(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】制御可能な変形可能特性を有する微細構造体を生成するデータ処理デバイス
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240304BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240304BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558521
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 FR2022050553
(87)【国際公開番号】W WO2022200742
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505026125
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシュ・アン・アンフォルマティック・エ・オン・オトマティック
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ケンザリ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,ジャン・クロード
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ,ジミー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
(57)【要約】
付加製造用のデバイスは、製造される物体の形状に関するデータと、製造される物体のアクチュエータデータとを受信するように構成されるメモリ52と、製造される物体の形状に関するデータと、製造される物体のアクチュエータデータとに基づいて、直交異方性発泡体を定義する付加モデル56を求めるように構成されるコンピュータ54とを備えてなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造される物体の形状データと、前記製造される物体のアクチュエータデータとを受信するように構成されるメモリ(52)と、
前記製造される物体の前記形状データと、前記製造される物体の前記アクチュエータデータとを使用して、直交異方性発泡体を定義する付加モデル(56)を求めるように構成されるコンピュータ(54)と
を備えてなる、付加製造用のデバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータデータは、前記製造される物体のいくつかのアクチュエータを付加構造として定義し、前記コンピュータ(54)は、これらのアクチュエータを統合する直交異方性発泡体を定義する付加モデル(56)を求めるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
少なくとも1つのアクチュエータが、前記直交異方性発泡体における1つ以上の閉構造と、気体、ゲル又は流体をその内部に導入することとによって製作される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記アクチュエータは、ソレノイド弁又は、空気圧源によってトリガされ、又は、前記直交異方性発泡体のある別の部分と流体接触する前記気体、前記ゲル若しくは前記流体を含んでいる部分のうちの1つが単に押されることによってトリガされ、前記気体、前記ゲル又は前記流体の移動によって動作する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータデータは、前記製造される物体のいくつかのアクチュエータを非付加要素として定義し、前記コンピュータ(54)は、これらのアクチュエータの導入を可能にする直交異方性発泡体を定義する付加モデル(56)を求めるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記アクチュエータデータは、前記製造される物体が、前記直交異方性発泡体の様々な点に接続された変形可能な要素を備えるように前記アクチュエータを定義し、前記変形可能な要素の変形は、該変形可能な要素が接続された点を含む各ゾーンの変形の好ましい方向に従って前記直交異方性発泡体の前記変形を誘発するようになっている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コンピュータ(54)は、前記製造される物体の表面の全て又は一部にスキンを設けるように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
a)製造される物体の形状データを受信するステップと、
b)前記製造される物体のアクチュエータデータを受信するステップと、
c)前記製造される物体の前記形状データと、前記製造される物体の前記アクチュエータデータとから、直交異方性発泡体を定義する付加モデル(56)を求めるステップと
を含んでなる、付加モデルデータを求める方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータにおいて実行されると請求項8に記載の方法を実施するプログラムコード部分を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造または3Dプリント(fabrication additive; additive manufacturing)の分野に関する。より具体的には、本発明は、変形可能な特性を有する構造体及び微細構造体の付加製造の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、その仕事を進めていくうちに、一般の機能仕様による選択された異方性の変形特性及び適合した変形可能な特性を有する構造体の具現化を研究することに至った。そのようなことから、本出願人は、ヴォロノイセル(cellules de Voronoi; Voronoi cell)によって生成され、選択された構造に応じて可変の弾性を有する発泡体を記載した第1の仏国特許出願を特許文献1の形で出願した。
【0003】
ヴォロノイダイアグラム(Voronoi diagram)は、サイト(sites)又はシード(seedsまたはgermes)と呼ばれる、ある平面又はある体積にある点の集合に適用されることを思い起こすことにする。このダイアグラムは、凸多角形(polygones convexes; convex polygon)を含むネットワークになっている。凸多角形のそれぞれは、全ての点が他のどのシードよりもそのシードに近いゾーンの範囲を画定する。ヴォロノイダイアグラムを生成するために、いくつかの垂直二等分線のみが使用され、それ以外のものは使用されない。すなわち、過度に遠く離れたサイトは考慮されない。そして、有用なセグメント(segmentes utiles; useful segment)が、いわゆるドローネ三角形分割(Delaunay triangulation)又は平面のあるパーティションを形成する。力学において、ドローネ三角形構造(Delaunay triangular structure)は、三角形の面積の二乗を最小にすると考えられる。外部境界をカウントすると、各サイトは、ある凸多角形の内部にある。この多角形の全ての点は、他の全ての点よりも内側にある点に近い。これは不規則なハニカム格子である。これらの基本原理を使用すると、(平面内の)セグメント又は(空間内の)限られた表面(confined surface)を定義することが可能である。そして、これらの個別の要素の知識は、空間とその物体に作用されるストレスとに従った機械的特性を有する3次元物体を作製するために付加製造において使用される。
【0004】
後に、本出願人は、発泡体がストレスに応じて変形される可能性がより高い方向を示す変形フィールドを有する直交異方性発泡体(mousses orthotropes; orthotropic foam)を製作するための第2の仏国特許出願を特許文献2の形で出願した。
【0005】
これらの発明は、学問的な観点から興味深いが、それらの変形能(deformabilite;deformability)を発現させるのが困難であったので、商業製品に使用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許出願第1652497号
【特許文献2】仏国特許出願第1754866号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、この状況を改善する。このために、本発明は、製造される物体の形状データと、製造される物体のアクチュエータデータ(donnees d’actionneurs; actuator data)とを受信するように構成されるメモリと、製造される物体の形状データと、製造される物体のアクチュエータデータとを使用して、直交異方性発泡体を定義する付加モデルを求めるように構成されるコンピュータとを備える、付加製造のデバイスを提案する。
【0008】
このデバイスは、付加製造によって、変形が得られるだけでなく、有利には機械的なストレスの存在下での制御可能性もあるように、物体を作製することを可能にするので特に有利である。
【0009】
様々な実施の形態によれば、本発明は、以下の特徴のうちの1つ以上を有することができる。
アクチュエータデータは、製造される物体のためにいくつかのアクチュエータまたは作動子(actionneurs)を付加構造体として定義し、コンピュータは、これらのアクチュエータを統合する直交異方性発泡体を定義する付加モデルを求めるように構成されており、
少なくとも1つのアクチュエータが、直交異方性発泡体における1つ以上の閉構造体によって、気体、ゲル又は流体をその内部に導入することにより製作されており、
アクチュエータは、ソレノイド弁または空気圧源によってトリガされ、又は、直交異方性発泡体のある別の部分と流体接触する気体、ゲル若しくは流体を含んでいる部分のうちの1つが単に押されることによってトリガされ、気体、ゲル又は流体の移動によって動作するものであり、
アクチュエータデータは、製造される物体のアクチュエータを非付加要素として定義し、コンピュータは、これらのアクチュエータの導入を可能にする直交異方性発泡体を定義する付加モデルを求めるように構成され、
アクチュエータデータは、製造される物体が、直交異方性発泡体の様々な点に接続された変形可能な要素を備えるようにアクチュエータを定義し、変形可能な要素の変形は、該変形可能な要素が接続された点を含む各ゾーンの変形の好ましい方向に従って直交異方性発泡体の変形を誘発するようになっており、
コンピュータは、製造される物体の表面の全て又は一部にスキン(skin)を設けるように構成されている。
【0010】
本発明はまた、
a)製造される物体の形状データを受信するステップと、
b)製造される物体のアクチュエータデータを受信するステップと、
c)製造される物体の形状データと、製造される物体のアクチュエータデータとから、直交異方性発泡体を定義する付加モデルを求めるステップと
を含んでなる、付加モデルデータを求める方法に関する。
【0011】
本発明はまた、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータにおいて実行されると本発明によるデバイス又は方法を実施するプログラムコード部分を含む、コンピュータプログラム製品に関する。
【0012】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面に基づく、例示及び非限定的の目的で与えられた例に基づく以下の説明を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】選択された異方性変形特性を有する発泡体の第1の例を表す図である。
【
図2】機械的アクチュエータを備える、
図1による発泡体の一例を表す図である。
【
図3】変形フィールドを有する発泡体の第2の例を表す図である。
【
図4】
図1の発泡体又は
図3の発泡体に導入することが可能なアクチュエータの一例を表す図である。
【
図5】本発明によるデバイスの概略図の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面及び以下の説明は、本質的に、或る特定の性質の要素を含む。したがって、図面及び以下の説明は、本発明をよりよく説明するのに役立つことができるだけでなく、該当する場合には本発明の定義に寄与するのに役立つこともできる。
【0015】
図1は、発泡体の第1の例を表している。この例では、発泡体は、選択された異方性の変形特性を有する。この図からわかるように、人間の指に類似した物体2は、可変の弾性変形特性を有する発泡体の形態で製作されたものである。したがって、物体2は、第1の端部4と、中央要素6と、第2の端部8とを備える。第1の端部4と中央要素6は、第1の接合部10によって相互接続され、中央要素6と第2の端部8は、第2の接合部12によって相互接続される。
【0016】
ここで説明する例では、この発泡体は、特許文献1の教示に従って製作されたものである。すなわち、この発泡体は、ヴォロノイセルを使用して生成されたものであり、ストレスが第1の端部4又は第2の端部8に印加されたときに好ましい変形方向を生み出すために、第1の接合部10及び第2の接合部12の密度はより低くなっている。したがって、いずれか一の端部が押されると、指は、これらの部分において屈曲し、これらの部分は、その時、指骨としての役割を果たす。
【0017】
図2は、
図1の発泡体の特性から利益を受ける本発明による発泡体を表している。実際、剛性の細線(fil rigide; rigid thread)が、第1の端部4の一部分と、中央要素6と、第2の端部8とに取り付けられている。したがって、第1の端部4及び第2の端部8の一方が固定されているときに細線の一方の端部を引くことによって、細線は、第1の接合部10及び第2の接合部12において指を屈曲させるように指を作動させる。ここで説明する例では、指には、スキンとしての役割を果たすケーシングが設けられていない。
【0018】
それでも、ケーシングを設けることが有益なものとなることがある。実際、このケーシングがない場合に、この構造は、細線の張力を受けるとクラッシュする可能性があり、その変形を制御することはより困難である可能性がある。代替として、発泡体に統合されるか又は発泡体に取り付けられる任意のタイプの固体アクチュエータを使用することもできるし、発泡体と同時に形成することもできる。
【0019】
直交異方性発泡体が、同じタイプ又は異なるタイプの材料によるケースに収容されると、これによって、好ましい方向における空間変形を制限することが可能になり、これらの発泡体は、ケースに収容されていない発泡体と比較して強化される。このように、直交異方性発泡体は、好ましい空間方向に変形を印加する外部ケーシングによって取り囲まれる。この「スキン」がない場合には、これは、ケースに収容されない発泡体では遭遇しない空間連続性ストレスを印加するので、注目に値する効果は低下するおそれがある。
【0020】
図3は、発泡体の第2の例を表している。この例では、発泡体は、直交異方性特性を有し、特に、1つ以上のストレスが印加されたときの複数の好ましい方向を定義する変形フィールドのマップを有する。この発泡体は、特許文献2の教示に従って製作されたものである。一般に、この出願の教示に従って製造された発泡体は、特許文献1の教示に従って具現化された発泡体よりも有利である。その理由は、この出願の教示に従って製造された発泡体が許容する好ましい方向の幅が、後者の発泡体よりも大きいからである。したがって、複雑な運動を有する物体を製作することが可能である。
【0021】
一様な発泡体からなる材料が屈曲されるとき、又は、材料が直交異方性発泡体からなるとき、変形は非常に異なる可能性がある。この相違が本発明において使用される。
【0022】
この構造から利益を得るために、本発明は、
図4に表されるようなアクチュエータも提案する。
【0023】
ここで説明する例は、発泡体において1つ以上の閉構造を作成することと、その閉構造内に気体、ゲル又は流体を導入することとに基づいている。ここでのアイデアは、これらの要素のうちの1つを、発泡体の第1の部分から発泡体の第2の部分に渡すことであり、これによって、第2の部分は、超過材料によって誘発される圧力の影響を受けて、その好ましい方向に沿って変形される。移動は、ソレノイド弁、空気圧源の手段によって有利にトリガすることもできるし、気体、ゲル又は流体を受け取るのに適した発泡体の別の部分と流体接続する気体、ゲル又は流体を含む部分のうちの1つを単に押すことによって有利にトリガすることもできる。例えば、靴に配置された支持部に人の体重によって作用される圧力は、アクチュエータ(actionneur)として機能することができ、快適さ又は歩行補助の観点から要求される変形をトリガすることができる。この例では、空気房(ballonnet; ballonet)に導入された剛性が、好ましい方向への変形を引き起こす。
【0024】
このように、
図4の例では、ソレノイド弁が、パイプ42を通じて方向40に沿って直交異方性発泡体44内へと気体を導入する。直交異方性発泡体44は、パイプ42に接続されたチューブのネットワーク46を備えるとともに、気体の導入が方向48に沿って発泡体にストレスを与えるようになっているケーシングを表面に備える。
【0025】
代替的に、気体、ゲル又は流体を含む部分は、それらの部分のみが内圧変化の影響を受けて変形されるように、完全に密閉しておくことができる。それにもかかわらず、近傍部分は、それ自体が変形可能であるので、圧力を受けた部分の変形と関連したストレスを少なくとも部分的に受けることになる。この場合には、気体、ゲル又は他の任意の流体を、必要に応じて任意選択的に作動される形状記憶材料に取り替えることもできる。
【0026】
図5は、本発明によるデバイスの実施態様の概略例を表している。
【0027】
デバイス50は、製造される物体に与えられる一般的形状を定義するデータと、要求されるアクチュエータのタイプ及び物体におけるそれらのロケーションとを定義するアクチュエータデータとを受信するメモリ52を備える。
【0028】
このデバイスは、メモリ52のデータにアクセスするように構成されるとともに、発泡体と、アクチュエータの存在に必要な要素、すなわち、アクチュエータが発泡体とともに付加的に製造される場合にはアクチュエータ自体を製作するための付加モデル56、又は必要に応じてその後のその設置を可能にするアクセスとを構築するように構成されるコンピュータ54も備える。
【0029】
最後に、デバイス50は、コンピュータ54によって求められた付加モデルに従って発泡体を製作するように、それ自体が既知である付加製造プリンタ60を制御する。
【国際調査報告】