(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】高コレステロール血症を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240304BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240304BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240304BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240304BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240304BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240304BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240304BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20240304BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240304BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240304BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240304BHJP
A61K 38/46 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
C12N15/55
A61K31/7105
A61K48/00
A61K31/711
A61K35/407
A61K35/28
A61P3/06
C12N5/10
A61K38/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558546
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022021263
(87)【国際公開番号】W WO2022204087
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476126
【氏名又は名称】エメンドバイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン・メシア、ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ディッケン、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
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4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZC33
(57)【要約】
開示は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子、並びにそれらの組成物、方法、及び使用を提供する。具体的には、本開示は、細胞内の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子の内因性発現を増加させる方法であって、LDLR遺伝子の改変又はLDLR遺伝子がコードする転写産物の改変、少なくとも1つのヌクレアーゼ及びガイド配列部分を含むRNA分子を含む組成物の細胞への導入を含み、RNA分子のガイド配列部分が、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子の内因性発現を増加させる方法であって、前記LDLR遺伝子の改変又は前記LDLR遺伝子がコードする転写産物の改変を含む、方法。
【請求項2】
前記LDLR遺伝子が、CRISPRヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)若しくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)により改変される、又は前記LDLR遺伝子がコードする転写産物が、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)若しくはマイクロRNA(miRNA)により改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LDLR遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)又は前記LDLR遺伝子がコードする前記転写産物の3’UTRが改変される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記LDLR遺伝子の3’UTRが、前記3’UTR又はその一部分の切除により改変される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記細胞への、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列部分を含む、RNA分子又は前記RNA分子をコードするDNA分子
を含む組成物の導入を含み、
前記CRISPRヌクレアーゼと前記RNA分子の複合体が、前記LDLR遺伝子の1つのアレルを二本鎖切断し、これにより、前記LDLR遺伝子の発現を増加させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、対象の細胞又は培養中の細胞に導入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、肝臓細胞、肝実質細胞又は幹細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子、及び前記RNA分子又は前記RNA分子をコードするDNA分子が、実質的に同時に又は異なる時点で前記細胞に導入される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞内の前記LDLR遺伝子のmiRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)が、挿入変異又は欠失変異を受ける、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記RNA分子のガイド配列部分が、LDLR 3’UTR内の、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記RNA分子のガイド配列部分が、LDLRアレル中のmiRNA結合部位を標的とする、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記RNA分子のガイド配列部分が、miR-85結合部位又はmiR-148結合部位を標的とする、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記LDLR遺伝子の改変の結果、miRシード配列が不活性化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記miRシード配列が、UGGUGCUA又はCACUGUGである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記miRシード配列が、miR-85シード配列又はmiR-148シード配列である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記CRISPRヌクレアーゼと前記RNA分子の複合体が、前記LDLR遺伝子の一対のアレルを二本鎖切断する、請求項5~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記RNA分子のガイド配列部分が、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む、請求項5~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞に導入される前記組成物が、ガイド配列部分を含む、第2のRNA分子又は前記第2のRNA分子をコードするDNA分子を更に含む、請求項5~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のRNA分子のガイド配列部分が、前記LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のRNA分子のガイド配列部分が、前記第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
LDLR 3’UTR又はその一部分が、CRISPRヌクレアーゼと前記第1のRNA分子によって形成される二本鎖切断、及びCRISPRヌクレアーゼと前記第2のRNA分子によって形成される二本鎖切断により切除される、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
内因性LDLRのポリアデニル化シグナルは改変されない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のRNA分子又は第2のRNA分子のガイド配列部分が、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個又は5個のヌクレオチドミスマッチを有する、請求項5~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ガイド配列部分が、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含み、前記連続するヌクレオチドは、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個又は5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ガイド配列部分の、前記CRISPRヌクレアーゼと前記RNA分子の複合体に対する標的特異性が、前記LDLR遺伝子の変異したアレルに対して高い相補性を有するガイド配列部分よりも高い、請求項23又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
細胞内の内因性LDLR遺伝子の発現の増加が、前記LDLR遺伝子を改変する前の細胞内のLDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルと比較して、LDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルの、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%又は少なくとも600%の増加として測定される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
内因性LDLR遺伝子の発現の増加が、前記LDLR遺伝子を改変する前の細胞によるLDL-Cの取込みと比較して、前記細胞によるLDL-Cの取込みを、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%又は少なくとも500%増加させる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、若しくはLDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている前記連続するヌクレオチドを含むRNA分子、又は前記RNA分子をコードするDNA分子を含む、組成物。
【請求項29】
CRISPRヌクレアーゼ、又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子を更に含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
tracrRNA分子を更に含む、請求項28又は29に記載の組成物。
【請求項31】
ガイド配列部分を含む、第2のRNA分子又は前記第2のRNA分子をコードするDNA分子を更に含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第2のRNAのガイド配列部分が、LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記第2のRNA分子のガイド配列部分が、前記第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、又は前記第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む、請求項31又は32に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法により改変された細胞、又は請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物により改変された細胞。
【請求項35】
請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物を含む、細胞中のLDLRアレルを不活性化するための医薬であって、前記医薬が、前記組成物を前記細胞へ送達することにより投与される、医薬。
【請求項36】
請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34に記載の改変された細胞の、高コレステロール血症を治療する、寛解させる又は予防するための使用であって、前記組成物又は前記改変された細胞を、高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することを含む、使用。
【請求項37】
請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34に記載の改変された細胞を含む、高コレステロール血症を治療する、寛解させる又は予防するための医薬であって、前記医薬が、前記組成物又は前記改変された細胞を、高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することにより投与される、医薬。
【請求項38】
請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物及び前記組成物を細胞へ送達することについての使用説明書を含む、細胞内のLDLR発現を増加させるためのキット。
【請求項39】
請求項28~33のいずれか一項に記載の組成物又は請求項34に記載の改変された細胞、及び前記組成物又は前記改変された細胞を高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することについての使用説明書を含む、対象において高コレステロール血症を治療する又は予防するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2022年1月28日に出願された米国仮出願第63/304,170号及び2021年3月22日に出願された同第63/164,396号の恩恵を主張し、それらの米国仮出願の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
この出願全体で、括弧に入れて参照したものを含む、さまざまな刊行物を参照する。この出願において全体として言及された全ての刊行物の開示は、この発明が属する技術分野及びこの発明と共に使用される技術分野における追加の特徴の説明を提供するために、参照によりこの出願に組み入れられる。
【0003】
配列表への言及
この出願は、「220321_91709-A-PCT_Sequence_Listing_AWG.txt」と名付けられたファイルに存在するヌクレオチド配列を参照により組み入れ、そのファイルは、サイズが2,288kbであり、MS-Windows(登録商標)とのシステム互換性を有するIBM-PC機フォーマットで2022年3月17日に作成され、この出願の一部として、2021年3月21日に出願されたテキストファイルに含まれている。
【背景技術】
【0004】
高コレステロール血症、又は高コレステロールは、高い血漿中コレステロールレベルの存在と定義される。家族性高コレステロール血症(FH)は、コレステロールの上昇及び心血管疾患の早期発症に至る低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の変異を主な原因とする、遺伝性疾患である。
【0005】
低密度リポタンパク質受容体(LDLR)は、血漿の主要なコレステロール運搬リポタンパク質である低密度リポタンパク質(LDL)と結合し、エンドサイトーシスによりこれを細胞中に輸送する。受容体-リガンド複合体は、内在化されるためにはまず、クラスリン被覆ピット中に密集しなければならない。LDLコレステロールのレベルの上昇は、冠動脈性心疾患の病態形成において中心的な役割を果たす。家族性高コレステロール血症を引き起こすLDLR遺伝子における影響の大きな機能欠失変異によって実証されるように、LDL受容体又はその制御における欠陥は、高レベルのLDL及び早発の心血管疾患をもたらす。
【0006】
生涯にわたる脂質低下薬物療法、例えばスタチン類又はエゼチミブが現在利用可能だが、これらは一部の患者には耐え難く、所望のLDL-Cレベルを得ることができないことが多い。より最近の治療的アプローチは、LDLRのリソソーム分解を促進するタンパク質であるプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を一過的に阻害する、皮下注入されたモノクローナル抗体に基づいている。現在、塩基編集によるPCSK9の恒久的な阻害が開発されつつあるが、FHの病原性の根拠ですらない遺伝子のそのような非可逆的ノックダウンの持続的な結果については、未知のままである。
【発明の概要】
【0007】
高コレステロール又は高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療又は予防するための、内因性LDLR遺伝子の発現又はその転写産物の半減期を増加させるアプローチを開示する。本発明のいくつかの側面によれば、開示するアプローチは、高コレステロール又は高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療又は予防するために、LDLR遺伝子の3’非翻訳領域(UTR)を標的とするものである。いずれかの作用機序に限定されるものではないが、本発明のいくつかの側面によれば、開示するアプローチは、LDLRの発現を増強し、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の取込みを促進するために、LDLRの転写及び/又は翻訳を制限する原因となる3’非翻訳領域(UTR)を、ノックアウト、除去、短縮化又はブロックするためのものである。したがって、例えば、この明細書で説明する、好ましくは肝臓細胞(例.肝実質細胞)中の、LDLR遺伝子の3’UTRにおける調節エレメント結合部位(例.miRNA結合部位)の両アレルの切除又はノックアウトを利用して、LDLR分子の半減期又は発現レベルを増加させ、これにより、高コレステロール血症を治療し、阻止し、予防し、及び/又は寛解させてもよい。いくつかの態様では、この明細書で説明するLDLR遺伝子の3’UTRの少なくとも部分的な切除を利用して、転写産物の半減期又はLDLR分子の発現を増加させ、これにより、高コレステロール血症を治療し、阻止し、予防し、及び/又は寛解させてもよい。
【0008】
いくつかの態様では、細胞中の内因性低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子の発現を増加させる方法であって、LDLR遺伝子の改変又はLDLR遺伝子がコードする転写産物の改変を含む方法を提供する。いくつかの態様では、細胞中の内因性低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子の発現を増加させる方法であって、LDLR遺伝子又はLDLR転写産物の3’UTRの少なくとも一部分を、改変、ブロック又は除去することを含む方法を提供する。
【0009】
ある態様では、この方法は、
CRISPRヌクレアーゼ、又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
17~50ヌクレオチドを有するガイド配列部分を含むRNA分子、又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子
を含む組成物の細胞への導入を含み、
CRISPRヌクレアーゼとRNA分子の複合体がLDLR遺伝子の1つのアレルを二本鎖切断する。
【0010】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTR又はその一部分は、CRISPRヌクレアーゼ及び第1のRNA分子によって形成される第1の二本鎖切断と、CRISPRヌクレアーゼ及び第2のRNA分子によって形成される第2の二本鎖切断との組合せにより切除される。
【0011】
限定するものではない例として、LDLR 3’UTRの一部分は、OMNI-50 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10749)と配列番号7707で示す配列を含むガイド配列部分を含む第1のRNA分子とを含む第1のCRISPR複合体、及びOMNI-50 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10749)と配列番号9843で示す配列を含むガイド配列部分を含む第2のRNA分子とを含む第2のCRISPR複合体の複合的な活性により切除されてもよい。
【0012】
別の限定するものではない例において、LDLR 3’UTRの一部分は、OMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10744)と配列番号7871で示す配列を含むガイド配列部分を含む第1のRNA分子とを含む第1のCRISPR複合体、及びOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10744)と配列番号9843で示す配列を含むガイド配列部分を含む第2のRNA分子とを含む第2のCRISPR複合体の複合的な活性により切除されてもよい。
【0013】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子を提供する。
【0014】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を提供する。
【0015】
本発明のいくつかの態様では、例えば、細胞中のLDLRのmiRNA結合部位を不活性化することによる、細胞中のLDLR遺伝子の発現を増加させる方法であって、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を細胞へ送達することを含む方法を提供する。いくつかの態様では、細胞は肝臓細胞である。いくつかの態様では、細胞は肝実質細胞である。いくつかの態様では、細胞は幹細胞である。いくつかの態様では、細胞への送達は、in vivo、ex vivo又はin vitroで実施する。いくつかの態様では、細胞への送達は、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)又はナノ粒子の、肝臓へのin vivo送達によって実施する。いくつかの態様では、この方法はex vivoで実施され、細胞は、個々の患者から提供/外植される。いくつかの態様では、この方法は、不活性化されたmiRNA結合部位を含有する少なくとも1つの改変されたLDLRアレルを有する得られた細胞を、個々の患者に導入する工程を更に含む。
【0016】
本発明のいくつかの態様では、高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療及び/又は予防する方法であって、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を、高コレステロール血症にり患した又はり患するリスクがある対象の細胞へ送達することを含む方法を提供する。
【0017】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を細胞へ送達することを含む、細胞中のLDLRアレルのmiRNA結合部位を不活性化するための、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物の使用を提供する。
【0018】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を含む医薬を提供し、前記医薬は、組成物を細胞へ送達することにより投与される。
【0019】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物の、高コレステロール血症を治療する、寛解させる、又は予防するための使用を提供し、前記組成物は、高コレステロール血症にり患した又はり患するリスクがある対象の細胞へ送達される。
【0020】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子及びCRISPRヌクレアーゼを含む組成物を含む、高コレステロール血症を治療する、寛解させる、又は予防するための医薬を提供し、前記組成物は、高コレステロール血症にり患した又はり患するリスクがある対象の細胞へ送達することにより投与される。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ、及び必要に応じてtracrRNA分子、並びに前記RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ、及び必要に応じてtracrRNAを細胞へ送達することについての使用説明書を含む、細胞中のLDLR発現を増加させるキットを提供する。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ、及び/又はtracrRNA分子、並びに前記RNA分子、CRISPRヌクレアーゼ、及び必要に応じてtracrRNAを、高コレステロール血症を有する又は有するリスクがある対象の細胞へ送達することについての使用説明書を含む、対象において高コレステロール血症を治療又は予防するためのキットを提供する。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した方法のいずれか1つにより改変された、又はこの明細書に記載した組成物のいずれか1つを使用して改変された細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1A~1Hは、LDLR 3’UTR切除の機能の概念実証である。SpCas9及び2つのシングルガイドRNA(sgRNA)を同時に使用して、LDLR遺伝子の3’UTRを改変した。この標的化はHepG2細胞で行い、3’UTRのほぼ全体(g1+g9)、miR85結合領域(g6+g7)、又はFH患者でLDLR発現を上方制御することが以前に示されている2.5キロベース領域のいずれかを切除した。
【
図1B】切除された細胞はいずれも、mRNA(qRT-PCRで測定した「Rq」値)の上方制御を示した。その効果は、3’UTR全体が切除された細胞で特に顕著であった。
【
図1C】切除された細胞はいずれも、総タンパク質(ウエスタンブロットで測定)の上方制御を示した。その効果は、3’UTR全体が切除された細胞で特に顕著であった。
【
図1D】切除された細胞はいずれも、膜タンパク質(フローサイトメトリー分析で測定)の上方制御を示した。その効果は、3’UTR全体が切除された細胞で特に顕著であった。
【
図1E】ガイドg1+g9で3’UTRを切除した細胞の蛍光LDLコレステロール取込みを、指定の時点にフローサイトメトリーで測定した。全ての時点で、コレステロール取込みの最大で2倍の上方制御が示された(LDL-DyLight(商標)488-コレステロール取込み)。
【
図1F】sgRNAのさまざまな組合せを用いて、3’UTR LDLR切除実験を行った。
【
図1G】sgRNAのさまざまな組合せを用いて、3’UTR LDLR切除実験を行った。
【
図1H】
図1F及び
図1Gに示したLDLR 3’UTR切除実験の切断マップを、LDLRの発現(Rq値)に対するsgRNAの組合せ形成の効果と共に示す。ddPCRプローブ部位を含まない組合せはddPCRでは検出できない点に留意されたい。
【
図2A】患者に由来するヘテロ接合LDLR変異体LCL細胞:表面受容体の低下が、いずれの患者のものでも確認された(
図2A及び
図2B)。
図2Aに、患者LCL細胞株対WT細胞における、膜LDLRのフローサイトメトリー分析を示す。
【
図2B】
図2Bに、WT LCL細胞の値から、各細胞株の発現の割合(幾何平均)を計算した結果を示す。
【
図2C】GM1448変異を有するFH患者のLCL細胞は、Gly197の欠失[△G197]に対応する。
【
図2D】GM1460変異は、コドン646におけるシステインからチロシンへの置換[C646Y]に対応する。
【
図3A】ヘテロ接合のFH患者のLCL細胞におけるLDLR 3’UTRの切除は、表面LDLRの上方制御とコレステロールの取込みの増加をもたらす。特定のガイド(g1及びg9)とSpCas9を使用して、ヘテロ接合のFH患者に由来するLCL細胞株でLDLR遺伝子の3’UTRを切除した。切除後、LDLRの発現とLDL-コレステロールの取込みについて細胞を分析した(以上、
図3A~
図3D)。
図3Aに、ddPCRで測定したLDLR 3’UTR切除の割合を示す。
【
図3B】
図3Bに、qRT-PCRで測定したLDLR mRNAのレベルを示す。
【
図3C】
図3Cに、特異的な抗体を使用するフローサイトメトリーで測定した、LDLR表面タンパク質発現のレベルを示す。
【
図3D】
図3Dに、4時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーで測定した、LDL-Dylight-488-コレステロールの取込みを示す。
【
図4A】マウス肝臓細胞株Hepa1-6におけるLDLRの3’UTRの切除は、ヒト肝臓HepG2細胞における結果と一致する。特定のガイド(g1m及びg6m)とSpCas9を使用して、マウス肝細胞癌細胞株Hepa1-6でLDLR遺伝子の3’UTRを切除した。切除後、LDLRの発現とLDL-コレステロールの取込みについて細胞を分析した(以上、
図4A~
図4C)。
図4Aに、qRT-PCRで測定したLDLR mRNAのレベルを示す。
【
図4B】
図4Bに、特異的な抗体を使用するフローサイトメトリーで測定した、LDLR表面タンパク質発現のレベルを示す。
【
図4C】
図4Cに、4時間のインキュベーション後にフローサイトメトリーで測定した、LDL-Dylight-488-コレステロールの取込みを示す。
【
図5A】3’UTR領域での、OMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ系ガイドのスクリーニング(
図5A~
図5C)。
図5Aに、WT OMNI-79又はOMNI-79 V5570のいずれかを使用する、LDLRの3’UTRの指定された領域を標的とするガイドの、HeLa細胞におけるトランスフェクションに基づくガイドのスクリーニングの結果を示す。いくつかのガイドは高いレベルの編集を示し、RNP又はRNA組成物として更に評価される。
【
図5B】
図5Bに、OMNI-103によるLDLRの3’UTRの指定された領域を標的とするガイドの、HeLa細胞におけるトランスフェクションに基づくガイドのスクリーニングの結果を示す。OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼを使用した複数のガイド分子では活性が高い。
【
図5C】
図5Cは、ガイド分子のLDLR標的部位の概略図である。
【
図6A】HepG2細胞における、CRISPRベースの編集によるPCSK9のノックアウトと、そのLDLR発現及びLDL取込みに対する効果(
図6A~
図6E)。
図6Aの表題は、PCSK9編集である。特定のガイド分子によるPCSK9の改変後に、HepG2細胞における編集のレベルを測定した。
【
図6B】
図6Bの表題は、PCSK9 qRT-PCRである。PCSK9編集後のHepG2細胞におけるPCSK9のmRNAレベル。
【
図6C】
図6Cの表題は、分泌されたPCSK9である。野生型細胞と比較したPCSK9編集細胞におけるPCSK9の分泌を、ELISAにより測定した。
【
図6D】
図6Dの表題は、LDLR発現である。野生型細胞及びLDLR 3’UTR切除細胞と比較した、PCSK9改変細胞におけるLDLRの膜発現を測定した。
図6E:LDL-コレステロール取込み。これらの細胞にロバスタチンを16時間添加した場合と添加しない場合の488-LDLコレステロールの取込みを、4時間測定した。
【
図6E】
図6Eの表題は、LDL-コレステロール取込みである。これらの細胞にロバスタチンを16時間添加した場合と添加しない場合の488-LDLコレステロールの取込みを、4時間測定した。
【
図7A】LDLR発現の上方制御に必須であるLDLR 3’UTRの領域を特定するために、sgRNAのSpCas9とのいくつかの異なる組合せを使用して、ヒト肝癌細胞株HepG2で、LDLR 3’UTRの一部分を切除した。切除後、mRNAのレベルと表面膜におけるLDLRの発現レベルについて、細胞を分析した(以上、
図7A~
図7C)。
図7Aは、各sgRNAの編集割合が、試験を行ったガイドの全てで90%を超えたことを示す。
【
図7B】
図7Bは、LDLR 3’UTR切除のそれぞれについての、ddPCRで測定したLDLR 3’UTR切除の割合(可能であれば4回測定)、qRT-PCRで測定したLDLR mRNAのレベル(2回測定)、及びLDLR特異的抗体を使用したフローサイトメトリーで測定したLDLR膜タンパク質の発現レベルを示す(3回の実験)。
【
図7C】
図7A及び
図7Bに示したLDLR 3’UTR切除実験の切断マップを、LDLRの発現(Rq値)に対するsgRNA組合せ形成の効果と共に示す。
【
図8A】ガイドg46及びg79とOMNI-50リボ核タンパク質(RNP)複合体による、HepG2細胞におけるLDLR 3’UTRの切除。簡潔に説明すると、特定のガイドとOMNI-50 CRISPRヌクレアーゼを使用して、ヒト細胞株HepG2でLDLR遺伝子の3’UTRを切除した。切除後、LDLR発現レベルとLDL-コレステロール取込みについて、細胞を分析した(以上、
図8A~
図8D)。
図8Aは、ddPCR測定によるLDLR 3’UTRの切除の割合を示す。
【
図8B】
図8Bは、qRT-PCRで測定したLDLR mRNAのレベルを示す。
【
図8C】
図8Cは、DLR特異的抗体を用いたフローサイトメトリーで測定した、LDLR膜タンパク質発現レベルを示す。
【
図8D】
図8Dは、ロバスタチンを添加した場合と添加しない場合で、4時間のインキュベーション後のフローサイトメトリーにより測定した、LDL-Dylight-488-コレステロールの取込みを示す。
【
図9A】ガイドg38及びg79とOMNI-79リボ核タンパク質(RNP)複合体の導入、又はOMNI-79をコードするmRNA並びにガイドg38及びg79を含むRNA組成物の導入による、HepG2細胞におけるLDLR 3’UTRの切除。簡潔に説明すると、特定のガイドとOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼを使用して、HepG2でLDLR遺伝子の3’UTRを切除した。切除後、LDLR発現レベルとLDL-コレステロール取込みについて、細胞を分析した(以上、
図9A~
図9D)。
図9Aは、ddPCR測定によるLDLR 3’UTRの切除の割合を示す。
【
図9B】
図9Bは、qRT-PCRで測定したLDLR mRNAのレベルを示す。
【
図9C】
図9C:LDLR特異的抗体を用いたフローサイトメトリーで測定した、LDLR膜タンパク質発現レベルを示す。
【
図9D】
図9D:ロバスタチンを添加した場合と添加しない場合で、4時間のインキュベーション後のフローサイトメトリーにより測定した、LDL-Dylight-488-コレステロールの取込みを示す。
【
図10】本発明におけるCRISPRベースのLDLR 3’UTR切除ストラテジーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
別段の定義がある場合を除き、この明細書で用いる全ての技術的及び/又は科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。この明細書に記載したものと類似した又は等価の方法及び材料は、本発明の態様の実施又は試験に用いることができるが、代表的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含めて、この特許明細書が優先する。加えて、材料、方法及び実施例は例証となるのみであり、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0026】
この明細書では、用語「1つの(a、an)」は、列挙された成分の「1つ以上」を指すことが理解される。単数形の使用は、具体的に別段の説明がある場合を除き、複数形を含むことは当業者に明らかである。したがって、用語「1つの(a、an)」及び「少なくとも1つの」は、この出願では同じ意味である。
【0027】
この教示をより良く理解することを目的として、かつ教示の範囲を決して限定することなく、別段の指示がある場合を除き、この明細書及び特許請求の範囲で用いられる、量、パーセンテージ又は割合を表す全ての数及び他の数値は、あらゆる場合において、用語「約」により修飾されていると理解される。したがって、反する指示がある場合を除き、明細書及び特許請求の範囲に示した数的パラメータは、得られるように求められる所望の性質に依存して変動し得る近似値である。最低でも、各数的パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮しかつ通常の丸め技術を適用することによって解釈される。
【0028】
別段の説明がある場合を除き、形容詞、例えば、本発明の態様の特徴を示す状態又は関係を修飾する「実質的に」及び「約」は、その状態又は特性が、それが意図される適用についての態様の運用に受け入れられる許容範囲内までで定義されることを意味すると理解される。別段の指示がある場合を除き、この明細書及び特許請求の範囲における語「又は」は、排他的な「又は」というよりむしろ、包含的な「又は」であると見なされ、それが結合させる項目の少なくとも1つ又は任意の組合せを示す。
【0029】
本出願の説明及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「含有する(include)」及び「有する(have)」、並びにそれらの活用形は、その動詞の目的語が、必ずしも、その動詞の主語の成分、要素又は部分の完全な列挙とは限らないことを示すために用いられる。この明細書では他の用語は、当技術分野におけるそれらの周知の意味により定義されることを意図される。
【0030】
本発明のいくつかの態様では、DNAヌクレアーゼを利用して、標的部位のDNAを切断し、例えば、非相同末端結合(NHEJ)が挙げられるがこれには限定されない、細胞修復機構を誘導する。古典的なNHEJでは、二本鎖切断(DSB)部位の2つの末端が、迅速ではあるものの不正確に連結される(すなわち、切断部位におけるわずかな挿入又は欠失というDNAの変異が多く生じる)。
【0031】
この明細書では、用語「改変された細胞」は、標的配列とのハイブリダイゼーション、すなわち、オンターゲットハイブリダイゼーションの結果、RNA分子及びCRISPRヌクレアーゼの複合体が二本鎖切断する細胞を指す。
【0032】
この明細書では、用語「標的化配列」又は「標的化分子」は、特定の標的配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列、又はヌクレオチド配列を含む分子を指し、例えば、標的化配列は、標的となる配列と少なくとも部分的に相補的であるヌクレオチド配列を有する。標的化配列又は標的化分子は、単独で、又は他のRNA分子と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよく、標的化配列が、CRISPR複合体の標的化部分としての役割を果たす。標的化配列を有する分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、単独で又は他の1つ以上のRNA分子(例.tracrRNA分子)と組み合わせて、CRISPRヌクレアーゼの標的を特定の標的配列とする能力がある。限定するものではない例として、CRISPR RNA分子のガイド配列部分又はシングルガイドRNA分子は、標的化分子としての役割を果たしてもよい。それぞれの実現可能性は、個別の態様である。標的化配列は、所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。
【0033】
この明細書では、用語「標的とする」は、標的化分子の標的化配列を、標的化されるヌクレオチド配列を有する核酸へ優先的にハイブリダイズさせることを指す。用語「標的化する」は、可変性のハイブリダイゼーション効率を包含し、したがって、標的化されるヌクレオチド配列を有する核酸の優先的標的化があるが、オンターゲットハイブリダイゼーションに加えて、意図しないオフターゲットハイブリダイゼーションも生じる可能性があることは理解されている。RNA分子が配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼ分子の複合体は、ヌクレアーゼ活性のためにその配列を標的とすることは理解されている。
【0034】
RNA分子の「ガイド配列部分」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を指し、例えば、ガイド配列部分は、ガイド配列部分に沿って標的化されるDNA配列と部分的に又は完全に相補的であるヌクレオチド配列を有する。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50、又は、およそ17~50、17~49、17~48、17~47、17~46、17~45、17~44、17~43、17~42、17~41、17~40、17~39、17~38、17~37、17~36、17~35、17~34、17~33、17~31、17~30、17~29、17~28、17~27、17~26、17~25、17~24、17~22、17~21、18~25、18~24、18~23、18~22、18~21、19~25、19~24、19~23、19~22、19~21、19~20、20~22、18~20、20~21、21~22若しくは17~20である。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは17~50である。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは17~25である。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは17~22である。いくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは17~20である。いくつかの態様では、ガイド配列部分の全長は、ガイド配列部分に沿って標的化されるDNA配列と完全に相補的である。ガイド配列部分は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部であってもよく、ガイド配列部分がCRISPR複合体のDNA標的化部分としての役割を果たす。ガイド配列部分を有するDNA分子が、CRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼの標的を特定の標的DNA配列とする能力がある。それぞれの実現可能性は、個別の態様である。RNA分子は、任意の所望の配列を標的とするようにカスタムデザインできる。したがって、「ガイド配列部分」を含む分子は一種の標的化分子である。いくつかの態様では、ガイド配列部分は、この明細書に記載したガイド配列部分、例えば、配列番号1~20246のいずれかに示すガイド配列と同じ配列、又は1、2、3、4若しくは5ヌクレオチド以下の異なる配列を含む。それぞれの実現可能性は、個別の態様である。これらの態様の一部において、ガイド配列部分は、標的配列に対して完全に相補的であり、配列番号1~20246のいずれかに示す配列と同じ配列を含む。この出願全体で、用語「ガイド分子」、「RNAガイド分子」、「ガイドRNA分子」及び「gRNA分子」は、ガイド配列部分を含む分子と同義である。
【0035】
この明細書では、用語「非区別的な」は、遺伝子の全てのアレルで共通する特定のDNA配列を標的とするRNA分子のガイド配列部分を指す。
【0036】
本発明のいくつかの態様では、RNA分子は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドのガイド配列部分を含む。
【0037】
RNA分子及び/又はRNA分子のガイド配列部分は、修飾ヌクレオチドを有してもよい。ヌクレオチド/ポリヌクレオチドへの代表的な修飾は、合成であってもよく、天然に存在するアデニン、シトシン、チミン、ウラシル又はグアニン塩基以外の塩基を含むヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを包含してもよい。ポリヌクレオチドへの修飾には、合成で、天然に存在しないヌクレオシド、例えば、ロックド核酸を有するポリヌクレオチドが挙げられる。RNAの安定性を増加又は減少させるために、ポリヌクレオチドを修飾してもよい。修飾ポリヌクレオチドの例は、1-メチルプソイドウリジンを有するmRNAである。修飾ポリヌクレオチドとその用途の例は、参照によりこの明細書に組み入れられる米国特許第8,278,036号、国際公開第2015/006747号及びWeissman and Kariko (2015)を参照。
【0038】
この明細書では、配列番号で示す「連続するヌクレオチド」は、ヌクレオチドの介入を一切含まない、配列番号に示した順序での配列のヌクレオチドを指す。
【0039】
本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分は、17~50ヌクレオチド長であってもよく、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する20~22ヌクレオチドを含有してもよい。本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分は、22ヌクレオチド長未満であってもよい。例えば、本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分は、17、18、19、20又は21ヌクレオチド長であってもよい。そのような態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す連続する17~22ヌクレオチドの配列における、それぞれ17、18、19、20又は21ヌクレオチドからなってもよい。例えば、配列番号10739に示す連続する17ヌクレオチドの配列のガイド配列部分は、以下のヌクレオチド配列のいずれか1つからなってもよい(連続する配列から排除されたヌクレオチドには、取り消し線が引かれている):
【0040】
【0041】
本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチドの長さは、20を超えてもよい。例えば、本発明のいくつかの態様では、ガイド配列部分のヌクレオチド長は、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30であってもよい。そのような態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す連続する20、21又は22ヌクレオチドの配列を含有する17~50ヌクレオチド、及び、標的配列の3’末端、5’末端、又は両者に隣接するヌクレオチド(の配列)に完全に相補的なヌクレオチドを含む。
【0042】
本発明のいくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼ、及びガイド配列部分を含むRNA分子は、標的DNA配列と結合して、標的DNA配列を切断するCRISPR複合体を形成する。CRISPRヌクレアーゼ、例えば、Cpf1は、追加のtracrRNA分子なしで、CRISPRヌクレアーゼ及びRNA分子を含むCRISPR複合体を形成してもよい。あるいは、CRISPRヌクレアーゼ、例えば、Cas9は、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子とtracrRNA分子の間でCRISPR複合体を形成してもよい。特定の標的DNA配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を含むガイド配列部分と、CRISPRヌクレアーゼ結合に関与する配列部分、例えば、tracrRNA配列部分は、同じRNA分子中に存在できる。あるいは、ガイド配列部分は1つのRNA分子に存在し、CRISPRヌクレアーゼ結合に関与する配列部分、例えば、tracrRNA部分は、別のRNA分子に存在してもよい。ガイド配列部分(例.DNA標的化RNA配列)及び少なくとも1つのCRISPRタンパク質結合RNA配列部分(例.tracrRNA配列部分)を含む単一のRNA分子が、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成し、DNA標的化分子としての役割を果たすことができる。いくつかの態様では、ガイド配列部分を含むDNA標的化RNA部分を含む第1のRNA分子と、CRISPRタンパク質結合RNA配列を含む第2のRNA分子は、塩基対形成により相互作用して、CRISPRヌクレアーゼの標的をDNA標的部位とするRNA複合体を形成し、あるいは、融合してCRISPRヌクレアーゼと複合体化し、CRISPRヌクレアーゼの標的をDNA標的部位とするRNA分子を形成する。
【0043】
本発明のいくつかの態様において、ガイド配列部分を含むRNA分子は、tracrRNA分子の配列を更に含んでいてもよい。そのような態様は、RNA分子のガイド部分とトランス活性化crRNA(tracrRNA)の合成的融合体としてデザインされてもよい。(Jinek et al., 2012参照)。そのような態様では、RNA分子はシングルガイドRNA(sgRNA)分子である。本発明のいくつかの態様は、個々のtracrRNA分子及びガイド配列部分を含む個々のRNA分子を利用するCRISPR複合体も形成してもよい。そのような態様では、tracrRNAは、塩基対形成を介してRNA分子とハイブリダイズしてもよく、この明細書に記載した発明のある特定の適用において有利である可能性がある。
【0044】
用語「tracrメイト配列」は、塩基対形成を介してtracrRNAとハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成を促進するように、tracrRNA分子に対して十分に相補的な配列を指す。(米国特許第8,906,616号参照)。本発明のいくつかの態様では、RNA分子はtracrメイト配列を有する部分を更に含んでいてもよい。
【0045】
本発明では、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域、及び、遺伝子産物の産生を制御する全てのDNA領域を含み、前記制御領域の配列は、コード配列及び/又は転写配列と隣接しているか、していないかを問わない。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳制御配列、例えば、リボソーム結合部位及び配列内リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位、並びに遺伝子座調節領域が挙げられるが、必ずしもそれらに限定されるものではない。
【0046】
「真核」細胞には、真菌細胞(例.酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、及びヒト細胞が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0047】
この明細書では、用語「ヌクレアーゼ」は、核酸のヌクレオチドサブユニット間のホスホジエステル結合を切断する能力がある酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然物から単離してもよく、又は天然物に由来するものであってもよい。天然物は、生きている生物体であってもよい。あるいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合切断活性を保持する、改変された又は合成されたタンパク質であってもよい。遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えばCRISPRヌクレアーゼを用いて実現できる。
【0048】
本発明のいくつかの態様では、細胞中の内因性低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子の発現を増加させる方法であって、LDLR遺伝子の改変又はLDLR遺伝子がコードする転写産物の改変を含む方法を提供する。
【0049】
いくつかの態様では、細胞内の内因性LDLR遺伝子の発現の増加が、LDLR遺伝子を改変する前の細胞内のLDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルと比較して、LDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルの、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%又は少なくとも600%の増加として測定される。転写産物のレベル(例.qRT-PCR)及びタンパク質のレベル(例.抗体染色、フローサイトメトリー)を測定する方法は当技術分野において知られている。
【0050】
いくつかの態様では、内因性LDLR遺伝子の発現の増加は、LDLR遺伝子を改変する前の細胞によるLDL-Cの取込みと比較して、細胞によるLDL-Cの取込みを、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、又は少なくとも500%増加させる。
【0051】
いくつかの態様では、LDLR遺伝子は、CRISPRヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)若しくはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)により改変される、又はLDLR遺伝子がコードする転写産物が、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)若しくはマイクロRNA(miRNA)により改変される。
【0052】
いくつかの態様では、LDLR遺伝子又はLDLR遺伝子がコードする転写産物の3’非翻訳領域(UTR)が改変される。例えば、LDLR遺伝子の転写産物は、siRNA分子の転写産物への結合により改変されてもよい。転写産物のそのような改変は、転写産物の3’UTRへの接触をブロックするために実施されてもよい。
【0053】
いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRは、3’UTR又はその一部分の切除により改変される。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの領域が切除される。いくつかの態様では、3’UTRの切除された領域の5’末端は、LDLR終止コドンの末端の少なくとも1、2、5、10、15、20、30、40、50、60ヌクレオチド下流に位置し、3’UTRの切除された領域の3’末端は、内因性LDLRポリアデニル化シグナルの少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、40、50、60ヌクレオチド上流に位置する。各可能性は、別々の態様を表す。いくつかの態様では、3’UTRの切除された領域は、LDLR遺伝子の終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流にあり、ポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流にある。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、ポリアデニル化シグナルの500、450、400、300、200ヌクレオチド(「塩基対(bp)」とも呼ばれる)上流からポリアデニル化シグナルの100、90、70、80、70、60ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。各可能性は、別々の態様を表す。いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除された領域は、ポリアデニル化シグナルの500ヌクレオチド上流からポリアデニル化シグナルの60ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、終止コドンの800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500ヌクレオチド下流からポリアデニル化シグナルの200、100、90、70、60、50ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。各可能性は、別々の態様を表す。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、終止コドンの800ヌクレオチド下流からポリアデニル化シグナルの60ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、終止コドンの100~300ヌクレオチド下流からポリアデニル化シグナルの170~30ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、終止コドンの175ヌクレオチド下流からポリアデニル化シグナルの70ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。いくつかの態様では、LDLR遺伝子の3’UTRの切除された領域は、終止コドンの230ヌクレオチド下流からポリアデニル化シグナルの70ヌクレオチド上流にわたる、少なくとも一領域の切除を含む。
【0054】
いくつかの態様では、この方法は、
少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子;及び
ガイド配列を含む、RNA分子又はRNA分子をコードするDNA分子
を含む組成物の細胞への導入を含み、
CRISPRヌクレアーゼとRNA分子の複合体が、LDLR遺伝子の1つのアレルを二本鎖切断し、これにより、LDLR遺伝子の発現を増加させる。
【0055】
いくつかの態様では、LDLRの3’UTRに位置する、LDLR発現を抑止することに関与する1つ以上の部位、例えばmiRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)は不活性化され、LDLRの発現の増加をもたらす。
【0056】
いくつかの態様では、組成物は、対象の細胞又は培養中の細胞に導入される。
【0057】
いくつかの態様では、細胞は肝臓細胞である。いくつかの態様では、細胞は肝実質細胞である。いくつかの態様では、細胞は幹細胞である。
【0058】
いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼ、及びRNA分子又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子(例.DNA分子)は、実質的に同時に又は異なる時点で細胞に導入される。
【0059】
いくつかの態様では、細胞内のLDLR遺伝子のmiRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)は、挿入変異又は欠失変異を受ける。いくつかの態様では、少なくとも1つのmiRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)が、細胞における一方又は両方のLDLRアレルから完全に切除される。
【0060】
いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの下流又はポリアデニル化シグナルの上流に位置する部位を標的とする。いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの末端の少なくとも1、2、5、10、15、20、30、40、50ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、40、50ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする。各可能性は、別々の態様を表す。いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする。
【0061】
いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、LDLRアレル中のmiRNA結合部位を標的とする。
【0062】
いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、miR-85結合部位又はmiR-148結合部位を標的とする。
【0063】
いくつかの態様では、LDLR遺伝子のアレルの二本鎖切断の結果、miRシード配列は不活性化される。
【0064】
いくつかの態様では、miRシード配列は、UGGUGCUA又はCACUGUGである。
【0065】
いくつかの態様では、miRシード配列は、miR-185又はmiR-148シード配列である。
【0066】
いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子の複合体は、LDLR遺伝子の一対のアレルを二本鎖切断する。
【0067】
いくつかの態様では、RNA分子のガイド配列部分は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0068】
いくつかの態様では、細胞に導入される組成物は、ガイド配列部分を含む、第2のRNA分子又は第2のRNA分子をコードするヌクレオチド分子(例.DNA分子)を更に含む。
【0069】
いくつかの態様では、第2のRNAのガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする。
【0070】
いくつかの態様では、第2のRNA分子のガイド配列部分は、第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0071】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTR又はその一部分は、CRISPRヌクレアーゼと第1のRNA分子によって形成される二本鎖切断、及びCRISPRヌクレアーゼと第2のRNA分子によって形成される二本鎖切断により切除される。いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの配列の少なくとも一部分を含む配列が切除される。いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの配列を含む配列が切除される。
【0072】
限定するものではない例として、LDLR 3’UTRの一部分は、OMNI-50 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10749)と配列番号7707で示す配列を含むガイド配列部分を含む第1のRNA分子とを含む第1のCRISPR複合体、及びOMNI-50 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10749)と配列番号9843で示す配列を含むガイド配列部分を含む第2のRNA分子とを含む第2のCRISPR複合体の複合的な活性により切除されてもよい。
【0073】
別の限定するものではない例において、LDLR 3’UTRの一部分は、OMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10744)と配列番号7871で示す配列を含むガイド配列部分を含む第1のRNA分子とを含む第1のCRISPR複合体、及びOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ(配列番号10744)と配列番号9843で示す配列を含むガイド配列部分を含む第2のRNA分子とを含む第2のCRISPR複合体の複合的な活性により切除されてもよい。
【0074】
したがって、特定のガイド配列部分を組み合わせて使用して、LDLR 3’UTRの一部分を切除してもよい。以下の態様は、LDLR遺伝子の発現を増加させるために切除されてもよいLDLR 3’UTRの一部分の、いくつかの限定するものではない例を提供する。列挙された、示したゲノム位置は、gnomAD v3 database and UCSC Genome Browser assembly ID: hg38, Sequencing/Assembly provider ID: Genome Reference Consortium Human GRCh38.p12 (GCA_000001405.27). Assembly date: Dec. 2013 initial release; Dec. 2017 patch release 12に基づく。
【0075】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131463から19:11133279に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1120で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号2656で示される配列を含んでいてもよい。
【0076】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131463から19:11133713に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1120で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号796で示される配列を含んでいてもよい。
【0077】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131463から19:11132114に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1120で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号477で示される配列を含んでいてもよい。
【0078】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131463から19:11132115に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1120で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1913で示される配列を含んでいてもよい。
【0079】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131516から19:11133713に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号181で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号796で示される配列を含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131557から19:11131567に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号901で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1927で示される配列を含んでいてもよい。
【0081】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11133279から19:11133713に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号2656で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号796で示される配列を含んでいてもよい。
【0082】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11133713から19:11132114に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号796で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号477で示される配列を含んでいてもよい。
【0083】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11133713から19:11132115に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号796で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号1913で示される配列を含んでいてもよい。
【0084】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131467から19:11133713に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号7871で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号9843で示される配列を含んでいてもよい。
【0085】
いくつかの態様では、LDLR 3’UTRの切除した部分は、ほぼ19:11131519から19:11133713に及ぶ。例えば、LDLR 3’UTRからそのような部分を切除するために、第1のRNA分子のガイド配列部分は配列番号7707で示される配列を含んでいてもよく、第2のRNA分子のガイド配列部分は配列番号9843で示される配列を含んでいてもよい。
【0086】
いくつかの態様では、内因性LDLRのポリアデニル化シグナルは改変されない。
【0087】
いくつかの態様では、第1のRNA分子又は第2のRNA分子のガイド配列部分は、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個又は5個のヌクレオチドミスマッチを有する。
【0088】
いくつかの態様では、ガイド配列部分は、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含み、前記連続するヌクレオチドは、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個又は5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている。
【0089】
いくつかの態様では、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個又は5個のヌクレオチドミスマッチを有するように改変されたガイド配列部分の、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子の複合体に対する標的特異性は、LDLR遺伝子の変異したアレルに対して高い相補性を有するガイド配列部分より高い。
【0090】
いくつかの態様では、細胞内の内因性LDLR遺伝子の発現の増加は、LDLR遺伝子を改変する前の細胞内のLDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルと比較して、LDLR転写産物又はLDLRタンパク質のレベルの、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%又は少なくとも600%の増加として測定される。
【0091】
いくつかの態様では、内因性LDLR遺伝子の発現の増加は、LDLR遺伝子を改変する前の細胞によるLDL-Cの取込みと比較して、細胞によるLDL-Cの取込みを、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%又は少なくとも500%増加させる。
【0092】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、若しくはLDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている前記連続するヌクレオチドを含むRNA分子、又はRNA分子をコードするDNA分子を含む、組成物を提供する。
【0093】
いくつかの態様では、組成物は、CRISPRヌクレアーゼ、又はCRISPRヌクレアーゼをコードするヌクレオチド分子を更に含む。
【0094】
いくつかの態様では、組成物はtracrRNA分子を更に含む。
【0095】
いくつかの態様では、組成物は、ガイド配列部分を含む、第2のRNA分子又は第2のRNA分子をコードするDNA分子を更に含む。
【0096】
いくつかの態様では、第2のRNAのガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする。
【0097】
いくつかの態様では、第2のRNA分子のガイド配列部分は、第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、配列番号1~10736のいずれか1つ、又は第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0098】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した方法のいずれか1つにより改変された、又はこの明細書に記載した組成物のいずれか1つを使用して改変された細胞を提供する。
【0099】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した態様のいずれか1つの組成物を含む、細胞中のLDLRアレルを不活性化する医薬を提供し、前記組成物は、細胞へ送達される。
【0100】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した態様のいずれか1つの組成物又はこの明細書に記載した改変された細胞の、高コレステロール血症を治療する、寛解させる、又は予防するための使用を提供し、前記組成物又は改変された細胞は、高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達される。
【0101】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した態様のいずれか1つの組成物又はこの明細書に記載した改変された細胞を含む、高コレステロール血症を治療する、寛解させる、又は予防するための医薬を提供し、前記医薬は、前記組成物又は改変された細胞を高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することにより投与される。
【0102】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した態様のいずれか1つの組成物及び組成物を細胞へ送達することについての使用説明書を含む、細胞内のLDLR発現を増加させるキットを提供する。
【0103】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した態様のいずれか1つの組成物又はこの明細書に記載した改変された細胞、及び前記組成物又は改変された細胞を高コレステロール血症にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することについての使用説明書を含む、対象において高コレステロール血症を治療又は予防するためのキットを提供する。
【0104】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した組成物又は改変された細胞のいずれか1つの、高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療する、寛解させる、又は予防するための使用を提供し、前記組成物又は改変された細胞は、高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達される。
【0105】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した組成物又は改変された細胞のいずれか1つを含む、高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療する、寛解させる、又は予防する医薬を提供し、前記医薬は、前記組成物又は改変された細胞を高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することにより投与される。
【0106】
本発明のいくつかの態様では、細胞(例.肝臓細胞又は肝実質細胞)を改変して、対象における高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療する、寛解させる、又は予防することにおける使用のための、RNA分子を提供する。RNA分子は、ex vivo、in vitro、又はin vivoで細胞に送達してもよい。
【0107】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した組成物のいずれか1つ及び前記組成物を細胞へ送達することについての使用説明書を含む、細胞中のLDLRアレルのmiRNA結合部位及び/又はAUリッチ領域(AUR)を不活性化するキットを提供する。
【0108】
本発明のいくつかの態様では、この明細書に記載した組成物のいずれか1つの組成物及び組成物を高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)にり患している又はり患するリスクがある対象へ送達することについての使用説明書を含む、対象における高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療する、寛解させる、又は予防するためのキットを提供する。
【0109】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、又はLDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている前記連続するヌクレオチドを含むRNA分子を含む、組成物を提供する。
【0110】
いくつかの態様では、組成物は、CRISPRヌクレアーゼ又はその機能性誘導体を更に含む。
【0111】
いくつかの態様では、組成物はtracrRNA分子を更に含む。
【0112】
本発明のいくつかの態様では、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、若しくはLDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている前記連続するヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子、又はRNA分子をコードするヌクレオチド分子(例.DNA分子)を含む、遺伝子編集組成物を提供する。いくつかの態様では、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼと結合する配列を有する部分を更に含む。いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼと結合する配列はtracrRNA配列である。
【0113】
いくつかの態様では、RNA分子は、tracrメイト配列を有する部分又はこれをコードする分子を更に含む。
【0114】
いくつかの態様では、RNA分子は1つ以上のリンカー部分を更に含んでいてもよい。
【0115】
本発明のいくつかの態様では、RNA分子のヌクレオチド長は、1000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、又は100までであってもよい。それぞれの実現可能性は、個別の態様である。本発明のいくつかの態様では、RNA分子のヌクレオチドの長さは、17~300、100~300、150~300、100~500、100~400、200~300、100~200又は150~250であってもよい。それぞれの実現可能性は、個別の態様である。
【0116】
本発明のいくつかの態様では、組成物はtracrRNA分子を更に含む。
【0117】
いくつかの態様では、組成物は、第2のRNA分子又は第2のRNA分子をコードするDNA分子を更に含む。
【0118】
いくつかの態様では、第2のRNAのガイド配列部分は、LDLR 3’UTRの、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置する部位を標的とする。
【0119】
いくつかの態様では、第2のRNA分子のガイド配列部分は、第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド、又は第1のRNA分子に含まれる配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチド以外の、LDLRの標的配列と完全に相補的な配列に対して、1個、2個、3個、4個若しくは5個のヌクレオチドミスマッチを有するように更に改変されている、配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含む。
【0120】
本開示の組成物及び方法は、高コレステロール血症を治療し、予防し、寛解させ又はその進行を遅くするために利用してもよい。
【0121】
本発明では、細胞中のLDLRの発現を増加させる又はLDLRの半減期を増加させるためのこれまでに説明したストラテジーのいずれか1つ又は組合せを使用してもよい。
【0122】
いくつかの態様では、この方法は、LDLR遺伝子の増加した発現により重症度が低下する疾患表現型である、高コレステロール血症のリスクがある対象を治療するために利用される。そのような態様では、この方法は、疾患表現型を改善し、寛解させ又は予防する。
【0123】
この明細書に記載した組成物の態様は、少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNA分子を含み、対象又は細胞において同時に有効である。少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNAは、実質的に同時に送達してもよく、又は、異なる時点に送達できるが、効果は同時に生じる。例えば、これは、RNA分子及び/又はtracrRNAが対象又は細胞中に実質的に存在する前に、CRISPRヌクレアーゼを対象又は細胞へ送達することを含む。
【0124】
いくつかの態様では、ヒト細胞が、この明細書に記載した方法のいずれか1つにより改変される。いくつかの態様では、細胞は肝臓細胞である。いくつかの態様では、細胞は肝実質細胞である。いくつかの態様では、細胞は幹細胞である。
【0125】
LDLR編集ストラテジー
LDLR発現を増加させるために改変又は除去できるヒトLDLR遺伝子の具体的な領域は、未だ決定されていない。これまでに、Knouffら(2001)は、マウスLDLRアレルを短縮化したヒトLDLRミニ遺伝子バリアントと置き換えるように改変したマウスヘテロ接合体の肝臓において、肝LDLR mRNAレベルを中程度に増加させることを示している。さらに、Bjornssonら(2021)は、内因性ポリアデニル化シグナルを含むLDLR 3’UTRの遠位領域にわたってLDLR遺伝子を越え、機能獲得効果をもたらすと思われる2.5kbの欠失変異を有するいくつかのキャリアを含む、単一のファミリーを特定している。しかし、例えば、CRISPRヌクレアーゼを特定の部位へ標的化することによって、ヒトLDLR 3’UTRの特定の部分を標的とし、除去するストラテジーはこれまでに存在せず、並びにLDLR発現及びコレステロールレベルに対するそのような変異の効果は、これまでに判明していない。
【0126】
本発明は、例えば、対象の細胞中の制御因子部位を除去若しくは不活性化させ、又は1つ以上のLDLRアレルの3’UTRの部分を切除することによって、LDLR遺伝子の発現を増加させ、これにより高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)を治療又は予防する方法を提供する。したがって、細胞中のLDLRアレル内の制御因子部位をノックアウト又は不活性化させる方法は、高コレステロール血症(例.家族性高コレステロール血症)の治療、予防又は寛解のために使用してもよい。いくつかの態様では、制御因子部位は、miRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)である。
【0127】
LDLRの編集ストラテジーには、CRISPRヌクレアーゼの標的をLDLR 3’UTRのマイクロRNA結合部位とするガイド配列部分を含むRNA分子を利用することが挙げられるが、これには限定されない。例えば、ガイド配列部分は、miR-185シード配列又はmiR-148シード配列を標的としてもよい。そのようなシード部位における編集は、miRNAの3’UTRへの結合を防ぎ、これにより、LDLR mRNA及び/又はLDLRタンパク質のレベルを上方制御する。
【0128】
別のストラテジーは、それぞれがCRISPRヌクレアーゼの標的をLDLR 3’UTRの配列とする独自のガイド配列部分を含む2つのRNA分子を利用することを含む。3’UTRの少なくとも一部分の両アレル切除を達成するために、2つの標的とされる配列の1つ目はLDLR終止コドンの下流に位置していてもよく、2つ目はポリアデニル化シグナルの上流に位置していてもよい。そのような配列は、終止コドンの少なくとも30ヌクレオチド下流又はポリアデニル化シグナルの少なくとも30ヌクレオチド上流に位置していてもよい。このようにして、3’UTRの大半の両アレル切除が達成される。したがって、LDLRの発現を負に制御するmiRNA結合部位又はAUリッチ領域(AUR)制御部位は、無効化又は除去される。いくつかの態様では、これは、転写産物の安定性と翻訳効率に必須であるポリアデニル化シグナルを改変することなく、3’UTRを短縮化することで達成される。他の態様では、ポリアデニル化シグナルもまた少なくとも部分的に除去される。
【0129】
したがって、1つのストラテジーは、それぞれが3’UTRの配列を標的とする独自のガイド配列部分を含む2つのガイドRNA分子、及び少なくとも1つのCRISPRヌクレアーゼを利用して、LDLR遺伝子の3’UTR又はLDLR遺伝子の3’UTRの少なくとも一部分を含む配列を切除することを含む。そのような配列は、ポリアデニル化シグナルの下流又は終止コドンの上流に位置していてもよい。少なくとも一部分の3’UTR又は全ての3’UTRを含む両アレル切除を達成するために標的とすることができる配列の限定するものではない例として、1)終止コドンの上流に位置する第1の配列及びポリアデニル化シグナルの上流に位置する第2の配列;2)終止コドンの下流に位置する第1の配列及びポリアデニル化シグナルの下流に位置する第2の配列;並びに3)終止コドンの上流に位置する第1の配列及びポリアデニル化シグナルの下流に位置する第2の配列、が挙げられる。
【0130】
ガイド配列部分を含むRNA分子のいずれか1つは、シングルガイドRNA(sgRNA)分子又はCRISPR RNA(crRNA)分子であってもよい。crRNA分子は、当技術分野において説明されているように、通常、トランス活性化crRNA(tracrRNA)分子と共に利用されて、CRISPRヌクレアーゼを標的とする。したがって、示したストラテジーのそれぞれは、1つ以上のCRISPRヌクレアーゼを、1つ以上のシングルガイドRNA分子並びに/若しくは1つ以上のcrRNA及びtracrRNA分子、又はこれらの組合せと共に実施してもよい。組成物は、核酸ベクター、DNA分子、RNA分子、リボ核タンパク質(RNP)又はこれらの組合せのうちの1つ以上として、標的細胞に導入できる。
【0131】
CRISPRヌクレアーゼ及びPAM認識
いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼから選択されるか、その機能性バリアントである。いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼはRNA誘導型DNAヌクレアーゼである。そのような態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ(例.Cpf1)をガイドするRNA配列は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼと結合し、及び/又は、前記RNA誘導型DNAヌクレアーゼを細胞中の全てのLDLRアレルへ誘導する。いくつかの態様では、CRISPR複合体は、tracrRNAを更に含まない。RNA分子は、当技術分野において一般的に知られた方法により、ゲノム中の選択した標的と結合するように操作できることを、当業者は理解する。
【0132】
この明細書では、用語「PAM」は、標的となるDNA配列の近傍に位置し、かつCRISPRヌクレアーゼ複合体により認識される標的DNAのヌクレオチド配列を指す。PAM配列は、ヌクレアーゼの種類によって異なっていてもよい。加えて、ほとんど全てのPAMを標的にできるCRISPRヌクレアーゼがある。本発明のいくつかの態様では、CRISPRシステムは、ガイド配列部分と、標的を認識するための追加の要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣にある標的DNA部位のプロトスペーサーとの間で、ワトソン・クリック塩基対を形成することにより、CRISPRヌクレアーゼを標的DNA部位へ誘導するガイド配列部分を有する1つ以上のRNA分子を利用する。その後、CRISPRヌクレアーゼは、標的DNA部位を切断し、プロトスペーサー内に二本鎖切断を作り出す。限定するものではない例において、II型CRISPRシステムは、crRNAのガイド配列部分と、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間で、ワトソン・クリック塩基対を形成することにより、CRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)を標的DNAへ誘導する成熟crRNA:tracrRNA複合体を利用する。本発明の操作されたRNA分子が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば、利用するCRISPRヌクレアーゼに関連する配列に対応するPAM、の隣の目的の標的ゲノムDNA配列と会合するように更にデザインされることを、当業者は理解する。そのPAMは、例えば、限定するものではない例として、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9 WT(SpCAS9)ではNGG若しくはNAG(Nは任意の核酸塩基である);黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SaCas9)ではNNGRRT;Jejuni Cas9 WTではNNNVRYM;SpCas9-VQRバリアントではNGAN若しくはNGNG;SpCas9-VRERバリアントではNGCG;SpCas9-EQRバリアントではNGAG;SpCas9-NRRHバリアントではNRRH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9-NRTHバリアントではNRTH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9-NRCHバリアントではNRCH(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、HはA、C、又はTである);SpCas9のSpGバリアントではNG(Nは任意の核酸塩基である);SpCas9のSpCas9-NGバリアントではNG若しくはNA(Nは任意の核酸塩基である);SpCas9のSpRYバリアントではNR若しくはNRN若しくはNYN(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGであり、YはC又はTである);ストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)Cas9バリアント(ScCas9)ではNNG(Nは任意の核酸塩基である);黄色ブドウ球菌のSaKKH-Cas9バリアント(SaCas9)ではNNNRRT(Nは任意の核酸塩基であり、RはA又はGである);髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(NmCas9)ではNNNNGATT(Nは任意の核酸塩基である);アリサイクロバチルス・アシドフィルス(Alicyclobacillus acidiphilus)Cas12b(AacCas12b)ではTTN(Nは任意の核酸塩基である);又はCpflではTTTV(VはA、C、又はGである)である。本発明のRNA分子は、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと共に複合体を形成するようにそれぞれデザインされ、かつ前記CRISPRヌクレアーゼに対応する1つ以上の異なるPAM配列を利用して、目的のポリヌクレオチド配列を標的とするようにデザインされる。
【0133】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ、例えば、CRISPRヌクレアーゼは、事実上、二本鎖又は一本鎖のいずれかで、細胞のゲノムにおける所望の位置に、DNA切断を引き起こすために用いてもよい。最も一般的に用いられるRNA誘導型DNAヌクレアーゼはCRISPRシステムに由来するが、他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼも、この明細書に記載したゲノム編集組成物及びゲノム編集方法における使用のために企図される。例えば、参照によりこの明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2015/0211023号を参照。
【0134】
本発明の実施に使用できるCRISPRシステムは非常にさまざまである。CRISPRシステムは、I型、II型又はIII型のシステムであってもよい。適切なCRISPRタンパク質の限定するものではない例には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8al、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Casl0、Casl Od、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Csel(又はCasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、Csxl0、Csxl6、CsaX、Csx3、Cszl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4及びCul966が挙げられる。
【0135】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼは、II型CRISPRシステムに由来したCRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)である。CRISPRヌクレアーゼは、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、ノカルディオプシス・ダッソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス・プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス、ストレプトスポランジウム・ロゼウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランジウム・ロゼウム、アリサイクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バチルス・シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス・セレニティレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム・シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロシラ・マリナ(Microscilla marina)、バークホルデリアレス・バクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロモナス・ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス種(Polaromonas sp.)、クロコスファエラ・ワトソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノセイス種(Cyanothece sp.)、ミクロキスティス・エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス種(Synechococcus sp.)、アセトハロビウム・アラビティカム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェツクス・デゲンシイ(Ammonifex degensii)、カルディセルロシロプトル・ベスキー(Caldicellulosiruptor bescii)、キャンディダトゥス・デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)、ナトラネロビウス・サーモフィルス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム・ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター種(Marinobacter sp.)、ニトロソコッカス・ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワッソニ(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクテル・ラセミファー(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスチガータム(Methanohalobium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノジュラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストック種(Nostoc sp.)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アルスロスピラ種(Arthrospira sp.)、リングビア種(Lyngbya sp.)、ミクロコレウス・クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア種(Oscillatoria sp.)、ペトロトガ・モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、アカリオクロリス・マリーナ(Acaryochloris marina)、又は既知のPAM配列を有するCRISPRヌクレアーゼをコードする任意の種に由来してもよい。非培養性細菌によりコードされるCRISPRヌクレアーゼも、本発明に関連して使用してもよい。(Burstein et al. Nature, 2017参照)。既知のPAM配列を有するCRISPRタンパク質のバリアント、例えば、SpCas9 D1135Eバリアント、SpCas9 VQRバリアント、SpCas9 EQRバリアント又はSpCas9 VRERバリアントも、本発明に関連して使用してもよい。
【0136】
したがって、Cas9タンパク質若しくは改変されたCas9、若しくはCas9のホモログ若しくはオルソログといったCRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1とそのホモログ及びオルソログといった他のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼを、本発明の組成物に使用してもよい。別のCRISPRヌクレアーゼ、例えば、国際公開第2020/223514号及び国際公開第2020/223553号(これらは参照によりこの明細書に組み入れられる)に記載のヌクレアーゼも使用してもよい。
【0137】
ある特定の態様では、CRISPRヌクレアーゼは、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であってもよい。天然配列ポリペプチドの「機能性誘導体」は、天然配列ポリペプチドと質的に共通した生物学的性質を有する化合物である。「機能性誘導体」には、天然配列の断片、並びに天然配列ポリペプチド及びその断片の誘導体(ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通の生物学的活性を有する)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。この明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を加水分解して断片にする能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントと、その共有結合性改変体及び融合体の両者を包含する。Casポリペプチド又はその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質又はその断片の変異体、融合体、共有結合性改変体が挙げられるが、それらに限定されるものではない。誘導体には、CRISPRニッカーゼ、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼ又は「死んだ」CRISPRヌクレアーゼ、及びCRISPRヌクレアーゼ又はその誘導体と、塩基エディター又はレトロトランスポゾンといった他の酵素との融合体が挙げられるが、それらに限定されるものではない。例えば、Anzalone et al. (2019)及びPCT国際特許出願第PCT/US2020/037560号を参照。
【0138】
Casタンパク質又はその断片、加えてCasタンパク質又はその断片の誘導体を含むCasタンパク質は、細胞から取得可能なものであってもよく、若しくは化学的に合成されるものであってもよく、又はこれらの方法の組合せにより得られるものであってもよい。細胞は、天然でCasタンパク質を産生する細胞、又は、天然でCasタンパク質を産生し、かつ、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように、若しくは、内因性Casと同じ若しくは異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように、遺伝子操作された細胞であってもよい。場合によっては、細胞は、天然ではCasタンパク質を産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作されている。
【0139】
いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼはCpf1である。Cpf1は、Tリッチなプロトスペーサー隣接モチーフを利用する単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。Cpf1は、ねじれ型DNA二本鎖切断によってDNAを切断する。アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)及びラクノスピラ科(Lachnospiraceae)に由来する2つのCpf1酵素が、ヒト細胞において効率的にゲノム編集を行うことが示されている。(Zetsche et al., 2015参照)。
【0140】
したがって、Cas9タンパク質若しくは改変されたCas9、若しくCas9のホモログ、オルソログ若しくはバリアントといったII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1及びそのホモログ、オルソログ若しくはバリアントといった他のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼを、本発明で使用してもよい。
【0141】
いくつかの態様では、ガイド分子は、新しい性質又は向上した性質(例.分解に対する安定性、ハイブリダイゼーションエネルギー又はRNA誘導型DNAヌクレアーゼとの結合性)を付与する1つ以上の化学修飾を含む。適切な化学修飾には、修飾塩基、修飾糖、又は修飾されたヌクレオシド間結合が挙げられるが、それらに限定されるものではない。適切な化学修飾の限定するものではない例には、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2’-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、β,D-ガラクトシルキューオシン、2’-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、β,D-マンノシルキューオシン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸-メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、ワイブトキソシン、キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)-カルバモイル)スレオニン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、ワイブトシン、「3-(3-アミノ-3-カルボキシ-プロピル)ウリジン、(acp3)u、2’-O-メチル(M)、3’-ホスホロチオエート(MS)、3’-チオPACE(MSP)、プソイドウリジン又は1-メチルプソイドウリジンが挙げられる。それぞれの実現可能性は本発明の個別の態様である。
【0142】
RNA誘導型CRISPRヌクレアーゼによりLDLRアレルを標的とすることに加えて、標的細胞内のLDLR発現を阻害する他の手段として、ギャップマー、shRNA、siRNA、カスタマイズされたTALEN、メガヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼの使用、低分子阻害剤、及び標的細胞における遺伝子の発現を低減する又は取り除くための当技術分野において知られている他の方法が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、米国特許第6,506,559号;同第7,560, 438号;同第8,420,391号;同第8,552,171号;同第7,056,704号;同第7,078,196号;同第8,362,231号;同第8,372,968号;同第9,045,754号及び国際公開第2004/067736号;同第2006/097853号;同第2003/087341号;同第2000/041566l号;同第2003/080809号;同第2010/079430号;同第2010/079430号;同第2011/072246号;同第2018/057989号;同第2017/164230号を参照、これらの内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0143】
有利には、この明細書で提示したガイドRNA分子は、細胞におけるCRISPRヌクレアーゼと複合体化されたとき、他のガイドRNA分子と比べて改善された効率をもたらす。これらの特別にデザインされた配列は、他のヌクレオチド標的化に基づいた遺伝子編集又は遺伝子サイレンシング方法、例えば、siRNA、TALEN、メガヌクレアーゼ又はジンクフィンガーヌクレアーゼのために、LDLR標的部位を特定することにも有用である可能性がある。
【0144】
細胞への送達
この明細書に記載した組成物のいずれか1つは、任意の適切な手段により標的細胞に送達してもよい。本発明のRNA分子組成物は、LDLRアレルを含有し及び/又は発現する細胞(例.哺乳動物肝臓細胞、肝実質細胞、幹細胞)を標的としてもよい。例えば、ある態様では、RNA分子は標的細胞におけるLDLRアレルを特異的に標的とし、標的細胞は、肝臓細胞、肝実質細胞又は幹細胞である。細胞への送達は、in vivo、ex vivo又はin vitroで実施してもよい。送達は、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)又はナノ粒子にパッケージングされた組成物の、対象の肝臓又は対象の肝臓細胞へのin vivo送達であってもよい。送達は、対象の細胞(例.対象から単離された肝臓細胞、肝実質細胞又は幹細胞)に対するex vivoであってもよい。さらに、この明細書に記載した核酸組成物は、DNA分子、RNA分子、リボ核タンパク質(RNP)、核酸ベクター、又はそれらの組合せのうちの1つ以上として細胞に送達してもよい。
【0145】
いくつかの態様では、この明細書に記載した組成物のin vivo送達方法には、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)又はナノ粒子による送達が挙げられる。いくつかの態様では、この明細書に記載した組成物のin vivo送達方法には、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、裸のRNA、又はナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子による送達が挙げられる。組成物は、RNA組成物の形をとってもよい。組成物は、リボ核タンパク質(RNP)組成物の形をとってもよい。したがって、送達は、対象、例えば、高コレステロール血症を患っている対象内の肝臓細胞へin vivoで行われる。
【0146】
いくつかの態様では、この明細書に記載した組成物のいずれか1つが、ex vivoで細胞に送達される。いくつかの態様では、細胞は幹細胞である。いくつかの態様では、細胞は肝臓細胞である。いくつかの態様では、細胞は肝実質細胞である。いくつかの態様では、細胞はiPS由来肝実質細胞である。組成物を公知のex vivo送達により細胞へ送達してもよく、その方法には、電気穿孔、ウイルス形質導入、ナノ粒子送達、リポソームなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。組成物は、RNP組成物の形態であってもよい。送達方法の詳細は、このセクション全体に記載されている。
【0147】
いくつかの態様では、場合によっては、肝葉又は肝実質細胞が、例えば生検を行うことで、対象から得られる。得られた細胞は、この明細書に記載した組成物のex vivo送達により遺伝子改変してもよい。改変された細胞を、葉移植又は肝実質細胞移植により対象へ再導入してもよい。
【0148】
いくつかの態様では、RNA分子は化学修飾を含む。適切な化学修飾の限定するものではない例には、2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、又は2’-O-メチル-3’-チオPACE(MSP)、プソイドウリジン及び1-メチルプソイドウリジンが挙げられる。それぞれの実現可能性は本発明の個別の態様である。
【0149】
適切なウイルスベクター系を用いて、核酸組成物、例えば、本発明のRNA分子の組成物を送達してもよい。核酸を導入し、組織を標的とするために、通常のウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子移入を行うことができる。ある特定の態様では、in vivo又はex vivo遺伝子治療のために核酸が投与される。非ウイルスベクター送達系には、裸の核酸、及び送達媒体(例.リポソーム又はポロキサマー)と複合体化した核酸が挙げられる。遺伝子治療の手順の総説は、Anderson (1992);Nabel & Felgner (1993);Mitani & Caskey (1993);Dillon (1993);Miller (1992);Van Brunt (1988);Vigne (1995);Kremer & Perricaudet (1995);Haddada et al. (1995)及びYu et al. (1994)を参照。
【0150】
核酸及び/若しくはタンパク質の非ウイルス性送達の方法には、電気穿孔、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、パーティクルガン加速、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリカチオン若しくは脂質:核酸コンジュゲート、人工ビリオン、及び促進剤による核酸の取込みが挙げられ、又は、核酸及び/若しくはタンパク質は、細菌若しくはウイルス(例.アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、リゾビウム種(Rhizobium sp.)NGR234、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus)、ジャガイモウイルスX(potato virus X)、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)、及びキャッサバ葉脈モザイクウイルス(cassava vein mosaic virus))により植物細胞へ送達できる(例えば、Chung et al., 2006を参照)。例えばSonitron 2000系(Rich-Mar)を用いるソノポレーションも、核酸の送達に用いることができる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性脂質媒介性送達も、in vivo、ex vivo又はin vitro送達として企図される。(Zuris et al. (2015)を参照;Coelho et al. (2013);Judge et al. (2006)及びBasha et al. (2011)も参照)。
【0151】
トランスポゾンに基づく系(例.組換えスリーピングビューティトランスポゾン系又は組換えPiggyBacトランスポゾン系)のような非ウイルスベクターを、標的細胞に送達してもよく、標的細胞において、組成物の分子のポリヌクレオチド配列又は組成物の分子をコードするポリヌクレオチド配列の転位に利用してもよい。
【0152】
他の代表的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)及びCopernicus Therapeutics Inc.が提供するもの(例えば米国特許第6,008,336号参照)が含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、米国特許第4,946,787号及び米国特許第4,897,355号で説明されており、リポフェクション試薬は市販されている(例.Transfectam(登録商標)、Lipofectin(登録商標)及びLipofectamine(登録商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質及び中性脂質には、国際公開第91/17424号及び国際公開第91/16024号に開示されているものが含まれる。細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vivo投与)への送達が可能である。
【0153】
免疫脂質複合体といった標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者によく知られている(例えば、Crystal, Science (1995);Blaese et al., (1995);Behr et al., (1994);Remy et al. (1994);Gao and Huang (1995);Ahmad and Allen (1992);米国特許第4,186,183号;同第4,217,344号;同第4,235,871号;同第4,261,975号;同第4,485,054号;同第4,501,728号;同第4,774,085号;同第4,837,028号及び同第4,946,787号を参照)。
【0154】
送達の別の方法には、送達する核酸をEnGeneIC送達媒体(EDV)へパッケージングすることが含まれる。EDVは、抗体の一方のアームが標的組織に対する特異性を有し、他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を用いて、標的組織へ特異的に送達する。抗体は、EDVを標的細胞表面に運び、EDVがエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞内に入った後に、内容物が放出される。(MacDiarmid et al., 2009参照)。
【0155】
ウイルスによる核酸の送達のためのRNA又はDNAウイルス系の使用は、ウイルスの標的を体内の特定の細胞とし、ウイルスペイロードを核へ輸送する高度に進化した方法を活用する。ウイルスベクターは、患者へ直接投与でき(in vivo)、又は、in vitroで細胞を処理するために使用でき、改変された細胞を患者へ投与する(ex vivo)。核酸を送達する従来のウイルス系には、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0156】
レトロウイルスのトロピズムは、外来エンベロープタンパク質を組み入れることにより変化させることができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大する。レンチウイルスベクターは、分裂していない細胞に形質導入又は感染できるレトロウイルスベクターであり、通常、ウイルス力価が高い。レトロウイルスの遺伝子移入系の選択は標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、シス作用性末端反復配列で構成され、最大6~10kbの外来配列をパッケージングする能力がある。最小限のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分であり、治療用遺伝子を標的細胞へ組み込み、導入遺伝子を永続的に発現させるために用いられる。広く用いられるレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びそれらの組合せに基づくものが挙げられる。(例えば、Buchschacher et al. (1992);Johann et al. (1992);Sommerfelt et al. (1990);Wilson et al. (1989);Miller et al. (1991);国際公開第94/26877号を参照)。
【0157】
臨床試験における遺伝子移入のために、現在、少なくとも6つのウイルスベクターが利用でき、それらは、ヘルパー細胞株へ挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用して、形質導入剤を生成する。
【0158】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されたことがあるレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al., 1995;Kohn et al., 1995;Malech et al., 1997を参照)。PA317/pLASNは、遺伝子治療の治験で使用された初めての治療用ベクターであった(Blaese et al., 1995)。MFG-Sパッケージングベクターの形質導入効率は、50%以上であった(Ellem et al., (1997);Dranoff et al., 1997)。
【0159】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染する能力があるウイルス粒子を形成するために用いられる。そのような細胞には、アデノウイルス、AAVをパッケージングする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするPsi-2細胞又はPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に用いられるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子へパッケージングする産生細胞株により生成される。ベクターは、通常、パッケージング及び(該当する場合は)その後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットで置換されている。欠損したウイルス機能は、パッケージング細胞株によりトランスで供給される。例えば、遺伝子治療に用いられるAAVベクターは、通常、パッケージング及び宿主ゲノムへの組込みに必要とされるAAVゲノム由来の末端逆位配列(ITR)のみを有する。ウイルスDNAは、細胞株においてパッケージングされ、その細胞株は、他のAAV遺伝子、つまり、ITR配列を欠くが、rep及びcapをコードするヘルパープラスミドを含有する。その細胞株は、ヘルパーとしてのアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ITR配列の欠損のため、ヘルパープラスミドは大量にはパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性が高い熱処理によって軽減できる。さらに、バキュロウイルス系を用いて臨床スケールでAAVを産生できる(米国特許第7,479,554号参照)。
【0160】
多くの遺伝子治療において、遺伝子治療ベクターは、特定の組織に対して高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面のウイルス被覆タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現させることによって、所定の細胞に対する特異性を有するように改変できる。そのリガンドは、目的の細胞に存在することが知られた受容体に対して親和性を有するように選択される。例えば、Hanら(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変でき、その組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳がん細胞に感染することを報告した。この原理は、他のウイルス-標的細胞の組合せに拡張でき、その組合せでは、標的細胞は受容体を発現し、ウイルスは細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する。例えば、繊維状ファージは、事実上、選択されたいかなる細胞受容体に対しても特異的な結合親和性を有する抗体断片(例.FAB又はFv)を提示するように操作できる。この説明は、主にウイルスベクターに当てはまるが、同じ原理が非ウイルスベクターに適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取込みを優先する特定の取込み配列を含むように操作できる。
【0161】
遺伝子治療ベクターは、個々の患者への投与により、例えば、全身投与(例.硝子体内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用により、in vivoで送達できる。
【0162】
あるいは、ベクターは、細胞、例えば、個々の患者から外植された細胞(例.リンパ球、骨髄穿刺、組織生検)又はユニバーサルドナー造血幹細胞へ、ex vivoで送達され、続いて、その細胞を患者へ、ベクターを組み入れている細胞の選択後に、再移植できる。限定するものではない代表的なex vivoアプローチは、培養のために患者から組織(例.末梢血、骨髄及び脾臓)を取り出し、培養細胞(例.造血幹細胞)に核酸を移入し、次いで、細胞を、患者の標的組織(例.骨髄及び脾臓)に移植することを含んでいてもよい。いくつかの態様では、幹細胞又は造血幹細胞は、生存率増強剤で更に処理してもよい。
【0163】
診断、研究のための、又は(例えばトランスフェクト細胞の宿主への再注入による)遺伝子治療のためのex vivoでの細胞トランスフェクションは、当業者によく知られている。好ましい態様において、対象から細胞が単離され、核酸組成物がトランスフェクトされ、対象(例.患者)へ再注入される。ex vivoトランスフェクションに適したさまざまな細胞型は、当業者によく知られている(例えば、Freshney, “Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique and Specialized Applications (6th edition, 2010)と、この文献の、患者から細胞を単離し、培養する方法の考察で引用されている文献を参照)。
【0164】
治療用核酸組成物を有するベクター(例.レトロウイルス、リポソーム)は、in vivoで細胞に形質導入するために、生物体へ直接投与することもできる。投与は、注射、注入、局所適用(例.点眼剤及びクリーム)及び電気穿孔を含むが、それらには限定されない、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触するように導入するために通常使用される経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する適切な方法が利用でき、当業者によく知られており、特定の組成物を投与する複数の経路が使用できるが、特定の経路が、別の経路より迅速かつ効果的な反応を提供できる場合が多い。いくつかの態様によれば、組成物はIV注射で送達される。
【0165】
導入遺伝子の免疫細胞(例.T細胞)への導入に適したベクターには、非組込み型レンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2009/0117617号を参照。
【0166】
薬学的に許容される担体は、部分的には、投与する組成物によって、加えて、組成物の投与に用いる方法によって、決まる。したがって、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989の記載されているように、利用できる医薬組成物の幅広い種類の適切な製剤がある。
【0167】
LDLR遺伝子のアレルを特異的に標的とするRNAガイド配列の例
LDLR遺伝子を標的とするように多数のガイド配列をデザインできるが、配列番号1~10736で特定され、表1に記載したヌクレオチド配列を、この明細書で示した方法を効果的に実行するために、具体的に選択した。
【0168】
表1は、これまでに説明した態様での使用において、LDLRアレルと会合するようにデザインされたガイド配列を示す。操作された各ガイド分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例.配列NGG又はNAG(「N」は任意の核酸塩基である)に対応するPAM)の隣に位置する目的の標的ゲノムDNA配列と結合するように更にデザインされる。ガイド配列は、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと共に働くようにデザインされ、そのCRISPRヌクレアーゼには、例えば、SpCas9WT(PAM配列:NGG)、SpCas9.VQR.1(PAM配列:NGAN)、SpCas9.VQR.2(PAM配列:NGNG)、SpCas9.EQR(PAM配列:NGAG)、SpCas9.VRER(PAM配列:NGCG)、SaCas9WT(PAM配列:NNGRRT)、SpRY(PAM配列:NRN又はNYN)、NmCas9WT(PAM配列:NNNNGATT)、Cpf1(PAM配列:TTTV)、又はJeCas9WT(PAM配列:NNNVRYM)が挙げられるが、それらに限定されるものではない。本発明のRNA分子はそれぞれ、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと共に複合体を形成するようにデザインされ、かつ使用するCRISPRヌクレアーゼ、それぞれの1つ以上の異なるPAM配列を利用して、目的のポリヌクレオチド配列を標的とするようにデザインされる。
【0169】
【0170】
本発明のより完全な理解を促進するために、実施例を以下に示す。以下の実施例は、本発明を構築しかつ実施する代表的な様式を示す。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示した特定の態様に限定されず、これらの態様は例証のみを目的とする。
【実施例】
【0171】
実験の詳細
実施例1 LDLR改変の全体的な分析
配列番号1~10736のいずれか1つに示す配列の連続する17~50ヌクレオチドを含むガイド配列について、オンターゲット活性が高いものを、ヒト細胞においてSpCas9を用いてスクリーニングする。オンターゲット活性は、DNAキャピラリー電気泳動分析で測定する。
【0172】
実施例2 LDLR 3’UTR改変の概念実証
家族性高コレステロール血症(FH)はLDL-Cの生涯にわたる上昇を特徴とし、85~90%の症例は、LDLR遺伝子の病原性変異によって引き起こされる(L. Jiang et al, 2015;A.K. Soutar and R.P. Naoumova, 2007)。
【0173】
この実施例のデータは、LDLR遺伝子の3’UTR領域の欠失(
図1A)が、LDLR遺伝子産物の発現をRNA及びタンパク質の両者で増加させたこと、及びin vitroでコレステロールの取込みを増加させること(
図1B、
図1C及び
図1D)を示す。野生型HepG2細胞及び3’UTRを切除したHepG2細胞における、蛍光標識したLDL-コレステロールの細胞取込みの動態を、フローサイトメトリーを使用して測定した。試験を行った全ての時点で、3’UTR切除後にコレステロールの取込みが2倍に増加した(
図1E)。
図1F~1H、
図7A~7C、
図8A~8D及び
図9A~9Dも参照。
【0174】
LDLR 3’UTR切除ストラテジーのex vivoにおける概念実証を、FH患者に由来するLCL細胞(これは、EBVで形質転換したリンパ芽球様B細胞株である)で確立した。この細胞は、疾患モデルとして使用する際に、いくつかの利点、例えば、誘導の容易さ、成長しやすさ及びゲノム安定性を有している。この細胞のLDLRの存在量及び機能も知られている(P.C. Chan et al. 1997)。
【0175】
FHヘテロ接合性を示す2つの細胞株の特徴を明らかにした。第1の細胞株であるGM1448は△G197変異を有し、ClinVarMinerによれば、これはリトアニアのアシュケナージユダヤ系集団における創始者変異であることが知られており、FHに罹患している71のアシュケナージユダヤ系家系の35%で観察されている。機能性研究は、このバリアントがゴルジ体への不完全なタンパク質輸送を引き起こし、変異体タンパク質は、ホモ接合の個体の細胞でLDLR活性が2%未満であることを示している。第2の細胞株であるGM1460は、2000G>A置換に起因するC646Yのミスセンス変異を有する。ClinVarMinerによれば、この変異はLDLRのプロセッシングを低下させ、ホモ接合の個体では成熟型へプロセッシングされた受容体はおよそ20%である(
図2A~2D)。
【0176】
FH患者のLCL細胞でのSpCas9及び特定のガイドRNA分子によるLDLR 3’UTRの切除は、処理を行っていない細胞と比較して、LDLR mRNA、LDLR表面タンパク質、及びコレステロール取込みを上方制御した(
図3A~3D)。
【0177】
in vivoにおける概念実証としての動物モデルを選択するために、マウスHepa1-6肝実質細胞における3’UTR切除ストラテジーを検証した。マウス編集組成物を使用したマウスLDLR遺伝子の3’UTRの切除は、表面LDLRの上方制御及びコレステロール取込みの増加をもたらした(
図4A~4C)。
【0178】
別のCRISPRヌクレアーゼを用いる編集組成物も、LDLRの編集における使用について検証した。LDLRの3’UTRを変更するガイドRNA分子を、HeLa細胞でDNAトランスフェクション方法を使用して、(1)国際公開第2020/223513号(その内容は参照によりこの明細書に組み入れられる)に記載のOMNI-50 CRISPRヌクレアーゼ、(2)国際公開第2021/248016号(その内容は参照によりこの明細書に組み入れられる)に記載のOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼ、(3)OMNI-79 V5570と呼ばれるOMNI-79 CRISPRヌクレアーゼの活性増強バリアント、及び(4)OMNI-103 CRISPRヌクレアーゼ、を用いてスクリーニングした(
図5A~5C)。OMNI-79 V5570は、試験を行ったsgRNAの大部分で、編集のレベルが改善することが判明した。試験を行った全てのヌクレアーゼにおいて、いくつかの高度に活性なガイドが特定された。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
実施例3 結果の要約
CRISPRベースの遺伝子編集は、家族性高コレステロール血症においてLDLRの発現を増強し、LDL-Cの取込みを促進する
家族性高コレステロール血症(FH)は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の生涯にわたる上昇を特徴とする、広く見られる常染色体優性遺伝疾患で、アテローム性動脈硬化及び冠血管イベントが早期に発症する。遺伝学的に確認されたFHの約85%~90%が、LDLR遺伝子の病原性変異によって引き起こされ、そのハプロ不全はLDL-Cの取込みを低下させる。スタチン類やエゼチミブといった脂質低下薬を生涯使用できるが、患者は耐えられず、所望のLDL-Cレベルを得ることができないことが多い。最近の治療アプローチは、LDLRのリソソーム分解を促進するタンパク質であるプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を一過性で阻害する、皮下注入されたモノクローナル抗体に基づく。塩基編集によるPCSK9の恒久的な阻害が現在開発中であるが、FHの原因ではない遺伝子のこのような非可逆的ノックダウンの長期間の結果は、未だ判明していない。加えて、そのようなアプローチは単剤療法としては不十分であることが多く、スタチン療法との組合せで行われる。
【0184】
この開示は、LDLRの発現を負に制御する部位を有するLDLR 3’UTRの少なくとも一部分の切除により、LDLRの発現を上方制御する、CRISPRベースの遺伝子編集ストラテジーを提示する。
【0185】
この編集ストラテジーを、HepG2細胞株、FH患者に由来するリンパ芽球様細胞株(LCL)及びマウス肝細胞癌細胞株(Hepa1-6)で試験した。LDLR 3’UTRの切除をddPCRで確認し、LDLR mRNAレベルをqRT-PCRで定量した。特異的抗体を使用して、総LDLRレベル及び膜結合LDLRレベルを、それぞれ、ウエスタンブロット及びフローサイトメトリーで測定した。最後に、蛍光標識したLDL-Cの細胞取込みをフローサイトメトリーで測定することにより、コレステロール取込みに対するLDLR 3’UTR切除の効果を評価した。
【0186】
HepG2細胞での切除効率は約60%であった。切除された細胞は、処理を行っていない細胞と比較して、LDLR mRNAレベルの3~6倍の上方制御と、膜結合LDLRの3倍の増加が示された。LDLR 3’UTR切除は、試験を行った全ての時点で、コレステロールの取込みが2倍に増加した。患者に由来するLCLも類似の結果を示し、LDL-C取込みの増加は3~4倍であった。マウス肝臓細胞株でも、LDLR mRNAレベル及び膜タンパク質発現の増加と、それに続くLDL-C取込みの増強が観察され、in vivoのモデルマウスにおける編集ストラテジーの今後の評価を更に支持した。比較分析により、本ストラテジーは、コレステロール取込みの増加において、PCSK9ノックアウト及びスタチン類よりも優れていることが示された。
【0187】
これらの知見は、LDLR mRNAの迅速なターンオーバーに関与する領域を短縮化して、LDLRの発現を増強し、LDL-Cの取込みを促進させるという、CRISPRベースの遺伝子編集ストラテジーを支持する。この独自のアプローチは、高コレステロール血症に関連するさまざまな障害に役に立つ可能性がある。
【0188】
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【配列表】
【国際調査報告】