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特表2024-510877全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法
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  • 特表-全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 41/00 20060101AFI20240305BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240305BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B23Q41/00 B
G05B19/418 Z
B21J13/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023548935
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022053309
(87)【国際公開番号】W WO2022171772
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201389.9
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021209878.9
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ゲアハート ショレス
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ロスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】フランク フィーゲン
【テーマコード(参考)】
3C042
3C100
4E087
【Fターム(参考)】
3C042RA29
3C042RK22
3C042RK29
3C042RL14
3C100AA29
3C100AA57
3C100BB15
3C100BB29
3C100DD04
3C100EE10
4E087CA17
4E087ED15
(57)【要約】
本発明は、全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法に関し、この方法には、次のステップ、すなわち、鍛造プロセスのプロセスパラメータを検出するステップと、機械的または熱的な貫入処理を用いて、鍛造プロセスにおいて製造した被加工物に第1の識別子をマーキングするステップと、製造した被加工物の第1の識別子と共に鍛造プロセスの検出したプロセスパラメータをデータベースに記憶するステップと、先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子を読み出すステップと、製造プロセスの後続プロセスステップ中にプロセスパラメータを検出するステップと、製造プロセスの後続プロセスステップにより、被加工物の第1の識別子の可読性が存続している場合、データベースの読み出した識別子に後続プロセスステップのプロセスパラメータを記憶するステップと、製造プロセスの後続プロセスステップにより、被加工物の第1の識別子の可読性が存続していない場合、表面刻印処理を用いて、後続プロセスステップにおいて製造した被加工物に別の識別子をマーキングするステップと、先行プロセスステップのプロセスパラメータおよび第1の識別子と共に、別の識別子と合わせて後続プロセスステップのプロセスパラメータをデータベースに記憶するステップとが含まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法であって、前記方法には、次のステップ、すなわち、
前記鍛造プロセスのプロセスパラメータを検出するステップと、
機械的または熱的な貫入処理を用いて、前記鍛造プロセスにおいて製造した被加工物に第1の識別子をマーキングするステップと、
製造した前記被加工物の前記第1の識別子と共に前記鍛造プロセスの検出した前記プロセスパラメータをデータベースに記憶するステップと、
先行プロセスステップにおいて製造した前記被加工物の前記識別子を読み出すステップと、
前記製造プロセスの後続プロセスステップ中にプロセスパラメータを検出するステップと、
前記製造プロセスの後続プロセスステップにより、前記被加工物の前記第1の識別子の可読性が存続している場合、前記データベースの読み出した前記識別子に前記後続プロセスステップの前記プロセスパラメータを記憶するステップと、
前記製造プロセスの前記後続プロセスステップにより、前記被加工物の前記第1の識別子の前記可読性が存続していない場合、表面刻印処理を用いて、前記後続プロセスステップにおいて製造した前記被加工物に別の識別子をマーキングするステップと、
前記先行プロセスステップの前記プロセスパラメータおよび前記第1の識別子と共に、前記別の識別子と合わせて前記後続プロセスステップの前記プロセスパラメータを前記データベースに記憶するステップとが含まれている、方法。
【請求項2】
前記鍛造プロセスにおいて製造した前記被加工物の領域であって、前記後続プロセスステップにおいて除去される領域に前記第1の識別子を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被加工物の領域であって、前記被加工物を使用する際に小さな負荷に晒される領域に前記別の識別子を被着する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記プロセスステップにおいて、前記プロセスパラメータの他に、少なくとも部分的に品質データを検出し、前記第1の識別子および/または前記別の識別子と共に前記データベースに前記品質データを記憶する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記鍛造プロセスによって変形されないか、または前記鍛造プロセスによって既に最終的な形状を得ている、前記被加工物の領域に前記第1の識別子を生成する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ドットマトリクス印刷処理またはニードルエンボス処理を用いて前記第1の識別子を生成する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ニードルは、熱間工具鋼、超硬合金またはこれらに類するものから構成されており、かつ/または能動冷却器を有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第1の識別子を生成するための装置には、受動的かつ/または能動的な温度保護装置が含まれている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
レーザを用いて、または印刷処理により、前記別の識別子を生成する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の識別子および/または前記別の識別子には、データマトリクスコード、QRコード、バーコード、1つまたは複数の番号および/または数字、またはその他の記号またはシンボルが、特に部品番号または図面番号、供給者識別子、注文番号またはこれらに類するもの等の指示のために含まれている、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
複数の前記後続製造ステップの1つにおいて前記被加工物が切り離される場合、前記被加工物に複数の前記第1の識別子を付与し、好適には、切り離したそれぞれの被加工物が第1の識別子を有するように、複数の第1の識別子を配置する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
検出した前記プロセスパラメータには、前記鍛造プロセスの、または前記別のプロセスステップのプラントオートメーションの目標値および実際値、機械データ、プロセスデータ、測定ログまたはこれらに類するもの、好適には、特に異なる時点におけるプロセス温度、被加工物温度、プロセス時間、サイクル時間、スプレー時間、ドゥエル時間、プロセス力、変形力および反力、機械データ、主駆動部および副駆動部のモータ電力消費量、成形体の復元力、想定外のプロセスイベント、ツールの破損、特に亀裂形成、エンドピースの鍛造、ダブルローダまたはこれに類するものが含まれる、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
あらかじめ設定した境界または閾値を上回り、かつ/または下回る際に、前記第1の識別子および/または前記別の識別子と共に前記プロセスパラメータを前記データベースに記憶する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
特に、後から発見される不良の、もしくは欠陥のある製品に基づいて、不良の、または欠陥のある製品を識別するために、前記データベースに記憶した前記プロセスデータを解析することと、不良の、もしくは欠陥のある製品のプロセスデータと、データベースのプロセスデータとを比較することと、前記第1の識別子および/または前記別の識別子に基づいて、対応する製品を識別することとが含まれている、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記第1の識別子が存続しているプロセスステップには、前記被加工物のサンドブラスト、ショットピーニング、熱処理、例えば表面硬化、浸炭窒化、焼入れまたはこれに類するもの等が含まれている、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第1の識別子が存続していないプロセスステップには、前記被加工物の機械加工、例えば旋削加工、フライス加工、研削加工またはこれに類するもの等が含まれている、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
鍛造装置の前に、または前記鍛造装置内に、または前記鍛造装置の後ろに直接に配置されている1つまたは複数のマーキングユニットによって前記第1の識別子を生成する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法に関する。
【0002】
被加工物を追跡することは、多くの観点から有利である。例えば、1つの被加工物に関して品質上の問題が発生した場合、同等の条件下で製造した別の複数の被加工物を識別して、これらを検査し、抜き取りまたは交換することができる。このことは、例えば自動車産業用の構成部品において有利である。なぜなら、1つの構成部品に関する問題の際には、場合によってはコストのかかるリコールに結び付く、同じ製造ロットからの全ての構成部品を交換する必要はなく、相当する条件下で製造された構成部品だけを交換すればよいからである。しかしながらこれには、全製造プロセスにわたって構成部品(鍛造部品)を追跡できる必要がある。被加工物の追跡には、製造プロセスの個々のプロセスステップのプロセスパラメータへのアクセスが含まれる。
【0003】
全製造プロセスにわたる鍛造部品の追跡には、鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工および完成した鍛造部品の最終的な使用に至るまで、被加工物の一貫したマーキングが必要である。しかしながら、鍛造プロセス中に生じている周囲条件と、完成した鍛造部品に対する要求に関係する付随状況とにより、鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工および完成した鍛造部品の最終的な使用に至るまで、被加工物の一貫したマーキングが妨げられてしまう。鍛造プロセス中および直後には、高温の被加工物および対応する熱放射により、極めて高い熱負荷が生じている。さらに、鍛造プロセスの後、被加工物は、被加工物表面への直接的なアクセスを妨げる、表面のスケールを有する。さらに、例えば黒鉛等の噴霧剤による不純物も加わる。後続プロセスステップでは、スケールは、材料を機械的かつ/または熱的に除去する処理を用いて、例えばサンドブラストまたはショットピーニングによって除去され、また被加工物の表面は、熱処理、例えば表面硬化、浸炭窒化または焼入れ等により加工され、これによって、高い機械的な応力が生じてしまう。一貫したマーキングは、これらの条件下において永続性を有しなければならないが、同時に最終的な被加工物(鍛造部品)に対する要求により、被加工物の機械的な性質にマイナスの影響を及ぼすマーキングの使用を妨げる。例えば、被加工物表面の損傷(応力集中)、耐食性の低下または取り付けプロセスのマイナスの影響が取り除かれる。
【0004】
さらに、全製造プロセスの個々のプロセスステップは通常、直接に順次連続して実行されるのではなく、被加工物は、例えば個々のプロセスステップ間に一時的に保管される。さらに、いくつかのプロセスステップでは、複数の被加工物が並行して加工されるが、これは、例えばブラスト処理または熱処理において当てはまる。したがって、全製造プロセスにわたって被加工物を一貫して光学式に追跡することは不可能である。
【0005】
本発明の根底にある課題は、全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法であって、前に挙げた全ての要求を満たす方法を提供することである。
【0006】
この課題は、本発明により、全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する方法によって解決され、この方法には、次のステップ、すなわち、
鍛造プロセスのプロセスパラメータを検出するステップと、
機械的または熱的な貫入処理を用いて、鍛造プロセスにおいて製造した被加工物に第1の識別子をマーキングするステップと、
製造した被加工物の第1の識別子と共に鍛造プロセスの検出したプロセスパラメータをデータベースに記憶するステップと、
先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子を読み出すステップと、
製造プロセスの後続プロセスステップ中にプロセスパラメータを検出するステップと、
製造プロセスの後続プロセスステップにより、被加工物の第1の識別子の可読性が存続している場合、データベースの読み出した識別子に後続プロセスステップのプロセスパラメータを記憶するステップと、
製造プロセスの後続プロセスステップにより、被加工物の第1の識別子の可読性が存続していない場合、表面刻印処理を用いて、後続プロセスステップにおいて製造した被加工物に別の識別子をマーキングするステップと、
先行プロセスステップのプロセスパラメータおよび第1の識別子と共に、別の識別子と合わせて後続プロセスステップのプロセスパラメータをデータベースに記憶するステップとが含まれている。
【0007】
本発明による方法によると、鍛造部品の製造方法の全てのプロセスステップにおいて、関連するプロセスパラメータを検出する。これは、例えば、それぞれの製造プロセスのプロセスオートメーションによって行われる。常にプロセスチェーンに沿って、または後続の使用に、検出したプロセスパラメータを製造した被加工物に対応付けることができるようにするため、鍛造プロセスを用いて製造した被加工物には、機械的または熱的な貫入処理を用いて、第1の識別子を付与する。第1の識別子および検出したプロセスパラメータは、後の追跡のためにデータベースに記憶される。第1の識別子に基づき、後の時点に、鍛造プロセスのプロセスパラメータをデータベースから呼び出すことができる。
【0008】
本発明によると、鍛造プロセスのプロセスパラメータを検出するステップには、鍛造プロセスの前、鍛造プロセス中、および鍛造プロセスの後にパラメータを検出するステップが含まれていてよい。鍛造プロセスの前には、例えば原材料データを検出し、鍛造プロセス中には、鍛造プロセスのパラメータ、例えば力、温度等を検出し、鍛造プロセスの後には、作製した被加工物のパラメータ、例えば寸法等を検出することができる。
【0009】
第1の識別子を生成するための機械的または熱的な貫入処理は、これによって、第1の識別子の領域において、脆いスケール層は、これが剥げ落ちるため、自動的に除去されるという利点を有する。また、場合によって生じ得る不純物も、第1のマーキングにマイナスの影響を及ぼさない。というのは、第1のマーキングは、被加工物の表面への機械的な貫入によって生成されるからである。被加工物は、鍛造プロセス後に引き続いて1250℃までの極めて高い温度を有しているため、第1の識別子を生成するための機械的な手段は、被加工物表面に比較的容易に貫入可能である。また、鍛造プロセス後の熱的な負荷および機械的な負荷に耐える簡単な機械装置により、第1の識別子を生成するための機械的な手段を構成することも可能である。機械的な貫入処理とは択一的に、第1の識別子を生成するために熱的な貫入処理も利用可能である。熱的な貫入処理は、例えば、第1のマーキングを生成するためのレーザに基づく。
【0010】
機械的または熱的な貫入処理によって製造される第1の識別子は、ブラスト処理および熱処理の後続プロセスステップにおいても維持され、これにより、鍛造プロセスのプロセスパラメータと共に、これらのプロセスステップにおいて検出したプロセスパラメータをデータベースの第1の識別子に記憶する。
【0011】
例えば旋削加工、フライス加工、研削加工またはこれらに類するもの等の被加工物の後続の機械加工では、第1の識別子が取り除かれてしまい、加工した被加工物の追跡のためにもはや読み取ることができない。したがって、このプロセスステップにおいて加工される被加工物に、引き続いて別の識別子を付与し、表面刻印処理を用いてこの別の識別子を作製する。関連するプロセスステップ中に検出したプロセスパラメータは、データベースにおいて、別の識別子と共に、対応する被加工物の第1の識別子に対応付けられる。これにより、別の識別子を介して、対応する第1の識別子をデータベースから呼び出すことができ、全製造プロセスにわたって被加工物を追跡でき、またデータベースに対応して記憶されている、全てのプロセスステップの全てのプロセスパラメータにもアクセス可能である。
【0012】
理論的には、被加工物をさらに加工する際には、このさらなる加工の際に、先行する別の識別子が存続していない場合、表面刻印処理を用いて新しい識別子を被着することも可能である。
【0013】
本発明の好ましい1つの変形実施形態によると、鍛造プロセスにおいて製造した被加工物の領域であって、複数の後続プロセスステップの1つにおいて除去される領域に第1の識別子を生成する。第1の識別子を有するこの領域は、例えば、後続の加工によって機械的に除去される。第1の識別子の後続の除去により、機械的または熱的な貫入処理を用いて生成されるこの第1の識別子は、全製造プロセスにおいて作製される被加工物(鍛造部品)にマイナスの影響を及ぼさない。
【0014】
本発明の別の有利な1つの変形実施形態によると、被加工物の領域であって、被加工物を使用する際に小さな負荷に晒される領域に別の識別子を被着する。好適には、被加工物の領域であって、被加工物を使用する際にいかなる負荷にも晒されない領域に別の識別子を被着する。これにより、被加工物の別の識別子は、被加工物の特性にマイナスの影響を及ぼさない。別の識別子を有する領域の負荷が小さいかまたは生じないことにより、この領域の可読性が存続され、このことは後の追跡にも同様に有利である。
【0015】
しかしながら追跡には、別の識別子の、後からの可読性は、どこにどの被加工物がそれらの別の識別子と共に使用された/取り付けられたかが記録されるのであれば必ずしも必要ではない。
【0016】
本発明による別の1つの変形実施形態では、プロセスステップにおいて、プロセスパラメータの他に、少なくとも部分的に品質データを検出し、第1の識別子および/または別の識別子と共にこの品質データをデータベースに記憶する。この品質データは、例えば、自動および/または手動の品質検査および/または最終検査の枠内で特定される。自動の特定は、これが可能である場合には好ましい。品質データを特定して記憶することにより、個々のプロセスステップまたは場合によってはこれに続く後続処理または取り付けは、記憶した品質データを用いることができる。すなわち、品質標準をチェックして保証することができる。さらに、場合によっては被加工物の固有の受入検査を行う必要がない。
【0017】
本発明の1つの変形実施形態によると、鍛造プロセスによって変形されないか、または鍛造プロセスによって既にその最終的な形状を得ている、被加工物の領域に第1の識別子を生成する。被加工物のこの領域では、第1の識別子は、理論的に、鍛造プロセスの前または鍛造プロセス中に生成可能である。というのは、鍛造プロセスは、この領域に(もはや)影響を及ぼさず、これにより第1の識別子は可読のままであるからである。
【0018】
本発明の合目的的な1つの変形実施形態によると、ドットマトリクス印刷処理またはエンボス処理を用いて第1の識別子を生成する。
【0019】
有利な1つの変形実施形態では、エンボスツール(例えばニードル)は、熱間工具鋼、超硬合金またはこれに類するものから構成され、かつ/または能動冷却器を有する。これにより、ドットマトリクス印刷処理またはニードルエンボス処理用のニードルの寿命が延ばされる。
【0020】
本発明の別の好ましい1つの変形実施形態によると、第1の識別子を生成するための装置には、受動的かつ/または能動的な温度保護装置が含まれている。受動的な温度保護装置は、例えば、断熱器であり、能動的な温度保護装置は、例えば、冷却器である。これにより、鍛造プロセスもしくは鍛造した被加工物が、第1の識別子を生成するための装置に及ぼすマイナスの熱の影響を低減することができ、これによりその寿命を延ばして、故障を少なくする。
【0021】
本発明の合目的的な1つの変形実施形態によると、レーザを用いて、または印刷処理により、別の識別子を生成する。印刷処理により、被加工物の表面に識別子が生成され、これにより、被加工物の機械的な特性にはいかなる影響も及ぼされない。しかしながら、印刷した別の識別子は一般に、表面に組み込まれる別の識別子よりも耐久性が低い。レーザにより、被加工物の表面に別の識別子が生成され、したがって、理論的には、被加工物の機械的な特性に影響が及ぼされることがある。しかしながら識別子は、最上部の層だけに生成されるため、上記の影響は極めて小さいはずである。レーザを用いて生成される別の識別子は一般に、印刷した別の識別子よりも耐久性がある。
【0022】
本発明による1つの変形実施形態では、第1の識別子および/または別の識別子には、データマトリクスコード、QRコード(商標)、バーコード、1つまたは複数の番号および/または数字、またはその他の記号またはシンボルが、特に部品番号または図面番号、供給者識別子、注文番号またはこれらに類するもの等の指示のために含まれている。
【0023】
本発明の1つの変形実施形態によると、複数の後続製造ステップの1つにおいて被加工物が切り離される場合、被加工物には複数の第1の識別子を付与し、好適には、切り離したそれぞれの被加工物が第1の識別子を有するように、複数の第1の識別子を配置する。製造プロセスの終了時に被加工物の切り離しを行う場合、個々の部品にはそれぞれ表面刻印処理を用いて別の識別子を付与して、プロセスデータおよび第1の識別子をそれぞれ共通に用いる。
【0024】
本発明の1つの変形実施形態によると、検出したプロセスパラメータには、鍛造プロセスの、または別のプロセスステップのプラントオートメーションの目標値および実際値、機械データ、プロセスデータ、測定ログ、炭素排出量またはこれらに類するもの、好適には、特に異なる時点におけるプロセス温度、被加工物温度、プロセス時間、サイクル時間、スプレー時間、ドゥエル時間、プロセス力、変形力および反力、機械データ、主駆動部および副駆動部のモータ電力消費量、成形体の復元力、想定外のプロセスイベント、ツールの破損、特に亀裂形成、エンドピースの鍛造、ダブルローダまたはこれに類するものが含まれる。プロセスパラメータとしての炭素排出量には、特に、それぞれのプロセスステップで発生する炭素排出量が含まれる。
【0025】
本発明の有利な1つの変形実施形態では、あらかじめ設定した境界または閾値を上回り、かつ/または下回る際に、第1の識別子および/または別の識別子と共にプロセスパラメータをデータベースに記憶する。すなわち、製造プロセスの全てのプロセスステップの全てのプロセスパラメータの記憶を強制的に行うのではなく、あらかじめ定義した閾値または境界を上回るプロセスパラメータだけを記憶する。これにより、記憶すべきデータ量が大幅に低減される。
【0026】
特に好ましい1つの変形実施形態によると、本発明の方法には、特に、後から発見される不良の、もしくは欠陥のある製品に基づいて、不良の、または欠陥のある製品を識別するために、データベースに記憶したプロセスデータを解析することと、不良の、もしくは欠陥のある製品のプロセスデータと、データベースのプロセスデータとを比較することと、第1の識別子および/または別の識別子に基づいて、対応する製品を識別することとが含まれている。
【0027】
本発明の合目的的な1つの変形実施形態によると、第1の識別子が存続しているプロセスステップには、被加工物のサンドブラスト、ショットピーニング、熱処理、例えば表面硬化、浸炭窒化、焼入れまたはこれに類するもの等が含まれている。
【0028】
本発明による1つの変形実施形態では、第1の識別子が存続していないプロセスステップには、被加工物の機械加工、例えば旋削加工、フライス加工、研削加工またはこれに類するもの等が含まれている。
【0029】
本発明の合目的的な1つの変形実施形態によると、鍛造装置の前に、鍛造装置内に、または鍛造装置の後ろに直接に配置されている1つまたは複数のマーキングユニットによって第1の識別子を生成する。鍛造装置の前に、鍛造装置内に、または鍛造装置の後ろに直接に配置することにより、直接に後続して、または前にもしくは並列に被着される第1の識別子に鍛造プロセスのプロセスパラメータを一意に対応付けることができる。鍛造装置とマーキングユニットとの間で取り違えのおそれはない。このことが不可能である場合には、例えば鍛造装置とマーキングユニットとの間で被加工物を光学的または論理的に追跡することにより、一意の対応付けを保証しなければならない。第1の識別子の生成よりも鍛造プロセスが速い場合には、好適には複数のマーキングユニットを鍛造装置に割り当て、これにより、第1の識別子の生成は、製造プロセスのスループットを低下させない。この場合、個々のマーキングユニットへの被加工物の対応付けは、関連するプロセスパラメータと共に保証されなければならない。
【0030】
以下では、図1に示した1つの実施例に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する、本発明による方法の実施例のフローチャートである。
【0032】
図1には、全製造プロセスにわたり、特に鍛造プロセスからサンドブラストおよび熱処理を経て機械加工に至るまで、鍛造部品を追跡する本発明による方法の実施例のフローチャートが示されている。
【0033】
本発明による、図1の方法のフローチャートによると、製造プロセスは鍛造プロセスで開始される。本発明にしたがって、鍛造プロセスのプロセスパラメータを検出する。
【0034】
鍛造プロセスの後または鍛造プロセス中に、この鍛造プロセスで製造した被加工物に第1の識別子を付与する。機械的または熱的な貫入処理を用いて、特にドットマトリクス印刷処理またはエンボス処理を用いて第1の識別子を生成する。対応するエンボス手段、例えばニードル等は、特に熱間工具鋼、超硬合金またはこれに類するものから構成される。さらに、エンボス手段もしくはニードルには、能動冷却器が含まれていてよい。これにより、エンボス手段もしくはニードルの寿命を延ばすことができる。
【0035】
鍛造プロセスおよび/または被加工物の温度から、第1の識別子を生成するための装置をより良好に保護するために、この装置は好適には、受動的かつ/または能動的な温度保護装置を有する。この温度保護装置は、例えば、熱的分離器または冷却装置であってよい。
【0036】
特に、鍛造プロセスにおいて製造した被加工物の領域であって、複数の後続プロセスステップの1つにおいて機械的に除去する領域に第1の識別子を生成する。これにより、生成される第1のマーキングは、全製造プロセスにおいて製造される被加工物/製品にマイナスの影響を及ぼさない。
【0037】
第1の識別子が鍛造プロセス中に生成される場合、これは、鍛造プロセスによって変形されないか、または鍛造プロセスによって既にその最終的な形状を得ている、被加工物の領域において行われる。これによって保証されるのは、鍛造プロセスにより、第1の識別子の可読性が損なわれないことである。
【0038】
第1の識別子の生成よりも鍛造プロセスが速い場合、第1の識別子の生成によって製造方法のスループットにマイナスの影響が及ぼされないようにするために、第1の識別子を生成するための複数の装置を設けることができる。第1の識別子を生成するための少なくとも1つの装置は好適には、鍛造装置の前に、鍛造装置内に、または鍛造装置の後ろに直接に配置されている。
【0039】
被加工物に第1の識別子を付与した後、製造した被加工物の第1の識別子と共に、鍛造プロセスの検出したプロセスパラメータをデータベースに記憶する。
【0040】
後続プロセスステップでは、先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子、例えば鍛造プロセスにおいて製造した被加工物の第1の識別子を読み出す。さらに、後続プロセスステップにおいて、プロセスパラメータを検出する。
【0041】
基本的には後続プロセスステップでは、この後続プロセスステップにより、先行プロセスステップで製造した被加工物の識別子の可読性が存続しているか否かが区別される。
【0042】
先行プロセスステップで製造した被加工物の識別子の可読性が存続している場合、被加工物の識別子の読出しと、後続プロセスステップのプロセスパラメータの検出との順序は、重要ではなく自由に選択可能である。この場合、後続(最新)プロセスステップの検出したプロセスパラメータを検出して、データベースの読み出した識別子に記憶する。その後、次のプロセスステップが続く。
【0043】
第1の識別子の可読性が存続しているプロセスステップには、特に被加工物のサンドブラスト、ショットピーニング、熱処理、例えば表面硬化、浸炭窒化、焼入れ、またはこれに類するもの等が含まれている。
【0044】
先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子の可読性が存続していない場合には、先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子を最初に読み出し、引き続いて、ここでは先行プロセスステップにおいて作製した被加工物の識別子の可読性が失われているため、後続(最新)プロセスステップのプロセスパラメータを検出する。この場合、表面刻印処理を用いて被加工物に別の識別子をマーキングする。
【0045】
引き続いて、データベースにおける別の識別子と共に、先行プロセスステップにおいて製造した、被加工物の識別子に、特に対応する被加工物の関連する第1の識別子に、検出したプロセスパラメータを記憶する。
【0046】
この際には特に、被加工物の領域であって、この被加工物を使用する際に小さな負荷に晒されるかまたは負荷に晒されない領域にこの別の識別子を被着する。
【0047】
表面刻印処理は、例えば、レーザ刻印または印刷処理に基づく。
【0048】
先行プロセスステップにおいて製造した被加工物の識別子が存続していないプロセスステップには特に、被加工物の機械加工、例えば旋削加工、フライス加工、研削加工またはこれに類するもの等が含まれている。
【0049】
次いで、別のプロセスステップを続けることができるか、または製造プロセスを終了させる。
【0050】
鍛造プロセスおよび/または後続プロセスステップの検出したプロセスパラメータには、例えば、鍛造プロセスまたは後続プロセスステップのプラントオートメーションの目標値および実際値、機械データ、プロセスデータ、測定ログ、炭素放出量、またはこれらに類するものが含まれる。これには好適には、特に異なる時点におけるプロセス温度、被加工物温度、プロセス時間、サイクル時間、スプレー時間、ドゥエル時間、プロセス力、変形力および反力、機械データ、主駆動部および副駆動部のモータ電力消費量、成形体の復元力、想定外のプロセスイベント、ツールの破損、特に亀裂形成、エンドピースの鍛造、ダブルローダまたはこれに類するものが該当する。好適には、それぞれのプロセスステップにおいて発生する炭素放出量が、このプロセスステップについてのプロセスパラメータとして検出される。
【0051】
本発明の1つの変形実施形態によると、プロセスステップにおいて、プロセスパラメータの他に、少なくとも部分的に品質データが検出可能であり、第1の識別子および/または別の識別子と共にデータベースにこの品質データを記憶する。
【0052】
第1の識別子および/または別の識別子には、例えば、データマトリクスコード、QRコード、バーコード、1つまたは複数の番号および/または数字、またはその他の記号またはシンボルが、特に部品番号または図面番号、供給者識別子、注文番号またはこれに類するもの等の指示のために含まれている。第1の識別子は、機械的な貫入処理によって作製されるため、これは好適には、単純な数値または英数字の文字列またはドットマトリクスから構成される。これとは異なり、表面刻印処理を用いて作製される別のマーキングは、より複雑に構成することができ、例えばQRコードの形態の付加的な情報を含んでいてよい。
【0053】
本発明の1つの変形実施形態によると、複数の後続製造ステップの1つにおいて被加工物が切り離される場合、被加工物には複数の第1の識別子を付与し、好適には、切り離したそれぞれの被加工物が第1の識別子を有するように、複数の第1の識別子を配置する。製造プロセスの終了時に被加工物の切り離しを行う場合、個々の部品にはそれぞれ表面刻印処理を用いて別の識別子を付与して、プロセスデータおよび第1の識別子をそれぞれ共通に用いる。
【0054】
本発明の有利な1つの変形実施形態では、あらかじめ設定した境界または閾値を上回り、かつ/または下回る際に、第1の識別子および/または別の識別子と共にプロセスパラメータをデータベースに記憶する。すなわち、製造プロセスの全てのプロセスステップの全てのプロセスパラメータの記憶を強制的に行うのではなく、あらかじめ定義した閾値または境界を上回るプロセスパラメータだけを記憶する。これにより、記憶すべきデータ量が大幅に低減される。
【0055】
特に好ましい1つの変形実施形態によると、本発明の方法には、特に、後から発見される不良の、もしくは欠陥のある製品に基づいて、不良の、または欠陥のある製品を識別するために、データベースに記憶したプロセスデータを解析することと、不良の、もしくは欠陥のある製品のプロセスデータと、データベースのプロセスデータとを比較することと、第1の識別子および/または別の識別子に基づいて、対応する製品を識別することとが含まれている。
図1
【国際調査報告】