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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ポータブル血液透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
A61M1/16 190
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558642
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022021401
(87)【国際公開番号】W WO2022204194
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/165,098
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】フルカーソン, バリー
(72)【発明者】
【氏名】バリボー, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ガルペリン, アンナ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077DD07
4C077EE04
4C077GG14
4C077KK11
(57)【要約】
ポータブル血液透析システムは、透析流体を再生するように構成された透析流体モジュールと、透析流体モジュールに可逆的に流体的に結合可能な血液ハンドリングモジュールと、を含む。ポータブル血液透析システムは、透析流体モジュールによって再生された透析流体を使用して、血液ハンドリングモジュール内の血液を透析するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル血液透析システムであって、
透析流体から尿素を除去するように構成された透析流体再生モジュールと、前記透析流体再生モジュールと流体的に接続された第1のポンプに動作可能に接続された制御回路を備える透析流体管理モジュールとを少なくとも部分的に格納するハウジングと、
前記ハウジング内に形成された血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースにおいて前記透析流体再生モジュールに流体的に接続可能な血液ハンドリングモジュールであって、前記血液ハンドリングモジュールが、血液導管と透析器膜に沿って延在する透析流体導管とを備える、血液ハンドリングモジュールと、を備え、
前記透析流体管理モジュールは、前記血液ハンドリングモジュールが前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースにおいてドッキングされているときに、前記第1のポンプを作動させて、前記透析流体を、前記透析流体再生モジュールを通して、かつ前記血液ハンドリングモジュールの前記透析流体導管を通してポンピングするように構成されている、ポータブル血液透析システム。
【請求項2】
前記透析流体再生モジュールが、光酸化モジュール、電気酸化モジュール、又は吸着剤モジュールのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項3】
前記透析流体再生モジュールが、前記光酸化モジュールを備え、前記光酸化モジュールが、光源に隣接して配設されたアノード/カソードアレイを備える、請求項2に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項4】
前記アノード/カソードアレイが、内部に形成された複数の透析流体チャネルを備えるパネルとして形成されている、請求項3に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項5】
前記制御回路が、前記透析流体を、約200mL/分未満の流速において前記透析流体再生モジュールを通してポンピングするように構成されている、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項6】
前記制御回路が、前記ハウジング内に配設されており、前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされた前記血液ハンドリングモジュールの前記血液導管を通して血流をポンピングするように構成された第2のポンプに動作可能に接続されており、前記制御回路が、前記第1のポンプ及び前記第2のポンプを制御して、約10mmHg~約300mmHgの、前記透析器膜を横切る圧力勾配を維持するように構成されている、請求項5に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項7】
前記透析流体再生モジュールが、バルブ又はガス透過性膜のうちの少なくとも1つを通して、前記透析流体からガスを除去するように構成されたガス除去モジュールに流体的に接続されている、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項8】
前記ガス除去モジュールが、前記透析流体からガスを引き出すように構成された真空を備える、請求項7に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項9】
前記制御回路が、前記透析流体の温度又は前記透析流体の体積のうちの少なくとも1つに基づいて、前記透析流体再生モジュール内の尿素除去速度を加減することによって、前記透析流体の蒸発を調節する、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項10】
前記血液ハンドリングモジュールの前記透析流体導管が、透析流体出口カップリングから前記透析流体を受け取り、前記透析流体を、前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェース内に形成された透析流体入口カップリングに提供し、前記透析流体出口カップリング及び前記透析流体入口カップリングが、前記透析流体再生モジュールと流体接続されている、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項11】
前記ポータブル血液透析システムが、動作の向きを有し、前記透析流体入口カップリングが、前記透析流体出口カップリングよりも重力的に高く配設されている、請求項10に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項12】
前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースは、前記血液ハンドリングモジュールが前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされているときに、前記血液導管内の血流と接するように構成されたセンサアレイを備える、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項13】
前記センサアレイが、前記血流の温度及び第2のパラメータを測定するようにそれぞれ構成された温度センサ及び第2のセンサを備え、前記温度センサは、前記第2のセンサが前記血流の前記第2のパラメータを感知する前記血流の第2の場所よりも上流の前記血流の第1の場所において前記血流の前記温度を感知するように構成されている、請求項12に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項14】
前記制御回路が、前記センサアレイを、ドッキング解除位置とドッキング位置との間で移動させるように構成されている、請求項13に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項15】
前記ハウジングの貯蔵部ドッキングインターフェースと可逆的に結合された流体貯蔵部を更に備え、前記流体貯蔵部が、前記透析流体再生モジュールと流体接続されている、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項16】
前記制御回路が、前記流体貯蔵部から電解質を提供することによって、前記透析流体中の電解質レベルを調節するように構成された電解質管理モジュールに動作可能に接続されている、請求項15に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項17】
前記流体貯蔵部が、電解質溶液容器、生理食塩水貯蔵部、廃液貯蔵部、又は過剰な透析流体貯蔵部のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項18】
前記流体貯蔵部及び前記透析流体再生モジュールに流体的に接続された第2のポンプを更に備える、請求項17に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項19】
前記制御回路に動作可能に接続された電源を更に備える、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項20】
前記透析流体再生モジュール及び前記血液ハンドリングモジュールを包含するウェアラブル物品を更に備え、前記ウェアラブル物品が、バックパック、ベスト、バッグ、ブリーフケース、財布、及びジャケットからなる群から選択される、請求項1に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項21】
ポータブル血液透析システムであって、
透析流体から尿素を除去するように構成された透析流体再生モジュールと、前記透析流体再生モジュールを通して前記透析流体をポンピングするように流体的に結合された第1のポンプに動作可能に接続された制御回路を備える透析流体管理モジュールをと少なくとも部分的に格納するハウジングを備え、
血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースが、前記ハウジング内に形成され、前記透析流体再生モジュールと流体接続する透析流体入口カップリング及び透析流体出口カップリング、並びに前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされた血液ハンドリングモジュールの血液導管を通して血液をポンピングするように構成された第2のポンプの少なくとも一部を備え、前記血液ハンドリングモジュールが、前記血液導管、及び透析器膜に沿って延在する透析流体導管を備え、前記透析流体導管が、前記血液ハンドリングモジュールが前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされているときに、前記透析流体入口カップリングから前記透析流体出口カップリングまで延在する、ポータブル血液透析システム。
【請求項22】
血液ハンドリングモジュールであって、血液導管と、透析器膜の反対側に沿って延在する透析流体導管とを格納するハウジングを備え、前記血液導管が、前記ハウジングを通って延在する血液入力及び血液出力を備え、前記透析流体導管が、前記ハウジングを通って延在する透析流体入口及び透析流体出口を備え、前記血液ハンドリングモジュールの動作位置で、前記透析流体出口が、前記透析流体入口よりも重力的に高く配設されており、ポンプインターフェースが、前記血液導管に沿って配設されており、前記ポンプインターフェースが、外部ポンプと動作可能に結合するように構成されている、血液ハンドリングモジュール。
【請求項23】
前記ポンプインターフェースが、前記血液導管と流体接続している捕捉インペラを備える、請求項22に記載の血液ハンドリングモジュール。
【請求項24】
前記血液入力及び前記血液出力が、前記ハウジングの第1の側面を通って延在し、前記透析流体入口及び前記透析流体出口が、前記ハウジングの異なる第2の側面を通って延在する、請求項22に記載の血液ハンドリングモジュール。
【請求項25】
前記血液入力及び前記血液出力に流体的に接続された多管腔患者血液ラインと、クイックディスコネクト装置であって、前記クイックディスコネクト装置が所定の閾値を超える引張力を経験するときに、前記血液入力及び前記血液出力を前記患者血液ラインから分離するように構成されたクイックディスコネクト装置と、を更に備える、請求項22に記載の血液ハンドリングモジュール。
【請求項26】
前記血液導管に沿って前記ハウジング内に形成されたセンサバンクインターフェースを更に備え、前記センサバンクインターフェースが、前記ハウジング内の複数の凹部を備える、請求項22に記載の血液ハンドリングモジュール。
【請求項27】
前記透析流体再生モジュールが、光酸化モジュール、電気酸化モジュール、又は吸着剤モジュールのうちの少なくとも1つを備える、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項28】
前記制御回路が、前記透析流体を、約200mL/分未満の流速において前記透析流体再生モジュールを通してポンピングするように構成されている、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項29】
前記透析流体再生モジュールが、バルブ又はガス透過性膜のうちの少なくとも1つを通して、前記透析流体からガスを除去するように構成されたガス除去モジュールに流体的に接続されている、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項30】
前記制御回路が、前記透析流体の温度又は前記透析流体の体積のうちの少なくとも1つに基づいて、前記透析流体再生モジュール内の尿素除去速度を加減することによって、前記透析流体の蒸発を調節する、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項31】
前記ポータブル血液透析システムが、動作の向きを有し、前記透析流体入口カップリングが、前記透析流体出口カップリングよりも重力的に高く配設されている、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項32】
前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースが、前記血液ハンドリングモジュールが前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされるときに、前記血液導管内の血流と接するように構成されたセンサアレイを備える、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項33】
前記ハウジングの貯蔵部ドッキングインターフェースと可逆的に結合された流体貯蔵部を更に備え、前記流体貯蔵部が前記透析流体再生モジュールと流体接続されている、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項34】
前記制御回路に動作可能に接続された電源を更に備える、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項35】
前記透析流体再生モジュール及び前記血液ハンドリングモジュールを包含するウェアラブル物品を更に備え、前記ウェアラブル物品が、バックパック、ベスト、バッグ、ブリーフケース、財布、及びジャケットからなる群から選択される、請求項21に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項36】
前記透析流体再生モジュールが、前記光酸化モジュールを備え、前記光酸化モジュールが、光源に隣接して配設されたアノード/カソードアレイを備える、請求項27に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項37】
前記アノード/カソードアレイが、内部に形成された複数の透析流体チャネルを備えるパネルとして形成されている、請求項27に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項38】
前記制御回路が、前記ハウジング内に配設されており、前記血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェースとドッキングされた前記血液ハンドリングモジュールの前記血液導管を通して血流をポンピングするように構成された第2のポンプに動作可能に接続されており、前記制御回路が、前記第1のポンプ及び前記第2のポンプを制御して、約10mmHg~約300mmHgの、前記透析器膜を横切る圧力勾配を維持するように構成されている、請求項28に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項39】
前記センサアレイが、前記血流の温度及び第2のパラメータを測定するようにそれぞれ構成された温度センサ及び第2のセンサを備え、前記温度センサが、前記第2のセンサが前記血流の前記第2のパラメータを感知する前記血流の第2の場所よりも上流の前記血流の第1の場所において前記血流の前記温度を感知するように構成されている、請求項32に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項40】
前記制御回路が、前記流体貯蔵部から電解質を提供することによって、前記透析流体中の電解質レベルを調節するように構成された電解質管理モジュールに動作可能に接続されている、請求項33に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項41】
前記流体貯蔵部が、電解質溶液容器、生理食塩水貯蔵部、廃液貯蔵部、又は過剰な透析流体貯蔵部のうちの少なくとも1つを備える、請求項33に記載のポータブル血液透析システム。
【請求項42】
前記流体貯蔵部及び前記透析流体再生モジュールに流体的に接続された第2のポンプを更に備える、請求項41に記載のポータブル血液透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月23日に出願された米国仮特許出願第63/165098号の利益を主張するものであり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
健康な腎臓は、血中尿素濃度を低く、比較的一定の値に保つ。血液透析は、腎不全を経験している患者の寿命を延ばす効果的な治療であるが、血液透析システム及び治療方法には多くの既知の問題がある。例えば、維持透析(週に数回)を受けている患者は、尿素レベルが上昇を示しており、これは、典型的な透析セッションで非常に低い尿素レベルに急速に低下する。この非生理学的不均衡は、透析セッションの間及び後に患者が経験する不快感の多く、並びに長期的な合併症の原因となっている。更に、既知の血液透析システムは、水源に接続する必要がありし、透析セッションごとに400リットル以上の水を使用し、これは、ウェアラブル透析の重要な障壁となっている。
【0003】
使い捨てコンポーネントに依存する既知の透析システムは、大量の医療廃棄物を作り出し、非常に大量の水を必要とする。尿素を除去するためにほとんどのウェアラブルコンセプトで使用される吸着カラムは、大量の医療廃棄物につながり、高価で重く、しばしば有毒な生成物を生成する。
【0004】
従来の血液透析では、セッションごとに約120リットルの透析液を流すことによって、体から過剰な代謝老廃物を除去しており、典型的には3~4時間の治療を必要とする。透析は週に3回必要になり得る。患者は、何時間も固定される必要あり、透析センターまでの交通手段を手配しなければならないことを含み、生活に著しい支障をきたし、生活の質に影響を及ぼす。
【0005】
したがって、患者が透析中に歩行可能なることを許容するポータブル血液透析システムは、患者の生活の質を改善するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面を併せて考慮すると、以下の詳細な説明を参照することによって、前述の態様、及び特許請求される主題の多くの付随する利点がより容易に理解されるであろう。
【0007】
図1】本開示の実施形態による血液透析システムの部分的に隠された斜視図を示す。
図2】本開示の実施形態による、ウェアラブル物品に適合するように構成された血液透析システムを示す。
図3A】本開示の実施形態による血液透析システムの上部後方分解斜視図を示す。
図3B図3Aの血液透析システムの上部前方分解斜視図を示す。
図4】本開示の実施形態による透析モジュールの態様の斜視図を示す。
図5A】本開示の実施形態による、透析流体モジュール及び透析モジュールの態様の第1の斜視図を示す。
図5B図5Aの透析流体モジュール及び透析モジュールの態様の第2の斜視図を示す。
図5C】本開示の実施形態による透析流体再生モジュールの一部の態様の斜視図を示す。
図6】本開示の実施形態による光酸化モジュールの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
血液透析システムは、概して、患者の血流から尿素を除去する透析器ユニットを含む。特に、血流は、透析器ユニットを通してポンピングされ、透析液流体の流れ(例えば、透析液)から膜によって分離され、これは、血液の流れと透析流体の流れとの間で選択された分子の質量交換を許容する。部分的に洗浄された血流は、患者の血管系に戻るか、又は更なる処理のために下流で別のモジュールに戻るかの、いずれかで継続する。洗浄された血流は、患者の血管系に送り返され、その結果、血流から除去された尿素及び尿毒症毒素を含有する大量の「使用済み」透析流体が生じる。
【0009】
既知の血液透析システムは、典型的には、外部の大量の水源への接続を必要とし、透析セッションごとに数百リットル以上の水を使用し、これは、ウェアラブル透析の重要な障壁となっている。
【0010】
本開示は、外部水源への必要な接続を除去することによって、かつ治療ごとに必要な透析流体の量を劇的に減少させることによって、透析患者の生活の質を大幅に改善する血液透析システムを提供する。特に、本明細書で開示する血液透析システムは、小さいポータブルサイズを有し、外部への水の接続を必要とせず、少量の再循環透析流体で継続的に稼動するため、患者は外出先で透析を行うことができ、治療中の移動性を回復させ、自然腎機能をより忠実に模倣する、より長く継続的な透析を提供することができる。
【0011】
代表的な実施形態が本明細書に記載される。したがって、異なるように記載されていない限り、同様の用語は、同様の意味を有する。本開示は、特徴の組み合わせを含む追加の実施形態を明示的に包含し、任意の実施形態の任意の特徴を任意の他の実施形態と組み合わせ得ることを理解されたい。
【0012】
図1は、本開示の実施形態によるポータブル血液透析システム100を示す。血液透析システム100は、透析流体から尿素及び尿毒症毒素を除去することによって透析流体を再生し、透析流体回路を通してそのような再生透析流体をポンピングするように構成された透析流体モジュール102を含む。血液透析システム100はまた、透析流体モジュール102、特に透析流体回路に可逆的に流体的に結合可能(すなわち、ドッキング可能)な血液ハンドリングモジュール104を含む。血液ハンドリングモジュール104は、透析流体回路を介して透析流体モジュールから受け取られた透析液流体から患者の血流を分離し、血流と透析流体の流れとの間で選択された分子の質量交換を許容し、それによって血流から尿素及び尿毒症毒素(例えば、硫酸インドキシル)を除去する透析膜を含む。
【0013】
有利には、血液透析システム100は、透析流体モジュール102によって再生される透析流体を使用して、消耗品である血液ハンドリングモジュール104内で血液を透析する。血液透析システム100は、透析流体を連続的に再生するため、患者は、大規模な透析流体供給に接続された従来の固定式血液透析システムから解放される。
【0014】
血液ハンドリングモジュール104は、単一の患者が疲労する前に多数の透析治療を受けることを可能にする、消耗品(使い捨て)のモジュラ透析器カートリッジである。血液ハンドリングモジュール104は、透析器106、血液導管108、及び透析流体モジュール102と可逆的に結合するように構成された血液ハンドリングモジュールハウジング110内にパッケージ化された透析流体回路の一部(図3B及び図4を参照)を含む。
【0015】
実施形態では、透析器106は、PSf(ポリスルホン及びポリスルホン混合物群)、PES(ポリエーテルスルホン)、CTA(トリアセテートセルロース)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PEPA(PESプラスポリアリレート)、EVAL(エチレンビニルアルコールコポリマー)、PAN(ポリアクリロニトリル)、及び同類のものなどの材料の透過性膜を有する中空繊維透析器である。いくつかの実施形態では、低分子量カットオフ透析膜は、小分子(例えば、100Da未満)のみが通過することを許容する。血液透析システム100に適した透析流体には、重炭酸塩及び酸成分の水ベースの溶液が含まれる。
【0016】
血液導管108は、血液入口から始まり、透析器106を通過し、血液出口で終わる流体導管(例えば、連続管腔)である。血液入口及び血液出口の各々は、異なる患者血液ライン、例えば、動脈又は静脈血液ラインと流体的に接続するように構成されている。いくつかの実施形態では、血液入口及び血液出口の各々は、血液ハンドリングモジュール104上の共通の場所において配設される。例えば、例解の実施形態では、血液入口及び血液出口は、血液入口及び血液出口を多管腔患者血液ライン114と流体的に接続するように構成された血液ラインコネクタ112(例えば、継手、クイックディスコネクト分離機構、又は同類のもの)上に配設される。
【0017】
いくつかの実施形態では、血液ラインコネクタ112は、引張力作動型クイックディスコネクト装置を組み込んでおり、これは、血液入力及び血液出力を患者の血液ライン114から分離し、クイックディスコネクト装置が所定の閾値を超える引張力を経験したときに管腔を密封し、任意選択で、血液ラインコネクタ112が不注意によるチューブ破裂の場合に血液透析システム100から分離されたときに、血液損失を防ぐために、血流を停止し、接続管腔を密封するように構成されている。
【0018】
血液導管108は、透析流体モジュール102内に配設されたポンプが血液導管108を通して血液をポンピングするように、透析流体モジュール102内に配設されたポンプと動作可能に結合するように構成されたポンプインターフェース116を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ポンプインターフェース116は、血液ハンドリングモジュール104が透析流体モジュール102とドッキングされるときに、透析流体モジュール102内に配設されたポンプによって磁気的又は機械的に駆動される可能性があるポンプ回転子又は捕捉インペラを含む。
【0019】
上記のように、透析流体モジュール102は、透析流体回路の一部分である透析流体導管を含み、透析流体導管は、透析流体入口から始まり、透析器106を通過し(しかし、膜によって血液導管108から分離され)、透析流体出口で終わる(図1に示されていないため、図3Bを参照)。血液ハンドリングモジュール104の透析流体導管は、血液透析システム100のより大きな透析流体回路のセグメントであり、いくつかの実施形態では、マルチパス流体回路及び/又は閉ループ回路である。したがって、血液ハンドリングモジュール104上の透析流体入口及び透析流体出口の各々は、透析流体モジュール102の一部である、透析流体出口カップリング及び透析流体入口カップリングとそれぞれ流体的に結合するように構成されている。
【0020】
血液ハンドリングモジュールハウジング110は、硬質の医療用ポリマー(例えば、ポリプロピレン)から形成される。いくつかの実施形態では、モジュールハウジング110は、75mm(例えば、約55mm)を超えない全体の深さ、200mm(例えば、約155mm)を超えない全体の深さに対して直交して測定される全体の幅、及び400mm(例えば、約310mm)を超えない全体の深さ及び全体の幅に対して直交して測定される全体の高さを有する。上記の寸法は、移動性を容易にし、代表的なものであって、限定的なものではない。
【0021】
透析流体モジュール102は、透析流体を再生するためのシステム、血液ハンドリングモジュール104と接する物理及び流体インターフェース、並びに血液ハンドリングモジュール104を通して血液をポンピングすることによって患者の血液を透析するように構成された回路、センサ、及びポンプを収容する自己完結型の電気機械的及び/又は電気化学的システムである。したがって、透析流体モジュール102は、ポリマー、金属、又はそれらの組み合わせから少なくとも部分的に形成された保護ハウジング118に包含される。いくつかの実施形態では、ハウジング118は、血液透析システム100の最外側の物理的寸法を確立する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、血液透析システム100(及び特にハウジング118)は、200mm(例えば、150mm)を超えない全体的な深さ、400mm(例えば、300mm)を超えない全体的な深さに対して直交して測定される全体的な幅、及び500mm(例えば、400mm)を超えない全体的な深さ及び全体的な幅に対して直交して測定される全体的な高さを有する。いくつかの実施形態では、血液透析システム100は、携帯性を許可する総重量(例えば、30lbを超えない総重量)を有する。これらの寸法は、システム全体の携帯性を可能にし、患者が透析中に歩行することを許容する。
【0023】
示される実施形態では、透析流体モジュール102は、透析流体管理モジュール120、透析流体再生モジュール122、及び全て流体的に一緒に結合される流体貯蔵部124を含む。これらのサブシステムの各々を以下に説明する。
【0024】
図2は、バックパック、ダッフルバッグ、ブリーフケース、財布、トートバッグ、ベスト、ジャケット、及び同類のものなどのウェアラブル物品202内に適合するように構成された血液透析システム200の一実施例を示す。いくつかの実施形態では、血液透析システム200は、ウェアラブル物品202を含む。
【0025】
図3A図3Bは、本開示の実施形態による血液透析システム300の分解図を示す。血液透析システム300は、上記の血液透析システム100の特徴を含む。したがって、同様の用語は、同様の意味を有する。
【0026】
血液透析システム300は、血液ハンドリングモジュール302、及び保護ハウジング306内に配設された透析流体モジュール304を含む。更に、透析流体モジュール304は、血液透析システム300が限られた透析流体供給で患者の血液を連続的に透析することができるように、透析流体を再生するシステムを含む。したがって、図示の実施形態の透析流体モジュール304は、以下に説明する透析流体管理モジュール308及び透析流体再生モジュール310である、2つの主要サブシステムを含む。
【0027】
血液ハンドリングモジュール302は、透析流体モジュール304と可逆的かつ流体的に結合する血液ハンドリングモジュールハウジング312内に包含される。特に、血液ハンドリングモジュール302は、透析流体モジュール304内の凹部として少なくとも部分的に形成された血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェース314内に少なくとも部分的に適合する。上記のように、血液ハンドリングモジュール302は、血液導管316及び透析流体導管を含む。透析流体導管は、透析器309を通って延在し、血液ハンドリングモジュール302及び透析流体モジュール304の両方を通って延在するより大きな透析流体回路の一部を形成する。血液導管316はまた、透析器309を通って延在する。
【0028】
血液ハンドリングモジュール302がドッキングインターフェース314とドッキングする図3Bを参照すると、透析流体回路は、(透析流体が透析流体モジュール304から血液ハンドリングモジュール302内に流出する)透析流体出口318及び(透析流体が血液ハンドリングモジュール302から透析流体モジュール304内に流入する)透析流体入口320を有する。いくつかの実施形態では、血液透析システム300は、垂直から±30度内の動作の向きを有し、透析流体入口320は、システム300が動作の向きにあるとき、透析流体出口318よりも重力的に高く配設される。これは、有利には、血液ハンドリングモジュール302から任意のガスを排出するのに役立つ。
【0029】
図3Aに戻ると、透析流体管理モジュール308は、オンボード制御回路322、センサ、ポンプ、ユーザインターフェース324、及び透析流体回路の一部を含む。更に、透析流体管理モジュール308は、血液ハンドリングモジュール302に物理的、流体的、及び電気的インターフェースを提供する。これらの特徴を以下に説明する。
【0030】
制御回路322は、透析流体モジュール304のセンサ、ポンプ、ユーザインターフェース324、及び他の特徴を作動させる。電源326(例えば、充電式リチウムイオン電池パック)は、制御回路322に電気的に接続され、透析プロセスに電力を供給する。いくつかの実施形態では、透析流体管理モジュール308は、ACコンセント、及び任意選択で、標準化されたAC電源、例えば、110V、120V、220V、及び同類のものなどへの接続を可能にするAC/DCコンバータを含む。
【0031】
制御回路322は、プロセッサ(例えば、一般的なプロセシングユニット、グラフィカルプロセシングユニット、又は特定用途向け集積回路)、データストア(有形機械可読記憶媒体)、ソフトウェアロジック(例えば、実行可能ソフトウェアコード)として実装された複数のモジュール、ファームウェアロジック、ハードウェアロジック、又はそれらの様々な組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、制御回路322は、モバイルデバイス328(例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、バイオメトリックセンサ)に信号を送信し、モバイルデバイス328から送信された信号(例えば、感知された血圧に対応する信号)を受信するトランシーバ、すなわち双方向通信を含む。制御回路322のデータストアは、機械(例えば、制御回路322のプロセッサ)によってアクセス可能な非一時的形式で情報を格納する機構を含む有形機械可読記憶媒体である。例えば、機械可読記憶媒体は、記録可能/非記録可能媒体(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイスなど)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、制御回路322は、インターネット、セルラネットワーク、RFネットワーク、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、又は他のネットワークを介して、モバイルデバイス328、及び/又は他のネットワーク要素との通信を可能にするように構成された回路を有する通信インターフェースを含む。例えば、いくつかの実施形態では、制御回路322は、血液透析システム300のセンサによって監視されるパラメータのうちのいずれか1つ以上を示す信号をモバイルデバイス328に送信する。
【0034】
したがって、通信インターフェースは、無線プロトコル(例えば、WiFi(登録商標)、WiMAX(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、セルラ、赤外線、ニアフィールドなど)及び/又は有線プロトコル(ユニバーサルシリアルバス又はRS-216、RJ-45などの他のシリアル通信、並列通信バスなど)を使用して通信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、通信インターフェースは、制御回路322及び他のネットワーク要素が互いを識別し、制御情報を交換することを許容する発見プロトコルを開始するように構成された回路を含む。実施形態では、通信インターフェースは、発見プロトコルに対して、かつ1つ以上の事前共有鍵をネゴシエートするように構成された回路を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、制御回路322は、透析流体を約250mL/分、200mL/分、150mL/分、100mL/分、又はそれ以下の流速において透析流体再生モジュール310を通してポンピングするように構成されている。このような流量は、従来の血液透析システムよりも低く、一般的には毎分何リットルもの透析流体を透析器にポンピングする。更に、いくつかの実施形態では、制御回路322は、(透析流体をポンピングする)第1のポンプ及び(血液ハンドリングモジュールを通して血液をポンピングする)ポンプ334を制御して、約10mmHg~約300mmHg、約10mmHg~約200mmHg、約10mmHg~約100mmHgの間で、血液ハンドリングモジュール302内の透析器膜にわたって圧力勾配を維持するように構成されている。
【0036】
血液ハンドリングモジュール302がドッキングインターフェース314内にネストされるとき、血液ハンドリングモジュール302の透析流体回路のセグメントは、流体インターフェース330a、b(例えば、オス/メス流体カップリング)を介して透析流体モジュール304と流体的に接続する。特に、透析流体入口カップリング330bは、血液ハンドリングモジュール302の透析流体入口320に再生透析流体を提供し、流体透析流体出口カップリング330aは、(透析流体再生モジュール310に戻すために)血液ハンドリングモジュール302の透析流体出口318から使用済み透析流体を受け取る。
【0037】
ドッキングインターフェース314に設けられた血液センサアレイ332は、血液ハンドリングモジュール302がドッキングインターフェース314内に完全に受け入れられると、血液センサアレイ332が血液ハンドリングモジュール302の血液導管316に沿って位置決めされるように、位置決めされる。したがって、血液感覚アレイ332は、血液ハンドリングモジュール302がドッキングインターフェース314とドッキングされたときに(血液導管316を通して)、血流と接するように構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、血液センサアレイ332は、制御回路322に動作可能に接続されている、血圧センサ(血液透析システム300の外部に配設されたセンサを含む、単一のセンサ又は複数のセンサであり得る)、酸素レベルセンサ、血流速度センサ、バイオマーカセンサ(例えば、ヘモグロビンセンサ)、温度センサ、伝導度センサ、及び他のセンサのうちの少なくとも1つを含む。前述のセンサは、血液ハンドリングモジュール302の血液導管に対して非侵襲的である。センサアレイ332が温度センサ及び第2のセンサ(例えば、伝導度センサ)を備えるいくつかの実施形態では、温度センサは、第2のセンサが血液の異なるパラメータを感知する第2の場所の上流の血液導管316に沿った第1の場所において血流の温度を感知するように構成されている。有利には、この構成は、制御回路322が第2のセンサを用いて温度補償された測定を行うことを可能にする。
【0039】
いくつかの実施形態では、センサアレイ332は、ドッキング解除位置とドッキング位置との間を移動するように構成されている。ドッキング解除位置では、センサアレイ332は、血流のパラメータを感知するように位置決めされていない。例えば、センサアレイ332は、ハウジング306内に後退され得、一方の側にシフトされ得、又は別様に、ドッキングされたときに血液導管316によって占有される血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェース314内の領域から離れて移動され得る。ドッキング位置では、センサ332は、スライド、シフト、ピボット、又は伸長などによって、各センサが血流中の対応するパラメータを感知するように構成されている位置に戻る。有利には、可動センサアレイ332は、血液ハンドリングモジュール302とのドッキングを容易にする。
【0040】
ポンプ334(インペラポンプ、蠕動ポンプ、又は線形アクチュエータなど)は、ドッキングインターフェース314内に配設され、血液ハンドリングモジュール302が透析流体モジュール304と結合されるとき、ポンプ334が血液を血液ハンドリングモジュール302の血液導管316を通してポンピングするように、制御回路322に動作可能に接続される。いくつかの実施形態では、ポンプ334は、血液ハンドリングモジュールのドッキングインターフェース314内に配設されたポンプ駆動部を含み、このポンプ駆動部は、血液ハンドリングモジュール302の血液導管316内に配設された捕捉型インペラ317を(例えば、磁気的又は機械的に)駆動するように構成されている。
【0041】
図3Bに簡単に戻ると、血液ハンドリングモジュール302は、血液導管316に沿ってモジュールハウジング312内に形成されたセンサバンクインターフェース350を含み、これは、センサアレイ332とドッキングするように構成されている。したがって、いくつかの実施形態では、センサバンクインターフェース350は、ハウジング312内の複数の凹部を含み、各凹部は、血液ハンドリングモジュール302が血液ハンドリングモジュールドッキングインターフェース314とドッキングするときに、センサアレイ332の対応するセンサを受け入れるようにサイズ設定、形状設定、及び位置決めされている。
【0042】
図3Aに示され、図5Bに関してより詳細に説明されるように、透析流体センサアレイ336は、ハウジング306内に配設され、制御回路322に接続され、尿素レベル、カリウムレベル、及び同類のものなどの血液透析システム300を通って循環する透析流体の態様を監視するように構成された1つ以上の追加のセンサを含む。制御回路322はまた、ハウジング306内に配設された少なくとも1つの透析流体ポンプ338に接続され、透析流体を透析流体再生モジュール310を通してポンピングするように構成され、任意選択で、電解質溶液を流体貯蔵部340から透析流体再生モジュール310にポンピングするように構成されている。
【0043】
流体貯蔵部340は、比較的少量(例えば、0.5リットル~2.0リットル)のプライミング流体、例えば、生理食塩水又は水、及び任意選択で電解質溶液、廃液、及び/又は過剰透析液を格納するように構成された容器である。したがって、流体貯蔵部340は、1つ以上の内部容器又は区画(流体のタイプごとに1つ)を含み、その各々は、透析流体管理モジュール308上に配設された流体インターフェース342を介して透析流体回路と流体的に結合される。
【0044】
透析流体再生モジュール310は、透析流体回路(血液ハンドリングモジュール302及び透析流体管理モジュール308の一部を含む)に流体的に接続され、尿素及びそこからの血液から透析された他の廃棄物を除去し、次いで、再生された透析流体を血液ハンドリングモジュール302に戻すことによって、使用済み透析流体を再生する。
【0045】
実施形態では、透析流体再生モジュール310は、2020年2月20日に公開された米国特許出願公開第20200054810号、2022年1月6日に公開された米国特許出願公開第20220000938号、並びに2019年7月31日に出願され、ワシントン大学に譲渡された国際特許出願第PCT/US2019/044285号のうちのいずれか1つ以上に記載されるような光酸化プロセスを組み込んでおり、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に明示的に組み込まれている。そのような光酸化プロセスは、有利には、血液から透析された尿素及び他の廃棄物を除去し、それらの廃棄物を無害に大気中に分散する二酸化炭素及び窒素に触媒的に変換する。そのような光酸化プロセスは、血液透析システム300が閉ループシステム内で比較的少量の透析流体(例えば、0.5リットル~2.0リットル)を再循環させることを可能にする。
【0046】
したがって、いくつかの実施形態では、透析流体再生モジュール310は、光酸化システムの少なくとも一部分、例えば、陽極/陰極アレイ及び光源を含む。代表的な光酸化モジュールは、図5C図6に関して以下に説明される。
【0047】
本開示の他の実施形態によれば、透析流体再生モジュール310は、透析流体から廃棄物を除去するための異なるシステム、例えば、吸着剤ベースのシステム、電気化学酸化システム、又は他の廃棄物除去システムを含む。吸着剤ベースのシステムでは、吸着剤カートリッジは、少なくとも1つの吸着剤カートリッジ及び適切な添加剤を含む再生セクションを通して使用済み透析液を通過させることによって、初期透析液を精製し、使用済み透析液を再生することができる。吸着剤カートリッジは、尿毒症廃棄物を結合し、透析液のpHのバランスをとるなどの他のタスクにも使用することができる。典型的な吸着剤カートリッジシステムは、例えば、活性炭層(浄化層)、ウレアーゼ酵素層(変換層)、カチオン交換層、及びアニオン交換層を含むことができる。再生透析中、使用された又は使用済みの透析液は、カートリッジの層を通って上昇することができ、高純度の再生透析液は、カートリッジ出口から出て、透析器に再循環することができる。活性炭又は炭素層を使用して、患者のクレアチニン、尿酸、及び含窒素代謝廃棄物などの有機代謝産物、並びに水からの塩素及びクロラミンを吸収することができる。ウレアーゼ層に使用されるウレアーゼは、二酸化炭素及びアンモニアへの尿素の加水分解に触媒作用を及ぼす酵素である可能性がある。炭酸アンモニウムは、従来の吸着剤カートリッジ中のウレアーゼ層によって放出される。ウレアーゼ層で作り出されたアンモニウムは、Na+及びH+イオンの放出と引き換えに、カチオン交換層、例えば、吸着性リン酸ジルコニウム内で除去することができる。次いで、尿素加水分解からの炭酸塩は、H+と結合して、重炭酸塩(HCO3-)及び炭酸(H2CO3)を形成することができる。炭酸は不安定な有機酸であり、そのほとんどが急速に水と二酸化炭素分子(CO2)に分解される。アニオン交換層、例えば、対イオンとしてアセテートを包含するHZOは、HCO3-、P-、及び他のアニオン(例えば、水中のF-)を除去し、アセテートを放出することができる。
【0048】
電気化学的酸化システムは、使用済み透析液中に存在する尿素及び尿毒症毒素を窒素、二酸化炭素、水素、及び他の副生成物に酸化するために、使用済み透析流体中に浸漬されたカソードとアノード(例えば、グラファイト、白金、又は他の好適な材料)の間に電圧を印加することによって、使用済み透析流体を再生する。
【0049】
光酸化システムを組み込んだ本開示の実施形態は、尿素及び非尿素毒素の両方を除去し、いくつかの利点を提示する。まず、吸着剤ベースのシステムと比較して、光酸化システムの重量が軽く(吸着剤は必要ない)、アンモニウムなどの有毒な副生成物を回避する。電気化学的酸化システムと比較して、光酸化システムは、有毒な副生成物(塩素など)、電極浸出、及びアンモニウム生成(血液pHレベルを変化させる可能性がある)を回避する。
【0050】
いくつかの実施形態では、血液透析システム300は、モバイルデバイス328によって実行されるように構成されたソフトウェアアプリケーション344を含む。そのようなアプリケーションは、制御回路322から受信した信号に基づいて、(モバイルデバイス328のユーザインターフェース上で)300の動作ステータス、例えば、「透析」、「プライミング」、「透析完了」、「エラー」を表示する透析監視モジュールを含む。いくつかの実施形態では、アプリケーション344は、モバイルデバイス328上のユーザからの入力(例えば、「透析開始」及び/又は「透析停止」コマンド)を受信し、次いで、コマンドを実行するために、モバイルデバイス328から制御回路322に信号を送信するコマンドモジュールを含む。いくつかの実施形態では、アプリケーション344は、モバイルデバイス328のセンサで少なくとも1つのパラメータ(例えば、血圧)を感知し、感知されたパラメータに対応する信号を制御回路322に送信する透析動作モジュールを含み、制御回路322は、感知されたパラメータに基づいて透析プロセスの動作パラメータ(例えば、ポンプ速度)を調整する。前述のモジュールは、限定的ではなく、代表的であり、複数のモバイルデバイス328、例えば、患者のスマートウォッチ及び介護者又は医師のスマートフォン上で実行され得る。
【0051】
図4は、代表的な血液ハンドリングモジュール400のモックアップを示し、その機能要素を明らかにして理解を深める。血液ハンドリングモジュール400は、特に明記されない限り、以前に導入された血液ハンドリングモジュールと同じ特徴を含む。
【0052】
血液ハンドリングモジュール400は、血液入口404を介して患者の血液を受け取り、(上述したように)透析器膜407を有する透析器406を通過し、透析された血液を血液出口408に戻す血液導管402を含む。この実施形態では、血液入口404及び血液出口408は、血液ラインコネクタ及び/又はクイックディスコネクト装置への接続を容易にするために、共通の場所に位置している。剛性ハウジング410は、前述の要素を保護する。
【0053】
ポンプヘッド412は、患者から、透析器406を通して血液をポンピングするために、血液導管402と一直線に配設される。実施形態では、ポンプヘッドは、透析流体モジュール内に配設されたポンプモータに磁気的に結合可能な回転子又はインペラである。しかしながら、いくつかの実施形態は、そのような「捕捉インペラ」構成を含まない。例えば、蠕動ポンプを利用する実施形態は、血液ハンドリングモジュール内に捕捉インペラを含まない場合がある。
【0054】
いくつかの実施形態では、血液ハンドリングモジュールは、透析を監視及び制御するための1つ以上のセンサ、例えば、血圧センサ(血液透析システム300の外部に配設されたセンサ上のセンサを含む、単一のセンサ又は複数のセンサであり得る)、酸素レベルセンサ、血流速度センサ、バイオマーカセンサ(例えば、ヘモグロビンセンサ)、及び/又は他のセンサを包含する。
【0055】
ハウジング410内に形成されたセンサインターフェース414は、複数の凹部を含み、その場所及びサイズは、透析流体管理モジュール内の血液センサアレイに対応する。血液ハンドリングモジュール400内ではなく透析流体モジュール内にセンサを位置決めすることにより、異なる血液ハンドリングモジュール400と共にセンサを衛生的に再利用することが可能になる。それにもかかわらず、血液ハンドリングモジュールのいくつかの実施形態は、上記のセンサのうちのいずれか1つ以上を含む。
【0056】
血液ハンドリングモジュール400は、透析流体入口416及び透析流体出口418をそれぞれ介して透析流体回路406に出入りする、透析流体回路の一部分を組み込んでいる。透析流体回路の部分は、血液導管402とは反対側の透析器膜407に沿って通過する。
【0057】
図5A及び図5Bは、本開示の実施形態による、代表的な血液透析システム500のモックアップの反対側の斜視図を示す。血液透析システム500は、特に明記されない限り、以前に導入された実施形態と同じ特徴を含む。
【0058】
上記のように、血液透析システム500は、血液ハンドリングモジュール502及び透析流体モジュール504を含む。血液透析システム500に関して記載される特徴のうちのいずれか1つ以上は、本開示の任意の他の実施形態に適用され得る。
【0059】
血液ハンドリングモジュール502は、図4に関して記載された血液ハンドリングモジュール400と同じ特徴を有し、したがって、再び記載されることはない。
【0060】
透析流体モジュール504は、透析流体再生モジュール508に流体的に接続された透析流体管理モジュール506を含み、透析流体回路の一部(その一部も血液ハンドリングモジュール502内に配設されている)を一緒に含む。
【0061】
透析流体管理モジュール506は、血液ハンドリングモジュール502を通して血液をポンプすることによって患者の血液を透析するように、また、血液ハンドリングモジュール502及び透析流体再生モジュール508を通して透析流体をポンピングするように構成された回路、センサ、及びポンプを含む。したがって、透析流体管理モジュール506は、本明細書に記載の少量血液透析システムに固有のいくつかの機能を実行する複数のセンサ、ポンプ、及びモジュールに動作可能に接続された制御回路510を含む。
【0062】
制御回路510は、透析流体をシステムを通してポンピングする第1の複数のセンサ及びポンプに動作可能に接続される。例えば、センサ512a~cは、透析流体回路に沿って配設され、透析流体の特定のパラメータ、例えば、尿素レベル、カリウムレベル、温度、色、又は透析流体中のガスの存在及び/又は量を感知するように各々構成されている。感知されたパラメータのうちの1つ以上に基づいて、制御回路510は、システムを通る透析流体の流速を増加又は減少させ、感知されたパラメータに基づいてユーザ又は臨床医にメッセージを送信し、及び/又は以下に記載されるモジュールのうちの1つ以上を制御し得る。例えば、透析流体再生モジュール508が光酸化モジュールを備えるいくつかの実施形態では、制御回路510は、透析流体の蒸発速度を増加させ、したがってシステムから熱を除去するために、流体再生モジュール508を通る透析流体の流量を増加させ得る。
【0063】
ポンプ514a~cはまた、透析流体回路に沿って配設される。具体的には、ポンプ514aは、透析液再生モジュール508から血液ハンドリングモジュール502に再生透析液をポンピングし、ポンプ514bは、電解質溶液(及び/又は生理食塩水などのプライミング溶液)を流体貯蔵部516から透析流体回路内にポンピングし(例えば、回路をプライミングするために)、ポンプ514cは、再生のために使用された透析流体を透析流体再生モジュール508にポンピングする。いくつかの実施形態では、ポンプ514b及び/又は別のポンプは、廃液及び/又は過剰な透析流体を透析流体回路から流体貯蔵部516にポンピングする。これは、血液透析システム500が治療中に患者から過剰な量の流体を除去する場合に特に有利である。前述の過剰な流体を(廃棄のために)流体貯蔵部516に格納し、例えば、システム内の流体レベル及び/又は化学濃度を調節するために、任意選択で透析流体回路にポンピングで戻すことができる。
【0064】
制御回路510はまた、第2の複数のセンサ及び血液ハンドリングモジュール502を通して血液をポンピングする少なくとも1つのポンプに動作可能に接続される。例えば、センサ518a~cは、血液ハンドリングモジュール502が透析流体モジュール504に結合されているときに、血液導管と接するように構成された場所において透析流体管理モジュール506上に配設されている。したがって、センサ518a~cは、患者の血液の態様、例えば、血圧センサ、酸素レベルセンサ、血流速度センサ、バイオマーカセンサ(例えば、ヘモグロビンセンサ)、及び同類のものを感知する。ポンプ520は、血液導管を通して血液をポンピングする。ポンプ520は、任意の数のポンプタイプであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポンプ520は、血液ハンドリングモジュール内の血液導管に作用する蠕動ポンプである。
【0065】
使用中、空気又は他のガスは、透析流体回路内に導入され得る。例えば、ユーザが流体貯蔵部516からの生理食塩水でシステムをプライミングするとき、少量の空気がシステムに入る場合がある。又は、透析流体の蒸発は、透析流体回路内にガスを作り出し得る。したがって、透析流体再生モジュール508内の流量及び一貫した性能を維持するために、任意選択のガス除去モジュール528は、透析流体回路に沿って配設され、そこからガスを除去するように構成されている。いくつかの実施形態では、ガス除去モジュールは、透析流体回路内のバルブ又はガス透過性膜のうちの少なくとも1つと、任意選択で、透析流体回路からガスを引き出すためにそれに結合された真空と、を備える。ガスの排出を容易にするために、そのような特徴は、血液透析システム500が垂直から+/-30度以内の直立状態の動作の向きにあるとき、透析流体回路に沿った重力の高い点において配設され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、血液透析システム500には、制御回路510に動作可能に接続され、透析流体回路及び流体貯蔵部516に沿っている任意選択の電解質管理モジュール540が提供されている。電解質管理モジュールは、流体貯蔵部516から透析流体回路内に電解質溶液を選択的に提供することによって、透析流体中の電解質レベルを調節するように構成されている。したがって、電解質管理モジュール540は、透析流体中の電解質レベルを測定するための1つ以上のセンサを含み得、かつ流体貯蔵部516と透析流体回路との間に配設された1つ以上のバルブも含み得る。いくつかの実施形態では、特に、透析流体再生モジュール518が光酸化モジュールを含む実施形態では、電解質管理モジュールは、透析流体再生モジュール518への入口の上流の場所において透析流体回路に素って配設された1つ以上のグルコースフィルタを含む。グルコースは、光酸化プロセスにおいて尿素と競合するため、グルコースフィルタは、有利には、再生前に透析流体からグルコースを除去し、それによってシステム効率を向上させる。上記のセンサ及びポンプ構成は、代表的なものであって、限定的なものではない。
【0067】
例解されている実施形態の透析流体再生モジュール508は、光酸化モジュールを含み、これは、血液から透析された尿素及び他の廃棄物を取り込み、これらの廃棄物を二酸化炭素及び窒素に触媒的に変換し、大気中に無害に拡散させる。
【0068】
したがって、図5Cに示される実施形態では、透析流体再生モジュール508は、透析流体が流れる複数の流体チャネル530を含む半透明又は透明材料(例えば、導電性FTOガラス)から少なくとも部分的に形成された少なくとも1つの光酸化パネル526を含む。特に、流体チャネルは、共通の流体入力532から生じる多数の分岐を含み、多数の流体的に平行な酸化流体チャネル536を形成し(酸化が生じる)、共通の流体出力534に収束する。アノード/カソードアレイ522は、酸化流体経路536及び少なくとも1つの光源524に隣接して配設される。アノード/カソードアレイは、アノード及びカソードがそれを通って流れる透析流体に接触するように、酸化流体経路536の管腔内に延在するアノード及びカソードを含む。使用中、透析流体は、透析流体管理モジュール506の制御下でこれらのチャネルを通って流れる。
【0069】
アノード/カソードアレイ522は、酸化が生じる複数のアノード、例えば、導電性FTOガラス上で熱水的に成長するTiO/FTOアノードを含み、そのうちの少なくとも1つは、酸化流体経路536の各々に沿って配設され、その対応する管腔内に延在する。アノード/カソードアレイ522はまた、酸化流体経路526の各々に沿って配設され、対応するアノード、例えば、Pt/C(Ptコーティング炭素紙カソード)とは反対にその管腔内に延在する複数のカソード触媒を備える。したがって、各酸化流体経路526は、その管腔内に延在する少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードを有する。
【0070】
いくつかの実施形態では、各酸化流体経路526は、単一の細長いアノード及びその長さに沿って延在する単一の細長いカソードを含むが、他の実施形態は、各酸化流体経路536に沿って延在する複数の別個のアノード及びカソードを含む。いくつかの実施形態によれば、アノード/カソードアレイ522は、24時間で少なくとも12~15gの尿素(ヒト尿素産生の代表的なレベル)を除去するために、少なくとも約0.25~2.0平方フィートの組み合わされた活性表面積(酸化流体経路536の管腔に曝露される)を有する。
【0071】
光源524は、アノード/カソードアレイ522のアノードに面し、尿素酸化を開始するための光活性化エネルギーを提供するLEDアレイ、UVランプ、又は他の光源を含む。例解された実施形態では、複数のLEDは、各酸化流体経路536に沿って配設される。それにもかかわらず、いくつかの実施形態は、複数の酸化流体経路536に光を提供する集中型光源524を利用し得る。LEDは、その効率及び出力のために例解された光源524で使用されるが、他の実施形態は、他の形態の照明を含み得る。
【0072】
例解される実施形態は、単一の光酸化パネル526を含む。それにもかかわらず、いくつかの実施形態は、複数の光酸化パネル526、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のそのようなアレイを含み、これらは、(尿素除去能力を増加させるために)並列に及び/又は(追加の尿素除去段階を提供するために)直列に流体的に接続され得る。いくつかの実施形態は、複数の光源524、例えば、複数のアノード/カソードアレイ522と接続した複数の光パネルを利用し、そのような実施形態では、単一の光源524は、複数のアノード/カソードアレイ522を照明するように構成され得る。
【0073】
したがって、本開示の代表的なプロセスによれば、使用済み透析流体は、透析流体管理モジュール506の制御下で、流体入力532においてパネル526内にポンピングされ、光源524及びアノード/カソードアレイ522によって、酸化流体経路536内で光酸化され、使用済み透析流体中の尿素を、CO、N、及びHOに分解させる。再生透析液の水成分は、流体出力534においてパネル526を出て、再使用のためにポンプ514aによって透析流体回路内に再循環される。
【0074】
いくつかの実施形態では、透析流体再生モジュール508は、例解の実施形態に示されるものとは異なるアノード/カソードアレイを含む。一実施例として、アノード/カソードアレイは、並列に接続されたセル(例えば、円形セル)の可撓性パネルとして形成され、各セルは、アノード側、カソード側、及びその中に光源を有するディスクを有する。そのような可撓性パネルは、平行な流体接続が毒素除去効率を増加させつつ、着用者の体に適合することを有利に可能にする。上記の実施例は、代表的なものであり、限定的なものではない。
【0075】
本開示の代表的な血液透析システムの試験では、再生透析流体のみを利用して、24時間の連続操作にわたって、患者溶液流(患者の血液を模倣するように製剤化された、生理学的に関連する濃度における生理食塩水及び尿素の溶液)から平均14.0±0.2グラムの尿素を除去することに成功した。
【0076】
図6Aは、本開示の任意の透析流体再生モジュールに具体化され得る別の代表的な光酸化モジュール600の分解図である。以下で説明されるプロセスは、図5A図5Cに関して説明される光酸化モジュールで生じるプロセスを表す。
【0077】
光酸化モジュール600で行われる電気化学反応は、次のように説明され得る。
【0078】
アノード:CO(NH+6OH->CO+N+5HO+6e
【0079】
カソード:O+2HO+4e->4OH
【0080】
正味:CO(NH+3/2O->CO+N+2HO (式1)
【0081】
いくつかの実施形態では、透析流体602は、入口606から出口608までスペーサ604を通って流れる。透析流体602は、電気化学的にCO及びNに分解される尿素を運ぶ。スペーサ604は、アノード610とカソード612との間に挟まれ得、各々が電圧源614(例えば、DC電圧を提供するバッテリ又は他の電源)に個別に接続される。いくつかの実施形態では、電圧源614は、約0.6V~約0.8Vの範囲内の電圧差を提供する。スペーサ604のいくつかの実施形態では、透析液の流れ全体が、TiO層の上を流れるように向けられる。
【0082】
いくつかの実施形態では、アノード610は、ナノ構造(例えば、TiOナノワイヤ)を装備している。動作中、アノード610は、式1に示される電気化学反応のために光(例えば、UV光)を発する光源616によって照明される。アノード610において、光励起されたTiOナノ構造が表面上で溶液種の酸化のために正孔を提供する一方で、電子はその下の導電性酸化物(例えばフッ素ドープされた薄酸化物又はFTO)上に集められ、水をOHに分割するためにカソード電極に輸送される。光励起は、光源616によって、又は自然光によって提供され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、カソード612は、ガス透過性(例えば、空気透過性又は酸素透過性)であり得る。動作中、酸素を含むガス618の流れは、尿素を含む透析液に向かってカソード612を通過することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、光酸化モジュールは、透析流体を調製又は再生するために使用され得る。例えば、処理される水は、アノード610とカソード612との間を通過して、処理される水中の不純物を酸化させ、それによって透析流体を生成し得る。
【0085】
前述の光酸化モジュール600は、本開示の透析流体再生モジュールに具現化され得る光酸化モジュールを限定するものではなく、代表的なものである。
【0086】
本出願はまた、量及び数を参照し得る。特に明記されていない限り、そのような量及び数は、限定的であると見なされるべきではなく、本出願に関連付けられた可能な量や数の代表的なものである。この点でもまた、本出願は、「複数の」という用語を使用して、量又は数を参照し得る。この点で、「複数の」という用語は、1よりも多い任意の数、例えば、2、3、4、5などであることを意味する。「約」、「およそ」、「ほぼ」などは、記載された値のプラス又はマイナス5%を意味する。本開示の目的のために、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」という語句は、例えば、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味し、3つを超える要素が列挙されている場合、全ての更なる可能な並べ替えを含む。
【0087】
本明細書で開示される実施形態は、本明細書で説明される技術及び方法論を実装し、2つ以上のコンポーネントを動作可能に接続し、情報を生成し、動作条件を判定し、器具、デバイス、又は方法、及び/又は同類のものを制御するために、回路を利用し得る。任意のタイプの回路を使用することができる。実施形態では、回路は、とりわけ、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は同類のものなどの1つ以上のコンピューティングデバイス、又はそれらの任意の組み合わせを含み、別個のデジタル又はアナログ回路素子若しくは電子機器、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0088】
実施形態では、回路は、複数の事前定義された論理コンポーネントを有する1つ以上のASICを含む。実施形態では、回路は、複数のプログラム可能な論理コンポーネントを有する1つ以上のFPGAを含む。実施形態では、回路は、ハードウェア回路実装(例えば、アナログ回路での実装、デジタル回路での実装、及び同類のもの、並びにそれらの組み合わせ)を含む。実施形態では、回路は、デバイスに本明細書に記載の1つ以上の方法論又は技術を実行させるために一緒に動作する、1つ以上のコンピュータ可読メモリ上に格納されたソフトウェア又はファームウェア命令を有する回路及びコンピュータプログラム製品の組み合わせを含む。実施形態では、回路は、例えば、動作のためにソフトウェア、ファームウェア、及び同類のものを必要とする、マイクロプロセッサ又はマイクロプロセッサの一部などの回路を含む。実施形態では、回路は、1つ以上のプロセッサ又はその一部、及び添付のソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、及び同類のものを含む実装を含む。実施形態では、回路は、ベースバンド集積回路又はアプリケーションプロセッサ集積回路、又はサーバ、セルラネットワークデバイス、他のネットワークデバイス、又は他のコンピューティングデバイス内の同様の集積回路を含む。実施形態では、回路は、1つ以上の遠隔に位置するコンポーネントを含む。実施形態では、遠隔に位置するコンポーネントは、無線通信を介して動作可能に接続される。実施形態では、遠隔に位置するコンポーネントは、1つ以上の受信機、送信機、トランシーバ、又は同類のもの介して動作可能に接続される。
【0089】
実施形態は、例えば、命令又はデータを格納する1つ以上のデータストアを含む。1つ以上のデータストアの非限定的な実施例としては、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、又は同類のもの)、不揮発性メモリ(例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、又は同類のもの)、永続的メモリ、又は同類のものが挙げられる。1つ以上のデータストアの更なる非限定的な実施例としては、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、フラッシュメモリ、又は同類のものが挙げられる。1つ以上のデータストアは、1つ以上の命令、データ、又はパワーバスによって、例えば、1つ以上のコンピューティングデバイスに接続することができる。
【0090】
実施形態では、回路は、1つ以上のコンピュータ可読媒体ドライブ、インターフェースソケット、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、メモリカードスロット、又は同類のもの、並びに例えば、グラフィカルユーザインターフェース、ディスプレイ、キーボード、キーパッド、トラックボール、ジョイスティック、タッチスクリーン、マウス、スイッチ、ダイヤル、又は同類のものなどの1つ以上の入出力コンポーネント、並びに任意の他の周辺デバイスを含む。実施形態では、回路は、(電気的、電気機械的、ソフトウェア実装、ファームウェア実装、又は他の制御、又はそれらの組み合わせ)実施形態の1つ以上の態様を制御するために、少なくとも1つのコンピューティングデバイスに動作可能に接続される1つ以上のユーザ入力/出力コンポーネントを含む。
【0091】
実施形態では、回路は、信号伝達媒体(例えば、コンピュータ可読メモリ媒体、コンピュータ可読記録媒体など)を受け入れるように構成されたコンピュータ可読媒体ドライブ又はメモリスロットを含む。実施形態では、システムに開示された方法のいずれかを実行させるためのプログラムは、例えば、コンピュータ可読記録媒体(CRMM)、信号伝達媒体、又は同類のものに格納することができる。信号伝達媒体の非限定的な実施例としては、任意の形態のフラッシュメモリ、磁気テープ、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、デジタルテープ、コンピュータメモリ、又は同類のものなどの記録可能なタイプの媒体、並びにデジタル及び/又はアナログ通信媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンク(例えば、送信機、受信機、トランシーバ、送信ロジック、受信ロジックなど)などの送信タイプの媒体が挙げられる。信号伝達媒体の更なる非限定的な実施例としては、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD+RW、DVD-RW、DVD-R、DVD+R、CD-ROM、スーパーオーディオCD、CD-R、CD+R、CD+RW、CD-RW、ビデオコンパクトディスク、スーパービデオディスク、フラッシュメモリ、磁気テープ、磁気光学ディスク、MINIDISC、不揮発性メモリカード、EEPROM、光ディスク、光記憶装置、RAM、ROM、システムメモリ、ウェブサーバ、又は同類のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0092】
添付の図面に関連して上述した詳細な説明は、同様の数字が同様の要素を参照しているが、本開示の様々な実施形態の説明として意図されており、唯一の実施形態を表すことを意図していない。本開示に記載される各実施形態は、単なる実施例又は例解として提供され、他の実施形態よりも好ましい又は有利と解釈されるべきではない。本明細書に提供される例解的な実施例は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。同様に、本明細書に記載される任意のステップは、同じ又は実質的に同様の結果を達成するために、他のステップ、又はステップの組み合わせと交換可能であり得る。概して、本明細書に開示される実施形態は非限定的であり、発明者は、本開示の範囲内の他の実施形態が、図に示され、本明細書に記載される複数の特定の実施形態からの構造及び機能性を含み得ることを企図する。
【0093】
前述の説明では、本開示の例示的な実施形態の完全な理解を提供するために、具体的な詳細を示している。しかしながら、本明細書に開示された実施形態が、全ての具体的な詳細を具体化することなく実施され得ることは、当業者には明らかであろう。いくつかの実例では、本開示の様々な態様を不必要に曖昧にしないために、周知のプロセスステップを詳細に記載していない。更に、本開示の追加の実施形態は、本明細書に記載の特徴の任意の組み合わせを採用し得ることが理解されよう。
【0094】
本出願は、「垂直」、「水平」、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、及び「下」などの方向への参照を含み得る。これらの参考文献、及び本出願における他の同様の参考文献は、特定の実施形態(実施形態が使用のために位置決めされるときなど)を説明及び理解するのを助けることを意図しており、本開示をこれらの方向又は場所に限定することを意図していない。
【0095】
本出願はまた、量及び数を参照し得る。具体的に記載されていない限り、そのような量及び数は、限定的ではなく、本出願と関連付けられた可能性のある量又は数の例示であると見なされるべきである。この点でもまた、本出願は、「複数の」という用語を使用して、量又は数を参照し得る。この点で、「複数の」という用語は、1よりも多い任意の数、例えば、2、3、4、5などであることを意味する。「約」、「およそ」などは、記載された値のプラス又はマイナス5%を意味する。「に基づく」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味する。
【0096】
本開示の原理、代表的な実施形態、及び動作モードは、前述の説明に記載されている。しかしながら、保護されることが意図されている本開示の態様は、開示された特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。更に、本明細書に記載の実施形態は、限定的ではなく例解的なものと見なされるべきである。本開示の趣旨から逸脱することなく、変形及び変更が他のものによって行われ得、及び等価物が採用され得ることを理解されたい。したがって、全てのそのような変形、変更、及び等価物が、特許請求の範囲に記載の本開示の趣旨及び範囲に入ることが明示的に意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
【国際調査報告】