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特表2024-510826様々なシヌクレイン病の治療のためのモノマーα-シヌクレインのD-エナンチオマーペプチドリガンドの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】様々なシヌクレイン病の治療のためのモノマーα-シヌクレインのD-エナンチオマーペプチドリガンドの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20240304BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240304BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240304BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C07K14/435
C07K7/08 ZNA
A61P43/00
A61P25/16
A61P25/00
A61K38/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558629
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057456
(87)【国際公開番号】W WO2022200327
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107061.9
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523361585
【氏名又は名称】プリアヴォイド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルボルド ディーター
(72)【発明者】
【氏名】モールルーダー ジャニーヌ
(72)【発明者】
【氏名】セヴェニッヒ マルク
(72)【発明者】
【氏名】アルテンドルフ ティム
(72)【発明者】
【氏名】サントゥール カロリーネ ビアンカ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA18
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZC51
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA01
4H045BA17
4H045CA40
4H045EA21
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA01
4H045GA05
4H045GA15
4H045GA22
(57)【要約】
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、及びシヌクレイン病の治療に使用するためのそのようなペプチドに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7、並びにそれらの相同体、断片及び一部分からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6若しくは配列番号7、又はそれらと少なくとも80%の同一性を有する相同体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
遊離C末端において、カルボキシル基の代わりに、酸アミド基(CONH基)若しくはCOH基、COCl基、COBr基、CONH-アルキル基若しくはCONH-アルキルアミン基が存在するか、又は前記ペプチドは環化形態にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6若しくは配列番号7を有する配列の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又はこれより多いコピーを含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは実質的にD-アミノ酸からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
別の物質に連結されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項8】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、互いに共有結合又は非共有結合により連結されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項9】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、リンカーなしで互いに連結されている、すなわち、互いに直接連結されているか、又はリンカー基を使用して互いに連結されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、線状又は分岐様式で互いに連結されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7のペプチドがプラットフォーム分子を使用して連結されているデンドリマーであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項12】
50μM未満のKでα-シヌクレインペプチドに結合することを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項13】
α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/又はα-シヌクレインペプチド凝集体の形成を防止するための請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項14】
α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/又はα-シヌクレインペプチド凝集体の解毒のための請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項15】
シヌクレイン病の治療に使用するための請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7、それらの相同体、断片及び一部分からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、並びにシヌクレイン病の治療に使用するためのそのようなペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
シヌクレイン病は、特定の細胞におけるタンパク質α-シヌクレインのミスフォールディング及び凝集に関連する、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症(MSA)等の神経変性疾患の異種群を包含する。
【0003】
PD患者の罹患したニューロンにおいて見出される不溶性封入体は、α-シヌクレインのアミロイド形態を含有し、これは、アミロイド形成と疾患病態との間の因果関係を示唆する。様々なシヌクレイン病におけるα-シヌクレイン凝集体は、プリオンの様式で増殖して細胞から細胞に転移するα-シヌクレインの異なる立体構造状態に対応すると推定される。
【0004】
National Institute of Neurological Disorders and Stroke(米国国立神経疾患・脳卒中研究所)(https://www.ninds.nih.gov/)からのデータによれば、PD、DLB及びMSAを治癒又は効果的に停止することができる物質は現在存在しない。それにもかかわらず、それぞれの症状を治療するために使用できる多くの活性成分が存在する。
【0005】
要約すると、因果関係に基づき大幅に寿命を延ばす療法は、現在、すべてではないにしてもほとんどのシヌクレイン病に対して利用可能ではなく、緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、既に存在している毒性α-シヌクレイン凝集体を天然の機能性α-シヌクレインモノマーに分解することができ、これにより様々なシヌクレイン病において治療的使用が可能になる新規化学物質を開発することであった。
【0007】
治療において使用されることになる化学物質又はその変異体は、可能な限り高い親和性及び特異性で天然の内因性α-シヌクレインタンパク質に結合し、これによりそれを安定化させることが意図される。結果として、誤って折り畳まれたα-シヌクレイン立体構造と天然に折り畳まれたα-シヌクレイン立体構造との間のバランスは、後者に有利にシフトする。従って、理想的な場合、すでに存在するα-シヌクレインオリゴマー及び原線維は、それらのモノマー成分に分解され、これにより排除されることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のペプチド、特に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7、並びにそれらの相同体、断片及び一部分からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドによって達成される。
【0009】
さらなる好ましい実施形態は、従属請求項において規定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】組換え完全長L-エナンチオマーα-syn及びD-エナンチオマー16量体ペプチドを用いたチオフラビン-Tアッセイ。
図2】SVD-1及びα-synのMST測定。
図3】野生型α-シヌクレイン及びSVD-1の多サイクルSPR実験。
図4】SVD-1によるα-synオリゴマーの排除。
図5】ThTアッセイにおけるα-syn凝集の準化学量論的阻害。
図6】SVD-1の存在下及び不存在下でのα-syn凝集試料の勾配遠心分離。
図7】組換え完全長L-エナンチオマーα-syn及びD-エナンチオマーSVD-1aを用いたチオフラビン-Tアッセイ。
図8】野生型α-syn及びSVD-1a、SVD-6a又はSVD-10aの単サイクルSPR実験。
図9】SVD-1及びSVD-1_scrambledを用いたデノボThTアッセイ及び播種ThTアッセイ。
図10】SVD-1及びSVD-1aを用いたα-synのMST測定。PBS、pH7.4中25℃でのSVD-1及びSVD-1aと完全長α-synとの相互作用のMST測定。
図11】α-syn並びに固定化SVD-1及びSVD-1aを用いた動態学的単サイクルアッセイ。
図12】SVD-1a(同位体標識されていない)との相互作用における15N標識α-synのNMR分析。
図13】漸増濃度のSVD-1aとのインキュベーション後のモノマーα-synのサイズ排除クロマトグラフィー。
図14】SVD-1a及びSVD-1_scrambled+5rとのモノマーα-synのチオフラビン-Tデノボ凝集。
図15】ThT、DGC、CD及びAFMを用いた、SVD-1aの存在下及び不存在下でのα-synのデノボ凝集分析。
図16】SVD-1a及びSVD-1_scrambled+5rをシードとして用いたThTアッセイ。
図17】SVD-1aは、PFFオリゴマーをα-synモノマーに分解する。
図18】ThTアッセイ及びCD分光法によるSVD-1aの存在下及び不存在下での凝集アッセイの分析。
図19】SVD-1aは、細胞における播種されたα-synの凝集を阻害する。
図20】SVD-1及びSVD-1aは、PFFオリゴマーシードを用いたMTTアッセイにおいて細胞生存率を増加させる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、「comprise(含む)「は、「consist of(からなる)」をも包含するものとする。
【0012】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7のペプチドは、最適化された鏡像ファージディスプレイ選択を用いて見出された。
【0013】
鏡像ファージディスプレイの方法は、本明細書に記載される特定のモノマーバインダの選択とともに、特定のオリゴマーバインダを見出すために、又はタンパク質ミスフォールディング疾患において形成する他の種に対するリガンドを見出すためにさえも、使用することができるということに留意されたい。
【0014】
鏡像ファージディスプレイでは、例えば、M13ファージのgp3タンパク質上に提示され、そのゲノム中にコードされるランダム化ペプチド配列の組換えライブラリが、天然に存在するL-エナンチオマー標的分子(例えば、α-シヌクレイン)の正確な鏡像(D-エナンチオマー)に対して選択される。遺伝子産物3としても知られるgp3分子は、宿主細胞との接触に必要とされるファージカプシド中のタンパク質である。
【0015】
ペプチド配列は、有利には、M13ファージのgp3タンパク質のN末端に提示され、そのゲノム中にコードされる。
【0016】
選択されたファージのp3遺伝子のDNA配列は、gp3分子上の対応するペプチド配列についての遺伝情報を含むDNA配列に連結され、その結果、これを配列決定することができる。配列決定後、ゲノム配列をアミノ酸配列に翻訳し、生理学的なL-エナンチオマー形態の標的分子(例えばα-シヌクレイン)に結合するD-エナンチオマーペプチドとして合成することができる。表面上に異なるペプチドをgp3との融合タンパク質として提示するすべてのファージは、以下、ファージライブラリと呼ばれる。対応するペプチドは、実験において選択される生体分子を表す。
【0017】
「バイオパニング」ラウンド(選択ラウンド)と呼ばれるものを、例えば3ラウンド実行することができる。このプロセスにおいて、ファージライブラリは、ベイトとも呼ばれる固定された標的分子と接触させられ、結合ファージは、同様に存在する数100万個の他の非結合ファージから単離される。
【0018】
例として、α-シヌクレインのオリゴマー種又は原線維(フィブリル)種に優先的に結合するファージの数は、これらのまさにその種をベイトとして提供しないことによって減少する。これにより、α-シヌクレインオリゴマー及び原線維に対する親和性が増加したファージをファージプールから除去することができ、これは、例えば、α-シヌクレインモノマー特異的ファージが蓄積することを意味する。この方法は、もちろん、α-シヌクレインオリゴマーに結合するリガンド及びペプチドを特異的に決定するために同様に適合させることができる。
【0019】
本発明によると、プラスチック、BSA又はストレプトアビジンに対する親和性を有するファージの何らかの蓄積を低減するために、好ましくはすべてのバイオパニングラウンドにおいて、異なる基材表面がさらに使用される。この場合、基材表面は、使用されるビオチン化基材(ストレプトアビジンで誘導体化されたポリスチレン又はポリプロピレンの表面)及び使用されるブロッキング剤又はクエンチング剤の組み合わせとして定義される。連続する選択ラウンドにおいて、選択圧は徐々に増加する。この目的のために、標的分子(例えば、モノマーα-シヌクレイン)の濃度は安定したままであるが、ファージインキュベーション後の洗浄工程の数は、α-シヌクレインモノマーに対して親和性を有するファージを除去しないように、第2の選択ラウンドから始めて増加される。
【0020】
さらに、標的分子が基材上に固定された後に、表面をブロック(遮断)するための他の薬剤(例えば、BSA、ミルク粉末、ブロッキングなし)を使用することによって、異なる基材表面がファージディスプレイのあらゆる選択ラウンドにおいて選択される。
【0021】
例として、ラウンド1におけるBSAブロックポリスチレン表面と、ラウンド2におけるミルク粉末ブロックポリプロピレン表面と、ラウンド3におけるBSAブロックポリスチレン表面との間の切り替えがあってもよい。
【0022】
異なる基材表面間の切り替えは、表面に対する標的分子又はベイトの特異性を増加させる。さらに、これは、プラスチック表面、BSA又はベイト分子以外の基材表面の他の成分に非特異的に結合するリガンドの減少をもたらす。
【0023】
実際のファージディスプレイ選択と並行して、例えば、主選択と同一であるが、ここではベイトを使用しないという顕著な違いを有する対照選択が行われてもよい。対照選択から得られた配列のデータ分析により、ベイトの不存在下でさえ選択中に蓄積し、それゆえすべてのその後の工程に無関係であるペプチドを特定することが可能になる。
【0024】
それゆえ、当該方法は、以下の、
a)基材表面上に固定化ベイトを提供する工程と、
b)ベイトとして作用する固定化分子を、選択すべき分子のライブラリを含有する溶液と接触させる工程と、
c)上記分子に取り囲まれた固定化ベイトを洗浄溶液と接触させる工程と、
d)上記分子により取り囲まれた固定化ベイトを洗浄溶液と接触させた後にベイトに依然として結合した分子を分離し増殖(Vermehrung)させる工程と、
e)異なる基材を各反復に使用して、上記工程を反復する工程と、
f)反復後にベイト上に残っている分子の配列を特定する工程と
を特徴とする。
【0025】
例えば、基材の種類を変更することによって、及び/又は試薬によって基材をブロックするか若しくはブロックしないことによって、異なる基材が使用される。
【0026】
ベイトとして、タンパク質、ペプチド、RNA、DNA、mRNA及び化学化合物からなる群からの分子が使用される。ベイトとして、特にモノマーα-シヌクレインが使用される。
【0027】
ベイトが固定化される表面として、例えば、微量滴定プレート、磁性粒子、アガロースビーズ又はセファロース(sepharose)ビーズからなる群からの材料(成分)が使用される。
【0028】
それゆえ、ポイントa)に係るベイトは、選択されるべき生体分子が結合する化合物である。従来技術から公知である方法によれば、その化合物は第1の表面に固定される。非限定的な例として、ベイトとして、タンパク質、ペプチド、RNA又はDNA分子、特にα-シヌクレインモノマーを挙げてもよい。可能な表面として、例えば、微量滴定プレート、磁性粒子、アガロースビーズ又はセファロースビーズが使用されてもよい。その後、固定化ベイトを有する表面をクエンチすることができ、基材の官能基は、このプロセスにおいて不活性化される。さらに、基材上に残っている疎水性自由表面は、適切な薬剤でブロックすることができる。
【0029】
第2の工程b)では、固定化ベイトは、分子、とりわけ生体分子のランダム化ライブラリと接触させられる。これらの生体分子は、ベイトへの結合について競合する。ランダム化ライブラリは、混合物中の非常に多数、例えば1012種の異なる分子、又は10種若しくはわずか100種の異なる分子の混合物である。このようなライブラリは、例えば、それぞれの場合において、特定のビヒクルに結合し、しかもベイトに結合することができるペプチド、タンパク質、DNA、RNA又はmRNAからなることができる。ビヒクルとしては、例えば、ファージ、ポリソーム又は細菌表面が挙げられる。ライブラリは、人工的な構成成分若しくは天然から単離された構成成分、又は両方の混合物からなることができる。本発明の文脈では、人工的とは、例えば、オリゴヌクレオチド合成から生成される化合物を意味する。
【0030】
工程c)では、生体分子によって取り囲まれた固定化ベイトを洗浄物質と接触させることができる。この目的のために、工程c)において洗浄工程が実施され、緩衝液が固定化ベイトと接触させられるか、又は固定化ベイトをすすぐために使用される。これは、生体分子のライブラリを有する溶液が、好ましくは、類似又は同一であってもよい溶液で繰り返し置換されることを意味する。これは、固定化ベイトから他のライブラリ分子よりも速く解離しないライブラリ分子を除去する。結合するライブラリ分子の解離反応の速度は、主に個々の分子の異なる解離定数(特にkoff値)によって決定される。従って、統計学的には、小さいkoff値を有する分子は、固定化ベイトに最も長く結合したままであり、それゆえ、洗浄緩衝液によって洗い流される可能性が統計学的に低い。洗浄緩衝液を含む液体は、好ましくは水性であり、pH緩衝液を含有してもよい。特異性洗浄工程のための溶液の任意選択の成分は、塩、界面活性剤又は還元剤であってもよい。
【0031】
工程c)における特異性洗浄工程の後、工程d)において、結合した生体分子がベイトから分離され、増殖させられる。分離又は溶出は、例えば、pHの変更、加熱又は他の変化、特に塩濃度の上昇によって行われてもよい。分離又は溶出された生体分子は、その後、公知の方法を用いて増殖される。この目的のために、例えば、工程a)~c)の後に得られて溶出され、その表面に生体分子を担持するファージ粒子が、細胞に導入され、増殖させられることが可能である。
【0032】
工程e)では、工程a)の後にベイトに供給される溶液中の選択された生体分子の濃度が高められる。好ましくは、工程a)~e)を含む3~6回の選択ラウンドが実施される。しかしながら、1~10回又は1~20回の反復を実施することもできる。好ましくは工程c)で実施される競合物質濃度の増加も、サイクル数の増加とともに改善された選択をもたらす。好ましくは工程c)で実施される洗浄工程の増加は、サイクル数の増加とともに選択の改善をもたらす。
【0033】
特に関連する鏡像ファージディスプレイは、工程a)におけるN末端ビオチン化D-エナンチオマーα-シヌクレインモノマー、工程b)における組換えファージライブラリ、及び工程c)における緩衝液を、ベイトとしてのα-シヌクレインモノマーとともに提供する。分離工程としての溶出は、例えば、分離工程としてpHを低下させることによって行われ、ファージ増幅は工程d)における増殖として行われる。
【0034】
このようにして、α-シヌクレインモノマーに特異的に結合する7種のD-エナンチオマーペプチドが開発された。
【0035】
配列番号1:
SVD-1(遊離N末端、アミド化C末端):
kmpthetywqehiwha
【0036】
配列番号2:
SVD-6(遊離N末端、アミド化C末端):
ydwkqpmsasrflapw
【0037】
配列番号3:
SVD-10(遊離N末端、アミド化C末端):
sshwqqwnppywntds
【0038】
配列番号4:
SVD-14(遊離N末端、アミド化C末端):
ydwkqpmsasrflapwr
【0039】
配列番号5:
SVD-1a(遊離N末端、アミド化C末端):
rlpthetywqehiwharrrrr
【0040】
配列番号6:
SVD-6a(遊離N末端、アミド化C末端):
ydwrqplsasrflapwrrrrr
【0041】
配列番号7:
SVD-10a(遊離N末端、アミド化C末端):
sshwqqwnppywntdsrrrrr
【0042】
SVD-1、SVD-6、SVD-10、SVD-14、SVD-1a、SVD-6a又はSVD-10aの配列プロセシング(例えば配列変異)は、シヌクレイン病において治療的に使用することができる他の物質を開発する可能性をもたらす。
【0043】
本発明は、上記で開示された方法を用いて特定された可能性がある他のペプチドに関することもできる。
【0044】
配列番号1~7に係るペプチドは、α-シヌクレインモノマーへの特異的結合の結果としてシヌクレイン病に対する潜在的な医薬として使用することができる。
【0045】
本発明に係る目的は、配列番号1~7に係るアミノ酸配列の相同体、断片及び一部分を含有するペプチドによっても達成される。
【0046】
本明細書において、α-シヌクレインペプチド又はα-シヌクレインタンパク質は、好ましくはヒトのα-シヌクレインペプチド又はα-シヌクレインタンパク質を意味する。
【0047】
本発明の文脈では、相同配列又は「相同体」は、アミノ酸配列が上記モノマーの上述のアミノ酸配列の1つと少なくとも50、55、60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の同一性を有することを意味する。このうち、80%及び90%が好ましい。本明細書において、用語「相同体」及び「相同性」は、「同一性」と同義に使用される。2つの核酸配列又はポリペプチド配列の間の同一性は、Smith,T.F.及びWaterman,M.S(Adv.Appl.Math. 2:482-489(1981))によるアルゴリズムに基づくBESTFITプログラムを使用し、アミノ酸について、ギャップ生成ペナルティ(Gap creation penalty):8及びギャップ伸長ペナルティ(Gap extension penalty):2、のパラメータ、核酸について、ギャップ生成ペナルティ:50及びギャップ伸長ペナルティ:3、のパラメータを調整することにより比較によって計算される。好ましくは、2つの核酸配列又はポリペプチド配列の間の同一性は、Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.(J.Mol.Biol. 48:443-453)によるアルゴリズムに基づくGAPプログラムを使用し、アミノ酸について、ギャップ生成ペナルティ:8及びギャップ伸長ペナルティ:2、のパラメータ、核酸について、ギャップ生成ペナルティ:50及びギャップ伸長ペナルティ:3、のパラメータを調整して、比較によって計算されるような、各場合において同じ配列長にわたる核酸配列/ポリペプチド配列の同一性によって定義される。
【0048】
本発明の文脈では、2つのアミノ酸配列は、それらが同じアミノ酸配列を有する場合、同一である。
【0049】
さらなる変形形態では、本発明に係るペプチドは、2個又は3個までのアミノ酸だけ記載された配列とは異なる配列を有する。
【0050】
さらには、上記配列を含む配列をペプチドとして用いることもできる。
【0051】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、遊離C末端において、カルボキシル基の代わりに、酸アミド基(CONH基)若しくはCOH基、COCl基、COBr基、CONH-アルキル基若しくはCONH-アルキルアミン基が存在するか、又はペプチドは環化形態にあることを特徴とする。
【0052】
これは、特に有利には、C末端に負電荷を有さないペプチドを提供するという目的も達成する。これは、有利には、上記ペプチドが、遊離C末端にカルボキシル基を有するペプチドよりも高い親和性で標的分子に結合することができることを意味する。生理学的状態では、遊離の非修飾カルボキシル基を有するペプチドは、この末端に負電荷を有する。
【0053】
本発明の1つの実施形態では、本発明に係るペプチドは、生理学的状態、特に6~8、特に6.5~7.5のpH、特にpH6.0、pH6.1、pH6.2、pH6.3、pH6.4、pH6.5、pH6.6、pH6.7、pH6.8、pH6.9、pH7.0、pH7.1、pH7.2、pH7.3、pH7.4、pH7.5、pH7.6、pH7.7、pH7.8、pH7.9又はpH8.0において、C末端が負電荷を有さず、代わりに中性であるか、又は1つ以上の正電荷を有するように修飾される。
【0054】
1つの実施形態では、当該ペプチドは、遊離C末端において、カルボキシル基の代わりに酸アミド基が存在することを特徴とする。それゆえ、カルボキシル基(-COOH基)の代わりにC末端に酸アミド基(-CONH基)が配置される。
【0055】
従って、当該ペプチドは、特に有利には、遊離C末端でアミド化される。
【0056】
従って、当該ペプチドは、特に有利には、遊離C末端でアミド化され、遊離N末端では非修飾である。
【0057】
これは、特に有利には、標的分子に親和性で結合することができ、単純な様式で得ることができる過剰の負電荷のないペプチドを有するという目的も達成する。
【0058】
本開示のさらなる実施形態では、カルボキシル基の代わりに以下のさらなる基、COH、COCl、COBr、ONH-アルキル基、CONH-アルキルアミン基(正味正電荷)等が存在するが、これは、主請求項の技術的教示に従う限り、非限定的なリストである。
【0059】
それゆえ、本発明のさらなる好ましい実施形態では、C末端に負電荷を有さない本発明に従って修飾されたペプチドの結合親和性は、C末端に負電荷を有するがその点を除けば同一のアミノ酸配列を有する線状ペプチドと比較して、1%、2、3、4、5、6、7、8、9、特に10%、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、特に100%、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、特に200%、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、特に300%、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、特に400%、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、さらに有利なことに500%、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、特に有利には600%、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、特に有利には700%、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、749、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、761、762、763、764、765、766、767、768、769、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、782、783、784、785、786、787、788、789、790、791、792、793、794、795、796、797、798、799、同様に特に有利には800%、801、802、803、804、805、806、807、808、809、810、811、812、813、814、815、816、817、818、819、820、821、822、823、824、825、826、827、828、829、830、831、832、833、834、835、836、837、838、839、840、841、842、843、844、845、846、847、848、849、850、851、852、853、854、855、856、857、858、859、860、861、862、863、864、865、866、867、868、869、870、871、872、873、874、875、876、877、878、879、880、881、882、883、884、885、886、887、888、889、890、891、892、893、894、895、896、897、898、899、同様に特に有利には900%、901、902、903、904、905、906、907、908、909、910、911、912、913、914、915、916、917、918、919、920、921、922、923、924、925、926、927、928、929、930、931、932、933、934、935、936、937、938、939、940、941、942、943、944、945、946、947、948、949、950、951、952、953、954、955、956、957、958、959、960、961、962、963、964、965、966、967、968、969、970、971、972、973、974、975、976、977、978、979、980、981、982、983、984、985、986、987、988、989、990、991、992、993、994、995、996、997、998、999、又はさらには1000%、又はさらには10000%、又はさらには100000%若しくは1000000%まで(いずれの中間値を採用することも可能である)増加する。
【0060】
これは、対応して低下したK値によって示される。α-シヌクレインモノマーに対する修飾ペプチドの結合親和性の尺度としてのK値は、遊離C末端に負電荷を有する線状結合ペプチドと比較して、1%、2、3、4、5、6、7、8、9、特に10%、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、特に99.1、99.2、99.3、99.4、99.5%、99.6、99.7、99.8、99.9~99.99又はさらには99.999%(いずれの中間値を採用することも可能である)低下する。
【0061】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、このペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び/又は配列番号7を有する配列のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又はこれより多いコピーを含有することを特徴とする。
【0062】
当該ペプチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び/又は配列番号7の11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又はこれより多いペプチドを含有する変異体を想起することも可能である。
【0063】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び/又は配列番号7を有する配列のダイマーが特に好ましく、その両方のモノマーは、同じ配列番号を有するか又は異なる配列番号を有するペプチドである。
【0064】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、そのペプチドが実質的にD-アミノ酸からなることを特徴とする。
【0065】
本発明の文脈では、用語「実質的にD-エナンチオマーアミノ酸からなる」は、本発明に従って使用されるモノマーが、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、好ましくは75%、80%、特に好ましくは85%、90%、95%、特に96%、97%、98%、99%、100%まで、D-エナンチオマーアミノ酸から形成されることを意味する。
【0066】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、そのペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列からなることを特徴とする。
【0067】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、そのペプチドが別の物質に連結されていることを特徴とする。
【0068】
本発明の文脈では、連結は、Roempp Chemie Lexikon、第9版、第1巻、650頁以降、Georg Thieme Verlag、シュトゥットガルト(Stuttgart)に定義される化学結合、好ましくは主原子価結合、特に共有結合である。
【0069】
上記物質は、ドイツ薬事法(German Medicines Act)第2条又は第4条(19)、2012年9月版に従って定義される医薬品又は活性成分の変種である。あるいは、活性成分は、医薬活性物質として使用される治療活性物質である。好ましくは抗炎症剤が使用される。
【0070】
さらなる変形形態では、上記物質は、当該ペプチドの効果を増強する化合物である。
【0071】
さらなる代替形態において、上記物質は、当該ペプチドの溶解性及び/又は血液脳関門の通過を改善する化合物である。
【0072】
あるいは、本発明によれば、当該ペプチドは、上記の変形形態、実施形態及び/又は代替形態の少なくとも2つ以上の特徴の任意の所望の組み合わせを有する。
【0073】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、互いに共有結合又は非共有結合で連結されていることを特徴とする。
【0074】
本発明の文脈では、ペプチドユニットの共有結合又は連結は、2つのペプチドが、その間にリンカー基が挿入されているか又は挿入されていない状態で、頭-頭、尾-尾、又は頭-尾でのいずれかで互いに線状に連結される場合に、存在する。
【0075】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、リンカーなしで互いに連結されている、すなわち、互いに直接連結されているか、又はリンカー基を使用して互いに連結されていることを特徴とする。
【0076】
本発明の文脈では、ペプチドが、例えばビオチン及びストレプトアビジン、特にストレプトアビジンテトラマーを介して互いに連結されている場合、非共有結合による連結が存在する。
【0077】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又は配列番号7の複数のペプチドが、線状又は分岐様式で互いに連結されていることを特徴とする。
【0078】
本発明の変形形態では、当該ペプチドは、特に上記のように、互いに線状に連結されていてもよい。別の変形形態において、上記ペプチドは、分岐様式で互いに連結されて、本発明に係るペプチドを与える。
【0079】
本発明によれば、分岐ペプチドは、上記モノマーが互いに共有結合又は非共有結合で連結されているデンドリマーであってもよい。
【0080】
あるいは、当該ペプチドは、プラットフォーム分子(例えば、PEG又は糖)に連結され、従って、分岐ペプチドを形成することもできる。
【0081】
あるいは、これらの選択肢の組み合わせも可能である。
【0082】
本発明の1つの構成では、当該ペプチドの結合親和性は、解離定数(K値)によって定義される。
【0083】
本発明の1つの有利な構成では、本発明に係るペプチドの解離定数(K値)は、有利には低下する。これは、本発明に係るペプチドの改善された特性、例えば、より高い結合親和性及びより高い分解効率並びに/又は毒性のα-シヌクレインのオリゴマー若しくは凝集体の形成の防止に関連する。
【0084】
本発明の変形形態では、最大で500μM、好ましくは250、100、50μM、特に好ましくは25、10、1μMの解離定数(K値)で、特に好ましくは最大で500nM、250、100、50、特に好ましくは25、10、1nM、500pM、100、50、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1pMから1pM未満の範囲まで(任意の中間値を採用することが可能である)の解離定数(K値)でα-シヌクレインモノマーに結合するペプチドが使用される。
【0085】
本発明に係るペプチドは、さらに好ましくは、それらが、50μM未満のKでα-シヌクレインペプチド、好ましくは折り畳まれていないα-シヌクレインペプチドに結合することを特徴とする。
【0086】
当該ペプチドは、例えば、化学合成又はペプチド合成によって生成することができる。
【0087】
α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/又はα-シヌクレインペプチド凝集体の形成を防止するための、先行する請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【0088】
さらなる変形形態では、当該ペプチドは、α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/又はα-シヌクレインペプチド凝集体の形成を阻害又は防止するためのペプチドである。
【0089】
さらなる変形形態では、当該ペプチドは、α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/又はα-シヌクレインペプチド凝集体の解毒のためのペプチドである。
【0090】
本発明に係るペプチドは、α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/若しくはα-シヌクレインペプチド凝集体又はそれらから形成されるポリマー、例えば原線維を、好ましくはそれらに結合するのではなく、むしろα-シヌクレインモノマーに結合することによって、及び平衡をシフトさせることによって、α-シヌクレインオリゴマーの減少をもたらし、これによりそれらが毒性化合物に変換されるのを防止することによって、解毒する。従って、本発明の別の主題は、α-シヌクレインオリゴマー及び凝集体又はそれから形成される原線維の解毒の方法である。
【0091】
α-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/若しくはα-シヌクレインペプチド凝集体の形成の阻害又は防止、並びにα-シヌクレインペプチドオリゴマー及び/若しくはα-シヌクレインペプチド凝集体の解毒は、インビトロ又はインビボで行うことができる。
【0092】
本発明は、シヌクレイン病の治療に使用するための上記のペプチドにも関する。
【0093】
本発明は、特に、特定の細胞におけるタンパク質α-シヌクレインのミスフォールディング及び凝集に特に関連している、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症(MSA)の治療に使用するための上記のペプチドにも関する。
【0094】
本発明は、特に、パーキンソン病(PD)の治療に使用するための上記のペプチドにも関する。
【0095】
以下で、非限定的な実施例を用いて本発明をより詳細に記載する。
【実施例
【0096】
ペプチドSVD-1、SVD-6、SVD-10及びSVD-14、SVD-1a、SVD-6a、SVD-10aを、より綿密に検討した。
【0097】
材料及び方法:
モノマーの野生型(WT)α-syn及びα-syn A140Cの組換え発現及び洗浄(cleaning):
【0098】
N末端アセチル化野生型α-syn(以下、α-synと呼ぶ)及びアセチル化α-syn-A140Cを、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)由来のN末端アセチル化酵素とともにpT7ベクター及びpNatBベクター中にコドン最適化α-synを保有する大腸菌BL21(DE3)中で発現させた。発現は、1mM IPTGを含むLB又は15N飽和M9最少培地中で、1.2のOD600に到達し、続いて37℃で4時間(h)インキュベートした後に起こった。1lの発現物からのペレットを25mlの20mM Tris、pH8.0に再懸濁し、95~100℃で2×15分(min)間沸騰させた。4℃で30分間、20,000×gで遠心分離した後、上清を0.45g/mlの硫酸アンモニウムの最終濃度で沈殿させた。このタンパク質を20,000×gで30分間ペレット化し、50mlの20mM Tris-HCl、pH8.0に再懸濁した。滅菌濾過後、この試料をHiPrep QFF 16/10(Cytiva(サイティバ)、米国、CV=20ml)陰イオン交換カラムにロード(装填)した。勾配溶出は、目標濃度の800mM NaClで20CVにわたって行った。組換えα-synは、28~32mS/cmの電気伝導率で溶出した。組換えα-synを含有する画分をプールし、上記のように硫酸アンモニウムで沈殿させた。ペレットを5mlの50mM Tris-HCl、pH7.4、50mM NaClに再懸濁し、HiLoad Superdex 60/75pgゲル濾過カラム(Cytiva、米国、CV=120ml)にロードした。発現は、5600M-1cm-1の吸光係数を有するA275によって決定したところ、20~30mg/lを与えた。このタンパク質アリコートを液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。
【0099】
D-エナンチオマーペプチド:
C末端アミド化を有するD-エナンチオマーペプチドを、>95%の純度を有する凍結乾燥塩化物塩粉末としてCASLO(キャスロ)(CASLO、デンマーク)から得た。上記ペプチド、例えばSVD-1及びSVD-1aを、PBSを含む異なる緩衝液、pH7.4、条件下で試験し、37℃で1時間のインキュベーション及び20,800×gの遠心分離の後のUV-vis吸光度測定により、両方の化合物が少なくとも1mMの開始濃度まで上清中に完全に残ったことが示された。
【0100】
チオフラビンTアッセイ:
チオフラビンT(ThT)アッセイは、α-syn細線維化(フィブリル化)を可視化するために慣例的に使用される。これは、染料ThTは原線維構造のアミロイド形成性交差βプリーツシート部分に結合することができるためである。組換えα-synを氷上で解凍し、21,000×g及び4℃で30分間遠心分離した。上清の濃度を測定した。凍結乾燥D-ペプチドを室温(RT)で1時間解凍し、500μlのPBS、pH7.4に溶解した。21,000×gで30分間遠心分離した後、A280における対応する吸光係数を用いて、UV-visによって上清の濃度を決定した。すべてのThTアッセイ実験は、明示的に特段の記載がない限り、PBS、pH7.4中の15μM ThT及び0.05%アジ化ナトリウム(w/v)を用いて37℃で実施した。ThT蛍光を、3mmまでの中心以外の測定(orbital averaging)で蛍光プレートリーダー(Clariostar又はPolarstar Optima、BMG labtech(ベーエムゲー・ラボバイオテック)、ドイツ)において、λex=448nm及びλem=482nmでのベースライン光学構成でモニターした。測定を開始する前に、120μlの試料溶液を、透明な平らなベースを有する非結合性の96ウェルハーフエリアプレート(Corning(コーニング)、米国)に添加した。すべてのデノボ(de novo)凝集アッセイについて、ホウケイ酸ガラスビーズ(d=3.0mm、Hilgenberg(ヒルゲンベルグ)、ドイツ)を各ウェルに添加した。接種した凝集アッセイについては、ビーズを使用せず、試料を静止条件下でインキュベートした。試料ウェルを取り囲むウェルは、熱分布を改善するために同体積の緩衝液で満たした。明示的に特段の記載がない限り、実験は5回の反復で行った(n=5)。
【0101】
ThTアッセイを異なる目的に使用した。第1に、デノボThT凝集アッセイは、合成D-ペプチドによる凝集遅延についてのスクリーニングプラットフォームとして役立った。この場合、50μMの組換えα-synを3倍モル過剰の各D-ペプチドとともにインキュベートした。試料を各サイクルの前にオービタルシェイキング(軌道振盪)モードで300rpmで30秒(s)間振盪した。水性緩衝液に不溶性であるペプチドを2.5μlのDMSO(0.5mgペプチド)に溶解し、2.5%(v/v)DMSOの最終濃度に達するまでPBS、pH7.4と徐々に混合した。これらの試料については、2.5%(v/v)DMSOを含むPBS、pH7.4中のα-syn単独の参照凝集も行った。各反復物の凝集曲線を、下記式を用いて対称ボルツマンシグモイドフィット(OriginPro 2020、OriginLab(オリジンラボ)、米国)を用いて個々に調整した。
【数1】
【0102】
(A=開始値、A=終了値、x=変曲点[s]、dx=時定数[1/s])。
【0103】
調整の変曲点は、凝集半減期t1/2を決定し、遅延時間は、式t1/2-2・dt1/2を使用して近似し、式中、dt1/2は、x=t1/2での調整の勾配(単位:1/s)として定義される。半減期及び遅延時間は、個々の調整の平均値として計算した。凝集遅延の濃度依存性を決定するために、50μMの組換えα-synに異なる濃度の上記化合物を適用した。遅延時間及びt1/2は、上述のように計算した。グラフ表示のために、調整した定常状態をすべての条件について1に正規化し、調整に基づいて平均誤差を計算した。時間シフトの有意性に関する統計的検定は、2つの無作為試料(無作為標本)についてウエルチ(Welch)のt検定を使用して実施し、p<0.05を用いた(OriginPro 2020、OriginLab(オリジンラボ)、米国)。準化学量論的な物質濃度でのデノボThTアッセイのために、10μM α-synを使用した。スクリーニング凝集アッセイとは対照的に、凝集時間を短縮するために、α-syn試料をオービタルシェイキングモードで300rpmで連続的に振盪し、測定を5分ごとに行った。阻害剤及び同じ濃度の対応する対照ペプチドの存在下での遅延時間シフト及び定常状態減少に対するt1/2の有意性を比較することによって、上記のように統計的評価を行った。接種したThTアッセイについては、50nMのモノマー当量のPFFオリゴマーを、異なる濃度の上記化合物とともに又はその不存在下で、37℃の静止条件下で蛍光プレートリーダーにおいてインキュベートした。20時間後、20μMのモノマーα-synを、播種を開始するために試料混合物に添加した。測定は5分毎に行った(n=3)。
【0104】
PFFオリゴマーの生成:
PFFオリゴマーを以下のように生成した。第1に、ホウケイ酸ガラスビーズ(d=3.0mM;Hilgenberg、ドイツ)を含むLoBind反応管(Eppendorf GmbH(エッペンドルフ)、ドイツ)中で、20mM NaPi、pH7.0、150mM 0.05% NaCl(w/v)アジ化ナトリウム中で、300μMの組換えα-synを37℃で1週間インキュベートすることによって、不溶性PFFを生成した。この不溶性PFFを4℃で30分間100,000×gの超遠心分離によって回収し、ペレットを20mM NaPi、pH7.0、150mM NaClで数回洗浄した。モノマー当量濃度は、最初の遠心分離後の上清中のα-syn濃度を測定し、これを細線維化の開始濃度から差し引くことによって決定した。不溶性PFFを緩衝液に再懸濁し、液体Nで-80℃で凍結させた。オリゴマーPFFは、チップ超音波処理器(MS72マイクロチップ、Sonopolus、Brandelin(ブランデリン)、ドイツ)を使用して、300μMのモノマー当量濃度を有する200μlの不溶性PFFを3×15秒間(1秒の開始/終了)及び60%振幅で激しく超音波処理することによって得た。不溶性PFFを、100,000×gで1時間4℃で遠心分離することによって分離した。PFFオリゴマーを含む上清を分離し、分注(アリコート)し、液体Nで-80℃で凍結した。
【0105】
蛍光標識:
システイン-マレイミドカップリングによってペプチドを蛍光標識した。SVD-1_Cys及びSVD1a_Cysを、5倍又は10倍モル過剰のTCEP及びCF633-PEG2-マレイミド(Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ)、米国)でC末端で蛍光標識した。この標識反応を25mM NaPi、pH7.0中で室温で2時間行った。標識したペプチドを、Agilent(アジレント) 1260 Infinity II System及びC-18 RP-HPLCカラム(Zorbax 300 SB-C8/SB-C 18、Agilent、米国)を用いて25℃で精製した。移動相は、A:水+0.1%TFA、及びB:アセトニトリル+0.1%TFA、からなっていた。蛍光標識したペプチド及びタンパク質を、30分で5~40%(v/v)Bの勾配で溶出した。蛍光標識生成物をフルオロフォアの吸収波長(CF633:633nm)を用いて分画し、続いてプールした試料を凍結乾燥し、適切な緩衝液に再溶解した。タンパク質濃度をUV-visによって決定し、蛍光標識試料を-20℃で保存した。
【0106】
マイクロスケール熱泳動
マイクロスケール熱泳動(MST)の実験は、Monolith NT.115装置(NanoTemper Technologies GmbH(ナノテンパー・テクノロジーズ)、ドイツ)を用いて行った。蛍光標識ペプチドをPBS、pH7.4で100nMの最終濃度に希釈した。組換えα-synを、PBS、pH7.4中で、50μM~3pMの最終濃度の一連の連続希釈で希釈し、上記ペプチド溶液と均一に混合した。この試料を、SVD1については標準表面積ガラスキャピラリーに、SVD-1aについてはプレミアム表面積キャピラリー(NanoTemper Technologies GmbH、ドイツ)にロードし、測定を25℃で20%LED出力及び60%MST出力で行った。製造業者が推奨する標準パラメータを使用した(30秒の加熱期間及び5秒の再平衡化期間の遅延時間)。データは、製造業者が供給するNT分析ソフトウェア(バージョン1.5.41)を使用して、熱泳動効果に関して評価した。
【0107】
表面プラズモン共鳴動態実験:
測定は、8K-Biacore装置(Cytiva、米国)を用いて行った。相互作用は、単サイクル動態実験を用いて測定した。すべてのアッセイにおいて、ペプチド化合物をリガンドとしてセンサー表面に固定化し、組換えα-synを分析物としてフローに注入した。ペプチド、特にSVD-1及びSVD-1aを、第一級アミノ基を介してCMD200Mカルボキシルデキストランマトリクスチップ(Xantec(キサンテック)、ドイツ)に固定化した。固定化は、10mM NaAc中、SVD-1についてはpH5.0、SVD-1aについてはpH7.0で50μg/mlのペプチドを用いて、10μl/分で7分間のEDC/NHS活性化後に、飽和シグナル(SVD-1:400RU、SVD-1a:500RU)に達するまで行った。pH8.3の1Mエタノールアミンを用いて表面クエンチングを行った。明示的に特段の記載がない限り、動態実験は、PBS、pH7.4中30μl/分の流量で実施した。表面は、30μl/分での2M Gua-HClの30秒注入を用いてサイクル間で再生した。データ評価は、評価ソフトウェアBiacore insight v3.0(Cytiva、米国)を用いて行った。
【0108】
スピン標識SVD-1a_Cys_MTSLの生成:
ニトロキシルラジカルでスピン標識したSVD-1aの類似体は、(1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-Δ3-ピロリン-3-メチル)メタンチオスルホネート(MTSL)(Toronto Research Chemicals(トロント・リサーチ・ケミカルズ)、米国)をSVD-1a_Cysと反応させ、C末端D-システイン残基へのニトロキシルラジカルスピン標識MTSLの共有結合をもたらすことによって生成した。ペプチドに対して5倍モル過剰のMTSL、すなわち約4mgのMTSL(約15μmol)を90μlのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、810μlの200mM HEPES/NaOH緩衝液、pH7.6と混合した。次いで、この溶液を約5mg(約3μmol)の凍結乾燥SVD-1a_Cysに加えた。室温で1~2時間インキュベートした後、反応混合物を、接続されたHPLCシステム(Agilent 1260、Agilent、ドイツ)を備えたC8カラム(Zorbax-300 SB、Agilent、ドイツ)でのセミ分取用RP-HPLCで使用した。スピン標識したペプチドSVD-1a_Cys_MTSLを、水性アセトニトリル(ACN)勾配(40分以内にMilli-Q水中の8%ACN、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)から60%ACN、0.1%TFAまで)を用いて、25℃で4ml分-1のスループット速度及び214nmでの検出で精製した。精製したスピン標識した試料を回収し、分注し、液体N中で急速凍結し、真空下で凍結乾燥させた(LT-105、Martin Christ(マーティン・クライスト)、ドイツ)。この記載した方法は、98%以上の純度を有するSVD-1a_Cys_MTSLの完全なスピン標識を可能にする。
【0109】
NMR分光法:
試料は、内部基準として5%DOを添加したPBS緩衝液、pH7.4中で、25μMの完全長15N標識アセチル-α-synの最終濃度で、等モル量のSVD-1a(同位体標識されず、従ってNMRに不可視)の不在下(参照)及び存在下で作製した。2D-H-15N-HSQCスペクトルを、Bruker(ブルカー) AVANCE NEO分光計(Bruker、米国)を用いて1200MHzプロトンラーモア(Larmor)周波数で連続して(Ruecken an Ruecken)記録した。実験の温度は10℃であった。スペクトル次元は16.02ppm(H)×30ppm(15N)であり、H次元で2048ポイント、15N次元で256増分であり、H次元で53ms、15N次元で35msの記録時間を与えた。スキャン間で1秒の回復遅延を用いて32スキャンを各増分について取得し、総試験期間はスペクトルあたり4.8時間となった。
【0110】
NMR常磁性緩和促進(Paramagnetic Relaxation Enhancement)データを、1:1のα-syn:SVD-1a比を与える、25μMの常磁性標識した(しかし同位体濃縮していない)SVD-1a_Cys_MTSL(SVD-1aのC末端に共有結合したMTSLスピン標識を使用する)の存在下で25μMの完全長15N標識アセチル-α-synを用いて取得した。強度(Ipara)を、600MHz及び10℃で取得した2D-H-15N-Best-TROSY-NMRスペクトルから抽出した。測定では、増分毎にそれぞれ128回のスキャンを行い、総試験期間は16時間となった。20倍モル過剰のアスコルビン酸を同じ試料に添加し、その結果、スピン標識の常磁性効果がクエンチされ、反磁性参照試料が得られることによって参照データを得た。常磁性試料と同じ条件下で反磁性参照スペクトル及び強度(Idia)を連続して記録した。
【0111】
NMRデータセットを、Bruker TopSpinソフトウェア(バージョン4.1.1)を使用して処理し、CcpNmr Analysis(v2.4.2)(50)を使用して可視化した。参照スペクトル(SVD1aなし)と比較した、SVD-1aの存在下でのα-syn共鳴の化学シフトの変化を評価するために、ピーク位置を、CcpNmr Analysisソフトウェアを使用して抽出した。H及び15Nの次元における化学シフトの残基に特定の変化から、化学シフトの絶対変化を下記式に従って計算した。
【数2】
【0112】
PREデータを分析するために、常磁性試料の共鳴強度及び反磁性参照試料のピーク強度を、CcpNmr Analysisを使用して抽出した。
【0113】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
PFFオリゴマーの排除をSEC及びその後のPFFオリゴマー及びモノマーのピークの検出によって評価した。PFFオリゴマーを、低保持エッペンドルフ(Eppendorf)チューブ(Eppendorf、ドイツ)中で、PBS、pH7.4中、SVD-1aとともに又はSVD-1aを伴わずに、静止条件下で、37℃で3日(d)間インキュベートした。注入前に、試料を2分間20,800×gで遠心分離し、100μlの試料を、SEC-HPLCカラム(Bio SEC-3 300Å、Agilent、米国)上に、Agilent 1260 Infinity IIシステム(Agilent、米国)を1ml/分の流量で使用し、PBS、pH7.4を移動相として使用して注入した。タンパク質はA214で検出した。
【0114】
動的光散乱(DLS)
測定は、SpectroSize 300 131(XtalConcepts(エクスタル・コンセプツ)、ドイツ)デバイス及び密封石英キュベット(Hellma Group(ヘルマ・グループ)、ドイツ)中の1mlの試料体積を使用して行った。試料を静止条件下、37℃でインキュベートした。測定の前に、溶液からあらゆる可能性のある不純物を除去するために、すべての試料を4℃、21,000×gで30分間遠心分離した。時間依存性DLS測定のために30秒毎にデータ点を記録した。拡散係数は、散乱強度の自己相関関数の減衰の分析から得て、ストークス-アインシュタイン(Stokes-Einstein)の式を使用して見かけの流体力学半径を決定するために使用した。
【0115】
原子間力顕微鏡法(AFM):
試料はα-synモノマー濃度が1μMになるように希釈して作製した。5μlを新たに劈開したマイカ(雲母)表面上でインキュベートし、乾燥させた。次いで、表面を200μlのddHOで3回洗浄し、穏やかなN流を用いて乾燥させた。測定は、Nanowizard 3システム(JPK BioAFM(ジェイピーケー・バイオエーエフエム) - Bruker Nano GmbH(ブルカー・ナノ)、ドイツ)において、間欠接触モードで、2×2及び5×5μm、0.5~2Hzのライン走査速度を用い、周囲条件下で、公称ばね定数26N/m、9±2nmの平均先端半径、約300kHzの共振周波数を持つシリコンカンチレバー及び先端(Olympus(オリンパス) OMCL-AC160TS-R3)を用いて実施した。画像は、JPKデータ処理ソフトウェア(バージョンspm-5.0.84)を用いて処理した。図示の高さプロファイルについては、まず独立に、次いで限られたデータ範囲を使用して、各走査線から多項式調整を減算した。
【0116】
円二色性(CD)分光法:
遠UV円二色性(CD)データは、Jasco J-1100分光偏光計(Jasco(ジャスコ)、ドイツ)を使用して取得した。接種したアッセイからの試料複製物350μlをプールし、1mmの層厚を有する高精度石英キュベット(Hellma-Gruppe、ドイツ)に充填した。20nm/分の走査速度、260nm~190nmの遠UV波長で試料あたり5回の積算を採用した。ベースラインは、緩衝液の測定値だけを差し引くことによって補正した。
【0117】
α-シヌクレイン凝集の細胞アッセイ:
完全長A53T変異ヒトα-synをコードし、C末端でYFPと融合した構築物を合成し、pMK-RQ発現ベクター(GeneArt;Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)、米国)に導入した。α-synA53T-YFP構築物を、ベクターpIRESpuro3(Clontech(クロンテック);タカラバイオ(Takara Bio)、日本)中の制限部位NheI(5’)及びNotI(3’)を使用してサブクローニングした。HEK293T細胞(American Type culture Collection(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関))を、10%ウシ胎仔血清(Sigma-Aldrich、米国)、50単位/mlペニシリン、及び50μg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich、米国)も添加した高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;Sigma-Aldrich、米国)中で培養した。この細胞を5%COの加湿雰囲気中37℃で培養した。
【0118】
DMEM中にプレーティングした細胞をLipofectamine 2000(Invitrogen(インビトロジェン);Thermo Fisher Scientific、米国)でトランスフェクトした。安定な細胞を、1μg/mlのピューロマイシンを含むDMEM(EMD Millipore(メルクミリポア)、米国)中で選択した。モノクローナル細胞株は、MoFlo XDPセルソーター(Beckman Coulter(ベックマン・コールター)、米国)を用いた96ウェルプレートにおけるポリクローナル細胞集団の蛍光活性化セルソーティングによって作製した。クローン細胞株B5を最終的に24のクローン細胞株から選択した。これを、αSynA53T-YFP細胞と命名する。
【0119】
ペプチドをOptiMEM中1.5%Lipofectamine 2000とともに室温で2時間インキュベートした。α-synA53T-YFP細胞を、0.1μg/ml Hoechst 33342(Thermo Fisher Scientific、米国)を用いてウェルあたり1000細胞の密度で、ポリ-D-リシンコーティング(Greiner(グライナー)、オーストリア)を有する384ウェルプレートにプレーティングし、予め調製したトランスフェクション混合物をウェル中の細胞に直接添加した。
【0120】
α-synA53T-YFP細胞へのα-synの細胞凝集の種を播く(播種する、saeen)ために、30nMの可溶性α-syn PFFオリゴマーをOptiMEM中の1.5%Lipofectamineとともに室温で2時間インキュベートし、最初のトランスフェクションの3時間後に各ウェルに添加した。
【0121】
次いで、プレートを5%COの加湿雰囲気中、37℃でインキュベートした。3日目に、IN Cell Analyzer 6500HSシステム(Cytiva、米国)において青色及び緑色蛍光チャネルを使用して細胞を画像化(イメージング)し、生細胞中の細胞内凝集体を特定するためのアルゴリズムを確立するために使用されていたIN Carta Image Analysisソフトウェア(Cytiva、米国)によって分析した。各条件について4つのウェルを使用し、ゆがみを防止するために、ウェルあたり16個の画像を記録し、完全自動化アルゴリズムによって分析した。統計分析は、一元配置ANOVA及びその後の多重比較のためのダネット(Dunnett)検定(GraphPad Prism 9、GraphPad Software(グラフパッド・ソフトウェア)、米国)を用いて行った。エラーバーは標準偏差を表す。
【0122】
細胞生存率アッセイ;CellGlo試験:
CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega GmbH(プロメガ)、ドイツ)を使用して、代謝的に活性な細胞の指標である存在するATPの定量に基づいて、培養物中の生存細胞の数を決定した。
【0123】
細胞を384ウェルプレート中で3日間培養した後、35μlの培地をウェルから除去し、40μlのCellTiter-Glo試薬を各ウェルに直接添加した。混合後、10分後にFluostar(BMG labtech、ドイツ)を用いて発光を測定した。
【0124】
免疫蛍光細胞染色
384ウェルプレート上での3日間の細胞培養の後、細胞をPBS(pH7.4)中の4%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich、米国)中で15分間固定した。PBSで3回洗浄した(それぞれ5分間続く)後、細胞をPBS中の0.25% Triton X-100(Sigma-Aldrich、米国)で10分間透過処理した。
【0125】
さらにPBSで5分間の洗浄を3回行った後、細胞を、0.1%Tween20(Sigma-Aldrich、米国)を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich、米国)で30分間ブロックした。この細胞を、0.1%Tween-20を含むPBS中の1%ウシ血清アルブミン中8μg/mlの濃度のCF633(Biotium(バイオティウム)、米国)蛍光標識抗体で、室温及び暗所で1~3時間染色した。抗α-syn抗体syn211(Abcam(アブカム)、英国)を使用して、α-syn全体を検出した。
【0126】
抗凝集α-syn抗体5G4(Sigma-Aldrich、米国)を使用して、オリゴマーα-syn及び原線維α-synを検出した。組換え抗α-syn(phospho S129)抗体EP1536Y(Abcam,英国)を使用して、セリン129でリン酸化されたα-synを検出した。それぞれ5分間続く、PBS中でのその後の3回の洗浄の後、PBS中の細胞を、IN-Cell Analyzer 6500HSシステム(Cytiva、米国)を用いて40×倍率で画像化した。
【0127】
細胞生存率アッセイ;MTTアッセイ:
SVD-1、SVD-1a又はSVD-1_scrambled(スクランブル)を添加することによってα-syn毒性からPC12細胞(Leibniz-Institut DSMZ(ライプニッツ研究所DSMZ、ドイツ細胞バンク)、ドイツ)を救う可能性を、MTT(3(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)細胞生存率アッセイにおいて測定した。
【0128】
PC12細胞(Leibniz-Institut DSMZ、ドイツ)を、5%ウシ胎仔血清及び10%ウマ血清を補充したRPMI1640培地中、5%COを含む95%に加湿した雰囲気中で、コラーゲンAコーティング(Biochrom GmbH(バイオクロム)、ドイツ)組織培養フラスコで37℃で培養した。100μlの体積のウェルあたり10,000個の細胞をコラーゲンAコーティングした96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific、米国)に播種し、サーモサイクラー中、37℃及び300rpmで24時間インキュベートした。
【0129】
その後、30nM α-synの最終濃度を、事前にインキュベーションをせずに、又は15μM SVD-1、SVD-1_scrambled若しくは0.5μM SVD-1aと事前にインキュベートした後のいずれかで、上記細胞に添加した。さらには、15μMのペプチド単独、細胞培地、ペプチドを含まない緩衝液及び0.1%Triton X-100(細胞毒性化合物)を対照として使用した。5%COを含む95%加湿雰囲気中で、37℃で24時間さらにインキュベートした後、Cell Proliferation Kit I(MTT)(Roche Applied Science(ロシュ・アプライド・サイエンス)、スイス)を製造業者のプロトコルに従って使用して細胞の生存率を測定した。
【0130】
MTT-ホルマザン生成物を、FluoroStar Optimaプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)において、660nmでの吸光度を差し引くことによって補正した570nmでの吸光度を測定することによって定量した。すべての結果を、培地中でのみ増殖させた未処理細胞に対して正規化した。有意性検定は、一元配置ANOVA及びボンフェローニ(Bonferroni)事後分析(OriginPro 2020、OriginLab、米国;n=4)によって行った。
【0131】
結果を図1図20に示す。
【0132】
図1:組換え完全長L-エナンチオマーα-syn及びD-エナンチオマー16量体ペプチドを用いたチオフラビン-Tアッセイ。
【0133】
50μMのα-シヌクレイン(α-syn)を、PBS、pH7.4中で50、150又は250μMのD-ペプチドを伴って又は伴わずにインキュベートした。測定は、37℃で20分毎に300rpmで30秒間振盪しながら、非結合96ウェルプレート中で行った。1つのホウケイ酸ガラスビーズ(d=3mm)を各ウェルに加えた。各条件の5つの複製物を、ボルツマンフィットに個別にフィッティングし、正規化し、平均を標準偏差(エラーバー)とともに計算した。X1/2及び遅延時間シフトは、ペプチドを含む試料と含まない試料との間の差を計算することによって決定した。時間シフトの有意性を、ウエルチのt検定を使用して2つの無作為試料が0.05(有意:)であるか検定した。(A)SVD-1、(B)SVD-6、(C)SVD-10、(D)SVD-14。
【0134】
図2:SVD-1及びα-synのMST測定。
【0135】
SVD-1を159.5μM~19nM及び30nMの140C-C2-Alexa 647の濃度でインキュベートした。70%のLED出力;60%MST出力。Kは55nMと決定された。
【0136】
図3:野生型α-シヌクレイン及びSVD-1の多サイクルSPR実験。
【0137】
400RUのSVD-1を2D CMDセンサーチップ表面上に固定化した。野生型α-synを、PBS、pH7.4中0.39~100 0.1の濃度範囲で注入した。再生:2M Gua-HCl及び0.1%SDS。Kは、異種リガンド調整によって決定し、K1は12.5nMであり、K2は2.0μMであった。
【0138】
図4:SVD-1によるα-synオリゴマーの排除。
【0139】
5μMのモノマー当量のオリゴマーを、SVD-1を伴って又は伴わずに、900rpm及び37℃で3日間インキュベートした。試料を21,000×gで遠心分離し、上清をHPLC-SECカラムにロードした。150及び250μMのSVD-1濃度では、上清中のα-synオリゴマーを検出することはできなかった。
【0140】
図5:ThTアッセイにおけるα-syn凝集の準化学量論的阻害。
【0141】
25μMのモノマーα-synを2.5及び12.5μM SVD-1の準化学量論的な濃度のSVD-1とインキュベートした。測定は、37℃で連続的に振盪しながら、非結合コーティングした96ウェル中で行った。1ウェルあたり1つのホウケイ酸ビーズ(d=3mm)を加えた。各複製物を、ボルツマンシグモイドフィットを用いて調整し、平均値及び遅延時間を各条件について計算した。
【0142】
図6:SVD-1の存在下及び不存在下でのα-syn凝集試料の勾配遠心分離。
【0143】
モノマーα-synを、高結合表面コーティングした96ウェルプレート(CORNING(コーニング))中で、等モル濃度のSVD-1を伴って又は伴わずにインキュベートした。振盪なし、ガラスビーズなし、37℃。9日後、三連の試料を合わせ、100μlをイオジキサノール勾配(5~50%(w/v))に加えた。それぞれ140μlの15画分を、Zorbax 300 SB-C8カラムを使用するRP-HPLCによって分析し、α-synピークに積分した。SVD-1の存在下では原線維形成(F6~F12)は観察されなかった。
【0144】
図7:組換え完全長L-エナンチオマーα-syn及びD-エナンチオマーSVD-1aを用いたチオフラビン-Tアッセイ。
【0145】
20μMのα-synを、PBS、pH7.4中、準化学量論的濃度のSVD-1aを伴って又は伴わずにインキュベートした。測定は、400rpm及び37℃で連続的に振盪しながら、非結合コーティングした96ウェルプレート中で行った。1ウェルあたり1つのホウケイ酸ビーズ(d=3mm)を加えた。各条件について、5つの複製物の平均値及び標準誤差を計算した。
【0146】
図8:野生型α-syn及びSVD-1a、SVD-6a又はSVD-10aの単サイクルSPR実験。
【0147】
各ペプチドをCM5センサーチップ表面に固定化した。野生型α-synを、PBS、pH7.4、0.005%(v/v)Tween-20中30~500nMの濃度範囲で注入した。再生は、2M Gua-HClで2×30秒間、各サイクル後に行った。Kは、1:1結合モデルフィットを用いて、以下のように決定した:SVD-1a:15.7nM;SVD-6a:14.0nM;SVD-10a:12.3nM。
【0148】
図9
SVD-1及びSVD-1_scrambledを用いたデノボThTアッセイ及び播種ThTアッセイ。
【0149】
両アッセイは、pH7.4のPBS緩衝系中で行った。ThT蛍光の経過を、Fluorostarプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)を使用して、λex=448nm及びλem=482nmで96ウェルハーフエリアプレート(Corning、米国)において測定した。ペプチド配列は、一文字アミノ酸コードとして灰色で示される。
【0150】
(A)SVD-1及びSVD 1_scrambledを用いたデノボ凝集アッセイ。10μMのα-synモノマーを、5、10及び20μMのペプチドとともに、1ウェルあたり1つのホウケイ酸ガラスビーズ(d=3.0mm、Hilgenberg、ドイツ)を添加し、測定間に300rpmで連続的に振盪して、37℃でインキュベートした。平均データ±SD(n=5)を報告する。
【0151】
(B)播種された凝集のために、50nMのモノマー当量のPFFオリゴマーを、ペプチドを伴って又は伴わずに、静止条件下、37℃で20時間、シード(種)としてプレインキュベートした。その後ではじめて、播種を誘導するために20μMのα-synモノマーを添加した。平均データ±SD(n=3)を報告する。
【0152】
図10
SVD-1及びSVD-1aを用いたα-synのMST測定。PBS、pH7.4中25℃でのSVD-1及びSVD-1aと完全長α-synとの相互作用のMST測定。
【0153】
α-synを50μM~1pMの連続希釈系列で希釈し、最終濃度100nMのフルオロフォア標識ペプチド(Alexa 647 C2)と混合した。実験は個々の測定として行った。Kは、SVD-1については170nM±100nMであり、SVD-1aについては390nM±150nMであると決定された。
【0154】
図11
α-syn並びに固定化SVD-1及びSVD-1aを用いた動態学的単サイクルアッセイ。
【0155】
SVD-1及びSVD-1aを、飽和までのアミノカップリングによってカルボキシルデキストランマトリクス(CMD200M、Xantec、ドイツ)上に固定化した。α-synを、30~500nMの連続希釈で、PBS7.4中、30μl/分で100秒間注入し、続いて60分又は30分の解離時間を設けた。実験は個々の測定として行った。相互作用動態は、動態学的1:1相互作用モデルを使用して調整した:SVD-1:K:880pM、Kon:6.56×104M-1-1、Koff:5.78s-1×10-5;SVD-1a:K:100pM、Kon:3.13×105M-1-1、Koff:3.13×10-5-1
【0156】
図12
SVD-1a(同位体標識されていない)との相互作用における15N標識α-synのNMR分析。
【0157】
(A)等モル量のSVD-1aの存在下(赤色)及び不存在下(黒色)における25μM 15N-α-synの二次元H-15N-HSQCスペクトルの重ね合わせ。
【0158】
(B)SVD-1a(130E、129S、126E、122N、119D、65N)の存在下(赤色)及び不存在下(黒色)の残基について小さな化学変化を示す(A)に示されるスペクトルにおける多数の共鳴の拡大。比較のために、化学シフトの変化を示さない77V共鳴を示す。
【0159】
(C)SVD-1aの不存在下と比較して、SVD-1aの存在下における15N α-synのスペクトルにおける残基特異的絶対NMR化学シフトの変化。観察された化学シフトの変化の分布の標準偏差σ及び2倍の標準偏差2σを破線で示す。
【0160】
(D)常磁性標識SVD-1aの存在下での15N α-synのNMR PRE強度比。これは、反磁性試料と比較した常磁性試料の二次元H-15N NMRスペクトルにおけるクロスピーク強度の残基特異的強度比Ipara/Idiaを示す。Ipara/Idia強度比が低いほど、常磁性標識SVD-1aは対象とするα-syn残基に近接している。1の強度は、相互作用の欠如を示す。データは、残りのN末端領域の残基に対する平均効果と比較して、α-synのC末端領域の残基とのSVD-1aのいくらかより顕著な(一過性の)結合相互作用を示唆する。
【0161】
図13
漸増濃度のSVD-1aとのインキュベーション後のモノマーα-synのサイズ排除クロマトグラフィー。
【0162】
10μMのα-synモノマーを、PBS、pH7.4中の0、5、10、20、40及び80μMのSVD-1aとともに、37℃及び300rpmで2時間インキュベートした。SECは、Bio SEC-3カラム(150Å、Agilent、米国)を用いて1ml/分で、移動相としてPBS、pH7.4を用いて行った。試料を20,800×gで5分間遠心分離した後、上清を注入した。タンパク質はA214で検出した。α-synモノマーは保持時間6.91分後に溶出した。10μMのα-syn試料についてα-synモノマーのピーク面積を積分し、100%に設定した。モノマーα-synの濃度は、漸増濃度のSVD-1aの存在下で減少しなかった。SVD-1a自体は、SECの精製及び再生手順の間にのみ溶出され、これはおそらくその高い正味正電荷に起因する。
【0163】
図14
SVD-1a及びSVD-1_scrambled+5rとのモノマーα-synのチオフラビン-Tデノボ凝集。
【0164】
実験は、PBS緩衝系、pH7.4中で行った。ThT蛍光の経過を、Fluorostarプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)を使用して、λex=448nm及びλem=482nmで96ウェルハーフエリアプレート(Corning、米国)において測定した。10μMのα-synモノマーを、5、10及び20μMのペプチドとともに、1ウェルあたり1つのホウケイ酸ガラスビーズ(d=3.0mm、Hilgenberg、ドイツ)を添加し、測定間に300rpmでプレートを連続的に振盪して、37℃でインキュベートした。データを平均±SD(n=5)として報告する。使用したペプチドのアミノ酸配列を灰色のテキストで示す。
【0165】
図15
ThT、DGC、CD及びAFMを用いた、SVD-1aの存在下及び不存在下でのα-synのデノボ凝集分析。
【0166】
(A)20μMのSVD-1aを伴う又は伴わない10μMのα-synのデノボThTアッセイ。ThT蛍光の経過を、Fluorostarプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)を使用して、λex=448nm及びλem=482nmで96ウェルハーフエリアプレート(Corning、米国)において、測定間に300rpmでプレートを連続的に振盪しながら測定した。データを平均±SD(n=5)として報告する。
【0167】
(B)デノボ凝集体試料のCD二次構造分析。試料を、いかなるThTも添加せずに(n=3)(A)に記載のようにインキュベートし、続いてCD分析のためにプールした。この試料の遠UV楕円率を、J-1100 CD分光計(Jasco、ドイツ)において石英キュベット(l=10mm)中で測定した。(A)に加えて、20μMのSVD-1aのみを含む試料を同じ条件下でインキュベートし、その後、α-syn及びSVD-1aを含む試料の参照として使用した。これらの試料(α-syn+SVD-1a(インキュベーション後))について、SVD-1a参照から差し引いたCDスペクトルを示す。
【0168】
(C)(A)からの試料をインキュベーションの直後に単離し、PBS、pH7.4中で希釈して、1μMのα-synモノマー当量の最終濃度にした。5μlの希釈試料をインキュベートし、新たに劈開したマイカ表面上で乾燥させ、その後ddHOで洗浄し、穏やかなN流を用いて乾燥させた。分析は、NanoWizard 3システム(J-1100、JPK BioAFM、米国)を用いて行い、複数の表面切片を記録した。(C)に示す切片は、すべての表面切片において特定した観察したタイプの代表である。
【0169】
図16
SVD-1a及びSVD-1_scrambled+5rをシードとして用いたThTアッセイ。
【0170】
ThT蛍光の経過を、Fluorostarプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)を使用して、λex=448nm及びλem=482nmで96ウェルハーフエリアプレート(Corning、米国)において測定した。D-ペプチド配列は、一文字アミノ酸コードとして灰色で示す。50nMのモノマー当量のPFFオリゴマーを、ペプチドを伴って又は伴わずに、37℃で、静止条件下で、シードとして20時間プレインキュベートした。その後ではじめて、播種を誘導しα-synモノマーとのインキュベーション時間を開始するために、20μMのα-synモノマーを添加した。平均データ±SD(n=3)を報告する。
【0171】
図17
SVD-1aは、PFFオリゴマーをα-synモノマーに分解する。
【0172】
PFFオリゴマーを上記のように生成した。100nMのモノマー当量のPFFオリゴマーを、400nM及び1600nM SVD-1aを伴って又は伴わずに、PBS、pH7.4中、37℃で3日間インキュベートした。
【0173】
(A)HPLC-SEC測定試料をBio SEC-3カラム(300Å、Agilent、米国)に注入した。PFFオリゴマーは約5分後に溶出し、α-synモノマーは約8.6分後に検出された。
【0174】
(B)400nM SVD-1aの存在下(赤色)及び不存在下(黒色)における100nM PFFオリゴマーを用いた時間依存性DLS測定。SpectroSize 300 Instrument(XtalConcepts、ドイツ)において、1mlの試料を、密封石英キュベット中で、37℃で30秒毎に24時間、静止条件下で連続的に測定した。データは半径図として示され、各粒子の信号振幅はデータ点の直径によって表される。
【0175】
(C)AFM分析のために、5μlの(A)に記載の試料を遠心分離前に取り出し、インキュベートし、新たに劈開したマイカ表面上で乾燥させ、続いてddHOで洗浄し、穏やかなN流を用いて乾燥させた。分析は、NanoWizard 3システム(J-1100、JPK BioAFM、米国)を用いて行い、複数の表面切片を記録した。Cに示す切片は、すべての表面切片において特定した観察したタイプ及び粒子密度の代表である。
【0176】
図18
ThTアッセイ及びCD分光法によるSVD-1aの存在下及び不存在下での凝集アッセイの分析。
【0177】
500nM α-syn PFFを、PBS、pH7.4中、15μM α-synモノマー及び/若しくは30μM SVD-1aを伴って又は伴わずに、静止条件下、37℃で24時間インキュベートした。
【0178】
(A)ThT蛍光の経過を、Fluorostarプレートリーダー(BMG labtech、ドイツ)を使用して、λex=448nm及びλem=482nmで96ウェル非結合ハーフエリアプレート(Corning、米国)において測定した。データを平均±SD(n=3)として報告する。矢印は、CD分光法によって分析した時間点を示す。
【0179】
(B)(A)に示す試料を、ThTを添加しない同じ条件下でインキュベートした。各条件についての3つの複製物(各120μl)をプールし、0時間(h)、2時間、8時間及び24時間の時間点でCD分光法によって測定した。遠UV楕円率を、J-1100 CD分光計(Jasco、ドイツ)において石英キュベット(l=10mm)中で測定した。(d)について示したデータは、対応する時間点について(c)によって差し引からた。
【0180】
図19
SVD-1aは、細胞における播種されたα-synの凝集を阻害する。
【0181】
細胞におけるSVD-1aの阻害効果を検証するために、HEK293T細胞において、YFPと融合した、家族性A53T変異を有するヒトα-synを安定的に発現するα-synA53T-YFP細胞系を使用し、凝集体の蛍光に基づく検出は、PFFオリゴマーを播種した後の細胞内におけるバックグラウンドに対する細胞内の強い蛍光スポットを明確に示すことを可能にした。ペプチドがPFFオリゴマーの同化を妨害するのを防ぐために、ペプチドによる第1のトランスフェクション及びPFFオリゴマーによる第2のトランスフェクションから開始する2段階トランスフェクションを行った。SVD-1aは、用量依存的にαSynA53T-YFP細胞におけるα-syn凝集を阻害したが、陰性対照由来のペプチド(kgvgnleyqlwalegk-NH2)は阻害しなかった(A)。本発明者らの画像において凝集体を有する細胞の数を定量化し、実験的なゆがみを防止するために、画像分析のための完全自動化アルゴリズムを使用した。有意性は、一元配置ANOVA及びその後の多重比較のためのダネット検定を使用して計算した。1つのアスタリスクは0.05未満のp値を表し、3つのアスタリスクは0.001未満のp値を表す。エラーバーは標準偏差を表す。播種後3日目にα-syn凝集体を全く有さなかった播種されていない細胞(B~E)とは対照的に、可溶性α-syn-PFFオリゴマーの播種は、α-synに結合しない陰性対照由来のペプチド(25μM)で処理した細胞の85%において凝集をもたらした(F~I)。漸増濃度のSVD-1a、この場合25μMでの処理は、凝集物を有する細胞の数の濃度依存的減少をもたらした(J~M)。パネルB、E及びHは、Hoechst 33342で染色した核を示す。パネルC、F及びIはαSynA53T-YFP蛍光を示す。パネルD、G及びJは合成画像を示す。Lのスケールバーは100μmに相当し、パネルB~D、F~H及びJ~Lに当てはまる。パネルE、I及びMは、D、H及びLの囲まれた部分の拡大を示す。Mのスケールバーは、パネルE、I及びMに適用され、25μMに相当する。
【0182】
図20
SVD-1及びSVD-1aは、PFFオリゴマーシードを用いたMTTアッセイにおいて細胞生存率を増加させる。
【0183】
SVD-1、SVD1a、SVD-1_scrambledを、30nM PFFオリゴマーを伴って又は伴わずに、37℃及び300rpmで一晩インキュベートし、続いて、15μM(SVD-1及びSVD-1_scrambled)又は0.5μM(SVD-1a)の最終濃度でPC12細胞とともにインキュベートした。30nM PFFオリゴマーのみを伴う細胞の生存率は50%に低下したが、細胞の89又は82%をSVD-1又はSVD-1aの存在下で救うことができた。15μMの対照ペプチドSVD-1_scrambledでも細胞生存率救済効果のわずかな増加が観察された。有意性検定は、一元配置ANOVA及びボンフェローニ事後分析によって行った:p≦0.5、***p≦0.01。平均値を±SD(n=4)とともに記載する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2024510826000001.app
【国際調査報告】