(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】新規グルココルチコイド受容体アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07J 71/00 20060101AFI20240304BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240304BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240304BHJP
A61K 31/665 20060101ALI20240304BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240304BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240304BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240304BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240304BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240304BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240304BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240304BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C07J71/00 CSP
A61K31/58
A61K31/7048
A61K31/665
A61P17/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P13/12
A61P1/04
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558317
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2022021285
(87)【国際公開番号】W WO2022204100
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミソン,ジェームス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ドンミン ドン ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヴルスト,ジャクライン メアリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076FF11
4C086AA01
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4C086EA11
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4C086MA01
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4C086NA14
4C086ZA68
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4C086ZB13
4C086ZB15
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK02
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN02
4C091NN07
4C091NN12
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ07
4C091QQ15
(57)【要約】
本発明は、式I:
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
である]の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供し、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩は、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、及び炎症性腸疾患などの自己免疫疾患及び炎症性疾患を治療するために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
【化2】
である]
の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Rは、水素である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Rは、-P(=O)(OH)
2である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
Rは、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Rは、
【化4】
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
Rは、
【化5】
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記化合物は、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記化合物は、
【化7】
である、請求項7に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
【化8】
である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、
【化9】
である、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
【化10】
である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、
【化11】
である、請求項6に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
【化12】
である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物は、
【化13】
である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記化合物は、
【化14】
である、請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
前記化合物は、
【化15】
である、請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
患者におけるアトピー性皮膚炎を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項18】
患者における全身性エリテマトーデスを治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項19】
患者における関節リウマチを治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項20】
患者におけるループス腎炎を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項21】
患者における炎症性腸疾患を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項22】
療法における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
アトピー性皮膚炎の治療における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
全身性エリテマトーデスの治療における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
ループス腎炎の治療における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
関節リウマチの治療における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
炎症性腸疾患の治療における使用のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項28】
アトピー性皮膚炎を治療するための薬剤の製造のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項29】
全身性エリテマトーデスを治療するための薬剤の製造のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項30】
ループス腎炎を治療するための薬剤の製造のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項31】
関節リウマチを治療するための薬剤の製造のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項32】
炎症性腸疾患を治療するための薬剤の製造のための、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項33】
請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項34】
医薬組成物を調製するためのプロセスであって、請求項1~16のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グルココルチコイド受容体アゴニストであり、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、及び関節リウマチなどの自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用である化合物、これらの化合物を調製するためのプロセス、これらの化合物を含む医薬組成物を提供し、これらの化合物及び組成物を使用する方法もまた提供される。
【0002】
アトピー性皮膚炎は、小児に頻繁に発生するが、多くの成人にも影響を及ぼす、慢性、掻痒性の再発性及び寛解性の炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の現在の治療には、光治療、コルチコステロイド若しくはカルシニューリン阻害剤を含有する局所クリーム、又はデュピルマブとして知られる皮下注射可能な生物製剤が含まれる。アトピー性皮膚炎の治療においてなされた進展にもかかわらず、アトピー性皮膚炎並びに他の炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療するための新規化合物に対する有意なニーズが存在している。
【0003】
国際公開第2017/210471号は、自己免疫疾患又は炎症性疾患を治療するために有用な特定のグルココルチコイド受容体アゴニスト及びその免疫複合体を開示している。国際公開第2018/089373号は、新規ステロイド、そのタンパク複合体、並びにステロイド及び複合体を投与することを含む疾患、障害、及び状態を治療する方法を開示している。
【0004】
本発明は、グルココルチコイド受容体アゴニストである特定の新規化合物を提供する。本発明は、グルココルチコイド受容体アゴニストのプロドラッグである特定の新規化合物を更に提供する。更に、本発明は、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びループス腎炎などの自己免疫疾患及び炎症性疾患の治療に有用なグルココルチコイド受容体アゴニストである特定の新規化合物を提供する。
【0005】
したがって、一実施形態では、本発明は、式I:
【0006】
【化1】
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
【0007】
【化2】
である]の化合物、 又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0008】
一実施形態では、Rは、水素である。
【0009】
一実施形態では、Rは、-P(=O)(OH)2である。
【0010】
一実施形態では、Rは、
【0011】
【0012】
一実施形態では、Rは、
【0013】
【0014】
一実施形態では、Rは、
【0015】
【0016】
特定の実施形態では、本発明は、式Ia:
【0017】
【化6】
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
【0018】
【化7】
である]の化合物、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、式Ib:
【0020】
【化8】
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
【0021】
【化9】
である]の化合物、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、式Ic:
【0023】
【化10】
[式中、Rは、水素、-P(=O)(OH)
2、
【0024】
【化11】
である]の化合物、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0025】
一実施形態では、本発明はまた、炎症性疾患の治療を必要とする患者における炎症性疾患を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明はまた、アトピー性皮膚炎の治療を必要とする患者におけるアトピー性皮膚炎を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患の治療を必要とする患者における炎症性腸疾患を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を更に提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチの治療を必要とする患者における関節リウマチを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を更に提供する。一実施形態では、本発明はまた、全身性エリテマトーデスの治療を必要とする患者における全身性エリテマトーデスを治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、本発明はまた、ループス腎炎の治療を必要とする患者におけるループス腎炎を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、療法における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療における使用のための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎の治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチの治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患の治療における使用のための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、ループス腎炎の治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態では、本発明は、全身性エリテマトーデスの治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0027】
一実施形態では、本発明はまた、炎症性疾患を治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎を治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、関節リウマチを治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。一実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患を治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を更に提供する。一実施形態では、本発明は、ループス腎炎を治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を更に提供する。一実施形態では、本発明はまた、全身性エリテマトーデスを治療するための薬剤の製造のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0028】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物を更に提供する。一実施形態では、本発明は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、医薬組成物を調製するためのプロセスを更に提供する。一実施形態では、本発明はまた、式Iの化合物の合成のための新規中間体及びプロセスを包含する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療」、又は「治療する」という用語は、既存の症状又は障害の進行又は重症度を抑制すること、遅延させること、阻止すること、又は改善することを含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳類、特にヒトを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に単回又は複数回投与すると、診断中又は治療中の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の量又は投与量を指す。
【0032】
有効量は、既知の技法の使用により、かつ同様の状況下で得られた結果を観察することにより、当業者によって決定され得る。患者についての有効量を決定する際に、多数の因子が、担当診断医によって考慮され、これらの因子としては、患者の種類;患者の背丈、年齢、及び一般的健康状態;関連する特定の疾患又は障害;疾患若しくは障害の程度又は関与若しくは重症度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与様式;投与される調製物の生物学的利用能特性;選択された投与レジメン;併用薬の使用;並びに他の関連する状況が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される場合、式Iは、式Ia、式Ib、及び式Icを包含することが理解され、本明細書における式Iへの言及は全て、式Ia、式Ib、及び式Icを含むものとして読まれるべきである。
【0034】
本発明の化合物は、局所投与を含む、化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化することができる。更に、本発明の化合物は、抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)として処方され得、式Iの特定の化合物は、ADCのペイロード部分として当業者によって認識される。そのようなADCは、注射、特に皮下注射によって投与される。更に、C21においてキャップされたヒドロキシ基を有する本発明の化合物であって、Rが、-P(=O)(OH)2
【0035】
【化12】
である化合物は、プロドラッグとして挙動し、in vitro又はin vivoで代謝されて、Rが水素である活性グルココルチコイド受容体アゴニストを提供する。そのような医薬組成物及びそれらを調製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22
nd Edition,Pharmaceutical Press,2012;国際公開第2017/062271号及び同第2017/210471号を参照)。
【0036】
式Iの薬学的に許容される塩は、本発明の範囲内に含まれる。式Iの化合物などの、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、ジエチルエーテルなどの好適な溶媒中で当該技術分野で周知の標準的な条件下で、例えば、本発明の化合物の適切な遊離塩基を適切な薬学的に許容される酸と反応させることによって形成することができる。例えば、Berge,S.M.,et al.,「Pharmaceutical Salts,」Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)を参照のこと。
【0037】
特定の略語は以下のように定義される。「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し、「DCM」は、塩化メチレン又はジクロロメタンを指し、「g」はグラムを指し、「rt」は室温を指し、「g」はグラムを指し、「hr」又は「hrs」は、時間を指し、「mg」はミリグラムを指し、「min」は、分を指し、「mL」は、ミリリットルを指し、「mol」は、モルを指し、「mmol」は、ミリモル指し、「nm」は、ノノメートル又はナノメートルを指し、「ES/MS」は、エレクトロスプレー質量分析を指し、「m/z」は、質量分析の質量対電荷割当量を指す。
【0038】
本発明の化合物又はその塩は、当業者に既知の様々な手順によって容易に調製されてもよく、そのうちのいくつかが、以下の調製及び実施例において説明されている。当業者は、本発明の化合物又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを異なる様式で組み合わせることができるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィ、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収することできる。全ての置換基は、別途指示のない限り、すでに定義されたとおりである。試薬及び出発物質は、当業者であれば容易に入手可能なものである。以下の調製、実施例、及びアッセイは、本発明を更に説明するものであるが、決して本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0039】
調製1
N-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル]カルバミン酸tert-ブチル
【0040】
【化13】
(4-(ブロモメチル)フェニル)カルバミン酸tert-ブチル(3.4g、11.6mmol)、2-フルオロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアルデヒド(1.9g、7.7mmol)及び炭酸カリウム(39g、285mmol)をトルエン(50mL、470mmol)及び水(10mL、560mmol)に溶解させた。溶液を脱気し、真空に引き、窒素で3回バックフィルした。1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(0.977g、1.2mmol)を添加し、反応物を加熱して、18時間還流した。反応物を冷却し、室温に戻した後、水(100mL)及び酢酸エチル(150mL)を添加した。層を分離し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、4:1ヘプタン:酢酸エチルで溶出する順相精製(シリカゲル)により精製して、表題化合物を得た(1.36g、53%収率)。ES/MS m/z 328.2(M-H)。
【0041】
調製2
(2R,3S,4S,5R,6R)-2-(アセトキシメチル)-6-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート
【0042】
【化14】
モレキュラーシーブ(3Å、0.5g)、(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン(異性体1)(200mg、0.34mmol、実施例1を参照)及び2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシルブロミド(175mg、0.43mmol)をジクロロメタン(7mL、109mmol)に溶解させ、室温で1時間撹拌した。反応物を0℃に冷却し、酸化銀(I)(160mg、0.68mmol)を一度に添加し、次いで、反応物を30分間激しく撹拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(65μL、0.35mmol)を3分間かけて滴下添加した。粗反応物を20mLのジクロロメタンで希釈し、2mLの水を添加した。溶液を珪藻土で濾過し、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びメタノールで洗浄した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:9の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(85mg、27%収率)。ES/MS m/z 918.4(M)。
【0043】
調製3
(2R,3R,4S,5S,6S)-2-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5-インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート
【0044】
【化15】
モレキュラーシーブ(3Å、0.5g)、(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン(異性体1)(200mg、0.34mmol、実施例1を参照)及び2,3,4,6-テトラ-アセトブロモ-α-D-グルクロン酸メチルエステル(182mg、0.43mmol)をジクロロメタン(7mL、109mmol)に溶解し、室温で1時間撹拌した。反応物を0℃に冷却し、酸化銀(I)(160mg、0.68mmol)を一度に添加し、次いでトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(65μL、0.35mmol)を一度に添加した。反応物を0℃で40分間撹拌し、次に、室温に10分間昇温させた。粗反応物をジクロロメタン15mLで希釈し、水2mLを添加した。溶液を珪藻土で濾過し、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びメタノールで洗浄した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:9の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(44mg、14%収率)。ES/MS m/z 904.4(M+H)。
【0045】
調製4
N-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル]カルバミン酸9H-フルオレン-9-イルメチル
【0046】
【化16】
0℃のアセトニトリル(40mL)及び水(10mL)中のN-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル]カルバミン酸tert-ブチル(3.7mg、13mmol、調製1を参照)の溶液に、炭酸水素ナトリウム(1.9g、23mmol)及びクロロギ酸9-フルオレニルメチル(3.3g、12mmol)を一度に添加した。添加後、反応物を15℃に加温し、12時間撹拌した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を水(50mL)中に再懸濁させ、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、9:1の石油エーテル:酢酸エチルで溶出する順相クロマトグラフィ(シリカゲル)により精製して、表題化合物を得た(1.6g、24%収率)。ES/MS m/z 452.4(M+H)。
【0047】
調製5
(4-(3-フルオロ-4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)ベンジル)フェニル)カルバミン酸(9H-フルオレン-9-イル)メチル
【0048】
【化17】
0℃のアセトニトリル(15mL、290mmol)中のN-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル])カルバミン酸9H-フルオレン-9-イルメチル(1.5g、2.9mmol、調製4を参照)及び(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)-11,16,17-トリヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン(1.3g、3.5mmol)の溶液に、過塩素酸(水中70%、1.3mL、17mmol)を滴下添加した。反応物を0℃で30分間撹拌し、6時間かけて室温に加温した。反応物を30mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を酢酸エチル(50mL)及び水(30mL)に溶解させ、酢酸エチル(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣を、9:1のジクロロメタン:メタノールで溶出する順相クロマトグラフィ(シリカゲル)により精製して、表題化合物を得た(1.5g、61%収率)。ES/MS m/z 810.3(M+H)。
【0049】
調製6
(4-(4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-8b-(2-((ジ-tert-ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)-3-フルオロベンジル)フェニル)カルバミン酸(9H-フルオレン-9-イル)メチル
【0050】
【化18】
1H-テトラゾール(520mg、7.3mmol)及びN-ジtert-ブトキシホスファニル-N-エチル-エタンアミン(1.9g、7.1mmol)を、(4-(3-フルオロ-4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)ベンジル)フェニル)カルバミン酸(9H-フルオレン-9-イル)メチル(650mg、0.75mmol、調製5を参照)のジメチルホルムアミド(7mL、90mmol)溶液に、室温、窒素雰囲気下で一度に添加した。3時間後、反応物を0℃に冷却し、過酸化水素(1.9g、7.5mmol)を添加し、反応物を4時間かけて室温に加温した。反応物をチオ硫酸ナトリウム(10mL)の添加によりクエンチし、水(15mL)に注ぎ、酢酸エチル(25mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:1の石油エーテル:酢酸エチルで溶出する順相クロマトグラフィ(シリカゲル)により精製して、表題化合物を得た(250mg、33%収率)。ES/MS m/z 1002.3(M+H)。
【0051】
調製7
リン酸=2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエチル=ジ-tert-ブチル
【0052】
【化19】
(4-(4-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-8b-(2-((ジ-tert-ブトキシホスホリル)オキシ)アセチル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-2,4,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-1H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-10-イル)-3-フルオロベンジル)フェニル)カルバミン酸(9H-フルオレン-9-イル)メチル(250mg、0.25mmol、調製6を参照)をアセトニトリル(4mL、76mmol)に溶解させ、ピペリジン(200μL、2.0mmol)を添加した。反応物を室温で20分間撹拌した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を10mLの石油エーテルに取り、2時間撹拌した。得られた固形物を濾過により収集し、減圧下で乾燥させて、表題化合物(165mg、収率77%)を得た。ES/MS m/z 780.3(M+H)。
【0053】
調製8
(2R,3R,4S,5R,6R)-2-(アセトキシメチル)-6-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート
【0054】
【化20】
モレキュラーシーブ(3Å、0.5g)、(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン(異性体1)(300mg、0.51mmol、実施例1を参照)及び2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシルブロミド(320mg、0.77mmol)をジクロロメタン(7mL)中に溶解させ、室温で1時間撹拌した。反応物を0℃に冷却した。酸化銀(I)(240mg、1.0mmol)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(100μL、0.54mmol)を添加した。30分後、反応物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、セライトで濾過し、DCM(10mL)及びMeOH(10mL)ですすいだ。合わせた有機層を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:2の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(120mg、26%収率)。MS m/z 918.4(M)。
【0055】
実施例1
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン(異性体1)
【0056】
【化21】
過塩素酸(水中70%、3mL)を、アセトニトリル(50mL)中の(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)-11,16,17-トリヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン(2.5g、6.6mmol)及びN-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル]カルバミン酸tert-ブチル(2.2g、6.7mmol、調製1を参照)に室温で添加し、撹拌した。18時間後、反応物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、9:1の塩化メチレン:イソプロパノールで抽出した。有機層を組み合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:1の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物、異性体1、ピーク1(2.25g、収率58%)を得た。ES/MS m/z 588.4(M+H)。
1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)δ 0.86(s,3H);1.06-1.01(m,2H),1.39(s,3H),1.80-1.73(m,5H),2.16-2.13(m,2H),2.38-2.28(m,1H),2.59-2.53(m,1H),3.74(s,2H),4.20-4.15(m,1H),4.30-4.29(m,1H),4.50-4.45(m,1H),4.94-4.79(m,4H),5.12(t,J=6.0Hz,1H),5.59(s,1H),5.93(s,1H),6.16(dd,J=1.8,10.1Hz,1H),6.49-6.46(m,2H),6.86(d,J=8.3Hz,2H),7.06-7.00(m,2H),7.32-7.30(m,1H),7.46(t,J=7.7Hz,1H)
【0057】
実施例1(追加の調製)
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン
過塩素酸(水中70%w/w、12mL、140mmol、3.5当量)を、アセトニトリル(750mL、589g、50体積、360当量、14.34mol)中の(8S,9S,10R,11S,13S,14S,16R,17S)-11,16,17-トリヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13-ジメチル-7,8,9,11,12,14,15,16-オクタヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オン(15.00g、39.85mmol)及びN-[4-[(3-フルオロ-4-ホルミル-フェニル)メチル]フェニル]カルバミン酸tert-ブチル(13.12g、39.85mmol、調製1を参照)の混合物の低温の(0~3℃)スラリーに滴下添加した。10分後、冷却浴を取り外し、混合物を周囲温度で18時間撹拌した。固体のNaHCO3(16.8g、200mmol)を少しずつ添加し、pHを中性に調整した。1時間撹拌した後、混合物を濾過し、アセトニトリル50mLで洗浄した。次いで、透明な溶液を、メタノール(325mL)中の(R)-アニシホス(10.84g、39.85mmol)の溶液で一度に処理し、約5mgの塩で処理した。混合物を周囲温度で16時間撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、アセトニトリル(3×50mL)で洗浄し、真空下45℃で乾燥させて、17.8gの(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン-(R)-アニシホス塩を白色固体として得た(収率52%)。
【0058】
固体のHPLC-MSは、215/242nmで(0.68でのアニシホスピークについて補正)1.69分、95.5/96面積%a/a(所望の異性体)、1.75分、1.3/1.4面積%a/a(望ましくない異性体)を示した。
【0059】
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン-(R)-アニシホス塩(20g、23mmol)と、200mLのDCM及び200mLの飽和NaHCO3水溶液との混合物を、全ての固体が溶解するまで(一般的には一晩)激しく撹拌した。次に、層を分離し、水層を2×50mLのDCMで抽出した。合わせた有機相を2×50mLの飽和NaClで洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、真空下45℃で濃縮して、12.5gの表題化合物を白色固体として得た(91%収率)。HPLC純度:215nmで96.6%、242nmで96.9%。ES/MS m/z 588.2(M+1)。Q-NMR(9.5mgの生成物+3.0mgのTCNB(MW 260.89)。純度90%w/w。残留DCM 1%w/w。1H NMR(500.11MHz,CDCl3)δ 0.95(s,3H);1.20-1.03(m,2H),1.44-1.37(m,4H),1.84-1.56(m,3H),1.97-1.90(m,1H),2.25-2.00(m,3H),2.38-2.29(m,1H),2.62-2.50(m,1H),3.08-2.90(m,1H),3.68-3.47(m,1H),3.82(s,2H),4.32-4.23(d,1H),4.49(m,1H),4.65-4.58(d,1H),5.08-5.03(d,1H),5.63(s,1H),6.00(s,1H),6.27-6.23(d,J=8.3Hz,1H),6.60(d,J=8.3Hz,2H),6.99-6.82(m,3H),7.23-7.16(m,1H),7.35(t,J=7.7Hz,1H)。
【0060】
実施例2
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10S,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-8b-(2-ヒドロキシアセチル)-6a,8a-ジメチル-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン(異性体2)
【0061】
【化22】
実施例1から、残渣を1:1の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物、異性体2、ピーク2(225mg、9%収率)を得た。ES/MS m/z 588.4(M+H)。
1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)d 0.86(s,3H),1.05(dd,J=3.0,11.1Hz,1H),1.25-1.20(m,2H),1.38(s,4H),1.85-1.78(m,5H),2.09-2.00(m,2H),2.32-2.29(m,1H),2.56-2.53(m,1H),3.73(s,2H),4.02-3.97(m,1H),4.22-4.17(m,1H),4.30-4.29(m,1H),4.78(d,J=3.1Hz,1H),4.87(s,2H),4.98(t,J=6.0Hz,1H),5.28(d,J=6.8Hz,1H),5.93(s,1H),6.16(dd,J=1.7,10.1Hz,1H),6.23(s,1H),6.47(d,J=8.2Hz,2H),6.84(d,J=8.2Hz,2H),6.99-6.95(m,2H),7.16(t,J=7.7Hz,1H),7.32-7.30(m,1H)。
【0062】
実施例3
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-8b-(2-(((2R,3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)アセチル)-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン
【0063】
【化23】
(2R,3S,4S,5R,6R)-2-(アセトキシメチル)-6-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(45mg、0.05mmol、調製2を参照)、メタノール(2mL)、及び炭酸カリウム(25mg、0.25mmol)をフラスコに添加し、室温で1時間撹拌した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、3:7の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(23mg、63%収率)。ES/MS m/z 750.4(M+H)。
1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)δ 0.88(s,3H);1.06-1.03(m,2H),1.40(s,3H),1.77-1.69(m,3H),1.81(d,J=1.8Hz,2H),2.04-2.00(m,1H),2.17-2.14(m,1H),2.38-2.32(m,1H),2.58-2.53(m,1H),3.18(d,J=5.4Hz,1H),3.31-3.26(m,1H),3.39-3.34(m,1H),3.55-3.47(m,2H),3.63(t,J=4.1Hz,1H),3.74(s,2H),4.20(d,J=7.6Hz,1H),4.31-4.30(m,1H),4.47-4.41(m,2H),4.65(t,J=5.5Hz,1H),4.78-4.72(m,3H),4.89(s,2H),4.94(dd,J=5.0,9.9Hz,2H),5.64(s,1H),5.93(s,1H),6.17(dd,J=1.8,10.1Hz,1H),6.49-6.46(m,2H),6.86(d,J=8.3Hz,2H),7.06-7.01(m,2H),7.32(d,J=10.0Hz,1H),7.47(t,J=7.7Hz,1H)。
【0064】
実施例4
(2S,3S,4S,5R,6R)-6-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5-インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロ-2H-ピラン-2-カルボン酸
【0065】
【化24】
(2R,3R,4S,5S,6S)-2-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)-6-(メトキシカルボニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(44mg、0.05mmol、調製3を参照)、メタノール(2mL)、及び炭酸カリウム(25mg、0.25mmol)を一緒に添加し、室温で2.5時間撹拌した。粗製溶液を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、1:1の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(24mg、65%収率)。ES/MS m/z 764.4(M+H)。1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)d 0.84(s,3H),1.07-0.98(m,2H),1.41(s,3H),1.76-1.66(m,4H),2.16-2.11(m,2H),2.45-2.44(m,1H),2.60-2.55(m,1H),3.05-3.04(m,1H),3.20-3.18(m,2H),3.74(s,2H),4.40-4.30(m,2H),4.58-4.52(m,1H),4.82-4.78(m,1H),4.95-4.92(m,2H),5.13-5.11(m,2H),5.64(s,1H),5.92(s,1H),6.16(dd,J=1.3,10.0Hz,1H),6.48(d,J=8.1Hz,2H),6.86(d,J=8.1Hz,2H),7.11-7.09(m,2H),7.36-7.32(m,1H),7.51-7.45(m,1H)。
【0066】
実施例5
リン酸=二水素=2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエチル
【0067】
【化25】
リン酸=2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエチル=ジ-tert-ブチル(165mg、0.19mmol、調製7を参照)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(1mL)を添加した。反応物を室温で1時間撹拌した。粗製溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を、7:3の10mM炭酸水素アンモニウム水:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(34mg、26%収率)。ES/MS m/z 668.2(M+H)。1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)d 0.79-0.72(m,1H),0.89(s,4H),1.38(s,3H),1.66-1.55(m,1H),1.73-1.67(m,2H),2.10-2.08(m,2H),2.27-2.22(m,2H),3.67(s,2H),3.67(brs,4H),4.19(d,J=1.8Hz,1H),4.78-4.69(m,2H),4.94(d,J=4.9Hz,1H),5.58(s,1H),5.88(s,1H),6.11-6.08(m,1H),6.46(d,J=8.3Hz,2H),6.87-6.80(m,4H),7.38-7.28(m,5H)。
【0068】
実施例6
(6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-8b-(2-(((2R,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)アセチル)-1,2,6a,6b,7,8,8a,8b,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4H-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-4-オン
【0069】
【化26】
(2R,3R,4S,5R,6R)-2-(アセトキシメチル)-6-(2-((6aR,6bS,7S,8aS,8bS,10R,11aR,12aS,12bS)-10-(4-(4-アミノベンジル)-2-フルオロフェニル)-7-ヒドロキシ-6a,8a-ジメチル-4-オキソ-1,2,4,6a,6b,7,8,8a,11a,12,12a,12b-ドデカヒドロ-8bH-ナフト[2’,1’:4,5]インデノ[1,2-d][1,3]ジオキソール-8b-イル)-2-オキソエトキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリイルトリアセテート(120mg、0.13mmol、調製8を参照)、メタノール(2mL)、及び炭酸カリウム(65mg、0.66mmol)を丸底フラスコに添加し、室温で1時間撹拌した。粗製溶液をセライトに含ませて、3:7の10mM炭酸水素アンモニウム水+5%メタノール:アセトニトリルで溶出する逆相クロマトグラフィにより精製して、表題化合物を得た(78mg、78%収率)。MS m/z 750.4(M+H)。1H NMR(500.11MHz,d
6-DMSO)d 7.48-7.45(m,1H),7.34-7.30(m,1H),7.07-7.01(m,2H),6.86(d,J=8.3Hz,2H),6.48(d,J=8.3Hz,2H),6.25-6.16(m,1H),5.95-5.93(m,1H),5.66(s,1H),5.11(d,J=4.9Hz,1H),4.98-4.88(m,5H),4.79-4.74(m,2H),4.62-4.59(m,1H),4.50-4.46(m,1H),4.38-4.29(m,1H),4.25-4.23(m,1H),3.74(s,2H),3.71-3.67(m,1H),3.50-3.48(m,1H),3.17-3.13(m,4H),2.38-2.34(m,1H),2.16-2.14(m,2H),1.84-1.75(m,5H),1.40(s,3H),1.07-1.05(m,2H),0.89-0.88(m,3H)。
【0070】
hGRコアクチベーターリクルートアッセイ
グルココルチコイド化合物の活性を、Life Technologies製のLanthaScreen TR-Fret GRコアクチベーターアッセイ(A15899)を使用して測定した。化合物を、200nMの最高濃度で3倍10点連続希釈でアッセイプレートにアコースティック分注で移した。10マイクロリットルのGR-LBDの2倍溶液を化合物プレートに添加し、10分間インキュベートした後、10マイクロリットルのフルオレセイン-SRC1-4標識及びTb標識抗GST抗体の2倍溶液をプレートに添加した。プレートを暗所で2時間インキュベートし、次いで、340nmで励起し、520nm(フルオレセイン)及び490nm(テルビウム)で発光するEnvisionプレートリーダーで読み取った。520/490の発光比をGenedataで分析した。活性比率を得るために、データをDMSOの陰性対照及び4μMデキサメタゾンの陽性対照と比較した。
【0071】
本質的に上記の手順に従って、実施例1の化合物は、2.07nMの相対IC50を提供し、実施例2の化合物は、13.1nMの相対IC50を提供した。
【国際調査報告】