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特表2024-510793外科用メッシュの埋め込みを容易にするためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】外科用メッシュの埋め込みを容易にするためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
A61F2/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558469
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 IB2022052661
(87)【国際公開番号】W WO2022201064
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2102931
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597147278
【氏名又は名称】ソフラディム・プロダクション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】デュッセ, ジュヌビエーブ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA20
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC02
4C097CC14
4C097EE08
4C097FF02
4C097FF12
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのバーブ付き面(2)を有する外科用メッシュ(1)の埋め込みを容易にするためのデバイス(10)に関し、該デバイスは、-該外科用メッシュ(1)と、-該バーブ付き面(2)を少なくとも部分的に覆うように成形及び寸法決めされた少なくとも1つの生体適合性フィルム(11、11a、11b)と、-該フィルム(11、11a、11b)を該メッシュ(1)の該バーブ付き面(2)に取り外し可能に取り付けるように配置された少なくとも1つのケーブル(12)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバーブ付き面(2)を有する外科用メッシュ(1)の埋め込みを容易にするためのデバイス(10)であって、前記デバイスが、
-前記外科用メッシュ(1)と、
-前記バーブ付き面(2)を少なくとも部分的に覆うように成形及び寸法決めされた少なくとも1つの生体適合性フィルム(11、11a、11b)と、
-前記フィルム(11、11a、11b)を前記メッシュ(1)の前記バーブ付き面(2)に取り外し可能に取り付けるように配置された少なくとも1つのケーブル(12)と、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記フィルム(11、11a、11b)が、非多孔性である、請求項1に記載のデバイス(10)。
【請求項3】
前記フィルム(11、11a、11b)が、生分解性材料のみから作製されている、請求項1又は2に記載のデバイス(10)。
【請求項4】
前記フィルム(11、11a、11b)を前記メッシュ(1)の前記バーブ付き面(2)に取り外し可能に取り付けるように配置された複数のケーブル(12)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項5】
前記メッシュ(1)が、長手方向軸と前記バーブ付き面(2)の2つの対向する端部(2a、2b)とを画定する全体的に楕円形の形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項6】
前記フィルム(11、11a、11b)が、前記バーブ付き面(2)の前記端部(2a、2b)のうちの1つの少なくとも一部分(22a、22b)を覆わないままにするように成形及び寸法決めされている、請求項5に記載のデバイス(10)。
【請求項7】
前記フィルム(11、11a、11b)が、前記バーブ付き面(2)の両端部(2a、2b)の部分(22a、22b)を覆わないままにするように成形及び寸法決めされている、請求項6に記載のデバイス(10)。
【請求項8】
前記メッシュ(1)が、鼠経ヘルニアを治療するように意図されており、前記メッシュ(1)には、精索の通過を可能にするためのスリット(6)が更に設けられている、請求項5から7のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項9】
前記メッシュ(1)には、前記スリット(6)の縁部から延在するフラップ(7)が更に設けられており、前記フラップ(7)は、前記メッシュ(1)が埋め込まれると、前記メッシュを精索の周りで閉鎖するように意図されている、請求項8に記載のデバイス(10)。
【請求項10】
前記フィルム(11、11a、11b)は、前記フィルムが前記バーブ付き面から取り外されると、前記スリット(6)を通過するように前記フィルムが折り畳まれることを可能にする可撓性を示す、請求項8又は9に記載のデバイス(10)。
【請求項11】
前記フィルム(11、11a、11b)には、プレカット線(11c)が設けられており、前記プレカット線(11c)が、前記スリット(6)上に実質的に位置合わせされている、請求項8から10のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項12】
前記フィルム(11)が、フィルムの2つの部分(11a、11b)から形成されており、フィルムの各部分(11a、11b)が、前記メッシュ(1)の半分を実質的に覆い、前記スリット(6)上に実質的に位置合わせされた中心縁部(111a、111b)を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項13】
フィルムの一部分(11a、11b)の前記中心縁部(111a、111b)が、フィルムの他方の部分(11a、11b)の前記中心縁部(111a、111b)と重なり合う、請求項12に記載のデバイス(10)。
【請求項14】
前記フィルム(11、11a、11b)が、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)の積層を介して得られる、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項15】
前記フィルム(11、11a、11b)が、前記フィルム(11、11a、11b)及び前記メッシュ(1)によって形成される2つの層を、いかなる結び目も形成することなく、単に上下に1回又は数回横切る各ケーブル(12)によって、前記メッシュ(1)の前記バーブ付き面(2)に取り外し可能に取り付けられている、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス(10)。
【請求項16】
各ケーブル(12)が、他のケーブル(12)と相互作用することなく、前記メッシュ(1)の中心(5)から前記メッシュ(1)の縁部に向かって半径方向に配向されている、請求項4及び15に記載のデバイス(10)。
【請求項17】
各ケーブル(12)の遠位端(12b)が、前記フィルム(11、11a、11b)によって覆われていない前記メッシュ(1)の前記面(3)上で終端する、請求項16に記載のデバイス(10)。
【請求項18】
前記ケーブル(12)の全ての近位端(12a)が、前記メッシュ(1)の中心(5)から前記フィルム(11、11a、11b)によって覆われていない前記メッシュ(1)の前記面(3)から外向きに延在する中心尾部(13)に一緒に集められている、請求項16又は17に記載のデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面のうちの少なくとも1つにバーブが設けられた外科用メッシュの、患者の体内への埋め込みを容易にするためのデバイスに関する。このようなメッシュは、ヘルニアの治療のための組織補強プロテーゼを生産するために使用され得る。本発明のデバイスは、鼠経ヘルニアの治療に特に有用であり、メッシュは、好ましくは、古典的な切開手術を介して患者の体内に導入される。
【背景技術】
【0002】
組織補強プロテーゼ、例えば腹壁を補強するためのプロテーゼは、外科分野において広く使用されている。これらのプロテーゼは、組織欠損を一時的又は永久的に補強又は充填することによって、ヘルニアを治療するように意図されている。これらのプロテーゼは、一般に、生体適合性の外科用メッシュから作製されており、それらが適合する解剖学的構造に依存して、例えば、長方形、円形、又は楕円形などの多くの形状を有することができる。外科用メッシュは、非生分解性糸、又は生分解性糸、又は非生分解性糸と生分解性糸との組み合わせから作製され得、これは、外科用メッシュが患者の体内に永久的に留まるように意図されているか、又は反対に、細胞定着が起こって組織修復が行われる間にその補強役割を果たした後に消失するように意図されているかに依存する。
【0003】
外科用メッシュは、編物、織布、又は不織布などの糸の配列を含み得る。外科用メッシュは、一方の面から、場合によっては両方の面から外向きに突出するバーブを更に備え得、これらのバーブは、同一のプロテーゼに属するか若しくは属さない別のメッシュにおいて、又は直接、生物学的組織、例えば腹壁において、のいずれかで、それ自体を固定することができるフックを構成する。
【0004】
面のうちの少なくとも1つにバーブが設けられたメッシュを有することによって、いくつかの利点が提供される。バーブの存在のおかげで、メッシュは、生物学的組織を直接把持し得、タック、ステープル、縫合糸、又は接着剤などの従来の取り付け手段を使用することを必要とせずに、生物学的組織に固定され得る。実際に、タック、ステープル、縫合糸、及び接着剤などの従来の取り付け手段は、生物学的組織に対して外傷性であり、慢性疼痛の原因となり得る。タック、ステープル、及び縫合糸はまた、生物学的組織における張力及び/又はメッシュにおける断裂を引き起こし得る。バーブが設けられたメッシュが生物学的組織に固定されるとき、バーブが通常、メッシュの面の表面全体に位置するため、メッシュ表面全体にわたる力の最適な分散が得られる。これは、固定点に力が集中し、それによってメッシュの断裂及び患者の潜在的な不快感を引き起こす可能性がある、バーブのないメッシュのタック、ステープル、又は縫合糸による固定よりも有利である。
【0005】
それらの利点にもかかわらず、少なくとも1つのバーブ付き面が設けられた外科用メッシュについて、外科医がいくつかの否定的な認識を持つ場合があり、それらの否定的な認識によって、このような外科用メッシュを埋め込むことが困難になる。
【0006】
実際に、少なくとも1つのバーブ付き面を有する外科用メッシュが埋め込み部位に運ばれるとき、バーブが埋め込み部位に隣接する組織に付着することが起こり得、これにより、隣接する組織及び/又は外科用メッシュ自体を損傷する可能性なしに、外科用メッシュを埋め込み部位まで運ぶことが困難になる。したがって、外科用メッシュの導入段階は、外科医にとって快適ではなくなる。
【0007】
バーブを有する外科用メッシュで遭遇し得る別の欠点は、一旦埋め込み部位にあると、バーブによってメッシュを再位置決めすることが困難になることである。実際に、外科用メッシュが埋め込み部位まで運ばれると、外科医は、メッシュが一旦固定されてからその機能を適切に確実にすることができるように、周囲の組織に対してメッシュの様々な場所及び/又は位置決めを試みることを望むことが起こり得る。バーブがメッシュを生物学的組織から取り外して再取り付けすることを困難にするという事実によって、この位置決め工程が外科医にとって困難なものになり得る。
【0008】
更に、バーブは、メッシュが折り畳まれるときにメッシュ自体を把持する場合があり、それによって、その後のメッシュの展開及びその位置決めが妨げられる。
【0009】
したがって、少なくとも1つのバーブ付き面を有する外科用メッシュの埋め込みを容易にするためのデバイスが依然として必要とされており、このようなデバイスであれば、バーブ及び/又は周囲の生物学的組織を損傷することなく外科用メッシュを導入することを可能にし、更に、一旦該メッシュが埋め込み部位に到達してから、外科用メッシュの位置決め及び再位置決めを可能にするだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、少なくとも1つのバーブ付き面を有する外科用メッシュの埋め込みを容易にするためのデバイスであって、該デバイスが、
-該外科用メッシュと、
-該バーブ付き面を少なくとも部分的に覆うように成形及び寸法決めされた少なくとも1つの生体適合性フィルムと、
-該フィルムを該メッシュの該バーブ付き面に取り外し可能に取り付けるように配置された少なくとも1つのケーブルと、を備える、デバイスである。
【0011】
本発明のデバイスでは、生体適合性フィルムは、メッシュのバーブ付き面に存在するバーブの大部分を覆い、実施形態では、全てを覆う。したがって、外科用メッシュが埋め込み部位に運ばれるとき、周囲の生物学的組織は、バーブが主に生体適合性フィルムの表面と接触しているため、バーブから保護され、該表面は、滑らかで非外傷性である。結果として、外科医は、外科用メッシュが周囲の組織に絡み合ったり、このような組織が損傷したりする状況に直面する必要がない。
【0012】
外科用メッシュが埋め込み部位に到達するとき、バーブ付き面に連結されている生体適合性フィルムがバーブの大部分を依然として覆っており、それによって周囲の生物学的組織を保護し続けるため、外科医は、外科用メッシュを容易に操作して、該メッシュの様々な位置を試み得る。外科用メッシュのバーブ付き面の一部が覆われていないとき、外科医は、この覆われていない部分を使用して固定点を作成し、その固定点からメッシュの様々な位置/配向を試み得る。
【0013】
外科医が外科用メッシュの位置に快適であると感じると、外科医は、生体適合性フィルムを外科用メッシュに取り付けているケーブルを除去することを決定し得る。このケーブルが除去されると、外科医は、結果として生体適合性フィルムを除去し得る。本明細書から明らかなように、生体適合性フィルムと、該生体適合性フィルムを外科用メッシュのバーブ付き面に取り外し可能に取り付けているケーブルとは、患者の体内に留まるように意図されていない。生体適合性フィルム及びケーブルは、外科用メッシュが正確に位置決めされると除去される。生体適合性フィルム及びケーブルが除去されると、バーブは、周囲の生物学的組織を把持することが可能になり、バーブは、その固定機能を果たすことができる。
【0014】
したがって、本発明のデバイスは、メッシュ内でのバーブの絡み合いなど、バーブに関する問題を生じることなくメッシュが折り畳まれ得るため、メッシュの取り扱いを改善することを可能にする。本発明のデバイスは更に、該メッシュの把持性能を損なうことなく外科用メッシュの再位置決めを可能にするが、これは、バーブが、メッシュの埋め込み部位への輸送中にも、生体適合性フィルム自体によっても損傷されないからである。
【0015】
更に、本発明のデバイスは更に、埋め込み部位まで患者の体内にメッシュを挿入する間、周囲の生物学的組織を保護することを可能にする。加えて、メッシュを除くデバイスの全ての要素は、メッシュが埋め込まれると患者の体内から除去されるため、本発明のデバイスは、患者の体内に留まるように意図された異物を追加することに寄与しない。
【0016】
上記から明らかなように、本発明のデバイスは、外科医が、バーブを周囲の組織に係合させ、それによってメッシュを固定したい時点を選択することを可能にする。必要に応じて、外科医はまた、ケーブル及びフィルムを除去する前に、デバイスを完全に除去し、それを再導入することを決定し得る。本発明のデバイスのおかげで、外科医がメッシュからフィルムを除去することによってバーブを作動させることを決定する時間的制限がない。
【0017】
本発明のデバイスは、少なくとも1つのバーブ付き面を有する外科用メッシュを備える。外科用メッシュは通常、例えば、編物、織布、又は不織布であり得る生体適合性糸の配列から作製され、糸の該配列は、メッシュの2つの対向する面を画定する。バーブは、メッシュの少なくとも1つの面、特に、メッシュが埋め込まれたときに周囲の生物学的組織に固定されるように意図されているメッシュの面に存在する。実施形態では、バーブは、メッシュの両面に存在し得る。
【0018】
バーブは、メッシュが埋め込み部位に正確に位置決めされると、メッシュを周囲の生物学的組織に把持するように意図されている。したがって、バーブは通常、メッシュの面から外向きに、例えばメッシュの面に対して実質的に垂直に突出する。メッシュの表面全体に力が分散される均一な固定を得るために、バーブは、好ましくは、メッシュのバーブ付き面の表面全体にほぼ規則的に位置決めされている。
【0019】
本発明のデバイスの外科用メッシュの糸及びバーブは、生分解性又は非生分解性であり得る生体適合性材料から作製されている。
【0020】
本出願において、「生体適合性」とは、この特性を有する材料を人体又は動物の体内に埋め込むことができることを意味すると理解される。
【0021】
全ての生体適合性材料は、合成又は天然の、生分解性、非生分解性、又は生分解性と非生分解性との組み合わせであり得る。本明細書で使用される場合、「生分解性」という用語は、生体吸収性材料及び生体再吸収性材料の両方を含むと定義される。生分解性とは、その材料が身体条件下で分解するか又は構造的一体性を失うか(例えば酵素分解又は加水分解)、又は分解生成物が体内から排出可能若しくは吸収可能であるように、体内での生理的条件の下で(物理的又は化学的に)分解されることを意味する。
【0022】
本発明の外科用メッシュに好適な生分解性材料は、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid、PGA)、酸化セルロース、ポリカプロラクトン(polycaprolactone、PCL)、ポリジオキサノン(polydioxanone、PDO)、トリメチレンカーボネート(trimethylene carbonate、TMC)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate、PHA)、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)、それらのコポリマー、及びそれらの混合物から選択され得る。本発明の外科用メッシュに好適な非生分解性材料は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリアミド、アラミド、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリビニリデンジフルオリド(polyvinylidene difluoride、PVDF)、ブチルエステルポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリオレフィン(ポリエチレン又はポリプロピレンなど)、ポリエーテル、銅合金、銀又は白金合金、医療グレードのステンレス鋼などの医療グレードの鋼、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0023】
バーブは、メッシュの構成に使用される熱融着性モノフィラメント糸によって生成されたループを溶融することによって得られ得る。熱融着性モノフィラメント糸で作製された予備的なループからバーブを生成することは公知であり、例えば国際公開第01/81667号の明細書に記載されている。
【0024】
メッシュは、適合されるように意図されている解剖学的構造に依存して、長方形、円形、又は楕円形などの任意の形状を示し得る。
【0025】
実施形態では、本発明のデバイスの外科用メッシュは、長手方向軸と該バーブ付き面の2つの対向する端部とを画定する全体的に楕円形の形状を有する。2つの対向する端部は、該長手方向軸上に実質的に位置合わせされている。このような楕円形の形状のメッシュは、特に、ヘルニアの治療に使用され得る。
【0026】
実施形態では、外科用メッシュは、鼠経ヘルニアを治療するように意図されている。したがって、メッシュは、長手方向軸及び該バーブ付き面の2つの対向する端部を画定する全体的に楕円形の形状を有し得、精索の通過を可能にするためのスリットが更に設けられ得る。このような外科用メッシュは公知であり、それらは通常、楕円形の形状であり、スリットは、メッシュの中心に実質的に位置する点から、メッシュの長い側面のうちの1つの中央に実質的に位置する点におけるメッシュの縁部まで延在する。
【0027】
他の実施形態では、メッシュには、スリットの縁部から延在するフラップが更に設けられ得、該フラップは、メッシュが埋め込まれると、精索の周りでメッシュを閉鎖するように意図されている。このようなフラップは、メッシュを閉鎖構成に維持するように更に意図され得る。例えば、このようなフラップには、それ自体に、その面のうちの1つに、好ましくは、メッシュのバーブがない面の方を向いているその面にバーブが設けられ得る。スリット及びフラップが設けられ、かつ鼠径ヘルニアの治療に使用するように意図されたメッシュは公知であり、本明細書ではこれ以上記載しない。このようなメッシュでは、バーブ付き面は、好ましくは、フラップが設けられていないメッシュの面である。
【0028】
本発明のデバイスは、生体適合性フィルムを更に備える。生体適合性フィルムは、外科用メッシュのバーブ付き面を少なくとも部分的に覆うように成形及び寸法決めされている。
【0029】
上記に見られるように、フィルムは、外科用メッシュが患者の体内の埋め込み部位に輸送される間、並びに該埋め込み部位におけるメッシュの展開及び位置決めの間、バーブの大部分を覆うように意図されている。
【0030】
フィルムは、好ましくは非多孔性である。これにより、バーブを完全に覆うことが可能になり、したがって、患者の体内にメッシュを挿入する間、周囲の生物学的組織に対して最適に保護することが可能になる。フィルムの滑らかで滑りやすい表面により、フィルムが生物学的組織上を摺動することが可能になり、埋め込み手順の終わりに患者の体内からフィルムを除去することが容易になる。
【0031】
フィルムは、好ましくは薄い。指標として、フィルムは、約15μm~約25μmの範囲の厚さを示し得る。薄いフィルムは、メッシュの過負荷を防止することを可能にする。薄いフィルムはまた、外科医の指先によるメッシュ及びバーブの良好な接触を維持することを可能にする。
【0032】
フィルムは、好ましくは、外科用メッシュが患者の体内に導入されて運ばれるときに引き裂かれないように、ある程度の強度を示す。フィルムはまた、外科医が、フィルムを引き裂くことなく埋め込み部位からフィルムを除去するために、埋め込み手順の終わりにフィルムを引っ張り得るように、十分な強度を示さなければならない。
【0033】
フィルムは、生体適合性材料から作製されている。フィルムは、上に列挙したような生分解性材料、非生分解性材料、又は生分解性材料と非生分解性材料との組み合わせから作製され得る。フィルムは、好ましくは、それが作製される生体適合性材料の積層によって得られる。このような積層プロセスは周知であり、本明細書ではこれ以上記載しない。
【0034】
実施形態では、フィルムは、生分解性材料のみから作製されている。これにより、メッシュの埋め込み後にフィルムのいくつかの部分が患者の体内に残るという潜在的な悪影響が制限される。例えば、フィルムは、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)から作製されている。本発明のデバイスのフィルムを形成するのに好適なポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)のコポリマー組成物の調製は、米国特許第6,235,869号に記載されている。
【0035】
実施形態では、フィルムは、メッシュのバーブ付き面の表面全体を覆うように成形及び寸法決めされ得る。このような場合、バーブ付き面に存在するバーブの全体がフィルムによって覆われる。
【0036】
メッシュが長手方向軸及びバーブ付き面の2つの対向する端部を画定する全体的に楕円形の形状を有する実施形態では、フィルムは、該バーブ付き面の該端部のうちの1つの少なくとも一部分を覆わないままにするように成形及び寸法決めされている。バーブ付き面の端部の覆われていない部分によって、メッシュが埋め込み部位にあると、該覆われていない端部分に存在するバーブを周囲の生物学的組織に取り付けることによって、外科医が生物学的組織に第1の固定点を作成することが可能になる。この第1の固定点により、外科医は、最終位置を決定する前に、フィルムが依然としてバーブ付き面に取り付けられている間に、メッシュについて異なる位置及び/又は配向を試みることが可能になる。その覆われていない端部分以外のバーブ付き面のフィルムの存在により、メッシュの容易な取り扱いが可能になり、外科医が該メッシュの位置/配向を変更するときに、生物学的組織内でのメッシュの滑らかで容易な移動が可能になる。この第1の固定点は、外科医が快適であるメッシュの位置/配向に到達した場合に決定的であり得る。代替的に、バーブ付き面の覆われていない端部分が、少数のバーブのみが存在する制限された表面を有するため、外科医が最終的に、バーブ付き面の覆われていない部分のバーブを生物学的組織から取り外し、これらのバーブを異なる位置に再取り付けすることを決定する場合に、この第1の固定点は一時的であり得る。バーブ付き面の覆われていない端部分のバーブを周囲の生物学的組織に対して取り付け、取り外し、及び/又は再取り付けするために、外科医は、バーブ付き面の覆われていない端部の領域において、メッシュのバーブのない面を押すか、代替的に引っ張るだけでよい。
【0037】
更なる実施形態では、メッシュが長手方向軸とバーブ付き面の2つの対向する端部とを画定する全体的に楕円形の形状を有する場合、フィルムは、該バーブ付き面の両端部の部分を覆わないままにするように成形及び寸法決めされている。メッシュの2つの端部においてバーブ付き面の覆われていない部分を有することによって、外科医が、フィルムを除去する前に、周囲の生物学的組織へのメッシュの予備的な固定を作成することが可能になる。実際に、メッシュの両端部を生物学的組織の方向に押すことによって、バーブ付き面の覆われていない部分に存在するバーブは、生物学的組織の内側に貫通し、これらの組織においてメッシュの部分的な固着を実行する。以下の詳細な説明においてより明確に明らかなように、生物学的組織におけるメッシュのこのような予備的な固着によって、フィルムの除去及びメッシュのバーブ付き面に該フィルムを取り付けているケーブルの除去が容易になる。
【0038】
加えて、埋め込み部位から容易に除去するために、フィルムは、好ましくは、良好な可撓性及び良好な引き裂き抵抗を示す。実際に、フィルムの強度はメッシュのしわを制限するのに役立つ可能性が高いが、メッシュは容易に操作されて折り畳まれなければならないため、フィルムはいずれにせよ過度の剛性をメッシュに加えるべきではない。フィルムは、好ましくは、埋め込み手順の終わりにメッシュから分離されるときに容易に折り畳まれることを可能にする可撓性を示す。
【0039】
該メッシュが、長手方向軸と該バーブ付き面の2つの対向する端部とを画定する全体的に楕円形の形状を有し、該メッシュには、鼠経ヘルニアの治療において精索の通過を可能にするためのスリットが更に設けられている実施形態では、該フィルムは、該フィルムが該バーブ付き面から取り外されると、該スリットを通過するように該フィルムが折り畳まれることを可能にする可撓性を示す。
【0040】
本発明のデバイスに好適な可撓性及び引き裂き抵抗を示すフィルムは、特に、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)の積層を介して得られ得る。
【0041】
実施形態では、フィルムは、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)の積層によって得られる。このようなフィルムの調製は、例えば、欧州特許第3106185(B1)号の明細書に記載されている。このようなフィルムは、容易に折り畳まれることを可能にし、かつ埋め込み部位からのその除去を容易にする可撓性を示す。
【0042】
実施形態では、フィルムにはプレカット線が設けられており、該プレカット線は、該スリット上に実質的に位置合わせされている。このようなプレカット線によって、外科医が埋め込み部位からフィルムを除去したいときに、外科医がフィルムを2つの部分に容易に分離することが可能になる。以下の詳細な説明から明らかなように、プレカット線がメッシュのスリット上に位置合わせされているという事実によって、外科医の指又は任意の把持ツールのいずれかによって、該スリットを通して、フィルムの各部分の把持が容易になる。
【0043】
実施形態では、フィルムは、フィルムの2つの部分から形成されており、フィルムの各部分は、メッシュの半分を実質的に覆い、該スリット上に実質的に位置合わせされた中心縁部を有する。実施形態では、フィルムの一部分の中心縁部は、フィルムの他方の部分の中心縁部と重なり合う。このような実施形態では、フィルムが最初から2つの部分の形態であるため、外科医は、フィルムを2つの部分に分離する必要がない。したがって、このような実施形態によって、埋め込み手順の終わりのフィルムの除去が容易になる。フィルムの一部分の中心縁部がフィルムの他方の部分の中心縁部と重なり合うという事実によって、その重なり合いが、メッシュのスリットの近傍でフィルムの縁部に近接して把持される可能性が高いフィルム部分のより大きな表面を提供するため、外科医によるフィルムの各部分の把持が容易になる。
【0044】
本発明のデバイスは、フィルムをバーブ付き面に取り外し可能に取り付けるように配置された少なくとも1つのケーブルを更に備える。ケーブルは、特に本明細書に記載されるように、フィルムをバーブ付き面に取り外し可能に取り付けることができる任意の可撓性の細長い構造であり得る。例えば、ケーブルは、スレッド、コード、糸、ワイヤ、チューブ、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0045】
好ましくは、デバイスは、フィルムをバーブ付き面に取り外し可能に取り付けるように配置された複数のケーブルを備える。
【0046】
ケーブルは、生分解性又は非生分解性であり得る生体適合性材料から作製されている。外科用メッシュのバーブ及び糸について上述したような全ての生体適合性材料は、ケーブルを作製するのに好適である。
【0047】
ケーブルは、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸、又はマルチフィラメント糸とモノフィラメント糸との組み合わせであり得る。実施形態では、ケーブルは、モノフィラメント糸である。モノフィラメント糸は、メッシュのケーブルとバーブとの間の全ての絡み合いを防止することを可能にする。ケーブルは更に着色され得、着色されたケーブルは、埋め込み部位において外科医によってより容易に見分けられ、メッシュから区別され得る。実施形態では、異なる色のケーブルが使用され得る。このような実施形態は、必要に応じて、例えば、最初に除去するべきケーブルを外科医に示すために、いくつかのケーブルを他のケーブルから判別するために有用であり得る。
【0048】
実施形態では、ケーブルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作製されたモノフィラメント糸である。
【0049】
ケーブルのいくつかを単に引っ張るだけでケーブルがフィルム及びメッシュから分離されるように、フィルム及びメッシュがケーブルによって一緒に縫合されることによって、フィルムは、メッシュのバーブ付き面に取り外し可能に取り付けられている。フィルム及びメッシュからケーブルを分離することにより、互いの取り付け手段がこれ以上ない状態で、フィルム及びメッシュが単に並んで位置決めされることになる。次いで、外科医は、メッシュからフィルムを容易に分離することができる。
【0050】
実施形態では、フィルムは、フィルム及びメッシュによって形成される2つの層を、いかなる結び目も形成することなく、単に上下に1回又は数回横切る各ケーブルによって、メッシュのバーブ付き面に取り外し可能に取り付けられている。ケーブルとフィルム及びメッシュとの間の摩擦により、フィルム及びメッシュは、結び目の助けなしに一緒に維持されている。したがって、該摩擦を克服するために各ケーブルを単に引っ張るだけで、フィルム及びメッシュによって形成される2つの層からケーブルを除去することが可能になる。外科医は、各ケーブルを除去するために、結び目を切断又は解く必要がない。
【0051】
実施形態では、複数のケーブルが使用され得、各ケーブルは、他のケーブルと相互作用することなく、メッシュの中心からメッシュの縁部に向かって半径方向に配向されている。ケーブルのこのような半径方向の配置によって、フィルムが完全に平坦化され、フィルムをメッシュのバーブ付き面に接続することが可能になる。加えて、ケーブルが、いかなる結び目も形成することなくメッシュの縁部の方向に延在するという事実によって、外科医が必要に応じてメッシュをトリミングすることが可能になり、必要に応じて、フィルムとメッシュとの間の接続を損なうことなく、このトリミング工程中にケーブルの遠位端を切断することが可能になる。
【0052】
本明細書において、構成要素の遠位端は、ユーザの手から最も遠い端部を意味するものとして理解されるべきであり、近位端は、ユーザの手に最も近い端部を意味するものとして理解されるべきである。本明細書に記載のようなケーブルの半径方向の配置では、ケーブルの近位端は、メッシュの中心に位置するケーブルの端部であり、一方、ケーブルの遠位端は、メッシュの縁部の方向に位置するケーブルの端部である。
【0053】
したがって、ケーブルを半径方向に配置することにより、フィルムとメッシュのバーブ付き面との間の接続を失うことなくメッシュをトリミングすることが可能になる。
【0054】
実施形態では、各ケーブルの遠位端は、フィルムによって覆われていないメッシュの面上で終端する。これによって、フィルムの滑らかな表面を維持することが可能になる。
【0055】
実施形態では、ケーブルの全ての近位端は、フィルムによって覆われていないメッシュの面から外向きにメッシュの中心から延在する、中心尾部に一緒に集められている。ケーブルは、外科医に把持しやすい要素を提供するために、中心尾部の近位端において編組の形態で配置され得る。外科医は、単に編組を引っ張るだけで、メッシュ及びフィルムから全てのケーブルを確実に除去する。
【0056】
代替的な実施形態では、複数のケーブルが使用され得、ケーブルは、半径方向の配置に従うのとは異なるように編成され、ケーブルは、例えば、メッシュの表面上で様々な方向に延在し得、及び/又はメッシュの1つの縁部から直線的にもたらされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明及びそれから生じる利点は、以下のような添付の図面を参照して以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。
【0058】
図1】外科用メッシュ自体の上面図である。
図2図1の外科用メッシュのI-I面に沿った断面図である。
図3】本発明のデバイスのある実施形態の上面図である。
図4図3のデバイスの底面図である。
図5図3のデバイスのII-II面に沿った断面図である。
図6】固定するように意図されている筋肉上への図3のデバイスの位置決めを示す断面図である。
図7図3のデバイスの予備的な固着及びケーブルの除去を示す断面図である。
図8図3のデバイスのメッシュのフラップの開口部を示す断面図である。
図9図3のデバイスのフィルムの第1の部分の除去を示す断面図である。
図10図3のデバイスのフィルムの第2の部分の除去を示す断面図である。
図11】筋肉に固定及び固着された、図3のデバイスのメッシュを示す断面図である。
図12】本発明のデバイスの別の実施形態の部分断面図である。
図13】本発明のデバイスの別の実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1及び図2を参照すると、鼠経ヘルニアを治療するように成形及び寸法決めされた外科用メッシュ1が示される。メッシュ1は、メッシュの2つの対向する面、バーブ付き面2、及びバーブのない面3を画定する生体適合性糸の配列から形成されている。バーブ付き面2は、その表面に規則的に分散されている複数のバーブ4を備える。バーブ4は、メッシュ1が患者の体内で固定されるように意図されている生物学的組織を貫通するように意図されている。
【0060】
図1及び図2に示されるように、メッシュ1は、メッシュ1の長手方向軸Aと、2つの対向する端部(1a、1b)と、2つの対向する側縁部(1c、1d)とを画定する全体的に楕円形の形状を有する。したがって、メッシュ1の形状は、バーブ付き面2の2つの対向する端部(2a、2b)を更に画定する。
【0061】
メッシュ1には、中心開口部5と、この中心開口部5からメッシュ1の1つの側縁部1dまで延在するスリット6とが更に設けられている。スリット6は、メッシュ1が埋め込まれると、精索の通過を可能にするように意図されている。メッシュ1にはフラップ7も設けられており、このフラップ7は、スリット6の縁部からメッシュのバーブのない面3から外向きに延在する。図2に示されるように、フラップ7には、メッシュのバーブのない面3に向けられたその面にバーブ4が設けられている。フラップ7は、メッシュ1が埋め込まれると、精索の周りでメッシュ1を閉鎖するように意図されている。次いで、フラップ7のバーブ4は、メッシュ1を閉鎖構成に維持することに役立ち得る。
【0062】
図3図5を参照すると、本発明のデバイス10が示される。デバイス10は、図1図2のメッシュ1と、フィルムの2つの部分(11a、11b)から形成されている生体適合性フィルム11とを備え、該フィルム11は、メッシュ1のバーブ付き面2を部分的に覆う。
【0063】
図4を参照すると、フィルム(11、11a、11b)は、バーブ付き面2に存在するバーブ4の大部分を覆うが、バーブ付き面2の端部(2a、2b)のいくつかの部分(22a、22b)を覆わないままにするように成形及び寸法決めされている。以下の埋め込み手順の説明において明らかなように、バーブ付き面2の覆われていない部分22a及び22bによって、外科医が、生物学的組織に対してメッシュ1を位置決めするときに、予備的な固定点を作成することが可能になる。
【0064】
図5に示されるように、フィルム11の第1の部分11bは、第1の端部2bの覆われていない部分22bを除いて、バーブ付き面2の実質的に半分を覆い、フィルム11の第2の部分11aは、第2の端部2aの覆われていない部分22aを除いて、バーブ付き面2の実質的に他の半分を覆う。フィルム11の各部分(11a、11b)は、スリット6上に実質的に位置合わせされた中心縁部(111a、111b)を有する。いずれにせよ、図5に見られるように、フィルム11の第1の部分11bの中心縁部111bは、フィルム11の第2の部分11aの中心縁部111aと重なり合う。このような重なり合いによって、埋め込み部位からフィルム11を除去するときに、外科医がフィルム11の有意な部分を把持することが可能になる。
【0065】
図12に示される代替的な実施形態では、フィルム11は、プレカット線11cが設けられた1枚のフィルムのみから作製されている。プレカット線11cは、スリット6上に実質的に位置合わせされている。プレカット線11cによって、外科医は、メッシュ1が正確に位置決めされると、埋め込み部位からフィルム11を除去する準備ができているときに、フィルム11を2つの部分(11a、11b)に容易に分離することが可能になる。次いで、外科医は、フィルムの一方の部分及び他方の部分をスリット6に通過させることによって、これらのフィルムの部分を順次除去する。
【0066】
図13に示される別の実施形態では、フィルム11は、メッシュ1のスリット6を通過させることによって外科医により除去される一枚のフィルムから作製されている。
【0067】
フィルム11は、好ましくは非多孔性であり、生分解性材料のみから作製され得る。加えて、フィルム11は、フィルム11がメッシュ1から取り外されると、外科医が埋め込み部位からフィルム11を除去したいときに、外科医がメッシュ1のスリット6を通してフィルム11を運び得るように、フィルム11が折り畳まれることを可能にする可撓性を有する。
【0068】
実施形態では、フィルム11は、ポリ(グリコリド-カプロラクトン-ラクチド-トリメチレンカーボネート)の積層を介して得られる。
【0069】
本発明のデバイス10は、フィルム11をメッシュ1のバーブ付き面2に取り外し可能に取り付けるように配置された6本のケーブル12のセットを更に備える。
【0070】
図示されていない実施形態では、デバイスは、フィルムがメッシュに取り外し可能に取り付けられた状態で維持される限り、例えば、1本のみのケーブル、又は代替的に4本、5本、7本、8本、若しくはそれ以上のケーブルのセットのような、フィルムをメッシュに取り外し可能に取り付けられている別の数のケーブルを備えることができるだろう。
【0071】
ケーブル12は、メッシュ1にわたって半径方向に分散されており、換言すれば、各ケーブル12は、メッシュ1の中心から、例えばメッシュ1の中心開口部5から、メッシュ1の縁部に向かって延在する。加えて、各ケーブル12は、フィルム11及びメッシュ1によって形成される2つの層を、いかなる結び目も形成することなく、上下に数回横切る。したがって、フィルム11は、メッシュ1のバーブ付き面2に非決定的に縫合されている。実際に、フィルム11のメッシュ1への取り外し可能な取り付けを引き起こすのは、一方の端部のケーブル12と、他方の端部のフィルム11及びメッシュ1との間の摩擦である。ケーブル12の半径方向の編成は更に、フィルム11を平坦化することを可能にする。上述のようなフィルム11のメッシュ1への縫合は、ケーブル12のいずれもが他のケーブルと相互作用しないという結果を有する。したがって、各ケーブル12は、ケーブル12とフィルム11及びメッシュ1との間の上述のような摩擦を克服することができる力で、その近位端12aを単に引っ張ることによって除去され得る。
【0072】
図5に見られるように、各ケーブル12について、その遠位端12bは、メッシュ1のバーブのない面3に位置する。これにより、デバイス10が埋め込み部位に運ばれるときにフィルム11の平滑性を保持することが可能になる。
【0073】
ケーブル12の近位端12aは全て、メッシュ1のバーブのない面3から外向きにメッシュ1の中心から延在する中心尾部13に一緒に集められている。ケーブル12は、中心尾部13の近位端において編組14の形態で配置され得る。このような編組14は、ケーブル12の除去工程中に外科医が把持しやすい要素を提供する。
【0074】
ケーブル12は、生体適合性材料から作製されている。ケーブル12は、埋め込み部位で外科医によって容易に識別されるように着色され得る。例えば、ケーブル12はPETモノフィラメント糸であり得る。
【0075】
ここで、本発明のデバイス10を使用してメッシュ1を患者の鼠径部に埋め込むための方法について、図6図11を参照して記載する。
【0076】
図6図11では、簡略化目的のために、メッシュ1が固定されるように意図されている生物学的組織は、組織20として図式化される。この組織20は、横筋の腰筋などの鼠径部の腹壁の筋肉のうちの1つであり得るか、又は恥骨を覆う組織も表し得る。
【0077】
本発明のデバイス10は、フィルム11がメッシュ1のバーブ付き面2に存在するバーブ4の大部分を覆い、バーブ付き面2の覆われていない部分(22a、22b)に存在するバーブ4のみが自由なままである状態で、図5に示されるその構成で埋め込み部位に運ばれる。この構成においても、メッシュ1のフラップ7は、スリット6を覆い、フィルム11は、上述のようにフィルム11をメッシュ1に縫合する複数のケーブル12によってメッシュ1に取り外し可能に取り付けられている。
【0078】
フィルム11の存在によって、バーブ4を損傷することなく、結果としてこれらのバーブの把持能力を危うくすることなく、周囲の生物学的組織を通してデバイス10を輸送することが可能になる。フィルム11は更に、デバイス10の移動中にバーブ4によって周囲の生物学的組織が損傷することから保護することを可能にする。
【0079】
図6を参照すると、デバイス10は、フィルム11によって実質的に覆われたメッシュ1のバーブ付き面2が組織20に面した状態で、組織20に接近するように移動される。明確にするために、この図には示されていないが、外科医は、フラップ7を開放して、それを精索(図示せず)の周りに正確に位置決めし得る。外科医がメッシュ1の第1の位置決めを試みる準備ができたとき、外科医は、図6の矢印F1によって示されるように、バーブ付き面2の端部(2a、2b)の覆われていない部分(22a、22b)の一方又は両方を押す。これらの覆われていない部分(22a、22b)上で、バーブ4は自由なままであり、組織20を貫通してメッシュ1を組織20に部分的に固着させることができる。いずれにせよ、この段階で、外科医は、依然としてメッシュ1の位置を変更し、組織20の異なる位置でメッシュ1の第2の位置決めを試みるために、組織20から覆われていない部分(22a、22b)を取り外すことを決定し得る。したがって、バーブ付き面2の覆われていない部分(22a、22b)によって、バーブがメッシュ又は周囲の生物学的組織と絡み合う状況に直面することなく、外科医が快適に感じるメッシュの位置決めに到達するまで、外科医が予備的な固定点を作成することが可能になる。したがって、位置決め工程は、外科医にとって容易になる。
【0080】
外科医がメッシュ1の位置決めに満足し、メッシュのバーブ付き面2の覆われていない部分(22a、22b)に存在するバーブ4が、図7に示されるように組織20内に固着すると、外科医は、患者の体内に留まるように意図されていないデバイス10の要素を除去することを決定し得る。
【0081】
この図において、外科医は、中心尾部13の近位端に設けられた編組14を把持し、図7に示されるように、この編組14を矢印F2の方向に引っ張る。ケーブル12は、フィルム11及びメッシュ1によって形成される2つの層を、結び目を形成することなく単に横切るだけであり、それらの遠位端12bは自由であるため、外科医は、ケーブル12とフィルム11及びメッシュ1との間の摩擦を克服するのに十分な引張力を容易に及ぼすことができる。したがって、ケーブル12は、図8に示されるように、デバイス10及び埋め込み部位から除去される。
【0082】
依然として図8を参照すると、フィルム11及びメッシュ1は、ここで、互いから取り外され、単に、一方が他方の隣に位置決めされている。必要であれば、次いで、外科医は更に、図8に矢印F3として示される方向にフラップ7を開放してメッシュ1のスリット6を覆わないようにし、その結果、外科医は、フィルム11の第1の部分11bの中心縁部111bをより容易に視覚化することができる。
【0083】
図9を参照すると、外科医は、次いで、フィルム11の第1の部分11bの中心縁部111bを把持し、矢印F5によって示されるように、この中心縁部111bを引っ張り得、フィルム11のこの第1の部分11bをスリット6に通過させることによってフィルムの第1の部分11bを埋め込み部位から除去するようにする。フィルムの強度及び可撓性により、フィルムが折り畳まれることが可能になり、引き裂かれることなくスリット6を横切ることが可能になる。同時に、外科医は、フィルム11のこの部分11bから解放されているメッシュ1の半分に、矢印F4によって示される力を印加し得る。したがって、メッシュ1のバーブ付き面2のこの部分に存在するバーブ4は、組織20を貫通させられる。
【0084】
フィルム11の第1の部分11bが除去されると、外科医は、フィルム11の第2の部分11aの中心縁部111aを視覚化することができる。
【0085】
図10を参照すると、外科医は、次いで、フィルム11の第2の部分11aの中心縁部111aを把持し、この中心縁部111aを矢印F7の方向に引っ張り得る。その可撓性のおかげで、フィルム11のこの第2の部分11aは、スリット6を横断し、引き裂かれることなく埋め込み部位から除去される。同時に、外科医は、組織20にまだ固着されていないメッシュ1の部分に矢印F6によって示される力を印加し得る。バーブ付き面2の残りのバーブ4がフィルム1の第2の部分11aから解放されると、バーブ4は、組織20を貫通させられる。
【0086】
図11を参照すると、メッシュ1のバーブ付き面2の全てのバーブ4は、組織20に進入しており、メッシュ1は、ステープル又は縫合糸などの付加的な従来の固定手段を必要とせずに、組織20に完全に固着されている。更に、本発明のデバイスのケーブル及びフィルムは患者の体内から除去されているため、メッシュ以外の他の異物は埋め込まれない。最終工程(図示せず)では、外科医は、フラップ7を精索(図示せず)の周りで慎重に閉鎖し、メッシュ1のバーブのない面3の方向にフラップ7に圧力を印加して、フラップ7のバーブを該面3に把持し、それによってメッシュ1が閉鎖構成に維持されることを確実にし得る。
【0087】
したがって、本発明のデバイスは、バーブ付き面を有する外科用メッシュの、患者の体内への埋め込みを容易にするのに特に有用である。本発明のデバイスは、メッシュを患者の体内に挿入し、メッシュを埋め込み部位まで運ぶ一方で、周囲の生物学的組織及びバーブの把持能力の両方を保持することを可能にする。本発明のデバイスは更に、外科医が、組織を損傷することなく、容易にかつ必要に応じて何度でもメッシュを位置決め及び再位置決めすることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】