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特表2024-510852植込み用に改善された特徴を有する組織修復スキャフォールド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-11
(54)【発明の名称】植込み用に改善された特徴を有する組織修復スキャフォールド
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20240304BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240304BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/18
A61L27/22
A61L27/24
A61L27/52
A61L27/50
A61L27/58
A61L27/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501641
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2022021005
(87)【国際公開番号】W WO2022198081
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/163,644
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523357647
【氏名又は名称】オーキシリウム バイオテクノロジーズ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ナサニエル
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA13
4C081BA16
4C081CA16
4C081CA18
4C081CD12
4C081CD15
4C081DA12
4C081DA16
4C081DB03
4C097AA20
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097EE02
4C097EE19
(57)【要約】
【解決手段】スキャフォールドの設置において助けとなる改善された特徴を有する組織修復スキャフォールドを本明細書において説明する。そのような特徴は、位置合わせマーカーと、内側チャネルの終端点を表わす外側マーカーと、増大されたシース厚さとを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部および第2の端部を有するシースと、
前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断するマイクロチャネルと、
前記シースの外側表面上に設けられ、実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在しているマーカーと
を含む組織修復スキャフォールド。
【請求項2】
前記マーカーが、溝を含む、請求項1に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項3】
前記シースの前記外側表面が、その上に設けられた少なくとも2、3、または4本の溝を含む、請求項2に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項4】
前記シースの前記外側表面が、その上に設けられた4本の溝を含む、請求項2または3に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項5】
前記溝が、前記シースの周囲に略均等に分散している、請求項3または4に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項6】
前記溝が、前記マイクロチャネルと実質的に平行である、請求項2~5のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項7】
前記溝が、少なくとも約50ミクロンの幅または深さを有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項8】
前記組織修復スキャフォールドが、前記シースの前記内側に設けられた複数のマイクロチャネルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項9】
前記複数のマイクロチャネルが、実質的に平行である、請求項8に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項10】
前記マーカーが、前記複数のマイクロチャネルのそれぞれと実質的に平行である、請求項8または9に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項11】
前記スキャフォールドの長さが、約0.5cm~約30cmである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項12】
前記シースの内径が、約1.5mm~約10mmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項13】
前記シース、前記マイクロチャネル、またはその両方が、生分解性ポリマーから作製される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される、請求項13に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項15】
前記マイクロチャネルの壁が、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項16】
前記マイクロチャネルの壁が、ヒドロゲル材料を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項17】
前記シースが、前記第1の端部、前記第2の端部、またはその両方を越えて延びるオーバーハング構造を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項18】
前記マイクロチャネルが、神経組織の成長を可能とするよう構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項19】
前記神経組織が、脊髄神経または末梢神経を含む、請求項18に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項20】
第1の端部および第2の端部を有し、少なくとも約250ミクロンの厚さを有するシースと、
前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断する複数のマイクロチャネルと
を含む組織修復スキャフォールド。
【請求項21】
前記シースが、約250ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する、請求項20に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項22】
前記シースが、約300、約350、約400、約450、約500、約550、または約600ミクロンの厚さを有する、請求項20または21に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項23】
前記シースが、生分解性ポリマーから作製される、請求項20~22のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項24】
前記生分解性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される、請求項23に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項25】
前記生分解性ポリマーが、ポリカプロラクトンである、請求項23または24に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項26】
前記シースが、約40%vol~約75%volの多孔度を有する、請求項20~25のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項27】
前記組織修復スキャフォールドが、約7~約200本のマイクロチャネルを含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項28】
各マイクロチャネルが、約10ミクロン~約60ミクロンの壁厚を有する、請求項20~27のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項29】
前記マイクロチャネルの壁が、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む、請求項20~28のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項30】
前記マイクロチャネルの壁が、ヒドロゲル材料を含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項31】
前記マイクロチャネルの形状が、六角形、丸形、三角形、矩形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形、楕円形、または台形である、請求項20~30のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項32】
前記スキャフォールドの長さが、約0.5cm~約30cmである、請求項20~31のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項33】
前記シースの内径が、約1.5mm~約10mmである、請求項20~32のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項34】
前記シースが、前記第1の端部、前記第2の端部、またはその両方を越えて延びるオーバーハング構造を含む、請求項20~33のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項35】
前記マイクロチャネルが、神経組織の成長を可能とするよう構成されている、請求項20~34のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項36】
前記神経組織が、脊髄神経または末梢神経である、請求項35に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項37】
第1の端部および第2の端部を有するマイクロチャネルと、
シースであって、
前記シースの内側に設けられた前記マイクロチャネル、
前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造、および
前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にあるマーカー
を含むシースと
を含む組織修復スキャフォールド。
【請求項38】
前記マーカーが、前記シースの外側の、前記第1の端部または前記第2の端部に相当する前記位置に溝を含む、請求項37に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項39】
前記溝が、前記シースの前記外側を周方向に包含している、請求項38に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項40】
前記溝が、少なくとも約50ミクロンの深さまたは幅を有する、請求項38または39に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項41】
前記マーカーが、少なくとも200ミクロンの長さを有する、請求項37~40のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項42】
前記組織修復スキャフォールドが、前記第1の端部と前記第2の端部の両方を覆うオーバーハング構造を含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項43】
前記オーバーハング構造が、前記第1の端部、または前記第2の端部を少なくとも約0.5mm越えて延びている、請求項37~42のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項44】
前記オーバーハング構造が、少なくとも1針の縫合を受けるよう構成されている、請求項37~43のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項45】
前記シースが、生分解性ポリマーから作製される、請求項37~44のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項46】
前記生分解性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される、請求項45に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項47】
前記組織修復スキャフォールドが、複数のマイクロチャネルを含む、請求項37~46のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項48】
前記組織修復スキャフォールドが、約7~約200本のマイクロチャネルを含む、請求項37~47のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項49】
各マイクロチャネルが、約10ミクロン~約60ミクロンの壁厚を有する、請求項47または48に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項50】
前記マイクロチャネルの形状が、六角形、丸形、三角形、矩形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形、楕円形、または台形である、請求項47~49のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項51】
前記マイクロチャネルの壁が、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む、請求項37~50のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項52】
前記マイクロチャネルの壁が、ヒドロゲル材料を含む、請求項37~50のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項53】
前記スキャフォールドの長さが、約0.5cm~約30cmである、請求項37~52のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項54】
前記シースの内径が、約1.5mm~約10mmである、請求項37~53のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項55】
前記マイクロチャネルが、神経組織の成長を可能とするよう構成されている、請求項37~54のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項56】
前記神経組織が、脊髄神経または末梢神経である、請求項55に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項57】
a.第1の端部および第2の端部を有するシースと、
b.前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断するマイクロチャネルと、
c.前記シースの外側表面上に設けられた少なくとも1つのマーカーと
を含む組織修復スキャフォールド。
【請求項58】
前記マーカーが、前記シースの外側表面上に設けられるとともに実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在している特徴を含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項59】
前記マーカーが、前記シースの長さに沿って延在し、かつ前記マイクロチャネルと平行である、請求項1~58のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項60】
前記マーカーが、溝を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項61】
前記シースの前記外側表面が、その上に設けられた少なくとも2、3、または4本の溝を含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項62】
装置の位置合わせおよび/または前記装置に印加されたねじれを示す、複数のマーカーをさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項63】
前記シースの前記外側表面が、その上に設けられた4本の溝を含む、請求項1~62のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項64】
前記溝が、前記シースの周囲に略均等に分散している、請求項1~63のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項65】
前記溝が、前記マイクロチャネルと実質的に平行である、請求項1~64のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項66】
前記溝が、少なくとも約50ミクロンの幅または深さを有する、請求項1~65のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項67】
前記組織修復スキャフォールドが、前記シースの前記内側に設けられた複数のマイクロチャネルを含む、請求項1~66のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項68】
前記複数のマイクロチャネルが、実質的に平行である、請求項1~67のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項69】
前記マーカーが、前記複数のマイクロチャネルのそれぞれと実質的に平行である、請求項1~68のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項70】
前記マーカーが、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造と、前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にあるマーカーとを含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項71】
前記マーカーが、前記シースの前記外側の、前記第1の端部または前記第2の端部に相当する前記位置に溝を含む、請求項1~70のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項72】
前記溝が、前記シースの前記外側を周方向に包含している、請求項1~71のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項73】
前記溝が、少なくとも約50ミクロンの深さまたは幅を有する、請求項1~72のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項74】
前記マーカーが、少なくとも200ミクロンの長さを有する、請求項1~73のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項75】
前記組織修復スキャフォールドが、前記第1の端部と前記第2の端部の両方を覆うオーバーハング構造を含む、請求項1~74のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項76】
前記オーバーハング構造が、前記第1の端部または前記第2の端部を少なくとも約0.5mm越えて延びている、請求項1~75のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項77】
前記オーバーハング構造が、少なくとも1針の縫合を受けるよう構成されている、請求項1~76のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項78】
第1の複数のマーカーおよび第2の複数のマーカーをさらに含み、前記第1の複数のマーカーが、前記シースの外側表面上に設けられるとともに実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する2つ以上の特徴を含み、前記第1の複数のマーカーが、前記シースの長さに沿って延在し、かつ前記マイクロチャネルと平行であり、前記第2の複数のマーカーが、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造を含み、前記第2の複数のマーカーが、前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にある特徴を含む、請求項1~77のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項79】
前記第1の複数のマーカーおよび前記第2の複数のマーカーが、内部での前記マイクロチャネルの位置合わせ、および隣接する神経組織に対する前記マイクロチャネルの位置付けを示すよう構成されている、請求項1~78のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールド。
【請求項80】
請求項1~79のいずれか一項に記載の組織修復スキャフォールドを、必要とする対象の神経損傷部位に植え込むことを含む、神経機能の回復方法。
【請求項81】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、前記損傷部位にわたる神経機能の回復を可能とする、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、第1の神経端部が、第1の端部を起点とするマイクロチャネルを通して再成長するように、前記第1の神経端部を装置に縫合することを含む、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、第2の神経端部が、第2の端部を起点とする前記マイクロチャネルを通して再成長するように、前記第2の神経端部を前記装置に縫合することをさらに含む、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記神経が、末梢神経または脊髄神経である、請求項80~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記神経が、完全にまたは部分的に損傷している、請求項80~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記神経損傷部位が、神経端部間に約0.5mm~約10cmの欠損部を含む、請求項80~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記神経損傷部位の近位端の前記第1の端部に前記マーカーを位置合わせすること、および前記神経損傷部位の遠位端の前記第2の端部に前記マーカーを位置合わせすることをさらに含む、請求項80~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記マーカーが、前記神経損傷部位にわたり再生されることになる軸索の生理学的に正確な方向と位置合わせされる、請求項80~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、前記マイクロチャネルの前記位置合わせを検証し、かつ前記装置がねじれを印加されていないことを検証するために前記第1の複数のマーカーを利用して、前記神経損傷部位に前記スキャフォールドを挿入することを含む、請求項80~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、隣接する神経組織に対する前記マイクロチャネルの位置、および前記隣接する神経組織に対する前記オーバーハンドの位置付けを検証するために前記第2の複数のマーカーを利用して、前記神経損傷部位に前記スキャフォールドを挿入することを含む、請求項80~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、前記マイクロチャネルを穿刺することなく、隣接する組織に前記スキャフォールドを縫合することを含む、請求項80~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記組織修復スキャフォールドを植え込むことが、宿主の軸索の位置合わせに対して平行に隣接する組織に前記スキャフォールドを縫合することを含み、前記装置が、ねじれを印加されていない、請求項80~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
a)前記マイクロチャネルを穿刺しないこと、またはb)前記スキャフォールドの平行な位置合わせおよびその中の軸索の位置合わせを促すことのうちの1つ以上の結果として、神経組織の再生が促進される、請求項80~92のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2021年3月19日提出の米国仮出願第63/163,644号の利益を主張するものであり、上記出願は、参照により全体として本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
神経損傷は一般的に、永久的な損傷であり、かつ、運動機能および身体的感覚の喪失をもたらす。当該損傷は、個体が受け得る中でもっとも強烈で衰弱させるような損傷のひとつである。あいにく、神経損傷は、神経に対する外傷の結果としてよく起こり、かつ、毎年何万人もの個体の麻痺や障害をもたらす。当該技術分野において、神経組織に対する損傷の治癒を促すことにより、運動機能および身体的感覚を回復させ、かつ、神経損傷を受けている個体の麻痺や障害を防ぐことのできる医療技術の改善が求められている。
【発明の概要】
【0003】
神経組織の再生に有用なそのようなある装置としては、対象への植込み用に設計されたマイクロチャネルを有する組織修復スキャフォールドが挙げられる。そのような装置は、神経の肉体的損傷および病変の処置に有用である。ただし、脊髄神経および末梢神経に対する神経損傷のための改善された組織修復スキャフォールドが求められている。
【0004】
神経系は、正しい医療介入により損傷後に再生する能力を有する。しかし、損傷後の機能的再生は、損傷を受けた軸索が神経支配された組織と位置ずれを生じたり、接触しなくなったりすると、大いに不完全となり、このことは神経損傷の大抵の場合において一般的に起こる。主要な機能障害は、標的組織の不十分な神経再支配および苦痛を与える神経腫形成をもたらし、かつ含む。神経修復のための現在の外科治療は、自己の神経移植組織の配置を伴う。これら移植組織には、ドナー部位の病的状態、ドナー移植組織の限られた供給、ならびに手術の時間および複雑さを含む多くの不利な点がある。
【0005】
末梢神経の修復を支持するスキャフォールドの試験的開発により、市販の神経ガイドがもたらされた。しかし、これらスキャフォールドの多くは、再生する軸索がそれらの適正な標的と位置ずれを生じてしまう単一の大径チャネルしか有さない。切断されたラットの坐骨神経モデルにおける植込みの際、再生する軸索は、スキャフォールドに入ってまもなく近位端に沿って線状配向を失う。この結果、軸索の配向不整および神経腫による痛みが生じる。さらに、マイクロチャネルの穿刺、または装置とその中のマイクロチャネルとの位置ずれに起因する外科的統合の過失による植込み不良の可能性もある。当該技術分野において、神経組織の再生を促すための改善された神経組織修復スキャフォールドが求められている。
【0006】
対象への植込み用に改善された特性および特徴を有する組織修復スキャフォールド(例えば、脊髄神経または末梢神経などの神経修復のためのスキャフォールド)を本明細書中で提供する。本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドは、外側シース内に設けられた1本以上のチャネルを有する。マイクロチャネルは、切断されたまたは損傷を受けた神経が、装置を通して再成長し、かつ切断されたまたは損傷を受けた神経接続を再現できるよう構成されている。いくつかの場合、装置は、神経再接続にあたり神経の遠位端および近位端の改善された接続のためのスキャフォールドの各チャネルを通した個々の軸索へのより良好な誘導を提供するという利点をもたらす複数のチャネル(「マルチチャネル」装置)を含む。
【0007】
いくつかの態様において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドにより、外科医は、必要とする対象にスキャフォールドをより容易に、簡単に、かつ正確に挿入できる。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、スキャフォールドが適正に位置合わせされているか(例えば、1本以上のマイクロチャネルが線状構成となっていること、およびスキャフォールドがねじれていないこと)を植込みを行う外科医が容易に確認できるようにする外部マーカーを有する。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、オーバーハング領域の開始箇所を表わし、繊細な内側マイクロチャネルに穴を開け、スキャフォールドの効能を損なうことなく、外科医がオーバーハングに損傷をうけたまたは切断された神経端部を縫合可能とする外部マーカーを有する。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、他のマルチチャネル神経修復スキャフォールドと比較してシース厚さが大きいため(例えば、500ミクロン)、植込み中のスキャフォールド破断を防ぐ増大した強度および安定性、ならびに植込み後の組織再生中の神経断片への改善された接着性を有するスキャフォールドを吸収する(imbibing)。
【0008】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有するシースと、前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断するマイクロチャネルと、前記シースの外側表面上に設けられ、実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在しているマーカーとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記マーカーは、溝を含む。いくつかの実施形態において、前記シースの前記外側表面は、その上に設けられた少なくとも2、3、または4本の溝を含む。いくつかの実施形態において、前記シースの前記外側表面は、その上に設けられた4本の溝を含む。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記シースの周囲に略均等に分散している。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記マイクロチャネルと実質的に平行である。いくつかの実施形態において、前記溝は、少なくとも約50ミクロンの幅または深さを有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、前記シースの前記内側に設けられた複数のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のマイクロチャネルは、実質的に平行である。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記複数のマイクロチャネルのそれぞれと実質的に平行である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記スキャフォールドの長さは、約0.5cm~約30cmである。いくつかの実施形態において、前記シースの内径は、約1.5mm~約10mmである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記シース、前記マイクロチャネル、またはその両方は、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、ヒドロゲル材料を含む。いくつかの実施形態において、前記シースは、前記第1の端部、前記第2の端部、またはその両方を越えて延びるオーバーハング構造を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルは、神経組織の成長を可能とするよう構成されている。いくつかの実施形態において、前記神経組織は、脊髄神経または末梢神経を含む。
【0015】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有し、少なくとも約250ミクロンの厚さを有するシースと、前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断する複数のマイクロチャネルとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記シースは、約250ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、前記シースは、約300、約350、約400、約450、約500、約550、または約600ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、前記シースは、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトンである。いくつかの実施形態において、前記シースは、約40%vol~約75%volの多孔度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、約7~約200本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、各マイクロチャネルは、約10ミクロン~約60ミクロンの壁厚を有する。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、ヒドロゲル材料を含む。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの形状は、六角形、丸形、三角形、矩形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形、楕円形、または台形である。いくつかの実施形態において、前記スキャフォールドの長さは、約0.5cm~約30cmである。いくつかの実施形態において、前記シースの内径は、約1.5mm~約10mmである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記シースは、前記第1の端部、前記第2の端部、またはその両方を越えて延びるオーバーハング構造を含む。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルは、神経組織の成長を可能とするよう構成されている。いくつかの実施形態において、前記神経組織は、脊髄神経または末梢神経である。
【0019】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有するマイクロチャネルと、シースであって、前記シースの内側に設けられた前記マイクロチャネル、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造、および前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にあるマーカーを含むシースとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記シースの外側の、前記第1の端部または前記第2の端部に相当する前記位置に溝を含む。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記シースの前記外側を周方向に包含している。いくつかの実施形態において、前記溝は、少なくとも約50ミクロンの深さまたは幅を有する。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、少なくとも200ミクロンの長さを有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、前記第1の端部と前記第2の端部の両方を覆うオーバーハング構造を含む。いくつかの実施形態において、前記オーバーハング構造は、前記第1の端部、または前記第2の端部を少なくとも約0.5mm越えて延びている。いくつかの実施形態において、前記オーバーハング構造は、少なくとも1針の縫合を受けるよう構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記シースは、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、前記生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、およびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、複数のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、約7~約200本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、各マイクロチャネルは、約10ミクロン~約60ミクロンの壁厚を有する。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの形状は、六角形、丸形、三角形、矩形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形、楕円形、または台形である。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、前記壁の中に設けられた複数の孔を含む。いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルの壁は、ヒドロゲル材料を含む。いくつかの実施形態において、前記スキャフォールドの長さは、約0.5cm~約30cmである。いくつかの実施形態において、前記シースの内径は、約1.5mm~約10mmである。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記マイクロチャネルは、神経組織の成長を可能とするよう構成されている。いくつかの実施形態において、前記神経組織は、脊髄神経または末梢神経である。
【0025】
一態様において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドを、必要とする対象の神経損傷部位に植え込むことを含む、神経機能の回復方法を本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、前記損傷部位にわたる神経機能の回復を可能とする。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第1の神経端部が、第1の端部を起点とするマイクロチャネルを通して再成長するように、前記第1の神経端部を装置に縫合することを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第2の神経端部が、第2の端部を起点とする前記マイクロチャネルを通して再成長するように、前記第2の神経端部を前記装置に縫合することをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記神経は、末梢神経または脊髄神経である。いくつかの実施形態において、前記神経は、完全にまたは部分的に損傷している。いくつかの実施形態において、前記神経損傷部位は、神経端部間に約0.5mm~約10cmの欠損部を含む。
【0028】
本明細書中で開示される態様は、第1の端部および第2の端部を有するシースと、前記シースの内側に設けられ、前記第1の端部から前記第2の端部まで前記シースを横断するマイクロチャネルと、前記シースの外側表面上に設けられた少なくとも1つのマーカーとを含む組織修復スキャフォールドを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記シースの外側表面上に設けられるとともに実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在している特徴を含む。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記シースの長さに沿って延在し、かつ前記マイクロチャネルと平行である。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、溝を含む。いくつかの実施形態において、前記シースの前記外側表面は、その上に設けられた少なくとも2、3、または4本の溝を含む。いくつかの実施形態において、装置の位置合わせおよび/または前記装置に印加されたねじれを示す、複数のマーカーをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記シースの前記外側表面は、その上に設けられた4本の溝を含む。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記シースの周囲に略均等に分散している。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記マイクロチャネルと実質的に平行である。いくつかの実施形態において、前記溝は、少なくとも約50ミクロンの幅または深さを有する。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、前記シースの前記内側に設けられた複数のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、前記複数のマイクロチャネルは、実質的に平行である。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記複数のマイクロチャネルのそれぞれと実質的に平行である。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造と、前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にあるマーカーとを含む。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記シースの前記外側の、前記第1の端部または前記第2の端部に相当する前記位置に溝を含む。いくつかの実施形態において、前記溝は、前記シースの前記外側を周方向に包含している。いくつかの実施形態において、前記溝は、少なくとも約50ミクロンの深さまたは幅を有する。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、少なくとも200ミクロンの長さを有する。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドは、前記第1の端部と前記第2の端部の両方を覆うオーバーハング構造を含む。いくつかの実施形態において、前記オーバーハング構造は、前記第1の端部または前記第2の端部を少なくとも約0.5mm越えて延びている。いくつかの実施形態において、前記オーバーハング構造は、少なくとも1針の縫合を受けるよう構成されている。いくつかの実施形態において、第1の複数のマーカーおよび第2の複数のマーカーをさらに含み、前記第1の複数のマーカーは、前記シースの外側表面上に設けられるとともに実質的に前記第1の端部から前記第2の端部まで延在する2つ以上の特徴を含み、前記第1の複数のマーカーは、前記シースの長さに沿って延在し、かつ前記マイクロチャネルと平行であり、前記第2の複数のマーカーは、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造を含み、前記第2の複数のマーカーは、前記シースの外側の、前記マイクロチャネルの前記第1の端部または前記第2の端部に相当する位置にある特徴を含む。いくつかの実施形態において、前記第1の複数のマーカーおよび前記第2の複数のマーカーは、内部での前記マイクロチャネルの位置合わせ、および隣接する神経組織に対する前記マイクロチャネルの位置付けを示すよう構成されている。
【0030】
本明細書中で開示される態様は、本明細書中で説明される組織修復スキャフォールドを、必要とする対象の神経損傷部位に植え込むことを含む、神経機能の回復方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、前記損傷部位にわたる神経機能の回復を可能とする。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第1の神経端部が、第1の端部を起点とするマイクロチャネルを通して再成長するように、前記第1の神経端部を装置に縫合することを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第2の神経端部が、第2の端部を起点とする前記マイクロチャネルを通して再成長するように、前記第2の神経端部を前記装置に縫合することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記神経は、末梢神経または脊髄神経である。いくつかの実施形態において、前記神経は、完全にまたは部分的に損傷している。いくつかの実施形態において、前記神経損傷部位は、神経端部間に約0.5mm~約10cmの欠損部を含む。いくつかの実施形態において、前記神経損傷部位の近位端の前記第1の端部に前記マーカーを位置合わせすること、および前記神経損傷部位の遠位端の前記第2の端部に前記マーカーを位置合わせすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記マーカーは、前記神経損傷部位にわたり再生されることになる軸索の生理学的に正確な方向と位置合わせされる。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、前記マイクロチャネルの前記位置合わせを検証し、かつ前記装置がねじれを印加されていないことを検証するために前記第1の複数のマーカーを利用して、前記神経損傷部位に前記スキャフォールドを挿入することを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、隣接する神経組織に対する前記マイクロチャネルの位置、および前記隣接する神経組織に対する前記オーバーハンドの位置付けを検証するために前記第2の複数のマーカーを利用して、前記神経損傷部位に前記スキャフォールドを挿入することを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、前記マイクロチャネルを穿刺することなく、隣接する組織に前記スキャフォールドを縫合することを含む。いくつかの実施形態において、前記組織修復スキャフォールドを植え込むことは、宿主の軸索の位置合わせに対して平行に隣接する組織に前記スキャフォールドを縫合することを含み、前記装置は、ねじれを印加されていない。いくつかの実施形態において、a)前記マイクロチャネルを穿刺しないこと、またはb)前記スキャフォールドの平行な位置合わせおよびその中の軸索の位置合わせを促すことのうちの1つ以上の結果として、神経組織の再生が促進される。
【0032】
別の態様において、本開示は、3Dプリンティングにより神経組織の成長を促進するための生物模倣スキャフォールドを作製する方法を提供する。本明細書中で提供されるスキャフォールドは、さまざまな3Dプリンティング技法を用いて作製可能である。3Dプリンティングされたスキャフォールドの準備に用いられ得る3Dプリンティング技法の例としては、押出プリンティング、インクジェットプリンティング、レーザを利用したステレオリソグラフィ、デジタル光処理ステレオリソグラフィ、および(ホログラフィック3Dプリンティングとしても知られている)体積3Dプリンティングが挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される生物模倣スキャフォールドは、デジタル光処理3Dプリンティングにより準備される。生物模倣スキャフォールドの3Dプリンティングのさらなる方法は、PCT/US2017/065857において説明されており、上記出願は、参照により全体として本明細書中に組み込まれる。
【0033】
その他の態様において、本明細書中で提供される生物模倣スキャフォールドは、鋳造、成形、電界紡糸、エンボス加工、またはその他いずれかの適切な方法を含む他の技法により作製可能である。生物模倣スキャフォールドを準備するための例示的な代替方法は、例えば、PCT/US2020/027773、PCT/US2016/056104およびPCT/US2020/012966において説明されており、上記各出願は、参照により全体として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書中で説明される方法および組成物の新規な特徴は、添付の請求項において特定して記載される。例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明を参照することにより、本明細書中で説明される本発明の方法および組成物の特徴および利点がよりよく理解されるであろう。当該実施形態では、本明細書中で説明される方法および組成物の原理が利用されており、付随する図面は以下の通りである。
図1】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドの断面図である。
図2】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドの外観側面図である。
図3】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドの外観正面(マイクロチャネルを貫く方向から見た)図である。
図4】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドの角度のついた視点位置からの外観図である。
図5】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドの外観側面写真である。
図6】本明細書中で提供される例示的な組織修復スキャフォールドが個体の指の間に保持されている外観正面(マイクロチャネルを貫く方向から見た)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
神経系は、損傷後の大きな再生能力を有する。しかし、損傷後の機能的再生は、損傷を受けた軸索が神経支配された組織と位置ずれを生じたり、接触しなくなったりすると、大いに不完全となる。主要な機能障害は、標的組織の不十分な神経再支配および苦痛を与える神経腫形成をもたらし、かつ含む。神経修復のための現在の外科治療は、自己の神経移植組織の配置を伴う。これら移植組織には、ドナー部位の病的状態、ドナー移植組織の限られた供給、ならびに手術の時間および複雑さを含む多くの不利な点がある。
【0036】
末梢神経の修復を支持するスキャフォールドの試験的開発により、市販の神経ガイドがもたらされた。しかし、これらスキャフォールドの多くは、再生する軸索がそれらの適正な標的と位置ずれを生じてしまう単一の大径チャネルしか有さない。切断されたラットの坐骨神経モデルにおける植込みの際、再生する軸索は、スキャフォールドに入ってまもなく近位端に沿って線状配向を失う。この結果、軸索の配向不整および神経腫による痛みが生じる。
【0037】
より最近では、研究者らは、複数のより小型の「マイクロチャネル」を有する神経チャネルを作製することを試みており、これによれば、結果として生じる接続をよりよく誘導するために、自らの線状チャネル内を個々の軸索がそれぞれ進行可能となる。このアプローチは、神経組織(例えば、軸索)が再生可能な程度、速度、誘導、標的、および病変距離の増大に対して有望であり、かつ利点を提供するが、スキャフォールドは、その設置においていくつかの課題や難題を生じる。
【0038】
例えば、いくつかの場合、マルチチャネルスキャフォールドでは、設置時に正しい軸索接続が行われるように、内側チャネルのそれぞれが、位置合わせされ、かつ実質的に平行でなければならない。設置中に装置がねじれたり、変形したりした場合(装置が小型で可撓性であるため比較的よく起こる)、装置が所望の神経接続を形成する能力は、損なわれる可能性がある。
【0039】
また、いくつかの実施形態において、装置の内側に設けられるチャネルは、装置の外側から見た場合には見えない。したがって、設置中、植込みを行っている外科医は、チャネルが装置の内側のどこにあるのかを確認することが困難なことがある。このことが問題となる可能性があるのは、いくつかの場合、組織修復スキャフォールドが、装置のオーバーハング構造の使用により、分離した神経に縫合されるからである。装置のシースは、(その構成に用いられる材料のせいで)不透明であるので、設置を行う外科医が、装置の不適切な部分において装置を関連する組織と縫合し、かつ内側チャネルを穿刺するリスクがあり、これにより、チャネルの完全性が損なわれ、かつ軸索やその他の組織の位置ずれの危険が生じる。
【0040】
最後に、いくつかの例において、組織修復スキャフォールドは、スキャフォールドのシースを介して、関連する組織(例えば、神経組織)に直接縫合される。いくつかの場合、組織修復スキャフォールドのそれまでの繰り返し(iterations)は、植込み中または植込み後のいずれかにおける構造的完全性の欠如をこうむる。いくつかの例において、組織修復スキャフォールドは、所望の組織の再成長に適した期間後にスキャフォールドを望ましく分解可能とする生分解性ポリマーから作られる。しかし、いくつかの例において、マイクロチャネルを保持するよう設計された外側シースなどのそのようなスキャフォールドの外側は、所望の時間全体にわたって接着を保つ構造的完全性が欠如している。というのも、生分解プロセスがシースを弱め、神経の完全回復前にスキャフォールドが分離してしまうからである。移植片のこの早期分離は、部分的または完全に分離したスキャフォールドが、再成長につれて神経組織と適正に位置合わせされないかもしれず、患者のアウトカムに悪影響を与えかねない。
【0041】
本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドは、装置の外側の位置合わせマーカー、装置の外側に設けられたマイクロチャネル端点マーカーおよび/または植込み後の安定性向上のために最適化されたシース厚さの使用によりこれらの欠陥を克服する。
【0042】
位置合わせマーカー
いくつかの態様において、設置を行う外科医に、シースの内側の1本以上のマイクロチャネルの位置合わせについて情報を提供するシース上に設けられたマーカーを本明細書中で提供する。いくつかの例において、シースは、設置を行う外科医から装置の内側の1本以上のマイクロチャネルを隠す不透明材料から作られている。いくつかの実施形態において、装置の内側に設けられた1本以上のマイクロチャネルは、マイクロチャネルを通した神経および/または軸索の成長を最適に促すために、適正な位置合わせ(例えば、1本の線状チャネルまたは複数の平行な線状チャネル)を要する。マイクロチャネルの幾何学的形状が、設置中に変化した場合、再成長している神経または軸索は、位置ずれを生じ、末梢器官(例えば、筋肉)などの所望の組織への適正な接続可能性が妨げられることがある。そのような装置の取扱いおよび設置中に、スキャフォールドがねじれることにより、内側のマイクロチャネルの線状幾何学的形状が変化することがある。適正な位置合わせを欠いた状態で装置が設置された場合、神経の再接続が損なわれ、結果として最適以下の神経再生となる可能性がある。したがって、内側のマイクロチャネルがいつ適正に位置合わせされているかを表わす装置の外側の特徴により、外科医は、装置がいつ適正な配向となっているかを容易に認識でき、これにより、患者のアウトカムを向上させることができる。
【0043】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有するシースと、シースの内側に設けられ、第1の端部から第2の端部までシースを横断するマイクロチャネルと、シースの外側表面上に設けられたマーカーとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、マーカーは、シースがいつ適正な配向となっているかを示す。
【0044】
装置の外側に設けられたマーカーは、装置が適正に位置合わせされていること(例えば、装置がねじれていないことおよび/または内側チャネルが適正な配向となっていること)を表わす任意の適切なマーカーであってもよい。いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの外側表面上に設けられた線状の特徴である。いくつかの実施形態において、線状の特徴は、シースの外側に特徴を印刷または塗布したり、溝を彫ったり刻印したりなどによって、製造後に装置に適用されている。いくつかの実施形態において、線状の特徴は、シースの外側に配置された線であり、線は、設置を行う外科医やその他の使用者により位置合わせが容易に判断可能なように色付けされていてもよい。いくつかの実施形態において、線状の特徴は、シースの外側に設けられた溝構造を含む。いくつかの実施形態において、選択された特徴は、装置の外側で裸眼によって、または設置プロセス中に用いられる顕微鏡やその他の視覚強化装置下で見られるときなどに、設置中にはっきりと見える。
【0045】
いくつかの実施形態において、シースの外側に設けられたマーカーは、実質的に第1の端部から第2の端部まで延在している。いくつかの実施形態において、マーカーは、装置の長さの少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、または95%にわたって延在している特徴を含む。いくつかの実施形態において、装置の長さは、シースの全長として計測され、当該全長は、内側のマイクロチャネルを越えて延びるオーバーハング構造(例えば、神経断端への装置の縫合を可能とするオーバーハング構造)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、長さ(例えば、第1の端部から第2の端部までの距離)は、いかなるオーバーハング構造をも包含せず、かつ内側のマイクロチャネルの長さとして計測される。
【0046】
いくつかの実施形態において、マーカーは、装置の全体または実質的に全体の長さにわたって進む連続した特徴ではない。いくつかの実施形態において、特徴は、隙間を含むことにより、点状、破線状、またはその他類似の位置合わせマーカーを形成してもよい。いくつかの実施形態において、シースは、実質的に介在マーカーなしに装置の両端部に2つの特徴を含むが、依然として適正な位置合わせを容易に可能とする(例えば、3cmの組織修復スキャフォールド上で、装置の両端部に0.5cmなどのより短い長さで2つの特徴が延在し、当該特徴の間には不連続な隙間を有する)。
【0047】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、装置の外側に1個を上回るマーカーを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはこれを上回るマーカーを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、少なくとも2、3、または4個のマーカーを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のマーカーを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、4個のマーカーを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、装置の外部のあらゆる向きから装置を見たときに装置が適正に位置合わせされているかを使用者が確認できるようにする複数のマーカーを含む。いくつかの実施形態において、シースは、シースの周囲に設けられたマーカーを含む。いくつかの実施形態において、マーカーのそれぞれは、シースの周囲に略均等に分散している。いくつかの実施形態において、シースの周囲に略均等に分散しているとは、マーカーが、均等な拡がりの約25%、20%、15%、10%、または5%の範囲内などの設定された許容誤差内で均等に設けられていることを意味する。いくつかの実施形態において、許容誤差は、各マーカーが、均等な拡がりの約30度、25度、20度、15度、10度、または5度の範囲内となるなどの度数で計測される。
【0049】
いくつかの実施形態において、マーカーは、マイクロチャネルと実質的に平行である。いくつかの実施形態において、装置は、複数のマイクロチャネルを含み、マーカーは、複数のマイクロチャネルの大多数と実質的に平行である。いくつかの実施形態において、マーカーは、複数のマイクロチャネルのそれぞれと実質的に平行である。いくつかの実施形態において、マーカーは、マイクロチャネルと平行である。いくつかの実施形態において、実質的に平行とは、マーカーとマイクロチャネルが、平行度10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1度以内などの設定された平行の許容誤差内にあることを意味する。
【0050】
いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの外側において1本以上の溝を含む。溝は、スキャフォールドの製造プロセス中にシースに(例えば、成形または鋳造プロセスにより)追加されても、その他の点では完成しているスキャフォールドに(例えば、エンボス加工、穿孔、またはエッチングにより)追加されてもよい。いくつかの実施形態において、溝は、裸眼によって、または設置プロセス中に用いられる顕微鏡やその他の視覚強化装置下で見られたときのいずれかで容易に見えるように選択された深さおよび幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン~約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、少なくとも約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、または約150ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、最大で約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1~約200ミクロンの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、少なくとも約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、または約150ミクロンの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、最大で約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝の形状は、円形または角形である。
【0051】
マイクロチャネル終端マーカー
いくつかの態様において、シースの外側表面上に設けられ、シース内に設けられた1本以上のマイクロチャネルの終端点を画定するマーカーを有する組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。シースは、マーカーによる画定点を越えて延びるオーバーハング構造を含む。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、損傷を受けたかまたは切断された神経の神経断端などの組織へのスキャフォールドの縫合に用いられるよう構成されている。マーカーにより、対象への組織修復スキャフォールドの植込みを任される外科医などの使用者が、装置の外側を見ながら装置の内側においてマイクロチャネルがどこに位置しているかを確認することができ、装置のシースは、不透明であり、内側のマイクロチャネルを見えにくくしている。この情報により、外科医は、内側のマイクロチャネルに穴を開けて、装置に損傷を生じさせることなく、組織部位(例えば、神経断端)にオーバーハングを縫合することにより、装置を植込み可能である。マイクロチャネルが、このようにして損なわれたり、損傷を受けたりした場合、装置を通じて成長する神経や軸索は、位置ずれを生じ、マイクロチャネルの穿刺により生じた開口を通じて曲がりくねり、これによって、スキャフォールドが神経を適正に修復する能力が損なわれかねない。したがって、本明細書中で提供されるマイクロチャネル終端マーカーを含まない組織修復スキャフォールドは、外科医にとって植込みがより困難であり、外科医が安全に縫合できるのは装置のどこかということを確認するために装置に数多くの調節を行う必要があり、植込み前または植込み中に損なわれたスキャフォールドとなる可能性が高まり、これが検出を免れ、好ましくない患者のアウトカムにつながる恐れがある。
【0052】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有するマイクロチャネルと、シースの内側に設けられたマイクロチャネル、マイクロチャネルの第1の端部または第2を越えて延びるオーバーハング構造、およびマイクロチャネルの第1の端部または第2の端部に相当する位置のシースの外側にマーカーを含むシースとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。
【0053】
いくつかの実施形態において、マーカーは、装置の内側のマイクロチャネルが終端するのと同じ点である装置の外側の点を示す。したがって、マーカーを見た外科医は、オーバーハングがどこで始まり、マイクロチャネルがどこで終わるか、よって、装置をどこで対象の組織(例えば、神経断端)に安全に縫合可能かを直ちに確認することができる。いくつかの実施形態において、マーカーの特徴は、シースの外側表面に設けられ、シースの周方向に延在する。いくつかの実施形態において、マーカーの特徴は、シースの少なくとも部分的に周方向に延在するリングである。いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの外側にマーカーを印刷または塗布したり、溝を刻付けまたはエンボス加工したりなどによって、製造後に装置に適用されている。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル終端マーカーは、シースの外側に配置された線であり、線は、設置を行う外科医やその他の使用者により位置合わせが容易に判断可能なように色付けされていてもよい。いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの外側に設けられた溝構造を含む。いくつかの実施形態において、選択されたマーカーは、装置の外側で裸眼によって、または設置プロセス中に用いられる顕微鏡やその他の視覚強化装置下で見られたときなどに、設置中にはっきりと見える。
【0054】
いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの外側を周方向に包含するよう位置付けられている。いくつかの実施形態において、マーカーは、シースの周囲の連続した特徴ではなく、むしろ、シースの外側に設けられた破線または点線や一連の小型溝などの不連続な特徴である。
【0055】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、2個のマイクロチャネル端点マーカーを含む。いくつかの実施形態において、2個のマイクロチャネル端点マーカーは、スキャフォールドの両端部に位置付けられている。
【0056】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネル終端マーカーは、シースの外側に設けられた溝を含む。溝は、スキャフォールドの製造プロセス中にシースに(例えば、成形または鋳造プロセスにより)追加されても、その他の点では完成しているスキャフォールドに(例えば、エンボス加工、穿孔、またはエッチングにより)追加されてもよい。いくつかの実施形態において、溝は、裸眼によって、または設置プロセス中に用いられる顕微鏡やその他の視覚強化装置下で見られたときのいずれかで容易に見えるように選択された深さおよび幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン~約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、少なくとも約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、または約150ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、最大で約5ミクロン、約10ミクロン、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、または約200ミクロンの深さを有する。いくつかの実施形態において、溝は、約1ミクロン~約5mmの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約50ミクロン、少なくとも約100ミクロン、少なくとも約150ミクロン、または少なくとも約200ミクロンの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約1mm、または少なくとも約1.5mmの幅を有する。いくつかの実施形態において、溝は、最大で5mm、最大で約4mm、最大で約3mm、または最大で約2.5mmの幅を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、マイクロチャネルの第1の端部または第2の端部を越えてシースを延ばす。いくつかの実施形態において、シースは、第1の端部と第2の端部の両方を越えてシースを延ばす2個のオーバーハング構造を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、1本以上のマイクロチャネルの終端点を越えて延びる。オーバーハング構造は、外科医がオーバーハング構造を神経断端またはその他の組織に縫合できる十分な長さとすべきである。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも約1mm、少なくとも約1.1mm、少なくとも約1.2mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.4mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約1.75mm、または少なくとも約2mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約0.25mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約0.25mm~約2mm、約0.4mm~約2mm、約0.5~約2mm、約0.25mm~約1.75mm、約0.25mm~約1.5mm、約0.5mm~約2mm、または約0.5mm~約1.5mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0mmの長さを有する。
【0059】
オーバーハング構造は、設置後にオーバーハング構造が破れないように外科医がオーバーハング構造を縫合可能なよう十分な厚さとすべきである。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン~約200ミクロン、約100ミクロン~約300ミクロン、約100ミクロン~約400ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約100ミクロン~約600ミクロン、約100ミクロン~約700ミクロン、約200ミクロン~約300ミクロン、約200ミクロン~約400ミクロン、約200ミクロン~約500ミクロン、約200ミクロン~約600ミクロン、約200ミクロン~約700ミクロン、約300ミクロン~約400ミクロン、約300ミクロン~約500ミクロン、約300ミクロン~約600ミクロン、約300ミクロン~約700ミクロン、約400ミクロン~約500ミクロン、約400ミクロン~約600ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、約500ミクロン~約600ミクロン、約500ミクロン~約700ミクロン、または約600ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、または約600ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、最大で約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。
【0060】
オーバーハング構造は、シースを作製可能ないずれかの材料から作製してもよい。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、シースを作製するのと同じ材料から作製される。
【0061】
改善されたシース厚さ
いくつかの態様において、植込み後の安定性および耐久性のために最適化されたシース厚さを有する組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、対象への設置中に、組織修復スキャフォールドは、所望の位置で患者内に縫合される。設置後、組織修復スキャフォールドは、組織が1本以上のマイクロチャネルを通じて再生可能となるのに十分な期間安定性を保たねばならない。したがって、組織修復スキャフォールドのシースは、設置中の耐久性およびその後の安定性の特徴を兼ね備えていなければならない。しかし、いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドの残存期間が長過ぎることは望ましくない。スキャフォールドは、最終的には生分解することが有益だからである。組織修復スキャフォールドがこれらの安定性および耐久性の基準をすべて満たさなければ、組織からの移植片の分離(これにより、再生中の組織の再接続を妨げる)などのように、患者のアウトカムに悪影響を及ぼしかねない。シースは、対象の組織への装置の接続を行い、かつ保持する組織修復スキャフォールドの部分であるため、(組成および厚さなどの)シースの特性を最適化することは、極めて重要である。
【0062】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有し、少なくとも約250ミクロンの厚さを有するシースと、シースの内側に設けられ、第1の端部から第2の端部までシースを横断するマイクロチャネルとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、シースは、第1の端部または第2の端部を越えて延びるオーバーハング構造を任意選択で含む。
【0063】
一態様において、第1の端部および第2の端部を有し、少なくとも約250ミクロンの厚さを有するシースと、シースの内側に設けられ、第1の端部から第2の端部までシースを横断する複数のマイクロチャネルとを含む組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、シースは、第1の端部または第2の端部を越えて延びるオーバーハング構造を任意選択で含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、シースは、約250ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、約250ミクロン~約300ミクロン、約250ミクロン~約350ミクロン、約250ミクロン~約400ミクロン、約250ミクロン~約450ミクロン、約250ミクロン~約500ミクロン、約250ミクロン~約550ミクロン、約250ミクロン~約600ミクロン、約250ミクロン~約650ミクロン、約250ミクロン~約700ミクロン、約300ミクロン~約350ミクロン、約300ミクロン~約400ミクロン、約300ミクロン~約450ミクロン、約300ミクロン~約500ミクロン、約300ミクロン~約550ミクロン、約300ミクロン~約600ミクロン、約300ミクロン~約650ミクロン、約300ミクロン~約700ミクロン、約350ミクロン~約400ミクロン、約350ミクロン~約450ミクロン、約350ミクロン~約500ミクロン、約350ミクロン~約550ミクロン、約350ミクロン~約600ミクロン、約350ミクロン~約650ミクロン、約350ミクロン~約700ミクロン、約400ミクロン~約450ミクロン、約400ミクロン~約500ミクロン、約400ミクロン~約550ミクロン、約400ミクロン~約600ミクロン、約400ミクロン~約650ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、約450ミクロン~約500ミクロン、約450ミクロン~約550ミクロン、約450ミクロン~約600ミクロン、約450ミクロン~約650ミクロン、約450ミクロン~約700ミクロン、約500ミクロン~約550ミクロン、約500ミクロン~約600ミクロン、約500ミクロン~約650ミクロン、約500ミクロン~約700ミクロン、約550ミクロン~約600ミクロン、約550ミクロン~約650ミクロン、約550ミクロン~約700ミクロン、約600ミクロン~約650ミクロン、約600ミクロン~約700ミクロン、または約650ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約550ミクロン、約600ミクロン、約650ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、少なくとも約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約550ミクロン、約600ミクロン、または約650ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、最大で約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約550ミクロン、約600ミクロン、約650ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、シースは、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体およびポリカプロラクトン、またはそれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体である。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトンである。
【0066】
いくつかの実施形態において、シースは、ポリカプロラクトンから作製され、かつ、少なくとも約250ミクロン、少なくとも約300ミクロン、少なくとも約350ミクロン、少なくとも約400ミクロン、少なくとも約450ミクロン、または少なくとも約500ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、ポリカプロラクトンから作製され、かつ、約250ミクロン~約700ミクロン、約250ミクロン~約650ミクロン、約250ミクロン~約600ミクロン、約250ミクロン~約550ミクロン、約300ミクロン~約700ミクロン、約300ミクロン~約650ミクロン、約300ミクロン~約600ミクロン、約300ミクロン~約550ミクロン、約350ミクロン~約700ミクロン、約350ミクロン~約650ミクロン、約350ミクロン~約600ミクロン、約350ミクロン~約550ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、約400ミクロン~約650ミクロン、約400ミクロン~約600ミクロン、または約400ミクロン~約550ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、ポリカプロラクトンから作製され、かつ、約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約550ミクロン、約600ミクロン、約650ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、シースは、複数の孔を含む。いくつかの実施形態において、複数の孔は、シース内に穴を作らない(例えば、壁内を「見通せ」ない多孔性(no “line of sight” porosity))ような平均粒径および粒径分布を有する。したがって、いくつかの実施形態において、平均孔径は、シース厚さより大幅に小さくなるよう選択される。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約100ミクロンの範囲の平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約5ミクロン、約1ミクロン~約10ミクロン、約1ミクロン~約20ミクロン、約1ミクロン~約30ミクロン、約1ミクロン~約40ミクロン、約1ミクロン~約50ミクロン、約5ミクロン~約10ミクロン、約5ミクロン~約20ミクロン、約5ミクロン~約30ミクロン、約5ミクロン~約40ミクロン、約5ミクロン~約50ミクロン、約10ミクロン~約20ミクロン、約10ミクロン~約30ミクロン、約10ミクロン~約40ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約20ミクロン~約30ミクロン、約20ミクロン~約40ミクロン、約20ミクロン~約50ミクロン、約30ミクロン~約40ミクロン、約30ミクロン~約50ミクロン、または約40ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、または約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、少なくとも約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、または約40ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、最大で約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、または約50ミクロンの平均粒径を有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、シースは、高い多孔度を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約40%vol~約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約40%vol~約50%vol、約40%vol~約60%vol、約40%vol~約65%vol、約40%vol~約70%vol、約40%vol~約75%vol、約50%vol~約60%vol、約50%vol~約65%vol、約50%vol~約70%vol、約50%vol~約75%vol、約60%vol~約65%vol、約60%vol~約70%vol、約60%vol~約75%vol、約65%vol~約70%vol、約65%vol~約75%vol、または約70%vol~約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約40%vol、約50%vol、約60%vol、約65%vol、約70%vol、または約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、シースは、少なくとも約40%vol、約50%vol、約60%vol、約65%vol、または約70%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、シースは、最大で約50%vol、約60%vol、約65%vol、約70%vol、または約75%volの多孔度を有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、シースは、神経が十分に再成長できるように十分な期間安定している。いくつかの実施形態において、シースは、植込み後安定している。いくつかの実施形態において、シースは、対象に植込み後、少なくとも90日、少なくとも100日、少なくとも110日、少なくとも120日、少なくとも150日、少なくとも180日、少なくとも210日、少なくとも240日、少なくとも270日、少なくとも300日、少なくとも330日、または少なくとも365日の期間安定している。いくつかの実施形態において、安定性は、上記期間後にモデル動物(例えば、ウサギ)における神経断片に接着された状態を保っている実質的に同一のスキャフォールドの割合として計測される(例えば、テストされたスキャフォールドの少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%が、上記期間後にモデル動物の神経断片に接着された状態を保っている)。
【0070】
組織修復スキャフォールド
本明細書中で提供される植込み用に改善された特徴を有する組織修復スキャフォールドを本明細書中で提供する。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、神経の修復に特化している。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、シースと、シース内に設けられた1本以上のマイクロチャネルとを含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、シースは、位置合わせマーカー、マイクロチャネル端点マーカー、および/または増大されたシース厚さなどの本明細書中で提供される植込み用に改善された特徴の1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、シースは、これらの特徴のうちの1つを含む。いくつかの実施形態において、シースは、これらの特徴のうちの2つのいずれかの組合せを含む。いくつかの実施形態において、シースは、これら3つの特徴のそれぞれを含む。
【0072】
本明細書中で提供されるシースは、対象への植込みに適したさまざまな材料から作製可能である。いくつかの実施形態において、シースは、生分解性材料から作製される。いくつかの実施形態において、シースは、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、シースは、生分解性ポリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%から作製される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体およびポリカプロラクトン、またはそれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体である。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトンである。
【0073】
いくつかの実施形態において、シースは、本明細書中で記載される改善されたシース厚さを含む。いくつかの実施形態において、シースは、異なる厚さ(例えば、本明細書中の別の箇所で提供されるものより薄いシース厚さ)を有する。そのようなシースは、本明細書中で提供される改善されたシース厚さの利点を欠くかもしれないが、ある状況においては、他の利点をもたらす可能性がある。
【0074】
いくつかの実施形態において、シースは、約50ミクロン~約500ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、約50ミクロン~約75ミクロン、約50ミクロン~約100ミクロン、約50ミクロン~約150ミクロン、約50ミクロン~約200ミクロン、約50ミクロン~約250ミクロン、約50ミクロン~約500ミクロン、約75ミクロン~約100ミクロン、約75ミクロン~約150ミクロン、約75ミクロン~約200ミクロン、約75ミクロン~約250ミクロン、約75ミクロン~約500ミクロン、約100ミクロン~約150ミクロン、約100ミクロン~約200ミクロン、約100ミクロン~約250ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約150ミクロン~約200ミクロン、約150ミクロン~約250ミクロン、約150ミクロン~約500ミクロン、約200ミクロン~約250ミクロン、約200ミクロン~約500ミクロン、または約250ミクロン~約500ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、または約500ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、少なくとも約50ミクロン、約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、または約250ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、シースは、最大で約75ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、または約500ミクロンの厚さを有する。
【0075】
シースは、所望の径を有する所望の数のマイクロチャネルを収容するのに十分な内径を有する。シースの内径サイズは、修復すべき組織の種類および接続せねばならない軸索や神経の数(よって、ならびにマイクロチャネルの数)を含む組織修復スキャフォールドの使用目的に特有の数多くの要因によって決まる。
【0076】
いくつかの実施形態において、シースは、約1mm~約10mmの内径を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約1mm~約1.5mm、約1mm~約2mm、約1mm~約2.5mm、約1mm~約3mm、約1mm~約3.5mm、約1mm~約4mm、約1mm~約5mm、約1mm~約7.5mm、約1mm~約10mm、約1.5mm~約2mm、約1.5mm~約2.5mm、約1.5mm~約3mm、約1.5mm~約3.5mm、約1.5mm~約4mm、約1.5mm~約5mm、約1.5mm~約7.5mm、約1.5mm~約10mm、約2mm~約2.5mm、約2mm~約3mm、約2mm~約3.5mm、約2mm~約4mm、約2mm~約5mm、約2mm~約7.5mm、約2mm~約10mm、約2.5mm~約3mm、約2.5mm~約3.5mm、約2.5mm~約4mm、約2.5mm~約5mm、約2.5mm~約7.5mm、または約2.5mm~約10mmの内径を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約3.5mm、約4mm、約5mm、約7.5mm、または約10mmの内径を有する。いくつかの実施形態において、シースは、少なくとも約1mm、約1.5mm、約2mm、または約2.5mmの内径を有する。いくつかの実施形態において、シースは、最大で約5mm、約7.5mm、または約10mmの内径を有する。いくつかの実施形態において、シースは、約3mmの内径を有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、装置は、オーバーハング構造を含む。オーバーハング構造は、装置を神経断端またはその他の関連する組織に縫合することにより、装置のマイクロチャネルを通した成長に適した位置および向きに組織を配置し、組織を再生させるために用いられてもよい。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、マイクロチャネルの第1の端部または第2の端部を越えてシースを延ばす。いくつかの実施形態において、シースは、第1の端部と第2の端部の両方を越えてシースを延ばす2個のオーバーハング構造を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、1本以上のマイクロチャネルの終端点を越えて延びる。オーバーハング構造は、外科医がオーバーハング構造を神経断端またはその他の組織に縫合できる十分な長さとすべきである。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約0.25mm、少なくとも約0.4mm、少なくとも約0.5mm、少なくとも約0.6mm、少なくとも約0.7mm、少なくとも約0.8mm、少なくとも0.9mm、少なくとも約1mm、少なくとも約1.1mm、少なくとも約1.2mm、少なくとも約1.3mm、少なくとも約1.4mm、少なくとも約1.5mm、少なくとも約1.75mm、または少なくとも約2mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約0.25mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約0.25mm~約2mm、約0.4mm~約2mm、約0.5~約2mm、約0.25mm~約1.75mm、約0.25mm~約1.5mm、約0.5mm~約2mm、または約0.5mm~約1.5mmの長さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2.0mmの長さを有する。
【0079】
オーバーハング構造は、設置後にオーバーハング構造が破れないように外科医がオーバーハング構造を縫合可能なよう十分な厚さとすべきである。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、シースと実質的に同じ厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン~約200ミクロン、約100ミクロン~約300ミクロン、約100ミクロン~約400ミクロン、約100ミクロン~約500ミクロン、約100ミクロン~約600ミクロン、約100ミクロン~約700ミクロン、約200ミクロン~約300ミクロン、約200ミクロン~約400ミクロン、約200ミクロン~約500ミクロン、約200ミクロン~約600ミクロン、約200ミクロン~約700ミクロン、約300ミクロン~約400ミクロン、約300ミクロン~約500ミクロン、約300ミクロン~約600ミクロン、約300ミクロン~約700ミクロン、約400ミクロン~約500ミクロン、約400ミクロン~約600ミクロン、約400ミクロン~約700ミクロン、約500ミクロン~約600ミクロン、約500ミクロン~約700ミクロン、または約600ミクロン~約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、少なくとも約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、または約600ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、最大で約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロン、または約700ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、約500ミクロンの厚さを有する。
【0080】
オーバーハング構造は、シースを作製可能ないずれかの材料から作製してもよい。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、シースを作製するのと同じ材料から作製される。いくつかの実施形態において、オーバーハング構造は、シースの一部として作られる。
【0081】
組織修復スキャフォールドは、シース内に設けられた1本以上のマイクロチャネルを有する。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、シース内に設けられた単一のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、シース内に設けられた複数のマイクロチャネルを含む。
【0082】
マイクロチャネルは、いかなる適切な生体適合性材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、シースと同じ材料から作製される。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、シースとは異なる材料から作製される。
【0083】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、生分解性材料から作製される。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、生分解性ポリマーから作製される。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、生分解性ポリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%から作製される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンおよびアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらのいずれかの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体およびポリカプロラクトン、またはそれらの組合せから選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体である。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトンである。
【0084】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、壁内に設けられた複数の孔を含む。いくつかの実施形態において、複数の孔は、マイクロチャネルの壁内に穴を作らない(例えば、壁内を「見通せ」ない多孔性)ような平均粒径および粒径分布を有する。したがって、いくつかの実施形態において、平均孔径は、壁厚より大幅に小さく(例えば、1/2以下のサイズ)なるよう選択される。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約100ミクロンの範囲の平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン~約5ミクロン、約1ミクロン~約10ミクロン、約1ミクロン~約20ミクロン、約1ミクロン~約30ミクロン、約1ミクロン~約40ミクロン、約1ミクロン~約50ミクロン、約5ミクロン~約10ミクロン、約5ミクロン~約20ミクロン、約5ミクロン~約30ミクロン、約5ミクロン~約40ミクロン、約5ミクロン~約50ミクロン、約10ミクロン~約20ミクロン、約10ミクロン~約30ミクロン、約10ミクロン~約40ミクロン、約10ミクロン~約50ミクロン、約20ミクロン~約30ミクロン、約20ミクロン~約40ミクロン、約20ミクロン~約50ミクロン、約30ミクロン~約40ミクロン、約30ミクロン~約50ミクロン、または約40ミクロン~約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、または約50ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、少なくとも約1ミクロン、約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、または約40ミクロンの平均粒径を有する。いくつかの実施形態において、複数の孔は、最大で約5ミクロン、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、または約50ミクロンの平均粒径を有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、高い多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、約40%vol~約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、約40%vol~約50%vol、約40%vol~約60%vol、約40%vol~約65%vol、約40%vol~約70%vol、約40%vol~約75%vol、約50%vol~約60%vol、約50%vol~約65%vol、約50%vol~約70%vol、約50%vol~約75%vol、約60%vol~約65%vol、約60%vol~約70%vol、約60%vol~約75%vol、約65%vol~約70%vol、約65%vol~約75%vol、または約70%vol~約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、約40%vol、約50%vol、約60%vol、約65%vol、約70%vol、または約75%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、少なくとも約40%vol、約50%vol、約60%vol、約65%vol、または約70%volの多孔度を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、最大で約50%vol、約60%vol、約65%vol、約70%vol、または約75%volの多孔度を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、バリアを通した栄養分の拡散に対して本質的に多孔性である材料から作製されるが、孔を含まない(例えば、ヒドロゲル材料)。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの壁は、ヒドロゲルを含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、複数のチャネルを有する壁を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル壁の壁は、約10ミクロン~約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル壁の壁は、約10ミクロン~約20ミクロン、約10ミクロン~約30ミクロン、約10ミクロン~約40ミクロン、約10ミクロン~約60ミクロン、約10ミクロン~約80ミクロン、約10ミクロン~約100ミクロン、約20ミクロン~約30ミクロン、約20ミクロン~約40ミクロン、約20ミクロン~約60ミクロン、約20ミクロン~約80ミクロン、約20ミクロン~約100ミクロン、約30ミクロン~約40ミクロン、約30ミクロン~約60ミクロン、約30ミクロン~約80ミクロン、約30ミクロン~約100ミクロン、約40ミクロン~約60ミクロン、約40ミクロン~約80ミクロン、約40ミクロン~約100ミクロン、約60ミクロン~約80ミクロン、約60ミクロン~約100ミクロン、または約80ミクロン~約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル壁の壁は、約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、約60ミクロン、約80ミクロン、または約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル壁の壁は、少なくとも約10ミクロン、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、約60ミクロン、または約80ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネル壁の壁は、最大で約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、約60ミクロン、約80ミクロン、または約100ミクロンの厚さを有する。
【0088】
マイクロチャネルは、その意図された使用に最適化された内径を有すべきだが、それは用途によって決まる。いくつかの実施形態において、内径は、対象の特定の神経(例えば、脊髄神経または末梢神経)に最適化されている。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、約50ミクロン~約500ミクロンの内径を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、約50ミクロン~約300ミクロンの内径を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、約50ミクロン~約100ミクロン、約50ミクロン~約150ミクロン、約50ミクロン~約175ミクロン、約50ミクロン~約200ミクロン、約50ミクロン~約225ミクロン、約50ミクロン~約250ミクロン、約50ミクロン~約300ミクロン、約100ミクロン~約150ミクロン、約100ミクロン~約175ミクロン、約100ミクロン~約200ミクロン、約100ミクロン~約225ミクロン、約100ミクロン~約250ミクロン、約100ミクロン~約300ミクロン、約150ミクロン~約175ミクロン、約150ミクロン~約200ミクロン、約150ミクロン~約225ミクロン、約150ミクロン~約250ミクロン、約150ミクロン~約300ミクロン、約175ミクロン~約200ミクロン、約175ミクロン~約225ミクロン、約175ミクロン~約250ミクロン、約175ミクロン~約300ミクロン、約200ミクロン~約225ミクロン、約200ミクロン~約250ミクロン、約200ミクロン~約300ミクロン、約225ミクロン~約250ミクロン、約225ミクロン~約300ミクロン、または約250ミクロン~約300ミクロンの内径を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約175ミクロン、約200ミクロン、約225ミクロン、約250ミクロン、または約300ミクロンの内径を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、少なくとも約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約175ミクロン、約200ミクロン、約225ミクロン、または約250ミクロンの内径を有する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、最大で約100ミクロン、約150ミクロン、約175ミクロン、約200ミクロン、約225ミクロン、約250ミクロン、または約300ミクロンの内径を有する。
【0089】
マイクロチャネルは、チャネルを通して所望の組織を成長させるのに適したあらゆる形状を有し得る。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの形状は、チャネルの断面形状である。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの形状は、六角形、丸形、三角形、矩形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形、楕円形、または台形である。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの形状は、六角形または丸形である。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、六角形である。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは、丸形である。
【0090】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、複数のマイクロチャネルを含む。装置のマイクロチャネルの数は、関連する組織に基づき選択される。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、約2~約300本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、約2~約5、約2~約7、約2~約15、約2~約30、約2~約50、約2~約100、約2~約150、約2~約200、約2~約300、約5~約7、約5~約15、約5~約30、約5~約50、約5~約100、約5~約150、約5~約200、約5~約300、約7~約15、約7~約30、約7~約50、約7~約100、約7~約150、約7~約200、約7~約300、約15~約30、約15~約50、約15~約100、約15~約150、約15~約200、約15~約300、約30~約50、約30~約100、約30~約150、約30~約200、約30~約300、約50~約100、約50~約150、約50~約200、約50~約300、約100~約150、約100~約200、約100~約300、約150~約200、約150~約300、または約200~約300本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、約2、約5、約7、約15、約30、約50、約100、約150、約200、または約300本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、少なくとも約2、約5、約7、約15、約30、約50、約100、約150、または約200本のマイクロチャネルを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、最大で約5、約7、約15、約30、約50、約100、約150、約200、または約300本のマイクロチャネルを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、複数のマイクロチャネルを含む組織修復スキャフォールドは、所望のマイクロチャネル密度を有する。所望のマイクロチャネル密度は、組織修復スキャフォールドが意図されている用途によって決まる。マイクロチャネル密度は、種々の実施形態において異なっていてもよく、例えば、マイクロチャネル密度は、スキャフォールドにおいて平方ミリメートルあたり約1本以上約300本以下のマイクロチャネルであってもよい。特定の変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり約10本以上約30本以下のマイクロチャネルであってもよい。別の変形例において、組織スキャフォールドは、平方ミリメートルあたり約120本のマイクロチャネルのマイクロチャネル密度を有していてもよい。いくつかの変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり約10~約300本のマイクロチャネルである。いくつかの変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり約10~約20、約10~約30、約10~約50、約10~約100、約10~約120、約10~約150、約10~約200、約10~約300、約20~約30、約20~約50、約20~約100、約20~約120、約20~約150、約20~約200、約20~約300、約30~約50、約30~約100、約30~約120、約30~約150、約30~約200、約30~約300、約50~約100、約50~約120、約50~約150、約50~約200、約50~約300、約100~約120、約100~約150、約100~約200、約100~約300、約120~約150、約120~約200、約120~約300、約150~約200、約150~約300、または約200~約300本のマイクロチャネルである。いくつかの変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり約10、約20、約30、約50、約100、約120、約150、約200、または約300本のマイクロチャネルである。いくつかの変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり少なくとも約10、約20、約30、約50、約100、約120、約150、または約200本のマイクロチャネルである。いくつかの変形例において、マイクロチャネル密度は、平方ミリメートルあたり最大で約20、約30、約50、約100、約120、約150、約200、または約300本のマイクロチャネルである。
【0092】
スキャフォールドは、神経損傷などの組織損傷の処置に必要なあらゆる適切な長さを有し得る。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、0.5mm~10cmであり得る。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、5mm~10cmであり得る。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、15cm以下であり得る。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、約0.5cm~約10cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、約0.5cm~約1cm、約0.5cm~約2cm、約0.5cm~約3cm、約0.5cm~約5cm、約0.5cm~約7cm、約0.5cm~約9cm、約0.5cm~約10cm、約1cm~約2cm、約1cm~約3cm、約1cm~約5cm、約1cm~約7cm、約1cm~約9cm、約1cm~約10cm、約2cm~約3cm、約2cm~約5cm、約2cm~約7cm、約2cm~約9cm、約2cm~約10cm、約3cm~約5cm、約3cm~約7cm、約3cm~約9cm、約3cm~約10cm、約5cm~約7cm、約5cm~約9cm、約5cm~約10cm、約7cm~約9cm、約7cm~約10cm、または約9cm~約10cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、約0.5cm、約1cm、約2cm、約3cm、約5cm、約7cm、約9cm、または約10cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、少なくとも約0.5cm、約1cm、約2cm、約3cm、約5cm、約7cm、または約9cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、最大で約1cm、約2cm、約3cm、約5cm、約7cm、約9cm、または約10cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、約0.1cm~約15cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、約5cm~約15cmである。いくつかの実施形態において、スキャフォールドの長さは、少なくとも5cmである。
【0093】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、組織再生を刺激するために1個以上の細胞で満たされている。いくつかの実施形態において、細胞は、成長因子を発現するよう改変されているか、または幹細胞やシュワン細胞などのように本来治療的なものであってもよい。
【0094】
対象の神経端部などの神経の一部は、損傷を受けているか、または切断されていてもよく、例えば、怪我、病気、または外科手術により引き起こされた完全または部分的に損傷された神経端部であってもよい。特定の態様において、神経端部の一部は、組織スキャフォールドの近位端または遠位端に固定されてもよい1本以上の個々の枝または束に外科的に分割、切開、切り分けおよび/または横切してもよい。神経端部の1本以上の個々の枝または束は、1本以上のマイクロチャネルと接触していても、その内部に配置されていてもよい。神経端部(または、その個々の枝や束)は、縫合、接着剤、またはその他公知の固定技法により、シースの近位端または遠位端に固定され得る。例えば、数ヶ月の期間にわたり、神経端部から生じる神経組織は、各マイクロチャネルの長手方向軸に沿って成長し、かつ組織スキャフォールドの反対側の端部においていずれかの神経標的を神経再支配し得る。したがって、本教示のさまざまな態様に係る組織スキャフォールドは、スキャフォールドの第1の端部から反対側の第2の端部まで複数のマイクロチャネルの開口している中央内腔を通した神経組織の成長を促す。
【0095】
他の態様において、マイクロチャネルの壁の表面は、例えば、細胞の成長、再生、分化、増殖、および/または修復を促進する生体機能剤で被覆してもよい。細胞成長、細胞増殖、細胞分化、細胞修復、または細胞再生を「促進する」ことは、そのような生体機能剤の非存在下での細胞または生体のプロセス、例えば、そのようなプロセスを自然に行うことと比較して、生体機能剤の存在下で起こるそのようなプロセスの速度または測定可能なアウトカムのいずれかにおいて検出可能な増加が起こることを意味する。例として、当業者により理解されているように、生体機能剤の存在下で細胞成長を促進することは、そのような生体機能剤の非存在下における標的細胞の細胞成長または細胞数と比較した際、標的細胞の成長速度を高めるか、または標的細胞の総細胞数を増加させるかもしれない。
【0096】
いくつかの実施形態において、生体機能剤は、測定可能なプロセス結果を増大させる(例えば、細胞発生または細胞再生のための総細胞数を測定する、細胞増殖、細胞分化、もしくは細胞修復速度の速度または定性的アウトカムを測定する)ことにより細胞成長、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、細胞修復、および/または細胞再生を促進するものである。例示的な生体機能剤は、フィブロネクチン、ケラチン、ラミニン、コラーゲン、成長因子、および/または幹細胞促進因子を含むが、これらに限定されない。例示的な成長因子としては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、およびニューロトロフィン3(NT-3)が挙げられる。いくつかの実施形態において、成長因子は、BDNFである。いくつかの実施形態において、成長因子は、神経成長因子である。いくつかの実施形態において、成長因子は、GDNFである。いくつかの実施形態において、成長因子は、NT-3である。
【0097】
そのような生体機能剤は、マイクロチャネルの形成後に、例えば、マイクロチャネルの壁の1つ以上の表面(例えば、内面)上に生体機能剤を被覆、注入、またはそうでなければ組込みにより導入してもよい。特定の態様において、多孔性の壁の表面は、フィブロネクチン、ケラチン、ラミニン、コラーゲン、ならびにそれらの組合せおよび均等物からなる群より選択される神経組織の成長を促進するための材料を含む被覆物を有する。特定の実施形態において、壁は、フィブロネクチンで被覆されていてもよく、フィブロネクチンは、細胞および軸索の接着を最適化するために、マイクロチャネルの壁を形成する生体適合性ポリマーとともに特に有利となる1ダースを超える化合物をふるいにかけた後発見された。
【0098】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、マイクロチャネルを通した組織の成長を促すよう構成されている。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、マイクロチャネル内において切断された神経組織を再結合するよう構成されている。いくつかの実施形態において、神経組織は、脊髄神経または末梢神経である。いくつかの実施形態において、神経組織は、脊髄神経である。いくつかの実施形態において、神経組織は、末梢神経である。
【0099】
本開示のさまざまな態様に係る組織スキャフォールド設計の1つの利点は、全スキャフォールド体積の約50体積%以上、任意選択で約60体積%以上、任意選択で約70体積%以上、任意選択で約80体積%以上、および特定の好適な態様において、任意選択で約90開口体積%以上の全開口体積(例えば、シース内の開口している介在チャネルの体積、およびマイクロチャネルの開口している中央内腔を含む開口内腔体積)を提供していることである。なお、従来のスキャフォールド設計は、そのような高いレベルの開口内腔体積を達成できなかったが、そのような開口内腔体積は、望まれる程度に高い方向直線性および高い信号忠実度を有する健康な神経組織の成長の支持ならびに促進に特に有利であると考えられている。
【0100】
生物工学によって作られたスキャフォールドや移植片が、脊髄または末梢神経の病変部への軸索再生を支持する一方、これらの技術は、植込み部位における異物反応、煩雑な製造要件、ヒトのサイズの損傷への調整における限界、および自然脊髄または末梢神経のバイオミミクリーの欠如により限定されてきた。本明細書中で説明される移植片および移植片を用いる方法は、脊髄または末梢神経の複雑な神経束構造を生物模倣する構造を含む。移植片は、印刷可能であるが、単純かつ迅速に製造され、異物反応を低減し、かつ/または病変部を横切る線状で位置合わせされた宿主の軸索再生を支持し得る。さらに、神経幹細胞は、移植片に充填可能である。幹細胞は、病変部を横断し、これを越えて架橋する際に宿主の軸索の再生を支持し、かつin vivoでの機能的再生を促すことができる。したがって、異物反応の減少に起因して反応性細胞層を減少させることにより、宿主の軸索が病変を越えてより良好に貫通し、さらには横切りさえすることができる分解性材料の混合物から作られた移植片を本明細書中で開示する。
【0101】
移植片と宿主との間の機械的特性の不一致は、脊髄接合部分における圧縮や裂傷に繋がり、統合不良を引き起こす可能性があるので、植込み材料の濃度および印刷される移植片の架橋密度は、生来の神経組織、例えば、脊髄組織の機械的特性を模倣するよう設計可能である。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、生来の神経組織の機械的特性を模倣するために、約200kPa~約300kPaの弾性率を含む。
【0102】
位置合わせマーカー、マイクロチャネル終端マーカー、および改善されたシース厚さを組み込んだ装置
位置合わせマーカー、マイクロチャネル終端境界画定、および約500ミクロンのシース厚さを組み込んだ組織修復スキャフォールド装置の例示的で非限定的な実施形態の断面図を図1に示す。図1は、シース101を有する組織修復スキャフォールド100の断面図である。シース101は、ポリカプロラクトン(PCL)から作製され、かつ500ミクロンの厚さを有する。シース101はまた、およそ70%volの多孔度を有する。シース101の内側には、複数のマイクロチャネル102がある。マイクロチャネルは、約200ミクロンの断面径を有し、かつまた、PCLから作製されている。また、組織修復スキャフォールド100は、装置の神経断端への縫合に有用なオーバーハング103を含む。オーバーハング103は、シース101の一部であり、マイクロチャネル102の終端点を越えて延びる。オーバーハング103は、神経がここを通じてマイクロチャネル102に進入することができるスキャフォールド開口部105を規定し、かつ1mmの長さを有する。シース101の外側には、凹んだ溝があり、マイクロチャネル端部マーカー104として作用する。マイクロチャネル端部マーカー104は、2mmの長さを有する。マイクロチャネル端部マーカー104により、装置を植え込んでいる外科医は、オーバーハング103が始まり、マイクロチャネル102が終わる箇所を容易に確認でき、これにより、外科医は、縫合でマイクロチャネルに穴を開けることなくオーバーハングを神経に縫合することができる。
【0103】
図2は、スキャフォールド100の外側側面図である。マイクロチャネル端部マーカー104は、シース101における凹みまたは溝構造としてはっきりと目視可能であり、かつオーバーハング103が始まる箇所をはっきりと画定する。スキャフォールド開口部105もまた示されている。また、シース101の外側に図示されているのが、位置合わせ溝106であり、端部マーカー104により包含されているシース101の部分を除いて、実質的にスキャフォールド開口部105の一方からスキャフォールド100の他方の端部まで延在している。図2を通して延在している破線により示されているように、スキャフォールド100を植え込んでいる外科医は、位置合わせマーカーとして作用する位置合わせ溝106が直線状であるので、装置が適正に位置合わせされていることが分かる。
【0104】
図3は、スキャフォールド開口部105を見下ろす組織修復スキャフォールド100の正面図である。厚さ500ミクロンのシース101、およびシース101内に設けられた複数のマイクロチャネル102がはっきりと示されている。マイクロチャネル102はすべて、互いに実質的に平行である。位置合わせ溝106は、シース101に対する凹みとして図示されている。位置合わせ溝106は、マイクロチャネル102と実質的に平行である。スキャフォールド100は、その周囲に均等に広がって設けられた4本の位置合わせ溝106を有する。
【0105】
図4は、すべての特徴を示す組織修復スキャフォールド100の角度のついた図である。4本の位置合わせ溝106のうちの2本とともに、シースの外側101が示されている。端部オーバーハング103を印すスキャフォールド開口部105が示されており、オーバーハング103がマイクロチャネル102の端部を越えて延びている様子も示されている。マイクロチャネル端部マーカー104の端もまた、シース101の内側においてマイクロチャネル102の端部を画定していることが図示されている。
【0106】
図5は、図1図4において説明した組織修復スキャフォールドの側面から見た写真である。装置のマイクロチャネル端部マーカーおよび位置合わせ溝がはっきりと目視可能である。写真に示す装置は、長さが約3cmであり、内側シース径は、約3mmである。図6は、図5と同じ組織修復スキャフォールドが個体の手に保持されている写真である。マイクロチャネル、位置合わせ溝、およびシース厚さがすべて、はっきりと目視可能である。
【0107】
図1図6に示されている装置は、本明細書中で提供される3つの別個の特徴(位置合わせマーカー、マイクロチャネル終端マーカー、および改善されたシース厚さ)を含むが、装置が、これら特徴のいずれか1つを個別に、またはこれら特徴のうちの2つのいずれかの組合せで組み込み得ることもまた想定されている。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドは、位置合わせマーカーおよびマイクロチャネル終端マーカーを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドは、位置合わせマーカーおよび増大されたシース厚さを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、マイクロチャネル終端マーカーおよび増大されたシース厚さを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、位置合わせマーカーのみを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、マイクロチャネル終端マーカーのみを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、増大されたシース厚さのみを含む。
【0108】
したがって、本技術は、損傷を受けた末梢神経の外科的修復における既存の技術に対する主要な進歩をもたらす。これらの既存の装置は、軸索が直線状経路から頻繁に逸れることにより、スキャフォールドの遠位端に到達して、神経修復に寄与する軸索の数を減少させる(個々のマイクロチャネルに分割されていない)単一の開口チャネルのみからなる。市販のもののようなより単純な設計は、軸索の誤誘導により苦痛を伴う神経腫および機能的改善の欠如につながることがより一般的である。これに加えて、既存のスキャフォールドが作られてきた材料の特性は、細胞と軸索の接着を適正に支持しない。ヒドロゲル神経再生スキャフォールドの植込みおよび試験後の経験的観察に基づくと、ヒドロゲル系材料は、壁の薄い(<50μm)スキャフォールドの製造を可能とするのに十分な強度を示さない。しかし計算に基づくと、50ミクロン未満の壁厚が、神経組織の成長を十分に支持および促進する80%を超える内腔体積のスキャフォールドを達成するために必要なようである。したがって、現在入手可能なヒドロゲル系材料は、本教示の特定の態様により提供される有利な開口している内腔体積とともに適正な強度を有するスキャフォールドを提供できない。逆に、本明細書中で提供される材料、例えば、ポリ(エチレングリコール)メタクリレートとメタクリレート化ゼラチンとの混合物を含むヒドロゲル、またはポリ(エチレングリコール)メタクリレートとメタクリレート化コラーゲンとの混合物を含むヒドロゲルは、in vivoで安定なように機械的に加工される。いくつかの実施形態において、3Dプリンティング(例えば、デジタル光処理またはその他の適切な方法)の使用は、マイクロチャネルの壁の印刷において高解像度をもたらす。本明細書中で提供される材料と併せたいくつかの実施形態において、この高解像度により、スキャフォールドがin vivoで安定を保つのに必要な強度を持つことができる。いくつかの実施形態において、高解像度3Dプリンティングにより、10ミクロンもの薄さの壁を有するスキャフォールドを作成できる。いくつかの実施形態において、高解像度3Dプリンティングにより、上に開示したように、約250ミクロン~約700ミクロンのシース厚さのスキャフォールドを作成できる。
【0109】
本組織スキャフォールド装置は、神経誘導を高める複数内腔設計を提供することにより、再生が成功する軸索の総数を増加させることにおいて、より優れている。その結果、そのような組織スキャフォールド装置は、長い神経欠損部にわたり、かつより近位の神経損傷において機能し、これにより、多大な満たされていない医療ニーズに対処する。さらに、本開示に係る組織スキャフォールドは、最適化された多孔度および表面粗さを有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、メタクリレート化ゼラチン、メタクリレート化コラーゲン、ポリカプロラクトン、またはアクリレート化ポリカプロラクトンなどの生体適合性かつ生分解性材料から作製されることにより、植込み後のin vivoでの大幅に低減した炎症反応を示しつつ、より優れた細胞接着レベルおよび方向性細胞成長を提供している。in vivoで試験される際、本開示の装置は、生体適合性である。
【0110】
このように、本開示の特定の態様に係る組織スキャフォールド装置は、以下の特有の特徴または利点のうちの1つ以上を可能とする。すなわち、生来の神経組織を模した密に並んだ線状マイクロチャネル、相当な、かつカスタマイズ可能な長さを有するマイクロチャネル、シース内のチャネル数を最大化するための六角形のマイクロチャネル、開口体積を最大化するための壁の薄いマイクロチャネル、高い開口内腔体積、生体適合性材料を含むスキャフォールド装置、外側シース管としての壁厚および縫合可能性を最小化する強度のための最適化を行う機械的特性制御能力、酸素およびその他の栄養分の浸透を可能としつつ軸索の突き刺しを防ぐスキャフォールドとシースの多孔度を制御する能力、細胞接着を可能とするためのマイクロチャネル表面特性を改変する能力、神経断端とスキャフォールドの壁の間の固定並置を可能とする植込みを容易化する単一の一体シースおよびスキャフォールド構成、ならびに最後に、低い材料および製造費用である。
【0111】
さらなる適用可能領域は、本明細書中で提供される説明から明らかになるだろう。本概要における説明および具体例は、例示目的のみを意図したものであり、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
【0112】
処置方法
一態様において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドは、必要とする対象における組織の再成長に有用である。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドは、脊髄神経または末梢神経などの神経組織の再成長に有用である。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドにより、対象への植込み後に切断された神経の再成長および再接続が可能となる。
【0113】
一態様において、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドを必要とする対象における神経損傷部位に植え込むことを含む神経機能を回復する方法を本明細書中で提供する。
【0114】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドを植え込むことは、損傷部位を横切る神経機能の回復を可能とする。いくつかの実施形態において、回復は、神経機能の部分的回復である。いくつかの実施形態において、回復は、神経機能の完全回復である。
【0115】
いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第1の神経端部が、第1の端部を起点とするマイクロチャネルを通して再成長するように、第1の神経端部を装置に縫合することを含む。いくつかの実施形態において、組織修復スキャフォールドを植え込むことは、第2の神経端部が、第2の端部を起点とするマイクロチャネルを通して再成長するように、第2の神経端部を装置に縫合することを含む。いくつかの実施形態において、第1の神経または第2の神経端部の一方は、組織修復スキャフォールドの全体を通して再成長する。いくつかの実施形態において、第1の神経端部と第2の神経の両方は、組織修復スキャフォールドの全体を通して再成長する。いくつかの実施形態において、第1の神経端部と第2の神経端部とは、スキャフォールドの内側で再接続する。
【0116】
いくつかの実施形態において、神経は、脊髄神経または末梢神経である。いくつかの実施形態において、神経は、脊髄神経である。いくつかの実施形態において、神経は、末梢神経である。
【0117】
いくつかの実施形態において、神経は、完全にまたは部分的に損傷している。いくつかの実施形態において、神経は、完全に損傷している。いくつかの実施形態において、神経は、部分的に損傷している。
【0118】
いくつかの実施形態において、神経損傷部位は、神経端部間に欠損部を有する。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、約0.5mm~約10cmである。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、約0.1cm~約10cmである。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、約0.1cm~約0.25cm、約0.1cm~約0.5cm、約0.1cm~約0.75cm、約0.1cm~約1cm、約0.1cm~約2.5cm、約0.1cm~約5cm、約0.1cm~約7.5cm、約0.1cm~約10cm、約0.25cm~約0.5cm、約0.25cm~約0.75cm、約0.25cm~約1cm、約0.25cm~約2.5cm、約0.25cm~約5cm、約0.25cm~約7.5cm、約0.25cm~約10cm、約0.5cm~約0.75cm、約0.5cm~約1cm、約0.5cm~約2.5cm、約0.5cm~約5cm、約0.5cm~約7.5cm、約0.5cm~約10cm、約0.75cm~約1cm、約0.75cm~約2.5cm、約0.75cm~約5cm、約0.75cm~約7.5cm、約0.75cm~約10cm、約1cm~約2.5cm、約1cm~約5cm、約1cm~約7.5cm、約1cm~約10cm、約2.5cm~約5cm、約2.5cm~約7.5cm、約2.5cm~約10cm、約5cm~約7.5cm、約5cm~約10cm、または約7.5cm~約10cmである。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、約0.1cm、約0.25cm、約0.5cm、約0.75cm、約1cm、約2.5cm、約5cm、約7.5cm、または約10cmである。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、少なくとも約0.1cm、約0.25cm、約0.5cm、約0.75cm、約1cm、約2.5cm、約5cm、または約7.5cmである。いくつかの実施形態において、神経間の欠損部は、最大で約0.25cm、約0.5cm、約0.75cm、約1cm、約2.5cm、約5cm、約7.5cm、または約10cmである。
【0119】
対象は、ヒトまたは非ヒト動物であってもよい。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、対象は、脊椎動物である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト哺乳類である。いくつかの実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウマ、ウシ、ブタ、霊長目、またはその他の動物である。
【0120】
定義
本明細書において用いられる用語は、特定の例示的実施形態のみを説明する目的のものであり、限定的意図はない。本明細書において用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別の意味を示すのでない限り、複数形をも含むものと意図されていることがある。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であり、よって、記述されている特徴、要素、組成物、工程、整数、動作、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。「含む(comprising)」というオープンエンド用語は、本明細書中に記載のさまざまな実施形態を説明かつ特許請求するために用いられる非制限的用語として理解されるべきであるが、特定の態様においては、当該用語は、代わりに「からなる(consisting of)」や「実質的に~からなる(consisting essentially of)」などのより限定的かつ制限的な用語であると理解されてもよい。したがって、組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/またはプロセス工程を記載しているあらゆる所与の実施形態に対して、本開示もまた、そのような記載された組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/またはプロセス工程からなるまたは実質的にそれらからなる実施形態を特定して含む。「からなる(consisting of)」の場合、代替の実施形態は、あらゆる追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/またはプロセス工程を除外する一方、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」の場合、基本的かつ新規な特徴に実質的に影響するあらゆる追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/またはプロセス工程は、そのような実施形態から除外される。しかし、基本的かつ新規な特徴に実質的に影響しないあらゆる組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/またはプロセス工程は、当該実施形態に含まれ得る。
【0121】
本明細書中で説明されているいずれの方法工程、プロセス、および動作も、実行順序として特定して明示されていない限り、述べられているかまたは例示されている特定の順序での実行を必ずしも必要とするとは解釈すべきでない。また、別の意味が示されていない限り、追加または代替の工程を使用してもよいことは理解されねばならない。
【0122】
本明細書中で用いられている「約」という用語は、数値または範囲に言及するとき、値または範囲においてある程度のばらつき、例えば、記載されている値または範囲の記載されている限界の10%以内、もしくは5%以内のばらつきを許容する。
【0123】
第1の、第2の、第3のなどの用語は、さまざまな工程、要素、構成要素、領域、層および/または区分を説明するために本明細書中で用いられていることがあるが、別の意味が示されていない限り、これらの工程、要素、構成要素、領域、層および/または区分は、これらの用語により限定されるべきでない。これらの用語は、ある工程、要素、構成要素、領域、層、または区分を別の工程、要素、構成要素、領域、層、または区分から区別するためにのみ用いてもよい。本明細書中で用いられるとき、「第1の」、「第2の」などの用語およびその他数に関する用語は、文脈上明らかに示されていない限り、連続や順序を暗示するものではない。しがたって、下で述べる第1の工程、要素、構成要素、領域、層、または区分は、例示的実施形態の教示から逸脱することなく、第2の工程、要素、構成要素、領域、層、または区分と呼ばれ得る。
【0124】
別の意味が記されていない限り、すべてのパーセント組成は、重量パーセントとして与えられている。
【0125】
別の意味が特定されていない限り、ポリマーのすべての平均分子量は、重量平均分子量である。
【0126】
本明細書中で用いられているとき「実質的に(Substantially)」という用語は、完全にまたはほぼ完全にという意味である。
【0127】
「チャネル」によって、構造が、明白な長手方向軸を定め、かつ開口した内腔または中空の芯を有するということが意味される。そのような明白な長手方向軸を有するチャネルは、長尺の軸方向寸法を含み、この寸法は、チャネルの他の寸法(例えば、直径または幅)より長い。いくつかの実施形態において、長尺のチャネルは、線状である。
【0128】
本明細書中で用いられるとき、「マイクロサイズの」、「マイクロメートルサイズの」という用語、または別の用語に付いている「マイクロ」という接頭辞(例えば、マイクロチャネル)は、マイクロメートルのオーダーでの特徴(例えば、1mm未満、900マイクロメートル未満、800マイクロメートル未満、700マイクロメートル未満、600マイクロメートル未満、または500マイクロメートル未満)を有するという意味であると、当業者に一般的に理解されている。
【0129】
本明細書中で用いられるとき、「マイクロメートル」および「ミクロン」という用語ならびに「μm」という略語はすべて、同じ意味であり、かつ互換的に用いられる。
【0130】
「生体適合性」によって、ある材料または材料の組合せが、in vitroまたはin vivoで細胞、組織と接触させたり、哺乳類またはその他の生体とともに用いたりすることができ、かつそのような細胞、組織、および/もしくは動物との接触、ならびに/または有益な使用に対する許容可能な毒性学的性質を有するということが意味される。
【0131】
本明細書中で用いられるとき、本明細書中で提供される組織修復スキャフォールドの「長さ」に言及すると、該長さは、シース内に設けられた1本以上のマイクロチャネルの長さとして計測される。同様に、シースが第1の端部および第2の端部を有すると言及されるとき、別の意味が特定されていない限り、第1の端部と第2の端部とは、シース内に設けられたいずれかのマイクロチャネルの終端点に相当するということが意図される。シースの一部であるか、またはシースに接着されていてもよく、これらの点を越えて延びるあらゆる追加の材料は、「オーバーハング構造」または類似の用語で呼ばれる。
【実施例
【0132】
本明細書中で本開示の好適な実施形態を示し、説明したが、そのような実施形態がほんの一例として与えられていることは、当業者であれば自明のことであろう。本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置換えが現在当業者に想定されるであろう。本明細書中で説明した実施形態のさまざまな代案は、本発明を実施するにあたり使用されてもよいことを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定することと、これら特許請求の範囲内の方法および構成ならびにそれらの均等物が請求項の範囲に包含されることが、意図されている。
【0133】
実施例1 植込み用に改善された特徴を有するスキャフォールドの製造
膜材料の準備
ポリ(ε-カプロラクトン)(シグマ・アルドリッチ社、数平均モル質量:80kDa;PCL)を用いて、スラリーを製造する。PCLを3wt%の濃度のクロロホルム中で可溶化する。製粉したNaClをポロゲンとして添加することにより、多孔性を与える。NaClを400rpmで2時間(5分間のミル粉砕と5分間の休止の交互の間隔)ボールミル(レッチェPM100)粉砕することにより、NaClの結晶を準備する。ミル粉砕により、およそ17~20μmの粒径を有するNaClを製造する。NaClを可溶化したPCLに添加して、ポリマー/塩の比率が30vol%/70vol%であるポリマーと塩とのスラリーを製造する。ボールミル中で20分間(2分間の混合と2分間の休止の交互の間隔)スラリーを混合する。次に、PCL+塩スラリーを用いて、膜を作製し、該膜をマイクロチャネルおよびシースに形成する。
【0134】
ポリマー膜を製造するために、PCL+塩スラリーを自動化テープ成形用塗工機(MTI社)により成形する。スラリーを銅箔(McMaster)上に注ぎ、ブレードを用いて広げて、600μmの最終乾燥厚さを有する膜を製造する。膜を空気乾燥させ、エタノールで濡らすことにより銅箔から取り外す。エンボス加工前に、自動化カレンダー機を用いて、膜(PCL+塩)を順次プレス加工する。シースの作製に用いられる膜材料の一部をプレス加工して、最終厚さ500μmとし、膜の残りをプレス加工して、最終厚さ約70μmとする。
【0135】
エンボス材料の準備
280μmの外径を有するステンレス鋼線材をエタノール中で洗浄する。洗浄した線材を、60℃に予熱した水中の12wt%ポリビニルアルコール(シグマ・アルドリッチ社、80%加水分解;PVA)溶液に浸漬する。被覆された線材を吊り下げ乾燥させ、次いで、被覆物中の滴りや不均質性を点検する。被覆物中に滴りや不均質性が発見された場合、線材を製造から除外する。アセタールエンボス加工金型(DELRIN)を機械加工して、135μm間隔で離間した線状の溝を作製する。各溝を0.013インチのエンドミルにより作製し、結果として、幅およそ300μmおよび深さおよそ150μmの特徴とする。最終のマルチチャネルロールをともにプレス加工するための金型は、アルミニウムから製作される。金型は、嵌め合わせると3.0mm径となる単一チャネルを製造するために位置合わせされた2つの切片を含む。
【0136】
エンボス加工されたマイクロチャネルの準備
エンボス加工のために、2つのアルミニウムブロックおよびプレス加工用金型を使用に先立ち40℃~50℃に加熱する。エンボス加工用金型は、およそ21℃~80℃の温度で用いる。2mmのフォームシート(Darice)をエンボス加工用金型の大きさに切り分ける。(例えば、上述のように製造された)2枚のプレス加工された正方形膜をある大きさに切り分ける。約70μmの厚さを有する第1の膜をエンボス加工用金型上に載置し、一片のフォームにより覆う。サンドイッチ状物を予熱したアルミニウムブロック間に配置し、油圧プレス(Carver)内に入れる。積層体を0.4メータートン未満の力でプレス加工する。表面に軽く膜が付着した状態で、ブロックを積層体から優しく取り除く。予め被覆したステンレス鋼線材をエンボス加工用金型上の溝に配置し、接着テープにより固定する。例示的な実施形態において、16本の線材を用いて、直径1.6mmの装置を製造する。第2の膜を最上部に配置し、一片のフォームにより覆う。サンドイッチ状物をプレス上のアルミニウムブロックの間に配置する。積層体全体を1.5メータートンの力で20秒間プレス加工し、次いで、プレスから取り除く。
【0137】
シースの準備
500μmの厚さを有する膜の矩形シートを所望の大きさで切り分けることで、所望の長さおよび3mmの内径を有するシースを作製する。その後、シートを3mm径のステンレス鋼マンドレルの周囲に巻きつける。ステンレス鋼マンドレルは、結果として得られるシースの所望の長さより長い。その後、ステンレス鋼マンドレルの端部を、約70℃で約5分間加熱してあった鋼マンドレルの端部を保持するよう構成された金属ブロック内に配置する。ブロックからマンドレルへの熱送達は、マンドレルの周囲に巻き付いた単一の丸みを帯びたシースの作製のために膜材料の2つの端部同士を繋ぐのに十分である。
【0138】
その後、マンドレルを加熱ブロックから取り除き、シースの周囲に沿って均等に広がり、シースの第1の端部から第2の端部まで延在している4本の平行な溝と、シースの端部から1mm離間して装置に作り込まれた2本からなる2mmの周方向溝とを準備するよう構成されたエンボス加工金型内に配置する。その後、金型アセンブリを1.5メータートンの力で約5分間プレス加工し、プレスから取り除く。その結果得られたシースを、完全な装置準備のために必要となるまで内部に残存しているステンレス鋼マンドレルとともに保管する。
【0139】
装置の製造
装置を形成するために、線材スペーサを有するエンボス加工されたマイクロチャネル膜をエンボス加工用ブロックから剥離する。スペーサの両側の余分な膜をかみそりにより切り取る。装置をスペーサの軸と平行な(または実質的に平行な)軸の周りで圧延する。ロールを40℃~50℃に予熱したプレス加工用金型内に配置する。この金型を2つのアルミニウムブロックの間に配置し、1.5~2メータートンの圧力でプレス加工する。一旦、プレスから取り除き、金型を開き、ロールを取り除く。次いで、マンドレルをシースから取り除く。ロールをシースに挿入し、アセンブリを水に浸けることで、ポロゲン(NaCl)およびPVA被覆物を取り除く。アセンブリを1時間浸漬し、少なくとも一度水を換える。水から取り除いた後、スペーサをピンセットで取り除き、装置を空気乾燥させておく。その結果得られる装置は、シース材料の1mmのオーバーハングを残して、シースの端部から1mmで終端するシース内に設けられたマイクロチャネルを有する。
【0140】
実施例2 位置合わせ線を有するマルチチャネル神経修復スキャフォールドの植込み
欠損部の神経修復を行う際、近位と遠位の神経断端を適切に位置合わせすることが非常に重要である。位置ずれがあると、軸索が不適切な標的へ逸れてしまいかねず、このことが、再生を損ない、かつ周辺器官(例えば、筋肉)への適正な接続性を妨げることとなる。本明細書中で提供される神経修復スキャフォールドは、再生している軸索を誘導するマイクロチャネルからなる内部構造を有する。外科医が損傷した欠損部に装置を植え込み、近位と遠位の神経断端を装置に取り付けるとき、該断端が、修復の成功可能性を最大化し、かつ装置の両側の位置ずれを防ぐよう適正に位置合わせされていることが重要である。したがって、装置の外シース上の位置合わせ用の特徴は、適正な位置合わせを促すために開発された。
【0141】
マルチチャネル神経修復スキャフォールドは、外シースの長さだけ延在し、外シースの周囲に沿って均等に離間した4本の長手方向線を含む外シースを含む。これらの線は、外シースの細い表面エッチングからなり、これらにより、外科医が欠損部の両側の神経断端を位置合わせ可能となる。これらの新規な外シースを、挿入に対して熟練した整形外科医により試験した。
【0142】
顕微鏡案内下でウサギの長さ3cmの坐骨神経病変欠損部モデルにおいてin vivoで装置を試験した。取扱いやすさおよび神経断端の位置合わせを調べた。5分間の滅菌食塩水を用いた水和作用の後、装置を試験した。以下が観察された。1)エチロン9-0縫合糸を用いて神経断端を外シースに取り付けることは、容易であった。2)外シース表面上の線状エッチングは、スキャフォールドの部位の近位と遠位の面において神経植込みを案内することに成功した。これにより、外科医は、神経断端を装置に取り付け、それらが互いに位置合わせされるように回転させることにより、損傷前の状態を模倣することができた。
【0143】
本発明者らは、スキャフォールドの外シースに細い線状エッチングを追加することにより、機械的強度や外科医による操作性を明らかに失うことなく、位置合わせ可能性が向上すると結論づけた。
【0144】
実施例3 最適化された外シース厚さを有するマルチチャネル神経修復スキャフォールドの植込み
神経欠損部架橋装置は、近位と遠位の神経端部に縫合するための、装置の端部を越えて延びる外シースを有する。長さ3cmのマルチチャネル神経修復スキャフォールドの実行可能性の検討では、末梢神経損傷のウサギモデルにおいて100ミクロンの厚さを有する長さ3cm、内径3mmのスキャフォールドを試験した。合計18匹のウサギが長さ3cmの坐骨神経病変へのスキャフォールドの植込みを受けた。シースは、ポリカプロラクトンから製造され、かつ70%volの多孔度を有していた。
【0145】
本実行可能性検討において、in vivoでの90日後に18個中4個のスキャフォールドにおいて、厚さ100ミクロンの外シースの部分的生分解が観察された。これら4つのうち2つの場合において、該生分解が、遠位神経断片からのスキャフォールドの分離をもたらした。
【0146】
この欠陥を正すために、200ミクロン、300ミクロン、および500ミクロンの外シース厚さを有するスキャフォールドを同じ材料から作製し準備した。外シースの厚さを増大させたこれらのスキャフォールドを、神経スキャフォールドの植込みおよび操作において熟練した3人が試験した。
【0147】
エチロン9-0縫合糸を用いた外科的顕微鏡下において装置を試験した。操作性の向上、可撓性、縫合、縫合による突き刺し時の破れ耐性、および引っ張り耐性を調べた。乾燥時と5分間または15分間の滅菌食塩水を用いた水和作用後との両方において、装置を試験した。以下の結果が観察された。
【0148】
200ミクロンのシース-この厚さの外シースは、操作が容易で、かつ通常の取扱いに対して十分な可撓性および耐久性を有していた。しかし、外シースを通して配置された縫合糸に引っ張りを加えて試験すると、シースが破断したことにより、最適以下の機械的強度である可能性が示された。
【0149】
300ミクロンのシース-この厚さの外シースは、操作が容易で、かつ通常の取扱いに対して十分な可撓性および耐久性を有していた。外シースを通して配置された縫合糸に牽引力を加えて試験すると、シースは破断せず、代わりに、縫合糸が破断したことで、外シースの機械的強度は良好であることが示された。
【0150】
500ミクロンのシース-この厚さの外シースは、操作が容易で、かつ通常の取扱いに対して十分な可撓性および耐久性を有していた。外シースを通して配置された縫合糸に引っ張りを加えて試験すると、外シースではなく縫合糸が破断した。この厚さは、取扱い容易で、十分に耐久性があり、かつ破れ耐性を有すると判断された。
【0151】
5分間および15分間の水和作用とともに実験を再現したところ、各回で同様の結果が観察された。
【0152】
実施例4 マイクロチャネル端部マーカーを有するマルチチャネル神経修復スキャフォールドの植込み
神経欠損部架橋装置は、近位と遠位の神経端部の縫合のための装置の端部を越えて延びる外シースを有する。これらの外シース延長部は、装置の内側に設けられたマイクロチャネルを越えて延びている。シースの外側材料が不透明であるため、オーバーハング部分に対するマイクロチャネルの正確な位置は、設置を行う外科医には確認が困難である。よって、オーバーハング部分を神経断端に縫合しようとしているときに、外科医は、シースの内側に設けられたマイクロチャネルを穿刺しないよう細心の注意を払わねばならない。縫合糸が誤った位置に植え込まれ、内側のマイクロチャネルの1本以上を穿刺した場合、移植片は、損なわれ、かつ2つの神経端部の神経再成長および再接続を促すにあたり効果がない可能性がある。
【0153】
この課題を正すために、マイクロチャネルの端部を越えて延びる外シースを有する神経修復スキャフォールドを準備する。外シースは、装置の外側で、装置の内側の見えにくいマイクロチャネルがどこで終わるかを示す外側マーカーを有する。マーカーは、シースにおけるエッチングであり、装置の内側のマイクロチャネルの終端点を表わす。エッチングは、内側のマイクロチャネルの終端部を表わす点から内向きに装置中央へ向かって2mmの長さにわたっており、設置を行う外科医が容易に見ることができる。
【0154】
エチロン9-0縫合糸を用いた外科的顕微鏡下において、オーバーハングマーカーを有するスキャフォールドを試験する。in vivoでのウサギの長さ3cmの坐骨神経病変欠損部モデルを用いて装置を試験する。5分間の滅菌食塩水を用いた水和作用の後、装置を試験する。
【0155】
外シースマーカーの存在により、外科医は、内側のマイクロチャネルに損傷を与えることなく、装置のどこで神経断端への装置の縫合を開始および終了すべきかを容易に確認することができる。設置を行う外科医は、内部のどこがチャネルの端部であるかを確認するために装置を頻繁に調整する必要がない。外科医は、内側のチャネルのいずれをも穿刺することなく、神経の欠損部に装置を設置することができる。マーカーの存在は、装置の安定性や機能に影響を与えることはない。
【0156】
実施例5 ラットモデルにおける神経損傷修復のためのマルチチャネルスキャフォールド
いくつかの実施形態において、装置は、多孔性PCL、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、もしくはアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらの組合せから3Dプリンティングされ、かつ改善されたシース厚さおよび複数の線状マイクロチャネルを含む。装置全体は、10mmの長さを有し、かつ(例えば、対象において適所に縫合するために)両側に外シースの1mmのオーバーハングを有する。シースは、500μmの壁厚および3mmの内径を有する。装置は、近位と遠位の神経端部に縫合のするための、装置の端部を越えて延びる外シースを有する。これらの外シース延長部は、装置の内側に設けられたマイクロチャネルを越えて延びている。装置は、約200kPa~約300kPaの弾性率を含む。
【0157】
シースの外側材料が不透明であるため、オーバーハング部分に対するマイクロチャネルの正確な位置は、設置を行う外科医には確認が困難である。よって、オーバーハング部分を神経断端に縫合しようとしているときに、外科医は、シースの内側に設けられたマイクロチャネルを穿刺しないよう細心の注意を払わねばならない。縫合糸が誤った位置に植え込まれ、内側のマイクロチャネルの1本以上を穿刺した場合、移植片は、損なわれ、かつ2つの神経端部の神経再成長および再接続を促すにあたり効果がない可能性がある。
【0158】
この課題を正すために、マイクロチャネルの端部を越えて延びる外シースを有する神経修復スキャフォールドを準備する。外シースは、装置の外側で、装置の内側の見えにくいマイクロチャネルの端を示す外側の第1の複数のマーカーを有する。装置のシースは、装置の外側で、線状マイクロチャネルの位置合わせおよび装置のねじれを示す外側の第2の複数のマーカーをさらに有する。マーカーは、シースにおけるエッチングであり、装置の内側のマイクロチャネルの終端点、およびその中のマイクロチャネルの位置合わせを表わす。エッチングは、内側のマイクロチャネルの終端部を表わす点から内向きに装置中央へ向かって2mmの長さにわたっており、設置を行う外科医が容易に見ることができる。
【0159】
外シースマーカーの存在により、外科医は、内側のマイクロチャネルに損傷を与えることなく、装置のどこで神経断端への装置の縫合を開始および終了すべきかを容易に確認することができる。設置を行う外科医は、内部のどこでチャネルが終わるかを確認するために装置を頻繁に調整する必要がない。外科医は、内側のチャネルのいずれをも穿刺することなく、神経の欠損部に装置を設置することができる。マーカーの存在は、装置の安定性や機能に影響を与えることはない。
【0160】
神経修復に対するこれら装置の効能を評価するために、ラットの坐骨神経モデルにおいて装置を試験した。動物は、米国実験動物ケア認証協会により承認された施設において食料および水に自由にアクセスできる状態で(例えば、1ケージあたり2~3匹)収容される。すべての動物研究は、サンディエゴの退役軍人医療システムの学内動物飼育使用委員会(the Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されたプロトコルに準拠した実験動物ケアおよび安全性のためのNIH指針にしたがって行われる。
【0161】
装置(n=6)を植え込むために、(例えば、ケタミン(25mg/mL)、キシラジン(1300mg/mL)、およびアセプロマジン(0.25mg/mL)を用いて)動物に深麻酔をかけた後、右側方の大腿部を長さ20mmで切開する。側方でん筋の切離により右坐骨神経幹を露出する。神経幹の周囲の神経弓上の結合組織をマイクロ剪刀により分離し、長さ6.0mmの神経断片を切除する。組織の退縮後、切断された神経断端を約15mmまでさらに離間させ、生理食塩水により保護および水和する。9-0エチコン縫合糸を用いて、装置を神経に、両方の端部に位置付けて取り付ける。装置と神経部位との界面における引っ張りを回避するよう装置を位置付ける。植込みに引き続き、5-0縫合糸を用いて筋肉を縫合し、クリップを用いて皮膚を閉じる。最初の3日間、抗生剤および鎮痛剤(例えば、乳酸リンゲル液中のバナミン(1mg/kg)およびアンピシリン(0.2mg/kg))を投与して、手術からの回復を促す。4週間後、装置を採取する。動物を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で灌流し、組織を取り除いて、PFA中でさらに24時間の後、30%スクロース中で48時間、後固定する。
【0162】
4週間後、観察では、装置の分解の兆候はないことが示されると予測される。病変部にわたる神経の再生を評価するために、組織学的断面に免疫標識を行う。1)例えば、損傷部位(NF200)を通したおよび越えた軸索の再生を評価するための軸索標識、ならびに2)シュワン細胞(S100)について、組織を処理する。
【0163】
装置のマイクロチャネルは、神経が移植片の遠位側から出る状態で、スキャフォールドの全長を通して位置合わせされた神経突起の成長をもたらす。より伝統的な製造方法(例えば、ディップコーティング)とは異なり、本明細書中で提供される装置の高い開口内腔体積は、孔壁により占められる体積の減少により、より多くの数の神経細胞を再生可能とする。したがって、本技術は、より良好な機能的回復とともに、神経病変のより迅速な治癒をもたらす。
【0164】
実施例6 ラットモデルにおける神経損傷修復のためのマルチチャネルスキャフォールド
マルチチャネルスキャフォールドを、多孔性PCL、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ゼラチン、メタクリレート化ゼラチン、コラーゲン、メタクリレート化コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、もしくはアクリレート化ポリカプロラクトン、またはそれらの組合せから3Dプリンティング法により準備し、ラットの坐骨神経における長さ1cmの欠損部に植え込み、腓腹神経自家移植または開管移植と比較した。本実施例において用いられるスキャフォールドは、それぞれがおよそ200ミクロン径のおよそ75本のマイクロチャネルを有していた。スキャフォールドは、長さ1cmで外径が1.7mmであった。装置は、約200kPa~約300kPaの弾性率を含む。
【0165】
シースの外側材料が不透明であるため、オーバーハング部分に対するマイクロチャネルの正確な位置は、設置を行う外科医には確認が困難である。よって、オーバーハング部分を神経断端に縫合しようとしているときに、外科医は、シースの内側に設けられたマイクロチャネルを穿刺しないよう細心の注意を払わねばならない。縫合糸が誤った位置に植え込まれ、内側のマイクロチャネルの1本以上を穿刺した場合、移植片は、損なわれ、かつ2つの神経端部の神経再成長および再接続を促すにあたり効果がない可能性がある。さらに、植込み時の装置のねじれもまた、設置を行う外科医には確認が困難である。というのも、装置は、円筒形状であり、ねじれた状態で配置されているか否かを明白に示さないからである。
【0166】
この課題を正すために、マイクロチャネルの端部を越えて延びる外シースを有する神経修復スキャフォールドを準備する。外シースは、装置の外側で、装置の内側の見えにくいマイクロチャネルの端を示す外側の第1の複数のマーカーを有する。シースは、装置の外側で、線状マイクロチャネルの位置合わせおよび装置のねじれを示す外側表面上の第2の複数のマーカーを有する。マーカーは、シースにおけるエッチングであり、装置の内側のマイクロチャネルの終端点、およびその中のマイクロチャネルの位置合わせを表わす。エッチングは、内側のマイクロチャネルの終端部を表わす点から内向きに装置中央へ向かって2mmの長さにわたっており、設置を行う外科医が容易に見ることができる。第2の複数のマーカーは、移植片の近位端から移植片の遠位端まで直線状に延在する4本の線状マーカーを含む。第1の複数のマーカーは、マイクロチャネルが終わり、外シースが続く位置に相当する移植片の近位端および移植片の遠位端の周囲の周方向リングを含む。
【0167】
第1の外シースマーカーの存在により、外科医は、内側のマイクロチャネルに損傷を与えることなく、装置のどこで神経断端への装置の縫合を開始および終了すべきかを容易に確認することができる。第1の外シースマーカーの存在により、外科医は、その中に収容されているマイクロチャネルの位置合わせ、および装置に印加されるあらゆるねじれを容易に確認することができ、外科医は、移植片を設置する際に装置からあらゆるねじれを取り除くことが簡単に可能となる。設置を行う外科医は、内部のどこがチャネルの端部であるかを確認するために装置を頻繁に調整したり、装置に印加されるねじれを考慮するために装置を調整したりする必要がない。外科医は、装置の中の線状マイクロチャネルの適正な位置合わせ(例えば、ねじれがないこと)を維持しつつ、内側のチャネルのいずれをも穿刺することなく、神経の欠損部に装置を設置することができる。マーカーの存在は、装置の安定性や機能に影響を与えることはない。
【0168】
植込み後4週のマルチチャネルスキャフォールドは、損傷部位にわたって軸索の線状位置合わせ、および再生の迅速化を支持する。植込み後6ヶ月のマルチチャネルスキャフォールドは、開管処置と比較して、かつ自家移植に匹敵して、脊髄と腓腹筋との間の接続性の改善を示した。これに加えて、マルチチャネルスキャフォールドは、筋肉量の増加を支持し、病変のみの処置または開管処置と比較して、かつ自家移植に匹敵して、筋肉量を2倍に増加させる。本明細書中で説明されるマルチチャネルスキャフォールドは、同じ時点での開管スキャフォールドと比較して、(損傷後4週で示された)ラットにおける1cmの坐骨神経欠損部にわたって、優れた軸索の位置合わせ、およびより高速な再生を促す。さらに、本実施例において利用された移植片は、神経修復6ヶ月後での逆行性トレーサー(コレラ毒素B)の腓腹筋への注射により評価した脊髄運動ニューロンと筋肉との間の接続性の改善を示し、結果として筋肉量の改善をもたらす。統計的には、マルチチャネルスキャフォールドは、腓腹神経自家移植と同等の有効性を有する。一群あたりN=11匹の動物。
【0169】
本明細書中で開示されているマイクロチャネルを有する生物模倣スキャフォールドは、坐骨神経損傷部位にわたる解剖学的かつ電気生理学的接続性の改善を有し、運動機能の回復を支持する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】