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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】艶消し化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240301BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20240301BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/25
A61K8/87
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553240
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022018221
(87)【国際公開番号】W WO2022187169
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】17/189,768
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウィルソン エー.
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC111
4C083AC122
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD572
4C083BB01
4C083BB21
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE06
(57)【要約】
可撓性であり、選択された温度、例えば、43℃未満の水に耐性がある、艶消し単相化粧品組成物。この組成物は、持ちが良く、滲み及び剥離耐性、並びに耐油性である。本発明による組成物は、化粧品として許容される基剤又は送達ビヒクル中に、アクリレート/VAコポリマー、アクリレートコポリマー及びHDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカの特定の組み合わせを含む。本発明による組成物は、適用前は親水性であるが、乾燥して透明な疎水性フィルムになる。乾燥したフィルムは、ある特定の温度を超える水でこすり洗うと容易に除去することができるが、その温度未満の水ではそれほど容易には除去されない。この組成物は、製造が容易であり、可撓性で快適であり、皮膚及び毛髪への使用に好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相移り抵抗性水性組成物であって、前記組成物の総重量に対して、
8%~16%のアクリレート/VAコポリマー、
0.2%~0.8%のアクリレートコポリマー、
1%~15%のHDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ、
40%~70%の水を含む、単相移り抵抗性水性組成物。
【請求項2】
アクリレート/VAコポリマー対アクリレートコポリマーの比が、10:1~80:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アクリレート/VAコポリマー対アクリレートコポリマーの比が、12:1~40:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカの濃度が、4%~8%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.00001%~20%の顔料を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
0.00001%~3%の界面活性剤及び/又は乳化剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.001%~0.5%のポリウレタンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
0.00001重量%~4重量%のグリコールを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚などのケラチン表面のためのパーソナルケア製品及び化粧品の分野である。特に、本発明は、皮膚に艶消し効果又はぼかし効果を提供するローション、セラム、及びクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア製品及び化粧製品は、様々な形態で提供されており、使用者が望む見た目に応じて様々である。具体的には、製品は艶消し又は光沢があり得る。高い光沢(高い輝き)の化粧製品によって付与される見た目は、魅力的で官能的であると考えられる。しかしながら、高い輝きの製品は、皮膚上での保持力がほとんどない傾向があった。剥離及び滲みは、高い輝きの製品に共通の問題であり、皮膚上での製品の可撓性の欠如による不快感も同様である。これらの問題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共同所有の同時係属出願の米国特許出願公開第15/632903号及び米国特許出願公開第17/176527号において成功裏に対処された。可撓性があり、43℃未満の水に対して耐性である高い輝きの色付き化粧品組成物がそこに開示されている。組成物は、持ちが良く、滲み及び剥離耐性、並びに耐油性であり、これらを高い輝きの長持ちする化粧品として非常に好適なものにする。これらの組成物は、化粧品として許容される基剤又は送達ビヒクル中にアクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの特定の組み合わせを含む。組成物は、親水性であり、ある特定の温度を超える水でこすり洗うと容易に除去することができるが、その温度未満の水ではそれほど容易には除去されない。組成物は、製造が容易であり、可撓性で快適であり、皮膚、毛髪、及び爪などのケラチン表面上での使用に好適である。しかしながら、これらの出願に記載されている組成物は、本質的に光沢があった。
【0003】
現在、米国特許出願公開第15/632903号及び米国特許出願公開第17/176527号に開示されている光沢のある組成物と同じ特性の多くを有する艶消し組成物に対する必要性が生じている。ぼかし、又はソフトフォーカス効果及び真の色、並びに温水による容易な除去を提供する艶消し化粧品組成物を提供することが特に有利であろう。本発明はそのような組成物を提供する。
【0004】
アクリレートポリマーを含む化粧品組成物は、典型的には、油、界面活性剤、及び/若しくは乳化剤を含むエマルジョン、又は油若しくはアルコールなどの揮発性成分を含む無水製剤の形態で提供されてきた。例えば、米国特許第7,323,162号は、水相、油相、及び2種類のフィルム形成剤(水溶性、耐油性フィルム形成剤、例えば、Covacryl A15又はE14)、及び油溶性(耐水性)フィルム形成剤(そのうちの少なくとも1つが特定のシリコーン変性アクリレートコポリマーである)を含む水中シリコーンエマルジョンを開示している。組成物は、水中シリコーンエマルジョンを安定化するのに特に適した界面活性剤を更に含む。対照的に、共同所有の米国特許第8,932,570号は、移り抵抗性単相水性化粧品組成物を開示している。組成物は、1%~95%の水溶性フィルム形成アクリレートコポリマー及び1%~60%のコポリマーのための水溶性可塑剤、並びに任意選択で1%~20%の顔料から本質的になる。アクリレートコポリマーは、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択されるモノマーと、アルキル及びアルコキシルアクリレート並びにアルキル及びアルコキシルメタクリレートからなる群から選択されるコモノマーから本質的になる。可塑剤は、ポリエーテル誘導体、ポリオキシプロピレン誘導体、グリコール及びグリコール誘導体、並びにグリセリン及びグリセリン誘導体、並びにこれらの組み合わせから選択され得る。組成物は、油、ワックス、界面活性剤、又は乳化剤を含まず、皮膚上で乾燥した際に耐水性及び耐油性であり、高い光沢及び長持ち並びに移り抵抗性を呈する。これらの組成物が顔料を含む場合、それらは高い色強度も示す。2相の油及び水エマルジョン系とは対照的に、これらの組成物は、製剤化するのにそれほど複雑でなく、より費用がかからず、単一の水相のみを必要とし、かつ油、界面活性剤、又は乳化剤を必要としない。更に、これらの組成物は、単一タイプの水溶性フィルム形成剤を用いて製剤化され得る。
【0005】
本発明者らの知る限りでは、先行技術は、本明細書に開示されるような、8%~16%のアクリレート/VAコポリマー、0.2%~0.8%のアクリレートコポリマー、及び1%~15%の疎水性粉末、例えば、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカを含む艶消し組成物を開示できていない。また、本明細書に開示されるようなアクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの比も、それらの有用性も開示していない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、可撓性であり、43℃未満の水に対して耐性である、色を含むか、又は含まない艶消し化粧品組成物を提供する。組成物は、皮膚の細かい線の出現を減少させるぼかし効果を提供する。本発明による組成物は、化粧品として許容される基剤又は送達ビヒクル中に、アクリレート/VAコポリマー、アクリレートコポリマー及び疎水性粉末(特に、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ)の特定の組み合わせを含む。本発明による組成物は、単相であり、使用前及び使用中は親水性であるが、乾燥時には疎水性である。それにもかかわらず、乾燥フィルムは、ある特定の温度を超える水でこすり洗うと容易に除去されるが、その温度未満の水ではそれほど容易には除去されない。この組成物は、製造が容易であり、可撓性で快適であり、皮膚への使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施例及び比較例、又は別様に明示的に示される場合を除き、材料又は反応条件の量又は比率、材料及び/又は使用の物理的特性を示す本明細書における全ての数は、「約」という語によって修飾されるものとして理解されるべきである。全ての量は、別途指定されない限り、最終的な組成物の重量百分率として示される。
【0008】
本明細書を通して、「フィルム形成剤」などは、例えば、フィルム形成剤に付随する溶媒が蒸発し、基質中に吸収され、かつ/又は基質上で消散した後に、ポリマーが適用された基質上にフィルムを残すポリマーを指す。
【0009】
「真の色」の組成物は、適用された組成物の色が、ある期間後に、皮膚又は毛髪への適用時と同じ、又は実質的に同じままである組成物である。
【0010】
「可撓性」組成物は、その意図された使用のために皮膚又は毛髪に適用された場合に、4時間又は8時間の着用などの定義された期間にわたってひび割れないか、又は剥離しない組成物である。組成物が十分に可撓性でない場合、それは「剛性」である。
【0011】
「耐水性」とは、皮膚又は毛髪に堆積した組成物が、乾燥又は硬化させた後に、溶解しないか、又は再湿潤しないか、又は水分を吸収しないか、又はそうでなければ水によって悪影響を受けないことを意味する。
【0012】
「単相」は、組成物が油中水型又は水中油型エマルジョンではないことを暗示する。
【0013】
「含む」などは、要素のリストが明示的に記載されたものに限定されない場合があることを意味する。
【0014】
アクリレート/VAコポリマー
本発明の第1の主成分は、アクリレート/VAコポリマー(INCI名)、C1526であり、エテニルアセテート又は2-エチルヘキシルプロプ-2-エノエート(IUPAC名)としても知られている。CAS番号25067-02-1。詳細な情報については、PubChem Compound Database;CID=168269を参照されたい。
【0015】
【化1】
【0016】
化粧品において、この材料はしばしば、結合剤、フィルム形成剤、接着剤、及び/又は毛髪固定剤として機能する。アクリレート/VAコポリマーは、水性化粧品系に配置されると、皮膚又は毛髪上にフィルムを付与することができる。純粋なアクリレート/VAコポリマーフィルムは、約40℃以上の水でのすすぎがフィルムを分解し、通常の皮膚温度(すなわち、36.5~37.5℃)以下の温度でその完全性を保持しながら、表面から除去することを可能にするような温度依存性を特徴とする。
【0017】
本発明の組成物は、典型的には、組成物の総重量に対して8%~16%のアクリレート/VAコポリマー、例えば、組成物の総重量に対して11%~13%を含む。アクリレート/VAコポリマーは、水性混合物として市販されている。例えば、大同化学株式会社は、アクリレート/VAコポリマーの46.6%水性混合物であるVinysol 2140L、及びアクリレート/VAコポリマーの47.5%水性混合物であるVinysol 2140LPを提供している。
【0018】
アクリレート/VAコポリマーフィルムの強度は、この材料を、容易に割れない又は剥離しない薄く適用される化粧品に好適なものにする。しかしながら、改質なしでは、アクリレート/VAコポリマーは、最終生成物を、商業的に有用であるには剛性すぎるものにする傾向がある。
【0019】
アクリレートコポリマー
高い剛性の問題に対処するために、アクリレート/VAコポリマーを、アクリレート/VAコポリマーよりも低いTを有するアクリレートポリマーと組み合わせた。一般に、より低いTは、得られるフィルムにより多くの可撓性を提供する。本発明において、乾燥した組成物に好適な量の可撓性を提供するために、第2の主成分は、アクリレートコポリマー、C1422であり、プロプ-2-エノエート;メチル2-メチルプロプ-2-エノエート又は2-メチルプロプ-2-エン酸(IUPAC名);CAS番号25133-97-5としても知られている。詳細な情報については、PubChem Compound Database;CID=168299を参照されたい。様々なタイプの化粧品製剤において、アクリレートコポリマーは、フィルム形成剤、毛髪固定剤、結合剤、及び懸濁化剤、粘度増強剤、帯電防止剤、並びに接着剤としての用途を含めて、多種多様な用途を有する。
【0020】
上述したように、アクリレート/VAコポリマーフィルムは、少なくとも約40℃の水でのすすぎがフィルムを分解するが、それを下回る温度では分解しないような温度依存性を特徴とする。アクリレート/VAコポリマーをアクリレートコポリマーと本明細書に開示される比率で組み合わせる際に、得られるフィルムは、フィルムを分解するのに必要とされる水の異なる最低温度を呈することが注目された。具体的には、アクリレートコポリマーの添加は、フィルムを分解するのに必要とされる水の最低温度を上昇させる傾向がある。米国では、家庭用蛇口からの典型的な水温は、120°F(48.9℃)を超えないように設定されている。したがって、ある特定の最低温度は、40℃~48.9℃、好ましくは42℃~46℃、より好ましくは43℃~44℃に設定されるべきである。本発明の様々な実施形態では、ある特定の最低温度は、43℃~44℃になるように調整されている。43℃~44℃は、通常の健康な皮膚温度(すなわち、36.5~37.5℃)よりも数度暖かいが、皮膚を損傷する又は痛みを引き起こすほど高くないため、最も好ましい。Vinysol 2140L材料について報告された40℃の最低温度は、通常の皮膚の温度に近く、消費者の使用において一貫した経験を提供しない場合がある。本明細書に開示される比でアクリレートコポリマー(及び疎水性粉末、下記参照)と組み合わせてアクリレート/VAコポリマーを使用することによって、最低温度を40℃超、好ましくは42℃~46℃に固定して、より大きな誤差の範囲を提供することができ、又はより良好には43℃~44℃である。
【0021】
本発明において、アクリレートコポリマーの有用な濃度は、組成物の総重量に基づいて、0.2%~0.8%、例えば、0.3%~0.7%、例えば、0.4%、0.6%、例えば0.5%である。同時係属出願の米国特許出願公開第15/632903号及び米国特許出願公開第17/176527号において、約0.5%未満のアクリレートコポリマーの濃度では、アクリレートコポリマーは最終組成物に十分な可撓性を付与することができないことが報告された。しかしながら、疎水性粉末は、アクリレート/VAコポリマーに対するいくらかの可塑化効果(及び以下に記載される他の特性)に寄与するため、疎水性粉末の組成物への添加が、アクリレートコポリマーの必要とされる濃度を低下させることを発見した。
【0022】
上記に基づいて、アクリレート/VAコポリマーの重量対アクリレートコポリマーの重量の比は、10:1~80:1、好ましくは10:1~60:1、より好ましくは12:1~40:1の範囲でなければならないと言うことができる。更に、10:1~80:1のアクリレート/VAコポリマー対アクリレートコポリマーの全ての重量比が有用であり、本発明により包含される。これらの有用な比としては、例えば、X:1が挙げられ、Xは、10~80の任意の整数又は半整数である。例えば、Xは、10~60の任意の整数若しくは半整数、又は12~40の任意の整数若しくは半整数であり得る。
【0023】
アクリレートコポリマーは、水性混合物として市販されている。例えば、大東化成工業株式会社は、Daitosol 5000ADを提供しており、Interpolymer CorporationはSyntran 5710を提供している。Daitosol 5000ADは、アクリレートコポリマーの50%水性混合物である。Syntran 5710は、アクリレートコポリマーの40.8%水性混合物である。
【0024】
疎水性粉末
本発明の製剤系は、水性系中に疎水性粉末を分散させることが特に特異である。例としては、シリカ及びチタンが挙げられる。しかしながら、特に興味深いのは、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ(INCI名)である。この材料は、その絹のような質感及び高められた滑りのため、並びにその光拡散又は艶消し効果のために使用される油溶性微小球粉末であり、これは皮膚における細かい線の出現を低減する。疎水性であるため、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカは一般に揮発性溶媒を必要とし、シリコーン及びアルコールは単なる2つの例である。しかしながら、疎水性粉末及び揮発性溶媒の使用は、皮膚の毛穴を詰まらせること、並びに粉を吹いた外観及び不快な乾燥効果をもたらすことなどの周知の問題をもたらす。
【0025】
上記の不快な副作用を回避しながら、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカの艶消し効果を得ることができることが今や発見された。これは、本明細書に記載されるように、アクリレートコポリマー及びアクリレート/VAコポリマーと併せてHDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカを使用することによって達成される。揮発性溶媒は不要である。本明細書に記載されるアクリレートコポリマー及びアクリレート/VAコポリマーの組み合わせが、揮発性溶媒を使用することなく、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末の艶消しの利益を確実にすることができることは全く明らかではなかった。HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末に関する文献には、同程度に示唆するものはなかった。それにもかかわらず、本明細書に開示されるように使用される場合、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末は、皮膚の毛穴を詰まらせることができず、粉を吹いた外観又は乾燥した感触を有さないが、望ましい艶消し効果又はぼかし効果を提供する。更に、同時係属出願の米国特許出願公開第15/632903号及び米国特許出願公開第17/176527号に示されるように、本発明の組成物の1つの有利な特徴は、それらが使用前及び使用中に親水性であるが、乾燥時に疎水性であることである。HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末の添加が、アクリレートコポリマー及びアクリレート/VAコポリマーの組み合わせのこの特性及び他の固有の特性を損なわないことは明らかではなかった。驚くべきことに、本発明者らは、アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの濃度及び比を調整することによって、これらの固有の特性を保持する方法を発見した。
【0026】
本発明において、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカなどの疎水性粉末の有用な濃度は、1%~15%、好ましくは4%~8%、より好ましくは3%~6%である。HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカは市販されている。Kobo Products,Inc.のBPD-500及び日光ケミカルズのD-800が2つの例である。
【0027】

組成物は、単一の水相を有し、総組成物の40重量%~70重量%の水、好ましくは50重量%~60重量%の水を含み、油又はシリコーンを有さない。水の量は、アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの市販の水性分散液などの全ての供給源からの量である。(本明細書に記載される他の有益な特性を有する一方で)乾燥して疎水性状態になる水性親水性状態で製剤化する能力は、本発明の大きな利点である。組成物が第1の状態又は親水性状態にある間、水溶性成分と製剤化する能力は強化され、化粧品の適用はより容易であり、より心地よい感触である。乾燥して第2の状態又は疎水性状態になると、適用された組成物は、皮膚及び大気中の水分による分解に抵抗する。しかしながら、米国特許第8,932,570号に開示されているものとは異なり、本発明の乾燥組成物は、ある特定の最低温度以上の水及び剪断の適用によって容易に洗い落とすことができる。皮膚又は毛髪から組成物を除去するためには、剪断及びある特定の最低水温の両方が必要である。例えば、乾燥した組成物が、ある特定の最低温度以上で水に曝露されると、組成物は構造が崩壊するが、そうでなければ適用された水に溶解せず、その結果、組成物は皮膚又は毛髪上に残る。同様に、乾燥した組成物が、水なしで、又はある特定の最低温度未満の水を用いて、剪断(典型的な激しいこすり洗い作用の形態で)に曝露された場合、組成物はそのまま残り、皮膚又は毛髪への優れた接着性を有する。皮膚又は毛髪からの組成物の除去を行うためには、組成物を皮膚から取り除くために、剪断(典型的な激しいこすり洗い作用の形態で)及びある特定の最低温度を超える水の両方を組成物に適用しなければならない。
【0028】
形態
本発明の組成物は、ローション、セラム、及びクリームとして実施することができる。最終組成物の粘度は、増粘剤で調整することができるが、手動スプレーポンプ又は加圧容器などの化粧品又はパーソナルケアタイプの分注システムを使用して、組成物をスプレーとして分注することを可能にするほど十分に低くてもよい。
【0029】
他の成分
消費者体験を微調整するために、又は組成物の性能を向上させるために、様々な成分は任意選択であるが、本発明の化粧品組成物中に含まれ得る。本明細書に開示されるレベルでは、以下の成分は、組成物の化粧品特性及び商業的特性に悪影響を及ぼさないようである。
【0030】
組成物が色を付与することが意図される場合、組成物は、0%~20%の親水性顔料を含み得る。顔料を含む本発明の組成物は、乾燥時の組成物の色が、皮膚又は毛髪への湿潤適用時と、同じ又は実質的に同じままである「真の色」を提供する。
【0031】
任意選択で、キサンタンガム、カラギーナン、及びマイクロセルロースなどの、化粧製品において安全であると典型的に考えられる懸濁化剤は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ、又は他の疎水性粉末が、組成物全体に均一に分散されたままであることを確実にするために有用であり得る。使用される場合、懸濁化剤は、総組成物の0.01~25重量%を含み得る。
【0032】
例えば、アルコールは、任意選択であるが、皮膚への適用後の乾燥を速めるのに有用であり得る。アルコールも、防腐剤系の一部として有用であり得る。5%までのアルコール量が有用であり得る。この量は、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカの活性に干渉しない。
【0033】
化粧品組成物はまた、必要に応じて、それらの防腐及び防腐増強活性のための成分を含み得る。総防腐剤系は、典型的には、組成物の0.00001重量%~約2重量%の範囲である。
【0034】
また、必要に応じて、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤を、典型的には組成物の0.00001重量%~1重量%の範囲で使用して、消費者が許容できる製品を作製してもよい。
【0035】
ジオール(2個のヒドロキシル基を含む化合物)としても知られるグリコールは、任意選択であるが、本発明において時に有用である。1,3-プロパンジオールなどのグリコールは、典型的には、組成物の凍結融解安定性を向上させるために化粧品において使用され得る。しかしながら、存在する場合、グリコールは、それ未満では乾燥した組成物が皮膚又は毛髪から容易に除去され得ないある特定の最低温度にも影響を及ぼし得る。アクリレートコポリマーがある特定の最低温度を上昇させる傾向がある場合、グリコールはそれを減少させる傾向がある。したがって、使用される場合、グリコールは、総組成物の0.00001重量%~4重量%、好ましくは総組成物の1重量%未満、より好ましくは総組成物の0.5重量%未満で含まれ得る。特に、許容される凍結融解安定性がグリコールなしで達成可能である場合、0%のグリコールが最も好ましい。
【0036】
本発明の好ましい組成物は、界面活性剤又は乳化剤として作用する成分を有さない。しかしながら、いくつかの界面活性剤又は乳化剤は、本発明の場合のように、疎水性粉末(すなわち、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末)が水性系に添加されている場合に、粉末を安定化するために、いくつかの例において有用であり得る。したがって、使用される場合、界面活性剤及び乳化剤の合計は、最終組成物の0.00001重量%~3重量%に制限されるべきであり、最終組成物が単相であるように、エマルジョンを作製するために必要とされるよりも少ない量に制限されるべきである。
【0037】
ポリウレタンは、組成物を非常に剛性にする傾向があり、皮膚又は毛髪からフィルムを除去するのに必要な水のある特定の最低温度を変化させる。したがって、本発明の組成物がポリウレタンを含まない(0%)場合が好ましい。ポリウレタンが使用される場合、その濃度は、最終組成物の0.001重量%~0.5重量%に制限されるべきである。
【0038】
乾燥したフィルムの構造に著しく干渉する薬剤は、皮膚からフィルムを除去するのに必要な水のある特定の最低温度を変化させ、また存在する場合には色を劣化させる。したがって、含まれる場合、本発明の組成物は、ワックス、粘土(ベントナイトなど)、又はステアリン酸など、0.00001%~0.5%の構造化剤に制限されるべきである。より好ましくは、本発明の組成物は、0.00001%~0.001%の構造化剤に限定される。最も好ましくは、本発明の組成物は、構造化剤を含まない(0%)。この規則の有用な例外は、ステアリン酸ナトリウムである。多くの構造化剤とは異なり、ステアリン酸ナトリウムは、部分的に親水性であり、それにより水性系に好適となる。ステアリン酸ナトリウムは、部分的に疎水性であるが、その使用は本発明の目的を損なうようには思われていない。ステアリン酸ナトリウムは、総組成物の0.00001重量%~4重量%で構造化剤として使用することができる。
【0039】
本明細書に記載されるように、安全であると認識され、かつ本発明の組成物の機能的及び性能面に干渉しない任意の他の化粧品成分が含まれ得る。
【0040】
以下の非限定的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す。
【実施例1】
【0041】
【表1】
【0042】
本発明のローション、セラム、クリーム、又は噴霧可能な製品を調製するための好ましい手順は、以下の通りである。
【0043】
1.主容器中で、相1、2、及び3を均一になるまで逐次的に混合する。
2.別に、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末をレシチン(又は任意の液体水中油型乳化剤)と混合して、粉末をコーティングする。
3.工程2の成分を混合しながら主容器に添加する。
4.アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーを別々に混合し、水の一部に溶解する(この工程は、既に溶液で供給されているこれらの材料で作業している場合には省略してもよい)。
5.工程4の成分を主容器に添加し、十分に混合して均一な塊を得る。
【0044】
本発明の組成物は、皮膚に艶消し及び/又はぼかし効果を提供し、かつ顔料が含まれる場合には鮮やかな色強度を提供する、移り抵抗性の水ベースローション、セラム、及びクリームである。アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーは、容易に割れない又は剥離しないが、一方で商業的に受け入れられるには硬すぎない化粧品組成物を形成する。同時に、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末は、ぼかし又はソフトフォーカス効果を提供し、これは、細かい線を隠すのに役立ち、全体的に若々しい外観を提供することができる。組成物が乾燥して透明なフィルムになるにつれて、油溶性HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー//シリカ粉末が、フィルムの孔に捕捉されるようになり、光を効率的に散乱させることができ、これがぼかし又はソフトフォーカス効果を生み出すと考える。フィルムの孔に捕捉されていると、粉末は皮膚の孔を詰まらせることができない。
【0045】
組成物は、艶消し及び/又はぼかし効果を提供する一方で、滲み及び剥離に関して良好に機能する。組成物は非常に良好な破壊強度及び可撓性を有し、湿潤時には親水性であるが、乾燥時には疎水性である。適用されると、組成物は約1分以下で乾燥し、例えば43℃など、ある特定の最低温度を超える水、及びこすり洗いで容易に除去することができるが、その温度未満の水ではそれほど容易に除去することができず、これにより望ましくない移り及び滲みが低減される。ある特定の最低温度よりわずか1度低い水でこすり洗っても、完全に乾燥した製品を皮膚から除去するのに有効ではない。
【国際調査報告】