(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ソトラシブ投与レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240301BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240301BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240301BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240301BHJP
A61K 33/08 20060101ALI20240301BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20240301BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61K31/573
A61K45/00
A61K33/08
A61K33/00
A61K45/06
A61K31/4439
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556503
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 US2022020642
(87)【国際公開番号】W WO2022197865
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フライバーグ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘナリー,アビ
(72)【発明者】
【氏名】ハウク,ブレット・イー
(72)【発明者】
【氏名】マザー,オマー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ンガームチャムナンリー,ガタリー
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ,サンディープ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA23
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4C084ZC42
4C084ZC751
4C086AA01
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4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本明細書では、KRAS G12C変異を有するがんに罹患している患者に240mgの合計1日用量のソトラシブを投与する方法が提供される。また、本明細書では、患者においてKRAS G12C変異がんを治療する方法であって、960mgの合計1日用量のソトラシブを患者に投与すること、及び960mgの用量のソトラシブに対して有害事象を経験している患者においてソトラシブの合計1日用量を480mgに減少させることを含む方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者においてがんを治療する方法であって、240mgのソトラシブの合計1日用量を前記患者に投与することを含み、前記がんが、KRAS G12C変異がんである方法。
【請求項2】
患者において治療する方法であって、960mgのソトラシブの最初の合計1日用量を前記患者に投与すること、及び前記患者が前記最初の合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、480mgのソトラシブの減少した合計1日用量を投与することを含み、前記がんが、KRAS G12C変異がんである方法。
【請求項3】
前記患者が前記減少した合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、240mgのソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有害事象が、前記患者における1種以上の肝臓酵素の上昇であり、前記肝臓酵素が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)である、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ALT及び/又はASTのレベルの上昇が、ベースラインが正常であった場合>3×ULNであり、ベースラインが異常であった場合>3.0×ベースラインである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者におけるALT及び/又はASTレベルが、ソトラシブの前記減少した合計1日用量又はソトラシブの前記第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、前記患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
AST又はALTのレベルが、別の原因が存在しない場合に総ビリルビン>2×ULNとともに>3×ULNであるとき、ソトラシブ治療を中止することを含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有害事象が、下痢である、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者における下痢が、ソトラシブの前記減少した合計1日用量又はソトラシブの前記第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、前記患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記有害事象が、嘔気/嘔吐である、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者における嘔気/嘔吐が、ソトラシブの前記減少した合計1日用量又はソトラシブの前記第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、前記患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ソトラシブが、1日1回投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ソトラシブが、経口投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、非小細胞肺がんである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、転移性非小細胞肺がんである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが、局所進行性及び切除不能である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、結腸直腸がんである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、膵臓がんである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが、小腸がん、虫垂がん、子宮内膜がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、生殖細胞腫瘍、卵巣がん、胃腸管神経内分泌腫瘍、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、又は黒色腫である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、ソトラシブ療法の開始前に、少なくとも1つの他の全身性がん療法を受けた、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、少なくとも2つの他の全身性がん療法を受けた、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの全身性がん療法が、抗PD1免疫療法、抗PDL1免疫療法、及びプラチナ系化学療法から選択される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、又は(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)前記がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、及び(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)前記がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、ソトラシブ療法の開始の4週以内に脳転移を有しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、0、1、又は2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスを示す、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記患者が、少なくとも1ヶ月間ソトラシブを投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が、少なくとも3ヶ月間ソトラシブを投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が、少なくとも6ヶ月間ソトラシブを投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される安定な疾患(SD)を示す、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記安定な疾患が、部分奏効(PR)の認定を受けるのに十分な縮小も進行性疾患(PD)の認定を受けるのに十分な拡大もない、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される部分奏効(PR)を示す、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記部分奏効が、標的病変の直径の合計における少なくとも30%の減少である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、少なくとも3ヶ月間の無増悪生存期間(PFS)を示す、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が、少なくとも6ヶ月のPFSを示す、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記がんが、1~49%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが、1%未満のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、50~100%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんがさらに、STK11変異を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記がんがさらに、KEAP1変異を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記がんがさらに、STK11野生型を含む、請求項1~39及び41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記がんがさらに、KEAP1野生型を含む、請求項1~40及び42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、肝毒性を示し、前記方法がさらに、ステロイドを前記患者に投与することを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ステロイドが、0.25~1.0mg/kg/日の用量のプレドニゾンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記患者が、制酸薬による治療をさらに必要とする、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記制酸薬が、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2受容体アンタゴニスト(H2RA)、又は局所作用制酸剤である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が制酸薬による治療をさらに必要とする条件で、ソトラシブが、局所作用制酸剤の約4時間前又は約10時間後に投与される、請求項46又は請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記局所作用制酸剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、又は水酸化マグネシウムである、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記患者が、プロトンポンプ阻害剤(PPI)又はH2受容体アンタゴニスト(H2RA)による治療をさらに必要とする、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、ソトラシブと組み合わせてプロトンポンプ阻害剤又はH2受容体アンタゴニストを投与されない、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、又はデクスランソプラゾールである、請求項47、又は50~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記H2RAが、ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ニザチジン、ロキサチジン、又はラフチジンである、請求項47、又は50~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記患者が、CYP3A4誘導剤による治療をさらに必要とする、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記患者が、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4誘導剤を投与されない、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記CYP3A4誘導剤が、バルビツレート、ブリガチニブ、カルバマゼピン、クロバザム、ダブラフェニブ、エファビレンツ、エラゴリクス、エンザルタミド、エスリカルバゼピン、グルココルチコイド、レテルモビル、ロルラチニブ、モダフィニル、ネビラピン、オリタバンシン、オクスカルバゼピン、ペランパネル、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、リファブチン、リファンピン、テロトリスタット、及びトログリタゾンである、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記患者が、ソトラシブと組み合わせて強力なCYP3A4誘導剤を投与されない、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記強力なCYP3A4誘導剤が、フェニトイン又はリファンピンである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記患者が、CYP3A4基質による治療をさらに必要とする、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記患者が、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4基質を投与されない、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記CYP3A4基質が、アベマシクリブ、アビラテロン、アカラブルチニブ、アレクチニブ、アルフェンタニル、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アムロジピン、アピキサバン、アプレピタント、アリピプラゾール、アステミゾール、アトルバスタチン、アバナフィル、アキシチニブ、ボセプレビル、ボスチニブ、ブレクスピプラゾール、ブリガチニブ、ブスピロン、カフェルゴット、カフェイン、カルバマゼピン、カリプラジン、セリチニブ、セリバスタチン、クロルフェニラミン、シロスタゾール、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロバザム、クロピドグレル、コビメチニブ、コカイン、コデイン、コルヒチン、コパンリシブ、クリゾチニブ、シクロスポリン、ダブラフェニブ、ダクラタスビル、ダプソン、デフラザコート、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジルチアゼム、ドセタキセル、ドルテグラビル、ドンペリドン、ドキセピン、エラゴリクス、エルバスビル/グラゾプレビル、エリグルスタット、エンザルタミド、エプレレノン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、エソメプラゾール、エストラジオール、フェロジピン、フェンタニル、フィナステリド、フリバンセリン、グリベック、ハロペリドール、ヒドロコルチゾン、イブルチニブ、イデラリシブ、インダカテロール、インジナビル、イリノテカン、イサブコナゾニウム、イバブラジン、アイバカフトール、ランソプラゾール、レンバチニブ、レルカニジピン、リドカイン、リナグリプチン、ロバスタチン、マシテンタン、メサドン、ミダゾラム、ナルデメジン、ナロキセゴール、ナテグリニド、ネルフィナビル、ネラチニブ、ネツピタント/パロノセトロン、ネビラピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、オラパリブ、オメプラゾール、オンダンセトロン、オシメルチニブ、オスペミフェン、パルボシクリブ、パノビノスタット、パントプラゾール、ペランパネル、ピマバンセリン、ピモジド、ポマリドミド、ポナチニブ、プロゲステロン、プロプラノロール、クエチアピン、キニジン、キニーネ、レゴラフェニブ、リボシクリブ、リルピビリン、リスペリドン、リトナビル、リバーロキサバン、ロフルミラスト、ロラピタント、ロミデプシン、ルキソリチニブ、サルメテロール、サキナビル、セレキシパグ、シルデナフィル、シメプレビル、シンバスタチン、シロリムス、ソニデギブ、ソラフェニブ、スニチニブ、スボレキサント、タクロリムス(fk506)、タモキシフェン、タシメルテオン、タキソール、テラプレビル、テリスロマイシン、テルフェナジン、テストステロン、チカグレロル、トファシチニブ、トルバプタン、トーリセル、トラマドール、トラゾドン、バルベナジン、バンデタニブ、ベルパタスビル、ベムラフェニブ、ベネトクラクス、ベンラファキシン、ベラパミル、ビラゾドン、ビンクリスチン、ボラパクサール、ボリコナゾール、ザレプロン、及びジプラシドンである、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記患者が、P-糖タンパク質(P-gp)基質による治療をさらに必要とする、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記患者が、ソトラシブと組み合わせてP-gp基質を投与されない、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記P-gp基質が、エテキシラート、ジゴキシン、及びフェキソフェナジンである、請求項57又は請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月17日に出願された米国仮特許出願第63/162,273号、2021年5月6日に出願された米国仮特許出願第63/185,054号、及び2021年5月18日に出願された米国仮特許出願第63/190,096号の利益を主張し、これらの全ては、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ラット肉腫(RAS)がん原遺伝子は、非小細胞肺がん(NSCLC)及び結腸直腸がん(CRC)などのがんにおける腫瘍発生の発がんドライバーとして同定された。RASファミリーは、細胞増殖及び生存の調節に関与するグアノシン三リン酸(GTP)アーゼを発現する3つの密接に関係する遺伝子からなる。RASタンパク質、カーステンラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(KRAS)、Harveyラット肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログ(HRAS)、及び神経芽細胞腫RASウイルスがん遺伝子ホモログ(NRAS)は、コドン12、13、又は61で変異的に活性化されて、ヒトがんを引き起こす可能性がある。異なる腫瘍型は、RASの特定のアイソフォームにおける変異と関連し、KRASは、大部分のがんにおいて最も高頻度に変異したアイソフォームである。ヒトがんにおけるKRAS変異の役割は、何十年にもわたり知られているが、一般にタンパク質は小分子による阻害が困難であるとみなされていたため、KRAS変異を特異的に標的化する抗がん療法は、最近まで順調に開発されていなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、患者においてがんを治療する方法であって、240mgのソトラシブの合計1日用量を患者に投与することを含み、がんが、KRAS G12C変異がんである方法が提供される。
【0004】
また、本明細書では、患者においてがんを治療する方法であって、960mgのソトラシブの最初の合計1日用量を患者に投与すること、及び患者が最初の合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、480mgまでソトラシブの減少した合計1日用量を投与することを含み、がんが、KRAS G12C変異がんである方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、患者が減少した合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、240mgのソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与することを含む。
【0005】
様々な実施形態では、ソトラシブは、1日1回投与される。様々な実施形態では、ソトラシブは、経口投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも1ヶ月間ソトラシブを投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも3ヶ月間ソトラシブを投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月間ソトラシブを投与される。
【0006】
様々な実施形態では、がんは、固形腫瘍である。様々な実施形態では、がんは、非小細胞肺がんであり、いくつかの場合、転移性又は局所進行性及び切除不能である。様々な実施形態では、がんは、結腸直腸がんである。様々な実施形態では、がんは、膵臓がんである。様々な実施形態では、がんは、小腸がん、虫垂がん、子宮内膜がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、生殖細胞腫瘍、卵巣がん、胃腸管神経内分泌腫瘍、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、又は黒色腫である。
【0007】
様々な実施形態では、患者は、ソトラシブ療法の開始前に、少なくとも1つの他の全身性がん療法を受けた。様々な実施形態では、患者は、少なくとも2つの他の全身性がん療法を受けた。様々な実施形態では、少なくとも1つの全身性がん療法は、抗PD1免疫療法、抗PDL1免疫療法、及びプラチナ系化学療法から選択される。様々な実施形態では、患者は以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、又は(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある。様々な実施形態では、患者は以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、及び(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある。
【0008】
様々な実施形態では、患者は、ソトラシブ療法の開始の4週以内に活動性脳転移を有しない。様々な実施形態では、患者は、0、1、又は2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスを示す。
【0009】
様々な実施形態では、患者は、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される安定な疾患(SD)を示す。様々な実施形態では、安定な疾患は、部分奏効(PR)の認定を受けるのに十分な縮小も進行性疾患(PD)の認定を受けるのに十分な拡大もない。
【0010】
様々な実施形態では、患者は、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される部分奏効(PR)を示す。様々な実施形態では、部分奏効は、標的病変の直径の合計における少なくとも30%の減少である。
【0011】
様々な実施形態では、患者は、少なくとも3ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示す。様々な実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月のPFSを示す。
【0012】
様々な実施形態では、がんは、1~49%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す。様々な実施形態では、がんは、1%未満のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す。様々な実施形態では、がんは、50~100%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す。様々な実施形態では、がんはさらに、STK11変異を含む。様々な実施形態では、がんはさらに、KEAP1変異を含む。様々な実施形態では、がんはさらに、STK11野生型を含む。様々な実施形態では、がんはさらに、KEAP1野生型を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】1日目の180、360、720、又は960mgのソトラシブの1日1回の経口投与後の平均血漿濃度時間プロファイルを示し、Nは、データポイント全体にわたる観察の数を示す。
【
図2】8日目の180、360、720、又は960mgのソトラシブの1日1回の経口投与後の平均血漿濃度時間プロファイルを示し、Nは、データポイント全体にわたる観察の数を示す。
【
図3】ソトラシブ 180mg QD、360mg QD、720mg QD、又は960mg QDを与えられた非小細胞肺がん患者の最良腫瘍縮小の箱ひげ図を示し、nは、患者の数であり、直径の合計におけるベースラインからの変化率は、時点の応答が進行性疾患である第1の評価の以前の腫瘍評価のみを考慮する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、KRAS G12C変異を有するがんを有する患者にソトラシブを投与する方法が提供される。ソトラシブは、KRAS
G12C変異タンパク質を不可逆的に阻害する小分子である。ソトラシブはまた、AMG 510又は6-フルオロ-7-(2-フルオロ-6-ヒドロキシフェニル)-(1M)-1-[4-メチル-2-(プロパン-2-イル)ピリジン-3-イル]-4-[(2S)-2-メチル-4-(プロパ-2-エノイル)ピペラジン-1-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-2(1H)-オンであり、以下の構造を有する。
【化1】
【0015】
ソトラシブは、12位の変異体システインに隣接するKRASのP2ポケット及びヌクレオチド結合ポケットに結合する。阻害剤は、システイン残基を共有結合的に修飾し、不活性型のグアノシン二リン酸(GDP)に結合された立体構造でKRASG12Cをロックするチオール反応性部分を含有する。これは、急速進行性線維肉腫(RAF)などのエフェクターとKRASの相互作用を遮断することにより、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化を含む下流のシグナル伝達を妨げる(Cully and Downward,2008;Ostrem et al.,2013;Simanshu et al.,2017)。RNA干渉(RNAi)又は小分子阻害によるKRASの不活性化は、KRAS変異(KRAS G12C変異を含む)を有する腫瘍細胞株及び異種移植片におけるアポトーシスの細胞増殖及び誘導の阻害を以前に実証した(Janes et al.,2018;McDonald et al.,2017;Xie et al.,2017;Ostrem and Shokat,2016;Patricelli et al.,2016)。ソトラシブによる試験は、これらのインビトロでの知見を確認し、同様にKRAS G12C変異を有する細胞及び腫瘍の増殖の阻害及び退縮を実証した(Canon et al.,2019)。
【0016】
本開示の様々な実施形態では、患者は、240mgのソトラシブの合計1日用量で投与される。いくつかの実施形態では、ソトラシブは、1日1回投与される。様々な実施形態では、ソトラシブは、経口投与される。様々な実施形態では、ソトラシブは、食事とともに投与される。様々な実施形態では、ソトラシブは、食事を伴わずに投与される。
【0017】
様々な実施形態では、患者はさらに、制酸薬による治療を必要とする。制酸薬としては、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2受容体アンタゴニスト(H2RA)、及び局所作用制酸剤が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、患者はさらにPPI又はH2RAによる治療を必要とする。例示的なPPIとしては、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、及びデクスランソプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なPPIとしては、オメプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、又はデクスランソプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なH2RAとしては、ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ニザチジン、ロキサチジン及びラフチジンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な局所作用制酸剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてプロトンポンプ阻害剤又はH2受容体アンタゴニストを投与されない。いくつかの実施形態では、患者がさらに制酸剤による治療を必要とする条件で、ソトラシブは、局所作用制酸剤の約4時間前又は約10時間後に投与される。
【0018】
様々な実施形態では、患者はさらに、CYP3A4誘導剤による治療を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4誘導剤を投与されない。例示的なCYP3A4誘導剤としては、バルビツレート、ブリガチニブ、カルバマゼピン、クロバザム、ダブラフェニブ、エファビレンツ、エラゴリクス、エンザルタミド、エスリカルバゼピン、グルココルチコイド、レテルモビル、ロルラチニブ、モダフィニル、ネビラピン、オリタバンシン、オクスカルバゼピン、ペランパネル、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、リファブチン、リファンピン、テロトリスタット、及びトログリタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2021年5月にアクセスされたFlockhart DA,Drug Interactions:Cytochrome P450 Drug Interaction Table.Indiana University School of Medicine(2007),www.drug-interactions.medicine.iu.eduを参照されたい。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせて強力なCYP3A4誘導剤を投与されない。例示的な強力なCYP3A4誘導剤としては、フェニトイン及びリファンピンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2021年5月にアクセスされたwww.fda.gov/drugs/drug-interactions-labeling/drug-development-and-drug-interactions-table-substrates-inhibitors-and-inducersを参照されたい。
【0019】
様々な実施形態では、患者はさらに、CYP3A4基質による治療を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4基質を投与されない。例示的なCYP3A4基質としては、アベマシクリブ、アビラテロン、アカラブルチニブ、アレクチニブ、アルフェンタニル、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アムロジピン、アピキサバン、アプレピタント、アリピプラゾール、アステミゾール、アトルバスタチン、アバナフィル、アキシチニブ、ボセプレビル、ボスチニブ、ブレクスピプラゾール、ブリガチニブ、ブスピロン、カフェルゴット、カフェイン、カルバマゼピン、カリプラジン、セリチニブ、セリバスタチン、クロルフェニラミン、シロスタゾール、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロバザム、クロピドグレル、コビメチニブ、コカイン、コデイン、コルヒチン、コパンリシブ、クリゾチニブ、シクロスポリン、ダブラフェニブ、ダクラタスビル、ダプソン、デフラザコート、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジルチアゼム、ドセタキセル、ドルテグラビル、ドンペリドン、ドキセピン、エラゴリクス、エルバスビル/グラゾプレビル、エリグルスタット、エンザルタミド、エプレレノン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、エソメプラゾール、エストラジオール、フェロジピン、フェンタニル、フィナステリド、フリバンセリン、グリベック、ハロペリドール、ヒドロコルチゾン、イブルチニブ、イデラリシブ、インダカテロール、インジナビル、イリノテカン、イサブコナゾニウム、イバブラジン、アイバカフトール、ランソプラゾール、レンバチニブ、レルカニジピン、リドカイン、リナグリプチン、ロバスタチン、マシテンタン、メサドン、ミダゾラム、ナルデメジン、ナロキセゴール、ナテグリニド、ネルフィナビル、ネラチニブ、ネツピタント/パロノセトロン、ネビラピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、オラパリブ、オメプラゾール、オンダンセトロン、オシメルチニブ、オスペミフェン、パルボシクリブ、パノビノスタット、パントプラゾール、ペランパネル、ピマバンセリン、ピモジド、ポマリドミド、ポナチニブ、プロゲステロン、プロプラノロール、クエチアピン、キニジン、キニーネ、レゴラフェニブ、リボシクリブ、リルピビリン、リスペリドン、リトナビル、リバーロキサバン、ロフルミラスト、ロラピタント、ロミデプシン、ルキソリチニブ、サルメテロール、サキナビル、セレキシパグ、シルデナフィル、シメプレビル、シンバスタチン、シロリムス、ソニデギブ、ソラフェニブ、スニチニブ、スボレキサント、タクロリムス(fk506)、タモキシフェン、タシメルテオン、タキソール、テラプレビル、テリスロマイシン、テルフェナジン、テストステロン、チカグレロル、トファシチニブ、トルバプタン、トーリセル、トラマドール、トラゾドン、バルベナジン、バンデタニブ、ベルパタスビル、ベムラフェニブ、ベネトクラクス、ベンラファキシン、ベラパミル、ビラゾドン、ビンクリスチン、ボラパクサール、ボリコナゾール、ザレプロン、及びジプラシドンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2021年5月にアクセスされたFlockhart DA,Drug Interactions:Cytochrome P450 Drug Interaction Table.Indiana University School of Medicine(2007),https://drug-interactions.medicine.iu.eduを参照されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4基質を投与されず、CYP3A4基質は、狭い治療指数を有するCYP3A4基質である。狭い治療指数を有する例示的なCYP3A4基質としては、アルフェンタニル、フェンタニル、シクロスポリン、ピモジド、ジヒドロエルゴタミン、キニジン、エルゴタミン、シクロスポリン、エベロリムス、及びタクロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
様々な実施形態では、患者はさらに、P-糖タンパク質(P-gp)基質による治療を必要とする。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてP-gp基質を投与されない。例示的なP-gp基質としては、ダビガトランエテキシラート、ジゴキシン、及びフェキソフェナジンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2021年5月にアクセスされたwww.fda.gov/drugs/drug-interactions-labeling/drug-development-and-drug-interactions-table-substrates-inhibitors-and-inducersを参照されたい。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブと組み合わせてP-gp基質を投与されず、P-gp基質は、狭い治療指数を有するP-gp基質である。狭い治療指数を有する例示的なP-gp基質としては、ジゴキシン、エベロリムス、シクロスポリン、シロリムス、タクロリムス、及びビンクリスチンが挙げられるが、これらに限定されない。狭い治療指数を有するP-gp基質は、最小濃度変化が重大な毒性を引き起こす可能性がある化合物である。
【0022】
様々な実施形態では、患者は、本明細書で開示されるとおりのソトラシブの投与の前にKRASG12C変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有することが決定されたがんを有する。KRASG12C変異体タンパク質の決定は、本開示における他の箇所で記載されるとおりに評価され得る。
【0023】
本明細書で開示される方法において240mgのソトラシブが投与される患者は、全身性がん療法、例えば、1、又は2、又は3つなどの少なくとも1つの他の全身性がん療法で以前に治療されていてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法においてソトラシブが投与される患者は、全身性がん療法で以前に治療されていない。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブ療法が第二選択療法であるように1つの他の全身性がん療法で以前に治療されたことがあった。いくつかの実施形態では、患者は、ソトラシブ療法が第三選択療法であるように2つの他の全身性がん療法で以前に治療されたことがあった。
【0024】
いくつかの実施形態では、以前の全身性がん療法は、KRASG12C阻害剤による療法である。いくつかの実施形態では、以前の全身性がん療法は、KRASG12C阻害剤による療法ではない。ある特定の実施形態では、患者は、KRASG12C阻害剤による療法に対して低減した感受性を示す。いくつかの実施形態では、患者は、KRASG12C阻害剤による療法に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、KRASG12C阻害剤は、ソトラシブ、アダグラシブ、GDC-6036、D-1553、JDQ443、LY3537982、BI1823911、JAB-21822、RMC-6291、又はAPG-1842である。ある特定の実施形態では、KRASG12C阻害剤は、ソトラシブである。ある特定の実施形態では、KRASG12C阻害剤は、アダグラシブである。いくつかの実施形態では、療法は、単剤療法である。一実施形態では、KRASG12C阻害剤による療法は、ソトラシブ単剤療法である。別の実施形態では、KRASG12C阻害剤による療法は、アダグラシブによる単剤療法である。
【0025】
本明細書で使用する場合、「感受性」は、がんが薬物、例えば、ソトラシブに対して反応する様式を指す。例示的な態様では、「感受性」とは、「治療に対して反応性である」ことを意味し、「感受性」及び「反応性」の概念は、薬物治療に対して反応性のがん又は腫瘍が、その薬物に対して感受性であると言われる点において正の関連を示す。例示的な場合における「感受性」は、Pelikan,Edward,Glossary of Terms and Symbols used in Pharmacology(Pharmacology and Experimental Therapeutics Department Glossary at Boston University School of Medicine)に従って、特定の薬物用量に対して定性的に通常の方法で反応するための、他の能力と比較した集団、個体又は組織の能力として定義される。効果をもたらすのに必要な用量が少ないほど、反応系は、より感受性が高い。「感受性」は、用量効果曲線と横座標値の軸又はこれに平行な線との交点を基準にして定量的に測定又は説明されてもよく;こうした点は、所与の効果の程度をもたらすのにまさに必要な用量に対応する。これと同様に、測定系の「感受性」は、所与の出力(効果)の程度をもたらすのに必要な最低入力(最小量)として定義される。代表的な態様では、「感受性」は、「抵抗性」とは反対であり、「抵抗性」の概念は、「感受性」と負の関連を示す。
【0026】
例えば、薬物治療に対して抵抗性のあるがんは、その薬物に感受性でも反応性でもないか、又はその薬物に対して最初は感受性であり、抵抗性を獲得するともはや感受性でなくなり;薬物がもはやその腫瘍又はがん細胞に関して有効な治療ではないか又はもはや有効な治療ではない。
【0027】
以前の全身性がん療法としては、化学療法及び免疫療法が挙げられるが、これらに限定されない。特に考慮される以前の全身性がん療法としては、抗PD1療法、抗PDL1療法、プラチナ系化学療法、及び抗EGFR療法が挙げられる。抗PD1療法及び抗PDL1療法のいくつかの例としては、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ(tisielizumab)、トリパリマブ、アスパルタリズマブ(aspartalizumab)、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、シンチリマブ(simtilimab)、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗PD1療法又は抗PDL1療法は、バルスチリマブ、ブディガリマブ、カドニリマブ、カムレリズマブ、セトレリマブ、セミプリマブ、ドスタルリマブ、エザベンリマブ、フィノトンリマブ、ニボルマブ、ペンプリマブ、ペムブロリズマブ、プコテンリマブ(pucotenlimab)、レチファンリマブ、ルロニリマブ、ササンリマブ、セルプルリマブ、シンチリマブ、スパルタリズマブ、テボテリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ゼルバリマブ(AMG 404)、及びジムベレリマブである。ある特定の実施形態では、抗PD1療法又は抗体は、セミプリマブ、ドスタルリマブ、ペムブロリズマブ、又はニボルマブである。抗PDL1療法又は抗体のいくつかの例としては、アデブレリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、コシベリマブ、デュルバルマブ、エンバフォリマブ、エルフォンリリマブ(erfonrilimab)、ガリブリマブ(garivulimab)、ロダポリマブ、オプコリマブ(opucolimab)、スゲマリマブ、ソカゾリマブ、及びタギタンリマブ(tagitanlimab)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗PDL1療法又は抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブである。プラチナ系化学療法のいくつかの例としては、カルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、ネダプラチン、サトラプラチン、ロバプラチン、四硝酸トリプラチン、ピコプラチン、ProLindac(商標)(AP5346)、及びアロプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。抗EGFR療法のいくつかの例としては、セツキシマブ及びパニツムマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態では、患者は、がんが、上皮増殖因子受容体遺伝子(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子(ALK)、及び/又はROSがん原遺伝子1(ROS1)において治療につながる発がんドライバー変異を有することが同定された場合、標的化療法である全身性がん療法を以前に施されている。EGFR変異のための標的化療法としては、セツキシマブ、パニツムマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及びアファチニブが挙げられるが、これらに限定されない。ALK変異のための標的化療法としては、クリゾチニブ、エヌトレクチニブ、ロルラチニブ、レポトレクチニブ、ブリガチニブ、アルコチニブ(alkotinib)、アレクチニブ、エンサルチニブ、及びセリチニブが挙げられるが、これらに限定されない。ROS1変異のための標的化療法としては、クリゾチニブ、エントレセチニブ(entrecetinib)、エンサルチニブ、アルコチニブ(alkotinib)、ブリガチニブ、タレトレクチニブ、カボザンチニブ、レポトレクチニブ、ロルラチニブ、及びセリチニブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
様々な実施形態では、患者は、活動性脳転移を示さない。いくつかの実施形態では、患者は、本明細書で開示されるとおりのソトラシブ療法の開始の4週以内に脳転移を示さない。
【0030】
様々な実施形態では、患者は、0、1、又は2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスを示す(例えば、Zubrod et al.,1960を参照のこと)。ステータス0は、完全に活動性であり、制約を伴わずに全ての疾患前の動作を続けることができることを示す。ステータス1は、身体的に激しい活動において制約があるが、歩行可能で、軽作業又は座っての作業は行うことができることを示す。ステータス2は、歩行可能であり、自己の世話は全て可能であるが、作業はできず;日中の50%以上は起きて動き回ることを示す。ステータス3は、限定された自己の世話しかできず。日中の50%以上をベッド又は椅子で過ごすことを示す。ステータス4は、全く動くことができず、いずれの自己の世話もできず、完全にベッド又は椅子で過ごすことを示す。ステータス5は、死亡を示す。
【0031】
用量変更スキーム
また、本明細書では、患者においてがんを治療する方法であって、960mgのソトラシブの最初の合計1日用量を患者に投与すること、及び患者が最初の合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、480mgのソトラシブの減少した合計1日用量を投与することを含み、がんが、KRAS G12C変異がんである方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法はさらに、患者が減少した合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、240mgのソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与することを含む。
【0032】
用語「有害事象又は(AE)」は、本明細書で使用する場合、いずれかの好ましくなく且つ意図されない徴候(臨床検査異常所見を含む)、症状、又は疾患であって、医学的治療又は手順に関連するとみなされ得る医学的治療又は手順の使用と時間的に関連付けられるものを指す。
【0033】
いくつかの実施形態では、有害事象は、肝毒性(例えば、肝臓酵素の上昇)、下痢、及び/又は嘔気/嘔吐である。いくつかの実施形態では、有害事象は、肝毒性(例えば、肝臓酵素の上昇)、間質性肺疾患/間質性肺炎、下痢、及び/又は嘔気/嘔吐である。
【0034】
肝毒性
いくつかの実施形態では、有害事象は、肝毒性である。用語「肝毒性」は、本明細書で使用する場合、患者が、ソトラシブ投与前に異常な臨床検査値ではなかったか又はソトラシブの投与後に測定されるものより低かった肝臓バイオマーカーのベースラインレベルを有したとき、肝臓バイオマーカー(例えば、アルカリホスファターゼ(ALP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及び/又は総ビリルビン(TBL))の異常な臨床検査値を有する患者を指す。
【0035】
血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)とも呼ばれるアラニントランスアミナーゼ(ALT)は、アラニンからα-ケトグルタル酸へのアミノ基の転移を触媒して、ピルビン酸及びグルタミン酸を生成する。肝臓が損傷されるとき、血液中のALTのレベルは、損傷したか又は壊死した肝細胞から血液中へのALTの漏出に起因して上昇し得る。
【0036】
血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT又はGOT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)とも呼ばれるアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)は、アスパラギン酸からα-ケトグルタル酸へのアミノ基の転移を触媒して、オキサロ酢酸及びグルタミン酸を生成する。ASTは、肝臓損傷に応答して増加し得る。ASTの上昇はまた、赤血球、心筋、骨格筋、腎臓組織、及び脳組織を含む他の供給源に対する損傷から生じる可能性がある。ASTとALTの比は、肝臓損傷のバイオマーカーとして使用され得る。
【0037】
ビリルビンは、肝臓によって身体から排除されるヘムの異化産物である。肝細胞によるグルクロン酸へのビリルビンの抱合によって、身体から容易に排除される水溶性産物である直接ビリルビンを生成する。間接ビリルビンは、未抱合であり、直接ビリルビン及び間接ビリルビンの合計が総ビリルビンを構成する。総ビリルビンの上昇は、肝臓機能障害を示している可能性がある。
【0038】
アルカリホスファターゼ(ALP)は、様々な分子からリン酸基を加水分解し、肝臓の胆管を裏打ちする細胞において存在する。血漿中のALPレベルは、肝臓損傷に応答して上昇する可能性があり、パジェット病を有する成長期の小児及び高齢の患者においてより高い。しかしながら、ALPレベルの上昇は通常、胆樹疾患を反映している。
【0039】
いくつかの実施形態では、患者は、肝臓バイオマーカーの上昇をもたらす障害に罹患していない。肝臓バイオマーカー(AST/ALT及び/又はTBL値など)の上昇と関連する障害としては、肝胆道疾患;ウイルス性肝炎(例えば、A/B/C/D/E型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘、トキソプラズマ症、及びパルボウイルス);右心不全、低血圧若しくは虚血を引き起こす肝臓に対して低酸素のいずれかの原因;草本及び栄養補助食品、植物及びマッシュルームを含む肝毒性薬剤/薬物又は肝臓毒への暴露;障害性のグルクロン酸抱合を引き起こす遺伝性障害(例えば、ジルベール症候群、クリグラー・ナジャー症候群)及びビリルビングルクロン酸抱合を阻害する薬物(例えば、インジナビル、アタザナビル);α1-アンチトリプシン欠乏症;アルコール性肝炎;自己免疫性肝炎;ウィルソン病及びヘモクロマトーシス;脂肪性肝炎を含む非アルコール性脂肪性肝疾患;並びに/又は肝臓外の原因(例えば、横紋筋融解症、溶血)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
ソトラシブを受容する前に、患者のベースライン肝臓機能が、肝臓機能のバイオマーカーを測定する血液化学試験などの当技術分野で知られる様々な手段によって評価され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者において肝臓バイオマーカーをモニターすること並びにAST及び/又はALTのレベルによって測定されるとおりの>グレード2の異常な肝臓機能を有する患者においてソトラシブ投与を保留することを含む。そのような実施形態では、ソトラシブ投与は、患者におけるAST及び/又はALTレベルが、グレート1以下(ベースライン)に改善するまで休止される。
【0041】
異常な肝臓機能に関する有害作用グレードは、表1において提供される改訂版共通毒性基準(CTC)によって本明細書で定義される。全体として参照により本明細書に組み込まれる、National Cancer Instituteによって2017年11月27日に公開されたNational Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v5.0(NCI CTCAE)を参照されたい。
【0042】
【0043】
グレード0レベルは、正常範囲内(WNL)のバイオマーカーレベルによって特徴付けられる。「正常な」肝臓機能は、本明細書で使用する場合、グレード0の有害作用を指す。「異常な」肝臓機能は、本明細書で使用する場合、グレード1以上の有害作用を指す。
【0044】
「グレード1の肝臓機能異常」は、ベースラインが正常であった場合、ULNより大きく且つULNの3倍以下のALT又はASTにおける上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、1.5~3.0×ベースラインである。グレード1の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNより大きく且つULNの1.5倍以下のビリルビンレベルの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>1.0~1.5×ベースラインである。グレード1の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNより大きく且つULNの2.5倍以下のALPの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>2.0~2.5×ベースラインである。
【0045】
「グレード2の肝臓機能異常」は、ベースラインが正常であった場合、正常範囲上限(ULN)の3倍より大きく且つ5倍以下のALT又はASTにおける上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>3.0~5.0×ベースラインである。グレード2の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNの1.5倍より大きく且つULNの3倍以下のビリルビンレベルの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>1.5~3.0×ベースラインである。グレード2の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNの2.5倍より大きく且つULNの5倍以下のALPの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>2.5~5.0×ベースラインである。
【0046】
「グレード3の肝臓機能異常」は、ベースラインが正常であった場合、ULNの5倍より大きく且つULNの20倍以下のALT、AST、又はALPにおける上昇を含む;ベースラインであった場合、>5.0~20.0×ベースラインである。グレード3の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNの3倍より大きく且つULNの10倍以下のビリルビンレベルの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>3.0~10×ベースラインである。
【0047】
「グレード4の肝臓機能異常」は、ベースラインが正常であった場合、ULNの20倍より大きいALT、AST、又はALPにおける上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>20×ベースラインである。グレード4の肝臓機能異常はまた、ベースラインが正常であった場合、ULNの10倍より大きいビリルビンレベルの上昇を含む;ベースラインが異常であった場合、>10.0×ベースラインである。
【0048】
肝臓機能の様々な指標に関するULNは、使用されるアッセイ、患者集団、及び指定されるバイオマーカーに関する値のそれぞれの臨床検査値正常範囲に依存するが、当業者によって容易に決定され得る。健康な成人集団に関する正常範囲についての例示的な値は、下の表2に記載される。Cecil Textbook of Medicine,pp.2317-2341,W.B.Saunders & Co.(1985)を参照されたい。
【0049】
【0050】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、ソトラシブの合計1日用量は、患者におけるAST及び/又はALTレベルが、例えば、グレード2又はグレード3レベルまで上昇するときに減少され(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)、患者のベースラインAST及び/又はALTレベルは、グレード2未満又はグレード3未満のレベルであった。いくつかの実施形態では、ソトラシブの合計1日用量は、患者におけるAST及び/又はALTレベルが、グレード1レベルまで上昇するときに減少され(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)、患者のベースラインAST及び/又はALTレベルは、グレード1未満のレベルであった。
【0051】
或いは、本明細書で開示される方法のいずれかにおいて、ソトラシブの合計1日用量は、例えば、グレード1、グレード2、グレード3又はグレード4レベルまで(1)患者におけるAST及びビリルビンレベルが上昇させられるとき、又は(2)患者におけるAST又はALPレベルが上昇させられるとき、又は(3)患者におけるALT及びビリルビンレベルが上昇させられるとき、又は(4)患者におけるALT及びALPレベルが上昇させられるとき、又は(5)患者におけるビリルビン及びALPレベルが上昇させられるとき、減少され(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)、患者のベースラインAST、ビリルビン、ALP、及び/又はALTレベルは、それぞれグレード1未満、グレード2未満、グレード3未満又はグレード4未満のレベルであった。或いは、本明細書で開示される方法のいずれかにおいて、肝臓機能の3つのバイオマーカー、例えば、ALT及びAST及びビリルビン、又はALT及びAST及びALPは、患者においてグレード1、グレード2、グレード3又はグレード4のレベルまで上昇させられる場合があり、患者のベースラインバイオマーカーレベルは、それぞれグレード1未満、グレード2未満、グレード3未満又はグレード4未満のレベルであった。
【0052】
いくつかの実施形態では、ソトラシブの合計1日用量は、ALT及び/又はASTのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約3倍より大きいとき、減少される(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)。関連する実施形態では、ALT及び/又はASTの異常なレベルは、正常範囲上限(ULN)と比較して約3~約5倍の増大より大きい(すなわち、「グレード2の異常」)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード2の異常は、ベースラインと比較して約3倍~約5倍の増大より大きいALT及び/又はASTの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、ALPの異常なレベルは、正常範囲上限(ULN)と比較して約2.5~約5倍の増大より大きい(すなわち、「グレード2の異常」)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード2の異常は、ベースラインと比較して約2.5~約5倍の増大より大きいALPの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、ビリルビンの異常なレベルは、正常範囲上限(ULN)と比較して約1.5~約3倍の増大より大きい(すなわち、「グレード2の異常」)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード2の異常は、ベースラインと比較して約1.5倍~約3倍の増大より大きいビリルビンの異常なレベルである。
【0053】
いくつかの実施形態では、ソトラシブの合計1日用量は、ALT及び/又はASTのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約5倍より大きいとき、減少される(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)。いくつかの実施形態では、合計1日用量は、ALT、AST、又はALPのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約5~約20倍の増大より大きいとき(すなわち、「グレード3の異常」)、減少される。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード3の異常は、ベースラインと比較して約5倍~約20倍の増大より大きいALT及び/又はASTの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、ALPの異常なレベルは、正常範囲上限(ULN)と比較して約5~約20倍の増大より大きい(すなわち、「グレード3の異常」)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード3の異常は、ベースラインと比較して約5~約20倍の増大より大きいALPの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、合計1日用量は、ビリルビンのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約3~約10倍の増大より大きいとき(すなわち、「グレード3の異常」)、減少される。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード3の異常は、ベースラインと比較して約3倍~約10倍の増大より大きいビリルビンの異常なレベルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ソトラシブの合計1日用量は、ALT及び/又はASTのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約20倍より大きいとき(すなわち、「グレード4の異常」)、減少される(例えば、960mgから480mg、又は480mgから240mg)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード4の異常は、ベースラインと比較して約20倍の増大より大きいALT及び/又はASTの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、ALPの異常なレベルは、正常範囲上限(ULN)と比較して約20倍の増大より大きい(すなわち、「グレード4の異常」)。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード4の異常は、ベースラインと比較して約20倍の増大より大きいALPの異常なレベルである。いくつかの実施形態では、合計1日用量は、ビリルビンのレベルが正常範囲上限(ULN)と比較して約10倍の増大より大きいとき(すなわち、「グレード4の異常」)、減少される。いくつかの実施形態では、患者が異常なベースラインを有する場合、グレード4の異常は、ベースラインと比較して約10倍の増大より大きいビリルビンの異常なレベルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、患者における肝臓バイオマーカーがグレード1以下(例えば、ベースライン)まで改善されたとき、ソトラシブの合計用量を増加させること(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を含む。
【0056】
嘔気/嘔吐
いくつかの実施形態では、有害事象は、嘔気又は嘔吐である。いくつかの実施形態では、嘔気/嘔吐は、適切な支持療法(例えば、制吐療法)にもかかわらず存在する。「嘔気」は、本明細書で使用する場合、吐き気を催させる感覚及び/又は嘔吐する衝動によって特徴付けられる障害を指す。
【0057】
嘔気及び嘔吐に関する有害作用グレードは、表3において提供される改訂版共通毒性基準(CTC)によって本明細書で定義される。全体として参照により本明細書に組み込まれる、National Cancer Instituteによって2017年11月27日に公開されたNational Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v5.0(NCI CTCAE)を参照されたい。
【0058】
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者が≦グレード1又はベースラインに改善されるまで、>グレード3の嘔気を有する患者においてソトラシブ投与を保留することを含む。いくつかの実施形態では、患者が≦グレード1又はベースラインに改善されると、方法は、患者にソトラシブの減少された合計1日用量(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を投与することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、嘔吐が≦グレード1又はベースラインに改善されるまで、>グレード3の嘔吐を有する患者においてソトラシブ投与を保留することを含む。いくつかの実施形態では、患者が≦グレード1又はベースラインに改善されると、方法は、患者にソトラシブの減少された合計1日用量(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を投与することを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、患者における嘔気又は嘔吐がグレード1以下(例えば、ベースライン)まで改善されたとき、ソトラシブの合計用量を増加させること(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を含む。
【0062】
下痢
いくつかの実施形態では、有害事象は、下痢である。いくつかの実施形態では、下痢は、適切な支持療法(例えば、制瀉療法)にもかかわらず存在する。
【0063】
下痢に関する有害作用グレードは、表4において提供される改訂版共通毒性基準(CTC)によって本明細書で定義される。全体として参照により本明細書に組み込まれる、National Cancer Instituteによって2017年11月27日に公開されたNational Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v5.0(NCI CTCAE)を参照されたい。
【0064】
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者が≦グレード1又はベースラインに改善されるまで、>グレード3の下痢を有する患者においてソトラシブ投与を保留することを含む。いくつかの実施形態では、患者が≦グレード1又はベースラインに改善されると、方法は、患者にソトラシブの減少された合計1日用量(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を投与することを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、患者における下痢がグレード1以下(例えば、ベースライン)まで改善されたとき、ソトラシブの合計用量を増加させること(例えば、240mgから480mg、又は480mgから960mg)を含む。
【0067】
ソトラシブ療法に対する奏効
本明細書で開示される方法において240mgのソトラシブの合計1日用量が投与された患者に関する奏効率又は結果は、患者が好適な期間で240mgのソトラシブ療法を受けた後にいくつかの方法で測定され得る。様々な実施形態では、患者は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも21ヶ月、又は少なくとも23ヶ月間、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、21ヶ月、又は24ヶ月間240mgの合計1日用量のソトラシブを投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも1ヶ月間240mgの合計1日用量のソトラシブを投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも3ヶ月間240mgの合計1日用量のソトラシブを投与される。様々な実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月間240mgの合計1日用量のソトラシブを投与される。
【0068】
患者は、RECIST 1.1プロトコル(Eisenhauer、et al.,2009)によって決定される少なくとも安定な疾患(SD)によって測定されるとおり、ソトラシブ療法に奏効することができる。少なくとも安定な疾患は、安定な疾患であるか、部分奏効(PR)を示したか又は完全奏効(CR)を示したものである(すなわち、「少なくともSD」=SD+PR+CR、疾患制御と称される場合が多い)。様々な実施形態では、安定な疾患は、部分奏効(PR)の認定を受けるのに十分な縮小も進行性疾患(PD)の認定を受けるのに十分な拡大もない。様々な実施形態では、患者は、少なくとも部分奏効を示す(すなわち、「少なくともPR」=PR+CR、客観的奏効と称される場合が多い)。
【0069】
奏効は、腫瘍サイズの縮小、腫瘍増殖の抑制又は低減、標的又は腫瘍病変の減少、無増悪期間の遅延、新規の腫瘍又は病変がないこと、新規の腫瘍形成の減少、生存又は無増悪生存期間(PFS)の増加、及び転移がないことのうちの1つ以上によって測定され得る。様々な実施形態では、患者の疾患の進行は、腫瘍サイズ、腫瘍病変、又は新規の腫瘍若しくは病変の形成を測定することによって、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、核磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、X線、超音波、又はそのいくつかの組み合わせを使用して患者を評価することによって評価され得る。
【0070】
無増悪生存期間は、RECIST 1.1プロトコルに記載されるとおりに評価され得る。様々な実施形態では、患者は、少なくとも3ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも6ヶ月のPFSを示す。
【0071】
奏効を評価するための追加の手段は、下の実施例において詳細に記載され、一般に本明細書で開示される方法に適用され得る。
【0072】
KRAS G12Cがん
いずれの特定の理論にも縛られることを望むものではないが、以下が注目される:ソトラシブは、KRASG12Cを特異的且つ不可逆的に阻害する小分子である(Hong et al.,2020)。Hongらは、「[p]再臨床試験は、[ソトラシブ]が、KRASの重要な下流エフェクターである細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)のほぼ全ての検出可能なリン酸化を阻害し、KRAS p.G12C腫瘍を有するマウスにおいて永続的な完全な腫瘍退縮をもたらすことを示した」と報告している(同書、またCanon et al.,2019、及びLanman et al.,2020も参照のこと)。したがって、様々な実施形態では、240mgの合計1日用量のソトラシブは、1つ以上の細胞がKRAS G12C変異タンパク質を発現するがんを治療する際の使用のために開示される。
【0073】
ソトラシブは、非小細胞肺がんを有する59名の対象、結腸直腸がんを有する42名の対象、及びその他の腫瘍型を有する28名の対象を含む腫瘍組織に対する局所分子検査によって同定された、組織学的に確認されたKRAS G12C変異を含む局所進行性又は転移性のがんを有する129名の対象による第1相用量漸増及び拡大試験で評価された(Hong et al.,2020、1208~1209頁)。Hongらは、非小細胞肺がんについて88.1%、結腸直腸がんについて73.8%及び他の腫瘍型について75.0%の病勢コントロール率(95%CI)を報告している(Hong et al.,2020,at page 1213,Table 3)。Hongらによって報告された安定な疾患(SD)又は部分奏効(PR)のいずれかを示すがん型は、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、虫垂がん、子宮内膜がん、原発不明がん、膨大部がん、胃がん、小腸がん、副鼻腔がん、胆管がん又は黒色腫であった(Hong et al.,2020,1212頁(
図A)、並びに付録(59頁(
図S5)及び63頁(
図S6))。
【0074】
KRAS G12C変異は、下の表に示される改変頻度で発生する(Cerami et al.,2012;Gao et al.,2013)。例えば、表は、非小細胞肺がんを有する対象の11.6%が、1つ以上の細胞がKRAS G12C変異タンパク質を発現するがんを有することを示す。したがって、KRASG12Cに特異的且つ不可逆的に結合するソトラシブは、下の表5において列挙されるがんを含むが、これらに限定されないがんを有する対象の治療に有用である。
【0075】
【0076】
様々な実施形態では、がんは、固形腫瘍である。様々な実施形態では、がんは、非小細胞肺がん、小腸がん、虫垂がん、結腸直腸がん、原発不明がん、子宮内膜がん、混合性がん型、膵臓がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、胚細胞がん、卵巣がん、消化管神経内分泌がん、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、頭頸部がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、がんは、小腸がん、虫垂がん、子宮内膜がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、生殖細胞腫瘍、卵巣がん、胃腸管神経内分泌腫瘍、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、又は黒色腫である。様々な実施形態では、がんは、非小細胞肺がんであり、いくつかの特定の実施形態では、転移性又は局所進行性及び切除不能の非小細胞肺がんである。様々な実施形態では、がんは、結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは、膵臓がんである。
【0077】
KRAS、STK11、KEAP1 EGFR、ALK、及び/又はROS1変異状態を検出する方法
本明細書に記載されるとおりのがんにおけるG12C、STK11、KEAP1、EGFR、ALK及び/又はROS1変異の存在又は欠如は、当技術分野で知られる方法を使用して決定され得る。腫瘍又はがんが変異を含むかどうかの決定は、例えば、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を評価することにより、タンパク質のアミノ酸配列を評価することにより、若しくは推定上の変異体タンパク質の特徴を評価することにより又は当技術分野で知られる任意の他の好適な方法により行われ得る。野生型ヒトKRAS(Genbank受入番号BC010502に記載されるヌクレオチド配列;Genbank受入番号AGC09594に記載されるアミノ酸配列)、STK11(遺伝子ID:6794;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6794で利用可能;2020年1月にアクセスされた)、KEAP1(遺伝子ID:9817;www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/9817で利用可能;2020年1月にアクセスされた)、EGFR(遺伝子ID:1956;www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/1956で利用可能;2021年3月にアクセスされた)、ALK(遺伝子ID:238;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/238で利用可能;2021年3月にアクセスされた)、及びROS1(遺伝子ID:6098;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6098で利用可能;2021年3月にアクセスされた)のヌクレオチド及びタンパク質配列の配列は、当技術分野で知られている。
【0078】
変異を検出するための方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応-制限酵素断片長多型(PCR-RFLP)アッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応-一本鎖DNA高次構造多型(PCR-SSCP)アッセイ、リアルタイムPCRアッセイ、PCRシークエンシング、変異体アレル特異的PCR増幅(MASA)アッセイ、ダイレクトシークエンシング及び/又は次世代シークエンシング、プライマー伸長反応、電気泳動、オリゴヌクレオチド連結アッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイ、TaqManアッセイ、SNP遺伝子型決定アッセイ、高分解能融解アッセイ並びにマイクロアレイ分析が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、試料は、リアルタイムPCRによってKRAS G12C変異などの変異について評価される。リアルタイムPCRでは、KRAS G12C変異などの特定の変異に特異的な蛍光プローブが使用される。変異が存在すると、プローブが結合し、蛍光が検出される。いくつかの実施形態では、変異は、遺伝子における特定の領域の直接的な配列決定方法を使用して同定される。この手法は、配列決定された領域において起こり得る変異を全て同定する。いくつかの実施形態では、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、シークエンシング、及び/又はアレイを使用して、挿入変異の存在又は欠如を検出することができる。いくつかの実施形態では、方法としては、変異体タンパク質に特異的な結合剤(例えば、抗体)、タンパク質の電気泳動及びウエスタンブロッティング、並びに直接的なペプチドシークエンシングを使用する変異体の検出が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態では、マルチプレックスPCR系シークエンシングが変異検出のために使用され、1種以上の遺伝的バイオマーカーの検出の感受性の改善を提供するいくつかのアンプリコンを含み得る。例えば、マルチプレックスPCR系シークエンシングは、約60個のアンプリコン(例えば、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、又は70個のアンプリコン)を含み得る。いくつかの実施形態では、マルチプレックスPCR系シークエンシングは、61個のアンプリコンを含み得る。マルチプレックスPCR系シークエンシングを使用して生成されるアンプリコンは、約15bp~約1000bp(例えば、約25bp~約1000bp、約35bp~約1000bp、約50bp~約1000bp、約100bp~約1000bp、約250bp~約1000bp、約500bp~約1000bp、約750bp~約1000bp、約15bp~約750bp、約15bp~約500bp、約15bp~約300bp、約15bp~約200bp、約15bp~約100bp、約15bp~約80bp、約15bp~約75bp、約15bp~約50bp、約15bp~約40bp、約15bp~約30bp、約15bp~約20bp、約20bp~約100bp、約25bp~約50bp、又は約30bp~約40bp)の長さを有する核酸を含み得る。例えば、マルチプレックスPCR系シークエンシングを使用して生成されるアンプリコンは、約33bpの長さを有する核酸を含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、患者から得られる試料中に存在する1つ以上の変異の存在は、シークエンシング技術(例えば、次世代シークエンシング技術)を使用して検出される。様々なシークエンシング技術が当技術分野で知られている。例えば、セルフリーDNA中の循環腫瘍DNAの検出及び特徴付けのための方法は他で記載され得る(例えば、Haber and Velculescu,2014を参照のこと)。そのような手法の非限定的な例としては、SafeSeqs(例えば、Kinde et al.,2011を参照のこと)、OnTarget(例えば、Forshew et al.,2012を参照のこと)、及びTamSeq(例えば、Thompson et al.,2012を参照のこと)が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、患者から得られる試料中に存在する1つ以上の変異の存在は、変異検出に関して高度に感受性であることが知られる方法であるドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用して検出される。いくつかの実施形態では、患者から得られる試料中に存在する1つ以上の変異の存在は、鎖伸長終結技術、ショットガン技術、合成によるシークエンシング方法、微少流体技術を利用する方法、他の捕捉技術、又は試料中の少量のDNA(例えば、セルフリーDNA試料中のctDNA)の検出に有用な当技術分野で知られる他のシークエンシング技術を含むが、これらに限定されない他のシークエンシング技術を使用して検出される。
【0082】
いくつかの実施形態では、患者から得られる試料中に存在する1つ以上の変異の存在は、アレイに基づく方法を使用して検出される。例えば、セルフリーDNA中で遺伝子改変(例えば、1つ以上の遺伝子改変)を検出する工程は、DNAマイクロアレイを使用して実施される。いくつかの実施形態では、DNAマイクロアレイは、複数のがん細胞変異のうちの1つ以上を検出することができる。いくつかの実施形態では、セルフリーDNAは、遺伝子改変を検出する前に増幅される。本明細書に記載される方法のいずれかにおいて使用され得るアレイに基づく方法の非限定的な例としては、相補的DNA(cDNA)マイクロアレイ(例えば、Kumar et al.2012;Laere et al.2009;Mackay et al.2003;Alizadeh et al.1996を参照のこと)、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(例えば、Kim et al.2006;Lodes et al.2009を参照のこと)、細菌人工染色体(BAC)クローンチップ(例えば、Chung et al.2004;Thomas et al.2005を参照のこと)、一塩基多型(SNP)マイクロアレイ(例えば、Mao et al.2007;Jasmine et al.2012を参照のこと)、マイクロアレイに基づく比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ(アレイ-CGH)(例えば、Beers and Nederlof, 2006;Pinkel et al.2005;Michels et al.2007を参照のこと)、分子反転プローブ(MIP)アッセイ(例えば、Wang et al.2012;Lin et al.2010を参照のこと)が挙げられる。いくつかの実施形態では、cDNAマイクロアレイは、Affymetrixマイクロアレイ(例えば、Irizarry 2003;Dalma-Weiszhausz et al.2006を参照のこと)、NimbleGenマイクロアレイ(例えば、Wei et al.2008;Albert et al.2007を参照のこと)、Agilentマイクロアレイ(例えば、Hughes et al.2001を参照のこと)、又はBeadArrayアレイ(例えば、Liu et al.2017を参照のこと)である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、DNAタイリングアレイ(例えば、Mockler and Ecker,2005;Bertone et al.2006を参照のこと)である。他の好適なアレイに基づく方法は、当技術分野で知られている。
【0083】
腫瘍又はがんが変異を含むかどうかを決定するための方法は、様々な試料を使用することができる。いくつかの実施形態では、試料は、腫瘍又はがんを有する患者から採取される。いくつかの実施形態では、試料は、新鮮な腫瘍/がん試料である。いくつかの実施形態では、試料は、冷凍された腫瘍/がん試料である。いくつかの実施形態では、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。いくつかの実施形態では、試料は、循環セルフリーDNA及び/又は循環腫瘍細胞(CTC)試料である。いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物に処理される。いくつかの実施形態では、試料は、DNA又はRNAに処理される。ある特定の実施形態では、試料は、切除、コア針生検(CNB)、穿刺吸引(FNA)、尿の回収、又は毛包の回収によって得られる。いくつかの実施形態では、全血又は脳脊髄液を使用する液体細胞診を使用して、変異状態を評価してもよい。
【0084】
様々な実施形態では、米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局によって承認された試験を使用して、患者が、変異、例えば、KRASG12C変異がんを有するかどうか、又はそのような患者から得られる腫瘍又は組織試料が変異を有する細胞を含有するかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、使用されるKRAS変異に関する試験は、therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキット(Qiagen)である。therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、Rotor-Gene Q MDx 5plex HRM機器を使用するヒトKRASがん遺伝子のコドン12及び13の7種の体細胞変異(G12A、G12D、G12R、G12C、G12S、G12V、及びG13D)の検出のためのリアルタイム定量PCRアッセイである。キットは、切除、CNB又はFNAによって得られるNSCLC試料のFFPE試料から抽出されたDNAとの使用が意図される。STK11、KEAP1、EGFR、ALK及び/又はROS1に関する変異試験は、24種の遺伝子を含む(NSCLCにおいて治療につながるものを含む)Resolution Bioscience Resolution ctDx Lung(商標)アッセイなどの市販の試験により実行され得る。組織試料は、Tempus xT 648パネルを使用して試験され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、がんは、KRAS G12C変異を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、STK11の変異、例えば、機能喪失変異を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、KEAP1の変異、例えば、機能喪失変異を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、野生型STK11を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、野生型KEAP1を有すると同定されている。
【0086】
様々な実施形態では、がんは、STK11の機能喪失変異及び野生型KEAP1を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、STK11の機能喪失変異及びKEAP1の機能喪失変異を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、STK11の野生型及びKEAP1の野生型を有すると同定されている。いくつかの実施形態では、がんは、STK11の野生型及びKEAP1の機能喪失変異を有すると同定されている。
【0087】
用語「機能喪失変異」は、本明細書で使用する場合、もはや野生型活性を示さない(例えば、低減したか又は消失した野生型生物活性又は酵素活性)変異体タンパク質の発現をもたらすか、もはや野生型活性を示さないタンパク質の断片のみの発現をもたらすか、又は野生型タンパク質の発現をもたらさない変異(例えば、置換、欠失、短縮化又はフレームシフト変異)を指す。例えば、細胞においてSTK11遺伝子に影響を及ぼす機能喪失変異は、STK11タンパク質の発現の減少、STK11タンパク質の断片のみの発現、又はがん性細胞において減少した酵素活性を示すか又は酵素活性を示さない(例えば、セリン/スレオニンキナーゼ酵素活性がない)STK11タンパク質の発現をもたらし得る。同様に、細胞においてKEAP1遺伝子に影響を及ぼす機能喪失変異は、KEAP1タンパク質の発現の減少、KEAP1タンパク質の断片のみの発現、又は細胞において減少した活性を示すか又は活性を示さない(例えば、赤血球系転写因子2関連転写因子2(NRF2)と相互作用するか又はそれを活性化することができない)KEAP1タンパク質の発現をもたらし得る。
【0088】
PDL1タンパク質発現を検出する方法
PDL1発現は、当技術分野で知られる方法によって決定され得る。例えば、PDL1発現は、ペムブロリズマブによる治療に関するコンパニオン試験としてDako及びBristol-Meyers Squibbによって開発されたFDAに承認されたインビトロ診断用の免疫組織化学(IHC)試験であるPDL1 IHC 22C3 pharmDxを使用して検出され得る。これは、ヒト非小細胞肺がん組織などのFFPE試料においてPDL1を検出するためのモノクローナルマウス抗PD-L1、クローン22C3 PDL1及び自動染色装置Lin 48上でのEnVision FLEX可視化システムを使用する定量アッセイである。発現レベルは、腫瘍比率スコア(TPS)を使用して測定することができ、任意の強度で部分的な又は完全な膜染色を示す生存腫瘍細胞のパーセンテージを測定する。染色は、0%から100%でPDL1発現を示すことができる。
【0089】
PDL1発現はまた、ニボルマブによる治療に関するコンパニオン試験としてDako及びMerckによって開発されたFDAに承認されたインビトロ診断用の免疫組織化学(IHC)試験であるPDL1 IHC 28-8 pharmDxを使用して検出され得る。この定量アッセイは、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒトがん組織においてPDL1を検出するためのモノクローナルウサギ抗PDL1、クローン28-8及び自動染色装置Lin 48上でのEnVision FLEX可視化システムを使用する。
【0090】
PDL1検出のための他の市販の試験としては、モノクローナルウサギ抗PD-L1、クローンSP263を利用するVentana SP263アッセイ(AstraZenecaと共同でVentanaによって開発された)及びウサギモノクローナル抗PDL1クローンSP142を使用するVentana SP142アッセイ(Genentech/Rocheと共同でVentanaによって開発された)が挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局によって承認された試験を使用して、本明細書で開示されるとおりのがんのPDL1 TPSを決定する。様々な実施形態では、PDL1 TPSは、免疫組織化学(IHC)試験を使用して決定される。いくつかの実施形態では、IHC試験は、PDL1 IHC 22C3 pharmDx試験である。様々な実施形態では、IHC試験は、例えば、切除、CNB、又はFNAによって得られた試料を用いて実行した。
【0092】
様々な実施形態では、患者は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、50%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満のPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、50%未満又は1%未満のPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、50%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%以上のPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、50%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%以下のPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、50%以下、又は1%以下のPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、50%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%を超えるPDL1 TPSを有する。様々な実施形態では、患者は、前述の実施形態において引用される値のいずれかによって制限される範囲のPDL1 TPSスコアを有する。例えば、患者は、50%未満且つ1%以上、50%以下且つ1%超、50%以下且つ1%以上又は50%未満且つ1%超の範囲のPDL1 TPSスコアを有する。
【0093】
様々な実施形態では、患者は、50%未満且つ1%以上の範囲のPDL1 TPSスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、0%以上且つ1%未満の範囲のPDL1 TPSスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、50%超且つ100%以下の範囲のPDL1 TPSスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、1%未満のPDL1 TPSスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、1~49%のPDL1 TPSスコアを有する。いくつかの実施形態では、患者は、50%以上(すなわち、50%~100%)のPDL1 TPSスコアを有する。
【0094】
実施形態
1.患者においてがんを治療する方法であって、240mgのソトラシブの合計1日用量を患者に投与することを含み、がんが、KRAS p G12C変異がんである方法。
2.患者においてがんを治療する方法であって、960mgのソトラシブの最初の合計1日用量を患者に投与すること、及び患者が最初の合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、480mgのソトラシブの減少した合計1日用量を投与することを含み、がんが、KRAS p G12C変異がんである方法。
3.患者が減少した合計1日用量に対して有害事象を経験する場合、240mgのソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与することをさらに含む、実施形態2の方法。
4.有害事象が、患者における1種以上の肝臓酵素の上昇であり、肝臓酵素が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)である、実施形態2又は3の方法。
5.ALT及び/又はASTの上昇したレベルが、>3×ULNである、実施形態4の方法。
6.患者におけるALT及び/又はASTレベルが、ソトラシブの減少した合計1日用量又はソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、実施形態2~5のいずれか1つの方法。
7.AST又はALTのレベルが、別の原因が存在しない場合に総ビリルビン>2×ULNとともに>3×ULNであるとき、ソトラシブ治療を中止することを含む、実施形態2~6のいずれか1つの方法。
8.有害事象が、下痢である、実施形態2~7のいずれか1つの方法。
9. 患者における下痢が、ソトラシブの減少した合計1日用量又はソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、実施形態8の方法。
10.有害事象が、嘔気/嘔吐である、実施形態2~9のいずれか1つの方法。
11. 患者における嘔気/嘔吐が、ソトラシブの減少した合計1日用量又はソトラシブの第2の減少した合計1日用量を投与する前にグレード1又はベースラインに改善するまで、患者からソトラシブ治療を保留することをさらに含む、実施形態10の方法。
12.ソトラシブが、1日1回投与される、実施形態1~11のいずれか1つの方法。
13.ソトラシブが、経口投与される、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
14.がんが、固形腫瘍である、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
15.がんが、非小細胞肺がんである、実施形態1~14のいずれか1つの方法。
16.がんが、転移性非小細胞肺がんである、実施形態15の方法。
17.がんは、局所進行性及び切除不能である、実施形態16の方法。
18.がんが、結腸直腸がんである、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
19.がんが、膵臓がんである、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
20.がんが、小腸がん、虫垂がん、子宮内膜がん、肝胆道がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、生殖細胞腫瘍、卵巣がん、胃腸管神経内分泌腫瘍、膀胱がん、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、頭頸部がん、食道胃がん、軟部組織肉腫、中皮腫、甲状腺がん、白血病、又は黒色腫である、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
21.患者が、ソトラシブ療法の開始前に、少なくとも1つの他の全身性がん療法を受けた、実施形態1~20のいずれか1つの方法。
22.患者が、少なくとも2つの他の全身性がん療法を受けた、実施形態21の方法。
23.少なくとも1つの全身性がん療法が、抗PD1免疫療法、抗PDL1免疫療法、及びプラチナ系化学療法から選択される、実施形態21又は22の方法。
24.患者が以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、又は(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある、実施形態23の方法。
25.患者が以前に、(i)禁忌とならない限り、抗PD1療法又は抗PDL1療法、及び(ii)プラチナ系化学療法、及び(iii)がんがEGFR、ALK、又はROS1においても変異を示した場合、EGFR、ALK又はROS1標的化療法を受けたことがある、実施形態23の方法。
26.患者が、ソトラシブ療法の開始の4週以内に脳転移を有しない、実施形態1~25のいずれか1つの方法。
27.患者が、0、1、又は2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスを示す、実施形態1~26のいずれか1つの方法。
28.患者が、少なくとも1ヶ月間ソトラシブを投与される、実施形態1~27のいずれか1つの方法。
29.患者が、少なくとも3ヶ月間ソトラシブを投与される、実施形態1~27のいずれか1つの方法。
30.患者が、少なくとも6ヶ月間ソトラシブを投与される、実施形態1~27のいずれか1つの方法。
31.患者が、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される安定な疾患(SD)を示す、実施形態28~30のいずれか1つの方法。
32.安定な疾患が、部分奏効(PR)の認定を受けるのに十分な縮小も進行性疾患(PD)の認定を受けるのに十分な拡大もない、実施形態31の方法。
33.患者が、ソトラシブ療法の1、3、又は6ヶ月後に少なくとも、RECIST 1.1プロトコルによって測定される部分奏効(PR)を示す、実施形態28~31のいずれか1つの方法。
34.部分奏効が、標的病変の直径の合計における少なくとも30%の減少である、実施形態33の方法。
35.患者が、少なくとも3ヶ月間の無増悪生存期間(PFS)を示す、実施形態1~34のいずれか1つの方法。
36.患者が、少なくとも6ヶ月のPFSを示す、実施形態35の方法。
37.がんが、1~49%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
38.がんが、1%未満のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
39.がんが、50~100%のPDL1腫瘍比率スコア(TPS)を示す、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
40.がんがさらに、STK11変異を含む、実施形態1~39のいずれか1つの方法。
41.がんがさらに、KEAP1変異を含む、実施形態1~40のいずれか1つの方法。
42.がんがさらに、STK11野生型を含む、実施形態1~39及び41のいずれか1つの方法。
43.がんがさらに、KEAP1野生型を含む、実施形態1~40及び42のいずれか1つの方法。
44.患者が、肝毒性を示し、方法がさらに、ステロイドを患者に投与することを含む、実施形態1~43のいずれか1つの方法。
45.ステロイドが、0.25~1.0mg/kg/日の用量のプレドニゾンである、実施形態44の方法。
46.患者が、制酸薬による治療をさらに必要とする、実施形態1~45のいずれか1つの方法。
47.制酸薬が、プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2受容体アンタゴニスト(H2RA)、又は局所作用制酸剤である、実施形態46の方法。
48.患者が制酸薬による治療をさらに必要とする条件で、ソトラシブが、局所作用制酸剤の約4時間前又は約10時間後に投与される、実施形態46又は実施形態47の方法。
49.局所作用制酸剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、又は水酸化マグネシウムである、実施形態46~48のいずれか1つの方法。
50.患者が、プロトンポンプ阻害剤(PPI)又はH2受容体アンタゴニスト(H2RA)による治療をさらに必要とする、実施形態1~45のいずれか1つの方法。
51.患者が、ソトラシブと組み合わせてPPI又はH2RAを投与されない、実施形態47の方法。
52.PPIが、オメプラゾール、パントプラゾール、エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、又はデクスランソプラゾールである、実施形態47、又は50~51のいずれか1つの方法。
53.H2RAが、ファモチジン、ラニチジン、シメチジン、ニザチジン、ロキサチジン、又はラフチジンである、実施形態47、又は50~51のいずれか1つの方法。
54.患者が、CYP3A4誘導剤による治療をさらに必要とする、実施形態1~53のいずれか1つの方法。
55.患者が、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4誘導剤を投与されない、実施形態54の方法。
56.CYP3A4誘導剤が、バルビツレート、ブリガチニブ、カルバマゼピン、クロバザム、ダブラフェニブ、エファビレンツ、エラゴリクス、エンザルタミド、エスリカルバゼピン、グルココルチコイド、レテルモビル、ロルラチニブ、モダフィニル、ネビラピン、オリタバンシン、オクスカルバゼピン、ペランパネル、フェノバルビタール、フェニトイン、ピオグリタゾン、リファブチン、リファンピン、テロトリスタット、及びトログリタゾンである、実施形態54又は55の方法である。
57.患者が、ソトラシブと組み合わせて強力なCYP3A4誘導剤を投与されない、実施形態54の方法。
58.強力なCYP3A4誘導剤が、フェニトイン又はリファンピンである、実施形態57の方法。
59.患者が、CYP3A4基質による治療をさらに必要とする、実施形態1~58のいずれか1つの方法。
60.患者が、ソトラシブと組み合わせてCYP3A4基質を投与されない、実施形態59の方法。
61.CYP3A4基質が、アベマシクリブ、アビラテロン、アカラブルチニブ、アレクチニブ、アルフェンタニル、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アムロジピン、アピキサバン、アプレピタント、アリピプラゾール、アステミゾール、アトルバスタチン、アバナフィル、アキシチニブ、ボセプレビル、ボスチニブ、ブレクスピプラゾール、ブリガチニブ、ブスピロン、カフェルゴット、カフェイン、カルバマゼピン、カリプラジン、セリチニブ、セリバスタチン、クロルフェニラミン、シロスタゾール、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロバザム、クロピドグレル、コビメチニブ、コカイン、コデイン、コルヒチン、コパンリシブ、クリゾチニブ、シクロスポリン、ダブラフェニブ、ダクラタスビル、ダプソン、デフラザコート、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、ジアゼパム、ジルチアゼム、ドセタキセル、ドルテグラビル、ドンペリドン、ドキセピン、エラゴリクス、エルバスビル/グラゾプレビル、エリグルスタット、エンザルタミド、エプレレノン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、エソメプラゾール、エストラジオール、フェロジピン、フェンタニル、フィナステリド、フリバンセリン、グリベック、ハロペリドール、ヒドロコルチゾン、イブルチニブ、イデラリシブ、インダカテロール、インジナビル、イリノテカン、イサブコナゾニウム、イバブラジン、アイバカフトール、ランソプラゾール、レンバチニブ、レルカニジピン、リドカイン、リナグリプチン、ロバスタチン、マシテンタン、メサドン、ミダゾラム、ナルデメジン、ナロキセゴール、ナテグリニド、ネルフィナビル、ネラチニブ、ネツピタント/パロノセトロン、ネビラピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、オラパリブ、オメプラゾール、オンダンセトロン、オシメルチニブ、オスペミフェン、パルボシクリブ、パノビノスタット、パントプラゾール、ペランパネル、ピマバンセリン、ピモジド、ポマリドミド、ポナチニブ、プロゲステロン、プロプラノロール、クエチアピン、キニジン、キニーネ、レゴラフェニブ、リボシクリブ、リルピビリン、リスペリドン、リトナビル、リバーロキサバン、ロフルミラスト、ロラピタント、ロミデプシン、ルキソリチニブ、サルメテロール、サキナビル、セレキシパグ、シルデナフィル、シメプレビル、シンバスタチン、シロリムス、ソニデギブ、ソラフェニブ、スニチニブ、スボレキサント、タクロリムス(fk506)、タモキシフェン、タシメルテオン、タキソール、テラプレビル、テリスロマイシン、テルフェナジン、テストステロン、チカグレロル、トファシチニブ、トルバプタン、トーリセル、トラマドール、トラゾドン、バルベナジン、バンデタニブ、ベルパタスビル、ベムラフェニブ、ベネトクラクス、ベンラファキシン、ベラパミル、ビラゾドン、ビンクリスチン、ボラパクサール、ボリコナゾール、ザレプロン、及びジプラシドンである、実施形態59又は60の方法。
62.患者が、P-糖タンパク質(P-gp)基質による治療をさらに必要とする、実施形態1~61のいずれか1つの方法。
63.患者が、ソトラシブと組み合わせてP-gp基質を投与されない、実施形態62の方法。
64.P-gp基質が、エテキシラート、ジゴキシン、及びフェキソフェナジンである、実施形態57又は実施形態58の方法。
【実施例】
【0095】
実施例1-960mg、360mg、180mg、及び240mgのソトラシブの薬物動態分析
予備的な薬物動態(PK)データは、180から960mg PO QDまでの範囲の用量により、特定のKRAS p.G12C変異を有する進行性固形腫瘍を有する患者に関して入手可能であった。1日目の暴露量において180から960mg PO QDまでの用量相関性の増加が観察された。暴露量の増加は、1日目の用量比より小さかった。8日間の複数回のPO QD投与による蓄積はなかった。180から960mg PO QDまでの暴露量の変化は、8日目の用量比より小さかった。迅速な吸収は、PO投与の1~2時間後にtmaxにより観察された。
図1は、1日目の180、360、720、又は960mgのソトラシブの経口投与後の平均血漿濃度時間プロファイルを示す。
図2は、8日間の1日1回の投与後(8日目)の濃度を示す。下の表は、薬物動態パラメーターを提供し、AUC
0~24hは、投与後のゼロ時から24時間までの濃度-時間曲線下面積であり;C
maxは、投与間隔の間の最高薬物濃度であり;t
1/2,zは、終末相消失半減期であり;t
maxは、C
maxに到達するまでの時間である。報告されるデータは、それぞれ中央値(範囲)及び算術平均(SD)として報告されるt
max及びt
1/2を除いて、幾何平均(算術的なCV%)として示される。値は、それぞれ小数点以下0桁及び2桁の有効数字まで報告されるCV%及びt
maxを除いて、有効数字3桁まで報告される。
【0096】
【0097】
実施例2-非小細胞肺がんにおける180mg、360mg、及び720mg QDの有効性
非小細胞肺がん又は他の固形腫瘍を有すると診断され且つKRAS
G12C変異を有すると決定された患者に、180mg、360mg、720mg、及び960mg QDのソトラシブを経口投与した。奏効は、試験された全ての用量レベル全体にわたって見られた(Hong et al.,2020)。180mg QD、360mg QD、720mg QD、及び960mg QDを与えられたNSCLC患者に関する最良腫瘍縮小の箱ひげ図が
図3に示される。
【0098】
評価可能であり且つ用量180mg、360mg、又は720mgで治療された24名のNSCLC患者の中で、8名に奏効が見られた(33.3%のORR)。960mgで治療された34名のNSCLC患者の中で、12名の対象に奏効が観察された(35.5%のORR)。ソトラシブ960mg QDの第2相試験において、NSCLCにおけるORR(N=124)は、37.1%であった。
【0099】
NSCLC患者の客観的奏効は、下の表7に示される。
【0100】
【0101】
実施例3-960mg QD及び240mg QDの用量比較試験
960mg QDのソトラシブは、試験20170543(CodeBreak100)下の試験条件下で安全であり且つ有効であることが示された。しかしながら、ソトラシブは、ヒトにおける非線形の薬物動態プロファイルを示し、180mg~960mgの範囲の全ての用量レベルで認められる奏効を有する。実施例1で論じられる観察された薬物動態プロファイルに基づいて、240mg QD用量は、180mg又は360mg QDの低用量での暴露量を近似すると予想される。240mg QD用量の薬物暴露量は、960mg QD用量と類似すると予想され、240mg QD用量は、2時間の細胞pERKアッセイにおいてインビトロで90%の阻害と関連する濃度を超えることが予想される(例えば、Hong et al.2020、付録、
図S3)。
【0102】
多施設、無作為化、非盲検試験は、以前に治療された局所進行性及び切除不能又は転移性KRAS G12C変異体進行性NSCLCを有する対象において単剤療法としてのソトラシブの安全性及び有効性を評価するために構成される。およそ200名の対象が登録され、960mg QD又は240mg QDのソトラシブを受容するように1:1に無作為化される。腫瘍奏効は、独立した放射線学中央検査機関によって実行される評価により造影CT/MRIに基づいてRECIST 1.1を利用して評価される。対象は、疾患進行、治療中止につながる治療の不耐性、別の抗がん療法の開始又は同意の撤回まで治療を継続する。対象のスキャンは、最初の進行性疾患(PD)の時点で独立した中央検査機関での進行の確認(COP)を受ける。中央検査機関での進行の確認後、両方のアームにおける対象は、忍容性があり且つ合理的な代替の治療選択肢が治験責任医師の判断において利用可能ではない場合、それらの既存の用量でソトラシブ療法を継続する選択肢を有する。進行後に治療を受ける対象は、第1のPDの確認後にスキャンを受け続ける。
【0103】
対象組み入れ基準としては、以下が挙げられる:
対象は、いずれかの試験特異的な行動/手順の開始の前にインフォームドコンセントを提供した。
【0104】
少なくとも18歳の男性又は女性。
【0105】
分子的試験を介して同定されたKRAS G12C変異を有する病理学的に実証された局所進行性又は転移性悪性腫瘍。
【0106】
NSCLCに関して: 対象は、(禁忌でなければ)抗PD1若しくは抗PDL1免疫療法並びに/又はプラチナ系の組み合わせ化学療法及び標的化療法(治療につながる発がんドライバー変異(すなわち、EGFR、ALK及びROS1)が同定された場合)を受けた後に進行していなければならない。
【0107】
全てのNSCLC対象に関して、以下のガイダンスが使用されるべきである:(1)補助療法は、対象が補助療法投与時又はその6ヶ月以内に進行した場合、療法のラインとして数えられる。(2)局所進行性及び切除不能なNSCLCにおいて、以前の治癒が意図された多様式の療法の終了時又はその6ヶ月以内の疾患進行は、療法のラインとして数えられる。化学放射線治療の後に計画された全身療法が行われ、化学放射線治療と全身療法の間に実証された進行を伴わない場合、全治療期間が療法の1ラインとして数えられる。(3)プラチナダブレット化学療法後の維持療法は、別のラインの療法としてみなされない。
【0108】
CRCに関して: 対象は、フルオロピリミジン及びオキサリプラチン及びイリノテカンを受容した後に進行していなければならない。MSI-Hである腫瘍を有するそれらのCRC対象については、先行する全身性レジメンの少なくとも1種は、対象が阻害剤を摂取することが臨床的に可能であり、これらの薬剤の1種がその地域又は国においてその適応について承認されている場合、抗PD1療法を含んでいなければならない。
【0109】
NSCLC又はCRC以外の進行性固形腫瘍型については、対象は、少なくとも1種の先行する全身性療法を受けていなければならないか、臨床的利点を提供することが知られている利用可能な療法について非忍容性又は不適格でなければならない。。NSCLC又はCRC以外の進行性固形腫瘍型を有する対象は、KRAS p.G12C変異の中央検査機関での確認を伴わずに第1相又は第2相において登録され、治療され得る。
【0110】
対象は、保管された腫瘍組織試料(5年以内に採取されたホルマリン固定、パラフィン包埋[FFPE]試料)を提供する意思があるか又は治療前の腫瘍生検を受ける意思がある。利用可能な保存された組織を有しない以前に分子的に確認されたKRAS p.G12C変異を有するNSCLC又はCRC以外の腫瘍型を有する対象は、腫瘍生検が実現可能ではない場合に治験責任医師及びメディカルモニターによる同意に基づく腫瘍生検を受けずに登録することが許容され得る。
【0111】
適切に生検され得る病変を有する対象は、腫瘍進行時に任意選択の生検を受けることが要求されることになる。
【0112】
RECIST 1.1判定基準に従って測定可能な疾患。
【0113】
≦2の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス。
【0114】
以下のとおりの十分な腎臓臨床検査:MDRD(腎疾患における食事の変更)計算に基づく推算糸球体濾過量≧45ml/分/1.73m2。
【0115】
対象除外基準としては、以下が挙げられる:
非脳腫瘍からの活動性の脳転移。脳転移が切除されたか又は試験1日目の少なくとも4週前に放射線療法を終えた対象は、対象が以下の判定基準の全てを満たす場合、適格である: a)≦2のグレードの残留性の神経症状;b)該当する場合、デキサメタゾンの安定用量の投与;及びc)30日以内に実施された経過観察MRIが新規の病変の出現を示さない。
【0116】
2年以上疾患の証拠がなく、治療により完治している場合を除いて、血液系腫瘍の病歴があるか又はそれが存在する。
【0117】
試験の1日目の6ヶ月以内の心筋梗塞、症候性のうっ血性心不全(ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)>クラスII)、不安定狭心症、又は薬物療法を必要とする心不整脈。
【0118】
経口薬の服用を不能にする胃腸(GI)管疾患、吸収不良症候群、静脈内栄養補給の必要、制御されない炎症性GI疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)。
【0119】
試験登録(1日目)の1週以内のIV抗生物質を必要とする活動性感染。
【0120】
以下の結果及び/又は判定基準に基づく肝炎感染の除外:陽性のB型肝炎表面抗原(HepBsAg)(慢性B型肝炎又は最近の急性B型肝炎を示す);B型肝炎コア抗体に関して陽性である陰性HepBsAg(B型肝炎コア抗体試験はスクリーニングのために必要ではないが、これがなされ、陽性である場合、B型肝炎表面抗体[抗HBs]試験が必要である)。この状況において抗HBsが検出不能であることは、不明確な感染の可能性を示唆しており、除外される必要がある);陽性のC型肝炎ウイルス抗体: PCRによるC型肝炎ウイルスRNAが必要である。C型肝炎ウイルスRNAが検出可能であることは、慢性C型肝炎を示唆する。
【0121】
HIVに関して既知の陽性試験。
【0122】
有害事象共通用語規準(CTCAE)バージョン5.0のグレード0若しくは1又は脱毛症を除く適格性判定基準において指示されるレベルまで回復していないと定義される以前の抗腫瘍療法に起因する未回復の毒性(イホスファミド関連タンパク尿などの不可逆的であるとみなされる[6ヶ月を超えて存在し且つ安定であるものとして定義される]以前の抗腫瘍療法に起因するグレード2又は3の毒性は、それらが除外基準に記載されておらず且つ治験責任医師及び治験依頼者の両方によって同意が得られた場合に許容され得る)。
【0123】
試験1日目の28日以内の抗腫瘍療法(化学療法、抗体療法、分子標的化療法、レチノイド療法、ホルモン療法[乳がんを有する対象を除く]又は治験薬);ホルモン抵抗性前立腺がん又は乳がんのためのホルモン枯渇療法の同時の使用は許容される。
【0124】
試験1日目の2週以内の治療的又は対症的放射線療法。対象は全ての放射線療法関連毒性から回復していなければならない。
【0125】
現在、別の治験用医療機器若しくは治験薬試験に登録されているか、又は別の治験用医療機器若しくは治験薬試験の終了から28日未満であるか、又は他の治験薬の投与を受けている。例外:別の治験用医療機器又は治験薬の長期的な経過観察部分に登録されているが、それぞれの治験薬又は治験用医療機器を使用していない対象。
【0126】
他の治験処置は除外される。
【0127】
試験1日目の28日以内の大手術。
【0128】
AMG 510による単剤療法: 治療中及びAMG 510の最後の投与を受けた後の少なくとも7日(女性)又は7日(男性)間に許容される受胎調節の方法を実践する意思がない男性及び妊娠可能な女性(WOCBP)。女性のための非常に有効な受胎調節の許容される方法は、禁欲(異性間性交を控える);試験により精液中に精子がないことが示される精管切除術(1名の男性の性的パートナーを有する女性);卵管結紮術若しくは閉塞;又は子宮内避妊器具を含む。男性のための受胎調節の許容される方法は、禁欲(異性間性交を控える);試験により精液中に精子がないことが示される精管切除術;パートナーにおける左右卵管結紮若しくは閉塞;又はコンドーム(女性パートナーは受胎調節の形式も検討すべきである)を含む。注: 女性は、初経後、恒久的に不妊でない限り閉経後まで妊娠可能である(WOCBP)、すなわち、生殖能力があるとみなされる。恒久的な不妊化方法としては、子宮摘出、両側卵管摘除、及び両側卵巣摘出が挙げられる。閉経後の状態は、別の医学的原因を伴わずに12ヶ月間月経がないこととして定義される。閉経後範囲の高い卵胞刺激ホルモンレベルは、ホルモン避妊又はホルモン補充療法を使用していない女性の閉経後状態を確認するために使用され得る。しかしながら、無月経が12ヶ月間ない場合、卵胞刺激ホルモンの1回の測定では不十分である。
【0129】
授乳中/母乳栄養中であるか又は試験中から試験薬の最後の投与を受けてから7日後まで母乳で育てる予定がある女性。
【0130】
妊娠試験が陽性である女性。
【0131】
試験中から試験薬の最後の投与を受けてから7日後まで妊娠中になる予定がある女性。
【0132】
対象が、投与中に投与されることになる製品のいずれかに既知の感受性を有する。
【0133】
対象及び治験責任医師が知る限り、対象は、治験実施計画書で要求される試験来院又は手順について利用可能ではないことになる。
【0134】
対象は、治験責任医師の判断において、文書によるインフォームドコンセントを行う対象の能力及び/又は必要な全ての試験手順を遵守する対象の能力を損なう可能性のあるいずれかの障害を有する。
【0135】
治験責任医師又は会社専属医師が、対象の安全性に対するリスクを提起するか、又は試験の評価、手順若しくは完了に支障をきたすであろうと判断する任意の他の臨床的に重要な障害、病態又は疾患(上で概説されたものを除く)の病歴又は証拠。
【0136】
治験責任医師による審査及び承認を受けていない、試験1日目前の14日以内又は本剤若しくはその主要な活性代謝物の5半減期以内のいずれか長い方の既知のP-gp感受性基質(治療域が狭い)の使用。
【0137】
治験責任医師による審査及び承認を受けていない、試験1日目前の14日以内又は本剤若しくはその主要な活性代謝物の5半減期以内のいずれか長い方のプロトンポンプ阻害剤(PPI)又はH2受容体アンタゴニストの使用。
【0138】
治験責任医師及び会社のメディカルモニターによる審査及び承認を受けていない、試験1日目前の14日以内又は本剤若しくはその主要な活性代謝物の5半減期以内のいずれか長い方の既知のチトクロムP450(CYP)3A4感受性基質(治療域が狭い)の使用。
【0139】
治験責任医師及び会社のメディカルモニターによる審査及び承認を受けていない、試験1日目前の14日以内又は5半減期以内(いずれか長い方)のCYP3A4の強力な誘導剤(セイヨウオトギリソウ(St.John’s wort)などのハーブの栄養補助剤を含む)の使用。
【0140】
以下の例外を伴う過去2年以内の他の悪性腫瘍の病歴:治癒を目的として治療された悪性腫瘍であり、登録前の2年間以上活動性の疾患が認められず、且つ担当医によって再発のリスクが低いと考えられたもの;疾患の証拠を有しない十分に治療された非黒色腫皮膚がん又は悪性黒子;疾患の証拠を有しない十分に治療された生体内原位置の子宮頸がん;疾患の証拠を有しない十分に治療された生体内原位置の乳管がん;前立腺がんの証拠を有しない前立腺上皮内腫瘍;十分に治療された尿路上皮乳頭非浸潤がん若しくは生体内原位置のがん。
【0141】
直接的なKRASG12C阻害剤による以前の治療。
【0142】
対象の無作為化
対象は、全ての登録要件を満たした後に非盲検の様式でソトラシブ960mg QD又は240mg QDのいずれかに1:1の割り当て比で無作為化される。無作為化は、転移性疾患のための以前の療法のライン数(1~2又は>2)、CNS転移の病歴(あり又はなし)、パフォーマンスステータス(<2又は2)、及び人種(アジア人対非アジア人)によって層別化される。
【0143】
用量及び投与
ソトラシブは、1日1回経口投与される。休薬は許容されない。対象は、毎日ほぼ同時に食事を伴うか又は伴わずにソトラシブ用量(全てが同時の錠剤)を服用すべきである。その用量は、予定された時間の2時間の枠内に服用されるべきである。ソトラシブの用量は、投与の15分位内に嘔吐が生じ、投与された全ての錠剤が説明され(例えば、4個の錠剤が投与された場合、4個の錠剤が回収されなければならない)、目視検査によって未変化である(崩壊していないか、部分的に溶解していないか、噛まれていないか、又は粉砕されていない)場合、嘔吐の際に置き換えられ得る。対象は、予定された投与の時間から6時間が経過した場合、ソトラシブ投与を省くべきである。
【0144】
休薬
960mg QDアームに無作為化された対象は、下の表8において概説されるとおり、最大2回の休薬が許容され、その後480mg QD(1用量の減少)又は240mg QD(2用量の減少)のいずれかへの用量減少が許容される。240mg QD用量は、観察された臨床奏効を有する低用量での曝露プロファイルを最も容易に近似しているため、240mg未満への用量減少を必要とする対象は、治療を恒久的に中止すべきである。240mg QDアームに無作為化された対象は、最大2回の休薬が許容されるが、ソトラシブは、治験責任医師の判断に従って医学的に安全であり且つ適切であるとみなされる場合、ソトラシブの再開時に減少されない。ソトラシブに関連する毒性管理に起因して3以上の用量減少を必要とする960mg QDアームにおける対象及びソトラシブに関連する毒性管理に起因して3回以上の休薬を必要とする240mg QDアームにおける対象は、治療を恒久的に中止すべきである。
【0145】
【0146】
ソトラシブに関する肝毒性ガイドライン: AST、ALT、又はアルカリホスファターゼ(ALP)の上昇を有する患者の管理及びモニタリングのためのガイドラインは、下の表9において示される。
【0147】
【0148】
肝毒性反応:異常な肝臓臨床検査値(すなわち、アルカリホスファターゼ(ALP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、総ビリルビン(TBL))及び/若しくは国際標準比(INR)並びに/又は肝炎の徴候/症状(下記のとおり)を有する対象は、ソトラシブの保留又は完全中止に関する判定基準を満たし得る。
【0149】
以下の中止及び/又は保留の規則は、肝臓バイオマーカー(TBL、INR、及びトランスアミナーゼ)におけるそれらの変化の別の原因が同定されている対象に適用される。AST/ALT及び/又はTBL値の上昇に関する重要な別の原因としては、肝胆道疾患;ウイルス性肝炎(例えば、A/B/C/D/E型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘、トキソプラズマ症、及びパルボウイルス);右心不全、低血圧若しくは虚血を引き起こす肝臓に対して低酸素のいずれかの原因;草本及び栄養補助食品、植物及びマッシュルームを含む肝毒性薬剤/薬物又は肝臓毒への暴露;障害性のグルクロン酸抱合を引き起こす遺伝性障害(例えば、ジルベール症候群、クリグラー・ナジャー症候群)及びビリルビングルクロン酸抱合を阻害する薬物(例えば、インジナビル、アタザナビル);α1-アンチトリプシン欠乏症;アルコール性肝炎;自己免疫性肝炎;ウィルソン病及びヘモクロマトーシス;脂肪性肝炎を含む非アルコール性脂肪性肝疾患;並びに/又は肝臓外の原因(例えば、横紋筋融解症、溶血)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
下の表10に記載されるとおり、障害性の肝臓試験(ALT、AST、ALP)及び/又はTBLの上昇に関する別の原因が発見され且つ/又は臨床検査値異常が正常又はベースラインに回復する場合、再負荷が検討され得る。
【0151】
【0152】
放射線学的画像評価
疾患の程度は、下記のとおり、RECIST 1.1に従って造影MRI/CTによって評価される。対象に対する放射線暴露を低減するために、できるだけ低線量CTが利用されるべきである。
【0153】
スクリーニングスキャンは、登録前の28日以内に実施される必要があり、ベースラインとして使用される。その後の全てのスキャンは、同じ造影剤を用いて、好ましくは同じスキャナー上でスクリーニング時と同じ様式で実施される。放射線学的評価は、胸部、腹部及び骨盤のMRI/CT、並びに疾患の全ての他の既知の部位の評価を含まなければならない。脳の核磁気共鳴画像法(MRI)は、中枢神経系転移を示唆する徴候又は症状が存在する場合、実施されるべきである。
【0154】
スクリーニング時に使用されるべきである同じ画像診断モダリティ、MRIの場の強度並びに静脈内及び経口造影剤が、その後の全ての評価のために使用されるべきである。肝臓特異的MRI造影剤は使用してはならない。潜在的な安全性の懸念を軽減するため、大環状ガドリニウム造影剤は、国立衛生研究所(National Health Institute)ガイドラインに従うことが推奨されるか、又はより厳格な場合、地域の基準に従う。
【0155】
治療及び経過観察の間、胸部、腹部、骨盤、及び疾患の全ての他の既知の部位の放射線画像診断は、最初の8回の奏効評価まで治療サイクルに関係なく6±1週毎に実施され、ベースライン後の最初のスキャンはC1D1の6±1週後に行われる。8回の6週毎の奏効評価の後、放射線画像診断及び腫瘍評価は、12±1週毎に実施される。放射線画像診断及び腫瘍評価は、疾患進行、又は治験薬の終了のいずれか遅い方まで実施される。画像診断はまた、管理医の判断で臨床的に必要な場合、より頻繁に実施され得る。放射線学的奏効(完全奏効、部分奏効)は、奏効の最初の文書化の少なくとも4週後に再現スキャンによる確認を必要とし、不必要な手技を回避するために次の予定されたスキャンまで遅延されてもよい。安定な疾患の決定のための最小の時間間隔は、≧5週である。
【0156】
脳転移を有する全ての対象は、AMG 510の最初の投与前の28日以内に実施される脳のMRIを有していなければならない。その後、脳スキャンは、管理医の判断において臨床的に必要な場合、任意の時点で実施され得る。治験実施計画書上の全ての脳スキャンは、MRIが禁忌でなければMRIでなければならず、続いて造影によるCTが許容される。
【0157】
EOT来院中の放射線画像診断評価は、RECIST 1.1ガイドラインに従う疾患進行以外の理由のために治療を中止する患者に関してのみ実施されるべきである。
【0158】
対象の臨床管理のための疾患奏効の決定は、RECIST 1.1に従って臨床施設で評価される。
【0159】
独立した中央検査機関での進行の確認(COP)
治験責任医師がRECIST v1.1に従って放射線学的な進行を特定するとき、現在の画像診断とこれまでの全ての画像を即座に中央の画像診断業者に送らなければならない。重大な疑義が解決されてから、中央の画像診断業者が独立したCOPを実施し、参加者がRECIST v1.1に従って進行性疾患に達したかどうかに関して、試験施設及び治験依頼者に第2の独立した意見を提供することになる。これは、有効性のために画像を読み取る中央の放射線科医グループとは別である1名の放射線科医によって実施される。独立したCOPの結果は、中央の有効性審査担当者とは議論されず、したがって、中央の有効性審査担当者による奏効又は進行の決定に影響を及ぼさないことになる。独立したCOPは、目下の時点でRECIST v1.1に従って進行性疾患の存在又は非存在に対して施設PIにセカンドオピニオンを提供するためにのみ利用され、臨床対象のデータは議論されないことになる。
【0160】
中央の画像診断業者による放射線学的疾患進行の評価により、この時点で疾患進行が確認されない場合、中央の画像診断業者により、1名の放射線医と施設の放射線医との間で放射線学的疾患進行の確認を決定するために参加者の画像を審査する会議が開催されてもよい。施設PIは、最終的な治療及び対象管理の決定を行う。
【0161】
放射線学的疾患の進行は、治験薬の休止、地域による介入、新規の抗がん療法の開始、又は進行後の治療の前に中央検査機関で検証されるべきである。安全性の懸念が存在せず、試験参加者が臨床的に安定している場合、参加者は、中央検査機関での進行の確認が進行中である間及び放射線学的な疾患進行の確認が完了するまで、治験薬の投与を続けることになる。
【0162】
KRAS G12C、PD1、及び様々な変異に関する試験
QIAGENからのtherascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、FFPE組織から抽出されたDNAを使用するヒトKRASがん遺伝子における7種の体細胞変異の検出のためのRotor-Gene Q MDx機器上で実施されるリアルタイム定量PCRアッセイである。検出される変異は、G12A、G12D、G12R、G12C、G12S、G12V、G13Dである。therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、KRAS p.G12C変異に関してNSCLC及びCRCを有する対象を試験するために使用されることになる利用可能な調査用のインビトロ診断デバイスである。Qiagen therascreen(登録商標)KRAS RGQ PCRキットは、ある特定の地域で承認され得る。
【0163】
PDL1試験は、使用のための指示書に従ってDako PharmDx 22C3免疫組織化学FDA承認キットを使用して中央検査機関で実行される。
【0164】
固形がん効果判定基準バージョン1.1(RECIST 1.1)
定義
測定可能な病変
測定可能な腫瘍病変-少なくとも一次元で正確に測定できる境界が明確であり、スライス厚が5mm以下のCT/MRIスキャンで最長の直径が≧10mmの非リンパ節病変。スライス厚が5mmより大きいとき、測定可能な病変の最小サイズは、スライス厚の2倍であるべきである。
【0165】
リンパ節病変-リンパ節は、病理学的に肥大し、測定可能であるとみなされることになり、リンパ節は、CT/MRI(5mm以下であることが推奨されるスキャンスライス厚)によって評価されるとき、短軸で≧15mmでなければならない。ベースライン及び経過観察時に、短軸のみが測定され、追跡される。節のサイズは通常、軸面において二次元として報告される。これらの測定値のうちでより小さいのは短軸(長軸に対して垂直)である。
【0166】
放射線照射された病変-以前に放射線照射された領域、又は他の局所領域療法にかけられた領域に位置する腫瘍病変は、登録前に病変の進行が実証されていない限り、測定不可能である。
【0167】
測定不可能な病変: 小病変(最長の直径<10mm又は病的状態のリンパ節であって、短軸が≧10mmであるが<15mmであり、5mm以下のCTスキャンスライス厚を有するもの)を含む他の全ての病変は、測定不可能であるとみなされ、非標的病変として特徴付けられる。
【0168】
測定不可能な病変の他の例としては、以前に局所治療を有する病変: 以前に放射線照射された領域、又は他の局所領域療法にかけられた領域に位置する腫瘍病変は、病変の進行が実証されていない限り、測定可能であるとみなされるべきではない;生検された病変が挙げられ;分類上、小病変、骨病変、炎症性乳房疾患、及び軟髄膜疾患のクラスターは、標的不可能である。
【0169】
測定の方法
病変の測定-選択された病変の最長の直径は、画像が取得された平面(軸面)において測定されるべきである。全ての測定値が取得され、メートル表示法で記録されるべきである。全てのベースライン評価は、可能な限り治療の開始に近い時期であり、試験1日目の4週以前に実施されるべきである。
【0170】
評価の方法-同じ評価方法及び同じ技術を使用して、治験全体にわたってそれぞれの同定され且つ報告された病変を特徴付けるべきである。
【0171】
CT/MRI-造影CT又はMRIを使用して、全ての病変を評価すべきである。固形腫瘍における転移の最適な可視化及び測定は、一貫したIV造影剤の投与(用量及び速度)及びスキャンの時機を必要とする。CT及びMRIは、≦5mm厚の隣接するスライスで実施されるべきである。
【0172】
「標的」及び「非標的」病変のベースライン考証
標的病変-全ての関与する臓器を代表する、1つの臓器当たり最大2つまでの病変及び合計で5つまでの病変である全ての測定可能な病変が、ベースライン時に標的病変として同定され、記録され、測定されるべきである。
【0173】
標的病変は、それらのサイズ(最長の直径を有する病変)及び正確な反復測定への適性に基づいて選択されるべきである。
【0174】
病的なリンパ節(≧15mmの短軸を有する)が標的病変として同定され得る。全ての他の病的なリンパ節(≧10mmであるが<15mmの短軸を有するもの)は、非標的病変とみなされるべきである。
【0175】
全ての標的病変について、直径の合計(非リンパ節病変については最長の直径、リンパ節病変については短軸)が計算され、ベースラインの直径の合計として報告される。ベースラインの直径の合計は、客観的腫瘍奏効を特徴付けるための基準として使用される。
【0176】
非標的病変-病的なリンパ節を含む全ての他の病変(又は疾患の部位)は、非標的病変として同定されるべきであり、ベースライン時にも記録されるべきである。これらの病変の測定は必要とされず、これらの病変は、試験全体にわたって「存在」、「非存在」、又は「明白な進行」として追跡されるべきである。加えて、同じ臓器を含む複数の非標的病変を症例報告書上の1つの項目として記録することが可能である(例えば、「複数の拡大した骨盤リンパ節」又は「複数の肝臓転移」)。
【0177】
奏効判定基準
【0178】
【0179】
【0180】
全体的な奏効の評価
最良総合効果は、試験治療の開始から治療の終了又は疾患進行/再発まで記録された最良効果である(PDのための基準として治療が開始されてから記録された最小の測定値を取得する)。
【0181】
一般に、対象の最良効果の割当は、標的疾患及び非標的疾患の両方の所見に依存し、新規の病変の出現も考慮に入れる。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
奏効評価に対する特記事項
リンパ節病変-標的病変として同定されたリンパ節は、リンパ節が試験において10mm未満に退行する場合でさえ、実際の短軸の測定値が常に記録されるべきである。CRに関して認定するために、各リンパ節は、完全な消失ではなく<10mmの短軸に達しなければならない。リンパ節標的病変の短軸の測定値を、標的病変の最長の直径測定値とともに加えて、特定の評価(時点)のための標的病変の直径の合計を作成する。
【0186】
「小さすぎて測定できない」標的病変-試験中、ベースライン時に記録された全ての病変(リンパ節及び非リンパ節)は、それぞれのその後の評価時にそれらの測定値が記録されるべきである。病変が5mm未満になる場合、測定値の正確度は低下する。したがって、5mm未満の病変は、「小さすぎて測定できない」とみなされ、測定されない。この指定により、それらは5mmの既定の測定値に割り当てられる。病変が完全に消失し、「0」が測定値に関して記録され得る場合を除いて、5mm未満の病変測定値は記録される必要はない。
【0187】
新規の病変-用語「新規の病変」は常に、明確に腫瘍である新規の所見の存在を指す。腫瘍である可能性しかないが、良性の可能性もある新規の所見(感染、炎症など)は、審査によりそれらが腫瘍であると確定するときまで、新規の病変として選択されない。
【0188】
例えば、サイズが小さいために新規の病変が不確かである場合、継続される療法及び経過観察評価は、それが実際に新規の疾患となるかどうかを明らかにすることになる。繰り返しのスキャンにより、新規の病変が明確に存在することが確証される場合、進行は、最初のスキャンの日付を使用して申告されるべきである。
【0189】
ベースライン時にスキャンされなかった解剖学的位置において経過観察試験で同定された病変は、新規の病変とみなされ、ベースラインから存在する標的又は非標的病変において認められ得るいずれかの奏効にもかかわらず、疾患進行を示すことになる。
【0190】
その時点で疾患進行の客観的な証拠を伴わずに治療の中止を必要とする健康状態の全体的な悪化を有する対象は、「症状の悪化」を有するものとして分類されるべきである。治療の中止後でさえ、追加的な画像診断評価により客観的な進行を記録するためのあらゆる試みがなされるべきである。
【0191】
ある状況下では、残存疾患を瘢痕又は正常組織から識別するのが困難な場合がある。完全奏効(CR)の評価がこの決定に依存するとき、残存病変をさらに、フルオロデオキシグルコース-ポジトロン放出断層撮影(FDG-PET)若しくはPET/コンピューター断層撮影(PET/CT)、又は場合により穿刺吸引/生検によって調査して、CR状態を確認することが推奨される。
【0192】
確認測定/奏効期間
奏効確認-奏効が主要評価項目である非無作為化試験において、PR及びCRの確認は、同定された奏効が測定誤差の結果ではないことを確実にするために必要となる。
【0193】
全奏効期間-全奏効期間は、CR/PRに関する測定基準を最初に満たした時点(最初に記録された方)から、再発又は進行性疾患が客観的に記録された最初の日又は死亡のいずれか早い時点まで測定される。
【0194】
安定な疾患の期間-SDは、治療の開始から疾患進行に関する判定基準が満たされるまで測定され、治療が開始されてから記録された最小の測定値、又は死亡のいずれか早い方を基準として取得する。
【0195】
予備的なデータ(2022年2月21日):
1日目及び8日目のソトラシブ(240mg又は960mg)の投与後の薬物動態(PK)データを要約する表が下で提供される。
【0196】
【0197】
簡潔に述べると、数値的により高い平均暴露量(Cmax及びAUC0-24h)は、240mgと比較して960mgの後に1日目及び8日目に観察された。960mgのPKは、期待される暴露量範囲及び排出半減期と一致した。8日目の暴露量は、240mg及び960mgの投与の両方に関して1日目より30~40%低かったが、これは期待される定常状態プロファイルと一致する。
【0198】
さらに、1日1回の240mgのソトラシブで治療された2名のNSCLC腺がん(ステージIV)患者の予備的なデータが審査された。240mgのソトラシブによる治療の9サイクル後の1名の患者は、サイクル3及び5の後に安定な疾患(SD)、並びにサイクル7及び9の後に部分奏効(PR)を示した。治療の9サイクル後の1名の患者は、サイクル3、5、及び7の後に部分奏効(PR)を示し、サイクル9の後、新規の病変を有する進行疾患(PD)を示した。
【0199】
実施例4-ソトラシブ用量減少プロトコル
第2相試験中のソトラシブ治療に対する最も一般的な有害事象は、臨床検査値異常(≧10%)、リンパ球の減少、ヘモグロビンの減少、下痢、筋骨格痛、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加、カルシウムの減少、アルカリホスファターゼの増加、尿タンパク質の増加、ナトリウムの減少、嘔気、疲労、アルブミンの減少、活性化部分トロンボプラスチン時間の増加、咳嘔吐、便秘、呼吸困難及び腹痛を含んだ。
【0200】
【0201】
用量減少(960mgの合計1日用量から480mg、又は480mgから240mg)は、ある特定の有害事象(例えば、肝毒性、嘔気/嘔吐、下痢、他の有害反応)が観察されたとき、許容された。用量減少レベルは、下の表17において要約される。
【0202】
【0203】
【0204】
任意の腫瘍型及び任意の用量でソトラシブ単剤療法を受容した427名の対象の中で、56名の対象(13.1%)は用量減少を有し、最も主要な理由は、有害事象(AE)に起因した(46名の対象、10.8%)。以下の表19を参照されたい。
【0205】
【0206】
用量減少を有した56名の対象の中で、39名の対象(69.6%)がソトラシブによる治療を中止し(表20)、残りの17名の対象は、データカットオフ日時点で治療を継続していた。
【0207】
【0208】
ソトラシブ治療を中止した39名の対象の中で、中止の理由がAEに起因した対象はわずか12名(21.4%)であり、ソトラシブの変更された用量を受容した大部分の対象がAEに起因するソトラシブ治療の完全中止を必要としなかったことが確認された。用量減少の後にソトラシブを中止した39名の対象の大部分は、疾患の進行に起因して中止した(25名の対象、44.6%)。データは、ここで示されるとおりのソトラシブの非線形薬物動態特性を考慮すると、予想外に、用量減少により個々の安全性プロファイルが改善され、AEに起因するソトラシブの中止率が低いままであった可能性を示唆している。
【0209】
実施例5-絶食下で制酸薬とソトラシブの同時投与による禁忌
この第1相、非盲検、固定順序試験は、14名の健康な対象を登録した。対象は、1日目に960mg、4~8日目に1日1回40mgのオメプラゾール、9日目に40mgのオメプラゾールに続いて960mgのソトラシブを受容した。全ての用量は、絶食下で投与された。ソトラシブPKのための血液試料は、投与前及びソトラシブ投与の48時間後まで回収された。ソトラシブの血漿PKパラメーターは、ノンコンパートメント法を使用して推定された。
【0210】
ソトラシブとオメプラゾールの同時投与は、ソトラシブの最大血漿濃度(tmax)までの時間を0.75時間遅らせた。ソトラシブの平均終末半減期(t1/2)は、ソトラシブ単独の投与と比較して、ソトラシブとオメプラゾールの同時投与後に同様であった。ソトラシブとオメプラゾールの同時投与後の幾何平均ソトラシブAUCinf(ゼロ時から無限大までの曲線下面積)及びCmax(最大血漿濃度)(それぞれ17000h*ng/mL及び3100ng/mL)は、ソトラシブ単独の投与と比較して低かった(それぞれ29300h*ng/mL及び7200ng/mL)。ソトラシブは、健康な対象に40mgのオメプラゾールと同時投与されたか又は単独で投与されたとき、安全であり且つ良好な忍容性を示した。
【0211】
結果は、絶食状態におけるソトラシブとオメプラゾールの同時投与が、ソトラシブ単独の投与と比較して、ソトラシブのAUCinfを42%及びCmaxを57%減少させることを示した。
【0212】
実施例6-食後の制酸薬とソトラシブの同時投与による禁忌
これは、ソトラシブの暴露に対する制酸薬の影響を制限するための緩和戦略を探索するための第1相、非盲検、固定順序、クロスオーバー、単一施設試験であった。この試験は、食後に健康な男性及び女性(合計で14名の対象)において単独及びファモチジン又はオメプラゾールと組み合わせて投与されたソトラシブのPKを評価した。対象は、1日目にソトラシブの単回投与、3日目にファモチジンの夕方投与(ソトラシブ投与の10時間前)、4日目にソトラシブの単回投与に続いて2時間後にファモチジンの再投与、6日目から10日目にオメプラゾールの毎日の投与、並びに11日目にオメプラゾール及びソトラシブの両方の単回投与を受けた。全てのソトラシブ投与は、標準的なカロリーの中脂肪食の消費後に行われた。血液は、ソトラシブの血漿濃度を特徴付けるために予め規定された時点で回収された。安全性及び忍容性のモニタリングは、試験全体にわたって実施された。
【0213】
合計で15名の健康な対象(1名の女性及び13名の男性)が試験に登録された。14名の対象のうちの13名が、全ての治療を受け、試験を完了した。
【0214】
ソトラシブのAUCinf及びCmaxの幾何最小二乗平均の比率は、食後にファモチジンと同時投与されるソトラシブ及びソトラシブ単独と比較したとき、それぞれ0.622及び0.654であった。ソトラシブのAUCinf及びCmaxの幾何最小二乗平均の比率は、オメプラゾールと同時投与れるソトラシブ及びソトラシブ単独と比較したとき、それぞれ0.430及び0.349であった。960mgのソトラシブの用量は、健康な対象への食後の40mgのファモチジン単回投与との同時投与及び40mgのオメプラゾールの1日に複数回の投与後の同時投与の場合、安全であり且つ良好な忍容性を示した。
【0215】
要約すると、食後のソトラシブの単回投与の10時間前及び2時間後に与えられるファモチジン(H2受容体アンタゴニスト)の単回投与の同時投与は、ソトラシブのCmaxを35%、AUCを38%減少させた。加えて、ソトラシブの単回投与とオメプラゾール(PPI)の反復投与の同時投与は、食後にソトラシブのCmaxを65%、AUCを57%減少させた。
【0216】
実施例7-強力なCYP34A4誘導剤とソトラシブの同時投与による禁忌
この第1相、非盲検、固定順序試験は、14名の健康な対象を登録した。各対象は、1、3及び18日目に960mgのソトラシブ、並びに3日目及び5~19日目に600mgのリファンピンを受容した。ソトラシブPKのための血液試料は、投与前及びソトラシブ投与の48時間後まで回収された。ソトラシブの血漿PKパラメーターは、ノンコンパートメント法を使用して推定された。
【0217】
結果
ソトラシブとリファンピンの単回投与の同時投与後の幾何平均ソトラシブAUCinf(ゼロ時から無限大までの曲線下面積)及びCmax(最大血漿濃度)(それぞれ19600h*ng/mL及び5340ng/mL)は、ソトラシブ単独のものと同様であった(それぞれ25600h*ng/mL及び6350ng/mL)。ソトラシブとリファンピンの複数回投与の同時投与後の幾何平均ソトラシブAUCinf及びCmax(それぞれ12400h*ng/mL及び4110ng/mL)は、ソトラシブ単独のものと比較して低かった(それぞれ25600h*ng/mL及び6350ng/mL)。
【0218】
ソトラシブは、健康な対象に600mgのリファンピンと同時投与されたか又は単独で投与されたとき、安全であり且つ良好な忍容性を示した。リファンピンの単回投与は、ソトラシブのPKに対して臨床的に意味のある影響を及ぼさず、ソトラシブがOATP1B1の基質ではないことを示した。リファンピンの複数回投与は、ソトラシブのAUCinfを51%、Cmaxを35%減少させ、ソトラシブがCYP3A4基質であることを示しており、インビトロでのデータと一致した。
【0219】
実施例8-CYP34A基質とソトラシブの同時投与による禁忌
この第1相、非盲検、固定順序試験は、以前に治療されていないNSCLCを有する5名の対象を登録し、1日前に2mgのミダゾラムを単独で単回経口投与し、1日目から14日目に960mgのソトラシブを経口投与し、15日目に960mgのソトラシブの経口投与とほぼ同時に2mgのミダゾラムを単回経口投与した。ソトラシブPKのための血液試料は、投与前及びソトラシブ投与の48時間後まで回収された。ソトラシブの血漿PKパラメーターは、ノンコンパートメント法を使用して推定された。
【0220】
単回投与のミダゾラムの血漿PKデータは、ミダゾラム単独及びソトラシブと同時投与されるミダゾラムを受容した5名の対象から14日のソトラシブの1日に複数回の投与後に得られた。結果は、ミダゾラムに対する暴露量が、ソトラシブによる1日に複数回の投与後にソトラシブと同時投与されたときに減少することを示した。ミダゾラム(高感度CYP3A4基質)とソトラシブの同時投与は、ミダゾラムのCmaxを48%、AUVを53%減少させた。
【0221】
実施例9-ソトラシブ及びP-gp基質の同時投与による禁忌
この第1相、非盲検、固定順序試験は、14名の健康な対象を登録した。各対象は、1日目に0.5mgのジゴキシン及び7日目に960mgのソトラシブに続いて0.5mgのジゴキシンを受容した。ジゴキシンPKのための血液試料は、投与前及びジゴキシン投与の144時間後まで回収された。試料は、バリデートされた高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を使用して測定された。PKパラメーターは、ノンコンパートメント法を使用して推定された。安全性及び忍容性は、試験全体にわたってモニターされた。
【0222】
ジゴキシンの最大血漿濃度までの時間(tmax)及び平均終末半減期(t1/2)は、ジゴキシン単独のものと比較してソトラシブとジゴキシンの同時投与後に同様であった。ソトラシブとジゴキシンの同時投与後の幾何平均ジゴキシンAUCinf(ゼロ時から無限大までの曲線下面積)(40.3h*ng/mL)は、ジゴキシン単独のものと同様であった(33.2h*ng/mL)。ソトラシブとジゴキシンの同時投与後の幾何平均ジゴキシンCmax(最大血漿濃度)(3.64ng/mL)は、ジゴキシン単独のものと比較して高かった(1.90ng/mL)。0.5mgのジゴキシンの単回投与は、単独で投与されたか又は960mgのソトラシブと同時投与されたとき、安全であり且つ良好な忍容性を示した。
【0223】
結果は、ソトラシブの単回投与とジゴキシンの同時投与が、ジゴキシン単独と比較してAUCinf及びCmaxをそれぞれおよそ21%及び91%増加させることを示した。
【0224】
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【国際調査報告】