(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスおよび粒子状石膏
(51)【国際特許分類】
C04B 11/032 20060101AFI20240304BHJP
C04B 28/14 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C04B11/032
C04B28/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547100
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022054409
(87)【国際公開番号】W WO2022194499
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520141081
【氏名又は名称】サン-ゴバン プラコ
【氏名又は名称原語表記】Saint-Gobain Placo
【住所又は居所原語表記】Tour Saint-Gobain, 12 Place de l’Iris, 92400 Courbevoie, France
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フランシー,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マゴー,ライオネル
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ビン
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB11
4G112PE04
(57)【要約】
本発明は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続生成のためのプロセスを記載し、プロセスは、粒子状石膏を提供するステップと、水を提供するステップと、粒子状石膏と水を混合して石膏スラリーを形成するステップと、前述の石膏スラリーを上昇された圧力および温度下で維持して粒子状石膏をアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換しかつアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するステップを含む。さらに、粒子状石膏は、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値、および25μm以下のD50値を備える。プロセスにおける使用のための粒子状石膏もまた、提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスであって、前記プロセスは、
粒子状石膏を提供するステップと、
水を提供するステップと、
前記粒子状石膏と前記水を混合して石膏スラリーを形成するステップと、
前記石膏スラリーを上昇した圧力および温度下で維持して、前記粒子状石膏をアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換し、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するステップ
を含み、
前記粒子状石膏は、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値および25μm以下のD50値を備える
ことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記粒子状石膏は、20μm以下のD50値を備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記粒子状石膏は、15μm以下のD50値を備える、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記上昇された温度は、110℃~170℃(両端を含む)の範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記上昇された圧力は、0.15MPa~0.80MPa(両端を含む)の範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記石膏スラリー内の石膏粒子は、10分~120分(両端を含む)の範囲内の平均滞留時間にわたり上昇された温度および圧力の条件下で維持される、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記石膏スラリーは、0.4~1.5重量(両端を含む)の水対石膏の比を備える、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記石膏スラリーは、80℃で15~0.5cP(両端を含む)の範囲のブルックフィールド粘度を備える、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスは、前記粒子状石膏を粉砕してその粒子径を低減するさらなるステップを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
粒子状石膏を提供する前記ステップは、粒子状石膏を実質的に連続的に提供することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
水を提供する前記ステップは、水を実質的に連続的に提供することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記石膏スラリーを上昇した圧力および温度下で維持して、前記粒子状石膏をアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換し、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供する前記ステップは、か焼容器内に前記石膏スラリーを保持することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスは、前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから水を除去することを含む、先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
水を提供する前記ステップは、前記アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから除去された水を追加の水と混合することを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
先行する請求項のいずれか一項に記載のプロセスにおける使用のための粒子状石膏であって、
前記粒子状石膏は、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値および25μm以下のD50値を備える、
粒子状石膏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な調製のためのプロセスに関する。本発明はさらに、このプロセスで使用するための粒子状石膏に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏は、硫酸カルシウム二水和物(CaSO4・2(H2O))の形態で原料として天然に存在する。プラスターボードなどの石膏含有製品は、か焼されたまたは無水の石膏、すなわち硫酸カルシウム半水和物(CaSO4・0.5(H2O))と、水の混合物を形成して、固化可能なスラリーを形成し、それを次いで所定の形状に鋳造することによって作製される。硫酸カルシウム半水和物は、水と反応し、再水和されて二水和物結晶になり、これは次いで、固体状態へと硬化または乾燥される。
【0003】
硫酸カルシウム半水和物は、2つの基本形態、アルファ硫酸カルシウム半水和物およびベータ硫酸カルシウム半水和物、に分類され得る。ベータ硫酸カルシウム半水和物は典型的には、大気条件下で石膏を加熱することによって形成される。その一方で、アルファ硫酸カルシウム半水和物は、高温および高圧の条件下で石膏から生成される。アルファ硫酸カルシウム半水和物およびベータ硫酸カルシウム半水和物の両方は、石膏製品を作り出すために使用され得、アルファ半水和物で作られた石膏製品は、より硬い傾向があり、より高い強度および密度を有する。
【0004】
石膏製品が連続的に生産される商業的工業環境では、アルファ硫酸カルシウム半水和物を連続的に生成することが、しばしば望ましいかまたは必要である。アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成は、連続プロセスで使用されるか焼容器に導入される石膏粒子がバッチプロセスの単一の滞留時間ではなく滞留時間の分布を有するため、バッチ生産プロセスよりも困難であり得る。
【0005】
さらに、連続的なプロセスでは、か焼容器内の材料およびか焼プロセスによって生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物が、連続的な生成プロセスを妨害または停止し得る閉塞を防ぐために流体のままであることが必須である。流動性の必要性はまた、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子が所望の形状およびサイズを有する要件と両立しなければならない。最後に、アルファ硫酸カルシウム半水和物を生成するプロセスで使用される水の量を最小限にして、全体の効率を高め、かつエネルギー消費を減らす必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のためのプロセスが提供され、プロセスは、粒子状石膏を提供するステップと、水を提供するステップと、粒子状石膏と水を混合して石膏スラリーを形成するステップと、上昇された圧力および温度下で石膏スラリーを維持して粒子状石膏をアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換しアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するステップとを含み、粒子状石膏は、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値、および25μm以下のD50値を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のための概略的な装置を示す。
【0008】
そのようなプロセスは、アルファ硫酸カルシウム半水和物を生成する既存のプロセスに対するいくつかの有利な特徴を有し得る。
【0009】
まず、生成プロセスの連続性を考慮して、直径90μm超の石膏粒子の数を制限することは、石膏粒子の大部分が生成プロセス中に石膏スラリー中の溶液に移るのに十分な時間を有することを確実にする。さらに、直径2μm未満の石膏粒子の数を制限することは、プロセス中にアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの十分な流動性を確保するために必要な水を減らすのに有利であり得る。
【0010】
石膏の小さな粒子は、大きい表面積、したがって大きい水必要量を有する。したがって、粒子状石膏内のそれらの存在を制限することは、プロセス中に必要な水を減らすことができ、その効率を高め、必要とされるエネルギーを減らす。また、そのような石膏微粒子はしばしば、か焼プロセス中にアルファ硫酸カルシウム半水和物の好ましくない細長い結晶へと成長する。そのような細長い結晶は、アルファ硫酸カルシウム半水和物からの石膏製品の生産、および/またはそれらの細長い形状によるアルファ硫酸カルシウム半水和物の粘度の増大の両方において望ましくない場合がある。
【0011】
25μm以下のD50は、この形態で粒子状石膏を提供することが、粒子状石膏の大部分が石膏スラリー中の溶液に入りかつ上昇された温度および圧力の期間内にアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換されることを確実にするのを助け得るため、望ましい場合がある。
【0012】
したがって、請求項1に記載のプロセスで使用される石膏粒子径分布は、有利であることを示し得る。
【0013】
好ましくは、粒子状石膏は、2.5μm以上のD10値を備える。より好ましくは、粒子状石膏は、3μm以上のD10値を備える。
【0014】
好ましくは、粒子状石膏は、80μm以下のD90値を備える。より好ましくは、粒子状石膏は、70μm以下のD90値を備える。
【0015】
好ましくは、粒子径分布は、以下の関係を満たす:
0.4≦(D90/D50)/(D50/D10)≦1.5
【0016】
好ましくは、式中、dは、0.5d>D10と2d<D90の間の粒子の直径であり、各粒子径dについて、粒子径分布は、以下の基準:
1.25>q(0.5d,d)/q(d,2d)>0.75
に適合し、式中、q(d1,d2)は、d1とd2の間に含まれる粒子の質量分率である。
【0017】
好ましくは、粒子状石膏は、20μm以下のD50値を備える。さらにより好ましくは、粒子状石膏は、18μm以下のD50値を備える。さらにより好ましくは、粒子状石膏は、15μm以下のD50値を備える。好ましくは、粒子状石膏は、8μm以上のD50値を備える。より好ましくは、粒子状石膏は、10μm以上のD50値を備える。
【0018】
したがって、粒子状石膏のD50値は好ましくは、以下の範囲のいずれかにあり得る:
8μm≦D50≦25μm、8μm≦D50≦20μm、8μm≦D50≦18μm、8μm≦D50≦15μm、10μm≦D50≦25μm、10μm≦D50≦20μm、10μm≦D50≦18μm、10μm≦D50≦15μm。
【0019】
好ましくは、上昇された温度は、110℃~170℃の範囲(両端を含む)である。より好ましくは、上昇された温度は、120℃~160℃の範囲(両端を含む)である。さらにより好ましくは、上昇された温度は、125℃~150℃の範囲(両端を含む)である。
【0020】
好ましくは、上昇された圧力は、0.15MPa~0.80MPaの範囲(両端を含む)である。より好ましくは、上昇された圧力は、0.25MPa~0.50MPaの範囲(両端を含む)である。
【0021】
好ましくは、石膏スラリー内の石膏粒子は、10分~120分の範囲(両端を含む)内の平均滞留時間にわたって上昇された温度および圧力の条件下で維持される。より好ましくは、石膏スラリー内の石膏粒子は、30分~90分の範囲(両端を含む)内の平均滞留時間にわたって上昇された温度および圧力の条件下で維持される。さらにより好ましくは、石膏スラリー内の石膏粒子は、45分~90分の範囲(両端を含む)内の平均滞留時間にわたって上昇された温度および圧力の条件下で維持される。さらにより好ましくは、石膏スラリー内の石膏粒子は、約45分の間の平均滞留時間にわたって上昇された温度および圧力の条件下で維持される。
【0022】
滞留時間は、石膏の粒子がか焼されてアルファ硫酸カルシウム半水和物を形成するために十分な時間があることを確実にするために、これらの範囲のいずれかの中にあることが好ましい場合がある。上昇された温度の条件が150℃以上の温度を含む場合、滞留時間は、10分~30分の範囲(両端を含む)であり得る。
【0023】
好ましくは、石膏スラリーは、0.4~1.5重量(両端を含む)の水対石膏の比を備える。より好ましくは、石膏スラリーは、0.4~1.3重量(両端を含む)の水対石膏の比を備える。さらにより好ましくは、石膏スラリーは、0.7~1.2重量(両端を含む)の水対石膏の比を備える。さらにより好ましくは、石膏スラリーは、0.7~1.0重量(両端を含む)の水対石膏の比を備える。
【0024】
好ましくは、プロセスは、石膏スラリー中に媒晶剤を組み込むことを含む。石膏スラリー中の媒晶剤の組み込みは、連続的なプロセスによって生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物結晶の形状および形態の制御を支援し得る。
【0025】
好ましくは、媒晶剤は、石膏の重量に対して0.1wt.%~0.15wt.%の量で石膏スラリー中に組み込まれる。好ましくは、媒晶剤は、コハク酸である。
【0026】
好ましくは、石膏スラリーは、80℃で15~0.5cPの範囲(両端を含む)のブルックフィールド粘度を備える。より好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、80℃で10~1cPの範囲(両端を含む)のブルックフィールド粘度を備える。さらにより好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、80℃で8~1cPの範囲(両端を含む)のブルックフィールド粘度を備える。さらにより好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、80℃で7~2cPの範囲(両端を含む)のブルックフィールド粘度を備える。アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーのブルックフィールド粘度は、それがプロセス中に自由に流動できることを確実にするために、これらの範囲のいずれか1つの中にあることが有利であり得る。石膏スラリーが上に記載された範囲のブルックフィールド粘度を有することを確実にすることは、流動、沈降、および粘度の点で好適な挙動を有するアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの出力をもたらす。出力スラリーのブルックフィールド粘度は、か焼プロセスの影響により、石膏スラリーのブルックフィールド粘度より低いであろう。
【0027】
好ましくは、プロセスは、粒子状石膏を粉砕してその粒子径を低減するさらなるステップを含む。より好ましくは、粉砕するステップは、粒子状石膏と水を混合するステップの前に生じる。粒子状石膏を粉砕することは、それが水中での石膏粒子の溶解性を高め得るので好ましい場合がある。
【0028】
好ましくは、粉砕するステップの後に、プロセスは、粒子状石膏を濾過することを含む。そのようなステップは、粒子状石膏から望ましくないサイズの石膏粒子を有利に除去し得る。
【0029】
好ましくは、粒子状石膏を提供するステップは、粒子状石膏を実質的に連続的に提供することを含む。粒子状石膏を連続的に提供することは、これがアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの体積およびまたは品質における一貫した出力を可能にし得るので、有利であり得る。より好ましくは、粒子状石膏は、毎秒実質的に一定の質量で提供される。
【0030】
好ましくは、水を提供するステップは、水を実質的に連続的に提供することを含む。水を連続的に提供することは、これがアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーの体積およびまたは品質における一貫した出力を可能にし得るので、有利であり得る。より好ましくは、水は、実質的に一定の流量で提供される。好ましくは、水は、実質的に一定の温度で提供される。より好ましくは、水は、実質的に一定の流量および実質的に一定の温度で提供される。
【0031】
好ましくは、上昇された圧力および温度下で石膏スラリーを維持して、アルファ硫酸カルシウム半水和物へと粒子状石膏を変換しかつアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを提供するステップは、か焼容器内に石膏スラリーを保持することを含む。
【0032】
好ましくは、プロセスは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから水を除去することを含む。好ましくは、水を除去することは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを加熱することを含む。好ましくは、水を除去することは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーを濾過することを含む。好ましくは、水を除去することは、ハイドロサイクロンを用いてアルファ硫酸カルシウム半水和物から水を分離することを含む。アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから水を分離することは、これがプラスターボードなどの石膏製品の生産中にスラリーから除去されなければならない水の量を減らし得るので、好ましい場合がある。
【0033】
好ましくは、水を提供するステップは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから除去された水を追加の水と混合することを含む。このようにして、プロセスで使用されるエネルギーは減らされ得、これは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーから除去された水は、それが粒子状石膏と混合される前にまたはか焼プロセス中に、加熱される必要がない場合があるか、または加熱を減らす必要があり得るためである。
【0034】
好ましくは、粒子状石膏は、排煙脱硫石膏を含む。好ましくは、粒子状石膏は、リサイクルされた石膏を含む。
【0035】
好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、0.8~1.2(両端を含む)のアスペクト比を有するアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子を含む。より好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、0.9~1.0(両端を含む)のアスペクト比を有するアルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子を含む。典型的には、アルファ硫酸カルシウム半水和物のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡画像解析によって得られる。
【0036】
好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、アルファ硫酸カルシウム半水和物内の粒子の8wt.%~22wt.%(両端を含む)が10μmを通過する、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子を含む。より好ましくは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、アルファ硫酸カルシウム半水和物内の粒子の12wt.%~16wt.%(両端を含む)が10μmを通過する、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子を含む。そのような測定は、レーザ粒度計を使用して行われ得る。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、上に記載されたようなプロセスにおける使用のための粒子状石膏が提供され、粒子状石膏は、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値、および25μm以下のD50値を備える。
【0038】
このようにして、上に記載された利点を有する連続的なか焼プロセスにおける使用のための粒子状石膏が提供される。
【0039】
好ましくは、本発明の第2の態様の粒子状石膏は、本発明の第1の態様に関して記載された特徴のいずれかまたはすべてを、単独でまたは組み合わせで有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態をここで、ほんの一例として、およびアルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のための概略的な装置を示す
図1を参照しながら説明する。そのような装置は、先行技術で知られている。
【0041】
図1で見られるように、装置100は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の連続的な生成のための直列の3つのか焼容器101、102、103を備える。か焼容器の各々は、か焼容器101、102、103の内容物を混合するように構成された混合アーム104、105、106を含む。
【0042】
図1で示されるように、この装置100において、各混合部材104、105、106は、か焼容器101、102、103の上部から、か焼容器101、102、103の内部の底部に隣接する位置へと、か焼容器101、102、103の内部の中で下方に伸びる。このようにして、混合部材104、105、106は、それらが部分的に充填されているときでも、か焼容器101、102、103の内容物を効果的に混合する。各混合部材104、105、106は、混合を改善するために、か焼容器101、102、103の底部の近くに位置する複数の混合パドルを備える。
【0043】
か焼プロセスの間、予熱された石膏スラリーは、開口107を通して第1のか焼容器101に供給される。開口107は、第1のか焼容器101の上部に向かって位置する。第1のか焼容器101は第1のパイプ108によって第2のか焼容器102に流体接続されるため、スラリーは、第1のか焼容器101から第2のか焼容器102へ自由に移動できる。第1のパイプ108は、第1のか焼容器101の底部に向かう位置から第2のか焼容器102の上部に向かう位置へ伸びる。
【0044】
第2のか焼容器102は、第2のパイプ109によって第3のか焼容器103に流体接続される。第2のパイプ109は、第2のか焼容器102の底部に向かう位置から第3のか焼容器103の上部に向かう位置へ伸びる。したがって、スラリーは、第2のか焼容器102から第3のか焼容器へ自由に移動できる。石膏スラリーは、第1のか焼容器101に絶えず導入され、かつか焼容器101、102、103間で圧送されるため、第2のか焼容器102を介して、第1のか焼容器101から第3のか焼容器103へのスラリーの連続的な通過が存在する。
【0045】
スラリーは、出口110を介して第3のか焼容器を出る。出口110は、第3のか焼容器103の底部に向かって位置する。開口107、第1のパイプ108、第2のパイプ109、および出口110の配置は、スラリーが装置100のすべての領域を通って移動しなければならならないこと、および装置100内でのスラリーの滞留時間が制御され得ることを確実にする。
【0046】
か焼容器101、102、103を通るスラリーの通過中に行われるか焼プロセスにより、スラリーは、アルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーとして第3のか焼容器を出る。か焼プロセスは、か焼容器101、102、103が高温および高圧で維持される際に生じる。
【0047】
図1の装置100は3つのか焼容器101、102、103を備えるが、か焼容器101、102、103の数およびサイズは、変化し得る。この変化は、導入された石膏スラリーがアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーへの石膏スラリーの許容される変換を可能にする平均滞留時間を有するように、か焼容器101、102、103の全容積が十分であることを確実にする。この変換プロセスに必要とされる時間の長さは、か焼プロセス中にか焼容器101、102、103内でスラリーが経験する温度および圧力によって変化する。
【0048】
か焼プロセスの間のアルファ硫酸カルシウム半水和物への石膏の十分かつ効率的な変換を確実にするために、出願人は、装置内での粒子の平均滞留時間は10~120分の範囲(両端を含む)であるべきと考える。さらに、出願人は、か焼容器の温度は110℃~170℃の範囲(両端を含む)であるべきと考える。最後に、出願人は、上昇された圧力は0.15~0.80MPaの範囲(両端を含む)であるべきと考える。滞留時間、温度、および圧力の各々は、アルファ硫酸カルシウム半水和物への石膏の効率的な変換を確実にするために独立して変化し得る。装置100の出力は、連続的なか焼プロセスが要望どおりに進むことを確実にするために監視および試験され得る。必要に応じて、各か焼容器中の温度および/または圧力は、要求どおりに装置100内のか焼プロセス全体が進むことを確実にするために異なってよい。さらに、各か焼容器の容積は、独立して制御され得る。
【0049】
連続的なか焼プロセスでは、か焼容器中の材料およびか焼プロセスによって生成されるアルファ硫酸カルシウム半水和物は、連続的な生成プロセスを妨害または停止し得る閉塞を防ぐために流体のままであることが必須である。流動性の必要性は、アルファ硫酸カルシウム半水和物の粒子がさらなる商業プロセスでの使用のために所望の形状およびサイズを有する要件と両立しなければならない。最後に、アルファ硫酸カルシウム半水和物を生成するプロセスで使用される水の量を最小限にして、全体の効率を高め、かつエネルギー消費を減らす必要性が存在する。
【0050】
連続的なか焼プロセスでの使用のための様々な石膏スラリーの適合性を決定するために、以下の石膏粒子径分布を有する石膏スラリーを、表1に要約されるように調製した。
【表1】
【0051】
D10、D50、およびD90を、Horiba LA-950レーザ回折計を使用して測定した。すべての粒子径測定を、30秒の超音波予備分散ステップによりイソプロパノール中で実行した。
【0052】
アルファ硫酸カルシウム半水和物の生成のための連続的なか焼プロセスにおける使用のためのこれらの石膏スラリーの適合性を、以下に記載された基準とこれらのスラリーを比較することによって決定した。
【0053】
変換率
アルファ硫酸カルシウム半水和物の生成のための連続的なか焼プロセスで使用される石膏スラリーについて、スラリー内の石膏粒子は、比較的速やかにアルファ硫酸カルシウム半水和物に変換されなければならない。許容される速さの変換率を、25分以内のアルファ硫酸カルシウム半水和物への石膏粒子の95wt.%の変換(T95)であると決定し、ここで、か焼を、150℃の温度および0.5Mpaの圧力で行った。変換率測定を、粒子滞留時間の精密な制御およびT95の正確な決定を可能にするために、バッチ反応器で行った。
【0054】
流動性
連続プロセスでは、スラリーは、か焼の全体を通して許容される流動性を有しなければならない。好適な流動性は、粘度がか焼容器内で最適な壁熱交換係数を得るのに十分に低い場合に生じ、粘度は、か焼装置内での閉塞および/または圧力降下のリスクを制限するために十分に低く、粘度は、スラリーの沈殿および/または沈降を最小限にするために十分に高い。石膏スラリーの好適な粘度を、80℃で測定したブルックフィールド粘度が0.5~15cPの範囲(両端を含む)であるときに達成されると決定した。石膏スラリーの粘度を測定するときに、石膏粒子を、重量比1:1で水と混合した。
【0055】
これらの実験の間に、石膏スラリーのブルックフィールド粘度を、RV/HA/HB-2スピンドルを用いるブルックフィールドダイヤル目盛り粘度計を使用して測定した。
【0056】
出力されたアルファ硫酸カルシウム半水和物の品質
出力されたアルファ硫酸カルシウム半水和物は、将来のプラスターボード製造中の最適な水必要量のための正しいアスペクト比を有する粒子、および製造中に要求される速さで将来のプラスターボードが固化することを確実にするために十分な微細な粒子を含まなければならない。好適なアスペクト比を、0.8~1.2(両端を含む)であると決定し、微細な粒子の十分なレベルを、10μmを通過する出力されたアルファ硫酸カルシウム半水和物内の粒子の8wt.%~22wt.%(両端含む)であると決定した。
【0057】
ここで、アルファ硫酸カルシウム半水和物のアスペクト比を、走査型電子顕微鏡画像解析によって決定し、微粒子のレベルを、レーザ粒度計で測定した。出力されたアルファ硫酸カルシウム半水和物を、入力されたスラリーをバッチ反応器で45分間150℃の温度および0.5Mpaの圧力でか焼した後に、特性評価した。
【0058】
表1の石膏スラリーの各々を上述の基準に対して試験し、結果を表2にまとめた。
【表2】
【0059】
表2および表1の組み合わせからわかるように、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値、および25μm以下のD50値を有する石膏粒子径分布は、表2に要約された連続か焼プロセスにおける使用のための4つの基準を満たした。したがって、これらの粒子径分布を有する石膏スラリーは、
図1に関して記載されたような連続的なか焼プロセスでの使用に適している。
【0060】
石膏スラリーの粒子径分布が上で指定されたものの外側にある場合、連続的なプロセスにおけるスラリーの使用のための基準の少なくとも1つを満たせなかった。したがって、2μm以上のD10値、90μm以下のD90値、および25μm以下のD50値を有する粒子径分布を有する石膏スラリーを提供することは、アルファ硫酸カルシウム半水和物の製造のための連続的なプロセスの効率的かつ商業的な使用を可能にする。
【0061】
上で論じられた試行の連続的なか焼プロセスへの適用性を確認するために、さらなる試験を行った。このさらなる試験では、石膏スラリーを選択し、
図1に示されたものと同様の実験用の連続的なか焼装置でか焼した。これらのさらなる試験で使用された実験用の連続的なか焼装置は、2つのか焼容器を直列で含み、2つのか焼容器は、
図1に示された装置と同様の方法で互いに流体接続していた。
【0062】
これらのさらなる実験を、以下の表にまとめる。
【表3】
【0063】
ここで、測定された変換は、出力スラリー中のアルファ硫酸カルシウム半水和物への入力スラリー内の石膏粒子のものである。
【0064】
実施例2、実施例3、および実施例4のスラリーを含む実験の各々について、測定された変換率は、95wt.%超であった。しかしながら、比較例1のスラリーを使用する実験について測定された変換率は、相対的に低い89.5wt.%であった。
【0065】
さらに、実施例2、実施例3、および実施例4のスラリーは、連続的なか焼プロセス全体を通して許容される流動性を保持することが観察された。最後に、実施例2、実施例3、および実施例4のスラリーを使用する実験によって生成された、出力されたアルファ硫酸カルシウム半水和物スラリーは、標準的な商業プロセスを使用するプラスターボードの生産に適していた。したがって、実施例2、実施例3、および実施例4のスラリーの各々は再び、連続的なか焼プロセスでの使用に適していると決定された。その一方で、比較例4のスラリーで観察された低い変換率は、このスラリーを、連続的なか焼プロセスでの使用に適さないものにした。
【国際調査報告】