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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】船舶振動ダンパシステム
(51)【国際特許分類】
   B63B 39/04 20060101AFI20240301BHJP
   B63B 39/06 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B63B39/04
B63B39/06 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557075
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 GR2022000008
(87)【国際公開番号】W WO2022195302
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】20210100165
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351531
【氏名又は名称】フィリッポウ,ソティリオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポウ,ソティリオス
(57)【要約】
船舶振動ダンパシステムであって、1つ以上のフィンアセンブリ(20)からなり、フィンアセンブリは、船舶(60)の船尾梁の中間を通過する横軸に対して対称的に、船舶の船尾梁に配置され、フィンアセンブリ(20)は、垂直方向に配置された複数の連続する個々のフィン(21)からなり、それぞれの個々のフィンは、1つの基部および2つの側面からなるII型断面を有し、上部フィンの側面は、直下部フィンの側面に接し、水が通過する連続的な閉鎖導管を形成し、フィンアセンブリ(20)は、船舶との連結接続部(22)により、それぞれ共にまたは独立し、同時に反対方向または同方向に、水面の上方に時計回りに回転し、および反時計回りに回転し、これにより、ピッチングおよびローリングを同時にまたは独立して即座に減衰させ、船舶の転覆および水の流入を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶振動ダンパシステムであって、
前記船舶振動ダンパシステムは、1対以上のフィンアセンブリ(20)と、前記フィンアセンブリの駆動システム(25)と、フィンアセンブリ位置センサシステム(30)と、電子コントローラ(35)と、1つ以上の制御画面(45)と、フィンアセンブリ格納ボタン(55)と、これらの部材間の情報伝達システムと、を備え、
前記フィンアセンブリ(20)は、船舶(60)の船尾梁に、前記船舶の前記船尾梁の中心を通る垂直軸(x)に対して対称的に取り付けられ、互いに接続された複数の個々のフィン(21)からなり、
前記電子コントローラ(35)は、ジャイロスコープ(36)と、加速度計(37)と、GPS(38)と、フィンアセンブリ位置センサ(39)と、からなり、
前記情報伝達システムは、手動運転および自動運転され、
前記フィンアセンブリ(20)は、垂直方向に配置された複数の連続する個々のフィン(21)からなり、各々のフィンは、P型断面を有し、基部と基部に交差する2つの側面とからなり、上部フィンの前記側面は、直下部フィンの前記側面に対して接し、水が通過する、連続する閉鎖導管を形成し、
前記フィンアセンブリ(20)は、前記船舶との連結接続部(22)により、互いに平行または独立に、同時に反対方向かつ同方向に、水位の上方に時計回りに、および反時計回りに回転し、
前記船舶振動ダンパシステムは、前記電子コントローラ(35)に設置された衝撃センサ(40)を含み、電子コントローラ(35)は、燃料消費量の増加の有無を監視する船舶エンジンから与えられる、荷重および消費量データと、動きの方向における速度および一定の変化を減少させるGPS(38)から与えられる、前記船舶の速度および方向のデータと、を受信し、前記船舶振動ダンパシステムは、電子コントローラ(35)に順に信号を与え、ピッチングの観点において前記船舶の傾斜を調整するように前記フィンアセンブリ(20)を回転させ、
前記船舶振動ダンパシステムは、緊急停止安全装置を含み、緊急停止ボタン(50)を介して起動されると、前記緊急停止安全装置を介して、全てのフィンアセンブリ(20)を瞬時に反時計回りに回転し、船首を下降させ、強制的に前記船舶の速度を停止させる、
ことを特徴とする船舶振動ダンパシステム。
【請求項2】
前記フィンアセンブリ(20)は、フラップ(65)の位置に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項3】
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)は、オイルポンプ(26)と油圧ピストンシリンダ(27)とからなることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項4】
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)は、サーボモータ(28)からなることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項5】
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)は、ハイブリッドサーボモータ(29)からなることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項6】
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)は、船体の底部(66)の高さ(1)に完全に平行であるゼロレベル表面に応じて、前記船舶(60)の前記船尾梁の少なくとも2点にある前記連結接続部(22)により時計回りおよび反時計回りに、前記フィンアセンブリ(20)の平行および独立した回転を実現することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項7】
前記衝撃センサ(40)は、自動設定において、オペレータの選択により、最大速度と水に対する最小衝撃との間で計量することにより、前記船舶の最適な傾斜を実現し、
水中での前記船舶の前記最小衝撃のための前記設定において、フィンアセンブリ(20)の回転(方向、角度)の設定により、前記船舶の前記最適な傾斜を一定に維持し、
それぞれの波において、具体的には前記船舶が波頭まで上昇するとき、フィンアセンブリ(20)を反時計回りに回転させ、その結果、フィンアセンブリ(20)を通過する水に対して抵抗を生じさせ、船尾を上昇させ、前記船首を下降させて前記波を横断し、
前記船舶が前記波の谷へと下降し始めるとき、前記フィンアセンブリ(20)を時計回りに回転させ、フィンアセンブリ(20)を反対方向へ通過する水に対して抵抗を生じさせ、前記船尾を下降させ、前記船首を上昇させ、
一方で、最大速度の性能の選択においては、この動作をオフにすることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項8】
前記船舶が強力な横方向の力を受けるとき、前記ジャイロスコープ(36)は、前記船舶の前記垂直軸(x)に対するその傾斜を検出し、
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)を介して、前記船舶の前記垂直軸(x)に関して、前記力を受ける前記船舶の側面とは反対側の前記フィンアセンブリ(20)は、反時計回りに回転し、
同時に、前記力を受ける前記船舶の同じ側面に位置する前記フィンアセンブリは、時計回りに回転することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項9】
前記船舶が前記船首から強い力を受けるとき、前記ジャイロスコープ(36)は、長手方向軸(y)に対するその傾斜を検出し、
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)を介して、前記フィンアセンブリ(20)は反時計回りに回転し、
一方、前記船舶が船尾から強い力を受けるとき、前記ジャイロスコープ(36)は、前記長手方向軸(y)に対する傾斜を検出し、
前記フィンアセンブリの前記駆動システム(25)を介して、前記フィンアセンブリ(20)は時計回りに回転することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項10】
前記船舶が、横方向の強い力および長手方向軸方向の強い力の両方を受けるとき、前記ジャイロスコープ(36)は、前記垂直軸(x)および長手方向軸(y)の両方に関してその傾斜を検出し、
前記フィンアセンブリの駆動システム(25)を介して、前記力を受ける前記船舶の側面と反対側の前記フィンアセンブリ(20)は、前記船舶の前記垂直軸(x)に関して反時計回りに回転し、
前記横方向の力を受ける前記船舶の同じ側面に位置する前記フィンアセンブリ(20)は、時計回りに回転し、
同時に、前記フィンアセンブリ(20)は、平行に反時計回りおよび時計回りに回転することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項11】
前記電子コントローラ(35)は、前記船舶の所定の傾斜の角度でフィンアセンブリの回転を開始し、前記船舶の速度に応じて前記フィンアセンブリの最大傾斜を決定し、前記フィンアセンブリの傾斜交替に対する応答時間を決定することを特徴とする、請求項1および3に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項12】
前記船舶の旋回中にゼロローリングを維持するオプションと、旋回をできるだけ迅速に完了するオプションとがあり、代替的に、自動オプションにおいて、特別なセンサを介してステアリングに応じて旋回半径を調整し、
小さな半径で最も速く旋回の完了を実現するために、前記船舶の前記垂直軸(x)に関して、回転方向と反対の前記フィンアセンブリ(20)は、反時計回りに回転し、同時に、旋回と同じ方向に位置する前記フィンアセンブリ(20)は、時計回りに回転し、
ゼロローリングおよび大きな半径での旋回を実現するために、前記垂直軸(x)に対する前記船舶の前記傾斜がゼロとなるように維持される間、前記船舶の前記垂直軸(x)に関して、旋回方向と反対側の前記フィンアセンブリ(20)は、時計回りに回転し、同時に、旋回と同じ方向にある前記フィンアセンブリ(20)は、反時計回りに回転することを特徴とする、請求項1および3に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項13】
前記位置センサシステム(30)を介して、所定のインターバルで、前記フィンアセンブリ(20)が前記フィンアセンブリ(20)のゼロ平面(1)を通過するとき、前記フィンアセンブリ(20)のゼロ点が補正され、
最初に前記ゼロ平面(1)に到達する前記フィンアセンブリ(20)は、他のフィンアセンブリ(20)が前記ゼロ平面(1)に到達するのを待ち、前記フィンアセンブリ(20)のゼロ平面が補正され次第、前記フィンアセンブリ(20)の動作を継続し、
前記フィンアセンブリ(20)間の補正時間が所定の限度を超える場合、オペレータは、前記制御画面(45)を介して、油圧ピストンシリンダ(27)、サーボモータ(28)またはハイブリッドサーボモータ(29)、前記フィンアセンブリ(20)の回転を実現する前記フィンアセンブリの駆動システム(25)に不具合があること、および、それらを交換または修理する必要があることを通知され、安全動作モードが自動的に起動されることを特徴とする、請求項1、3、4、5に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項14】
前記個々のフィン(21)は、設置される前記船舶のサイズおよびタイプに応じて、長さ、幅および厚さ、形状および構成材料を変更してよく、また、前記フィンアセンブリ(20)を構成する前記個々のフィン(21)の数は、所望の抵抗に依存することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項15】
前記フィンアセンブリ(20)は、水の動きに追従して自由に動く付属フラップゲート(23)を有し、
前記船舶が静止しているとき、フラップゲート(23)は前記個々のフィン(21)に接触し、前記個々のフィン(21)の中に水を保持し、その結果、回転を減衰させながら、水に対してより大きな抵抗が生じ、これにより、即座に結果を得ることができ、
前記船舶が動いているとき、前記フラップゲートは、水の動きおよび勢いにより持ち上げられ、その動きに全く影響を及ぼすことなく水がフィンを通過することを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項16】
センサにより前記船舶が動いていないことを確認された場合にのみ、フィンアセンブリ格納ボタン(55)を介し、前記フィンアセンブリ(20)を格納し、前記フィンアセンブリ(20)を時計回りに回転させ、前記船舶(60)の前記船尾梁にできるだけ近い位置に配置することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項17】
前記フィンアセンブリ(20)は、前記船舶(60)の前記船尾梁内に設置されたローリングガイド(71)に取り付けられたプレート(70)に接続され、
前記プレート(70)は、前記船舶(60)の前記船尾梁内に空間がない場合に、前記フィンアセンブリ(20)の回転を実現するために、駆動システム(72)により船体の外側に移動されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項18】
前記船舶の前記傾斜を補正するために前記フィンアセンブリ(20)の回転が必要ない場合、オイルポンプ(26)の動作は待機状態に設定され、オイルポンプ(26)の速度を最小限に低減し、オペレータにより設定されたタイムインターバルの間に波がないとき、その動作を完全に停止させ、
前記船舶の小さな傾斜を補正するために前記フィンアセンブリ(20)の小さな回転が必要とされる場合、オイルポンプ(26)の速度を低減し、前記オイルポンプ(26)をより遅いオイル流により動作し、そのため、より低い作動圧力およびより小さいオイル流抵抗で動作し、
強力な波の場合、前記オイルポンプの速度は、インバータを介して増加され、前記電子コントローラは電磁弁を開くことにより、前記駆動システムの圧力を介して、前記フィンアセンブリはより多くかつより速く回転され、そのため、前記船舶の前記傾斜はゼロに減少され、
前記動作が完了すると、前記電磁弁は停止し、前記オイルポンプは待機状態に戻ることを特徴とする、請求項1および3に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項19】
前記フィンアセンブリ(20)の前記個々のフィン(21)は、固定された距離で互いに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項20】
前記フィンアセンブリ(20)の個々のフィン(21)は、前記個々のフィン(21)の間の距離の変化を調節する接続装置を有し、
そのような装置の1つの態様は、梁(80)を介して、個々のフィン(21)間を連結接続し、
前記梁の1つは、駆動システム(82)により連結され、前記駆動システム(82)の動きに伴い、連結固定点(83)から前記船舶に取り付けられた前記個々のフィン(21)まで時計回りおよび反時計回りに回転するバー(81)より連結され、
前記駆動システム(82)が延伸するとき、前記バー(81)は、その連結固定点(83)から反時計回りに回転し、前記個々のフィン(21)も同様に、連結接続(84)を介して回転し、これにより、前記駆動システム(84)の延伸が完了するまでの間、前記個々のフィン(21)の間の距離を減少させ、前記個々のフィン(21)が接触するまで集まり、
前記駆動システム(82)の引き込みにより、前記バー(81)はその連結固定点(83)から時計回りに回転するとともに、前記個々のフィン(21)は、連結接続(84)を介して回転し、その結果、前記個々のフィン(21)の間の距離は、駆動装置(82)が完全に引き込まれるとき、最大可能距離まで増加することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項21】
非起動時であっても所定のインターバルで、可動部分が完全に延伸する間か、完全に格納される間の何れかにおいて、油圧ピストンシリンダ(27)、サーボエンジン(28)およびハイブリッドサーボエンジン(29)、前記フィンアセンブリの駆動システム(25)を、海洋微生物から洗浄する機能を含むことを特徴とする、請求項3、4、5に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項22】
前記フィンアセンブリ(20)はセンサを有し、前記センサがその範囲内で物体、人、または他の障害物を検出するときに、前記フィンアセンブリ(20)の回転を即座に中断することを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項23】
部材間の前記情報伝達システムは、配線システムであることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項24】
部材間の前記情報伝達システムは、無線ネットワークであることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項25】
部材間の前記情報伝達システムは、前記船舶の既設配線であることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【請求項26】
不具合の処理および解決は、遠隔装置からの要請を介して、技術者により行われることを特徴とする、請求項1に記載の船舶振動ダンパシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、波、風および/または水上船舶の荷重によって受ける振動に対する、水上船舶の安定化の技術分野に関する。
【0002】
あらゆるサイズの水上船舶において生じる重大な問題は、水上船舶が受ける振動である。これらの振動は、乗客および乗組員を不快にさせ、嘔吐または疲労を引き起こし得る。これらの振動は危険にもなり得、貨物の紛失または破壊を引き起こし、さらには船舶自体を転覆させ、乗客および乗組員の安全を脅かす可能性がある。ピッチングは、船舶の長手方向の振動であり、一方、ローリングは、船舶の垂直軸に沿って起こる振動である。
【0003】
現在、多くの船舶、特にコンテナを運ぶために建造された貨物船は、これらのコンテナが暴風雨によって移動し、船舶を危険にさらしうる事故の発生を防止するために、振動ダンパを装備している。
【0004】
船舶(vessel)/船(ship)の安定化には、受動的安定化と、能動的安定化の2種類がある。
【0005】
受動的安定化:主に大型船舶(商船、巡航船舶)において使用される受動的安定化の方法は、船舶の特定の区画を水で浸すというものである。この操作は、連通管の原理に基づいている。
【0006】
ローリングに関する受動的安定化の第2の方法は、船舶の船体の側面に設置された固定フィンである。固定フィンの欠点は、振動がない静かな水域においてさえも、固定フィンが船舶の速度を低下させ、燃費を増加させることである。加えて、それらが船舶の本体から永久的に突出するので、損傷を引き起こす可能性が高い。
【0007】
能動的安定化:能動的安定化の方法は、ピストンを通る液塊の変位にある。この方法の欠点は、液塊が正確に適切な時間に移動されなければならないので、操作が困難であることである。
【0008】
能動的安定化の別の方法は、ジャイロスコープ安定化システムによって制御されるポンプのシステムを介して、船舶のタンクを水で浸すというものである。この方法の欠点は、一方の側から他方の側への水のポンピングによる遅延のために応答が遅いことである。
【0009】
能動的安定化の第3の方法は、船舶の船体の側面に設置されたフィンによるものであり、これらのフィンは、船舶の使用が必要とされないときに、船体の凹部内に運搬され、収容される。これにより、海が穏やかであるときには水による抵抗が生じない。したがって、船舶の速度を低下させず、かつ追加の燃料を消費しない。また、フィンは使用されないときに凹部内で保護される。この方法の欠点は、ローリングに関してのみ安定化を提供すること、非常にコストがかかること、フィンの配置が困難であること、フィンが格納される区画を形成するために船舶の船体に大きな孔が形成され、非常に注意深く密閉されなければならないので、専門的な技能を必要とすること、である。また、これらの区画は、船舶の船体内の貴重な空間を占める。さらに、これらのフィンは、船舶が動いているときにのみ機能することができる。
【0010】
水系内の静止船舶の安定性の維持に関して、ほとんどの水上船舶は長手方向の軸に沿って大きな表面を露出するので、当該表面により、船舶は、水流および風などの力の影響を受けやすい。そのような力は、船舶を、所望の固定位置または所望のコースから逸脱させることができる。これは、所望の位置および/またはコースを維持するために、絶え間ない監視および多数の調整の必要性を生じさせる。
【0011】
現在、静止状態の船舶に安定性を提供する能動的スタビライザが存在する。この能動的スタビライザは、船舶の側面の外部に、水位より下に取り付けられた一対のフィンを使用する、最も普及しているスタビライザシステムである。一対のフィンは、静止状態または移動状態の船舶における所望の安定性を達成するために、運搬されてもされなくてもよく、それらの軸の周りを回転してもしなくてもよい。しかしながら、このスタビライザは、ピッチングではなく、ローリングのみを減衰させるものである。
【0012】
別のタイプの能動的ピッチングスタビライザは、パワートリムである。パワートリムは、スピードボートのメインコントロールの1つである。パワートリムは、滑走および速度の最適な活用、燃料の節約、エンジンの負担の回避、スムーズな巡航を実現する。パワートリムはエンジンに搭載されており、船舶が動いているときにのみ作動し、適切に取り扱うための経験を必要とする。また、パワートリムは応答が遅い。
【0013】
別の能動的スタビライザは、スピードボートの基本コントロールの1つでもあるトリムタブであり、その目的は、ローリングを減衰させることである。この能動的スタビライザは、船外モータ搭載の船舶のパワートリムと組み合わせることもできるし、船内モータ搭載の船舶に独立して設置することもできる。トリムタブは、船舶の船尾梁に取り付けられた一対のフィンである。一対のフィンは、電気式であり、かつ油圧式である。一対のフィンは、15~17ノットを超える速度で効率的に動作し、そのときにのみ燃費にプラスの影響を及ぼす。一対のフィンは、操作が困難である。
【0014】
自動トリムタブも使用できる。船舶のパネルボード内のスクリーンまたはコントロールパネルから操作され、船舶の最適な補償で調整される。巡航中、システムは、ジャイロスコープセンサを使用して、船舶を所定の位置に保つために補償フィンの設定を変更するが、それぞれの波では変更しない。別のタイプの能動的スタビライザは、ジャイロスコープスタビライザである。ジャイロスコープスタビライザは、ジャイロトルクを使用して、船舶のローリングを減衰させる。ジャイロスコープスタビライザの欠点は、購入および保守のコストが高いこと、エネルギー消費量が大きいこと、船体の内部に配置されるので、船舶に多くの空間を必要とすること、および、慣性によりジャイロスコープが船舶をアシストできる間に限って瞬時にのみ動作すること、である。また、起動時に15~20分の遅延がある。したがって、どのスタビライザも、船舶の長手方向の軸および船舶の垂直軸の両方に対して、船舶の振動を減衰させるものではない。
【0015】
また、既存の安定化システムはいずれも、激しい波の間、それぞれの波において、ピッチングに対する船舶の傾斜を補正するものではない。
【0016】
既存の安定化システムはいずれも、船舶が、船舶の垂直軸および長手方向の軸の両方に向かって転覆することを防止するものではない。
【0017】
これまでのところ、即時減速機能を有するスタビライザは存在しない。
【0018】
既存の安定化システムは、効率、低購入コスト、単純設計、小総容積、燃料節約を、同時に実現するものでない。また、既存の安定化システムは、船体内の空間を確保することなく、船体内に追加の大きな穴を作ることなく、最大の船舶から最小の船舶まであらゆる種類の船舶への容易な設置をも同時に実現するものではない。また、既存の安定化システムは、容易な組立て、容易な解体、各船舶のニーズに応じた適応性およびパーソナリゼーションをも、同時に実現するものでない。また、既存の安定化システムは、定置船または巡航船のいずれかでの自動運転または手動運転の選択を伴う即時の起動をも、同時に実現するものではない。
【0019】
本発明は、既存のスタビライザの上述した全ての特徴を組み合わせ、今日まで達成することができなかった追加の機能を提供するものである。
【0020】
これは、船舶の船尾梁において対をなして配置され、船舶の船尾梁の中央を通る垂直軸に対して対称的に配置され、フラップの位置またはより広い位置において配置されるフィンアセンブリにより実現される。フィンアセンブリのそれぞれは、垂直方向に配置された複数の連続する個々のフィンからなる。フィンのそれぞれは、P型断面を有し、基部と基部に交差する2つの側面とからなり、上部フィンの側面は、直下部フィンの側面に対して接し、水が通過する、連続する閉鎖導管を形成する。フィンアセンブリの動きは、ジャイロスコープ、加速度計、GPS、およびフィンアセンブリの位置センサからなる電子コントローラにより、駆動システムを介して制御される。フィンアセンブリは、船舶の船尾梁の少なくとも2点にある、船舶との連結接続部から、互いに平行または独立に、同時に反対方向かつ同方向に、ゼロ平面に対して水位の上方に時計回りに回転し、および反時計回りに回転する。ゼロ平面は、フィンアセンブリが設置された船体の底部の高さに対して完全に平行である。
【0021】
この回転は、船舶が動いているか静止しているかにかかわらず、フィンアセンブリを通過する水の動きに影響を与える。フィンアセンブリの回転の方向およびフィンアセンブリの平行または独立した回転に応じて、長手方向および/または垂直軸に対する船舶の傾斜をゼロに低減し、転覆を防止する。特に、フィンアセンブリが平行に回転するとき、フィンアセンブリは、反時計回りに回転することにより、船尾を上昇させて船首を下降させる、または、時計回りに回転することにより、船尾を下降させて船首を上昇させる。これにより、フィンアセンブリは、ピッチングを減衰させる。さらにフィンアセンブリが独立して回転することにより、ローリングを補正する。
【0022】
船舶が動いており、フィンアセンブリが互いに異なる傾斜で固定され、平行な状態で時計回りまたは反時計回りに同時に回転している場合、フィンアセンブリは、同時に、船舶の傾斜を、船舶の両方の軸に向かってリセットする。本発明の動作は手動で行われてよい。オペレータが対応するノブを押すことにより、所望のフィンアセンブリを時計回りに回転させて上昇させ、所望のフィンアセンブリを反時計回りに回転させて下降させてよい。または自動でも行われてもよい。センサ入力およびオペレータの設定により、適切なフィンアセンブリを所望の結果をもたらすように自動的に回転させてよい。
【0023】
船舶が静止しているとき、垂直軸に対する船体の傾斜は、ジャイロスコープを介して自動で、または、対応するノブを上下に押すことにより手動で解消される。船舶が動いているとき、対応するノブを上下に押すことによる手動操作を介したオペレータの命令により、垂直軸および長手方向軸の両方に関して、同時にまたは独立して、船舶の傾斜が解消される。または、速度および自動設定に関するプログラムされた船舶のダイアグラムを定義することにより、上述の船舶の傾斜が解消される。オペレータにより定義され、連続的に維持される傾斜について、ピッチングの観点で船体を一致させることにより、上述の船舶の傾斜が解消される。または、GPSセンサおよび衝撃センサシステムを介して、船体の速度および水との衝撃に応じて、装置が選択する設定を起動させ、最適な傾斜の観点で連続的に補正することにより、上述の船舶の傾斜が解消される。ローリングに関しては、それぞれのフィンアセンブリが独立して、反時計回りまたは時計回りに回転することにより、上述の船舶の傾斜が解消される。
【0024】
具体的には、船舶が波頭まで上昇するとき、電子コントローラに設置されたジャイロスコープが、その強い傾斜を検出し、反時計回りに回転するようフィンアセンブリに指示する。その結果、船首が下降し、船舶は波頭まで上昇する代わりに波を横断する。続いて、波を下降する船舶においては、時計回りに回転するようにフィンアセンブリに指示する。その結果、船首は上昇し、波の谷に急激に落下せず、水平またはオペレータにより設定された傾斜に合わせて船舶の角度をリセットする。このようにして、船舶の安定化を実現することに加えて、特に開放型船舶において船首からの水の流入が防止されるとともに、船舶の転覆が防止される。
【0025】
船舶が船首または船尾から強い力を受けると、ジャイロスコープは、フィンアセンブリの駆動システムを介して、長手方向軸への強い傾斜を検出し、フィンアセンブリは、反時計回りに回転して船首を下降させるか、または、時計回りに回転して船尾を下降させ、傾斜をゼロにする。
【0026】
同様に、船舶が強い横方向の波、風、または、貨物の横方向の変位を受ける場合、ジャイロスコープは、船舶の垂直軸に対して強い傾斜を検出する。傾斜を解消するために、船舶において波または他の横方向の力を受けるのと同じ側面に位置するフィンアセンブリは、その垂直軸に関して、駆動システムを介して時計回りに回転し、同時に、船舶において波または他の横方向の力を受ける側面と反対側のフィンアセンブリは、反時計回りに回転する。これにより、力に抵抗し、船舶をゼロの傾斜に戻す。船が強い横方向の力とその長手方向軸に沿った力との両方を受けるとき、ジャイロスコープは、フィンアセンブリの駆動システムを介して、垂直軸および長手方向軸の両方に対する傾斜を検出する。垂直軸に対する傾斜をなくすために、横方向の力を受ける船舶の側面と反対側のフィンアセンブリは、船舶の垂直軸に対して反時計回りに回転し、船舶が受ける横方向の力と同じ側面に位置するフィンアセンブリは、時計回りに回転する。同時に、フィンアセンブリは、長手方向軸の傾斜をなくすために、反時計回りまたは時計回りに平行に回転する。
【0027】
本発明の1つの態様において、衝撃センサは電子コントローラに設置される。電子コントローラは、燃料消費量の増加の有無を監視する船舶エンジンから与えられる、荷重および消費量データと、動きの方向における速度および一定の変化を監視するGPS(38)から与えられる、速度および方向のデータと、を受信する。船舶振動ダンパシステムは、電子コントローラ(35)に順に信号を与え、自動選択において、ピッチングの観点において船舶の傾斜を調整するようにフィンアセンブリ(20)を回転させる。オペレータの選択により、より低い燃料消費量のための最高速度と、乗客の安全と快適さのための水中における最小衝撃との間で計量することにより、最適な傾斜を実現する。
【0028】
水中における船舶の最小衝撃のための設定では、フィンアセンブリの回転(方向、角度)が決定され、船舶の最適な傾斜を一定に維持する。それぞれの波において、具体的には船舶が波頭に向かい上昇し始めるとき、フィンアセンブリを反時計回りに回転させ、その結果、フィンアセンブリを通過する水に対して抵抗を生じさせることで、船尾を上昇させ、船首を下降させて波を横断する。船舶が波の谷に向かい下降し始めるとき、フィンアセンブリを時計回りに回転させ、フィンアセンブリを反対方向へ通過する水に対して抵抗を生じさせることで、船尾を下降させ、船首を上昇させる。一方、最大速度が生じる設定においては、この動作は無効になる。
【0029】
フィンアセンブリの駆動システムは、オイルポンプ、および、油圧ピストンシリンダ、またはサーボモータ、またはハイブリッドサーボモータからなる。または、フィンアセンブリの駆動システムは、異なるタイプの駆動システムからなる。
【0030】
電子コントローラは、船舶の所定の傾斜角度でフィンアセンブリの回転を開始すること、船舶の速度に応じてフィンアセンブリの最大傾斜を決定すること、フィンアセンブリの傾斜回転に対する応答時間を決定すること、などの追加の機能を提供する。
【0031】
各々のフィンアセンブリに多くの個々のフィンを配置することは、水に対して大きな抵抗がかかるため、船舶の角度の調整をより良好に制御することができる。個々のフィンの数は、所望の抵抗に応じて変化する。
【0032】
個々のフィンの長さ、幅、厚さ、形状および構成材料は、個々のフィンが設置される船舶のサイズおよびタイプに応じて変化する。
【0033】
また、個々のフィン間の接続のタイプも区別される。船舶の旋回のために、オペレータが選択しうる設定があり、安定性、安全性、および乗客の快適な乗り心地のために、旋回中に船舶の垂直軸に対して傾斜をゼロに保つ設定、または、特殊なセンサにより、できるだけ短い半径で旋回させ、最速で旋回を完了するオプションを有する。または、代替的に、自動設定を選択する設定がある。その設定では、ステアリングにおける特殊なセンサを介し、船舶の動きに応じて、システムは、旋回半径を調節しその調整に従って応答する。
【0034】
小さな半径で迅速な回転を実現するために、船舶の垂直軸に対して、回転方向の反対側のフィンアセンブリは、反時計回りに回転し、同時に、回転方向と同じ側のフィンアセンブリは、時計回りに回転する。ゼロローリングおよび大きな半径での旋回を実現するために、垂直軸に対する船舶の傾斜がゼロに維持される間、船舶の垂直軸に関して、回転方向の反対側のフィンアセンブリは、時計回りに回転し、同時に、回転方向と同じ側のフィンアセンブリは、反時計回りに回転する。
【0035】
本発明では、フィンアセンブリの位置センサシステムが設置される。位置センサシステムは、所定のインターバルで、フィンアセンブリがそのゼロレベルを通過するとき、フィンアセンブリの無効化点が補正される。最初にゼロレベルに到達するフィンアセンブリは、他の1または複数のフィンアセンブリがゼロレベルに到達するのを待つ。フィンアセンブリ間の補正時間が所定の限度を超える場合、オペレータは、制御画面により、1または複数の駆動システムに不具合があること、フィンアセンブリの回転を駆動するフィンアセンブリのステアリングシステムに不具合があること、および、フィンアセンブリを交換または修理する必要があることが通知され、安全モードが自動的に起動される。
【0036】
本発明の誤動作の場合において、安全モードは自動的に起動される。誤動作は、船舶の突然の移動を引き起こす可能性がある。
【0037】
フラップ格納機能が存在する。フラップ格納機能は、船舶が動いていないことをセンサにより確認した場合にのみ、オペレータによりノブを介して起動される。フラップ格納機能は、修繕、または補修、または清掃、または船舶が使用されない期間に、陸上で上架/進水/休止する場合において用いられる。その期間、フィンアセンブリを格納し、時計回りに回転させ、船舶の船尾梁にできるだけ近い位置で停止させる。これにより、水による抵抗を可能な限り小さく抑え、船舶の速度を低下させず、必要以上の燃料を消費しないようにして、最高速度の最大値を実現し、破損および損傷、海洋汚染などにさらされないようにすることができる。
【0038】
手動運転、または、自動運転、または、船舶の速度に応じた船舶の傾斜に関するプログラムといったオプションがある。
【0039】
船舶の長手方向軸に対してのみ、またはその横軸に対してのみ、または両方の軸に対して、船舶の傾斜を補正する本発明を動作させるオプションがある。フィンアセンブリは、水の動きに追従して自由に動く付属フラップゲートを有する。船舶が静止しているとき、フラップゲートは個々のフィンにもたれ、フィンの中にある水を保持する。その結果、隔壁により減衰する間に、水に対してより大きな抵抗が生じ、即座に結果を得ることができる。船舶が動いているとき、フラップゲートは、水の動きおよび勢いにより運び出されるように持ち上げられ、流れに影響を及ぼすことなく水がフィンを通過することを可能にする。その結果、より少ない数の個々のフィンが要求される。
【0040】
個々のフィン間の距離は、固定または可変である。本発明の1つの態様において、フィンアセンブリの個々のフィンを接続するための装置があり、この装置から、所望の水に対する抵抗に応じて、フィンアセンブリ間の距離の変化が得られる。
【0041】
そのような装置の1つのケースでは、個々のフィンが梁により互いに連結される。梁の1つはバーにより駆動システムに接合される。このバーは、駆動システムの動きに伴い、連結固定点から船舶に接続された個々のフィンまで時計回りおよび反時計回りに回転する。
【0042】
駆動システムが拡大されるとき、バーはその連結固定点から反時計回りに回転し、また、その連結接続を介して個々のフィンを引っ張り、これにより、個々のフィンの間の距離を減少させる。個々のフィンは、駆動システムを完全に拡大するまでの間に、接触するまで集まり、結果として、水による抵抗をゼロにし、これにより、速度を増加させ、燃料消費を低減する。駆動システムの引き込みにより、バーはその連結固定点から時計回りに回転し、個々のフィンを、それらの連結接続を介して引っ張り、これにより、駆動装置の引き込み完了までに個々のフィンの間の距離を最大に増大させ、水に対するより大きな抵抗を生じさせることで、船舶のより大きな安定性をもたらす。
【0043】
船外エンジンおよびキャットウォーク等により船舶の船尾梁の空間が不足している場合、フィンアセンブリは、船舶の船尾梁に設置されたレールトラックに取り付けられたプレートに接続される。その延伸中に駆動システムは、フィンアセンブリの自由な回転のために、フィンアセンブリを有するプレートを、船舶の左右へ、船体の外側に移動させる。一方、本発明がオフであるとき、駆動システムは、その格納中に、フィンアセンブリを、損傷から保護するために、船舶の船尾梁の元の位置に戻す。
【0044】
本発明には、フィンアセンブリの回転半径の周りにおけるセンサの走査領域において、物体、人間または他の障害物がフィンアセンブリに取り付けられたセンサを介して検出された場合に、フィンアセンブリの回転を即座に停止する安全装置が設置されている。
【0045】
また、本発明に設置された追加の緊急停止安全装置もあり、この装置では、オペレータが船舶を瞬時に停止させることを望む場合はいつでも、緊急停止ボタンを押すことにより、全てのフィンアセンブリが瞬時に反時計回りに回転し、船首を下降させ、大きな力で船舶の速度を停止させる。
【0046】
これは、特に、高速に達し、減速が困難な船舶にとって重要な利点である。フィンアセンブリの駆動システムの運動伝達装置は、その可動部品を海洋汚染(例えば、カキ)から保護するために、ポリマーまたは他の材料から設置された折り畳みカバーを有する。
【0047】
本発明が動作していないときでさえ、所定のインターバルで、フィンアセンブリの駆動システムの運動伝達装置を洗浄する機能がある。海洋生物が運動伝達装置に付着するのを妨げ、耐用年数および有効期間を延ばすために、完全な延伸および完全な格納に伴い、各駆動装置の可動部分の軌道全体が洗浄される。
【0048】
本発明の構成部分は配線システムと相互に通信し、新たな配線を配する空間がない場合には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)または同様のシステムを介した無線ネットワーキングが代替的に使用される。携帯電話またはタブレットまたはコンピュータからの要請を介して、遠隔操作または本発明の技術的課題を解決することが可能である。
【0049】
船舶への本発明の設置およびその構成部品間の接続のために、スペースが不足している場合には、船舶の既設配線が代替的に使用される。
【0050】
本発明の低いエネルギー消費量は、船舶が静止している間、船舶の傾斜をリセットする必要がないとき、オイルポンプが、非常に低い回転数で動作する待機状態であるか、または、オペレータにより指定された期間に波がないとき、圧力をかけずゼロ回転数でその動作を停止している、という事実に起因する。船舶のわずかな傾斜の補正のためにフィンアセンブリのわずかな回転が必要とされるとき、オイルポンプの速度を低減し、その結果、オイルポンプは、より遅いオイル流で動作し、これにより、より低い作動圧力およびより小さいオイル流抵抗で動作する。
【0051】
強力な波の場合、オイルポンプの速度は、インバータを介して増加され、電子コントローラは、電磁弁を開くように指示することにより、駆動システム内の圧力を介して、フィンがより多くかつより速く回転し、その結果、船舶の傾斜がゼロに減少される。動作が完了すると、電磁弁は閉じ、オイルポンプは慣性状態に戻る。
【0052】
適切な点で電磁弁を閉じることにより、船舶が進行しているとき、フィンアセンブリは船舶を必要とされる方向に向かい押し続け、所望の結果、すなわち、時間の関係で累積的に動作する船舶に必要とされる傾斜を生みだす。
【0053】
本発明の重要な利点は、船舶の2つの異なる安定化システムの機能を組み合わせることである。1つはスタビライザとフラップまたはトリムタブであり、同時に、ピッチおよびロールを減衰させ、加えて、船舶が動いている間、ピッチ減衰の機能を提供することである。このような機能は、これまでに、いかなる安定化システムによっても提供されていない。
【0054】
この動作は、結果として、船舶の振動の減衰だけでなく、過酷な気象現象または船舶の荷重の移動の場合における転覆の防止をもたらす。既存のフラップは、船首を下降させ、船尾を上昇させることにより、フラップが反時計回りに回転するときにのみ、船舶の傾斜を補正する。本発明に係るフィンアセンブリは、時計回りに回転し、船尾を下降させ、船首を上昇させるときにも、船舶の傾斜を補正する。
【0055】
本発明は、燃料を節約し、乗客を快適にしつつ、船舶の最大速度を利用するなどのオプションをユーザに提供する。
【0056】
重要な利点は、本発明が設置される場所であり、他のスタビライザのように、船舶を港または別船舶の隣に係留する問題を生じさせることなく、船舶の外側および船尾梁に配置される。さらに、フィンアセンブリが陸または他の物体にぶつかっても、水が船舶に入ることはない。船舶の建設により頑丈である船舶の船尾梁における設置は、船体の強化を必要とする他の位置に配置された他の安定化システムとは異なり、開発力に耐える。
【0057】
本発明の別の利点は、新しい船舶または古い船舶のいずれかに設置することが極めて容易なことである。これは、既存のフラップシステムを取り外し、追加の作業、穴あけ、および封止、および追加の空間を必要とせず、同じ位置に配置することが可能なためである。
【0058】
個々のフィンは、水中にある場合であっても、清掃され、メンテナンスされ、交換されるために、容易に分離、および接続可能である。一方で、既存の安定化システムは、船舶を上架する必要がある。
【0059】
本発明は設置でき、他の同様のシステムでは不可能である低速船舶(排水型または半滑走型(displacement or semi-displacement))においてさえも、十分に機能を果たすことができる。本発明の別の利点は、船舶を安定化させる前に15~20分の遅延を必要とするジャイロスタビライザとは対照的に、即時に起動可能である点である。
【0060】
本発明の安全装置の主な利点は、本発明の誤動作により船舶が突然動き出した場合に、事故を回避するために安全装置の安全動作が自動的に起動されることである。
【0061】
本発明の別の利点は、その総質量が小さいことであり、特に、ジャイロスコープの慣性を利用するために回転中に極めて大きな荷重の存在を必要とするジャイロスコープ安定器と比較して、総質量が小さい。
【0062】
加えて、本発明の利点は、特にジャイロスコープスタビライザとの関連において低い電力消費量である。ジャイロスコープスタビライザは、必要とされる真空ポンプの動作と同程度に、移動質量の数千回転における絶え間ない回転のための連続的なエネルギー消費量を必要とする。
【0063】
別の重要な利点は、船舶の燃料消費量における経済性である。本発明は、機械部品が少なく、不具合の発生が少なく、容易に修理され、特に専門的な技能を必要としない、極めて単純なシステムからなる。また、本発明の利点は、極めて経済的に実現できることに加えて、設計および設置における小さい体積およびシンプルさにより、空間の欠如により別のスタビライザを設置することができない最小の船舶にも配置することができる。
【0064】
本発明はまた、設置する船舶のタイプおよびサイズに応じて、ならびに安定性制御の所望のレベルに応じて、カスタマイズおよび適合も提供する。
【0065】
船舶内で貨物の変動が発生するとき、または横風による力を受ける場合、船舶のバランスをとるために、一方向におけるフィンアセンブリの絶え間ない圧力が必要とされる。これは本発明では可能であるが、一方で、ジャイロスコープのような他のスタビライザは、船舶の傾斜を瞬間的にしか補正することができず、絶え間ない圧力を加えない。これまで、オペレータまたは自動システムによる手動または自動のフラップにおいて、2つのフラップの一方を下げてウォーリング(walling)を補正するとき、船体の表面の下方に下降するフラップにより生成される一方向の抵抗により、船舶の側部の必要な押し上げを生成すると同時に、船舶全体のトルクが生成され、これにより、船舶はフラップが下降する側部に向かい回転する傾向を与える。すなわち、軌道を減衰させたい場合、船舶を時計回りに回転させるために、左フラップが下降し、船舶が左に回転することが必要であった。そのとき、オペレータは、船舶のコースを真っ直ぐに保つために、ハンドルを時計回りに回転させ、反対の場合には反時計回りに回転させなければならなかった。しかしながら、これは、ラダーが船舶の軸と完全に一致していないとき、流体力学的抵抗が増加し、その結果、速度が低下するため、さらなる燃料消費を生じさせる。これは、本発明により解決される。なぜなら、隔壁を減衰させるために船舶により必要とされるトルクが両方のアセンブリにおいて同時に共有され、フィンアセンブリのはるかに小さい傾斜が要求され、船舶の全コースに影響を及ぼすことなく、左側は反時計回りに傾斜され、右側は時計回りに傾斜され、その結果、ラダーが船舶の軸と完全に一致するためである。
【0066】
空間が不足しているときに、他のシステムの動作に影響を及ぼすことなく、本発明を船舶に設置するために船舶の既設配線を使用することができる。
【0067】
本発明は、添付の図面を参照して以下に説明される:
図1は、船舶に設置された本発明の図を示す。
図2は、電子コントローラを示す。
図3は、サーボモータを有する駆動システムを示す。
図4は、ハイブリッドサーボモータを有する駆動システムを示す。
図5は、個々のフィンおよびフィンアセンブリの態様の正面図を示す。
図6は、個々のフィンおよびフィンの複合体の側面図を示す。
図7図8、および、図9は、本発明の運用法を示す。
図10および図11は、可動フィン複合体を有する本発明の態様、および、可動フィン複合体がどのように機能するかを示す。
図12図13、および、図14は、個々のフィンの距離が可変である本発明の態様と、この動作モードとを、共に示す。
図15は、本発明がローリングを減衰するためにどのように機能するかを示す。
図16は、本発明がピッチングを減衰するためにどのように機能するかを示す。
【0068】
本発明をより良く理解するために、参照番号を用いた図面の詳細な説明が以下に与えられる。
【0069】
図1は、船舶に設置された本発明を示す。本発明は、フラップ(65)の位置において船舶(60)の船尾梁に取り付けられたフィンアセンブリ(20)、緊急停止ボタン(50)、船舶のコントロールパネルに取付けられたフィンアセンブリ格納ノブ(55)および制御画面(45)、オイルポンプ(26)および油圧ピストンシリンダ(27)を有するブレードアセンブリの駆動システム(25)、フィンアセンブリ位置センサシステム(30)、電子コントローラ(35)を備える。図1は、これらの部材を、情報伝送システムを介してどのように接続しているかを示している。
【0070】
図2は電子コントローラを示す。電子コントローラは、ジャイロスコープ(36)、加速度計(37)、GPS(38)、フィンアセンブリ位置センサ(39)、および、衝撃センサ(40)からなる。
【0071】
図3は、サーボモータ(28)を有するフィンアセンブリの駆動システム(25)を示す。
【0072】
図4は、ハイブリッドサーボモータ(29)を有するフィンアセンブリの駆動システム(25)を示す。
【0073】
図5は、個々のフィン(21)およびフィンアセンブリ(20)の正面図を示す。フィンアセンブリ(20)は、互いに接続された複数の個々のフィン(21)からなる。
【0074】
図6は、個々のフィン(21)およびフィンアセンブリ(20)の側面図を示す。フィンアセンブリ(20)は、互いに接続された複数の個々のフィン(21)と、船舶に接続されたヒンジ接続部(22)と、自由に動くように接続されたフラップゲート(23)と、からなる。
【0075】
図7は、船舶が動き、かつ、減衰すべき振動がないとき、本発明がどのように機能するかを示す。フィンアセンブリ(20)は、フィンアセンブリ(20)のゼロ平面(1)に平行になるように回転し、フラップゲート(23)は、水の勢いにより運び出され、持ち上げられる。その結果、水に抵抗を生じさせることなく、かつ船舶の傾斜に影響を及ぼすことなく、単に水がフィンアセンブリ(20)を通過する。
【0076】
図8は、船舶が動いているとき、ピッチング振動を減衰させる場合に、本発明がどのように機能するかを示す。この場合、フィンアセンブリ(20)は、フィンアセンブリ(20)のヒンジ接続部(22)から船舶(60)の船尾梁まで反時計回りに回転し、フィンアセンブリ(20)を通過する水からの抵抗を生じさせ、その結果、船尾が上昇し、船首が下降する。一方、フラップゲート(23)は、水の勢いにより運び出され、持ち上げられ、フラップゲート(23)に抵抗を生じさせることはない。図9は、船が動いているとき、ピッチング振動を減衰させる場合に、本発明がどのように機能するかを示している。フィンアセンブリ(20)は、フィンアセンブリ(20)のヒンジ接続部(22)から船舶(60)の船尾梁まで時計回りに回転し、フィンアセンブリ(20)を通過する水からの抵抗を生じさせ、船尾が下降し、船首が上昇する。一方、フラップゲート(23)は、水の勢いにより運び出され、持ち上げられ、フラップゲート(23)に抵抗を生じさせることはない。
【0077】
図10は、船尾梁(60)内に空間がないときにフィンアセンブリ(20)の回転を実現するために、フィンアセンブリ(20)がレール(71)に取り付けられたプレート(70)に設置され、駆動システム装置(72)を介して、フィンアセンブリ(20)全体が船舶の船体から引き出される、本発明の態様を示す。
【0078】
図11は、動作しておらず、元の位置にある可動フィンアセンブリ(20)を有する本発明の態様を示す。
【0079】
図12図13図14において、A-A断面における本発明の態様が示されている。個々のフィンが梁(80)により関節式に接続されているので、個々のフィン(21)間の距離は変更される。梁の1つは、ロッド(81)を介して駆動システム(82)に関節式に接続され、ロッド(81)は駆動システム(82)の運動に伴い、連結固定点(83)から船舶に取り付けられた一つのフィン(21)まで時計回りまたは反時計回りに回転する。駆動システム(82)を延伸させることにより、バー(81)は、その連結固定点(83)から反時計回りに回転し、同時に個々のフィン(21)は、その連結接続(84)を介して回転する。その結果、駆動システム(84)の延伸が完了するまでに、個々のフィン(21)の間の距離は減少され、接触するまで集まる。駆動システム(82)を引き込むことにより、バー(81)は、その連結固定点(83)から時計回りに回転し、同時に個々のフィン(21)はその連結接続(84)を介して回転する。その結果、駆動システム(82)が完全に引き込まれるとき、個々のフィン(21)の間の距離は、個々のフィン(21)の間の最大可能距離まで増加する。
【0080】
図15は、船舶が垂直軸(x)上で、特にその右側から振動を受けるとき、本発明がどのように機能するかを示す。垂直軸の傾斜をなくすために、左フィンアセンブリ(20)は反時計回りに回転し、一方、右フィンアセンブリ(20)は時計回りに回転する。
【0081】
図16は、船舶がその長手方向軸(y)上で、特に船首から振動を受けるとき、本発明どのように機能するかを示す。長手方向軸の傾斜をなくすために、フィンアセンブリ(20)は反時計回りに回転する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】船舶に設置された本発明の図を示す。
図2】電子コントローラを示す。
図3】サーボモータを有する駆動システムを示す。
図4】ハイブリッドサーボモータを有する駆動システムを示す。
図5】個々のフィンおよびフィンアセンブリの態様の正面図を示す。
図6】個々のフィンおよびフィンの複合体の側面図を示す。
図7】本発明の運用法を示す。
図8】本発明の運用法を示す。
図9】本発明の運用法を示す。
図10】可動フィン複合体を有する本発明の態様、および、可動フィン複合体がどのように機能するかを示す。
図11】可動フィン複合体を有する本発明の態様、および、可動フィン複合体がどのように機能するかを示す。
図12】個々のフィンの距離が可変である本発明の態様と、この動作モードとを、共に示す。
図13】個々のフィンの距離が可変である本発明の態様と、この動作モードとを、共に示す。
図14】個々のフィンの距離が可変である本発明の態様と、この動作モードとを、共に示す。
図15】本発明がローリングを減衰するためにどのように機能するかを示す。
図16】本発明がピッチングを減衰するためにどのように機能するかを示す。
図1
図2
図3
図4
図5-6】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】