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特表2024-510903固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進する液体粘弾性嚥下補助剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進する液体粘弾性嚥下補助剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20240305BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240305BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/44
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552243
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022056410
(87)【国際公開番号】W WO2022189663
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162444.0
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ラヴォアジエ, アナイス
(72)【発明者】
【氏名】ラマイオーリ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェドワブ, マイケル ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】バービッジ, アダム ステュワート
(72)【発明者】
【氏名】エングマン, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】サティヤヴァゲスワラン, シュリーラム
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE41
4C076EE58
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF35
4C076FF39
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF61
4C076FF68
(57)【要約】
本開示は、安全な嚥下を必要とする患者において、固形経口製剤(SODF)、例えば錠剤及び/又はカプセルの安全な嚥下を促進させるために製剤化された、液体粘弾性嚥下補助剤、並びにそのような液体粘弾性嚥下補助剤の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を、安全な嚥下を必要とする患者において促進する使用のための液体粘弾性嚥下補助剤であって、前記液体粘弾性嚥下補助剤が、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1~10重量%の総量で含み、前記液体粘弾性嚥下補助剤が:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される10~1000mPa.sの剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~1000msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4のIDDSIレベルと、を有する、液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項2】
1~4、好ましくは1~3、1~2、又は2~3、より好ましくは1~2、最も好ましくは1~2、例えば1又は2、最も好ましくは1のIDDSIレベルを有する、請求項1に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項3】
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~900mPa.sの剪断粘度、10~800mPa.sの剪断粘度、10~700mPa.sの剪断粘度、又は10~600mPa.sの剪断粘度、好ましくは10~500mPa.sの剪断粘度、同様に好ましくは10~400mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~350mPa.s、例えば10~350mPa.s、20~350mPa.s、又は更には30~350mPa.sの剪断粘度を有する、請求項1又は2に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項4】
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの少なくとも1つの伸長緩和時間が10~900ms、10~800ms、10~700ms、10~600ms、10~500ms、10~475ms、好ましくは10ms~450ms、同様に好ましくは、より好ましくは10~425ms、同様により好ましくは10ms~400ms、更により好ましくは10ms~375ms、最も好ましくは10ms~350msであり、各伸長緩和時間が、室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項5】
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定したときの前記液体粘弾性嚥下補助剤のフィラメント径が、前記CaBER試験中に時間の経過とともに指数関数的に減少する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項6】
前記植物抽出ガムが、オクラガム、コンニャクマンナン、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フェネグリークガム、タマリンドガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、ペクチン、セルロース誘導体、トラガントガム、カラヤガム、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項7】
前記植物由来粘液が、サボテン粘液、オオバコ粘液、ゼニアオイ粘液、亜麻仁粘液、ウスベニタチアオイ粘液、ヘラオオバコ粘液、モウズイカ粘液、セトラリア粘液、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項8】
前記β-グルカン、植物由来粘液、及び/又は植物抽出ガムが、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7.5重量%、最も好ましくは0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%の総量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項9】
前記固形経口製剤(SODF)が、錠剤又はカプセルであり、好ましくは、前記錠剤又はカプセルが、「5」~「000」の標準サイズを有し、又は3~23mm、好ましくは3~22mmの錠剤長さ、又は3~24mm、好ましくは3~22mmのカプセル長さを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項10】
前記患者が嚥下障害を有する、前記患者が嚥下困難若しくは唾液分泌不全を有する、又は前記患者が、窒息及び不顕性誤嚥のリスクが増加している、若しくは複数の薬剤を処方されている患者、例えば、複数の併存症を有する及び複数の薬剤を処方されている小児若しくは高齢の患者である、又は前記患者ががん患者である、又は前記患者が、口腔乾燥症(口渇)、高血糖、糖尿病、心臓血管疾患、関節症、高血圧症、ぜんそく、認知症、MCI、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、骨粗鬆症、脳卒中、慢性腎疾患、若しくは深部静脈血栓症を有している患者である、咽喉炎を有する人物である、又は咽頭炎に起因する嚥下の問題を有する人物であり得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項11】
前記液体粘弾性嚥下補助剤が、医薬製剤、ダイエタリーサプリメント、機能性飲料製品、特別医療目的用食品(FSMP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される投与可能な形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項12】
前記液体粘弾性嚥下補助剤が、使用前に希釈される濃縮形態で提供される、又はレディ・トゥ・ユーズ形態で提供される、又は使用前に再構成される粉末として提供される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項13】
前記液体粘弾性嚥下補助剤が、食品添加物、酸味料、pH調節用緩衝剤若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、添加物、香料、ミネラル、浸透圧剤、製薬上許容されるキャリア、保存料、安定剤、糖(複数可)、甘味料(複数可)、調質剤(複数可)、ビタミン(複数可)、タンパク質、脂質、及び/又は炭水化物からなる群から選択される任意選択的な原材料を更に含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための液体粘弾性嚥下補助剤。
【請求項14】
健康な人において固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための、液体粘弾性嚥下補助剤の非治療目的使用であって、
前記液体粘弾性嚥下補助剤が、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1~10重量%の総量で含み、前記液体粘弾性嚥下補助剤が:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される10~1000mPa.sの剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によってによって測定されるとおりの、10~1000msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される1~4のIDDSIレベルと、を有する、非治療目的使用。
【請求項15】
前記組成物が、
1~4、好ましくは1~3、1~2、若しくは2~3、より好ましくは1~2、最も好ましくは1~2、例えば1若しくは2、最も好ましくは1のIDDSIレベル、及び/又は
それぞれ50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~900mPa.sの剪断粘度、10~800mPa.sの剪断粘度、10~700mPa.sの剪断粘度、若しくは10~600mPa.sの剪断粘度、好ましくは10~500mPa.sの剪断粘度、同様に好ましくは10~400mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~350mPa.s、例えば10~350mPa.s、20~350mPa.s、若しくは更には30~350mPa.sの剪断粘度、及び/又は
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によってによって測定されるとおりの、10~900ms、10~800ms、10~700ms、10~600ms、10~500ms、10~475ms、好ましくは10ms~450ms、同様に好ましくは、より好ましくは10~425ms、同様により好ましくは10ms~400ms、更により好ましくは10ms~375ms、最も好ましくは10ms~350msの少なくとも1つの伸長緩和時間、を有し、それぞれの伸長緩和時間が、室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定される伸長緩和時間を有する、請求項14に記載の非治療目的使用。
【請求項16】
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定したときの前記液体粘弾性嚥下補助剤のフィラメント径が、前記CaBER試験中に時間の経過とともに指数関数的に減少する、請求項14又は15に記載の非治療目的使用。
【請求項17】
前記植物抽出ガムが、オクラガム、コンニャクマンナン、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フェネグリークガム、タマリンドガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、ペクチン、セルロース誘導体、トラガントガム、カラヤガム、若しくはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され;及び/又は
前記植物由来粘液が、サボテン粘液、オオバコ粘液、ゼニアオイ粘液、亜麻仁粘液、ウスベニタチアオイ粘液、ヘラオオバコ粘液、モウズイカ粘液、セトラリア粘液、若しくはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載の非治療目的使用。
【請求項18】
前記β-グルカン、植物由来粘液、及び/又は植物抽出ガムが、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7.5重量%、最も好ましくは0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%の総量で存在する、請求項14~17のいずれか一項に記載の非治療目的使用。
【請求項19】
前記固形経口製剤(SODF)が、錠剤又はカプセルであり、好ましくは、前記錠剤又はカプセルが、「5」~「000」の標準サイズを有し、又は3~23mm、好ましくは3~22mmの錠剤長さ、又は3~24mm、好ましくは3~22mmのカプセル長さを有する、請求項14~18のいずれか一項に記載の非治療目的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、健康な人又は安全な嚥下を必要とする患者において、固形経口製剤(SODF)、例えば錠剤及び/又はカプセルの安全な嚥下を促進するよう製剤化された液体粘弾性嚥下補助剤、並びにそのような液体粘弾性嚥下補助剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固形経口製剤(SODF)、例えば、粉末、顆粒、錠剤及びカプセルは、成人用医薬品に最も一般的な形式である。Heppner et al.,(2006)は、2006年にドイツで患者に処方された全ての薬物の65~70%が、まるごと嚥下されることを意図した錠剤及びカプセルであったと推定した。より最近では、Schiele et al.,(2013)が、一般診療を受けている患者によって言及された薬物の90.1%が様々な形状及びサイズの錠剤及びカプセルであったことを報告している。
【0003】
カプセル及び錠剤は、産業及び患者にとって取り扱い、加工、及び保管が簡単であるので、尚も市場で最も一般的な経口薬物送達形態である(Hoag 2017;Shaikh et al.2018)。しかしながら、カプセル及び錠剤を嚥下することが難しい場合もあり、そのような場合には、処方された薬物へのノンアドヒアランスにつながり得る。服薬に関連する嚥下困難は、成人人口の10~60%に影響を及ぼしており(Fields,Go,and Schulze 2015;Lau et al.2015;Punzalan et al.2019;Schiele et al.2013;Strachan and Greener 2005;Tahaineh and Wazaify 2017)、人々がそのような困難に関して医療従事者からのアドバイスを求めたがらない場合もあり得るので、過去にはおそらく過小評価されてきた(Lau et al.2015)。
【0004】
患者は、年齢及び性別に関連する解剖学的特徴(口腔、咽頭、上部食道括約筋及び食道などの寸法及び機能)のために、剤形自体の物理的特徴(寸法、表面特性、コンプライアンス、嗜好性、色など)のために(Liu et al.2016;Radhakrishnan 2016;Schiele et al.2013;Shariff et al.2020)、又は不適切な嚥下技術のために(Forough et al.2018;Schiele et al.2014)、錠剤及びカプセルを嚥下することに不安を感じる場合がある。
【0005】
古典的なSODFは、窒息及び不顕性誤嚥のリスクがより高い嚥下障害(swallowing disorders)(嚥下困難(dysphagia))を有する患者にとって特に厄介である(Schiele et al.2015)。SODFはまた、喉頭襞に引っかかったまま残り、局所的な炎症、食道炎、及び潰瘍形成を引き起こし得る(U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration 2013)。しかしながら、古典的なSODFは、健康な人にとっても面倒であり、食塊が喉に詰まる不快感などを引き起こす可能性がある。
【0006】
SODFの嚥下に関する系統的なin vivo研究は少なく、文献で入手可能なデータのほとんどは、SODFの受容性に対する錠剤/カプセル特性(例えば、サイズ、形状、密度、フィルムコーティング)の影響に焦点を当てている。Kasashi et al.,(2011)は、健康なボランティアに大型のハードゼラチンカプセル(19mm×7mm)を水と共に嚥下させたときにビデオ蛍光透視法で評価された口腔通過時間は0.95~1.45秒であったことを報告している。Yamamoto et al.,(2014)は、丸い両凸錠剤(最大9mm径)が健康な人の嚥下挙動に影響を及ぼすことを示している。彼らは、水対照と比較して丸い両凸錠剤(直径9mm)を服用したときの、錠剤サイズ及び数の増加に伴う嚥下の総数の増加、並びに舌骨上筋のEMG活性(バースト面積及び持続時間)の増加を報告している。Schiele et al.,(2015)は、流体又は食品へのSODFの添加が脳卒中患者の嚥下能力を悪化させることを示している。彼らは、SODFのタイプ及び形状とは無関係に、喉頭侵入及び誤嚥のリスクの増加を観察した。
【0007】
嚥下困難は、様々な神経障害、筋肉障害、及び呼吸器障害(脳卒中、アルツハイマー病、及びパーキンソン病、代謝性ミオパチー、咽喉がんなど)、並びに加齢に関連する生理学的変化に関連する(Stegemann,Gosch,and Breitkreutz 2012)。人口の高齢化に向かう現在の傾向(国連2020)を考慮すると、高齢者の少なくとも15%に影響を与えると考えられる嚥下困難による健康上の問題は増大している(Sura et al.2012)。
【0008】
更に、高齢者は、一般に、複数の共存症を管理するために複数の薬剤を処方されており(Masnoon et al.2017)、ほとんどの血糖降下薬、抗高血圧薬、又は抗脂質異常症薬は、彼らの特別な嚥下の必要性はよそにSODFでしか利用できない(Forough et al.2018;Liu et al.2016)。したがって、錠剤及びカプセルは、投与を容易にするために医療従事者又は介護者によって扱われることが多いが、これは有害事象及び医療過誤の件数の増加に関連している(Logrippo et al.2017;Nissen,Haywood,and Steadman 2009;Shariff et al.2020)。
【0009】
薬物の調合とは別に、他のストラテジーを使用して、錠剤及びカプセルで苦労している人々を助けることができる(Patel et al.2020;Satyanarayana,Kulkarni,and Shivakumar 2011)。第1に、別のタイプのSODF(すなわち、サイズがより小さい、異なる形状又はコーティングを有する、チュアブル又は口腔分散性であるものなど)に、別の医薬形態(液体製剤又はゲル製剤、微粒子など)に、又は異なる投与経路(例えば、経皮送達)に切り替えることが可能であり得る。これが可能でない場合、カップ及びストローなどの嚥下補助デバイス(Forough et al.2018)、並びに潤滑剤スプレー(Diamond and Lavallee 2010)又はコーティング(Uloza,Uloziene,and Gradauskiene 2010)が開発されている。柔らかい食品(プディング、アップルソース、ヨーグルトなど)もまた、嚥下補助ビヒクルとして頻繁に使用されるが、薬物製品と食品との間の適合性は、最初に注意深く評価されるべきである(Fukui 2015)。
【0010】
最近、まるごとのSODFを嚥下するのを助けるために特別に設計された潤滑剤ゲル及びとろみをつけた液体が市販されている(例えば、「Gloup」、「Slo錠剤」、「Medcoat」、又は「Magic Jelly」)。これらの製品は、嚥下困難の管理のために推奨される製品において考案(inspired)されており、デンプン又はガムベースの粘弾性材料に基づいている。それらの製品は、嚥下中の口腔及び咽喉におけるSODFの味覚及び通過をマスクすることによって嚥下の快適さを向上させるように設計されている。彼らはまた、付着のリスクを減少させることによって、口腔から胃へのSODFの滑らかな移動が支持されると主張している(Fukui 2015)。しかしながら、これらの潤滑ゲルに関する研究はほとんど発表されておらず、それらは現在のところ嚥下困難のない人々にのみ推奨されている(Malouh et al.2020)。Fukui et al.は、50名の健康な人(20歳~50歳)のグループによって、嚥下補助剤(アガー、カラギーナン、糖、糖アルコール、及び香料で構成される「Magic Jelly」)と水とをプラセボ錠剤及びカプセル(15~19mm径)と共に使用して比較した。彼らの官能試験によれば、ゼリーは水よりも優れており、有用であり、安全であると判断され、彼らのビデオ蛍光透視嚥下研究(VFSS)では、ゼリーと共に摂取されたカプセルは胃に到達するのに8秒しかかからないのに対して、水と共に嚥下されたカプセルは18秒かかることが明らかになった(Fukui 2004,2015)。Wright et al.,(2019)は、水と共に投与された、又はゼラチンベースのゲル中に封入されたアスピリン錠を比較した、第IV相非盲検ランダム化対照化クロスオーバー試験(12名の健康な男性、年齢18歳~35歳)の結果を報告している。ゲルコーティングは味覚を改善し、錠剤を水なしで嚥下させたが、薬物の生物学的利用能は有意に低下した。
【0011】
Schiele et al.,(2015)は、嚥下困難を有する患者のためのSODF嚥下に関して、プディングの稠度までとろみをつけた水と共に、又はミルクと共に中サイズのプラセボを嚥下した、52名の嚥下困難脳卒中患者のビデオ内視鏡評価から、有望な結果を報告した。SODF嚥下困難の有病率(prevalence rate)は、ミルクよりも、テクスチャを改変させた水の方が低く、このことは錠剤及びカプセルが流体よりもむしろ半固体で送達されるべきであることを示唆している。
【0012】
剪断減粘性食品増粘剤を使用した液体のテクスチャ改変は、安全な嚥下を促進し、嚥下困難の管理を助けるという一般的な意見の一致がある(Newman et al.2016;Rofes et al.2014)が、食塊移送の動態に対する流体の弾性及び伸長特性の作用は、最近になって初めて研究されており、まだ十分には理解されていない(Hadde et al.2019;Hadde,Chen,and Chen 2020;Mackley et al.2013;Marconati and Ramaioli 2020;Nishinari et al.2019;Sukkar et al.2018)。以前の研究において、本発明者らは、in vitroでの嚥下中の食塊伸長及び嚥下後残留物が、薄い弾性液体によって限定されることを観察した(Marconati and Ramaioli 2020)。Hadde et al.,(2019)による臨床研究は、伸長特性が食塊伸長及び安全に対して示す効果を確認しているが、強い伸長特性を有する流体については検討されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記を考慮して、本願及び付随する研究の目的は、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下の促進を、健康な個体及びそれを必要とする患者の両方において、特に嚥下障害を有する患者、例えば嚥下困難を有する患者、又は脳卒中、アルツハイマー病及びパーキンソン病、代謝性ミオパチー、咽喉がんなどの様々な神経障害、筋肉障害、及び呼吸器障害を有する患者、又は加齢に関連する生理学的変化を有する患者(Stegemann,Gosch,and Breitkreutz 2012)、又は健康な個体若しくは複数の疾患のうちの1つに罹患しておりSODFの投与を必要とする患者、例えば、血糖降下薬、抗高血圧薬、及び/若しくは抗脂質異常症薬などを含む複数の共存症を管理するために一般的に処方される複数の服薬を典型的には有する高齢者などにおいて、行うためのより効率的な手段を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特に、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための液体粘弾性嚥下補助剤であって、該液体粘弾性嚥下補助剤が、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1~10重量%の総量で含み、液体粘弾性嚥下補助剤が、
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される10~1000mPa.sの剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~1000msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4のIDDSIレベルと、を有する、液体粘弾性嚥下補助剤による第1の実施形態により、根本的な課題は解決される。
【0015】
本明細書で使用するとき、重量%は、総重量当たりの特定の成分の重量を指す。
【0016】
「室温」という用語は、典型的には20~25℃、好ましくは25℃を意味する。括弧内に示される場合、括弧内の温度が好ましい測定温度である。
【0017】
好ましくは、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、25℃でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)で測定したとき、時間の経過とともに指数関数的に減少する、フィラメント径を有する。
【0018】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤において、固形経口製剤(SODF)は、好ましくは錠剤又はカプセルである。カプセルは、「5」から「000」の間の標準サイズを有してもよい。錠剤は、3~23mm、好ましくは3~22mmの長さを有してもよく、又は3~24mm、好ましくは3~22mmのカプセル長さを有してもよい。
【0019】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは医薬製剤、ダイエタリーサプリメント、機能性飲料製品、特別医療目的用食品(FSMP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される投与可能な形態であってもよい。
【0020】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、使用前に希釈される濃縮形態であってもよく、又はレディ・トゥ・ユーズ形態で提供されてもよい。あるいは、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、使用前に再構成される粉末として提供されてもよい。しかしながら、剪断粘度、伸長緩和時間及びIDDSIレベルについて本明細書に記載される全ての値は、好ましくは、再構成された、したがって、使用準備された最終的な液体粘弾性嚥下補助剤を指す。
【0021】
更に、本発明はまた、安全な嚥下を促進する処置を必要とする患者又は健康な人のいずれかにおいて、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下の促進に使用するための、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤に関する。
【0022】
したがって、第2の実施形態によれば、本発明は、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進する必要がある患者において、かかる嚥下の促進に使用するための、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤に関する。かかる嚥下の促進を必要としている患者は、嚥下障害、嚥下困難若しくは唾液分泌不全を有する患者であってもよく、又は窒息及び不顕性誤嚥のリスクが増加していてもよく、又は複数の薬剤を処方されている患者、例えば複数の併存症に罹患しており複数の薬剤を処方されている小児若しくは高齢の患者であってもよく、又はがん患者であってもよく、又は高血糖、糖尿病、心臓血管疾患、関節症、高血圧症、ぜんそく、認知症、MCI、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、骨粗鬆症、脳卒中、慢性腎疾患、若しくは深部静脈血栓症などに罹患している患者であってもよい。
【0023】
更に、第3の実施形態によれば、本発明は、健康な人における、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤の非治療目的使用に関する。一般に、健康な人は、典型的には、本明細書に記載されるかかる疾患のいずれをも有していない人である。健康な人は、かかるSODFを嚥下するときの不快な体験を回避するために、本明細書に記載されるような液体粘弾性嚥下補助剤を使用することを好む場合がある。本文脈におけるSODFは、例えば、一般的な栄養補助食品、ビタミンであってもよいが、疼痛、頭痛、片頭痛、月経痛、腰痛などに対する錠剤などの一般的な医薬品であってもよい。
【0024】
更に、第4の実施形態によれば、本発明はまた、SODFの嚥下を促進するために、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を、それを必要とする患者に投与する又は摂取させる(feeding)方法を目的とする。
【0025】
本明細書で定義される好ましい特徴、実施形態、又は代替形態のいずれも、別段の開示がない限り、適切な方法で組み合わせることができる。
【0026】
本発明及びその利点の完全な理解のため、以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】嚥下の口腔期を再現するために使用するin vitro設定の模式図を示す。Marconati及びRamaioli(2020)のものを調整した。
図2】試験においてキャリアとして調査したさまざまな液体の定常剪断粘度測定値を示す。
図3】(a)β-グルカン試料L、(b)ThickenUp Clear(TUC)L、(c)ポリエチレングリコール(PEO)L、(d)グリセロールL、(e)β-グルカン試料L、(f)TUC L、(g)PEO L、(h)グリセロールL、(i)Gloup L、(j)TUC L4のフィラメント収縮を示す。t0、t1/4破断、t1/2破断、t3/4破断、及びt破断における各液体キャリアの代表的な写真(特定の試料についてのt破断の値が画像上に示される)。
図4】(a)TUC試料、グリセロール試料、及びGloup試料、並びに(b)β-グルカン組成物、及びPEO試料の、t破断までのフィラメント中間点直径の経時的な変化を示す。平均値を提示し、エラーバーは、明確さを改善するために表示しない。
図5】本明細書で試験した液体キャリアの、γ=50s-1でのそれらの剪断粘度に対する、伸長緩和時間を示す。
図6】代表的なin vitroでの嚥下(カプセル及び錠剤)のスナップショットを示す。
図7】単独の、カプセルを伴う、又は錠剤を伴うさまざまな液体キャリアについてin vitroで測定された特徴的な口腔通過時間tTOを示す。水TOを基準とする(アスタリスクでマークされた垂直線)。
図8】in vitroでの嚥下後の口腔を模したプラスチック膜に残った残留物の体積の計算値を示す。水残留物を基準とする(アスタリスクでマークされた垂直線)。
図9】tTOにおける食塊伸長を示す(t0における食塊の初期サイズのパーセンテージとして表される食塊の長さ)。水を基準とする(アスタリスクでマークされた垂直線)
図10】T0における食塊前部に対するカプセル/錠剤の相対位置の画像解析による定量化を示す。
図11-1】さまざまな液体キャリアを用いたin vitroでの嚥下中のSODFの位置を示す。水及びL流体中のカプセル(a)、L及びL流体中のカプセル(b)、並びに水及びL流体中の錠剤(c)、L及びL流体中の錠剤(d)。
図11-2】さまざまな液体キャリアを用いたin vitroでの嚥下中のSODFの位置を示す。水及びL流体中のカプセル(a)、L及びL流体中のカプセル(b)、並びに水及びL流体中の錠剤(c)、L及びL流体中の錠剤(d)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願の発明者らは、驚くべきことに、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を、健康な人又はかかる嚥下を必要とする患者において促進するのに好適な、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤により、根本的な課題が効果的に解決され得ることを見出した。本願は、具体的には、本発明者らによる、特定の粘弾性液体キャリアのレオロジー動態が口腔期におけるSODFの嚥下プロセスをより効率的なものにするという、嚥下のインビトロモデルを使用した新規のかつ驚くべき発見に基づく。このような特定の粘弾性液体キャリアの使用はまた、嚥下プロセス中の食塊の伸展又は食塊の分解のリスクを低下させ、したがって、嚥下プロセス中の食塊又はその一部の誤嚥のリスクも著しく低下させる。更に、このような特定の粘弾性液体キャリアの使用はまた、特に好ましい様式でSODFの非治療目的投与を可能にする。
【0029】
本明細書で使用するとき、特徴的な「食塊」は、嚥下に備えて口腔内で形成される、液体粘弾性嚥下補助剤及びSODFの任意のまとまりを含む。食塊は、任意のサイズ、組成及び/又はテクスチャであってもよい。
【0030】
β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせをキャリアとして含む本発明の液体粘弾性嚥下補助剤のレオロジー特性は、特定の剪断及び伸長粘度、並びにIDDSIレベル及び剪断粘度によって特徴付けられる特定の流動挙動によって評価される。これらの因子は共に、食塊の速度、食塊の形状、嚥下後残留物、及び食塊中のSODFの位置に対する予期せぬ驚くべき効果をもたらす。特に、後者は、驚くべきことに、異なるキャリアの有効性を識別するための新規且つ強力な変数であることが確認された。
【0031】
概して、本発明者らは、カプセル及び錠剤が水と共に嚥下された場合、食塊の速度には有意な影響はなかったが、カプセル及び錠剤が液体食塊よりも遅れることを見出した。これは低粘度のニュートン流体がSODFの効率的なキャリアではないことを示唆している。高剪断速度(すなわち、≧300s-1)で調査したキャリアの粘度増加は、液体によるSODFの移送能力を改善しただけでなく、嚥下後残留物の量も増加させた。同等の剪断粘度では、キャリアの弾性及び伸長特性は、食塊中のSODFの位置に好影響を与えた。カプセル及び錠剤は、嚥下の口腔期中に、これらの食塊の前部の方に移送された。この移送は、嚥下の次の段階においてSODFが粘膜に付着することを回避するために肯定的であると考えられる。したがって、驚くべき結果として、薄い弾性液体(thin elastic liquids)が、特定の条件下でカプセル及び錠剤の安全な嚥下をより促進することが特定された。
【0032】
本発明者らの驚くべき発見は、嚥下用のin vitroモデルにより証明され、さまざまな液体キャリアのレオロジーがin vitroでのカプセル及び錠剤の口腔期嚥下に対して示す効果を、特に、口腔から咽頭へのSODF移送が弾性液体の使用によって促進されるかどうかを、評価した。剪断及び伸長レオメトリーを使用して液体キャリアの選択に関するレオロジー特性を評価し、さまざまな組み合わせのキャリア及びSODFの嚥下動態を調査するために、カプセル又は錠剤を用いてin vitroでの嚥下実験を行った。
【0033】
したがって、第1の実施形態によれば、本発明は、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための液体粘弾性嚥下補助剤を提供する。本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1~10重量%の総量で含む。
【0034】
更に、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される10~1000mPa.sの剪断粘度と、
25℃でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~1000msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4のIDDSIレベルと、を有する。
【0035】
典型的には、β-グルカン、植物抽出ガム及び/若しくは植物由来粘液、又はこれらの組み合わせは、液体粘弾性嚥下補助剤中に、0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7.5重量%、最も好ましくは0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%の総量で存在する。このような範囲の下限は、0.1重量%から、例えば、0.25重量%、0.5重量%、0.75重量%又は1.0重量%に増加されてもよい。このような下限のいずれも、上述の範囲と組み合わせてもよい。
【0036】
本発明において、ベータ-グルカン(β-グルカン)は、典型的には、(1→3)、(1→4)-β-グルコシド結合により連結されたD-グルコピラノースモノマーのホモ多糖を指す。β-グルカンは、例えば、Lazaridou et al.の「A comparative study on structure-function relations of mixed-linkage(1→3),(1→4)linear β-D-glucans」in Food Hydrocolloids,18(2004),837-855に記載のものなどの当業者に公知の方法により、植物又は微生物原料、典型的には穀物抽出物、例えば、オート麦又は大麦から誘導される。
【0037】
少量のβ-グルカンにより、25℃で50s-1の剪断速度で測定したときに10~1,000mPa.sの特許請求の範囲に記載の剪断粘度を提供することができるため、β-グルカン、したがってオート麦もまた、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤において特に好ましい特性を示す。
【0038】
同様に、植物抽出ガム及び/又は植物由来粘液は、本明細書で使用される場合、例えば、キサンタンよりも優れた特性を提供する。
【0039】
この特性により、液体粘弾性嚥下補助剤中の植物抽出ガムは、好ましくは、植物抽出ガム、植物由来粘液、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。植物抽出ガムは、更に、オクラガム、コンニャクマンナン、タラガム、ローカストビーンガム、グアーガム、フェネグリークガム、タマリンドガム、カシアガム、アラビアガム、ガティガム、ペクチン、セルロース誘導体、トラガントガム、カラヤガム、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。好ましい実施形態では、植物抽出ガムは、オクラガムである。植物抽出ガムの抽出は、当業者に公知の手順によって実施されてもよい。
【0040】
更に、液体粘弾性嚥下補助剤のための植物由来粘液は、サボテン粘液[フィカス・インディカ(Ficus indica)]、オオバコ粘液[プランタゴ・オバタ(Plantago ovata)]、ゼニアオイ粘液[マルバ・シルベストリス(Malva sylvestris)]、亜麻仁粘液[リナム・ウシタティッシマム(Linum usitatissimum)]、ウスベニタチアオイ粘液[アルテア・オフィシナエリス(Althaea officinalis)]、ヘラオオバコ粘液[プランタゴ・ランセオラタ(Plantago lanceolata)]、モウズイカ粘液[バーバスカム(Verbascum)]、セトラリア(cetraria)粘液[リチェン・イスランディカス(Lichen islandicus)]、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態では、植物由来粘液は、サボテン粘液[フィカスインディカ(Ficus indica)]である。植物由来粘液の抽出は、当業者に公知の手順によって実施されてもよい。
【0041】
食品用ポリマーは、オクラガム及び/若しくはサボテン粘液(Ficus indica)、又はこれらの組み合わせから選択されることが特に好ましい。
【0042】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム、又はこれらの組み合わせを含む、又はこれらからなる群から選択される化合物、好ましくはβ-グルカン、オクラガム及び/若しくはサボテン粘液(Ficus indica)又はこれらの組み合わせを含む、又はこれらからなる群から選択される化合物を含有することが更により好ましい。それによって量は、本明細書において上で定義されたように0.1~10重量%である。
【0043】
更に好ましい実施形態では、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、デンプン、例えば、ワキシートウモロコシデンプン、若しくはキサンタンガム、変性キサンタンガム、例えば、非ピルビン酸化キサンタンガム若しくは還元ピルビン酸化キサンタンガム、カラギーナン、又はこれらの組み合わせを含有しない。好ましくは、デンプンとカラギーナンとの組み合わせ、又はカゼインとワキシートウモロコシデンプンとの組み合わせを含有しない。
【0044】
更に、本発明の第1の実施形態による液体粘弾性嚥下補助剤は、特に残留剪断粘度に起因して、任意選択的に、1~4、好ましくは1~3のIDDSIレベルを有する。本文脈において、IDDSIレベル及びIDDSIレベルを測定する方法は、当業者に周知である。ごく最近になって、IDDSIシステムは、液体、特に嚥下困難管理に使用されるテクスチャ改変食品及びとろみをつけた流体の流動特性を評価するためのアプローチとして現れた。IDDSIシステムは、主に、較正されたシリンジの容積を空にすることに基づく。IDDSI測定において評価される液体/飲料のレベルは、レベル0~4として定義され、レベル0=「液体(thin)」、1=「極薄いとろみ(slightly thick)」、レベル2=「薄いとろみ(mildly thick)」、レベル3=「中間のとろみ(moderately thick)」、及びレベル4=「濃いとろみ」とも呼ばれる。このようなレベルの測定は、好ましくは、例えば、https://link.springer.com/article/10.1007/s00455-016-9758-yで利用可能である、又はCichero,J.A.Y.,Lam,P.,Steele,C.M.et al.Development of International Terminology and Definitions for Texture-Modified Foods and Thickened Fluids Used in Dysphagia Management:The IDDSI Framework.Dysphagia 32,293-314(2017)で開示のとおりに利用可能である、国際嚥下食基準化構想(International Dysphagia Diet Standardization Initiative)(IDDSI)による定義のとおりに行われる。https://doi.org/10.1007/s00455-016-9758-y
【0045】
したがって、上記を考慮して、本出願は、任意選択的に、段階1=「液体」、段階2=「薄いとろみ」、段階3=「中間のとろみ」、及び段階4=「濃いとろみ」に対応する、IDDSIレベル1、2、3、及び4にも基づき、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤のレオロジー特性を定義する。このようなレオロジー特性、又は液体の場合の流動挙動(並びに剪断粘度値及び伸長緩和時間)もまた、常に、(最終的な)液体粘弾性嚥下補助剤、すなわち、健康な人又は固形経口製剤(SODF)の嚥下を必要とする患者においてSODFの嚥下に使用するために準備された、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤を指す。
【0046】
本発明の文脈において、IDDSI流動試験は、各液体キャリアのIDDSIレベル(IDDSI 2019)を評価するために、好ましくは室温(典型的には20℃~25℃、好ましくは25℃)で3回実施される。本試験では、標準ルアースリップチップシリンジを10mLの印まで試料で満たし、次いで液体を10秒間流す。シリンジ内に残された残りの体積に基づいて、液体試料は、とろみの増加についての4つのレベル:レベル0(1mL未満が残っている)、レベル1(1mL~4mLが残っている)、レベル2(4mL~8mLが残っている)、レベル3(8mL以上が残っている)に分類される。液体がシリンジの先端を通って流れない場合、レベル4として分類される。IDDSIレベル4の液体は、IDDSIスプーン傾斜試験で評価することもできる。該液体は、スプーン上で形状を保持しなければならず、かつスプーンが傾けられると容易に落下しなければならない。更なる詳細については、上述の測定方法を参照されたい。
【0047】
任意選択的に、本発明の第1の実施形態による液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4、より好ましくは1~3、同様に好ましくは1~2又は2~3、より好ましくは1~2、更により好ましくは1~2、例えば1又は2、最も好ましくは1のIDDSIレベルを有する。
【0048】
更に、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、典型的には、それぞれ50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~1,000mPa.sの剪断粘度、10~900mPa.sの剪断粘度、10~800mPa.sの剪断粘度、又は更には10~700mPa.sの剪断粘度を有する。同様に、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~600mPa.sの剪断粘度、好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~500mPa.sの剪断粘度、同様に好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~400mPa.sの剪断粘度、より好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~350mPa.sの剪断粘度、例えば50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~350mPa.sの剪断粘度、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、20~350mPa.sの剪断粘度、又は更には50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、30~350mPa.sの剪断粘度を有する。このような値は、特に、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~300mPa.sの剪断粘度、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~200mPa.sの剪断粘度、更により好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~100mPa.sの剪断粘度、最も好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~50mPa.sの剪断粘度、又は10~40mPa.s又は更には10~30mPa.sの剪断粘度を有し、上記で定義された剪断粘度レベルのそれぞれは、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される。
【0049】
本発明の文脈において、剪断速度は、好ましくは、モジュラーコンパクトレオメータ(MCR)102(Anton Paar GmbH,Graz,Austria)を用いて25℃で測定される。コーン及びプレートの形状(直径=50mm、コーン角度=4°、トランケーション=500μm)、及び0.5mmのギャップを使用して、0.5~800逆数秒の剪断速度の範囲で流動曲線を得た。各試料について、好ましくは3回繰り返す。
【0050】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの少なくとも1つの伸長緩和時間を有する。本明細書で使用される場合、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)は、液体試料中に強い伸長流の場を含む複合流体を測定するのに好適な装置である。好ましくは、本明細書で使用されるキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)は、Thermo Fisher Scientific製のHAAKE CaBER 1であり、現在市場で唯一市販されている流体用伸長レオメーターである。したがって、本発明の文脈において決定される伸長緩和時間の測定は、好ましくは、キャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)としてThermo Fisher Scientific製のThermo Scientific HAAKE CaBER 1を使用して、Thermo Fisher Scientificによる取扱説明書HAAKE CaBER 1、バージョン1.8、第19頁、セクション8.4において定義される周囲条件下で実施される。「EN 61010による周囲条件」とは、すなわち、空調された室内で、周囲温度で、20~25℃、好ましくは25℃で、屋内で、最大で海抜2000メートルである。
【0051】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤の緩和時間を測定するために本明細書で実施されたCaBER試験においては、好ましくは、平行に垂直に並べた、共に直径6mmを有する2枚の円形の金属面の間に、上記製品の液滴を配置する。次いで、金属面を、50ms(ミリ秒)の時間間隔で素早く直線的に引き離す。この広げる動作で形成されたフィラメントは、その後、界面張力の作用下で細くなり/収縮し(thinning)、この収縮プロセスを、その中間点でフィラメント径を測定するデジタルカメラ及び/又はレーザーシートを使用して定量的に追跡する。CaBER試験における緩和時間は、収縮プロセス中のフィラメント径の自然対数を正規化し、時間に対してプロットし、この曲線の直線部の勾配(dln(D/D)/d)を特定することによって求められ、式中、Dはフィラメント径、Dは時間0におけるフィラメント径、tはフィラメント収縮経過時間である。次いで、本文脈における緩和時間は
-1/(3dln(D/D)/d)と定義される。
【0052】
HAAKE CaBER 1は、測定のために調整して、2枚の円形プレート(直径6mm)間の初期分離を3mmに設定し、かつ最大10mmの軸方向変位を50msで加えてフィラメントを収縮させることもできる。液柱の中間点直径の経時的な変化は、1mmのビーム厚及び20μmの分解能を有するレーザーマイクロメーターで測定することができる。伸長緩和時間は、CaBER解析ソフトウエア(Haake RheoWin Software、バージョン5.0.12)を用いて、データを弾性(指数)モデルに当てはめることによって計算することができる。更に、試験の高速ビデオを1,000フレーム/秒で撮影して、Phantom V1612高速カメラ(Vision Research,Wayne,NJ)を使用してキャピラリー液柱の形状変化を記録し、試料の形状変化を監視することができる。
【0053】
好ましくは、本明細書に記載される伸長緩和時間を決定するために室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定される液体粘弾性嚥下補助剤のフィラメント径は、CaBER試験中に時間の経過とともに指数関数的に減少する。
【0054】
同様に、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~1000msの少なくとも1つの伸長緩和時間を有する。好ましくは、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によってされるとおりの、10~900ms、同様に好ましくは10~800ms、より好ましくは10~700ms、同様により好ましくは10~600ms、更により好ましくは10~500ms、例えば10~475ms、好ましくは10~450ms、同様に好ましくは、より好ましくは10~425ms、同様により好ましくは10~400ms、更により好ましくは10~375ms、最も好ましくは10~350msの少なくとも1つの伸長緩和時間を有し、当該伸長緩和時間は、10ms~350ms、20ms~350ms、30ms~350ms、40ms~350ms、50ms~350ms、60ms~350ms、70ms~350ms、80ms~350ms、90ms~350ms、100ms~350msの値を含み、また10ms~150ms、20ms~150ms、30ms~150ms、40ms~150ms、50ms~150ms、60ms~150ms、70ms~150ms、80ms~150ms、90ms~150ms、100ms~150msの値を含み、各伸長緩和時間は、室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定される。範囲の全ての組み合わせが、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤に含まれる。
【0055】
好ましい実施形態によれば、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7.5重量%の総量で含み、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~1000mPa.sの剪断粘度、好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~900mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~800mPa.sの、又は全てが50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、上記で定義した未満の剪断粘度と、
室温でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~1,000ms、好ましくは10~800ms、より好ましくは10ms~600ms、又は上記の定義未満の、少なくとも1つの伸長緩和時間であって、各伸長緩和時間が室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定される、伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4、好ましくは1~3又は1~2のIDDSIレベルと、を有する。
【0056】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7.5重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%の総量で含み、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~800mPa.sの剪断粘度、好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~700mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~600mPa.sの剪断粘度であって、全てが50s-1の剪断速度及び25℃で測定される剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~600ms、好ましくは10ms~500ms、同様に好ましくは、より好ましくは10ms~400msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、好ましくは1のIDDSIレベルと、を有する。
【0057】
同様に好ましい実施形態によれば、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~4.5重量%、例えば0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%の総量で含み、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~600mPa.sの剪断粘度、好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~500mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~400mPa.sの剪断粘度であって、全てが50s-1の剪断速度及び25℃で測定される剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10~400ms、好ましくは10ms~375ms、より好ましくは10ms~350msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、好ましくは1のIDDSIレベルと、を有する。
【0058】
更により好ましい実施形態によれば、本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、β-グルカン、植物由来粘液及び/若しくは植物抽出ガム又はこれらの組み合わせから選択される化合物を0.1重量%~4.5重量%、好ましくは0.1重量%~3.5重量%の総量で含み、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~400mPa.sの剪断粘度、好ましくは50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~300mPa.sの剪断粘度、より好ましくは10~200mPa.sの剪断粘度であって、全てが50s-1の剪断速度及び25℃で測定される剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10ms~150ms又は20ms~150ms、好ましくは30ms~150ms又は40ms~150ms、より好ましくは50ms~150ms、同様に、より好ましくは60ms~150ms、更により好ましくは70ms~150ms、最も好ましくは80ms~150ms、例えば90ms~150ms、又は100ms~150msの少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、好ましくは室温(25℃)で測定される、1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2、好ましくは1のIDDSIレベルと、を有する。
【0059】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤のための化合物は、上記で定義された食品用ポリマーのβ-グルカン、植物抽出ガム及び/若しくは植物由来粘液、又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0060】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、概して、レディ・トゥ・ユーズ形態で提供されてもよく、又は使用前に再構成される、例えば、水で希釈される高粘稠組成物若しくはゲル若しくはゲル様組成物などの濃縮液体形態で提供されてもよく、又は使用前に再構成される粉末として提供されてもよい。あるいは、液体粘弾性嚥下補助剤は、粉末などの乾燥形態で提供されてもよく、本明細書で定義される栄養製品は、適切な量の水の添加により再構成されて、本明細書で特許請求され記載される液体粘弾性嚥下補助剤の特性を示すことができる。本明細書における再構成は、典型的には、適切な量の水を、例えば、濃縮物、ゲル、粉末などの液体粘弾性嚥下補助剤の濃縮形態又は乾燥形態のいずれかに添加して、特許請求の範囲に記載のレディ・トゥ・ユーズ製品の本明細書で定義される(最終)濃度に到達させることを意味する。
【0061】
したがって、本発明において、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤について本明細書で定義されるIDDSI値、剪断粘度データ及び伸長粘度データは、常に、レディ・トゥ・ユーズ液体組成物又は液体粘弾性嚥下補助剤として使用する準備がされた再構成された液体組成物に関する。言い換えれば、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、例えば、より濃縮されたすなわち乾燥形態又は粉末形態で提供される場合、再構成されたあとで、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤について本明細書で定義されるIDDSI値、剪断粘度データ、及び伸長粘度データを有する本発明の液体粘弾性嚥下補助剤を形成する。
【0062】
液体粘弾性嚥下補助剤は、単回使用パック、ミニGualapack、水溶性パックなどとして、サシェ、ボトル、定量ポンプディスペンサーなどの分配デバイスで提供され得る。
【0063】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、5~200mL、好ましくは5~150mL、より好ましくは5~100mL、例えば、10~100mL、20~100mL、30~100mL、40~100mL、50~100mL、10~90mL、10~80mL、10~70mL、10~60mL、10~50mLなどの量で提供されてもよい。このような量は、好ましくは、固形経口製剤(SODF)のうちの1つ以上を、それを必要とする患者が嚥下するための、単回投与量である。上述のサシェ、ボトル、又は分配デバイスなどのいずれも、単回適用のためにこのような量を提供し得る。あるいは、複数回の適用のために、より大きな容量(例えば、50mL~1,000mL、又は更にそれ以上)が、例えば、対応するサイズのボトルで提供され得る。
【0064】
本発明による液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは、医薬製剤、ダイエタリーサプリメント、機能性飲料製品、特別医療目的用食品(FSMP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される投与可能な形態で提供される。
【0065】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは、例えば、典型的には無菌条件下で充填された、又は例えば、保存料の存在下で低温充填された密閉ボトル若しくは密閉容器中で保存されたとき、通常は室温で少なくとも数ヶ月(1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月)、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも1年間安定である。安定とは、粘度及び特許請求の範囲に記載されたレオロジー特性が、想定される有効期間の間、ほぼ一定のままであることを意味すると解釈される。好ましくは、安定とはまた、想定される有効期間の間に微生物数がほぼ一定のままであることと解釈される。したがって、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、以下に記載されるように、予めパッケージ化された製品、例えばサシェ、ボトル、定量ポンプディスペンサーなどの分配デバイスとしてエンドユーザーに提供することができる。エンドユーザーは、例えば、ボトル又はサシェから容易に分配又は搾り出し、SODFと混合して、SODF及び形成された食塊を安全に嚥下するのに適切な量の本発明の液体粘弾性嚥下補助剤を使用することができる。食塊は、上で定義したとおりであり、すなわち、SODFと本発明の液体粘弾性嚥下補助剤との任意の混合物である。
【0066】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、更に、任意の数の任意選択的な原材料を含むものと理解される。しかしながら、そのような任意選択的な原材料が含有される場合にも、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、上記で定義されたようなIDDSIレベル、剪断粘度、及び伸長緩和時間を提供する必要がある。したがって、当業者は、上記で定義されたようなIDDSIレベル、剪断粘度、及び伸長緩和時間についての本明細書で定義された値を依然として達成することを可能にする量でのみ、そのような更なる原材料を添加する。それにもかかわらず、そのような任意選択的な更なる原材料の少なくとも1つ以上を含有する本発明の液体粘弾性嚥下補助剤も存在し得る。
【0067】
任意選択的な原材料は、従来の食品添加物、例えば、1つ以上の酸味料、追加の増粘剤、pH調節用緩衝剤若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、添加物、香料、ミネラル、浸透圧剤、製薬上許容されるキャリア、保存料、安定剤、糖(複数可)、甘味料(複数可)、調質剤(複数可)、医薬原材料、免疫増強原材料、プレバイオティクス、酸化防止剤、塩、例えば、再水和のための塩、及び/又はビタミン(複数可)などを含み得る。このような任意選択的な原材料は、更に、以下に定義されるタンパク質、脂質、及び炭水化物も含有し得る。
【0068】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤のIDDSIレベル、剪断粘度、及び伸長緩和時間について本明細書で定義された値が上記で定義されたとおり維持される場合に限り、任意選択的な原材料は、任意の好適な量で添加することができる。
【0069】
したがって、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つのタンパク質を含んでもよい。少なくとも1つのタンパク質は、乳製品ベースのタンパク質、植物性タンパク質、若しくは動物性タンパク質、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。乳製品ベースのタンパク質としては、例えば、カゼイン、カゼイン塩(例えば、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム、カゼインカリウムを含む全ての形態)、カゼイン加水分解物、乳清(例えば、濃縮物、単離物、脱塩物を含む全ての形態)、乳清加水分解物、乳タンパク質濃縮物、及び乳タンパク質単離物が挙げられる。植物性タンパク質としては、例えば、大豆タンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、エンドウマメタンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、キャノーラタンパク質(例えば、濃縮物及び単離物を含む全ての形態)、市販品としては小麦及び分画小麦タンパク質、トウモロコシ及びゼインを含むその画分、米、オート麦、ジャガイモ、落花生、グリーンピース粉末、サヤエンドウ粉末である他の植物タンパク質、並びに腎臓形の豆(beans)、レンズマメ(lentils)、及び豆類(pulses)由来の任意のタンパク質が挙げられる。動物性タンパク質は、牛肉、鶏肉、魚、ラム、海産食品、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0070】
本発明の第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に脂肪源を含んでもよい。脂肪源としては、植物性脂肪(例えば、オリーブ油、コーン油、ヒマワリ油、菜種油、ヘーゼルナッツ油、ダイズ油、パーム油、ココナッツ油、キャノーラ油、レシチンなど)、動物性脂肪(乳脂肪など)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本発明の第1の実施形態の別の態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、繊維又は繊維ブレンドを含んでもよい。繊維ブレンドは、可溶性繊維及び不溶性繊維の混合物を含有してもよい。可溶性繊維としては、例えば、フラクトオリゴ糖、アカシアガム、イヌリンなどが挙げられる。不溶性繊維としては、例えば、エンドウマメ外皮繊維が挙げられ得る。
【0072】
本発明の第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、炭水化物源を含んでもよい。炭水化物源としては、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ固体、マルトデキストリン、変性デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。炭水化物の組み入れは、特に、例えば粉末分散体などの形態で栄養製品の調製を単純にするのに都合がよい。
【0073】
第1の実施形態の1つの他の態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つの次のプレバイオティクス:フラクトオリゴ糖、フコシルラクトース、ガラクトオリゴ糖、ガラクトマンナン、ゲンチオオリゴ糖、グルコオリゴ糖、グアーガム、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクトネオテトラオース(lactoneotetraose)、ラクトスクロース、ラクツロース、レバン、マルトデキストリン、ミルクオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ペクチンオリゴ糖(pecticoligosaccharide)、難消化性デンプン、老化デンプン、シアロオリゴ糖、シアリルラクトース、大豆オリゴ糖、糖アルコール、キシロオリゴ糖、若しくはこれらの加水分解物、若しくはこれらの組み合わせ、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。プレバイオティクスは、選択的に腸内の有益細菌の生育を促進する、又は病原細菌の生育若しくは粘膜付着を阻害する食物物質である。プレバイオティクスは、胃及び/若しくは上部腸管では不活性化されず、又は摂取した個体の胃腸管で吸収されないものの、胃腸管内の微生物叢及び/又はプロバイオティクスによって発酵される。プレバイオティクスは、例えば、Glenn R.Gibson and Marcel B.Roberfroid,Dietary Modulation of the Human Colonic Microbiota:Introducing the Concept of Prebiotics,J.Nutr.1995 125:1401-1412.fffにより定義される。
【0074】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つのプロバイオティクスを含んでもよい。プロバイオティクスは、食品用微生物(半生菌、又は弱毒化菌、及び/又は非複製菌を含む生菌)、代謝産物、微生物細胞調製物又は微生物細胞成分であり、投与されたときに宿主に対して健康上の利益を与えることができ、より詳細には、プロバイオティクスは、腸内微生物バランスを改善し、宿主の健康又はウェル・ビーイングに対する効果をもたらすことによって宿主に有益な影響を及ぼすものである。Salminen S,Ouwehand A.Benno Y.et al.,Probiotics:how should they be defined?Trends Food Sci.Technol.1999:10,107-10を参照されたい。一般に、これらのプロバイオティクスは、腸管内の病原性細菌の生育及び/又は代謝を阻害する、又はそれらに影響を与えると考えられている。プロバイオティクスはまた、宿主の免疫機能も活性化させ得る。本発明において使用されるプロバイオティクスとしては、アエロコッカス(Aerococcus)、アスペルギルス(Aspergillus)、バシラス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、カンジダ(Candida)、クロストリジウム(Clostridium)、デバロマイセス(Debaromyces)、エンテロコッカス(Enterococcus)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ラクトバシルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、リューコノストック(Leuconostoc)、メリッソコッカス(Melissococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ムコール(Mucor)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、ペニシリウム(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostrepococcus)、ピキア(Pichia)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、シュードカテヌラータム(Pseudocatenulatum)、クモノスカビ(Rhizopus)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トルロプシス(Torulopsis)、ワイセラ(Weissella)、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0075】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤はまた、第1の実施形態の一態様において、任意選択的に、シンバイオティクスを含んでもよい。シンバイオティクスは、プレバイオティクス(前述のうちの少なくとも1種)と、プロバイオティクス(前述のうちの少なくとも1種)の両方を含む補給剤であり、協調的に作用して腸の微生物叢を改善する。
【0076】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つの次のアミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパルテート、シトルリン、システイン、グルタメート、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシセリン、ヒドロキシチロシン、ヒドロキシリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0077】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つの脂肪酸又はその任意の組み合わせを含んでもよい。脂肪酸は、α-リノレン酸(「ALA」)、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)及びエイコサペンタエン酸(「EPA」)などのω-3脂肪酸を含む。脂肪酸は、魚油、オキアミ、家禽、卵、植物素材、藻類及び殻果素材に由来し得る。殻果素材としては、亜麻油、くるみ、アーモンドが挙げられる。
【0078】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つの植物栄養素を含んでもよい。植物栄養素は、フラバノイド、アリ化(allied)フェノール化合物、ポリフェノール化合物、テルペノイド、アルカノイド、硫黄含有化合物のうちの少なくとも1種である。
【0079】
植物栄養素は、多くの食品においてみられる非栄養性の化合物である。植物栄養素は、基本的な栄養以外の健康上の利益を有する機能性食品であり、植物素材から得られる健康増進化合物である。植物栄養素は、1つ以上の健康上の利益を使用者に付与する、植物によって産生される任意の化学物質を指す。植物栄養素の非限定的な例として、以下のもの:
i)モノフェノール(例えば、アピオール、カルノソール、カルバクロール、ジラピオール、ローズマリオール(rosemarinol);フラボノール(例えば、クエルセチン、フィンゲロール(fingerol)、ケンペロール、ミリセチン、ルチン、イソラムネチンなど)、フラバノン(例えば、フェスペリジン(fesperidin)、ナリンゲニン、シリビン、エリオジクチオールなど)、フラボン(例えば、アピゲニン、タンゲレチン、ルテオリンなど)、フラバン-3-オール(例えば、カテキン、(+)-カテキン、(+)-ガロカテキン、(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキン、(-)-エピガロカテキンガラート(EGCG)、(-)-エピカテキン3-ガラート、テアフラビン、テアフラビン-3-ガラート、テアフラビン-3’-ガラート、テアフラビン-3,3’-ジガラート、テアルビジンなど)、アントシアニン(フラボナール(flavonal))及びアントシアニジン(例えば、ペラルゴニジン、ペオニジン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペツニジンなど)、イソフラボン(植物エストロゲン)(例えば、ダイゼイン(ホルモノネチン)、ゲニステイン(ビオカニンA)、グリシテインなど)、ジヒドロフラボノール、カルコン、クメスタン(植物エストロゲン)、及びクメストロール、を含む、フラボノイド(ポリフェノール);フェノール酸(例えば、エラグ酸、没食子酸、タンニン酸、バニリン、クルクミンなど);ヒドロキシ桂皮酸(例えば、カフェ酸、クロロゲン酸、桂皮酸、フェルラ酸、クマリンなど);リグナン(植物エストロゲン)、シリマリン、セコイソラリシレシノール、ピノレシノール、及びラリシレシノール);チロソールエステル(例えば、チロソール、ヒドロキシチロソール、オレオカンタール、オレウロペインなど);スチルベノイド(例えば、レスベラトロール、プテロスチルベン、ピセアタンノールなど)及びプニカラギン、を含む、フェノール化合物、
ii)カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン、リコピン、ノイロスポレン、フィトフルエン、フィトエン)及びキサントフィル(例えば、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン(aeaxanthin)、アスタキサンチン、ルテイン、ルビキサンチン)を含むカロテノイド(テトラテルペノイド);モノテルペン(例えば、リモネン、ペリリルアルコールなど);サポニン;フィトステロール(例えば、カンプエステロール、βシトステロール、γシトステロール、スチグマステロール)、トコフェロール(ビタミンE)、並びにγ-3、γ-6、及びγ-9脂肪酸(例えば、γ-リノレン酸)などの脂質;トリテルペノイド(例えば、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸、モロン酸など)を含む、テルペン(イソプレノイド)、
iii)ベタシアニン(ベタニン、イソベタニン、プロべタニン、ネオべタニンなど);及びベタキサンチン(非糖鎖付加型)(例えば、インジカキサンチン、及びブルガキサンチンなど)を含むベタレイン、
iv)例えば、ジチオールチオン(dithiolthiones)(イソチオシアネート)(例えば、スルホラファン);及びチオスルホナート(アリウム化合物)(例えば、アリルメチルトリスルフィド、及びジアリルスルフィドなど)、インドール、例えば、インドール-3-カルビノールを含むグルコシノレート;スルフォラファン;3,3’-ジインドリルメタン;シニグリン;アリシン;アリイン;アリルイソチオシアネート;ピペリン;syn-プロパンチアール-S-オキシドを含む、オルガノスルフィド、
v)例えば、プロテアーゼ阻害剤を含む、タンパク質阻害剤、
vi)シュウ酸、フィチン酸(イノシトール六リン酸);酒石酸;及びアナカルジン酸を含む、他の有機酸、
が挙げられる。
【0080】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、少なくとも1つの酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤は、他の分子の酸化を遅らせること又は防止することができる分子である。酸化防止剤は、アスタキサンチン、カロテノイド、コエンザイムQ10(「CoQ10」)、フラボノイド、グルタチオンゴジ(クコ)、ヘスペリジン、ラクトウルフベリー(lactowolfberry)、リグナン、ルテイン、リコピン、ポリフェノール、セレン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ゼアキサンチン、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つであってもよい。
【0081】
第1の実施形態の更なる態様では、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤は、任意選択的に、ミネラルを含んでもよい。このようなミネラル(複数可)としては、ホウ素、カルシウム、クロミウム、銅、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、リン、カリウム、セレニウム、ケイ素、スズ、バナジウム、亜鉛、又はこれらの任意の組み合わせを挙げてもよい。
【0082】
本発明の液体粘弾性嚥下補助剤中の任意選択的な原材料としては、通常の身体の発育及び活動に必要な量のビタミン類、例えばビタミンA、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン又はナイアシンアミド)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキシン、ピリドキサール、又はピリドキサミン、又は塩酸ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、及びビタミンB12(各種コバラミン;ビタミンサプリメントでは、通常、シアノコバラミン)、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、及びビオチン)、又はこれらの任意の組み合わせを挙げてもよい。
【0083】
上記で詳述した第1の実施形態の任意の態様は、互いに組み合わせてもよい。
【0084】
本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤はまた、健康な人又は安全な嚥下を促進する必要がある患者のいずれかにおける、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための使用を意図する。
【0085】
本文脈において、「安全な嚥下を促進する」とは、典型的には好ましくは、嚥下のプロセスを例えば液体粘弾性嚥下補助剤及び/又は食塊の誤嚥、窒息などによって「危険(unsafe)」なものにせずに、健康な人又は安全な嚥下を必要とする患者によって食塊が嚥下され得ることを意味する。更に、本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤はまた、例えば、不快感の低減によって、臨床的若しくは非臨床的様式のいずれか、又は両方において、嚥下プロセスを改善し、より容易且つより快適な嚥下イベントをもたらし得る。言い換えれば、「安全な嚥下」という用語は、例えば嚥下困難などの嚥下障害の治療などにおける嚥下の臨床的態様のみに制限されるものではなく、以下で更に論じるように、健康な人への本発明の液体粘弾性嚥下補助剤の投与にも関する。
【0086】
本明細書で定義されるSODFは、典型的には、錠剤又はカプセルであり得る。通常、錠剤及びカプセルは、当該技術分野で定義される周知の錠剤及びカプセルサイズに従って、当業者に知られているように定義される。本文脈中、本発明の文脈において好ましいカプセルは、FDAの定義(例えば、Guidance for Industry,‘Size,shape and other physical attributes of generic Tablets and Capsules,U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research(CDER)June 2015,Pharmaceutical Quality/CMC,又はhttps://www.fda.gov/media/87344/download、又はhttp://www.fda.gov/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/default.htmなどを参照)に従って「5」から「000」の間の標準サイズを有する、又は3~23mm、好ましくは3~22mmの錠剤長さ、及び/若しくは3~24mm、好ましくは3~22mmのカプセル長さを有する。
【0087】
上記を考慮して、本発明はまた、第2の実施形態によれば、安全な嚥下を必要とする患者において、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進する使用のための、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を提供する。本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤について上で定義された定義及び特徴のいずれも、ここでも適用される。
【0088】
本文脈において、本発明による処置を必要とする患者は、通常、嚥下障害を有する患者、又は嚥下困難を有する患者である。患者はまた、唾液分泌不全に罹患している患者、又は窒息及び不顕性誤嚥のリスクが増加している患者であってもよく、又は複数の薬剤を処方されている及び/若しくは複数の併存症を有する患者、例えば、複数の併存症を有する及び/若しくは複数の薬剤を処方されている小児若しくは高齢の患者である、又は患者はがん患者である、又は患者は、口腔乾燥症(口渇)、高血糖、糖尿病、心臓血管疾患、関節症、高血圧症、ぜんそく、認知症、MCI、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、骨粗鬆症、脳卒中、慢性腎疾患、若しくは深部静脈血栓症を有している、又は咽喉炎を有する若しくは嚥下障害をもたらす任意の更なる疾患若しくは病態を有する人物である。かかる処置を必要とする患者は、更に、本明細書で定義されるSODFの投与を必要とする任意の患者であり得る。投与は、特に、記載した疾患のいずれかにおける嚥下プロセスを改善し、且つ/又は不快感を低減させ、本明細書に記載した疾患のいずれか、特に嚥下障害の状況下において、より容易且つより快適な嚥下イベントをもたらす。
【0089】
固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を、かかる嚥下を必要とする患者において促進する使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは、例えば、医薬製剤、ダイエタリーサプリメント、機能性飲料製品、特別医療目的用食品(FSMP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される上記の投与可能な形態である。同様に、先に述べたように、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を、かかる嚥下を必要とする患者において促進する使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、例えば、使用前に希釈される濃縮形態で上記のように提供され得る、又はレディ・トゥ・ユーズ形態で提供される、又は使用前に再構成される粉末として提供される。同様に、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を、かかる嚥下を必要とする患者において促進する使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、例えば、食品添加物、酸味料、pH調節用緩衝剤若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、添加物、香料、ミネラル、浸透圧剤、製薬上許容されるキャリア、保存料、安定剤、糖(複数可)、甘味料(複数可)、調質剤(複数可)、ビタミン(複数可)、タンパク質、脂質、及び/又は炭水化物からなる群から選択される、上記の任意選択の原材料を含有してもよい。第1の実施形態について前に定義された特徴のいずれもが、この第2の実施形態にも適用される。
【0090】
更に、第3の実施形態によれば、本発明はまた、好ましくは、健康な人における、固形経口製剤(SODF)の安全な嚥下を促進するための、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤の非治療目的使用を提供する。本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤について上で定義された定義及び特徴のいずれも、ここでも適用される。このような非治療目的使用は、好ましくは、不快感の低減による嚥下プロセスの改善をもたらし、より容易且つより快適な嚥下イベントをもたらす。
【0091】
一般に、そのような健康な人は、好ましくは疾患に有さない人、好ましくは前述のような疾患のいずれも有さない人、より好ましくは前述のような嚥下疾患のいずれも有さない人である。そのような健康な人は、例えば、そのようなSODFを嚥下するときの不快な体験を回避するために、本明細書に記載されるような液体粘弾性嚥下補助剤を使用することを好む場合がある。本文脈におけるSODFは、例えば、一般的な栄養補助食品、ビタミンなどであってもよいが、任意選択的に、疼痛、頭痛、片頭痛、月経痛、腰痛などに対する錠剤などの一般的な医薬品であってもよく、又は高血圧、甲状腺機能亢進症、橋本病などのなどの短期若しくは長期治療のために処方される薬剤、免疫調節薬、抗うつ薬(antidepressiva)、向精神薬(psychopharmaca)、抗てんかん薬(antiepileptika)、抗体試薬(antibodytherapy)、抗生物質などであってもよい。したがって、本文脈における健康な人はまた、例えば上記の医薬品から単一又は複数の医薬品を投与されているが、上記の嚥下疾患のいずれも有さないという点では健康な人であってもよい。健康な人はまた、例えば咽頭炎を有するが、好ましくは嚥下の問題などを有さないという点では健康な人であってもよい。健康な人はまた、例えばビタミン、ミネラル、多価不飽和脂肪酸及びオメガ-3-脂肪酸などの脂肪酸、葉酸などの単純な栄養補助食品を摂取する人であってもよい。
【0092】
「~を必要とする患者」並びに「健康な人」という用語はどちらも、本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤から利益を得ることができる任意のヒト、動物、哺乳動物を指す。動物としては哺乳動物が挙げられるがこれに限定されないことは理解されたい。哺乳動物としては、限定はされないが、齧歯類、水生哺乳類、家庭用動物(イヌ及びネコなど)、家畜(ヒツジ、ブタ、ウシ及びウマなど)、並びにヒトが挙げられる。
【0093】
健康な人における非治療目的使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは、例えば、医薬製剤、ダイエタリーサプリメント、機能性飲料製品、特別医療目的用食品(FSMP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記の投与可能な形態であってもよい。同様に、先に述べたように、健康な人における非治療目的使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、例えば、使用前に希釈される濃縮形態で提供され得る、又はレディ・トゥ・ユーズ形態で提供される、又は使用前に再構成される粉末として提供される。同様に、健康な人における非治療目的使用のための液体粘弾性嚥下補助剤は、例えば、食品添加物、酸味料、pH調節用緩衝剤若しくはpH調節剤、キレート剤、着色剤、乳化剤、添加物、香料、ミネラル、浸透圧剤、製薬上許容されるキャリア、保存料、安定剤、糖(複数可)、甘味料(複数可)、調質剤(複数可)、ビタミン(複数可)、タンパク質、脂質、及び/又は炭水化物からなる群から選択される、上記の任意選択的な原材料を含有してもよい。第1の実施形態について前に定義された特徴のいずれも、この第3の実施形態にも適用される。更に、第3の実施形態及び第4の実施形態の態様を組み合わせてもよい。
【0094】
更に、第4の実施形態によれば、本発明はまた、固形経口製剤(SODF)の嚥下を促進するために、本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤を個体に投与する又は摂取させる方法を目的とする。第1の実施形態について本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤。個体は、健康な人及び/又は上記で定義されたように治療される患者のいずれかであり得る。
【0095】
したがって、本発明はまた、固形経口製剤(SODF)の嚥下を促進するために、本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を個体に投与する又は摂取させる方法であって:
a.本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を用意することと、
b.好ましくは本明細書に記載の、固形経口製剤(SODF)を用意することと、
c.本明細書で定義される固形経口製剤(SODF)と本明細書で定義される液体粘弾性嚥下補助剤とを、例えばスプーン上で混合して、嚥下される食塊を形成することと、
d.食塊を、それを必要とする患者に投与することとを含む、方法を目的とする。
【0096】
あるいは、本発明はまた、固形経口製剤(SODF)の嚥下を促進するために、本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤を、それを必要とする個体に投与すえる又は摂取させる方法であって:
a.本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を用意することと、
b.好ましくは本明細書に記載の、固形経口製剤(SODF)を用意することと、
c.上記の固形経口製剤(SODF)を、それを必要とする患者に、該SODFを嚥下させずに投与することと、
d.上記の液体粘弾性嚥下補助剤を投与して、本明細書で定義される固形経口製剤(SODF)と本明細書で定義される液体粘弾性嚥下補助剤とを、好ましくは口腔内で混合させ、嚥下される食塊をin situで形成することと、を含む、方法を目的とする。
【0097】
あるいは、本発明はまた、固形経口製剤(SODF)の嚥下を促進するために、本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤を、それを必要とする個体に投与する又は摂取させる方法であって:
a.本明細書に記載の液体粘弾性嚥下補助剤を用意することと、
b.好ましくは本明細書に記載の、固形経口製剤(SODF)を用意することと、
c.本明細書に記載される液体粘弾性嚥下補助剤を、それを必要とする患者に、該液体粘弾性嚥下補助剤を嚥下させずに投与することと、
d.上記の固形経口製剤(SODF)を投与して、本明細書で定義される固形経口製剤(SODF)と本明細書で定義される液体粘弾性嚥下補助剤とを、好ましくは口腔内で混合させ、嚥下される食塊をin situで形成することと、を含む、方法を目的とする。
【0098】
本明細書に開示するとおりの詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するものであり、請求項及び詳細な説明と共に考慮するにあたり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の態様及び実施形態に由来する特徴を、本発明の同じ又は異なる態様及び実施形態に由来する更なる特徴と組み合わせてもよいことも理解されたい。
【0099】
発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示が文脈上明確にない限り、複数の参照物も含まれる。
【0100】
記載の全ての範囲は、この範囲内に含まれる全ての数値、整数、又は分数を包含することを意図する。
【実施例
【0101】
1.材料及び方法
1.1材料
本発明の実施例は、ミネラルウォーター(ヴィッテル)及び5種類の異なるタイプの液体キャリア(3種類の増粘溶液及び2種類のモデル系)を検討した。国際嚥下食標準化構想(International Dysphagia Diet Standardization Initiative)(IDDSI)フレームワークに従ってレベル1及びレベル3~4として分類される2つのカテゴリーの流体を得る目的で、各キャリアをさまざまな濃度で使用した。微量の染料(0.02%w/w)を試料に添加して、画像コントラストを高めた。
【0102】
β-グルカン試料は、Nestle Research(Lausanne,CH)によって提供された。凍結β-グルカン試料を冷蔵庫内で4℃にて18時間解凍し、次いで、レオロジー特性評価及びin vitro試験の前に周囲温度で3時間放置して平衡化した。β-グルカン試料は、特許請求の範囲に記載の伸長粘性キャリア、すなわちβ-グルカン、植物由来粘液及び/又は植物抽出ガムのモデルとして働く。
【0103】
以下の文脈では、TUCと呼ばれる市販のキサンタンガム系増粘剤(Resource(登録商標)ThickenUp(商標)Clear、Nestle Health Science、市販)の水性懸濁液も使用した。供給業者の推奨に従って、100mLのミネラルウォーターを0.6g、2.4g、又は3.6gのTUC粉末に添加して、異なるIDDSIレベルを有する懸濁液を調製した。TUCは嚥下困難の管理に一般的に使用されており、地域の薬局で容易に入手可能な市販のテクスチャーモディファイヤーの例として使用した。
【0104】
イチゴ/バナナフレーバーを有する嚥下補助剤「Gloup original」も試験した(Rushwood B.V.,Raamsdonksveer,NL)。この製品は、薬剤用の嚥下ゲルとして提案されており、カラギーナンを含有する。室温で、150mLの容器からゲルを直接注いだ。
【0105】
既存の2つの食品系と比較してレオロジーの複雑性が限定されている2つのモデル流体もまた、この試験において検討した。最初に、ポリエチレンオキシド(PEO、CAS 25322-68-3、平均分子量M=10^6g/mol)の水性懸濁液(ミネラルウォーター中1%w/w及び3%w/w)を使用して、弾性の効果を更に調査した。ポリマーを密閉容器中で磁気撹拌下で一晩水和させた。最後に、グリセロール(Sigma-Aldrich、CAS番号56-81-5)の溶液を使用した。グリセロールをミネラルウォーターで希釈して、IDDSIレベル1の混合物(72.8%グリセロールw/w)及びIDDSIレベル3の混合物(98.8%グリセロールw/w)を得た。
【0106】
いくつかの形状及びサイズのSODFが、同じ薬剤及び投与量で利用可能であり得る。錠剤及びカプセルのサイズは、Jacobsen et al.(Jacobsen et al.2016年)によれば、長さ3~25mmの範囲であってもよいが、人々は、円形、白色、中程度のサイズ(8~12mm径)のコーティングされた錠剤に、より安心する傾向がある(Fields et al.2015;Overgaard et al.2001;Radhakrishnan 2016)。したがって、大型で非コーディングの暗色錠剤及びサイズが同等のHPMCカプセルを選択した(表1)。これらの2つの形式で入手可能なスピルリナサプリメントは、Anastoreから供給される「Spiruline Biologique」、500mg(例えば、https://www.anastore.com/fr/articles/NA40_spiruline_bio.phpを参照)及びVegavero(「Spirulina Bio」、1,000mg、https://shop.vegavero.com/uk/p/Spirulina-Organic)であった。
【表1】
【0107】
1.2.方法
1.2.1 IDDSI流動試験
各液体キャリアのIDDSIレベル(IDDSI 2019)を評価するために、IDDSI流動試験を室温で3回実施した。本試験では、標準ルアースリップチップシリンジを10mLの印まで試料で満たし、次いで液体を10秒間流す。シリンジ内に残された残りの体積に基づいて、液体試料は、とろみの増加についての4つのレベル:レベル0(1mL未満が残っている)、レベル1(1~4mLが残っている)、レベル2(4~8mLが残っている)、レベル3(8mL以上が残っている)に分類される。液体がシリンジの先端を通って流れない場合、レベル4として分類される。IDDSIレベル4の液体は、IDDSIスプーン傾斜試験で評価することもできる。該液体は、スプーン上で形状を保持しなければならず、かつスプーンが傾けられると容易に落下しなければならない。
【0108】
1.2.2.定常剪断試験
剪断粘度は、モジュラーコンパクトレオメータ(MCR)102(Anton Paar GmbH,Graz,Austria)を用いて25℃で評価した。コーン及びプレートの形状(直径=50mm、コーン角度=4°、トランケーション=500μm)、及び0.5mmのギャップを使用して、0.5~800逆数秒の剪断速度の範囲で流動曲線を得た。各試料について3回繰り返した。
【0109】
1.2.3.伸長特性
試料の伸長特性を、室温(好ましくは25℃)でHAAKE CaBER(Thermo Electron,Karlruhe,Germany)を使用してキャピラリー破断式レオメトリーによって測定した。2つの円形プレート(直径6mm)間の初期分離を3mmに設定し、最大10mmの軸方向変位を50msで加えて、フィラメントを収縮させた。液柱の中間点直径の経時的な変化は、1mmのビーム厚及び20μmの分解能を有するレーザーマイクロメーターで測定した。伸長緩和時間は、CaBER解析ソフトウエア(Haake RheoWin Software、バージョン5.0.12)を用いて、データを弾性(指数)モデルに当てはめることによって計算した。各試料について5回繰り返した。また、試験の高速ビデオを1,000フレーム/秒で撮影して、Phantom V1612高速カメラ(Vision Research,Wayne,NJ)を使用してキャピラリー液柱の形状変化を記録した。
【0110】
1.2.4.In vitroでの嚥下
嚥下の口腔期中に舌によって誘導される蠕動運動を考慮する条件設定(図1)を用いて、SODFの嚥下動態に対するさまざまな液体キャリアのレオロジー特性の影響をin vitroで調査した。この条件設定の網羅的な議論、超音波in vivo測定に対する制限及び検証の議論は、Mowlavi et al.,(2016年)によって既に提示されている。
【0111】
カプセル又は錠剤を最初に乾燥プラスチック膜に配置し、その縦軸を整列させた。したがって、SODFの最小断面は流動の方向に向いていた。次に、4.5mLの液体キャリアを注意深く押し込み、2分後にローラー移動を開始させた。SODFと液体との間のこの接触時間は、嚥下前のカプセル/錠剤の溶解を制限するために制御した(図1参照)。
【0112】
in vitroでの嚥下試験中の食塊及びSODFの瞬間的な位置を、高速カメラ(モデルac1920-155mm、Basler,Ahrensburg,Germany)を用いて200フレーム/秒で記録した。試験毎に、嚥下後にプラスチック膜内部に残った残留物の質量も記録した。各セットの条件変数について、少なくとも3回繰り返した。
【0113】
食塊の前部(FO)がプラスチック膜を出る時間、及び食塊の尾部(TO)が膜を離れる時間を、各試験のビデオ記録から特定した。本条件設定において、プラスチック膜は口腔の役割を果たすため、FO及びTOは特徴的な口腔通過時間と見なされる。
【0114】
画像処理ツール(ImageJ及びGNU Octave)を使用して、(食塊尾部に対応する)ローラーの瞬間的な位置、及び嚥下試験中T0までのSODF質量中心を抽出した。
【0115】
t0、FO及びTOで、ローラーと食塊前部との間の食塊の長さを測定し、t0における食塊の初期サイズのパーセンテージとして表した。同様に、食塊内のSODFの位置は、t0、FO及びFO(Δ前部)でSODF前部と食塊前部との間の距離を測定することによって定量化した。
【0116】
加えて、SODFの質量中心の角度位置とローラーの角度位置との差をFOまで追跡した。
Δθ=θSODF-θローラー (1)
【0117】
Δθの減少は、SODFが液体キャリアより遅く、食塊の尾部の方に移動したことを示し、逆に、Δθの増加は、SODFが液体より速く流れ、食塊の前部の方に移動したことを示す。
【0118】
1.2.3.統計解析
結果を平均値±標準偏差として示す。一元配置分散分析(ANOVA)を用いて結果の統計的有意性を検定し、群平均間の差を確率水準0.05(p<0.05)でテューキーの多重比較検定により解析した。Origin 2020b(OriginLab Corporation,Northampton,MA)を用いて統計解析を行った。
【0119】
1.3.結果及び考察
1.3.1.IDDSI流動試験
本試験で検討する液体キャリアのセットは、2つの異なるカテゴリー稠度:一方は水及び薄い液体、他方は嚥下困難を有する個体に適したよりとろみのある液体、を得るように設計した。
【0120】
まず、IDDSIフレームワークに従って各液体キャリアの稠度を定性的に評価した(表2)。
【表2】
【0121】
水とは別に、3群の試料を得た。β-グルカン試料0.3%(w/w)、及びTUC 0.6%(w/v)、PEO 1%(w/w)、及びグリセロール72.8%(w/w)の懸濁液を、IDDSIレベル1として分類した。β-グルカン試料1%(w/w)、及びTUC 2.4%(w/v)、PEO 3%(w/w)、及びグリセロール98.8%(w/w)の懸濁液を、IDDSIレベル3として分類した。Gloup Original及びTUC 3.6(w/v)を、IDDSIレベル4として分類した。
【0122】
Gloup Originalは、IDDSIレベル3の製品として市販されているが、10秒の試験時間で流出が測定されなかったので、本明細書ではIDDSIレベル4として分類した。この分類は、IDDSIスプーン傾斜試験で確認された。(Malouh et al.2020)はまた、ボトルから直接注いだときのこの製品をレベル4と分類した。
【0123】
1.3.2.レオロジー特性
定常剪断で得られた流動曲線を図2に示す。全体として、試料は、ニュートン流体であるミネラルウォーター及びグリセロール溶液を除いて、剪断減粘性挙動を示した(図2)。しかしながら、特異的な差異が観察された。
【0124】
TUC懸濁液は、使用した濃度とは無関係に、この範囲の剪断速度にわたって有意な剪断減粘性挙動を有したが、PEO懸濁液は剪断減粘性がより低く、低剪断速度で粘度プラトーを示した。この粘度プラトーの程度は、ポリマー濃度を増加させると減少した(PEO L1については100s-1まで、PEO L3については1s-1まで)。TUC及びPEOと比較して、β-グルカン試料は、中程度の剪断減粘性挙動を有した。同様の結果がMarconati及びRamaioli(2020)によって報告された。
【0125】
Gloupの流動曲線は、カラギーナンで構成される製品について予想され得るように、強い剪断減粘性挙動も示した。検討した剪断速度の範囲にわたって、Gloup、TUC L3、及びTUC L4は同様の粘度を有した。
【0126】
4つのIDDSIレベル1キャリアは、γ=50s-1で同等の剪断粘度を有した(付録)。TUC L1が最も低く(30.76±3.12mPa.s)、β-グルカン試料L1が最も高かった(40.09±13.01mPa.s)。読者に基準を提供すると、市販のオレンジジュースは同様の粘度を有している(Marconati et al.2018)。対照的に、IDDSIレベル3の液体キャリア間では、γ=50s-1での剪断粘度は有意に異なった。2つの群が観察された:β-グルカン試料L3及びTUC L3は、PEO L3及びグリセロールL3よりも粘度が低かった(それぞれ、約275mPa.s及び670mPa.s)。
【0127】
テクスチャーモディファイヤーの剪断レオロジーは、一般に、50逆数秒の剪断速度で報告される。このことは研究間の比較を容易にする。しかしながら、嚥下プロセス全体の剪断速度は、口腔及び食道の1s-1から咽頭の1,000s-1まで変化し得ることが立証されている(Gallegos et al.2012;Nishinari et al.2016)。
【0128】
図2によれば、どちらも類似した強い剪断減粘性製品であるTUC懸濁液及びGloupを除いて、同じIDDSIレベルを有する液体キャリアは、低剪断速度及び高剪断速度(すなわち、それぞれ、≦10s-1及び≧100s-1)で異なる粘度を有した。これらの結果は、検討する流体がニュートン流体であり、剪断減粘性がわずかである又は剪断減粘性が強い場合、IDDSIレベルにより表される粘度範囲が異なることを示唆している。
【0129】
1.3.3.伸長特性
液体キャリアの伸長特性を、キャピラリー破断式伸長レオメトリー(CaBER)によって調べた。試料毎に、破断まで過渡的にフィラメントが収縮していくビデオ記録から抽出した選択画像を図3に提示する。初期中間点直径によって正規化した中間点フィラメント径の時間変化を図4に示す。
【0130】
キャリアのIDDSIレベルとは無関係に、キャピラリーの収縮から破断までに異なる状況が観察された。TUC懸濁液、Gloup、及びグリセロール溶液では、フィラメントは砂時計形状を有した(図3b、図3d、図3f、図3h、図3i、図3j)。フィラメントは時間と共に急速に変化し、短い破断時間が測定された(すなわち、≦0.5秒)。グリセロール試料では、フィラメント径は時間の経過とともに直線的に減少した。この減少はニュートン流体に典型的に観察される(Anna and McKinley 2000)。TUC及びGloupでは、剪断減粘性液体の特徴である、粘性が優勢な状況におけるフィラメント破断の加速が観察された(McKinley n.d.)(図4a)。
【0131】
対照的に、PEO懸濁液及びβ-グルカン試料によって形成された液柱は円筒形であった(図3a、図3c、図3e、図3g)。この場合、円筒形のキャピラリーの半径は、時間の経過とともに指数関数的に減少し、より長い破断時間が記録された(図4b)。この挙動は、弾性流体に特有のものである(Anna and McKinley 2000)。そのような弾性が優勢な状況は、伸長緩和時間(λ)によって説明することができる(Arnolds et al.2010)。この試験の試験条件において、β-グルカン試料は、PEO懸濁液よりも大きいλを有した(それぞれ、0.04~0.10及び0.01~0.07)。同様の結果がMarconati及びRamaioli(2020)によって得られた。
【0132】
全体として、IDDSIレベル3のキャリアでは、IDDSIレベル1の試料と比較してより長い破断時間が測定された。より高い増粘剤濃度では、フィラメントの収縮動態に対する粘性排水(viscous drainage)の寄与が増加した。これは弾性液体キャリアでも観察されたが、弾性液体キャリアでは、ポリマー濃度を増加させたときにλも増加した(図5)。興味深いことに、β-グルカン試料ではλ値は濃度とともに急速に増加したが、剪断粘度の増加は中程度であった(図5)。したがって、これらの試料は、弾性である薄い流体とみなされ得る。
【0133】
剪断及び伸長レオメトリーを用いて評価する液体キャリアのレオロジー特性に関して図5に示す値は、以下のとおりのものである:
【表3】
【0134】
値にはオクラ(0.5%及び0.8%)のレオロジー特性も含む。これらの値は、β-グルカン試料について上記のように測定された。図5から分かるように、本発明の液体粘弾性嚥下補助剤に含有される化合物についての特許請求されたデータポイントの全て、特に剪断粘度値及び単一緩和時間を一致させることができる。IDDSIレベルを、特許請求された値内に到達させることもできる。
【0135】
1.3.4.SODFのin vitroでの嚥下
in vitroでの試験は、さまざまなレオロジー特性を有する液体キャリアの、カプセル及び錠剤の嚥下動態に対する効果を理解することを目的とした。最初に、基準とする水を用いて、食塊速度、嚥下後残留物、食塊伸長、及び食塊中のSODFの位置を調査した。
【0136】
試験のビデオ記録からのスナップショットを図6に提示する。これらの写真は、試験の開始時(t0)、食塊の前部が模擬口腔の端部に到達したとき(FO)、及び食塊の尾部が模擬口腔を出たとき(TO)に撮影された。
【0137】
1.3.5.口腔通過時間
異なるセットのキャリア及びSODFの特徴的な口腔通過時間を図7に示す。
【0138】
水を用いると、tFOでは食塊中のSODFの存在による変化はなかったが、tTOはわずかに遅延した。これは、カプセル及び錠剤のいずれもが食塊放出を減速させたことを意味する(それぞれ、0.03秒及び0.06秒の遅延)(図7)。これらの結果は、大きなSODFが水と共に嚥下された場合に食塊速度に及ぼす影響は極わずかであることを示唆している。
【0139】
SODFを含むL1液体及び含まないL1液体を用いて行った全ての試験で、水(SODFFを含まない)に対して同様のTOが得られた。したがって、水と比較した場合、L1液体は全て、カプセルの存在によって誘発される減速を回避することができた。
【0140】
β-グルカン試料L3、Gloup、及びTUC L4は、水と比較してtFO及びtTOをわずかに遅らせただけであったが(図7)、TUC L3は、水と同様の通過時間を示した。グリセロールL3は、有意により高いFO及びTOを示した。グリセロールL3では、錠剤の口腔通過時間が試験した全ての試料の中で最も長く0.79秒に達しており、これは水による通過時間のほぼ2倍である(図7)。この遅延は、高剪断速度ではこのニュートン試料の粘度が比較的高いことに起因する(γ≧50s-1で約650mPa・s)。
【0141】
任意のIDDSIレベル3又は4の液体キャリアと共に嚥下された場合、SODFはどちらも、tTOを0.05~0.2秒遅延させ、遅延の増加順は、TUC及びGloup<β-グルカン試料<PEO<グリセロールであった(図7)。これは、γ=300s-1でのキャリアの剪断粘度に関連するようである。カプセルと錠剤との間に差異は観察されなかった。
【0142】
このことは、口腔通過時間に対するSODFの影響が、高剪断速度での液体キャリアのレオロジー特性にも依存することを示唆する。換言すれば、遅延は、高剪断速度粘度の増加と共に増加する。これは、流動中にODFの周りに存在し、高剪断速度に達し得る、小さなギャップによって説明することができる。
【0143】
これらの結果は、グリセロール及びオレンジジュース(それぞれ、粘度=1.05±0.05Pa.s及び0.03±0.01Pa.s)中の大きなSODF(扁長楕円体、d=10mm球体に容量が等しい)について、より長い通過時間、より高い変動性及びより低い食塊速度が記録された以前の研究(Marconati et al.2018)と一致する。
【0144】
1.3.6.嚥下後残留物
プラスチック膜に残った残留物の質量を、各嚥下後に測定した。
【0145】
水を用いた場合、嚥下後残留物は、食塊中の錠剤の存在によって増加した(図8)。膜には微量の暗色残留物が観察されたため、この増加はおそらく非コーティング錠剤の水への溶解が速いことに関連していた。
【0146】
全体として、嚥下後残留物の量は試料の剪断粘度と共に増加し、嚥下後残留物に対するSODFの明確な影響は観察されなかった(図8)。IDDSIレベル1のキャリアの中ではグリセロール溶液が、他の液体キャリア(0.5mL~0.6mL)よりも多くの残留物(約0.8mL)を残した。β-グルカン試料及びTUCでは濃度の有意な影響は観察されなかった。対照的に、PEO及びグリセロールL3では、IDDSI L1として分類される低濃度溶液と比較して嚥下後残留物が有意に高く、約0.9mL及び1mLに達し、これは水で測定した残留物の体積の2倍であった。Gloupもまた、膜にかなりの量の嚥下後残留物(0.9mL~1mL、グリセロールL3に相当)を残した。
【0147】
過剰な口咽頭残留物は、不快感(すなわち、食塊が喉に詰まる不快な感触)を引き起こす可能性があり、残留物を除去するために複数回の嚥下が必要となる可能性があり、このことが製品の嗜好性を低下させる可能性がある。残留物はまた、嚥下障害を有する人々による誤嚥をまねき、肺炎などの呼吸器合併症をもたらし得る。したがって、嚥下補助剤を開発する場合、残留物及び嗜好性に対する粘度増加の悪影響を回避するように注意しなければならない。TUCのようなキサンタンガム系増粘剤は、口咽頭残留物を増加させることなく嚥下の安全を改善するので、嚥下困難の管理においてデンプン系増粘剤よりも好ましいことが多い(Hadde et al.2019;Ortega et al.2020;Rofes et al.2014)。TUCと同様に、この試験で評価したβ-グルカン試料では、in vitroでの嚥下後残留物は限られていた。臨床結果は、嚥下困難を有する人々に対するプラスの効果を確認することができる。
【0148】
1.3.7.食塊伸長
食塊の長さは、液体キャリア及びSODFの各セットを、t0、tFO、及びtTOでの画像解析によって評価した。t0において、食塊の長さは、SODFなしで43.1±0.8mm、カプセルありで47.0±1.2mm、錠剤ありで47.2±1.4mmであった。食塊中のカプセル及び錠剤の存在は、その体積を増加させ、より長い初期食塊をもたらし、特に水及びIDDSIレベル1の流体で、嚥下前漏出のリスクが高くなる。
【0149】
tFOにおいて、水又はTUC L1と共に嚥下されたSODFでは食塊の長さの増加が観察された(図9)。これは、試験が開始される前の液体漏出に起因する。対照的に、最も粘性の高い試料(例えば、PEO及びグリセロールL3)では食塊の長さの減少が認められ、この減少は、嚥下中のキャリアの部分的な減少(すなわち、膜に残留物として残る)に関連し得る(図9)。
【0150】
このin vitroでの試験では、プラスチック膜から放出された液体食塊は、重力加速度の影響を受けて食塊伸長が誘発され、粘弾性液体の場合は膨張(すなわち、食塊膨張)する。液体キャリアの剪断粘度及び両方の現象間の相互作用が、tTOにおける食塊形状を決定する。
【0151】
水の嚥下は、tTOで長い食塊をもたらした(図6a及び図9)。食塊の長さは、t0とtTOとの間でほぼ倍になり、SODFの存在は食塊伸長をなお更に増加させた。引き伸ばされた食塊は嚥下中に壊れる可能性がより高く、in vitroでの誤嚥のリスクを増加させる場合があることから、このような食塊伸長は嚥下困難を有する患者にとって望ましくない(Hadde et al.2019)。
【0152】
水と同様の結果がTUC L1で観察された(食塊伸長>175%、SODFの存在によって増加)。他のIDDSIレベル1の液体キャリア(β-グルカン試料、PEO、及びグリセロール)については、より短い食塊が測定され、SODFを嚥下した場合に食塊の長さに有意差はなかった(図9)。
【0153】
全てのIDDSIレベル3の流体は、水と比較して、tTOでより短い食塊を有し(図6及び図9)、SODFの有意な影響は観察されなかった。PEO L3試料は、最も低い食塊伸長値(80%~85%)をもたらし、TUC L3試料は、最も高い食塊伸長値(120%~140%)をもたらした。食塊伸長はまた、Gloup及びTUC L4では限定され、いずれのキャリアでも約105%であった(図6及び図9)。
【0154】
これらの結果は、口腔の出口での食塊伸長が、高剪断速度での液体キャリアの粘度(L3流体のBL<L1流体のBL)、及び液体キャリアの伸長特性(TUC L3のBLと同様のβ-グルカン試料L1のBL)に関連することを示唆する。
【0155】
ビデオ蛍光透視法観察に基づいて、咽頭を通るより滑らかでより制御された食塊の流動を促進する方法として、コンパクトな食塊形状が提案された(Hadde et al.2019)。このパラメータは、より広い範囲の伸長特性及び粘弾特性の影響を評価するために、更にin vivoで調査されるべきである。
【0156】
1.3.8.SODFの位置
図6に見られるように、食塊中のカプセル及び錠剤の位置は、使用される液体キャリアによって変化した。この現象をより詳細に調べるために、食塊前部に対するSODFの相対位置を、t0、FO、及びTOにおける試験のビデオから定量化した(図10)。
【0157】
嚥下前、SODFの位置は、液体キャリアにおけるその浮力に依存した。水では低密度(0.7g/mL)のカプセルが浮き、食塊の前部の近くに位置した(図6及び図10)。対照的に、錠剤(1.2g/mLの密度)は沈降し、食塊の尾部の近くに位置した(図6及び図10)。同様の結果が、IDDSIレベル1のキャリアで観察された。しかし、IDDSI L3流体では、β-グルカン試料を除いて、錠剤は食塊の中央に見出された。
【0158】
1.2g/mLの密度を有したグリセロール溶液を除いて、この試験で使用した全ての液体キャリアは約1.0g/mLの密度を有した。したがって、グリセロール溶液及び錠剤は同じ密度を有した。錠剤は沈降せず、グリセロール食塊においてt0でのカプセルと同じ位置を有した。
【0159】
水と共に嚥下された場合、SODFはいずれも、in vitroでの嚥下中に食塊尾部の方に遅れた(図6及び図10)。ローラーによる強制的な絞り動作下では、水は、SODFの周りに存在するギャップを通って流れることができ、固体の遅れをもたらした(Marconati et al.2018)。カプセル及び錠剤は、ほとんどの液体の後に模擬咽頭に入り、カプセル及び錠剤をその先に移送するのを助ける液体は残っていなかった。この現象は、オレンジジュースにおいて大型球状錠剤モデルを用いた同様のin vitroでの試験において、Marconati et al.,(2018)によって既に報告されている。
【0160】
これらの結果は、水がカプセル及び錠剤にとって有効なキャリアではないことを示唆している。水はSODFよりも速く流れ、SODFはそれに遅れる。次いで、SODFを口腔から食道に移送するためには、複数回の嚥下又はより大量の水がおそらく必要とされることとなり、これは嚥下困難を有する患者のリスクを増大させる(Hey et al.1982;Stegemann et al.2012;Yamamoto et al.2014)。実際にin vivoでの試験は、最初の試行でプラセボが嚥下され得なかった場合、それらは主に患者の口腔内に残っていたことを示している(Schiele et al.2015;Yamamoto et al.2014)。
【0161】
同等の結果がTUC L1で得られた。液体食塊は引き伸ばされ、SODFは、tFO及びtTOで食塊尾部に近かった(図6及び10)。しかし、他のIDDSIレベル1の液体キャリアでは差異が観察された。tTOにおいて、PEO及びグリセロール(L1)では、カプセルは液体食塊の中央に位置し、β-グルカン試料では、カプセル及び錠剤のいずれもが液体食塊の前部に見られた(図6及び図10)。固体が嚥下プロセス全体を通してキャリア内に効率的に埋め込まれ得ることを示唆するので、これはSODFの移送の改善と考えられる。
【0162】
よりとろみのある液体キャリア(IDDSI L3及びL4)では、カプセル及び錠剤を食塊の前部に押し出す、又は中央に移送するかのいずれかであった(TUC L3+カプセル、及びグリセロール試料)(図6及び図10)。したがって、試験した全ての液体キャリアは、TUC L1を除いて、本試験で検討したSODFの移送を改善したが、この流体は、嚥下後残留物の減少をもたらした。
【0163】
実際には、先に述べた他の基準(食塊の形状、嚥下後残留物、及び口腔通過時間)もまた、どのキャリアを好むかを決定するために考慮されるべきである。β-グルカン試料L1及びL3はいずれも、コンパクトな食塊の前部でカプセル及び錠剤を移送し、嚥下後残留物をあまり増加させることなく口腔通過時間をごくわずかに増加させるだけなので、非常に良好な選択肢であると思われる。
【0164】
1.3.9.カプセルと錠剤との比較
in vitroでの嚥下中のカプセル移送と錠剤移送との間の差異を更に調査するために、試験全体にわたってSODFの位置も追跡した。SODFのタイプ及びIDDSIレベルによって分けてデータを図11に示す。
【0165】
グリセロール溶液を除く全ての液体キャリアでは、試験の最初のパート(すなわち、t<0.15秒)中に、カプセルは口腔を模倣する膜に付着するようであった(図11)。試験の開始時に、カプセルは動かなかったが、液体は前方に流れることができた(Δθは減少した)。次いでカプセルは、食塊尾部(Δθ約-15°)に到達し、ローラーによって加えられる絞り動作下で、最終的に側壁から離れた。そしてカプセルでは、試験の最後のパート中に2つの異なるシナリオが観察された。水及びTUC(L1及びL3)では、カプセルは液体食塊(一定のΔθ)とともに前方に押されたが、他のキャリアではカプセルは液体食塊よりも速く移動した(Δθが増加)(図11)。グリセロール(L1及びL3)と共に嚥下した場合、カプセルと膜との間に付着は観察されず、Δθは連続的に減少した(図11)。
【0166】
錠剤は、試験の開始時の膜への付着がカプセルよりも有意に少なかった(図11)。水及びグリセロール(L3)を用いると、Δθは試験中に連続的に減少した(図11)。他の液体キャリアでは、Δθは最初は一定であった。次いで、伴う液体キャリアに応じて、食塊の前部(Δθ約+15°)、又はΔθ=5°付近のプラトーへの到達には約0.1秒増加した(図11)。全体として、これらの結果は、錠剤がそれらの初期位置に関する欠点を迅速に克服したことを示す。
【0167】
これらの結果によれば、液体食塊中のSODFの初期位置は、嚥下中の一連の変化に強い影響を与えない。しかしながら、SODFの膜への付着は、固体の嚥下動態に有意な影響を及ぼし、これは更に調査されるべきである。
【0168】
付着に関して、本試験の1つの限界は、in vitroでの嚥下を開始させる前の、液体とSODFとの接触時間が2分であったことであり、これは典型的なin vivoでの接触時間よりも長い。試験上の制約により、この浸漬時間を短縮することは不可能であった。
【0169】
これらの試験条件では、非コーティング錠剤はHPMCカプセルよりもプラスチック膜への付着が少なかった。グリセロール溶液中では、カプセルも錠剤も膜に付着しないようであったので、観察された差異は、水性懸濁液中でのSODF表面の部分的溶解又はグリセロール溶液の存在下での付着の減少に起因し得る。
【0170】
口腔から胃までの粘膜へのSODFの付着は、食道損傷の原因となり得るため、これまでに研究されてきた(Channelr and Virjee 1986;Chisaka et al.2006;Hey et al.1982;Perkins et al.1994)。しかしながら、粘膜へのHPMCカプセルの付着に関する文献には矛盾する結果が見られる。一方で、Smart et al.,(2013)は、唾液で湿らせたブタ食道粘膜の切片を組み込んだin vitro条件を使用して、HPMCでコーティングした錠剤は有意な付着性を有すると結論付けた。これに対し、カプセルが予め水に浸漬されていた場合には、HPMCコーティングされた錠剤と人工皮膚との間の静摩擦係数及び動摩擦係数はほぼ0に減少することが示されている(Shimasaki et al.2019)。著者らは、HPMCコーティングが製剤と人工皮膚との間の潤滑剤として作用したと考え、このタイプの錠剤は、水と共に摂取された場合、非コーティング錠剤よりも嚥下しやすいと結論付けていた。
【0171】
2.結論
これらの試験では、in vitro人工咽喉を使用して、嚥下の口腔期中の異なるセットの液体キャリア及びSODFの動態を研究した。食塊速度、食塊形状、嚥下後残留物、及び食塊中のSODF位置に対するキャリアのレオロジー特性の影響を調査した。試験は、嚥下の口腔期に関連する蠕動流下でのカプセル及び錠剤の移送に関する新たな洞察を提供した。
【0172】
水のような低粘度のニュートン流体は、SODFにとっての最も効率的なキャリアではない。水と共に嚥下された場合、カプセル及び錠剤は、食塊の速度に有意な影響を与えなかったが、それらは液体食塊に遅れをとった。SODFに続く液体の運動エネルギーが低いため、口腔期後に粘膜に付着するリスクが高いことが示唆される。
【0173】
SODFを移送する液体の能力及び食塊中のSODFの位置は、高剪断速度(すなわち、≧300s-1)で液体キャリアの粘度を増加させることによって改善された。しかしながら、より高い粘度は、より高い嚥下後残留物と関連し、嚥下後誤嚥のリスクを増加させ得る。
【0174】
同等の剪断粘度では、食塊中のSODFの位置はキャリアの弾性及び伸長特性によってプラスの影響を受けた。カプセル及び錠剤は、SODF上の薬物を維持し及び嚥下の以降の期での付着を防止するために、流動の観点からより有利であると考えられる、食塊の前部の方に移送された。
【0175】
したがって、本試験で評価したβ-グルカン試料のような薄い弾性液体製剤は、SODFの嚥下を促進する可能性を有する興味深い選択肢であると思われる。しかしながら、嚥下困難患者においてプラスの効果が観察されるかどうかを臨床研究が確認する必要がある。
【0176】
結果及び驚くべきデータの発見から、本発明者らは、液体粘弾性嚥下補助剤が、本明細書で定義される植物由来粘液及び/又は植物抽出ガムから選択されるβ-グルカン又は同等の粘弾性キャリアから選択される化合物を0.1~10重量%の総量で含む場合、固形経口製剤(SODF)の嚥下の促進に使用するための液体粘弾性嚥下補助剤は最も効率的であることを見出した。最適量は、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~3.5重量%であってもよい。
【0177】
液体粘弾性嚥下補助剤は、好ましくは:
50s-1の剪断速度及び25℃で測定される、10~1,000mPa.sの剪断粘度、10~900mPa.sの剪断粘度、10~800mPa.sの剪断粘度、又は10~700mPa.sの剪断粘度であって、最適値が更に低く、例えば、10~600mPa.s、10~500mPa.s、10~400mPa.s、10~300mPa.s、10~200mPa.s、例えば、約10~100mPa.s、10~50mPa.s、10~40mPa.s、又は更には10~30mPa.sであってもよく、各剪断粘度が、50s-1の剪断速度及び25℃で測定される剪断粘度と、
室温(25℃)でキャピラリー破断式伸長粘度計(CaBER)によって測定されるとおりの、10ms~500ms以下、例えば10ms~350ms又は更にはそれ以下の少なくとも1つの伸長緩和時間と、
任意選択的に、典型的には室温(25℃)で測定される、1~4のIDDSIレベル、好ましくは1~3のIDDSIレベル、より好ましくは1~2又は更に1のIDDSIレベルと、も示さなければならない。
【0178】
そのような組み合わせ値を用いて、特に計画された最適領域において、本発明者らは、驚くべきことに、SODFを含有する食塊が適度な食塊伸長を経て、おそらく嚥下中に起こり得る断片化リスクを低減する、有益な粘弾性特性を見出した。SODFが、SODFの遅れが生じないように食塊の中央又は前部で嚥下されることは、SODFの移送に有益であると考えられる。
【0179】
3.参考文献
上記で手短に引用した参考文献を、完全な形で以下に列挙する:
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図1
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【国際調査報告】