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特表2024-510808金属セラミック基板の製造方法及びそのような方法によって製造された金属セラミック基板
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  • 特表-金属セラミック基板の製造方法及びそのような方法によって製造された金属セラミック基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】金属セラミック基板の製造方法及びそのような方法によって製造された金属セラミック基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240304BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240304BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H01L23/12 D
H05K1/02 J
H05K3/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558562
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057595
(87)【国際公開番号】W WO2022200406
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107690.0
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515063390
【氏名又は名称】ロジャーズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Rogers Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Stadtwald 2, D-92676 Eschenbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】コール、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レティンガー、ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA18
5E338BB19
5E338CD25
5E338EE31
(57)【要約】
本発明は、金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、セラミック要素(30)及び少なくとも1つの金属層(10)を用意するステップであって、セラミック要素(30)及び少なくとも1つの金属層(10)は主延在面(HSE)に沿って延在する、ステップと、セラミック要素(30)を少なくとも1つの金属層(10)に接合することで、特に直接金属接合プロセス、熱間等方圧加圧及び/又は半田付けプロセスによって、金属セラミック基板(1)を形成するステップと、を含み、好ましくは金属部分(10’)の分離を形成するための構造化部、及び/又は好ましくは半田止めを形成するための凹部は、レーザプロセス及び化学的プロセス、特にエッチングプロセスによって、少なくとも1つの金属層(10)において実現される、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
セラミック要素(30)及び少なくとも1つの金属層(10)を用意するステップであって、前記セラミック要素(30)及び前記少なくとも1つの金属層(10)は主延在面(HSE)に沿って延在する、ステップと、
前記セラミック要素(30)を前記少なくとも1つの金属層(10)に接合することで、特に直接金属接合プロセス、熱間等方圧加圧及び半田付けプロセスの少なくとも1つによって、金属セラミック基板(1)を形成するステップと、を含み、
好ましくは金属部分(10’)の分離を形成するための構造化部(15)及び好ましくは半田止めを形成するための凹部(14)の少なくとも一方は、レーザプロセス及び化学的プロセス、特にエッチングによって、前記少なくとも1つの金属層(10)において実現される、方法。
【請求項2】
前記化学的プロセスによる処理は、前記レーザプロセスの終了後に終了する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザプロセスによる処理は、時間的に前記化学的プロセスの前の事前ステップとして行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的プロセスによって、特に前記化学的プロセスのみによって、前記セラミック要素(30)の前記外側の領域が露出される金属の除去が行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化学的プロセス及び前記レーザプロセスは、同時に、少なくとも断続的に行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記主延在面(HSE)に対して平行ではない前記少なくとも1つの金属層(10)の側面(17)の形状は、前記レーザプロセスによって少なくとも部分的に決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記製造された側面(17)は、斜めである、湾曲している、階段状である、及び/又は分割されている、請求項6の記載の方法。
【請求項8】
2つの相互に絶縁された隣接する金属部分の間の空間は、1より大きい、より好ましくは1.5より大きい、最も好ましくは2より大きいアスペクト比を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザプロセスにおいて超短パルスレーザが使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構造化部(15)及び前記凹部(14)の少なくとも一方の形成は、機械的処理によってさらに支援される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記主延在面(HSE)に対して垂直に寸法決めされた深さ(T)を有する凹部(18)がレーザ光によって製造され、前記少なくとも1つの金属層(10)の厚さ(D)に対する前記凹部(18)の最大深さ(T)の比は、0.7~0.99、好ましくは0.8~0.98、より好ましくは0.9~0.95の比を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの金属層(10)は、1mmより大きい、より好ましくは1.5mmより大きい、最も好ましくは2.5mmより大きい厚さ(D)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属セラミック基板(1)を製造する方法であって、
セラミック要素(30)及び少なくとも1つの金属層(10)を用意するステップであって、前記セラミック要素(30)及び前記少なくとも1つの金属層(10)は主延在面(HSE)に沿って延在する、ステップと、
前記セラミック要素(30)を前記少なくとも1つの金属層(10)に接合することで、特に直接金属接合プロセス、熱間等方圧加圧及び半田付けプロセスの少なくとも1つによって、金属セラミック基板(1)を形成するステップと、を含み、
好ましくは金属部分(10’)の分離を形成するための構造化部(15)、及び好ましくは半田止めを形成するための凹部(14)の少なくとも一方は、機械的方法、例えばフライス加工、及び化学的プロセス、特にエッチングによって、前記少なくとも1つの金属層(10)において実現される、方法。
【請求項14】
前記化学的プロセスによる処理は、前記機械的プロセスの終了後に終了され、及び/又は前記機械的プロセスによる処理は、前記化学的プロセスの前の事前ステップとして行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって製造される金属セラミック基板(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属セラミック基板の製造方法及びそのような方法によって製造された金属セラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属セラミック基板の形態の電気部品用のキャリア基板は、例えばプリント回路基板又は回路基板として、従来技術、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3から十分に周知である。通常、電気部品と導電路との接続領域は、金属セラミック基板の一方の部品面に配置され、電気部品と導電路とは、相互接続されて電気回路を形成することができる。金属セラミック基板の必須構成要素は、好ましくはセラミックから製造された絶縁層、及び絶縁層に接合された金属層又は構造メタライゼーションである。セラミックから製造された絶縁層は、その比較的高い絶縁強度のために、パワーエレクトロニクスの分野において特に有利であることが判明している。したがって、金属層を構造化することによって、電気部品用の導電路及び/又は接続領域が実現され得る。
【0003】
このようなキャリア基板、特に金属セラミック基板では、一方の絶縁層と他方のメタライゼーションとの材料選択が異なることにより、熱膨張係数が異なることに起因する問題、例えばキャリア基板の動作中又は製造中に熱が発生した際に熱機械的応力を誘発又は引き起こす可能性があり、キャリア基板の曲がり又は損傷につながり得る。
【0004】
最新技術は、通常、少なくとも1つの金属層を構造化又はプロファイリング(Profilierung)するために使用されるエッチングプロセスを提案する。この目的のために、マスキングが、特にレジスト層の形態で金属層におけるセラミック要素と反対側の面に塗布される。次に、エッチング剤を使用して、マスキングのない領域を露出させ、マスキングに対応する金属層を構造化することができる。しかしながら、このようなアプローチは、特にマスキングの塗布及びエッチング剤の使用に関して、多くの材料及び時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013104739号明細書
【特許文献2】独国特許発明第19927046号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009033029号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づいて、本発明は、金属セラミック基板の製造、特にそれらの構造化において必要とされる時間及び/又は材料の量を減少させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の方法及び請求項10に記載の金属セラミック基板によって解決される。さらなる発展形態及びさらなる実施形態は、従属請求項、明細書及び図面に記載されている。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、金属セラミック基板を製造する方法であって、
セラミック要素及び少なくとも1つの金属層を用意するステップであって、セラミック要素及び少なくとも1つの金属層は主延在面に沿って延在する、ステップと、
セラミック要素を少なくとも1つの金属層に接合することで、特に直接金属接合プロセス、熱間等方圧加圧及び/又は半田付けプロセスによって、金属セラミック基板を形成するステップと、を含み、
好ましくは金属部分の分離を形成するための構造化部、及び/又は好ましくは半田止めを形成するための凹部は、レーザプロセス及び化学的プロセス、特にエッチングによって、少なくとも1つの金属層において実現される、方法が提供される。
【0009】
従来技術とは対照的に、本発明は、構造化のためのエッチング剤の使用だけでなく、構造化部及び/又は凹部を形成するように材料を除去するためのレーザ光の使用も提案する。これらの2つの方法を組み合わせることによって、有利にはマスキングの形成を省くことが可能である。特に、レーザ光は、構造化部のコース(Verlauf)を規定するために使用され、例えば使用されるエッチング剤は、少なくとも1つの金属層の材料の均一な除去のために使用されることが意図される。レーザ光は、どの領域で材料の除去が増大するかという領域の仕様を与えるので、マスキングによる仕様はもはや必要ではない。例えばマスキングの形成のために材料が必要とされないので、構造化部の製造が促進され、材料要件が低減される。
【0010】
レーザ光及び/又はエッチング剤による製造又は除去は、同時に、少なくとも断続的に行われることが考えられる。つまり、材料を除去するための2つの独立した方法は、時間的に重なり、製造プロセスをさらに促進することができる。例えば、レーザ光を一定回数通過させた後、エッチング剤を少なくとも1つの金属層の全領域に塗布し、レーザ光はさらなる通過でさらなる除去を保証することが考えられる。より好ましくは、レーザ光による処理と化学的処理とは連続して行われる。
【0011】
エッチングとレーザ光による除去との組み合わせから得られる別の利点は、レーザ光による処理中にセラミック要素の材料が除去されないことを保証することである。これにより、レーザ光によるセラミック要素の損傷を回避することができる。この目的のために、エッチング剤による除去は、レーザ光による構造化が終了する前に完了しないことが特に意図される。特に、事前又は準備ステップの範囲内でのレーザ光による除去は、分離溝及び/又は凹部のコースを特定する役割を果たし、分離溝及び/又は凹部は、エッチングステップのみによって確定的な又は最終的な深さを得る。
【0012】
好ましくは、材料の除去の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%は、レーザ光によって行われる。
特に、凹部は、少なくとも1つの金属層において、2つの隣接する金属部分を分離させるプロファイル(Profilierungen)ではなく、例えば半田止めとして使用されるようなプロファイルであると理解される。このような半田止めは、例えば凹部が半田材料を受け入れるための溝として機能し、半田材料がそれ以上流れないようにすることで、特定の領域への半田材料の不要な流れを防止する。
【0013】
金属セラミック基板における少なくとも1つの金属層又は裏面メタライゼーションのための材料として、銅、アルミニウム、モリブデン及び/又はそれらの合金、並びにCuW、CuMo、CuAl、AlCu及び/又はCuCuなどの積層体、特に第1の銅層及び第2の銅層を有する銅サンドイッチ構造が考えられ、第1の銅層の粒径は第2の銅層の粒径と異なる。さらに、一次金属層は、特に構造メタライゼーションとして表面改質されていることが好ましい。考えられる表面改質は、例えば、クラック形成又は拡張を抑制するための、貴金属、特に銀及び/又は金、若しくはENIG(「無電解ニッケル浸漬金(electroless nickel immersion gold)」)、ニッケルによる封止、又は少なくとも1つの金属層上のエッジカプセル化を含む。
【0014】
好ましくは、セラミック要素は、Al、Si、AIN、HPSXセラミック(すなわち、構成比率xパーセントのZrOを含むALマトリックスを有するセラミック、例えば9%のZrOを有するAL=HPS9、又は25%のZrOを有するAL=HPS25)、SiC、BeO、MgO、高密度MgO(理論密度の90%超)、セラミックの材料としてのTSZ(正方晶安定化酸化ジルコニウム)を含む。様々な所望の性質を組み合わせるために、それぞれがその材料組成の点で異なるいくつかのセラミック層が互いに重なり合って配置され、接合されて絶縁要素を形成する複合材又はハイブリッドセラミックとしてセラミック要素が設計されることも考えられる。金属中間層が2つのセラミック層の間に配置されることも考えられ、金属中間層は好ましくは1.5mmよりも厚く、及び/又は2つのセラミック層の合計よりも厚い。好ましくは、可能な限り低い熱抵抗とするために、可能な限り熱伝導性の高いセラミックが使用される。
【0015】
当業者は、「DCBプロセス」(直接銅接合技術)又は「DABプロセス」(直接アルミニウム接合技術)を、例えば金属層又はシート(例えば、銅シート又は箔又はアルミニウムシート又は箔)を互いに接合したり、及び/又はセラミック若しくはセラミック層に接合したりするような方法であって、表面側に層又はコーティング(溶融層)を有する金属又は銅シート若しくは金属又は銅箔を使用するものであると理解する。例えば米国特許第3744120号明細書又は独国特許発明第2319854号明細書に記載されているこの方法では、この層又はコーティング(溶融層)は、金属(例えば銅)の融点未満の融点を有する共晶を形成する。これにより、箔をセラミック上に配置し、すべての層を加熱することによって、それらは一緒に接合される。よって、溶融層又は酸化物層の領域でのみ金属又は銅を本質的に表面溶融することによって、一緒に接合することが可能である。
【0016】
特に、次に、DCBプロセスは、例えば、以下の方法ステップ、
均一な酸化銅層が得られるように銅箔を酸化させるステップと、
銅箔をセラミック層上に配置するステップと、
複合体を約1025~1083℃の間の、例えば約1071℃であるプロセス温度まで加熱するステップと、
室温まで冷却するステップと、を有している。
【0017】
金属層又は金属箔を、特に銅層又は銅箔を、セラミック材料に接合するための活性半田付け法とは、特に金属セラミック基板の製造にも使用される方法として理解される。金属箔、例えば銅箔と、セラミック基板、例えば窒化アルミニウムセラミックとの間の結合は、銅、銀、及び/又は金などの主成分に加えて活性金属を含有するろう付け半田を用いることで生成される。この活性金属は、例えばHf、Ti、Zr、Nb、Ceの群の少なくとも1つの元素であり、ろう付け半田とセラミックとの間の結合を化学反応によって確立し、ろう付け半田と金属との間の結合は、金属ろう付け半田結合である。代替的に、厚いコーティング処理による接合も考えられる。
【0018】
熱間等方圧加圧は、例えば欧州特許第3080055号明細書から知られており、その内容は、熱間等方圧加圧に関して参照によって本明細書に明示的に含まれる。
好ましくは、化学的プロセスによる構造化は、特にレーザ光による準備ステップの終了後に終了する。これにより、最終的な除去がエッチング剤のみで行われることが保証され、セラミック要素がレーザ光によって損傷されないことが保証される。
【0019】
特に、構造化部の製造においてエッチング中のマスキングが回避されることが意図される。これは、特に、構造化がレーザ光による除去によって特定され、等方性効果を有するエッチングが少なくとも1つの金属層の上面全体を均一に除去するために使用されることから可能である。代替的に、マスキングが意図されることも考えられる。エッチング前の事前ステップにおいて、少なくとも1つの金属層の厚さよりも小さい深さを有する凹部が形成されることも考えられる。次に、例えば既に形成された凹部を使用して、エッチング剤をこの凹部にのみ流入させるか、又はエッチング剤をこの凹部に集中させることができる。例えば、エッチング剤が塗布され、少なくとも1つの金属層の上面上での傾斜及び回転運動の結果として、過剰なエッチング剤が金属セラミック基板から流れ出るか、又は凹部に流れ込むことが考えられる。
【0020】
好ましくは、化学的プロセス、特に化学的プロセス単独は、金属を除去してセラミック要素の外面の領域を露出させることが意図されている。換言すると、レーザ処理の終了後に開始又は継続する化学的プロセスは、金属層の残留量が分離溝を形成するために除去されることを保証する。
【0021】
原理上は、例えば、階段状のコースを実現するか、又は計画された分離溝の外側の領域における厚さを維持するために、マスキングが少なくとも部分的に意図されることも考えられる。この場合、レーザ光による予備構造化、すなわち事前ステップ中の凹部の形成は、マスキングをより柔軟にかつ簡略化された方法で、例えば事前ステップ中に材料が除去されていない領域上への対応する印刷プロセスによって塗布することを可能にするため、有利であることが分かる。
【0022】
さらに、マスキングは少なくとも部分的に意図されており、レーザ光によって部分的に除去され、エッチング中に少なくとも1つの金属層の上面から材料が除去されないことが考えられる。このように、少なくとも選択された領域において元の金属層の厚さを保持することができる。これらの領域において、少なくとも1つの金属層を、上述のさらなる実施例と同様に、エッチングプロセスと組み合わせてレーザ光を使用して構造化することがさらに考えられる。
【0023】
好ましくは、化学的プロセス及びレーザプロセスは、同時に、少なくとも断続的に行われることが意図される。これは、所望の構造化部及び/又は凹部を実現するのに必要な速度及び持続時間にとって有利であることが分かる。
【0024】
好ましくは、レーザプロセスは、少なくとも部分的に、主延在面と平行ではない少なくとも1つの金属層の側面の形状を規定するために使用される。特に、これは、少なくとも1つの金属層の上縁部を少なくとも1つの金属層の下縁部に接合する側面に関する。少なくとも1つの金属層を実質的に横方向に境界付けるこの側面は、熱衝撃耐性に対して特に有利な効果を有するように適切に成形することができる。例えば、上縁部と下縁部との間に局所最大値及び/又は局所最小値を形成することによって、熱衝撃耐性を高めることができることが示されている。
【0025】
好ましくは、製造された側面は、斜めに、及び/又は湾曲して、及び/又は階段状に、及び/又は分割されて延びる。対応する幾何学的形状によって、特に熱衝撃耐性及びセラミック要素からの少なくとも1つの金属層の剥離性に関して、金属セラミック基板の追加の好ましい特性を誘導することができる。さらに、少なくとも1つの金属層又はその側面の対応する形状の形成において、熱拡散を考慮することができる。
【0026】
特に、2つの相互に絶縁された隣接する金属部分の間の空間は、1より大きい、より好ましくは1.5より大きい、最も好ましくは2より大きいアスペクト比(空間の高さ対幅)を有することが意図される。これにより、狭い分離溝を設けることができ、特に金属層が比較的厚く、例えば1.5mmを超える場合であっても、金属部分の非常にコンパクトな配置が可能になる。特に、等方性エッチング(理論的なアスペクト比は最大でも1しか可能でない)によってだけでなく、指向性レーザ光によっても材料を除去することができるという事実が利用される。これは、第一に、対応するアスペクト比を可能にするものである。
【0027】
好ましくは、レーザ光による除去のために超短パルスレーザが使用されることが意図される。使用される光は、例えば連続的に放射される光又はパルス光であってもよい。好ましくは、パルス長又はパルス持続時間がナノ秒より短い光パルスを有する超短パルスレーザ光である。好ましくは、UKPレーザは、0.1~800ps、より好ましくは1~500ps、最も好ましくは10~50psのパルス持続時間を有する光パルスを提供するレーザ源である。
【0028】
好ましくは、構造化部及び/又は凹部の実現は、特に事前又は準備ステップの範囲内で、機械的処理によってさらに支援されることが意図される。例えば、少なくとも1つの金属層の大きな領域の材料の除去が、機械的処理、例えば処理、特にフライス加工によって行われ、特に、後の工程で所定の破断点が埋め込まれ、例えばマスターカードにおいては、これらの破断点に沿って、個々の金属セラミック基板間に破断がなされるような領域において行われることが考えられる。
【0029】
好ましくは、レーザ光によって、主延在面に対して垂直に測定された深さを有する凹部が製造されることが意図されており、少なくとも1つの金属層の厚さに対する凹部の最大深さの比は、0.7~0.99、好ましくは0.8~0.98、より好ましくは0.9~0.95の比である。最大深さとは、特に、少なくとも1つの金属層の上面から主延在面に垂直な方向に測定される、決定されるべき最大深さを意味する。凹部の深さが調節される限り、最大深さは特にその算術平均も意味し、例えば100個の異なる位置で凹部の深さを決定し、次いでそれらを平均化することによって決定される。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つの金属層は、1mmより大きい、より好ましくは1.5mmより大きい、最も好ましくは2.5mmより大きい厚さを有することが意図される。レーザ光による利用又は予備構造化は、2つの隣接する金属部分間の距離を特に小さくすることができるので、このような厚い金属層に対して特に有利であることが判明しており、これは、材料がエッチング剤によってのみ除去される場合には実現不可能である。これにより、プリント回路基板は、スペースを最大限に節約してセラミック要素の上面に金属部分を実現し、形成することができるように設計することが可能になる。
【0031】
本発明の別の目的は、金属セラミック基板を製造する方法であって、
セラミック要素及び少なくとも1つの金属層を用意するステップであって、セラミック要素及び少なくとも1つの金属層は主延在面に沿って延在する、ステップと、
セラミック要素を少なくとも1つの金属層に接合することで、特に直接金属接合プロセス、熱間等方圧加圧及び/又は半田付けプロセスによって、金属セラミック基板を形成するステップと、を含み、
好ましくは金属部分の分離を形成するための構造化部、及び/又は好ましくは半田止めを形成するための凹部は、機械的プロセス、例えばフライス加工又は旋盤加工、及び化学的プロセス、特にエッチングによって、少なくとも1つの金属層において実現される。レーザ光を使用して金属セラミック要素を製造するための方法について記載された全ての利点及び特性は、機械的プロセスを使用して金属セラミック要素を製造するための方法に同様に適用される。
【0032】
好ましくは、化学的プロセスによる処理は、機械的プロセスの終了後に終了され、及び/又は機械的プロセスによる処理は、時間的に化学的プロセスの前又は化学的プロセスと部分的に重複する事前ステップとして行われることが意図される。これにより、有利には、機械的工具による除去中にセラミック要素の外側を損傷することを回避することができる。代わりに、残っている金属残留物は、材料に優しい方法でセラミック要素の外側から穏やかに除去され、セラミック要素は、特定の領域において再び露出される。これにより、最終的に2つの隣接する金属部分の間に構造化部又は所望の分離溝が形成される。
【0033】
本発明のさらなる目的は、本発明による方法によって製造される金属セラミック基板である。本方法に関して説明した全ての特性及び利点は、金属セラミック基板にも同様に転用することができ、その逆もまた同様である。特に、金属セラミック基板は、パワーモジュールの構成要素であり、電気又は電子部品のためのキャリアとして機能する。
【0034】
さらなる利点及び特徴は、添付の図を参照しながら、本発明の主題の好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。個々の実施形態の個々の特徴は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の好ましい実施形態による、金属セラミック基板を示す図である。
図2】本発明の第2の好ましい実施形態による、金属セラミック基板を示す図である。
図3】本発明の第3の好ましい実施形態による、金属セラミック基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の第1の好ましい実施形態による、金属セラミック基板を概略的に示す。このような金属セラミック基板1は、好ましくは電気部品(図示せず)用のキャリアである。特に、金属セラミック基板1は、セラミック要素30及び少なくとも1つの金属層10を備え、セラミック要素30及び少なくとも1つの金属層10は主延在面HSEに沿って延在することが意図される。この場合、少なくとも1つの金属層10はセラミック要素30に接合されており、少なくとも1つの金属層10とセラミック要素30とは、主延在面HSEに対して垂直に延びる積層方向Sにおいて上下に配置されている。これに関連して、少なくとも1つの金属層10が複数の金属部分10’を有し、これらの金属部分10’は、例えば主延在面HSEに対して平行に延びる方向に沿って、互いに電気的に絶縁され、互いに隣り合って配置されることが特に意図されている。
【0037】
さらに、積層方向Sで見て、セラミック要素30の少なくとも1つの金属層10とは反対側に裏面メタライゼーション20が設けられることが最も好ましい。裏面メタライゼーション20は、特に、少なくとも1つの金属層10及びセラミック要素30における異なる膨張係数の結果である熱機械的応力によって引き起こされる、動作中に通常生じる変形に対抗するように意図されている。同時に、裏面メタライゼーション20は、十分な熱容量を提供するように意図されており、これは、過負荷状況において適切なバッファを提供するために特に望ましい。
【0038】
例えば2つの隣接する金属部分10’を互いに分離する構造化部15を実現するために、従来技術は、通常、マスキング又はレジスト層を接合された少なくとも1つの金属層10に塗布して、レジスト層又はマスキングによって覆われていない少なくとも1つの金属層10内の領域をエッチングプロセスによって除去することを意図している。有利には、これにより、少なくとも1つの金属層10の構造化部15が可能になり、その結果、例えば少なくとも1つの金属層10の2つの金属部分10’が互いに電気的に絶縁される。しかしながら、マスキングの塗布及び製造は高価であり、エッチング剤を比較的多く消費する。
【0039】
図2は、本発明の例示的な実施形態による方法によって製造された金属セラミック基板1の断面図を概略的に示す。特に、構造化部15の製造のために、特に2つの隣接する金属部分の間の空間、すなわちいわゆる分離溝の形成のために、少なくとも1つの金属層10における材料の除去が、レーザ光の使用及びエッチングの両方によって実現されることが意図される。
【0040】
好ましくは、まず、事前ステップにおいて、レーザ光によって少なくとも1つの金属層10に凹部18が形成され、凹部18は、少なくとも1つの金属層10の厚さDよりも小さい最大深さTを有する。これにより、レーザ光による少なくとも1つの金属層10の処理中に、少なくとも1つの金属層10から材料が完全に除去されないことが保証される。これは、レーザ光が、少なくとも1つの金属層10の処理の終わりに、接合されたセラミック要素のいかなる構成要素も除去しないことを保証する。特に、ここでは、少なくとも1つの金属層10の厚さDに対する凹部の最大深さTの比は、0.7~0.99の間、より好ましくは0.8~0.98の間、最も好ましくは0.9~0.95の間の比を有することが意図される。換言すると、レーザ光によって少なくとも1つの金属層10からかなりの量の材料が除去される。
【0041】
これは、例えば事前ステップにおいて少なくとも1つの金属層10の材料を除去又はアブレーションするために使用される、連続的に動作するcwレーザ又は超短パルスレーザであってもよい。代替的に、レーザ光による処理に加えて、事前ステップの範囲内で少なくとも1つの金属層10の厚さDよりも小さい最大深さTを有する凹部18を保証するために機械的処理が使用されることも考えられる。これは、例えば、比較的大きな領域が露出されるような場合や、後で所定の破断点が入れられるような領域、例えばマスターカードの場合には、これらの破断点に沿って金属セラミック基板がいくつかの個々の金属セラミック基板に分離されるような領域に役立つ。
【0042】
少なくとも1つの金属層10の厚さDよりも小さい最大深さTを有する凹部18が形成される事前ステップに続いて、少なくとも1つの金属層10の材料の除去がエッチングプロセスによって行われる。特に、少なくとも1つの金属層10の材料がレーザ光によって除去された後に残され、エッチングプロセスによって除去される少なくとも1つの金属層10の残りの部分13が、エッチングプロセスによって除去されることが意図される。換言すると、エッチングプロセスを使用することによって、隣接する金属部分10’の分離に必要な残りの部分13の除去が、例えば計画された分離溝の領域において行われる。この場合、残りの部分13は、例えば構造化部又は凹部が形成された後に、製造された金属セラミック基板1上に保持される金属部分13の上にも延在する。
【0043】
これに関連して、より好ましくは、エッチングプロセス又はエッチングステップ中にマスキング又はレジスト層が省かれることが意図される。これにより、特に少なくとも1つの金属層10において、好ましくはセラミック要素30とは反対側において均一な材料の除去が行われる。少なくとも1つの金属層10の厚さDよりも小さい最大深さTを有するレーザ光によって予め決定された凹部18のプロファイル又は輪郭に起因して、特にこの凹部18の領域において、少なくとも1つの金属層10の材料の残りの部分13が、少なくとも1つの金属層10における2つの隣接する金属セクション10’の電気的絶縁を実現するために除去され得るという事実につながる。
【0044】
したがって、説明した手順では、有利には、少なくとも1つの金属層10の上面への費用のかかるマスキング又はレジスト層の形成を省略することが可能である。さらに、エッチングプロセスは、特に、レーザ光及び/又は機械的プロセスによる製造中にセラミック要素30に損傷が生じないことを保証するために、材料のわずかな又は少量の除去のみを意図していることから、エッチング剤を有利に節約することができ、好ましくは本方法を促進することもできる。特に、構造化部15の位置を予め決定するマスキング層又はレジスト層の形成が省略される場合にも、本方法が促進される。
【0045】
好ましくは、この場合、少なくとも1つの金属層10の、主延在面に対して平行に延在しない側面17の形状をレーザ光によって少なくとも部分的に決定することが意図されている。このように、有利には、少なくとも1つの金属層10又は金属部分10’の外側領域がどのように構成されるかを特定するためにレーザ光を使用することが可能である。これは、熱衝撃耐性のために決定され、少なくとも1つの金属層10の上縁部を少なくとも1つの金属層10の下縁部に接合する形状を側面17に実現することが有利であることが判明しており、下縁部は、セラミック要素30に面する側で少なくとも1つの金属層を制限し、上縁部は、セラミック要素30とは反対側で金属層10を制限するので特に有利である。
【0046】
図3は、2つの異なる製造された金属セラミック基板1の上面図を示しており、製造された金属セラミック基板1は、本発明による金属セラミック基板1を製造する例示的な方法を使用して製造されたものである。特に、図3の上側の実施形態は、島状の正方形の金属部分10’を示し、下側の実施形態では、構造化部15のための実質的に円形の空間が、少なくとも1つの金属層10において実現されている。
【符号の説明】
【0047】
1 金属セラミック基板
10 金属層
10’ 金属部分
13 残りの部分
14 凹部
15 構造化部
17 側面
18 凹部
20 裏面メタライゼーション
30 セラミック要素
S 積層方向
D 厚さ
T 深さ
HSE 主延在面
図1
図2
図3
【国際調査報告】