(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】搬送波再生の為の方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H04B 10/61 20130101AFI20240304BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20240304BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20240304BHJP
【FI】
H04B10/61
H04B10/077
H04B10/70
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558236
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2021060494
(87)【国際公開番号】W WO2022199859
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518153977
【氏名又は名称】フンダシオ インスティチュート デ サイエンセズ フォトニクス
(71)【出願人】
【識別番号】512171032
【氏名又は名称】インスティトゥシオ カタラナ デ レセルカ イ エストゥディス アヴァンカッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガセミ,サイード
(72)【発明者】
【氏名】エチェベリー,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】プルネリ,ヴァレリオ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AA52
5K102AB11
5K102AD12
5K102AH02
5K102AH12
5K102AH13
5K102AH14
5K102AH26
5K102AH27
5K102LA21
5K102LA31
5K102LA52
5K102MA02
5K102MB13
5K102MH03
5K102MH14
5K102MH27
5K102PA12
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH21
5K102PH31
5K102PH42
5K102PH49
5K102RD04
5K102RD26
(57)【要約】
【要約】
本発明は、コヒーレント光通信におけるフィードフォワード搬送波再生の為の方法及びデバイスに関する。本発明は、光源から光信号を受信する方法及びデバイスを開示し、光信号は少なくとも一つのパイロットパルスと情報を含む少なくとも一つの信号パルスとを具備する。局部発振源の局部発振信号を使用して、少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値が確定される。光源から受信された光信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差が複数のサンプルの直角位相値を使用して確定され、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスの搬送波情報が再生される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードフォワード搬送波再生の為の方法であって、
光源から光信号を受信するステップであって、前記光信号は、少なくとも一つのパイロットパルス(R
i)と情報を含む少なくとも一つの信号パルス(S
k)とを具備するステップと、
局部発振源の局部発振信号を使用して前記少なくとも一つのパイロットパルス(R
i)の複数のサンプル(R
0,i,R
1,i)の直角位相値を確定するステップと、
前記複数のサンプル(R
0,i,R
1,i)の前記直角位相値を使用して前記光源から受信された前記光信号と前記局部発振源の前記局部発振信号との間の位相差を確定するステップと、
確定された前記位相差に基づいて前記少なくとも一つの信号パルス(S
k)の搬送波情報を再生するステップと、
を包含する方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)の少なくとも二つの隣接サンプル(R
0,i,R
1,i)の直角位相値が前記位相差を確定する為に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パイロットパルス(R)と前記少なくとも一つの信号パルス(S)との間の所定の時間遅延(T
d)、前記パイロットパルスのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて、前記パイロットパルスの前記サンプルの少なくとも一つが選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記搬送波情報を再生するステップは、前記少なくとも一つの信号パルス(S)の直角位相値を確定すべく補正因子(W)を計算するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記補正因子は、前記位相差、前記パイロットパルス(R)の二つの隣接サンプルの間の時間遅延(T
s)、前記少なくとも一つの信号パルス(S)と前記パイロットパルス(R)の前記サンプルの一つとの間の時間遅延(T
d)、及び/又は、上記の組み合わせのうちいずれか一つに基づいて、計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記補正因子(W)は、一以上の三角関数係数を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記補正因子(W)は、ブロックモジュールを使用して計算される、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光信号は、信号パルス(S)の列を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パイロットパルス(R)の前記サンプル(R
0,R
1)のうち一以上が、前記パイロットパルス(R)のパルス幅の逆数の少なくとも2倍であるサンプリング周波数(1/T
s)でサンプリングされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)は、前記少なくとも一つの信号パルス(S)の強度より高い強度を持つ光パルスである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)は、前記少なくとも一つの信号パルス(S)と交互配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの信号パルス(S)は、量子暗号プロトコル、特に連続変数量子鍵配送(CV‐QKD)プロトコルに従って送信される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
フィードフォワード搬送波再生の為に構成されているデバイスであって、
光源から光信号を受信するように構成されている受信ユニットであり、前記光信号は、少なくとも一つのパイロットパルス(R)と情報を含む少なくとも一つの信号パルス(S)とを具備する、受信ユニットと、
局部発振源の局部発振信号を使用して前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)の複数のサンプル(R
0,i,R
1,i)の直角位相値を確定するように構成されている制御ユニットと、
を具備し、
前記制御ユニットはさらに、
前記複数のサンプル(R
0,i,R
1,i)の前記直角位相値を使用して、前記光源から受信された前記光信号と前記局部発振源の前記局部発振信号との間の位相差を確定し、
確定された前記位相差に基づいて前記少なくとも一つの信号パルス(S)の搬送波情報を再生するように構成されている、
デバイス。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)の二つの隣接サンプルの直角位相値を使用して前記位相差を確定するように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記制御ユニットは、前記少なくとも一つの信号パルス(S)の直角位相値を確定すべく補正因子(W)を計算するように構成されている、請求項13又は14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記受信ユニットにより受信及び/又は検出された前記信号パルス、及び/又は、搬送波情報を再生する為の前記少なくとも一つのパイロットパルス(R)を受信するように構成されているクロック再生回路を具備する、請求項13から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記クロック再生回路は、前記パイロットパルス(R)と前記少なくとも一つの信号パルス(S)との間の所定の時間遅延(T
d)、前記パイロットパルスのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて前記パイロットパルス(R)のサンプルの少なくとも一つを選択するように構成されている、請求項13から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記制御ユニットは、前記位相差、前記パイロットパルス(R)の二つの隣接サンプルの間の時間遅延(T
s)、少なくとも一つの信号パルス(S)と前記パイロットパルス(R)の前記サンプルの一つとの間の時間遅延(T
d)、及び又は、上記の組み合わせのうちいずれか一つに基づいて前記補正因子を計算するように構成されている、請求項15から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記補正因子(W)は、一以上の三角関数係数を含む、請求項15から18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記制御ユニットは、前記補正因子(W)を計算するように構成されているブロックモジュールを具備する、請求項13から19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ブロックモジュールは、前記補正因子を計算する為の少なくとも一つの加算器と少なくとも一つの乗算器とを具備する、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ブロックモジュールは、前記ブロックモジュールの為の一以上の入力を選択するように構成されている少なくとも一つの乗算器と、前記ブロックモジュールの為の一以上の入力を処理するように構成されている少なくとも一つのレジスタバッファとを具備する、請求項20又は21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記制御ユニットは、デジタル信号処理(DSP)ハードウェア、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に実装される、請求項13から22のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコヒーレント光通信における搬送波再生の為の方法及びデバイスに関する。特に、本発明は、例えばコヒーレント光通信及び量子暗号における位相及び/又は周波数再生を可能にするフィードフォワード搬送波再生の為の方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
量子鍵配送(QKD)は、通信チャネルを通して量子信号を配送することにより、一般的にはアリス及びボブと称される二人の当事者が暗号鍵を共有及び/又は生成することを可能にする。主要なQKD実装例の一つは、連続変数QKD(CV‐QKD)である。CV‐QKDは一般的に、光(例えば弱い光パルス)のコヒーレント状態を量子信号として使用し、情報は電磁場の共役直角位相で符号化される。直角位相は、信号パルスの振幅及び位相に関係する。
【0003】
一般的なCV‐QKDシステムは、一般的にはアリスとして知られる発信側を含み、発信側は、例えば、符号化されたランダム情報を持つ低強度量子パルス(つまりコヒーレント状態)を、コヒーレント検出を使用して量子パルスを測定できるボブとして知られる受信側へ送る。コヒーレント検出では、局部発振子(LO)と呼ばれる高強度参照信号とアリスにより送られた信号パルスとの混信又は干渉が行われて、その直角位相値が取得される。検出の成果は、アリスのシンボル信号及びLO信号の位相変動により影響を受け得る。より具体的に記すと、LO及びアリス信号の間の位相差の変動が検出に影響し得る。この理由から、CV‐QKDの幾つかの実装例で、LO及び量子信号がアリスの同じレーザから生成され、両方の信号がボブへ送信される。光チャネルを経由するLOの送信は、高強度LOパルスと低強度アリスパルスとの間での一定の位相関係を可能にする。しかしながら、これは第三者による秘密鍵への迷惑アクセスつまり盗聴を招き得る。
【0004】
他の幾つかのCV‐QKD実装例で、LOは追加のレーザによりボブの側で局部的に生成されてもよい。ボブでのこのような自走LOの使用は、アリスにより生成された量子信号とLOとの間の位相変動を補正するのに搬送波又は位相再生手順を必要とする。旧来のコヒーレント通信では、高強度信号パルスが使用される時に、送信されたパルス自体を参照することにより位相変動が補正され得る。代替案は、データ変調による位相の曖昧性を回避する為のいわゆるパイロット信号を使用することであり得る。
【0005】
従来の技術には、二以上の(参照パルスとも称される)連続パイロットパルスを使用することにより低強度信号の位相情報を再生して、アリスの信号とLO信号との間の位相及び周波数の差を推定する為の方法が記載されている。しかしながら、位相の正確な推定を得る為に、アリスレーザとLOとの間の周波数差は±1/2T
bの範囲内でなければならず、T
bは二つの連続パイロットパルスの間の時間遅延である(
図1参照)。例えば、高速CV‐QKDシステムにおいて、パイロットパルスは100MHzのレートで進み、この場合、アリスレーザとLOとの間の周波数差は50MHz以内でなければならない。これは、複雑な構造を備える非常に安定したレーザ源の使用を必要とすることにより利用可能性の制限及び高コストを伴うという欠点を有する。例えば、レーザの周波数を安定化させるのに原子遷移が使用され得る。しかしながら、これは、気体電池など追加コンポーネントの使用につながり得る。レーザ信号が安定している場合でも、アリスレーザとLOとの間には一般的に放出周波数(波長)の差が生じ得る。それゆえ、相対的な波長同調の追加が必要となり得、これは一般的に電流及び/又は温度を変化させることにより達成される。
【0006】
また、上述の従来方法は一般的に、情報を再生するようにパイロット及び/又は量子パルスの位相を測定するのに三角関数を使用する。三角関数の代わりに、幾つかの実装例では、ルックアップテーブル(LUT)が使用され得る。しかしながら、三角関数とLUTの両方のアプローチは、大量の計算時間、ハードウェア、及び/又は、リソースを免れない。リアルタイムのフィードフォワード及びフィードバック搬送波再生を達成するのに、LUT不要の技術が使用されてもよい。この技術は、データを再生するのに(例えばパワーについて)最適である各シンボルのサンプルを選択することで動作の周波数範囲を制限することに基づき得る。
【0007】
図1に図示されている一つの従来例は、真の局部発振子(いわゆる自走LO)を備えるCV‐QKDの一般的な実験構成を示す。発信/送信側(アリス)101は連続波レーザ源103を使用し、例えばガウスランダム分布に従った直角位相値を持つ光パルスが得られるように、振幅変調器(AM)105及び/又は位相電気光学変調器(PM)107によりレーザは変調され得る。発信/送信側101により符号化された同相及び異相の直角位相信号は、それぞれX
A及びP
Aと称される。続いて、秘密鍵レートを最大化又は最適化し得る値に信号分散(つまりアリス変調器分散)を設定するのに、減衰器(ATT)109が使用され得る。変調分散は通常、平均光子数の2倍に等しい。
【0008】
変調された光パルスは受信側(ボブ)201へ送られ、そこで、光パルスは、一般的には連続波で動作し得るLO205により生成されたLO信号により受信ユニット203で干渉を受け得る。受信ユニット203の偏光制御器(PC)207は、量子パルスと局部発振子の偏光を整合させて干渉を最大化又は最適化するのに使用され得る。干渉は、検出器209の一部である90°光ハイブリッド(90°OH)で行われ、光ハイブリッドからの出力は検出器209により測定され得る。受信側201は、測定値をリアルタイムで処理してアリス信号XA及びPAと相関するデータを得る。リアルタイムデータ処理は一般的に、デジタル信号処理(DSP)ユニット211などの制御ユニットにより行われ得る。
【0009】
LOと発信/送信側(アリス)レーザからの受信信号との間の周波数差Δfは、レーザの周波数ノイズf
nとともに、測定された直角位相に位相ドリフト(位相ノイズ)を生じる結果となり得る。ボブにより受信された(X
B及びP
Bと称される)量子信号の同相及び異相の直角位相値は、
【数1】
のようにアリス信号に関係している。方程式(1)は、ノイズ(Δf+fn)による位相φの回転に相当し、N
x及びN
Pは、システムのショットノイズと過剰ノイズとを含み得るゼロ中心ガウスノイズである。
【0010】
アリスにより指定されたX
A及びP
Aの値を取得する為に、ボブは、座標回転により行われ得る位相再生アルゴリズムを行う必要があり得る。
【数2】
パイロットパルス(参照パルス)の使用は、旧来の通信と量子通信の両方の位相再生で知られている。旧来のコヒーレント通信では、第Mパワー方式などの方法を使用することにより位相再生は一般的に信号から直接行われる。それゆえに、旧来のコヒーレント通信において、パイロットパルスはデータ再生のために厳密には必要でない。連続変数(CV)量子鍵配送では、データを搬送する信号パルスSは低強度を有する可能性があり、このような低強度信号パルスSは正確な位相ノイズ又は周波数ドリフト推定に適していないかもしれないので、パイロットパルスRの使用が必要となる場合がある。この場合、データ再生は、パイロットパルスRの情報にもっぱら基づき得る。
【0011】
例えば、パイロットパルスRが信号パルスSの間に交互配置される
図2の方式を使用すると、三角関数及び/又は線形補間を使用して量子信号パルスSの前後に置かれた高強度パイロットパルスRの位相情報を取得することにより、量子信号パルスSの位相情報が得られる。
図2では、パイロットパルスR
iと量子パルスS
iとの間の時間遅延はT
dであり、二つのパイロットパルスR
i及びR
i+1の間の時間遅延はT
bである。指数iは第iの信号又はパイロットパルスを指す。しかしながら、上述のように、この従来技術は周波数範囲の制限とハードウェア実装例の複雑性など幾つかの制約を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮すると、上述した課題、短所、及び/又は、問題のうち一以上に対処する改良方法及び/又はデバイスを提供することが本発明の目的である。言い換えると、ハードウェア複雑性を低下させながらも(光源の)大きな周波数ドリフトが存在しても量子信号パルスを正確に再生することのできる方法及び/又はデバイスの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特定の実施形態において、フィードフォワード搬送波再生の為の方法を提供することにより上述の目的に対処する。この方法は、光源から光信号を受信するステップであって、光信号は、少なくとも一つのパイロットパルスと情報を含む少なくとも一つの信号パルスとを具備するステップと、局部発振源の局部発振信号を使用して少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値を確定するステップと、複数のサンプルの直角位相値を使用して、光源から受信された光信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差を確定するステップと、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスの搬送波情報を再生するステップとを包含する。
【0014】
本文脈において、「パイロットパルス」という語は参照パルスを指し、「直角位相値」という語は同相及び/又は異相の直角位相値を指し、「サンプル」という語は、例えばパイロットパルスについての振幅/強度/パワーと時間とのグラフにおける一つの点を指す。「信号パルス」という語は、搬送波情報、例えば通信情報あるいはその符号化データを含む信号パルスを指し、情報は複数の性質のものであり得る。ここで、「搬送波情報を再生すること」は、位相差を補正した後の信号パルスの取得を指す。パイロットパルスは、周期的であり得るか、又はパルス間の時間遅延が不均一な非周期的であり得る。
【0015】
発明に関する方法によれば、少なくとも一つのパイロットパルスと少なくとも一つの信号パルスとを具備する光信号が光源から受信され、光源から受信された光信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差を確定する為に、局部発振源の局部発振信号を使用して少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値が確定される。少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値が使用されるので、例えば、パイロットパルスの一つのサンプル、通常は最適サンプルを使用する従来技術と比較して、特に、光源と局部発振源との間の周波数ドリフトが大きくても、この正確な確定により搬送波情報再生は向上し得る。それゆえ、発明に関する方法では、リアルタイム動作での大きな周波数ドリフトの補正が可能であるとともに、フィードフォワード搬送波再生の為に堅固でその上簡易的及び/又は効率的な方法が供与されるので有利である。さらに、広範囲の周波数ドリフトが補正され得るので、高価及び/又は複雑なレーザハードウェアが回避されることでコスト効果の高い適用が達成され得る。
【0016】
本発明の特定実施形態では、少なくとも一つのパイロットパルスの少なくとも二つの隣接サンプル、特に直接隣接する二つのサンプルの直角位相値が、位相差を確定するのに使用され得る。特定実施形態では、少なくとも一つのパイロットパルスの二つの隣接サンプルが使用されてもよい。本文脈において、「二つの隣接サンプル」という語は、例えば所定のサンプリング周波数での「二つの連続サンプル」を指し、所定のサンプリング周波数は、サンプリング技術/ハードウェアにより確定される最小周波数(例えば毎秒1Gサンプル(1GSps))、あるいは、例えばユーザにより設定される固定周波数であり得る。二つの隣接サンプルを使用することにより、直角位相値と位相差との確定が堅固で簡易的となり得、こうして、特に広範囲の周波数ドリフトでは、搬送波情報の正確な再生を簡易的な手順で達成できる。
【0017】
本発明の特定実施形態では、パイロットパルスと信号パルスとの間の所定の時間遅延、パイロットパルスのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて、パイロットパルスのサンプルの少なくとも一つが選択され得る。パイロットパルスのサンプルの少なくとも一つの選択は複雑ではなく、専用ハードウェアの必要を伴わず、これにより搬送波再生手順の簡易化に役立つ。
【0018】
本発明の特定実施形態において、搬送波情報を再生するステップは、少なくとも一つの信号パルスの直角位相値を確定すべく補正因子を計算するステップを含み得る。補正因子の計算は、特に、簡易的なハードウェア手順を使用して正確に、搬送波情報の再生、そして少なくとも一つの信号パルスの直角位相値の確定も可能にする。補正因子の確定は、リアルタイムのフィードフォワード再生に役立つものとする。したがって、特定の一例では、補正因子は、特に少なくとも一つのパイロットパルスの後に置かれた量子信号パルスを再生する為に計算され得る。しかしながら、本発明はこれに限定されるわけではない。代替実施形態では、補正因子は、少なくとも一つのパイロットパルスの前に置かれた量子信号パルスを再生する為に計算されてもよい。
【0019】
本発明の特定実施形態では、補正因子は、位相差、パイロットパルスの二つの隣接サンプルの間の時間遅延、少なくとも一つの信号パルスとパイロットパルスのサンプルの一つとの間の時間遅延、及び/又は、上記の組み合わせのうちいずれか一つに基づいて、計算され得る。パイロットサンプルの位相差又は直角位相値、あるいはパイロットパルスの二つの隣接サンプルの間の時間遅延、及び/又は、少なくとも一つの信号パルスとパイロットパルスのサンプルの一つとの間の時間遅延などのパラメータが使用される際に、リアルタイム値が補正因子の計算で考慮され、それゆえ、これらのパラメータがパイロット及び信号パルスから簡単に抽出され得るので計算手順が簡易化され得る。
【0020】
発明の特定実施形態において、補正因子は、例えば、一以上の三角関数係数を含む座標回転行列であり得る。座標回転行列は、とりわけハードウェア/ソフトウェア実装例についての搬送波情報の簡易的な再生と、少なくとも一つの信号パルスの直角位相値の確定とを可能にする。
【0021】
本発明の特定実施形態では、補正因子は、ブロックモジュールを使用して計算され得る。ブロックモジュールは、乗算、加算、又は減算など単純な数学演算を容易にするコンポーネントを具備する信号処理モジュールであり得る。それゆえに、ブロックモジュールは、信号処理ユニットを使用してリアルタイムの実装を容易にし、コンピュータを必要とする三角関数/計算あるいはLUTの回避を可能にする。
【0022】
本発明の特定実施形態において、光信号は信号パルスの列を含み得る。少なくとも一つのパイロットパルスに対応する信号パルスの列を有することにより、パイロット又は参照パルスの数が減少し、こうして、鍵を抽出するのに使用され得る符号化データ情報をパイロットパルスが有していないので、諸経費を削減してセキュリティ鍵レートを上げることができる。ここで、「に対応する」という語は、位相差を確定する際に所与の信号パルス列について少なくとも一つのパイロットパルスが参照パルスとして使用されることを表している。ここで、信号パルス列の少なくとも一つの信号パルスは、搬送波情報を含み得る。
【0023】
本発明の特定実施形態では、パイロットパルスのパルス幅の逆数の少なくとも2倍であるサンプリング周波数でパイロットパルスの一以上のサンプルがサンプリングされ得る。特定実施形態において、各パイロットパルスは少なくとも2回サンプリングされ得る。これは、パルス形状やパルス列のパルス間隔にも関係なく適用される。このサンプリング周波数により、複数のサンプルを使用する位相差の正確な推定の為に必要であり得る少なくとも二つのサンプルを提供できるパイロットパルスの最適なサンプリングが保証され得る。
【0024】
本発明の特定実施形態において、少なくとも一つのパイロットパルスは、少なくとも一つの信号パルスの強度より高い強度を持つ光パルスであり得る。したがって、高強度パイロットパルスを参照することにより位相変動が補正され、それによって、信号パルスの符号化情報の損失が回避され得る。さらに、高強度パイロットパルスを有することにより、パイロットパルスによるノイズが最小化されることで信号パルスの搬送波情報の正確な再生に役立ち得る。
【0025】
本発明の特定実施形態では、少なくとも一つのパイロットパルスは、少なくとも一つの信号パルスと交互配置され得る。すなわち、少なくとも一つのパイロットパルスは一つ又は複数の信号パルスと交互配置され得る。これは、とりわけハードウェア要件の軽減において有利であり得る。一つの特定例では、時分割多重化を使用して交互配置は行われ得る。別の特定例では、例えば信号源からの信号パルス及びパイロットパルスから成る多重化データを送信することにより交互配置は行われ得る。
【0026】
本発明の特定実施形態では、少なくとも一つの信号パルスは、量子暗号プロトコル、特に連続変数量子鍵配送(CV‐QKD)プロトコルに従って送信され得る。CV‐QKDでは、通常は低強度信号が検出される。それゆえ、この実施形態では、このような低強度信号パルスを検出する為の安定したレーザ源を必要とするという短所を伴うことなく低強度信号パルスのコヒーレント検出が可能なので有利である。
【0027】
本発明は、特定実施形態において、フィードフォワード搬送波再生の為に構成されているデバイスを提供することにより上述の目的に対処する。デバイスは、光源から光信号を受信するように構成されている受信ユニットを具備し、光信号は、少なくとも一つのパイロットパルスと、情報を含む少なくとも一つの信号パルスとを具備する。デバイスはさらに、局部発振源の局部発振信号を使用して少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値を確定するように構成されている制御ユニットを具備する。制御ユニットはさらに、複数のサンプルの直角位相値を使用して光源から受信された光信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差を確定するとともに、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスの搬送波情報を再生するように構成されている。
【0028】
発明に関するデバイスにおいて、制御ユニットは、局部発振源の局部発振信号を使用して少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値を確定する。少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値が使用されるので、特に、例えばパイロットパルスの一つのサンプルを使用する従来技術と比較して、光源と局部発振源との間の周波数ドリフトの範囲が大きくても、この正確な確定により搬送波情報再生は改善され得る。それゆえ、発明に関するデバイスは大きな周波数ドリフトの補正をリアルタイム動作で可能にし、フィードフォワード搬送波再生の為に堅固だが簡易的及び/又は効率的なデバイスを供与できるので有利である。さらに、広範囲の周波数ドリフトが補正され得るので、高価及び/又は複雑なレーザハードウェアが回避されることによりコスト効果の高いデバイスが実現される。
【0029】
本発明の特定実施形態では、制御ユニットは、少なくとも一つのパイロットパルスの二つの隣接サンプルの直角位相値を使用して位相差を確定するように構成され得る。特定実施形態では、少なくとも一つのパイロットパルスの二つの隣接サンプルが使用され得る。二つの隣接パルスを使用することにより、直角位相値及び位相差の確定が簡易化され、同時に、特に光源と局部発振源との間の広範囲の周波数ドリフトでの正確さが向上し、こうして簡易化デバイスによる搬送波情報の正確な再生を達成できる。
【0030】
本発明の特定実施形態では、制御ユニットは、補正因子を計算して少なくとも一つの信号パルスの直角位相値を確定するように構成され得る。補正因子の計算により、特に簡易化したハードウェアを使用して正確に、搬送波情報の再生、そして少なくとも一つの信号パルスの直角位相値の確定も可能にする。一つの特定例では、補正因子は、特に少なくとも一つのパイロットパルスの後に置かれた直角位相信号パルスを再生する為に計算され得る。
【0031】
本発明の特定実施形態において、制御ユニットは、受信ユニットにより受信及び/又は検出された信号パルス、及び/又は、搬送波情報を再生する為の少なくとも一つのパイロットパルス(R)を受信するように構成されているクロック再生回路を具備し得る。クロック再生回路は、搬送波再生に役立つデジタル信号処理の一部として機能できる。制御ユニットのクロック再生回路は、少なくとも一つのパイロットパルスの複数のサンプルの直角位相値を確定するように構成され得る。
【0032】
本発明の特定実施形態において、クロック再生回路は、パイロットパルスと信号パルスとの間の所定の時間遅延、パイロットパルスのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて、パイロットパルスのサンプルの少なくとも一つを選択するように構成され得る。クロック再生回路を使用したパイロットパルスのサンプルの少なくとも一つの選択は複雑でなく、特殊なハードウェアの必要性を伴わないことにより、搬送波再生の簡易化に役立つ。一つの特定例で、クロック再生回路は、1/Tsの周波数を持つ入力プロセスクロックを使用して、パイロットパルス、その隣接サンプル、及び/又は、信号パルス/シンボルでの光パワーについて最良のサンプルを特定するように構成され得る。
【0033】
本発明の特定実施形態では、制御ユニットは、位相差、パイロットパルスの二つの隣接サンプルの間の遅延、少なくとも一つの信号パルスとパイロットパルスのサンプルの一つとの間の時間遅延、及び/又は、上記の組み合わせのうちいずれか一つに基づいて補正因子を計算するように構成され得る。パイロットサンプルの位相差又は直角位相値、あるいはパイロットパルスの二つの隣接サンプルの間の時間遅延、及び/又は、少なくとも一つの信号パルスとパイロットパルスのサンプルの一つとの間の時間遅延などのパラメータが使用される際には、制御ユニットによりパイロット及び信号パルスからこれらのパラメータが簡単に抽出され得るので、補正因子の計算は簡易化され得る。
【0034】
本発明の特定実施形態において、補正因子は、例えば、一以上の三角関数係数を含む座標回転行列であり得る。座標回転行列は、とりわけ、搬送波情報のソフトウェア/ハードウェア実装と少なくとも一つの信号パルスの直角位相値の確定について、再生の簡易化を可能にする。
【0035】
本発明の特定実施形態において、制御ユニットは、補正因子を計算するように構成されているブロックモジュールを具備し得る。ブロックモジュールは、乗算、加算、又は減算など単純な数学演算を包含する信号処理モジュールであり得る。それゆえに、ブロックモジュールは、デジタル信号処理を使用したリアルタイム実装を容易にし、コンピュータを必要とする三角関数又はLUTの回避を可能にする。
【0036】
本発明の特定実施形態において、ブロックモジュールは、補正因子を計算する為の少なくとも一つの加算器と少なくとも一つの乗算器とを具備し得る。一以上の加算器及び/又は一以上の乗算器を使用してブロックモジュールを構成することにより、三角関数係数を必要とし得る補正因子の計算は単純な加算及び/又は乗算を使用して簡易化され、減算と除算もそれぞれ加算器と乗算器とを使用して実施され得る。したがって、単純だが堅固なフィードフォワード搬送波再生が簡易化したアーキテクチャで可能となり得る。
【0037】
本発明の特定実施形態において、ブロックモジュールは、ブロックモジュールの為の一以上の入力を選択するように構成されている少なくとも一つの多重化装置と、ブロックモジュールの為の一以上の入力を処理するように構成されている少なくとも一つのレジスタバッファとを具備し得る。補正因子が簡易化ハードウェアで正確に確定されるように、一以上の多重化装置と一以上のレジスタバッファとはブロックモジュールの為の一以上の入力の処理を容易にすることができる。
【0038】
本発明の特定実施形態では、制御ユニットは、デジタル信号処理(DSP)ハードウェア、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)に実装され得る。それゆえに、発明に関するデバイスは、旧来の通信と量子暗号の両方の用途でのコスト効果の高いシステムの為の低コストレーザを伴って、オフラインプロセッサあるいはFPGAなどのリアルタイムDSPにより、適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】真のLOを備えるCV‐QKDの従来の実験構成を示す。
【
図2】位相再生の為のパイロットパルス(参照パルス)の従来使用を示す。
【
図3】本発明の特定実施形態によるフィードフォワード搬送波再生の為の方法の概略フロー図を示す。
【
図4】本発明の特定実施形態による少なくとも二つの隣接/連続サンプルの直角位相値を確定する為の少なくとも一つのパイロットパルスのサンプリングを示す。
【
図5】本発明の特定実施形態による第iパイロットパルスの二つの連続/隣接サンプルの複素平面における位相を示す。
【
図6】本発明の特定実施形態によるブロックモジュールを示す。
【
図7】特定実施形態によるフィードフォワード搬送波再生の為のデバイスを示す。
【
図8】本発明の特定実施形態によるデバイス、特に制御ユニットの一部を示す。
【
図9】本発明の特定実施形態による制御ユニット、特にブロック回路(BC)の一部を示す。
【
図10】方法の裏付けとなるとともに発明に関する搬送波再生の実施を評価するシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の特徴及び有利な実施形態が図を参照して詳細に記載される。
【0041】
図3は、本発明の特定実施形態によるフィードフォワード搬送波再生の為の方法300の概略フロー図を示す。この方法は、光源から光信号を受信するステップ302を含み、光信号は、少なくとも一つのパイロットパルスRと情報を含む少なくとも一つの信号パルスSとを具備する。この方法はさらに、局部発振源、特に局部発振源の局部発振信号を使用して少なくとも一つのパイロットパルスRの複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値を確定するステップ304を包含する。この方法はさらに、複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値を使用して、光源、特に受信された光信号と、局部発振源、特に局部発振信号との間の位相差を確定するステップ306を包含する。この方法はさらに、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスSの搬送波情報を再生するステップ308を包含する。
【0042】
図3のステップ302は、光路を介して光信号を受信することを含み得る。光路は一以上の光ファイバチャネルであり得る。光信号は、
図1の送信側あるいは(連続レーザ源などの)送信側光源から受信され得る。光信号は、少なくとも一つのパイロットパルス(つまり参照パルス)Rと少なくとも一つの信号パルスSとを含む。一実施形態において、信号パルスは、搬送波情報、例えば通信情報又はそれに符号化されたデータを含むパルスであり得る。一例において、信号パルスSは位相及び/又は振幅変調を受け得る。パイロットパルスは参照パルスであり、信号パルスと同じ発生源から、あるいは異なる発生源からのものであり得る。パイロットパルスRはそれに符号化された情報を含まなくてもよい。一例で、パイロットパルスRは位相及び/又は振幅変調を受け得る。
【0043】
一実施形態において、少なくとも一つのパイロットパルスRは、少なくとも一つの信号パルスSの強度より高い強度(例えば振幅)のものであり得る。一実施形態において、パイロットパルスRの強度と信号パルスSの強度との比は100から500の範囲であり得る。特定実施形態において、この比は少なくとも100であり得る。特定実施形態において、パイロットパルスRは高強度パイロットパルスであり、信号パルスSは低強度量子パルスであって、その間の所定の強度比は連続変数量子鍵配送(CV‐QKD)プロトコルなどの量子暗号プロトコルに従ったものである。
【0044】
(詳細に後述される)
図4は、一実施形態において光信号は少なくとも一つのパイロットパルスRに続く信号パルスの列又はシーケンスS
0からS
N-1を含み、Nは列/シーケンスの信号パルス数を指すことを示している。すなわち、少なくとも一つのパイロットパルスRは一つ又は複数の信号パルスS
0からS
N-1と交互配置され得る。一つの特定実施形態では、交互配置は、時分割多重化を使用して実施され得る。別の特定実施形態では、一以上の量子信号パルスS
0からS
N-1と光源からの少なくとも一つのパイロットパルスRとから成る多重化データを送信することにより、交互配置は行われ得る。
【0045】
図3のステップ304は、局部発振源を使用して少なくとも一つのパイロットパルスRの直角位相値を確定することを含む。特に、少なくとも一つのパイロットパルスRの複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値は、局部発振源、特に局部発振源の局部発振信号を使用して確定される。一実施形態において、直角位相値は同相及び異相の直角位相値を指す。
図4を参照すると、本発明の実施形態において、少なくとも一つのパイロットパルスRの少なくとも二つのサンプルR
0,R
1が直角位相値確定の為にサンプリングされる。しかしながら、サンプリングは二つに限定されない。状況及び/又はハードウェア/ソフトウェアの制約に応じて、2、3、4などより多いサンプルも使用され得る。特定例では、二つの隣接サンプルのみが使用される。
【0046】
特定の実施形態において、二つのサンプルは所定のサンプリング周波数/レートで互いに隣接又は連続している。所定のサンプリング周波数は、サンプリング技術/ハードウェアにより確定される最小周波数、あるいはユーザにより設定される周波数であり得る。一実施形態において、
図4は、二つの隣接サンプルR
0,iとR
1,iを有する第iパイロットパルスR(又は第i-1パイロットパルスについてのR
0,i-1とR
1,i-1)を示す。一実施形態において、隣接サンプルR
0,i及びR
1,iの後には、N-1個の信号パルスS
0からS
N-1が続く。隣接サンプルR
0及びR
1のサンプリング周波数は1/T
sと称される。
【0047】
好適な実施形態において、パイロットパルスRの一以上のサンプルR
0,R
1は、ナイキスト定理を満たすようにパイロットパルスRのパルス幅(時間単位で測定)の逆数の少なくとも2倍であり得るサンプリング周波数1/T
sでサンプリングされる。特定実施形態において、各パイロットパルスは少なくとも2回サンプリングされる。これは他のパルス形状、パルス列のパルス間の間隔にも適用される。パイロットパルスRと信号パルスSとの間の所定の時間遅延T
d、パイロットパルスRのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて、パイロットパルスRの複数のサンプルR
0,R
1のうち少なくとも一つが選択され得る。
図4では、サンプルR
1は、パイロットパルスRのピークパワー/振幅/強度に基づく最適サンプルとなるように選択される。サンプルR
0は、所定のサンプリング点、及び/又は、パイロットパルスRのR
1(最良サンプル)との所定の時間遅延に基づいて選択され得る。
【0048】
ここで、「局部発振源」という語は、ボブ(受信者)の側での自走レーザ源を指し、「局部発振」という語はレーザ振動源の出力つまり局部発振信号を指し得る。パイロットパルスR及び信号パルスSと局部発振信号との干渉が行われて、直角位相値は確定され得る。
【0049】
ステップ306において、少なくとも一つのパイロットパルスRの複数のサンプルR0,R1の直角位相値を使用して、光源から受信された光信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差が確定される。一実施形態において、位相差を確定するこのステップでは、確定された位相差の関数又は成分が得られ、それは搬送波情報を再生して少なくとも一つの信号パルスの直角位相値を確定することにより位相誤差を補正するのに使用され得る。
【0050】
図3のステップ308において、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスSの搬送波情報は再生される。このステップにより、ステップ306で少なくとも一つのパイロットパルスから抽出された位相差/情報を使用した位相誤差/不整合の補正が可能になる。一つの特定例において、ステップ308では、高強度パイロットパルスのサンプリングに基づいて低強度信号パルスのフィードフォワード搬送波再生が可能になる。
【0051】
図4及び
図5を参照して本発明の非限定的な特定実施形態を記載する。この特定実施形態では、少なくとも一つのパイロットパルスRの少なくとも二つの隣接/連続サンプルR
0及びR
1の直角位相値は、位相差の確定に使用される。
【0052】
図4において、第iパターンは、N-1個の信号パルスSが後に続く二つの連続サンプルR
0,i及びR
1,iから成る一つのパイロットパルスRに対応する。信号パルスの各々は、パワーについての(kと記された)最適サンプルS
kを備える。例えばパワーについての最適サンプルR
1は、信号パルスの第1サンプルS
0と最終サンプルS
N-1のそれぞれに関する時間遅延T
d及びNT
dを有する。この実施形態では、信号パルスは、等しい時間遅延T
dを伴って周期的に受信される。しかしながら、本発明は、周期的な、及び/又は、等しい時間遅延T
dに限定されるわけではない。ボブ(受信側)により測定された第iパイロットパルスRの同相の直角位相X
Rと異相の直角位相P
Rとは、
【数3】
により求められ、Aはパイロットパルスの振幅に関係する係数であり、簡易化の為にこれは1と見なされる。しかしながら、本発明はA=1に限定されるわけではない。φ
pnは位相ノイズであり、φ
cは、パイロットパルスRで光源(アリス‐送信側)からの送信された信号の位相である。位相φ
cはアリスにより符号化された位相と、アリスのレーザ周波数と関連する位相とを含む。φ
LOはLO周波数と関連する局部発振子からの光源の信号の位相である。それゆえに、パイロットパルスRはφ
R=φ
c-φ
LO+φ
pnの位相差を有する。位相φ
cは、アリス(つまり送信側)による符号化情報を備えていない(つまり変調されていない)パイロットパルスについてのアリスレーザ周波数に関係する成分を有し得る。しかしながら、本発明はこの詳細に限定されるわけではない。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、時間遅延Td、パイロットパルスRのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のいずれか一つに基づいて、パイロットパルスRのサンプルR0及びR1の少なくとも一つが選択され得る。一つの特定例において、1/Tsの周波数を持つ入力プロセスクロックを使用してパイロットパルスRの光パワーについて最良のサンプルが特定される。同様に、パイロットパルスRと信号パルスSとの間の時間遅延Td、及び/又は、信号パルスのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいて、信号パルスSの最適/最良のサンプルも選択され得る。別の特定例では、1/Tsの周波数を持つ入力プロセスクロックを使用して、光パワー、その隣接サンプルR0,i(所定のサンプリング点、及び/又は、R1,iとの所定の時間遅延)について、そして信号パルスSk,iについてのクロック再生回路(後述される)により、最良サンプル(R1,i)が特定/選択され得る。
【0054】
さらに、パイロットパルスRのサンプルのうち一以上が、パイロットパルスRのパルス幅の逆数の少なくとも2倍である周波数でサンプリングされ得る。このサンプリング周波数はナイキスト定理を満たすことで最適なサンプリングを保証することができる。
【0055】
図4の実施形態において、光信号は、二つの参照パルスRの間の信号パルスS
k,i(kは1からN-1)の列を含む。それゆえに、少なくとも一つのパイロットパルスRに対応する信号パルス列について、パイロット又は参照パルスの数を減少することができ、このとは、鍵を抽出するのに使用され得る符号化データ情報をパイロットパルスが有していないので、諸経費を削減するとともにセキュリティ鍵レートを上げ得る。
【0056】
図5は、本発明の実施形態による、位相
【数4】
と
【数5】
とをそれぞれ持つ第iパイロットパルスの二つの連続/隣接サンプルR
0,i及びR
1,iの複素平面における位相を示す。したがって、第iパターンでの第k信号パルス(k:0→N-1)の位相は、
【数6】
により求められ得る。量
【数7】
は、Δf及びf
nに関連する位相誤差を表し得る。この実施形態で、局部発振源と送信側(アリス)レーザとの間の周波数差Δfはレーザの周波数ノイズf
nより高い、及び/又は、周波数差Δfは二つの連続パイロットパルスの間の時間((N+1).T
d)にわたって一定であり得る。それゆえに、例えば参照位相
【数8】
を始点と仮定すると、このパターンの各個別サンプルの位相は先行のサンプルと関連する
【数9】
の累積に対応し得る。しかしながら、各パイロットパルスの後の信号パルスの位相の正確な推定が周波数差により保証される限り、本発明はこの関係式に限定されない。
【0057】
この実施形態において、パイロットパルスは複素平面(
図5)で一定の包絡線及び/又は一定の半径を有し、(
図6を参照すると)以下の三角関数関係式が得られる。
【数10】
三角関数公式を使用すると、
【数11】
以下の方程式(7)は方程式(5)から求められる。
【数12】
それゆえ、上記方程式(7)では、複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値を使用して光源から受信された光学信号と局部発振源の局部発振信号との間の位相差を確定するステップ306(
図3)が、位相差の関数又は成分(ここではサイン及びコサイン関数/成分)について行われ得る。方程式(7)から明白であるように、パイロットパルスRの複数のサンプルの直角位相値についての単純な数学演算により、位相差の関数又は成分は確定され得る。さらに、位相差の関数又は成分は、搬送波情報を再生して少なくとも一つの信号パルスSの直角位相値を確定することにより位相誤差を補正するのに使用され得る。
【0058】
特に、送信側レーザ源からの受信側での測定値と局部発振源での測定値との間の位相差を確定するのに、パイロットパルスの直角位相が使用される。そして、位相差は、送信側レーザ源を参照して信号パルスの直角位相についての局部発振源の測定値を補正するか、又は整合させるために使用され、それにより、信号パルスの情報の再生を可能にし得る。
【0059】
これに関して、本発明の実施形態によれば、搬送波情報を再生するステップ308は、少なくとも一つの信号パルスSの直角位相値を確定すべく補正因子Wを計算するステップを含み得る。一つの特定実施形態では、補正因子Wは、例えばパイロットパルスRの後に置かれる量子信号パルスについて計算され得る。
【0060】
本発明の一実施形態による搬送波情報を再生するステップを、以下に記載する。この実施形態では、方程式(1)及び方程式(4)に基づいて、第k信号パルス、特に情報を含む信号パルスは、第iパターンにおける
【数13】
の同相直角位相と
【数14】
の異相直角位相とから成る直角位相値S
i’で再生され得る。それゆえ、再生された信号パルスの直角位相値S
i’と受信された信号パルスの直角位相値S
iとの間の関係は
【数15】
のように求められ得る。
上式において、
【数16】
回転行列W
iは、送信された情報、つまり信号パルスSで符号化された情報を再生する為の補正因子Wと称される。上記の方程式(9)から、また
図4を参照すると、本発明の一実施形態によれば、補正因子Wは、パイロットパルスRの二つの隣接サンプルR
0,R
1の間の時間遅延T
s、及び/又は、少なくとも一つの信号パルスSとサンプルR
0,R
1の一つ、特にパイロットパルスRの最適サンプルR
1との間の時間遅延T
dに基づき得る。言い換えると、補正因子Wはパイロットサンプルの直角位相値以外の追加係数に基づき得る。補正因子Wは、座標回転行列又はその係数と称され得る。
【0061】
一実施形態では、行列Wを簡略化する為に、
【数17】
とし、(k+1).M=βとする。
【0062】
方程式(9)で行列W
iの要素について三角関数値を求める為に、
図6は本発明の一実施形態によるブロックモジュール(BM)600を表している。本発明によれば、ブロックモジュール600はデジタル信号処理ユニットの一部となるように実装され得る。ブロックモジュール600は、一以上の入力In
1からIn
4と一以上の出力Out
1,Out
2とを含み、各入力は三角関数係数、特に信号パルスの補正因子及び/又は直角位相値の係数に関係し得る。
【0063】
この実施形態において、ブロックモジュール600はさらに、少なくとも一つの加算器600A1,600A2と少なくとも一つの乗算器600M1,600M2,600M3,600M4とを具備し得る。ブロックモジュール600はこれらのコンポーネント及び/又は機能に限定されるわけではない。例えば、加算器及び/又は乗算器をそれぞれ使用して減算及び/又は除算を行うようにブロックモジュールが構成され得る。さらに、ブロックモジュール600の数は1に限定されない。特定実施形態では、複数のブロックモジュールも設けられ得る。
【0064】
本実施形態において、入力In
1はsin(a)に関連し、入力In
2はsin(b)に関連し、入力In
3はcos(b)に関連し、入力In
4はcos(a)に関連しており、それにより、ブロックモジュール600では、少なくとも一つの加算器600A1,600A2と少なくとも一つの乗算器600M1,600M2,600M3,600M4とを使用して、Out
1=sin(a+b)とOut
2=cos(a+b)の出力を生むことができる。これゆえに、
【数18】
を考慮することにより、そしてブロックモジュール600の機能、特に単純な乗算及び加算を使用することにより、そしてまた方程式(5)及び方程式(7)の定義から、補正因子WであるW
iの行列要素が求められ得る。ブロックモジュール600を使用することにより、補正因子の確定における何らかのルックアップテーブル(LUT)又は何らかの特定の三角関数計算器の使用が回避され得る。
【0065】
こうして、方程式(5)及び方程式(7)と、
図6のブロックモジュール600の出力とを使用して、方程式(9)の回転行列Wの要素が求められることで、入力としてのSの同相及び直角位相により方程式(8)の解が求めることができる。この入力とブロックモジュール600からの行列係数とに基づいて、所与の位相変動に対応する信号パルスSの直角位相値とS’の行列要素とが再生され得る。
【0066】
以下では、本発明によるフィードフォワード搬送波再生の為のデバイス700を、本発明の方法300を参照して記載する。デバイス700は、
図3から
図6を参照して上記に述べた本発明によるフィードフォワード搬送波再生の為の方法300のステップを実行するように構成されている。方法300に関係して既に述べられた特徴は繰り返されず、参照によりここに取り入れられる。
図7は、本発明の特定実施形態によるフィードフォワード搬送波再生の為のデバイス700を示している。
【0067】
デバイス700は、光源からの光信号を受信するように構成されている受信ユニット701を具備し、光信号は少なくとも一つのパイロットパルスRと少なくとも一つの信号パルスSとを具備する。受信ユニット701は局部発振源LOを含む。特定実施形態において、受信ユニット700はボブとしても知られる受信側であり得る。例えば、受信ユニット700は
図1の受信側201のコンポーネントの幾つか又は全てを含み得る。デバイスは、
図1の送信側101のコンポーネントの幾つか又は全てを有する(不図示の)送信ユニットも含み得る。
【0068】
特定実施形態において、受信ユニット701は、光源から送信された光信号の受信及び検出を行うように構成され得る。受信ユニット701は一以上の光電気コンポーネントを含み得る。受信ユニット701の一以上の光電気コンポーネントは、90°光ハイブリッド、バランス/アンバランスマイケルソン干渉計又はバランス/アンバランスマッハ・ツェンダー干渉計などの干渉計の組み合わせ、一以上のビームスプリッタ、偏光維持光ファイバ(PMF)などの偏光部材、信号パルスと局部発振子との偏光を整合させて干渉を最大化又は最適化する為の偏光制御器、一以上の変調器/復調器、その他を含み得るが、これらに限定されるわけではない。
【0069】
受信ユニット701は、一以上の単一光子検出器、ヘテロダイン検出器、ホモダイン検出器、その他などの一以上の光電気コンポーネントも含み得るが、これらに限定されるわけではない。受信ユニット701はホモダイン又はヘテロダイン検出を使用し得る。ホモダイン検出では、90°位相シフトを局部発振子に加えることによりX又はP直角位相の測定をランダムに選択でき、一方でヘテロダイン検出では、例えば90°光ハイブリッドを使用して信号を二つの部分に分割することにより受信ユニットは両方の直角位相を同時的に測定できる。
【0070】
光源は、
図1を参照して定義された送信側101の一部であり得る。光源はデバイス700の一部であるか、デバイス700又は送信側101から分離しているかその外部にあり得る。デバイス700又は送信側101は、ガウスランダム分布に従った直角位相値を持つ最適パルスを得るように振幅変調器及び/又は異相変調器を含み得る。送信側は、秘密鍵レートを最大化又は最適化し得る値に信号分散(つまりアリス変調器分散)を設定する為の減衰器も含み得る。変調分散は通常、平均光子数の2倍に等しい。受信ユニット701は光源から光信号を受信するように構成されている。
【0071】
本発明の実施形態では、送信側101の代わりに、又はこれに加えて、光ファイバネットワーク、例えばCV‐QKDネットワークで通信を行なうように、デバイス700、特に
図7に示されている受信ユニット701との組み合わせで従来周知の送信器が使用されてもよい。本発明はこれに限定されない。光ファイバネットワークは、いかなる数の送信及び受信デバイスを有していてもよい。発明に関するデバイスは送受信側の一部でもあり得る。さらに、ネットワークの受信デバイスの全て又は幾つかが本発明により構成され得る。
【0072】
デバイス700はさらに、局部発振源LO(例えば、
図1の要素203に類似した連続波レーザ)を使用して少なくとも一つのパイロットパルスRの複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値を確定するように構成されている制御ユニット703を具備する。これに関して、少なくとも一つのパイロットパルスRをサンプリングするのに(不図示の)サンプリングユニットが使用されてもよい。代替的に、制御ユニット703は少なくとも一つのパイロットパルスRをサンプリングするように構成されてもよい。例えば、ナイキスト定理を満たすようにパイロットパルスRのパルス幅の逆数の少なくとも2倍であり得る所定のサンプリング周波数1/T
sで少なくとも一つのパイロットパルスRをサンプリングするアナログデジタル変換器を含み得る。制御ユニット703は、時間遅延T
d、パイロットパルス(R)のパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいてパイロットパルスRのサンプルの少なくとも一つを選択するように構成され得る。
【0073】
制御ユニット703はさらに、複数のサンプルR
0,R
1の直角位相値を使用して、光源から受信された光信号と局部発振源LOの局部発振信号との間の位相差を確定し、確定された位相差に基づいて少なくとも一つの信号パルスSの搬送波情報を再生するように構成されている。例えば、
図4及び
図5を参照すると、制御ユニット703は、少なくとも一つのパイロットパルスRの二つの隣接サンプルR
0,R
1の直角位相値を使用して位相差を確定するように構成されている。制御ユニット703は、補正因子Wを計算して少なくとも一つの信号パルスSの直角位相値を確定するようにも構成されている。特定実施形態では、
図6を参照して上記に述べたように、制御ユニット703は、特に回転行列の一以上の三角関数係数を有する補正因子Wを計算する為のブロックモジュール600を含む。
【0074】
一実施形態では、受信ユニット701は、ソフトウェア、制御ユニット703、又はその組み合わせにより制御され得る。別の特定実施形態において、局部発振源LOは受信ユニット701又は制御ユニット703の一部であり得る。別の特定実施形態において、局部発振源LOは受信ユニット701及び制御ユニット703から分離していてもよい。制御ユニット703はハードウェア及び/又はソフトウェア要素であり得る。一つの特定実施形態において、制御ユニット703はソフトウェアにより制御され得る。別の特定実施形態では、制御ユニット703は、受信ユニット701及び局部発振源LOのコンポーネントを制御及び/又は駆動するように構成され得る。
【0075】
図8及び9を参照して本発明の特定の非限定的実施形態が説明される。
図8は、デバイス700の制御ユニット703を図示している。この特定実施形態において、制御ユニット703は、受信ユニット701により受信及び/又は検出された信号パルス、及び/又は、搬送波情報を再生する為の少なくとも一つのパイロットパルスRを受信するように構成されているクロック再生回路803を含む。制御ユニット703はさらに、搬送波情報を再生する為の搬送波再生回路805を含む。特に、特定実施形態において、クロック再生回路803は、搬送波再生回路805の為の入力回路として機能して位相差の補正に役立つ。しかしながら、別のクロック再生回路と別の搬送波再生回路は、制御ユニットがその機能を行うように構成されている限りは、必要ではない。
【0076】
この特定実施形態において、発明に関するデバイス700と発明に関する方法300とは、受信されたデータクロック又は処理速度とサンプリング周波数との間の差を補正する為に、クロック再生回路803と搬送波再生回路805とを使用して搬送波再生を行うことができる。
【0077】
制御ユニット703のクロック再生回路803は、パイロットパルスと信号パルスとの間の時間遅延Td、パイロットパルスRのパワーと振幅と強度、及びそれらのピーク値のうちいずれか一つに基づいてパイロットパルスRの複数のサンプルR0,R1から少なくとも一つを選択又は特定するように構成され得る。この特定実施形態では、パイロットパルスRのピークパワー/振幅/強度に基づいて、特にパイロットパルスRの光パワーについて、最適サンプルとなるようにサンプルR1は選択される。所定のサンプリング周波数に基づいて、及び/又は、パイロットパルスRの所定の時間遅延R1に基づいて、サンプルR0は選択され得る。
【0078】
この実施形態において、クロック再生回路803からの入力と少なくとも一つのパイロットパルスRとそのサンプルとを使用する搬送波再生回路805は、位相差を確定し、位相差を使用して搬送波情報を再生するように構成されている。補正因子Wは、ブロックモジュール600を使用して計算され得る。
【0079】
この特定実施形態において、搬送波再生回路805は、上記に述べたブロックモジュールを一より多い、特に三つのブロックモジュール807,809,811(
図8)を含む。ブロックモジュール機能を使用して、方程式(8)の解を求める為の発明に関する搬送波再生が
図8に示されており、好ましくはデジタル化されたボブの(つまり受信ユニットの)信号である
【数19】
1と
【数20】
2が、クロック再生回路803への入力として提供される。
【0080】
上記のように、クロック再生回路803は、1/T
sの周波数を持つ入力プロセスクロック4を使用して、パイロットパルスつまりR
1,i及びその隣接サンプルR
0,iと、量子信号パルスS
k,iとの光パワーについて最良のサンプルを選択/特定するように構成され得る。例えば、制御入力オプションを含むDフリップフロップでできているレジスタを使用するクロック再生回路803は、次の更新済みパイロットパルス、つまり第(i+1)のもの又は量子信号パルス、つまり第(k+1)のものまで、信号
【数21】
を出力及びラッチするように構成されている。信号5から8を入力として使用すると、ブロックモジュール807は、以下のように方程式(7)を適用することにより(Out
1及びOut
2と称される)12を出力する。
【数22】
ブロックモジュール807の機能と方程式(7)との間の符号不一致を修正すべく、例えば
【数23】
8の前で論理NOT演算子13が使用され得る。しかしながら、論理NOT演算子の位置はこれに限定されるわけではない。
【0081】
図8に示されているように、ブロックモジュール807の出力12はブロック回路BCの入力として機能し得る。こうして、ブロック回路BCは二つの入力、すなわちブロックモジュール807から出力された
【数24】
と
【数25】
とを受信するように構成され得る。
【0082】
図8のブロック回路BCが
図9に詳しく図示されている。ブロック回路BCはブロックモジュール18でもあるが、ブロックモジュールの一以上の入力を選択するように構成されている一以上の多重化装置14,15と、ブロックモジュールの一以上の入力を処理するように構成されている一以上のレジスタバッファ21,25とを追加として含み得る。
【0083】
任意の制御信号16,17を使用する多重化装置14,15は、ブロック回路BCの入力(すなわちブロックモジュール807の出力)をブロックモジュール18へ送り、それぞれ出力19,20として
【数26】
と
【数27】
が求められる。レジスタバッファ21は、入力プロセスクロック4の場合に、任意の制御信号22を使用して入力データをラッチできる。制御信号16,17は、多重化装置14,15が得られた出力を通過させるように制御又は変更することができ、
【数28】
及び
【数29】
と組み合わせて
【数30】
と
【数31】
とを求めるべく、ブロックモジュール18にフィードバックされ得る。制御信号16,17は、次に検出されるパイロットパルス(つまり第(i+1)のもの)まで、好ましくはオン状態に維持され得る。ブロックモジュール18は、R
0,iの後の第jサンプルに対応する
【数32】
23と
【数33】
24とをそれぞれ求めることができる。一実施形態では、N個の量子信号パルスの後に、制御信号16,17,22は前と同じ機能で次のパターンの為にリセットされ得る。例えば、R
0,iの後の第(j+1)サンプルが量子パルスである場合に、ブロック回路BCの第2レジスタバッファ25とその任意の制御信号26とが、Output
127とOutput
228について
【数34】
及び
【数35】
をラッチし、その結果、
【数36】
となる。方程式(5)及び方程式(6)を使用し、そしてブロック回路BC出力からの信号を使用することにより、方程式(9)の回転行列W
iの要素を求めると、ブロックモジュール809により以下の出力がOut’
130及びOut’
231として得られる。
【数37】
上式において、ブロックモジュール811への入力としてのS
k,iの同相及び直角位相と方程式(13)との組み合わせから、
【数38】
により、
【数39】
33及び
【数40】
34についての相当値で方程式(8)の解を求めることができる。それゆえ、方程式(14)では、方程式(13)の推定値に基づいて信号パルスが回転されたと見なされ得、位相変動に対応してS
i’の行列要素は再生され得る。一実施形態では、次のパイロットパルスを受信することにより、搬送波再生手順全体が再開され得る。
【0084】
図10は、発明に関する搬送波再生方法の裏付けとなるとともにその性能を評価するシミュレーション結果を示す。
図10(a)及び
図10(c)では、Xの同相と(Δf+f
n)=60Hz(a)及び1060MHz(c)の直角位相Pとを含み、M=16、N=1、T
s=1nsである量子パルスの配置と、2T
sのパイロット及び量子パルスの全体幅とがシミュレーションされている。(Δf+f
n)>1/T
sについて、Tsのサンプル周期中に配置は2πより大きく回転できることが分かる。
図10(b)及び
図10(d)は、それぞれ
図10(a)及び
図10(c)の信号に対応する再生後の量子パルスを示している。発明に関する方法を使用すると、非常に大きな周波数ドリフトについてもデータが正しく正確に再生され得ることをシミュレーション結果は示している。この実施形態では、M及びNの選択について理論的な制限はない。しかしながら、実際の適用では短い時間周期であってもレーザ周波数が変化し得るので、M及びNをそれぞれ2から256と1から256の範囲に制限して、搬送波データ再生の為の最適かつ良好な性能が得られることが好ましい。最も好適な実施形態では、M=16かつN=1である。
【0085】
図9に関して記載したように、本発明では、フィードフォワード位相補正とともに、例えば方程式(13)の推定値から求められたフィードバック信号も、局部発振子LOの発生源の波長を能動的に調整することによりレーザの周波数差を最小化するのに使用され得る。好ましくは、総数で16個の乗算器と8個の加算器とを使用して、簡易的だが堅固なフィードフォワード搬送波再生が達成され得る。
【0086】
旧来の通信及び量子暗号の両方の用途におけるコスト効果の高いシステムの為の低コストレーザでは、オフラインプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのリアルタイムデジタル信号処理ユニットにより、
図6から
図9を参照して記載した構成も適用され得る。特に、本発明の実施形態によれば、制御ユニット703はデジタル信号処理ハードウェア/ソフトウェアで実装され得る。一つの特定例において、デジタル信号処理ハードウェアはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)であり得る。それゆえに、本発明はデジタル信号処理(DSP)と組み合わされて送信情報を再生できる。
【0087】
本発明は、ハードウェアの複雑性を軽減しながらも(光源の)大きな周波数ドリフトが存在する状態で量子信号パルスを正確に再生できる改良方法及び/又はデバイスを提供する。特に、開示される方法及び/又はデバイスは、光源(例えばレーザ)の信号不安定性に関連する大きな周波数ドリフトの補正を可能にし、効率的で改良された搬送波再生手順ゆえにリアルタイム動作での簡易的なハードウェア/ソフトウェア実装例の可能性も供与できる。言い換えると、パイロットパルスの多くのサンプルを使用することにより、本発明は、パイロットパルスの一つのサンプルを使用する従来技術と比較した時に、送信側の光源と受信側との間での広範囲の周波数ドリフトで正確な搬送波再生を可能にする。発明に関する方法及び/又はデバイスは、量子暗号化、例えば低強度量子パルスのコヒーレント検出に基づくCV‐QKDに特に適している。
【0088】
本発明は、乗算及び加算(又は減算)を含む単純な数学演算に依存するハードウェアを使用する搬送波再生も開示しており、こうしてデジタル信号処理ユニットを使用するリアルタイム実装を容易にするとともに、コンピュータを必要とする三角関数又はLUTの回避を可能にする。
【0089】
さらに、発明に関する方法及び/又はデバイスは、コヒーレント光通信での位相及び/又は周波数再生を可能にし、例えば旧来の通信及び量子暗号の両方の用途で、オフラインプロセッサ及び/又はFPGAなどのリアルタイムDSPと、コスト効果の高いシステムの為の低コストレーザとを備えるように構成され得る。
【0090】
本発明の上述の実施形態/ステップ/例のうち一以上は、処理/計算デバイス及びソフトウェア/プログラムなど一以上のコンポーネントを使用して完全又は部分的に自動化され得る。本発明の一以上のステップ/実施形態/例は、これらのコンポーネントの使用により実装され得る。
【0091】
上の記載は、記載及び図示された特定の実施形態及び例を有していることが理解されるだろう。しかしながら、この記載は本発明の様々な実施形態及び例のいずれか及び全ての変形を内含することが意図されている。本明細書に具体的に記載していない上記実施形態/例/配置構成の組み合わせは、上の記載を熟読すると当業者には明白になるだろう。それゆえ、開示された特定の実施形態/例/配置構成に開示が限定されないことと、添付請求項の範囲内にある全ての実施形態及び配置構成を本発明が含むこととが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
1
【数41】
2
【数42】
4 入力プロセスクロック
5,6,7,8,9,10 信号
12 出力
13 論理NOT演算子
14,15 多重化装置
16,17 制御信号
18 ブロックモジュール
19,20 出力
21 レジスタバッファ
22 制御信号
23
【数43】
24
【数44】
25 レジスタバッファ
26 制御信号
27 出力1
28 出力2
30 Out’
1
31 Out’
2
33
【数45】
34
【数46】
101 発信側/送信側(アリス)
103 連続波レーザ源
105 振幅変調器
107 電気光学位相変調器
109 減衰器
201 受信側(ボブ)
203 受信ユニット
205 局部発振子
207 偏光制御器
209 検出器
211 デジタル信号処理ユニット
600 ブロックモジュール
700 デバイス
701 受信ユニット
703 制御ユニット
803 クロック再生回路
805 搬送波再生回路
807,809,811 ブロックモジュール
【国際調査報告】