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特表2024-510596掃引共焦点配置平面励起(SCAPE)顕微鏡法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】掃引共焦点配置平面励起(SCAPE)顕微鏡法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240301BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555626
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 US2022019924
(87)【国際公開番号】W WO2022192656
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/159,758
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/160,297
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・エム・シー・ヒルマン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ウェンウェイ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンシュアン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ユ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043BA16
2G043EA01
2G043EA03
2G043FA02
2G043FA03
2G043HA09
2G043KA09
2G043LA03
2H052AA09
2H052AB02
2H052AB06
2H052AB07
2H052AB08
2H052AB17
2H052AC34
2H052AD27
2H052AD31
2H052AE06
2H052AF01
2H052AF14
(57)【要約】
浸漬対物レンズのためのスペーサが、側壁の組をミラーに押し付けて液密空洞を形成し、液密空洞を第1の量のUV硬化性ポリマーで満たし、第1の量のUV硬化性ポリマーを、ミラーに付着される第1の固体塊に硬化させることによって、製作され得る。次いで、第1の固体塊の上面は、第2の量のUV硬化性ポリマーが第1の固体塊と対物レンズとの間の空間を占めている状態で、対物レンズの近くに位置決めされる。次に、第1の固体塊の位置は、第1の固体塊が対物レンズに対する最終位置に到達するまで、調整される。この調整は、ミラーを通して反射された光の平行をチェックすることによって支援され得る。次いで、第2の量のUV硬化性ポリマーが硬化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬対物レンズのためのスペーサを製作する方法であって、
側壁の組の間に位置決めされたミラーの部分がネガティブモールドの底部として機能するように、かつ、前記側壁の組が前記ネガティブモールドの前記底部と協働して液密空洞を形成するように、前記側壁の組を前記ミラーに押し付けるステップと、
前記液密空洞を第1の量の紫外線硬化性ポリマーで満たすステップと、
前記第1の量の紫外線硬化性ポリマーを第1の固体塊に硬化させるステップであって、前記第1の固体塊が、前記ミラーに付着する下面、および上面を有する、ステップと、
前記第1の固体塊の下面と前記ミラーとの間の付着を乱すことなしに、前記側壁の組を前記ミラーから取り外すステップと、
第2の量の紫外線硬化性ポリマーが前記第1の固体塊の上面と対物レンズとの間の空間を占めている状態で、前記第1の固体塊の上面を前記対物レンズの近くに位置決めするステップと、
前記位置決めするステップに続いて、前記第1の固体塊の下面が前記対物レンズに対する最終位置に到達するまで、前記第1の固体塊の位置を調整するステップと、
前記第1の固体塊が前記最終位置に到達した後で、前記第2の量の紫外線硬化性ポリマーを硬化させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記対物レンズを通して前記ミラーに向かって平行光を投射するステップと、
前記ミラーによって反射された光の平行特性を検出するステップと、をさらに含み、
前記第1の固体塊が前記最終位置に到達したという判定が、前記ミラーによって反射された前記光が正確に平行になったときになされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の量の紫外線硬化性ポリマーを硬化させるステップが、前記対物レンズを通して前記第2の量の紫外線硬化性ポリマー内に紫外線を投射することによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対物レンズを通して前記第2の量の紫外線硬化性ポリマー内に紫外線を投射することに続いて、前記第2の量の紫外線硬化性ポリマーをさらに硬化させるために追加の紫外線が適用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも前記ネガティブモールドの底部として機能する前記ミラーの部分が、誘導性表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記ネガティブモールドの底部として機能する前記ミラーの部分が、250nmの範囲内で平坦である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の固体塊の下面から前記ミラーを取り外すステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記側壁の組がポリマー製である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記側壁の組がポリジメチルシロキサン(PDMS)製である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記紫外線硬化性ポリマーがBIO-133を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有する第1の光学素子の組であって、前記第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む第1の光学素子の組と、
近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有する第2の光学素子の組であって、前記第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む第2の光学素子と、
前記第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ前記第2の光学素子の組の近位端部に対して近位に配置された走査素子であって、
前記走査素子が、励起光のシートが前記第1の光学素子の組を近位から遠位の方向に通過して、前記第1の光学素子の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、前記励起光のシートを送るように位置決めされ、前記励起光のシートが、斜角で前記試料内に投射され、前記励起光のシートが、前記走査素子の向きに依存して変化する位置において前記試料内に投射され、
前記第1の光学素子の組が、前記試料からの検出光を遠位から近位の方向において前記走査素子へ送り返し、
前記走査素子が、前記検出光が近位から遠位の方向において前記第2の光学素子の組を通過して、前記第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、前記検出光を送るように位置決めされる走査素子と、
励起光を生成する光源と、
光軸を有する焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズであって、(a)前記励起光が前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズの光軸に平行に前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズを通過するように、かつ、(b)前記励起光が前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズの光軸に対して偏心して前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズを通過するように、前記励起光を受け入れるように位置決めされる焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズと、
前記励起光のシートが前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズと円柱レンズとの直列組み合わせから出て行くように、前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズと直列に位置決めされた円柱レンズと、
前記励起光のシートを前記走査素子に向けて送るように位置決めされた反射面と、を備える撮像装置。
【請求項12】
前記中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記第3の対物レンズおよび前記第2の対物レンズが、流体チャンバを介して光学的に結合される、請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記第2の対物レンズを越えた遠位にある中間像平面からカメラに向かって光を中継するように位置決めされた高開口数(NA)受光角溶融繊維束をさらに備える請求項11に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記高開口数(NA)受光角溶融繊維束が、前記第2の対物レンズによって形成される斜光シートの像と位置合わせされる前面を有する、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記高開口数(NA)受光角溶融繊維束が、光を収集するとともに像回転を実現するために、前記第2の対物レンズによって形成される斜光シートの像と位置合わせされるベベルカット縁部を有する、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記光源が励起光のパルスを生成し、
前記励起光のパルスが、それらが前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズに到達するのに先立って、プリズムコンプレッサによって圧縮される、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記反射面がダイクロイックビームスプリッタを備える、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記円柱レンズが、前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズと前記反射面との間の光学経路内に位置決めされ、前記円柱レンズが、前記焦点距離可変音響勾配(TAG)レンズから出て行く前記励起光を前記励起光のシートに拡大する、請求項11に記載の撮像装置。
【請求項20】
近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有する第1の光学素子の組であって、前記第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む第1の光学素子の組と、
近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有する第2の光学素子の組であって、前記第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む第2の光学素子の組と、
前記第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ前記第2の光学素子の組の近位端部に対して近位に配置された走査素子であって、前記第1の光軸または前記第2の光軸のどちらかに対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度で取り付けられる走査素子と、
前記走査素子と前記第2の光学素子の組または前記第1の光学素子の組のどちらかとの間に配置された折り畳みミラーと、を備え、
前記走査素子が、励起光のシートが前記第1の光学素子の組を近位から遠位に通過して、前記第1の光学素子の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、前記励起光のシートを送るように位置決めされ、前記励起光のシートが、斜角で前記試料内に投射され、前記励起光のシートが、前記走査素子の向きに依存して変化する位置において前記試料内に投射され、
前記第1の光学素子の組が、前記試料からの検出光を遠位から近位の方向において前記走査素子へ送り返し、
前記走査素子が、前記検出光が近位から遠位の方向において前記第2の光学素子の組を通過して、前記第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、前記検出光を送るように位置決めされる、撮像装置。
【請求項21】
前記中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える請求項20に記載の撮像装置。
【請求項22】
前記走査素子が、前記第1の光軸に対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度において取り付けられ、
前記折り畳みミラーが、前記走査素子と前記第2の光学素子の組との間に配置される、請求項20に記載の撮像装置。
【請求項23】
前記走査素子が、前記第2の光軸に対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度において取り付けられ、
前記折り畳みミラーが、前記走査素子と前記第1の光学素子の組との間に配置される、請求項20に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記励起光のシートが、前記第2の光学素子の組を介して前記走査素子に到達し、
前記励起光のシートが、前記第2の対物レンズに対して近位に位置決めされた第2のミラーを介して第2の光学素子の組に導入される、請求項20に記載の撮像装置。
【請求項25】
前記第2のミラーが、面取りされた直線状の第1の縁部、および少なくとも1つの第2の縁部を有し、
前記第2のミラーが、前記面取りされた直線状の第1の縁部が前記少なくとも1つの第2の縁部よりも前記第2の光軸に接近するように、取り付けられる、請求項24に記載の撮像装置。
【請求項26】
前記第2のミラーが並進ステージ上に取り付けられる、請求項25に記載の撮像装置。
【請求項27】
近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有する第1の光学素子の組であって、前記第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む第1の光学素子の組と、
近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有する第2の光学素子の組であって、前記第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む第2の光学素子の組と、
前記第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ前記第2の光学素子の組の近位端部に対して近位に配置された走査素子であって、
前記走査素子が、励起光のシートが前記第1の光学素子の組を近位から遠位の方向に通過して、前記第1の光学素子の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、前記励起光のシートを送るように位置決めされ、前記励起光のシートが、斜角で前記試料内に投射され、前記励起光のシートが、前記走査素子の向きに依存して変化する位置において前記試料内に投射され、
前記第1の光学素子の組が、前記試料からの検出光を遠位から近位の方向において前記走査素子へ送り返し、
前記走査素子が、前記検出光が近位から遠位の方向において前記第2の光学素子の組を通過して、前記第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、前記検出光を送るように位置決めされる、走査素子と、
複数の光源であって、該複数の光源の各々がそれぞれの波長におけるそれぞれの出力ビームを有する、複数の光源と、
前記複数の光源からの出力ビームを励起光の共通経路上へ送るように前記複数の光源に対して位置決めされた少なくとも1つの光学ビームコンバイナと、
少なくとも1対の位置合わせミラーであって、位置合わせミラーの各対が、それぞれの出力ビームのアライメントを調整するようにそれぞれの光源に対して位置決めされ、前記少なくとも1対の位置合わせミラーが、前記試料内での全ての前記出力ビームの位置合わせを促進するように構成される、少なくとも1対の位置合わせミラーと、
前記出力ビームを前記励起光のシートに拡大するように構成された第3の光学素子の組と、を備える撮像装置。
【請求項28】
前記中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える請求項27に記載の撮像装置。
【請求項29】
前記励起光のシートが、前記第2の光学素子の組を介して前記走査素子に到達し、
前記励起光のシートが、前記第2の対物レンズに対して近位に位置決めされた第2のミラーを介して第2の光学素子の組に導入され、
前記第2のミラーが、前記第3の光学素子の組から前記励起光のシートを受け入れて、前記励起光のシートを前記第2の光学素子の組の近位端部に向けて別ルートで送るように、位置決めされる、請求項27に記載の撮像装置。
【請求項30】
前記第2のミラーが、面取りされた直線状の第1の縁部、および少なくとも1つの第2の縁部を有し、
前記第2のミラーが、前記面取りされた直線状の第1の縁部が前記少なくとも1つの第2の縁部よりも前記第2の光軸に接近するように、取り付けられる、請求項29に記載の撮像装置。
【請求項31】
前記第2のミラーが並進ステージ上に取り付けられる、請求項30に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/159758号(2021年3月11日出願)および第63/160297号(2021年3月12日出願)の利益を主張するものであり、これら米国仮出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって与えられた助成番号NS108213、NS094296、NS104649、CA236554ならびに米国国立科学財団によって与えられた助成番号1644869、0801530および0954796の下で政府支援によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5は、各々が参照により本明細書に組み込まれており、掃引共焦点配置平面励起(SCAPE,swept confocally-aligned planar excitation)顕微鏡法を実施するための様々な手法を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10061111号明細書
【特許文献2】米国特許第10831014号明細書
【特許文献3】米国特許第10835111号明細書
【特許文献4】米国特許第10852520号明細書
【特許文献5】米国特許第10908088号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://www.mypolymers.com/products
【非特許文献2】https://www.thorlabs.com/thorproduct.cfm?partnumber=G608N3
【非特許文献3】https://www.cargille.com/optical-gels/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の1つの態様は、液浸対物レンズのためのスペーサを製作する第1の方法を対象とする。第1の方法は、側壁の組の間に位置決めされたミラーの部分がネガティブモールドの底部として機能するように、および、側壁の組がネガティブモールドの底部と協働して液密空洞を形成するように、側壁の組をミラーに押し付けるステップを含む。液密空洞は、第1の量のUV(紫外線)硬化性ポリマーで満たされ、第1の量のUV硬化性ポリマーは、第1の固体塊に硬化される。第1の固体塊は、ミラーに付着する下面、および上面を有する。側壁の組は、第1の固体塊の下面とミラーとの間の付着を乱すことなしに、ミラーから取り外される。第1の方法はまた、第2の量のUV硬化性ポリマーが第1の固体塊の上面と対物レンズとの間の空間を占めている状態で第1の固体塊の上面を対物レンズの近くに位置決めするステップを含む。位置決めするステップに続いて、第1の固体塊の下面が対物レンズに対する最終位置に到達するまで、第1の固体塊の位置が調整される。第2の量のUV硬化性ポリマーは、第1の固体塊が最終位置に到達した後で硬化される。
【0007】
第1の方法のいくつかの事例は、対物レンズを通してミラーに向かって平行光を投射するステップ、および、ミラーによって反射された光の平行特性(collimation property)を検出するステップをさらに含む。これらの事例では、ミラーによって反射された光が正確に平行になったときに、第1の固体塊が最終位置に到達したという判定がなされる。場合により、これらの事例では、第2の量のUV硬化性ポリマーの硬化は、対物レンズを通して第2の量のUV硬化性ポリマー内にUV光を投射することによって実施され得る。場合により、これらの事例では、対物レンズを通して第2の量のUV硬化性ポリマー内にUV光を投射することに続いて、第2の量のUV硬化性ポリマーをさらに硬化させるために追加のUV光が適用される。
【0008】
第1の方法のいくつかの事例では、少なくともネガティブモールドの底部として機能するミラーの部分は、誘電性表面を有する。第1の方法のいくつかの事例では、少なくともネガティブモールドの底部として機能するミラーの部分は、250nmの範囲内で平坦である。第1の方法のいくつかの事例では、側壁の組は、ポリマーで作られる。第1の方法のいくつかの事例では、側壁の組は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)で作られる。第1の方法のいくつかの事例では、UV硬化性ポリマーは、BIO-133を含む。
【0009】
第1の方法のいくつかの事例は、第1の固体塊の下面からミラーを取り外すステップをさらに含む。
【0010】
本出願の別の態様は、第1の撮像装置を対象とする。第1の撮像装置は、第1の光学素子の組、第2の光学素子の組、走査素子、光源、TAGレンズ、円柱レンズ、および反射面を備える。第1の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有し、第1の光学素子の組は、第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む。第2の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有し、第2の光学素子の組は、第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む。
【0011】
第1の撮像装置では、走査素子は、第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ第2の光学素子の近位端部に対して近位に配置される。走査素子は、励起光のシートが第1の光学素子の組を近位から遠位の方向に通過して、第1の光学素子の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、励起光のシートを送るように位置決めされ、ここで、励起光のシートは、斜角で試料内に投射され、励起光のシートは、走査素子の向きに依存して変化する位置において試料内に投射される。第1の光学素子の組は、試料からの検出光(detection light)を遠位から近位の方向において走査素子へ送り返す。走査素子はまた、検出光が近位から遠位の方向において第2の光学素子の組を通過して、第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、検出光を送るように位置決めされる。
【0012】
第1の撮像装置において、光源は、励起光を生成する。TAGレンズは、光軸を有し、TAGレンズは、(a)励起光がTAGレンズの光軸に平行にTAGレンズを通過するように、および、(b)励起光がTAGレンズの光軸に対して偏心してTAGレンズを通過するように、励起光を受け入れるように位置決めされる。円柱レンズは、励起光のシートがTAGレンズと円柱レンズとの直列組み合わせから出て行くように、TAGレンズと直列に位置決めされる。反射面は、励起光のシートを走査素子に向かって送るように位置決めされる。
【0013】
第1の撮像装置のいくつかの実施形態は、中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える。場合により、これらの実施形態では、第3の対物レンズおよび第2の対物レンズは、流体チャンバを介して光学的に結合される。
【0014】
第1の撮像装置のいくつかの実施形態は、第2の対物レンズを越えた遠位にある中間像平面からカメラに向かって光を中継するように位置決めされた高NA受光角溶融繊維束(high NA acceptance angle fused fiber bundle)をさらに備える。場合により、これらの実施形態では、繊維束は、第2の対物レンズによって形成される斜光シートの像と位置合わせされる前面を有し得る。あるいは、これらの実施形態では、繊維束は、光を収集するとともに像回転を実現するために、第2の対物レンズによって形成される斜光シートの像と位置合わせされるベベルカット縁部(bevel cut edge)を有し得る。
【0015】
第1の撮像装置のいくつかの実施形態では、光源は、励起光のパルスを生成し、励起光のパルスは、それらがTAGレンズに到達するのに先立って、プリズムコンプレッサによって圧縮される。第1の撮像装置のいくつかの実施形態では、反射面は、ダイクロイックビームスプリッタを備える。第1の撮像装置のいくつかの実施形態では、円柱レンズは、TAGレンズと反射面との間の光学経路内に位置決めされ、円柱レンズは、TAGレンズから出て行く励起光を、励起光のシートに拡大する。
【0016】
本出願の別の態様は、第2の撮像装置を対象とする。第2の撮像装置は、第1の光学素子の組、第2の光学素子の組、走査素子、および折り畳みミラーを備える。第1の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有し、第1の光学素子の組は、第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む。第2の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有し、第2の光学素子の組は、第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む。走査素子は、第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ第2の光学素子の組の近位端部に対して近位に配置され、走査素子は、第1の光軸または第2の光軸のどちらかに対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度で取り付けられる。折り畳みミラーは、走査素子と第2の光学素子の組または第1の光学素子の組のどちらかとの間に配置される。
【0017】
第2の撮像装置では、走査素子は、励起光のシートが第1の光学素子の組を近位から遠位の方向に通過して、第1の光学素子の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、励起光のシートを送るように位置決めされ、ここで、励起光のシートは、斜角で試料に投射され、励起光のシートは、走査素子の向きに依存して変化する位置において試料に投射される。第1の光学素子の組は、試料からの検出光を遠位から近位の方向において走査素子へ送り返す。走査素子はまた、検出光が近位から遠位の方向において第2の光学素子の組を通過して、第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、検出光を送るように位置決めされる。
【0018】
第2の撮像装置のいくつかの実施形態は、中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える。
【0019】
第2の撮像装置のいくつかの実施形態では、走査素子は、第1の光軸に対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度で取り付けられ、折り畳みミラーは、走査素子と第2の光学素子の組との間に配置される。第2の撮像装置のいくつかの実施形態では、走査素子は、第2の光軸に対して垂直から20~25°だけ逸脱した角度で取り付けられ、折り畳みミラーは、走査素子と第1の光学素子の組との間に配置される。
【0020】
第2の撮像装置のいくつかの実施形態では、励起光のシートは、第2の光学素子の組を介して走査素子に到達し、励起光のシートは、第2の対物レンズに対して近位に位置決めされた第2のミラーを介して第2の光学素子の組に導入される。場合により、これらの実施形態では、第2のミラーは、面取りされた直線状の第1の縁部、および少なくとも1つの第2の縁部を有し、第2のミラーは、面取りされた直線状の第1の縁部が少なくとも1つの第2の縁部よりも第2の光軸に接近するように、取り付けられる。場合により、これらの実施形態では、第2のミラーは、並進ステージ上に取り付けられる。
【0021】
本出願の別の態様は、第3の撮像装置を対象とする。第3の撮像装置は、第1の光学素子の組、第2の光学素子の組、走査素子、複数の光源、少なくとも1つの光学ビームコンバイナ、少なくとも1対の位置合わせミラー、および第3の光学素子の組を備える。第1の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有し、第1の光学素子の組は、第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズを含む。第2の光学素子の組は、近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有し、第2の光学素子の組は、第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズを含む。走査素子は、第1の光学素子の組の近位端部に対して近位に、かつ第2の光学素子の組の近位端部に対して近位に配置される。
【0022】
第3の撮像装置では、走査素子は、励起光のシートが第1の光学素子の組を近位から遠位の方向に通過して、第1の光学素子の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、励起光のシートを送るように位置決めされ、ここで、励起光のシートは、斜角で試料に投射され、励起光のシートは、走査素子の向きに依存して変化する位置において試料に投射される。第1の光学素子の組は、試料からの検出光を遠位から近位の方向において走査素子へ送り返す。走査素子はまた、検出光が近位から遠位の方向において第2の光学素子の組を通過して、第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の位置に中間像平面を形成するように、検出光を送るように位置決めされる。
【0023】
第3の撮像装置では、光源の各々は、それぞれの波長におけるそれぞれの出力ビームを有する。少なくとも1つの光学ビームコンバイナは、複数の光源からの出力ビームを励起光の共通経路上へ送るように、複数の光源に対して位置決めされる。各位置合わせミラーの対は、それぞれの出力ビームのアライメントを調整するように、それぞれの光源に対して位置決めされ、少なくとも1対の位置合わせミラーは、試料内での全ての出力ビームの位置合わせを促進するように構成される。第3の光学素子の組は、出力ビームを励起光のシートに拡大するように構成される。
【0024】
第3の撮像装置のいくつかの実施形態は、中間像平面から到達する光をカメラに向かって送るように位置決めされた第3の対物レンズをさらに備える。
【0025】
第3の撮像装置のいくつかの実施形態では、励起光のシートは、第2の光学素子の組を介して走査素子に到達する。励起光のシートは、第2の対物レンズに対して近位に位置決めされた第2のミラーを介して第2の光学素子の組に導入される。第2のミラーは、第3の光学素子の組から励起光のシートを受け入れて、その励起光のシートを第2の光学素子の組の近位端部に向かって別ルートで送るように、位置決めされる。
【0026】
場合により、先の段落において説明された実施形態では、第2のミラーは、面取りされた直線状の第1の縁部、および少なくとも1つの第2の縁部を有し、第2のミラーは、面取りされた直線状の第1の縁部が少なくとも1つの第2の縁部よりも第2の光軸に接近するように、取り付けられる。場合により、これらの実施形態では、第2のミラーは、並進ステージ上に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1a】従来技術のSCAPEシステムよりも高い分解能を提供するSCAPE実施形態の概略図である。
図1b図1aに示されたミラー80の詳細図である。
図2a】撮像チャンバを製作するための様々な手法を示す図である。
図2b】試料の場所を見当合わせするためのテンプレートを示す図である。
図2c】見当合わせテンプレートに組み込まれた位置合わせ標的を示す図である。
図2d】撮像されている試料を拘束するためにFEPフィルムがどのようにして使用され得るかを示す図である。
図2e】チャンバ内に拘束されたC.エレガンス線虫の像を示す図である。
図3a】局所加熱を生じさせて生体を刺激するためのシステムのブロック図である。
図3b図3aの実施形態によって生じたIR照明に起因する局所温度上昇を示す図である。
図4a】基本的なSCAPEシステムのブロック図である。
図4b】NAを分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図4c】NAを分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図5a】水浸チャンバ(water-immersion chamber)の設計を示す図である。
図5b】別の水浸チャンバの設計を示す図である。
図5c】別の水浸チャンバの設計を示す図である。
図5d】カバーガラスを対物レンズ上に保持するための設計を示す図である。
図6a】ゼロ作動距離手法(zero working distance approach)を分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図6b】ゼロ作動距離手法を分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図6c】ゼロ作動距離手法を分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図6d】ゼロ作動距離手法を分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図6e】ゼロ作動距離手法を分析するために使用される2つの対物レンズ間の幾何学的関係性を示す図である。
図6f】ZWDレンズについてのガラス対水界面に対する予期される角度依存反射損失を示す図である。
図6g】ZWDレンズについてガラス対水界面に対する予期される角度依存反射損失を示す図である。
図7】第3の対物レンズにおいて水滴を保持するためのアダプタを示す図である。
図8a】SCAPEシステムにおける第3の対物レンズとして使用される浸漬レンズの前方に取り付けられた付加型スペーサを示す図である。
図8b図8aに示された付加型スペーサを鋳造し位置決めする方法を示す図である。
図8c図8aに示された付加型スペーサを鋳造し位置決めする方法を示す図である。
図8d】付加型スペーサを製作するための一連のステップを示す図である。
図8e】付加型スペーサを製作するための別の一連のステップを示す図である。
図8f】付加型スペーサを第3の対物レンズに添着するための一連のステップを示す図である。
図8g】第3の対物レンズに添着された付加型スペーサを示す図である。
図8h】付加型スペーサを製作し、そのスペーサを第3の対物レンズに添着するための異なる一連のステップを示す図である。
図8i】付加型スペーサを製作し、スペーサを第3の対物レンズに添着するための異なる一連のステップを示す図である。
図9a】TAGレンズを用いる2光子SCAPE実施形態の概略図である。
図9b図9aの実施形態において第3の対物レンズO3をカメラテレスコープに位置合わせするための手法を示す図である。
図9c図9aの実施形態のTAGレンズを通る光学経路と代替的な手法とを比較する図である。
図9d図9cに示された様々な手法についての光シートの湾曲を示す図である。
図9e】偏心して位置合わせされたTAGレンズを様々な振幅変調で走査したときの蛍光の測定値を示す図である。
図9f図9aにおけるTAGレンズを通るビームが軸外に移動されたときの照射野(illuminated field)の変化を示す図である。
図9g図9aにおけるTAGレンズを通って光が偏心して伝達されたときの予想される非対称のビーム変調を示す、シミュレーションの結果の図である。
図9h図9aにおけるTAGレンズを通って光が偏心して伝達されたときの予想される非対称のビーム変調を示す、シミュレーションの結果の図である。
図9i】カメラが行を横方向の画素として読むようにカメラの向きを回転させることを示す図である。
図9j】カメラの回転を伴わずに像をZにおいて圧縮するためにO3テレスコープに非対称の拡大を組み込むことを示す図である。
図10a】様々な素子がどのようにしてデュアルカメラSCAPEシステムに取り付けられるかを示す図である。
図10b】様々な素子がどのようにしてデュアルカメラSCAPEシステムに取り付けられるかを示す図である。
図10c】様々な素子がどのようにしてデュアルカメラSCAPEシステムに取り付けられるかを示す図である。
図10d】様々な素子がどのようにしてデュアルカメラSCAPEシステムに取り付けられるかを示す図である。
図11a】SCAPEのデスキャン型軸方向分解2光子実施形態の概略図である。
図11b図11aの実施形態を使用して取得される画像の例の図である。
図11c図11aの実施形態を使用して取得される画像の例の図である。
図11d】高速3-D2光子画像取得のための様々な手法を比較する図である。
図12a】誘導ラマン散乱およびコヒーレント反ストークスラマン散乱のエネルギー準位図である。
図12b】局所パルス列発生の例を示す図である。
図12c】階層的なパルス分裂の例として8経路分割を示す図である。
図12d】光学繊維および繊維結合器を用いた階層的なパルス分裂を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
同様の参照符号が同様の要素を表す添付の図面を参照しながら、様々な実施形態を以下に詳細に説明する。
【0029】
本出願は、SCAPEシステムのいくつかの改良、および/またはSCAPEシステムを実施するための代替的な手法を説明する。本明細書において、O1、O2、およびO3は、試料から検出器までのSCAPEシステムにおける第1の対物レンズ、第2の対物レンズ、および第3の対物レンズをそれぞれ意味する。以下の頭字語が本明細書において使用される:ZWD=ゼロ作動距離、FOV=視野、NA=開口数、NIR=近赤外、GDD=群遅延分散、PSF=点像分布関数、WD=作動距離。
【0030】
第1節 高検出NAを伴う高分解能多スペクトルSCAPE設計
図1aは、主としてC.エレガンス線虫の多スペクトル撮像のために設計されているが細胞撮像、インサイチュ(in-situ、その場)シークエンシング、エクスパンションシークエンシング、および新鮮組織における病理組織診断などの他の撮像用途への適用可能性も有する新規のSCAPE構成(本明細書では「Y-SCAPE」と呼ばれる)の概略図である。この設計は、新規のレンズの組の他に、レイアウトおよび調整点の修正を含む。図1aの設計の大きな利点は、O2およびO3として2つの空浸レンズを使用する高検出NAによる比較的広い視野を維持しながらいくつかの従来のSCAPEシステムよりも分解能がはるかに高いこと、および、より高い処理量である。
【0031】
図1aの実施形態は、近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有する第1の光学素子10~14の組を含む。第1の光学素子の組は、第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズ10を含む。図1aの実施形態はまた、近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有する第2の光学素子20~24の組を含む。第2の光学素子の組は、第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズ20を含む。図1aの実施形態はまた、第1の光学素子10~14の組の近位端部に対して近位に、かつ第2の光学素子20~24の組の近位端部に対して近位に配置された走査素子50を含む。
【0032】
走査素子50は、励起光のシートが第1の光学素子10~14の組を近位から遠位の方向に通過して、第1の光学素子10~14の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、励起光のシートを送るように位置決めされる。励起光のシートは、斜角で試料内に投射され、励起光のシートは、走査素子の向きに依存して変化する位置において試料内に投射される。
【0033】
第1の光学素子10~14の組は、試料からの検出光を遠位から近位の方向において走査素子50へ送り返す。走査素子50はまた、検出光が近位から遠位の方向において第2の光学素子20~24の組を通過して、第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の(すなわち、図1aにおける第2の対物レンズ20の左側の)位置に中間像平面を形成するように、検出光を送るように位置決めされる。
【0034】
図1aに示された実施形態では、第3の対物レンズ30が、中間像平面から到達する光をカメラ40に向かって送るように位置決めされる。カメラは、非常に高いフレームレートでの撮像を可能にするための高速度カメラ、増感カメラ、または他の方法で増幅されるカメラを含むことができ、したがって、広視野にわたる走査中に非常に細密なサンプリングを達成して、高い信号対雑音比および少ない光退色による、3次元での高い分解能および非常に高速の撮像速度の両方を実現させることができる。
【0035】
図1aに示された実施形態は、複数の光源60を含み、その各々が、それぞれの波長におけるそれぞれの出力ビームを有する。図1aに示された実施形態はまた、複数の光源からの出力ビームを励起光の共通経路上へ送るように複数の光源60に対して位置決めされた少なくとも1つの光学ビームコンバイナ64を含む。少なくとも1対の位置合わせミラー62が設けられる。各位置合わせミラーの対は、それぞれの出力ビームのアライメントを(例えば、ビームの角度および位置を調整することによって)調整するように、それぞれの光源60に対して位置決めされる。これらの位置合わせミラー62の対は、出力ビームが試料内で位置合わせされるように全ての出力ビームを位置合わせするために使用される。示された実施形態では、405nmの光源60からの光路が、レンズ66および67を通過し、他の全ての光源60からの光路が、レンズ68および69を通過する。
【0036】
場合により、レーザコンバイナは、個々のレーザ源60の出力が試料内で位置合わせされることになるようにそれらの出力が共通経路上に到達する前にそれらの出力のビームサイズ、発散、または集束を調整するために、1つまたは複数のレンズ系もしくは他の波面調整システムを含み得る。この追加の自由度は、位置合わせミラー62と相まって、試料における各レーザ波長からの照明光シートのずれをもたらし得るレンズ系内の色収差および色効果を事前に補正するために必要とされ得る。この事前補正は、組み合わせられたレーザ波長の下流の光学系への自由空間結合を必要とし、レーザ波長が他の多スペクトル顕微鏡システムには一般的である光ファイバ結合器を通じて組み合わせられて送られる場合には、容易には達成され得ない。この手法は、各照明波長のためのビーム特性の順次的な調整を必要としないことにより、非常に高速のまたは同時の多スペクトル撮像を可能にする。
【0037】
第3の光学素子72~76の組が、出力ビームを励起光のシートに拡大するように構成される。励起光のシートは、第2の光学素子20~24の組を介して走査素子50に到達する。より具体的には、図1aに示された実施形態において、励起光のシートは、第2の対物レンズ20に対して近位に位置決めされた第2のミラー80を介して第2の光学素子の組に導入される。この第2のミラー80は、第3の光学素子72~76の組から励起光のシートを受け取り、その励起光のシートを第2の光学素子20~24の組の近位端部に向けて別ルートで送るように、位置決めされる。いくつかの好ましい実施形態では、第2のミラー80は、図1bに示されるように、面取りされた直線状の第1の縁部81、および少なくとも1つの第2の縁部82を有する。これらの実施形態では、第2のミラーは、面取りされた直線状の第1の縁部が少なくとも1つの第2の縁部よりも第2の光軸に接近するように、取り付けられる。この第2のミラー80は、有利には、主要な光路内にダイクロイックビームスプリッタを使用しないので、多くの波長の使用を可能にする。
【0038】
場合により、第2のミラー80は、図1aにおいて第2のミラー80の隣の垂直矢印によって示されているように、第2の光学素子20~24の組の光軸に垂直な方向における第2のミラー80の位置の精密制御を提供する並進ステージ上に取り付けられ得る。
【0039】
システムはまた、多重レーザライン、およびエミッションフィルタセットを含むことができ、それらは、撮像される蛍光色素分子間のモーションレスの切り替えだけでなくハイパースペクトル撮像を可能にして、何百にもなる可能性のある色の組み合わせのスペクトル分解を可能にする。
【0040】
図1aに示された実施形態では、走査素子50は、第1の光軸に対して垂直から22.5°だけ逸脱した角度で取り付けられ、折り畳みミラー55が、走査素子と第2の光学素子20~24の組との間に配置される。しかし、代替的な実施形態(図示せず)では、走査素子50および折り畳みミラー55の位置は交換されてもよく、その場合、走査素子50は、第2の光軸に対して垂直から22.5°だけ逸脱する角度で取り付けられることになり、折り畳みミラー55は、走査素子50と第1の光学素子の組との間に配置されることになる。この段落で説明される実施形態は、有利には、折り畳みミラー55が省略され走査素子が第2の光軸および第1の光軸の両方に対して45°の角度で取り付けられる従来の手法に対して、有効口径を増大させる。
【0041】
場合により、2つのテレスコープアーム間の精密かつ容易な位置合わせのために、ケージシステムスイベルマウント(例えば、Thorlabs LC1A)が設けられ得る(すなわち、O2とO3との間に位置決めされる)。位置合わせはまた、シミュレーション由来の理想的な角度および位置を示す像と重ね合わせられる、上方からのO2およびO3のリアルタイムのカメラベースの視覚化を使用して最適化され得る。O3が図1aに示された40x 0.95NAのレンズを使用して実装される場合、40x 0.95NAのレンズに必要とされるカバーガラス補正を考慮するために、O3の前方にカバーガラスが慎重に位置決めされることが好ましい。
【0042】
場合により、O3の後焦点面の共役面をイメージスプリッタ42内に投射するために、O3の後ろに位置決めされる中継レンズテレスコープ32、36が設けられ得る。これは、より良好な像の一様性とともにより広いFOVを提供する。さらに、中間像平面の生成は、YおよびZの両方におけるイメージクロッピングを可能にし、これは、カメラ40上での2重チャネルスペクトル分解画像の配置に重要であり得る。
【0043】
表1は、図1aの実施形態においてうまく機能する素子の組を一覧表にしており、表2は、図1aに見られる様々な素子の中心間の距離を一覧表にしている。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
第2節 試料チャンバの設計
この節は、リソグラフィ、PDMS、アガロース、および関連する材料を使用してC.エレガンス線虫、ゼブラフィッシュ、および微小流体などの小試料のための試料ホルダを作ることについて説明する。高速3D(三次元)撮像の場合、綿密に生物体に3D視野内を移動させることが好ましい。その場限りのチャンバを製作する必要を含む場合、取付けは困難であり得る。
【0047】
自由に行動する動物のモーションブラーのない画像を得るには、行動領域(behavior arena)の物理的寸法を制約することが重要である。ポリジメチルシロキサン(PDMS)が続くSU-8ソフトリソグラフィは標準化されており、高度に繰返し可能な製作技法である。しかし、PDMS(n=1.41)と水(n=1.33)との間の相当な屈折率差により、PDMSベースのマイクロチャネルは、重度の収差を誘発する。ここで、本発明者らは、2次モールドとしてPDMSモールドを用いる鋳造スタンプ技法を開発した。最終的な行動領域は、アガロースにPDMSを押すことによって作ることができ、したがって、繰返し可能な領域幾何形状を維持することができる。UV硬化性ポリマーもまた、PDMSモールドからの鋳造に使用可能であり、アガロースよりも頑強でありながら、収差低減のために水に正確に一致し得る1.33を含む様々な範囲の屈折率で利用可能である(図2a)。
【0048】
リソグラフィを使用した撮像チャンバの製作は、試料の位置決め、および、顕微鏡視野に適合させるように試料を拘束することを促進する。対物レンズの要件に対応し、分解能を向上させるために、ガラス製カバースリップ、カバースリップなし、屈折率整合ポリマー、およびFEPカバースリップの選択肢が、場合により使用され得る。図2a~図2eを参照されたい。表面を埋めかつ保護するための毛管現象のために、頂部は、例えば図2dに示されるように、カバースリップ、屈折率整合ポリマーフィルム、またはFEPなどの材料によって覆われ得る。
【0049】
設計は(例えば、図2bに示されるように)、多目的な試料の取付けおよび識別を可能にするために、多岐にわたるウェルサイズ/見当合わせ可能位置を含み得る。最終的な鋳造は、迅速かつ安価であり得る。多くの設計が、実験中の使用のために作られ得る。例えば、特定のサイズの線虫を選択して顕微鏡視野に適合させる場合、多目的な型が、単一のスライド上で利用可能な複数の異なる形状およびサイズを有し得る。サイズは、格子/参照記号(referenceable)によって整理され得る。設計は、いくつかの試料を同時に取り付けることを可能にし得る。ポリマー型は、再利用可能であり得る。
【0050】
設計は、較正、検証、および視野のための「位置合わせ標的」タイプの構造をスライド上に組み込むことができる。ポリマーから作られている場合、チャネルは(例えば、図2cに示されているように)、フルオレセインまたは類似のものを導入して満たすために、3Dコントラストのために、タブを収容することができる。リソグラフィ製造はまた、3次元較正および視野一様性評価を含むシステム特徴付けのための標的を含むために使用され得る。それらの標的は、最小限の追加の間接費で各試料ホルダプレートに組み込まれ得る。
【0051】
多層リソグラフィは、3D較正、および試料の屈折率に整合する標準化標的をより恒久的なものにするために使用され得る。FEP(フッ素化エチレンプロピレン)は、水に近い屈折率を有するプラスチックの一種であり、したがって、屈折率の不整合による収差を発生させることなしに試料を拘束するために、ガラス製カバースリップの代わりに使用され得る。この高分解能システム、および「単一対物レンズ」幾何学的配置と相まって、本発明者らは、FEPを本発明者らの撮像チャンバに組み込むことによりシステムにおける残存収差が著しく改善されることを見出した。図2d~図2eを参照されたい。
【0052】
第3節 試料の監視および操作の付加
図3a~図3bは、例えばトラッキング、侵害刺激、および固定化を含めて試料と相互作用するための、2次試料撮像、集中的試料加熱(例えば、レーザ加熱)、および能動的試料冷却の組み込みを示す。これらの実施形態は、行動、移動、および細胞シグナル応答のリアルタイム撮像による標本との相互作用を可能にする。場合により、NIRによる補足的撮像、およびトラッキングが実施され得る。場合により、図3aに示された試料の撮像および操作の実施態様のうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0053】
図3bは、IR照明に起因する局所温度上昇を示す。より具体的には、図3bは、(寒天中の)FITC蛍光発光の温度依存変化の画像を示す。可視ビームを使用することにより、標的の位置合わせが可能になる。加熱レーザが、慎重にタイミングが決定され、および/または出力を動的に調整されるように、収集ソフトウェアによって制御され得る。それは、例えば、動態カメラ(behavior camera)からの画像の閉ループ解析によって引き起こされ得る。
【0054】
システムは、C.エレガンス線虫の標的とされた加熱刺激に対して試験された。同じまたは類似の焦点手法もしくはパターン化手法が、光遺伝的刺激のために使用され得る。
【0055】
第4節 検出NAの最大化
検出NAは、O2とO3との間で像を回転させる必要性により、SCAPEにおいて減少される。図4a~図4cは、O1~O2~O3のために使用される様々なレンズに基づいてSCAPEにおける検出NAを支配する条件を導き出す。それらは第1に、Y-SCAPE(すなわち、図1aに示された構成)における高NAのO3が、いくつかの以前の設計よりも強力に向上された検出効率を提供することを示す。しかし、適切なレンズの商業的な入手可能性のせいで現在の実施形態では視野が制限され、この場合、レンズを一緒に位置決めするための十分な空間を有するために、O3としての市販の40x 0.95NAのレンズが、O2としての50xのレンズの選択を必要とした。
【0056】
この分析は、O2およびO3として2つの水浸レンズを使用し、それらの水浸レンズをそれらの間に水を含んで位置決めすることにより、より広い視野が得られ得ることを裏付ける。NAは、Y-SCAPEほど良好ではないが、いくつかの以前の設計よりは良好である。
【0057】
次に図4b~図4cを参照すると、本発明者らは、O2=48.59°の角度として0.75NAの空気対物レンズを典型的に使用した。これは、O1が1.0NAの水浸レンズであるときの試料におけるシートのおおよその角度に一致する。O3の焦点面を試料から中継される光シートの斜め像と位置合わせしながら可能な限り多くの光を収集するために、高NAのO3が望ましい。このレンズの選択は、通常、レンズを物理的に位置決めするのに利用できる作動距離、および、より高いNA(一般に、より高い倍率)のレンズのより狭い視野によって制限される。
【0058】
式NA=n sinαに基づく。以下の表は、NAと屈折率nとの様々な組み合わせが対物レンズに対して使用されたときの得られる角度αを示す。
【0059】
【表3】
【0060】
次に図4cに目を向けると、本発明者らは、以下の関係性を有する:
シート角度=α-β;
γ=α/2+α-β-45;
式中、2γは、O3によって受け入れられる光の角度範囲である。
【0061】
先の構成は、O1としての1.0NAの水対物レンズ、O2(α=48.59)としての0.75NAの空気対物レンズ、および(NA=n sinαを使用すると)26.74°の角度αをもたらすO3のための10x 0.45NAの空気レンズを使用した。そのため、β=0の場合、γ=16.96°である。
【0062】
図1aの実施形態では、0.95NA 40xの空気レンズとしてO3を使用することにより、71.81°の角度αがもたらされる。そのため、β=0の場合、γ=71.81/2-45+48.59=39.5°である。
【0063】
別の実施形態では、最大シート角度(β=0)に対して本発明者らが1.0NAの水浸レンズ(α=α=48.75°)としてO2およびO3を整合させると、γ=48.59/2-45+48.59=27.88°であるが、それは、図1aのY-SCAPE構成よりもはるかに広い視野(>1mm)を可能にする。
【0064】
第5節 水チャンバの設計
Y-SCAPEの2つの空気対物レンズを(図1aの実施形態におけるように)使用する代わりに、3つの水浸対物レンズをO1、O2、およびO3のために使用して、より広い視野だけなく、いくつかの以前のSCAPE設計と比較して良好な分解能および処理量を得ることができることを、本発明者らはすでに説明した。
【0065】
しかし、O2およびO3において水浸レンズを使用することは、水チャンバを必要とする。多くの光シートシステムが水チャンバを使用するが、それらは一般に、撮像中に試料を保持するために使用され、様々な要件および制約を有する。ここで、本発明者らは、位置合わせのための自由度を維持しながら漏れ、蒸発、または汚染の可能性を減らす、安定性があり、かつ安全な設計を説明する。
【0066】
O2およびO3における2つの水浸対物レンズに対応するために、本発明者らは、動的位置合わせに対応する様々な水浸チャンバを設計した(図5a~図5c)。
【0067】
類似の設計もまた、カバーガラス補正されるシステムにおいてカバーガラスを対物レンズ上に保持するために作られた(図5d)。精密撮像にはカバーガラス補正が重要な要素であり得ることを、本発明者らは見出した。これは、O2およびO3のどちらかのレンズがカバーガラスを必要とする場合にO2とO3との間にカバーガラスを含むことを含む。本発明者らは、それらのカバーガラスを保持するのに使用するための様々なキャップを製造した。いくつかの実施形態では、カバーガラスが対物レンズに恒久的に接着され得ない限り、精密な位置合わせが好ましい。O2においてカバーガラスが含まれるかまたは省略される場合に、O1においてカバーガラスが必要とされるかどうかに適応することができることの、ある程度の相互関係が存在し得る。
【0068】
第6節 ゼロ作動距離手法(ZWD)
O2とO3との間に2種類の異なる浸漬媒体を有することにより、O3内へのはるかに大きな光錐の受入れが可能になる。20x 1.0NAの水浸主対物レンズ(O1)を含む標準的なSCAPE2.0レイアウトにO3としてゼロ作動距離(ZWD)長さのレンズを組み込む新規のシステムが構築された。このタイプのZWDレンズを従来のSCAPEシステムに追加することにより、高速3D細胞内撮像のためのSCAPEの(たとえより狭い視野にわたってでも)高分解能のバージョンがもたらされる。このZWDレンズの追加的なバーションが、より広い視野を有して存在し、分解能および光処理量を(増大された検出NAを介して)高めてより広くかつより有用な視野を提供するために、このSCAPE設計に組み込まれ得る。
【0069】
図6a~図6eは、このZWD手法の基準を導き出すものであり、O2が空浸レンズでありO3が1.0NAの(非空気)浸漬レンズである場合、原則的に、O1またはO2のNAに関わりなく(O2がO1のNAの全てを中継するのに十分なNAを有しており、偶発的な損失を無視する限り)O1から来る光の100%が検出可能であることを示す。
【0070】
n1-n2に対する予期された角度依存損失、偏光依存損失、空気-ガラス対空気-水の屈折率が、より高い屈折率の材料に対して予期された相当な反射とともに、図6f~図6gに示されている。この反射は、ZWD界面を形成する材料の屈折率(n2)に依存するO3に入る光の量を減少させ、より高い屈折率(例えば、ガラス)、および、入射角が大きい光線(例えば、Bと標識された光線)に対しては、損失が最大である。
【0071】
O1、O2、ならびにO3のNAおよびRIを考慮すると、図6a~図6eを参照すると、従来のSCAPE設計は、典型的に、1.0NAの水浸レンズをO1として使用してきた。0.75NAの空気O2を使用することにより、O2の後ろで48.59°の全検出角度が保たれる。したがって、O3としての1.0NAの水浸レンズ(斜光シートの像と位置合わせされる焦点面まで水を含む)は、O1により試料から収集された光の100%を捕捉する。これは、空気における1.0NA=90°であり、したがって、O2としての空気対物レンズと対にされたO3としての任意の1.0NAの対物レンズがO2からの光の約100%を捕捉するためである。このことは、標準的な1.0NAの水浸対物レンズが、この要求を満たすために「水スペーサ」の追加によって修正可能であることを意味する。
【0072】
O2としての非空浸レンズに移ることの唯一の便益は、O1からのより高いNAを活用することであり得る。しかし、O1における1.1NAの水レンズは、O2において55.7°を生成し、これは、(WDの制約がなければ)O2における40x 0.95NAの空浸レンズによって受け入れられ得る。O1およびO2のNAを増大させることにより、分解能および処理量が高まるが、斜角、反射損失が増大し、また一般に、FOVが狭くなる。
【0073】
O1およびO2が低NA(例えば、空気において0.5)である場合であっても、ZWDの効果は、光検出効率を著しく向上させるであろう。一部の事例では、αが小さく、かつO2およびO3がどちらも空気対物レンズである場合、O3によって検出される光の量は、ゼロであり得る(例えば、図4cに関して、45+β-α>α/2)。O3においてZWDレンズを使用することにより、この事例では光収集効率を大きく向上させることができ、例えば広視野、長作動距離、空浸の屈折率分布型(GRIN)レンズの適用のために、O1としての低倍率の(また一般に、低NAの)レンズの使用が可能になる。
【0074】
第7節 多浸漬アダプタ
アダプタは、O2/O3間の光学界面においてより多くの光を取り込むために屈折率不整合を活用しながら、異なる浸漬を伴う様々なレンズの対形成を可能にする能力を有する。これらの実施形態はまた、カバーガラス補正対物レンズが使用される場合には、O2とO3との間にカバーガラスを保持するために使用され得る。本発明者らは、様々な浸漬レンズ-それらが1.0NAを有するという唯一の条件を含む-を使用する任意のシステムから光の約100%を捕捉するこの手法の柔軟性を認識している。
【0075】
O3には1.0NAの水浸対物レンズで十分であることを認識し、本発明者らは、1.0NAの浸漬対物レンズの前方にスペーサを追加する能力により、ZWD界面を提供するガラス錐台を含むレンズなどの特注のレンズなしで、より大きな検出NAを得るための多用途、低コスト、かつより広い視野のオプションZWDレンズが提供されることを認識している。図7は、浸漬媒体の小滴を拘束するためにカバーガラス(カバーガラス補正される液浸対物レンズの場合)または他の(FEPなどの)屈折率整合材料によって拘束される前面とともにこれらの目的のために水(または他の浸漬媒体)小滴を保持するための、3D印刷された様々な適切なアダプタを示す。
【0076】
第8節 ゼロ作動距離(ZWD)「ブロブ」手法
浸漬のために真に液体の水を使用することの難しさを念頭に置き、本発明者らは、第3の対物レンズ(O3)として使用される1.0NAの浸漬レンズをZWDレンズに変換して検出NAを最大限に高めるために1.0NAの浸漬レンズの前に取り付けられ得る適切な屈折率を有するスペーサを製作する技法を開発した。これは、1.0NA、2mmWD、20xの水浸対物レンズ、および1.33の屈折率を有するUV硬化性ポリマーを使用して達成された。このレンズは、カバーガラス補正されず、したがって、スペーサは、焦点面におけるガラス製カバースリップまたは他の材料を伴わずに単一のユニットとして形成された。使用された材料はまた、自己蛍光が低いものである。図8a~図8iにおける詳細は、O3としてガラス錐台ベースのZWDレンズを使用することに優るこの手法の顕著な利点を含めて、この手法(本明細書では「ブロブ」手法と呼ばれる)のための製作手順、取付け手順、および位置合わせ手順を示す。
【0077】
図8dは、BIO-133(水と同じ屈折率を有するUV硬化性ポリマー)を使用して本発明者らがこの節において「ブロブ」と呼ぶものを製作するための第1の手法のステップを示す。第1のステップは、ネガティブモールドを3D印刷するステップである。次のステップは、3D印刷したモールド上にスライドガラスを取り付けるステップである。次のステップは、BIO-133を注入し、次いで真空を用いてガスを除去するステップである。次のステップは、頂部に第2のスライドガラスを追加して平坦面を作り出し、続いてポリマーをUV硬化させるステップである。しかし、この第1の手法は、BIO-133に横からアクセスすることができず、そのことが(上面および底面に接触することは回避されるべきなので)解放を難しくするため欠点を有するということに、留意されたい。
【0078】
図8eは、この節において論じられる「ブロブ」を製作するための第2の手法のステップを説明する。第1のステップは、2重ネガティブモールドを3D印刷するステップである。次のステップは、PDMSを注入し、次いでPDMSを硬化させ、PDMSを第1のモールドから取り出すステップである。この時点で、PDMSから作られたネガティブモールドは、薄い底部を有する。次のステップは、薄いPDMSの底部を取り除いて、貫通孔を取り囲む側壁の組を作り出すステップである。側壁の組は、複数の表面(例えば、正方形の事例では4つの側壁)、または(円筒の事例では)単一の連続的な表面のみを含み得る。次のステップは、PDMSの側壁を高平坦性スライドガラスに押し付けるステップである。PDMSの側壁は、可逆結合によって付着する。次のステップは、BIO-133を注入し、真空を用いてガスを除去するステップである。次のステップは、頂部に第2のスライドガラスを追加して平坦面を作り出し、続いてUV硬化させるステップである。最後のステップは、PDMSの側壁およびスライドガラスを取り外し、硬化したBIO-133ポリマーを残すステップである。酸素はポリマーのUV硬化を弱め、PDMSは酸素透過可能であるので、ここでのPDMSの使用は、PDMS-BIO133界面間に未硬化ポリマーの層をもたらし、それが取外しを促進する。
【0079】
ここで図8fに目を向けると、「ブロブ」を製作するためにどの手法(図8d~図8eに関連して上述された2つの手法を含むがそれらに限定されない)が使用されても、ブロブおよび第3の対物レンズO3は、例えば図8fに示されたステップを使用して、組立体を形成するために組み立てられる。より具体的には、この例の第1のステップは、ポリマーブロブをきれいなパターン化されたスライドガラス(例えば、分解能標的)と接触させるステップである。次のステップは、3D印刷した支持体をポリマーと優しく接触させるステップである。これは、後でポリマーを支持してポリマーの座屈を回避することを意図されている。支持体およびポリマーは、UV接着剤を用いて互いに結合され得る。次のステップは、組立体をO3の下に設置し、間隙を水で満たすステップ、および、無限遠においてチューブレンズを用いてカメラ上に焦点画像が存在するまでO3の焦点を合わせるステップである。次のステップは、3D印刷した第2のデバイスをポリマー組立体に取り付けるステップである。ここでの意図は、分解能標的をカメラから継続的に観察することによりポリマーブロブを最適な位置に固定することである。しかし、図8fの手順が使用される場合、追加されるブロブがその(非常に滑らかな)前面が対物レンズの焦点面と正確に位置合わせされた状態で精密に位置合わせされることを確実にするのが困難であり得ることに、留意されたい。
【0080】
図8hは、この節において論じられるブロブを製作するための第3の手法のステップを示し、この第3の手法は、非常に良好な性能をもたらしており、ブロブの前面と第3の対物レンズ(O3)の焦点面との精密な位置合わせを促進する。この手法は、下方のスライドガラスの代わりに高平坦性ミラー95が使用されること、および、UV硬化に先立ってブロブの上に第2のスライドガラスが追加されないこと以外は、多くの点で図8eに関連して上述された手法に似ている。したがって、この第3の手法のステップは、以下の通りである。第1のステップは、2重ネガティブモールドを3D印刷するステップである。次のステップは、PDMSを注入し、2重ネガティブモールドを押し込み、次いでPDMSを硬化させて取り出すステップである。この時点で、薄い底部を有するPDMSから作られたネガティブモールドを有する。次のステップは、薄いPDMSの底部を取り除いて、貫通孔を取り囲む側壁の組を作り出すステップである。側壁の組は、複数の表面(例えば、正方形の事例では4つの側壁)、または(円筒の事例では)単一の連続的な表面のみを含み得る。次のステップは、PDMSの側壁をミラー95に押し付けるステップである。PDMSの側壁は、可逆結合によりミラー95に付着する。次のステップは、BIO-133を注入し、真空を用いてガスを除去するステップである。次のステップは、UV硬化させるステップである。そして最後のステップは、PDMSの側壁を取り外し、硬化したBIO-133ポリマーの「ブロブ」を残すステップであり、ブロブは、この時点では依然としてミラー95に固着されている。いくつかの実施形態では、硬化したブロブは、最終的にブロブが取り付けられる対物レンズの作動距離の75~95%の間の厚さを有する。例えば、対物レンズの作動距離が2mmである場合、硬化したブロブは、1.8mmの厚さを有し得る。
【0081】
この第3の手法では、ブロブの前面は、カバーガラスまたは顕微鏡スライドにではなく、非常に平坦なミラー95上に成型される。誘電性前面ミラーは、超平坦面を有して-およそ4分の1波長の範囲内の精密さで-製造される。したがって、ミラーは、250nm未満の許容誤差で平坦になる。これは、ミラーをブロブの超平坦な共平面を成型するのに理想的なものにするだけではなく、ブロブの前面がミラーに接触するという事実は、以下で詳述されるような位置合わせプロセスのために使用される。
【0082】
次に図8iを参照すると、リグ全体が、デジタル傾斜計を用いて最初に位置合わせされる。示されるように、依然としてそれが成型されたミラー95に取り付けられている最初に成型された約1.8mm厚さのブロブ91は、次いで、対物レンズのきれいなガラス前面とBIO-133の硬化したブロブ91との間にある量の未硬化BIO-133ポリマー92を有して、対物レンズ30の前に位置決めされる。図8iにおいて縦縞で標識された光路は、拡大されかつ50:50ビームスプリッタを介して対物レンズに送り出された平行レーザ光を表す。この光は、(ブロブを通って)ミラー95に反射して、対物レンズ30を通って戻ってくる。次いで、ミラー95(依然としてブロブ91が取り付けられている)の位置は、1距離および2D傾斜の両方において調整され、一方で、戻ってくる光の平行特性は、例えば正確な平行をチェックするシアプレート(sheer plate)を使用して監視される。ミラー(したがって、「ブロブ」の前面)が対物レンズ30の焦点面と正確に位置合わせされているときにだけ、戻ってくる光が平行になる。いったんこの状態に達すると、ポリマーのブロブ91の周りの環境から酸素がパージされ(これは、ポリマーの適切な硬化を確実にする)、UV光(横縞によって表される)が対物レンズを通って(ダイクロイックビームスプリッタを介して)下方に投射され、すでに硬化した「ブロブ」91と対物レンズ30のガラス面との間の液体ポリマー92を硬化させて、恒久的な結合を提供する。次いで、ミラー95は、「ブロブ」91の前面から剥離される。次いで、ポリマーの完全硬化を確実にするために、追加のUV光が使用され得る。
【0083】
浸漬対物レンズ30のためのスペーサを製作するための図8h~図8iに示された手法の最も重要なステップは、以下の通りである。最初に、図8hに見られるように、側壁の組の間に位置決めされたミラーの部分がネガティブモールドの底部として機能するように、側壁の組がネガティブモールドの底部と協働して液密空洞を形成するように、ネガティブモールドの側壁がミラー95に押し付けられる。次に、液密空洞は、第1の量のUV硬化性ポリマーで満たされる。次いで、第1の量のUV硬化性ポリマーは、第1の固体塊91に硬化される。第1の固体塊91の下面は、ミラー95に付着する。次に、側壁の組は、第1の固体塊91の下面とミラーとの間の付着を乱すことなしに、ミラー95から取り外される。次に、第1の固体塊91の上面は、第2の量のUV硬化性ポリマー92が第1の固体塊91の上面と対物レンズ30との間の空間を占めている状態で、対物レンズの近くに位置決めされる。位置決めに続いて、第1の固体塊91の位置は、第1の固体塊の下面(ミラー95の上面と直接接触している)が対物レンズ30に対する最終位置に到達するまで、調整される。第1の固体塊91が最終位置に到達した後、第2の量のUV硬化性ポリマー92が硬化される。
【0084】
第1の固体塊91の位置の精密な調整を得るための優れた方法は、ミラー95によって反射された光の平行特性を検出しながら、対物レンズ30を通してミラー95に向かって平行光を投射することである。第1の固体塊91が最終位置に到達したという判定は、ミラー95によって反射された光が正確に平行になったときになされる。これは、例えば、シアプレートを使用して達成され得る。
【0085】
第2の量の硬化性ポリマー92の硬化のための適切な手法は、対物レンズ30を通して第2の量のUV硬化性ポリマー内にUV光を投射することである。場合により、対物レンズを通して第2の量のUV硬化性ポリマー92内にUV光を投射することに続いて、第2の量のUV硬化性ポリマーをさらに硬化させるために、追加のUV光が適用される。
【0086】
第2の量のUV硬化性ポリマーの硬化後、ミラー95は、対物レンズ30が使用され得るように、第1の固体塊91の下面から取り外される。
【0087】
ゼロ作動距離手法は、上記の例を超えて拡大され得る。適切な屈折率を有する任意のタイプの固体材料(または、拘束された液体)が、既存の浸漬レンズを修正するために使用され得る。浸漬レンズ(水浸レンズばかりでなく、必ずしも1.0NAのレンズではない)への恒久的な延長部を成型するために使用され得る正確な屈折率を有する多くのUV硬化性の(または、例えば時間、熱、照射、もしくは化学薬品を介して硬化可能/活性化可能な)化合物または接着剤が存在する。例えば、非特許文献1を参照されたい。様々な粘性および最小限の蒸発量を有するRI(屈折率)整合ゲルも利用可能である。例えば、非特許文献2および非特許文献3を参照されたい。
【0088】
別の選択肢は、PDMS(屈折率約1.43)を組織透明化撮像のために設計されたレンズ(透明度RI約1.4)と組み合わせて使用することであり、レンズのうちのいくつかは、「ブロブ」材料の屈折率のための精密整合を可能にするために、補正環を有する。O3においてより多くの光を捕捉するために、精密成型されたスペーサが、それらの高NA、長WDのレンズに対する恒久的な修正を提供し得る。
【0089】
カバーガラス補正される浸漬レンズもまた、前面がガラスのチャンバとともに使用可能であり、本明細書において説明されるように、空間は液体または例えば硬化性ポリマーで満たされる。FEPベースの前面の水チャンバは、カバーガラス補正を伴わない水浸漬レンズ(water immersion dipping lens)のために使用され得る。特定の他のプラスチックまたはシリコーン材料もまた、一般的なシリコーンまたはオイル浸漬屈折率に整合するように、固体ブロックまたはチャンバに作られ得る。多浸漬および屈折率調整可能レンズもまた、材料選択の容易さのために用いられ得る。
【0090】
「ブロブ」素子を光学特性、材料の形状、または光学的完全性を変化させ得る粉塵または他の環境要因から保護するために、完成した修正済みレンズの周りに場合により着脱式キャップとともに保護チューブまたはハウジングを追加することが、有利である。この事例は、位置合わせのための両方のレンズの調整を可能にする、図5a~図5cに示された(浸漬液の追加を伴わない)キャップ付きチャンバの形態をとることができる。
【0091】
ZWD O3としてのNA1.0の水対物レンズなどの対物レンズ上のこの「ブロブ」手法の利点は、以下を含む。(1)「ブロブ」手法は、一般的な約6,000米ドルの対物レンズ(例えば、1.0NAの水浸レンズ)の単純かつ安価な修正である。(2)変形可能なポリマー材料を使用することにより、位置合わせ中の損傷が防止され、かつ、様々なO2の幾何形状に対応するように成形可能である。(3)ブロブは、必要に応じて除去/交換/再生可能である。(4)使用されるO3レンズのうまく特徴付けされた性能により、広い(例えば、>1mmの)視野を得ることができる。(5)高NAのガラスと比較して、空気に対する減少した表面反射:1.33の界面。(6)O2からの光の同様の100%の受光角が達成可能である。また、空気およびガラスと比較して、空気と水との間のより小さな屈折率不整合のおかげで、像平面における焦点外れに対する許容差がより良好である。斜め平面の遠隔焦点マッピングは斜め平面の小さな湾曲を一般に導入するので、上記のことは重要である。しかし、これはZWD手法に利用可能な深度範囲における制限因子であり得ることに、留意されたい。
【0092】
第9節 2光子SCAPE
図9aは、照明の全シートを使用し、生きているマウスの脳などの散乱組織における20ボリューム毎秒の2光子撮像をもたらすことができる、2光子(「2P」)SCAPEシステムの概略的かつ実験的な構成を示す。500kHzまでのパルスピッキングを伴う100W、1MHz、100μJのパルスポンプレーザ(Spectra-Physics)が、非共線光パラメトリック増幅器(NOPA)をポンピングして940nmのパルスを発生させるために使用された。
【0093】
図9aにおける題語は、以下の通りである。HWP:ビーム減衰のために使用される半波長板、EOM:検流計ミラーフライバック中にビームを遮断するための電気光学変調器、TAG:試料における高NA光シートの軸方向位置の調節のために使用される焦点距離可変音響勾配(tunable acoustic gradient)レンズ、CL:光シートを生成するための円柱レンズ、L1/2:中継のためのアクロマートレンズ、SL1/2:走査レンズ、TL1/2/3:チューブレンズ、O1/2/3:対物レンズ、DM:ダイクロイックビームスプリッタ(700nmショートパス)、EF:エミッションフィルタ。カメラは、Zyla 4.2+(Andor)またはHICAM Fluo(Lambert)のいずれかであった。
【0094】
視覚刺激を受けている、覚醒し行動しているマウスおよびゼブラフィッシュ幼生における実験のための撮像構成が実施された。SCAPE撮像幾何は、図9aの右下隅に示されている。
【0095】
図9aの実施形態は、近位端部、遠位端部、および第1の光軸を有する第1の光学素子10~14の組を含む。第1の光学素子の組は、第1の光学素子の組の遠位端部に配置された第1の対物レンズ10を含む。図9aの実施形態はまた、近位端部、遠位端部、および第2の光軸を有する第2の光学素子20~24の組を含む。第2の光学素子の組は、第2の光学素子の組の遠位端部に配置された第2の対物レンズ20を含む。図9aの実施形態はまた、第1の光学素子10~14の組の近位端部に対して近位に、かつ第2の光学素子20~24の組の近位端部に対して近位に配置された走査素子50を含む。
【0096】
走査素子50は、励起光のシートが第1の光学素子10~14の組を近位から遠位の方向に通過して、第1の光学素子10~14の組の遠位端部を越えて遠位に位置決めされた試料に入射するように、励起光のシートを送るように位置決めされている。励起光のシートは、斜角で試料内に投射され、励起光のシートは、走査素子の向きに依存して変化する位置において試料内に投射される。
【0097】
第1の光学素子10~14の組は、検出光を遠位から近位の方向において試料から走査素子50へ送り返す。走査素子50はまた、検出光が近位から遠位の方向において第2の光学素子20~24の組を通過して、第2の光学素子の組の遠位端部を越えた遠位の(すなわち、図9aにおける第2の対物レンズ20の左側の)位置に中間像平面を形成するように、検出光を送るように位置決めされている。
【0098】
図9aに示された実施形態では、第3の対物レンズ30が、中間像平面から到達する光をカメラ40に向かって送るように位置決めされている。場合により、第3の対物レンズ30および第2の対物レンズ20は、流体チャンバ90を介して光学的に結合される。
【0099】
しかし、代替的な実施形態では、高NA受光角溶融繊維束が、第2の対物レンズ20を越えた遠位にある中間像平面からカメラに向かって光を中継するように位置決めされ得る。これらの代替的な実施形態では、繊維束は、第2の対物レンズ20によって形成される斜光シートの像と位置合わせされる前面を有し得るか、または、繊維束は、光を収集するとともに像回転を実現するために、第2の対物レンズ20によって形成される斜光シートの像と位置合わせされるベベルカット縁部を有し得る。
【0100】
図9bは、第3の対物レンズO3を図9a実施形態におけるカメラテレスコープに位置合わせするための手法を示す。この構成は、O3の光路の残りの部分への大きな影響を伴わずに、焦点面のより微細な調整を可能にする。ここに示されるように、O3のマウントは、カメラチューブレンズおよびカメラマウントから分離されている。以前の実施態様は、焦点の(対物レンズの方向に平行な)微調整を有した。しかし、本発明者らは、このレンズの横方向および垂直方向の調整(また、可能な場合は、回転、チップ、およびチルト)は、O3を保持しているマウント上のマイクロポジショナによって最も良く行われることを見出した。その位置に対する微調整は、O3から出てカメラの前にイメージスプリッタおよびチューブレンズを通り抜けるビームとほとんど関連がないが、中間像平面上での焦点合わせにとって極めて重大な微調整を提供し得る。
【0101】
場合により、図9aの実施形態のシステムは、2つの水浸対物レンズO2およびO3を結合するために、水チャンバを使用し得る。O3の位置の調整などを可能にするこの水チャンバのための様々な設計が開発されてきた。この水浸構成は、2光子SCAPEを使用してアクセス可能なより深い深度範囲(例えば、約400~450マイクロメートル)を撮像するための実行可能な選択肢であるように思われる。
【0102】
あるいは、向上された光収集効率および分解能が、浸漬対物レンズの浸漬媒体に整合するガラス界面または材料とともに、O2としての空気対物レンズおよびO3としてのゼロ作動距離(ZWD)レンズを使用して得られ得る。そのようなレンズが1.0のNAを有する場合、原則的に、O1によって捕捉されてO2を通して(この事例では、O2は、0.75NAの空気レンズに置き換えられるであろう)中継される光の全角度を捕捉することができるはずである。別のZWD構成は、O2の後ろで中間像平面からの光を中継するために、その前面により焦点面において位置合わせされるかまたは光を収集するとともに像回転を実現するために焦点面と位置合わせされるベベルカット縁部を有する、高NA受光角溶融繊維束を使用し得る。ここで、溶融繊維束の裏側は、適切なO3を用いて撮像される。
【0103】
しかし、これらのZWD選択肢は、光の効率的な収集を実現するはずであるが、それらの手法はO1とO2との間の像における収差のためにその全Z範囲に沿って中間斜め像平面を取り込む能力が限定されるであろうという予想がある程度されており、そのため、上記で詳述された水-水手法は、2P-SCAPEの全(拡大された)深度範囲に沿った光の収集にとって最適であり得る。
【0104】
この問題を克服するための代替的な手法は、照明波面を最適化して、O3内への効率的な収集のために02の後ろに可能な限り平坦な像を生成するために、適応光学を使用することであろう。
【0105】
図9aの実施形態においてTAGレンズを使用することは、大きな利点を提供する。TAGレンズは、迅速に変調可能な調整可能レンズである(例えば、Mitutoyo America Corporationから入手可能なMitutoyo TAGLENS-T1)。図9aにおいて指示された位置にTAGレンズを使用することは、より薄い平面におけるより効率的な非線形励起を達成するためにより狭い(しかし、なおも引き伸ばされた)ウエスト(waist)を有するより高いNAの光シートを生成すること、および、このウエストを試料内で非常に迅速に上下に掃引してカメラ上に撮像されるべき光シートの同等物を生成することを可能にする。
【0106】
図9cは、TAGレンズを使用するための3つの有望な手法を示す。より具体的には、図9cのパネル1(すなわち、上方のパネル)は、シートの平行を変えることなしに、Zにおける焦点面の走査を可能にする、第1の手法を示す。しかし、この手法は、システムのレーザがレンズ内で集束されることを必要とし、これは、本発明者らのレーザパラメータの選択では(集束レーザ出力がレンズに対する推奨損傷閾値を超過する可能性があるため)不可能であった。
【0107】
しかし、注目すべきことに、本発明者らは、パネル1に示されたレイアウトに対して2つの修正を行うことにより試料における比較的一様なシート励起の安全な生成が可能とされたことを確定した。それらの2つの修正は、以下の通りである。第1に、TAGレンズは、外部の凹面円柱レンズと(パネル2、すなわち中央のパネルに示されるように)組み合わせられる。そして第2に、TAGレンズは、ビームがTAGレンズの光軸に対して偏心してTAGレンズを横断するように(パネル3、すなわち下方のパネルに示されるように)取り付けられる。
【0108】
図9aに戻ると、光源160が、励起光を生成する。示された実施形態では、光源160は、励起光のパルスを生成し、励起光のパルスは、それらがTAGレンズ110に到達するのに先立って、プリズムコンプレッサ166により間に合うように(in time)圧縮される。
【0109】
TAGレンズ110は、光軸を有し、TAGレンズは、(a)励起光がTAGレンズの光軸に平行にTAGレンズを通って移動するように、および、(b)励起光がTAGレンズの光軸に対して偏心してTAGレンズを通って移動するように、励起光を受け入れるように位置決めされる。円柱レンズ115が、励起光のシートがTAGレンズと円柱レンズとの直列組み合わせから出て行くように、TAGレンズ110と直列に位置決めされる。そして、反射面58(例えば、ダイクロイックビームスプリッタ)が、励起光のシートを走査素子50に向かって送るように位置決めされる。
【0110】
示された実施形態では、円柱レンズ115は、TAGレンズ110と反射面58との間に位置決めされ、円柱レンズは、TAGレンズから出て行く励起光を励起光のシートに拡大する。
【0111】
上記で特定された2つの修正の組み合わせがなぜ有益であるかの解説は、以下の通りである。レーザビームがTAGレンズ(図9cにおけるパネル2)(または、代替的な実施形態では、電気的に調整可能なレンズ(ETL))の中心を通って伝搬する場合、x次元およびy次元は、同じ波面変調の振幅を有し、それが、図9dの左の列に見られるように、光シートのy次元に沿った湾曲につながる。しかし、図9cのパネル3に示されるように、レーザビームがTAGレンズ内で偏心して伝搬する場合、波面変調の振幅は、図9dの右の列に見られるように、大部分はx次元に沿ったものであり、それにより、主にx次元に沿った焦点変化(軸方向走査)がもたらされて、yに沿った光シートの一様性が大幅に向上される。
【0112】
図9eは、偏心して位置合わせされたTAGレンズを様々な振幅変調で走査したときの蛍光の測定値を示す。図9fは、ビームが軸外に移動されたときの照射野の変化を示す。図9g~図9hは、TAGレンズを通って光が偏心して伝達されたときの予想される非対称のビーム変調を示す、シミュレーションの結果を示す。
【0113】
2P-SCAPEシステムは、定型的な1P-SCAPEよりもはるかに深く試料に入り込んで撮像する能力を有する。必要とされる深度範囲のサンプリングをするためにより多くのカメラ行を読み出す必要がある場合、画像は全体的によりゆっくりと取得されることを必要とする可能性があり、そのことが、x方向の視野、x方向のサンプリング密度、または全体的なボリュメトリック容積撮像速度のいずれかを減少させる。1P-SCAPEでは200~300のカメラ行が、試料の必要とされる深度範囲にまたがる可能性があるが、2P-SCAPEとの関連では、より大きい数字の深度が有益である。すぐ下で論じられる2つの選択肢のそれぞれは、深度の数字を増大させる。
【0114】
第1の選択肢(図9i参照)は、カメラが行を横方向の画素(Y)として読み取るようにカメラの向きを回転させて、その列に沿った深度の無制限の読出しを可能にすることである。Z’が行にではなく列に沿うように2P-SCAPEにおいてカメラを回転させることは、減少した横方向(Y)視野とともに、より深く試料に入り込んだ撮像を可能にする。この構成は、400+の列の高速撮像に適応して、1画素当たり約1ミクロンで>400ミクロンの深度に達することができる。
【0115】
第2の選択肢(図9j参照)は、(カメラの回転を伴わずに)像をZにおいて圧縮するためにO3テレスコープに非対称の(例えば、一側性の)拡大を組み込むことである。例えば、より大きな深度範囲にまたがるために読み出される必要があるカメラ上の行がより少なくなるように、円柱レンズテレスコープが、O2とカメラとの間の光路に挿入されて、z方向に沿った斜め平面像の圧縮を可能にし得る。ほとんどの多深度2PシステムはZ平面間に大きな間隔を有しており、そのため、本発明者らのものを1から(例えば)3または4ミクロンまで減少させることは競合他社のシステムと比べて不利ではないので、上記のことは妥当なトレードオフである。
【0116】
第10節 広い視野を有するデュアルカメラSCAPE
図10a~図10dは、Dミラー、3つの(拡大可能な)励起波長、O2およびO3のための水/水対物レンズ、ならびに>1mmのFOVにわたる高速二重色調取得のための2つのカメラを使用する、別の単光子SCAPEシステムを示す。これらの実施形態は、光を放つのにダイクロイックビームスプリッタではなくD形状のミラーを使用する。これらの実施形態はまた、より従来的なO2-O3空気-空気SCAPE設計と比較してより高いNA検出のために、O2およびO3(O1と整合する)として2つの水浸レンズを使用する。いくつかの実施形態では、O2およびO3は、20x、1.0NA、2mm WDの水浸レンズである。これらのレンズは、水チャンバ内で位置合わせされることが好ましい。システムは、より広い視野、より高い分解能(より大きなサンプリング密度)、および2色試料の撮像を可能にするために、撮像のための2つのカメラを組み込む。イメージスプリッタ/イメージステアリング設計は、両方のカメラに対応する。コンピュータアーキテクチャは、2つのカメラの全速読出しを一度に達成するように設計される。図10cは、プリズムミラーを含む主対物レンズのより微細な回転を使用してこれらの実施形態において走査テレスコープを実施するための適切なパラメータの組を示し、図10dは、レンズチューブの背面と同一平面であるプルーセルレンズを使用してこれらの実施形態において走査テレスコープを実施するための適切なパラメータの組を示す。
【0117】
第11節 DART-デスキャン型軸方向分解2光子設計の実施態様
図11aは、本明細書において「DART」と呼ばれるデスキャン型軸方向分解2光子実施形態を示す。この実施形態は、完全なシートではなく斜めに入射する軸方向ビームを使用する。このビームは、試料において、xおよびyに走査され、かつ、深度分解された信号が線型検出器アレイまたは一連の個々の検出器によって検出され得るように、xおよびyにデスキャンされる。この設計は、走査検流計ミラーG1、G2の2つの軸の間にテレスコープを含んで、位置のずれを回避するためにビームを走査する方法を最適化することが好ましい。システムは、場合により、照明ビームの形状を形成するために、空間光変調(SLM)を使用する。
【0118】
これらの実施形態は、ライン照明によって励起された信号の起源を符号化するためにパルス遅延などの複雑な手段を使用する競合する高速3D 2光子システムよりも単純な実施により、SCAPEの高速3D撮像の利点を共有する。2P-SCAPEと比較すると、この実施形態は、入射ビームのPSFによってのみ制限される、xおよびyにおけるより高い分解能を提供し、散乱効果は、主にz分解能に影響する。したがって、この手法は、3光子蛍光、第2高調波発生または第3高調波発生、コヒーレント反ストークスラマン分光法および誘導ラマン分光法(CARSおよびSRS)、蛍光寿命および燐光寿命などの、他のコントラストの形態を撮像することへの拡張の可能性を有して、哺乳類の脳などの散乱試料により深く入り込んで撮像するために都合良く使用され得る。
【0119】
これらの実施形態は、カメラではなく線型検出器を使用するが、デスキャンされたライン像の横方向に位置決めされた部分を複数の検出器にマッピングするための複数の方法が存在する。1つの例では、位置は、O2の後でデスキャンされた像平面内へ配置される一連の研磨光学繊維またはテーパ付けされた繊維束を使用して、個々の検出器へ中継され得る。これらの検出器の一つ一つのチャネルは、非常に高い速度で読み取ることができ、カメラで達成可能なものよりも高い画素レートでの並列検出を可能にする。各検出器はまた、カメラ画素と比較して、より高感度であるかまたは高帯域幅の検出のためのより良好なノイズ等価電力を有し得る。このより高い時間的帯域幅は、蛍光寿命、空間符号化、またはスペクトル符号化などの追加の情報を符号化するために利用され得る。
【0120】
線型光電子増倍式検出器アレイを使用するこの原型によって得られた画像の例が、図11bおよび図11cに示されている。最適化されていないが、これらの画像は、様々な生物学的試料からの高分解能の深度分解撮像結果を示す。
【0121】
ビームは各ボリュームをサンプリングするためにxおよびyにわたってラスター走査されなければならないので、レーザ繰返し率は、これらの実施形態における1つの制約である。この制約は、適切な繰返し率(例えば、1秒当たり約15ボリュームでの512x512xの深度撮像の場合、4MHz)、および、2P-SCAPEと比較して減少した達成可能な1画素当たりの積分時間と相まって、十分な1ピーク当たりの出力を有するパルスレーザの利用可能性に由来する。しかし、本発明者らは、孤立した検出を可能にするために複数のビームが十分な空間によって分離されている限り、2つ以上の軸方向ビームが使用可能であることを認識した(図11d)。2次元の検出器アレイ上に投射されると、この妥協は、nxの追加の軸方向ビーム(および、nxのより多くの検出器チャネル)のためのボリュメトリック撮像速度のnxの増大を可能にする。
【0122】
注目すべきことに、これらのDART実施形態におけるボリュメトリック撮像速度は、レーザシステムの1~2MHzの繰返し率(同等な平均電力に対しては80MHzのTi:サファイアレーザよりもはるかに良好な励起を提供する)により、目下制限されている。撮像速度を向上させるために、複数の軸方向ビームが生成されて、2D検出器アレイ(例えば、8x8要素の光電子増倍管アレイ)上へデスキャンされ得る。各追加のビームNは、ボリュメトリック撮像速度をN倍に向上させる。これらの分割ビームを生成するために豊富な電力が利用可能であり、ビームが十分に離間されているのであれば分解能は影響を受けない(2P-SCAPEよりも良好なx-y分解能をもたらす)。
【0123】
検出効率の著しい向上は、上記のゼロ作動距離(ZWD)手法をO3において使用して達成され得ることに、留意されたい。それらは、上記のような溶融繊維束、または、O2における適切な空気対物レンズと対にされたときにO1に入る光の全角度の収集を可能にするガラスもしくは浸漬媒体整合延長部を有するレンズを含み得る。これらの改善は、DARTの単一ビーム実施態様および多ビーム実施態様の両方に有益であり得る。
【0124】
第12節 ラマンコントラストのためのDART
次に図12aに目を向けると、本発明者らは、2P-SCAPEおよびDARTはラマン散乱コントラストを撮像するために利用可能であることを認識した。これらの実施形態は、本明細書において「ラマンDART」と呼ばれる。従来のラマン分光法は、非常に低い信号レベルを有するが、誘導ラマン顕微鏡法は、撮像速度および信号対雑音を著しく向上させることができる方法である。ポイント走査誘導ラマン顕微鏡法(SRS)は、組み合わせられた2つのビーム-ポンプビームおよびストークスビーム-を時間的に変調させることによって行われる。これらのビーム間のエネルギーの差がラマン吸収帯に等しい場合、ストークス信号は増大することになり、ポンプ信号は減少することになる。この作用は非線形であり、したがって、パルスレーザとともに最も良く働き、かつ、2光子励起に類似した光学的セクショニング特性を有することになる。どちらの信号も高く、信号の変調は信号のほんの数%(ΔI/I<10-4)であるが、単一チャネルロックイン検出は、ラマンコントラストの撮像を可能にする輝度変調の振幅をピックアップすることができる。
【0125】
DARTの線形深度分解検出、および、単一チャネル検出器(好ましくは高帯域幅を有する)の使用は、この変調およびロックイン検出の戦略を実行可能にする。ラマンDARTの実施態様は、蛍光放射を必要とすることなしに、コントラストの様々な代替源を試料に利用して、ラマンコントラストの迅速な3D撮像を可能にすることができる。
【0126】
これらのラマンDARTの実施形態では、ラマンコントラストの向上されたボリュメトリック撮像速度は、特定のラマン吸収帯を有する神経伝達物質のような物体の独特の生体内動態を捕捉することができる。ラマン帯におけるシフトを生じさせることに基づく造影剤も使用可能であり、細胞のグルコース取り込み動態をリアルタイムでマッピングするための、グルコースなどの物質のタギングを可能にする。化学変化および代謝作用に関連する疾病コントラスト(disease contrast)が、臨床的な用途のために検出可能である。3D速度は、モーションアーチファクトを伴わないインサイチュの臨床的撮像を可能にし得る。場合により、互いに相互作用する複数の異なる化学物質を同時にマッピングすることができるスペクトル多重化手法-スペクトル分解などの戦略が、適用され得る。
【0127】
これらの実施形態において波長を選択することは、以下の通りに行われた。2845cm-1のラマンシフトを含むCH振動バンドを標的とすると、(515nmのポンプ波長を有する本発明者らのOPAに基づいて)使用されるべき信号およびアイドラ波長は、(1/λsignal)+(1/λidler)=1/(515nm)、(1/λsignal)-(1/λidler)=2845cm-1に基づいて解かれ得る。この式は、λsignal=898.4nm、およびλidler=1207nmをもたらす。
【0128】
別の選択肢は、ストークスビームとして一般的なポンプレーザ(例えば、Spectra PhysicsによるSpirit 100)の1030nmの出力を使用すること、および、OPAの信号ビームをポンプビームとして適切な波長(CHバンドに対しては797nm)に設定することである。これらの構成のどちらも、2つのビームがパルス化されて互いに時間的に同期されるという事実を利用する。
【0129】
これらの実施形態における変調周波数を決定する場合、いくつかの検討事項が存在する。変調周波数は、変調および復調の十分な周期を可能にするためだけでなく、混濁した生物学的試料を通して走査することによって生じるスプリアス変調信号を(たとえストークスビームがない場合でも)回避するために、x-y画素レートよりもはるかに高いものであるべきである。変調周波数はまた、<100kHzに制限されるレーザ雑音よりも遙かに高いものであるべきである。典型的なポイント走査顕微鏡は、試料を可能な限り迅速に走査してμsレベルの画素滞在時間をもたらすことを試みる。いくつかの実施形態では、変調は、典型的には少なくとも10MHzに設定される。典型的な80MHzのTi:サファイアレーザ源の場合、これは、真のソース変調(例えば、4パルスオン、4パルスオフ)に対応する。しかし、DARTベースのライン励起の場合、同時多層検出の利点により、少し減速することができる。しかし、高速ボリュメトリック撮像を可能にするために、MHzレベルの変調速度も標的とされ得る。ピーク出力を増大させるためにより低い繰返し率のレーザ(<1MHZ)が使用され得るので、レーザパルス自体を変調として使用することが考慮され得る。所与の変調fに対して、常にオン状態にあるビームのための少なくとも2fのパルス、および、ON-OFF変調されるビームのためのfのパルスが存在すべきことに、留意されたい。
【0130】
400kHzにおいてパルスを生成するOPAを用いる場合、1つの適切な方法は、各パルスを例えば16個のコピーに分割して、6.4MHzの一様に離間されたパルス列を得ることであろう。しかし、この事例におけるパルス間遅延は1/6.4μsになり、この遅延は自由空間では46.875メートルに変わり、これは(特に、第1のコピーと中間のコピーとの間の遅延が8×46.875>350メートルになることを考慮すれば)、実用的でない。したがって、パルス分割のための他の手法が好ましい。例えば、各パルスは、例えば自由空間における約300cmに相当する10nsの実用的なパルス間遅延を含む複数のコピーに分割されてよく、ストークス(またはアイドラ)波長のパルス間遅延をポンプ(または信号)ビームのパルス間遅延の2倍に等しく(または、その逆に)設定する。このようにして、各OPAの信号パルスまたはアイドラパルスから局所的なパルス列を得ることができ、かつ、2つの局所的なパルス列を整合させてSRS検出のための高周波数変調を実現することができる。
【0131】
図12bは、局所的なパルス列生成の例を示す。この例は、全体的および局所的な(サブ)パルス列の概念を示す。全体的なパルス群列(400kHz)が左側に示されており、各群は、10nsまたは20nsのパルス間遅延を含む8つのサブパルスで構成されている。
【0132】
図12cは、階層的パルス分割の概念図の一例として8経路分割を示す。入力パルスは、左下隅からシステムに入り、出力サブパルス列は、右上隅において出て行く。この図では、BS1~BS3は、50/50ビームスプリッタであり、Mは、ミラーであり、Cは、パルスコンバイナ(これは、ビームスプリッタを使用して実施され得る)である。図12cの例の8経路分割では、ビームは、連続的な通過の間に適切な遅延セットアップを伴って、50/50ビームスプリッタを3回通過する。この階層的パルス分割の原理は、図12cに示されている。基本的に、各50/50ビームスプリッタは、サブパルスの数を倍にし、2つのサブパルス間に相対的な追加の遅延を導入する。相対的な遅延は、1段階ずつ倍に(または半分に)される。このようにして、最後のコンバイナ(Cによって示される)を出て行くパルスが経験する追加の遅延は、4b1+2b2+b3Δとして数学的に説明可能であり、式中、biは、各ビームスプリッタに続いてパルスが取る経路に応じて0または1である。
【0133】
図12dは、光学繊維および繊維結合器を用いる階層的パルス分割を示す。入力パルスは、第1の結合器(FC1)のどちらかの入力ポートからシステムに入り、ここでの最後の結合器(FC4)は、実際にはどちらかの出力ポート(O1またはO2)から出力サブパルス列が得られ得るコンバイナとして使用される。
【0134】
局所的なパルス間遅延Δ=10ns(50MHzの変調周波数に相当する)を得るには、各段階における追加の遅延は、それぞれ12メートル、6メートル、および3メートルになる。これは、自由空間光学では実施するのが難しい。これを容易にする1つの方法は、ビームスプリッタとしての2x2の結合器および遅延発生のための適切な長さの光学繊維を使用する繊維ベースの方式を用いることである。
【0135】
両方の波長のためのシリカベースの光学繊維における約1.5の群屈折率を考慮すると、2メートルの光学繊維は10nsの遅延を発生させ、4メートルの光学繊維は>20nsの遅延を発生させ、8メートルの光学繊維は>40nsの遅延を発生させる。誘導ラマン散乱撮像のためのさらに長い分割およびさらに低い変調周波数を得るには、より長い繊維が必要とされる。そのような長い繊維は、最終的なサブパルスのかなりの量の分散を導入することになり、遅延されるサブパルスもまた、比例的により多くの群遅延分散(GDD)を経験し、したがって、結果的にパルス持続時間がより長くなる。加えて、(自己位相変調などの)非線形効果が作用し始めて、サブパルスのスペクトルを変化させることになる。1つの解決策は、余分な繊維間伝搬によってもたらされるGDDを相殺するように各遅延段階において適切な量のネガティブチャーピング(negative chirping)を導入することである。そのようなネガティブチャーピングは、プリズム対、回折格子対、もしくはグリズム対、または個別製作の繊維ブラッグ回折格子などの繊維ベースのデバイスに基づいた自由空間セットアップを使用して実現され得る。
【0136】
本発明は特定の実施形態に関連して開示されたが、添付の特許請求の範囲において定められる本発明の領分および範囲から逸脱することなしに、説明された実施形態に対する多数の修正、改変、および変更が可能である。したがって、本発明は説明された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の文言によって定められる全範囲およびその均等物を有するものである。
【符号の説明】
【0137】
10 第1の光学素子、第1の対物レンズ
12 第1の光学素子
14 第1の光学素子
20 第2の光学素子、第2の対物レンズ
22 第2の光学素子
24 第2の光学素子
30 第3の対物レンズ、浸漬対物レンズ
32 中継レンズテレスコープ
36 中継レンズテレスコープ
40 カメラ
42 イメージスプリッタ
50 走査素子
55 折り畳みミラー
58 反射面
60 光源、レーザ源
62 位置合わせミラー
64 光学ビームコンバイナ
66 レンズ
67 レンズ
68 レンズ
69 レンズ
72 第3の光学素子
74 第3の光学素子
76 第3の光学素子
80 第2のミラー
81 第1の縁部
82 第2の縁部
90 流体チャンバ
91 ブロブ、第1の固体塊
92 液体ポリマー、第2の量のUV硬化性ポリマー
95 高平坦性ミラー
110 TAGレンズ
115 円柱レンズ
160 光源
166 プリズムコンプレッサ
BS1 50/50ビームスプリッタ
BS2 50/50ビームスプリッタ
BS3 50/50ビームスプリッタ
C パルスコンバイナ
FC1 第1の結合器
FC4 最後の結合器
G1 走査検流計ミラー
G2 走査検流計ミラー
M ミラー
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図6g
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図8g
図8h
図8i
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
図9f
図9g
図9h
図9i
図9j
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図12d
【国際調査報告】