(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アンテナシステムに使用するためのポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240305BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240305BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240305BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240305BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240305BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240305BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240305BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
C08K3/30
C08K7/06
C08K7/14
H01Q21/06
H01Q1/24 Z
H01Q1/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550000
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 US2021018492
(87)【国際公開番号】W WO2022177560
(87)【国際公開日】2022-08-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4J002
5J021
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF051
4J002CF061
4J002CF071
4J002CF081
4J002CF161
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4J002FD016
4J002FD018
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4J002GQ00
5J021AA09
5J021AB03
5J021AB04
5J021AB05
5J021AB06
5J021HA05
5J046AB06
5J046AB07
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5J046AB11
5J046AB13
5J047AB06
5J047AB07
5J047AB08
5J047AB11
5J047AB13
(57)【要約】
ポリマーマトリックス内に分布された半導電性材料を含むポリマー組成物が提供される。半導電性材料は、無機粒子および導電性材料を含み、無機粒子は、約0.1~約100μmの平均粒径および約500μS/cm以下の導電率を有する。ポリマーマトリックスは、約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有する。ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率および約0.3以下の誘電正接を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス内に分布された半導電性材料を含むポリマー組成物であって、前記半導電性材料が無機粒子および導電性材料を含み、前記無機粒子が約0.1~約100μmの平均粒径および約500μS/cm以下の導電率を有し、前記ポリマーマトリックスが、1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有し、さらに前記ポリマー組成物が、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率および約0.3以下の誘電正接を示す、ポリマー組成物。
【請求項2】
約-30℃~約100℃の温度サイクルに曝露された後に比誘電率を示し、前記温度サイクル後の比誘電率の前記熱サイクル前の比誘電率に対する比が約0.8以上である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約-30℃~約100℃の温度サイクルに曝露された後に誘電正接を示し、前記温度サイクル後の誘電正接の前記熱サイクル前の誘電正接に対する比が約1.3以下である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約150℃~約310℃の荷重たわみを有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、約100℃~約320℃のガラス転移温度および/または約200℃~約410℃の溶融温度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリマーまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性高性能ポリマーが全芳香族液晶ポリマーを含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、約10mol.%以下である、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の合計量を有する、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記液晶ポリマーが、約30mol.%~約70mol.%の量のHBA、約2mol.%~約30mol.%の量のIAおよび/またはTA、ならびに約2mol.%~約40mol.%の量のBPおよび/またはHQを含有する、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記液晶ポリマーが、約10mol.%より高い、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の合計量を有する、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記液晶ポリマーが、約20mol.%~約60mol.%の量のHBA、約2mol.%~約30mol.%の量のIAおよび/またはTA、ならびに約5mol.%~約35mol.%の量のBPおよび/またはHQを含有する、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記半導電性材料が前記ポリマー組成物の約10wt%~約70wt%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
ASTM D257-14に従って約20℃の温度で決定される約1×10
11オーム・m~約1×10
17オーム・mの体積抵抗率、および/または約1×10
13オーム~約1×10
19オームの表面抵抗率を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記無機粒子の重量パーセンテージの前記導電性材料の重量パーセンテージに対する比が約3~約100である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記導電性材料が前記ポリマー組成物の約0.1wt%~約15wt%を構成し、前記無機粒子が前記ポリマー組成物の約20wt%~約60wt%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記無機粒子が硫酸バリウムを含有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記導電性材料が約0.1オーム・cm以下の体積抵抗率を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記導電性材料が、約1×10
3~約1×10
12オーム・cmの体積抵抗率を有する炭素材料を含む、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記導電性材料が炭素繊維を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
ガラス繊維をさらに含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
1,000秒
-1のせん断速度および前記ポリマー組成物の溶融温度より約15℃高い温度で決定される約5~約100Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む成型部品。
【請求項23】
前記部品の表面上に1つまたは複数の導電素子が形成されている、請求項22に記載の成型部品。
【請求項24】
請求項1に記載のポリマー組成物を含む基板、および無線周波数信号を送受信するように構成された少なくとも1つのアンテナ素子を含み、前記アンテナ素子が前記基板に結合されている、アンテナシステム。
【請求項25】
前記無線周波数信号が5G信号である、請求項24に記載のアンテナシステム。
【請求項26】
前記少なくとも1つのアンテナ素子が約1,500マイクロメートル未満の特徴サイズを有する、請求項24に記載のアンテナシステム。
【請求項27】
前記少なくとも1つのアンテナ素子が複数のアンテナ素子を含む、請求項24に記載のアンテナシステム。
【請求項28】
前記複数のアンテナ素子が、約1,500マイクロメートル未満の間隔距離によって離間された、請求項27に記載のアンテナシステム。
【請求項29】
前記複数のアンテナ素子が少なくとも16個のアンテナ素子を含む、請求項27に記載のアンテナシステム。
【請求項30】
前記複数のアンテナ素子がアレイ状に配列された、請求項27に記載のアンテナシステム。
【請求項31】
前記アレイが、少なくとも8個の送信チャネルおよび少なくとも8個の受信チャネルのために構成された、請求項30に記載のアンテナシステム。
【請求項32】
前記アレイが、1平方センチメートルあたり1,000個より多いアンテナ素子である、平均アンテナ素子密度を有する、請求項30に記載のアンテナシステム。
【請求項33】
基地局をさらに含み、前記基地局が少なくとも1つのアンテナ素子を含む、請求項24に記載のアンテナシステム。
【請求項34】
少なくとも1つのユーザコンピューティングデバイスまたはリピーターをさらに含み、前記少なくとも1つのユーザコンピューティングデバイスまたはリピーター基地局が前記少なくとも1つのアンテナ素子を含む、請求項33に記載のアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
[0001]5Gシステムには、アンテナ素子などの様々な種類の電気構成部品が利用される。残念なことに、5G用途で遭遇する高周波数での送受信は、一般に消費電力および発熱量を増加させる。その結果、従来の電子構成部品に頻繁に使用される材料は、高周波性能能力に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、5Gアンテナシステムで使用するための改善された電子構成部品に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0002]本発明の一実施形態によると、ポリマーマトリックス内に分布された半導電性材料を含むポリマー組成物が開示される。半導電性材料は、無機粒子および導電性材料を含み、無機粒子は、約0.1~約100μmの平均粒径および約500μS/cm以下の導電率を有する。ポリマーマトリックスは、約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有する。ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率および約0.3以下の誘電正接を示す。
【0004】
[0003]本発明の他の特色および態様が、以下により詳細に記載される。
[0004]本発明の完全かつ実施可能な開示が、当業者に対するその最良の形態を含め、添付の図面への参照を含む本明細書の残り部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0005]アンテナシステムを利用することができる電子構成部品の一実施形態の前面斜視図である。
【
図2】アンテナシステムを利用することができる電子構成部品の一実施形態の裏面斜視図である。
【
図3】[0006]アンテナシステムの一実施形態の例示的な逆Fアンテナ共振素子の上面図である。
【
図4】[0007]アンテナシステムの一実施形態の例示的なモノポールアンテナ共振素子の上面図である。
【
図5】[0008]アンテナシステムの一実施形態の例示的なスロットアンテナ共振素子の上面図である。
【
図6】[0009]アンテナシステムの一実施形態の例示的なパッチアンテナ共振素子の上面図である。
【
図7】[0010]アンテナシステムの一実施形態の例示的な多分岐逆Fアンテナ共振素子の上面図である。
【
図8】[0011]本開示の態様による、基地局、1つまたは複数の中継局、1つまたは複数のユーザコンピューティングデバイス、1つまたは複数のWi-Fiリピーターを含む5Gアンテナシステムを示す。
【
図9A】[0012]本開示の態様による5Gアンテナを含む、例示的なユーザコンピューティングデバイスを上から見た図を示す。
【
図9B】[0013]本開示の態様による5Gアンテナを含む、
図9Aの例示的なユーザコンピューティングデバイスの側面立面図を示す。
【
図10】[0014]
図9Aのユーザコンピューティングデバイスの一部の拡大図を示す。
【
図11】[0015]本開示の態様による共平面導波管アンテナアレイ構成の側面立面図を示す。
【
図12A】[0016]本開示の態様による大規模多入力多出力構成のアンテナアレイを示す。
【
図12B】[0017]本開示の態様による、レーザー直接構造化によって形成されたアンテナアレイを示す。
【
図12C】[0018]本開示の態様による例示的なアンテナ構成を示す。
【
図13】[0019]アンテナシステムを形成するために使用され得るレーザー直接構造化製造プロセスの簡略化された連続図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0020]本考察は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことが当業者によって理解される。
[0021]一般に、本発明は、無機粒子と導電性材料の組合せを含む半導電性材料を含有するポリマー組成物に関する。半導電性材料は、高性能ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布される。組成物の種々の態様を選択的に制御することによって、本発明者は、得られる組成物が、アンテナシステムで使用するための高比誘電率と低誘電正接の独特の組合せを維持できることを発見した。例えば、ポリマー組成物は、2GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定される約4以上、一部の実施形態では約8以上、一部の実施形態では約10以上、一部の実施形態では約10~約30、一部の実施形態では約11~約25、一部の実施形態では約12~約24の高比誘電率を示してもよい。そのような高い比誘電率は、薄い基板を形成する能力を促進し、さらにほんの最小レベルの電気的干渉と同時に動作する複数の導電素子(例えば、アンテナ)の利用を可能にすることができる。また、エネルギー損失率の測定値である誘電正接は比較的低くてもよく、例えば、2GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定される約0.3以下、一部の実施形態では約0.1以下、一部の実施形態では約0.06以下、一部の実施形態では約0.04以下、一部の実施形態では約0.01以下、一部の実施形態では約0.001~約0.006であってもよい。注目すべきことに、本発明者らはまた、比誘電率および誘電正接は、約-30℃~約100℃の温度などの種々の温度に曝露された場合でも、上述の範囲内に維持され得ることを驚くべきことに発見した。例えば、本明細書に記載される熱サイクル試験に供された場合、熱サイクリング後の比誘電率の初期比誘電率に対する比は、約0.8以上、一部の実施形態では約0.9以上、一部の実施形態では約0.95~約1.1であってもよい。同様に、高温への曝露後の誘電正接の初期誘電正接に対する比は、約1.3以下、一部の実施形態では約1.2以下、一部の実施形態では約1.1以下、一部の実施形態では約1.0以下、一部の実施形態では0.95以下、一部の実施形態では約0.1~約0.95、一部の実施形態では約0.2~約0.9であってもよい。誘電正接の変化(すなわち、初期誘電正接-熱サイクリング後の誘電正接)も、約-0.1~約0.1、一部の実施形態では約-0.05~約0.01、一部の実施形態では約-0.001~0の範囲であり得る。
【0007】
[0022]従来的に、高比誘電率と低誘電正接の組合せを有するポリマー組成物は、特定の種類の用途での使用を可能にするのに十分に良好な機械的特性および加工容易性(すなわち、低粘度)を同時に有さないと考えられていた。しかし、従来の考えとは異なり、ポリマー組成物は優れた機械的特性と加工性の両方を有することが見出されている。例えば、ポリマー組成物は高い衝撃強度を有してもよく、これは薄い基材を形成する場合に有用である。例えば、組成物は、ISO試験No.ISO179-1:2010に従って23℃の温度で決定される約0.5kJ/m2以上、一部の実施形態では約1~約60kJ/m2、一部の実施形態では約2~約50kJ/m2、一部の実施形態では約5~約45kJ/m2のノッチ付きシャルピー衝撃強度を有してもよい。組成物の引張および曲げ機械的特性もまた良好であり得る。例えば、ポリマー組成物は、約20~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約70~約350MPaの引張強度;約0.4%以上、一部の実施形態では約0.5%~約10%、一部の実施形態では約0.6%~約3.5%の引張破断歪み;および/または約5,000MPa~約20,000MPa、一部の実施形態では約8,000MPa~約20,000MPa、一部の実施形態では約10,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、ISO試験No.527:2019に従って23℃の温度で決定されてもよい。ポリマー組成物はまた、約20~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約100~約350MPaの曲げ強度;約0.4%以上、一部の実施形態では約0.5%~約10%、一部の実施形態では約0.6%~約3.5%の曲げ伸び;および/または約5,000MPa~約20,000MPa、一部の実施形態では約8,000MPa~約20,000MPa、一部の実施形態では約10,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、178:2019に従って23℃の温度で決定されてもよい。
【0008】
[0023]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0024]ポリマーマトリックスは、全ポリマー組成物の約15wt.%~約85wt.%、一部の実施形態では約20wt.%~約75wt.%、一部の実施形態では約30wt.%~約50wt.%の量の1種または複数の熱可塑性高性能ポリマーを一般に含有する。高性能ポリマーは、1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約40℃以上、一部の実施形態では約50℃以上、一部の実施形態では約60℃以上、一部の実施形態では約100℃~約320℃、一部の実施形態では約150℃~約310℃、一部の実施形態では約220℃~約300℃の荷重たわみ温度(「DTUL」)によって反映されるように、高度の耐熱性を有する。高度の耐熱性を示すことに加え、ポリマーは、典型的に約40℃以上、一部の実施形態では約50℃以上、一部の実施形態では約60℃以上、一部の実施形態では約70℃以上、一部の実施形態では約80℃以上、一部の実施形態では約100℃~約320℃などの高いガラス転移温度も有する。半結晶性または結晶性ポリマーが利用される場合、高性能ポリマーは、約140℃以上、一部の実施形態では約150℃~約420℃、一部の実施形態では約200℃~約410℃、一部の実施形態では約300℃~約400℃などの高い溶融温度も有することができる。ガラス転移温度および溶融温度は、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して当技術分野で周知のように決定されてもよく、例えばISO 11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって決定されてもよい。
【0009】
[0025]この目的のための好適な高性能熱可塑性ポリマーは、例えばポリアミド(例えば脂肪族、半芳香族、または芳香族ポリアミド)、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、液晶ポリマー(例えば、全芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドなど)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシドなど、およびこれらのブレンドを含んでもよい。ポリマー系の正確な選択は、組成物中に含まれる他の充填剤の性質、組成物が形成および/または加工される方法、ならびに意図される用途の特定の要件などの種々の要因に依存する。
【0010】
[0026]例えば、芳香族ポリマーは、ポリマーマトリックスに使用するのに特に好適である。芳香族ポリマーは、実質的に非晶質、半結晶、または結晶性であり得る。好適な半結晶性芳香族ポリマーの1つの例は、例えば芳香族ポリエステルであり、これは少なくとも1種のジオール(例えば、脂肪族および/または環式脂肪族)と、4~20個の炭素原子、一部の実施形態では8~14個の炭素原子を有するものなどの少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸との縮合生成物であり得る。好適なジオールとして、例えばネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、および式HO(CH2)nOH(式中、nは2~10の整数である)の脂肪族グリコールを挙げることができる。好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの組合せを挙げることができる。1,4-、または1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環が存在してもよい。そのような芳香族ポリエステルの特定の例として、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)ならびに上述の混合物が挙げられてもよい。
【0011】
[0027]芳香族ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)の誘導体および/またはコポリマーも利用されてもよい。例えば、一実施形態では、変性酸および/またはジオールを使用し、そのようなポリマーの誘導体を形成してもよい。本明細書で使用される用語「変性酸」および「変性ジオール」は、それぞれポリエステルの酸およびジオール繰り返し単位の一部を形成することができ、かつポリエステルを変性してその結晶化度を低減させる、またはポリエステルを非晶質にすることができる化合物を定義することを意図する。変性酸成分の例として、これらに限定されないが、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸などが挙げられてもよい。実際には、多くの場合、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどのこれらの官能性酸誘導体を使用することが好ましい。実用的な場合、これらの酸の無水物または酸ハロゲン化物も利用されてもよい。変性ジオール成分の例として、これらに限定されないが、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン(ここで、Zは3、4または5を表す);1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールS]、および鎖中に1つまたは複数の酸素原子を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを挙げることができる。一般に、これらのジオールは、2~18個、一部の実施形態では2~8個の炭素原子を含有する。脂環式ジオールは、それらのシスもしくはトランス立体配置で、または両方の形態の混合物として利用することができる。
【0012】
[0028]上記のような芳香族ポリエステルは、典型的に、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約40℃~約80℃、一部の実施形態では約45℃~約75℃、一部の実施形態では約50℃~約70℃のDTUL値を有する。芳香族ポリエステルは、同様に、例えばISO 11357-2:2020によって決定される約30℃~約120℃、一部の実施形態では約40℃~約110℃、一部の実施形態では約50℃~約100℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-2:2018に従って決定される約170℃~約300℃、一部の実施形態では約190℃~約280℃、一部の実施形態では約210℃~約260℃の溶融温度を典型的に有する。芳香族ポリエステルはまた、例えばISO 1628-5:1998に従って決定される約0.1dl/g~約6dl/g、一部の実施形態では約0.2~約5dl/g、一部の実施形態では約0.3~約1dl/gの固有粘度を有してもよい。
【0013】
[0029]ポリアリーレンスルフィドも、好適な半結晶性芳香族ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せにより、2つ以上の異なる単位を含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを生じることができる。例えば、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用する場合、式:
【0014】
【0015】
の構造を有するセグメント、および式:
【0016】
【0017】
の構造を有するセグメント、または式:
【0018】
【0019】
の構造を有するセグメントを含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0030]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐または架橋型であってもよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、典型的に80mol%以上の繰り返し単位-(Ar-S)-を含有する。そのような線状ポリマーは、少量の分岐単位または架橋単位も含んでもよいが、分岐または架橋単位の量は、典型的にポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1mol%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上述の繰り返し単位を含有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半線状ポリアリーレンスルフィドは、同様に3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種または複数のモノマーがポリマー中に導入された架橋構造または分岐構造を有してもよい。例として、半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーの調製に利用可能な、分子あたり2個以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含んでもよい。そのようなモノマーは、式R’Xn(式中、各Xは、塩素、臭素およびヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R’は、最大約4個のメチル置換基を有し得る価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の合計数は6~約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に利用可能な、分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている一部のポリハロ芳香族化合物の例として、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラ-ヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
[0031]上記のようなポリアリーレンスルフィドは、典型的に1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約70℃~約220℃、一部の実施形態では約90℃~約200℃、一部の実施形態では約120℃~約180℃のDTUL値を有する。ポリアリーレンスルフィドは、同様に、例えばISO 11357-2:2020によって決定される約50℃~約120℃、一部の実施形態では約60℃~約115℃、一部の実施形態では約70℃~約110℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-3:2018に従って決定される約220℃~約340℃、一部の実施形態では約240℃~約320℃、一部の実施形態では約260℃~約300℃の溶融温度を典型的に有する。
【0021】
[0032]上記に示したように、明確な融点温度を欠く実質的に非晶質のポリマーも、利用することができる。好適な非晶質ポリマーは、例えば芳香族ポリカーボネートを含むことができ、これは典型的に、式-R1-O-C(O)-O-の繰り返し構造カーボネート単位を含有する。ポリカーボネートは、R1基の総数の少なくとも一部(例えば、60%以上)が芳香族部分を含有し、その残部が脂肪族、脂環式、または芳香族であるという点で芳香族である。一実施形態では、例えば、R1はC6~30芳香族基であってもよく、すなわち少なくとも1つの芳香族部分を含有する。典型的に、R1は、一般式HO-R1-OHのジヒドロキシ芳香族化合物、例えば以下に参照される特定の式:
HO-A1-Y1-A2-OH
(式中、
A1およびA2は、独立して単環式二価芳香族基であり、
Y1は、単結合またはA1とA2とを分離する1つもしくは複数の原子を有する架橋基である)を有するものに由来する。1つの特定の実施形態では、ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(I):
【0022】
【0023】
(式中、
RaおよびRbは、それぞれ独立してハロゲンまたはC1~12アルキル基、例えば、各アリーレン基上のヒドロキシ基に対してメタに配置されたC1~3アルキル基(例えば、メチル)であり、
pおよびqは、それぞれ独立して0~4(例えば、1)であり、
Xaは、2つのヒドロキシ置換芳香族基を接続する架橋基を表し、架橋基および各C6アリーレン基のヒドロキシ置換基は、C6アリーレン基上で互いに対してオルト、メタ、またはパラ(特にパラ)に配置される)
に由来してもよい。
【0024】
[0033]一実施形態では、Xaは、置換または非置換C3~18シクロアルキリデン、式-C(Rc)(Rd)-(式中、RcおよびRdは、それぞれ独立して水素、C1~12アルキル、C1~12シクロアルキル、C7~12アリールアルキル(arylalcyl)、C7~12ヘテロアルキル、または環式C7~12ヘテロアリールアルキルである)のC1~25アルキリデン、または式-C(=Re)-(式中、Reは二価のC1~12炭化水素基である)の基であってもよい。例示的なこの種類の基として、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデンおよびイソプロピリデン、ならびに2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンが挙げられる。Xaが置換シクロアルキリデンである特定の例は、以下の式(II):
【0025】
【0026】
(式中、
Ra’およびRb’は、それぞれ独立してC1~12アルキル(例えば、メチルなどのC1~4アルキル)であり、任意選択でシクロヘキシリデン架橋基に対してメタに配置されてもよく、
Rgは、C1~12アルキル(例えば、C1~4アルキル)またはハロゲンであり、
rおよびsは、それぞれ独立して1~4(例えば1)であり、
tは0~10、例えば0~5である)
のシクロヘキシリデン架橋アルキル置換ビスフェノールである。
【0027】
[0034]シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、2モルのo-クレゾールと1モルのシクロヘキサノンの反応生成物であってもよい。別の実施形態では、シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、2モルのクレゾールと1モルの水素化イソホロン(例えば、1,1,3-トリメチル-3-シクロヘキサン-5-オン)の反応生成物であってもよい。このようなシクロヘキサン含有ビスフェノール、例えば2モルのフェノールと1モルの水素化イソホロンの反応生成物は、高いガラス転移温度および高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーを作製するのに有用である。
【0028】
[0035]別の実施形態では、Xaは、C1~18アルキレン基、C3~18シクロアルキレン基、縮合C6~18シクロアルキレン基、または式-B1-W-B2-(式中、B1およびB2は、独立してC1~6アルキレン基であり、WはC3~12シクロアルキリデン基またはC6~16アリーレン基である)の基であってもよい。
【0029】
[0036]Xaはまた、以下の式(III):
【0030】
【0031】
(式中、
Rr、Rp、RqおよびRtは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、酸素、またはC1~12有機基であり、
Iは、直接結合、炭素、または二価の酸素、硫黄、または-N(Z)-であり、ここでZは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~12アルキル、C1~12アルコキシまたはC1~12アシルであり、
hは0~2であり、
jは1または2であり、
iは0または1であり、
kは0~3であり、ただしRr、Rp、RqおよびRtの少なくとも2つは一緒になって縮合環式脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環である)
の置換C3~18シクロアルキリデンであってもよい。
【0032】
[0037]他の有用な芳香族ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(IV):
【0033】
【0034】
(式中、
Rhは、独立してハロゲン原子(例えば、臭素)、C1~10ヒドロカルビル(例えば、C1~10アルキル基)、ハロゲン置換C1~10アルキル基、C6~10アリール基、またはハロゲン置換C6~10アリール基であり、
nは0~4である)
を有するものを含む。
【0035】
[0038]式(I)のビスフェノール化合物の特定の例として、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3.3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、ポリカーボネートは、ビスフェノールAに由来する線状ホモポリマーであってもよく、ここで式(I)において、A1およびA2のそれぞれはp-フェニレンであり、Y1はイソプロピリデンである。
【0036】
[0039]好適な芳香族ジヒドロキシ化合物の他の例として、これらに限定されないが、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、アルファ,アルファ’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フロリン、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物など;カテコール;ヒドロキノン;2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノンなど、およびその組合せが挙げられてもよい。
【0037】
[0040]上記のような芳香族ポリカーボネートは、典型的に、1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約80℃~約300℃、一部の実施形態では約100℃~約250℃、一部の実施形態では約140℃~約220℃のDTUL値を有する。また、ガラス転移温度は、例えばISO11357-2:2020によって決定される約50℃~約250℃、一部の実施形態では約90℃~約220℃、一部の実施形態では約100℃~約200℃であってもよい。そのようなポリカーボネートはまた、例えばISO1628-4:1998に従って決定される約0.1dl/g~約6dl/g、一部の実施形態では約0.2~約5dl/g、一部の実施形態では約0.3~約1dl/gの固有粘度を有してもよい。
【0038】
[0041]上記で言及されたポリマーに加え、高結晶性芳香族ポリマーもポリマー組成物で利用することができる。そのようなポリマーの特に好適な例は、金型の小さな空間を有効に充填することを可能にする高い結晶化度を有する液晶ポリマーである。液晶ポリマーは、一般的に棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限り、「サーモトロピック」と分類される。そのようなポリマーは、典型的に1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約120℃~約340℃、一部の実施形態では約140℃~約320℃、一部の実施形態では約150℃~約300℃のDTUL値を有する。ポリマーはまた、約250℃~約400℃、一部の実施形態では約280℃~約390℃、一部の実施形態では約300℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する。そのようなポリマーは、当技術分野で公知のように1つまたは複数の種類の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、一般に以下の式(I):
【0039】
【0040】
(式中、
環Bは、置換または非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換または非置換の5または6員アリール基に縮合した置換または非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、あるいは置換または非置換の5または6員アリール基に連結した置換または非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1およびY2は、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)
によって表される1つまたは複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有してもよい。
【0041】
[0042]典型的に、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例として、例えば芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1はOであり、Y2はC(O)である)、ならびにこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0042】
[0043]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。利用される場合、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約20mol.%~約80mol.%、一部の実施形態では約25mol.%~約75mol.%、一部の実施形態では約30mol.%~70mol.%を構成する。
【0043】
[0044]また、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約10mol.%~約35mol.%を構成する。
【0044】
[0045]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。例えば、特定の実施形態では、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジオールとして、例えばヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約30mol.%を構成する。また、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位が利用されてもよい。利用される場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約0.1mol.%~約20mol.%、一部の実施形態では約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10mol.%を構成する。また、ポリマーに種々の他のモノマー繰り返し単位が導入されてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含有してもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0045】
[0046]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)またはこれらの組合せなどの、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、「低ナフテン」ポリマーであってもよい。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約10mol.%以下、一部の実施形態では約8mol.%以下、一部の実施形態では約6mol.%以下、一部の実施形態では約1mol.%~約5mol.%である。1つの特定の実施形態では、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「HNA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約8mol.%のみの量で存在してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーは、種々の他のモノマー、例えば約30mol.%~約70mol.%、一部の実施形態では約40mol.%~約65mol.%の量の芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA);約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量の芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA);ならびに/または約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%の量の芳香族ジオール(例えば、BPおよび/またはHQ)も含有してもよい。
【0046】
[0047]当然ながら、他の実施形態では、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)、またはそれらの組合せなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、「高ナフテン」ポリマーであってよい。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約10mol.%より高い、一部の実施形態では約15mol.%以上、一部の実施形態では約20mol.%~約60mol.%である。1つの特定の実施形態では、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約10mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約12mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約15mol.%~約30mol.%を構成してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーは、種々の他のモノマー、例えば約20mol.%~約60mol.%、一部の実施形態では約30mol.%~約50mol.%の量の芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA);約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量の芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA);ならびに/または約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%の量の芳香族ジオール(例えば、BPおよび/もしくはHQ)も含有してもよい。
【0047】
[0048]ある特定の実施形態では、液晶ポリマーのすべてが上述のような「低ナフテン」ポリマーである。他の実施形態では、液晶ポリマーのすべてが上述のような「高ナフテン」ポリマーである。一部の場合では、このようなポリマーのブレンドも使用されてもよい。例えば、低ナフテン液晶ポリマーは、組成物中の液晶ポリマーの合計量の約1wt.%~約50wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約30wt.%を構成してもよく、高ナフテン液晶ポリマーは、組成物中の液晶ポリマーの合計量の約50wt.%~約99wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約98wt.%、一部の実施形態では約70wt.%~約95wt.%を構成してもよい。
【0048】
B.半導電性材料
[0049]所望の特性を達成するのを助けるために、ポリマー組成物は半導電性材料も含有する。半導電性材料は、典型的に、組成物の約10wt%~約70wt%、一部の実施形態では約20wt%~約60wt%、一部の実施形態では約30wt%~約50wt%の量で利用される。半導電性材料の体積抵抗率は、例えば、例えばASTM D257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って約20℃の温度で決定される約0.1オーム・cm~約1×1012オーム・cm、一部の実施形態では約0.5オーム・cm~約1×1011オーム・cm、一部の実施形態では約1~約1×1010オーム・cm、一部の実施形態では約2~約1×108オーム・cmの範囲内にあるように選択的に制御されてもよい。このようにして得られるポリマー組成物の体積抵抗率は、例えば、ASTM D257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って約20℃の温度で決定される約1×1011オーム・m~約1×1017オーム・m、一部の実施形態では約1×1012オーム・m~約1×1016オーム・m、一部の実施形態では約1×1013オーム・m~約1×1015オーム・mであってもよい。ポリマー組成物の表面抵抗率は、同様に、例えばASTM D257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って約20℃の温度で決定される約1×1013オーム~約1×1019オーム、一部の実施形態では約1×1014オーム~約1×1018オーム、一部の実施形態では約1×1015オーム~約1×1017オームの範囲であってもよい。
【0049】
[0050]上述のように、半導電性材料は、所望の体積抵抗を達成するのを助けるために、無機粒子および導電性材料を含有する。ポリマー組成物中の無機粒子の重量パーセンテージの組成物中の導電性材料の重量パーセンテージに対する比は、典型的に約3~約100、一部の実施形態では約3~約50、一部の実施形態では約3~約20、一部の実施形態では約7~約18、一部の実施形態では約8~約15である。例えば、導電性材料は、半導電性材料の約1wt%~約20wt%、一部の実施形態では約3wt%~約18wt%、一部の実施形態では約5wt%~約15wt%を構成してもよく、一方で無機粒子は、半導電性材料の約80wt%~約99wt%、一部の実施形態では約82wt%~約97wt%、一部の実施形態では約85wt%~約95wt%を構成してもよい。同様に、導電性材料は、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約15wt.%、一部の実施形態では約0.5wt.%~約12wt.%、一部の実施形態では約1wt.%~約10wt.%を構成してもよく、一方で無機粒子は、ポリマー組成物の約20wt%~約60wt%、一部の実施形態では25wt%~約55wt%、一部の実施形態では約30wt%~約50wt%を構成してもよい。
【0050】
[0051]無機粒子は、一般に、約25℃の温度で決定される約500μS/cm以下、一部の実施形態では約350μS/cm以下、一部の実施形態では約50~約200μS/cmなどの低い導電率を有する。無機粒子はまた、例えば、ISO13317-3:2001(sedigraph)で測定される約0.1~約100マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1~約50マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1~約25マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1~約10マイクロメートル、一部の実施形態では約0.1~約5マイクロメートル、一部の実施形態では約0.2~約4マイクロメートル、一部の実施形態では約0.5~約3マイクロメートルのメジアン粒径(D50)などの制御されたサイズを有してもよい。粒子はまた、狭いサイズ分布を有してもよい。すなわち、粒子の少なくとも約70体積%、一部の実施形態では粒子材料の少なくとも約80体積%、一部の実施形態では材料の少なくとも約90体積%が上述の範囲内のサイズを有してもよい。粒子の形状は、フレーク状、球状、板状など、所望通り異なってもよい。上述の特徴を有する種々の無機粒子、例えば、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、水酸化炭酸銅など)、フッ化物(例えば、フッ化カルシウム)、リン酸塩(例えば、ピロリン酸カルシウムなど)、ケイ酸塩(例えば、シリカ、ケイ酸アルミニウムカリウム、ケイ酸銅、タルク、マイカなど)、ホウ酸塩(例えば、水酸化ホウケイ酸カルシウム)、アルミナ、硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、および前述のいずれかの組合せが本発明で利用されてもよい。硫酸バリウムは、本発明での使用に特に適している。
【0051】
[0052]導電性材料は、同様に、一般に約0.1オーム・cm未満、一部の実施形態では約1×10-8~約1×10-2オーム・cmの体積抵抗率を有し、絶縁性材料は、一般に約1×1012オーム・cmより大きい、一部の実施形態では約1×1013~約1×1018オーム・cmの体積抵抗率を有する。好適な導電性材料としては、例えば、導電性炭素材料(例えば、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、ナノチューブなど)、金属などが挙げられてもよい。
【0052】
C.任意選択の添加剤
[0053]滑剤、繊維状充填剤、熱伝導性充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、流動調整剤、レーザー活性化可能添加剤、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの、多種多様なさらなる添加剤がポリマー組成物に含まれてもよい。
【0053】
[0054]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、アンテナ素子を形成するためにレーザー直接構造化(「LDS」)プロセスによって活性化され得る添加剤を含有するという意味で、「レーザー活性化可能」であってもよい。このようなプロセスでは、添加剤がレーザーに曝露され、それにより金属が放出される。こうして、レーザーは部品に導電素子のパターンを描き、埋め込まれた金属粒子を含む粗面化された表面を残す。これらの粒子は、その後のメッキプロセス(例えば、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ、銀メッキ、亜鉛メッキ、スズメッキなど)で結晶成長の核として作用する。利用される場合、レーザー活性化可能添加剤は、典型的にポリマー組成物の約0.1wt.%~約30wt.%、一部の実施形態では約0.5wt.%~約20wt.%、一部の実施形態では約1wt.%~約10wt.%を構成する。レーザー活性化可能添加剤は、一般に、明確な結晶形成体内に2つ以上の金属酸化物クラスター構成を含み得るスピネル結晶を含む。例えば、全体的な結晶形成体は、以下の一般式を有してもよい:
AB2O4
(式中、
Aは、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタンなど、およびそれらの組合せなどの2の価数を有する金属カチオンであり、
Bは、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズなど、およびそれらの組合せなどの3の価数を有する金属カチオンである)。
【0054】
[0055]典型的に、上記式中のAは第1の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与え、Bは第2の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与える。これらの酸化物クラスターは、同じまたは異なる構造を有してもよい。一実施形態では、例えば、第1の金属酸化物クラスターは四面体構造を有し、第2の金属酸化物クラスターは八面体クラスターを有する。いずれにせよ、クラスターは、電磁放射線に対する増大した感受性を有する、単一の識別可能な結晶型構造を共に提供することができる。好適なスピネル結晶の例として、例えば、MgAl2O4、ZnAl2O4、FeAl2O4、CuFe2O4、CuCr2O4、MnFe2O4、NiFe2O4、TiFe2O4、FeCr2O4、MgCr2O4などが挙げられる。酸化銅クロム(CuCr2O4)は、本発明での使用に特に適しており、「Shepherd Black 1GM」の名称でShepherd Color Co.から入手可能である。
【0055】
[0056]電気的性能に顕著な影響を与えることなく組成物の熱的および機械的特性を改善するために、ポリマー組成物中に繊維状充填剤を利用することもできる。繊維状充填剤は、典型的に、その質量に対して高度な引張強度を有する繊維を含む。例えば、繊維の最大引張強度(ASTM D2101に従って決定される)は、典型的に約1,000~約15,000メガパスカル(「MPa」)、一部の実施形態では約2,000MPa~約10,000MPa、一部の実施形態では約3,000MPa~約6,000MPaである。所望の誘電特性を維持するのを助けるために、このような高強度繊維は、ガラス、セラミック(例えば、アルミナまたはシリカ)、アラミド(例えば、E.I.duPont de Nemours、Wilmington、Del.から販売されているKevlar(登録商標))、ポリオレフィン、ポリエステルなどの、一般に本質的に絶縁性である材料から形成することができる。ガラス繊維、例えばEガラス、Aガラス、Cガラス、Dガラス、ARガラス、Rガラス、S1ガラス、S2ガラスなどが特に好適である。
【0056】
[0057]繊維状充填剤に利用される繊維は、様々な異なるサイズを有することができるが、特定のアスペクト比を有する繊維は、得られるポリマー組成物の機械的特性を改善するのに役立ち得る。すなわち、約5~約50、一部の実施形態では約6~約40、一部の実施形態では約8~約25のアスペクト比(平均長を公称直径で除したもの)を有する繊維が特に有益である。このような繊維は、例えば、約100~約800マイクロメートル、一部の実施形態では約120~約500マイクロメートル、一部の実施形態では約150~約350マイクロメートル、一部の実施形態では約200~約300マイクロメートルの重量平均長を有することができる。繊維は同様に、約6~約35マイクロメートル、一部の実施形態では約9~約18マイクロメートルの公称直径を有することができる。繊維状充填剤の相対量はまた、その流動性および誘電特性などの組成物の他の特性に悪影響を及ぼすことなく、所望の機械的および熱的特性を達成するのに役立つように選択的に制御することができる。例えば、繊維状充填剤は、ポリマー組成物の約1wt%~約40wt%、一部の実施形態では約3wt%~約30wt%、一部の実施形態では約5wt%~約20wt%を構成してもよい。レーザー活性化可能添加剤と組み合わせて利用される場合、繊維状充填剤はまた、繊維状充填剤の誘電材料およびレーザー活性化可能材料を合わせた量に対する重量比が約0.05~約1、一部の実施形態では約0.05~約0.5、一部の実施形態では約0.06~約0.4、一部の実施形態では約0.1~約0.3となるように十分な量で利用されてもよい。
【0057】
II.形成
[0058]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当技術分野で公知のように様々な異なる技術のいずれかを使用して一緒に組み合わされてもよい。1つの特定の実施形態では、例えば、熱可塑性高性能ポリマー、無機粒子、導電性材料、および他の任意選択の添加剤を押出機内で混合物として溶融加工し、ポリマー組成物を形成する。混合物は、約250℃~約450℃の温度で一軸または多軸押出機で溶融混練することができる。一実施形態では、混合物は、複数の温度ゾーンを含む押出機で溶融加工することができる。個々のゾーンの温度は、液晶ポリマーの溶融温度に対して約-60℃~約25℃の範囲内で通常設定される。例として、混合物は、Leistritz 18mm共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融加工することができる。混合物を溶融加工するために、汎用スクリュー設計を使用することができる。一実施形態では、成分をすべて含む混合物を、定量フィーダーによって第一のバレルのフィード口にフィードすることができる。別の実施形態では、公知のように、押出機の異なる添加ポイントで異なる成分を添加することができる。例えば、液晶ポリマーをフィード口に適用し、それより下流に位置する同一または異なる温度ゾーンで特定の添加剤(例えば、無機粒子、導電性材料など)を供給することができる。いずれにせよ、得られた混合物を溶融して混合し、その後ダイを通して押し出すことができる。次に、押し出されたポリマー組成物を水浴中でクエンチして固化し、ペレタイザーで造粒し、続いて乾燥することができる。
【0058】
[0059]得られる組成物の溶融粘度は、一般に小型回路基板を形成するための金型の空洞内に組成物が容易に流入できるように十分に低い。例えば、1つの特定の実施形態では、ポリマー組成物は、1000秒-1のせん断速度で決定される約5~約100Pa・s、一部の実施形態では約10~約95Pa・s、一部の実施形態では約15~約90Pa・sの溶融粘度を有してもよい。溶融粘度は、11443:2014に従って決定されてもよい。
【0059】
III.基板
[0060]一旦形成されると、ポリマー組成物は、アンテナシステムで使用するための基板の所望の形状に成型されてもよい。ポリマー組成物の有益な特性のために、得られる基板は、約5ミリメートル以下、一部の実施形態では約4ミリメートル以下、一部の実施形態では約0.5~約3ミリメートルの厚さなどの非常に小さいサイズを有することができる。典型的に、成形された部品は、乾燥させ予熱したプラスチック顆粒を金型に注入する一成分射出成型プロセスを使用して成型される。導電素子は、メッキ、電気メッキ、レーザー直接構造化などの様々な方法で形成することができる。レーザー活性化可能添加剤としてスピネル結晶を含有する場合、例えば、レーザーで活性化すると、スピネル結晶が割れて開き、金属原子を放出する物理化学反応が引き起こされる可能性がある。これらの金属原子は、金属化(例えば、還元銅コーティング)のための核として作用することができる。レーザーはまた、微視的に不規則な表面を作り、ポリマーマトリックスをアブレートし、金属化の際に銅を固定できる多数の微視的なピットおよびアンダーカットを作る。
【0060】
[0061]所望により、導電素子は、得られる部品がアンテナシステムを形成するように、アンテナ素子(例えば、アンテナ共振素子)であってもよい。導電素子は、パッチアンテナ素子、逆Fアンテナ素子、閉および開スロットアンテナ素子、ループアンテナ素子、モノポール、ダイポール、平面逆Fアンテナ素子、これらの設計の混成などから形成される共振素子を有するアンテナなど、様々な異なる種類のアンテナを形成することができる。得られるアンテナシステムは、様々な異なる電子構成部品に利用することができる。例として、アンテナシステムは、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ、手持ち型電子デバイス、自動車機器などの電子構成部品に形成することができる。1つの好適な構成では、アンテナシステムは、利用可能な内部空間が比較的小さい、比較的コンパクトなポータブル電子構成部品のハウジング内に形成される。好適なポータブル電子構成部品の例として、携帯電話、ラップトップコンピュータ、小型ポータブルコンピュータ(例えば、ウルトラポータブルコンピュータ、ネットブックコンピュータおよびタブレットコンピュータ)、腕時計デバイス、ペンダントデバイス、ヘッドフォンおよびイヤフォンデバイス、無線通信機能付きメディアプレーヤー、手持ち型コンピュータ(パーソナルデジタルアシスタントとも呼ばれる場合もある)、リモートコントローラ、グローバルポジショニングシステム(GPS)デバイス、手持ち型ゲームデバイスなどが挙げられる。また、アンテナは、手持ち型デバイスのカメラモジュール、スピーカー、またはバッテリーカバーなど、他の構成部品と一体化させることもできる。
【0061】
[0062]
図1~2に示される1つの特に好適な電子構成部品は、携帯電話機能付き手持ち型デバイス10である。
図1に示されるように、デバイス10は、プラスチック、金属、他の好適な誘電材料、他の好適な導電性材料、またはそのような材料の組合せから形成されたハウジング12を有してもよい。タッチスクリーンディスプレイなどのディスプレイ14が、デバイス10の前面上に設けられてもよい。デバイス10はまた、スピーカーポート40および他の入出力ポートを有してもよい。ユーザ入力を収集するために、1つまたは複数のボタン38および他のユーザ入力デバイスが使用されてもよい。
図2に示されるように、アンテナシステム26もデバイス10の裏面42上に設けられるが、アンテナシステムは、一般にデバイスの任意の所望の位置に配置することができることを理解されたい。アンテナシステムは、様々な公知の技術のいずれかを使用して電子デバイス内の他の構成部品に電気的に接続されてもよい。
図1~2を再び参照すると、例えば、ハウジング12またはハウジング12の一部は、アンテナシステム26のための導電グランド面として機能してもよい。これは、
図3により詳細に図示されており、この図は、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56で無線周波数源52によって給電されるアンテナシステム26を示す。正アンテナ給電端子54はアンテナ共振素子58に結合されてもよく、グランドアンテナ給電端子56はグランド素子60に結合されてもよい。共振素子58は、主アーム46、および主アーム46をグランド60に接続する短絡ブランチ48を有してもよい。
【0062】
[0063]アンテナシステムを電気的に接続するための種々の他の構成も企図される。例えば
図4では、アンテナシステムはモノポールアンテナ構成に基づいており、共振素子58は曲がった蛇行経路形状を有する。このような実施形態では、給電端子54は共振素子58の一端に接続されてもよく、グランド給電端子56は、ハウジング12または他の好適なグランド面素子に結合されてもよい。
図5に示される別の実施形態では、導電アンテナ素子62は、閉スロット64および開スロット66を画定するよう構成される。構造体62から形成されるアンテナは、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56を使用して給電されてもよい。この種類の配列において、スロット64および66は、アンテナ素子26のためのアンテナ共振素子として機能する。スロット64および66のサイズは、アンテナ素子26が所望の通信帯域(例えば、2.4GHzおよび5GHzなど)で動作するように構成されてもよい。アンテナ素子26の別の可能な構成が
図6に示される。この実施形態では、アンテナ素子26は、パッチアンテナ共振素子68を有し、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56を使用して給電されてもよい。グランド60は、ハウジング12またはデバイス10の他の好適なグランド面素子に関連付けられてもよい。
図7は、アンテナシステム26のアンテナ素子に使用され得るさらに別の例示的な構成を示す。示されるように、アンテナ共振素子58は、2つの主アーム46Aおよび46Bを有する。アーム46Aは、アーム46Bよりも短く、したがってアーム46Aよりも高い動作周波数に関連付けられる。異なるサイズの2つ以上の別個の共振素子構造体を使用することにより、アンテナ共振素子58は、より広い帯域幅または目的の1つより多くの通信帯域をカバーするように構成することができる。
【0063】
[0064]本発明のある特定の実施形態では、ポリマー組成物は、基地局、リピーター(例えば、「フェムトセル」)、中継局、端末、ユーザデバイス、および/または5Gシステムの他の好適な構成部品で使用するための高周波数アンテナおよびアンテナアレイに特に良好に適合する可能性がある。本明細書で使用される場合、「5G」は一般に、無線周波数信号を介した高速データ通信を指す。5Gネットワークおよびシステムは、前世代のデータ通信規格(例えば、「4G」、「LTE」)よりもはるかに速い速度でデータを通信することが可能である。例えば、本明細書で使用される場合、「5G周波数」は、1.5GHz以上、一部の実施形態では約2.0GHz以上、一部の実施形態では約2.5GHz以上、一部の実施形態では約3.0GHz以上、一部の実施形態では約3GHz~約300GHz以上、一部の実施形態では約4GHz~約80GHz、一部の実施形態では約5GHz~約80GHz、一部の実施形態では約20GHz~約80GHz、一部の実施形態では約28GHz~約60GHzの周波数を指してもよい。5G通信の要件を定量化する種々の規格および仕様が発表されている。一例として、International Telecommunications Union(ITU)は、2015年にInternational Mobile Telecommunications-2020(「IMT-2020」)規格を発表した。IMT-2020規格は、5Gのための種々のデータ送信基準(例えば、ダウンリンクおよびアップリンクのデータレート、レイテンシなど)を規定する。IMT-2020規格は、アップリンクおよびダウンリンクのピークデータレートを、5Gシステムがサポートしなければならないデータのアップロードおよびダウンロードの最小データレートとして定義する。IMT-2020規格は、ダウンリンクのピークデータレート要件を20Gbit/s、アップリンクのピークデータレートを10Gbit/sと設定する。別の例として、3rd Generation Partnership Project(3GPP)は、「5GNR」と呼ばれる5Gの新しい規格を近年発表している。3GPPは、2018年に5GNRの標準化のための「フェーズ1」を定義する「Release 15」を公開した。3GPPは、5G周波数帯を、一般に6GHz未満の周波数を含む「Frequency Range1」(FR1)、および20~60GHzの範囲の周波数帯としての「Frequency Range2」(FR2)と定義している。本明細書に記載されたアンテナシステムは、Release 15(2018)などの3GPPによって発表された規格、および/またはIMT-2020規格に基づき「5G」を満たすことができ、または適格とすることができる。
【0064】
[0065]高周波数での高速データ通信を実現するために、アンテナ素子およびアレイは、アンテナ性能を向上させることができる小さな特徴(feature)サイズ/間隔(例えば、ファインピッチ技術)を利用することができる。例えば、特徴サイズ(アンテナ素子間の間隔、アンテナ素子の幅)などは、一般に、アンテナ素子がその上に形成される基板誘電体を伝搬する所望の送信および/または受信無線周波数の波長(「λ」)に依存する(例えば、nλ/4(ここでnは整数である))。さらに、ビームフォーミングおよび/またはビームステアリングは、複数の周波数範囲またはチャネルにわたる受信および送信を容易にするために利用されてもよい(例えば、多入力多出力(MIMO)、大規模MIMO)。
【0065】
[0066]高周波数5Gアンテナ素子は、種々の構成を有することができる。例えば、5Gアンテナ素子は、共平面導波路素子、パッチアレイ(例えば、メッシュグリッドパッチアレイ)、他の好適な5Gアンテナ構成であってもよく、またはそれを含んでもよい。アンテナ素子は、MIMO、大規模MIMO機能、ビームステアリングなどをもたらすように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「大規模」MIMO機能は、一般にアンテナアレイで多数の送信および受信チャネル、例えば8個の送信(Tx)および8個の受信(Rx)チャネル(8×8と略称される)を提供することを指す。大規模MIMO機能は、8×8、12×12、16×16、32×32、64×64以上で提供されてもよい。
【0066】
[0067]アンテナ素子は、様々な構成および配列を有することができ、様々な製造技術を使用して製作することができる。一例として、アンテナ素子および/または関連素子(例えば、グランド素子、給電ラインなど)は、ファインピッチ技術を利用することができる。ファインピッチ技術は、一般に、それらの構成部品またはリード間の小さいまたは細かい間隔を指す。例えば、アンテナ素子間(またはアンテナ素子とグランド面との間)の特徴寸法および/または間隔は、約1,500マイクロメートル以下、一部の実施形態では1,250マイクロメートル以下、一部の実施形態では750マイクロメートル以下(例えば、1.5mm以下の中心間間隔)、650マイクロメートル以下、一部の実施形態では550マイクロメートル以下、一部の実施形態では450マイクロメートル以下、一部の実施形態では350マイクロメートル以下、一部の実施形態では250マイクロメートル以下、一部の実施形態では150マイクロメートル以下、一部の実施形態では100マイクロメートル以下、一部の実施形態では50マイクロメートル以下であってもよい。しかし、より小さいおよび/またはより大きい特徴サイズおよび/または間隔が本開示の範囲内で利用され得ることを理解されたい。
【0067】
[0068]このような小さい特徴寸法の結果として、アンテナシステムは、小さなフットプリントで多数のアンテナ素子を用いて実現することができる。例えば、アンテナアレイは、1平方センチメートルあたり1,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり2,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり3,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり4,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり6,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり約8,000個より多いアンテナ素子の平均アンテナ素子濃度を有してもよい。アンテナ素子のそのような緻密な配列は、アンテナ面積の単位面積あたりのMIMO機能のチャネル数を増加させることができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、等しいまたは比例してもよい)。
【0068】
[0069]
図8を参照すると、基地局102、1つもしくは複数の中継局104、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス106、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター108(例えば、「フェムトセル」)、および/または5Gアンテナシステム100の他の好適なアンテナ構成部品も含む5Gアンテナシステム100の一実施形態が示される。中継局104は、基地局102とユーザコンピューティングデバイス106および/または中継局104との間で信号を中継するまたは「繰り返す」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス106および/または他の中継局104による基地局102との通信を容易にするよう構成されてもよい。基地局102は、中継局104、Wi-Fiリピーター108、および/またはユーザコンピューティングデバイス106と直接、無線周波数信号112を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ110を含むことができる。ユーザコンピューティングデバイス106は、必ずしも本発明によって限定されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【0069】
[0070]MIMOアンテナアレイ110は、中継局104に対して無線周波数信号112を集中させるまたは導くために、ビームステアリングを利用することができる。例えば、MIMOアンテナアレイ110は、X-Y面に対する仰角114、および/またはZ-Y面で規定され、Z方向に対するヘディング角116を調整するよう構成されてもよい。同様に、中継局104、ユーザコンピューティングデバイス106、Wi-Fiリピーター108のうちの1つまたは複数は、基地局102のMIMOアンテナアレイ110に対するデバイス104、106、108の感度および/または電力送信を方向調節することによって(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角の一方または両方を調整することによって)MIMOアンテナアレイ110に対する受信および/または送信能力を改善するためにビームステアリングを利用してもよい。
【0070】
[0071]
図9Aおよび9Bは、例示的なユーザコンピューティングデバイス106を上から見た図および側面立面図をそれぞれ示す。ユーザコンピューティングデバイス106は、1つまたは複数のアンテナ素子200、202(例えば、それぞれのアンテナアレイとして配列される)を含むことができる。
図9Aを参照すると、アンテナ素子200、202は、X-Y面でビームステアリングを行うように(矢印204、206によって図示され、相対方位角と対応するように)構成されてもよい。
図9Bを参照すると、アンテナ素子200、202は、Z-Y面でビームステアリングを行うように(矢印204、206によって図示されるように)構成されてもよい。
【0071】
[0072]
図10は、それぞれの給電ライン304を使用して接続された(例えば、フロントエンドモジュールと)複数のアンテナアレイ302の簡略化された概略図である。アンテナアレイ302は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板308の側面306に取り付けられてもよい。アンテナアレイ302は、複数の垂直に接続された素子を含むことができる(例えば、メッシュグリッドアレイとして)。したがって、アンテナアレイ302は、一般に基板308の側面306と平行に延びてもよい。シールドが任意選択で基板308の側面306上に設けられてもよく、それによりアンテナアレイ302は、基板308に対するシールドの外側に位置する。アンテナアレイ302の垂直に接続された素子間の垂直の間隔距離は、アンテナアレイ302の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、これらの間隔距離は、アンテナアレイ302が「ファインピッチ」アンテナアレイ302であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0072】
[0073]
図11は、共平面導波管アンテナ400の構成の側面立面図を示す。1つまたは複数の共平面グランド層402は、アンテナ素子404(例えば、パッチアンテナ素子)と平行に配列されてもよい。別のグランド層406は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板408によってアンテナ素子から離間されてもよい。1つまたは複数の追加のアンテナ素子410は、第2の層または基板412によってアンテナ素子404から離間されてもよく、この基板も本発明のポリマー組成物から形成することができる。寸法「G」および「W」は、アンテナ400の「特徴サイズ」に対応してもよい。「G」寸法は、アンテナ素子404と共平面グランド層406との間の距離に対応してもよい。「W」寸法は、アンテナ素子404の幅(例えば、線幅)に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法「G」および「W」は、アンテナ400が「ファインピッチ」アンテナ400であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0073】
[0074]
図12Aは、本開示の別の態様によるアンテナアレイ500を示す。アンテナアレイ500は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板510およびその上に形成される複数のアンテナ素子520を含むことができる。複数のアンテナ素子520は、X方向および/またはY方向でほぼ等しい大きさであってもよい(例えば、正方形または長方形)。複数のアンテナ素子520は、Xおよび/またはY方向でほぼ等間隔で離間することができる。アンテナ素子520の寸法および/またはその間の間隔は、アンテナアレイ500の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法および/または間隔は、アンテナアレイ500が「ファインピッチ」アンテナアレイ500であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。楕円522によって図示されるように、
図12に図示されるアンテナ素子520の列の数は、単なる例として提供される。同様に、アンテナ素子520の行の数は、単なる例として提供される。
【0074】
[0075]同調アンテナアレイ500は、例えば基地局において(例えば、
図8に関して上述したように)大規模MIMO機能を提供するために使用することができる。より具体的には、種々の素子間の無線周波数相互作用は、複数の送信および/または受信チャネルを提供するように制御または同調することができる。送信電力および/または受信感度は、例えば
図8の無線周波数信号112に関して説明したように、無線周波数信号を集中させるまたは導くように方向制御することができる。同調アンテナアレイ500は、小さなフットプリントで多数のアンテナ素子522を提供することができる。例えば、同調アンテナ500は、1平方cmあたり1,000個以上のアンテナ素子の平均アンテナ素子密度を有することができる。このような緻密なアンテナ素子の配列は、単位面積あたりのMIMO機能のチャネル数を増加させることができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、等しいまたは比例してもよい)。
【0075】
[0076]
図12Bは、アンテナ素子を形成するために任意選択で利用可能なレーザー直接構造化で形成されたアンテナアレイ540を示す。アンテナアレイ540は、複数のアンテナ素子542、およびアンテナ素子542を(例えば、他のアンテナ素子542、フロントエンドモジュール、または他の好適な構成部品と)接続する複数の給電ライン544を含むことができる。アンテナ素子542は、それぞれの幅「w」およびその間の間隔距離「S
1」および「S
2」(例えば、それぞれX方向およびY方向で)を有することができる。これらの寸法は、所望の5G周波数で5G無線周波数通信を実現するように選択することができる。より具体的には、寸法は、5G周波数スペクトル内にある無線周波数信号を使用したデータの送信および/または受信のためにアンテナアレイ540を同調するように選択することができる。寸法は、基板の材料特性に基づいて選択することができる。例えば、「w」、「S
1」または「S
2」のうちの1つまたは複数は、基板材料を通る所望の周波数の伝搬波長(「λ」)の倍数に対応し得る(例えば、nλ/4(ここでnは整数である))。
【0076】
[0077]一例として、λは以下のように計算することができる:
【0077】
【0078】
(式中、cは真空中の光の速さであり、
【0079】
【0080】
は基板(または周囲材料)の比誘電率であり、fは所望の周波数である)。
[0078]
図12Cは、本開示の態様による例示的なアンテナ構成560を示す。アンテナ構成560は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板564の平行な長辺に配列された複数のアンテナ素子562を含むことができる。種々のアンテナ素子562は、所望の周波数および/または周波数範囲での受信および/または送信のためにアンテナ構成560を同調するそれぞれの長さ「L」(およびその間の間隔距離)を有することができる。より具体的には、そのような寸法は、例えば
図12Bを参照して上述したように、基板材料に対する所望の周波数での伝搬波長λに基づいて選択することができる。
【0081】
[0079]
図13A~
図13Cは、本開示の態様によるアンテナ素子および/またはアレイを形成するために使用することができるレーザー直接構造化製造プロセスの簡略化した連続図である。
図13Aを参照すると、基板600は、任意の所望の技術(例えば、射出成型)を使用して本発明のポリマー組成物から形成することができる。ある特定の実施形態では、
図13Bに示されるように、レーザー602を使用してレーザー活性化可能な添加剤を活性化し、アンテナ素子および/またはアレイの1つもしくは複数を含み得る回路パターン604を形成することができる。例えば、レーザーは、回路パターン604を形成するためにポリマー組成物中の導電性粒子を溶融することができる。
図13Cを参照すると、基板600を無電解銅浴に浸漬して回路パターン604をメッキし、アンテナ素子、素子アレイ、他の構成部品、および/またはその間に導電ラインを形成することができる。
【0082】
[0080]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
【実施例】
【0083】
試験方法
[0081]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、せん断速度400s-1および溶融温度を15℃超える温度(例えば、約350℃)で、ISO試験No.11443:2014に従って決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mm、ロッド長さは233.4mmであった。
【0084】
[0082]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-3:2018によって決定される示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順に基づき、TA Q2000装置上で行うDSC測定を使用し、ISO標準10350に記述されるように、試料を1分あたり20℃で加熱および冷却した。
【0085】
[0083]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648と同等である)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、指定の荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点屈曲試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴中に下げ、検体が0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を1分あたり2℃で上昇させる。
【0086】
[0084]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2019(技術的にASTM D638と同等である)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0087】
[0085]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(技術的にASTM D790と同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパン上で実施されてもよい。試験は、切断されていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0088】
[0086]シャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmベース半径)であってもよい。検体は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出してもよい。試験温度は23℃であってもよい。
【0089】
[0087]比誘電率(「Dk」)および誘電正接(「Df」):比誘電率(または相対静的誘電率)および誘電正接は、Baker-Jarvisら、IEEE Trans.on Dielectric and Electrical Insulation、5(4)、571頁(1998年)およびKrupkaら、Proc.7th International Conference on Dielectric Materials:Measurements and Applications、IEEE Conference Publication No.430(1996年9月)に記載されるものなどの公知のスプリット-ポスト誘電共振法を使用して決定される。より詳細には、サイズ80mm×90mm×3mmの板状試料を2つの固定された誘電共振器の間に挿入した。共振器により、検体の面における誘電率成分を測定した。5つの試料を試験し、平均値を記録する。スプリット-ポスト共振器を使用し、低ギガヘルツ領域、例えば2GHzから1GHzで誘電測定を行うことができる。
【0090】
[0088]熱サイクル試験:検体を温度制御チャンバに入れ、-30℃~100℃の温度範囲内で加熱/冷却する。まず、100℃の温度に達するまで試料を加熱し、その時点ですぐに冷却した。温度が-30℃に達したとき、検体を100℃に達するまですぐに再び加熱する。3時間にわたって23回の加熱/冷却サイクルを実施してもよい。
【0091】
[0089]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率の値は、IEC62631-3-1:2016またはASTM D257-14に従って決定することができる。この手順によると、標準検体(例えば、1メートルの立方体)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m単位)と単位電極長あたりの電流(A/m単位)の商であり、一般に絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するため、商において長さを約分して表面抵抗率をオームで報告するが、より説明的な単位であるオームパースクエアを見ることも一般的である。また、体積抵抗率は、材料中の電流に平行な電位勾配の電流密度に対する比として決定される。SI単位では、体積抵抗率は、その材料の1メートルの立方体の対向面間の直流抵抗(オーム・mまたはオーム・cm)に数値的に等しい。
【0092】
実施例1
[0090]試料1~6を、液晶ポリマー(LCP1、LCP2およびLCP3)、硫酸バリウム粒子(平均粒径=1.7μm、導電率=100μS/cm)、炭素繊維、ガラス繊維、滑剤、黒色顔料およびアルミナ三水和物の様々な組合せから形成する。LCP1は、43%のHBA、20%のNDA、9%のTA、および28%のHQから形成される。LCP2は、73%のHBAおよび27%のHNAから形成される。LCP3は、60%のHBA、5%のHNA、17.5%のTA、2.5%のBP、および5%のAPAPから形成される。配合は、18mm単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0093】
【0094】
[0091]試料1~3を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表2に記載する。
【0095】
【0096】
[0092]また、試料1~3を上述の熱サイクル試験に供した。試験後、試料について得られた誘電正接は、それぞれ0.013、0.017および0.018と決定された。したがって、試料1、2および3の熱サイクル試験後の誘電正接の初期誘電正接に対する比は、それぞれ0.86、0.86および0.76であった。また、試験後、試料について得られた比誘電率は、それぞれ9.0、12.2および15.1と決定された。したがって、試料1、2および3の熱サイクル試験後の比誘電率の初期比誘電率に対する比は、それぞれ1.01、1.01および1.03であった。
【0097】
[0093]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施可能である。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で相互交換可能であることが理解されるべきである。さらに、当業者は、上述の記載が単なる例示であり、したがってそのような添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限するものではないことを理解する。
【国際調査報告】