(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】スパイン形成のためのある特定のファスシン結合化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20240301BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20240301BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240301BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K31/167
A61K31/506
A61P25/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557026
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022021507
(87)【国際公開番号】W WO2022204257
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520036824
【氏名又は名称】スピノジェニックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サラフ, ステラ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】サイモン, ヴィンセント エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダークリシュ, ピーター ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC31
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA94
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZA16
4C206ZA94
4C206ZC41
(57)【要約】
一部の実施形態では、患者におけるスパイン形成を促進するための方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミン、セマピモド、もしくはブリラシジン、またはそのそれぞれの薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。神経学的障害は、脳、脊髄および末梢神経系の疾患である。疫学および個々の病的状態の面で、ニューロンおよび該ニューロン間のシナプス結合の損傷または消失をもたらす神経変性状態によって最大の社会的費用が課される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロン中のスパイン形成を促進する方法であって、前記ニューロンをイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
ニューロンの疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含むが、ただし、前記ニューロンの疾患または障害が気分障害ではない、方法。
【請求項3】
前記ニューロンの疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、および外傷性脳損傷から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ニューロンの疾患または障害がアルツハイマー病である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ニューロン中のスパイン形成を促進する方法であって、前記ニューロンをセマピモドまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法。
【請求項6】
ニューロン中のスパイン形成を促進する方法であって、前記ニューロンをブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法。
【請求項7】
ニューロンの疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のセマピモドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項8】
前記ニューロンの疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、および外傷性脳損傷から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ニューロンの疾患または障害がアルツハイマー病である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ニューロンの疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記ニューロンの疾患または障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、および外傷性脳損傷から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ニューロンの疾患または障害がアルツハイマー病である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年3月23日に出願された米国仮特許出願第63/165,079号および2021年12月17日に出願された米国仮特許出願第63/291,077号(それぞれ、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる)の米国特許法第119条(e)による利益を主張するものである。
【0002】
分野
本明細書では、スパイン形成の促進およびニューロンの疾患または障害の処置のための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
神経学的障害は、脳、脊髄および末梢神経系の疾患である。疫学および個々の病的状態の面で、ニューロンおよび該ニューロン間のシナプス結合の損傷または消失をもたらす神経変性状態によって最大の社会的費用が課される。これらの最も目立つものは、アルツハイマー病およびパーキンソン病である。他の神経変性状態および加齢に関連する状態としては、例えば、パーキンソン認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、遺伝症候群(例えば、ダウン症候群)、傷害関連の状態(例えば、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、卒中)、ならびに統合失調症およびうつ病などの、事実上、純粋に精神医学的であると典型的に考えられる状態が挙げられる。
【0004】
研究者らは、数百種の神経系の疾患、例えば、脳腫瘍、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病および卒中、ならびに認知症などの加齢に関連する状態を分類してきた。そのような状態の一部は、シナプス(2つの異なるニューロン間の接合部)の進行性消失と、最終的にはニューロンの消失(神経変性)とから生じる。残念ながら、神経変性疾患を効果的に処置するための治療法を開発することはほぼ不可能だった。脳内のニューロンは、神経伝達物質(樹状突起上の受容体に結合する化学物質)をシナプス中へ放出し、受信する側のニューロンの電位を変えることによって互いに伝達する。神経伝達物質を放出するニューロン部分は、軸索(シナプスのシナプス前部側)であり、神経伝達物質によって影響を受けるシナプス部分は、樹状突起スパイン(シナプスのシナプス後部側)と呼ばれる。シナプス接合部の数、位置およびさらには形状における変化は、記憶、学習、思考および性格の根底にある。脳のさまざまな部分は、ニューロン変性によって影響され得、シナプスおよびニューロンの顕著な消失に悩まされ得る。スパイン密度を回復する新規の方法および脳内の消失したシナプスを置き換える新規の方法の開発は、多くの神経変性および発達認知障害の処置にとって重要な意義を有し得る。
【0005】
樹状突起の複雑性、シナプス形成、ならびにニューロンの正常な発達および機能は、脳由来神経栄養因子(BDNF)などの成長因子によって内因的に制御される。近年、一部の小分子は神経栄養様活性を示すことが報告されたが、これらの分子は樹状突起スパインの形成を促進することは実証されていない。小分子に対する新規の細胞標的の同定は、多くの神経変性障害および精神発達障害の処置につながることができ、改善された記憶および学習を提供する可能性を持つと考えられている。したがって、スパイン形成を促進する小分子は、アルツハイマー病などの神経変性疾患における認知欠損の改善における潜在的な使用を有し、また、一般的な向知性薬としての使用も見出され得る。しかしながら、そのような活性を有する薬学的に許容される化合物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書では、スパイン形成の促進およびニューロンの疾患または障害の処置のための方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、患者におけるスパイン形成を促進する方法またはニューロンの疾患もしくは障害を処置する方法であって、ファスシンを、ファスシンと相互作用するかまたはその活性を阻害する特定の化合物と接触させることを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、患者におけるスパイン形成を促進する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の、以下:
【化1】
の構造を有するイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
一部の実施形態では、患者におけるスパイン形成を促進する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の、以下:
【化2】
の構造を有するセマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、または以下:
【化3】
の構造を有するブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
一部の実施形態では、ニューロン中のスパイン形成を促進する方法であって、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩をニューロンと接触させることを含む、方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、アルツハイマー病を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患もしくは障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、本明細書に記載の治療有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、および外傷性脳損傷から選択される。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、うつ病および外傷性脳損傷から選択される。一部の実施形態では、化合物はイミプラミンであり、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、および外傷性脳損傷から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書において、患者におけるスパイン形成を促進する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に記載のファスシンと相互作用するまたはファスシンを阻害する化合物であって、結合部位1でファスシンに結合しない化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による化合物で処置した後のニューロン中のシナプス密度の分析である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
一般的に、本明細書に記載の組成物および方法は、ファスシンと相互作用する特定の化合物の投与を提供する。化合物は、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩であってもよい。一部の実施形態では、組成物および方法は、ニューロンの疾患または障害の処置に有用である。化合物は、医薬組成物中で製剤化され得る。また、スパイン形成によって利益を受ける、疾患または状態を有する対象に、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む方法も提供する。化合物は、1種または複数の追加の薬学的に活性の物質も含んでよい。
【0017】
化合物は、セマピモドまたはその薬学的に許容される塩であってもよい。化合物はまた、ブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩であってもよい。一部の実施形態では、組成物および方法は、ニューロンの疾患または障害の処置に有用である。化合物は、医薬組成物中で製剤化され得る。また、スパイン形成によって利益を受ける、疾患または状態を有する対象に、セマピモドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。さらに、スパイン形成によって利益を受ける、疾患または状態を有する対象に、ブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。化合物は、1種または複数の追加の薬学的に活性の物質も含んでよい。
【0018】
I.定義
以下の記述は、本技術の例示的な実施形態を説明する。しかしながら、そのような記述は、本開示の範囲を限定することを意図せず、むしろ、例示的な実施形態の説明として提供されるという知見を得るべきである。
【0019】
本明細書で使用される場合、以下の単語、語句および記号は、一般に、それらを使用する文脈に別段の指定がある場合を例外として、以下に説明する意味を有することが意図される。
【0020】
用語「ファスシン(Fascin)」は、アクチン架橋タンパク質である54~58kDaのタンパク質を指す。用語「ファスシン」は、ヒトファスシン1のアミノ酸配列を指し得る。用語「ファスシン」は、野生型の形態のヌクレオチド配列またはタンパク質およびその任意の変異体の両方を含む。一部の実施形態では、「ファスシン」は、野生型ファスシンである。一部の実施形態では、「ファスシン」は、1つまたは複数の変異型である。一部の実施形態では、ファスシンは、ヒトファスシン1である。一部の実施形態では、ファスシンタンパク質は、参照番号GI:347360903に対応するヌクレオチド配列中でコードされる。一部の実施形態では、ファスシンタンパク質は、RefSeq M_003088のヌクレオチド配列中でコードされる。一部の実施形態では、ファスシンは、RefSeq NP_003079.1のアミノ酸配列に対応する。
【0021】
用語「スパイン形成」などは、通例的かつ慣例的には、ニューロン中の樹状突起スパインの発達(例えば、成長および/または成熟)を指す。一部の実施形態では、本明細書で提供される化合物は、全体のスパイン形態の比率(例えば、薄型(thin)、スタビー型(stubby)、マッシュルーム型(mushroom))に影響を与えることなくスパイン形成を促進する。促進は、化合物の投与がないことに関連する。
【0022】
用語「気分障害」は、主に、患者の全体的情動状態または気分が状況によって歪み、または一貫せず、患者の日常生活の機能を実行する能力を妨げる精神障害を指す。対象は、悲観、虚無感またはイラつきがあり得る、または過剰な幸福感(躁病)と交互に起こる負の感情の期間を有し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「樹状突起」は、神経細胞の分枝伸長を指す。樹状突起は、典型的には、隣接ニューロンの軸索から伝達された電気化学的シグナルを受けることを担う。用語「樹状突起スパイン(dendritic spine)」または「樹枝突起スパイン(dendrite spine)」は、神経細胞(例えば、樹状突起)上の原形質突起を指す。一部の実施形態では、樹状突起スパインは、小頭球(capitulum)(例えば、頭部(head))で終端し得る膜性のネック(membranous neck)を有すると説明され得る。樹状突起スパインは、それらの形状:薄型、スタビー型、またはマッシュルーム型に応じて分類される。樹状突起スパインの密度は、神経細胞の単位長当たりの樹状突起スパインの総数を指す。例えば、樹状突起スパインの密度は、1ミクロン当たりの樹状突起スパインの数として得ることができる。
【0024】
用語「樹状突起スパイン形成」などは、通例的かつ慣例的には、樹状突起スパインの数の増加または樹状突起スパインの発達の強化をもたらすプロセスを指す。用語「樹状突起スパイン形態(dendritic spine morphology)」などは、通例的かつ慣例的には、樹状突起スパインの物理的特徴付け(例えば、形状および構造)を指す。樹状突起スパイン形態の改善は、形態の変化(例えば、長さの増加または幅の増加)であり、これは、機能性の増加(例えば、ニューロン間の接触の数の増加、またはシナプス幅の増加)をもたらす。当該技術分野で公知のとおり、かつ本明細書に開示するように、そのような特徴付けの例示的な方法は、樹状突起スパインの寸法(すなわち、長さおよび幅)の測定を含む。したがって、用語「樹状突起スパイン形態の改善」は、一般に、樹状突起スパインの長さ、幅、または長さおよび幅の両方の増加を指す。
【0025】
「結合」は、少なくとも2つの特異的な種(例えば、生分子を含む化学的化合物または細胞)が、反応または相互作用することによって錯体の形成をもたらすために十分に近づくことを指す。例えば、2つの特異的な種(例えば、タンパク質と本明細書に記載の化合物)の結合は、錯体の形成をもたらし得、各種は、非共有結合または共有結合を介して相互作用する。一部の実施形態では、結果として得られた錯体は、2つの特異的な種(例えば、タンパク質と本明細書に記載の化合物)が非共有結合(例えば、静電気、ファンデルワールス、または疎水)を介して相互作用するときに形成される。
【0026】
本明細書で定義されるように、タンパク質-活性化剤(例えば、アゴニスト)相互作用に関連する用語「活性化」、「活性化する」、「活性化している」などは、活性剤(例えば、本明細書に記載の化合物)なしのタンパク質の活性または機能と比較して、タンパク質の活性または機能に良い影響を与える(例えば、強化する)ことを意味する。
【0027】
「対照」または「対照実験」は、平易な通常の意味にしたがって使用され、実験の対象または試薬が、実験の手順、試薬、または変数を省略すること以外は、並行実験で処置される、実験を指す。一部の例では、対照は、実験効果を評価する上で比較基準として使用される。
【0028】
「接触させる」は、平易な通常の意味にしたがって使用され、少なくとも2つの別個の種(例えば、生体分子を含めた化学的化合物または細胞)が十分に近位になって相互作用することを可能にするプロセスを指す。用語「接触させる」は、2つの分子種を反応させるか、または物理的に触れさせることを含んでよく、ここで、2つの種は、例えば、本明細書に記載の化合物、生体分子、タンパク質または酵素であってもよい。一部の実施形態では、接触させることは、本明細書に記載の化合物をタンパク質(例えば、ファスシン)または酵素と相互作用させることを含む。一部の実施形態では、接触させることは、タンパク質を結合することを含んでもよい。
【0029】
本明細書で定義されるように、用語「阻害」、「阻害する」、「阻害している」などは、当業者にとって慣例的な意味のものである。タンパク質-阻害剤(例えば、アンタゴニスト)相互作用に関連して、用語「阻害」、「阻害する」、「阻害している」は、阻害剤なしのタンパク質の機能的活動と比較して、タンパク質の機能的活動に悪影響を与える(例えば、低下させる)ことを意味する。
【0030】
2つの文字または記号の間にないダッシュ記号(「-」)は、置換基の結合点を示すために用いられる。例えば、-C(O)NH2は、炭素原子を通して結合される。化学基の前端または末端のダッシュ記号は便宜上のものであり、化学基は、通常の意味を失うことなく、1つまたは1つより多くのダッシュ記号を用いてまたは用いずに描写され得る。構造中の線を通って描かれた波線は、基の結合点を示す。化学的にまたは構造的に必要とされない限り、化学基が記載または命名される順序によって指向性が示されることも示唆されることもない。
【0031】
接頭辞「Cu~v」は、後続の基がu~v個の炭素原子を有することを示す。例えば、「C1~6アルキル」は、アルキル基が1~6個の炭素原子を有することを示す。
【0032】
本明細書中の値またはパラメータに対する「約」への言及は、値またはパラメータそれ自体を対象とする実施形態を含む(また、記載する)。ある特定の実施形態では、用語「約」は、±10%の指定量を含む。他の実施形態では、用語「約」は、±5%の指定量を含む。ある特定の他の実施形態では、用語「約」は、±1%の指定量を含む。また、用語「約X」は、「X」の記述を含む。また、単数形「a(1つの)」および「the(その)」は、文脈上、別段の明確な他の指示がない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物(the compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「アッセイ(the assay)」への言及は、1つまたは1つより多くのアッセイおよび当業者に公知のその同等物への言及を含む。
【0033】
一部の化合物は、互変異性体として存在する。互変異性体は、互いに平衡状態にある。例えば、アミド含有化合物は、イミド酸互変異性体と平衡状態で存在し得る。どの互変異性体が示されるにしても、かつ互変異性体間の平衡状態の性質にもかかわらず、化合物は、全ての互変異性体を含むと当業者に理解されている。
【0034】
本明細書に記載の任意の式または構造は、非標識形態および同位体標識された形態の化合物を表すことも意図される。同位体標識された化合物は、1個または複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子で置き換えられていることを除いては、本明細書に記載の式で表される構造を有する。本開示の化合物に取り入れることができる同位体またはそれに対する対イオンの例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、限定されないが、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iが挙げられる。さまざまな同位体標識された化合物、例えば、3H、13Cおよび14Cなどの放射性同位体が取り入れられたものが、本開示下で可能である。そのような同位体標識された化合物は、代謝研究、反応動態研究、検出または画像化技術、例えば陽電子放出断層撮影(PET)もしくは単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)(薬物もしくは基質組織分布アッセイを含む)において、または患者の、放射線処置(radioactive treatment)において有用であり得る。
【0035】
本開示は、炭素原子に結合された1~n個の水素が重水素で置き換えられている(nは、分子中の水素の数である)、化合物の「重水素化類似体」および該類似体への対イオンも含む。そのような化合物は、代謝に対する増大した耐性を示し、したがって、哺乳動物、特にヒトへ投与されたとき、化合物の半減期を増加する上で有用である。例えば、Foster, "Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism," Trends, Pharmacol. Sci. 5(12):524-527 (1984)を参照されたい。そのような化合物は、当該技術分野に周知の手段によって、例えば、1個または複数の水素が重水素で置き換えられた出発物質を用いて合成される。
【0036】
本開示の重水素で標識または置換された治療用化合物は、分布、代謝および排泄(ADME)と関連する、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有し得る。重水素などの重同位体による置換は、より高い代謝的安定性、例えばin vivo半減期の増加、必要用量の減少および/または治療指数の改善からもたらされる、ある特定の治療上の利点をもたらすことができる。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識した化合物およびそのプロドラッグは、一般に、スキームまたは実施例で開示される手順および非同位体標識された試薬を容易に入手可能な同位体標識された試薬に置き換えることによる下記の調製法を実施することによって調製することができる。この文脈における重水素は、化合物中の置換基として見なされることを理解されたい。
【0037】
そのようなより重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって規定され得る。本開示の化合物において、特定の同位体として特に指定されない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことを意味する。別途述べられない限り、位置が特に「H」または「水素」と表されるとき、その位置は、その天然存在度の同位体組成で水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物において、具体的に重水素(D)と表される任意の原子は、重水素を表すことを意味する。
【0038】
本明細書に記載の化合物は、塩、例えば薬学的に許容される塩として存在し得る。化合物は、酸性および/または塩基性塩などの塩を形成することができる。また、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性型、多形体、およびプロドラッグも提供する。「薬学的に許容される」または「生理的に許容される」は、獣医またはヒト薬学的用途に好適な医薬組成物の調製に有用な化合物、塩、組成物、剤形および他の材料を指す。本明細書に記載の化合物の塩は、本明細書に記載され、当該技術分野において公知の手順にしたがって調製することができる。
【0039】
所与の化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、所与の化合物の生物学的効果および特性を保持し、生物学的に、またはそれ以外の点で望ましくないものではない塩を指す。「薬学的に許容される塩」または「生理的に許容される塩」には、例えば、無機酸の塩および有機酸の塩が含まれる。加えて、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、酸性塩の溶液を塩基性化することによって遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製する従来の手順にしたがって、遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解し、溶液を酸で処理することによって、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩が生成され得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得るさまざまな合成方法論を認識している。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製することができる。無機酸から誘導される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸などが挙げられる。有機酸から誘導される塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびサリチル酸などが挙げられる。同様に、薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製することができる。無機塩基から誘導される塩としては、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、これらに限定されないが、第1級、第2級および第3級アミンの塩、例えばアルキルアミン(すなわち、NH2(アルキル))、ジアルキルアミン(すなわち、HN(アルキル)2)、トリアルキルアミン(すなわち、N(アルキル)3)、置換アルキルアミン(すなわち、NH2(置換アルキル))、ジ(置換アルキル)アミン(すなわち、HN(置換アルキル)2)、トリ(置換アルキル)アミン(すなわち、N(置換アルキル)3)、アルケニルアミン(すなわち、NH2(アルケニル))、ジアルケニルアミン(すなわち、HN(アルケニル)2)、トリアルケニルアミン(すなわち、N(アルケニル)3)、置換アルケニルアミン(すなわち、NH2(置換アルケニル))、ジ(置換アルケニル)アミン(すなわち、HN(置換アルケニル)2)、トリ(置換アルケニル)アミン(すなわち、N(置換アルケニル)3)、モノ-、ジ-もしくはトリ-シクロアルキルアミン(すなわち、NH2(シクロアルキル)、HN(シクロアルキル)2、N(シクロアルキル)3)、モノ-、ジ-もしくはトリ-アリールアミン(すなわち、NH2(アリール)、HN(アリール)2、N(アリール)3)、または混合アミンなどが挙げられる。好適なアミンの具体例としては、ほんの一例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソ-プロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N-エチルピペリジンなどが挙げられる。塩の調製方法は、活性金属との酸化還元反応によって、またはイオン交換によって(例えば、塩の異なる溶解度のため)、化合物を混合することも含む。
【0040】
「溶媒和物」は、溶媒分子が取り込まれている化合物の固体形態である。溶媒和物は、溶媒と化合物の相互作用によって形成される。水和物は、溶媒が水である溶媒和物である。本明細書に記載の化合物の塩の溶媒和物も提供する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される添加剤」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などのいずれかおよび全てを含む。薬学的に活性の物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体または作用物質が活性成分と相溶性でない場合以外は、その治療用組成物中での使用は企図される。また、補助的活性成分も組成物中に取り入れることができる。
【0042】
「処置」または「処置する」は、臨床結果を含めた有益または所望の結果を得るための手法である。有益または所望の臨床結果は、以下:a)疾患もしくは状態の処置(例えば、疾患もしくは状態がもたらした1つもしくは複数の症状の軽減および/または疾患もしくは状態の程度の漸減)、b)疾患もしくは状態に伴う1つもしくは複数の臨床症状の発症の遅延もしくは阻止(例えば、疾患もしくは状態の安定化、疾患もしくは状態の悪化もしくは進行の予防もしくは遅延、および/または疾患もしくは状態の拡散(例えば、転移)の予防もしくは遅延)、ならびに/あるいはc)疾患の緩和、すなわち臨床症状の退行(例えば、病状の改善、疾患もしくは状態の部分的もしくは全体的な寛解の提供、別の投薬の効果の強化、疾患の進行の遅延、クオリティオブライフの向上、および/または生存の延長)のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0043】
「予防」または「予防する」は、疾患または状態の臨床症状を発症させないようにする疾患または状態の任意の処置を意味する。化合物が、一部の実施形態では、疾患または状態のリスクがあるまたはその家族歴を有する対象(ヒトを含む)に投与され得る。
【0044】
「対象」は、処置、観察または実験の対象物だったまたは対象物になる哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載の方法は、ヒト治療および/または獣医学的適用において有用であり得る。一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。一実施形態では、対象はヒトである。対象が人間である場合、対象は「患者」と呼んでよい。
【0045】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の「治療有効量」または「有効量」という用語は、症状の改善または疾患の進行の減速などの治療上の利益を与えるために対象に投与したときに処置をもたらすのに十分な量を意味する。例えば、治療有効量は、ニューロンの疾患の症状を減少するのに十分な量であってもよい。治療有効量は、対象、処置する疾患または状態、対象の体重および年齢、疾患または状態の重症度、ならびに投与方法によって変わり得、これらは当業者によって容易に決定され得る。
【0046】
本明細書に記載の方法は、in vivoまたはex vivoでの細胞集団に適用され得る。「in vivo」は、動物またはヒトの内部などの生きている個体内を意味する。この文脈において、本明細書に記載の方法は、個体において治療的に使用され得る。「ex vivo」は、生きている個体外を意味する。ex vivo細胞集団の例としては、in vitro細胞培養物および生体試料(個体から得られる体液または組織試料を含む)が挙げられる。そのような試料は、当該技術分野において周知の方法によって得ることができる。例示的な体液試料としては、血液、脳脊髄液、尿、および唾液が挙げられる。この文脈において、本明細書に記載の化合物および組成物は、治療および実験目的を含めたさまざまな目的のために使用することができる。例えば、本明細書に記載の化合物および組成物は、所与の適応症、細胞型、個体、および他のパラメータのために本開示の化合物の投与の最適なスケジュールおよび/または投薬を決定するためにex vivoで使用され得る。そのような使用から収集される情報は、実験目的のために、またはin vivo処置のためのプロトコルを設定するために診療所で使用され得る。本明細書に記載の化合物および組成物が適する他のex vivo使用は、以下に記載する、または当業者には明らかになるであろう。選択された化合物をさらに特徴付けて、ヒトまたは非ヒト対象の安全性または許容投与量を調べることができる。そのような特性は、当業者に一般的に公知の方法を用いて調べることができる。
【0047】
化合物
本明細書では、スパイン形成を促進する作用物質を提供する。そのような作用物質は、ニューロンの疾患および障害の処置において有用である。
【0048】
一部の実施形態では、スパイン形成促進化合物は、以下の構造を有するイミプラミン
【化4】
またはその薬学的に許容される塩である。イミプラミンの塩は、イミプラミン塩酸塩であってもよい。
【0049】
一部の実施形態では、スパイン形成促進化合物は、以下の構造を有するセマピモド
【化5】
またはその薬学的に許容される塩である。セマピモドの塩は、セマピモド塩酸塩であってもよい。
【0050】
一部の実施形態では、スパイン形成促進化合物は、以下の構造を有するブリラシジン
【化6】
またはその薬学的に許容される塩である。ブリラシジンの塩は、ブリラシジン塩酸塩であってもよい。
【0051】
本明細書に記載の化合物は、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。入手可能な場合、化合物は、例えばSigma Aldrichまたは他の化学物質供給業者から市販で購入してもよい。
【0052】
公知の手順またはその改変によって合成を行ってもよい。例えば、多くの出発物質は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wisconsin、USA)、Bachem(Torrance、California、USA)、Emka-ChemceまたはSigma(St.Louis、Missouri、USA)などの商業的供給業者から入手可能である。他は、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1-15 (John Wiley, and Sons, 1991)、Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1-5, and Supplementals (Elsevier Science Publishers, 1989) organic Reactions, Volumes 1-40 (John Wiley, and Sons, 1991)、March's Advanced Organic Chemistry, (John Wiley, and Sons, 5th Edition, 2001)、およびLarock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989)などの標準の参考文献に記載されている手順またはその改変によって調製することができる。
【0053】
処置方法および使用
ファスシン
本明細書では、本明細書に記載の化合物などの作用物質で細胞骨格タンパク質を標的とすることによって、神経変性状態で失われるスパインシナプスを再生する方法を記載する。意外なことに、細胞骨格タンパク質ファスシン1(FSCN1)との相互作用または該FSCN1の阻害が、in vivoおよびin vitroでの樹状突起スパインの迅速な上方調節をもたらしたことが観察された。樹状突起スパインは、線維状アクチン(F-アクチン)、細胞およびその細胞内特化までの構造を与える細胞骨格ポリマーを含有する。F-アクチンフィラメントの伸長およびその組織化の変化は、樹状突起スパインの形成、成熟、および可塑性に重要である。本開示より前は、F-アクチンフィラメントを平行アレイに束ねるファスシン1の能力は、浸潤突起、糸状仮足(filapodia)および場合によっては樹状突起スパインなどの広範にわたる細胞突起の形成に必須であると考えられていた。ファスシン1は、細胞移動およびそのようなプロセスによるがん転移の関連プロセスを促進すると考えられている。F-アクチンを束ねるその能力を阻止するファスシン1の小分子阻害剤は、F-アクチン富化細胞突起を減少することが観察された。したがって、先行研究は、ファスシン阻害剤が、F-アクチンに富む細胞突起である樹状突起スパインの形成も遮断すると考えられることを示唆した。しかしながら、予想に反して、逆が正しく、ファスシン1の構造上異なる阻害剤およびファスシン1の遺伝子ノックダウンは、樹状突起スパイン密度の迅速な増加をもたらし得る。理論に束縛されることを望むものではないが、樹状突起スパインは、高度に分枝されたF-アクチンの集合体の形成を必要とし、そのような集合体の形成は、ファスシン1によってF-アクチンを平行アレイに束ねることによって、排除され得るか、または顕著に減少され得ると考えられる。
【0054】
ファスシン結合部位は、国際公開第WO2020/046991号に記載されている。一部の実施形態では、部位2または部位3でファスシンタンパク質と相互作用するまたはファスシンタンパク質を結合する方法であって、ファスシンタンパク質を、有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、方法はファスシンとの相互作用を生じさせる。一部の実施形態では、方法はファスシンを阻害する。イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、ファスシンと相互作用することによってまたはファスシンを阻害することによって樹状突起スパインの形成を促進すると考えられる。
【0055】
一部の実施形態では、部位2でファスシンタンパク質と相互作用するまたは結合する方法であって、ファスシンタンパク質を、有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、部位3でファスシンタンパク質と相互作用するまたは結合する方法であって、ファスシンタンパク質を、有効量のセマピモドまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、部位3でファスシンタンパク質と相互作用するまたは結合する方法であって、ファスシンタンパク質を、有効量のブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩と接触させることを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、方法はファスシンとの相互作用を生じさせる。一部の実施形態では、方法はファスシンを阻害する。イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩、セマピモドまたはその薬学的に許容される塩、ブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩は、ファスシンと相互作用することによってまたはファスシンを阻害することによって樹状突起スパインの形成を促進すると考えられる。
【0056】
ファスシンは、他のアクチン結合タンパク質とのアミノ酸配列相同性を有しない、重要なアクチン架橋因子である。脊椎動物には3つの形態のファスシン:神経系および他の部位に広く見られるファスシン1、網膜の光受容細胞内に見られるファスシン 2、精巣中のみに見られるファスシン 3が見られる。一部の実施形態では、ファスシンは、ヒトファスシン1である。ファスシンは、55kDaの分子量を有し、単量体の実体として機能し、アクチンフィラメントを線状のコンパクトな剛性の束へ架橋して、アクチン束へ機械的剛性を付与する。ファスシンは、平行のアクチンフィラメントをまとめて保持して、直径が約60~200nmの糸状仮足を形成すると考えられている。ファスシンの構造を、アクチン結合部位と共に、国際特許公開第WO2020/046991号の
図1に例示する。
【0057】
ニューロンの発達中、F-アクチンの長い束が、ニューロンの膜を押し出して、軸索、樹状突起、糸状仮足および葉状仮足などの構造を形成すると考えられている。ファスシンは、新生樹状突起の細胞骨格再構築に関与すると考えられている。したがって、ファスシンによるアクチン束化は、一般に、軸索および樹状突起の形成および伸長に必要とされると考えられる。驚くべきことに、本結果は、アクチン束の形成におけるファスシンとの相互作用または該ファスシンの活性の阻害が、樹状突起スパインの形成、樹状突起の細胞膜の突出を促進することを示す。
【0058】
ファスシンは、結合部位1、結合部位2および結合部位3の少なくとも3つのアクチン結合部位を有すると考えられている。したがって、ファスシンは、アクチンが結合され得る部位を3つ有するように見える。結合部位2は、恐らくはリガンド結合時のタンパク質構造の移動に起因して、ファスシンの初期アポ(リガンド非含有)結晶構造中に見られなかった。国際特許公開第WO2017/120198号で開示される化合物は、結合部位1でファスシンを結合すると考えられている。しかしながら、作用様式はよく理解されていないことを強調したい。
【0059】
一部の実施形態では、ファスシン結合部位1は、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、および/またはY493によって少なくとも部分的に規定される。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、および/またはY493から選択されるファスシン残基のいずれにも結合されない。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、ファスシン結合部位1および/または結合部位3に結合しない。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、V10、Q11、L40、K41、A137、H139、Q141、Q258、S259、R383、R389、E391、G393、F394、S409、Y458、K460、E492、および/またはY493から選択されるファスシン残基のいずれにも結合しない。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、ファスシン結合部位1に結合しない。
【0060】
ファスシン結合部位2は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、および/またはS218によって少なくとも部分的に規定されると考えられている。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、およびS218から選択される少なくとも1つのファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、およびS218から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、F14およびL16から選択される少なくとも1つの群I ファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、L48、Q50、およびL62から選択される少なくとも1つの群II ファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、W101およびL103から選択される少なくとも1つの群III ファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、E215およびS218から選択される少なくとも1つの群IV ファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、ファスシン結合部位2は、F14、L16、L48、A58、V60、L62、I93、A95、W101、L103、V134、T213、L214、E215、F216、および/またはR217によって少なくとも部分的に規定される。
【0061】
一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、Q50、L62、W101、L103、E215、および/またはS218から選択されるファスシン残基のいずれにも結合しない。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、F14、L16、L48、A58、V60、L62、I93、A95、W101、L103、V134、T213、L214、E215、F216、および/またはR217から選択されるファスシン残基のいずれにも結合しない。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、ファスシン結合部位2に結合しない。
【0062】
一部の実施形態では、ファスシン結合部位3は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、および/またはK379によって少なくとも部分的に規定される。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される少なくとも1つのファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのファスシン残基に結合する。
【0063】
一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される少なくとも1つのファスシン残基に結合する。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩、またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、Q291、R308、H310、T311、G312、K313、Y314、L317、T318、T320、T326、S328、K329、N330、N331、S333、E339、R341、R344、R348、K353、S350、N351、F354、T356、S357、K358、K359、N360、Q362、L363、S366、V367、E368、T369、D372、S373、L375、L377、I381、およびK379から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのファスシン残基に結合する。
【0064】
一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩の結合部位は、部位特異的変異誘発法によって決定することができる。例えば、変異体ファスシン中のアミノ酸残基は、野生型ファスシンに対して変化され得る。例えば、作用物質の結合親和性の低下が、野生型ファスシンと、結合部位1、結合部位2、または結合部位3のアミノ酸残基が非天然残基、例えばアラニン残基で置き換えられた変異ファスシンと、の間で決定される場合、その低下は、置換部位の結合の親和性の消失に起因し得る。部位特異的変異誘発法は、公知の方法、例えば、クンケルの方法、カセット式変異誘発、PCR部位特異的変異誘発、またはCRISPRにしたがって実施することができる。
【0065】
同様に、一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩の結合部位は、実施形態を含めた本明細書に記載されるように、部位特異的変異誘発法によって同様に決定することができる。
【0066】
一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、等温滴定熱量測定(isothermal titration calorimetry)によって決定した場合、少なくとも約10nM、少なくとも約100nM、少なくとも約1μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、または少なくとも約500μMのKdでファスシンに結合する。
【0067】
一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、等温滴定熱量測定によって決定した場合、少なくとも約10nM、少なくとも約100nM、少なくとも約1μM、少なくとも約5μM、少なくとも約10μM、少なくとも約20μM、少なくとも約50μM、少なくとも約100μM、または少なくとも約500μMのKdでファスシンに結合する。
【0068】
一部の実施形態では、ファスシン結合部位3で結合する、上記のもの(例えば、ブリラシジンおよびセマピモド)以外の他の化合物(「部位3-結合化合物」)またはその薬学的に許容される塩が、実施形態を含めた本明細書に記載のものの代わりに、またはそれと共に使用され得る。そのような化合物としては、例えば、尿素C-13(または(13C)尿素)、ウラシル(または1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-2,4-ジオン)、N-(7-カルバムイミドイルナフタレン-1-イル)-3-ヒドロキシ-2-メチルベンズアミド、N-[2-({[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}オキシ)エチル]-2-{6-クロロ-3-[(2,2-ジフルオロ-2-フェニルエチル)アミノ]-2-フルオロフェニル}アセトアミド、6-カルバムイミドイル-4-(3-ヒドロキシ-2-メチル-ベンゾイルアミノ)-ナフタレン-2-カルボン酸メチルエステル(またはメチル6-カルバムイミドイル-4-(3-ヒドロキシ-2-メチルベンズアミド)ナフタレン-2-カルボキシレート)、パントテニル-アミノエタノール-アセテートピバル酸、[4-(2-アミノ-4-メチル-チアゾール-5-イル)-ピリミジン-2-イル]-(3-ニトロ-フェニル)-アミンが挙げられる。
【0069】
一部の実施形態では、ファスシン結合部位1で結合する他の化合物(「部位1-結合化合物」)またはその薬学的に許容される塩を、実施形態を含めた本明細書に記載のものの代わりにまたはそれと共に使用してもよい。そのような化合物としては、例えば、(2R)-14-フルオロ-2-メチル-6,9,10,19-テトラアザペンタシクロ[14.2.1.0^{2,6}.0^{8,18}.0^{12,17}]ノナデカ-1(18),8,12(17),13,15-ペンタエン-11-オン、ヘキソプレナリン、N-(2-アミノ-4-フルオロフェニル)-4-{[(2E)-3-(ピリジン-3-イル)プロパ-2-エンアミド]メチル}ベンズアミド、N-(4-スルファモイルフェニル)-1H-インダゾール-3-カルボキサミド、2-ヒドロキシ-5-(3,5,7-トリヒドロキシ-4-オキソクロメン-2-イル)フェノキシホスホン酸、アラントイン、4-[(4E)-1-(カルボキシメチル)-4-[(4-ヒドロキシフェニル)メチリデン]-5-オキソイミダゾール-2-イル]-4-イミノブタン酸、N-(1H-インダゾール-5-イル)-2-(6-メチルピリジン-2-イル)キナゾリン-4-アミン、クロロゲン酸が挙げられる。
【0070】
ニューロンの疾患および状態ならびにそれらの処置
認知的構成要素を有する神経変性状態の統一的特徴は、ヒトおよび他の哺乳動物において、最も豊富なタイプのシナプスであると考えられている、アミノ酸グルタメートを神経伝達物質として利用するシナプス(「グルタミン酸作動性」シナプス)の消失である。重要なことには、グルタミン酸作動性シナプスの約90%は、シナプス後樹状突起スパインに関与する。神経変性状態で消失する大部分のシナプスは、軸索が樹状突起スパインに接触する、いわゆる「軸索スパイン間シナプス(axospinous synapse)」と呼ばれるものである。正常な状態下、樹状突起スパインの密度、形状、およびタンパク質組成における変化は、シナプス伝達の強度に影響を与え、学習および記憶、認知の柔軟性、傷害および疾患への適応、ならびに他のプロセスにおいて関与するいくつかの形態のシナプスの変化(すなわち、「可塑性」)の基礎である。これらの軸索スパイン間シナプスの変化は、海馬などの構造の記憶をコードする機能に重要であると考えられている。したがって、海馬および他の領域内の樹状突起スパインの初期および進行性消失は、アルツハイマー病および他の認知症における記憶喪失および認知機能低下の駆動因子であると考えられている。スパイン密度を再生させる新規の方法の開発は、多数の神経変性および発達認知障害の処置に重要な意義を有し得る。
【0071】
樹状突起スパインは、シナプス入力を受け、ニューロン間の伝達において重要な機能を提供することを担う特化した突起である。樹状突起スパインの形態およびその総密度は、シナプス機能と相関し、記憶および学習に強力に関与する。脳細胞内の細胞変化は、ニューロンの疾患の病因に寄与し得る。例えば、脳内の樹状突起スパイン密度における異常レベル(例えば、低下)は、ニューロンの疾患の病因に寄与し得る。その結果、樹状突起スパインの変化または誤調節は、シナプス機能に影響を与え、自閉症、脆弱X症候群、パーキンソン病(PD)およびアルツハイマー病(AD)などのさまざまな神経学的障害および精神障害において主要な役割を果たすと考えられている。例えば、ADでは、アミロイド-β(Aβ)タンパク質によって生じる場合もそれによって生じたものではない場合もある、ニューロンの消失に先立つ海馬シナプス機能の変質で始まる欠損を示唆する証拠が多数ある。したがって、末期疾患介入またはさらにはAβの低減ではなく初期シナプス喪失を標的とする処置戦略は、ADの処置に、より良好な予後をもたらすことができる。例えば、脆弱X症候群は、過多の未熟スパインによって特徴付けられる。
【0072】
本明細書では、スパイン形成を促進する上で有用な方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、有効量の実施形態を含めた本明細書に記載のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。スパイン形成は、1ニューロン当たりのスパインの平均数またはニューロンの単位長さの増加として観察され得、これは樹状突起スパイン密度の増加と称し得る。スパイン形成は、樹状突起スパイン形態における改善として観察され得る。例えば、樹状突起スパイン形態の改善は、スパイン頭部の平均サイズの増加として観察され得る。スパイン形成は、樹状突起スパインサイズ、スパイン可塑性、スパイン運動性、スパイン密度および/またはシナプス機能における改善として観察され得る。スパイン形成は、膜電位の局所空間平均値の増加として観察され得る。スパイン形成は、Ca2+のシナプス後濃度(例えば、体積平均化された)の増加として観察され得る。スパイン形成は、成熟スパインの未成熟スパインに対する平均比、例えば「マッシュルーム型」または「スタビー型」スパインの薄型スパインに対する比の増加として観察され得る。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、対照に対して樹状突起スパイン密度を増加する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、処置が開始した時点で観察されたものに対して、樹状突起スパイン密度を増加する。一部の実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、対象または患者におけるニューロンの疾患または障害の症状を軽減させる。一部の実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、解剖学的観察で説明される。一部の実施形態では、樹状突起スパイン密度の増加は、一次海馬ニューロン中で観察される。
【0073】
一部の実施形態では、方法は、有効量の実施形態を含めた本明細書に記載のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0074】
一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩による処置が開始される時点に対する平均樹状突起スパイン密度は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もしくは50%、または任意の2つの数の間の任意の範囲(両端の数を含む)だけ増加する。一部の実施形態では、スパイン形成の程度は、処置前に存在していたスパイン密度における欠損に比例し、処置は、スパイン密度を、正常または生理的に適切と考えられるレベルまで戻す。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩による処置の期間は、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。一部の実施形態では、投与は連続的ではなく、例えば、指定の日に別々の投与が実施される。
【0075】
一部の実施形態では、方法は、新しいスパインの形成を促進することによってスパイン密度を増加する。一部の実施形態では、方法は、平均スパイン密度を、対照(例えば、化合物が存在しないスパイン密度)に対して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もしくは50%、または任意の2つの数の間の任意の範囲(両端の数を含む)だけ増加する。一部の実施形態では、方法は、平均スパイン密度を、対照(例えば、化合物が存在しないスパイン密度)に対して約50%増加する。
【0076】
一部の実施形態では、方法は、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩による処置が開始される時点に対して、1ニューロン当たりのスパインの平均数を増加する。一部の実施形態では、ニューロンの単位長さ当たりのスパインの平均数は、少なくとも約10、20、30、40、50、60もしくはそれよりも多く、または任意の2つの数の間の任意の範囲(両端の数を含む)だけ増加する。一部の実施形態では、時間は、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。
【0077】
一部の実施形態では、スパイン形成の促進に有用な方法は、有効量の、実施形態を含めた本明細書に記載のセマピモドまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、有効量の、実施形態を含めた本明細書に記載のブリラシジンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、対照に対して樹状突起スパイン密度を増加する。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、その処置が開始される時点で観察されたものに対して、樹状突起スパイン密度を増加する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩による処置が開始される時点に対する平均樹状突起スパイン密度は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、もしくは50%、または任意の2つの数の間の任意の範囲(両端の数を含む)だけ増加する。
【0078】
一部の実施形態では、スパイン形成の程度は、処置前に存在していたスパイン密度における欠損に比例し、処置は、スパイン密度を、正常または生理的に適切と考えられるレベルまで戻す。一部の実施形態では、樹状突起スパイン密度は、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩による処置が開始される時点に対して、約50%~約100%増加する。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩による処置の期間は、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。一部の実施形態では、投与は連続的ではなく、例えば、指定の日に別々の投与が実施される。
【0079】
一部の実施形態では、方法は、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩による処置が開始される時点に対して、1ニューロン当たりのスパインの平均数を増加する。一部の実施形態では、ニューロンの単位長さ当たりのスパインの平均数は、少なくとも約10、20、30、40もしくはそれよりも多く、または任意の2つの数の間の任意の範囲(両端の数を含む)だけ増加する。一部の実施形態では、時間は、1時間、2時間、4時間、8時間、1日、3日、5日、7日、14日、28日、90日、180日、または365日である。
【0080】
一部の実施形態では、化合物は、ニューロンの疾患および障害の処置において有用である。ニューロンの疾患は、対象の神経系の機能に障害を生じさせるようになる疾患または状態である。ニューロンの疾患または障害は、神経学的疾患または障害であってもよい。ニューロンの疾患または障害は、神経変性疾患または障害を伴うことがある。
【0081】
一態様において、それを必要とする患者におけるニューロンの疾患を処置する方法であって、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、前頭側頭型認知症(FTD)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、パーキンソン病である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、パーキンソン認知症である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、自閉症である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、脆弱X症候群、アンジェルマン症候群、または異常に低レベルの成熟スパインもしくは総スパイン密度によって特徴付けられる他の神経発達障害である。一部の実施形態では、疾患または障害は、アミロイド斑の蓄積に関連している(例えば、アミロイド斑の蓄積によって特徴付けられる)。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、外傷性脳損傷である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患を有する患者は、ニューロンの疾患の発症前、発症中、または発症後に外傷性脳損傷に罹患していた。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、ニューロン機能障害(neuronal impairment)を含む。ニューロン機能障害は、萎縮またはニューロンの有効な機能における他の減少を含み得る。例えば、アルツハイマー病は、特に皮質ニューロン、例えば、海馬ニューロンおよび海馬に近接するニューロン中にニューロン機能障害とともに現れることが公知である。シナプスの喪失は、樹状突起スパインの喪失および神経変性と相関し得る。
【0082】
一部の態様では、実施形態を含めた本明細書に記載のものなどの、それを必要とする患者におけるニューロンの疾患を処置する方法は、治療有効量のセマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【0083】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、異常な樹状突起スパイン形態、スパインサイズ、スパイン可塑性、スパイン運動性、スパイン密度および/または異常なシナプス機能を伴う。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、異常な(例えば、低下した)レベルの樹状突起スパイン密度を伴う。
【0084】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、パーキンソン病である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、認知症を伴うパーキンソン病である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、自閉症である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、卒中である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、外傷性脳障害(TBD)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、慢性外傷性脳症(CTE)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、統合失調症である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、認知症(例えば、一般的な認知症)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、注意欠陥/多動障害(ADHD)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、FTLD-tau、FTLD-TDP、もしくはFTLD-FUS)またはALS/FTDである。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、記憶喪失である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、記憶喪失を含む。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、加齢による記憶喪失である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、加齢による記憶喪失を含む。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、高血圧性脳症である。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、慢性ストレスである。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、慢性ストレスを含む。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、FTLD-TDP タイプAである。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、FTLD-TDP タイプBである。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、FTLD-TDP タイプCである。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、FTLD-TDP タイプDである。
【0085】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、運動皮質中および脊髄運動ニューロン上におけるスパインシナプスの喪失が運動機能不全に寄与する筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。一部の実施形態では、ニューロンの障害は、遺伝学的かつ機構的に関連する神経変性疾患のスペクトルの異なる終末を表すと考えられているALSおよびFTDの症状を伴う運動障害および認識/認知症障害の混合である。ニューロンの疾患または障害はタウオパチーであり得る。
【0086】
ニューロンの疾患または状態は、統合失調症であってもよい。統合失調症の症状は、一般的に、以下の3つのカテゴリーに分類される:精神病症状は、変化した知覚(例えば、視力、聴力、臭覚、触覚、および味覚における変化)、異常な思考、ならびに奇妙な行動を含む。精神病症状を有するヒトは、共通する現実感を喪失して、自身と世界を歪んだ方法で経験し得る。特に、個体は、典型的には、幻覚、妄想、ならびに思考障害(型通りでない思考および/または支離滅裂な会話など)を経験する。陰性症状としては、モチベーション低下、計画を立てることが困難なこと、満足感の減少、平坦な情動、および言語化の低下が挙げられる。認知的症状としては、情報処理が困難なこと、集中することが困難なこと、および注意を持続することが困難なことが挙げられる。
【0087】
本明細書に記載の化合物または方法によって処置できるニューロンの疾患の例としては、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、うつ病、周生期仮死、パーキンソン病認知症(「PD認知症」)、筋萎縮性側索硬化症、毛細管拡張性失調症、バッテン病(スピールマイヤー-フォークト-シェーグレン-バッテン病としても公知)、海綿状脳症(例えば、ウシ海綿状脳症(狂牛病))、クールー、クロイツフェルト-ヤコブ病、致死性家族性不眠症、カナヴァン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、脆弱X症候群、前頭側頭型認知症、ゲルストマン-ストロイスラー-シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レヴィ小体認知症、マシャド-ジョセフ病(脊髄小脳失調3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェーウス-メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、統合失調症、脊髄小脳失調(さまざまな特性を持つ複数のタイプ)、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルゼウスキー病、脊髄癆、薬剤性パーキンソニズム、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、特発性パーキンソン病、常染色体優性パーキンソン病、家族性1型(PARK1)、パーキンソン病3、常染色体優性レヴィ小体(PARK3)、パーキンソン病4、常染色体優性レヴィ小体(PARK4)、パーキンソン病5(PARK5)、パーキンソン病6、常染色体劣性早発型(PARK6)、パーキンソン病2、常染色体劣性若年性(PARK2)、パーキンソン病7、常染色体劣性早発型(PARK7)、パーキンソン病8(PARK8)、パーキンソン病9(PARK9)、パーキンソン病10(PARK10)、パーキンソン病11(PARK11)、パーキンソン病12(PARK12)、パーキンソン病13(PARK13)、またはミトコンドリアパーキンソン病が挙げられる。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン認知症、自閉症、卒中、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、外傷性脳障害(TBD)、慢性外傷性脳症(CTE)、統合失調症、認知症(例えば、一般的な認知症)、注意欠陥/多動障害(ADHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、FTLD-tau、FTLD-TDP、もしくはFTLD-FUS)、記憶喪失(例えば、加齢による記憶喪失)、高血圧性脳症、または慢性ストレスである。
【0088】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、アルツハイマー病(AD)である。アルツハイマー病は、疾患の早期の記憶喪失の症状によって特徴付けられる。Apoε4保有者は、ADを発症するリスクがより大きい。APOε4は、Aεの除去において他のアイソフォームより非効率であると考えられ、したがって、より大きなアミロイド負荷、タウリン酸化、シナプス毒性(synaptotoxicity)、および低下したシナプス密度と相関し得る。外傷性脳損傷(TBI)の経験は、ADを発症させる別のリスク因子であり、研究は、TBIを経験するものは、ADのリスクが有意に増加することを示す。認知機能低下は、進行性のシナプス喪失と相関してきた。疾患が進むと、症状は、錯乱、長期記憶喪失、錯語、語彙の喪失、攻撃性、被刺激性および/または気分変動を含む。より進行した段階の疾患では、身体機能の喪失がある。アルツハイマー病(AD)を有する患者は、酸化ストレス増加、ミトコンドリア機能障害、シナプス機能障害、カルシウムの恒常性の破壊、老人斑の沈着および神経原線維変化、ならびに脳の萎縮などの多くの特徴的な神経障害を示す。AD関連の障害としては、ADタイプの老人性認知症(SDAT)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、軽度認知障害(MCI)ならびに加齢による記憶障害(AAMI)が挙げられる。一部の実施形態では、アルツハイマー病を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、患者は、Apoε2またはApoε3保有者である。一部の実施形態では、患者はTBIに罹患していた。一部の実施形態では、患者は、Apoε4保有者である。一部の実施形態では、患者は、TBIに罹患していたApoε4保有者である。
【0089】
一部の実施形態では、アルツハイマー病を処置または予防する方法は、上記の実施形態に記載されるものなど、それを必要とする患者に、治療有効量のセマピモドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。一部の実施形態では、アルツハイマー病を処置または予防する方法は、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0090】
一部の実施形態では、状態は、自閉症スペクトラム状態である。自閉症スペクトラムにある状態は、スパイン密度の変化を伴うことが頻繁にあり、これは、ファスシンと相互作用するまたはファスシンを阻害する化合物で処置することができる。一部の実施形態では、ニューロンの疾患は、自閉症である。当該技術分野において公知であるように、自閉症は、神経発達の障害である。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、自閉症および自閉症スペクトラム状態は、神経およびシナプスの接続および組織化の仕方を変更することによって脳内の情報処理に影響を与えると考えられている。
【0091】
さらなる実施形態では、ニューロンの疾患または障害の症状を緩和する、軽減する、または逆転させるための組成物および方法を提供する。症状は、本明細書に記載のいずれの症状であってもよい。
【0092】
用語「記憶」などは、通例的かつ慣例的には、対象によって情報がコード、保存および検索されるプロセスを指す。用語「コードする」および「登録する」などは、記憶の文脈上、通例的かつ慣例的には、化学的または物理的刺激としての感覚に影響を与える情報を受信、処理および統合することを指す。用語「保存された」などは、この文脈上、通例的かつ慣例的には、コードされた情報の記録の作製を指す。用語「検索する」および「想起する」などは、この文脈上、通例的かつ慣例的には、保存された情報を呼び戻すことを指す。検索は、当該技術分野において公知の合図に応答することができる。一部の実施形態では、記憶喪失は、情報をコード、保存または検索する能力の低下を指す。一部の実施形態では、記憶は、認識記憶または想起記憶であってもよい。この文脈上、「認識記憶」は、以前に遭遇した刺激の回想を指す。刺激は、例えば、当該技術分野において公知の、言葉、光景、音、匂いなどであり得る。より広範な種類の記憶は、以前に学習した情報、例えば、対象が以前に遭遇した一連の行動、単語および数のリストなどの検索を必要とする「想起記憶」である。方法は、エピソード記憶および「運動の記憶」を含めた主要なカテゴリーの陳述記憶および非陳述記憶内で生じる記憶障害を処置するために使用され得る。本明細書で開示される方法を含めた、対象によって示される記憶のコード、保存および検索のレベルを評価する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、一部の実施形態では、方法は、ニューロンの疾患を有し、それを必要とする対象における記憶を改善する。一部の実施形態では、方法は、対象における記憶を改善する。一部の実施形態では、方法は、対象におけるニューロンまたは認識機能障害を処置する。一部の実施形態では、方法は、対象におけるニューロン機能障害を処置する。一部の実施形態では、方法は、対象における認識機能障害を処置する。
【0093】
本明細書で開示される任意の態様に加えて、一部の実施形態では、対象は、脳傷害に罹患している。脳傷害のタイプとしては、脳損傷(すなわち、脳細胞の破壊または変性)、外傷性脳損傷(すなわち、脳への外部の力の結果として生じた損傷)、卒中(すなわち、例えば無酸素症を介して、脳へ一時的にまたは永久的に損傷を与える血管のインシデント)、および後天的脳傷害(すなわち、出生時に存在していなかった脳損傷)が挙げられる。一部の実施形態では、方法は、対象における記憶を改善する。一部の実施形態では、方法は、対象における学習を改善する。一部の実施形態では、方法は、対象におけるニューロンまたは認識機能障害を処置する。一部の実施形態では、方法は、対象におけるニューロン機能障害を処置する。一部の実施形態では、方法は、対象における認識機能障害を処置する。
【0094】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるスパイン形成を促進する方法であって、ファスシンと相互作用するまたはファスシンを阻害する化合物を患者に投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のイミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害の処置に使用する化合物であって、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害の処置のための医薬の製造において使用する化合物であって、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン認知症、自閉症、脆弱X症候群、および外傷性脳損傷から選択される。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、F-アクチンと相互作用するまたはF-アクチンの架橋を阻害する。一部の実施形態では、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩は、抗転移剤である。
【0095】
一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量のセマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害の処置に使用する化合物であって、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害の処置のための医薬の製造において使用する化合物であって、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パーキンソン認知症、自閉症、脆弱X症候群、および外傷性脳損傷から選択される。一部の実施形態では、ニューロンの疾患または障害は、アルツハイマー病である。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、F-アクチンと相互作用するまたはF-アクチンの架橋を阻害する。一部の実施形態では、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩は、抗転移剤である。
【0096】
併用療法
一実施形態では、本明細書で開示する化合物を、ニューロンの疾患または障害を処置するために使用および/または開発された1種または複数の追加の治療剤と組み合わせて使用してもよい。
【0097】
上記の疾患および障害の処置または予防に使用する場合、イミプラミンまたはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の追加の治療剤、例えば特定の疾患もしくは障害の処置または予防における使用が認可された追加の治療剤、より特定すると現在の標準治療を形成すると見なされる作用物質と共に投与してもよい。併用療法が想定される場合、1種または複数の医薬組成物中に、同時に、別々にまたは逐次的に活性剤を投与してもよい。
【0098】
同様に、セマピモドもしくはその薬学的に許容される塩またはブリラシジンもしくはその薬学的に許容される塩を、実施形態を含めた本明細書に記載のものなどの1種または複数の追加の治療剤と共に投与してもよい。
【0099】
したがって、近年のAD処置の戦略は、特定のアイソフォームのAβペプチドの生成または集合状態の制御を含む。追加の戦略は、毒性型のリン酸化タウの防止、低減または除去を含む。他の戦略は、脳内のAβペプチドの存在量を低減する試みでアミロイド前駆体タンパク質のプロセシングを通してAβペプチドの生成において役割を果たす酵素の小分子標的化を含む。加えて、タウオパチーまたはアポリポタンパク質E遺伝子における特異的変異の散発性遺伝などの非アミロイド神経障害の役割上に有益な情報があり、神経変性と闘う追加の戦略を活気づける。
【0100】
キット
本明細書では、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、必要に応じた第2の活性成分、および好適な包装を含むキットも提供する。一実施形態では、キットは、使用説明書をさらに含む。一態様では、キットは、化合物またはその薬学的に許容される塩、ならびに本明細書に記載の、疾患または状態を含めた適応症の処置における医薬組成物の使用のための標識および/または使用説明書を含む。
【0101】
また、好適な容器中に本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む製造物品も本明細書で提供する。容器は、バイアル、ビン、アンプル、予め充填された注射器、噴霧器、エアロゾル分配装置、ドロッパー、または点滴静注バッグであってよい。
【0102】
医薬組成物および投与方法
本明細書で提供される化合物は、通常、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本明細書では、一般に本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩ならびに担体、アジュバントおよび賦形剤から選択される1種もしくは複数の薬学的に許容されるビヒクルを含めた、1種または複数の本明細書に記載の化合物を含有する医薬組成物も提供する。好適な薬学的に許容されるビヒクルには、例えば、不活性固体希釈剤および充填剤、滅菌水溶液およびさまざまな有機溶媒を含めた希釈剤、浸透促進剤、可溶化剤ならびにアジュバントを挙げることができる。そのような組成物は、医薬分野で周知の方法で調製される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, Pa. 17th Ed. (1985)およびModern Pharmaceutics, Marcel Dekker, Inc. 3rd Ed. (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)を参照されたい。
【0103】
医薬組成物は、単回または複数回投与で投与することができる。医薬組成物は、例えば、直腸、口腔、鼻腔内および経皮経路を含めたさまざまな方法によって投与することができる。ある特定の一部の実施形態では、医薬組成物は、動脈内注射、静脈内、腹腔内(「i.p.」)、非経口、筋内、皮下、経口、局所的に、または吸入剤として投与することができる。
【0104】
一投与方法は、例えば、注射による非経口である。本明細書に記載の医薬組成物を注射によって投与するために取り込まれ得る形態としては、例えば、水性もしくは油懸濁液またはエマルション(ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油、またはピーナッツ油、ならびにエリキシル、マンニトール、デキストロースを含む)、または滅菌水溶液、および同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0105】
経口投与は、本明細書に記載の組成物の別の投与経路であり得る。投与は、例えば、カプセル剤または腸溶性錠剤を介したものでよい。少なくとも1種の本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を調製する上で、活性成分は、通常、添加剤により希釈され、かつ/またはカプセル剤、小袋、紙もしくは他の容器の形態であってもよいそのような担体内に封入される。添加剤が希釈剤として働く場合、固体、半固体、または液体材料の形態とすることができ、活性成分のビヒクル、担体または媒体として作用する。したがって、組成物は、錠剤、丸薬、粉剤、トローチ剤、小袋、カシェ、エリキシル、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、例えば最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、滅菌注射液、ならびに滅菌パッケージ粉末の形態であってもよい。
【0106】
好適な添加剤の一部の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。製剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱物油などの滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、甘味剤、ならびに香味剤を追加で含んでもよい。
【0107】
医薬組成物およびそれが分配される任意の容器は、滅菌してよい。医薬組成物は、防腐剤、安定剤、乳化剤または懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧を変化させるための塩、粘性改質剤、または緩衝剤などのアジュバントも含有し得る。
【0108】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩などの少なくとも1種の本明細書に記載の化合物を含む組成物は、当該技術分野において公知の手順を用いることによって対象に投与した後に活性成分の急速、持続または遅延放出をもたらすように製剤化することができる。経口投与用の放出制御薬物送達システムは、浸透圧ポンプシステムおよび溶解システム(ポリマー被覆リザーバまたは薬物-ポリマーマトリクス製剤を含有する)を含む。放出制御システムの例は、米国特許第3,845,770号、同第4,326,525号、同第4,902,514号、および同第5,616,345号に記載されている。本明細書で開示される方法において使用するための別の製剤は、経皮送達装置(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチは、制御された量の本明細書に記載の化合物の連続的または非連続的注入を提供するために使用され得る。医薬剤の送達のための経皮パッチの構造および使用は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,023,252号、同第4,992,445号および同第5,001,139号を参照されたい。そのようなパッチは、医薬剤の連続的、拍動、または要望に応じた送達のために構成され得る。
【0109】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主な活性成分を医薬添加剤と混合して、均一な本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の混合物を含有する固体予備製剤化組成物を形成してもよい。これらの予備製剤化組成物を均一であるとした場合、活性成分は、組成物全体にわたって一様に分散され得、したがって、組成物は、錠剤、丸薬およびカプセル剤などの同じ有効性の単位剤形に容易に細分することができる。
【0110】
本明細書に記載の化合物の錠剤または丸薬は、持続作用の利益を与える剤形を得るために、または胃の酸性条件から保護するために、被覆されていてもよく、またはそうでなければ配合されていてよい。例えば、錠剤または丸薬は、内部剤形構成要素および外部剤形構成要素を含んでもよく、外部剤形構成要素は、内部剤形構成要素よりエンベロープの形態である。2つの構成要素は、胃の中で崩壊しないように耐え、かつ内部構成要素を無傷で十二指腸中へ通過させるか、または放出を遅延させるように作用する腸溶層によって分離され得る。そのような腸溶層または被覆にはさまざまな材料を使用することができ、そのような材料としては、いくつかのポリマー酸およびポリマー酸とシェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースなどの材料との混合物が挙げられる。
【0111】
医薬組成物は、経鼻投与用に製剤化することができる。そのような医薬組成物は、さまざまな物理的状態の、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩などの1つまたは1つより多くの活性成分を含んでもよい。例えば、活性成分は、液体担体中に溶解しても懸濁化してもよい。活性成分は、乾燥した形態であってもよい。乾燥した形態は、粉末であり得る。粉末の活性成分は、非晶質でも結晶質でもよい。例えば、本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩は、非晶質でも結晶質でもよい。結晶質活性物質は、水和物でも溶媒和物でもよい。
【0112】
固体化合物またはその塩もしくは結晶は、選択された平均粒径の製剤中に存在し得る。粒子は、10nm、100nm、300nm、500nm、1μm、10μm、50μm、100μm、300μm、もしくは500μm、または任意の2つの値の間の範囲の平均粒径(最長寸法)を有し得る。
【0113】
投与は、吸入または吹送によるものであってもよい。吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはこれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末を挙げることができる。液体または固体組成物は、本明細書に記載の好適な薬学的に許容される添加剤を含有してもよい。一部の実施形態では、組成物は、経口または経鼻呼吸経路によって投与される。効果は、局所または全身であり得る。特定の実施形態では、効果は、局所から頭蓋の組織である。他の実施形態では、薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスを使用して噴霧してもよい。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接吸い込まれ得る、または噴霧装置をフェイスマスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸機に接続してもよい。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、好ましくは経口または経鼻で、適当な方法で製剤を送達する装置から投与することができる。吸入または吹送用の医薬組成物は、エアロゾルであってもよい。
【0114】
医薬組成物は、約0.05%、約0.1%、約0.3%、約0.5%、約0.7%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%w/wの活性成分を含む液体懸濁液または溶液を含んでもよい。液体は、水および/またはアルコールを含んでもよい。液体は、pHが約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、もしくは約10、またはこれらの間の値の範囲であるように、pH調整剤を含んでもよい。
【0115】
医薬組成物は、薬学的に許容される防腐剤を含んでもよい。本明細書における使用に好適な防腐剤としては、これらに限定されないが、病原性粒子による汚染から溶液を保護するもの、例えばフェニルエチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、または安息香酸ナトリウムなどのベンゾエートが挙げられる。ある特定の一部の実施形態では、医薬組成物は、約0.01%~約1.0%w/wの塩化ベンザルコニウム、または約0.01%~約1%v/wのフェニルエチルアルコールを含む。また、保存剤も、組成物の総重量または体積の約0.01%~約1%、好ましくは約0.002%~約0.02%の量で存在し得る。
【0116】
医薬組成物は、約0.01%~約90%、または約0.01%~約50%、または約0.01%~約25%、または約0.01%~約10%、または約0.01%~約1%w/wの乳化剤、湿潤剤または懸濁化剤のうちの1つまたは複数も含んでよい。そのような本明細書で使用する作用物質としては、これらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステルまたはポリソルベート(ポリエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートを含むが限定されない);レシチン;アルギン酸;アルギン酸ナトリウム;アルギン酸カリウム;アルギン酸アンモニウム;アルギン酸カルシウム;アルギン酸プロパン-1,2-ジオール;アガー;カラギーナン;ローカストビーンガム;グアーガム;トラガカント;アカシア;キサンタンガム;カラヤゴム;ペクチン;アミド化ペクチン;アンモニウムホスファチド;微結晶性セルロース;メチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;エチルメチルセルロース;カルボキシメチルセルロース;脂肪酸のナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリド;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドの酢酸エステル;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドの乳酸エステル;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドのクエン酸エステル;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドの酒石酸エステル;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドのモノ-およびジ-アセチル酒石酸エステル;脂肪酸のモノ-およびジ-グリセリドの酢酸と酒石酸の混合エステル;脂肪酸のスクロースエステル;スクログリセリド;脂肪酸のポリグリセロールエステル;ヒマシ油の重縮合脂肪酸のポリグリセロールエステル;脂肪酸のプロパン-1,2-ジオールエステル;ナトリウムステアロイル-2ラクチレート;カルシウムステアロイル-2-ラクチレート;酒石酸ステアロイル;ソルビタンモノステアレート;ソルビタントリステアレート;ソルビタンモノラウレート;ソルビタンモノオレエート;ソルビタンモノパルミテート;キラヤ抽出物;ダイズ油の二量体化脂肪酸のポリグリセロールエステル;酸化的に重合したダイズ油;ならびにペクチン抽出物が挙げられる。
【0117】
さらなる実施形態では、粉末の形態の経鼻投与用の医薬組成物が提供され得る。例えば、粉状経鼻用組成物を、単位剤形の粉末として直接使用することができる。要望に応じて、粉末を、硬ゼラチンカプセルなどのカプセルに充填することができる。カプセルまたは単回投与装置の内容物を、例えば、吸入器を使用して投与することができる。
【0118】
したがって、ニューロンの障害の治療方法は、本明細書に記載の化合物またはその塩を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に経鼻投与するステップを含んでもよい。
【0119】
投薬
任意の特定の対象のための、本出願の活性成分、例えば本明細書に記載の化合物またはその塩の具体的な用量レベルは、用いる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与時期、投与経路、および排泄速度、薬物の組み合わせおよび治療を受けている対象の特定の疾患の重症度を含めたさまざまな要因に依存するであろう。例えば、投与量は、対象の体重1キログラム当たりの本明細書に記載の化合物のミリグラム数(mg/kg)で表すことができる。約0.1~0.01mg/kgの間の投与量が適当であり得る。一部の実施形態では、約0.07~0.03mg/kgが適当であり得る。他の実施形態では、0.06~0.04mg/kgの間の投与量が適当であり得る。対象の体重による正規化が、広範にわたって全く異なるサイズを有する対象間で投与量を調整するとき(例えば、小児および成人のヒトの両方に薬物を使用するとき、またはイヌなどの非ヒト対象に有効な投与量をヒト対象に好適な投与量に変換するときに生じる)、特に有用である。
【0120】
1日投与量も、1投与当たりまたは1日当たりの投与された本明細書に記載の化合物の総量として記載され得る。本明細書に記載の化合物またはその塩の1日投与量は、約1mg~4,000mgの間、約2,000~4,000mg/日の間、約1~2,000mg/日の間、約1~1,000mg/日の間、約10~500mg/日の間、約20~500mg/日の間、約50~300mg/日の間、約75~200mg/日の間、または約15~150mg/日の間であってもよい。
【0121】
経鼻投与した場合、ヒト対象の合計1日投与量は、1mg~1,000mgの間、約1,000~2,000mg/日の間、約10~500mg/日の間、約50~300mg/日の間、約75~200mg/日の間、または約100~150mg/日の間であってもよい。さまざまな実施形態において、1日投与量は、約10mg、約30mg、約50mg、約75mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、もしくは約1000mg、またはこれらの間の値の範囲である。
【0122】
本出願の活性成分またはその医薬組成物は、上記の任意の好適な様式を用いて、1日に1回、2回、3回、または4回投与することができる。また、投与または処置は、数日間継続することができ、例えば、一般的には、1サイクルの処置のために、処置は、少なくとも7日間、14日間、または28日間継続する。処置サイクルは、周知であり、サイクル間の、約1~28日、一般的には約7日または約14日の休止期間と交互に行われることが頻繁にある。処置サイクルは、他の実施形態では、連続的でもあり得る。投与または処置は、無期限に継続され得る。
【0123】
特定の実施形態では、方法は、初期の1日投与量が約1~800mgの本明細書に記載の化合物を対象に投与し、臨床効果が達成されるまで投与量を一定量ずつ増加することを含む。約5、10、25、50、または100mgの増分を用いて投与量を増加することができる。投与量は、毎日、1日おきに、週2回、または週1回増加することができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれる。当業者は、以下の実施例中で開示する技術が、本開示の実践中によく機能する技術を表し、したがって、その実践のための特定モードを構成すると考えることができることを理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、かつ本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、依然として同様のまたは類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0125】
図1は、本明細書に記載の3つの化合物、すなわち、イミプラミン、セマピモド、およびブリラシジンによる処置後のニューロン中のシナプス密度の分析を実証している。特に、一次マウス海馬ニューロンを、培養下、それぞれ10μM、500nM、および50nMの濃度の4つの化合物のうちの1つで、または対照(ビヒクル(0.1%DMSO))で、14日目に24時間処置した。処置後、ニューロンを、4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、ファロイジンによる染色ならびにシナプス後マーカーPSD95およびシナプス前マーカーVGlutに対する抗体による免疫標識のために処理した。レーザー走査共焦点顕微鏡を使用して画像を取得し、樹状突起の長さ当たりの共局在化されたシナプス前およびシナプス後要素の数について分析した。研究は、一次ニューロンの3つの生物学的調製物にわたって実施し、処置/調製物当たり最低12個の樹状突起セグメントで分析した。シナプス密度のデータのグラフ化および統計分析をPrismソフトウェアで実施した。
【0126】
図1に例示するように、分析された4つの化合物のそれぞれは、スパイン形成を促進する上での効力を示した。その上、結合活性は、濃度依存的である。例えば、イミプラミン、セマピモド、およびブリラシジンはそれぞれ、10μMの濃度で、それより低い濃度での場合と比較して、高い活性を示した。
【0127】
試験した3つの化合物のうち、イミプラミンは、アクチン結合部位2でファスシンと相互作用または結合し、ファスシンのアクチン束化活性を相互作用または阻害することが公知である。したがって、アクチン結合部位2と相互作用するまたはこれに結合する他の化合物は、同様に、スパイン形成を促進する上で効力を有することが企図される。その上、セマピモドおよびブリラシジンは、in silicoでのドッキング分析を通して、ファスシンのアクチン結合部位3への良好なドッキングスコアを有することが決定された。したがって、アクチン結合部位3に結合する他の化合物、例えば本明細書に記載の部位3結合化合物は、スパイン形成の促進における効力も有することが企図される。加えて、アクチン結合部位2および3の両方への結合が効力をもたらすため、アクチン結合部位1などの他の結合部位でファスシンに結合する化合物(例えば、本明細書で開示する1位結合化合物)も、スパイン形成の促進における効力を有することがさらに企図される。
【0128】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0129】
本明細書で例示的に記載される本開示は、適宜、本明細書で特に開示されていない任意のエレメント(複数可)および制限(複数可)なしに実践することができる。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含めた(including)」、「含有する(containing)」などは、広い視野で読むものとし、限定されない。加えて、本明細書で用いられる用語および表現は、説明の条件として使用され、限定されるものではなく、示されて記述される特徴の任意の同等物またはその一部を除外して該用語および表現を使用する意図はなく、むしろ、さまざまな修正が可能であることを認識されたい。
【0130】
したがって、本開示を、特に、好ましい実施形態および必要に応じた特徴によって開示してきたが、開示された本明細書に組み込まれた本開示内容の修正、改善および変更が当業者によって行われ得、そのような修正、改善および変更は、本開示の範囲内であると考えられる。本明細書で提供される材料、方法、および例は、好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本開示の範囲において限定されるものとは意図されない。
【0131】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それぞれが参照により個別に組み込まれた場合と同じ程度まで、参照によりその全内容が明確に組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含めた本明細書が優先される。
【配列表】
【国際調査報告】