(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】船舶の監視
(51)【国際特許分類】
B63B 79/30 20200101AFI20240304BHJP
B63B 59/10 20060101ALI20240304BHJP
B63B 79/15 20200101ALI20240304BHJP
【FI】
B63B79/30
B63B59/10 A
B63B79/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558645
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057629
(87)【国際公開番号】W WO2022200427
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ホアナ コスタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラップ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ パエレリ
(72)【発明者】
【氏名】チャルタン トビアス ボーマン
(72)【発明者】
【氏名】シーマス マイケル ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】マノリス レバンティス
(57)【要約】
船舶の航行中に前記船舶の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピュータ実行方法。法は、コンピューティングデバイスで実行され、船舶の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、船舶の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、ファウリング防止値及び前記環境条件に基づいて、船舶の表面のファウリングリスクのレベルを確認すること、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の航行中に前記船舶の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピュータ実行方法であって、コンピューティングデバイスで実行され、
前記船舶の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、
前記船舶の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、
前記ファウリング防止値及び前記環境条件に基づいて、前記船舶の表面のファウリングリスクのレベルを確認すること、
を備える方法。
【請求項2】
少なくとも前記環境データに基づいて、前記表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、
前記ファウリング防止値及び前記ファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、前記船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記環境データは、前記船舶の地理的位置に関する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記環境データは、
前記船舶の一つ以上のセンサと、
前記船舶の前記船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、
前記船舶の前記船体を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の地理的位置に関連する環境データは、前記メモリに記憶され、前記船舶の地理的位置に関連する環境データは、前記船舶の地理的位置を使用して検索される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ファウリング値の決定は、さらに、前記船舶に関連する運航データに基づいて行われ、前記運航データは、一つ以上の運航パラメータの各々に関連する値を含み、前記一つ以上の運航パラメータは、(i)前記船舶の対地速力に関するパラメータ、(ii)前記船舶の活動レベルに関するパラメータ、(iii)前記船舶の対水速力に関するパラメータ、(iv)前記船舶の喫水に関するパラメータ及び(v)前記船舶の方向に関するパラメータのうちの一つ以上を含む、請求項2~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ファウリング値は、サンプリング時間に前記表面がさらされるファウリングのレベルを示す瞬時ファウリング値であり、前記瞬時ファウリング値は、前記環境データにおいて規定される少なくとも一つの環境パラメータを含む複数のリスクパラメータの値の加重平均を計算することによって決定される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ファウリングリスク値は、(i)各々が期間内のそれぞれのサンプリング時間における前記船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認する複数の瞬時ファウリングリスク値、(ii)前記期間に関連する時間係数及び(iii)前記期間中の前記船舶の活動に基づいて決定される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えたことを判定することによって高リスクファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備える、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ファウリングリスク値を出力することを更に備える、請求項2~10のいずれかいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ファウリングリスク値を前記コンピューティングデバイスの出力デバイスに出力すること又は前記ファウリングリスク値を遠隔コンピューティングデバイスに出力することを更に備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに依存して制御信号を出力することを更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メモリに記憶された前記船舶に関連する活動ログを問い合わせることによって、所定の期間中の前記船舶の一つ以上のアイドル期間の合計期間を判定することと、
前記メモリから前記表面の使用年数を判定することと、
前記メモリに予め記憶されたデータから、前記ファウリング防止値及び前記表面の使用年数に基づいて、アイドル期間しきい値を決定することと、
前記合計期間がアイドル期間しきい値を超えると判定し、それに応答して前記環境データに基づいて前記船舶の表面のファウリングのリスクを確認すること、
を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記船舶の表面のファウリングのリスクを確認することは、前記環境データを一つ以上の所定のしきい値と比較することを備える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記環境データが前記一つ以上の所定のしきい値を超えると判定することによって高リスクのファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも前記環境データに基づいて、前記表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、
前記ファウリング防止値及び前記ファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することと、
前記ファウリングリスク値を所定のしきい値と比較することを備える、前記船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、
を更に備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ファウリングリスク値が前記所定のしきい値を超えると判定することによって、高リスクのファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記環境データは、前記船舶の地理的位置に関する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記環境データは、
前記船舶の一つ以上のセンサと、
前記船舶の前記船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、
前記船舶の前記船体を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の地理的位置に関連する環境データは、前記メモリに記憶され、前記船舶の地理的位置に関連する環境データは、前記船舶の地理的位置を使用して検索される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記船舶の表面の検査を開始するために、前記制御信号を、前記船舶の前記船体をクリーニングするように構成された遠隔操作水中ビークル又は船体クリーニングロボットに出力することを備える、請求項10,13,16又は18に記載の方法。
【請求項24】
前記船舶の表面の検査を開始するようにユーザに注意喚起するために、前記制御信号を、前記コンピューティングデバイスの出力装置又は前記船舶の遠隔装置に出力することを備える、請求項10,13,16又は18に記載の方法。
【請求項25】
前記船舶の表面のクリーニングを開始するために、前記制御信号を、前記船舶の前記船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに出力することを備える、請求項10,13,16又は18に記載の方法。
【請求項26】
前記船舶を制御して運用措置をとるために、船舶制御システムに前記制御信号を出力することを備える、請求項10,13,16又は18に記載の方法。
【請求項27】
前記船舶又はオンショア監視ステーションは、前記コンピューティングデバイスを備える、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コンピューティングデバイスは、前記船舶の前記船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットであり、
前記船舶の表面の検査を開始するために、前記制御信号を前記船体クリーニングロボットの船体検査装置に出力すること、又は、
前記船舶の表面のクリーニングを開始するために、前記制御信号を前記船体クリーニングロボットのクリーニング装置に出力することを備える、請求項10,13,16又は18に記載の方法。
【請求項29】
前記制御信号の出力は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに更に基づく、請求項23~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ファウリング防止値は、ファウリングに対する前記表面の魅力を規定する値に基づいて決定される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ファウリングに対する前記表面の魅力を規定する値は、(i)前記表面の表面エネルギー、(ii)前記表面のトポグラフィー、(iii)前記表面の多孔性、(iv)前記表面の弾性及び(v)前記表面の色のうちの一つ以上に基づいて決定される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ファウリング防止値は、前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値に基づいて決定される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値は、前記船舶の対地速力又は前記船舶の対水速力並びに(i)前記表面の表面エネルギー、(ii)前記表面のトポグラフィー及び(iii)前記表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記表面に設けられるコーティングは、研磨コーティングであり、前記表面を移動する水の前記表面への影響を規定する値は、前記コーティングに関連する研磨レートを使用して決定される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記表面に設けられるコーティングは、ファウリング防止剤を含み、前記ファウリング防止値は、前記ファウリング防止剤の効果を規定する値に基づいて決定される、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記一つ以上の環境パラメータは、(i)前記船舶の水生環境の温度に関するパラメータ、(ii)前記船舶の前記水生環境の水深に関するパラメータ、(iii)前記船舶と海岸線との間の距離に関するパラメータ、(iv)日の長さに関するパラメータ、(v)前記水生環境の光強度に関するパラメータ、(vi)前記水生環境のクロロフィルの量に関するパラメータ、(vii)前記水生環境の塩分濃度に関するパラメータ、(viii)前記水生環境のpHレベルに関するパラメータ、(ix)前記水生環境の栄養水準に関するパラメータ、(x)前記水生環境の二酸化炭素量に関するパラメータ及び(xi)前記水生環境の水に溶解している気体酸素量に関するパラメータの一つ以上を含む、請求項3又は19に記載の方法。
【請求項37】
定期的に実行される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行されるときに、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項39】
船舶の航行中に前記船舶の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピューティングデバイスであって、プロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記船舶の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索し、
前記船舶の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定し、
前記ファウリング防止値及び前記環境条件に基づいて、前記船舶の表面のファウリングリスクのレベルを確認するように構成された、コンピューティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶の航行中に船体の清浄度を動的に監視することに関する。
【背景技術】
【0002】
海水に浸漬されている全ての表面は、バクテリア、珪藻、藻類、ムール貝、チューブワーム及びフジツボのような生物によるファウリングを経験する。海洋生物付着は、海水に浸漬されている構造物上に微生物、藻類及び動物が望ましくない形で蓄積することである。汚損生物は、ファウリングコミュニティを形成しながら共生するミクロファウリング(バクテリア及び二原子バイオフィルム)とマクロファウリング(例えば、大藻、フジツボ、イガイ、チューブワーム、フナクイムシ)に分けられる。ファウリングプロセスを単純化して概観すると、最初のステップは、有機分子が表面に付着するコンディショニングフィルムの形成である。これは、表面が海水に浸漬されると瞬時に起こる。第1の付着物であるバクテリア及び珪藻は、1日以内に付着する。第2の付着物である大型藻類の胞子及び原生動物が、1週間以内に付着する。最後に、第3の付着物であるマクロファウリングの幼生が、2~3週間で付着する。
【0003】
海洋生物付着の発生は既知の問題である。船舶の水中にある船体の汚れは、抗力抵抗の増加、燃料消費量の増加又は速度の低下につながる。燃料消費量の増加は、CO2、NOx、硫黄の排出量の増加につながる。ひどいファウリングは、船舶の操縦性の低下にもつながる。多くの商業船(例えば、コンテナ船、ばら積み貨物船、タンカー、旅客船)が世界中で取引されている。船舶の船体にファウリングが生じる場合、生物は、元の生態系から別の生態系に運ばれてる。これは、敏感な生態系に新種が持ち込まれ、在来種を駆逐する可能性があるために問題である。船体にファウリングが生じる場合、船舶の入港が禁止されることもある。
【0004】
様々なタイプのコーティング技術が、ファウリングの量を減少させるために使用されており、殺生物剤を含むファウリング防止コーティングは、ファウリングの防止に最も効果的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業船は、種々の海域、種々の貿易、種々の活動期間及び休止期間で操業することが多い。物体が静止しているとき又は物体が低速のとき、ファウリングのリスクが高くなる。商業船の典型的なサービス間隔は、24~90ヶ月である。船舶がサービス及び修理のために乾ドックに入るとき、水中の船体に設けられるコーティングは、通常、次の期間の予定された取引に応じて指定される。しかしながら、サービス間隔中に船舶の取引が変更される可能性がある。そのために、本発明者は、全ての可能な状況に対して最適な水中の船体のためのコーティングを設計及び指定することは困難であることを確認した。
【0006】
船舶の取引が変更された場合、指定されたコーティングが新しい取引に最適化されていないので、船舶にファウリングが生じる可能性がある。その結果、抵抗が増加する可能性、燃料消費量が増加する可能性又は速度が低下する可能性がある。
【0007】
したがって、船舶を監視し、運航効率が低下するリスクを予測し、かつ、運航効率が低下する前に適切な措置を講じることができる監視システムが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態により、船舶運航者(例えば、船舶の所有者)は、一つ以上の船舶のフリートの運航効率をリアルタイムで監視することができる。
【0009】
本開示の他の態様によれば、船舶の航行中に前記船舶の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピュータ実行方法であって、コンピューティングデバイスで実行され、船舶の環境条件に関連する環境データをコンピューティングデバイスのメモリから検索することと、船舶の表面に関連するファウリングに対する耐性を規定するファウリング防止値を決定することと、ファウリング防止値及び環境条件に基づいて、船舶の表面のファウリングリスクのレベルを確認すること、を備える方法を提供する。
【0010】
いくつかの実装において、方法は、少なくとも環境データに基づいて、表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって、船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、を備える。
【0011】
環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含んでもよい。
【0012】
環境データは、前記船舶の地理的位置に関してもよい。
【0013】
環境データは、船舶の一つ以上のセンサと、船舶の船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、船舶の船体を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知されてもよい。
【0014】
複数の地理的位置に関連する環境データは、メモリに記憶されてもよく、船舶の地理的位置に関連する環境データは、船舶の地理的位置を使用して検索されてもよい。
【0015】
ファウリング値の決定は、さらに、船舶に関連する運航データに基づいて行われてもよく、運航データは、一つ以上の運航パラメータの各々に関連する値を含み、一つ以上の運航パラメータは、(i)船舶の対地速力に関するパラメータ、(ii)船舶の活動レベルに関するパラメータ、(iii)船舶の対水速力に関するパラメータ、(iv)船舶の喫水に関するパラメータ及び(v)船舶の方向に関するパラメータのうちの一つ以上を含む。
【0016】
ファウリング値は、サンプリング時間に表面がさらされるファウリングのレベルを示す瞬時ファウリング値であってもよく、瞬時ファウリング値は、環境データにおいて規定される少なくとも一つの環境パラメータを含む複数のリスクパラメータの値の加重平均を計算することによって決定される。
【0017】
ファウリングリスク値は、各々が期間内のそれぞれのサンプリング時間における前記船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認するとともにサンプリング時間の新しさを規定する重みで重み付けされる複数の瞬時ファウリングリスク値に基づいて決定されてもよい。
【0018】
方法は、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えたことを判定することによって高リスクファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを更に備えてもよい。
【0019】
方法は、ファウリングリスク値を出力することを更に備えてもよい。
【0020】
方法は、ファウリングリスク値をコンピューティングデバイスの出力デバイスに出力すること又はファウリングリスク値を遠隔コンピューティングデバイスに出力することを更に備えてもよい。方法は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに依存して制御信号を出力することを更に備えてもよい。
【0021】
いくつかの実装において、方法は、メモリに記憶された前記船舶に関連する活動ログを問い合わせることによって、所定の期間中の船舶の一つ以上のアイドル期間の合計期間を決定することと、メモリから表面の使用年数を決定することと、メモリに予め記憶されたデータから、ファウリング防止値及び表面の使用年数に基づいて、アイドル期間しきい値を決定することと、合計期間がアイドル期間しきい値を超えると判定し、それに応答して環境データに基づいて船舶の表面のファウリングのリスクを確認すること、を備えてもよい。
【0022】
船舶の表面のファウリングのリスクを確認することは、環境データを一つ以上の所定のしきい値と比較することを備えてもよい。方法は、環境データが一つ以上の所定のしきい値を超えると判定することによって高リスクのファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを備えてもよい。
【0023】
方法は、少なくとも環境データに基づいて、表面がさらされるファウリングのレベルを示すファウリング値を決定することと、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することと、ファウリングリスク値を所定のしきい値と比較することを備える、船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを確認することと、を更に備えてもよい。
【0024】
方法は、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えると判定することによって、高リスクのファウリング状態を識別し、それに応答して制御信号を出力することを備えてもよい。
【0025】
環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含んでもよい。
【0026】
環境データは、船舶の地理的位置に関してもよい。
【0027】
環境データは、船舶の一つ以上のセンサと、船舶の船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに設けられた一つ以上のセンサと、船舶の船体を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルの一つ以上のセンサと、のうちの少なくとも一つによって検知されてもよい。
【0028】
複数の地理的位置に関連する環境データは、メモリに記憶されてもよく、船舶の地理的位置に関連する環境データは、船舶の地理的位置を使用して検索されてもよい。
【0029】
いくつかの実装において、方法は、船舶の表面の検査を開始するために、制御信号を、船舶の船体をクリーニングするように構成された遠隔操作水中ビークル又は船体クリーニングロボットに出力することを備えてもよい。
【0030】
いくつかの実装において、方法は、船舶の表面の検査を開始するようにユーザに注意喚起するために、制御信号を、コンピューティングデバイスの出力装置又は船舶の遠隔装置に出力することを備えてもよい。
【0031】
いくつかの実装において、方法は、船舶の表面のクリーニングを開始するために、制御信号を、船舶の船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットに出力することを備えてもよい。
【0032】
いくつかの実装において、方法は、船舶を制御して運用措置をとるために、船舶制御システムに制御信号を出力することを備えてもよい。
【0033】
船舶又はオンショア監視ステーションは、コンピューティングデバイスを備えてもよい。
【0034】
コンピューティングデバイスは、船舶の船体をクリーニングするように構成された船体クリーニングロボットであってもよく、方法は、船舶の表面の検査を開始するために、制御信号を船体クリーニングロボットの船体検査装置に出力すること、又は、船舶の表面のクリーニングを開始するために、制御信号を船体クリーニングロボットのクリーニング装置に出力することを備えてもよい。
【0035】
制御信号の出力は、制御動作が実行されることのユーザ確認を受信することに更に基づいてもよい。
【0036】
ファウリング防止値は、ファウリングに対する表面の魅力を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0037】
ァウリングに対する表面の魅力を規定する値は、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー、(iii)表面の多孔性、(iv)表面の弾性及び(v)表面の色のうちの一つ以上に基づいて決定されてもよい。
【0038】
ファウリング防止値は、表面を移動する水の表面への影響を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0039】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値は、船舶の対地速力又は船舶の対水速力並びに(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定されてもよい。
【0040】
表面に設けられるコーティングは、研磨コーティングであってもよく、表面を移動する水の表面への影響を規定する値は、コーティングに関連する研磨レートを使用して決定されてもよい。
【0041】
表面に設けられるコーティングは、ファウリング防止剤を含んでもよく、ファウリング防止値は、ファウリング防止剤の効果を規定する値に基づいて決定されてもよい。
【0042】
一つ以上の環境パラメータは、(i)船舶の水生環境の温度に関するパラメータ、(ii)船舶の水生環境の水深に関するパラメータ、(iii)船舶と海岸線との間の距離に関するパラメータ、(iv)日の長さに関するパラメータ、(v)水生環境の光強度に関するパラメータ、(vi)水生環境のクロロフィルの量に関するパラメータ、(vii)水生環境の塩分濃度に関するパラメータ、(viii)水生環境のpHレベルに関するパラメータ、(ix)水生環境の栄養水準に関するパラメータ、(x)水生環境の二酸化炭素量に関するパラメータ及び(xi)水生環境の水に溶解している気体酸素量に関するパラメータの一つ以上を含んでもよい。
【0043】
方法は、定期的に実行されてもよい。
【0044】
本開示の他の態様によれば、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行されるときに、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法をプロセッサに実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体
【0045】
命令を、ディスク、CD-ROM又はDVD-ROMのようなキャリア、読み取り専用メモリ(ファームウェア)のようなプログラムされたメモリ又は光信号キャリア若しくは電気信号キャリアのようなデータキャリア上で提供してもよい。本開示の実施形態を実施するためのコード(及び/又はデータ)は、C言語のような通常の(インタープリタ型又はコンパイル型)プログラミング言語のソースコード、オブジェクトコード若しくは実行可能コード、又は、アセンブリコード、ASIC(特定用途向け集積回路)又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を設定若しくは制御するためのコード、又は、ハードウェア記述言語のコードを備えてもよい。
【0046】
本開示の別の態様によれば、船舶の航行中に前記船舶の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピューティングデバイスであって、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備える。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本開示を更によく理解するとともに実施形態がどのように実施され得るかを示すために、添付図面を参照する。
【0048】
【
図1b】
図1bは、船舶のフリートと通信を行う監視ステーションを示す。
【
図3】
図3は、コンピューティングデバイスの概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施形態による船舶の水中の船体の清浄度を動的に監視する方法を示す図である。
【
図5a】
図5aは、ファウリング値を決定する方法を示す。
【
図5b】
図5bは、ファウリング値を決定する方法を示す。
【
図6a】
図6aは、環境パラメータの値が時間と共にどのように変化するかを示す。
【
図6b】
図6bは、ファウリング値が時間と共にどのように変化するかを示す。
【
図6c】
図6cは、ファウリング値に対する対地速力パラメータの寄与を示す。
【
図6d】
図6dは、ファウリング値に対する海面水温パラメータの寄与を示す。
【
図6e】
図6eは、ファウリング値に対する海岸線までの距離の寄与を示す。
【
図7】
図7は、本開示の第2の実施形態による船舶の水中の船体の清浄度を動的に監視する方法を示す図である。
【
図8a】
図8aは、本開示の実施形態における監視されている船舶の船体の清浄度に対応して行うべき動作のユーザ確認に応答して実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【
図8b】
図8bは、本開示の実施形態における監視されている船舶の船体の清浄度に対応して自動的に実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【
図8c】
図8cは、本開示の実施形態における監視されている船舶の船体の清浄度に対応して行うべき動作のユーザ確認に応答してクリーニングロボットによって実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【
図8d】
図8dは、本開示の実施形態における監視されている船舶の船体の清浄度に対応してクリーニングロボットによって自動的に実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【
図9】
図9は、船体クリーニングロボットの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施形態について例示的に説明する。
【0050】
図1aは、水上船舶100、例えば、コンテナ船、ばら積み船、タンカー又は旅客船を示す。水上船舶は、船体101を備える。
【0051】
船舶は、クリーニングロボット102を充電するために使用してもよいロボットステーション104(ドッキングステーション)を備えてもよい。ロボットステーション104を、海面上方の船舶上に配置してもよい。ロボットステーション104は、ロボットによって実行されるクリーニング作業を一時停止させるときにロボット102のパーキングを可能にする。船体101の表面のクリーニング中、ロボット102は、海洋生物付着が形成される可能性のある船体101の任意の表面(例えば、船体の平底又は底部側)を横断してもよい。本明細書では、「クリーニング」という言及は、船体101の表面から汚損生物を除去することを指すために使用され、そのようなクリーニングは、「グルーミング」と呼ばれることもある。船体101の表面の継続的なクリーニングを実行することによって、ロボット102は、典型的には、船体101の表面に付着したファウリングの初期段階(例えば、第1の付着物及び第2の付着物)の除去を実行する。しかしながら、ロボット102によって実行されるクリーニングが第3の付着物及び任意の後続付着物の除去も含み得ることが理解される。
【0052】
図1aに示すように、コンピューティングデバイス106は、例えば、
図1bに示すような監視ステーション110のロボット102及び/又はオンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔装置と通信を行うために、船舶(例えば、船舶のデッキハウス)に設けられてもよい。
【0053】
図1bは、コンピューティングデバイス108を備えるそのような監視ステーション110を示す。コンピューティングデバイス108は、通信ネットワーク112を介して一つ以上の船舶と通信を行う。
【0054】
本開示の実施形態において、船舶の航行中に船舶の水中の船体の清浄度を動的に監視するためのコンピュータ実行方法を実行する。以下で更に詳しく説明するように、方法を、ロボット102、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108で実行してもよい。
【0055】
図1bに示すように、オンショアコンピューティングデバイス108が本明細書に記載のコンピュータ実行方法を実行する実装において、これによって、船舶運航者は、船舶のフリートの運航効率をリアルタイムで監視することができる。
【0056】
本開示の実施形態は、クリーニングロボット102が設けられた船舶の水中の船体の清浄度を監視することに限定されない。以下で更に詳しく説明するように、そのような船舶が船舶の表面のファウリングのリスクが高いことを検出することに応答して、船体クリーニングロボットを伴わない他の動作を、検出に応答して行ってもよい。
【0057】
図2は、ロボット102の概略ブロック図である。
図2に示すように、ロボット102は、中央処理装置(CPU)202を備えるコンピューティングデバイスである。CPU202は、CPU202に結合されるとともに船体101の表面から付着生物の除去を実行する(回転円筒ブラシの形態をとってもよい)クリーニング装置208を制御するように構成される。
【0058】
本開示の実施形態によれば、CPU202は、船舶の水中の船体の清浄度を監視するように構成されたファウリングリスク判定モジュール206を備えてもよい。ロボット102が船体ファウリングリスク判定モジュール206を備えてもよいが、代替の実施形態において、船体ファウリングリスク判定モジュール206がロボット102の外部のコンピューティングデバイスの構成要素であってもよいことは、以下から明らかである。
【0059】
CPU202は、電源214(例えば、一つ以上のバッテリー)に結合されている。電源214は、例えば、ロボットステーション104を使用して充電可能であってもよい。ロボット102は、当該技術分野で知られているように、データを記憶するためのメモリ210も備える。
【0060】
図2に示すように、ロボット102は、船体ファウリングリスク判定モジュール206にセンサ信号を出力するように構成された一つ以上のセンサ212を備えてもよい。本明細書で説明するセンサの各々は、物理的なセンサ(すなわち、物理的な測定器)又は仮想的なセンサ(すなわち、測定値を計算するために複数の物理的なセンサからの検知データを組み合わせるソフトウェア)であってもよい。
【0061】
(一つ以上の)センサ212は、船舶に関連する運航データを検知するように構成された一つ以上のセンサを備えてもよい。特に、(一つ以上の)センサは、船舶100の速度を示す速度データを出力するように構成された速度センサ(例えば、速度ログ)を備えてもよい。速度センサは、「対地速力」測定及び/又は「対水速力」測定を実行するように構成されてもよい。「対地速力」測定を行うように構成された速度センサは、船舶のナビゲーションシステム(例えば、全地球測位システム(GPS))又は船上の他の速度センサ(例えば、ドッキングステーション104のGPSセンサ)から抽出された情報を使用してもよい。「対水速力」測定を実行するように構成された速度センサは、一つ以上の船上センサ(典型的には、ドップラーベースのセンサ又は電磁センサ)を使用してもよい。また、ロボット102を「対水速力」測定のための仮想センサとして使用することも可能である。
【0062】
(一つ以上の)センサ212は、船舶の活動レベル、船舶の喫水、船舶のプロペラの速度及び/又は船舶の方向のような船舶に関連する他の運航データを検知するように構成された一つ以上のセンサを備えてもよい。船舶の活動レベルは、船舶が航行中に何時間移動していたかを示すものであり、時間単位の値として又は航行中に移動に費やされた時間の割合として規定されてもよい。対地速力が所定の速度(例えば 6ノット)未満のとき、船舶は移動していないとみなされる。喫水は、船体のどの位置でも喫水線より下である船体のキールの深さである。船舶の喫水は、船舶の積荷状態(例えば、船舶が積荷を満載しているか否か)によって変化することがある。船舶の喫水は、バラスト水の使用により所定の積載量でも変化することがある。方向は、船舶が任意の瞬時に向いているコンパスの方位(北に対する角度距離)である。
【0063】
センサ212は、船舶100の環境条件に関する環境データを検知するように構成された一つ以上のセンサを備えてもよい。
【0064】
例えば、(一つ以上の)センサは、(i)船舶の水生環境のクロロフィルの量を検知するように構成されたクロロフィルセンサ、(ii)船舶の水生環境のpHレベルを検知するように構成されたpHセンサ、(iii)リン酸塩、硝酸塩のようなの栄養物を感知するように構成されてもよい、船舶の水生環境の栄養水準を検知するように構成された栄養センサ、(iv)船舶の水生環境の光強度を検知するように構成された太陽光強度センサ(v)船舶の水生環境の塩分濃度を検知するように構成された塩分センサ(例えば、伝導度センサ)、(vi)船舶の水生環境の温度を検知するように構成された温度センサ、(vii)船舶の水生環境の二酸化炭素の量を検知するように構成された二酸化炭素センサ、(viii)船舶の地理的位置を検知するように構成された位置センサ(例えば、GPSセンサ)、(ix)船舶の水生環境の水中に溶解している気体酸素の量を検知するように構成された溶存酸素センサ及び(x)船舶の水生環境の深さを検知するように構成された深さセンサのうちの一つ以上を備えてもよい。そのようなセンサは当業者に知られているので、本明細書ではこれ以上詳しく説明しない。
【0065】
上記の位置センサを、船舶と近くの海岸線との間の距離を判断するために使用することができる。
【0066】
本開示の実施形態において、同一の種類の複数のセンサを使用してもよい。例えば、異なる深さにおける船舶の水生環境の温度を測定するために、複数の温度センサを使用してもよい。実施形態において、センサの種類に関連する単一の値を提供するために、同一の種類の複数のセンサからの読み取り値を組み合わせてもよい。
【0067】
上述したセンサがロボット102に配置されているものと説明したが、これらのセンサを、船舶の船体を検査するように構成された遠隔操作水中ビークルに配置してもよく、これらのセンサを、船舶100に配置してもよい。
【0068】
船舶100に設置されたセンサは、インターフェース216を介してロボット102の船体ファウリングリスク判定モジュール206に直接データを出力してもよい。代替的に、船舶100に設置されたセンサは、インターフェース216を介してロボット102にデータを中継するコンピューティングデバイス106にデータを出力してもよい。
【0069】
(一つ以上の)センサ212は、画像データを含むカメラ信号を出力するように構成されたカメラを備えてもよい。カメラは、カメラ信号をコンピューティングデバイス106及び/又はコンピューティングデバイス108に出力してもよい。カメラによって、ロボット102は、船舶の船体の目視検査を行うことができる。ロボット102は、目視検査を行うことなく船舶の船体を検査してもよい。したがって、カメラに加えて又はカメラの代替として、ロボット102は、電磁装置又は超音波装置のような船舶の船体の検査を行うための一つ以上の他の検査装置を備えてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、ロボット102がコンピューティングデバイス106及びコンピューティングデバイス108に対するデータの送受信を行うことを可能にするインターフェース216を設ける。インターフェース216は、ロボットが船舶のセンサからデータを受信することも可能にする。インターフェース216は、有線インターフェース及び/又は無線インターフェースを備えてもよい。
【0071】
インターフェース216は、ロボット102が船舶測位データ(例えば、自動識別システム(AIS)データ)及び/又は衛星由来の海洋環境データをダウンロードすることを可能にする。この情報を、AISデータプロバイダ及びコペルニクス海洋環境モニタリングサービス(CMEMS)に関連するデータセンターのような衛星由来の海洋環境データを記憶するデータセンターからそれぞれダウンロードしてもよい。この情報は、少なくとも毎日ダウンロードしてもよい。船舶測位データ(例えば、AIS情報)については、1時間ごとに新しいデータをダウンロードしてもよく、それに対し、海洋環境データは、1日に1回、例外として1週間に1回しか更新されない。船舶測位データを、船舶運航者に関連するストレージ(例えば、報告された位置データ又はGPSデータ)からダウンロードしてもよい。したがって、船舶運航者は、例えば、AISシステムがインストールされていない船舶のために、船舶測位データを提供してもよい。
【0072】
上述したように、いくつかの実施形態において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108の構成要素である。
図3は、そのようなコンピューティングデバイスを示す。
【0073】
図3に示すように、コンピューティングデバイス106,108は、中央処理装置(CPU)302を備える。CPU302は、当該技術分野で知られているようなデータを記憶するためのメモリ310及び出力装置312に結合されている。
【0074】
本開示の実施形態によれば、CPU302は、船舶の水中の船体の清浄度を動的に監視するように構成された船体ファウリングリスク判定モジュール306を備えてもよい。
【0075】
コンピューティングデバイス106,108は、コンピューティングデバイスがデータの送受信を行うことができるようにするためのインターフェース316を備える。インターフェース316は、コンピューティングデバイス106,108がロボット102(船舶に存在する場合)からデータを受信すること及び/又は船舶のセンサからデータを受信することを可能にする。例えば、コンピューティングデバイスは、インターフェース316を介して、上述した環境データを受信してもよい。インターフェース316によって、コンピューティングデバイスは、ロボット102、船舶の遠隔操作水中ビークル及び/又は船舶の船舶制御システムと通信を行うことも可能にし、船舶制御システムは、船舶の方位及び速度を制御する。
【0076】
インターフェース316は、コンピューティングデバイス106,108が船舶測位データ(例えば、AISデータ)及び/又は衛星由来の海洋環境データをダウンロードすることを可能にする。この情報は、AISデータプロバイダ及びコペルニクス海洋環境モニタリングサービス(CMEMS)に関連するデータセンターのような衛星由来の海洋環境データを記憶するデータセンターからそれぞれダウンロードしてもよい。この情報を、少なくとも毎日ダウンロードしてもよい。船舶測位データ(例えば、AIS情報)については、1時間ごとに新しいデータをダウンロードしてもよく、それに対し、海洋環境データは、1日に1回、例外として1週間に1回しか更新されない。船舶測位データを、船舶運航者に関連するストレージ(例えば、報告された位置データ又はGPSデータ)からダウンロードしてもよい。したがって、船舶運航者は、例えば、AISシステムがインストールされていない船舶のために、船舶測位データを提供してもよい。
【0077】
出力装置312は、コンピューティングデバイス106,108のユーザに情報を出力するように構成される。例えば、出力装置312は、情報を視覚的に出力するためのディスプレイを備えてもよい。追加的に又は代替的に、出力装置312は、情報を聴覚的に出力するためのスピーカを備えてもよい。
【0078】
上述した環境データの使用は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されるものではなく、環境データを、全ての実施形態で使用してもよい。
【0079】
本開示の実施形態において、船舶の航行中に船舶の水中の船体の清浄度を動的に監視する。
【0080】
船舶の水中の船体は、通常、コーティングされている。船舶の船体に存在するコーティングは、単層、同一のコーティングの複数の層又は多層コーティングすなわちコーティング系を含んでもよい。多層コーティングの場合、(プライマーコーティングと呼ばれることもある)最初のコーティングは、防食層であることが多い。プライマーコーティングは、オプションとして、リンクコート又はタイコートによって上塗りされ、その後、ファウリング防止性を有するか否かに関係なく一つ以上の最後のコート又はトップコートによって上塗りされる。別のタイプの多層コーティングにおいて、最初の(プライマー)コートを最後のコート又はトップコートでオーバーコートするだけでもよい。
【0081】
船舶の水中の船体を、船体全体に亘って単一のコーティング又はコーティング系でコーティングしてもよい。代替的に、船体は、船体の異なる部分(例えば、平底、底部側、船体前部、船体後部、喫水線、損傷を受けやすい部分、プロペラ及び舵)の異なるコーティング又はコーティング系の複数の部分を備えてもよい。船体の異なる部分に存在する異なるコーティング又はコーティング系は、異なるタイプ及び/又は異なる厚さであってもよい。
【0082】
船舶に設けられるコーティングは、コーティングが研磨性か非研磨性かによってクラス分けすることができる。研磨コーティングは,コーティングの寿命の間に膜厚が減少するコーティングである。膜厚の減少は、化学反応、侵食又はその組合せによるものである。非研磨コーティングは、コーティングの寿命中に膜厚が減少しないコーティングである。
【0083】
研磨コーティングは通常、様々な劣化メカニズムを持つバインダーシステムをベースにしている。自己研磨コーティングも一般的に使用される用語である。ほとんどの場合、劣化は、バインダー系の結合の加水分解であり、その結果、水溶性が増し、コーティングが研磨される。加水分解には、バインダーのポリマー主鎖のペンダント基又は側鎖の加水分解と、バインダーのポリマー主鎖の基の加水分解と、がある。
【0084】
研磨コーティングに存在するバインダーは、例えば、シリル(メタ)アクリレートコポリマー、ロジン系バインダー、(メタ)アクリレートバインダー、主鎖分解性(メタ)アクリレートコポリマー、金属(メタ)アクリレートバインダー、シリル(メタ)アクリレートバインダー、 (メタ)アクリルヘミアセタールエステルコポリマー、ポリ無水物バインダー、ポリオキサレートバインダー、非水分散バインダー、双性イオンバインダー、ポリエステルバインダー、ポリ(エステル-シロキサン)バインダー、ポリ(エステル-エチル-シロキサン)バインダー又はその混合物を含んでもよい。
【0085】
代表的なシリル(メタ)アクリレートコポリマー及びこれらを含むコーティングは、英国特許第2558739号明細書、英国特許第2559454号明細書、国際特許出願公開第1990/96926号明細書、英国特許第2576431、国際特許出願公開第2010/071180号明細書、国際特許出願公開第2013/073580号明細書、国際特許出願公開第2012/026237号明細書、国際特許出願公開第2005/005516号明細書、国際特許出願公開第2013/000476号明細書、国際特許出願公開第2012/048712号明細書、国際特許出願公開第2011/118526号明細書、国際特許出願公開第0077102号明細書、国際特許出願公開第2019/198706号明細書、国際特許出願公開第03/070832号明細書及び国際特許出願公開第2019/216413号明細書に記載されている。
【0086】
シロキサン部位を有する代表的なシリル(メタ)アクリレートコポリマーは、国際特許出願公開第2011/046087号明細書に記載されている。代表的なロジン系バインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第1990/96928号明細書、独国特許第102018128725号明細書、独国特許第102018128727号明細書及び国際特許出願公開第97/44401号明細書に記載されている。
【0087】
代表的な(メタ)アクリレートバインダー及びそれを含むコーティングは、独国特許第102018128725a1号明細書、独国特許第102018128727a1号明細書、国際特許出願公開第1990/96928号明細書、国際特許出願公開第2018/086670号明細書及び国際特許出願公開第97/44401号明細書に記載されている。代表的な金属(メタ)アクリレートバインダーは、国際特許出願公開第1990/81495号明細書及び国際特許出願公開第2011/046086号明細書に記載されている。代表的なシリル(メタ)アクリレートバインダーのハイブリッドは、韓国特許出願公開第20140117986、国際特許出願公開第2016/063789号明細書、欧州特許出願公開第1323745号明細書、欧州特許出願公開第0714957号明細書、国際特許出願公開第2017/065172号明細書、特開平10-168350号公報及び国際特許出願公開第2016/066567号明細書に記載されている。代表的なポリ無水物バインダーは国際特許出願公開第2004/096927号明細書に記載されている。代表的なポリオキサレート結合剤は、国際特許出願公開第1990/81495号明細書及び国際特許出願公開第2015/114091号明細書に記載されている。代表的な非水系分散バインダーは、国際特許出願公開第1990/81495に記載されている。代表的な双性イオン結合剤は、国際特許出願公開第2004/018533号明細書及び国際特許出願公開第2016/066567号明細書に記載されている。代表的なポリエステルバインダーは、国際特許出願公開第1990/81495号明細書、欧州特許出願公開第1072625、国際特許出願公開第2007/3995号明細書及び米国特許出願公開第2015/0141562に記載されている。代表的なポリ(エステル-シロキサン)及びポリ(エステル-エーテル-シロキサン)バインダーは、国際特許出願公開第2017/009297号明細書、国際特許出願公開第2018/134291号明細書及び国際特許出願公開第2015/082397号明細書に記載されている。代表的な(メタ)アクリル酸ヘミアセタールエステル共重合体バインダーは、国際特許出願公開第2019/179917号明細書、国際特許出願公開第2016/167360号明細書、欧州特許出願公開第0714957号明細書及び国際特許出願公開第2017/065172号明細書に記載されている。代表的な主鎖分解性(メタ)アクリレートコポリマー結合剤は、国際特許出願公開第2015/010390号明細書、国際特許出願公開第2018/188488号明細書、国際特許出願公開第2018/196401号明細書及び国際特許出願公開第2018/196542号明細書に記載されている。
【0088】
非研磨コーティングは、一般的に、架橋されており、低量のVOC(揮発性有機化合物)を含むことが多い。非研磨コーティングに存在するバインダーは、例えば、ポリシロキサン、シロキサンコポリマー、シリコーンバインダー、エポキシ系バインダー、エポキシシロキサン、ポリウレタン又はその混合物を含んでもよい。
【0089】
代表的なポリシロキサンバインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第2019101912号明細書、国際特許出願公開第2011/076856号明細書、国際特許出願公開第2014/117786号明細書、国際特許出願公開第2016/088694号明細書及び国際特許出願公開第2013/024106号明細書に記載されている。代表的なシロキサン共重合体バインダーは、国際特許出願公開第2012/130861号明細書及び国際特許出願公開第2013/000479号明細書に記載されている。代表的なエポキシ系バインダー及びそれを含むコーティングは、国際特許出願公開第2018/046702号明細書、国際特許出願公開第2018/210861号明細書、国際特許出願公開第2009/019296号明細書、国際特許出願公開第2009/141438号明細書、欧州特許出願公開第3431560号明細書及び国際特許出願公開第2017/140610号明細書に記載されている。代表的なエポキシシロキサンバインダーは、米国特許出願公開第2009/281207号明細書、国際特許出願公開第2019/205078号明細書及び欧州特許出願公開第1086974号明細書に記載されている。他のタイプのシリコーンバインダーは、典型的には、MQ、DT、MDT、MTQ又はQDT樹脂として示されるシリコーン樹脂である。コーティングは、国際特許出願公開第2019/189412号明細書に記載されているような、リブレット構造の硬化性ポリシロキサンバインダーであってもよい。コーティングは、米国特許出願公開第2018/0229808号明細書に記載されているようなディンプル構造のコーティングであってもよい。そのようなコーティングを、コーティング又は接着箔として設けてもよい。コーティングは、例えば、国際特許出願公開第2018/100108号明細書に記載されているように、ファウリングリリーストップコートを有するリブレット構造の接着箔であってもよい。
【0090】
また、船舶に設けられるコーティングは、コーティングがファウリング防止剤を含むか否かによってクラス分けされる。ファウリング防止剤を、付着生物に影響を及ぼす、付着生物を忌避する危険な働きをする有機化合物、有機金属化合物又は無機化合物とすることができる。
【0091】
ファウリング防止剤の群は、化学的手段又は生物学的手段によって付着生物の破壊、抑止、無害化、防止又は制御効果の発揮を行うことを意図した物質である殺生物剤である。殺生物剤、ファウリング防止剤、防汚剤、活性化合物、毒性物質という用語は、表面の海洋付着物を防止するために作用する既知の化合物を表すために業界で使用されている。殺生物剤は、無機、有機金属又は有機であってよい。
【0092】
一般的に使用される殺生物剤は、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ジンクエチレンビス(ジチオカルバメート)[ジネブ]、 2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-l,3,5-トリアジン[キュブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’ , N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’,N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、 トリフェニルボランピリジン[TPBP]、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]、4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]である。
【0093】
物理的な作用様式によってファウリング生物の付着を防止又は低減するファウリング防止剤の群は、シリコーンオイル、親水性改質シリコーンオイル及び疎水性改質シリコーンオイルである。代表的なシリコーンオイルは、国際特許出願公開第2018/134291号明細書に記載されている。
【0094】
研磨コーティングと非研磨コーティングの両方は、殺生物剤、シリコーンオイル又はその混合物のようなファウリング防止剤を含むことができる又は含まないことができる。
【0095】
本開示の実施形態を、船舶の航行中のコーティングされた船体の清浄度(すなわち、船体に設けられたコーティングの表面の清浄度)又は船舶のコーティングされていない船体の清浄度を監視するために使用することができる。
【0096】
次に、
図4を参照しながら本開示の第1の実施形態について説明する。
図4は、船体ファウリングリスク判定モジュール206,306によって実行される船舶の水中の船体の清浄度を監視するためのプロセス400のフローチャートを示す。その結果、プロセス400を、コンピューティングデバイスによって実行する。例えば、プロセス400を、ロボット102、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108で実行してもよい。
【0097】
第1の実施形態は、船舶が就航中にさらされる可能性のあるファウリングリスクを予測することを目的とし、ファウリングリスクは、船舶の船体に発生又は存在し得るファウリングの程度を反映する。特に、船舶の水中の表面のファウリングリスクのレベルは、ファウリング防止値及びファウリング値を使用してファウリングリスク値を決定することによって確認される。後に説明するように、ファウリングリスク値を、0(低)から1(高)までの正規化スケールで考察することができる。
【0098】
ステップS402において、ファウリング値を決定する。ファウリング値は、船舶の環境(海洋及び大気)の条件が船舶の船体の海洋生物付着物の発生及び成長にどのように影響するかを反映する。
【0099】
ファウリング値を決定するために、船体ファウリングリスク判定モジュールは、例を上述した船舶100の環境条件に関連する環境データを必要とする。環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連する値を含む。
【0100】
船体ファウリングリスク判定モジュールは、船舶100の環境条件に関連する環境データを、多くの異なる方法で特定してもよい。
【0101】
図5aに示すように、プロセス500のステップS502において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、メモリ(例えば、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリ)から環境データを検索する。検索された環境データが船舶100の環境条件に関連する(例えば、環境データがロボット102のセンサ又は船舶のセンサによって検知された)場合、ステップS402において、検索された環境データを、ファウリング値を決定するために使用することができる。
【0102】
図5aに示すように、プロセス500において、検索された環境データが、船舶100の環境条件を含むが特に関連しない場合、例えば、検索された環境データが世界中の環境条件に関連する衛星由来の海洋環境データである場合、ステップS504において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、船舶の地理的位置を取得する。船体ファウリングリスク決定モジュールは、次に、ステップS402でファウリング値を決定するために使用される船舶100の環境条件に関する環境データを決定するために、船舶の地理的位置を、検索された環境データと共に使用する。この例において、船舶の地理的位置を、ロボット102の位置センサ又は船舶の位置センサによって検知してもよく、船舶の地理的位置を、AISデータプロバイダからそれぞれダウンロードされた船舶測位データ(例えば、AISデータ)を使用して決定してもよい。
【0103】
図5bに示すように、オンショアコンピュータ装置108がプロセス400を実行する実施形態では、プロセス550において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、ステップS506でグローバルファウリングマップを決定するために、ステップS502で環境データを検索する。グローバルファウリングマップは、複数の場所の海洋生物付着状況を特定し、時間と共に変化してもよい。
【0104】
グローバルファウリングマップを決定するために使用されるステップS502で検索された環境データは、世界中の環境条件に関連する衛星由来の海洋環境データを備えてもよい。
【0105】
追加的に又は代替的に、グローバルファウリングマップを決定するために使用されるステップS502で検索された環境データは、一つ以上の船舶の各々について、船舶の環境条件(例えば、環境データは、船舶のロボットのセンサ又は船舶のセンサによって検知される。)に関する環境データ及び船舶の地理的位置を備えてもよい。この例において、船舶の地理的位置を、船舶のロボットの位置センサ又は船舶の位置センサによって検知してもよい、又は、船舶の地理的位置を、AISデータプロバイダからそれぞれダウンロードされた船舶測位データ(例えば、AISデータ)を使用して決定してもよい。
【0106】
ステップS504において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、監視される船舶の地理的位置を取得し、監視される船舶100に固有の環境条件に関する環境データを決定するために船舶の地理的位置及びグローバルファウリングマップを使用し、環境データは、次にステップS402においてファウリング値を決定するために使用される。この例において、船舶の地理的位置を、ロボット102の位置センサ又は船舶の位置センサによって検知してもよい、又は、船舶の地理的位置を、AISデータプロバイダからそれぞれダウンロードされた船舶測位データ(例えば、AISデータ)を使用して決定してもよい。
【0107】
さらに、ステップS402でファウリング値を規定するために、船舶の運航特性を、環境パラメータと組み合わせて使用することもできる。運航データは、一つ以上の運航パラメータの各々に関連する値含む。これらの運航特性の例には、船舶の対地速力、船舶の対水速力、船舶の活動レベル、船舶の喫水及び船舶の方向を含む。
【0108】
ステップS402において、ファウリング値を決定するために、一つ以上の環境パラメータを使用する。さらに、ステップS402において、ファウリング値を決定するために、一つ以上の運航パラメータを使用してもよい。
【0109】
一例として、各パラメータが全体のファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化した式がメモリに記憶されていてもよい。
【0110】
そのような式を経験的に導出してもよい。船舶が任意の時点でさらされる可能性のある(ファウリング値によって規定される)海洋生物付着圧を決定するために、環境条件(例えば、表層海水温度、光の利用可能性、栄養素の濃度、クロロフィルの濃度、表層海水の塩分濃度、海岸線までの距離、水深)の量及びそれが船舶の船体の状態にどのように影響し得るかが、いくつかの場所について本開示の発明者によって研究及び分析された。恒久的な試験筏、船体の試験パッチ、ドッキング条件及び検査報告書から取得した経験的結果を、当該場所について収集された海洋環境条件及び大気環境条件と比較した。この研究に基づいて、各環境パラメータが全体的なファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化するために、経験的に導かれた式が導出された。
【0111】
パラメータ例を以下に示す。
【数1】
ここで、上記のパラメータは、環境パラメータであり、tは時間の単位であり、通常は、時間又は日単位である。一日の長さのパラメータを、太陽照度又はこれら二つのパラメータの組合せに置き換えることができる。
【0112】
各パラメータに対して導き出されるとともに実現された式の例を、以下に示す。
【数2】
ここで、c
1及びc
2は定数である。
【数3】
ここでc
3及びc
4は定数である。
【数4】
ここで、c
5及びc
6は定数である。
【数5】
ここで、c
7は定数である。
【数6】
ここで、c
8及びc
9は定数である。
【数7】
ここで、c
10及びc
11は定数である。
【数8】
【0113】
同様の式を、本明細書で言及する他の環境パラメータについて導き出すこともできる。
【0114】
図6aは、ノルウェーのサンデフィヨルドにおける三つの環境パラメータ(太陽照度、海面水温及び日照時間)の値が、1年間に亘ってどのように変化するかを示す。特に、曲線602は、太陽照度が1年間でどのように変化するかを示し、曲線604は、日照時間が1年間でどのように変化するかを示し、曲線606は、気温が1年間でどのように変化するかを示す。
【0115】
図6bは、ファウリング値が正規化されたスケールで時間と共にどのように変化するかを示す。特に、曲線608は、ファウリング値が海面水温及び太陽照度という二つのパラメータに基づくときに1年間の期間に亘ってどのように変化するかを示す。曲線610は、ファウリング値が海面水温及び太陽照度という二つのパラメータに基づくときに1年間に亘ってどのように変化するかを示す。曲線612は、三つのパラメータ(太陽照度、海面水温及び日照時間)に基づいてファウリング値が1年間でどのように変化するかを示す。
【0116】
これらの式が0(低)から1(高)までの正規化されたスケールでのファウリング値によって規定される船舶の船体の表面がさらされる海洋付着物の総レベルに対する0(低)から1(高)までのスケールでの個別パラメータの各々の寄与をモデル化することを意図していることは明らかである。ファウリング値は、この正規化スケールの任意の値を取ってもよい。
【0117】
図6cを参照すると、船舶100が0knの対地速力のときにファウリング値に対する水速パラメータの寄与が最大(すなわち、1に等しい)であり、これは、船舶へのファウリング付着/発生のリスク/寄与がその時点で最大であることを意味する。しかしながら、船舶が約4knで移動する場合、寄与は、40%(速度係数の数値では0.4)にまで低下する。船舶が6knで移動する場合、速度パラメータのリスク/寄与は、ゼロに近い。
【0118】
ファウリング値に対する海面水温パラメータの寄与については、
図6dに示すように、ファウリング発生の寄与が温度とともに増加するが直線的ではないことがわかる。低温域及び高温域では、中央値よりも増加の度合いが低い。
【0119】
図6eに示すように、海岸線までの距離は、ファウリングの付着及び発生のリスク/寄与が海岸線に近いほど高いが船舶が海岸線から遠くなるにつれて急激に減少するパラメータである。導出された曲線は、海岸線から20kmの地点ではファウリング値への寄与が約10%(海岸線までの距離の図では0.1)であることを示す。
【0120】
上述した式が単なる例であることは明らかである。各パラメータが全体のファウリング値に与えるおおよそのリスク/寄与をモデル化するために上述した式を使用する場合、式は、時間の経過と共に変化する可能性があり、時間の経過と共に収集された経験的データの継続的な分析を通じて改善される可能性がある。さらに、ファウリング値を決定する際に使用される一つ以上の式は、船舶のタイプ、船舶の取引又は取引エリアに依存して変化してもよい。
【0121】
ステップS402において、いくつかのパラメータがファウリング値の決定に更に重要であると考えられる場合、各パラメータに重みを適用してもよい。
【0122】
したがって、上述した例示のパラメータを参照すると、総瞬時ファウリング値は、式(8)に示すように、種々のパラメータリスク因子の加重平均となり、ここで、Kは、定数であり、各要因に与えられる重みを表す。
【数9】
【0123】
表1は、各パラメータに適用される重みの例を示す。
【表1】
【0124】
図4に示す実施形態を参照してファウリング値を決定する方法を上述したが、ファウリング値を決定する方法を、本明細書に記載した本開示の他の実施形態、例えば、
図7に示すプロセスに適用することもできる。
【0125】
図4に戻ると、ステップS404において、ファウリング防止値を決定する。ファウリング防止値は、船舶の表面に関連する海洋生物付着に対する表面の耐性、例えば、船舶の船体のコーティングによって与えられる防止を規定する。上述したように、船舶の船体がコーティングされている場合があり、そのような状況では、ファウリング防止値は、コーティングの表面に関連する海洋生物付着に対する耐性すなわち船舶の船体のコーティングによって与えられる防止を規定する。代替的に、船舶の船体は、コーティングされていなくてもよく、そのような状況では、ファウリング防止値は、船舶の船体の表面に関連するファウリングに対する許容誤差を規定する。
【0126】
ファウリング防止値は、メモリに予め記憶されていてもよい。例えば、ファウリング防止値は、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに事前に記憶されていてもよい。これらの実装において、ファウリング防止値は、事前に計算されており、ファウリングリスク決定モジュールは、メモリからファウリング防止値を検索することによってファウリング防止値を決定する。したがって、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリング防止値の計算自体を実行しなくてもよい。
【0127】
他の実装において、船体ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリング防止値それ自体を計算することによってファウリング防止値を決定する。
【0128】
ファウリング防止値の算出方法については、後に詳しく説明する。ファウリング防止値を、0(低防止)から1(高防止)までの正規化スケールで計算することができる。ファウリング防止値は、この正規化スケールの任意の値を取ることができる。
【0129】
ステップS405において、(ステップS402で決定された)ファウリング値及び(ステップS404で決定された)ファウリング防止値を使用してファウリングリスク値を決定する。ファウリングリスク値は、船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを規定する。
【0130】
(例えば、1時間であってもよいサンプリング周期に依存する)各時点において、ファウリング値及びファウリング防止値を決定する。以下に示す式(9)は、ファウリングリスク値がファウリング値及びファウリング防止値の関数としてどのように計算されるかの例を示す。
【数10】
【0131】
ファウリング値及びファウリング防止値の関数としてファウリングリスク値を計算する他の式も使用できることが理解される。
【0132】
ファウリングリスク値を、0(低リスク)から1(高リスク)までの正規化スケールで計算することができる。表2に式(9)の適用例を示す。
【表2】
【0133】
実際には、瞬時ファウリングリスク値は、必ずしも船舶がファウリングされる実際の総リスクを正確に反映していないことがある。一例は、船舶が比較的長い停泊を数回行うとともにその間にほとんど活動がない場合である。ある停泊中の総ファウリングリスクがそれ以前の停泊中のリスクよりも高いことは明らかである。
【0134】
これを考慮すると、ファウリングリスク値を、一定期間のファウリングリスク瞬時値の加重平均として計算することができる。
【数11】
ここで、windowizeは、ファウリングリスク値の評価において考慮される日数(例えば3ヶ月)であり、wは、重み付け係数である。最近の瞬時値には高い重みが与えられ、古い瞬時値には低い重みが与えられる。重み付け係数の範囲は、0~1であり、ファウリングリスク値も0~1の範囲にする必要がある。
【0135】
したがって、いくつかの実施形態において、ファウリングリスク値は、複数の瞬時ファウリングリスク値に基づいて決定され、複数の瞬時ファウリングリスク値の各々は、期間中のそれぞれのサンプリング時間における船舶の表面のファウリングのリスクのレベルを識別し、複数の瞬時ファウリングリスク値の各々は、サンプリング時間のリーセンシー(recency)を規定する重みで重み付けされる。
【0136】
ステップS405でファウリングリスク値を決定すると、プロセス400は、ステップS407に進んでもよい。ステップS407において、船体ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリングリスク値を出力する。
【0137】
ロボット102が船体ファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態では、ステップS407において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、ユーザへの出力のために、ファウリングリスク値を、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスに出力する。これによって、ユーザは、ファウリングリスク値を見ることができ、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。
【0138】
船舶のコンピューティングデバイス106が船体ファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS407において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、ユーザへの出力のために、ファウリングリスク値を、オンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスに出力してもよい。これによって、ユーザは、ファウリングリスク値を見ることができ、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。追加的に又は代替的に、ステップS407において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、コンピューティングデバイス106の出力デバイス312を介してファウリングリスク値を出力してもよい。
【0139】
オンショアコンピューティングデバイス108が船体ファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS407において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、コンピューティングデバイス108の出力デバイス312を介してファウリングリスク値を出力してもよい。
【0140】
ステップS405でファウリングリスク値を決定すると、プロセス400は、代替的にステップS406に進んでもよい。ステップS406において、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって、高リスクのファウリング状態があるか否かを識別する。ファウリングリスク値が所定のしきい値より下である場合、これは、低リスクのファウリング状態があることを示し、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0141】
ファウリングリスク値が所定のしきい値より上である場合、これは、高リスクのファウリング状態があることを示し、プロセス400は、船体ファウリングリスク判定モジュールが制御信号を出力するステップS408に進む。これについては、後で更に詳しく説明する。
【0142】
次に、
図7を参照しながら本開示の第2の実施形態について説明する。
図7は、船体ファウリングリスク判定モジュール206,306によって実行される船舶の水中の船体の表面の清浄度を動的に監視するためのプロセス700のフローチャートを示す。その結果、プロセス700を、コンピューティングデバイスによって実行する。例えば、プロセス700を、ロボット102、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108で実行してもよい。
【0143】
ステップS702において、ファウリング防止値を決定する。ファウリング防止値は、船体の表面に関連するファウリングに対する許容範囲を規定する。上述したように、船体はコーティングされていてもよく、これらの状況において、ファウリング防止値は、コーティングの表面に関連する海洋生物付着に対する許容範囲、すなわち、コーティングによって船体に与えられる防止を規定する。代替的に、船体は、コーティングされていなくてもよく、これらの状況において、ファウリング防止値は、船舶の船体の表面に関連するするファウリングの許容範囲を規定する。
【0144】
ファウリング防止値は、メモリに予め記憶されていてもよい。例えば、ファウリング防止値は、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに予め記憶されていてもよい。これらの実装では、ファウリング防止値は、事前に計算され、船体ファウリングリスク判定モジュールは、メモリからファウリング防止値を検索することによってファウリング防止値を決定する。したがって、船体ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリング防止値の計算それ自体を実行しなくてもよい。
【0145】
他の実装では、船体ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリング防止値それ自体を計算することによってファウリング防止値を決定する。
【0146】
ファウリング防止値の計算方法については、後で詳しく説明する。ファウリング防止値を、0(ファウリング防止効果が低い)から1(ファウリング防止効果が高い)までの正規化スケールで計算してもよい。
【0147】
ステップS704において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、前記船舶の一つ以上のアイドル期間の合計期間を判定する。ステップS704を、メモリに格納されている船舶に関連する活動ログを問い合わせることによって、船舶が期間中にアイドル状態であったアイドル日数を使用して実行されてもよい。アイドル日数は、累積数値であってもよい、又は、連続したアイドル日数を規定してもよい。 船舶の対地速度が所定のしきい値未満である(例えば、<6kn)場合、船舶をアイドルと見なしてもよい。例えば、船舶が、レイアップ中である、拘留中、ある場所に留まっている、その場所内で移動中である、漂流中である、係留中及び/又は停泊中である又は低速で航行しているとき、船舶をアイドルと見なしてもよい。アイドル日を、1日のうち所定のしきい値割合以上(例えば60%以上)で船舶の対地速度が所定のしきい値未満であった日として定義することができる。活動ログを、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに記憶してもよい。
【0148】
ステップS706において、船体ファウリングリスク決定モジュールは、表面の使用年数を判定する。表面の使用年数は、メモリに予め記憶されていてもよい。例えば、表面の使用年数は、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに予め記憶されてもよい。
【0149】
コーティングされた船体については、ステップS706において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、表面に設けられるコーティングの使用年数を判定する。コーティングの使用年数を、コーティングが塗布された船舶のドライドックからの年数によって規定してもよい。コーティングが設けられてから船舶がクリーニングされた場合、コーティングの使用年数を、船舶がクリーニングされてから経過した時間(例えば、日単位)によって規定してもよい。
【0150】
船舶のコーティングされていない船体について、ステップS706において、船体ファウリングリスク決定モジュールは、コーティングされていない船体の使用年数を決定する。未塗装船体の使用年数を、船舶がクリーニングされてから経過した時間(例えば、日単位)によって規定してもよい。
【0151】
ステップS708において、船体ファウリングリスク決定モジュールは、ファウリング防止値及び表面の使用年数に基づいて、アイドル期間しきい値を決定する。アイドル期間しきい値は、上述した期間中に許容される最大アイドル時間を規定する。アイドル期間しきい値は、上述した期間中に許容されるアイドル日数の最大値を規定してもよい。
【0152】
アイドル期間しきい値を、アイドル期間(例えば、アイドル日数)が期間中にどのように分布しているかに基づいて、S708で決定してもよい。例えば、期間が30日の場合、累積アイドル日数に基づくアイドル期間しきい値を15日に設定することができる。それに対し、出航とアイドルを毎日交互に繰り返す船舶の場合、アイドル期間しきい値は異なってもよい。
【0153】
表面のファウリング防止値及び表面の使用年数に基づいてアイドル期間しきい値(例えば、日単位)を規定するデータは、コンピューティングデバイスのローカルメモリ又はコンピューティングデバイスによってアクセス可能なリモートコンピューティングデバイスのメモリに予め記憶されてもよい。表3は、概念を説明するための例を示す。
【表3】
【0154】
表3に示すように、アイドル期間しきい値を、ファウリング防止値及び表面の使用年数に基づいて取得することができる。例えば、表3に示すように、B<x≦Cの範囲内のファウリング防止値(x)を有する1年未満のコーティングは、30日のアイドル期間しきい値と関連付けることができる。
【0155】
ステップS710において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、ステップS704で判定された総アイドル期間がステップS708で判定されたアイドル期間しきい値を超えるか否かを判定する。
【0156】
総アイドル時間がアイドル時間しきい値よりしたである場合、プロセス700は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0157】
総アイドル時間がアイドル時間しきい値より上である場合、プロセス700は、ステップS712に進む。
【0158】
ステップS712では、船舶100の環境条件に関連する環境データを取得する。環境データは、一つ以上の環境パラメータの各々に関連付けられた値からなる。
【0159】
上述したように、船体ファウリングリスク決定モジュールは、船舶100の環境条件に関連する環境データを、多くの異なる方法で特定してもよい。
【0160】
ステップS714において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、船舶100の環境条件に関する環境データを使用して、高リスクのファウリング状態があるか否かを判定する。
【0161】
船体ファウリングリスク判定モジュールがステップS714で低リスクのファウリング状態があると判定した場合、プロセス700は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0162】
船体ファウリングリスク判定モジュールがステップS714で高リスクのファウリング状態があると判定した場合、プロセス700は、船体ファウリングリスク判定モジュールが制御信号を出力するステップS716に進む。これについては、後に更に詳しく説明する。
【0163】
ステップS714において、船体ファウリングリスク判定モジュールは、環境データを一つ以上の所定のしきい値と比較してもよく、一つ以上の所定のしきい値を超える場合、船体ファウリングリスク判定モジュールは、ステップS714で高リスクのファウリング状態があると判定し、プロセスは、上述したステップS716に進む。
【0164】
代替的に、判定ステップS714を行うために、船体ファウリングリスク判定モジュールは、ステップS402を参照して上述したようにファウリング値を決定し、ステップS405を参照して上述したようにファウリングリスク値を決定し、ファウリングリスク値が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって、高リスクファウリング状態があるか否かを識別してもよい。ファウリングリスク値が所定のしきい値を超える場合、船体ファウリングリスク判定モジュールは、ステップS714で高リスクのファウリング状態があると判定し、プロセスは、上述したステップS716に進む。
【0165】
ここで、ファウリング防止値がどのように計算されるかを説明する。上述したように、ファウリングリスク判定モジュールは、ファウリング防止値を自ら計算してもよい又は(例えば、別のコンピューティングデバイスによって)事前に計算されたファウリング防止値を検索してもよい。
【0166】
ファウリング防止値は、船舶の表面に関連する海洋生物付着に対する耐性を規定する。すなわち、ファウリング防止値は、水中領域、更に具体的には、船舶の水中の船体に海洋生物付着物が付着して最終的に成長するのを防止する表面の能力を規定する。
【0167】
今日、効果的なファウリング防止は、主に、船舶の水中の船体にコーティングの適用によって達成されるが、それに限定されない。表面の特性と表面材料の組成は、ファウリング防止能力に影響を与える。表面の特性及び表面材料の組成は、ファウリング防止能力に影響を及ぼす。しかしながら、上述したように、実施形態は、コーティングされた表面の清浄度を監視することに限定されず、船体のコーティングされていない表面の清浄度を監視するためにも使用することができる。
【0168】
ファウリング防止値を、ファウリングに対する表面の魅力を規定する値に基づいて計算してもよい。付着生物は、定着及び付着のために特定のタイプの表面を好む傾向がある。これは、生物学的要因及び物理的要因に関連する。したがって、これらの特性及びこれらが表面の魅力にどのように影響するかを考慮するとともにモデル化することができる。 表面の魅力(P_c)を考慮することは、船舶が静止している期間に特に重要である。表面の魅力(P_c)は、海洋生物が船体の水中表面に付着する傾向を表す。付着生物は、暗くてざらざらした多孔性の表面を好む傾向がある。
【0169】
表面の魅力(P_c)を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)、(iii)表面の多孔性、(iv)表面の弾性及び(iv)表面の色(例えば、表面の色がどの程度暗いか)のうちの一つ以上に基づいて決定してもよい。
【0170】
いくつかのパラメータが表面の魅力の決定の際に更に重要であると考えられる場合、各パラメータに重みを適用してもよい。
【0171】
当業者は、表面の上記の特性を決定する技術を知っている。例えば、多孔性を、表面の空隙をマッピングするために画像解析と(光又は走査電子)顕微鏡とを組み合わせることによって決定することができる。多孔性を、ASTM D6583に従って決定することもできる。表面エネルギーを、ゴニオメーターと異なる溶媒を使用して決定された接触角に基づいて計算することができる。表面粗さを、共焦点顕微鏡、重量光顕微鏡、レーザー顕微鏡又は触覚プロフィロメーターを使用して求めたx座標、y座標及びz座標に基づいて算出することができる。弾性を、動的機械試験(DMA)又は万能試験機で測定してもよい。暗い色とは、可視光の反射率が低い色である。RGB色モデルでは、色の暗さを、赤の値、緑の値及び青の値の合計で近似することができる。
【0172】
表面の魅力(P_c)の値は、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0173】
表面の魅力P_cの算出方法の一例を、以下に示す。
【数12】
ここで、normalized surface energy normalized surface energyは、例えば、エポキシコーティングの基準表面エネルギーに対するコーティング表面エネルギーの比であり、normalized roughnessは、基準粗さ値に対するコーティング表面粗さの比である。
【0174】
表面の魅力の係数が時間に依存するとも考えられるので、表面の経年変化による影響が及ぼされる。表面の経年変化を、上述したような経年変化の係数を使用して係数にすることができ、この係数は、0から1の間で変化してもよい。
【0175】
w_S及びw_rは、正規化された表面エネルギーの重み付け係数及び正規化された表面粗さの重み付け係数である。
【0176】
当業者であれば、付着生物にはさまざまなクラスがあること及び表面の魅力P_cを全てのクラスの付着生物を考慮して計算すること又は特定のタイプの付着生物だけを考慮して計算することもできることを理解する。
【0177】
追加的に又は代替的に、ファウリング防止値は、表面を移動する水の船舶の表面に対する影響を規定する値に基づいて計算することができる。
【0178】
ファウリングの沈殿/増殖を防ぐためのストラテジーは、船舶の航行中に発生する機械的な力によってそのような生物を除去することである。このストラテジーを、二つの異なるアプローチに分けることができる。一方のアプローチは、水が表面を流れるときに加わるせん断力によって表面に付着した生物を除去するように表面をできるだけ滑らかで滑りやすくすることである。別のアプローチは、膜浸食及び研磨によってファウリングの沈着除去に寄与する自己再生表面を開発することである。
【0179】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)を、船舶の対地速力又は船舶の対水速力並びに(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を用いて決定してもよい。
【0180】
表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0181】
本開示の実施形態が船舶の船体に設けられたコーティングの表面の清浄度を監視するために使用される状況において、表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、コーティングの特性に依存する。
【0182】
上述したように、船舶に設けられるコーティングを、コーティングが研磨性であるか非研磨性であるかによってクラス分けすることができる。
【0183】
研磨コーティングの場合、値P_bを、研磨レート及び表面特性の関数としてモデル化してもよい。
【数13】
【0184】
研磨レートは、コーティングの厚さが時間と共に減少するレートを規定する。研磨レートは、通常、コーティングの製造業者によって指定され、通常、年間研磨レートで表される。
【0185】
研磨コーティングの研磨レートを、英国特許第2558739号明細書に記載されている試験方法「実生活動的試験(Real life dynamic testing)」に従ってコーティングを船舶に設けて試験することによって決定することができる。研磨レートを、コーティングされたパネルを世界の種々の場所において筏上で暴露することによって決定することができる。研磨レートを、国際特許出願公開第1990/096926号明細書に記載されている試験方法「海水中における回転円盤の防汚コーティング膜の研磨レートの決定(Determination of the polishing rates of antifouling coating films on rotating disc in seawater)」に従って実験室試験で決定することができる。実験室試験を、研磨レートに対する温度の影響を決定するために種々の温度の海水を使用して行うことができる。上述したことがコーティングの研磨レートをどのように計算することができるかの単なる例として提供されるとともに(実験室内又は海上で種々の水速度、種々の海水温を使用してもよい)代替的な試験条件を使用してもよいことが理解される。
【0186】
研磨レートを、基準研磨レートに正規化してもよく、基準研磨レートは、技術及び/又はコーティング固有のものであってもよい。基準研磨レートは、ファウリング防止剤の拡散と浸出層の厚さとの間のバランスが許容可能なレベルに維持される理論的な年間研磨レートを反映する。浸出層は、水溶性物質の損失により組成が変化した表面に向かっている領域である。浸出層の厚さを、研磨レートについて上述した方法で決定することができる。
【0187】
表面特性係数を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定してもよい。
【0188】
当業者であれば、表面特性係数がコーティングの使用年数及び表面露出履歴に依存することが理解できる。表面露出履歴は、ファウリングが表面に効果的に付着しうる一定期間の累積時間を指す。これは、通常、船舶が静止している期間を指す。通常、表面露出は、表面更新(船舶は短期間停船した後(適切な時間)航行する)によって均衡が保たれ、乾ドック期間全体を通してこのパターンに従う。表面更新は、研磨コーティングのための研磨又は船舶が移動する際に船体に作用する単純な力(例えば、表面を移動する水)のいずれかを指すことができる。
【0189】
表面特性係数の計算方法の一例を、以下に示す。
【数14】
ここで、normalized surface energyは、例えば、エポキシコーティングのような基準表面エネルギーに対するコーティング表面エネルギーの比であり、normalized roughnessは、基準粗さ値に対するコーティング表面粗さの比である。
【0190】
vf,w1及びw2は、水速の重み付け係数、正規化された表面エネルギーの重み付け係数及び正規化された表面粗さの重み付け係数である。
【0191】
表面の使用年数を、上述したような使用年数の影響の係数を使用して係数にしてもよい。
【0192】
非研磨コーティングの場合、P_bを、水速(例えば、船舶の対地速力又は船舶の対水速力)及び表面特性(例えば、表面特性係数)の関数としてモデル化することができる。
【0193】
表面特性係数を、(i)表面の表面エネルギー、(ii)表面のトポグラフィー(例えば、表面の粗さ及び/又は質感)及び(iii)表面の多孔性のうちの一つ以上を使用して決定してもよい。
【0194】
例えば、表面を移動する水の表面への影響を規定する値(P_b)は、速度が所定のしきい値より上のときに最大であるとともに速度がゼロのときに最小と考えられる。速度のしきい値を、全てのタイプのファウリングが表面から除去できる速度として実験的に決定することができる。速度のしきい値は、生物種に依存し、種々の方法、例えば、フジツボについてのASTM D5618を使用して決定することができる。P_bの表面特性への依存について言えば、後者は、表面にかかる正味のせん断力に影響を及ぼす。
【0195】
上記に加えて、本開示の実施形態が船舶の船体に設けられたコーティングの表面の清浄度を監視するために使用されるとともにコーティングがファウリング防止剤を含む状況において、ファウリング防止値を、海洋生物付着に対する表面のファウリング防止剤(例えば、殺生物剤)の効果を規定する値に基づいて計算してもよい。
【0196】
ファウリング防止剤を、有機物又は非有機物の任意の形態とすることができ、それは、付着生物に影響を及ぼし、付着生物を撃退し、又は、付着生物に有害な働きをして、表面への定着又は生存を困難にする又は不可能にする。
【0197】
海洋生物付着に対するファウリング防止剤の効果は、コーティングから表面へのファウリング防止剤の拡散によって説明される。大まかに言えば、ファウリング防止剤の効果(P_a)は、(i)水の速度(例えば、船舶の対地速力又は船舶の対水速力)、(ii)表面露出履歴及び(iii)コーティングの年数の関数としてモデル化される。
【0198】
ファウリング防止剤の効果を規定する値(P_a)は、正規化されるとともに0から1の間で変動してもよい。
【0199】
船舶が航行するとき、ファウリング防止剤は、コーティングから表面へと絶えず運ばれる。しかしながら、船体に沿って水が流れるため、単純化したモデルでは、ファウリング防止剤は、ほとんどすぐに洗い流され、海洋生物に対する防止をほとんど行わないと考えられる。船舶が減速して静止状態になるとき、ファウリング防止剤の拡散は止まらず、船体に対する水速が減少するので、ファウリング防止剤の濃度が上昇し始める。
【0200】
表面露出履歴に関して、表面露出が表面更新によってバランスがとられていない場合、これは、ファウリング防止剤の効果に影響を及ぼす(ファウリング防止剤の拡散が阻害される)。例えば、殺生物剤による自己研磨表面では、殺生物剤が効果的に表面に拡散して表面を保護できるように、浸出層の厚さを許容レベル内に維持する必要がある。表面の暴露履歴が好ましくない場合(寄港時間が非常に長い、寄港回数が比較的最近である又は港と港の間を航行する時間が比較的短かった場合)、上記のバランスが崩れる。表面更新及び表面露出のバランスは、長期的な視点からも見ることができる。ある種の技術は、このバランスを更によく制御することができ、コーティングの寿命を通じて更に安定したファウリング防止剤の表面への拡散を保証することができる。
【0201】
ファウリング防止剤の効果をモデル化する一つの可能な方法は、以下の式で表される。
【数15】
ここで、
P_a(time: x)は、時間xにおけるファウリング防止剤の濃度であり、
P_a(time: x-1)は、時間x-1におけるファウリング防止剤の濃度であり、
leach layer factor(time: x)は、浸出層の厚さを示す係数であり、leach layer factorは、コーティングの年数及びコーティング技術に依存することができ、
mean release rateは、単位時間当たりのファウリング防止剤の濃度の平均変化であり、mean release rateを、研磨レート及び/又はコーティングのコーティング技術に関する知識に基づいて推定することができ、代わりに、release rateは、既知の方法(例えば、ISO10890:2010、ASTM D6442-99、ISO15181-2、ISO15181-3、ISO15181-6)を使用して実験的に決定してもよく、
removal agent factorは、海水中のファウリング防止剤の拡散を考慮した係数であり、除去剤係数は、温度、海水の粘度及び水速に依存してもよい。
【0202】
既に例示したように、理想的には、ファウリング防止剤の放出と表面の更新との間のバランスがある必要がある。このバランスにより、浸出層の厚さの変化が最小限に抑えられ、したがって、ファウリング防止剤の表面への拡散が容易になる。浸出層の厚さの変化を考慮するために、以下の式を使用することができる。
【数16】
ここで、deltaは、研磨による表面更新を考慮した補正係数である。研磨面の場合、deltaは、船舶の速度、例えば、船舶の対地速力又は船舶の対水速力の関数としてモデル化される。船舶の速度が所定のしきい値より大きいとき、deltaが負になると予想される。それに対し、船舶の速度が同一のしきい値より下であるとき、この補正係数は正となり、これは、活動の少ない期間/活動のない期間が長く続くと浸出層の厚さが時間と共に増加することを意味する。使用するしきい値は、コーティング技術に依存し、研磨を開始する最低速度を反映する。非研磨コーティングの場合、deltaは、正であるとともにコーティングの寿命を通じて一定である。
【0203】
ファウリング防止剤がコーティング表面に到達すると、ファウリング防止剤は、海水に更に拡散する。これを考慮するために、「除去剤」係数を使用することができる。除去剤は、船舶の速度(例えば、船舶の対地速力又は船舶の対水速力)の関数であり、船舶の速度が所定のしきい値(例えば3kn)より小さいとき、除去剤係数は、小さいが決してゼロにはならない。一方、船舶の速度が同一のしきい値を超えるとき、除去剤係数は、大きくなる。
【0204】
ファウリング防止剤の効果は、ファウリング防止剤自体にも依存する。コーティング表面に拡散する全てのファウリング防止剤が同一の防止効果を有するとは限らない。さらに、コーティングが複数のファウリング防止剤を含む場合があり、それらは、異なる付着生物に対して有効である可能性がある。
【0205】
上記の式によって計算されたファウリング防止剤パラメータを補正するために、0と1との間で変動してもよい薬剤の有効性係数を使用することができる。したがって、任意の時点におけるファウリング防止剤の効果を規定する最終値(P_a)を、以下のように規定することができる。
【数17】
【0206】
ファウリング防止値の計算式の例を、以下に示す。
【数18】
ここで、P_aは、ファウリング防止剤の効果を表し、P_bは、表面にかかるせん断力の効果を表し、P_cは表面の吸着性の効果を表し、w_a,w_b,w_cは、重み付け係数である。
【0207】
本開示の実施形態がこれらのパラメータの全てを使用して計算されたファウリング防止値を使用することに限定されないことが理解される。
【0208】
式(17)に示すように、ファウリング防止値がこれらのパラメータのうち一つ以上を使用して計算される実施形態では、重み付け係数を使用してもよい。
【0209】
重み付け係数を、船舶の速度及び/又はコーティング技術の関数としてモデル化してもよく、w_a,w_b及びw_cの合計が1になるように提案される。例えば、研磨コーティングの場合、船舶がアイドリングしているとき、w_aがw_bよりも大きくなり、w_cも重要であると予想されるが、船舶が動き出して速度が増加するとき、w_bが支配的になる。ファウリング防止剤のない非研磨表面の場合w_aは、ゼロとなり、船舶が静止しているときにw_cが支配的となり、船舶が航行するときにw_bが支配的となる。
【0210】
式(17)の各パラメータは、正規化されるとともに0から1の間で変化してもよい。
【0211】
ファウリング防止値が海洋生物の種類によって異なることに注意することが重要である。例えば、異なる生物種は、異なる殺生物剤に対して異なる反応を示し、表面から除去されやすい又はされにくいか、及び/又は、表面に付着する傾向が異なるので、P_a、P_b、P_cは、変化する。
【0212】
一般化されたファウリング防止値の計算式の例を、以下に示す。
【数19】
ここで、iは、海洋生物の異なる種の数であり、P
iは、種固有のファウリング防止値であり、g
iは、加重係数である。
【0213】
次に、高リスクのファウリング状態が検出されたことに応答して本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す
図8a~dを参照する。
【0214】
図8aは、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108がファウリングリスク決定モジュール306を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0215】
特に、
図8aは、監視対象である船舶の船体の清浄度に応じた動作が行われるユーザ確認に応答して実行してもよい制御動作の例を示す。
【0216】
示すように、
図8aは、船体ファウリングリスク判定モジュール306が高リスクのファウリング状態があることを示す制御信号を出力するステップを有し、それは、上述したステップS408及びステップS716に対応する。
図8aに示す実施形態において、この制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために出力される。特に、制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために出力装置を制御する。
【0217】
船舶のコンピューティングデバイス106が船体ファウリングリスク決定モジュール306を備える実施形態では、ステップS408及びステップS716において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、ユーザへの出力のために、オンショアコンピューティングデバイス108のような遠隔コンピューティングデバイスにアラートを出力してもよい。これによって、ユーザは、制御動作を行うべきか否かを決定することができる。追加的に又は代替的に、ステップS408において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、船舶のユーザが応答するために、コンピューティングデバイス106の出力デバイス312を介してアラートを出力してもよい。
【0218】
オンショアコンピューティングデバイス108が船体ファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態では、ステップS408及びステップS716において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、コンピューティングデバイス108の出力デバイス312を介してアラートを出力してもよい。
【0219】
ステップS407でファウリングリスク決定モジュール306がファウリングリスク値を出力すること又はステップS408若しくはステップS716で制御信号を出力することに応答して、ステップS802において、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、動作が行われるユーザ確認の受信を待機する。
【0220】
船体ファウリングリスク判定モジュール306は、ユーザがコンピューティングデバイスの(
図3には示さない)入力デバイスを介して入力を供給することに応答して、動作が行われるユーザ確認を受信してもよい。制御信号が遠隔コンピューティングデバイスに出力される場合、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、インターフェース316を介して受信した確認メッセージを受信することに応答して、動作が行われるユーザ確認を受信してもよい。
【0221】
ユーザが、動作が行われることを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0222】
ユーザが、動作が行われることを確認した場合、船体ファウリングリスク決定モジュール306は、適切な動作が適時に行われるように、更なる制御信号を出力する。これを、様々な方法で実施することができる。
【0223】
一例では、ステップS804において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、船舶の船体の検査を開始するための制御信号を出力する。
【0224】
船体ファウリングリスク判定モジュール306は、船舶の船体の検査を開始するために、船舶のロボット102又船舶の遠隔操作水中ビークルにこの制御信号を出力してもよい。理解されるように、船舶のロボット102又は遠隔操作水中ビークルは、船舶の船体を横断するとともに検査装置(例えば、カメラ)を使用して船体を検査することによって、船舶の船体の検査を行うことができる。代替的に、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、ロボット102又は遠隔操作水中ビークル(例えば、遊泳用遠隔操作水中ビークル)を手動で起動させて船舶の船体を検査するようにユーザに注意喚起するために、この制御信号を船舶の遠隔コンピューティングデバイスに出力してもよい。オンショアコンピューティングデバイス108が船体ファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、遠隔コンピューティングデバイスは、コンピューティングデバイス106に対応してもよい。コンピューティングデバイス106が船体ファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、遠隔コンピューティングデバイスは、船舶の更なるコンピューティングデバイス(例えば、船舶作業員のモバイルコンピューティングデバイス)に対応してもよい。
【0225】
別の例では、ステップS808において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、船舶の船体のクリーニングを開始するための制御信号をロボット102に出力する。オンショアコンピューティングデバイス108が船体ファウリングリスク判定モジュール306を備える実施形態において、この制御信号を、船舶のコンピューティングデバイス106を介して送信してもよい。理解されるように、船舶のロボット102は、クリーニング装置208を使用しながら船舶の船体を横断することによって、船舶の船体のクリーニングを行う。
【0226】
ステップS804に戻り、船体の検査に基づいて、船体の表面が汚れていることがステップS806で確認された場合、プロセスは、上述したステップS808に進んでもよい。ステップS806で行われる船体の表面が汚れていることの確認を、(ロボット102又は遠隔操作水中ビークルのような)検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータを処理することによって検査ビークルにより自動的に行ってもよい。例えば、船体を検査するためにカメラを使用する場合には、海洋生物付着を検出するために、撮影された画像データを処理してもよい。代替的に、ステップS806で実行される、船体の表面が汚れていることの確認は、検査ビークルが検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータをコンピューティングデバイス106,108に送信することを備えてもよい。そして、ユーザは、船体の表面が汚れているか否かを確認するために、受信したデータを見ることができる。ユーザが、船体の表面が汚れていることを確認しない場合、プロセス400は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0227】
別の例では、ステップS810において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、検出されたファウリングリスク状態に応答して運用措置をとるために、船舶の制御システムに制御信号を出力する。例えば、制御信号は、船舶を清掃ドックに迂回させるために、船舶の速度を上げるために及び/又は船舶のコースを変更するために、船舶制御システムを制御してもよい。
【0228】
図8bは、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108が船体ファウリングリスク決定モジュール306を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0229】
特に、
図8bは、船舶の船体の清浄度が監視されていることに応答して(ユーザが関与することなく)自動的に実行してもよい制御動作の例を示す。
【0230】
図8bに示すように、ステップS406,S714における船体ファウリングリスク判定モジュール306の高リスクのファウリング状態があるとの判定に応答して、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、適切な動作が適時に行われるように、ステップS408,S716において制御信号を出力する。
【0231】
これらの制御動作は、
図8aを参照して説明したものに対応する。したがって、ステップS408,S716において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、船体の検査を開始するための制御信号を出力してもよく、これを、
図8bにステップS408a及びS716aとして図示する。代替的に、ステップS408,S716において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、船体のクリーニングを開始するための制御信号をロボット102に出力してもよく、これを、
図8bにステップS408b及びS716bとして図示する。代替的に、ステップS408,S716において、船体ファウリングリスク判定モジュール306は、運用措置をとるために船舶の制御システムに制御信号を出力してもよく、これを、
図8bにステップS408c及びS716cとして図示する。
【0232】
図8cは、ロボット102が船体ファウリングリスク判定モジュール206を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0233】
特に、
図8cは、船舶の船体の清浄度が監視されていることに応答して動作が行われるユーザ確認したことに応答して実行してもよい制御動作の例を示す。
【0234】
示すように、
図8cは、船体ファウリングリスク判定モジュール206が高リスクのファウリング状態があることを示す制御信号を出力するステップを有し、それは、上述したステップS408及びS716に対応する。
図8cに示す実施形態において、この制御信号を、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために、船舶のコンピューティングデバイス106又はオンショアコンピューティングデバイス108に出力してもよい。特に、制御信号は、高リスクのファウリング状態をユーザに注意喚起するために遠隔装置を制御する。これによって、ユーザは、制御動作を行うべきか否かを判断することができる。
【0235】
船体ファウリングリスク判定モジュール206がステップS407でファウリングリスク値を出力すること又はステップS408又はS716で制御信号を出力することに応答して、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、ステップS802において、例えば、インターフェース216を介して受信した確認メッセージを受信することによって、動作が行われるユーザ確認の受信を待機する。
【0236】
ユーザが、動作を行うことを確認しない場合、プロセス400,700は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0237】
ユーザが、動作を行うことを確認した場合、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、適切な動作が適時に行われるように、更なる制御信号を出力する。これを、様々な方法で実施することができる。
【0238】
一例では、ステップS804において、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、船舶の船体の検査を開始するための制御信号を出力する。例えば、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、ロボット102の検査装置を作動させるための制御信号を出力し、船舶の船体の表面を検査するためにロボット102を移動させるように制御する。
【0239】
別の例では、ステップS808において、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、船舶の船体のクリーニングを開始するための制御信号を出力する。例えば、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、ロボット102のクリーニング装置208を起動するための制御信号を出力し、船体の表面をクリーニングするためにロボット102を移動させるように制御する。
【0240】
ステップS804に戻ると、船体の検査に基づいて船体の表面が汚れていることがステップS806で確認された場合、上述したステップS808に進んでもよい。ステップS806で行われる船体の表面が汚れていることの確認を、検査ビークルの検査装置によって取り込まれたデータをロボット102が処理することによって自動的に行ってもよい。例えば、船体を検査するためにカメラを使用する場合、海洋生物付着を検出するために、撮影された画像データを処理してもよい。代替的に、ステップS806で行われる船体の表面が汚れていることの確認は、ロボット102がロボットの検査装置によって取り込まれたデータをコンピューティングデバイス106,108に送信することを備えてもよい。そして、ユーザは、船体の表面が汚れているか否かを確認するために、受信したデータを見ることができる。ユーザが、船体の表面が汚れていることを確認しない場合、プロセス400,700は、次のサンプリング時間を待機する(すなわち、サンプリング期間が経過するのを待機する)スタートにループバックする。
【0241】
図8dは、ロボット102が船体ファウリングリスク判定モジュール206を備える本開示の実施形態において実行してもよい例示的な制御動作を示す。
【0242】
特に、
図8dは、船舶の船体の清浄度を監視したことに応答して自動的に実行してもよい制御動作の例を示す。
【0243】
図8dに示すように、船体ファウリングリスク判定モジュール206が高リスクのファウリング状態があるとステップS406,S714で判定したことに応答して、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、ステップS408,S716において、適切な動作が適時に行われるように制御信号を出力する。
【0244】
これらの制御動作は、
図8cを参照して説明したものに対応する。したがって、ステップS408,S716において、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、船舶の船体の検査を開始するための制御信号を出力してもよく、これを、
図8dにおいて、ステップS408a及びS716aとして図示する。代替的に、ステップS408,S716において、船体ファウリングリスク判定モジュール206は、船舶の船体のクリーニングを開始するための制御信号を出力してもよく、これを、
図8dにおいて、ステップS408b及びS716bとして図示する。
【0245】
上述したプロセス400及び700を、船舶の航行中に複数回実行してもよい。すなわち、プロセス400及び700を、定期的に、例えば、サンプリング期間を規定する固定時間間隔で、又は、変動する時間間隔で実行してもよい。
【0246】
船舶の船体を、異なる領域に分割することができ、各領域は、上述したプロセス400又はプロセス700を用いて異なる方法で評価することができる。船舶のプロペラを、船体の一部とみなしてもよい。プロペラについては、プロセス400又はプロセス700においてプロペラの速度を使用することができる。船舶の舵を、船体の一部とみなしてもよい。
【0247】
上述した船体の検査の結果を、プロセス400のステップS402,S404及びS406の一つ以上で使用される式及び係数を導出するために使用することができる。
【0248】
上記で言及した船体の検査結果もプロセス700で使用することができる。例えば、このフィードバックを、ステップS708で使用されるコーティングのファウリング防止値及び表面の使用年数(例えば、表3に示すファウリング防止値)に基づいてアイドル期間しきい値を規定するデータを修正するために使用することもできる。このフィードバックを、ステップS714における高リスクのファウリング状態の分類を改善するためにも使用することもできる。
【0249】
図9は、船舶の船体の表面をクリーニングするロボット102の一例を示す。 ロボットの車輪4は、鉄の構造物に付着するように磁気を帯びている。ロボット102は、車輪4によって駆動され、車輪4は、電気モーター(図示せず)によって駆動される。
図9において、ロボット102を、完全に組み立てられた状態の斜視図で示す。 ロボット1のシャーシ2は、電源(例えば、電池)を封入するとともに
図2に示す電気部品の一つ以上を有してもよい密閉容器3を保持する周囲フレームである。 容器3は、水の浸入を防止するために防水密閉されている。二つの梁「車軸」5がシャーシ2に固定され、これらの梁5は、車輪4並びに車輪4のためのサスペンション配置及びステアリング機構の関連要素を支持する。ロボット102は、回転円筒形ブラシの形態をとることができるクリーニング装置208を有し、これもシャーシ2に固定されている。
図9は、ロボット102がとりうる形態の一例を示しているにすぎず、他の例も可能であることが理解される。
【0250】
一般に、本明細書で説明する機能のいずれかを、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア(例えば、固定論理回路)又はこれらの実装の組合せを使用して実現することができる。本明細書で使用される「機能性」及び「モジュール」という用語は、一般に、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア又はその組合せを表す。 ソフトウェア実装の場合、機能性又はモジュールは、プロセッサ(例えば、一つ以上のCPU)で実行されたときに指定されたタスクを実行するプログラムコードを表す。プログラムコードを、一つ以上のコンピュータ可読記憶装置(例えば、メモリ210又はメモリ310)に記憶させることができる。以下で説明する技術の特徴は、プラットフォームに依存せず、技術を様々なプロセッサを有する様々な市販のコンピューティングプラットフォームで実施してもよいことを意味する。
【0251】
本開示を、特に、好適な実施形態を参照して示すとともに説明したが、形態及び詳細における様々な変更を添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲から逸脱することなく行ってもよいことが当業者には理解される。
【国際調査報告】