IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クイーン メアリー ユニバーシティ オブ ロンドンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240301BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240301BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240301BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240301BHJP
   C07K 4/00 20060101ALI20240301BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240301BHJP
   C07K 7/64 20060101ALI20240301BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240301BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240301BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240301BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61P37/02
A61K38/08
A61K33/243
A61K31/282
A61K39/395 T
A61K35/17
C07K16/28
C07K4/00
C07K7/06
C07K7/64
C12N5/10
C12N5/0783
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554014
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 GB2022050592
(87)【国際公開番号】W WO2022185081
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2103122.4
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515200272
【氏名又は名称】クイーン メアリー ユニバーシティ オブ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホディバラ - ディルケ、カイルバーン
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス、ホセ マヌエル ムニョス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA20
4C084AA24
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA23
4C084BA24
4C084BA31
4C084DA27
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA12
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB14
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせたαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤による患者のがんの処置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のがんを治療する方法において使用するためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤であって、該方法が、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤を患者に投与することをさらに含む、上記αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項2】
少なくとも1つの免疫療法剤及び少なくとも1つの化学療法剤を患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項3】
がんが固形がんである、請求項1又は2に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項4】
がんが肺がん、任意で非小細胞肺がんである、請求項3に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項5】
がんが非血管新生性である、及び/又は血管コ-オプション(vessel co-option)を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項6】
がんが免疫療法に対して難治性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項7】
前記方法が、がんからの患者の生存を増強する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項8】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の投与が、がんの免疫浸潤を増加させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項9】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が、小分子、ペプチド、ペプチド模倣物質(peptidomimetic)、タンパク質又は抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項10】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が、RGDモチーフを含むペプチド又はそのペプチド模倣物質であり、任意でペプチド又はペプチド模倣物質は約5~約8アミノ酸長の環状ペプチド又はそのペプチド模倣物質であってもよく、任意でペプチド又はペプチド模倣物質はペンタペプチド若しくはヘキサペプチド又はそのペプチド模倣物質であってもよい、請求項9に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項11】
(a)ペプチド若しくはペプチド模倣物質が、少なくとも1つのN-アルキル化アミノ酸残基、任意で少なくとも1つのN-メチル化アミノ酸残基を含むペプチド若しくはそのペプチド模倣物質である、
(b)ペプチド若しくはペプチド模倣物質が、少なくとも1つのD-アミノ酸若しくはGlyを含むペプチド、若しくはそのペプチド模倣物質であり、好ましくは、該ペプチド若しくはペプチド模倣物質が少なくとも1つのβII’ターンを含み、少なくとも1つのD-アミノ酸若しくはGlyが、βII’ターンのi+1位に提供され、及び/又は
(c)ペプチド若しくはペプチド模倣物質が、任意でVal若しくはPheから選択されてもよい少なくとも1つの疎水性アミノ酸残基を含むペプチド、又はそのペプチド模倣物質である、
請求項10に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項12】
ペプチドが、シレンギチド若しくはその誘導体若しくは類似体若しくはペプチド模倣物質、又は以下のペプチドの1つ若しくはその誘導体若しくは類似体若しくはペプチド模倣物質:
a.rGDAAA(配列番号1);
b.rGDAAA(配列番号13);
c.aRGDAA(配列番号2);
d.rGDAAA(配列番号3);
e.rGDAA(配列番号4);
f.vRGDAA(配列番号5);
g.fRGDAA(配列番号6);
h.rGDAAV(配列番号7);及び
i.rGDAAF(配列番号8);
は、次のアミノ酸のN-メチル化を表し、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、Dはアスパラギン酸であり、rはD立体配置のアルギニンであり、Aはアラニンであり、aはD立体配置のアラニンであり、Vはバリンであり、vはD立体配置のバリンであり、Fはフェニルアラニンであり、かつfはD立体配置のフェニルアラニンであり、好ましくは、ペプチドは、SEQ ID NO24~31及び36のいずれか1つの環状ペプチド又はその誘導体若しくは類似体若しくはペプチド模倣物質である)
から選択される、請求項10又は11に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項13】
ペプチドが、vRGDAA(配列番号5)、配列番号28の環状ペプチド、又はこれらのいずれかの誘導体若しくは類似体若しくはペプチド模倣物質である、請求項12に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項14】
ペプチド又はペプチド模倣物質がプロドラッグの形態であるか、又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質として提供される、請求項9~13のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項15】
プロドラッグが、ペプチド若しくはペプチド模倣物質の正味電荷を減少させる少なくとも1つの部分を含む、及び/又は以下の部分若しくは部分の群:
(i)-COR部分(Rはアルキルである);
(ii)任意でアルギニン残基に連結されていてもよい、ヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分;
(iii)Aspのメチル若しくはアルキルエステルなどの、メチルエステル部分(OMe)若しくは他のアルキルエステル部分;
(iv)ヘキシルオキシカルボニル(Hoc)及びエステル(OMe)部分;並びに/又は
(v)2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分;
のうちの少なくとも1つを含み、
任意で、該プロドラッグが、式:c(vR(Hoc)GD(OMe)AA)(配列番号9)、c(aR(Hoc)GD(OMe)AA)(配列番号10)、c(r(Hoc)GD(OMe)AAA)(配列番号11)又はc(r(Hoc)GD(OMe)AA)(配列番号12)を有してもよい、
請求項14に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項16】
小分子、ペプチド又はペプチド模倣物質が経口投与される、請求項9~15のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項17】
ペプチド又はペプチド模倣物質が、該ペプチド又はペプチド模倣物質、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物として投与される、請求項9~16のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項18】
少なくとも1つの免疫療法剤がCD8+T細胞抗がん応答を誘導する、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項19】
少なくとも1つの免疫療法剤が、1種又は複数種のチェックポイント阻害剤を含み、任意で、該チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4又はPD-L1の、リガンドとの相互作用を標的としてもよい、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項20】
チェックポイント阻害剤が、抗体又はCAR-T細胞、任意で、PD1、PD-L1若しくはCTLA4を結合する抗体又はCAR-T細胞である、請求項19に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項21】
少なくとも1つの化学療法剤が、少なくとも1つのアルキル化剤、任意でシスプラチン、カルボプラチン又はこれらのいずれかの誘導体を含む、請求項2又は請求項2に従属する請求項3~20のいずれか一項に記載の使用のためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【請求項22】
患者のがんを治療する方法において使用するための少なくとも1つの免疫療法剤であって、該方法が、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を患者に投与することをさらに含み、任意で、少なくとも1つの免疫療法剤が請求項18~20のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、並びに/或いはαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が請求項8~15のいずれか一項に定義されるとおりであってもよい、上記免疫療法剤。
【請求項23】
患者のがんを治療する方法であって、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤と、少なくとも1つの免疫療法剤とを投与することを含み、任意で、少なくとも1つの免疫療法剤が請求項18~20のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、並びに/或いはαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が請求項8~15のいずれか一項に定義されるとおりであってもよい、上記方法。
【請求項24】
がんの処置のための医薬品の製造におけるαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の使用であって、処置が少なくとも1つの免疫療法剤の投与をさらに含み、任意で、少なくとも1つの免疫治療剤が請求項18~20のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、並びに/或いはαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が請求項8~15のいずれか一項に定義されるとおりであってもよい、上記使用。
【請求項25】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤と少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤との組み合わせであって、任意で、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が請求項8~15のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、少なくとも1つの免疫療法剤が請求項18~20のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、並びに/或いは少なくとも1つの化学療法剤が請求項21に定義されるとおりであってもよい、上記組み合わせ。
【請求項26】
患者のがんを治療する方法において使用するためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤であって、該方法が、少なくとも1つの化学療法剤を投与することをさらに含み、任意で、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が請求項8~15のいずれか一項に定義されるとおりであってもよく、がんが請求項4若しくは5に定義されるとおりであってもよく、並びに/或いは少なくとも1つの化学療法剤が請求項21に定義されるとおりであってもよい、上記αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の、患者のがんを処置(治療)するための医学的使用であって、処置は、少なくとも1つの免疫療法剤を患者に投与することをさらに含む、医学的使用に関する。本発明はまた、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせた、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の、がんの処置のための医学的使用に関する。本発明はさらに、上記の薬剤によるがんの処置方法、及びこの処置方法において有用な組み合わせ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法及び化学療法などの既存の治療に対する応答が不良ながんを含む、がんに対する新しい治療を提供することは極めて重要である。既存の薬剤の用量/副作用を低減することができる併用療法も必要とされている。肺がんは、現在、がん死亡の主な原因である。非小細胞肺がん(NSCLC)は、全ての肺がんのうち80%超を占め、しばしば不良な予後を伴う進行した疾患として現れる。診断時に、NSCLC患者の75%は進行した疾患(ステージIII~IV)を呈する(1)。これらの進行したがんは手術不能である。
【0003】
免疫療法の導入は、おそらく、NSCLC患者の処置結果の改善に最も寄与した(2)が、これにもかかわらず、治療に対する耐性及び毒性作用はなお大きな障害である。抗PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)及び抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)抗体による免疫チェックポイントの遮断は、全生存期間のさらなる13ヶ月の改善をもたらすにすぎず、患者の20~30%しか応答しない。
【0004】
より最近では、ネオアンチゲン発現を増強するシスプラチンなどの化学療法を免疫療法と組み合わせることはいくらか有望であったが(3)、障害には、(1)不十分な送達及び酸素負荷による免疫療法の有効性の欠如(4);(2)腫瘍内への不良なT細胞浸潤(5);(3)T細胞の不良な腫瘍内活性化(6);及び(4)処置の早期終了を強いることがある重度の自己免疫応答の発症(7)がなお含まれる。したがって、副作用を低減しながら、NSCLCの処置のための免疫療法の有効性を増大させる方法を見出す緊急の必要性が存在する。
【0005】
T細胞による不十分な腫瘍浸潤及びより低いレベルのPD-L1(プログラム死リガンド-1)は、免疫療法に対する不良な応答と関連する(8)。CD8+細胞の増加したレベル又はCD8+/制御性T細胞(Tregs)比の増加は、腫瘍を免疫チェックポイント遮断に対して増感させる(9)。低酸素腫瘍はTregsによって高度に浸潤されるが、CD8+細胞は存在しない(10)。血管新生腫瘍血管系は無秩序であり、腫瘍内低酸素症を促進する不規則な漏出性の血管を有する。血管コ-オプション(vessel co-option)/血管再構築は、腫瘍細胞が既存の血管を乗っ取って腫瘍成長を支える非血管新生性の機序である(11)。肺では、腫瘍細胞は、血管新生に加えて、腫瘍に酸素を与えるために血管コ-オプション戦略を採ることができる(12、13)。この観察は、このような肺がんが抗血管新生療法に対して少なくとも部分的に耐性であると推測されることを示唆している。実際、ヒト原発性肺がんでは、組織病理学的分析は、血管コ-オプション性の間質性成長パターンの増加したレベルが不良な転帰と関連するという証拠を明らかにした(14)。
【0006】
以前の研究は、静脈内投与された低用量のシレンギチド(αvβ3/αvβ5を標的とするRGD模倣物質)と、最適を下回る用量のゲムシタビン及びベラパミルとの組み合わせ処置が血管密度を増加させ、ゲムシタビン代謝を増強し、したがってゲムシタビンの副作用を軽減しながらがん制御を改善するための戦略を提供することを実証した(20)。
【0007】
免疫療法薬及び化学療法薬の有効性/免疫療法薬及び化学療法薬に対する応答性を増大させ、それらの副作用を軽減する組み合わせ処置が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、経口的に利用可能なRGD模倣物質ヘキサペプチドプロドラッグ29Pによって例示されるようなαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が、免疫療法の有効性を改善することができ、化学療法の有効性も改善することができることを示した。NSCLCのK-RasLSL-G12D/+;p53fl/fl(KP)マウスモデルを使用して、本発明者らは、29Pが、抗PD1及び抗CTLAを使用する標準治療シスプラチン及び免疫チェックポイント遮断に対して動物を増感させ、有害な副作用を軽減しながら腫瘍量の低下及び延長された生存期間をもたらすことを実証した。29P処置は肺腫瘍成長パターンを改変し、低酸素を軽減させながら、血管密度、腫瘍灌流並びにT細胞浸潤及び活性化の増加をもたらす。
【0009】
観察された効果はまた、非血管新生性であり、抗血管新生療法に抵抗性であるがんを含む、免疫療法及び/又は化学療法が用いられる他のがんにおける処置を改善するのに有用であると予想される。観察された効果はまた、より低用量の免疫療法剤及び/又は化学療法剤を治療的に使用することができるように免疫療法及び/又は化学療法の処置効果の増強を可能にし、このような薬剤の毒性及び副作用の軽減を可能にする。
【0010】
したがって、本発明は、患者のがんを処置する方法において使用するためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤であって、前記方法は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は化学療法剤を患者に投与することをさらに含む、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を提供する。本発明はさらに、患者のがんを処置する方法において使用するための少なくとも1つの免疫療法剤であって、前記方法は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を患者に投与することをさらに含む、免疫療法剤を提供する。本発明はさらに、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤並びに少なくとも1つの免疫療法剤を投与することを含む、患者のがんを処置する方法を提供する。本発明はさらに、がんを処置するための医薬品の製造におけるαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の使用であって、処置が少なくとも1つの免疫療法剤の投与をさらに含む使用を提供する。本発明はまた、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤と、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤との組み合わせを提供する。本発明はさらに、患者のがんを処置する方法において使用するためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤であって、前記方法は、少なくとも1つの化学療法剤を投与することをさらに含む、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、KP腫瘍が血管コ-オプション成長パターンを示し、VEGFR2阻害に対して応答しないことを示す。(A)KP腫瘍は、血管コ-オプション成長パターン:肺胞成長パターン(中央のパネル)及び間質性成長パターン(下のパネル)を示す。(B)ヘマトキシリン-エオシン(上のパネル)及び二重ポドプラニン/CD31免疫染色で染色されたヒトNSCLC切片、肺胞及び間質性成長パターンが患者に生じることを確認した。(C)ウイルスCre感染の56日後から、KPマウスをDC101(600μg/マウス、週に2回、3週間)で処置した。プラセボ又はDC101のいずれかで処置されたKPマウスからの、腫瘍を持った肺のヘマトキシリン-エオシン及びエンドムチン染色の代表的な画像(左)。病巣の数、腫瘍量及び血管密度の定量(右)は、有意な差がないことを確認する。N.S.有意でない/p>0.05、対応のないスチューデントのt検定及びマン・ホイットニー検定、腫瘍量及び病巣の数についてはn=7プラセボ、n=8DC101、血管密度はそれぞれn=6動物の動物あたりn>4の視野に基づく。スケールバー:IFで50μm。
図2図2は、KP腫瘍に対する29P処置の血管効果を示す。ウイルスCre感染の56日後から、KPマウスを29P(250μg/kg、週に2回、3週間)で処置した。(A)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(左)及び腫瘍病巣の数及び腫瘍量の定量化(右)、有意な差を示さなかった。(B)ポドプラニン/エンドムチン免疫蛍光(上)及びエンドムチン免疫組織化学染色(下)の代表的な画像。間質性成長パターン及び血管密度を示す腫瘍の百分率の定量化(右パネル)。(C)29Pで処置されたマウスにおけるポドプラニン/エンドムチン免疫蛍光の代表的な画像、2つの異なる血管成長パターンを示す。血管密度の定量化(右)。(D~G)PE-PECAM/エンドムチン二重免疫染色及び視野当たりの灌流された血管の数の代表的な画像(左)及び定量化(右)(D)、PE-PECAM/Hoechst二重免疫染色及び相対Hoechst強度(E)、Glut1免疫組織化学的染色及びGlut1発現レベル(F)、CD3免疫組織化学的染色及びフローサイトメトリー分析(G);プラセボ対29P処置マウス。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(A、B、D~G)対応のないスチューデントのt検定、(C)二元配置ANOVAとSidakの多重比較検定、処置当たりn=5~8、血管密度はそれぞれn=7~8動物の動物あたりn>4の視野に基づくスケールバー:IF低倍率で500μm、IF高倍率で50μm。
図3図3は、29P処置がKP腫瘍を現在の免疫療法及び化学療法に対して増感させることを示す。ウイルスCre感染の56日後から、例に記載されている頻度で、プラセボ(生理食塩水)又はアイソタイプ抗体(100μg/マウス)、並びにシスプラチン(6mg/kg[Cis]又は3mg/kg[Cis])、PD-1mAb(200μg/マウス)、CTLA-4mAb(100μg/マウス)及び29P(250μg/kg)の組み合わせでKPマウスを処置した。(A、B、E)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像並びに腫瘍病巣の数及び腫瘍量の定量化。(C)Cis、PD-1+CTLA-4mAb及び29Pの4重の組み合わせで処置されたマウスにおける有意な延命効果を示すカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)グラフ。(D)プラセボ、29P、Cis/α-PD-1+α-CTLA-4及びCis/α-PD-1+α-CTLA-4/29PでC57/BL6マウスを処置した。マウス体重の定量化、リンパ球の血液学的分析及び腎臓損傷応答の指標であるクレアチニンの生化学的分析は、低用量シスプラチン(Cis)との4重の組み合わせに対して、有意に改善されたパラメータを示す。(F)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(左)並びにマウスの体重及び腫瘍量の定量化(右)。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(A、B、D~F)通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、正規分布していないデータについては、クラスカル・ウォリス検定とダンの多重比較検定、(C)マンテル・コックス検定、処置あたりn=5~8。スケールバー:H&E染色で5mm。
図4図4は、29P処置が腫瘍成長パターンを改変し、血管密度を増加させ、腫瘍低酸素を低下させることを示す。ウイルスCre感染の56日後から、プラセボ(生理食塩水、[A])又はアイソタイプ抗体(100μg/マウス[B])並びにシスプラチン(3mg/kg[Cis])、PD-1mAb(200μg/マウス)、CTLA-4mAb(100μg/マウス)及び29P(250μg/kg)の組み合わせでKPマウスを3週間処置し、さらに1週間の処置停止後に採取した。肺のポドプラニン/エンドムチン二重免疫蛍光染色(A、Bの一番上の列)、エンドムチン免疫組織化学染色(Bの2列目)、Glut1免疫組織化学染色(Bの3列目)、又はPD-L1免疫組織化学染色(Bの一番下の列)の代表的な画像(左)及びマウスにおける腫瘍成長パターン(A、Bの一番上の列)、血管密度(Bの2列目)、Glut1発現強度(Bの3列目)、又は高いPD-L1発現を示す病巣の数(Bの一番下の列)の定量化(右)。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、処置あたりn=6~9、血管密度はそれぞれn≧6の動物の動物あたりn≧5の視野に基づく。スケールバー:IFで250μm。
図5図5は、29P処置が免疫許容性腫瘍微小環境を誘導することを示す。ウイルスCre感染の56日後から、プラセボ(生理食塩水、[A])又はアイソタイプ抗体(100μg/マウス[B])並びにシスプラチン(3mg/kg[Cis])、PD-1mAb(200μg/マウス)、CTLA-4mAb(100μg/マウス)及び29P(250μg/kg)の組み合わせでKPマウスを3週間処置し、さらに1週間の処置停止後に採取した。(A、B)肺のCD3及びCD8免疫組織化学染色の代表的な画像(左)、並びにCD3+又はCD8+細胞によって浸潤された病変の数及び面積当たりのCD8+細胞の数の定量化(右)。(C)腫瘍負荷肺におけるリンパ系及び骨髄系細胞集団のフローサイトメトリー分析、結果は組織1mg当たりの細胞の絶対数(x10)の平均±SEMとして示され、NT=非腫瘍(対照動物からの、腫瘍を含まない肺)。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、正規分布していないデータについては、クラスカル・ウォリス検定とダンの多重比較検定、処置あたりn=5~8、CD8+細胞/面積については、動物あたりn=5領域、処置あたりn=3~7動物。
図6図6は、29Pによって誘導された効果がVEGFR2依存性であることを示す。ウイルスCre感染の56日後から、プラセボ、29P(250μg/kg)又は29P及びDC101(600μg/マウス)で、週に2回、3週間、KPマウスを処置した。(A)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(上の列)、エンドムチン免疫組織化学染色(中央の列)、ポドプラニン/エンドムチン二重免疫蛍光染色(下の列)並びに腫瘍量、血管密度及び腫瘍成長パターンの定量化(左)。ポドプラニン/エンドムチン二重免疫組織化学染色の代表的な画像[腫瘍病変は破線によって示されている]及び腫瘍成長パターンによる病変サイズの定量化(右)。(B、C)エンドムチン/Ki67二重(B)及びエンドムチン/Ki67/ポドプラニン三重(C)免疫蛍光染色の代表的な画像(上の列)及び増殖性内皮細胞の定量(下)。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。対応のないスチューデントのt検定、処置あたりn=6~8、血管密度はそれぞれn≧6の動物の動物あたりn≧5の視野に基づく、Ki67+エンドムチン+は、n=6~7の動物の動物あたりn=10(B)/n=2~5(C)の視野に基づく。スケールバー:IFで100μm(A、C)、IFで50μm(B)。
図7図7は、CD8+細胞及びIL-18-IFN-γ-CXCL9軸の枯渇が29Pの抗腫瘍効果を逆転させることを示す。ウイルスCre感染の56日後から、パネル内に示されているように、アイソタイプ抗体(100μg/マウス)、並びにシスプラチン(6mg/kg[Cis])、PD-1mAb(200μg/マウス)、CTLA-4mAb(100μg/マウス)、CD8αmAb(200μg/マウス)、IFN-γmAb、抗CXCL9mAb、抗IL-18mAb及び29P(250μg/kg)の組み合わせでKPマウスを3週間処置した。(A~E)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(左)並びに病巣の数及び腫瘍量の定量化(右)。(D、下パネル)CD8免疫組織化学染色の代表的な画像(左)及び面積あたりの、腫瘍病変部中に浸潤したCD8+細胞の数の定量化(右)。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、正規分布していないデータについては、クラスカル・ウォリス検定とダンの多重比較検定、処置あたりn=7~14。
図8図8は、図1に関連し、間質性成長パターンが起こっている腫瘍の経時的な分析を示す。(A)KP腫瘍を有するマウスを屠殺し、ウイルスCre感染の63、70、77及び83日後に肺を採取した(tharvested)。ヘマトキシリン-エオシン染色は、腫瘍量の増加(上)、病巣の数及び腫瘍量の定量化(下)を示す。(B)示されている時点で採取された肺の代表的なポドプラニン免疫蛍光染色(上)及び間質性腫瘍成長の定量化(下)。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、全ての群を63日間と比較、処置あたりn=4~5の動物。スケールバー:IFで500μm。
図9図9は、図2に関連し、29P処置後の腫瘍成長及び腫瘍進行の分析を示す。(A)ウイルスCre感染の56日後での、KP腫瘍を有するマウスのヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像。より高い倍率の写真は、これらのKP腫瘍における肺腺腫(左の写真)及び肺腺がん(右の写真)を示す。(B)ウイルスCre感染の56日後から、KPマウスを29P(250μg/kg、週に1回)で処置した。ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(上)及び腫瘍病巣の数及び腫瘍量の定量化(下)、有意な差を示さなかった。(C、D)ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像、異なる腫瘍グレードを示す(C)及び29Pでの処置後のグレードの定量化、プラセボで処置されたマウスと差を示さない(D);グレード0(過形成)、グレード1~2(腺腫)、グレード3~4(腺がん)及びグレード5(線維形成性腫瘍)。(E)エンドムチン/α-SMA二重免疫蛍光染色の代表的な画像(左)及びα-SMA+血管周囲細胞によって覆われた血管の定量化。(F)異なる用量の29P後のKP肺腫瘍細胞の細胞生存分析。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。対応のないスチューデントのt検定、処置あたりn=7~9(B、E)、カイ二乗検定(D)。スケールバー:低倍率では100μm、高倍率(C)では50μm。
図10図10は、図3に関連し、29PがPD-1との組み合わせで腫瘍成長を制御することを示す。(A)ウイルスCre感染の56日後から、アイソタイプ抗体(100μg/マウス)、PD-1mAb(200μg/マウス)単独又はPD-1及び29P(250μg/kg)で、方法に記載されている頻度でKPマウスを処置した。ヘマトキシリン-エオシン染色された肺の代表的な画像(上)並びに腫瘍病巣の数及び腫瘍量の定量化(下)。(B)異なる濃度のシスプラチン又はシスプラチン及び2nMの29Pに曝露されたヒトA459細胞及びマウスKP肺腫瘍細胞の細胞生存分析。N.S.有意でない/p>0.05、*p<0.05、**p<0.01。通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、正規分布していないデータについては、クラスカル・ウォリス検定とダンの多重比較検定、処置あたりn=9の動物、条件あたりn=6~8の独立した試料。g。
図11図11は、図5に関連し、29P処置が間質性腫瘍病変内へのCD3+細胞の浸潤を促進することを示す。ウイルスCre感染の56日後から、アイソタイプ抗体(100μg/マウス)並びにPD-1mAb(200μg/マウス)、CTLA-4mAb(100μg/マウス)及び29P(250μg/kg)の組み合わせでKPマウスを3週間処置し、さらに1週間の処置停止後に採取した。肺のCD3/ポドプラニン/エンドムチン三重免疫蛍光染色の代表的な画像(上)及びCD3+細胞によって浸潤された間質性病変の数の定量化(下)。*p<0.05、**p<0.01。通常の一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定、処置あたりn=6~8の動物からのn=2~23の病変。スケールバー:100μm。
【0012】
配列の簡単な説明
本明細書及び配列表に示される配列番号1~46は、ペプチド及びプロドラッグのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示された生成物及び方法の異なる用途は、当技術分野における具体的なニーズに合わせて調整され得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の態様を記載することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0014】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかに別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤(an αvβ3-and/or αvβ5-integrin targeting agent)」への言及は、2つ又はそれより多くのこのような薬剤などを含む。
【0015】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記であるかを問わず、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
がんの処置
本発明は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤並びに少なくとも1つの免疫療法剤を投与することを含む、患者のがんを処置する方法を提供する。本発明はまた、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤並びに少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含む、患者のがんを処置する方法を提供する。本明細書におけるがんの処置への言及は、1種又は複数種の腫瘍の処置を含む。本発明の方法は、好ましくは、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤、少なくとも1つの免疫療法剤及び少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含み得る。
【0017】
本発明はまた、本明細書に記載されている処置の方法に対応し、本発明の方法に関して本明細書に記載されている任意の特徴を組み入れる医学的使用を提供する。したがって、本発明は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤を投与することを含む、患者のがんを処置する方法において使用するためのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を提供する。本発明はまた、少なくとも1つのαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を投与することを含む、患者のがんを処置する方法において使用するための少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤を提供する。本発明はまた、がんを処置するための医薬品の製造におけるαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の使用であって、処置は少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の投与をさらに含む使用を提供する。本発明はさらに、がんを処置するための医薬品の製造における少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の使用であって、処置はαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の投与をさらに含む使用を提供する。
【0018】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、任意の手段によって、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせてがんを処置するのに適した様式でαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを標的化する任意の作用物質であり得る。典型的には、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、がんを処置する上で少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の有効性を増強する。少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の非存在下でがんを処置することができないこと、又はがんを効果的に処置することができないことがあり得る。
【0019】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて使用される場合、がんからの患者の生存を増強し得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて使用される場合、腫瘍量を低下させ得るか、又は腫瘍病巣の数を低下させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤での処置に対してがんを増感させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、がんに対する治療効果のために必要とされる少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の用量を低下させ得る。したがって、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、がんの処置における少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の副作用及び/又は毒性を軽減させ得る。
【0020】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、本発明に従って組み合わせて、すなわち少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて使用される場合、抗がん又は抗腫瘍免疫応答を増加させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、がん又は腫瘍における免疫細胞、典型的には活性化された免疫細胞の浸潤を増加させ得る。したがって、がん又は腫瘍におけるこのような免疫細胞のレベルは、薬剤の投与によって増加され得る。免疫細胞には、典型的には、T細胞、好ましくはCD8+T細胞、典型的には、活性化されたCD8+T細胞が含まれる。したがって、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、腫瘍炎症を増加させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、免疫許容性の腫瘍微小環境を促進し得る。したがって、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、免疫細胞(T細胞など)浸潤を媒介する分子などの、がん又は腫瘍における免疫応答に関連する分子の上方制御を促進し得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、1つ又は複数のサイトカイン、ケモカイン及びそれらの受容体、例えば、CXCL13、CXCR5、CXCR3、CCL5、CCL9、CCL10、IFN-γ及びIL-18の1つ又は複数の上方制御を促進し得る。好ましくは、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、IL-18、IFN-γ及びCXCL9のうちの1つ、2つ又は3つ全てを上方制御し得、これらは、観察された効果に対して特に重要性を有するとして例において例示されている。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、上記のように分子を上方調節し得、T細胞、好ましくは活性化されたCD8+T細胞の浸潤も増加させ得る。
【0021】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、これらに加えて又はこれらに代えて、腫瘍灌流を増加させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、がん又は腫瘍における低酸素を低減させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、これらに加えて又はこれらに代えて、がん又は腫瘍中の血管密度を増加させ得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、これらに加えて又はこれらに代えて、血管コ-オプションを示すがん又は腫瘍などの非血管新生性がん又は腫瘍を含むがん又は腫瘍における血管新生を促進し得る。
【0022】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、これらに加えて又はこれらに代えて、がん又は腫瘍におけるPD-L1発現を上方制御し得る。
【0023】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の上記の機能的特性は、例に記載されている技術及びマウスモデルの使用によるなど、当業者によって容易に評価され得る。
【0024】
典型的には、インテグリン標的化剤は、変化したシグナル伝達及び/又は遺伝子発現を誘導するが、インテグリン接着機能に影響を及ぼさないことがあり得る。この薬剤は、他の受容体シグナル伝達経路を交差活性化させ得る。
【0025】
標的化剤は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン、並びに任意にさらなるインテグリンを標的とし得る。この薬剤は、αvβ1、α2β1、α3β1、αvβ6、αvβ8及び/又はαvβ1などの、がん又は腫瘍において発現又は過剰発現される1種又は複数種のさらなるインテグリンを結合し得る。
【0026】
典型的には、この薬剤は、αvβ3-インテグリンを標的とし、任意にαvβ5-インテグリンなどの他のインテグリンも標的とし得る。好ましくは、この薬剤は、他のインテグリンよりもαvβ3-インテグリンに対して(及び任意でαvβ5-インテグリンに対しても)選択的であり、αIIbβ3などの血小板インテグリンに対して高い結合親和性を示さない。いくつかの態様において、標的化剤はまた、インテグリンαvβ6、αvβ8及びαvβ1のうちの1種又は複数種を、典型的にはαvβ3と比較して低下した親和性で標的とし得る。
【0027】
この薬剤は、(5kDa未満の有機化合物、例えばSB-273005(CAS番号205678-31-5)、SB-267268(CAS番号205678-26-8)又はMK-0429(CAS番号227963-15-7))、ペプチド、タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドなどの)小分子リガンドなどの任意の種類の分子であり得る。
【0028】
典型的には、この薬剤は、小分子リガンド、ペプチド、タンパク質又は抗体である。このような薬剤は、典型的には、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンに直接特異的に結合するが、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを間接的に標的とし、上記の効果を与える薬剤も使用され得る。その標的(αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン)に優先的な又は高い親和性で結合するが、他の標的には実質的に結合しない、結合しない、又は低い親和性でのみ結合する場合に、薬剤は、その標的に特異的に結合する。例えば、その標的タンパク質に優先的な又は高い親和性で結合するが、他のヒト抗原には実質的に結合しない、結合しない、又は低い親和性でのみ結合する場合に、抗体は、標的タンパク質を「特異的に結合する」。
【0029】
抗体は、1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、より好ましくは1×10-8M以下又はより好ましくは5×10-9M以下のKdで結合すれば、優先的な又は高い親和性で結合する。抗体は、1×10-6M以上、より好ましくは1×10-5M以上、より好ましくは1×10-4M以上、より好ましくは1×10-3M以上、さらにより好ましくは1×10-2M以上のKdで結合すれば、低い親和性で結合する。
【0030】
抗体は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、CDR移植抗体又はヒト化抗体であり得る。抗体は、完全な状態の免疫グロブリン分子又はFab、F(ab’)又はFv断片などのその断片であり得る。
【0031】
好ましくは、薬剤はペプチドである。本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、天然の(遺伝的にコードされた)、非天然の、及び/又は化学的に修飾されたアミノ酸残基の鎖を包含することを意味する。アミノ酸残基は、当技術分野で一般的に知られているように、本明細書及び特許請求の範囲を通じて1文字又は3文字のコードのいずれかによって表される。
【0032】
本明細書に記載されるペプチドの配列におけるアミノ酸は、典型的には、当技術分野で公知のように一文字によって表され、小文字は、D立体配置での対応するアミノ酸(及び大文字はL配置)を表す。文字が続くアスタリスク記号は、対応するアミノ酸がN-メチル化されていることを意味する。
【0033】
本明細書に記載されているペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸長であり得る。本明細書に記載されているペプチドは、4~10、5~19、5~18、15~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8又は5~7アミノ酸の長さであり得る。
【0034】
本明細書に記載されているペプチドは、典型的には環化されている。「シクロ」又は「環状」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ペプチドが環化されていることを示すことを意図する。限定されないが、頭-尾環化、側鎖-側鎖、側鎖-末端、ジスルフィド架橋、又は骨格環化、好ましくは頭-尾環化を含む任意の種類の環化が適用され得る。いくつかの態様において、ペプチドは、頭-尾環化を含む、すなわち、アミノ末端アミノ基の原子とペプチドのカルボキシル末端との間に共有結合を有する。ペプチド配列が記載された括弧がその後に続く「c」の文字は、前記ペプチドが環状であることを意味する。インテグリン標的化環状ペプチドを含む環状ペプチドの設計原理は当技術分野で周知であり、例えば、Weide et al(Topics in Curr Chemistry 2007,272,1-40)及びKessler(ACIE 1982,21,512-523)に記載されている。
【0035】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを標的とする典型的な環状ペプチドは、配列モチーフRGDを含む。R及び/又はDは、L-又はD-アミノ酸であり得る。モチーフ中のアミノ酸は、標的化剤としてのペプチドの活性と適合する限り、修飾されていてもよく、例えば、修飾の導入は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを標的とする、環状ペプチドの能力を損なうべきではない。例えば、Arg中のアミノ酸のアルファ炭素からグアニジニウム官能基への脂肪族鎖の長さは変更され得る。
【0036】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを標的とするペプチドの能力は、様々な方法を用いて決定され得る。例えば、本明細書に記載されているペプチドの、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンを標的とする能力は、ELISA(例えば、Kapp et al.Sci Rep.2017;7:39805を参照)、細胞アッセイ又は力場顕微鏡法によって決定され得る。
【0037】
配列モチーフRGDを含む環状ペプチドは、典型的には、約5~約8アミノ酸長である。このような環状ペプチドは、5、6、7又は8アミノ酸長、例えば5~7、5~6、6~7又は6~8アミノ酸長であり得る。好ましくは、ペプチドはペンタペプチド又はヘキサペプチドである。ペプチドは、2つのβターンを含み得る。
【0038】
上記環状ペプチドは、少なくとも1つのN-アルキル化(例えば、N-メチル化)アミノ酸残基、例えば、少なくとも2つ又は少なくとも3つのN-アルキル化又はN-メチル化を含み得る。N-アルキル化(N-メチル化など)は、ペプチド立体構造を拘束させること及び/又は代謝安定性を増加させることを補助し得る。前記ペプチドは、4つ又は5つのN-アルキル化又はN-メチル化を含み得る。環状ペプチドは、上記の指定された数のN-アルキル化又はN-メチル化を含むヘキサペプチドであり得る。N-アルキル化又はN-メチル化は、(1,5)、(1,6)、(3,5)及び(5,6)からなる群から選択される位置に存在し得る。
【0039】
上記環状ペプチドは、少なくとも1つのD-アミノ酸を含み得る。環状ペプチドは、D立体配置の少なくとも1つのアミノ酸を含むN-メチル化環状ペンタペプチド又はヘキサペプチドであり得る。このようなペプチドは、D立体配置の少なくとも1つのアラニン残基、D立体配置の少なくとも1つのバリン残基又は少なくとも1つのフェニルアラニン残基を含み得る。D立体配置のアミノ酸は、ペプチド中の位置番号1又はβII’ターンのi+1位に存在し得る。
【0040】
上記環状ペプチドは、少なくとも1つのβ-アミノ酸又はγ-アミノ酸を含み得る。上記環状ペプチドは、好ましくはVal又はPheから選択される少なくとも1つの疎水性アミノ酸残基(Pro、Ile、Leu、Val、Phe、Trp、Tyr、Metなど)をさらに含み得る。
【0041】
ペプチドは、シレンギチド(c(fVRGD)又はアミノ酸がL若しくはD立体配置に変更されている、f及び/若しくはVが別の疎水性アミノ酸(Pro、Ile、Leu、Val、Phe、Trp、Tyr、Metなど)若しくはGlyに置換されている、若しくはペプチドが、指定されたN-Meに対する代替のN-アルキル化若しくは追加のN-アルキル化若しくはN-メチル化を含む誘導体若しくは類似体を含む、その誘導体若しくは類似体であり得る。典型的には、D-アミノ酸又はGlyは、βII’ターンのi+1位に提供される(Muller et al.Proteins:Structure,Function,and Genetics,1993,15,235-251)。
【0042】
ペプチドは、以下のペプチドの1つ若しくはその誘導体若しくは類似体:
a.*rGDA*AA(配列番号1);
b.*rGDAA*A(配列番号13);
c.*aRGDA*A(配列番号2);
d.rG*DA*AA(配列番号3);
e.rGDA*A*A(配列番号4);
f.*vRGDA*A(配列番号5);
g.*fRGDA*A(配列番号6);
h.*rGDA*AV(配列番号7);
i.*rGDA*AF(配列番号8);
j.LPPFRGDLA(配列番号17);
k.LPPGLRGD(配列番号18);
l.aAAAAA(配列番号19);又は
m.f*VRGD(配列番号20)
であり得、
*は、次のアミノ酸のN-メチル化を表し、Rはアルギニンであり、Gはグリシンであり、Dはアスパラギン酸であり、rはD立体配置のアルギニンであり、Aはアラニンであり、aはD立体配置のアラニンであり、Vはバリンであり、vはD立体配置のバリンであり、Fはフェニルアラニンであり、fはD立体配置のフェニルアラニンである。
【0043】
上述のように、本発明のペプチドは、典型的には環化されている。したがって、本発明はまた、配列番号9~12、24~31及び36~46の環状ペプチドに関する。例として、配列番号9~12のペプチドの非環化バージョンは、配列番号32~35としても記載される。
【0044】
a.及びc.~g.のペプチドは、国際公開第2019058374号にも記載されており、特にプロドラッグとして製剤化された場合、高い親和性、高い選択性及び代謝安定性、高い安定性及び経口投与への適合性などの改善された具体的特性を示すことが示されている。好ましいペプチドは、所定の位置にD-アミノ酸を含み、Phe又はValを含むように最適化された。特に好ましいペプチドは、ペプチドf.(配列番号5)である。
【0045】
a.~h.の上記ペプチドの誘導体又は類似体には、代替のD-アミノ酸若しくはGlyが1位に含まれる、及び/又は1つ若しくは複数のアラニン残基が他のアミノ酸に、典型的には他の非荷電アミノ酸、嵩高い側鎖を有さないアミノ酸(例えば、Ile、Leu、Val、Met)及び/若しくは非天然アミノ酸に置換されているペプチドが含まれる。誘導体又は類似体は、指定されたN-Meに対する代替的なN-アルキル化又は追加のN-アルキル化若しくはN-メチル化を含み得る。a.~f.のペプチドがPhe又はD-Pheを含む場合、これはTyr又はD-Tyrに置換され得る。誘導体又は類似体は、典型的には、(Muller et al.Proteins:Structure,Function,and Genetics 1993,15,235-251に記載されているように)βII’ターンのi+1位又はペプチド中の1位にD-アミノ酸又はGlyを含む。
【0046】
いずれの上記ペプチドの誘導体又は類似体も、典型的には、標的化剤としてのペプチドの活性を保存又は増強し、当業者によって、当技術分野で公知である、及び例に記載されている方法を用いて活性について検証され得る。
【0047】
いずれの上記ペプチドのペプチド模倣物質も本明細書に記載されている。ペプチド模倣物質の設計のための原理は、当技術分野で周知である。例えば、Kapp et al.Sci Rep.:2017 7:39805,Neubauer et al.J Med Chem 2014,57,3410及びIntervoll et al.Bioorg Med Chem Let 2006,16,6190-93に記載されているインテグリン結合剤の文脈に含める。
【0048】
上記のペプチド及びペプチド模倣物質の塩、並びにペプチド及びペプチド模倣物質の類似体及び化学的誘導体も本明細書に記載されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、カルボキシル基の塩と、ペプチド分子のアミノ基又はグアニド基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当技術分野で公知の手段によって形成され得、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄又は亜鉛塩など、及び、例えばトリエタノールアミン、ピペリジン、プロカインなどのアミンと形成された塩などの、有機塩基との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、酢酸又はシュウ酸などの鉱酸との塩が挙げられる。塩は、ここでは、カルシウム鉱物のヒドロゲル形成及び/又はミネラル化を増強するためにペプチド溶液に添加されるイオン性成分も記載する。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの遊離アミノ基と形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離のカルボキシル基と形成されたものが挙げられる。
【0050】
ペプチドは、組換え法及び合成法を含む、当技術分野で公知の任意の方法によって生産され得る。合成方法としては、固相合成、部分固相合成、断片縮合又は古典的溶液合成が挙げられる。固相ペプチド合成手順は当業者に周知であり、例えば、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Polypeptide Syntheses(2nd Ed.,Pierce Chemical Company,1984),Biron&Kessler(J.Org.Chem.2005,70,5183-5189)及びChatterjee et al(Nature protocols,2012,7(3),432-444)によって記載されている。いくつかの態様において、合成ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィーによって精製される(Creighton T.(1983)Proteins,structures and molecular principles.WH Freeman and Co.N.Y.)。
【0051】
ペプチドはまた、プロドラッグの形態で提供され得、又はコンジュゲート若しくは融合タンパク質として提供される。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、対象において1つ又は複数の代謝過程を介して活性を有する状態になる活性を有する薬剤の不活性な又は比較的活性の低い形態を指す。本明細書に開示されるペプチドのプロドラッグは、第一級アルコールのエステル及び/又はカルバマートを含めるためのアミノ酸及び/又はアミノ酸残基の修飾を含み得る。いくつかの態様において及び一般に、アミン部分を有するアミノ側鎖は、-NHCOR部分を有するカルバマートに修飾されるのに対して、カルボキシラート部分を有するアミノ側鎖は、-COR部分を有するエステルに修飾される。
【0052】
上記ペプチドのプロドラッグは、正味の中性電荷を有し得、好ましくは生理的pHで電荷を有さない。プロドラッグは、ペプチドの正味電荷を低下させる少なくとも1つの部分を含み得る。例えば、ペプチド(N-メチル化環状ヘキサペプチドなど)は、ペプチド中のアミノ酸の電荷を遮蔽する少なくとも1つの分子に連結され得る。ペプチドは、ペプチドの配列に直接又はスペーサー若しくはリンカーを介して結合された透過性増強部分を含み得る。スペーサー又はリンカーは、プロテアーゼ特異的切断部位を含み得る。
【0053】
プロドラッグは、(透過性増強部分としても記載される)以下の部分又は部分の群:
(i)-CO2R部分、Rはアルキルである;
(ii)任意でアルギニン残基に連結されてもよいペンタ、ヘキシル若しくはヘプタオキシカルボニル部分;
(iii)メチルエステル部分(OMe)若しくは他のアルキルエステル部分、例えばAspのメチル若しくはアルキルエステル;
(iv)ペンタ、ヘキシル若しくはヘプタオキシカルボニル及びエステル(OMe)部分;並びに/又は
(v)2つのペンタ、ヘキシル若しくはヘプタオキシカルボニル部分、例えば2つのヘキシルオキシカルボニル部分;
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0054】
少なくとも1つの-COR部分は、A.Schumacher-Klinger et al.(Molecular Pharmaceutics 2018,15.3468-3477)によって記載されたRGDシクロヘキサペプチドなどの、ペプチド、好ましくはN-メチル化環状ヘキサペプチドの少なくとも1つのアミノ酸側鎖(アルギニン側鎖など)の窒素原子に共有結合され得る。
【0055】
プロドラッグは、部分:
【化1】

を含み得、式中、破線は、部分とN-メチル化環状ヘキサペプチドなどのペプチドの骨格との間の共有結合を示す。いくつかの態様によれば、破線は、部分と、N-メチル化環状ヘキサペプチドなどのペプチドのα-炭素との間の共有結合を表す。
【0056】
上記部分のRは、第一級アルキル基であり得る。Rは、n-ヘキシル又はn-C1429(ミリスチル)などの任意のアルキル基であり得る。
【0057】
透過性増強部分は、ペンタ、ヘキシル又はヘプタオキシカルボニル(Hoc)部分などのオキシカルボニル部分であり得る。全ての構造中のHocは、構造:
【化2】

を有するヘキシルオキシカルボニル残基を示す。
【0058】
ペプチドのArgのグアニジン基は、1つのHoc又は2つのHoc部分で遮蔽され得る。
【0059】
別のプロドラッグ修飾では、ペプチドは、Aspのメチル又はアルキルエステルなど、メチルエステル部分(OMe)又はその他のアルキルエステル部分を含み得る。ペプチドは、式CHCOOMeを有する少なくとも1つの側鎖を含み得る。
【0060】
特定の局面では、ペプチドのプロドラッグは、式:c(*vR(Hoc)GD(OMe)A*A)(配列番号9、(本明細書では29Pとも記載される))、c(*aR(Hoc)GD(OMe)A*A)(配列番号10)、c(*r(Hoc)GD(OMe)A*AA)(配列番号11)c(r(Hoc)GD(OMe)A*A*A)(配列番号12)、*fR(Hoc)GD(OMe)A*A(配列番号14)、LPPFR(Hoc)GDLA(配列番号15)、LPPGLR(Hoc)GD(配列番号16)、*vR(Hoc)GD(OMe)A*A(配列番号21)、a*AA(Hoc)AAA(配列番号22)又はf*VR(Hoc)GD(配列番号23)を有し得る。
【0061】
好ましいαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化ペプチドの提供に関するさらなる情報は、国際公開第2019058374号及びWeinmuller et al(Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,16405-16409)に提供されており、その開示(文献に記載されている全ての設計されたペプチドを含む)は参照により本明細書に組み入れられる。
【0062】
免疫療法
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、典型的には、少なくとも1つの免疫療法剤と、すなわち免疫療法と組み合わせて使用される。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の、少なくとも1つの免疫療法剤と組み合わせた使用は、典型的には、免疫療法剤の活性を増強する。免疫療法剤又は免疫療法は、典型的には抗がん又は抗腫瘍応答によってがんを処置することができる任意の免疫療法剤又は免疫療法であり得る。好ましくは、免疫療法剤は、エフェクターT細胞(典型的にはCD8+T細胞)の抗がん又は抗腫瘍応答を増強することによってがんを処置する。エフェクターT細胞活性化は、通常、MHC複合体によって提示される抗原性ペプチドを認識するT細胞受容体によって引き金が引かれる。次いで、達成される活性化の種類及びレベルは、エフェクターT細胞応答を刺激するシグナルとエフェクターT細胞応答を阻害するシグナルとの間のバランスによって決定される。
【0063】
「免疫系チェックポイント」という用語は、本明細書では、エフェクターT細胞応答の阻害に有利になるようにバランスを変化させる任意の分子的相互作用を指すために使用される。すなわち、それが起こるとエフェクターT細胞の活性化を負に調節する分子的相互作用である。このような相互作用は、リガンドと、阻害性シグナルをエフェクターT細胞に伝達する細胞表面受容体との間の相互作用など、直接的であり得る。又は、このような相互作用は、リガンドと相互作用の遮断若しくは阻害がなければ活性化シグナルをエフェクターT細胞に伝達する細胞表面受容体との間の相互作用の遮断若しくは阻害、又は阻害性分子若しくは細胞の上方制御若しくはエフェクターT細胞によって必要とされる代謝産物の酵素による枯渇を促進する相互作用、又はこれらの任意の組み合わせなど、間接的であり得る。
【0064】
免疫系チェックポイントの例には、
a)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)とその基質との相互作用;
b)PD1とPDL1及び/又はPD1とPDL2との間の相互作用;
c)CTLA4とCD86及び/又はCTLA4とCD80との間の相互作用;
d)B7-H3及び/又はB7-H4とそれらのそれぞれのリガンドとの間の相互作用;
e)HVEMとBTLAとの間の相互作用;
f)GAL9とTIM3との相互作用;
g)MHCクラスI又はIIとLAG3との間の相互作用;及び
h)MHCクラスI又はIIとKIRとの間の相互作用
が含まれる。
【0065】
免疫療法剤は、任意の免疫系チェックポイント阻害剤、例えば上記チェックポイントのいずれもの任意の阻害剤であり得る。本発明において好ましいチェックポイントは、PD1とそのリガンドPD-L1及びPD-L2のいずれかとの間の相互作用である。PD1は、エフェクターT細胞上に発現される。いずれかのリガンドとの結合は、活性化を下方制御するシグナルをもたらす。リガンドは、いくつかの腫瘍によって発現される。PD-L1は、特に、黒色腫、乳房、膀胱、結腸(colon)、卵巣、子宮及び肉腫を含む多くの固形腫瘍によって発現される。したがって、これらの腫瘍は、T細胞上の阻害性PD1受容体の活性化を通じて、免疫によって媒介される抗腫瘍効果を下方制御し得る。PD1とそのリガンドの一方又は両方との間の相互作用を遮断することによって、免疫応答のチェックポイントが除去され、増強された抗腫瘍T細胞応答をもたらし得る。したがって、PD1及びそのリガンドは、好ましくは本発明の方法において免疫療法剤によって標的とされ得る免疫系チェックポイントの成分の例である。
【0066】
本発明における別の好ましいチェックポイントは、T細胞受容体CTLA-4とそのリガンドであるB7タンパク質(B7-1及びB7-2)との間の相互作用である。CTLA-4は通常、初期活性化後にT細胞表面上で上方制御され、リガンド結合はさらなる/継続する活性化を阻害するシグナルをもたらす。CTLA-4は、同じくT細胞表面上に発現されるが活性化を上方制御する受容体CD28と、B7タンパク質への結合について競合する。したがって、B7タンパク質とのCTLA-4相互作用を遮断するが、B7タンパク質とのCD28相互作用を遮断しないことによって、免疫応答の正常なチェックポイントの1つが除去され、増強された抗腫瘍T細胞応答をもたらし得る。したがって、CTLA4及びそのリガンドは、好ましくは本発明の方法において標的とされ得る免疫系チェックポイントの成分の例である。
【0067】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、2つ以上の免疫系チェックポイントの阻害剤と、例えば、PD1とそのリガンドとの間の相互作用の阻害剤及びCTLA4とそのリガンドとの間の相互作用の阻害剤と組み合わせて使用され得る。
【0068】
免疫療法剤は、チェックポイントの成分に結合するか、又はさもなければチェックポイントの成分を修飾することによってチェックポイントを遮断又は阻害し、それによってチェックポイントの活性を遮断又は阻害し得る。薬剤は、チェックポイントの成分に特異的に結合する抗体若しくは小分子阻害剤又は他の結合剤であり得る。関心対象の標的を特異的に結合する抗体及び他の結合剤のタイプの一般的な結合特性及び例は上に提供されており、チェックポイント成分に結合する抗体及び他の結合剤に対しても適用され得る。他の結合剤には、チェックポイントの成分を結合するCAR T細胞が含まれ得る。例は、PD-L1及び/又はPD-L2に結合するPD1の抗体、CAR T細胞若しくは小分子阻害剤(抗PD1又は抗PD-L1抗体など)、又はB7-1及び/若しくはB7-2に結合するCTLA4の抗体、CAR T細胞若しくは小分子阻害剤(抗CTLA4抗体など)である。B7タンパク質とのCTLA-4相互作用を遮断又は阻害し、本発明に従って組み合わせて使用され得る好ましい抗体には、イピリムマブ(ipilumumab)、トレメリムマブ又は国際公開第2014/207063号に開示されている抗体のいずれもが含まれる。他の分子としては、ポリペプチド又は可溶性変異体CD86ポリペプチドが挙げられる。PD-L1とのPD1相互作用を遮断又は阻害し、本発明に従って組み合わせて使用され得る好ましい抗体又は他の薬剤としては、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ラムブロリズマブ、セミプリマブ、ピジルズマブ、トリパリマブ及びAMP-224が挙げられる。抗PD-L1抗体としては、MEDI-4736及びMPDL3280Aが挙げられる。
【0069】
上記の免疫療法剤は、本明細書に記載されている任意のαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤、好ましくは上記の配列RGDを含む約5~約8アミノ酸長の環状ペプチド、例えばシレンギチド(cilengetide)又は配列番号1~23のペプチド及びプロドラッグのいずれも並びにそれらの誘導体及び類似体、及びそれらのペプチド模倣物質、特に好ましくは配列番号5のペプチド又は配列番号9のプロドラッグ又はそれらのいずれかの誘導体、類似体又はペプチド模倣物質との組み合わせについて記載されている。上記の免疫療法剤は、上記のαvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤並びに以下に記載される任意の化学療法剤、特に好ましくはシスプラチン、カルボプラチン、ペメトレキセド又はそれらのいずれかの誘導体との組み合わせについてさらに記載される。
【0070】
化学療法
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、これに加えて又はこれに代えて、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて使用され得る。好ましくは、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、少なくとも1つの化学療法剤及び少なくとも1つの免疫療法剤と組み合わせて使用され得る。αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせた使用は、典型的には、化学療法剤の活性を増強する。
【0071】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、任意の化学療法剤、例えば関心対象のがんの処置において有用な任意の化学療法剤と組み合わせて使用され得る。当業者は、特定の種類のがんの処置に適した化学療法剤を選択することができる。抗がん剤などの化学療法剤には、シスプラチン(cis-DDP)及びカルボプラチンなどの白金配位錯体、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)及びクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタードを含むアルキル化剤;エチレンイミン及びヘキサメチルメラミンなどのメチルメラミン、チオテパ;ブスルファンなどのアルキルスルホナート;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)などのニトロソ尿素;並びにデカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾール-カルボキサミド)などのトリアゼン;ゲムシタビン及びメトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体、ペメトレキセドを含む代謝拮抗薬;フルオロウラシル(5-フルオロウラシル;5-FU)、フロクスウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)及びシタラビン(シトシンアラビノシド)などのピリミジン類似体;並びにメルカプトプリン(6-メルカプトプリン;6MP)などのプリン類似体及び関連する阻害剤、チオグアニン(6-チオグアニン;TG)及びペントスタチン(2’-デオキシコホルマイシン);ビンブラスチン(VLB)及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイドを含む天然産物;エトポシド及びテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン(マイトマイシンC)などの抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;並びにインターフェロンアルフェノームなどの生物学的応答修飾因子;ミトキサントロン及びアントラサイクリンなどのアントラセンジオンを含む種々の薬剤;ヒドロキシ尿素などの置換された尿素;プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;並びにミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド等の副腎皮質抑制剤;タキソール及び類似体/誘導体;並びにフルタミド及びタモキシフェンなどのホルモンアゴニスト/アンタゴニストが含まれる。
【0072】
好ましい化学療法剤には、アルキル化剤、特にシスプラチン、カルボプラチン及びこれらの誘導体、並びにゲムシタビン及びペメトレキセドなどの代謝拮抗剤、並びにシスプラチン、カルボプラチン又はこれらの誘導体及びペメトレキセド又はその誘導体などのこれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0073】
いくつかの態様において、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、免疫療法剤のさらなる使用なしに、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて使用される。このような態様において、少なくとも1つの化学療法剤は、アルキル化剤、特にシスプラチン、カルボプラチン及びこれらの誘導体であり得、又はペメトレキセド若しくはその誘導体、又はそれらのいずれかの組み合わせであり得、方法は、ゲムシタビンの使用を含まないか、又は任意の他の化学療法剤の使用を含まない。このような態様において、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤はさらに、上記a.~m.のペプチド又はその環化されたバージョン、好ましくはf.のペプチド又はその環化されたバージョンであり得る。このような態様において、これに加えて又はこれに代えて、がんは、以下で論じられるように、血管コ-オプションを示すがんなどの非血管新生性がんであり得る。がんは、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の非存在下で化学療法剤に対して難治性であり得る。がんは、以下で論述されるようにNSCLCであり得る。
【0074】
がん
がんは、任意のがん又は腫瘍であり得る。がん又は腫瘍は、免疫療法及び/又は化学療法による処置に関して以前に記載された任意のがん又は腫瘍であり得る。
【0075】
がん又は腫瘍は、典型的には、固形がん又は腫瘍である。固形がん又は腫瘍は、例えば、乳房、膵臓(膵管など)、膀胱、腎臓、肝臓、結腸、肺、前立腺、頭部及び頸部、卵巣、子宮、扁平上皮皮膚、中皮腫、肉腫又は黒色腫であり得る。がんは、ホジキンリンパ腫などの血液がんであり得る。
【0076】
がん又は腫瘍は、上記の免疫療法剤及び/又は化学療法剤による処置に対して、不十分に応答性、非応答性又は難治性であり得る。がん又は腫瘍は、PD-1、CTLA-4又はPD-L1の、リガンドとの相互作用を標的とするものなど、上記のチェックポイント阻害剤による処置に対して不十分に応答性、非応答性又は難治性であり得る。がん又は腫瘍は、治療用量での副作用及び/又は毒性に基づいて、上記の免疫療法剤及び/又は化学療法剤での処置に適していないと以前に記載されたものであり得る。がん又は腫瘍は、これに加えて又はこれに代えて、抗血管新生剤による処置に対して不十分に応答性、非応答性又は難治性であり得る。
【0077】
がん又は腫瘍は、非血管新生性であり得る。したがって、がん又は腫瘍は、不十分な血管新生化を有し得る。がん又は腫瘍は、新血管新生化を示さないことがあり得る。がん又は腫瘍は、低酸素を示し得る。がん又は腫瘍は、異常な灌流を有し得る。がん又は腫瘍は、血管コ-オプションを示し得る。
【0078】
がん又は腫瘍は、好ましくは、肺がん、最も好ましくはNSCLCである。NSCLCは、ステージIII又はIV NSCLCなどの進行型NSCLCであり得る。がんは、小細胞肺がんであり得る。肺がんは、切除不能であり得る。肺がんは、非血管新生性であり得、及び/又は血管コ-オプションを示し得る。肺がんは、肺胞及び/又は間質性腫瘍の成長を含み得る。肺がんは、原発性肺がん、又は乳がん若しくは膵がんなどの、肺に広がった任意の続発性がんであり得る。
【0079】
患者は、典型的にはヒトである。しかしながら、患者は、ウマ、ウシ、ヒツジ、魚、ニワトリ若しくはブタなどの商業的に飼育された動物、マウス若しくはラットなどの実験動物、又はモルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ若しくはイヌなどのペットなどの別の哺乳動物であり得る。
【0080】
患者は、以前にがんと診断されたことがあり得、又はがんの1種若しくは複数種の症候を示し得る。患者は、本明細書に記載されている免疫療法及び/又は化学療法で以前に処置されたことがあり得、前記処置に対して不十分に応答性又は非応答性であると判定されたことがあり得る。患者は、非血管新生性である及び/又は血管コ-オプションを示すがんを有すると判定されたことがあり得る。
【0081】
医薬組成物
本明細書に記載されている薬剤は、医薬組成物に製剤化され得る。上記の方法及び医学的使用は、典型的には、医薬組成物の投与を含む。組成物は、治療活性成分に加えて、薬学的に許容される、賦形剤、担体、希釈剤、緩衝剤、安定剤又は当業者に周知の他の材料を含み得る。このような材料は非毒性であるべきであり、有効成分の有効性を妨げるべきではない。薬学的担体又は希釈剤は、例えば、等張溶液であり得る。
【0082】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府若しくは州政府などの規制機関によって承認されていること、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用に関して米国薬局方若しくは他の一般に認識されている薬局方に掲載されていることを意味する。「担体」という用語は、それとともに治療化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルを指す。このような薬学的担体は、無菌の液体、例えば水及び石油、動物、植物又は合成起源の油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒であり得る。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はアセタート、シトラート若しくはホスファートなどのpH緩衝剤も含有することができる。アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの、等張性を調整するための薬剤も想定される。
【0083】
担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮膚又は皮下、経鼻、筋肉内及び腹腔内経路に依存し得る。適切な薬学的担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、対象への適切な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体とともに、好ましくは実質的に精製された形態で、治療有効量の本発明のペプチドを含有する。適切な組成物及び投与方法の例は、Esseku and Adeyeye(2011)及びVan den Mooter G.(2006)に提供されている。
【0084】
例えば、固体経口形態は、活性物質とともに、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ又はジャガイモデンプン;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコール;結合剤;例えば、デンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギナート又はデンプングリコール酸ナトリウム;発泡混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリルサルファート;並びに、一般に、薬学的製剤中で使用される非毒性及び薬理学的に不活性な物質を含有し得る。このような薬学的製調製物は、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣又はフィルムコーティングプロセスによって公知の様式で製造され得る。
【0085】
経口製剤は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、通常使用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤又は散剤の形態をとり、10%~95%、好ましくは25%~70%の活性成分を含有する。医薬組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥された材料は、投与前に再構成され得る、例えば、懸濁液。再構成は、好ましくは緩衝液中で行われる。
【0086】
個体への経口投与のためのカプセル剤、錠剤及び丸剤は、例えば、Eudragit「S」、Eudragit「L」、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コーティングを備え得る。
【0087】
経口投与のための液体分散液は、シロップ、エマルジョン又は懸濁液であり得る。シロップは、担体として、例えば、サッカロース又はグリセリン及び/若しくはマンニトール及び/若しくはソルビトールとサッカロースを含有し得る。
【0088】
懸濁液及びエマルジョンは、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを含有し得る。筋肉内注射用の懸濁液又は溶液は、活性物質とともに、薬学的に許容される担体、例えば無菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、及び所望であれば適切な量の塩酸リドカインを含有し得る。
【0089】
静脈内投与又は注入のための溶液は、担体として、例えば無菌水を含有し得、又は好ましくは無菌水性等張生理食塩水溶液の形態であり得る。
【0090】
坐剤の場合、従来の結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含み得、このような坐剤は、0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲で活性成分を含有する混合物から形成され得る。
【0091】
医薬組成物(経口投与用組成物など)は、吸収促進剤を含み得る。医薬組成物は、脂質を含み得る。医薬組成物は、自己ナノ乳化薬物送達系(SNEDDS)又はPro-NanoLiposphere(PNL)を含み得る。本明細書で使用されるSNEDDS(自己ナノ乳化薬物送達系)という用語は、透明なナノエマルジョンを自発的に形成する、油、界面活性剤、薬物及び/又は共溶媒から構成される無水均質液体混合物を指す。本明細書で使用されるPNL(Pro-NanoLiposphere)という用語は、薬物、トリグリセリド、リン脂質、界面活を基礎とする送達系を指す。
【0092】
投与及び用量
本明細書に記載されている薬剤又は前記薬剤を含む医薬組成物は、がんを処置するために投与される。投与は、典型的には「治療有効量」でされ、これは、個体に利益を示すのに十分であり、例えば、1つ若しくは複数の症候を改善するための、生存を強化するための、寛解を誘導若しくは延長するための、又は再発(relapse)若しくは再発(recurrence)を遅延させるための有効量である。
【0093】
薬剤又は医薬組成物は、経口、静脈内、皮膚若しくは皮下、経鼻、筋肉内又は腹腔内経路を含む任意の経路によって投与され得る。
【0094】
各薬剤の用量は、様々なパラメータに従って、特に使用される物質;処置されるべき個体の年齢、性別、体重及び症状;投与経路;並びに必要とされるレジメンに従って決定され得る。医師は、任意の特定の個体に対して、必要とされる投与経路及び投与量を決定することができるであろう。特定の障害又は症状の処置において有効である薬剤の量は、障害又は症状の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、最適な投与量範囲を特定するのを補助するために、任意で、インビトロアッセイが使用され得る。製剤において使用されるべき正確な用量は、疾患又は障害の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。本明細書に記載されている薬剤の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、対象化合物についてIC50(50%阻害を提供する濃度)及びLD50(試験された動物の50%に死を引き起こす致死量)を決定することによって決定され得る。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を定める上で使用され得る。
【0095】
本明細書に記載される薬剤の典型的な1日用量は、薬剤の性質及び上述の条件に応じて、体重1kg当たり約0.1~50mgである。ペプチドを含む医薬組成物の投与に関して当技術分野で記載されている一般用量量は、約0.1μg/kg~約20mg/kg体重の範囲である。活性成分の量は、約10~5000μg/kgの範囲であり得る。用量は、単回用量として提供され得、又は例えば規則的な間隔で服用される複数回用量として提供され得る。投与量は、例えば、毎週、隔週、毎月又は隔月のレジメンで投与され得る。上記の技術及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th Edition,2000,pub.Lippincott,Williams&Wilkinsに見出すことができる。
【0096】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤は、同時に、別々に、又は逐次に投与され得る。各薬剤は、同一の又は異なる投与経路によって投与され得る。各薬剤は、薬剤の投与を含む処置の異なる段階で投与され得る。
【0097】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤の投与は、治療有効性のために必要とされる少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の用量の低下を可能にし得、したがって、より高用量でのこのような薬剤の副作用及び/又は毒性を有益に低下させ得る。したがって、本発明はまた、がんの処置のために必要とされる、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の用量を低下させる方法であって、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤を前記少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。この方法は、第1の用量の少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤を上記の組み合わせで投与し、次いで、第2のより低い用量の少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤を上記の組み合わせで投与する工程と、第2のより低い用量が治療有効性を有することを決定する工程と、任意で、第2のより低い用量が副作用及び/又は毒性が低下していることをさらに決定する工程とを含み得る。
【0098】
本発明の方法において、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、上記のこのような薬剤の機能的特性の1つ又は複数を誘導するのに、並びに少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の有効性を増強するのに有効な用量で投与される。用量は、典型的には、インテグリン接着を阻害することなくαvβ3-及び/又はαvβ5インテグリンシグナル伝達を変化させるのに有効である。
【0099】
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤が、上記の配列RGDを含む約5~約8アミノ酸長の環状ペプチド、例えばシレンギチド(cilengetide)、又は配列番号1~23のペプチド及びプロドラッグ及びこれらの誘導体及び類似体のいずれか、並びにこれらのペプチド模倣物質である場合には、ペプチドは、対象体重の約0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲の用量で投与され得る。ペプチドは、約0.01、0.05、0.1、0.5、0.7、1又は2mg/対象体重のkg~約0.05、0.1、0.5、0.7、1、2、5、10、15、20、50、100、250又は500mg/対象体重のkgの範囲の用量で投与され得る。ペプチドは、0.1、1、10、20、30、50、100、200、400、500、700、900又は1000ng/対象体重のkg~約100、200、400、500、700、900、1000、1200、1400、1700又は2000ng/対象体重のkgの範囲の用量で投与され得る。ペプチドは、約20ng/対象体重のkg~約100ng/対象体重のkgの範囲の用量で投与され得る。ペプチドは、約50μg/kg~約400μg/kg、例えば約50μg/kg~約300μg/kg、約100μg/kg~約300μg/kg又は約100μg/kg~約250μg/kgのマウス用量量に対応するヒト用量量で投与され得る。50μg/kg未満又は400μg/kg超のヒト用量量、例えば約10μg/kg~約700μg/kgの用量量も投与され得る。
【0100】
ペプチドは、約0.001mg/対象体重のkg~約500mg/対象体重のkg、例えば、約0.1mg/対象体重のkg~約500mg/対象体重のkgの範囲の用量で経口投与され得る。
【0101】
組み合わせ
αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤は、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤と組み合わせて、本発明の方法及び医学的使用において投与される。関連する局面において、本発明は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤の組み合わせを、製品自体として提供する。上記の組み合わせは、αvβ3-及び/若しくはαvβ5-インテグリン標的化剤と、少なくとも1つの免疫療法剤及び/若しくは少なくとも1つの化学療法剤とを含む組成物、又は異なる用量形態のインテグリン標的化剤と、少なくとも1つの免疫療法剤及び/若しくは少なくとも1つの化学療法剤とを含む製品の形態を取り得る。組み合わせは、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリンインテグリン標的化剤と、少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤とを、任意で、本発明の方法における投与のための説明書と一緒に含むキットであり得る。少なくとも1つの免疫療法剤及び/又は少なくとも1つの化学療法剤は、αvβ3-及び/又はαvβ5-インテグリン標的化剤と同時に、別々に、又は逐次に投与するためのものであり得る。
【0102】

以下の例は、本発明を例示するために提供される。
【0103】
材料及び方法
非小細胞肺がんのコンディショナルマウスモデル
KrasLSL-G12D/+;Trp53flox/flox(KPと呼ばれる)を使用して、以前に記載されたように、Ad-Cre(Creリコンビナーゼアデノウイルス)5×10PFUを投与することによって肺腺がんを作製した(DuPage et al,2009;Cortez-Retamozo et al,2013;Pfirsche et al,2016)。アデノウイルス感染の56日後に、異なる組み合わせ:週に1回、29Pと組み合わせて又は組み合わせずに、シスプラチン6mg/Kg(Cis)又はシスプラチン3mg/Kg(Cis);週に2回α-PD-1 200μg/マウス及びα-CTLA-4 100μg/マウス、又はシスプラチン/29Pと免疫療法の組み合わせ;週に2回抗VEGFR2(DC101)600μg/マウス、又は週に2回組み合わせDC101/29Pを使用してマウスを処置した。
【0104】
異種移植モデル
C57/BL6Jの側腹部に0.5×10個のルイス肺がん(LLC)細胞を皮下注射して、腫瘍血管新生を示すLLC皮下腫瘍を作製した。週に3回、ノギスを使用することによって腫瘍成長を測定し、以下の式を用いて腫瘍体積を計算した:腫瘍体積=長さ×幅×幅×0.52。腫瘍が50mmに達したら、LLC腫瘍を有するマウスをアイソタイプ又はDC101 800μg/マウスのいずれかで週に2回処置した。
【0105】
処置
Barts Hospitalの薬局から、シスプラチン(100mg/100ml、Teva)、ベラパミル(40mg/5ml Zolvera、Rosemant)を購入し、3ヶ月以内に使用した。Horst Kessler Labから29:c(*vRGDA*A)及びそのプロドラッグ29P、c(*vR(Hoc)GD(OMe)A*A)を購入した。PD-1mAb(クローン-29F.1A12)(Bio X Cell)200μg/マウスを週に2回、3週間にわたって投与した。
【0106】
CTLA-4mAb(クローン-9D9)(Bio X Cell)100μg/マウスを週に2回、3週間にわたって投与した。ラットIgG2aアイソタイプ対照、抗トリニトロフェノール(クローン2A3)(Bio X Cell)100μg/マウスを週に2回、3週間投与した。シスプラチン単独処置を週に1回投与した。シスプラチンと組み合わせた場合には週に1回、又は免疫療法、中和抗体若しくはDC101と組み合わせた場合には週に2回、29Pを投与した。多剤併用処置については、29P及びシスプラチンを週に1回同じ日に与え、29P/シスプラチン投与の2日後及び6日後に、週に2回、免疫療法を与えた。
【0107】
細胞株
肺腺がん細胞株KP53 F1は、C57BL/6KPマウスの肺腫瘍に由来し、UCL Cancer Centre(University College London、UK)のDr.SA.Quezadaからいただいた。
【0108】
A549及びLLC細胞をATCCから購入した。マウス肺内皮細胞(EC)を得て、前述のように培養した(34)。
【0109】
細胞生存アッセイ:
製造者の説明書に従ってCellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Reagent(Promega #G3582)を使用して、A549又はKP細胞の生存を分析した。簡潔には、1000個の細胞を96ウェルプレーティングに播種した。翌日、細胞を処理し、処理の72時間後に溶液試薬を添加した。490nmの波長を用いてプレートを読み取った。
【0110】
VEGFR2不活性化
VEGFR2不活性化のために、週に2回、3週間にわたってKPマウスに抗VEGFR2(クローンDC101、Bio X Cell)を投与した。
【0111】
インビボでのCD8+細胞枯渇
CD8+細胞を枯渇させるために、処置の最初の日の後及び実験の終わりまで、週に2回、抗CD8αmAb(クローンYTS169.4、BioXcell)を、KPマウスに腹腔内投与した。
【0112】
インビボでのインターフェロン-γ、CXCL9及びIL-18の不活性化
IFN-γを枯渇させるために、抗IFN-γmAb(XMG1.2、Bio X Cell)を、処置の最初の日の後及び実験の終わりまで、週に2回、KPマウスに腹腔内投与した。CXCL9を枯渇させるために、抗CXCL9mAb(MIG-2F5.5、Bio X Cell)を、処置の最初の日の後及び実験の終わりまで、週に2回、KPマウスに腹腔内投与した。IL-18を枯渇させるために、抗IL-18mAb(クローンYlGIF73-1G7、Bio X Cell)を、処置の最初の日の後及び実験の終わりまで、週に2回、KPマウスに腹腔内投与した。
【0113】
免疫組織化学及び免疫蛍光
組織をホルマリン中で24時間固定し、70%エタノールに移した。沸騰している10mMクエン酸緩衝液pH6.0中で組織をパラフィン包埋し、切片にし、脱ろうし、マスキングを除去した。PBS中で切片を3回洗浄し、5%正常ヤギ血清で1時間ブロックし、一次抗体:ラットモノクローナルエンドムチン(Santa Cruz-sc-65495)、ウサギポリクローナル抗Glut1(Abcam-ab652)、ウサギポリクローナルカルボニックアンヒドラーゼIX(Novus Biologicals-NB100-417)、マウスモノクローナル抗α-平滑筋アクチンCy3コンジュゲート(Sigma-Aldrich-C6198)、ウサギモノクローナルKi67(Abcam-ab16667)、ウサギポリクローナル抗CD3(DAKO、A045201-2)、ラットモノクローナル抗CD3(BioRad IBL-3/16)、ウサギポリクローナル抗CD8(abcam、ab203035)、ラットモノクローナル抗CD8a(ThermoFisher、4SM15)、ラットモノクローナル抗F4/80(abcam、ab6640)、ラットモノクローナル抗Ly6G(abcam、ab25377)とインキュベートした。次いで、切片を洗浄し、二次フルオロフォア又はビオチン化二次抗体と45分間インキュベートした。組織切片の免疫組織化学のために、酵素的アビジン-ビオチン複合体(ABC)-3,3’ジアミノベンジジン(DAB)染色(Vector Laboratories)を使用した。核をヘマトキシリンで対比染色した。
【0114】
血管灌流
屠殺の10分前に、PEをコンジュゲートした20μgのマウスモノクローナル抗PE-PECAM(Biolegend-102408)を、尾静脈を介してマウスに注射することによって、血管灌流を可視化した。腫瘍を急速凍結し、切片にし、エンドムチンについて染色した。灌流された血管の総数(PE-PECAM陽性)及び二重陽性血管の%は、血管灌流の指標を提供した。
【0115】
血管透過性
上記のように、屠殺及び抗PE-PECAMの1分前に、尾静脈を介してマウスにHoechst色素(0.4mg、Sigma-Aldrich)を注射することによって、血管外の拡散を試験した。腫瘍を急速凍結した。Axioplan顕微鏡法(LSM510ME-TA、Carl Zeiss)を用いて、100μm厚の切片を分析した。ImageJソフトウェアを使用して、各100μmのスタックに対してPE-PECAM及びHoechst染色の平均画素数を計算した。
【0116】
フローサイトメトリーによるKP腫瘍を有する肺の表現型分析。
腫瘍を切り刻み、DNase(0.5mg/ml、Sigma)を含有する酵素カクテル中で、37℃で20分間インキュベートした。HBSS(Sigma)中のリベラーゼ(2mg/ml、Sigma)を使用して、膵臓腫瘍の単一細胞懸濁液を作製した。乳房腫瘍については、PBS中のコラゲナーゼ/ディスパーゼ(1mg/ml、Sigma)を使用して単一細胞懸濁液を作製した。
【0117】
70μMフィルター(BD Biosciences)に細胞を通し、2%ウシ胎児血清及び2mMEDTAを補充したPBSで洗浄し、計数し、直ちにフローサイトメトリーのために使用した。細胞を特異的抗体で染色する前に、Fcγ R III/II TruStain fcX(93、Biolegend)で非特異的結合部位をブロックした。2%ウシ胎児血清及び2mMEDTAを補充したPBS中で染色を実施した。
【0118】
以下の蛍光色素コンジュゲート抗体を使用した:Biolegendの抗CD45(30-F11)、抗CD3(145-2C11)、抗CD4(L3T4)、抗CD8(53-6.7)、抗CD69(H1.2F3)、抗CD44(IM7)、抗CD62L(MEL-14)、抗CD19(6D5)、抗CD11b(M1/70)、抗F4/80(BM8);eBioscienceの抗PD1(RMP1-30)、抗Gr1(RB6-8C5)及び抗Ly6C(HK1.4)。生きた細胞と死細胞を識別するために、固定可能な生存色素(FVD)(eBioscience)を使用した。BD FACSDIVAソフトウェア(BD Biosciences)を使用して、BD LSRIIシステムで取得及び分析を行った。FlowJoソフトウェア(バージョン10.0.8 tree Star)を使用して細胞のパーセンテージを分析した。FVD及びSSCゲーティングに基づいて死細胞を分析から除外した。FSC面積対FSC幅についてゲーティングすることによって、細胞ダブレットを分析から除外した。データ解析において白血球のみを含めるために、CD45+細胞を使用した。
【0119】
RNA抽出及びRNAseq分析
プラセボ又は29Pのいずれかで処理されたKP腫瘍を有する凍結肺からRNAを抽出し、プラセボ又は29のいずれかでKP細胞を処理し、MLECを29で処理するか、又は処理しなかった。3つの事例において、RNAの抽出は製造者の説明書(Qiagen、Manchester、UK)に従って行われた。KP腫瘍を有する肺をポリトロンホモジナイザを用いて抽出前に消化した。Illumina NextSeq 500プラットフォームでBarts及びLondon Genome Centreによって、RNA-Seqを行った。
【0120】
倫理規定
全ての手順は、所属する機関の動物倫理委員会、ロンドンのQueen Mary Universityによって承認され、United Kingdom Home Officeの規則に従って実行された。
【0121】
統計解析
別段の指示がない限り、データは、個々の動物を単一のデータ点としてプロットすることによって示され、バーは平均を示し、エラーバーは平均の標準誤差を示す。全てのデータを、GraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。最初に分布の正規性についてデータを評価した。正規分布するデータを有する2つの群の比較については、対応のない両側スチューデントt検定を使用し、分布が正規でないデータについては、マン・ホイットニー検定を使用した。2つを超える群の比較については、正規分布するデータについては一元配置又は二元配置ANOVAを使用し、正規分布していないデータについては、クラスカル・ウォリスを使用した。図の凡例に別段の指示がない限り、全ての平均を互いに比較した。多重比較のための事後検定を用いてP値を調整した。カイ二乗検定を使用して、観察された組織学的腫瘍グレードを比較し、マンテル・コックスを使用して、生存の差を評価した。p<0.05であれば、平均の差を統計学的に有意とみなした。使用された個々の検定及びn個数は、各図の凡例に示されている。
【0122】
例1-KrasLSL-G12D/+;p53fl/flマウス中の肺がんは、血管コ-オプション成長パターンを示し、抗VEGFR2療法に応答しない
肺がんに対する29P処置による血管調節の効果を調べるために、まず、本発明者らは、腫瘍を有するKrasLSL-G12D/+;p53fl/fl(KP)マウスにおける血管成長パターンを確定した。それぞれ肺実質及び内皮を染色するポドプラニン及びエンドムチンタンパク質発現の二重免疫蛍光分析は、KPマウスが非血管新生性肺胞及び間質性腫瘍成長パターンを示すことを実証した。肺胞成長パターンは、肺胞内での腫瘍細胞成長を伴い、圧縮された間質腔及び血管をもたらすのに対して、間質性成長パターンは、肺胞内ではなく間質腔内での腫瘍細胞成長を特徴とする(図1A)。さらなる結果では、間質性成長パターンを有する腫瘍の存在は、アデノウイルスCre投与の63~84日後に増加し、間質性成長パターンと腫瘍進行の相関を示した。ポドプラニン及び内皮細胞マーカーCD31の二重免疫染色により、ヒト非小細胞肺がん試料における間質性成長の類似のパターンが明らかになり(図1B)、NSCLC研究に対するKPマウスモデルの適合性が強調された。血管新生性血管成長ではなく腫瘍血管コ-オプションへの偏りが観察されたことと一致して、本発明者らは、抗VEGFR2(DC101(Rockwell,P.,Mol.Cell.Differ.,3:91-109,1995))抗体による腫瘍負荷KPマウスの処置が、肺腫瘍病巣の数、全体的な腫瘍量又は1視野当たりの微小血管の数に有意な効果を及ぼさないことを見出した(図1C)。合わせると、これらのデータは、KP肺腫瘍の新血管新生がヒト非小細胞肺がんの新血管新生と同様であること、及びこれらが抗VEGFR2抗体を使用した抗血管新生処置に対して応答しないことを示唆した。
【0123】
例2-29P処置はNSCLC成長パターンを改変し、血管密度を増加させる
NSCLC成長に対する29P処置の効果を調べるために、腫瘍を負荷されたKPマウスを29P(250μg/kg)で処置し、処置が開始された後4週間の実験終了点で腫瘍量及び腫瘍血管を評価した処理の開始点及び終了点は、この実験モデルを用いた以前の刊行物に従って選択された(22~24)。組織学的分析は、29P処置が病巣の数又は腫瘍量に影響を及ぼさない(図2A図9B)が、間質性腫瘍成長パターンを有する病巣の百分率及び1視野当たりの腫瘍血管の総数の両方を増加させること(図2B)を示した。さらなる免疫蛍光分析により、血管密度は、肺胞成長パターンを有する病巣では29P処置によって変化しないが、間質性腫瘍成長パターンを有する病巣では有意に増加されることが明らかになった(図2C)。腫瘍進行(図9C、D)又は血管成熟の指標であるαSMA陽性血管の百分率のいずれに対しても効果は観察されなかった(図9E)。さらに、インビトロでの29Pによる処理は、インビボで与えられた用量と同等の低用量(0.2nM~200nM)でKP腫瘍細胞生存に対して有意な効果を及ぼさなかった(補足図9F)。機能レベルでは、29P処置はまた、(1)灌流された血管の百分率の増加(図2D)、(2)ヘキスト色素の漏出によって検出される血管透過性に対する明らかな影響の不存在(図2E)、(3)Glut1染色によって評価される腫瘍低酸素の減少されたレベル(図2F)並びに(4)組織学的に評価されたCD3+細胞の数の増加及び、フローサイトメトリーによってKP腫瘍においてCD3+であったCD45+細胞浸潤の百分率の増加(図2G)ももたらした。
【0124】
まとめると、これらのデータは、29P処置が、血管新生性成長ではなく血管コ-オプションを示す間質性成長パターンを示す腫瘍病変の数を特異的に増加させることによって腫瘍新血管新生を改変することを実証した。29Pによる処置はまた、これらの腫瘍における血管密度を増加させ、これは血管灌流の増加、低酸素の低下及びCD3+細胞浸潤の増加に対応した。
【0125】
例3-29P処置はKPマウスにおけるNSCLCの免疫チェックポイント遮断及びシスプラチン処置を増強する
シスプラチンなどの白金をベースとした療法は、第一選択化学療法の一部であり、NSCLC処置のための免疫療法と組み合わせても使用される(25)。低酸素及び抗腫瘍免疫浸潤物の非存在は有効な免疫療法の主要な障害であり、29P処置はこれらを改善したので、本発明者らは、29P処置を化学療法剤/免疫療法剤と組み合わせることはそれらの有効性を増加させると仮定した。実際、本発明者らは、免疫療法(抗PD-1及び抗CTLA-4抗体)、Cis(シスプラチン6mg/kg)及び29Pの多重組み合わせで処置されたKPマウスは、Cis/29P又はCis/抗PD-1/抗CTLA-4抗体のいずれかで処置されたKPマウスと比較して、有意に低下した病巣数及び有意により低い腫瘍量を有することを見出した(図3A)。重要なことに、同じ多重組み合わせ処置であるが、より低用量のシスプラチン(3mg/kg、Cis)を使用することも、Cis/29P又はCis/抗PD-1/抗CTLA-4で処置されたマウスと比較して、マウスの生存率を有意に増加させながら、腫瘍量及び病巣数を低下させた(図3B及びC)。シスプラチンの用量を6から3mg/kgに低下させると、シスプラチンの毒性副作用の問題が克服された。例えば、Cis/抗PD-1/抗CTLA-4による組み合わせ処置は、動物の体重を低下させ、リンパ球減少症を誘発し、腎機能障害を示す高いクレアチニンレベルを引き起こしたが、Cis/抗PD-1/抗CTLA-4及び29Pによる処置は、体重、リンパ球数及びクレアチニンレベルをプラセボ又は単剤29Pで処置されたマウスの体重、リンパ球数及びクレアチニンレベルに回復させた(図3D)。
【0126】
29Pが腫瘍をシスプラチン及び/又は抗PD-1/抗CTLA-4抗体処置に対して増感させたかどうかを調べるために、本発明者らは、29Pをシスプラチン又は単一免疫療法のいずれかと別々に組み合わせた。抗PD-1+抗CTLA-4抗体による処置は腫瘍成長を低下させなかったが、以前に記載されているように(23)、抗PD-1及び抗CTLA-4抗体と組み合わせた29Pの投与は腫瘍病巣の数及び腫瘍量を低下させた(図3E)。29P処置はまた、抗PD-1+抗CTLA-4と一緒の29Pよりも控え目な効果であるが、抗PD-1単独療法に対して腫瘍を増感させるのに十分であった(図10A)。29Pの有用性をよりよく実証するために、本発明者らは、Cis、Cis及びCis/29Pのいずれかで処置されたKPマウスにおける抗腫瘍有効性及び有害な副作用を比較した。結果は、Cis処置が明確な抗腫瘍効果を有するが、マウスはより高いレベルの体重減少副作用を被ることを示している。しかしながら、Cis/29Pは、Cisで得られるレベルと同様のレベルに抗腫瘍効果を改善するが、明らかな有害な体重減少副作用はない(図3F)。これは、29Pがシスプラチンと組み合わせて腫瘍細胞の生存に直接影響を及ぼし得るかという疑問を提起した。これに対処するために、本発明者らは、インビトロ実験を行い、ヒト肺腺がん(A549)又はマウス肺腺がん(KP)細胞のいずれかを、単独での又は29Pと組み合わせた漸増濃度のシスプラチンで処理した。MTS細胞生存アッセイを使用して、本発明者らは、シスプラチン細胞毒性が29P添加に非依存的であることを見出し、29Pがシスプラチンの抗腫瘍効果を直接変化させないことを示唆した(図10B)。合わせると、これらのデータは、29Pによるインビボ処置が、副作用を軽減させながら、免疫療法と組み合わせたシスプラチンの有効性を改善し、NSCLCにおける免疫療法の治療効果を増加させる可能性のある機会を提供することを確立した。
【0127】
例4-29Pによる処置は免疫抑制性腫瘍を免疫許容性腫瘍に切り替える
次に、本発明者らは、組み合わせ処置において見られた増強された治療効果の基礎を成す機序をさらに調査したいと考えた。29P単独の効果と同様に、Cis/抗PD-1/抗CTLA-4抗体と29Pとの4重の組み合わせ、又は抗PD-1/抗CTLA-4免疫療法と29Pとの3重の組み合わせで処置されたKPマウス中の腫瘍は、間質性成長パターンを有する腫瘍の百分率の増加を示した(図4A)。この処置はまた、プラセボ又は抗PD-1/抗CTLA-4抗体単独のいずれかで処置されたマウスと比較して、血管密度を増大させ、腫瘍低酸素を低下させた(図4B)。
【0128】
他方、本発明者らは、抗PD-1/抗CTLA-4で処置されたマウス又はアイソタイプで処置されたマウスと比較して、抗PD-L1/抗CTLA-4及び29Pの組み合わせで処置されたKP腫瘍中でPD-L1タンパク質の増加したレベルを観察した(図4C)。
【0129】
免疫排除した「非炎症型(cold)」腫瘍を、炎症を起こした「炎症型(hot)」腫瘍に切り替える、腫瘍中の浸潤T細胞の数を増強する戦略は、免疫療法がその可能性を実現するために必要であると広く考えられているので、現在のがん研究における主要な目標である(2)。面白いことに、本発明者らは、29Pで処置されたKPマウスにおける間質性成長パターン、血管密度の増強及び低酸素の低下に対する効果が、Cisのみとの組み合わせ又はCis/抗PD-1/抗CTLA-4抗体との組み合わせにおいて、CD3+及びCD8+T細胞浸潤の増加と相関することを見出した(図5A)。Cisの非存在下において、KPマウスの29P/抗PD-1/抗CTLA-4抗体での組み合わせ処置もCD3+及びCD8+T細胞腫瘍浸潤を増強し、免疫排除した腫瘍を、炎症を起こした腫瘍に切り替えた(図5B)。ポドプラニン、エンドムチン及びCD3について三重免疫蛍光染色を行って、本発明者らは、CD3+細胞浸潤が間質性成長パターンを有する病巣において有意に増強されることを示し(図11A)、29Pによって誘導される増強された新血管新生が「非炎症型」腫瘍を「炎症型」腫瘍に切り替えることに関連することを示唆する。
【0130】
フローサイトメトリーによるKP腫瘍負荷肺細胞懸濁液全体の検査により、シスプラチン処置は、腫瘍関連マクロファージの低下にもかかわらず、T細胞(CD4+及びCD8+)及び骨髄細胞(Gr1+、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、単球)数を増加させることが特定された。低用量シスプラチン(Cis)及び29Pによる組み合わせ処置は、CD3+細胞数、特に制御性T細胞(Treg)集団を低下させたのに対して、CD8+細胞数の低下は観察されず、Tregs:CD8+細胞の比率が低いことを示した。さらに、活性化されたCD8+細胞(CD8+CD44+CD62-)の数は、組み合わされたCis/29P処置後に増加した(図5C)。Cis/29P処置後のマウスでは、樹状細胞及びナチュラルキラー細胞の数は、Cis単独と比較して影響を受けなかったが、Gr1+好中球及び単球は減少した(図5C)。
【0131】
全体として、29PでのKPマウスの処置は、シスプラチン処置によって誘導された阻害性免疫細胞を枯渇させ、CD8+細胞の比較的より高い活性化をもたらし、免疫許容性の「炎症型」腫瘍微小環境を生成した。
【0132】
例6-29P処置後の増強された免疫療法有効性はVEGFR2によって媒介される血管新生に依存する
本発明者らはまた、間質性成長パターンを有する腫瘍における29P処置後の増加された血管数の分子的基礎を調査した。本発明者らの以前の研究は、低用量RGD模倣物質による処置がVEGFR2によって媒介される血管新生を増強することを示した(26)。本例で、本発明者らは、VEGFR2阻害剤DC101と組み合わせた29Pによる処置が、腫瘍病巣の数、腫瘍量及び血管密度の低下をもたらしたことを示す。この効果は、間質性成長パターンを有する腫瘍では非常に明白であったが、肺胞成長パターンを有する腫瘍では本質的に存在しなかった。このデータは、肺胞成長パターンを有する腫瘍が29Pによる血管調節に対して抵抗性であること、及び29Pの効果がVEGFR2依存性であることを示唆している(図6A)。
【0133】
RNA-seq分析により、29Pでインビトロ処理された内皮細胞が、DNA複製及び細胞周期転写物の上方制御(Reactome DNA Replication,Reactome Cell Cycle Mitotic and Reactome Respiratory Electron Transportを参照)並びに細胞外マトリックス形成に関連する転写物の下方制御(Naba Core Matrisome、Naba Basement Membranes、KEGG Focal Adhesionを参照)を示したことが特定され、これらは全て血管新生の増強に関与するプロセスである。インビボにおいて、ピクロシリウスレッド分析により、29P処理後のコラーゲン組織化の低下が同定され、インビトロでのECM転写物シグネチャーの低下を連想させる。さらに、29P処理は、インビボで、増殖する内皮細胞のレベルも有意に増強した(図6B)。29P処置後、Ki67陽性内皮細胞の数は、肺胞パターンを有するものと比較して、間質性成長パターンを有する腫瘍において有意により高かった(図6C)。簡潔には、29Pは、間質性成長パターンを有する腫瘍において優先的にVEGFR2依存性血管新生を誘導し、肺胞成長パターンを有する腫瘍においては誘導しない。
【0134】
例7-29P処置は、インビボで、KP腫瘍において抗腫瘍免疫効果を誘導する
本発明者らはまた、インビボでの29P処置によってどのような他の分子変化が誘導されるかを調査した。以前の研究は、CXCL9及びINF-γ関連遺伝子がNSCLCにおける抗腫瘍免疫応答の予測因子であることを示している(27)。さらに、IFN-γ関連mRNAプロファイルは、メラノーマなどのいくつかのがんにおけるPD-1遮断に対する臨床応答を予測することができる(28)。CXCL9は、腫瘍内へのT細胞浸潤を促進する走化性ケモカインであり、IFN-γによって誘導される(29)。
【0135】
プラセボ対照と比較して、29Pで処置されたマウス由来の、KP腫瘍を有する肺は、免疫応答に関与するRNA転写物シグネチャーの上方制御を示した。29P処置は、CXCL13及びその受容体CXCR5を含む免疫原性サイトカイン及びそれらの受容体、並びにT細胞遊走に関与するケモカイン:CCL5、CXCL9、CCL10及びそれらの受容体CXCR3(CXCL13の受容体でもある)などのサイトカイン-サイトカイン受容体相互作用に関連する経路を含む経路を濃縮した。インターフェロン-γシグナル伝達経路などの他の細胞傷害性経路も、29P処置後に有意に上方制御された。興味深いことに、IL18(インターフェロン誘導因子としても知られる)もまた、29P処置後に上方制御される。これらのデータを裏付けるように、インビトロで29Pで処理された内皮細胞は、インターフェロン(IFN-I、IFN-γ)経路成分(Ifr5、Ifit2、Gbp2、Mx1、Rnasel、Stat2、Xaf1、Ifitm3、Oas3、Ifi35、lsg15、Oas2、Psmb8、Irf1、Ifit1、Ifit3、Stat1、lsg20、Usp18)の上方制御も示した。29P処理は、血管壁における白血球遊出及び細胞表面受容体についてのリアクトーム(reactome)の有意な濃縮も誘導した。合わせると、これらのデータは、29Pが増強された抗腫瘍免疫応答と相関する分子的変化を誘導し、本発明者らが本研究で記載した抗PD-1/抗CTLA-4処置の増強された有効性についての可能性のある説明を提供することを示唆している。
【0136】
重要なことに、29P処置されたマウスの腫瘍を有する肺由来の上方制御されたRNAシグネチャーと免疫応答性ヒトがん由来の上方制御された転写物シグネチャーとの比較(30)により、全てT細胞浸潤の主要なメディエーターであるCXCL9、CXCL10、CXCL13、CCL8及びCCL5が一般に上方制御されることが特定され、免疫療法を増強する上での29P処置の臨床的妥当性を示唆する。
【0137】
例8-29Pによって誘導される腫瘍の増感は、T細胞、IL-18、IFN-γ及びCXCL9依存性である
本発明者らは、増加したCD8+細胞並びにIL-18、INFγ及びCXCL9レベルが、29P処置によって誘導される免疫療法の増強された有効性において鍵となる機能的関連性を有すると仮定した。これを調査するために、本発明者らは、本発明者らの既存の治療レジメンと組み合わせてこれらの成分のそれぞれを枯渇させる一連の実験を行った。抗PD-1/抗CTLA-4抗体と29Pの三重の組み合わせで処置されたKPマウスへの抗CD8α抗体の投与によるCD8+細胞枯渇は処置効果を失わせ、マウスは、プラセボ処置群と同様に、病巣数、腫瘍面積又は腫瘍量の低下を示さなかった(図7A)。同様に、Cisと29Pの組み合わせ処置は、抗CD8α抗体を使用してCD8+細胞集団を除去すると、もはや、KP腫瘍病巣の数、腫瘍面積又は腫瘍量の低下をもたらさなかった(図7B)。したがって、腫瘍成長の制御においてシスプラチンと29Pの組み合わせで観察された効果は、より高いレベルの活性化されたCD8+細胞を有する免疫許容性腫瘍微小環境の促進を原因とする可能性が高い。
【0138】
IFN-、IL-18及びCXCL9が免疫療法の抗腫瘍効果の決定的に重要なメディエーターであるという本発明者らのRNA配列決定データ分析をさらに裏付けるように、本発明者らが、抗PD-1/抗CTLA-4抗体及び29P並びにIFN-γ又はCXCL9を機能的に阻害する抗体の三重の組み合わせでKP腫瘍負荷マウスを処置すると、動物はもはや免疫療法に応答せず、腫瘍量又は病巣の数の低下を示さなかった。三重処置に加えた抗IL-18抗体による処置はなお病巣数の有意な低下をもたらしたが、全体的な腫瘍量はプラセボと比較して変化しなかった(図7C~E)。本発明者らは、中和抗体を使用してCXCL9を除去すると、29Pによって誘導される、T細胞浸潤に対する効果が損なわれることを実証する。抗PD-1/抗CTLA-4、29P及び抗CXCL9の組み合わせで処置された腫瘍は、CD8+が異なる肺腫瘍病変の周辺に留まる免疫排除表現型を示し、29P処置後の腫瘍のコアへのCD8+の遊走におけるCXCL9の重要な機能を示している(図7C)。総合すると、これらのデータは、29Pによる処置が、29P処置によって調節される免疫療法の増加した有効性に機能的に関連するIL-18、IFN-γ及びCXCL9のレベルを増加させるという強力な証拠を提供する。
【0139】
考察
PDL1又はCTLA-4抗体を含む、肺がんにおける免疫療法を使用する臨床試験は、これが極めて有望な第一選択であり、腫瘍細胞においてPD-L1の高い発現を有する患者において良好な結果をもたらすことを示している(Reckら)。しかしながら、これは、診断された全患者の30%未満に当てはまるに過ぎない。大部分の患者にとって、腫瘍微小環境の不均一性、特に浸潤する細胞傷害性T細胞の程度は、免疫療法に対する応答性の鍵となる決定因子である(31)。
【0140】
本研究において、本発明者らは、血管促進戦略が免疫療法に対するこの固有の抵抗性を克服することができるかどうか、及びNSCLC腫瘍を処置に対してより感受性にすることを可能にするかどうかを調査した。これを調査するために、本発明者らは、ヒト疾患及び現在の治療に対して応答しない患者の集団の両方を密接に再現する、ゴールドスタンダードである遺伝子操作されたKPマウスモデルを使用した。NSCLC患者における抗血管新生療法の使用は、なお議論されている。本発明者らが実証したように、KP腫瘍は大部分が血管新生性ではなく、代わりに血管コ-オプションモードで成長する。これらの腫瘍はまた、抗血管新生療法に対しても応答せず、これは、多くの患者が臨床においてVEGFR2阻害剤及び類似の薬物に対して応答しなかった理由を説明し得る。
【0141】
本発明者らは、KP腫瘍の大部分及び患者試料中にも見られる非血管新生性血管コ-オプション成長パターン(間質性及び肺胞)の静止状態の腫瘍脈管構造を調節した。RGDを模倣するヘキサペプチド29Pを使用したこの戦略は、間質性パターンで成長するKP腫瘍における新血管新生性の、VEGFR2依存性機構で血管密度を増加させた。これらの腫瘍において促進された微細血管網は、より高い血管灌流をもたらし、低酸素の低下ももたらした。腫瘍塊の内側の低酸素ゾーンはT細胞を欠くが、低酸素の喪失はT細胞排除を逆転させることが以前に記載されている(4)。29Pを使用して、本発明者らは、KP腫瘍内へのT細胞浸潤を促進し、それによって以前は免疫学的に「非炎症型」のKP腫瘍を免疫チェックポイント遮断に対して増感させることができた。
【0142】
本研究では、本発明者らは、非血管新生性腫瘍中の腫瘍脈管構造を調節し、したがって静止状態の血管を標的とした。血管を流用する腫瘍は抗血管新生療法に対して抵抗性であるので、血管コ-オプションは抗血管新生に対する抵抗性の機序であると考えられている(12)。本発明者らは、本研究において、血管新生促進アプローチが静止状態及び非血管新生性の腫瘍を標的とするのに有用であることを実証した。本発明者らは、29Pを使用して、間質性成長パターンを有する腫瘍において新血管新生を促進することを実証し、間質性成長パターンでは抗VEGFR2処置に対して増感されるようになるが、肺胞成長パターンでは増感されるようにならない。29P処置後の増加した血管密度は、腫瘍低酸素の減少及び増加したCD8+細胞浸潤と相関し、したがって全て免疫療法の有効性の増強と相関する。
【0143】
並行して、RNAseq分析を使用した本発明者らの結果は、機能的にも検証された、サイトカイン産生及びそれらの受容体に基づく機構を実証し、CXCL9-IL-18-IFNシグナル伝達軸を中心に据える。T細胞遊走に関与するCXCL9、及びCD8+細胞の細胞傷害能力に関連するIFN-γ、又はIFN経路は全て、29Pによる処理後に内皮細胞において上方制御されることが見出された。これらのRNAシグネチャーは、ヒトがん患者試料における治療に対する応答と相関し、ここでは、これらのRNAシグネチャーは、化学療法及び免疫療法処置を29Pと組み合わせた場合の治療に対する応答を予測した。
【0144】
したがって、本発明者らは、非血管新生性腫瘍を標的とするための新しい概念の原理の証明を提供し、この血管調節が免疫療法及び化学療法の有効性を高めるためにどのように有益であり得るかを提供した。本発明者らは、このアプローチが、非血管新生性肺転移又は肝臓若しくは脳への転移などの他の免疫学的に「非炎症型」及び非血管新生性の腫瘍に機能的に影響を及ぼし、様々ながんに対する処置の有効性を高める方法を提供すると考える。
【0145】
参考文献

【配列表フリーテキスト】
【0146】
配列表1 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表2 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表3 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表4 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表5 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表6 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表7 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表8 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表9 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
配列表10 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
配列表11 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
配列表12 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
<223>Nメチル化
配列表13 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表14 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
配列表15 <223>合成ペプチド
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表16 <223>合成ペプチド
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表17 <223>合成ペプチド
配列表18 <223>合成ペプチド
配列表19 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
配列表20 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>Nメチル化
配列表21 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>ヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>Nメチル化
配列表22 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表23 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表24 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表25 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表26 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表27 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表28 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表29 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表30 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表31 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表32 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
配列表33 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
配列表34 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
配列表35 <223>合成ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表36 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>N-メチル化
配列表37 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
配列表38 <223>環状ペプチド
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表39 <223>環状ペプチド
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表40 <223>環状ペプチド
配列表41 <223>環状ペプチド
配列表42 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
配列表43 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>Nメチル化
配列表44 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>ヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
<223>メチルエステル(OMe)部分
<223>N-メチル化
配列表45 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
配列表46 <223>環状ペプチド
<223>D-アミノ酸
<223>N-メチル化
<223>2つのヘキシルオキシカルボニル(Hoc)部分
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D-G】
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B-1】
図4B-2】
図5A-1】
図5A-2】
図5B-1】
図5B-2】
図5C-1】
図5C-2】
図6A-1】
図6A-2】
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D-1】
図7D-2】
図7E
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11
【配列表】
2024510577000001.app
【国際調査報告】