(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】遺伝的編集手順の効率を決定するための方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20240304BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557101
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2022056740
(87)【国際公開番号】W WO2022194886
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523351852
【氏名又は名称】カウンタゲン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】レイオレ・アジュリア・アストビザ
(72)【発明者】
【氏名】ヨースト・バーリマン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ02
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(57)【要約】
本発明は、以下のステップを含む、遺伝的編集手順の効率を決定するための方法及び使用に関する:(i)遺伝的編集手順からの試料を提供するステップであって、試料が、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含む、提供するステップ、(ii)ローリングサークル増幅を実施して、試料中の1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成するステップ、及び(iii)ステップ(ii)で生成されたRCA産物の存在に基づいて、遺伝的編集手順の効率を決定するステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝的編集手順の効率を決定するための方法であって、前記方法が、
(i)遺伝的編集手順からの試料を提供するステップであって、前記試料が、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含む、提供するステップ、
(ii)ローリングサークル増幅を実施して、前記試料中の前記1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成するステップ、及び
(iii)ステップ(ii)で生成された前記RCA産物の存在に基づいて、前記遺伝的編集手順の効率を決定するステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
ローリングサークル増幅ステップ(ii)を実施する前に、前記方法が、前記試料中の前記ポリヌクレオチド配列から環状一本鎖ポリヌクレオチド基質を生成するステップを含み、前記環状一本鎖ポリヌクレオチド基質が、前記正しく編集済みのポリヌクレオチド配列、及び前記未編集のポリヌクレオチド配列に特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RCA産物が、検出可能な部分で標識され、好ましくは、前記正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は前記未編集のポリヌクレオチド配列からのRCA産物を区別することができるように、差次的に標識される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iii)が、ステップ(ii)で生成された前記RCA産物を定量すること、及び前記試料中の前記正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は未編集のポリヌクレオチド配列の量を決定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記試料中のポリヌクレオチド配列の総数を定量するステップを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記環状一本鎖ポリヌクレオチド基質が、前記正しく編集済みのポリヌクレオチド配列を特異的に標的とする第1のオリゴヌクレオチドプローブ、及び前記未編集のポリヌクレオチド配列を特異的に標的とする第2のオリゴヌクレオチドプローブを使用して生成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブが、パドロックプローブ、分子反転プローブ、ギャップ-フィルプローブ、スプリット様プローブ、ロータスプローブ、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブが、それらの特異的標的ポリヌクレオチド配列の認識時に環状化する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブの環状化が、1つ以上のジョイニングプローブによって媒介及び/又は改善され、任意選択的に、前記1つ以上のジョイニングプローブが、セレクタープローブである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記環状一本鎖ポリヌクレオチド基質が、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ及びその特異的標的ポリヌクレオチド配列のライゲーションによって、並びに前記第2のオリゴヌクレオチドプローブ及びその特異的標的ポリヌクレオチド配列のライゲーションによって形成され、任意選択的に、ライゲーションが、特定の分子内ライゲーション活性を有するリガーゼによって実施される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記環状一本鎖ポリヌクレオチド基質のローリングサークル増幅が、標的配列によって、又は前記環状一本鎖ポリヌクレオチド基質に対して相補的である増幅プライマーによって開始される、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記検出可能な部分が、フルオロフォア、発色団、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(iii)が、前記RCA産物を表面上に固定することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記RCA産物が、前記表面との静電相互作用、共有結合相互作用、又は立体相互作用によって前記表面上に固定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記表面が、ガラス表面又は多孔質膜である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔質膜が、濾過膜、例えば、多孔質親水性膜である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RCA産物が、前記多孔質膜を通って濾過することによって固定される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記ガラス表面が、RCA生成物と相互作用するように修飾される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記RCA産物が、前記試料を顕微鏡の単一視野に濃縮するように、マイクロ流体チャネルを通って流される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(iii)が、顕微鏡法によって前記RCA産物を検出することを含み、任意選択的に、顕微鏡法が、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(iii)が、DNAシーケンシングによって前記RCA産物を検出することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝的編集手順の効率が、前記試料中の前記正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び前記未編集のポリヌクレオチド配列の相対量に基づいて決定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記RCA産物を磁気ビーズに付着させて、ビーズに結合したRCA産物を提供するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記RCA産物が、前記ビーズに結合したRCA産物を前記表面上の位置に引き付けるように磁気源を提供することによって固定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
遺伝的編集手順の産物を特定するための方法であって、前記方法が、
(i)遺伝的編集手順からの試料を提供するステップであって、前記試料が、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含む、提供するステップと、
(ii)ローリングサークル増幅を実施して、前記試料中の前記1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)で生成された前記RCA産物の存在に基づいて、前記遺伝的編集手順の産物を決定するステップ、
を含む、方法。
【請求項26】
遺伝的編集手順の産物を特定するための、及び/又は遺伝的編集手順の効率を決定するための、ローリングサークル増幅の使用。
【請求項27】
部品のキットであって、
遺伝子編集試薬を含む第1の容器、
RCA試薬を含む第2の容器、
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法における前記キットの使用説明書、
を含む、部品のキット。
【請求項28】
添付の説明、例及び/又は図面を参照しつつ、本明細書に実質的に記載されるような方法又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝的編集手順の効率を決定するための、及び/又は遺伝的編集手順の産物を特定するための方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
標的化遺伝子修飾を高い効率で実施する可能性は、創薬、個別化された医薬、及び農業生産性の重要なステップである。
【0003】
遺伝子編集は、特殊なヌクレアーゼを使用した正確なゲノム操作を可能にするため、多くの画期的な成果を生み出してきた。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及び現在人気のあるCRISPR/Cas9ベースの系(CRISPR、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート、Cas9、CRISPR関連タンパク質9)を含む、多数の遺伝子編集ツールが開発されてきた。これらのツール及び系の多くは、現在広く使用されており、技術的に実施が簡単である。
【0004】
しかしながら、それらの実用上の単純さにもかかわらず、そのような系の効率は、変動する可能性があり、正しく編集済みの遺伝的産物の割合が低くなる。例えば、CRISPR/Cas9系の効率は、使用される単一ガイドRNA(「sgRNA」)の設計に依存する。したがって、CRISPRベースの系を使用して最大編集効率を確保するためには、使用されるsgRNAを慎重にスクリーニングし、最適化する必要がある。
【0005】
ゲノム操作の開発における1つの重要なステップは、使用される系の効率及び特異性を事前スクリーニングすることである。したがって、標的とされる遺伝的編集事象の正確な定量及び特定は、遺伝的編集技術の開発、特性評価、及びより広い応用にとって重要である。
【0006】
遺伝的編集手順の結果を検出し、定量するための一連のアプローチが開発されてきた。
【0007】
編集効率をスクリーニングし、検証するための現在の戦略は、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)に基づいており、これは、実施するために専門的な実験装置を必要とする複数ステップの方法である。PCRは、Sanger及び次世代シーケンシングで使用され、これらの技術は、高解像度で精度を提供するが、更に複雑で高価なシーケンシング装置を必要とする。デジタル液滴PCR(「ddPCR」)は、高精度を提供するが、その実装は、使用することができるという以前に、最適な結果を達成するために必要な計装費用及び退屈な最適化ステップによって妨げられる。PCRベースの「T7エンドヌクレアーゼI」又は「Surveyor」スクリーニングアプローチは、シーケンシング及びddPCRよりも技術的に単純であるが、精度が低いことが問題である。これらの方法は、以下により詳細に記載される。
【0008】
最も正確であるが、最も時間がかかる(多くの場合、数日かかる)最も高価な方法は、シーケンシングベースのものであり、これらには主にSangerシーケンシング及びNGSが含まれる。Sangerシーケンシングは、単一クローンのインプットが必要であり、この種類の方法に必要な作業量が増加する。「分解によるインデルの追跡(tracking of indels by decomposition)」(TIDE)等の新しいインシリコ法は、混合細胞集団の分析を可能にする(Brinkman,E.K.;Chen,T.;Amendola,M.;Van Steensel,B.Easy Quantitative Assessment of Genome Editing by Sequence Trace Decomposition.Nucleic Acids Res.2014,42(22),e168)。
【0009】
TIDEと組み合わせたSangerシーケンシングは、高品質のDNA及びリードが必要であり、そうでなければ、エラーが容易に起こる。NGSは、高度に多重化されたディープシーケンシングを実施して、遺伝子編集によって導入される細胞集団における希少な変異を特定することができる(Schmitt,M.W.;Kennedy,S.R.;Salk,J.J.;Fox,E.J.;Hiatt,J.B.;Loeb,L.A.Detection of Ultra-Rare Mutations by next-Generation Sequencing.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012,109(36),14508-14513)。それにもかかわらず、その主な欠点は、エラー率、実行当たりのコストが、遺伝子編集実験のための事前スクリーニングツールとして非経済的であることである。
【0010】
ddPCR法は、遺伝子編集事象の効率のより正確な測定を可能にし、定量のために蛍光プローブを使用する(例えば、Miyaoka,Y.;Mayerl,S.J.;Chan,A.H.;Conklin,B.R.Detection and Quantification of HDR and NHEJ Induced by Genome Editing at Endogenous Gene Loci Using Droplet Digital PCR.In Methods in Molecular Biology;Humana Press Inc.,2018;Vol.1768,pp 349-362を参照されたい)。ddPCRの欠点は、標的DNAの液滴へのデジタル化を実施し、液滴PCR反応を実行し、最終的に液滴リーダで結果を読み出すための特殊な器具の必要性である。
【0011】
変性ベースの方法は、それらが標準的な分子生物学研究室の観点から、いかなる特殊な計装も必要としないため、最もローテクな解決策とみなされる。しかしながら、これらの方法によって提供される情報内容は、単に未編集のゲノムに対する編集済みのゲノムの違いに基づいているため、非常に制限される(Germini,D.;Tsfasman,T.;Zakharova,V.V.;Sjakste,N.;Lipinski,M.;Vassetzky,Y.A Comparison of Techniques to Evaluate the Effectiveness of Genome Editing.Trends in Biotechnology.Elsevier Ltd February 1,2018,pp 147-159)。これらの違いは、最も多くは、「T7エンドヌクレアーゼI」又は「Surveyor」アッセイにおけるようなゲル電気泳動後のバンド強度によって測定される(Vouillot,L.;Thelie,A.;Pollet,N.Comparison of T7E1 and Surveyor Mismatch Cleavage Assays to Detect Mutations Triggered by Engineered Nucleases.G3 Genes,Genomes,Genet.2015,5(3),407-415.)。したがって、これらの方法は、遺伝子編集効率に関する情報を与えることなく、編集活性を推定することができるだけである。
【0012】
図1は、これらの方法間のワークフローの違いを示す。異なる利用可能な方法のより詳細な比較は、(Germini,D.;Tsfasman,T.;Zakharova,V.V.;Sjakste,N.;Lipinski,M.;Vassetzky,Y.A Comparison of Techniques to Evaluate the Effectiveness of Genome Editing.Trends in Biotechnology.Elsevier Ltd February 1,2018,pp147-159)中に見出すことができる。
【発明の概要】
【0013】
このような背景を踏まえて、本発明者らは、遺伝的編集手順の産物を特定し、そのような手順の効率を決定するための改善されたアプローチを開発した。このアプローチは、遺伝的編集手順の特異性を決定するのにも有用である。
【0014】
従来技術とは異なり、本発明者らのアプローチは、PCRベースの検出に依存せず、したがって、PCR及びその後のステップ、例えば、ddPCRにおいて液滴を読み取ること、又は外部のサービスにシーケンシングのためにPCRアンプリコンを送ることを実施するのに必要とされる複数のステップ及び高価で専門的な実験装置を回避する。以下及び添付の実施例で説明されるように、本発明者らの技術は、その単純さにもかかわらず、遺伝的編集手順の産物を迅速かつ正確に検出し、そのような手順の効率を決定することができる。
【0015】
第1の態様では、本発明は、遺伝的編集手順の効率を決定するための方法を提供し、本方法は、
(i)遺伝的編集手順からの試料を提供するステップであって、試料が、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含む、提供するステップ、
(ii)ローリングサークル増幅を実施して、試料中の1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成するステップ、及び
(iii)ステップ(ii)で生成されたRCA産物の存在に基づいて、遺伝的編集手順の効率を決定するステップ、を含む。
【0016】
したがって、従来技術に基づくアプローチとは異なり、本発明者らの方法は、ツールとしてローリングサークル増幅(「RCA」)を使用して、遺伝的編集手順によって産生されるポリヌクレオチド配列を分析する。具体的には、遺伝的編集手順に続いて、RCAを使用して、産生された正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び未編集のポリヌクレオチド配列からRCA産物(RCA-Products)(本明細書では「RCA産物(RCA products)」、「RCP」又は「RCPs」とも称される)を選択的に生成する。RCA後、RCA産物は、液体試料中に存在し、これが更なる処理ステップを受け、液体試料として、又は乾燥固体試料としてのいずれかで、RCA産物を分析することができる。
【0017】
RCAは、区画化することなくデジタル定量化を可能にする、周知の単一分子増幅法である。フルオロフォア等の所定の光学特性の分子でRCA産物を標識した後、上述の増幅された分子は、個々に定量することができる単一のドットとして検出することができる。RCAを実施するための環状オリゴヌクレオチドテンプレートは、いくつかの非常に標的特異的な手段によって設計及び産生することができ、これらの標的は、実質的に任意のヌクレオチド配列であり得る。アッセイを調整して、遺伝子編集技術(例えば、CRISPR/Cas9)に供されたゲノム材料から編集済みのバリアント及び未編集のバリアントを検出することによって、その効率を単純であるが正確な方法で推定することが可能である。
【0018】
RCAは、環状DNA標的上で非常に加工性の高いポリメラーゼを使用して、数百ナノメートルからマイクロメートルまでの範囲で長いssDNA(すなわち、一本鎖DNA)コンカテマーを生成する(Baner,J.;Nilsson,M.;Mendel-Hartvig,M.;Landegren,U.Signal Amplification of Padlock Probes by Rolling Circle Replication.Nucleic Acids Res.1998,26(22),5073-5078)。RCAは、多くの場合、「パドロックプローブ」(PLP)と組み合わされ、配列特異的オリゴヌクレオチドが標的鎖に環状の方法で結合し、次いで、ライゲーションステップによって共有結合的に連結され得る。PLPベースのRCAアッセイは、単一塩基精度で厳しいストリンジェンシーを提供する (Nilsson,M.;Malmgren,H.;Samiotaki,M.;Kwiatkowski,M.;Chowdhary,B.P.;Landegren,U.Padlock Probes:Circularizing Oligonucleotides for Localized DNA Detection.Science.1994,265(5181),2085-2088)。PLPと同様に、「セレクター」プローブをRCAと組み合わせることができ、標的は、RCAの前に環状化される(Johansson,H.;Isaksson,M.;Sorqvist,E.F.;Roos,F.;Stenberg,J.;Sjoblom,T.;Botling,J.;Micke,P.;Edlund,K.;Fredriksson,S.;Kultima,H.G.;Ericsson,O.;Nilsson,M.Targeted Resequencing of Candidate Genes Using Selector Probes.Nucleic Acids Res.2011,39(2),e8)。
【0019】
更に別のプローブ機構は、単一ヌクレオチド多型検出のための、並びに遺伝子型決定のための、高度に多重化されたアッセイにおいて実証されている分子反転プローブを使用する(Antson,D.O.;Isaksson,A.;Landegren,U.;Nilsson,M.PCR-Generated Padlock Probes Detect Single Nucleotide Variation in Genomic DNA.Nucleic Acids Res.2000,28(12),e58、及びKrishnakumar,S.;Zheng,J.;Wilhelmy,J.;Faham,M.;Mindrinos,M.;Davis,R.A Comprehensive Assay for Targeted Multiplex Amplification of Human DNA Sequences.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2008,105(27),9296-9301)。前述のプローブのニックを密封するために最も一般的に使用されるリガーゼは、DNA上のライゲーションのためのT4 DNA及びTthリガーゼ、並びにRNA上のライゲーションのためのT4 RNA及びSplintRリガーゼである。
【0020】
増幅のために、phi29 DNAポリメラーゼは、3’から5’への校正エンドヌクレアーゼ活性に加え、非常に高い加工性を有するため、最も頻繁である。RCAは、臨床診断における潜在的な使用のために、がんプロファイリング(Huang,R.;He,L.;Li,S.;Liu,H.;Jin,L.;Chen,Z.;Zhao,Y.;Li,Z.;Deng,Y.;He,N.A Simple Fluorescence Aptasensor for Gastric Cancer Exosome Detection Based on Branched Rolling Circle Amplification.Nanoscale 2020,12(4),2445-2451)、及び病原体の検出(Neumann,F.;Hernandez-Neuta,I.;Grabbe,M.;Madaboosi,N.;Albert,J.;Nilsson,M.Padlock Probe Assay for Detection and Subtyping of Seasonal Influenza.Clin.Chem.2018,clinchem.2018.292979)に適用されている。
【0021】
しかしながら、これまでのところ、RCA/プローブベースのアッセイは、遺伝子編集のスクリーニングには使用されていない。本発明者らのアプローチは、そうするための最初のものであり、高い特異性及びそうするための単純なアプローチをもたらす。
【0022】
現在利用可能な方法の提示は、すぐに使用できる方法でddPCRと同じか又はそれより多い情報内容を提供しつつ、変性ベースの方法の容易さ及び要件を提供する新しい方法の必要性を明確に強調している。
【0023】
このことは、RCAを利用して遺伝子編集効率の正確な決定を可能にする本発明によって提供される。本発明は、遺伝子編集分析に要する時間及び費用を数日からわずか数時間に短縮する。更に、生成されたRCPは、濃縮方法で使用することができ、必要に応じてシーケンシング用途で使用することができる。本発明のRCAベースのアプローチの利点としては、1つのDNA標的が1つのRCPに対応するため、デジタル化を必要としないこと、2つの結合アームを包含するプローブを使用することにより、非常に特異的であること、アームが標的特異的でありつつ、プローブ骨格を一定に維持することができるため、蛍光プローブを切り替えることを必要とせずに多重化反応を可能にすること、並びに、ddPCR及びシーケンシングベースの方法とは異なり、RCAを標準装備で行うことができ、蛍光顕微鏡で容易に読み出すことができるため、いかなる特殊な計装も必要としないことが挙げられる。
【0024】
周知であるにもかかわらず、RCAは、本発明の方法の文脈において使用されたことがない。その代わりに、上記の考察から明らかなように、この分野の人々は、ddPCR及びDNAシーケンシングベースのアプローチ等の遺伝子編集事象を検出する、これまで以上に複雑な方法を開発することに焦点を当てていた。
【0025】
したがって、本発明者らのアプローチは、当該分野において展開されている開発の方向と概念的に異なるものであり、当該技術分野から論理的に従うものではない。本発明は、遺伝的編集手順の効率及び全体的な産物を決定するためのより良い方法を可能にし、実施例及び本明細書に示されるように、現在の方法と比較すると、以下を含むいくつかの驚くべき利点を提供する。
・使用の単純さ、
・低コスト、
・より短いターンアラウンドタイム、
・より高い感度、
・より高い特異性、及び
・特殊な技術ではなく、標準的な実験装置を使用する可能性。
【0026】
したがって、本発明のこの改善された方法は、この分野における重要な進展である。
【0027】
本発明の方法のステップ(i)は、遺伝的編集手順からの試料を提供することを伴う。
「遺伝的編集手順」とは、標的ポリヌクレオチド配列が、その分子中の1つ以上のヌクレオチド塩基の付加及び/又は欠失及び/又は変異によって「編集される」任意のそのような手順を含む。「遺伝的編集」という用語はまた、「ゲノム編集」及び「遺伝子編集」を包含する。ZFN、TALEN、及び現在人気のあるCRISPR/Cas9系を含むいくつかのゲノム編集ツールが開発されており、これらの編集ツールのそれぞれは、本明細書で「遺伝的編集手順」と称されるものに含まれる。
【0028】
遺伝的編集手順は、ポリヌクレオチド配列中の遺伝子材料が特定の位置で付加、除去、又は変更されることを可能にする。したがって、「遺伝的編集手順からの試料」には、得られたゲノム編集手順の産物を含有する試料を含む。理解されるように、そのような試料は、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含有し得る。更に、試料は、1つ以上の誤って編集済みのポリヌクレオチド配列も含有し得る。
【0029】
誤解を避けるために、本方法を使用して、試料が、100%の正しく編集済みのポリヌクレオチドを含有するかどうか、又は100%の未編集の(すなわち、0%の編集済みの)ポリヌクレオチドを含有するかどうか、又は100%の誤って編集済みのポリヌクレオチドを含有するかどうか、又はこれらの組み合わせであるかどうかを決定し得ることは本発明の範囲内であることが企図される。
【0030】
「ポリヌクレオチド配列」とは、鎖中のヌクレオチドモノマー、例えば、DNA及び/又はcDNA及び/又はRNAで構成される任意のバイオポリマーを含む。各ポリヌクレオチド配列は、試料中に、約0.1ng~約5000ng、例えば、約0.1ng~約2000ng、例えば、約1ng~約1000ngの量で存在し得る。換言すると、ステップ(ii)では、各ポリヌクレオチド配列は、約0.01ng/μL~500ng/μL、例えば、約0.05ng/μL~約250ng/μLの量で存在し得る。
【0031】
本発明の方法のステップ(ii)は、ローリングサークル増幅を実施して、試料中の1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成することを必要とする。
【0032】
ある実施形態では、本方法は、RCAの前に試料を調製するステップを含み、調製ステップは、試料からのDNA抽出、DNAの変性、続いてプローブハイドブリダイゼーション及びライゲーションを含む。
【0033】
ステップ(iii)に関連して、任意の単一分子検出方法を使用することができることが理解されるであろう。かかる単一分子検出方法は、蛍光顕微鏡法、例えば、落射蛍光顕微鏡法を含み得る。
【0034】
好ましくは、本発明の方法では、RCA産物は、検出可能な部分で標識される。
【0035】
ある実施形態では、検出可能な部分は、フルオロフォア、発色団及びナノ粒子からなるリストから選択することができ、好ましくはフルオロフォアから選択することができる。
【0036】
ある実施形態では、検出可能な部分は、シアニン3、シアニン5、Alexa Fluorファミリー色素(488及び750等)、フルオレセイン(FITC)、Attoファミリー色素(ATTO 550及びATTO 488等)、量子ドット、及び合成フルオロフォアからなるリストから選択される、スペクトル的に分離されたフルオロフォアであり得る。
【0037】
好ましい実施形態では、異なる検出可能な部分を使用して、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列から生成されたRCA産物、及び未編集のポリヌクレオチド配列から生成されたRCA産物を標識する。したがって、本発明のその実施形態では、RCA産物は、差次的に標識され、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は未編集のポリヌクレオチド配列からのRCA産物を互いに区別することが可能になる。
【0038】
更に、追加の検出可能な部分を使用して、試料中の誤って編集済みのポリヌクレオチド配列を標識してもよく、この検出可能な部分は、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び未編集のポリヌクレオチド配列を標識するために使用される部分とは異なる。
【0039】
好ましくは、本発明の方法では、ステップ(iii)は、ステップ(ii)で生成されたRCA産物を定量すること、並びに試料中の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は未編集のポリヌクレオチド配列の量を決定することを含む。正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び未編集のポリヌクレオチド配列は、互いに対して定量されてもよく、及び/又は誤って編集済みのポリヌクレオチド配列の総数も定量することによって試料中のポリヌクレオチド配列の総数に対して定量されてもよい。
【0040】
本発明の方法が、RCAを使用することによって、標的遺伝子編集効率の正確な定量及びその特定を可能にするこの実施形態では、本方法は、遺伝子編集部位特異的環状化オリゴヌクレオチド配列も使用し得る。
【0041】
ある実施形態では、RCA産物は、対照、未編集の遺伝子配列及び編集済みの配列に相補的な標識されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションすることによって、差次的に標識されてもよく、ハイブリダイゼーションのレベルは、配列の定量を可能にし、これは、次いで、編集効率の比率を決定することを可能にする。
【0042】
オリゴヌクレオチドは、フルオロフォア、化学発光標識、比色標識、リン光標識、及び量子ドット、金粒子、又は銀粒子等の粒子を含むが、これらに限定されない、種々のレポーター分子によって標識することができる。
【0043】
ある実施形態では、個々の環状化可能なプローブ又は環状化された遺伝子標的は、編集済みの遺伝子部位及び未編集の遺伝子部位を含むように設計又は選択される。上述のプローブ又は標的は、RCA反応のための基質である円形にライゲーションされ得る。個々の反応したプローブから得られたアンプリコンは、デジタル方式で差次的に標識され、定量されてもよい。対照/参照、編集済み及び未編集の標的部位プローブに由来するアンプリコンの比率を測定することによって、遺伝子編集技術の効率を計算し、高精度で編集自体を特定することが可能である。
【0044】
「RCA産物を定量すること」とは、デジタル方式で定量することを含む。
【0045】
特定の実施形態では、得られたRCA産物は、マイクロアレイ等の固体支持体上での固定、又は濾過膜上での濃縮によって、これらに限定されないが、増幅された単一分子検出を含む差次的検出を可能にする単一分子検出スキームによって検出され、定量され得る。
【0046】
定量は、蛍光顕微鏡を用いて、固定されたRCPを撮像することによって達成される。得られた画像は、トップハットフィルタリング、スポット登録、スポットサイズフィルタリング、及びスポット定量アルゴリズムを実行する画像処理ソフトウェアで処理される。ここで、各スポットは、標的分子から得られるRCPに対応する。個々のスポット又は陽性実体のこの計測は、本発明者らがデジタル定量と呼ぶものである。
【0047】
ある実施形態では、試料中のRCPの数は、1コピーより多く、例えば、10、100、200、400又は500コピーより多い。
【0048】
好ましい実施形態では、本方法は、試料中のポリヌクレオチド配列の総数を定量するステップを更に含む。
【0049】
「試料中のポリヌクレオチド配列の総数」とは、試料中の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列、未編集のポリヌクレオチド配列、及び誤って編集済みの配列を組み合わせた総数を含む。
【0050】
ある実施形態では、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列の総数を定量し、続いて、未編集のポリヌクレオチド配列の総数を定量し、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列の総数を定量し、かつ誤って編集済みのポリヌクレオチド配列の総数を定量し、その量を合計してもよい。各配列型の定量は、任意の順序で行われ得る。あるいは、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列、未編集のポリヌクレオチド配列、及び誤って編集済みのポリヌクレオチド配列の総数を定量し、同時に合計してもよい。
【0051】
好ましくは、本方法のステップ(ii)は、試料中のポリヌクレオチド配列から環状一本鎖ポリヌクレオチド基質を生成することを含み、環状一本鎖ポリヌクレオチド基質が、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列、及び未編集のポリヌクレオチド配列に特異的である。
【0052】
「環状一本鎖ポリヌクレオチド基質」とは、本明細書に記載のプローブ、続いてプローブハイブリダイゼーション及びライゲーションを使用して産生された基質を含む。
【0053】
より好ましくは、環状一本鎖ポリヌクレオチド基質は、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列を特異的に標的とする第1のオリゴヌクレオチドプローブ、及び未編集のポリヌクレオチド配列を特異的に標的とする第2のオリゴヌクレオチドプローブを使用して生成される。これは、一般的に、編集済み及び未編集の部位を標的とするプローブを使用することによって達成され、これらの部位は、それらのそれぞれの標的を発見したときのみ、円形になる。
【0054】
第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブが、パドロックプローブ、分子反転プローブ、ギャップ-フィルプローブ、スプリット様プローブ、ロータスプローブ、トリロックプローブ、又はこれらの組み合わせを含む群から選択されることが好ましい。
【0055】
ある実施形態では、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブは、未編集の検出に有利なパドロックプローブと、編集済みの検出に有利なオリゴヌクレオチドギャップフィルプローブとの組み合わせである。
【0056】
本明細書で使用される場合、「パドロックプローブ」という用語は、リンカーポリヌクレオチド配列によって接続された標的に相補的な2つのセグメントを有する一本鎖DNA分子を指す。相補的なセグメントがDNA標的にハイブリダイゼーションするとき、パドロックプローブは環状化する。
【0057】
ある実施形態では、環状オリゴヌクレオチドは、それらのそれぞれの標的上でのパドロックプローブの特異的ハイブリダイゼーション及びライゲーションによって生成される。ここで、上述のプローブは、対照、編集済み及び未編集の遺伝子配列を区別することを可能にする差次的配列を含有するように設計される。その後のRCA反応の後、元のプローブの複数の相補的なコピーが生成される。得られた単一分子アンプリコンは、各プローブ内で元々コードされたものに対応する標識されたオリゴヌクレオチドタグをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識され、それぞれ、対照、編集済み及び未編集の遺伝子配列部位に由来する差次的に標識されたアンプリコンの集団が生成される。
【0058】
「分子反転プローブ」という用語によって、本発明者らは、プローブがポリヌクレオチド断片にハイブリダイゼーションされたときに、相補的なセグメント間のギャップ中に捕捉された意図された標的とともに環状構造が形成されるように修飾されたパドロックプローブを指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ギャップ-フィルプローブ」という用語は、ハイブリダイゼーション後に遺伝子編集部位に隣接し、したがって編集部位上にギャップを残すように設計されたプローブアームを有するプローブに関する。
【0060】
ある実施形態では、RCAのための環状基質は、それらのそれぞれの標的上でのオリゴヌクレオチドギャップ-フィルプローブの特異的ハイブリダイゼーション及びライゲーションによって生成される。編集部位上のギャップは、ギャップ内に含まれる配列に相補的なオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及びライゲーションによって埋められ、したがって、環状オリゴヌクレオチド分子を形成する。その後のRCA反応の後、埋められたプローブの複数の相補的なコピーが生成される。得られた単一分子アンプリコンは、ギャップを元々埋めているものに対して、及びギャップ-フィルプローブのジョイントアームに対して相補的な標識されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識され、ここで、ギャップが埋められた標識された事象は、未編集の遺伝子配列に対応し、埋められていない事象は、編集済みの配列に対応する。
【0061】
「スプリット様プローブ」という用語とは、ポリヌクレオチド標的及びコネクター配列に対して部分的に相補的であるように設計された少なくとも2つの別個のプローブからなるプローブを指す。ポリヌクレオチド断片にハイブリダイゼーションすると、プローブは近接し、それらの骨格が、コネクター配列によって連結される。骨格中のニックは、リガーゼによって閉じることができ、一方で、ポリヌクレオチド標的部位中のニック又はギャップは、それぞれ、リガーゼ単独で、又はポリメラーゼと組み合わせて閉じることができる。
【0062】
「ロータスプローブ」という用語とは、すでに部分的に円形であるが、機能的環状オリゴヌクレオチド分子を形成するためのポリヌクレオチド標的配列の特異的ハイブリダイゼーションを必要とするプローブを指す。ハイブリダイゼーションした標的断片は、2つのニック部位、
又はリガーゼによって、若しくはポリメラーゼと組み合わせたギャップの場合に後で閉じることができるギャップを作製することができる。これらのプローブは、ダンベル形状であり、単一のプローブ又は複数の別個のプローブのいずれかからなる。
【0063】
「トリロックプローブ」という用語とは、4つの別個のプローブである共通の骨格プローブ、ポリヌクレオチド標的に部分的に相補的な2つのプローブ及び他のプローブに部分的に相補的であることによってそれら全てをまとめる「トリロックリンカー」からなるプローブを指す。ポリヌクレオチド標的に相補的な2つのプローブアームは、リガーゼで密封することができるニック部位を作成するために完全に一致するか、又はリガーゼによって密封される前にポリメラーゼによって埋められるギャップを作成することができる。
【0064】
「シーケンシングプローブ」という用語とは、骨格中のバーコードからなり、NGS化学と適合することによって進化するRCPのシーケンシングを可能にするプローブを指す。
【0065】
ある実施形態では、第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブは、それらの特異的標的ポリヌクレオチド配列の認識時に環状化する。
【0066】
環状化は、ポリヌクレオチド配列の末端(これらは、プローブ又は標的であり得る)が隣同士でハイブリダイゼーションし、円形を形成するときに起こる。次に、DNAリガーゼが、その末端を接続し、環状分子を完全に閉じる。ギャップフィルプローブ(別名分子反転プローブ)の場合、ポリメラーゼが、プローブの末端間にあるギャップを埋めた後に環状化が起こり、次いでリガーゼが両端を接続する。
【0067】
好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドプローブの環状化は、1つ以上のジョイニングプローブによって媒介及び/又は改善され、任意選択的に、1つ以上のジョイニングプローブが、セレクタープローブである。
【0068】
環状基質は、遺伝子編集部位領域を環状化することによって生成されてもよく、遺伝的編集手順からのポリヌクレオチド配列は、例えば、制限エンドヌクレアーゼによって断片化され、その後変性される。断片化領域の接続末端に相補的な、いわゆるセレクタープローブを使用して、遺伝子編集領域を環状化し得る。任意の非環状標的のエキソヌクレオチド分解消化の後、RCAを実施し、したがって、遺伝子編集済みのポリヌクレオチド配列の複数のコピーを生成する。
【0069】
「ジョイニングプローブ」とは、末端に対するテールの方式で違いに隣接してハイブリダイゼーションし、ライゲーション後に単一のDNA配列鎖を形成するプローブを含む。
【0070】
好ましい実施形態では、環状一本鎖ポリヌクレオチド基質は、第1のオリゴヌクレオチドプローブ及びその特異的標的ポリヌクレオチド配列のライゲーションによって、並びに第2のオリゴヌクレオチドプローブ及びその特異的標的ポリヌクレオチド配列のライゲーションによって形成され、任意選択的に、ライゲーションが、特定の分子内ライゲーション活性を有するリガーゼによって実施される。
【0071】
好ましい実施形態では、環状一本鎖ポリヌクレオチド基質のローリングサークル増幅は、標的配列によって、又は環状一本鎖ポリヌクレオチド基質に対して相補的である増幅プライマーによって開始される。
【0072】
ある実施形態では、RCAを実施するポリメラーゼは、RCAを開始するために3’OH末端を必要とする。この3’末端塩基は、円形に対して相補的であり得るため、円形をテンプレートとして使用する。ゲノムDNA中の配列を検出するとき、この3’末端は、円形に対して相補的ではなく、円形に結合した一本鎖DNAの長い伸張部が存在する。これにより、RCAを開始する2つの方法が得られる。
【0073】
RCAが、標的によって開始される場合、ポリメラーゼ自体は、円形に到達するまで、長いDNA伸張部を消化し、到達したら、円形に相補的な3’末端を発見し、次いで、RCAを開始することができる。RCAが、プライマーによって開始される場合、プライマーが円にハイブリダイゼーションされ、このハイブリダイゼーションが、この3’末端を生成し、次いでRCAを開始することができる。
【0074】
「増幅プライマー」とは、環状テンプレートに完全に相補的であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0075】
ある実施形態では、プライマーは、エキソヌクレアーゼ活性からプライマーを保護する部分で修飾することができる。そのような部分は、オルトメチルRNA塩基及びアルファ-チオールリン酸結合からなる群から選択することができる。
【0076】
好ましくは、検出可能な部分は、フルオロフォア、発色団、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0077】
上述したように、RCAステップの後、RCA産物は、液体試料中に存在する。本発明の特に好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、RCA産物を表面上に固定することを含む。
【0078】
例えば、RCA産物は、上述の表面との静電相互作用、共有結合相互作用、又は立体相互作用によって表面上に固定され得る。
【0079】
あるいは、RCA産物を磁気ビーズに結合させて、ビーズに結合したRCA産物を提供し、RCA産物を表面上に固定するために、ビーズに結合したRCA産物を上述の表面上に引き付けるように磁気源を提供してもよい。
【0080】
磁気ビーズは、約10nm~約5μm、例えば、約10nm~約2μm、例えば、約500nm~約2μmの平均サイズを有し得る。この観点で、磁気ビーズは、約10nm~約5μm、例えば、約10nm~約2μm、例えば、約500nm~約2μm、又は約50nm~約200nmの平均直径を有し得る。
【0081】
別の実施形態では、表面は、ガラス表面又は多孔質膜である。
【0082】
ある実施形態では、多孔質膜は、濾過膜、例えば、多孔質親水性膜である。
【0083】
ある実施形態では、RCA産物は、液体試料を多孔質膜を通って濾過することによって固定される。液体試料は、重力濾過によって、真空ポンプの適用によって、又は毛細管力によって、多孔質膜を通って引き出され得る。
【0084】
ある実施形態では、液体試料は、多孔質膜の一方の側に液体試料を施し、多孔質膜の他方の側に吸収層を施して、吸収層及び多孔質膜を液体接続及び液体試料からの液体に入れることによって、毛細管力によって多孔質膜を通って引き出される。
【0085】
誤解を避けるために、多孔質膜は、液体試料中の液体に対して透過性であるが、RCA産物に対して実質的に不透過性である。
【0086】
本明細書で使用される「毛細管力」という用語とは、膜の表面上にRCA産物を固定するように、多孔質膜を通って液体を吸引するか、又は吸い込むことを指す。
【0087】
ある実施形態では、多孔質膜の領域は、光学検出デバイスの単一視野に対応する。
【0088】
ある実施形態では、多孔質膜は、約0.01μm~約100μm、例えば、約0.05μm~0.5μm、例えば、約0.07μm~約0.2μmの厚さを有するか、又は濾過膜は、約0.1μmの厚さを有する。
【0089】
別の実施形態では、多孔質膜は、約2~約20mm2、例えば、約5~約15mm2、例えば、約5~約10mm2の表面積を有する。
【0090】
更なる実施形態では、多孔質膜は、実質的に環状の形状、例えば、環状の形状であり、多孔質膜は、約0.1~約10mm、例えば、約0.5mm~約10mm、例えば、約1mm~約5mm、若しくは約1mm~約3mmの範囲の直径を有するか、又は濾過膜は、約2mmの直径を有する環状である。
【0091】
ある実施形態では、RCA産物がガラス表面上に固定されるとき、ガラス表面は、RCA産物と相互作用するように修飾される。
【0092】
ある実施形態では、ガラス表面は、正に帯電したホモポリマー、例えば、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン又はアミノシランで修飾され得る。
【0093】
RCA産物はまた、ビオチン修飾dNTPをRCA反応混合物に導入することによって、ビオチンなどの親和性分子を含有し得る。ビオチン化RCA産物を、ストレプトアビジンで修飾されたガラス表面上に固定することができる。
【0094】
別の実施形態では、液体試料中のRCA産物を、試料を顕微鏡の単一視野に濃縮するように、マイクロ流体チャネルを通って流す。液体の流れは、ポンプシステムの使用によって達成されてもよく、又は流れは、受動的に達成され得る。この濃縮ステップは、マイクロ流体濃縮と呼ばれ得る。
【0095】
RCA産物の濃縮/固定は、現在知られている手順と比較して、使用されるポリヌクレオチドの量/濃度を低くすることを可能にする。使用可能なポリヌクレオチドの特定の量/濃度は、上に概説されている。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、顕微鏡法によってRCA産物を検出することを含み、任意選択的に、顕微鏡法が、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、ステップ(iii)は、DNAシーケンシングによってRCA産物を検出することを含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、「DNAシーケンシング」という用語は、ライゲーションによるシーケンシング、合成によるシーケンシング、又はハイブリダイゼーションによるシーケンシング、並びにSanger又は次世代シーケンシングなどのシーケンシング技術を指す。そのような方法は、分子生物学の分野の当業者には周知である。
【0099】
好ましくは、遺伝的編集手順の効率は、試料中の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び未編集のポリヌクレオチド配列の相対量に基づいて決定される。
【0100】
例えば、正しく編集済みのポリヌクレオチド配列の数は、残りが未編集の配列に関連する対照と比較して決定することができる。編集済みの配列及び未編集の配列を合わせた総数は100%に等しくない場合には、この違いは、誤った編集又は予期しない編集に起因する可能性がある。
【0101】
ある実施形態では、遺伝的編集手順の効率は、編集されるのと同じポリヌクレオチドを標的とするが、編集される位置とは異なる位置にある検出可能な部分を付加することによって決定することができる。
【0102】
これにより、遺伝子が編集され得るが、正しい配列によっては編集されない方法に依存して、方法の効率の正確な定量が可能になる。したがって、検出可能な部分は、理論的には、編集されるポリヌクレオチド上の異なる位置に結合するため、試料中の全てのポリヌクレオチド配列に結合し、したがって、配列の総数を決定することを可能にする。編集済みの配列及び未編集の配列を標的とする部分は、正しく編集済みの配列及び未編集の配列の総数を定量し、一方で、ポリヌクレオチド配列の総数と、正しく編集済みの配列及び未編集の配列の組み合わせとの間の差によって、誤って編集済みの配列の定量を可能にする。
【0103】
この対照プローブを含めることで、ddPCR及びqPCR等の他のより高価で複雑な方法に依存することなく、効率の非常に正確な分析が可能になる。
【0104】
更なる態様では、本発明は、遺伝的編集手順の産物を特定するための方法を提供し、本方法は、
(i)遺伝的編集手順からの試料を提供するステップであって、試料が、1つ以上の正しく編集済みのポリヌクレオチド配列及び/又は1つ以上の未編集のポリヌクレオチド配列を含む、提供するステップ、
(ii)ローリングサークル増幅を実施して、試料中の1つ以上のポリヌクレオチド配列からRCA産物を生成するステップ、及び
(iii)ステップ(ii)で生成されたRCA産物の存在に基づいて、遺伝的編集手順の産物を決定するステップ、を含む。
【0105】
更なる態様では、本発明は、遺伝的編集手順の産物を特定するための、及び/又は遺伝的編集手順の効率を決定するための、ローリングサークル増幅の使用を提供する。
【0106】
特定の値(例えば量)に関連して本明細書で使用される場合、「約」という用語(又は「およそ」等の同様の用語)は、そのような値が定義された値の最大10%まで(特に、最大5%、例えば、最大1%まで)変化し得ることを示すものとして理解される。各場合において、そのような用語は、「±10%」等の表記で(又は、関連する値に基づいて計算された特定の量の変動を示すことによって)置き換えられてもよいことが企図される。また、各場合において、そのような用語は削除されてもよいことが企図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】遺伝子編集効率及び特異性を事前スクリーニングするために利用可能な異なる方法のワークフローの比較である。
【
図2】編集効率を定量し、ローリングサークルアンプロンを定量することによって編集を特定するための方法の概略図である。
【
図3】遺伝子編集部位を標的とするパドロックプローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図4】遺伝子編集部位を標的とするギャップ-フィルプローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図5】遺伝子編集断片配列を標的とするセレクタープローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図6】単一ヌクレオチド多型部位のためのスプリントプローブ、パドロックプローブ、インベーダープローブ又はスプリントプローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図7】遺伝子編集断片配列を標的とするロータス又はロータス様プローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図8】遺伝子編集断片配列を標的とするトリプルスプリットプローブを使用してRCAのための環状テンプレートを生成する設計及び原理の概略図である。
【
図9】編集効率を定量し、ローリングサークル増幅アンプロンの次世代シーケンシングによる編集を特定するための方法の概略図である。
【
図10】目的の遺伝子の存在下及び非存在下で生成されたRCPである。目的の遺伝子の存在下でのみ、RCPが生成され、蛍光顕微鏡下で明るい蛍光実体として見ることができる。スケールバー=10μm。
【
図11】RCPのマイクロ流体濃縮である。目的の遺伝子が存在する試料においてのみ、蛍光顕微鏡下でRCPを観察することができる。白色の矢印は、個々のRCPを指す。スケールバー=10μm。
【
図12A】3つの遺伝子の多重化された定量を示す、目的の領域の例示的な画像である。合成画像は、3色全てを示し、第2の行は、各チャネルの分解画像と、RCPの例示的な位置を示す矢印を示す。
【
図12B】記載された方法を使用して、同じ遺伝子コピー数を有する3つの異なる遺伝子をデジタル定量化するという概念を示すグラフである。2つの個々の測定値の平均及び対応する標準偏差が示される。
【
図13A】様々なヒトDNAインプット及び対照としての一定のマウスDNAを有する試料からのRCPの定量を示すグラフである。
【
図13B】Aからのデータを、観察されたRCP比に対する予想値/理論値の割合(%)として示すグラフである。純粋なヒトDNAインプットを参照(100%理論値及び100%観察値)としてとり、そのRCPカウントに関連する様々なインプットをとった。2つの個々の測定値の平均及び対応する標準偏差が示される。
【
図13C】ヒトDNAインプットを減少させるためのRCP量の減少を示す、目的の領域の例示的な画像。スケールバーは20μmに対応する。
【
図14A】パドロックプローブ及びRCAを使用して単一ヌクレオチドを区別する方法の特異性を示すグラフ。2つの個々の測定値の平均及び対応する標準偏差が示される。
【
図14B】両方の場合(完全一致及び1ヌクレオチド不一致)における参照遺伝子からのRCPの存在、並びに1ヌクレオチド不一致の場合におけるRCPの不存在を示す、例示的な目的の領域。スケールバーは20μmに対応する。
【
図15】異なる生物からのポリヌクレオチド配列を定量する方法の能力を示すグラフであり、パドロックプローブ設定も示しており、参照は、未編集配列と同じレベルの事象を示す(参照と未編集の棒グラフを比較する)。編集事象の場合、未編集に対する参照又は未編集に対する対照の比率は、編集レベルに関する結論を引き出すことを可能にする。2つの個々の測定値の平均が示される。
【0108】
図では、以下の参照番号が使用されている。
【符号の説明】
【0109】
1.対照配列
2.未編集の配列部位
3.編集済みの配列部位
4.対照配列のためのパドロックプローブ
5.未編集の配列のためのパドロックプローブ
6.編集済みの配列のためのパドロックプローブ
7.対照配列のためのギャップ-フィルプローブ
8.未編集の配列のためのギャップ-フィルプローブ
9.編集済みの配列のためのギャップ-フィルプローブ
10.対照配列のためのSelectorプローブ
11.未編集の配列のためのセレクタープローブ
12.編集済みの配列のためのセレクタープローブ
13.ギャップ-フィルプローブハイブリダイゼーション部位
14.単一ヌクレオチド多型部位(N)を有する標的鎖
15.ライゲーション部位
16.単一ヌクレオチド多型部位検出のためのDNA塩基を3’末端に有するパドロックプローブ
17.単一ヌクレオチド多型部位検出のための代替のインベーダープローブ
18.インベーダーフラップ
19.置き換えられたインベーダーフラップ
20.単一ヌクレオチド多型部位検出のための従来のインベーダープローブ
21.単一ヌクレオチド多型部位検出のためのRNA塩基を3’末端に有するスプリントプローブ
22.スプリントライゲーション部位
23.直接ライゲーションのためのニック、又はライゲーションに続く埋め込みのためのギャップ
24.ロータスプローブ
25.ポリヌクレオチド標的配列
26.トリロックプローブ
27.トリロックリンカー
28.NGS化学と互換性のあるプローブ特異的バーコードを有するシーケンシングプローブ
29.単一ヌクレオチド多型を有するポリヌクレオチド配列
【発明を実施するための形態】
【0110】
特定の実施形態では、本発明の方法は、標的化遺伝子編集方法の効率の定量、並びにそれらの遺伝子編集の特定を可能にし、特に、プローブ又は標的環状化によって生成される環状オリゴヌクレオチド基質、及びその後のローリングサークル増幅(RCA)を使用することを可能にする。
【0111】
図2、3、4、5、6、7、8、及び9に示される概略図を参照すると、本明細書の方法は、対照遺伝子配列(1)、未編集の標的部位配列(2)及び編集済みの標的部位配列(3)から差次的に標識され、増幅された単一分子の集団を生成し、定量することを含む。個々の集団からの標識されたアンプリコンの比率を定量し、計算することによって、遺伝子編集技術の効率を高精度で測定することができる。特に、アンプリコンは、非常に特異的な多重標的配列認識反応によって生成された環状オリゴヌクレオチド基質のローリングサークル増幅反応によって生成される。
【0112】
図3に示される特定の方法では、環状オリゴヌクレオチドは、それらのそれぞれの標的上でのいわゆるパドロックプローブの特異的ハイブリダイゼーション及びライゲーションによって生成される。ここで、上述のプローブは、対照、編集済み及び未編集の遺伝子配列を区別することを可能にする差次的配列を含有するように設計される。その後のRCA反応の後、元のプローブの複数の相補的なコピーが生成される。得られた単一分子アンプリコンは、各プローブ内で元々コードされたものに対応する標識されたオリゴヌクレオチドタグをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識される。これにより、それぞれ、対照、編集済み及び未編集の遺伝子配列部位に由来する差次的に標識されたアンプリコンの集団が生成される。
【0113】
図4に示される本発明による別の特定の方法では、RCAのための環状基質は、それらのそれぞれの標的上でのいわゆるオリゴヌクレオチドギャップ-フィルプローブの特異的ハイブリダイゼーション及びライゲーションによって生成される。ここで、上述のプローブアーム(i)は、ハイブリダイゼーション後に遺伝子編集部位に隣接するように設計されており、したがって、編集部位上にギャップを残す。上述のギャップは、ギャップ内に含まれる配列に相補的なオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及びライゲーションによって埋められ、したがって、環状オリゴヌクレオチド分子を形成する。その後のRCA反応の後、埋められたプローブの複数の相補的なコピーが生成される。得られた単一分子アンプリコンは、ギャップを元々埋めているものに対して、及びギャップ-フィルプローブのジョイントアームに対して相補的な標識されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識される。ここで、ギャップが埋められた標識された事象は、未編集の遺伝子配列に対応し、埋められていない事象は、編集済みの配列に対応する。
【0114】
図4に示される本発明による方法の別の実施形態では、RCAのための環状基質は、それらのそれぞれの標的上でのいわゆるギャップ-フィルプローブの特異的ハイブリダイゼーション、ライゲーション及び重合によって生成される。ここで、上述のプローブアーム(i)は、ハイブリダイゼーション後に遺伝子編集部位に隣接するように設計されており、したがって、編集部位上にギャップを残す。上述のギャップは、ポリメラーゼ及びリガーゼの協調作用による重合及びライゲーションによって埋められ、したがって、環状オリゴヌクレオチド分子を形成する。その後のRCA反応の後、埋められたプローブの複数の相補的なコピーが生成される。得られた単一分子アンプリコンは、予想されたギャップ配列に対して、及びギャップ-フィルプローブのジョイントアームに対して相補的な標識されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識される。ここで、ギャップが埋められた標識された事象は、未編集の遺伝子配列に対応し、埋められていない事象は、編集済みの配列に対応する。
【0115】
図5に示される本発明による本発明の方法の別の実施形態では、環状基質は、遺伝子編集部位領域を環状化することによって生成され、編集済みの細胞からのゲノムDNAは、例えば、制限エンドヌクレアーゼによって断片化され、その後に変性される。断片化された遺伝子領域の接続末端に相補的な、いわゆるセレクタープローブを使用して、遺伝子編集済みの領域を環状化する。非環状標的のエキソヌクレオチド分解消化の後、RCAを実施し、このようにして、遺伝子編集済みの領域の複数のコピーを生成する。得られた単一分子アンプリコンは、対照、未編集の遺伝子配列及び編集済みの配列に相補的な標識されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションすることによって差次的に標識され、このようにして、これを定量して、編集効率の比率を決定する。
【0116】
図6に示される本発明による本発明の方法の別の実施形態では、単一ヌクレオチド多型を有するポリヌクレオチド標的配列を、3’末端に特異的塩基を有するパドロックプローブ(16)、代替的なインベーダープローブ(17)、従来のインベーダープローブ(20)又はスプリントプローブ(21)によって標的化することができる。この設計は、完全に一致する配列の場合にのみ、これらのプローブをライゲーションすることができ、非常に近いポリヌクレオチド配列を区別することができるため、高い特異性を提供する。
【0117】
図7に示される本発明による方法の別の実施形態では、ポリヌクレオチド標的配列は、その後にそれぞれのロータスプローブにハイブリダイゼーションすることができる特異的断片に断片化され、次いで、ニックをリガーゼで密封した後、又はギャップ-フィル機構を使用して、環状化させ、RCA反応のためのテンプレートとして機能することができる。
【0118】
図8に示されるように、本発明の方法の別の実施形態では、トリロックプローブを使用して、ポリヌクレオチド配列に特異的に結合することによって環状基質を生成する。ポリヌクレオチド標的に相補的な2つのプローブアームは、リガーゼで密封することができるニック部位を作成するために完全に一致するか、又はリガーゼによって密封される前にポリメラーゼによって埋めることができるギャップを作成し、その後に、RCA反応のためのテンプレートとして機能することができる。
【0119】
図9に示される本発明による別の実施形態では、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、及び
図8に提示されるプローブは、NGSケミストリーと互換性のあるバーコードを含むように設計されている。これにより、生成されたRCPを、直接測定によってだけではなく、DNAシーケンシングによっても特定し、定量することが可能である。
【0120】
特定の実施形態では、本方法は、以下のステップを有していてもよい。
・遺伝子編集実験に供された試料からのDNA抽出
・DNA変性
・プローブハイブリダイゼーション及びライゲーション(これは、対照、編集済み及び未編集のためのプローブを含む混合物である)
・RCA
・RCP標識
・膜中のRCP固定
・蛍光顕微鏡法
・画像処理及び結果のスポットの定量
【0121】
配列
配列番号1
パドロックプローブRPP 30
PO4-TTGTTGAGTGTTGGCGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCG TCGCGTGCATAACCAGGCCA
配列番号2
検出オリゴヌクレオチド
TCCTCAGTAATAGTGTCTTACTTTT-Cy3
配列番号3
パドロックプローブGAPDH
PO4- AAGGGTGCAGCTGAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGAGCGTTTTCTCCCTA
配列番号4
パドロックプローブNRXN1 未編集
PO4-CGGCGGCCGCCTGCAGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATGCTGATTCTGACGCG
配列番号5
パドロックプローブNRXN1 参照
PO4-AATAAGGGTCCCGAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACAGAGAGTAGTACTTCCGACTACACCGTGACGAAGA
配列番号6
捕捉オリゴヌクレオチド
ビオチン-TTTTTCCTCAGTAATAGTGTCTTAC
配列番号7
検出オリゴヌクレオチドCY3
ATTTAGCATACATCGTCGCG-CY3
配列番号8
検出オリゴヌクレオチドFITC
GGGCCTTATTCCGGTGCTATTTTTT-FITC
配列番号9
パドロックプローブACTB 参照
PO4-TTGTAGAAGGTGTGGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATGCCACACGCAGCTCA
配列番号10
パドロックプローブACTB 編集済み
PO4-CCTTCACCGTTCCAGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGAACCGACTGCTGTCA
配列番号11
パドロックプローブNRXN1 SNP
PO4-CGGCGGCCGCCTGCAGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATGCTGATTCTGACGCT
配列番号12
パドロックプローブMe28S:A2486 参照
PO4-TCAACACCGCTGGCAGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACGGGCCTTATTCCGGTGCTATCGGAGACAGAGAGCT
配列番号13
パドロックプローブACTB 参照2
PO4-TTGTAGAAGGTGTGGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACAGAGAGTAGTACTTCCGACTGCCACACGCAGCTCA
配列番号14
パドロックプローブACTB 参照mut
PO4-TTGTAGAAGGTGTGGGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGGCCACACGCAGCTCG
配列番号15
検出オリゴヌクレオチドAtto647
AGAGAGTAGTACTTCCGACT-Atto647
配列番号16
外部プライマー
TACTGAGGAGCTGCATAC*A*C
塩基の前の「*」は、ホスホロチオエート修飾を示す
【実施例】
【0122】
実施例1
ヒトDNAからのRCPの生成
図2及び3に示されるRCPは、パドロックプローブライゲーション反応を使用して、ヒトDNAから生成された。このために、1μgのヒトDNA(Sigma Aldrich)を、1×CutSmart緩衝液(NEB)中の10UのMscI(NEB)を使用して、37℃で30分間、合計10μLで断片化した。
【0123】
その後、反応物を不活性化し、反応物を10分間で95℃まで加熱することによってDNAを変性させた後、氷上で急速冷却した。次に、20μLの最終体積で、100pM(の各々の)パドロックプローブ(PO4-TTGTTGAGTGTTGGCGTGTATGCAGCTCCTCAGTAATAGTGTCTTACATTTAGCATACATCGTCGCGTGCATAACCAGGCCA、配列番号1)(IDT)、Tthリガーゼ緩衝液(20mM Tris-HCl(pH 8.3)(Thermo Fisher Scientific)、25mMのKCl(Thermo Fisher Scientific)、10mMのMgCl2(Thermo Fisher Scientific)、0.5mMのNAD(Thermo Fisher Scientific)、0.01%のTriton(登録商標)X-100(Sigma Aldrich))、0.2μg/μLのBSA(Thermo Fisher Scientific)、0.68mMのATP(Thermo Fisher Scientific)、及び5UのTthのDNAリガーゼ(Blirt S.A)で構成されたライゲーション混合物を調製した。混合物を95℃で1分間、続いて50℃で40分間インキュベートした。この反応から得られた円形を、30μLの総体積で、0.2μg/μLのBSA、125μMのdNTP(Thermo Fisher Scientific)及び8Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Monserate)を含有するphi29 DNAポリメラーゼ緩衝液(50mMのTris-HCl(pH8.3)、10mMのMgCl2、10mMの(NH4)2SO4)中で混合した。増幅混合物を37℃で3時間インキュベートし、続いて65℃で2分間インキュベートした。5nMの検出オリゴヌクレオチド(TCCTCAGTAATAGTGTCTTACTTTT-Cy3、配列番号2)(IDT)を含有する30μLのハイブリダイゼーション緩衝液(1.4MのNaCl(KI Substrat)、0.01%のTWEEN 20(Sigma Aldrich)、20mMのTris-HCl(pH 8)及び20mMのEDTA(KI Innovation))を75℃で2分間、及び55℃で15分間添加することによって、RCPを蛍光標識した。
【0124】
スライドでのRCP検出
RCPを可視化するために、10μLのハイブリダイゼーション反応物を、Superfrostスライド(ThermoFisher)の上に置き、24×24mmのMenzel Glaserカバースリップ(VWR)を使用して表面上に広げた。スライドを室温で5分間インキュベートし、RCPをスライドに付着させた。インキュベーション後、24×24mmのカバースリップ内の5つの視野を、0.75×0.75μmの視野を有する20倍対物レンズを備えたZeiss Axio Imager Z2落射蛍光顕微鏡で撮像した。得られたRCPを、CellProfilerソフトウェアを使用して、カスタム構築されたパイプラインを使用して定量した。例示的な画像を
図10に示す。
【0125】
濃縮試料分析デバイスでのRCP検出
図3の濃縮に使用される試料分析デバイスは、Aline,Inc.(U.S.)によって製造された。濾過膜は、0.1μmの孔径を有するProtran(商標)NC Nitrocellulose膜(GE Healthcare Lifesciences)であり、吸収層は、セルロース繊維試料パッドシート(Meck-Millipore)であり、スペーシング層は、感圧性接着剤(Aline)の形態であり、液体不透過性層は、ポリエチレンテレフタレート(Aline)であった。試料収容ウェルは、直径が1.5mmであった。試料分析デバイスは、標準的な顕微鏡スライドの寸法が25×75mmであり、試料分析デバイスの上に10個の試料収容ウェルが整列されるように製造された。直径1.5mmの試料分析デバイスに埋め込まれた試料収容ウェルに、RCPの標識希釈液を施した。10μLの標識RCPを試料収容ウェルに施した。施された液体試料は、試料収容ウェルの上部に大きな液滴を形成させた。およそ4分後、全ての液体試料を、フィルター膜を通して吸い取った。試料収容ウェルを、0.75×0.75μmの視野を有する20倍対物レンズを備えたZeiss Axio Imager Z2落射蛍光顕微鏡で撮像した。得られたRCPを、CellProfilerソフトウェアを使用して、カスタム構築されたパイプラインを使用して定量した。例示的な画像を
図11に示す。
【0126】
実施例2
本発明の原理及び分析能力
この実施例は、本発明を使用して、試料中に存在する配列の数をデジタル的に決定する原理及び分析能力を実証する。この実施例を
図12に示す。
【0127】
RCPの生成
図12のために生成されたRCPは、条件にわたって一定量(1μg)のマウスDNAを含み、及びヒトDNAの量を減少させた(それぞれ、1μg、500ng、100ng及び1ng)ヒト及びマウスDNAから調製された。このために、ヒト(Sigma Aldrich)及びマウス(Sigma Aldrich)DNAを、37℃で5分間、1×Tth緩衝液(Blirt)中の15UのAluI(NEB)を使用して、合計20μLで断片化した。次に、30μLの最終体積で、1nM(の各々の)パドロックプローブ(配列番号3、配列番号4、配列番号5)(IDT)、Tthリガーゼ緩衝液(Blirt)及び7.5UのTth DNAリガーゼ(Blirt)で構成されたライゲーション混合物を調製した。混合物を98℃で10分間、続いて55℃で45分間インキュベートした。この反応から得られた円形を、40μLの総体積で、24UのExonuclease I(NEB)、0.8mMのdNTP、5nMの外部プライマー(配列番号16)(IDT) 6μgのBSA(Thermo Fisher Scientific)及び12Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Blirt)を含むTth緩衝液(Blirt)中で混合した。増幅混合物を37℃で3時間インキュベートし、続いて65℃で2分間インキュベートした。
【0128】
RCPの標識
5nM(の各々の)検出オリゴヌクレオチド(配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号15)(IDT)を含有する10μLのハイブリダイゼーション緩衝液(0.7MのNaCl(KI Substrat)、0.005%のTWEEN 20(Sigma Aldrich)、10mMのTris-HCl(pH8)及び10mMのEDTA(KI Substrat))を75℃で2分間、及び55℃で20分間添加することによって、RCPを蛍光標識した。
【0129】
ビーズ上のRCPの捕捉
得られた標識されたRCPを、Dynabeads(商標)MyOne(商標)Streptavidin T1(Thermo Fisher Scientific)上で捕捉した。Dynabeads(商標)MyOne(商標)Streptavidin T1ビーズは、1μmの直径を有する超常磁性ビーズである。このために、ビーズを製造業者の指示に従って調製し、その後、0.125μg/μLの濃度でRCP溶液に添加した。捕捉反応物を37℃で20分間インキュベートし、その後、ビーズを洗浄緩衝液中で1回洗浄し、同じ緩衝液に再懸濁させた。
【0130】
RCPの撮像
得られたビーズに結合したRCPを可視化するために、10μLの捕捉反応物をSuperfrostガラススライド(Thermo Fisher Scientific)上に置いた。2mmの円形磁石(Supermagnete)を、細胞カウンタースライド(Bio-Rad)に取り付け、ビーズに結合したRCPを小さな表面積上に局所的に濃縮させた。スライドを室温で5分間インキュベートし、ビーズを濃縮した。インキュベーション後、スライドを、20倍対物レンズ及び0.65×0.65μm2の視野を有するOlympus IX73倒立蛍光顕微鏡で撮像した。
【0131】
RCP定量
得られた画像を、CellProfilerソフトウェア中のカスタム作製されたパイプラインを使用して分析した(バージョン4.1.3、https://cellprofiler.org、Broad Instituteによるものであり、最初にLamprecht et al.CellProfiler:free,versatile software for automated biological image analysis,Biotechniques(2007);42(1):71-75)によって公開された)。パイプラインは、手動しきい値設定による画像強調及びオブジェクト特定で構成されていた。
【0132】
結論として、その結果は、本方法が、パドロックプローブ及びRCAを使用して、目的の遺伝子の存在及び量を正しく定量する能力を確認するものである。この実施例では、3つの遺伝子は全て、ゲノム中に1つの対立遺伝子を有しており、したがって、同様の数のRCP/事象を示すはずである。これはまさに、
図12のグラフが示すものである。
【0133】
実施例3
本発明の分析能力
この実施例は、本発明を使用して、複雑な試料中に存在する目的の配列の割合を決定する分析能力を実証する。この実施例を
図13に示す。
【0134】
RCPの生成
図13のために生成されたRCPは、条件にわたって一定量(1μg)のマウスDNAを含み、及びヒトDNAの量を減少させた(それぞれ、1μg、500ng、100ng及び1ng)ヒト及びマウスDNAから調製された。このために、ヒト(Sigma Aldrich)及びマウス(Sigma Aldrich)DNAを、37℃で5分間、1×Tth緩衝液(Blirt)中の15UのAluI(NEB)を使用して、合計20μLで断片化した。次に、30μLの最終体積で、1nM(の各々の)パドロックプローブ(配列番号9、配列番号10)(IDT)、Tthリガーゼ緩衝液(Blirt)及び7.5UのTth DNAリガーゼ(Blirt)で構成されたライゲーション混合物を調製した。混合物を98℃で10分間、続いて55℃で45分間インキュベートした。この反応から得られた円形を、40μLの総体積で、24UのExonuclease I(NEB)、0.8mMのdNTP、5nMの外部プライマー(配列番号16)(IDT) 6μgのBSA(Thermo Fisher Scientific)及び12Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Blirt)を含むTth緩衝液(Blirt)中で混合した。増幅混合物を37℃で3時間インキュベートし、続いて65℃で2分間インキュベートした。
【0135】
RCPの標識
5nM(の各々の)検出オリゴヌクレオチド(配列番号6、配列番号7、配列番号8)(IDT)を含有する10μLのハイブリダイゼーション緩衝液(0.7MのNaCl(KI Substrat)、0.005%のTWEEN 20(Sigma Aldrich)、10mMのTris-HCl(pH8)及び10mMのEDTA(KI Substrat))を75℃で2分間、及び55℃で20分間添加することによって、RCPを蛍光標識した。
【0136】
捕捉、撮像、及び定量は、実施例2に記載されるように行った。
【0137】
結論として、観察されたRCPの数には、ヒト参照及び異なる希釈液、理論的に期待される比率(パーセント単位)との間の比率として、強い相関関係及び一致が存在する。その結果は、デジタルPCR等の競合方法と比較したときに、DNA配列の存在又は不存在をデジタル的に定量するための単純化された方法である。
【0138】
実施例4
特異性の観点からの本発明の分析能力
この実施例は、本発明を使用して単一ヌクレオチドの差を区別する特異性の観点からの分析能力を実証する。この実施例を
図14に示す。
【0139】
RCPの生成
図14のために生成されたRCPを、1μgのヒトDNA(Sigma Aldrich)から調製した。このために、ヒトDNAを、37℃で5分間、1×Tth緩衝液(Blirt)中の15UのAluI(NEB)を使用して、合計20μLで断片化した。次に、20μLの最終体積で、1nMのパドロックプローブ(配列番号3)、及び完全一致としての1nMのパドロックプローブ(配列番号4)、又は3’末端での1ヌクレオチド不一致としての1nMのパドロックプローブ(配列番号11)(IDT)のいずれか、Tthリガーゼ緩衝液(Blirt)及び5UのTth DNAリガーゼ(Blirt)で構成されたライゲーション混合物を調製した。混合物を55℃で20分間インキュベートした。この反応から得られた円形を、30μLの総体積で、6μgのBSA、0.8mMのdNTP(Thermo Fisher Scientific)、5nMの外部プライマー(配列番号16)(IDT)及び12Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Blirt)を含有するphi29 DNAポリメラーゼ緩衝液(Blirt)中で混合した。増幅混合物を37℃で2時間インキュベートし、続いて65℃で2分間インキュベートした。
【0140】
RCPの標識
5nMの検出オリゴヌクレオチド(配列番号6、配列番号7、配列番号8)(IDT)を含有する30μLのハイブリダイゼーション緩衝液(0.7MのNaCl(KI Substrat)、0.005%のTWEEN 20(Sigma Aldrich)、10mMのTris-HCl(pH8)及び10mMのEDTA(KI Substrat))を75℃で2分間、及び55℃で20分間添加することによって、RCPを蛍光標識した。
【0141】
捕捉、撮像、及び定量は、実施例2に記載されるように行った。
【0142】
結論として、その結果は、標的配列中の単一ヌクレオチドの差を区別することができることによって、パドロックプローブベースのアプローチの高い特異性を確認するものである。単一ヌクレオチドの差がある場合、パドロックプローブは、ライゲーションされず、その後のRCA反応のための環状テンプレートになることができない。これにより、標的化進化又は遺伝子疾患が研究されている遺伝子編集に特に有用な方法となる。高い特異性により、この方法は、単一ヌクレオチド間の分化がプライマー最適化を必要とすることが多いPCRベースのアプローチよりも特に優れている。
【0143】
実施例5
異なるDNA源の定量
この実施例は、目的の生物又は遺伝子とは無関係にDNAを定量する能力を実証した。ここでは、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、HEK細胞、及びヒトバフィーコートからのDNAを例として使用した。この実施例を
図15に示す。
【0144】
RCPの生成
図15で生成したRCPを、異なる供給源、すなわち、Drosophila melanogaster、HEK細胞、及びヒトバフィーコートDNA(Sigma Aldrich)から調製した。各反応を、異なる供給源及び生物からのRCA産物を生成し、定量するための提示された技術の能力を実証するために、別個の実験で実施した。このために、DNAを、37℃で15分間、1×Tth緩衝液(Blirt)中の15UのAluI(NEB)を使用して、合計20μLで断片化した。次に、ライゲーション混合物を調製した。その混合物は、30μLの最終体積で、Tthリガーゼ緩衝液(Blirt)及び7.5UのTth DNAリガーゼ(Blirt)中、それぞれ、HEK細胞及びバフィーコートDNAについて、1nM(の各々の)パドロックプローブ(配列番号4、配列番号5、配列番号1)(IDT)、及びDrosophilaからのDNAについて、1nMのパドロックプローブ(配列番号12、配列番号13、配列番号14)で構成されていた。混合物を98℃で10分間、続いて55℃で45分間インキュベートした。この反応から得られた円形を、40μLの総体積で、24UのExonuclease I(NEB)、0.8mMのdNTP、5nMの外部プライマー(配列番号16)(IDT) 6μgのBSA(Thermo Fisher Scientific)及び12Uのphi29 DNAポリメラーゼ(Blirt)を含むTth緩衝液(Blirt)中で混合した。増幅混合物を37℃で3時間インキュベートし、続いて65℃で2分間インキュベートした。
【0145】
RCPの標識
5nM(の各々の)検出オリゴヌクレオチド(配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号15)(IDT)を含有する10μLのハイブリダイゼーション緩衝液(0.7MのNaCl(KI Substrat)、0.005%のTWEEN 20(Sigma Aldrich)、10mMのTris-HCl(pH8)及び10mMのEDTA(KI Substrat))を75℃で2分間、及び55℃で20分間添加することによって、RCPを蛍光標識した。
【0146】
捕捉、撮像、及び定量は、実施例2に記載されるように行った。
【0147】
結論として、その結果は、異なるDNA供給源から目的の遺伝子を容易に検出する方法の能力を確認するものである。更に、本実施例は、参照が未編集の配列と同じレベルの事象を示すパドロックプローブの設定を確認するものである。編集事象の場合、未編集に対する参照又は未編集に対する対照の比率は、編集レベルで結論を引き出すことを可能にする。これにより、本方法は、遺伝子編集分野内の異なる研究上の疑問及び使用に対する使用を容易にする。
【配列表】
【国際調査報告】