IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション ツールズ アクティエボラーグの特許一覧

特表2024-510894応力分布が改善されたダウンホール管を接続する連結具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】応力分布が改善されたダウンホール管を接続する連結具
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/03 20060101AFI20240305BHJP
   F16L 15/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E21B17/03
F16L15/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551165
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022054823
(87)【国際公開番号】W WO2022180225
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】21159696.0
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520344785
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション ツールズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤンソン, トマス
(72)【発明者】
【氏名】ノードベリ, アンデシュ
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB14
2D129BA09
2D129BA19
2D129EB08
2D129EC07
(57)【要約】
管状体と、雌連結部と、雄連結部と、管状体の外表面上に形成された雄ねじ山、および管状体の内表面に形成された雌ねじ山のうち少なくとも1つと、を備え、少なくとも1つのねじ山が、山頂と、谷底と、一対のフランクとを含む、ねじ山形状を有し、山頂および谷底がそれぞれ、ねじ山形状の全長に沿ってそれぞれの第1および第2のキャンバー半径R、R-Tを中心にしてキャンバーが与えられ、各キャンバー半径R、R-Tが連結具の外径よりも大きく、雄ねじ山がキャンバー半径Rbmを有し、雌ねじ山がキャンバー半径Rbfを有し、雄ねじのキャンバー半径と雌ねじのキャンバー半径との比(Rbm/Rbf)が、<1.0かつ≦1.1であることを特徴とする、ダウンホール管を接続する連結具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体と、
雌連結部(2)と、
雄連結部(4)と、
前記管状体の外表面上に形成された雄ねじ山(4t)、および、
前記管状体の内表面に形成された雌ねじ山(2t)
のうち少なくとも1つと、を備え、
少なくとも1つの前記ねじ山が、山頂(A、A、A)と、谷底(A、A、A)と、一対のフランク(E、E)とを含む、ねじ山形状を有し、
前記山頂(A、A、A)および前記谷底(A、A、A)がそれぞれ、前記ねじ山形状の全長に沿ってそれぞれの第1および第2のキャンバー半径(R、R-T)を中心にしてキャンバーが与えられ、
前記雄ねじ山(4t)がキャンバー半径(Rbm)を有し、前記雌ねじ山(2t)がキャンバー半径(Rbf)を有し、
前記雄ねじのキャンバー半径と前記雌ねじのキャンバー半径との比(Rbm/Rbf)が、>1.0かつ≦1.1であることを特徴とする、ダウンホール管を接続する連結具。
【請求項2】
bm/Rbfが1.01から1.05である、請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
各キャンバー半径(R、R-T)が700から1900mmである、請求項1または2に記載の連結具。
【請求項4】
各フランク(E、E)が直線であり、
各フランク(E、E)が、それぞれの円弧(A、A、A、A)によって、隣接した山頂(A、A、A)および/または谷底(A、A、A)に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項5】
各キャンバー半径(R、R-T)の円弧に垂直な前記ねじ山形状の中心線(C)が、前記連結具の長手方向軸線(G)に対して、前記少なくとも1つのねじ山の始まりに隣接して鋭角であってほぼ垂直な第1の角度(δ)で傾斜し、また前記少なくとも1つのねじ山の終わりに隣接して第2の角度(δ)で傾斜し、
前記第2の角度(δ)が前記第1の角度(δ)よりも小さい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項6】
各キャンバー半径(R、R-T)が前記連結具の外径の少なくとも5倍である、請求項1から5のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項7】
前記ねじ山形状が非対称である、請求項1から6のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項8】
前記ねじ山形状が台形である、請求項1から7のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項9】
前記少なくとも1つのねじ山のスイープ角(γ)が1から10度である、請求項1から8のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項10】
前記谷底(A、A、A)および前記山頂(A、A、A)が同心である、請求項1から9のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項11】
前記谷底(A、A、A)の円弧長さおよび前記山頂(A、A、A)の円弧長さが等しい、請求項1から10のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項12】
前記谷底(A、A、A)の円弧長さおよび前記山頂(A、A、A)の円弧長さが等しくない、請求項1から11のいずれか一項に記載の連結具。
【請求項13】
前記雌ねじ山(2t)を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の雌連結部(2)と、
前記雄ねじ山(4t)を有し、前記雌ねじ山(2t)にねじ込まれる、請求項1から12のいずれか一項に記載の雄連結部(4)と、を備え、
前記雌および雄連結部(2、4)が圧縮状態にあるとき、前記フランク(E、E)のうち一方が接触フランク(E)であり、他方のフランクが非接触フランク(E)であり、
各フランクが直線であり、
各ねじ山形状が、それぞれのキャンバー半径(R、R-T)の円弧に垂直な中心線(C)を有し、
各フランクが、それぞれの中心線に対して傾斜したフランク角(α、β)を有し、
各接触フランク角(β)が、それぞれの非接触フランク角(α)よりも大きい、接続部。
【請求項14】
各非接触フランク角が45度未満である、請求項13に記載の接続部。
【請求項15】
各連結具が金属または合金から作製され、
前記雄連結部(4)が、外径部分と、前記雄ねじ山を有する縮径部分と、2つの部分を接続する肩部(4s)とを有し、
前記肩部(4s)が、前記雌連結部(2)の端部(2p)と係合されて、金属間シールを形成する、請求項14に記載の接続部。
【請求項16】
ロッド本体(3)と、
前記雌ねじ山(2t)を有し、前記ロッド本体(3)の第1の端部に溶接された、請求項1から12のいずれか一項に記載の雌連結部(2)と、
前記雄ねじ山(4t)を有し、前記ロッド本体(3)の第2の端部に溶接された、請求項1から12のいずれか一項に記載の雄連結部(4)と、を備える、衝撃削孔用のドリルロッド(1)。
【請求項17】
前記雌および雄連結具(2、4)の外径が5から20センチメートルであり、
各キャンバー半径(R、R-T)が1メートル超過である、請求項16に記載のドリルロッド。
【請求項18】
請求項16または17に記載のドリルロッド(1)を備えるドリルストリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ドリルストリング連結具向けのキャンバー付きねじ(cambered thread)に関し、特に、限定的にではないが、衝撃削岩に利用されるドリルストリング向けのキャンバー付きねじに関する。
【背景技術】
【0002】
EP1511911/米国特許第8,066,307号は、互いに接合されてドリルストリングを形成する要素の雄ねじ山および雌ねじ山を含む、衝撃削岩用のドリルラン(drill run)またはドリルストリングのねじ継手であって、雄ねじ山および雌ねじ山が台形形状を有し、ねじ山がねじ山の長さに沿って7度未満の円錐角を有する円錐形の傾斜を有し、ねじ山のフランクとねじ山の頂点に対して接線方向の線との間のフランク角が45度未満であることを特徴とする、ねじ継手を開示している。
【0003】
米国特許第4121862号は、ねじの入口および出口に先細のピッチ径を有する管状接続部を開示している。US2006/118340号は、台形形状およびわずかな円錐形の傾斜を有するねじ接手を開示している。
【0004】
EP‘911号特許の円錐ねじは、その長さにわたって均等に曲げ荷重を分配するのには最適ではなく、また円錐ねじは好都合な連結および分解時間をもたらすものでもない。EP‘911号特許の円錐ねじの耐摩耗性には改善の余地がある。EP3536894は、ねじ山の山頂および谷底がそれぞれ、ねじ山形状の全長に沿ってそれぞれの第1および第2のキャンバー半径を中心にしてキャンバーが与えられ、各キャンバー半径が連結具の外径よりも大きく、それによって、曲げ荷重を受けたときの連結具の特性および剛性が改善された、円錐ねじを開示している。しかしながら、連結具の応力レベルを低減して、応力がねじの長さに沿ってより均等に分配され、高応力集中がある領域がないという要件がある。さらに、ねじ付き連結具の長さに沿ってより均等に摩耗し、早期破断のリスクが低減され、寿命が増加した、連結具を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、概して、ドリルストリング連結具向けのキャンバー付きねじに関し、特に、限定的にではないが、衝撃削岩に利用されるドリルストリング向けのキャンバー付きねじに関する。一実施形態では、ダウンホール管を接続する連結具は、管状体と、雌連結部と、雄連結部と、管状体の外表面上に形成された雄ねじ山、および管状体の内表面上に形成された雌ねじ山のうち少なくとも1つとを含む。少なくとも1つのねじ山は、山頂と、谷底と、一対のフランクとを含む、ねじ山形状を有する。山頂および谷底はそれぞれ、第1および第2のキャンバー半径をそれぞれ中心にしてキャンバーが与えられる。各キャンバー半径は連結具の外径よりも大きい。キャンバー半径Rbmを有する雄ねじ山、およびキャンバー半径Rbfを有する雌ねじ山は、雄ねじキャンバー半径対雌ねじキャンバー半径の比Rbm/Rbfが、>1.0かつ≦1.1、好ましくは1.01~1.05、より好ましくは1.01~1.03であることを特徴とする。換言すれば、RbmおよびRbfは等しくてはならない。
【0006】
有利には、上記により、ねじの長さに沿って最大応力が低減された、ねじ付き連結具が提供される。さらに、この比の範囲内で、応力はねじの長さに沿って最も均等に分配され、高応力集中ピークが局在化領域に存在することが回避される。結果的に、ねじの長さに沿った摩耗がより均等に生じるので、早期の不具合が起こりにくく、したがって部品の寿命が増加する。
【0007】
好ましくは、各キャンバー半径(Rb、Rb-T)は、700~1900mm、好ましくは800~1700mm、さらにより好ましくは900~1500mm、さらにより好ましくは1050~1400mm、さらにより好ましくは1100~1300mmである。有利には、これによって、ねじの長さに沿って可能な限り最も低い平均応力が達成される。キャンバー半径が大きすぎる場合、ねじは平行ねじのように作用し、したがって平行ねじを上回る十分な技術的利点を有さなくなる。キャンバー半径が小さすぎる場合、応力の釣り合いが取れなくなり、結果としてやはり応力が増加する。結果的に、曲げながら接触圧を均等に分配することにより、ねじの長さに沿った摩耗がより均等に生じるので、早期の不具合が起こりにくい。
【0008】
実施形態の一態様では、各フランクは直線であり、各フランクはそれぞれの円弧によって、隣接した山頂および/または谷底に接続される。
【0009】
実施形態の別の態様では、各キャンバー半径の円弧に垂直なねじ山形状の中心線は、連結具の長手方向軸線に対して、少なくとも1つのねじ山の始まりに隣接して鋭角であってほぼ垂直な第1の角度で傾斜し、また少なくとも1つのねじ山の終わりに隣接して第2の角度で傾斜し、第2の角度は第1の角度よりも小さい。
【0010】
実施形態の別の態様では、各キャンバー半径は、連結具の外径の少なくとも5倍である。実施形態の別の態様では、ねじ山形状は非対称である。実施形態の別の態様では、ねじ山形状は台形である。実施形態の別の態様では、少なくとも1つのねじ山のスイープ角は1~10度である。実施形態の別の態様では、谷底および山頂は同心である。実施形態の別の態様では、谷底の円弧長さおよび山頂の円弧長さは等しい。実施形態の別の態様では、谷底の円弧長さおよび山頂の円弧長さは等しくない。
【0011】
実施形態の別の態様では、接続部は、雌ねじ山を有する雌連結部と、雄ねじ山を有し、雌ねじ山にねじ込まれる雄連結部とを含む。連結具が圧縮状態にあるとき、フランクのうち一方は接触フランクであり、他方のフランクは非接触フランクである。各フランクは直線である。各ねじ山形状は、それぞれのキャンバー半径の円弧に垂直な中心線を有する。各フランクは、それぞれの中心線に対して傾斜したフランク角を有する。各接触フランク角は、それぞれの非接触フランク角よりも大きい。
【0012】
任意に、各非接触フランク角は45度未満である。EP‘911号特許は、ねじ山頂点から測定されるものとしてフランク角を定義しているので、EP‘911号の教示は、フランク角が45度超過であると解釈される。非接触フランク角を最小限に抑えることによって、分解が容易になり、分解中の衝撃波の伝達が促進される。
【0013】
実施形態の別の態様では、各連結具は金属または合金から作成される。雄連結部は、外径部分と、雄ねじ山を有する縮径部分と、2つの部分を接続する肩部とを有する。肩部は、雌連結部の端部と係合されて、金属間シールを形成する。
【0014】
実施形態の別の態様では、衝撃削孔用のドリルロッドは、ロッド本体と、雌ねじ山を有し、ロッド本体の第1の端部に溶接された雌連結部と、雄ねじ山を有し、ロッド本体の第2の端部に溶接された雄連結部とを含む。任意に、連結具の外径は5~20センチメートルであり、各キャンバー半径は1メートル超過である。
【0015】
実施形態の別の態様では、ドリルストリングはドリルロッドを含む。
【0016】
以下、本発明の特定の実施例について、単なる例として、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態による、雄連結具および雌連結具を有し、各連結具がキャンバー付きねじ山を含む、ドリルロッドを示す図である。
図2A】キャンバー付きねじを設計するためのキャンバー付きつる巻き線(cambered helix)を示す図である。
図2B】キャンバー付きねじのパラメータを示す図である。
図3A-3G】キャンバー付きつる巻き線の式を示す図である。
図4】雄および雌キャンバー半径の関係を示す図である。
図5】雄キャンバー付きねじのプロファイルを示す図である。
図6A-6B】図5の部分の拡大図である。
図7】キャンバー付き雌ねじのプロファイルを示す図である。
図8A-8B】図7の部分の拡大図である。
図9】互いにねじ止めされた雄および雌連結具を示す図である。
図10a-10c】荷重ケースとしての回転曲げを使用するDang van基準を使用してキャプチャされた安全係数画像を示す図であり、図10aは、Rbm/Rbfが好ましい範囲内にあるときのDang van基準を示し、図10bは、Rbm/Rbfが好ましい範囲の上にあるときのDang van基準を示し、図10cは、Rbm/Rbfが好ましい範囲の下にあるときのDang van基準を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本開示の一実施形態による、雌連結具2および雄連結具4を有し、各連結具がキャンバー付きねじ山2t、4tをそれぞれ含む、ドリルロッド1を示している。ドリルロッド1は、鋼など、金属または合金から作製されてもよい。ドリルロッド1はまた、浸炭などによって表面硬化されてもよい。各連結具2、4は、中間ロッド本体3に溶接5などで取り付けられて、ドリルロッド1の長手方向端部を形成してもよい。各溶接5は、摩擦溶接など、シームレスであってもよい。ドリルロッド1には、中を通る流れ孔が形成されてもよい。ドリルロッド1は6メートルの長さを有してもよい。
【0019】
ドリルストリング(図示なし)は、一端のドリルビットおよび他端のシャンクアダプタと共に、複数のドリルロッド1を互いにねじ止めすることによって(図9)形成されてもよい。ドリルビットおよびシャンクアダプタも、キャンバー付きねじ山2t、4tのどちらかを有してもよい。ドリルストリングは、トップハンマー(図示なし)またはダウンホールハンマー(図示なし)を用いた衝撃削岩に使用されてもよい。ダウンホールハンマーが使用される場合、ハンマーは、ドリルストリングの一部として組み立てるため、キャンバー付きねじ山2t、4tそれぞれを有してもよい。
【0020】
あるいは、ドリルロッド1は一対の雄連結具4を有してもよく、一対の雌連結具2を有するスリーブ(図示なし)が、一対のドリルロッドを互いに接続するのに使用されてもよい。あるいは、キャンバー付きねじ山2t、4tは、油田ドリルパイプ、油田ケーシングもしくはライナー、油田生産用導管、または油田吸盤ロッドなど、他のタイプのダウンホール管を接続するのに使用されてもよい。
【0021】
雄連結部4は、ロッド本体3の下端部に接続する外径上部部分と、外側の雄ねじ山4tが外表面に形成された縮径下部部分と、上部および下部部分を接続する肩部4sとを有する、管状体を有してもよい。雄連結部の上部部分は、外表面に形成された複数のレンチフラットを有してもよい。上部部分の流れ孔は、ノズルと、のど部の一部分とを含んでもよい。のど部は、肩部4sおよび下部部分を通って延在してもよい。
【0022】
雌連結部2は、ロッド本体3の上端部に接続される下部部分を有する管状体を有してもよい。雌連結部2は、その流れ孔に隣接して内表面に形成された内側の雌ねじ山2tを有してもよい。流れ孔は、別のドリルロッドの雄連結部4の縮径下部部分を受け入れるようにサイズ決めされてもよい(図9)。雄連結部4は、肩部4sが雌連結具の頂部2pに当接するまで、雌連結部2にねじ込まれてもよく、それによって、流れ孔を隔離すると共に2つのドリルロッドを互いに締結する、金属間シールが作られる。雌連結部2の流れ孔は、雌ねじ山2tの下端部に隣接して配置されたディフューザを含んでもよい。
【0023】
あるいは、雄連結部4はロッド本体3の上端部に接続されてもよく、雌連結部2はロッド本体の下端部に接続されてもよい。この代替例では、雄連結部4のノズルはディフューザとなり、雌連結部2のディフューザはノズルとなる。
【0024】
図2Aは、キャンバー付きねじ2t、4tを設計するためのキャンバー付きつる巻き線6を示している。図2Bは、キャンバー付きねじ2t、4tのパラメータを示している。図3A~3Hは、キャンバー付きつる巻き線6の式を示している。キャンバー付きねじ2t、4tを設計するのに、ドリルロッド1の寸法を利用して、開始径D、終了径D、および(線形)長さLなど、1つまたは複数のねじ山パラメータが指定されてもよい。ねじ山パラメータが指定されると、図3Aの式を利用してキャンバー半径Rが計算されてもよい。キャンバー半径Rは、中心点Cから延在してもよく、雄ねじ山4tの山頂および雌ねじ山2tの谷底を規定してもよい。ねじ山パラメータは、キャンバー半径Rが、5倍または10倍など、連結部2、4の外径よりも大きくなるように、指定されてもよい。連結部2、4の外径は5~20センチメートルであってもよく、キャンバー半径Rは、1.05メートル~1.7メートルなど、1メートル超過であってもよい。
【0025】
キャンバー半径Rが計算されると、図3Bの式を利用してスイープ角γが計算されてもよい。スイープ角γは1~10度であってもよい。スイープ角γが計算されると、図3C~3Gのパラメトリック計算式を使用して、キャンバー付きつる巻き線6が生成されてもよい。キャンバー付きつる巻き線6は、キャンバー付きねじ2t、4tのアウトラインを規定するのに使用されてもよい。パラメトリック計算式では、R(t)は、ドリルロッド1の長手方向軸線Gを中心にしたキャンバー付きつる巻き線の動径座標であってもよい。図3E~3Gの式の規約は、左ねじの場合は負(図示)、右ねじの場合は正であってもよい。
【0026】
雌ねじ山2tおよび雄ねじ山4tは、1つのドリルロッド1の雄ねじ山が別のドリルロッドの雌ねじ山にねじ込まれてもよいように(図9)、補完的であってもよい。ねじ山2t、4tのねじ止めおよびねじ抜きを容易にするため、雄ねじ山4tおよび雌ねじ山2tは、互いに類似しているが同一の鏡像ではなくてもよい。上述の設計プロセスは、雌ねじ山2tに関して一回、雄ねじ山4tに関してもう一回実施されてもよい。雌ねじ山2tおよび雄ねじ山4tはそれぞれ二条ねじであってもよい。
【0027】
ねじの局在化領域における応力集中を回避するため、雄ねじRbmのキャンバー半径と雌ねじRbfのキャンバー半径との比は、>1.0かつ≦1.1、好ましくは1.01~1.05、さらにより好ましくは1.01~1.03であるべきである。
【0028】
換言すれば、Rbm/Rbfは、>1.0~1.1、好ましくは1.01~1.05、より好ましくは1.01~1.03である。
【0029】
図4は、雄および雌キャンバー半径の比が好ましい範囲内である場合の一例を示している。
【0030】
比が1.0未満の場合、第1の雄ねじ20の領域における応力の高集中が存在することになる。これが問題になるのは、すべての荷重がねじの始まりのみに位置することになって、高応力集中を引き起こし、ツール寿命が低下し突然の破断のリスクが増加する可能性があるためである。比が1.1超過の場合、最も遠い雄ねじ22の領域における応力の高集中が存在することになる。これが問題になるのは、すべての荷重がねじ山のうち最遠部のねじ山にかかることになり、高応力集中を引き起こし、したがってツール寿命が低減し突然の破断のリスクが低減されるためである。雌ねじのキャンバー半径が雄ねじのキャンバー半径よりも大きくなるように比を入れ換えた場合、これは応力に対して悪影響を有する。好ましい範囲は、可能な限り最も低くした場合に最も均等に分配された応力が達成される、比の範囲に関する。
【0031】
好ましくは、各キャンバー半径(R、Rb-T)は、700~1900mm、好ましくは800~1700mm、さらにより好ましくは900~1500mm、さらにより好ましくは1050~1400mm、さらにより好ましくは1100~1300mmである。
【0032】
あるいは、キャンバー付きねじ2t、4tは右ねじであってもよい。あるいは、雌ねじ山2tおよび雄ねじ山4tはそれぞれ一条ねじまたは三条ねじであってもよい。
【0033】
図5は、キャンバー付き雄ねじ4tのプロファイル7mを示している。図6Aおよび6Bは、図5の部分の拡大図である。雄ねじ山4tのアウトラインが生成されると、プロファイル7mが決定されてもよい。プロファイル7mは、肩部4sからのスタンドオフ距離Xで始まってもよい。プロファイル7mは、プロファイルの山頂が、長手方向軸線Gに平行であって終了径Dにオフセットした軸線Gと交差する地点で終わってもよい。スイープ角γは、プロファイル7mの始まりから終わりまでの弓状範囲を規定してもよく、1~10度であってもよい。
【0034】
図6Aを特に参照すると、プロファイル7mのねじ山形状は第1の山頂Aを含んでもよい。ねじ山形状は台形形状を有してもよい。第1の山頂Aは、(外側)キャンバー半径Rを有する円弧であってもよく、第2の円弧Aまで延在してもよい。中心線Cは、鋭角であってほぼ垂直な第1の角度δでオフセット軸Gに対して傾斜してもよい。第2の円弧Aは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第2の円弧Aは、第1の山頂Aから非接触フランクEまで延在してもよい。第2の円弧Aは、第1の山頂Aおよび非接触フランクEに対して接線方向であってもよい。
【0035】
非接触フランクEは、中心線Cに対して第1のフランク角αで傾斜した直線であってもよい。第1のフランク角αは35~55度であってもよく、または第1のフランク角は45度未満であってもよい。非接触フランクEは第2の円弧Aから第3の円弧Aまで延在してもよい。第3の円弧Aは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第3の円弧Aは、非接触フランクEから第1の谷底Aまで延在してもよい。第3の円弧Aは、非接触フランクEおよび第1の谷底Aに対して接線方向であってもよい。ねじ山形状は、第1の谷底Aと第2の山頂Aとの間で高さTを有してもよい。第1の谷底Aは、内側キャンバー半径R-Tを有する円弧であってもよく、第3の円弧Aから第5の円弧Aまで延在してもよい。高さTは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満であってもよいので、キャンバー半径に関して上述したように、内側キャンバー半径R-Tも雄連結部4の外径よりも大きい。第1の谷底Aは第1の山頂Aと同心であってもよい。中心線Cは、各キャンバー半径R、R-Tの円弧に垂直であってもよい。
【0036】
第5の円弧Aは、キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第5の円弧Aは、第1の谷底Aから接触フランクEまで延在してもよい。第5の円弧Aは、第1の谷底Aおよび接触フランクEに対して接線方向であってもよい。接触フランクEは、中心線Cに対して第2のフランク角βで傾斜した直線であってもよい。第2のフランク角βは40~45度であってもよい。第1のフランク角αは第2のフランク角βよりも小さくてもよく、それによって非対称のねじ山形状が得られる。接触フランクEは第5の円弧Aから第6の円弧Aまで延在してもよい。第6の円弧Aは、接触フランクEから第2の山頂Aまで延在してもよい。第6の円弧Aは、接触フランクEおよび第2の山頂Aに対して接線方向であってもよい。第2の山頂Aは、外側キャンバー半径Rを有する円弧であってもよい。
【0037】
ねじ山形状は、プロファイル7mの始まりと第2の山頂Aの中心との間の(円弧長さ)ピッチPを有してもよい。第1の山頂Aは、第2の山頂Aの円弧長さの2分の1にも等しくてもよい、円弧長さXを有してもよい。第1の谷底Aも、円弧長さXの2倍に等しい円弧長さを有してもよい。
【0038】
あるいは、山頂および谷底は異なる円弧長さを有してもよい。あるいは、第2のフランク角は45度未満であってもよい。
【0039】
図6Bを特に参照すると、各キャンバー半径R、R-Tを中心にしたプロファイル7mのキャンバーにより、プロファイル7mの端部に隣接したねじ山形状の中心線Cは、第1の角度δよりも小さい第2の鋭角δで、オフセット軸Gに対して傾斜してもよい。
【0040】
図7は、キャンバー付き雌ねじ2tのプロファイル8fを示す。図8Aおよび8Bは、図7の部分の拡大図である。雌ねじ山2tのアウトラインが生成されると、プロファイル7fが決定されてもよい。プロファイル7fは、頂部2pからのスタンドオフ距離Xで始まってもよい。プロファイル7fは、プロファイルの谷底が、長手方向軸線Gに平行であって終了径Dにオフセットした軸線Gと交差する地点で終わってもよい。雌プロファイル7fのスタンドオフ距離Xは、雄プロファイル7mのスタンドオフ距離とわずかに異なってもよい。スイープ角γは、プロファイル7fの始まりから終わりまでの弓状範囲を規定してもよく、1~10度であってもよい。
【0041】
図8Aを特に参照すると、プロファイル7fのねじ山形状は第1の谷底Aを含んでもよい。ねじ山形状は台形形状を有してもよい。第1の谷底Aは、外側キャンバー半径Rを有する円弧であってもよく、第2の円弧Aまで延在してもよい。雌プロファイル7fの外側キャンバー半径Rは、雄プロファイル7mの外側キャンバー半径とはわずかに異なってもよい。中心線Cは、鋭角であってほぼ垂直な第1の角度δでオフセット軸Gに対して傾斜してもよい。第2の円弧Aは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第2の円弧Aは、第1の谷底Aから非接触フランクEまで延在してもよい。第2の円弧Aは、第1の谷底Aおよび非接触フランクEに対して接線方向であってもよい。非接触フランクEは、中心線Cに対して第1のフランク角αで傾斜した直線であってもよい。第1のフランク角αは35~55度であってもよい。
【0042】
非接触フランクEは第2の円弧Aから第3の円弧Aまで延在してもよい。第3の円弧Aは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第3の円弧Aは、非接触フランクEから第1の山頂Aまで延在してもよい。第3の円弧Aは、非接触フランクEおよび第1の山頂Aに対して接線方向であってもよい。ねじ山形状は、第1の山頂Aと第2の谷底Aとの間で高さTを有してもよい。第1の山頂Aは、内側キャンバー半径R-Tを有する円弧であってもよく、第3の円弧Aから第5の円弧Aまで延在してもよい。雌プロファイル7fの内側キャンバー半径R-Tは、雄プロファイル7mの内側キャンバー半径とはわずかに異なってもよい。第1の山頂Aの終点から延在する一対の仮想線によって示されるように、中心線Cは、第1の山頂Aの中点を通って延在してもよい。中心線Cは、各キャンバー半径R、R-Tの円弧に対して垂直であってもよい。高さTは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満であってもよいので、キャンバー半径に関して上述したように、内側キャンバー半径R-Tも雌連結具2の外径よりも大きい。
【0043】
第5の円弧Aは、外側キャンバー半径Rの1パーセント未満の半径を有してもよい。第5の円弧Aは、第1の山頂Aから接触フランクEまで延在してもよい。第5の円弧Aは、第1の山頂Aおよび接触フランクEに対して接線方向であってもよい。接触フランクEは、中心線Cに対して第2のフランク角βで傾斜した直線であってもよい。第2のフランク角βは40~45度であってもよい。第1のフランク角αは第2のフランク角βよりも小さくてもよく、それによって非対称のねじ山形状が得られる。非対称のねじ山形状は、中心線Cからオフセットした地点で交差するフランクE、Eの突出によってさらに示される。雌プロファイル7fの第2のフランク角βは、雄プロファイル7mの第2のフランク角とはわずかに異なってもよい。接触フランクEは第5の円弧Aから第6の円弧Aまで延在してもよい。第6の円弧Aは、接触フランクEから第2の谷底Aまで延在してもよい。第6の円弧Aは、接触フランクEおよび第2の谷底Aに対して接線方向であってもよい。第2の谷底Aは、外側キャンバー半径Rを有する円弧であってもよい。
【0044】
ねじ山形状は、プロファイル7mの始まりと第2の谷底Aの中心との間の(円弧長さ)ピッチPを有してもよい。第1の谷底Aは、第2の谷底Aの円弧長さの2分の1にも等しくてもよい、円弧長さXを有してもよい。雌プロファイル7fの円弧長さXは、雄プロファイル7mの円弧長さと異なってもよい。第1の山頂Aも、円弧長さXの2倍未満の円弧長さを有してもよい。
【0045】
あるいは、谷底および山頂は同じ円弧長さを有してもよい。
【0046】
図8Bを特に参照すると、各キャンバー半径R、R-Tを中心にしたプロファイル7mのキャンバーにより、プロファイル7mの端部に隣接したねじ山形状の中心線Cは、第1の角度δよりも小さい第2の鋭角δで、オフセット軸Gに対して傾斜してもよい。
【0047】
接触フランクEおよび非接触フランクEに関する言及は、ドリルストリングが圧縮状態にあるときの削孔に関連する。ドリルストリングをドリル孔から外し、ドリルロッドをねじ外しするとき、ドリルストリングは緊張状態にあり、図9に示されるように、接触フランクEは非接触フランクになり、非接触フランクEは接触フランクになる。
【0048】
図9は、互いにねじ止めされた雄連結部4および雌連結部2を示している。ねじプロファイル7m、fが生成されると、各プロファイルは、その切頭などによって、それぞれのキャンバー付きねじ4t、2tの幾何学形状を作成するように適合されてもよい。長手方向軸線Gに沿った各ねじ山2t、4tのキャンバーの曲率により、切頭オジーブ(frusto-ogive)形状がもたらされてもよい。
【0049】
図10a~cは、下記の表1で説明されるように、雄ねじRbmおよび雌ねじRbfのキャンバー半径の間の異なる比を有する連結具に関して、荷重ケースとしての回転曲げを使用するDang van基準を使用してキャプチャされた安全係数画像を示している。
【0050】
画像はDang van基準を使用してキャプチャした。LS-Dynaでの陰的分析を使用して、nCodeソフトウェアを用いてDang van基準を抽出する。Dang van基準の値が増加するにつれて、不具合のリスクが増加する。したがって、色が濃いほど不具合のリスクが高いことを意味する。Rbm/Rbfが好ましい範囲内にある場合、Rbm/Rbfが好ましい範囲の上または下にあるときと比較して不具合のリスクが減少し、また加えて、不具合のリスクがより均等に分配されることが分かる。
図1
図2A
図2B
図3A-3G】
図4
図5
図6A-6B】
図7
図8A-8B】
図9
図10a-10c】
【国際調査報告】