(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ボディの温度を制御するシステム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H05H1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550585
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2022053787
(87)【国際公開番号】W WO2022179907
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505441568
【氏名又は名称】インスティトゥト ナシオナル デ テクニカ アエロエスパシアル “エステバン テラーダス”
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTO NACIONAL DE TECNICA AEROESPACIAL ”ESTEBAN TERRADAS”
【住所又は居所原語表記】Ctra. de Ajalvir, Km 4,5, E-28850 Torrejon de Ardoz (Madrid) (ES).
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】コネサ トルレス,アントニオ ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】カブレラ レブエルタ,アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ガルシア,マリオ
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA23
2G084BB05
2G084BB07
2G084CC03
2G084CC07
2G084CC08
2G084CC19
2G084DD01
2G084DD14
2G084DD21
2G084DD22
2G084DD37
2G084HH05
2G084HH20
2G084HH22
2G084HH25
2G084HH26
2G084HH45
2G084HH52
(57)【要約】
【要約】
ボディ(6)の温度を制御するシステムであり、ボディにイオン風を発生させるために電源に接続可能なDBDアクチュエータ(9)と、初期構成を選択し、ボディ(6)の入力温度(Ti)と目標温度(Tta)との間の温度差(ΔT)に依存して、電源(5)を制御する制御ユニット(8)とを備えている。初期構成は、DBDアクチュエータの以下の構成パラメータ、即ち、数、形状、幾何学的形状、電極の相対位置(d)、誘電体材料、及び誘電体厚み(e)を含み、初期構成はさらに、電源(5)に設定された以下の設定パラメータ、即ち、周波数値(f)、振幅値(V)、波形信号、及びデューティサイクルを含む。制御ユニット(8)は、ボディの表面に伝達された熱を制御するために、設定パラメータのいずれかを変更することによって、初期構成を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディの温度を制御するシステムであって、
電源に接続可能であり、前記ボディでのイオン風を発生させるように構成されているDBDアクチュエータと、
前記ボディでの入力温度と目標温度との間の温度差に依存して、さらに初期構成に依存して、前記電源を制御するように構成されている制御ユニットとを備え、
前記初期構成は、前記DBDアクチュエータの以下の構成パラメータ、即ち、電極の数、電極の形状及び幾何学的形状、電極の間の相対位置、誘電体材料、及び誘電体厚みを含み、
前記初期構成はさらに、前記電源での以下の設定パラメータ、即ち、周波数値、振幅値、波形信号、及びデューティサイクルを含み、
前記制御ユニットはさらに、発生された前記イオン風に伝達される熱を制御するために、前記設定パラメータの任意のものを変更することによって前記初期構成を調整するように構成され、
前記目標温度が前記ボディの前記温度よりも低い場合に、前記制御ユニットは、冷却構成を適用するように構成され、前記冷却構成は、最大冷却周波数限界よりも小さい周波数値と、最小冷却振幅限界よりも大きい振幅値とを含み、
前記目標温度が前記ボディの前記温度よりも高い場合に、前記制御ユニットは、加熱構成を適用するように構成され、前記加熱構成は、最小加熱周波数限界よりも大きい周波数値と、最大加熱振幅限界よりも小さい振幅値とを含む、システム。
【請求項2】
前記目標温度が前記ボディの前記温度よりも低い場合に、前記最大冷却周波数限界は10Hzないし5kHzの範囲にあり、前記最小冷却振幅限界は5kVppないし40kVppの範囲にある、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記最大冷却周波数限界は、10Hzないし100Hzの範囲にある、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記電極のエッジの間の分離間隔は、0ないし8mmである、請求項2又は3記載のシステム。
【請求項5】
前記DBDアクチュエータの露出電極は、非直線エッジを有し、好ましくは鋸歯形状を有する、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記目標温度が前記ボディの前記温度よりも高い場合に、前記DBDアクチュエータは第3電極を含み、前記第3電極と第1電極とは前記誘電体材料の同じ側に位置し、
前記第3電極は、前記第1電極、又は第2電極、又は外部電源(交流又は直流)に電気的に接続され、又は浮動電極として残る、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記電極のエッジの間の分離間隔が負であり、両方の電極が部分的に又は完全に重なっている、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
さらに、システムの中で関心パラメータを測定するように構成されているセンサを備え、前記制御ユニットは、測定された前記関心パラメータが入力として供給される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサは、前記ボディの表面の温度を測定するように構成されている温度センサであり、前記制御ユニットは、測定された前記温度が入力温度として供給される、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記DBDアクチュエータは、可撓性のコンポーネントを含み、又は特定の形状に適応する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記DBDアクチュエータの中で前記誘電体材料は、一定でない厚みを有する、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
複数のDBDアクチュエータを備えている、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
システムのコントロールは、予め固定され、又は手動で管理される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体的に熱交換に関する技術を教示する。さらに詳細には、誘電体バリア放電(DBD)効果に基づくプラズマアクチュエータで形成されたイオン風を使用した温度制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボディの温度を上昇又は下降させるために、熱管理を改善する必要がある分野に、多くの応用がある。例えば、エレクトロニクスの分野では、集積回路の小型化には、熱の増加の補償となるように適切な冷却が必要である。しかし、既存の提案は、一般的に、かさばり、騒音があり、複雑なものである(例えば、機械部品やジャイロ効果が増える)。航空学の分野では、別の例が逆の状況を示している。飛行中の低温は、空気力学と航空機の性能とに影響を及ぼす有害な現象である着氷を引き起こす。
【0003】
他の技術の中でも、誘電体バリア放電(DBD)効果は、加熱に利用可能である。DBDは19世紀から知られ、絶縁性の誘電体バリアで隔てられた2つの電極の間に、高い交流電圧による非熱放電を発生させる。これらの電極が非対称に配置されると、イオン風が得られる。
【0004】
DBD効果を発生させることができるアクチュエータを、DBDアクチュエータと称する。これらは通常、2つ以上の電極を重ね合わせ(露出電極及び絶縁電極)、誘電体媒体で分離したデバイスである。電極は、任意の導電性材料で形成されてよい。高電圧及び高周波の交流電力が供給された場合に、プラズマ放電が発生する。運動量は、イオンが中性分子と衝突することで、プラズマ放電から周囲に伝達され、これにより、空気及びボディの力が誘引される。
【0005】
既知のDBDアクチュエータは、流体関連用途に使用されている。しかし、熱を伝達するためのDBDアクチュエータは、まれであり、加熱用途に限られている。
【0006】
プラズマ発生技術は、コロナ放電のように、他にもある。コロナ放電は、やはり非熱放電であり、高い直流電圧を鋭い電極チップに印加して発生する。
【0007】
従って、改良された冷却、改良された加熱、又は代替の冷却及び加熱を提供することを可能するため、DBDアクチュエータがボディの温度を一層よく制御することを可能にすることが、現在の技術水準での必要性である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、技術の現状での限界と、適切な熱管理の必要性に鑑みてなされたものである。独立請求項に従って、表面冷却及び/又は加熱を行うことが可能なシステムが、提案される。このシステムは、特に凍結防止(氷結防止とも称する)用途及び霜取り(着氷防止とも称する)用途に使用されてよい。このシステムは、空気のイオン化の結果としてイオン風を発生させることが可能であり、その温度といくつかの特性とは、特定の運転条件に応じて変化されてよい。イオン風は、境界層を変更、例えば除去し、対流熱伝達の改善を達成するために、使用されてよい。有利なことに、表面の冷却と加熱との両方を、代替的機能を有するシステムの1つの実施形態で、又は別々の実施形態で、達成することができる。別々の実施形態の場合は、一方は特に冷却に適合し、他方は特に加熱に適合する。
【0009】
このシステムは、DBDアクチュエータを備え、DBDアクチュエータは、イオン風を発生させるように、例えば熱調整されるボディの近くに配置される。DBDアクチュエータは、電極と、非気体の誘電体材料とを含む。電極の間に電界勾配が生じた場合に、電界勾配の減少方向に力が発生し、誘電体材料の表面の弱くイオン化した空気に力を加える。イオンが変位する際、イオンは中性の空気分子と衝突し、運動量を伝達し、この衝突から気流を発生させる。この気流をイオン風と称する。このイオン風の速度と体積とは、パラメータのうち電圧や周波数によって増加する。イオン風は、境界層の特性と流れの構造とを変化させることができる。
【0010】
本発明は、ボディの温度を制御するシステムを提供する。システムは、電源に接続可能であり、ボディでのイオン風を発生させるように構成されているDBDアクチュエータと;初期構成を選択し、ボディでの入力温度(Ti)と目標温度(Tta)との間の温度差(ΔT)に依存して電源を制御するように構成されている制御ユニットとを備えている。初期構成は、DBDアクチュエータの以下の構成パラメータ、即ち、電極の数、電極の形状及び幾何学形状、電極の間の相対位置(d)、誘電体材料、誘電体厚み(e)、及び設定される以下の設定パラメータ、即ち、周波数値(f)、振幅値(V)、波形信号、及びデューティサイクルを含む。制御ユニットはさらに、発生されたイオン風に伝達される熱を制御するために、設定パラメータのいずれかを変更することによって初期構成を調整するように構成されている。
【0011】
システムのいくつかの実施形態は、従属請求項に従って定義されてよい。とりわけ、例えば、多様な特徴を有する異なるDBDアクチュエータを使用してよい。多様な特徴とは、電極の数、電極の形状(即ち、平坦、波状、円形又は円柱形)、位置(即ち、エッジ距離、平行、面一など)、幾何学形状(歯状、直線状、尖端状など)、封止(欠如、均一、可変)、そのコンポーネントの構造(剛性、可撓性)などに応じた特徴である。これらは、DBDアクチュエータの製造構成に関連する構成的特徴である。
【0012】
同様に、システムのDBDアクチュエータの電極に印加される電圧信号の特性が、全体の挙動を変える。そうすることで、イオン風を変化させることができる。これらの特性とは、例えば周波数、振幅、波形、デューティサイクルなどである。これらは、必要に応じて簡単に変更可能である設定パラメータと想定される。その目的のために、用途に応じた電源の設定が変更可能であるように構成された制御ユニットが提案される。電源DBDアクチュエータの設定パラメータは、電源を制御する際に考慮されてよい。
【0013】
例えば、ボディに一定の冷却又は加熱を発生させるために、制御ユニットは、電源に特定の波形、電圧及び/又は周波数を設定してよく、結果が達成されたか、そうでなければ設定の調整が必要か否かをモニタする。DBDアクチュエータによって発生されるイオン風の温度、速度、及び/又は体積を上昇又は低下させることによって、パラメータの選択は影響を与える。また、境界層にも影響を与える。
【0014】
システムの性能は、DBDへの入力温度(Ti)によって制限され、目標温度(Tta)の影響を受ける。たとえこれらが固定可能であったとしても、両方が変更されてよい。実際、Ttaは設計によって設定された値であり、ユーザによって変更されてよい。一方、Tiは、例えば、DBDシステムの周囲の温度が高いか低いかの異なる領域から強制的に流すことによって、又はDBD入口に設置された加熱/冷却システムによって、変更されてよい。さらに推定され、手動で導入されてよい。ここで、Ttaは、到達不可能であるように選択されてよく、その場合に、システムはある方向(加熱のみ、又は冷却のみ)にしか機能しないことが強いられることに留意するものとする。
【0015】
用途によっては、システムは、システムの中で任意の関心パラメータをリアルタイムで測定するセンサ(例えば、氷の存在を特定するセンサ)の存在を利用してよい。このパラメータは、システムのコントロールをさらに適合させるために、使用されてよい。好ましい実施形態では、このセンサはボディの温度を測定する温度センサである。
【0016】
冷却又は加熱を実現するために重要なこととして、本発明は、特徴の複雑なトレードオフとバランスとに対処するものである。構成パラメータ又は設定パラメータのいずれかのように、正反対の効果をもたらす特徴がある。さらに、変更されたときに逆の方向に挙動を変更する可能性のある特徴がある。
【0017】
例えば、電極の間の分離間隔が大きいほど放電領域は大きくなるが、プラズマの領域は小さくなり、イオン風の形成は弱くなる。一方、電極の間を離すと、放電は不均一になり、その結果、挙動の繰り返し性は低い。放電の不均一性を補うために、電極のエッジ(通常は直線状)の形状が変更されてよい。例えば、エッジが、鋸歯状や尖端状であることが提案される。つまり、適切なエッジ形状を選択することで、放電が電極の特定の領域から開始することを生じさせる。その結果、放電は一層均一なものとなり、その結果、電界の強度が増加する。この場合に、エッジ形状が2つの電極の分離の効果を補償する。
【0018】
同様に、制御ユニットは、ある設定パラメータを介して電源の設定をダイナミックに変更し、迅速にDBDの動作に作用させることができる。
【0019】
制御ユニットは、意図された用途を達成するためにイオン風をどのように発生させるかに影響を与える。例えば、DBDアクチュエータへの供給には、パラメータ、即ち、電圧信号の波形、デューティサイクル、振幅、周波数が鍵となる。その結果、ボディの熱調節を達成することができる。ボディの表面に当たるイオン風を発生させることは、変動してよく、異なった熱調節(冷却又は加熱、あるいはその両方)を得ることができる。
【0020】
システムのロバスト性は強化されてよい。例えば、DBDアクチュエータの過度の加熱による誘電破壊を防止することができる。温度センサが安全閾値(例えば温度限界)よりも大きい値を示した場合に、制御ユニットは、電圧振幅を維持したまま励起周波数を低下させ、温度を低下させる。
【0021】
このシステムは電源のエネルギー消費を節約する。例えば、一層小さい周波数(例えば1kHz以下)でボディを冷却するために作動が可能である。
【0022】
このシステムは、いくつかの追加的な利点、即ち、小さな重量、減少した体積の占有(冷却用途ではヒートシンクやファンが不要)、特定の形状に適応する可撓性、低メンテナンス性、複数の機能性の組み合わせ(冷却と加熱)などの利点がある。
【0023】
さらに本発明の教示は、異種技術に適用可能である熱保護システムの複雑さを軽減し、その統合を改善することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】システムの実施形態の要素の概略ブロック図である。
【
図2】システムの実施形態の制御ユニットの概略ブロック図である。
【
図3】システムの実施形態のボディを冷却又は加熱する制御ユニットの例示的な流れ図である。
【
図4】DBDアクチュエータを備えているシステムの実施形態を示す概略図である。
【
図5A】DBDアクチュエータの露出電極の[3つの]異なる形状を示す。
【
図5B】DBDアクチュエータの露出電極の[3つの]異なる形状を示す。
【
図5C】DBDアクチュエータの露出電極の[3つの]異なる形状を示す。
【
図6A】封止されていない下部電極を有するDBDアクチュエータを示す。
【
図6B】下部封止電極を有するDBDアクチュエータを示す。
【
図7】3つの電圧周波数について、
図6BのDBDアクチュエータにわたる高さでのイオン風の速度変化の実験結果を示す。
【
図8A】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8B】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8C】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8D】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8E】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8F】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図8G】システムのためのDBDアクチュエータの異なる構成的実施形態を示す。
【
図12A】
図8Aのシステムの実施形態の加熱に関する温度/時間の曲線を示す。
【
図12B】
図8Aのシステムの実施形態の加熱に関する温度/距離の曲線を示す。
【
図13A】時間と励起周波数電圧との関数としての冷却効果を示す。
【
図13B】時間と電圧振幅との関数としての冷却効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のいくつかの態様及び実施形態について、さらによく理解するために図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による簡略化したブロック図である。温度センサ7は、ボディ6の温度を測定し、その値を制御ユニット8に供給する。電源5は、DBDアクチュエータ9に交流電圧を供給する。制御ユニット8は、ボディ6の温度に依存して、また目標温度に依存して電源5を制御する。制御ユニット8は、初期構成として電源5の特定の設定を選択してよい。冷却又は加熱は、温度センサ7によって与えられるボディ6の現在の温度と、目標温度とに依存して適用されてよい。初期構成ではさらに、DBDアクチュエータの構成的特徴が考慮されてよい。DBDアクチュエータの電極は、ボディ6に向かってイオン風を引き起こすプラズマ領域を形成する。制御ユニット8は、このように、電圧周波数、及び/又は電圧振幅、及び/又は波形、及び/又はデューティサイクルのような設定パラメータを変えることによって、ボディ6を冷却又は加熱することができ、ボディの温度が所望の通りに変化したか否かを、温度センサ7により時間間隔Δtの後にチェックする。チェックした結果、ボディの温度が十分に変化していない場合は、目標温度に到達しやすいように初期構成を調整してよい。
【0027】
制御ユニットは、温度センサと目標温度とに基づいて、加熱モード又は冷却モードで作用するように作動されてよい。さらに、制御ユニットは、その動作方法を変更するための他の入力信号を含んでよい。さらに、制御ユニットは、2つの設定(冷却又は加熱)のいずれかを選択するための手動モードでの動作を可能にしてよい。
【0028】
加熱モードでは、デフォルトの波形はナノパルス(ns-DBD)となる。プリセット構成で目標温度に到達できない場合に、励起電圧が上昇され、次に周波数が上昇される。これらは例えば、交互に行ってよく、又は同時に行ってよい。目標温度に到達した場合に、デューティサイクルのある非定常波を導入するか、又はバーストの形で、消費電力の一層少ない波形に変更してよい。
【0029】
冷却モードでは、プリセット波形は正弦波交流信号であることが好ましい。プリセットされた条件で目標温度に到達しない場合に、励起電圧は上昇する。表面の冷却を達成するために励起電圧を上昇させる間、望ましくない効果が発生する可能性、例えば、温度の上昇が生じる可能性があることに留意するものとする。このような状況では、励起周波数を減少させるか、又は、デューティサイクルを介して非定常波で励起する。制御ユニットは、目標温度に到達した場合に、電力消費を削減するために同様の作動を使用してよい。
【0030】
図1に示したシステムは、温度センサ7がなくても有効であることに留意するものとする。この場合に、コントロールは予め固定されてよく、又は、手動で管理されてよい。
【0031】
図2は、制御ユニット8の別のブロック図である。制御ユニット8は、電源5の設定パラメータとDBDアクチュエータ9の構成パラメータとを有する初期構成を考慮して、初期構成、例えば電源5の設定パラメータを適切に調整することができる。DBDアクチュエータ9の構成パラメータは、制御ユニット8の入力の一部であってよい(例えば、ある周波数範囲での電圧の限界振幅(振幅限界)、ある振幅範囲での電圧信号の限界周波数(周波数限界)、またDBDアクチュエータの限界温度などの安全動作値)。
【0032】
電源5の設定パラメータの変更が、DBDアクチュエータ9の限界動作値に達することを生じたか否かをチェックすることによって、DBDアクチュエータ9の安全動作をモニタするように、制御ユニット8は構成されている。ここで、限界動作値は、電源5での残りの設定パラメータに従って選択されたものである。
【0033】
図3は、温度制御のための制御ユニット8の実施を示すフロー図である。ボディの温度(T
b)が、T
ta度以下(加熱)又はT
ta度以上(冷却)の場合に、初期構成が使用されて、電源を作動させ、DBDアクチュエータによりプラズマを生じさせる。ある時間Δt後、ボディの温度は、所望の目標温度T
taと比較される。T
bとT
taとの間に温度差がある場合に、制御ユニットはパワーユニット(電源)の設定パラメータを変更することによって初期構成を調整することができる。このように、設定パラメータは、冷却又は加熱のために選択的に変更してよい。
【0034】
図4は、誘電体バリア放電(DBD)効果に基づいてボディ6の温度を変更するシステム10の実施形態の概略図である。システム10は、2つの電極を有するDBDアクチュエータを含む。第1電極1は、側面が外部(全体的に、周囲の空気だけでなく、他の流体も含む)に露出する。第2電極2は、望ましくない影響を回避し、消費電力を削減するために、封止構造4を有する。両方の電極は、高い交流電圧を供給する電源5に接続されている。後述するように、他のDBDアクチュエータが適する可能性がある。好ましくは、電圧波形と関連パラメータとは、使用目的に応じて定義されてよい。周波数、振幅、波形、デューティサイクルなど、設定するべきパラメータのいくつかについては後で説明する。見て分かるように、電極1及び2は、平行な平面に配置され、その間に特定の厚み「e」の誘電体層3のための空間を画定している。電極1及び2は、垂直に位置合わせされず、エッジ1b及び2bの間にはオフセット「d」があり、高電圧が印加されると、空気のイオン化を生じ、いくつかの目的のために利用可能な、矢印で示す、イオン風を発生させる。特に、ボディ6の表面を冷却又は加熱する目的である。d>0は、電極の間のギャップ又は分離、即ちエッジ2bからエッジ1bまでのギャップを意味する一方、d<0は、両方の電極の間の少なくとも部分的な重なり合い、即ちエッジ2bが電極1の下にあることを意味することに留意するものとする。一般的な規則として、d<0の構成は、加熱用途のために好まれるものとする。他方、d>0の構成は、冷却用途のために好まれることとなる。
【0035】
図5Aないし5Cは、露出電極の3つの異なる形状を示す。幾何学的特性は異なってよい。
図5Aは、直線状のエッジを有する電極を示す。
図5Bは、三角形の歯を有する電極を示す。
図5Cは、正弦波状のエッジを有する電極を示す。エッジの形状は、後述するように、適切な放電を生成するために重要である。
【0036】
電極の厚みは、鍵となる要素ではないことが分かっている。しかし、厚みは小さいほどよい。一般的に、電極の厚みは200μm未満であるものとし、好ましくは、約50μmであるものとする。
【0037】
図6Aは、簡素化されたDBDアクチュエータを示し、これは、非対称に配置された、誘電体材料3(誘電体媒体3)の反対側に位置する2つの電極1及び2によって定義される。この実施形態には、封止電極(encapsulated electrode)はない。交流高電圧源5は、電極1及び2に電圧を印加する。本明細書の文脈では、高電圧は5kVppないし50kVppであると理解されるものとする。電圧閾値を超えると放電が生じ、誘電体の両側、電界が最も強い領域で、空気がイオン化される。誘電体材料3の両側に、プラズマが形成される。その結果、両側でイオン風が逆向きに発生する。
【0038】
図6Bは、別の単純化されたDBDアクチュエータを示す。この場合に、プラズマの発生は誘電体3の片側のみに生じる。誘電体の反対側でのプラズマ発生を防止するために、電極の一方は、例えば、電極を封止電極とすることにより、分離される。露出電極上には、プラズマの領域が形成される。一般に、接地に接続された電極は、通常、封止電極である。
【0039】
プラズマ領域は、電極に高電圧信号を印加して得られた強い電界によって、形成される。プラズマ領域に含まれたイオン化した空気は、露出電極1のエッジ1bから封止電極2へ伝搬し、イオン風を発生させる。
【0040】
誘電体材料は、2つの電極の間に電気アークが形成されるのを防止する。さらに、誘電体材料3に電荷が蓄積されると、放電が減少し、最終的には消滅する。このため、通常は交流電圧信号が使用される。
【0041】
図7は、
図6Bに描かれたDBDアクチュエータ表面からの高さhの関数としての、誘引されたイオン風の速度の実験的測定を示す。カプトン(登録商標)が、誘電体素子として使用される。14kVpp(振幅7kV)の電源電圧で、3つの異なる周波数値(1kHz,2kHz,3kHz)であり、露出電極の後エッジ1bからL=16mmの位置である。周波数が大きいほど、イオン風の速度が速くなることが分かる。この事実は、制御ユニットがDBDアクチュエータの機能を変更するために利用される。速度は、アクチュエータ表面付近、高さ0.5ないし1mmの間で最大に到達する。
【0042】
図8Aないし8Gでは、DBD9のさまざまなシステム実施形態に従った電気風(イオン風)の異なる形成を概略的に見ることができる。DBD9では、電極のDBDアクチュエータの構成パラメータ(配置、サイズ、数など)はさまざまである。矢印の方向は、イオン風の方向を示す。矢印のサイズは、速度の大きさと関係ない。
【0043】
図8Aは、露出電極1が誘電体層3の上に配置されている場合を示す。封止電極2は、誘電体層の反対側に配置されている。両方の電極1及び2は層状(例えばフォイルテープ)であり、平行な平面上に配置され、それぞれのエッジに変位を有する。プラズマは、封止電極2に近い方の露出電極1のエッジで発生する。このようなDBDアクチュエータは、冷却及び加熱の用途に適する可能性がある。
【0044】
図8Bは、露出電極1が誘電体層3の上に配置されている場合を示す。封止電極2は、誘電体の反対側に配置されている。両方の電極1及び2は、層状で、平行な平面上に配置されている。露出電極1は、封止電極2よりも小さく、完全に重なっている。プラズマは、露出電極1の両エッジに発生する。このようなDBDアクチュエータは、加熱用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0045】
図8Cは、一方の電極が他方の電極に対して突出することで、追加的な分離又はギャップが定義される(d>0)、別の実施形態を示す。露出電極1と封止電極2との間にあるこのギャップは、必要性に合わせて変更してよい。このようなDBDアクチュエータは、冷却用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0046】
図8Dは、第3電極を追加した別の実施形態を示す。この構成では、電気風が、ボディ6の表面に垂直に発生する。3つの電極に関しては、2つの電極が露出し、同じ電源に接続されている。電気風は、風向きを180度変えることができるように発生される。この結果を得るためには、電極1及び13に与える電圧及び/又は周波数を異ならせる必要がある。2つの電源が使用されてよい。このようなDBDアクチュエータは、加熱用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0047】
図8Eは、
図8Aで説明した構成に類似した別の実施形態を示す。ここでは、誘電体厚みが一定でない。封止電極の一部が、露出電極の平面に平行でない。電界の強度が減少する領域で誘電体厚みを減少させることにより、一層大きなプラズマ領域が生成される。このようなDBDアクチュエータは、冷却用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0048】
図8Fは、3つの電極を有する別の実施形態を示す。この構成では、第3電極13は、接地封止電極に電気的に接続されている。電極1が交流高電圧信号に接続され、電極2及び13が接地に接続されている場合に、放電は、電極13が一層大きな電荷中和を可能にし、誘電体材料3への電荷蓄積を減少させるという利点を有する。このようなDBDアクチュエータは、加熱用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0049】
図8Gは、3つの電極を伴って「スライディング放電」と称する構成による実施形態を示し、コロナ放電とDBD放電とを組み合わせている。誘電体要素3によって分離された、2つの露出電極と1つの封止電極とがある。この配置では、追加電極13は負の直流電源に接続されている。電極1と電極2との間には、基本的なDBDがある。電極1から電極13まで、コロナ放電チャンネルが形成されている。この構成により、減少した電圧で一層大きなプラズマ領域が実現される。このようなDBDアクチュエータは、加熱用途の方にむしろ適する可能性がある。
【0050】
上述の構成は単なる例示に過ぎない。他のタイプが定義されてよい。異なる構成の組み合わせも可能である。そのうちには、電極を共有するものがある。
【0051】
図では単一のDBDアクチュエータ9を示すが、システムは同じボディ又は異なるボディに作用する複数のアクチュエータを含んでよい。電極の形状は、平らであること、層状であることにも、電極の間が平行であることにも限定されないことに留意するものとする。実際に、DBDとそのコンポーネントがボディや特定の形状に適応することで、システムの性能の利点が予見できる。
【0052】
本実施形態の性能に影響を与えるその他の構成パラメータについては、下記に述べる。
【0053】
露出電極の厚みは、電界の強さに相対的に影響する。電極を形成する幅や材質は、あまり重要ではない。露出電極が薄いほど、イオン風の発生という点で、さらによい結果が得られる。
【0054】
封止電極の幅は、プラズマ領域の長さの増加を生じ、性能を向上させる。しかし、ある値を超えると、それ以上の改善は得られない。
【0055】
対向電極の配置は、互いに前側に配置されるエッジの間にオフセット「d」が存在するようにしてよい。従って、オフセット「d」は正又は負であってよい。イオン風発生のための最良の結果は、-1mmから1mmまでのオフセットで得られる。重なり合った電極構成は、一層均一な放電に関係する。この実施形態はさらに、性能の少しの上昇を可能にする。
【0056】
誘電体層の材料は非常に重要で、DBDシステムの性能とその最大動作条件に影響する。誘電体として使用される代表的な材料は、テフロン(登録商標)、水晶、カプトン(登録商標)、マコー(登録商標)、ベークライト、石英、デルリン(登録商標)、メタクリレート、ポリカーボネートなどを含む。実際には、完全な誘電体は存在しない。どの誘電体が最も適切かは、具体的な用途に依存する。
【0057】
これまでの考察とは別に、電気的励起もシステムの挙動で非常に重要である。
【0058】
図9は、システムに供給するために使用可能な数タイプ、即ち、正弦波、矩形波、三角波、鋸歯状波、パルス波の電気信号を示す。一般的に、冷却用途には正弦波が好まれ、加熱用途には非常に短い持続時間のパルス波が好まれる。
【0059】
パルスを使用して電圧信号を変調する、例えば、交流信号を一定の周波数でオン・オフすることで、非定常励起を得ることができる。動作時間と励起周期との関係から、デューティサイクルが求められる。定常動作は、100%のデューティサイクルを有する。非定常動作は、剥離した境界層に不安定性を励起し、定常動作よりもよい結果を得ることができる。
【0060】
図10は、定常波形と非定常波形とを示す。このタイプの励起は、冷却と加熱との両方で有効である。周波数について、ナノ秒パルス放電は、マイクロ秒放電よりも効率的である。電源は、このような短時間の信号が供給可能であることを必要とする。
【0061】
ナノ秒パルス放電は、ns-DBDとも称するが、広いマッハ範囲での流量制御用途に有効であることが示されている。また、熱伝達にも大きな効果があり、短時間での加熱が可能である。ナノ秒パルス放電に基づく構成は、基本的に通常のDBD、即ち、これは既に説明したこの文脈でAC-DBDとも称するものと同じである。説明した設定はすべて有効であり、両方に適用可能である。
【0062】
ns-DBDの構成では、ジュール効果が鍵となる。システム周囲の空気の加熱が非常に速いため、音速で伝播する圧縮波が発生する。ns-DBDシステムでは、
図11に見られるように、立ち上がり時間が数十ナノ秒のオーダーで、持続時間が5nsないし200nsの高電圧パルス(5ないし50kV)によって励起が生成される。
【0063】
図11は、ある周波数に従って繰り返される単一パルスの典型的な形態を示す。これらのパルスは、いわゆるns-DBD構成で使用される。ns-DBD構成の用途は、飛行機での氷の形成を回避するために熱を発する能力の高さによる着氷防止要素である。
【0064】
図12A及び12Bは、加熱に関する実験結果を示す。
図12Aは、
図8Aの構成のシステムの実施形態の経時的な温度変化を示す。同様に、
図12Bは、エッジ1bに平行でこのエッジから5mmに位置する線での温度変化を示す。ほぼ100°Cの上昇が、約20秒で達成できる。使用した特定の設定は、周波数1500Hz、振幅16kVであり、波形はナノ秒パルスである。一層大きな周波数は、一層よい結果をもたらす可能性がある。
【0065】
電圧と周波数との上昇は、不凍液又は除霜システムでの加熱能力の上昇を意味する。さらにこれに代えて、又はこれに加えて、
図8Gの「スライディング放電」構成によって、加熱領域の増加が達成されてよい。
【0066】
冷却能力に関して、一層多くのイオン風を発生させる目的で電圧や周波数を上昇させた場合には、望ましい結果が得られるように注意する必要がある。風自体の温度も上昇する。温度の上昇は、期待された改善の効果をなくしてしまう可能性がある。さらに、後述する図面に見られるように、逆の効果を引き起こす可能性がある。この影響は、制御ユニットによって考慮され、意図された目的に対して逆行にならないように適切に電源を制御する。
【0067】
図13Aは、
図4のシステムの実施形態の作用下、70°Cで加熱された平板(ボディであってよい)の経時的な温度変化を示す。電源電圧は20kVppの振幅に固定で設定され、他方、周波数は上昇される。見て分かるように、周波数の上昇は、平板の温度低下が一層大きくなること、その結果、冷却能力が上昇することを意味する。しかし、この冷却能力は、周波数を上昇させると低下するのであり、その傾向が逆転することさえある。イオン風の速度を上昇させると、風そのものの温度が上昇する可能性があるため、ある時間が経過すると、平板が再加熱される可能性がある。制御ユニットはこの挙動をモニタし、必要であれば対策の構成を適用する。
【0068】
図13Bは、1kHzの固定周波数の場合に経時的な温度変化を表すいくつかの曲線を有するグラフに、同様の挙動を示す。各曲線は、振幅電圧の値に対応する。電圧が上昇するごとに、冷却がわずかに改善され、電圧値が22kVppを超えると、相殺されて逆転することが分かる。
【0069】
図13A及び
図13Bの曲線は、限られた性能及び高い消費電力と引き換えに、DBD効果を応用した冷却が可能であることを示唆する。この問題は、かなり正反対の一連の動作を実行することによって対処される。
【0070】
[実施例]
以下、いくつかの実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定することを意図しない。
【0071】
制御ユニットにより、電源の設定のダイナミックな制御が行われる。
【0072】
[冷却の設定パラメータ]
可能な限り小さい(低い)周波数を設定するものとする。DBDアクチュエータは、通常の状態では1kHzないし50kHzの範囲で動作する。有利なことに、本システムでは動作周波数を少なくとも1又は2オーダー(1又は2桁)だけ減少させることができ、最適な範囲は100Hz未満である。このような小さい周波数では、イオン風はほとんど冷却性能を有さない。このため、励起電圧は、制御ユニットによって25kVppのオーダーの値まで上昇される。
【0073】
構成パラメータに関しても、いくつかの推奨事項がある。まず第一に、露出電極と封止電極とを分離することであり、これは、プラズマ領域がさらに小さく、イオン風がさらに弱いことを伴う。しかし、電極の間の距離は、不均一放電を生じる。つまり、放電は、繰り返し性のある(repeatable)挙動を示さない。
【0074】
第二に、放電の不均一性を補うために、露出電極は、
図5Aに示されるように通常は直線状であるが、
図5Bに示されるように鋸歯状の電極に置き換えられ、放電が常に電極の歯から始まるようになる。放電は一層均一になり、電界は一層強くなり、2つの電極を分離する欠点を補い、パラメータdを増加させる。
【0075】
このような構造と操作により、イオン風は、最小限の温度上昇を伴って得られる。従って、最小限の電力消費で、優れた冷却が実現できる。
【0076】
要約すると、良好な冷却能力を達成するためには、DBDアクチュエータの通常の動作から逸脱した特定のアプローチがとられる。異なる周波数範囲が使用され、電極の間の分離間隔が必要とされ、放電を制御するための特定の形状が必要とされる。
【0077】
[冷却作動の例]
入力として、ボディの温度が70°Cであり、目標温度が40°Cであるとする。周囲温度が約25°Cの場合に、いくつかの条件や制約が生じる。周囲温度が高いほど、ボディの表面から放散される熱の流れは少なくなる。一方、周囲温度が一層低いと、一層低いボディの温度に到達するようになる。
【0078】
構成パラメータ:
厚みは0.5mmオーダー(カプトン素材)。
電極の間の分離間隔dは0mmを超え、好ましくは3mmである(0ないし8mmであってよい)。
【0079】
設定パラメータ:
i.Vpp<40kVpp
ii.f>50Hz
iii.波形:交流(正弦波、方形波など)
iv.消費電力を削減するために、デューティサイクルによる作動の可能性
【0080】
誘電体厚みが大きい場合に、分離間隔dは0mmまで減少させることができる。
i.Vpp>12kVpp
ii.f>500Hz
iii.波形:交流(正弦波、方形波など)
iv.消費電力を削減するために、作業サイクルによる作動の可能性
【0081】
(好ましくは、最大冷却周波数限界は10Hzないし5kHzの範囲にあり、最小冷却振幅限界は5kVppないし40kVppの範囲にあってよく、さらに好ましくは、最大冷却周波数限界は、10Hzないし100Hzの範囲にあってよい。)
【0082】
[加熱の設定パラメータ]
可能な限り大きな、電圧の周波数と振幅とが、設定されるものとする。使用する誘電体の温度を超えることと、誘電破壊とを回避するように、制御ユニットは、安全マージンをもって動作するものとする。DBDアクチュエータは、通常の動作で、数kHzかつ数十kVの範囲で、動作するものとする。
【0083】
[加熱作動の例]
入力として、ボディの温度が-10°Cであり、目標温度が10°Cであるとする。周囲温度がボディの温度と同じかそれ以下である場合に、一層高いエネルギー入力が必要となる。
【0084】
構成パラメータ:
その用途で使用可能なスペースによって、使用する誘電体のタイプと厚みとを条件づける。厚み0.5mmのカプトン(登録商標)を使用すれば、負のdから0mmまで電極を重ねることができる。
【0085】
設定パラメータ:
i.V>10kV
ii.f>2kHz
iii.波形:好ましくはナノパルス
【0086】
これまで述べてきたこれら及び他の特徴、機能、及び利点は、さまざまな実施形態の中で独立して達成されてよく、又は、さらに他の実施形態の中で組み合わせられてよい。
【国際調査報告】