(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】エラストマー性ポリマー組成物、並びに鉄道軌道構造及びそれを含むシステム
(51)【国際特許分類】
C08G 63/91 20060101AFI20240304BHJP
E01B 9/62 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C08G63/91
E01B9/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558447
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022057755
(87)【国際公開番号】W WO2022200495
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523354897
【氏名又は名称】エクウス ユーケイ トプコ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】509095961
【氏名又は名称】エデロン)(セドラ ベスローテン フェンノートシャップ
(71)【出願人】
【識別番号】518172381
【氏名又は名称】スティヒティング ヴァーヘニンゲン リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホンクープ、ヴィルヘルムス アドリアヌス ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デア ハウウェン、ヘリット マリヌス
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホーフェン、ピーター ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】コテリス、ステファヌス ヤコブス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フォーへルツァング、ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】クノープ、ヨハネス ルトヘル イドサルド
(72)【発明者】
【氏名】ブラアウヴ、ルールフ
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029BA02
4J029BA05
4J029CA09
4J029HA01
4J029HB02
4J029KH01
(57)【要約】
本発明は、アクリレートと、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、を含むエラストマー性ポリマー組成物に関する。特に、このようなエラストマー性ポリマー組成物は、鉄道軌道構造に使用することができる。本発明はまた、鉄道軌道構造にエラストマー性ポリマー組成物を適用するための方法に関し、特に、ポリマー組成物を適用する方法は、有利には、ポリマー中に存在するアセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物によって促進されるC-マイケル付加反応を利用し得る。本発明は更に、エラストマー性ポリマー組成物を含む鉄道軌道構造及びシステムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレートと、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、を含むエラストマー性ポリマー組成物であって、前記ポリオールが、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む、エラストマー性ポリマー組成物。
【請求項2】
再生可能な供給源及び/又はバイオベースの供給源に由来する、請求項1に記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記エラストマー性ポリマー組成物が、イソシアネートを含有しない、請求項1又は2に記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物の、アクリレートに対するモル比が、1:0.2~1:4、好ましくは1:0.25~1:3、より好ましくは1:0.25~1:2.5、最も好ましくは1:0.25~1:1.8の範囲である、請求項1~3のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記アセトアセチル化剤が、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸tert-ブチル、アセト酢酸イソプロピル、及びアセト酢酸イソブチルのうちの1つ以上から選択され、好ましくは、前記アセトアセチル化剤が、アセト酢酸tert-ブチルである、請求項1~4のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記アセトアセチル化剤と前記ポリオールとの前記反応生成物が、最大で10重量%のアセトアセチル化剤を含む、請求項1~5のいずれかのエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリオール中のa)の、b)に対する重量比が、90:10~30:70の範囲、好ましくは85:15~45:55の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記エラストマー性ポリマー組成物の前記ダイマー脂肪族残基の含有量が、5~60重量%、好ましくは8~55重量%、特に15~50重量%、とりわけ20~45重量%の範囲である、請求項1~7のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記アセトアセチル化剤と前記ポリオールとの前記反応生成物が、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%のダイマー脂肪族残基を含み得る、請求項1~8のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記アセトアセチル化剤と前記ポリオールとの前記反応生成物が、少なくとも5重量%のダイマー脂肪酸残基から、最大で95重量%のダイマー脂肪酸残基を含む、請求項9に記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記エラストマー性ポリマー組成物が、モノアクリレート、多官能アクリレート、オリゴマーアクリレート、又はそれらの誘導体のうちの1つ以上から選択されるアクリレートを含む、請求項1~10のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記エラストマー性ポリマー組成物が、発泡剤、触媒、顔料又は染料、充填剤、界面活性剤、可塑剤、接着促進剤、酸化防止剤、及びUV吸収添加剤から選択される1つ以上の添加剤を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて5~60重量%の量で充填剤を含む、請求項12に記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項14】
1つ以上の可塑剤を含む、請求項12又は13に記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項15】
ISO 37基準に従って測定された少なくとも0.1MPaの破断時引張強度を有する、請求項1~14のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項16】
少なくとも80%のISO 37に従う(最大)伸長度を有する、請求項1~15のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項17】
少なくとも150%のISO 37に従う(最大)伸長度を有する、請求項1~16のいずれかに記載のエラストマー性ポリマー組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のエラストマー性ポリマー組成物を鉄道軌道構造に適用する方法であって、前記方法が、
i)
A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物であって、前記ポリオールが、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、
B)アクリレートと、を混合することによって、ポリマー組成物混合物を調製する工程と、
ii)前記ポリマー組成物混合物を少なくとも1つ以上の鉄道軌道構造の構成要素に適用する工程と、
iii)前記ポリマー組成物混合物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項19】
工程iii))の硬化が、フリーラジカル重合反応によって、又はマイケル付加反応によって達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程iii)の硬化が、0℃~35℃の温度で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマー組成物混合物を少なくとも1つ以上の鉄道軌道構造の構成要素に適用する方法工程ii)において、前記鉄道軌道構造の構成要素が、レールであり、前記ポリマー組成物混合物が、前記レールの少なくとも1つの側面(又は面)に適用される、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
方法工程ii)において、前記レールが硬化したポリマー組成物によって、又は前記硬化したポリマー組成物の本体内に3つの側面で埋め込まれるように、前記ポリマー組成物混合物が、前記レールの前記3つの側面に適用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
方法工程ii)において、前記ポリマー組成物混合物が、少なくとも5mmの厚さを有する層で適用される、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
方法工程ii)において、前記ポリマー組成物混合物が、5~300mmの厚さを有する層で適用される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
方法工程i)の後に、得られたポリマー組成物混合物を、ギャップ、キャビティ、チャネル又は型に適用する、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
プライマーの適用、研磨及び洗浄といった前処理工程のうちの1つ以上を更に含む、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~17のいずれか一項に記載のエラストマー性ポリマー組成物を含むか、又は請求項18~26のいずれか一項に記載のポリマー組成物を適用するための方法によって得ることができる、鉄道軌道構造。
【請求項28】
前記エラストマー性ポリマー組成物から形成された発泡体シート、ベースプレート、締結具、トレイ本体、又は他の構成要素を含む、請求項27に記載の鉄道軌道構造。
【請求項29】
鉄道軌道構造又はシステムにおける、請求項1~17のいずれか一項に記載のエラストマー性ポリマー組成物の、又は請求項18~26のいずれか一項に記載のポリマー組成物を適用するための方法によって得ることができる、使用。
【請求項30】
レール構成要素を固定するための請求項29に記載の使用。
【請求項31】
レール構成要素を埋め込むための、請求項29又は30に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリレートと、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、を含むエラストマー性ポリマー組成物に関し、特に、そのようなエラストマー性ポリマー組成物を鉄道軌道構造に使用することができる。本発明はまた、鉄道軌道構造にエラストマー性ポリマー組成物を適用するための方法に関する。本発明は更に、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物を含む鉄道軌道構造に関する。いくつかの実施形態では、本発明はまた、鉄道軌道構造に締結されたレールを用いてコンクリートスラブを支持するための発泡体シートへと形成される上述のエラストマー性ポリマー組成物に関する。
【0002】
ポリウレタンの製造は、ポリオールとイソシアネートとの反応を伴う。ポリウレタンの製造において、ポリウレタンは、二成分組成物として供給され、ここで、一方のイソシアネート及び他方のポリオールは、別々に包装された容器又はキット中に提供され、組成物の適用の直前に一緒に混合される。このような遊離モノマー性イソシアネートは、安全性、環境及び健康の要因を考慮すると限界がある。特に、そのようなポリウレタン中に存在するポリイソシアネート硬化剤中のモノマーイソシアネートの毒性プロファイルは、近年精査されているところであり、法律によって推進される変化は、ポリウレタン製造産業を、新しいポリマー、特に、ポリウレタン成分の製造中、特にポリウレタン組成物の適用中にイソシアネートの存在を必要としないが、その意図された最終用途のためのポリマーの性能が損なわれないようなポリマーの探索に導いた。
【0003】
イソシアネート系ポリウレタンの更なる欠点は、火災の場合、又はレールが溶接又は切断された場合に、それらがシアン化水素を放出することである。シアン化水素は極めて有毒である。更に、ポリウレタンは石油系であり、したがって持続可能ではなく、更なる環境問題を引き起こす。
【0004】
したがって、有益なポリウレタンの機械的特性及び化学的特性を提供するが、イソシアネートを使用しないポリマーを製造するための新しい技術が求められている。そのような新しい技術は、より持続可能であると考えられる。
【0005】
鉄道軌道構造は、振動及び騒音を減衰させるためにポリマー組成物中に埋め込むことができることが知られている。ポリウレタン化合物は、満足な騒音及び振動減衰特性を提供することが知られている。例えば、特許出願DE 19627468は、二液型ポリウレタン反応混合物が型枠によって囲まれた空間に導入されるレール設置方法を開示している。ポリウレタン反応混合物は、レールの下及びレールの両側に導入され、その結果、反応プロセスが行われた後、レールは、得られるポリウレタンエラストマー中に滑らかに埋め込まれる。この得られたポリウレタンエラストマーは、鉄道軌道構造体の使用中に振動絶縁を提供する。
【0006】
鉄道軌道用途において、ポリウレタン組成物を鉄道軌道構造に適用する作業者は、ポリウレタンポリマーの両方の成分を混合し、ポリマー組成物を適用しなければならない。したがって、鉄道作業員は、反応性イソシアネートモノマーに曝露される。更に、鉄道軌道構造に利用されるイソシアネート系ポリウレタンは、火災の場合に、又は軌道の設置、除去、又は修復の間にレールが溶接されるか、若しくは切断される場合に、シアン化水素を放出する可能性があり、公的労働者及び鉄道労働者の構成員に健康上のリスクを引き起こす。
【0007】
レールの埋め込みに使用する以外に、ポリウレタンポリマーは、鉄道軌道構造にみられる多種多様な他の形態で、例えば、エラストマーなどの非多孔性材料、並びに低密度可撓性発泡体、高密度可撓性発泡体、及び微孔質発泡体などの多孔性材料にも使用される。そのような発泡体は、鉄道軌道構造中に締結されたレールを有するコンクリートスラブを支持するための支持マット又はパッドとして提供されてもよい。これらの発泡体マット又はパッドは、振動減衰を提供する場合もある。
【0008】
マイケル付加(又はマイケル反応)化学は、有用なポリマーをイソシアネート非存在下で調製することができる代替的で持続可能なプロセスを与えると考えられる。マイケル付加化学が研究されており、いくつかの用途で使用されている(Noomen,A.,Prog.Org.Coat,32,137-142(1997))。
【0009】
マイケル付加系の重要な化学構成要素は、電子不足C=C二重結合、酸性C-H結合、及びC-H結合のうちの1つのプロトンを引き抜いて、C=C二重結合を付加することができる求核性カルバニオンを提供するのに十分なほど強い塩基触媒である。このようにして、提供された求核性カルバニオンの反応を介して、上述の2つの分子間に炭素-炭素結合が形成される。ドナー分子の第2のプロトンは、同様の後続の反応に利用可能である。
【0010】
【0011】
本発明は、コンクリート、アスファルト、若しくは他の道路表面におけるレール軌道の締結、固定、若しくは埋め込みなどの鉄道軌道構造に使用されるか、又はこの分野においてイソシアネート由来ポリウレタンに関連する問題を克服することができるような、締結されたレール軌道を有するコンクリートスラブを支持するのに適した発泡体シートに使用される、ポリマー組成物、特に、エラストマー性ポリマー組成物を提供しようとするものである。
【0012】
驚くべきことに、マイケル付加化学は、鉄道軌道構造における使用に適したポリマーの調製に使用することができ、それによって、ポリオールとイソシアネートとの反応に基づくポリウレタン化学の欠点を克服することが見出された。
【0013】
本明細書に記載される任意の上限量若しくは下限量又は範囲境界を独立して組み合わせてもよいことが理解されるだろう。
【0014】
置換基中の炭素原子の数を記載する場合(例えば、「C1~C6」)、その数は、任意の分枝基に存在する任意のものを含め、置換基に存在する炭素原子の総数を指すことは、当業者によって理解されるであろう。加えて、例えば脂肪酸中の炭素原子の数を記載する場合、これは、カルボン酸にある炭素原子、及び任意の分枝基に存在するいずれかを含め、炭素原子の総数を指す。
【0015】
本発明のポリオール又はポリマー組成物を製造するために使用され得る化学物質の多くは、天然源から得られる。そのような化学物質は、典型的には、それらの天然起源に起因する化学種の混合物を含む。このような混合物が存在するため、本明細書で定義される様々なパラメータは平均値であってもよく、整数でなくてもよい。
【0016】
「ポリオール」という用語は、当該技術分野において周知であり、1個より多いヒドロキシル基を含む分子を指す。
【0017】
本明細書で使用される「ポリエステル」という用語は、1個より多いエステル結合を有する分子又は基を指す。
【0018】
本明細書で使用される「ダイマー脂肪族残基」という用語は、別段の定義がない限り、ダイマー脂肪酸(ダイマー脂肪族二酸とも呼ばれる)の残基、又はダイマー脂肪族ジオール若しくはダイマー脂肪族ジアミンなどのダイマー脂肪酸誘導体の残基を指す。
【0019】
分子又は分子の一部に関して本明細書で使用される「官能性」という用語は、その分子又は分子の一部における官能基の数を指す。「官能基」は、化学反応に関与し得る分子中の基を指す。例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基及びアミン基は全て官能基の例である。例えば、二酸(2個のカルボン酸基を有する)及びジオール(2個のヒドロキシル基を有する)は、両方とも2の官能性を有し、三酸及びトリオールは、両方とも3の官能性を有する。
【0020】
「ダイマー脂肪酸」(ダイマー脂肪族二酸とも呼ばれる)という用語は、当該技術分野において周知であり、一価不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸及び/又はそれらのエステルのダイマー化生成物を指す。関連する用語であるトリマー脂肪酸は、同様に、一価不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸及び/又はそれらのエステルのトリマー化生成物を指す。
【0021】
鉄道軌道システムは、列車、路面電車、地下鉄などのカートだけではなく、ドッグクレーンなどの他の輸送手段が、その車輪を転がすための信頼できる表面を提供することによって移動することを可能にするレールを含む、任意の軌道構造であると理解される。
【0022】
鉄道軌道構造は、鉄道軌道システムの任意のサブユニットであると理解される。例えば、鉄道軌道システムは、現場以外で予め形成され、システム軌道全体を作製するために一緒に固定されたいくつかの鉄道軌道構造によって形成された線路であってもよい。
【0023】
鉄道軌道構造の構成要素は、鉄道軌道構造又はシステムの任意の個々の部品又は構成要素であると理解される。鉄道軌道構造の構成要素の例は、コンクリート又はアスファルトなどの道路表面、レール、レール足部、コンクリートブロック、レール接続手段、鉄道支柱(枕木)、バラスト又は非バラスト軌道(スラブ軌道)などを含み得る。しかしながら、鉄道軌道構造の構成要素という用語は、これらの具体例に限定されることを意味しない。
【0024】
「弾性」、「エラストマー」及び「エラストマー性」という用語は、本発明のポリマー組成物を指すために互換的に使用され得る。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、アクリレートと、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、を含むエラストマー性ポリマー組成物であって、ポリオールが、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む、エラストマー性ポリマー組成物が提供される。
【0026】
更に、鉄道軌道構造にエラストマー性ポリマー組成物を適用する方法であって、
i)
A)上述のアセトアセチル化剤と上述のポリオールとの反応生成物と、
B)アクリレートと、を混合することによって、ポリマー組成物混合物を調製する工程と、
ii)ポリマー組成物混合物を少なくとも1つ以上の鉄道軌道構造の構成要素に適用する工程と、
iii)ポリマー組成物混合物を硬化させる工程と、を含む、方法が提供される。
【0027】
特に、本明細書に記載されるように、そのようなエラストマー性ポリマー組成物を含むか、又はポリマー組成物を適用するための方法によって得ることができる、鉄道軌道構造も提供される。そのような鉄道軌道構造は、上述のエラストマー性ポリマー組成物から形成された発泡体シート、ベースプレート、締結具、トレイ、本体、又は他の構成要素を含み得る。
【0028】
更に、鉄道軌道構造若しくはシステムにおける、特に、レール構成要素を固定又は埋め込むための、任意選択的にポリマー組成物を適用するための方法によって得ることができる、エラストマー性ポリマー組成物の使用が提供される。
【0029】
本発明は、アクリレートと、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、を含むエラストマー性ポリマー組成物であって、ポリオールが、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む、エラストマー性ポリマー組成物を提供する。
【0030】
より具体的には、エラストマー性ポリマー組成物は、アクリレートの反応生成物、及び上述のアセトアセチル化剤と上述のポリオールとの反応生成物(すなわち、予め形成された生成物)である。そのようなエラストマー性ポリマー組成物は、1つ以上の所望の物理的特性を有していてもよく、鉄道軌道構造及びシステムにおけるそれらの意図された最終用途に特に適しているだろう。
【0031】
好適には、エラストマー性ポリマー組成物は、樹脂(すなわち、予備硬化混合物)又はポリマーマトリックス(すなわち、最終形態の硬化後ポリマー材料)であってもよい。したがって、エラストマー性ポリマー組成物は、2つの別個の実施形態を包含すると考えることができ、第1の実施形態は樹脂であり、第2の実施形態はポリマーマトリックスである。ポリマーマトリックス最終生成物の意図された使用又は処理に必要な添加剤が、後処理又は取り扱いを容易にするためにポリマー樹脂の製造中に導入されてもよいため、2つのエラストマー性ポリマー組成物の実施形態の間に、大量の重複が存在する。したがって、「ポリマー組成物」に言及する以下の実施形態は、ポリマー樹脂及びポリマーマトリックスの実施形態に等しく適用され得る。
【0032】
エラストマー性ポリマー組成物は、樹脂として提供されてもよく、その後、樹脂が、硬化を介してエラストマー性ポリマーマトリックスに変換されてもよい。ポリマー樹脂とポリマーマトリックスとの間の違いは、当業者によって理解されるように、ポリマー鎖の架橋がポリマーマトリックス中に存在することである。
【0033】
エラストマー性ポリマー組成物は、好ましくは、再生可能な供給源及び/又はバイオベースの供給源に由来する。好ましくは、ポリマー組成物は、ASTM D6866を使用して決定される場合、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも80%の再生可能炭素含有量を有する。放射性炭素分析を使用した、固体、液体、及び気体状試料のバイオベース含有量を決定するための標準試験方法(Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Solid,Liquid,and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis)を提供する、ASTM D6866。
【0034】
本発明のエラストマー性ポリマー組成物の特別な利点は、イソシアネートを含まないことである。したがって、ポリマー組成物は、イソシアネートを含有せず、好ましくは、ポリマー組成物は、実質的にイソシアネートを含まない。
【0035】
好適には、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物の、アクリレートに対するモル比は、1:0.2~1:4、好ましくは1:0.25~1:3、より好ましくは1:0.25~1:2.5、最も好ましくは1:0.25~1:1.8の範囲である。
【0036】
エラストマー性ポリマー組成物は、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を含み、ポリオールは、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む。
【0037】
アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも800、より好ましくは少なくとも1000、更により好ましくは少なくとも1500、とりわけ好ましくは少なくとも1800g/molの分子量(数平均)を有し得る。
【0038】
アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、最大で5000g/mol、好ましくは最大で4000、より好ましくは最大で3000、更により好ましくは最大で2500、とりわけ好ましくは最大で2200g/molの分子量(数平均)を有し得る。
【0039】
加えて、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、2未満、より好ましくは1.7未満、特に好ましくは1.3未満、とりわけ好ましくは1.0mgKOH/g未満の酸価(本明細書に記載されるように測定される)を有し得る。
【0040】
アセトアセチル化剤は、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸tert-ブチル、アセト酢酸イソプロピル、及びアセト酢酸イソブチルのうちの1つ以上から選択されてもよい。好ましくは、アセトアセチル化剤は、アセト酢酸tert-ブチルである。
【0041】
アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、最大で10重量%のアセトアセチル化剤、好ましくは最大で5重量%、より好ましくは5重量%未満のアセトアセチル化剤を含み得る。
【0042】
好適には、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物において、ポリオール官能性ヒドロキシル基は、ポリオールのヒドロキシル基の全てが反応するように、最大100%の転化率を有し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ポリオール官能性ヒドロキシル基のより低い転化率が望ましい場合があり、そのため、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物について、ポリオール官能性ヒドロキシル基は、50%~100%の転化率を有し得ることが好ましく、より好ましくは65%~100%、最も好ましくは75%~100%の転化率を有し得る。
【0043】
次に、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物のポリオールについて、より詳細に説明する。
【0044】
必然的に、ポリオールは、少なくとも1つより多い官能性ヒドロキシル基を含む。好適には、ポリオールは、ジオール、トリオール、テトロール、ペントール又はヘキソールであってもよい。好ましくは、ポリオールは、ジオール、トリオール又はテトロール、より好ましくは、ジオール又はトリオールである。最も好ましくは、ポリオールは、ジオールである。好適には、ポリオールはジオールであり、ジオール上に存在する2個の官能性ヒドロキシル基は、アセトアセチル化剤と反応して、上述のアセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を形成する。より多価の官能性ポリオールが利用される場合、少なくとも2個のヒドロキシル官能基は、アセトアセチル化剤と反応して、上述の反応生成物を形成するが、この場合には、いくつかの未反応のヒドロキシル官能基が反応生成物中に存在したままであってもよい。
【0045】
ポリオールは、少なくとも2個のエステル結合、好ましくは少なくとも3個のエステル結合、より好ましくは少なくとも4個のエステル結合、更により好ましくは少なくとも5個のエステル結合を含み得る。
【0046】
ポリオールは、最大で10個のエステル結合、好ましくは最大で8個のエステル結合、より好ましくは最大で7個のエステル結合を含み得る。
【0047】
ポリオールは、ポリエステルであってもよい。
【0048】
ポリオールは、少なくとも1個のエーテル結合を含み得る。ポリオールは、ポリエステルエーテルであってもよい。あるいは、ポリオールは、エーテル結合を含んでいなくてもよい。
【0049】
あまり好ましくない実施形態では、ポリオールは、少なくとも1個のアミド結合を含み得る。あるいは、ポリオールは、アミド結合を含んでいなくてもよい。
【0050】
あまり好ましくない実施形態では、ポリオールは、ポリエステルアミドであってもよい。ポリオールは、ポリエステルアミドでなくてもよい。
【0051】
ポリオールは、好ましくは100~250、より好ましくは125~225、特に好ましくは150~200、とりわけ好ましくは160~180mgKOH/gの範囲の水酸基価(本明細書に記載されるように測定される)を有する。
【0052】
ポリオール中のa)の、b)に対する重量比は、90:10~30:70の範囲、好ましくは85:15~45:55の範囲であってもよい。ポリオール中のa)の重量%は、少なくともb)の重量%であってもよい。ポリオール中のa)及びb)のこれらの相対量は、以下に更に記載されるように、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を含むポリマーマトリックスにおいて、可撓性、引張強度、硬度及び耐加水分解性の有利なバランスを提供し得る。
【0053】
ポリオールは、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基を含み、
以下、これについて詳細に説明する。
【0054】
一般に、少なくとも1個のダイマー脂肪族残基は、以下に詳述されるようなダイマー脂肪酸、ダイマー脂肪族ジオール又はダイマー脂肪族ジアミンに関して本明細書に記載される特徴又は選好のいずれかを含んでもよい。
【0055】
エラストマー性ポリマー組成物のダイマー脂肪族残基の含有量は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは8~55重量%、特に15~50重量%、とりわけ20~45重量%の範囲である。
【0056】
ポリオールは、最大で80重量%のダイマー脂肪族残基、好ましくは75重量%のダイマー脂肪族残基、より好ましくは最大で70重量%のダイマー脂肪族残基を含み得る。アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%のダイマー脂肪族残基を含み得る。
【0057】
好適には、少なくとも1個のダイマー脂肪族残基は、飽和又は不飽和であってもよい。しかしながら、好ましくは、少なくとも1個のダイマー脂肪族残基は、飽和である。
【0058】
ダイマー脂肪族残基は、本質的に脂肪族であり、これはポリオールの疎水性を増加させ得る。ダイマー脂肪族残基の存在により、ポリオールを、より非晶質、非結晶性、又は実質的に非結晶性にし得る。ポリオールの非晶質性は、以下に更に記載されるように、ポリオールを含むポリマーマトリックスの可撓性を増加させ、及び/又は引張強度を減少させ得る。
【0059】
選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基は、ダイマー脂肪酸残基であってもよい。
【0060】
ダイマー脂肪酸は、T.E.Breuer,’Dimer Acids’,J.I.Kroschwitz(ed.),Kirk-Othmer Encyclopaedia of Chemical Technology,4th Ed.,Wily,New York,1993,Vol.8,pp.223-237に記載されている。ダイマー脂肪酸は、加圧下で脂肪酸を重合させ、次いで蒸留によって未反応の脂肪酸出発材料の大部分を除去することによって調製される。最終生成物は、通常、いくらかの少量のモノ脂肪酸及びトリマー脂肪酸を含有するが、大部分はダイマー脂肪酸から構成される。得られる生成物は、所望な場合、様々な割合の異なる脂肪酸を用いて調製することができる。
【0061】
好適には、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%のダイマー脂肪酸残基を含み得る。ポリオールは、最大で95重量%、好ましくは最大で90重量%、より好ましくは最大で80重量%のダイマー脂肪酸残基を含み得る。
【0062】
ダイマー脂肪酸の、トリマー脂肪酸に対する比は、当業者に知られているように、処理条件及び/又は不飽和脂肪酸原料を変えることによって変化させることができる。ダイマー脂肪酸は、当該技術分野で公知の精製技術を使用して、生成物混合物から実質的に純粋な形態で単離され得るか、又はあるいはダイマー脂肪酸及びトリマー脂肪酸の混合物が使用され得る。
【0063】
本発明において使用されるダイマー脂肪酸又はダイマー脂肪族残基は、好ましくは、C10~C30脂肪酸、より好ましくはC12~C24脂肪酸、特にC14~C22脂肪酸、更に好ましくはC16~C20脂肪酸、とりわけC18脂肪酸のダイマー化生成物に由来する。したがって、得られるダイマー脂肪酸は、好ましくは20~60個、より好ましくは24~48個、特に28~44個、更に好ましくは32~40個の範囲、とりわけ36個の炭素原子を含む。
【0064】
好適には、ダイマー脂肪酸の由来となる脂肪酸は、直鎖又は分枝鎖の不飽和脂肪酸から選択されてもよく、直鎖脂肪酸が好ましい。不飽和脂肪酸は、シス/トランス配座のいずれかを有する脂肪酸から選択されてもよく、1個、又は1個より多い不飽和二重結合を有していてもよい。しかしながら、一価不飽和脂肪酸が特に好ましい。最も好ましくは、脂肪酸は、直鎖一価不飽和脂肪酸である。
【0065】
好適には、ダイマー脂肪酸は、水素化されていなくてもよく、水素化されていてもよく、又は部分的に水素化されていてもよい。水素化ダイマー脂肪族残基(二酸、ジオール又はジアミンのいずれかに由来する)は、良好な酸化安定性又は熱安定性を有する場合があり、これはポリオールを含むポリマーにおいて望ましい場合があり、したがって、好ましくは、ダイマー脂肪酸は、水素化されているか、又は部分的に水素化されている。
【0066】
好適なダイマー脂肪酸は、好ましくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、又はエライジン酸のダイマー化生成物に由来する(すなわち、そのダイマー等価物である)。特に、好適なダイマー脂肪酸は、好ましくはオレイン酸に由来する。
【0067】
ダイマー脂肪酸は、天然の脂肪及び油、例えばヒマワリ油、ダイズ油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油、又はトール油の加水分解から得られる不飽和脂肪酸混合物のダイマー化生成物であってもよい。
【0068】
ダイマー脂肪酸の分子量(重量平均)は、好ましくは450~690、より好ましくは500~640、特に530~610、とりわけ550~590の範囲である。
【0069】
更に、ダイマー脂肪酸に加えて、ダイマー化によって、通常、様々な量のトリマー脂肪酸(いわゆる「トリマー」)、オリゴマー脂肪酸、及びモノマー脂肪酸(いわゆる「モノマー」)の残基、又はそれらのエステルが存在する。モノマーの量は、例えば蒸留によって減少させることができる。ダイマー脂肪酸生成物の蒸留は、製造コストを増加させるため、これらの任意選択的なダイマー化反応生成物の存在は許容されるものの、ダイマー脂肪酸の蒸留による精製が、いくつかのニッチな用途にとって好ましい場合がある。
【0070】
適切には、トリマー脂肪酸は、好ましくは、ダイマー脂肪酸に関して言及した材料のトリマー化生成物に由来し、好ましくはC10~C30、より好ましくはC12~C24、特にC14~C22、更に好ましくはC16~C20脂肪酸、とりわけC18脂肪酸のトリマーである。したがって、トリマー脂肪酸は、好ましくは30~90個、より好ましくは36~72個、特に42~66個、更に好ましくは48~60個の範囲、とりわけ54個の炭素原子を含有する。
【0071】
トリマー脂肪酸の分子量(重量平均)は、好ましくは750~950g/mol、より好ましくは790~910、特に810~890、とりわけ830~870g/molの範囲である。
【0072】
これに加えて、又はあるいは、テトラマー脂肪酸及びより高次のオリゴマー(以下、両方ともオリゴマー酸と呼ばれる)は、ダイマー脂肪酸の生成中に形成され得る。したがって、このようなオリゴマー酸も、上で言及したように、トリマー脂肪酸及び/又はダイマー脂肪酸及び/又はモノ脂肪族一塩基酸と組み合わせて、本発明で使用されるダイマー脂肪酸中に存在し得る。
【0073】
オリゴマー酸は、好ましくは、C10~C30、より好ましくはC12~C24、特にC14~C22、とりわけC18脂肪酸に由来する4個以上の単位を含有するオリゴマーである。オリゴマー酸の分子量(重量平均)は、適切には1000g/molより大きく、好ましくは1200~1800、より好ましくは1300~1700、特に1400~1600、とりわけ1400~1550g/molの範囲である。
【0074】
本発明において使用されるダイマー脂肪酸は、好ましくは、60重量%より多く、より好ましくは70重量%より多く、特に80重量%より多く、とりわけ85重量%より多いダイマー脂肪酸(又はダイマー)含有量を有し得る。最も好ましくは、ダイマー脂肪酸のダイマー含有量は、90重量%~99重量%の範囲である。
【0075】
代替的な実施形態では、ダイマー脂肪酸は、好ましくは、70重量%~96重量%の範囲のダイマー脂肪酸(又はダイマー)含有量を有する。これは、特に2成分系又は架橋系に適用可能な場合がある。
【0076】
これに加えて、又はあるいは、特に好ましいダイマー脂肪酸は、40重量%未満、より好ましくは30重量%未満、特に20重量%未満、とりわけ15重量%未満のトリマー脂肪酸(又はトリマー)含有量を有し得る。トリマー脂肪酸含有量は、4重量%未満であってもよい。
【0077】
更に、ダイマー脂肪酸は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に4重量%未満、とりわけ2.5重量%未満のモノ脂肪族一塩基酸(又はモノマー)を含む。
【0078】
上の重量百分率の値は全て、ダイマー脂肪酸中に存在する重合した脂肪酸及びモノ脂肪酸の総重量に基づく。
【0079】
選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基は、ダイマー脂肪族ジオール残基であってもよい。
【0080】
適切なダイマー脂肪族ジオールは、対応するダイマー脂肪酸の水素化によって形成され得る。ダイマー脂肪酸(又はダイマー脂肪族二酸)は、当該技術分野で知られているように、ダイマー脂肪族ジオールに変換され得る。ダイマー脂肪族ジオールは、ダイマー脂肪酸中の酸基がダイマー脂肪族ジオール中のヒドロキシル基で置き換えられていることを除き、ダイマー脂肪酸(又はダイマー脂肪族二酸)に関して本明細書に記載されているような特性を有し得る。同様に、トリマー脂肪族三酸は、トリマー脂肪族トリオールに変換されてもよく、これがトリマー脂肪族三酸に関して本明細書に記載されているような特性を有し得る。したがって、ダイマー脂肪酸に関して本明細書に詳述される同じ好ましい実施形態は、ポリオールのダイマー脂肪族ジオール残基成分の対応する好ましい実施形態に適用され得る。
【0081】
好適には、ポリオールは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%のダイマー脂肪族ジオール残基を含み得る。ポリオールは、最大で90重量%、好ましくは最大で80重量%のダイマー脂肪族ジオール残基を含み得る。これらの量のダイマー脂肪族残基は、ポリオールを含むポリマーマトリックスの引張強度又は硬度を過度に低下させることなく、適切な量の疎水性及び/又は非晶質性をポリオールに提供し得る。
【0082】
好適には、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%のダイマー脂肪族ジオール残基を含み得る。ポリオールは、最大で30重量%、好ましくは最大で20重量%のダイマー脂肪族ジオール残基を含み得る。
【0083】
ダイマー脂肪族ジオールは、水素化されていてもよい。ダイマー脂肪族ジオールは、水素化されていなくてもよい。
【0084】
これに加えて、又はあるいは、ポリオールは、少なくとも1個のダイマー脂肪族ジアミン残基を含んでいてもよく、その結果、選択された少なくとも1個のダイマー脂肪族残基がダイマー脂肪族ジアミン残基であってもよい。しかしながら、この実施形態はあまり好ましくなく、ポリオールは、ダイマー脂肪族ジアミン残基を含まなくてもよく、したがって、ポリオールの成分a)中に関連するアミン基を含まなくてもよい。
【0085】
ポリオールは、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基を含み、
以下、これについて詳細に説明する。
【0086】
好ましくは、C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、カルボン酸基、ヒドロキシル基、及びそれらの混合物から選択される少なくとも2個の官能基を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、二酸又はジオールは、好ましくは、カルボン酸基、ヒドロキシル基、及びそれらの混合物から選択される2個の官能基を有する。
【0088】
ポリオールは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の成分b)を含んでもよい。ポリオールは、最大で50重量%、好ましくは最大で40重量%のb)を含んでもよい。アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.15重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%のb)を含み得る。更に、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物は、最大で15重量%、好ましくは最大で8重量%のダイマー脂肪族ジオール残基を含み得る。b)のこれらの量は、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を含むポリマーマトリックスの可撓性を過度に減少させることなく、ポリオールに適切な量の結晶化度を提供し得る。
【0089】
成分b)は、非ダイマー二酸又はジオールであり、成分a)について上述したダイマー脂肪酸及びジオールとは異なることを理解すべきである。
【0090】
好適な非ダイマー二酸は、脂肪族又は芳香族(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸など)であってもよく、ジカルボン酸及びそれらのエステル、好ましくはそれらのアルキルエステルが挙げられる。
【0091】
好ましくは、ポリオールは、直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも2個の残基を含み、いくつかの実施形態では、直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも3個の残基を含んでもよく、各々が独立して、以下に詳述される好ましい実施形態から選択される。直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの1種類より多い1個の残基を含むことにより、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を含むポリマーの物理的特性を、その最終用途に合うように調整することが可能になる。
【0092】
特に好ましい一実施形態では、b)は、直鎖又は分枝鎖C6~C36ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1個の残基を含む。ポリオール中のb)の存在により、C6~C36直鎖又は分枝鎖ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1個の残基に存在する長い脂肪族炭素鎖に起因して、ポリオールをより結晶性にし得る。結晶化度の増加により、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物を含むポリマーマトリックスの引張強度及び/又は硬度を増加させ得る。C6~C36直鎖又は分枝鎖二酸の少なくとも1個の残基は、それらのエステル、好ましくはアルキルエステル、より好ましくはジメチルエステルを含んでもよい。
【0093】
C6~C36直鎖又は分枝鎖ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、直鎖であってもよい。それは、末端カルボキシル基又はヒドロキシル基を含んでもよく、ここで、末端カルボキシル基又はヒドロキシル基は、アルキル基又はアルケニル基によって架橋される。
【0094】
C6~C36直鎖又は分枝鎖ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、分枝鎖であってもよい。C6~C36直鎖又は分枝鎖二酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、少なくとも1個のメチル分枝鎖を含んでいてもよい。C6~C36直鎖又は分枝鎖二酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、少なくとも1個のエチル分枝鎖を含んでいてもよい。
【0095】
C6~C36直鎖又は分枝鎖ジカルボン酸又はジオールの少なくとも1個の残基は、飽和又は不飽和であってもよく、好ましくは飽和である。
【0096】
好ましくは、C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、直鎖ジカルボン酸である。
【0097】
C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくはC18~C26ジカルボン酸又はジオール、より好ましくはC18又はC26ジカルボン酸又はジオールであってもよい。C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくはC18ジカルボン酸であってもよい。C6~C36ジカルボン酸又はジオールは、好ましくはC26ジカルボン酸であってもよい。
【0098】
C6~C36二酸又はジオールは、メタセシス反応、好ましくは自己メタセシス反応によって得られるC6~C36二酸又はジアルキルエステルに由来し得る。メタセシス反応は、触媒の存在下で起こり得る。好適なメタセシス触媒は、国際公開第2008/065187号及び国際公開第2008/034552号に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
これに加えて、又はあるいは、成分b)は、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、及びドデカンジカルボン酸などの、4~12個の炭素原子の範囲の炭素鎖を有する直鎖ジカルボン酸の少なくとも1個の残基を含む。より好ましくは、b)は、5~10個の炭素原子を有する直鎖ジカルボン酸の少なくとも1個の残基を含む。アジピン酸が特に好ましい。この実施形態は、成分b)が上述のC2~C36二酸又はジオールの少なくとも2個以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0100】
好ましくは、b)は、2~10個の炭素原子、より好ましくは5~8個の炭素原子を有するジオールの少なくとも1個の残基を含んでいてもよい。この実施形態は、成分b)がC2~C36二酸又はジオールの少なくとも2個以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0101】
好適な非ダイマージオールは、直鎖脂肪族ジオール若しくは分枝脂肪族ジオール、又はそれらの組み合わせから独立して選択され得る。
【0102】
好適な非ダイマージオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール(ヘキサンジオールとしても知られている)及びこれらの混合物などの直鎖脂肪族ジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタングリコール、1,2-プロピレングリコール及びこれらの混合物などの分枝鎖ジオール、並びに1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,4-シクロヘキサン-ジメタノール及びこれらの混合物などの環状ジオールが挙げられる。ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0103】
直鎖脂肪族ジオールは、独立して、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール(1,3-プロパンジオールとしてよく知られている)、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択され得る。このような材料が特に好ましい。
【0104】
分枝鎖脂肪族ジオールは、独立して、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及び1,3-ブタンジオールから選択され得る。
【0105】
成分b)は、ポリエーテルジオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラヒドロフラン(ポリテトラメチレンエーテルグリコール又はPTMEGとしても知られている)の少なくとも1個の残基を含み得る。PTMEGは、200~2000g/mol、好ましくは200~1000、より好ましくは200~500g/molの分子量(数平均)を有し得る。この実施形態は、成分b)がC2~C36二酸又はジオールの少なくとも2個以上の残基を含む場合に特に好ましい。
【0106】
成分b)は、2より大きいヒドロキシル官能を有するポリオールの少なくとも1個の残基を含み得る。このようなポリオールとしては、グリセロール、ペンタエリスリトール、又はトリメチロールプロパンを挙げることができる。
【0107】
成分b)は、好ましくは、再生可能な供給源及び/又はバイオベースの供給源に由来する。好適には、成分b)は、ASTM D6866を使用して決定される、少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも80%の再生可能炭素含有量を有し得る。
【0108】
好適には、エラストマー性ポリマー組成物は、モノアクリレート、多官能アクリレート、オリゴマーアクリレート、又はそれらの誘導体のうちの1つ以上から選択されるアクリレートを含む。
【0109】
好ましくは、アクリレートは、オリゴマーアクリレート又はその誘導体によって提供される。特に好ましいオリゴマーアクリレートは、ウレタンアクリレート及びエポキシアクリレートである。このようなオリゴマーアクリレートは、好ましくは、以下に更に詳述するようなオリゴマーアクリレート樹脂であってもよい。市販のオリゴマーアクリレート樹脂としては、とりわけ、IGM Resins製のPhotomer(登録商標)、BASF製のLaromer(登録商標)、Allnex製のEbecryl(登録商標)が挙げられる。
【0110】
好ましい多官能アクリレート又はその誘導体は、2以上の官能性を有する。好適には、多官能アクリレート誘導体は、アクリレート、メタクリレート、エタクリレート、及びこれらの組み合わせを有する任意のモノマー又はオリゴマー分子からなる群から選択されてもよい。
【0111】
特に好ましい一実施形態では、多官能アクリレート誘導体は、ウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0112】
代替的な特に好ましい実施形態では、アクリレートは、オリゴマーエポキシアクリレート樹脂又はオリゴマーポリエーテルアクリレート樹脂又はオリゴマーポリエステルアクリレート、あるいはそれらの組み合わせから選択される多官能アクリレートオリゴマーである。
【0113】
好ましくは、アクリレート誘導体は、六官能ウレタンアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、二官能ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0114】
エラストマー性ポリマー組成物は、任意選択的に、1つ以上の添加剤を含有し得る。適切であり、とりわけ好ましい添加剤は、以下に記載されており、発泡剤、触媒、顔料若しくは染料、充填剤、界面活性剤、可塑剤、接着促進剤、酸化防止剤、又はUV吸収添加剤が挙げられる。
【0115】
ポリマー組成物は、発泡剤を含んでいてもよく、発泡剤としては、水、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びトリクロロジフルオロエタンなどのフルオロカーボン、又はそれらの混合物を挙げることができる。発泡剤の含有は、ポリマーマトリックスの意図される最終用途に依存する。発泡剤としての水の使用は、環境上の利点を有し、したがって好ましい。
【0116】
ポリマー組成物は、触媒を含み得る。触媒は、後処理を補助するためにポリマー樹脂中に存在してもよく、又は処理中にポリマーマトリックス中に固定化されるためにポリマーマトリックス中に存在してもよい。このような触媒は、均一系触媒である傾向がある。好ましい均一系触媒は、塩基性アニオン基の塩である。有用なカチオンの例としては、無機カチオン、好ましくは、アルカリ若しくはアルカリ土類金属カチオン、より好ましくはK+、Na+及びLi+、又はテトラ-アルキルアンモニウム及びテトラ-アルキルホスホニウム塩のような有機カチオンだけではなく、プロトンを有するが極めて非酸性であるカチオン、例えば、強塩基性有機塩基のプロトン化した種、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene、DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene、DBN)又はテトラメチルグアニジンも挙げられる。
【0117】
ポリマー組成物は、顔料又は染料を含み得る。好適な顔料としては、遷移金属塩などの無機顔料、アゾ化合物などの有機顔料、及び炭素粉末が挙げられる。
【0118】
ポリマー組成物は、充填剤を含み得る。好ましくは、充填剤は、粒状充填剤である。ポリマー組成物が充填剤を含むことが特に好ましい。
【0119】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、5~60重量%、好ましくは10~50重量%、最も好ましくは20~40重量%の量で充填剤を含み得る。
【0120】
1つの好ましい充填剤としては、ミクロスフェアが挙げられる。ミクロスフェアは、1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する有機又は無機の材料から構成される中空体を指す。これらのミクロスフェアの利点は、硬化した生成物が、ミクロスフェアが添加されなかった生成物と比較して、弾性が改善されるという点にある。ミクロスフェアの密度は、好適には0.01~0.9kg/dm3、好ましくは0.02~0.5kg/dm3の範囲である。ポリマー組成物に添加されるミクロスフェアの量は、所望の弾性に従って変化し得る。一般に、ミクロスフェアの量は、ポリマー組成物100重量部(parts by weight、pbw)当たり0.01~100pbw、好ましくは0.1~50pbw、より好ましくは0.3~20pbwから選択される。ミクロスフェアの量は、エラストマー性ポリマー組成物の総重量に基づいて、10~50重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは25~30重量%から選択される。上記のように、ミクロスフェアは、無機材料又は有機材料から作製されていてもよい。好適なミクロスフェアとしては、サイラスバルーン(silas balloon)(火山灰から作られた中空ミクロスフェア)、パーライト、ガラスバルーン、シリカバルーン、飛散灰バルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン又は炭素バルーンが挙げられる。加えて、中空ミクロスフェアの製造に適した有機材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又は尿素、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、又はスチレン-アクリレートポリマー若しくは塩化ビニリデンポリマーが挙げられる。更に、特定のミクロスフェアは、熱硬化性樹脂でコーティングされた表面を有していてもよい。
【0121】
あるいは、又はこれに加えて、好ましくは、充填剤は、コルク粒子を含み、コルク粒子は、鉄道軌道用途に適した充填剤であることが証明されている。
【0122】
有機繊維又は無機繊維も、充填剤として使用されてもよい。有機繊維は、合成繊維、例えばポリエステル又はポリアミド繊維であってもよいが、亜麻繊維などの天然繊維を使用することも可能である。充填剤材料はまた、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィンなどの他のポリマーを含有してもよい。
【0123】
充填剤は、再生材料であってもよい。非常に適した再生材料は、例えば粒状タイヤからのゴム顆粒である。
【0124】
好適な無機充填剤としては、ガラス繊維が挙げられる。これらの充填剤の密度は、好適には0.1~1.0kg/dm3の範囲である。
【0125】
エラストマー性ポリマー組成物はまた、1kg/dm3より大きい密度を有する充填剤を含有してもよく、この充填剤は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカエアロゲル、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、ドロマイト、粘土、タルク、酸化チタン、酸化第二鉄、酸化亜鉛、ガラス球及び他のフィラメントなど、得られる硬化したポリマー組成物を強化するのに好適に有効である。
【0126】
硬化した生成物の剛性を促進する別の好適な充填剤は、凝集体であり、すなわち、砂、砂利、砕石、スラグ、及び再生コンクリートを含む粗い粒子状材料である。凝集体を含む組成物は、弾性を保持しつつ、鉄道軌道構造において安定した基礎を提供する。凝集体は、1kg/dm3より大きな密度を有する。凝集体は、ミクロスフェアも含有する組成物において特に有用である。ミクロスフェアの存在により、ポリマー組成物の密度は、1kg/dm3未満である場合がある。このような組み合わせを、型(例えば、以下に記載するような鉄道軌道構造のキャビティ及びギャップ)に注ぎ入れる場合、環境からの水が組成物の下に閉じ込められ、それによって鉄道軌道構造又はシステムの耐荷重能力に悪影響を及ぼす可能性があるというリスクがある。ポリマー組成物に凝集体を添加することによって、硬化した組成物の剛性が促進されるだけではなく、得られる組成物の密度も高められ、その結果、この密度は、1kg/dm3を超える。これにより、ポリマー組成物が、鉄道軌道構造の耐荷重能力が保証されるように、鉄道軌道構造のキャビティ及びギャップ中に存在し得る水をこれらのキャビティ及びギャップから強制的に追い出すことを確実にする。予備硬化ポリマー組成物の密度が1kg/dm3を超える場合、鉄道軌道構造のキャビティ及びギャップ中の静圧が更に大きくなり、その結果、ポリマー組成物混合物(予備硬化ポリマー組成物)は、その中に存在し得る任意の障害物の下で、より良好に流れる。水が強制的に排出され、これにより、電気絶縁を危うくする可能性があり、また、鉄道軌道構造を損傷する可能性がある凍結状態での氷の形成の可能性があるような水が確実に存在しなくなる。
【0127】
充填剤の混合物も使用可能である。
【0128】
好ましくは、充填剤は、コルク粒子、無機充填剤、ゴム顆粒、ミクロスフェア、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0129】
より好ましくは、充填剤は、CaCO3を含み、最も好ましくは、充填剤は、CaCO3粒子を含む。
【0130】
エラストマー性ポリマー組成物の添加剤は、界面活性剤を含み得る。好ましい界面活性剤は、以下のうちの1つ以上を含み得る。ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン、及びアルキレングリコール変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤、及び/又は脂肪酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホネートなどのアニオン系界面活性剤。
【0131】
ポリマー組成物の添加剤は、安定剤を含み得る。好適には、安定剤は、ラジカルスカベンジャー、酸化防止剤又は紫外線吸収剤から選択され得る。適切な安定剤は、ポリマー組成物の意図される最終用途に応じて、当業者によって選択され得る。安定剤の例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びイソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのヒンダードフェノールラジカル捕捉剤、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、及びトリフェニルホスフィンなどの亜リン酸化合物などの酸化防止剤、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、及びメチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合生成物などの紫外線吸収剤が挙げられる。
【0132】
これに加えて、又はあるいは、エラストマー性ポリマー組成物はまた、硬化した組成物の伸長度特性を改善するために、又はより大量の充填剤の組み込みを可能にするために、1つ以上の可塑剤を含有し得る。例えば、以下の可塑剤のうちの1つ以上が使用されてもよい。フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル又はフタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、又はセバシン酸ジブチルなどの脂肪族二塩基酸エステル、ジエチレングリコールジベンゾエート、又はペンタエリスリトールエステルなどのグリコールエステル、オレイン酸ブチル又はリシノール酸メチルアセチルなどの脂肪族エステル、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、又はオクチルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、アルキルスルホン酸エステル、例えば、アルキル基が8~25個の炭素原子を含むアルキルスルホン酸のフェノールエステル、特に、アルカン(C10~21)スルホン酸フェニルエステル(LanxessからMesamollとして販売される)、エポキシ化ダイズ油又はベンジルエポキシステアレートなどのエポキシ可塑剤、二塩基酸及び二価アルコールから得られるポリエステルなどのポリエステル可塑剤、ポリプロピレングリコール及びその誘導体などのポリエーテルポリオール、ポリ-α-メチルスチレン又はポリスチレンなどのポリスチレン、並びにポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン又は塩素化パラフィンなどの他の可塑剤。可塑剤は、通常、ポリマー組成物100pbw当たり0~150pbwの量で使用される。
【0133】
加えて、接着促進剤(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又はオルガノシラン接着促進剤)、酸化防止剤、又はUV吸収剤を含む添加剤も、必要に応じてエラストマー性ポリマー組成物に添加してもよい。接着促進剤としては、オルガノシラン接着促進剤が、安全性の理由から好ましい。
【0134】
本発明のエラストマー性ポリマー組成物は、エラストマー組成物を提供することが理解されるべきである。すなわち、エラストマー性ポリマー組成物は、エラストマーとして機能するのに適した物理的特性を有するエラストマーポリマー生成物を提供すると考えることができる。そのようなエラストマーポリマー製品は、鉄道軌道構造及びシステムにおいて、特に使用時に振動減衰を提供するために、特定の有用性を見出す。
【0135】
好適には、エラストマーポリマー組成物は、固体エラストマー又は微孔質エラストマーであってもよい。エラストマー組成物は、強化エラストマーであってもよい。そのような強化エラストマー組成物は、強化繊維又は繊維マットを更に含み得る。強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維又はポリエステル繊維を含み得る。
【0136】
好ましい一実施形態では、エラストマー性ポリマー組成物は、発泡体シートの形態で提供されてもよく、これは鉄道軌道構造及びシステムにおいて使用するための締結されたレールを有するコンクリートスラブを支持するのに特に適している。このような発泡体シートは、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物から事前に製作されていてもよい。発泡体シート構造は、可撓性及び/又は微孔質発泡体などの多孔性であってもよい。好ましくは、シートは、代替的な鉄道軌道の構成要素とは別個に事前に製作される。発泡体シートは、締結されたレールを有するコンクリートスラブを配置する前に、その予定の場所に配置することができる。発泡体シートは、鉄道軌道構造の支持及び振動減衰を提供する。
【0137】
発泡体シートのサイズは、予め設定された基準に従って選択されてもよく、又はそれらのサイズは、コンクリートスラブの長さ又は幅に適合するように特に調整されてもよい。好ましくは、発泡体シートは、1~100mm、より好ましくは5~60mm、最も好ましくは15~30mmの厚さを有する。
【0138】
有利なことに、エラストマー性ポリマー組成物は、少なくとも0.1MPa、好ましくは少なくとも0.5MPa、より好ましくは少なくとも0.75MPa、最も好ましくは少なくとも1MPaのISO 37基準に従って測定された破断時引張強度を有し得る。
【0139】
これに加えて、又はあるいは、エラストマー性ポリマー組成物は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも100%、更により好ましくは少なくとも150%、とりわけ好ましくは少なくとも550%、更によりとりわけ好ましくは少なくとも600%のISO 37に従う(最大)伸長度を有し得る。とりわけ、鉄道軌道構造におけるレールの固定又は埋め込みのためには、少なくとも150%の(最大)伸長度が好ましい。
【0140】
本発明はまた、鉄道軌道構造に上述のエラストマー性ポリマー組成物を適用する方法であって、本方法が、
i)
A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物であって、ポリオールが、
a)ダイマー脂肪酸残基、ダイマー脂肪族ジオール残基及びダイマー脂肪族ジアミン残基から選択される少なくとも1個のダイマー脂肪族残基と、
b)直鎖又は分枝鎖C2~C36二酸又はジオールの少なくとも1個の残基と、を含む、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、
B)アクリレートと、を混合することによって、ポリマー組成物混合物を調製する工程と、
ii)ポリマー組成物混合物を少なくとも1つ以上の鉄道軌道構造の構成要素に適用する工程と、
iii)ポリマー組成物混合物を硬化させる工程と、を含む、方法を提供する。
【0141】
当業者によって理解されるように、工程i)及びii)において、予備硬化ポリマー樹脂が提供され、一方で、工程iii)の硬化後に、ポリマーマトリックスが形成されている。樹脂及びマトリックスは両方とも、上述のエラストマー性ポリマー組成物であると理解することができる。したがって、一般に、本発明の方法は、i)予備硬化ポリマー樹脂を形成する工程と、その後にii)樹脂の適用工程と、その後にiii)予備硬化ポリマー樹脂を硬化させることによってポリマーマトリックスを形成する工程と、を含む。
【0142】
ポリマー組成物混合物を調製する工程i)の方法は、A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、B)アクリレートポリマー成分とを一緒に混合することを含む。この混合工程は、2つの反応剤を密に接近させて均質なポリマー組成物を生じることを確実にするためのものである。
【0143】
好適には、工程i)において、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物の、アクリレートに対するモル比は、1:0.2~1:4、好ましくは1:0.25~1:3、より好ましくは1:0.25~1:2.5、最も好ましくは1:0.25~1:1.8の範囲である。
【0144】
工程iii)におけるポリマー組成物の硬化は、ポリマー鎖を架橋することによって達成され、これは、任意の好適な手段によって達成され得る。しかしながら、好ましくは、工程iii))の硬化は、フリーラジカル重合反応によって、又はマイケル付加反応によって達成される。より好ましくは、硬化工程iii)は、マイケル付加反応によって達成される。
【0145】
好ましくは、工程iii)の硬化は、周囲温度で、より好ましくは室温で行われる。特に、工程iii)の硬化は、フリーラジカル重合反応によって、又はマイケル付加反応によって達成され、0℃~35℃の温度で、好ましくは15℃~30℃の温度で、より好ましくは20℃~25℃の温度で行われる。
【0146】
本発明の重要な利点は、硬化工程iii)がマイケル付加反応による炭素架橋によって達成され得ることである。炭素-炭素結合を達成するためにマイケル付加反応方法を利用する能力は、上述のアセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物中に存在するアセトアセチル化剤の反応性アセト酢酸基の存在によって促進される。炭素-炭素結合を達成するための比較的穏やかな反応条件が本発明の適用方法において利用され得るという事実は、本発明のエラストマー性ポリマー組成物が鉄道軌道構造に利用される場合に、イソシアネートを利用して調製されたポリマーと比較して、予想できないことに、生成物の性能の損失なく、イソシアネートを反応剤として利用するポリマー適用方法を置き換えることができることを意味する。このようなイソシアネートを含まないポリマー適用方法は、従来のイソシアネートポリマーに基づく方法よりも明らかに健康及び環境上の利点を有する。更に、マイケル付加反応が周囲温度及び/又は室温で達成され得るという事実は、更なる適用の容易さという利益を提供する。硬化後、得られたポリマーは、適度に弾性であり、優れた接着強度を有する。
【0147】
好適には、ポリマー組成物混合物を少なくとも1つの鉄道軌道構造の構成要素に適用する方法工程ii)において、鉄道軌道構造の構成要素は、レールであり、ポリマー組成物混合物は、レールの少なくとも1つの側面(又は面)に適用される。好ましくは、工程ii)において、予備硬化ポリマーは、レールの少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの側面に適用される。したがって、特に好ましい実施形態では、本方法によって、硬化したエラストマー組成物によって、又は硬化したエラストマー組成物の本体内に3つの側面で埋め込まれるレールを有する鉄道軌道構造が得られる。そのような方法は、レールが鉄道軌道システムにおいて使用されるときに、締結、連続的な支持並びに振動及び騒音からの絶縁を提供する。
【0148】
あるいは、方法工程ii)では、レールの下にある空間を、レールが垂直方向に支持され、減衰されるように、本発明による組成物で充填することができる。この場合、エラストマー性ポリマーは、レールの下にある空間において、地面又は他の支持表面上に適用される。
【0149】
方法工程i)を実施する前に、A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物、及びB)アクリレートを、別個に詰めてもよい。例えば、A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物、及びB)アクリレートを、少なくとも2つの別個の容器、例えば剛性容器(缶、ボトルなど)又は可撓性容器で包んでもよい。少なくとも2つの別個の容器は、異なるものであってもよく、又は同じ種類のものであってもよい。したがって、工程i)では、A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、B)アクリレートとを一緒に混合することは、少なくとも2つの容器の内容物を第3の容器に添加することによって、又はあるいは少なくとも2つの容器の内容物を容器のうちの1つで合わせることによって、実施され得る。このようにして、A)アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物と、B)アクリレートの量を予め決定し、別個に詰めてもよく、現場に特殊な計量装置又は投入装置を必要とすることなく、ポリマー組成物が適用される鉄道軌道構造の場所の近くで、その場で混合を容易に行うことができる。
【0150】
あるいは、計量/投入及び混合は、例えば、所望の鉄道軌道構造の場所で、投入混合機械によって自動的に行われてもよい。
【0151】
工程ii)では、好ましくは、ポリマー組成物混合物は、少なくとも5mmの厚さを有する層で適用され、より好ましくは、ポリマー組成物混合物は、5~300mmの厚さを有する層で適用され、最も好ましくは、ポリマー組成物混合物の層は、10~200mmの厚さで適用される。
【0152】
硬化した生成物が接着することが意図される鉄道軌道構造の基材の1つによって形成されるキャビティ又はチャネルにポリマー組成物を適用することが有利である。したがって、ポリマー組成物が適用される基材は、好ましくは、第2の基材を包含する鋼鉄又はコンクリートチャネル、すなわち、鉄道、地下又は線路のためのレールである。したがって、特に好ましい一実施形態では、工程i)のポリオールとアクリレートとの混合工程の後、得られたポリマー組成物混合物(また、予備硬化ポリマー組成物)を、好ましくは、ギャップ、キャビティ、チャネル又は型に適用する。したがって、上述の層は、上述のギャップ、キャビティ、チャネル、又は型の中に形成され得る。型の場合、エラストマーポリマー組成物が硬化したら、型が鉄道軌道システムで使用するための鉄道軌道構造の一部を形成しないように、型を除去してもよい。
【0153】
有利であると考えられる場合、本方法はまた、前処理工程を含んでもよい。これは、好ましくは、工程ii)の前に行われてもよい。好ましくは、本方法は、プライマーの適用、研磨及び洗浄といった前処理工程のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0154】
好適には、エラストマー性ポリマー組成物が適用される構成要素は、最初に前処理され、構成要素が、レイタンス、硬化性化合物、剥離剤、並びに汚れ、油及びグリースなどの汚染物質を確実に含まないようにする。このような前処理を行うのに適した方法としては、湿式又は乾式ブラスト洗浄及び粉砕が挙げられる。
【0155】
望ましい場合、プライマーは、様々な市販製品から選択することができる。適切なプライマーとしては、市販のシラン樹脂系のプライマー、エポキシプライマー及びUV硬化アクリレート系のプライマーが挙げられる。場合によっては、表面に対する硬化したエラストマー生成物又はマトリックスの接着に、プライマーを使用しないことが好ましい場合がある。しかしながら、全ての場合に、適用されるエラストマー性ポリマー組成物の接着性は、組成物が所望の構成要素に適用される前に全ての緩くなった部品、埃及び汚れ、錆び及び他の汚染物質が除去されている場合に、改善される。しかしながら、最初に構成要素の上にプライマーを適用することが有利である。
【0156】
本発明は更に、上述の本発明によるエラストマー性ポリマー組成物を含む鉄道軌道構造を提供する。
【0157】
本発明はまた、上述の本発明による鉄道軌道構造にポリマー組成物を適用するための方法によって得ることができる、鉄道軌道構造を提供する。特に、本発明は、合成樹脂の本体に埋め込まれたレールを提供し、合成樹脂は、上述の硬化した組成物又はポリマーマトリックスである。
【0158】
あるいは、エラストマー性ポリマー組成物から形成された発泡体シートを含む鉄道軌道構造が提供される。発泡体シートは、上述のように、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物から事前に製作されていてもよい。この場合、発泡体シート構造は、可撓性及び/又は微孔質発泡体などの多孔性であってもよい。発泡体シートは、締結されたレールを有するコンクリートスラブを配置して鉄道軌道構造を提供する前に、その所望の位置に配置することができる。
【0159】
あるいは、コンクリートブロックがエラストマーポリマー組成物によって基材に弾性的に固定され、それによって騒音及び振動に対する隔離を提供するように、レールが締結されたコンクリートブロックを基材、例えば、コンクリートトレイ、橋、又はトンネルに締結することを含む鉄道軌道構造が提供される。国際公開第2008/040549号に開示されている構築物と同様に、支持体がコンクリートブロックのために作製されるように、ポリマートレイを別のポリマートレイ中に締結することも可能であり、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物を、そのようなポリマートレイに利用してもよい。
【0160】
更なる代替的な実施形態は、ベースプレート中にエラストマー性ポリマー組成物を含む鉄道軌道構造である。ベースプレートはまた、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物中に打設される、鋼鉄又は代替的なポリマープレート、例えば、ポリアミドも含み得る。その後、レールを、これらのベースプレートに締結してもよい。ベースプレートを、その後、例えば道路、トンネル、又は橋などの基材に締結してもよい。
【0161】
上記のように、本発明はまた、上述のように、鉄道軌道構造及びシステムにおけるエラストマー性ポリマー組成物の使用を提供する。
【0162】
特に、エラストマー性ポリマー組成物は、鉄道軌道構造におけるレール構成要素の締結のために使用され、次いで鉄道軌道システムを形成する際に使用することができる。好ましくは、エラストマー性ポリマー組成物は、硬化したポリマー組成物(又はポリマーマトリックス)中にレール構成要素を埋め込む際に使用される。より好ましくは、エラストマー性ポリマー組成物は、硬化したポリマー組成物(又はポリマーマトリックス)によって3つの側面で埋め込まれるレールを提供するために使用される。これにより、埋め込まれたレールが鉄道軌道構造を形成する際に使用される場合に、締結、連続的な支持並びに振動及び騒音からの絶縁を提供する。
【0163】
本明細書に記載される特徴の全ては、任意の組み合わせで、上述の態様のいずれかと組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0164】
本発明は、添付の図面によって更に説明される。
【0165】
【
図1】チャネルが、本発明による組成物で充填されている、本発明の一実施形態の簡略化された断面図を示す。
【
図2】埋め込まれたレールを有する、本発明の代替的な実施形態の簡略化された断面図を示す。
【
図3】構造を形成するために型(図示せず)が利用されている、更なる実施形態の簡略化された断面図を示す。
【
図4】本発明による組成物を使用してチャネルを充填する、別の実施形態の簡略化された断面図を示す。
【
図5】埋め込まれたレールの代替的な実施形態の簡略化された断面図を示す。
【
図7】埋め込まれたブロック構造の簡略化された断面図を示す。
【
図8】本発明による組成物でコーティングされたレール構成要素の簡略化された断面図を示す。
【
図9】鉄道軌道システム中のコンクリートスラブの底部及び両側を完全に支持する発泡体シートを示す。
【
図10】鉄道軌道システム中のコンクリートスラブを支持する、複数のより小さな発泡体シートを示す。
【0166】
図1は、チャネルに降ろされた鋼鉄レール1を示す。チャネルは、道路内に位置する。道路は、アスファルト4の上層で覆われている。レール1は、従来、弾性ポリマー材料の第1の本体2及び弾性ポリマー材料の第2の本体3を使用して固定され、それによって、レールの強力な締結、並びに列車又は路面電車がレールの上を走行する場合の騒音及び振動の十分な減衰を提供する。本体2及び3は、道路の表面より下にギャップを可能にするように、チャネルを部分的にのみ充填している。その後、このギャップを、本発明によるエラストマー性組成物によって充填し、組成物を硬化させて、弾性ポリマー本体5を提供する。このようにして、組成物は、道路のアスファルト層4及び鋼鉄レール1に対する接着性と、その弾性及び強度の特性とをあわせもつ。代替的な実施形態では、本体2及び3のポリマー材料は、異なるポリマーから形成されてもよく、一方又は両方が、ポリウレタン組成物からなっていてもよい。
【0167】
図2において、レール21は、レール21のために設けられたチャネル内に配置される。レール21は、エラストマーポリマーによって、その所望の位置に固定されている。本発明による組成物を混合し、レール21が部分的に覆われるようにチャネル内に適用する。エラストマー性組成物を硬化させて、そのようにして弾性ポリマー本体22を作製する。本体22の硬化後、チャネルを、本発明のポリマー組成物で更に充填して、弾性ポリマー本体23及び24を提供する。この実施形態は、本体23及び24の異なるレベルによって示されるように、2つの異なる高さレベルで弾性ポリマー材料に埋め込まれたレール21を有することが望ましい場合に、特に便利である。このような高さの差が望まれない場合には、チャネル全体を所望の高さまで充填する1つの本体のみが得られるように、1つの工程でチャネルを充填することも可能である。
【0168】
図3に示される実施形態を得るために、まず、型(図示せず)を作製し、それより上に、レール足部32が設けられたレール31が型の底部と接触しないように、レール31が配置される。残りの空間を、本発明による組成物で充填し、組成物を硬化させて、弾性本体33を提供する。型が取り外され、弾性本体33を有するレールを、鉄道軌道システムを調製する際に使用することができる。このようにして、埋め込まれたレール構造は、所望の鉄道軌道システムを敷設するために、現場外で事前に製作され、現場で持って行くことができる。
【0169】
図4は
図1と同様であるが、アスファルト層4が存在しない。ここでは、コンクリート道路(図示せず)にチャネルが設けられており、その中に、鋼鉄レール41が、弾性ポリマー本体43及び44を介して固定されている。本体42は、チャネルを部分的にのみ充填しているため、残りのチャネルを、本発明による組成物で充填し、弾性本体44を得る。本体44は、鋼鉄レールに対して優れた接着特性を有する。更に、本体44は、道路のコンクリートとも結合する。
【0170】
図5は、埋め込まれたレール構造の異なる態様を示す。この実施形態では、レール51は、レール足部52を備える。レール足部52は、接続手段54を介して、トレイ53に締結される。トレイ53は、鉄又は鋼鉄などの様々な材料から作製されてもよい。トレイ53は、側壁55及び56を備える。レール51、レール足部52、及びトレイ53の構造は、レール用のチャネル内に降ろされ、トレイの側壁55及び56とチャネルの壁との間にギャップが形成される。このギャップは、以下の2つの工程で充填される。第1の工程では、本発明の組成物の層が適用され、これが硬化後に弾性本体57を提供し、これに第2の工程が続き、第2の本体58を提供する。この第2の本体58は、本発明のエラストマーポリマーを含む任意の適切なポリマー材料のものであってもよいが、代替のポリマーを利用することもできる。
【0171】
図6は、伸長部63及びフック64を介して、プレートの締結手段62によって、レール61が基部に締結される直接締結構造を示す。代替的又は付加的な締結手段が適用されてもよいことは明らかである。2つの側壁65及び66は、それらの間に型を形成するために設けられる。ベースプレート62を有するレール61は、底部に接触することなく、この型内に降ろされ、ギャップを作製する。ギャップを、本発明によるエラストマー性組成物によって充填し、弾性層67を提供する。
【0172】
図7は、国際公開第2008/040549号に記載されたレールシステムと同様の実施形態における本発明の使用を示す。コンクリートから作製されたブロック72に締結されるレール71を示す。ブロックの製造には、ポリマーコンクリート及び他の材料を使用することも可能である。レール71は、ブロックに固定される締結伸長部74と、レール71の下側部分を締結するフック73とを使用する、従来の締結手段によって締結される。ブロック72は、トレイ77内に降ろされ、ギャップ76を形成する。次いで、形成されるギャップ76を、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物を用いて2工程で充填する。そのようなレール及びブロック鉄道軌道構造は、現場以外で事前に製作され、予定の場所に配置され、鉄道軌道システムを作製し得る。構造の位置決めは、国際公開第2008/040549号に記載されているのと同じ方法で、所望の位置で行われてもよい。
【0173】
図8は、本発明によるエラストマーポリマー組成物から作製された層82で大部分が覆われたレール81の断面を示す。ポリマー層82を有するレール81は、事前に製作される。このレールが、その所望の位置に配置されると、レールはチャネルの壁に接触することなくチャネル内に配置される。レール81の下に沿ってコンクリートが打設され、それにより鉄道軌道構造が形成される。層82は、比較的厚くてもよく、それにより騒音及び振動の減衰を提供する。あるいは、層82は比較的薄くてもよく、それにより電気絶縁性及び耐腐食性を提供する。レール81は、表面に機械的に固定される。レールの上部には、滑り抵抗特性を有する2つの弾性本体83を適用し得る。これらの弾性本体83は、代替のポリマー材料から形成され、ポリウレタン又はエポキシ型の材料であってもよい。
【0174】
図9は、コンクリートのスラブ92に従来の手段によって締結された2つのレール91を示す。発泡体シート93’及び93”は、本発明によるエラストマー性組成物から事前に製作されている。発泡体シートは、鉄道軌道構造から離れて別個に事前に製作されており、スラブ92及びレール91を配置する前に、その予定の場所に配置された。発泡体シートは、鉄道軌道システムの支持及び振動減衰を提供する。
図9では、発泡体シートのサイズは、コンクリートスラブ92の底部及び側面が完全に囲まれるようなサイズである。
【0175】
図10は、コンクリートのスラブ102に従来の手段によって締結された2つのレール101を示す。発泡体シート103は、本発明によるエラストマー性ポリマー組成物から事前に製作されている。発泡体シートは、鉄道軌道構造から離れて別個に事前に製作されており、スラブ102及びレール101を配置する前に、その予定の場所に配置された。発泡体シートは、鉄道軌道システムの支持及び振動減衰を提供する。
図10では、発泡体シートのサイズは、コンクリートスラブ102の底部及び側面が完全に囲まれないようなサイズである。
【実施例】
【0176】
ここで、以下の実施例を参照して、単なる例として本発明を更に説明する。全ての部及びパーセンテージは、別途述べられていない限り、重量で与えられる。
【0177】
列挙された全ての試験及び物理的特性は、本明細書において別段の記載がない限り、又は参照された試験方法及び手順において別段の記載がない限り、大気圧及び室温(すなわち、約20℃)で決定されていることが理解されるであろう。
【0178】
以下の実施例で使用される材料は、以下のように特定される。
・1,4-ブタンジオール-例えばBioAmberから入手可能なバイオベース態様
・1,6-ヘキサンジオール-BASF製
・アジピン酸(C6ジカルボキシル酸)-Verdezyne製のバイオベース態様
・Pripol(商標)1006ダイマー脂肪族二酸-Croda製の水素化C36ジカルボン酸
・Pripol(商標)1013ダイマー脂肪族二酸-Croda製の非水素化C36ジカルボン酸
・ネオペンチルグリコール-Perstorp製
・トリメチロールプロパン-Perstorp製
・カプロラクトン-Perstorp製のCAPA-モノマー
・アセト酢酸tert-ブチル-Eastman製のtBAA
・Photomer(商標)6210-IGM Resins製のウレタンアクリレート
・Photomer(商標)6891-IGM Resins製のウレタンアクリレート
・Photomer(商標)3316-IGM Resins製のエポキシアクリレート
・Suprasec(商標)2030-Huntsman製のメチレンジフェニルジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate、MDI)プレポリマー
・PTMEG-Terathane(商標)-Invista製の数平均分子量2000
・Desmophen(商標)2061BD-市販のポリプロピレングリコールのポリオール-Covestro製の数平均分子量2000
・ImerSeal(商標)36S-Imersys製の市販の炭酸カルシウムポリマー充填剤
・Corkelast(商標)VA-60-edilion)(sedra製のポリプロピレングリコールに基づく充填PU系
・Desmodur(商標)E15-Covestro製の市販のトルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)プレポリマー
【0179】
試験方法:
・数平均分子量を、水酸基価を参照しつつ、末端基分析によって決定した。
・重量平均分子量を、水酸基価を参照しつつ、末端基分析によって決定した。
・水酸基価は、試料1gのヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウムのmg数として定義され、アセチル化、その後の過剰な無水酢酸の加水分解によって測定した。その後、形成された酢酸を、エタノール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
・酸価は、試料1g中の遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義され、標準水酸化カリウム溶液での直接滴定によって測定した。
・伸長度を、特に明記しない限り、2型のダンベル試験片を使用して、ISO 37に従うInstron引張試験機を使用して測定した。
・引張強度を、特に明記しない限り、2型のダンベル試験片を使用して、ISO 37に従うInstron引張試験機を使用して測定した。
・弾性率を、所定の伸長度を達成するのに必要な引張強度として計算した。
・7日間浸漬後の吸水度を、ISO 62に従って測定した。
・圧縮永久歪み(compression set)を、ISO 1856、方法B(ISO 1856B)に従って測定した。
・体積抵抗率を、EN 62631、part 3-1(EN 62631-3-1)に従って測定した。
【0180】
実施例1:アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物の調製及び実施例
P1-ダイマー脂肪酸及びジオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部のPripol 1006及び21部のブタンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気下、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下でエステル化反応を行い、ポリエステルポリオールを得た。エステル化反応は、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの数平均分子量の計算値及び85%の再生可能含有量を有していた。
【0181】
P2-ダイマー脂肪酸、脂肪族二酸及びジオール含有ポリオール
反応剤としてPripol 1006、アジピン酸及びヘキサンジオールを利用して、3つの異なる反応を行った。反応における変動は、以下に詳述されるように、異なる数平均分子量のポリオールをもたらした。
【0182】
P2A
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、50重量部のPripol 1006、50部のアジピン酸及び68.9部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び110mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約1000g/molの数平均分子量の計算値及び30%の再生可能含有量を有していた。
【0183】
P2B
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、50重量部のPripol 1006、50部のアジピン酸、59部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの数平均分子量の計算値及び30%の再生可能含有量を有していた。
【0184】
P2C
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、50重量部のPripol 1006、50部のアジピン酸、56.3部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び37mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約3000g/molの数平均分子量の計算値及び30%の再生可能含有量を有していた。
【0185】
P3-ダイマー脂肪酸及びグリコール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部のPripol 1013及び25部のネオペンチルグリコールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの数平均分子量の計算値及び84%の再生可能含有量を有していた。
【0186】
P4-ダイマー脂肪酸、トリオール及びポリオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部のPripol 1006及び47部のトリメチロールプロパンを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び282mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールを反応器中に保持し、以下の方法工程に従って、CAPAポリオールの導入によって更に変性させた。
【0187】
反応器の温度を160℃まで下げ、その後、60部のカプロラクトン(Perstorp製のCAPA-モノマー)及び重合触媒として0.05部のスズ(II)オクトエートを投入した。これらの条件下で、開環重合反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。得られた最終ポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び210mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約1000の数平均分子量の計算値及び55%の再生可能含有量を有していた。
【0188】
P5-ダイマー脂肪酸及びジオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部のPripol 1006及び28部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの数平均分子量の計算値及び81%の再生可能含有量を有していた。
【0189】
P6a-ダイマー脂肪酸、二酸、ジオール及びポリオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、50重量部のPripol 1006、50部のアジピン酸及び68.5部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び110mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールを反応器中に保持し、以下の方法工程に従って、CAPAポリオールの導入によって更に変性させた。
【0190】
反応器の温度を160℃まで下げ、その後、188部のカプロラクトン(Perstorp製のCAPA-モノマー)及び重合触媒として0.05部のスズ(II)オクトエートを投入した。これらの条件下で、開環重合反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。得られた最終ポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000の数平均分子量の計算値及び18%の再生可能含有量を有していた。
【0191】
P6b-ダイマー脂肪酸、二酸、ジオール及びポリオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、50重量部のPripol 1006、50部のアジピン酸及び68.5部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び110mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールを反応器中に保持し、以下の方法工程に従って、CAPAポリオールの導入によって更に変性させた。
【0192】
反応器の温度を160℃まで下げ、その後、370部のカプロラクトン(Perstorp製のCAPA-モノマー)及び重合触媒として0.05部のスズ(II)オクトエートを投入した。これらの条件下で、開環重合反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。得られた最終ポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000の数平均分子量の計算値及び12%の再生可能含有量を有していた。
【0193】
比較例:
C7-(非ダイマー含有)ポリエーテル系ポリオール
PTMEG-56mgKOH/gの水酸基価を有するTerathane(商標)ポリエ-テル系ポリオ-ル。
【0194】
C8-(非ダイマー含有)二酸及びジオール含有ポリオール
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部のアジピン酸、91部のヘキサンジオールを投入した。その後、反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から220~230℃まで上昇させた。これらの条件下で、エステル化反応を、所望の酸/水酸基価が観察されるまで行った。この実施例において、得られたポリエステルポリオールは、1mg KOH/g未満の酸価及び56mg KOH/gの水酸基価を有していた。得られたポリエステルポリオールは、約2000g/molの数平均分子量の計算値及び0%の再生可能含有量を有していた。
【0195】
ポリオールとアセトアセチル化剤との反応生成物の一般的な調製方法
続いて、上で調製したポリエステルポリオールのそれぞれを、アセトアセテートを含有するアセトアセチル化剤との反応によって変性させた。
【0196】
撹拌機、温度計、気体入口、及び凝縮器を備えた反応器に、100重量部の上で調製した各ポリオール及び15.8重量部のアセト酢酸tert-ブチル(Eastman(商標)t-BAA)を投入した。
【0197】
反応器の温度を、窒素雰囲気中、常圧で周囲温度から150~160℃まで上昇させた。これらの条件下で、理論量の三級ブタノール留出物が得られるまで反応を継続する。
【0198】
必要であれば、反応の完了を確実にするために真空を適用することができる。
【0199】
ゲルクロマトグラフィーを用いて反応の完了を特定することができる。
【0200】
実施例2:エラストマーポリマーの調製及び分析
以下の表1に詳述するように、様々なエラストマーポリマーを調製した。ポリマーは、上で特定されたようにそれらを含有するポリオールの例を参照することによって特定され、すなわち、ポリマー実施例P1は、ポリオールP1の反応生成物を含有するなど。室温で行われるC-マイケル付加反応は、2つの市販のアクリレート系オリゴマーのうちの1つと組み合わせて、上述の材料の実施例を利用するときに使用された。エラストマーポリマーを、2成分プロセスを用いて調製した。ポリマーマトリックス内で達成されるC-マイケル架橋は、所望な場合、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)のような有機塩基触媒の使用によって加速させることができる。
【0201】
実施例の材料及びアクリレート系オリゴマーを、以下の表1に示すように、1:1.2~1.8のモル比で反応させた。試験した2つの市販のアクリレート系オリゴマーは、Photomer(商標)6210(IGM Resins製のウレタンアクリレート)及びPhotomer 6891(IGM Resins製のウレタンアクリレート)であった。したがって、得られるエラストマーポリマーは、ポリウレタン系生成物であると考えられるが、有利には、イソシアネート非存在下で調製される。
【0202】
比較材料は、上述の比較ポリオール7及び比較ポリオール8(高温での硬化を必要とする非ダイマー含有材料)、並びにポリマーイソシアネート比較例と組み合わせて商業的に利用されるポリエーテルポリオールを表すように作製されたSuprasec(商標)と反応させた市販のDesmophen 2061BDからなる更なる材料も利用して、製造された。これを以下の表ではC9と呼ぶ。したがって、C9は、イソシアネートの付加によって調製されるエラストマー性ポリマーを提供し、これは望ましくない。
【0203】
【表1】
*エラストマーは、硬化を達成するために60℃~90℃の高温で調製されなければならなかった。
【0204】
表1に詳述した機械的データを考慮すると、アクリレートオリゴマーと組み合わせた、アセトアセチル化剤と、ダイマー脂肪族残基及びジオール又は二酸残基を含むポリオールとの反応生成物から室温で形成されるC-マイケルポリマーマトリックス材料は、比較の市販のポリウレタン(polyurethane、PU)エラストマー材料C9よりも高い弾性率及び引張強度特性を提供する。当業者によって理解されるように、ここで試験された本発明による材料は、市販のPUの高レベルに達しない伸長度を提供するが、これは、より高い弾性率が得られた結果である。結局、より高い弾性率及び引張強度が得られたことを考慮すると、ポリマーマトリックス材料の調製からイソシアネートを有利に省きつつ、本発明の材料について、商業的に許容される伸長度に達している。更に、エーテル結合は、エステル結合と比較して、低い熱酸化安定性を有することが知られており、したがって、本発明によって提供される材料にポリエステルポリオール系骨格が存在することが好ましい。加えて、上に示したように、C8に基づくエラストマーポリマー(ダイマーを含有しない)は、高温で硬化させる必要があったが、一方で、本発明によるポリマー組成物は、有利なことに、室温で硬化させることができる。
【0205】
更なる実験では、種々のエラストマーポリマーを、2つの市販のアクリレート系オリゴマーのうちの1つと組み合わせて、上述のアセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物の実施例を利用して、室温でのC-マイケル付加反応によって、以下の表2に詳述されるように調製した。この場合、エラストマーポリマーを、2成分プロセスを用いて調製し、充填剤であるImerSeal 36Sを含んでいた。ポリマーマトリックス内で達成されるC-マイケル架橋は、所望な場合、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)のような有機塩基触媒の使用によって加速させることができる。
【0206】
アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物、並びにアクリレート系オリゴマーを、以下の表2に示すように、1:1.2~1.8のモル比で反応させた。試験した2つの市販のアクリレート系オリゴマーは、Photomer(商標)6210(IGM Resins製のウレタンアクリレート)及びPhotomer(商標)6891(IGM Resins製のウレタンアクリレート)であった。したがって、得られるエラストマーポリマーは、ポリウレタン系生成物であるが、有利には、イソシアネート非存在下で調製される。
【0207】
Sigma Aldrichから市販されているPPG及びSuprasec(商標)2030からなる、表2でC10と示される比較材料を製造した。C10を作製して、ポリマーイソシアネートを含有する比較例を提供した。したがって、C10は、イソシアネートの付加によって調製される充填されたエラストマーポリマーであり、これは望ましくない。
【0208】
【0209】
充填剤が含まれる場合に、上の表2に詳述した機械的データを考慮すると、アクリレートオリゴマーと組み合わせた、アセトアセチル化剤とポリオールとの反応生成物から形成されるC-マイケルポリマーマトリックス材料は、比較の市販のポリウレタン(PU)エラストマー材料と同等の範囲である弾性率及び引張強度特性を提供する。加えて、充填剤を含むことにより、市販の比較例と同等であるように、本発明の材料の伸長度特性を改善するが、ポリマーマトリックス材料からイソシアネートを有利に省いたことを注記することができる。
【0210】
C10は、鉄道軌道システムで現在使用されているような組成物と同等の例である。鉄道軌道システムの場合、弾性率は、好ましくは2.3~3.1MPaである。この弾性率範囲は、水平力に対するレール/軌道の安定性を与えるが、振動減衰には特定のレベルの弾性が必要とされるため、この材料は硬すぎない。
【0211】
以下の表3は、特定の系における様々な充填剤量に関する更なる情報を提供する。
【0212】
【0213】
表3からわかるように、20%より多く40%未満、例えば、26~34%の充填剤を含む組成物は、鉄道軌道システムに使用するのに適した弾性率を有する。少なくとも20%の充填剤、好ましくは少なくとも26%の充填剤を有する組成物は、適切な引張強度を有する。少なくとも20%の充填剤の場合に、好適な伸長度特性も得られる。
【0214】
以下の表4は、鉄道軌道システムにおける埋め込み材料として商業的に使用されるポリウレタン材料と比較した、充填系の更なる特性に関する情報を提供する。
【0215】
【0216】
ここからわかるように、本発明による充填ポリマー組成物は、驚くべきことに、吸水度、体積抵抗率、及び圧縮永久歪みに関して、鉄道軌道構造に適用される市販のPU系充填材料よりも優れている。したがって、本発明のエラストマーポリマーは、鉄道軌道構造及びシステムにおける使用に特に適していることが証明されている。
【国際調査報告】