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特表2024-510909安定したシート案内部を有する塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】安定したシート案内部を有する塗布装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240305BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M4/139
B05C13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552277
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022056012
(87)【国際公開番号】W WO2022189491
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105658.6
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519075786
【氏名又は名称】バトリオン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Battrion AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エブナー マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ボジギット デニズ
(72)【発明者】
【氏名】コリー マックス
【テーマコード(参考)】
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4F042AA22
4F042AB00
4F042DF10
4F042DF19
4F042DF21
5H050AA19
5H050BA17
5H050DA03
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
【要約】
キャリア(1)をコーティングで塗布するための塗布装置(30)が提案されている。塗布装置は、キャリア(1)の少なくとも1つの面においてキャリア(1)を塗布するための塗布工程中、及び少なくとも1つの面へのペースト塗布後に、キャリア(1)を搬送するための搬送装置と、整列装置を備えている。特に安定したシート案内のために、搬送装置は、キャリアが搬送中載置される搬送表面に垂直及び/又は搬送方向(T)に垂直な方向に対して、キャリア(1)の位置的に安定した支持のための支持装置(2,12,22,29)を備えている。支持装置は、表面に垂直な方向に対して位置の変化を妨げるために、キャリア(1)の塗布されていない面の方向において、表面に垂直なキャリア(1)の動作範囲に対する機械的制約を形成するように、構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(1、1a、1b、1c)、具体的には箔(F)、の少なくとも1つの側を、コーティング(B、B1、B2)、具体的には力場において配向可能な粒子を備えるペースト及び/又は乾燥塗料、を用いて、塗布するための、好ましくはリチウムイオン電池のアノードを製造するための塗布装置(30)であって、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の少なくとも1つの面に前記キャリア(1、1a、1b、1c)を塗布するための塗布作業中、且つ、少なくとも、1つの面へのコーティング塗布後に、前記キャリア(1、1a、1b、1c)を搬送するための搬送装置であって、前記搬送装置には、前記ペースト内で粒子を配向するための配向装置(3)が設けられており、前記配向装置は、具体的には前記粒子を配向するための力場を、好ましくは空間的及び/又は時間的な交流磁場を生成する、搬送装置を備え、前記搬送装置は、前記キャリアが搬送中載置される搬送表面に垂直及び/又は前記搬送方向に垂直な方向に対して、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の位置的に安定した取付けのための軸受装置(2、12、22、29)を備え、前記軸受装置は、前記表面に垂直及び/又は前記搬送方向(T)に垂直な方向に対する位置の変化を妨げるために、前記キャリア(1、1a、1b、1c)に機械力を及ぼすように、且つ、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の塗布されていない面に少なくとも係合するように、及び/又は、少なくとも前記キャリア(1、1a、1b、1c)の塗布されていない面の方向において、前記表面に垂直及び/又は前記搬送方向に垂直な前記キャリア(1、1a、1b、1c)の動作範囲に対する機械的制約を形成するように、構成されていることを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置(2、12、22、29)が、
・少なくとも1つの転がり軸受(2)であって、その上に前記キャリア(1、1a、1b)を載置可能であり、且つ、前記キャリア(1、1a、1b)と接触して、前記キャリアの並進運動と一体となって共回転するよう構成されている、少なくとも1つの転がり軸受(2)、及び/又は、
・少なくとも1つの滑り軸受(12)であって、その上に前記キャリア(1、1a、1b)を載置可能であり、且つ、前記キャリア(1、1a、1b、1c)と接触して、キャリアの並進運動に対して回転可能に固定されるよう構成されており、具体的には、前記搬送表面に平行に及び/又は前記搬送方向(T)に垂直に配置されるワイヤ及び/又はプラスチック糸である、少なくとも1つの滑り軸受(12)、及び/又は、
・少なくとも1つのガス軸受(22)、具体的には空気軸受であって、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の非接触取付けのための少なくとも1つのガス軸受(22)、及び/又は、
・真空軸受(29)であって、具体的には、真空ポンプで形成される真空軸受、具体的には、前記搬送表面及び/又は前記搬送方向に垂直な押圧力を及ぼすため、及び/又は、前記搬送方向(T)に平行に前記キャリア(1、1a、1b、1c)に引張力を及ぼすための真空軸受(29)、及び/又は、
・取付け具としての液体クッション、及び/又は、
・電磁軸受、具体的には、静電流軸受及び/又は渦電流軸受、
を備えることを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項3】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置(2、12、22、29)は、前記キャリア(2)の多面に配置可能であって、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の多面取付け用に構成されており、前記軸受装置(2、12、22、29)が、具体的には、前記搬送表面及び/又は前記キャリア(1、1a、1b、1c)に対して互いに向き合うように位置する少なくとも2つの軸受を有している、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項4】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置は、前記キャリア(1、1a、1b、1c)の塗布されていない面、及び/又は、塗布された面と係合するために、非接触軸受(22)を備えており、前記非接触軸受は、具体的にはガス軸受(22)として、有利には空気軸受として構成されていることを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記搬送表面側で、具体的には、前記キャリアの塗布されていない面が位置している前記搬送表面側で、前記キャリアの湾曲した搬送側面を可能にするために、少なくとも2つの軸受が、搬送方向に直列に接続され、且つ、互いに対して角度をつけて配置されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項6】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記搬送方向(T)に直列に接続されている少なくとも2つのガス軸受(22)、具体的には空気軸受、が設けられており、且つ、前記搬送方向(T)に垂直な押圧力を生成するために、2つの連続するガス軸受(22)の間に、真空軸受(29)が配置されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記少なくとも1つのガス軸受(22)に対向するガス軸受(22)が、前記搬送表面及び/又は前記キャリア(1、1a、1b、1c)に対して配置されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記粒子を前記ペースト内で配向するために、前記配向装置が、時間的及び/又は空間的な交流磁場を発生するように構成されており、具体的には、少なくとも1つの永久磁石(3)を備えている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項9】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置(2、12、22、29)は、前記箔(F)及び/又は前記キャリア(1)を、前記配向装置から、具体的には磁石から離れて、0-200mmの距離で、具体的には0mm-20mmの距離で、有利には1-4mmの距離で、保持するように構成されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置(2、12、22、29)が、少なくとも2つの軸受を備え、前記少なくとも2つの軸受は、前記搬送方向(T)に直列に接続し、且つ、前記少なくとも2つの軸受の距離は、1cmと8mとの間、好ましくは1cm-50cmの間である、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項11】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記軸受装置は、湾曲した搬送路に前記キャリアを案内するよう構成されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項12】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記配向装置は、少なくとも2つの部分的な配向要素、具体的には永久磁石、を有し、前記少なくとも2つの部分的な配向要素は、前記搬送方向に対して直列に接続されており、且つ、前記湾曲した搬送路の少なくとも一部に沿って、互いに対して角度をつけて配置されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【請求項13】
先行する請求項のいずれかに記載の塗布装置(30)であって、前記配向装置、具体的には前記永久磁石は、力場の場分布を、前記湾曲した搬送路の側面に適応させるために、前記湾曲した搬送路の少なくとも一部に沿って湾曲するよう構成されている、ことを特徴とする、塗布装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の通り、ペーストを用いて、キャリアの少なくとも1つの側を塗布するための塗布装置に関する。
ペーストを用いたキャリア箔の塗布のような製造工程は、例えば、国際公開第2018/047054 A1号の先行技術から知られており、リチウムイオン電池用の負極の製造例を用いて、説明される。キャリアは、織布状箔であり、ローラーによって対応する製造/塗布設備内を搬送される。その場合、ペーストには、磁場内で配向可能な黒鉛粒子も含まれている。しかしながら、正確に制御可能な黒鉛粒子の配向を得るためには、キャリアを正確に定義された方法で磁場内に案内することが必要であるため、搬送は非常に正確に行う必要がある。
【0002】
特開2020-053278号は、コーティングを乾燥するために乾燥送風機を使うとき、キャリアが気流を受けて垂下することがあるという問題に言及している。これを相殺するために、電極材に、より正確にはキャリアのコーティングに、磁性材料が加えられ、垂下を相殺するために、永久磁石がキャリアの近くに配置されている。
【0003】
本発明の目的は、キャリアのより正確な位置決めによって、より正確な製造作業を可能にする塗布装置を提供することである。
本目的は、導入部に記載したタイプの塗布装置を出発点として、請求項1の特徴的な機能によって達成される。
【0004】
本発明の有利な実施形態及び改良は、従属クレームに述べる特徴により可能となる。
本発明に係る塗布装置は、搬送装置を提供する。搬送装置によって、塗布されるキャリア箔は設備内に案内される。キャリア箔自体は、本発明に係る塗布装置の固定された構成要素ではない。
【0005】
ここで使用される用語体系では、キャリアは、基本的材料としての箔、及び、箔に塗布されたコーティングを備える。リチウムイオン電池用の負極の製造には、例えば、長い織布に存在する銅箔が使用される。しかしながら、先行技術に係る従来の方法では、搬送、具体的には、力場や磁場に関する長い織布状箔の搬送は、十分に正確ではなく、これまで定期的に問題を起こしてきたことが証明されている。
【0006】
さらに、一般的には、塗布する場合、製造工程にさらなる要件がある。コーティングとして、例えば、軟質から液体までの材料からなるペーストが塗布され、続いて乾燥される。乾燥中、ペーストの容量は、ペーストの構成要素の蒸発のため、縮小することがある。箔へのペーストの接着により、キャリア全体に、変形、膨張、皺、折り目が生じることがある。さらに、ペーストを乾燥するために用いられる加熱の間、キャリアは、膨張、又は、収縮することがある。
【0007】
例えば、リチウムイオン電池の製造において、使用された銅箔は、加熱時に膨張することが予測される。一方、銅箔に塗布されたペーストは収縮する。この場合、その中を電流が流れる加熱バイメタル細片と同様に、箔とペーストとを備えるキャリアの複合体全体は湾曲する。
【0008】
このことは、次に、キャリア全体の変形、膨張、皺又は折り目につながる可能性がある。これらの影響により、これまで、力場におけるキャリアの取付け及び位置決めにおいて、ひいては搬送及び製造においても、具体的には、正確な位置決めにおいて、根本的な問題が生じていた。
【0009】
例えば、キャリア箔に塗布されるペーストは、平板状の粒子を含んでいてもよい。平板状の粒子では、粒子の大部分において、それぞれの粒子形状に近似した楕円体が、似た長さの2つの軸、及び、1つの明らかに短い軸を有している。
【0010】
例えば、キャリア箔に塗布されるペーストは、球体状の粒子を含んでいてもよい。球体状の粒子では、粒子の大部分において、それぞれの粒子形状に近似した楕円体が、似た長さの3つの軸を有している。
【0011】
例えば、キャリア箔に塗布されるペーストは、針状の粒子を含んでいてもよい。針状の粒子では、粒子の大部分において、それぞれの粒子形状に近似した楕円体が、1つの長軸、及び、2つの明らかに短い軸を有している。
【0012】
キャリア箔に塗布されるペーストが、炭素系粒子、具体的には黒鉛粒子、具体的には平板状の粒子のような粒子を含む場合、実際に原理上、粒子の統一した配向は、乾燥中の容量減少による歪みに影響することがある。しかしながら、配向は、所望の製造結果によって規定されており、歪みの可能性のみによって決定され得ない。可能であれば、コーティングは、熱応答特性を有する材料も含んでもよいが、これらの特性でさえ、一般的には、歪みの回避には部分的にしか寄与しない。
【0013】
例えば、力場の影響下で、粒子をペースト内で配向させることは可能である。黒鉛粒子を、例えば磁場で、具体的には、時間的及び/又空間的な交流磁場で、配向することは可能である。完全に乾燥し且つ凝固したペーストの塊に囲まれた粒子は、通常、機械的にほとんど動くことができないため、ペースト内に配向される予定の粒子が存在する場合、乾燥前に及び/又は乾燥中に粒子を配向させる工程は、有利に実行される。例えば、空気流によって、又は、ペースト容量の縮小の影響を受けて、粒子の配向が完全に又は部分的に乾燥中に再び失われることがないように、粒子の配向は、部分的に乾燥工程と同時に実行され得る。乾燥中に発生する変形及びペーストの収縮は、キャリアの能動的な形成によって、相殺されることも想定できる。しかしながら、そのような変形の場合に、箔を取付け配置から浮き上がらせないために、本発明に係る軸受装置を代わりに採用することも可能である。本発明に係る軸受装置は、適切に非接触で、複数の方向への取付けを可能にする。
【0014】
粒子を有する軟質又は液体の塊を必須成分として備えるペーストは別として、粉末を用いた乾燥塗布を実行することも可能である。用途に応じて、乾燥塗布において、力場で粒子を配向してもよい。本発明を、この材料と共に使用することも可能である。
【0015】
本発明に係る塗布装置は、キャリアが繊細なコーティングを有すると共に、正確な位置決めが望まれる場合でも、信頼性のある、安定的な取付けを提供する。
それに対応して、本発明に係る塗布装置は、搬送装置が、搬送面に垂直な方向に対してキャリアを位置的に安定して取付けるための軸受装置を備えている点において、際立っている。キャリアは、搬送中、搬送面に載置されている。上記軸受装置は、搬送表面へ垂直な力を及ぼすために使用することができる。軸受装置は、基本的に、接触して又は非接触で、その上にコーティングがない塗布されていない領域に、又は塗布された領域に、係合することができる。よって、軸受装置は、搬送面又はキャリアの表面に垂直な動作範囲に対する機械的制約を表す。
【0016】
製造工程の間、搬送面における安定的な取付けは、塗布中にペーストを正確に塗布することができる点だけでなく、規定の方法で、キャリアを力場にさらす点でも有利である。具体的には、正確な規定の方法で、キャリアを力場に位置決めする点で有利であり、例えば、力場を発生する装置に関してキャリアを正確に配向させる点、及び、力場を発生する装置に関して正確な規定の距離でキャリアを位置決めする点で有利である。一般的には、磁場を発生するために、永久磁石が典型的に使用される。永久磁石が典型的に使用されるため、配向されるべき粒子が、粒子を配向するために必要とされる予定された磁場の強度にさらされるように、永久磁石から所定の適切な規定の距離でキャリアを位置決めすることが、特に重要である。そのような安定的な取付けは、本発明に係る塗布装置によって獲得し得る。具体的には、キャリアの磁石からの距離は、磁場が影響を与えるキャリアの表面全体にわたって、正確に規定される必要がある。その取付け配置に関して、本発明に係る塗布装置は、凸状の箔案内部も、省略することができる。凸状の箔案内部は、従来、先行技術で使用されているが、実装が著しく複雑になることがある。
【0017】
実施形態の変形例では、箔と磁石との間の距離は、好ましくは、0mm-200mmの間、好ましくは0mm-20mmの間、特に好ましくは1mm-4mmの間である。
【0018】
発明の改良では、例えば、以下の軸受装置、又は、軸受装置の組み合わせを用いることができる。
キャリアは、1つ以上の転がり軸受に載置してもよい。転がり軸受は、キャリアが重力の方向に垂下しないように、機械的制約を提供する。転がり軸受は、キャリアの並進運動と一体となって共回転できるという利点を有しているため、わずかな摩擦力しかもたらさず、結果的に、キャリアに(例えば、磨耗、静電帯電等による)影響を与えにくい。
【0019】
代わりに、滑り軸受も可能である。滑り軸受は、キャリアと接触して共回転することはなく、むしろ回転可能に固定される。一般的には、平面滑り軸受は、キャリアと接触する広い接触面を有しており、高い摩擦力をもたらすため、使用できない。一般的には、搬送方向に対して横に又は斜めに延在する細いワイヤやプラスチック糸を、使用することが可能である。キャリアは、ワイヤや糸に載置され、その上を滑る。接触面が非常に小さいため、通常、キャリアと、糸やワイヤとの間には、わずかな摩擦力しか発生しない。このような取付けは、通常、費用効率が高く、構造的な高さが小さい省スペースな方法で、且つ、比較的大きな技術的労力も要さず、実行することができる。
【0020】
軸受の配置や組み合わせには、様々な可能性がある。
転がり軸受又は滑り軸受は、一般的には、固体表面と接触する場合に使用される。摩擦を軽減するために、キャリアが液体クッションの上を滑るように、液体クッションを設けてもよい。
【0021】
軟質材料や液体コーティングから構成される表面に関しては、今度は、非接触軸受を使用することが有利である。ガス軸受や空気軸受の場合、例えば、ガス流、有利には空気流が、表面に発生する。そして、キャリアは、このガスクッションの上を滑ることができる。摩擦力は、通常、無視できるほど低い。それでもなお、ガス軸受は、特に塗布側に設置される場合には、乾燥作業を妨げないような寸法にするべきである。ガス軸受は、平面的な方法で磁石上に設置でき、且つ、有利には1mm-4mmの間のわずかな厚みを有するように設計することが、特に有利である。この構成において、磁場は、ガス軸受を貫通してキャリアに作用する。これにより、磁石と平行に、箔を正確に取付けることが可能となる。
【0022】
真空軸受を使用することも、有利に可能である。真空軸受は、例えば真空ポンプや送風機を用いて、陰圧を提供する。真空軸受は、キャリアを吸引して、キャリアに力の作用を及ぼす。この配置は、キャリアを別の軸受に押し付けるためにも、使用することができる。
【0023】
さらに、渦電流軸受や静電流軸受のような電磁軸受も考えられる。これらは、ガス軸受と同様に低い摩擦力を可能にする。それでもなお、取付けられる材料は、例えば、静電帯電や渦電流発生を可能にするなど、対応する性質を有することが必要である。
【0024】
ガス軸受や電磁軸受のような非接触軸受は、具体的には塗布している面で使用することができる。これらは、軟質又は部分的に液体のコーティングに接触したり損傷を与えたりすることなく、キャリアが搬送面に対して過度に垂直に屈曲すること、又は、過度に膨張することを、効果的に防ぐことが可能である。同時に、発明の改良に係るガス軸受は、つまり乾燥作業中に、例えば妨げられることなく、箔にアクセスすることを可能にする。
【0025】
概して、箔の膨張、折り目、皺を避けるため、箔搬送方向に垂直な箔の真直度が確保されるように、全ての軸受の位置を合わせることが有利である。非接触軸受は、横方向での一定量の遊びも許容し得る。
【0026】
以下の軸受の配置が、出発点として考えられる。
キャリア帯を案内する従来のローラーを、ローラーによって力線が妨げられないように、搬送方向にある各々の磁石の間に、それぞれ配置することは基本的に可能である。しかしながら、ローラーは、比較的広域のスペースを必要とする。1つの面の取付けのため、箔はローラーから浮き上がることがある。配向作業中に箔が浮き上がると、磁石からの距離が増加する。つまり、粒子は、不十分な程度にしか配向しないことがある。
【0027】
箔と磁石との間の正確な距離を得るために、磁石に載置するスペーサを使用してもよい。しかしながら、このような取付けも、基本的には1つの面の取付けを構成する。つまり、箔の浮き上がりは、依然としてありうる。スペーサは、箔と磁石との間の距離が、小さくなりすぎることを防ぐのみである。さらに、スペーサは滑り軸受を構成し、摩擦により箔に傷が生じるため、この従来型の取付けには、困難が伴う。工程の安定性は、もはや確保されないかもしれない。
【0028】
そこで、ある例示的な実施形態では、空気軸受等のガス軸受を使用することができる。反対側の面でどの軸受(例えば、接触ローラー、又は滑り軸受、又は非接触ガス軸受)を使用するかに関係なく、反対側の面に係合する2つの面の取り付け配置になるように、非接触の空気軸受は、特に、塗布された面で使用することができる。
【0029】
個々の軸受が(搬送方向において)直列に接続される場合、隣接する軸受間の距離は、原則として、1cmから8mの間でもよく、好ましくは1cm-50cmの間でもよい。隣接する軸受間の距離は、どの軸受が使われているかに依存する。
【0030】
塗布している面に配置されている空気軸受、例えば上部の空気軸受が、乾燥工程を妨げないように、且つ、乾燥工程で乾燥のためのアクセスが不十分にならないように、押圧力を及ぼす真空軸受を設けてもよい。この真空軸受は、箔を吸引する、すなわち、他の軸受の力方向と反対方向に作用するため、真空軸受は、他の軸受と同じキャリアの側に配置され得る。真空軸受は、好ましくは、真空ポンプと共に設計することができる。
【0031】
本発明に係る塗布装置は、ペースト内で粒子を配向することができるように、配向装置も備えているため、塗布装置は、塗布の最終完成に役立つ。配向装置は力場を発生し、力場の影響下で、粒子は配向させられる。薄片形状又は細長形状の平板状黒鉛粒子の場合、時間的又は空間的な交流磁場を使用することができる。一般に、永久磁石は、その磁場の向きが空間的に変化するように、基本的に積み重ねて配置されて配向される。結果として、場を移動していくキャリアは、キャリアに対して固定されたポイントに対して、時間的な交流磁場の影響を受ける。一定の品質で塗布されたキャリアを得るためには、本発明に係る塗布装置によって可能となるキャリアの安定的な位置決めは、特に磁場を通過する際に、有利である。
【0032】
軸受装置は、キャリアを、安定した位置で搬送面に垂直に、有利に取付ける。よって、本発明の有利な例示的実施形態では、軸受装置は、キャリアの少なくとも2つの面又は複数の面に取付けるために構成されている。磁場を発生する要素からの距離に関して、軸受要素は、例えば、搬送面又はキャリアの上下に、向い合うように配置してもよい。また、軸受は、周辺領域において、キャリアを囲むU字状に係合して、三面の軸受を形成してもよい。
【0033】
対応する領域全体にわたって特に安定的な取付けを得るために、2以上の軸受を、搬送路に沿って直列に接続してもよい。軸受は、搬送路に沿った個々の場所で、向かい合うように配置してもよい、あるいは、様々な場所で、直接的に直列に配置してもよい。これにより、織布状箔の長さにかかわらず、織布状箔の垂下は防止又は軽減される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2つのガス軸受が直列で接続されている。搬送方向に垂直な押圧力を及ぼす真空軸受は、ガス軸受の位置と同じ側に設けられている。これにより、特に安定性を高めることができる。
【0035】
キャリアは、ペーストの乾燥中変形することがあり、これは一般的に、搬送面に垂直な破壊的な膨張につながる。このような膨張に関して、例えば、キャリア又は箔の形状を復元する、滑り軸受を使用することが有利になることもある。
【0036】
塗布された側の支持力は、基本的には、凸状の箔案内部によって生じさせることも可能である。そして箔は、直線よりも長い経路を通過する。円弧状経路部分における一定の方向変化を伴う箔の案内は、キャリア箔が、一定の押圧作用を受けるという効果を奏する。しかしながら、特に、この搬送路部分において配向も同時に行うことが予定されている場合には、技術的に困難であるが、凸状の力場や磁石面を搬送路部分に生成することが必要である。また、一般的に、塗布装置は、形状に関して決められた角度範囲しか許容しないため、凸状の案内は、決められた範囲内でしか行うことができない。
【0037】
それでもなお、本発明の一つの実施形態では、凸状箔案内部を、少なくとも1つの空気軸受と組み合わせて使用することも可能である。乾燥工程では、例えば、塗布された側が乾燥工程にアクセス可能になるように、全ての軸受を1つの面に配置してもよい。
【0038】
[例示的な実施形態]
発明の例示的な実施形態は、図面で例示され、更なる詳細と、与えられる有利な点と共に、以下にさらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】異なる方法で塗布されたキャリアを示している。
図2】塗布装置の転がり軸受の概略的な例示を示している。
図3】本発明に係る塗布装置の滑り軸受の概略的な例示を示している。
図4】本発明に係る塗布装置の空気軸受の概略的な例示を示している。
図5】本発明に係る空気軸受と真空軸受の組み合わせの概略的な例示を示している。
図6】本発明に係る2つの面の空気軸受の概略的な例示を示す。
図7】本発明に係る凸状箔案内部と、力場を発生する永久磁石のある実施形態とを有する、空気軸受の概略的な例示を示す。
図8】本発明に係る凸状箔案内部と、力場を発生する永久磁石の別の実施形態とを有する、空気軸受の概略的な例示を示す。
図9】本発明に係る塗布装置の概略的な例示を示す。
図10】本発明に係る使用される空気軸受の例示を示す。 図2から図4の各々は、1つの面に作用する軸受を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
異なるタイプのキャリア1a,1b,1cは、本発明に係る塗布装置を用いて、加工され得る、又は、搬送され得る。異なるタイプのキャリア1a,1b,1cは、図1に概略的に例示されている。キャリア1aは、本質的に箔Fのみから構成されており、コーティングを有していない。キャリア1b,1cは、それぞれ、一つのコーティングB、又は、二つのコーティングB1,B2を有する。一般的に、コーティングB1,B2も、互いに異なることがある。ペースト又は乾燥塗料が、コーティングB,B1,B2として根本的に適している。これに続く図におけるキャリア1は、対応して、塗布されてもよい、又は、塗布されていなくてもよい。
【0041】
図2は、搬送路の詳細を示しており、箔F又はキャリア1が、塗布されるために、搬送路の上を搬送方向Tへ搬送される。キャリア1は、転がり軸受2の上を滑って動く。さらに、キャリア1の箔のコーティングで粒子を配向するために、(ここでは例示しない)磁石3が設けられており、その磁場で、粒子を配向することができる。力線を妨げないように、磁石3は、転がり軸受2の間に配置されている。キャリア1は、2つの隣接する転がり軸受2の間で、ある程度垂下する。その結果、キャリア1の磁石3からの距離は、十分に引っ張られた箔と比較して、減少する。転がり軸受2は、わずかな摩擦力しか有していないだけでなく、この場合には、キャリア1の1つの面のみに係合する。よって、磁石3に向いている箔の面は塗布された面であり、軸受に接触していない反対の面が塗布される。この配置は、キャリア1の磁石3からの距離であって、規定された粒子の配向に極めて重要な距離が、キャリア1の現在の引っ張り応力のような個々の要因に大きく依存し、且つ、ケースバイケースで必ず変化し、結果として、製造品質が変動しやすい、という不利な点を有する。
【0042】
地面4は、重力の方向を示すために描かれている。
キャリア1の垂下は、より近くにあるより多くの場所で、共にキャリアを支えることで減らすことができる。しかしながら、このための必須要件は、磁石3からの磁場に著しい影響を与えないように、軸受12がより小さいことである。このような実施形態は、図3に示すように、スペーサの形状をした滑り軸受12を用いて、実現することができる。個別のワイヤ又はプラスチック糸は、搬送方向Tを横切って張架され、その上をキャリア1が滑ることができる。個別のワイヤ又はプラスチック糸は、滑り軸受12として間に合う。そして、スペーサ12は、キャリア1と磁石3との間に載置することもできる。ある程度のキャリア1の垂下が、まだここで見られ得る場合であっても、それでもキャリア1の磁石3からの距離は概ね一定である。箔の搬送中、滑り軸受は、摩擦の結果、上記箔の表面をこすることがある。
【0043】
対照的に、図4に例示するように、空気軸受22を用いることにより、摩擦の影響を低減又は回避することができる。この場合、取付けは、完全に非接触な方法で行われる。
【0044】
図2~4によって、1つの面の取付けが提示されている。例えば、塗布されたコーティングペーストの乾燥中の歪みのために、箔が変形する場合、箔が、軸受から局所的に分離し、浮き上がることがある。これは、搬送をさらに困難にするだけでなく、磁石3からの距離も、もはや所定の距離値に対応しなくなり、むしろ増加する。
【0045】
図5~8は、2つの面に作用する軸受を示している。
滑り軸受又は転がり軸受のような接触する軸受は、箔の上面のコーティングに損傷を与えることがある。そして、図6に示すように、空気軸受は、上側の塗布された面へのアクセスを遮断することがある。これにより、例えば、乾燥作業がさらに困難になることがある。軸受22の支持力に反作用する力をキャリア1に作用させるために、吸引作用を用いて空気軸受22に対する押圧力を生む真空軸受型の真空ポンプ29が、図4の好ましい実施形態に提示されている。この場合、上側の塗布された面は、自由にアクセスすることができる。
【0046】
図5(真空軸受を有する空気軸受)と同様の、2つの面での取付け効果を有する別の選択肢は、キャリア1に引張力を及ぼすことで獲得し得る。凸状の案内側面をもつ対応実施形態は、図7及び8に例示されている。伸張状態にあるキャリア1は、凸形状を維持するために、空気軸受22の支持力に対する反力を発揮する必要がある。そのため、この引張力は、搬送方向に関して湾曲し且つ空気軸受22から離れている凸状の案内側面によって獲得される。空気軸受22に加えて、図7に見られるように、磁石3が、互いに対して角度をつけて配置される必要もある。あるいは、図8で例示するように、磁石は、湾曲されて、所望の力線側面、又は、所望の磁場分布を持つ、対応磁場を生成する。本来、キャリア1の領域全体の全てのポイントに、具体的には、搬送方向と横向きに、同等の磁場強度が広がるべきである。そのため、一般的に、曲率は所望するほど大きく選択することはできず、力線側面を曲率に適応させることも、技術的観点では単純ではない。図7から見られるように、角度をつけた磁石配置の場合、キャリア1もやや角度をつけて、互いに対して角度をつけて配置された2つの磁石間の遷移点を滑って動く。
【0047】
図9は、箔F又はキャリア1を塗布するための塗布装置30の概略的な例示を示している。箔F又はキャリア1は、塗布ステーション31においてペーストを備え、続いて搬送方向Tに進んで、ペーストを乾燥するための乾燥モジュール32に供給される。乾燥モジュール32は、定められたn数の個別のステーション32.1,32.2,…,32.n-1,32.nを備えており、これらは直列に接続されている。リターンステーション33によって、キャリア1は、例えば反対の面を塗布されるために、逆方向で戻ってくる。
【0048】
図10は、本発明に係る塗布装置用の空気軸受22の技術的な実装を示している。空気軸受22は、設置内に取付けるためのベースプレート形状の固定プレート23を備えている。取付けられる物体に向いている表面24は、空気の通過を可能にするように、且つ、エアクッションを形成できるように、多孔質の黒鉛表面として構成されている。この目的のため、空気接続部25が、側部に設けられている。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1b,1c…キャリア、2…転がり軸受、3…磁石、4…地面、12…滑り軸受、22…ガス軸受/空気軸受、23…固定プレート、24…多孔質の黒鉛表面、25…空気接続部、29…真空ポンプ/真空軸受、30…塗布装置、31…塗布ステーション、32…乾燥モジュール、32.1,32.2,…,32.n…乾燥用の個別ステーション、33…リターンステーション、B,B1,B2…被膜、F…箔、T…搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】