(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】ウェブ状の記録担体にインクで印刷するインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240301BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240301BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/17 203
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557206
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022056823
(87)【国際公開番号】W WO2022200147
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107461.4
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516255493
【氏名又は名称】キャノン プロダクション プリンティング ホールディング ビー. ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】Canon Production Printing Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】Van der Grintenstraat 10, 5914 HH Venlo, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マイア
(72)【発明者】
【氏名】メーラート ビグラリ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ピルスル
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA23
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA29
2C056HA46
2C056JB01
2C056JB15
2C056JC13
(57)【要約】
ウェブ状の記録担体(12)にインクで印刷するインクジェット印刷装置(10)は、それぞれ1つまたは複数の印刷ヘッドを有する複数の印刷バー(16)を有する印刷ユニット(14)を有する印刷モジュール(M1)を備えている。さらに印刷装置(10)は、印刷ユニット(14)の下の空間(R)内に進入移動可能であり、かつこの空間(R)から退出移動可能である、記録担体(12)を案内するトランスファキャリッジ(18)を備えている。トランスファキャリッジ(18)は、印刷運転状態では空間(R)内に配置されており、記録担体(12)を印刷時に案内する。保守運転状態では、トランスファキャリッジ(18)は、空間(R)から退出移動されている。印刷装置(10)のクリーニングモジュール(M9)が、印刷モジュール(M1)の少なくとも1つの印刷ヘッドをクリーニングする少なくとも1つのクリーニング要素を有している。少なくとも1つのクリーニング要素は、記録担体(12)の搬送方向(T)で、印刷運転状態では空間(R)の側方に並んで、かつ保守運転状態ではこの空間(R)内に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状の記録担体(12)にインクで印刷するインクジェット印刷装置(10)であって、
それぞれ1つまたは複数の印刷ヘッドを有する複数の印刷バー(16)を有する印刷ユニット(14)を有する印刷モジュール(M1)と、
印刷モジュール(M1)の前記印刷ユニット(14)の下の空間(R)内に進入移動可能であり、かつ前記空間(R)から退出移動可能である、前記記録担体(12)を案内するトランスファキャリッジ(18)を有するサドルモジュール(M12)と、
を備え、
前記トランスファキャリッジ(18)は、印刷運転状態では前記空間(R)内に配置されており、前記記録担体(12)を前記印刷時に案内し、
前記トランスファキャリッジ(18)は、保守運転状態では前記空間(R)から退出移動されており、
前記ウェブ状の記録担体(12)は、前記印刷運転状態から前記保守運転状態への、かつ前記保守運転状態から前記印刷運転状態への、前記トランスファキャリッジ(18)の移動時、前記トランスファキャリッジ(18)とともに動かされ、
前記印刷ユニット(14)の少なくとも1つの印刷ヘッドをクリーニングする少なくとも1つのクリーニング要素を有するクリーニングモジュール(M9)を備え、
少なくとも1つの前記クリーニング要素は、前記記録担体(12)の搬送方向(T)で、前記印刷運転状態では前記空間(R)の側方に並んで、かつ前記保守運転状態では前記空間(R)内に配置されている、
インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記印刷ユニット(14)が、前記空間(R)を上方で画定し、かつ少なくとも1つの前記クリーニング要素を用いた前記印刷ヘッドの前記クリーニング時に捕集すべき粒子を捕集する捕集槽(17)が、前記空間(R)を下方で画定する、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記トランスファキャリッジ(18)は、前記トランスファキャリッジ(18)の前記印刷運転状態での前記記録担体(12)の搬送方向(T)で、前記空間(R)から退出移動可能であり、かつ前記搬送方向(T)とは反対方向で、前記空間(R)内に進入移動可能であり、好ましくは、モータにより往復走行可能である、請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷ユニット(14)は、前記印刷装置(10)内に位置固定に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷ユニット(14)に電気的なラインおよび/または液体ラインが接続されており、前記電気的なラインおよび/または液体ラインは、位置固定に前記印刷装置(10)のハウジング(50)内に配置されている、請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記トランスファキャリッジ(18)は、前記保守運転状態で、少なくとも部分的に、前記印刷ユニット(14)により印刷された前記記録担体(12)を乾燥させる乾燥モジュール(M4)の上に配置されており、前記乾燥モジュール(M4)は、少なくとも1つの加熱要素(144,244)を有する乾燥ユニット(40)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項7】
前記加熱要素(144,244)のエミッション領域(146,246)が、前記記録担体(12)の搬送方向(T)で、斜め下方にかつ/または斜め上方に傾けられており、その結果、前記エミッション領域(146,246)は、水平平面に、好ましくは、30°~60°の範囲の角度をなして、特に40°~50°の範囲の角度をなして交わる、請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
前記記録担体(12)は、少なくとも前記加熱要素(144,244)の領域において、前記加熱要素(144,244)の前記エミッション領域(146,246)に沿ってまたは前記加熱要素(144,244)の前記エミッション領域(146,246)に対して平行に可動である、請求項6または7記載の印刷装置。
【請求項9】
前記乾燥ユニット(40)は、第1の乾燥ユニット(240)であり、前記第1の乾燥ユニット(240)の少なくとも1つの前記加熱要素(244)は、IR放射加熱要素(244)であり、少なくとも1つの第2の加熱要素(144)を有する第2の乾燥ユニット(140)が存在し、前記第2の加熱要素(144)は、加熱サドルを有する接触加熱要素(144)であり、前記加熱サドルを介して前記記録担体(12)は案内されており、前記第1および第2の乾燥ユニット(140,240)は、前記第1および第2の乾燥ユニット(140,240)が、オペレータにより互いに交換可能であるように形成されている、請求項6から8までのいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項10】
前記乾燥モジュール(M4)および/または前記乾燥ユニット(40,140,240)は、前記記録担体(12)を前記乾燥ユニット(40,140,240)の前記加熱要素(144,244)の通過後に冷却する少なくとも1つの冷却要素を有する冷却ユニット(44)を有する、請求項6から9までのいずれか1項記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ状の記録担体にインクで印刷するインクジェット印刷装置に関する。印刷装置は、それぞれ1つまたは複数の印刷ヘッドを有する複数の印刷バーを有する印刷ユニットと、印刷ユニットの下の空間内に進入移動可能であり、かつこの空間から退出移動可能である、記録担体を案内するトランスファキャリッジとを備えている。トランスファキャリッジは、印刷運転状態では空間内に配置されており、記録担体を印刷時に案内する。保守運転状態では、トランスファキャリッジは、印刷ユニットとクリーニングユニットとの間の空間から退出移動されている。
【0002】
トランスファキャリッジを備えるこのような印刷装置は、特に独国特許発明第102013106211号明細書において公知である。この明細書に開示された印刷装置は、しかし、印刷運転モードでクリーニングユニットがトランスファキャリッジの下に配置されており、保守運転状態で印刷ヘッドをクリーニングするためには、上方に移動されなければならないという欠点を有している。このことは、比較的多くの構成スペースを高さに関して必要としてしまう。
【0003】
国際公開第98/39691号において、ウェブ状の記録担体に印刷する印刷機または複写機が公知であり、この公知の印刷機または複写機では、複数のモジュールおよび構成群が設けられている。而してこの印刷機または複写機は、搬送通路の両側に電子写真モジュールとそれぞれ1つの転写モジュールとを有している。
【0004】
本発明の根底にある課題は、単純かつモジュール状に構成されており、比較的僅かな構成スペースしか必要としないインクジェット印刷装置を提示することである。
【0005】
上記課題は、請求項1の特徴を備えるインクジェット印刷装置により解決される。本発明の有利な発展形は、従属請求項に記載されている。
【0006】
請求項1の特徴を備えるインクジェット印刷装置により、印刷運転モードにおいて、印刷すべき記録担体が、トランスファキャリッジにより正確に位置決めされており、かつ印刷ユニットの下の空間が、保守運転状態では空いていて、その結果、印刷運転状態では空間の側方に並んで配置されている少なくとも1つのクリーニング要素が、保守運転状態では印刷ユニットの下の空間内に配置されており、そこで、印刷ユニットの、この空間の上に配置されている印刷ヘッドをクリーニングし得ることが達成される。クリーニング要素は、この場合、噴霧要素および/または払拭要素を有していてもよい。その際に剥離された異物粒子および/または滴下したクリーニング液は、その後、この空間の下に配置されている捕集槽内に捕集され得る。
【0007】
これにより、印刷ヘッドの簡単なクリーニングが、このために多くの構成スペースを高さに関して必要とせずに可能である。このことは、特に、印刷運転モードにおいて少なくとも1つのクリーニング要素をこの空間の側方に並んで配置することにより達成される。
【0008】
この空間は、特に印刷ユニットの直下に存在している。サドルモジュールのトランスファキャリッジは、特に印刷運転モードにおいて、記録担体を印刷ユニットの印刷ヘッドに対して位置決めする印刷サドルとして用いられる。ウェブ状の記録担体は、この場合、印刷運転状態でも、保守運転状態でも、トランスファキャリッジに少なくとも部分的に巻き掛かることができる。
【0009】
さらにトランスファキャリッジは、印刷運転状態において、少なくとも部分的に、記録担体の一部セクションを中間貯蔵する中間貯蔵モジュールの上に配置されていることができる。中間貯蔵モジュールにおいて記録担体の一部セクションを中間貯蔵する領域は、好ましくは、保守運転状態において異物粒子および/またはクリーニング液を捕集する捕集槽の下に配置されている。
【0010】
さらなる特徴および利点は、以下の説明から看取可能であり、実施の形態については、添付の図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ウェブ状の記録担体にインクで印刷するインクジェット印刷装置を、乾燥モジュールの、代替的に装入可能な2つの乾燥ユニットとともに示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したインクジェット印刷装置のモジュールを第1の視点から見た概略図である。
【
図3】
図1に示したインクジェット印刷装置のモジュールを第2の視点から見た概略図である。
【
図4】
図1に示したインクジェット印刷装置のモジュールの詳細側面図である。
【
図5】別の一実施の形態のインクジェット印刷装置のモジュールの簡略化した概略的な配置を示す図である。
【0012】
図1は、ウェブ状の記録担体にインクで印刷するインクジェット印刷装置10の斜視図を、乾燥モジュールM4の、代替的にインクジェット印刷装置10内に装入可能な2つの乾燥ユニット140,240とともに示している。インクジェット印刷装置10は、特に、
図4に示す記録担体12に、高い速度、典型的には3m/sまでの速度でもって、多色運転で印刷し得る高性能プリンタである。記録担体12としては、紙、包装材料、繊維素材、板紙、プラスチックおよび/もしくは金属からなるフィルム、またはハイブリッド材料、例えば紙内のプラスチック領域もしくは金属領域が考え得る。
【0013】
インクジェット印刷装置10のハウジング50は、乾燥モジュールM4の領域において開放されているので、例えば乾燥ユニット140を乾燥モジュールM4から除去し、搬送カート142上に下ろし、かつ別の乾燥ユニット240を乾燥モジュールM4内に装入することが可能であり、その逆もまた然りである。乾燥ユニット140は、接触加熱要素144を有し、接触加熱要素144は、好ましくは加熱サドルを有し、加熱サドルを介して、好ましくはウェブ状の記録担体は、案内されているので、記録担体は、加熱サドルの表面と接触する。加熱要素144は、乾燥ユニット140の、記録担体の搬送方向で斜め下方に傾けられた前面に配置されている。乾燥ユニット140の、記録担体が続いて斜め上方に通過案内される背面には、少なくとも1つの別の接触加熱要素144および/または記録担体を冷却する少なくとも1つの冷却要素が配置されていてもよい。乾燥ユニット240は、少なくとも1つの放射加熱要素244、特にIR放射加熱要素244を有し、放射加熱要素244に沿って、記録担体は、印刷時に被着されたインクを乾燥させるために通過案内される。この乾燥ユニット240の場合も、加熱要素244は、乾燥ユニット240の、記録担体の搬送方向で斜め下方に傾けられた前面に配置されている。乾燥ユニット240の、記録担体が続いて斜め上方に通過案内される背面には、少なくとも1つの別の放射加熱要素244および/または記録担体を冷却する少なくとも1つの冷却要素が配置されていてもよい。
【0014】
図2は、
図1に示したインクジェット印刷装置10の構成ユニットを第1の視点から見た概略図を示し、
図3は、第2の視点から見た概略図を示しており、同じ要素および/または同じ機能を有する要素は、同じ符号を有している。インクジェット印刷装置10内に装入された乾燥ユニットは、乾燥ユニット140であるか、または乾燥ユニット240であり、共通して符号40を付してある。
【0015】
インクジェット印刷装置10は、乾燥モジュールM4の他に、それぞれ複数の印刷ヘッドを有する複数の印刷バーを有する印刷モジュールM1と、印刷すべきウェブ状の記録担体をインクジェット印刷装置10へ供給するけん引モジュールM2と、例えば印刷中断時に記録担体の一部セクションを中間貯蔵する中間貯蔵モジュールM3と、電気系モジュールM5であって、別のモジュールと、好ましくは、この電気系モジュールM5および/または別のモジュールを制御および/または監視する制御ユニットとに給電する電力部を有する電気系モジュールM5と、空気吸出モジュールM6と、印刷モジュールM1の印刷バーの印刷ヘッドを冷却する冷却モジュールM7と、印刷された記録担体を排出するけん引モジュールM8と、印刷モジュールM1の印刷ヘッドをクリーニングするクリーニング要素を有するクリーニングモジュールM9と、インク、プライマおよび/または残留インクならびにクリーニング液を取り扱う液体マネジメントモジュールM10と、記録担体を乾燥後に冷却する冷却モジュールM11と、トランスファキャリッジを有するサドルモジュールM12と、を備えている。記録担体は、印刷時、インクジェット印刷装置10の印刷運転状態において、印刷ヘッドに対向するように配置されるトランスファキャリッジ18を介して案内され、その結果、トランスファキャリッジ18は、印刷運転モードでは印刷サドルとして用いられる。サドルモジュールM12の構造およびトランスファキャリッジ18の機能については、以下に
図4との関連でさらに詳しく説明する。
【0016】
クリーニングモジュールM9は、サドルモジュールM12の側方に並んで配置されており、クリーニング要素として、少なくとも1つの噴霧要素および/または払拭要素を有し、噴霧要素および/または払拭要素は、印刷運転状態ではサドルモジュールM12のトランスファキャリッジ18の側方に並んで、ひいては印刷モジュールM1の側方に並んで配置されている。保守運転状態では、少なくとも1つの噴霧要素および/または払拭要素は、印刷モジュールM1の印刷ヘッドを公知の方法でクリーニングすべく、印刷モジュールM1の下の領域内へ移動される。
【0017】
印刷モジュールM1をサドルモジュールM12の上に配置し、クリーニングモジュールM9をサドルモジュール12の側方に並んで配置し、かつ/または液体マネジメントモジュールM10を印刷モジュールM1より下、かつ好ましくは、印刷モジュールM1の側方に並んで配置する構成は、インクジェット印刷装置10の、
図1ないし
図3に示したモジュール形の構造に関して最適である。モジュールM10は、特に液体を、例えばインクを領域60~66内で、プライマを領域68内で、クリーニング液を領域70内で、そして残留インクを取り扱う。
【0018】
記録担体の、特に乾燥モジュールM4による後処理、および/または印刷された画像の、特にインラインラインカメラを用いた画像捕捉が、印刷モジュールM1から空間的に切り離されて、かつ液体が取り扱われる領域、例えば液体マネジメントモジュールM10から空間的に切り離されて実施される。これにより、単純なモジュール形の構造が、インクジェット印刷装置10の個々のモジュールを形成する際の大きなフレキシビリティで達成される。
【0019】
図4は、ウェブ状の記録担体12にインクで印刷するインクジェット印刷装置10のモジュールM1およびM12の詳細側面図を示している。記録担体12に付した矢印は、記録担体12の搬送運動Tを表している。
【0020】
印刷モジュールM1は、印刷ユニット14を有し、印刷ユニット14内には、複数の印刷バー16が配置されており、印刷バー16は、それぞれ、基本色、例えばイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの色分解を印刷する。印刷バー16は、記録担体12の全幅にわたって延在し、1つまたは複数の印刷ヘッドを有していることができ、印刷ヘッドのノズルから、インク滴が、記録担体12に向けて吐出される。印刷運転状態において、印刷バー16は、位置固定であり、記録担体12は、搬送方向Tに沿って印刷ユニット14の下を前進移動される。印刷ユニット14の下には、保守運転状態において印刷ユニット14の印刷ヘッドのクリーニング時にクリーニング液および異物粒子を捕集する捕集槽17が配置されている。
【0021】
印刷ユニット14と捕集槽17との間の高さw2を有する空間R内には、サドルモジュールのトランスファキャリッジ18が配置されており、トランスファキャリッジ18は、記録担体12を案内する多数のローラ20(1つにのみ符号を付した)を含んでいる。トランスファキャリッジ18は、走行可能に支持されている。図示の印刷運転状態において、トランスファキャリッジ18は、空間R内に進入走行されており、その結果、記録担体12は、種々異なる印刷バー16に対向し、インクで印刷され得る。この状態において、記録担体12は、左向きに開口した蛇行部を形成し、ロール22および23を有するロールペアと、偏向ロール24とを介して、ローラ20に供給される。
【0022】
印刷運転状態において、記録担体12は、別の偏向ロール26を介して導出され、後続のモジュール、例えば中間貯蔵モジュールおよび/または乾燥モジュールM4に供給される。
【0023】
トランスファキャリッジ18は、滑動するように例えばガイドレール(図示せず)上に支持されており、保守運転状態のセッティングのために、左方に、破線で示す保守位置へ摺動されることができ、このとき行程w1を経る。このとき、偏向ロール24は、トランスファキャリッジ18とともに連れ動かされるので、トランスファキャリッジ18を取り巻く記録担体12の蛇行部の長さは、実質的に維持される。蛇行部の左端にのみ、印刷運転状態と保守運転状態との間での、蛇行部のある程度の長さの違いが生じ得ることが看取可能である。このことは、補償装置28により補償され、補償装置28において、偏向ロール26は、この長さの差を補償すべく、レバーアーム30により揺動軸線32回りに揺動され、持ち上げられる。
【0024】
長さ中立的な補償のためには、記録担体12を偏向させる位置固定の偏向ロール22も役立つ。補償装置28により、トランスファキャリッジ18の移動は、全体として長さ中立化され、その結果、記録担体12は、偏向ロール26の下流では、かつロール22および23の上流では、この移動によって位置変化を被らない。ロール22,23と偏向ローラ26との間の記録担体12の蛇行部の長さは、一定のままである。このことは極めて有利である。それというのも、こうして、後置される乾燥ユニット40に、記録担体12が、長さ変動または位置変動なしに供給されるからである。セクションの二重の乾燥は、これにより回避される。印刷運転状態から保守運転状態への、そして印刷運転状態へ戻す切り換わりの際にも、長さ変化または位置変化は生じず、このことは、連続的かつ一様な運転フローへと至る。ローラ22,23,24,20,26は、記録担体12の裂断を防止すべく、遊転している。
【0025】
クリーニングモジュールM9の図示しない別のクリーニング要素、例えばドクタ、払拭要素および/または印刷バー16用の閉鎖キャップは、印刷運転状態では空間Rの側方に並んで配置されている。保守運転状態では、これらのクリーニング要素の少なくとも一部は、印刷ヘッドをクリーニングすべく、空間R内に進入移動される。
【0026】
図4に示した配置では、トランスファキャリッジ18は、保守運転状態のセッティングのために、左方に搬送方向Tで走行させられる。別の実施の形態では、トランスファキャリッジ18を右方に搬送方向Tとは反対方向で、保守運転状態のセッティングのために走行させることも可能である。
【0027】
インクジェット印刷装置10のすべての重厚長大なユニットおよびモジュール、特に印刷ユニット14は、固定に据え付けられていることができる。移動されなければならないのは、僅かな要素だけであり、例えばクリーニングユニット17のクリーニング要素およびトランスファキャリッジ18である。
【0028】
特に印刷ユニット14では、種々異なる接続ライン、例えばデータ伝送用の電気的なライン、センサシステム、アクチュエータシステム、光-電気的なデータバス等や、インク供給用のチューブ、冷却ライン等の接続ラインための運動補償用のループが、一切必要ないか、小さなループしか必要ない。接続ラインは、最適に短く、位置固定に、かつドラグチェーンなしに敷設可能である。
【0029】
トランスファキャリッジ18を印刷運転状態で捕集槽17と印刷ユニット14との間に配置し、クリーニング要素を印刷運転状態でトランスファキャリッジ18の側方に並んで配置したことにより、インクジェット印刷装置10の単純かつコンパクトな構造、特に、インクジェット印刷装置10の
図1ないし
図3との関連で説明したモジュール形の構造が可能である。
【0030】
トランスファキャリッジ18およびクリーニング要素の移動のためには、比較的小さな駆動部および簡単なガイドレールで十分である。可動のトランスファキャリッジ18および可動のクリーニング要素のために必要な接続ラインに要する技術的な手間あるいはコストは、場合によっては必要なドラグチェーンを考えても、比較的小さい。
【0031】
印刷モジュールM1の印刷ユニット14、特に印刷バーは、インクジェット印刷装置10の印刷運転状態でも、保守運転状態でも、位置固定に配置されている。これにより、印刷ユニット14に接続される電気的なラインおよび/または液体ラインも、位置固定にインクジェット印刷装置10のハウジング50内に配置されていることができる。これらの電気的なラインおよび/または液体ラインは、印刷運転状態と保守運転状態との移行時、動かされず、ひいてはその位置は不変である。
【0032】
トランスファキャリッジ18は、保守運転状態において、少なくとも部分的に、印刷モジュールM1の印刷ユニット14により印刷された記録担体12を乾燥させる乾燥モジュールM4の乾燥ユニット40,140,240の上に配置されていることができる。
【0033】
乾燥モジュールM4、特に乾燥ユニット40,140,240は、記録担体12を加熱要素144,244の通過後に冷却する少なくとも1つの冷却要素を有する冷却ユニット44を有している。
【0034】
既に言及したように、乾燥ユニット40,140,240は、少なくとも1つの加熱要素144,244を有している。加熱要素144,244のエミッション領域146,246は、記録担体12の搬送方向Tで斜め下方にかつ/または斜め上方に傾けられており、その結果、エミッション領域146,246は、水平平面に、好ましくは、30°~60°の範囲の角度をなして、特に40°~50°の範囲の角度をなして交わる。
【0035】
加熱要素144,244のエミッション領域146,246は、概して、特に、加熱要素244が熱放射を放出する平面であるか、または接触加熱要素140として構成される加熱要素140が、乾燥させたい記録担体12と接触する接触領域が配置されている平面である。接触加熱要素140の接触領域は、好ましくは、加熱サドルにより形成されており、加熱サドルを介して記録担体12は案内されている。
【0036】
これによりエミッション領域146,244は、記録担体12の搬送方向Tで垂直にも水平にも配置されておらず、好ましくは、傾けられた一平面内に配置されている。記録担体12の搬送方向Tで、エミッション領域146,246の始端は、エミッション領域146,246の終端とは異なる高さを有している。
【0037】
乾燥させるために、記録担体12は、少なくとも加熱要素144,244の領域において、加熱要素144,244のエミッション領域146,246に沿ってまたは加熱要素144,244のエミッション領域146,246に対して平行に動かされる。
【0038】
加熱要素144,244が、第1のエミッション領域146,246を有する第1の加熱要素144,244であり、かつ乾燥ユニット40,140,240が、第2のエミッション領域146,246を有する少なくとも1つの第2の加熱要素144,244を有しているとき、特に有利である。この場合、第1のエミッション領域146,246は、乾燥ユニット40,140,240の前面に配置され、第2のエミッション領域146,246は、乾燥ユニット40,140,240の背面に配置されていることができる。記録担体12は、この場合、まず乾燥ユニット40,140,240の前面に沿って、好ましくは、斜め下方に、続いて乾燥ユニット40,140,240の背面に沿って、好ましくは、斜め上方に通過案内され得る。
【0039】
乾燥ユニット40,140,240のエミッション領域146,246あるいは第1のエミッション領域146,246および/または第2のエミッション領域146,246は、乾燥モジュールM4の対角線に沿ってまたは乾燥モジュールM4の対角線に対して平行に延びていることができる。
【0040】
代替的または付加的に、少なくとも1つの加熱要素144,244が、乾燥ユニット40,140,240の前面に配置され、少なくとも1つの冷却要素が、背面に配置されており、記録担体12が、まず乾燥ユニット40,140,240の前面に沿って、好ましくは、斜め下方に、続いて乾燥ユニット40,140,240の背面に沿って、好ましくは、斜め上方に通過案内されると、特に有利である。
【0041】
冷却要素に対して付加的または代替的に、冷却ローラが乾燥モジュールM4内に配置されていてもよく、記録担体12は、加熱要素144,244の通過後、冷却ローラを介して案内されている。
【0042】
乾燥ユニット40,140,240の少なくとも1つの加熱要素144,244の上に、または側方にずらされて少なくとも1つの加熱要素144,244より上に、乾燥ユニット40の領域から空気を吸出する吸出アッセンブリまたは吸出通路が配置されていてもよい。
【0043】
図5は、インクジェット印刷装置10の、記録担体12の搬送面内に配置されるモジュールM1,M2,M3,M4,M5,M8およびM12の、簡略化した概略的な配置を示している。
図1ないし
図4に示した別のモジュールM6,M7,M9,M10,M11は、別の実施の形態では、そこに示した箇所とは別の箇所に配置されていてもよいし、または別のモジュール内に組み込まれていてもよい。記録担体12は、モジュールM1,M2,M3,M4,M5,M8およびM12の各々を通して案内される。これらのモジュールは、これにより記録担体面を規定する。
【0044】
別の実施の形態では、モジュールM2は、外部に配置されていてもよいし、モジュールM3内に組み込まれていてもよい。代替的または付加的に、別の実施の形態では、モジュールM8は、外部に配置されていてもよいし、モジュールM4内に組み込まれていてもよい。捕集槽17は、
図2および
図4に示すように、モジュールM3内に配置されていてもよいし、別の実施の形態では、モジュールM12内に配置されていてもよい。
【0045】
モジュールM1,M2,M3,M4,M5,M8およびM12の
図5に示した配置により、インクジェット印刷装置10の機能のモジュール形の切り離しにもかかわらず、高さの点でも、インクジェット印刷装置10の底面積、いわゆるフットプリントの点でも、必要な所要スペースは、僅かである。特に、モジュールM1~M12全体、または個々のモジュールM1~M12のユニット14,18,140,240の交換により、インクジェット印刷装置10の進化・拡張および/またはインクジェット印刷装置10の構成の変更が簡単に達成され得る。
【符号の説明】
【0046】
10 インクジェット印刷装置
12 記録担体
14 印刷ユニット
16 印刷バー
17 捕集槽
18 トランスファキャリッジ
20 ローラ
22,23 ロール
24 偏向ロール
26 偏向ロール
28 補償装置
30 レバーアーム
32 揺動軸線
40,140,240 乾燥ユニット
42 インラインスキャナ
44 冷却兼偏向ローラ
46 吸出通路
50 ハウジング
60,62,64,66 インクユニット
68 プライマユニット
70 洗浄液ユニット
142,242 搬送カート
144,244 加熱要素
146,246 エミッション領域
T 搬送方向
WP1 保守位置
w1 行程
w2 高さ
M1 印刷モジュール
M2 供給のけん引モジュール
M3 中間貯蔵モジュール
M4 乾燥モジュール
M5 電気系モジュール
M6 空気吸出モジュール
M7 印刷ヘッドの冷却モジュール
M8 排出のけん引モジュール
M9 払拭ユニットを有するクリーニングモジュール
M10 液体マネジメントモジュール
M11 乾燥の冷却モジュール
M12 トランスファキャリッジを有するサドルモジュール
【国際調査報告】