(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】プレスシステムおよびプレスシステムのためのプレスツール、ならびにワークピースを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B30B 5/02 20060101AFI20240304BHJP
B30B 15/34 20060101ALI20240304BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B30B5/02 Z
B30B15/34 A
C08J5/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550234
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2022054333
(87)【国際公開番号】W WO2022175543
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000923.1
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512215107
【氏名又は名称】ジームペルカンプ・マシーネン-ウント-アンラーゲンバウ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ショーラー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ケーファース
(72)【発明者】
【氏名】クラウス シュルマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ガイヤ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュテルマッハー
【テーマコード(参考)】
4E090
4F072
【Fターム(参考)】
4E090AA08
4E090AB01
4E090DA01
4E090HA07
4E090HA10
4F072AA07
4F072AB10
4F072AG03
4F072AG17
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL02
(57)【要約】
本発明は、
- 第1のプレスツール(2)および第2のプレスツール(3)を有し、第1のプレスツール(2)と第2のプレスツール(3)とは、作業空間(8)を形成するために互いに対して動かされることができるプレス(1、1’)、
- ワークピース(19)、
- 作業空間(8)の中でワークピース(19)に作用する圧力曲線を発生するための圧力発生装置(22)、
- 作業空間(8)の中でワークピース(19)に作用する温度曲線を発生するための温度発生装置(23)
を含み、
- ワークピース(19)は、作業空間(8)の中で作用する圧力曲線および作業空間(8)の中で作用する温度曲線に依存して伸長曲線(DVW)を通り抜け、
- 第1のプレスツール(2)および第2のプレスツール(3)は、作業空間の中で作用する圧力曲線と作業空間の中で作用する温度曲線とに依存してそれぞれの伸長曲線(DVP1、DVP2)を通り抜けるプレスシステム(100)であって、
第1のプレスツール(2)および/または第2のプレスツール(3)は、それらの伸長曲線(DVP1、DVP2)が伸長曲線の少なくとも97.5%の間にワークピース(19)の伸長曲線(DVW)から3.5%を超えて逸脱するように設計されることを特徴とするプレスシステム(100)に関する。本発明は、さらに、プレスツールと、ワークピースを製造するための方法と、に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスシステム(100)であって、
- 第1のプレスツール(2)および第2のプレスツール(3)を有するプレス(1、1’)であって、前記第1のプレスツール(2)と前記第2のプレスツール(3)とは、作業空間(8)を形成するために互いに対して動かされることができるプレス(1、1′)、
- ワークピース(19)
- 前記作業空間(8)の中に配置された前記ワークピース(19)に作用する圧力プロファイルを発生させるための圧力発生装置(22)
- 前記作業空間(8)の中に配置された前記ワークピース(19)に作用する温度プロファイルを発生させるための温度発生装置(23)
を含み、
- 前記ワークピース(19)は、前記作業空間(8)の中で作用する圧力プロファイルと前記作業空間(8)の中で作用する温度プロファイルとの関数としての膨張プロファイル(DVW)を通過し、
- 前記第1のプレスツール(2)と前記第2のプレスツール(3)とは、前記作業空間の中で作用する圧力プロファイルと前記作業空間の中で作用する温度プロファイルとの関数としてのそれぞれの膨張プロファイル(DVP1、DVP2)を通過するプレスシステム(100)において、
前記第1のプレスツール(2)および/または前記第2のプレスツール(3)は、それらの膨張プロファイル(DVP1、DVP2)が前記膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間に前記ワークピース(19)の膨張プロファイル(DVW)から最大3.5%逸脱するような方法で設計されることを特徴とする
プレスシステム(100)。
【請求項2】
前記ワークピース(19)は、少なくとも1つの第1の構成部品(24)および少なくとも1つの第2の構成部品(25)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプレスシステム(100)。
【請求項3】
前記第1の構成部品(24)と前記第2の構成部品(25)とは、圧力および温度の影響を受ける前記作業空間(8)の中のプレスプロセス時に互いに結合されることを特徴とする、請求項2に記載のプレスシステム(100)。
【請求項4】
前記プレスシステム(100)は、メンブレン(4)をさらに含み、前記メンブレン(4)は、前記プレスツール(2、3)の一方に接続され、前記メンブレン(4)とそれに結合された前記プレスツール(2、3)との間に作業媒体のための空洞(5)が形成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項5】
前記メンブレン(4)は、その膨張プロファイル(DVM)も前記膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間に前記ワークピースの膨張プロファイル(DVW)から最大3.5%逸脱するような方法で設計されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項6】
前記メンブレン(4)は、その膨張プロファイル(DVM)が前記膨張プロファイルの少なくとも7.5%の間に前記ワークピースの膨張プロファイル(DVW)から5.0%を超えて逸脱するような方法で設計されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項7】
前記プレスシステム(100)は、プレス面(26)を有することと、前記メンブレン(4)は、それに結合された前記プレスツール(2、3)に対して好ましくは少なくとも1つの、好ましくは前記プレス面(26)に実質的に平行に延びる方向成分に関して動かすことができるように配置されることと、を特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項8】
少なくとも前記第1のプレスツール(2)および/または少なくとも前記第2のプレスツール(3)は、36.0%と48%との間、好ましくは37.5%と47%との間、非常に好ましくは39.25%と46%との間のニッケル含有量を有する鋳鉄材料を含み、特に体積分率で少なくとも90%、特に少なくとも98%、好ましくは全体がそれらから形成されることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項9】
前記鋳鉄材料は、1.0%~5.5%、好ましくは1.5%~4.0%の炭素をさらに含むことを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項10】
前記プレスシステム(100)は、前記ワークピース(19)を製造するためのプレスサイクルを通過し、前記プレスサイクルは、前記作業空間(8)の中で作用する100K~500K、好ましくは170K~450K、非常に好ましくは190K~250Kの温度差を通過することを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項11】
前記作業空間(8)は、第1の空間軸(X)、第2の空間軸(Y)および第3の空間軸(Z)によって画定され、前記空間軸(X、Y、Z)の少なくとも一つの方向に、少なくとも1.3m、好ましくは少なくとも3.5m、非常に好ましくは少なくとも5m、より好ましくは少なくとも8m、非常に特に好ましくは少なくとも10.5mの距離(L)に沿って設計されることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載のプレスシステム(100)。
【請求項12】
第1のプレスツール(2)および第2のプレスツール(3)を有するプレス(1、1’)の中で使用されるプレスツール(2、3)であって、前記第1のプレスツール(2)と前記第2のプレスツール(3)とは、作業空間(8)を形成するために互いに対して動かされることができ、前記プレスツール(2、3)は、前記作業空間(8)の中に配置された前記ワークピース(19)に作用する圧力プロファイルを発生させるための圧力発生装置(22)および前記作業空間(8)の中に配置された前記ワークピース(19)に作用する温度プロファイルを発生させるための温度発生装置(23)と動作可能に結合されることができるような方法で設計され、請求項1~11の何れか一項に記載のプレスシステム(100)のために設計されることを特徴とするプレスツール(2、3)。
【請求項13】
ワークピースを製造するための方法であって、
- 圧力発生装置(22)および温度発生装置(23)を有するプレス(1)を準備するステップ(101)
- (製造される)ワークピース(19)を準備するステップ(102)
- プレスシステム(100)を形成するために作業領域(8)に前記ワークピース(19)を挿入するステップ(103)
- 前記プレス(1)を閉じるステップ(104)
- ワークピース(19)に圧力(p)および/または温度(T)を印加するステップ(105)
- 前記プレスを開くステップ(106)、
を含み、
前記ワークピース(19)は、前記作業空間(8)の中で作用する圧力プロファイルと前記作業空間(8)の中で作用する温度プロファイルとの関数としての膨張プロファイル(DVW)を通過し、
前記第1のプレスツール(2)および前記第2のプレスツール(3)は、前記作業空間の中で作用する圧力プロファイルと前記作業空間の中で作用する温度プロファイルとの関数としてのそれぞれの膨張プロファイル(DVP1、DVP2)を通過し、
前記第1のプレスツール(2)および/または前記第2のプレスツール(3)は、それらの膨張プロファイル(DVP1、DVP2)が前記膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間に前記ワークピース(19)の膨張プロファイル(DVW)から最高3.5%逸脱するような方法で設計される、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記方法を実施するために関連する請求項の何れか一項に記載のプレスシステム(100)が用いられることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
形成される前記ワークピース(19)は、固定された集合状態の複数のプリプレグの形で前記プレス(1)、特に前記作業空間(8)に挿入されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
- 第1のプレスツールおよび第2のプレスツールを有するプレスであって、第1のプレスツールと第2のプレスツールとは、作業空間を形成するために互いに対して動かされることができるプレス
- ワークピース
- 作業空間の中に配置されたワークピースに作用する圧力プロファイルを発生させるための圧力生成装置
- 作業空間の中に配置されたワークピースに作用する温度プロファイルを発生させるための温度生成装置
を含み、
- ワークピースは、作業空間の中で作用する圧力プロファイルと作業空間の中で作用する温度プロファイルとの関数としての膨張プロファイルを通過し、
- 第1のプレスツールと第2のプレスツールとは、作業空間の中で作用する圧力プロファイルと作業空間の中で作用する温度プロファイルの関数としてのそれぞれの膨張プロファイルを通過する、
プレスシステムに関する。
【0002】
本発明は、プレスの中で使用されるプレスツールにも関する。
【0003】
本発明は、さらに、ワークピースを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
プレスシステムおよびプレスツールは、長い間にわたり知られてきた。プレスシステムが互いの方に移動可能であるように配置された少なくとも2つのプレスツールを含むか、またはプレスが互いの方に移動可能であるように配置された少なくとも2つのプレスツールを受け入れるのに適し、少なくとも2つのプレスツールの相対的な動きによって作業空間が大きくなるかまたは小さくなり、かつ機械加工されるワークピースに作用する圧力がワークピースの少なくとも1つの材料成分の充填圧力に依存しない場合に、鋳造システム、鋳造ツールまたは鋳造装置とは対照的に、常にプレスシステム、プレスおよびプレスツールが参照される。
【0005】
プレスそれ自体とは対照的に、従って、プレスの中で製造されるワークピースもプレスシステムの一部であり、本記載の意味においてワークピースの機械加工も用語「製造」を意味すると理解されるべきである。
【0006】
よって、製造されるワークピースの少なくとも1つの(材料)成分が閉じた、または少なくとも実質的に閉じた作業空間の中に液体形で導入される本発明の根底にあるプレスシステム、プレスおよびプレス方法と比較すると、遠心鋳造、RTMまたはその他のプロセスならびにそれらの配置は、一般的でない。
【0007】
しかし、先行技術によれば、RTM法は、特に、多くの場合に繊維複合材料、例えば炭素繊維含有複合材料(CFRP)で製作されるワークピースの製造のために種々の変化形で用いられるが、RTM法は、一般にプレス法と比較して顕著な問題点を有する。とりわけ、そのようなプロセスにおいて均質性、品質および安定性の点で実現可能な結果は、プレス法で実現可能なものにはるかに及ばない。
【0008】
繊維複合材料は、実質的に2つの主成分、すなわち強化用繊維と繊維、が埋め込まれるプラスチック(「母材」または「樹脂」)とからなる複合材料である。2つの主成分を組み合わせることによって、全体としての複合材料が2つの成分単独より良好な特性を有することを実現することができる。例えば、繊維の方向におけるそれらの高い引張強度に起因して、繊維は、複合材料の引張強度を増大する助けとなる。他方で、母材は、例えば繊維がそれらの位置に保持され、機械的および化学的な影響から保護されることを確実にする。
【0009】
しかし、これまでのところのプレス法に伴う課題は、プレスプロセス時に製造されるワークピースとワークピースに作用するプレスツールとからなるプレスシステム内で異なる熱膨脹率が設定されることである。この現象は、周知である。当業者は、冷却するとプレスツールがワークピース上に収縮するかまたはワークピースがプレス上に収縮するかのどちらかであると承知している。
【0010】
炭素繊維部分を有する複合材料、特に埋め込まれた炭素繊維メッシュを有する熱可塑性材料、例えばCFRP自体は、極めて低い長手方向または体積膨張を有するため(それによって、場合によっては繊維層の方向、繊維層に角度をなす方向、特に繊維層と直交する方向に強い差異があり、そのことは顕著に弱められた形でガラス強化プラスチックGRPにも適用される)、プレスプロセスにおけるCFRPで製作されるワークピースの製造は、特に難しい。よって、それらのものの極めて低い熱膨張挙動とは対照的に、そのような複合材料は、少なくともそれらの熱製造または加工プロセス時に少なくともそれらのものの母材への望ましくない変化なしでは強制膨張にほとんど耐えることができず、このことは後の使用にとって非常に重要である。さらに、望ましくない空気封入物が発生することがあり、そのことが実現可能な耐久性を顕著に低下させる。
【0011】
特に、温度制御された加工プロセスにおいていわゆる「プリプレグ」または「オルガノシート」が加工される場合、プレスツールまたはプレスダイ自体が対応して耐熱性でなければならないので、プレスツールまたはプレスダイの熱膨張挙動は、加工可能性の決定的な限界を容易に表すことができる。さらに、それらは、経済的に使用可能であるように設計され、長い耐用年数を目的としてしかるべく設計されなければならない。その上、プレスツールまたはプレスダイは、適当な正確さで製造可能でなければならず、それらの表面は研磨が容易でなければならないため、今までのところ実際的に代替物なしで鋼から製造されてきた。
【0012】
従って、上記で既に述べたように、多くのCFRP構成部品が今日、たとえこのことが上記で既に記載した不利を伴うとしても、プリプレグからプレスされる代わりに依然としていわゆるRTMプロセスにおいて鋳造されている。
【0013】
例えば、ただ1つのプレスツールまたはダイ部品がプリプレグまたはオルガノシート、あるいは一般に製造されるかまたは機械加工されるワークピースの長さまたは体積の変化と異なる長さまたは体積の変化を経験する場合、少なくともキャリア層部分が少なくとも部分的に、内部的にまたは表面に達する変位を受け、その結果、多くの場合に少なくとも構造部分も破断し、従ってもはや計画された構造強度を維持することができない。
【0014】
このことは、大きなワークピースを設計するとき、この場合は異なる肉厚をほとんど防止できず、肉厚に応じて部分的に異なる冷却速度が発生するので、特に問題となる。大きなワークピースは、対応して大きな有効レバー長さも有する。2~3センチメートルから1.5メートル前後の最大長さを有するふつうの寸法のワークピースより、例えば長さが3mを超えるか5mさえも超える大きなワークピースにおいては10分の2~10分の3°の歪みを感じることができ、顕著に問題となる。
【0015】
このことは、製造されるワークピースへの反りおよび損傷が非常に容易に発生することを意味する。その結果、不良率が増大するかまたは加工後の労力が増大する。しかし、場合によっては、生じる応力に起因する構造損傷の発生に起因して可能なかぎり単一体である大きなワークピースを製造することも不可能なことがある。
【0016】
大きなワークピースの最大長さが大きくなるほどこの問題は深刻になる。
【0017】
そのような大きな構成部品を十分に均一な圧力でなんとかプレスすることを可能にするために、固定されたツールに載置されているワークピースの一方の側にメンブレンを介して静水圧を加えるプレス装置および方法が公知である。
【0018】
これの例が特許文献1から公知の装置および繊維複合材料で製作された構成部品を製造するための方法である。製造される部品の均一な加圧は、部品に作用する柔軟なメンブレンによって実現されるべきであり、メンブレンの部品とは反対側からメンブレンに油圧が作用する。従って、メンブレンは、油圧によって部品表面に押圧される。この方法では、湾曲した部品表面の場合に油圧がすべての側に作用し、従ってメンブレンから部品表面に作用する力、特に部品表面に直角に作用する力成分もすべての箇所で同じであることも確実にされるべきである。
【0019】
繊維複合材料から部品を製造するためのそのような「メンブレンプレス」の使用も特許文献2から公知である。
【0020】
メンブレンを用いることの一つの難題は、製造プロセス全体時に、部品表面への圧力の均一な伝達を確実にするためにメンブレンはできるだけ滑らかである表面を有しなければならないことである。同時に、メンブレンは、油圧が上昇して行く空洞に対して確実に封止されなければならないが、熱誘起膨張または収縮時もその滑らかな表面を維持するために動くことができる方法で保管されなければならない。
【0021】
それにもかかわらず、そのようなプレス装置、方法またはシステムの場合でも、プレスシステム内で様々に起こる、特にワークピースに対するプレスツールの熱膨張挙動の基本的な課題は、未解決のままである。
【0022】
この背景に対して、本発明の根底にある目的は、熱的に導かれるプレスプロセスにおいて高品質のワークピースを製造することができるプレスシステムを提供することである。
【0023】
特に、たとえ特に低い熱膨脹率を有する材料および/または材料混合物からワークピースが製造される場合でも、高い構造強度を有するワークピースを製造することが可能になるはずである。
【0024】
さらに、製造されるワークピースの構造設計への損傷は、避けられるはずであるかまたは少なくとも低減されるはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2017 113 595(A1)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0297153(A1)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
これらの目的の少なくとも1つは、第1のプレスツールおよび/または第2のプレスツールは、それらの膨張プロファイルが膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピースの膨張プロファイルから最大3.5%逸脱するような方法で設計されることで、初めに言及されたタイプのプレスシステムにおいて実現される。
【0027】
膨張プロファイルは、その際、ある期間にわたって適用される膨張値に対応する。従って、従来の手法から逸脱して、本発明は、互いに相互作用する2つの材料、この場合はプレスツール材料とワークピース材料との間で熱誘導膨張の最大量だけが比較されるべきであるとは考えず、それらのプロファイルが比較されるべきであり、これらは、最大3.5%の一時的な差に狭く限定されるべきである。
【0028】
本発明者らは、種々の材料、特に複合材料の膨張挙動は線形ではないので最大膨張率値を調整することは適切ではないと認識した。
【0029】
共通する別の誤解は、膨張挙動だけが材料に依存するということである。
【0030】
本発明によれば、第1のプレスツールおよび第2のプレスツールは、それらの膨張プロファイルが膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピースの膨張プロファイルから最大3.5%逸脱するような方法で設計され、膨張プロファイルからの逸脱は、その後好ましくはプレスプロセスによって定義される期間内の同じ時点における膨張値の逸脱に対応する。
【0031】
プレスツールおよびワークピースの膨張または膨張プロファイルは、プレスプロセスの間に直接的に(測定によって)または間接的に(計算/シミュレーションによって)決定されることができる。測定値定量のために接触または非接触の測定法、例えば画像処理および画像評価による光学測定法が用いられることができる。対照的に、計算機定量の場合には、測定変数が記録され、それらから既知の係数を考慮して膨張プロファイルが計算機的に決定される。これらの測定変数は、特に温度もしくは温度プロファイルおよび/または圧力もしくは圧力プロファイルを含む。これらの測定変数も接触または非接触の方法(例えば、赤外線放射を測定することによる温度の決定)で決定されることができる。関連する係数は、特に、用いられる材料に依存する膨張係数を含む。さらに、計算機定量において構成部品の体積、構成部品の表面、構成部品の温度吸収容量および形状係数などの因子が用いられることができる。プレスツールおよびワークピースの温度を決定するとき、間で熱伝達または熱輸送が起っている場合にはプレスシステムを通って流れる冷却媒体または加熱媒体の決定された温度も用いられることができる。プレスツールおよびワークピースの膨張または膨張プロファイルをできるだけ正確に決定するには、可能な高周波測定法および/または計算方法が用いられるべきである。測定または決定された膨張プロファイルは、例えばプレスプロセス時に温度を調整することによってそれらを制御するために用いられることができる。
【0032】
この場合、第1のプレスツールおよび第2のプレスツールの膨張プロファイルは、膨張プロファイルの少なくとも98.0%の間にワークピースの膨張プロファイルから最大3.0%しか逸脱しないか、または膨張プロファイルの少なくとも98.5%の間でもワークピースの膨張プロファイルから最大2.5%しか逸脱しないと特に好ましい。
【0033】
従って、そのようなプレスシステムは、予め製作された繊維-樹脂半製品(いわゆる「プリプレグ」、「予め含浸された繊維(preimpregnated fibers)」の省略形)の使用に基づく繊維複合材料で作られた構成部品の製造に特に良好に適している。そのような半製品の場合、まだ完全に反応していない樹脂システムが繊維に提供され、そのため半製品は、依然として柔軟な形(例えばウェブ形、ロール状、またはプレート形)で存在する。プリプレグは、部品が製造され、高圧および高温において化学反応を完了することによって硬化されるとき初めて形を変えられる。このステップは、次に、本プレスシステムにおいて非常に有利に実行されることができる。
【0034】
よって、ワークピースが少なくとも1つの第1の成分および少なくとも1つの第2の成分を含むと好ましい。
【0035】
この方法において、特に安定なワークピースが製造されることができ、2つの材料成分の一方だけが通常、膨張逸脱に敏感である場合でも、本プレスシステムの利点が用いられることができる。
【0036】
圧力および温度の影響を受けるプレスプロセス時に作業空間の中で第1の成分と第2の成分とが結合すれば特に有利である。
【0037】
これは、特に高い品質のワークピースが製造されることができることを意味し、その際、このプレスシステムの使用は、実施において有効であるいかなる変位、脆弱化または過膨張も、恐れるいかなる必要も、もはやないことを意味する。このことは、特に、第1の成分が繊維、例えば繊維紐、特に炭素繊維紐の形の繊維、第2の成分が受容母材、特に樹脂によって形成される場合に適用される。
【0038】
例えば、これらの2つの成分の混合物が既に言及したプリプレグによって表される。
【0039】
例えば、航空機産業においてはプリプレグが大量に加工される。加工における難題は、航空宇宙産業が多くの場合に例えば桁(独:Stringern,英:stringers)などの補強要素に起因して非常に複雑な部品幾何形状を必要とすることである。さらに、組み立て作業は減らされるべきであり、そのことは部品点数は減るが大きな部品を用いることによって実現されるべきである。複雑な幾何形状と大きな部品寸法との組み合わせは、これらの部品の製造のための装置およびプロセスへの要求を増大させる。1つの要件は、例えば、部品の製造時に均一な加圧を確実にすることである。
【0040】
従って、プレスシステムがさらにメンブレンを含み、メンブレンがプレスツールの1つに結合され、メンブレンとそれに結合されたプレスツールとの間に作業媒体のための空洞が形成されれば特に有利である。
【0041】
その結果、プレスプロセスの間にワークピースに静水圧が作用する。言い換えると、ワークピースは、すべての領域において確実に同じ圧力を受ける。それによって、互いに上下に配置されたプリプレグシートまたはプレートに厚さ許容度を加えることにより、区域によって形成される変動も補償されることができる。
【0042】
プレスを閉じる前にメンブレンに既にプレテンションが印加されている場合は、それがワークピースへの作用の始めに滑らかな面を有し、空洞の中の作業媒体だけによって応力を受けず、従って「滑らかに引っ張られる」ことが確実にされる。これは、メンブレンが温度および圧力印加の開始時にワークピースに均一に施用されるという利点を有する。
【0043】
前述の利点の少なくとも一部に対応して、場合によって、メンブレンが、その膨張プロファイルも膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピースの膨張プロファイルから最大3.5%逸脱するような方法で設計されれば好ましい。
【0044】
しかし、これは、メンブレンの設計の可能性をひどく制限するので、他の場合には、今度はメンブレンが、その膨張プロファイルが膨張プロファイルの少なくとも5.0%の間にワークピースの膨張プロファイルから5.0%を超えて逸脱するような方法で設計されると好ましいことがある。
【0045】
メンブレンを設計するとき多くの側面が考慮されなければならない。一方で、メンブレンは温度を速く伝達することができるようにできるだけ平らであるように設計されるべきである。この目的のために、それは、少なくとも一時的に空洞の中に保管される媒体、特に油によって温度制御されるように設計されることができる。しかし、さらに、メンブレンは、0.9mmと4.2mmとの間、特に1.5mmと3.0mmとの間の厚さを有する薄板鋼からの製造が好ましいように高い引張荷重に耐えることができなければならない。
【0046】
さらに、メンブレンの表面は、ワークピースの表面に転写される。この目的のために、メンブレンが特に滑らかであるかまたは区域毎に繰り返す特定のパターンによる構造を有するか、あるいは、例えばレリーフの形の特定の個々のイメージを発生するように設計されると望ましいことがある。
【0047】
さらに、ケースバイケースでメンブレンが磁気的に設計されなければならないことが望ましいことがある。
【0048】
十分な設計可能性を有するために、メンブレンがその膨張挙動に関して特に制限される必要がなければ望ましい。
【0049】
その代わり、プレスシステムがプレス面を有することと、メンブレンがそれに結合されたプレスツールに対して、好ましくは少なくとも1つの、好ましくはプレス面に実質的に平行に延びる方向成分に関して移動可能であるように配置されることと、が有利に規定されることができる。
【0050】
この目的のために、メンブレンは、好ましくは空洞の中の作業媒体を利用して好ましくはメンブレンに圧力および/または温度を印加することによって、そのことによってそれがプレスツールを封止しているシールを通ることができることと、好ましくは、メンブレンは、その、特に温度誘起され、膨脹力と関連してプレスプロセス内で起こる膨張に起因して、少なくとも部分的にシールを通ることとが有利に規定されることができる。
【0051】
少なくとも第1のプレスツールおよび/または少なくとも第2のプレスツールは、36.0%と48%との間、好ましくは37.5%と47%との間、非常に好ましくは39.25%と46%との間のニッケル含有量を有する鋳鉄材料を含み、特に体積分率(%)で少なくとも90%、特に少なくとも98%、好ましくは全体がそれらから形成されると好ましい。
【0052】
これは、鋳鉄材料が真正の結晶格子から冷却され、-60℃~440℃の温度範囲において、特に0℃~420℃の温度範囲において、極めて小さな体積および長さの変化(正の方向において、体積または長手方向膨脹)を有するという利点を有する。そのような鋳鉄材料の体積変化挙動は、少なくとも定格温度範囲内にあり、大体においてCFRP材料のものと調和し、かつこれらの限界内で選ばれるニッケル含有量の正確な定量に応じて個々のCFRP材料組成に正確に調整されることができることも有利である。さらに、鋳鉄材料の熱伝導率は、黒鉛の形の沈殿炭素に起因して鋳鋼のものより顕著に良好であり、そのため熱プロセスにおいてより好ましい構成部品の挙動が実現される。
【0053】
そのような鋳鉄材料の体積変化挙動がGRP材料のものに、特にCFRP材料のものに非常に似ていることは、その際にこのうえなく有利である。驚くべきことに、このことは、例えばプロセスによって指定される克服されるべき温度差に関する絶対値だけでなく、同じような目的で製造される他の利用分野の合金にまったく異なる形で適用され、長さおよび/または体積変化の経過全体にも適用される。これは、成形用ワークピース構造内の微視的または巨視的変位を最小にするかまたは防止する目標を実現する唯一の方法である。
【0054】
さらに、鋳鉄材料としての合金は、鋳鋼材料合金に対して顕著な利点を有する。固化プロセス時の融解物からの溶解炭素の沈殿に起因して最終的に鋳鉄との複合材料が形成される。材料中の体積変化と関連付けられるこの沈殿プロセスは、鋳鋼と比較して鋳鉄の収縮挙動に好適な効果を及ぼす。このことは、次に、より低い収縮挙動をもたらし、最終的にはより低い収縮空洞形成をもたらし、特に、温度影響を受ける長さまたは体積の変化の挙動の進行に関して明確な挙動の存在をももたらす。さらに、それから製造される部品は、プロセス技術の点でより容易に確実な品質で製造されることができ、そのことが最終的には経済的な利点も有する。同時に、本来の固化プロセス後に規則的に熱処理に付され、そのことが特に大型部品、例えば大きなワークピースのためのプレスツールの場合に著しい経済的な利点をいささかも提供しない鋳鋼とは対照的に、多くの場合、さらなる熱処理は必要ない。
【0055】
鋳鉄材料が鋳鋼材料と比較してプレスツールの振動挙動の減衰度の顕著な増加を可能にすることも重要である。プレスシステムが開き、再び閉じるサイクル時間だけでなく閉時間(およびもちろん開時間)もプレスシステムを経済的に成功裏に使用するための決め手となり得るので、このことは特に重要である。
【0056】
このことを考慮すると、従って、鋳鉄材料が1.0%~5.5%、好ましくは1.5%~4.0%炭素を含むことも特に好ましい。
【0057】
鋳鉄材料は、特に好ましくは、以下のような特徴を有する。鋳鉄材料は、元素または化合物として重量百分率で少なくとも以下を含む。約1.0%~4.0%の範囲の炭素、約1.0%~5.0%の範囲のケイ素、約0.1%~1.5%の範囲のマンガン、約36.5%~48.0%の範囲のニッケル、約0.01%~0.25%の範囲のクロム、最大約0.08%のリン、最大約0.5%の銅、最大約0.15%のマグネシウム、の割合を含み、残りは鉄を含む。鋳鉄材料は、約0.020%~0.150%、好ましくは約0.040%~0.100%、特に好ましくは約0.065%~0.090%の範囲の割合のマグネシウムも有することができる。さらに、鋳鉄材料は、約1.0%~4.5%、好ましくは約1.0%~2.5%、特に好ましくは約1.3%~2.0%の範囲のケイ素の割合を含むことができる。
【0058】
好ましくは、プレスシステムは、ワークピースを製造するためにプレスサイクルを通過し、プレスサイクルは、100K~500K、好ましくは170K~450K、非常に好ましくは190K~250Kの温度差を通過し、作業空間の中で作用する。
【0059】
実際のプレスプロセスに加えてプレスの開閉も含むプレスサイクルは、従って少なくとも100K(1K=1ケルビン)の温度差を少なくとも1回通過するべきである。しかし、温度差は500Kを超えるべきではない。
【0060】
上記範囲だけでなくこの範囲内の好ましい範囲も、一般に、季節および地域環境に応じて環境温度または室温、すなわち通常-20℃~+45℃から始まるべきである。
【0061】
この温度窓は、特にCFRPまたはGRPで製作されるワークピースの製造のための熱的に制御される大部分のプロセスにとって十分かつ適切である。
【0062】
作業空間が第1の空間軸、第2の空間軸および第3の空間軸によって画定され、少なくとも空間軸の1つの方向に、少なくとも1.3m、好ましくは少なくとも3.5m、非常に好ましくは少なくとも5m、より好ましくは少なくとも8m、さらに特に好ましくは少なくとも10.5mの距離に沿って設計されれば有利である。
【0063】
この方法において、大きな設置長さを有するワークピース、例えば自動車、特に乗用車、トラック、航空機、ボートおよび船用の本体部品だけでなく風力タービン用ローターブレードまたは同様に大きなワークピースも製造されることができる。
【0064】
大きなワークピースの場合、プレスシステムの前記利点は、真価を発揮する。
【0065】
第1のプレスツールと第2のプレスツールとを有するプレスに使用されるプレスツールであって、第1のプレスツールと第2のプレスツールとは、作業空間を形成するために互いに対して動かされることができ、プレスツールは、それが、作業空間の中に配置されたワークピースに作用する圧力プロファイルを発生させるための圧力発生装置と、および作業空間の中に配置されたワークピースに作用する温度プロファイルを発生させるための温度発生装置と動作可能に接続されることができるような方法で設計されているプレスツールにおいて、本発明の根底にある少なくとも1つの目的は、プレスツールが請求項1~11の何れか一項に記載のプレスシステムのために構成されることで実現される。
【0066】
関連する利点は、プレスシステムを記載する本特許出願の部分から当業者に明らかであり、本明細書において適切に適用される。もちろん、プレスツールは、従って、プレスにおける使用だけでなくプレスシステムにおける使用も目的とする。
【0067】
圧力発生装置および温度発生装置を有するプレスを準備するステップ、(製造される)ワークピースを準備するステップ、プレスシステムを形成するために作業領域にワークピースを挿入するステップ、プレスを閉じるステップ、ワークピースに圧力および/または温度を印加するステップ、プレスを開くステップ、を含む、ワークピースを製造するための方法において、本発明の根底にある目的の少なくとも1つは、作業空間の中で作用する圧力プロファイルと作業空間の中で作用する温度プロファイルとの関数としての膨張プロファイルを通過するワークピースであって、第1のプレスツールおよび第2のプレスツールは、作業空間の中で作用する圧力プロファイルと作業空間の中で作用する温度プロファイルの関数としてのそれぞれの膨張プロファイルを通過し、第1のプレスツールおよび/または第2のプレスツールは、それらの膨張プロファイルが膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピースの膨張プロファイルから最大3.5%逸脱するような方法で設計される、ワークピースによって実現される。
【0068】
この場合、関連する請求項の何れか一項に記載のプレスシステムが本方法を実施するために用いられると好ましい。
【0069】
さらに、その際、成形用ワークピースは、固定された集合状態の複数のプリプレグの形でプレスの中に、特に作業空間の中に、挿入されると好ましい。
【0070】
本発明による方法に関連する利点および/またはその好ましい構成は、プレスシステムを記載する本特許出願の部分から当業者に自明であり、本明細書において適切に適用される。
【0071】
本発明は、単に好ましい実施形態例を示す図面に基づいて、下記でさらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1A】ワークピースが挿入されていない開位置での断面における本発明による方法を実施するためのプレスの第1の構成を示す。
【
図1B】ワークピースが挿入されている開位置における
図1Aからのプレスを示す。
【0073】
図1Aは、プレスシステム100を形成し、ワークピース19を製造するための本発明による方法を実施するためのプレス1の第1の構成をワークピース19が挿入されていない開位置での断面において示す。プレス1は、第1の上部プレスツール2および第2の下部プレスツール3を含む。2つのプレスツール2、3は、互いに対して、例えば垂直方向(Z方向)(
図1において矢印によって示される)に動かされることができる。さらに、プレスは、上部プレスツール2に結合されているメンブレン4を含む。
図1に示した構成への代りとして、メンブレン4は、下部プレスツール3に結合されることもできる。さらなる代りの構成において、メンブレンに加えて第2のメンブレンも、第1のツールと第2のツールとの両方がメンブレンに結合されるように設けられることができる。さらに、単一のメンブレンが第1のプレスツール2と第2のプレスツール3との両方に結合され、これが、好ましくは、例えば180°曲げられて配置されることが想定可能と考えられる。
【0074】
メンブレン4とそれに結合された上部プレスツール2との間に作業媒体、例えば油のための空洞5が形成される。メンブレン4は、金属から製造され、好ましくは0.05mmと3.5mmとの間であるが好ましくは0.2mmと2.2mmとの間の範囲の厚さを有する。空洞5は、チャンネル6を通して作業媒体で満たされることができる。上部プレスツール2と下部プレスツール3との両方の中に加熱媒体および/または冷却媒体が導かれることができる孔7が設けられる。
【0075】
図1Aに示したプレス1の構成において、ワークピース19(
図1Aに図示せず)が挿入されることができる作業空間8が下部プレスツール3の中に設けられる。これから離れて、第2のプレスツール3によって作業空間の一部を形成することもできる。しかし、
図1Bおよび
図1Cにおいて示されるワークピース19は、好ましくは、圧力および温度の影響を受ける作業空間8内のプレスプロセス時に互いに結合されている第1の構成部品24と第2の構成部品25とから形成されるべきなので、作業空間8を形成するために設けられる自由空間が下部プレスツール3の中に設けられると有利である。
【0076】
2つのプレスツール2、3は、例えば突起9Aと凹み9Bとによって形成されることができるガイド9を有し、突起9Aは、下部プレスツール3上に設けられることができ、凹み9Bは、上部プレスツール2上に設けられることができる。
【0077】
圧力発生装置22および温度発生装置の作用は、矢印によって示される。もちろん、プレスが閉じられているとき圧力発生装置22が作業空間8の境界を定めるすべての構成部品に自動的に影響を及ぼす間に温度発生装置23もプレスツール2と3との両方に作用することが好ましい。特に、圧力発生装置は、メンブレン4によって境界が定められる空洞5にも少なくともその出力の一部で作用することもできる。
【0078】
メンブレン4は、次の方法で上部プレスツール2に結合される。上部プレスツール2は、上部プレスツール2にネジ止めされる(
図1Aにネジ止め接続は図示せず)外周縁要素10を有する。上部プレスツール2とその縁要素10との間に、メンブレン4が導かれるギャップ11が形成される。ギャップ11は、中にメンブレン4がクランプされるクランプ装置13が中に設けられる中空の空間12に開口する。クランプ装置13は、開口を通って上部プレスツール2および縁要素10から外に導かれ、そこで自身を外表面上に支持しているバネ15によって外へ押圧され、それによってメンブレン4にプレテンションが提供される、テンションアンカー14に結合される。空洞5を封止するために、メンブレン4の動きを可能にするシール16がギャップ11の中に設けられる。封止力F
Dを変えるための装置17がシール16に隣接して設けられる。バネ力F
Fを変えるための装置18がバネ15に隣接して設けられる。
【0079】
図1Bは、ワークピース19が挿入されている開位置において
図1Aからのプレス1を示す。既に記載されたプレス1の領域は、対応する参照番号とともに
図1Bに示される。
図1Aに示した位置との差異は、ワークピース19(形成される)が下部プレスツール3の作業空間8中に挿入されたことである。
【0080】
この場合、好ましくは依然形成されるワークピース19は、複数の薄い層の中のいわゆるプリプレグまたはオルガノシートの形で互いに上下に積層されている第1の構成部品24および第2の構成部品25からなる。個々のプリプレグは、その際、0.12mm~0.72mm、好ましくは0.16mm~0.32mmの厚さを有し、樹脂の母材に挿入された繊維、特に炭素繊維の紐からなる。母材(樹脂)と繊維、または繊維紐との間の化学結合は、その際、圧力および温度の影響を受けるプレスシステム100内で、すなわちプレスサイクル時に初めて完了する。
【0081】
図1Cは、閉位置において
図1Aからのプレス1を示す。既に記載されたプレス1の領域も対応する参照番号とともに
図1Cに提供される。プレス1は、2つのプレスツール2、3を互いの方へ動かすことによって閉じられた。
図1Cに示した位置において、ワークピース19に圧力および温度が印加される。チャンネル6を通して空洞5の中に作業媒体、例えば油を導くことによって加圧が実施され、それによってメンブレン4がワークピース19の方向に押圧される。あるいは、空洞5は、既に作業媒体で満たされていてもよい。この場合、作業媒体は、空洞の中の圧力制限弁に対抗して貯えられ、既にプレテンションが印加されてよい。プレスが閉じられると空洞内の作業媒体の圧力は増大することができ、従って、応答して(成形用)ワークピースにも及ぼされることができる。作業媒体の圧力は、次に、プレス1、1’を閉じると例えば1.2バールと2.5バールとの間のプレテンション範囲から16バールと50バールとの間、極端な場合には最大70バールにも達する作業範囲に増大し、プレス期間このレベルに維持されることができる。
【0082】
温度の印加は、種々の方法で行われてよい。1つの可能な方法は、チャンネル6を通して空洞5の中に導かれる作業媒体を、熱が空洞5の中に配置された作業媒体からメンブレン4を通ってワークピース19に伝達されるように加熱することである。逆に、作業媒体は、ワークピース19を冷却するために冷却されることができよう。これに代えてまたは加えて、ボア7に加熱および/または冷却媒体を流し、それによって、まず2つのプレスツール2、3、続いてワークピース19も加熱または冷却されることができると規定することができる。圧力印加の結果、ワークピース19は、
図1Cに示した位置において圧縮される。
【0083】
第1のプレスツール2および第2のプレスツール3を有するプレス1であって、第1のプレスツール2と第2のプレスツール3とは作業空間8を形成するために互いに対して動かされることができるプレス1、ワークピース19、作業空間8の中に配置されたワークピース19に作用する圧力プロファイルを発生する圧力発生装置22、作業空間8の中に配置されたワークピース19に作用する温度プロファイルを発生させるための温度発生装置23を含み、ワークピース19は、作業空間8の中で作用する圧力プロファイルと作業空間8の中で作用する温度プロファイルとの関数として
図2に表示される膨張プロファイルDVWを通過し、第1のプレスツール2および第2のプレスツール3は、作業空間の中で作用する圧力プロファイルと作業空間8の中で作用する温度プロファイルとの関数として同じく
図2に表示されるそれぞれの膨張プロファイルDVP1、DVP2を通過する、図示されたプレスシステム100は、本明細書において第1のプレスツール2および/または第2のプレスツール3は、それらの膨張プロファイルDVP1、DVP2が、
図2において分かるように、膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピース19の膨張プロファイルDVWから最大3.5%逸脱するような方法で設計されることを特徴とする。
【0084】
プレスシステム100は、従って、ワークピース19を製造するためにプレスサイクルを通過する。プレスサイクルは、この場合、作業空間8の中で作用する100K~500K、好ましくは170K~450K、特に好ましくは190K~250Kの温度差を通過することができ、プレスサイクル全体の間に、膨脹プロファイルDVP1、DVP2は、膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピース19の膨張プロファイルDVWから最大3.5%逸脱することが適用される。
【0085】
この目的のために、第1のプレスツール2および/または第2のプレスツール3は、好ましくは、36.0%と48%との間のニッケル含有量を含む鋳鉄材料から形成され、特に体積分率で少なくとも90%、好ましくは全体がそれらから形成される。
【0086】
鋳鉄材料は、1.0%~5.5%、好ましくは1.5%~4.0%の炭素をさらに含み、好ましくは以下のような特徴を有する。鋳鉄材料は、元素または化合物として重量百分率で少なくとも、約1.0%~4.0%の範囲の炭素、約1.0%~5.0%の範囲のケイ素、約0.1%~1.5%の範囲のマンガン、約36.5%~48.0%の範囲のニッケル、約0.01%~0.25%の範囲のクロム、最大約0.08%のリン、最大約0.5%の銅、最大約0.15%のマグネシウム、の割合を含み、残りは鉄を含む。鋳鉄材料は、約0.020%~0.150%、好ましくは約0.040%~0.100%、特に好ましくは約0.065%~0.090%の範囲の割合のマグネシウムも有してよい。さらに、鋳鉄材料は、約1.0%~4.5%、好ましくは約1.0%~2.5%、特に好ましくは約1.3%~2.0%の範囲の割合のケイ素を含んでよい。
【0087】
図1A~
図1Cおよび
図2に図示したプレスシステム100の作業空間8は、第1の空間軸X、第2の空間軸Yおよび第3の空間軸Zによって画定され、少なくとも空間軸X、Y、Zの1つの方向に、少なくとも1.3m、好ましくは少なくとも3.5m、非常に好ましくは少なくとも5m、より好ましくは少なくとも8m、さらに特に好ましくは少なくとも10.5mの距離Lに沿って設計される。
【0088】
図2は、水平軸に沿ったプレスシステム100のプレスサイクルの時間経過を示す。膨脹値は、膨張プロファイルDVM、DVW、DVP1およびDVP2が曲線となるように時間に対して垂直軸に沿ってプロットされ、それらの値は、それぞれの場合に作業空間の中で作用する圧力プロファイルおよび作業空間の中で作用する温度プロファイルの作用に依存する。この場合、プレスツール2、3は、作業空間の中で作用する圧力および温度プロファイルを経験するが、できるだけ多くのシステム部品に熱的に負荷をかけることがプレスシステム100の役務の1つではないので、少なくとも作業空間の中で作用する温度プロファイルを二次的にしか経験しない。生態学的および経済的観点から、これは誤りであろう。それでも、2つのプレスツール2、3の膨張プロファイルDVP1、DVP2は、それらの膨張プロファイルの少なくとも97.5%にわたりワークピース19の膨張プロファイルから最大3.5%逸脱する。実際、この図において視認性をよくするために無意味に拡大され、プレスサイクル時間の最大1%まで、極端な場合には最大2%まで続き、DVP1またはDVP2からDVWの間の膨張挙動の最大差異が依然として1.5%より低い小さな時間遅れを除けば、曲線は、プロセスサイクル時間全体の間、実際的には恒久的に互いに上下となり、従って、tのさらなる経過においても同じ線上に表示される。
【0089】
対照的に、
図2は、メンブレン4の膨張プロファイルがその膨張プロファイルの少なくとも7.5%の間の同じ時間にワークピースの膨張プロファイルから5%を超えて逸脱することも明らかに示している。
【0090】
メンブレン4の膨張挙動も、はるかに線形である。もちろん、ワークピースおよびプレスツールの膨張プロファイルは、異なる曲線形状となることもある。第1のプレスツール2および/または第2のプレスツール3は、それらの膨張プロファイルDVP1、DVP2が膨張プロファイルの少なくとも97.5%の間にワークピース19の膨張プロファイルDVWから最大3.5%逸脱するような方法で設計されることは決定的なままである。
【0091】
図示した例において示した曲線でのより大きな低下は、選ばれたプレスプロセスの急速な冷却に依存する。しかし、原理的に加熱速度と冷却速度とを同等にすることもできる。ケースバイケースで、加熱プロセスが冷却プロセスより速く実施されることも想定可能である。図示のように、通常、加熱プロセス部分と冷却プロセス部分との間に圧力および温度が1つのレベルに保たれる部分が設けられる。膨張挙動は、その場合、一般に調整されるがわずかに遅れることがあり、従って、わずかに丸くなった形状となることがあり、それもいくぶんか誇張されて示されている。
【0092】
最後に、
図3は、本発明による方法100の配列を概略表示で示す。方法100は、以下のステップを含む。101:プレスを準備するステップ、102:ワークピースを準備するステップ、103:ワークピースを挿入するステップ、104:プレスを閉じるステップ、105:ワークピースに圧力および/または温度を印加するステップ、106:プレスを開けるステップ。
【符号の説明】
【0093】
1、1’ プレス
2 第1の(上部)プレスツール
3 第2の(下部)プレスツール
4 メンブレン
5 空洞
6 チャンネル
7 孔
8 作業空間
9 ガイド
9A 突起
9B 凹み
10 縁要素
11 ギャップ
12 中空空間
13 クランプ装置
14 テンションアンカー
15 バネ
16,16’ シール1
17,17’ 装置(封止力FDを変えるための)
18 装置(バネ力FDを変えるための)
19 ワークピース
22 圧力発生装置
23 温度発生装置
24 第1の構成部品
25 第2の構成部品
26 プレス面
100 プレスシステム
A プレスサイクルの開始
E プレスサイクルの終了
DVM メンブレンの膨張プロファイル
DVP1 第1のプレスツールの膨張プロファイル
DVP2 第1のプレスツールの膨張プロファイル
DVW ワークピースの膨張プロファイル
L 距離
p 圧力
t 時間
T 温度
X 第1の空間方向(長手方向)
Y 第2の空間方向(幅方向)
Z 第3の空間方向(垂直方向)
【国際調査報告】