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特表2024-510742バナジウム系触媒及びモレキュラーシーブ系触媒を含む触媒物品
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  • 特表-バナジウム系触媒及びモレキュラーシーブ系触媒を含む触媒物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】バナジウム系触媒及びモレキュラーシーブ系触媒を含む触媒物品
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20240304BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240304BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240304BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240304BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240304BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240304BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240304BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B01J35/57 L ZAB
B01J29/76 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/08 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301P
F01N3/24 E
F01N3/035 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555566
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 CN2022079948
(87)【国際公開番号】W WO2022188808
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/080047
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チアディ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イーチヤン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,シューシン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンネケス,エドガー フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】ベアード,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】パチェット,ジョセフ エー
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ヤン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァイ,マルティン
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
3G091BA14
3G091GB01W
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3G190CB26
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(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及びバナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、第2の領域の少なくとも一部が、排ガスの流れ方向において、第1の領域の少なくとも一部の下流かつ第3の領域の少なくとも一部の上流に位置し、ただし、第2の領域のいずれの部分も、第1の領域の上流又は第3の領域の下流に位置しない、触媒物品に関する。本発明はまた、触媒物品を使用する選択的触媒還元による窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法及びシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物を含む排ガスを浄化するための触媒物品であって、前記触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
式中
前記第2の領域の少なくとも一部は、前記排ガスの流れ方向において、前記第1の領域の少なくとも一部よりも下流側及び前記第3の領域の少なくとも一部よりも上流側に位置し、
前記第2の領域のいかなる部分も、前記第1の領域の上流又は前記第3の領域の下流に位置しない、触媒物品。
【請求項2】
前記第1の領域及び前記第3の領域の各々における前記バナジウム系SCR触媒が、担体の粒子上に担持された、酸化バナジウム及び任意選択的に助触媒としての他の元素の少なくとも1つの酸化物を含有する、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
助触媒としての他の元素が、B、Al、Bi、Si、Sn、Pb、Sb、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ce、Y、Nb、Mo及びWからなる群から選択される、請求項2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記担体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn及びBiからなる群から選択される元素の1つ又は複数の酸化物から選択される、請求項2又は3に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記第1の領域及び前記第3の領域中の前記バナジウム系SCR触媒が、Vとして計算されるバナジウムを、前記バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて0.1~20重量%、1~15重量%、2~10重量%、又は2~7重量%の量で含有し、前記2つの領域中の前記バナジウム系SCR触媒のバナジウム含有量が同じであるか又は異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中のモレキュラーシーブが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、-SSO、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG又はZON及びそれらの任意の組合せの骨格型を有するゼオライトから選択され、これらの中でも、AEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR、MEL又はそれらの任意の組合せが好ましい、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記第2の領域におけるモレキュラーシーブを促進するための前記金属が、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn及びBiなどの卑金属、Ca及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにそれらの任意の組合せから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記第2の領域におけるモレキュラーシーブを促進するための前記金属が、Fe、Cu又はそれらの組合せである、請求項7に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記第2の領域における前記モレキュラーシーブを促進するための前記金属が、前記金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中に、酸化物基準で、前記金属で促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、0.1~20重量%、0.5~15重量%又は1~10重量%の範囲の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域が、互いに独立して、押出物の形態又は基材上のウォッシュコートの形態で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記押出物及び/又は前記基材が、ハニカム構造、例えばモノリスフロースルー構造又はウォールフロー構造を有する、請求項10に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記第1、第2及び第3の領域が、2つ以上の不活性基材上に別々に担持されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記第2の領域が、前記触媒物品の総体積に対して、0.5~80体積%、好ましくは1~75体積%、より好ましくは5~65体積%、例えば10~60体積%又は15~50体積%の割合で前記触媒物品に含まれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記第1及び第3の領域が、互いに独立して、前記触媒物品の総体積に対して、10~60体積%、好ましくは15~55体積%、より好ましくは25~50体積%の割合で前記触媒物品に含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記触媒物品が、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
前記第2の領域は、前記第1の領域の少なくとも一部の下流側及び前記第3の領域の少なくとも一部の上流側に位置する、
請求項1~14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記触媒物品が、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
前記第2の領域は、前記第1の領域の完全に下流及び前記第3の領域の完全に上流に位置する、
請求項15に記載の触媒物品。
【請求項17】
窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法であって、前記方法は、還元剤の存在下で排ガスを請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法。
【請求項18】
前記排ガスが、内燃機関、例えばガソリン又はディーゼルエンジンに由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
特に内燃機関に由来する排ガスを処理するためのシステムであって、前記システムは、還元剤源、請求項1~16のいずれか一項に記載の触媒物品、任意選択的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒、センサ及びミキサの1つ又は複数を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウム系触媒及び金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含む触媒物品、並びに選択的接触還元による窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOx)は、一般的な大気汚染物質であり、一般に自動車などの移動源及び発電所などの固定源からの排ガス中に含まれる。NOx排出の制御は、生態系、人間、動物及び植物に対するNOxの環境的な悪影響のために、例えば自動車製造分野において、常に最も重要な話題の1つである。
【0003】
排ガス中のNOxを低減させるために、様々な処理方法、例えば窒素酸化物の触媒還元が使用されてきた。1つの典型的な触媒還元方法は、大気中の酸素の存在下で還元剤としてアンモニア(NH)又はアンモニア前駆体を用いる選択的触媒還元であり、これはSCRプロセスとも呼ばれる。SCRプロセスは、少量の還元剤で高いNOx低減度を得ることができるので、優れていると考えられる。典型的には、窒素酸化物及び還元剤NHは、以下の式に従って反応する。
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準SCR反応)
2NO+4NH+O→3N+6HO(低速SCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(高速SCR反応)。
【0004】
選択的触媒還元に伴う副反応は、低原子価窒素酸化物、特に還元剤NH及び酸素由来の亜酸化窒素(NO)の形成である。
【0005】
例えば、NOx転化率及びNO形成に関するNOx処理効率は、SCRプロセスで使用される触媒に大きく依存する。当技術分野で周知のように、バナジウム系酸化物材料及びモレキュラーシーブ系材料は、NOxの選択的接触還元に有用な2つの主要な種類の触媒である。最近、SCRプロセスのために2種類の触媒を組み合わせて使用することが、より多くの関心を集めている。
【0006】
CN107100700Bには、連続的に配置された触媒ユニット、第1の触媒ユニット、第2の触媒ユニット、及び任意選択的に第3の触媒ユニットを含む選択的触媒還元装置であって、第1の触媒ユニットは、Fe-ゼオライト又はCu-ゼオライトからなるゼオライト系触媒材料を備え、第2の触媒ユニットは、バナジウム、チタン及びタングステンの酸化物からなるバナジウム系触媒材料を備え、第3の触媒ユニットは、Fe-ゼオライト又はCu-ゼオライトからなるゼオライト系触媒材料を備える、選択的触媒還元装置が記載されている。SCR装置内に配置された複数の触媒ユニットによって、排ガス中のNOxを還元すると同時に、NOxの変換プロセス中に発生するNOの量を最小限に抑えることが可能であると言われている。
【0007】
国際公開第2019/001942(A1)号には、銅含有ゼオライト材料を含む第1のSCR触媒、第1のSCR触媒の下流に配置されたアンモニアスリップ触媒、微粒子フィルタ、第1のSCR触媒の上流に配置されたバナジウム含有SCR材料を有する第2のSCR触媒、アンモニアスリップ触媒の下流及び微粒子フィルタの上流に配置された酸化触媒、及び少なくとも1つの貴金属を有するアンモニアスリップ触媒の表面上に塗布された銅含有ゼオライト材料の層を含む排ガス後処理装置が記載されている。
【0008】
国際公開第2018/1150454(A1)号には、選択的触媒還元(SCR)によって窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒装置であって、触媒装置は、少なくとも2つの触媒領域を含み、第1の領域は酸化バナジウム及び酸化セリウムを含有し、第2の領域は鉄含有モレキュラーシーブを含有する、触媒装置が記載されている。鉄含有モレキュラーシーブを有する触媒領域も有する触媒装置において、酸化バナジウムを酸化セリウムと組み合わせることによって、SCRの効率を大幅に改善することができ、NOの形成が大幅に抑制されると言われている。
【0009】
いくつかの特定の操作条件下でのSCR触媒のNOx処理効率は、依然として改善が必要とされる。本発明者らは、いくつかのモデルの車両の動作中に、不十分なNH投入量及び/又はSCR触媒の入口で50%を超える高いNO/NOx比と共に、頻繁な温度上昇及び温度下降期間が生じてもよいことを見出した。条件が変動すると、NOx転化に悪影響を及ぼしてもよく、これは自動車排ガスの処理において無視できない問題である。
【0010】
条件の変動下で改善されたNOx低減効率を有するSCR触媒を開発することができれば望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、例えば、温度勾配、排ガス空間速度、NH投与量、及びSCR触媒の入口でのNO/NOx比を含む、いくつかのモデルの車両の動作中の条件の変動下でも良好に機能する触媒物品を提供することである。
【0012】
驚くべきことに、この目的は、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒の領域及びバナジウム系SCR触媒の2つの領域を含む触媒物品によって達成されることが見出された。
【0013】
したがって、1つの態様において、本発明は、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
式中
第2の領域の少なくとも一部は、排ガスの流れ方向において、第1の領域の少なくとも一部よりも下流側及び第3の領域の少なくとも一部よりも上流側に位置し
第2の領域のいかなる部分も、第1の領域の上流又は第3の領域の下流に位置しない、触媒物品に関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、選択的触媒還元による窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法であって、方法は、還元剤の存在下で排ガスを本明細書に記載の触媒物品と接触させることを含む、方法に関する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、特に内燃機関からの排ガスの処理システムであって、処理システムは、還元剤源、本明細書に記載の触媒物品、任意選択的にディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒、センサ及びミキサのうちの1つ又は複数を備える、処理システムに関する。
【0016】
本発明者らは、本発明による触媒物品が、処理条件の変動に遭遇する自動車エンジンからの排ガス中のNOxの低減に特に有用であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例9.1によるSCR性能試験の周期的な条件変化を概略的に示す。
図2】実施例9.2によるSCR性能試験の周期的な条件変化を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を以下に詳細に説明する。本発明は、多くの異なる方法で実施してもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0019】
本明細書において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明確に他に指示されない限り、複数の指示対象を含む。用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、「含有する(contain)」、「含有する(containing)」などと互換的に使用され、非限定的なオープンな様式で解釈されるべきである。すなわち、例えば、更なる構成要素又は要素が存在してもよい。「からなる(consists of)」又は「から本質的になる(consists essentially of)」という表現又は同族語を、「含む(comprises)」又は同族語に包含してもよい。
【0020】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒の機能を有する特定の形状のアイテムを意味することを意図しているに過ぎず、必ずしも単体である必要はない。言い換えれば、触媒物品は、単体であってもよく、又は2個以上の分離可能な本体から成ってもよい。
【0021】
本明細書で使用される「領域」という用語は、ウォッシュコート又は押出物のいずれかに存在する特定の触媒の各々が、排ガスの流れ方向に特定の長さに延在することを意味することを意図しているに過ぎない。「第1の領域」、「第2の領域」及び「第3の領域」という用語自体は、領域が互いに直接隣接しているか、又は任意の他の特定の空間配置にあることを示すことを意図していない。
【0022】
第1の態様によれば、本発明は、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
式中
第2の領域の少なくとも一部は、排ガスの流れ方向において、第1の領域の少なくとも一部よりも下流側及び第3の領域の少なくとも一部よりも上流側に位置し
第2の領域のいかなる部分も、第1の領域の上流又は第3の領域の下流に位置しない、触媒物品に関する。
【0023】
特に、本発明は、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
第2の領域は、第1領域の少なくとも一部の下流側及び第3の領域の少なくとも一部の上流側に位置する、触媒物品を提供する。
【0024】
より詳細には、本発明は、窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
第2の領域は、第1の領域の完全に下流及び第3の領域の完全に上流に位置する、触媒物品を提供する。
【0025】
第1の領域は、バナジウム系SCR触媒を含有する。バナジウム系SCR触媒とは、NOxの選択的触媒還元のための主要な活性種として、典型的には酸化物の形態のバナジウムを含有する任意の材料を指す。NOxの選択的触媒還元に有用なバナジウムを含有する材料は、当技術分野において周知である。第1の領域及び第3の領域に有用なバナジウム系SCR触媒に特に制限はない。
【0026】
バナジウム系SCR触媒は概して、主要な活性種としての酸化バナジウム(例えば、V)及び任意選択的に助触媒としての他の金属(又は元素)の少なくとも1つの酸化物を含有するか、又はからなり、これらは担体の粒子上に担持される。
【0027】
助触媒として有用な金属(又は元素)としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)を挙げてもよいが、これらに限定されない。特に、バナジウム系SCR触媒は、酸化バナジウム及び、任意選択的にケイ素(Si)、アンチモン(Sb)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)から選択される元素の少なくとも1つの酸化物を含有する。
【0028】
本発明によるいくつかの実施形態において、バナジウム系SCR触媒は、担体の粒子上に酸化バナジウム及び、ケイ素(Si)、アンチモン(Sb)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)から選択される元素の少なくとも1つの酸化物を含有するか、又はからなる。例えば、バナジウム系SCR触媒は、担体の粒子上のV、Sb及びSiの酸化物を含有するか、又はからなる。
【0029】
酸化バナジウム及び、存在する場合、他の金属(若しくは元素)の少なくとも1つの酸化物は、それぞれの酸化物、又はバナジウム及び他の金属(若しくは元素)との複合酸化物、又はそれらの組合せの形態で存在してもよいことが理解される。
【0030】
担体として有用な材料としては、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn及びBiからなる群から選択される金属の1つ又は複数の酸化物が挙げられてもよいが、これらに限定されない。好ましくは、担体は、チタニア(好ましくはアナターゼ型を含有する種)、シリカ、アルミナ、ジルコニア、及びそれらの任意のドーパント安定化型から選択される1つ又は複数であってもよい。
【0031】
担体は、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、例えば、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、及び少なくとも75重量%の量で、第1及び第3の領域の各々においてバナジウム系SCR触媒中に含有されてもよい。担体の量は、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて、最大95重量%、最大90重量%、又は最大80重量%であってもよい。
【0032】
第1及び第3の領域の各々におけるバナジウム系SCR触媒は、Vとして計算されるバナジウムを、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて、0.1~20重量%、1~15重量%、2~10重量%、又は2~7重量%の量で含有してもよい。2つの領域におけるバナジウム系SCR触媒のバナジウム含有量は、同じであっても異なっていてもよいことが理解される。
【0033】
助触媒としての他の金属(又は元素)の少なくとも1つの酸化物の各々は、存在する場合、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて、0.1~30重量%、1~15重量%、又は2~8重量%の量で、第1及び第3の領域の各々におけるバナジウム系SCR触媒中に含有されてもよい。
【0034】
いくつかの例示的な実施形態において、第1及び第3の領域の各々におけるバナジウム系SCR触媒は、
(a)Vとして計算して、1~15重量%の酸化バナジウム。
(b)Sbとして計算して、1~25重量%の酸化アンチモン、
(c)1~10重量%のSiO
(d)任意選択的に、WOとして計算して、1~10重量%の酸化タングステン、
(e)65~95重量%のTiO担体を含有する又はからなり、
各々は、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づく。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態において、バナジウム系SCR触媒は、
(a)Vとして計算して、2~10重量%の酸化バナジウム。
(b)Sbとして計算して、1~15重量%の酸化アンチモン、
(c)2~10重量%のSiO
(d)任意選択的に、WOとして計算して、2~8重量%の酸化タングステン、
(e)70~90重量%のTiO担体を含有する、又はからなり、
各々は、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づく。
【0036】
いくつかの更なる例示的な実施形態において、バナジウム系SCR触媒は、
(a)Vとして計算して、2~7重量%の酸化バナジウム、
(b)Sbとして計算して、2~8重量%の酸化アンチモン、
(c)2~8重量%のSiO
(e)80~90重量%のTiO担体を含有する、又はからなり、
各々は、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づく。
【0037】
本明細書に記載の各場合におけるバナジウム系SCR触媒の総重量は、100重量%である。
【0038】
第1の領域及び第3の領域におけるバナジウム系SCR触媒は、組成に関して同じであっても異なっていてもよい。第1及び第3の領域中のバナジウム系SCR触媒は、活性組成物が、担体の種及び/若しくは粒径特性が、又は任意の他の態様が互いに異なってもよいことが理解される。
【0039】
本発明によるいくつかの実施形態において、第1の領域及び第3の領域におけるバナジウム系SCR触媒は同じである。
【0040】
第1及び第3の領域はまた、各々独立して、バナジウム系SCR触媒に加えて、非触媒活性成分、例えば、潤滑剤及び結合剤などの触媒物品の調製に有用な加工助剤であってもよい、他の成分を含有してもよい。他の成分はまた、触媒的に活性であってもよく、例えば、本明細書に記載のバナジウム系SCR触媒及び金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒以外の活性種であってもよい。
【0041】
第2の領域は、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する。本明細書で使用する場合、「金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒」とは、金属で促進されたモレキュラーシーブが、NOxの低減に必要なSCR活性を有することを意味することを意図する。
【0042】
モレキュラーシーブとは、一般に四面体型部位を含有し、実質的に均一な細孔分布を有する酸素イオンの広範な三次元ネットワークに基づく骨格材料を指す。本発明の目的に適したモレキュラーシーブは、微細多孔性又はメソ多孔性であってもよい。典型的には、2nm未満の平均孔径を有するモレキュラーシーブを「微細多孔性」と分類し、2~50nmの平均孔径を有するモレキュラーシーブを「メソ多孔性」と分類する。孔径は環の大きさによって定義される。
【0043】
特に、モレキュラーシーブはゼオライトである。「ゼオライト」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、典型的には、頂点共有TO四面体から構成される解放系三次元骨格構造がある空間的ネットワーク構造を有する結晶性材料(典型的にはアルミノケイ酸塩)を指し、式中、Tは、4価元素(典型的にはSi)又は3価元素(典型的にはAl)である。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は水分子で満たされている。非骨格カチオンは概して交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0044】
本発明の目的のために、好適なモレキュラーシーブとしては、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、-SSO、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG及びZON並びにそれらの任意の組合せからなる群から選択される骨格型を有するゼオライトが挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0045】
特に、第2の領域に有用なモレキュラーシーブとしては、AEI、AEL、AFI、AFT、AFO、AFX、AFR、ATO、BEA、CHA、DDR、EAB、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、GME、HEU、JSR、KFI、LEV、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEL、MFI、MOR、MOZ、MSO、MTW、MWW、OFF、RTH、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TON、TSC及びWENの群から選択される骨格型を有するゼオライトが挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態において、第2の領域に有用なモレキュラーシーブとしては、AEI、BEA(例えば、ベータ)、CHA(例えば、チャバザイト、SSZ-13)、AFT、AFX、FAU(例えば、ゼオライトY)、MOR、MFI(例えば、ZSM-5)、MOR(例えば、モルデナイト)及びMELの群から選択される骨格型を有するゼオライトが挙げられ、これらのうち、AEI、BEA及びCHAが特に好ましい。
【0047】
いくつかの他の実施形態において、第2の領域に有用なモレキュラーシーブは、小細孔ゼオライトから選択されてもよい。「小細孔ゼオライト」という用語は、約5オングストローム(Å)より小さい細孔開口部を有するゼオライトを指す。小細孔ゼオライトは、小細孔8員環ゼオライトであってもよい。「8員環ゼオライト」という用語は、8員環細孔開口部を有するゼオライトを指す。いくつかの8員環ゼオライトは、二重6員環(d6r)第二次構造単位を有してもよく、その中に4員環による二重6員環構造単位の結合から生じるケージ様構造が形成される。小細孔8員環ゼオライトの例としては、骨格型AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC及びWENが挙げられる。
【0048】
いくつかの特定の実施形態において、第2の領域に有用な小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、SAS、SAT及びSAVからなる群から選択される骨格型を有するゼオライトを含む。AEI、AFT、AFX及びCHAからなる群から選択される骨格型を有する小細孔ゼオライトを特に挙げてもよい。
【0049】
ゼオライトを、本明細書において国際ゼオライト協会(IZA)によって一般的に受け入れられている骨格型コードを参照して言及する場合、標準材料だけでなく、SCR触媒活性を有する任意のアイソタイプ骨格材料も含むことが意図されることが理解される。各骨格型コードの標準材料及びアイソタイプ骨格材料のリストは、IZAのデータベースから入手可能である(http://www.iza-structure.org/databases/)。
【0050】
金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中のモレキュラーシーブとして有用なゼオライト、例えば上述の骨格型のいずれかを有するゼオライトは、好適には5:1~150:1、好ましくは5:1~50:1、特に10:1~30:1の範囲のSiO/Alモル比(SAR)を有する。
【0051】
モレキュラーシーブは、高い表面積、例えば、DIN66131に従って測定して、少なくとも300m/g、少なくとも400m/g、少なくとも550m/g又は少なくとも650m/g、例えば400~750m/g又は500~750m/gのBET表面積を示してもよい。あるいは又は更に、モレキュラーシーブは、SEMによって決定して、10nm~10μm、50nm~5μm、0.1~2μm、又は0.1~0.5μmの平均結晶サイズを有してもよい。
【0052】
第2の領域におけるモレキュラーシーブは、金属で促進されており、これは、モレキュラーシーブの触媒活性を向上させることができる金属がモレキュラーシーブの中及び/又は上に組み込まれていることを意味する。助触媒金属とも呼ばれる金属は、非骨格元素としてモレキュラーシーブ中に存在する。言い換えれば、助触媒金属は、モレキュラーシーブ骨格の構成に関与しない。助触媒金属は、モレキュラーシーブ内及び/又はモレキュラーシーブ表面の少なくとも一部上に、好ましくはイオン種の形態で存在してもよい。
【0053】
助触媒金属は、NOxの選択的触媒還元(SCR)の用途においてゼオライトの触媒性能を改善するのに有用であることが知られている任意の金属であってもよい。一般に、助触媒金属は、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn及びBiなどの卑金属、Ca及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにそれらの任意の組合せから選択してもよい。助触媒金属は好ましくは、Fe若しくはCu又はそれらの組合せである。
【0054】
いくつかの例示的な実施形態において、第2のゾーンに有用な金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒は、AEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR又はMELの骨格型を有するCu及び/又はFeで促進されたゼオライトである。いくつかの更なる例示的な実施形態において、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒は、AEI、BEA又はCHAの骨格を有するCu及び/又はFeで促進されたゼオライトである。
【0055】
助触媒金属は、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中に、金属で促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、酸化物基準で0.1~20重量%、0.5~15重量%、1~10重量%又は4~10重量%の範囲の量で存在してもよい。Cu又はFeが助触媒金属として使用されるいくつかの例示的な実施形態において、助触媒金属は好ましくは、金属で促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、酸化物基準で0.5~15重量%、又は1~15重量%、又は1~10重量%の量で存在する。
【0056】
第2の領域は、1つ又は複数の金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有してもよい。言い換えれば、1種の金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒のみ、又は2種以上の金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒の組合せを第2の領域に使用してもよい。
【0057】
第2の領域は、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒に加えて、他の成分、特に非触媒活性成分、例えば触媒物品の調製に有用な結合剤などの加工助剤を含有してもよい。
【0058】
バナジウム系触媒を含有する第1の領域、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及びバナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域は、互いに独立して、押出物の形態又は基材上のウォッシュコートの形態で、本発明によるSCR触媒物品中に存在してもよい。
【0059】
「押出物」という用語は一般に、押出によって形成された成形体を指す。押出物は、排ガス流を通過させることが可能な任意の適切な構造、好ましくはハニカム構造を有してもよい。ハニカム構造は、以下にモノリシックフロースルー及びウォールフロー構造について記載されるような流路を有してもよい。第1、第2及び第3の領域のいずれかが押出物の形態で存在する場合、押出物は、任意の従来の手段によって、それぞれの触媒並びに任意選択的に結合剤及び潤滑剤などの少なくとも1つの加工助剤から形成されてもよい。
【0060】
「基材」という用語は一般に、排気流中で遭遇する条件に耐えるのに適して、触媒材料が典型的にはウォッシュコートの形態で担持される、構造を指す。
【0061】
典型的には、基材はモノリシックフロースルー構造であってもよく、この構造は、基材の入口面から出口面まで延在する複数の微細な平行ガス流路を有し、流路はそこを通る流体流に対して開いている。流体入口から流体出口まで本質的に直線経路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして塗布された壁によって画定される。モノリス基材の流路は、薄壁チャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形等の任意の好適な断面形状及びサイズとすることができる。このような構造は、断面1平方インチ当たり60~900以上の流路(又は「セル」)を含有してもよい。例えば、基材は、50~600セル/平方インチ(「cpsi」)又は200~450cpsiを有してもよい。フロースルー基材の壁厚は、2ミル~0.1インチの典型的な範囲で変動してもよい。
【0062】
基材はまた、基材の入口面から出口面に沿って延在する複数の微細な平行ガス流路を有するモノリシックウォールフロー構造であってもよく、流路は交互に両端で遮断される。通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように、触媒材料がウォッシュコートとして塗布された壁によって画定される。この構成は、ガスがウォールフロー基材の多孔質壁を通って流れて出口面に到達することを必要とする。ウォールフロー基材は、最大700cpsi、例えば100~400cpsiを有してもよい。モノリス基材の流路は、薄壁チャネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などの任意の好適な断面形状及びサイズとすることができる。ウォールフロー基材の壁厚は、2ミル~0.1インチの典型的な範囲で変動してもよい。
【0063】
用語「ウォッシュコート」は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、基材に塗布された触媒又は他の材料の薄い接着性コーティングを指す。ウォッシュコートは一般に、所望の材料及び任意選択的に特定の固形分(例えば、15~60重量%)を有する結合剤などの加工助剤を含有するスラリーを調製し、次いでスラリーを基材上に塗布し、乾燥させ、焼成してウォッシュコート層を提供することによって形成される。ウォッシュコートは一般に、0.5~10g/in、好ましくは1~7g/inの量で基材上に担持される。
【0064】
基材は通常不活性であり、従来は、例えばセラミック又は金属材料から作製され、本明細書では「不活性基材」と称される。あるいは、基材は活性であってもよいと考えることができる。その場合、基材は、例えば、バナジウム系触媒、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒又は他の触媒活性種を含有する押出物からなってもよい。例えば、第1、第2及び第3の領域のいずれかは、ウォッシュコートの形態の他の領域のいずれかからなる基材を構成する押出物の形態で存在してもよい。
【0065】
本発明によるSCR触媒物品のいくつかの例示的な実施形態において、バナジウム系触媒を含有する第1の領域、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及びバナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域は、1つ又は複数個の不活性基材上のウォッシュコートとして存在する。
【0066】
いくつかの特定の例示的な実施形態において、第1、第2及び第3の領域は、2個以上の不活性基材上に別々に担持される。例えば、第1、第2及び第3の領域は、正確に2個又は3個の不活性基材上に別々に担持されてもよい。2個以上の不活性基材を使用する場合、この基材は、同一又は異なる材料から作製されてもよい。
【0067】
2個の不活性基材を使用する場合、第1及び第2の領域又は第2及び第3の領域を一方の基材に担持し、残りの領域を他方の基材に担持するか、又は第1の領域及び第2の領域の一部を一方の基材に担持し、残りの第2の領域及び第3の領域を他方の基材に担持する。同じ1個の基材上の2個の領域を、それぞれのスラリーを順次ウォッシュコートすることによって基材上に塗布してもよい。この場合、同じ1個の基材上の2個の領域を、互いに隣接して配置しても、重なり合って配置してもよい。
【0068】
本発明によるSCR触媒物品のいくつかの他の例示的な実施形態において、バナジウム系触媒を含有する第1の領域は押出物として存在し、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域及びバナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域は、1つ又は複数の不活性基材上のウォッシュコートとして存在する。あるいは、第1の領域及び第2の領域は、1つ又は複数の不活性基材上のウォッシュコートとして存在し、第3の領域は押出物として存在する。
【0069】
本発明によるSCR触媒物品のいくつかの更なる例示的な実施形態において、第1の領域は、押出物として存在し、第2の領域は、押出物の全長未満の長さで押出物の出口側から入口側に延在するウォッシュコートとして押出物上に存在し、第3の領域は、1個の不活性基材上のウォッシュコートとして存在するか、又は別個の押出物として存在する。
【0070】
あるいは、第3の領域は押出物として存在し、第2の領域は、押出物の全長未満の長さで押出物の入口側から出口側まで延在するウォッシュコートとして押出物上に存在し、第1の領域は、1個の不活性基材上のウォッシュコートとして存在するか、又は別個の押出物として存在する。
【0071】
あるいは、第1及び第3の領域は両方とも押出物として存在し、第2の領域は、押出物の全長未満の長さで押出物の出口側から入口側に延在するウォッシュコートとして第1の領域の押出物上に、及び/又は第3の領域の押出物の全長未満の長さで押出物の入口側から出口側に延在するウォッシュコートとして第3の領域の押出物上に存在する。
【0072】
本明細書で使用する場合、「押出物の全長未満の長さ」とは、押出物の全長の90%以下、例えば80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下を指す。
【0073】
第1の領域、第2の領域及び第3の領域は各々、本発明によるSCR触媒物品中に、触媒物品の総体積に対して0.5~90体積%の範囲の任意の好適な割合で含まれていてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域は、本発明によるSCR触媒物品中に、触媒物品の総体積に対して0.5~80体積%、好ましくは1~75体積%、より好ましくは5~65体積%、例えば10~60体積%又は15~50体積%の割合で含まれてもよい。
【0075】
バナジウム系SCR触媒を含有する第1及び第3の領域は、互いに独立して、本発明によるSCR触媒物品中に、触媒物品の総体積に対して、10~60体積%、好ましくは15~55体積%、より好ましくは25~50体積%の割合で含まれてもよい。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態において、本発明によるSCR触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する10~60体積%の第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する5~65体積%の第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する10~60体積%の第3の領域を含み、
各々は、触媒物品の総体積に対するものである。
【0077】
いくつかの他の例示的な実施形態において、本発明によるSCR触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する15~55体積%の第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する10~60体積%の第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する15~55体積%の第3の領域を含み、
各々は、触媒物品の総体積に対するものである。
【0078】
更なる例示的な実施形態において、本発明によるSCR触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する25~50体積%の第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する15~50体積%の第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する25~50体積%の第3の領域を含み、
各々は、触媒物品の総体積に対するものである。
【0079】
領域に関して言及される体積割合は、領域が占める空間体積を指す。領域が基材上にウォッシュコートとして存在する場合、領域の体積割合は、領域が位置する基材の部分の体積を指すことを意図することが理解される。
【0080】
本発明による触媒物品は、酸化機能及び貯蔵機能を含むがこれらに限定されない、SCR以外の任意の機能を有する1つ又は複数の更なる構成要素を含んでもよい。1つ又は複数の更なる構成要素を、3個の領域のいずれかと共に配置してもよい。例えば、白金族金属(PGM)に基づく酸化触媒を、炭化水素、CO若しくはNOを酸化するために第1の領域の区域に、又はNHを酸化するために第3の領域の区域に配置してもよい。炭化水素吸着体及びNOx吸着体などの貯蔵構成要素を、第1の領域の区域に配置してもよいことも考えることができる。1つ又は複数の更なる構成要素が、任意の形態で、例えばウォッシュコート又は共押出物で存在してもよい。
【0081】
本発明によるSCR触媒物品は、例えば、発電所並びに建物及び家庭用の暖房システムなどの固定型燃焼装置、並びに車両の燃焼エンジン、特にディーゼルエンジンなどの移動型燃焼装置からの排ガスを処理するために使用してもよい。本発明によるSCR触媒物品は、内燃機関、例えばガソリン又はディーゼルエンジン、特に高馬力ディーゼルエンジンからの排ガスを処理するのに特に有効であってもよい。
【0082】
したがって、別の態様において、本発明は、選択的触媒還元による窒素酸化物を含有する排気ガスの処理方法であって、還元剤の存在下で排ガスを本明細書に記載のSCR触媒物品と接触させることを含む、方法に関する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法は、内燃機関、例えばガソリン又はディーゼルエンジン、特に高馬力ディーゼルエンジンに由来する排ガスの処理に有用である。
【0084】
更なる態様において、本発明は、排ガス、特に内燃機関からの排ガスを処理するためのシステムであって、還元剤源及び本明細書に記載の触媒物品を備えるシステムに関する。
【0085】
排ガスを処理するためのシステムは、1つ又は複数の排ガス処理要素を更に備えてもよい。従来の排ガス処理要素としては、SCR触媒以外の触媒、例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒、センサ及びミキサが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
排ガスを処理するためのシステムの変形例において、触媒物品の少なくとも1つの領域は、他の領域に密接に接続されない。この場合、排ガス処理システムの1つ又は複数の要素、例えば、SCR触媒以外の触媒構成要素、還元剤源、フィルタ、センサ、及びミキサを中間に配置してもよい。
【0087】
排ガス処理システムは、エンジンの下流及び本発明によるSCR触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒を更に含むことが好ましい。いくつかの実施形態において、排ガス処理システムは好ましくは、本発明によるSCR触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒及び触媒スートフィルタの両方を含む。
【0088】
実施形態
様々な実施形態を以下に列挙する。以下に列挙する実施形態は、本発明の範囲による全ての態様及び他の実施形態と組み合わせてもよいことが理解される。
【0089】
実施形態1.窒素酸化物を含有する排ガスを浄化するための触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
式中
第2の領域の少なくとも一部は、排ガスの流れ方向において、第1の領域の少なくとも一部よりも下流側及び第3の領域の少なくとも一部よりも上流側に位置し
第2の領域のいかなる部分も、第1の領域の上流又は第3の領域の下流に位置しない、触媒物品に関する。
実施形態2.第1の領域及び第3の領域の各々におけるバナジウム系SCR触媒が、酸化バナジウム及び任意選択的に他の元素の少なくとも1つの酸化物を助触媒として含有し、触媒が担体の粒子上に担持された、前述の実施形態に記載の触媒物品。
実施形態3.助触媒としての他の元素が、B、Al、Bi、Si、Sn、Pb、Sb、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ce、Y、Nb、Mo及びWから選択される、前述の実施形態による触媒物品。
実施形態4.担体が、モレキュラーシーブ、並びにTi、Si、W、Al、Ce、Zr、Mg、Ca、Ba、Y、La、Pr、Nb、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn及びBiから選択される元素の1つ又は複数の酸化物から選択される、実施形態2又は3に記載の触媒物品。
実施形態5.第1の領域及び第3の領域中のバナジウム系SCR触媒が、Vとして計算されるバナジウムを、バナジウム系SCR触媒の総重量に基づいて、0.1~20重量%、1~15重量%、2~10重量%、又は2~7重量%の量で含有し、2つの領域中のバナジウム系SCR触媒のバナジウム含有量が同じであるか又は異なる、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態6.金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中のモレキュラーシーブが、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、-SSO、SSY、STF、STI、STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN又はYUG、ZON、及びそれらの任意の組合せの骨格型を有するゼオライトから選択される。前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態7.金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中のモレキュラーシーブが、AEI、AEL、AFI、AFT、AFO、AFX、AFR、ATO、BEA、CHA、DDR、EAB、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、GME、HEU、JSR、KFI、LEV、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEL、MFI、MOR、MOZ、MSO、MTW、MWW、OFF、RTH、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TON、TSC又はWENの骨格型を有するゼオライトから選択される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態8.金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中のモレキュラーシーブが、AEI、BEA、CHA、AFT、AFX、FAU、FER、KFI、MOR、MFI、MOR又はMELの骨格型を有するゼオライトから選択され、これらの中で、AEI、BEA及びCHAが特に好ましい、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態9.第2の領域中のモレキュラーシーブを促進するための金属が、Au及びAgなどの貴金属、Ru、Rh、Pd、In及びPtなどの白金族金属、Cr、Zr、Nb、Mo、Fe、Mn、W、V、Ti、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Sn及びBiなどの卑金属、Ca及びMgなどのアルカリ土類金属、並びにそれらの任意の組合せから選択される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態10.第2の領域中のモレキュラーシーブを促進するための金属が、Fe、Cu、又はそれらの組合せである、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態11.第2の領域中のモレキュラーシーブを促進するための金属が、金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒中に、金属で促進されたモレキュラーシーブの総重量に基づいて、酸化物基準で0.1~20重量%、0.5~15重量%又は1~10重量%の範囲の量で存在する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態12.第1の領域、第2の領域及び第3の領域が、互いに独立して、押出物の形態で、又は基材上のウォッシュコートの形態で存在する、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態13.押出物及び/又は基材がハニカム構造、例えばモノリスフロースルー構造又はウォールフロー構造を有する、前述の実施形態に記載の触媒物品。
実施形態14.第1、第2、及び第3の領域が、2つ以上の不活性基材上に別々に、好ましくは2つ又は3つの不活性基材上に別々に担持される、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態15.第2の領域が、触媒物品の総体積に対して、0.5~80体積%、好ましくは1~75体積%、より好ましくは5~65体積%、例えば10~60体積%又は15~50体積%の割合で触媒物品中に含まれる、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態16.第1及び第3の領域が、互いに独立して、触媒物品の総体積に対して、10~60体積%、好ましくは15~55体積%、より好ましくは25~50体積%の割合で触媒物品に含まれる、前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品。
実施形態17.前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
第2の領域は、第1の領域の少なくとも一部の下流側及び第3の領域の少なくとも一部の上流側に位置する、触媒物品を提供する。
実施形態18.前述の実施形態のいずれか1つに記載の触媒物品であって、触媒物品は、
-バナジウム系SCR触媒を含有する第1の領域、
-金属で促進されたモレキュラーシーブ触媒を含有する第2の領域、及び
-バナジウム系SCR触媒を含有する第3の領域を含み、
第2の領域は、第1の領域の完全に下流及び第3の領域の完全に上流に位置する、触媒物品を提供する。
実施形態19.窒素酸化物を含有する排ガスの処理方法であって、処理方法は、還元剤の存在下で、排ガスを実施形態1~18のいずれか1つで定義される触媒物品と接触させることを含む、方法。
実施形態20.排ガスが、内燃機関、例えばガソリン又はディーゼルエンジン、特に高馬力ディーゼルエンジンに由来する、実施形態19に記載の方法。
実施形態21.還元剤源、実施形態1~20のいずれか1つに記載の触媒物品、任意選択的にディーゼル酸化触媒(DOC)、三元変換触媒(TWC)、四元変換触媒(FWC)、無触媒又は触媒スートフィルタ(CSF)、アンモニア酸化触媒(AMOx)、NOxトラップ、NOx吸収触媒、炭化水素トラップ触媒、センサ及びミキサの1つ又は複数を備える、特に内燃機関に由来する排ガスを処理するためのシステム。
【0090】
本発明を、特に有利な実施形態を記載する以下の実施例によって更に説明する。実施例は本発明を説明するために提供されるが、それらは本発明を限定することを意図しない。
【実施例
【0091】
実施例1 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
1.1 基材上にV系SCR触媒を含むブリック(V-SCRレンガ)の調製
TiOとして計算して95.9重量%のチタン含量を有するアナターゼ型の173.2gのTiO、Vとして計算して10.75重量%のバナジウム含量を有する74.4gのシュウ酸バナジル溶液及び12.0gのSbを、室温で200gのDI水に混合した。得られた懸濁液を30分間撹拌した後、更に30%アンモニア水溶液を添加して系のpHを7.0に上げた。次いで、30.1重量%のSiO含有量を有する46.2gのSiOゾルを添加した。1時間撹拌した後、均質なスラリーを得た。5ミルの壁厚を有する300cpsiのフロースルーハニカムコーディエライト基材を、得られたスラリーに浸漬して、十分なスラリーを充填した。余分に充填されたスラリーをエアナイフで注意深く吹き飛ばした後、150℃の熱風で15分間乾燥させ、次いで空気中450℃で1時間焼成した。
【0092】
4.5g/inの基材上の総ウォッシュコート担持量が得られるまで、浸漬、乾燥及び焼成のプロセスを繰り返した。V系SCR触媒は、Vとして計算して4.0重量%のバナジウム含有量を有する。
【0093】
1.2 基材上にFeで促進されたモレキュラーシーブを含むブリック(Fe-ゼオライトレンガ)の調製
SiO対Alモル比が9、Feとして計算して鉄充填量が4.8重量%、X線結晶化度が98%、BET表面積が578m/g、D90=13μm、NaOが0.07重量%、KOが0.03重量%、CaOが0.01重量%、MgOが0.02重量%である、Zeolyst製のFe/ベータゼオライトを使用した。
【0094】
95重量部のFe/ベータゼオライト及びZrOとして計算された5重量部の酢酸ジルコニウムを脱イオン水に混合して、スラリーを形成した。スラリーを、Sympatec粒径分析器で測定して、約10μmのD90の粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを、直径1インチ、セル密度300cpsi及び壁厚5ミルを有するフロースルーコーディエライトモノリス基材上に、基材をスラリーに浸漬することによってコーティングした。余分に充填したスラリーをエアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。3.2g/inの基材上の総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥及び焼成のプロセスを繰り返した。。
【0095】
1.3 試験サンプルの調製
V-SCRブリックから直径1インチ、長さ2インチの2個のコアを切り出し、Fe-ゼオライトレンガから直径1インチ、長さ1インチの1つのコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコア、Fe-ゼオライトコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0096】
実施例2 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
2.1 基材上にV系SCR触媒を含むブリック(V-SCRブリック)の調製
V-SCRブリックは、実施例1.1に記載したのと同じ方法によって調製した。
【0097】
2.2 基材上にFeで促進されたモレキュラーシーブを含むブリック(Fe-ゼオライトブリック)の調製
SiO対Alモル比が9、Feとして計算して鉄充填量が4.8重量%、X線結晶化度が98%、BET表面積が578m/g、D90=13μm、NaOが0.07重量%、KOが0.03重量%、CaOが0.01重量%、MgOが0.02重量%である、Zeolyst製のFe/ベータゼオライトを使用した。
【0098】
90重量部のFe/ベータ、Feとして計算した5重量部の硝酸鉄及びZrOとして計算した5重量部の酢酸ジルコニウムを脱イオン水に混合してスラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒径分析器で測定して、約10μmのD90の粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを、直径1インチ、セル密度300cpsi及び壁厚5ミルを有するフロースルーコーディエライトモノリス基材上に、基材をスラリーに浸漬することによってコーティングした。余分に充填したスラリーをエアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。3.2g/inの基材上の総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0099】
2.3 試験サンプルの調製
V-SCRブリックから直径1インチ、長さ2インチの2個のコアを切り出し、Fe-ゼオライトレンガから直径1インチ、長さ1インチの1つのコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコア、Fe-ゼオライトコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0100】
実施例3 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
V-SCRブリック及びFe-ゼオライトブリックを、それぞれ実施例1.1及び1.2に記載したのと同じ方法によって調製した。
【0101】
V-SCRブリックから直径1インチ及び長さ1.5インチの2つのコアをから切り出し、Fe-ゼオライトブリックから直径1インチ及び長さ2インチの1つのコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコア、Fe-ゼオライトコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0102】
実施例4 V-Cu-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
4.1 基材上にV系SCR触媒を含むブリック(V-SCRブリック)の調製
実施例1.1に記載したのと同じ方法によってV-SCRブリックを調製した。
【0103】
4.2 基材上にCuで促進されたモレキュラーシーブを含むブリックの調製(Cu-ゼオライトブリック):
SiO対Alモル比が16.5、X線結晶化度が99%、BET表面積が520m/g、D90=6μm、NaO≦0.01重量%及びタップ密度が0.7g/mLの、Tosoh製のCHAゼオライトを使用した。
【0104】
90重量部のCHA型ゼオライト、5重量部の酸化銅CuO、及びZrOに換算して5重量部の酢酸ジルコニウムを脱イオン水に混合してスラリーを形成した。次いで、スラリーを、Sympatec粒径分析器で測定して、約5μmのD90の粒径に粉砕した。粉砕したスラリーを、直径1インチ、セル密度300cpsi及び壁厚5ミルを有するフロースルーコーディエライトモノリス基材上に、基材をスラリーに浸漬することによってコーティングした。余分に充填したスラリーをエアナイフで注意深く吹き飛ばし、続いて130℃で乾燥させ、550℃で焼成した。2.1g/inの基材上の総ウォッシュコート充填量が得られるまで、浸漬、乾燥及び焼成のプロセスを繰り返した。
【0105】
4.3 試験サンプルの調製
V-SCRブリックから直径1インチ、及び長さ2インチの2つのコアを切り出し、Cu-ゼオライトブリックから直径1インチ、及び長さ1インチの1つのコアを切り出した。サンプルを、第1のV-SCRコア、Cu-ゼオライトコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0106】
実施例5 V-Cu-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
5.1 基材上にV系SCR触媒を含むブリック(V-SCRブリック)の調製
V-SCRブリックは、実施例1.1に記載したのと同じ方法によって調製した。
【0107】
5.2 基材上にCuで促進されたモレキュラーシーブを含むブリック(Cu-ゼオライトブリック)の調製
BASF製であり、SiO対Alモル比が21、X線結晶化度が93%、BET表面積が583m/g、D90が13ミクロン、NaO≦0.01重量%及びタップ密度=0.4g/mLのAEIゼオライトを使用したことを除いて、実施例4.2に記載の方法に従って、Cu-ゼオライトブリックを調製した。
【0108】
5.3 試験サンプルの調製
V-SCRブリックから直径1インチ、及び長さ2インチの2つのコアを切り出し、Cu-ゼオライトブリックから直径1インチ、及び長さ1インチの1つのコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコア、Cu-ゼオライトコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0109】
実施例6 V-Fe-Cu-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
実施例1.1と同じ方法でV-SCRブリックを調製し、実施例1.2と同じ方法でFe-ゼオライトブリックを調製し、実施例4.2と同じ方法でCu-ゼオライトブリックを調製した。
【0110】
V-SCRブリックから直径1インチ、及び長さ2インチの2個のコアを切り出し、Fe-ゼオライトブリックから直径1インチ、長さ0.5インチの1個のコアを切り出し、Cu-ゼオライトブリックから直径1インチ、及び長さ0.5インチの1個のコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコアが最初に試験ガスと接触するように、第1のV-SCRコア、Fe-ゼオライトコア、Cu-ゼオライトコア及び第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0111】
実施例7 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品サンプル
V-SCRブリック及びFe-ゼオライトブリックを、それぞれ実施例1.1及び1.2に記載したのと同じ方法によって調製した。
【0112】
V-SCRブリックから直径1インチ、長さ2.0インチの1個のコア及び直径1インチ、長さ2.5インチの1個のコアを切り出し、Fe-ゼオライトブリックから直径1インチ、長さ0.5インチの1個のコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコアが最初に試験ガスと接触するように、2.0インチの第1のV-SCRコア、Fe-ゼオライトコア、及び2.5インチの第2のV-SCRコアの順に配置した。
【0113】
実施例8 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品
Zeolyst製であり、SiO対Alモル比が41、Feとして計算して鉄充填量が1.4重量%、X線結晶化度が100%、BET表面積が708m/g、D90=5μm、及びNaO=0.03重量%の、Fe充填量が低いFe/ベータゼオライトを使用したことを除いて、実施例1に記載したのと同じ方法で試験サンプルを調製した。
【0114】
比較例1 V-SCRの触媒物品
実施例1.1に記載したのと同じ方法によって調製したV-SCRブリックから、それぞれ直径1インチ及び長さ2インチ、1インチ及び2インチの3個のコアを切り出した。コアを、第1のV-SCRコアが最初に試験ガスと接触するように、2インチの第1のV-SCRコア、1インチの第2のV-SCRコア、及び2インチの第3のV-SCRコアの順に配置した。
【0115】
比較例2 Fe-V-Vの触媒配置を有する触媒物品
Fe-ゼオライトコアが最初に試験ガスと接触するように、コアをFe-ゼオライトコア、第1のV-SCRコア、及び第2のV-SCRコアの順に配置した以外は、実施例1に記載したのと同じ方法で試験試料を調製した。
【0116】
比較例3 V-V-Feの触媒配置を有する触媒物品
第1のV-SCRコアが最初に試験ガスと接触するように、コアを第1のV-SCRコア、第2のV-SCRコア、及びFe-ゼオライトコアの順に配置した以外は、実施例1に記載したのと同じ方法で試験試料を調製した。
【0117】
比較例4 V-Fe-Vの触媒配置を有する触媒物品
試験サンプルを、2個のV-SCRコアが各々長さ0.5インチであり、Fe-ゼオライトコアが長さ4インチであることを除いて、実施例1に記載したのと同じ方法で調製した。
【0118】
実施例9 SCR性能試験
実施例9.1 温度及びNO/NO比の変動下でのSCR性能の試験
フレッシュ状態の各サンプルを実験室固定床シミュレータに入れた。ベース供給ガスは、5体積%のCo、5体積%のHO、10体積%のO、500ppmNO(NO+NO)、及び残部のNからなる。空間速度(SV)は、1”×3”円筒形サンプルに基づいて120,000/時間に固定した。NH対NOの比(NSR)を1.2に固定した。実験用固定床シミュレータの入口での温度及びNO/NO比を、1サイクル当たり200秒にわたって、条件1から条件2に、次いで条件1に戻るように周期的に変化させた(図1に示すように)。各サイクルにおいて、安定化のために条件1を50秒間維持した。NO/NO比を、ベース供給ガスのNOの割合を調整することによって変化させ、各試験は4サイクルからなる。4サイクル後の累積NOx及びNO排出量をサンプルについて測定し、結果を以下の表1にまとめた。
条件1:300℃、NO中75%NO
条件2:200℃、NO中25%NO
【0119】
【表1】
【0120】
驚くべきことに、表1の試験結果から分かるように、本発明による2個のバナジウム系SCR領域の間に位置する金属で促進されたゼオライト領域を含むSCR触媒サンプルは、本発明の配置設計とは異なる触媒配置を有するSCR触媒試料と比較して、NOx低減の改善、すなわち、より低いNOx排出を示す。
【0121】
特に、実施例1のSCR触媒サンプル並びに比較例2及び3のサンプルとを比較すると、バナジウム系SCR触媒及び金属で促進されたゼオライト触媒の本発明の配置設計によって達成されるNOx低減の改善が明確に示される一方、NO形成の増加は観察されなかった。
【0122】
実施例9.2 温度、NOx供給量、NH/NOx比、及び空間速度の変動下でのSCR性能の試験
フレッシュ状態の各サンプルを実験室固定床シミュレータに入れた。ベース供給ガスは、5体積%のCo、5体積%のHO、10体積%のO、NO(NO+NO)及び残部のNからなる。実験室用固定床シミュレータの入口での温度、空間速度(SV)、NO供給、及びNH/NO比(NSR)を、条件1から条件2に周期的に変化させ、次いで条件1に戻した(図2に示すように)。各サイクルにおいて、一方の条件から他方の条件への変化は100秒間にわたって達成され、安定化のために条件1及び条件2を両方とも50秒間維持した。各試験は5サイクルからなる。5サイクル後の累積排出量及び累積NO排出量に基づいて計算したNOx転化率をサンプルについて測定し、結果を以下の表2にまとめた。
条件1:200℃、SV=80,000/時間、NO=500ppm、NSR=2、NO中50%NO
条件2:300℃、SV=120,000/時間、NO=1000ppm、NSR=0.5、NO中50%NO
【0123】
【表2】
【0124】
本発明の触媒設計から得られるNOx低減の改善は、複数の条件の複雑な変動の下でも、NO形成の増加を観察しないまま、達成することができることが分かる。
図1
図2
【国際調査報告】