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特表2024-510622アクティブエアロダイナミクスモータサイクル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】アクティブエアロダイナミクスモータサイクル
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/10 20200101AFI20240301BHJP
   B62J 17/04 20060101ALI20240301BHJP
   B62J 17/00 20200101ALI20240301BHJP
【FI】
B62J17/10
B62J17/04
B62J17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556814
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2022051788
(87)【国際公開番号】W WO2022195387
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021000006029
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】マルケッタ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ランブリ,マルコ
(57)【要約】
モータサイクル(1)のフレーム(3)を少なくとも部分的に覆うフェアリング(2)を備えるモータサイクル(1)であって、前記フェアリング(2)は、モータサイクル(1)の右側および左側にそれぞれ配置された2つの可動部分(4)を備える、モータサイクル(1); 前記可動部分(4)の各々は、前記可動部分(4)がフェアリング(2)のポケット(5)内にフェアリング(2)自体と共平面になるように配置される静止位置と、前記可動部分(4)の後縁(6)が前記フェアリング(2)から横方向に切り離される開放位置との間を移動するように構成されており、前記フェアリング(2)の前記可動部分(4)は、前記モータサイクル(1)の重心(G)よりも上方に配置されたモータサイクルの上部に配置されていることを特徴とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクル(1)のフレーム(3)を少なくとも部分的に覆うフェアリング(2)を備えるモータサイクル(1)であって、前記フェアリング(2)は、モータサイクル(1)の右側および左側にそれぞれ配置された2つの可動部分(4)を備える、モータサイクル(1); 前記可動部分(4)の各々は、前記可動部分(4)が前記フェアリング(2)のポケット(5)内に配置され、前記フェアリング(2)自体と同一平面上にある静止位置と、前記可動部分(4)の後縁(6)が前記フェアリング(2)から横方向に切り離された開放位置との間を移動するように構成されており、前記フェアリング(2)の前記可動部分(4)が、前記モータサイクル(1)の重心(G)よりも上方に配置された前記モータサイクルの上部に配置されていることを特徴とする、モータサイクル(1)。
【請求項2】
前記可動部分(4)の各々が、モータサイクル(1)の前方に向かって垂直または傾斜した回転軸(A)を有する1つまたは複数のヒンジ(7)によって、前記フェアリング(2)に回転可能に連結されている、請求項1に記載のモータサイクル(1)。
【請求項3】
前記1つまたは複数のヒンジ(7)が、前記可動部分(4)の前縁(8)に近接して配置されている、請求項2に記載のモータサイクル(1)。
【請求項4】
前記可動部分(4)が、前記モータサイクル(1)のタンク(9)の横に配置されている、請求項3に記載のモータサイクル(1)。
【請求項5】
前記可動部分(4)は、少なくとも部分的に、モータサイクル(1)のハンドルバー(10)の下に配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載のモータサイクル(1)。
【請求項6】
前記可動部分(4)の各々が凹形状を有し、該凹形状の底部(11)がモータサイクル(1)の前後方向に長手方向に延びている、請求項1-5のいずれか1項に記載のモータサイクル(1)。
【請求項7】
前記可動部分(4)の前方に配置された前記フェアリング(2)の部分(12)は、長手方向に延びる空気チャネル(13)を提供するように、前記可動部分(4)の凹部と共平面の凹部を有する形状であることを特徴とする請求項6に記載のモータサイクル(1)。
【請求項8】
前記可動部分(4)の各々を前記静止位置と前記開放位置との間で移動させるように構成された作動装置(14)を備える、請求項1-7のいずれか一項に記載のモータサイクル(1)。
【請求項9】
前記作動装置が、前記フェアリング(2)および前記可動部分(4)に直接または機構(17)によって接続された不可逆型の第1のアクチュエータ(16)を備える、請求項8に記載のモータサイクル(1)。
【請求項10】
前記第1のアクチュエータ(16)に動作可能に接続された制御ユニット(18)と、前記制御ユニット(18)に動作可能に接続された少なくとも1つの速度センサ(19)とを備え、前記制御ユニット(18)は、前記少なくとも1つの速度センサ(19)によって検出された速度の関数として前記第1のアクチュエータ(16)を制御するように構成されている、請求項8または9に記載のモータサイクル(1)。
【請求項11】
前記制御ユニット(18)は、所定の速度閾値を超えると、前記静止位置から前記開放位置への前記可動部分(4)の移動を制御するように構成されている、請求項10に記載のモータサイクル(1)。
【請求項12】
ウィンドシールド(20)を有し、
前記ウィンドシールド(20)は、多関節平行四辺形(22)によって前記フレーム(3)のフロント部分(21)に連結され、
前記多関節平行四辺形(22)は、前記フロント部分(21)に対して、前記ウィンドシールド(20)が前記フェアリング(2)に近接する静止位置と、前記ウィンドシールド(20)が前記フェアリング(2)から上方に離間される開放位置との間で、前記ウィンドシールド(20)の移動を可能にするように構成されている、請求項1-11のいずれか一項に記載のモータサイクル(1)。
【請求項13】
前記フロント部分(21)および前記関節平行四辺形(22)の一部に接続された不可逆型の第2のアクチュエータ(23)を備える、請求項12に記載のモータサイクル(1)。
【請求項14】
前記ウィンドシールド(20)の上下動を制御するように構成された、前記モータサイクル(1)のハンドルバー(10)に配置されたセレクタ(24)を備える、請求項12または13に記載のモータサイクル(1)。
【請求項15】
前記制御ユニット(18)は、前記所定の速度閾値を超えたときに、前記第1のアクチュエータ(16)および前記第2のアクチュエータ(23)の前記静止位置から前記開放位置への移動を同時に制御するように構成されている、請求項10および請求項12または13に記載のモータサイクル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つまたは3つの車輪を有するモータサイクルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバから空気をそらすための可動部分を備えるモータサイクルは、先行技術から知られている。
【0003】
この例は、特許EP1514782によって提供されている。この解決策では、車両のフェアリングと同一平面上にあり、車両の前部に配置されたフィンが、ライダの脚から空気をそらすように開いている。
【0004】
この解決策では、ライダの脚から空気を偏向させるが、ライダの身体で最も空気に敏感な部分は胴体または頭部である。
【0005】
高速では、ライダの胴体や頭部にかかる空気は運転の妨げになる。実際、高速走行時、ライダは胴体をタンクとほぼ接触させ、頭部をフロントウィンドシールドの後方に置いて、身をかがめることを余儀なくされる。これにより、身体への空気の摩擦によって生じる乱気流や乱れは最小限に抑えられる。逆に、この姿勢は、不快であることに加えて、車両の操縦性が低く、前方の視界が悪いため、非常に危険である。
【0006】
さらに、フロントウィンドシールドが可動である解決策も従来技術から知られている。この種の解決策の1つは、特許US10766557によって提供されており、この特許では、可動ウィンドシールドが、ライダの頭部を通過する空気を偏向させる。
【0007】
この解決策は、ライダの頭部から空気をそらすという上述の問題を部分的に解決することはできるが、胴体から空気をそらすことはできない。したがって、この態様では、ライダにとって高速での快適な乗り心地は得られない。
【0008】
前述の欠点を回避し、より良好なドライビングポジションと、たとえ高速であってもより高いドライビング快適性を可能にするために、従来技術からの公知の解決策は利用できない。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の前述の欠点は、現在、モータサイクルのフレームを少なくとも部分的に覆うフェアリングを備えるモータサイクルによって解決され、前記フェアリングは、モータサイクルの右側および左側にそれぞれ配置された2つの可動部分を備える。前記可動部分の各々は、前記可動部分がフェアリング自体と同一平面となるようにフェアリングポケット内に配置される静止位置と、前記可動部分の後縁が前記フェアリングから横方向に離間する開放位置との間を移動するように構成されている。フェアリングの前記可動部分は、全体が、モータサイクルの重心の上方に配置されたモータサイクルの上部に配置される。これにより、空気は、フェアリングの可動部分によって横方向に迂回され、車両の上部に配置されることにより、空気流がライダの胴体から遠ざかり、ライダの脚からわずかに遠ざかるのに寄与する。
【0010】
本発明の可動部分は同時に動かされ、両方が静止位置または開放位置のいずれかをとるように対称的に作動される。
【0011】
相対的な用語である後方、前方、上方、下方、側方とは、平坦な地面に垂直に配置され、横方向に傾斜しておらず、操舵されていないモータサイクルの通常の向きの方向に従って、車両によって特定される方向を指す。
【0012】
有利には、前記可動部分は、1つ以上のヒンジによって前記フェアリングに回転可能に連結され得る。前記ヒンジは、垂直方向又はモータサイクルの前方に向かって傾斜した回転軸を有することができる。これにより、可動部分は、フェアリングに対して斜めに開く。
【0013】
好ましくは、前記1つ以上のヒンジは、前記可動部分の前縁の近くに配置することができる。それにより、前記可動部分は斜めに開き、前記可動部分の前縁は前記フェアリングと実質的に同一平面上に維持される。
【0014】
特に、前記可動部分は、モータサイクルのタンクの横に配置することができる。通常、タンクはモータサイクルの最も高い要素であるため、前記可動部分は車両の最も高い部分に配置される。この位置は、ライダの胴体から空気を偏向させるのに特に好都合である。
【0015】
好ましくは、前記可動部分は、モータサイクルのハンドルバーの下に少なくとも部分的に配置することができる。この位置では、運転者の脚がこれらの可動部分に衝突することが非常に困難であり、したがって、車両が損傷する危険性が低減される。
【0016】
有利には、前記可動部分の各々は、凹形状とすることができる。凹部の底部は、モータサイクルの前後方向に長手方向に延びることができる。可動部分のこの特定の形状によって、可動部分によって偏向された気流を、特定の方向に集中させながら流すことができる。
【0017】
好ましくは、前記可動部分の前に配置された前記フェアリングの一部は、車両の長手方向に延びる空気流路を形成するように、前記可動部分の凹部と共平面の凹部を有する形状にすることができる。この空気流路は、前記可動部分が前記静止位置にあるときにはタンク周囲の空気を偏向させ、前記可動部分が前記開放位置にあるときには横方向への分流に寄与するという二重の効果を提供する。
【0018】
有利には、前記モータサイクルは、前記可動部分の各々を前記静止位置と前記開放位置との間で移動させるように構成された作動装置を備えることができる。これにより、可動部分の操作は手動ではない。
【0019】
特に、前記作動装置は、フェアリング及び可動部分に直接又は機構によって接続された不可逆型の第1のアクチュエータから構成することができる。この解決策により、高速で空気により可動部分に加えられる抵抗力を除算するために機構が使用されるため、アクチュエータが加えなければならない力を低減することができる。さらに、このアクチュエータは不可逆型であるため、可動部が開位置に達したときに連続的な作動を必要としない。用語「不可逆型アクチュエータ」とは、様々な動作位置に移動することができ、前記動作位置に到達した後はアクチュエータを作動させ続ける必要なく、前記各動作位置を維持することができるアクチュエータを意味する。
【0020】
好ましくは、前記モータサイクルは、前記第1のアクチュエータに動作可能に接続された制御ユニットと、前記制御ユニットに動作可能に接続された少なくとも1つの速度センサとを備えることができる。前記制御ユニットは、前記少なくとも1つの速度センサによって検出された車速の関数として前記第1のアクチュエータを制御するように構成され得る。それにより、前記可動部分は、前記速度の関数として開き、前記モータサイクルの前進によって生じる風速の関数として、その偏向効果を増大させる。
【0021】
特に、前記制御ユニットは、所定の速度閾値を超えると、前記可動部分の前記静止位置から前記開放位置への移動を制御するように構成することができる。これにより、速度がもはや運転に快適ではないと考えられる閾値を超えたときに可動部分を開くことができる。
【0022】
有利なことに、前記モータサイクルは、ウィンドシールドがフェアリングに近接する静止位置と、ウィンドシールドがフェアリングから上方に離間する開放位置との間で、ウィンドシールドのモータサイクルのフロント部分に対する垂直方向の移動を可能にするように構成された関節平行四辺形によって、モータサイクルのフロント部分に連結された可動ウィンドシールドを備えることができる。この可動ウィンドシールドは、ライダの頭や肩を通過する空気の偏向を可能にし、したがって、フェアリングの可動部分とともに、高速走行時にライダからできるだけ多くの空気を取り除くのに役立ちます。用語 "ウィンドシールド "は、小型のウインドスクリーン、またはフェアリングの残りの部分から分離された、部分的または全体的に透明なフロントフェアリング部分を意味する。
【0023】
特に、前記モータサイクルは、フレーム及び前記関節平行四辺形の一部に接続された不可逆型の第2のアクチュエータを備えることができる。これにより、前記第2のアクチュエータが作動すると、前記多関節平行四辺形が前記可動ウィンドシールドを移動させ、前記アクチュエータによる労力が少なくなり、その結果、コストが低くなる。
【0024】
好ましくは、前記モータサイクルは、前記可動ウィンドシールドの垂直方向の移動を制御するように構成されたモータサイクルのハンドルバーに配置されたセレクタを備えることができる。オプションとして、モータサイクルのライダは、雨の日または非常に寒い日のように、速度に関係なくウィンドシールドを上げたいと思うことができる。
【0025】
これらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、単に例示的な非限定的な例として与えられるその実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、フェアリングおよびウィンドシールドの可動部分が共に静止位置にある、本発明によるモータサイクルの側面図である。
図1B図1Bは、フェアリングおよびウィンドシールドの可動部が共に静止位置にある、本発明によるモータサイクルの正面図である。
図2A図2Aは、フェアリングの可動部が開位置にあり、ウィンドシールドが静止位置にある、本発明によるモータサイクルの側面図である。
図2B図2Bは、フェアリングの可動部が開位置にあり、ウィンドシールドが静止位置にある、本発明によるモータサイクルの正面図を示す。
図3A図3Aは、フェアリングの可動部が静止位置にあり、ウィンドシールドが開放位置にある、本発明によるモータサイクルの側面図である。
図3B図3Bは、フェアリングの可動部が静止位置にあり、ウィンドシールドが開放位置にある、本発明によるモータサイクルの正面図を示す。
図4A図4Aは、フェアリングの可動部分とウィンドシールドの両方が開放位置にある、本発明によるモータサイクルの側面図である。
図4B図4Bは、フェアリングおよびウィンドシールドの可動部がともに開位置にある、本発明によるモータサイクルの正面図である。
図5図5は、フェアリングおよびウィンドシールドの可動部がともに開放位置にある、本発明によるモータサイクルと関連するライダの側面図である。
図6A図6Aは、特にウィンドシールドとその移動機構を参照した、ウィンドシールドが開位置にあるモータサイクルの前部の断面側面図である。
図6B図6Bは、ウィンドシールドが静止位置にあるときの、ウィンドシールドとその移動機構を中心としたモータサイクル前部の断面側面図である。
図7図7は、フェアリングの内側の側面図であり、左側の可動部が静止位置にある。
図8図8は、左側の可動部が開放位置にある、フェアリング内側の軸線図である。
図9A図9Aは、左側の可動部が開位置にあるフェアリングの外側を示す軸線図である。
図9B図9Bは、左側の可動部分が静止位置にある、フェアリングの外側の軸線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の1つまたは複数の実施形態に関する以下の説明は、添付図面に関するものである。図面中の同じ参照数字は、等しい又は類似の要素を識別する。本発明の目的は、添付の特許請求の範囲によって定義される。以下に説明する解決策の技術的詳細、構造、または特徴は、任意の方法で互いに組み合わせることができる。
【0028】
図1-4を参照すると、フレーム3の一部と、クリーナボックス、エンジン制御ユニット、およびフェアリング2によって覆われているので図1-4には示されていない他の様々な構成要素などの、モータサイクル1の他の内部構成要素とを覆うように構成されたフェアリング2を備えたモータサイクル1が示されている。フェアリング2は、エンジンを部分的にまたは完全に覆うこともできる。
【0029】
図1-4に描かれているモータサイクル1は、内燃エンジン、エンジンから後輪への運動伝達部品、ステアリング前輪、車両部品を支持するフレーム、およびシート、フットレスト、ハンドルバーなどのモータサイクル1を快適にする典型的な要素からなる典型的なモータサイクルである。この車両の簡単な説明は、本発明が二輪タイプの乗用鞍型車両に関するものであることを明確にするためのものである。あるいは、問題の車両は、タンクの代わりに電気モータ、したがってバッテリを備えることも、2輪の代わりに3輪を備えることも可能である。
【0030】
本発明の目的のため、すべての図には、モータサイクル1の前面、背面、右側面、左側面、上面、および底面を示すように適合された直交基準軸が設けられている。このような方向は、モータサイクル1またはその一部の要素を位置決めするための基準としても役立つ。「モータサイクル」または「車両」という用語は、本文中で同じ意味を有する代替語として使用することができる。
【0031】
図には連続番号を付し、異なる図または異なる実施位置を示す場合には接尾辞を付けることができる。例えば、2つの図1、すなわち図1Aおよび図1Bは、同じ運転状態にある同じモータサイクル1を、それぞれ側面および前面から見た状態を描いており、逆に、2つの図6、すなわち図6Aおよび図6Bは、フロントウィンドシールド10の2つの異なる運転位置にあるモータサイクル1の前面を描いている。
【0032】
「静止位置」または「閉鎖位置」という用語は、本文中で同じ意味を有する代替語として使用される。
【0033】
それぞれの右側および左側において、前記フェアリング2は、フェアリング2に対して移動可能な可動部分4からなる。これらの可動部分4は、図1および図3に示すような静止位置から、図2および図4に示すような開放位置まで移動することができる。
【0034】
モータサイクル1は、フェアリング2に対して動くように構成されたウィンドシールド20をさらに備えることができる。特に、ウィンドシールド20は、図3および図4に示すように開放位置をとり、図1および図2に示すように静止位置にとどまることができる。
【0035】
以下でより明確にするように、可動部4は、図2に示すように、ウィンドシールドの動きに関係なく動くことができる。同じことが、図3に示すように、可動部4とは無関係に動くことができるウィンドシールド20にも明らかに当てはまります。図4に示すように、ウィンドシールド20と可動部4の両方が開放位置をとることもできます。あるいは、図1に示すように、可動部分4とウィンドシールド20の両方が閉位置を維持することもできる。
【0036】
休止位置では、フェアリング2の可動部分4は、フェアリング2が実質的に連続するように、フェアリング2と実質的に同一平面上にある。この位置では、可動部4はフェアリング2の閉じたハッチとして見える。
【0037】
したがって、図9Bに示すように、可動部分4が閉位置にあるときにフェアリング2を周回する気流は、後者によって妨げられない。
【0038】
開位置では、フェアリング2の可動部分4は、部分的に横方向外側に間隔をあけて配置される。これにより、前進時にモータサイクル1を周回する気流は、横方向および部分的に上方に迂回する。
【0039】
図5に示すように、開放位置にあるとき、可動部分4は、流線25で描かれる気流をライダ15の胴体の側方に迂回させる。従って、特に高速走行時に、運転の快適性が向上する。
【0040】
さらに、図5は、ウィンドシールド20が、開位置にあるとき、ライダ15の頭部を越えて気流を上方に迂回させることを示している。
【0041】
これら2つの空気力学的な貢献により、特に高速で、特に同時に使用する場合、ライダ15の運転快適性を大幅に改善することができる。
【0042】
可動部分4は、気流を横方向に転向させるために、フェアリング2に対して傾斜している。要するに、図7および図8に示すように、可動部4の後方に配置されたヒンジ7を中心に回転し、フェアリング2に対する可動部4の角度を変化させる。
【0043】
可動部分は、前縁8の近くに配置されたヒンジ7によって、フェアリング2の残りの部分にヒンジ止めされている。これにより、可動部分4が開くと、前縁8は実質的に同じ位置、すなわちフェアリング2に近い位置に留まる一方、後縁6はフェアリング2から離れる。要するに、可動部分4は魚のエラのように動く。
【0044】
可動部分4の後縁6がフェアリング2から離間しているとき、フェアリングのフロント部分12を周回する流れは、可動部分4によって横方向に分流され、フェアリング2から離間して横方向外側に移動する。
【0045】
可動部分4は、ライダ15の胴体から空気をそらすように、モータサイクル1の上部に配置される。
【0046】
特に、可動部分4は、ライダ15と燃料のない車両の重心の上方に配置されている。実際、モータサイクル1のこの部分は、図1-5に示すように、その最も高い部分の1つであり、ライダ15の胴体に最も近い部分である。
【0047】
さらに、可動部4は、特に、図1B、2B、3B、4Bのようにモータサイクル1を正面から観察した場合、タンク9の隣に配置される。図1-5示すように、タンク9(点線で描かれている)は、ほとんどすべての公知のモータサイクルで通常そうであるように、ライダ15のベルトの前にある。この位置は、ライダ15の胴体から空気をそらすのに、特に好都合である。このため、可動部4は好ましくはこの位置に配置される。
【0048】
可動部分4は、好ましくはハンドルバー10の下に配置される。この位置は特に高度であるため、モータサイクル1の前部12を横方向に偏向させるために周回する気流を遮るのに最適である。
【0049】
可動部分4は、これらが静止位置にあるときにフェアリング2の輪郭に沿うように形成されている。
【0050】
特に、図9に示す可動部分4は、他の図と同様に、凹形状であり、従って、空気流をより良く伝達することができる。凹部は、凹部の底部11、すなわち可動部4の最も窪んだ部分が長手方向に配置されるように、可動部4上に延びている。可動部分4の凹形状は、長手方向に半分に切断された管のように振る舞い、その結果、流線25を流してまとめて空気流路13を形成することができる。従って、この空気流路13は、可動部4の傾斜に応じて、多かれ少なかれ外側に迂回させることができる。
【0051】
図9Bでは、可動部4が流路25をグループ化し、フェアリング2を周回できるようにしていることがわかる。したがって、空気流路13はフェアリング2の外面に接している。
【0052】
一方、図9Aでは、流路25が可動部4によってグループ化され、迂回してフェアリング2の背面から外れていることがわかる。
【0053】
凹部の底部11は、モータサイクル1を側面から観察したとき、前後方向に従って配向しており、後方では上方に傾斜している。この底部11の向きにより、流線25を外側に偏向させるだけでなく、上方にも偏向させることができる。凹部及びその底部11の形状は、図1A,2A,3A,4A,5の可動部4の構造線の向きを観察することによって認識することができる。
【0054】
フェアリング2の前面部12も、空気流路13の形成を容易にするように、凹みを有する形状である。この凹部は、可動部4が閉位置にあるとき、可動部4と連続し、かつ共平面である。フェアリング2のフロント部分12の凹みもまた、可動部分4が前記開位置にあるときに、フェアリング2を周回する空気の流体流線の剥離が生じないように形成されている。
【0055】
可動部分4は、図9Bに示すように、フェアリング2のポケット5と相補的な形状を有する。フェアリング2は、内側カバー26からなり、この内側カバー26によって、フェアリング2の貫通穴となるはずの前記ポケット5を得ることができる。このカバー26により、可動部4が開位置にあるときに、フェアリング2の内部に誤って手が入るのを防止することができる。
【0056】
図8に示すように、可動部4の作動装置14もカバー26の内側に配置されている。作動装置4は、可動部分4が閉位置から開位置に切り替わる手段である。
【0057】
作動装置14は、不可逆型の第1のアクチュエータ16からなる。図8の例では、第1のアクチュエータ16は、可動部4の内面に回転可能に連結された連結ロッドに回転可能に連結されたアームを備えた回転アクチュエータである。アームは連結棒と共に機構17を形成する。
【0058】
不可逆的であるために、第1のアクチュエータ16は、電動モータに運動学的に連結された歯付きホイールと協働するヘリカルウォームねじから構成される。ウォームねじのピッチは、ウォームねじと歯付きホイールとの間に十分な摩擦を生じさせ、電動モータに電力が供給されていないときに第1のアクチュエータ16を不可逆にするように、好都合に選択される。これにより、電動モータに電力が供給されなくても、可動部4は開放位置に留まる。作動装置14の別の実施形態も可能である。例えば、作動装置は、ポンプによって作動し、バルブによってポンプに接続された油圧ピストンで構成することができる。バルブが閉じられると、ピストンはその伸びを保持し、可動部4を開位置に保持する。
【0059】
図5に最もよく示されているように、第1のアクチュエータ16は制御ユニット18に作動的に接続されている。好ましくは、この制御ユニット18は、車両のものと同じである。さらに、制御ユニット18は速度センサ19に作動的に接続されている。
【0060】
制御ユニット18は、速度センサ19からの信号を受信し、第1のアクチュエータ16のための制御信号を出力するように処理するように構成されている。この出力信号は、速度センサ19によって読み取られた速度に基づいて処理される。前記速度センサ19は、例えば、車両1のABSシステムのフォニックホイールセンサとすることができる。
【0061】
制御ユニット18は、速度が所定の閾値、例えば100km/hを超えると、第1のアクチュエータ16を作動させるように構成されている。前記所定の閾値を超えると、制御ユニット18は、可動部4を開くための制御信号を第1のアクチュエータ16に送り、可動部4は前記閉位置から前記開位置に切り替わる。
【0062】
前記制御ユニット18は、ウィンドシールド20の第2のアクチュエータ23にも接続することができる。
【0063】
前述のように、ウィンドシールド20は、作動システムの作動によりフェアリング2に対して上下動するように構成されている。問題のシステムは、図6に示すように、多関節平行四辺形22と第2のアクチュエータ23とからなる機構からなる。
【0064】
多関節平行四辺形22は、図6A,6Bでは断面図であるため一方しか見えない一対の上側連結ロッドと、図6A,6Bでは断面図であるため一方しか見えない一対の下側連結ロッドとから構成されている。 前記上下の連結棒にヒンジ止めされたウィンドシールド20そのものと、前記上下の連結棒の反対側の端部がヒンジ止めされたフレーム21の前部とが、多関節平行四辺形22を完成させるのに寄与している。こうして考え出された多関節平行四辺形22は、ウィンドシールド20の上方および下方への回転移動を可能にする。例えば、ウィンドシールド20は、ステッピングモータまたはピストンによって、フレーム21のフロント部分と一体の軌道に沿って移動させることができる。
【0065】
図6に描かれているフレーム21のフロント部分は、モータサイクル1のステアリングヘッドに剛性的に連結された部品であり、この部品は、フレーム3と一体であり、フレーム3の一体部分を形成している。前記平行四辺形は、第2のアクチュエータ23に接続されており、このアクチュエータ23が伸長すると、前記関節平行四辺形22を変形させ、ウィンドシールド20を移動させることができる。
【0066】
具体的には、第2のアクチュエータ23は、図6Aに示すように、電気モータと、モータから出ているウォームスクリューとから構成されている。前記ウォームねじの上端は、多関節平行四辺形22の要素に接続されている。特に、前記ウォームスクリューは、前記上部連結ロッドに連結されている。前記第2のアクチュエータ23が伸長すると、上部連結ロッドが回転して上方に傾斜し、その結果、ウィンドシールド20が上昇する。下部連結ロッドは、ウィンドシールド20が開放位置にある図6Aに見られるように、ウィンドシールド20と実質的に同じ傾斜を保つことを可能にする。
【0067】
第2のアクチュエータ23は、前記制御ユニット18に作動的に接続されている。前記制御ユニット18は、前記所定の速度閾値に達するか、又は前記所定の速度閾値を超えると、前記第1のアクチュエータ16及び前記第2のアクチュエータ23を同時に作動させるように構成されている。
【0068】
この場合、制御ユニット18は、二重の制御信号を処理し、それを第1のアクチュエータ16と第2のアクチュエータ23の両方に送る。これにより、フェアリング2の可動部4とウィンドシールド20の両方が前記開放位置に移動する。
【0069】
さらに、前記制御ユニット18は、ハンドルバー上に配置されたセレクタ24に動作可能に接続することができる。前記セレクタ24により、ライダ25は速度に関係なくウィンドシールド20の高さを制御することができる。それにより、ウィンドシールド20の高さの制御は、可動部4が操作されるか否かに依存しない。さらに、前記セレクタ24によって、ライダ15は、高さ、すなわち、前記開放位置または前記開放位置と前記静止位置との間の中間位置となり得る位置をさらに選択することができる。
【0070】
結論として、このように考案された本発明は、いくつかの変更または変形が可能であり、そのすべてが本発明の範囲内にあることは明らかであり、さらに、すべての細部は、技術的に等価な要素によって置換可能である。さらに、すべての細部は技術的に同等な要素で置換可能である。実際には、技術的な必要性に応じて量を変更することも可能である。
【0071】
キー
1 モータサイクル
2 フェアリング
3 フレーム
4 可動部分
5 ポケット
6 可動部後端
7 ヒンジ
8 可動部前端
9 タンク
10 ハンドルバー
11 可動部凹部
12 可動部前方のフロントフェアリング
13 エアチャネル
14 作動装置
15ライダ
16 第1アクチュエータ
17機構
18 制御装置
19 速度センサ
20 フロントウィンドシールド
21 フロントフレーム部
22多関節平行四辺形
23 第2アクチュエータ
24セレクタ
25フローライン
26 フェアリングカバー
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
【国際調査報告】