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特表2024-510794組織非特異型アルカリホスファターゼの送達のための遺伝子療法構築物およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】組織非特異型アルカリホスファターゼの送達のための遺伝子療法構築物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240304BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240304BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240304BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240304BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/55
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/46
A61P3/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558472
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2022052677
(87)【国際公開番号】W WO2022201074
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,928
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘一
(72)【発明者】
【氏名】松本 多絵
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC22
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC511
4C084ZC512
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZC21
(57)【要約】
組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターおよび組成物が、本明細書中に提供される。TNALP融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターおよび組成物の投与を含む、低ホスファターゼ症(HPP)を治療する方法もまた、本明細書中に提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドを含むベクターであって、該ポリヌクレオチドが、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含み、かつ該ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む、前記ベクター。
【請求項2】
前記融合タンパク質をコードする前記核酸が、配列番号2の核酸配列を含む、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
前記プロモーターがCAGプロモーターを含む、請求項1または2に記載のベクター。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが、前記プロモーターの上流にCMVエンハンサーをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項5】
前記プロモーターが、配列番号3または21の核酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項7】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項1~6のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項8】
前記AAVが、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
前記AAVが、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
前記AAVが血清型8(AAV8)である、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のベクターおよび製薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターおよび製薬上許容される担体を含む医薬組成物であって、該AAVベクターが、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを封入し、該ポリヌクレオチドが、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)を含む融合タンパク質をコードする核酸配列を含み、AAV血清型がAAV8である、前記医薬組成物。
【請求項14】
それを必要とする被験体に請求項1~11のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項12もしくは13に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させる方法。
【請求項15】
それを必要とする被験体に請求項1~11のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項12もしくは13に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させる方法。
【請求項16】
それを必要とする被験体に請求項1~11のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項12もしくは13に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において低ホスファターゼ症(HPP)を治療する方法。
【請求項17】
前記HPPがHPPの重症乳児型である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
投与が筋内注射である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与が単一用量である、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が複数回注射を含む単一用量である、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体が乳児または小児である、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が成体である、請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体の血漿アルカリホスファターゼ(ALP)レベルが、投与2週間後に約5U/mL~約100U/mLである、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記被験体が、投与2週間後に少なくとも5U/mLの血漿ALPレベルを有する、請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体の血漿ALPレベルが、投与2週間後に少なくとも10U/mLである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体の血漿ALPレベルが、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に少なくとも5U/mLである、請求項14~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体の血漿ALPレベルが、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に少なくとも10U/mLである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体の血漿ALPレベルが、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に約5U/mL~約10U/mLである、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体が、投与6ヵ月間後までに異所性石灰化または異常カルシウム代謝を発症しない、請求項14~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクターが、投与6ヵ月間後までに前記被験体の肝臓、心臓、骨、精巣、卵巣、またはそれらのいずれかの組み合わせにおいて検出されない、請求項14~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ベクターまたは前記医薬組成物の投与が、投与6ヵ月間後までに前記被験体での肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない、請求項14~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ベクターまたは前記医薬組成物の投与が、投与6ヵ月間後までに前記被験体での発癌作用を有しない、請求項14~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
(a) 被験体にポリヌクレオチドを含むベクターの第1用量を投与するステップであって、該ポリヌクレオチドが、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーターを含み、かつ該ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む、ステップ;
(b) 該ベクターの該第1用量を投与するステップの後に、該被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および
(c) ステップ(b)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの治療上有効レベル未満である場合、該被験体に該ベクターの第2用量を投与するステップ
を含む、それを必要とする被験体において血漿ALPの治療上有効レベルを達成する方法。
【請求項34】
血漿ALPの前記治療上有効レベルが少なくとも約5U/mLである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
血漿ALPの前記治療上有効レベルが少なくとも約10U/mLである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
血漿ALPの前記治療上有効レベルが約5U/mL~約100U/mLである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
血漿ALPの前記治療上有効レベルが少なくとも5U/mLである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
血漿ALPの前記治療上有効レベルが少なくとも10U/mLである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記被験体の血漿ALPレベルが、前記ベクターの前記第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(b)で測定される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記被験体の血漿ALPレベルが、前記ベクターの前記第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(b)で測定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(d) 前記ベクターの前記第2用量を投与するステップの後に、前記被験体での血漿ALPのレベルを測定するステップ;および
(e) (d)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの有効レベル未満である場合、該被験体に該ベクターの第3用量を投与するステップ
をさらに含む、請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記血漿ALPレベルが、前記ベクターの前記第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(d)で測定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体の血漿ALPレベルが、前記ベクターの前記第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(d)で測定される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記融合タンパク質をコードする前記核酸が、配列番号2の核酸配列を含む、請求項33~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記プロモーターがCAGプロモーターである、請求項33~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記プロモーターがCMVエンハンサーをさらに含む、請求項33~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記プロモーターが、配列番号21または配列番号3の核酸配列を含む、請求項33~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する、請求項33~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項33~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記AAVが、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型、またはAAV10血清型である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記AAVが、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記AAVがAAV8血清型である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリヌクレオチドが配列番号1の核酸配列を含む、請求項33~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記投与が筋内注射である、請求項33~53のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年3月23日出願の米国特許仮出願第63/164,928号に対する優先権を主張し、その内容はその全体で参照により本明細書中に組み入れられる。
電子的に提出された配列表に対する参照
本出願と共に提出された、ASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表(名称4627_002PC01_Seqlisting_ST25;サイズ:40,458バイト;および作成日:2022年3月22日)の内容は、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
低ホスファターゼ症(HPP)は、異常な骨および歯の石灰化を引き起こすTNALP遺伝子突然変異に起因する組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の欠損により特徴付けられる、遺伝性の全身性骨疾患である(Mornet, E (2007) Orphanet J Rare Dis 2: 40;Henthorn, PS, and Whyte, MP (1992) Clin Chem 38: 2501-2505;Millan, JL, and Whyte, MP (2016) Calcif Tissue Int 98: 398-416)。乳児型または周産期型HPPを有する患者は、出生時には正常に見える場合があるが、6ヵ月齢以内に臨床症状としてのくる病を徐々に発症する。多くの症例で、その後の頭蓋骨癒合症および腎石灰沈着症が、高カルシウム血症および高カルシウム尿症に続く(Albeggiani, A, and Cataldo, F (1982) Helv Paediatr Acta 37: 49-58)。加えて、骨格変化に先立つピリドキシン依存性けいれん発作が、致死的な転帰の予測因子である(Whyte, MP (2016) Nat Rev Endocrinol 12: 233-246)。胸郭変形および肋骨骨折につながる骨格変化が、呼吸器の問題を引き起こし、これはときにはこれらのHPP患者の生命を脅かす。
【0003】
成人型HPP患者では、血漿アルカリホスファターゼ(ALP)レベルを増加させる酵素補充療法(ERT)および副甲状腺ホルモンの投与をはじめとする数種類の治療アプローチから、幾分かの利益が得られてきた(Whyte, MP et al. (1984) J Pediatr 105: 926-933;Whyte, MP et al. (1986) J Pediatr 108: 82-88;Weninger, M, et al. (1989) Acta Paediatr Scand Suppl 360: 154-160;Camacho, PM, et al. (2008) Endocr Pract 14: 204-208;Whyte, MP, et al. (2007) J Clin Endocrinol Metab 92: 1203-1208)。しかしながら、これらの療法は、組み換え酵素に対する抗体の出現を生じる場合があり、かつ中枢神経系へと酵素を移動させることは困難であり得る。骨髄移植により、乳児型HPP患者における症状の改善が認められたと報告されている(Whyte, MP, et al. (2003) J Bone Miner Res 18: 624-636;Tadokoro, M et al. H (2009) J Pediatr 154: 924-930)。同種間葉系幹細胞移植は、周産期型致死性HPP延命および骨石灰化に対して3年間にわたり有効であった。しかしながら、上記療法は、細胞療法の投与に先立つ化学療法、放射線療法、および免疫療法を常に伴う。細胞療法は、移植後に移植片対宿主病をもたらす場合があり、これは患者の生命を脅かし得る(Taketani, T, et al. (2015) Cell Transplant 24: 1931-1943)。
【0004】
骨を標的とするためにデカアスパラギン酸(D10)と融合させた組み換えTNALPを投与されたマウスにおける結果が観察された(Millan, JL, et al. (2008) J Bone Miner Res 23: 777-787)。それらの結果は、ヒトHPP患者に対するTNALP-D10を用いるERTの開発につながった(Bowden, SA, and Foster, BL (2018) Drug Des Devel Ther 12: 3147-3161)。しかしながら、ERTは頻回の皮下注射(週2~3回)を必要とし、これは投与回数、疼痛およびコストに関して患者の負担が大きい。ERTの最も高頻度の有害作用は、皮下注射の頻度に関連する注射部位反応である(Kishnani, PS, et al. (2017) Mol Genet Metab 122: 4-17)。
【0005】
HPPのげっ歯類モデルであるTNALPノックアウト(Akp2-/-)マウスの治療を含む研究は、TNALP-D10をコードするレンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス型ベクターの単回静脈内注射が、Akp2-/-マウスにおけるTNALPの持続的発現を生じたことを示した(Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther. 22: 1355-1364;Yamamoto, S, et al. (2011) J Bone Miner Res 26: 135-142)。しかしながら、静脈内注射はベクターの全身への分布をもたらし、一部の臓器では高いALP活性が観察され、これは癌または胚細胞への形質導入を引き起こす可能性があった。筋肉特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーターと共にTNALPをコードするベクターの筋内(IM)注射を介したAkp2-/-マウスの処置を含む他の研究は、Akp2-/-マウスの生存期間の延長を示した(Nakamura-Takahashi, A, et al. (2016) Mol Ther Methods Clin Dev 3: 15059;Ikeue, R, T, et al. (2018) Mol Ther Methods Clin Dev 10: 361-370)。しかしながら、筋内発現は、Akp+/+野生型(WT)マウスにおける骨成熟と同等のAkp2-/-マウスにおける骨成熟を媒介するには十分でなかった。MCKプロモーターを用いて十分な血漿ALP活性を達成するためには、新生マウスの両側の大腿四頭筋へ15μLものベクター(5.0×1012vg/個体)を注射することを必要とした。しかしながら、骨石灰化は依然として不十分なままであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mornet, E (2007) Orphanet J Rare Dis 2: 40
【非特許文献2】Henthorn, PS, and Whyte, MP (1992) Clin Chem 38: 2501-2505
【非特許文献3】Millan, JL, and Whyte, MP (2016) Calcif Tissue Int 98: 398-416
【非特許文献4】Albeggiani, A, and Cataldo, F (1982) Helv Paediatr Acta 37: 49-58
【非特許文献5】Whyte, MP (2016) Nat Rev Endocrinol 12: 233-246
【非特許文献6】Whyte, MP et al. (1984) J Pediatr 105: 926-933
【非特許文献7】Whyte, MP et al. (1986) J Pediatr 108: 82-88
【非特許文献8】Weninger, M, et al. (1989) Acta Paediatr Scand Suppl 360: 154-160
【非特許文献9】Camacho, PM, et al. (2008) Endocr Pract 14: 204-208
【非特許文献10】Whyte, MP, et al. (2007) J Clin Endocrinol Metab 92: 1203-1208
【非特許文献11】Whyte, MP, et al. (2003) J Bone Miner Res 18: 624-636
【非特許文献12】Tadokoro, M et al. H (2009) J Pediatr 154: 924-930
【非特許文献13】Taketani, T, et al. (2015) Cell Transplant 24: 1931-1943
【非特許文献14】Millan, JL, et al. (2008) J Bone Miner Res 23: 777-787
【非特許文献15】Bowden, SA, and Foster, BL (2018) Drug Des Devel Ther 12: 3147-3161
【非特許文献16】Kishnani, PS, et al. (2017) Mol Genet Metab 122: 4-17
【非特許文献17】Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther. 22: 1355-1364
【非特許文献18】Yamamoto, S, et al. (2011) J Bone Miner Res 26: 135-142
【非特許文献19】Nakamura-Takahashi, A, et al. (2016) Mol Ther Methods Clin Dev 3: 15059
【非特許文献20】Ikeue, R, T, et al. (2018) Mol Ther Methods Clin Dev 10: 361-370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、HPPに対する実用的かつ安全な遺伝子療法を開発する必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の特定の態様は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含むポリヌクレオチドを対象とし、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0009】
本開示の特定の態様は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含むポリヌクレオチドを含むベクターを対象とし、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0010】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列を含む。
【0011】
一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流に、エンハンサー、例えば、CMVエンハンサーをさらに含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号3または21に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターおよびCMVエンハンサーは、配列番号3の核酸配列を含む。
【0012】
一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5の核酸配列を含む。
【0013】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列を含む。
【0014】
一部の態様では、融合タンパク質は、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。
【0015】
一部の態様では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の態様では、AAVは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVは、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVは、血清型8(AAV8)である。一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0016】
一部の態様では、AAVベクターは、筋内投与に対して好適である。
【0017】
本開示の特定の態様は、本開示のベクターおよび製薬上許容される担体を含む医薬組成物を対象とする。
【0018】
本開示の特定の態様は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターおよび製薬上許容される担体を含む医薬組成物を対象とし、ここでAAVベクターは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを封入し、ここでポリヌクレオチドは、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)を含む融合タンパク質をコードし、ここでAAV血清型はAAV8である。
【0019】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体に本開示のポリヌクレオチド、本開示のベクターまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において血漿アルカリリン酸塩(alkaline phosphate)(ALP)活性を増加させる方法を対象とする。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0020】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体に本開示のポリヌクレオチド、本開示のベクターまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させる方法を対象とする。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0021】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体に本開示のポリヌクレオチド、本開示のベクターまたは本開示の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において低ホスファターゼ症(HPP)を治療する方法を対象とする。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0022】
一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。一部の態様では、被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、被験体は成体である。
【0023】
一部の態様では、被験体の血漿アルカリホスファターゼ(ALP)レベルは、投与2週間後に、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、約75U/mL~約100U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約25U/mL、または約5U/mL~約15U/mLである。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0024】
一部の態様では、被験体は、投与2週間後に少なくとも5U/mLの血漿ALPレベルを有する。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2週間後に少なくとも10U/mLである。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2週間後に少なくとも25U/mLである。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2週間後に少なくとも50U/mLである。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2週間後に少なくとも75U/mLである。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2週間後に少なくとも100U/mLである。
【0025】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に少なくとも5U/mL、少なくとも6U/mL、少なくとも7U/mL、少なくとも8U/mL、少なくとも9U/mL、少なくとも10U/mL、少なくとも25U/mL、少なくとも50U/mL、少なくとも75U/mL、または少なくとも100U/mLである。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、約75U/mL~約100U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約25U/mL、または約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0026】
一部の態様では、被験体は、投与後3ヵ月間以内、4ヵ月間以内、5ヵ月間以内または6ヵ月間以内に異所性石灰化または異常カルシウム代謝を発症しない。
【0027】
一部の態様では、ベクターは、投与後3ヵ月間以内、4ヵ月間以内、5ヵ月間以内または6ヵ月間以内に被験体の肝臓、心臓、骨、精巣、卵巣、またはいずれかの組み合わせで検出されない。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0028】
一部の態様では、本開示のポリヌクレオチド、本開示のベクターまたは本開示の医薬組成物の投与は、投与後3ヵ月間以内、4ヵ月間以内、5ヵ月間以内または6ヵ月間以内に被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0029】
一部の態様では、本開示のポリヌクレオチド、本開示のベクターまたは本開示の医薬組成物の投与は、投与後3ヵ月間以内、4ヵ月間以内、5ヵ月間以内または6ヵ月間以内に被験体における発癌作用を有しない。一部の態様では、投与は筋内注射である。一部の態様では、投与は単一用量である。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。
【0030】
本開示の特定の態様は、
(a) 被験体にポリヌクレオチドを含むベクターの第1用量を投与するステップであって、上記ポリヌクレオチドは、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含み、かつ上記ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む、ステップ;
(b) ベクターの第1用量を投与するステップの後に、被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および
(c) ステップ(b)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの治療上有効レベル未満である場合、被験体にベクターの第2用量を投与するステップ
を含む、それを必要とする被験体において血漿ALPの治療上有効レベルを達成する方法を対象とする。
【0031】
一部の態様では、投与は筋内注射である。
【0032】
一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも約5U/mL、少なくとも約6U/mL、少なくとも約7U/mL、少なくとも約8U/mL、少なくとも約9U/mL、少なくとも約10U/mL、少なくとも約25U/mL、少なくとも約50U/mL、少なくとも約75U/mL、または少なくとも約100U/mLである。
【0033】
一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、約75U/mL~約100U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約25U/mL、または約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも25U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも50U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも75U/mLである。
【0034】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(b)で測定される。
【0035】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(b)で測定される。
【0036】
一部の態様では、方法は、(d) ベクターの第2用量を投与するステップの後に、被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および(e) (d)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの有効レベル未満である場合、被験体にベクターの第3用量を投与するステップをさらに含む。
【0037】
一部の態様では、血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(d)で測定される。
【0038】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(d)で測定される。
【0039】
一部の態様では、方法は、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、AAVベクター)を投与するステップを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列を含む。
【0040】
一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流に、エンハンサー、例えば、CMVエンハンサーをさらに含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号3または21に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターおよびCMVエンハンサーは、配列番号3の核酸配列を含む。
【0041】
一部の態様では、方法は、配列番号2または5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター(例えば、AAVベクター)を投与するステップを含む。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5の核酸配列を含む。
【0042】
一部の態様では、方法は、配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、AAVベクター)を投与するステップを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列を含む。
【0043】
一部の態様では、方法は、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、AAVベクター)を投与するステップを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。
【0044】
一部の態様では、方法は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの投与を含む。一部の態様では、AAVは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVは、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVは、血清型8(AAV8)である。
【0045】
一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】AAV8-TNALP-D10ベクターを用いて処置されたAkp2-/-マウスの血漿ALP濃度および寿命を示す図である。Akp2-/-マウスに、1.0×1012ベクターゲノム(vg)/個体、1.0×1011vg/個体、または3.0×1011vg/個体の用量でAAV8-TNALP-D10を注射した。未処置Akp2-/-マウスおよび野生型(WT)マウスを対照として用いた。図1Aは、右側大腿四頭筋にAAV8-TNALP-D10を注射された新生Akp2-/-マウスにおける血漿ALP活性を示すグラフである。血漿ALP活性は、処置後最大18ヵ月間にわたって測定した。血漿ALP活性に関して、1単位(U)は、1分間(min.)当たり1μmolのp-ニトロフェノールの生成を触媒するために必要とされる酵素の量として定義した。血漿中のALP活性は、U/mLとして算出した。
図1B】AAV8-TNALP-D10ベクターを用いて処置されたAkp2-/-マウスの血漿ALP濃度および寿命を示す図である。Akp2-/-マウスに、1.0×1012ベクターゲノム(vg)/個体、1.0×1011vg/個体、または3.0×1011vg/個体の用量でAAV8-TNALP-D10を注射した。未処置Akp2-/-マウスおよび野生型(WT)マウスを対照として用いた。図1Bは、右側大腿四頭筋にAAV8-TNALP-D10を注射された新生Akp2-/-マウスの寿命を示すグラフである。処置18ヵ月間後までの寿命を示す。1.0×1011vg/個体、n=5;3.0×1011vg/個体、n=7;1.0×1012vg/個体、n=7;野生型(WT)、n=5、未処置Akp2-/-マウス、n=4。
図2A】AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおける骨石灰化および骨成熟を示す図である。図2Aは、2ヵ月齢で得られたX線画像を用いて、1×1012vg/個体のAAV-TNALP-D10により処置されたAkp2-/-マウスおよび未処置野生型(WT)マウスの形態および大まかなサイズを比較する。X線画像は、μFX-1000フィルムを用いて100mA、40kVで30秒間撮影した。
図2B】AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおける骨石灰化および骨成熟を示す図である。図2Bは、2ヵ月齢での1×1012vg/個体AAV-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(n=5)および未処置WTマウス(n=3)の体重発達を比較するグラフである。
図2C】AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおける骨石灰化および骨成熟を示す図である。図2Cは、生後10日目に未処置WTマウス(左側パネル)、未処置Akp2-/-マウス(中央パネル)、および1×1012vg/個体AAV-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(右側パネル)の二次骨化のX線分析から得られた代表的X線画像を示す。二次骨化中心は、すべてのWTマウス(左側パネル)におけるX線分析により検出されたが、大多数のAkp2-/-マウス(中央パネル)では検出されなかった。対照的に、二次骨化中心は、1×1012vg/個体AAV-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスでは生後10日目にX線分析により検出された(右側パネル)。
図2D】AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおける骨石灰化および骨成熟を示す図である。図2Dは、2ヵ月(56日)齢でのWTマウス(左側パネル)および1×1012vg/個体AAV-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(右側パネル)の膝関節のX線分析から得られた代表的X線画像を示す。56日目に成体へと成長すると、膝関節のX線分析は、1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおいて、WTマウスと同様の成熟骨を示した。
図2E】AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおける骨石灰化および骨成熟を示す図である。図2Eは、1×1012vg/個体AAV-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(n=3)およびGFP発現ベクターを注射されたWTマウス(n=3)における18ヵ月齢での骨密度(BMD)を比較するグラフである。BMDは、コンピュータ断層撮影(CT)により決定した。データは、平均±SDを表わす。
図3】2ヵ月齢でのWTマウス(左側パネル)、1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(中央パネル)、および1.0×1011vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/マウス(右側パネル)の脛骨中のALP活性の組織化学(ファストブルー)染色を示す図である。原倍率、×100。
図4A】極めて高い血漿ALP活性を有するマウスがマウス肢上で結石(calculi)を発達させたことを示す図である。図4Aは、AAV8-TNALP-D10注射後のマウスにおける時系列血漿ALP活性を示すグラフである。AAV8-TNALP-D10を、50μLのPBS中の2.8×1012、1.1×1013もしくは2.8×1013vg/個体の用量で6週齢雄性C57BL/6マウスの右側大腿四頭筋中に、または両側大腿四頭筋中に注射される100μLのPBS中の5.5×1013vg/個体の用量で注射した(各群中でn=3)。未処置WT C57BL/6マウスを対照として用いた。
図4B】極めて高い血漿ALP活性を有するマウスがマウス肢上で結石を発達させたことを示す図である。図4Bは、2.8×1013vg/個体AAV8-TNALP-D10を用いて処置された6週齢C57BL/6マウスの前肢(左側パネル)および5.5×1013vg/個体AAV8-TNALP-D10を用いて処置された6週齢C57BL/6マウスの前肢(右側パネル)における結石を示す画像である。
図4C】極めて高い血漿ALP活性を有するマウスがマウス肢上で結石を発達させたことを示す図である。図4Cは、2.8×1013vg/個体AAV8-TNALP-D10を用いて処置された6週齢C57BL/6マウスの後肢(左側パネル)および5.5×1013vg/個体AAV8-TNALP-D10を用いて処置された6週齢C57BL/6マウスの後肢(右側パネル)における結石を示す画像である。
図5】筋内注射による1×1011、1×1012、および1×1013vg/動物のAAV8-TNALP-D10の投与後の野生型ラットにおけるTNALPレベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示の特定の態様は、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列を含む。
【0048】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、プロモーターを含む核酸配列を含む。一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、エンハンサーを含む核酸配列を含む。一部の態様では、エンハンサーは、CMVエンハンサーである。
【0049】
一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を含む。
【0050】
一部の態様では、核酸配列は、CMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号22に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22の配列を含む。
【0051】
一部の態様では、核酸配列は、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号3の核酸配列を含む。
【0052】
一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5の核酸配列を含む。
【0053】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列を含む。
【0054】
一部の態様では、融合タンパク質は、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。本開示の特定の態様は、融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター(例えば、ウイルスベクター)に関し、ここで融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む(TNALP-D10)。一部の態様では、ベクターは、TNALP融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含むポリヌクレオチドを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ベクターは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して100%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。
【0055】
本開示の特定の態様は、ポリヌクレオチドを含むかまたは封入するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはAAVカプシドに関し、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(promotor)(例えば、CAGプロモーター)を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターおよびCAGプロモーターの上流のCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号1の核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。
【0056】
一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号2または5に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2または5の核酸配列を含む。
【0057】
一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号6に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列を含む。
【0058】
一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むかまたは封入する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有する融合タンパク質をコードする。
【0059】
一部の態様では、AAVベクターまたはカプシドは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型ベクターまたはカプシドである。一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0060】
本開示の特定の態様は、本明細書中に開示されるベクター(例えば、AAVベクター)および製薬上許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0061】
本開示の特定の態様は、AAVベクターまたはAAVカプシドおよび製薬上許容される担体を含む医薬組成物に関し、ここでAAVベクターまたはカプシドは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、または少なくとも99%の同一性を有する核酸配列を含むポリヌクレオチドを封入し、ここで核酸配列はTNALP-D10融合タンパク質をコードし、またここでAAV血清型はAAV8である。一部の態様では、医薬組成物は、AAVベクターまたはAAVカプシドと、配列番号1の核酸を含むポリヌクレオチドとを含む。
【0062】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体に本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において骨疾患または障害を治療する方法に関する。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。
【0063】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体に本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体においてアルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させる方法に関する。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、それを必要とする被験体において血漿ALPを増加させるために投与することができる。
【0064】
本開示の特定の態様は、それを必要とする被験体において血漿ALPの治療上有効レベルを達成する方法を対象とする。一部の態様では、方法は、(a) 被験体にポリヌクレオチドを含むベクターの第1用量を投与するステップであって、上記ポリヌクレオチドが、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含み、かつ上記ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む、ステップ;(b) ベクターの第1用量を投与するステップの後に、被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および(c) ステップ(b)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの治療上有効レベル未満である場合、被験体にベクターの第2用量を投与するステップを含む。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも約5U/mL、少なくとも約10U/mL、少なくとも約25U/mL、少なくとも約50U/mL、少なくとも約75U/mL、少なくとも100U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、約75U/mL~約100U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約25U/mL、または約5U/mL~約15U/mLである。
【0065】
様々な態様の非限定的な例が、本開示中に示される。
【0066】
I. 定義
本開示をより容易に理解できるように、最初に特定の用語が定義される。追加の定義は、詳細な開示を通して示される。
【0067】
用語「a」または「an」実体とは、その実体の1以上を指すことに留意すべきであり;例えば、「a nucleic acid sequence」は、別途明記されない限り、1以上の核酸配列を表すものと理解される。したがって、用語「a」(または「an」)、「1以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書中で互換的に使用され得る。
【0068】
さらに、「および/または」は、本明細書中で使用される場合、他方を伴うかまたは伴わない2つの特定される特徴または構成要素のうちのそれぞれの具体的開示と解されるべきである。このため、本明細書において「Aおよび/またはB」などの語句中で用いられる用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの語句中で用いられる用語「および/または」は、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0069】
本明細書中で態様が「含む(comprising)」という語と共に記載される場合はどこでも、「からなる(consisting of)」および/または「本質的に~からなる(consisting essentially of)」の言葉で記載される以外は類似する態様も提供されることが理解される。
【0070】
本明細書中で用語「約(about)」は、およそ(approximately)、大まかに(roughly)、およそ(around)、または近辺(in the regions of)を意味するために用いられる。用語「約」が数値範囲と共に用いられる場合、この用語は、示される数値の上下の境界を延長することによりその範囲を修飾する。一般的に、用語「約」は、例えば、上下(より高いかまたはより低い)10パーセントの変動により、明記される値の上下に数値を修飾することができる。
【0071】
数字または一連の数字の前の用語「少なくとも」は、用語「少なくとも」に隣接する数字および、文脈から明らかである場合、論理的に含めることができるであろうすべての後続の数字または整数を含むものと理解される。例えば、核酸分子中のヌクレオチドの数は整数でなければならない。例えば、「21ヌクレオチド核酸分子のうちの少なくとも18ヌクレオチド」とは、18、19、20、または21個のヌクレオチドが示される特性を有することを意味する。「少なくとも」が一連の数字または範囲の前に存在する場合、「少なくとも」は、連続するまたは範囲中の数字のそれぞれを修飾することができることが理解される。「少なくとも」はまた、整数に限定されない(例えば、「少なくとも5%」は、有効数字の数を考慮しなければ、5.0%、5.1%、5.18%を含む)。
【0072】
本明細書中で用いる場合、「以下」(no more than)または「未満」は、その語句に隣接する値および、文脈から論理的である場合は論理的なより低い値または整数、からゼロまでとして理解される。「以下」が一連の数字または範囲の前に存在する場合、「以下」は、連続するまたは範囲中の数字のそれぞれを修飾することができることが理解される。
【0073】
本明細書中で用いる場合、用語「ベクター」とは、プラスミド、発現ベクター、発現カセット、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン、カプシド等などの、核酸のクローニングおよび/または宿主細胞への核酸の移動のための任意のビヒクルを指す。ベクターは、連結されたセグメントの複製をもたらすようにそれに対して別の核酸セグメントを連結することができるレプリコンであり得る。「レプリコン」とは、in vivoで自律的複製単位として機能し、すなわち、それ自体の制御下での複製が可能である任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで核酸を細胞へと導入するためのウイルス性ビヒクルおよび非ウイルス性ビヒクルの両方を含む。一部の態様では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)、プラスミド、脂質、タンパク質粒子、細菌ベクター、およびリソソームからなる群より選択される。
【0074】
「ウイルスベクター」とは、ウイルスの構成要素を含むかまたはそれに由来するベクターを指す。ウイルスベクターは、遺伝物質を細胞へと送達するために用いることができる。ウイルスベクターは、特定の用途のために改変することができる。一部の態様では、ウイルスベクターは、目的の分子、例えば、タンパク質、ペプチド、およびオリゴヌクレオチドまたはそれらの複数をコードするかまたは含む1つ以上のポリヌクレオチド領域を含む。一部の態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群より選択することができる。一部の態様では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。
【0075】
用語「アデノ随伴ウイルスベクター」または「AAVベクター」とは、本明細書中で用いる場合、アデノ随伴ベクターの構成要素を含むかまたはそれに由来し、かつ哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞に感染するために好適な任意のベクターを指す。AAVベクターという用語は、典型的には、ペイロードを含むAAV型ウイルス粒子またはビリオンを指す。AAVベクターは、血清型の組み合わせ(すなわち、「偽型化」AAV)を含む様々な血清型に、または様々なゲノム(例えば、一本鎖ゲノムまたは自己相補的ゲノム)に由来し得る。さらに、AAVベクターは、複製欠損型および/または標的化型であり得る。本明細書中で用いる場合、用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)としては、限定するものではないが、1型AAV、2型AAV、3型AAV、(3A型および3B型を含む)、4型AAV、5型AAV、6型AAV、7型AAV、8型AAV、9型AAV、10型AAV、11型AAV、12型AAV、13型AAV、AAVrh8、AAVrh10、AAVrh.74、ヘビAAV、鳥類AAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gao et al.(J. Virol. 78:6381 (2004))およびMoris et al.(Virol. 33:375 (2004))により開示されるAAV血清型およびクレード、ならびに現在公知であるかまたは後に発見されるいずれかの他のAAVが挙げられる。例えば、FIELDS et al. VIROLOGY、第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers社)を参照されたい。一部の態様では、「AAVベクター」は、公知のAAVベクターの誘導体を含む。一部の態様では、「AAVベクター」は、改変型または人工のAAVベクターを含む。用語「AAVゲノム」および「AAVベクター」は、互換的に用いることができる。一部の態様では、AAVベクターは、野生型AAV血清型配列に対して改変されている。
【0076】
本明細書中で用いる場合、「AAVカプシド」または「AAV粒子」は、少なくとも1つのペイロード領域(例えば、TNALP-D10融合タンパク質などの治療用タンパク質またはペプチドをコードするポリヌクレオチド)および少なくとも1つの逆位末端反復(ITR)領域を有するAAVベクターを含むAAVウイルスである。一部の態様では、用語「本開示のAAVベクター」、「AAVベクター」、または「AAVカプシド」とは、例えば、AAVカプシド中に封入される、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターを指す。
【0077】
一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、AAV7血清型、AAV8血清型、またはAAV9血清型である。一部の態様では、AAVベクターまたはAAVカプシドは、AAV8血清型である。一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0078】
本明細書中で用いる場合、用語「プロモーター」は、遺伝子の特異的転写を開始するために必要とされる細胞の機構、または導入された合成機構により認識されるDNA配列を指す。用語「プロモーター」はまた、細胞型特異的発現、組織特異的発現に関しては制御可能な、または外部シグナルもしくは薬剤により誘導可能なプロモーター依存性遺伝子発現のために十分な核酸エレメントを包含することも意味し;このようなエレメントは、ネイティブ遺伝子の5'または3'領域に位置し得る。
【0079】
一部の態様では、プロモーターは、構成的に活性なプロモーター、細胞型特異的プロモーター、または誘導性プロモーターである。一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0080】
用語「機能的に連結された」、「機能的に挿入された」、「機能的に配置された」、「制御下に」または「転写制御下に」とは、プロモーターが、RNAポリメラーゼ開始および目的の遺伝子または核酸の発現を制御するために、目的の遺伝子または核酸(例えば、DNA配列)との関連で正しい位置および方向にあることを意味する。用語「機能的に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化因子タンパク質)が調節配列(1つまたは複数)に結合する場合に、目的の遺伝子または核酸の発現を可能にするような方法で、目的の遺伝子または核酸(例えば、DNA配列)および調節配列(1つまたは複数)が連結されることを意味する。用語「機能的に挿入された」とは、細胞に導入された目的の遺伝子または核酸が、導入された対象となる遺伝子または核酸の転写および翻訳に向ける(すなわち、例えば、目的の遺伝子または核酸によりコードされるポリペプチドの産生を促進する)DNA配列に隣接して位置することを意味する。
【0081】
用語「発現ベクター」または「発現構築物」とは、核酸コード配列の一部分またはすべてが転写され得る核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物を意味する。
【0082】
「コード配列」または特定の分子(例えば、治療用タンパク質またはペプチド)を「コードする」配列は、プロモーターなどの適切な調節配列に機能的に連結される場合に、in vitroまたはin vivoで、ポリペプチドへと転写(DNAの場合)または翻訳(mRNAの場合)される核酸である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列としては、限定するものではないが、原核生物または真核生物mRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物DNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列が挙げられる。転写終結配列は、通常、コード配列に対して3'に位置する。
【0083】
本明細書中で用いる場合、用語「投与」または「投与すること」とは、被験体または系への本開示の組成物(例えば、本明細書中に開示されるベクター、AAVベクター、AAVカプシド、または医薬組成物)の投与を指す。動物被験体への(例えば、ヒトへの)投与は、筋内注射などの任意の適切な経路によるものであり得る。
【0084】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、本出願において互換的に用いられる。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語は、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNAを含む。用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書中で用いる場合、2個以上の共有結合したヌクレオシドを含む分子として、当業者に一般的に理解される通りに定義される。このような共有結合したヌクレオシドはまた、核酸分子またはオリゴマーとも称され得る。ポリヌクレオチドは、組み換え的に、酵素的に、または合成的に、例えば、固相化学合成およびそれに続く精製により作製することができる。ポリヌクレオチドまたは核酸の配列に言及する場合、共有結合したヌクレオチドまたはヌクレオシドの核酸塩基部分の配列もしくは順序、またはその修飾について言及される。
【0085】
本明細書中で用いる場合、用語「ポリペプチド」は、単数形の「ポリペプチド」ならびに複数形の「ポリペプチド」を包含することを意図し、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を含む。このため、本明細書中で用いる場合、「ペプチド」、「ペプチドサブユニット」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、「アミノ酸配列」、「融合タンパク質」、または2個以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために用いられる任意の他の用語は、これらの用語のそれぞれがより具体的な意味を有し得るにもかかわらず、「ポリペプチド」の定義中に含まれる。用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に用いることができる。この用語は、翻訳後修飾または合成後修飾、例えば、パルミトイル基のコンジュゲート化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、または非天然アミノ酸による修飾を受けたポリペプチドをさらに含む。用語「ペプチド」は、本明細書中で用いる場合、全長ペプチドおよびその断片、変異体または誘導体を包含する。本明細書中に開示されるペプチドは、追加の構成要素、例えば、アスパラギン酸ペプチド(例えば、デカアスパラギン酸(D10)ペプチド)を含む融合ポリペプチドの一部分であり得る。一部の態様では、ペプチドはまた、多数の異なる方法で誘導体化することもできる。一部の態様では、ペプチドは、例えば、パルミトイル基のコンジュゲート化などの修飾を含み得る。
【0086】
本明細書中で用いる場合、用語「融合タンパク質」とは、互いに連結または結合している2つ以上のアミノ酸配列の複合体を意味する。
【0087】
「TNALP-D10」融合タンパク質とは、TNALPアミノ酸配列およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む複合体を指す。一部の態様では、TNALP-10融合タンパク質は、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸を含む。一部の態様では、TNALP-D10融合タンパク質は、配列番号9に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。一部の態様では、TNALP-10融合体は、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、TNALP-D10融合体をコードする配列は、配列番号5に対して少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0088】
本明細書中で用いる場合、例えば、本明細書中に開示されるAAVベクター、AAVカプシド、または医薬組成物の用語「有効量」、「治療上有効量」、「治療上有効レベル」および「十分量」とは、ヒトを含む被験体に投与される場合に、臨床的結果を含む有益なまたは所望の結果を生じさせるために十分な量を指し、したがって、「有効量」またはそれに対する同義語は、それが適用される文脈によって決まる。一部の態様では、薬剤(例えば、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ウイルスベクター、AAVカプシド、または医薬組成物)の治療上有効量は、対照と比較した場合に、被験体において有益なまたは所望の結果を生じる量である。
【0089】
一部の態様では、所与の薬剤(例えば、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ウイルスベクター、AAVカプシド、または医薬組成物)の量は、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患または障害のタイプ、被験体のアイデンティティ(例えば、年齢、性別、および/または体重)または治療対象の宿主等などの様々な因子に応じて変動するような量に対応する。
【0090】
本明細書中で用いる場合、用語「in vitro」とは、生物(例えば、動物、植物、または微生物)内ではなくむしろ、人工的な環境において、例えば、試験管または反応容器中、細胞培養物中、ペトリ皿中等で起こる事象を指す。
【0091】
本明細書中で用いる場合、用語「in vivo」とは、生物(例えば、動物、植物、もしくは微生物またはその細胞もしくは組織)内で起こる事象を指す。
【0092】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対する「パーセント(%)配列同一性」は、配列をアライメントし、必要であれば最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後に、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸に対して同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。パーセント核酸またはアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公衆に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当業者の能力の範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較対象の配列の全長にわたって最大アライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。例えば、パーセント配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムであるBLASTを用いて生成することができる。
【0093】
「レベル」は、任意選択的に参照に対して比較した、タンパク質、またはタンパク質をコードするmRNAのレベルまたは活性を意味する。参照は、本明細書中で定義される任意の有用な参照であり得る。タンパク質の「減少したレベル」または「増加したレベル」とは、参照に対して比較した、タンパク質レベルの減少または増加を意味する。
【0094】
タンパク質のレベルは、質量/体積(例えば、g/dL、mg/mL、μg/mL、ng/mL)またはサンプル中の総タンパク質もしくはmRNAに対するパーセンテージで表すことができる。タンパク質の活性は、U/mLで表すことができる。1単位(U)は、特定の基質の生成を触媒するために必要とされる酵素の量である。一部の態様では、1単位(U)は、1分間当たりに1μmolのp-ニトロフェノールの生成を触媒するために必要とされる酵素の量である。
【0095】
用語「医薬組成物」は、本明細書中で用いる場合、製薬上許容される担体または賦形剤を用いて製剤化された、本明細書中に記載される化合物または分子、例えば、本明細書中に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、ウイルスベクター、またはAAVカプシドを含む組成物を表す。一部の態様では、医薬組成物は、哺乳動物における疾患の治療のための治療レジメンの一部として、政府規制機関の承認により製造または販売することができる。
【0096】
「製薬上許容される賦形剤」または「製薬上許容される担体」とは、本明細書中で用いる場合、本明細書中に記載される化合物以外の任意の成分(例えば、活性化合物を懸濁または溶解することが可能なビヒクル)であって、患者において実質的に無毒かつ非炎症性の特性を有するものを意味する。一部の態様では、製薬上許容される担体は、PBS、水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0097】
本明細書中で用いる場合、用語「被験体」とは、例えば、実験的、診断的、予防的、および/または治療的目的のために、それに対して本明細書中に開示される組成物、例えば、本開示のAAVベクターを投与することができる、任意の生物を指す。典型的な被験体としては、任意の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳動物)が挙げられる。被験体は、治療を求めるかもしくは治療を必要とするか、治療を要求するか、治療を受けているか、将来治療を受ける予定であるか、または特定の疾患もしくは状態に対して訓練された専門家によるケアを受けているヒトもしくは動物であり得る。
【0098】
本明細書中で用いる場合、用語「治療する」、「治療される」および「治療すること」とは、目的が望ましくない生理的状態、障害、もしくは疾患を予防もしくは遅延させる(軽減させる)ことであるか、または有益なもしくは所望の臨床的結果を得ることである、治療的処置および予防的(prophylacticまたはpreventative)手段の両方を意味する。一部の態様では、治療することは、疾患または障害に伴う症状を低減または軽減する。一部の態様では、治療することは、有益なまたは所望の臨床的結果を生じる。
【0099】
有益なまたは所望の臨床的結果としては、限定するものではないが、症状の軽減;状態、障害または疾患の程度の減少;状態、障害、または疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状況;状態、障害、または疾患の発症を遅延させるかまたはその進行を遅らせること;検出可能であるかまたは検出不可能であるかにかかわらず、状態、障害、もしくは疾患状態の改善または寛解(部分的であるかまたは全体的であるかにかかわらず);患者により必ずしも認識され得ない、少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの改善;あるいは状態、障害、または疾患の強化または改善が挙げられる。一部の態様では、治療は、過度のレベルの副作用を伴わずに、臨床的に顕著な応答を誘発することを含む。一部の態様では、治療は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較した、生存期間の延長を含む。本明細書中で用いる場合、用語「改善」または「改善する」とは、状態または疾患の少なくとも1つの指標の重症度の軽減を意味する。本明細書中で用いる場合、用語「予防する」または「予防」とは、数週間、数ヵ月間、または数年間などの一定期間にわたって、状態または疾患の発症、発達または進行を遅延させるかまたは未然に防ぐことを指す。
【0100】
本明細書中で用いる場合、用語「デカアスパラギン酸」または「D10」とは、10個のアスパラギン酸残基を含むペプチドを指す。一部の態様では、D10ペプチドは、骨に対して融合タンパク質を標的化する。
【0101】
本明細書中で用いる場合、用語「TNALP」または「TNSALP」とは、組織非特異型アルカリホスファターゼを指す。一部の態様では、TNALPは、ヒトTNALPである。一部の態様では、TNALPは、配列番号7に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸を有する。一部の態様では、TNALPは、配列番号7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、TNALPは、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、TNALPをコードする配列は、配列番号2に対して少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0102】
II. 組成物
II.A. 融合タンパク質
本開示の特定の態様は、融合タンパク質をコードするためのポリヌクレオチドを対象とする。一部の態様では、融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)および一連のアスパラギン酸(D)アミノ酸を含む。一部の態様では、アスパラギン酸アミノ酸は、8個のアスパラギン酸(D8)(配列番号13および17)、9個のアスパラギン酸(D9)(配列番号14および18)、10個のアスパラギン酸(またはデカアスパラギン酸(D10))(配列番号4および8)、11個のアスパラギン酸(D11)(配列番号15および19)、または12個のアスパラギン酸(D12)(配列番号16および20)を含む。一部の態様では、アスパラギン酸アミノ酸は、8~12個のアスパラギン酸を含む。一部の態様では、アスパラギン酸アミノ酸は、TNALPアミノ酸配列に直接連結される。一部の態様では、アスパラギン酸アミノ酸は、リンカーによりTNALPアミノ酸に連結される。
【0103】
本開示は、融合タンパク質をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを提供する。一部の態様では、核酸は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質(TNALP-D10)をコードする。
【0104】
本開示は、融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター(例えば、AAVベクターまたはAAVカプシド)を提供する。一部の態様では、融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む(TNALP-D10)。
【0105】
一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号2(TNALPの核酸配列)に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号4(D10の核酸配列)に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸は、配列番号5(TNALP-D10の核酸配列)に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0106】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたプロモーター(例えば、CAGプロモーター)を含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を含む。
【0107】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、CMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22の核酸配列を含む。
【0108】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、融合タンパク質をコードする核酸配列に機能的に連結されたCAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含むポリヌクレオチドは、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0109】
一部の態様では、融合タンパク質のTNALPは、配列番号7に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質のD10は、配列番号8に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質(TNALP-D10)は、配列番号9に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0110】
一部の態様では、ベクターは、表1の核酸配列を含む。一部の態様では、ベクターは、表2のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。一部の態様では、融合タンパク質は、表2のアミノ酸配列を含む。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
一部の態様では、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含むポリヌクレオチドは、本明細書中に開示されるウイルスベクター(例えば、AAVベクター)へと挿入される。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0114】
一部の態様では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)である。一部の態様では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の態様では、AAVは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV3血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型、またはAAV10血清型である。一部の態様では、AAVは、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型である。一部の態様では、ベクターは、AAV血清型8(AAV8)ベクターである。
【0115】
一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0116】
一部の態様では、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含むポリヌクレオチドは、2つの逆位末端反復(ITR)の間に位置する。一部の態様では、ITRは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、またはそれらの任意の組み合わせである。一部の態様では、ITRは、AAV2 ITRである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0117】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0118】
一部の態様では、ベクターは、ポリヌクレオチドを含むAAV血清型8(AAV8)ベクターであり、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含み、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0119】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、疾患または障害(例えば、骨疾患または障害)を治療するために好適である。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、ベクターは、それを必要とする被験体においてHPPを治療するために投与される。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。
【0120】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(TNALP)を増加させるために投与することができる。
【0121】
一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、非ヒト霊長類である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、ヒトである。
【0122】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、筋肉に投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、単一用量を介して投与することができる。一部の態様では、ベクターは、筋内注射により複数部位で投与することができる。
【0123】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約1U/mL~20U/mLから、約5U/mL~約15U/mL、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を約5U/mLから約15U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも100U/mLへと増加させるために投与することができる。
【0124】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後、1ヵ月間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約10U/mLである。
【0125】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において安全性を高めた組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、投与後少なくとも6ヵ月間にわたり、被験体の異所性石灰化または異常カルシウム代謝の発症を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、被験体における発癌作用を有さない。
【0126】
II.B. ベクター
一部の態様では、ベクターは、プラスミド、発現ベクター、発現カセット、ウイルス、またはカプシドである。一部の態様では、ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、プラスミド、脂質、またはリソソームである。一部の態様では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)である。一部の態様では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の態様では、AAVは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV3血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型、またはAAV10血清型である。一部の態様では、AAVは、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型である。一部の態様では、ベクターは、AAV血清型8(AAV8)ベクターである。一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0127】
一部の態様では、ベクターは、ポリヌクレオチドを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードする核酸を含む。一部の態様では、融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む(TNALP-D10)。
【0128】
一部の態様では、TNALPをコードする核酸は、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、デカアスパラギン酸は、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0129】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を有する。
【0130】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、CMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22の核酸配列を有する。
【0131】
一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含む。一部の態様では、ベクターはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸配列に機能的に連結されたCAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0132】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALPをコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するD10をコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALP-D10をコードする核酸配列を含む。
【0133】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0134】
一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、2つの逆位末端反復(ITR)の間に位置する。
【0135】
一部の態様では、AAV血清型8(AAV8)ベクターは、TNALP-D10をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含むポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0136】
一部の態様では、ベクターは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、ベクターは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0137】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、疾患または障害(例えば、骨疾患または障害)を治療するために好適である。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、ベクターは、それを必要とする被験体においてHPPを治療するために投与される。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。
【0138】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(TNALP)を増加させるために投与することができる。
【0139】
一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、非ヒト霊長類である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、ヒトである。
【0140】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、筋肉へ投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、単一用量を介して投与することができる。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、ベクターは、筋内注射により複数部位で投与することができる。
【0141】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約1U/mL~20U/mLから、約5U/mL~約15U/mL、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mLから約15U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。
【0142】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2週間後、1ヵ月間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLに増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約10U/mLである。
【0143】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターは、それを必要とする被験体において安全性を高めた組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、投与後少なくとも6ヵ月間にわたり、被験体の異所性石灰化または異常カルシウム代謝の発症を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターの投与は、被験体における発癌作用を有さない。
【0144】
一部の態様では、ベクターは、ポリヌクレオチドを封入するウイルスカプシドである。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードする核酸を含む。一部の態様では、融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む(TNALP-D10)。
【0145】
一部の態様では、カプシドは、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドである。一部の態様では、AAVは、AAV1血清型、AAV2血清型、AAV3血清型、AAV4血清型、AAV5血清型、AAV6血清型、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型、またはAAV10血清型である。一部の態様では、AAVは、AAV7血清型、AAV8血清型、AAV9血清型である。一部の態様では、カプシドは、AAV血清型8(AAV8)である。一部の態様では、ベクターは、アカゲザルアデノ随伴ウイルス(AAVrh)ベクターである。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.74血清型である。一部の態様では、AAVrhは、AAVrh.10血清型である。
【0146】
一部の態様では、カプシドは、ポリヌクレオチドを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードする核酸を含む。一部の態様では、融合タンパク質は、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む(TNALP-D10)。
【0147】
一部の態様では、TNALPをコードする核酸は、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、デカアスパラギン酸は、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0148】
一部の態様では、カプシドはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含む。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21の核酸配列を含む。
【0149】
一部の態様では、カプシドはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、CMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22の核酸配列を含む。
【0150】
一部の態様では、カプシドはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、TNALP-D10をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含む。一部の態様では、カプシドはポリヌクレオチドを含み、ここでポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸は、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、TNALP-D10に機能的に連結されたCAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0151】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALPをコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するD10をコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALP-D10をコードする核酸配列を含む。
【0152】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0153】
一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、2つの逆位末端反復(ITR)の間に位置する。
【0154】
一部の態様では、AAV血清型8(AAV8)カプシドは、TNALP-D10をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを封入し、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の同一性を有する。
【0155】
一部の態様では、カプシドは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、カプシドは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0156】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、疾患または障害(例えば、骨疾患または障害)を治療するために好適である。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、カプシドは、それを必要とする被験体においてHPPを治療するために投与される。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。
【0157】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(TNALP)を増加させるために投与することができる。
【0158】
一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、非ヒト霊長類である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、ヒトである。
【0159】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、筋肉へ投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される通りのカプシドは、筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、単一用量または単回筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、カプシドは、筋内注射により複数部位で投与される。一部の態様では、単一用量は、24時間以内、12時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内の複数回筋内注射を含む。
【0160】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約1U/mL~20U/mLから、約5U/mL~約15U/mL、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mLから約15U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。
【0161】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2週間後、1ヵ月間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLに増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約10U/mLである。
【0162】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドは、それを必要とする被験体において安全性を高めた組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。
【0163】
TNALPのアップレギュレーションが内側血管石灰化において重要な役割を果たすことが報告されている。Sheen, CR, et al. (2014) Journal of Bone and Mineral Research。高リン血症は、通常、悪性腫瘍、または骨軟化症(osteomalasia)、くる病、パジェット病、もしくは骨粗鬆症などの代謝性骨疾患などの疾患状態に関連するが、高い血漿ALPレベルは、通常は重症疾患の原因ではない。一過性の高ホスファターゼ血症が、乳児において、および幼児期に見られる場合がある。これらの小児は、正常範囲よりも約5倍高い血漿ホスファターゼレベルを示す。これは通常、「良性」高ホスファターゼ血症と呼ばれる。それにも関わらず、骨標的化型組み換えヒトTNALPであるアスホターゼアルファを利用する酵素補充療法を受けている若齢患者の中で、ERT開始から4週間以内に約24U/mLまたはERT療法開始後5年間で3~6U/mLという高い血漿ALP活性を伴う異所性石灰化または血管石灰化を経験している者はいない。Kitaoka, T, et al. (2017). Clin Endocrinol (Oxf) 87: 10-19;Whyte, MP, et al. (2016). JCI Insight 1: e85971。
【0164】
低ホスファターゼ症患者に対するERTまたはアスホターゼアルファの臨床適用の中止は、死亡を意味する場合があり得、生涯にわたって継続される治療が、患者に負担となり得る。Hofmann, CE, et al. (2019). J Clin Endocrinol Metab 104: 2735-2747;Rockman-Greenberg, C (2019) J Clin Endocrinol Metab 104: 3146-3147。
【0165】
一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドの投与は、投与後少なくとも6ヵ月間にわたって、被験体の異所性石灰化または異常カルシウム代謝の発症を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドの投与は、被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるカプシドの投与は、被験体における発癌作用を有さない。
【0166】
II.C. 医薬組成物
本開示の一部の態様は、本明細書中に開示されるベクター(例えば、AAVベクターまたはAAVカプシド)および製薬上許容される担体を含む医薬組成物に関する。一部の態様では、製薬上許容される担体は、PBS、水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、またはそれらの任意の組み合わせである。一部の態様では、医薬組成物は、筋肉への送達に好適である。一部の態様では、医薬組成物は、筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、医薬組成物は、単一用量を介して投与することができる。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、医薬組成物は、筋内注射により複数部位で投与される。一部の態様では、医薬組成物は、TNALP-D10をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを封入するAAV血清型8(AAV8)カプシドを含み、ここでポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して100%の同一性を有する。
【0167】
一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(TNALP)を増加させるために投与することができる。
【0168】
一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、非ヒト霊長類である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、ヒトである。
【0169】
一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、筋肉へ投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、単一用量または単回筋内注射を介して投与することができる。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、医薬組成物は、筋内注射により複数部位で投与される。一部の態様では、単一用量は、24時間以内、12時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内の複数回筋内注射を含む。
【0170】
一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約1U/mL~20U/mLから、約5U/mL~約15U/mL、または約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mLから約15U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。
【0171】
一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2週間後、1ヵ月間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLに増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与することができる。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約10U/mLである。
【0172】
一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物は、それを必要とする被験体において安全性を高めた組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与することができる。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物の投与は、投与後少なくとも6ヵ月間にわたり、被験体の異所性石灰化または異常カルシウム代謝の発症を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物の投与は、被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示される医薬組成物の投与は、被験体における発癌作用を有さない。
【0173】
III. 治療方法および使用
本開示の一部の態様は、それを必要とする被験体に本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において疾患または障害(例えば、骨疾患または障害)を治療するための方法を対象とする。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、ベクターは、それを必要とする被験体においてHPPを治療するために投与される。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。
【0174】
本開示の一部の態様は、それを必要とする被験体に本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(ALP)活性を増加させる方法を対象とする。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、それを必要とする被験体において組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、それを必要とする被験体において血漿アルカリホスファターゼ(TNALP)を増加させるために投与される。
【0175】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約1U/mL~20U/mLから、約5U/mL~約15U/mL、または約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mLから約15U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与される。
【0176】
一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2週間後、1ヵ月間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を、約5U/mL~約10U/mL、約5U/mL~約25U/mL、約5U/mL~約50U/mL、約5U/mL~約75U/mL、約5U/mL~約100U/mL、約15U/mL~約100U/mL、約25U/mL~約100U/mL、約50U/mL~約100U/mL、または約75U/mL~約100U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも5U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも10U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも25U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも50U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物は、投与2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、被験体の血漿ALP活性を少なくとも75U/mLへと増加させるために投与される。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPレベルは、投与2週間後、2ヵ月間後、6ヵ月間後、10ヵ月間後、または18ヵ月間後に、約10U/mLである。
【0177】
本開示の一部の態様は、それを必要とする被験体に本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする被験体において安全性を高めた組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)の発現を増加させる方法を対象とする。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物の投与は、投与後少なくとも6ヵ月間にわたり、被験体の異所性石灰化または異常カルシウム代謝の発症を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物の投与は、被験体における肝臓または腎臓機能不全を引き起こさない。一部の態様では、本明細書中に開示されるベクターまたは医薬組成物の投与は、被験体における発癌作用を有さない。
【0178】
一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、乳児または小児である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、成体である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、非ヒト霊長類である。一部の態様では、それを必要とする被験体は、ヒトである。
【0179】
本開示の一部の態様は、それを必要とする被験体において血漿ALPの治療上有効レベルを達成する方法を対象とする。一部の態様では、方法は、(a) 被験体にポリヌクレオチドを含むベクターの第1用量を投与するステップであって、上記ポリヌクレオチドが、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNALP)およびデカアスパラギン酸(D10)アミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸に機能的に連結されたCAGプロモーターを含み、かつ上記ポリヌクレオチドが、配列番号1に対して少なくとも85%の同一性を有する核酸配列を含む、ステップ;(b) ベクターの第1用量を投与するステップの後に、被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および(c) ステップ(b)で測定される血漿ALPレベルが血漿ALPの治療上有効レベル未満である場合、被験体にベクターの第2用量を投与するステップを含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。
【0180】
一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも約5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約25U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約50U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約75U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、約5U/mL~約100U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも5U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも10U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも25U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも50U/mLである。一部の態様では、血漿ALPの治療上有効レベルは、少なくとも75U/mLである。
【0181】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(b)で測定される。一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(b)で測定される。
【0182】
一部の態様では、方法は、(d) ベクターの第2用量を投与するステップの後に、被験体における血漿ALPのレベルを測定するステップ;および(e) (d)で測定される血漿ALPのレベルが血漿ALPの有効レベル未満である場合、被験体にベクターの第3用量を投与するステップをさらに含む。一部の態様では、血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも1週間後に(d)で測定される。
【0183】
一部の態様では、被験体の血漿ALPレベルは、ベクターの第1用量を投与するステップの少なくとも2週間後、少なくとも3週間後、少なくとも4週間後、少なくとも1ヵ月間後、少なくとも2ヵ月間後、少なくとも3ヵ月間後、少なくとも4ヵ月間後、少なくとも5ヵ月間後、少なくとも6ヵ月間後、少なくとも7ヵ月間後、少なくとも8ヵ月間後、少なくとも9ヵ月間後、少なくとも10ヵ月間後、少なくとも11ヵ月間後、少なくとも1年間後、少なくとも18ヵ月間後、または少なくとも2年間後に(d)で測定される。
【0184】
一部の態様では、TNALPをコードする核酸は、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、デカアスパラギン酸は、配列番号4に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、配列番号5に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0185】
一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、プロモーターに機能的に連結される。一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、CAGプロモーターは、配列番号21に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0186】
一部の態様では、核酸は、CMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CMVエンハンサーは、配列番号22に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、CMVエンハンサーは、CAGプロモーターの上流である。
【0187】
一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、プロモーターに機能的に連結される。一部の態様では、プロモーターは、CAGプロモーターである。一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸は、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む。一部の態様では、CAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。一部の態様では、TNALP-D10に機能的に連結されたCAGプロモーターの上流にCMVエンハンサーを含む核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0188】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALPをコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号8に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するD10をコードする核酸配列を含む。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号9に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有するTNALP-D10をコードする核酸配列を含む。
【0189】
一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。一部の態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号10に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する。
【0190】
一部の態様では、TNALP-D10をコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、2つの逆位末端反復(ITR)の間に位置する。
【0191】
一部の態様では、投与は、筋内注射を介する。一部の態様では、投与は、単一用量または複数用量(例えば、2、3、または4)を含む。一部の態様では、投与は、単一用量(例えば、単回筋内注射または複数回筋内注射(例えば、2、3、4、5、または6回注射))を介する。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、投与は、筋内注射により複数部位でなされる。一部の態様では、単一用量は、24時間以内、12時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内の複数回筋内注射を含む。一部の態様では、被験体は、約1×1011~約1×1014、約1×1012~約1×1014、約1×1012~約5×1013、または約1×1012~約1×1013vg/kgの単一用量を投与される。一部の態様では、被験体は、1×1011~1×1014、1×1012~1×1014、1×1012~5×1013、または1×1012~1×1013vg/kgの単一用量を投与される。一部の態様では、単一用量は、約50μL~約150μL(例えば、50μL~150μL)の体積で投与される。一部の態様では、単一用量は、約75μL~約125μL(例えば、75μL~125μL)の体積で投与される。一部の態様では、単一用量は、約75μL、約80μL、約85μL、約90μL、約95μL、または約100μLの体積で投与される。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。
【0192】
IV. 投与
本明細書中に開示されるベクターおよび医薬組成物(例えば、AAVベクターまたはAAVカプシド)は、治療上有効な転帰をもたらす任意の経路により被験体に投与することができる。一部の態様では、本開示のベクターまたは医薬組成物は、筋内(IM)、静脈内(IV)、または皮内注射により被験体に投与される。一部の態様では、本開示のベクターまたは医薬組成物は、筋内注射により被験体に投与される。一部の態様では、ベクターまたは医薬組成物は、単一用量または単回筋内注射として被験体に投与される。一部の態様では、単一用量は、単回または複数回注射により投与される。一部の態様では、ベクターまたは医薬組成物は、筋内注射により複数部位で投与される。一部の態様では、単一用量は、24時間以内、12時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内の複数回筋内注射を含む。
【0193】
一部の態様では、被験体は、約1×1011~約1×1014、約1×1012~約1×1014、約1×1012~約5×1013、または約1×1012~約1×1013vg/kgの単一用量を投与される。一部の態様では、被験体は、1×1011~1×1014、1×1012~1×1014、1×1012~5×1013、または1×1012~1×1013vg/kgの単一用量を投与される。一部の態様では、単一用量は、約50μL~約150μL(例えば、50μL~150μL)の体積で投与される。一部の態様では、単一用量は、約75μL~約125μL(例えば、75μL~125μL)の体積で投与される。一部の態様では、単一用量は、約75μL、約80μL、約85μL、約90μL、約95μL、または約100μLの体積で投与される。
【0194】
一部の態様では、被験体は、乳児、小児、または成体である。一部の態様では、被験体は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。一部の態様では、被験体は、骨疾患または障害に罹患しているヒトである。一部の態様では、骨疾患または障害は、低ホスファターゼ症(HPP)、くる病、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、歯限局型低ホスファターゼ症(odontophyophosphatasia)、骨形成不全症、先天性小人症、または骨軟化症である。一部の態様では、骨疾患または障害は、HPPである。一部の態様では、HPPは、周産期型、乳児型、小児型、または成人型HPPである。一部の態様では、HPPは、HPPの重症乳児型である。
【実施例
【0195】
実施例1:AAV8-TNALP-D10の生成
組織非特異的CAGプロモーター(promotor)により駆動されるTNALP-D10をコードするAAVベクターを生成した。
【0196】
CAGプロモーター(promotor)によるヒトTNALP遺伝子の発現のためのcDNAを含むAAVベクタープラスミドを構築した。TNALP-D10は、以前に記載された方法を用いて作製した。Yamamoto, S, et al. (2011) J Bone Miner Res 26: 135-142。
【0197】
AAV8-TNALP-D10を、三重トランスフェクション法によりHEK293細胞株を用いて生成し、以前に記載された通りに精製した。Salvetti, A, et al. (1998). Hum Gene Ther 9: 695-706;Hermens, WT, et al. (1999). Hum Gene Ther 10: 1885-1891;Kurai, T, et al. (2007) Mol Ther 15: 38-43。GFPをコードする組み換えAAV 8型ベクター(AAV8-GFP)を、18ヵ月間での骨成熟の評価のための対照として用いた。AAVベクター力価は、以前に記載された通りにリアルタイムPCR(7500 Fast、Applied Biosystems社、東京、日本)を用いて決定した。Salvetti, A, et al. (1998) Hum Gene Ther 9: 695-706;Hermens, WT, et al. (1999) Hum Gene Ther 10: 1885-1891;Kurai, T, et al. (2007) Mol Ther 15: 38-43;Noro, T, et al. (2004) Cancer Res 64: 7486-7490。
【0198】
AAV8-TNALP-D10ベクターの核酸配列が、表3に提供される。TNALP-D10アミノ酸配列は、表2に提供される。
【0199】
【表3】
【0200】
実施例2:3.0×10 11 vg/個体超のAAV8-TNALP-D10を筋内注射されたマウスにおける生存期間および持続的TNALP発現
Akp2-/-マウスの生存のために必要とされる外因性血漿ALP活性は約10U/mLであろうと算出されたが、これはWTマウスにおける内因性活性よりも10~100倍高い。Yamamoto, S, et al. (2011) J Bone Miner Res 26: 135-142;Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364。Akp2-/-マウス生存を支持することができる力価を達成するために必要とされるベクターの量を決定するために、新生マウスに、最初にAAV8-TNALP-D10(1.0×1012ベクターゲノム(vg)/個体)を筋内注射した。
【0201】
Akp2-/-マウスの作製および特性決定が以前に記載された。Narisawa, S, et al. (1997) Dev Dyn 208: 432-446。Akp2-/-マウスを選択するために、すべての新生TNALP/129/Bl6マウスを、以前に記載された通りにPCRを用いて遺伝子型決定した。Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364。使用したプライマーは、5'-AGTCCGTGGGCATTGTGACTA-3'(配列番号11)および5'-TGCTGCTCCACTCACGTCGAT-3'(配列番号12)であった。Akp2-/-マウスは、乳児型HPPの近似表現型模倣体であり、出生時には健康な外見を有する。1週間以内に発育遅延が明らかになり、大多数のAkp2-/-マウスは2~3週間以内に死亡する。これらのマウスのうちの約半数が、重度の症状を有し、かつ死亡前にけいれん発作を経験する。Narisawa, S, et al. (1997) Dev Dyn 208: 432-446。本研究のために、新生(出生1、2または3日間後)Akp2-/-マウスに、AAV8-TNALP-D10(2μLのPBS中、1.0×1011、3.0×1011または1.0×1012ベクターゲノム(vg))を注射した。TNALP/129/Bl6 Akp2+/+野生型(WT)マウスを、処置実験の対照として利用した。対照として、18ヵ月間の骨分析のために、WTマウスにAAV8-GFPベクター(2μLのPBS中、1.0×1012vg/個体)を注射した。
【0202】
22ゲージハミルトンシリンジを用いて、右側大腿四頭筋へと注射を行なった。ヘパリンコートキャピラリーを用いて、麻酔された動物の眼窩洞から血液サンプルを採取し、血漿ALP活性を、1、2、3、6、12ヵ月間(2μLのPBS中、3.0×1011vg/個体)および1、2、3、6、12、18ヵ月間(2μLのPBS中、1.0×1011および1.0×1012vg/個体)で評価した。マウスの行動も観察した。ヘパリン(10U/mL)を含有するPBSを用いた灌流により、深麻酔下でマウスを屠殺した。次いで、マウスの器官を、腫瘍形成を示す顕微鏡的病変について調べた。器官は、分析まで-80℃の冷凍庫中で保持した。
【0203】
続いて、筋内AAV8-TNALP-D10注射を介したTNALP送達がAkp2-/-マウスを表現型的に修正し得たか否かを決定するために、マウスをモニタリングした。AAV8-TNALP-D10注射後2ヵ月間にわたり、処置マウスにおける血漿ALP活性は、WTマウスにおける血漿ALP活性よりも顕著に高いままであった(2ヵ月間で14.8±4.3 vs. 0.1±0.004U/mL)(図1A)。さらに、7匹の処置マウスのうちの5匹が18ヵ月超にわたって生存し(図1B)、18ヵ月でも、ALP活性の持続的発現が確認された(19.38±5.02U/mL)(図1A)。Akp2-/-マウスは、新生期中に投与された、わずか2μLのAAV8-TNALP-D10の単回筋内注射後、18ヵ月間またはほぼその全生存期間にわたり、健康に生存した。筋内注射の治療効果は、寿命または身体的表現型に関して、全身注射のものに劣らなかった。
【0204】
2匹のマウスにおいて処置は失敗した:1匹は25日目に死亡し、2匹目は393日目に死亡した。同様に、3.0×1011vg/個体または1.0×1011vg/個体のAAV8-TNALP-D10の投与の有効性を、これらのマウスの表現型修正のために必要とされる最も低いベクター強度を決定するために試験した。3.0×1011vg/個体で処置されたAkp2-/-マウスもまた強いALP活性を示し(図1A)、屠殺まで12ヵ月超にわたり生存した(n=3/7生存)(図1B)。対照的に、1匹を除いて、1.0×1011vg/個体を投与されたマウスは3週間以内に死亡し(n=1/5生存)、残りのマウスでは、ALP活性は2ヵ月間で0.7U/mLに達し、マウスはその後間もなく死亡した。
【0205】
この生存期間の延長は、3.0×1011vg/個体以上のベクター用量で、血漿ALP活性は、処置マウスをその寿命を通して維持するために十分なプラトーに達することを示した。処置Akp2-/-マウスではけいれんは認められなかった。血漿ALP活性の用量依存性は観察されなかった。このため、3.0×1011vg/個体のAAV8-TNALP-D10は安全であり、かつAkp2-/-マウスを治療するために十分な有効ベクター力価であることが決定された。
【0206】
実施例3:18ヵ月での1.0×10 12 vg/個体のAAV8-TNALP-D10により処置されたAkp2 -/- マウスにおける成熟骨石灰化
持続的ALP活性は、Akp2-/-マウスの寿命を延長するだけでなく、その骨石灰化の成熟も改善した。WTマウス(n=3)と1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-(n=5)マウスとの間で平均体重の有意差はなかった(図2Aおよび2B)。
【0207】
二次骨化中心を、X線分析により検出した。X線分析は、以前に記載された方法に従って行なった。Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364。手短に言えば、成体マウスのX線画像を、25kVのエネルギーレベルおよび10秒間の曝露時間でμFX-1000フィルム(Fujifilm社、東京、日本)上に取得した。二次骨化中心は、出生10日後にWTマウス(n=8/8)全てで検出された。一方で、未処置Akp2-/-マウスの大多数は、10日目に二次骨化中心を有しない(n=3/10)(図2C)。
【0208】
処置後、WTマウスと同様に、1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおいて10日目に二次骨化中心が見出された(n=9/10)。56日目に成体へと成長すると、膝関節のX線分析は、WTマウスと同様に、1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウスにおいて成熟骨を示した(図2D)。
【0209】
次に、コンピュータ断層撮影(CT)を用いて、18ヵ月齢1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス(n=4)および対照としてのAAV8-GFPベクター処置WTマウス(n=3)の大腿骨の構造を分析した。コンピュータ断層撮影(CT)は、以前に記載された通りに、Latheta実験動物CTシステム(LCT-200;Hitachi Healthcare BU社、東京、日本)を用いて行なった(Okuda, T, et al. (2018) J Nippon Med Sch 85: 322-329)。骨密度(BMD)を決定するために、Lathetaソフトウェアバージョン3.44(Hitachi Healthcare BU社)を用いて骨形態計測を行なった。定量的評価のために連続48μmスライス画像を利用し、皮質BMDを大腿骨幹の中心部分の10スライスで評価した。
【0210】
CTデータの統計解析は、処置マウスの大腿骨における骨幅の増加および過形成を明らかにし、骨端軟骨構造は不規則であった。骨幹体積は、WT大腿骨における骨幹体積とほぼ同じであった。18ヵ月で、処置マウスにおける骨密度(673.7±41.6 vs. 620.8±52.9mg/cm3:p=0.26)は、対照の骨密度と有意に異ならなかった(図2E)。これらの結果を考慮すると、くる病におけるフレアリングと同様の骨幅拡大の促進が見出されたが、処置マウスにおける骨梁の質は、WTマウスにおける骨梁の質とほぼ同じであった。このため、新生期中の単回筋内AAV8-TNALP-D10注射は、Akp2-/-マウスの治療のために安全かつ有効であると考えられる。
【0211】
実施例4:1.0×10 12 vg/個体AAV8-TNALP-D10により処置されたマウスの骨におけるALP活性
未処置野生型(WT)、1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/-マウス、および1.0×1011vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/マウスの膝関節におけるALP活性を調べた。骨を、固定または脱灰することなく直接染色した。膝関節の切片(10μm厚)を、川本フィルム法を用いて切った。Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364。生化学的組織ホモジナイゼーション後の上清中でALP活性を評価し、ファストブルーを用いて染色された組織において、光学顕微鏡下で組織学的に検査した(BX60;Olympus社、Tokyo、Japan)。膝関節の組織学的画像を、図3に示す。青色に染色された領域が、骨内膜性骨の表面および吸収区画(zone of resorption)中で見られ、WTマウスおよび1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10処置Akp2-/マウスでは、吸収区画で軟骨が石灰化していた。
【0212】
実施例5:ベクター分布
ベクターは筋内的に注射されたが、筋肉の収容力を超えるベクター体積は、血中に漏出し、全身に循環し得る。1.0×1012vg/個体AAV-TNALP-D10の分布を、処置マウスの肝臓、筋肉、心臓、および骨において分析した。
【0213】
AAVベクターの体内分布を、AAV8-TNALP-D10で処置したAkp2-/-マウスにおいて決定した。ゲノムDNAを心臓、肝臓、骨および筋肉から抽出し、その後、以前に記載されたとおりにリアルタイムPCRに供した。Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364。両脚から得た大腿四頭筋を分析し、注射された筋肉を反対側の未処置筋肉と比較した。
【0214】
リアルタイムPCRを使用すると、AAV-TNALP-D10注射筋肉以外の任意の器官においてAAVベクターゲノムは検出されなかった。精巣および/または卵巣におけるウイルスベクターの生殖細胞系列挿入は臨床的使用についての重要な懸念事項であるので、精巣および卵巣中に存在するAAVベクターゲノムを分析した。AAVベクターゲノムは、精巣および卵巣では検出されなかった。リアルタイムPCRは、ベクター注射部位の筋肉のみにおけるAAVベクターの存在を明らかにした(データは示していない)。このことは、新生マウスの大腿四頭筋へと注射された2μLのベクターが、それが注射された場所に局在したことを示唆する。これらの結果は、ベクターが筋肉中に留まり、全身に分布しないので、筋肉注射が静脈内注射よりも安全であったことを示す。
【0215】
Akp2-/-マウスの全身処置に対する応答の用量依存性が、以前に記載された。Matsumoto, T, et al. (2011) Hum Gene Ther 22: 1355-1364;Yadav, MC, et al. (2011) Bone 49: 250-256。しかしながら、本明細書中に示される通り、筋内注射のAAV8-TNALP-D10ベクターの分布は、それが注射された筋肉に限定され;すなわち、筋肉からのAAV8-TNALP-D10の有意な漏出はなかった。このため、CAGプロモーターは組織特異的ではないが、比較的小さな体積のAAV8-TNALP-D10を注射することにより、筋肉への物理的標的化が成功裏に達成された。これらの結果は、、より高い発現を可能にする組織非特異的プロモーターを含む改変型ベクターにより比較的小さな体積(例えば、約100μL)を使用し得ることを示す。
【0216】
実施例6:極めて高い血漿ALP活性によるC57BL/6マウスの肢上の異所性石灰化
構成的に高い血漿ALP活性は、生理学的状態ではない。したがって、構成的に高い血漿ALP活性の安全性および有害作用を評価するために、多量のAAV8-TNALP-D10を6週齢野生型C57BL/6マウスに注射した。
【0217】
過剰に上昇した血漿TNALPの潜在的影響を分析するために、6週齢雄性C57BL/6マウスに、29ゲージインスリンシリンジを用いて、高用量のAAV8-TNALP-D10(50μLのPBS中の3.0×1012、5.5×1012、3.0×1013または5.5×1013vg/個体)を右側大腿四頭筋へと注射した。次いで、マウスを、その身体中での異所性石灰化の出現に関してモニタリングし、血漿ALP活性、血漿トランスアミナーゼ、および腎機能について分析した。
【0218】
5.5×1013vg/個体を注射されたマウス(n=3)は約4ヵ月齢まで成長し、最終的には、高い血漿ALP活性(8347.3±5738.4U/mL)で、約6ヵ月齢までに死亡した(図4A)。この高いベクター投与量を投与された3匹のマウスは全て、結石を発症した。1匹は、注射の2ヵ月間後に前肢の各掌球に結石を有し、6ヵ月間で左側後肢の指球に小さな結石を有した。もう1匹のマウスは、2ヵ月間で各掌球に2個の結石を有し、一方で、3匹目のマウスは3ヵ月間で左側前肢の指球に小さな結石を有した。マウス(n=3)に比較的低い用量のベクター(2.8×1013vg/個体)を注射した場合、ALP活性のレベルは比較的高い投与量よりも約1桁低かった(373.0±215.3U/mL)。これらのマウスでは、異所性石灰化は、注射の約4ヵ月間後に現われ始めた。結石は、固体であり、かつX線を通さなかった(図4Bおよび4C)。
【0219】
SRL社(東京、日本)による結石の赤外分光分析は、それらが主にリン酸カルシウム(55%)および炭酸カルシウム(45%)で構成されることを示した。X線分析は、血管の石灰化を明らかにしなかった。アリザリンレッド染色は、これらの処置マウスの肝臓、心臓、筋肉、腎臓、および血管における異所性石灰化を示さなかった。AAV8-TNALP-D10注射Akp2-/-マウスでは、最も高い投与量(1.0×1012vg/個体)が投与された場合でさえも、異所性石灰化または血管石灰化を誘導しなかった(データは示していない)。2.8×1012および1.1×1013vg/個体を注射されたC57BL/6マウスは、実験期間全体を通して、その肢または任意の他の体表面に結石を示さなかった。
【0220】
予備的実験は、極めて高いALP活性(10,000U/mL)が、投与経路または投与時点でのマウスの週齢にかかわらず、異所性石灰化を引き起こすことを示した(データは示していない)。最も高いALP活性を有するマウスは、その鼻の先端の石灰化に罹患したが、X線検査は、腎臓または血管などの他の箇所での異所性石灰化の証拠を全く示さなかった。
【0221】
実施例7:肝臓または腎臓機能不全は処置マウスで検出されなかった
最も高い血漿ALP活性を有するマウスにおいて、生化学的データ、肝機能および腎機能、ならびにカルシウムレベルを調べた。すべての処置マウスにおける血漿カルシウム代謝は、WTマウスにおける血漿カルシウム代謝と同様であった(カルシウム:9.5±0.45 vs. 9.5±0.63mg/dL;P=0.5)。肝機能および腎機能は、正常範囲内であった。1.0×1012vg/個体AAV8-TNALP-D10により処置されたマウスはWTマウスにおける内因性レベルより397倍ほども高い血漿ALP活性(19.38±5.02U/mL)を有していたが、AAV8-TNALP-D10処置マウスでは明らかな問題はなかった。さらに、すべての器官において腫瘍は見られず、それらの器官は顕微鏡的には正常に見える。
【0222】
実施例8:AAV-TNALP-D10による非ヒト霊長類の処置
非ヒト霊長類において10U/mLの範囲内の血漿ALPレベルを達成するためのAAV8-TNALP-D10の力価、体積、および注射の多重度に関して用量を調べるために試験(study)を行なう。体重約1kgの1歳のカニクイザルに、AAV8-TNALP-D10またはプラセボを注射する。AAV8-TNALP-D10ベクターを、リン酸緩衝生理食塩液を用いて製剤化する。プラセボは、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)(137mmol/L NaCl、8.1mmol/L Na2HPO4、2.68mmol/L KCl、1.47mmol/L KH2PO4、pH7.4)である。試験設計は、右側大腿四頭筋(外側広筋)および/または右側腓腹筋への単回または複数回筋内注射としてのAAV-HPP 100μLの投与を含む。ビヒクル(プラセボ)は、同じ注射体積および部位数で、身体の左側の同じ筋肉群へと投与される。複数回注射が投与される場合、動物は軽く麻酔される。次の動物へと進む前に、用量群を、肝臓酵素およびALP活性を含む忍容性について2週間にわたりモニタリングし;動物における用量の忍容性を考慮して、用量レベルが選択される。
【0223】
試験中、動物1には、100μLの1×1014vg/mLのAAV8-TNALP-D10を、総用量1×1013vgとして単一の筋内注射部位に投与する。動物1を、忍容性に関して2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。動物1が1×1013vgの用量に耐えられない場合、動物2についてのAAV8-TNALP-D10の総用量を低減し、かつ/またはコルチコステロイドにより前処置する。動物2を、忍容性について2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0224】
動物1における投与2週間後のALPレベルが>10U/mLである場合、動物2についてのAAV8-TNALP-D10の総用量を低減し、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0225】
動物1における投与2週間後のALPレベルが9U/mL以下である場合、動物2についてはAAV8-TNALP-D10の総用量を増加させる。100μLの1×1014vg/mLのAAV8-TNALP-D10を、総用量2×1013vgとして2箇所の筋内注射部位のそれぞれに注射する(総体積200μL)。動物2を、忍容性について2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0226】
動物1における投与2週間後のALPレベルが10U/mLである場合、動物2についてのAAV8-TNALP-D10の総用量を維持する。動物2には、100μLの1×1014vg/mLのAAV8-TNALP-D10を、総用量1×1013vgとして単一筋内注射部位に投与する。動物2を、忍容性について2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0227】
動物2における投与2週間後のALPレベルが標的範囲内にない場合、動物3についてのAAV8-TNALP-D10の総用量を、必要に応じて増加または減少させ、任意の忍容性の問題を軽減するために、コルチコステロイドによる前処置を検討する。動物3を、忍容性について2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0228】
動物1および2における投与2週間後でのALPレベルが10U/mLである場合、動物3についてAAV8-TNALP-D10の総用量を維持するが、注射の多重度の影響が調べられる。100μLの2×1013vg/mLのAAV8-TNALP-D10を、総用量1×1013vgとして5箇所の筋内注射部位のそれぞれに注射する(総体積500μL)。動物3を、忍容性に関して2週間モニタリングし、ALP活性を投与2週間後に決定する。
【0229】
標的ALPレベルを達成するために、動物1~3において観察された結果に基づいて、適切な濃度、体積、および注射部位の数で、動物4にAAV8-TNALP-D10を投与する。
【0230】
実施例9:AAV8-TNALP-D10を筋内注射されたラットにおける持続的TNALP発現
大腿四頭筋への筋内注射により投与される3つの異なる用量のAAV8-TNALP-D10(1×1011、1×1012、および1×1013vg/動物、用量コホート当たりn=2動物)で処置された5~6週齢野生型(wt)ラットにおけるTNSALP-D10発現を分析した。未処置wtラットを対照として用いた(n=1)。
【0231】
TNSALP-10活性における用量応答を1週目に観察し、それぞれ、ベクターなし、1.0×1011、1.0×1012、または1.0×1013vg/動物の投与後に、TNSALP-D10レベルは192U/mL、841±948U/mL、1373±1121U/mL、3837±3318であった(図5および表4)。TNSALP-D10活性は1週目にピークに達し、2つの高用量群について、発現は18週目まで持続した。血清化学分析は、肝臓または筋肉損傷関連酵素の上昇を全く明らかにせず、他の異常は認められなかった。
【0232】
AAV8-TNALP-D10を投与されたAlpl-/-マウスと同様に、TNSALP-D10活性は、最も早い時点(投与1週間後)で測定可能であり、18週目まで持続した。TNSALP-D10上昇は、肝臓酵素の任意の上昇と関連付けられなかった。
【0233】
【表4】
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図5
【配列表】
2024510794000001.app
【国際調査報告】