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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】調節可能なゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/06 20150101AFI20240301BHJP
   A63B 53/02 20150101ALI20240301BHJP
【FI】
A63B53/06 C
A63B53/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023553386
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 NZ2022050028
(87)【国際公開番号】W WO2022197190
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2021201742
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2021254532
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523331762
【氏名又は名称】キュー ゴルフ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】バリー、ダニエル
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002AA07
2C002KK01
2C002KK05
(57)【要約】
本発明は、ゴルフクラブ又はその一部分に関する。それは、打球ヘッド1、前記ヘッドの少なくとも一部分に沿って延在し、前記ヘッドに係合するシャンク5を有するホーゼル2、前記ヘッド1及びホーゼル2を引き離すように動かそうとするロック力を提供し、そうすることで、前記ヘッドを、ロフト設定4の選択のうちの一方又は他方にロックした状態に維持させる付勢手段(例えば、ばね9)を備えてよい。クラブ又はその一部分は、前記ロック力に打ち勝つように前記ヘッド1を内方向に動かして、前記ヘッドを解放して前記ロフト設定4のうちの別の設定へと回転させるために手動力を加えることができるようなものである。その後の、前記ヘッドの逆の動きにより、それがその他の設定にロックされるような構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブ又はその一部分であって、
打球用のヘッド;
前記ヘッドの少なくとも一部分に沿って延在し、前記ヘッドに係合するシャンクを有するホーゼル;及び
前記ヘッド及びホーゼルを引き離すように動かそうとするロック力を提供し、そうすることで、前記ヘッドを、ロフト設定の選択のうちの一方又は他方にロックした状態に維持させる付勢手段;
を備え、
前記ゴルフクラブ又はその一部分は、前記ロック力に打ち勝つように前記ヘッドを内方向に動かして、前記ヘッドを解放して前記ロフト設定のうちの別の設定へと回転させるために手動力を加えることができるようなものであり、且つその後の、前記ヘッドの逆の動きにより、それがその他の設定にロックされるようなものであり;
前記ヘッドは、一連のロック歯を有し、前記ホーゼルは一連のロック歯を有し、これらは、前記ロフト設定のうちのいずれかに前記ヘッドをロックするように噛合し、その後前記ロフト設定のうちの別の設定に前記ヘッドを回転できるようにするために、前記ロック力に打ち勝つように前記ヘッドが手動で動かされたとき、係合解除するように構成されており;
2つの前記一連のロック歯は、前記ホーゼルの前記ロック歯が雄で前記ヘッドの前記ロック歯が雌である雄-雌係合であり、ロック歯のそれぞれのセットは、実質的に円錐状であり、前記ゴルフクラブ又はその一部分のトゥ側端部の方向に外方向にテーパ状になっている、ゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項2】
前記ロック力の付勢が、前記ヘッドを外方向に駆動して、前記ヘッドを前記他の設定にロックさせるように形成された、請求項1に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項3】
付勢力は、ばねによって提供される、請求項1又は2に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項4】
前記ばねは、前記シャンクの周りに構成されている、請求項3に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項5】
前記ヘッド及び前記ホーゼルの前記ロック歯がそれぞれ、半径方向長手方向に延在する歯のセットを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項6】
前記ヘッドが前記ロフト設定のうちのいずれか1つにロックされたときに、前記ホーゼルの歯のセットが、前記ヘッドの歯のセットにスリーブ嵌合し、それと噛み合う、請求項1から5のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項7】
前記シャンクのトゥ側端部に嵌められたナット、前記ナットにより前記シャンクに固定されたリテーナを備え、前記リテーナは、前記ヘッドが前記ロフト設定のうちの1つにロックされたときに前記ヘッドに突き当たる関係であり、それにより前記ヘッドは、前記シャンクから解放されるように引っ張られることができない、請求項1から6のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項8】
前記突き当たる関係は、前記リテーナ、及び前記ヘッドの一部分を形成するライナーの間にある、請求項7に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項9】
前記ライナーは、前記ヘッドの別の一部分に解放可能に螺合している、請求項8に記載のゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項10】
それぞれが直線状に延在するように構成された円錐形状の一連のロック歯を有する打球用のヘッド;
それぞれが直線状に延在するように構成された円錐形状の一連のロック歯を有するホーゼル、及び前記ヘッドの少なくとも一部分に沿って延在し、前記ヘッドに係合するシャンク;
前記ヘッド及びホーゼルを引き離すように動かそうとするばねロック力を提供し、そうすることで、前記ヘッドを、ロフト設定の選択のうちの一方又は他方にロックした状態に維持させる付勢手段;
を備え、
2つの前記一連のロック歯は、噛み合う雄-雌の関係で一方の前記円錐形状が他方の前記円錐形状にスリーブ嵌合してそれらを回転しないようにロックするが、前記ヘッドを内方向に動かして、前記ヘッドを解放して前記ロフト設定のうちの別の設定へと回転させるために手動力を加えることができるように、且つその後の、前記ヘッドの逆の動きにより、それがその他の設定にロックされるように構成されている、ゴルフクラブ。
【請求項11】
ゴルフクラブ又はそのための一部分であって、
a)打球用のヘッド;
b)ホーゼル;及び
c)スリップギア;
を備え、
前記ゴルフクラブ又はそのための一部分は、
前記ヘッド及び前記ホーゼルが互いに係合して、複数のロフト設定のうちの1つに前記ヘッドを解放可能にロックし;
前記スリップギアにばね力が作用して、1つのスリップギアの歯を別のスリップギアの歯に係合するように付勢し;
前記複数のロフト設定のうちの別の設定へと前記ヘッドを回転させてその他のロフト設定にロックされるように、前記ヘッドに手動力を加えることができ;
前記ヘッドが前記他のロフト設定へと回転させられるとき、前記スリップギアのうちの少なくとも1つが、それらのうちの別のギアを乗り越えて、クリック音及び/又は触覚的インジケーションを発生させて、前記ゴルフクラブを調節している人に、前記調節の可聴及び/又は触覚的フィードバックを与えるように形成されている、ゴルフクラブ又はその一部分。
【請求項12】
a)前記打球用のヘッドが、スプラインを有する第1のロックギアと一体であるか又はそれに固定されており、
b)前記ホーゼルが、スプラインを有する第2のロックギアと一体であるか又はそれに固定されており;
c)ばね力が、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアに作用してそれらを付勢して互いに係合させ;
d)前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアに対する前記付勢に対抗して前記ヘッドを前記ゴルフクラブのヒールに向かって動かして前記ヘッドをロック解除するために、前記ヘッドに手動力を加えることができ、それにより前記複数のロフト設定のうちの前記他のロフト設定へとそれを手動で回転させることができ、次いで、同じ付勢により、前記ヘッドがその他のロフト設定でロックされるように、解放することができる、請求項11に記載のゴルフクラブ又はそのための一部分。
【請求項13】
雄及び雌のギアに作用する前記ばね力、及び前記スリップギアに作用する前記ばね力は、共通のばねによって提供される、請求項12に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項14】
前記共通のばねは圧縮されて、前記ヘッドを前記ゴルフクラブの前記ヒールから離れるように押しやり、同時に、前記スリップギアのうちの少なくとも1つを別のスリップギアに係合するように押しやる力を行使する、請求項13に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項15】
前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアに作用する前記ばね力は、第1のばねによって提供され、前記スリップギアに作用する前記ばね力は、第2のばねによって提供される、請求項12に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項16】
前記第1のばねは、前記第2のばねよりも実質的に弱い力を提供する、請求項15に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項17】
前記第1のばね及び前記第2のばねは、実質的に互いに一列に構成された細長いコイルを有する、請求項15又は16に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項18】
前記第1のばねの中央部分は、その中を通って延在する支持部を有していない(例えば、それは内部に構成されたシャフトなどに関連付けられていない)、請求項15から17のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項19】
前記スリップギアは、内側スリップギア、中間スリップギア、及び外側スリップギアを有し、前記内側スリップギア及び前記外側スリップギアのうちの一方又は他方の歯が、前記中間スリップギアの歯に衝突したときに、前記クリック音が発生する、請求項11から18のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項20】
a)前記第1のロックギアが雌ギアであり、そのスプラインが、長手方向にテーパ状の構成で通っており、テーパは、前記ゴルフクラブのトゥ側端部に向かって進むにつれてより細い形状からより広い形状となるように延在しており;
b)前記第2のロックギアが雄ギアであり、そのスプラインも、長手方向にテーパ状の構成で通っており、テーパは、前記ゴルフクラブの前記トゥ側端部に向かって進むにつれてより細い形状からより広い形状となるように延在している、
請求項12から18のいずれか一項、又は請求項12に従属する請求項19に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項21】
前記スリップギアのうちの1つは回転できない、請求項11に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項22】
前記第1のロックギアは、前記ゴルフクラブのヒール側端部において、シャフトに係合している、請求項20に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項23】
前記第2のロックギアは、前記ヘッドの内側に固定されているか、又は前記ヘッドの内側と一体である、請求項12から18のいずれか一項、又は請求項12に従属する請求項19から21のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項24】
前記スリップギアは、前記ゴルフクラブのトゥ側端部に隣接している、請求項11から23のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項25】
それぞれのスリップギアは、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアのそれぞれと同数のギア歯を有する、請求項12から18のいずれか一項、又は請求項12に従属する請求項19から24のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項26】
前記他のロフト設定への前記ヘッドの回転が、ロフト設定の変更ごとに可聴クリックを1回のみ生じさせるように、前記スリップギアは、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアと整合している、請求項12から18のいずれか、又は請求項12に従属する請求項19から25のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項27】
前記他のロフト設定への前記ヘッドの回転が、可聴クリックに対応した触覚的衝撃を1回生じさせるように、前記スリップギアは、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアと整合している、請求項12から18のいずれか一項、又は請求項12に従属する請求項19から26のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項28】
前記複数のロフト設定が2つよりも多く存在しており、前記ヘッドのロフトは、それをそれぞれの設定へと順番に同様に回転させることにより、調節されることが可能である、請求項11から27のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【請求項29】
触覚的インジケータは、請求項11に記載したように前記スリップギアが他のスリップギアを乗り越えるときに、前記人によって感じられることが可能な衝撃又は振動である、請求項11から28のいずれか一項に記載のゴルフクラブ又は一部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節可能なロフト設定を有するゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、クラブ全体のロフトを変更するように打球ヘッドの角度を調節する機能を有していることが知られている。知られているように、全ての条件が同じだとすると、急角度(例えば60°)に設定されたヘッドは、ヘッドがより緩やかな角度(例えば10°)のクラブよりも、ゴルフボールをより急峻で短い軌道を通るように飛ばす。この調節可能性は、1本のクラブを使用して、複数のクラブと同じロフト範囲を与えることができることを意味する。しかしながら、少なくともいくつかの公知のこのタイプのクラブに伴う問題として、この調節機構は生産及び/又は使用が不便なことがある。また、公知のこのタイプのクラブに伴う問題として、ロフト調節を行う人に、クラブの調節中にいかなる可聴又は触覚的フィードバックも与えられないことがある。
(目的)
【0003】
本発明の好ましい実施形態の目的は、上記の問題のうちの一方又は他方に対処することを少なくともいくらか支援することである。これは、好ましい実施形態に適用されるが、その一方で本発明の目的それ自体は、単に有用な選択肢を提供することである。したがって、好ましい実施形態に適用可能な任意の目的又は利点は、より広義に表現される特許請求の範囲に対する限定として受け取られるべきではない。
(定義)
【0004】
「備える(comprises)」又は「有する(has)」という用語は、1つ又は複数の特徴に関して本明細書で使用される場合、言及していない付加的な特徴が存在するというオプションを排除するものとみなされるべきでない。「備え(comprising)」及び「有し(having)」などの派生語にも同じことが適用される。
【発明の概要】
【0005】
態様1
ロック機構
本発明の第1の態様において、
打球ヘッド;
前記ヘッドの少なくとも一部分に沿って延在し、前記ヘッドに係合するシャンクを有するホーゼル;及び
前記ヘッド及びホーゼルを引き離すように動かそうとするロック力を提供し、そうすることで、前記ヘッドを、ロフト設定の選択のうちの一方又は他方にロックした状態に維持させる付勢手段;
を備え、
前記ゴルフクラブ又はその一部分は、前記ロック力に打ち勝つように前記ヘッドを内方向に動かして、前記ヘッドを解放して前記ロフト設定のうちの別の設定へと回転させるために手動力を加えることができるようなものであり、且つその後の、前記ヘッドの逆の動きにより、それがその他の設定にロックされるようなものであり;
前記ヘッドは、一連のロック歯を有し、前記ホーゼルは一連のロック歯を有し、これらは、前記ロフト設定のうちのいずれかに前記ヘッドをロックするように噛み合わされ、その後前記ロフト設定のうちの別の設定に前記ヘッドを回転できるようにするために、前記ロック力に打ち勝つように前記ヘッドが手動で動かされたとき、係合解除するように構成されており;
2つの前記一連のロック歯は、前記ホーゼルの歯が雄で前記ヘッドの歯が雌である雄-雌係合であり、前記歯のそれぞれのセットは、実質的に円錐状であり、前記クラブ又はその一部分のトゥ側端部の方向に外方向にテーパ状になっている、ゴルフクラブ又はその一部分が提供される。
【0006】
任意選択で、前記ロック力の付勢が、前記ヘッドを外方向に駆動して、前記ヘッドを前記他の設定にロックさせる。
【0007】
任意選択で、前記付勢力は、ばねによって提供される。
【0008】
任意選択で、前記ばねは、前記シャンクの周りに構成されている。
【0009】
任意選択で、前記ヘッド及び前記ホーゼルの前記ロック歯がそれぞれ、半径方向に長手方向に延在する歯のセットを有する。
【0010】
任意選択で、前記ロフト設定のうちのいずれか1つに前記ヘッドがロックされるとき、前記ホーゼルの歯のセットが、前記ヘッドの歯のセットにスリーブ嵌合し、それと噛み合う。
【0011】
任意選択で、前記シャンクのトゥ側端部に嵌められたナット、前記ナットにより前記シャンクに固定されたリテーナが存在しており、前記リテーナは、前記ヘッドが前記ロフト設定のうちの1つにロックされたときに前記ヘッドに突き当たる関係であり、それにより前記ヘッドは、前記シャンクから解放されるように引っ張られることができない。
【0012】
任意選択で、前記突き当たる関係は、前記リテーナ、及び前記ヘッドの一部分を形成するライナーの間にある。
【0013】
任意選択で、前記ライナーは、前記ヘッドの別の一部分に解放可能に螺合している。
【0014】
態様2
ロック機構
本発明のさらなる態様において、
それぞれが直線状に延在するように構成された円錐形状の一連のロック歯を有する打球ヘッド;
それぞれが直線状に延在するように構成された円錐形状の一連のロック歯を有するホーゼル、及び前記ヘッドの少なくとも一部分に沿って延在し、前記ヘッドに係合するシャンク;
前記ヘッド及びホーゼルを引き離すように動かそうとするばねロック力を提供し、そうすることで、前記ヘッドを、ロフト設定の選択のうちの一方又は他方にロックした状態に維持させる付勢手段;
を備え、
2つの前記一連のロック歯は、噛み合う雄-雌の関係で一方の前記円錐形状が他方の前記円錐形状にスリーブ嵌合してそれらを回転しないようにロックするが、前記ヘッドを内方向に動かして、前記ヘッドを解放して前記ロフト設定のうちの別の設定へと回転させるために手動力を加えることができるように、且つその後の、前記ヘッドの逆の動きにより、それがその他の設定にロックされるように構成されている、ゴルフクラブが提供される。
【0015】
態様3
可聴及び触覚的調節
本発明のさらなる態様において、ゴルフクラブ又はそのための一部分であって、
a)打球ヘッド;
b)ホーゼル;及び
c)スリップギア
を備え、
前記クラブ又はそのための一部分は、
前記ヘッド及び前記ホーゼルが互いに係合して、複数のロフト設定のうちの1つに前記ヘッドを解放可能にロックし;
前記スリップギアにばね力が作用して、1つのスリップギアの前記歯を別のスリップギアの歯に係合するように付勢し;
前記ロフト設定のうちの別の設定へと前記ヘッドを回転させてその他のロフト設定にロックされるように、前記ヘッドに手動力を加えることができ;
前記ヘッドが前記他のロフト設定へと回転させられるとき、前記スリップギアのうちの少なくとも1つが、それらのうちの別のギアを乗り越えて、クリック音及び/又は触覚的インジケーションを発生させて、前記クラブを調節している人に、前記調節の可聴及び/又は触覚的フィードバックを与えるように形成された、ゴルフクラブ又はその一部分が提供される。
【0016】
任意選択で、
a)前記打球ヘッドが、スプラインを有する第1のロックギアと一体であるか又はそれに固定されており、
b)前記ホーゼルが、スプラインを有する第2のロックギアと一体であるか又はそれに固定されており;
c)ばね力が、前記ロックギアに作用してそれらを付勢して互いに係合させ;
d)前記ロックギアに対する前記付勢に対抗して前記ヘッドを前記クラブの前記ヒールに向かって動かしてそれをロック解除するために、前記ヘッドに手動力を加えることができ、それにより前記ロフト設定のうちの前記他の設定へとそれを手動で回転させることができ、次いで、同じ付勢により、前記ヘッドがその他のロフト設定でロックされるように、解放することができる。
【0017】
任意選択で、前記雄のギア及び前記雌のギアに作用する前記ばね力、及び前記スリップギアに作用する前記ばね力は、共通のばねによって提供される。
【0018】
任意選択で、前記共通のばねは圧縮されて、前記ヘッドを前記クラブの前記ヒールから離れるように押しやり、同時に、前記スリップギアのうちの少なくとも1つを別のスリップギアに係合するように押しやる力を行使する。
【0019】
任意選択で、前記ロックギアに作用するばね力は、第1のばねによって提供され、前記スリップギアに作用するばね力は、第2のばねによって提供される。
【0020】
任意選択で、前記第1のばねは、前記第2のばねよりも実質的に弱い力を提供する。
【0021】
任意選択で、前記第1のばね及び前記第2のばねは、実質的に互いに一列に構成された細長いコイルを有する。
【0022】
任意選択で、前記第1のばねの中央部分は、その中を通って延在する支持部を有していない(例えば、それは内部に構成されたシャフトなどに関連付けられていない)。
【0023】
任意選択で、前記スリップギアは、内側スリップギア、中間スリップギア、及び外側スリップギアを有し、前記内側スリップギア及び前記外側スリップギアのうちの一方又は他方の歯が、前記中間スリップギアの歯に衝突したときに、前記クリック音が発生する。
【0024】
任意選択で、
a)前記第1のロックギアが雌ギアであり、そのスプラインが、長手方向にテーパ状の構成で通っており、前記テーパは、前記クラブの前記トゥ側端部に向かって進むにつれてより細い形状からより広い形状となるように延在しており;
b)前記第2のロックギアが雄ギアであり、そのスプラインも、長手方向にテーパ状の構成で通っており、前記テーパは、前記クラブの前記トゥ側端部に向かって進むにつれてより細い形状からより広い形状となるように延在している。
【0025】
任意選択で、前記スリップギアのうちの1つは回転できない。
【0026】
任意選択で、前記第1のロックギアは、前記クラブの前記ヒール側端部において、前記シャフトに係合している。
【0027】
任意選択で、前記第2のロックギアは、前記ヘッドの内側に固定されているか、又は前記ヘッドの内側と一体である。
【0028】
任意選択で、前記スリップギアは、前記クラブの前記トゥ側端部に隣接している。
【0029】
任意選択で、それぞれのスリップギアは、前記第1のロックギア及び第2のロックギアのそれぞれと同数のギア歯を有する。
【0030】
任意選択で、前記他のロフト設定への前記ヘッドの回転が、ロフト設定の変更ごとに可聴クリックを1回のみ生じさせるように、前記スリップギアは、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアと整合している。
【0031】
任意選択で、前記他のロフト設定への前記ヘッドの回転が、前記可聴クリックに対応した触覚的衝撃を1回生じさせるように、前記スリップギアは、前記第1のロックギア及び前記第2のロックギアと整合している。
【0032】
任意選択で、前記ロフト設定が2つよりも多く存在しており、前記ヘッドの前記ロフトは、それをそれぞれの設定へと順番に同様に回転させることにより、調節されることが可能である。
【0033】
任意選択で、前記触覚的インジケータは、前記スリップギアが前記他のスリップギアを乗り越えるときに、前記人によって感じられることが可能な衝撃又は振動である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を、ここで例として、添付図面を参照しながら説明する。
図1】「ロフト調節可能」ゴルフクラブの等角図である。
図1a】クラブのトゥ側端部から見たときのクラブのロフト設定を示す。
図1b】クラブのヒール側端部から見たときの同じロフト設定を示す。
図2】クラブのいくつかの構成要素を示す分解等角図である。
図3】同じ構成要素を示す代替的な分解等角図である。
図4】クラブのヘッドがそのロフト設定のうちの1つにロックされたときの、クラブの側方断面を示す。
図4a図4のクラブヘッドの外部を示す。
図5】クラブヘッドが、ロフト設定のうちの別の設定に調節されるように解放されたときの、クラブの側方断面を示す。
図6】クラブのホーゼルの様々な等角詳細図を示す。
図6a】クラブのホーゼルの側面図を示す。
図7】クラブのヘッドの一部分を形成するスリップ歯を示す。
図8】スリップ歯の詳細図を示す。
図9】本発明の第2の実施形態による、ロフト調節可能クラブの何らかの主要な細部を示す分解図である。
図10a】第2の実施形態の部分の断面詳細図を示す。
図10b】第2の実施形態の部分の断面詳細図を示す。
図11a】2つの移動ステージにある第2の実施形態の断面詳細図を示す。
図11b】2つの移動ステージにある第2の実施形態の断面詳細図を示す。
図12a】第2の実施形態の一部分を形成するスリップ歯の詳細図を示す。
図12b】第2の実施形態の一部分を形成するスリップ歯の詳細図を示す。
図13】本発明の第3の実施形態による、ロフト調節可能クラブの何らかの主要な細部を示す分解図である。
図14a】2つの移動ステージにある第3の実施形態の断面詳細図を示す。
図14b】2つの移動ステージにある第3の実施形態の断面詳細図を示す。
図15a】第3の実施形態の一部分を形成するスリップ歯の詳細図を示す。
図15b】第3の実施形態の一部分を形成するスリップ歯の詳細図を示す。
図16】本発明のさらなる実施形態による、ロフト調節可能ゴルフクラブの分解図である。
図17図16のクラブの内部組み立て詳細図を示す。
図18図16の実施形態の一部分を形成するスリップはめ歯の詳細図を示す。
図19A図16のクラブの一部分を形成するスリップはめ歯が移動する方法を示す。
図19B図16のクラブの一部分を形成するスリップはめ歯が移動する方法を示す。
図19C図16のクラブの一部分を形成するスリップはめ歯が移動する方法を示す。
図20図16のクラブが、図のロフト位置のうちの1つに設定されたときの側方断面図である。
図21図16のクラブが、そのロフト位置のうちの別の位置へと部分的に調節されるときの側方断面図である。
図22図16のクラブのがたつき防止機構を示す。
図23図16のクラブのがたつき防止機構を示す。
図24図16のクラブのがたつき防止機構を示す。
図25図16のクラブのがたつき防止機構を示す。
図26図16のクラブのがたつき防止機構を示す。
図27図16のクラブであるが、浮動スリップはめ歯のないさらなる形態を示す。
図28】スリップはめ歯がなく、中心で支持されていない単一のばねを有する、本発明のさらなる実施形態を示す。
図29】スリップはめ歯がなく、中心で支持されていない単一のばねを有する、本発明のさらなる実施形態を示す。
図30図28図30のクラブのさらなる形態を示す。
図31図28図30のクラブのさらなる形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施形態1]
図1を参照すると、ゴルフクラブは、打球ヘッド1、及びゴルフシャフト3への接続のためのホーゼル2を有する。通常通り、シャフト3の上方端部は、クラブをスイングするためのハンドグリップ又はハンドルとして機能する。この場合、構成は、ヘッド1をホーゼルに対して手動で動かし、P、F、6、8、W、又はSというロフト設定4のうちのいずれかにロックできるというようなものである。この記号は、パター、フェアウェイドライバ、6番アイアン、8番アイアン、ピッチングウェッジ、及びサンドウェッジを表している。この例において、これらのロフト角度はそれぞれ5°、15°、25°、35°、45°及び55°であるが、他の実施形態において、それらは任意の他の有用な角度の組み合わせであってよい。図1aは、ヘッド1のトゥ1a側端部から見た、ロフト設定がF、8、及びSのときのヘッドを示し、図1bは、ヘッド1のヒール1b側端部から見た対応する図を示している。
【0036】
図2及び図3は、組み立て前のクラブのいくつかの構成要素を示している。ホーゼル2は、ヘッド1の内側の空間内に延在し、ヘッドのトゥ側端部においてナット6に接続されるように構成された円筒状のシャンク5を有する。これを可能にするために、シャンクの遠位端部は、雄ねじ山7を有し、ナットは、相補的な雌ねじ山8を有する。シャンク5がヘッド1の内側のばね9の中を通っており、ナット6が、相補的な形状のリテーナ10の内側に位置しているような構成である。ばねにかかる圧縮張力を構成するために、スペーサ22が使用されてよい。円筒状のおもり11が、ヘッドの内側のさらなる空間にぴったり位置するが取り外し可能であるように構成されており、ここでグラブねじ12によって保持されている。おもり11は、クラブの「バランスをとる」ことを支援するためのものであり、クラブを使用する人に合うように、より重い又はより軽い同様のおもりに交換されることが可能である。
【0037】
図4を参照すると、ヘッド1の一部分とみなされ得るスリーブ1cの内側に、リテーナ10が位置している(この例において、スリーブ1cは、ヘッド1の残りの部分に螺合している)。ばね9が圧縮されて、ヘッド1をクラブのヒール側端部から離れるよう外方向に押しやろうとする力を提供するような構成である。しかしながら、ライナー1cの接触表面13がリテーナ10の相補的な接触表面14に突き当たっているので、ヘッド1及びホーゼル2は分離することができない。換言すると、ばね9は、シャンク6及びリテーナ10を越えて外方向にヘッドを動かすことはできない。同様に、ライナー10のさらなるショルダ15が、ナット6のショルダ16に突き当たって、ライナー及びナットを一体に保つことを支援している。図4aは、図4の配置にあるときのヘッド1及びホーゼル2の外部を示している。雄歯17の固定を補助するために、軸リテーナ又はサークリップ23が使用されてよい(図2を参照)。
【0038】
図5は、図4と同じ構成要素を示すが、コンパクトになるよう、且つばね9の付勢力に打ち勝つように、ヘッド1がクラブのヒールに向かって(すなわち、図面の右側の方向へ)手動で内方向に押されたときの構成要素を示す。これは、クラブを解放してヘッド及びホーゼルの間の角度を調節するために行われる。この動きにより、ヘッドのヒール側端部の内部にある相補的な雄17及び雌18の円錐状又は円錐状以外ではテーパ状の「フィンのような」又は「スプライン状」の歯が係合解除される(雄歯17は、ホーゼル2に一体化又は接続された部分であり、雌歯18は、ヘッド1に一体化又は接続された部分である)。歯17及び歯18は、円錐形状の周囲を概して提供するように直線状に通っているので、「円錐状」とみなされてよい。雄歯17は、サークリップ(図2を参照)を使用して、シャンク5に固定されてよい。歯17、歯18の係合解除により、ヘッドをホーゼルに対して手動で回転できるようになる。これは、ロフト設定4のうちの1つから別の設定に変更するという作用を有する(設定は図1に示してある)。ばね9の付勢に打ち勝つ手動力が解放されたとき、ばねは、ヘッドを図4の構成に押し戻し、それにより歯17、歯18が再係合して、ヘッドを新たなロフト設定にロックする。この構成は概して、歯17のより小さい円錐状のセットが、歯18のより大きい円錐状のセットに嵌合する構成である。図5のaは、図5の配置にあるときのホーゼル及びクラブヘッドの外部を示す。
【0039】
改めて図4及び図5を参照すると、通常のゴルフスイングでクラブをスイングすることにより、ヘッド1をホーゼル2から離れるように押しやろうとする求心力が発生する。しかしながらこの場合、実際には、その力は、歯17、歯18を、したがってヘッド及びホーゼルを引き離すのではなく、よりきつくこれらをロック式に係合するよう押し込むように機能する。これが行われるのは、ヘッドに関連付けられた歯18が、ホーゼルの「雄」歯17に対する「雌」になっており、歯の両方が、クラブのトゥ側端部に向かって外方向へのテーパ状になっているからである。雌歯18の、より細い(右手側の)端部が外方向に(左へと)動こうとするにつれて、雄歯17の徐々に広がっている(左手側端部の)テーパに激しくぶつかる。その結果、ヘッド1及びホーゼル2の間でロック式の行き止まりが生じる。
【0040】
図6及び図6aは、ホーゼル2の細部を示す。インデックス線19は、様々なロフト設定4の正確な位置合わせを可能にし、これは図1においても見ることができる。図6に示してあるように、ホーゼルのヒール側端部は、外方向に延在する一連の半径方向スリップ歯20を、ロック歯17の後ろにロック歯17から間隔を置いて有する。これらのスリップ歯20は、ヘッドの相補的な半径方向スリップ歯と係合するように構成されている。スリップ歯の2つのセットは、噛み合い/係合するが、その一方で、ロフト設定4のうちの1つへと、又はその1つから出るようにヘッドが回転するとき、それらは互いに乗り越えることが可能であり、その結果、ヘッドを回転している人は、それらが衝突するときの「クリック」を聞き、衝撃を感じる。これにより、ユーザには、ロフト調節中に心地よい可聴の「触覚的」な印象が与えられる。図6aは、ホーゼルの回転防止特徴部の例を示し、これは、雄スプライン17がホーゼルに対して回転できないように構成された、シャンクの開始部にあるキー24である。ヘッドのスリップ歯21が、図7に示してある。
【0041】
図8は、ヘッド1の残りの部分に接続された雌歯18を示す。
【0042】
代替的に、歯は、ヘッドの一体部分として形成されてよい。
【0043】
上に記載した好ましい実施形態は、ヒール側端部におけるテーパ状スプライン、及びトゥ側端部における相補的な接触表面の対の組み合わせを含むが、その一方で本発明の他の実施形態においては、テーパ状スプラインの2つの対が存在し、1つがヒールに1つがトゥにあってよい。
【0044】
[実施形態2]
図9は、本発明による、ロフト調節可能ゴルフクラブの代替的な実施形態を示す。便宜上、上で言及した部分と同じ又は実質的に同等である部分には、同じ番号付けが使用される。クラブは、打球ヘッド1、ホーゼル2、及びシャフト3を有する。シャフト3の上方端部は、クラブをスイングするためのハンドルとして機能する。ホーゼルは、長手方向にテーパ状の雄歯17の円錐状のセットを受ける円筒状のシャンク5を組み込んでいる。雄歯17の内部がスロットを有し、このスロットが、シャンク5の一部分を形成するキー24と相補的であり且つそれに係合するような構成である。キー24は、雄歯17がシャフト5に対して回転するのを防止する。図面は、先に記載したテーパ状の雌歯18に同等な物を示していないが、それはこの例において、それらがヘッド内にあるからである。しかしながら、雄歯17及び雌歯18の間のロック及び解放係合は、先に記載したのと同じである。
【0045】
さらに図9を参照すると、この機構は管25を含み、ヘッド1の内側で、シャンク5はこの管25の中を通っている。示してあるように、管のヒール側端部は出っ張り26を有する。ばね9は管25の細い部分の周りに延在するが、出っ張り26を越えて押すことができないような構成である。出っ張り26は、雄歯17にも接触し、その長手方向の動きを防止するか、又は換言すると軸方向の動きを防止する。管25のトゥ側端部は、内側スリップはめ歯27の中を通っている。スリップはめ歯27は、管25に対して長手方向にスライドできるが、その周りを回転することはできない。スリップはめ歯27のさらなる特徴は、クラブのトゥ側端部に面するスリップ歯28のリングを有していることである。これらは、外側スリップはめ歯30のスリップ歯29の内向きの相補的なリングに係合する。この外側スリップはめ歯30は、ヘッドとともに軸方向に動き、ヘッドが回転するときにヘッドとともに回転する。
【0046】
引き続き図9では、バレルナット6が、シャフト5の遠位端部に螺合するようにねじ山がつけられ、スライダ31に対して締め付け、次いでこのスライダ31が管25に押し付けられる。スライダ31が、ナット6及び管25の間にトラップされるような構成である。スライダ31は、内側スリップはめ歯27を軸方向に動かせるようにするが、回転ができないようにする溝32を有する。最後に、リテーナ33は、外側スリップはめ歯30内に螺合して外側スリップはめ歯30を定位置に保持する。
【0047】
図10a及び図10bを参照すると、これらは組み立てられたときの図9の機構を示しており、両方のスリップ歯28、スリップ歯29のセットがインターロックされている。それらは圧縮しているばね9からの圧力によって互いに押し付けられている。
【0048】
クラブのロフトを調節したいとき、前のようにヘッド1がクラブのヒール側端部に向かって動かされて、テーパ状の歯17、歯18のセットを係合解除し、それによりシャフト5を中心としてヘッドを回転させて、ロフト設定のうちの異なる1つにヘッドを至らせることができる。ロック位置からロック解除位置への動きは、図11a及び図11bにそれぞれ示してある。ロック解除時、クラブヘッド1は、新しいロフト設定へと手動で回転させられる。これが行われるとき、スリップ歯28、スリップ歯29は、図12a及び図12bに示してあるように互いに乗り越える。これが行われるとき、スリップ歯28、スリップ歯29は、歯のそれぞれの衝突に対応した可聴クリック、及び振動又は衝撃を引き起こす動きを発生させる。これにより、クラブを調節する人には可聴及び触覚的フィードバックの両方が与えられ、このことが、クラブの市場性及び知覚品質を高める。
【0049】
[実施形態3]
図13は、本発明のさらなる代替的な実施形態を示す。それは、上に記載した実施形態2とほぼ同様であり、それゆえおおよそ同等の部分には、同じ参照符号が付与されている。実質的に、実施形態2との唯一の相違点は、実施形態3では、内側スリップはめ歯27がより短く、スライダ31がないことである。管25が、内側スリップはめ歯27の軸方向の動きを防止する。ここでもばね9は常に圧縮されており、一方の端部が外側スリップはめ歯30に接触しており、その他方の端部がリテーナ33に接触している。またここでも、内側スリップはめ歯27は、管15に対して回転又はスライドすることができない。外側スリップはめ歯30は、ヘッド1の内側で軸方向に動くことができ、ヘッドに対して回転することはできず、ばね9によって内側スリップはめ歯27に押し当てられている。図14a及び図14bは、雄歯17及び雌歯18がロック及びロック解除されたときの実施形態3をそれぞれ示す。図15a及び図15bは、上に記載したのと同様に、スリップ歯28、スリップ歯29がどのように互いを乗り越えて、クリック音及び触覚的衝撃を生み出すかを示す。
【0050】
上に記載した好ましい実施形態は、ヒール側端部におけるテーパ状スプライン、及びトゥ側端部における相補的な接触表面の対の組み合わせを含むが、その一方で本発明の他の実施形態においては、テーパ状スプラインの2つの対が存在し、1つがヒールに1つがトゥにあってよい。
【0051】
[実施形態4]
図16及び図17は、本発明のさらなる代替的な実施形態を表すロフト調節可能ゴルフクラブを示す。ほとんどの部分に関して、言及したものと実質的に同様の部分には、同じ参照符号が与えられている。
【0052】
クラブは、ヘッド1、ホーゼル2、及びハンドル3を有する。示してあるように、ホーゼル2は、短縮されたシャフト5を組み込んでいる。円錐状の雄のロック歯17のセットが、シャフト5に支持されており、ヘッド1の内部部分と一体の雌のロック歯18の相補的な円錐状のセットに係合するように適合されている。上記のように、歯17、歯18のこれらのセットはそれぞれ、クラブのヒールに最も近いより細い端部から、クラブのトゥ側端部により近い広い端部に向かってテーパ状になっている。
【0053】
ヘッド1は、歯17、歯18を係合解除するようにクラブのヒールに向かって軸方向に手動で動かされることが可能であり、それによりヘッドは部分的に回転して、利用可能な複数のロフト設定のうちの1つへとそれを調節することができる。軸方向の動きを引き起こした手動力が緩和されると、歯17、歯18は、ばねの張力の下で自動的に互いに係合して、それぞれのロフト設定においてクラブがロックされる。この張力は、雄歯17のテーパ又はバンクに雌歯18を押し付けるように作用するばね9によって提供される。示してあるように、ばね9の中央部分には、その中に延在する支持部がない(例えば、中央の支持シャフトなどがない)。ばね9が圧縮しているので、ヘッド1の自然な傾向は、ホーゼルから離れるほうに引っ張られることになるが、雌歯18の細いヒール側端部が、雄歯17の拡大するテーパを越えてスライドすることができないので、そうはなり得ない。ここでも、このロックは、通常通りにゴルフボールを打つためにクラブがスイングされたときの求心力によって強化される。
【0054】
示してあるように、ばね9は、ヘッド1に螺合するリテーナ33に接して、クラブのトゥ側端部に位置している。ばねの他方の端部は、シルクハット形状のスラストパッド34に当接して位置しており、次いでこのスラストパッド34が、バレルナット35の遠位端部に係合している。バレルナット35の他方の端部は、シャンク5の周りでこれらを互いに締結するためのねじ山が付けられている。第2のばね37が、バレルナットの周りに巻かれており、ヒール側端部におけるスリップはめ歯の構成部及びバレルナットにおけるワッシャ36の間で圧縮された状態で維持される。示してあるように、ワッシャ36は、クラブのヒール側端部に最も近いバレルナットの側部に当接して位置している。図17に示しているように、スリップはめ歯の構成部は、内側スリップはめ歯27及び外側スリップはめ歯30を有し、これらがともに、中間浮動スリップはめ歯38を挟んでいる。示してあるように、内側スリップはめ歯27は、雄歯17のセットに突き当たっており、外側スリップはめ歯30は、第2のばね37に突き当たっている。
【0055】
図18に示してあるように、浮動スリップはめ歯38は、内側及び外側のスリップはめ歯の相補的な形状の歯にそれぞれ係合するための、半径方向右向きに傾斜した一連の歯をそれぞれの側部に有する。3つのスリップはめ歯は、第2のばね37からの圧力によって、常に互いに当接した状態で保持される。これは、ロフト設定を調節するためにヘッド1がクラブのヒール側端部に向かって軸方向に動かされたときでも、それらが係合したままであることを意味する。第2のばね37は、好ましくは、他方のばね9よりもかなり強力な張力を提供する。しかしながら、これは、ロフト調節のためのヘッドの軸方向の動きを妨げることはない。なぜならゴルファーは、これを行うためにばね9のより弱い張力に打ち勝ちさえすればよいからである。
【0056】
ロフト設定を調節するためにヘッド1が回転されるとき、スリップはめ歯の歯は互いに乗り越え、それによりゴルファーは、調節のレベルごとに、クリック音を1回聞き、衝撃も1回感じる。例えば、ゴルファーが2回のクリックを聞き、2回の衝撃を感じた場合、例えば7番アイアンの設定から9番アイアンの設定へといったように、彼らは自分が2つのロフト設定だけクラブを調節したことがわかる。これは、視界に制限のある(例えば、日常的に老眼鏡を必要とする)ゴルファーが、クラブをどのロフト設定にしたかを、そのマーカ目盛りを見る必要なしに知ることができることを意味する。当然ながら、歯が互いに乗り越えるとき、それらは第2のばね9の張力に対抗して作用する。
【0057】
ここでも図18を参照すると、クラブヘッド1が一方向に回転するとき、浮動スリップはめ歯38の歯の一方の側がクリックを生じさせることに関与し、ヘッド1が反対方向に回転するとき、浮動スリップはめ歯38の歯の反対側が、クリックを生じさせることに関与する。したがって、一方の回転方向においては、外側スリップはめ歯30の歯が、浮動スリップはめ歯38の歯と衝突しクリックを生じさせ、他方の回転方向においては、内側スリップはめ歯27の歯が、浮動スリップはめ歯38の歯と衝突しクリックを生じさせる。さらに、外側スリップはめ歯30が動いているとき、内側スリップはめ歯27は動いておらず、その逆もまた同様である。理解されるように、内側スリップはめ歯及び外側スリップはめ歯のそれぞれの回転運動は、それらがそれぞれ一方向にしか回転できないことから、ラチェット状である。図19A図19Cは、回転方向に応じた様々な異なるスリップはめ歯の歯の衝突を示す。
【0058】
図20は、クラブヘッド1がロフト設定にロックされたときの、図16図19Cの実施形態を側面図で示す。図21は、同じ構成の部分であるが、クラブのロフトを回転方向に調節するために、ヘッド1がクラブのヒール側端部に向かって軸方向に動かされて歯17、18がロック解除されたときの部分を示す。
【0059】
図22図26を参照すると、外側スリップはめ歯30は、直径方向に対向した、がたつき防止歯39の対を有する。クラブヘッド1がロフト調節のためにヒール側端部に向かって軸方向に動かされたとき、これらの歯39は、ヘッド内の相補的なスロット40に位置付けられる。この係合は、ロフト調節が行われるときに、ヘッド及びホーゼルの間のがたつきを阻止するように機能する。しかしながら、ロフトが設定され、クラブの使用準備が整ったとき、歯39は、それらそれぞれのスロット40からそれぞれ解放されている。
【0060】
図27は、浮動スリップはめ歯38を含んでいないことを除き、図16及び図17と同様の構成を示す。その場合、ロフト調節中にゴルファーが気づくクリック及び衝撃を生じさせるために、内側27及び外側30のスリップはめ歯の歯が、互いに乗り越えてよい。これを容易にするために、歯はラチェットになる形状ではなく、むしろいずれの回転方向にも互いに乗り越えることができる。
【0061】
[実施形態6]
図28及び図29は、本発明のさらなる実施形態を表すロフト調節可能ゴルフクラブを示す。言及したのと実質的に同様の部分は、同じ参照符号を先に与えられている。
【0062】
クラブは、前のようにヘッド1、ホーゼル2、及びハンドル3を有する。それは、円錐状の雄歯17のセット、及び相補的な円錐状の雌18のセットも有する。これらは、上に記載したように機能して、設定されているいずれかのロフト角度にクラブを解放可能にロックする。
【0063】
この実施形態において、雄歯は、好ましくはホーゼルと一体であり、ホーゼルはシャフトを有していない。むしろ、歯17、歯18のセットをロック位置に付勢するばね9は、一方の端部で雄歯のセットの基部41の周りに位置し、ヘッドのトゥ側端部においてリテーナ33の基部42の周りに位置している。ばね9は圧縮されており、それによりヘッド1を自然にホーゼルから離れるように押しやり、当然ながらこれは、上に記載したように歯17、18をロックするように機能する。しかし、クラブヘッドがクラブのヒール側端部に向かって軸方向に手動で動かされたとき、歯17、18は解放され、それによりヘッド1を回転式に動かして、クラブのロフト設定を変更することができる。ばね9は、その軸方向中心を通って延在するいかなる支持シャフトも有していない。
【0064】
図30及び図31は、ばね9が、基部の周りではなく、雄歯17のセットの前面において凹部43に位置していることを除き、図28及び図29と同様の構成を示す。ばね9の反対側の端部は、グラブねじ44に螺合しているか又は別様にその中に位置するディスク43に押し当てられている。グラブねじは、ヘッドのトゥ側端部にも螺合しており、ばね9にかかる張力を調整するために、より大きい又はより少ない程度、前方にねじ込まれることが可能である。
【0065】
本発明の他の実施形態において、上の実施形態のいずれかのゴルフクラブは、雄のロックギアがヘッド1に関連付けられ、雌のロックギア18がホーゼルに関連付けられるように修正されてよい。その例において、これらのギアのテーパは、いずれの場合も上の実施形態のテーパと反対になる。換言すると、それぞれのギア17、18の円錐部は、トゥ側端部よりもヒール側端部に近いほど広くなる。
【0066】
本発明のいくつかの形態は、例として記載されているが、その一方で、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、修正及び改善を加えてよいことが理解されるべきである。
【0067】
開示に関して、本明細書は、本明細書において言及した任意の特徴を、それ自体又は本明細書において言及した1つ又は複数の他の特徴との組み合わせで想定し、これにより前提とするが、これはそれらの組み合わせが特許請求されていない場合でも該当する。
図1
図1a
図1b
図2
図3
図4
図4a
図5
図5a
図6
図6a
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14a
図14b
図15a
図15b
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【国際調査報告】