(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20240301BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240301BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240301BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240301BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240301BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K8/89
A61Q1/00
A61Q19/00
A61K8/31
A61K8/19
A61Q1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553350
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2021091491
(87)【国際公開番号】W WO2022227002
(87)【国際公開日】2022-11-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】イン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シンウェイ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】サイジュアン・ニ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB271
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC791
4C083AC912
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD662
4C083BB14
4C083BB25
4C083CC13
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための液体である無水組成物であって、a)シリコーン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末、b)第1の油中で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラー、並びにd)揮発性炭化水素油である少なくとも1種の第2の油を含み、ワックスを含まず、組成物の総質量に対して15wt.%超のフィラーを含む、組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための液体である無水組成物であって、
a)シリコーン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末、
b)第1の油中で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、
c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラー、並びに
d)揮発性炭化水素油である少なくとも1種の第2の油
を含み、ワックスを含まず、組成物の総質量に対して15wt.%超のフィラーを含む、組成物。
【請求項2】
ペースト状化合物を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オルガノポリシロキサンエラストマーが、とりわけ、(C1)白金触媒の存在下で、(A1)ケイ素に結合した少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサンと、(B1)各々ケイ素に結合した少なくとも2個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応によって得られる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、組成物の総質量に対して、0.5wt.%~10wt.%、好ましくは1wt.%~8wt.%、より好ましくは2wt.%~5wt.%の範囲の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーのタイプが、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーは、組成物の総質量に対して、2wt.%~20wt.%、好ましくは4wt.%~15wt.%、より好ましくは6wt.%~10wt.%の範囲の量で本発明の組成物中に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
非粉末タイプのオルガノポリシロキサンエラストマー及びシリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、2から5の間、好ましくは2.5から4の間の質量比で存在しうる、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物の総質量に対して、0.1wt.%~5wt.%、好ましくは1wt.%~4wt.%のポリメチルシルセスキオキサン、及び0.1wt.%~5wt.%、好ましくは0.1wt.%~0.5wt.%のホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
タルク、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、トリメチロールヘキシルラクトンを含むコポリマー、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の他のフィラーを更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラーが、組成物の総質量に対して、15wt.%~30wt.%、好ましくは15wt.%~25wt.%、より好ましくは15wt.%~20wt.%の範囲の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
第2の油が、組成物の総質量に対して、10wt.%~40wt.%、好ましくは10wt.%~25wt.%の範囲の量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)不揮発性炭化水素油、(ii)親水性保湿剤、(iii)着色料、及び(iv)これらの混合物のうちの少なくとも1種を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の総質量に対して、
a)2wt.%~5wt.%のビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、
b)ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される、第1の油中で運ばれる6wt.%~10wt.%のオルガノポリシロキサンエラストマー、
c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む、15wt.%~20wt.%の少なくとも2種のフィラー、並びにタルク、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマー及びこれらの混合物から選択される他のフィラー、
d)イソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択される、10wt.%~25wt.%の揮発性炭化水素油、
e)イソステアリン酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリイソブテン及びこれらの混合物から選択される、10wt.%~25wt.%の不揮発性炭化水素油、並びに
f)YELLOW 6レーキ、Blue 1レーキ、RED 28レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される、2wt.%~10wt.%の着色料
を含み、ワックス及びペースト状化合物を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための美容方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物に関する。より詳細には、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための無水組成物に関する。本発明はまた、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適用、快適性、特に非グリース状であること、良好な被覆性の観点において、及びメイクアップ効果の観点において満足のいく特性を有する、皮膚及び/又は唇をメイクアップ及び/又はケアするための専用の配合物の開発は、継続している目的である。
【0003】
口紅は、必須のものになっており、使用者の唇をケア及び/又はメイクアップすることにおいて圧倒的に優勢な適用方法であると使用者に認識されている。口紅は、使用者の顔の外見的特徴を変更することが可能である。例えば、薄い唇を厚くし、厚い唇を薄くすることができる。口紅は、唇の形状を変更するほか、所望の効果を促進する又は着用者の雰囲気を表現する多数の色及び色合いを作ることができる。
【0004】
しかしながら、一部の口紅は適用することが容易ではなく、生成される付着層のマット感は不十分なままである。
【0005】
唇をメイクアップする文脈において従来グロスと呼ばれている、流体の形態の皮膚又は唇をメイクアップするための組成物も知られており、これは一般にワックスを欠いており、従来は600g/mol超の分子量の少なくとも1種の不揮発性油を含む。
【0006】
しかしながら、そのような液体組成物により生成される付着層は、一般に比較的光沢があり、及び/又は唇上で脂っぽさの感覚を示し、これは使用者にとって不快感の原因となる。
【0007】
一方、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための一部の化粧品は、良好な被覆性をもたらすことができず、これは望ましくない。
【0008】
したがって、適用することが容易であり、マットな付着物及び軽い感覚をもたらすことが可能な、ケラチン物質、特に唇をケア及び/又はメイクアップするための組成物への必要性がなお存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5538793号
【特許文献2】米国特許第5236986号
【特許文献3】米国特許第5412004号
【特許文献4】米国特許第5837793号
【特許文献5】米国特許第5811487号
【特許文献6】国際公開第2008/155059号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1086683号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】刊行物「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、1997年版、371~386頁及び524~528頁、「The Cosmetic, Toiletries and Fragrance Association」刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、適用することが容易であり、マットな付着物及び軽質量の感覚をもたらすことが可能な、ケラチン物質、特に唇をケア及び/又はメイクアップするための組成物を開発することである。
【0012】
本発明の別の目的は、ケラチン物質、例えば皮膚及び唇、特に唇をケア及び/又はメイクアップするための美容方法を提供することであり、その結果、軽質量の感覚を有するマットな付着物がケラチン物質上にもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様によると、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための液体である無水組成物であって、
a)シリコーン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末、
b)第1の油中で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、
c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラー、並びに
d)揮発性炭化水素油である少なくとも1種の第2の油
を含み、ワックスを含まず、組成物の総質量に対して15wt.%超のフィラーを含む、組成物を提供する。
【0014】
第2の態様によると、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための美容方法であって、上記の無水組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法を提供する。
【0015】
本発明による無水組成物は、適用することが容易であり、マットな付着物及び軽質量の感覚をもたらすことが可能であることが見出された。
【0016】
本発明の他の主題及び特徴、態様及び利点は、以下の記載及び実施例を読むことによって、更により明確となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、別段に示されていない限り、値の範囲の限界値は、特に「…から…の間」及び「…~…」という表現において、この範囲内に含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、全ての特定的に言及される特徴に加えて、任意選択の追加の不特定の特徴を包含すると解釈されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用はまた、特定的に言及される特徴以外の特徴が存在しない(すなわち「からなる」)実施形態を開示する。
【0020】
本出願において使用される「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と同等である。
【0021】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本記載における用語の定義が、本発明が属する分野の当業者に一般に理解される通りの意味と矛盾する場合、本明細書に記載される定義が優先するものとする。
【0022】
別段に指定されない限り、本記載及び特許請求の範囲において使用される成分等の量を表す全ての数値は、「約」という用語によって修飾されていると理解されたい。したがって、逆のことが示されていない限り、本明細書に記載される数値及びパラメーターは、必要に応じて得られる所望の性能に従って変化することが可能な近似値である。
【0023】
本発明の目的で、「無水」という用語は、本発明による組成物が、組成物の総質量に対して2wt.%未満、好ましくは0.5wt.%未満の水を含有することを意味する。適切な場合、そのような少量の水は、それを残存量で含有する組成物の成分によってもたらされうるが、意図的にはもたらされない。
【0024】
「ワックス」という用語は、周囲温度(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化があり、120℃までの範囲でありうる、30℃以上の融点を有する親油性化合物を意味すると理解される。
【0025】
本出願における全てのパーセンテージは、別段に指定されない限り、質量パーセンテージを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ケラチン物質」という用語は、皮膚及び唇を指す。「皮膚」とは、頭皮を含む全ての身体の皮膚を意味することが意図される。好ましくは、ケラチン物質は唇である。
【0027】
本発明による無水組成物は、
a)シリコーン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末、
b)第1の油中で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、
c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラー、並びに
d)揮発性炭化水素油である少なくとも1種の第2の油
を含み、ワックスを含まず、組成物の総質量に対して15wt.%超のフィラーを含む。
【0028】
好ましくは、本発明による組成物は、ペースト状化合物を含まない。
【0029】
「ペースト状脂肪物質」という用語は、可逆的な固体/液体の状態変化を行い、固体状態で異方性の結晶組織を示し、23℃の温度で液体画分及び固体画分を含む、親油性脂肪化合物を示すことが意図される。
【0030】
シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末
本発明の第1の態様によると、無水組成物は、シリコーン樹脂、特にシルセスキオキサン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含み、これは例えば米国特許第5538793号に記載され、その内容は参照により組み込まれる。
【0031】
そのようなエラストマー粉末は、信越化学工業株式会社によって、KSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-103、KSP-104及びKSP-105の名称で販売されており、INCI名:ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーを有する。
【0032】
好ましくは、シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、INCI名:ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーを有する化合物である。
【0033】
有利には、シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、組成物の総質量に対して、0.5wt.%~10wt.%、好ましくは1wt.%~8wt.%、より好ましくは2wt.%~5wt.%の範囲の量で本発明の組成物中に存在する。
【0034】
第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー
本発明の第1の態様によると、無水組成物は、第1の油中で、特にオルガノポリシロキサンエラストマーゲルの形態で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマーとも呼ばれる)を含む。
【0035】
好ましくは、第1の油はシリコーン油及び/又は炭化水素油であり、これは好ましくは不揮発性である。
【0036】
好ましくは、組成物は、INCI名ジメチコンを有する少なくとも1種の不揮発性シリコーン油中で運ばれる少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマーを含む。
【0037】
「オルガノポリシロキサンエラストマー」又は「シリコーンエラストマー」という用語は、粘弾性を有し、とりわけスポンジ又は軟質の球体の稠度を有する、軟質の変形可能なオルガノポリシロキサンを意味する。その弾性係数は、この材料が変形に耐え、限定的な伸長及び収縮能力を有するようなものである。この材料は、延伸後にその元の形状に戻ることが可能である。
【0038】
それは、より詳細には、架橋シリコーンエラストマーである。
【0039】
シリコーンエラストマー粒子は、少なくとも1種の炭化水素油及び/又は1種のシリコーン油中に含まれるエラストマー性オルガノポリシロキサンから形成されたゲルの形態で運ばれる。
【0040】
これらのゲル中で、オルガノポリシロキサン粒子は、多くの場合、非球状粒子である。
【0041】
非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマー
したがって、オルガノポリシロキサンエラストマーは、とりわけ白金触媒の存在下で、ケイ素に結合した少なくとも1個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合したエチレン性不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応によって;又はとりわけ有機スズの存在下で、ヒドロキシル末端基を含有するジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した少なくとも1個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンとの間の脱水素架橋縮合反応によって;又はヒドロキシル末端基を含有するジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシロキサンとの架橋縮合反応によって;又はとりわけ有機過酸化物触媒の存在下で、オルガノポリシロキサンの熱架橋によって;又はガンマ線、紫外線若しくは電子ビーム等の高エネルギー放射線を介したオルガノポリシロキサンの架橋によって得ることができる。
【0042】
好ましくは、オルガノポリシロキサンエラストマーは、とりわけ(C)白金触媒の存在下で、(A)各々ケイ素に結合した少なくとも2個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、(B)ケイ素に結合した少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応によって得られる。
【0043】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルポリシロキサンとトリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0044】
化合物(A)は、エラストマー性オルガノポリシロキサンの形成のためのベース反応物であり、架橋は、触媒(C)の存在下における化合物(A)と化合物(B)との付加反応を介して生じる。
【0045】
化合物(A)は、特に、各分子中に異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0046】
化合物(A)は、任意の分子構造、とりわけ直鎖若しくは分枝鎖構造又は環状構造を有していてもよい。
【0047】
化合物(A)は、とりわけ化合物(B)と混和性であるように、25℃で1~50000センチストークの範囲の粘度を有していてもよい。
【0048】
化合物(A)のケイ素原子に結合した有機基は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル;置換アルキル基、例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えば、フェニル、トリル、キシリル;置換アリール基、例えば、フェニルエチル;及び置換一価炭化水素基、例えば、エポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0049】
化合物(A)は、したがって、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、及びジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン環状コポリマーから選択することができる。
【0050】
化合物(B)は、有利には、少なくとも2つの低級アルケニル基(例えばC2~C4)を含有するジオルガノポリシロキサンであり、低級アルケニル基は、ビニル、アリル及びプロペニル基から選択することができる。これらの低級アルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子の任意の位置に位置していてもよいが、好ましくは、オルガノポリシロキサン分子の末端に位置する。オルガノポリシロキサン(B)は、分枝鎖、直鎖、環状又は網状構造を有していてもよいが、直鎖構造が好ましい。化合物(B)は、液体状態からゴム状態の範囲の粘度を有していてもよい。好ましくは、化合物(B)は、25℃で少なくとも100センチストークスの粘度を有する。
【0051】
上述のアルケニル基のほか、化合物(B)中でケイ素原子に結合した他の有機基は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はオクチル;置換アルキル基、例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えば、フェニル、トリル又はキシリル;置換アリール基、例えば、フェニルエチル;及び置換一価炭化水素基、例えば、エポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0052】
オルガノポリシロキサン(B)は、メチルビニルポリシロキサン、メチルビニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、及びジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマーから選択することができる。
【0053】
特に、オルガノポリシロキサンエラストマーは、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するジメチルポリシロキサンとトリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0054】
別の代替的形態によると、化合物(B)は、少なくとも2つの低級アルケニル基(例えばC2~C4)を含有する不飽和炭化水素化合物であってもよく、低級アルケニル基は、ビニル、アリル及びプロペニル基から選択することができる。これらの低級アルケニル基は、分子の任意の位置に位置していてもよいが、好ましくは、末端に位置する。例として、ヘキサジエン、特に1,5-ヘキサジエンを挙げることができる。
【0055】
有利には、化合物(B)中の1分子当たりのエチレン性基の数と、化合物(A)中のケイ素原子に結合している1分子当たりの水素原子の数との合計は、少なくとも5である。
【0056】
化合物(A)は、化合物(A)中のケイ素原子に結合した水素原子の総量と、化合物(B)中の全てのエチレン性不飽和基の総量との間の分子比が、1.5/1から20/1の範囲内となるような量で添加することが有利である。
【0057】
化合物(C)は、架橋反応のための触媒であり、とりわけ、クロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び担体上の白金である。
【0058】
触媒(C)は、好ましくは、清浄な白金金属として、化合物(A)及び(B)の総量1000質量部当たり、0.1~1000質量部、更により良好には1~100質量部の量で添加される。
【0059】
エラストマーは、有利には、非乳化性エラストマーである。
【0060】
「非乳化性」という用語は、親水性鎖を一切含有しない、特にポリオキシアルキレン単位(とりわけポリオキシエチレン若しくはポリオキシプロピレン)又はポリグリセリル単位を一切含有しない、オルガノポリシロキサンエラストマーを定義する。
【0061】
オルガノポリシロキサンエラストマー粒子は、好ましくは、下記で定義するように、少なくとも1種の炭化水素油及び/又は1種のシリコーン油中に含まれるエラストマーオルガノポリシロキサンから形成されたゲルの形態で運ばれる。これらのゲル中で、オルガノポリシロキサン粒子は、球状又は非球状粒子であってもよい。
【0062】
使用することができる球状の非乳化性エラストマーには、例えばDow Corning社によってDC 9040、DC 9041、DC 9509、DC 9505の名称で販売されているものが含まれる。
【0063】
また、信越化学工業株式会社によってKSG-6、KSG-15、KSG-16、KSG-18、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44、Grant Industries社からGransil RPSからのGransil SR 5CYC Gel、Gransil SR DMF 10 Gel及びGransil SR DC556 Gel、General Electric社から1229-02-167、1229-02-168及びSFE 839の名称で販売されているものも使用することができる。
【0064】
好ましい実施形態によると、本発明による組成物は、油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーとして、好ましくはDow Corning社によってDC 9040、DC 9041、DC 9509、DC 9505の名称で販売されている化合物から選択される、好ましくは球状の非乳化性エラストマーを含む。
【0065】
特定の一実施形態によると、エラストマーは、環状シリコーン油との混合物として使用することができる。挙げることができる例は、架橋オルガノポリシロキサン/シクロペンタシロキサンの混合物又は架橋オルガノポリシロキサン/シクロヘキサシロキサンの混合物、例えば、Grant Industries社製のGransil RPS D5又はGransil RPS D6である。
【0066】
乳化性オルガノポリシロキサンエラストマー
別の実施形態によると、本発明による組成物は、油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーとして、乳化エラストマーを含む。
【0067】
「乳化性オルガノポリシロキサンエラストマー」という用語は、少なくとも1つの親水性鎖を含むオルガノポリシロキサンエラストマー、例えばポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマー及びポリグリセロール化シリコーンエラストマーを意味する。
【0068】
乳化性オルガノポリシロキサンエラストマーは、ポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーから選択することができる。
【0069】
ポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーは、ケイ素に結合した少なくとも1個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するポリオキシアルキレンとの架橋付加反応によって得ることができる架橋オルガノポリシロキサンエラストマーである。
【0070】
好ましくは、ポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーは、例えば、米国特許第5236986号及び米国特許第5412004号に記載の通り、とりわけ白金触媒(C1)の存在下での、各々ケイ素に結合した少なくとも2個の水素を含有するジオルガノポリシロキサン(A1)と、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するポリオキシアルキレン(B1)との架橋付加反応によって得られる。
【0071】
特に、オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するポリオキシアルキレン(とりわけ、ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン)と、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0072】
化合物(A1)のケイ素原子に結合した有機基は、1~18個の炭素原子を含有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル(又はラウリル)、ミリスチル、セチル又はステアリル;置換アルキル基、例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えば、フェニルエチル;及び置換一価炭化水素基、例えば、エポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0073】
したがって、化合物(A1)は、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、ジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン-環状コポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン-ラウリルメチルシロキサンコポリマーから選択することができる。
【0074】
化合物(C1)は、架橋反応のための触媒であり、とりわけクロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び支持体上の白金である。
【0075】
有利には、ポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーは、ジビニル化合物、特にポリシロキサンのSi-H結合と反応する少なくとも2つのビニル基を含有するポリオキシアルキレンから形成することができる。
【0076】
ポリオキシアルキレン化エラストマーは、とりわけ米国特許第5236986号、米国特許第5412004号、米国特許第5837793号及び米国特許第5811487号に記載されており、その内容は参照により組み込まれる。
【0077】
使用することができるポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーには、信越化学工業株式会社によってKSG-21、KSG-20、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33、KSG-210、KSG-310、KSG-320、KSG-330及びKSG-340、並びにDow Corning社によってDC9010及びDC9011の名称で販売されているものが含まれる。
【0078】
乳化性オルガノポリシロキサンエラストマーはまた、ポリグリセロール化オルガノポリシロキサンエラストマーから選択することができる。
【0079】
本発明によるポリグリセロール化オルガノポリシロキサンエラストマーは、とりわけ白金触媒の存在下で、ケイ素に結合した少なくとも1個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、エチレン性不飽和基を含有するポリグリセロール化化合物との架橋付加反応によって得ることができるオルガノポリシロキサンエラストマーである。
【0080】
好ましくは、オルガノポリシロキサンエラストマーは、とりわけ(C2)白金触媒の存在下で、(A2)各々ケイ素に結合した少なくとも2個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、(B2)少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するグリセロール化化合物との架橋付加反応によって得られる。
【0081】
特に、オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下で、ジメチルビニルシロキシ末端基を含有するポリグリセロール化化合物と、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0082】
化合物(A2)は、オルガノポリシロキサンエラストマーの形成のためのベース反応物であり、架橋は、触媒(C2)の存在下での化合物(A2)と化合物(B2)との付加反応によって実施される。
【0083】
化合物(A2)は、特に、各分子中に異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0084】
化合物(A2)は、任意の分子構造、とりわけ直鎖若しくは分枝鎖構造又は環状構造を有することができる。
【0085】
化合物(A2)は、とりわけ化合物(B2)と混和性になるように、25℃で1~50000センチストークの範囲の粘度を有していてもよい。
【0086】
化合物(A2)中のケイ素原子に結合した有機基は、1~18個の炭素原子を含有するアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、ドデシル(又はラウリル)、ミリスチル、セチル又はステアリル;置換アルキル基、例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリフルオロプロピル;アリール基、例えば、フェニル、トリル又はキシリル;置換アリール基、例えば、フェニルエチル;及び置換一価炭化水素基、例えば、エポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基であってもよい。
【0087】
好ましくは、前記有機基は、メチル、フェニル及びラウリル基から選択される。
【0088】
したがって、化合物(A2)は、トリメチルシロキシ末端基を含有するメチルヒドロゲノポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサンコポリマー、ジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン環状コポリマー、及びトリメチルシロキシ末端基を含有するジメチルシロキサン-メチルヒドロゲノシロキサン-ラウリルメチルシロキサンコポリマーから選択することができる。
【0089】
化合物(B2)は、下記式(B'):
CmH2m-1-O-[Gly]n-CmH2m-1 (B')
(式中、mは2~6の範囲の整数であり、nは2~200の範囲、好ましくは2~100の範囲、好ましくは2~50の範囲、好ましくは2~20の範囲、好ましくは2~10の範囲、優先的には2~5の範囲の整数であり、特に、nは3に等しく、Glyは、
-CH2-CH(OH)-CH2-O-又は-CH2-CH(CH2OH)-O-
を示す)
に対応するポリグリセロール化化合物であってもよい。
【0090】
有利には、化合物(B2)における1分子当たりのエチレン性基の数と化合物(A2)における1分子当たりのケイ素原子に結合した水素原子の数との合計は、少なくとも4である。
【0091】
化合物(A2)は、化合物(A2)中のケイ素原子に結合した水素原子の総量と、化合物(B2)中の全てのエチレン性不飽和基の総量との間の分子比が、1/1~20/1の範囲内となるような量で添加することが有利である。
【0092】
化合物(C2)は、架橋反応のための触媒であり、とりわけクロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒及び支持体上の白金である。
【0093】
触媒(C2)は、好ましくは、清浄な白金族金属として、化合物(A2)及び(B2)の総量1000質量部当たり、0.1~1000質量部、更により良好には1~100質量部の量で添加される。
【0094】
ポリグリセロール化オルガノポリシロキサンエラストマーは、少なくとも1種の炭化水素油及び/又は1種のシリコーン油中で、ゲル形態で運ばれる。これらのゲル中で、ポリグリセロール化エラストマーは、多くの場合、非球状粒子の形態である。
【0095】
使用することができるポリグリセロール化オルガノポリシロキサンエラストマーには、信越化学工業株式会社によってKSG-710、KSG-810、KSG-820、KSG-830及びKSG-840の名称で販売されているものが含まれる。
【0096】
好ましくは、第1の油中で運ばれるシリコーンエラストマーは、非乳化性であり、好ましくは親水性鎖を欠き、特にポリオキシアルキレン単位及びポリグリセリル単位を欠く。
【0097】
有利には、本発明に従って検討されるオルガノポリシロキサンエラストマーは、球状の非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマー、ポリグリセロール化オルガノポリシロキサンエラストマー及びポリオキシアルキレン化オルガノポリシロキサンエラストマーから選択される。
【0098】
有利には、本発明に従って検討されるオルガノポリシロキサンエラストマーは、球状非乳化性オルガノポリシロキサンエラストマーから選択される。
【0099】
より詳細には、オルガノポリシロキサンエラストマーは、とりわけ白金触媒(C)の存在下での、(A)各々ケイ素に結合した少なくとも2個の水素を含有するジオルガノポリシロキサンと、(B)ケイ素に結合した少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有するジオルガノポリシロキサンとの架橋付加反応によって得られる。
【0100】
したがって、組成物は、不揮発性油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーを、シリコーン樹脂でコーティングされた少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末と組み合わせて含む。
【0101】
好ましくは、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーのタイプは、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される。
【0102】
有利には、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーは、組成物の総質量に対して、2wt.%~20wt.%、好ましくは4wt.%~15wt.%、より好ましくは6wt.%~10wt.%の範囲の総固体含有量で、本発明の組成物中に存在する。
【0103】
本発明による組成物において、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー及びシリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、2超、好ましくは2.5超の、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー(すなわち、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマーの総固体含有量)/シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末(すなわち、シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマーの総含有量)の乾燥基準の質量比で存在する。
【0104】
第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー及びシリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、2から5の間、好ましくは2.5から4の間の、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー(すなわち、油中で運搬されるオルガノポリシロキサンエラストマーの総固形物含有量)/シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末(すなわち、シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマーの総含有量)の乾燥基準の質量比で存在する。
【0105】
有利には、本発明による組成物は、組成物の総質量に対して、2.5wt.%~30wt.%、より好ましくは5wt.%~25wt.%、より好ましくは8wt.%~15wt.%の範囲の総含有量のオルガノポリシロキサンエラストマー(すなわち、=第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー+シリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末)を含む。
【0106】
本発明者らは、第1の油中で運ばれるオルガノポリシロキサンエラストマー及びシリコーン樹脂でコーティングされたオルガノポリシロキサンエラストマー粉末の組合せにより、ケラチン物質をマットな及びソフトフォーカス仕上げにすることができることを見出した。
【0107】
フィラー
本発明の第1の態様によると、無水組成物は、ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラーを含み、組成物の総質量に対して15wt.%超のフィラーを含む。
【0108】
「フィラー」という用語は、組成物が製造される温度に関わりなく、組成物の媒体に不溶性である、任意の形状の無色の無機又は有機粒子を意味すると理解されるべきである。
【0109】
タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ベントン、任意選択で親水性又は疎水性処理されたヒュームドシリカ粒子、ポリアミド(Nylon(登録商標))粉末(Atochem社製Orgasol(登録商標)、東レ株式会社(Dow Corning社)製SP-500)、ポリ-β-アラニン粉末及びポリエチレン粉末、テトラフルオロエチレンポリマー(Teflon(登録商標))粉末、ラウロイルリジン、デンプン、窒化ホウ素、中空ポリマーミクロスフェア、例えばポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルミクロスフェア、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie社)、アクリル酸コポリマーミクロスフェア(Dow Corning社製Polytrap(登録商標))及びシリコーン樹脂ミクロビーズ(例えば、GE東芝シリコーン株式会社製Tospearls(登録商標))、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフェア(Maprecos社製Silica Beads(登録商標))、ガラス又はセラミックマイクロカプセル(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)、及び8個~22個の炭素原子、好ましくは12個~18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛又はミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0110】
これらはまた、コポリマーを含む粒子であってもよく、前記コポリマーは、トリメチロールヘキシルラクトンを含む。特に、それは、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマーであってもよい。
【0111】
そのような粒子は、とりわけ、例えば、東色ピグメント株式会社製Plastic Powder D-400(登録商標)又はPlastic Powder D-800(登録商標)の名称で市販されている。
【0112】
好ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムに加えて、本発明による組成物は、タルク、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、トリメチロールヘキシルラクトンを含むコポリマー、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマー及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の他のフィラーを含む。
【0113】
より好ましくは、組成物は、ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウム、並びにタルク、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマー及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の他のフィラーを含む。
【0114】
一部の好ましい実施形態では、組成物は、組成物の総質量に対して、0.1wt.%~5wt.%、好ましくは1wt.%~4wt.%のポリメチルシルセスキオキサン、及び0.1wt.%~5wt.%、好ましくは0.1wt.%~0.5wt.%のホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む。
【0115】
本発明者らは、ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムがマット感及びソフトフォーカスの利益を強化することができる一方、本発明による組成物の滑動特性を強化することを見出した。
【0116】
有利には、ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む少なくとも2種のフィラーは、組成物の総質量に対して15wt.%~30wt.%、好ましくは15wt.%~25wt.%、より好ましくは15wt.%~20wt.%の範囲の量で、本発明の組成物中に存在する。
【0117】
揮発性炭化水素油
本発明の第1の態様によると、無水組成物は、揮発性炭化水素油である少なくとも1種の第2の油を含む。
【0118】
「油」とは、本発明において記載されるペースト状化合物又はワックスとは異なり、ここでの油は、室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)において液体である。
【0119】
「炭化水素油」という用語は、炭素及び水素原子、並びに任意選択で、酸素及び窒素原子から本質的に形成され、又は更にはそれらで構成され、ケイ素又はフッ素原子を一切含有しない油を意味する。これは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含有していてもよい。
【0120】
「揮発性油」という用語は、室温及び大気圧で、皮膚と接触して1時間未満で蒸発することができる油を意味する。揮発性油は、室温で液体である化粧用揮発性油である。より具体的には、揮発性油は、端値を含む0.01から200mg/cm2/分の間の蒸発速度を有する。
【0121】
この蒸発速度を測定するために、試験を受けることになる15gの油又は油混合物を、直径7cmの結晶皿に入れ、これを、25℃の温度で温度制御し、50%の相対湿度で湿度制御している約0.3m3の大きなチャンバ内で秤に配置する。液体は、撹拌せずに自由に蒸発させる一方で、前記油又は前記混合物を含有する結晶皿の上に垂直位置に配置した送風機(Papst-Motoren社、参照名8550N、2700rpmで回転)によって換気を行い、送風機の羽根は、結晶皿の底部から20cm離して結晶皿の方に向ける。結晶皿に残存する油の質量を、一定の間隔で測定する。蒸発速度は、単位面積(cm2)及び単位時間(分)当たりの蒸発した油のmgで表す。
【0122】
本発明に好適な揮発性炭化水素油は、7~16個の炭素原子を有する炭化水素油から選択することができる。揮発性炭化水素油は、分枝状アルカン及び直鎖状アルカンから選択することができる。
【0123】
とりわけ挙げることができる、7~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油には、分枝状C8~C16アルカン、例えばC8~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、イソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカン、及び例えばIsopar又はPermethylの商品名で販売されている油、分枝状C8~C16エステル、例えばネオペンタン酸イソヘキシル、並びにこれらの混合物が含まれる。好ましくは、7~16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油は、イソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択され、とりわけイソドデカンである。
【0124】
本発明の目的で使用することができる揮発性炭化水素油としては、7~15個の炭素原子、特に9~14個の炭素原子、より詳細には11~13個の炭素原子を含む、好ましくは植物起源の直鎖状アルカンを挙げることができる。
【0125】
本発明に好適な直鎖状アルカンの例としては、n-ヘプタン(C7)、n-オクタン(C8)、n-ノナン(C9)、n-デカン(C10)、n-ウンデカン(C11)、n-ドデカン(C12)、n-トリデカン(C13)、n-テトラデカン(C14)及びn-ペンタデカン(C15)、並びにこれらの混合物、特に、Cognis社による国際公開第2008/155059号の実施例1に記載されたn-ウンデカン(C11)及びn-トリデカン(C13)の混合物を挙げることができる。また、Sasol社によって参照名Parafol 12-97及びParafol 14-97でそれぞれ販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)、並びにまたこれらの混合物も挙げることができる。
【0126】
有利には、第2の油、すなわち揮発性炭化水素油は、組成物の総質量に対して、10wt.%~40wt.%、好ましくは10wt.%~25wt.%の範囲の量で本発明の組成物中に存在する。
【0127】
好ましくは、本発明による組成物は、(i)不揮発性炭化水素油、(ii)着色料、及び(iii)これらの混合物のうちの少なくとも1種を更に含む。
【0128】
不揮発性炭化水素油
任意選択で、無水組成物は、不揮発性炭化水素油を含む。
【0129】
「不揮発性油」という用語は、室温及び大気圧で皮膚又はケラチン繊維上に残存する油を意味する。より正確には、不揮発性油は、厳密に0.01mg/cm2/分未満の蒸発速度を有する。
【0130】
本発明に好適な不揮発性炭化水素油は、特に、以下から選択することができる:
- 植物起源の炭化水素油、例えばグリセロールの脂肪酸エステルで構成されるトリグリセリド、その脂肪酸は、C4~C28の範囲の鎖長を有していてもよく、これらの脂肪酸は、場合により直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であり、これらの油は、特に、コムギ胚芽油、ヒマワリ油、テリハボク(beauty-leaf)油、ブドウ種子油、ゴマ油、コーン油、アプリコット油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、スイートアーモンド油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア油、ホホバ油、パーム油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、マロー油、アブラナ種子油、ブラックカラント油、月見草油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、サフラワー油、ククイ油、トケイソウ油及びムスクローズ油、又は代わりにカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えば、Stearineries Dubois社によって販売されているもの又はSasol社によってMiglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)の名称で販売されているもの;
- 10~40個の炭素原子を有する合成エーテル;
- 鉱物又は合成起源の直鎖状又は分枝状炭化水素、例えば、液体パラフィン、液体ワセリン、ナフタレン油、ポリブチレン、例えば、Amoco社によって販売又は製造されているIndopol H-100(モル質量又はW=965g/mol)、Indopol H-300(MW=1340g/mol)及びIndopol H-1500(MW=2160g/mol)、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、例えば、Amoco社によって販売又は製造されているParleam(登録商標)又はPanalane H-300 E(MW=1340g/mol)、Synteal社によって販売又は製造されているViseal 20000(MW=6000g/mol)及びWitco社によって販売又は製造されているRewopal PIB 1000(MW=1000g/mol)、デセン/ブテンコポリマー、ポリブテン/ポリイソブテンコポリマー、とりわけIndopol L-14、ポリデセン及び水添ポリデセン、例えば、Mobil Chemicals社によって販売又は製造されているPuresyn 10(MW=723g/mol)及びPuresyn 150(MW=9200g/mol)、並びにこれらの混合物;
- 合成エステル及び/又はエーテル、例えば、式R1COOR2及び/又はR1OR2(式中、R1+R2の合計炭素数が≧10である条件で、R1は、1~40個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状脂肪酸の残基を表し、R2は、1~40個の炭素原子を含む炭化水素鎖、特に、分枝状炭化水素鎖を表す)の油、例えば、ピュアセリンオイル(セトステアリルオクタノエート)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、C12~C15アルキルベンゾエート、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸又は乳酸2-オクチルドデシル、コハク酸2-ジエチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、アルコール又はポリアルコールのオクタノエート、デカノエート又はリシノレート、例えば、プロピレングリコールジオクタノエート、ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル及びリンゴ酸ジイソステアリル、ラノール酸、オレイン酸、ラウリン酸又はステアリン酸エステル、トリイソステアリン酸グリセリル又はジグリセリル、並びにペンタエリスリトールエステル;
- 室温で液体であり、12~26個の炭素原子を有する分枝状及び/又は不飽和炭素鎖を含有する脂肪族アルコール、例えばセタノール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール又は2-ウンデシルペンタデカノール;
- ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びイソステアリン酸等の脂肪酸;並びに
- これらの混合物。
【0131】
好ましくは、不揮発性炭化水素油は、イソステアリン酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリイソブテン及びこれらの混合物から選択される。
【0132】
有利には、存在する場合、不揮発性炭化水素油は、組成物の総質量に対して、10wt.%~40wt.%、好ましくは10wt.質量%~25wt.%の範囲の量で、本発明の組成物中に存在する。
【0133】
着色料
本発明による固体無水組成物は、任意選択で、少なくとも1種の着色料を含んでいてもよい。好ましくは、着色料の量は、組成物の総質量に対して20wt.%未満である。
【0134】
本発明の目的では、「着色料」という用語は、好適な化粧用媒体中に十分な量で配合された場合、着色された光学効果をもたらすことが可能な化合物を意味する。
【0135】
本発明の文脈で検討される着色料は、水溶性又は水不溶性、脂溶性又は非脂溶性、有機又は無機着色料、及び光学効果を有する材料、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0136】
水溶性染料
本発明に従って用いられる水溶性着色料は、より詳細には、水溶性染料である。
【0137】
本発明の目的で、「水溶性染料」という用語は、水性相又は水混和性溶媒に可溶性であり、色を付与することが可能な任意の天然若しくは合成の、一般に、有機化合物を意味する。特に、「水溶性」という用語は、化合物が、25℃で測定して、0.1g/lに少なくとも等しい濃度まで水に溶解する能力(巨視的に等方性の、透明な、着色された又は無色の溶液の生成)を特徴付けることが企図される。この溶解度は、特に1g/l以上である。
【0138】
本発明における使用に好適な水溶性染料としては、特に、合成又は天然水溶性染料、例えば、FD&C Red 4(CI:14700)、DC Red 6(Lithol Rubine Na;CI:15850)、DC Red 22(CI:45380)、DC Red 28(CI:45410 Na塩)、DC Red 30(CI:73360)、DC Red 33(CI:17200)、DC Orange 4(CI:15510)、FDC Yellow 5(CI:19140)、FDC Yellow 6(CI:15985)、DC Yellow 8(CI:45350 Na塩)、FDC Green 3(CI:42053)、DC Green 5(CI:61570)、FDC Blue 1(CI:42090)を挙げることができる。
【0139】
本発明の文脈で使用することができる水溶性着色料の供給源の非限定的な例示として、特に、天然起源のもの、例えば、コチニールカルミン、ビートの根、ブドウ、ニンジン、トマト、アナットー、パプリカ、ヘンナ、カラメル及びクルクミンの抽出物を挙げることができる。
【0140】
したがって、本発明における使用に好適な水溶性着色料は、特に、カルミン酸、ベタニン、アントシアン、エノシアニン、リコペン、β-カロテン、ビキシン、ノルビキシン、カプサンチン、カプソルビン、フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、リボフラビン、ロドキサンチン、カンタキサンチン及びクロロフィル、並びにこれらの混合物である。
【0141】
これらはまた、硫酸銅、硫酸鉄、水溶性のスルホポリエステル、ローダミン、ベタイン、メチレンブルー、タートラジンの二ナトリウム塩及びフクシンの二ナトリウム塩であってもよい。
【0142】
これらの水溶性着色料のいくつかは、食品使用のために特に認可されている。挙げることができるこれらの染料の代表には、より詳細には、食品コードE120、E162、E163、E160a~g、E150a、E101、E100、E140及びE141で参照される、カロテノイドファミリーの染料が含まれる。
【0143】
顔料
「顔料」という用語は、白色であるか又は着色された無機(鉱物)又は有機粒子を意味すると理解されるべきであり、これは、液体有機相に不溶性であり、組成物及び/又は組成物を用いて生成される付着物を着色及び/又は不透明化することが意図されている。
【0144】
顔料は、鉱物顔料、有機顔料及び複合顔料(すなわち、鉱物及び/又は有機材料をベースとした顔料)から選択することができる。
【0145】
顔料は、単色顔料、レーキ及び光学効果を有する顔料、例えばゴニオクロマチック顔料及び真珠光沢剤から選択することができる。
【0146】
鉱物顔料は、金属酸化物顔料、例えば、酸化クロム、酸化鉄(黒色、黄色、赤色)、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及び酸化ジルコニウム、クロム水和物、マンガンバイオレット、プルシアンブルー、ウルトラマリンブルー、フェリックブルー、合成フルオロフロゴパイト、金属粉、例えばアルミニウム粉及び銅粉、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0147】
有機レーキは、基質に結合した染料から形成された有機顔料である。
【0148】
有機顔料としても知られるレーキは、下記の物質及びこれらの混合物から選択することができる:
- コチニールカーマイン;
- アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、キサンテン染料、ピレン染料、キノリン染料、トリフェニルメタン染料又はフルオラン染料の有機顔料。
【0149】
特に挙げることができる有機顔料の中でも、以下の名称:D&C Blue No.4、D&C Brown No.1、D&C Green No.5、D&C Green No.6、D&C Orange No.4、D&C Orange No.5、D&C Orange No.10、D&C Orange No.11、D&C Red No.6、D&C Red No.7、D&C Red No.17、D&C Red No.21、D&C Red No.22、D&C Red No.27、D&C Red No.28、D&C Red No.30、D&C Red No.31、D&C Red No.33、D&C Red No.34、D&C Red No.36、D&C Violet No.2、D&C Yellow No.7、D&C Yellow No.8、D&C Yellow No.10、D&C Yellow No.11、FD&C Blue No.1、FD&C Green No.3、FD&C Red No.40、FD&C Yellow No.5、FD&C Yellow No.6で知られているものがあり;
- 有機レーキは、少なくとも1つのカルボン酸又はスルホン酸基を場合によって含む酸性染料、例えばアゾ、アントラキノン、インジゴイド、キサンテン、ピレン、キノリン、トリフェニルメタン又はフルオラン染料の不溶性ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ストロンチウム又はチタン塩であってもよい。
【0150】
有機レーキはまた、有機支持体、例えば、ロジン又は安息香酸アルミニウム上で支持されていてもよい。
【0151】
有機レーキの中でも、以下の名称:D&C Red No.2アルミニウムレーキ、D&C Red No.3アルミニウムレーキ、D&C Red No.4アルミニウムレーキ、D&C Red No.6アルミニウムレーキ、D&C Red No.6バリウムレーキ、D&C Red No.6バリウム/ストロンチウムレーキ、D&C Red No.6ストロンチウムレーキ、D&C Red No.6カリウムレーキ、D&C Red No.7アルミニウムレーキ、D&C Red No.7バリウムレーキ、D&C Red No.7カルシウムレーキ、D&C Red No.7カルシウム/ストロンチウムレーキ、D&C Red No.7ジルコニウムレーキ、D&C Red No.8ナトリウムレーキ、D&C Red No.9アルミニウムレーキ、D&C Red No.9バリウムレーキ、D&C Red No.9バリウム/ストロンチウムレーキ、D&C Red No.9ジルコニウムレーキ、D&C Red No.10ナトリウムレーキ、D&C Red No.19アルミニウムレーキ、D&C Red No.19バリウムレーキ、D&C Red No.19ジルコニウムレーキ、D&C Red No.21アルミニウムレーキ、D&C Red No.21ジルコニウムレーキ、D&C Red No.22アルミニウムレーキ、D&C Red No.27アルミニウムレーキ、D&C Red No.27アルミニウム/チタン/ジルコニウムレーキ、D&C Red No.27バリウムレーキ、D&C Red No.27カルシウムレーキ、D&C Red No.27ジルコニウムレーキ、D&C Red No.28アルミニウムレーキ、D&C Red No.30レーキ、D&C Red No.31カルシウムレーキ、D&C Red No.33アルミニウムレーキ、D&C Red No.34カルシウムレーキ、D&C Red No.36レーキ、D&C Red No.40アルミニウムレーキ、D&C Blue No.1アルミニウムレーキ、D&C Green No.3アルミニウムレーキ、D&C Orange No.4アルミニウムレーキ、D&C Orange No.5アルミニウムレーキ、D&C Orange No.5ジルコニウムレーキ、D&C Orange No.10アルミニウムレーキ、D&C Orange No.17バリウムレーキ、D&C Yellow No.5アルミニウムレーキ、D&C Yellow No.5ジルコニウムレーキ、D&C Yellow No.6アルミニウムレーキ、D&C Yellow No.7ジルコニウムレーキ、D&C Yellow No.10アルミニウムレーキ、FD&C Blue No.1アルミニウムレーキ、FD&C Red No.4アルミニウムレーキ、FD&C Red No.40アルミニウムレーキ、FD&C Yellow No.5アルミニウムレーキ及びFD&C Yellow No.6アルミニウムレーキで知られているものを特に挙げることができる。
【0152】
また、脂溶性染料、例えば、スーダンレッド、DC Red 17、DC Green 6、β-カロテン、ダイズ油、スーダンブラウン、DC Yellow 11、DC Violet 2、DC Orange 5及びキノリンイエローも挙げることができる。
【0153】
上に挙げた有機染料のそれぞれに対応する化学物質は、刊行物「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」、1997年版、371~386頁及び524~528頁、「The Cosmetic, Toiletries and Fragrance Association」刊に言及されており、その内容は、参照により本特許出願に組み込まれる。
【0154】
顔料はまた、疎水性処理に供されていてもよい。
【0155】
疎水性処理剤は、シリコーン、例えばメチコン、ジメチコン、アルコキシシラン及びペルフルオロアルキルシラン;脂肪酸、例えばステアリン酸;金属石鹸、例えばジミリスチン酸アルミニウム、水添タロウグルタミン酸のアルミニウム塩、リン酸ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラザン、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、ペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサン及びアミノ酸;N-アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリイソステアリルチタネート、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0156】
N-アシルアミノ酸は、8個~22個の炭素原子を含有するアシル基、例えば、2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基を含みうる。これらの化合物の塩は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、ナトリウム又はカリウム塩であってもよい。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであってもよい。
【0157】
上に挙げた化合物において言及した「アルキル」という用語は、1~30個の炭素原子を含有し、好ましくは5~16個の炭素原子を含有するアルキル基を特に示す。
【0158】
疎水性処理した顔料は、特に、欧州特許出願公開第1086683号に記載されている。
【0159】
真珠光沢剤
本特許出願の目的では、「真珠光沢剤」という用語は、虹色であってもなくてもよく、特に、殻の中の特定の軟体動物によって生成されるか、又は代わりに合成され、光学干渉を介した色彩効果を有する、任意の形状の着色された粒子を意味する。
【0160】
挙げることができる真珠光沢剤の例には、真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄でコーティングされたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスでコーティングされたマイカ、酸化クロムでコーティングされたチタンマイカ、特に上述のタイプの有機染料でコーティングされたチタンマイカ、及びまたオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料が含まれる。
【0161】
それらはまた、その表面に金属酸化物及び/又は有機着色剤の少なくとも2つの連続層が重ねられているマイカ粒子であってもよい。
【0162】
真珠光沢剤は、より詳細には、黄、ピンク、赤、青銅、オレンジ、茶、金及び/又は銅の色又は色調を有していてもよい。
【0163】
第1の組成物中に干渉顔料として導入することができる真珠光沢剤の例示としては、特にBASF社によってBrilliant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)及びMonarch gold 233X(Cloisonne)の名称で販売されている金色に着色された真珠光沢剤;特にMerck社によってBronze fine(17384)(Colorona)及びBronze(17353)(Colorona)の名称で、並びにBASF社によってSuper bronze(Cloisonne)の名称で販売されている青銅色の真珠光沢剤;特にBASF社によってOrange 363C(Cloisonne)の名称で、並びにMerck社によってPassion orange(Colorona)及びMatte orange(17449)(Microna)の名称で販売されているオレンジ色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によってNu-antique copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chromalite)の名称で販売されている茶色の色調を有する真珠光沢剤;特にBASF社によってCopper 340A(Timica)の名称で販売されている銅色の色調を有する真珠光沢剤;特にMerck社によってSienna fine(17386)(Colorona)の名称で販売されている赤色の色調を有する真珠光沢剤;特にBASF社によってYellow(4502)(Chromalite)の名称で販売されている黄色の色調を有する真珠光沢剤;特にBASF社によってSunstone G012(Gemtone)の名称で販売されている金色の色調を有する赤色の真珠光沢剤;特にBASF社によってTan opale G005(Gemtone)の名称で販売されているピンク色の真珠光沢剤;特にBASF社によってNu antique bronze 240 AB(Timica)の名称で販売されている金色の色調を有する黒色の真珠光沢剤、特にMerck社によってMatte blue(17433)(Microna)の名称で販売されている青色の真珠光沢剤、特にMerck社によってXirona Silverの名称で販売されている銀色の色調を有する白色の真珠光沢剤、及び特にMerck社によってIndian summer(Xirona)の名称で販売されている金-緑色でピンク-オレンジ色の真珠光沢剤、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0164】
好ましい実施形態によると、本発明において使用される着色料は、金属酸化物顔料、有機レーキ、合成又は天然水溶性染料及びこれらの混合物から選択される。
【0165】
特定の好ましい実施形態によると、本発明において使用される着色料は、YELLOW 6レーキ、Blue 1レーキ、RED 28レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される。
【0166】
存在する場合、着色料は、組成物の総質量に対して、1wt.%~20wt.%、好ましくは2wt.%~10wt.%の範囲の量で存在する。
【0167】
他の成分
本発明による固体無水組成物は、検討される分野で通常使用される他の成分を更に含んでもよい。
【0168】
例えば、本発明による固体無水組成物は、増粘剤、酸化防止剤(例えば、トコフェロール、トコフェリルアセテート、ペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート)、フィルム形成剤(例えば、トリメチルシロキシシリケート)、保存剤、抗菌剤(例えば、カプリリルグリコール(capryly glycol)、エチルヘキシルグリセリン)、香料、中和剤、防腐剤、追加の化粧用活性剤、例えば、ビタミン、コラーゲン保護剤及びこれらの混合物から選択される他の成分を更に含んでもよい。
【0169】
本発明による組成物中に存在する他の成分の性質及び量を、本発明に従って使用される組成物の有益な特性が、想定された添加によって有害な影響を受けない、又は実質的に有害な影響を受けないように調節することは、当業者にとって常法である。
【0170】
好ましい実施形態によると、本発明は、組成物の総質量に対して、
a)2wt.%~5wt.%のビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、
b)ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー及びこれらの混合物から選択される、第1の油中で運ばれる6wt.%~10wt.%のオルガノポリシロキサンエラストマー、
c)ポリメチルシルセスキオキサン及びホウケイ酸カルシウムアルミニウムを含む、15wt.%~20wt.%の少なくとも2種のフィラー、並びにタルク、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンコポリマー及びこれらの混合物から選択される他のフィラー、
d)イソドデカン(ododecane)、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択される、10wt.%~25wt.%の揮発性炭化水素油、
e)イソステアリン酸イソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、水添ポリイソブテン及びこれらの混合物から選択される、10wt.%~25wt.%の不揮発性炭化水素油、並びに
f)YELLOW 6レーキ、Blue 1レーキ、RED 28レーキ、RED 21、RED 7、二酸化チタン、酸化鉄、合成フルオロフロゴパイト及びこれらの混合物から選択される、2wt.%~10wt.%の着色料
を含み、ワックス及びペースト状化合物を含まない、組成物を提供する。
【0171】
ガレヌス形態
本発明の組成物は、スキンケア及び/又はメイクアップ製品として使用するのに好適である。より詳細には、本発明の組成物は、液体リップバームである。
【0172】
本発明による組成物は、従来の方法で調製することができる。
【0173】
第2の態様によると、本発明は、ケラチン物質をケア/メイクアップするための美容方法であって、上記の固体無水組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、美容方法を提供する。
【0174】
特に、ケラチン物質は唇である。
【0175】
以下の実施例は、本発明の非限定的例示として示されるものである。
【実施例】
【0176】
使用した主原材料、その商品名及び供給元をTable 1(表1)に列挙する。
【0177】
【0178】
(発明の実施例1及び比較例1~2)
発明の実施例(IE.)1及び比較例(CE.)1~2の液体リップ組成物を、Table 2(表2)に列挙する成分により調製した。
【0179】
【0180】
調製手順:
上記の組成物を調製する詳細な手順は、組成物1を例として、下記の通りである。
1)第1の段階において、顔料を、油性相(水添ポリイソブテン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸イソステアリル及びペンタエリスリチルテトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロシンナメート)の一部の中で、3本ロールミルで摩砕し;
2)次いで、油溶性成分の残部を残りの油性相及び摩砕色素材料と、均質混合物が得られるまで混合し;
3)上述の混合物にオルガノポリシロキサンエラストマーを撹拌しながら添加し、次いで、摩砕色素材料を混合物に組込み、混合物が均質になるまで均質化を継続し;
4)フィラー、フィルム形成剤、共防腐剤(co-preservative)、酸化防止剤、活性物質、香料を、均一になるまで撹拌しながら添加し;
5)最後に、得られた組成物を小さなポットに注ぎ入れ、次いで周囲温度で24時間置いた。
【0181】
評価:
調製した組成物の展延性、光沢及び重さの評価を実施した。
【0182】
展延性
展延性を使用して、リップ組成物が唇への適用中に容易かつ滑らかに滑動しうるかを評価する。
【0183】
展延性は、5名の専門家によって、同じ力を使用して、リップ組成物を上唇に対して両側に2回ゆっくり適用し、その間、2回目の適用中のリップ組成物と唇との間の力を注意深く感じ取ることで評価した。摩擦力が弱いほど、展延性は良好になる。
【0184】
光沢及び重さ
光沢を使用して、標準光の下での唇への光の反射又は明るさの度合いを評価する。
【0185】
重さを使用して、リップ製品によってもたらされる唇への質量感覚を評価する。重さは、唇に負荷がかかり、自由に呼吸できない感覚である。
【0186】
光沢及び重さは、5名の専門家によって、同じ力を使用して、口紅を上唇に対して両側に2回適用することによって評価した。適用後、唇を3分間動かさず、標準光の下で上唇の中央での光反射又は明るさの度合いを確認し、重さも同時に確認した。光の反射又は明るさが低いほど、光沢は低く、マットな効果が良好になる。重さは低いほど良い。
【0187】
最後に、専門家は、以下の標準に基づいて展延性、光沢及び重さへのコメント又はスコアを付け、平均を取った:
5:非常に良好
4:基本的に良好
3:許容される
2:やや不十分、許容されない
1:不十分、許容されない
【0188】
各リップ組成物の評価結果を、Table 3(表3)にまとめる。
【0189】
【0190】
発明の実施例のリップ組成物は、良好な展延性を有し、マットな、かつ軽い付着物をケラチン物質上にもたらしうることが分かる。
【国際調査報告】