(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】N-(2-アミノエチル)モルホリンベースのRNA類似体、調製方法、及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07H 21/02 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
C07H21/02 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555632
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 PL2022050013
(87)【国際公開番号】W WO2022191725
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522320475
【氏名又は名称】ユニベルシテット・ヴァルシャフスキ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アダム・マモット
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル・シコルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアンナ・コヴァルスカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤツェク・イェミエリティ
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057MM02
(57)【要約】
本発明の主題は、式1のRNAの類似体、それらの調製、並びに、特に、顕微鏡観察、遺伝子発現方法の研究、及び酵素活性のモニタリングにおけるそれらの応用であり、式中、R1は、(オリゴ)ヌクレオチド含有基であり、R2は核酸塩基であり、R3は官能基である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNA類似体であって、式1:
【化1】
(式中、
R
1は、
式2a:
【化2】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、0~3の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OH若しくはOCH
3である)
のRNA鎖、
又は式2b:
【化3】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OH若しくはOCH
3であり、
X
2は、N
3若しくは
【化4】
基である)
のRNA鎖、
又は式2c:
【化5】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OH若しくはOCH
3であり、
X
2及びX
3は独立に、OH、OCH
3、
【化6】
である)
のRNA鎖であり、
R
2は、天然若しくは修飾プリン若しくはピリミジン窒素塩基であり、好ましくは、
【化7】
から選択され、
R
3は、
式3a:
【化8】
(式中、
Yは、NH
2、N
3、若しくは
【化9】
基である)
の生態直交基を含む置換基、
又は式3b:
【化10】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、CH
3、(CH
2)
3SO
3H、若しくは(CH
2)
4SO
3Hであり、
Z
1及びZ
2は独立に、SO
3H若しくはHである)、
のシアニン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式3c:
【化11】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、SO
3H、OCH
3、OH、COOH、若しくはHであり、
Z
1及びZ
2は独立に、NH若しくはOであり、
Z
3は、NH
2若しくはOH基である)、
のローダミン若しくはフルオロセイン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式3d:
【化12】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、SO
3H、OCH
3、OH、COOH、若しくはHであり、
Y
3は、CH
2CH
3、CH
3、若しくはH基であり、
Z
1及びZ
2は独立に、NH若しくはOであり、
Z
3は、NH
2若しくはOH基である)、
のローダミン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式3e:
【化13】
の親和性タグ構造を有する置換基、
又は式3f:
【化14】
(式中、
Yは独立に、OCH
3、OH、若しくはHであり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R
2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基、
又は式3g:
【化15】
(式中、
Yは独立に、OCH
3、OH、若しくはH基であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R
2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基、
又は式3h:
【化16】
(式中、
Yは独立に、OCH
3、OH、又はH基であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R
2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基
等の機能性置換基であり、
上記の式(3a~3h)において、Xは以下の基:
【化17】
(式中、
mは、1~10の範囲の自然数である)
のいずれかの基又は多くの一連の組合せである式のリンカーである)
のRNA類似体。
【請求項2】
式4:
【化18】
のRNAの溶液に、
連続的に、
(i)メタ過ヨウ素酸(HIO
4)、その塩、メタ過ヨウ素酸(HIO
4)若しくはその塩の溶液とインキュベーションして、式5:
【化19】
の化合物を提供する工程、
(ii)還元媒体中で式6:
【化20】
のエチレンジアミン類似体とインキュベーションして、
式1:
【化21】
のRNA類似体を得る工程を行うことを特徴とし、
上記式中のR
1、R
2、及びR
3基の意味が請求項1で定義されている、請求項1に記載の式1のRNA類似体の調製のための方法。
【請求項3】
工程(i)及び(ii)が1つの反応器中で行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RNAが、
式4a:
【化22】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、0~3の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OCH
3若しくはOHである)
の化合物、
又は式4b:
【化23】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OH若しくはCH
3基であり、
X
2は、N
3若しくは
【化24】
基である)
の化合物、
又は式4c:
【化25】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
X
1は独立に、OH若しくはOCH
3であり、
X
2及びX
3は独立に、OH、OCH
3、
【化26】
である)
の化合物
であることを特徴とする、請求項2又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)が、好ましくは1.0~1.5mMの濃度のNaIO
4の存在下で、40℃未満の温度で、1~100μMのRNA濃度で行われることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)が、好ましくはpH5.5~7.5のKH
2PO
4緩衝液、100mMを超えない濃度、好ましくは20mMの濃度のNaBH
3CN還元剤、及び1~10mMの濃度のエチレンジアミン類似体の存在下で行われることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
得られたRNA類似体が、公知のRNA単離方法、好ましくはRNA塩のアルコール沈殿又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって反応混合物から単離されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式7:
【化27】
(式中、R
3は、
式7a:
【化28】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、CH
3、(CH
2)
3SO
3H、若しくは(CH
2)
4SO
3Hであり、
Z
1及びZ
2は独立に、SO
3H若しくはHである)
のシアニン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式7b:
【化29】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、SO
3H、OCH
3、OH、COOH、若しくはHであり、
Z
1及びZ
2は独立に、NH若しくはOであり、
Z
3は、NH
2若しくはOH基である)、
のローダミン若しくはフルオロセイン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式7c:
【化30】
(式中、
Y
1及びY
2は独立に、SO
3H、OCH
3、OH、COOH、若しくはHであり、
Y
3は、CH
2CH
3、CH
3、若しくはH基であり、
Z
1及びZ
2は独立に、NH若しくはOであり、
Z
3は、NH
2若しくはOH基である)
のローダミン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式7d:
【化31】
の親和性タグ構造を有する置換基、
又は式7e:
【化32】
(式中、
Yは独立に、OCH
3、OH、若しくはH基であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R
2は上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基、
又は式7f:
【化33】
(式中、
各Yは独立に、OCH
3、OH、若しくはH基であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R
2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基、
又は式7g:
【化34】
(式中、
Yは独立に、OCH
3、OH、若しくはH基であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは1~30の範囲の自然数であり、
R
2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基である)
のエチレンジアミン類似体であって、
上記の式(7a~7g)において、Xは以下の基:
【化35】
(式中、mは1~10の範囲の自然数である)
のいずれかの基又は多くの一連の組合せである式のリンカーである、
エチレンジアミン類似体。
【請求項9】
以下の式:
【化36】
の化合物から選択されることを特徴とする、
請求項8に記載のエチレンジアミン類似体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
RNA分子の選択的共有結合修飾の方法は、RNAの検出、局在化、単離、及び配列決定、遺伝子発現方法、免疫系、細胞発生、又は分子動力学の研究等の多くに応用される。望ましい効果及び採用した実験戦略に応じて、RNA修飾の以下の方法、触媒核酸(DNAザイム又はRNAザイム)との反応による修飾、酵素反応による修飾、及び化学反応による修飾の1つを使用することができる。DNAザイムやRNAザイム等の触媒核酸は、その配列により所与の化学反応を触媒することができる(多くの場合、合成)分子である。10DM24、FH14、又はFJ1等のDNAザイム及びRNAザイムは、官能基化ヌクレオチド類似体の5'三リン酸基と、標的RNA配列に含まれ、触媒核酸配列によって定義されるアデノシンの2'-ヒドロキシル基との反応によって生じる2'-5'-ホスホジエステル結合を生成することによってRNAを修飾する[1~4]。或いは、ポリメラーゼ活性を有するリボザイムを用いて、標的RNA又はDNAの末端ヌクレオチドの3'ヒドロキシル基を修飾することができる[5]。リガーゼ、ポリメラーゼ、又はトランスフェラーゼ等の酵素を使用して、酵素反応によってRNAを選択的に修飾することができる。この酵素は、天然の基質又は補因子の官能基化類似体を使用して反応を行う。バクテリオファージT4-RNAリガーゼを使用すると、標的RNAの3'-OH基と官能基化5',3'-ヌクレオチド二リン酸(pNp)類似体の5'-リン酸基との間にホスホジエステル結合が生成され得る[6~7]。バクテリオファージT7-RNAポリメラーゼ又はポリAポリメラーゼ等のRNAポリメラーゼは、ヌクレオチド三リン酸の官能基化類似体を使用し、標的RNAの末端領域(5'又は3'末端)又は内部ヌクレオチドの修飾を可能にする[8~12]。トランスフェラーゼの群において、最も一般的に使用されるのはEcm1等のメチルトランスフェラーゼであり、これは、補因子S-アデノシルメチオニン(SAM)の官能基化類似体を使用して、標的RNA内のグアノシンのN2、グアノシンのN7、アデノシンのN6、及び3'-ヒドロキシルの位置を修飾する[13]。
【背景技術】
【0002】
化学反応によってRNAを修飾するためには、2'-及び3'-ヒドロキシル基、窒素塩基のアミノ、アミド、イミノ、カルボニル、及びエノール基、又はリン酸基等の固有に存在する官能基を使用することができる。選択的化学反応を行うためにそれらを使用することは、RNAが高分子量であり、言及した基の多くが類似の反応性を有しており、激しい条件下でホスホジエステル及びN-グリコシド結合が分解する可能性があるため、困難である。これらの問題は、迅速かつ選択的な化学反応に関与することできる非天然の官能基(生体直交基を含む)を導入することによって解消することができる。非天然の官能基は、化学的核酸合成、例えば、ホスホロアミダイト化学を使用した固相合成の過程で導入されることがある。このアプローチの主な限界は、得られるポリヌクレオチド鎖の長さに限界があることである。200ヌクレオチド長のRNAの化学合成が事実上不可能な限り、100ヌクレオチド長を超えるDNA及びRNA分子の合成は困難である。したがって、より大きなRNA分子、例えば200~10,000ヌクレオチド長のタンパク質コーディングRNA(mRNA)を修飾するには、これまで酵素的方法又は化学酵素的方法のみが使用されてきた。
【0003】
RNA修飾の特有の方法は、メタ過ヨウ酸(HIO
4)塩によるリボース2',3'-cis-ジオールの化学的酸化及びその後のアミノ化又は還元的アミノ化反応に依存している。その結果、RNAの3'末端リボースは、アミノ化又は還元的アミノ化に使用されるアミン誘導体の構造に応じて、異なる官能基を有する可能性のあるジヒドロキシモルホリン又はモルホリン類似体に変換される(
図1A)。このアプローチを使用して、RNAの3'末端をヒドラジン類似体及び脂肪族アミンで修飾したが[14-21]、アミン誘導体はヒドラジン及びヒドラジド誘導体よりもはるかに低い反応性を示した(
図1B)。したがって、ヒドラジン及びヒドラジド誘導体はRNA3'末端修飾に最もよく使用されるが、その合成はアミンの合成よりも要求が厳しく、得られるコンジュゲートの化学的安定性は低い[22]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、RNA分子の化学修飾に関する上述の問題を解消する方法及び化合物を提供することである。特に、本発明の目的は、RNAの3'末端のリボースの2',3'-cis-ジオールを酸化することによって得られるモルホリン類似体をもたらす還元的アミノ化に使用されるアミン誘導体の反応性が低いという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主題は、RNA類似体であって、式1:
【0006】
【0007】
(式中、
R1は、
式2a:
【0008】
【0009】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、0~3の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OH若しくはOCH3から独立して選択される)
のRNA鎖、
又は式2b:
【0010】
【0011】
(式中、
nは、1~10000の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OH若しくはOCH3から独立して選択され、
X2は、N3若しくは
【0012】
【0013】
基である)
のRNA鎖、
又は式2c:
【0014】
【0015】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OH若しくはOCH3から選択され、
X2及びX3は独立に、OH、OCH3、
【0016】
【0017】
である)
のRNA鎖であり、
各R2は独立に、天然若しくは修飾プリン若しくはピリミジン窒素塩基から選択され、好ましくは、
【0018】
【0019】
から選択され、
R3は、
式3a:
【0020】
【0021】
(式中、
Yは、NH2、N3、若しくは
【0022】
【0023】
基である)
の生体直交基を含む官能基、
又は式3b:
【0024】
【0025】
(式中、
Y1及びY2は独立に、CH3、(CH2)3SO3H、若しくは(CH2)4SO3Hであり、
Z1及びZ2は独立に、SO3H若しくはHである)、
のシアニン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式3c:
【0026】
【0027】
(式中、
Y1及びY2は独立に、SO3H、OCH3、OH、COOH、若しくはHであり、
Z1及びZ2は独立に、NH若しくはOであり、
Z3は、NH2若しくはOH基である)、
のローダミン若しくはフルオレセイン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式3d:
【0028】
【0029】
(式中、
Y1及びY2は独立に、SO3H、OCH3、OH、COOH、若しくはHであり、
Y3は、CH2CH3、CH3、若しくはH基であり、
Z1及びZ2は独立に、NH若しくはOであり、
Z3は、NH2若しくはOH基である)
のローダミン基のフルオロセインの構造を有する置換基、
又は式3e:
【0030】
【0031】
の親和性タグ構造を有する置換基、
又は式3f:
【0032】
【0033】
(式中、
各Yは独立に、OCH3、OH、若しくはHから選択され、
nは、1~30の自然数であり、
R2は、上記の窒素塩基である)、
の核酸構造を有する置換基、
又は式3g:
【0034】
【0035】
(式中、
各Yは独立に、OCH3、OH、若しくはH基から選択され、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R2は、上記の窒素塩基である)、
の核酸構造を有する置換基、
又は式3h:
【0036】
【0037】
(式中、
各Yは独立に、OCH3、OH、若しくはH基から選択され、
mは、1~4の自然数であり、
nは、1~30の自然数であり、
R2は上記の窒素塩基である)
の核酸
を含む官能基であり、
上記の式(3a~3h)において、Xは以下の基:
【0038】
【0039】
(式中、
mは、1~10の範囲の自然数である)
のいずれかの基又は多くの一連の組合せである式のリンカーである)
のRNA類似体である。
【0040】
本発明の別の目的は、上記で定義したような式1のRNA類似体を調製するための方法であって、式4:
【0041】
【0042】
のRNAの溶液に、
連続的に、
(i)メタ過ヨウ素酸HIO4)、その塩、メタ過ヨウ素酸HIO4若しくはその塩の溶液とインキュベーションして、式5:
【0043】
【0044】
の化合物を提供する工程、
(ii)還元媒体中で式6:
【0045】
【0046】
のエチレンジアミン類似体とインキュベーションして、
式1:
【0047】
【0048】
のRNA類似体を得る工程を行い、
上記式中のR1、R2、及びR3基の意味が請求項1で定義されている方法である。
【0049】
好ましくは、工程(i)及び(ii)は1つの反応器中で行われる。
【0050】
好ましくは、RNAは、
式4a:
【0051】
【0052】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、0~3の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OCH3若しくはOHから選択される)、
の化合物、
又は式4b:
【0053】
【0054】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OH若しくはCH3基から選択され、
X2は、N3若しくは
【0055】
【0056】
基である)
の化合物、
又は式4c:
【0057】
【0058】
(式中、
nは、1~10,000の範囲の自然数であり、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
各X1は独立に、OH若しくはOCH3から選択され、
X2及びX3は独立に、OH、OCH3、
【0059】
【0060】
である)
の化合物である。
【0061】
好ましくは、工程(i)は、好ましくは1.0~1.5mMの濃度のNaIO4の存在下で、40℃未満の温度で、1~100μMのRNA濃度で行われる。
【0062】
好ましくは、工程(ii)は、好ましくはpH5.5~7.5のKH2PO4緩衝液、100mMを超えない濃度、好ましくは20mMの濃度のNaBH3CN還元剤、及び1~10mMの濃度のエチレンジアミン類似体の存在下で行われる。
【0063】
好ましくは、得られたRNA類似体は、公知のRNA単離方法、好ましくはアルコール中でのRNA塩の沈殿又はHPLCによって反応混合物から単離される。
【0064】
本発明の別の目的は、式7:
【0065】
【0066】
(式中、Rは、
式7a:
【0067】
【0068】
(式中、
Y1及びY2は独立に、CH3、(CH2)3SO3H、若しくは(CH2)4SO3Hであり、
Z1及びZ2は独立に、SO3H若しくはHである)
のシアニン基のフルオロフォアの構造を有する置換基
又は式7b:
【0069】
【0070】
(式中、
Y1及びY2は独立に、SO3H、OCH3、OH、COOH、若しくはHであり、
Z1及びZ2は独立に、NH若しくはOであり、
Z3は、NH2若しくはOH基である)、
のローダミン若しくはフルオロセイン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式7c:
【0071】
【0072】
(式中、
Y1及びY2は独立に、SO3H、OCH3、OH、COOH、若しくはHであり、
Y3は、CH2CH3、CH3、若しくはH基であり、
Z1及びZ2は独立に、NH若しくはOであり、
Z3は、NH2若しくはOH基である)、
のローダミン基のフルオロフォアの構造を有する置換基、
又は式7d:
【0073】
【0074】
の親和性タグ構造を有する置換基、
又は式7e:
【0075】
【0076】
(式中、
Yは独立に、OCH3、OH、若しくはH基であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基、
又は式7f:
【0077】
【0078】
(式中、
各Yは独立に、OCH3、OH、若しくはH基から選択され、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは1~30の範囲の自然数であり、
R2は、上記の窒素塩基である)、
の核酸構造を有する置換基、
又は式7g:
【0079】
【0080】
(式中、
各Yは独立に、OCH3、OH、若しくはH基から選択され、
mは、1~4の範囲の自然数であり、
nは、1~30の範囲の自然数であり、
R2は、上記の窒素塩基である)
の核酸構造を有する置換基
であり、
上記の式(7a~7g)において、Xは以下の基:
【0081】
【0082】
(式中、mは1~10の範囲の自然数である)
のいずれかの基又は多くの一連の組合せである式のリンカーである)
のエチレンジアミン類似体である。
【0083】
好ましくは、本発明によるエチレンジアミン類似体は、以下の式の化合物:
【0084】
【0085】
から選択される。
【0086】
開示したN-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体は、ヌクレオチド(モノマー)の1つが特有のN-(2-アミノエチル)モルホリン部分(式1による)で置換された核酸分子(直鎖ヌクレオチドポリマー、ポリヌクレオチド)の類似体である。この部分は、3つの主要な置換基(式1によるR1、R2、及びR3)、すなわちRNA鎖(R1)、窒素塩基(R2)、及び機能的置換基(R3)を有する。RNA鎖(式1によるとR1)は、モノマー(リボヌクレオチド)が窒素塩基に連結したペントース(糖残基)から形成され、リン酸ジエステル結合によって隣接するモノマーの糖残基と連結した、生体高分子である。置換基(R1)は、化学合成(例えば、ホスホラミダイト化学を使用した固相合成)及び酵素合成(例えば、RNAポリメラーゼによって触媒される転写反応)から生じる可能性があるため、置換基(R1)には、広範囲の重合度(1から最大10,000ヌクレオチドまで)のRNA鎖、又は糖残基若しくは窒素塩基の領域に修飾を含むRNA鎖が含まれる。更に、置換基(R1)は、5'-ヒドロキシル、リン酸、アジド、アミノ、及びヌクレオシド基等の末端ヌクレオチド領域(5'末端)の天然及び非天然修飾を含む様々な構造のRNA鎖を含み(式2a~2c)、その存在は、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の化学的及び生物学的特性の領域に影響を及ぼす。窒素塩基(式1によるR2)は、ピリミジン及びプリンの種類の複素環式有機化合物であり、糖残基とともにN-グリコシド結合(アデノシン、グアノシン、N6-メチルアデノシン、N7-メチルグアノシン、イノシン、ウリジン、5-メチルウリジン、シチジン、及び5-メチルシチジンの場合のように)又はC-グリコシド結合(プソイドウリジン及び1-メチルプソイドウリジンの場合のように)によってヌクレオシド残基を形成する。機能的置換基(式1によるR3)は、リンカー(式3a~3eによる置換基X)によってRNA類似体のN-(2アミノエチル)モルホリン基に連結した、官能基又はモチーフ、特に生体直交基、フルオロフォア、親和性タグ、又は核酸モチーフ(式3a~3eによる)である。官能基又はモチーフの存在は、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の化学的、分光的、生物学的特性にとって重要である。アジド、アルキン、又はアミン等の生体直交性官能基(式3aによる)の存在によって、選択的なCuAAC反応、SPAAC反応、NHSエステルとの反応、又は天然の核酸に見いだされる化学基に関与しないその他の反応を行うことが可能になる。例えば、シアニン、ローダミン、又はフルオレセインの群からの、フルオロフォア(式3b~3cによる)の構造を有する機能モチーフの存在は蛍光特性をもたらし、例えば、顕微鏡観察又はヌクレオチド分解酵素の活性の研究における蛍光プローブとしてのN-(2アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の使用を可能にする。ビオチン等の親和性タグ構造(式3dによる)を有する機能モチーフの存在によって、ストレプトアビジン、アビジン、及びそれらの類似体等のタンパク質と結合することにより、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の結合、並びにRNA類似体の親和性プローブとしての使用が可能になる。核酸構造を有する機能モチーフ(式3eによる)は、モチーフのオリゴヌクレオチド配列を有するRNA鎖の構造中に存在するN-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体のポリヌクレオチド配列を伸長させる。リンカー(式3a~3eによる置換基X)は、単純な化学基の一連の組合せである。リンカーの長さ及び構造が、官能基又はモチーフの特性、及びN-(2-アミノエチル)モルホリンRNA類似体全体の特性に与える影響はわずかである。
【0087】
N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体を得る方法は、RNA等の核酸(式4による)に次の2つの化学反応を行うことである。工程(i)では、RNAのcis-ジオール基をメタ過ヨウ酸(又はその塩)と反応させて、ジアルデヒド(式5による)の形成を引き起こす。工程(ii)では、得られたジアルデヒドを還元媒体中でエチレンジアミン類似体(式6による)と更に反応させ、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体を生成する。両工程は水性環境中で行われ、1つの反応器で行うことができる。更に、工程(i)は、以下の条件、低過ヨウ素酸濃度(1.0~1.5mM)、広範囲のRNA濃度(1~100μM)、及び低温(40℃未満)を使用して、効率的かつ選択的に実施される。工程(ii)は、以下の条件、選択的還元アミノ化の進行を可能にする還元媒体中(例えば、20~100mMの濃度のシアノ水素化ホウ素ナトリウムの存在下)、緩衝溶液中(5.5~7.5の範囲のpH)、及び過剰なエチレンジアミン類似体の存在下(例えば、1~10mMの濃度)で最適である。工程(ii)は、エチレンジアミン類似体の溶解度を高めるために有機溶媒を任意選択で添加して(例えば、水:DMSO 4:1v/v混合物中で)実施することができる。N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の調製に最適な条件は、高度に重合した(30ヌクレオチド超)RNA基質を使用して効率的に合成するために非常に重要である。得られたN-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体は、クロマトグラフィー法、核酸塩沈殿、又は市販の核酸単離キット等の従来の方法によって反応混合物から単離することができる。RNA基質(式4による)は、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の3つの主要な置換基のうちの2つ、RNA鎖(式1によるR1)及び窒素塩基(式1によるR2)の前駆体である置換基(式4によるR1及びR2)を含む。したがって、基質のRNA鎖及び窒素塩基は、生成物のRNA鎖及び窒素塩基と類似の構造及び特性を有し、RNA基質は、例えば、リボース構造の一部として少なくとも1つのcis-ジオール部分(式4a~4c)を含まなければならない。エチレンジアミン類似体(式6による)は、官能基(式1によるR3)の前駆体である置換基(式6によるR3)を含み、これは、RNA類似体のN-(2-アミノエチル)モルホリン部分の3つの主要な置換基の1つである。したがって、エチレンジアミン類似体の官能基は、RNA類似体の官能基と類似の構造及び特性を有する。
【0088】
エチレンジアミンの類似体(式7による)は、N-(2-アミノエチル)モルホリンRNA類似体の合成における試薬として使用され得る。それらの類似体は、反応性エチレンジアミンモチーフ(H2N-(CH2)2-NH-CH2-R)及びリンカー(式7a~7dによる置換基X)によって連結された機能モチーフ(式7a~7dによるフルオロフォア、親和性タグ、又は核酸モチーフ等)を含む。N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の調製のための方法の工程(ii)の間に起こる反応の速度及び選択性の観点から、反応性エチレンジアミンモチーフの存在は極めて重要である。(H2N-(CH2)2-NH-CO-R)又は(H2N-(CH2)3-NH-CH2-R)等の構造的に類似したモチーフを含む化合物は、本発明によって記載された方法によってRNA類似体を効率的に得るために必要な特性を備えていない。エチレンジアミン類似体の機能モチーフ(式7a~7dによる)は、標的N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体の化学的、分光学的、及び生物学的特性の観点から非常に重要であるが、同時にエチレンジアミン類似体の反応性及びこのRNA類似体の調製中の工程のいずれかを妨げることはできない。リンカー(式7a~7dによる置換基X)は、単純な化学基の一連の組合せであり、エチレンジアミン類似体の反応性及びRNA類似体の調製の工程のいずれかを妨害しない限り、その長さ及び構造は、一般的にエチレンジアミン類似体の特性の観点から、重要ではない。これらの種類のエチレンジアミン類似体は、機能モチーフのアジド誘導体とN-プロパルギルエチレンジアミンとの間のCuAAC反応、又はNHSエステルの機能誘導体とジエチレントリアミンとの間の反応等、単一の選択的かつ効率的な合成工程で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0089】
RNAの3'末端の反応性に関する研究の過程で、驚くべきことに、過ヨウ素酸で酸化されたリボヌクレオチド又はリボ核酸との反応に使用されるアミン誘導体の構造が、方法の速度及び効率に重大な影響を与えることが見いだされた。モノヌクレオチド(GMP)及びトリヌクレオチド(pU3)をRNAモデルとして使用すると、驚くべきことに、選択されたエチレンジアミン類似体(H
2N-(CH
2)
2-NH-CH
2-R)がその他のアミン及びアミン誘導体よりもリボースジアルデヒド誘導体に対して高い反応性を示すことが見いだされた。エチレンジアミン及びその類似体との反応は、ヒドラジン及びその類似体、並びにエチレンジアミンモチーフを含まないいくつかのアミンとの類似の反応よりも速く、効率的であった(
図2)。還元的アミノ化反応の過程及びその中で形成される中間生成物の詳細な分析によって、使用するアミンに応じて、その機構の仮説を明確に示すことが可能になった(
図3)。これらの予備研究の結果に基づいて、RNAを修飾するために、ビオチン(Biot-EDA)、蛍光色素(FAM-EDA、pHrodo-EDA、Cy3-EDA、Cy5-EDA)、又はヌクレオチド(EDA-AG、EDA-m
7Gp
3G)等の官能基を含むエチレンジアミン類似体を使用した(
図4)。これらの類似体の合成は、例えば、NHSエステルとジエチレントリアミンとの反応(FAM-EDA及びpHrodo-EDAの合成)、又はN-プロパギルエチレンジアミンとアジドとの間のCuAAC反応(Biot-EDA、Cy3-EDA、Cy5-EDA、EDA-AG、EDA-m
7Gp
3Gの合成)による類似の合成経路に従う。NHSエステル又はCuAACの反応は、高い選択性、効率、及び穏やかな条件で知られている。このため、市場には、幅広い蛍光色素、親和性タグ、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、ナノ粒子、及びアジド、アルキン、又はNHSエステルを含むその他の物質が存在する。その結果、提案されているエチレンジアミン類似体の合成は非常に簡単で効率的であり、幅広い誘導体に応用することができる。RNAの3'末端の修飾反応がRNAの分解を最小限に抑えながら効率的かつ選択的に進行する条件を理解するために、いくつかの実験を実行した。pHに関係なく、40℃未満、シアノ水素化ホウ素ナトリウムの濃度が100mMを超えない場合に、ジアルデヒドの最高の安定性が達成されることが観察された。反応速度は、pH5.5~7.5の範囲及びエチレンジアミン類似体の濃度1~10mMの範囲では大きく変化しなかった。RNAの安定性及び反応性、並びに反応条件の更なる最適化について更なる研究を行った。最良の結果は、広範囲の濃度(1~100μM)及び長さ(3~2000nt)のRNAを、最初にNaIO
4(1.0~1.5mM)の存在下で、光を遮断し、25℃で30分間インキュベートする、ワンポット反応を行うことによって得られた。続いて、緩衝液(KH
2PO
4、pH6、100mM)、還元剤(NaBH
3CN、20mM)、及びエチレンジアミン類似体(1mM)等の試薬を(別々に、又は混合物として同時に)酸化RNA溶液に添加した。25℃で120分間インキュベーションした後、市販のRNA単離キット(分離効率90~100%)を使用して、又はHPLC(分離効率25~60%)によって、RNA塩のアルコール沈殿等の簡単な方法で、N-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体生成物を効率的に単離することができた(単離収率80~90%)。
【0090】
本発明による方法は、直接的で安価(酵素及び触媒を使用しない)で、高い効率で、1~300ヌクレオチドの長さのRNAについては75~99%、900~2100ヌクレオチドの長さのRNAについては65~80%のRNAを迅速に修飾することを可能にする(
図5A~C)。RNA類似体は、蛍光色素、ビオチン等の機能性化学部分、又はアミン、アジド、及びアルキン等の反応性生体直交基を含んでいてもよい。
【0091】
RNA類似体の調製では、FRET対(Cy3及びCy5)を形成するために選択的に配置された2つの蛍光色素を含むRNA類似体を得るために使用されたSPAAC反応を含む、いくつかの化学的方法を並行して実施することができる。この目的のために、T7-RNAポリメラーゼ及び基質のヌクレオチド類似体を使用して、RNAの酵素合成(インビトロ転写)を実施し、これによって、mRNAの5'キャップの構造内にアジド基を含むRNAを得ることができた[8]。次に、転写生成物を変更された化学標識手順における基質として使用し、同時に5'末端のアジド基がSPAAC反応を受け、3'末端のジアルデヒドが還元的アミノ化を受け、二重修飾RNA誘導体が生成された。反応生成物をHPLCによって精製し、両修飾を含むRNA分子を単離することができた(
図5D~F)。Cy3及びCy5色素(RNA5、RNA8、RNA14、Table 1(表1))で標識された、長さ35及び276ヌクレオチドのN-(2-アミノエチル)モルホリンベースRNA類似体は、RNAの立体構造変化を研究し、RNアーゼA、RNアーゼT1、Dcp1/2、RNアーゼR(
図6)、及びRNアーゼH(
図7)等の酵素の活性をモニターするためのFRETプローブとして使用されている。
【0092】
一方、ガウシアルシフェラーゼ並びにCy3及びCy5色素で標識されたeGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)をコードするN-(2-アミノエチル)モルホリンベースmRNA類似体(長さはそれぞれ993ヌクレオチド及び1100ヌクレオチド)(RNA17~19及びRNA21~23、Table 1(表1))は、顕微鏡観察及び翻訳研究に使用された(
図8)。後者は、本発明によって導入されたmRNAの3'末端の修飾がタンパク質生合成方法を妨げないことを示す。
【0093】
本発明による方法の別の応用は、2つのRNA分子の化学的連結である。インビトロ転写及びエチレンジアミン類似体EDA AG及びEDA m
7Gp
3Gを用いて、5'末端にエチレンジアミン基を含む35ヌクレオチド長のRNA(RNA6、RNA9、Table 1(表1))が得られた。RNA6は、本発明によって変更された化学標識手順で使用され、このRNAを相補的DNAとハイブリダイズさせ(Table 3(表3))、2つのRNA分子の5'末端及び3'末端を互いに接近させ、その後酸化して、分子間還元的アミノ化反応を受けさせた。ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、基質長の倍数の長さを有するRNA連結生成物の形成が観察された(
図9)。
【0094】
本発明をより理解するために、実施形態並びに添付の表及び図面で例示している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】A)過ヨウ素酸酸化及びそれに続くアミノ化又は還元的アミノ化によるRNAの修飾の一般的方式を示した図である。Rは機能的置換基、Xは窒素塩基、NAは核酸である。B)従来技術に従ってRNAを修飾するために使用されるアミン誘導体の構造。
【
図2】HPLCによってモニターされた、NaIO
4で酸化されたpUUUトリヌクレオチドに対する本発明による還元的アミノ化反応の過程を示した図である。A)反応方式。B)メチルアミン(参照反応)、ヒドラジン(参照反応)、エチレンジアミン(参照反応)、及びエチレンジアミン類似体(本発明による反応)の時間の関数としての反応収率。C)反応が二次反応であると仮定して決定された反応速度定数。
【
図3】HPLCによってモニターされた、NaIO
4で酸化されたGMPモノヌクレオチドに対する本発明による還元的アミノ化反応の過程を示した図である。A)エチレンジアミンの反応過程。A)ヒドラジンの反応過程。A)システアミンの反応過程。
【
図4】RNAを修飾するために得られた本発明によるエチレンジアミン類似体の構造を示した図である。
【
図5】本発明による蛍光RNA標識生成物を示した図である。A~C)A)35(RNA1基質、RNA2生成物)、B)237(RNA10基質、RNA11生成物)、又はC)2098(RNA24基質、RNA25生成物)ヌクレオチドの長さを有するRNAの3'末端をCy3蛍光色素で標識したHPLCクロマトグラム(Sは未反応の出発物質、Pは反応生成物である)。D~F)D)35(RNA3基質、RNA5生成物)、E)276(RNA12基質、RNA14生成物)、又はF)993(RNA16基質、RNA19生成物)ヌクレオチドの長さを有するRNAの5'及び3'末端をCy5及びCy3色素でそれぞれ標識したHPLCクロマトグラム(Sは未反応基質、Pは主要な反応生成物、並びに3及び5はそれぞれ、3'又は5'末端でモノ標識されている中間体である)。
【
図6】FRETプローブによる酵素反応の進行のモニタリングを示した図である。核酸分解活性を有する酵素の存在下で、5'末端及び3'末端それぞれをCy5及びCy3色素で標識したRNA5(A~D)及びRNA8(E)の蛍光スペクトルの変化。Ribolock-市販の選択的RNアーゼA阻害剤。F)酵素反応が進行するにつれての564及び667nmでの蛍光強度の比。
【
図7】FRETプローブによるRNアーゼH活性のモニタリングを示した図である。A~D)RNアーゼH及びプローブ配列に相補的な配列を有する様々なDNAの存在しない場合及び存在する場合のRNA5蛍光スペクトルの変化。E)経時的な564及び667nmでの蛍光強度の比。
【
図8】HeLa細胞における蛍光mRNA類似体によってコードされた遺伝子の顕微鏡観察及び発現を示した図である。A)mRNA(RNA16~19)トランスフェクション後のガウシアルシフェラーゼ活性(発光)の時間依存性、及びB)88時間インキュベーション後のタンパク質の全相対活性(2回の生物学的反復の平均)。C)フローサイトメトリーによって実施した、GFPタンパク質をコードする蛍光mRNA類似体(RNA20~23)のトランスフェクション後の細胞内のeGFPタンパク質及びCy3及びCy5色素の蛍光強度の測定。D)蛍光mRNA類似体でトランスフェクションした後の細胞の共焦点顕微鏡画像。モック-mRNAなしの試験。ppp-Ggluc-翻訳的に不活性なmRNA(RNA15)を使用した試験。N
3-m
7Ggluc及びN
3-m
7Gegfp-非標識mRNA(RNA16及びRNA20)を使用した試験。N
3-m
7Ggluc-Cy3及びN
3-m
7Gegfp-Cy3-本発明による方法を使用して、3'末端をCy3で標識したmRNA(RNA17及びRNA21)を使用した試験。N
3-m
7Ggluc-Cy3モック-本発明による方法を使用して、NaIO
4酸化工程を省略して、3'末端をCy3で標識したmRNA(RNA17)を使用した試験。Cy5-m
7Ggluc及びCy5-m
7Gegfp-5'末端を標識したmRNA(RNA18及びRNA22)を使用した試験。Cy5-m7Ggluc-Cy3及びCy5-m7Gegfp-Cy3-本発明に従って実施した3'末端での標識を含む、5'及び3'末端を標識したmRNA(RNA19及びRNA23)を使用した試験。
【
図9】RNA6の化学的連結を示した図である。A)反応方式。B)基質(NR)及びDNAの存在下(A0~D33、Table 3(表3))又はDNAなし(H
2O)での反応生成物を含むポリアクリルアミドゲル。
【
図10】表1.得られたRNAの名称並びにそれらの種類及び修飾方法を示した表である。5'IVTは転写反応中にRNAの5'末端に導入されるヌクレオチド又はその類似体である。3'標識:目的のRNAが本発明に従ってCy3によって3'末端標識反応を受けたことを意味する。5'標識:目的のRNAがCy5によって5'末端標識反応を受けたことを意味する。二重標識生成物(3'Cy3及び5'Cy5を同時に有する)はCy3とCy5の両方を含む。
【
図11】表2.Table 1(表1)のRNAヌクレオチド配列を示した表である。
【
図12】表3.RNA6の化学的連結(
図9)の間に使用したDNA配列を示した表である。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示し、その特定の態様を説明するためにのみ提供されており、本発明を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲全体に含まれるものとして解釈されるべきではない。以下の実施例では、特に明記しない限り、当技術分野で使用される標準的な材料及び方法を使用するか、又は特定の材料及び方法についての製造業者の推奨に従った。
【0097】
(2-ブロモエチル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【0098】
【0099】
この合成は、公開された手順に基づいて行われた[23]。トリエチルアミン(1.38mL、9.92mmol)を2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩(1.02g、4.96mmol)のメタノール溶液(70mL)に0/4℃で添加した。次に、二炭酸ジ-tert-ブチル(1.09g、4.99mmol)のメタノール溶液(20mL)を添加した。0/4℃で15分間撹拌した後、冷却浴を取り外し、溶液を室温で2時間撹拌した。溶液を水/ジクロロメタン(65mL/65mL)で希釈し、分液ロートに移し、ジクロロメタン(65mL)で洗浄した。合わせた有機画分をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。生成物が無色の油の形態で得られた(1.11g、4.95mmol、約100%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) σ [ppm]: 4.94 (br s, 1H, CONH), 3.54 (t, J = 5.8 Hz, 2H, CH2CH2), 3.45 (t, J = 5.8 Hz, 2H, CH2CH2), 1.45 (s, 9H, tBu).
【0100】
(N-プロパギルアミノエチル)カルバミン酸tert-ブチルの合成
【0101】
【0102】
炭酸水素ナトリウム(200mg、2.38mmol)、DMF(2.0mL)、及びプロパルギルアミン(849μL、13.25mmol)を(2-ブロモエチル)カルバミン酸tert-ブチル(495mg、2.21mmol)に添加した。懸濁液を60℃で4.5時間還流させた。反応の経過をTLC(n-ヘキサン/2-プロパノール1:1、ニンヒドリン染色、RF約0.4)でモニターした。懸濁液を飽和炭酸ナトリウム及びジクロロメタン(20mL/30mL)の混合物で希釈し、分液ロートに移し、ジクロロメタン(2×20mL)で洗浄した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られたショウガ油を、n-ヘキサンに溶かした2-プロパノールの段階勾配を用いたFLASHクロマトグラフィー(乾式充填、12gシリカゲルカートリッジ)によって分離した。所望の生成物を含有する画分を合わせて、減圧下で濃縮した。生成物が黄色の油の形態で得られた(374mg、1.88mmol、86%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ [ppm]: 3.42 (d, J = 2.4 Hz, 2H, CH2CCH), 3.24 (q, J = 5.7 Hz, 2H, CH2CH2), 2.81 (t, J = 5.7 Hz, 2H, CH2CH2), 2.22 (t, J = 2.4 Hz, 1H, CCH), 1.44 (s, 9H, tBu).
【0103】
N-プロパギルエチレンジアミン(PEDA)二塩酸塩の合成
【0104】
【0105】
塩酸(4mL、約37wt%)を、(N-プロパルギルアミノエチル)カルバミン酸tert-ブチル(374mg、1.88mmol)のメタノール溶液(20mL)に滴下して添加した。室温で30分間インキュベーションした後、エタノールを添加し、溶液を減圧下で蒸発させた。その後、沈殿が生じるまで、無水エタノールを少しずつ添加した。次いで、混合物を冷却し、沈殿を濾過し、最小量の冷無水エタノールで洗浄した(合計100mLの無水エタノールが消費された)。沈殿物を水に溶解し、凍結乾燥して、生成物を淡褐色の粉末として得た(156mg、0.912mmol、48%)。1H NMR (500 MHz, D2O) δ [ppm]: 4.08 (d, J = 2.6 Hz, 2H, CH2CCH), 3.58 (td, J = 7.0, 1.8 Hz, 2H, CH2CH2), 3.46 (td, J = 7.0, 1.9 Hz, 2H, CH2CH2), 3.10 (t, J = 2.6 Hz, 1H, CCH). 13C NMR (126 MHz, D2O) σ [ppm]: 79.01 (CCH), 43.11 (CH2CH2), 36.98 (CH2CCH), 35.37 (CH2CH2).
【0106】
2-アジドエチルアミンの合成
【0107】
【0108】
この合成は、公開された手順に基づいて行われた[8]。2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩(10.09g、49.3mmol)をアジ化ナトリウム(8.14g、148mmol)の水溶液(40mL)に添加し、70℃で16時間還流させた。混合物を冷却し、水酸化カリウム(14g)の水溶液(10mL)、次いでジクロロメタン(50mL)を添加した。室温で30分間撹拌した後、懸濁液を分液ロートに移し、ジクロロメタン(5×50mL)で洗浄した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下(30℃、600~50ミリバールの圧力範囲で、生成物の質量が安定するまで)注意深く濃縮した。生成物が無色の油の形態で得られた(3.78g、43.9mmol、d=1.04g/ml、89%)。
【0109】
[N-(2-アジドエチル)アミノエチル]カルバミン酸tert-ブチルの合成
【0110】
【0111】
(2-ブロモエチル)カルバミン酸tert-ブチル(1.47g、6.58mmol)のDMF溶液(2mL)を2-アジドメチルアミン(1.63mL、19.73mmol)、炭酸水素ナトリウム(0.91g、6.58mmol)、及びDMF(8mL)からなる懸濁液に70℃で1時間滴下して添加した。反応の経過をTLC(n-ヘキサン/2-プロパノール1:1、ニンヒドリン染色、RF約0.4)でモニターした。懸濁液を飽和炭酸ナトリウム及びジクロロメタン(40mL/50mL)の混合物で希釈し、分液ロートに移し、ジクロロメタン(3×50mL)で洗浄した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた無色の油を、n-ヘキサンに溶かした2-プロパノールの段階勾配を用いたFLASHクロマトグラフィー(乾式充填、12gシリカゲルカートリッジ)によって分離した。所望の生成物を含有する画分を合わせて、減圧下で濃縮した。生成物が無色の油の形態で得られた(940g、4.14mmol、63%)。
【0112】
N-(2-アジドエチル)エチレンジアミン(AEEDA)二塩酸塩の合成
【0113】
【0114】
希釈した塩酸(5mL、約10質量%)を、[N-(2-アジドエチル)アミノエチル]カルバミン酸tert-ブチル(374mg、1.88mmol)に滴下して添加した。室温で1時間インキュベーションした後、混合物を水(20mL)で希釈し、分液ロートに移し、ジクロロメタン(3×25mL)で洗浄した。エタノールを水相に添加し、溶液を減圧下で蒸発させた。次いで、無水アセトニトリルを、沈殿が生じるまで少しずつ添加した。次いで、混合物を冷却し、沈殿を濾過し、最小量の冷無水エタノールで洗浄した。沈殿物を減圧下で乾燥させ、生成物を白色の生成物として得た(70mg、0.53mmol、13%)。1H NMR (500 MHz, D2O) σ [ppm]: 3.82 (t, J = 5.5 Hz, 2H), 3.49 (m, 2H), 3.43 (m, 2H), 3.35 (t, J = 5.5 Hz, 2H). 13C NMR (126 MHz, D2O) σ [ppm]: 49.61, 49.48, 46.84, 38.01.
【0115】
Biot-EDAの合成
【0116】
【0117】
Biot-N3の合成は、公知の方法に従って行われた[24]。50%DMSO(1.26mL)及びCuSO4-TBTA複合体の溶液(340μL、50%DMSO中9.4/10mM)の混合物を、秤量した試薬Biot-N3(9.81mg、31.4μmol)、PEDAx2HCl(8.27mg、48.4μmol)、及びアスコルビン酸ナトリウム(146mg、234μmol)に添加した。室温で105分間撹拌した後、EDTA(0.5M、400μL)及び水(6mL)をこの溶液に添加した。シリンジフィルターで濾過した後、HPLC分離を行った:SUPELCOSIL(商標)LC-18-Tカラム、250×4.6mm、5μm、A-50mM NH4OAc pH5.9、B-50mM NH4OAc pH5.9/MeOH 1:1、1.3mL/分、22℃、プログラム:30分でBを0~100%(RT=15分)。画分を合わせて3回凍結乾燥した後、Biot-EDA生成物が酢酸塩の形態で得られ(4.5mg、8.48μmol、M=530.7g/mol)、収率29%であった。MS ESI(+):411.4(計算された[M+H]+:411.2)。
【0118】
Cy3-EDAの合成
【0119】
【0120】
アスコルビン酸ナトリウム(5.19mg、26.2μmol)及びPEDA×2HCl(1.13mg、6.63μmol)をスルホ-Cy3-N3(2.22mg、3.01μmol、Lumiprobe社)に添加し、50%DMSO(270μL)に溶解した。次いで、CuSO4-TBTA複合体の溶液(32μL、50%DMSO中9.4/10mM)を添加し、室温(22℃)で60分間インキュベートした。次に、水(2.7mL)及びEDTA溶液(6μL、0.5M、pH8.0)を添加し、Gemini(登録商標)NX-C18カラム、5μm、110Å、250×10mm;システムA:100mM TEAA pH7.0 B:75%MeCN、プログラム:40分でBを0~27%、10分間でBを100%、5mL/分、25℃(RT=35分)でHPLC分離を実施した。画分を合わせて3回凍結乾燥し、50%DMSO(180μL)に溶解した後、生成物がトリエチルアミン酢酸塩溶液の形態で得られ(1.66μmol、9.2mM、A550=1492、ε548=162mM-1cm-1)、収率55%であった。MS ESI(-):795.6(計算された[M-H]-:796.3)ESI(+):797.4(計算された[M-H]-:797.3)。
【0121】
Cy5-EDAの合成
【0122】
【0123】
この合成は、スルホ-Cy5-N3(4.7mg、6.01μmol、Lumiprobe社)から開始して、Cy3-EDAの合成と同様の手順に従って行われた。HPLC画分を合わせて3回凍結乾燥し、水(360μl)に溶解した後、生成物がトリエチルアミン酢酸塩溶液の形態で得られ(3.58μmol、9.8mM、A654=2450、ε645=250mM-1cm-1)、収率59%であった。MS ESI(-):821.8(計算された[M-H]-:821.4)ESI(+):823.5(計算された[M-H]-:823.4)。
【0124】
FAM-EDAの合成
【0125】
【0126】
トリエチルアミン(10μL、bioultra社)及びジエチレントリアミン(30μL)をNHS 6-カルボキシフルオレセイン(4.5mg、9.5μmol、ChemGenes社)のDMSO溶液(200μL)に添加し、22℃で60分間インキュベートした。次に、エタノール溶液(1mL、80%)を添加し、減圧下で蒸発させた。この操作を2回反復した。酢酸アンモニウム溶液(1.8mL、0.5M、pH5.9)を添加し、HPLC:Gemini(登録商標)5μm NX-C18カラム、110Å、250×10mm;システムA:50mM NH4OAc pH5.9、B:MeOH;30分でBを0~50%、5.0mL/分、22℃(RT=27分)によって分離を実施した。3回凍結乾燥した後、酢酸アンモニウム塩の形態の生成物(2.8μmol、E490=83mM-1cm-1、30%)を60%DMSOに溶解し、10mM溶液を得た。MS ESI(-):460.5(計算された[M-H]-:460.2)。
【0127】
pHrodo-EDAの合成
【0128】
【0129】
トリエチルアミン(10μL、bioultra社)及びジエチレントリアミン(20μL)をpHrodo RED NHSエステル(1mg、2.0μmol、Thermo社)のDMSO溶液(200μL)に添加し、暗所で22℃で60分間インキュベートした。次に、エタノール溶液(1mL、80%)を添加し、減圧下で蒸発させた。この操作を2回実施した。酢酸トリエチルアミンの溶液(1.8mL、0.1M、pH7.0)を添加し、HPLC:Gemini(登録商標)5μm NX-C18カラム、110Å、250×10mm;システムA:50mM AA pH5.9、B:MeCN;60分でBを0~100%、5.0mL/分、22℃(RT=26分、MS)によって分離を実施した。2回凍結乾燥し、水(100μL)に溶解した後、生成物溶液(2.8μmol、ε560=65.0mM-1cm-1)が、12.6mM(A560=82、A260=30、1mm、pH7.0)の濃度、63%の収率で得られた。MS ESI(+):630.4(計算された[M-H]-:630.4)。
【0130】
EDA-m7Gp3Gの合成
【0131】
【0132】
アスコルビン酸ナトリウム(10.3mg、52μmol)及びPEDA×2HCl(3.4mg、20μmol)をN3-m7Gp3G[8](10mg、8.4μmol)に添加し、脱気した酢酸トリエチルアミン溶液(2.0mL、45mM、pH7)に溶解した。次いで、CuSO4-THPTA複合体の溶液(10μL、水中100/500mM)を添加し、室温で2時間インキュベートした。次に、EDTA溶液(20μL、100M、pH7.0)を添加し、C18カラム;システムA:100mM NH4OAc pH5.9 B:30%MeCN、プログラム:40分でBを0~25%、4.5mL/分、22℃でHPLC分離を実施した。画分を合わせて3回凍結乾燥した後、生成物が酢酸アンモニウム塩の形態で得られ(1.6mg、1.75μmol、ε260=20.0mM-1cm-1)、収率21%であった。MS ESI(-):505.4(計算された[M-2H]2-:505.1)、ESI(+):507.4(計算された[M+2H]2+:507.1)。
【0133】
pU3の合成
【0134】
【0135】
この合成は、5'-O-DMT-2'-O-TBDMS-rU 3'-lcaa Primer Support 5G ribo U 300(170mg、50.7μmol、298μmol/g、GE Healthcare社)固体支持体で、AKTA Oligopilot plus 10合成装置を使用した公知の方法[11]に基づいて行われた。カップリング中、カラムの固体支持体を、5-(ベンジルチオ)-1H-テトラゾールのアセトニトリル溶液(0.30M)とともに5'-O-DMT-2'-O-TBDMSウリジンホスホラミダイト(ChemGenes社)又はビスシアノエチルホスホラミダイト(ChemGenes社)のアセトニトリル溶液(0.6mL、0.2M、2.4当量)で15分間洗浄した。ジクロロ酢酸のトルエン溶液(3%v/v)を脱トリチル試薬として使用し、ヨウ素のピリジン溶液(0.05M)を酸化剤として使用し、アセトニトリルに溶かしたN-メチルイミダゾール(20%v/v)をCapAとして使用し、アセトニトリルに溶かした無水酢酸(40%v/v)及びピリジン(40%v/v)の混合物をCapBとして使用した。最終合成サイクルの後、固体支持体上のRNA生成物をジエチルアミンのアセトニトリル溶液中でインキュベートして、2-シアノエチル基を除去した。固体支持体をアセトニトリルで洗浄し、アルゴンで乾燥させた。生成物の切断及び脱保護のために、樹脂をAMA(40wt%メチルアミン3mL及び30wt%アンモニア水3ml)中で40℃で1時間インキュベートした。得られた溶液を蒸発させ、生成物をDMAO(0.220mL)に溶解した。TBDMS基はトリエチルアミン三フッ化水素塩(250μL、65℃、3時間)で除去した。冷却後、溶液を炭酸水素ナトリウム溶液(20mL、0.25M)で希釈した。生成物を、DEAE Sephadexでのイオン交換クロマトグラフィー(0~1.2M TEAB勾配)によって単離した。画分を蒸発させた後、生成物がトリエチルアンモニウム塩の形態で得られた(29mg、21.0μmol、630mOD260、HPLC260=99%、収率57%)。ESI(+):467.1、935.5(計算された[M+2H]2+:469.1、[M+H]+:937.1)。
【0136】
N3-AGの合成
【0137】
【0138】
この合成は、5'-O-DMT-2'-O-TBDMS-rGiBu3'-lcaa Primer Support 5G ribo G 300(163mg、49.0μmol、300μmol/g、GE Healthcare社)固体支持体で、AKTA Oligopilot plus 10合成装置を使用した公知の方法[25]に基づいて行われた。カップリング中、カラムの固体支持体を、5-(ベンジルチオ)-1H-テトラゾールのアセトニトリル溶液(0.30M)とともに5'-O-DMT-2'-O-TBDMS rAPacのアセトニトリル溶液(0.6mL、0.2M、2.4当量)で15分間洗浄した。ジクロロ酢酸のトルエン溶液(3%v/v)を脱トリチル試薬として使用し、ヨウ素のピリジン溶液(0.05M)を酸化剤として使用し、アセトニトリルに溶かしたN-メチルイミダゾール(20%v/v)をCapAとして使用し、アセトニトリルに溶かした無水酢酸(40%v/v)及びピリジン(40%v/v)の混合物をCapBとして使用した。最終合成サイクルの後、固体支持体上のRNA生成物をジエチルアミンのアセトニトリル溶液中でインキュベートして、2-シアノエチル基を除去した。固体支持体をアセトニトリルで洗浄し、アルゴンで乾燥させた。固体支持体を閉回路内でトリフェノキシメチルホスフィンヨージド((PhO)3PCH3
+I-)のDMF溶液(1.0mL、0.6M)で15分間洗浄した。固体支持体をDMF、アセトニトリルで順次洗浄し、アルゴンで乾燥させて、試験管に移した。次に、アジ化ナトリウムのDMF飽和溶液(1mL)を添加し、60℃で1時間激しく撹拌した。固体支持体を、水、エタノール、アセトニトリルで順次洗浄し、アルゴンで乾燥させた。生成物の切断及び脱保護のために、固体支持体をAMA(40wt%メチルアミン3mL及び30wt%アンモニア水3ml)中で50℃で1時間インキュベートした。得られた溶液を蒸発させ、生成物を水に溶解した。生成物を、DEAE Sephadexでのイオン交換クロマトグラフィー(0~0.6M TEAB勾配溶出液)によって単離した。画分を蒸発させた後、生成物がトリエチルアンモニウム塩の形態で得られた(21mg、20.8μmol、550mOD260、E260=24.3mM-1cm-1、HPLC260=92%、収率42%)。
【0139】
インビトロ転写のために、生成物の一部(11mg、11.1μmol)をHPLC:Vydac Denali HiChrom C18カラム、150×10mm、5μm、120Å;溶媒A-50mM NH4OAc pH5.9、B-50mM NH4OAc pH5.9/MeCN 7:3v/v、プログラム:40分でBを0~25%、流量4.5mL/分、25℃(RT)=25分)によって更に精製した。画分を合わせて3回凍結乾燥した後、生成物が酢酸アンモニウム塩の形態で得られた(5.5mg、9.0μmol、220mOD260、E260=24.3mM-1cm-1、HPLC260約100%、収率81%)。MS ESI(-):636.3(計算された[M-H]-:636.1)。
【0140】
EDA-AGの合成
【0141】
【0142】
アスコルビン酸ナトリウム(10.3mg、52μmol)及びPEDA×2HCl(3.4mg、20μmol)をN3-AG(7.4mg、11.5μmol)に添加し、脱気した酢酸トリエチルアミン溶液(2.0mL、45mM、pH7)に溶解した。次いで、CuSO4-THPTA複合体の溶液(10μL、水中100/500mM)を添加し、室温で2時間間インキュベートした。次に、EDTA溶液(20μL、100M、pH7.0)を添加し、C18カラム;システムA:100mM NH4OAc pH5.9 B:30%MeCN、プログラム:40分でBを0~25%、4.5mL/分、22℃でHPLC分離を実施した。画分を合わせて3回凍結乾燥した後、生成物が酢酸アンモニウム塩の形態で得られ(2.8mg、3.50μmol、E260=24.3mM-1cm-1)、収率は30%であった。MSESI(-):734.4(計算された[M-H]-:734.2)。
【0143】
A35及びSP6配列を有するRNAのインビトロ転写反応のための鋳型DNAの調製
A35配列を有するRNA転写鋳型(RNA1-6)を以下の通りに調製した:
AGTAATACGACTCACTATTAGGGAAGCGGGCATGCGGCCAGCCATAGCCGATCA
(コード鎖A35);
TGATCGGCTATGGCTGGCCGCATGCCCGCTTCCCTAATAGTGAGTCGTATTACTG
(鋳型鎖A35);
の配列を有する2つのDNAオリゴヌクレオチド(Genomed社)配列の溶液を、ハイブリダイゼーション緩衝液中で1:1で混合した(4mM Tris-HCl pH7.5、15mM NaCl、0.1mM EDTA、最終45μMの各DNA鎖)。次に、この溶液を温め、ゆっくり冷却した(1時間で95℃から25℃、工程勾配-5℃/約4分)。
【0144】
SP6配列を有するRNA(RNA7~9)の転写のための鋳型は公知の手法に従って調製した[8]。
【0145】
V5x3、G276、gluc、egfp、及びfluc配列を有するRNAをインビトロ転写するための鋳型DNAの調製
3×V5配列を有するRNAの転写のための鋳型DNAは、3×V5_pUC57プラスミドをAarI(Thermo社)制限酵素で消化することによって調製した。プラスミド3×V5_pUC57は、EcoRV戦略を使用して、次の配列の遺伝子をpUC57ベクターにクローニングすることによって、Gen|Scriptによって作製した:
CAC GCT GTG TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGG TAC GCC ACC ATG GAA GGT AAG CCT ATC CCT AAC CCT CTC CTC GGT CTC GAT TCT ACG GGC AGC AGC GGC GGC AAA CCG ATT CCG AAC CCG CTG CTG GGC CTG GAT AGC ACC GGT AGC AGC GGC GGT AAG CCT ATC CCT AAC CCT CTC CTC GGT CTC GAT TCT ACG GTT TAA ACA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAG CAG GTG TCT AGA
【0146】
G276配列のRNA転写のための鋳型DNAは、hRLuc-pRNA2(A)128プラスミドをAdeI制限酵素(Thermo社)で消化することによって調製した。hRLuc-pRNA2(A)128プラスミドは公知の手法に従って作製した[26]。
【0147】
gluc配列のRNA転写のための鋳型DNAは、pJET1.2_T7_Gluc_3'utr-ベータ-グロビン_A128プラスミドをAarI制限酵素(Thermo社)で消化することによって調製した。pJET1.2_T7_Gluc_3'utr-ベータ-グロビン_A128は公知の手法に従って作製した[11]。
【0148】
egfp配列のRNA転写のための鋳型DNAは、pJET1.2_T7_Egfp_3'utr-ベータ-グロビン_A128プラスミドをAarI制限酵素(Thermo社)で消化することによって調製した。pJET1.2_T7_Egfp_3'utr-ベータ-グロビン_A128は、eGFP遺伝子をpJET1.2ベクターにクローニングすることによって、pJET1.2_T7_Gluc_3'utr-ベータ-グロビン_A128プラスミドと同じ方法で作製した[11]。
【0149】
fluc配列のRNA転写のための鋳型DNAは、pJET1.2_T7_Fluc_3'utr-ベータ-グロビン_A128プラスミドをAarI制限酵素(Thermo社)で消化することによって調製した。pJET1.2_T7_Fluc_3'utr-ベータ-グロビン_A128は公知の手法に従って作製した[8]。
【0150】
A35配列をコードするRNA(RNA1、RNA3、RNA6)のインビトロ転写及び単離
RNA3:試薬を鋳型DNA溶液(45μM、11μL)に添加して、以下の組成:転写緩衝液(×1、Thermo社)、GTP(5.0mM)、UTP(5.0mM)、CTP(5.0mM)、ATP(3.0mM)、N3-AG(6.0mM)、MgCl2(20mM)、Ribolock(1U/μL、Thermo社)、T7-RNAP(0.125mg/mL)を含む反応混合物(250μL)を得た。37℃で2時間インキュベーションした後、DNアーゼI(2μL、30分、Thermo社)を添加し、インキュベーションを更に30分続けた。その後、EDTA溶液(250μL、30mM)を添加し、除タンパク(反応混合物をPhOH/CHCl3系、続いてCHCl3、1:1v/vで洗浄)及び沈殿(3M NaOAc 50μL、pH5.2/1.1mL 99%EtOH、-20℃、ON)を実施した。遠心分離(>10g、20分、4℃)、洗浄(80%EtOH)、及び真空中で乾燥後、RNAペレットを水(200μL)に溶解した。HPLCによる生成物の分離を実施した:Phenomenex Clarity 3μm Oligo RP C18カラム、50×4.6mm。緩衝液A:50mM TEAA、B:MeCN。プログラム:5分間でBを5%、15分でBを5~10%、1分でBを10~50%、50%で4分間、流量1.0mL/分、50℃(RT約16分)。収集した画分を凍結乾燥し、水に溶解し、組成を分析するためにPAAゲル(15%PAA、8M尿素、1×TBE)で分離した。所望のRNA生成物を含有する画分を合わせ、凍結乾燥し、水に溶解した。溶液中のRNAをエタノール中で沈殿させ(前と同様にナトリウム塩として)、水(160μL)に再溶解した。RNA生成物の濃度は、ナノドロップ(A260=2.48、1.0mm光路)を使用して測定した。生成物RNA3(159μg、9.1nmol、3.98mOD260、E260=437mM-1cm-1)が、n-マー(約35~36nt)の混合物として得られた。
【0151】
RNA1:RNA1の転写及び単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:ATP(5.0mM)、N3-AG(0mM)を含むことを除いて、RNA3について記載したように実施した。
【0152】
RNA6:RNA6の転写及び単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:EDA-AG(46.0mM)、N3-AG(0mM)を含むことを除いて、RNA3について記載したように実施した。
【0153】
SP6配列をコードするRNA(RNA7、RNA9)のインビトロ転写及び単離
RNA7:RNA7転写及び単離は、公知の手法に従って実施した[8]。
【0154】
RNA9:RNA9の転写及び単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:EDA-m7Gp3G(1.0mM)、N3-m7Gp3G(0mM)を含むことを除いて、RNA7について記載したように実施した。
【0155】
V5x3、G276、gluc、egfp、及びfluc配列をコードするRNA(RNA10、RNA15、RNA16、RNA20、RNA24)のインビトロ転写及び単離
RNA20:試薬を鋳型DNA溶液(13μg、20μL)に添加して、以下の組成:転写緩衝液(×1、Thermo社)、ATP(5.0mM)、UTP(5.0mM)、CTP(5.0mM)、GTP(1.0mM)、N3-m7Gp3G(6.0mM)、MgCl2(20mM)、Ribolock(1U/μL、Thermo社)、T7-RNAP(0.125mg/mL)を含む反応混合物(130μL)を作製した。37℃で135分間インキュベーションした後、DNアーゼI(2μL、30分、Thermo社)を添加し、インキュベーションを更に30分間続けた。次に、EDTA溶液(8μL、0.5M)及び水(420μL)を添加した。反応生成物をNucleoSpin(登録商標)RNA(MACHEREY-NAGEL)で精製した:調製1回、3回に分けて添加、溶出2×60μL。RNA20溶液が得られた(152μg/115μL、1.32μg/μL、2.31μM)。更に精製するために、得られたRNAの一部をHPLCクロマトグラフィーによって分離した:RNASeptTM Prep C18カラム、50×7.8mm、2μm、A-100mM TEAOAc pH7.0、B-200mM TEAOAc pH7.0/MeCN 1:1、0.9mL/分、55℃。プログラム:40分でBを18~30%。収集した画分を約700μLに小分けし、NaOAc(70μL、3M)、グリコーゲン(1μL、5mg/mL)、及びiPrOH(800μL)を添加し、-80℃で30分間インキュベートした。ペレットを遠心分離し(30分、4℃、15,000g)、上清を注意深く除去し、EtOH(80%、0.5mL)を添加し、ペレットを再度遠心分離し(10分、4℃、14,000g)、真空下で乾燥させて、水に溶解した(試料当たり20μL)。生成物試料(60ng)をアガロースゲル(1%、1×TBE、80V 60分)で分離した。所望する生成物を含有する画分を合わせた後、高品質RNA20が得られた(4.76μg、53%)。
【0156】
RNA10:適切なDNA鋳型(V5X3)上での転写及びRNA10単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:GTP(5.0mM)、N3-m7Gp3G(0mM)を含むことを除いて、RNA20について記載したように実施した。様々なHPLCクロマトグラフィー条件も使用した:SecurityGuard(商標)カートリッジGemini(登録商標)-NX C18プレカラム、4×3.00mm、+Phenomenex Clarity 3μm Oligo RP C18カラム、150×4.6mm、A-100mM TEAOAc pH7。RNA10:適切なDNA鋳型(V5X3)上での転写及びRNA10単離は、RNA200について記載したように実施した、B-200mM TEAOAc pH7.0/MeCN 1:1,1mL/分、50℃、プログラム:60分でBを10~60%。
【0157】
RNA12:適切なDNA鋳型(G276)上での転写及びRNA12単離は、様々なHPLCクロマトグラフィー条件:SecurityGuard(商標)カートリッジGemini(登録商標)-NX C18プレカラム、4×3.00mm、+Phenomenex Clarity 3μm Oligo RPC18カラム、150×4.6mm、A-100mM TEAOAc pH7.0、B-200mM TEAOAc pH7.0/MeCN 1:1、1mL/分、50℃、プログラム:60分でBを10~60%使用したことを除いて、RNA20で記載したように実施した。
【0158】
RNA15:適切なDNA鋳型(gluc)上での転写及びRNA15単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:GTP(5.0mM)、N3-m7Gp3G(0mM)を含むことを除いて、RNA20について記載したように実施した。
【0159】
RNA16:適切なDNA鋳型(gluc)上での転写及びRNA16単離は、RNA20について記載したように実施した。
【0160】
RNA24:適切なDNA鋳型(fluc)上での転写及びRNA24単離は、反応混合物が以下の濃度の選択された試薬:GTP(1.0mM)、m2
3'-O,7Gp3G(6.0mM)を含むことを除いて、RNA20について記載したように実施した[27]。
【0161】
本発明によってCy3の3'末端で標識したRNA(RNA2、RNA4、RNA11、RNA13、RNA17、RNA21、RNA25)の調製及び単離
RNA21:新鮮なNaIO4溶液(2μL、10mM)をRNA20溶液(11.43μg/12μL)に添加し、25℃で30分間インキュベートした。次に、KH2PO4緩衝液(2μL、1M、pH6.0)、新鮮なNaBH3CN溶液(2μL、200mM)、及びCy3-EDA(2μL、10mM、50%DMSO)を添加した。25℃で120分間インキュベーションした後、水(160μL)、NaOAc(20μL、3M、pH5.9)、グリコーゲン(1μL、5mg/mL)、及びEtOH(100%、600μL)を添加し、-80℃で30分間インキュベートした。ペレットを遠心分離し(30分、4℃、15,000g)、上清を注意深く除去し、EtOH(80%、800mL)を添加し、ペレットを再度遠心分離し(10分、25℃、14,000g)、真空下で乾燥させて、水(100μL)に溶解した。RNA21溶液(101.1ng/μL、10.1μg、88%)が得られた。更に精製するために、RNA20で記載したように、得られたRNAの一部をHPLCクロマトグラフィーによって分離した。所望する生成物を含有する画分を合わせた後、高品質RNA21が得られた(3.30μg、37%)。
【0162】
RNA2:標識反応及びRNA2単離は、基質としてRNA1を使用して、RNA21で記載したように実施した。HPLCクロマトグラフィー条件:Phenomenex Clarity 3μm Oligo RP C18カラム、50×4.6mm、A-50mM TEAOAc pH7.0、B MeCN、1mL/分、50℃。プログラム:10分でBを5~75%。
【0163】
RNA4:標識反応及びRNA4単離は、基質としてRNA3を使用して、RNA21で記載したように実施した。HPLCクロマトグラフィー条件:RNA2で記載した通り。
【0164】
RNA11:標識反応及びRNA11単離は、基質としてRNA10を使用して、RNA21で記載したように実施した。HPLC条件:RNA10で記載した通り。
【0165】
RNA17:標識反応及びRNA17単離は、基質としてRNA16を使用して、RNA21で記載したように実施した。
【0166】
RNA25:標識反応及びRNA25単離は、基質としてRNA24を使用して、RNA21で記載したように実施した。
【0167】
Cy5の5'末端で標識したRNA(RNA18、RNA22)の調製及び単離
RNA22:緩衝液KH2PO4(2μL、1M、pH6.0)及びDIBAC-sCy5(2μL、20mM、50%DMSO、Lumiprobe社)をRNA20溶液(11.43μg/16μL)に添加した。25℃で120分間インキュベーションした後、水(160μL)、NaOAc(20μL、3M、pH5.9)、グリコーゲン(1μL、5mg/mL)、及びEtOH(100%、600μL)を添加し、-80℃で30分間インキュベートした。ペレットを遠心分離し(30分、4℃、15,000g)、上清を注意深く除去し、EtOH(80%、800mL)を添加し、ペレットを再度遠心分離し(10分、25℃、14,000g)、真空下で乾燥させて、水に溶解した(100μL)。RNA22溶液(94.3ng/μL、9.43μg、83%)が得られた。更に精製するために、RNA20で記載したように、得られたRNAの一部をHPLCクロマトグラフィーによって分離した。所望する生成物を含有する画分を合わせた後、高品質RNA22が得られた(4.78μg、53%)。
【0168】
RNA18:標識反応及びRNA18単離は、基質としてRNA16を使用して、RNA22で記載したように実施した。
【0169】
本発明によってCy3の3'末端及びCy5の5'末端で標識したRNA(RNA5、RNA8、RNA14、RNA19、RNA23)の調製及び単離
RNA23:新鮮なNaIO4溶液(2μL、10mM)をRNA20溶液(11.43μg/10μL)に添加し、25℃で30分間インキュベートした。次に、KH2PO4緩衝液(2μL、1M、pH6.0)、新鮮なNaBH3CN溶液(2μL、200mM)、DIBAC-sCy5(2μL、20mM、50%DMSO、Lumiprobe社)、及びCy3-EDA(2μL、10mM、50%DMSO)を添加した。25℃で120分間インキュベーションした後、水(160μL)、NaOAc(20μL、3M、pH5.9)、グリコーゲン(1μL、5mg/mL)、及びEtOH(100%、600μL)を添加し、-80℃で30分間インキュベートした。ペレットを遠心分離し(30分、4℃、15,000g)、上清を注意深く除去し、EtOH(80%、800mL)を添加し、ペレットを再度遠心分離し(10分、25℃、14,000g)、真空下で乾燥させて、水(100μL)に溶解した。RNA23溶液(94.6ng/μL、9.46μg、83%)が得られた。更に精製するために、RNA20で記載したように、得られたRNAの一部をHPLCクロマトグラフィーによって分離した。所望する生成物を含有する画分を合わせた後、高品質RNA23が得られた(2.66μg、37%)。
【0170】
RNA5:標識反応及びRNA5単離は、基質としてRNA3を使用して、RNA23で記載したように実施した。HPLCクロマトグラフィー条件:Phenomenex Clarity 3μm Oligo RP C18カラム、50×4.6mm、A-50mM TEAOAc pH7.0、B MeCN、1mL/分、50℃。プログラム:20分でBを5~30%。
【0171】
RNA8:標識反応及びRNA8単離は、基質としてRNA7を使用して、RNA23で記載したように実施した。HPLC条件:RNA5で記載した通り。
【0172】
RNA14:標識反応及びRNA14単離は、基質としてRNA12を使用して、RNA23で記載したように実施した。HPLC条件:RNA10で記載した通り。
【0173】
RNA19:標識反応及びRNA19単離は、基質としてRNA16を使用して、RNA23で記載したように実施した。
【0174】
RNアーゼA、RNアーゼT1、及びRNアーゼR活性のモニタリング
反応緩衝液(4mM Tris-HCl pH7.5、15mM NaCl、0.1mM EDTA)を減圧下で脱気した。次に、濃縮した標識RNA溶液(RNA5)を緩衝液と混合して、蛍光測定に適したRNA濃度(約100nM)を得た。RNA溶液(50μL)を温め、ゆっくり冷却し(1時間で95℃から25℃、工程勾配-5℃/約4分)、次いで暗所で氷上でインキュベートした。脱気した緩衝液(150μL)又はRiboLock RNアーゼ阻害剤緩衝液(Thermo社、10μL+140μL)で希釈した後、溶液を石英キュベット(1×1×350mm)に入れ、蛍光スペクトルを記録した(励起500nm、範囲510nm~850nm、3つのスペクトルの平均、10nmスリット)。発光スペクトルの変化を5℃で測定した。システムが安定した後(5~15分)、酵素を適切な濃度で添加した:
RNアーゼA(Thermo社):10mg/mLストック溶液、100万倍希釈(約10ng/mL、H2O)した酵素1μLをキュベットに添加した。
RNアーゼT1(Thermo社):1000U/μLストック溶液、100倍希釈(約10U/μL、H2O)した酵素1μLをキュベットに添加した。
RNアーゼR(ABM社):10U/μLストック溶液、酵素1μLをキュベットに添加した。
次に、反応が進行するにつれて発光スペクトルの変化を5℃で測定した。
【0175】
Dcp1/2酵素活性のモニタリング
反応緩衝液(4mM Tris-HCl pH7.5、15mM NaCl、0.1mM EDTA)を減圧下で脱気した。次に、濃縮したRNA溶液(RNA8)を緩衝液と混合して、蛍光測定のためのプローブ溶液(約100nM)を得た。このFRETプローブ溶液(40μL)を温め、ゆっくり冷却し(1時間で95℃から25℃、工程勾配-5℃/約4分)、次いで暗所で氷上でインキュベートした。脱気した緩衝液(150μL)で希釈した後、MgCl2(1μL、1M)を添加し、石英キュベット(1×1×350mm)に移し、蛍光スペクトルを記録した(励起500nm、範囲510nm~850nm、3つのスペクトルの平均、10nmスリット)。発光スペクトルの変化を5℃で測定した。システムが安定した後(5~15分)、シゾサッカロマイセス・ポンビー(Schizosaccharomyces pombe)によるDcp1/2複合体(10μL、7μM)を添加した。次に、反応が進行するにつれて発光スペクトルの変化を5℃で測定した。
【0176】
RNアーゼH活性のモニタリング
DNA溶液(6.00μL、1μM、1.2当量)を緩衝液(412μL;4mMトリス-HCl pH7.5、15mM NaCl、0.1mM EDTA)又は水(6.00μL)に溶かしたFRETプローブ溶液(RNA5、約100nM、50μL)に添加し、温めてゆっくり冷却した(1時間で95℃から25℃、工程勾配-5℃/約4分)。次いで、脱気した水(160μL)及びRnアーゼH緩衝液×10(24μL、200mM Tris-HCl pH7.5、500mM NaCl、100mM MgCl2、10mM DTT)を添加し、石英キュベット(240μL、1×1×350mm)に入れた。発光スペクトルの変化は35℃で測定した(励起500nm、範囲510~850nm、3つのスペクトルの平均、スリット10nm)。システムが安定した後(2~5分)、RNアーゼH(2.00μL、0.1mg/mL)を添加し、反応が進行するにつれて、当該温度での発光スペクトルの変化を測定した。
【0177】
【国際調査報告】