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特表2024-510924効率的なプロテオミクス研究のための自己組織化(MIPSA)によるタンパク質の分子インデックス化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】効率的なプロテオミクス研究のための自己組織化(MIPSA)によるタンパク質の分子インデックス化
(51)【国際特許分類】
   C40B 40/08 20060101AFI20240305BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240305BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240305BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240305BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240305BHJP
【FI】
C40B40/08 ZNA
C12N15/10 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/63 Z
C07K19/00
A61K38/21
A61P31/14
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553019
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022018386
(87)【国際公開番号】W WO2022187277
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,086
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518056003
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン, ハリー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クレドル, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ガン, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】サンカプリーチャ, プワナット
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR62
4B063QS05
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA21
4C084DA23
4C084NA05
4C084NA12
4C084ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045EA50
4H045FA70
4H045FA71
(57)【要約】
本開示は、プロテオミクスの分野に関する。より具体的には、本開示は、自己組織化によるタンパク質の分子インデックス化のための組成物および方法を提供する。一態様では、本開示は、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを提供する。特定の実施形態では、各タンパク質-DNAコンジュゲートは以下を含む(a)バーコードを含むcDNAであって、ポリペプチドタグに特異的に結合するリガンドとコンジュゲートしているcDNA;および(b)前記ポリペプチドタグおよび目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記リガンドは前記ポリペプチドタグと共有結合する融合タンパク質。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む方法:
(a)ベクターライブラリーをメッセンジャーリボ核酸(mRNA)に転写する工程であって、前記ベクターライブラリーが複数のタンパク質をコードし、前記ベクターライブラリーの各ベクターが、5’から3’方向に構成される工程:
(i)ポリメラーゼ転写開始部位;
(ii)バーコード;
(iii)逆転写プライマー結合部位;
(iv)リボソーム結合部位(RBS);および
(v)(1)ポリペプチドタグと(2)タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドタグがリガンドに特異的に結合する、ヌクレオチド配列;
(b)前記RBSの上流に結合するプライマーを使用して前記mRNAの5’末端を逆転写するステップであって、前記プライマーが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに特異的に結合する前記リガンドとコンジュゲートされ、前記リガンド、プライマーおよびバーコードを含む相補的デオキシリボ核酸(cDNA)が形成される、工程:
(c)前記mRNAを翻訳するステップであって、前記cDNAの前記リガンドが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに結合する、工程:
【請求項2】
前記ベクターライブラリーに、工程(a)の前にニックを入れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベクターが、(vi)ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含み、前記ベクターライブラリーが、工程(a)の前に直鎖化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベクターの前記バーコードが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記バーコードが、PCRプライマーに対する結合部位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記RBSが内部リボソーム進入部位を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドタグが、前記目的のタンパク質のN末端に融合される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドタグが、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドタグがHALOタグを含み、前記リガンドがHALOリガンドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記HALOタグが、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記HALOリガンドが
【化1】
のいずれか1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドタグがSNAPタグを含み、前記リガンドがSNAPリガンドを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記SNAPタグが、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記SNAP-リガンドがベンジルグアニンまたはその誘導体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドタグがCLIPタグを含み、前記リガンドがCLIPリガンドを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記CLIPタグが、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記CLIPリガンドがベンジルシトシンまたはその誘導体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーであって、各タンパク質-DNAコンジュゲートが、(a)バーコードを含むcDNAであって、ポリペプチドタグに特異的に結合するリガンドとコンジュゲートしているcDNA;および(b)前記ポリペプチドタグおよび目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記リガンドは前記ポリペプチドタグと共有結合する融合タンパク質;とを含む、ライブラリー。
【請求項19】
前記バーコードがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している、請求項18に記載のライブラリー。
【請求項20】
前記バーコードがPCRプライマーの結合部位を含む、請求項18または19に記載のライブラリー。
【請求項21】
前記ポリペプチドタグが、前記目的のタンパク質のN末端に融合される、請求項18~20のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項22】
前記ポリペプチドタグが、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む、請求項18~21のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項23】
前記ポリペプチドタグがHALOタグを含み、前記リガンドがHALOリガンドを含む、請求項18~22のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項24】
前記HALOタグが、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、請求項23に記載のライブラリー。
【請求項25】
前記HALOリガンドが
【化2】
のいずれか1つを含む、請求項23に記載のライブラリー。
【請求項26】
前記ポリペプチドタグがSNAPタグを含み、前記リガンドがSNAPリガンドを含む、請求項18から25のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項27】
前記SNAPタグが配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載のライブラリー。
【請求項28】
前記SNAPリガンドがベンジルグアニンまたはその誘導体を含む、請求項26記載のライブラリー。
【請求項29】
前記ポリペプチドタグがCLIPタグを含み、前記リガンドがCLIPリガンドを含む、請求項18~28のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項30】
前記CLIPタグが、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項29に記載のライブラリー。
【請求項31】
前記CLIPリガンドがベンジルシトシンまたはその誘導体を含む、請求項29に記載のライブラリー。
【請求項32】
タンパク質-タンパク質相互作用を研究するための方法であって、目的のタンパク質を用いて、請求項18~31のいずれか1項に記載のライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する、方法。
【請求項33】
タンパク質-小分子相互作用を研究するための方法であって、小分子を用いて、請求項18~31のいずれか1項に記載のライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する、方法。
【請求項34】
生物学的サンプルから得られた抗体を用いて、請求項18~31のいずれか1項に記載のライブラリーの免疫沈降を行う工程を包含する、方法。
【請求項35】
第1の小分子の標的を同定する方法であって、(a)請求項18~31のいずれか1項に記載のライブラリーを、その標的に結合する第1の小分子とともにインキュベートする工程、および(b)第2の小分子を用いて工程(a)のライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を含み、ここで、その標的に結合した第1の小分子は、第2の小分子の結合をブロックする、方法。
【請求項36】
(a)バーコードを含むcDNAであって、ポリペプチドタグに特異的に結合するリガンドとコンジュゲートしているcDNAと、(b)ポリペプチドタグおよび目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、リガンドがポリペプチドタグに共有結合している融合タンパク質とを含む自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項37】
前記バーコードが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している、請求項36に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項38】
前記バーコードがPCRプライマーの結合部位を含む、請求項36または37に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項39】
前記ポリペプチドタグが、前記目的のタンパク質のN末端に融合される、請求項36~38のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項40】
前記ポリペプチドタグが、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む、請求項36~39のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項41】
前記ポリペプチドタグがHALOタグを含み、前記リガンドがHALOリガンドを含む、請求項36~40のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項42】
前記HALOタグが、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項43】
前記HALOリガンドが
【化3】
のいずれか1つを含む、請求項41に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項44】
前記ポリペプチドタグがSNAPタグを含み、前記リガンドがSNAPリガンドを含む、請求項36~43のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項45】
前記SNAPタグが、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項46】
前記SNAPリガンドがベンジルグアニンまたはその誘導体を含む、請求項44に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項47】
前記ポリペプチドタグがCLIPタグを含み、前記リガンドがCLIPリガンドを含む、請求項36~46のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項48】
前記CLIPタグが、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項47に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項49】
前記CLIPリガンドがベンジルシトシンまたはその誘導体を含む、請求項47に記載の自己組織化タンパク質-DNA組成物。
【請求項50】
目的のタンパク質をコードする核酸配列をそれぞれ含む複数のベクターを含む自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーであって、前記複数のベクターがそれぞれ、5’から3’方向に沿って構成されている、自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー:
(a)ポリメラーゼ転写開始部位;
(b)バーコード;
(c)逆転写プライマー結合部位;
(d)RBS;
(e)(i)ポリペプチドタグと(ii)目的のタンパク質とを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドタグがリガンドに特異的に結合する、ヌクレオチド配列;
【請求項51】
前記複数のベクターがそれぞれ、(f)ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含む、請求項50に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項52】
前記バーコードが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している、請求項50または51に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項53】
前記バーコードが、PCRプライマーに対する結合部位を含む、請求項50~52のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項54】
前記RBSが、内部リボソーム進入部位を含む、請求項50~6のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項55】
前記ポリペプチドタグが、前記目的のタンパク質のN末端に融合される、請求項50に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項56】
前記ポリペプチドタグが、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む、請求項50に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項57】
前記ポリペプチドタグがHALOタグを含み、前記リガンドがHALOリガンドを含む、請求項50に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項58】
前記HALOタグが、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、請求項57に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項59】
前記HALOリガンドが
【化4】
のいずれか1つを含む、請求項57に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項60】
前記ポリペプチドタグがSNAPタグを含み、前記リガンドがSNAPリガンドを含む、請求項50~59のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項61】
前記SNAPタグが、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む、請求項60に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項62】
前記SNAPリガンドがベンジルグアニンまたはその誘導体を含む、請求項60に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項63】
前記ポリペプチドタグがCLIPタグを含み、前記リガンドがCLIPリガンドを含む、請求項50から62のいずれか1項に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項64】
前記CLIPタグが、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項63に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項65】
前記CLIPリガンドがベンジルシトシンまたはその誘導体を含む、請求項63に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリー。
【請求項66】
5’から3’方向に沿って構成されるベクター:
(a)ポリメラーゼ転写開始部位;
(b)バーコード;
(c)逆転写プライマー結合部位;
(d)RBS;
(e)(i)ポリペプチドタグと(ii)目的のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドタグがリガンドに特異的に結合する、ヌクレオチド配列;
【請求項67】
前記複数のベクターがそれぞれ、(f)ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含む、請求項66に記載のベクター。
【請求項68】
バーコードがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している、請求項66または67に記載のベクター。
【請求項69】
バーコードがPCRプライマーの結合部位を含む、請求項66~68のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項70】
前記RBSが内部リボソーム進入部位を含む、請求項66~69のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項71】
前記ポリペプチドタグが、前記目的のタンパク質のN末端に融合される、請求項66~70のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項72】
前記ポリペプチドタグが、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む、請求項66~71のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項73】
前記ポリペプチドタグがHALOタグを含み、前記リガンドがHALOリガンドを含む、請求項66~72のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項74】
前記HALOタグが、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む、請求項73に記載のベクター。
【請求項75】
前記HALOリガンドが
【化5】
のいずれか1つを含む、請求項73に記載のベクター。
【請求項76】
前記ポリペプチドタグがSNAPタグを含み、前記リガンドがSNAPリガンドを含む、請求項66~75のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項77】
前記SNAPタグが配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む、請求項76に記載のベクター。
【請求項78】
前記SNAPリガンドがベンジルグアニンまたはその誘導体を含む、請求項76に記載のベクター。
【請求項79】
前記ポリペプチドタグがCLIPタグを含み、前記リガンドがCLIPリガンドを含む、請求項66~78のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項80】
前記CLIPタグが、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む、請求項79に記載のベクター。
【請求項81】
前記CLIPリガンドがベンジルシトシンまたはその誘導体を含む、請求項79に記載のベクター。
【請求項82】
以下の工程を含む方法:
(a)請求項50に記載の自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを含む、直鎖化またはニック化された複数のベクターを転写して、mRNAを産生する工程;
(b)前記リガンドにコンジュゲートされたプライマーを使用して、前記mRNAの5’末端を逆転写して、前記バーコードを含むcDNAを生成する工程;および
(c)前記mRNAを翻訳する工程;
ここで、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグが、前記バーコードを含む前記cDNAにコンジュゲートされた前記リガンドに共有結合する。
【請求項83】
重症COVID-19を有する患者を治療するための方法であって、有効量のインターフェロン療法を前記患者に投与する工程を含み、IFN-λ3を中和する自己抗体が、前記患者から得られた生物学的サンプルにおいて検出される、方法。
【請求項84】
重症COVID-19を有する患者を治療するための方法であって、以下を含む方法:
(a)前記患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程;および
(b)有効量のインターフェロン療法で前記患者を治療する工程;
【請求項85】
患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程を含む、インターフェロン療法が有益であるCOVID-19患者を同定する方法。
【請求項86】
前記インターフェロン療法が、インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)を含む、請求項83~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)がペグ化されている、請求項86に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照本出願は、2021年3月1日に出願された米国仮特許出願第63/155,086号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
政府支援条項
政府の支援本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号GM127353の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
分野
本開示は、プロテオミクスの分野に関する。より具体的には、本開示は、自己組織化によるタンパク質の分子インデックス化のための組成物および方法を提供する。
【0003】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本出願は、配列表を含む。配列表は、「P16720_01_ST25.txt」と題されたASCIIテキストファイルとしてEFS-Webを介して電子的に提出されている。配列表は10,148バイトのサイズであり、2021年3月1日に作成された。これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
抗体結合特異性の不偏分析は、健常および疾患状態への重要な洞察を提供することができる。(1~4)ファージディスプレイはこれらおよび多くの他の用途に有用であるが、ほとんどのタンパク質-タンパク質、タンパク質-抗体およびタンパク質-小分子相互作用は、プログラム可能なファージディスプレイを用いて捕捉されないある程度の立体構造を必要とする。プロテオームスケールでの立体構造タンパク質相互作用のプロファイリングは、伝統的にタンパク質マイクロアレイ技術に依存してきた。しかしながら、タンパク質マイクロアレイは、高いアッセイ当たりのコスト、ならびにタンパク質のハイスループット発現および精製、固体支持体上へのタンパク質のスポッティング、アレイ化されたタンパク質の乾燥および再水和、ならびにスライド走査蛍光イメージングベースのリードアウトに関連するものを含む、無数の技術的アーチファクトに悩まされる傾向がある(5、6)タンパク質マイクロアレイ生産および貯蔵に対する代替的アプローチが開発されているが(例えば、核酸プログラム可能タンパク質アレイ、NAPPA(7)またはSIMPLEX(8))、ロバストで、拡張性があり、費用対効果の高い技術が欠けている。
【0005】
完全長タンパク質のアレイベースのプロファイリングに関連する制限を克服するために、本発明者らは、ORFeomeライブラリーのリボソームディスプレイを利用する、翻訳オープンリーディングフレームのパラレル解析(ParalleL Analysis of Translated Open reading frames)(PLATO)と呼ばれる方法論を以前に確立した(9)。リボソームディスプレイは、終止コドンを欠くmRNAのインビトロ翻訳に依存し、それらがコードする新生タンパク質との複合体においてmRNA分子の末端でリボソームを失速させる。PLATOは、その有用性を制限するいくつかの重要な制限に悩まされている。理想的な代替法は、タンパク質を短い増幅可能なDNAバーコードへ共有結合させることである。実際に個々に調製されたDNAバーコード化抗体やタンパク質は、LiszczakとMuirによって最近レビューされたように、無数のアプリケーションで採用されている。(10)1つの特に魅力的なタンパク質-DNAコンジュゲーション方法は、ハロゲン末端アルカン部分と不可逆的共有結合を形成する細菌酵素を利用したHaloタグシステムを含む。(11)個々のDNA-バーコード化Haloタグ融合タンパク質は、従来のELISAと比較して、自己抗体検出の感度およびダイナミックレンジを大幅に向上させることが示されている(12)。個々のタンパク質バーコード化を全ORFeomeライブラリーにスケーリングすることは非常に価値があるが、高コストおよび低スループットのために困難を伴う。従って、自己組織化アプローチは、ライブラリー生成へのはるかに効率的な経路を提供し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、少なくとも部分的に、PLATOおよび他の全長タンパク質アレイ技術の主要な欠点を克服する、新規分子ディスプレイ技術であるMolecular Indexing of Proteins by Self Assembly(MIPSA)の開発に基づく。特定の実施形態では、MIPSAは可溶性全長タンパク質のライブラリーを産生し、それらはそれぞれユニバーサルPCRプライマー結合配列に隣接するDNAバーコードへの共有結合を介して一意的に識別可能である(図1A~1C)。バーコードは、リボソーム結合部位(RBS)の上流で、転写されたmRNA配列の5’末端付近に導入される。インビトロで転写されたmRNAの5’末端の逆転写(RT)は、cDNAバーコードを作製し、これは、いくつかの実施形態において、ハロアルカン標識RTプライマーに連結される。N末端Haloタグ融合タンパク質はRBSの下流にコードされ、インビトロ翻訳の結果、cDNAバーコードとHaloタグおよびその下流のオープンリーディングフレーム(ORF)がコードするタンパク質産物が複合体内で共有結合をもたらす。得られた一意的にインデックス付けされた全長タンパク質のライブラリーは、不偏自己抗体プロファイリングなどの安価なプロテオーム全体の相互作用研究に使用することができる。以下に記載されるように、一実施形態において、本発明者らは、重症COVID-19を有する患者の血漿中の既知および新規自己抗体を明らかにすることによって、プラットフォームの有用性を実証する。
【0007】
一態様では、本開示は、自己組織化によるタンパク質の分子インデキシング(MIPSA)を介した効率的なプロテオミクス調査のための方法を提供する。一実施形態では、以下の工程を含む方法:(a)ベクターライブラリーをメッセンジャーリボ核酸(mRNA)に転写する工程であって、前記ベクターライブラリーが複数のタンパク質をコードし、前記ベクターライブラリーの各ベクターが、5’から3’方向に構成される工程: (i)ポリメラーゼ転写開始部位; (ii)バーコード; (iii)逆転写プライマー結合部位; (iv)リボソーム結合部位(RBS); および(v)(1)ポリペプチドタグと(2)タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドタグがリガンドに特異的に結合する、ヌクレオチド配列; (b)前記RBSの上流に結合するプライマーを使用して前記mRNAの5’末端を逆転写するステップであって、前記プライマーが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに特異的に結合する前記リガンドとコンジュゲートされ、前記リガンド、プライマーおよびバーコードを含む相補的デオキシリボ核酸(cDNA)が形成される、工程:および(c)前記mRNAを翻訳するステップであって、前記cDNAの前記リガンドが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに結合する、工程。特定の実施形態では、前記ベクターライブラリーに、工程(a)の前にニックを入れる。他の特定の実施形態では、前記ベクターが、(vi)ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含み、前記ベクターライブラリーが、工程(a)の前に直鎖化される。
【0008】
別の態様において、本開示は、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲート組成物を提供する。特定の実施形態において、本開示は、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを提供する。特定の実施形態では、各タンパク質-DNAコンジュゲートは以下を含む(a)バーコードを含むcDNAであって、ポリペプチドタグに特異的に結合するリガンドとコンジュゲートしているcDNA;および(b)前記ポリペプチドタグおよび目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記リガンドは前記ポリペプチドタグと共有結合する融合タンパク質。
【0009】
特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドタグはHALOタグを含み、リガンドはHALOリガンドを含む。より具体的な実施形態では、HALOタグは、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、HALO-リガンドは以下のいずれか1つを含む:
【化1】
【0010】
別の実施形態では、ポリペプチドタグはSNAPタグを含み、リガンドはSNAPリガンドを含む。より具体的な実施形態では、SNAPタグは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、SNAP-リガンドはベンジルグアニンまたはその誘導体を含む。
【0011】
さらなる実施形態では、ポリペプチドタグはCLIPタグを含み、リガンドはCLIPリガンドを含む。より具体的な実施形態では、CLIPタグは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む。他の態様において、CLIP-リガンドはベンジルシトシンまたはその誘導体を含む。
【0012】
本開示はまた、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを使用するための方法を提供する。1つの実施形態において、タンパク質-タンパク質相互作用を研究するための方法は、目的のタンパク質を用いてタンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する。別の実施形態において、タンパク質-小分子相互作用を研究するための方法は、小分子を用いて、タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する。さらに別の実施形態において、方法は、生物学的サンプルから得られた抗体を用いて、タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーの免疫沈降を行う工程を包含する。さらなる実施形態において、第1の小分子の標的を同定するための方法は、(a)タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを、その標的に結合する第1の小分子とともにインキュベートする工程、および(b)第2の小分子を用いて工程(a)のライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含し、ここで、その標的に結合した第1の小分子は、第2の小分子の結合をブロックする。より具体的な実施形態において、2つ以上の小分子が、ステップ(b)のプルダウンアッセイにおいて使用される。
【0013】
さらに別の態様では、本開示は、ベクターおよび複数のベクターを含む自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを提供し、各ベクターは、目的のタンパク質をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態において、ベクターは、5’から3’方向に沿って、(a)ポリメラーゼ転写開始部位;(b)バーコード;(c)逆転写プライマー結合部位;(d)RBS;ならびに(e)(i)ポリペプチドタグおよび(ii)目的のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、このポリペプチドタグは、リガンドに特異的に結合する。
【0014】
特定の実施形態において、ベクターは、ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含む。他の実施形態において、ベクターは、(vii)終止コドンをさらに含む。
【0015】
特定の実施形態において、バーコードは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している。別の実施形態では、バーコードはPCRプライマーの結合部位を含む。
【0016】
別の実施形態では、RBSは内部リボソーム進入部位を含む。特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、目的のタンパク質のN末端に融合される。他の実施形態において、ポリペプチドタグは、目的のタンパク質のC末端に融合される。
【0017】
本開示はまた、自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを使用するための方法を提供する。特定の実施形態において、方法は、(a)自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを含む直鎖化またはニック化された複数のベクターを転写して、mRNAを産生する工程;(b)リガンドにコンジュゲートされたプライマーを使用して、mRNAの5’末端を逆転写して、バーコードを含むcDNAを産生する工程;および(c)mRNAを翻訳する工程を包含し、ここで、融合タンパク質のポリペプチドタグが、バーコードを含むcDNAにコンジュゲートされたリガンドに共有結合する。
【0018】
別の態様において、本開示は、COVID-19を処置するための方法を提供する。一実施形態では、重症COVID-19を有する患者を治療するための方法は、有効量のインターフェロン療法を患者に投与する工程を含み、IFN-λ3を中和する自己抗体が患者から得られた生物学的サンプル中で検出される。別の実施形態において、重症COVID-19を有する患者を治療するための方法は、(a)患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程および、(b)有効量のインターフェロン療法で患者を治療する工程とを含む。さらなる実施形態において、インターフェロン療法が有益であるCOVID-19患者を同定するための方法は、患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程を包含する。特定の実施形態において、インターフェロン療法は、インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)を含む。特定の実施形態では、インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)はペグ化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A-1G】MIPSA法を示す。図1A:キー成分を強調した組換えpDEST-MIPSAベクターの概略図:ユニーククローン識別子(UCI、青色)、リボソーム結合サイト(RBS、黄色)、N末端Haloタグ(紫色)、FLAGエピトープ(橙色)、オープンリーディングフレーム(ORF、緑色)、およびベクター直鎖化のためのI-SceI制限エンドヌクレアーゼ部位(黒色)。図1B:(図1A)に示されるベクター鋳型からインビトロ転写された(IVT)RNAを示す概略図。等温塩基バランス化UCI配列:(SW)18-AGGGA-(SW)18図1C:(図1B)に示されるRNA-cDNAの無細胞翻訳。Haloタグタンパク質は、翻訳中にcisでHaloリガンドとコンジュゲートしたUCI含有cDNAと共有結合を形成する。図1D:翻訳に対する影響について試験したRTプライマー位置。図1E:(図1D)に示すRTプライマーの存在下での翻訳のα-FLAGウェスタンブロット分析(NC、陰性対照、RTプライマーなし)。図1F:-32位からプライミングされたUCI-cDNAを有するRNAから翻訳されたTRIM21タンパク質のウェスタンブロット分析であり、Haloリガンドとコンジュゲートしていても(+)していなくても(-)よい。シェーグレン症候群、SS;健常対照、HC。図1G:IP化したTRIM21 UCIのqPCR分析。倍数差は、Haloリガンド(-)HC IPとの比較による。
図2A-2D】cis-対trans-UCIコンジュゲーションを示す。図2A:別個のUCIバーコードを有するTRIM21またはGAPDHをコードするIVT-RNAを、1:1の比で混合する前または後に翻訳した。UCI特異的プライマーを使用したIPのqPCR分析は、IVT-RNAを翻訳後に混合した場合の、HC血漿を用いたIPに対する倍率変化として報告された。図2B:TRIM21(黒色UCI)およびGAPDH(灰色UCI)をコードするIVT-RNAを、100倍過剰のGAPDH(白色UCI)のバックグラウンドに1:1で混合し、次いで、モックライブラリーとして翻訳した。IPのシーケンシング分析は、100×GAPDHのHC IPに対する倍率変化として報告される。図2C:スパイクインTRIM21を含有するhORFeome MIPSAライブラリーであって、SS血漿を用いてIP化され、8つのモックIP(血漿投入なし)の平均と比較されたもの。TRIM21 UCIは赤色で示されている。図2D:シーケンシングによって決定された、SS対HC IPにおけるTRIM21 UCIの相対的倍数差。
図3A-3D】UCI-ORF辞書の構築を示す。図3A:(i)タグメンテーションは、MIPSAベクターライブラリーにアダプターをランダムに挿入する。(ii)PCR1フォワードプライマーおよびタグメンテーションにより挿入されたアダプターのリバースプライマーを利用して、DNA断片を増幅し、ORFの5’末端を捕捉する約1.5kbとなるようにサイズ選択する。(iii)これらの断片を、P5を含むPCR2フォワードプライマーおよびP7リバースプライマーを用いて増幅する。(iv)Illuminaシーケンシングを使用して、同じ断片からUCIおよびORFを読み取り、辞書におけるそれらの会合を可能にする。図3B:pDEST-MIPSA hORFeomeライブラリーの各メンバーについて、単一特異性UCIの数を、ORFの長さに重ねて示す。図3C:それらの集計されたUCI関連リードカウントによるライブラリー中のORF表現のヒストグラム。赤色の縦線は、UCI関連リードカウントの中央値の+/-10倍を示す。図3D:シェーグレン症候群(SS)血漿を用いたhORFeome MIPSAライブラリーのIPを、8つのモックIPの平均と比較する。各UCIについてのシーケンシングリードカウントをプロットする。2つのGAPDHアイソフォーム(塗りつぶされた黒色)およびスパイクインされたTRIM21(赤色)に関連するUCIが示されている。
図4A-4C】重症COVID-19における自己抗体のMIPSA分析を示す。図4A:健常対照、軽度~中等度のCOVID-19患者、または重症COVID-19患者からの血漿中の自己反応性タンパク質の総数を示す箱ひげ図。*は、平均を比較するための片側t検定によるp<0.05を示す。図4B:少なくとも1つの重症COVID-19血漿中の少なくとも2つの反応性UCIによって表されるが、1つ以下の対照(健常または軽度~中等度のCOVID-19血漿)では表されない、全てのタンパク質の階層的クラスターマップ。図4C:hORFeomeライブラリーを使用した、10人の封入体筋炎(IBM)患者および10人の健常対照(HC)における自己抗体のMIPSA分析。UCI-qPCR倍率変化(10個のHCの平均に対する)およびシーケンシングの倍率変化(モックIPに対する)の両方として測定された、IP化5’-ヌクレオチダーゼ、細胞質1A(NT5C1A)の倍率変化。
図5A-5H】MIPSAが既知および新規の中和インターフェロン自己抗体を検出することを示す。図5A~5C:3人の重症COVID-19患者についての反応性インターフェロンUCIを強調する散布図。図5D:重症COVID-19を有する55人のうち5人において検出されたインターフェロン反応性の概要。ヒット倍数変化値(細胞の色)および反応性UCIの数(細胞中の数)が提供される。図5E~5F:図5Dに示される同じ患者の組換えインターフェロンアルファ2(IFN-α2)またはインターフェロンラムダ3(IFN-λ3)中和活性。A549細胞とのインキュベーションの前に、血漿を100U/mlのIFN-α2または1ng/mlのIFN-λ3とプレインキュベートした。インターフェロン刺激遺伝子MX1の倍率変化を、非刺激細胞に対するRT-qPCRによって計算した。GAPDHを正規化のためのハウスキーピング対照遺伝子として使用した。赤色のバーは、どのサンプルが各インターフェロンについて中和活性を有するとMIPSAによって予測されるかを示す。図5G図5Dの5人の患者におけるインターフェロン自己抗体のPhIP-Seq分析(行および列の順序を維持)。ヒット倍数変化値(セルの色)および反応性ペプチドの数(セル中の数)が提供される。図5H:PhIP-Seq反応性I型インターフェロン90-aaペプチドのEpitopefindr分析。
図6A-6C】逆転写プライマーへのHaloリガンド結合を示す。図6A:上部は、5’第一級アミンで修飾されたオリゴヌクレオチド逆転写(RT)プライマー配列である。下は、1つのエチレングリコール部分(O2)によって分離された、反応性スクシンイミジルエステル基を有するHaloリガンドである。スクシンイミジルエステルは、第一級アミンと反応して、RTプライマーとHaloリガンドとの間にアミド結合を形成し、Haloリガンド結合RTプライマーを生じる。図6B:Haloリガンド修飾を含まないRTプライマーのHPLCクロマトグラフィー。図6C:精製後のHaloリガンド修飾を有するRTプライマーのHPLCクロマトグラフィー。コンジュゲート生成物は、修飾によって付与された疎水性の増加のために後に溶出する。
図7A-7C】cis対transUCI-ORF会合を示す。MIPSA IVT-RNAライブラリーの翻訳中のUCI-ORFコンジュゲーションのcis図7A対trans図7Bの概略図。図7C:左パネル:正しいタンパク質-UCI会合(例えば、青色UCIと青色タンパク質)からなる50%cisコンジュゲート(「C」)。中央パネル:非コンジュゲートタンパク質は、次いで、非コンジュゲートUCIとtrans(「T」)でランダムに会合する。右パネル:この2種実験における正確にIP処理されたUCIと不正確にIP処理されたUCIとの比は3:1(75%:25%)であり、実験観察と同様である(図2A)。
図8】TRIM21およびGAPDHの2重翻訳およびIPを示す。TRIM21(T)およびGAPDH(G)IVT-RNA-cDNAを別々にまたは一緒に翻訳し、次いで、健常対照(HC)またはシェーグレン症候群(SS)血漿を用いてIPを行った。分析は、Haloタグをタンパク質に連結する共通のFLAGエピトープタグを認識するM2抗体を用いたイムノブロッティングによって行った。
図9】インターフェロンの配列相同性を示す。全てのインターフェロン(IFN)タンパク質についてのペアワイズblastpアラインメントビットスコア行列を図5Dに示す。
図10A-10C】患者P2の自己抗体のMIPSA検出の再現性および線形性を示す。図10A:全ての一貫して反応性の単一特異性UCIについての100 ORF倍数変化の平均および標準偏差(3つの複製物全てにおいて倍数変化>3)。エラーバーの右側の値は変動係数である。図10B:P2血漿の3つの独立したMIPSA分析にわたる重複する反応性単一特異性UCIの数。面積はヒット数に比例する。図10C:健常対照血漿のバックグラウンドに10倍希釈したP2血漿と比較した、P2血漿についての平均ORF倍率変化。ドットサイズは、各ORFに対応する反応性UCIの数を示す。
図11A-11B】患者P2のインターフェロン自己抗体レベルの滴定に基づく推定値を示す。マウスモノクローナルブロッキング抗体を、細胞ベースのIFN中和アッセイにおいて異なる濃度で使用した:図11A:IFN-α2および図11B IFN-λ3。中和曲線をあてはめ、患者P2の対応するインターフェロン自己抗体レベルを推定するために使用した。示された血漿希釈は、アッセイのダイナミックレンジ内にあるように選択された;示された希釈でのP2血漿の中和活性は、三連でアッセイされた。
図12A-12C】連続希釈におけるインターフェロン抗体のMIPSA分析を示す。連続希釈したP2血漿中のMIPSAによって検出されたインターフェロン反応性の概要(図12A)、IFN-α2 mAb(図12B)、およびIFN-λ3 mAb(図12C)。ヒット倍数変化値(セル内の色)および反応性UCIの数(セル内中の数)を、図5Dと同様に提供する。
図13】IFN-λ3自己抗体は、IFN-λ1を効率的に中和しない。患者P2の血漿のIFN-λ3中和活性を、そのIFN-λ1中和活性と比較した。IFN-λ3の中和は、それぞれ1:10および1:100希釈で完全および部分的であった。IFN-λ1の中和は部分的であり、それぞれ1:10および1:100希釈では検出されなかった(ND)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、本明細書に記載される特定の方法および構成要素などに限定されず、これらは変化し得ることが理解される。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的で使用され、本開示の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「タンパク質」への言及は、1つまたは複数のタンパク質への言及であり、当業者に公知のその等価物などを含む。
【0021】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。特定の方法、デバイス、および材料が記載されるが、本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が、本開示の実施または試験において使用され得る。
【0022】
本明細書に引用される全ての刊行物は、全ての雑誌論文、書籍、マニュアル、公開された特許出願、および発行された特許を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語および語句の意味が提供される。定義は、本質的に限定的であることを意味せず、本開示の特定の態様のより明確な理解を提供するのに役立つ。
【0023】
本発明者らは、本明細書において、タンパク質マイクロアレイ、PLATO、および代替技術を超える重要な利点を提供する、全長タンパク質のための新規分子ディスプレイ技術を記載する。特定の実施形態において、MIPSAは、自己組織化を利用して、例えば、25kDaのHaloタグドメインを介して比較的短い(例えば、158nt)一本鎖バーコードに連結されたタンパク質のライブラリーを生成する。このコンパクトなバーコード化アプローチは、かさ高い連結カーゴ(例えば、酵母、ファージ、リボソーム、mRNA)を有する代替的なディスプレイフォーマットに利用できない多数の用途を見出す可能性が高い。実際、最小DNAバーコードをタンパク質、特に抗体および抗原に個々にコンジュゲートすることは、CITE-Seq、(25)LIBRA-seq、(26)および関連する方法論(22、27)を含むいくつかの状況において有用であることが既に証明されている。プロテオームスケールでは、MIPSAは、例えば、ハプテン修飾研究またはプロテアーゼ活性プロファイリングなどの翻訳後修飾の研究と同様に、タンパク質-抗体、タンパク質-タンパク質、およびタンパク質-小分子相互作用の不偏分析を可能にする。MIPSAの重要な利点は、その高いスループット、低いコスト、単純なシーケンシングライブラリー調製、およびタンパク質-DNA複合体の安定(ディスプレイライブラリーの操作および保存の両方に重要である)を含む。重要なことは、MIPSAは、特殊な訓練または機器を必要とせず、ハイスループットシーケンシング機器または設備への単なるアクセスを必要とするだけでよいので、低複雑度の研究室によって直ちに採用され得ることである。
【0024】
MIPSAおよびPhIP-Seqの相補性。ディスプレイ技術は、互いに補完することが多いが、協調して日常的に使用することができない場合がある。MIPSAは、PhIP-Seqよりも、インビトロで十分に発現されたタンパク質上の立体構造エピトープに対する抗体を検出する可能性が高い。これは、PhIP-Seqを介して検出されなかった、以下に記載されるMIPSAを介したインターフェロンα自己抗体のロバストな検出によって例証された。一方、PhIP-Seqは、ORFeomeライブラリーに存在しないか、または細菌溶解物中で十分に発現され得ないかのいずれかであるタンパク質内に含まれるより少ない立体構造エピトープに対する抗体を検出する可能性がより高い。MIPSAおよびPhIP-Seqは、これらの方法で互いに自然に相補するので、本発明者らは、MIPSA UCI増幅プライマーを、本発明者らがPhIP-Seqに使用したものと同じになるように設計した。MIPSAおよびPhIP-Seqは、細菌ファージ溶解物中でも安定であるので、単一セットの増幅およびシーケンシングプライマーを使用して、単一反応で一緒に容易に実施することができる。したがって、これらの2つの表示モダリティの自然な互換性は、それらの相乗効果を活用することに対する障壁を低下させる。
【0025】
MIPSAシステムのバリエーション。MIPSAの重要な側面は、別のライブラリーメンバーのUCIのtransでの結合と比較して、タンパク質のその関連するUCIへのcisでの結合を含む。ここで、本発明者らは、Haloタグ/Haloリガンド系を介した共有結合を利用したが、同様に機能し得る他のものも存在する。例えば、SNAPタグ(DNA修復タンパク質O6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼの20kDa変異体)は、ベンジルグアニン(BG)誘導体と共有結合を形成する(28)ので、Haloリガンドの代わりにBGを用いてRTプライマーを標識することができる。SNAPタグの変異誘導体であるCLIPタグは、O2-ベンジルシトシン(BC)誘導体に結合し、これもMIPSAに適応させることができる(29)。
【0026】
融合タグ成熟およびリガンド結合の速度は、cis対trans結合の相対収率にとって重要である。Samelsonらの研究によると、Haloタグタンパク質の生産速度は、Haloタグの機能成熟速度の約4倍である(30)。典型的なタンパクサイズがORFeomeライブラリーにおいて1,000アミノ酸未満であることを考慮すると、これらのデータは、ほとんどのタンパクが、Haloタグ成熟の前に、すなわちcisHaloリガンド結合が起こり得る前にリボソームから放出され、それによって望ましくないtransバーコード化に有利に働くことを予測する。最適化実験の間に、本発明者らは、翻訳混合物から放出因子を排除することによってcisバーコード化の割合がわずかに改善されることを見出し、これは、リボソームをそれらのネイティブORF終止コドン上で停止させる。すなわち、Haloタグ成熟は、cisHaloリガンド結合プライマーに近接したままで継続する。制御されたリボソーム失速を促進するための代替的なアプローチはまた、終止コドン除去/抑制またはドミナントネガティブ終止因子の使用を含み得る。次いで、リボソーム放出は、鎖ターミネーターであるピューロマイシンの添加を介して達成され得る。
【0027】
UCIはmRNAの5’UTR上に形成されるので、真核生物リボソームは5’キャップから開始Kozak配列まで走査することができないであろう。キャップ依存性翻訳が必要とされる場合、2つの代替的な方法が使用され得る。第1に、配列内リボソーム進入部位(IRES)がRTプライマーとKozak配列との間に配置される場合、現在の5’UCI系が使用され得る。第2に、UCIをmRNAの3’末端に配置し、RTがORF中に伸長することを妨げることが可能である。無細胞翻訳にとどまらず、これらのアプローチのいずれかが開発された場合、mRNA-cDNAハイブリッドを生きている細胞または組織にトランスフェクトし、そこでUCIタンパク質形成をin situで行うことができる。
【0028】
ORF関連UCIは、様々な方法で具体化することができる。特定の実施形態では、実施例の項に記載されるように、本発明者らは、約10倍の表示でヒトORFeomeにインデックスを確率的に割り当てた。このアプローチは、2つの主な利点を有し、第1は、合成オリゴヌクレオチドライブラリー(単一の縮重オリゴヌクレオチドプール)の低コストであり、第2は、各ORFに関連するUCIのセットによって報告される証拠の複数の独立した部分である。ある特定の実施形態において、確率バーコードのライブラリーは、均一な融解温度の配列、したがって均一なPCR増幅効率を特徴とするように設計される。単純化のために、本発明者らは、固有分子識別子(UMI)をプライマーに組み込まないことを選択したが、このアプローチは、MIPSA UMIと互換性であり、定量化を潜在的に増強し得る。確率的インデックス付けの1つの欠点は、ORFドロップアウトの可能性、したがって、比較的高いUCI表現の必要性であり、これは、各UCIを定量化するために必要とされるシーケンシングの深さ、したがって、全体的なサンプルあたりのコストを増加させる。第2の欠点は、UCI-ORFeomeマッチング辞書を構築する必要があることである。ショートリードシーケンシングを用いて、本発明者らは、大部分が代替アイソフォームから構成されるライブラリーの画分を明確にすることができなかった。ショートリード技術の代わりに、またはショートリード技術に加えて、PacBioまたはOxford Nanopore Technologiesなどのロングリードシーケンシング技術を使用することは、UCI-ORFマッチング中の不完全な曖昧性除去を克服することができる。確率的バーコード化とは対照的に、個々のORF-UCIクローニングは可能であるが、費用がかかり面倒である。しかし、より小さいUCIセットは、より低いアッセイあたりのシーケンシングコストという利点を提供する。本発明者らは、以前に、Long Adapter Single Stranded Oligonucleotide(LASSO)プローブを用いてORFeomeをクローニングする方法を開発した(31)。標的特異的インデックスを捕捉プローブライブラリーに組み込むことにより、LASSOプローブライブラリーのコストを劇的に増加させることなく、一意的にインデックス付けされたORFが得られる。したがって、ORFeomeライブラリーのLASSOクローニングは、MIPSAベースの適用と相乗作用する可能性がある。
【0029】
qPCRによるMIPSAリードアウト。適切に設計されたUCIの有用な特徴は、それらがqPCRリードアウトプローブとしても機能し得ることである。本発明者らが設計し、本明細書中で使用した縮重UCI(図1B)もまた、18ntのTm平衡フォワードおよびリバースプライマー結合部位を含む。したがって、qPCRアッセイの低いコストおよび迅速なターンアラウンドタイムを、MIPSAと組み合わせて活用することができる。例えば、TRIM21 IPのようなアッセイ品質管理手段を組み込むことは、よりコストのかかるシーケンシングの実行の前に、サンプルのセットを認定するために使用され得る。トラブルシューティングおよび最適化は、同様に、NGSではなくqPCRをリードアウトとして使用することによって促進することができる。特異的UCIのqPCR試験はまた、理論的には、シーケンシングと比較して増強された感度を提供する可能性があり、臨床設定における分析により適している可能性がある。
I.定義
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アミン基、カルボン酸基、および各アミノ酸に特異的な側鎖を含む有機化合物をいい、これらはペプチドのモノマーサブユニットとして働く。アミノ酸には、20種の標準アミノ酸、天然アミノ酸または標準アミノ酸、ならびに非標準アミノ酸が含まれる。標準的な天然アミノ酸としては、アラニン(A又はAla)、システイン(C又はCys)、アスパラギン酸(D又はAsp)、グルタミン酸(E又はGlu)、フェニルアラニン(F又はPhe)、グリシン(G又はGly)、ヒスチジン(H又はHis)、イソロイシン(I又はIle)、リジン(K又はLys)、ロイシン(L又はLeu)、メチオニン(M又はMet)、アスパラギン(N又はAsn)、プロリン(P又はPro)、グルタミン(Q又はGln)、アルギニン(R又はArg)、セリン(S又はSer)、スレオニン(T又はThr)、バリン(V又はVal)、トリプトファン(W又はTrp)、およびチロシン(Y又はTyr)が挙げられる。アミノ酸は、L-アミノ酸またはD-アミノ酸であってよい。非標準アミノ酸は、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、非標準タンパク質構成アミノ酸、または天然に存在するかもしくは化学的に合成された非タンパク質構成アミノ酸であってよい。非標準アミノ酸の例としては、セレノシステイン、ピロリジン、およびN-ホルミルメチオニン、β-アミノ酸、ホモアミノ酸、プロリンおよびピルビン酸誘導体、3-置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環置換フェニルアラニンおよびチロシン誘導体、直鎖状コアアミノ酸、N-メチルアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチドおよびタンパク質を包含し、そしてペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸の鎖を含む分子をいう。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、2~50個のアミノ酸を含み、例えば、20~30個を超えるアミノ酸を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、二次構造、領域構造、または高次構造を含まない。いくつかの実施形態において、タンパク質は、30個以上のアミノ酸を含み、例えば、50個を超えるアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、一次構造に加えて、二次構造、領域構造、または高次構造を含む。ポリペプチドのアミノ酸は、最も典型的にはL-アミノ酸であるが、D-アミノ酸、非天然アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣体、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。ポリペプチドは、天然に存在するか、合成的に産生されるか、または組換え的に発現され得る。ポリペプチドはまた、アミノ酸鎖を修飾するさらなる基、例えば、翻訳後修飾を介して付加される官能基を含んでもよい。ポリマーは、直鎖状または分枝状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。この用語はまた、天然に、または介入によって改変されたアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲートなど任意の他の操作もしくは改変。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「プロテオーム」は、任意の生物の標的、例えば、ゲノム、細胞、組織、または生物、によって特定の時間に発現されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(これらのコンジュゲートまたは複合体を含む)のセット全体を含み得る。一態様では、それは、規定された条件下で、所与の時間に、所与のタイプの細胞または生物において発現されたタンパク質のセットである。プロテオミクスは、プロテオームの研究である。例えば、「細胞プロテオーム」は、ホルモン刺激への曝露などの特定の一連の環境条件下で特定の細胞型において見出されるタンパク質の集合を含み得る。生物の完全なプロテオームは、様々な細胞プロテオームの全てからのタンパク質の完全なセットを含み得る。プロテオームはまた、特定の細胞内生物学的系におけるタンパク質の収集を含み得る。例えば、ウイルス中の全てのタンパク質をウイルスプロテオームと呼ぶことができる。本明細書中で使用される場合、用語「プロテオーム」は、プロテオームのサブセットを含み、これには、キノーム;セクレトーム;レセプトソーム(例えば、GPCRome);免疫プロテオーム;ニュートリプロテオーム(nutriproteome);翻訳後修飾(例えば、リン酸化、ユビキチン化、メチレーション、アセチレーション、グリコシレーション、酸化、脂質化、および/またはニトロシル化)によって定義されるプロテオームサブセット、例えば、ホスホプロテオーム(例えば、ホスホチロシン-プロテオーム、チロシン-キノーム、およびチロシン-ホスファトーム)、グリコプロテオームなど;組織もしくは臓器、発生ステージ、または生理的もしくは病理学的状態に関連するプロテオームサブセット;細胞プロセス、例えば、細胞サイクル、分化(もしくは脱分化)、細胞死、老化、細胞移動、形質転換、もしくは転移に関連するプロテオームサブセット;またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」という用語は、3’-5’ホスホジエステル結合によって連結されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有する一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチド、ならびにポリヌクレオチド類似体を指す。核酸分子としては、DNA、RNA、およびcDNAが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド類似体は、天然のポリヌクレオチドにおいて見出される標準的なホスホジエステル結合以外の骨格、および必要に応じて、改変された糖部分または、リボースもしくはデオキシリボース以外の部分を有し得る。ポリヌクレオチド類似体は、標準的なポリヌクレオチド塩基に対するワトソン-クリック塩基対形成によって水素結合し得る塩基を含み、ここで、類似体骨格は、オリゴヌクレオチド類似体分子と標準的なポリヌクレオチド中の塩基との間の配列特異的様式でのこのような水素結合を可能にする様式で塩基を提示する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「バーコード」という用語は、巨大分子、巨大分子のライブラリー中の各巨大分子などについての固有の識別子タグまたは起源情報を提供する、約2~約10塩基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100塩基)の核酸分子を指す。バーコードは、人工配列または天然に存在する配列であり得る。バーコードの概念は、任意の増幅の前に、各元の標的分子が固有のバーコード配列によって「タグ付けされる」というものである。いくつかの実施形態において、DNA配列は、各ファウンダー分子に固有のバーコードを割り当てるのに十分な順列を提供するのに十分な長さでなければならない。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」または「ユニバーサルプライミング配列」は、ライブラリー増幅および/またはシーケンシング反応のために使用され得る核酸分子をいう。ユニバーサルプライミング部位は、PCR増幅のためのプライミング部位(プライマー配列)、フローセル表面上の相補的オリゴヌクレオチドにアニールするフローセルアダプター配列、いくつかの次世代シーケンシングプラットフォームにおけるブリッジ増幅を可能にするシーケンシングプライミング部位、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。「フォワード」という用語は、「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」との関連で使用される場合、「5’」または「センス」とも称され得る。「リバース」という用語は、「ユニバーサルプライミング部位」または「ユニバーサルプライマー」との関連で使用される場合、「3’」または「アンチセンス」とも称され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「次世代シーケンシング」は、数百万から数十億の分子のシーケンシングを並行して可能にするハイスループットシーケンシング方法を指す。次世代シーケンシング法の例としては、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、ハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ポロニーシーケンシング、イオン半導体シーケンシング、およびパイロシーケンスが挙げられる。プライマーを固体基板に付着させ、相補配列を核酸分子に付着させることによって、核酸分子をプライマーを介して固体基板にハイブリダイズさせることができ、次いで、ポリメラーゼを用いて増幅することによって、固体基板上の別個の領域に複数のコピーを生成することができる(これらのグループ分けは、ポリメラーゼコロニーまたはポロニーと呼ばれることもある)。その結果、シーケンシングプロセスにおいて、特定の位置のヌクレオチドを複数回(例えば、数百回または数千回)シーケンシングすることができる。ハイスループット核酸シーケンシング技術の例には、Illumina、BGI、Qiagen、Thermo-Fisher、およびRocheによって提供されるプラットフォームが含まれ、パラレルビーズアレイ、合成によるシーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、キャピラリー電気泳動、電子マイクロチップ、「バイオチップ」、マイクロアレイ、パラレルマイクロチップ、および単一分子アレイなどのフォーマットが含まれる。
【0037】
用語「~に特異的に結合する」、「~に対して特異的な」および関連する文法上の変形は、リガンド/タグ、抗体/抗原、アプタマー/標的、酵素/基質、受容体/アゴニストおよびレクチン/炭水化物のような対になった種の間で起こる結合であって、共有結合もしくは非共有結合相互作用または共有結合および非共有結合相互作用の組み合わせによって媒介され得る結合を指す。2つの種の相互作用が非共有結合複合体を生成する場合、生じる結合は、典型的には静電結合、水素結合、または親油性相互作用の結果である。従って、特定の実施形態において、「特異的結合」は、例えば、抗体/抗原または酵素/基質相互作用の特徴を有する結合複合体を生成する2つの間の相互作用が存在する、対になった種の間で生じる。特に、特異的結合は、対の一方のメンバーが特定の種に結合し、結合メンバーの対応するメンバーが属する化合物ファミリー内の他の種には結合しないことを特徴とする。したがって、例えば、抗体は、典型的には単一のエピトープに結合し、タンパク質ファミリー内の他のエピトープには結合しない。ある実施形態では、抗原と抗体との特異的結合は、少なくとも10-6Mの結合親和性を有する。他の実施形態では、抗原および抗体は、少なくとも10-7M、10-8M~10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの親和性で結合する。ある特定の実施形態では、この用語は、任意の非標的と比較して少なくとも5倍大きい親和性、例えば、少なくとも10、20、50、または100倍大きい親和性で標的(例えば、タンパク質)に結合する分子(例えば、アプタマー)を指す。特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、そのリガンドに特異的に結合する。特定の実施形態では、ポリペプチドタグはリガンドに共有結合する。
【0038】
「生物学的サンプル」は、本明細書中で使用される場合、一般に、個体または被験体由来のサンプルである。生物学的サンプルの非限定的な例としては、血液、血清、血漿、または脳脊髄液が挙げられる。さらに、固形組織(例えば、脊髄または脳の生検)が使用され得る。
II.ベクター、そのライブラリーおよびそれを使用する方法
【0039】
本開示は、ベクターおよび複数のベクターを含む自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを提供する。特定の実施形態において、ベクターは、目的のタンパク質をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態において、ベクターは、5’から3’方向に沿って、(a)ポリメラーゼ転写開始部位;(b)バーコード;(c)逆転写プライマー結合部位;(d)RBS;ならびに(e)(i)ポリペプチドタグおよび(ii)目的のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、このポリペプチドタグは、リガンドに特異的に結合する。
【0040】
特定の実施形態において、ベクターは、ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含む。他の実施形態において、ベクターは、(vii)終止コドンをさらに含む。
【0041】
特定の実施形態において、バーコードは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーの結合部位に隣接している。別の実施形態では、バーコードはPCRプライマーの結合部位を含む。
【0042】
別の実施形態では、RBSは内部リボソーム進入部位を含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、バーコードの集団内の各バーコードは異なる。他の実施形態では、バーコードの集団におけるバーコードの一部は異なり、例えば、バーコードの集団におけるバーコードの少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%が異なる。
【0044】
バーコードの母集団は、ランダムに生成されてもよいし、非ランダムに生成されてもよい。いくつかの実施形態において、バーコードは、ランダム化されたヌクレオチドを含有し、核酸に組み込まれる。例えば、12塩基ランダム配列は、サンプル中の各標的分子について412または16,777,216個のUMIを提供する。
【0045】
特定の実施形態では、バーコードを使用して、多重化シーケンシングデータをコンピュータでデコンボリューションし、個々の高分子、サンプル、ライブラリーなどに由来する配列を同定することができる。
【0046】
本開示はまた、自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを使用するための方法を提供する。特定の実施形態において、方法は、(a)自己組織化タンパク質ディスプレイライブラリーを含む直鎖化またはニック化された複数のベクターを転写して、mRNAを産生する工程;(b)リガンドにコンジュゲートされたプライマーを使用して、mRNAの5’末端を逆転写して、バーコードを含むcDNAを産生する工程;および(c)mRNAを翻訳する工程を包含し、ここで、融合タンパク質のポリペプチドタグが、バーコードを含むcDNAにコンジュゲートされたリガンドに共有結合する。
【0047】
より具体的な実施形態は、以下の工程を含む方法:(a)ベクターライブラリーをメッセンジャーリボ核酸(mRNA)に転写する工程であって、前記ベクターライブラリーが複数のタンパク質をコードし、前記ベクターライブラリーの各ベクターが、5’から3’方向に構成される工程: (i)ポリメラーゼ転写開始部位; (ii)バーコード; (iii)逆転写プライマー結合部位; (iv)リボソーム結合部位(RBS); および(v)(1)ポリペプチドタグと(2)タンパク質とを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、前記ポリペプチドタグがリガンドに特異的に結合する、ヌクレオチド配列; (b)前記RBSの上流に結合するプライマーを使用して前記mRNAの5’末端を逆転写するステップであって、前記プライマーが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに特異的に結合する前記リガンドとコンジュゲートされ、前記リガンド、プライマーおよびバーコードを含む相補的デオキシリボ核酸(cDNA)が形成される、工程:および(c)前記mRNAを翻訳するステップであって、前記cDNAの前記リガンドが、前記融合タンパク質の前記ポリペプチドタグに結合する、工程。特定の実施形態では、前記ベクターライブラリーに、工程(a)の前にニックを入れる。他の特定の実施形態では、前記ベクターが、(vi)ベクター直鎖化のためのエンドヌクレアーゼ部位をさらに含み、前記ベクターライブラリーが、工程(a)の前に直鎖化される。
III.自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲート、そのライブラリーおよびそれを使用する方法
【0048】
本開示はまた、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲート組成物およびそれを含むライブラリーを提供する。特定の実施形態では、各タンパク質-DNAコンジュゲートは以下を含む(a)バーコードを含むcDNAであって、ポリペプチドタグに特異的に結合するリガンドとコンジュゲートしているcDNA;および(b)前記ポリペプチドタグおよび目的のタンパク質を含む融合タンパク質であって、前記リガンドは前記ポリペプチドタグと共有結合する融合タンパク質。
【0049】
ある特定の実施形態では、目的のタンパク質の2つ以上のコピーが、タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリー中にタンパク質-DNAコンジュゲートとして存在することができ、目的のタンパク質の各コピーは、固有のバーコードを含むことができる。
【0050】
特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、目的のタンパク質のN末端に融合される。他の実施形態において、ポリペプチドタグは、目的のタンパク質のC末端に融合される。
【0051】
特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、ハロアルカンデハロゲナーゼまたはO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼを含む。特定の実施形態では、ポリペプチドタグはHALOタグを含み、リガンドはHALOリガンドを含む。より具体的な実施形態では、HALOタグは、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、HALO-リガンドは以下のいずれか1つを含む:
【化2】
【0052】
HALOTAG(登録商標)タグおよびリガンドは、Promega(Madison,WI)から市販されており、製造者の指示に従って核酸とコンジュゲートされる。特定の実施形態では、HALOTAG(登録商標)リガンドをDNA配列(例えば、逆転写プライマー)にコンジュゲートするために、DNA配列をアルキン基で修飾する。次いで、Cu触媒環化付加(「クリック」化学)を使用して、アジドハロリガンドをアルキン末端DNA配列と反応させる。例えば、Duckworth et al. 46 ANGEW CHEM. INT. 8819-22 (2007)を参照のこと。
【0053】
あるいは、他のポリペプチドタグ-リガンド捕捉部分系を使用することができる。例えば、O6-アルキルグアニン-DNAアルキルトランスフェラーゼは、ベンジルグアニン(BG)およびその誘導体と特異的かつ迅速に反応する。特定の実施形態において、ポリペプチドタグは、SNAP-TAG(登録商標)(New England Biolabs(Ipwich,MA))を含む。SNAP-TAG(登録商標)は、ヒトO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼに由来する自己標識タンパク質である。SNAP-TAG(登録商標)は、O-ベンジルグアニン誘導体と共有結合的に反応する。一実施形態では、ポリペプチドタグは、配列番号23に記載のアミノ酸配列を含む。別の特定の実施形態では、ポリペプチドタグは、SNAP-TAG(登録商標)の修飾バージョンであるCLIP-TAG(New England Biolabs)を含む。これはまた、ヒトO-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ由来の自己標識タンパク質である。ベンジルグアニン誘導体の代わりに、CLIPタグは、ベンジルシトシン誘導体と反応するように操作される。特定の実施形態では、ポリペプチドタグは、配列番号24に記載のアミノ酸配列を含む。Keppler et al. 1 NAT BIOTECHNOL. 86-99 (2003);およびGautier et al. 15(2) CHEM. BIOL. 128-36 (2008)を参照のこと。
【0054】
本開示はまた、自己組織化タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを使用するための方法を提供する。1つの実施形態において、タンパク質-タンパク質相互作用を研究するための方法は、目的のタンパク質を用いてタンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する。別の実施形態において、タンパク質-小分子相互作用を研究するための方法は、小分子を用いて、タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含する。さらに別の実施形態において、方法は、生物学的サンプルから得られた抗体を用いて、タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーの免疫沈降を行う工程を包含する。さらなる実施形態において、第1の小分子の標的を同定するための方法は、(a)タンパク質-DNAコンジュゲートのライブラリーを、その標的に結合する第1の小分子とともにインキュベートする工程、および(b)第2の小分子を用いて工程(a)のライブラリーのプルダウンアッセイを行う工程を包含し、ここで、その標的に結合した第1の小分子は、第2の小分子の結合をブロックする。より具体的な実施形態において、2つ以上の小分子が、ステップ(b)のプルダウンアッセイにおいて使用される。
IV.COVID-19の処置
【0055】
本開示はまた、COVID-19を処置するための方法を提供する。一実施形態では、重症COVID-19を有する患者を治療するための方法は、有効量のインターフェロン療法を患者に投与する工程を含み、IFN-λ3を中和する自己抗体が患者から得られた生物学的サンプル中で検出される。別の実施形態において、重症COVID-19を有する患者を治療するための方法は、(a)患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程および、(b)有効量のインターフェロン療法で患者を治療する工程とを含む。さらなる実施形態において、インターフェロン療法が有益であるCOVID-19患者を同定するための方法は、患者から得られた生物学的サンプル中のIFN-λ3を中和する自己抗体を検出する工程を包含する。特定の実施形態において、インターフェロン療法は、インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)を含む。特定の実施形態では、インターフェロンラムダ(IFN-λ)またはインターフェロンベータ(IFN-β)はペグ化される。さらなる実施形態において、インターフェロン療法は、インターフェロンω(IFN-ω)を含む。
【0056】
用語「インターフェロン」、「IFN」および「インターフェロン分子」は、本明細書中で交換可能に使用される。それらは、COVID-19の治療に使用することができる任意のインターフェロンまたはインターフェロン誘導体(例えば、ペグ化インターフェロン)を指す。
【0057】
インターフェロンは、ウイルス感染および他の抗原刺激に応答して真核細胞によって産生されるサイトカインのファミリーであり、広域スペクトルの抗ウイルス、抗増殖および免疫調節効果を示す。インターフェロンの組換え形態は、ウイルス感染(例えば、HCV、HBVおよびHIV)、炎症性障害および疾患(例えば、多発性硬化症、関節炎、嚢胞性線維症)、ならびに腫瘍(例えば、肝臓癌、リンパ腫、骨髄腫など)などの様々な状態および疾患の治療に広く適用されている。
【0058】
インターフェロンは、それらが結合する細胞受容体に応じて、I型、II型およびIII型に分類される。I型インターフェロンは、2つの鎖(IFNAR1およびIFNAR2)からなるIFN-アルファ(IFN-α)受容体(IFNAR)として知られる特異的細胞表面受容体複合体に結合する。ヒトに存在するI型インターフェロンは、インターフェロン-アルファ(IFN-α)、インターフェロン-ベータ(IFN-β)およびインターフェロン-オメガ(IFN-ω)である。
【0059】
III型インターフェロンは、インターフェロン-ラムダ受容体(IFNLR1またはCRF2-12)およびインターロイキン10受容体2(IL10R2またはCRF2-4)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。ヒトにおいて、III型インターフェロンは、それぞれインターロイキン29(IL-29)、インターロイキン28A(IL-28A)およびインターロイキン28B(IL-28B)としても知られる、IFN-λ1、IFN-λ2およびIFN-λ3と呼ばれる3つのインターフェロンラムダ(IFN-λ)タンパク質を含む。
【0060】
したがって、特定の実施形態では、インターフェロン療法は、IFN-α、IFN-β、IFN-ω、IFN-γ、IFN-λ、それらの類似体およびそれらの誘導体のうちの1つ以上を含む。特定の実施形態において、インターフェロン療法は、IFN-λ、その類似体およびその誘導体を含む。他の実施形態において、インターフェロン療法は、IFN-β、その類似体およびその誘導体を含む。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「インターフェロン」、「IFN」および「IFN分子」は、より具体的には、インターフェロン(例えば、ヒトインターフェロン)(例えば、当該分野で公知のIFN-α、IFN-β、IFN-ω、IFN-γおよびIFN-λ)の配列の全てまたは一部と実質的に同一である(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはさらに100%同一である)アミノ酸を有するペプチドまたはタンパク質をいう。本開示における使用に適したインターフェロンとしては、ヒト細胞を使用して産生される天然ヒトインターフェロン、哺乳動物細胞から産生される組換えヒトインターフェロン、大腸菌産生組換えヒトインターフェロン、ヒトインターフェロンの合成バージョンおよびそれらの等価物が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切なインターフェロンとしては、全ての公知のヒトIFNサブタイプ(例えば、全ての公知のIFN-βサブタイプ、または全ての公知のIFN-λサブタイプ)の配列のおおよその平均であるアミノ酸配列を有する合成インターフェロンの一種であるコンセンサスインターフェロンが挙げられる。
【0062】
用語「インターフェロン」、「IFN」、および「IFN分子」はまた、インターフェロン誘導体、すなわち、改変または形質転換されたインターフェロンの分子(上記のような)を含む。適切な形質転換は、インターフェロン分子に所望の特性を付与する任意の改変であり得る。望ましい特性の例としては、インビボ半減期の延長、治療有効性の改善、投与頻度の減少、溶解度/水溶性の増加、タンパク質分解に対する耐性の増加、制御放出の促進などが挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、ペグ化インターフェロンが産生されており(例えば、ペグ化IFN-λ)、肝炎を治療するために現在使用されている。ペグ化インターフェロンは、より長い半減期を示し、これは、薬物のより少ない頻度の投与を可能にする。インターフェロン分子をペグ化することは、インターフェロンをポリエチレングリコール(PEG)、不活性、非毒性および生分解性有機ポリマーに共有結合させることを含む。したがって、特定の実施形態において、インターフェロン療法はペグ化インターフェロンを含む。インターフェロンはまた、ヒトアルブミンとの融合タンパク質(例えば、アルブミン-IFN-λ)として産生されている。アルブミン融合プラットフォームは、ヒトアルブミンの長い半減期を利用して、IFNの投与頻度を減少させることができる治療を提供する。したがって、特定の実施形態において、インターフェロン療法は、アルブミン-インターフェロン融合タンパク質を含む。
【0063】
本開示は、IFN-λ3に対する自己抗体を検出するための方法を提供する。より具体的な実施形態において、IFN-λ3を中和する自己抗体が検出される。IFN-λ3を中和する自己抗体の存在は、インターフェロン療法から利益を得るCOVID-19患者を同定するために使用され得る。特定の実施形態では、患者は重症COVID-10を有する。インターフェロン治療は、IFN-λ3を中和する自己抗体が患者から得られた生物学的サンプル中で検出されているCOVID-19患者に施すことができる。
【0064】
IFN-λ3ポリペプチドは、生物学的サンプル中のIFN-λ3特異的自己抗体を検出するための免疫アッセイにおいて使用され得る。イムノアッセイにおいて使用されるIFNλ-3ポリペプチドは、細胞溶解物(例えば、全細胞溶解物もしくは細胞画分)中に存在し得るか、または精製されたIFNλ-3ポリペプチドもしくはその断片が、IFNλ-3特異的自己抗体によって認識される少なくとも1つの抗原部位が結合のために利用可能なままであるという条件で、使用され得る。サンプルの性質に依存して、免疫アッセイおよび免疫細胞化学的染色技術のいずれかまたは両方が使用され得る。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、およびラジオイムノアッセイは、生物学的サンプル中のIFNλ-3特異的自己抗体の存在を検出するために、本明細書中に記載されるように使用され得る。
【0065】
IFNλ-3ポリペプチドまたはその断片は、IFNλ-3特異的自己抗体の検出のために、改変してまたは改変せずに使用され得る。ポリペプチドは、ポリペプチドを検出可能なシグナルを提供する第2の物質と共有結合または非共有結合させることによって標識することができる。多種多様な標識およびコンジュゲーション技術を使用することができる。使用され得る標識のいくつかの例としては、放射性同位体、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光剤、化学発光剤、磁性粒子などが挙げられる。
【0066】
さらに詳述することなく、当業者は、前述の説明を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は例示に過ぎず、本開示の残りの部分を何ら限定するものではない。
【実施例
【0067】
以下の実施例は、本明細書に記載および特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのように作製および評価されるかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、純粋に例示的であることが意図され、本発明者らがそれらの開示とみなすものの範囲を限定することは意図されない。数(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされているが、いくつかの誤差および偏差が本明細書において考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は摂氏度であるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。反応条件、例えば、成分濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、ならびに記載されたプロセスから得られる生成物純度および収率を最適化するために使用することができる他の反応範囲および条件の多数の変形形態および組合せが存在する。このようなプロセス条件を最適化するためには、合理的かつ日常的な実験のみが必要とされる。
【0068】
実施例1:効率的なプロテオミクス調査のための自己組織化によるタンパク質の分子インデックス化(MIPSA)。
材料および方法
【0069】
MIPSA宛先ベクター構築およびUCIバーコードライブラリー構築。MIPSAベクターは、pDEST15ベクターを骨格として用いて構築した。RBS、Kozak配列、N末端Haloタグ融合タンパク質、FLAGタグ、およびattR1配列をコードするgBlock断片(Integrated DNA Technologies)を親プラスミドにクローニングした。150bpのポリ(A)配列もattR2および終止コドンの後に付加した。41ntバーコードオリゴを、交互混合塩基(S:G/C;W:A/T)を有するgBlock Gene Fragment(Integrated DNA Technologies)内で生成して、以下の配列:(SW)18-AGGGA-(SW)18を生成した。縮重バーコードに隣接する配列は、標準的なPhIP-Seq PCR1およびPCR2プライマー結合部位を組み込んだ(43)。18ngの出発UCIライブラリーを使用して40サイクルのPCRを行い、ライブラリーを増幅し、BglIIおよびPspxI制限部位を組み込んだ。次いで、MIPSAベクターおよび増幅されたUCIライブラリーを制限酵素で一晩消化し、カラム精製し、1:5のベクター対インサート比で連結(ligate)した。連結されたMIPSAベクターを使用して、エレクトロコンピテントOne Shot ccdB 2 T1細胞(Thermo Fisher Scientific)を形質転換した。6回の形質転換反応により約800,000個のコロニーを得て、pDEST-MIPSA UCIライブラリーを作製した。
【0070】
バーコード化MIPSAベクターへのヒトORFeome組換え。150ngのpENTR-hORFeome-(L1-L5)ベクターを、150ngのpDEST-MIPSAベクターおよび2μLのGateway LR Clonase II mix(Life Technologies)と合わせて、総反応容量を10uLとした。反応物を25℃で一晩インキュベートした。全反応物を50μLのOne Shot OmniMAX 2 T1ケミカルコンピテント大腸菌(Life Technologies)に形質転換した。形質転換により約120,000コロニーが得られ、これは各ヒトサブプールライブラリーの約10倍である。コロニーを収集し、掻き取ることによってプールした後、Qiagen Plasmid Midi Kit(Qiagen)を使用して、バーコード化pDEST-MIPSA-hsORFeomeプラスミドMIPSA(ヒトORFeome DNAライブラリー)を精製した。
【0071】
RTオリゴへのHaloリガンド結合およびHPLC精製。100μgの5’アミン修飾オリゴ(表1)を、Guら(14)に従って、0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液中の75μL(17.85μg/μL)のスクシンイミジルエステル(O2)Haloリガンド(Promega Corporation)と共に室温で6時間インキュベートした。3M NaClおよび氷冷エタノールを、それぞれ10%(v/v)および250%(v/v)で標識反応物に添加し、-80℃で一晩インキュベートした。反応物を12,000×gで30分間遠心分離した。ペレットを氷冷70%エタノール中で1回すすぎ、10分間風乾した。
【0072】
Haloリガンド結合RTプライマーを、Brownlee Aquapore RP-300 7u、100×4.6mmカラム(Perkin Elmer)を使用して、0-70%CH3CN/MeCN(アセトニトリルに対して100mM酢酸トリメチルアミン)の2緩衝液勾配を使用して70分間にわたってHPLC精製した。標識オリゴに対応する画分を回収し、凍結乾燥した(図6)。オリゴを1μMで再懸濁し、-80℃で保存した。
【0073】
MIPSA RNAライブラリー調製。ヒトORFeomeライブラリー(4μg)を含有するpDEST-MIPSAベクターを、I-SceI制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で一晩直鎖化した。生成物をNucleoSpin Gel and PCR Clean Upキット(Macherey-Nagel GmbH&Co.KG)を用いてカラム精製した。40μLのHiScribe T7 High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs)を利用して、1μgの精製した直鎖化産物を転写した。生成物を60μLの分子生物学グレードの水で希釈し、1μLのDNAseIを添加した。反応物を37℃でさらに15分間インキュベートした。次いで、50μLの1M LiClを溶液に添加し、-80℃で一晩インキュベートした。遠心分離機を4℃に冷却し、RNAを最大速度で30分間回転させた。上清を除去し、RNAペレットを70%エタノールで洗浄した。サンプルを4℃でさらに10分間スピンダウンし、70%エタノールを除去した。ペレットを室温で15分間乾燥させ、続いて100μLの水に再懸濁した。サンプルを保存するために、1μLの40U/μL RNAseOUT Recombinant Ribonuclease Inhibitor(Life Technologies,Carlsbad CA)を添加した。
【0074】
MIPSA RNAライブラリー逆転写および翻訳。SuperScript IV First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を用いて逆転写反応物を調製した。最初に、1μLの10mM dNTP、1μLのRNAseOUT(40U/μL)、4.17μLのRNAライブラリー(1.5μM)、および7.83μLのHaloリガンドコンジュゲートRTプライマー(1μM、表1)を、単一の14μLの反応液に合わせ、65℃で5分間インキュベートし、続いて氷上で2分間インキュベートした。4μLの5×RT緩衝液、1μLの0.1M DTT、および1μLのSuperScript IV RT酵素(200U/μL)を氷上の14μL反応物に添加し、42℃で20分間インキュベートした。単一の20μL RT反応物に36μLのRNAClean XPビーズ(Beckman Coulter)を加え、室温で10分間インキュベートした。ビーズを磁石で集め、70%エタノールで5回洗浄した。ビーズを室温で10分間風乾し、7μLの5mM Tris-HCl、pH8.5に再懸濁した。生成物(2μL)を分光光度法で分析して、RNA収量を測定した。翻訳反応を、PURExpressΔRibosome Kit(New England Biolabs)を使用して氷上で設定した(44)。リボソームの最終濃度が0.3μMになるように反応を改変した。4.57μLのRT反応物を、4μLの溶液A、1.2μLの因子混合物、および0.23μLのリボソーム(13.3μM)に添加した。この反応物を37℃で2時間インキュベートし、35μLの1×PBSで総容量45μLに希釈し、直ちに使用するか、または25%グリセロールの添加後に-80℃で保存した。PURExpressΔRF123 Kit(New England Biolabs)を利用する最適化実験において、溶液BをNEBカスタムメイドのFactor Mix(-RF123、-リボソーム)で置換した。37℃で2時間のインキュベーション工程の後、RNase Aを添加するか、または放出因子1、2、および3を添加し、反応を氷上で30分間進行させた。
【0075】
MIPSAライブラリーを用いた免疫沈降。5μLの血清を45μLの希釈MIPSAライブラリー(上記参照)と混合し、穏やかに撹拌しながら4℃で一晩インキュベートする。各IPについて、5μLのProtein A Dynabeadsおよび5μLのProtein G Dynabeads(Life Technologies)の混合物を、1×PBSを用いてそれらの元の体積の2倍で3回洗浄した。次いで、ビーズを元の容量で1×PBSに再懸濁し、各IPに添加した。結合を4℃で4時間進行させた。ビーズを磁石上に回収し、ビーズを1×PBSで3回洗浄し、洗浄の間にチューブまたはプレートを交換した。次いで、ビーズを回収し、T7-Pep 2 PCR1 FフォワードプライマーおよびT7-Peps PCR1 R+ad minリバースプライマー(表1)ならびにHerculase-II(Agilent)を含有する20μLのPCRマスターミックスに再懸濁した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、58℃で30秒間、72℃で30秒間の30サイクル、最後に72℃で3分間の伸長。2マイクロリットルの増幅産物を、PhIP PCR2 FフォワードプライマーおよびAd min BCX P7リバースプライマーを用いた10サイクルの20μLデュアルインデックスPCR反応へのインプットとして使用した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の最初の変性工程、続いて95℃で20秒間、58℃で30秒間、72℃で30秒間の10サイクル、最後に72℃で3分間の伸長。i5/i7インデックス付きライブラリーをプールし、カラム精製した。ライブラリーを、1×75ntプロトコルを使用してIllumina NextSeq 500上でシーケンシングした。Plato2_i5_NextSeq_SPおよびStandard_i7_SPプライマーを、i5/i7同定のために使用した(表1)。出力は、不整合を許容することなくi5およびi7を使用して多重分離された。
【0076】
ファージ免疫沈降シーケンシング。90アミノ酸のヒトペプチドームライブラリーの設計およびクローニングは、以前に記載されている(24)。ファージ免疫沈降およびシーケンシングを、本発明者らが公開したプロトコルに従って実施した(45)。簡単に述べると、0.2μlの各血漿を個々にヒトファージライブラリーと混合し、次いでプロテインAおよびプロテインGでコーティングした磁気ビーズを使用して免疫沈降させた。8つのモックIPのセットを各96ウェルプレート上で実行した。アンプリコンを、Illumina NextSeq 500機器でシーケンシングした。
【0077】
qPCRによるMIPSA実験の定量化のために、PCR1産物を以下のように分析した。PCR1反応の1/1000希釈物4.6μLを、5μLのBrilliant III Ultra Fast 2X SYBR Green Mix(Agilent)、0.2μLの2μM参照色素および0.2μLの10μMフォワードおよびリバースプライマーミックス(標的UCIに特異的)を含有する10μLのqPCRマスターミックスに再懸濁した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、60℃で30秒間を30サイクル、45サイクル。サーモサイクリングの完了後、増幅産物を融解曲線分析に供した。MIPSA免疫沈降実験のためのqPCRプライマーは以下の通りである。TRIM21に対するBT2_FおよびBT2_R、GAPDHに対するBG4_FおよびBG4_R、ならびにNT5C1Aに対するNT5C1A_FおよびNT5C1A_R(表1)。
【0078】
血漿サンプル。全てのサンプルは、以下に記載されるように、対象がプロトコール適格性基準を満たした研究によって収集された。研究の全ては、研究参加者の権利およびプライバシーを保護し、元のサンプル収集およびその後の分析について、それぞれの直観審査委員会によって承認された。
【0079】
パンデミック前の血漿サンプル。全てのヒトサンプルは、2017年より前に、NIAID IRB承認の手順に従って、国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)、ワクチン研究センター(Vaccine Research Center、VRC)/国立アレルギー感染症研究所(National Institutes of Allergy and Infectious Diseases、NIAID)/NIHのプロトコル「VRC 000: Screening Subjects for HIV Vaccine Research Studies」(NCT00031304)の下で、収集した。
【0080】
非入院患者からのCOVID-19回復期血漿(CCP)。適格なCCPドナーは、前述のように研究担当者から連絡を受けた(46,47)。全てのドナーは少なくとも18歳であり、鼻咽頭スワブサンプル中のRNAの検出によるSARS-CoV-2の確定診断を有していた。基本的な人口統計学的情報(年齢、性別、COVID-19による入院)を各ドナーから得た;SARS-CoV-2の最初の診断および診断の日付を、カルテ審査によって確認した。採取から12時間以内にサンプルを血漿と末梢血単核細胞に分離し、血漿サンプルを直ちに-80℃で凍結した。
【0081】
重症COVID-19血漿サンプル。研究コホートは、以下の条件を満たす入院患者を対照とした:1)COVID-19の確定診断;2)死亡または退院までの生存;および3)Johns Hopkins COVID-19 Remnant Specimen Biorepository(ジョンズ・ホプキンズ病院COVID-19患者の59%および在院日数≧3日を有する患者の66%を含む機会サンプル)中に残存検体を有する(48)。患者の結果は、世界保健機関(WHO)COVID-19疾患重篤度スケールによって定義された。この研究に含まれた重症COVID-19患者からのサンプルは、死亡した17人の患者、人工呼吸後に回復した13人の患者、回復するために酸素投与を必要とした22人の患者、および補充酸素投与なしで回復した3人の患者から得られた。この研究は、JHU施設内倫理委員会(IRB00248332、IRB00273516)によって承認され、すべての標本および臨床データが、Johns Hopkins Institute for Clinical and Translational ResearchのCore for Clinical Research Data Acquisitionによって非特定化されたので、同意の権利放棄が認められ;研究チームは、同定可能な患者データへのアクセスを有さなかった。
【0082】
シェーグレン症候群および封入体筋炎(IBM)血漿サンプル。シェーグレン症候群サンプルをプロトコルNA_00013201の下で収集した。全ての患者は>18歳であり、インフォームドコンセントを得た。IBM患者サンプルをプロトコルIRB00235256の下で収集した。全ての患者がENMC 2011診断基準(49)を満たし、インフォームドコンセントを得た。
【0083】
イムノブロット分析。5%β-MEを含有するLaemmli緩衝液を翻訳後サンプルに添加し、5分間煮沸し、NuPAGE 4~12%Bis-Trisポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分析した。PVDF膜に移した後、ブロットを、0.1%Tween 20(TBST)および5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有する20mMトリス緩衝生理食塩水(pH 7.6)中、室温で>1時間ブロッキングした。続いて、ブロットを一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、続いて二次抗体中で室温で4時間インキュベートした。
【0084】
UCI-ORF辞書の構築。Nextera XT DNA Library Preparationキット(Illumina)を150ngの各ライブラリーのタグメント化に使用して、1.5kb付近を中心とする最適サイズ分布を得た。タグメント化MIPSAヒトORFeomeライブラリーを、T7-Pep2 PCR1 FフォワードおよびNextera Index 1 Readプライマーと共にHerculase-II(Agilent)を使用して増幅した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、53.5℃で30秒間、72℃で30秒間の30サイクル、最後に72℃で3分間の伸長。PCR反応を1%アガロースゲル上で実行し、続いて約1.5kbの産物を切り出し、NucleoSpin Gel&PCR Clean-upカラム(Mackeryナゲル)を使用して精製した。次いで、精製した産物を、PhIP PCR2 FフォワードプライマーおよびP7.2リバースプライマー(プライマー配列のリストについては表1を参照のこと)を用いてさらに10サイクル増幅した。産物をゲル精製し、リード1についてT7-Pep2.2 SP subAプライマーおよびリード2についてMISEQPLATOR2プライマーを使用してMiSeq(Illumina)上でシーケンシングした。リード1は、UCIを捕捉するために60bp長であった。第1のインデックスリードI1は、ORFへの50bpリードで置換された。I2は、サンプル逆多重化のためのi5インデックスを識別するために使用された。
【0085】
ヒトORFeome V8.1のDNA配列を最初の50ntに切断し、非ユニーク配列に対応するORF名を連結した。Illumina MiSeqから読み取った50ntのR2(ORF)の逆多重化出力を、Rbowtie2パッケージ(50)を使用して、以下のパラメーターを有する短縮型ヒトORFeome V8.1ライブラリーにアライメントさせた:options = "-a --very-sensitive-local"。次いで、固有のFASTQ識別子を使用して、60bpのR1(UCI)リードから対応する配列を抽出した。次いで、これらの配列を、3’アンカーACGATAを使用して短縮し、そしてアンカーを有さない配列を除去した。さらに、18個未満のヌクレオチドを有する任意の短縮型R1配列を除去した。フィルタリング後に対応するUCIを依然として有するORF配列を、FASTQ識別子を使用して保持した。次いで、同じUCIを有するORFの名前を連結し、この最終辞書を使用して、ORF名およびUCI配列を有するFASTAアラインメントファイルを生成した。
【0086】
MIPSAデータの情報分析。Illumina出力FASTQファイルを、全てのUCI配列の後に定常ACGATアンカー配列を使用して切り詰めた。次に、完全マッチアラインメントを使用して、UCI-ORFルックアップディクショナリを介して短縮配列をそれらの連結されたORFにマッピングした。行が個々のUCIに対応し、列がサンプルに対応するカウント行列が構築される。次に、本発明者らは、edgeRソフトウェアパッケージ(51)を使用し、これは、負の二項モデルを使用して、各サンプルにおいて検出されたシグナルを、血清なしで実施された陰性対照(「モック」)IPのセットと比較し、倍率変化値および各サンプルにおける各UCIについての検定統計量を返し、倍率変化および有意性行列を作成した。有意に濃縮されたUCI(「ヒット」)は、少なくとも15のリードカウント、0.001未満のp値、および少なくとも3の倍数変化を必要とした。ヒット倍数変化行列は、「ヒット」について倍数変化値を報告し、ヒットではないUCIについて「1」を報告する。
【0087】
タンパク質配列の類似性。hORFeome v8.1ライブラリー中のタンパク質間の配列相同性を評価するために、blastpアラインメントを用いて、各タンパク質配列を他のすべてのライブラリーメンバーと比較した(パラメーター:「-outfmt 6 -evalue 100 -max_hsps 1 -soft_masking false -word_size 7 -max_target_seqs 100000」)。
【0088】
ファージ免疫沈降シーケンシング(PhIP-Seq)分析。PhIP-Seqは、以前に公開されたプロトコールに従って行った(45)。簡潔には、0.2μlの各血漿を、90-aaヒトファージライブラリーと個々に混合し、プロテインAおよびプロテインGでコーティングした磁気ビーズを使用して免疫沈降させた。6~8個のモック免疫沈降(血漿投入なし)のセットを各96ウェルプレート上で実行した。磁気ビーズをPCRマスターミックスに懸濁し、サーモサイクリングに供した。第2のPCR反応を、サンプルバーのために使用した。アンプリコンをプールし、Illumina NextSeq 500機器でシーケンシングした。ヒトライブラリーを有するPhIP-Seqを使用して、健常なドナーからの血漿の収集物中の自己抗体を特徴付けた。重症COVID-19コホートとの公平な比較のために、本発明者らはまず、陽性個体の両方においてIFN-λ3反応性を検出するために必要とされたであろう最小シーケンシング深度を決定した。次いで、本発明者らは、この最小閾値より大きいシーケンシング深度を有する健常コホートからの423個のデータセットのみを考慮した。これらの423個体のいずれも、IFN-λ3由来の任意のペプチドに対して反応性であることが見出されなかった。
【0089】
I/III型インターフェロン中和アッセイ。IFN-α2(カタログ番号11100-1)、IFN-λ1(カタログ番号1598-IL-025)、およびIFN-λ3(カタログ番号5259-IL-025)は、R&D Systemsから購入した。20μLの患者の粗血清を、100U/mLのIFN-α2または1ng/mLのIFN-λ3のいずれか、および200μLの総容量の完全DMEM溶媒と共に室温で1時間インキュベートした後、7.5×10 A549細胞に添加した。4時間のインキュベーション後、細胞を1×PBSで洗浄し、細胞mRNAを抽出し、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を使用して精製した。600ngの抽出mRNAをSuperScript III First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を使用して逆転写し、qPCR実行のためにQuantStudio 6 Flex System(Applied Biosystems)上で10倍に希釈した。PCRは2段階サイクリングプロトコールを実行し、95℃で3分間のサイクル、続いて95℃で15秒間および60℃で30秒間の45サイクルからなる。MX1発現をインターフェロンによる細胞刺激の尺度として選択し、相対的mRNA発現をGAPDH発現によって正規化した。qPCRプライマーGAPDHおよびMX1は、Integrated DNA Technologiesから入手した(表1)。
表1 プライマーシーケンス
【表1】
【0090】
結果
MIPSAシステムの開発。MIPSAゲートウェイデスティネーションベクターは、以下の重要な要素を含有する:T7 RNAポリメラーゼ転写開始部位、定常プライマー結合配列に隣接する等温ユニーククローン識別子(「UCI」バーコード)、リボソーム結合部位(RBS)、N末端Haloタグ融合タンパク質(891nt)、ORF挿入のための組換え配列、終止コドン、およびプラスミド直鎖化のためのホーミングエンドヌクレアーゼ部位。組換えORF含有pDEST-MIPSAプラスミドを図1Aに示す。
【0091】
本発明者らは、最初に、転写開始部位とリボソーム結合性部位との間に位置する確率的等温UCIを含むpDEST-MIPSAプラスミドのライブラリーを確立しようとした。融解温度(Tm)バランスのとれた配列:(SW)18-AGGGA-(SW)18(式中、SはCおよびGの等量混合物を表し、WはAおよびTの等量混合物を表す)を含む縮重オリゴヌクレオチドプールを合成した(図1B)。本発明者らは、この安価な配列プールが、(i)固有のORF標識のために十分な複雑性(236~7×1010)を提供し、(ii)歪みなく増幅し、(iii)対象となる個々のUCIの測定のためのORF特異的フォワードおよびリバースqPCRプライマー結合部位として役立つと推論した。縮重オリゴヌクレオチドプールをPCRによって増幅し、MIPSAデスティネーションベクターに制限クローニングし、E.coliに形質転換した(方法)。約800,000個の形質転換体を選択プレートから掻き取って、pDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーを得た。ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)および既知の自己抗原、tripartite motif containing-21(TRIM21、一般にRo52として知られている)をコードするORFを別々にpDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーに組み換え、以下の実験に使用した。単一のバーコード化GAPDHおよびTRIM21クローンを単離し、シーケンシングした。
【0092】
MIPSAの手順は、スクシンイミジルエステル(O2)-ハロアルカン(Haloリガンド)結合逆転写(RT)プライマーを使用する確率バーコードの逆転写を含む。結合されたRTプライマーは、E.coliリボソームのアセンブリおよび翻訳の開始を妨害すべきではないが、Haloリガンド-Haloタグ-タンパク錯体のカップリングが翻訳のさらなるラウンドを妨害し得るように十分に近位であるべきである。本発明者らは、RBSの3’末端から-30ヌクレオチド~+7ヌクレオチド(5’から3’)の範囲の距離でアニーリングする一連のRTプライマーを試験した(図1D)。これらの様々な位置でプライマーで飽和されたmRNAからのタンパク質産物の収量に基づいて、本発明者らは、翻訳効率に干渉しなかったので-20位を選択した(図1E)。対照的に、RBSの20ヌクレオチド以内に位置するプライマーからのRTは、タンパク質翻訳を減少または消失させた。この結果は、最小15ヌクレオチドのmRNAを保護することが示されている、アセンブルされた70S大腸菌リボソームの推定フットプリントと一致する(13)。
【0093】
次に、本発明者らは、SuperScript IVの5’末端がHaloリガンドで標識されたプライマーからの逆転写能、およびHaloタグ-TRIM21タンパクの翻訳反応におけるHaloリガンド結合プライマーとの共有結合形成能を評価した。Haloリガンドコンジュゲーションおよび精製は、Gu et al.に従った(Materials and Methods、図6)(14)。非コンジュゲートRTプライマーまたはaHaloリガンドコンジュゲートRTプライマーのいずれかを、バーコード化Haloタグ-TRIM21 mRNAのRTのために使用した。次いで、翻訳産物を、健常ドナー由来の血清またはシェーグレン症候群(SS)を有するTRIM21(Ro52)自己抗体陽性患者由来の血清を用いて免疫沈降(IPed、IP化)した。SS血清は、RTプライマー結合にかかわらず、TRIM21タンパクを効率的にIP化したが、Haloリガンド結合プライマーをRT反応に使用した場合、TRIM21 cDNA UCIのみをプルダウンした(図1F~G)。
【0094】
cis対transUCIバーコード化の評価。先の実験は、実際にHaloリガンドがRTプライミングを妨げないこと、およびHaloタグが翻訳反応の間にHaloリガンドと共有結合を形成することができることを示したが、cis(錯体内)およびtrans(錯体間)のHaloタグ-UCIコンジュゲーションの量は解明されなかった。(図7)。cisおよびtransHaloタグ-UCI-コンジュゲーションの量を測定するために。GAPDHおよびTRIM21 mRNAを別々に逆転写し(Haloリガンドプライマーを使用)、次いで1:1で混合するか、またはインビトロ翻訳のために別々に保持した。予想された通り、混合物の翻訳は、個々の翻訳と比較してほぼ等量の各タンパク質を産生した(図8)。翻訳条件にかかわらず、SS血漿はTRIM21タンパク質を特異的にIP化した(図8、IPed画分)。しかしながら、本発明者らは、SS IPは高レベルのTRIM21 UCIを含んでいたが、意図したように、mRNAが翻訳前に混合された場合、HC血清によるものと比較して、より多くのGAPDH UCIがSS血清によってプルダウンされたことに注目した。これは、実際にいくつかのtransバーコード化が起こることを示す(図2A)。本発明者らは、タンパク質の約50%がcisバーコード化され、残りの50%がtransバーコード化されたタンパク質が両方のタンパク質によって等しく表されると推定する。したがって、この2コンパートメント系では、TRIM21タンパク質の25%がGAPDH-UCIにコンジュゲートしている。
【0095】
複雑なライブラリーの設定において、タンパク質の約50%がtransバーコード化される場合であっても、この望ましくない副産物は、ライブラリーの全てのメンバーにわたって一様に分布する。本発明者らは、第1のGAPDHおよびTRIM21クローンの1:1混合物と組み合わせた100倍過剰の第2のGAPDHクローンから構成されるモデルMIPSAライブラリーを使用してこれを試験した(図2B)。本発明者らはさらに、各UCIの絶対定量化のためにPCRスパイクイン配列を利用するシーケンシングワークフローを開発した。最適化されたプロトコルを使用したSS血清によるIPは、TRIM21-UCIの特異的IPをもたらし、trans結合GAPDH-UCI IPの検出は無視できる量であった(図2B)。絶対定量化のためにスパイクイン配列を使用し、TRIM21タンパク質の100%のプルダウンを仮定して、本発明者らは、約0.2%のcisカップリング効率を計算した(すなわち、投入TRIM21 RNA分子の0.2%が、意図されたUCIカップリングTRIM21タンパク質に変換された)。
【0096】
確率的にバーコード化されたヒトORFeome MIPSAライブラリーを確立し、デコンボリューションする。配列が検証されたヒトORFeome v8.1は、pDONR223中の11,437個の遺伝子にマッピングされる12,680個のクローンORFから構成される(15)。ライブラリーの5つのサブプールを作製し、各々はおよそ約2,500個の同様のサイズのORFから構成された。5つのサブプールの各々を別々にpDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーに組み換え、形質転換して、約10倍のORFカバレッジ(サブプール当たり約30,000クローン)を得た。各サブプールを、Bioanalyzer電気泳動、約20個のコロニーのシーケンシング、およびスーパープールのIlluminaシーケンシングによって評価した。TRIM21プラスミドを、スーパープールされたhORFeomeライブラリーに、典型的なライブラリーメンバーに匹敵する1:10、000でスパイクした。次いで、リードアウトとしてシーケンシングを使用して、hORFeome MIPSAライブラリーに対してSS IP実験を行った。スパイクインされたTRIM21を含む、ライブラリー中の全てのバーコードからの読み取りを図2Cに示す。TRIM21のSS自己抗体依存的濃縮(17倍)は、単純な系と同様であった(図2D)。以前に誘導されたカップリング効率を仮定して、本発明者らは、正確にcisカップリングしたTRIM21分子の約6×10分子(したがって、平均して各ライブラリーメンバー)がIP反応に投入されたと推定している。
【0097】
次に、本発明者らは、タグメンテーションおよびシーケンシングを使用して、UCI-ORFルックアップ辞書を作成するためのシステムを確立した(図3A)。5’50ntのORFインサートのシーケンシングにより、11,887個のユニークな5’50nt配列のうち11,300個が検出された。検出された153,161のユニークなバーコードのうち、82.9%(126,975)が単一のORFに関連することが見出された。各ORFは、0~123UCIの範囲の中央値9UCIと一意的に関連した(図3B)。各ORFに対応するリードを集約すると、表されたORFの99%超が、中央値ORF存在量の10倍の差内に存在した(図3C)。総合すると、これらのデータは、本発明者らが11,300個の確率的にインデックス付けされたヒトORFの均一なライブラリーを確立し、下流の分析のための辞書を十分に定義したことを示した。図3Dは、図2Cの散布図を示すが、予想通りy=x対角線に沿って出現する47個の辞書解読GAPDH UCI(hORFeomeライブラリー中に存在する2つのGAPDHアイソフォームに対応する)を有する。
【0098】
重症COVID-19に関連する自己抗体の不偏MIPSA分析。いくつかの最近の報告は、重症COVID-19を有する患者における自己抗体反応性の上昇を記載している(16~20)。そこで、本発明者らは、55人の重症COVID-19患者の血漿中の自己反応性の偏りのない同定のために、ヒトORFeomeライブラリーを有するMIPSAを使用した。比較のために、本発明者らは、MIPSAを使用して、10人の健常なドナーおよび10人の入院していないCOVID-19の回復期血漿ドナーからの血漿中の自己反応性を検出した(表2)。各サンプルを、血清を除く全ての反応成分を含有する8つの「モックIP」のセットと比較した。このモックIPとの比較は、ライブラリーおよびバックグラウンド結合における偏りを説明する。重要なことに、抗体依存性反応性を検出するために使用されるインフォーマティックパイプラインは、モックIP当たり5つの偽陽性UCIヒットの中央値(2~9の範囲)をもたらした。しかし、重症COVID-19患者からの血清を使用したIPは、平均132個の反応性UCIをもたらし、これは、対照の中の93個の反応性UCIの平均よりも有意に高かった(p=0.018、t検定)。UCIをそれらの対応するタンパク質に折り畳むことにより、重症COVID-19患者の間で平均83個の反応性タンパク質が得られ、これは対照の間で平均63個の反応性タンパク質よりも有意に高かった(図4A、p=0.019、t検定)。
表2 研究対象
【表2】
【0099】
本発明者らは次に、少なくとも2つの反応性UCIを有し、少なくとも1人の重症患者において反応性があり、1より多い対照(健常または軽度/中等度の回復期血漿中)において反応性でなかった重症COVID-19 IP中のタンパク質を調べた。1人の重症の患者および1人の対照において反応性であったタンパク質は除外した。これらの基準を満たした115個のタンパク質を図4Bのクラスター化ヒートマップに示す。55人の重症COVID-19患者のうち52人が、これらのタンパク質の少なくとも1つに対して反応性を示した。本発明者らは、複数の個体において同時に起こるタンパク質反応性に注目し、その大多数がタンパク質配列アラインメントによる相同性を欠いていた。
【0100】
1つの注目すべき自己反応性クラスター(図4B)は、5’-ヌクレオチダーゼ、細胞質基質1A(NT5C1A)を含み、これは、骨格筋において高度に発現され、封入体筋炎(IBM)において最もよく特徴付けられた自己抗体標的である。NT5C1Aに連鎖する複数のUCIは、55人の重症COVID-19患者のうちの3人(5.5%)において有意に増加した。NT5C1A自己抗体は、IBM患者の最大70%において(1)、SS患者の約20%において、および健常ドナーの最大約5%において報告されている(21)。重症COVID-19コホートにおけるNT5C1A反応性の頻度は、必ずしも上昇していない。しかし、本発明者らは、MIPSAが、NT5C1A反応性に基づいて、健常なドナーとIBM血漿とを確実に区別することができるかどうかを疑問に考えた。本発明者らは、10人の健常ドナーおよび10人のIBM患者からの血漿を試験し、後者はPhIP-Seqによって決定されたNT5C1A血清陽性に基づいて選択された(1)この独立したコホートにおける対照からの患者の明確な分離は、MIPSAが実際に、密接に相関するリードアウトであったqPCRまたはシーケンシングのいずれかを使用する臨床診断試験において有用性を有し得ることを示唆する(図4C)。
【0101】
重症COVID-19におけるI型およびIII型インターフェロン中和自己抗体。I型インターフェロンアルファ(IFN-α)及びオメガ(IFN-ω)を標的とする中和自己抗体は、重症COVID-19と関連付けられている(17、22、23)。IFN-α16を除く全てのI型インターフェロンは、ヒトMIPSAライブラリ及び辞書に表されている。しかし、IFN-α4、IFN-α17、およびIFN-α21は、それらをコードするORF配列の最初の50ヌクレオチドをシーケンシングすることによって区別できない。このコホートにおける重症COVID-19患者のうちの2人(3.6%)は、劇的なIFN-α自己反応性を示した(10個の別個のIFN-αORFにわたって43個および41個のUCI、ならびに5個および2個のIFN-ωUCI、図5A~5B)。これらのタンパク質の広範な共反応性は、それらの配列相同性に起因する可能性が高い(図9)。少なくとも2つのIFN UCIが陽性であるとみなされることを必要とすることによって、本発明者らは、より低いレベルの反応性を有する3人のさらなる重症COVID-19患者を同定し、各々は2つの反応性IFN-αUCIのみを有した。興味深いことに、1つの血漿(P5)は、III型インターフェロンIFN-λ3から5つのUCIを沈降させたが、いずれのI型またはII型インターフェロンからもUCIを沈降させなかった(図5C~5D)。健常または非入院COVID-19対照のいずれも、2つ以上のインターフェロンUCIに対して陽性でなかった。
【0102】
A549ヒト腺癌肺上皮細胞を100U/ml IFN-α2または1ng/ml IFN-λ3とともに無血清培地中で4時間インキュベートすると、IFN応答遺伝子MX1がそれぞれ約1,000倍および約100倍強く上方制御された。P1、P2またはP3の血漿とのIFN-α2のプレインキュベーションは、A549インターフェロン応答を完全に消失させた(図5E)。MIPSAによる最も弱いIFN-α反応性を有する血漿(P4)は、サイトカインを部分的に中和した。HCまたはP5血漿のいずれも、IFN-αに対するA549細胞の応答に対していかなる効果も有しなかった。しかしながら、IFN-λ3とMIPSA反応性血漿P2およびP5とのプレインキュベーションは、サイトカインを中和した(図5F)。他の血漿(HC、P1、P3またはP4)はいずれも、IFN-λに対するA549細胞の応答に対していかなる効果も有しなかった。要約すると、この重症COVID-19コホートの抗体検査により、患者の5.5%に強く中和するIFN-α自己抗体が、患者の3.6%に強く中和するIFN-λ3自己抗体が同定され、1人の患者(1.8%)が両方の自己反応性を保有していた。
【0103】
本発明者らは、90-aaヒトペプチドームライブラリー(24)を有するPhIP-Seqもまた、このコホートにおいてインターフェロン抗体を検出する可能性があると考えた。PhIP-Seqは、P1およびP2からの血漿中でIFN-α反応性を検出したが、その程度ははるかに低かった(図5G)。P3およびP4の血漿中のMIPSAによって検出された2つのより弱いIFN-α反応性は、両方ともPhIP-Seqによって失われた。PhIP-Seqは、MIPSAによって陰性であった単一のさらなる弱いIFN-α反応性サンプルを同定した(図示せず)。III型インターフェロン自己反応性(IFN-λ3のみを対象とする)の検出は、2つの技術間で完全に一致した。PhIP-Seqデータを使用して、I型およびIII型自己抗原における優性エピトープの位置を絞り込んだ(図5H~5I)。
【0104】
本発明者らは次に、一般集団におけるIFN-λ3自己反応性の罹患率、およびそれが重症COVID-19を有する患者の間で増加し得るかどうかについて考えた。PhIP-Seqは、423人の健常な対照の血漿をプロファイリングするために使用され、そのうちのいずれも、検出可能なIFN-λ3自己反応性を有することが見出されなかった。これらのデータは、IFN-λ3自己反応性が重症COVID-19を有する個体の間でより頻繁であり得ることを示唆する。これは、中和抗IFNλ自己抗体を記載する最初の報告であり、したがって、一部の患者において生命を脅かすCOVID-19に寄与する潜在的に新規な病原性機構を提案する。
【0105】
実施例2:タンパク質ディスプレイ技術によって同定された重症COVID-19における中和IFNL3自己抗体。
【0106】
MIPSAを使用した重症COVID-19患者において検出された自己抗体。自己免疫と重症COVID-19疾患との間の関連性は、ますます認識されている。55人の入院個体のコホートにおいて、本発明者らは、本発明者らが以前に封入体筋炎に関連していたものを含む、複数の確立された自己抗体を検出した(1)。次いで、本発明者らは、血清陽性IBM患者および健常対照の別個のコホートにおいて、NT5C1A自己抗体を検出するためのMIPSAの能力を試験した。結果は、標準化された包括的な自己抗体試験のためのMIPSAの臨床有用性を評価することにおける将来の努力を支持する。そのような試験は、シングルプレックスqPCRまたはバイアスのないシーケンシングのいずれかをリードアウトとして利用することができる。
【0107】
自己反応性のクラスターが複数の個体において観察されたが、それらが重症COVID-19において、たとえあったとしても、どのような機能を果たし得るかは明らかではない。より大規模な研究において、本発明者らは、同時に起こる反応性、または関連する生物学的機能を有するタンパク質に対する反応性のパターンが、重症COVID-19に関連する新たな自己免疫症候群を究極的に規定し得ると期待する。中和IFN-αおよびIFN-ω自己抗体は、重症COVID-19を有する患者において記載されており、病原性であると推定される(17)。これらのおそらく既存の自己抗体は、一般集団において非常に稀にしか存在せず、細胞培養におけるウイルス複製の制限を遮断し、したがって疾患の解消を妨げる可能性が高い。この発見は、生命を脅かすCOVID-19肺炎の危険性がある個体のサブセットを同定する道を開いて、これらの自己抗体によって中和されないインターフェロンベータを利用する潜在的な治療手段を提案した。本研究において、MIPSAは、IFN-αサイトカインの全ファミリーに対して広範な反応性を有する2人の個体を同定した。実際に、両方の個体に加えて、MIPSAによって検出されたより弱いIFN-α反応性を有する1つの個体からの血漿は、肺腺癌細胞培養モデルにおいて組換えIFN-α2を強く中和した。予期しないことに、IFN-α反応性を有さないコホートにおける1人の個体は、5つのIFN-λ3 UCIをプルダウンした。第2のIFN-α自己反応性個体もまた、単一のIFN-λ3 UCIをプルダウンした。同じ自己反応性がまた、PhIP-Seqを用いて検出された。興味深いことに、MIPSAもPhIP-Seqも、それらの高度な配列相同性にもかかわらず、IFN-λ2に対する反応性を検出しなかった(図9)。本発明者らは、これらの患者の血漿中のIFN-λ3中和能を試験し、組換えサイトカインに対する細胞応答のほぼ完全な消失を観察した(図5F)。これらのデータは、IFN-λ3自己反応性が、重症COVID-19疾患に寄与する新規の潜在的な病原性機構であることを提案する。
【0108】
III型IFN(IFN-λ、IL-28/29としても知られる)は、主にバリア部位で作用する強力な抗ウイルス活性を有するサイトカインである。IFN-λに対するIFN-λR1/IL-10RBヘテロ二量体受容体は、肺上皮細胞上で発現され、ウイルス感染に対する自然応答にとって重要である。Mordsteinらは、マウスにおいて、IFN-λが病原性を減少させ、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、およびサーズコロナウイルス(SARS-CoV-1)の複製を抑制することを明らかにした(32)。IFN-λは、抗ウイルス細胞状態の誘導ではなく、免疫細胞との刺激的相互作用を介してインビボでその抗ウイルス活性の多くを発揮することが提案されている(33)。重要なことは、IFN-λは、初代ヒト気管支上皮細胞(34)、初代ヒト気道上皮培養物(35)、および初代ヒト腸上皮細胞(36)におけるSARS-CoV-2複製を強く制限することである。これらの研究を総合すると、中和IFN-λ自己抗体がSARS-CoV-2感染を悪化させ得る多面的機構を示唆している。
【0109】
Casanovaらは、試験したI型IFN自己抗体を有する101人の個体の中でIII型IFN中和抗体を検出しなかった(17)。本発明者らの研究において、3人のIFN-α自己反応性個体のうちの1人(P2、22歳男性)もまた、IFN-λ3を中和する自己抗体を保有していた。この共反応性は非常に稀であり、したがってCasanovaコホートにおいて示されない可能性がある。あるいは、異なるアッセイ条件が異なる検出感度を示すことが可能である。Casanovaらは、A549細胞を50ng/mlのIFN-λ3と共に培養し、血漿中でプレインキュベートしなかったのに対し、本発明者らは、A549細胞を血漿中で1時間プレインキュベートした後、1ng/mlのIFN-λ3と共に培養した。STAT3リン酸化のそれらのリードアウトはまた、MX1の上方制御と比較して異なる検出感度を提供し得る。重症COVID-19患者および対応対照におけるこれらの反応性の真の頻度を決定するためには、より大規模な研究が必要である。ここで、本発明者らは、重症COVID-19を有する55人の個体のうち、それぞれ3人(5.5%)および2人(3.6%)においてIFN-αおよびIFN-λ3自己抗体を中和することを報告する。IFN-λ3自己抗体は、パンデミック前に収集された541人の健常対照のより大きなコホートにおいて、PhIP-Seqを介して検出されなかった。
【0110】
III型インターフェロンは、SARS-CoV-2感染のための治療様式として提案されており(35、37~41)、現在、COVID-19に関連する罹患率および死亡率の低減における効力についてペグ化IFN-λ1を試験するための3つの進行中の臨床試験がある(ClinicalTrials.gov Identifiers:NCT04343976、NCT04534673、NCT04344600)。最近完了した1つの二重盲検プラセボ対照試験、NCT04354259は、外来患者設定における軽度から中等度のCOVID-19患者の間で、7日目にSARS-CoV-2の1mL当たり2・42logコピーの有意な減少を報告した(p=0・0041)(42)。将来の研究は、抗IFN-λ3自己抗体が既存であるか、またはSARS-CoV-2感染に応答して生じるかどうか、およびそれらがどのくらい頻繁にIFN-λ1も交差中和するかを決定する。しかし、IFN-λ1およびIFN-λ3の配列アラインメント(約29%の相同性、図9)に基づくと、交差中和はまれであると予想され、中和IFN-λ3自己抗体を有する患者がペグ化IFN-λ1治療が特に有益である可能性が生じる。
【0111】
結論
MIPSAは、別のアプローチよりも重要な利点を有する新しい自己組織化タンパクディスプレイ技術である。これは、PhIP-SeqおよびMIPSAライブラリーのような相補的技術が、プログラム可能なファージディスプレイライブラリーを用いて同じ反応において簡便にスクリーニングされ得るという特性を有する。本明細書に提示されるMIPSAプロトコルは、キャップ非依存的無細胞翻訳を必要とするが、将来の適応は、この制限を克服し得る。MIPSAベースの研究のための適用は、タンパク-タンパク、タンパク-抗体、およびタンパク-小分子相互作用研究を含み、翻訳後修飾の偏りのない分析を含む。ここで、本発明者らは、MIPSAを使用して、多くの他の潜在的に病原性の自己反応性の中で、中和IFN-λ3自己抗体(これは、危険性のある個体のサブセットにおいて、生命を脅かすCOVID-19肺炎に寄与し得る)を発見した。
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このページの残りの部分は意図的に空白にしている。(訳注:原文においてはこのページの残りは空白であった)
【0112】
実施例3:自己組織化によるタンパク質の分子インデックス化(MIPSA)により、重症COVID-19における中和I型およびIII型インターフェロン自己抗体を同定された。
【0113】
抗体結合特異性の不偏分析は、健常および疾患状態への重要な洞察を提供することができる。本発明者らおよび他の研究者らは、新規な自己抗体を同定し、抗ウイルス免疫を特徴付け、アレルゲン特異的IgE抗体をプロファイリングするために、プログラム可能なファージディスプレイライブラリーを利用してきた1~4。ファージディスプレイは、これらおよび多くの他の用途に有用であるが、ほとんどのタンパク質-タンパク質、タンパク質-抗体およびタンパク質-小分子相互作用は、バクテリオファージディスプレイペプチドライブラリーによって捕捉されない程度の立体構造を必要とする。プロテオームスケールでの立体構造タンパク質相互作用のプロファイリングは、伝統的にタンパク質マイクロアレイ技術に依存してきた。しかしながら、タンパク質マイクロアレイは、高いアッセイ当たりのコスト、ならびにタンパク質のハイスループット発現および精製、固体支持体上へのタンパク質のスポッティング、アレイ化されたタンパク質の乾燥および再水和、ならびにスライド走査蛍光イメージングベースのリードアウトに関連するものを含む無数の技術的アーチファクトに悩まされる傾向がある5,6。タンパク質マイクロアレイ生産および保存に対する代替的なアプローチが開発されているが(例えば、核酸プログラム可能タンパク質アレイ、NAPPA、または単一分子PCR関連インビトロ発現、SIMPLEX)、ロバストで、スケーラブルで、費用効果の高い代替法が欠けている。
【0114】
完全長タンパク質のアレイベースのプロファイリングに関連する制限を克服するために、本発明者らは、オープンリーディングフレーム(ORF)ライブラリーのリボソームディスプレイを利用する、翻訳オープンリーディングフレームの並行分析(Parallel Analysis of Translated Open reading frames)(PLATO)と呼ばれる方法論を以前に確立した。リボソームディスプレイは、終止コドンを欠くmRNAのインビトロ翻訳に依存し、それらがコードする新生タンパク質との複合体中のmRNA分子の末端でリボソームを失速させる。PLATOは、その採用を妨げてきたいくつかの重要な制限に悩まされている。理想的な代替法は、短い増幅可能なDNAバーコードへのタンパク質の共有結合である。実際、個々に調製されたDNAバーコード化抗体やタンパク質は、様々な用途で成功裏に使用されている10。特に魅力的なタンパク質-DNAコンジュゲーション法のひとつに、ハロゲン末端アルカン部位と不可逆的な共有結合を形成する細菌酵素を利用したHaloタグシステムがある11。個々のDNAバーコード化Haloタグ融合タンパク質は、従来のELISAと比較して、自己抗体検出の感度およびダイナミックレンジを大幅に増強することが示されている12。個々のタンパク質バーコード化を全ORFeomeライブラリーにスケーリングすることは、非常に有用であるが、高コストおよび低スループットのために手に負えないものである。従って、自己組織化アプローチは、ライブラリー生成へのはるかに効率的な経路を提供し得る。
【0115】
ここで、新規な分子ディスプレイ技術であるMolecular Indexing of Proteins by Self Assembly(MIPSA)が記載され、これは、PLATOおよび他の全長タンパク質アレイ技術の主要な欠点を克服する。MIPSAは可溶性完全長タンパク質のライブラリーを産生し、各々は増幅可能なバーコードへの共有結合を介して独自に同定可能である。バーコードは、リボソーム結合部位(RBS)の上流に導入される。インビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)の部分逆転写(RT)は、ハロアルカン標識RTプライマーに連結されるcDNAバーコードを作製する。N末端Haloタグ融合タンパク質は、インビトロ翻訳が、Haloタグおよびその下流のオープンリーディングフレーム(ORF)コードタンパク質産物へのcDNAバーコードの複合体内(「cis」)で共有結合をもたらすように、RBSの下流にコードされる。一意的にインデックス付けされた全長タンパク質の得られたライブラリーは、不偏自己抗体プロファイリングなどの安価なプロテオーム全体の相互作用研究に使用することができる。
【0116】
サーズコロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染によって引き起こされるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、無症状の経過から生命を脅かす肺炎および死にまで及ぶ。自己免疫と重症COVID-19との間の因果関係は、複数の研究によって支持されている13,14。多種多様な自己抗体が実証されているが15、中和I型インターフェロン自己抗体が特に重要な役目を果たしているようである16,17。ここでは、重症COVID-19を有する患者の血漿中の新規自己抗体を探索することによって、MIPSAプラットフォームの有用性を調査する。
【0117】
方法
【0118】
MIPSA宛先ベクター構築
【0119】
MIPSAベクターは、Gateway pDEST15ベクターを骨格として用いて構築した。RBS、Kozak配列、N末端Haloタグ融合タンパク質、およびFLAGタグ、続いてattR1配列をコードするgBlock断片(Integrated DNA Technologies)を親プラスミドにクローニングした。150bpのポリ(A)配列もattR2部位の後に付加した。2成分系を特徴付け、最適化するために使用したTRIM21およびGAPDH ORF配列は、最終MIPSA構築物中に保持された天然終止コドンを含んでいた。
【0120】
UCIバーコードライブラリ構築
【0121】
41ntのバーコードオリゴを、交互混合塩基(S:G/C;W:A/T)を有するgBlock Gene Fragment(Integrated DNA Technologies)内で生成して、以下の配列:(SW)18-AGGGA-(SW)18を生成した。変性バーコードに隣接する配列には、標準的なPhIP-Seq PCR1およびPCR2プライマー結合部位が組み込まれた51。18ナノグラムの出発UCIライブラリーを使用して40サイクルのPCRを行い、ライブラリーを増幅し、BglIIおよびPspxI制限部位を組み込んだ。次いで、MIPSAベクターおよび増幅されたUCIライブラリーを制限酵素で一晩消化し、カラム精製し、1:5のベクター対インサート比で連結した。連結されたMIPSAベクターを使用して、エレクトロコンピテントOne Shot ccdB 2 T1細胞(Thermo Fisher Scientific)を形質転換した。6回の形質転換反応により、約800,000コロニーを得て、pDEST-MIPSA UCIライブラリーを作製した。
【0122】
pDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーへのヒトORFeome組換え
【0123】
hORFeome v8.1からの150ngの各pENTR-hORFeomeサブプール(L1~L5)を、150ngのpDEST-MIPSA UCIライブラリープラスミドおよび2μlのGateway LR Clonase II mix(Life Technologies)と個別に合わせて、10μlの総反応容量とした。反応物を25℃で一晩インキュベートした。全反応物を50μlのOne Shot OmniMAX 2 T1ケミカルコンピテント大腸菌(Life Technologies)に形質転換した。全体として、形質転換により約120,000コロニーが得られ、これはhORFeome v8.1の複雑性の約10倍である。コロニーを収集し、掻き取ることによってプールした後、Qiagen Plasmid Midi Kit(Qiagen)を使用して、バーコード化pDEST-MIPSA-hORFeomeプラスミドMIPSA(ヒトORFeome DNAライブラリー)を精製した。ヒトhORFeome v8.1コレクションを、終止コドンなしでクローニングした;従って、提示されたタンパク質は、ポリAテールの翻訳から生じるポリリジンC末端を含み得る。MIPSAデスティネーションベクターのより最近のバージョンは、組換えORFとインフレームで終止コドンを含む。
【0124】
RTオリゴへのHaloリガンド結合およびHPLC精製
【0125】
100μgの5’アミン修飾オリゴHL-32_ad(表1)を、Haloリガンドである75μl(17.85μg/μl)のHaloタグ Succinimidyl Ester(O2)(Promega Corporation)と共に、0.1Mホウ酸ナトリウム緩衝液中で、Guら19に従って室温で6時間インキュベートした。3M NaClおよび氷冷エタノールをそれぞれ10%(v/v)および250%(v/v)で標識反応物に添加し、-80℃で一晩インキュベートした。反応物を12,000×gで30分間遠心分離した。ペレットを氷冷70%エタノールで1回すすぎ、10分間風乾した。
【0126】
Haloリガンド結合RTプライマーを、Brownlee Aquapore RP-300 7u、100×4.6mmカラム(Perkin Elmer)を使用して、0-70%CHCN/MeCN(アセトニトリルに対して100mM酢酸トリメチルアミン)の2緩衝液勾配を使用して70分間にわたってHPLC精製した。標識オリゴに対応する画分を回収し、凍結乾燥した(図15A~15C)。オリゴを1μM(15.4ng/μl)で再懸濁し、-80℃で保存した。
【0127】
MIPSAライブラリーIVT-RNA調製
【0128】
ヒトORFeome MIPSAライブラリープラスミド(4μg)をI-SceI制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で一晩直鎖化した。生成物をNucleoSpin Gel and PCR Clean Up kit(Macherey-Nagel)を用いてカラム精製した。HiScribe T7 High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs)を使用して40μlのインビトロ転写反応を行い、1μgの精製された直鎖化pDEST-MIPSAプラスミドライブラリーを転写した。生成物を60μlの分子生物学グレードの水で希釈し、1μlのDNAseIを添加した。反応物を37℃でさらに15分間インキュベートした。次いで、50μlの1 M LiClを溶液に添加し、-80℃で一晩インキュベートした。遠心分離機を4℃に冷却し、RNAを最大速度で30分間回転させた。上清を除去し、RNAペレットを70%エタノールで洗浄した。サンプルを4℃でさらに10分間スピンダウンし、70%エタノールを除去した。ペレットを室温で15分間乾燥し、続いて100μlの水に再懸濁した。サンプルを保存するために、1μlの40U/μl RNAseOUT Recombinant Ribonuclease Inhibitor(Life Technologies)を添加した。
【0129】
MIPSAライブラリーIVT-RNA逆転写および翻訳
【0130】
SuperScript IV First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を用いて逆転写反応物を調製した。最初に、1μlの10mM dNTP、1μlのRNAseOUT(40U/μl)、4.17μlのRNAライブラリー(1.5μM)、および7.83μlのHaloリガンドコンジュゲートRTプライマー(1μM、表1)を、単一の14μl反応物中で合わせ、65℃で5分間インキュベートし、続いて氷上で2分間インキュベートした。4マイクロリットルの5×RT緩衝液、1μlの0.1M DTT、および1μlのSuperScript IV RT酵素(200U/μl)を、氷上の14μlの反応物に添加し、42℃で20分間インキュベートした。単一の20μl RT反応物に36μlのRNAClean XPビーズ(Beckman Coulter)を加え、室温で10分間インキュベートした。ビーズを磁石で集め、70%エタノールで5回洗浄した。ビーズを室温で10分間風乾し、7μlの5mM Tris-HCl、pH8.5に再懸濁した。生成物を分光光度法で分析して、RNA収量を測定した。翻訳反応を、PURExpressΔRibosome Kit(New England Biolabs)を使用して氷上でセットアップした52。リボソームの最終濃度が0.3μMになるように反応を改変した。各10μlの翻訳反応について、4.57μlのRT反応を、4μlの溶液A、1.2μlのFactor Mix、および0.23μlのリボソーム(13.3μM)に添加した。この反応物を37℃で2時間インキュベートし、35μlの1×PBSで総容量45μlに希釈し、直ちに使用するか、または最終濃度25%(v/v)までグリセロールを添加した後に-80℃で保存した。
【0131】
翻訳されたMIPSA hORFeomeライブラリーの免疫沈降。
【0132】
5μlの血漿(PBSで1:100に希釈)を、45μlの希釈MIPSAライブラリー翻訳反応物(上記参照)と混合し、穏やかに撹拌しながら4℃で一晩インキュベートする。各IPについて、5μlのProtein A Dynabeadsおよび5μlのProtein G Dynabeads(Life Technologies)の混合物を、1×PBSを用いてそれらの元の体積の2倍で3回洗浄した。次いで、ビーズを元の容量で1×PBSに再懸濁し、各IPに添加した。抗体捕捉を4℃で4時間進行させた。ビーズを磁石上に集め、1×PBSで3回洗浄し、洗浄の間にチューブまたはプレートを交換した。次いで、ビーズを回収し、T7-Pep2_PCR1_FフォワードプライマーおよびT7-Pep2_PCR1_R+ad_minリバースプライマー(表1)ならびにHerculase-II(Agilent)を含有する20μlのPCRマスターミックスに再懸濁した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の最初の変性および酵素活性化工程、続いて95℃で20秒間、58℃で30秒間、および72℃で30秒間の20サイクル。最後の伸長工程を72℃で3分間行った。2マイクロリットルのPCR1増幅産物を、それぞれ10ntバーコード(それぞれi5およびi7)を含有するPhIP_PCR2_FフォワードプライマーおよびPhIP_PCR2_Rリバースプライマーを用いた20μlのデュアルインデックスPCR反応へのインプットとして使用した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、58℃で30秒間、および72℃で30秒間の20サイクル。最終伸長工程を、72℃で3分間行った。i5/i7インデックス化ライブラリーをプールし、カラム精製した(NucleoSpinカラム、Takara)。ライブラリーを、1×50nt SEまたは1×75nt SEプロトコルを使用してIllumina NextSeq 500上でシーケンシングした。MIPSA_i5_NextSeq_SPおよびスタンダード_i7_SPプライマーをi5/i7シーケンシングに使用した(表1)。出力は、不整合を許容することなくi5およびi7を使用して多重分離された。
【0133】
qPCRによるMIPSA実験の定量化のために、PCR1産物(上記)を以下のように分析した。PCR1反応の1:1,000希釈物4.6μlを、5μlのBrilliant III Ultra Fast 2X SYBR Green Mix(Agilent)、0.2μlの2μM参照色素および0.2μlの10μMフォワードおよびリバースプライマーミックス(標的UCIに特異的)に添加した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、60℃で30秒間を45サイクル。サーモサイクリングの完了後、増幅産物を融解曲線分析に供した。MIPSA免疫沈降実験のためのqPCRプライマーは、TRIM21についてはBG 2_FおよびBG 2_R、GAPDHについてはBG4_FおよびBG4_R、ならびにNT5C1AについてはNT5C1A_FおよびNT5C1A_Rであった(表1)。
【0134】
オリゴヌクレオチド
【0135】
表5にプローブ、プライマーおよびgRNAのリストを提供する。
【0136】
血漿サンプル
【0137】
全てのサンプルを、以下に記載されるように、プロトコル適格性基準を満たした対象から収集した。すべての試験は、試験参加者の権利およびプライバシーを保護し、元のサンプル収集およびその後の分析について、それぞれの施設内倫理委員会によって承認された。
【0138】
パンデミック前および健常対照血漿サンプル。全てのヒトサンプルは、2017年より前に、NIAID IRB承認の手順に従って、国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)、ワクチン研究センター(Vaccine Research Center、VRC)/国立アレルギー感染症研究所(National Institutes of Allergy and Infectious Diseases、NIAID)/NIHのプロトコル「VRC 000: Screening Subjects for HIV Vaccine Research Studies」(NCT00031304)の下で、収集した。
【0139】
非入院患者からのCOVID-19回復期血漿(CCP)。適格なCCPドナーは、前述のように研究担当者から連絡を受けた53。全てのドナーは少なくとも18歳であり、鼻咽頭スワブサンプル中のRNAの検出によるSARS-CoV-2の確定診断を有していた。基本的な人口統計学的情報(年齢、性別、COVID-19による入院)を各ドナーから得た;SARS-CoV-2の最初の診断および診断の日付を、カルテ審査によって確認した。
【0140】
重症COVID-19血漿サンプル。研究コホートは 、以下の条件を満たす入院患者を対照とした:1)COVID-19の確定診断;2)死亡または退院までの生存;および3)Johns Hopkins COVID-19 Remnant Specimen Biorepository(ジョンズ・ホプキンズ病院COVID-19患者の59%および在院日数≧3日を有する患者の66%を含む機会サンプル)中に残存検体を有する54,55。患者の結果は、世界保健機関(WHO)COVID-19疾患重篤度スケールによって定義された。この研究に含まれた重症COVID-19ジョンズ・ホプキンズからのサンプルは、死亡した17人の患者、人工呼吸後に回復した13人の患者、回復のために酸素投与を必要とした22人の患者、および補助酸素投与なしで回復した3人の患者から得られた。この研究は、JHU施設内倫理委員会(IRB00248332、IRB00273516)によって承認され、すべての標本および臨床データが、Johns Hopkins Institute for Clinical and Translational ResearchのCore for Clinical Research Data Acquisitionによって非特定化されたので、同意の権利放棄が認められ;研究チームは、同定可能な患者データへのアクセスを有さなかった。
【0141】
シェーグレン症候群および封入体筋炎(IBM)血漿サンプル。シェーグレン症候群サンプルをプロトコルNA_00013201の下で収集した。全ての患者は>18歳であり、インフォームドコンセントを得た。IBM患者サンプルをプロトコルIRB00235256の下で収集した。全ての患者がENMC 2011診断基準56を満たし、インフォームドコンセントを提供した。
【0142】
免疫ブロット分析
【0143】
5%β-MEを含有するLaemmli緩衝液をサンプルに添加し、5分間煮沸し、NuPAGE 4~12%Bis-Trisポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分析した。PVDF膜に移した後、ブロットを、0.1%Tween 20(TBST)および5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有する20mMトリス緩衝生理食塩水(pH 7.6)中、室温で30分間ブロッキングした。続いて、ブロットを、1:4,000(v/v)の一次抗FLAG抗体(#F3165、MilliporeSigma)と共に4℃で一晩インキュベートし、続いて、1:2,000(v/v)の抗マウスIgG、HRP結合二次抗体(#7076、Cell Signaling)中、室温で4時間インキュベートした。
【0144】
UCI-ORF辞書の構築。
【0145】
150ngのpDEST-MIPSA hORFeomeプラスミドライブラリーのタグメント化のためにNextera XTDNA Library Preparationキット(Illumina)を使用して、約1.5kbを中心とする最適なサイズ分布を得た。タグメント化ライブラリーを、T7-Pep2_PCR1_FフォワードおよびNextera Index 1 Readプライマーと共にHerculase-II(Agilent)を使用して増幅した。PCRサイクルは以下の通りであった:95℃で2分間の初期変性ステップ、続いて95℃で20秒間、53.5℃で30秒間、72℃で30秒間の30サイクル。最終伸長工程を、72℃で3分間行った。PCR反応を1%アガロースゲル上で行い、続いて約1.5kbの産物を切り出し、NucleoSpin GelおよびPCR Clean-upカラム(Macherey-Nagel)を用いて精製した。次いで、精製した産物を、PhIP_PCR2_FフォワードプライマーおよびP7.2リバースプライマー(プライマー配列のリストについては表1を参照のこと)を用いてさらに10サイクル増幅した。産物をゲル精製し、リード1についてはT7-Pep2.2_SP_subAプライマーを、リード2についてはMISEQ_MIPSA_R2プライマーを使用してMiSeq(Illumina)でシーケンシングした。リード1は、UCIを捕捉するために60bp長であった。第1のインデックスリードI1は、ORFへの50bpリードで置換した。I2は、サンプル逆多重化のためのi5インデックスを同定するために使用した。
【0146】
hORFeome v8.1配列を最初の50ntに切断し、非ユニーク配列に対応するORF名を「|」デリミタで連結した。Illumina MiSeqから読み取られた50ntのR2(ORF)の逆多重化された出力を、以下のパラメーターを有するRbowtie2パッケージを使用して、短縮型ヒトORFeome v8.1ライブラリーにアライメントさせた:options = "-a --very-sensitive-local"(57)。次いで、固有のFASTQ識別子を使用して、60bpのR1(UCI)リードから対応する配列を抽出した。これらの配列を、3’アンカーACGATAを使用して短縮し、そしてアンカーを有さない配列を除去した。さらに、18個未満のヌクレオチドを有する任意の短縮型R1配列を除去した。フィルタリング後に対応するUCIを依然として有するORF配列を、FASTQ識別子を使用して保持した。同じUCIを有するORFの名前を「&」デリミタで連結し、この最終辞書を使用して、ORF名およびUCI配列から構成されるFASTAアラインメントファイルを生成した。
【0147】
MIPSAシーケンシングデータのインフォーマティック分析
【0148】
Illumina出力FASTQファイルを、全てのUCI配列の後に定常ACGATアンカー配列を使用して切り詰めた。次に、完全マッチアラインメントを使用して、UCI-ORFルックアップディクショナリを介して短縮配列をそれらの連結されたORFにマッピングした。行が個々のUCIに対応し、列がサンプルに対応するリードカウント行列を構築した。edgeRソフトウェアパッケージ58を使用し、これは、負の二項モデルを使用して、各サンプルにおいて検出されたシグナルを、血漿なしで行われた陰性対照(「モック」)IPのセットと比較して、最大尤度倍数変化推定値およびすべてのサンプルにおける各UCIについての検定統計量を返し、したがって、倍数変化および-log10(p値)行列を作成した。反復IPからのEdgeR出力データの比較によって、有意に濃縮されたUCI(「ヒット」)は、少なくとも15のリードカウント、0.001未満のp値、および少なくとも3の倍数変化を必要とするはずであることが確立された。ヒット倍数変化行列は、「ヒット」について倍数変化値を報告し、ヒットではないUCIについて「1」を報告する。
【0149】
タンパク質配列類似性
【0150】
hORFeome v8.1ライブラリー中のタンパク質間の配列相同性を評価するために、blastpアラインメントを用いて、各タンパク質配列を他のすべてのライブラリーメンバーと比較した(パラメーター:「-outfmt 6 -evalue 100 -max_hsps 1 -soft_masking false -word_size 7 -max_target_seqs 100000」)。ヒト90-aaファージディスプレイライブラリーにおける反応性ペプチド間の配列相同性を評価するために、epitopefindr59ソフトウェアを使用した。
【0151】
ファージ免疫沈降シーケシング(PhIP-Seq)分析P
【0152】
hIP-Seqは、以前に発表されたプロトコールに従って行われた51。簡潔には、0.2μlの各血漿を個々に90-aaヒトファージライブラリーと混合し、プロテインAおよびプロテインG被覆磁気ビーズを使用して免疫沈降させた。6~8個のモック免疫沈降(血漿投入なし)のセットを各96ウェルプレート上で実行した。磁気ビーズをPCRマスターミックスに再懸濁し、サーモサイクリングに供した。第2のPCR反応を、サンプルバーのために使用した。アンプリコンをプールし、1×50nt SEまたは1×75nt SEプロトコルを使用してIllumina NextSeq 500機器でシーケンシングした。ヒトライブラリーを用いたPhIP-Seqを使用して、健常な対照からの血漿の収集物中の自己抗体を特徴付けた。重症COVID-19コホートとの公平な比較のために、陽性個体の両方においてIFN-λ3反応性を検出するために必要とされたであろう最小シーケンシング深度を最初に決定した。その場合にのみ、健常なコホートからの423個のデータセットを、この最小閾値よりも大きいシーケンシング深度で検討した。これらの423個体のいずれも、IFN-λ3由来の任意のペプチドに対して反応性であることが見出されなかった。
【0153】
I/III型インターフェロン中和アッセイ
【0154】
IFN-α2(カタログ番号11100-1)、IFN-λ1(カタログ番号1598-IL-025)およびIFN-λ3(カタログ番号5259-IL-025)は、R&D Systemsから購入した。20マイクロリットルの血漿を、100U/mlのIFN-α2または1ng/mlのIFN-λ3のいずれか、および180μlのDMEMと共に、200μlの総体積で室温で1時間インキュベートした後、48ウェル組織培養プレート中の7.5×10 A549細胞に添加した。4時間のインキュベーション後、細胞を1×PBSで洗浄し、細胞mRNAを抽出し、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を使用して精製した。600ngの抽出mRNAをSuperScript III First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を使用して逆転写し、qPCR実行のためにQuantStudio 6 Flex System(Applied Biosystems)上で10倍に希釈した。PCRは2段階サイクリングプロトコールを実行し、95℃で3分間のサイクル、続いて95℃で15秒間および60℃で30秒間の45サイクルからなる。MX1発現をインターフェロンによる細胞刺激の尺度として選択し、相対的mRNA発現をGAPDH発現に対して正規化した。GAPDHおよびMX1のqPCRプライマーは、Integrated DNA Technologiesから入手した(表1)。抗hIFN-α2-IgG(カタログ番号mabg-hifna-3)および抗hIL-28b-IgG(カタログ番号mabg-hil28b-3)はInvivoGenから購入した。mabg-hifna-3についての製造業者の注記:「この抗体は、hIFN-α1、hIFN-α2、hIFN-α5、hIFN-α8、hIFN-α14、hIFN-α16、hIFN-α17およびhIFN-α21と反応する;hIFN-α4およびIFN-α10とは非常に弱く反応する;hIFN-α6またはhIFN-α7とは反応しない」。mabg-hil28b-3についての製造業者の注記:「ヒトIL-28AおよびヒトIL-28Bと反応します。」。
【0155】
結果
【0156】
MIPSAシステムの開発
【0157】
E.coli無細胞翻訳のためのMIPSAゲートウェイデスティネーションベクターは、以下の重要な要素を含有する:T7 RNAポリメラーゼ転写開始部位、等温ユニーククローン識別子(「UCI」)バーコード配列、E.coliリボソーム結合性部位(RBS)、N末端Haloタグ融合タンパク質(891nt)、ORF挿入のための組換え配列、およびプラスミド直鎖化のためのホーミングエンドヌクレアーゼ(I-SceI)部位。組換えORF含有pDEST-MIPSAプラスミドを図1Aに示す。
【0158】
転写開始部位とリボソーム結合性部位との間に位置する確率的等温UCIを含むpDEST-MIPSAプラスミドのライブラリーを確立することが最初に求められた。融解温度(Tm)バランスのとれた配列:(SW)18-AGGGA-(SW)18(式中、SはCおよびGの等量混合物を表し、WはAおよびTの等量混合物を表す)を含む縮重オリゴヌクレオチドプールを合成した(図1B)。配列のこの安価なプールは、(i)固有のORF標識のために十分な複雑性(236~7×1010)を提供し、(ii)歪みなく増幅し、(iii)対象の個々のUCIの測定のためのORF特異的フォワードおよびリバースqPCRプライマー結合部位として役立つと推論された。縮重オリゴヌクレオチドプールをPCRによって増幅し、MIPSAデスティネーションベクターに制限クローニングし、E.coliに形質転換した(方法)。約800,000個の形質転換体を選択プレートから掻き取って、pDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーを得た。ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)および既知の自己抗原、トリパータイトモチーフ含有-21(TRIM21、一般にRo52として知られる)をコードするORFを、pDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーに別々に組み換えた。個々にバーコード化されたGAPDHおよびTRIM21クローンを単離し、シーケンシングし、以下の実験に使用した。
【0159】
MIPSAの手順は、スクシンイミジルエステル(O2)-ハロアルカン(Haloリガンド)結合RTプライマーを使用するUCIのRTを含む(図6A~6C)。結合されたRTプライマーは、E.coliリボソームのアセンブリおよび翻訳の開始を妨害すべきではないが、Haloリガンド-Haloタグ-タンパク錯体のカップリングが翻訳のさらなるラウンドを妨害し得るように十分に近位であるべきである。リボソーム結合部位の3’末端に対して-42ヌクレオチド~-7ヌクレオチドの範囲の距離でアニールする一連のRTプライマーを評価した(図1D)。これらの異なる位置においてプライマーで飽和されたmRNAからのタンパク質産物の収量に基づいて、翻訳効率を妨害しなかった-32位を選択した(図1E)。対照的に、RBSの20ヌクレオチド内に位置するプライマーからのRTは、最小15ヌクレオチドのmRNAを保護することが示されているアセンブルされた70S E.coliリボソームの推定フットプリントと一致して、タンパク質翻訳を減少または消失させた18
【0160】
5’末端をHaloリガンドで標識したプライマーからSuperScript IVがRTを行うことができるかどうか、およびHaloタグ-TRIM21タンパク質が翻訳反応の間にHaloリガンド結合プライマーと共有結合を形成することができるかどうかを評価した。Haloリガンドコンジュゲーションおよび精製は、Guらに従った(Methods、図A~15C)19。非コンジュゲートRTプライマーまたはHaloリガンドコンジュゲートRTプライマーのいずれかを、バーコード化Haloタグ-TRIM21 mRNAのRTのために使用した。次いで、翻訳産物を、プロテインAおよびプロテインGでコーティングされた磁気ビーズを使用して、健常なドナー由来の血漿またはシェーグレン症候群(SS)を有するTRIM21(Ro52)自己抗体陽性患者由来の血漿で免疫捕捉(すなわち、免疫沈降、「IP化」)した。SS血漿は、RTプライマー結合にかかわらず、TRIM21タンパクを効率的にIP化したが、Haloリガンド結合プライマーをRT反応に使用した場合、TRIM21 UCIのみをプルダウンした(図10F~10G)。
【0161】
cis対transUCIバーコード化のレベルの評価
【0162】
先の実験は、実際にHaloリガンドがRTプライミングを妨げないこと、およびHaloタグが翻訳反応の間にHaloリガンドと共有結合を形成することができることを示したが、cis(錯体内、望ましい)対trans(錯体間、望ましくない)Haloタグ-UCIコンジュゲーションの量を解明しなかった(図16A~16C)。ここで、「複合体内」は、タンパク質をコードする同じRNA分子と会合するUCIへのコンジュゲーションとして定義される。cisおよびtransのHaloタグ-UCIコンジュゲーションの量を測定するために、GAPDHおよびTRIM21 mRNAを別々に逆転写し(Haloリガンドコンジュゲートプライマーを使用して)、次いで、インビトロ翻訳のために1:1で混合するかまたは別々に維持した。予想通り、混合物の翻訳は、個々の翻訳と比較してほぼ等量の各タンパク質を産生した(図8)。翻訳条件にかかわらず、SS血漿はTRIM21タンパク質を特異的にIP化した(図8、IPed画分)。しかしながら、SS IPは高レベルのTRIM21 UCIを含んでいる一方で、mRNAが翻訳前に混合された場合、HC血漿によるものと比較して、より多くのGAPDH UCIがSS血漿によってプルダウンされたことが注目された。これは、実際にいくらかの量のtransバーコード化が生じることを示す(図11A)。本発明者らは、タンパク質の約50%がcis-バーコード化され、残りの50%がtrans-バーコード化されたタンパク質が両方のUCIに等しくコンジュゲートしていると推定する。したがって、この二成分系では、TRIM21タンパク質の25%がGAPDH UCIにコンジュゲートしている(図16A~16C)。
【0163】
複雑なライブラリーの設定において、各タンパク質の約50%がtransバーコード化される場合であっても、この副産物は、低レベルの無作為にサンプリングされたUCIと関連するはずである。本発明者らは、100倍過剰の第2のGAPDHクローンから構成されるモックMIPSAライブラリーを使用してこれを試験し、これを第1のGAPDHおよびTRIM21クローンの1:1混合物と組み合わせた(図2B)。
【0164】
確率的にバーコード化されたヒトORFeome MIPSAライブラリーの確立およびデコンボリューション
【0165】
配列が検証されたヒトORFeome(hORFeome)v8.1は、Gateway Entryプラスミド(pDONR223)中の11,437個の遺伝子にマッピングされる12,680個のクローンORFから構成される20。ライブラリーの5つのサブプールを作製し、それぞれ、約2,500個の同様のサイズのORFから構成された。5つのサブプールの各々を別々にpDEST-MIPSA UCIプラスミドライブラリーに組み換え、形質転換して、約10倍のORFカバレッジ(サブプール当たり約25,000クローン)を得た。各サブプールを、Bioanalyzer電気泳動、約20個のコロニーのシーケンシング、および合わせたスーパープールのIlluminaシーケンシングによって評価した。TRIM21プラスミドをスーパープールしたhORFeomeライブラリーに、典型的なライブラリーメンバーである1:10,000でスパイクした。次いで、リードアウトとしてシーケンシングを使用して、hORFeome MIPSAライブラリーに対してSS IP実験を行った。スパイクインされたTRIM21を含むライブラリ内の全てのUCIからのリードカウントは、図11Cにおいて、8つのモックIPの平均に対するSS IPについて示されている。確かに、TRIM21のSS自己抗体依存的濃縮(17倍)は、モデル系と同様であった(図11D)。シーケンシングデータのための分析パイプラインの説明については、方法セクションにおけるMIPSAシーケンシングデータのインフォーマティック分析を参照されたい。
【0166】
次に、タグメンテーションおよびシーケンシングを使用して、UCI-ORFルックアップ辞書を作成するためのシステムを確立した(図3A)。5’50ntのORFインサートのシーケンシングにより、11,887個のユニークな5’50ntライブラリー配列のうち11,076個が検出された。検出された153,161のUCIのうち、82.9%(126,975)が、単一のORF(「単一特異性UCI」と呼ばれる)に関連することが見出された。各ORFは、中央値9(0~123の範囲)の単一特異性UCIと一意的に関連していた(図3B)。重要なことに、一貫した挙動を有する単一特異性UCIのアンサンブルは、それらの関連するORFの反応性についてのさらなる強力な支持を提供することができる。UCI数とORFサイズとの間の弱い逆相関が認められ、これは、プールされた組換え反応におけるより大きなORF含有プラスミドのより低い効率の組換えを反映している可能性が最も高い。各ORFに対応するリードカウントの集計後、表示されたORFの99%超が、ORF存在量中央値の10倍の差内に存在していた(図3C)。まとめると、これらのデータは、11,076個の確率的にインデックス付けされたヒトORFの均一なライブラリーが確立され、下流の分析のためのルックアップ辞書を定義したことを示す。図3Dは、8個のモックhORFeomeの平均に対するSS IPのUCIリードカウント、および予想通りy=x対角線に沿って現れる47個のディクショナリデコードされたGAPDH単一特異性UCI(IPSライブラリに存在する2つのGAPDHアイソフォームに対応する)を示す。曖昧さを避けるために、1つより多いORFに関連する任意のUCIをさらなる分析から除外した。
【0167】
重症COVID-19に関連する自己抗体の不偏MIPSA分析
いくつかの最近の報告は、重症COVID-19患者における自己抗体反応性の上昇が報告されている21-25。臨床メタデータの利用可能性が不完全であったため、ここでは入院のみに基づいて定義した55名の重症COVID-19患者の血漿中の自己反応性を不偏同定するために、ヒトORFeomeライブラリーを用いてMIPSAを用いた。比較のために、MIPSAを使用して、10人の健常なドナーおよび入院していない10人のCOVID-19の回復期血漿ドナーからの血漿中の自己反応性を検出した(表2)。ファージ免疫沈降シーケンシング(PhIP-Seq)分析について以前に行ったように、各サンプルを、血漿を除く全ての反応成分を含有する8つの「モックIP」のセットと比較し、同じプレート上で実行した。モックIPとの比較は、ライブラリーおよびバックグラウンド結合における偏りを説明する。抗体依存性反応性を検出するために使用されるインフォーマティックパイプライン(Methods)は、モックIP当たり中央値5(2~9の範囲)の偽陽性UCIヒットをもたらした。しかし、重症COVID-19患者からの血漿を使用したIPは、重症COVID-19患者の間で平均83個の反応性タンパク質を生じ、これは、健常なパンデミック前の対照の間での平均64個の反応性タンパク質よりも有意に多く、軽度から中等度のCOVID-19後に回復した個体の間での平均62個の反応性タンパク質よりも有意に多かった(それぞれp=0.02およびp=0.05、片側t検定;図4A)。
【0168】
少なくとも2つの反応性UCI(同じIP内)を有し、少なくとも1人の重症患者において反応性であり、2人以上の対照(健常または軽度/中等度の回復期血漿中)において反応性でなかった重症COVID-19 IPにおいてタンパク質を調べた。タンパク質は、1人の重症の患者および1人の対照において反応性であった場合には除外した。これらの基準を満たした103個のタンパク質を図4Bのクラスターマップに示す。55人の重症COVID-19患者のうちの51人が、これらのタンパク質の少なくとも1つに対して反応性を示した。複数の個体において同時に生じるタンパク質反応性が注目され、その大多数は、タンパク質配列アラインメントによる相同性を欠く。表4は、それらがヒト自己抗原データベースAAgAtlas 1.0.26に従って以前に定義された自己抗原であるかどうかを含む、これらの反応性タンパク質に関する要約統計量を提供する。タンパク質は、少なくとも1人の重症患者において少なくとも2つの反応性UCIを有し、1より多い対照(健常または軽度/中等度の回復期血漿)において反応性でなかった場合に含まれた。タンパク質は、1人の重症の患者および1人の対照において反応性であった場合には含めなかった。各行は、アルファベット順にタンパク質によって編成された単一のUCIに対応する(遺伝子記号は下線の左に提供される)。各カラムは個々のCOVID-19患者である。UCIリードカウントがモックIPに対して有意に濃縮されなかった場合、それは「1」として報告される。UCIリードカウントがモックIPに対して有意に濃縮された場合、倍数変化推定値(EdgeRから)が提供される。
【0169】
1つの注目すべき自己反応性クラスター(表4、クラスター#5)は、5’-ヌクレオチダーゼ、細胞質基質1A(NT5C1A)を含み、これは、骨格筋において高度に発現され、封入体筋炎(IBM)において最もよく特徴付けられた自己抗体標的である。NT5C1Aに連鎖する複数のUCIは、55人の重症COVID-19患者のうちの3人(5.5%)において有意に増加した。NT5C1A自己抗体は、IBM患者の最大70%、シェーグレン症候群(SS)患者の約20%、および健常ドナーの最大約5%において報告されている27。したがって、重症COVID-19コホートにおけるNT5C1A反応性の罹患率は必ずしも上昇しない。しかし、本発明者らは、MIPSAが、NT5C1A反応性に基づいて、健常なドナーとIBM血漿とを確実に区別することができるかどうか疑問に思った。10人の健常ドナーおよび10人のIBM患者からの血漿を使用し、後者は、PhIP-Seqによって決定されたNT5C1A血清陽性に基づいて選択した。この独立コホートにおける対照からの患者の明確な分離は、MIPSA特異的qPCRまたはライブラリシーケンシングのいずれかを使用する臨床診断試験において、UCIが実際に有用性を有し得ることを示唆しており、これらは密接に相関するリードアウトであった(図4C)。
【0170】
重症COVID-19患者におけるI型およびIII型インターフェロン中和自己抗体
【0171】
I型インターフェロンアルファ(IFN-α)およびオメガ(IFN-ω)を標的とする中和自己抗体は、重症COVID-19と関連付けられている15,22,28。IFN-α16を除く全てのI型インターフェロンは、ヒトMIPSA ORFeomeライブラリに表されており、ルックアップ辞書に注釈が付けられている。IFN-α4、IFN-α17、およびIFN-α21は、それらをコードするORF配列の最初の50ヌクレオチドによって区別できないので、単一のORFとして分析される。このコホートにおける重症COVID-19患者のうちの2人(P1およびP2)(3.6%)は、劇的なI型IFN自己反応性を示した(49および46のI型インターフェロンUCI、多くのIFN-αおよびIFN-ωに対応する11の別個のORFにわたって。図5Aおよび図5B)。これらのタンパク質の広範な共反応性は、それらの配列相同性に起因する可能性が高い(図9)。陽性と見なすために少なくとも2つの反応性IFN UCIを必要とすることにより、検出可能なレベルのIFN-α反応性を有するさらに2つの重篤なCOVID-19血漿(P3およびP4)が同定され、それぞれ2つの反応性IFN-α UCIのみであった。これら4つのIFN-α自己反応性患者のうち50%が死亡したが、残りのコホートでは約30%であった。興味深いことに、1つのさらなる血漿(P5)は、任意のI型またはII型インターフェロン由来のUCIを沈降させなかったが、III型インターフェロンIFN-λ3由来の5つのUCIを沈降させた(図5C、5D)。この患者もCOVID-19で死亡した。重症COVID-19患者の間でさらなるインターフェロン自己反応性は検出されなかった。健常または非入院COVID-19対照のいずれも、2つ以上のインターフェロンUCIに対して陽性でなかった。
【0172】
I型およびIII型インターフェロンの両方を中和するP2血漿を用いたMIPSAの能力を評価した。MIPSAをP2血漿中で3回実施し、ヒットの一貫した検出および低い変動係数(平均CV=22%)の両方において、高レベルのアッセイ再現性を得た(図19A、19B)。アッセイの線形性は、P2血漿を健常な血漿中に10倍希釈し、次いで再びMISPAを行うことによって評価した。結果は、反応性間のシグナルの一貫した減少(反応性インターフェロンについて平均5.4倍)、およびいくつかのヒット、特に単一反応性UCIを有するORFの検出の喪失を実証する。
【0173】
A549ヒト腺癌肺上皮細胞を100U/mlのIFN-αまたは1ng/mlのIFN-λ3とともに無血清培地中で4時間インキュベートすると、IFN応答遺伝子MX1がそれぞれ約1,000倍および約100倍強く上方制御される。血漿P1、P2、またはP3とのIFN-α2のプレインキュベーションは、MX1上方制御を完全に無効にした(図5E)。MIPSAによる最も弱いIFN-α反応性を有する血漿P4は、サイトカインを部分的にしか中和しなかった。HCまたはP5血漿のいずれも、IFN-α2処置に対するA549細胞の応答に対していかなる効果も有さなかった。しかしながら、IFN-λ3サイトカインのMIPSA陽性血漿、P2およびP5とのプレインキュベーションは、インターフェロン応答を除去した(図5F)。他の血漿(HC、P1、P3またはP4)はいずれも、IFN-λ3に対するA549細胞の応答に対していかなる効果も有さなかった。IFN-α2およびIFN-λ3モノクローナル抗体を使用した滴定曲線と比較すると、患者P2血漿を3回使用した連続滴定により、これらの自己抗体の循環レベルがそれぞれ~20μg/mlおよび~100ng/mlであることが示された(図11A、11B)。連続希釈したIFN-α2 mAbのMIPSA分析は、広範なIFN-α交差認識を示したが、適切なI型またはIII型インターフェロンに対するmAbの相互排他的な結合を示した(図12A、12B)。重要なこととして、本発明者らは、MIPSA検出感度の損失が、IFN-α2およびIFN-λ3の中和活性も失われる同等以上の血漿希釈に相当することに注目した。最後に、P2の自己抗体の力価は、IFN-γ1中和よりもIFN-γ3中和に対して少なくとも10倍の優先性を示した(図13)。要約すると、この重症COVID-19コホートのMIPSAベースの自己抗体プロファイリングは、患者の7.3%において強力に中和するIFN-α自己抗体が同定され、および患者の3.6%において強力に中和するIFN-λ3自己抗体を同定され、単一の患者(1.8%)は両方の自己反応性を保有していた。
【0174】
次いで、90 aaヒトペプチドームライブラリー29を有するファージ免疫沈降シーケシング(PhIP-Seq)もまた、このコホートにおいてインターフェロン抗体を検出し得るかどうかを決定した。PhIP-Seqは、P1およびP2からの血漿中でIFN-α反応性を検出したが、その程度ははるかに低かった(図5G)。P3およびP4の血漿中のMIPSAによって検出された2つのより弱いIFN-α反応性は、両方ともPhIP-Seqによって失われた。PhIP-Seqは、MIPSAによって陰性であった単一のさらなる弱いIFN-α反応性サンプルを同定した(図示せず)。両方の技術は、III型インターフェロン自己反応性(IFN-λ3のみを対象とする)を検出した。PhIP-Seqデータを使用して、これらのI型およびIII型インターフェロン自己抗原における優性エピトープの位置を絞り込んだ(IFN-αについては図5H;IFN-λ3についてはアミノ酸位置45~135)。
【0175】
一般集団における以前に報告されていないIFN-λ3自己反応性の罹患率、およびそれが重症COVID-19を有する患者の間で増加し得るかどうかを評価した。PhIP-Seqは、423人の健常な対照の血漿をプロファイリングするために以前に使用されており、そのいずれも、検出できるIFN-λ3自己反応性を有することが見出されなかった30。これらのデータは、IFN-λ3自己反応性が、重症COVID-19を有する個体の間でより頻繁である可能性が高いことを示唆する。これは、中和IFN-λ3自己抗体を記載する最初の報告であり、したがって、患者のサブセットにおいて生命を脅かすCOVID-19に寄与する潜在的に新規な病原性機構を提供する。
【0176】
考察
【0177】
ここで、新規な分子ディスプレイ技術が、全長タンパク質について提示され、これは、タンパク質マイクロアレイ、PLATO、および代替技術を超える重要な利点を提供する。MIPSAは、自己組織化を利用して、25kDaのHaloタグドメインを介して比較的短い(158nt)一本鎖バーコードに連結されたタンパク質のライブラリーを産生する。このコンパクトなバーコード化アプローチは、かさ高い連結カーゴ(例えば、酵母、細菌、ウイルス、ファージ、リボソーム、mRNA、cDNA)を有する代替ディスプレイフォーマットに利用できない多数の用途を有する可能性が高い。実際に、最小DNAバーコードをタンパク、特に抗体および抗原に個々にコンジュゲートすることは、CITE-Seq31、LIBRA-seq32、および関連する方法論を含むいくつかの設定において有用であることが既に証明されている33。プロテオームスケールで、MIPSAは、タンパク質-抗体、タンパク質-タンパク質、およびタンパク質-小分子相互作用の偏りのない分析、ならびに例えばハプテン修飾研究34またはプロテアーゼ活性プロファイリング35などの翻訳後修飾の研究を可能にする。MIPSAの重要な利点には、その高いスループット、低いコスト、単純なシーケンシングライブラリー調製、PhIP-Seqとの固有の適合性、およびタンパク質-DNA複合体の安定(ディスプレイライブラリーの操作および保存に重要)が含まれる。重要なことに、MIPSAは、専門の訓練または機器を必要とせず、ハイスループットシーケンシング機器または設備への単なるアクセスを必要とするので、標準的な分子生物学研究所によって直ちに採用され得る。
【0178】
MIPSAを使用して重症COVID-19患者において検出された自己抗体
【0179】
中和IFN-α/ω自己抗体は、重症COVID-19疾患を有する患者において記載されており、病原性であると推定されている22。これらの既存の自己抗体は、一般集団において非常に稀にしか存在せず、細胞培養におけるウイルス複製の制限を遮断し、したがって、病気の消散を妨げる可能性が高い。この発見は、生命を脅かすCOVID-19のリスクがある個体のサブセットを同定する道を開いて、この患者集団におけるインターフェロンβの治療用途を提案した。この研究において、MIPSAは、IFN-αサイトカインの全ファミリーに対して広範な反応性を有する2人の個体を同定した。実際、両方の個体に加えて、MIPSAによって検出されたより弱いIFN-α反応性を有する2人の個体からの血漿は、肺腺癌細胞培養モデルにおいて組換えIFN-α2を強く中和した。
【0180】
III型IFN(IFN-λ、IL-28/29としても知られる)は、主にバリア部位で作用する強力な抗ウイルス活性を有するサイトカインである。IFN-λに対するIFN-λR1/IL-10RBヘテロ二量体受容体は、肺上皮細胞上で発現され、ウイルス感染に対する自然応答にとって重要である。Mordsteinらは、マウスにおいて、IFN-λが病原性を減少させ、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、およびサーズコロナウイルス(SARS-CoV-1)の複製を抑制することを明らかにした36。IFN-λは、抗ウイルス細胞状態の誘導を介するのではなく、免疫細胞との刺激相互作用を介してインビボでその抗ウイルス活性の多くを発揮することが提唱されている37。しかしながら、IFN-λは、初代ヒト気管支上皮細胞38、初代ヒト気道上皮培養物39、および初代ヒト腸上皮細胞40において、SARS-CoV-2複製を強く制限することが見出されている。これらの研究を総合すると、中和IFN-λ自己抗体がSARS-CoV-2感染を悪化させ得る多面的機構を示唆している。
【0181】
55人の重症COVID-19患者のうち、MIPSAは、IFN-λ3反応性自己抗体を有する2人の個体を検出した。本発明者らは、これらの患者の血漿中のIFN-λ3中和能を試験し、組換えサイトカインに対する細胞応答のほぼ完全な消失を観察した(図5F)。これらのデータは、IFN-λ3自己反応性が、重症COVID-19疾患に寄与する新規の潜在的な病原性機構であることを提案する。
【0182】
Casanovaらは、試験したI型IFN自己抗体を有する101人の個体のうち、III型IFN中和抗体を全く検出しなかった22。この研究において、4人のIFN-α自己反応性個体のうちの1人(P2、22歳男性)もまた、IFN-λ3を中和する自己抗体を有していた。この共反応性は非常に稀であり、したがってCasanovaコホートにおいて示されない可能性がある。あるいは、異なるアッセイ条件が異なる検出感度を示すことが可能である。Casanovaらは、A549細胞を50ng/mlのIFN-λ3と共に、血漿中でプレインキュベートせずに培養したが、ここでは、A549細胞を、血漿中で1時間プレインキュベートした後、1ng/mlのIFN-λ3と共に培養した。STAT3リン酸化のそれらのリードアウトはまた、MX1発現の上方制御と比較して異なる検出感度を提供し得る。より大規模な研究は、重症COVID-19患者および対応する対照におけるこれらの反応性の真の頻度を決定するはずである。ここで、重症COVID-19を有する55人の患者のコホートにおいて、それぞれ4人(7.3%)および2人(3.6%)の個体における強力に中和するIFN-αおよびIFN-λ3自己抗体の検出が報告されている。IFN-λ3自己抗体は、パンデミック前に収集された423人の健常対照のより大きなコホートにおいて、PhIP-Seqを介して検出されなかった。
【0183】
外因的に投与されたIII型インターフェロンは、SARS-CoV-2感染の治療薬として提案されており39,41-45、現在、COVID-19に関連する罹患率および死亡率の低減における効力についてペグ化IFN-λ1を試験するための3つの進行中の臨床試験がある(ClinicalTrials.gov Identifiers:NCT04343976、NCT04534673、NCT04344600)。1つの最近完了した二重盲検プラセボ対照治験、NCT04354259は、外来患者設定における軽度から中等度のCOVID-19患者の間で、7日目にSARS-CoV-2の2.42logコピー/mlの有意な減少を報告した(p=0.0041)46。将来の研究は、抗IFN-λ3自己抗体が既存であるか、またはSARS-CoV-2感染に応答して生じるかどうか、およびそれらがどのくらい頻繁にIFN-λ1を交差中和するかを決定する。P2からの中和データ(図13)ならびにIFN-λ1およびIFN-λ3の配列アラインメント(約29%相同性、図9)に基づいて、交差中和はまれであると予想され、中和IFN-λ3自己抗体を有する患者がペグ化IFN-λ1治療から利益を得る可能性を生じさせる。
【0184】
特徴付けられていない自己反応性のクラスターが複数の個体において観察されたが、それらが重症COVID-19において、たとえあったとしても、どのような機能を果たし得るかは明らかではない。より大規模な研究において、本発明者らは、同時に起こる反応性、または関連する生物学的機能を有するタンパク質に対する反応性のパターンが、重症COVID-19に関連する新たな自己免疫症候群を究極的に規定し得ることを予測する。
【0185】
MIPSAおよびPhIP-Seqの相補性
【0186】
ディスプレイ技術はしばしば互いに補完し合うが、通常の同時使用には適していない場合がある。MIPSAは、PhIP-Seqよりも、インビトロで十分に発現されたタンパク質上の立体構造エピトープに対する抗体を検出する可能性が高い。これは、PhIP-Seqを介してあまり敏感に検出されなかったMIPSAを介したインターフェロンα自己抗体のロバストな検出によって例証された。一方、PhIP-Seqは、ORFeomeライブラリーに存在しないか、または無細胞溶解物中で十分に発現され得ないかのいずれかであるタンパク質内に含まれるより少ない立体構造エピトープに対する抗体を検出する可能性がより高い。MIPSAおよびPhIP-Seqは、これらの方法で互いに自然に相補するので、本発明者らは、MIPSA UCI増幅プライマーを、本発明者らがPhIP-Seqに使用したものと同じになるように設計した。MIPSAおよびPhIP-Seqは、ファージ調製物中でも安定であるので、単一セットの増幅およびシーケンシングプライマーを使用して、単一反応で一緒に容易に実施することができる。これらの2つの表示モダリティの互換性は、それらの相乗効果を活用する障壁を低下させる。
【0187】
MIPSAシステムのバリエーション
【0188】
MIPSAの重要な側面は、別のライブラリーメンバーのUCIのtransでの結合と比較して、タンパク質のその関連するUCIへのcisでの結合を含む。ここでは、Haloタグ/Haloリガンドシステムを介して共有結合を利用したが、他のものも同様に機能し得る。例えば、SNAPタグ-tag(DNA repair protein O6-alkylguanine-DNA alkyltransferaseの20kDa突然変異体)は、ベンジルグアニン(BG)誘導体と共有結合を形成する47。したがってBGを用いてHaloリガンドの代わりにRTプライマーを標識することができる。SNAPタグの変異誘導体であるCLIPタグは、O2-ベンジルシトシン誘導体に結合し、これもMIPSAに適合させることができる48
【0189】
Haloタグ成熟およびリガンド結合の速度は、cis対transUCIコンジュゲーションの相対収率に重要である。Samelsonらの研究によると、Haloタグタンパク質の生産速度は、Haloタグの機能成熟速度の約4倍である49。典型的なタンパク質サイズがORFeomeライブラリーにおいて<1,000アミノ酸であることを考慮すると、これらのデータは、ほとんどのタンパクが、Haloタグ成熟の前に、したがってcisHaloリガンドコンジュゲーションが起こり得る前に、リボソームから放出されるはずであり、それによって望ましくないtransバーコード化に有利に働くことを予測する。しかしながら、ここでは、約50%のタンパク質-UCIコンジュゲートがcisで形成され、それによって、複合体ライブラリーの設定において優れたアッセイ性能を可能にすることが観察された。最適化実験の間、翻訳混合物から放出因子を排除することによって、cisバーコード化の速度がわずかに改善されることが見出され、これは、リボソームをそれらの終止コドン上で失速させ、Haloタグ成熟がそのUCIに近接して継続することを可能にする。制御されたリボソーム失速を促進するための代替のアプローチは、終止コドン除去/抑制またはドミナントネガティブ終止因子の使用を含み得る。次いで、リボソーム放出は、鎖ターミネーターであるピューロマイシンの添加を介して誘導され得る。
【0190】
UCI cDNAは、IVT-RNAの5’UTR上に形成されるので、真核生物リボソームは、5’キャップから開始Kozak配列まで走査することができない。したがって、本明細書に記載されるMIPSA系は、キャップ依存性真核無細胞翻訳系と不適合である。しかし、キャップ依存性翻訳が所望される場合、2つの代替的な方法が開発され得る。第1に、配列内リボソーム進入部位(IRES)がRTプライマーとKozak配列との間に配置される場合、現在の5’UCI系が使用され得る。第2に、RTがORF内に伸長するのを防止するという条件で、代わりにUCIをRNAの3’末端に導入することができる。真核生物培養MIPSAの拡張において、RNA-cDNAハイブリッドは、生きている細胞または組織に潜在的にトランスフェクトされ得、ここで、UCIタンパク形成がin situで起こり得、多くのさらなる適用を可能にする。
【0191】
ORF関連UCIは、様々な方法で具体化することができる。ここで、確率的に割り当てられたインデックスを、約10倍の表示でヒトORFeomeに割り当てた。このアプローチは、2つの主な利点を有する:第1に、単一の縮重オリゴヌクレオチドプールが低コストである;第2に、複数の独立した測定が、各ORFに関連するUCIのアンサンブルによって報告される。ここでライブラリーは、均一なGC含量、したがって均一なPCR増幅効率を有するUCIを有するように設計された。簡単にするために、固有分子識別子(UMI)をRTプライマーに組み込まないことを選択したが、このアプローチはMIPSA UMIと互換性であり、定量化を潜在的に増強し得る。確率的インデックス付けの1つの欠点は、ORFドロップアウトの可能性、したがって、比較的高いUCI表現の必要性であり、これは、各UCIを定量化するために必要とされるシーケンシングの深さ、したがって、全体的なサンプルあたりのコストを増加させる。第2の欠点は、UCI-ORFeomeマッチング辞書を構築する必要があることである。ショートリードシーケンシングを用いて、本発明者らは、大部分が代替アイソフォームから構成されるライブラリーの画分を明確にすることができなかった。ショートリードシーケンシング技術の代わりに、またはショートリードシーケンシング技術に加えて、PacBioまたはOxford Nanopore Technologiesなどのロングリードシーケンシング技術を使用することは、不完全な曖昧性除去を克服し得る。確率的バーコード化とは対照的に、個々のUCI-ORFクローニングは可能であるが、コストがかかり面倒である。しかし、より小さいUCIセットは、より低いアッセイあたりのシーケンシングコストという利点を提供する。Long Adapter Single Stranded Oligonucleotide(LASSO)プローブを使用してORFeomesをクローニングする方法論は、以前に開発された50。ORFeomeライブラリーのLASSOクローニングは、MIPSAベースのアプリケーションと自然に相乗効果を発揮する。
【0192】
qPCRによるMIPSAリードアウト
【0193】
適切に設計されたUCIの有用な特徴は、それらがqPCRリードアウトプローブとしても機能し得ることである。ここで設計および使用された縮重UCI(図1B)は、18nt塩基バランスのフォワードおよびリバースプライマー結合部位を含む。したがって、qPCRアッセイの低いコストおよび迅速なターンアラウンドタイムを、MIPSAと組み合わせて活用することができる。例えば、TRIM21 IPのようなアッセイ品質管理手段を組み込むことは、より費用のかかるシーケンシングの実行の前に、サンプルのセットを認定するために使用され得る。トラブルシューティングおよび最適化は、NGSのみに依存するのではなく、リードアウトとしてqPCRを使用することによって同様に促進することができる。特異的UCIのqPCR試験はまた、理論的には、シーケンシングと比較して増強された感度を提供する可能性があり、臨床設定における分析により適している可能性がある。
【0194】
結論
【0195】
MIPSAは、別のアプローチに勝る重要な利点を有する自己組織化性タンパク質ディスプレイ技術である。それは、PhIP-SeqおよびMIPSA ORFeomeライブラリーのような相補的技術が、ファージディスプレイライブラリーを用いた同じ反応において簡便にスクリーニングされ得るという特性を有する。本明細書に提示されるMIPSAプロトコルは、キャップ非依存性の無細胞翻訳を必要とするが、将来の適応は、この制限を克服し得る。MIPSAベースの研究の用途には、タンパク-タンパク、タンパク-抗体、およびタンパク-小分子相互作用研究、ならびに翻訳後修飾の分析が含まれる。ここで、MIPSAを使用して、既知の自己抗体を検出し、中和IFN-λ3自己抗体を発見したが、これは、多くの他の潜在的に病原性の自己反応性(表4)の中でも、危険性のある個体のサブセットにおいて、生命を脅かすCOVID-19に寄与し得る。
【0196】
表4:重症COVID-19患者において反応性のタンパク質(次のページに続く)。
Symbol、遺伝子記号;AAgAtlas、AAgAtlas 1.0にリストされたタンパク質。;#Severe、少なくとも1つのUCIに反応性を示した重症COVID-19患者の数;#Controls、少なくとも1つのUCIに反応性を示した対照ドナー(健常または軽度~中等度COVID-19患者)の数;#Reactive_UCIs、所定のORFに関連する反応性UCIの数;hits_FCs、反応性を示した患者の間で観察されたORFごとの最大ヒット倍率変化の平均および範囲(最小~最大);Cluster_ID、図4Bに定義された抗原クラスター。
【表4-1】
【表4-2】
【0197】
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【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12
図13
【配列表】
2024510924000001.app
【国際調査報告】