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▶ ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】スノー性能を向上させたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240301BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557435
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2022057082
(87)【国際公開番号】W WO2022195049
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021000006614
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ ロドリケズ
(72)【発明者】
【氏名】デイビー ルジエロ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC18
3D131EB81Z
3D131EC14Z
(57)【要約】
本発明は、スノー性能を向上させるために、トレッドブロック(a、b)の周壁(2、3、4、5)に革新的なプロファイルを有する外面(10)を有するタイヤ(1)に関し、周壁は、スノーディギング及びスノートラッピング効果を高めるよう構成された3次元ボイド/凸部(9、8)パターンを呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向(C)、径方向(R)、及び横断方向(T)を有するタイヤ(1)であって、複数の外周壁(2、3、4、5)を有する少なくとも1つのトレッドブロック(a)を含む外側トレッド部(P)を含むタイヤ(1)において、
前記周壁(2、3、4、5)のうち1つの外面(10)の少なくとも一部が、凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有し、
前記凹部(6)及び/又は凸部(7)は、前記外面(10)の少なくとも2つの空間方向(x、y)に従って交互になっているタイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ(1)において、前記少なくとも2つの空間方向(x、y)は、相互に対して垂直であるタイヤ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)と平行な方向に従って測定した連続する凹部(6)及び/又は凸部(7)間の距離が一定であるタイヤ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記周壁(2、3、4、5)のうち1つの外面(10)全体が、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有するタイヤ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記周壁(2、3、4、5)のうち2つの対向する周壁の外面(10)全体が、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有するタイヤ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記周壁(2、3、4、5)のうち2つの連続する周壁の外面(10)全体が、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有するタイヤ。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記周壁(2、3、4、5)のうち3つの外面(10)全体が、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有するタイヤ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、全ての前記周壁(2、3、4、5)の外面(10)全体が、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンを有するタイヤ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンは、波状の導線(D)に沿って移動させた波状の母線(G)により実現され、該母線(G)及び前記導線(D)はそれぞれ、各外面(10)の最外点である山点(8)と、前記各外面(10)の最内点である谷点(9)とを含むタイヤ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)と平行な方向に従って測定した連続する山点(8)と谷点(9)との間の距離(y 、y )が一定であるタイヤ。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)に対する前記山点(8)の高さ(x out、x out)が一定であるタイヤ。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)に対する前記谷点(9)の深さ(x in、x in)が一定であるタイヤ。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)に対する前記山点(8)の高さ(x out、x out)は、0mm~4mm、好ましくは0.25mm~3mmであるタイヤ。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)に対する前記谷点(9)の深さ(x in、x in)は、0mm~4mm、好ましくは0.25mm~3mmであるタイヤ。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)と平行な方向に従って測定した連続する山点(8)と谷点(9)との間の距離(y 、y )は、0.5mm~7.5mm、好ましくは0.5mm~5mmであるタイヤ。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記外面(10)に直交する方向に従って測定した前記谷点(9)に対する前記山点(8)の高さが、8mm以下、好ましくは0.5mm~6mmであるタイヤ。
【請求項17】
請求項9~16のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記波状の母線(G)及び/又は波状の導線(D)は、前記山点(8)及び谷点(9)のそれぞれで0.2mmに等しい曲げ半径を呈するタイヤ。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、前記交互の凹部(6)及び/又は凸部(7)は、角柱形状又は角錐形状を呈するタイヤ。
【請求項19】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ(1)において、交互の前記凹部(6)及び/又は凸部(7)の3次元パターンは、ジグザグ導線(D)に沿って移動させたジグザグ母線(G)により実現されるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スノーディギング及びスノートラッピング効果に関してスノー性能を向上させるための、トレッド陸部の外周壁に革新的な3Dパターンプロファイルを有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
雪上でのタイヤ性能は、主にトレッドコンパウンド及びパターン特徴(ボイド比/分布、エッジの幾何学的形状/数/分布、トレッドブロックの形状/剛性)に応じたいくつかのメカニズムに関連する。
【0003】
特に、このような種類の性能に対応する主なメカニズムは、「スノーディギング」及び「スノートラッピング」効果であり、前者は積雪へのトレッドの貫入に関するものであり、後者はトレッドボイドが雪を集めて圧縮する能力に関するものである。
【0004】
特に、スノーディギングは、トレッドパターン要素(サイプ、切込み、エッジ)が積雪に貫入してトラクション/ブレーキング/コーナリング操作のためのグリップを提供する能力に関する。
【0005】
一方で、スノートラッピングは、スノーグリップに対するさらなる寄与として雪同士の摩擦メカニズムを利用するために、トレッドパターンのマクロボイド(溝、ラグ、クランク等)が雪を集めて圧縮する能力である。
【0006】
スノートラッピング効果に関して、トレッドブロックの縦/横側壁として平坦面を有することは、通常のことであるとしても、このメカニズムの向上に適した解決手段ではない。
【0007】
スノー性能の向上のために採用される最も一般的な手法の1つは、雪を蓄積させることができる箇所を増やすために単純な多角形の鎖のような形状(例えば、方形波、鋸歯形、「ジグザグ」状等)の輪郭を有するトレドブロックを実現することである。これにより、トラッピングメカニズムが改良される。
【0008】
一例として、従来技術の第1解決手段を図1a~図1cに示す。トレッドブロックの断面プロファイルは、ブロック自体の高さに沿って変わらず、タイヤ径方向に沿って、すなわちブロック高さzに沿って基本的に「押し出された」ボイドパターン特徴(切込み、切欠き、「ジグザグ」線)を呈する。
【0009】
図2a~図2cに示す従来技術の第2解決手段は、ブロック自体の高さ(方向z)に沿って変わるがブロック幅(方向x)及びブロック長さ(方向y)に沿って平坦であるトレッドブロック断面プロファイルを有することである。
【0010】
図3a及び図3bに、別の従来技術の解決手段のトレッドブロック周壁の外面を示す。外面には、ブロック幅に沿って「ジグザグ」プロファイル(丸みもある)を押し出すことにより実現された直線的な切込みが設けられる。各切込みは、三角形のプロファイルを有する。
【0011】
上記既知の解決手段の全てにおいて、トレッドブロックの壁の可変プロファイルは一方向にのみ適用され、これは幅/長さ又は高さであり得る。
【0012】
全てのこのような既知の実施形態には、雪を捕らえてスノー性能を高めるのにブロック壁全体を用いないという制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明が提起し解決する技術的課題は、既知の技術に関して上述した欠点を克服することができるタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1に記載のタイヤにより解決される。本発明の好ましい特徴は、従属請求項の主題である。
【0015】
本概念の目的は、トレッド陸部の周壁面に、特にトレッドブロックの周壁面に一連の3次元(3D)形状の付加的なパターン要素(例えば、切込み、切欠き、波状ボイド)を導入することにより、「スノートラッピング」効果を高める解決手段を提供することである。
【0016】
上記3D特徴(基本的には小さなパターン状のボイド及び/又は凸部)は、雪を捕らえて圧縮するような形状及び分布なので、スノーグリップに大きく寄与する。解決される課題は、トレッドコンパウンド特性の設計に加えて、トレッド陸部レベルでの全体的なスノートラッピングメカニズムを強化することにより、スノー性能を向上させるという課題である。
【0017】
本発明は、スノー性能を向上させるために、トレッド陸部の周壁に革新的な3Dプロファイルを有する外面を有するタイヤを提供する。周壁は、スノーディギング及びスノートラッピング効果を高めるよう構成された3Dボイド(又は凹部)及び/又は凸部パターンを呈する。
【0018】
本願において、用語「ボイド」及び「凹部」は同義であるものとする。
【0019】
本発明の重要な第1態様は、陸部の高さ及び/幅/長さの両方に沿って同時に可変プロファイルが可能であるように、ボイド(切込み、切欠き、溝等)及び/又は突出要素がトレッド陸部の縦壁(タイヤ転がり方向に対して前後の両方)及び/又は横壁に適用されることにある。
【0020】
高さ方向及び幅/長さ方向の両方に可変のプロファイルを適用することにより、複雑な3Dパターンの形状にすることができるので、陸部の壁全体を用いてスノートラッピングメカニズムを、さらには全体的なスノーグリップ能力を高めることができる。
【0021】
トレッド陸部の側壁全体がこの3Dパターンによる影響を受け得るので、このようなメカニズムに関与する総表面積は、従来技術の解決手段のものよりもはるかに大きい可能性がある。これにより、スノートラッピング能力、したがって全体的なスノーグリップを強化するボイドの数が多くなる。
【0022】
より詳細には、本発明の第1技術的利点は、エッジ密度(スノートラッピング及びディギング効果の両方にとって非常に重要である)が高くなることである。
【0023】
さらに、トレッド陸部の壁プロファイルを適切に最適化することにより、スノートラッピングを局所的に(トレッド陸部レベルで)向上させて、捕らえる雪の量を多くすると共に密度も高くすることができる。
【0024】
さらに、陸部の剛性が影響を受けない、特に低下しないように、ボイドが導入される。これは、実際にはブロック剛性の低下等の雪を優先した設計目的の悪影響を受ける可能性がある他のあらゆる性能(すなわち、ドライ、ウェット)にとって非常に重要である。
【0025】
本発明が、トレッド陸部の内面ではなく縦/横側壁面に、一連の小さな3D「ボイド」(切込み又は凹部)及び/又は突出要素を付加的なパターン要素として導入することにより、スノートラッピング効果を高める解決手段を提供することに留意することが重要である。換言すれば、3Dパターンは、雪に(又はより一般的には地面に)貫入するよう設計されたトレッド陸部の外周面に設けられる。特定のレイアウトで位置決めされた小さな3Dボイドは、雪を捕らえて圧縮するような形状及び分布なので、スノーグリップに大きく寄与する。
【0026】
本発明による解決手段は、全体的なスノー性能向上(ブレーキング/トラクション/ハンドリング/スラローム)を必要とする全てのタイヤに適用される可能性があるものとするが、当然ながら、あらゆる種類のタイヤに適用されることが有利である。
【0027】
本発明の他の利点、特徴、及び使用形態は、限定ではなく例として示す以下のいくつかの実施形態の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0028】
添付の図面の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】タイヤの従来技術の第1実施形態の概略斜視図を示す。
図1b図1aの実施形態に含まれる従来技術の第1トレッドブロックの平面図を示す。
図1c図1aの実施形態に含まれる従来技術の第1トレッドブロックの側面図を示す。
図2a】タイヤの従来技術の第2実施形態の概略斜視図を示す。
図2b図2aの実施形態に含まれる従来技術の第2トレッドブロックの平面図を示す。
図2c図2aの実施形態に含まれる従来技術の第2トレッドブロックの側面図を示す。
図3a】従来技術の第3トレッドブロックの概略斜視図を示す。
図3b図3aの従来技術の第3トレッドブロックの側断面図を示す。
図4a】本発明によるタイヤの好ましい実施形態の概略斜視図を示す。
図4b図4aのタイヤに含まれる本発明によるトレッドブロックの好ましい実施形態の平面図を示す。
図4c図4aのタイヤに含まれる本発明によるトレッドブロックの好ましい実施形態の側面図を示す。
図5】本発明によるトレッドブロックの好ましい実施形態の側面斜視図をより詳細に示す。
図6図5に示すトレッドブロックの好ましい実施形態の側面図を示す。
図7図5に示すトレッドブロックの好ましい実施形態の平面図を示す。
図8図5のトレッドブロックの3次元パターン外面をさらに詳細に示す。
図9】本発明による導線Dの幾何学的特徴を示す。
図10】本発明による母線Gの幾何学的形状を示す。
図11】従来技術の第1トレッドブロック(解決手段A)、従来技術の第2トレッドブロック(解決手段B)、及び本発明によるトレッドブロックの好ましい実施形態(解決手段C)それぞれの原型に関する雪面摩擦のポテンシャル指数を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
前述の図に示す厚さ及び曲率は、例示にすぎないことを理解されたく、必ずしも一定の縮尺で示されていない。さらに、上記図では、本発明の態様をより明確に説明するためにタイヤのいくつかの層/構成要素が省かれている場合がある。
【0031】
以下において、前述の図を参照して本発明のいくつかの実施形態及び変形形態を説明する。
【0032】
さらに、以下で説明する異なる実施形態及び変形形態は、適合する場合は組み合わせて用いることができる。
【0033】
図4aを参照すると、本発明によるタイヤ1の好ましい実施形態が示されており、これは、少なくともトレッドブロックaを含む外側トレッド部Pを含む。
【0034】
本発明によれば、トレッド部は、トレッドの中央陸部、中間陸部、又は/及びショルダ陸部を指し得るか又はこれを含み得るものとする。さらに本発明によれば、以下で角柱形状を有する例示的なトレッドブロックに言及する本発明の特徴の全てが、異なるさらにより複雑な形状を有する、例えばV字形(「掌」形)プロファイルを有するトレッドブロック、又はより一般的にトレッド陸部にも適用されるものとする。
【0035】
タイヤ1は、周方向C、径方向R、及びタイヤの回転軸Aと平行な方向である横断方向Tを有する。より明確にするために、タイヤ1の転がり方向を矢印で示す。
【0036】
図4aの例示的な図では、横断方向T及び回転軸Aが一致して示されている。
【0037】
さらに、トレッドブロックの幾何学的形状の以下の説明を容易にするために、図4aに縦軸x、横軸y、及び矢状軸zにより規定されるトレッドブロックの局所基準系を意図した直交座標系を示す。縦軸xは、周方向Cに局所的に接し、横軸yは、回転軸Aと平行であり、矢状軸zは、径方向Rと局所的に一致する。
【0038】
トレッド部P、又は特にこの例によればトレッドブロックaは、複数の外側周面又は周壁を含み、これらは、本発明によれば、ブロックaの外壁、例えばマクロボイドに面するか又は他のブロックに面する外壁であって、例えばサイプの壁等のマイクロボイドに面するトレッドブロックの内壁ではない壁であるものとする。周壁は、タイヤ1の使用時に雪、又はより一般的には地面に貫入して係合する壁である。
【0039】
本発明によれば、上記周壁のうち1つの外面の少なくとも一部は、凹部及び/又は凸部の3次元(3D)パターンを有する。
【0040】
本発明によれば、凹部のみの3Dパターン及び凸部のみの3Dパターンを含む実施形態も想定される。
【0041】
換言すれば、3Dパターンは、同じ外面の、好ましくは相互に対して垂直な少なくとも2つの空間方向に従って交互になる凹部及び/凸部を含む。好ましくは、凹部及び/又は凸部は、相互に対して垂直であり平面図での該当の外面の範囲を画定する2つの主方向に従って交互になっている。例として、上記直交座標系を参照すると、このような2つの方向は、横断/長手方向及び矢状方向であり得る。上記3Dパターンは、タイヤ1の使用時に3D凹部内及び/又は3D凸部間で雪が捕らえられて圧縮されるので、スノーディギング及びスノートラッピング効果を高めるよう構成される。
【0042】
好ましくは、上記交互の凹部及び/又は凸部のそれぞれが複曲面要素として形成されるが、本発明の好ましい実施形態によれば、角柱形状(図4b及び図4cの実施形態)又は角錐形状も呈し得る。そうでない場合、それぞれ凹部及び/又は凸部の形状が異なる外面の様々な領域が、同じブロック壁に設けられ得る。
【0043】
例として、図4b及び図4cは、それぞれ本発明によるトレッドブロックaの好ましい実施形態の平面図及び側面図を示す。トレッドブロックaは、4つの周壁、すなわち第1対の縦周壁及び第2対の横周壁により規定された角柱形状を呈する。好ましくは、4つの周壁の全ての外面が、角柱形状を呈する交互の凹部及び/又は凸部を有することで、3Dパターンを形成する。
【0044】
より一般的には、凹部及び/又は凸部を交互にすることで、トレッド陸部の、特にトレッドブロックの外面で一種の3D市松パターンを実現する。
【0045】
本発明の他の実施形態によれば、既に説明したものによる3Dパターンを、既述のように、1つの周壁のみ、又は2つの対向する周壁(好ましくは横周壁対)、又は当然ながらトレッドブロックの全ての周壁の外面に設けることもできる。3Dパターンは、各周壁の外面全体に、又はその限られた部分のみに設けることもできる。
【0046】
好ましくは、凹部及び/又は凸部が設けられた周壁の外面と平行な方向に従って測定した、連続する凹部及び/又は凸部間の距離は一定である。
【0047】
図5を参照すると、本発明によるトレッド部Pの別の好ましい実施形態が示されている。より明確にするために、トレッド部Pを含むタイヤの転がり方向を矢印で示す(タイヤは図5には示さない)。トレッド部Pは、例として、参照符号a及びbでそれぞれ示す2つのトレッドブロックを含むが、以下の説明はトレッドブロックaのみに言及する。しかしながら、トレッドブロックaに関する以下の考察は全て、トレッドブロックbにも(又は本発明によるタイヤに含まれる任意の他のトレッドブロックに)拡張されるものとする。
【0048】
図5に明確に見られるように、本発明の3Dパターンは、トレッド部又はより詳細にはトレッドブロックを画定する外周面又は外周壁に設けられることが意図され、これらの面又は壁は、サイプ11を画定する壁等のトレッドブロック本体内に設けられた内壁を含むものではない。
【0049】
トレッドブロックaは、角柱形状を有することが好ましく、4つの周壁、すなわち第1対の周壁3、5及び第2対の周壁2、4を含み、概して各対の壁は実質的に相互に対向している。特に、トレッドブロックaは、上記周方向C及び径方向Rに従って延びる2つの縦周壁2、4と、上記横断方向T及び径方向Rに沿って延びる2つの横周壁3、5とを含む。
【0050】
好ましくは、第1対の2つの周壁3、5又は第2対の2つの周壁2、4のそれぞれの外面10全体に、交互の凹部6及び/又は凸部7の3Dパターンが設けられる。
【0051】
すなわち、好ましい実施形態によれば、図6及び図7にも見られるように、上記2つの横周壁3、5の両方の外面10全体が、交互の凹部6及び/又は凸部7の3Dパターンを有する。3Dパターン外面10の拡大図を図8に示す。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、トレッドブロックaの2つの連続する周壁(図6及び図7を参照すると、連続する周壁は、参照符号2、3又は3、4又は4、5又は5、2で示されている)の外面10全体が、交互の凹部及び/又は凸部の3Dパターンを有することもできる。
【0053】
代替として、トレッドブロックaの3つの周壁の外面10全体が、交互の凹部及び/又は凸部の3Dパターンを有することもできる。
【0054】
好ましくは、交互の凹部及び/又は凸部の3Dパターンは、波状の導線D経路に沿って移動させた波状の母線Gにより実現され、線G及びDの好ましい実施形態を図10及び図9にそれぞれ示す。母線G及び導線Dはいずれも、各外面10の最外点である山点8と、各外面10の最内点である谷点9とを含む。
【0055】
本発明において、山点及び谷点でゼロ以外の曲げ半径を呈するジグザグ線も波線であるものとすることに留意されたい。
【0056】
図9を参照すると、x-z平面断面に従ったトレッドブロック3Dパターン表面の外側プロファイルに対応する導線Dが示されている。図10を参照すると、x-y平面断面に従ったトレッドブロック3Dパターン表面の外側プロファイルに対応する母線Gが示されている。
【0057】
特に、3Dパターンは、導線Dのプロファイル(図9に示すようにx-z平面上)に沿って移動させた母線Gのプロファイル(図10に示すようにx-y平面上)により生成されている。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記外面10と平行な方向である長手方向xに従って測定した連続する山点8と谷点9との間の距離は一定である。好ましくは、横断方向yに従って測定した外面10に対する山点8の高さx out、x outは一定である。外面10に対する谷点9の深さx in、x inも一定とすることができる。
【0059】
より詳細には、外面10に対する山点8の高さx out、x outは、0mm~4mm、好ましくは0.5mm~3mmであり得る。一方、外面10に対する谷点9の深さx in、x inは、0mm~4mm、好ましくは0.5mm~3mmであり得る。
【0060】
好ましくは、上記外面10と平行な横断方向yに従って測定した連続する山点8と谷点9との間の距離y 、y は、0.5mm~7.5mm、好ましくは0.5mm~5mmである。さらに好ましくは、上記外面10に直交する長手方向xに従って測定した各山点8と各谷点9との間の距離は、8mm以下であり、好ましくは0.5mm~6mmである。
【0061】
特に、波状の母線G及び/又は波状の導線Dは、山点8及び谷点9のそれぞれで0.2mmに等しい曲げ半径を呈する(図9及び図10には図示せず)。他の実施形態によれば、曲げ半径は、2mm以下、より好ましくは0.2mm~1.5mmであり得る。
【0062】
本発明の他の実施形態によれば、交互の凹部及び/又は凸部の3Dパターンは、ジグザグの導線に沿って移動させたジグザグの母線により実現される(ジグザグの母線及び導線は、それらの山点及び谷点でゼロ以外の曲げ半径を有する)。このような場合、生成された凹部及び/又は凸部は角錐形状を有する。
【0063】
複雑な3Dパターンを導入する目的は、雪を捕らえるためにトレッド陸部(特に、トレッドブロック)の壁上に(適切な形状及び間隔の)溝/切込み/ボイドを最大限に存在させることである。捕らえた雪を圧縮することにより、縦せん断力が大きくなり、さらに全体的なグリップ効果が高くなる。
【0064】
トレッドブロックの外面に本発明による凹部及び/又は凸部の3Dパターンが設けられるほど、スノー性能が向上する。当業者が意図するように、3Dパターンが設けられたトレッド陸部の外面の選択に応じて、雪上のトラクション及び/又はブレーキング及び/又はコーナリングを向上させることが可能であり、上記特徴の全てを同時に向上させることさえ可能である。
【0065】
図5図9、及び図10に関して、母線G及び導線Dの好ましい寸法値を以下に記す(a及びaは、凹部及び凸部が施されていない平坦な外面10の元の高さを示す)。
【0066】
【表1】
【0067】
実験データ
実験キャンペーンを実施して、本発明によるタイヤのスノー性能の向上の程度を証明した。
【0068】
実験キャンペーンでは、同じ使用条件下、一定の速度、温度、及び加圧力、制御された温度で3つのゴムブロック原型に雪道を滑らせた。
【0069】
切込みのない第1ゴムブロック(解決手段A)、従来技術による第2ゴムブロック(解決手段B)、及び本発明による第3ゴムブロック(解決手段C)を用意した。
【0070】
実験キャンペーンの対象となるゴムブロックのそれぞれが、同じ全体寸法を有する。
【0071】
図3bを参照すると、従来技術の解決手段Bのトレッドブロックには、以下の寸法の凹部及び凸部のパターンが設けられている。
【0072】
【表2】
【0073】
試験した本発明による解決手段Cの寸法。
【0074】
【表3】
【0075】
解決手段Cの曲げ半径は0.2mmである。
【0076】
実験結果を、雪面摩擦係数(雪面摩擦係数は、前後力Fxと法線力Fzとの比である)の異なるポテンシャル指数に関して図11のヒストグラムに示すが、当然ながら、高摩擦が望まれた。
【0077】
本発明による解決手段Cの雪面摩擦ポテンシャル指数は、試験した解決手段A及びBよりも高い。
【0078】
好ましい実施形態を参照して、本発明をここまで説明してきた。添付の特許請求の範囲の保護範囲により定められるように、同じ発明の中心概念の範囲内で他の実施形態が可能であるものとする。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】