(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】間質空間を介して生理学的状態を評価および変更するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61B5/00 101L
A61B5/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542854
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022070186
(87)【国際公開番号】W WO2022155666
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521065469
【氏名又は名称】エヌエックスティー バイオメディカル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NXT BIOMEDICAL,LLC
【住所又は居所原語表記】9 Executive Circle, Suite 290, Irvine, California 92614, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラビト,グレン
(72)【発明者】
【氏名】パスマン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ローウェ,スタントン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハリファ,アブバカー
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB10
4C117XC11
4C117XD22
4C117XE04
4C117XE27
4C117XJ13
4C117XN04
(57)【要約】
必要な治療の指標として、患者の間質空間の圧力の測定値を使用し、患者の生理学的状態を治療するための方法およびデバイス。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生理学的状態を治療する方法であって、
皮下間質圧(SCIP)を測定するステップと、
前記SCIPが正常範囲にあるか否かを判定するステップと、
前記SCIPが正常範囲外の場合に、治療を実施するステップと、
前記SCIPを監視するステップと、
前記SCIPが正常範囲内にある場合、前記治療を中止するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記生理学的状態は、間質性浮腫、心不全、敗血症、腎臓病、および癌のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の間質空間内に自由流体ポケットを形成するステップを更に備え、前記SCIPを測定するステップは、前記自由流体ポケット内の圧力を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記自由流体ポケットを形成するステップは、前記間質空間内に穿孔カプセルを挿入するステップと、前記穿孔カプセル内への組織および毛細血管の内部成長を可能にすることにより、前記自由流体ポケットを形成するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記穿孔カプセルは、患者の胸部に埋め込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記穿孔カプセルは、3~5週間にわたり、前記間質空間に埋め込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
圧力センサに接続された針を、前記自由流体ポケットに挿入するステップを更に備える、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力センサからのSCIPを表す信号が増幅される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ウェアラブル圧力検知デバイスを患者に装着するステップと、前記ウェアラブル圧力検知デバイスを用いてSCIPを測定するステップとを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
埋め込み型圧力検知デバイスを患者に埋め込むステップと、前記埋め込み型圧力検知デバイスを用いてSCIPを測定するステップとを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセル内に挿入可能な圧力導管と、
前記圧力導管に接続された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項12】
前記カプセルの内面に配置された発泡体を更に備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記圧力導管は、針である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記圧力導管は、バルーンライニングである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バルーンライニングは、前記発泡体に隣接して配置される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記バルーンライニングは、小孔を有する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセル内に配置された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項18】
前記カプセルの内面に配置された発泡体を更に備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記発泡体に隣接して小孔を有したライニングを更に備える、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセルに挿入可能な圧力導管と、
前記圧力導管に接続された増幅器と、
前記圧力導管に接続された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項21】
前記増幅器は、ピストンシステムにより互いに接続された第1の流体チャンバおよび第2の流体チャンバを備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ピストンシステムは、第1の圧力ディスクと第2の圧力ディスクとを備え、前記第1の圧力ディスクの表面積は、前記第2の圧力ディスクの表面積よりも大きい、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたプリント回路基板、マイクロプロセッサユニット、およびバッテリと、
前記ハウジングおよび前記マイクロプロセッサユニットに組み合わされた圧力センサと、
前記圧力センサに組み合わされた流体カラムと、
前記流体カラムに接続されたフラッシュポートと
を備える、デバイス。
【請求項24】
前記圧力センサは、着用可能な場所の原位置に配置するために、前記ハウジングの外側に配置される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記圧力センサは、前記ハウジングの内部に配置される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記流体カラムに接続された穿孔カプセルと、前記流体カラムに接続された圧力カラムとを更に備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記デバイスは着用可能である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項28】
前記デバイスは、パッチである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項29】
間質圧を測定するための埋め込み型デバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたプリント回路基板、マイクロプロセッサユニット、およびバッテリと、
前記ハウジングおよび前記マイクロプロセッサユニットに組み合わされた圧力センサと
を備える、埋め込み型デバイス。
【請求項30】
前記圧力センサは、原位置圧力センサである、請求項29に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項31】
前記ハウジングに組み合わされた穿孔カプセルを更に備え、前記圧力センサは、前記穿孔カプセル内に配置される、請求項29に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項31】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから延在するカラムと、
間質空間に配置するために前記カラムの遠位端に配置された穿孔カプセルと、
前記ハウジング内に配置される構成要素である、大気チャンバ、圧力センサ、前記穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を供給するためのフラッシュ流体リザーバ、前記フラッシュ流体リザーバに補充するためのフラッシュ流体接続部、流体を介して前記穿孔カプセルから前記圧力センサに圧力を伝達するために前記圧力センサに接続された圧力流体リザーバ、前記圧力流体リザーバに補充するための圧力流体接続部、および前記穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を送給するためのマイクロポンプと
を備える、デバイス。
【請求項32】
前記穿孔カプセル内には、バルーンが配置され、前記バルーンは、前記圧力流体リザーバと連通する、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記穿孔カプセルは、吸い上げ機構を備える、請求項31に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、「間質空間を介して生理学的状態を評価および変更するための方法およびデバイス」の名称で2021年1月15日に出願された米国仮出願第63/138227号、「間質空間を介して生理学的状態を評価および変更するための方法およびデバイス」の名称で2021年1月18日に出願された米国仮出願第63/138734号、ならびに「間質空間を介して生理学的状態を評価および変更するための方法およびデバイス」の名称で2021年6月11日に出願された米国仮出願第63/209844号の特権および優先権を主張するものであり、これらの全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
人体は、主に水と溶解した溶質とにより構成される。細胞内(細胞の内部)区画と細胞外(組織内ではあるが細胞の内部ではない)区画との間で、体液が配分される。更に、体液は、腹膜腔および胸膜腔などの体腔内に蓄積した「第3の空間」となることがある。この溶液の一部は、細胞内に存在しており、細胞内液と呼称することができる。また、この溶液の一部は、細胞の外側に存在し、細胞外液と呼称することができる。更に、細胞外液は、血管内液、間質液、およびリンパ液に区分される。一般的に、体内水分全体の約2/3が細胞内液であり、1/3が細胞外液である1。細胞外液の4分の1は、血管内腔にある。これに対し、細胞外液の優位を占める残部は、間質空間およびリンパ循環からなる。
【0003】
細胞外液は、血管内腔、間質空間、およびリンパ腔に分散される。人間の循環系は、主に心血管系とリンパ系とからなる。心血管系は、心臓が中央ポンプとして作用する閉じた高圧循環系である。リンパ系は、中央ポンプのない開放形の低圧循環系である。間質区画は、心血管区画とリンパ循環との間の仲介として作用する
2,3。微小血管床、間隙空間、およびリンパ管の間の相互作用を可視化したものを
図1に示しており、リンパ管Lが、間質空間から液体を収集する。液体、溶質、タンパク質、脂質などが、微小血管循環と間質空間との間で交換される。この図は、Titze, Kidney International 2013
4によるものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
細胞外液の輸送は、一般的に、以下のように機能する。(1)当業者に公知のスターリング(Starling)方程式に従い、毎日、数リットルの体液が、毛細血管の半透膜を介して間質空間内へと濾過され、(2)リンパ系は、間質空間に蓄積する濾過された体液(主に水、塩分、血漿タンパク質)を収集し、それを心血管循環の中心静脈成分に戻す。
【0005】
間質区画は、病態生理学的観点から、静的で比較的興味の生じない空間であると考えられる場合がある。最近の研究では、間質空間が、体積調節(例えば、うっ血の病因)において重要な役割を果たすこと、炎症およびショックの病因における重要なメディエータであること5、免疫機能を調節すること、および癌の転移/治療において役割を果たし得ること6が明らかにされている。
【0006】
本出願における方法およびデバイスの有用性を例示するために、各病状に対する間質空間の寄与に注意を払いながら、様々な疾患状態の概要について論じる。
全般的なうっ血(体液過剰/浮腫)
【0007】
間質性浮腫を防ぐために、濾過されたリンパ液の戻りが、間質空間における液体の生成/蓄積の速度に等しい速度で生じる7。濾過されたリンパ液の量の増加は、四肢浮腫、肺水腫、呼吸困難、および腎機能低下などの臨床症状を伴う間質性浮腫をもたらす可能性がある。
心不全
【0008】
間質空間およびリンパ系は、心不全の病態生理学において一般的に無視されるが、観察される心不全の臨床症状に対するそれらの寄与は重要である。
【0009】
心不全は、通常、静脈うっ血に関連している8。中心静脈圧(CVP)の上昇は、有害な臨床転帰(例えば、腎機能障害)の最大の決定因子であり、心不全患者の死亡率の独立した予測因子である9。更に、ほとんどの心不全による入院は、低心拍出量ではなく、静脈うっ血の発現に関連する10,11。
【0010】
更に、うっ血は、更なる病状を引き起こす可能性がある。血管内皮細胞は、生体力学的な力を感知し、静水圧の増加により、血管内皮細胞が、休止状態から、炎症、血管収縮、および酸化ストレスの増加を特徴とする活性化状態に切り替わる可能性がある12。従って、静脈うっ血の慢性状態は、肺血管リモデリング、肝臓損傷、および腎臓損傷などの臓器損傷を引き起こす可能性がある。
【0011】
静脈うっ血と同様に、間質性うっ血およびリンパ性うっ血も、心不全のもう1つの特徴であり、心不全の症状発現および有害な転帰において極めて重要な役割を果たす。心不全では、下肢および上肢の浮腫、肺水腫、ならびにその後の腹水を伴う肝うっ血として臨床的に現れる間質液の蓄積に、多くの並行したメカニズムが寄与する可能性が高い。心不全では、間質液の体積増大が、血管内容積の増大よりも顕著であることが知られている13。
【0012】
心不全における間質液蓄積の背後にあるメカニズムは、以下のように仮定することができる。
a)当業者に公知であるように、毛細血管静水圧の増加により、スターリング支配力学を介し、増加した濾液が間質空間に流入する。
b)中心静脈圧の上昇により、ハーゲン・ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)力学と14、おそらくリンパ静脈接合部における拘束性の病理とにより15、胸管を介するリンパ液の還流が妨げられる。
c)根底にある病因(例えば、敗血症、心不全、癌)にかかわらず、血管透過性の増加により、大きなタンパク質およびナトリウムなどの他の溶質が、血管外空間に漏出する可能性がある16,17。スターリング(Starling)力学によると、間質空間内の溶質および大きな分子の濃度の増加により、間質空間内の浸透圧が上昇し、間質空間内への更なる液体の蓄積を引き起こす。
【0013】
これらの全ての事象が並行して生じると、ホメオスタシスを打ち負かす正のフィードバックサイクルが生じ、このフィードバックサイクルにより、代償不全をもたらすうっ血の正のフィードバックサイクルを示す
図2に示すように、腎不全、呼吸困難、四肢浮腫、および肺水腫などの臨床症状を伴って心不全代償不全に至る。心血管循環には、総血液量の30~40%しか存在しないので
18、間質空間における著しい体積増大は、心血管圧力よりも早期の指標であり、より敏感なうっ血の指標となる可能性がある。Miller, Circ: Heart Failure 2016を参照されたい
19。
【0014】
利尿薬は、心不全の状況において、体積過剰に対処するために使用される最も一般的な方法である20。実際には、いくつかの事柄により、心不全患者に対する利尿薬療法の投薬調整が困難となる。これらを以下に列挙する21。
a)多くの患者は、臨床的うっ血を残したまま退院するため(例えば、DOSE-AHF研究では、患者の15%が臨床的うっ血を伴って退院22)、正常循環血液量の状態の判定は困難である。
b)うっ血の日常的な処置は、病院においてのみ行うことが可能であり、投薬調整による治療のためのタッチポイントの量が制限される。
c)多くの患者は、ループ利尿薬に対する耐性を示す(例えば、PRAISE研究では、患者の35%が、毎日の80mg以上のフロセミド用量に対して耐性を示した)23。
【0015】
列挙した課題は広く知られている。例えば、高度な心不全の処置に関する医師の懸案の57%は、利尿剤の投薬調整に関連するものである24。心不全を適切に処置するには、医学的介入による「うっ血カスケード」への早期介入によって、心不全入院を防ぐことができることが示されている25。
【0016】
例えば、アボット(Abbott)の心臓血管部門によって商業的に提供されているCardioMEM技術は、臨床的に受け入れられているうっ血の尺度の代用を評価するために使用できる埋め込み式の血行動態モニタである。CardioMEMのCHAMPION試験では、比較対照に比べ、心不全入院が統計的に減少した。これは、治療群において利尿変化が2倍の頻度で生じるという有効な情報を医師が受け取ったことによるものである可能性がある26。
【0017】
CardioMEMSは有効であるが、出血、肺塞栓、デバイス塞栓、および不整脈などを含むリスクを伴う高価で侵襲性のインプラントである27。体積状態を非侵襲的に監視するための別のシステムも開発されている。一例として、センシブルメディカルイノベーションズ社(Sensible Medical Innovations, Ltd.)が開発したRED技術がある。この技術は、肺内の体液の代用物を評価するために使用可能な胴着を備える。N=50の患者の研究では、心不全再入院の減少が示された28。しかしながら、RED技術は、真の生理学的相関を欠いた代理指標を提供するものである。
【0018】
心不全のうっ血カスケードに、医学的に介入すべき時期についての明確な指標を提供する、非侵襲的で容易に設置可能な技術が必要とされていることは明らかである。
敗血症
【0019】
敗血症性ショックの特徴は、炎症を介した微小血管透過性の増加(例えば、毛細血管漏出)、血管内血液量減少、および心拍出量の増加である
29。低血圧および全身性炎症反応の治療には、輸液蘇生が必要である。
図3に示すように
30、敗血症では、炎症を介した毛細血管透過性の増加により、間質空間への体液の血管外漏出が生じる。輸液療法(蘇生)および昇圧剤投与は、低血圧の治療に使用される治療用維持法である。これは、多くの場合、体液過剰を引き起こし、死亡率の増加に相関する
31。Osterman, Crit Care. 2015.30を参照されたい。
【0020】
しかしながら、輸液投与は、体液過剰がこの輸液療法の医原性の結果となる正のフィードバックサイクルの一部である(例えば、敗血症を有した245人の患者の後ろ向き研究では、患者の86%が、治療中に正の体液バランスを有した32)。これを更に複雑にするのは、上述のように、正常血液量の判定が困難なことである。これにより、多くの患者が体液過剰で退院することになる(例えば、敗血症患者245人の後ろ向き研究では、患者の35%が、ICU退院時に体液過剰であった32)。敗血症患者における体液過剰の重大な結果は、死亡率の上昇である31。
【0021】
敗血症性ショックにおける輸液投与を誘導するためのツールは、体液バランスを改善し、血液透析の利用を低減し、人工呼吸器の利用を低減することが示されている33。しかしながら、このシステムは、中心ラインおよび医師によって行われる受動的下肢挙上を必要とする。更に、このシステムは高価であり、資本設備および使い捨てのツールの両方を必要とする。このシステムの使用に関連する結果は肯定的であるが、輸液蘇生および能動的蘇生を誘導するプロセスを更に簡素化する必要がある。
【0022】
敗血症患者における生理的な正常血液量を、より確実に、容易に、かつ非侵襲的に判定するためのツールは、血液透析および利尿剤などの医学的治療を介した輸液投与ならびに輸液排出を誘導する上で有用となるはずである。適切な血圧を維持し、その結果として、末端臓器の潅流を維持するために、輸液が静脈内に投与される。しかし、炎症を介した毛細血管透過性の増加は、間質空間への体液の血管外漏出を引き起こす。例えば、敗血症患者と非敗血症患者とを比較した研究では、敗血症患者の方が、細胞外水の量が多いことがわかった34。研究者らは、間質空間が、敗血症の処置をより適切に誘導する合図を提供する可能性があると仮定した。敗血症患者と非敗血症患者との間質圧を比較する研究が進行中である(NCT03818269)。間質空間の検査が、敗血症の処置を導く上で有用となる可能性がある。
慢性腎臓病(CKD)
【0023】
腎臓病は、2017年現在、米国で第9位の死因であり、年齢調整死亡の13%を占めている35。腎機能の低下は、推定糸球体濾過率(eGFR)により、5段階の慢性腎臓病(CKD)に層別化される。末期腎臓病(ESRD)は、ステージ5のCKDの呼称であり、eGFR<15mL/min/1.73m2として定義される36。2015年現在、米国では70万人のESRD患者がおり、この米国のESRD患者数は、年間で100万人あたり約2128人(年間約70万人)で増加している37。ESRD患者を処置するために、腎置換療法(RRT)が使用される。RRTには、腎臓移植、腹膜透析(PD)、血液透析(HD)、またはそれらの組み合わせのいずれかが含まれる。2020年現在、RRTで治療されたESRD患者数は、世界で250万人となる。RRTを受けていないために、230万~710万人が死亡したと推定される38。RRTを受ける人の世界的な有病率は、2030年までに540万人に増加すると予想される39。
【0024】
HDは、ESRDの治療の大半を占めており、全ての治療の約90%を占める40。ESRDのための定期的なHD治療を受けている患者は、透析治療の間、体液を貯留する。各HD治療セッションの主な目標は、「ドライウエイト」を達成することである。ドライウエイトは、通常、高血圧などの症状の発現を伴わずに、患者が耐えることができる最低体重として定義される41。HDセッションの終了時の体積過剰が死亡率に関連するので、ドライウエイトを達成することは重要である42。
【0025】
ドライウエイトの推定値は、臨床的に導かれ、一般的には、増加した前負荷(通常、心房性ナトリウム利尿ペプチドレベル、環状グアニジン一リン酸レベル、および超音波上の静脈直径)の測定値、細胞外液レベルの代用値(通常、生体インピーダンス)、および血液量モニタリングの測定値などの指標を使用する。別の一般的な方法には、正常な血圧、臨床的浮腫、頸静脈拡張、聴診時のラ音がないこと、呼吸困難がないこと、およびX線写真において正常な大きさの心臓陰影を調査することが含まれる43。標準的な方法は存在せず、ドライウエイトを評価する現在の方法は時代遅れで、不正確であるという意見がある44。
【0026】
体液過剰の生理学的な程度を検査する方法およびツールが必要とされている。CKDにおける過剰な体液の大部分は、細胞外(即ち、間質空間)にある。間質液の過剰は、CKD患者の死亡率に関連する
45。最近の研究では、短期および長期の浮腫性CKD患者の両方において、体液過剰が間質圧の上昇と関連することが示されている(
図6)
46。
【0027】
間質圧を測定すること、または別の方法で間質空間を検査することにより、ドライウエイトの正確な評価を提供することが可能となるほか、CKD患者の治療を誘導することが可能となる。この見解は、間質液圧が、体液過剰のインピーダンスに基づく相関関係と比較して、より直接的な生理学的意味合いを有するという観点から支持されている47。
癌
【0028】
腫瘍細胞は間質空間に存在する48。
【0029】
化学療法送達の最も一般的な経路は、静脈内および経口である。全ての療法において、癌治療薬は、血管供給により腫瘍に送達される。これは全身投与と呼ばれる。癌治療薬の全身投与は、多くの病的状態と関連している49,50。癌治療薬の生物学的利用能の改善が必要であることは一般に認められており、これを追求する最も一般的な方法は、ナノ粒子および標的化部分によるものである51。
【0030】
腫瘍は、間質圧が上昇することが長い間知られている52。腫瘍微小血管環境におけるこのような高い間質圧は、癌治療の適用に対する障壁であると仮定されてきた。腫瘍における間質圧の上昇は、様々な癌腫において見出されている。更に、間質圧は、腫瘍の大きさに相関して増加する53。従って、より大きな腫瘍を伴う末期段階の癌は、薬物送達に対して更に高い障壁を有する可能性があると推測することができる。
【0031】
メカニズムとして、本来の仮説は、間質圧の上昇が、固形腫瘍における確定したリンパ系の欠如によるというものであった54。これには誤った思考の可能性がある。現在では、癌細胞の最初の拡散が、リンパ管を介して生じることが広く受け入れられている55。この見解は、乳癌患者における残存する腋窩リンパ節の転移状態を特定するためのセンチネルリンパ節生検の一般的な手順によって証明されており、現代的なものである56。
【0032】
最近のレビューでは、例えばサイトカインアンタゴニストなどによる腫瘍の間質圧の低下によって薬物取り込みが改善され、おそらくは治療効果が改善されることが示されている57,58。間質圧を監視し、変化させるツールは、実質的な臨床的利益をもたらす可能性がある。
【0033】
要約すると、多くの生理学的状態の治療に対する改善は、例えば間質圧などの間質液に関するデータを取得し、次に、そのデータを使用して、そのような生理学的状態の治療法を最適化することによって、達成できることが明らかである。
【発明の概要】
【0034】
本発明は、概して、患者の間質空間の状態、特に、患者の間質空間の皮下間質圧(SCIP)もしくは全組織圧(TTP)、またはその両方のレベルに基づいて、患者の生理学的状態を治療するための方法およびデバイスに関する。
【0035】
一態様では、SCIPを測定し、SCIPが正常範囲にあるか否かを判定し、一般的に正常範囲を-8~-1mmHgとして患者の生理学的状態を治療する方法がある。SCIPが正常範囲外であれば、患者に対して治療が行われる。SCIPを監視し、SCIPが正常範囲にあるときには治療を中止する。
【0036】
一態様において、間質圧を測定するためのデバイスは、穿孔を有したカプセルを備える。圧力導管がカプセル内に挿入可能であり、圧力センサが圧力導管に接続される。
【0037】
一態様において、間質圧を測定するためのデバイスは、穿孔を有したカプセルと、カプセルの内部に配置された圧力センサとを備える。
【0038】
一態様において、間質圧を測定するためのデバイスは、穿孔を有したカプセルと、カプセル内に挿入可能な圧力導管とを備える。また、当該デバイスは、圧力導管に接続された増幅器と、圧力導管に接続された圧力センサとを備える。
【0039】
一態様において、間質圧を測定するためのデバイスは、ハウジングと、ハウジング内に配置されたプリント回路基板およびマイクロプロセッサならびに電池とを備える。圧力センサは、ハウジングおよびマイクロプロセッサに組み合わされる。また、流体カラムが、圧力センサと、流体カラムに接続されたフラッシュポートとに組み合わされる。
【0040】
一態様において、間質圧を測定するための埋め込み型デバイスは、ハウジングと、ハウジング内に配置されたプリント回路基板およびマイクロプロセッサならびにバッテリとを備える。圧力センサは、ハウジングおよびマイクロプロセッサに組み合わされる。
【0041】
一態様において、間質圧を測定するためのデバイスは、ハウジングと、ハウジングから延在するカラムとを備える。穿孔カプセルは、間質空間に配置するために、カラムの遠位端に配置される。ハウジング内には、大気チャンバと、圧力センサと、穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を供給するためのフラッシュ流体リザーバと、フラッシュ流体リザーバに補充するためのフラッシュ流体接続部と、流体を介して穿孔カプセルから圧力センサに圧力を伝達するために圧力センサに接続された圧力流体リザーバと、圧力流体リザーバに補充するための圧力流体接続部と、穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を送給するためのマイクロポンプとを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の実施により可能となるこれらおよびその他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照して行う、本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになり、解明されることになる。
【0043】
【
図1】
図1は、微小血管床、間質空間、およびリンパ管の間の相互作用を概略的に可視化した図である。
【0044】
【
図2】
図2は、代償不全につながるうっ血の正のフィードバックサイクルの概略図である。
【0045】
【
図3】
図3は、間質空間への体液の血管外漏出を引き起こす、炎症を介した毛細血管透過性の増加を表すフローチャートである。
【0046】
【0047】
【
図5】
図5は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0048】
【
図6】
図6は、本発明に係る、侵襲性心血管指標と相関する皮下間質圧測定値のグラフ表示である。
【0049】
【
図7】
図7は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0050】
【
図8】
図8は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0051】
【0052】
【
図10】
図10は、本発明による、間質圧の測定の概略図である。
【0053】
【
図11】
図11は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0054】
【
図12】
図12は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0055】
【
図13】
図13は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0056】
【
図8】
図8は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0057】
【0058】
【0059】
【
図17】
図17は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0060】
【
図18】
図18は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0061】
【
図19】
図19は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【0062】
【
図20】
図20は、本発明により、間質圧を測定する実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、多くの異なる形態で具現化することが可能であって、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が周到かつ完全であり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。添付の図面に示す実施形態についての詳細な説明で使用される用語は、本発明の限定を意図するものではない。図面において、同様の番号は、同様の要素を指す。
間質圧測定の全般的な方法
【0064】
図4を参照すると、間質空間は、通常、ゲル状態で存在する。従って、間質空間は、固体応力(SS)圧力として知られて、固体組織(例えば、I型およびIII型コラーゲン線維、弾性線維、ミクロフィブリル、およびグリコサミノグリカン)の存在によって生じる圧力と、間質液圧(IFP)または皮下間質圧(SCIP)として知られて、体液の存在によって生じる圧力とを有することになる。本発明の開示のために、本明細書では、間質空間内の体液圧力をSCIPと呼称するものとする。
【0065】
SCIPは、間質液蓄積の主要な指標であり、その蓄積は、上述のスターリング関係によってなされる。スターリング関係を定義する方程式を以下に記載するが、式中、J(F)は微小血管レベルでの正味流量、L(p)Aは濾過係数、PVは毛細血管床内の圧力、PiはSCIP、σは凝集反射係数、πVは血漿内の膠質浸透圧、πiは間質空間内の膠質浸透圧である。正のJ(F)は、体液の正味の流れが間質空間に向かって移動し、特定の状態において浮腫を引き起こす可能性があることを示す。
【0066】
JF=LpA[(PV-Pi)-σ(πV-πi)]
【0067】
全組織圧(TTP)は、SS圧とSCIPとの合計である。
【0068】
本明細書において方法AとするSCIPの測定、および本明細書において方法BとするTTPの測定は、それぞれ、本発明による治療の改善を達成するために使用することができる。方法Aは、通常、SSの存在とは無関係に、体液蓄積の量を測定するために、吸い上げまたは穿孔カプセル(後述)などの間接的な方法の使用を含む。
【0069】
方法Bは、通常、ピエゾ抵抗センサまたは光ファイバセンサなどの原位置センサの使用を含む。これらのセンサは、血管腔の外側の組織内に直接配置され、組織から機械的に遮蔽されない。このようなセンサは、方法Aでは測定されない筋肉の収縮や組織間の変動のようなものから生じる固体応力指標に敏感である。このような固体応力指標の測定は、体液の蓄積の評価だけでなく、コンパートメント症候群などの間質空間の状態を示すのに有用である。
【0070】
一実施形態では、SCIPおよびTTPの両方が測定され、SCIPは、本明細書に開示する穿孔カプセルなどの間接的方法によって測定され、TTPは、本明細書に開示する原位置センサなどの直接的方法によって測定される。SCIPおよびTTPの両方の測定は、当業者が理解するように、患者の間質空間の状態、従って、患者の生理学的状態を示す有用な情報を提供する。
間質圧の測定-トランスデューサ
穿孔カプセル
【0071】
一実施形態において、SCIPは、ポリウレタンなどの生体適合性ポリマから構築された穿孔カプセルを使用して測定することができる。
図5を参照すると、カプセル500は、1.4~2.0cmの範囲の直径を有し、孔501が穿孔されている。孔501は、0.2~1mmの範囲の大きさとすることができる。カプセル500は、生体不活性ポリマから形成されてもよい。また、流体充填可能な針504と共に使用するための圧力センサ503も設けられる。
【0072】
1つの例示的な使用において、穿孔カプセル500は、一定期間、患者の例えば胸部の皮下に埋め込まれる。一実施形態において、期間は、3~5週間とすることができる。
【0073】
この間、間質組織510および毛細血管床506は、孔501を通って穿孔カプセル500内に成長し、カプセル500内に自由流体ポケット502を形成する。
【0074】
流体充填可能な針504などの導管が圧力センサ503に接続され、センサは、カプセル500のレベルに一致するように高さを同じにされるか、または調整される。流体充填可能な針504は、カプセル500の孔501のうちの1つを通って自由流体ポケット502内に挿入される。次に、圧力センサは、SCIPを表す信号を提供する。
【0075】
一実施形態では、カプセル500の直径に基づいて、埋め込み時間が選択される。より小さい直径のカプセル500は、より大きい直径のカプセル500と比較して、埋め込み時間を短縮することができる。カプセル500の大きさおよび埋め込み時間は、1つには間質組織の内部成長速度などに基づいて導出される。過剰な内部成長を許容する期間は、自由流体ポケット502の形成を減少させる可能性がある。
【0076】
一実施形態において、穿孔カプセルは、2.0cmの直径を有し、3週間の期間にわたって埋め込まれ、流体充填可能な針504を受容し、従って圧力センサ503でSCIPを測定するのに適した自由流体ポケット502をもたらす。
【0077】
図6を参照すると、体液過剰心不全の動物モデルにおいて、うっ血の2つの心血管指標である左心室拡張期圧(LVEDP)および中心静脈圧(CVP)と併せて、SCIPの読み取りが行われた。心不全モデルは、心選択性ベータ遮断薬と、生理食塩水を用いた急速輸液投与とを用いて生成した。輸液投与の後、血漿の限外濾過により、うっ血が軽減された。このようにして、輸液投与および輸液抜き取りの両方がシミュレートされる。SCIPの読み取りは、本明細書に開示する穿孔カプセルの実施形態と同様の埋め込み穿孔カプセルを使用して行われた。更に、充填圧の急激な変化は、起立操作(例えば、心臓に対する従属解剖学的構造の位置を変化させるためのテーブル傾斜)を使用して行われた。実験の目的は、標準的でより侵襲的なうっ血の指標と比較して、SCIPがどのように変化したかを判定することであった。
【0078】
実験の仮説の1つは、スターリング力学によって支配される微小血管交換により、SCIPが血管区画における変化を模倣するということであった。更なる仮説は、うっ血の血管指標の上昇と、それに対応するSCIPの上昇との間に時間遅延が存在するというものであった。同様に、SCIPは、実験の輸液抜き取り段階の間、うっ血の心血管指標に遅れることが予測された。
【0079】
図6を参照すると、未加工のLVEDP、CVP、およびSCIPトレースが示されている。CVPトレースおよびLVEDPトレースのピーク・ピーク間振幅(垂直軸)変化、即ち垂直幅は、呼吸運動によって説明することができる。SCIPトレースでは、対応する呼吸運動が少ない(即ち、CVPおよびLVEDPよりも振幅が小さい)ことがわかる。これは、脚にある穿孔カプセルを介してSCIP信号が測定されたので、直感的なものである。
【0080】
約1時間のベースラインが取得された。ベースラインにおいて、1回の起立操作を行った。この後、輸液投与によってうっ血が誘発された。LVEDPおよびCVPは、約10mmHg上昇した。SCIPは、約5mmHg上昇した。全てのトレースの値は、輸液抜き取りの部分、即ち実験の限外濾過部分の間に、同程度の大きさだけ低下した。
【0081】
LVEDPに対するSCIP、およびCVPに対するSCIPの、未加工で未調整の二乗相関係数は、0.8より大きく、SCIPとうっ血の血管指標との間の相関を示している。心血管うっ血の指標とSCIPとの間には、約10分という非常に小さな時間遅延が見られた。この遅延は、このグラフのスケールでは観測することができない。本発明者らは、これらの信号の相関を評価すると共に、この時間遅延を考慮するアルゴリズムを開発した。もう1つの観察結果は、起立操作によって引き起こされるSCIPの変化が、輸液投与に相関して変化したが、うっ血の血管指標の変化は、このようには挙動しなかったということである。これにより、間質液過剰の相対的重症度を評価する方法を提供することができる。例えば、大きな起立性変化は、患者が間質コンプライアンスを失い、重度の体液過剰状態に移行したことを示唆している可能性がある。この推論は、臨床医が、治療計画を開始するために使用することができる。
【0082】
このデータを使用すると、うっ血の心血管指標を追跡するために、また、結果として、インピーダンスに基づく間質体積測定値、孔食浮腫、頸静脈圧触診、下大静脈径などといったうっ血のその他の生理学的指標に、SCIPを使用できるということが、本発明者らの見解である。重要なことは、この測定結果が、非侵襲的に、即ち、本明細書に開示する方法によって得ることができるということである。このようにして、医師は、心臓血管生理学(および急性腎損傷、癌、敗血症、および慢性腎臓病などのその他の生理学的状態)に、より有効活用可能なスケールで、かつ、例えば心不全の悪循環における不均衡な体液蓄積の領域に、より詳細に把握可能な窓を有することができる。加えて、患者の動きを追跡し、朝にベッドから出るなど、在宅での起立運動中のSCIPの変化を感知することができる。これは、起立操作によって誘発されるSCIPの変化が体液状態に対応することを示唆するデータから推論することができる。これは、データ内のノイズをチェックするため、データをフィルタリングするため、または治療方法を決定するために使用することができる。
【0083】
上述を考慮すると、本発明は、必要とされる治療の主要な指標としてSCIPの測定結果を使用する、患者の多くの生理学的状態の治療のための方法およびプロトコルを提供することが理解されよう。そのような方法およびプロトコルの非限定的な例を以下に記載する。
全般的なうっ血
【0084】
患者は、うっ血で入院する。一実施形態では、本発明によるSCIP検知システムが患者に取り付けられる。SCIP検知システムは、継続的なSCIPデータをデータベースに送信する。一実施形態において、患者は、起立操作、例えば、受動的下肢挙上を行うように求められる。SCIPが、正常範囲を超えて上昇する場合、医師は、生理学的知識を用い、当業者に公知の1つまたは複数の体液排出療法により、SCIPを正常範囲に向けて変化させる。SCIPが正常範囲に達すると、治療が中止される。
心不全
【0085】
心不全チームまたは心不全医師は、患者の病歴、人口統計、またはその他の何らかの臨床評価により、患者が再発入院するリスクが高いと評価する。一実施形態において、心不全医師は、本発明によるSCIP検知システムを患者に処方する。SCIPシステムは、患者に取り付けられる。医師は、患者に適した利尿剤の投与量を患者に処方する。SCIP検知システムは、継続的なSCIPデータをデータベースに送信する。心不全チームは、データを観察し、SCIPの異常があれば記録する。観察期間中には、いくつかの起立性変化が自然に生じる。一実施形態では、SCIPの異常(例えば、SCIPの上昇)が観察されると、SCIP値を正常範囲にするために、即ち、異常を除去するために、医学療法の変更、例えば利尿剤投薬量の変更が決定される。一実施形態では、推奨される変更が、患者に報告される。投薬処方の変更が記録され、SCIPへの影響が観察される。SCIPが正常範囲に向けて変化する場合、治療変更は適切であると判定される。上記は、体液過剰と、それに関連する呼吸困難とに起因する入院を防止するために使用可能な介入の例である。
敗血症
【0086】
敗血症は、毛細血管透過性の増加に起因した、急速な間質液の増量開始と関連する。治療法の1つは、間質区画への血管内液の大量損失に対抗するために輸液を投与することである。主なガイド信号は、動脈血圧(ABP)である。集中治療医にとっては、ABPが低下しないことが重要である。従って、集中治療医が輸液を過剰投与し、医原性体液過剰を誘発することは珍しくない。敗血症における医原性体液過剰は、死亡率の増加に関連している。本発明によるSCIP検知システムは、敗血症による入院の際に患者に装着される。一実施形態において、SCIP信号は、ABP信号と並行して監視され、流体分布の定量的理解を得て、血管区画および間質区画が互いにどのように体液を蓄積しているかについて応答する。一実施形態において、この情報は、輸液投与を停止させる時期を決定するために、集中治療医によって使用される。一実施形態では、限外濾過、継続的腎代替療法などによる積極的な体液除去を誘導するために、SCIPシグナルが使用される。一実施形態において、医師は、SCIP信号を使用し、体液を抜き取る速度を決定し、除去する総体積を決定する。一実施形態において、SCIP信号は、正常な生理学的範囲を理解することによって、または敗血症における病的事象の予防について構築された予測分析アルゴリズムにより、臨床医によって使用される。
腎臓病
【0087】
腎臓病は、それぞれの透析セッションの間に体液過剰が生じる一般的な病気である。透析の主な目標は、患者を安全にドライウエイトに移行させることである。これを行うために、腎臓専門医は、除去すべき体液の量および体液除去の速度を決定する必要がある。透析装置が体液を過剰に速く除去すると、血管腔が枯渇し、透析中低血圧を引き起こす可能性がある。一実施形態では、体液除去の速度を知らせるために、本発明によるSCIP検知システムを使用する。一実施形態において、本発明によるSCIP検知システムは、患者に取り付けられる。更に、動脈血圧が監視される。動脈血圧、ABPが低下しているのに、SCIPが変化していない場合は、限外濾過速度が高すぎる可能性がある。従って、限外濾過(体液の除去)が低減される。加えて、ドライウエイトの測定は、困難な場合がある。通常、医師は、患者が痙攣またはその他の透析中の病的事象を起こすまで、単に体液を排出し、ドライウエイトを測定する。これは、不正確であり、体液過剰の主要な領域に関する定量的データを使用して、どれだけの体液を除去するかを知らせることはできない。SCIP検知システムは、体液過剰情報を提供し、医師は、それに応じて治療/療法を調整することができる。
癌
【0088】
癌細胞は、通常、間質空間に位置する。言い換えれば、それらは、正常細胞の「外側」に位置する。癌細胞の増殖により、間質区画が密集し、間質液圧が上昇する。低い間質液圧は、スターリング(Starling)力学や、重要なことに、毛細血管圧と間質液圧との間の差によって支配されるので、癌治療薬などの化学物質を間質空間に送り込むために不可欠である。癌の場合、毛細血管圧は正常で、間質液圧が上昇する可能性がある。これは、間質空間への癌治療薬の治療的分泌に対する流体力学的障壁として作用する。間質空間を介した癌細胞への治療薬の流入は、癌細胞に対する治療薬の生物学的利用能を増加させるために重要である。一実施形態では、制癌剤の静脈内治療介入の前に、本発明によるSCIP検知システムが患者に配置される。一実施形態において、SCIPの上昇が観察される場合、医師は、SCIPを低下させるために、血管拡張剤、または血管透過性を増加させる薬剤、または間質空間から血管区画への正味の流入を増加させる薬剤などの治療薬を処方する。SCIPが正常レベルになると、癌治療薬が投与される。これにより、癌治療薬の有効性が増大する。
穿孔カプセル-発泡体裏打ち
【0089】
図7を参照すると、
図6を参照して上述したような穿孔カプセル500が示されている。但し、この穿孔カプセルは、穿孔カプセル500の内側を裏打ちする発泡体マトリックス505を備える。発泡体マトリックス505は、間質組織および毛細血管の内部成長を、均一かつ予測可能な様式で生じさせ、自由流体ポケット502が確実に形成されるようにする。発泡体マトリックス505を有した穿孔カプセルの使用は、
図6の穿孔カプセルに関して説明したものと同じプロトコルに従って行うことができる。測定された圧力はSCIPである。
穿孔カプセル-発泡体裏打ち、バルーン
【0090】
図8を参照すると、
図7を参照して上述したような発泡体マトリックス505を有した穿孔カプセル500が示されている。但し、有穿孔カプセル500は、発泡体マトリックス505に隣接するバルーンライニング507を備える。バルーンライニング507は、間質組織510および毛細血管床506の内方成長に対する障壁として機能し、自由流体ポケット502が確実に形成されるようにする。
【0091】
流体カラム508などの導管が、バルーンライニング507、またはバルーンライニング507の一体部分(成形または押出成形)のいずれかに追加され、圧力センサ503に取り付けられる。発泡体マトリックス505とバルーンライニング507とを有した穿孔カプセルの使用は、
図6の穿孔カプセルに関して上述したプロトコルと同様とすることができる。但し、針の形態の導管の代わりに、流体カラム508の形態の導管が、圧力センサ503への圧力の導管として機能する。測定された圧力はSCIPである。
【0092】
図9Aを参照すると、
図8を参照して上述したような発泡体マトリックス505とバルーンライニング507とを有した穿孔カプセル500が示されている。但し、穿孔カプセル500は、小孔509を有したバルーンライニング507を備える。バルーンライニング507は、間質組織および毛細血管の内部成長に対する障壁として機能し、自由流体ポケット502が確実に形成されるようにする。バルーンライニング507の小孔509により、自由流体ポケット502への間質液の自由流体移動が可能となる。一実施形態において、小孔の大きさは、5~10ミクロンの範囲である。
【0093】
流体カラム508は、バルーンライニング507、またはバルーンライニング507の一体部分(成形または押出成形)のいずれかに追加され、圧力センサ503に取り付けられる。発泡体マトリックス505および小孔509を有したバルーンライニング507を備えた穿孔カプセル500の使用は、
図6の穿孔カプセルに関して上述したプロトコルと同様とすることができる。但し、針の代わりに、流体カラム508が、圧力センサ503への圧力の導管として機能する。測定された圧力はSCIPである。
穿孔カプセル-原位置センサ
【0094】
図9Bを参照すると、発泡体マトリックス505とライニング512(例えば、ポリマ)とを有した穿孔カプセル500(
図9Aに示すものとは異なる形状を有する)が示されている。ライニング512は、小孔513を有する。ライニング512は、間質組織510および毛細血管床506の内部成長に対する障壁として機能し、自由流体ポケット502が確実に形成されるようにする。ライニング512の小孔513は、自由流体ポケット502への間質液の自由流体移動を可能にする。一実施形態において、小孔の大きさは、5~10ミクロンの範囲である。
【0095】
圧力センサ503は、原位置、即ち自由流体ポケット502内に配置される。圧力センサ503は、当業者に知られているように、電子機器への接続部514を有する。発泡体マトリックス505と小孔513とを有したライニング512を備える穿孔カプセル500の使用は、
図6の穿孔カプセルに関して上述したプロトコルと同様とすることができる。但し、圧力センサ503は、原位置に配置される。測定された圧力はSCIPである。
【0096】
筋肉収縮、身体運動などといった患者からの「ノイズ」が、圧力センサ503によって測定されるSCIP信号に擾乱をもたらし得ることは、当業者によって理解されるはずである。そのようなノイズにより、SCIPが、患者の正常な生理学的測定値の範囲を超え、それによって断続的に不正確な読取値がもたらされる可能性がある。従って、一実施形態では、圧力センサ503からのSCIP信号を増幅または強化することによって、信号対雑音比を改善し、そのような擾乱を緩和することができるようにすることが有用となり得る。
【0097】
典型的なSCIPは、-5~-3mmHgの範囲にある。体液過剰状態において、SCIPは、約+2mmHgまで増加する。
図10を参照すると、圧力増幅方法の一実施形態が示されている。例えば、圧力センサ503は、-3mmHg(正常体液状態)および+5mmHG(体液過剰状態)の生理学的範囲内でSCIPを読み取るように較正される。機械的圧力増幅/増圧器が、圧力センサと一体化されており、-10mmHG(正常体液状態)~+20mmHG(体液過剰状態)の増幅SCIP範囲が得られる。このようにして生理学的圧力変化を増大させることは、信号対雑音比を改善するため、または体液過剰を検出する真の陽性率を増加させるために設けることができる。
穿孔カプセル-発泡体裏打ち、増幅器
【0098】
図11を参照すると、機械的圧力増幅器を有したSCIP測定システムの一実施形態が示されている。一実施形態では、穿孔カプセル500が示されている。一実施形態では、カプセルが0.5~2.0cmの範囲の幅と、0.5~3.0cmの範囲の長さとを有する。
【0099】
カプセル500は、発泡体マトリクス505で裏打ちされ、ライニング512(例えば、ポリマ)は、発泡体マトリクス505の内側部分に配置される。ライニング512は、小孔513を有する。一実施形態において、小孔513は、直径が3~10ミクロンである。ライニング512は、間質組織510および毛細血管床506の内部成長に対する障壁として機能する。ライニング512の小孔513は、第1の流体充填チャンバ520内への間質液の自由流体移動を可能にする。一実施形態において、小孔の大きさは、3~10ミクロンの範囲である。
【0100】
穿孔カプセル505内に配置された潤滑性ポリマ体526によって形成された穿孔カプセル505内には、第1の流体チャンバ520および第2の流体チャンバ524も存在する。第1の流体チャンバ520および第2の流体チャンバ524には、非圧縮性液体(例えば、シリコーンオイル、生理食塩水など)が予め充填されている。ライニング512は、親水性ポリマから構成されていてもよいし、また親水性コーティングを含んでいてもよい。これにより、シリコーンオイルが流体チャンバ520から流出するのが防止される。流体チャンバ520が生理食塩水で充填される別の実施形態では、間質環境での水の自然流動は妨げられず、真のSCIPの変化により、間質区画と流体チャンバ520との間の流動が制御されることになる。圧力センサ503は、流体カラムを介して第2の流体チャンバ524に流体的に接続される。一実施形態では、原位置圧力センサが、第2の流体チャンバ524内に配置される。
【0101】
第1の流体チャンバ520および第2の流体チャンバ524は、第1の圧力ディスク516および第2の圧力ディスク518を備えたピストンシステムを介して互いに接続される。第1の圧力ディスク516の表面積は、第2の圧力ディスク518の表面積よりも大きい。従って、動作中、第1の流体チャンバ520に印加されるSCIPへの変化は、第1の圧力ディスク516に対する力を誘発する。ピストンシステムは、密閉されたエアポケット522により並進移動することができる。潤滑性ポリマ本体526は、ポケットのためのシールとして存在し、また、必要に応じ、ピストンが最小限の摩擦でエアポケットチャンバ522に沿って並進移動することを可能にする。従って、ピストンシステムは、第2の圧力ディスク518を介して第2の流体チャンバ内に圧力変化を及ぼす。第1の圧力ディスク516の表面積が第2の圧力ディスク518の表面積よりも大きいので、第2の流体チャンバに加えられる圧力変化が増幅される(即ち、第1の流体チャンバの圧力変化よりも大きくなる)。
【0102】
図11に示すような発泡体マトリックス505と小孔513とを有したライニング512を備える穿孔カプセル500の使用は、
図6の穿孔カプセルに関して上述したプロトコルと同様とすることができる。但し、ピストンシステムおよび流体チャンバによって提供される圧力読取値の増幅を考慮すると、圧力読取値は、より高い信号対雑音比を有する。
原位置センサ付き保護チューブ
【0103】
図12を参照すると、チューブ600は、発泡体マトリックス505によって囲まれた原位置圧力センサ503を備える。一実施形態において、発泡体マトリクスは、発泡体マトリクス505と圧力センサ503との間にライニング602を備えることも可能であり、小孔603を有する。一実施形態において、ライニングは、ポリマライニングであり、小孔603は、6~10ミクロンの範囲の大きさを有する。
【0104】
一実施形態において、原位置圧力センサは、光ファイバトランスデューサ、ピエゾ抵抗トランスデューサ、または歪みゲージトランスデューサとすることができる。
【0105】
毛細血管床506および間質組織510は、発泡体マトリックス内へと成長する。小孔604は、自由流体ポケットを形成するために、圧力センサ503の周りの空間への組織および毛細血管の成長を抑制する。電子機器604は、当業者に知られているように、圧力センサ503を圧力読み取り装置に接続する。
【0106】
いくつかの実施形態において、チューブ600は、針またはポリマ管とすることができる。いくつかの実施形態において、チューブ600は、発泡体マトリックス505の代わりに、予め充填された流体チャンバ(例えば、シリコーンオイルまたは水などで充填)を有する。
【0107】
いくつかの実施形態において、発泡体マトリックス505は、最初に非圧縮性流体で充填され、脱気されるようにしてもよい。これは、発泡体マトリクス505が、SCIPを測定する従来のウィック・イン・ニードル(WIN)法の機能を代行することができることを意味する。WIN法は、間質組織の内部成長または機械的圧縮によって誘発される目詰まりが発生する可能性がある。生体不活性の発泡体マトリックスを使用することにより、これらの問題を低減することができる。一実施形態では、空気のような圧縮性媒体によって間質空間内の圧力変化が減衰されることを確実になくすために、発泡体マトリックス505が、空気を含まないようにすることが望ましい。例えば、デバイス送達の前に、トランスデューサを生理食塩水に浸漬することで脱気することにより、挿入後にシステム内に空気が残る可能性が低減される。このプロセスおよび構成により、WINなどの従来の方法と比較して、原位置トランスデューサの感度および安定性を改善することができる。
【0108】
SCIPを測定するためのチューブ600の使用は、上述したプロトコルと同様とすることができる。
【0109】
上述した概念(および本明細書に具体的に列挙していないその他の概念)は、SCIPを測定するための多くの実際に有用な製品に統合することができる。製品の1つは、
図13に示すように、使用者の腕または皮膚上のその他の場所に装着可能なウェアラブルデバイス700であってもよい。このようなウェアラブルデバイス700は、定期的に、例えば、14日毎に交換することが可能であり、使用者(例えば、患者)が装着することが可能で、例えば、携帯電話を介して遠隔で制御および/または監視することが可能であり、心拍数、ECG、生体インピーダンス、PPG、血圧などのその他の生理学的測定値を統合することもできる。
【0110】
もう1つのそのような製品は、
図14に示すように、患者の皮膚の下、例えば、患者の胸部に埋め込み可能な皮下インプラント800であってもよい。このようなインプラント800は、例えば5年といった長寿命を有することが可能であり、心拍数、ECG、生体インピーダンス、PPG、血圧などのその他の生理学的測定値を統合することもできる。
原位置圧力センサを備えたウェアラブルデバイス
【0111】
図15Aおよび
図15Bを参照すると、圧力センサ信号などの信号を処理し、使用者に情報をワイヤレス通信するための、当業者に公知の構成要素を収容するハウジング701を有したウェアラブルデバイス700Aが示されている。一実施形態において、そのような構成要素には、プリント回路基板(PCB)710、バッテリ712、A/D変換器およびマイクロコントローラユニット(MCU)714、ならびにブルートゥースデバイス718が含まれる。また、ハウジング内には、流体カラム703およびフラッシュポート716がある。電子部品延長部705が、ハウジング701の外側に延在し、圧力センサ702に取り付けられる。
【0112】
ハウジングは、接着剤708で使用者の皮膚に接着され、その際、センサ702は、使用者の表皮704または深部表皮706のいずれか、またはこれら2つの間の範囲に位置する。このように、センサ702は、原位置センサと見なされる。従って、センサ702は、圧力が、例えば、穿孔カプセルを通して間接的にではなく、直接測定されるようにして、TTPを読み取るように配置される。
【0113】
一実施形態において、ウェアラブルデバイスは、上述の原位置センサだけではなく、例えば、SCIPを測定するための穿孔カプセル内に収容されたセンサの両方を有することができる。このとき、デバイスは、TTPおよびSCIPの両方を測定することが可能であり、一実施形態では、当業者が理解するように、患者の生理学的状態に関する更なる有用な情報を提供する。
【0114】
図15Bを参照すると、シリンジ720、またはその他のプランジャ機構がフラッシュポート716に取り付けられ、生理食塩水、またはその他の適切な液体が、流体カラム703内に押し込まれて、センサ702の周囲の表皮704,706内の領域をフラッシュする。フラッシュにより、センサ702の周囲の空間が確保され、正確な圧力の読み取りが可能となる。
【0115】
一実施形態において、圧力センサ702は、SCIPを表す信号をA/D変換器およびMCU714に伝達する。圧力を圧力信号に処理するために、当業者に公知のアルゴリズムがMCUによって使用され、その後、圧力信号は、ブルートゥースデバイス718を介し、携帯電話などの受信デバイスに通信される。
【0116】
一実施形態において、ウェアラブルデバイス700Aはパッチである。
穿孔カプセルを備えたウェアラブルデバイス
【0117】
図16Aおよび
図16Bを参照すると、圧力センサ信号などの信号を処理し、情報を使用者にワイヤレスに通信するための、当業者に公知の構成要素を収容するハウジング701を有したウェアラブルデバイス700Bが示されている。一実施形態において、そのような構成要素には、プリント回路基板(PCB)710、バッテリ712、A/D変換器およびマイクロコントローラユニット(MCU)714、ならびにブルートゥースデバイス718が含まれる。また、ハウジング内には、流体カラム703およびフラッシュポート716がある。圧力カラム709は、流体カラム703を圧力センサ702に接続する。流体カラム703は、ハウジング701の外側に延在し、穿孔カプセル707に取り付けられる。
【0118】
一実施形態において、穿孔カプセル707は、別の実施形態に関して上述したような穿孔カプセルとすることができる。一実施形態において、穿孔カプセル707は、当業者に公知のようなガイトン(Guyton)カプセルであってもよい。
【0119】
ハウジングは、接着剤708で使用者の皮膚に接着され、その際、穿孔カプセル707は、使用者の表皮704または深部表皮706のいずれか、またはこれら2つの間の範囲に位置する。
【0120】
図16Bを参照すると、シリンジ720、またはその他のプランジャ機構がフラッシュポート716に取り付けられ、生理食塩水、またはその他の適切な液体が、流体カラム703内に押し込まれて、穿孔カプセル707と表皮704,706内の周囲領域とをフラッシュする。フラッシュにより、穿孔カプセル707内およびその周囲の空間が確保され、穿孔カプセル707の自由流体ポケットから流体カラム703を通って圧力センサ702に接続された圧力カラム709に正確な圧力を伝達可能となる。
【0121】
圧力センサ702は、SCIPを表す信号をA/D変換器およびMCU714に伝達する。圧力を圧力信号に処理するために、当業者に公知のアルゴリズムがMCUによって使用され、その後、圧力信号は、ブルートゥースデバイス718を介し、携帯電話などの受信デバイスに通信される。
【0122】
一実施形態において、ウェアラブルデバイス700Bはパッチである。
原位置圧力センサを備えた埋め込み型デバイス
【0123】
図17を参照すると、プリント回路基板(PCB)810、バッテリ812、A/D変換器およびマイクロコントローラ(MCU)814、ならびにブルートゥースデバイス818を収容するハウジング801を有した埋め込み型デバイス800Aが示されている。電子接続部803が、ハウジング801の外側に延在し、圧力センサ802に取り付けられる。
【0124】
ハウジング801は、表皮804または深部表皮806のいずれか、またはこれら2つを含む範囲に埋め込まれる。一実施形態において、ハウジングは、筋膜822の上にある。このようにすることで、センサ802は、使用者の表皮804または深部表皮806のいずれか、またはこれら2つの間の範囲に位置する。このように、センサ802は、原位置センサと見なされる。従って、一実施形態において、センサ802は、圧力が、例えば、穿孔カプセルを通して間接的にではなく、直接測定されるようにして、TTPを読み取るように配置される。
【0125】
一実施形態において、埋め込み型デバイスは、上述の原位置センサだけではなく、例えば、SCIPを測定するための穿孔カプセル内に収容されたセンサの両方を有することができる。このとき、デバイスは、TTPおよびSCIPの両方を測定することが可能であり、一実施形態では、当業者が理解するように、患者の生理学的状態に関する更なる有用な情報を提供する。
【0126】
動作中、圧力センサ802は、SCIPを表す信号をA/D変換器およびMCU714に伝達する。圧力を圧力信号に処理するために、当業者に公知のアルゴリズムがMCUによって使用され、その後、圧力信号は、ブルートゥースデバイス718を介し、携帯電話などの受信デバイスに通信される。
【0127】
一実施形態において、
図17のシステムは、全組織圧を測定する。
穿孔カプセルを備えた埋め込み型デバイス
【0128】
図18を参照すると、圧力センサ信号などの信号を処理し、情報を使用者にワイヤレスに通信するための、当業者に公知の構成要素を収容するハウジング801を有した埋め込み型デバイス800Bが示されている。一実施形態において、そのような構成要素には、プリント回路基板(PCB)810、バッテリ812、A/D変換器およびマイクロコントローラユニット(MCU)814、ならびにブルートゥースデバイス818が含まれる。電子接続部803が、ハウジング801の外側に延在し、圧力センサ802に取り付けられる。また、穿孔カプセル807が、ハウジングに取り付けられる。
【0129】
一実施形態において、穿孔カプセル807は、別の実施形態に関して上述したような穿孔カプセルとすることができる。一実施形態において、穿孔カプセル807は、当業者に公知のようなガイトン(Guyton)カプセルであってもよい。
【0130】
ハウジング801は、表皮804または深部表皮806のいずれか、またはこれら2つを含む範囲に埋め込まれる。一実施形態において、ハウジングは、筋膜822の上にある。このようにすることで、穿孔カプセル807は、使用者の表皮804または深部表皮806のいずれか、またはこれら2つの間の範囲に位置する。
【0131】
一実施形態において、圧力センサ802は、穿孔カプセル807の内部に配置され、電子接続部を介してMCU814に接続される。
【0132】
別の実施形態では、圧力センサ802が、ハウジング801の内側に配置され、圧力カラムが、圧力センサ802から穿孔カプセル807の内側の自由流体区画まで延在する。
【0133】
動作中、圧力センサ802は、SCIPを表す信号をA/D変換器およびMCU714に伝達する。圧力を圧力信号に処理するために、当業者に公知のアルゴリズムがMCUによって使用され、その後、圧力信号は、ブルートゥースデバイス818を介し、携帯電話などの受信デバイスに通信される。
【0134】
一実施形態において、
図18のシステムは、全組織圧を測定する。
穿孔カプセルを備えた装着型デバイス
【0135】
図19を参照すると、プリント回路基板(PCB)903を収容するハウジング902と、バッテリ908と、例えば、ブルートゥースデバイス、MCU、記憶デバイスなどを有する処理ユニット910とを備え、使用者900が装着可能な、または身につけることが可能なデバイスが示されている。
【0136】
穿孔カプセル962およびその遠位端を含むカラムが、ハウジング902から皮下空間内に延在する。一実施形態において、穿孔カプセル962は、本明細書で前述したいずれかの穿孔カプセルのうちの1つとすることができる。
【0137】
また、ハウジング902は、大気に連通する孔を有してチャンバを大気圧に維持可能にする大気チャンバ904と、穿孔カプセル962の周囲の間質空間にフラッシュ流体(例えば、生理食塩水)を供給するためのフラッシュ流体リザーバ912と、フラッシュ流体リザーバ912に補充するためのフラッシュ流体接続部916と、流体、例えば、シリコーンを介して穿孔カプセル962から圧力センサ922に圧力を伝達するために圧力センサ922に接続された圧力流体リザーバ914と、圧力流体リザーバに補充するための圧力流体接続部916と、穿孔カプセル962の周囲の間質空間にフラッシュ流体を送給するためのマイクロポンプ920とを収容する。
【0138】
圧力センサ922は、デュアルポートセンサであり、一方のポートが、大気室904内の大気に曝され、他方のポートが、圧力流体リザーバ914に接続される。
【0139】
図20を参照すると、ハウジング902から延在するカラムは、穿孔カプセル952が接続されているか、または穿孔カプセル952と同延の編組カバー950によって構成することができる。穿孔カプセル962は、小孔960を有する。一実施形態において、シャフト950はポリマである。別の実施形態では、シャフト950が編組材料である。
【0140】
更に、カラムは、編組カバー950内に収容されたバルーンシャフト954および同延バルーン956によって構成される。バルーンシャフト954/バルーン956と編組カバー950の内面との間には、フラッシュ流体空間952がある。フラッシュ流体空間952は、フラッシュ流体リザーバ912に接続される。
【0141】
バルーンシャフト954/バルーン956は、圧力流体リザーバ914と流体的に連通し、更に、圧力流体リザーバ914は、圧力センサ922のポートのうちの1つと流体的に連通する。
【0142】
穿孔カプセル962には、穿孔カプセル952の周囲に吸い上げ作用をもたらす吸い上げ機構960が組み込まれている。一実施形態において、吸い上げ機構962は、生体不活性ポリマによって構成される。
【0143】
動作中、装着型デバイス900は、穿孔カプセル962を使用者の皮下空間に押し込むことによって、使用者に固定され、ハウジングは、接着剤、または接着剤で裏打ちされた可撓性ポリマ906で使用者に接着される。
【0144】
次に、フラッシュ流体リザーバ912からのフラッシュ流体(例えば、生理食塩水)は、マイクロポンプ920によって、フラッシュ流体空間952を通り、穿孔カプセル962の孔960を通って間質空間に押し出される。このフラッシュにより、間質液への穿孔カプセル962の適切な曝露が確保される。吸い上げ機構958は、間質空間への結合を強化する働きをする。それはまた、埋め込み期間を必要とせずに、間質空間への即時の結合が確実になされるようにすることもできる。図示するように、結合された吸い上げ機構と穿孔カプセルとにより、デバイスが即座に動作して埋め込み期間を回避することを確実になし得る。
【0145】
一実施形態において、吸い上げ機構946は必要に応じて設けられる。
【0146】
フラッシュが完了すると、バルーン956に間質圧が加えられ、バルーン956は、その圧力を、バルーンシャフトを介して圧力流体に加え、圧力流体リザーバ914に加え、そして圧力センサ922に加える。一実施形態では、
図11で説明したような圧力増幅システムを、圧力流体リザーバ914に組み込むことにより、前述の利点を得ることができる。
【0147】
次に、MCUは、圧力センサ922からの信号を処理してSCIPを示し、このSCIPを、ブルートゥースを介して携帯電話などのデバイスに通信する。
【0148】
データは、当業者に公知のように、単純な時系列および傾向分析を介して処理することができる。別の処理スキーマでは、SCIPデータを入院またはその他の異常と対比して使用しながら人工知能モデル(たとえば、ニューラルネットワーク)を習熟させ、介入すべき時期を定義するために予測モデルに情報を与えることができる。別のスキーマでは、SCIP測定が実行されている解剖学的構造の特定の領域に関連する生理学的圧力・体積曲線を使用して、閾値アルゴリズムを使用することができる。例えば、基準SCIP値(液量正常状態)は負である。大気と比較して正圧への移行は、間質体積の大幅な増加と関連している。従って、0mmHgの閾値は、浮腫の急性発症の重要な指標であり、真の生理的ドライウエイトを決定する重要な方法となり得る。このような生理学的関係を知ると、臨床医は、例えば、利尿剤の漸増による体液抜き取りを試みるべきであるという指標として、この遷移点を使用することができる。身体のその他の領域は、別の領域よりも初期の体液蓄積に対し、より敏感である可能性がある。異なる臓器における異なる圧力・体積曲線は、体液過剰または浮腫の程度について、より早期の確認、または臓器の特定をもたらし得る。間質圧を測定するためにデバイスを配置するためのその他の領域の例には、心臓、肺、脾臓、腸間膜、および腎臓を含めることができる。
【0149】
特定の実施形態および用途に関して本発明を説明したが、当業者であれば、本開示に照らして、特許請求された発明の意図から逸脱したり、当該発明の範囲を超えたりすることなく、更なる実施の形態および変更を生成することができる。従って、本明細書の図面および説明は、本発明の理解を促進するための一例として提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでないことを理解されたい。
――――――――――――――――
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【手続補正書】
【提出日】2022-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生理学的状態を治療する方法であって、
皮下間質圧(SCIP)を測定するステップと、
前記SCIPが正常範囲にあるか否かを判定するステップと、
前記SCIPが正常範囲外の場合に、治療を実施するステップと、
前記SCIPを監視するステップと、
前記SCIPが正常範囲内にある場合、前記治療を中止するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記生理学的状態は、間質性浮腫、心不全、敗血症、腎臓病、および癌のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の間質空間内に自由流体ポケットを形成するステップを更に備え、前記SCIPを測定するステップは、前記自由流体ポケット内の圧力を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記自由流体ポケットを形成するステップは、前記間質空間内に穿孔カプセルを挿入するステップと、前記穿孔カプセル内への組織および毛細血管の内部成長を可能にすることにより、前記自由流体ポケットを形成するステップとを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記穿孔カプセルは、患者の胸部に埋め込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記穿孔カプセルは、3~5週間にわたり、前記間質空間に埋め込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
圧力センサに接続された針を、前記自由流体ポケットに挿入するステップを更に備える、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力センサからのSCIPを表す信号が増幅される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ウェアラブル圧力検知デバイスを患者に装着するステップと、前記ウェアラブル圧力検知デバイスを用いてSCIPを測定するステップとを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
埋め込み型圧力検知デバイスを患者に埋め込むステップと、前記埋め込み型圧力検知デバイスを用いてSCIPを測定するステップとを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセル内に挿入可能な圧力導管と、
前記圧力導管に接続された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項12】
前記カプセルの内面に配置された発泡体を更に備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記圧力導管は、針である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記圧力導管は、バルーンライニングである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バルーンライニングは、前記発泡体に隣接して配置される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記バルーンライニングは、小孔を有する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセル内に配置された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項18】
前記カプセルの内面に配置された発泡体を更に備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記発泡体に隣接して小孔を有したライニングを更に備える、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
穿孔を有するカプセルと、
前記カプセルに挿入可能な圧力導管と、
前記圧力導管に接続された増幅器と、
前記圧力導管に接続された圧力センサと
を備える、デバイス。
【請求項21】
前記増幅器は、ピストンシステムにより互いに接続された第1の流体チャンバおよび第2の流体チャンバを備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ピストンシステムは、第1の圧力ディスクと第2の圧力ディスクとを備え、前記第1の圧力ディスクの表面積は、前記第2の圧力ディスクの表面積よりも大きい、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたプリント回路基板、マイクロプロセッサユニット、およびバッテリと、
前記ハウジングおよび前記マイクロプロセッサユニットに組み合わされた圧力センサと、
前記圧力センサに組み合わされた流体カラムと、
前記流体カラムに接続されたフラッシュポートと
を備える、デバイス。
【請求項24】
前記圧力センサは、着用可能な場所の原位置に配置するために、前記ハウジングの外側に配置される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記圧力センサは、前記ハウジングの内部に配置される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項26】
前記流体カラムに接続された穿孔カプセルと、前記流体カラムに接続された圧力カラムとを更に備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記デバイスは着用可能である、請求項23に記載のデバイス。
【請求項28】
前記デバイスは、パッチである、請求項23に記載のデバイス。
【請求項29】
間質圧を測定するための埋め込み型デバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたプリント回路基板、マイクロプロセッサユニット、およびバッテリと、
前記ハウジングおよび前記マイクロプロセッサユニットに組み合わされた圧力センサと
を備える、埋め込み型デバイス。
【請求項30】
前記圧力センサは、原位置圧力センサである、請求項29に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項31】
前記ハウジングに組み合わされた穿孔カプセルを更に備え、前記圧力センサは、前記穿孔カプセル内に配置される、請求項29に記載の埋め込み型デバイス。
【請求項32】
間質圧を測定するためのデバイスであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから延在するカラムと、
間質空間に配置するために前記カラムの遠位端に配置された穿孔カプセルと、
前記ハウジング内に配置される構成要素である、大気チャンバ、圧力センサ、前記穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を供給するためのフラッシュ流体リザーバ、前記フラッシュ流体リザーバに補充するためのフラッシュ流体接続部、流体を介して前記穿孔カプセルから前記圧力センサに圧力を伝達するために前記圧力センサに接続された圧力流体リザーバ、前記圧力流体リザーバに補充するための圧力流体接続部、および前記穿孔カプセルの周囲の間質空間にフラッシュ流体を送給するためのマイクロポンプと
を備える、デバイス。
【請求項33】
前記穿孔カプセル内には、バルーンが配置され、前記バルーンは、前記圧力流体リザーバと連通する、請求項
32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記穿孔カプセルは、吸い上げ機構を備える、請求項
32に記載のデバイス。
【国際調査報告】