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特表2024-510653急性虚血性脳卒中を治療するDC009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】急性虚血性脳卒中を治療するDC009
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4725 20060101AFI20240301BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20240301BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20240301BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240301BHJP
【FI】
A61K31/4725
A61P9/10
A61K31/616
A61K31/4365
A61K31/4545
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557404
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2022082100
(87)【国際公開番号】W WO2022199551
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,336
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517413638
【氏名又は名称】ルモサ セラピューティクス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】リン ジュン-チン
(72)【発明者】
【氏名】イェ シェン-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ペン シーチー
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ デイヴィッド チー-クアン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086CB05
4C086CB26
4C086DA17
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA45
(57)【要約】
【課題】本発明は、低用量のDC009を1回以上投与することを含む、ヒトの急性虚血性脳卒中を治療する方法に関する。
【解決手段】該用量は、約0.01~0.075mg/kg/回である。低用量投与は、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するのに安全で有効である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用量が約0.01~0.075mg/kg/回である、ヒトの急性虚血性脳卒中を治療する方法において使用されるDC009
【化1】
の化合物。
【請求項2】
前記用量は、約0.025~0.05mg/kg/回である、請求項1に記載の使用される化合物。
【請求項3】
前記用量は、約0.025mg/kg/回である、請求項2に記載の使用される化合物。
【請求項4】
前記用量は、約0.05mg/kg/回である、請求項2に記載の使用される化合物。
【請求項5】
前記用量は、少なくとも1日1回投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項6】
前記用量は、1日2回投与される、請求項5に記載の使用される化合物。
【請求項7】
前記用量は、約3~12時間の投与間隔で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項8】
前記用量は、少なくとも1日1回で、2日間又は3日間投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項9】
前記用量は、少なくとも1日2回で、3日間投与される、請求項4に記載の使用される化合物。
【請求項10】
前記用量は、約3~12時間の投与間隔で投与される、請求項9に記載の使用される化合物。
【請求項11】
急性虚血性脳卒中の発症後、直ちに又は1~24時間以内に被験者に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項12】
静脈内注入及び/又はボーラス注射によって投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項13】
静脈内注入によって投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項14】
5~60分間かけて静脈内注入によって投与される、請求項13に記載の使用される化合物。
【請求項15】
アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと同時に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【請求項16】
投与後の被験者の血漿中のCmaxは、200ng/mL未満である、請求項1~15のいずれか1項に記載の使用される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低用量の3S-6,7-ジヒドロキシ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-アシル-Lys(Pro-Ala-Lys)(CAS登録番号(RN):1639303-73-3)を用いてヒトの急性虚血性脳卒中を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、血管の原因による中枢神経系の急性局所損傷に起因する神経学的欠損として古典的に特徴付けられる。虚血性脳卒中は、全脳卒中の約87%を占め、10%が脳内出血であり、3%がクモ膜下出血である。毎年、世界中で1500万人が脳卒中を患っており、米国では、平均して40秒ごとに1人が脳卒中を経験している。世界的に、脳卒中は、60歳以上の死因の第2位であり、身体障害の主な原因となっている。
【0003】
組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)であるアルテプラーゼ(アクティバーゼ(登録商標))は、1996年にアメリカ食品医薬品局によって虚血性脳卒中の治療薬として承認された最初の薬剤であった(BLA 103172/S-1055)。アルテプラーゼは、急性虚血性脳卒中(AIS)を患った被験者の転帰(outcome)を改善することが示されているが、症状発現後の3時間以内(米国内)又は4.5時間以内の投与のみが承認されているため、その使用が制限され、症候性脳内出血のリスクがほぼ5倍になる。
【0004】
以上の理由により、アルテプラーゼの使用率は低く、脳卒中患者の約5%のみにアルテプラーゼが投与される。そのため、アルテプラーゼと同様の効果を達成できるが、出血の増加が少なく、及び/又は治療可能時間域が長い治療法を開発する必要がある。
【0005】
DC009は、ペプチド-テトラヒドロイソキノリン複合体であり、化学名が3S-6,7-ジヒドロキシ-1,1-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-アシル-Lys(Pro-Ala-Lys)又はL-リジン、N6-(L-プロリル-L-アラニル-L-リシル)-N2-[[(3S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジヒドロキシ-1,1-ジメチル-3-イソキノリニル]カルボニル](CAS登録番号:1639303-73-3)である。DC009は、リジン連結アームを介して血栓溶解ペプチド(Pro-Ala-Lys)と2つのC1-4アルキル基を有するテトラヒドロイソキノリン化合物とを結合することによって形成できる二成分複合体である。DC009の構造は、図1Aに示され、リジン連結アームとPro-Ala-Lysペプチドとの間のアミド結合は、図1Bに示される。
【0006】
医薬品開発は、動物とヒトの薬効及び安全情報の両方の評価を伴う段階的な処理である。非臨床安全性評価の目標は、一般的に、毒性作用の特徴を含み、この情報を用いて、人体試験のための初期の安全開始用量と用量範囲を推定し、潜在的な副作用を臨床的にモニタリングするためのパラメータを特定する。薬理学的作用量、化合物の完全な毒物学的プロファイル、及び治療薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)に関する情報を含む、関連する全ての前臨床データを考慮すべきである。
【0007】
成人の健康な被験者に対する新規化合物のヒト初回投与臨床試験における最大推奨開始用量(MRSD)は、動物無毒性量(NOAEL)に由来するヒト等価用量(HED)を安全係数で割ることによって決定されるべきである。通常用いられるデフォルトの安全係数は、10であり、これは、歴史的に受け入れられた値であるが、入手可能な情報に基づいて評価される必要がある。これは、FDAの医薬品評価研究センター(CDER)による拘束力のない助言である。しかし、安全係数10は、全ての場合に適切であるとは限らない。安全係数は、懸念が増大する理由がある場合に引き上げられるべきであり、安全性のさらなる保証を提供する入手可能なデータにより懸念が軽減される場合に引き下げられるべきである(Guidance for Industry ”Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers”、www.fda.gov/media/72309/download)。
【0008】
急性虚血性脳卒中(AIS)の治療法の開発は、この異質な疾患の病態生理学と臨床面が複雑であるため、困難かつ挑戦的な取り組みである。脳卒中発症後の3時間以内に活性化された組み換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rtPA)は、AISに対して現在承認されている唯一の治療法である。AIS治療法の開発における動物モデルの使用を評価するための実績は制限されている。AIS動物モデルでは、多くの介入が有効性を示しているが、これらの介入、主に神経保護薬は、患者のAISの転帰を改善することが示されていない(Fisher, al, Stroke.Volume 36, Issue 10, 1 October 2005; Pages 2324-2325)。動物実験と臨床試験における神経保護薬に関する結果の差異は大きな問題である。多くの神経保護薬は、様々な動物虚血性脳卒中モデルで有効であることが証明されているが、臨床試験では効果が示されたものがない(Xu, et al, Med Sci Monit Basic Res.2013 Jan 28;19:37-45. doi: 10.12659/msmbr.883750.)。
【0009】
急性虚血性脳卒中を治療する方法が必要になる。該方法は、効果的であり、副作用及び毒性が最小限であるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】DC009の化学構造を示す。
図1B】DC009の化学構造をNH-Lys-Ala-Proの詳細とともに示す。
図2】神経学的欠損の評価の方法を示す。
図3】ラットMCAOモデルにおけるDC009の単回投与による血流結果を示す。
図4】ラットMCAOモデルにおけるDC009の複数回投与による梗塞サイズ結果を示す。
図5】実施例1~10(ラットモデル)をまとめる。
図6】ヒト被験者におけるDC009の神経学的改善を示す。
図7】実施例11~16(ヒト臨床試験結果又はプロトコール)をまとめる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ラットにおけるDC009の血栓溶解効果及びフリーラジカル捕捉効果を考慮して、本発明者らは、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療する方法を発見した。該方法は、有効量のDC009又はその薬学的に許容される塩を、それを必要とする被験者に投与することを含み、DC009の量は、疾患を治療するのに有効であり、最小毒性量で安全なCmaxを提供する。本発明の方法は、適切な投与量を提供する。該投与量は、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するのに有効であり、出血のリスクを最小限に抑え、治療可能時間域を延長する可能性がある。
【0012】
本発明者らによるミニブタにおけるDC009の前臨床毒性結果によれば、本発明者らは、ミニブタにおける血漿曝露限界値を1177ng/mLと設定した。そして、本発明者らは、安全係数を設定して、初期臨床用量を受けたヒト被験者を保護するための安全余裕度を提供する。背景技術で説明したように、デフォルトの安全係数は、10であるが、利用可能な安全データに基づいて調整されてもよい。本発明において、ヒト被験者におけるDC009の投与は、血漿Cmaxが約200ng/mL以下、好ましくは約150ng/mL以下又は約110ng/mL以下となる用量に制限される。
【0013】
本発明者らは、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するための有効かつ安全なDC009の量が約0.01~0.075mg/kg/回(dose)又は約0.025~0.05mg/kg/回の低用量であることを発見した。例えば、有効かつ安全な用量は、約0.025mg/kg/回又は約0.05mg/kg/回である。
【0014】
本願全体を通して使用されるように、「約」とは、列挙された値の±10%を指す。
【0015】
本発明者らは、本発明の低用量のDC009が急性虚血性脳卒中を治療するのに有効であり、低い血漿中薬物レベルを提供し、潜在的な薬物毒性が低減されることを発見した。DC009の(消失)半減期は、非常に短く(半減期<5分間)、DC009は、投与後にすぐに循環系から排出され、投与後の30分間以降にヒト血漿においてほとんど測定できない。DC009の複数回投与は、DC009の蓄積を引き起こさず、DC009の治療効果は、各用量の薬物曝露によって達成される。
【0016】
DC009の薬学的に許容される塩(図1A及び1Bを参照)は、薬学的に許容される任意の塩、例えば、塩酸塩、即ち、L-リジン、N6-(L-プロリル-L-アラニル-L-リシル)-N2-[[(3S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジヒドロキシ-1,1-ジメチル-3-イソキノリニル]カルボニル]-塩酸塩(1:3)(CAS登録番号:2419930-71-3)を含む。DC009の分子式は、C32H51N7O8であり、遊離塩基の分子量は、661.8g/moleである。
【0017】
DC009化合物の製造は、米国公開第2016-0083423号の実施例63に開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体及びDC009化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を使用する。
【0018】
不活性成分である薬学的に許容される担体は、当業者によって従来の基準で選択することができる。薬学的に許容される担体としては、生理食塩水及び電解質水溶液;塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、ブドウ糖などのイオン性及び非イオン性浸透圧剤;水酸化物の塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩などのpH調整剤及び緩衝剤、及びトロラミン;亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩、アスコルビン酸、アセチルシステイン、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、及びパルミチン酸アスコルビルの塩、酸及び/又は塩基などの抗酸化剤;レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルイノシオールを含むがこれらに限定されないリン脂質などの界面活性剤;ポロキサマー及びポロキサミン、ポリソルベート80、ポリソルベート60、及びポリソルベート20などのポリソルベート、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリエーテル;ポリビニルアルコール、ポビドンなどのポリビニル;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体及びその塩;カルボキシポリメチレンゲルなどのアクリル酸のポリマー及び疎水変性架橋アクリレートコポリマー;デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウムなどのグリコサミノグリカンなどの多糖類を含むが、これらに限定されない成分を含み得る。このような薬学的に許容される担体は、周知の防腐剤を用いて細菌汚染から保存することができ、塩化ベンザルコニウム、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、メチルパラベン、チメロサール、及びフェニルエチルアルコールを含むが、これらに限定されず、又は単回若しくは複数回の使用のために非保存製剤として製剤化することができる。
【0019】
ヒト用の医薬組成物の1つは、DC009の塩酸塩(C32H51N7O8・3HCl)を含む凍結乾燥粉末であり、主な賦形剤は、マンニトールである。DC009は、投与前に生理食塩水で適切な濃度に更に希釈される。
【0020】
いくつかの実施形態では、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するためのDC009の用量(dose)は、約0.01~0.075mg/kg/回である。いくつかの実施形態では、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するためのDC009の用量は、約0.025~0.05mg/kg/回である。1つの実施形態では、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するためのDC009の用量は、約0.025mg/kg/回である。1つの実施形態では、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療するためのDC009の用量は、約0.05mg/kg/回である。
【0021】
いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも1日1回投与される。いくつかの実施形態では、用量は、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、用量は、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、用量は、1日3回投与される。本願全体を通して使用されるように、用量は、DC009の用量を指す。
【0022】
いくつかの実施形態では、用量は、約3~12時間の投与間隔で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12時間の投与間隔で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、約3時間、6時間、9時間又は12時間の投与間隔で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、約3時間の投与間隔で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、約6時間の投与間隔で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、約12時間の投与間隔で投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、用量は、被験者に1~6日間投与される。例えば、用量は、被験者に1、2、3、4、5又は6日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に1日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に2日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に4日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に5日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に6日間投与される。いくつかの実施形態では、用量は、被験者に1日1~3回で、1~6日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に1日3回で、3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に1日2回で、3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に1日2回で、6日間投与される。1つの実施形態では、用量は、被験者に1日1回で、6日間投与される。
【0024】
1つの実施形態では、用量は、約0.025mg/kg/回であり、被験者に単回投与される。1つの実施形態では、用量は、約0.05mg/kg/回であり、被験者に単回投与される。
【0025】
1つの実施形態では、用量は、約0.025mg/kg/回であり、被験者に1日2回で、3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、約0.05mg/kg/回であり、被験者に1日2回で、3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、約0.025mg/kg/回であり、被験者に1日3回で、3日間投与される。1つの実施形態では、用量は、約0.05mg/kg/回であり、被験者に1日3回で、3日間投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後、直ちに又は1~24時間以内、又は3~24時間以内に被験者に投与される。1つの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後、直ちに被験者に投与される。1つの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後の1~24時間以内に被験者に投与される。1つの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後の3~24時間以内に被験者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後の3時間、6時間、9時間、又は24時間以内に被験者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後の3時間以内に被験者に投与される。いくつかの実施形態では、化合物又は医薬組成物は、急性虚血性脳卒中の発症後の24時間以内に被験者に投与される。
【0027】
脳卒中重症度評価スケール(NIHSS)は、急性虚血性脳卒中(AIS)の予後を予測する指標(predictor for the prognosis)であり、その予測が時間に依存する。いくつかの実施形態では、本発明による治療に適したAIS患者は、NIHSSが4~30である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが4~25である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが6~25である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが6~12である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが13~25である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが6以上である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSが4以上である。
【0028】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、大動脈アテローム性動脈硬化症を患っている。
【0029】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、年齢が65歳未満である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、年齢が80歳未満である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、年齢が65歳を超えている。いくつかの実施形態では、AIS患者は、年齢が80歳を超えている。
【0030】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、6時間以内に発症する脳卒中症状を有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、9時間以内に発症する脳卒中症状を有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、12時間以内に発症する脳卒中症状を有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、16時間以内に発症する脳卒中症状を有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、16時間を超えて発症する脳卒中症状を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、M1中大脳動脈に症候性頭蓋内閉塞を有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、M2中大脳動脈に症候性頭蓋内閉塞を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、MRI(核磁気共鳴画像法)又はCTP(コンピュータ断層撮影灌流)で、虚血性コア体積≦70mL、ミスマッチ比>1.2、及びミスマッチ体積≧5mLのミスマッチプロファイルを有する。いくつかの実施形態では、AIS患者は、虚血性コア≦20mLである。いくつかの実施形態では、AIS患者は、虚血性コア≦30mLである。いくつかの実施形態では、AIS患者は、虚血性コア≦50mLである。
【0033】
いくつかの実施形態では、AIS患者は、ミスマッチ比>1.8である。いくつかの実施形態では、AIS患者は、ミスマッチ体積>10mLである。いくつかの実施形態では、AIS患者は、ミスマッチ体積>20mLである。
【0034】
静脈内(IV)注射は、医薬組成物を血流に送達し、組成物は、迅速に、最大限の効果で吸収することができる。静脈内投与治療薬は、プッシュ、ボーラス、又は持続注入によって投与することができる。この迅速な応答を達成するために、静脈内プッシュ(IVプッシュ)は、30秒以内に投与される。IVプッシュは、点滴バッグに依存しない。静脈内ボーラス(IVボーラス)は、注入ポンプを必要とせずに簡単に行うことができる。静脈内注入(IV bolus)は、治療薬の定常状態濃度を提供しながら薬剤を投与するのにより長い時間がかかる。
【0035】
いくつかの実施形態では、DC009化合物を含む本発明の医薬組成物は、静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、5~60分間かけて静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、15~30分間かけて静脈内注入によって投与される。1つの実施形態では、医薬組成物は、15分間かけて静脈内注入によって投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、30分間かけて静脈内注入によって投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内ボーラス注射によって投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内ボーラス注射とそれに続く静脈内注入によって投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、使用可能な任意の静脈によってAIS患者に投与された。
【0039】
一例では、用量は、約0.05mg/kg/回であり、医薬組成物は、30分間かけて静脈内注入によって投与される。
【0040】
他の例では、用量は、約0.025mg/kg/回であり、医薬組成物は、15分間かけて静脈内注入によって投与される。
【0041】
他の例では、用量は、約0.025mg/kg/回であり、医薬組成物は、30分間かけて静脈内注入によって投与される。
【0042】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと同時に投与される。1つの実施形態では、医薬組成物は、アスピリンと同時に投与される。1つの実施形態では、医薬組成物は、クロピドグレルと同時に投与される。1つの実施形態では、医薬組成物は、アピキサバンと同時に投与される。1つの実施形態では、医薬組成物は、ダビガトランと同時に投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、血管内血栓除去術の前、最中、又は後に投与される。いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、血管内血栓除去術の前に投与される。いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、血管内血栓除去術の最中に投与される。いくつかの実施形態では、ヒト被験者は、血管内血栓除去術の前、後に投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、血管内血栓除去術及びDC009の投与は両方とも、脳卒中発症後の24時間以内に行われる。
【0045】
いくつかの実施形態では、治療期間中のヒト被験者の血漿中薬物レベルは、200ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、治療期間中のヒト被験者の血漿中薬物レベルは、150ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、治療期間中のヒト被験者の血漿中薬物レベルは、110ng/mL未満である。
【0046】
DC009の有効性転帰(efficacy outcome)は、投与後の特定期間におけるNIHSSの変化などの神経学的結果によって評価することができる。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSがベースラインから4以上減少している。いくつかの実施形態では、AIS患者は、NIHSSがベースラインから8以上減少している。いくつかの実施形態では、AIS患者は、投与後にNIHSS≦2になった。いくつかの実施形態では、AIS患者は、投与後にNIHSS≦4になった。
【0047】
DC009の有効性転帰は、投与後の特定期間における修正ランキンスケール(mRS)の変化などの機能的転帰によって評価することができる。いくつかの実施形態では、AIS患者は、mRSがベースラインから1以上減少している。いくつかの実施形態では、AIS患者は、治療後にmRSが0~2になった。いくつかの実施形態では、AIS患者は、治療後にmRSが0~1になった。
【0048】
DC009の有効性転帰は、投与後の特定期間におけるバーセル(Barthel)インデックスによって評価された機能的転帰によって評価することができる。
【0049】
DC009の有効性転帰は、MRI/CTPによるベースラインからの梗塞体積の変化、脳灌流画像MRI/CTPによるベースラインからの低灌流病変の変化などの画像結果によって評価することができる。いくつかの実施形態では、AIS患者は、梗塞の成長が10%減少した。いくつかの実施形態では、AIS患者は、梗塞の成長が20%減少した。
【0050】
いくつかの実施形態では、DC009で治療されたAIS患者は、>50%の再灌流を達成した患者が非治療群より10%、20%又は30%多い。いくつかの実施形態では、DC009で治療されたAIS患者は、>90%の再灌流を達成した患者が非治療群より10%、20%又は30%多い。いくつかの実施形態では、DC009で治療されたAIS患者は、再疎通を達成した患者が非治療群より10%、20%又は30%多い。
【0051】
要約すると、本発明は、急性虚血性脳卒中の治療を必要とするヒト被験者にDC009化合物を投与することを含む、ヒト被験者の急性虚血性脳卒中を治療する方法に関し、用量が約0.01~0.075mg/kg/回である。1つの実施形態では、用量は、約0.025~0.05mg/kg/回である。1つの実施形態では、用量は、約0.025mg/kg/回である。他の実施形態では、用量は、約0.05mg/kg/回である。
【0052】
本発明の方法において、化合物は、少なくとも1日1回投与される。1つの実施形態では、化合物は、1日2回投与される。他の実施形態では、化合物は、約3~12時間の投与間隔で投与される。他の実施形態では、化合物は、少なくとも1日1回で、2日間又は3日間投与される。更に他の実施形態では、化合物は、少なくとも1日2回で、3日間投与される。更に他の実施形態では、化合物は、約12時間の投与間隔で投与される。
【0053】
本発明の方法において、化合物は、急性虚血性脳卒中の発症後、直ちに又は1~24時間以内に被験者に投与される。
【0054】
本発明の方法において、化合物は、静脈内注入及び/又はボーラス注射によって投与される。1つの実施形態では、化合物は、静脈内注入によって投与される。1つの実施形態では、化合物は、5~60分間かけて静脈内注入によって投与される。
【0055】
本発明の方法において、化合物は、アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと同時に投与されてもよい。
【0056】
本発明の方法において、投与後の被験者の血漿中のCmaxは、200ng/mL未満である。いくつかの実施形態では、投与後の被験者の血漿中のCmaxは、150ng/mL未満である。
【0057】
以下の実施例は、本発明を更に説明するものである。これらの実施例は、単に本発明を説明することを意図しており、限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0058】
〔略語リスト〕
〔略語〕 〔定義〕
----------------------------------------
AE 有害事象
AIS 急性虚血性脳卒中
aICH 無症候性頭蓋内出血
AUC 血中濃度-時間曲線下面積
aPTT 活性化部分トロンボプラスチン時間
BID 1日2回
ECG 心電図
max 最高血漿中濃度
trough 投与前トラフ濃度
CDER 医薬品評価研究センター
CT コンピュータ断層撮影
CTA コンピュータ断層撮影血管造影法
CCA 総頸動脈
CL 血漿中濃度の全身クリアランス
ECA 外頸動脈
EVT 血管内血栓除去術
HE ヘマトキシリン及びエオシン
HED ヒト等価用量
ICA 内頸動脈
IV 静脈内
mRS 修正ランキンスケール
mTICI 脳梗塞の修正された治療
MRSD 最大推奨開始用量
MRI/CTP 核磁気共鳴画像法又はコンピュータ断層撮影灌流
MRA 核磁気共鳴血管造影法
MCAO 中大脳動脈閉塞
MoCA モントリオール認知評価
NIHSS 脳卒中重症度評価スケール
NOAEL 無毒性量
NSS 神経学的重症度スコア
NDS 神経学的欠損スコア
PK 薬物動態学
PPA 翼口蓋動脈
PT プロトロンビン時間
rtPA 組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子
RT 室温
RBC 赤血球
RP2D 第II相(phase II)臨床試験の推奨用量
rCBF 局所脳血流量
SAE 重篤な有害事象
SBP/DBP 最高血圧/最低血圧
SDラット スプラーグドーリーラット
sICH 症候性頭蓋内出血
PIT 光化学誘導血栓性
1/2 半減期
TEAE 治療に起因する有害事象
max 最高血漿中濃度到達時間
TID 1日3回
TT トロンビン時間
TTC 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド
ss 定常状態の分布容積
【0059】
〔実施例1、SDラットの塞栓性脳卒中モデル〕
10%抱水クロラール溶液(400mg/kg)を、麻酔のためにSD雄性ラット(240~320g)の腹腔内に注射した。首の中央付近の右側に長さが約2cmの縦切開部を作り、右総頸動脈(CCA)、外頸動脈(ECA)及び内頸動脈(ICA)を胸鎖乳突筋の内側の縁に沿って分離した。内頸動脈の切開部と総頸動脈の近位端をそれぞれ非侵襲性動脈クリップでクリップした。外頸動脈に小さい切開部を作り、外頸動脈の遠位端を結紮した。総頸動脈の近位端にある動脈クリップを外し、10μlの血液を採取した。採血後、総頸動脈の近位端を非侵襲性動脈クリップで再度クリップした。採取した10μlの血液を1mLのEPバイアルに入れ、RTで30分間保持して血液を凝固させ、次に-20℃の冷蔵庫に移して1時間保持して、固体凝固物を形成した。1時間後、血餅(blood clot)を取り出し、1mLの生理食塩水を血餅に添加し、次に鋼製スパチュラで血餅を比較的均一な微小血栓に砕いた。次に、微小血栓懸濁液を、使用のために1mLのシリンジに移した。ラットの内頸動脈でのクリップを解除すると、シリンジ内の1mLの血栓懸濁液をラットの外頸動脈の近位端にゆっくりと注射し、次に内頸動脈を通してラットの脳内に注射した。続いて、外頸動脈の近位端を結紮し、内頸動脈及び総頸動脈での動脈クリップを解除し、血流を回復させた。総頸静脈を分離し、次に通常の生理食塩水又は試験化合物を注射した。静脈を結紮した。傷口に3滴のペニシリンを滴下した。傷口を縫合し、動物が目覚めるのを待った。
【0060】
ラットが目覚めてから24時間後に、神経機能の損傷程度をZealonga法によって評価した。スコア0は、神経機能の損失の兆候がないことを示し、スコア1は、損傷を受けていない側の前肢が伸びることができないことを示し、スコア2は、損傷を受けていない側に向かって歩くことを示し、スコア3は、損傷を受けていない側に向かって円を描くように尻尾を追いかけて歩くことを示し、スコア4は、意識障害を伴う不随意歩行を示し、スコア5は、死亡を示す。評価結果を統計的に解析し、t検定(t-test)を行った。
【0061】
ラットが目覚めてから24時間後かつZealonga法によって神経機能の損傷程度を評価した後、ウレタンでラットを麻酔し、直ちに断頭して脳を摘出した。脳組織を-20℃の冷蔵庫に2時間保持し、前頭葉前部から順次約2mmの冠状切片を計5枚切り出し、次に2%TTC溶液に入れ、光なしで37℃で30分間インキュベートした。脳切片の色の変化を観察した。正常な脳組織がTTCによって赤色に染色されたが、虚血性脳組織が白色に見えた。デジタルカメラで写真を撮り、画像統計ソフトで処理し、脳組織の梗塞体積と冠状切片における正常な脳組織の面積とを計算した。各群の脳梗塞体積の比を統計的に計算し、t検定を行った。
【0062】
〔実施例2、中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル〕
〔ウィスターラットのMCAO手術〕
0日目に、ラットを麻酔して大腿動脈から血液を採取し、同種(homologous)血餅を準備した。マイクロハサミで一部の動脈切開部を作り、次に動脈に沿って滅菌PE-50チューブ(40~50mm)を挿入した。この長さのPE-50チューブから採取された動脈血は、通常、MCAOに適した10個以下の個別血餅を形成した。チューブ内の血餅を室温で2時間保持し、続いて4℃で22時間保持した。
【0063】
1日目に、塞栓を準備するために、PE-50チューブとともに血餅を長さ32mmのセグメントに切断し、生理食塩水で満たされた、23G針を備えた3mlのシリンジを用いてセグメントを接続した。シリンジを押して血餅をPE-50チューブから生理食塩水で満たされたペトリ皿に勢いよく流した(flush)。PE-10チューブに血餅を引き込み、PE-10チューブから血餅を勢いよく流し(血餅の折り及びねじれを避けるために血餅の端部から引き込む)、それぞれ10~15回行い、捕捉された赤血球の大部分を、血餅がRBCを更に放出しないまで洗い流した。PE-10チューブを修正されたPE-50カテーテルに接続し、血餅をPE-50カテーテルに移した。次に、修正されたPE-50カテーテルを100μlのハミルトンマイクロシリンジに接続した。これで、使用のために血餅の準備が整った。
【0064】
1日目に、ラットを麻酔した。ECA(同側外頸動脈)、PPA(翼口蓋動脈)、及びICA(内頸動脈)分岐が露出するまで、総頸動脈(CCA)に沿って頸動脈鞘をずばっと解剖した(bluntly dissect)。後頭動脈及び上甲状腺動脈(ECAの第1分岐と第2分岐)を解剖し、双極マイクロ凝固器を用いてECAから脈管を除去した。レーザードップラーフロープローブを頭のチューブに準備した。CCA、PPA、ICAをクリップで一時的にクランプし、分岐近くのECA幹の周りに4-0絹製縫合糸を緩く適用した。クリップをゆっくりと解除し、ICA内でカテーテルを更に進めて、抵抗を感じるまでICAの頭蓋内セグメントに入った。進められたカテーテルの全長は、ECA動脈切開部位から約19~22mmであった。カテーテルを1~2mm引き込み、5~10μlの生理食塩水を10μl/minの速度でゆっくりと血餅に注射した。血餅注射後、局所脳血流量(rCBF)の割合は、約20~30%に減少した。ICAで血餅が安定するまで、30分間待った。カテーテルの先端がECA/ICA分岐に到達するまで、カテーテルを引き込んだ。クリップを再度適用してCCA及びICAを一時的にクランプし、次に動脈切開部からカテーテルを引き抜いた。ECA幹の周りに4-0絹製縫合糸を締めて、動脈切開部を結紮した。クリップを取り外した。動物が安定し、出血の問題がないことを確認するように、更に30分間待った。切開部を閉じて麻酔を終了した。
【0065】
〔神経機能試験〕
MCAO手術後の24時間後に神経学的欠損を評価した。神経機能は、0~18のスケールで等級付けされ、0が正常な機能を表し、18が最大の神経学的欠損を表す(図2を参照)。
【0066】
〔TTC染色と梗塞サイズ及び膨潤率の計算〕
MCAOの誘導後の24時間後に、5%イソフルランでラットを麻酔し、生理食塩水を用いて心臓から灌流を行った(150ml)。ラットを断頭して脳を収集した。収集した皿及びマトリックスを使用前にPBSですすいだ。写真を撮った後に血餅を切り取った。氷上で脳マトリックスを用いて脳を4つの2mm冠状スライスにスライスした(脳を8枚に切る)。脳スライスを1XPBS中の2%2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)(Sigma-Aldrich)で室温で(光を避けて)20分間インキュベートし、結果を写真で記録した。次に、Image Jを用いて梗塞のサイズ及び範囲を決定した。
【0067】
全てのTTC切片の尾側をデジタルカメラでスキャンし、画像をJPEGとして保存した。Image J(Image J、Bethesda、MD)ソフトウェアを用いて非虚血性及び虚血性半球梗塞領域を測定した。8つの梗塞領域の測定値を全てスライス間の距離2mmで計算した。これらの測定値を用いて各脳の総梗塞サイズ(%)を計算した。
・100×[(健康な半球の体積-損傷のない同側半球の体積)/健康な半球の体積]により、各切片の梗塞サイズ(%)を計算した。
・8枚の切片の合計/8により、総梗塞サイズ(%)を計算した。
・100×[(梗塞半球の体積-健康な半球の体積)/健康な半球の体積]により、各脳切片の膨潤率(%)を計算した。
・8枚の切片の合計/8により、総膨潤率(%)を計算した。
【0068】
〔脳血流の測定(rCBF)〕
rCBFを測定するために、骨から側頭筋を解剖した。(このとき、特にrtPAを使用する場合、皮膚及び筋肉からの出血を双極凝固器で制御する必要がある)。ドリルでブレグマの後方2mm、側方6mmの骨を薄くした。強力接着剤でレーザードップラーフロープローブを配置し、局所脳血流量(rCBF)を監視し始めた。
【0069】
〔実施例3、光化学誘導血栓性(PIT)脳卒中モデル〕
〔光化学誘導性の中大脳動脈血栓症〕
麻酔下で、光照射部位に生じた血栓により左中大脳動脈(MCA)が閉塞した。経眼窩アプローチによって左MCAを露出した。左眼窩と外耳道との間に縦切開部を作った。側頭筋を反射し、頬骨弓を切除せずに側頭下開頭術を実施した。頭蓋骨の底部に直径が約3mmの窓を開けた。左MCA主幹が窓から見えた。ローズベンガルと緑色照明(λ540nm、600,000ルクス)との間の光化学反応によって、MCAの内皮細胞を局所的に損傷した。ローズベンガル(20mg/kg)を静脈内投与し、次にMCAを緑色光に10分間曝露した。手術中、38℃に設定された加熱パッドに動物を置いた。
【0070】
〔ラット神経学的欠損スコアの評価〕
血栓塞栓症の発症後の24時間(±2時間)後に1回、次の5日間に1日1回、Edersonらによって記載された修正方法(Stroke、1986、17:472-476)に従って神経学的欠損をスコア化した。合計「0」は、欠損がないことを示し、最大スコア「15」は、重度の欠損を示す。
【0071】
1)前肢の屈曲
ラットを尻尾で軽く掴み、床から約10cmの高さに吊り下げ、前肢の屈曲を観察した。
0:両前肢が床に向かう。
1:前肢の伸展にわずかに違う。
2:手首の屈曲、肩の内転及び肘の伸展が軽度である。
3:手首、肘の完全に屈曲、及び肩の内旋を伴う内転を有する厳しい姿勢がある。
【0072】
2)後肢の屈曲
ラットを休ませた状態で、足裏を上に向けた後肢を尻尾の方へそっと引っ張った。
0:後肢の間で引き込み反応に違いがない。
1:右後肢の引き込み反応が左後肢の引き込み反応よりも弱い。
2:右後肢が異常に伸びているが、足裏を指で触ると引っ込めることができる。
3:右後肢が異常に伸びており、足裏を指で触っても引っ込めることができない。
【0073】
3)回転挙動
ラットの尻尾をそっと掴み、前肢を床につけた状態で旋回挙動を観察した。
0:前へ歩いている。
1:普段は前へ歩いているが、左へ歩くことができない。
2:普段は右に歩いているが、前へ歩くことができる。
3:右へ歩いているが、前へ歩くことができない。
【0074】
4)横変位
ラットを休ませた状態で、ラットの肩の後ろにどちらかの方向から穏やかな側圧を加えた。
0:どちらの方向にも均等に滑りに抵抗する。
1:右方向への横押しに対する抵抗が若干減少する。
2:右方向への横押しに対する抵抗が顕著に減少する。
3:右方向への横方向の押しに対する抵抗が顕著に減少し、ラットが仰向けに倒れる。
【0075】
5)一般的な姿勢
ラットを休ませた状態で、一般的な姿勢を観察した。
0:手術後の一般的な姿勢が通常のラットと変わらない。
1:ラットを上から見ると、左の前肢と後肢が見える。
2:体が少し傾く。
3:体が顕著に傾く。
【0076】
〔ヘマトキシリン及びエオシン染色のための脳〕
ラット脳マトリックス(2mm間隔)を用いて各脳を6つの冠状ブロックに切断した。脳を4%パラホルムアルデヒド中で3.1~6.2℃で一晩固定し、リン酸緩衝生理食塩水に保存し、組織学的処理に送った。各冠状ブロックをパラフィンに包埋した。各ブロックから1つの冠状切片を採取し、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)で染色した。
【0077】
HE染色切片から、OsiriXバージョン8.0.2(Pixmeo SARL、Bernex、スイス)を用いて梗塞領域(mm)を手動でマークした。虚血性梗塞の体積(mm)を、各冠状切片(脳ごとに6つの冠状切片)の梗塞領域の合計として計算した。梗塞体積を大脳皮質及び大脳基底核で計算した。大脳基底核及び大脳皮質の梗塞体積を加算することによって総梗塞体積を計算した。
【0078】
〔実施例4、ラット塞栓性脳卒中モデルにおけるDC009の単回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の3時間後の治療可能時間域)〕
本試験の目的は、実施例1に記載のスプラーグドーリーラットの塞栓性脳卒中モデルにおいて、脳卒中発症後の3時間後に0.007mg/kgでDC009を単回投与した場合の有効性を評価することであった。
【0079】
頸動脈に血餅を導入することによって、雄スプラーグドーリーラットの中大脳動脈の塞栓性閉塞を誘導した。ラットを媒体(生理食塩水)で、rtPA(10mg/kg、IVボーラス注射)で、又は脳卒中発症後の3時間後にDC009(0.007mg/kg、IVボーラス注射)で処理した(処理群ごとにn=12~13)。薬物投与後の24時間後に、ラットの神経学的欠損スケール(NDS)を評価した(0=神経機能の損失の兆候がない。1=左前肢が伸びることができない。2=左側に向かって歩く。3=左側に向かって円を描くように尻尾を追いかけて歩く。4=意識障害を伴う不随意歩行。5=死亡。)。神経学的評価後、動物を殺し、冠状脳切片(厚さ2mm)をTTCで染色した。コンピュータ支援画像解析技術を用いて梗塞体積を定量化した。
【0080】
脳卒中発症後の24時間後のラットのNDS及び梗塞体積を以下の表1にまとめた。
【0081】
【表1】
【0082】
DC009処理群(0.007mg/kg)は、生理食塩水処理群と比較して、神経学的挙動スコアの改善及び脳梗塞体積の減少を示した。したがって、脳卒中発症後の3時間後にIVボーラス注射として投与されたDC009製剤(0.007mg/kg)は、前臨床ラット塞栓性脳卒中モデルにおいて有効であった。
【0083】
〔実施例5、ラット塞栓性脳卒中モデルにおけるDC009の単回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の6時間後の治療可能時間域)〕
本試験の目的は、実施例1に記載の雄スプラーグドーリー(SD)ラットの塞栓性脳卒中モデルにおいて、脳卒中発症後の6時間後に0.007mg/kgでDC009を単回投与した場合の有効性を評価することであった。
【0084】
頸動脈に血餅を導入することによって、雄SDラットの中大脳動脈の塞栓性閉塞を誘導した。同種全血によって作られた血餅を、ラットの外頸動脈の近位端にゆっくりと注射し、次に内頸動脈を通して注入した。ラットを媒体(生理食塩水)で、rtPA(3mg/kg、静脈内ボーラス注射)で、又は脳卒中発症後の6時間後にDC009(0.007mg/kg、静脈内ボーラス注射)で処理した(処理群ごとにn=11~12)。薬物投与後の24時間後に、ラットの神経学的欠損スケールを6点として評価した。神経学的評価後、動物を殺し、冠状脳切片(厚さ2mm)をTTCで染色した。コンピュータ支援画像解析技術を用いて梗塞体積を定量化した。
【0085】
脳卒中発症後の24時間後のラットのNDS及び梗塞体積を以下の表2にまとめた。
【0086】
【表2】
【0087】
DC009処理群(0.007mg/kg)は、生理食塩水処理群と比較して、神経学的挙動スコアの改善及び脳梗塞体積の減少を示した。したがって、脳卒中発症後の6時間後に単回静脈内ボーラス注射(0.007mg/kg)として投与されたDC009製剤は、前臨床ラット塞栓性脳卒中モデルにおいて有効であった。
【0088】
〔実施例6、ラット塞栓性脳卒中モデルにおけるDC009の複数回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の24時間後の治療可能時間域、QD6)〕
本試験の目的は、実施例1に記載のラットの塞栓性脳卒中モデルにおいて、0.0007mg/kg、0.007mg/kg、及び0.07mg/kgの用量でDC009を6日間連続反復投与した場合の有効性を評価することであった。
【0089】
頸動脈に血餅を導入することによって、雄スプラーグドーリーラットの中大脳動脈の塞栓性閉塞を誘導した。ラットを、媒体(生理食塩水)で、又は脳卒中発症後の24時間後に、さらなる5日間に1日1回、DC009(0.0007mg/kg、0.007mg/kg及び0.07mg/kg、静脈内ボーラス注射)で処理した(処理群ごとにn=9~10)。薬物投与後の24時間後及び薬物投与前に1日1回、ラットの神経学的欠損スケールを評価した。最後の神経学的評価後、動物を殺し、冠状脳切片(厚さ2mm)をTTCで染色した。コンピュータ支援画像解析技術を用いて梗塞体積を定量化した。
脳卒中発症後の7日間後のラットの梗塞体積を以下の表3にまとめた。
【0090】
【表3】
【0091】
神経学的転帰についても評価されたが、データの解釈は、処理群間のベースラインスコアの違いによって混乱している(データは示されていない)。結論として、DC009(0.007mg/kg及び0.07mg/kg)の6日間連続反復IVボーラス投与は、前臨床ラット塞栓性脳卒中モデルにおいて有効であった。
【0092】
実施例4~6のデータは、実施例1のラット塞栓性脳卒中モデルにおけるDC009治療の有効用量が0.007~0.07mg/kgであったことを示している。治療効果は、脳卒中発症後の24時間後にも実証されており、この効力には臨床応用の見込みがあることが示されている。
【0093】
〔実施例7、ラットMCAOモデルにおけるDC009の単回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の3時間後の治療可能時間域、SD)〕
本試験の目的は、実施例2に記載の塞栓性中大脳動脈閉塞(MCAO)ラットにおいて、0.05mg/kg及び0.005mg/kgでDC009を単回投与した場合の治療効果を評価することであった。
【0094】
頸動脈に血餅を導入することによって、雄ウィスターラットの中大脳動脈の塞栓性閉塞を誘導した。同種全血によって作られた血餅を内頸動脈にゆっくりと注射した。ラットを、媒体(生理食塩水)で、rtPA(10mg/kg、まず10%の薬物を静脈内ボーラス注射し、その後、残りの薬物を30分間注入する)で、又は脳卒中発症後の3時間後にDC009(0.05mg/kg又は0.005mg/kg、15分間IV注入)で処理した(処理群ごとにn=8~9)。処理前、MCAO手術後の3時間後、及びMCAO手術後の24時間後に、神経学的欠損を評価した。神経学的重症度スコア(NSS)は、0~18のスケールで等級付けされ、0が正常を表し、18が重度の障害を表す。手術後の3時間後に、NSSが7以上の動物をいずれかの処理群に入れた。次に、手術後の24時間後に、処理された動物の神経機能を評価した。神経学的評価後、動物を安楽死させ、脳を2%2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色して、梗塞サイズを定量化した。Image Jソフトウェアを用いて、虚血の割合と脳の膨潤率を計算した。
【0095】
【表4】
【0096】
MCAOモデルにおいて、脳卒中発症後の24時間後に、0.05mg/kgの用量レベルのDC009処理後のNSSは、生理食塩水処理後のNSSよりも有意に低かった。0.005mg/kg及び0.05mg/kgの用量レベルのDC009も、rtPA及び生理食塩水処理と比較して、梗塞サイズを有意に減少させた(表4)。
【0097】
〔実施例8、ラットMCAOモデルにおけるDC009の単回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の1時間後の治療可能時間域、SD)〕
本試験の目的は、実施例2に記載の塞栓性中大脳動脈閉塞(MCAO)ラットにおいて、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg及び0.4mg/kgでDC009を単回投与した場合の治療効果を評価することであった。
【0098】
頸動脈に血餅を導入することによって、雄ウィスターラットの中大脳動脈の塞栓性閉塞を誘導した。同種全血によって作られた血餅を内頸動脈にゆっくりと注射した。ラットを、媒体(生理食塩水)で、rtPA(10mg/kg、まず10%の薬物を静脈内ボーラス注射し、その後、残りの薬物を30分間注入する)で、又は脳卒中発症後の1時間後にDC009(0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg及び0.4mg/kg、15分間IV注入)で処理した(処理群ごとにn=5~8)。血流を3時間測定した。
【0099】
図3に示すように、データは、生理食塩水処理群と比較して、rtPA及び全てのDC009処理群において血流が増加したことを示している(p<0.0001対生理食塩水)。0.05mg/kgの低用量のDC009は、ラットの閉塞した血流の回復に優れた有効性を実証した。
【0100】
〔実施例9、ラットMCAOモデルにおけるDC009の復数回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の3時間後の治療可能時間域、1日2回)〕
本試験の目的は、実施例2に記載の塞栓性MACOラットにおいて、DC009を1日2回で、1日間投与した場合の治療効果を評価することであった。
【0101】
合計22匹のラットを生理食塩水で処理し(n=8)、MCAO手術後の3時間後に10mg/kgでrtPAで処理し(n=8)、MCAO手術後の3時間及び6時間後に0.025mg/kgでDC009で処理した(n=6)。脳卒中発症後の24時間後に、全ての動物を犠牲にし、脳スライサーマトリックスを用いて脳組織を8枚に切断した。切片を更に2% 2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)溶液で染色し、Image Jソフトウェアを用いて虚血領域の割合と脳の膨潤率を計算した。結果は、DC009を1日2回投与すると、生理食塩水及びrtPA処理群と比較して、梗塞サイズが有意に小さくなったことを示している(図4)。
【0102】
〔実施例10、ラット光化学誘導血栓性脳卒中モデルにおけるDC009の単回投与の前臨床有効性(脳卒中発症後の1時間及び3時間後の治療可能時間域)〕
本試験の目的は、実施例3に記載のラット光化学誘導血栓性(PIT)脳卒中モデルにおいて、0.007mg/kgでDC009を1日1回投与した場合の有効性を評価することであった。
【0103】
ラットを、媒体(生理食塩水)で、rtPA(10mg/kg)で、脳卒中発症1時間後にDC009(0.007mg/kg、15分間IV注入)で、又は脳卒中発症3時間後にDC009(0.007mg/kg、15分間IV注入)で処理した(処理群ごとにn=10)。薬物投与後の24時間後に、ラットの神経学的欠損スケール(NDS)を評価した。
【0104】
PIT手術後の24時間後に、ラットを安楽死させ、脳をTTC染色のために処理した。梗塞体積を以下の表5にまとめた。
【0105】
【表5】
【0106】
媒体処理と比較して、DC009又はrtPAのいずれかは、PIT手術後の異なる投与時点で梗塞を減少させた。rtPA処理(PIT手術後の1時間後)を早く行うと、媒体処理と比較して、総脳梗塞体積を減少させた。PIT手術後の1時間後のDC009処理も、媒体処理と比較して、全脳梗塞を有意に減少させた。
【0107】
〔実施例11、試験101:健康な被験者におけるDC009製剤の安全性、忍容性、及び薬物動態〕
第I相(Phase 1)二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の第1の目的は、健康な被験者における、15分間IV注入によって投与されるDC009製剤の単回投与用量漸増試験の安全性、忍容性、及び薬物動態を判定することであった。第2の目的は、単回投与用量漸増試験の薬力学を特徴付け、単回投与用量漸増試験の薬物動態と薬力学の関係を調査し、DC009製剤のRP2Dを決定することであった。
【0108】
被験者集団は、18~65歳の健康な成人男性及び女性であった。16人の健康な被験者が試験を完了した。15分間IV注入によってDC009製剤又はプラセボを全ての被験者に単回投与した。
【0109】
0.05mg/kgでDC009製剤又はプラセボをコーホート1(被験者8人)に投与し、0.025mg/kgでDC009製剤又はプラセボをコーホート0(被験者8人)に投与した。投与量及び設計を表6にまとめた。
【0110】
【表6】
【0111】
〔一次エンドポイント〕
・有害事象(AE)の性質及び重症度、並びにAE被験者の数
・バイタルサイン、心電図(ECG)の結果、検査所見の異常、プラスミン-抗プラスミン複合体、オイグロブリン溶解時間、血小板凝集、及び身体検査所見におけるベースラインからの変化
・薬物動態パラメータ:最高血漿中濃度(Cmax)、最高(ピーク)血漿中濃度到達時間(Tmax)、0時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、0時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、半減期(T1/2)、血漿からの薬物の全身クリアランス(CL)、及び分布容積
【0112】
〔二次エンドポイント〕
・投与後最大48時間までの、血圧、トロンビン時間(TT)、プロトロンビン時間(PT)、オイグロブリン溶解時間、及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に対するDC009製剤の薬力学的影響
・DC009血漿濃度と選択されたPD及び安全性パラメータとの関係
・RP2D(第II相臨床試験の推奨用量)
【0113】
〔結果〕
DC009製剤は、安全であり、両方の投与コーホートで忍容性が高かった。どちらのコーホートでも重篤な有害事象(SAE)が報告されなかった。コーホート0では、AEが報告されなかった。コーホート1では、0.05mg/kg用量群の2人の被験者(頭痛、接触皮膚炎)と、プラセボを受けた1人の被験者(注射部位血腫)でTEAEが報告された。
【0114】
本試験で収集された安全性データには、バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、体温)、ECG、臨床化学、尿検査、血液学、凝固パラメータ及び便潜血検査も含まれた。測定された安全性パラメータのいずれにも臨床的に有意な所見がなかった。
【0115】
最高血漿中濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、0時間から無限までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)、0時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、半減期(T1/2)、血漿からの薬物の全身クリアランス(CL)、及び定常状態の分布容積によって、DC009製剤の薬物動態パラメータを評価した。血漿中のDC009を定量化するために、投与前、5、10、15(注入終了)、20、25、30、及び45分、注入後の1、2、4、6、12、18、24時間という時点で単一の血液サンプルを収集した。
【0116】
表8のデータは、DC009が全身循環系から急速に除去され、注入開始後の血漿サンプルで最初の30分以内にのみ測定可能であったことを示している。T1/2の平均値は、0.054時間で、0.05~0.07時間の範囲であった。Tmaxは、6分~18分の間に発生した。0.05mg/kg用量群は、0.025mg/kg用量群と比較して、分布容積及びクリアランスがより高かった。データは、DC009製剤からのDC009曝露量がほぼ用量比例したことを示唆している。0.05mg/kg用量群のAUC及びCmaxは、0.025mg/kg用量群のAUC及びCmaxの2倍よりもやや少なかった。0.05mg/kg用量群に対する0.025mg/kg用量群の用量正規化幾何平均比は、AUC0-infが1.40で、Cmaxが1.46であった。
【0117】
データは、0.05mg/kg群及び0.025mg/kg群の平均Cmaxが両方ともDC009の安全な血漿曝露限界値110ng/mLよりも低かったことを示している。被験者001-008(Cmax:152ng/mL)及び被験者001-042(Cmax:120ng/mL)からの結果は、DC009が約150ng/mLのCmaxでヒトにおいて忍容可能であったことを示している。
【0118】
【表7】
【0119】
〔実施例12、試験103:健康な被験者におけるDC009製剤の安全性、忍容性、及び薬物動態〕
第I相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の目的は、健康な成人被験者における、DC009製剤の複数回投与の安全性、忍容性、及び薬物動態を評価することであった。
【0120】
【表8】
【0121】
〔一次エンドポイント〕
・AEの性質及び重症度、並びにAE被験者の数
・バイタルサイン、心電図(ECG)の結果、検査所見の異常、及び身体検査所見におけるベースラインからの変化
・薬物動態パラメータ:最高血漿中濃度(Cmax)、最高(ピーク)血漿中濃度到達時間(Tmax)、0時間から無限までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)、0時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、半減期(T1/2)、血漿からの薬物の全身クリアランス(CL)、及び分布容積
【0122】
〔二次エンドポイント〕
・投与後最大24時間までの、血圧、プロトロンビン時間(PT)、及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に対するDC009製剤の薬力学的影響
【0123】
〔結果〕
最高血漿中濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、0時間から無限までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-∞)、0時間から最後の定量可能な濃度の時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC0-t)、半減期(T1/2)、血漿からの薬物の全身クリアランス(CL)、及び定常状態の分布容積によって、DC009製剤の薬物動態パラメータを評価した。0.025mg/kg群の場合、血漿中のDC009を定量化するために、投与前、5、10、15(注入終了)、20、25、30、45、及び60分という時点で1回目の投与(1日目)と5回目の投与(3日目)後の単一の血液サンプルを収集した。0.05mg/kg群の場合、血漿中のDC009を定量化するために、投与前、10、20、30(注入終了)、35、40、45、50、60、及び70分という時点で1回目の投与(1日目)と5回目の投与(3日目)後の単一の血液サンプルを収集した。
【0124】
【表9】
【0125】
DC009製剤は、ヒト被験者に1日2回で、3日間投与された場合、0.025mg/kg群(15分間注入)及び0.05mg/kg群(30分間注入)で安全であり、忍容性も高かった。報告されたAEのレベルは全て、グレードIとして定義され、無関係であるか又は関連する可能性が低いと考えられる。安全上のリスクは、十分に管理されている。
【0126】
0.025mg/kg(15分間注入)及び0.05mg/kg(30分間注入)の単回投与及び複数回投与後のTmax及びCmaxは、同様であった。0.05mg/kg群のAUC0-t及びAUC0-∞は、0.025mg/kg群のAUC0-t及びAUC0-∞よりも高かった。両群のCmaxは全て、暴露限界値110ng/mL未満であった。
【0127】
0.025mg/kg及び0.05mg/kgで投与した後に、血圧(SBP/DBP)及び凝固因子(PT/APTT)の有意な影響が観察されなかった。
【0128】
試験の健康な被験者の安全性結果から分かるように、DC009製剤の複数回の3日間静脈内注入は、健康な被験者において安全で忍容性が高く、Cmaxは、暴露限界値をはるかに下回った。
【0129】
〔実施例13、試験105:健康な被験者におけるDC009製剤の安全性、忍容性、及び薬物動態〕
第I相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の目的は、健康な成人被験者における、DC009製剤の複数回投与の安全性、忍容性、薬物動態、及び薬物間相互作用を評価することであった。
【0130】
〔パートA〕
健康な被験者において、DC009製剤を1日間以内に3時間の投与間隔(Q3h)でIV注入として投与した場合の、3日間、1日3回(TID)の使用の安全性、忍容性、及びPKを決定する。パートAは、二重盲検プラセボ対照試験であり、本試験は、健康な被験者における、DC009製剤の複数回投与の安全性とPKプロファイルを検査する。
【0131】
【表10】
【0132】
・エンドポイント
- AEの性質及び重症度、並びにAE被験者の数
- 身体検査、バイタルサイン、ECG評価、オキシメトリ、凝固、及び臨床検査におけるベースラインからの変化
- 血漿及び尿のPKパラメータ
- 収縮期血圧及び拡張期血圧(SBP/DBP)、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、及びトロンビン時間(TT)に対する影響
【0133】
〔パートB〕
アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと同時に投与された場合の、DC009の安全性とPKを評価する非盲検試験
【0134】
【表11】
【0135】
・エンドポイント
- AEの性質及び重症度、並びにAE被験者の数
- 身体検査、バイタルサイン、ECG評価、オキシメトリ、凝固、及び臨床検査におけるベースラインからの変化
- DC009の血漿PKパラメータ
- アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、及びダビガトランの血漿PKパラメータ
【0136】
〔結果〕
DC009製剤は、単独で投与された場合でも、アスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと組み合わせて投与された場合でも、一般的に安全で忍容性も高かった。
【0137】
報告されたTEAEは、重症度が軽度であり、重篤なものがなく、試験からの被験者の除外につながるものがなかった。最も多く報告されたTEAEは、試験のパートAでは月経不順、腹痛、口唇ヘルペス、及び頭痛、パートBでは腹痛及び頭痛であった。異常な検査結果に関連するTEAEがなかった。試験のどのパートにおいても、検査パラメータ(血液学、臨床化学、及び尿検査)、バイタルサイン、ECG、及びパルスオキシメトリの結果について、臨床的に有意な変化が報告されなかった。
【0138】
DC009製剤は、アピキサバン及びダビガトランと同時に投与された場合に、凝固に対する効果が限定的である。DC009製剤は、アスピリン及びクロピドグレルと同時に投与された場合に、COL/ADP及びCOL/EPIに対する効果が限定的である。
【0139】
全ての集団(N=12)の場合、DC009製剤の平均Cmaxは、1日目に40.14ng/mLで、3日目に48.86ng/mLであった。DC009製剤のピーク血漿濃度は、投与10~15分間後に達し、DC009製剤は、投与15分間後に排出され始めた。中国人の集団(N=6)の場合、DC009製剤の平均Cmaxは、1日目に37.30ng/mLで、3日目に40.00ng/mLであった。非アジア人の集団(N=6)の場合、DC009製剤の平均Cmaxは、1日目に42.98ng/mLで、3日目に57.72ng/mLであった。DC009製剤のAUC0-last、Ctrough、及びTmaxの平均値は、中国人及び非アジア人の集団全体で同等であった。
【0140】
【表12】
【0141】
DC009の投与が複数回投与レジメンで蓄積されたかどうかを調べるために、DC009の複数日間TIDレジメンにおける最初の投与と最後の投与のPKパラメータを比較することによって、潜在的な投与蓄積効果を評価した。比較は、DC009が単独で投与された場合、又はアスピリン、クロピドグレル、アピキサバン、又はダビガトランと同時に投与された場合に行われた。比較のためのPKパラメータには、AUC0-t及びCmaxが含まれた。結果は、DC009製剤の3日間TID投与により、平均Cmaxが48.86ng/mLになり、最大Cmaxが95ng/mLになり、これが被験者における血漿蓄積の安全なレベルであることを示している。
【0142】
〔実施例14、試験201:急性虚血性脳卒中患者に対する第II相単回投与試験〕
第II相二重盲検単回投与ランダム化プラセボ対照試験の目的は、急性虚血性脳卒中(AIS)患者におけるDC009製剤の安全性、忍容性、及び潜在的な有効性を評価することであった。第II相試験の安全性及び潜在的な有効性転帰は、急性虚血性脳卒中患者に対する今後の試験の設計の指針になる。適格な患者を2:1でランダムに割り付け、DC009製剤又はプラセボを15分間IV注入により投与して、合計約24人の評価可能な患者が得られる。適格な患者に対して、脳卒中症状の発症後の24時間以内に、0.025mg/kgでDC009製剤又はプラセボを単回投与した。
【0143】
【表13】
【0144】
主な選択規準は、被験者が、a)選択時に年齢が18~90歳であること、b)NIHSSが4~30であること、c)脳卒中症状の発症後の24時間以内にAISの臨床診断を受けることである。
【0145】
組織プラスミノーゲン活性化因子(アルテプラーゼ)は、USで承認されている唯一の脳卒中治療薬であり、ラベルによると、脳卒中症状の発症後の3時間以内に投与される必要がある。他の国で承認されている投与可能時間域は異なる。USでは、急性虚血性脳卒中に対して、脳卒中症状の発症後の3時間を超えて投与する承認された薬物療法がないため、プラセボ対照試験は、倫理的に許容され、薬物の効果を客観的に評価するために必要である。初期の有効性は、梗塞体積、再発性脳卒中の発生、NIHSSによって測定される神経学的転帰、及び修正ランキンスケール(mRS)によって測定される機能的自立度を評価することによって評価される。
【0146】
・一次エンドポイント
- 投与後の36時間以内の症候性頭蓋内出血(sICH)の発生、NIHSSの4点以上の増加として定義され、コンピュータ断層撮影又は核磁気共鳴画像法によって確認された臨床的悪化
【0147】
・二次エンドポイント
- 投与後の7日間以内に症候性頭蓋内出血(sICH)及び無症候性頭蓋内出血(aICH)の発生
- 投与後の24時間、7日間、30日間、及び90日間以内の脳内又は他の重大な出血合併症による死亡の発生
- 投与後の90日間以内のAEの数及び重症度
- 投与後の90日間以内の再発性脳卒中の発生
- mRSなどの機能的転帰
- 30日間後のNIHSSなどの神経学的転帰
- 24時間後と7日間後のCT又はMRI検査における梗塞体積の変化
- DC009の血漿PKパラメータ
【0148】
〔結果〕
〔ベースライン特性〕
【0149】
【表14】
【0150】
〔安全性結果〕
7日間以内に試験中にsICHを患っていると報告された被験者がいなかった。90日間以内に脳内又はその他の重大な出血合併症により死亡した被験者がいなかった。30日間以内に何らかの理由で死亡した被験者がいなかった。
【0151】
30日目に、プラセボ群では1人の被験者(14.3%)でNIHSSの4点以上の増加が観察されたが、DC009製剤群の被験者で観察されなかった。
【0152】
重篤なTEAEは、DC009製剤群では4人の被験者(25%)で、プラセボ群では2人の被験者(25%)で報告され、いずれも試験薬とは無関係であるか又は関連する可能性が低かったと考えられる。これらの6人の被験者のうち、2人の被験者、群ごとに1人は、重篤なTEAEにより90日目までに死亡した。
【0153】
プラセボ群の1人の被験者を除き、安全性集団の被験者全員で少なくとも1つのTEAEが報告された。試験中に報告された最も一般的なTEAEには、DC009製剤群の10人の被験者(62.5%)とプラセボ群の4人の被験者(50.0%)で報告された便秘と、DC009製剤群の5人の被験者(31.3%)とプラセボ群の2人の被験者(25%)で報告された高血圧とが含まれた。試験中に報告されたTEAEのほとんどは、試験薬とは無関係であるか又は関連する可能性が低かった。TEAEが明らかに試験薬に関連していると報告された被験者がいなかった。試験中に報告されたTEAEのほとんどは、軽度又は中程度であった。TEAEを理由に試験薬を中止した被験者がいなかった。
【0154】
臨床検査パラメータ、バイタルサイン、心電図(ECG)、及び神経学的検査では、臨床的に有意な傾向が観察されなかった。
【0155】
〔有効性結果〕
DC009製剤群の被験者で30日目にNIHSSの4点以上の減少が報告された割合(46.7%)は、プラセボ群の割合(14.3%)よりも高かった。なお、DC009製剤群(10.1[±7.45])のベースラインでのNIHSSは、プラセボ群のベースラインでのNIHSS(7.3[±4.77])よりも高かく、これは、ベースラインでNIHSSのバランスが取れておらず、DC009製剤群の被験者がより悪いNIHSSで開始されたことを示唆している。
【0156】
【表15】
【0157】
図6は、ベースラインNIHSS≧6の部分集団のベースラインからのNIHSSスコアの変化を実証した。DC009製剤群の平均スコアの変化は、-4.3±3点であり、神経学的転帰の改善を示したが、プラセボ群の平均スコアの変化は、3.5±2.1点であり、神経学的転帰の抑制を示した。この結果は、DC009製剤の有効性が、より重篤な神経学的欠陥を持つ患者部分集団において観察される可能性があることを示した。
【0158】
90日目に、DC009製剤群の3人の被験者(21.4%)とプラセボ群の1人の被験者(14.3%)で0~1のmRSが報告された。DC009製剤群の7人の被験者(50.0%)とプラセボ群の3人の被験者(57.2%)で0~2のmRSが報告された。0~2のmRSが報告された被験者の割合は、いずれの訪問においても両処理群で同等であった。脳卒中発症後のベースラインでは、DC009製剤群の13人の被験者(81.3%)、プラセボ群の4人の被験者(50.0%)で4~5のmRSが報告された。mRSの結果を表16にまとめた。
【0159】
【表16】
【0160】
試験201の結果は、DC009製剤が安全であり、AIS被験者において忍容性が高かったことを示している。0.025mg/kgの用量のDC009製剤は、AIS患者の治療において、プラセボ群と比較して、有効性を示している。
【0161】
〔実施例15、試験202:急性虚血性脳卒中患者に対する第II相複数回投与試験〕
第II相二重盲検複数回投与ランダム化プラセボ対照試験の目的は、AIS被験者におけるDC009製剤の安全性、忍容性、及び潜在的な有効性を評価することであった。
【0162】
【表17】
【0163】
主な選択規準は、被験者が、a)選択時に年齢が18~80歳であること、b)NIHSSが4~25であること、c)脳卒中発症後の24時間以内にAISの臨床診断を受けることである。
【0164】
・安全性エンドポイント
- 投与後のsICH及びaICHの発生
- 投与後の脳内又は他の重大な出血合併症による死亡の発生
- 投与後の死亡の発生
- 投与後の90日間以内のAEの数及び重症度
【0165】
・一次エンドポイント
- mRSが0~2の患者の割合
- 投与後にNIHSSが4点以上低下し、NIHSS≦1になった患者の割合
【0166】
・二次エンドポイント
- 投与後の特定期間における修正ランキンスケール(mRS)の変化などの機能的転帰
- 投与後の特定期間におけるベースラインと比較したNIHSSの変化などの神経学的転帰
- 投与後の特定期間におけるバーセルインデックスによって評価される日常生活活動及び生活の質
【0167】
〔実施例16、試験203:急性虚血性脳卒中患者に対する第II相単回及び複数回投与試験〕
本試験は、血管内血栓除去術(EVT)を受けたAIS被験者におけるDC009製剤の安全性及び有効性を評価する、第II相二重パート二重盲検ランダム化プラセボ対照試験である。
【0168】
主な選択規準は、被験者が、a)選択時に年齢が18~90歳であること、b)NIHSSが≧6であること、c)脳卒中症状の発症後の24時間以内にEVTによる治療を受けることができること、d)EVT前かつ脳卒中症状の発症後の24時間以内に試験薬の投与を受けること、e)核磁気共鳴血管造影法(MRA)/コンピュータ断層撮影血管造影法(CTA)に基づいて、M2の分岐の前にあるM1中大脳動脈(MCA)に症候性頭蓋内閉塞があることが確認されたこと、f)MRI(灌流を含む)又はCTPで、虚血性コア体積≦70mL、ミスマッチ比>1.2というターゲットミスマッチプロファイルがあることである。
【0169】
【表18】
【0170】
試験のパートAの目的は、血管内血栓除去術(EVT)を受けている急性虚血性脳卒中(AIS)被験者に静脈内投与されたDC009製剤の単回投与の安全性及び有効性を判定することであった。
【0171】
・一次エンドポイント
- 単回投与後の24時間以内のsICHの発生、NIHSSの4点以上の増加として定義され、核磁気共鳴(MR)/コンピュータ断層撮影(CT)画像法によって確認された臨床的悪化
【0172】
・二次エンドポイント
(1)安全性転帰
- sICH、aICHの発生と死亡
- AEの数及び重症度、並びにAE被験者の数
(2)機能的転帰
- 投与後にmRS≦2として定義された、独立した機能的転帰を示した被験者の割合
- 投与後にmRS≦1として定義された、優れた機能的転帰を示した被験者の割合
- mRSの各グレードでの被験者の割合のベースラインからの変化
- 再発性脳卒中の発生
(3)神経学的転帰
- ベースラインからのNIHSSの減少/変化として定義された、神経学的転帰が改善した被験者の割合
- 投与後にNIHSS≦2になった被験者の割合
(4)イメージングの転帰
- MRI/CTPによるベースラインからの梗塞体積の変化
- 脳灌流画像MRI/CPTによるベースラインからの低灌流病変の変化
- 脳灌流画像MRI/CTPによってベースラインから低灌流病変が90%減少した被験者の割合
- EVT処置の前後の再疎通率
- EVT処置後の脳梗塞の修正された治療(mTICI)≧2bとして定義された、完全な再疎通/実質的な血管造影再灌流を示した被験者の割合
【0173】
【表19】
【0174】
試験のパートBの目的は、EVTを受けているAIS被験者におけるDC009製剤の複数回投与の有効性及び安全性を判定することであった。
【0175】
・一次エンドポイント
- ベースラインからのNIHSSの4点以上の減少として定義された、神経学的転帰が改善した被験者の割合
【0176】
・二次エンドポイント
(1)機能的転帰
1回目の投与後にmRS≦2として定義された、独立した機能的転帰を示した被験者の割合
- 投与後にmRS≦1として定義された、優れた機能的転帰を示した被験者の割合
- mRSの各グレードでの被験者の割合のベースラインからの変化
(2)神経学的転帰
- ベースラインからのNIHSSの減少/変化として定義された、神経学的転帰が改善した被験者の割合
- 1回目の投与後にNIHSS≦2になった被験者の割合
(3)再発性脳卒中の発生
(4)モントリオール認知評価(MoCA)によるベースラインからの認知評価の変化
(5)イメージングの転帰
- MRI/CTPによるベースラインからの梗塞体積の変化
- 脳灌流画像MRI/CPTによるベースラインからの低灌流病変の変化
- 脳灌流画像MRI/CTPによってベースラインから低灌流病変が90%減少した被験者の割合
- EVT処置前、EVT後、24時間後、7日間後の再疎通率
- EVT処置後のmTICI≧2bとして定義された、完全な再疎通/実質的な血管造影再灌流を示した被験者の割合
(6)安全性転帰
- sICH及びaICHの発生
- 死亡の発生
- AEの数及び重症度、並びにAE被験者の数
【0177】
〔実施例17、試験205:急性虚血性脳卒中患者に対する第II相複数回投与試験〕
第II相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験の目的は、急性虚血性脳卒中(AIS)被験者におけるDC009製剤の複数回投与の安全性及び有効性を評価することであった。
【0178】
【表20】
【0179】
主な選択規準は、被験者が、a)選択時に年齢が18~90歳であること、b)NIHSSが6~25であること、c)MRI又はCTPで、虚血性コア体積≦70mL、ミスマッチ比>1.2、及びミスマッチ体積≧5mLというターゲットミスマッチプロファイルがあることである。
【0180】
・一次エンドポイント
- 1回目投与後の90日間以内に、おそらくDC009製剤に関連しているか又は確実に関連していると判断された、治療中に発現した有害事象(TEAE)が発生した被験者の割合
【0181】
・二次エンドポイント
(1)機能的転帰
- 1回目の投与後にmRS≦2になった被験者の割合
- 1回目の投与後にmRS≦1になった被験者の割合
- 1回目の投与後のmRSの各グレードでの被験者の割合のベースラインからの変化
(2)神経学的転帰
- ベースラインからNIHSS≦4の被験者の割合
- 1回目投与後のベースラインからのNIHSS≧4点又はNIHSSの0~1点の減少として定義された、神経学的転帰が改善した被験者の割合
- NIHSS≦2及びNIHSS≦1の被験者の割合
- 1回目の投与後のNIHSSのベースラインからの変化
- 再発性脳卒中の発生
- モントリオール認知評価(MoCA)によるベースラインからの認知評価の変化
(c)イメージングの転帰
- MRI/CTPによるベースラインからの梗塞体積の変化
- 脳灌流画像MRI/CPTによるベースラインからの低灌流病変の変化
- 脳灌流画像MRI/CTPによってベースラインから低灌流病変が90%減少した被験者の割合
(d)安全性転帰
- sICH及びaICHの発生、NIHSSの4点以上の増加として定義され、核磁気共鳴(MR)/コンピュータ断層撮影(CT)画像法によって確認された臨床的悪化
- 1回目の投与後、何らかの理由による死亡の発生
- AEの数及び重症度、並びにAE被験者の数
【0182】
〔実施例18、スプラーグドーリーラットにおける単回静脈内投与後のDC009の薬物動態試験〕
DC009の単回IVボーラス投与後に、DC009の血漿薬物動態をSDラットで試験した。雄SDラットに、0.001、0.01、0.1、1及び10mg/kgで1mL/kgの用量体積でDC009を静脈内ボーラス注射により投与した(処理群ごとにn=3)。
【0183】
【表21】
【0184】
【表22】
【0185】
0.1~10mg/kg用量群からの結果は、DC009の用量の増加により、SDラットにおけるCmax及びAUC0-∞がほぼ用量比例して増加したことを示唆している。
【0186】
〔実施例19、医薬製剤、投与量及び投与(実施例11~14の場合)〕
DC009化合物の調製は、米国公開第2016-0083423号の実施例63に開示されている。
【0187】
DC009製剤(注射用凍結乾燥粉末)は、ブチルゴム栓及びフリップオフアルミニウム圧着シールで密封されたガラスバイアルに入った、防腐剤を含まない滅菌凍結乾燥材料として提供される注射用製品である。各バイアルには、20mgの遊離塩基に相当するDC009原薬が凍結乾燥ケーキ又は粉末として含まれている。プラセボは、成分、組成、及び外観においてDC009製剤と同一に処方されているが、活性化合物を含んでいない。
【0188】
DC009製剤の製造において、まずマンニトールを注射用水(WFI)に溶解し、続いてDC009の塩酸塩(C3251・3HCl)を添加する。pH4.5に調節した後、溶液をWFIで目標重量まで希釈し、溶液の浸透圧をチェックし、次に0.2μmのPVDFフィルターを用いた無菌濾過によって滅菌する。前製剤には、10mg/mLのDC009及び3.8w/w%マンニトールが含まれている。各バイアルを目標重量±2%以内まで充填した後、バイアルを20mmのストッパーで半分ほど覆い、凍結乾燥機用のトレイに置く。凍結乾燥サイクルが完了した後、窒素で真空を解除し、完成した製剤に不活性なヘッドスペースを設ける。
【0189】
DC009製剤を使用前に0.9%生理食塩水で4mg/mLに再構成し、更に生理食塩水で適切な濃度に希釈し、IV注入によって投与する。実施例11~14では、適量の製剤を90mLに希釈し、注入体積を60mLとした。
【0190】
実施例15~17では、DC009の医薬製剤、投与量、及び投与は、製剤バイアル当たりのDC009原薬の量、生理食塩水の希釈係数、及び注入体積が慣例に従って変更され得ることを除いて、上記のものと同様である。
【0191】
本発明、並びにそれを製造及び使用する方法及びプロセスは、本発明に関連する当業者が本発明を製造及び使用できるように完全、明確、簡潔かつ正確な用語で説明される。以上は、本発明の好ましい実施形態について説明しており、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることを理解されたい。本発明の主題を特に指摘し、明確に請求するために、以下の特許請求の範囲によって明細書を特定する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】