(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】AP-1転写因子をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240305BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240305BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240305BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240305BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240305BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240305BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240305BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240305BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/863 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240305BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240305BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/85 Z
C12N15/866 Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
C07K19/00
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/17
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/864 Z
C07K14/47
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551754
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022017733
(87)【国際公開番号】W WO2022182890
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522421853
【氏名又は名称】ライエル・イミュノファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LYELL IMMUNOPHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】パーク,スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】ボン,クイニー
(72)【発明者】
【氏名】セイザー,ブライス
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ラジョワ,マーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
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4C087AA01
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4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
AP-1転写因子(すなわち、c-Jun)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが本明細書で開示される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、コドン最適化される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、リンカー、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、切断型EGFR、及びそれらの組み合わせをコードする1つ以上の追加のヌクレオチド配列を含む。そのようなポリヌクレオチドを含む細胞、ベクター、及び医薬組成物も本明細書で開示される。疾患または障害(例えば、がん)を処置するためのそのようなポリヌクレオチド、細胞、ベクター、及び医薬組成物の使用も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
b.配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
c.配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
d.配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
e.配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
f.配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
g.配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
h.配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも55%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;または
i.配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列
を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の前記核酸配列を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の前記核酸配列を含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号4に記載の前記核酸配列を含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号5に記載の前記核酸配列を含む、請求項8に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号6に記載の前記核酸配列を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号7に記載の前記核酸配列を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号8に記載の前記核酸配列を含む、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも55%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号9に記載の前記核酸配列を含む、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、前記ポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号10に記載の前記核酸配列を含む、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記AP-1転写因子は、配列番号9に記載の前記配列と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から19のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
リガンド結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1から20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記リガンド結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)、キメラシグナル伝達受容体(CSR)、T細胞受容体模倣物(TCR模倣物)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記CARは、標準的CAR、スプリットCAR、オフスイッチCAR、オンスイッチCAR、第一世代CAR、第二世代CAR、第三世代CAR、または第四世代CARとして設計される、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
前記リガンド結合タンパク質は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び/または細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項21から23のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項25】
前記抗原結合ドメインは、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、αvβ6または別のインテグリン、BCMA、Braf、B7-H3、B7-H6、CA9(炭酸脱水酵素9)、CCL-1(C-Cモチーフケモカインリガンド1)、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD47、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79a、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD171、CD352、CEA(がん胎児性抗原)、クローディン18.2、クローディン6、c-MET、DLL3(デルタ様タンパク質3)、DLL4、ENPP3(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3)、EpCAM、EPG-2(上皮糖タンパク質2)、EPG-40、エフリンB2、EPHa2(エフリン受容体A2)、ERBB二量体、エストロゲン受容体、ETBR(エンドセリンB受容体)、FAP-α(線維芽細胞活性化タンパク質α)、胎児AchR(胎児アセチルコリン受容体)、FBP(葉酸結合タンパク質)、FCRL5、FR-α(葉酸受容体アルファ)、GCC(グアニルシクラーゼC)、GD2、GD3、GPC2(グリピカン-2)、GPC3、gp100(糖タンパク質100)、GPNMB(糖タンパク質NMB)、GPRC5D(Gタンパク質共役受容体5D)、HER2、HER3、HER4、B型肝炎表面抗原、HLA-A1(ヒト白血球抗原A1)、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)、HMW-MAA(ヒト高分子量黒色腫関連抗原)、IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)、Igカッパ、Igラムダ、IL-22Ra(IL-22受容体アルファ)、IL-13Ra2(IL-13受容体アルファ2)、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、LI細胞接着分子(LI-CAM)、Liv-1、LRRC8A(8ファミリーメンバーAを含有するロイシンリッチリピート)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MART-1(メランA)、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、MCSP(黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、メソテリン、ムチン1(MUC1)、MUC16、MHC/ペプチド複合体(例えば、AFP、KRAS、HPV、NY-ESO、MAGE-A、及びWT1に由来するペプチドと複合化したHLA-A)、NCAM(神経細胞接着分子)、ネクチン-4、NKG2D(ナチュラルキラー群2メンバーD)リガンド、NY-ESO、腫瘍胎児抗原、PD-1、PD-L1、PRAME(黒色腫優先発現抗原)、プロゲステロン受容体、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、ROR1、ROR2、SIRPα(シグナル調節タンパク質α)、SLIT、SLITRK6(NTRK様タンパク質6)、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、サバイビン、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TPBG(栄養膜糖タンパク質)、Trop-2、VEGFR1(血管内皮増殖因子受容体1)、VEGFR2、ならびにHIV、HBV、HCV、及び他の病原体に由来する抗原、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される抗原と特異的に結合する、請求項24に記載のポリヌクレオチド。
【請求項26】
前記抗原結合ドメインは、ROR1と特異的に結合する、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記抗原結合ドメインは、GPC2と特異的に結合する、請求項25に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記共刺激ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、IL-7、IL-21、IL-23、IL-15、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、4-1BB/CD137、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、OX40、DAP10、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24から27のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記共刺激ドメインは、4-1BB/CD137共刺激ドメインを含む、請求項28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
前記膜貫通ドメインは、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2C、CD19の膜貫通ドメイン領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24から29のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインを含む、請求項24から30のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、FcRガンマ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」)、FcεRI、CD66d、CD32、DAP10、DAP12由来の細胞内シグナル伝達ドメイン領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24から31のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項32に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記TCRは、腫瘍抗原/MHC複合体と特異的に結合する、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記腫瘍抗原は、AFP、CD19、BCMA、CLL-1、CS1、CD38、CD19、TSHR、CD123、CD22、CD30、CD171、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、Tn Ag、PSMA、ROR1、ROR2、GPC1、GPC2、FLT3、FAP、TAG72、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、MUC16、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WTl、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-Al、レグマイン、HPV、(例えば、HPV E6、E7)、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビング、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MARTl、Ras変異体(例えば、HRAS、KRAS、NRAS)、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、CD2、CD3ε、CD4、CD5、CD7、APRILタンパク質の細胞外部分、ネオアンチゲン、またはそれらの任意の組み合わせに由来する、請求項34に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
前記AP-1転写因子は、リンカーによってキメラ結合タンパク質と連結される、請求項21から35のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
前記リンカーは、切断可能なリンカーを含む、請求項36に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記リンカーは、P2Aリンカー、T2Aリンカー、F2Aリンカー、E2Aリンカー、フーリン切断部位、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項36または37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記リンカーは、配列番号10に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項36から38のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記リンカーは、配列番号10に記載の前記アミノ酸配列を含む、請求項36から39のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
切断型EGFR(EGFRt)をコードする核酸配列をさらに含む、請求項1から38のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記EGFRtは、配列番号24に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記EGFRtは、配列番号24に記載の前記アミノ酸配列を含む、請求項41または42に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記EGFRtは、リンカーによって前記AP-1転写因子及び/または前記キメラ結合タンパク質と連結される、請求項41から43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記リンカーは、切断可能なリンカーを含む、請求項44に記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
前記リンカーは、P2Aリンカー、T2Aリンカー、F2Aリンカー、E2Aリンカー、フーリン切断部位、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項44または45に記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
前記リンカーは、配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項44から46のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項48】
リンカーは、配列番号12に記載の前記アミノ酸配列を含む、請求項44から47のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項49】
請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド及び調節エレメントを含む、ベクター。
【請求項50】
多シストロン性発現ベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
前記調節エレメントは、プロモーターを含む、請求項49または50に記載のベクター。
【請求項52】
前記プロモーターは、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター、EF1aプロモーター、ユビキチンプロモーター、またはそれらの組み合わせを含む、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
前記ベクターは、ウイルスベクター、哺乳動物ベクター、または細菌ベクターを含む、請求項49から52のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項54】
アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項49から53のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項55】
レンチウイルスである、請求項54に記載のベクター。
【請求項56】
請求項1から46のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項47から51のいずれか1項に記載のベクターを含む、組成物。
【請求項57】
請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、または請求項56に記載の組成物を含む、キット。
【請求項58】
請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、または請求項56に記載の組成物によってコードされるAP-1転写因子を含む、ポリペプチド。
【請求項59】
請求項58に記載のポリペプチド、請求項21から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによってコードされるリガンド結合タンパク質、及び/または請求項41から48のいずれか1項に記載のEGFRtを含む、ポリペプチドのセット。
【請求項60】
請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、請求項56に記載の組成物、請求項58に記載のポリペプチド、または請求項59に記載のポリペプチドのセットを含む、細胞。
【請求項61】
前記細胞は、免疫細胞を含む、請求項60に記載の細胞。
【請求項62】
前記細胞は、T細胞、B細胞、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、幹細胞、または人工多能性幹細胞を含む、請求項60または61に記載の細胞。
【請求項63】
請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、請求項58に記載のポリペプチド、請求項59に記載のポリペプチドのセット、または請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項64】
治療を必要とする対象を処置するための、請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞または請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
治療に有用な細胞の疲弊を低減または予防するための、請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、請求項56に記載の組成物、請求項58に記載のポリペプチド、請求項59に記載のポリペプチドのセット、請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞、または請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項66】
疾患または状態の処置または予防を必要とする対象において疾患または状態を処置または予防する際の医薬の製造のための、請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞または請求項63に記載の医薬組成物の使用。
【請求項67】
前記疾患または前記状態は、がんである、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
治療に有用な細胞の疲弊を予防または低減するための、請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、請求項56に記載の組成物、請求項58に記載のポリペプチド、請求項59に記載のポリペプチドのセット、請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞、または請求項63に記載の医薬組成物の使用。
【請求項69】
疾患または状態の処置または予防を必要とする対象において疾患または状態を処置または予防する方法であって、請求項60から62のいずれか1項に記載の細胞または請求項63に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項70】
前記疾患または前記状態は、がんである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
細胞中のc-Junポリペプチドの発現を増加させる方法であって、請求項1から48のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項49から55のいずれか1項に記載のベクター、請求項56に記載の組成物、請求項58に記載のポリペプチド、または請求項59に記載のポリペプチドのセットを含むように、細胞を改変することを含み、前記改変後、前記細胞中の前記c-Junポリペプチドの前記発現が、野生型c-Junポリヌクレオチドにより改変された対応する細胞と比較して増加する、前記方法。
【請求項72】
前記c-Junポリペプチドの前記発現は、前記対応する細胞と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、または少なくとも約1,000倍以上増加する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記c-Junポリペプチドの前記発現は、前記対応する細胞と比較して、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍増加する、請求項71または72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2021年2月25日に出願された米国特許仮出願第63/153,879号、2021年10月28日に出願された同第63/263,231号、及び2022年2月11日に出願された同第63/309,380号の優先権の利益を主張するものであり、各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
電子的に提出された配列表の内容(名称:4385_068PC03_Seqlisting_ST25.txt、サイズ:99,232バイト、及び作成日:2022年2月22日)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示の分野
本開示の主題は、概してAP-1転写因子をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列に関するポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞、ベクター、使用、及びキットに関する。
【背景技術】
【0004】
がん免疫療法は、T細胞(感染細胞及び疾患細胞の免疫系の主な殺傷細胞)を利用して、腫瘍細胞を攻撃及び死滅させることに依拠する。しかしながら、腫瘍細胞を標的とし、死滅させる免疫細胞の能力は、腫瘍微小環境内に存在する免疫応答の様々なインヒビターの存在によって抑制される。したがって、CAR T細胞は、特定のがんの処置において様々な成功を収めてきたが(例えば、KYMRIAH(商標)(チサゲンレクロイセル、Novartis)及びYESCARTA(商標)(アキシカブタゲンシロロイセル、Kite/Gilead)がFDAに認可されている)、問題も残されている。例えば、CAR T細胞免疫療法の成功は、レシピエントの体内でのCAR T増殖の程度によって制限される場合が多く、一般に大量の細胞注入が必要とされる。さらに、移植されたCAR T細胞の疲弊及び持続性の喪失が観察され、臨床効果の低下及び再発の可能性につながる。
【0005】
したがって、がん患者において許容される安全性プロフィール及び高い効力を有する新規の改善された治療の選択肢が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
a)配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;b)配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;c)配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;d)配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;e)配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;f)配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;g)配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;h)配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも55%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;またはi)配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。
【0007】
配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。特定の態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の核酸配列を含む。
【0008】
配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドも本明細書で提供される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の核酸配列を含む。
【0009】
配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号4に記載の核酸配列を含む。
【0010】
本開示は、配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドをさらに提供する。特定の態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号5に記載の核酸配列を含む。
【0011】
配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号6に記載の核酸配列を含む。
【0012】
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。特定の態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号7に記載の核酸配列を含む。
【0013】
配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号8に記載の核酸配列を含む。
【0014】
配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも55%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドが本明細書で提供される。特定の態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号9に記載の核酸配列を含む。
【0015】
配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、ヌクレオチド配列は、AP-1転写因子をコードする、ポリヌクレオチドも本明細書で提供される。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号10に記載の核酸配列を含む。
【0016】
いくつかの態様では、上記のポリヌクレオチドのいずれか1つによってコードされるAP-1転写因子は、配列番号13に記載の配列と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、リガンド結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。特定の態様では、リガンド結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)、キメラシグナル伝達受容体(CSR)、T細胞受容体模倣物(TCR模倣物)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、CARは、標準的CAR、スプリットCAR、オフスイッチCAR、オンスイッチCAR、第一世代CAR、第二世代CAR、第三世代CAR、または第四世代CARとして設計される。
【0018】
いくつかの態様では、リガンド結合タンパク質は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、及び/または細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の態様では、抗原結合ドメインは、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、αvβ6または別のインテグリン、BCMA、Braf、B7-H3、B7-H6、CA9(炭酸脱水酵素9)、CCL-1(C-Cモチーフケモカインリガンド1)、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD47、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79a、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD171、CD352、CEA(がん胎児性抗原)、クローディン18.2、クローディン6、c-MET、DLL3(デルタ様タンパク質3)、DLL4、ENPP3(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3)、EpCAM、EPG-2(上皮糖タンパク質2)、EPG-40、エフリンB2、EPHa2(エフリン受容体A2)、ERBB二量体、エストロゲン受容体、ETBR(エンドセリンB受容体)、FAP-α(線維芽細胞活性化タンパク質α)、胎児AchR(胎児アセチルコリン受容体)、FBP(葉酸結合タンパク質)、FCRL5、FR-α(葉酸受容体アルファ)、GCC(グアニルシクラーゼC)、GD2、GD3、GPC2(グリピカン-2)、GPC3、gp100(糖タンパク質100)、GPNMB(糖タンパク質NMB)、GPRC5D(Gタンパク質共役受容体5D)、HER2、HER3、HER4、B型肝炎表面抗原、HLA-A1(ヒト白血球抗原A1)、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)、HMW-MAA(ヒト高分子量黒色腫関連抗原)、IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)、Igカッパ、Igラムダ、IL-22Ra(IL-22受容体アルファ)、IL-13Ra2(IL-13受容体アルファ2)、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、LI細胞接着分子(LI-CAM)、Liv-1、LRRC8A(8ファミリーメンバーAを含有するロイシンリッチリピート)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MART-1(メランA)、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、MCSP(黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、メソテリン、ムチン1(MUC1)、MUC16、MHC/ペプチド複合体(例えば、AFP、KRAS、NY-ESO、MAGE-A、及びWT1に由来するペプチドと複合化したHLA-A)、NCAM(神経細胞接着分子)、ネクチン-4、NKG2D(ナチュラルキラー群2メンバーD)リガンド、NY-ESO、腫瘍胎児抗原、PD-1、PD-L1、PRAME(黒色腫優先発現抗原)、プロゲステロン受容体、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、ROR1、ROR2、SIRPα(シグナル調節タンパク質α)、SLIT、SLITRK6(NTRK様タンパク質6)、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、サバイビン、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TPBG(栄養膜糖タンパク質)、Trop-2、VEGFR1(血管内皮増殖因子受容体1)、VEGFR2、ならびにHIV、HBV、HCV、HPV、及び他の病原体に由来する抗原、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される抗原と特異的に結合する。
【0019】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、ROR1と特異的に結合する。特定の態様では、抗原結合ドメインは、GPC2と特異的に結合する。
【0020】
いくつかの態様では、リガンド結合タンパク質の共刺激ドメインは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、IL-7、IL-21、IL-23、IL-15、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、4-1BB/CD137、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、OX40、DAP10、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、共刺激ドメインは、4-1BB/CD137共刺激ドメインを含む。
【0021】
いくつかの態様では、本明細書に記載のリガンド結合タンパク質の膜貫通ドメインは、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2C、CD19の膜貫通ドメイン領域またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインを含む。
【0022】
いくつかの態様では、リガンド結合ドメインの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、FcRガンマ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」)、FcεRI、CD66d、CD32、DAP10、DAP12由来の細胞内シグナル伝達ドメイン領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む。特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるリガンド結合ドメインはTCRを含み、TCRは、腫瘍抗原/MHC複合体と特異的に結合する。特定の態様では、腫瘍抗原は、AFP、CD19、BCMA、CLL-1、CS1、CD38、CD19、TSHR、CD123、CD22、CD30、CD171、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、Tn Ag、PSMA、ROR1、ROR2、GPC1、GPC2、FLT3、FAP、TAG72、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、MUC16、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gp100、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-Al、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras変異体(例えば、HRAS、KRAS、NRAS)、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、CD2、CD3ε、CD4、CD5、CD7、APRILタンパク質の細胞外部分、ネオアンチゲン、またはそれらの任意の組み合わせに由来する。
【0024】
いくつかの態様では、AP-1転写因子は、リンカーによってリガンド結合タンパク質と連結される。特定の態様では、リンカーは、切断可能なリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、P2Aリンカー、T2Aリンカー、F2Aリンカー、E2Aリンカー、フーリン切断部位、またはそれらの任意の組み合わせである。特定の態様では、リンカーは、配列番号14~18のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、切断型EGFR(EGFRt)をコードする核酸配列をさらに含む。特定の態様では、EGFRtは、配列番号19に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、EGFRtは、配列番号23または24に記載のアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの態様では、EGFRtは、リンカーによってAP-1転写因子及び/またはキメラ結合タンパク質と連結される。特定の態様では、リンカーは、切断可能なリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、P2Aリンカー、T2Aリンカー、F2Aリンカー、E2Aリンカー、フーリン切断部位、またはそれらの任意の組み合わせである。特定の態様では、リンカーは、配列番号14~18のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、リンカーは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0027】
本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド及び調節エレメントを含むベクターが本明細書で提供される。いくつかの態様では、ベクターは、多シストロン性発現ベクターである。特定の態様では、調節エレメントは、プロモーターを含む。いくつかの態様では、プロモーターは、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター、EF1aプロモーター、ユビキチンプロモーター、またはそれらの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター、哺乳動物ベクター、または細菌ベクターを含む。特定の態様では、ベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、レンチウイルスである。
【0029】
本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターを含む組成物も本明細書で提供される。本開示はまた、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、または組成物を含むキットを提供する。本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、または組成物によってコードされるAP-1転写因子を含むポリペプチドが本明細書で提供される。本開示は、ポリペプチド(例えば、AP-1転写因子)、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるリガンド結合タンパク質、及び/または本明細書に記載のEGFRtを含むポリペプチドのセットをさらに提供する。
【0030】
本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットを含む細胞も本明細書で提供される。いくつかの態様では、細胞は、免疫細胞を含む。特定の態様では、細胞は、T細胞、B細胞、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、幹細胞、または人工多能性幹細胞を含む。
【0031】
本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、ポリペプチドのセット、または細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0032】
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞または医薬組成物は、治療を必要とする対象を処置するためのものである。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチド、ポリペプチドのセット、細胞、または医薬組成物は、治療に有用な細胞の疲弊を低減または予防するためのものである。
【0033】
疾患または状態の処置または予防を必要とする対象において疾患または状態を処置または予防する際の医薬の製造のための本明細書に記載の細胞または医薬組成物の使用が本明細書で提供される。いくつかの態様では、疾患または状態は、がんである。
【0034】
治療に有用な細胞の疲弊を予防または低減するための本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチド、ポリペプチドのセット、細胞、または医薬組成物の使用が本明細書で提供される。
【0035】
いくつかの態様では、本開示において提供される疾患または状態の処置または予防を必要とする対象において疾患または状態を処置または予防する方法は、本明細書で開示される細胞または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む。特定の態様では、疾患または状態は、がんである。
【0036】
細胞中のc-Junポリペプチドを増加させる方法であって、本明細書で提供されるポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチドまたはポリペプチドのセットのいずれかを含むよう細胞を改変することを含み、改変後、細胞中のc-Junポリペプチドの発現が、野生型c-Junポリヌクレオチドにより改変された対応する細胞と比較して増加する、方法も本明細書で提供される。
【0037】
いくつかの態様では、c-Junポリペプチドの発現は、対応する細胞と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、または少なくとも約1,000倍以上増加する。いくつかの態様では、c-Junポリペプチドの発現は、対応する細胞と比較して、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍増加する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本明細書に記載の13個の異なる抗ROR1 CAR構築物のグラフ表示を示す。構築物は、(i)c-Junタンパク質(「cJun」);(ii)切断型CD19(「CD19t」);(iii)P2Aリンカー(「P2A」);(iv)ヒトIgκシグナルペプチド(「hIgK」);(v)抗ROR1 scFv(「R12」);及び(vi)切断型EGFR(「EGFRt」)のうちの1つ以上をコードするヌクレオチド配列を含む。構築物#3~#12は、それぞれ、配列番号1~10に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む。構築物#13は、野生型(すなわち、コドン最適化されていない)c-Jun配列(配列番号11)を含む。
【
図2A】様々な抗ROR1構築物の形質導入効率を示す。形質導入効率をEGFRt
+cJun
+の細胞のパーセンテージとして示す。示される通り、各抗ROR1構築物を使用して、以下の感染多重度(MOI):20(各構築物の1番目の棒)、10(各構築物の2番目の棒)、5(各構築物の3番目の棒)、及び2(各構築物の最後の棒)で細胞に形質導入した。試験された抗ROR1CAR構築物は、
図1に示されており、(i)構築物#1(すなわち、c-Junが欠如している);(ii)構築物#11(すなわち、配列番号9に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);(iii)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む);(iv)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);及び(v)構築物#12(すなわち、配列番号10に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)を含んでいた。
【
図2B】様々な抗ROR1構築物の形質導入効率を示す。形質導入効率をEGFRt
+R12
+の細胞のパーセンテージとして示す。示される通り、各抗ROR1構築物を使用して、以下の感染多重度(MOI):20(各構築物の1番目の棒)、10(各構築物の2番目の棒)、5(各構築物の3番目の棒)、及び2(各構築物の最後の棒)で細胞に形質導入した。試験された抗ROR1CAR構築物は、
図1に示されており、(i)構築物#1(すなわち、c-Junが欠如している);(ii)構築物#11(すなわち、配列番号9に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);(iii)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む);(iv)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);及び(v)構築物#12(すなわち、配列番号10に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)を含んでいた。
【
図2C】様々な抗ROR1構築物の導入遺伝子発現レベルを示す。1細胞当たりの遺伝子発現レベルを、EGFRt
+細胞のうちのc-Jun発現の幾何平均(gMFI)として示す。示される通り、各抗ROR1構築物を使用して、以下の感染多重度(MOI):20(各構築物の1番目の棒)、10(各構築物の2番目の棒)、5(各構築物の3番目の棒)、及び2(各構築物の最後の棒)で細胞に形質導入した。試験された抗ROR1CAR構築物は、
図1に示されており、(i)構築物#1(すなわち、c-Junが欠如している);(ii)構築物#11(すなわち、配列番号9に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);(iii)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む);(iv)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);及び(v)構築物#12(すなわち、配列番号10に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)を含んでいた。
【
図2D】様々な抗ROR1構築物の導入遺伝子発現レベルを示す。1細胞当たりの遺伝子発現レベルを、EGFRt
+細胞のうちの抗ROR1(R12)scFv発現の幾何平均(gMFI)として示す。示される通り、各抗ROR1構築物を使用して、以下の感染多重度(MOI):20(各構築物の1番目の棒)、10(各構築物の2番目の棒)、5(各構築物の3番目の棒)、及び2(各構築物の最後の棒)で細胞に形質導入した。試験した抗ROR1 CAR構築物を
図1に試験された抗ROR1CAR構築物は、
図1に示されており、(i)構築物#1(すなわち、c-Junが欠如している);(ii)構築物#11(すなわち、配列番号9に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);(iii)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む);(iv)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む);及び(v)構築物#12(すなわち、配列番号10に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)を含んでいた。
【
図3A】様々なコドン最適化c-Jun配列を含む抗ROR1 CAR構築物の形質導入効率を示す。形質導入効率を、様々なMOI(x軸)におけるEGFRt
+R12CAR
+の細胞のパーセンテージ(y軸)として示す。以下の抗ROR1 CAR構築物に関する結果を示す:(i)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(円);(ii)構築物#5(すなわち、配列番号3に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(四角);(iii)構築物#4(すなわち、配列番号2に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(三角);及び(iv)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む)(菱形)。円で囲まれたデータ点は、グラフの右にある表に示される通りの様々な構築物間の比較のために使用される力価を表す。
【
図3B】様々なコドン最適化c-Jun配列を含む抗ROR1 CAR構築物の導入遺伝子発現レベルを示す。形質導入効率を、様々なMOI(x軸)におけるEGFRt
+R12CAR
+の細胞のパーセンテージ(y軸)として示す。以下の抗ROR1 CAR構築物に関する結果を示す:(i)構築物#3(すなわち、配列番号1に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(小円);(ii)構築物#6(すなわち、配列番号4に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(小四角);(iii)構築物#7(すなわち、配列番号5に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(三角);(iv)構築物#8(すなわち、配列番号6に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(逆三角);(v)構築物#13(すなわち、野生型c-Jun配列を含む)(菱形);(vi)構築物#9(すなわち、配列番号7に記載のコドン最適化c-Jun配列を含む)(大円);及び(vii)構築物#2(すなわち、c-Junが欠如し、切断型CD19を含む)(大四角)。円で囲まれたデータ点は、グラフの右にある表に示される通りの様々な構築物間の比較のために使用される力価を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
概要
本開示は、Junがん原遺伝子、AP-1転写因子サブユニット(「c-Jun」;本明細書では「AP-1」とも呼ばれる)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)に関する。本明細書に記載される通り、本明細書で開示されるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを自然界に存在する参照ポリヌクレオチドとは(例えば、構造的及び/または機能的に)異なるものにする1つ以上の特徴を含む。例えば、本開示の別の場所にさらに記載されている通り、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている(すなわち、合成である)。いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドは、以下のものの1つ以上をコードする1つ以上の追加のヌクレオチド配列をさらに含む:リンカー、シグナルペプチド、抗原結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、切断型EGFR、及びそれらの組み合わせ。
【0040】
定義
本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の用語をまず定義する。本出願で使用される場合、本明細書で明示的に示される場合を除き、以下の各用語は以下に記載される意味を有するものとする。さらなる定義は本出願の全体を通して記載される。
【0041】
「a」または「an」なる用語で示される実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a nucleotide sequence(ヌクレオチド配列)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すものとして理解される点に留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、ならびに「one or more」(1つ以上の)、及び「at least one」(少なくとも1つの)は、本開示では互換的に用いられる場合がある。各請求項は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合もある点にも留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の列挙と関連して「~だけの」、「~のみ」などの排他的な語の使用に対する、または否定的限定の使用に対する先行詞としての役割を果たすことが意図される。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「及び/または」は、他の有無にかかわらず、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの特定の開示とみなされるべきである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」といった語句で使用される「及び/または」なる用語は、以下の態様、すなわち、A、B、及びC、A、B、またはC、AまたはC、AまたはB、BまたはC、A及びC、A及びB、B及びC、A(のみ)、B(のみ)、ならびにC(のみ)のそれぞれを包含するものとする。
【0043】
態様が「~を含む」という語を用いて本明細書で説明されている場合は常に、「~からなる」及び/または「本質的に~からなる」という用語で説明されている別の形で類似する態様も提供されるものと理解されたい。
【0044】
本明細書で使用される場合、目的とする1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、別に明記されない限り、または文脈から明白でない限り(そのような数が、可能性のある値の100%を上回るであろう場合を除いて)、明記された基準値と同様の値及び明記された基準値のいずれかの(それより大きいか、または小さい)方向で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下にある値の範囲内にある値を指す。「およそ」または「約」という用語が本明細書中で特定の値に適用される場合、「およそ」または「約」という用語を伴わない値も本明細書で開示される。
【0045】
本明細書に記載される通り、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値を含み、適切な場合、その分数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ug」及び「uM」という用語は、それぞれ「μg」及び「μΜ」と交換可能に使用される。
【0047】
別段の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用される用語の多くについての一般的な辞書を与えるものである。
【0048】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)で承認された形式で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含むものとする。本明細書において提供する見出しは、本明細書全体を参照することにより得ることができる本開示の様々な態様を限定するものではない。したがって、直下に定義される用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、免疫系の細胞を指す。いくつかの態様では、免疫細胞は、Tリンパ球(「T細胞」)、Bリンパ球(「B細胞」)、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞または好中球から選択される。本明細書で使用される場合、「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は交換可能であり、胸腺によって産生または処理されるあらゆるリンパ球を指す。T細胞の非限定的なクラスとしては、エフェクターT細胞及びTh細胞(CD4+またはCD8+T細胞など)が挙げられる。いくつかの態様では、免疫細胞はTh1細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞はTh2細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞はTc17細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞はTh17細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、腫瘍浸潤細胞(TIL)である。いくつかの態様では、免疫細胞は、Treg細胞である。本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、免疫細胞に分化可能な多能性細胞、例えば、幹細胞(例えば、胚性幹細胞もしくは造血幹細胞)または人工多能性幹細胞も指す。
【0050】
いくつかの態様では、T細胞は、メモリーT細胞である。本明細書で使用される場合、「メモリー」T細胞という用語は、以前にそれらの同種抗原に遭遇し、応答した(例えば、インビボ、インビトロ、もしくはエクスビボで)T細胞または、例えば、抗CD3抗体で刺激された(例えば、インビトロもしくはエクスビボで)T細胞を指す。二次曝露時に「メモリー様」表現型を有する免疫細胞、そのようなメモリーT細胞は、一次曝露中よりも迅速かつ強力な免疫応答を開始するために複製することができる。いくつかの態様では、メモリーT細胞は、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞)、組織常在性メモリーT細胞(TRM細胞)、幹細胞様メモリーT細胞(TSCM細胞)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0051】
いくつかの態様では、T細胞は幹細胞様メモリーT細胞である。本明細書で使用される場合、「幹細胞様メモリーT細胞」、「Tメモリー幹細胞」、または「TSCM細胞」という用語は、CD95、CD45RA、CCR7、及びCD62Lを発現するメモリーT細胞を指し、自己複製する幹細胞様能力ならびにメモリー及びエフェクターサブセットの範囲全体を再構成する多能性を付与されている。
【0052】
いくつかの態様では、T細胞は、セントラルメモリーT細胞である。本明細書で使用される場合、「セントラルメモリーT細胞」または「TCM細胞」という用語は、CD45RO、CCR7、及びCD62Lを発現するメモリーT細胞を指す。セントラルメモリーT細胞は、一般にリンパ節内及び末梢循環で見られる。
【0053】
いくつかの態様では、T細胞は、エフェクターメモリーT細胞である。本明細書で使用される場合、「エフェクターメモリーT細胞」または「TEM細胞」という用語は、CD45ROを発現するが、CCR7及びCD62Lの発現を欠いているメモリーT細胞を指す。エフェクターメモリーT細胞は、リンパ節ホーミング受容体(例えば、CCR7及びCD62L)が欠如しているため、これらの細胞は、一般に末梢循環及び非リンパ組織で見られる。
【0054】
いくつかの態様では、T細胞は、組織常在性メモリーT細胞である。本明細書で使用される場合、「組織常在性メモリーT細胞」または「TRM細胞」という用語は、循環せず、皮膚、肺、及び胃腸管などの末梢組織に常在しているメモリーT細胞を指す。特定の態様では、組織常在性メモリーT細胞は、エフェクターメモリーT細胞でもある。
【0055】
いくつかの態様では、T細胞は、ナイーブT細胞である。本明細書で使用される場合、「ナイーブT細胞」または「TN細胞」という用語は、CD45RA、CCR7、及びCD62Lを発現するが、CD95は発現しないT細胞を指す。TN細胞は、T細胞系統の中で最も未分化な細胞である。TN細胞と抗原提示細胞(APC)との間の相互作用によって、活性化TEFF細胞へのTN細胞の分化及び免疫応答が誘導される。いくつかの態様では、T細胞は、エフェクターT(Teff)細胞である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「細胞操作」は、細胞、例えば、本明細書で開示される免疫細胞の標的改変を指す。いくつかの態様では、細胞操作は、ウイルス遺伝子操作、非ウイルス遺伝子操作、腫瘍特異的標的化を可能にする受容体の導入(例えば、キメラ結合タンパク質)、T細胞機能を向上させる1つ以上の内在性遺伝子の導入、免疫細胞、例えば、T細胞、機能を向上させる1つ以上の合成遺伝子の導入(例えば、本明細書で提供されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」という用語は、細胞間の相互作用及び伝達に対して特定の効果を有する、細胞によって放出される小さな分泌タンパク質を指す。サイトカインの非限定例としては、インターロイキン(例えば、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-13、IL-15、IL-3、IL-5、IL-6、IL-11、IL-10、IL-20、IL-14、IL-16、IL-17、IL-21及びIL-23)、インターフェロン(IFN、例えば、IFNα、IFNβ、及びIFNγ)、腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーメンバー、ならびにトランスフォーミング増殖因子(TGF)ファミリーメンバーが挙げられる。本開示の特定の態様では、宿主免疫細胞におけるTGFβと本明細書で開示されるキメラ活性化受容体との間の相互作用は、1つ以上のサイトカインの発現の増加につながる。いくつかの態様では、サイトカインはインターロイキンである。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21及びそれらの任意の組み合わせから選択される。特定の態様では、サイトカインはIL-2である。IL-2(UniProtKB-P60568)は、抗原刺激または細胞分裂刺激に応答してT細胞によって産生される。IL-2は、T細胞増殖及び免疫応答の制御に重要な他の活性を刺激することが知られている。
【0058】
いくつかの態様では、サイトカインは、インターフェロンである。いくつかの態様では、インターフェロンは、IFNα、IFNβ、及びIFNγから選択される。特定の態様では、インターフェロンはIFNγである。IFNγ(UniProtKB-P01579)は、免疫細胞の機能を促進する活性化リンパ球によって産生される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、タンパク質、ペプチド、またはハプテンなどの任意の天然または合成免疫原性物質を指す。本明細書で使用される場合、「同種抗原」という用語は、免疫細胞(例えば、T細胞)が認識することによって免疫細胞の活性化を誘導する(例えば、サイトカイン産生などのエフェクター機能を誘導する、及び/または細胞増殖のために細胞内シグナルを誘導する)抗原を指す。特定の態様では、抗原は腫瘍抗原を含む。いくつかの態様では、抗原はネオアンチゲンを含む。
【0060】
「がん」とは、体内の異常細胞の無制御の増殖を特徴とする様々な疾患の広範な群を指す。無制御の細胞の分裂及び増殖により悪性腫瘍が形成され、これは、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を通って身体の遠位部に転移する場合もある。本明細書で使用する「がん」は、原発性癌、転移癌、及び再発癌を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、外来作用物質に対する脊椎動物内の生物学的応答を指し、この応答は、これらの作用物質及びそれらに起因する疾患から生物を保護する。免疫応答は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞または好中性)ならびに任意のこれらの細胞または肝臓によって産生される、侵入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がんもしくは他の異常な細胞、または自己免疫もしくは病理学的炎症の場合は正常なヒト細胞もしくは組織に対する選択的標的化、それらとの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/または脊椎動物の体内からの排除をもたらす可溶性高分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用が関係する。免疫反応としては、例えば、T細胞、例えば、エフェクターT細胞もしくはTh細胞、例えば、CD4+もしくはCD8+T細胞などの活性化もしくは阻害、またはTreg細胞の阻害が挙げられる。本明細書で使用される場合、「T細胞」及び「Tリンパ球」という用語は交換可能であり、胸腺によって産生または処理されるあらゆるリンパ球を指す。いくつかの態様では、T細胞はCD4+T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はCD8+T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はNKT細胞である。
【0062】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍免疫応答」という用語は、腫瘍抗原に対する免疫応答を指す。
【0063】
「対象」には、あらゆるヒトまたは非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語は、限定するものではないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ならびにマウス、ラット、及びモルモットなどのげっ歯類といった脊椎動物を含む。いくつかの態様では、対象はヒトである。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という語句は、例えば、腫瘍成長を抑制するための、本明細書に記載の免疫細胞、例えば、T細胞の投与から恩恵を受けるであろう、哺乳動物対象などの対象を含む。
【0064】
「有効量」または「有効な投与量」という用語は、所望の生物学的、治療的、及び/または予防的結果をもたらす薬剤(例えば、キメラ結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列及びコドン最適化c-Jun配列を含むポリヌクレオチドを形質導入した免疫細胞)の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、または原因のうちの1つ以上の低減、改善、緩和、減少、遅延、及び/または軽減、あるいは生物系の任意の他の所望の変化であり得る。固形腫瘍に関して、有効量は、腫瘍の縮小を引き起こし、及び/または腫瘍の成長速度を低下させる(例えば、腫瘍成長を抑制する)か、もしくは他の望ましくない細胞増殖を阻止または遅延させるのに十分な量を含む。いくつかの態様では、有効量は、腫瘍形成を遅延させるのに十分な量である。いくつかの態様では、有効量は、腫瘍再発を予防するか、または遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。治療有効量などが、単回用量で投与されてもよく、または複数用量(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の用量)の投与によって達成されてもよいことを当業者は理解するであろう。疾患退行を促進するか、または疾患の発症または再発を阻害する治療薬の能力は、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトでの有効性を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイで薬剤の活性をアッセイすることによって、熟練した開業医に知られている様々な方法を使用して評価することができる。
【0065】
有効量の組成物(例えば、本明細書に記載の免疫細胞)は、例えば、(i)がん細胞の数を減少させ、(ii)腫瘍サイズを縮小させ、(iii)末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害し、遅延させ、ある程度遅くし、停止させる場合もあり、(iv)腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅くし、停止させる場合もあり、(v)腫瘍成長を阻害し、(vi)腫瘍の発生及び/または再発を予防もしくは遅延させ、及び/または(vii)がんに関連する症状のうちの1以上をある程度軽減することができる。
【0066】
処置に関する「有効」及び「有効性」という用語は、薬理学的有効性と生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、本明細書で開示される組成物(例えば、本明細書に記載の免疫細胞)の患者においてがんの退行を促進する能力を指す。生理的安全性は、本明細書で開示される組成物(例えば、本明細書に記載の免疫細胞)の投与の結果として生じる細胞、器官、及び/または生物レベルでの毒性、あるいは他の有害な生理作用(有害作用)のレベルを指す。
【0067】
「キメラ抗原受容体」及び「CAR」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドのセット、一般に最も単純な形態で2つのポリペプチドを指し、これは、免疫エフェクター細胞における場合、細胞に標的細胞、一般にがん細胞に対する特異性、及び細胞内シグナル生成をもたらす。いくつかの態様では、CARは、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び下で定義される刺激分子及び/または共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、ポリペプチドのセットは、同じポリペプチド鎖にあり、例えば、キメラ融合タンパク質を含む。いくつかの態様では、ポリペプチドのセットは、互いに隣接しておらず、例えば、異なるポリペプチド鎖にある。いくつかの態様では、ポリペプチドのセットは、二量体化分子が存在すると、ポリペプチドを互いに連結させることができる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインと連結させることができる二量体化スイッチを含む。いくつかの態様では、CARの刺激分子は、T細胞受容体複合体(例えば、CD3ゼータ)と会合したゼータ鎖である。いくつかの態様では、細胞質シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの態様では、細胞質シグナル伝達ドメインは、下で定義される少なくとも1つの共刺激分子由来の1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、共刺激分子は、本明細書に記載の共刺激分子、例えば、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、及び/またはCD28から選択される。
【0068】
いくつかの態様では、CARは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含み、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインは、CARスペーサーによって連結される。いくつかの態様では、CARは、CARスペーサーによって膜貫通ドメインと連結された抗原結合ドメインならびに共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの態様では、CARは、CARスペーサーを介して膜貫通ドメインに連結された抗原結合ドメインならびに1つ以上の共刺激分子(複数可)に由来する2つの機能性シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの態様では、CARは、CARスペーサーを介して膜貫通ドメインに連結された抗原結合ドメインならびに1つ以上の共刺激分子(複数可)に由来する少なくとも2つの機能性シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの態様では、CARは、CARのアミノ末端(N末端)に任意のリーダー配列を含む。いくつかの態様では、CARは、抗原結合ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は、任意に細胞プロセス及びCARの細胞膜への局在化の間に抗原結合ドメイン(例えば、scFv)から切断される。
【0069】
キメラ抗原受容体は、MHC非依存性抗原と結合し、その細胞内ドメインを介して活性化シグナルを伝達するその両方の能力によって他の抗原結合剤とは区別される。
【0070】
キメラ抗原受容体の抗原特異的細胞外ドメインは、抗原、典型的には悪性腫瘍の表面発現抗原を認識し、それと特異的に結合する。抗原特異的細胞外ドメインは、例えば、約0.1pMから約10μM、例えば、約0.1pMから約1μMもしくは約0.1pMから約100nMの間の親和性定数または相互作用の親和性(KD)で抗原と結合する場合に抗原と特異的に結合する。相互作用の親和性を決定する方法は、当該技術分野において既知である。本開示のCARでの使用に適した抗原特異的細胞外ドメインは、任意の抗原結合ポリペプチドであり得、多種多様のポリペプチドが当該技術分野において既知である。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、一本鎖Fv(scFv)である。他の抗体ベースの認識ドメイン、例えば、cAb VHH(ラクダ科抗体可変ドメイン)及びそのヒト化型、IgNAR VH(サメ抗体可変ドメイン)及びそのヒト化型、sdAb VH(単一ドメイン抗体可変ドメイン)、ならびに「ラクダ化」抗体可変ドメインなども、本開示のCARでの使用に適している。
【0071】
いくつかの態様では、T細胞受容体(TCR)ベースの認識ドメイン、例えば、一本鎖TCR(scTv、すなわち、VαVβを含有する一本鎖2ドメインTCR)なども、本開示のキメラ結合タンパク質での使用に適している。
【0072】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド(複数可)配列」、及び「ポリヌクレオチド」という用語は、同義に使用でき、一本鎖形態または二重螺旋のいずれかでのリン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、あるいはそれらの任意のリン酸エステル類似体、例えば、ホスホロチオエート及びチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。核酸分子及び特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次形態に限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線形または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、スーパーコイルDNA、及び染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について述べる際、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿った5’~3’方向での配列のみを提供する通常の慣例に従って本明細書に記載され得る。「組み換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載の1つ以上の核酸を含む。本明細書に記載される通り、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、単一のタンパク質をコードする単一のヌクレオチド配列(例えば、コドン最適化c-Junヌクレオチド配列)(「単シストロン性」)を含む場合がある。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、多シストロン性である(すなわち、2つ以上のシストロンを含む)。特定の態様では、多シストロン性ポリヌクレオチドのシストロンのそれぞれが、本明細書で開示されるタンパク質(例えば、AP-1転写因子、キメラ結合タンパク質、またはEGFRt)をコードする場合がある。いくつかの態様では、シストロンのそれぞれが互いに独立して翻訳される場合がある。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、別段の指示がない限り、ペプチド及びタンパク質の両方を包含する。
【0074】
本明細書で使用される場合、「コーディング領域」、「コーディング配列」または「翻訳可能配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は通常はアミノ酸に翻訳されないがコーディング領域の一部とみなすことができる。ただし、すべてのフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンと、得られるポリペプチドのカルボキシ末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンとによって一般的に決定される。
【0075】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック型塩基対形成則により互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)、またはオリゴマーと標的遺伝子との間を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’から3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’から5’)」と相補的である。相補性は「部分的」であってよく、その場合、所与の核酸塩基配列の核酸塩基のすべてより少ないものが塩基対形成則に従って他の核酸塩基配列と一致している。例えば、いくつかの態様では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。したがって、特定の態様では、「相補性」という用語は、標的核酸配列(例えば、c-Junコード核酸配列)との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の一致または相補性を指す。または例のような、「完璧な」または「完全な」(100%)相補性が、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に存在し得る。いくつかの態様では、核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著な影響を与える。
【0076】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えば、AP-1転写因子を生成するプロセスを指す。発現には、ポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)への転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が含まれるが、これらに限定されない。発現により、「遺伝子産物」が産生される。本明細書で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または転写産物から翻訳されるポリペプチドであり得る。本明細書に記載の遺伝子産物には、例えば、ポリアデニル化もしくはスプライシングなどの転写後修飾を有する核酸、または、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、もしくはタンパク質分解切断などの翻訳後修飾を有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的なモノマー保存を指す。いかなる追加の修飾語もない「同一である」という用語、例えば、「ポリヌクレオチドAはポリヌクレオチドBと同一である」は、ポリヌクレオチド配列同士が100%同一(100%の配列同一性)であることを意味する。例えば、「70%同一である」と2つの配列を表現することは、例えば、「70%配列同一性」を有するとそれらを表現することに等しい。「参照ヌクレオチド配列」は、本開示のヌクレオチド配列との比較として本明細書中で使用される場合、配列が最適化されていないことを除いて、本開示のヌクレオチド配列と本質的に同一のポリヌクレオチド配列を指す。例えば、いくつかの態様では、参照ヌクレオチド配列は、配列番号11に記載の野生型JUN核酸配列を含む。
【0078】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一率(%)の計算は、例えば、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列が比較のために無視され得る)。ある特定の態様では、比較のためにアラインメントされる配列の長さは、参照配列の全長の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。次いで、対応するアミノ酸位のアミノ酸、またはポリヌクレオチドの場合は塩基が比較される。
【0079】
第1の配列におけるある位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチドにより占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一率(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一率(%)の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0080】
異なる配列同士(例えば、ポリヌクレオチド配列)をアラインするために使用することができる適当なソフトウェアプログラムは様々なソースから入手可能である。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2個の配列間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の適当なプログラムとしては、例えば、バイオインフォマティクスプログラムパッケージEMBOSSの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)よりworldwideweb.ebi.ac.uk/Tools/psaにおいてやはり入手可能なNeedle、Stretcher、Water、またはMatcherがある。
【0081】
配列アラインメントは、当該技術分野において公知の方法、例えば、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X、またはClustal Omega)、MUSCLEなどを使用して実施され得る。
【0082】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一率(%)を有することができる。配列同一率(%)は、10分の1の位に四捨五入される点に留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数である点に留意されたい。
【0083】
特定の態様では、同一率(%ID)または第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一率(%ID)は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アラインメントプログラムによりアラインメントされる)において完全な一致と評価されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列を超える場合、第1の配列の第2の配列に対する同一率(%)は、第2の配列の第1の配列に対する同一率(%)より高くなるであろう。
【0084】
当業者であれば、配列同一率(%)を計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない点は理解されよう。配列アラインメントは、配列データを異種の供給源由来のデータ、例えば、構造データ(例えば、タンパク質結晶構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統学的データと統合することにより生成され得ることも理解されよう。異種データを統合してマルチプル配列アラインメントを生成する適当なプログラムは、worldwidewebtcoffee.orgで入手できるか、あるいは例えばEBIからも入手できるT-Coffeeである。配列同一率を計算するために使用される最終アラインメントは、自動または手動のいずれかでキュレートされ得ることも理解される。
【0085】
本明細書で使用される場合、「単離された」、「精製された」、「抽出された」という用語、及びそれらの文法的変化形は、同義に使用され、1つ以上の精製プロセスを経た、本開示の所望の組成物の調製物、例えば、コドン最適化ポリヌクレオチドまたはコドン最適化ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現する操作された細胞の状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用される場合、単離または精製は、夾雑物を含有するサンプルから本開示の組成物、例えば、本開示のコドン最適化ポリヌクレオチドを取り出す、(例えば、画分を)部分的に取り出すプロセスである。
【0086】
いくつかの態様では、単離された組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さないか、または代替的に、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルまたは量以下である。他の態様では、単離された組成物は、許容可能な量及び/または濃度及び/または活性以上の量及び/または濃度の本開示の所望の組成物を有する。他の態様では、単離された組成物は、組成物が取得される出発物質と比較して濃縮される。この濃縮は、出発物質と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%、少なくとも約99.999%、少なくとも約99.9999%、または99.9999%超であり得る。
【0087】
いくつかの態様では、単離された調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離された調製物は、任意の混入している生物学的物質を100%、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、または少なくとも約90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)または不要な核酸、タンパク質、脂質、もしくは代謝産物を含み得る。
【0088】
本明細書で使用する場合、「連結された」という用語は、共有結合または非共有結合によりそれぞれ第2のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に結合された、第1のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に直接的に結合もしくは並列され得るか、または代替的に介在配列が第1の配列から第2の配列までに共有結合により加わり得る。「連結された」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列の第2のポリヌクレオチド配列への5’末端または3’末端での融合を意味するだけでなく、第2のポリヌクレオチド配列(または第1のポリヌクレオチド配列)における任意の2つのヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチド配列(またはそれぞれ第2のポリヌクレオチド配列)全体の挿入も含む。第1のポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより第2のポリヌクレオチド配列に連結され得る。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。
【0089】
「投与すること」は、当業者に既知の任意の様々な方法及び送達システムを使用した、治療用薬剤(例えば、本明細書に記載の核酸分子)の対象への物理的な導入を指す。例示的な投与経路としては、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内、口腔、直腸、局所、上皮、粘膜、鼻腔内、経膣、直腸、舌下投与、及びそれらの組み合わせが挙げられる。また、投与は、例えば、1回、複数回、及び/または1回以上の長い期間にわたって行うことができる。
【0090】
対象の「処置」または「治療」とは、症状、合併症もしくは状態、または疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、発達、重症度もしくは再発を逆行、軽減、回復、阻害、緩徐化、または予防する目的で、対象に対して行われる任意のタイプの介入もしくはプロセス、または対象に対する活性剤の投与を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列に関して「最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードし、そのポリヌクレオチド配列の特性を向上させるよう変異させられたポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの態様では、最適化は、転写レベルを増加させるため、翻訳レベルを増加させるため、定常状態mRNAレベルを増加させるため、一般的な転写因子などの調節タンパク質の結合を増加もしくは減少させるため、スプライシングを増加もしくは減少させるため、またはポリヌクレオチド配列によって産生されるポリペプチドの産生量を増加させるために行われる。ポリヌクレオチド配列を最適化するためにポリヌクレオチド配列に行うことができる変更の例としては、コドン最適化、G/C含量最適化、反復配列の除去、ATが豊富なエレメントの除去、隠れたスプライス部位の除去、転写もしくは翻訳を抑制するシス作用エレメントの除去、ポリTもしくはポリA配列の付加もしくは除去、転写を増大させる転写開始部位付近の配列、例えば、Kozak共通配列の付加、ステムループ構造を形成するであろう配列の除去、不安定化配列の除去、及び2つ以上のそれらの組み合わせが挙げられる。そのような最適化に関連するさらなる開示が、本開示全体を通して提供される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、コーディング配列または機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般的に、コーディング配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、天然遺伝子にその全体が由来してもよく、または自然界にみられる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されてもよく、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでもよい。当業者には当然のことながら、異なるプロモーターは、異なる組織もしくは細胞タイプにおいて、または発生の異なる段階において、または異なる環境的もしくは生理学的条件に応じて、遺伝子の発現を誘導することができる。ほとんどの細胞タイプでほとんどの時間に遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発生または細胞分化の特定の段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「誘導性プロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。多くの場合、調節配列の正確な境界が完全には定義されていないため、異なる長さのDNAフラグメントが同じプロモーター活性を有し得ることもさらに認識されよう。
【0093】
本開示の様々な態様については、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
【0094】
c-Jun発現ヌクレオチド配列
c-Jun(本明細書では「AP-1転写因子」または「AP-1」とも呼ばれる)は、アクチベータータンパク質-1(AP-1)ファミリーに属する発がん性転写因子である。これは、様々なタンパク質(例えば、c-Fos)と相互作用して、細胞増殖及び腫瘍進行を含む、様々な細胞シグナル伝達経路を調節する二量体複合体を形成する。したがって、ある一定のがんでc-Jun発現の増加が確認され、そのようながんを処置するためのc-Junアンタゴニストの開発に大きな関心が寄せられてきた。例えば、Brennan,A.,et al.,J Exp Clin Cancer Res 39(1):184(Sep.2020)を参照。
【0095】
ヒトでは、c-Junタンパク質はJUN遺伝子によってコードされ、これは、第1染色体(GenBank受託番号NC_000001.11のヌクレオチド58,780,791から58,784,047、マイナス鎖方向)に位置する。JUN遺伝子、及びそのコード化タンパク質の同義語が知られており、「Junがん原遺伝子」、「AP-1転写因子サブユニット」、「v-Junトリ肉腫ウイルス17がん遺伝子ホモログ」、「転写因子AP-1」、「Junがん遺伝子」、「AP-1」、「Jun活性化ドメイン結合タンパク質」、「p39」、及び「エンハンサー結合タンパク質AP1」が挙げられる。野生型ヒトc-Junタンパク質配列は、331アミノ酸長である。野生型ヒトc-Junのアミノ酸及び核酸配列をそれぞれ表1及び2に示す。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0096】
コドン最適化
本明細書に記載される通り、本開示のポリヌクレオチドは、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載のc-Junタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、野生型c-Junヌクレオチド配列のもの(例えば、配列番号11)とは異なる。
【0097】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1から10に記載の核酸配列のいずれか1つと少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1から10のいずれか1つに記載の核酸配列を含む。
【0098】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の核酸配列を含む。
【0099】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の核酸配列を含む。
【0100】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、本明細書に記載のAP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に記載の核酸配列と少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号3に記載の核酸配列を含む。
【0101】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号4に記載の核酸配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号4に記載の核酸配列を含む。
【0102】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5に記載の核酸配列と少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号5に記載の核酸配列を含む。
【0103】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号6に記載の核酸配列を含む。
【0104】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号7に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0105】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8に記載の核酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号8に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0106】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号9に記載の核酸配列と少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号9に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0107】
いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する。特定の態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列は、配列番号10に記載の核酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、配列番号10に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0108】
例示的なコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を(下記)表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0109】
本明細書で開示されるAP-1ヌクレオチド配列は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用してコドン最適化されてもよい。例えば、特定の態様では、本明細書で開示されるAP-1ヌクレオチド配列のコドンは、野生型ヌクレオチド配列(例えば、配列番号11)と比較して1つ以上の以下のパラメーターを改変する(例えば、増加もしくは低下させる)よう最適化されている:(i)コドン適応指数(すなわち、コドン使用頻度バイアス);(ii)グアニン・シトシン(GC)ヌクレオチド含量;(iii)mRNA二次構造及び不安定なモチーフ;(iv)反復配列(例えば、ダイレクトリピート、逆位リピート、ダイアドリピート);(v)制限酵素認識部位;または(vi)それらの組み合わせ。
【0110】
いずれか1つの理論に束縛されるものではないが、いくつかの態様では、そのようなコドン最適化は、ヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質(例えば、c-Jun)の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本開示のコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、ヒト細胞、例えば、ヒトT細胞にトランスフェクト、形質導入または別の方法で導入された場合、野生型ヌクレオチド配列(例えば、配列番号11)をトランスフェクトした細胞における対応する発現と比較して、コード化AP-1転写因子の発現を増加させることができる。いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現は、発現するよう野生型ヌクレオチド配列(例えば、配列番号11)をトランスフェクト、形質導入、または別の方法で遺伝子改変された細胞(すなわち、「参照細胞」)における対応する発現と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、もしくは少なくとも約1,000倍またはそれ以上増加する。いくつかの態様では、c-Junポリペプチドの発現は、参照細胞と比較して、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍増加する。
【0111】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、トランスフェクション細胞(例えば、免疫細胞、例えば、CD4+及び/またはCD8+T細胞などのT細胞)の1つ以上の特性を向上及び/または増大させる場合がある。そのような特性の非限定例としては、疲弊に対する耐性(例えば、PD-1、CD39、TIM-3、及び/またはLAG-3などの疲弊マーカーの発現の低下;生存期間の延長;及び/またはサイトカイン産生の増加によって示される)、持続性/生存期間の延長、拡大/増殖の増加、エフェクター機能の向上(例えば、抗原刺激時のサイトカイン産生、標的抗原を発現する細胞の溶解、または両方)、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0112】
疲弊、細胞表現型、持続性、細胞傷害性及び/または殺傷、増殖、サイトカイン産生/放出、ならびに遺伝子発現プロフィールを判定するのに有用なアッセイは当該技術分野において知られており、例えば、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色(ICS)、INCUCYTE(登録商標)免疫細胞殺傷分析、Meso Scale Discovery(MSD)または類似のアッセイ、持続的抗原刺激アッセイ、バルク及びシングルセルRNAseq(例えば、Fron Genet.2020;11:220;2019 Bioinformatics 35:i436-445;2019 Annual Review of Biomed.Data Sci.2:139-173を参照)、細胞傷害性/殺傷アッセイ、ELISA、ウエスタンブロット、ならびに例えば、本明細書に記載されている、あるいは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology or Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons,Inc.,1999-2021)において、または別の場所で示されるその他の標準的な分子及び細胞生物学方法が挙げられる。
【0113】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、疲弊に対する細胞の耐性を高める。いくつかの態様では、疲弊に対する耐性は、参照細胞(例えば、AP-1発現が増加するよう改変されていない対応する細胞)と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、もしくは少なくとも約1,000倍またはそれ以上高められる。
【0114】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の過剰発現は、疲弊した細胞において疲弊を低減することができる。特定の態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、参照細胞(例えば、AP-1発現が増加するよう改変されていない対応する疲弊した細胞)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%疲弊を低減することができる。
【0115】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、例えば、インビボで対象に投与される場合、細胞の持続性/生存期間を延長することができる。いくつかの態様では、細胞の持続性/生存期間は、参照細胞(例えば、AP-1発現が増加するよう改変されていない対応する細胞)と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、もしくは少なくとも約1,000倍またはそれ以上延長される。
【0116】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、例えば、抗原刺激時の細胞の拡大/増殖を増加させることができる。いくつかの態様では、細胞の拡大/増殖は、参照細胞(例えば、AP-1発現が増加するよう改変されていない対応する細胞)と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、もしくは少なくとも約1,000倍またはそれ以上増加する。
【0117】
いくつかの態様では、AP-1転写因子の発現の増加は、細胞のエフェクター機能を高めることができる、例えば、サイトカイン産生、グランザイム放出、及び/または細胞傷害性の増加。いくつかの態様では、細胞のエフェクター機能は、参照細胞(例えば、AP-1発現が増加するよう改変されていない対応する細胞)と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約750倍、もしくは少なくとも約1,000倍またはそれ以上高められる。
【0118】
T細胞におけるc-Junの過剰発現は、例えば、T細胞の機能不全(例えば、T細胞の疲弊)を軽減または予防することによって、細胞の活性状態を維持するのに役立つ。本明細書に記載のコドン最適化c-Junは、T細胞などの免疫細胞を操作するために使用することができ、これは、その結果、所望の標的細胞(例えば、内在性TCRの標的または本明細書に記載のキメラ結合タンパク質の標的)に対して持続する強力な細胞傷害性を示す。c-Junを過剰発現しないT細胞と比較して、本明細書で開示されるコドン最適化c-Junを過剰発現する操作されたT細胞は、T細胞の疲弊の徴候が少ない。
【0119】
コドン使用頻度バイアス
発現系及び組み換えDNA技術の増え続ける知識にもかかわらず、選択された細胞で特定の遺伝子(例えば、外来性または合成)を発現させることに重大な障害が存在する。例えば、合成遺伝子の発現は、強力なプロモーターと連結された場合でも、予想されるよりもはるかに低い効率または速度が生じることが多い。同じことが細胞に対して外来性の外来性遺伝子の場合にもあてはまることが多い。いくつかの態様では、この予想よりも低い発現効率は、タンパク質が発現される細胞におけるコドン使用頻度パターンとは似ていないコドン使用頻度パターンを有する遺伝子のタンパク質コーディング領域によるものである。
【0120】
したがって、いくつかの態様では、本明細書で開示されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列(例えば、配列番号11)と比較して増加したヒトコドン適応指数を有する。本明細書で使用される場合、「コドン適応指数」という用語は、コドン使用頻度バイアスの尺度を指す。コドン適応指数(CAI)は、参照セットの遺伝子に対する所与のタンパク質コーディング遺伝子配列のずれを評価する(Sharp PM and Li WH,Nucleic Acids Res.15(3):1281-95(1987))。CAIは、(コドンで判定される)遺伝子配列の全長にわたり各コドンに関連づけられる重みの幾何平均を求めることによって算出される。
【数1】
【0121】
各アミノ酸に関して、CAIのそのコドンのそれぞれの重みが、そのアミノ酸に対するコドンの観察される頻度(fi)と同義コドンの頻度(fj)の間の比として計算される。
【数2】
【0122】
いくつかの態様では、本明細書で開示されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、少なくとも約0.91(91%)、少なくとも約0.92(92%)、少なくとも約0.93(93%)、少なくとも約0.94(94%)、少なくとも約0.95(95%)、少なくとも約0.96(96%)、少なくとも約0.97(97%)、少なくとも約0.98(98%)、または少なくとも約0.99(99%)のCAIを有する。
【0123】
G/C含量最適化
ヒト遺伝子は、G/C含量が極めて不均一であり、一部の遺伝子は、20%と低いG/C含量を有し、他の遺伝子は、95%と高いG/C含量を有する。一般に、G/Cが豊富な遺伝子は、より高度に発現される。実際、遺伝子のG/C含量を増加させると、主に転写の増加及びより高い定常状態mRNAレベルにより、遺伝子発現の増加につながる場合があることが示された。Kudla et al.,PLoS Biol 4(6):e180(2006)を参照。本明細書で使用される場合、「G/C含量」(もしくはグアニン・シトシン含量)または「G/Cヌクレオチドのパーセンテージ」という用語は、グアニンまたはシトシンのいずれかであるDNA分子中の窒素塩基のパーセンテージを指す。G/C含量は、以下の式を使用して算出することができる。
【数3】
【0124】
いくつかの態様では、本明細書で開示されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列(例えば、配列番号11)におけるG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載のコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、または少なくとも約65%であるG/C含量を有する。特定の態様では、本明細書で開示されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.60(60%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号1)。いくつかの態様では、本明細書で開示されるコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.61(61%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号2)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.59(59%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号3)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.52(52%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号4)。いくつかの態様では、本開示のコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.56(56%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号5)。いくつかの態様では、本明細書に記載のコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.59(59%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号6)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.61(61%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号7)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.63(63%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号8)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.56(56%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号9)。いくつかの態様では、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.62(62%)のG/C含量を有する(例えば、配列番号10)。
【0125】
付加的な翻訳可能配列
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列を含む発現構築物)は、対象の付加的なタンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、任意の適した対象のタンパク質と組み合わせてAP-1転写因子を発現させるために使用することができる。そのような付加的な翻訳可能配列の非限定例を以下に示す。
【0126】
リガンド結合タンパク質
いくつかの態様では、本明細書で提供されるポリヌクレオチド(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む発現構築物)は、リガンド結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。本明細書で使用される場合、「リガンド結合タンパク質」という用語は、対象の分子(すなわち、リガンド)(例えば、腫瘍細胞上に発現する抗原またはペプチド/MHC複合体)と結合することができる任意のタンパク質を指す。特定の態様では、リガンド結合タンパク質は、キメラ結合タンパク質である。本明細書で使用される場合、「キメラ結合タンパク質」という用語は、1つ以上のリガンド(例えば、抗原(例えば、抗原結合部分を含む))と結合することができ、もともと別個のタンパク質をコードする2つ以上のポリヌクレオチド配列の連結により作り出されるタンパク質を指す。別段の指示がない限り、この用語は、本開示において同義に使用することができる。
【0127】
リガンド結合タンパク質(例えば、キメラ結合タンパク質)の非限定例としては、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)、キメラシグナル伝達受容体(CSR)、T細胞受容体模倣物(TCR模倣物)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0128】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質はCARを含む。
【0129】
いくつかの態様では、(例えば、AP-1転写因子と組み合わせて発現され得る)CARは、標準的CARとして設計される。「標準的CAR」では、異なる構成要素(例えば、細胞外標的化ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達/活性化ドメイン)が直線的に単一の融合タンパク質として構築される。いくつかの態様では、CARは、第一世代CARとして設計される。「第一世代」CARは、細胞外結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインから構成される。すべての第一世代CARは、細胞内シグナル伝達ドメインとしてCD3ζ鎖ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、第二世代CARとして設計される。「第二世代」CARは、共刺激ドメイン(例えば、CD28または4-1BB)をさらに含む。いくつかの態様では、CARは、第三世代CARとして設計される。「第三世代」CARは、複数の共刺激ドメイン(例えば、CD28-4-1BBまたはCD28-OX40)を含むことを除いて第二世代CARと同様である。いくつかの態様では、CARは、第四世代CARとして設計される。「第四世代」CAR(TRUCKまたは武装化CARとしても知られている)は、機能をさらに向上させることができる付加的な因子をさらに含む。例えば、いくつかの態様では、第四世代CARは、標的腫瘍組織においてCARシグナル伝達時に放出され得るサイトカインをさらに含む。特定の態様では、第四世代CARは、CARの活性をさらに調節するのに役立つ可能性のある、ホーミング及び自殺遺伝子などの1つ以上の付加的な要素を含む。いくつかの態様では、CARは、スプリットCARとして設計される。「スプリットCAR」系では、CARの1つ以上の構成要素(例えば、細胞外標的化ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達/活性化ドメイン)は、完全な機能的受容体の構築を促進する複数の入力に依存するよう、2つ以上の部分に分けられる。いくつかの態様では、CARは、切替可能な(switchable)CARとして設計される。「切替可能なCAR」を用いれば、CARは、刺激の存在下において(例えば、一時的に)オン(オンスイッチCAR)またはオフ(オフスイッチCAR)の切替ができる。本開示で使用可能なCARのさらなる例は、例えば、US2020/0172879A1及びUS2019/0183932A1に記載されており、これらの各文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
いくつかの態様では、本明細書の構築物は、操作されたT細胞受容体(TCR)(当該技術分野において「トランスジェニック」TCRとも呼ばれる)をコードする。TCRは、T細胞の表面に見られる分子であり、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドとして抗原のフラグメントを認識することに関与している。TCRは、2つの異なるタンパク質鎖から構成されるヘテロ二量体である。いくつかの態様では、TCRは、(それぞれ、TRA及びTRBによってコードされる)アルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖からなる。いくつかの態様では、TCRは、(それぞれ、TRG及びTRDによってコードされる)ガンマ及びデルタ(γ/δ)鎖からなる。TCRは、MHC分子(ペプチド/MHC)によって提示される抗原ペプチドと結合すると、Tリンパ球がシグナル伝達により活性化される。いくつかの態様では、TCRは、操作された(トランスジェニック)TCRである。本明細書で使用される場合、「操作されたTCR」または「操作されたT細胞受容体」という用語は、単離されるか、または所望の親和性で主要組織適合遺伝子複合体(MHC)/ペプチド標的抗原と特異的に結合するように操作され、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、及び/またはTILの集団に導入されたT細胞受容体(TCR)を指す。
【0131】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、キメラ抗体-T細胞受容体(caTCR)を含む。本明細書で使用される場合、「キメラ抗体-T細胞受容体」または「caTCR」は、(i)対象の抗原と特異的に結合する抗体部分及び(ii)少なくとも1つのTCR関連シグナル伝達分子をリクルートすることができるT細胞受容体モジュールを含む。いくつかの態様では、抗体部分とT細胞受容体モジュールは一緒に融合される。いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、キメラシグナル伝達受容体(CSR)を含む。「キメラシグナル伝達受容体」または「CSR」は、標的リガンドと特異的に結合するリガンド結合ドメイン及びCSRを発現する免疫細胞に刺激シグナルを提供することができる共刺激シグナル伝達ドメインを含む。caTCR及びCSRの非限定例は、US10,822,413B2にさらに記載されており、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0132】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、T細胞受容体模倣物(TCR模倣物)を含む。本明細書で使用される場合、「T細胞受容体模倣物」または「TCR模倣物」という用語は、腫瘍抗原を認識するよう操作された抗体(またはそのフラグメント)を指し、腫瘍抗原は、HLA分子と関連して提示される。当業者には明白な通り、これらの抗体は、TCRの特異性を模倣することができる。TCR模倣物の非限定例は、例えば、US2009/0226474A1及びUS2019/0092876A1で提供されており、これらの各文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、遺伝子編集ツール(例えば、CRISPR-Cas系)と関連づけることができ、キメラ結合タンパク質の活性化は、1つ以上の遺伝子の発現及び/または活性が細胞中で調節されるよう、遺伝子編集ツールの活性化を誘導することができる。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、T細胞)は、プロテアーゼ及び対象の遺伝子の調節領域(例えば、プロモーター)を標的とするシングルガイドRNAと連結されたキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)を含むように改変される。いくつかの態様では、細胞は、例えば、リンカーを介して遺伝子編集ツールと複合体化された、T細胞活性化リンカー(LAT)をさらに含むよう改変される。(例えば、抗原刺激による)キメラ結合タンパク質の活性化は、核局在化及び遺伝子発現の調節のための遺伝子編集ツールの放出を可能にする。そのようなキメラ結合タンパク質のさらなる態様は、本開示の別の場所で示す。参照によってその全体が本明細書に組み込まれるPietrobon et al.,Int J Mol Sci 22(19):10828(Oct.2021)も参照。
【0134】
本明細書に記載される通り、本開示に有用なキメラ結合タンパク質は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、抗原結合ドメインは、抗原を認識し、それと特異的に結合する。抗原の非限定例としては、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、αvβ6または別のインテグリン、BCMA、Braf、B7-H3、B7-H6、CA9(炭酸脱水酵素9)、CCL-1(C-Cモチーフケモカインリガンド1)、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD47、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79a、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD171、CD352、CEA(がん胎児性抗原)、クローディン18.2、クローディン6、c-MET、DLL3(デルタ様タンパク質3)、DLL4、ENPP3(エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3)、EpCAM、EPG-2(上皮糖タンパク質2)、EPG-40、エフリンB2、EPHa2(エフリン受容体A2)、ERBB二量体、エストロゲン受容体、ETBR(エンドセリンB受容体)、FAP-α(線維芽細胞活性化タンパク質α)、胎児AchR(胎児アセチルコリン受容体)、FBP(葉酸結合タンパク質)、FCRL5、FR-α(葉酸受容体アルファ)、GCC(グアニルシクラーゼC)、GD2、GD3、GPC2(グリピカン-2)、GPC3、gp100(糖タンパク質100)、GPNMB(糖タンパク質NMB)、GPRC5D(Gタンパク質共役受容体5D)、HER2、HER3、HER4、B型肝炎表面抗原、HLA-A1(ヒト白血球抗原A1)、HLA-A2(ヒト白血球抗原A2)、HMW-MAA(ヒト高分子量黒色腫関連抗原)、IGF1R(インスリン様成長因子1受容体)、Igカッパ、Igラムダ、IL-22Ra(IL-22受容体アルファ)、IL-13Ra2(IL-13受容体アルファ2)、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、LI細胞接着分子(LI-CAM)、Liv-1、LRRC8A(8ファミリーメンバーAを含有するロイシンリッチリピート)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MART-1(メランA)、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)、MCSP(黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、メソテリン、ムチン1(MUC1)、MUC16、MHC/ペプチド複合体(例えば、AFP、KRAS、HPV(例えば、HPV E6もしくはE7)、NY-ESO、MAGE-A、及びWT1に由来するペプチドと複合化したHLA-A)、NCAM(神経細胞接着分子)、ネクチン-4、NKG2D(ナチュラルキラー群2メンバーD)リガンド、NY-ESO、腫瘍胎児抗原、PD-1、PD-L1、PRAME(黒色腫優先発現抗原)、プロゲステロン受容体、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、ROR1、ROR2、SIRPα(シグナル調節タンパク質α)、SLIT、SLITRK6(NTRK様タンパク質6)、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、サバイビン、TAG72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TPBG(栄養膜糖タンパク質)、Trop-2、VEGFR1(血管内皮増殖因子受容体1)、VEGFR2、ならびにHIV、HBV、HCV、HPV、及び他の病原体に由来する抗原、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、本明細書に記載のキメラ結合タンパク質の抗原結合ドメインは、ROR1と特異的に結合する。いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質の抗原結合ドメインは、GPC2と特異的に結合する。いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質の抗原結合ドメインは、腫瘍抗原と特異的に結合し、腫瘍抗原は、アルファフェトプロテイン(AFP)、CD19、BCMA、CLL-1、CS1、CD38、CD19、TSHR、CD123、CD22、CD30、CD171、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、Tn Ag、PSMA、ROR1、ROR2、GPC1、GPC2、FLT3、FAP、TAG72、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-l lRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、MUC16、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WTl、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-Al、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、プロステイン、サバイビング、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MARTl、Ras変異体(例えば、HRAS、KRAS、NRAS)、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、IGLL1、CD2、CD3ε、CD4、CD5、CD7、APRILタンパク質の細胞外部分、ネオアンチゲン、またはそれらの任意の組み合わせに由来する。
【0135】
本開示の別の場所にさらに記載されている通り、キメラ結合タンパク質の抗原結合ドメインは、1つ以上の抗原と結合することができる任意のポリペプチドであってもよい。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、Ig NAR、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)’2フラグメント、F(ab)’3フラグメント、Fv、単鎖可変フラグメント(scFv)、ビス-scFv、(scFv)2、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、イントラボディ、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(dsFv)、ユニボディ、ナノボディ、及び対象のタンパク質、リガンド、受容体、受容体フラグメント、ペプチドアプタマー、またはそれらの組み合わせのいずれかと特異的に結合することができる抗体由来の抗原結合領域を含むか、あるいはそれらに由来する。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、単鎖Fv(scFv)である。
【0136】
いくつかの態様では、本明細書に記載のキメラ結合タンパク質は、細胞外ドメインと抗原の結合時にエフェクター機能シグナルを伝達し、キメラ結合タンパク質(例えば、T細胞)を発現する細胞に特殊な機能を果たさせる細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインの非限定例としては、CD3ゼータ、FcRガンマ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」)、FcεRI、CD66d、CD32、DAP10、DAP12由来の細胞内シグナル伝達ドメイン領域、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、本明細書で開示されるタンパク質の細胞内ドメイン全体を含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、切断されている。細胞内ドメインの切断部分は、エフェクター機能シグナルを依然として伝達する限り完全な鎖の代わりに使用することができる。したがって、細胞内ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0137】
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチドにコードされ得るキメラ結合タンパク質は、膜貫通ドメインをさらに含む。特定の態様では、抗原結合ドメインは、膜貫通ドメインによってキメラ結合タンパク質の細胞内ドメインと連結される。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、リンカーによってキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)の膜貫通ドメインと連結される。特定の態様では、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間にリンカーを含めることは、抗原結合ドメインの柔軟性に影響を与え、それによって、キメラ結合タンパク質機能を向上させることができる。
【0138】
当該技術分野において既知の任意の膜貫通ドメインを、本明細書に記載のキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)に使用することができる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、人工的なもの(例えば、操作された膜貫通ドメイン)であってもよい。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、天然に存在するポリペプチドに由来する。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、天然に存在するポリペプチド由来の膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインの非限定例としては、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2C、CD19の膜貫通ドメイン領域またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインを含む。
【0139】
本明細書に記載される通り、いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質(例えば、CAR)は、1つ以上の共刺激ドメイン(例えば、第二及び第三世代CAR)を含む。いかなる理論にも束縛されるものではないが、これらの共刺激ドメインは、(例えば、AP-1転写因子と組み合わせて)キメラ結合タンパク質を発現するよう操作された細胞の増殖、活性化、メモリー、持続性、及び/またはエフェクター機能をさらに向上させることができる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは共刺激ドメインに融合しており、任意に、共刺激ドメインは第2の共刺激ドメインに融合しており、共刺激ドメインは、CD3ζに限定されないシグナル伝達ドメインに融合している。共刺激ドメインの非限定例としては、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、インターロイキン-12受容体(IL-12R)、IL-7、IL-21、IL-23、IL-15、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD27、CD28、CD30、CD40、4-1BB/CD137、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、OX40、DAP10、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の態様では、共刺激ドメインは、4-1BB/CD137共刺激ドメインを含む。
【0140】
リンカー
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチドは、リンカーをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。リンカーは、本明細書で提供されるポリヌクレオチドの任意の様々な構成要素の間にあってもよい。例えば、特定の態様では、ポリヌクレオチドは、AP-1転写因子をコードする第1のヌクレオチド配列、リンカーをコードする第2のヌクレオチド配列、及びキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする第3のヌクレオチド配列を含み、第2のヌクレオチド配列は、AP-1転写因子がリンカーによってキメラ結合タンパク質と連結されるよう、第1のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列の間にある。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、リンカーをコードする複数のヌクレオチド配列(例えば、少なくとも2つの別個のヌクレオチド配列)を含んでもよい。特定の態様では、複数のリンカーは同じである。いくつかの態様では、複数のリンカーは異なる。
【0141】
特定の態様では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの態様では、リンカーは、少なくとも約1個のアミノ酸、少なくとも約2個のアミノ酸、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約25個のアミノ酸、または少なくとも約30個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、リンカーは、グリシンが豊富である(例えば、柔軟性のため)。いくつかの態様では、リンカーは、セリン及び/またはトレオニンを含む(例えば、溶解性のため)。いくつかの態様では、リンカーは、Gly/Serリンカーである。
【0142】
いくつかの態様では、リンカーは、リンカー及び本明細書で提供されるポリヌクレオチドの様々な構成要素(例えば、AP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質)が単一のポリペプチドとして発現されるよう、切断不可能なリンカーである。特定の態様では、リンカーは、切断可能なリンカーである。本明細書で使用される場合、「切断可能なリンカー」という用語は、発現されるときに、選択的に切断されて、2つ以上の産物を産生できるよう、切断部位を含むリンカーを指す。いくつかの態様では、リンカーは、P2Aリンカー、T2Aリンカー、F2Aリンカー、E2Aリンカー、フーリン切断部位、またはそれらの任意の組み合わせから選択される(下記表4を参照)。いくつかの態様では、リンカーは、GSGリンカー配列をさらに含む。いくつかの態様では、本開示に有用なリンカーは、第1及び第2の遺伝子によってコードされる別々のポリペプチドが翻訳時に産生されるよう、内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。本開示で使用され得るリンカーのさらなる説明は、例えば、WO2020/223625A1及びUS2019/0276801A1で提供され、これらの文献のそれぞれは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【表4】
【0143】
いくつかの態様では、リンカーは、P2Aリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む。
【0144】
いくつかの態様では、リンカーは、T2Aリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号15に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む。
【0145】
いくつかの態様では、リンカーは、F2Aリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号16に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む。
【0146】
いくつかの態様では、リンカーは、E2Aリンカーを含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号17に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含む。
【0147】
いくつかの態様では、リンカーは、フーリン切断部位を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号18に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リンカーは、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む。
【0148】
切断型EGFR
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドは、EGFRtが完全長EGFRタンパク質(例えば、配列番号19)の部分配列のみを含むよう、切断型上皮増殖因子受容体(EGFRt)をコードする付加的なヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、EGFRtは、EGFR細胞外ドメインIII及びIVならびにEGFR膜貫通ドメインを含むが、EGFR細胞外ドメインI及びIIならびにEGFR細胞内配列が欠如している。
【0149】
EGFRは、大きな細胞外領域、単一の膜貫通ドメイン、細胞内膜近傍領域、チロシンキナーゼドメイン、及びC末端調節領域を含む180kDaの単量体糖タンパク質である。細胞外領域は、4つのドメインを含み、ドメインI及びIIIは相同リガンド結合ドメインであり、ドメインII及びIVはシステインが豊富なドメインである(Ferguson,Annu Rev Biophys.(2008)37:353-3)。別に指示がある場合を除いて、EGFRは、本明細書で使用される場合、ヒトEGFRを指す。選択的スプライシングのため、ヒトEGFRの少なくとも4つの既知のアイソフォームが存在する。様々なEGFRアイソフォームに関する配列を(下記)表5に示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0150】
上記のEGFRの規定配列(すなわち、アイソフォーム1)では、様々なEGFRドメインが以下の通りに説明される。シグナルペプチドは、アミノ酸1~24に及ぶ。細胞外配列はアミノ酸25~645に及び、ドメインI、ドメインII、ドメインIII、及びドメインIVは、それぞれ、アミノ酸25~188、189~333、334~504、及び505~645に及ぶ。膜貫通ドメインは、アミノ酸646~668に及ぶ。細胞内ドメインはアミノ酸669~1,210に及び、膜近傍ドメインはアミノ酸669~703に及び、チロシンキナーゼドメインはアミノ酸704~1,210に及ぶ。
【0151】
いくつかの態様では、本開示に有用なEGFRtは、配列番号19に記載のアミノ酸配列と少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0152】
いくつかの態様では、本開示で使用され得るEGFRtは、配列番号23に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、EGFRtは、配列番号23(表6を参照)に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本開示で使用され得るEGFRtは、配列番号24に記載のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、EGFRtは、配列番号24(表6を参照)に記載のアミノ酸配列を含む。
【表6】
【0153】
いくつかの態様では、本明細書に記載のEGFRtは、膜近傍ドメインをさらに含む。本明細書で使用される場合、「膜近傍ドメイン」という用語は、膜貫通ドメインに対してすぐC末端の細胞表面タンパク質(例えば、EGFR)の細胞内部分を指す。いかなる理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、膜近傍ドメインの付加は、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を増加させることができる。
【0154】
いくつかの態様では、膜近傍ドメインは、約1から約20(例えば、2~20、3~20、4~20、5~20、2~18、3~18、4~18、または5~18)アミノ酸長であってもよい。特定の態様では、膜近傍ドメインは、20アミノ酸よりも長くてもよい。いくつかの態様では、膜近傍ドメインの最初の1個以上(例えば、最初の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個)のアミノ酸は、正味中性または正味正の電荷をもつ配列である(例えば、アルギニン及びリジン残基の数が、アスパラギン酸及びグルタミン酸残基の数以上である)。特定の態様では、これらの最初のアミノ酸は、約30%超(例えば、40、50、60、70、80、または90%超)の親水性アミノ酸を含む。本開示に有用な膜近傍ドメインの非限定例を(下記)表7に示す。
【表7】
【0155】
いくつかの態様では、本開示で使用され得る膜近傍ドメインは、天然の細胞表面タンパク質の膜近傍領域、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、またはホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸(PIP2)と相互作用するヒト受容体型チロシンキナーゼの膜近傍領域(例えば、最初の20個の膜近傍アミノ酸の全配列または部分配列)由来であってもよい(例えば、Hedger et al.,Sci Rep.(2015)5:9198を参照)。受容体型チロシンキナーゼの非限定例は、ERBB1(EGFR)、ERBB2(HER2)、ERBB3(HER3)、ERBB4(HER4)、INSR、IGF1R、INSRR、PGFRA、PGFRB、KIT、CSF1R、FLT3、VGFR1、VGFR2、VGFR3、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、PTK7、NTRK1、NTRK2、NTRK3、ROR1、ROR2、MUSK、MET、RON、UFO、TYRO3、MERTK、TIE1、TIE2、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHAA、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB6、RET、RYK、DDR1、DDR2、ROS1、LMTK1、LMTK2、LMTK3、LTK、ALK、及びSTYK1である。特定の態様では、膜近傍ドメインは、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の意図されないいかなるシグナル伝達能力も回避するためにリン酸化されるのがわかっている残基を除去する1つ以上の変異(例えば、置換または欠失)を含んでもよい。
【0156】
いくつかの態様では、膜近傍ドメインは、EGFRの膜近傍領域由来である。EGFR由来の膜近傍ドメインの非限定例は、(下記)表8に示される配列のうちの1つを含む。特定の態様では、膜近傍ドメインは、アミノ酸配列RRRを含む。特定の態様では、そのような膜近傍ドメインを含むEGFRtは、配列番号22に記載の配列を含む。
【表8】
【0157】
本開示から明らかな通り、EGFRtをコードするヌクレオチド配列を含めることにより、本開示の(例えば、コドン最適化c-Junヌクレオチド配列及びキメラ結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む)ポリヌクレオチドにある一定の利点がもたらされる。例えば、いくつかの態様では、EGFRtは、キルスイッチとして機能する場合がある。操作された細胞(例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドを形質導入されたCAR T細胞)が体内で必要とされなくなったとき、セツキシマブ、パニツムマブ、ニモツズマブ、またはネシツムマブなどの医薬品グレードの抗EGFR抗体を、操作された細胞を受けた対象に投与し、それによって、操作された細胞を、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及び/または抗体依存性細胞食作用(ADCP)により除去することができる。
【0158】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、AP-1転写因子をコードする第1のヌクレオチド配列、キメラ結合タンパク質(例えば、CAR)をコードする第2のヌクレオチド配列、及びEGFRtをコードする第3のヌクレオチド配列を含む。特定の態様では、ポリヌクレオチドは、第1のリンカーをコードする第4のヌクレオチド配列をさらに含み、第4のヌクレオチド配列は、AP-1転写因子が第1のリンカーによってキメラ結合タンパク質と連結されるよう、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列の間にある。特定の態様では、ポリヌクレオチドは、第2のリンカーをコードする第5のヌクレオチド配列をさらに含み、第5のヌクレオチド配列は、キメラ結合タンパク質が第2のリンカーによってEGFRtと連結されるよう、第2のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列の間にある。いくつかの態様では、第1のリンカーと第2のリンカーは同じである。特定の態様では、第1のリンカーと第2のリンカーは異なる。本明細書に記載のいずれかのリンカー(例えば、P2Aリンカー)を第2のリンカーとして使用することができる。
【0159】
スペーサー
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドは、スペーサーをコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書で使用される場合、「スペーサー」という用語は、間隔のあいた2つの部分(例えば、P2Aリンカーとキメラ結合タンパク質)を一緒に共有結合することができるポリペプチド配列を指す。
【0160】
特定の態様では、スペーサーは、免疫グロブリン由来(例えば、ヒンジ領域またはループ領域由来)である。いくつかの態様では、スペーサーは、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、またはIgMヒンジ領域、それらのフラグメント(単独または付加的な配列、例えば、CH1もしくはCH2領域配列によってキャップされた)、あるいはIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、またはIgMヒンジ領域のフラグメントの組み合わせ(本明細書中では「ヒンジ領域由来のスペーサー」とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、スペーサーは、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、またはIgM定常ドメインループ領域、それらのフラグメント(単独または例えば、隣接するβ-鎖由来の、付加的な配列によってキャップされた)、あるいはIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgE、またはIgMループ領域のフラグメントの組み合わせ(本明細書中では「ループ領域由来のスペーサー」とも呼ばれる)を含む。特定の態様では、スペーサーは、ヒンジ領域由来のスペーサー、ループ領域由来のスペーサー、または両方(例えば、2つ以上の連結されたヒンジ領域由来のスペーサー及びループ領域由来のスペーサー)を含む。
【0161】
したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、(i)AP-1転写因子、(ii)第1のリンカー(例えば、P2Aリンカー)、(iii)シグナルペプチド(例えば、hIgκ)、(iv)抗原結合ドメイン(例えば、scFv)、(v)第2のリンカー(例えば、GGGSG;配列番号40)、(vi)スペーサー(例えば、IgG2ヒンジ由来のスペーサー)、(vii)膜貫通ドメイン(例えば、CD28)、(viii)共刺激ドメイン(例えば、4-1BB)、(ix)細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)、(x)第3のリンカー(例えば、P2Aリンカー)、及び(xi)EGFRtを含むポリペプチドをコードする。
【0162】
いくつかの態様では、本開示に有用なスペーサーは、ヒトIgA1(Uniprot:P01876、IGHA1_HUMAN、免疫グロブリン重定常アルファ1、配列番号41)、ヒトIgA2(Uniprot P01877、IGHA2_HUMAN、免疫グロブリン重定常アルファ2、配列番号42)、マウスIgG2A(Uniprot P01665、GCAM_MOUSE、免疫グロブリンガンマ2A鎖C領域、配列番号43)、ヒトIgG1(Uniprot P01857、IGHG1_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ1、配列番号44)、ヒトIgG2(Uniprot P01859、IGHG2_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ2、配列番号45)、ヒトIgG3(Uniprot P01860、IGHG3_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ3、配列番号46)、ヒトIgG4(Uniprot P01861、IGHG4、免疫グロブリン重定常ガンマ4、配列番号47)、ヒトIgD(Uniprot P01880、IGHD_HUMAN、免疫グロブリン重定常デルタ、配列番号48)、ヒトIgE(Uniprot P01854、IGHE_HUMAN、免疫グロブリン重定常鎖イプシロン、配列番号49)、またはIgM(Uniprot P01871、IGHM_HUMAN、免疫グロブリン重定常ミュー、配列番号50)からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖の部分配列を含み、部分配列は、CH1-CH2ヒンジ領域またはその一部を含む。いくつかの態様では、部分配列は、CH1及び/またはCH2定常ドメインの隣接部分をさらに含む。
【0163】
いくつかの態様では、スペーサーは、ヒトIgA1(Uniprot:P01876、IGHA1_HUMAN、免疫グロブリン重定常アルファ1、配列番号41)、ヒトIgA2(Uniprot P01877、IGHA2_HUMAN、免疫グロブリン重定常アルファ2、配列番号42)、マウスIgG2A(Uniprot P01665、GCAM_MOUSE、免疫グロブリンガンマ2A鎖C領域、配列番号43)、ヒトIgG1(Uniprot P01857、IGHG1_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ1、配列番号44)、ヒトIgG2(Uniprot P01859、IGHG2_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ2、配列番号45)、ヒトIgG3(Uniprot P01860、IGHG3_HUMAN、免疫グロブリン重定常ガンマ3、配列番号46)、ヒトIgG4(Uniprot P01861、IGHG4、免疫グロブリン重定常ガンマ4、配列番号47)、ヒトIgD(Uniprot P01880、IGHD_HUMAN、免疫グロブリン重定常デルタ、配列番号48)、ヒトIgE(Uniprot P01854、IGHE_HUMAN、免疫グロブリン重定常鎖イプシロン、配列番号49)、またはIgM(Uniprot P01871、IGHM_HUMAN、免疫グロブリン重定常ミュー、配列番号50)からなる群から選択される免疫グロブリン重鎖の部分配列を含み、部分配列は、定常ドメインのループ領域またはその一部を含む。いくつかの態様では、部分配列は、β鎖の隣接部分をさらに含む。
【0164】
いくつかの態様では、本開示に有用なスペーサーは、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4由来である。特定の態様では、スペーサーは、IgG2ヒンジ由来である。いくつかの態様では、IgG2ヒンジ由来のスペーサーは、配列番号51(KPCPPCKCP)の少なくとも5、6、または7個の連続的なアミノ酸を含む。いくつかの態様では、スペーサーは、配列番号51に記載の配列(KPCPPCKCP)と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。特定の態様では、スペーサーは、配列番号51に記載の配列(KPCPPCKCP)を含む、それからなる、または本質的にそれからなる。別の態様において、スペーサーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸置換を除いて、配列番号51に記載の配列(KPCPPCKCP)を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を含む。
【0165】
いくつかの態様では、本開示のスペーサーは、配列番号51に記載の配列から構成され、スペーサー配列は、任意の柔軟なリンカー(例えば、GGGSG(配列番号40)のリンカー)をさらに含む。したがって、いくつかの態様では、本開示のスペーサーは、スペーサー配列(例えば、配列番号51)及び任意のC末端またはN末端の柔軟なリンカーを含む。いくつかの態様では、本明細書で開示される任意の必須ではない柔軟なリンカー(例えば、gly/serが豊富なリンカー)は、スペーサーのC末端及び/またはN末端に付加されてもよい。
【0166】
シグナルペプチド
本明細書に記載される通り、いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列も含む。シグナルペプチドは、コード化タンパク質の細胞表面発現を促進することができ、その後、続いて成熟タンパク質から切断可能である。
【0167】
当該技術分野において既知の任意の適したシグナルペプチドを本開示で使用することができる。シグナルペプチドの非限定例を(下記)表9に示す。特定の態様では、シグナルペプチドは、ヒトIgカッパ由来である。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、配列番号54に記載のアミノ酸配列(MVLQTQVFISLLLWISGAYG)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の態様では、シグナルペプチドは、配列番号54に記載のアミノ酸配列(MVLQTQVFISLLLWISGAYG)を含む。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、GM-CSF由来である。特定の態様では、そのようなシグナルペプチドは、配列番号53に記載のアミノ酸配列(MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、配列番号53に記載のアミノ酸配列(MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP)を含む。
【表9】
【0168】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、単一のシグナルペプチド(例えば、配列番号53または54)を含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、複数のシグナルペプチド(例えば、少なくとも2、3、4またはそれ以上)を含む。したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、(i)AP-1転写因子、(ii)第1のリンカー(例えば、P2Aリンカー)、(iii)第1のシグナルペプチド(例えば、hIgκ)、(iv)抗原結合ドメイン(例えば、scFv)、(v)第2のリンカー(例えば、GGGSG;配列番号40)、(vi)スペーサー(例えば、IgG2ヒンジ由来のスペーサー)、(vii)膜貫通ドメイン(例えば、CD28)、(viii)共刺激ドメイン(例えば、4-1BB)、(ix)細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)、(x)第3のリンカー(例えば、P2Aリンカー)、及び(xi)第2のシグナルペプチド(例えば、GM-CSF)、及び(xii)EGFRtを含むポリペプチドをコードする。
【0169】
ベクター
いくつかの態様では、(例えば、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列、例えば、コドン最適化ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)が本明細書で提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載のベクターは、複数(例えば、2、3、もしくは4つまたはそれ以上)のポリヌクレオチドを含み、複数のポリヌクレオチドはそれぞれ、本明細書に記載のタンパク質(例えば、AP-1転写因子、リガンド結合タンパク質(例えば、キメラ結合タンパク質、例えば、CAR)、またはEGFRt)をコードする。したがって、特定の態様では、ベクターは、多シストロン性ベクター(例えば、バイシストロン性ベクターまたはトリシストロン性ベクター)を含む。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、同じベクター(例えば、マルチシストロン性発現ベクター)上に含まれる。特定の態様では、本明細書に記載のタンパク質(例えば、AP-1転写因子、リガンド結合タンパク質(例えば、キメラ結合タンパク質、例えば、CAR)、またはEGFRt)をコードするポリヌクレオチドが1つ以上の別個のベクター上に提供される。
【0170】
本明細書に記載される通り、そのようなベクターは、宿主細胞及び治療的介入のための標的とされる細胞における組み換え発現に有用である。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子、または別の核酸を輸送することができるそのような核酸分子を含む要素を指すことが意図される。いくつかの態様では、ベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができる。特定のベクターまたはベクターの一部であるポリヌクレオチドは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることが可能で、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。本開示において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、文脈に応じて同義に使用できる場合もある。ただし、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、複製欠損レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの他の形態の発現ベクターも本明細書で開示される。
【0171】
いくつかの態様では、ベクターは、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチド及び調節エレメントを含む。例えば、特定の態様では、ベクターは、プロモーターと機能可能に連結された(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ベクターは、複数(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたはそれ以上)のプロモーターを含むことができる。例えば、いくつかの態様では、AP-1転写因子をコードするヌクレオチド配列(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)は第1のプロモーターの支配下にあってもよく、ポリヌクレオチド(例えば、キメラ結合タンパク質)の1つ以上の付加的な構成要素をコードするヌクレオチド配列は第2のプロモーターの支配下にあってもよい。特定の態様では、複数のプロモーターのそれぞれが同じである。いくつかの態様では、複数のプロモーターのうちの1つ以上が異なる。
【0172】
当該技術分野において既知の任意の適したプロモーターを本開示で使用することができる。いくつかの態様では、本開示に有用なプロモーターは、構成的または誘導的プロモーターなどの哺乳動物またはウイルスプロモーターを含む。いくつかの態様では、本開示のためのプロモーターは、少なくとも1つの構成的プロモーター及び少なくとも1つの誘導的プロモーター、例えば、組織特異的なプロモーターを含む。
【0173】
構成的哺乳動物プロモーターとしては、以下の遺伝子に対するプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、及びその他の構成的プロモーター。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの末端反復配列(LTR)、及びその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。本明細書に記載される通り、いくつかの態様では、本開示で使用され得るプロモーターは、誘導的プロモーターである。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下において転写及び翻訳を促進するよう誘導される。複数の誘導的プロモーターが存在する場合、同じ誘導分子または異なる誘導物質によって誘導することができる。
【0174】
いくつかの態様では、プロモーターは、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、負の制御領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター、EF1aプロモーター、または両方を含む。
【0175】
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本開示の任意のポリヌクレオチドを含むベクターは、1つ以上の付加的な調節エレメントをさらに含む。調節エレメントの非限定例としては、翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、マイクロRNA結合部位もしくはそのシード、連結されたヌクレオシドの3’テーリング(tailing)領域、AUが豊富なエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、5’UTR、3’UTR、局在配列(例えば、膜局在配列、核局在配列、核排除配列(nuclear exclusion sequence)、もしくはプロテアソーム標的化配列)、翻訳後修飾配列(例えば、ユビキチン化、リン酸化、もしくは脱リン酸化)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0176】
いくつかの態様では、ベクターは、転移因子をさらに含んでもよい。したがって、特定の態様では、ベクターは、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含み、これは、少なくとも2つのトランスポゾン特異的な末端逆位配列(ITR)に隣接する。いくつかの態様では、トランスポゾン特異的なITRは、DNAトランスポゾンによって認識される。いくつかの態様では、トランスポゾン特異的なITRは、レトロトランスポゾンによって認識される。核酸分子を宿主細胞、例えば、免疫細胞のゲノムに導入するために、当該技術分野において既知の任意のトランスポゾン系を使用することができる。いくつかの態様では、トランスポゾンは、hAT様Tol2、Sleeping Beauty(SB)、Frog Prince、piggyBac(PB)、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの態様では、トランスポゾンは、Sleeping Beautyを含む。いくつかの態様では、トランスポゾンは、piggyBacを含む。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるZhao et al.,Transl.Lung Cancer Res.5(1):120-25(2016)を参照。
【0177】
いくつかの態様において、ベクターは、トランスファーベクターである。「トランスファーベクター」という用語は、単離された核酸(例えば、本開示のポリヌクレオチド)を含み、細胞の内部に単離された核酸を送達するために使用することができる組成物を指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と関連づけられるポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当該技術分野で知られている。したがって、「トランスファーベクター」という用語は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、細胞への核酸の導入を容易化する非プラスミド及び非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどをさらに含むと解釈されるべきである。ウイルストランスファーベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
いくつかの態様では、ベクターは、発現ベクターである。「発現ベクター」という用語は、発現させられるヌクレオチド配列に機能可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチド(例えば、本開示のポリペプチド)を含むベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、むき出しまたはリポソームに含有される)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野で既知のすべてのものが含まれる。
【0179】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター、哺乳動物ベクター、または細菌ベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターからなる群から選択される。
【0180】
いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、第三世代アデノウイルスベクターである。ADEASY(商標)は、アデノウイルスベクター構築物を作製するための圧倒的に普及している方法である。この系は、シャトル(またはトランスファー)ベクター及びアデノウイルスベクターの2つのタイプのプラスミドから構成される。対象の導入遺伝子は、シャトルベクターにクローン化され、検証され、制限酵素PmeIで線状にされる。その後、この構築物は、PADEASY(商標)を含むBJ5183 E.coli細胞であるADEASIER-1細胞にトランスフォームされる。PADEASY(商標)は、ウイルス産生に必要なアデノウイルス遺伝子を含む約33Kbのアデノウイルスプラスミドである。シャトルベクター及びアデノウイルスプラスミドは、アデノウイルスプラスミドへの導入遺伝子の相同組み換えを促進する対応する左及び右ホモロジーアームを有する。スーパーコイルPADEASY(商標)及びシャトルベクターで標準的なBJ5183をコトランスフォームすることもできるが、この方法は、非組み換えアデノウイルスプラスミドの高いバックグラウンドをもたらす。組み換えアデノウイルスプラスミドは、その後、導入遺伝子がアデノウイルスプラスミドに挿入されたこと、及び他のパターンの組み換えが生じていないことを判定するために、サイズ及び適切な制限消化産物パターンに関して検証される。検証されたら、組み換えプラスミドは、PacIで線状にされて、ITRが隣接した線状dsDNA構築物を作り出す。293または911細胞は、線状構築物でトランスフェクトされ、ウイルスは、約7~10日後に採取することができる。この方法以外にも、本明細書に開示される方法を実施するために、本願が出願された時点で当該技術分野において周知のアデノウイルスベクター構築物を作製するための方法を用いることができる。
【0181】
いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター(例えば、第三または第四世代レンチウイルスベクター)である。「レンチウイルス」という用語は、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点でレトロウイルスの中でも独特であり、相当量の遺伝子情報を宿主細胞のDNAに送達することができるため、遺伝子送達ベクターのうちで最も効率的な方法のうちの1つである。HIV、SIV、及びFIVはすべて、レンチウイルスの例である。「レンチウイルスベクター」という用語は、特にMilone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)で提供される自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指す。臨床において使用され得るレンチウイルスベクターの他の例としては、例えば、Oxford BioMedicaのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクター系などが挙げられるが、これらに限定されない。非臨床タイプのレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者にはわかるであろう。
【0182】
レンチウイルスベクターは通常、細胞株が3つの別のプラスミド発現系でトランスフェクトされる一過性トランスフェクション系において作製される。これらとしては、トランスファーベクタープラスミド(HIVプロウイルスの一部)、パッケージングプラスミドまたは構築物、及び異なるウイルスの異種エンベロープ遺伝子(env)を有するプラスミドが挙げられる。ベクターの3つのプラスミド成分がパッケージング細胞に入れられ、それが、その後、HIVシェルに挿入される。ベクターのウイルス部分は、ウイルスが細胞系内で複製できないよう、挿入配列を含む。現行の第三世代レンチウイルスベクターは、9つのHIV-1タンパク質のうちの3つのみ(Gag、Pol、Rev)をコードし、これは、複製可能なウイルスの組み換えが関係する形成を回避するために別個のプラスミドから発現される。第四世代レンチウイルスベクターでは、レトロウイルスゲノムはさらに減らされている(例えば、TAKARA(登録商標)LENTI-X(商標)第四世代パッケージングシステムを参照)。
【0183】
いくつかの態様では、非ウイルス的方法を使用して、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列及びキメラ結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドを対象の細胞または組織に送達することができる。いくつかの態様では、非ウイルス的方法としては、トランスポゾンの使用が挙げられる。いくつかの態様では、非ウイルス的送達方法の使用は、細胞、例えば、TまたはNK細胞のリプログラミング、及び対象への細胞の直接注入を可能とする。いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列及びキメラ結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む)本開示のポリヌクレオチドは、CRISPR/Cas系及びゲノム編集代替手段、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びメガヌクレアーゼ(MN)を使用することによって標的細胞(例えば、T細胞)または宿主細胞(例えば、コード化タンパク質の組み換え発現のための細胞)のゲノムに挿入され得る。
【0184】
いくつかの態様では、本明細書で開示されるベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、(i)AP-1転写因子(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)及び(ii)抗原結合ドメイン(例えば、抗ROR1 scFv)をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ベクターは、(i)AP-1転写因子(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)、(ii)抗原結合ドメイン(例えば、抗ROR1 scFv)、及び(iii)EGFRtをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ベクターは、(i)AP-1転写因子(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)、(ii)抗原結合ドメイン(例えば、抗ROR1 scFv)、(iii)膜貫通ドメイン(例えば、CD28)、(iv)共刺激ドメイン(4-1BB)、(v)細胞内シグナル伝達ドメイン(CD3ζ)、及び(vi)EGFRtをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。特定の態様では、1つ以上のヌクレオチド配列は、リンカー、スペーサー、シグナルペプチド、またはそれらの組み合わせをさらにコードする。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のベクターは、(5’から3’に)(i)AP-1転写因子をコードする第1のヌクレオチド配列(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列)、(ii)第1のリンカー(例えば、P2Aリンカー)をコードする第2のヌクレオチド配列、(iii)第1のシグナルペプチド(例えば、hIgκ)をコードする第3のヌクレオチド配列、(iv)抗原結合ドメイン(例えば、抗ROR1 scFv)をコードする第4のヌクレオチド配列、(v)第2のリンカー(例えば、GGGSG;配列番号40)をコードする第5のヌクレオチド配列、(vi)スペーサー(例えば、IgG2ヒンジ由来のスペーサー)をコードする第6のヌクレオチド配列、(vii)膜貫通ドメイン(例えば、CD28)をコードする第7のヌクレオチド配列、(viii)共刺激ドメイン(例えば、4-1BB)をコードする第8のヌクレオチド配列、(ix)細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)をコードする第9のヌクレオチド配列、(x)第3のリンカー(例えば、P2Aリンカー)をコードする第10のヌクレオチド配列、(xi)第2のシグナルペプチド(例えば、GM-CSF)をコードする第11のヌクレオチド配列、及び(xii)EGFRtをコードする第12のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0185】
いくつかの態様では、(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含む)本明細書で開示されるポリヌクレオチドは、DNA(例えば、DNA分子もしくはその組み合わせ)、RNA(例えば、RNA分子もしくはその組み合わせ)、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、本明細書で開示されるポリヌクレオチドは、ゲノムもしくはcDNA形態の一本鎖もしくは二本鎖RNAもしくはDNA(例えば、ssDNAもしくはdsDNA)、またはDNA・RNAハイブリッドを含む核酸配列を含み、それぞれが化学的または生化学的に改変された、非天然、または誘導化ヌクレオチド塩基を含んでもよい。本明細書に記載される通り、そのような核酸配列は、コード化ポリペプチドの発現及び/または精製の促進に有用な、以下に限定されないが、ポリA配列、改変Kozak配列、ならびにエピトープタグ、搬出シグナル、及び分泌シグナル、核局在シグナル、及び細胞膜局在シグナルをコードする配列を含む、付加的な配列を含んでもよい。本明細書の教示に基づいて、どのヌクレオチド配列が本明細書に記載の様々なポリペプチド(例えば、AP-1転写因子またはキメラ結合タンパク質)をコードするかは当業者には明らかであろう。
【0186】
細胞
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットを含むよう(例えば、遺伝子)改変された細胞(例えば、免疫細胞、例えば、T細胞)が本明細書で提供される。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載の改変細胞は、AP-1転写因子を過剰発現する。本開示の他の場所に記載されている通り、AP-1転写因子の過剰発現は、細胞の1つ以上の特性(例えば、疲弊に対する耐性、持続性/生存期間、拡大/増殖、エフェクター機能(例えば、抗原刺激時のサイトカイン産生、標的抗原を発現する細胞の溶解、もしくは両方)、またはそれらの組み合わせ)を向上及び/または増大させることができる。いくつかの態様では、改変細胞は、本明細書に記載の付加的な翻訳配列によってコードされる1つ以上のタンパク質(例えば、キメラ結合タンパク質、リンカー、EGFRt、スペーサー、シグナルペプチド、またはそれらの組み合わせ)をさらに発現する。
【0187】
いくつかの態様では、本明細書で開示される改変細胞は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターでトランスフェクトされている。「トランスフェクトされた」という用語(または同等の「トランスフォームされた」及び「形質導入された」)という用語)は、外来核酸、例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターが、宿主細胞、例えば、T細胞のゲノムに移行または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」細胞は、外来核酸、例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターがトランスフェクト、トランスフォーム、または形質導入された細胞である。細胞には、初代対象細胞及びその後代が含まれる。
【0188】
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞は、細胞における対象のタンパク質(例えば、c-Jun)の内因性発現を誘導すること及び/または増加させることができる転写活性化因子で改変されている。本明細書で使用される場合、「転写活性化因子」という用語は、(例えば、核酸配列のエンハンサーまたはプロモーター近位エレメントと結合し、それによって、その転写を誘導することによって)遺伝子または遺伝子のセットの転写を増加させるタンパク質を指す。本開示で使用され得るそのような転写活性化因子の非限定例としては、以下のものが挙げられる:転写活性化因子様エフェクター(TALE)ベースの転写活性化因子、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)ベースの転写活性化因子、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質(Cas)系ベースの転写活性化因子、またはその組み合わせ。例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるKabadi et al.,Methods69(2):188-197(Sep.2014)を参照。
【0189】
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞は、CRISPR/Cas系ベースの転写活性化因子、例えば、CRISPR活性化(CRISPRa)などで改変されている。例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるNissim et al.,Molecular Cell 54:1-13(May2014)を参照。CRISPRaは、エンドヌクレアーゼ活性が欠如しているが、そのガイドRNA及び標的DNA核酸配列と結合する能力を保持する改変Casタンパク質の使用を含むCRISPRツールの一種である。本開示で使用され得るそのような改変Casタンパク質の非限定例が当該技術分野において知られている。例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるPandelakis et al.,Cell Systems10(1):1-14(Jan.2020)を参照。いくつかの態様では、改変Casタンパク質は、(当該技術分野では「dCas9」とも呼ばれる)改変Cas9タンパク質を含む。いくつかの態様では、改変Casタンパク質は、改変Cas12aタンパク質を含む。いくつかの態様では、本開示に有用な改変Casタンパク質は、ガイドポリヌクレオチド(例えば、低分子ガイドRNA)と結合しており(「改変Cas・ガイド複合体」)、ガイドポリヌクレオチドは、対象のタンパク質(例えば、c-Jun)をコードする核酸配列の領域と相補的な認識配列を含む。いくつかの態様では、1つ以上の転写活性化因子が、改変Cas・ガイド複合体(例えば、改変Casタンパク質のN末端及び/またはC末端)に結合され、その結果、改変Cas・ガイド複合体が細胞に導入されると、1つ以上の転写活性化因子が核酸配列の調節エレメントと結合し、それによって、コード化タンパク質(例えば、c-Jun)の発現を誘導し、及び/または増加させることができる。いくつかの態様では、1つ以上の転写抑制因子(例えば、Kruppel関連ボックスドメイン(KRAB))が、改変Cas・ガイド複合体(例えば、改変Casタンパク質のN末端及び/またはC末端)に結合されてもよく、その結果、細胞に導入されると、1つ以上の転写抑制因子が、例えば、c-Jun(例えば、Bach2)の発現を妨げる可能性のある遺伝子などの遺伝子の転写を抑制または低減することができる。例えば、参照によって各文献の全体が本明細書に組み込まれるUS20200030379A1及びYang et al.,J Transl Med 19:459(2021)を参照。いくつかの態様では、本開示に有用な改変Casタンパク質は、1つ以上の転写活性化因子及び1つ以上の転写抑制因子の両方に結合されてもよい。
【0190】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、そのような改変Casタンパク質の使用は、対象の遺伝子の条件付き転写及び発現を可能にすることができる。例えば、いくつかの態様では、細胞(例えば、T細胞)は、プロテアーゼ(例えば、タバコエッチウイルス(TEV))及びc-Junのプロモーター領域を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)と連結された、キメラ抗原受容体(CAR)(例えば、抗ROR1 CAR)を含むよう改変される。いくつかの態様では、細胞は、リンカー(例えば、TEV切断可能なリンカー)を介して転写活性化因子と結合した改変Casタンパク質(例えば、dCas9-VP64-p65-Rta転写活性化因子(VPR))と複合体を形成した、T細胞活性化リンカー(LAT)をさらに含むよう改変される。CARの活性化時、改変Casタンパク質が核局在化のために放出され、条件的及び可逆的にc-Junの発現を誘導する。Yang et al.,J Immunother Cancer 9(Suppl2):A164(2021)、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0191】
当業者には明らかなように、いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞は、複数のアプローチの組み合わせを使用して改変されている。例えば、いくつかの態様では、細胞は、本明細書に記載のコドン最適化c-Junヌクレオチド配列を、例えば、単独で、または対象の他のタンパク質(例えば、リガンド結合タンパク質)をコードする1つ以上のヌクレオチド配列と組み合わせて含むよう改変されている。いくつかの態様では、そのような細胞は、内在性c-Junタンパク質の発現を増加させることができる外来性転写活性化因子(例えば、CRISPRa)でさらに改変される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、そのような組み合わせアプローチにより、免疫細胞が(例えば、外来性ヌクレオチド配列によってコードされ、免疫細胞によって内因的に発現される)さらに高いレベルのc-Junタンパク質発現を有することが可能になるであろう。
【0192】
別段の指示がない限り、1つ以上の外来性ヌクレオチド配列及び/または転写活性化因子を、当該技術分野において既知の任意の適した方法を使用して細胞に導入することができる。1つ以上の外来性ヌクレオチド配列を細胞に送達するための適した方法の非限定例としては、トランスフェクション(トランスフォーメーション及び形質導入としても知られている)、エレクトロポレーション、非ウイルス送達、ウイルスによる形質導入、脂質ナノ粒子送達、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0193】
いくつかの態様では、細胞は、免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、ヒト対象から単離される。いくつかの態様では、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞、Tc17細胞、またはそれらの組み合わせである。いくつかの態様では、免疫細胞は、NK細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの態様では、免疫細胞は、制御性T細胞(Treg)である。いくつかの態様では、免疫細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、B細胞である。
【0194】
いくつかの態様では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。本明細書で使用される場合、「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫応答、例えば、免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞を指す。「免疫エフェクター機能」または「免疫エフェクター応答」は、例えば、標的細胞の免疫攻撃を増強または促進する免疫エフェクター細胞の機能または応答を指す。例えば、免疫エフェクター機能または応答は、標的細胞の殺傷またはその成長もしくは増殖の阻害を促進するTまたはNK細胞の特性を指す。T細胞の場合、一次刺激及び共刺激が、免疫エフェクター機能または応答の例である。
【0195】
「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。キメラ結合タンパク質(例えば、CAR)の細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラ結合タンパク質を含有する細胞、例えば、CAR T細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成することができる。例えば、CAR T細胞における、免疫エフェクター機能の例としては、サイトカインの分泌を含む、細胞溶解活性及びヘルパー活性が挙げられる。いくつかの態様では、細胞内シグナルドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞が特殊な機能を果たすように誘導するキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)の一部である。細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される範囲内で、そのような切断部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、完全な鎖の代わりに使用することができる。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0196】
いくつかの態様では、免疫細胞は、多能性または複能性前駆細胞から分化させられる。したがって、本明細書で使用される場合、「免疫細胞」は、成熟免疫細胞を生じさせることができる多能性または複能性細胞をさらに含む。いくつかの態様では、細胞(例えば、免疫細胞)は、人工多能性幹細胞(IPSC)である。いくつかの態様では、細胞(例えば、免疫細胞)は胚性幹細胞である。いくつかの態様では、細胞は、造血幹細胞である。
【0197】
いくつかの態様では、T細胞は、CD4+T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD8+T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、ナイーブT細胞(TN)である。いくつかの態様では、T細胞は、CD95-/CD45RA+/CD62L+/CCR7+である。いくつかの態様では、T細胞は、CD95+/CD45RA+/CD62L+/CCR7+である。いくつかの態様では、T細胞は、CD45RO+/CCR7+/CD62L+である。いくつかの態様では、T細胞は、CD45RO+/CCR7-/CD62L-である。
【0198】
本開示から明らかなように、いくつかの態様では、AP-1発現が増加した細胞(例えば、免疫細胞)は、キメラ結合タンパク質をさらに発現する。いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)である。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のもの)からAP-1転写因子及びCARを発現するよう操作されている。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、第1のポリヌクレオチドからAP-1転写因子及び第2のポリヌクレオチドからCARを発現するよう操作されている。当該技術分野において既知の任意のCARは、セクション5.5.1に記載されているものなどの本開示の細胞に使用することができる。特定の態様では、CARは、ROR1と特異的に結合する。いくつかの態様では、CARは、GPC2と特異的に結合する。いくつかの態様では、CAR発現細胞は、CAR T細胞、例えば、モノCAR T細胞、ゲノム編集CAR T細胞、二重CAR T細胞、またはタンデムCAR T細胞である。そのようなCAR T細胞の例は、(US20210299223A1と対応する)国際出願第PCT/US2019/044195号に示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、TCR(例えば、操作されたTCR)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のもの)からAP-1転写因子及びTCRを発現するよう操作されている。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、第1のポリヌクレオチドからAP-1転写因子及び第2のポリヌクレオチドからTCRを発現するよう操作される。当該技術分野において既知の任意のTCRは、セクション5.4.1に記載されているものなどの本開示の細胞に使用することができる。
【0200】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、キメラ抗体-T細胞受容体(CaTCR)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のもの)からAP-1転写因子及びcaTCRを発現するよう操作されている。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、第1のポリヌクレオチドからAP-1転写因子及び第2のポリヌクレオチドからcaTCRを発現するよう操作される。当該技術分野において既知の任意のcaTCRは、セクション5.4.1に記載されているものなどの本開示の細胞に使用することができる。
【0201】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質は、キメラシグナル伝達受容体(CSR)を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のもの)からAP-1転写因子及びCSRを発現するよう操作されている。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、第1のポリヌクレオチドからAP-1転写因子及び第2のポリヌクレオチドからCSRを発現するよう操作される。当該技術分野において既知の任意のCSRは、セクション5.4.1に記載されているものなどの本開示の細胞に使用することができる。
【0202】
いくつかの態様では、キメラ結合タンパク質はTCR模倣物を含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のもの)からAP-1転写因子及びTCR模倣物を発現するよう操作されている。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞)は、第1のポリヌクレオチドからAP-1転写因子及び第2のポリヌクレオチドからTCR模倣物を発現するよう操作される。当該技術分野において既知の任意のTCR模倣物は、セクション5.4.1に記載されているものなどの本開示の細胞に使用することができる。
【0203】
いくつかの態様では、(例えば、AP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質を発現する)本明細書に記載の細胞は、本明細書に記載の付加的な翻訳配列によってコードされる1つ以上のタンパク質(例えば、セクション5.4を参照)をさらに発現するよう改変されてもよい。
【0204】
本開示の特定の態様は、細胞、例えば、免疫細胞に本明細書で開示されるポリヌクレオチド(例えば、コドン最適化AP-1ヌクレオチド配列及びキメラ結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む多シストロン性ポリヌクレオチド)をトランスフェクトし、適した条件下で細胞を培養することによって、本明細書で開示されるキメラ結合タンパク質を生成する方法に関する。
【0205】
組成物
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットを含む組成物をさらに含む。特定の態様では、組成物は、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質、例えば、キメラ結合タンパク質(例えば、CAR)及びAP-1転写因子(例えば、CAR T細胞、例えば、抗ROR1 CAR T細胞)を発現するよう操作されたT細胞を含む。いくつかの態様では、組成物は、医薬組成物である。したがって、(i)AP-1転写因子を発現するよう改変された細胞(例えば、免疫細胞)であって、例えば、AP-1転写因子の発現がコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを形質導入されていない対応する細胞における発現と比較して増加した、細胞、及び(ii)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物が本明細書で開示される。いくつかの態様では、(i)AP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)を発現するよう改変された細胞(例えば、免疫細胞)であって、例えば、AP-1転写因子の発現がコドン最適化AP-1ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを形質導入されていない対応する細胞における発現と比較して増加した、細胞、及び(ii)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物が本明細書で提供される。本明細書に記載される通り、そのような医薬組成物は、疾患または障害(例えば、がん)を予防及び/または処置するために使用することができる。いくつかの態様では、本明細書で開示される医薬組成物に存在する細胞は、T細胞またはNK細胞である。
【0206】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、1つ以上の他の化学成分、例えば、薬学的に許容される担体及び賦形剤と混合もしくは混ぜ合わされたか、またはそれらの中に懸濁させられた、例えば、キメラ結合タンパク質(例えば、CAR)を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作されたT細胞などの1つ以上の本明細書に記載の化合物を指す。いかなる理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、医薬組成物の目的は、例えば、本開示のAP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)を発現する細胞の調製物の対象への投与を容易にすることである。
【0207】
「賦形剤」及び「担体」という用語は、同義に使用され、化合物、例えば、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットの投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0208】
「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」という用語、及びそれらの文法的変化形は、ヒトを含む動物に使用するための米国連邦政府の規制機関により認可されたか、または米国薬局方に列挙される薬剤のいずれか、ならびに対象への組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理作用をもたらさず、投与される化合物の生物活性及び特性を抑制しないあらゆる担体または希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0209】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノールアルコール、ブチルアルコール、もしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及び他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、もしくはデキストリン;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0210】
医薬組成物は、対象に対するあらゆる投与経路用に製剤化することができる。投与経路の具体例としては、筋肉内、皮下、点眼、静脈内、腹腔内、皮内、眼窩内、脳内、頭蓋内、脊髄内、心室内、髄腔内、大槽内、嚢内、または腫瘍内が挙げられる。皮下、筋肉内、または静脈内のいずれかの注射を特徴とする非経口投与も、本明細書では想定される。注射物は、液体溶液または懸濁液のいずれか、注射前の液体の溶液または懸濁液に適した固体形態として、あるいはエマルジョンとして従来の形態で調製され得る。注射物、溶液、及びエマルジョンはまた、1つ以上の賦形剤を含む。適した賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、またはグリセロールである。さらに、必要に応じて、投与される医薬組成物はまた、少量の非毒性補助物質、pH緩衝剤、安定剤、及び他のそのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、及びシクロデキストリンなども含んでもよい。
【0211】
静脈内投与される場合、適した担体としては、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、ならびにこれらの混合物などの増粘剤及び可溶化剤を含む溶液が挙げられる。
【0212】
インビボ投与に使用される組成物(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作されたT細胞)は、無菌であり得る。これは、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって達成することができる。
【0213】
キット
本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞(例えば、AP-1転写因子を過剰発現するCAR T細胞)、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットを含むキットも本明細書で開示される。いくつかの態様では、キットは、疾患もしくは障害(例えば、がん)に対する免疫療法に使用するため、及び/または疾患もしくは障害(例えば、がん)を処置する、またはそのリスクを低減するのに使用するためのものである。特定の態様では、キットは、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、ポリペプチド、またはポリペプチドのセットを含む1つ以上の容器を含む。
【0214】
いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の任意の方法に従って使用するための説明書を含む。例えば、含まれる説明書には、標的とする疾患を処置する、その発症を遅らせる、またはそれを緩和するための本明細書に記載の医薬組成物の投与の説明が含まれる場合がある。いくつかの態様では、説明書には、本明細書に記載の組成物を標的とする疾患/障害(例えば、がん)のリスクがある対象に投与することの説明が含まれる。
【0215】
いくつかの態様では、説明書には、投与量情報、投薬スケジュール、及び投与経路が含まれる。いくつかの態様では、容器は、単位用量、大容量のパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)または単位用量以下である。いくつかの態様では、説明書は、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)上に書かれた説明書である。いくつかの態様では、説明書は、機械可読の説明書(例えば、磁気または光記憶ディスクに保持された説明書)である。
【0216】
いくつかの態様では、ラベルまたは添付文書は、本明細書で開示される組成物が、本明細書に記載のものなどのがんと関連づけられる疾患または障害を処置するため、その発症を遅らせるため、及び/またはそれを緩和するために使用されることを示す。本明細書に記載されている任意の方法を実施するための説明書が提供され得る。
【0217】
いくつかの態様では、本明細書に記載のキットは、適した包装に入れられている。いくつかの態様では、適した包装は、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブル包装(例えば、封止Mylarまたはプラスチックバッグ)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、包装は、特定のデバイス、例えば、インヘラー、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)、またはミニポンプなどの注入デバイスと組み合わせて使用するためのパッケージを含む。いくつかの態様では、キットは、滅菌アクセスポートを含む(例えば、容器は、皮下注射針で刺すことができる栓を有する静注液バッグまたはバイアルであってもよい)。いくつかの態様では、容器も、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針で刺すことができる栓を有する静注液バッグまたはバイアルであってもよい)。いくつかの態様では、少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載の組成物(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作されたT細胞)である。
【0218】
いくつかの態様では、キットは、バッファー及び説明情報などの追加の構成要素をさらに含む。いくつかの態様では、キットは、容器、及び容器上または容器と関連したラベルまたは添付文書(複数可)を含む。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載のキットの内容物を含む製品を提供する。
【0219】
治療的使用
本開示の特定の態様は、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、AP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質)を投与する方法に関する。本開示の特定の態様は、疾患または障害の処置を必要とする対象において疾患または障害を処置する方法であって、対象に本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、AP-1転写因子及びキメラ結合タンパク質)を投与することを含む、方法に関する。例えば、特定の態様では、疾患または障害の処置を必要とする対象において疾患または障害を処置する方法であって、対象にキメラ結合タンパク質(例えば、CAR)を発現し、AP-1転写因子を過剰発現するよう操作された細胞を投与することを含む、方法が本明細書で開示される。いくつかの態様では、疾患または状態は、腫瘍、すなわち、がんを含む。いくつかの態様では、方法は、有効量の本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)を投与することを含む、対象において標的細胞集団または組織に対するT細胞媒介性免疫応答を刺激することを含む。いくつかの態様では、標的細胞集団は、腫瘍を含む。いくつかの態様では、腫瘍は、固形腫瘍である。
【0220】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)の投与は、参照腫瘍体積と比較して対象における腫瘍体積を縮小させる。いくつかの態様では、参照腫瘍体積は、投与前の対象における腫瘍体積である。さらなる態様では、参照腫瘍体積は、投与を受けなかった対応する対象における腫瘍体積である。いくつかの態様では、対象における腫瘍体積は、投与後に、参照腫瘍体積と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%縮小する。
【0221】
いくつかの態様では、腫瘍を処置することは、対象の腫瘍重量を減少させることを含む。特定の態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)の投与は、対象に投与された場合、対象の腫瘍重量を減少させることができる。いくつかの態様では、腫瘍重量は、参照腫瘍重量と比較して、投与後に少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%減少する。いくつかの態様では、参照腫瘍重量は、投与前の対象における腫瘍重量である。さらなる態様では、参照腫瘍重量は、投与を受けなかった対応する対象の腫瘍重量である。
【0222】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)の、例えば、腫瘍を患っている対象への投与は、対象の腫瘍及び/または腫瘍微小環境(TME)においてTIL(例えば、CD4+またはCD8+)の数及び/またはパーセンテージを増加させることができる。特定の態様では、腫瘍及び/またはTMEにおけるTILの数及び/またはパーセンテージは、参照(例えば、投与を受けていない対象または投与前の同じ対象の対応する値)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、または少なくとも約300%以上増加する。
【0223】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)の、例えば、腫瘍を患っている対象への投与は、投与を受けていない対応する(例えば、対応するが、AP-1転写因子発現が欠如した細胞で処置される)対象における免疫応答の持続時間と比較して、対象における免疫応答の持続時間を延長することができる。特定の態様では、免疫応答の持続時間は、参照(例えば、投与を受けていない対応する対象)と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または少なくとも約1000%以上延長される。特定の態様では、免疫応答の持続時間は、参照(例えば、投与を受けていない対応する対象)と比較して、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍以上延長される。
【0224】
本明細書に記載される通り、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、様々ながんを処置するために使用することができる。処置することができるがんの非限定例としては、副腎皮質癌、進行癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、脳腫瘍、脳癌、乳癌、小児期癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫ファミリー、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎細胞癌、喉頭部及び下咽頭癌、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、皮膚のリンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、成人軟部組織における肉腫、基底及び扁平上皮細胞皮膚癌、黒色腫、小腸癌、胃癌、精巣癌、咽喉癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰部癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、がん処置によって引き起こされる二次がん、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、腫瘍は、固形腫瘍と関連づけられる。
【0225】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、他の治療用薬剤(例えば、抗がん剤及び/または免疫調節剤)と組み合わせて使用される。したがって、特定の態様では、本明細書で開示される疾患または障害(例えば、腫瘍)を処置する方法は、1つ以上の追加の治療用薬剤と組み合わせて本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)を投与することを含む。そのような薬剤としては、例えば、化学療法薬、標的抗がん療法、腫瘍溶解薬、細胞傷害性薬剤、免疫ベースの療法、サイトカイン、手術、放射線療法、共刺激分子の活性剤、免疫チェックポイント阻害剤、ワクチン、細胞免疫療法、またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0226】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、追加の治療用薬剤の投与前または後に対象に投与される。他の態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、追加の治療用薬剤と同時に対象に投与される。特定の態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)及び追加の治療用薬剤は、薬学的に許容される担体中の単一の組成物として同時に投与されてもよい。他の態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)及び追加の治療用薬剤は、別々の組成物として同時に投与される。
【0227】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、標準治療(例えば、手術、放射線、及び化学療法)と組み合わせて使用される。本明細書に記載の方法は、維持療法、例えば、腫瘍の発生または再発を予防することを目的とした療法としても使用することもできる。
【0228】
いくつかの態様では、本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド、ベクター、組成物、細胞、ポリペプチド、またはポリペプチドのセット(例えば、キメラ結合タンパク質を含み、AP-1転写因子を過剰発現する操作された細胞)は、免疫経路の複数の要素を標的とすることができるよう、1つ以上の抗がん剤と組み合わせて使用される。そのような組み合わせの非限定例としては、腫瘍抗原提示を増強する療法(例えば、樹状細胞ワクチン、GM-CSF分泌細胞ワクチン、CpGオリゴヌクレオチド、イミキモド)、例えば、CTLA-4及び/またはPD1/PD-L1/PD-L2経路の阻害、及び/またはTregもしくは他の免疫抑制細胞(例えば、骨髄系由来サプレッサー細胞)の枯渇もしくは遮断によって、負の免疫制御を阻害する療法、例えば、CD-137、OX-40、及び/またはCD40もしくはGITR経路を刺激する、及び/またはT細胞エフェクター機能を刺激するアゴニストを用いた、正の免疫制御を刺激する療法、抗腫瘍T細胞の発生頻度を全身で増加させる療法、例えば、CD25のアンタゴニスト(例えば、ダクリズマブ)を使用して、またはエクスビボ抗CD25ビーズ枯渇によって腫瘍中のTregなどのTregを枯渇させる、または阻害する療法、腫瘍中のサプレッサー骨髄細胞の機能に影響を与える療法、腫瘍細胞の免疫原性を増強する療法(例えば、アントラサイクリン)、遺伝子操作細胞、例えば、キメラ抗原受容体を発現するように操作された細胞(CAR-T療法)を含む養子T細胞またはNK細胞移入、代謝酵素、例えば、インドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)、ジオキシゲナーゼ、アルギナーゼ、または一酸化窒素合成酵素などを阻害する療法、T細胞アネルギーまたは疲弊を逆転させる/防止する療法、腫瘍部位の自然免疫活性化及び/または炎症を誘発する療法、免疫刺激性サイトカインの投与、免疫抑制サイトカインの遮断、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0229】
いくつかの態様では、抗がん剤は、免疫チェックポイント阻害剤を含む(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を介するシグナル伝達を遮断する)。本発明の方法に使用され得る免疫チェックポイント阻害剤の非限定例は、CTLA-4アンタゴニスト(例えば、抗CTLA-4抗体)、PD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体)、TIM-3アンタゴニスト(例えば、抗TIM-3抗体)、またはそれらの組み合わせを含む。そのような免疫チェックポイント阻害剤の非限定例としては、以下のものが挙げられる:抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標);MK-3475)、ピジリズマブ(CT-011)、PDR001、MEDI0680(AMP-514)、TSR-042、REGN2810、JS001、AMP-224(GSK-2661380)、PF-06801591、BGB-A317、BI 754091、SHR-1210、及びそれらの組み合わせ);抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標);RG7446;MPDL3280A;RO5541267)、デュルバルマブ(MEDI4736、IMFINZI(登録商標))、BMS-936559、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))、LY3300054、CX-072(Proclaim-CX-072)、FAZ053、KN035、MDX-1105、及びそれらの組み合わせ);ならびに抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))、トレメリムマブ(チシリムマブ;CP-675,206)、AGEN-1884、ATOR-1015、及びそれらの組み合わせ)。
【0230】
いくつかの態様では、抗がん剤は、免疫チェックポイント活性剤を含む(すなわち、特定の免疫チェックポイント経路を介するシグナル伝達を促進する)。特定の態様では、免疫チェックポイント活性剤は、OX40アゴニスト(例えば、抗OX40抗体)、LAG-3アゴニスト(例えば抗LAG-3抗体)、4-1BB(CD137)アゴニスト(例えば、抗CD137抗体)、GITRアゴニスト(例えば、抗GITR抗体)、TIM3アゴニスト(例えば、抗TIM3抗体)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0231】
本開示の実施は、特に明記しない限り、当業者の技能範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組み換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いるであろう。かかる技術は文献に十分な説明がなされている。例えば、Sambrook et al.,ed.(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual(2nd ed.;Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al.,ed.(1992)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,(Cold Springs Harbor Laboratory,NY);D.N.Glover ed.,(1985)DNA Cloning,Volumes I and II;Gait, ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al.米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins,eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins,eds.(1984)Transcription And Translation;Freshney(1987)Culture Of Animal Cells(Alan R.Liss,Inc.);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press)(1986);Perbal (1984)A Practical Guide To Molecular Cloning;the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al.,eds.,Methods In Enzymology,Vols.154 and 155;Mayer and Walker,eds.(1987)Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Academic Press,London);Weir and Blackwell,eds.,(1986)Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986););Crooks,Antisense drug Technology:Principles,strategies and applications,2nd Ed.CRC Press(2007)及びAusubel et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,Baltimore,Md.)を参照。
【0232】
上で引用されたすべての参考文献、及び本明細書において引用されるすべての参考文献ならびにアミノ酸またはヌクレオチド配列(例えば、GenBank番号及び/またはUniProt番号)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0233】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、限定のためのものではない。
【実施例】
【0234】
実施例1 - コドン最適化c-Jun配列を有する構築物の生成
導入遺伝子発現を増加させるために、コドン最適化c-Jun配列を含むR12-EGFRt構築物(すなわち、抗ROR1 scFv+切断型EGFRを含む)を、さまざまな最適化アプローチを使用して生成した。コドン最適化c-Jun配列を配列番号1~10に示す。対照として、c-Jun配列が欠如したバイシストロン性R12-EGFRt構築物を使用した(
図1の構築物#1)。追加の対照として、c-Junの代わりに切断型CD19(CD19t)を含むトリシストン性R12-EGFRt構築物も使用した(
図1の構築物#2)。配列番号1では、コドン最適化を、ヒト細胞におけるコドン使用頻度バイアスを模倣するよう調整し(
図1の構築物#3)、配列番号2では、コドン最適化使用を、ヒトT細胞におけるコドン使用頻度バイアスを模倣するよう調整した(
図1の構築物#4)。
【0235】
コドン最適化c-Junが抗ROR1構築物におけるc-Junの発現を向上させることができるか評価するために、
図1に示される一連の抗ROR1構築物を使用して、T細胞に異なる感染多重度(MOI 2、5、10、及び20)で形質導入した。次に、様々な構築物のc-Jun及びR12 CAR及びEGFRtの発現レベルを、フローサイトメトリーを使用して求めた。
【0236】
図2Aに示される通り、それぞれ、配列番号1及び10に示したc-Junコドン最適化配列を含む抗ROR1構築物3及び12は、対照抗ROR1構築物(すなわち、R12-EGFRt及びCD19t-R12-EGFRt)と比較して、最高のパーセンテージのEGFRt
+c-Jun
+細胞を示した。予想どおり、c-Junが欠如した抗ROR1構築物(すなわち、R12-EGFRt及びCD19t-R12-EGFRt)を形質導入した細胞は、EGFRt及びc-Junの両方を発現する細胞のパーセンテージが無視できるほどであった。形質導入細胞をEGFRt及び抗ROR1 scFv(R12)の両方の発現に関して分析したら、細胞にコドン最適化c-Jun抗ROR1構築物である構築物3及び12を形質導入した場合、配列番号9のコドン最適化c-Jun配列を含む構築物11を含む抗ROR1構築物(
図2B)及び対照CD19t-R12-EGFRt構築物と比較して、EGFRt+R12+細胞のパーセンテージがはるかに高かった。
【0237】
単一細胞レベルでは、コドン最適化c-Jun-抗ROR1構築物である構築物3及び構築物12を形質導入した細胞でも、配列番号9のコドン最適化c-Jun配列である構築物11を含む抗ROR1構築物と比較してc-Jun発現が実質的に高かった(
図2C)。さらに、コドン最適化c-Jun-抗ROR1構築物である構築物3及び構築物12を形質導入した細胞でも、単一細胞レベルで配列番号9のコドン最適化c-Jun配列である構築物11を含む抗ROR1構築物(
図2D)及び対照CD19t-R12-EGFRt構築物と比較して抗ROR1 CAR発現が高かった。
【0238】
これらの結果は、抗ROR1-EGFRt構築物である構築物3及び12に含まれる配列番号1及び10のコドン最適化c-Jun配列を含めることにより、標的細胞におけるc-Jun導入遺伝子発現を実質的に増加させることができることを示した。全般的な形質導入効率は、R12-EGFRt構築物(すなわち、c-Junが欠如している)のものと同様であり、コドン最適化c-Jun-抗-ROR1 CAR構築物は、高いベクター複製数と関連づけられなかった(データは示していない)。
【0239】
別の実験では、上記のさらなるコドン最適化c-Jun配列を使用して、様々な感染多重度でT細胞に形質導入し、様々な構築物の導入遺伝子の発現レベルを、フローサイトメトリーを使用して求めた。各構築物に対して、抗ROR1 CAR及びEGFRtの共発現によって判定される同様のレベルの形質導入を与えるMOIを、T細胞による導入遺伝子発現の比較のために選択した。
【0240】
最初の実験を行った(層1;
図3A)。この実験では、構築物3は、わずかに低下したが、依然として良好なc-Jun発現を示した構築物5、及びCD19t対照と比較して、形質導入効率のわずかな低下のみで、抗ROR1 CAR及びEGFRt導入遺伝子の良好な発現を維持しながら最高のc-Jun発現を有することが示された。構築物3を選択した後、
図3Bに示される層2実験においてさらなるコドン最適化c-Jun構築物と比較した。層2の比較では、構築物3及び8が、抗ROR1 CAR及びEGFRt導入遺伝子の良好な発現を維持しながら高いc-Jun発現を示し、構築物3が最高のc-Jun発現を有した。構築物7も良好なc-Jun発現を示したが、低い形質導入効率、ならびにROR1 CAR及びEGFRt発現を示した。
【0241】
要約すると、多数のコドン最適化c-Jun配列を生成し、形質導入効率ならびにc-Jun、R12及びEGFRt導入遺伝子発現に対する効果に関してスクリーニングした。これらの実験は、(それぞれ、配列番号1、6及び10に示されるコドン最適化c-Jun配列を有する)構築物3、8及び12が、形質導入効率ならびに導入遺伝子(R12及びEGFRt)発現に対して許容される影響で、高いc-Jun発現を有することを示した。構築物7も、良好なc-Jun及びR12発現ならびに形質導入効率及びEGFRt発現の中程度の低下を示した。これらの候補コドン最適化c-Jun配列は、特に、養子細胞免疫療法のための操作された免疫細胞の疲弊を低減するために使用することができる。
【配列表】
【国際調査報告】