(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ガイドプローブ及びクランピングプローブを用いた標的核酸の増幅方法及びそれを含む標的核酸増幅用組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240304BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558700
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 KR2022003869
(87)【国際公開番号】W WO2022203297
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036727
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362434
【氏名又は名称】エイチエルビー パナジーン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HLB Panagene Co., Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ジェジン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンソ
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヒョジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR58
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、非常に低い濃度の標的核酸(target nucleic acid)を高い特異度で増幅することができる標的核酸の増幅方法及びこれを用いた標的核酸増幅用組成物に関し、より詳しくは、標的核酸が存在する場合、標的核酸と結合したガイドプローブ(guide probe)と、前記ガイドプローブに結合して標的核酸を増幅することができる部分プライマー(partial primer)及び標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe)を用いて、高い特異度で標的核酸の増幅産物(amplicon)を生成する方法及びそのための重合酵素連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)用組成物に関する。本発明による標的核酸の増幅方法は、ガイドプローブを用いてサンプル内に存在する混成化できる全ての核酸に結合しながら部分プライマーの標的核酸の検出部位への結合を助けるため、非常に低い濃度で存在する標的核酸の増幅が可能であり、部分プライマーの配列特異性によって標的核酸以外の核酸は増幅速度に差が生じ、クランピングプローブによって標的核酸以外の核酸増幅が抑制され、標的核酸を高い特異度で検出できるという利点があるので、分子診断、出生前診断、早期診断、癌診断、遺伝関連診断、遺伝子型質診断、感染菌の診断、薬剤耐性菌の判別、法医学、生物体の種判別などに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む標的核酸の増幅方法:
(a) i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);
ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);
iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);および
iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅できる特異的プライマー(specific primer);
の存在下で重合酵素連鎖反応(PCR)を行って分離された核酸を増幅するステップ;および
(b) 増幅産物の存在有無を判別するステップ。
【請求項2】
前記ガイドプローブで標的核酸と混成化する配列は、5'末端またはN末端に存在し、標的核酸と混成化しない配列は3'末端またはC末端に存在することを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項3】
前記ガイドプローブは、標的核酸の混成化配列と標的核酸と混成化しない配列の間にリンカーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項4】
前記リンカーは、β-アラニン(β-Ala-OH、C3)、アミノ酪酸(aminobutyric acid、C4)、アミノヘキサノ酸(aminohexanoic acid、C6)、アミノラウリン酸(aminolauric acid、C12)、アセトアセトキシエチルアクリレート(acetoacetoxyethyl acrylate、AAEA(O-linker))、アミノエトキシエトキシエトキシ酢酸(2-[2-[2-[2-(amino)ethoxy]ethoxy]ethoxy]acetic acid、AEEEA)、AEEEEA、DL15及びL35からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項5】
前記ガイドプローブ、部分プライマー、クランピングプローブ及び特異的プライマーは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)、LNA(locked nucleic acid)及びPNA(peptide nucleic acid)のいずれか1つ又は2つ以上の組合せからなることを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項6】
前記ガイドプローブは、10~500個の塩基配列の長さで作製されたPNAであることを特徴とする、請求項5に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項7】
前記ガイドプローブは、20~150個の塩基配列の長さで作製されたPNAであることを特徴とする、請求項6記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項8】
前記ガイドプローブとクランピングプローブは、特異的プライマーが結合する標的核酸の反対側の鎖に混成化することを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項9】
前記部分プライマーは、ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列の間に1~100個の塩基配列の長さで作製された単鎖(single strand)オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)であるスペーサー(spacer)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項10】
前記部分プライマーの標的核酸の検出部位に相補的な配列は3~15個の塩基配列であることを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項11】
前記クランピングプローブは、5~500個の塩基配列の長さで作製されたPNAであることを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項12】
前記クランピングプローブは、部分プライマーが標的核酸を除外した他の核酸と結合することを防止し、標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項13】
前記クランピングプローブは、部分プライマーの標的核酸の検出部位に相補的な配列を含み、1~10個の塩基が異なることを特徴とする、請求項12に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項14】
前記増幅産物の長さは、50bp~1Kbpであることを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項15】
前記(b)ステップの増幅産物の存在有無を判別するステップは、前記増幅産物に結合可能な核酸結合染料(nucleic acids-binding dye)またはプローブ(probe)を使用することを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項16】
前記核酸結合染料は、エチジウムブロマイド(Ethidium bromide)、サイバーグリーン1 (SYBR(登録商標)Green I)、サイバーグリーンゴールド(SYBR(登録商標)Gold)、エヴァグリーン(EvaGreen)、ヨプロ-1(YO-PRO-1)、サイトー(SYTO)、ベボ(BEBO)及びベクスト(BEXTO)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項17】
前記増幅産物に結合可能なプローブは、オリゴヌクレオチド、LNA、及びPNAのいずれか1つまたは2つ以上の組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項18】
前記増幅産物に結合可能なプローブは、両末端にレポーター(reporter)と消光子(quencher)が連結されていることを特徴とする、請求項17に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項19】
前記レポーターは、フルオレセイン(fluorescein)、フルオレセインクロロトリアジニル(fluorescein chlorotriazinyl)、ローダミングリーン(rodamine green)、ローダミンレッド(rodamine red)、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)、FITC、オレゴングリーン(Oregon green)、Alexa Fluor、FAM、JOE、ROX、HEX、テキサスレッド(Texas Red)、TET、TRITC、TAMRA、シアニン(Cyanine)系染料及びチアジカルボシアニン(thiadicarbocyanine)染料からなる群から選択される1つ以上の蛍光物質であることを特徴とする、請求項18に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項20】
前記消光子は、ダブシル(Dabcyl)、タムラ(TAMRA)、エクリプス(Eclipse)、DDQ、QSY、ブラックベリークエンチャー(Blackberry Quencher)、ブラックホールクエンチャー(Black Hole Quencher)、Qxl、アイオワブラック(Iowa black)FQ、アイオワブラックRQおよびIRDye QC-1からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項18に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項21】
前記分離された核酸は、検体試料から分離されたことを特徴とする、請求項1に記載の標的核酸の増幅方法。
【請求項22】
i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);
ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);
iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);および
iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅できる特異的プライマー(specific primer);
を含む標的核酸増幅用PCR組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に低い濃度の標的核酸(target nucleic acid)を高い特異度で増幅することができる標的核酸の増幅方法及びそれを用いた標的核酸増幅用組成物に関し、より詳しくは、標的核酸が存在する場合、標的核酸と結合したガイドプローブ(guide probe)と、前記ガイドプローブに結合して標的核酸を増幅することができる部分プライマー(partial primer)及び標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe)を用いて、高い特異度で標的核酸の増幅産物(amplicon)を生成する方法及び前記方法の具現のための重合酵素連鎖反応(PCR;polymerase chain reaction)用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上のすべての生命体が持つ遺伝情報は、各個体が持つ固有の属性の源となり、これは核酸(DNAまたはRNA)という物質にアデニン(A; adenine)、グアニン(G; guanine)、シトシン(C; cytosine)、チミン(T; thymine)、ウラシル(U; uracil)の塩基が配列された順で記録される。したがって、これらの塩基の順序(塩基配列)を明らかにするか確認することは、生命体の属性を確認し、内在された代謝機構を理解するための過程になり得る。
【0003】
最近、生命体の特定の塩基配列を検出又は確認する方法を通じて生命体の存在有無またはその属性を確認する分子診断(molecular diagnostics)法が広く活用されている。医学的に活用される分子診断の代表的な例として、ヒトの癌発生に関連した遺伝子突然変異(mutation)を検出すること及びヒトに発生する可能性のある感染疾患の原因病原体を検出することがあり、その他食品に存在する有害微生物を検出する検査も分子診断に属する。
【0004】
特定の塩基配列を特異的に確認するための分子診断の様々な手法のうち、ほとんどが核酸重合酵素(DNA polymerase)を用いた重合酵素連鎖反応(PCR; polymerase chain reaction)を用いる。前記重合酵素連鎖反応は、特定の塩基配列部位を含む標的核酸(target nucleic acid)に特異的に混成化(hybridization)されることができる一対のプライマー(primer)及び前記プライマーを出発物質にして、標的核酸を鋳型として重合酵素連鎖反応を起こすことができる耐熱性(thermo-stable)核酸重合酵素を含む組成物、そして前記組成物に定められた温度を段階的かつ繰り返し付与することができる装置(thermal cycler)を介して行われる。また、前記重合酵素連鎖反応を通じた分子診断は、大量に形成された(増幅された)標的核酸内の特定の塩基配列をリアルタイムで検出するために核酸結合染料(nucleic acids-binding dye)またはプローブ(probe)を活用するが、これらをリアルタイム重合酵素連鎖反応(real-time PCR)と呼ぶ(Higuchi, R. et al., Biotechnology 1992. 10:413-417, Higuchi, R. et al., Biotechnology 1993. 11:1026-1030)。
【0005】
前記の分子診断において、ヒトの癌発生に関連した遺伝子突然変異を検出することは、高い敏感度(sensitivity)と高い特異度(specificity)が求められる。検出しようとする突然変異が体性突然変異(somatic mutation)に属するため、突然変異が起こってない(wild-type)正常DNAと混ざって非常に微量存在し、正常遺伝子と塩基配列の差が大きくない点突然変異(point mutation)あるいは塩基配列の変異が複雑に現れる挿入/削除突然変異(insertion/deletion)、遺伝子融合突然変異(gene fusion)などで目標変異を正確に認識しないと偽陽性(false-positive)を発生させる可能性があるからである。
【0006】
つまり、腫瘍特異的な突然変異検出検査で重要に求められる事項は、(1)正常DNAの中に低い比率で存在する突然変異DNAを検出できる敏感度(sensitivity)と(2)正常DNAを突然変異DNAと誤判定する偽陽性(false-positive)の比率をできるだけ低下させることができる特異度(specificity)を備えることである。
【0007】
腫瘍特異的な突然変異を検出する様々な検査法が開発及び利用されており、代表的な方法として、直接塩基配列分析法(direct sequencing)、対立遺伝子特異的増幅法(allele-specific PCR; AS-PCR)、制限酵素断片長多型法(Restriction Fragment Length Polymorphism; RFLP)、TaqManプローブ法、ARMS(amplification refractory mutation system) PCR等がある。しかし、これらの方法は敏感度と特異度において満足できる結果を示すことができなかった。直接塩基配列分析法は最も特異度が高く、偽陽性の比率が低いが、20~30%以上の突然変異DNAが存在する場合にのみ検出が可能という欠点がある。一方、AS-PCRやRFLP、TaqManプローブ法などは敏感度は高いが、特異度が低いため、偽陽性の問題を常に有する。
【0008】
最近では、PNA (peptide nucleic acid)媒介PCRクランピング法(Sun, X., et al., 2002. Nat Biotechnol, 20: 186-189)、LNA (locked nucleic acid)媒介PCRクランピング法(Dominguez, P. L., et al., 2005. Oncogene, 24: 6830-6834)、COLD-PCR (co-amplification at lower denaturation temperature PCR)(Li, J..、et al., 2008. Nat. Med, 14: 579-584)等の敏感度と特異度を大幅に改善した方法が開発されるなど、高い特異度の塩基配列分析能力が徐々に強調されている状況である。
【0009】
ARMS-PCR法は、AS-PCRの欠点である特異度を向上させることができる方案として開発された方法であって、AS-PCRと同様にプライマーが鋳型の配列と完璧な相補配列で構成してからこそPCRが行われるという原理に基づくが((Newton, C. R., et al., 1989. Nucl Acids Res, 17; 2503-2516)、特異度に優れた最適なプライマーを決定するためには実験的試行錯誤を経なければならないという欠点がある(Drenkard, E., et al., 2000. Plant Physiol. 124: 1483-1492)。
【0010】
韓国特許出願第10-2020-0066712号では、多数の集団を含む混合されたサンプルからDNA一集団の選択的富化のために複数の遮断オリゴヌクレオチドを接触させ、特定の集団の核酸比率を富化させる方法が記載されているが、遮断オリゴヌクレオチドに増幅反応を抑制する脂肪族分子がさらに必要であるという欠点があり、また、韓国特許第10-2019800号では、還元プローブを用いてTm(melting temperature)値の差を用いて標的遺伝子のメチル化状態を検出する方法が記載されているが、遺伝子変異を検出することができず、メチル化状態のみ検出できるという欠点がある。
【0011】
そこで、本発明者らは、非常に低い濃度で存在する標的核酸増幅の特異度(specificity)を画期的に増加させることができる方法を開発するために鋭意努力した結果、標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe)、前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer)、標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe)及び前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅することができる特異的プライマー(specific primer)を用いて増幅産物を生成する方法によりPCRを行う場合、非常に低い濃度の標的核酸を高い特異度で検出することができることを確認して本発明を完成するに至った。
【0012】
本背景技術部分に記載された前記情報は、あくまでも本発明の背景に対する理解を深めるためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって既に知られている先行技術を形成する情報を含まない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2020-0066712号
【特許文献2】韓国特許第10-2019800号
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、非常に低い濃度の標的核酸を高い特異性で増幅する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、非常に低い濃度の標的核酸を高い特異性で増幅することができる標的核酸増幅用重合酵素連鎖反応(PCR)用組成物を提供することである。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、(a) i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);及び iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅することができる特異的プライマー(specific primer);の存在下で重合酵素連鎖反応(PCR)を行って分離された核酸を増幅するステップ;及び(b) 増幅産物の存在有無を判別するステップを含む標的核酸の増幅方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);及び iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅することができる特異的プライマー(specific primer);を含む標的核酸増幅用PCR組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一態様に必要な構成物であるガイドプローブ(guide probe)、クランピングプローブ(clamping probe)、部分プライマー(partial primer)、特異的プライマー(specific primer)及び構成物間の混成化関係を示す図である。
【
図2】本発明を通じて標的核酸と非標的核酸の塩基配列の差による増幅効率の差を引き出す過程を示す図であって、(a)は標的核酸の存在時、前記標的核酸の特定の部位と混成化するガイドプローブの助けを借りて、前記ガイドプローブの一部と混成化する部分プライマーが標的核酸の目標増幅部位に近接すると、部分プライマーの3'末端部位の一部が前記標的核酸の標的増幅部位の塩基配列と相補的であるため、混成化及び伸長増幅が起こることを示し、この時、ガイドプローブと標的核酸及びガイドプローブと部分プライマーの結合はTmが高いため、先に混成化することになり、部分プライマーと標的核酸の結合は相補的な配列長が短くTmが低いため、後で混成化することになり、クランピングプローブと標的核酸の塩基配列間の相補性が低く、前記部分プライマーと標的核酸の結合を阻止することができず、(b)は、前記標的核酸と一部の塩基配列が異なる非標的核酸の存在時、前記ガイドプローブが前記非標的核酸の特定の部位と混成化して前記ガイドプローブの一部と混成化する部分プライマーが前記非標的核酸に近接しても、前記部分プライマーの3'末端部位の一部と前記非標的核酸の塩基配列間の相補性が低く、前記非標的核酸にクランピングプローブが混成化して前記部分プライマーと非標的核酸の結合を阻止するので、結果として伸長増幅が抑制されることを示す。
【
図3】本発明の一態様により、特定の突然変異を野生型と区分して検出する方法を示す概念図である。
【
図4】本発明の一態様により、高い敏感度と特異度でヒトゲノム内のKRAS遺伝子のG13D突然変異(mutation)を検出した結果を示す図であって、3'末端の一部がG13D突然変異の遺伝型(genotype)と混成化するように作製された部分プライマー及び突然変異が起こってない野生型(wild-type)と混成化するように作製されたクランピングプローブを用いる場合、G13D突然変異の存在時に高い増幅効率を示して比較的低いCt値が算出される一方、野生型(wild-type)のみが存在する場合には、低い増幅効率を示して比較的高いCt値が算出されるか、増幅が起こってないし、結果としてCt値の比較を通じて0.1%水準で非常に微量存在するG13D突然変異も検出することができる。
【
図5】本発明の一態様(a)及びクランピングプローブを含まない条件(b)で、ヒトゲノム内のKRAS遺伝子のG13D突然変異を検出した結果をそれぞれ比較して示した図であって、3'末端の一部がG13D突然変異の遺伝型と混成化するように作製された部分プライマーと野生型と混成化するクランピングプローブを一緒に使用する場合、G13D突然変異の存在条件と野生型のみ存在する条件間のCt値の差が非常に大きく現れる一方、クランピングプローブを含まない条件では、比較的にG13D突然変異の存在時と野生型の存在時の間のCt値の差が小さいことを確認することができる。
【
図6】本発明の一態様(a)及びクランピングプローブを含まない条件(b)で、ヒトゲノム内のKRAS遺伝子のG13D突然変異を検出した結果をそれぞれ比較したものであって、3'末端の一部がG13D突然変異の遺伝型と混成化するように作製された部分プライマーと野生型と混成化するクランピングプローブを一緒に使用する場合、Control部位の増幅Ct値とTarget部位の増幅Ct値の間の差を示すΔCt値を通じて0.1%水準の極微量で存在するG13D突然変異も検出できる一方、クランピングプローブを含まない条件では、ΔCt値を通じて0.5%水準で存在するG13D突然変異は検出できるが、それより少ない量(0.1~0. 25%)で存在するG13D突然変異は野生型と区分し難くなることを確認できる。
【
図7】本発明のガイドプローブに含まれてもよいリンカーの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0019】
本発明では、非常に低い濃度の標的核酸をガイドプローブとクランピングプローブ、部分プライマーを用いて検出できるかどうかを確認しようとした。
【0020】
つまり、本発明の一実施例では、ヒトKRAS遺伝子のexon 2、codon 13に位置するGGC>GAC塩基配列変異であるG13D突然変異を特異的に増幅し検出するために、KRAS遺伝子のcodon 13近傍部位に特異的に混成化することができるガイドプローブ、野生型(wild-type)KRAS遺伝子のcodon 13及び近傍部位に特異的に混成化することができるクランピングプローブ、G13D突然変異が起こったKRAS遺伝子のcodon 13及び近傍部位に3'末端の一部が特異的に混成化することができる部分プライマー、前記部分プライマーと対(pair)をなして標的核酸を増幅できるようにKRAS遺伝子の塩基配列の一部と混成化することができる特異的プライマーを設計し、この時、前記ガイドプローブのC末端の一部の塩基配列と前記部分プライマーの5'末端の一部の塩基配列が混成化できるようにした。
【0021】
野生型核酸の存在下で微量に存在する前記G13D突然変異を検出できるかどうか、前記ガイドプローブ、クランピングプローブ、部分プライマーおよび特異的プライマーを用いてPCRを行った。
【0022】
その結果、G13D突然変異の標的核酸が存在する条件では、増幅曲線上の蛍光信号の上昇が速く現れ、低いCt値が算出される一方、野生型核酸のみが存在する条件では、増幅曲線上の蛍光信号の上昇が起こらないか、非常に遅く現れ、大きなCt値が算出されることを確認した(
図4)。
【0023】
したがって、本発明は一観点において、
(a) i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);
ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);
iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);および
iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅できる特異的プライマー(specific primer);
の存在下で重合酵素連鎖反応(PCR)を行って分離された核酸を増幅するステップ;および
(b) 増幅産物の存在有無を判別するステップに関する。
【0024】
本発明における用語「標的核酸(target nucleic acid)」とは、増幅(amplification)あるいは検出しようとする関心塩基配列を含むあらゆる種類の核酸を意味する。前記標的核酸は、複数の種(species)、亜種(subspecies)、または変種(variant)由来の遺伝子塩基配列または同一種内の遺伝子突然変異を含み、これはgenomic DNAとmitochondrial DNA、viral DNAを含むあらゆる種類のDNAまたはmRNA、ribosomal RNA、non-coding RNA、tRNA、viral RNAなどを含むあらゆる種類のRNAを特徴としてもよいが、これに限定されない。標的核酸は、重合酵素連鎖反応のための条件下で、ガイドプローブ、部分プライマー(3'末端の一部)、特異的プライマーと混成化してもよい。
【0025】
本発明における用語「混成化(hybridization)」とは、相補的な塩基配列を持つ単鎖核酸間の水素結合によって二本鎖核酸が形成されることを意味し、アニーリング(annealing)と類似な意味で使用される。ただし、もう少し広い意味で、混成化は、2つの単鎖間の塩基配列が完全に相補的な場合(perfect match)と共に、例外的に一部の塩基配列が相補的でない場合(mismatch)まで含む。
【0026】
本発明における用語「ガイドプローブ(guide probe)」は、標的核酸及び部分プライマーと同時に混成化することができ、部分プライマーの3'末端が標的核酸の標的塩基配列と混成化することを助けることを特徴とする。つまり、ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列は部分プライマーと混成化することができる。前記ガイドプローブは、標的核酸と混成化できるあらゆる素材(例えば、DNA、RNA、LNA(locked nucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)など)のいずれか1つ又は2つ以上の混合で製造してもよい。
【0027】
本発明における用語「クランピングプローブ(clamping probe)」は、増幅を所望しない非標的核酸に混成化することができ、部分プライマーの3'末端が非標的核酸と混成化することを阻止することを特徴とする。前記クランピングプローブは、非標的核酸と混成化できるあらゆる素材(例えば、DNA、RNA、LNA(locked nucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)など)のいずれか1つあるいは2つ以上の混合で製造してもよい。
【0028】
本発明における用語「部分プライマー(partial primer)」は、5'末端部位の一部がガイドプローブと混成化し、3'末端部位が標的核酸の標的塩基配列と混成化して、核酸重合酵素(nucleic acid polymerase)による合成伸長(extension)が行われることを特徴とする。
【0029】
本発明の好ましい実施例では、前記標的核酸、ガイドプローブ、部分プライマーは相互に混成化(標的核酸-ガイドプローブ、ガイドプローブ-部分プライマー、部分プライマー-標的核酸)する。ガイドプローブが標的核酸の標的塩基配列の近傍に結合しながら、同時に混成化している部分プライマーが前記標的塩基配列の近傍に位置するようにし、これにより部分プライマーの3'末端が前記標的塩基配列にさらに容易に混成化し、核酸重合酵素による合成伸長及び標的核酸の標的部位増幅が開始される。
【0030】
標的核酸-ガイドプローブおよびガイドプローブ-部分プライマーの間の混成化は、互いに相補的な部分が部分プライマー-標的核酸に比べてTmが高いため先に混成化し、部分プライマー-標的核酸は比較的にTmが低いため後に混成化する。
【0031】
本発明における用語「特異的プライマー(specific primer)」は、前記ガイドプローブの助けを借りずに標的核酸に混成化し、核酸重合酵素による合成伸長が行われることを特徴とする。
【0032】
本発明において、前記ガイドプローブで標的核酸と混成化する部位は5'末端またはN末端に存在し、部分プライマーと混成化する部位は3'末端またはC末端に存在することを特徴としてもよいが、これに限定されない。
本発明において、前記ガイドプローブは、標的核酸の混成化配列と標的核酸と混成化しない配列の間にリンカーをさらに含むことを特徴としてもよい。
【0033】
本発明において、前記リンカーは、標的核酸混成化配列と部分プライマー混成化配列の間に存在し、2つの部位を連結する核酸塩基を含まない化合物であれば制限なく用いてもよく、好ましくは、β-アラニン(β-Ala-OH、C3)、アミノ酪酸(aminobutyric acid、C4)、アミノヘキサノ酸(aminohexanoic acid、C6)、アミノラウリン酸(aminolauric acid、C12)、アセトアセトキシエチルアクリレート(acetoacetoxyethyl acrylate、AAEA(O-linker))、アミノエトキシエトキシエトキシ酢酸(2-[2-[2-[2-(amino)ethoxy]ethoxy]ethoxy]acetic acid、AEEEA)、AEEEEA、DL15及びL35からなる群から選択される1種以上であることを特徴としてもよいが、これらに限定されない。
【0034】
本発明において、前記ガイドプローブ、クランピングプローブ、部分プライマーおよび特異的プライマーのそれぞれは、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)、LNA(locked nucleic acid)及びPNA(peptide nucleic acid)のいずれか1つまたは2つ以上の結合で構成されることを特徴としてもよい。
【0035】
より詳しくは、前記ガイドプローブとクランピングプローブのそれぞれは、オリゴヌクレオチド、LNA、PNAのいずれか1つまたは2つ以上を組み合わせて作製してもよい。
例えば、前記ガイドプローブが20bpである場合、5'末端10bpはPNAで構成され、3'末端10bpはオリゴヌクレオチドで構成されてもよい。
【0036】
前記部分プライマーと特異的プライマーのそれぞれは、オリゴヌクレオチド、LNA、PNAのいずれか1つまたは2つ以上を組み合わせて作製してもよいが、3'末端の5個の塩基配列以上はオリゴヌクレオチドで構成して増幅反応を誘導してもよい。
【0037】
本発明において、前記ガイドプローブは、標的核酸及び部分プライマーと混成化できる核酸であれば制限なく用いてもよいが、好ましくは10~500個の塩基配列の長さで作製されたPNAであってもよく、さらに好ましくは20~150個の塩基配列の長さで作製されたPNAであることを特徴としてもよい。
【0038】
本発明において、前記クランピングプローブは、非標的核酸に混成化できる核酸であれば制限なく用いてもよいが、好ましくは5~500個の塩基配列の長さで作製されたPNAであってもよく、さらに好ましくは10~100個の塩基配列の長さで作製されたPNAであることを特徴としてもよい。
本発明において、前記クランピングプローブは、部分プライマーが標的核酸を除外した他の核酸と結合することを防止することを特徴としてもよい。
【0039】
本発明において、前記クランピングプローブは、部分プライマーの標的核酸の検出部位に相補的な配列を含み、1~10個の塩基が異なることを特徴としてもよい。
【0040】
本発明において、前記クランピングプローブは、部分プライマーと標的核酸の検出部位の結合配列が異なるため、標的核酸以外にサンプル内に存在する他の核酸に部分プライマーが結合することを防止し、標的核酸とは結合しないことを特徴とする。
本発明において、前記ガイドプローブとクランピングプローブは、特異的プライマーが混成化する標的核酸の反対側の鎖に混成化することを特徴としてもよい。
【0041】
本発明において、前記部分プライマーは、ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列の間に1~100個の塩基配列の長さで作製された単鎖(single strand)オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)であるスペーサー(spacer)をさらに含むことを特徴としてもよい。
【0042】
本発明において、前記スペーサーは、部分プライマーに含まれているガイドプローブに相補的な配列と標的核酸に相補的な配列を除外した配列を意味し、必要に応じて前記スペーサーに結合可能なプローブを用いて標的核酸の塩基配列が変更されても同じプローブで検出を行うようにする機能をすることができる。
【0043】
本発明において、前記スペーサーと前記ガイドプローブのリンカーは、ガイドプローブによって標的核酸の標的部位の近傍に位置する部分プライマーが標的部位に結合する効率を調節する役割を果たすことができる。これは、ガイドプローブが前記標的部位と少し遠い位置の標的核酸に混成化する場合、前記スペーサーとリンカーの長さを増加させると、部分プライマーが標的部位に結合することを助けることができることを意味する。
【0044】
本発明において、前記部分プライマーの標的核酸の検出部位に相補的な配列は、3~15個の塩基配列であることを特徴としてもよい。
本発明において、前記増幅産物の長さは50bp~1Kbpであることを特徴としてもよい。
【0045】
本発明において、増幅産物の存在有無を判別するステップは、前記増幅産物に結合可能な核酸結合染料(nucleic acids-binding dye)またはプローブ(probe)を使用することを特徴としてもよい。
【0046】
本発明において、前記核酸結合染料は、インターカレーティング(intercalating)物質またはDNA副溝(minor groove)結合物質であれば制限なく用いてもよいが、好ましくはエチジウムブロマイド(Ethidium bromide)、サイバーグリーン1(SYBR(登録商標)Green I)、サイバーグリーンゴールド(SYBR(登録商標)Gold)、エヴァグリーン(EvaGreen)、ヨプロ-1(YO-PRO-1)、サイトー(SYTO)、ベボ(BEBO)及びベクスト(BEXTO)で構成される群から選択されることを特徴としてもよい。
【0047】
本発明において、前記増幅産物に結合可能なプローブは、オリゴヌクレオチド、LNA、およびPNAのいずれか1つまたは2つ以上の組合せからなる群から選択されることを特徴としてもよい。
【0048】
PNA(Peptide nucleic acid、ペプチド核酸)は、核酸塩基が糖-リン酸骨格ではなく、ペプチド骨格に連結された類似DNAであって、1991年にNielsen等により初めて合成された。PNAはLNA(Locked nucleic acid)またはMNA(Mopholino nucleic acid)のように人工的に合成された遺伝子認識物質の1つであり、基本骨格がポリアミド(polyamide)で構成されている。
【0049】
PNAは親和性(affinity)と選択性(selectivity)に非常に優れており、核酸分解酵素に対する安定性が高く、現存する制限酵素(restriction enzyme)で分解されない。また、熱/化学的な安定性が高く、長期保存が容易であるという利点がある。
【0050】
PNAは相補的な塩基配列の天然核酸と混成化(hybridization)反応を通じて二本鎖を形成する。長さが同じ場合、PNA/DNA二重鎖はDNA/DNA二重鎖より、PNA/RNA二重鎖はDNA/RNA二重鎖より安定である。また、PNAは単一塩基ミスマッチ(single base mismatch)のために二重鎖が不安定になる程度が大きいため、SNP(single nucleotide polymorphism)を検出する能力が天然核酸より優れている。
【0051】
つまり、PNA-DNA結合力がDNA-DNA結合力より非常に優れており、1つのヌクレオチド不一致(nucleotide mismatch)でも融解温度(Tm)値が通常15~20℃程度差がある。このような結合力の差を利用して、SNP(single-nucleotide polymorphism)及びIn/Del(insertion/deletion)などの塩基配列の変化を検出することができるようになる。
【0052】
本発明において、増幅産物に結合可能なプローブは、増幅産物内の任意の塩基配列および標的核酸の塩基配列と部分的または全体的に相補的な塩基配列を有することを特徴としてもよく、好ましくは、両末端にレポーター(reporter)と消光子(quencher)が連結されていることを特徴としてもよい。
【0053】
本発明において、前記プローブは、レポーターと消光子間の距離が近い時は信号発生が抑制されるが、レポーターと消光子間の距離が遠くなるにつれて信号強度が増加する。一般的に、前記プローブが相補的な塩基配列と混成化したときに、レポーターと消光子間の距離が最も遠くなるため、信号発生または信号強度の増加を通じて特定の塩基配列を検出することができる。
【0054】
本発明において、前記レポーターは、フルオレセイン(fluorescein)、フルオレセインクロロトリアジニル(fluorescein chlorotriazinyl)、ローダミングリーン(rodamine green)、ローダミンレッド(rodamine red)、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)、FITC、オレゴングリーン(Oregon green)、Alexa Fluor、FAM、JOE、ROX、HEX、テキサスレッド(Texas Red)、TET、TRITC、TAMRA、シアニン(Cyanine)系染料及びチアジカルボシアニン(thiadicarbocyanine)染料からなる群から選択される1つ以上の蛍光物質であることを特徴としてもよい。
【0055】
本発明において、前記消光子は、ダブシル(Dabcyl)、タムラ(TAMRA)、エクリプス(Eclipse)、DDQ、QSY、ブラックベリークエンチャー(Blackberry Quencher)、ブラックホールクエンチャー(Black Hole Quencher)、Qxl、アイオワブラック(Iowa black)FQ、アイオワブラックRQおよびIRDye QC-1からなる群から選択される1つ以上であることを特徴としてもよい。
【0056】
本発明の好ましい実施例において、前記核酸重合酵素による増幅産物の検出は、リアルタイム重合酵素連鎖反応(real-time PCR)を通じて行われ、この時、増幅産物の増加に伴う増幅曲線(amplification curve)を得てCt(threshold cycle)値を測定する方式で行われてもよいが、これに限定されない。前記Ct値を用いる方式の場合、試料内の標的核酸(標的塩基配列)が存在し、増幅産物が早く生成及び増加するほど、検出プローブによる信号発生量が早く増加し、thresholdに達するcycle数が減り、Ct値が少なく測定される原理を利用する。
【0057】
本発明において、前記分離された核酸は、重合酵素連鎖反応を阻害することができる他の物質がない状態の核酸であれば制限なく用いてもよく、好ましくは検体試料から分離されたことを特徴としてもよいが、これに限定されない。
【0058】
本発明は、他の観点から、
i) 標的核酸の検出部位以外の部位と混成化(hybridization)できる配列及び標的核酸と混成化しない配列を含むガイドプローブ(guide probe);
ii) 前記ガイドプローブの標的核酸と混成化しない配列に相補的な配列及び標的核酸の検出部位に相補的な配列を含む部分プライマー(partial primer);
iii) 標的核酸を除外した他の核酸の増幅を抑制するクランピングプローブ(clamping probe);および
iv) 前記部分プライマーと対をなして標的核酸を増幅できる特異的プライマー(specific primer);
を含む標的核酸増幅用PCR組成物に関する。
【0059】
本発明における「試料」は、様々な試料を含み、好ましくは、本発明の方法を用いて生物試料(biological sample)を分析する。より好ましくは、ウイルス種(species)と混合された試料であったり、前記ウイルスに感染した個体(例えば、人間、哺乳類及び魚類など)の試料であってもよく、植物、動物、人間、菌類、細菌及びウイルス起源の生物試料を分析してもよい。哺乳類またはヒト由来の試料を分析する場合、前記試料は特定の組織または器官から由来してもよい。組織の代表的な例としては、結合、皮膚、筋肉または神経組織が挙げられる。器官の代表的な例としては、目、脳、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ、血液、骨、軟骨、膵臓、腎臓、胆嚢、胃、小腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、腺および内部血管が挙げられる。分析される生物試料は、生物学的源からの任意の細胞、組織、流体液(fluid)、または本発明によってよく分析されることができる任意の他の媒体(medium)も含み、これは、人間、動物、人間または動物の消費のために製造された食品から得られた試料が含まれる。また、分析される生物試料は、体液試料を含み、これは、血液、血清、血漿、リンパ、母乳、尿、糞便、眼乳液、唾液、精液、脳抽出物(例えば、脳破砕物)、脊髄液、虫垂、脾臓および扁桃腺組織抽出物が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明は、他の観点において、前記組成物を含む標的核酸検出用キットに関する。
本発明において、前記キットは、バッファー(buffer)、DNA重合酵素(DNA polymerase)、DNA重合酵素補因子(DNA polymerase cofactor)及びデオキシリボヌクレオチド-5-三リン酸塩(dNTP)のような標的核酸増幅反応(例えば、重合酵素連鎖反応)を実施するのに必要な試薬を選択的に含んでもよい。選択的に、本発明のキットは、様々なオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)分子、逆転写酵素(reverse transcriptase)、様々なバッファー及び試薬、及びDNA重合酵素活性を抑制する抗体を含んでもよい。また、前記キットの特定の反応で使用される試薬の最適量は、本明細書の開示事項を習得した当業者によって容易に決定されてもよい。典型的には、本発明の装備は、前述の構成成分を含む別個のパッケージまたはコンパートメント(compartment)で作製してもよい。
【0061】
一実施例では、前記キットは、サンプルを入れる区画されたキャリア手段、試薬を含む容器、ガイドプローブ、クランピングプローブおよびプライマーを含む容器、および前記増幅産物を検出するためのプローブを含む容器を含んでもよい。
【0062】
前記キャリア手段は、ボトル、チューブなどの1つ以上の容器を含むのに適しており、各容器は、本発明の方法に使用される独立した構成要素を含む。本発明の明細書において、当該分野の通常の知識を有する者は、容器内の必要な製剤を容易に分配することができる。
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、あくまでも本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0064】
実施例1.ヒトゲノム内のG13D突然変異が発生したKRAS遺伝子の高敏感度増幅及び検出
1.1 プライマー及びプローブの作製
ヒトKRAS遺伝子は、体内の信号伝達系で機能するGTPベースのスイッチ(switch)タンパク質をコードしており、KRAS遺伝子の特定の突然変異は癌発生に関連していると知られている(Waters, A. M. and Der, C. J. 2018. Cold Spring Harb. Perspect. Med.8:a031435.)。前述したヒトKRAS遺伝子のexon 2、codon 13に位置するGGC>GAC塩基配列の変異をG13D突然変異と称する。
【0065】
本発明の新規な標的核酸の増幅方法を通じて前記KRAS遺伝子のG13D突然変異を特異的に増幅し検出するために、KRAS遺伝子のcodon 13近傍部位に特異的に混成化できるガイドプローブ1、G13D突然変異が起こってない野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近傍部位に混成化できるクランピングプローブ1、G13D突然変異が起こったKRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位に3'末端の一部が特異的に混成できる部分プライマー1、前記部分プライマー1と対(pair)をなして標的核酸を増幅できるようにKRAS遺伝子の塩基配列の一部と混成化できる特異的プライマー1を設計し、この時、前記ガイドプローブ1のC末端の一部の塩基配列と前記部分プライマー1の5'末端の一部の塩基配列が混成化できるようにした。また、設計されたガイドプローブ及びプライマーを通して増幅される産物を検出できるように検出プローブ1を設計して製造した(PANAGENE Inc., South Korea)。各プライマー及びプローブの塩基配列を表1と表2に開示した。
【0066】
【0067】
前記部分プライマー1は、19塩基配列の長さの単鎖オリゴヌクレオチドで作製し、下線で表示された塩基配列はガイドプローブ1の塩基配列の一部と相補的であり、イタリックで表示された塩基配列はG13D突然変異が発生したKRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の塩基配列と相補的な特性を有する。
【0068】
前記ガイドプローブ1は、23塩基配列の長さのPNAで作製し、イタリックで表示された塩基配列はKRAS遺伝子のcodon 13近隣部位の塩基配列と相補的であり、下線で表示された塩基配列は前記部分プライマー1の塩基配列の一部と相補的な特徴を有する。また、前記ガイドプローブ1のN末端には[K (lysine)]が取り付けられており、前記KRAS遺伝子の塩基配列と相補的な部位及び部分プライマー1の塩基配列の一部と相補的な部位の間に製造社(PANAGENE Inc., South Korea)のL35 linkerが連結されるようにした。
【0069】
前記クランピングプローブ1は、15塩基配列の長さのPNAで作製し、N末端には[K (lysine)]が取り付けられているようにした。
【0070】
前記検出プローブ1は、14塩基配列の長さのPNAで作製し、N末端には消光子(quencher)である[Dabcyl]が、C末端にはレポーター(reporter)である[FAM]がそれぞれ取り付けられており、PNAと[FAM]の間には製造社(PANAGENE Inc., South Korea)の[O linker]及び[K (lysine)]が連結されるように作製した。前記検出プローブ1は、相補的な塩基配列を有する増幅産物に混成化されるとき、前記消光子とレポーターが最も遠い距離に離れ、このときレポーターからの信号(蛍光)値が最大となり、前記信号を測定することで増幅産物を検出することができる。
【0071】
前記部分プライマー1は、KRAS遺伝子内の標的部位の塩基配列と相補的な塩基配列の長さが8に過ぎず、重合酵素連鎖反応(PCR)条件下で単独で前記標的部位に混成化することが難しく、ただし、前記標的部位の近傍に混成化するガイドプローブ1が存在する場合、前記ガイドプローブ1の塩基配列の一部と部分プライマー1の塩基配列の一部が混成化して容易に前記標的部位に混成化することができる。
【0072】
前記部分プライマー1は、KRAS遺伝子の標的核酸の塩基配列と混成化可能な塩基配列の長さが8に過ぎず、これは標的核酸と混成化可能な塩基配列の長さが18~30個の通常のプライマーより短い。したがって、もし部分プライマー1と前記標的核酸混成化部位の間に1つ以上の相補的でない(mismatch)塩基配列が存在すれば、前記相補的でない塩基配列が混成化効率に及ぼす影響が通常のプライマーより大きくなり、結果として通常のプライマーより塩基配列の微細な変化をよりよく検出することができる。
【0073】
また、もし、前記部分プライマー1とG13D突然変異が起こってない野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の配列の間に1つ以上の相補的でない塩基配列が存在して混成化効率が低くなると、前記クランピングプローブ1は、前記野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の塩基配列に混成され、前記部分プライマー1の混成化をさらに阻止し、これを用いてクランピングプローブを使用しなかった場合よりもさらに高敏感度で塩基配列の微細な変化を検出することができる。
【0074】
1.2 増幅産物の生成及び確認
約10,000個(copy)の野生型(wild-type) KRAS遺伝子標的核酸が存在する条件、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約500個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約100個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(1%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約50個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約25個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.25%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約10個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.1%)で前記意図した増幅産物を形成するように、10 pmoleのガイドプローブ1と5 pmoleのクランピングプローブ1、10 pmoleの部分プライマー1、4 pmoleの特異的プライマー1、3 pmoleの検出プローブ1を含む重合酵素連鎖反応用組成物を製造した。
【0075】
前記重合酵素連鎖反応用組成物には、通常、重合酵素連鎖反応に使用される核酸重合酵素(DNA polymerase)とともに、バッファー(buffer)、デオキシリボヌクレオチド-5-三リン酸塩(dNTP)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、界面活性剤(detergent)などの要素が含まれた。
【0076】
重合酵素連鎖反応のための温度調節は一般的なthermal cyclerを通じて行われ、initial denaturation [95℃, 5分]の後、15 cycleの第1ステップであるdenaturation [95℃, 20秒] - annealing [63℃、20秒] - extension [72℃, 20秒]を経て、35 cycleの第2ステップであるdenaturation [95℃, 10秒] - measure [50℃, 10秒] - denaturation [95℃, 20秒] - annealing [58℃, 20秒] - extension [72℃, 20秒]で行った。前記第2ステップのmeasure stepで毎cycleごとにFAM channelの蛍光値を測定して増幅曲線を導出した。
【0077】
その結果、G13D突然変異が発生したKRAS標的核酸が混合されたすべての条件で増幅曲線上の蛍光信号の上昇が明確に観察され、一方、野生型KRAS標的核酸のみが存在する条件では増幅曲線上の蛍光信号の上昇が観察されないか、非常に弱く観察された。すなわち、G13D突然変異の標的核酸が約500個、100個、50個、25個、10個混合された条件でそれぞれ平均13.6, 14.9, 16.0, 17.9, 18.9のCt値が観察された一方、野生型のみが存在する条件ではCt値が算出されないか(ND; not determined)、29.1の比較的に大きなCt値が観察され、結果的にCt値の差を通じて非常に微量に存在するG13D突然変異を特異的に確認することができた(
図4)。
【0078】
実施例2.ヒトゲノム内のG13D突然変異が発生したKRAS遺伝子の検出限界の確認
2.1 プライマー及びプローブの作製
本発明の新規な標的核酸の増幅方法を通じて前記KRAS遺伝子のG13D突然変異を特異的に増幅して検出するために、KRAS遺伝子のcodon 13近傍部位に特異的に混成化できるガイドプローブ1、G13D突然変異が起こってない野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近傍部位に混成化できるクランピングプローブ1、G13D突然変異が起こったKRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位に3'末端の一部が特異的に混成化できる部分プライマー1、前記部分プライマー1と対(pair)をなして標的核酸を増幅できるようにKRAS遺伝子の塩基配列の一部と混成化できる特異的プライマー1を設計し、この時、前記ガイドプローブ1のC末端の一部の塩基配列と前記部分プライマー1の5'末端の一部の塩基配列が混成化できるようにした。また、設計されたガイドプローブ及びプライマーを通じて増幅される産物を検出できるように検出プローブ1を設計して製造した(PANAGENE Inc., South Korea)。
【0079】
一方、KRAS遺伝子のG13D突然変異の存在有無にかかわらず、試料内のKRAS遺伝子を特異的に増幅して検出するために、KRAS遺伝子のexon 6に特異的に混成化できるガイドプローブ2、KRAS遺伝子のexon 6に3'末端の一部が特異的に混成化できる部分プライマー2、前記部分プライマー2と対をなして標的核酸を増幅できるように、KRAS遺伝子のexon 6塩基配列の一部と混成化できる特異的プライマー2を設計し、この時、前記ガイドプローブ2のC末端の一部の塩基配列と前記部分プライマー2の5'末端の一部の塩基配列が混成化できるようにした。また、設計されたガイドプローブ及びプライマーを通して増幅される産物を検出できるように検出プローブ2を設計して製造した(PANAGENE Inc., South Korea)。各プライマー及びプローブの塩基配列を表3と表4に開示した。
【0080】
【0081】
前記部分プライマー1は、19塩基配列の長さの単鎖オリゴヌクレオチドで作製し、下線で表示された塩基配列はガイドプローブ1の塩基配列の一部と相補的であり、イタリックで表示された塩基配列はG13D突然変異が発生したKRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の塩基配列と相補的な特性を有する。
【0082】
前記部分プライマー2は、19塩基配列の長さの単鎖オリゴヌクレオチドで作製し、下線で表示された塩基配列はガイドプローブ2の塩基配列の一部と相補的であり、イタリックで表示された塩基配列はKRAS遺伝子のexon 6塩基配列の一部と相補的な特性を有する。
【0083】
前記ガイドプローブ1は、23塩基配列の長さのPNAで作製し、イタリックで表示された塩基配列はKRAS遺伝子のcodon 13の近隣部位の塩基配列と相補的であり、下線で表示された塩基配列は前記部分プライマー1の塩基配列の一部と相補的な特徴を有する。また、前記ガイドプローブ1のN末端には[K (lysine)]が取り付けられており、前記KRAS遺伝子の塩基配列と相補的な部位及び部分プライマー1の塩基配列の一部と相補的な部位の間に製造社(PANAGENE Inc., South Korea)のL35 linkerが連結されるようにした。
【0084】
前記ガイドプローブ2は、25塩基配列の長さのPNAで作製し、イタリックで表示された塩基配列はKRAS遺伝子のexon 6塩基配列の一部と相補的であり、下線で表示された塩基配列は前記部分プライマー2の塩基配列の一部と相補的な特徴を有する。また、前記ガイドプローブ2のN末端には[K (lysine)]が取り付けられており、前記KRAS遺伝子の塩基配列と相補的な部位及び部分プライマー2の塩基配列の一部と相補的な部位の間に製造社(PANAGENE Inc., South Korea)のL35 linkerが連結されるようにした。
【0085】
前記クランピングプローブ1は、15塩基配列の長さのPNAで作製し、N末端には[K (lysine)]が取り付けられているようにした。
【0086】
前記検出プローブ1は、14塩基配列の長さのPNAで作製し、N末端には消光子(quencher)である[Dabcyl]が、C末端にはレポーター(reporter)である[FAM]がそれぞれ取り付けられており、PNAと[FAM]の間には製造社(PANAGENE Inc., South Korea)の[O linker]及び[K (lysine)]が連結されるように作製した。
【0087】
前記検出プローブ2は、13塩基配列の長さのPNAで作製し、N末端には消光子(quencher)である[Dabcyl]が、C末端にはレポーター(reporter)である[HEX]がそれぞれ取り付けられており、PNAと[HEX]の間には製造社(PANAGENE Inc., South Korea)の[O linker]及び[K (lysine)]が連結されるように作製した。
【0088】
前記検出プローブ1と検出プローブ2は、相補的な塩基配列を持つ増幅産物に混成化されるとき、前記消光子とレポーターが最も遠い距離に離れ、このときレポーターからの信号(蛍光)値が最大となり、前記信号を測定することで増幅産物を検出することができる。
【0089】
前記部分プライマー1は、KRAS遺伝子内の標的部位の塩基配列と相補的な塩基配列の長さが8に過ぎず、重合酵素連鎖反応(PCR)条件下で単独で前記標的部位に混成化することが難しく、ただし、前記標的部位の近傍に混成化するガイドプローブ1が存在する場合、前記ガイドプローブ1の塩基配列の一部と部分プライマー1の塩基配列の一部が混成化し、容易に前記標的部位に混成化することができる。
【0090】
前記部分プライマー1は、KRAS遺伝子の標的核酸の塩基配列と混成化できる塩基配列の長さが8に過ぎず、これは標的核酸と混成化できる塩基配列の長さが18~30個の通常のプライマーより短い。したがって、もし部分プライマー1と前記標的核酸混成化部位の間に1つ以上の相補的でない(mismatch)塩基配列が存在すれば、前記相補的でない塩基配列が混成化効率に及ぼす影響が通常のプライマーより大きくなり、結果として通常のプライマーより塩基配列の微細な変化をよりよく検出することができる。
【0091】
また、もし、前記部分プライマー1とG13D突然変異が起こってない野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の塩基配列の間に1つ以上の相補的でない配列が存在して混成化効率が低くなると、前記クランピングプローブ1は、前記野生型KRAS遺伝子のcodon 13及び近隣部位の塩基配列に混成化し、前記部分プライマー1の混成化をさらに阻止し、これを用いてクランピングプローブを使用しない場合よりもさらに高敏感度で塩基配列の微細な変化を検出することができる。
【0092】
前記部分プライマー2は、KRAS遺伝子内の標的部位の塩基配列と相補的な塩基配列の長さが9に過ぎず、重合酵素連鎖反応(PCR)条件下で単独で前記標的部位に混成化することが難しく、ただし、前記標的部位の近傍に混成化するガイドプローブ2が存在する場合、前記ガイドプローブ2の塩基配列の一部と部分プライマー2の塩基配列の一部が混成化し、容易に前記標的部位に混成化することができる。
【0093】
前記部分プライマー2の3'末端はKRAS遺伝子のexon 6塩基配列の一部と混成化し、これはKRAS遺伝子のG13D突然変異の存在有無に関係なく起こりうるので、このような特性を考慮して前記部分プライマー2による増幅を対照 群(control)として活用してもよい。
【0094】
つまり、もし試料内のKRAS遺伝子のG13D突然変異が存在しない場合、前記部分プライマー1による増幅(Target増幅)は抑制される一方、前記部分プライマー2による増幅(Control増幅)は円滑に表れ、2つの増幅曲線の計算されたCt値間の差(ΔCt)が大きく表れ、一方、試料内にKRAS遺伝子のG13D突然変異が存在する場合、前記部分プライマー1と部分プライマー2により増幅が全て円滑に行われ、2つの増幅曲線を通じて計算されたCt値間の差が小さく表れるので、これを用いてG13D突然変異の存在有無を簡単に判断することができる。
【0095】
2.2 増幅産物の生成及び確認
まず、クランピングプローブが注入されていない条件でG13D突然変異の検出限界を確認できるように、約10,000個の野生型(wild-type)KRAS遺伝子標的核酸が存在する条件、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約1,000個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(10%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約500個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約100個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(1%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約50個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約25個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.25%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約10個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.1%)で前記意図した増幅産物を形成できる10 pmoleのガイドプローブ1と15 pmoleのガイドプローブ2、10 pmoleの部分プライマー1、4 pmoleの部分プライマー2、4 pmoleの特異的プライマー1、2 pmoleの特異的プライマー2、3 pmoleの検出プローブ1、3 pmoleの検出プローブ2を含む重合酵素連鎖反応用組成物を製造した。
【0096】
前記重合酵素連鎖反応用組成物には、通常、重合酵素連鎖反応に使用される核酸重合酵素(DNA polymerase)と共に、バッファー(buffer)、デオキシリボヌクレオチド-5-三リン酸塩(dNTP)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、界面活性剤(detergent)などの要素が含まれていた。
【0097】
重合酵素連鎖反応のための温度調節は、一般的なthermal cyclerを通じて行われ、initial denaturation [95℃, 5分]の後、15 cycleの最初のステップであるdenaturation [95℃, 20秒] - annealing [63℃、20秒] - extension [72℃, 20秒]を経て、35 cycleの第2ステップであるdenaturation [95℃, 10秒] - measure [50℃, 10秒] - denaturation [95℃, 20秒] - annealing [58℃, 20秒] - extension [72℃, 20秒]で行った。前記第2ステップのmeasure stepで毎cycleごとにFAM及びHEX channelの蛍光値を測定して増幅曲線を導出した。
【0098】
その後、FAM channelから導出された増幅曲線からCt値を算出して「Target部位増幅Ct」と称し、HEX channelから導出された増幅曲線からCt値を算出して「Control部位増幅Ct」と称した。前記Control部位増幅CtからTarget部位増幅Ctを引いてΔCt値を求めた結果、0.5~10%のG13D突然変異が注入された条件では、突然変異注入条件と野生型のみが注入された条件の間の明確なΔCt値の差が確認され、0.1~0.25%のG13D突然変異が注入された条件では、一部の反応で野生型のみが注入された条件と類似した水準のΔCt値の差が表れ、区別が困難であった。したがって、クランピングプローブが注入されていない条件での検出限界は0.5%水準と確認された。
【0099】
一方、クランピングプローブが注入された条件で追加的に実験して前記G13Dの検出結果と比較できるように、約10,000個(copy)の野生型(wild-type)KRAS遺伝子標的核酸が存在する条件、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約1,000個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(10%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約500個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約100個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(1%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約50個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.5%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約25個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.25%)、または約10,000個の野生型KRAS遺伝子標的核酸と約10個のG13D突然変異が起こったKRAS遺伝子標的核酸が混合された条件(0.1%)で前記意図した増幅産物を形成することができる10 pmoleのガイドプローブ1と15 pmoleのガイドプローブ2、5 pmoleのクランピングプローブ1、10 pmoleの部分プライマー1、4 pmoleの部分プライマー2、4 pmoleの特異的プライマー1、2 pmoleの特異的プライマー2、3 pmoleの検出プローブ1、3 pmoleの検出プローブ2を含む重合酵素連鎖反応用組成物を製造した。
【0100】
前記重合酵素連鎖反応用組成物には、通常、重合酵素連鎖反応に使用される核酸重合酵素(DNA polymerase)と共に、バッファー(buffer)、デオキシリボヌクレオチド-5-三リン酸塩(dNTP)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、界面活性剤(detergent)などの要素が含まれた。
【0101】
重合酵素連鎖反応のための温度調節は、一般的なthermal cyclerを通じて行われ、initial denaturation [95℃, 5分]の後、15 cycleの第1ステップであるdenaturation [95℃, 20秒] - annealing [63℃、20秒] - extension [72℃, 20秒]を経て、35 cycleの第2ステップであるdenaturation [95℃, 10秒] - measure [50℃, 10秒] - denaturation [95℃, 20秒] - annealing [58℃, 20秒] - extension [72℃, 20秒]で行った。前記第2ステップのmeasure stepで毎cycleごとにFAM及びHEX channelの蛍光値を測定して増幅曲線を導出した。
【0102】
その後、FAM channelから導出された増幅曲線からCt値を算出して「Target部位増幅Ct」と称し、HEX channelから導出された増幅曲線からCt値を算出して「Control部位増幅Ct」と称した。もし増幅曲線の上昇が起こらず、Ct値を算出できない場合は、前記重合酵素連鎖反応用温度調節の第2ステップのcycle数を参考してCt値を任意に35とした。
【0103】
前記Control部位増幅CtからTarget部位増幅Ctを引いてΔCt値を求めた結果、G13D突然変異が注入された条件と野生型のみが注入された条件の間の明確なΔCt値の差が確認された。すなわち、G13D突然変異が注入されたすべての条件(0.1~10%)でΔCt値が-10以上であることに対し、野生型のみが注入された場合にはΔCt値が-20未満となり、明確な区分ができた。したがって、クランピングプローブが注入された条件での検出限界は0.1%以下の水準と確認された。
【0104】
以上の結果から、ガイドプローブ、クランピングプローブ、部分プライマー、特異的プライマーを含む重合酵素連鎖反応用組成物を用いた標的突然変異核酸検出方法を用いて、0.1%の低濃度または反応当たり約10個(copy)に該当する極微量の標的核酸だけが存在しても検出できる水準の高い敏感度が確認され、特に、クランピングプローブの注入により、非標的野生型核酸の増幅がより効果的に抑制され、敏感度の向上が行われることを確認した(
図5、6)。
【0105】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、これらの具体的な記述は単なる好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されないことは明らかであるといえる。従って、本発明の実質的な範囲は、添付した請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明による標的核酸の増幅方法は、ガイドプローブを用いてサンプル内に存在する混成化可能な全ての核酸に結合しながら部分プライマーの標的核酸の検出部位への結合を助けるため、非常に低い濃度で存在する標的核酸の増幅が可能であり、部分プライマーの配列特異性により標的核酸以外の核酸は増幅速度に差が生じ、クランピングプローブにより標的核酸以外の核酸に対する部分プライマーの結合が防止され、標的核酸を高い特異度で検出できるという利点があるので、分子診断、出生前診断、早期診断、癌診断、遺伝関連診断、遺伝型質診断、感染菌の診断、薬剤耐性菌の判別、法医学、生物体の種判別などに有用である。
【配列表】
【国際調査報告】