IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トムラ・ソーティング・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2024-510628空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法
<>
  • 特表-空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法 図1
  • 特表-空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法 図2
  • 特表-空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法 図3
  • 特表-空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法 図4
  • 特表-空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】空気流を用いて廃棄物を分別するためのロボットシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B25J15/06 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556953
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022057513
(87)【国際公開番号】W WO2022200363
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21164186.5
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520070127
【氏名又は名称】トムラ・ソーティング・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バルタサル,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ノアク,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルドルフ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS10
3C707FS01
3C707FT06
3C707FT17
3C707KS07
3C707KT03
3C707KT06
(57)【要約】
【課題】 廃棄物分別の分野でロボット分別システム及び方法の改良を提供することである。
【解決手段】 本発明の概念は、伸縮自在に配置されると共にばね手段によって弾性的に分離されている2つのチューブを有するロボットシステムのための分別デバイスを提供することにより、重い物体のつかみ上げと解放を改善できるという発明者らの認識に基づいている。本発明の概念は、ロボットアーム及び吸引グリップシステムによって分別を行うための方法及びシステムを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物のためのロボット真空分別システムであって、
3次元で移動するように適合されたロボットアームと、
流路を介して空気流発生システムに流体的に結合され、分別対象の物体を把持するように構成された吸引グリップ部材と、
伸縮自在に配置され、折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能な第1のチューブ及び第2のチューブと、
前記第1及び第2のチューブに前記伸張状態への軸方向の力を加えるためのばね手段と、
物体が前記空気流発生システムの方へ吸引されるのを妨げるためのフィルタと、
を備え、
前記第1のチューブは前記ロボットアームに結合され、前記吸引グリップ部材は、前記第2のチューブに結合され、かつ、伸張位置と折り畳み位置との間で前記第2のチューブとともに移動するように構成され、前記空気流発生システムは、空気流を逆転させて前記物体を押し出すように適合され、前記ばね手段は、前記空気流が逆転された場合に前記第1及び第2のチューブを前記折り畳み状態から前記伸張状態へ移動させて、追加の押し出し移動を生成するように構成されている、ロボット真空分別システム。
【請求項2】
前記第2のチューブに対する前記第1のチューブの位置状態を決定するように構成されたセンサを備える、請求項1に記載のロボット真空分別システム。
【請求項3】
前記センサは、前記分別対象の物体の良好な把持及び/又は所定値を超えた重量の物体を把持している際の過負荷状態を検出するように適合されている、請求項2に記載のロボット真空分別システム。
【請求項4】
前記流路内の空気圧を検知して空気閉塞を検出するように構成された圧力センサを更に備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項5】
分別対象の物体に係合したときに前記真空による力が前記第1及び第2のチューブを前記折り畳み状態にするまで、前記第1及び第2のチューブは前記伸張状態である、請求項1から4のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項6】
前記流路の前記断面流れ開口は前記流路内の圧力降下を回避するように構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項7】
前記流路内に配置されたフィルタ空洞を備え、前記フィルタ空洞は前記流れ開口よりも大きい断面を有し、フィルタ開口は前記流路の前記断面流れ開口以上の大きさである、請求項1から6のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項8】
前記第1のチューブは第1の摩耗係数の材料で作製され、前記第2のチューブは第2のより小さい摩耗係数の材料で作製される、請求項1から7のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項9】
前記流路は前記第1及び第2のチューブの内部に配置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項10】
伸縮自在に配置されると共に折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能である複数のペアの第1及び第2のチューブを構成する複数の第1のチューブ及び複数の第2のチューブを備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のロボット真空分別システム。
【請求項11】
前記複数のペアの第1及び第2のチューブは、前記ロボット真空分別システムの垂直中央軸を中心として均等に分布し、前記流路は、前記複数のペアの第1及び第2のチューブとは別個の可撓性チューブ内に配置されている、請求項10に記載のロボット真空分別システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のロボット真空分別システムを制御するための方法であって、
前記分別対象の物体を識別するステップ(S1)と、
前記吸引グリップ部材を通して吸引空気流を与えること(S2)と、
前記ロボットアームを前記分別対象の物体の方へ移動させて、前記吸引グリップ部材を前記分別対象の物体に接触させるステップ(S3)と、
前記分別対象の物体によって前記吸引グリップ部材の開口を通る前記空気流を制限するステップ(S4)と、
前記吸引空気流によって前記ばね手段を少なくとも部分的に圧縮させ、前記第1及び第2のチューブを前記圧縮状態へ移動させるステップ(S5)と、
前記吸引空気流によって前記分別対象の物体を保持するステップ(S6)と、
前記ロボットアームを分別位置の方へ移動させるステップ(S7)と、
前記空気流を逆転させ、前記ばね手段によって前記第1及び第2のチューブを前記伸張状態へ押すステップ(S8)と、これによって、
前記分別対象の物体を前記分別位置の方へ押し出すステップ(S9)と、
を含む方法。
【請求項13】
前記吸引グリップ部材を前記分別対象の物体と接触させる際、前記第1及び第2のチューブを前記圧縮状態へ移動させることによって、前記吸引グリップ部材と前記分別対象の物体との間の前記衝撃を減衰させるステップ(S3b)を更に含む、請求項12に記載のロボット真空分別システムを制御させるための方法。
【請求項14】
前記逆転した空気流によって前記フィルタを洗浄するステップ(S8b)を更に含む、請求項12又は13に記載のロボット真空分別システムを制御させるための方法。
【請求項15】
前記分別対象の物体の前記重量を決定又は測定するステップ(S2b)と、
前記物体の前記決定又は測定された重量に関連する加速度で、前記分別対象の物体と共に前記ロボットアームを前記分別位置の方へ移動させるステップ(S7b)と、
を更に含む、請求項12から14のいずれか1項に記載のロボット真空分別システムを制御させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分別の分野に関する。より具体的には、本発明は、分別のプロセスにおいてピックアンドプレース手段(pick and place means)として用いられる吸引グリッパに関する。特に、本発明は、ロボット吸引グリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物及び一般廃棄物は、有用な成分を回収及びリサイクルするため、資源として扱われ、分別されることが多くなっている。ロボット分別技法は、大量のごみ混合物を正しいリサイクル部分に自動的に分別するため用いられる。同種の汚染されていないリサイクル部分を受容するため、信頼性の高い分別技法が必要である。
【0003】
ロボット吸引グリッパは、物体をつかみ上げて移動させるため用いられる機構であり、物体をグリッパに保持するのに充分な空気流強度で物体の表面の一部に集中空気流を与える。分別対象の物体は、例えば、重い物体、不規則な形状の物体、小さい物体、又は、内部を空気流が貫通する物体であり、これら全てにおいて、効果的にしっかり把持して指定された落下位置へ搬送するという課題がある。重い物体の分別は、グリップシステムに過負荷をかけて損傷させるリスクのために追加の課題がある可能性があり、ロボット吸引グリッパの動作状態を正確に査定するための技法が必要である。
【0004】
このため、廃棄物分別の分野でロボット分別システム及び方法の改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明は、真空分別機を用いた廃棄物分別の分野において、上述した問題のうち少なくともいくつかを解決すること、及び、欠点のいくつかを解消するか又は少なくとも軽減することを目指している。
【0006】
本発明の概念は、伸縮自在に配置されると共にばね手段によって弾性的に分離されている2つのチューブを有するロボットシステムのための分別デバイスを提供することにより、重い物体のつかみ上げ(picking)と解放を向上させることができるという発明者らの認識に基づいている。
【0007】
第1の態様において、上述の目的は、廃棄物のためのロボット真空分別システムによって達成される。このシステムは、3次元で移動するように適合されたロボットアームと、流路を介して空気流発生システムに流体的に結合され、分別対象の物体を把持するように構成された吸引グリップ部材と、を備える。システムは更に、伸縮自在に配置され、折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能な第1のチューブ及び第2のチューブと、第1及び第2のチューブに伸張状態への軸方向の力を加えるためのばね手段と、物体が空気流発生システムの方へ/空気流発生システム内へ吸引されるのを妨げるためのフィルタと、を備える。更に、第1のチューブはロボットアームに結合され、吸引グリップ部材は、第2のチューブに結合され、かつ、伸張位置と折り畳み位置との間で第2のチューブとともに移動するように構成されている。空気流発生システムは更に、空気流を逆転させて物体を押し出すように適合され、ばね手段は、空気流が逆転された場合に第1及び第2のチューブを折り畳み状態から伸張状態へ移動させて、追加の押し出し移動を生成するように構成されている。
【0008】
これにより、ロボットアームを分別対象の物体に当接するよう移動させ、更に、吸引グリップ部材を分別対処の物体に押し付けて、2つのチューブを折り畳み状態へ移動させることができるシステムが提供される。これによって、ロボットアームの摩耗を低減すると同時に、分別対象の物体に対して確実に吸引部材を良好にフィットさせて、空気流発生システムからの力によって物体を持ち上げることを可能とする。伸縮自在に配置された2つのチューブを用いる設計では、物体の表面がどこにあるか、従って、物体の方へどのくらいロボットアームを移動させなければならないかを決定する際に、許容可能な誤差の範囲が大きくなる。誤差の範囲の拡大は、物体をつかみ上げる成功率を上昇させるだけでなく、分別対象の物体の表面位置の計算における費用と複雑さを低減する。この誤差の範囲は、2つのチューブの重なり(overlap)によって設定され得る。例えば重なりは、折り畳み状態で20~200mm、又は好ましくは40~120mmとすることができる。
【0009】
更に、第1及び第2のチューブに伸張状態への軸方向の力を加えるばね手段を有することによって、分別対象の物体と係合するまでチューブを伸張状態に保つことができる。
【0010】
本出願の文脈において、ロボットアームは、規定の作業領域内で移動させることができる任意の制御可能移動手段として解釈するべきである。これは、例えば、ある場所で物体をつかみ上げ、それを別の場所に配置することができる任意の多関節又は座標ロボットを含む。更に、本出願の文脈における吸引グリップ部材は、分別対象の物体に押し付けた場合、この物体に当接して、その表面に適合されるように構成された可撓性部材として解釈するべきである。これは例えば、吸引カップ、ゴムノズル、又は同様のものとすればよい。グリップ部材は、分別対象の物体にぴったりフィットすることを保証するため、何度か持ち上げに使用した後又は損傷したときに交換することができる。更に、空気流発生システムは、例えば吸引空気流又は噴出空気流のような空気流を生成できる任意のシステムとして解釈するべきである。これは例えば、可逆式ポンプ、コンプレッサ、ファン、又は他のユニットとすればよい。
【0011】
また、本出願の文脈において、チューブは、本体と内側中空部とを有する任意のタイプの物体(body)として解釈するべきである。形態は、説明されているように円筒形とすればよいが、他の実施形態では、例えば方形/矩形/三角形の断面形状のような別の形態を有し得る。
【0012】
ばね手段は、本出願の文脈において、ばね力を加えることができる任意の部材として解釈するべきである。これは、説明されているように、円形の分布に分散させた複数のコイルばねとすればよい。他の例では、例えば第1及び第2のチューブの周りにこれらと同軸に配置された単一のコイルばねとすればよい。他の考えられる解決策は、ゴム等、それ自体が弾性である材料を含み得る。
【0013】
更に、本出願の文脈において、真空は、負圧すなわち周囲圧力よりも低い圧力であるが、必ずしも純粋な真空状態ではないものとして読まれるべきである。真空すなわち負圧は、吸引空気流及び吸引グリップ部材における空気流の閉塞の結果として生じる。本出願の文脈において、「グリップ」は、物体が負の空気圧によって吸引グリップ部材に保持されていることとして解釈するべきである。何かが「結合されている」という用語は、何かが機械的に直接又は間接的に相互に結合されていることを含む。いくつかの中間の部材もしくは部分がそのような機械的結合の一部を形成する場合があり、又はそのような中間の部材もしくは部分が存在しない場合がある。
【0014】
別の実施形態において、ロボット真空分別システムは、第2のチューブに対する第1のチューブの位置状態を決定するように構成されたセンサを備える。
【0015】
これにより、システムは、吸引グリップ部材が分別対象の物体に対してぴったりフィットしていることを保証する入力データを取得できる。また、例えばカメラ又は他の入力デバイスから分別対象の物体の高さ指示がシステムに与えられる場合であっても、ロボットアームからの位置データと共に、伸縮している第1及び第2のチューブ間の重なりを検知することによって、この高さ指示を補正することができる。
【0016】
一実施形態において、センサは、第2のチューブに対する第1のチューブの位置状態を決定するため、第1及び第2のチューブに対してばね手段が加える軸方向の力を測定するように適合されている。いくつかの実施形態において、センサは、ばね手段に一体化することができる。他の実施形態において、センサは、第1及び第2のチューブ間の力又は相対的な位置のいずれかを検知する別個のユニットとすることができる。いくつかの実施形態において、センサは、容量センサ又は誘導センサとすればよい。いくつかの実施形態では、センサを用いて、第1のチューブ及び第2のチューブが終了位置(折り畳み状態)に到達したことを示すことができる。これにより、吸引グリップ部材、ロボットアーム自体、又はコンベヤベルトを含む分別システムのどの部品も損傷しないように、ロボットアームを分別対象の物体に対して更に強く押し付けることを防止できる。
【0017】
別の実施形態において、センサは、分別対象の物体の良好な把持及び/又は所定値を超えた重量の物体を把持している際の過負荷状態を検出するように適合されている。
【0018】
これにより、システムは、物体の予想外の落下を回避するため、物体が分別対象として重すぎることを検出できる。追加的に又は代替的に、センサを用いて、つかみ上げが成功したこと、又は新たな試みを実行するべきであることを決定できる。
【0019】
任意選択的に、ロボット真空分別システムは更に、分別対象の物体の重量を測定するように構成された重量センサを含み得る。次いで、把持された物体の重量を用いて、分別対象の物体の良好な把持を検出すること及び/又は所定値を超えた重量の物体を把持している際の過負荷状態を測定することができる。いくつかの実施形態において、ばね手段による力と空気流による力の大きさは、吸引グリップ部材が許容可能な重量の分別対象の物体と係合した場合に第1及び第2の部材が伸長状態から保持されるように設定することができる。物体の重量が重いので第2のチューブが第1のチューブに対して引っ張られて伸張状態になった場合、物体は持ち上げるには重すぎるので、センサは過負荷状態を信号で示すことができる。過負荷状態は、物体の重量のために物体が落下するリスクが大きいことを意味し得る。
【0020】
更に別の実施形態において、ロボット真空分別システムは、流路内の空気圧を検知して空気閉塞を検出するように構成された圧力センサを備える。これにより、流路内の空気の閉塞(又は漏れ)を圧力センサで検出することができる。空気の漏れは、1つ以上の部品を修理又は交換する必要があることを示し得る。正しい閉塞が検出された場合、これにより、分別対象の物体の良好な把持を決定することができる。
【0021】
一実施形態において、センサは、吸引グリップ部材又は第2のチューブのような1つ以上のコンポーネントで保守又は交換が必要であることをユーザに警告するため、警告信号を開始するように構成されている。センサは、流路内の任意の場所に配置すればよい。センサは、グリップシステム内に、又は空気流発生手段に近い下流(吸引流内)に配置することができる。
【0022】
別の実施形態では、分別対象の物体に係合したときに真空による力が第1及び第2のチューブを折り畳み状態にするまで、第1及び第2のチューブは伸張状態である。
【0023】
チューブが伸張状態であるようにばね手段で軸方向の力を加えることによって、吸引グリップ部材が分別対象の物体に係合したときに全減衰範囲が得られる。従って、伸張状態から折り畳み状態への折り畳み可能範囲を減衰のために利用できる。
【0024】
別の実施形態において、流路の断面流れ開口は、流路内の圧力降下を回避するように構成されている。いくつかの実施形態において、これは、吸引流の上流におけるオリフィス縮小を回避することによって実行される。いくつかの実施形態において、流路の異なる部分のオリフィスは実質的に同じである。これにより、空気流発生システムによって発生した流れを、流路全体を通して実質的に等しく保つことができる。
【0025】
別の実施形態において、ロボット真空分別システムは、流路内に配置されたフィルタ空洞を備え、フィルタ空洞は流れ開口よりも大きい断面を有し、フィルタ開口は流路の断面流れ開口以上の大きさである。これにより、フィルタにおける流れ開口の合計は流路の他の部分における流れ開口以上の大きさであるので、フィルタは流れ制限部を構成しない。いくつかの実施形態において、フィルタは幅広メッシュのフィルタであり、例えば断面距離が0.1mm、0.5mm、1mm、又は5mmよりも大きい物体のみをフィルタにかける。
【0026】
別の実施形態において、第1のチューブは第1の摩耗係数の材料で作製され、第2のチューブは第2のより小さい摩耗係数の材料で作製される。これにより、第2のチューブは第1のチューブよりも先に摩耗する可能性がある。摩耗係数が異なる2つのチューブを有することによって、無潤滑設計を用いることができる。この用途では、小さい粒子が潤滑細部に蓄積することが多いので、無潤滑設計が好ましい。
【0027】
摩耗係数は、材料の耐摩耗性(すなわち摩耗する傾向)を示す方法の一例である。大きい係数は材料の耐摩耗性が低いことを示し、小さい係数は摩耗する傾向が高いことを示す。一例として、ポリエチレンは約1.3×10-7の摩耗係数を有し、硬質工具鋼は1.3×10-4の摩耗係数を有する。これを記述する別の手法は、材料のアブレシブ摩耗耐性(abrasive wear resistance)である。
【0028】
一実施形態において、第1のチューブは金属で作製され、第2のチューブはポリマー材料で作製される。別の一例において、第1のチューブはアルミニウムで作製され、第2のチューブは例えばPU又はABSで作製され得る。
【0029】
好ましくは、第1及び第2のチューブは、変形を回避するため剛性材料から作製される。チューブが変形すると、望ましくない半径方向の移動が生じ、分別対象の物体を意図せずに落下させるリスクを招く可能性がある。従って、曲げに耐える剛性材料を有することで、意図しない落下が減少したデバイスが提供される。
【0030】
一実施形態において、第1のチューブ及び第2のチューブは、伸張状態で少なくとも10mm軸方向に重なり、好ましくは少なくとも20mm軸方向に重なり、最も好ましくは30mm軸方向に重なっている。これにより、第1及び第2のチューブは、半径方向の意図しない移動を回避するように半径方向に安定することができる。
【0031】
別の一実施形態において、第1のチューブと第2のチューブとの間の半径方向距離は1mmより小さく、好ましくは0.5mmより小さく、最も好ましくは0.1mmより小さい。これにより、設計は2つのチューブ間の空気漏れの量を低減させる。
【0032】
一実施形態において、流路は第1及び第2のチューブの内部に配置されている。これにより、実際の第1及び第2のチューブ以外の別の流路ガイドの必要がなくなる。従って、第1及び第2のチューブは、空気の流れを可能とすること、及び、吸引グリップ部材と分別対象の物体との間の衝撃を減衰することの双方のために使用され、更に、減衰中及び分別対象の物体の押し出し中の双方において、第2のチューブに対する第1のチューブの軸方向の移動を誘導するために使用され得る。
【0033】
別の実施形態において、ロボット真空分別システムは、伸縮自在に配置されると共に折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能である複数のペアの第1及び第2のチューブを構成する複数の第1のチューブ及び複数の第2のチューブを備える。これにより、いくつかのチューブが、吸引グリップ部材と分別対象の物体との間の衝撃のダンパとして機能し、更に、減衰中及び分別対象の物体の押し出し中の双方において、第2のチューブに対する第1のチューブの軸方向の移動を誘導することができる。これにより、グリップ部材の安定性を増大させることも可能となる。
【0034】
一実施形態において、複数のペアの第1及び第2のチューブは、ロボット真空分別システムの垂直中央軸を中心として均等に分布し、流路は、複数のペアの第1及び第2のチューブとは別個の可撓性チューブ内に配置されている。これにより、ダンパ及びガイドは最大の安定性を提供するように配置される。
【0035】
本発明の概念の第2の態様によれば、本発明の目的は、上記の実施形態のいずれかに従ったロボット真空分別システムを制御するための方法によって実現される。この方法は、分別対象の物体を識別するステップと、吸引グリップ部材を通して吸引空気流を与えることと、ロボットアームを分別対象の物体の方へ移動させて、吸引グリップ部材を分別対象の物体に接触させるステップと、を含む。方法は更に、分別対象の物体によって吸引グリップ部材の開口を通る空気流を制限することと、吸引空気流によってばね手段を少なくとも部分的に圧縮させ、第1及び第2のチューブを圧縮状態へ移動させることと、吸引空気流によって分別対象の物体を保持することと、ロボットアームを分別位置の方へ移動させることと、を含む。最後に、方法は、空気流を逆転させ、ばね手段によって第1及び第2のチューブを伸張状態へ押すステップと、これによって、分別対象の物体を分別位置の方へ押し出すステップと、を含む。
【0036】
この方法の利点は、上述したシステムの利点と概ね類似している。概して、この方法は、ロボットアームの摩耗を低減すると同時に、分別対象の物体に対して確実に吸引部材を良好にフィットさせて、空気流発生システムからの力によって物体を持ち上げることを可能とする。更に、この方法では、物体の表面がどこにあるか、従って、物体の方へどのくらいロボットアームを移動させなければならないかを決定する際に、許容可能な誤差の範囲が大きくなる。
【0037】
一実施形態において、方法は、吸引グリップ部材を分別対象の物体と接触させる際、第1及び第2のチューブを圧縮状態へ移動させることによって、吸引グリップ部材と分別対象の物体との間の衝撃を減衰させるステップを更に含む。
【0038】
これにより、第1及び第2のチューブの減衰移動によって分別システムのコンポーネントの摩耗及び応力を低減させることができるので、分別システムのコンポーネントは長い技術的寿命を獲得できる。
【0039】
一実施形態では、分別対象の物体が識別される場合、例えば近赤外線システム又は他の視覚システムにより、材料も識別することができる。分別対象の物体を分別位置の方へ移動させる際、識別された材料に関連した加速度又は速度プロファイルが用いられる。他の実施形態では、物体を移動させるのに適した速度又は加速度プロファイルを選択するため、重量が計算されて使用される。これにより、分別方法の間に重い物体の落下を回避することができる。
【0040】
別の一実施形態において、方法は、逆転した空気流によってフィルタを洗浄するステップを更に含む。これにより、フィルタを手作業で洗浄する必要がなくなる。また、フィルタは、流れを分別位置の方へ向けている間に洗浄されるので、フィルタ内の粒子を分別位置の方へ押し出すことができる。
【0041】
一実施形態において、方法は、分別対象の物体の重量を決定及び/又は測定するステップと、物体の決定された重量に関連する加速度で、分別対象の物体と共にロボットアームを分別位置の方へ移動させるステップと、を更に含む。これにより、重量が軽い物体を高い加速度(高速)で分別し、重量が重い物体を低い加速度(低速)で分別することができ、結果として落下が減少する。要するに、可能な場合に速度を上げることが分別時間を短縮し、また、重い物体の落下数を減少させることが分別にかかる合計時間を短縮するので、これにより効率的な分別動作が行われる。
【0042】
一実施形態において、方法は、分別対象の物体の決定又は測定された重量に基づいて加速度限界を選択し、計算された加速度限界を超えない加速度で分別対象の物体と共にロボットアームを分別位置の方へ移動させるステップを含む。本出願の文脈において、「選択する」という表現は、重量に基づいてリスト又は関数から加速度値を単に選ぶこと、又は、重量に基づいて加速度限度を計算することを含むものとして解釈するべきである。いくつかの実施形態では、空気流による吸引力を用いて加速度限界を計算することができる。
【0043】
一実施形態において、方法は、好ましくは圧力センサを用いて、分別対象の物体の良好な把持が実行されているか否かを判定し、良好な把持でない場合は、真空分別システムのエラーを監督制御手段に報告するステップを含む。これにより、システムは、分別対象の物体の把持が失敗したときに物体の把持の試みを再始動すること及び/又は警告信号をシステムへ送信することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「備える/備えている」という用語は、言及された特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を規定すると理解されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント、又はそれらのグループの存在又は追加を除外しないことを強調しておく。特許請求の範囲で用いられる全ての用語は、本明細書において明示的に別の定義がない限り、本技術分野での通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの/その(a/an/the)」(要素、デバイス、コンポーネント、手段、ステップ等)に対する全ての言及は、特に明記されない限り、その要素、デバイス、コンポーネント、手段、ステップ等の少なくとも1つのインスタンス(instance)を意味するものとしてオープンに解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
これより、一例として、添付図面を参照して本発明の実施形態を記載する。
【0046】
図1】本発明の概念の一実施形態に従った、廃棄物を分別するためのロボット真空分別システムを示す。
図2】一実施形態に従ったグリップシステムの縦断面図を示す。
図3】一実施形態に従ったばね手段及びセンサを備えたグリップシステムの概略図を示す。
図4】一実施形態に従ったグリップシステムの概略図を示す。
図5】方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
これより、添付図面を参照して本発明の実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。これらの実施形態は、本開示を完璧かつ完全にするため、また、本発明の範囲を当業者に充分に伝えるために提供される。添付図面に示されている特定の実施形態の詳細な説明で用いられる用語は、本発明を限定することは意図していない。図面において、同様の番号は同様の要素を示す。
【0048】
図1は、本発明の概念の一実施形態に従った、廃棄物を分別するためのロボット真空分別システム10を示す。ロボット真空分別システム10は、グリップシステム200を規定の作業領域内で移動させるための、特に、分別対象の物体400と複数の分別位置500、502、504との間で移動させるための、ロボットアーム100を備える。図における分別位置は、3つの異なるコンテナ500、502、504である。これらのコンテナは、分別対象の物体の推定体積に従って、数がより少ないか又は多い場合があり、サイズも変動する場合がある。
【0049】
分別対象の物体400は、リサイクルプロセスで分別することが有益である任意のタイプの物体とすることができる。これは、リサイクル対象の物体であってもよいが、他の物体を分別するために分類されるリサイクル可能でない物体であってもよい。
【0050】
図1に示されている特定の実施形態において、ロボットアームは、外腕106、中間腕104、及び内腕102を備える。ロボットアームは、外腕106の外端にツール搭載部108を備える。腕102、104、106は、グリップシステム200を規定の作業領域内で3次元に移動させるため用いられる。また、これらのアームは、各関節で回転可能かつ枢動可能であり得る。図のロボットアームは、単に説明のための例として見るべきであるが、他の実施形態でのロボットアームは、作業領域内で移動してこの領域内で物体をピックアンドプレースすることができる任意のタイプの産業用移動機械とすればよい。
【0051】
これらの物体は、コンベヤベルト410上で、コンベヤベルトの第1の端部から第2の端部へ移動するように示されている。ロボットアームの作業領域は、コンベヤベルト及び分別位置500、502、504の一部の上に規定されている。
【0052】
空気流発生システム700は、図1では概略的にのみ示されており、吸引/噴出ポンプ又はコンプレッサ等、任意のタイプの空気流発生器とすればよい。また、これは、異なる流れ方向のための2つの異なるポンプとすることができ、吸引及び噴出流を制御するため1つ又はいくつかのバルブを介して流路に接続してもよい。
【0053】
図2は、一実施形態に従ったグリップシステム200の側面の縦断面図を示す。グリップシステム200は第1のチューブ210及び第2のチューブ220を備え、第1のチューブは部分的に第2のチューブ220の内部に配置されている。他の実施形態では、第2のチューブを部分的に第1のチューブ内に挿入することができる。
【0054】
第1のチューブ210及び第2のチューブ220は、伸縮自在に配置され、折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能である。折り畳み状態では、第1のチューブ210は可能な限り第2のチューブ220内に配置され、伸張状態では、第2のチューブは可能な限り小さい重なりで配置される。折り畳み状態での軸方向の重なりは約70~200mmであり、伸張状態では折り畳み状態で約10~50mmである。ストローク長、すなわち伸張状態に対する折り畳み状態の重なりの差が、全減衰ストローク長を与える。
【0055】
ばね手段240は、第1及び第2のチューブに伸張状態への軸方向の力を加えることができるように配置されている。図2では、1つだけのばね手段240が示されている。図3では、4つのばね手段が示されている。任意の数のばね手段を想定することができる。また、第1及び第2のチューブの周りに同軸に1つのばね手段を配置することも可能である(図示せず)。ばね手段は、コイルばね、ゴム等の弾性部材、又は他の任意のタイプのばねとすることができ、その機能は、第1及び第2のチューブを伸張状態へ押すことである。
【0056】
図2における特定の実施形態では、グリップシステム200は、第1のチューブ210に流体的に接続された接続部230を備える。第1のチューブ210、第2のチューブ220、及び接続部230は、いずれも中空である。第1のチューブ210、第2のチューブ220、及び接続手段230の空洞は、流路228を規定する。流路220は更に、図1で概略的に示されている流れ発生手段700に流体的に接続されている。
【0057】
第1のチューブ210は、第1のチューブのオリフィスを構成する内部断面開口212を含む。また、第2のチューブは、第2のチューブのオリフィスを構成する内部断面開口222を含む。最後に、接続手段230は、接続手段のオリフィスを構成する内部断面開口232を含む。これらのコンポーネントの検討されているオリフィスは、各コンポーネントの最も小さいエリアに位置付けられる。
【0058】
流路228を通して吸引される空気流(又は他の適切なガス)の望ましくない圧力降下を回避するため、第1のチューブ、第2のチューブ、及び接続手段230のオリフィス212、222、及び232は、実質的に同じオリフィスサイズを有し得る。1つの設計では、これらのオリフィスは吸引流体流の下流でわずかに大きくなる。
【0059】
図示されている例では、第1のチューブ210及び第2のチューブ220は、異なる摩耗係数(wear coefficient)(又は剛性/摩耗係数(abrasion coefficient))を有する材料で作製される。好ましくは、第1のチューブ210の方が高い摩耗係数を有する材料で作製され、第2のチューブの方が低い摩耗係数を有する材料で作製される。上述のように、大きい係数は材料の耐摩耗性が低いことを示し、小さい係数は摩耗する傾向が高いことを示す。一例として、ポリエチレンは約1.3×10-7の摩耗係数を有し、硬質工具鋼は1.3×10-4の摩耗係数を有する。これを記述する別の手法は、材料のアブレシブ摩耗耐性である。
【0060】
一例において、第1のチューブ210は、例えば鉄、ステンレス鋼、又はアルミニウムのような金属製材料で作製することができる。第2のチューブ220は、例えばPU又はABSのようなポリマー材料を含む材料で作製することができる。
【0061】
摩耗係数が異なる材料を用いると、無潤滑動作が可能となる。この用途では多くのほこりが存在し、潤滑はほこり粒子を蓄積させてシステムの摩耗及び損傷を招くので、無潤滑動作は好ましい。
【0062】
流路はフィルタ空洞226を含む。図示されている例では、フィルタ空洞は第2のチューブ220内に配置されている。第2のチューブは、グリップシステム200が分別対象の物体に係合する開口に近いので、これは好ましい。これにより、フィルタが収集した粒子はグリップシステム内の奥まで進入しない。フィルタ空洞226は、内部断面開口212、222、及び223よりも大きい断面積を有する。その理由は、フィルタ260のオリフィス開口261の合計の面積が、第1のチューブ、第2のチューブ、及び接続手段のオリフィス212、222、及び232以上に大きくなければならないからである。
【0063】
また、第1のチューブ210及び第2のチューブ220は好ましくは高い剛性を有して、分別プロセス中に第1及び第2のチューブが望ましくない移動をしないこと、例えば半径方向移動をしないことを保証する。これらのチューブが望ましくない半径方向移動をした場合、空気漏れ、真空(負圧)の低下、及び分別対象の物体400の意図しない落下を招く可能性がある。重い物体を分別する場合、第1のチューブの剛性は特に有益である。
【0064】
第1及び第2のチューブ間の半径方向距離は、空気漏れを低減するため、1mm未満とすることができ、好ましくは0.5mm未満である。
【0065】
流路228内に、システムの潜在的な機能不全又は流路の閉塞を示す圧力センサ265を配置することができる。センサを用いて、物体が流路を塞いでいること、及び、どのような力で物体がグリップシステム200に保持されているかを測定できる。物体が保持されている力を用いて、分別対象の物体と共にロボットアームを移動させなければならない速度及び/又は加速度を計算することができる。
【0066】
また、圧力センサ265を用いて、閉塞度が満足できないものであると決定することができる。この結果、ロボットアームは新たな接触で分別対象の物体への接近を試みることができる。また、追加的に又は代替的に、これを用いて、いくつかのコンポーネントの機能不全に起因し得る流路の漏れの存在を示すことができる。(例えば、予想よりも低い負圧を検出したことによって)流路漏れの検出が示された場合、センサは、1つ以上のコンポーネントに保守、修理、又は交換が必要であることのアラーム信号指示を送信できる。圧力センサ265は、第2のチューブ220内に配置されるものとして図示されているが、流路228内のどこにでも配置され得る。
【0067】
最後に、グリップシステム200は、最外端に吸引グリップ部材300を備える。吸引グリップ部材300は、分別対象の物体の表面に適合するように形成できる可撓性部材とすればよい。ロボットアーム100がグリップシステム200を分別対象の物体の方へ押した場合、吸引グリップ部材300は分別対象の物体の表面にぴったりフィットして、流路228内の負圧で物体を保持することができる。これは例えば、吸着カップ、ゴムノズル、又は同様のものとすればよく、上述のように機能する任意の形態とすればよい。グリップ部材は、分別対象の物体にぴったりフィットすることを保証するため、何度か持ち上げに使用した後、又は損傷したときに、交換することができる。
【0068】
図3は、一実施形態に従ったグリップシステム200の概略図を示す。グリップシステムは、センサ250及び機械的インジケータ252を備える。センサ250は、第1及び第2のチューブの伸張状態と折り畳み状態との間の軸方向位置を検知するために使用され得る。この情報を用いて、吸引グリップ部材が分別対象の物体上へ及び/又は分別対象の物体内へ充分に押されたか否かを知ることができる。また、これを用いて、ばね手段240が何らかの理由で第1及び第2のチューブを伸長状態にしていないこと等、何かが機能不全であることを検知できる。これが検出された場合、機能不全を示すために機能不全警告をシステムに送信することができる。この警告は、第2のチューブに対する第1のチューブの移動に関与するコンポーネントのいずれかに対して、保守、修理、又は交換を行うためのプロンプトも含み得る。これにより、センサ250は、スライドシステムの潜在的な故障のインジケータとして機能することができる。
【0069】
センサ250は、容量センサ又は誘導センサ、又は位置を示すことができる他の任意のタイプのセンサを含み得る。また、センサは、第1及び第2のチューブの移動におけるストローク長を検出する視覚システムと共に動作し得る。
【0070】
図4は、本発明の概念の一実施形態に従ったグリップシステム600の概略斜視図を示す。流路628が第1及び第2のチューブ内に配置されてないことを除いて、上述した実施形態における実施形態の全体的な原理は全てこの実施形態にも関連する。この例示的な実施形態において、グリップシステム600は、複数の第1のチューブ610a~610d及び複数の第2のチューブ620a~620dを備える。複数の第1のチューブ及び複数の第2のチューブは、伸縮自在に配置されると共に折り畳み状態と伸張状態との間で移動可能である複数のペアの第1及び第2のチューブを構成する。
【0071】
前述の実施形態と同様に、接続手段630は空気流発生システム700(図4には示されていない)に流体的に結合され、グリップ部材310はグリッパシステムの下部に配置されている。また、フィルタ空洞626はグリップ部材310の真上に配置され、この中にフィルタ(図示せず)が設置されている。上述したように、この実施形態でも、複数の第1のチューブ及び複数の第2のチューブは好ましくは、異なる摩耗係数を有する材料で作製される。この実施形態において、複数のペアの第1及び第2のチューブは、グリップシステム600の垂直中央軸を中心として均等に分布している。図示されている特定の例では、4つのペアの第1及び第2のチューブが存在する。また、他の例では、これより少数のペア又は多数のペアが存在してもよい。
【0072】
グリップ部材310は、流路を介して空気流発生システムと流体的に接続されている。流路は、複数のペアの第1及び第2のチューブとは別個の可撓性チューブ(図示せず)内に配置されている。一実施形態において、可撓性チューブは、複数のペアの第1及び第2のチューブの中心に配置されている。
【0073】
フィルタ空洞626内に配置されたフィルタは、好ましくは、流路と同じ断面積の孔開口を有する。また、可撓性チューブは好ましくは、圧力降下を回避するため、流路のオリフィスに対応するオリフィスを有する。
【0074】
これより、デバイスの機能を全体的な説明で記載し、その後、図5のフローチャートに関連付けて方法を詳細に記載する。
【0075】
ステレオカメラシステム、又は、例えばレーザとカメラの組み合わせ、及び/又は近赤外線システム等の3D識別システムによって、分別対象の物体400を識別することができる。流路228及び吸引グリップ部材300を通して吸引空気流を与え、ロボット真空分別システム10は分別対象の物体400の方へ移動し、分別対象の物体400に接触する。分別対象の物体400をグリップ部材300と係合させ、ロボット真空分別システム10を物体の方へ降下させると、吸引グリップ部材300上の分別対象の物体400によって空気流が制限され、流路228内で負圧が発生する。
【0076】
流路228内の負圧及びロボット真空分別システム10の物体への移動によって、第1及び第2のチューブは、伸張状態から、第1及び第2のチューブの重なりが増大する折り畳み状態に移動する。一実施形態では、折り畳み状態においてばね手段が加える力は、伸張状態においてばね手段が加える力よりも大きく、ばね力は、分別対象の物体400に対するグリップ部材300の衝撃を減衰させる。
【0077】
流路228内で発生した空気流は、物体をグリップ部材300に対して空気流発生システムの方へ吸引された状態に保っている。ロボット真空分別システム10は、この後、つかみ上げ位置から所定の分別位置500、502、504へ移動する。
【0078】
分別位置に到達したら、空気流を逆転させ、流路内の圧力は増大し、第1及び第2のチューブはばね手段によって折り畳み状態から伸張状態へ押される。圧力の増大と、ばね手段による第2のチューブの下方への移動によって、物体400はグリップ部材から押し出される。逆転した空気流は流路228内の圧力を増大させ、また、フィルタ260から潜在的なデブリ及び小さい物を取り除く。
【0079】
次に、上述した本発明の方法のフローチャートを示す図5に関連付けて、方法を記載する。フローチャートは、実行される複数のステップS1~S9を含む。更に、ステップs2、s3、及びs8に関して、任意選択的なステップのセットが3つある。これらの任意選択的なステップは、図では破線で示されている。
【0080】
これらのステップのいくつかは、番号を有するが、異なる順序で実行され得ることに留意されたい。例えば、物体を識別するステップは、物体との係合前、係合中、及び/又は係合後に実行され得る。
【0081】
上述した方法は、ロボット真空分別システムを制御するための方法である。この方法における第1のステップは、分別対象の物体を識別することである(S1)。この識別は、例えば視覚システム及び/又は近赤外線(NIR)システムによって実行され得る。検出は、物体がどのようなタイプであるか、及び/又は物体が作製されている材料がどのようなタイプであるかに基づいて、物体を検出することを含み得る。第2のステップとして、方法は、吸引グリップ部材310を通して吸引空気流を与えることを含む(S2)。吸引空気流は、上述したような吸引空気流発生手段700によって発生される。
【0082】
更に、分別対象の物体の重量を決定する任意選択的なステップ(S2b)を実行してもよい。これは例えば、物体の材料及び体積を決定することによって実行され得る。これは、重量の計算のため、又は予め分類された物体のリストから適切な重量を選択するため、又は測定センサによって分別対象の物体の重量を測定するための基礎となり得る。
【0083】
更に、加速度限界を計算するか又は加速度及び/又は速度を受信し、識別された物体のためにこれを使用するという選択肢もある。例えば、これを用いて、紙又はプラスチック製コンテナ等の軽い物体を、金属廃棄物又はガラス物体等の重い物体よりも高い速度及び/又は加速度で移動させることができる。これにより分別システムは、比較的軽い物体を高速で、重い物体を低速で分別し、重い物体の落下を回避することができる。
【0084】
物体の重量/タイプに基づいて加速度又は速度を計算/検索するか否かにかかわらず、方法の次のステップは、ロボットアームを分別対象の物体の方へ移動させて、吸引グリップ部材を分別対象の物体に接触させることである(S3)。
【0085】
別の任意選択的なステップは、吸引グリップ部材を分別対象の物体と接触させる際、第1及び第2のチューブを圧縮状態へ移動させることによって、吸引グリップ部材と分別対象の物体との間の衝撃を減衰させることであり得る(S3b)。
【0086】
その後、次のステップは、分別対象の物体によって吸引グリップ部材の開口を通る空気流を制限することである(S4)。従って、吸引グリップ部材を分別対象の物体に当接させることにより、グリップ部材を通る空気流は阻止される。これによって負圧が増大し、分別対象の物体は所定位置に保持される。
【0087】
好ましくは前のステップと同時に実行される次のステップは、吸引空気流によってばね手段を少なくとも部分的に圧縮させ、第1及び第2のチューブを圧縮状態へ移動させる(S5)。これは部分的に負圧によって行われるが、ロボットアームが吸引グリップ部材を分別対象の物体上へ/分別対象の物体内へ押すことで発生した力によっても行われる。
【0088】
次のステップも、方法の前のステップと少なくとも並行して行われ、吸引空気流によって分別対象の物体を保持することを含む(S6)。
【0089】
一度、分別対象の物体が吸引グリップ部材によってしっかり保持されたら、ロボットアームを分別位置の方へ移動させる(S7)。分別対象の物体がしっかり保持されていることは、圧力センサが空気流路内の負圧を検知することによって確認できる。どのような物体を分別するかに基づいて、分別位置が決定される。1つ又は複数の任意選択的な分別位置があり、これらの中から選択することができる。
【0090】
重量を決定又は測定するステップが実行される場合は、任意選択的に、物体の決定された重量に関連する加速度/速度で、アームを分別位置の方へ移動させることができる(S7b)。
【0091】
その後、方法は、空気流を逆転させ、ばね手段によって第1及び第2のチューブを伸張状態へ押し(S8)、これによって、分別対象の物体を分別位置の方へ押し出すこと(S9)を含む。
【0092】
この押し出しによって、ロボットアームを分別位置に至るまでずっと移動させる必要がなくなり、最後は軌道内で押し出しにより物体を押し出すことができる。これによって、ロボットアームの移動が短くなり得るので、分別システムの効率が高くなる。
【0093】
最後に示されている任意選択的なステップとして、逆転した空気流によってフィルタを洗浄することができる(S8b)。
【0094】
方法は更に、好ましくは圧力センサを用いて、分別対象の物体の良好な把持を判定し、良好な把持でない場合は、真空分別システムのエラーを監督制御手段に報告するステップを含み得る。
【0095】
上述したように、分別対象の物体400の材料、形状(例えば長さ、幅、高さ、又は形態)、及び重量は、3D検出システム(図示せず)によって識別できる。更に、ロボット真空分別システム10の加速度及び/又は速度及び移動プロファイルを含むデータセットは、上述したように検知又は計算された様々な物体パラメータに基づくことができる。例えば金属製物体のような重い物体、又はエアバッグのような複雑な製品は、例えばペットボトルのような軽い物体とは異なる加速度パラメータ及び移動プロファイルを用いて分別される。重い物体は、軽い物体よりも低速で分別される。加速度パラメータ及び移動プロファイルは、分別位置への移動中に分別対象の物体がグリップシステム200から外れないことを保証するように選択される。つかみ上げ対象の物体の重量を推定又は計算することにより、この重量及び空気流発生手段から発生した力に基づいて、加速度限界を計算することができる。
【0096】
例えば、50Nの力によって物体がグリップシステムに保持され得る場合、グリップシステムが分別対象の物体を保持しているポイントでのロボットアームの加速度は、a=F/m未満に制限することができる。ここで、Fは限界力(50N)であり、mは物体の重量であり、aは限界加速度である。また、特定の閾値を超える物体をつかみ上げる場合、大きい流れ、従って大きい吸引力が使用されるように、空気流発生手段からの力を適合させることも想定できる。
【0097】
物体の重量を考慮に入れる場合、重い物体よりもはるかに高速で軽い物体を分別して、より効率的な分別を行うことができる。明らかに、限界力は、例えば10N~100Nの間で変動し得る。また、設定された加速度限界は安全レベル係数を含み、例えば、使用される実際の加速度が理論上の加速度限界の2/3又は1/2となるように、150%又は200%の安全係数を使用することができる。この結果、分別対象の物体の落下が減少する。
【0098】
本発明は開示されている特定の実施形態に限定されないこと、並びに、変更及び他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることは理解されよう。更に、前述の記載及び関連する図面は、要素及び/又は機能のいくつかの例示的な組み合わせの文脈で例示的な実施形態を記載しているが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、代替的な実施形態によって、要素及び/又は機能の異なる組み合わせも提供され得ることは認められよう。この点で、例えば、上記で明示的に記載されたものとは異なる組み合わせの要素及び/又は機能も、添付の特許請求の範囲のいくつかに明記され得るように想定されている。利点、メリット、又は問題の解決策が本明細書で記載されている場合、そのような利点、メリット、及び/又は解決策は、いくつかの例示的な実施形態に適用可能であり得るが、必ずしも全ての例示的な実施形態に適用可能でないことは認められよう。従って、本明細書に記載されたいかなる利点、メリット、又は解決策も、全ての実施形態にとって又は本明細書で特許請求されるものにとって、重要である、必要である、又は不可欠であると考えるべきではない。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的で記述的な意味でのみ用いられ、限定の目的では用いられない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】