(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】オキサジアゾール置換スピロ環系化合物とその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 413/04 20060101AFI20240301BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20240301BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240301BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
C07D413/04 CSP
A61K31/4245
A61P37/02
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557260
(86)(22)【出願日】2022-04-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2022085113
(87)【国際公開番号】W WO2022213935
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202110384689.2
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522125515
【氏名又は名称】ヒーリオイースト ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522125526
【氏名又は名称】ヒーリオイースト サイエンス アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー、リンユン
(72)【発明者】
【氏名】イウ、シュイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ローロー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シューホイ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC58
4C063DD08
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC71
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
一連の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。前記化合物は、スフィンゴシン1-リン酸受容体1に関連する疾患を治療するために使用することができ、例えば、自己免疫疾患又は炎症である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物又はその薬学に許容される塩。
【化1】
(ただし、
R
1は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH
2、CN、C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
aにより置換され、
R
2は、H、C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
bにより置換され、
R
3は、C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
cにより置換され、
又は、R
2、R
3はそれらに連結された炭素原子と一緒にC
3-7シクロアルキルを形成し、
R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立してF、Cl、Br、I、OH、NH
2、CN及びCOOHから選択される。)
【請求項2】
R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立してF、Cl及びBrから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1は、H、F、Cl、Br、CN、-CH
3及び-
【化2】
から選択され、ここで、前記-CH
3及び
【化3】
は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
aにより置換される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
1は、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、CN、-CH
3、
【化4】
から選択される、請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
2は、H、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化5】
から選択され、ここで、前記-CH
3、-CH
2CH
3、
【化6】
は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
bにより置換される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
2は、H、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化7】
から選択される、請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
3は、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化8】
から選択され、ここで、前記-CH
3、-CH
2CH
3、
【化9】
は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
cにより置換される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R
3は、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化10】
から選択される、請求項7に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R
2、R
3はそれらに連結された炭素原子と一緒に
【化11】
を形成する、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
構造単位
【化12】
から選択される、請求項6、8又は9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
構造単位
【化13】
から選択される、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
下記の式で表される、化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化14】
【化15】
【請求項13】
前記化合物は下記の式で表される、請求項12に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化16】
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
フィンゴシン-1-リン酸受容体1のアゴニスト又はスフィンゴシン1-リン酸受容体1に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
前記疾患は、自己免疫疾患又は炎症である、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連のオキサジアゾール置換スピロ環系化合物とその使用に関し、具体的には、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
<関連申請の相互引用>
本出願は出願日が2021年04月09である中国特許出願CN202110384689.2の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は、細胞増殖、生存、リンパ球輸送、細胞骨格組織化及び形態形成などの幅広い生理活性を持つ多面発現性脂質メディエーターである。スフィンゴシンは、酵素セラミドの触媒作用によりセラミドから放出される。スフィンゴシンキナーゼの触媒作用により、スフィンゴシンがリン酸化されてスフィンゴシン1-リン酸(S1P)が生成され、スフィンゴシン1-リン酸受容体(S1PR)と相互作用して生理活性が生じる。
【0003】
スフィンゴシン-1-リン酸受容体1(S1PR1)は、内皮細胞分化遺伝子1(EDG1)としても称され、内皮細胞分化遺伝子(EDG)受容体ファミリーに属するGタンパク質共役受容体であり、S1PR1遺伝子によってコードされるタンパク質である。スフィンゴシン1-リン酸受容体(S1PR)には5つのサブタイプ(S1PR1-5)があり、そのうちスフィンゴシン1-リン酸受容体1(S1PR1)は内皮細胞膜に豊富に存在する。他のGタンパク質共役受容体と同様に、S1PR1は細胞外でそのリガンドを検出し、細胞内シグナル伝達経路を活性化して細胞応答を引き起こす。
【0004】
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は人体において非常に重要であり、主に血管系と免疫系を調節する。小分子S1P1アゴニストと阻害剤は、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の受容体への結合機構を模倣しており、そのシグナル伝達系において重要な生理学的役割を持つことが示されている。スフィンゴシン-1-リン酸受容体1(S1PR1)アゴニズムはリンパ球輸送を妨害し、リンパ節やその他の二次リンパ器官にリンパ球を隔離し、急速に可逆的なリンパ球減少症を引き起こす。臨床研究では、リンパ球の隔離が炎症性又は自己免疫疾患の反応を軽減し、免疫調節にとって重要であることが実証されている。
【0005】
現在、スフィンゴシン-1-リン酸受容体1(S1PR1)アゴニストの体内有効性研究が開示されており、自己免疫疾患の治療又は予防に使用されている。新規なスフィンゴシン-1-リン酸受容体1(S1PR1)アゴニストの発見と使用は大きな期待を抱いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
ただし、
R
1は、H、F、Cl、Br、I、OH、NH
2、CN、C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
aにより置換され、
R
2は、H、C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
bにより置換され、
R
3は、それぞれ独立してC
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシから選択され、ここでで、前記C
1-3アルキル及びC
1-3アルコキシは、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
cにより置換され、
又は、R
2、R
3はそれらに連結された炭素原子と一緒にC
3-7シクロアルキルを形成し、
R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立してF、Cl、Br、I、OH、NH
2、CN及びCOOHから選択される。
【0007】
本発明の一部の実施形態において、上記R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立してF、Cl及びBrから選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
本発明の一部の実施形態において、上記R
1は、H、F、Cl、Br、CN、-CH
3及び-
【化2】
から選択され、ここで、前記-CH
3及び-OCH
3は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
aにより置換され、R
a及び他の変量は本発明に定義された通りである。
【0008】
本発明の一部の実施形態において、上記R
1は、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、CN、-CH
3、
【化3】
から選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、上記R
2は、H、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化4】
から選択され、ここで、前記-CH
3、-CH
2CH
3、
【化5】
は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
bにより置換され、R
b及び他の変量は本発明に定義された通りである。
【0010】
本発明の一部の実施形態において、上記R
2は、H、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化6】
から選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
本発明の一部の実施形態において、上記R
3は、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化7】
から選択され、ここで、前記-CH
3、-CH
2CH
3、
【化8】
は、それぞれ独立して任意選択で1、2又は3つのR
cにより置換され、R
c及び他の変量は本発明に定義された通りである。
【0011】
本発明の一部の実施形態において、上記R
3は、-CH
3、-CH
2CH
3、
【化9】
から選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
【0012】
本発明の一部の形態において、上記R
2、R
3はそれらに連結された炭素原子と一緒に
【化10】
を形成し、他の変量は本発明に定義された通りである。
【0013】
本発明の一部の実施形態において、上記構造単位
【化11】
は、
【化12】
から選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、上記構造単位
【化13】
から選択され、他の変量は本発明に定義された通りである。
【0015】
本発明一部の実施形態は、更に上記の各変量を任意の組み合わせることにより形成される。
本発明は、更に下記の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化14】
【0016】
本発明は、更に下記の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化15】
【0017】
本発明は、更に化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、前記化合物は、
【化16】
の混合物(例えば、ラセミ混合物)である。
【0018】
本発明は、更に上記の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
本発明は、更にスフィンゴシン1-リン酸受容体1に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、上記の化合物又はその薬学的に許容される塩、或いは上記の医薬組成物の使用を提供する。
【0019】
本発明は、更にスフィンゴシン-1-リン酸受容体1のアゴニストとしての上記の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明の一部の実施形態において、前記疾患は、自己免疫疾患又は炎症である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の化合物は、有意なS1PR1アゴニスト活性を有し、より優れたバイオアベイラビリティを有する。
[定義及び説明]
【0021】
別途に説明しない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び連語は以下の意味を含む。1つの特定の用語又は連語は、特別に定義されない場合、不確定又は不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品又はその活性成分を指す。
【0022】
本明細書で用いられる「薬学的許容される」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織との接触に適し、毒性、刺激性、アレルギー反応又はほかの問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合う。
【0023】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の塩で、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的に無毒の酸又は塩基とで製造される。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の塩基でこれらの化合物と接触することで塩基付加塩を得ることができる。薬学的許容される塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン又はマグネシウム塩あるいは類似の塩を含む。本発明で化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の酸でこれらの化合物と接触することで酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の実例は、無機酸塩及び有機酸塩、さらにアミノ酸(例えばアルギニンなど)の塩、及びグルクロン酸のような有機酸の塩を含み、上記無機酸は、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含み、上記有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸やメタンスルホン酸などの類似の酸を含む。本発明の一部の特定的の化合物は、塩基性及び酸性の官能基を含有するため、任意の塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。
【0024】
本発明の薬学的許容される塩は、酸基又は塩基性基を含む母体化合物から通常の方法で合成することができる。通常の場合、このような塩の製造方法は、水又は有機溶媒あるいは両者の混合物において、遊離酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させて製造する。
【0025】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態が存在してもよい。本発明は、全てのこのような化合物を想定し、シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物並びに他の混合物、例えばエナンチオマー又は非エナンチオマーを多く含有する混合物を含み、全てのこれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。アルキル等の置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。全てのこれらの異性体及びこれらの混合物はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
別途に説明しない限り、用語「エナンチオマー」又は「光学異性体」とは互いに鏡像の関係にある立体異性体である。
別途に説明しない限り、用語「シス-トランス異性体」又は「幾何異性体」とは二重結合又は環構成炭素原子の単結合が自由に回転できないことによるものである。
【0027】
別途に説明しない限り、用語「ジアステレオマー」とは分子が二つ又は複数のキラル中心を有し、かつ分子同士は非鏡像の関係にある立体異性体である。
別途に説明しない限り、「(+)」は右旋性を意味し、「(-)」は左旋性を意味し、「(±)」はラセミ体を意味する。
【0028】
【0029】
別途に説明しない限り、用語「互変異性体」又は「互変異性体の形態」とは室温において、異なる官能基の異性体が動的平衡にあり、かつ快速に互いに変換できることを指す。互変異性体は可能であれば(例えば、溶液において)、互変異性体の化学的平衡に達することが可能である。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピー互変異性体(prototropic tautomer)とも呼ばれる)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えばケト-エノール異性化やイミン-エナミン異性化を含む。原子価互変異性体(valence tautomer)は、一部の結合電子の再構成による相互変換を含む。中では、ケト-エノール互変異性化の具体的な実例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシ-3-ペンテン-2-オンの二つの互変異性体の間の相互変換である。
【0030】
別途に説明しない限り、用語「1つの異性体に富む」、「異性体豊富な」、「1つのエナンチオマーに富む」又は「エナンチオマー豊富な」とは、1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満で、且つこの異性体又はエナンチオマーの含有量が60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0031】
別途に説明しない限り、用語「異性体過剰率」又は「エナンチオマー過剰率」とは、2つの異性体又は2つのエナンチオマーの相対百分率の間の差を意味する。例えば、1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が90%であり、もう1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が10%である場合、異性体又はエナンチオマー過剰率(ee値)は80%である。
【0032】
光学活性な(R)-及び(S)-異性体ならびにD及びL異性体は、不斉合成又はキラル試薬又はほかの通常の技術を用いて調製することができる。本発明のある化合物の1つの鏡像異性体を得るには、不斉合成又はキラル補助剤を有する誘導作用によって調製することができるが、ここで、得られたジアステレオマー混合物を分離し、かつ補助基を分解させて単離された所要の鏡像異体性を提供する。あるいは、分子に塩基性官能基(例えばアミノ)又は酸性官能基(例えばカルボキシル)が含まれる場合、適切な光学活性な酸又は塩基とジアステレオマーの塩を形成させ、さらに本分野で公知の通常方式の方法によってジアステレオマーの分割を行った後、回収して単離された鏡像異体を得る。また、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、通常、クロマトグラフィー法によって行われ、上記クロマトグラフィーはキラル固定相を使用し、かつ任意の化学誘導法(例えば、アミンからカルバミン酸塩を生成させる)併用する。
【0033】
本発明の化合物は、化合物を構成する1つ又は複数の原子には、非天然の原子同位元素が含まれてもよい。例えば三重水素(3H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)のような放射性同位元素で化合物を標識することができる。又、例えば重水素を水素に置換して重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素で形成された結合は、通常の水素と炭素で形成された結合よりも強く、重水素化されていない薬物と比較して、重水素化された薬物には、毒性の副作用が軽減され、薬物の安定性が増し、治療効果が向上され、薬物の生物学的半減期が延ばされるという利点がある。本発明の化合物の同位体組成の変換は、放射性であるかいやかに関わらず、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
用語「任意」また「任意に」は後記の事項又は状況によって可能であるが必ずしも現れるわけではなく、かつ当該記述はそれに記載される事項又は状況が生じる場合によってその事項又は状況が乗じない場合を含むことを意味する。
【0035】
用語「置換された」は特定の原子における任意の1つ又は複数の水素原子が置換基で置換されたことで、特定の原子価状態が正常でかつ置換後の化合物が安定していれば、置換基は重水素及び水素の変形体を含んでもよい。置換基がケト基(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されたことを意味する。ケト基置換は、芳香族基で生じない。用語「任意に置換される」は、置換されてもよく、置換されなくてもよく、別途に定義しない限り、置換基の種類と数は化学的に安定して実現できれば任意である。
【0036】
変量(例えばR)のいずれかが化合物の組成又は構造に1回以上現れた場合、その定義はいずれの場合においても独立である。そのため、例えば、1つの基が0~2個のRで置換された場合、上記基は任意に2個以下のRで置換され、かついずれの場合においてもRは独立して選択肢を有する。また、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。
【0037】
連結基の数が0の場合、例えば、-(CRR)0-は、当該連結基が単結合であることを意味する。
【0038】
そのうち1つの変量が単結合の場合、それで連結する2つの基が直接連結し、例えばA-L-ZにおけるLが単結合を表す場合、この構造は実際にA-Zになる。
【0039】
置換基がない場合、当該置換基が存在しないことを表し、例えば、A-XのXがない場合、当該構造が実際にAとなることを表す。挙げられた置換基に対してどの原子を通して置換された置換基が明示しない場合、このような置換基はその任意の原子を通して結合することができ、例えば、置換基としてのピリジニルは、ピリジン環の任意の炭素原子を通して置換基に結合してもよい。
【0040】
【0041】
上記連結基、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。
【0042】
特に明記しない限り、ある基が1つ以上の結合可能な部位を有する場合、該基の任意の1つ以上の部位は、化学結合によって他の基に結合することができる。該化学結合の結合方式が非局在であり、且つ結合可能な部位にH原子が存在する場合、化学結合を結合すると、該部位のH原子の個数は、結合された化学結合の個数に応じて相応の価数の基に減少する。前記部位が他の基と結合する化学結合は、直線実線結合(
【化19】
)、直線破線結合(
【化20】
)、又は波線(
【化21】
)で表すことができる。例えば、-OCH
3の直線実線結合は、該基の酸素原子を介して他の基に結合されていることを意味する。
【0043】
【化22】
中の直線の破線結合は、該基内の窒素原子の両端が他の基に結合されていることを意味する。
【化23】
中の波線は、当該フェニル基の部位1と2の炭素原子を介して他の基に結合されていることを意味する。
【0044】
【化24】
は、当該ピペリジニル基の任意の結合可能な部位が1つの化学結合によって他の基に結合できることを意味し、少なくとも
【化25】
の四つの結合形態を含み、H原子が-N-に描かれていても、
【化26】
この結合形態の基が含まれるが、1つの化学結合が接続されると、その部位のHは1つ減少して対応する一価ピペリジンになる。
【0045】
別途に定義しない限り、化合物に二重結合構造、例えば炭素炭素二重結合、炭素窒素二重結合及び窒素窒素二重結合が存在し、且つ二重結合における各原子に2つの異なる置換基が結合されている場合(窒素原子を含む二重結合において、窒素原子における一対の孤立電子対はそれに連結されている1つの置換基と見なされる)、当該化合物の二重結合上の原子とその置換基が(
【化27】
)で表される場合、当該化合物の(Z)形異性体、(E)形異性体、又は2つの異性体の混合物を意味する。
【0046】
別途に定義しない限り、用語「C1-3アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~3個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-3アルキルにはC1-2とC2-3アルキルなどが含まれ、それは1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)及び多価(例えばメチン)であってもよい。C1-3アルキルの実例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)を含むが、これらに限定されない。
別途に定義しない限り、用語「C1-3アルコキシ」は酸素原子を介して分子の残り部分に連結した1~3個の炭素原子を含むアルキル基を表す。前記C1-3アルコキシは、C1-2、C2-3,C3及びC2アルコキシなどが含まれる。C1-3アルコキシの実例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ(n―プロポキシ又はイソプロポキシを含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0047】
別途に定義しない限り、「C3-7シクロアルキル」は、3~7個の炭素原子で構成された飽和環状炭化水素基であり、それは、単環式及び二環式環系を含み、ここで、二環式環系にはスピロ環、縮合環及び架橋環が含まれる。前記C3-7シクロアルキルには、C3-6、C3-5、C4-7、C4-6、C4-5、C5-7又はC5-6シクロアルキルなどが含まれ、それは1価、2価及び多価であってもよい。C3-7シクロアルキルの実例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル、スピロヘプタンなどを含むが、これらに限定されない。
用語「脱離基」とは別の官能基又は原子で置換反応(例えば求核置換反応)で置換されてもよい官能基又は原子を指す。例えば、体表的な脱離基は、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、塩素、臭素、ヨウ素、例えばメタンスルホン酸エステル、トルエンスルホン酸エステル、p-ブロモベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステル、例えばアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシなどのアシルオキシ基を含む。
【0048】
用語「保護基」は「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」又は「メルカプト保護基」を含むが、これらに限定されない。用語「アミノ保護基」とはアミノ基の窒素の位置における副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なアミノ酸保護基は、ホルミル;アルカノイル(例えばアセチル、トリクロロアセチル又はトリフルオロアセチル)のようなアシル;tert-ブトキシカルボニル(Boc)のようなアルコキシカルボニル;ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及び9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のようなアリールメトキシカルボニル;ベンジル(Bn)、トリフェニルメチル(Tr)、1,1-ビス(4’-メトキシフェニル)メチルのようなアリールメチル;トリメチルシリル(TMS)及びtert-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリルなどを含むが、これらに限定されない。用語「ヒドロキシ保護基」とはヒドロキシの副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なヒドロキシ保護基は、メチル、エチル及びt-ブチルのようなアルキル、アルカノイル(例えばアセチル)のようなアシル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルチル(Fm)及びジフェニルメチル(DPM)のようなアリールメチル、トリメチルシリル(TMS)及びt-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリルなどを含むが、これらに限定されない。
本発明の化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造することができ、以下に挙げられた具体的な実施形態、他の化学合成方法と合わせた実施形態及び当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物の構造は、当業者に周知の従来の方法によって確認することができ、本発明が化合物の絶対配置に関する場合、絶対配置は、当業者の従来の技術的手段によって確認することができる。例えば、単結晶X線回折(SXRD)、培養された単結晶はBruker D8 venture回折計によって収集され、光源はCuKα放射線、走査方法:φ/ω走査、関連データを収集した後、更に直接法は(Shelxs97)結晶構造解析により、絶対配置を確認できる。
【0050】
化合物は本分野の通常の名称又はChemDraw(登録商標)ソフトによって名付けられ、市販化合物はメーカーのカタログの名称が使用された。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の不利な制限を意味するものではない。本発明の化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造することができ、以下に挙げられた具体的な実施形態、他の化学合成方法と合わせた実施形態及び当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。当業者にとって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の特定の実施形態において様々な変更及び修正を行うことができることは明らかである。
【0052】
【0053】
ステップ1
化合物1a(2g、9.75mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、0℃で、反応系に順次に塩化オキサリル(3.71g、29.24mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(71.24mg、974.61μmol)を加え、反応溶液を20℃で0.5時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して溶媒を除去し、得られた粗生成物1bは、直接に後の反応に使用してもよい。
【0054】
ステップ2
化合物1d(280.43g、1.54mol)をN,N-ジメチルホルムアミド(100mL)に溶解させ、25℃で、反応系にカリウムtert-ブトキシド(166.15g、1.48mol)をバッチで加え、反応溶液を25℃で、3時間撹拌した後、反応系にゆっくりと1c(250g、1.18mol)をバッチで加え、反応溶液を25℃で、13時間撹拌した。他の並行バッチを合わせ(1dの投与量は840g)て後処理を実行し、反応溶液に水(1600mL)を加え、反応溶液を酢酸エチル(6L×5)で抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水(1.6L×1)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した後、粗生成物を得た。粗生成物を中性アルミナカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、2/1~1/1、V/V)で分離して化合物1eを得た。MS-ESI 計算値:[M+H]+ 267及び269, 実測値:267及び269。
【0055】
ステップ3
化合物1e(767g、2.87mol)をジメチルスルホキシド(3000mL)に溶解させ、25℃で、反応系に炭酸セシウム(748.44g、2.30mol)を加え、反応溶液を70℃に昇温させ、反応系にゆっくりとニトロメタン(525.81g、8.61mol)を滴下し、反応溶液を70℃で12時間撹拌した。他の並行バッチを合わせ(1eの投与量は767g)て後処理を実行し、反応溶液に水(2400mL)を加え、反応溶液を酢酸エチル(10L×1及び5L×1)で抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水(5L×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(2kg)で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を中性アルミナカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、1/1、V/V)で分離して化合物1fを得た。
【0056】
ステップ4
化合物1f(725g、2.21mol)をエタノール(2175mL)及び水(725mL)に溶解させ、25℃で、反応系に塩化アンモニウム(354.54g、6.63mol)を加え、反応溶液を80℃に昇温させ、反応系にゆっくりと鉄粉末(370.14g、6.63mol)をバッチで加え、反応溶液を80℃で12時間撹拌した。他の並行バッチを合わせ(1fの投与量は725g)て後処理を実行し、反応溶液を濾過し、ケーキを酢酸エチル(8L)及び水(4L)で順次に濯ぎ、濾液を濃縮して部分溶媒を除去し、次に、反応系に水(4L)を加え、酢酸エチル(4L×2)で抽出し、合わせた有機相を飽和食塩水(3L×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(2kg)で乾燥させ、濾過し、濃縮した後粗生成物を得た。粗生成物を混合溶媒(n-ヘプタン/酢酸エチル、1/1、V/V)で、25℃で、12時間撹拌してスラリー化させ、濾過し、乾燥させた後化合物1gを得た。MS-ESI 計算値:[M+H]+ 266及び268, 実測値:266及び268。
【0057】
ステップ5
化合物1g(50g、178.06mmol)をテトラヒドロフラン(350mL)に溶解させ、20℃で反応系にボラン-ジメチルスルフィド溶液(10M、35.61mL)を一滴ずつ加え、次に、温度を70℃に昇温させ、70℃で12時間撹拌した。他の並行バッチを合わせ(1gの投与量は50g)て後処理を実行し、80℃で反応溶液を塩酸水溶液(1M、400mL)に注ぎ、反応溶液を酢酸エチル(200mL×3)で抽出し、得られた水相を飽和炭酸ナトリウム水溶液でpHを約9に調節し、水相をジクロロメタン(300mL×3)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(100g)で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物1hは、更に精製せず、直接に次の反応に使用した。MS-ESI 計算値:[M+H]+ 252及び254, 実測値:252及び254。
【0058】
ステップ6
化合物1h(22g、87.25mmol)をジクロロメタン(130mL)に溶解させ、反応系にトリエチルアミン(21.19g、209.40mmol)及びジ-tert-ブチルジカーボネート(22.85g、104.70mmol)を加え、反応溶液を20℃で12時間撹拌した。他の並行バッチを合わせ(1hの投与量は22g)て後処理を実行し、反応系に水(800mL)を加え、反応溶液をジクロロメタン(500mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(100g)で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、100/1~10/1、V/V)で分離して化合物1iを得た。MS-ESI 計算値::[M-tBu+H]+ 296及び298, 実測値:296及び298。
【0059】
ステップ7
化合物1i(42.9g、121.78mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)(4.46g、4.87mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(4.64g、9.74mmol)及びシアン化亜鉛をN,N-ジメチルホルムアミド(400mL)に順次に加え、反応系を窒素ガスで置換した後、90℃で12時間撹拌し、反応系に水(1000mL)を加え、濾過し、ケーキを酢酸エチル(200mL×2)で洗浄し、水相を酢酸エチル(300mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、50/1~10/1、V/V)で分離して化合物1jを得た。MS-ESI 計算値:[M-tBu+H]+ 243, 実測値:243。
【0060】
ステップ8
化合物1j(12.5g、41.89mmol)をエタノール(120mL)に溶解させ、反応系に順次に塩酸ヒドロキシルアミン(4.64g、9.74mmol)及びトリエチルアミン(4.64g、9.74mmol)を加え、反応溶液を80℃で5時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後反応系に水(200mL)を加え、水相を酢酸エチル(150mL×2)で抽出し、合わせた有機相を水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物1kを更に精製せず、直接に次の反応に使用した。MS-ESI 計算値:[M-tBu+H]+ 276, 実測値:276。
【0061】
ステップ9
化合物1k(2.7g、7.14mmol)及び化合物1b(2.08g、9.28mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解させ、反応系にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.77g、21.41mmol)を滴下し、反応溶液を20℃で12時間撹拌した。反応溶液を濃縮した後反応系に水(80mL)を加え、水相をジクロロメタン(40mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(10g)で乾燥させ、濾過し、濃縮した後粗生成物を得た。粗生成物1lを更に精製せず、直接に次の反応に使用した。MS-ESI 計算値:[M-tBu+H]+ 463, 実測値:463。
【0062】
ステップ10
化合物1l(5g、9.64mmol)をアセトニトリル(50mL)に溶解させ、反応系に水酸化ナトリウム(1.54g、38.57mmol)を加え、反応溶液を27℃で12時間撹拌した。反応系に水(80mL)を加え、水相を酢酸エチル(40mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、濾過し、濃縮した後粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、3/1、V/V)で分離して化合物1mを得た。MS-ESI 計算値:[M-tBu+H]+ 445, 実測値:445。
【0063】
ステップ11
化合物1m(2.1g、4.20mmol)を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、反応系に塩化水素酢酸エチル溶液(4M、20mL)を加え、反応溶液を20℃で0.5時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物1nの塩酸塩を更に精製せず、直接に次の反応に使用した。MS-ESIの計算値:[M + H]+ 401、実測値:401。
【0064】
ステップ12
化合物1nの塩酸塩(1g、2.29mmol)をアセトニトリル(15mL)に溶解させ、反応系に順次にヨウ化カリウム(189.96mg、1.14mmol)、炭酸カリウム(948.93mg、6.87mmol)及び化合物1o(621.47mg、3.43mmol)を加え、反応溶液を85℃で12時間撹拌した。反応系に水(30mL)を加え、水相を酢酸エチル(20mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(5g)で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、5/1~3/1、V/V)で分離して化合物1pを得た。MS-ESIの計算値:[M + H]+ 501、実測値:501。
【0065】
ステップ13
化合物1p(810mg、1.62mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、反応系に水素化ホウ素リチウム(110mg、5.05mmol)を滴下し、反応溶液を20℃で0.5時間撹拌した後、70℃に昇温させ、12時間撹拌を続けた。反応系に塩酸水溶液(1N、30mL)を加え、水相を酢酸エチル(30mL×2)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウム(10g)で乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取高速液体クロマトグラフィー(カラム:Waters Xbridge C18 150×50mm×10μm;移動相:10mmol/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液-アセトニトリル;勾配:アセトニトリル62%~92%、10min)で分離して化合物1を得た。MS-ESIの計算値:[M + H]+ 473、実測値:473。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ = 8.47 - 8.41 (m, 2H), 8.01 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.48 - 7.37 (m, 2H), 5.00 - 4.94 (m, 1H), 3.47 (s, 2H), 3.31 - 3.27 (m, 2H), 3.11 - 3.03 (m, 1H), 3.03 - 2.95 (m, 3H), 2.30 - 2.22 (m, 1H), 2.21 - 2.13 (m, 1H), 2.11 - 1.96 (m, 2H), 1.48 (d, J = 6.1 Hz, 6H), 1.14 (s, 6H)。
【0066】
生物学的活性評価
試験例1:S1PR1アゴニスト活性に対する本発明の化合物の体外評価
実験目的:S1PR1に対する化合物のアゴニスト活性を検出するためである。
一.細胞処理
1.標準的な手順に従ってPathHunter細胞株を解凍した。
2.細胞を20μlの384ウェルマイクロプレートに接種し、37℃で適切な時間培養した。
【0067】
二.アゴニスト
1.アゴニストの測定は、細胞を試験試料と培養して反応を誘導した。
2.試験ストック溶液を緩衝液で5倍に希釈した。
3.5μlの5倍希釈溶液を細胞に加え、37℃で90~180分間培養した。溶媒濃度は1%であった。
【0068】
三.信号検出
1.12.5μL又は15μLの体積比50%のPathHunter検出試薬を1回加え、室温で1時間培養して検出信号を生成させた。
2.PerkinElmer EnvisionTM機器でマイクロプレートを読み取り、化学発光信号検出を実行した。
【0069】
四.データ分析
1.CBISデータ分析キット(ChemInnovation、CA)を使用して化合物活性分析を実行した。
2.計算式:
%活性=100%×(平均試験試料RLU-平均溶媒RLU)/(平均最大対照リガンド-平均溶媒RLU)
【0070】
実験結果は表1に示された通りである:
【表1】
結論:本発明の化合物は、いずれも有意な又は予想外のS1PR1アゴニスト活性を有している。
【0071】
試験例2:本発明の化合物の薬物動態研究
実験目的:SDラットにおける化合物の薬物動態を試験するためである。
実験材料:
Sprague Dawley ラット(オス、200~300g、7~9週齢、Shanghai Slack)
【0072】
実験操作:
化合物の静脈内注射及び経口投与後のげっ歯類の薬物動態特性を標準プロトコルで試験し、ラットに単回静脈内注射及び経口投与した。経口溶媒は、0.5%のメチルセルロース及び0.2%のTween80水溶液であり、静脈内注射溶媒は、5:95のDMSO及び10%のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン水溶液であった。48時間以内に全血試料を収集し、3000gで15分間遠心分離し、上清を分離して血漿試料を得、4倍体積で内部標準を含むアセトニトリル溶液を加えてタンパク質を沈殿させ、遠心分離して上清を取り、同じ体積の水を加えて更に遠心分離して上清を注入し、LC-MS/MS分析法により血中薬物濃度の定量分析し、ピーク濃度、ピーク時間、クリアランス、半減期、組織分布、薬物-時間曲線下の面積、バイオアベイラビリティなどの薬物動態パラメーターを計算した。
【0073】
実験結果は表2に示された通りである:
【表2】
結論:本発明の化合物は、SDラットの薬物動態において、比較的に優れたバイオアベイラビリティ、比較的に高い薬物-時間曲線下の面積及び比較的に長い半減期を有している。
【国際調査報告】