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特表2024-510695複合集電体、電極アセンブリ、及びそれらの製造方法、二次電池
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  • 特表-複合集電体、電極アセンブリ、及びそれらの製造方法、二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】複合集電体、電極アセンブリ、及びそれらの製造方法、二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20240304BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240304BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240304BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240304BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240304BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240304BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240304BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240304BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240304BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240304BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240304BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240304BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240304BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/04 Z
H01M4/13
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/414
H01M50/449
H01M4/64 A
H01M4/02 Z
H01M4/139
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M50/46
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540513
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2022077399
(87)【国際公開番号】W WO2023159372
(87)【国際公開日】2023-08-31
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】呉志陽
(72)【発明者】
【氏名】劉明健
(72)【発明者】
【氏名】李克強
(72)【発明者】
【氏名】謝斌
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB08
5H017BB16
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH00
5H017HH02
5H017HH03
5H017HH08
5H021AA06
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H028AA05
5H028BB07
5H028CC12
5H028EE01
5H028EE06
5H028HH05
5H028HH08
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ13
5H029CJ24
5H029CJ30
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ04
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA19
5H050FA04
5H050FA05
5H050GA24
5H050GA30
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
本出願は複合集電体を提供し、通気度が50s/100mL以上である有機支持層と、前記有機支持層の一つの表面に設置される導電層とを含む。それによって、有機支持層がセパレータを兼ねることができ、それにより該複合集電体を使用する二次電池の体積エネルギー密度を増大させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合集電体であって、
通気度が50s/100mL以上である有機支持層と、
前記有機支持層の一つの表面に設置される導電層とを含む、複合集電体。
【請求項2】
前記有機支持層の通気度は50s/100mL~2000s/100mLであり、任意選択的に100s/100mL~500s/100mLである、請求項1に記載の複合集電体。
【請求項3】
前記導電層は空隙を有し、
前記導電層の空隙率は10%~95%であり、任意選択的に10%~50%である、請求項1又は2に記載の複合集電体。
【請求項4】
前記有機支持層はポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリ塩化ビニリデン膜又はそれらの多層複合膜である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項5】
前記導電層の厚さは200nm~3000nmであり、任意選択的に500nm~1500nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項6】
前記導電層は、前記有機支持層から順に積層された製孔遷移層、肉盛層、機能層及び保護層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項7】
前記製孔遷移層、前記肉盛層及び前記機能層の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一つ又は複数であり、
前記保護層は、金属、金属酸化物及び導電性カーボンのうちの一つ又は複数を含み、好ましくはニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、アルミナ、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含む、請求項6に記載の複合集電体。
【請求項8】
前記製孔遷移層の厚さは2nm~100nmであり、任意選択的に10nm~50nmであり、
前記肉盛層の厚さは5nm~300nmであり、任意選択的に20nm~100nmであり、
前記機能層の厚さは500nm~5000nmであり、任意選択的に500nm~2000nmである、請求項6に記載の複合集電体。
【請求項9】
活物質層と前記導電層との間には、接着剤と導電剤とを含む下塗り層がさらに設置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項10】
電極アセンブリであって、
第1の極板と第2の極板とを含み、
前記第1の極板と前記第2の極板のうちの一方は、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合集電体と、前記複合集電体の前記導電層に設置される活物質層とを含み、
前記第1の極板と前記第2の極板のうちの前記一方の有機支持層と、前記第1の極板と前記第2の極板のうちの他方の活物質層とは、密着するように設置される、電極アセンブリ。
【請求項11】
電極アセンブリであって、
第1の極板と第2の極板とを含み、
前記第1の極板と前記第2の極板は、それぞれ請求項1~9のいずれか一項に記載の複合集電体と、前記複合集電体の前記導電層に設置される活物質層とを含み、
前記第1の極板の有機支持層と、前記第2の極板の活物質層とは、密着するように設置されるとともに、
前記第2の極板の有機支持層と、前記第1の極板の活物質層とは、密着するように設置される、電極アセンブリ。
【請求項12】
複合集電体の製造方法であって、
通気度が50s/100mL以上である有機支持層を形成する工程(1)と、
空隙のあるマスクを利用して気相成長法によって前記有機支持層の一つの表面に製孔遷移層を形成する工程(2)と、
前記製孔遷移層に導電性金属層を電気めっきして形成する工程(3)とを含む、複合集電体の製造方法。
【請求項13】
前記導電性金属層に保護層を形成する工程(4)をさらに含む、請求項12に記載の複合集電体の製造方法。
【請求項14】
前記工程(2)において、前記マスクの空隙の大きさと密度によって前記製孔遷移層の空隙の大きさと空隙率を調整する、請求項12に記載の複合集電体の製造方法。
【請求項15】
前記工程(2)において、真空めっき室内で、1300℃~2000℃の温度で導電性材料を蒸発させ、冷却して、前記有機支持層に堆積させ、前記製孔遷移層を形成する、請求項12に記載の複合集電体の製造方法。
【請求項16】
前記工程(4)において、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法のうちの少なくとも一つにより、前記導電性金属層に前記保護層を形成する、請求項13に記載の複合集電体の製造方法。
【請求項17】
電極アセンブリの製造方法であって、
第1の複合集電体を含む第1の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体は請求項1~9のいずれか一項に記載の複合集電体であり、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置されていることと、
第2の集電体と、前記第2の集電体の二つの表面に設置される活物質層とを含む第2の極板を用意することと、
一つのセパレータを用意することと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の一つの活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の別の活物質層が前記セパレータと接触するように、前記第1の極板、前記第2の極板及び前記セパレータを順に積層して、積層構造を得て、且つ前記積層構造を捲回することとを含む、電極アセンブリの製造方法。
【請求項18】
電極アセンブリの製造方法であって、
第1の複合集電体を含む第1の極板と第2の複合集電体を含む第2の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体と前記第2の複合集電体は、それぞれ請求項1~9のいずれか一項に記載の複合集電体であり、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置されていることと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の前記第2の複合集電体の有機支持層が前記第1の極板の活物質層と接触するように、前記第1の極板と前記第2の極板を捲回することとを含む、電極アセンブリの製造方法。
【請求項19】
二次電池であって、
請求項10又は11に記載の電極アセンブリ、及び請求項17又は18に記載の製造方法で製造された電極アセンブリのうちの少なくとも一つを含む、二次電池。
【請求項20】
電力消費装置であって、
請求項19に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電気化学分野に関し、特に複合集電体及びその製造方法、それを備える二次電池と電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲が益々広くなることに伴い、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システム、及び電動ツール、電動自転車、電動オートバイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。リチウムイオン電池が飛躍的な発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対してもより高い要求が求められている。
【0003】
従来技術の極板は、金属集電体と、該集電体の二つの表面に形成される活物質層とを含む。そして、極性の異なる極板はセパレータにより互いに分離されている。このような極板構造は、製造時にセパレータを二層捲回又は積層する必要があり、その製造プロセスが複雑である。そして、このような極板構造を用いる二次電池において、そのイオン通路が長く、充放電特性に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複合集電体及びその製造方法、それを備える二次電池と電力消費装置を提供することである。該複合集電体は、極板の間に設置されたセパレータを省き、製造プロセスを簡略化し、イオン通路を短縮させ、充放電特性を向上させることができる。そして、セパレータを設置する空間が省けるため、単位体積あたりにより多くの活物質を塗布することができ、したがってエネルギー密度を向上させた。
【0005】
上記目的を実現するために、本出願の第1の態様は、複合集電体を提供し、該複合集電体は、通気度が50s/100mL以上である有機支持層と、前記有機支持層の一つの表面に設置される導電層とを含む。
【0006】
通気度が50s/100mL以上である有機層を複合集電体の支持層とすることにより、該支持層をセパレータとして使用することができ、それにより極板の間に設置されたセパレータを省き、製造プロセスを簡略化し、イオン通路を短縮させ、充放電特性を向上させることができる。そして、セパレータを設置する空間が省けるため、単位体積あたりにより多くの活物質を塗布することができ、したがってエネルギー密度を向上させた。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記有機支持層の通気度は50s/100mL~2000s/100mLであり、任意選択的に100s/100mL~500s/100mLである。有機支持層の通気度を上記範囲内に制御することによって、イオンの透過性を確保し且つ電解液の濡れ性を良好にすることができ、電解液内のリチウムイオンを円滑に通過させることができる。通気度が低すぎる場合、セパレータ空隙は閉孔に相当し、電解液のリチウムイオンはセパレータを通過できず、高いイオン伝導性能を実現できず、通気度が高すぎる場合、貫通に相当し、他の物質の大粒子イオンも透過し、セパレータとしての性能が失われてしまう。それによって、通気度を合理的に設定することによって、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記導電層は空隙を有し、前記導電層の空隙率は10%~95%であり、任意選択的に10%~50%である。導電層の空隙率を上記範囲内に制御することによって、所望のイオン伝導率を満たし、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。空隙率が適切な範囲内にあることにより、イオン伝導率の不足を回避することができる一方、イオンが導電層に浸入しているが、有機支持層に余剰イオンが透過する余分の空間がないことを回避することができる。なお、有機支持層の繊維空隙通気性の上限は、導電層の上限空隙率と正の相関関係にあり、イオンの透過性を確保することができる。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記有機支持層はポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリ塩化ビニリデン膜又はそれらの多層複合膜である。上記材料を用いて有機支持層を製造することにより、イオン通過性の高い支持層を確実に構成することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記導電層の厚さは200nm~3000nmであり、任意選択的に500nm~1500nmである。導電層の厚さを上記範囲内にすることにより、二次電池の体積エネルギー密度の改善に有利であるとともに、二次電池に釘刺しなどの異常が発生した場合、導電層に発生するバリが大幅に減少し、二次電池の短絡抵抗を増大させ、短絡電流を減少させ、短絡発熱を減少させることにより、二次電池の安全性能を改善する一方、複合集電体が良好な導電と集電性能を持つことに有利であるとともに、複合集電体の加工及び使用中に破損が発生しにくく、それにより複合集電体は良好な機械的安定性及び長い使用寿命を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記導電層は、前記有機支持層から順に積層された製孔遷移層、肉盛層、機能層及び保護層を含む。それによって、導電層でイオン通路を良好に形成し且つ導電層の厚さを容易に調整することができ、また、保護層は、導電層における化学的腐食又は機械的破壊などの損傷の発生を防止し、複合集電体の高い作動安定性及び長い使用寿命を確保することができる。なお、保護層はさらに、複合集電体の機械的強度を高めることができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記製孔遷移層、前記肉盛層、前記機能層の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一つ又は複数であり、前記保護層は、金属、金属酸化物及び導電性カーボンのうちの一つ又は複数を含み、好ましくはニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、アルミナ、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含む。それによって、保護層は、導電層に対して化学的腐食、機械的破壊を防止する保護役割を果たすことができ、さらに複合集電体と活物質層との間の界面を改善し、複合集電体と正極活物質層との間の結合力を向上させ、二次電池の性能を改善することができる。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記製孔遷移層の厚さは2nm~100nmであり、任意選択的に10nm~50nmであり、前記肉盛層の厚さは5nm~300nmであり、任意選択的に20nm~100nmであり、前記機能層の厚さは500nm~5000nmであり、任意選択的に500nm~2000nmである。それによって、複合集電体のイオン伝導性能、導電性能と機械的安定性を両立させることができる。
【0014】
前記活物質層と前記導電層との間には、接着剤と導電剤とを含む下塗り層がさらに設置されている。下塗り層は、複合集電体の界面を改善することができ、導電能力が低く、過電流耐量が低く、且つ複合集電体における導電層が破損しやすいなどの複合集電体の欠点を良好に克服することができ、集電体の表面を効果的に補修し且つ集電体、導電性下塗り層と活物質の間の導電性ネットワークを構築することによって、電子輸送効率を向上させ、集電体と電極活物質層の抵抗を低下させることにより、二次電池の直流内部抵抗を効果的に低下させ、二次電池の出力性能を向上させ、且つ長期的サイクル中に電池セルに大きい分極及びリチウム析出などの現象が容易に発生しないように確保することができ、即ち二次電池の長期的信頼性を効果的に改善した。
【0015】
本出願の第2の態様は、電極アセンブリを提供し、該電極アセンブリは第1の極板と第2の極板とを含み、前記第1の極板と前記第2の極板のうちの一方は、本出願の第1の態様の複合集電体を含み、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置され、前記第1の極板と前記第2の極板のうちの前記一方の有機支持層と、前記第1の極板と前記第2の極板のうちの他方の活物質層とは、密着するように設置される。それによって、本出願の第1の態様の複合集電体を含む極板は、極性が逆である一般的な極板と混在して使用して、セパレータの使用を一層減少させることができる。
【0016】
本出願の第3の態様は、電極アセンブリを提供し、該電極アセンブリは、それぞれ本出願の第1の態様の複合集電体を含む第1の極板と第2の極板とを含み、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置され、前記第1の極板の有機支持層と、前記第2の極板の活物質層とは、密着するように設置されるとともに、前記第2の極板の有機支持層と、前記第1の極板の活物質層とは、密着するように設置される。それによって、極性が異なる、本出願の第1の態様の複合集電体を含む極板を使用することによって、セパレータを設置することなく二次電池を形成することができる。
【0017】
本出願の第4の態様は、本出願の第1の態様に記載の複合集電体の製造方法を提供し、該方法は以下の工程(1)~(3)を含み、
工程(1):通気度が50s/100mL以上である有機支持層を形成し、
工程(2):空隙のあるマスクを利用して気相成長法によって前記有機支持層の一つの表面に製孔遷移層を形成し、
工程(3):前記製孔遷移層に導電性金属層を電気めっきして形成する。
【0018】
上記方法によって、マスクを利用して導電性金属層に空隙を形成することにより、高いイオン伝導性能を形成することができ、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。なお、製孔遷移層は、電気めっき層の下地として、空隙のある電気めっき層を容易に形成することができるとともに、導電性金属層の厚さを電気めっきによって容易に調整することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、さらに、
前記導電性金属層に保護層を形成する工程(4)を含む。
【0020】
それによって、保護層は、導電層における化学的腐食又は機械的破壊などの損傷の発生を防止し、複合集電体の高い作動安定性及び長い使用寿命を確保することができる。なお、保護層はさらに、複合集電体の機械的強度を高めることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)では、前記マスクの空隙の大きさと密度によって前記製孔遷移層の空隙の大きさと空隙率を調整する。それによって、複合集電体のイオン伝導性能と導電性能を両立させることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)では、真空めっき室内で、1300℃~2000℃の温度で導電性材料を蒸発させ、冷却して、前記有機支持層に堆積させ、前記製孔遷移層を形成する。それによって、導電性金属層と有機支持層との間の結合力を向上させ、有機支持層による導電性金属層への支持役割を効果的に発揮することができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記工程(4)では、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法のうちの少なくとも一つにより、前記導電性金属層に前記保護層を形成する。それによって、導電層と保護層との間の結合力の向上に有利であり、それにより保護層による複合集電体への保護役割をよりよく発揮し、且つ複合集電体の高い作動性能を確保することができる。
【0024】
本出願の第5の態様は、電極アセンブリの製造方法を提供し、該方法は、
第1の複合集電体を含む第1の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体は本出願の第1の態様の複合集電体であり、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置されていることと、
第2の集電体と、前記第2の集電体の二つの表面に設置される活物質層とを含む第2の極板を用意することと、
一つのセパレータを用意することと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の一つの活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の別の活物質層が前記セパレータと接触するように、前記第1の極板、前記第2の極板及び前記セパレータを順に積層して、積層構造を得て、且つ前記積層構造を捲回することとを含む。
【0025】
それによって、電極アセンブリを製造するための一層のセパレータの使用を減少させることができる。
【0026】
本出願の第6の態様は、電極アセンブリの製造方法を提供し、該方法は、
第1の複合集電体を含む第1の極板と第2の複合集電体を含む第2の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体と前記第2の複合集電体は、それぞれ本出願の第1の態様の複合集電体であり、前記複合集電体の導電層に活物質層が設置されていることと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の前記第2の複合集電体の有機支持層が前記第1の極板の活物質層と接触するように前記第1の極板と前記第2の極板を捲回することとを含む。
【0027】
それによって、セパレータなしで電極アセンブリを製造することができる。
【0028】
本出願の第7の態様は、二次電池を提供し、該二次電池は、本出願の第2、3の態様に記載の電極アセンブリ、本出願の第5、6の態様に記載の製造方法で製造された電極アセンブリのうちの少なくとも一つを含む。
【0029】
本出願の第8の態様は、電力消費装置を提供し、該電力消費装置は、本出願の第7の態様に記載の二次電池を含む。
【0030】
本出願によれば、二次電池のサイクル性能、レート性能及び低い内部抵抗を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本出願の一実施形態の複合集電体の断面概略図である。
図2】本出願の一実施形態の複合集電体の断面概略図である。
図3】本出願の一実施形態の複合集電体の断面概略図である。
図4】本出願の一実施形態の電極アセンブリの断面図である。
図5図4に示す電極アセンブリの捲回後の平面図である。
図6】本出願の一実施形態の電極アセンブリの断面図である。
図7図6に示す電極アセンブリの捲回後の平面図である。
図8】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図9図8に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図10】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図11】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図12図11に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図13】本出願の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下は、本出願の正極材料及びその製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を、図面を適宜参照して詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0033】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲が挙げられている場合、60~110と80~120の範囲も想定されると理解される。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4と5が列挙されている場合、以下の範囲の1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5は、全て予想される。本出願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の全ての実数の組み合わせを表す短縮表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」はこれら数値の組み合わせの省略表示にすぎない。また、あるパラメータ≧2の整数であると記述している場合、このパラメータは例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0034】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0035】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0036】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0037】
特に説明されていない限り、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれか一つの条件は、いずれも「A又はB」という条件を満たす。Aが真であり(又は存在し)且つBが偽であり(又は存在せず)、Aが偽であり(又は存在せず)且つBが真であり(又は存在し)、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)。
【0038】
本出願の一実施形態において、複合集電体を提供し、該複合集電体は、通気度が50s/100mL以上である有機支持層と、前記有機支持層の一つの表面に設置される導電層とを含む。
【0039】
本出願者は以下のことを発見した。つまり、通気度が50s/100mL以上である有機層を複合集電体の支持層とすることにより、該支持層をセパレータとして使用することができ、それにより極板の間に設置されたセパレータを省き、製造プロセスを簡略化し、イオン通路を短縮させ、充放電特性を向上させることができる。そして、セパレータを設置する空間が省けるため、単位体積あたりにより多くの活物質を塗布することができ、したがってエネルギー密度を向上させた。
【0040】
また、以下は、本出願の複合集電体、二次電池、及び電力消費装置について、図面を適宜参照して説明する。
【0041】
[複合集電体]
図1は本出願の一実施形態の複合集電体の断面概略図である。図1に示すように、複合集電体610は、通気度が50s/100mL以上である有機支持層611と、有機支持層611の一つの表面に設置される、活物質層62が設置される導電層612とを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、有機支持層611の通気度は50s/100mL~2000s/100mLであり、任意選択的に100s/100mL~500s/100mLである。有機支持層の通気度を上記範囲内に制御することによって、イオンの透過性を確保し且つ電解液の濡れ性を良好にすることができ、電解液内のリチウムイオンを円滑に通過させることができる。通気度が低すぎる場合、セパレータ空隙は閉孔に相当し、電解液のリチウムイオンはセパレータを通過できず、高いイオン伝導性能を実現できず、通気度が高すぎる場合、貫通に相当し、他の物質の大粒子イオンも透過し、セパレータとしての性能が失われてしまう。それによって、通気度を合理的に設定することによって、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、導電層612は空隙を有し、導電層612の空隙率は10%~95%であり、任意選択的に10%~50%である。導電層612の空隙率を上記範囲内に制御することによって、所望のイオン伝導率を満たし、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。空隙率が適切な範囲内にあることにより、イオン伝導率の不足を回避することができる一方、イオンが導電層に浸入しているが、有機支持層611に余剰イオンが透過する余分の空間がないことを回避することができる。なお、有機支持層611の繊維空隙通気性の上限は、導電層の上限空隙率と正の相関関係にあり、イオンの透過性を確保することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、電解液浸潤率を向上させ、イオンを迅速に通過させるために、導電層612の平均孔径を100nm~1000nmに設定してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、有機支持層611はポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリ塩化ビニリデン膜又はそれらの多層複合膜である。上記材料を用いて有機支持層を製造することにより、イオン通過性の高い支持層を確実に構成することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、有機支持層611の厚さは、例えば、1000~8000nmである。それによって、十分な支持強度を提供することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、通気度が50s/100mL~2000s/100mLである場合、有機支持層の材料は、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアルキン系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖系ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリチアジル系、芳香環ポリマー、複素芳香環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体、それらの架橋物及びそれらの共重合体のうちの一つ又は複数であってもよい。さらに、有機支持層の材料は、例えば、ポリカプロラクタム(通称ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(通称ナイロン66)、ポリパラフェニレンテレフタラミド(PPTA)、ポリメタフェニレンイソフタラミド(PMIA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンエチレン(PPE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリアセチレン、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニル、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレングリコール(PEG)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、セルロース、澱粉、タンパク質、それらの誘導体、それらの架橋物及びそれらの共重合体のうちの一つ又は複数である。
【0048】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、導電層612の厚さは200nm~3000nmであり、任意選択的に500nm~1500nmである。導電層の厚さが上記範囲内にあることにより、二次電池の体積エネルギー密度の改善に有利であるとともに、二次電池に釘刺しなどの異常が発生した場合、導電層に発生するバリが大幅に減少し、二次電池の短絡抵抗を増大させ、短絡電流を減少させ、短絡発熱を減少させることにより、二次電池の安全性能を改善する一方、複合集電体が良好な導電と集電性能を持つことに有利であるとともに、複合集電体の加工及び使用中に破損が発生しにくく、それにより複合集電体は良好な機械的安定性及び長い使用寿命を有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、図2に示すように、導電層612は、有機支持層611から順に積層された製孔遷移層6121、肉盛層6122、機能層6123及び保護層6124を含む。それによって、導電層612でイオン通路を良好に形成し且つ導電層612の厚さを容易に調整することができ、また、保護層6124は、導電層612における化学的腐食又は機械的破壊などの損傷の発生を防止し、複合集電体610の高い作動安定性及び長い使用寿命を確保することができる。なお、保護層6124はさらに、複合集電体610の機械的強度を高めることができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、製孔遷移層6121、肉盛層6122、機能層6123の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一つ又は複数であり、保護層6124は、金属、金属酸化物及び導電性カーボンのうちの一つ又は複数であり、好ましくはニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、アルミナ、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一つ又は複数を含む。それによって、保護層6124は、導電層に対して化学的腐食、機械的破壊を防止する保護役割を果たすことができ、さらに複合集電体と活物質層との間の界面を改善し、複合集電体と正極活物質層との間の結合力を向上させ、二次電池の性能を改善することができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、製孔遷移層6121の厚さは2nm~100nmであり、任意選択的に10nm~50nmであり、肉盛層6122の厚さは5nm~300nmであり、任意選択的に20nm~100nmであり、機能層6123の厚さは500nm~5000nmであり、任意選択的に500nm~2000nmである。それによって、複合集電体610のイオン伝導性能、導電性能と機械的安定性を両立させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、保護層6124の厚さは、任意選択的に20nm~100nmである。それによって、導電層が酸化されることを防止することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、任意選択的に、図3に示すように、活物質層62と導電層612との間には、接着剤と導電剤とを含む下塗り層64がさらに設置されている。下塗り層64は、複合集電体610の界面を改善することができ、導電能力が低く、過電流耐量が低く、且つ複合集電体における導電層が破損しやすいなどの複合集電体の欠点を良好に克服することができ、集電体の表面を効果的に補修し且つ集電体、導電性下塗り層と活物質の間の導電性ネットワークを構築することによって、電子輸送効率を向上させ、集電体と電極活物質層の抵抗を低下させることにより、二次電池の直流内部抵抗を効果的に低下させ、二次電池の出力性能を向上させ、且つ長期的サイクル中に電池セルに大きい分極及びリチウム析出などの現象が容易に発生しないように確保することができ、即ち二次電池の長期的信頼性を効果的に改善した。
【0054】
明らかに、本出願における複合集電体は、正極板又は負極板に用いられてもよい。正極板に用いられる場合、それに応じて、複合集電体と活物質層は、それぞれ正極集電体と正極活物質層である。負極板に用いられる場合、それに応じて、複合集電体と活物質層は、それぞれ負極集電体と負極活物質層である。
【0055】
本出願の複合集電体610が正極集電体である場合、正極板は、正極複合集電体と、正極集電体の一つの表面に設置される正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、正極活物質は、当分野でよく知られている電池用の正極活物質を採用してもよい。一例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。しかし、本出願では、これらの材料に限定されず、さらに電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。
【0057】
いくつかの実施形態において、正極活物質層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。一例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリル酸エステル樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、正極活物質層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。一例として、前記導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、以下の方式で正極板を製造することができ、正極板を製造するための上記成分、例えば、正極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極複合集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極板が得られる。
【0060】
本出願の複合集電体610が負極集電体である場合、負極板は、負極複合集電体と、負極集電体の一つの表面に設置される負極活物質層とを含む。負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、負極活物質は、当分野でよく知られている電池用の負極活物質を採用してもよい。一例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも一つを含んでもよい。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。しかし、本出願では、これらの材料に限定されず、さらに電池の負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、負極活物質層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、負極活物質層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、負極活物質層は、任意選択的に、他の助剤、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、以下の方式で負極板を製造することができ、負極板を製造するための上記成分、例えば、負極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させて、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極複合集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極板が得られる。
【0066】
[複合集電体の製造方法]
本出願の別の実施形態において、複合集電体の製造方法を提供し、以下の工程(1)~(3)を含み、
工程(1):通気度が50s/100mL以上である有機支持層を形成し、
工程(2):空隙のあるマスクを利用して気相成長法によって前記有機支持層の一つの表面に製孔遷移層を形成し、
工程(3):前記製孔遷移層に導電性金属層を電気めっきして形成する。
【0067】
上記方法によって、マスクを利用して導電性金属層に空隙を形成することにより、高いイオン伝導性能を形成することができ、二次電池の充放電特性をさらに向上させることができる。なお、製孔遷移層は、電気めっき層の下地として、空隙のある電気めっき層を容易に形成することができるとともに、導電性金属層の厚さを電気めっきによって容易に調整することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、さらに、
工程(4):前記導電性金属層に保護層を形成する。
【0069】
それによって、保護層は、導電層における化学的腐食又は機械的破壊などの損傷の発生を防止し、複合集電体の高い作動安定性及び長い使用寿命を確保することができる。なお、保護層はさらに、複合集電体の機械的強度を高めることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)において、前記マスクの空隙の大きさと密度によって前記製孔遷移層の空隙の大きさと空隙率を調整する。それによって、複合集電体のイオン伝導性能と導電性能を両立させることができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記工程(2)では、真空めっき室内で、1300℃~2000℃の温度で導電性材料を蒸発させ、冷却して、前記有機支持層に堆積させ、前記製孔遷移層を形成する。それによって、導電性金属層と有機支持層との間の結合力を向上させ、有機支持層による導電性金属層への支持役割を効果的に発揮することができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記工程(4)では、気相成長法、インサイチュ形成法又は塗布法のうちの少なくとも一つにより、前記導電性金属層に前記保護層を形成する。それによって、導電層と保護層との間の結合力の向上に有利であり、それにより保護層による複合集電体への保護役割をよりよく発揮し、且つ複合集電体の高い作動性能を確保することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記工程(3)では、肉盛層と機能層を二回の電気めっきによってそれぞれ形成することができる。それによって、異なる厚さの導電性金属層を容易に形成することができる。
【0074】
[電極アセンブリ]
本出願の一実施形態において、電極アセンブリを提供する。電極アセンブリ52は、正極板(第1の極板)6と、負極板(第2の極板)7と、捲回プロセスで電極アセンブリを製造する時に正負極短絡を防止する役割を果たすと共に、イオンを通過させることができる一つのセパレータ8とを含む。本明細書では、正極板を第1の極板と称し、負極板を第2の極板と称するが、逆にしてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、正極板と負極板のうちの正極板は、本出願の上記構造の極板である。正極板と負極板のうちの負極板は、従来構造の極板であるが、逆であってもよい。
【0076】
図4に示すように、正極板6は、複合集電体610と、複合集電体610の一つの表面に設置される活物質層62と、複合集電体610の導電層612と電気的に接続される電気的接続部材63とを含む。
【0077】
負極板7は、負極集電体71と、負極集電体71の二つの表面に形成される負極活物質層72と、負極集電体71と電気的に接続される電気的接続部材73とを含む。極板の長手方向Xから見れば、正極板6の有機支持層611が負極板7の負極活物質層72と密着するように設置される。
【0078】
図5は、図4に示す電極アセンブリ52の捲回後の平面図である。電極アセンブリ捲回後に、正極板6の正極活物質層はセパレータ8と密着し、正極板6の有機支持層は負極板7の一つの負極活物質層72と密着するように設置される。
【0079】
それによって、本実施形態の正極板6と負極板7との間にセパレータを設置する必要がなく、有機支持層611は正極板6と負極板7との間のセパレータとして作用する。負極板7と正極板6との間はセパレータ8によって分離される。
【0080】
図6は、本出願の一実施形態の電極アセンブリ52Aの断面図である。図7は、図6に示す電極アセンブリ52Aの捲回後の平面図である。該電極アセンブリ52Aと上記の電極アセンブリ52との相違点は、正極板と負極板がそれぞれ本出願の上記構造の極板であることにある。即ち、負極板6Aは、集電体610Aと、集電体610Aの一つの表面に設置される活物質層62Aと、集電体610Aと電気的に接続される電気的接続部材63Aとを含む。
【0081】
図6、7に示すように、本実施形態において、正極板6の有機支持層611は負極板6Aの負極活物質層62Aと密着するように設置されるとともに、負極板6Aの有機支持層611Aは、正極板6の正極活物質層62と密着するように設置される。それによって、本実施形態の正負極板6,6Aの間にセパレータを設置する必要がなく、有機支持層611、611Aは正負極板6,6Aの間のセパレータとして作用する。
【0082】
なお、上記形態は、極板を捲回する形式を例として説明したが、積層式極板にも適用可能である。
【0083】
[電極アセンブリの製造方法]
本出願の別の実施形態において、電極アセンブリの製造方法を提供し、該方法は、
第1の複合集電体を含む第1の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体は本出願の第1の態様の複合集電体であることと、
第2の集電体と、前記第2の集電体の二つの表面に設置される活物質層とを含む第2の極板を用意することと、
一つのセパレータを用意することと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の一つの活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の別の活物質層が前記セパレータと接触するように、前記第1の極板、前記第2の極板及び前記セパレータを順に積層して、積層構造を得て、且つ前記積層構造を捲回することとを含む。
【0084】
それによって、電極アセンブリを製造するための一層のセパレータの使用を減少させることができる。
【0085】
本出願の別の実施形態において、電極アセンブリの製造方法を提供し、該方法は、
第1の複合集電体を含む第1の極板と第2の複合集電体を含む第2の極板を用意することであって、前記第1の複合集電体と前記第2の複合集電体は、それぞれ本出願の第1の態様の複合集電体であることと、
前記第1の極板の前記第1の複合集電体の有機支持層が前記第2の極板の活物質層と接触するとともに、前記第2の極板の前記第2の複合集電体の有機支持層が前記第1の極板の活物質層と接触するように、前記第1の極板と前記第2の極板を捲回することとを含む。
【0086】
それによって、セパレータなしで二次電池を製造することができる。
【0087】
[二次電池]
本出願の一実施形態において、二次電池を提供する。二次電池は、本出願の上記の複合集電体又は本出願の上記の電極アセンブリを含む。
【0088】
二次電池は、電解質をさらに含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間に往復してインターカレーションやデインターカレーションをする。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0089】
(電解質)
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願は、電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホンイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0092】
いくつかの実施形態において、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトンン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤と、正極被膜形成添加剤とを含んでいてもよいし、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0094】
(セパレータ)
いくつかの実施形態において、正負極短絡を防止する役割を果たすとともに、イオンを通過させることができるために、二次電池は、正極板と負極板との間に設置されるセパレータをさらに含んでもよく、しかし、本出願の極板における支持層がセパレータとして作用することもできるため、本出願の二次電池において、正極板と負極板が支持層により分離される場合、セパレータを別途設置しなくてもよい。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限することはなく、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有するいずれかの多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0095】
いくつかの実施の形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよいし、多層複合薄膜であってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであってもよいし、異なってもよく、特に制限はない。
【0096】
いくつかの実施形態において、正極板と負極板、及び必要に応じて設置されるセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリと電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟質バッグでもよく、例えば、袋式軟質バッグである。軟質バッグの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0099】
本出願では、二次電池の形状に対して特に制限することはなく、それは、円柱状、四角形又は他のいずれかの形状であってもよい。例えば、図8は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0100】
いくつかの実施形態において、図9を参照すると、外装は、筐体51とカバープレート53とを含んでもよい。ここでは、筐体51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。筐体51は収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして設けられることによって前記収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板、及び必要に応じて設置されるセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、当業者は実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0101】
いくつかの実施の形態では、二次電池を電池モジュールに組み立てもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者は電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0102】
[電池モジュール]
図10は、一例としての電池モジュール4である。図10を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0103】
任意選択的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよい。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者は電池パックの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0105】
[電池パック]
図11図12は、一例としての電池パック1である。図11図12を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設置される複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3をカバーして設けられ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ケースの中に配置されてもよい。
【0106】
[電力消費装置]
また、本出願は、本出願による二次電池、電池モジュール、または電池パックのうちの少なくとも一つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶と衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限らない。
【0107】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0108】
図13は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置は二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0109】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0110】
実施例
各実施例と比較例における電極極板に用いられる集電体の製造方法は以下のとおりである。
【0111】
1.複合集電体の製造:
厚さが5000nmであり、一定の通気度(50s/100mL以上)を有する支持層を選択し、その表面に、一定の厚さを有する導電層を、真空蒸着、電気めっきなどの方式によって空隙のあるマスクを利用して形成した。通気度は、標準GB/T 36363-2018を参照して試験することができる。
【0112】
ここで、真空蒸着方式の形成条件は以下のとおりである。表面洗浄処理された支持層を真空めっき室内に配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内における高純度の金属ワイヤを溶融し蒸発させ、蒸発後の金属が真空めっき室内の冷却システムを通り、最後に支持層の表面に堆積して、導電層が形成された。
【0113】
電気めっき方式の形成条件は以下のとおりである。
【0114】
(1)電流密度:単位電気めっき面積あたりにかかる電流。通常、電流密度が高いほど膜の厚さが厚くなるが、高すぎる場合にめっき層は焦げて荒れてしまう。
【0115】
(2)電気めっき位置:めっき物のめっき液における位置又は陽極に対応する位置であり、膜の厚さの分布に影響を与える。
【0116】
(3)撹拌状況:撹拌効果が良いほど、電気めっき効率が高くなる。空気、水流、陰極などの撹拌方式がある。
【0117】
(4)電流波形:通常、フィルタリング度が高いほど、めっき層組織が均一になる。
【0118】
(5)めっき液温度:金めっきは約50~60℃、ニッケルめっきは約50~60℃、スズ鉛めっきは約17~23℃、パラジウムニッケルめっきは約45~55℃である。
【0119】
(6)めっき液pH値:金めっきは約4.0~4.8、ニッケルめっきは約3.8~4.4、パラジウムニッケルめっきは約8.0~8.5である。
【0120】
(7)めっき液比重:基本的に、比重が低いほど、薬液導電性が悪くなり、電気めっき効率が低くなる。
【0121】
2.極板の製造:
1)導電性下塗り層を有しない正極板:
92wt%の正極活物質(具体的な材料を指定していない場合に、デフォルトでNCM333を使用する)、5wt%の導電剤Super-P(「SP」略称される)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して、正極活物質層スラリー(いくつかの実施例の活物質層スラリーの組成が変化する場合があり、この場合には該実施例において特に明記されたものを基準とする)に配合し、押圧塗布を用いて、上記方法で製造した複合集電体の一つの表面に正極活物質層スラリーを区画塗布し、85℃で乾燥させた後に正極活物質層を得た。そして、各塗り層を有する集電体を冷間プレスしてから切断し、次に85℃の真空条件で4時間乾燥させ、タブを溶接して、正極板を得た。
【0122】
2)従来の正極板:
集電体は、厚さが12μmであるAl箔シートであり、以上の正極板の製造方法に類似して、正極活物質層スラリーをAl箔シート集電体の表面に直接塗布し、次に後処理して従来の正極板を得た。
【0123】
3)導電性下塗り層を有する正極板:
一定の配合比率(4:1)の導電性材料(例えば、導電性カーボンブラック)と接着剤(例えば、PVDF又はポリプロピレン酸など)及び任意選択的な活物質を、適切な溶媒(例えば、NMP又は水)に溶解させ、均一に撹拌して下塗りスラリーに配合した。
【0124】
下塗りスラリーを複合集電体の導電層の表面に均一に塗布し、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブン温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0125】
下塗り層が完全に乾燥した後、92wt%の正極活物質、5wt%の導電剤Super-P(「SP」と略称される)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して正極活物質層スラリーに配合し、押圧塗布を用いて、正極活物質層スラリーを下塗り層の表面に区画塗布し、85℃で乾燥させた後に正極活物質層を得て、次に後処理して導電性下塗り層を有する正極板を得た。
【0126】
4)導電性下塗り層を有する負極板:
負極活物質の人造黒鉛、導電剤Super-P、増粘剤CMC、接着剤SBRを96.5:1.0:1.0:1.5の質量比で、溶媒の脱イオン水に加え、均一に混合して負極活物質層スラリーを得て、押圧塗布を用いて、上記方法で製造された複合集電体の一つの表面に負極活物質層スラリーを区画塗布し、85℃で乾燥させた後に負極活物質層を得た。
【0127】
そして、各塗り層を有する集電体を冷間プレスしてから切断し、次に110℃の真空条件で4時間乾燥させ、タブを溶接して、負極板を得た。
【0128】
5)従来の負極板:
集電体は、厚さが8μmであるCu箔シートであり、以上の負極板の製造方法と類似しており、負極活物質層スラリーをCu箔シート集電体の表面に直接塗布し、次に後処理して従来の負極板を得た。
【0129】
6)導電性下塗り層を有する負極板:
一定の配合比率(4:1)の導電性材料(例えば、導電性カーボンブラック)と接着剤(例えば、PVDF又はポリプロピレン酸など)及び任意選択的な活物質を、適切な溶媒(例えば、NMP又は水)に溶解させ、均一に撹拌して下塗りスラリーに配合した。
【0130】
下塗りスラリーを複合集電体の導電層の表面に均一に塗布し、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブン温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0131】
下塗り層が完全に乾燥した後、負極活物質の人造黒鉛、導電剤Super-P、増粘剤CMC、接着剤SBRを96.5:1.0:1.0:1.5の質量比で、溶媒の脱イオン水に加え、均一に混合して負極活物質層スラリーを得て、押圧塗布を用いて、負極活物質層スラリーを集電体の下塗り層に区画塗布し、85℃で乾燥させた後に負極活物質層を得て、次に後処理して、延在領域に導電性下塗り層を有する負極板を得た。
【0132】
3.電池の製造:
従来の電池製造プロセスにより、正極板(圧密度:3.4g/cm3)、負極板(圧密度:1.6g/cm3)及びPP/PE/PPセパレータ(必要に応じて二つのセパレータ、一つのセパレータ又はセパレータなしを選択する)を共に捲回してベアセルを形成し、そして電池筐体に入れ、電解液(EC:EMC体積比が3:7であり、LiPF6が1mol/Lである)を注入し、次にシール、化成などの工程を行い、最終的にリチウムイオン二次電池(以下に電池と略称する)を得た。
【0133】
4.電池試験方法:
1)レート特性試験:
25±5℃の条件で、電池を1.0CmAの定電流で3.0Vまで放電し、完全に充電した後、2時間静置し、電池の外観を目測し、電池のサイズ、開放電圧及び内部抵抗を測定し、試験が完了した後、3回の1.0CmAサイクル(放電、完全充電、放電、完全充電、放電、50%充電または完全充電)を行い、3回目のサイクルの放電容量を、中央値電圧を試験した。
【0134】
2)サイクル特性試験
環境温度が25±5℃である条件で電池を完全充電した後、10min静置し、10.0CmA又は公称レート電流で3.0Vまで放電し、10min静置し、電池放電容量が連続して2回≦80%の3回目のサイクルの放電容量になるまで、上記ステップを繰り返してサイクルした。
【0135】
3)DCR(直流内部抵抗)の試験方法:
物理公式R=V/Iにより、試験機器は、短時間(一般的には2-3秒)内に、大きな一定の直流電流(現在、一般的には40A-80Aの大電流を使用する)を電池に強制的に流し、この時の電池両端の電圧を測定し、且つ公式に基づいて現在の電池内部抵抗を計算した。
【0136】
5.試験結果及び検討:
5.1有機支持層のパラメータによる二次電池の性能への影響
以下の表1、表2のパラメータに従い、基本的に、前記「1、複合集電体の製造」「2、極板の製造」及び「3、電池の製造」に記載の、複合集電体1~9、及び二次電池を製造する実施例1~7、比較例1~2に基づいて、試験を行った。
【表1】
【表2】
【0137】
表1、2の結果から分かるように、実施例1~7と比較例1~2との比較により、有機支持層の通気度を50~2000s/100mLの範囲内に設定することによって、比較例1、2に比べて、より優れたレート特性とサイクル特性が得られることが分かった。
【0138】
5.2導電層のパラメータによる二次電池の性能への影響
以下の表3、表4のパラメータに従い、基本的に、前記「1、複合集電体の製造」「2、極板の製造」及び「3、電池の製造」に記載の、複合集電体10~20、及び二次電池を製造する実施例8~18、比較例3に基づいて、試験を行った。
【表3】
【表4】
【0139】
表3、4の結果から分かるように、実施例8~11と実施例15~16との比較により、導電層の厚さを200~3000nmの範囲内に設定することによって、二次電池の内部抵抗を低下させ、且つ優れたレート特性とサイクル特性を維持し得ることが分かった。
【0140】
表3、4の結果から分かるように、実施例8、12~14と実施例17~18との比較により、導電層の空隙率を10%~95%の範囲内に設定することによって、二次電池の低い内部抵抗と、優れたレート特性及びサイクル特性を維持し得ることが分かった。
【0141】
表3、4の結果から分かるように、実施例8~18と比較例3との比較により、本出願の複合集電体を有する二次電池は低い内部抵抗と優れたレート特性及びサイクル特性を有することが分かった。
【0142】
5.3複合集電体の構造による二次電池の体積エネルギー密度への影響
以下の表5のパラメータに従い、基本的に、前記「1、複合集電体の製造」「2、極板の製造」及び「3、電池の製造」に記載の、二次電池を製造する実施例3、19、比較例3に基づいて、体積エネルギー密度試験を行った。
【表5】
【0143】
表5の結果から分かるように、実施例10、19と比較例3との比較により、本出願の複合集電体を有する二次電池はエネルギー密度が高いことが分かった。そして、実施例10、19の比較から、正負極板がいずれも複合集電体を有する二次電池は体積エネルギー密度がより高いことが分かった。
【0144】
5.4下塗り層による二次電池の性能への影響
以下の表6のパラメータに従い、基本的に、前記「1、複合集電体の製造」「2、極板の製造」及び「3、電池の製造」に記載の、二次電池を製造する実施例3、19、比較例3に基づいて、体積エネルギー密度試験を行った。
【表6】
【0145】
表6の結果から分かるように、実施例10と実施例20、21との比較により、下塗り層を有する実施例20、21の二次電池がより低い内部抵抗を有することが分かった。
【0146】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0147】
1電池パック、2上ケース、3下ケース、4電池モジュール、5二次電池、51筐体、52、52A電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ、610、610A複合集電体、611、611A有機支持層、612、612A導電層、62、62A活物質層、6121製孔遷移層、6122肉盛層、6123機能層、6124保護層、63,63A電気的接続部材、64下塗り層、6、6A、7極板、71集電体、72活物質層、73電気的接続部材、8セパレータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】