(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-08
(54)【発明の名称】軸方向磁束電気機械用のロータ、およびそのようなロータを組み立てて取り外すための方法。
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2793 20220101AFI20240301BHJP
【FI】
H02K1/2793
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558219
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022057539
(87)【国際公開番号】W WO2022200379
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311009022
【氏名又は名称】ルノー エス.アー.エス.
(71)【出願人】
【識別番号】514325376
【氏名又は名称】ホワイロット
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】デュオ, パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ユイマール, ロイック
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA06
5H622CB01
5H622PP04
5H622PP10
5H622PP19
(57)【要約】
本発明はロータ(1)に関し、ロータ(1)は、複数のアーム(12)がそこから延在するハブ(11)を含む本体(10)と、アーム(12)間に配置された複数の磁石ブロック(20)と、ロータの周辺部に配置された円形リング(30)と、を含み、円形リングの内面および磁石ブロックの各々の外面の一方が、第1の凹部を有し、他方が相補的な形状を有し、ロータが、各々が本体と磁石ブロックとの間に配置されて、前記磁石ブロックを円形リングに対して付勢し、円形リングおよび前記磁石ブロックが前記第1の凹部に入れ子になっている、複数の保持手段(40)を含む、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向磁束電気機械用のロータ(1)であって、前記ロータ(1)が長手方向軸線(A1)を中心とする円板形状を有し、
複数のアーム(12)がそこから延在するハブ(11)を含む本体(10)と、
複数の磁石ブロック(20)であって、各磁石ブロック(20)が2つの隣接するアーム(12)の間に配置される、複数の磁石ブロック(20)と、
前記ロータ(1)の周辺部に配置され、前記磁石ブロック(20)を取り囲む円形リング(30)と、を含み、
前記円形リング(30)の内面(31)および前記磁石ブロック(20)の各々の外面(23)の一方が、第1の凹部(50)を有し、他方が相補的な形状を有し、
前記ロータ(1)が、各々が前記本体(10)と磁石ブロック(20)との間に配置されて、前記磁石ブロック(20)を前記円形リング(30)に対して付勢し、前記円形リング(30)および前記磁石ブロック(20)が前記第1の凹部(50)に入れ子になっている、複数の保持手段(40)を含む、ことを特徴とする、ロータ(1)。
【請求項2】
前記保持手段(40)が取り外し可能である、請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記保持手段(40)の各々が、前記本体(10)に設けられたハウジング(60)内に配置され、前記ハウジング(60)が、前記保持手段(40)を前記ハウジング(60)内に導入するように設計された開口部(61)を含み、前記開口部(61)が、前記保持手段(40)のサイズよりも小さいサイズを有する、請求項1または2に記載のロータ(1)。
【請求項4】
前記保持手段(40)が、ばねまたはクリップまたはフレットピンゲージである、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項5】
前記保持手段(40)の各々が、磁石ブロック(20)の内面(22)と前記本体(10)との間に囲まれている、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項6】
前記保持手段(40)の各々が、前記長手方向軸線(A1)を中心として前記本体(10)の厚さに対して偏心している、請求項1から5のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項7】
前記アーム(12)の各々が、互いに対向し、前記アーム(12)の延在方向に長さが延びる2つの第2の凹部または突起部(14)を含み、前記磁石ブロック(20)の各々が2つの側面(21)を有し、前記2つの側面(21)の各々が、前記側面(21)が接触している前記アーム(12)の前記第2の凹部または突起部(14)の形状と相補的な形状の第3の凹部または突起部(24)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項8】
前記第2の凹部または突起部(14)の各々が、前記長手方向軸線(A1)に近づくことによって増加する深さまたは高さを有する、請求項7に記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記磁石ブロック(20)の各々が、周辺支持体(26)に接着またはフレッティングされた複数の単一の磁石(25)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項10】
各磁石ブロック(20)と前記ハブ(11)との間に防振手段が設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載のロータ(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のロータ(1)を組み立てるための方法であって、
前記磁石ブロック(20)をアーム(12)間に挿入するステップと、
前記磁石ブロック(20)の周りに前記円形リング(30)を実装するステップと、
前記磁石ブロック(20)を前記円形リング(30)に対して付勢するように、前記本体(10)と前記磁石ブロック(20)との間の前記保持手段(40)を作動させるステップと、を含む方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載のロータ(1)を取り外すための方法であって、
前記磁石ブロック(20)を前記円形リング(30)から分離するように前記保持手段(40)を停止させるステップと、
前記磁石ブロック(20)の前記周辺部から前記円形リング(30)を取り外すステップと、
前記磁石ブロック(20)の少なくとも1つを前記アーム(12)間から取り外すステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、軸方向磁束電気機械の分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、軸方向磁束電気機械用のロータに関し、前記ロータは、長手方向軸線を中心とする円板形状を有し、
複数のアームがそこから延在するハブを含む本体と、
複数の磁石ブロックであって、各磁石ブロックが2つの隣接するアームの間に配置される、複数の磁石ブロックと、
ロータの周辺部に配置され、磁石ブロックを取り囲む円形リングと、を含む。
【0003】
本発明は、電気自動車またはハイブリッド自動車用の電気エンジンにおいて特に有利な用途を有する。
【0004】
本発明はまた、そのようなロータを組み立てて取り外すための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
軸方向磁束電気機械は、一般に、2つのステータと1つのロータとを含み、これら2つのタイプの要素を分離するエアギャップを含む。ロータは一連の永久磁石または磁石ブロックを担持し、一連のコイルはステータによって担持される。
【0006】
コイルが電流によって動力を供給されると、エンジンの出力シャフトに固定されたロータは、磁場に起因するトルクを受ける(生成される磁束は、軸方向磁束電気機械の軸方向磁束である)。
【0007】
従来、このようなロータを組み立てるために、一方では、本体が円板形状に製造され、ノッチを有し、他方では、磁石ブロックを有する。次いで、磁石ブロックは、この目的のために設けられたノッチに実装される。
【0008】
磁石ブロックを本体に固定するために、磁石ブロックは通常、本体に接着される。しかしながら、接着剤を使用することにはいくつかの欠点がある。
【0009】
まず、使用される接着剤は熱硬化性接着剤である。したがって、一旦注入されると、ロータは炉内で非常に高い温度で加熱され、一定の材料およびエネルギーコストの両方を表す保持圧力にさらされなければならない。したがって、接着剤ベースのロータの連続製造は高価である。
【0010】
さらに、接着層は、寸法の連鎖に追加のリンクを追加し、これはロータの設計を複雑にし、同一のエアギャップ差(磁気性能に必然的に悪影響を及ぼす)の取得を保証しない。
【0011】
さらに、一旦接着されると、磁石ブロックを本体から切り離すことができなくなる。したがって、接着は、ロータを維持するための選択肢を制限し、故障した磁石ブロックは、例えば、新しい磁石ブロックと交換することができない。接着剤がリサイクル可能でない場合、接着されると、ロータまたはその要素もリサイクル可能ではない。
【0012】
例えば仏国特許第3027468号明細書のように、接着剤を含まないロータが提案されている。これらのロータでは、ノッチは、ロータの周辺部の磁石ブロックを取り囲まないように、半径方向外側に開いている。磁石ブロックは、本体および磁石ブロックで構成されたアセンブリを取り囲む予め付勢された円形のフレットを力によって実装することによって本体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、フレットの実装は、部品の製造と、フレットを実装するための特定のプレスによる力の印加との両方で高い精度を必要とするため、複雑である。したがって、接着剤と同様に、この溶液は工業化が困難なままである。
【0015】
さらに、フレットが実装されると、ロータはもはや取り外し可能ではなく(または取り外すことが非常に困難であり)、これにより、部品のメンテナンスまたはリサイクルの選択肢が再び制限される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これに関連して、導入部で定義されたような軸方向磁束電気機械用のロータが提案され、円形リングの内面および各磁石ブロックの外面の一方が第1の凹部を有し、他方が相補的な形状を有することが提供され、ロータは、複数の保持手段を含み、各保持手段は、本体と磁石ブロックのうちの1つとの間に配置されて、円形リングと前記磁石ブロックとが前記第1の凹部に入れ子にされた状態で前記磁石ブロックを円形リングに対して付勢するようになっている。
【0017】
したがって、本発明のおかげで、ロータは、接着剤もフレッティングもなしに組み立てられる。保持手段は、中空円形リングと係合して、ロータの密着を確実にする。
【0018】
接着またはフレッティングによって磁石ブロックを本体に固定しないことにより、特定の機械なしで行うことが可能になり、したがって製造コストを削減することができる。これはまた、高温での加熱またはフレッティングなどの複雑なステップを除去することによって、ロータの連続製造を単純化する。
【0019】
さらに、本発明によるロータは、本体からの磁石ブロックの分離を考慮することを可能にし、したがって、ロータまたはその要素の一部のみのメンテナンスおよびリサイクルを容易にする。
【0020】
さらに、好ましい実施形態では、磁石ブロックは、半径方向に小さな並進を行うことができる。したがって、保持手段は、磁石ブロックがロータの中心に向かって移動するときにダンパの役割を果たす。したがって、磁石ブロックが受ける付勢が低減され、破損の危険性を制限し、それらの寿命を延ばすことを可能にする。
【0021】
本発明によるロータの他の有利で非限定的な特徴は、個々にまたはすべての技術的に可能な組み合わせに従って取られ、以下の通りである。
前記保持手段は取り外し可能であり、
前記円形リングは弾性であり、
前記保持手段の各々は、本体内に設けられたハウジング内に配置され、前記ハウジングは、前記保持手段を前記ハウジング内に導入するように設計された開口部を含み、前記開口部は、前記保持手段のサイズよりも小さいサイズを有し、
前記保持手段は、ばねまたはクリップまたはフレットピンゲージであり、
前記保持手段の各々は、磁石ブロックの内面と本体との間に取り囲まれ、
前記保持手段の各々は、長手方向軸線の周りで本体の厚さに対して偏心し、
前記アームの各々は、互いに対向し、前記アームの延在方向に長さが延びる2つの第2の凹部または突起部を含み、前記磁石ブロックの各々は、前記側面が接触しているアームの第2の凹部または突起部の形状と相補的な形状の第3の凹部または突起部をそれぞれ含む2つの側面を有し、
前記第2の凹部または突起部の各々は、前記第2の凹部または突起部が接触している側面に向かって、長手方向軸線に近づくにつれて増加する深さまたは高さをそれぞれ有し、
前記磁石ブロックの各々は、周辺支持体に接着またはフレッティングされた複数の単一の磁石を含み、
各磁石ブロックとハブとの間に防振手段が設けられ、
前記本体はアルミニウム製である。
【0022】
本発明はまた、上記のようなロータを組み立てるための方法であって、
磁石ブロックをアーム間に挿入するステップと、
磁石ブロックの周りに前記円形リングを実装するステップと、
前記磁石ブロックを前記円形リングに対して付勢するように、前記本体と前記磁石ブロックとの間の前記保持手段を作動させるステップと、を含む。
【0023】
この組立方法により、ロータをフレッティングや固着することなく組み立てることができる。実際、保持手段の実装前に、磁石ブロックは本体にわずかに接近しており、力なしで円形リングを実装するのに十分な隙間を残す。
【0024】
本発明は、上記のようなロータを取り外すための方法であって、
磁石ブロックを円形リングから分離するように保持手段を停止させるステップと、
磁石ブロックの周辺部から円形リングを取り外すステップと、
前記磁石ブロックの少なくとも1つを前記アーム間から取り外すステップと、を含む方法を最終的に提案する。
【0025】
この除去方法は、例えば、ロータを修理または交換する目的で、ロータの要素の1つを分離することを可能にする。一般に、この除去方法は、ロータのメンテナンスを容易にする。
【0026】
当然ながら、本発明の異なる特徴、変形および実施形態は、それらが互いに適合しないかまたは排他的でない限り、様々な組み合わせに従って互いに関連付けることができる。
【0027】
添付の図面に関する以下の説明は、非限定的な例として与えられ、本発明が何からなり、それがどのようにして達成され得るかを理解させる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
添付の図面において、
【0029】
【0030】
【
図2】
図1のロータの本体の一部の概略斜視図である。
【0031】
【
図3】
図1のロータの磁石ブロックの概略斜視図である。
【0032】
【
図4】
図1のロータの周辺部分の平面A-Aに沿った概略断面図である。
【0033】
【
図5】本発明によるロータの一実施形態の変形例の周辺部分の概略断面図である。
【0034】
【
図6】実装前の
図1のロータの保持手段の概略斜視図である。
【0035】
【
図7】実装後の
図6の保持手段の概略斜視図である。
【0036】
【
図8】本発明によるロータの一実施形態の変形例の保持手段の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に表され、全体が符号1で参照されるような、本発明による軸方向磁束電気機械用のロータは、主に、長手方向軸線A1を中心とする円板形状を有する。この場合、ロータ1は、より具体的には、平坦な円筒形状を有し、その厚さは、長手方向軸線A1の周りの寸法は、長手方向軸線A1に垂直な半径方向に沿った寸法よりもはるかに小さい。長手方向軸線A1は、この場合、ロータ1が電気機械内で回転するときのロータ1の回転軸に対応する。
【0038】
図1において、ロータ1は、ねじ2によってフランジ3およびエンジンシャフト4に固定される。ロータ1は、例えば、同様に長手方向軸線A1を中心とする2つのディスク形状ステータの間に含まれる。ステータがロータ1を回転させると、ロータ1はエンジンシャフト4を駆動する。したがって、ロータ1とステータとを含む電気機械はトルクを生成する。
【0039】
ロータ1は、2つの対向する円形面を有する。長手方向軸線A1を中心とするこれら2つの円形面の間の距離は、ロータ1の厚さを規定する。
【0040】
以下では、ロータ1の周辺部は、長手方向軸線A1に位置するその中央部分に対向するその外側部分と呼ばれる。したがって、ロータ1の周辺部は、長手方向軸線A1から離れて位置する円形の外周部に対応する。
【0041】
図1が示すように、ロータ1は、
本体10と、
本体10の周辺部に配置された複数の磁石ブロック20と、
磁石ブロック20を取り囲む円形リング30であって、円形リング30および磁石ブロック20が第1の凹部50(
図1では見ることができない)に入れ子になっている、円形リングと、
磁石ブロック20の複数の保持手段40(
図1では見ることができない)と、を含む。
【0042】
本体10は、ハブ11と、ハブ11から延在する複数のアーム12とを含む。ハブ11は、本体10の中央部分を構成し、フランジ3およびエンジンシャフト4の固定を可能にする中央凹部を有する。この場合、アーム12は、長手方向軸線A1に対して実質的に半径方向に延在する。図に示すように、アーム12は、ロータ1の外周に向かって先細になっている。
【0043】
アーム12はすべて同一であり、ハブ11の周りに規則的に分布しており、それにより、2対2で空間によって分離されている。
【0044】
図2に見られるように、2つの隣接するアーム12の各対は、台形形状のノッチ13を画定する。この場合、2つのアーム12は、別のアームによって分離されていないときに隣接する。ノッチ13は、この場合、ロータ1の周辺部に向かって半径方向に開いている。
【0045】
この場合、本体10はアルミニウム製であることが好ましく、これによりロータ1の製造コストを低減することができる。後述するように、磁石ブロック20がアーム12に固定されていないという事実によって、複合材料で作られた本体よりも脆弱なアルミニウム本体10の使用が可能になる。したがって、アーム12は、ロータ1が動作しているときに半径方向の付勢をほとんど受けない。
【0046】
本体10は、例えば、1ミリメートル以下の厚さのアルミニウムシートのスタックによって作られる。変形例では、ロータ1の本体10は、別の金属材料または複合材料、例えば樹脂に埋め込まれた繊維化合物で作製されることが提供され得る。
【0047】
磁石ブロック20は、アーム12の間の自由空間に分布している。各磁石ブロック20は、隣り合う2つのアーム12の間に配置されている。したがって、各磁石ブロック20はノッチ13内に配置され、ノッチの形状は磁石ブロック20の形状に適合されている。隣り合うアーム12の対の間には、1つの磁石ブロック20が配置されている。したがって、ロータ1は、
図1に示す例と同様に、アーム12と同数の磁石ブロック20を含み、例えば、アーム12及び磁石ブロック20の各々にて、16個ずつ含む。
【0048】
図3がより具体的に示すように、各磁石ブロック20は、この場合、主に台形形状を有する。したがって、各磁石ブロック20は、実質的に台形形状の2つの主面と、2つの側面21と、を含む。ロータ1内では、各側面21はアーム12に面している。各磁石ブロック20はまた、ロータ1内でハブ11に面する内面22を含む。最後に、各磁石ブロック20は外面23を含む。外面23は、ロータ1の外周に位置し、主に円弧状の曲率を有する。
【0049】
この場合、
図3がより具体的に示すように、各磁石ブロック20は、周辺支持体26の内側に挿入された複数の単一の磁石25を含む。単一の磁石25は、例えば、周辺支持体26に接着またはフレッティングされる。この場合、磁石ブロック20の側面21、内面22および外面23は、周辺支持体26によって形成される。周辺支持体26は、例えばポリマーで作られた反磁性材料で作られている。
【0050】
長手方向軸線A1を中心とした本体10内の磁石ブロック20の保持を確実にするために、各磁石ブロック20は、ロータ1の周辺部に向かって延在するこの場合はグルーブリブタイプのスライダ接続部によって2つの隣接するアーム12の間に挟まれる。
【0051】
スライダ接続を行うために、各アーム12は、互いに対向し、アーム12の延在方向に、すなわちロータ1の外周に向かって長さ方向に延在する2つの第2の凹部または突起部14を含む。各磁石ブロック20自体は、その側面21の各々に、第2の凹部または突起部14と相補的な形状の第3の凹部または突起部24を含む。第3の凹部または突起部24は、この場合、周辺支持体26に形成される。
【0052】
この場合、各アーム12について、第2の凹部または突起部14は同種である。
【0053】
実際には、
図2が示すように、各アーム12は、その2つの対向する側面(磁石ブロック20に面するように配置された側面)を担持し、2つのリブは、そのプロファイルが矩形部分を有する(これらのリブは、2つの第2の凹部または突起部14を形成する)。これに対応して、
図3が示すように、各磁石ブロック20の2つの側面21はそれぞれ、対応するアーム12のリブに挿入されるように設計された中空溝を有する。変形例では、アーム12は溝を含むことができ、磁石ブロック20はリブを含むことができる。
【0054】
有利には、アーム12にリブを設け、磁石ブロック20に溝を設けることにより、アーム12を補強することが可能になる。
【0055】
図2および
図3が示すように、長手方向軸線A1に直交する平面内の第2の凹部または突起部14および第3の凹部または突起部24の寸法、すなわちこの場合、リブの深さおよびロータの直交方向寸法に沿った溝の高さは、長手方向軸線A1に近づくにつれて徐々に増加する。入れ子のサイズのこの変化は、アーム12の破損の危険性を制限しながら、長手方向軸線A1の周りの磁石ブロック20の保持を改善することを可能にする。
【0056】
図1に示すように、円形リング30は、主に環状形状を有する。円形リング30は、ロータ1の周辺部に配置される。円形リング30は、磁石ブロック20、より具体的には、本体10および磁石ブロック20によって形成されたアセンブリを取り囲む。円形リング30は、その内面31によって磁石ブロック20の外面23と接触している。
【0057】
円形リング30は、この場合、アルミニウム製である。アルミニウムは実際に、円形リングに従来使用されている炭素繊維材料よりも安価である。以下に説明するように、円形リング30の実装はフレッティングを必要としないため、アルミニウム円形リング30の使用が特に可能になる。
【0058】
加えて、この場合、円形リング30は磁石ブロック20とのみ接触するものとする。これは、円形リング30が本体10と接触していないことを意味する。このため、磁石ブロック20は、ロータ1の外周のノッチ13からわずかに突出している。したがって、円形リング30によって加えられる全付勢が磁石ブロック20に加えられ、これにより、それらのノッチ13内の保持が改善される。
【0059】
変形形態では、円形リング30は、磁石ブロック20および本体10と接触することができる。
【0060】
この場合、円形リング30は弾性である。これは、この場合、ロータが回転したり、加速したり、急減速したりすると、円形リング30がわずかに変形し得ることを意味する。
【0061】
好ましくは、円形リング30は、この意味で、その輪郭に沿ってすべて不変の形状の断面を有するように形作られる。したがって、それを磁石ブロック20に実装することが容易になる。
【0062】
これらの磁石ブロックへの円形リング30の保持は、強制的な取り付けによって、または接着剤もしくは取り付けられた固定手段の使用によって行われない。逆に、それは幾何学的形状の係合によって行われる。
【0063】
この場合、円形リング30の内面31または磁石ブロック20の外面23は、第1の凹部50を有する。磁石ブロック20の外面23、または円形リング30の内面31はそれぞれ、第1の凹部50と相補的な形状を有する。したがって、円形リング30の内面31または磁石ブロック20の外面23は、第1の凹部50で互いに入れ子になるように設計されている。
【0064】
したがって、磁石ブロック20の外面23が第1の凹部50を有する場合、これは、各外面23が好ましくはすべての外面23において同一である第1の凹部50を有することを意味する。
【0065】
一般に、相補的な形状は、この場合、問題の面、すなわち円形リング30の内面31または磁石ブロック20の外面23が、たとえそうであっても、第1の凹部50と相補的な形状の突起部を必ず有することを意味しない。
図4および
図5に示す例に見られるように、問題のフェースは、その寸法によって第1の凹部50内に入れ子になるように設計されている間、直線的な直線プロファイル(隆起部分なし)を有することができる。
【0066】
図4に示す例では、第1の凹部50は円形リング30の内面31に位置し、磁石ブロック20は相補的な形状の隆起部分を有する。この場合は、
図1に示すロータ1の場合である。この場合、円形リング30は凹部を含み、その凹部は磁石ブロック20に向かって、すなわち長手方向軸線A1に向かって配向される。この場合、磁石ブロック20の外面23は、円形リング30の内面31に形成された凹部の底部に接触する。
【0067】
図5に示す例では、第1の凹部50は磁石ブロック20の外面23に位置し、円形リング30は相補的な形状を有する。しかしながら、円形リング30は、第1の凹部50の高さよりも大きい長手方向軸線A1の周りの高さを有し(したがって、内面31のサイズは第1の凹部50のサイズに対応しない)、円形リング30の内面31は、磁石ブロック20の外面23に設けられた第1の凹部50に突出する相補的な形状のリブを有するようにすることができる。
【0068】
変形例では、円形リングは、磁石ブロックの外面を囲む凹部と、磁石ブロックの外面のくぼみに入れ子になるように設計された突出リブの両方を含むことができる。そのような変形形態は、
図4および
図5に示す2つの例の組み合わせに対応する。
【0069】
保持手段40は、円形リング30と係合して、磁石ブロック20をノッチ13内に保持すること、すなわち、磁石ブロックを本体10に固定することを可能にする。
【0070】
この場合、
図1が示すように、各保持手段40は、それぞれの磁石ブロック20に関連付けられる。言い換えれば、この場合、磁石ブロック20ごとに1つの保持手段40が設けられる。したがって、ロータ1は、磁石ブロックと同数の保持手段40を含む。変形例では、磁石ブロックごとにいくつかの保持手段を設けることができる。
【0071】
図7または
図8では、各保持手段40が本体10と磁石ブロック20との間に配置されていることが観察される。より具体的には、各保持手段40は、この場合、隣接する2つのアーム12の基部のハブ11と磁石ブロック20の内面22との間に配置される。
【0072】
各保持手段40は、関連する磁石ブロック20を円形リング30に対して付勢するように配置される。したがって、保持手段40は、円形リング30および第1の凹部50に入れ子になった磁石ブロック20を保持することを可能にする。
【0073】
この場合、磁石ブロック20の半径方向対称平面が考慮される(長手方向軸線A1を含む)場合、各保持手段40は、この半径方向対称平面に含まれ、ロータ1の外周に向かって配向された方向にこの磁石ブロックに力を加えるように配置される。
【0074】
これらの力を発生させるために、保持手段40は、この場合、好ましくは予め付勢される。これは、本体10への取り付け時に、長手方向軸線A1に対する半径方向軸の周りの圧縮による弾性変形を受けていることを意味する。したがって、磁石ブロック20に生じる付勢力は、戻り力から生じる。より信頼性を高めるために、保持手段40は、好ましくは一体に作られる。保持手段40は、例えば金属製である。
【0075】
保持手段40および円形リング30の弾性のおかげで、ロータ1が動作しているとき、ロータ1の中心または周辺部に向けられた半径方向の力が磁石ブロック20に加えられ、磁石ブロックは両側に恒久的に保持されながら小さな動きをすることができる。保持手段40と円形リング30との係合は、これらの動きを減衰させることを可能にする。磁石ブロック20に伝達されるこの移動の自由度は、加速段階および減速段階における衝撃を制限することを可能にし、したがって磁石ブロック20が破損する危険性を制限することを可能にする。
【0076】
この場合、保持手段40は取り外し可能である。これは、磁石ブロック20をノッチ13内に残しながら、例えば特定の工具を使用して、保持手段40をロータ1から切り離すことができることを意味する。取り外し可能な保持手段40は、例えば、その要素を再使用してロータ1を取り外すことを可能にすることによって、多数のメンテナンスオプションを提供する。
【0077】
好ましくは、磁石ブロック20の内面22はそれぞれ、保持手段40の端部を受け入れるように設計された補強材を含む。
【0078】
この場合、保持手段40は、例えば、ばね、典型的には螺旋ばね、またはクリップもしくはフレットピンゲージである。ばねブレードも使用することができる。好ましくは、ロータ1のすべての保持手段40は、同じタイプのものである。
【0079】
図1、
図6および
図7に示すロータ1の第1の実施形態では、保持手段40はクリップである。
図6に示すように、保持手段40は、より具体的には、開口部の両側に、特定の工具(例えば、サークリッププライヤ)を使用して保持手段40を取り扱うように設計された2つのオリフィス41を含む開放リングの形状を主に有するサークリップである。保持手段40の弾性変形は、この場合、クリップの直径の縮小、すなわちリングの開口部の縮小である。
【0080】
図8に示すロータ1の第2の実施形態では、保持手段40は、螺旋状の圧縮ばねであり、その螺旋の巻回軸は半径方向に対応する。保持手段40の弾性変形は、この場合、ばねの長さの減少である。
【0081】
第3の実施形態(図示せず)では、保持手段はフレットピンゲージである。ピンゲージは、例えば、本体10と磁石ブロック20との間に最小直径を有する端部によって強制的に配置された円錐形部分または切頭部分である。ハブ11と磁石ブロック20の内面22との間にピンゲージを挿入することによって、磁石ブロック20は円形リング30に対して徐々に付勢される。保持手段40の弾性変形は、この場合、ピンゲージの容積のわずかな圧縮である。
【0082】
保持手段がばねまたはクリップ(ピンゲージでさえも)である場合、保持手段は、本体10に設けられたハウジング60内に配置することができる。ハウジング60は、この場合、本体10に形成された凹部であり、その寸法は、保持手段40の少なくとも一部を受け入れるように適合されている。ハウジング60は、本体10、より具体的にはハブ11に設けられる。ハウジング60は、保持手段40が磁石ブロック20に付勢を加えることができるように、ロータ1の周辺部に向けられた出口で磁石ブロック20に向かって開いている。
【0083】
第1の実施形態では、
図6および
図7に示すように、ハウジング60は、ハブ11内に配置され、長手方向軸線A1に平行な軸を中心とする円板形状を有する。
【0084】
図6および
図7に示す第1の実施形態では、各ハウジング60は、その出口に加えて、保持手段40をハウジング60に導入するように特に設計された開口部61を含む。
図6および
図7が示すように、開口部61は円形である。開口部61は、ロータ1の2つの円形面の一方のハブ11に設けられる。保持手段40が予測不可能にハウジング60から出ることを防止するために、開口部61は、保持手段40のサイズよりも小さいサイズを有する。言い換えると、開口部61は、ハウジング60自体のサイズよりも小さいサイズを有する。この場合、保持手段40の弾性は、保持手段を圧縮し、開口部61を通して保持手段を導入するために使用される。ハウジング60内に入ると、保持手段40が拡張する。
【0085】
図8に示す第2の実施形態の場合、ハウジング60は、半径方向に延在する円筒の形状を有する。したがって、ハウジング60は、関連する磁石ブロックに面するハブ11の外面において中空である。図示されていない変形例では、ばねのハウジング60は、ばねが圧縮されたときにばねの側面挿入を可能にする長方形の開口部をさらに含むことができる。
【0086】
この場合、保持手段40は、本体10の厚さに対して偏心している。言い換えると、保持手段40は、本体10の厚さの中央に位置せず、ロータ1の2つの円形面のうちの一方により近い。保持手段40のこの位置決めは、特に
図8に見ることができる。この場合、ハウジング60自体は、本体10の厚さに対して偏心している。この偏心に起因して、各保持手段40は、関連する磁石ブロック20に力を加え、これにより、磁石ブロック20のノッチ13内への保持が改善される。
【0087】
ここで、
図6~
図8を参照して、ロータ1を組み立てる方法の2つの実施形態を説明する。
【0088】
これらの2つの実施形態において、組立方法は、以下の主要なステップを含む。
e1-アーム12の間に磁石ブロック20を挿入するステップ(アーム12の間への挿入前に、例えば発泡体から形成される防振シールまたは弾性ストリップが磁石ブロック20の内面22に任意選択的に接着される)、
e2-磁石ブロック20の周りに円形リング30を実装するステップ、
e3-磁石ブロック20を円形リング30に対して付勢するように、本体10と磁石ブロック20との間の保持手段40を作動させるステップ。
【0089】
組立方法の第1の実施形態を
図6および
図7に示す。この第1の実施形態では、円形リング30はその内面に中空凹部を有し、保持手段40はクリップである。
【0090】
この第1の実施形態は、保持手段40が、磁石ブロック20の周りに円形リング30を実装した後に実装されることを特徴とする。
【0091】
予備ステップの間、磁石ブロック20は、周辺支持体26内の単一の磁石25を接着またはフレッティングすることによって組み立てられる。
【0092】
そして、挿入ステップe1では、磁石ブロック20を本体10のアーム12の間に略半径方向に挿入する。挿入は、アーム12と磁石ブロック20の側面21との間のスライダ接続部によって案内される。磁石ブロック20は、それらの内面22がハブ11と接触するまで挿入される。
【0093】
したがって、以下の実施ステップe2では、円形リング30は、強制することなく、典型的にはフレッティングすることなく実装することができる。実際、この場合、円形リング30は、磁石ブロック20が本体10のハブ11に対して平坦化されるとき、磁石ブロック20の外周部よりもわずかに広い。この構成では、磁石ブロック20の外周部と円形リング30との間の隙間は、後者を容易に実施することを可能にする。保持手段40を作動させるステップe3の間にのみ、磁石ブロック20が円形リング30と再び接触する。
【0094】
したがって、円形リング30は、この場合、特に本体10が磁石ブロック20の周りに可逆的に取り付けられるように適合されているという意味で、本体10に対して取り外し可能である。
【0095】
作動させるステップe3は、この場合、以下のサブステップを含む。
工具により保持手段40を把持および圧縮するステップ、
保持手段40を開口部61を通してハウジング60内に挿入するステップ、
工具を取り外し、保持手段40を展開し、これにより、磁石ブロック20を円形リング30に対して付勢するステップ。
【0096】
この場合、工具は、例えば、2つのオリフィス41でクリップを把持するように設計される。これらの2つのオリフィス41に近づくことにより、クリップの直径が減少し、これにより、クリップをハウジング60内に位置決めすることが可能になる。工具を取り外すことにより、クリップが拡張し、磁石ブロック20の内面22に当接する。
【0097】
作動ステップe3の間、磁石ブロック20は凹部50において円形リング30と入れ子にされ、これは
図5のように円形リング30上に設けられ、またはこれは
図4のように磁石ブロック20の外面23上に設けられる。
【0098】
変形例では、保持手段がフレットピンゲージであり、作動ステップが、例えばプレスによって本体と磁石ブロックとの間にピンゲージを挿入することからなることを提供することができる。また、変形例では、保持手段は、矩形開口部を通ってハウジング内に横方向に導入されたばねであることが提供され得る。
【0099】
組立方法の第2の実施形態を
図8に示す。この第2の実施形態では、保持手段40はばねである。この第2の実施形態は、保持手段40が磁石ブロック20の実装前にハウジング60内に位置決めされるという点で、第1の実施形態とは区別される。
【0100】
したがって、磁石ブロック20を挿入するステップe1の前に、この第2の実施形態による組立方法は、保持手段40を本体10上に配置する予備ステップを含む。
【0101】
本体10のアーム間に挿入されると、磁石ブロック20はハブ11に対して圧縮される(したがって、ばねも圧縮される)。これにより、第1の実施形態と同様に、磁石ブロック20の外周部と円形リング30との間の隙間のおかげで、強制することなく円形リング30を実装することが可能になる。
【0102】
したがって、保持手段40を作動させるステップe3は、保持手段40が拡張できるように磁石ブロック20の圧縮を緩和することからなる。
【0103】
次に、ロータ1を取り外すための方法が説明され、この方法は、以下の主要なステップを含む。
e4-磁石ブロック20を円形リング30から分離するように保持手段40を停止させるステップ、
e5-磁石ブロック20の周辺部から円形リング30を取り外すステップ、
e6-アーム12の間から磁石ブロック20の少なくとも1つを取り外すステップ。
【0104】
ロータ1が第1の実施形態に従って組み立てられたとき、停止させるステップe4は、以下のサブステップを含む。
工具によりクリップを把持および圧縮して、磁石ブロック20を付勢解除するステップ、
保持手段40を開口部61を通してハウジング60から取り外すステップ。
【0105】
次いで、磁石ブロック20は、典型的には内面22をハブ11と接触させるまで、本体10の近くに移動させて、磁石ブロック20の外周部と円形リング30との間に隙間を作り出すことができる。したがって、円形リング30を取り外すステップe5の間に、円形リングは困難なく取り外すことができる。
【0106】
ロータ1が第2の実施形態に従って組み立てられたとき、停止ステップe4は、磁石ブロック20、したがって保持手段40を本体10に対して長手方向軸線A1に向かって圧縮して、上述の隙間を生成することを含む。
【0107】
次に、以下の取り外しステップe6の間に、磁石ブロック20のうちの1つ、複数、またはすべてを取り外すことができる。
【0108】
この除去方法は、ロータ1の要素を交換または修理することができる、または異なる要素をリサイクルする目的でそれらを分離および分類することができるなど、多くの利点を有する。
【0109】
本発明は、記載および提示された実施形態に全く限定されないが、当業者は、本発明による任意の変形例を提供する方法を知っているであろう。
【国際調査報告】