(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】連続鋳造金属の元素不均一性を調整する方法
(51)【国際特許分類】
B22D 46/00 20060101AFI20240304BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D11/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558640
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057613
(87)【国際公開番号】W WO2022200417
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505008419
【氏名又は名称】タタ、スティール、ネダーランド、テクノロジー、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL NEDERLAND TECHNOLOGY BV
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】フレンク、ファン、デン、ベルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベゴナ、サンティリャーナ
(72)【発明者】
【氏名】カテリーナ、ヘチュ
(57)【要約】
本発明は、レーザー誘起ブレークダウン分光法によって連続鋳造金属の元素不均一性を決定する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造金属の元素不均一性を調整する方法であって、
前記方法が、
1又は2以上の鋳造パラメータを使用して、鋳型により金属を鋳造する工程、
固化した前記鋳造金属の元素不均一性を決定し、それにより、前記鋳造金属が均一であるか又は不均一であるかを判定する工程、及び、
前記鋳造金属が均一であると判定された場合には、鋳造パラメータを現状のまま維持し、前記鋳造金属が不均一であると判定された場合には、1又は2以上の鋳造パラメータを調整し、それにより、前記鋳造金属をより均一に調整する工程
を含み、
前記連続鋳造金属の元素不均一性が、レーザー誘起ブレークダウン分光法によってオンラインで決定され、
前記レーザー誘起ブレークダウン分光法が、
前記連続鋳造金属の断面を準備する工程、
前記断面内の複数のスポットをレーザーでアジテートし、それにより、プラズマを発生させる工程、及び、
前記スポットのそれぞれにおける前記プラズマから放出された放射線を分析して、前記スポットのそれぞれの元素組成を決定し、目的の元素組成からのずれを評価する工程
を含み、
前記1又は2以上の鋳造パラメータが、第1及び第2の冷却プロファイル、流量、鋳造速度、過熱、機械的変化、例えば、軽圧下(SR)及びダイナミック軽圧下(DSR)、並びに撹拌操作(EMS及びEMBr)を含む、前記方法。
【請求項2】
前記レーザーのレーザーパルスエネルギーが、1パルス当たり少なくとも10mJ、好ましくは1パルス当たり少なくとも22mJである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記断面の全エリアについて元素不均一性が決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記断面の0.01~10%について元素不均一性が決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スポット間のステップサイズが20~500μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スポットのそれぞれが、少なくとも3回アジテートされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レーザースポット径が、100~300μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1スポット当たりのエネルギー密度が、少なくとも60mJ/mm
2であり、エネルギー密度が、以下の式:
【数1】
[式中、
nは1スポット当たりのアジテーションの回数に相当し、
pはレーザーパルスエネルギーに相当し、
dはレーザースポット径に相当する。]
により決定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エリア分析速度が、少なくとも10μm
2/秒、好ましくは少なくとも100μm
2/秒であり、エリア分析速度が、以下の式:
【数2】
[式中、
dはレーザースポット径に相当し、
fはレーザー周波数に相当し、
nは1スポット当たりのアジテーションの回数に相当する。]
により決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記断面が、レーザーアジテーションの前に、グラインダ加工、ドリル加工、再マシニング加工、バリ取り又はそれらの組み合わせによって準備される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記連続鋳造金属の温度が、室温~1000℃である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
LIBSによって得られた情報が、分析され、ヒューマンマシンインターフェースに表示される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記断面が、横断面、すなわち金属スラブの鋳造方向に対して垂直である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記連続鋳造金属の元素不均一性が、700~1000℃の温度で決定される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属が鋼である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー誘起ブレークダウン分光法によって連続鋳造金属の元素不均一性を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造(ストランド鋳造とも呼ばれる)は、溶融金属、例えば、溶融鋼を、ビレット、ブルーム又はスラブに固化させる既知のプロセスである。これらのビレット、ブルーム又はスラブは、次いで、仕上げ圧延機において圧延して、ワイヤ(wire)、セクション(section)、プレート(plate)又はストリップ(strip)を得るために使用され得る。
【0003】
溶融金属は取鍋(
図5、60)に流し出され、溶融金属が、任意の取鍋処理、例えば、合金化及び脱ガス処理を経て、適正な温度に至った後、取鍋は鋳造機の上部に搬送される。通常、取鍋は鋳造機の回転式ターレットのスロットに載置される。1個の取鍋は、「オンキャスト(on-cast)」(鋳造機に供給する)の位置にあるが、もう一方は「オフキャスト(off-cast)」の位置で準備され、第1の取鍋が空になると、鋳造位置に切り替えられる。
【0004】
溶銑は、取鍋から耐火パイプ(55)を介してタンディッシュ(50)と呼ばれる保持槽に移送される。タンディッシュは、取鍋を切り替える間、鋳造機に供給するための金属の貯留を可能にし、それゆえ溶銑のバッファとして機能するとともに、溶銑の流れを滑らかにし、鋳型(mould)への金属供給を調整し、金属を清浄化する(
図5)。
【0005】
金属は、タンディッシュから別のシュラウド(shroud)を通じて、開放形の銅鋳型(45)の上部に引き出される。鋳型の深さは、鋳造速度及び断面寸法(section size)に応じて、0.5~2メートルであり得る。鋳型は水冷されており、鋳型に直接接触している溶銑を固化させる。これが第1の冷却工程である。鋳型はまた、鋳型壁に金属が付着するのを防止するために振動する。潤滑剤は、付着を防止するために、及び、金属内に存在し得る任意のスラグ粒子(酸化物粒子又はスケールを含む)を捕捉して、金属溜まりの上部にスラグの浮遊層を形成させるために、鋳型中の金属に添加される。シュラウドは、鋳型内でスラグ層の表面よりも下に溶銑を排出するように設置されることから、浸漬ノズル(SEN:submerged entry nozzle)と呼ばれている。
【0006】
鋳型内において、鋳型壁に隣接する金属の薄い殻が、中心部分よりも先に固化し、ここで、それはストランド(40)と呼ばれ、鋳型の底部からスプレーチャンバーに出る。ストランドの壁内の金属のバルクは、依然として溶融状態である。ストランドは、ストランド内で依然として固化中である液体の溶鋼静圧に対してストランドの壁を支えるための、間隔が狭く、水冷されているローラーによって、直ちに支持される。固化の割合を上げるために、ストランドは、スプレーチャンバーを通過する際に大量の水がスプレーされる。これが第2の冷却工程である。ストランドの最終的な固化は、ストランドがスプレーチャンバーを出た後に起こり得る。
【0007】
スプレーチャンバーを出た後、ストランド(30)は、矯正ロール(straightening roll)及び引抜ロール(withdrawal roll)を通過する。最後に、ストランドは、機械的剪断により又はオキシアセチレントーチ(20)の移動により、所定の長さに切断されて、特定のために標識され、貯蔵又は次の形成プロセスのいずれかに供される。
【0008】
鋳造金属の不均一性は、例えばマクロ偏析に起因して、製品の最終的な特性に有害な影響を及ぼし得る。鉄鋼業において、例えば、鋼の鋳造製品のマクロ偏析は、最終製品の特性に有害となり得る。元素不均一性を有する鋼は、接合性能が低下するために、溶接管にあまり適さず、且つ、構造的な完全性に欠けるため、鉄道製品及び自動車シャーシの安全部品に使用されるビームブランクにもあまり適さない。製品開発、プロセス管理及び品質保証について、鋳造鋼の不均一性の早期の指標を提供することが望まれる。しかしながら、現在利用可能な技術では、生産されるすべてのスラブを検査するためには、判断に膨大な人員、時間及び費用を要する。
【0009】
したがって、鋳造金属の元素不均一性を迅速に観測し得る方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、鋳造金属の元素不均一性を迅速に、好ましくは3~180分以内又はそれよりも速く判断する方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的はまた、金属試料の準備時間を抑える方法を提供することである。
【0012】
本発明の方法はまた、高温で鋳造金属を測定することができる方法を提供することである。
【0013】
本発明の目的はまた、金属鋳造中に、オンラインで使用され得る方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的の1又は2以上は、請求項1~15に記載の方法を用いて達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、断面(cross section)におけるレーザーパルスエネルギー及びアジテーション(agitation)の回数の効果を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法によって得られたLIBSの結果を示す図である。
【
図4】
図4は、オンラインLIBS測定の設備を示す図である。
【
図5】
図5は、既知の連続鋳造設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の態様では、レーザー誘起ブレークダウン分光法によって連続鋳造金属の元素不均一性を決定する方法であって、連続鋳造金属の断面(cross-section)を準備する工程、断面内の複数のスポットをレーザーでアジテート(agitating)し、プラズマを発生させる工程、及び、スポットのそれぞれにおけるプラズマから放出された放射線を分析して、スポットのそれぞれの元素組成を決定し、目的の元素組成からのずれ(deviation)を評価する(deduce)工程を含む方法が提供される。
【0017】
有利なことに、連続鋳造金属の断面を、LIBSによって複数のスポットにおいて判断し、その結果、スポットのそれぞれにおいて、目的とする元素組成からのずれを決定することができる。LIBSは、金属スラブに存在するいくつかの一般的な元素、例えば、Mn、Si、Al、Cr、C、O、P、S、Ti、V、Ni、Moの同時分析を可能にする。複数のスポットにおける元素組成を、目的の元素組成と比較することにより、断面の不均一性を迅速に決定することができる。鋳造金属の不均一性は金属の最終的な特性に有害な影響を及ぼし得るため、鋳造後の迅速且つ信頼性の高い元素組成の分析を使用して、金属を異なるカテゴリーに分類することができ、或いは、鋳造金属を不合格と判定することさえもできる。それにより、そのままの鋳造金属が、ラインのさらに下流のプロセス及び用途に適していることを保証し、結果として、プロセス後の不合格品を最小限に抑える。
【0018】
連続鋳造金属の断面の面は、特に限定されず、不均一性が予測される任意の方向で取得され得る。断面は、長手方向(金属スラブの鋳造方向に平行)の断面であっても、又は横断方向(金属スラブの鋳造方向に垂直)の断面であってもよい。好ましくは、断面は横断方向の断面である。
【0019】
好ましくは、LIBS測定は、酸化率を低下させ、プラズマにおける励起状態の原子の数密度を増加させるために、保護雰囲気下で実行される。好ましくは、少なくとも測定される断面のエリアは、保護雰囲気下にある。保護雰囲気は、希ガス、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)又はキセノン(Xe)を含むことができる。好ましくは、アルゴン(Ar)が使用され、例えば、表面にアルゴン流を吹き付けることによって使用される。
【0020】
本発明の方法は、任意の種類の鋳造金属、例えば、スラブ、ビレット及びブルームについて使用され得る。
【0021】
本発明の一実施形態において、レーザーのレーザーパルスエネルギーは、1パルス当たり少なくとも10mJ、好ましくは1パルス当たり少なくとも22mJである。一般に、鋳放しのスラブの断面には、酸化物層が形成されることがある。発明者らは、レーザー出力を増加させることで、酸化物層がレーザーにより浸透され、例えばマンガン(Mn)の偏析が、なお信頼できるように測定され得ることを見出した。特定の理論に縛られることを望むものではないが、この酸化物層は、酸化物の穴開け、溶融及び蒸発によって、レーザーで浸透されると考えられる。このことは、測定前に試料を脱スケールする必要性を省く。最大レーザー出力は、特に限定されないが、クレーター周辺の溶融金属の飛沫を低減するために、好ましくは最大で150mJである。
【0022】
本発明の一実施形態において、鋳造金属の断面の全エリアの元素不均一性が決定される。全エリアは、スポット方式でスキャンされる。次いで、結果が分析されて、例えば、断面におけるスポットのそれぞれについて、それぞれの化学元素の結果を色分けされたプロットでプロットすることにより、不均一性の指標がもたらされ得る。
【0023】
本発明の一実施形態において、短時間枠で良好な分解能を得るために、ステップサイズは、好ましくは20~500μmである。20μm未満のステップサイズは、より時間を要することになり、価値ある追加の情報を提供しない。ステップサイズは、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも30μm、最も好ましくは少なくとも50μmである。500μmを超えるステップサイズは、低い分解能と、金属における不均一性の量の潜在的な過小評価(underestimation)とをもたらすことになり、したがって、ステップサイズは、好ましくは最大で500μm、より好ましくは最大で300μm、最も好ましくは最大で200μmである。
【0024】
一般に、断面のサイズは、特に限定されず、4スポット測定の小さい領域から、鋳造金属の断面の実物大までであってもよく、鋳造金属の断面の実物大は通常、金属スラブの横断方向の断面において225×2200mmであり、数千のスポットがスキャンされる。本発明の一実施形態において、測定エリアは、鋳造金属の全断面積の0.01~10%、より好ましくは全断面積の0.05~5%、最も好ましくは全断面積の0.10~1%である。断面の一部を分析することによって、測定に要する時間及びエネルギーが削減されるが、それでもなお、不均一性の明確な指標を得ることができる。測定時間を削減することは、オンライン測定で特に重要である。測定エリアは、鋳造金属の仕様及び予測される不均一性に基づいて、例えば、鋳造機の固化プロファイル及び鋳造される製品の種類(ビレット、ブルーム、スラブ)に基づいて選択される。
【0025】
本発明の一実施形態において、スポットのそれぞれは、少なくとも3回アジテートされる。発明者らによって、1スポット当たり3回のレーザーショットにより、信頼性のある信号が得られ、その上、必要な処理時間が削減されることが見出された。好ましくは、スポットのそれぞれは最大で15回アジテートされて、クレーター周囲のアブレーション(ablation)を最小化し、スキャン時間を妥当な限度に保つ。
【0026】
本発明の一実施形態において、スポットのそれぞれは、アジテーション後、20~500μmのクレーター径を有する。鋼において、マクロ偏析の島(macrosegregation island)の検出可能性を高めるために、クレーター径は、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも30μm、最も好ましくは少なくとも50μmである。偏析の島(segregation island)よりもさらに大きいクレーター径であると、不鮮明な信号をもたらすため、測定の良好な分解能を確実にするために、クレーター径は、好ましくは最大で500μm、より好ましくは最大で300μm、最も好ましくは最大で200μmである。
【0027】
本発明の一実施形態において、位置分解能と測定速度との間の最適条件を提供するため、断面における集束レーザー径に相当するレーザースポット径dは、100~300μmである。100μm未満では、分析はより長い処理時間を必要とする。300μmを超えると、通常は10~50μm程度である偏析の島に対して、スポットが粗すぎるものになるため、分解能が低下する。発明者らによって、島よりもさらに大きい測定スポットは、不鮮明な信号及び分解能が低い平滑化されたマップをもたらすことが見出された。
【0028】
本発明の一実施形態において、1スポット当たりのエネルギー密度は、少なくとも60mJ/mm
2であり、エネルギー密度は以下の式:
【数1】
[式中、
nは1スポット当たりのアジテーションの回数に相当し、
pはレーザーパルスエネルギーに相当し、
dはレーザースポット径に相当する。]
により決定される。1スポット当たりのエネルギー密度が少なくとも60mJ/mm
2であれば、金属表面の十分な浸透を確実にし、1スポット当たりの良好な信号対ノイズ比を確実にする。
【0029】
本発明の一実施形態において、エリア分析速度は、少なくとも10μm
2/秒、好ましくは少なくとも100μm
2/秒であり、エリア分析速度は、以下の式:
【数2】
[式中、
dはレーザースポット径に相当し、
fはレーザー周波数に相当し、
nは1スポット当たりのアジテーションの回数に相当する。]
により決定される。少なくとも10μm
2/秒のエリア分析速度により、エリアの迅速な測定が可能であり、それによって、時間的余裕のない状況、例えば、オンライン測定において分析を使用することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、断面はレーザーアジテーションの前に、グラインダ加工、ドリル加工、再マシニング加工、バリ取り又はそれらの組み合わせによって準備され得る。測定される鋳造金属に応じて、断面表面を準備することが望ましい場合がある。例えば、金属スラブが20μmを超える酸化スケールを有する場合、又は、断面の表面が処理工程、例えば、スライス加工によって変形されている場合などである。
【0031】
本発明の一実施形態において、鋳造金属の元素不均一性は、オフラインで決定される。オフライン測定のために、連続鋳造金属の試料が採取され、LIBSで分析され得る。これは、スキャンのためにさらなる時間が利用可能であるという利点を有するため、試料の不均一性についての、より解像度の高い画像を得るために使用され得る。これは、例えば、ステップサイズ及びレーザーサイズを最小化することで実現され得る。
【0032】
本発明の一実施形態において、鋳造金属の元素不均一性は、オンラインで決定される。オンライン測定は、鋳造金属の不均一性についての迅速なフィードバックを提供し、それにより、プロセス内の、逆行的な(backward)調整(鋳造パラメータ設定)及び順行的な(forward)調整(プロセス条件及び/又はスケジュール変更及び/又は製品品質の見込み)の両方を可能にする。この実施形態において、試料は比較的短時間で測定される必要がある。金属の鋳造速度、つまり利用可能な処理時間に応じて、測定時間は、調整され、好ましくは、1~60分以内に調整され、全体の鋼生産プロセスが遅延しないように、測定速度を鋳造速度に遅れずに維持する必要がある。したがって、オンライン測定において、スキャンの分解能を下げることができる。これは、ステップサイズ及び/又はレーザー径を最大化することによって、且つ/或いは、レーザー出力及び/又はレーザー周波数を増加させることによって、実現され得る。オンライン測定は、鋳造金属に対して直接実施され得る。或いは、測定は鋳造金属から取得されたプローブに対して実施され得る。
【0033】
本発明の一実施形態において、連続鋳造金属の温度は、室温~1000℃である。1000℃は鋳造機の出口における鋳造金属の最高温度であり、オフライン測定は、環境温度(又は室温)で実施され得る。有利なことに、本発明の方法は、700~1000℃の高温域を含む幅広い温度範囲で機能するため、鋳造金属は、オンラインでの分析の前に冷却する必要がない。
【0034】
本発明の一実施形態において、LIBSによって得られた情報は、分析され、ヒューマンマシンインターフェースに表示される。LIBSによって得られた情報は、ヒューマンマシンインターフェースに、試料の不均一性を示す色分けされたマップとして、又は、鋳造金属が、不均一性に関連した所定の規格の範囲内若しくは範囲外にあることを示す単純なメッセージとして表示され得る。
【0035】
本発明の一実施形態において、鋳造パラメータは、製品品質を改善するために、LIBSのフィードバックに基づいて変更される。マクロ偏析を変更するために調整され得る典型的な鋳造パラメータは、第1及び第2の冷却プロファイル(primary and secondary cooling profiles)、流量(fluid flow)、鋳造速度、過熱、機械的変化、例えば軽圧下(SR)及びダイナミック軽圧下(DSR)並びに撹拌操作、例えばEMS(電磁撹拌)及びEMBr(電磁ブレーキ)である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、金属は鋼である。
【0037】
本発明のさらなる態様において、連続鋳造金属の元素不均一性を調整する方法であって、鋳型により(through a mould)金属を鋳造する工程、上記のようにレーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)によって、固化した鋳造金属の元素不均一性を決定し、それにより、鋳造金属が均一であるか又は不均一であるかを判定する工程、及び、鋳造金属が均一であると判定された場合には、鋳造パラメータを現状のまま維持し、鋳造金属が不均一であると判定された場合には、1又は2以上の鋳造パラメータを調整し、それにより、鋳造金属をより均一に調整する工程を含む方法が提供される。
【0038】
マクロ偏析を変更するために調整され得る鋳造パラメータの例は、典型的には、第1及び第2の冷却プロファイル、流量、鋳造速度、過熱、機械的変化、例えば、軽圧下及びダイナミック軽圧下(SR及びDSR)並びに撹拌操作(EMS及びEMBr)である。
【実施例】
【0039】
本発明は、
図1~5に示される非限定的な実施例によって、さらに説明される。
【0040】
【0041】
図2は、断面におけるレーザーパルスエネルギー及びアジテーション回数の効果を示す。
【0042】
図3は、本発明による方法によって得られたLIBSの結果を示す。
【0043】
【0044】
【0045】
図1において、レーザー誘起ブレークダウン分光法の原理が図式的に説明されている。パルスレーザービームは、鋳造金属の断面のスポットに、レーザースポット径dで焦点が合わせられる。放射エネルギーは、断面のスポットに蓄積し(2)、次いで、材料が蒸発し(3)、材料蒸気内及び周囲のアルゴン雰囲気内にプラズマが発生する(4)。プラズマは、特定の元素に応じて異なる波長を有する放射線を放出する。放射線は、それぞれのアジテーションについて分光器によって検出されて、対象の元素の値を提供する。蒸発した材料は、表面から部分的に除去され、クレーターの形成をもたらす(8)。
【0046】
図2は、LIBS分析のための最適パラメータを決定するための、様々なレーザーパルスエネルギー(p)及びアジテーション回数(n)におけるLIBS分析後の鋳造金属の断面における16スポットの共焦点画像を示す。試料01~13におけるバーは100μmに相当するが、試料14~16におけるバーは250μmに相当する。高いパルスエネルギー(13~16)は、大きなクレーターサイズ(>500μm)及び飛沫をもたらし、それゆえに、ミクロ偏析のLIBS分析にあまり適さなかった。低いレーザーパルスエネルギー(01~04)は、約100μmのクレーターサイズをもたらし、とりわけアジテーション回数が少ない場合に弱い信号となった。アジテーション回数が少ない場合は、浸透深さが浅くなるが、アジテーション回数が多い場合は、必要スキャン時間が長くなる。発明者らは、スポット06、スポット07、スポット10及びスポット11が最適な設定を示して、飛沫なし、十分な浸透、良好な信号及び迅速な分析時間を確実にすることを見出した。
【0047】
図3は、共焦点分析から決定された最適設定により、鋳造金属について元素組成を色分けしたマップを示す。重量パーセントでの鋳造金属の組成は、Si:1%、Mn:2%、C:0.22%、Fe:残部である。鋳造金属の断面表面の0.6%を、LIBSで分析する。断面におけるスポットのそれぞれを、良好な信号対ノイズ比を確実にするために、22mJのエネルギーで5回アジテートする。放射線は、分光器によって、それぞれのアジテーションについて288.1nm、403.1nm及び438.5nmにおいて検出され、それぞれ、Mn、Si及びFeの値を示す。スポットのそれぞれについて、合金の信号をFeで標準化する。ステップサイズ100μmで、6mm×7mmのエリアをスキャンし、Mn(
図2A)及びSi(
図2B)について、横断方向の断面の各エリアの色分けされたマップがもたらされ、試料における不均一性を明瞭に示す。
【0048】
図4は、連続鋳造設備においてオンラインで設置された、本発明の方法の一実施形態を示す。溶銑は取鍋(60)に流し出される。取鍋において、溶銑は、所望の化学組成を調製するための処理、例えば合金化及び脱ガス処理を受け得る。溶銑はタンディッシュ(50)に移送され、鋳造中に溶銑のストランド(30、40)は固化する。完全な固化の後(鋳造機の「冶金学的長さ」において)、ストランドは、例えばオキシアセチレントーチによりスラブ(10)に切断される(20)。切断部において、断面表面の不均一性がLIBSユニット(1)により決定される。LIBSユニット(1)は、x、y及びz方向に移動可能である。断面(11)のエリアの所望の領域(12)における1又は2以上のスポットは、レーザー(2)によりアジテートされ、発生したプラズマは分光器(3)で分析され、スポットのそれぞれの不均一性が決定される。ストランドの速度に応じて、LIBSユニットはスラブと同じx方向に、スラブと同じ速度で移動することができる。複数のスラブを、それに応じて測定することができる。測定される断面表面は、場合によりオンライングラインダー(図示せず)で準備され得る。不均一性のヒートマップ又は測定結果は、上流又は下流のオペレーターに対して、入力値として、ヒューマンマシンインターフェースにセットされる。
【0049】
図5は、本記述の序論部分に記載された、既知の連続鋳造設備を示す。
【国際調査報告】