(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】テラヘルツ波を使用した製品の個別認証
(51)【国際特許分類】
G06V 10/422 20220101AFI20240305BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240305BHJP
【FI】
G06V10/422
G06T7/00 300F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552283
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 FR2022050363
(87)【国際公開番号】W WO2022185006
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325853
【氏名又は名称】タイハイブ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,アニ
(72)【発明者】
【氏名】プラダ ロハス,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ボードワン,ニコラス
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096JA11
(57)【要約】
物品を認証するための方法であって、参照シグネチャ生成段階において、近接テラヘルツイメージャアレイを使用して物品の参照領域の下のボリュームの参照密度画像を取得するステップと、参照密度画像から物品に関連付けられた参照シグネチャを生成及び格納するステップとを含む、方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を認証するための方法であって、
前記物品の製造終了段階において、
前記物品の材料の製造プロセスから生じるランダムな内部テクスチャを有する参照ゾーンを前記物品上に定義するステップと、
前記参照ゾーンを前記物品上に目で見えるようにマーキングするステップと、
テラヘルツ近接イメージャを使用して前記物品の参照ゾーンの密度画像を取得するステップと、
前記密度画像から参照シグネチャを生成するステップと、
前記参照シグネチャを前記物品に関連付けられた一意識別子とともにデータベースに記録するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
後の前記物品の認証段階において、
前記目で見えるマーキングを使用した前記物品上の前記参照ゾーンを見つけるステップと、
テラヘルツ近接イメージャを使用して前記物品の参照ゾーンの電流密度画像を取得するステップと、
前記物品に関連付けられた前記参照シグネチャを前記データベースから検索するステップと、
前記電流密度画像内で前記参照シグネチャをサーチするステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イメージャは、前記参照ゾーンよりも大きいピクセルアレイを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記参照シグネチャは、前記参照領域内に整列された一連のピクセルを含むサブ画像である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記参照シグネチャは、前記参照領域を含むサブ画像である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記イメージャのピクセル値をピクセル解像度よりも著しく小さいいくつかのレベルにセグメント化するステップを含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ピクセル値を3つのレベルにセグメント化するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記近接テラヘルツイメージャはCMOS技術で一体的に実装される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記近接テラヘルツイメージャはレンズレス反射イメージャである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記テラヘルツ近接イメージャは近距離場イメージャである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高級品などの製品、又はより一般には個別に追跡する必要がある製品を認証するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高級品及び厳しい安全基準又は健康基準に準拠した製品の産業では、一般に、製品を個々に追跡するという要望がある。これを実現するために、各製品にシリアルナンバーなどの一意識別子が与えられ、これは製品の特徴又はさらには製品の写真とともに製造業者のデータベースに記録される。一意識別子は、普通はラベル又は刻印などで製品上にマークされる。
【0003】
製品を認証するために、所有者は、一意識別子を提供することによって、製造業者のデータベースの中の製品の特徴と検証する製品の特徴とを比較することができる。高級アイテムの場合、ユーザは、アイテムをデータベースの中の写真と比較することができる。
【0004】
特定のアイテムをより確実に認証するために、アイテムの物理的特徴に基づく一意のシグネチャを用いることが知られている。製造中に、参照シグネチャが取得され、データベースに格納される。その後の認証段階で、製造条件下でシグネチャが測定され、参照シグネチャと比較される。
【0005】
特許GB2097979には、事前定義された参照ゾーン内の製品の表面状態に基づくシグネチャを用いる認証システムが記載されている。このシグネチャは、例えば、表面プロファイルから導出された周波数スペクトルからなる。
【0006】
表面仕上げは微視的特徴であるため、その真正性検証手順は、高度な測定機器と、事前定義された領域に対する測定システムの非常に正確な配置を必要とし、実験室環境以外ではこの手順は実際的ではない。
【0007】
特許US8497983は、コヒーレント光を使用して物品の参照ゾーンを解析することによって上記のGB2097979特許の原理を応用している。この解析システムは、参照ゾーンを含む物品の参照画像に基づく機械式カメラ追跡システムを使用して、参照ゾーンと位置合わせされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような検証システムは依然として複雑であり、市場で広く採用するにはコストが高すぎる。さらに、この技術は、表面仕上げが本質的に不規則で、変形しにくい、又は摩耗しにくい、特定のカテゴリの物品のみを認証することができる。これらは、その製造プロセス(鋳造、機械加工、鍛造)が表面仕上げに関与する、本質的に金属アイテムである、又は少なくとも硬質材料で作製されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
物品を認証するための一般的な方法であって、参照シグネチャ生成段階において、近接テラヘルツイメージャアレイを使用して物品の参照領域の下のボリュームの参照密度画像を取得するステップと、参照密度画像から物品に関連付けられた参照シグネチャを生成及び格納するステップと、を含む方法が提供される。
【0010】
この方法は、その後の認証段階において、近接テラヘルツイメージャアレイを使用して物品の参照領域の下のボリュームの電流密度画像を取得するステップと、物品に関連付けられた参照シグネチャを検索するステップと、電流密度画像内で参照シグネチャをサーチするステップとを含み得る。
【0011】
イメージャは、参照ゾーンよりも大きいピクセルアレイを備え得る。
【0012】
参照シグネチャは、参照領域内に整列された一連のピクセルを含むサブ画像であり得る。
【0013】
参照シグネチャは、参照領域を含むサブ画像であり得る。
【0014】
この方法は、イメージャのピクセル値をピクセル解像度よりも著しく小さいいくつかのレベルにセグメント化するステップを含み得る。
【0015】
この方法は、ピクセル値を3つのレベルにセグメント化するステップを含み得る。
【0016】
近接テラヘルツイメージャは、CMOS技術で一体的に実装され得る。
【0017】
近接テラヘルツイメージャは、レンズレス反射イメージャであり得る。
【0018】
テラヘルツ近接イメージャは、近距離場イメージャであり得る。
【0019】
以下の限定ではない説明は、添付の図面に関連して提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】近接テラヘルツイメージャを適用するための視覚的にマークされた参照ゾーンを有する、一実施形態に係る認証可能な物品を示す図である。
【
図2】
図1に示されている物品の参照ゾーンで取得された画像の拡大図である。
【
図3】
図2の取得された画像の軸に沿ったピクセル値の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
表面状態に基づく物品認証システムの普及の障害となっているのは、低コストで、使いやすい、その場での測定装置を提供することの難しさである。
【0022】
別の障害は、シグネチャが高精度及び高解像度の画像を必要とする微視的特徴に基づいているため、シグネチャの作成及び比較に用いられる技術は複雑で信頼性が低いことである。
【0023】
アイテムの物理的特徴に基づく認証システムの魅力を高めるために、本開示は、非金属の可撓性のアイテムを含む広範囲のアイテムカテゴリにわたって、一意のシグネチャを構成し得る巨視的な特徴を識別する。テラヘルツ波は、解析される材料又は製造技術に特有の巨視的な内部構造を明らかにし、一意の製品シグネチャの生成に適したランダムな特性を示すことが判明した。
【0024】
別の分野では、テラヘルツ波は、製品が材料組成基準に準拠していることを検証するために用いられている。例えば、特許出願US2010/0232715は、テラヘルツ周波数帯での特徴的な振動数を有する特定の材料の含有量を検証するためのシステムを開示している。解析対象の製品にテラヘルツ波が照射され、製品によって放射された周波数のスペクトルを、システムが単一のテラヘルツ検出器を使用して測定する。次いで、測定されたスペクトルがデータベースに格納された参照スペクトルと比較され、解析される製品の適合スコアが計算される。この手法は、製品が組成基準に準拠して製造されたことを検証するだけであり、個々の製品を認証するものではない。
【0025】
本認証システムの特徴によれば、一意のシグネチャを抽出するためにテラヘルツイメージャを使用して物品の参照ゾーンの下の材料のボリュームの密度をマッピングすることが提案される。レンズレスの近接テラヘルツイメージャを使用すると、そのようなイメージャのピクセルアレイのピッチは関係する波長を考慮すると比較的大きいままであるため、マッピングは巨視的になる。例えば、600GHzの周波数では、イメージャのピクセルピッチは200μm程度である。比較すると、単一のピクセルが、特許GB2097979に係る表面状態の解析の場合の参照領域全体よりも4倍大きい。
【0026】
好ましくは、近接イメージャは、Hani Sherryの特許出願WO2019155156に記載されているようなレンズレス反射イメージャ、又はHani Sherryの特許出願WO2019186074に記載されているような近距離場イメージャである。これらの特許出願に記載されているイメージャは、全てCMOS技術で製造されているため、コンパクトであり、スタイラスの形態で持ち運び可能であり、低価格である。200μmピッチの30×30ピクセルイメージャは、例えば6×6mmの大きさで、同じ寸法の巨視的な参照領域の密度をマッピングすることができる。
【0027】
実際には、物品に視覚的にマークされる参照ゾーンに対するイメージャの位置決めの不確実性を考慮に入れるために、参照ゾーンは、イメージャのアレイよりも小さい、例えば、6×6mmイメージャの場合、4×4mmの正方形又は直径4mmのディスクである。
【0028】
図1は、アイテム、例えば、皮革バッグ12の認証段階又は参照シグネチャ作成段階における、近接テラヘルツイメージャスタイラス10の使用を例示している。実際には、イメージングスタイラスは、スキャンする領域と接触させられるように設計され、スタイラス端は、イメージャとスキャンする表面との間に必要な間隔を確保するように寸法設定される。
【0029】
物品は、ここでは物品の可視表面上の点線円14によって例示される明白なマーキングによってシグネチャの参照ゾーンが特定されている。(もちろん、美的理由から、参照ゾーンとそのマーキングは、実際には目立たない領域に配置されるが、それでもイメージングスタイラスがアクセス可能な領域に配置される)。
【0030】
参照ゾーンのマーキング14はまた、スタイラス端の正確な位置決めを支援するためになぞられてもよい。製造終了段階で、物品の参照シグネチャが記録されるときには、比較的正確な位置決めが好ましい。その後の認証段階では、イメージャが参照ゾーンよりも大きいため、位置決めはあまり重要ではなく、ずれは画像処理によって補償され得る。
【0031】
したがって、マーキングの直径は、スタイラス端の直径と実質的に等しくてもよく、例えば、6×6mmイメージャの場合は1cmであり得る。有効参照領域は、好ましくは、より小さい、例えば4×4mm(又はそれ以下)の正方形又は直径4mm(又はそれ以下)のディスクである。画像処理は回転を補正することができるが、参照ゾーンのいくつかのマーキングとスタイラス端を一致させることによって比較的正確な回転位置決めが達成され得る。スタイラスの端は、物品の正方形のマーキングと一致する正方形にすることもできる。
【0032】
図1の右側は、イメージャのピクセルが検出器モードに設定されているときに皮革バッグ12の参照ゾーンのスタイラスによって生成される画像の例である。テラヘルツイメージャのピクセルは、2つの動作モード、すなわち、ピクセルが受信した波の振幅又はパワーを単に提供する検出器モードと、ピクセルが受信した波の位相も提供する位相測定モードを有し得る。最も単純な構成は、検出器モードの構成であり、ここで開示される認証システムには十分すぎるほどである。
【0033】
検出器モードの近接テラヘルツイメージャは、観察面の下の材料の特定の厚さ全体にわたる吸収又は密度測定を行う。結果として得られる画像では密度レベルがグレーレベルに変換され、観察された材料に特有の、適用可能な場合には用いられた製造プロセスに特有の巨視的テクスチャが明らかにされる。このテクスチャはランダムであり、一意のシグネチャを確立するのによく適している。
【0034】
図2は、
図1に示されている画像の拡大図であり、30×30ピクセルイメージャで、すなわち、かなり低解像度でレンダリングされたものである。実際、
図1の画像はテクスチャを強調するために高解像度で表されているが、このテクスチャは実際のイメージャによって低解像度でサンプリングされる。低解像度の画像であっても、あまり複雑ではない一意のシグネチャを確立するには十分であるため、これは欠点ではない。一般的な用途では、各ピクセルは8~10ビットのグレーレベルを提供する。
【0035】
図2に示されている画像では、より小さな参照領域が、例えば円で中央に描かれている。参照ゾーンからシグネチャを確立するための多くの可能性がある。
【0036】
一実施形態では、円の直径上に、例えばピクセルの中央の列又は行に位置する、又はアレイの対角線上に位置する一連のグレーレベルが、参照シグネチャとして格納され得る。
【0037】
図3は、曲線の形態で得られたグレースケールシーケンスの例を示している。このシーケンスは、アイテムの製造終了時のステップで測定され、アイテムのシリアルナンバー又は他の一意識別子とともにデータベースに記録される。測定は、その後の認証に使用されるのと同じタイプのスタイラスを使用して手動で実行され得る。30×30ピクセルイメージャの場合、シーケンス又は曲線には、イメージャの精度で、実際には8~10ビットでコード化された、約20サンプルが含まれる。
【0038】
認証段階において、ユーザは、参照シグネチャの記録に使用したのと同じ特徴をもつスタイラスを使用してアイテムの参照領域の画像を取得する。この画像は、例えば、アイテムのシリアルナンバーとともに中央認証システムに送信される。シリアルナンバーを使用して、中央システムは、サブ画像の形態の参照シグネチャを検索し、供給された画像内にそのシグネチャを見つけることを試みる。MPEGビデオコーディングで用いられる動き推定などの、このタイプの動作に関する公知の技術が、動きベクトル又は変換行列との対応スコアを提供する。本システムの目的上、単にスコアを閾値と比較するだけで、一致があること、したがって、検証されているアイテムが本物であると判断するのに十分である。
【0039】
これらのサブ画像サーチ技術は、かなり広範なオフセット及び回転誤差を許容するため、認証するユーザは、スタイラスを参照領域と位置合わせする際に細心の注意を払う必要がない。一方、参照ゾーンは、取得された画像内に含まれていることが好ましい。
【0040】
別の実施形態では、参照領域に対応するサブ画像が、参照シグネチャとして格納され得る。このサブ画像は、前述のグレースケールシーケンスと同じ様態で用いられ得るが、より多くのストレージ及び処理リソースを必要とする。したがって、この実施形態は、テクスチャの変化があまり目立たない、すなわち、一意のシグネチャを確立するには単一のピクセルラインでは十分ではない材料により適している可能性がある。
【0041】
特に参照領域の画像全体をシグネチャとして用いるときに、シグネチャの一意性を保証する目的に対して、イメージャのピクセルの精度が過剰であることが判明する場合がある。この場合、測定値が、ピクセルのビット解像度よりも少ないレベルに、例えば、8ビットの場合256レベルの代わりに8レベルに、又はさらにはたったの3レベル(ホワイト、グレー、ブラック)にセグメント化され得る。製造段階と認証段階でそのようなセグメント化を適用すれば、シグネチャの格納及び認識に必要なリソースが大幅に削減される。
【0042】
認証するアイテムとして皮革バッグを例として説明したが、このシステムは、テラヘルツ放射に対して特定の透過度をもつ任意の材料に、さらにはプラスチックなどの均一な外観をもつ材料にも、適用可能である。プラスチックは、射出成形などの製造プロセスに関連した内部テクスチャ、及び特定の構造粒子を有し、これらはテラヘルツ放射で明らかとなり、ランダムな特性を有する。
【0043】
このシステムは、複合材料で作製されたアイテムに特によく適している。この場合、テラヘルツ放射は、一意のシグネチャを保証するのに非常に少ないグレーレベルを必要とする目立ったコントラストを有する樹脂に組み込まれた繊維を明らかにする。
【国際調査報告】