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特表2024-510708インドシアニングリーンの調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】インドシアニングリーンの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/60 20060101AFI20240304BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 31/403 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C07D209/60
A61K49/00
A61K9/14
A61K9/19
A61K31/403
A61P43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547204
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 IB2022052551
(87)【国際公開番号】W WO2022200991
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021000006794
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523292832
【氏名又は名称】アイクロム エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】ICROM SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ダニエーレ デ ツァーニ
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ パルマ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA30
4C076BB13
4C076CC50
4C076FF70
4C085HH11
4C085JJ01
4C085KA27
4C085KB56
4C085LL05
4C085LL07
4C085LL20
4C086AA04
4C086BC10
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA70
4C086NA20
4C086ZC78
(57)【要約】
本発明は、総不純物含量が0.5%以下、及び単一の不純物が0.10%以下であり(純度は254nmの波長における新しい分析法HPLCによって測定される)、並びに、水溶性で、NaI含有量が2.5%以下である安定したNaIを含む関連組成物を有する、式(I)のインドシアニングリーン(ICG、1H-ベンズ[e]インドール,2-[7-[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]-1,3,5-ヘプタトリエニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)ヒドロキシド,分子内塩,ナトリウム塩、CAS RN 3599-32-4)を調製するプロセスであって、産業規模でも調製する、プロセスに関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のインドシアニングリーン、1H-ベンズ[e]インドリウム,2-[7-[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]-1,3,5-ヘプタトリエニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)ヒドロキシド,分子内塩,ナトリウム塩の純度測定方法であって、
【化1】
以下:
・カラムHPLC:Polaris3 C18-A 150×4.6mm
・カラム温度:20℃
・検出器:UV254nm
・ステップA:1000ml中の酢酸アンモニウム2.3gを希酢酸またはアンモニアでpH6.8±0.05に調整
・ステップB:アセトニトリル
・希釈剤:メタノール
・流量:1.5ml/分
・注入量:10μL
・分析時間:34分
・オートサンプラー温度:5℃
・グラジエント
【表1】

を含む、純度測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のHPLC法により測定された、総不純物含量0.5%以下、及び単一の不純物0.10%以下であり、並びにNaI含量が2.5%以下である、式(I)のインドシアニングリーン、1H-ベンズ[e]インドリウム,2-[7-[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]-1,3,5-ヘプタトリエニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)ヒドロキシド,分子内塩,ナトリウム塩を含む、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の前記式(I)の化合物を調製するためのプロセスであって、以下のステップ:
a)式(II)の化合物1,1,2-トリメチル-1h-ベンゾ[e]インドールを、式(III)の1,4-ブタンスルトンと、
【化2】
【化3】
アニソールまたはキシレンから選択される高沸点溶媒中で反応させ、既知の方法に従って、式(IV)の4-(1,1,2-トリメチル-1H-ベンゾ[e]インドリル-3-イル)ブタン-1-スルホネートを与えることと、
【化4】
b)式(IV)の化合物を、式(V)の化合物、N-フェニル-N-((1E,3E,5E)-5-(フェニルアンモニウム)ペンタ-1,3-ジエニル塩酸塩と、
【化5】
無水酢酸、酢酸ナトリウムの存在下で、双極性非プロトン性溶媒を使用して反応させ、中間体を単離することなく、式(I)の最終化合物を与えることと、
を含む、プロセス。
【請求項4】
ステップb)における前記双極性非プロトン性溶媒がアセトニトリルであり、無水酢酸及び酢酸ナトリウムが化合物(IV)に対して4当量に等しい、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップb)後に得られる粗製形態の式(I)の化合物が、当該式(I)の粗製化合物1kg当たりのリットルの体積で表される、5.9/3.4または7.4/3.4または9.9/3.4から選択されるイソプロパノール/水混合物からの結晶化によって精製される、請求項3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項により得ることのできる、請求項2に記載の式(I)のインドシアニングリーンを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総不純物含量が0.5%以下、及び単一の不純物が0.10%以下であり(純度は254nmの波長における新しい分析法HPLCによって測定される)、並びに、水溶性で、NaI含有量が2.5%以下である安定したNaIを含む関連組成物を有する、式(I)のインドシアニングリーン(ICG、1H-ベンズ[e]インドール,2-[7-[1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンズ[e]インドール-2-イリデン]-1,3,5-ヘプタトリエニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)ヒドロキシド,分子内塩,ナトリウム塩、CAS RN 3599-32-4)を調製するプロセスであって、産業規模でも調製する、プロセスに関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
インドシアニングリーンは、心臓、循環器、肝臓、及び眼科的症状における造影剤(例えば、肝機能の測光診断用及び蛍光血管造影用)として医学で使用される蛍光色素である。インドシアニングリーンは、静脈内に投与され、肝臓の機能に応じて、約3~4分の半減期で体によって排出される。インドシアニングリーンのナトリウム塩は通常、粉末形態で入手でき、様々な溶媒に溶解可能である。より良好な溶解性の保証のために、通常は5%のヨウ化ナトリウムが添加される(バッチに応じて<5%)。水-インドシアニングリーン溶液の滅菌凍結乾燥製品は、多くのヨーロッパ諸国及び米国で静脈内使用の診断薬として承認されている。
【0003】
インドシアニングリーンの調製については、特許US2,895,955(1959年出願)及びUS10,287,436(2016年出願)、並びに近年の米国特許US2019/0337896を含む、様々なプロセスが知られている。
【0004】
以下の合成図もまた、文献で知られており、かつ上述した参考文献で報告された上記2つの合成アプローチを報告している:
【化2】
【0005】
US2,895,955では、式(I)の化合物は中間体(VI)の単離によって合成される。
【0006】
US10,287,436では、式(I)の化合物は、中間体(VII)を予備形成(pre-form)及び単離することによって合成される。
【0007】
US2019/0337896では、式(I)の化合物は、ここでも中間体(VI)の単離を経ることによって合成される。
【0008】
特許出願US2019/0337896は、99%を超える純度を有する式(I)の化合物の非晶質形態の調製についても記載していた。この出願はまた、そのような純度を測定するために使用されるHPLC法も記載している。
【0009】
出願人は、当該特許出願に存在する指示に従って式(I)の化合物を調製したが、US2019/0337896の実施例を再現することによって得られた生成物は、以下で詳述されているように、本発明で使用されるHPLC分析方法で分析した場合、同特許出願で表明されているように99%以上の純度であることを特徴とはしていないことを発見した。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、総不純物含量が0.5%以下、及び単一の不純物が0.1%以下であることを特徴とし、並びに産業規模に拡張することも可能な最終生成物を提供することができる式(I)の化合物を調製するための新たなプロセスを提供することである。
【0011】
本発明のプロセスはまた、式(I)の化合物を含み、かつ現在市販されているものよりも低いNaI含量(≦2.5%)を含む組成物を得ることが可能であり、それにもかかわらず、最大5mg/mlまで水に可溶であり、また現在市販されている製品に一般的に使用されている保存条件において安定、つまり光及び酸素から保護されている。
【0012】
実際、現在市販されている製品は、NaI含有量がより高い(アメリカ薬局方USPよると5%以下)。
【0013】
本発明の式(I)の化合物の不純物の程度は、以前に適用されたもの、例えば、特許出願US2019/0337896において適用された分析波長とは異なる分析波長の使用を特徴とする2つの新たなHPLC方法を使用して決定される。
【0014】
特に、205nmではなく254nmの分析波長を用いた新しいHPLC分析方法を使用することにより、US2019/0337896の実施例を使用して合成された式(I)の化合物は、はるかに低い純度、すなわち93%であることを特徴とした。
【0015】
本発明のプロセスは、合成ステップを節減することができるので、全体としてのプロセスをより安価にし、中間体(VI)の単離及び中間体(VII)の単離の両方を回避し、ゆえに上述した先行技術とは異なる。
【0016】
さらに、溶媒の特別な混合物の使用及び再結晶化ステップ中に使用される特別な条件の恩恵を受けて、高い純度が得られること、並びに、(VI)及び(VII)の両方の単離が回避されているにもかかわらず、そのような純度が実際に達成されることも強調されている。
【0017】
本発明は、以下のステップ:
(a)下記式(II)の化合物1,1,2-トリメチル-1h-ベンゾ[e]インドールを、下記式(III)の1,4-ブタンスルトンと、
【化3】
【化4】
アニソールまたはキシレンから選択される適切な高沸点溶媒中において、メタンが完全に存在しない状態で反応させ、既知の方法に従って、下記式(IV)の4-(1,1,2-トリメチル-1H-ベンゾ[e]インドリル-3-イル)ブタン-1-スルホネートを提供することと、
【化5】
(b)上記式(IV)の化合物を、下記式(V)の化合物ベンゼンアミン,N-[(2E,4E)-5-(フェニルアミノ)-2,4-ペンタジエン-1-イリデン]-,塩酸塩(1:1)(GADとして知られる)と、
【化6】
無水酢酸、酢酸ナトリウムの存在下で、双極性非プロトン性溶媒を使用して反応させ、中間体を単離することなく、上記式(I)の最終化合物を提供することと、
を含む、新しい合成プロセスを提供する。
【0018】
ステップa)も、前述の参考文献でよく知られている。反応は、使用する高沸点溶媒に応じた温度で実施することができる。US2019/0337896には、以下の非プロトン性溶媒、すなわち、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルtert-ブチルエーテルなど、キシレン及びアセトンが記載されている。
【0019】
出願人は、約130℃の温度で溶媒としてキシレンを使用した。アニソールも使用でき、反応速度の点で良好な結果が得られ、125~130℃のキシレンでは通常24時間必要であるところ、140~150℃で7~8時間で完全に転換した。式(IV)の中間体化合物は、アセトンを反応混合物に添加して沈殿させることによって単離され、US2019/0337896に記載されているように再結晶化することなく湿式状態でそのまま使用される。
【0020】
このステップにおけるメタノールの存在は、決定的なパラメーターとして評価された。実際、メタノールは、特にプロセスが産業規模で実施される場合、このステップで使用されるすべての材料を溶解するのに優れているため、反応器を洗浄するための溶媒として使用できる。しかし、メタノールが反応器内に微量でも残留すると、化合物(II)と反応してN-メチル-ベンズインドール(不純物G)が生成され、その後のステップで不純物「メチル-インドシアニン」(不純物H)が生成されることになる。
【0021】
パイロットシステムでのテスト(「デモ バッチ」テスト)において、この不純物は実際に発見されており、LC/MS研究(LC/MS ESI;[MH]:631,39)に基づくと、「メチルインドシアニン」(不純物H)と同様の仮説的構造であった。このような構造は、以下の実験パートで報告されているように、全合成を通して確認された。
【0022】
生成した化合物(IV)をLC/MSで順次分析すると、予想されるm/z(LC/MS ESI;[MH]:224が判明)によって特徴付けられる不純物メチルベンズインドール(不純物G)の存在が明らかになった。このケースでも全合成を通して該構造が確認された。
【0023】
出発原料中において残留溶媒としてもメタノールが存在しないことにより、不純物Hが具体的には0.10%未満である生成物が得られることが保証される。この不純物の評価は、この目的に適合したHPLC法の開発によって改善された。
【0024】
したがって、本発明に係るプロセスは、先行技術において既知の合成及び前述した合成で起こるように、いかなる中間体も単離することなく、また中間体(VI)もしくは中間体(VII)のいずれかを精製する必要もなく、ステップb)の直接的な実施、すなわち「ワンステップ」によって特徴付けられる。
【0025】
ステップb)は、すでに知られているように、溶媒(アセトニトリル)、無水酢酸及び酢酸ナトリウムの存在下で式(IV)の化合物と式(V)の化合物とを縮合させることによって実施する。反応は40~50℃の温度で実施し、式(I)の粗製(crude)化合物を形成する。式(V)の化合物及び式(IV)の化合物を酢酸ナトリウム(4当量)の存在下でアセトニトリルに溶解する。次いで、無水酢酸(4当量)をUS2019/0337896に公表されている温度よりも低い温度で添加し、同じ温度で1~3時間反応させる。この「ワンポット」ステップでアセトニトリルを使用することで、完全に反応させるための最小限の量で無水酢酸を使用することが可能となり、ゆえに無水酢酸を反応溶媒として使用しない。これにより、蒸留によるその除去がより容易になり、したがって粗製形態の式(I)の化合物の単離に使用される水/イソプロパノール混合物の使用がより安全になった。
【0026】
実際、その後の処理は、式(I)の化合物の粗製固体を分離するためにイソプロパノールを使用して実行した。
【0027】
このようにして粗製形態で得られた式(I)の化合物は、それ自体ですでに高いHPLC純度レベル(>90%)を特徴とし、唯一存在する重要な不純物は不純物Aである。化合物(I)は、US2019/0337896のメタノール/イソプロパノール混合物、もしくはアセトン、イソプロパノール、または他の引用文献において使用されたメタノールといった既知の方法によるのではなく、むしろ本出願人によって驚愕的に発見されたように、イソプロパノール/HO中での結晶化によって都合よく精製することができる。本発明で使用される以下から選択される適切な比率、すなわち、式(I)の粗製化合物についてリットル/kgの体積表記で、イソプロパノール/水:5.9/3.4または7.4/3.4または9.9/3.4でのイソプロパノール/HO混合物の使用については、これまでに言及した参考文献はない。
【0028】
イソプロパノール/HOを使用することにより、中間体(VI)が単離されていないという事実にもかかわらず、純度99.5以上で式(I)の化合物を提供するという利点を有する。
【0029】
前述したように、出願人は、実験パートで報告されている通り、出願US2019/0337896に記載された式(I)の化合物を調製し、得られる最大純度が93%であり、したがってクレームされている99%よりも有意に低いことを検証した。前記出願に記載されているように、205nmでサンプルを分析すると、このような低い純度は強調され得ない。
【0030】
この分析方法により効果的に定量することができ、また本発明の合成及び精製プロセスにより0.15%未満に減らすことができる既知の不純物は以下の通り、すなわち、
1.不純物A:N‐フェニルアセトアミド、
2.不純物B:4‐(1,1-ジメチル-2-((1E,3E,5E)‐6‐(N‐フェニルアセトアミド)ヘキサ‐1,3,5‐トリエニル)‐1H‐ベンゾ[e]インドール‐3‐イル)ブタン‐1‐スルホネート、
3.不純物C:4‐(1,1,2‐トリメチル‐1H‐ベンゾ[e]インドール‐3‐イル)ブタン‐1‐スルホネート、
4.不純物D:1‐(1,1‐ジメチル‐2‐メチリデン‐1,2‐ジヒドロ‐3H‐ベンゾ[e]インドール‐3‐イル)エタン‐1‐オン、
5.不純物E:(ナフタレン‐2‐イル)ヒドラジン、
6.不純物F:N‐アセチル‐N’‐(ナフタレン‐2‐イル)アセトヒドラジド、
7.不純物G:1,1,2,3‐テトラメチル‐1H‐ベンゾ[e]インドール‐3‐イウム、
8.不純物H:4‐[(2Z)‐1,1‐ジメチル‐2‐[(2E,4E,6E)‐7‐(1,1,3‐トリメチルベンゾ[e]インドール‐3‐イオ‐2‐イル)ヘプタ‐2,4,6‐トリエニリデン]ベンゾ[e]インドール‐3‐イル]ブタン‐1‐スルホナート(メチル‐インドシアニン)、
である。
【0031】
不純物Gは、増加し得ず、実際にはその最終生成物が不純物Hであるため、式(II)の化合物においてのみ評価された。
【0032】
これら不純物の構造を以下の図に示す:
【化7】

【化8】
【0033】
特に不純物E及びFは、潜在的に遺伝毒性があるため、警告構造を有する。本発明のプロセスは、それらを完全に(≦0.05%)分解することができる。
【0034】
式(I)の化合物の有用性は、診断、特に眼科血管造影についてその応用に根差している。式(I)の化合物は、5%以下のヨウ化ナトリウムの存在下で式(I)の化合物25mgまたは50mgを含有する滅菌凍結乾燥粉末の形態で固体状態にて販売される。眼科血管造影のために投与できる量は、ボーラス注射として体重1kgあたり0.1~0.3mgを超えてはならない。再構成された注射用溶液1mlが式(I)の化合物5mgを含むように、該化合物25mg用量を注射用溶液として5mlの水に溶解し、該化合物50mg用量を10mlに溶解する。成人の1日の全用量は体重1kgあたり5mg未満に保たなければならない。
【0035】
注射用調剤については、式(I)の化合物40mgまでの用量を2mlの滅菌水中で使用することができる。式(I)の化合物の注入の直後に、5mlの生理食塩水をボーラス投与しなければならない。
【0036】
実験パートではまた、本発明のプロセスに従って得られる式(I)の化合物の、診断に使用されるボトルの調製に利用できるNaIを含む凍結乾燥製剤の調製についても記載する。
【0037】
[実験パート]
式(I)の化合物の純度を決定するために使用される分析方法
・カラムHPLC:ODS Hypersil 4.6x250mm 5μm
・カラム温度:40℃
・検出器:UV254nm
・ステップA:ギ酸アンモニウム 4.09g/L、pH=5.0(ギ酸を用いて)
・ステップB:アセトニトリル
・混合相: 70:30 A:B
・流量:1.5ml/分
・注入量:10μL
・分析時間:30分
・グラジエント
【表1】
・白色:混合相
【0038】
サンプルの調製(方法1)
50mlフラスコ中で40mgを溶解し、混合相で正しい体積にする。
5分間超音波処理を施し、完全な可溶化を確認する。
サンプルは30分を超えると安定しないため、直ちに注入
【0039】
サンプルの調製(方法2)
50mlフラスコ中で40mgを溶解し、メタノールで正しい体積にする。5分間超音波処理を施し、完全な可溶化を確認する。
すぐに注入。
サンプルは30分を超えると安定しないため、直ちに注入
【0040】
メタノールの使用により、式(I)の化合物をより良好に安定化することができ、[MH]:752.5、すなわち、生成物に関して「-1」を有する劣化不純物の形成を防止することができる。
1~10分ごとに注入。
【0041】
潜在的に遺伝毒性のある不純物の評価は、より大量の溶液を注入することによって得られ、定量はスタンダードに対する限界アッセイとして実行される。
【0042】
式(I)の化合物の純度を決定するために使用される分析方法(2)
・カラムHPLC:Polaris3 C18-A 150x4.6mm
・カラム温度:20℃
・検出器:UV254nm
・ステップA:1000ml中の酢酸アンモニウム2.3gを希酢酸またはアンモニアでpH6.8±0.05に調整
・ステップB:アセトニトリル
・希釈剤:メタノール
・流量:1.5ml/分
・注入量:10μL
・分析時間:34分
・オートサンプラー温度:5℃
・グラジエント
【表2】
・サンプル溶液:メタノール中に1.5mg/ml。溶液を調製後すぐに注入。
【0043】
この方法は、不純物Hの存在を評価するのに特に適している。ただし、記載されている他のすべての不純物を分離することもできる。
【0044】
潜在的に遺伝毒性のある不純物の評価は、より大量の溶液を注入することによって得られ、定量はスタンダードに対する限界アッセイとして実行される。
【0045】
ICGに対するこの「分析方法2」は、LC/MSと互換性があるため、同じカラムを備えたUPLC/MS(ESI)において直接使用し、ESI検出器(コーン電圧:20ボルトを備えたWaters SQD)も用いて反応混合物及び生成物を分析する。
【0046】
この方法は、不純物G及び不純物Hを特定するために使用した。
【0047】
[実施例1]
式(IV)の4‐(1,1,2‐トリメチル‐1H‐ベンゾ[e]インドリル‐3‐イル)ブタン‐1‐スルホネートの調製
【化9】


キシレン93ml中に31.1gの式(II)の化合物(0.15モル、1当量、市販)、40.5gの式(III)の化合物(0.30モル、2当量、市販)を、窒素流下で2L反応器に充填する。懸濁液を撹拌し、約130℃の温度まで24時間加熱する。懸濁液を冷却し、アセトン(200ml)を添加する。次いで、得られた固体を濾過し、真空中で乾燥させる。このようにして、48.5gの所望の化合物が得られ、これは94.5%の収率に相当する(HPLC純度:97~98%)。
【0048】
あるいは、溶媒としてキシレンの代わりにアニソールを同量使用することもできる。同じプロトコールに従い、反応を140℃で実行すると、生成物の転換は6~8時間で完了する。得られる収率及び量はキシレン中での反応と同様である。
【0049】
[実施例2]
式(I)の化合物の調製(ワンポット合成)
【化10】
20.0gの式(V)の化合物(0.07モル、1当量、市販)、48.5gの式(IV)の化合物(実施例1に記載の通りに調製、0.14モル、2当量)、23gの酢酸ナトリウム(0.28モル、4当量)及び180mlのアセトニトリルを、窒素流下で1L反応器に充填する。懸濁液を20~25℃で撹拌し、無水酢酸28.8g(0.28モル、4当量)を5~10分後に滴下する。懸濁液を45~50℃の温度まで加熱し、撹拌を約2時間続ける。反応混合物を、温度を40~50℃に保ちながら真空中で濃縮する。次いで、大気圧に戻し、100mlのイソプロパノールを添加して、温度を40~50℃に保ちながら、再び反応混合物を真空中で濃縮する。
【0050】
その後、水(180ml)及びイソプロパノール(320ml)を加え、生成物を50~55℃で溶液にし、次いでイソプロパノール(100ml)を添加し、混合物を20~25℃まで徐々に冷却する。濾過し、イソプロパノールで洗浄する。このようにして、所望の湿式化合物が得られる(重量損失による収量:46.3g、化合物(V)に対して85.1%、HPLC純度80~85%)。
【0051】
[実施例3]
式(I)の化合物の精製(NaIなし)
イソプロパノールと共に49gの湿式のインドシアニングリーン(実施例2に記載のように調製、24.4g(乾燥)に等しい)、130mlのイソプロパノール及び77mlの水を1リットルフラスコに充填する。50~55℃に加熱し、完全に溶解するまで撹拌する。溶液のpHを5%NaOHで7.5~8.5に補正し、40~45℃まで冷却する。
【0052】
40~45℃を維持しながらイソプロパノール(48ml)を添加し、次いで20~25℃まで徐々に冷却し、撹拌を1.5時間続け、その後に濾過し、イソプロパノールで洗浄する(2×48ml)。
粉末を真空中において60℃で40時間乾燥させる。
収量:20g(82.9%)
HPLC純度:99.5%;不純物A:0.40%
ヨウ化ナトリウム含有量:0%。
【0053】
[実施例4]
US2019/0337896に記載のプロセスに従った式(I)の化合物の調製
式(I)の化合物は、特許出願US2019/0337896に記載のプロセスに従って、前の実施例に記載の通り調製した中間体(II)、及び(III)、及び(V)から出発して調製し、US2019/0337896の実施例1、2、5及び6に記載の合成手順に従って、所望の式(I)の化合物を得た。式(II)の化合物から出発した重量収率は60%であったが、本発明のプロセスでは86%であった。
【0054】
得られた生成物を、方法1及び方法2の両方でサンプルの溶液を調製することにより、次いで本発明の方法を用いて分析した。HPLC法で測定した純度は93.27%であった。
不純物A:0.68%
不純物C:1.12%
不純物D、E、F:定量不可能
最大未知不純物:2.42%(rt:0.93)
前述の特許で報告されているように、純度が205nmの波長で検証された場合、純度は100%であるが、これは明らかに現実に対応していない。
【0055】
[実施例5]
NaIを用いた式(I)の化合物の調製(I結晶化)
93.6gの式(I)の粗製化合物(実施例2に記載の通りに調製された、理論的乾燥化合物46.3g)及びヨウ化ナトリウム(1.39g;3%w/w)を250mlのイソプロパノール及び148mlの水に懸濁する。懸濁液を55~60℃の温度まで加熱し、完全に溶解するまで撹拌する。2.5%w/w水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを7.5~8.5に補正する。溶液を45~50℃の温度まで冷却し、15~30分後に93mlのイソプロパノールを添加する。20~25℃の温度に達するまでゆっくりと冷却し、30分間撹拌を続ける。次いで、懸濁液を35~40℃にし、約1時間撹拌したら、約2時間後に再び20~25℃まで冷却し、最後に20~30℃で濾過して、イソプロパノールで洗浄する。
【0056】
上記対象物を真空中において50~80℃で8~48時間乾燥させ、35.89gの所望の生成物を収率77.5%で得た(充填したそれぞれの粗製乾燥生成物に対して)。
HPLC純度:99.6%;不純物A:0.28%
ヨウ化物(銀電極による電位差滴定):1%。
【0057】
既知の不純物が0.15%を超え、かつ未知の不純物が0.1%を超える場合、より少ないヨウ化ナトリウムの使用によって第2の結晶化を実施することが可能であり、ヨウ化ナトリウムをより少なくすることは最終生成物中のヨウ化ナトリウムの量を2.5%未満に保つために不可欠である(実施例6)。
【0058】
[実施例6]
NaIを用いた式(I)の化合物の調製(II結晶化)
第1の結晶化から得られた式(I)の湿式化合物(実施例5に記載の通りに調製)(63.7%、重量損失ベースで対応する乾燥生成物35.9gに等しい)、ヨウ化ナトリウム(0.54g;1.5% w/w)、イソプロパノール(194ml)及び水(115ml)を1リットルの反応器に充填する。55~60℃まで加熱し完全に溶解させ、次いで溶液をボール紙上で濾過し、フィルターを水(7ml)で洗浄、次にイソプロパノール(18ml)で洗浄する。濾液を55~60℃にし、必要に応じて希釈したNaOHで7.5~8.5の範囲にpHを補正し、次いで45~50℃まで冷却し、約30分後にイソプロパノール(54ml)を添加する。
【0059】
上記対象物を20~25℃までゆっくり冷却し、再び35~40℃まで約1時間加熱し、次いで約1時間後に20~25℃に戻して、撹拌を30分間続ける。懸濁液を濾過し、イソプロパノールで洗浄し、湿式生成物を得て、これを真空中において50~80℃で24~48時間乾燥させる。
収量:26.9g(75%)。
このようにして得られた生成物の純度は、本発明のHPLC法を用いて測定すると99.5%以上である。
HPLC純度:99.92%
不純物A、B、C、D、E及びF:定量不可能(HPLC)。
最大未知不純物:0.084%(HPLC; rrt:0.45)。
ヨウ化ナトリウム(USPモノグラフによる電位差滴定):0.9%。
残留イソプロパノール:1597ppm。
【0060】
[実施例7]
NaIを用いた以下の本発明のプロセスに従って得られる式(I)の化合物の凍結乾燥製剤の調製
実施例6に記載した通りに得られたインドシアニングリーン(125mg)(NaI≦2.5%含有)を水(25ml)に溶解し、1分間超音波処理する(5mg/ml)。
【0061】
上記溶液を5つの異なる琥珀色のガラスバイアルに充填して使用する(バイアルあたり約5mlの溶液)。バイアルは、以下の凍結乾燥条件によって凍結乾燥する:
凍結乾燥機:Edwards MINIFAST 680
温度:凍結乾燥開始時 -40℃;凍結乾燥終了時 +5℃
圧力(真空):凍結乾燥開始時 6.610mbar、凍結乾燥終了時 4.610-2mbar
凍結乾燥時間:72時間
琥珀色のガラスバイアルに窒素を注入、及び蒸留終了時に密封。
【0062】
[実施例8]
NaI不使用での以下の本発明の方法に従って得られる式(I)の化合物の凍結乾燥製剤の調製
凍結乾燥製剤は、実施例7に記載のものに従って調製されるが、実施例3に記載のものに従って調製された式(I)の化合物を使用する。ヨウ化ナトリウムを使用せずに得られた式(I)の化合物(銀電極を用いた電位差滴定によるヨウ化ナトリウム=0%)は、結晶化後の乾燥単離粉末としてそのまま使用した場合、5mg/mlまたは2.5mg/mlの臨床的利用濃度では20~25℃の水に溶解しない。
【0063】
驚くべきことに、同じ乾燥凍結粉末は、2.5mg/ml、5mg/ml、さらには10mg/mlの濃度でも溶解する。
【0064】
溶解度は、得られたすべての溶液を0.45μmの穴を備えたシリンジフィルターで濾過することによって評価し、濾過が流体的に行われ、フィルター上にも、溶液を取り出したバイアル中にも残留物が残っていないことを観察した。
【0065】
この分子はおそらくそれ自体は可溶性であるが、反応速度論的な理由により、妥当な時間スケールでは溶解しない。一方、乾燥凍結粉末は水と接触する相対表面積が大きいため、超音波処理をする必要さえなく、完全かつ即座に溶解する傾向がある。
【0066】
[実施例9]
安定性テスト
実施例6に従って記載された方法によって得られた式(I)の化合物の粉末の安定性を、光から保護されておらず(つまり、同出願人の国際特許出願WO2013168186に記載されている方法に従って、ポリエチレン袋またはアルミニウムとポリエチレンとの二重袋に包装されている)、酸素の存在下または非存在下(すなわち、空気または窒素)において評価され、より多量のNaIを含有する市販製品の安定性と比較した(3.6%対1.4%)。
【0067】
記載された方法に従って生成された粉末は、ヨウ化ナトリウムの含有量が少なくても、また窒素の非存在下にもかかわらず、極めてより安定的であり、一般に、T 0(ゼロ)においてもより高い純度であることを特徴とする。
【0068】
結果を表1に示す。
【表3】
【0069】
[実施例10]
(A)メタノールの存在下での不純物Gの形成を伴う、式(IV)の4-(1,1,2-トリメチル-1H-ベンゾ[e]インドリル-3-イル)ブタン-1-スルホネートの調製
調製は、3.3% v/vのメタノールの存在下ではあったが、実施例1に記載した通りに行った。この反応のLC/MS分析により、[M]:224.18によって特徴付けられる不純物Gが0.55%存在することが強調される。
【0070】
(B)不純物Gの構造の確認
LC/MS分析に基づいて実施例10Aで予め仮定された不純物Gの構造を確認するために、不純物G(メチルベンズインドール)を、文献(Ind. Chem. Res, 2012, 51, 3630-3638)で知られているプロセスに従って、出発ベンズインドールをヨウ化メチルと反応させることによって合成した。このようにして得られた生成物は、予想される質量スペクトル、すなわち[M]:224を有し、実施例10Aの中間体1で同定された等しい重量のピークと共溶出し、その同一性が確認された。
H‐NMR:構造に準拠。
【0071】
(C)不純物H(メチルインドシアニン)の調製
不純物B(US2895955、実施例3に報告された手順に従って調製;20.0g)、ヨウ化メチルベンズインドール(14.24g)、酢酸ナトリウム(37.7g)、氷酢酸(23.6ml)及びアセトニトリル(240ml)を、所定の順序で500mlフラスコに充填する。懸濁液を45/50℃まで加熱し、6時間撹拌し続ける。反応塊を20/25℃まで冷却し、反応物を20/25℃でさらに40時間撹拌する。氷酢酸(1ml)を加え、反応混合物を45/50℃まで加熱し、5時間撹拌し続ける。反応混合物を20/25℃まで冷却し、撹拌をさらに64時間続ける。溶媒の一部(約130ml)を真空中において30/50℃で蒸留する。イソプロパノールを加え(40g)、溶媒を真空中において30/50℃で蒸留する。水(100ml)及びイソプロパノール(122g)を反応残渣に加える。懸濁液を完全な溶解が観察されない状態で50/55℃まで加熱する。懸濁液を50/55℃で30分間維持する。懸濁液を50/55℃に維持したままイソプロパノール(40ml)を加える。約2時間後に30/35℃まで冷却し、懸濁液を1時間撹拌する。反応塊をさらに40/45℃まで加熱し、懸濁液をさらに30分間撹拌する。反応塊を約1時間後に20/25℃まで冷却し、1時間撹拌する。固体をブフナー漏斗で濾過し、イソプロパノールで洗浄する(2×20.0g)。粗製固体を55℃で16時間乾燥させる。
【0072】
第1の精製:粗製固体(23.2g)、水(74.4g)及びイソプロパノール(98.4g)を所定の順序で500mlフラスコに充填する。懸濁液を溶解が観察されない状態で60/65℃まで加熱する。懸濁液を60/65℃で1時間撹拌する。イソプロパノール(36.4g)を加え、60/65℃で1時間撹拌する。反応塊を20/25℃まで冷却し、5時間撹拌する。固体をブフナー漏斗で濾過し、イソプロパノール(25ml)で洗浄する。固体を真空中において55℃で16時間乾燥させる。
【0073】
第2の精製:第1の乾燥精製生成物(16.9g)、水(68.3g)及びイソプロパノール(111.9g)を所定の順序で250mlフラスコに充填し、懸濁液を60/65℃まで加熱する。懸濁液を60/65℃で4時間撹拌する。懸濁液を20/25℃まで冷却し、20/25℃で2時間撹拌する。固体をブフナー漏斗で濾過し、イソプロパノール(20ml)で洗浄する。固体を真空中において50℃で20時間乾燥させる。
【0074】
第3の精製:第2の精製生成物(14.2g)及びイソプロパノール(60g)を所定の順序で250mlフラスコに充填する。懸濁液を70/80℃(溶媒還流)まで加熱し、1時間維持する。反応塊を20/25℃まで冷却し、5時間撹拌する。固体をブフナー漏斗で濾過し、イソプロパノールで洗浄する(2×15g)。固体をストーブ内にて50℃で6時間乾燥させ、その後60℃でさらに8時間乾燥させる。
乾燥固体 1.57g、
(HPLC)純度:93.07%、
[MH]:631.39(ESI)。
【0075】
このようにして調製された不純物Hは、説明パートで述べた「デモ バッチ」で見られた8m/zの不純物と共溶出する。
【国際調査報告】