(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】レトロウイルス粒子の送達のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20240305BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240305BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240305BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240305BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240305BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240305BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240305BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240305BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240305BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240305BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240305BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240305BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240305BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240305BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/09 Z
A61P35/00
A61K35/17
A61K9/10
A61P43/00 121
A61K38/19
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/02
A61K38/20
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K35/76
A61K38/21
C12N15/62
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553055
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018404
(87)【国際公開番号】W WO2022187289
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/020922
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/048532
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518332745
【氏名又は名称】エクスマ バイオテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー イアン フロスト
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ビガン
(72)【発明者】
【氏名】アニルバン クンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.ヘンケルマン ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】シッダールト ケルカー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー シュライバー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA97X
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB40
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD67
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4C076FF61
4C084AA02
4C084DA01
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4C084DA13
4C084DA14
4C084DA21
4C084DB52
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4C084ZB26
4C084ZC75
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4C085EE01
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4C085GG04
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4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
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4C086MA70
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4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087BC83
4C087MA66
4C087MA70
4C087NA13
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、例えばT細胞および/またはNK細胞などのリンパ球を、例えばインビボで、改変するための方法および組成物を提供する。開示された組成物は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)、その製剤、および対象へのRIP製剤の投与を含み得る。さらに、組成物は、ケモカインを含み得、当該ケモカインは、RIPに送達される、および/またはRIPと関連付けられるケモカインを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤の対象への投与における使用のためのRIPであって、前記RIPの使用は、前記RIP製剤を前記対象に投与することを含み、前記RIP製剤は、前記RIPを含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、前記一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結され、前記一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメント(LE)およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、および前記LEは構造的に活性であるポリヌクレオチド、を含む、RIP。
【請求項2】
対象におけるT細胞および/またはNK細胞の改変に使用するための複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって、前記RIPの使用は、
前記対象に、前記RIPおよび活性化エレメントを含むRIP製剤を投与することであって、前記RIPは、リンパ増殖エレメント(LE)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記LEは、構造的に活性である、投与することを含み、
前記投与によって、前記RIPと、T細胞および/またはNK細胞の会合が促進され、前記T細胞および/またはNK細胞は前記対象中に存在し、および前記RIPは、前記対象において前記T細胞および/またはNK細胞を改変して、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する、RIP。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドは一つ以上の転写単位を含み、前記一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結され、および前記転写単位のうちの一つは、前記第一のポリペプチドをコードする、請求項2に記載のRIP。
【請求項4】
前記転写単位はさらに、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、および前記改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を含む、請求項3に記載のRIP。
【請求項5】
対象におけるT細胞および/またはNK細胞の改変に使用するための複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって、前記RIPの使用が、RIP製剤を前記対象に投与することであって、前記RIP製剤は、前記RIPおよび活性化エレメントを含み、前記RIPは、リンパ増殖エレメント(LE)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、投与すること、および
前記対象に細胞懸濁液を含む細胞製剤を投与することであって、前記細胞懸濁液は、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞を含み、それによって前記細胞製剤を投与した後、前記懸濁されたT細胞および/または前記懸濁されたNK細胞は、投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞である、投与すること、を含み、
前記RIP製剤を投与し、および前記細胞製剤を投与することによって、前記投与されたT細胞および/または前記投与されたNK細胞と、前記RIPのインビボでの会合が促進され、および前記RIPは、インビボで前記T細胞および/またはNK細胞を改変して、前記対象において改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する、RIP。
【請求項6】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤の対象への投与における使用のためのRIPであって、前記RIPの使用は、前記RIP製剤を前記対象に投与することを含み、前記RIP製剤は、前記RIPを含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、前記一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、および前記一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、前記RIP製剤は、1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上を含む、RIP。
【請求項7】
前記RIP製剤が、ウシタンパク質を実質的に含まない、請求項6に記載のRIP。
【請求項8】
前記RIP製剤が、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まない、請求項6に記載のRIP。
【請求項9】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤の対象への投与における使用のためのRIPであって、前記RIPの使用は、前記RIP製剤を前記対象に投与することを含み、前記RIP製剤は、前記RIPを含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、前記一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結され、および前記一つ以上の転写単位は、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、前記RIP製剤は、0.5%~10%コロイド、0.4~1.8%デキストロース、2~10%のヒト血清アルブミン、および50~100mMの合計電解質を含み、前記合計電解質は、25~100mMナトリウム、0.25~5mMカリウム、10~75mM塩化物、および0.1~1.5mMマグネシウムを含む、RIP。
【請求項10】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤の対象への投与における使用のためのRIPであって、前記RIPの使用は、前記RIP製剤を前記対象に投与することを含み、前記RIP製剤は、前記RIPを含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、前記一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、前記一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、ポリヌクレオチド;および
c)前記RIPの表面上の一つ以上の膜結合型ケモカイン、を含み、前記一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である、RIP。
【請求項11】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤の対象への投与における使用のためのRIPであって、前記RIPの使用は、前記RIP製剤を前記対象に投与することを含み、前記RIP製剤は、前記RIPを含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、前記一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結され、前記一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、および前記RIP製剤は、一つ以上のケモカインを含み、前記一つ以上のケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である、RIP。
【請求項12】
複製能力のない組換えレトロウイルス粒子(RIP)を含む、RIP製剤であって、前記RIPが、
a)前記RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、前記一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結され、前記一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、ポリヌクレオチド;および
c)前記RIPの表面上の一つ以上の膜結合型ケモカイン、を含み、前記一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である、RIP製剤。
【請求項13】
前記RIP製剤が、注射器内に0.5ml~20mlの体積を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項14】
前記RIP製剤が、注射器内に2.5ml~10mlの体積を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項15】
前記使用が、疾患を治療するためのものであり、前記疾患が、がんである、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項16】
前記投与が、リンパ管周囲投与による、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項17】
前記投与が、筋肉内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、リンパ節内投与、または皮下投与によるものである、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項18】
前記投与が、リンパ節内投与または皮下投与による、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項19】
前記RIP製剤中に、1×10
5~4×10
9の合計TUのRIPがある、請求項18に記載のRIP。
【請求項20】
前記RIP製剤中に、1×10
3~4×10
7TU/対象kgがある、請求項18に記載のRIP。
【請求項21】
1x10
5~4x10
9の合計TUのRIPが、前記対象に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項22】
1x10
3~1x10
8のTU/対象kgのRIPが、前記対象に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項23】
細胞懸濁液を含む細胞製剤を前記対象に投与することをさらに含み、前記細胞懸濁液は、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞を含み、前記懸濁されたT細胞および/または前記懸濁されたNK細胞は、前記対象に由来する、請求項1~4または6~11のいずれか以降に記載のRIP。
【請求項24】
前記投与の後、前記懸濁されたT細胞および/またはNK細胞は、前記対象中に存在する投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞であり、前記RIP製剤中の前記RIPは、前記投与されたT細胞および/または前記投与されたNK細胞の少なくとも一部と接触し、それによって前記投与されたT細胞および/または前記投与されたNK細胞を改変する、請求項23に記載のRIP。
【請求項25】
前記懸濁されたT細胞および/またはNK細胞が、前記対象に由来する、請求項23に記載のRIP。
【請求項26】
前記細胞懸濁液が、PBMCの懸濁液である、請求項23に記載のRIP。
【請求項27】
前記PBMCは、前記対象から採取された全血から濃縮される、請求項26に記載のRIP。
【請求項28】
前記細胞製剤が、前記RIP製剤から1cm以内に投与される、請求項23に記載のRIP。
【請求項29】
前記懸濁されたT細胞および/または前記懸濁されたNK細胞が、前記対象に投与される前に、エクスビボで活性化される、請求項23に記載のRIP。
【請求項30】
前記RIPが、前記RIPの一つ以上の膜と関連付けられた一つ以上の膜結合型サイトカインを含み、前記膜結合型サイトカインが、一つ以上の膜結合型ケモカインである、請求項1~9のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項31】
前記一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を含む、請求項30に記載のRIP。
【請求項32】
前記ケモカインのうちの少なくとも一つが、C-Cモチーフを含む、請求項30に記載のRIP。
【請求項33】
前記ケモカインのうちの少なくとも一つは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片を含む、請求項32に記載のRIP。
【請求項34】
前記ケモカインは、CCL19、CCL21、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる、それらのバリアント、またはそれらの活性断片を含む、請求項33に記載のRIP。
【請求項35】
前記ポリヌクレオチドは、前記LEをコードする、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、一つ以上の転写単位を含み、前記一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結される、請求項2または5のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項36】
前記改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を含む、請求項34に記載のRIP。
【請求項37】
前記LEは、構造的に活性である、請求項2または5のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項38】
前記投与の後、RIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞と接触し、前記T細胞および/または前記NK細胞とインビボで会合する、請求項1または6~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項39】
前記RIPは、インビボで前記T細胞および/またはNK細胞を改変し、前記対象において改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する、請求項37に記載のRIP。
【請求項40】
前記RIP製剤が、pH7.2~7.6で、コロイド、デキストロース、アルブミン、および電解質を含む、請求項1~6および10~11のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項41】
前記RIP製剤が、0.5%~10%のコロイド、0.4~1.8%のデキストロース、2~10%のアルブミン、および50~100mMの総電解質を含有する、請求項39に記載のRIP。
【請求項42】
前記電解質は、ナトリウム、カリウム、塩化物、およびマグネシウムのうちの1、2、3種、または全てを含み、前記アルブミンは、ヒト血清アルブミンである、請求項39に記載のRIP。
【請求項43】
前記ナトリウムは、25~100mM ナトリウムで前記RIP製剤中に存在し、前記カリウムは、0.25~5mMで前記RIP製剤中に存在し、前記塩化物は、10~75mMで前記RIP製剤中に存在し、および前記マグネシウムは、0.1~1.5mMで、前記RIP製剤中に存在する、請求項41に記載のRIP。
【請求項44】
前記使用は、前記対象に、以下のサイトカイン:IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を投与する、送達する、または注入することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のRIP。
【請求項45】
前記サイトカインは、送達溶液中で前記対象に投与される、請求項43に記載のRIP。
【請求項46】
前記送達溶液が、前記RIP製剤と同じ溶液である、請求項44に記載のRIP。
【請求項47】
前記RIPおよび前記サイトカインは、同じRIP製剤中で前記対象に投与される、請求項44に記載のRIP。
【請求項48】
前記送達溶液が、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ、GM-CSF、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を含む、請求項44に記載のRIP。
【請求項49】
前記送達溶液は、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を含む、請求項44に記載のRIP。
【請求項50】
前記送達溶液は、CCL19、CCL21、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができるそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を含む、請求項44に記載のRIP。
【請求項51】
前記活性化エレメントは、前記RIPの表面上にあり、および前記活性化エレメントは、CD3、TCRα/β、CD28、またはマイトジェンのテトラスパニンに結合することができる抗体または抗体模倣体のうちの一つ以上を含み、または前記活性化エレメントは、マイトジェンのテトラスパニンである、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項52】
前記活性化エレメントは、CD3に結合することができる抗体または抗体模倣体を含み、前記活性化エレメントは、前記RIPの膜に結合される、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項53】
前記活性化エレメントは、抗CD3抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項54】
前記RIPは、前記RIPの表面上に融合性エレメントをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIPまたは請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項55】
前記融合性エレメントは、シュードタイピングエレメント上に存在する、請求項53に記載のRIP。
【請求項56】
前記シュードタイピングエレメントは、結合エレメントをさらに含む、請求項54に記載のRIP。
【請求項57】
前記シュードタイピングエレメントの前記結合エレメントは、結合を減少させるように変更される、請求項55に記載のRIP。
【請求項58】
前記融合性エレメントは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gpl60、マウス白血病ウイルス(MLV)gp70、テナガザル白血病ウイルス(GALV)gp70、ネコ白血病ウイルス(RD114)gp70、アンフォトロピック(amphotropic)レトロウイルス(Ampho)gp70、10A1 MLV(10A1)gp70、エコトロピック(Ecotropic)レトロウイルス(Eco)gp70、ヒヒ(Baboon ape)白血病ウイルス(BaEV)gp70、麻疹ウイルス(MV)HおよびF、ニパウイルス(NiV)HおよびF、狂犬病ウイルス(RabV)G、モコラウイルス(MOKV)G、エボラザイールウイルス(EboZ)G、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)GP1およびGP2、バキュロウイルスGP64、チクングニアウイルス(CHIKV)ElおよびE2、ロスリバーウイルス(RRV)ElおよびE2、セムリキ森林ウイルス(SFV)ElおよびE2、シンドビスウイルス(SV)ElおよびE2、ベネズアラウマ脳炎ウイルス(VEEV)ElおよびE2、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)ElおよびE2、インフルエンザA、B、CもしくはD HA、家禽ペストウイルス(FPV)HA、水疱性口内炎ウイルスVSV-G、またはチャンディプラ(Chandipura)ウイルス、ならびにピリ(Piry)ウイルスのCNV-GおよびPRV-G、に由来する融合性エレメントである、請求項53に記載のRIP。
【請求項59】
前記LEは、その同族受容体またはその断片に繋がれたサイトカインを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項60】
前記LEは、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL7RAもしくはIL12RB2、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項61】
前記LEは、CD2、CD3D、CD3E、CD3G、CD4、CD8A、CD8B、CD27、変異型デルタLck CD28、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CRLF2、CSF2RB、CSF2RA、CSF3R、EPOR、FCER1G、FCGR2C、FCGRA2、GHR、ICOS、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IFNLR1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL7RA、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17RA、IL17RB、IL17RC、IL17RD、IL17RE、IL18R1、IL18RAP、IL20RA、IL20RB、IL21R、IL22RA1、IL23R、IL27RA、IL31RA、LEPR、LIFR、LMP1、MPL、MYD88、OSMR、PRLR、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14もしくはTNFRSF18、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項62】
前記LEは、CD2、CD3D、CD3E、CD3G、CD4、CD8A、CD8B、CD27、変異型デルタLck CD28、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CRLF2、CSF2RB、CSF2RA、CSF3R、EPOR、FCER1G、FCGR2C、FCGRA2、GHR、ICOS、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IFNLR1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL1RL2、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17RA、IL17RB、IL17RC、IL17RD、IL17RE、IL18R1、IL18RAP、IL20RA、IL20RB、IL21R、IL22RA1、IL23R、IL27RA、IL31RA、LEPR、LIFR、LMP1、MPL、MYD88、OSMR、PRLR、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14もしくはTNFRSF18、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項63】
前記RIPは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメイン、膜会合ドメイン、および前記抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを前記膜会合ドメインに接続するストークを含む抗イディオタイプポリペプチドをさらに含み、前記抗イディオタイプ細胞外認識ドメインは、標的抗体または標的抗体模倣体のイディオタイプを認識する抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体のイディオタイプ結合可変領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項64】
前記CARまたはLEは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを含み、前記抗イディオタイプ細胞外認識ドメインは、標的抗体または標的抗体模倣体のイディオタイプを認識する抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体のイディオタイプ結合可変領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項65】
前記標的抗体または標的抗体模倣体は、米国食品医薬品局(USFDA)、欧州医薬品庁(EMA)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)(中国FDA)、または日本の医薬食品局(PFSB)によって承認された生物製剤の抗体または抗体模倣体である、請求項62に記載のRIP。
【請求項66】
前記承認された生物製剤の抗体または抗体模倣体は、前記承認された生物製剤の抗体であり、前記承認された生物製剤の抗体は、セツキシマブ(cetuximab)、ムロモナブ-CD3(muromonab-CD3)、エファリズマブ(efalizumab)、トシツモマブ-i131(tositumomab-i131)、ネバクマブ(nebacumab)、エドレコロマブ(edrecolomab)、カツマクソマブ(catumaxomab)、ダクリズマブ(daclizumab)、オララツマブ(olaratumab)、アブシキシマブ(abciximab)、リツキシマブ(rituximab)、バシリキシマブ(basiliximab)、パリビズマブ(palivizumab)、インフリキシマブ(infliximab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、アダリムマブ(adalimumab)、イブリツモマブ チウキセタン(ibritumomab tiuxetan)、オマリズマブ(omalizumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ネタリズマブ(natalizumab)、パニツムマブ(panitumumab)、ラニビズマブ(ranibizumab)、エクリズマブ(eculizumab)、セルトリズマブペゴル(certolizumab pegol)、ウステキヌマブ(ustekinumab)、カナキヌマブ(canakinumab)、ゴリムマブ(golimumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、トシリズマブ(tocilizumab)、デノスマブ(denosumab)、ベリムマブ(belimumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、ブレンツキシマブ ベドチン(brentuximab vedotin)、ペルツズマブ(pertuzumab)、アド-トラスツズマブ エムタンシン(ado-trastuzumab emtansine)、ラキシバクマブ(raxibacumab)、オビヌツズマブ(obinutuzumab)、シルツキシマブ(siltuximab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、ベドリズマブ(vedolizumab)、ニボルマブ(nivolumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、ブリナツモマブ(blinatumomab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、エボロクマブ(evolocumab)、イダルシズマブ(idarucizumab)、ネシツムマブ(necitumumab)、ジヌツキシマブ(dinutuximab)、セクキヌマブ(secukinumab)、メポリズマブ(mepolizumab)、アリロクマブ(alirocumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、エロツズマブ(elotuzumab)、イキセキズマブ(ixekizumab)、レスリズマブ(reslizumab)、ベズロトクスマブ(bezlotoxumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、オビルトキサキシマブ(obiltoxaximab)、ブロダルマブ(brodalumab)、デュピルマブ(dupilumab)、イノツズマブ オゾガミシン(inotuzumab ozogamicin)、ガセルクマブ(guselkumab)、サリルマブ(sarilumab)、アベルマブ(avelumab)、エミシズマブ(emicizumab)、オクレリズマブ(ocrelizumab)、ベンラリズマブ(benralizumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、ゲムツズマブ オゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin)、エレヌマブ(エレヌマブ アオオエ)(erenumab(erenumab-aooe))、ガルカネズマブ(ガルカネズマブ-gnlm)(galcanezumab(galcanezumab-gnlm))、ブロスマブ(ブロスマブ-twza)(burosumab(burosumab-twza))、ラナデルマブ(ラナデルマブ-flyo)(lanadelumab(lanadelumab-flyo))、モガムリズマブ(モガムリズマブ-kpkc)(mogamulizumab(mogamulizumab-kpkc))、チルドラキズマブ(チルドラキズマブ-asmn)(tildrakizumab(tildrakizumab-asmn))、フレマネズマブ(フレマネズマブ-vfrm)(fremanezumab(fremanezumab-vfrm))、ラブリズマブ(ラブリズマブ-cwvz)(ravulizumab(ravulizumab-cwvz))、セミプリマブ(セミプリマブ-rwlc)(cemiplimab(cemiplimab-rwlc))、イバリズマブ(イバリズマブ-uiyk)(ibalizumab(ibalizumab-uiyk)、エマパルマブ(エマパルマブ-lzsg)(emapalumab(emapalumab-lzsg))、モキセツモマブ パスドトクス(モキセツモマブ パスドトクス-tdfk)(moxetumomab pasudotox(moxetumomab pasudotox-tdfk))、カプラシズマブ(カプラシズマブ-yhdp)(caplacizumab(caplacizumab-yhdp))、リサンキズマブ(リサンキズマブ-rzaa)(risankizumab(risankizumab-rzaa))、ポラツズマブ ベドチン(ポラツズマブ ベドチン-piiq)(polatuzumab vedotin(polatuzumab vedotin-piiq))、ロモソズマブ(ロモソズマブ-aqqg)(romosozumab(romosozumab-aqqg))、ブロルシズマブ(ブロルシズマブ-dbll)(brolucizumab(brolucizumab-dbll))、クリザンリズマブ(クリザンリズマブ-tmca)(crizanlizumab(crizanlizumab-tmca))、エンフォルツマブ ベドチン(エンフォルツマブ ベドチン-ejfv)(enfortumab vedotin(enfortumab vedotin-ejfv))、トラスツズマブ デルクステカン(fam-トラスツズマブ デルクステカン-nxki)(trastuzumab deruxtecan(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki))、テプロツムマブ(テプロツムマブ-trbw)(teprotumumab(teprotumumab-trbw))、エプチネズマブ(エプチネズマブ-jjmr)(eptinezumab(eptinezumab-jjmr))、イサツキシマブ(イサツキシマブ-irfc)(isatuximab(isatuximab-irfc))、サシツズマブ ゴビテカン(サシツズマブ ゴビテカン-hziy)(sacituzumab govitecan(sacituzumab govitecan-hziy))、イネビリズマブ(イネビリズマブ-cdon)(inebilizumab(inebilizumab-cdon))、テファシタマブ(テファシタマブ-cxix)(tafasitamab(tafasitamab-cxix))、ベランタマブ マフォドチン(ベランタマブ マフォドチン-blmf)(belantamab mafodotin(belantamab mafodotin-blmf))、サトラリズマブ(サトラリズマブ-mwge)(satralizumab(satralizumab-mwge))、アトルチビマブ(atoltivimab)、マフチビマブ(maftivimab)、オデシビマブ-ebgn(odesivimab-ebgn)、ナキシタマブ-gqgk(naxitamab-gqgk)、マルゲツキシマブ-cmkb(margetuximab-cmkb)、アンスビマブ-zykl(ansuvimab-zykl)、エビナクマブ(evinacumab)、ドスタルリマブ(ドスタルリマブ-gxly)(dostarlimab(dostarlimab-gxly))、ロンカスツキシマブ テシリン(ロンカスツキシマブ テシリン-lpyl)(loncastuximab tesirine(loncastuximab tesirine-lpyl))、アミバンタマブ(アミバンタマブ-vmjw)(amivantamab(amivantamab-vmjw))、アデュカヌマブ(アデュカヌマブ-avwa)(aducanumab(aducanumab-avwa))、トラロキヌマブ(tralokinumab)、アニフロルマブ(アニフロルマブ-fnia)(anifrolumab(anifrolumab-fnia))、オポルツズマブ モナトクス(oportuzumab monatox)、チソツマブ ベドチン(tisotumab vedotin)、ビメキズマブ(bimekizumab)、ナルソプリマブ(narsoplimab)、テゼペルマブ(tezepelumab)、シンチリマブ(sintilimab)、イノリモム(inolimomb)、バルスチリマブ(balstilimab)、ウブリツキシマブ(ublituximab)、トリパリマブ(toripalimab)、オムブルタマブ(omburtamab)、ペンプリマブ(penpulimab)、タネズマブ(tanezumab)、ファリシマブ(faricimab)、スチムリマブ(sutimlimab)、テプリズマブ(teplizumab)およびレチファンリマブ(retifanlimab)である、請求項63に記載のRIP。
【請求項67】
前記RIPが、その表面上に、モノクローナル抗体承認生物製剤によって認識される認識ドメインをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項68】
前記モノクローナル抗体承認生物製剤は、セツキシマブ、ムロモナブ-CD3、エファリズマブ、トシツモマブ-i131、ネバクマブ、エドレコロマブ、カツマクソマブ、ダクリズマブ、オララツマブ、アブシキシマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、パリビズマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、イブリツモマブ チウキセタン、オマリズマブ、ベバシズマブ、ネタリズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、エクリズマブ、セルトリズマブペゴル、ウステキヌマブ、カナキヌマブ、ゴリムマブ、オファツムマブ、トシリズマブ、デノスマブ、ベリムマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブ エムタンシン、ラキシバクマブ、オビヌツズマブ、シルツキシマブ、ラムシルマブ、ベドリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ブリナツモマブ、アレムツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、ネシツムマブ、ジヌツキシマブ、セクキヌマブ、メポリズマブ、アリロクマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、イキセキズマブ、レスリズマブ、ベズロトクスマブ、アテゾリズマブ、オビルトキサキシマブ、ブロダルマブ、デュピルマブ、イノツズマブ オゾガミシン、ガセルクマブ、サリルマブ、アベルマブ、エミシズマブ、オクレリズマブ、ベンラリズマブ、デュルバルマブ、ゲムツズマブ オゾガミシン、エレヌマブ(エレヌマブ アオオエ)、ガルカネズマブ(ガルカネズマブ-gnlm)、ブロスマブ(ブロスマブ-twza)、ラナデルマブ(ラナデルマブ-flyo)、モガムリズマブ(モガムリズマブ-kpkc)、チルドラキズマブ(チルドラキズマブ-asmn)、フレマネズマブ(フレマネズマブ-vfrm)、ラブリズマブ(ラブリズマブ-cwvz)、セミプリマブ(セミプリマブ-rwlc)、イバリズマブ(イバリズマブ-uiyk)、エマパルマブ(エマパルマブ-lzsg)、モキセツモマブ パスドトクス(モキセツモマブ パスドトクス-tdfk)、カプラシズマブ(カプラシズマブ-yhdp)、リサンキズマブ(リサンキズマブ-rzaa)、ポラツズマブ ベドチン(ポラツズマブ ベドチン-piiq)、ロモソズマブ(ロモソズマブ-aqqg)、ブロルシズマブ(ブロルシズマブ-dbll)、クリザンリズマブ(クリザンリズマブ-tmca)、エンフォルツマブ ベドチン(エンフォルツマブ ベドチン-ejfv)、トラスツズマブ デルクステカン(fam-トラスツズマブ デルクステカン-nxki)、テプロツムマブ(テプロツムマブ-trbw)、エプチネズマブ(エプチネズマブ-jjmr)、イサツキシマブ(イサツキシマブ-irfc)、サシツズマブ ゴビテカン(サシツズマブ ゴビテカン-hziy)、イネビリズマブ(イネビリズマブ-cdon)、テファシタマブ(テファシタマブ-cxix)、ベランタマブ マフォドチン(ベランタマブ マフォドチン-blmf)、サトラリズマブ(サトラリズマブ-mwge)、アトルチビマブ、マフチビマブ、オデシビマブ-ebgn、ナキシタマブ-gqgk、マルゲツキシマブ-cmkb、アンスビマブ-zykl、エビナクマブ、ドスタルリマブ(ドスタルリマブ-gxly)、ロンカスツキシマブ テシリン(ロンカスツキシマブ テシリン-lpyl)、アミバンタマブ(アミバンタマブ-vmjw)、アデュカヌマブ(アデュカヌマブ-avwa)、トラロキヌマブ、アニフロルマブ(アニフロルマブ-fnia)、オポルツズマブ モナトクス、チソツマブ ベドチン、ビメキズマブ、ナルソプリマブ、テゼペルマブ、シンチリマブ、イノリモム、バルスチリマブ、ウブリツキシマブ、トリパリマブ、オムブルタマブ、ペンプリマブ、タネズマブ、ファリシマブ、スチムリマブ、テプリズマブおよびレチファンリマブである、請求項65に記載のRIP。
【請求項69】
前記認識ドメインは、EGFRまたはそのエピトープを認識する抗体により認識されるポリペプチドを含む、請求項65に記載のRIP。
【請求項70】
前記一つ以上の転写単位は、TCRa、TCRb、SOCS1、miR155標的、IFNガンマ、cCBL、TRAIL2、PP2A、ABCG1、CD3z、PD1、CTLA4、TIM3、LAG3、SMAD2、TNFRSF10B、PPP2CA、TNFRSF6(FAS)、BTLA、TIGIT、A2AR、AHR、EOMES、SMAD3、SMAD4、TGFBR2、PPP2R2D、TNFSF6(FASL)、CASP3、SOCS2、TIEG1、JunB、Cbx3、Tet2またはHK2を標的とする阻害性RNA分子をさらにコードする、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項71】
前記一つ以上の転写単位は、AHR、Cbx3、HK2、SMAD4、またはEOMESをコードするmRNAを標的とする阻害性RNA分子を少なくとも一つさらにコードする、請求項1~11のいずれか一項に記載のRIP、または請求項12に記載のRIP製剤。
【請求項72】
送達溶液であって、
a)RIPの膜に関連付けられた、または前記RIPの表面と関連付けられた、活性化エレメントを含む複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP);および
b)IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上、を含む、送達溶液。
【請求項73】
前記送達溶液は、CCL19、CCL21、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができるそれらのバリアント、またはそれらの活性断片のうちの一つ以上を含む、請求項70に記載の送達溶液。
【請求項74】
送達溶液であって、前記送達溶液は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を含み、前記RIPは、
a)前記RIPの膜に関連付けられた、または前記RIPの表面と関連付けられた、活性化エレメント;
b)リンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチド、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド;および
c)前記RIPの表面上の一つ以上の膜結合型ケモカイン、を含む、送達溶液。
【請求項75】
前記ケモカインのうちの少なくとも一つは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらの活性断片を含む、請求項72に記載の送達溶液。
【請求項76】
前記ケモカインは、CCL19、CCL21、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる、それらのバリアント、またはそれらの活性断片を含む、請求項73に記載の送達溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月1日に出願された米国仮特許出願第63/200,329号明細書、2021年6月4日に出願された米国仮特許出願第63/197,315号明細書、2021年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/261,099号明細書、2021年3月4日に出願された国際特許出願PCT/US2021/020922、および2021年8月31日に出願された国際特許出願PCT/US2021/048532に対する優先権を主張するものである。2021年8月31日に出願された国際特許出願PCT/US2021/048532は、2021年3月4日に出願された国際特許出願PCT/US2021/020922、2020年8月31日に出願された国際特許出願PCT/US2020/048843、2021年3月1日に出願された米国仮特許出願第63/200,329号明細書、および2021年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/136,177号明細書に対する優先権を主張するものである。2021年3月4日に出願された国際特許出願PCT/US2021/020922は、2020年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/985,741号明細書、2020年8月31日に出願された国際特許出願PCT/US2020/048843、2021年1月11日に出願された米国仮特許出願第63/136,177号明細書、および2021年3月1日に出願された米国仮特許出願第63/200,329号明細書に対する優先権を主張するものである。2020年8月31日に出願された国際特許出願PCT/US2020/048843は、2019年9月2日に出願された国際特許出願PCT/US2019/049259の一部継続出願であり、ならびに2019年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/894,849号明細書、2019年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/894,852号明細書、2019年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/894,853号明細書、2019年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/894,926号明細書、2019年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/943,207号明細書、および2020年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/985,741号明細書の利益を主張するものである。国際特許出願PCT/US2019/049259は、2018年9月17日に出願された国際特許出願PCT/US2018/051392の一部継続出願であり、ならびに2018年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/726,293号明細書、2018年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/726,294号明細書、、2018年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/728,056号明細書、2018年9月17日に出願された米国仮特許出願第62/732,528号明細書、2019年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,434号明細書、および2019年9月1日に出願された米国仮特許出願第62/894,853号明細書の利益を主張するものである。国際特許出願PCT/US2018/051392は、2018年3月3日に出願された国際特許出願PCT/US2018/020818の一部継続出願であり、ならびに2017年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/560,176号明細書、2017年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/564,253号明細書、2017年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/564,991号明細書、および2018年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/728,056号明細書の利益を主張するものである。国際特許出願PCT/US2018/020818は、2017年3月19日に出願された国際特許出願PCT/US2017/023112の一部継続出願であり、2017年7月8日に出願された国際特許出願PCT/US2017/041277の一部継続出願であり、2017年3月19日に出願された米国特許出願15/462,855の一部継続出願であり、2017年7月8日に出願された米国特許出願15/644,778の一部継続出願であり、ならびに2017年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/467,039号明細書、2017年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/560,176号明細書、2017年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/564,253号明細書、および2017年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/564,991号明細書の利益を主張するものである。国際特許出願PCT/US2017/023112は、2016年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/390,093号明細書、2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/360,041号明細書、および2017年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/467,039号明細書の利益を主張するものである。国際特許出願PCT/US2017/041277は、2017年3月19日に出願された国際特許出願PCT/US2017/023112、2017年3月19日に出願された米国特許出願15/462,855、2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/360,041号明細書、および2017年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/467,039号明細書の利益を主張するものである。米国特許出願15/462,855は、2016年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/390,093号明細書、2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/360,041号明細書、および2017年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/467,039号明細書の利益を主張するものである。米国特許出願15/644,778は、2017年3月19日に出願された国際特許出願PCT/US2017/023112の一部継続出願であり、および2017年3月19日に出願された米国特許出願15/462,855の一部継続出願であり、ならびに2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/360,041号明細書および2017年3月3日に出願された米国仮特許出願62/467,039号明細書の利益を主張するものである。この段落で引用されるすべての出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、本出願と同時に提出される電子配列表の資料を参照により本明細書に組み込む。電子配列表の資料は、2022年3月1日に作成された「F1_003_W0_03_Sequence_Listing」という表題のテキスト(.txt)ファイルとして提出され、ファイルサイズは506KBであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、免疫学および免疫療法の分野に関し、より具体的には、リンパ球の遺伝子改変方法およびそれを目的としたレトロウイルス、ならびにそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
対象(例えば、患者)から単離されたリンパ球は、インビトロで活性化され、遺伝子改変されて、組み込まれた遺伝子プログラムに基づいて他の細胞および環境とのリダイレクトされた関与を可能にする合成タンパク質を発現することができる。そのような合成タンパク質の例としては、操作されたT細胞受容体(TCR)およびキメラ抗原受容体(CAR)が挙げられる。現在使用されている一つのCARは、細胞外認識ドメイン(例えば、抗原結合ドメイン)、膜貫通ドメイン、および複製能力のない組換えレトロウイルスによってコードされる一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインの融合である。
【0005】
組換えレトロウイルスは、非分裂細胞に感染する上で効力を示しているが、休止状態のCD4およびCD8リンパ球は、これらのベクターによる遺伝形質導入に抵抗性がある。この困難を克服するために、これらの細胞は、典型的には、CAR遺伝子ベクターによる遺伝子改変が起こり得る前に、刺激試薬を使用してインビトロで活性化される。刺激および形質導入に続いて、遺伝子改変された細胞は、インビトロで増大し、その後、リンパ球枯渇患者に再導入される。インビボでの抗原の関与により、CARの細胞内シグナル伝達部分は、免疫細胞における活性化関連応答および細胞溶解性分子の放出を開始して、標的細胞死を誘導することができる。
【0006】
そのような現在の方法は、患者への再注入の前に体外で増殖するT細胞の広範な操作および製造、ならびにサイトカインを遊離し、競合する受容体を枯渇させてT細胞の生着を促進するリンパ球枯渇化学療法を必要とする。そのようなCAR療法は、患者に多くの受け入れ難い有害事象をもたらしただけでなく、さらに、体内に導入された後のインビボでの増殖速度について制御することも、腫瘍の外側にも発現する標的に安全に仕向けることもできない。結果として、CAR療法は今日、典型的には、1×105~1×108個の細胞/kgの用量を使用して12~28日間エクスビボで増大した細胞から注入され、標的、例えば腫瘍標的に向けられ、その腫瘍外標的毒性(off tumor on target toxicity)は、一般的に許容される。これらの比較的長いエクスビボ増大時間は、スケーラビリティの課題に加えて、細胞生存率および無菌性、ならびに試料の同一性の問題を引き起こす。したがって、より安全でより有効なスケーラブルなT細胞またはNK細胞療法に対して大きな必要性がある。特にそのような方法が、例えば注入センター内で対象の血液を採取させ、次いで、その同じ日に対象に再導入させる場合、そのような方法に必要な複雑さおよび時間のさらなる低減が非常に望ましいであろう。さらに、より単純かつより迅速な方法単独、またはより少ない専門機器を必要とする方法は、高度専門医療センターでのみ現在定期的に実施されているこれらの細胞療法プロセスを一般化する可能性がある。
【0007】
リンパ球の形質導入、増殖および生存を駆動するプロセスについての我々の理解は、免疫学的プロセスを含む様々な潜在的な商業的用途の中心であるため、リンパ球を研究するための改善された方法および組成物が必要である。例えば、リンパ球が遺伝子改変され得る方法、ならびにリンパ球の生存および増殖に影響を与える要因をより良く特徴付け、かつ理解するために使用され得る方法および組成を特定することが有用である。さらに、リンパ球の増殖および生存を駆動する組成物を特定することが有用である。そのような組成物は、そのようなプロセスの調節を研究するために使用され得る。リンパ球を研究するための方法および組成物に加えて、改善されたウイルスパッケージング細胞株ならびにそれを作製および使用する方法が必要である。例えば、そのような細胞株および方法は、組換えレトロウイルス粒子などの組換えウイルスの異なる成分を分析する上で、および組換えレトロウイルス粒子の産生のためにパッケージング細胞株を使用する方法にとって有用である。
【0008】
さらに、血液、器官、および組織、ならびに優先的および具体的に腫瘍微小環境中のリンパ球の増殖および/または生存を誘導するための改善された組成物および方法に対する必要性が依然として存在する。これまでの方法は、標的抗原に結合すると、CAR刺激誘導性プロモーターの制御下で分泌型サイトカインの発現を誘導する、構造的に発現するCARを有する細胞を使用していた。これらの分泌型サイトカインは、T細胞およびNK細胞に非特異的に結合し、かつそれらを刺激するため、CAR T細胞またはNK細胞を刺激するために利用可能なサイトカインの量を低減する。サイトカインはまた、離れて拡散し、CAR T細胞またはNK細胞を刺激するために利用可能なサイトカインをさらに低減する可能性がある。これらの以前の方法は通常、別個のベクター上で転写単位の複数回の形質導入を必要とし、長い血液細胞処理時間を必要とし、したがって、がん患者に、自身の血液が採取された後に数日間、数週間、さらには数ヶ月も待たせて、遺伝子操作された血液細胞を受け取らせる必要があった。二つ以上の転写単位をコードするベクターを使用した1ステップでのCAR-T細胞形質導入を実施した以前の方法は、低いウイルス力価をもたらし、かつ/または転写単位のうちの一つ以上の低発現をもたらし、それらの各々は、一般的な治療方法としての商業化への主な障害である。したがって、血液、器官、および組織、ならびに優先的および具体的に抑制性腫瘍微小環境中で生存および増殖するCAR-T細胞を生成するための、より効率的な方法に対する必要性が依然として存在する。
【0009】
さらに、細胞、特にリンパ球の遺伝子改変を伴う治療を行うための、より安全な方法に対するニーズが依然として存在する。エクスビボでの細胞処理方法は、対象の身体の外で細胞を操作して、その後に汚染を伴わずに、そして許容できないような細胞毒性を伴わずに、細胞を正しい対象に戻すという点に関して、固有の安全性に関する懸念がある。
【発明の概要】
【0010】
リンパ球、例示的な実施形態では、T細胞および/またはNK細胞を遺伝子改変するプロセスを単純化および迅速化する方法、使用、組成物、およびキットが本明細書に提供される。本明細書に提供されるいくつかの態様および実施形態は、ポイントオブケア細胞処理によく適しており、細胞を専門処理施設に輸送する必要がない。さらに、本明細書に提供される方法、使用、組成物、およびキットは、例示的な実施形態では、T細胞および/またはNK細胞などのリンパ球を形質導入および/または改変するための方法の有効性および安全性に関連する問題を克服するのに役立つ。そのような方法の特定の実施形態は、これらの細胞を用いて養子細胞療法を実施するために有用である。したがって、いくつかの態様では、リンパ球、特にT細胞および/もしくはNK細胞を改変するための、ならびに/または形質導入、遺伝子改変、および/もしくは改変されたT細胞および/もしくはNK細胞の活性を調節するための方法、組成物、およびキットが本明細書に提供される。そのような方法、組成物、およびキットは、特に、操作されたT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、および例示的な実施形態では、微小環境が制限された生物学的(「MRB」)CARを発現するT細胞および/またはNK細胞に関して、現在の技術よりも改善された有効性および安全性を提供する。本明細書に提供される方法によって産生される、および/またはそれに使用される形質導入および/または改変された、および例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞は、レトロウイルス(例えばレンチウイルス)粒子を介してレトロウイルス(例えばレンチウイルス)ゲノムから、例示的実施形態ではエクスビボで送達される、または特定の例示的な態様ではインビボで送達される、機能性および機能性の組み合わせを含み、これは、そのような細胞およびそのような細胞を利用する方法、例えば研究方法、商業生産方法、および養子細胞療法にとって改善された特徴を提供する。例えば、そのような細胞は、インビボで産生されることができ、またはエクスビボにおいてより短い時間で作製されることができ、より良く調節され得る改善された成長特性を有する。例示的な実施形態では、そのような方法、使用、組成物、およびキットは、対象への筋肉内送達、またはさらなる例示的な実施形態では、皮下送達を含むか、そのために適合されている。
【0011】
いくつかの態様では、T細胞および/またはNK細胞などのリンパ球を形質導入および/または改変する、および例示的な実施形態では、遺伝子改変するための方法、ならびに例示的な実施形態では、休止T細胞もしくは分割T細胞、および/またはNK細胞を形質導入、遺伝子改変、および/または改変するためのインビボまたはエクスビボでの方法が提供される。これらの態様の一部は、エクスビボでの細胞処理が少なく、または全く含まず、例示的な実施形態では、以前の方法よりもはるかに迅速に実施することができる。これにより、より効率的な研究、より効果的な商業的生産、対象のリンパ球をより安全に改変する方法、および患者の治療方法の改善を促進することができる。本明細書に提供される方法、使用、組成物、およびキットは、研究ツールとして、商業的生産において、ならびに複製能力のないレトロウイルス粒子(RIPs:incompetent retroviral particles)を使用した、ならびにTCRまたはCARを発現する形質導入された、および/または改変された、ならびに例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を使用した、養子細胞療法において使用することができる。
【0012】
例えば、T細胞および/またはNK細胞などのリンパ球の形質導入に関連する、本明細書に提供される方法、使用および組成物に関して、エクスビボ、または特定の例示的な実施形態では、原位置(in situ)またはインビボでの、RIPsならびにT細胞および/またはNK細胞を含む形質導入反応を含む、方法、ならびに関連する使用および組成物が本明細書に提供されている。一部の例示的な実施形態では、かかる形質導入反応は、エクスビボでの形質導入反応であってもよく、当該反応には、濃縮されたPBMC、TNC、または例えば簡略化された全血の場合には事前の細胞濃縮を伴わない血液細胞が含まれ、またCAR-T療法を目的としたエクスビボでの細胞処理を実施するための迅速な方法であってもよい。そのような方法では、専門性の低い器具類およびトレーニングでよい。さらに、そのような方法は、インビボでの形質導入法と比較して、非標的細胞形質導入のリスクが低い。さらに上述の方法の実施形態を含む方法、使用、および組成物が本明細書に提供され、それら実施形態には、特定の標的阻害性RNA、活性化エレメント、ポリペプチドリンパ増殖エレメント、およびそれらをコードするポリヌクレオチド、シュードタイピングエレメント、ケモカイン、ならびに人工抗原提示細胞が含まれ、それらは任意選択的に本明細書に提供される任意の他の態様と組み合わされて、インビトロ、エクスビボ、およびインビボでのリンパ球、特にT細胞および/またはNK細胞の拡張を強力に誘導する方法、使用および組成物を提供することができる。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球は、リンパ球系が備わった(lymphoreplete)環境に生着することができる。いくつかの実施形態では、患者または対象は、改変および/または遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の再注入の前に、リンパ球が枯渇していない。
【0013】
いくつかの態様および実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞に、より制御可能な様式で生存および増殖する能力を提供するのに特に適している遺伝子構築物が本明細書に提供される。分泌型サイトカインに作動可能に連結されたリンパ増殖エレメントまたは誘導性プロモーターに作動可能に連結された構造的プロモーターとは対照的に、そのような態様および実施形態は、その標的へのCAR結合によって誘導された場合、例えば、腫瘍微小環境中に存在するものなどのT細胞および/またはNK細胞の増殖を誘導することができる、膜結合リンパ増殖エレメントに作動可能に連結された誘導性プロモーターを提供する。
【0014】
一部の態様では、本明細書において、複製能力のないRIP(recombinant retroviral particle)を対象に送達する、投与する、および/注入する方法が提供され、当該方法は、対象にRIPを含むRIP製剤を投与することを含む。RIPは、本明細書に開示されるRIPのいずれであってもよい。
【0015】
本開示の態様および実施形態に関するさらなる詳細は、本特許出願全体を通して提供される。項および項の見出しは、読みやすくするためのものであり、方法、組成物、およびキット、または項全体にわたるその中の機能性エレメントなどの開示の組み合わせを制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、GCAR-19GU RIPをIP注射されてから19日後のNSG-SGM3 CD34ヒト化マウスの末梢血のFACSプロットを示す。
【0017】
【
図2】
図2は、PBSをモックIP注射された後、またはGCAR-19GU RIPをIP注射された後、様々な日数でのNSG-SGM3 CD34ヒト化マウスにおける、血液1μl当たりのB細胞数のグラフを示す。グラフは、各群の5匹のマウスの平均を表す。
【0018】
【
図3】
図3は、GCAR-19GU RIPをIP注射されてから19日後のNSG-MHC1/2 DKO PBMCヒト化マウスの末梢血のFACSプロットを示す。
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」または「CARs(複数)」という用語は、細胞、例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ、および幹細胞に抗原特異性を移植する操作された受容体を指す。本発明のCARは、少なくとも一つの抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン(TM)、および細胞内活性化ドメイン(IAD)を含み、ストーク、および一つ以上の共刺激ドメイン(CSD)を含むことができる。別の実施形態では、CARは、二つの異なる抗原またはエピトープに特異的である二重特異性CARである。ASTRが標的抗原に特異的に結合した後、IADは、細胞内シグナル伝達を活性化する。例えば、IADは、抗体の抗原結合特性を利用して、MHCに制限されない様式で、選択された標的に向けてT細胞の特異性および反応性をリダイレクトすることができる。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に、抗原プロセシングとは無関係に抗原を認識する能力を与え、それにより、腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。さらに、T細胞で発現される場合、CARは、内因性T細胞受容体(TCR)アルファおよびベータ鎖と有利に二量体化しない。
【0020】
本明細書で使用される場合、細胞「凝集物」という用語は、互いに接着する細胞の塊を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーター」という用語は、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結されたときに、細胞のほとんどのまたはすべての生理学的条件下で、細胞において遺伝子産物を産生させるプロモーターを指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「誘導性プロモーター」または「活性化可能プロモーター」という用語は、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結されたときに、実質的にプロモーター特異的インデューサーが細胞中に存在するときにのみ、細胞において遺伝子産物を産生させるプロモーターを指す。誘導性プロモーターは、基本転写活性を有しないか、または低いレベルを有するが、転写活性は、誘導シグナルの存在下で、時に大幅に増加する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「インスレーター」という用語は、染色体内および染色体間の相互作用を媒介し、エンハンサーとプロモーターとの間の相互作用を遮断することができるシス調節エレメントを指す。典型的には、インスレーターは、長さが200~2000個の塩基対であり、配列特異的DNA結合タンパク質のためのクラスター化された結合部位を含有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「微小環境」という用語は、組織の他の領域または体の領域との一定のまたは一時的な物理的または化学的差異を有する組織または体の任意の部分または領域を意味する。例えば、本明細書で使用される「腫瘍微小環境」は、腫瘍が存在する環境を指し、これは、腫瘍内の非細胞領域および腫瘍組織のすぐ外側の領域であるが、がん細胞自体の細胞内コンパートメントには関係しない。腫瘍微小環境は、悪性プロセスが生き残るおよび/または拡張するおよび/または広がるための構造的および/または機能的環境を作り出す条件を含む、腫瘍環境のありとあらゆる条件を指し得る。例えば、腫瘍微小環境は、これらに限定されないが、圧力、温度、pH、イオン強度、浸透圧、オスモル濃度、酸化ストレス、一つ以上の溶質の濃度、電解質の濃度、グルコースの濃度、ヒアルロナンの濃度、乳酸もしくは乳酸塩の濃度、アルブミンの濃度、アデノシンのレベル、R-2-ヒドロキシグルタル酸塩のレベル、ピルビン酸塩の濃度、酸素の濃度、および/または酸化剤、還元剤、もしくは共因子の存在、ならびに当業者が理解する他の条件などの条件の変化を含み得る。
【0025】
本明細書で互換的に使用される場合、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、または複数鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、あるいはプリンおよびピリミジン塩基、または他の天然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非天然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書で使用される場合、「承認された生物製剤」は、例えば限定されないが、米国食品医薬品局(USFDA)、欧州医薬品庁(EMA)、中国の国家食品薬品監督管理総局(中国のFDA)、または日本の医薬食品局(PFSB)など政府の規制当局により提示される生物製剤の要件を満たし、単剤の生物製剤として、または組み合わせた製品もしくは方法の一部として、係る規制当局により承認されている高分子である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の抗体および抗原への特異的結合を保持する抗体の断片を含む、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。抗体断片は、これらに限定されないが、断片抗原結合(Fab)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fab’-SH断片、(Fab’)2Fv断片、Fd断片、組換えIgG(rIgG)断片、ラクダ科の一本鎖可変断片(scFv)、二価scFv、三価scFvを含む一本鎖抗体断片、ラクダ科のVHH、および単一ドメイン抗体断片(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)であってもよい。この用語は、遺伝子操作された、および/または別様に改変された形態の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、一本鎖抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、抗体および非抗体タンパク質の抗原特異的標的化領域を含む融合タンパク質、ヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、およびタンデムトリ-scFvを含む。特に明記しない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を含むと理解されるべきである。この用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、無傷または完全長の抗体を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部分、例えば、無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995));一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片(各断片には単一の抗原結合部位がある)および残留「Fc」断片(容易に結晶化する能力を反映した名称)と呼ばれる二つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理により、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片が得られる。
【0029】
本明細書で互換的に使用される場合、「一本鎖Fv」、「scFv」、または「sFv」抗体断片という用語は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーまたはスペーサーをさらに含み、これにより、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。sFvのレビューについては、PluckthunによるThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「自然発生」VHおよびVLドメインは、米国特許第8709755B2号および出願WO/2016/033331A1に開示されているような特定の条件下でscFv形式において生成されたときに、それらのアフィニティを変化させるためのさらなる分子進化なしに宿主から単離されたVHおよびVLドメインを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「抗体模倣体」とは、標的配列に特異的に結合し、天然に存在する抗体とは異なる構造を有する有機化合物を指す。抗体模倣体は、タンパク質、核酸、または低分子を含んでもよく、当業者であれば、各タイプが関連するときを理解することができる。本開示の抗体模倣体が特異的に結合する標的配列は、抗原であってもよい。抗体模倣体は、限定されないが、優れた溶解性、組織浸透性、熱や酵素に対する安定性(例えば、酵素分解に対する耐性)、および製造コストの低さをはじめとする、抗体よりも優れた特性を提供することができる。抗体模倣体としては限定されないが、アフィボディ(affibody)、アフィリン(afflilin)、アフィマー(affimer)、アフィチン(affitin)、アルファボディ、アルファマブ(alphamab)、アンチカリン(anticalin)、ペプチドアプタマー、アルマジロリピートタンパク質(armadillo repeat protein)、アトリマー、アビマー(アビディティマルチマーとしても知られている)、C型レクチンドメイン、システイン-ノットミニタンパク質、環状ペプチド、細胞障害性Tリンパ球抗原-4(cytotoxic T-lymphocyte associated protein-4)、DARPin(Designed Ankyrin Repeat Protein)、フィブリノーゲンドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン(FN3ドメイン)(例えば、アドネクチン(adnectin)またはモノボディ)、フィノマー(fynomer)、ノッチン(knottin)、Kunitzドメインペプチド、ナノフィチン(nanofitin)、ロイシンリッチリピートドメイン、リポカリンドメイン、mAb 2もしくはFcab(商標)、ナノボディ、nanoCLAMP、Obody、プロネクチン(Pronectin)、一本鎖TCR、テトラトリコペプチドリピートドメイン、またはV様ドメインが挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」または「CDR」とは、免疫グロブリンおよびT細胞受容体の各可変鎖中の三個の超可変領域を指し、鎖の四個の「フレームワーク領域」領域によって間に挟まっている。CDRは主に結合の特異性に関与する。各免疫グロブリン鎖のCDRは、N末端から順にCDR1、CDR2およびCDR3と番号付けられて呼ばれ、典型的には、特定のCDRが位置する鎖によっても識別される。したがって、HCDR3は、自身が存在する抗体の重鎖の可変ドメイン中に位置しており、一方で、LCDR1は、自身が存在する抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。異なる軽鎖または異なる重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成エレメントである軽鎖と重鎖の結合したフレームワーク領域であり、CDRを三次元空間中に配置し、整列させる役割を果たす。CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当分野に公知の様々な定義、例えば、Kabat、Chothia、international ImMunoGeneTics database(IMGT)、およびAbM(例えば、Johnson and Wu,Nucleic Acids Res.2000 Jan 1;28(1):214-218およびJohnson et al.,Nucleic Acids Res.,29:205-206(2001);Chothia & Lesk,(1987)J.Mol.Biol.196,901-917;Chothia et al.(1989)Nature 342,877-883;Chothia et al.(1992)J.Mol.Biol.227,799-817;Al-Lazikam et al.,J.Mol.Biol.1997,273(4)を参照のこと)を使用して決定することができる。別段の示唆がない限り、本明細書のCDRは、ワールドワイドウェブのvbase2.org(Retter et al.,Nucleic Acids Res.,33:D671-D674 and Mollova et al.,BMC Systems Bio.,S1,p30))の「Fab Analysis」を使用して決定される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「イディオタイプ」という用語は、抗原に対するその特異性を決定する抗体または抗体模倣体のセグメントを指し、例えば、抗原結合特異性に基づいて抗体、T細胞受容体、または抗体模倣体のグループ間で共有される特徴であり、ゆえに可変領域の構造でもある、抗体、T細胞受容体、または抗体模倣体の可変領域の構造を指している。抗体のイディオタイプは、典型的には、可変領域を含み、例えば、CDRおよびフレームワーク領域を含む。抗体については、イディオタイプは、Fab領域中に位置する。例えば重鎖と軽鎖などの複数の鎖で形成される抗体については、イディオタイプの発現は通常、抗原結合部位を形成する重鎖と軽鎖の両方の可変領域の関与が必要となる。例えばscFvなど一つの鎖で形成される抗体については、イディオタイプの発現は通常、抗原結合部位を形成する一つのポリペプチドの可変領域の関与が必要となる。抗体模倣体については、イディオタイプは、抗体模倣体のタイプに応じて変化するが、同族抗原に結合するのに必要な領域は含んでいる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「治療用抗体」または「治療用抗体模倣体」は、例えばヒトなどインビボでのアッセイを使用して治療活性を有していることが示された抗体または抗体模倣体である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「認識する」という用語は、ある分子が別の分子に結合する能力を指し、例えば、受容体がそのリガンドに結合する能力、または抗体がその標的に結合する能力を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アフィニティ」という用語は、二つの薬剤の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(Kd)として表される。アフィニティは、無関係なアミノ酸配列に対する抗体のアフィニティより少なくとも1倍大きい、少なくとも2倍大きい、少なくとも3倍大きい、少なくとも4倍大きい、少なくとも5倍大きい、少なくとも6倍大きい、少なくとも7倍大きい、少なくとも8倍大きい、少なくとも9倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、少なくとも30倍大きい、少なくとも40倍大きい、少なくとも50倍大きい、少なくとも60倍大きい、少なくとも70倍大きい、少なくとも80倍大きい、少なくとも90倍大きい、少なくとも100倍大きい、または少なくとも1000倍大きい、またはそれ以上であってもよい。標的タンパク質に対する抗体のアフィニティは、例えば、約100ナノモル(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル(pM)、または約100nM~約1フェムトモル(fM)、またはそれ以上であってもよい。本明細書で使用される場合、「アビディティ」という用語は、希釈後の解離に対する二つ以上の薬剤の複合体の耐性を指す。「免疫反応性」および「優先的に結合する」という用語は、抗体および/または抗原結合断片に関して本明細書で互換的に使用される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「結合」という用語は、例えば、塩架橋および水架橋などの相互作用を含む、共有結合性相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、ならびにイオン性相互作用および/または水素結合相互作用による二つの分子間の直接会合を指す。非特異的結合とは、約10-7M未満の親和性での結合、例えば10-6M、10-5M、10-4Mなどのアフィニティでの結合を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「細胞表面発現系」または「細胞表面提示系」への言及は、細胞の表面上のタンパク質またはその一部分の提示または発現を指す。典型的には、細胞表面タンパク質に融合した目的のタンパク質を発現する細胞が生成される。例えば、タンパク質は、膜貫通ドメインとの融合タンパク質として発現される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「エレメント」という用語は、ポリペプチドの融合物、ポリペプチド領域、およびそれらの機能的変異体または断片、ならびにmicroRNAおよびshRNAを含むポリヌクレオチド、およびそれらの機能的変異体または断片ポリヌクレオチドを含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「領域」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの任意のセグメントである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ドメイン」は、機能的および/または構造的特性を有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの領域である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ストーク」または「ストークドメイン」という用語は、隣接するポリペプチド領域に構造的柔軟性および間隔を提供する柔軟なポリペプチドコネクター領域を指し、天然または合成ポリペプチドからなり得る。ストークは、免疫グロブリン(例えば、IgG1)のヒンジまたはヒンジ領域に由来し得、これは、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230まで伸びていると定義される(Burton(1985)Molec.Immunol.,22:161-206)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初および最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG1配列と整列され得る。ストークは、米国特許第5,677,425号に開示されているように、変化したヒンジ領域を含むがこれに限定されない、自然発生または非自然発生であってもよい。ストークは、任意のクラスまたはサブクラスの抗体に由来する完全なヒンジ領域を含むことができる。ストークはまた、CD8、CD28、または隣接領域に柔軟性および間隔を提供する上で同様の機能を提供する他の受容体に由来する領域を含むことができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、材料がその元の環境(例えば、それが自然発生している場合は自然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物に存在する自然発生ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されないが、天然系に共存する材料のいくつかまたはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離される。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってもよく、および/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物の一部であってもよく、そのようなベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではないという点で依然として単離され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の一本鎖である。ポリペプチドは、固定構造に折り畳まれず、またいかなる翻訳後修飾も有しない。「タンパク質」は、固定構造に折り畳まれるポリペプチドである。「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用される。
【0045】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドは、ポリペプチドの自然環境の汚染成分、例えば、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質などのポリペプチドの診断的または治療的使用を妨げる材料を除去するために「精製」され得る。ポリペプチドは、(1)ローリー法によって決定される抗体の90重量%超、95重量%超、もしくは98重量%超、例えば99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターの使用によってN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルーもしくは銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって均一になるまで精製され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という用語は、一般に、骨髄で産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球(leukocyte)を含む。「免疫細胞」には、例えば、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)および骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「T細胞」は、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、制御性T細胞(Treg)およびガンマ-デルタT細胞を含む、CD3を発現するすべてのタイプの免疫細胞を含む。CD3+、CD56+、およびCD4+またはCD8+のいずれかであるNKT細胞は、本明細書においてある種のT細胞とみなされる。CD3の表面発現は、本明細書に開示されるT細胞を改変する方法の一部で観察されたように、T細胞において一過性に減少または消失させることができる。一過性にCD3表面発現が減少/消失した、かかる改変CD4+リンパ球またはCD8+リンパ球もまだ本開示においてはT細胞とみなされる。例えば、CD3+、CD4+、CD8+、CD56+など、本明細書において「CD」または分化クラスター(cluster of differentiation)のマーカーという言及は、かかるポリペプチドの表面発現に関連する。表面発現は、陽性と陰性の連続したつながりであり、FACS分析で分析され得ることが理解される。FACS分析において細胞は当分野に公知のユーザーカットオフに基づいて陽性または陰性と判定される。例えば、CD3loまたはCD3intなど、FACS分析によって表面マーカーの発現が低度または中程度と判定された場合、本明細書においては表面マーカーが陰性(例えば、CD3-)とみなされる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「NK細胞」には、表面にCD56を発現するリンパ球(CD56+リンパ球)が含まれる。CD3+、CD56+、およびCD4+またはCD8+のいずれかであるNKT細胞は、本明細書においてある種のNK細胞とみなされる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性細胞」には、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK-T細胞、γδT細胞、CD4+細胞の亜集団、および細胞傷害性応答を媒介することができる細胞である好中球が含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、一般に、多能性または多分化能性の幹細胞を含む。「幹細胞」には、例えば、胚性幹細胞(ES)、間葉系幹細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPS)、およびコミットされた前駆細胞(造血幹細胞(HSC)、骨髄由来細胞など)が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒の点で治療的であってもよい。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の任意の処置をカバーし、以下を含む:(a)疾患の素因があるかもしれないが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生するのを防ぐこと;(b)疾患を阻害する、すなわちその発症を阻止すること;および(c)疾患を和らげる、すなわち疾患の退行をもたらすこと。
【0052】
本明細書で互換的に使用される場合、「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、ヒト、ネズミ(例えば、ラット、マウス)、ウサギ目(例えばウサギ)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などが挙げられるがこれらに限定されない、哺乳動物を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「治療有効量(therapeutically effective amount)」または「有効量(efficacious amount)」という用語は、疾患を処置するための哺乳動物または他の対象に投与された場合に、疾患に対するそのような処置に影響を与えるのに十分である薬剤の量、または二つの薬剤の合計量を指す。「治療有効量」は、薬剤、疾患およびその重症度、ならびに治療される対象の年齢、体重などによって異なる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「進化」または「進化する」という用語は、変異誘発の一つ以上の方法を使用して、それ自体が改良された生体分子である、および/または別の改良された生体分子の生成に寄与する、異なるポリペプチドをコードする異なるポリヌクレオチドを生成することを指す。「生理学的」または「正常な」または「正常な生理学的」条件は、これらに限定されないが、圧力、温度、pH、イオン強度、浸透圧、オスモル濃度、酸化ストレス、一つ以上の溶質の濃度、電解質の濃度、グルコースの濃度、ヒアルロナンの濃度、乳酸または乳酸塩の濃度、アルブミンの濃度、アデノシンのレベル、R-2-ヒドロキシグルタル酸塩のレベル、ピルビン酸塩の濃度、酸素の濃度、および/または酸化剤、還元剤、もしくは共因子の存在、ならびに対象への投与部位、または作用部位の組織もしくは器官で正常範囲内であると考えられる他の条件などの条件である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「形質導入された細胞」または「安定して形質導入された細胞」は、細胞のゲノムに組み込まれた外因性核酸を含有する細胞である。本明細書で使用される場合、「遺伝子改変された細胞」は、外因性核酸が細胞のゲノムに組み込まれているかどうかに関わらず、また外因性核酸を細胞に導入するために使用される方法に関わらず、外因性核酸を含有する細胞である。細胞のゲノムに組み込まれていない細胞内の外因性核酸は、本明細書では「染色体外」と称され得る。本明細書で使用される場合、「改変された細胞」は、組み換え核酸ベクター(本明細書において「ポリヌクレオチドベクター」または「遺伝子ベクター」とも呼称される)に関連付けられた細胞、または外来性核酸により遺伝子改変された細胞であり、例示的な実施形態では、当該組み換え核酸ベクターは、外来性核酸を含有する複製能力がない組み換えレトロウイルス粒子(本明細書において「RIRレトロウイルス粒子」または「RIP」とも呼称される)である。典型的には、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を含む組成物および方法において、改変された細胞は、細胞の表面上のタンパク質と、シュードタイピングエレメントおよび/またはT細胞活性化エレメントを含む複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上のタンパク質との間の相互作用を介して、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と会合する。リポソーム試薬などの脂質系試薬内の核酸のトランスフェクションを含む組成物および方法において、組換え核酸ベクターの一種である核酸を含有する脂質系試薬は、改変された細胞を融合するか、またはそれによって内在化される前に、改変された細胞の脂質二重層と会合する。同様に、ポリエチレンイミン(PEI)またはリン酸カルシウムベースのトランスフェクションなどの核酸の化学ベースのトランスフェクションを含む組成物および方法において、核酸は、典型的には、改変された細胞によって内在化される前に、改変された細胞の負に荷電した膜と会合する組換え核酸ベクターを形成するために、正に荷電したトランスフェクション試薬と会合する。細胞を安定してトランスフェクトまたは遺伝子改変する他の手段または方法は、エレクトロポレーション、弾道送達、およびマイクロインジェクションを含む。本明細書で使用される「ポリペプチド」は、タンパク質分子の一部または全体、ならびに任意の翻訳後または他の修飾を含み得る。
【0056】
本明細書で使用されるシュードタイピングエレメントは、標的宿主細胞を特定し、かつそれに結合する、典型的には糖タンパク質である一つ以上のポリペプチドを含む「結合ポリペプチド」、ならびにレトロウイルスおよび標的宿主細胞膜の融合を媒介し、それによりレトロウイルスゲノムが標的宿主細胞に入ることを可能にする一つ以上の「融合性ポリペプチド」を含み得る。本明細書で使用される「結合ポリペプチド」はまた、「T細胞および/もしくはNK細胞結合ポリペプチド」または「標的会合エレメント」とも称され得、「融合性ポリペプチド」はまた、「融合性エレメント」とも称され得る。
【0057】
例えば休止T細胞などの「休止」リンパ球は、Ki-67などの活性化マーカーを発現しない細胞周期のG0期のリンパ球である。休止リンパ球には、特定の抗原に遭遇したことがないナイーブT細胞、および抗原に以前に遭遇したことによって変化したメモリーT細胞が含まれ得る。「休止」リンパ球はまた、「静止」リンパ球とも称され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「リンパ球枯渇」は、例えば、リンパ球枯渇剤の投与によって、対象におけるリンパ球の数を低減する方法を含む。リンパ球枯渇はまた、身体の一部または全身の分割放射線療法によっても達成され得る。リンパ球枯渇剤は、哺乳動物に投与されたときに哺乳動物の機能的リンパ球の数を減少させることができる化合物または組成物であってもよい。そのような薬剤の一例は、一つ以上の化学療法剤である。そのような薬剤および投与量は既知であり、治療される対象に応じて治療する医師によって選択され得る。リンパ球枯渇剤の例には、これらに限定されないが、フルダラビン、シクロホスファミド、クラドリビン、デニロイキンジフチトクス、アレムツズマブ、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0059】
RNA干渉(RNAi)は、RNA分子が標的RNA分子を中和することによって遺伝子発現または翻訳を阻害する生物学的プロセスである。RNA標的は、mRNAであってもよく、またはRNAiによる機能阻害を受けやすい任意の他のRNAであってもよい。本明細書で使用される場合、「阻害性RNA分子」は、細胞内に存在することによりRNAiをもたらし、阻害性RNA分子が標的とされる転写物の発現の低減をもたらすRNA分子を指す。本明細書で使用される阻害性RNA分子は、RNA二重鎖を形成することができる5’ステムおよび3’ステムを有する。阻害性RNA分子は、例えば、miRNA(内因性もしくは人工のいずれか)またはshRNA、miRNAの前駆体(すなわち、プリmiRNAもしくはプレmiRNA)またはshRNA、あるいは細胞または対象に単離された核酸として直接転写または導入されるdsRNAであってもよい。
【0060】
本明細書で使用される場合、「二本鎖RNA」または「dsRNA」または「RNA二本鎖」は、二本の鎖で構成されるRNA分子を指す。二本鎖分子には、ハイブリダイズして二本鎖RNA構造を形成する二本のRNA鎖、またはそれ自体が二重になって二本鎖構造を形成する一本鎖RNA鎖で構成される分子が含まれる。必ずしもすべてではないが、ほとんどの二本鎖領域の塩基は、塩基対である。二本鎖領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。標的RNAに相補的な配列は、アンチセンス配列であり、しばしば18~29、19~29、19~21、もしくは25~28ヌクレオチド長、またはいくつかの実施形態では、下限の18、19、20、21、22、23、24、25~上限の21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30であり、所与の範囲は、上限よりも低い下限を常に有する。そのような構造は、典型的には、各ステムと隣接し、二本鎖の一部ではないループによって接続された5’ステム、ループ、および3’ステムを含む。特定の実施形態では、ループは、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、ループは、2~40、3~40、3~21、もしくは19~21ヌクレオチド、またはいくつかの実施形態では、下限の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20~上限の10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、もしくは40を含み、所与の範囲は、上限よりも低い下限を常に有する。
【0061】
本明細書で使用される「microRNA隣接配列」という用語は、microRNAプロセシングエレメントを含むヌクレオチド配列を指す。microRNAプロセシングエレメントは、前駆体microRNAからの成熟microRNAの産生に寄与する最小の核酸配列である。多くの場合、これらのエレメントは、microRNAステム-ループ構造に隣接する40ヌクレオチド配列内にある。いくつかの場合において、microRNAプロセシングエレメントは、microRNAステム-ループ構造に隣接する長さ5~4,000ヌクレオチドのヌクレオチド配列のストレッチ内に見られる。
【0062】
多重阻害性RNA分子に関して使用される場合の「リンカー」という用語は、二つの阻害性RNA分子を結合する接続手段を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「組換えレトロウイルス」は、複製可能なレトロウイルスとして明示的に記載されていない限り、複製不可能な、または「複製能力のない」レトロウイルスを指す。「組換えレトロウイルス」および「組換えレトロウイルス粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。そのようなレトロウイルス/レトロウイルス粒子は、例えば、ガンマレトロウイルス、および例示的実施形態ではレンチウイルスを含む、任意のタイプのレトロウイルス粒子であり得る。知られているように、そのようなレトロウイルス粒子、例えばレンチウイルス粒子は、典型的には、Gag、Pol、およびRevなどのパッケージング成分を含むプラスミド、シュードタイピングエレメントをコードするエンベロープまたはシュードタイピングプラスミド、および導入、ゲノム、またはレトロウイルス(例えばレンチウイルス)発現ベクター(これは典型的には、目的の遺伝子または他のコーディング配列がコードされているプラスミドである)でパッキング細胞をトランスフェクトすることによって、パッキング細胞において形成される。したがって、レトロウイルス(例えばレンチウイルス)発現ベクターは、細胞へのトランスフェクション後の発現およびパッケージングを促進する配列(例えば、psiパッケージングエレメントおよび標的異種コード配列に隣接する5’LTRおよび3’LTR)を含む。「レンチウイルス」および「レンチウイルス粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0064】
miRNAの「フレームワーク」は、miRNAを取り囲む「5’microRNA隣接配列」および/または「3’microRNA隣接配列」、ならびにいくつかの場合では、miRNA内のステム-ループ構造のステムを分離するループ配列からなる。いくつかの例では、「フレームワーク」は、例えば、miR-155などの自然発生miRNAに由来する。「5’microRNA隣接配列」および「5’アーム」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「3’microRNA隣接配列」および「3’アーム」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「miRNA前駆体」という用語は、一次RNA転写物、プリmiRNA、またはプレmiRNAなどのmiRNAに酵素的に処理され得る任意の長さのRNA分子を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「構築物」という用語は、単離されたポリペプチドまたはポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチド構築物は、ポリペプチド、例えば、リンパ増殖エレメントをコードすることができる。当業者は、文脈によって、構築物が単離されたポリヌクレオチドを指すのか、または単離されたポリペプチドを指すのかを理解するであろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、「MOI」は、感染多重度比を指し、MOIは、細胞数当たりの感染に使用されるウイルス粒子の数の比に等しい。限定されない例として、FACSおよびレポーター発現を使用して、ウイルス粒子数の機能的力価測定が実施され得る。
【0068】
「末梢血単核細胞」(PBMC)は、丸い核を有する末梢血細胞を含み、リンパ球(例えば、T細胞、NK細胞、およびB細胞)ならびに単球を含む。PBMCではないいくつかの血液細胞タイプには、赤血球、血小板、および顆粒球(すなわち、好中球、好酸球、および好塩基球)が含まれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「シンシチウム誘導ポリペプチド」という用語は、細胞融合を引き起こす膜ポリペプチドまたはその一部分を指し、かかる細胞融合によって、シンシチウムの形成がもたらされる。シンシチウム誘導ポリペプチドは、本明細書に開示されるようなある種の融合性エンベロープタンパク質である。本明細書において使用される場合、シンシチウム誘導ポリペプチドには、ウイルスにより自然界で産生されるタンパク質、特にウイルス-細胞の融合ならびに感染細胞の細胞-細胞の融合を介在する、いわゆる融合性膜タンパク質(FMP:fusogenic membrane protein)および融合性膜糖タンパク質(fusogenic membrane glycoprotein)が包含される。本明細書において使用される場合、シンシチウム誘導ポリペプチドにはさらに、インビボで細胞-細胞の融合を介在することが知られている非ウイルス性のポリペプチドも包含される。「ウイルス性融合性膜糖タンパク質」は、ウイルス由来の融合性膜タンパク質であり、自然界において、ウイルスとその標的宿主細胞の膜融合を介在する。シンシチウム誘導ポリペプチド(またはその一部)または融合性膜糖タンパク質(またはその一部)は、本明細書で使用される場合、ウイルスから単離された場合に、当該融合性膜糖タンパク質を発現する細胞と、当該融合性膜糖タンパク質の受容体を発現する細胞との間の融合を介在する、または融合する能力を有する。融合性膜タンパク質の例としては限定されないが、フェルチリン b(fertilin b)が挙げられる。融合性膜タンパク質のウイルス性融合性膜糖タンパク質サブセットとしては限定されないが、以下が挙げられる:狂犬病ウイルス、モコラウイルス(Mokola virus)、水疱性口炎ウイルスおよびトガウイルス(Toga virus)のG型糖タンパク質;マウス肝炎ウイルスJHM表面プロジェクションタンパク質(surface projection protein);ブタ呼吸器コロナウイルスのスパイク糖タンパク質および膜糖タンパク質;鶏伝染性気管支炎ウイルスのスパイク糖タンパク質およびその前駆体;ウシ腸内コロナウイルスのスパイクタンパク質;麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス3型、シミアンウイルス41、センダイウイルスおよびヒト呼吸器合胞体ウイルスのFならびにH、HNまたはG遺伝子;ヒトヘルペスウイルス1型およびサル水痘ウイルスのgH、シャペロンタンパク質gLを含む;ヒト、ウシおよびオナガザル(cercopithicine)のヘルペスウイルスgB;フレンドマウス白血病ウイルスおよびマソンファイザーサルウイルスのエンベロープ糖タンパク質;インフルエンザのヘマグルチニン;水疱性口炎ウイルスのGタンパク質;流行性耳下腺炎ウイルスのヘマグルチニンノイラミニダーゼならびに糖タンパク質F1およびF2;ならびにベネズエラ馬脳脊髄炎由来の膜糖タンパク質。
【0070】
本明細書において、一部のシンシチウム誘導ポリペプチドは単独で機能し、一方で他のポリペプチドは融合-促進活性のために複数の異なるポリペプチドを必要とすると認識されている。本明細書で使用される場合、単数形の「シンシチウム誘導ポリペプチド」という用語は、一つの融合促進性ポリペプチド、ならびに複数が必要とされる場合の融合促進に必要なポリペプチドの各々も包含されることを意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、開示された値よりも10%低い、または10%高い値を指す。例えば、「約1%のスクロース」は、0.9%~1.1%のスクロースを含む。
【0072】
本明細書で使用される場合、「形質導入単位」という用語は、標的細胞を形質導入することができる、溶液中のウイルス粒子の数を指し、例えば、Jurkat細胞などの任意の標的細胞を形質導入し、標的細胞中の導入遺伝子発現を測定することによって計算することができ、例えば、連続希釈や、Lenti-X(商標)qRT-PCR Titration Kit(Takara社、#631235)を使用したレンチウイルスゲノムのqPCRによって導入遺伝子発現の分析を行うことによって決定される。
【0073】
本開示、ならびに本明細書に提供される態様および実施形態は、開示された特定の例に限定されず、したがって当然ながら変動し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の例および実施形態を開示することのみを目的としており、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0074】
値の範囲が提供される場合、文脈により明確に別段の指示がない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在値が本開示に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立して、より小さい範囲に含まれる場合があり、また記載された範囲内の具体的に除外された限界に従って、本明細書の実施形態内に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も本明細書の実施形態に含まれる。重複する範囲に複数の低い値および複数の高い値が与えられる場合、当業者は、選択された範囲が高い値よりも小さい低い値を含むことを認識するであろう。本出願のすべての見出しは、読者の便宜のためのものであり、限定するものではない。
【0075】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書に提供される態様および実施形態が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似した、または同等であるすべての方法および材料もまた、本明細書に提供される任意の態様もしくは実施形態の実施または試験で使用することができるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、それに関して刊行物が引用されている方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「キメラ抗原受容体(a chimeric antigen receptor)」への言及は、複数のそのようなキメラ抗原受容体および当業者に既知のそれらの同等物などを含む。特許請求の範囲は、いかなる任意選択の要素も除外するように作成される場合があることがさらに留意される。したがって、この記述は、請求要素の列挙に関連して「単独」、「のみ」などの排他的用語を使用する、または「否定的な」制限を使用するための先行詞として機能することを意図する。
【0077】
本明細書で使用される場合、具体的に記述されない限り、または文脈から明白でない限り、「または」という用語は包括的であると理解される。本明細書において例えば「Aおよび/またはB」という語句で使用される場合の「および/または」という用語は、以下の各々を含む:AおよびB;AまたはB;A(単独);ならびにB(単独)。同様に、例えば「A、Bおよび/またはC」という語句で使用される場合の「および/または」という用語は、以下の各々を含む:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはB;AまたはC;BまたはC;AおよびB;AおよびC;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。この論理は、「および/または」に接続されたリスト内の任意の数の項目に拡張される。
【0078】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の好適な部分的組み合わせで提供され得る。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが個々に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態およびその要素のすべての部分的組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆるそのような部分的組み合わせが個々に、かつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本開示は、リンパ球、例えばNK細胞、および例示的な実施形態ではT細胞を改変する、および例示的な実施形態では、遺伝子改変するための改善された方法および組成物を提供することによって、従来技術の課題を克服する。本明細書の方法および組成物のいくつかは、リンパ球を形質導入またはトランスフェクトするための単純化され、かつより迅速なプロセスを提供し、特殊なデバイスを必要とするいくつかのステップを回避する。したがって、方法は、細胞治療法の一般化に向けた重要なステップを提供する。例えばNK細胞、例示的な実施形態ではT細胞などのリンパ球を改変するための例示的な方法および組成物は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を対象に直接投与することによって、エクスビボまたはインビボで実施される。本明細書の一部の態様および実施形態において、T細胞および/またはNK細胞を改変する方法は、従来法よりも短い時間で実施され、実際に一部の実施形態では、迅速な診療現場での(point of care)方法を提供する。さらに、リンパ管周囲投与、リンパ節内(intranodal)投与、または皮下投与に適合されるRIPおよび/または細胞製剤および/または組成物を含む、これら改善法での用途を含む、多くの用途を有する組成物が提供される。これらの組成物のいくつかは、インビボ増殖および生着、ならびに/または例えば増殖因子の非存在下でのエクスビボ培養および/もしくはインビトロ培養を含む、増殖性および生存性が改善された改変リンパ球、例示的な実施形態では遺伝子改変されたリンパ球を含む。そのようなRIP製剤、ならびに改変リンパ球、および例示的な実施形態では遺伝子改変リンパ球は、例えば、T細胞の増殖や生存に影響を与える因子を理解することを目的としたインビボ、エクスビボ、またはインビトロでT細胞やNK細胞をより簡単に形質導入するための研究ツールとしての実用性を有し、また例えば、回収され、試験され得る、または商用製品に使用され得る増殖因子および免疫調節剤などの特定の因子の作製のための商業生産を目的とした実用性を有する。またそのようなRIP製剤、ならびに改変リンパ球および遺伝子改変リンパ球は、例えば免疫細胞や遺伝子治療などの多くの障害の治療において実用性を有しており、例示的な実施形態では、例えばがんなどの超増殖性細胞傷害の治療において実用性を有している。
【0080】
本明細書の免疫細胞療法を目的として例示的な方法および組成物は、リンパ管周囲送達、皮下送達、腹腔内送達または筋肉内送達、ならびにそうした送達のための細胞製剤および/またはRIP製剤を含み、それらと適合性を有し、それらに効果的であり、および/またはそれらに適合される。これらの送達方法および細胞製剤(すなわち、送達用組成物)のいくつかは、細胞凝集を促進する。そのような細胞凝集は、いくつかの実施形態では、細胞製剤または細胞製剤の投与部位への抗原、成長因子、および免疫調節剤の添加によってさらに強化される細胞増殖および生存を促進する。
【0081】
また、悪性細胞の遺伝子改変を介して標的抗原利用可能性の喪失(例えば、エピトープまたは抗原マスキング)など、CARがん細胞によるCAR療法の抵抗性に関連する課題を克服する方法および組成物が、本明細書に提供される。
【0082】
T細胞および/またはNK細胞を遺伝子改変するためのインビボ方法
本明細書に提供される態様および実施形態は、対象内へのRIPの直接注射を含む点が特徴であり、この場合においてT細胞および/またはNK細胞は、インビボで改変される。さらに注目すべきは、本明細書に提供される態様および実施形態の多くが、組換えレトロウイルス粒子に関して検討されているが、本明細書に提供されるものを含むがこれに限定されない多くの異なる組換え核酸ベクターが、そのような方法および組成物に使用され、かつ/または含まれ得ることが意図され、かつ当業者によって認識されることである。したがって、一部の態様および実施形態では、本明細書に提供される方法は、ウイルス粒子を対象に直接投与(例えば、送達、導入、または注射)することを含む。一部の態様および実施形態では、本明細書において、対象にウイルス粒子を投与して、インビボで、すなわち対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変するための方法、例示的な実施形態では遺伝子改変する、および/または形質導入するための方法が提供される。例示的実施形態では、ウイルス粒子は、レトロウイルス粒子である。さらなる例示的な実施形態では、レトロウイルス粒子は、複製能力がない組換えレトロウイルス粒子(RIP)である。本明細書の態様および実施形態の多くは、RIPを指し、当業者であれば、他のウイルスおよび/またはレトロウイルス粒子がどのように使用され得るかを理解することができる。
【0083】
関連する態様および実施形態において、RIP製剤、RIPを含む改変組成物、RIPを含む送達溶液、方法で使用するためのRIP、RIP製剤の作製方法、RIPを含むインビボ組成物、およびRIPを含むインビボ反応混合物が本明細書において提供される。例示的な実施形態では、RIPは、例えばCARなどの操作されたシグナル伝達ポリペプチド、操作されたTCR、および/またはリンパ増殖エレメント(LE:lymphoproliferative element)をコードする一つ以上のポリヌクレオチドを含む。特定の例示的な実施形態では、LEは、構造的に活性なLEである。例示的な実施形態では、RIP製剤は、RIP溶液中で、またはRIP表面上のいずれかで活性化エレメントを含み、T細胞および/またはNK細胞のインビボでの遺伝子改変を促進する。例示的な実施形態では、RIPは、RIP表面上に結合エレメントおよび融合性エレメントを含む。一部の実施形態では、結合エレメントおよび融合性エレメントのうちの一つ、または両方が、シュードタイピングエレメントであり得る。一部の実施形態では、活性化エレメントは結合エレメントであり、および融合性エレメントはシュードタイピングエレメントである。
【0084】
一つの態様では、本明細書において、複製能力がない組換えレトロウイルス粒子(RIP)を対象に投与する方法が提供され、当該方法は、
当該RIPを含む製剤を当該対象に投与することであって、当該RIPが、
a)当該RIPの表面上の活性化エレメント、および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、当該一つ以上の転写単位のそれぞれが、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードすること、を含む。
【0085】
操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、本明細書において別段に開示される操作されたシグナル伝達ポリペプチドのいずれか、例えば、CAR、操作されたTCR、および/またはリンパ増殖エレメントであってもよい。
【0086】
別の態様では、本明細書において、複製能力がない組換えレトロウイルス粒子(RIP)を対象に投与する方法が提供され、当該方法は、
当該RIPを含む製剤を当該対象に投与することであって、当該RIPが、
a)当該RIPの表面上の活性化エレメント、および
b)リンパ増殖エレメント(LE)をコードするポリヌクレオチド、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含み、当該LEが構造的に活性であること、を含む。
【0087】
活性化エレメントは、本明細書において別段に開示される活性化エレメントのいずれかであってもよい。一部の実施形態では、RIPはさらに、RIP表面上に結合エレメントおよび/または融合性エレメントを含む。本明細書において別段に開示される結合エレメントまたは融合性エレメントのいずれを使用してもよい。
【0088】
対象にRIPを送達もしくは導入すること、および/または対象にRIPを注射することを含む、対象にRIPを投与することを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、ならびに対象にRIPを投与することを含む本明細書の対象を治療する方法を含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、投与は、RIPを静脈内または血管周囲に投与することを含んでもよい。例示的な実施形態では、RIPは、血管周囲に投与されてもよい。血管周囲への投与には、腫瘍内、リンパ節内、およびリンパ管周囲への投与を含む。したがって一部の実施形態では、RIPは、腫瘍内、リンパ節内、または例示的な実施形態では、リンパ管周囲に投与されてもよい。リンパ管周囲投与には、皮下、間質、腹腔内、筋肉内、および皮内の投与が含まれ、一部の実施形態では、RIPは、皮下、間質、腹腔内、筋肉内、または皮内に投与されてもよい。一部の実施形態では、RIPは、リンパ節内または皮下に送達されてもよい。RIPを含む製剤を含む、本明細書のあらゆる製剤が、例えばRIPなどを含む場合には改変組成物などの組成物、または送達溶液と呼称され得る。
【0089】
対象内へのRIPの導入または投与は、リンパ節への直接送達であってもよい。例示的な実施形態では、RIPは、祖型リンパ節、腋窩リンパ節、および/または頚部リンパ節に注入され、または投与されてもよい。一部の実施形態では、RIPが送達されるリンパ節は、リンパ節転移がある。一部の実施形態では、リンパ節は、腫瘍を排出するリンパ節である。一部の実施形態では、リンパ節は、腫瘍を排出するリンパ節ではない。一部の実施形態では、リンパ節は、TILを含む。
【0090】
本明細書のRIP製剤は、例えば対象に導入されたときの有効性を改善するための成分を含んでもよく、したがってそのような性能を有してもよく、非限定的な例では、当該成分は皮下送達により導入され得る。一部の実施形態では、RIPは、RIPを送達部位またはその近くに保持するための手段を含むように製剤化され、または送達部位の近くでのRIPの保持に有効である、保持に適して構成される、および/または適合されるよう製剤化される。一部の実施形態では、RIPは、送達部位またはその近くでのRIPの保持に有効であるように、保持に適合されるように、および/または保持に適して構成されるように製剤化され、または送達部位またはその近くにRIPを保持するための手段を有するように製剤化される。一部の実施形態では、皮下送達されるRIPは、膜結合型サイトカインを含む。一部の実施形態では、皮下送達されるRIPは、膜結合型ケモカインを含む。一部の実施形態では、RIPは、デポ製剤中で送達される。一部の実施形態では、RIPは、ハイドロゲル中で送達される。デポ製剤およびハイドロゲルは、本明細書において詳細に検討される。一部の実施形態では、RIPは、血中への局所的吸収を阻害するための手段を含むように製剤化される。一部の実施形態では、RIPは、血中への局所的吸収の阻害に有効であるように、阻害に適合されるように、および/または阻害に適して構成されるように、製剤化される。一部の実施形態では、RIPは、リンパ管への進入のための手段を含むように製剤化される。一部の実施形態では、RIPは、リンパ管への進入に有効であり、進入するように適合され、および/または進入するように構成される。一部の実施形態では、RIPは、可溶性製剤中で送達される。一部の実施形態では、RIPは、リンパ吸収を促進する一つ以上の賦形剤(リンパ生成促進物質)の有効量とともに製剤化される。一部の実施形態では、リンパ生成促進物質は、ヒト血清アルブミン、ヒアルロニダーゼ、非硫酸化デキストラン、分子量が10K、40K、100K、200K、500K、1000Kまたは2000K kDaを超えるデキストランを含むコロイド、および送達部位(例えば、皮下)でのRIPの局所滞留時間を減少させる他の剤から選択される。
【0091】
一部の実施形態では、RIPは、典型的にはインビボでの送達に有効な量で塩を含む緩衝液中での送達を目的として製剤化される。一部の実施形態では、製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する。一部の実施形態では、製剤はさらに、例えば、0.25%ラクトース~10%ラクトース、例えば、0.5%~10%、0.5%~8%、1%~8%、1%~10%、2%~8%、2%~6%、3%~6%、3%~5%、3.5%~4.5%、3.6%~4.4%、3.7%~4.3%、3.8%~4.2%、3.9%~4.1%、約4%ラクトースまたは4%ラクトースなどのラクトースを含有する。
【0092】
本明細書のRIP製剤、または本明細書の細胞製剤のいずれの一部の実施形態において、製剤は、ならびに/または対象に送達されるRIP製剤および/もしくは細胞製剤は、0.5~25ml、0.5~20ml、0.5~10ml、0.5~7.5ml、0.5~6ml、1.0~25ml、1.0~20ml、1.0~7.5ml、1.0~5.0ml、1~5ml、2.5~25ml、2.5~20ml、2.5~7.5ml、または2.5~5.0mlの体積を有する。
【0093】
一部の実施形態では、細胞製剤は、注射の直前、または注射から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30分以内に、RIP製剤と混合されてもよく、したがって一部の細胞、細胞の大部分、またはすべての細胞は、改変されず、遺伝子改変されず、または形質導入されない。
【0094】
一部の実施形態では、RIP製剤を投与することを含む、対象にRIPを投与する方法はさらに、細胞製剤(本明細書において細胞懸濁液または細胞混合物とも呼称される)を対象に投与すること(本明細書において、同時投与することと呼称される場合がある)を含む。一部の実施形態では、細胞製剤は、対象から採取された全血を含む。一部の実施形態では、細胞製剤は、対象由来の好中球を含有する。一部の実施形態では、細胞製剤は、対象由来の樹状細胞を含有する。一部の実施形態では、細胞製剤は、対象由来のマクロファージを含有する。一部の実施形態では、全血にPBMC濃縮手順およびTNC濃縮手順を行い、細胞製剤は、濃縮された細胞を含む。一部の実施形態では、細胞製剤は、PBMCを含有する。例示的な実施形態では、対象に投与される細胞製剤は、T細胞および/またはNK細胞を含む。一部の実施形態では、細胞、例示的な実施形態ではPBMCは、エクスビボでRIPなどのベクターに暴露されず/暴露されておらず、しかし同時投与されるまえに活性化エレメント(例えば、抗CD3および/または抗CD28)には暴露され、または暴露されている。それによって、PBMCは、同時投与されるときには活性化状態にあり、および/またはそのシグナル伝達経路はエクスビボで会合されて、対象に同時投与された後に活性化され、さらに活性化エレメントに暴露され、または暴露されない。そのような同時投与細胞と同時投与されるRIPは、任意の実施形態において、その表面上に活性化エレメントを有してもよく、および/またはLEをコードしてもよい。しかし特定の例示的な実施形態では、活性化細胞と同時投与されるRIPは、その表面上の活性化エレメントおよび/またはLEをコードするポリヌクレオチドのいずれかを含まず、または両方を含まず、例示的な実施形態ではかかる活性化細胞はエクスビボでベクター(例えば、RIP)に暴露されていない。
【0095】
一部の実施形態では、細胞は改変される。すなわち、対象への投与の前に、細胞は、RIPと接触している。例示的な実施形態では、細胞は改変されない。すなわち、対象への投与の前に、細胞は、RIPと接触していない。
【0096】
一部の実施形態では、RIP製剤および細胞製剤は、対象の標的送達部位、例えば、対象の皮膚の表面上などで、互いに0.5、1、2、3、4、または5cm以内で、投与されてもよく、送達されてもよく、導入されてもよく、または注射されてもよい。一部の実施形態では、対象への細胞製剤の投与は、対象へのRIP製剤の投与と同時、または対象へのRIP製剤の投与から1、2、3、4、5、10、15、30、45、もしくは60分以内、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8時間以内に行われる。
【0097】
一部の実施形態では、対象へのRIP投与および/または細胞投与の方法は、対象に、少なくとも0.1ml、0.5ml、1ml、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、4ml、または5ml、10ml、15ml、20ml、または25mlの、RIPを含む本明細書に開示される製剤のいずれかを投与することを含む。一部の実施形態では、対象へのRIP投与および/または細胞投与の方法は、対象に、0.1~20mlのRIP製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、対象へのRIP投与および/または細胞投与の方法は、対象に、1~10mlまたは1~20mlまたは1~25mlのRIP製剤を投与することを含む。例示的な実施形態では、対象へのRIP投与および/または細胞投与の方法は、2~3mlのRIP製剤を投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、本明細書に開示される投与経路のいずれかを含み得る。例示的な実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、RIPおよび/または細胞をリンパ管周囲に投与することを含み得る。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、単一用量または複数用量のいずれかを含み得る。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、1、2、3、4、5より多い、またはそれより多い数の用量を含み得る。
【0098】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1、10、100、1000、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014の合計形質導入単位(TU)を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、対象に合計で1×105~4×109のTUを投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、対象に合計で1×106~5×109のTUを投与することを含む。一部の実施形態では、投与されるTUは、対象のkg単位の重量で、すなわちTU/kgの単位で測定されてもよい。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1、10、100、1000、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014TU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1~1014TU/kg、103~1014TU/kg、または106~1014TU/kg、または103~108TU/kg、または104~107TU/kgを対象に投与することを含み、この場合においてkgとは対象の重量を指す。一部の実施形態では、投与されるTUは、対象の血液1ml中に存在する標的細胞の数を単位として、すなわちTU/標的細胞/対象の血液mlを単位として測定されてもよい。
【0099】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、対象に1ng/kg/日~500mg/kg/日を投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日またはその連続する期間、または1、2、3、4、5、もしくは6カ月間での複数の日、例えば1、2、3、4、5または6カ月にわたり1カ月当たり1日、1ng/kg/日~100mg/kg/日を投与することを含む。
【0100】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、または1.0×107ゲノムコピー(GC)を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1015GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、投与される用量は、GC/対象のkgの単位であってもよい。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015GC/kgを対象に投与することを含む。
【0101】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、または1.0×107感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1015感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015感染単位/体重kgを対象に投与することを含む。感染単位は、当分野で利用可能な技術によって定量化することができ、プラークアッセイによるウイルス粒子数の決定、蛍光顕微鏡法、および力価が含まれる。例えば、アデノウイルス粒子の数は、A260での吸光度を測定することによって決定することができる。同様に感染単位は、モノクローナル抗体を使用したベクター特異的タンパク質の定量的免疫蛍光法によって、またはプラークアッセイによっても決定することができる。一部の実施形態では、感染単位を計算する方法は、プラークアッセイを含む。当該アッセイでは、ウイルスの滴定物が細胞単層上で増殖され、数日~数週間後にプラーク数がカウントされる。例えば、感染力価は、プラークアッセイによって決定され、例えば、細胞変性効果(CPE)を評価するアッセイによって決定される。一部の実施形態では、CPEアッセイは、アガロースをオーバーレイされた例えばHFF細胞などの細胞の単層上でウイルスを連続希釈することによって実施される。例えば約3~28日間、多くは7~10日間、細胞変性効果が現れるまでの期間、インキュベーションを行った後、細胞を固定し、プラークとして可視化された細胞不在の巣が判定される。一部の実施形態では、感染単位は、エンドポイント希釈(TCID50)法を使用して決定することができる。当該方法は、細胞培養物の50%が感染するウイルス希釈を決定するものであり、したがって概して、例えば1logなど特定の範囲内の力価を決定することができる。
【0102】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、または1.0×107プラーク形成単位(PFU)を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1015PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015PFU/体重kgを対象に投与することを含む。
【0103】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、本明細書の別段で開示されるように、少なくとも1.0×103、1.0×104、1.0×105、1.0×106、または1.0×107減光単位(DU:dimming units)を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×103~1.0×1015DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×103~1.0×106DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、10~1.0×1013DU/体重kgを対象に投与することを含む。
【0104】
一部の実施形態では、対象に投与されるRIPの量は、個々の細胞において多すぎる統合(統合体とも呼称される)が生じない量であってもよい。一部の実施形態では、細胞ゲノム当たりのレンチゲノムコピー数として測定された場合に平均で5、4、または3個以下の統合体が生成される。例示的な実施形態では、平均で3個以下の統合体が生成される。さらなる例示的な実施形態では、平均で2個以下の統合体が生成される。
治療方法
【0105】
本開示は、対象に直接、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を投与する、送達する、および/または注射することを含む、様々な治療方法を提供する。例示的な実施形態では、かかるRIPは、RIPの表面に関連付けられた活性化エレメントを有し、リンパ増殖エレメント(LE)、操作されたT細胞受容体(操作されたTCR)、およびキメラ抗原受容体(CAR)のうちの一つ以上をコードするポリヌクレオチドを含む。例示的な実施形態では、LEは、構造的に活性なLEである。例示的な実施形態では、RIPは、LEとCARの両方をコードする。かかるRIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞を形質導入する能力を有し、形質導入するのに適合され、および/または形質導入する効果を発揮し、それによって、インビボで形質導入されたT細胞およびNK細胞は、LE、操作されたTCR、および/またはCARを発現する。本開示の操作されたTCRまたはCARは、Tリンパ球またはNK細胞により発現され、それらに存在するとき、標的細胞に対する細胞障害性を介在することができる。本明細書のかかる方法は、典型的には、本明細書に提示されるように、対象に、実質的に精製された、または精製されたRIPを投与することを伴う。操作されたTCRまたはCARは、標的細胞上に存在する抗原に結合し、それによって、操作されたT細胞受容体またはCARを産生するように遺伝子改変されたTリンパ球またはNK細胞による標的細胞の殺傷を介在する。一部の実施形態では、操作されたT細胞受容体、またはCARのASTRは、標的細胞の表面上に存在する抗原に結合する。
【0106】
本開示は一部の態様では、標的癌細胞の死滅、または増殖抑制方法を提供するものであり、当該方法は、操作されたT細胞受容体またはCARを産生するよう遺伝子改変された細胞障害性免疫エフェクター細胞(例えば、細胞障害性T細胞またはNK細胞)を、対象細胞と接触させることを伴い、それによって、Tリンパ球またはNK細胞は、標的細胞の表面上に存在する抗原を認識し、標的細胞の死滅を介在する。
【0107】
一部の態様では、本開示は、疾患または障害を有する個体において、疾患または障害を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、a.CARおよび/またはLE(例えば構造的に活性なLE)をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを対象に導入して、遺伝子操作された細胞、例えば遺伝子操作された細胞障害性の細胞、T細胞、および/またはNK細胞を生成することを含む。また本開示は、疾患または障害を有する個体において、疾患または障害を治療する方法を提供するものであり、当該方法は、CARをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、対象から取得された末梢血細胞に導入して、遺伝子操作された細胞障害性の細胞を生成すること、およびb.当該遺伝子操作された細胞障害性の細胞を当該対象に投与すること、を含む。一部の実施形態では、治療方法は、発現ベクター(例えば、RIP製剤)および遺伝子操作された細胞障害性の細胞(例えば、改変された、遺伝子改変された、もしくは形質導入されたT細胞および/またはNK細胞を含む細胞製剤)の両方を投与することを含む。一部の実施形態では、治療方法は、発現ベクター(例えば、RIP製剤)および非改変細胞(例えば、RIPと接触していない非改変細胞(例えば、T細胞および/またはNK細胞)を含む細胞製剤)を投与することを含む。かかる実施形態の例示的な実施形態では、非改変細胞は、対象由来であってもよい。かかる実施形態では、細胞製剤からの非改変細胞、および投与前の対象中に存在する細胞は、RIP製剤中のRIPによって改変されてもよい。一部の実施形態では、RIP製剤は、対象において細胞を改変し、本明細書において別段に開示されるように、対象において持続的な細胞集団を生成する。一部の実施形態では、RIP製剤によって改変される細胞には、別々に投与される細胞製剤の細胞を含む。
【0108】
一部の実施形態では、治療方法を目的として対象に投与されるRIPおよび/または細胞は、本明細書において別段に開示されるように、サイトカインの投与を含んでもよい。一部の実施形態では、サイトカインは、製剤の一部であり、または製剤と同時投与される。一部の実施形態では、サイトカインは、RIPまたは細胞の表面上の膜結合型サイトカインであってもよく、例示的な実施形態では、ケモカイン膜結合型であってもよい。膜結合型サイトカインを含む、対象に投与される細胞は、典型的には、細胞と、当該膜結合型サイトカインを発現するRIPの新しい融合から生じるものであり、細胞中の膜結合型サイトカインの発現から生じるものではない。例示的な実施形態において、サイトカインまたは膜結合型サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含んでもよい。例示的な実施形態において、サイトカインまたは膜結合型サイトカイン、例示的な実施形態ではケモカインまたは膜結合型ケモカインは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22もしくはCCL28、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片であってもよい。
【0109】
本明細書に提供される方法、例えば非限定的な例として、養子細胞療法、持続的な細胞集団を生成する方法、製剤(例えば、改変されたT細胞および/もしくはNK細胞の製剤、RIP製剤、ならびに/または非改変のT細胞および/もしくはNK細胞の製剤)を送達する方法は、がんの治療に特に採用される。そのようながんは、任意のタイプのがんであってもよい。例えばかかる方法は、卵巣がん、軟部組織肉腫、末梢T細胞がん、結腸直腸がん、肝内胆管がん、グリオブラストーマ、食道がん、皮膚T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路上皮がん、基底細胞がん腫、類上皮肉腫、膵臓がん、非小細胞肺がん腫、ホジキンリンパ腫、腎細胞がん腫、中皮腫、転移性ぶどう膜メラノーマ、腎がん、血液のがん、HER2発現がん、非メラノーマ皮膚がん、脂肪肉腫、肝細胞がん腫、小リンパ球性リンパ腫、前立腺がん、乳がん、肛門がん、辺縁帯リンパ腫、皮膚扁平上皮細胞がん腫、甲状腺がん、甲状腺髄様がん、トリプルネガティブ乳がん、神経内分泌系前立腺がん、膀胱がん、傍神経節腫、髄芽腫、表在性基底細胞がん、頭頚部扁平上皮細胞がん腫、血液悪性腫瘍、メラノーマ、B細胞リンパ腫、再発性/難治性急性骨髄性白血病、血管肉腫、骨肉腫(bone sarcoma)、難治性子宮頸がん、胆管がん、骨肉腫(osteosarcoma)、胆道がん、去勢抵抗性前立腺がん、胃食道腺がん、横紋筋肉腫、がん腫、筋層非浸潤性膀胱がん、ぶどう膜メラノーマ、小細胞肺がん、子宮頸がん、原発性解放隅角緑内障、濾胞性リンパ腫、滑膜肉腫、肝がん、がん肉腫、軟膜脳腫瘍、T細胞リンパ腫、リンパ腫、小細胞肺がん、マントル細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、子宮内膜がん、粘液性/円形細胞脂肪肉腫、転移性メルケル細胞がん腫、神経芽細胞腫、慢性リンパ球性白血病、腱滑膜巨細胞腫瘍、肉腫、急性骨髄性白血病、皮膚がん、鼻咽頭がん腫、再発性/難治性ユーイング肉腫、骨がん、グリオーマ、唾液腺がん腫、胃がん、良性腫瘍、低グレード漿液性卵巣がん、転移性乳がん、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、再発性/難治性リンパ腫、転移性結腸直腸がん、進行悪性腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、メソテリン発現固形腫瘍を有する対象、またはそれらに関連する腫瘍を有する対象を治療するために使用することができる。
【0110】
一部の実施形態では、本明細書の方法を使用して、本明細書に提示される腫瘍関連抗原および/または腫瘍特異的抗原のいずれか一つ以上を発現する腫瘍を治療することができ、操作されたT細胞受容体およびCARは、例えば本明細書の別段に開示される腫瘍関連抗原および/または腫瘍特異的抗原のいずれかなどの標的を認識するよう設計されることができる。非限定的な例として、そのような腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原としては、本明細書の別段において本明細書に提示される血液腫瘍抗原が挙げられ、一部の非限定的な実施形態では、以下の抗原が挙げられ、それら抗原の大部分またはすべては、固形腫瘍と関連すると考えられている:AXL、CD44v6、CAIX、CEA、CD133、c-Met、EGFR、EGFRvIII、Epcam、EphA2、GD2、GPC3、GUCY2C、HER1、HER2、ICAM-1、IL13Rα2、IL11Rα、Kras、Kras G12D、L1CAM、MAGE、MET、メソテリン、MUC1、MUC16 ecto、NKG2D、NY-ESO-1、PSCA、ROR-2、WT-1。
【0111】
一部の実施形態では、投与工程を伴う本明細書に提供される方法のいずれかは、別のがん治療法の投与と組み合わされてもよく、特定の実施形態では、別のがん治療法は、例えば皮下送達されるがんワクチンであってもよい。他の実施形態では、および任意選択的にがんワクチン投与とさらに組み合わされて、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の対象への投与を含む本明細書に提供されるかかる方法、特に当該対象が、がんを有する、がんに罹患している、またはがんであると疑われる方法は、対象に、免疫チェックポイント阻害剤の有効量を送達することをさらに含んでもよい。このチェックポイント阻害剤の送達は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の投与の前、後、または投与と同時に行われてもよい。免疫チェックポイント阻害剤は公知であり、様々な化合物が承認され、臨床開発中である。チェックポイント分子は、その多くがチェックポイント阻害剤化合物の標的であり、限定されないが、抗PD1抗体が挙げられる。
【0112】
一部の実施形態では、投与は、対象においてがんを治療することを目的とし、この場合において対象中の腫瘍は、当該投与から60日以内、45日以内、30日以内、または14日以内に退縮する。一部の実施形態では、腫瘍は、例えば、DLBCLなどの血液のがんであり、例示的な例では、本明細書に提供される血液がん抗原のいずれかを発現する。他の実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍抗原を発現する固形腫瘍であり、特定の例示的な実施形態では、例えば限定されないが、乳がんなどのHER2陽性固形腫瘍である。一部の実施形態では、投与は、対象においてがんを治療することを目的とし、この場合において当該対象は、例示的な実施形態では、RECIST1.1基準により、当該投与から90日以内、75日以内、60日以内、45日以内、30日以内、または14日以内に、安定的疾患、少なくとも部分的寛解、または完全寛解となる。一部の実施形態では、腫瘍は、少なくとも10%、20%、25%、30%、50%またはそれ以上まで縮小する。一部の実施形態では、腫瘍病変の合計が30%以上まで減少し、前回のスキャンから少なくとも4週間後に新たな病変の出現が無いことが確認され、および/または任意の病理リンパ節が短軸で10mm未満にまで減少したときに、部分的寛解とする。一部の実施形態では、すべての標的病変および非標的病変が消失したときに、完全寛解とする。一部の実施形態では、投与は、対象においてがんを治療することを目的とし、この場合において対象は、当該投与から60日以内、45日以内、30日以内、または14日以内に少なくとも部分的寛解となり、または完全寛解となる。一部の実施形態では、対象は、がんに罹患したヒトである。一部の実施形態では、細胞製剤は、2、3、4、5、6回、またはそれ以上の回数で投与され、または例示的な実施形態では、安定的疾患となる前に対象に一回のみ投与され、または例示的な実施形態では、部分的寛解または完全寛解が達成されるまで投与される。一部の実施形態では、第二の製剤は、第一の細胞製剤の投与から1日~1か月、2か月、3か月、6か月、または12か月の間の第二、第三、第四などの時点で対象に投与され、この場合において第二の製剤は、第一の製剤と同一であってもよく、または本明細書に提供される製剤のいずれかを含んでもよい。
【0113】
筋肉内投与を含む本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、および例示的な実施形態では、RIP、ならびに/または改変および/もしくは非改変のリンパ球(例えば、改変されたT細胞および/またはNK細胞)の皮下投与、特定の実施形態では、本明細書に提供される任意の経路による投与が、当分野で知られているように、リンパ球枯渇プロセスを経た哺乳動物対象に対して実施される。しかし例示的実施形態において、当該改変されたT細胞および/もしくはNK細胞、またはRIPの投与は、対象における生着を目的とした、および/または対象における腫瘍体積の減少を目的とした対象のリンパ球枯渇を必要としない方法において実施され、または過去数日、数週、もしくは数か月、もしくはかかる投与(例えば皮下投与)の前に、リンパ球枯渇を経ていない哺乳動物(例えば、ヒト)対象に対して実施される方法において実施される。特定の実施形態では、投与は、低白血球数、リンパ球減少症(lymphopenia)、またはリンパ球減少症(lymphocytopenia)を患っていない哺乳動物(例えば、ヒト)対象に対して行われる。特定の実施形態では、皮下投与は、正常範囲のリンパ球数(すなわち、血液1マイクロリットル(μL)中、1,000~4,800個のリンパ球)を有する対象に対して実施される。特定の実施形態では、皮下投与は、血液1μL当たり、1,000~5,000個、300個超、500個超、1,000個超、1,500個超、または2,000個超のリンパ球を有する対象に対して実施される。特定の実施形態では、例えば皮下投与などの投与は、哺乳動物対象(例えば、ヒト対象)に対して実施され、当該対象は、リンパ系が備っており、有効数のリンパ球を有し、健康なヒトのリンパ球の正常数の少なくとも50%、60%、75%、80%、または90%を有し、および/または当該投与の前に10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90または95%を超える自身のリンパ球を有する。
【0114】
RIP製剤、細胞製剤、およびその使用方法
例えば、非限定的な例としてヒト細胞、初代細胞、T細胞および/またはNK細胞を改変して、遺伝子改変された、および/または形質導入された細胞、ヒト細胞、初代細胞、T細胞、および/またはNK細胞を作製するための、本明細書に提供される方法および組成物において、組み換えウイルス粒子製剤が開示される。組み換えウイルス粒子およびその製剤は、それ自体が本開示の態様である。典型的には、本明細書に提供される態様に含まれる組換えウイルス粒子は組み換えレトロウイルス粒子であり、さらに複製能力がない。これは、組換えレトロウイルス粒子は、パッケージング細胞を離れた時点で複製することができないことを意味しており、すなわち、例えば対象に投与されたときなど、対象中では複製することができない。実際には、本明細書に別段の指示がない限り、レトロウイルス粒子は、複製能力がなく、そのようなレトロウイルス粒子が、レトロウイルスに天然ではない核酸をそのゲノム中に含む場合、それらは、「組換えレトロウイルス粒子」である。例示的な実施形態では、組換えレトロウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。複製能力がない組換えレトロウイルス粒子は、本明細書においてRIPと呼称され、RIPを含む製剤は、RIP製剤と呼称される場合がある。当業者であれば、本明細書に開示される様々な態様および実施形態が、他のウイルスおよびレトロウイルス粒子に対してどのように改変され得るか、または非ウイルス組換えベクターに対してどのように改変され得るかを理解することができる。
例えば、T細胞および/またはNK細胞を含む細胞製剤が、本明細書に提供される。そのような製剤は、例示的な実施形態では、本明細書に提供される方法によって提供される。本明細書に提供される細胞製剤のいずれも、非限定的な例では、自己駆動型CAR-T細胞を含み得る。一態様では、送達溶液中の改変された、遺伝子改変された、転写された、トランスフェクトされた、および/または安定して組み込まれた自己駆動型CAR-T細胞などの自己駆動型CAR-T細胞の集団を含む細胞製剤が、本明細書に提供される。
【0115】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤または細胞製剤は、リンパ管周囲送達、皮下送達、または筋肉内送達との適合性があり、それらに有効であり、さらには適合されて、細胞が局所的に凝集された状態を維持して、循環内への細胞の放出制御を可能にする。例えば、一部の実施形態ではリンパ管周囲送達、皮下送達、または筋肉内送達を目的とした送達溶液または製剤中の非改変、または改変された細胞の濃度は、静脈内に典型的に送達される場合の濃度よりも高い。一部の実施形態では、リンパ管周囲送達、皮下送達または筋肉内送達を目的とした送達溶液または製剤中の白血球の濃度は、約1.5×108個の細胞/ml、約5×108個の細胞/ml、約1×109個の細胞/ml~1.2×109個の細胞/mlよりも大きい。
【0116】
例示的な実施形態では、細胞、例えば、本明細書に記載されるように、改変された、および非改変のリンパ球の混合物、または非改変細胞のみ、または他の実施形態では、ウイルス粒子(例えば、RIP)は、送達溶液または細胞製剤中で製剤化され、それによって、それらは、リンパ管周囲投与、リンパ節内投与、皮下投与、または筋肉内投与を行うことができ、それらに有効であり、およびそれらに適合される。実際に、本明細書に提供される商業用容器およびキットの態様の特定の実施形態は、滅菌されたリンパ管周囲送達、リンパ節内送達、皮下送達、および/または筋肉内送達の溶液の容器であるか、またはそれを含み、当該容器は、一部の実施形態では、冷蔵保存される。こうした送達溶液は、リンパ管周囲投与、皮下投与、リンパ節内投与、または筋肉内投与、および例示的な実施形態では皮下投与を行うことができ、例示的な実施形態ではそれらに有効であり、さらに例示的な実施形態ではそれらに適合される。
【0117】
これを実現するために、かかる送達溶液および/または例えばRIP製剤や細胞製剤などの製剤は、典型的には、投与されるRIPが自身の形質導入能力(すなわち、インビボで細胞、例示的な実施形態ではNK細胞および/またはT細胞)の形質導入に有効であり、適合性があり、または適合される)を保持する環境、および/または投与される細胞(例えば、NK細胞および/またはT細胞)が、投与されるまで生存することができる環境、例えば、少なくとも1時間、典型的には少なくとも4時間生存することができる環境を提供するpHとイオン組成を有する。そのようなpHは、典型的には、pH6.5~8.0または7.0~8.0または7.2~7.6であり、pHを目標範囲内に維持するのに有効な濃度で存在するリン酸緩衝液または重炭酸塩などの緩衝液によって維持され得る。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的な実施形態の項で開示される、濃度を含む緩衝剤または塩のいずれかの一つ以上を含んでもよく、例えば、PBS、HBSS、生理食塩水、リンゲル乳酸溶液、Plasma-Lyteなどを含んでもよい。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的な実施形態の項で開示される、濃度を含む、任意の他の構成要素の一つ以上、例えば二つ以上、三つ以上、四つ以上、または五つ以上を含んでもよく、例えば、DMSO、ヒト血清アルブミン(HSA)、コロイド類(例えば、デキストラン(40kDa~2MDa)、ヘタスターチ(hetastarch)、アルブミン、PEG(5kDa~100kDa)、糖類(例えば、デキストロース、ラクトース、スクロースまたはトレハロース)などを含んでもよい。
【0118】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、複数の電解質溶液であるか、または複数の電解質溶液を含む。例えば、送達溶液は、単回用量容器などの容器中の滅菌、非発熱性の等張液であってもよく、またはそれを含んでもよい。特定の実施形態におけるそのような溶液は、静脈内投与または腹腔内投与ならびにリンパ管周囲投与、皮下投与、および/または筋肉内投与に適しており、またはそれらに適合される。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的な実施形態の項で開示される、濃度を含む、複数の電解質溶液のいずれかを含んでもよく、例えば、複数の電解質注射溶液は、様々な業者から入手可能なPlasma-Lyte A Injection pH 7.4などであってもよい。
【0119】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、凍結され、その後に解凍されて対象に投与される。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、一定の日数、0、-15、または-70℃未満で保存されてもよい。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的実施形態の項で開示される、凍結保存温度および凍結保存時間のいずれかを含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、1、2、3、4、5、もしくは6日間、または1、2、3、もしくは4週間、または1、2、3、4、5、6、9もしくは12か月間、または無期限に凍結されてもよく、その後に、投与され、または細胞を含む細胞製剤および送達溶液の例示的実施形態では、対象に戻し再投与される。RIPまたは細胞が凍結している期間中、または対象への投与前の任意のとき、または対象への戻し再投与前の任意のとき、RIPおよび/または細胞は、本明細書の別段で開示される様々な品質管理性、例えば、ウイルス濃度、純度、および/または効力についてRIPは試験されてもよく、ならびに/または一つ以上の細胞および/もしくは遺伝子治療の品質管理試験についてRIPは試験されてもよい。
【0120】
他の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、凍結されず、その後に対象に投与される。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、一定の日数、2~8℃で保存されてもよい。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的実施形態の項で開示される、非凍結保存温度および非凍結保存時間のいずれかを含んでもよい。
【0121】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、DMSOを含む。例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、約6% DMSO(v/v)を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、DMSOを含有しない。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的実施形態の項で開示される、DMSO濃度のいずれかを含んでもよい。
【0122】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、コロイドを含む。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、デキストラン(40kDa~2,000kDa、または40kDa~2×106kDa)、ヘタスターチ、アルブミン、PEG(5kDa~100kDa)のうちの一つ以上を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)を含む。例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、2.5%~7.5%のHSA(w/v)(例えば、25~75mg/ml)を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HSAを含まない。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的実施形態の項で開示される、コロイドおよび各濃度のいずれかを含んでもよい。
【0123】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、1%~10% DMSO、および0.20%~5% HSAを含む。さらなる例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、2%~8%、3%~7%、または4.5%~8%のDMSO、および0.25%~7.5%、0.25%~6%、または0.25%~5%のHSAを含む。他の例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、5%~7.5%のDMSO、および4%~6%のHSAを含む。
【0124】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、糖を含む。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、デキストロース、ラクトース、トレハロース、および/またはスクロースのうちの一つ以上を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、3~7%のデキストロース(w/v)(例えば、30~70mg/ml)を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、2~8%ラクトースを含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、2~8%スクロースを含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、2~8%トレハロースを含んでもよい。本明細書に開示される送達溶液および/または製剤の態様ならびに実施形態のいずれかにおいて、送達溶液および/または製剤は、例示的実施形態の項で開示される、糖類および各濃度のいずれかを含んでもよい。
【0125】
送達溶液および/または製剤に含まれ得る他の構成要素は、本明細書および例示的実施形態においてより詳細に開示され、同じ送達溶液および/または製剤中で、または異なる送達溶液および/または製剤中で送達されてもよく、例えば、送達溶液およびRIP製剤中で送達されてもよく、または第一の送達溶液および第二の送達溶液中で送達されてもよい。さらに、これらの他の構成要素は、送達溶液および/または製剤と共に送達されてもよく、または第一の送達溶液および/または製剤の数日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日)前または後に、数週間(例えば、1週、2週、4週、または4週)前または後に、または数か月(例えば、1か月、2カ月、3か月、6か月、12カ月、または24か月)前または後に送達されてもよい。さらに、皮下投与部位の近くでの遺伝子改変CAR-T細胞の持続性は、本明細書に提供される特定の実施形態の利点をさらに示すものであり、この場合において皮下投与は、例えば腫瘍などの新生物(例えば、癌性)の細胞の部位の近く、または例えば、血液がんの場合には脾臓またはリンパ節を含む、腫瘍を含む器官の近く(例えば、1、2、3、4、5、10、20、または30cm以内)で実施される。
【0126】
本明細書に提供される送達溶液および/または製剤のいずれかの一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、本明細書の例示的実施形態で開示されるように、ウシタンパク質を実質的に含まなくてもよい。本明細書に提供される送達溶液および/または製剤のいずれかの一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、本明細書の例示的実施形態で開示されるように、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まなくてもよい。
【0127】
送達溶液中またはRIP製剤中のRIPの純度は、RIPを生成するために使用された宿主細胞からのタンパク質の量と、形質導入単位の比率(宿主細胞タンパク質の量/TU)を使用して決定されてもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。RIPを生成する本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPを生成するために使用される宿主細胞は、ヒト細胞であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、初代細胞であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、不死化細胞であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK、HEK-293、HEK-293T、HEK-293E、HEK-293 FT、HEK-293S、HEK-293SG、HEK-293 FTM、HEK-293SGGD、HEK-293A、293RTV、GP2-293、MDCK、C127、COS-7、A549、HeLa、CHO、マウスミエローマ、PerC6、91-1、またはVero細胞であってもよい。例示的な実施形態では、宿主細胞は、HEK、HEK293、HEK293T、HEK293A、PerC6、または91-1である。
【0128】
送達溶液中またはRIP製剤中に存在するRIPの効力は、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率を使用して決定することができる。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、100、200、300、400、500、1,000、4,000、10,000、12,500、または15,000以上のTU/p24タンパク質のngであってもよい。
【0129】
一部の実施形態では、送達溶液および/またはRIP製剤中に存在するRIPの濃度は、少なくとも1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、2×108、5×108、または1×109TU/mlであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液中および/またはRIP製剤中に存在するRIPの濃度は、本明細書の例示的実施形態の項に開示される濃度のいずれかであってもよい。
【0130】
試料がPBMC単離または顆粒球枯渇手順を受けない実施形態などのいくつかの実施形態では、本明細書の改変方法を受ける血液試料中、または非改変細胞としてRIP製剤とともに同時投与される血液試料(すなわちこの場合において血液は過去にRIPと接触していない)中に存在する好中球、好塩基球、および/または好酸球の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達(すなわち、投与)工程の時点を含み、細胞製剤中に存在する。試料がB細胞枯渇手順を経ない実施形態などの一部の実施形態では、本明細書の改変方法を受ける血液試料中、または非改変細胞としてRIP製剤とともに同時投与される血液試料中に存在するB細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達工程の時点を含み、細胞製剤中に存在する。試料が単球枯渇手順を経ない実施形態などの一部の実施形態では、本明細書の改変方法を受ける血液試料中、または非改変細胞としてRIP製剤とともに同時投与される血液試料中に存在する単球の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達工程の時点を含み、細胞製剤中に存在する。
【0131】
一部の実施形態では、および細胞製剤が皮下または筋肉内投与される例示的な実施形態では、改変された、および/または非改変のリンパ球を含む細胞製剤の体積は、典型的には注入送達方法である従来のCAR-T方法よりも小さく、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約10mL、約15mL、約20mL、または約25mL未満であってもよい。
【0132】
血液の採血(採取)と、対象への非改変リンパ球または改変されたリンパ球の再導入との間の時間が短いことは有益であり、つまり一部の実施形態では、一部のリンパ球が、組換え核酸ベクターと関連付けられ、例示的な実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と関連付けられ、まだ遺伝子改変されていないことを意味する。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球の少なくとも5%が、遺伝子改変されていない。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球は、遺伝子改変されており、染色体外であるか、またはゲノムに組み込まれたポリヌクレオチドを含有する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、改変されたリンパ球の少なくとも5%において染色体外であってもよい。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球の少なくとも5%が、形質導入されていない。RIP製剤、または送達溶液中のRIPとの同時投与を含む一部の実施形態では、リンパ球は、本明細書に開示されるRIPと接触しておらず、したがって、リンパ球のいずれも、当該RIPで改変されず、遺伝子改変されず、または形質導入されない。
【0133】
特定の実施形態における短い接触時間はまた、任意選択の送達ステップの時点を含む、組換えレトロウイルス粒子との関連付けを介して、あるいはレトロウイルスエンベロープと原形質膜との融合によって、結合ポリペプチド、融合性ポリペプチド、およびいくつかの実施形態では、レトロウイルス粒子の表面上に生じたT細胞活性化エレメントを表面上に有する、本明細書の細胞製剤中の改変されたリンパ球の多くをもたらす。いくつかの実施形態では、細胞製剤中の改変されたリンパ球の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%が、シュードタイピングエレメントおよび/またはT細胞活性化エレメント、例えば、T細胞活性化抗体を含む。いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントおよび/もしくはT細胞活性化エレメントは、例えば、T細胞受容体、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81、CD82を介して、改変されたリンパ球の表面に結合することができ、かつ/またはシュードタイピングエレメントおよび/もしくはT細胞活性化エレメントは、改変されたリンパ球の原形質膜中に存在することができる。RIP製剤、または送達溶液中のRIPとの同時投与を含む一部の実施形態では、リンパ球は、本明細書に開示されるRIPと接触しておらず、したがって、リンパ球のいずれも、シュードタイピングエレメントを含まず、またはリンパ球表面に結合したT細胞活性化エレメントを含まず、したがってリンパ球のいずれも、改変リンパ球ではなく、遺伝子改変リンパ球ではなく、または形質導入リンパ球ではない。一部の態様では、例えば、T細胞および/またはNK細胞を含む細胞製剤が、本明細書に提供される。そのような製剤は、例示的な実施形態では、本明細書に提供される方法によって提供される。本明細書に提供される細胞製剤のいずれも、自己駆動CAR-T細胞を含み得る。一つの態様では、非改変の、改変された、遺伝子改変された、転写された、トランスフェクトされた、および/または安定して組み込まれた、T細胞および/またはNK細胞の集団を含む細胞製剤が本明細書において提供され、非限定的な例では、送達溶液中に自己駆動型CAR-T細胞および/またはNK細胞を含む、細胞製剤が本明細書において提供される。
【0134】
有利に短い時間のため、リンパ球は、組換え核酸ベクターと接触し、改変されたリンパ球は、本明細書に提供されるいくつかの例示的な実施形態においてそのような接触の後、エクスビボであり、これらの実施形態では、TおよびNK細胞の一部またはすべてが、組換え核酸をまだ発現していないか、または組換え核酸を細胞のゲノムにまだ組み込んでおらず、これらを含む実施形態におけるレトロウイルス粒子の一部は、対象に導入されるか、もしくは再導入して戻されことを含むがこれに限定されない、本明細書に提供される方法もしくは組成物のうちのいずれかで使用または含有される前に、または細胞製剤を調製するために使用される前に、標的細胞膜と関連付けられてもよいが、それと融合していない可能性がある。したがって、例えば、例示的な実施形態では皮下投与を伴う、例えば、迅速なポイントオブケア方法など、本明細書に提供されるこれらの例示的な方法から産生され得る、様々な細胞製剤の態様および実施形態が本明細書に提供される。本明細書のすぐ下および例示的な実施形態の項に記載されるものを含むがこれらに限定されない、そのような細胞製剤は、細胞が組換えレトロウイルスベクターと接触し、任意選択ですすがれた後の細胞の収集時に存在し得、対象への、例示的な実施形態では皮下への投与時まで(その時点を含む)存在し得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、T細胞および/またはNK細胞を含む細胞製剤が本明細書に提供され、細胞製剤中の細胞の90%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%、25%、20%、10%、または5%未満が、T細胞および/またはNK細胞である。一部の実施形態では、いずれの細胞も本明細書に開示されるRIPと接触しておらず、したがっていずれの細胞も、改変されず、遺伝子改変されず、または形質導入されない。一部の実施形態では、リンパ球、NK細胞、および/またはT細胞を含む細胞製剤が提供され、この場合において細胞製剤中のリンパ球、NK細胞、および/または例示的な実施形態ではT細胞の少なくとも4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%が、改変された細胞であり、例えば、本明細書に提供される抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドで改変される。かかるポリヌクレオチドは、任意選択的に本明細書に提供されるCAR、TCR、阻害性RNA、またはLEをコードしてもよい。いくつかの実施形態では、リンパ球の範囲の下限の4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、および70%が改変され、リンパ球の範囲の上限の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%が、改変された細胞であり、例えば、5%~95%、10%~90%、25%~75%、および25%~95%である。いくつかの実施形態では、細胞製剤内の改変されたリンパ球の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、遺伝子改変、形質導入、または安定してトランスフェクトされていない。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球の範囲の下限の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、および70%が、遺伝子改変、形質導入、または安定してトランスフェクトされておらず、改変されたリンパ球の範囲の上限の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、および99%、またはすべてが、遺伝子改変、形質導入、または安定してトランスフェクトされておらず、例えば、5%~95%、10%~90%、25%~75%、および25%~95%である。いくつかの実施形態では、遺伝子改変されたリンパ球のポリヌクレオチドは、接触およびインキュベーション後に形成されるこれらの細胞製剤中で、ならびに任意選択の投与時に、染色体外であるか、またはゲノムに組み込まれ得る。これらの細胞製剤のいくつかの実施形態では、遺伝子改変されたリンパ球の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、染色体外ポリヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子改変されたリンパ球の範囲の下限の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、および70%が、染色体外ポリヌクレオチドを有し、改変または遺伝子改変されたリンパ球の範囲の上限の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、および99%、またはすべてが、染色体外ポリヌクレオチドを有し、例えば、5%~95%、10%~90%、25%~75%、および25%~95%である。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子改変されたリンパ球の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、例えば、本明細書に提供されるT細胞および/またはNK細胞を遺伝子改変するための方法の結果として、これらの細胞製剤中で形質導入または安定してトランスフェクトされていない。いくつかの実施形態では、改変または遺伝子改変されたリンパ球の範囲の下限の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、および70%が、形質導入されておらず、改変または遺伝子改変されたリンパ球の範囲の上限の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、および99%、またはすべてが、形質導入または安定してトランスフェクトされておらず、例えば、5%~95%、10%~90%、25%~75%、および25%~95%である。
【0136】
溶液の皮下送達、および皮下送達のために適合された細胞製剤を含む本明細書に開示される特定の実施形態では、皮下送達時と比較して、静脈内送達された場合に生着することができる改変または遺伝子改変されたリンパ球は、より少ない。いくつかの実施形態では、皮下送達時と比較して、静脈内送達されたときに生着するリンパ球は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%少ない。
【0137】
いくつかの実施形態では、細胞製剤(細胞が組換えレトロウイルスベクターと接触し、任意選択ですすがれた後の細胞の収集時に存在し、かつ対象への投与時まで(その時点を含む)存在するそのような製剤を含む)は、改変されていないリンパ球、改変されたリンパ球、および遺伝子改変されたリンパ球のうちの少なくとも二つを含む。いくつかの実施形態では、そのような細胞製剤は、改変されたリンパ球よりも多くの改変されていないリンパ球を含む。本明細書に提供される方法によって産生されるそのような細胞製剤のいくつかの実施形態では、改変、遺伝子改変、形質導入、および/または安定してトランスフェクトされるT細胞およびNK細胞の割合は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%である。本明細書の実施例に例示されるように、全血中のリンパ球を形質導入するための本明細書に提供される例示的な方法において、反応混合物に添加されるか、または反応混合物を作り出すために使用される全血中のリンパ球、いくつかの実施形態では、T細胞および/またはNK細胞の1%~20%、または5%~20%、または1%~15%、または5%~15%、または7%~12%、または約10%が、遺伝子改変および/または形質導入され、結果として得られる細胞製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、リンパ球は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子などの組換え核酸ベクターと接触せず、改変されていない。特定の例示的な実施形態では、リンパ球は、腫瘍浸潤リンパ球である。一部の実施形態では、リンパ球は、腫瘍浸潤性リンパ球が組換え核酸ベクターと接触する前または後の腫瘍浸潤性リンパ球である。一部の実施形態では、リンパ球は、T細胞および/またはNK細胞が組換え核酸ベクターに接触する前または後の腫瘍浸潤性リンパ球ならびにT細胞および/またはNK細胞の両方を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、細胞製剤が本明細書に提供され、細胞製剤中の改変されたTおよび/またはNK細胞の少なくとも25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、CAR、もしくは特定の実施形態ではトランスポザーゼを発現せず、かつ/またはそれらの細胞膜と関連付けられたCARを有しない。他の実施形態では、細胞製剤が本明細書に提供され、細胞製剤中の改変されたTおよび/またはNK細胞の少なくとも25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、組換えウイルス逆転写酵素またはインテグラーゼを含有する。理論によって限定されるものではないが、細胞がエクスビボで数日間または数週間培養される従来のCAR-T細胞処理方法、および多くの細胞分裂とは異なり、送達から数時間以内にT細胞および/またはNK細胞が、T細胞および/またはNK細胞を改変するためのレトロウイルス粒子と接触する本明細書に提供される例示的な方法において、レトロウイルス粒子と融合した後にT細胞および/またはNK細胞の中に移動する、レトロウイルス粒子内に存在する逆転写酵素およびインテグラーゼの一部または大部分は、送達時に改変されたT細胞および/またはNK細胞中に依然として存在する。いくつかの実施形態では、細胞製剤が本明細書に提供され、細胞製剤中の改変されたTおよびNK細胞の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、組換えmRNA(例えば、CARおよび/または組換えトランスポザーゼをコードする)を発現しない。いくつかの実施形態では、細胞製剤が本明細書に提供され、細胞製剤中の改変されたTおよびNK細胞の少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはすべてが、それらのゲノムに安定して組み込まれた組換え核酸を有しない。いくつかの実施形態では、細胞製剤中の細胞、NK細胞、および/またはT細胞の50%、60%、70%、75%、80%、または90%超が、生存可能である。
【0139】
さらなる実施形態では、本明細書の方法において導入され得る、または再導入され得る改変されたリンパ球を含む細胞製剤は、単球および/またはB細胞を含む。いくつかの実施形態では、B細胞の一部は、組換え核酸ベクター、例えば、裸のDNAベクター、または例示的な実施形態では、複製能力のない組換えレトウイルス粒子が接触する接触ステップ中に改変される。いくつかの実施形態では、B細胞の少なくとも一部であるが、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以下が、任意選択で投与または再投与され得る細胞製剤中で改変される。例示的な実施形態では、B細胞の一部は、そのような製剤および方法において改変されない。さらなる例示的な実施形態では、B細胞の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%が、そのような製剤および方法において改変されない。したがって、いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球は、改変されていないリンパ球とともに細胞製剤中に存在し、これは、任意選択で対象に筋肉内または皮下送達される。いくつかの実施形態では、細胞製剤中にあり、かつ任意選択で対象に導入される改変されたリンパ球は、同種リンパ球であってもよい。そのような実施形態では、リンパ球は、別のヒトに由来するものであり、対象に由来するリンパ球は、改変されていない。いくつかの実施形態では、リンパ球を回収するために、対象から血液は採取されない。
【0140】
好中球は、例示的な実施形態では、細胞製剤、限定されない例として、細胞製剤が投与される対象の安全性を考慮したときに静脈内送達には高すぎる濃度で、改変されたT細胞および/またはNK細胞を皮下に送達するための細胞製剤中に存在する。理論によって限定されるものではないが、また本明細書の別の箇所で考察されるように、好中球の静脈内注射または送達は、例えば、輸血関連急性肺傷害(TRALI)および/または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の結果として、肺障害をもたらす可能性がある。例えば、この状況は、改変されたリンパ球を産生するための方法が、改変されたリンパ球を含む細胞製剤が調製される前、および溶液が任意選択で対象に皮下送達される前に、PBMC濃縮ステップを伴わない場合に生じ得る。したがって、いくつかの実施形態では、好中球は、例えば、任意選択の送達ステップの時点で、細胞製剤中に存在する。より具体的には、いくつかの実施形態では、本明細書の改変するための方法に供される血液試料中に存在する好中球の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達ステップの時点を含み、細胞製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、細胞製剤中に存在する細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも75%が、任意選択の送達ステップの時点を含み、好中球である。いくつかの実施形態では、任意選択の送達ステップの時点を含み、細胞製剤中に存在する細胞の範囲の下限の5%、10%、15%、20%、25%、30%、または40%が、好中球であり、細胞製剤中に存在する細胞の範囲の上限の30%、40%、50%、60%、70%、または75%が、好中球であり、例えば、任意選択の送達ステップの時点を含み、細胞製剤中に存在する細胞の5%~50%、20%~50%、30%~75%、または50%~75%が、好中球である。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書の改変するための方法に供される血液試料中に存在する単球の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達ステップの時点を含み、細胞製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、本明細書の改変するための方法に供される血液試料中に存在するB細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%が、任意選択の送達ステップの時点を含み、結果として生じる細胞製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、細胞製剤は、改変されたTおよびNK細胞を含むPBMC画分を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞製剤中の改変されたTおよびNK細胞の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、または1%~95%、5%~95%、5%~50%、もしくは10%~50%が、遺伝子改変されている。
【0142】
投与される送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤、または他の溶液の体積は、本明細書の別の箇所に提供されるように、投与経路に応じて変化する。リンパ管周囲、皮下もしくは筋肉内に注入される送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、典型的には、点滴を介して送達されるものよりも少ない体積を有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤の体積は、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、10ml、15ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、または50ml以下である。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤または細胞製剤の体積は、範囲の下限が0.20mL、0.25mL、0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、または25mLで、範囲の上限が0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、45mL、50mL、75mL、100mL、125mL、250mL、500mL、または1000mLの間であってもよい。したがって、限定されない例として、体積は、0.2mL~10mL、0.5mL~10mL、0.5~2mL、1mL~250mL、1mL~100mL、10mL~100mL、または1mL~10mLであってもよい。特定の例示的な実施形態では、送達溶液、RIP製剤または細胞製剤は、10mL未満であってもよく、1mL~25mLであってもよく、および例示的な実施形態では、1mL~3mL、1mL~5mL、または1mL~10mLであってもよい。例示的な実施形態では、送達容積、RIP製剤、または細胞製剤の体積は、範囲の下限が0.20mL、0.25mL、0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、および5mLで、範囲の上限が0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、45mL、および50mLの間であってもよい。細胞製剤の例示的な実施形態では、70kgの対象は、7.0×107個の細胞/mLでT細胞の送達製剤を1mL皮下投与することによって、1.0×106個のT細胞/kgで投与される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、溶液の体積が少なくとも2mL、3mL、4mL、5mL、10mL、15mL、20mL、または25mLであるとき、ヒアルロニダーゼを含んでもよい。リンパ球が特に改変された後に濾過される、および/または特に形質導入がフィルターの上で実施される本明細書の実施形態では、送達溶液を使用して、上記に提供されるものであり得る体積で、フィルターから細胞を再懸濁および/または溶出することができる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される送達溶液は、溶出溶液である。
【0143】
一部の実施形態では、非改変のリンパ球、改変されたリンパ球、および例示的な実施形態では、遺伝子改変されたリンパ球は、皮内投与、腫瘍内投与、または筋肉内投与、例示的な実施形態では、溶液を皮下送達するように適合された滅菌注射器などの皮下送達デバイス中に存在する細胞製剤を使用した、リンパ管周囲投与または皮下投与によって、対象に導入され、または再導入される。一部の実施形態では、溶液(例えば、本明細書の送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤)を保持し、例示的な実施形態では、デバイスの液体保持部分からの溶液(例えば、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤)の皮下投与を目的とした針の開放端である、開口部または開口可能な末端を有する皮下送達デバイスが使用される。そのような皮下送達デバイスは、皮下送達に有効であり、かつ例示的な実施形態では皮下送達のために適合されているか、または皮下注射に有効であるか、もしくは皮下注射のために適合されている。溶液を皮下に送達するように適合された皮下送達デバイスの非限定的な例としては、例えば、Insuflon(登録商標)(Becton Dickinson)などの留置皮下カテーテル、および例えば、Saf-T-Intima(登録商標)(Becton Dickinson)などの、例えば翼を有する無針閉鎖型留置皮下カテーテルシステムなどの皮下カテーテルが挙げられる。いくつかの実施形態では、送達デバイスは、ポンプ、例えば、注入ポンプまたは蠕動ポンプを含み得る。いくつかの実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、本明細書に開示される針のうちのいずれか、例えば、皮下送達に適合する、皮下送達に有効な、皮下送達のために適合された、もしくは皮下送達するように適合された、または皮下送達するのに有効な針に流体接続される。例示的な実施形態では、針は、26~30のゲージを有し得る。いくつかの実施形態では、皮下送達デバイスは、皮下送達ペンである。そのようなペンは、筐体内に封入された、皮下送達するのに有効な、または皮下送達するように適合された注射器を含み得、針ガードを含み得る。そのようなペンの例としては、スマトリプタンを送達するために使用されるペンが挙げられる。いくつかの実施形態では、当該送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、例えば注射器などの皮下送達デバイス中に存在し、針は、対象の皮膚に突き刺さり、この場合、RIP、ならびに/または非改変の、ならびに改変されたT細胞および/またはNK細胞は注射器中に存在し(すなわち、皮下注射を受ける対象は、注射されるRIPまたは自家細胞の供給源である)、一部の実施形態では、針は、対象の皮下組織にその開放端が配置される。例示的な実施形態では、皮下送達デバイス(例えば、注射器)は、皮下投与に適した針を含んでもよい。皮下投与は、典型的には、例えば16ゲージの針を用いることができる輸血用の静脈内カテーテルで使用されるものよりも小さい直径の針を使用する。筋肉内、および例示的な実施形態では、皮下送達に適合する注射器などの送達デバイスは、筋肉内または皮下送達にうまく使用され得る任意の送達デバイス(例えば、注射器)であり、筋肉内または皮下送達に有効、かつそのために適合された送達デバイス(例えば、注射器)、ならびに汎用注射器、および少なくともいくつかの実施形態では、筋肉内または皮下送達にうまく用いられ得る他の目的のために特別に設計された注射器を含む。知られているように、皮下注射については、注射器を使用した例示的な実施形態では、針は、45°~90°の角度で皮膚を通して挿入される。したがって、いくつかの実施形態は、皮膚に対して45°~90°の角度で送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤を皮下に注射することを含み、ならびに対象の皮膚に対して針が45°~90°の角度である注射器または他の皮下送達デバイス内に含有される送達溶液、RIP製剤または細胞製剤を含む。筋肉内、および例示的な実施形態では、皮下送達に有効であるか、または筋肉内もしくは皮下注射するのに有効である注射器は、典型的には、筋肉内または皮下送達に有効であるパラメータを有する注射器であり、例えば、20~22のゲージおよび1インチ~1.5インチの長さを有する針は、典型的には、筋肉内送達に有効であり、26~30のゲージおよび0.5インチ~0.625インチの長さを有する針は、典型的には、皮下送達に有効である。皮下送達のために適合されたか、または皮下注射するように適合された注射器は、皮下送達用に特別に作製された任意の注射器である。皮下送達のために適合された一つのそのような注射器は、通常は皮下送達可能ではない高度に高濃度化された生物学的製剤の皮下送達を可能にするコア環状流を使用する(Jayaprakash V et al.Adv Healthc Mater.2020 Aug 24;e2001022)。皮下送達のために適合された別の注射器は、一般に使用されるよりも短い針を使用する(Pager A,Expert Opin Drug Deliv.2020 Aug 9;1-14)。皮下送達のために適合された別の注射器は、Thermo Plastic Elastomer(TPE)針シールドを有する29G/5ベベル針を使用する(Jaber A et al.BMC Neurol.2008 Oct 10;8:38)。例示的な実施形態では、針の外径は、0.026”未満である。いくつかの実施形態では、針の外径は、最大で0.01625”、0.01865”、0.01825”、0.02025”、0.02255”、または0.02525”である。いくつかの実施形態では、針は、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、26、27、28、29、または30ゲージ針である。いくつかの実施形態では、針の長さは、1インチまたは0.5インチ以下である。例示的な実施形態では、針は、26、26s、27、28、29、または30ゲージ針であり、針の長さは、0.5インチ~0.625インチである。いくつかの実施形態では、針は、翼状針または頭皮静脈針としても既知の、翼付き注入セットであってもよい。いくつかの実施形態では、導入または再導入は、皮下カテーテルを使用して実施され得る。
【0144】
理論によって限定されるものではないが、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤の成分が急速に分散する静脈内送達とは対照的に、本明細書に提供される皮下送達法や筋肉内送達法は、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤の細胞を対象内で極めて近接させて保持させ、例えば例示的な実施形態では、制御放出として最大数日間、数週間、さらには数か月間、T細胞および/またはNK細胞の活性化や拡張のための局所環境を作り出しながら、例えば脾臓またはリンパ節などのリンパ器官においてT細胞およびNK細胞が直面するものと同様の環境性能を維持しつつ、それらを対象内で極めて近接して保持させる。例えば抗体などの20kDaを超える大きなタンパク質分子が皮下部位から吸収されると、リンパ管を通って24~72時間かけて血中に吸収される。本明細書に提供されるリンパ管周囲法、皮下法、または筋肉内法を使用して局所注射部位に注射された細胞製剤からの改変、遺伝子改変、および/もしくは形質導入T細胞またはNK細胞の制御放出は、注射部位での初期の拡張フェーズが伴うことが判明しており、その後、改変細胞の少なくとも一部、典型的には大部分が血管およびリンパ管を通って、例えば腫瘍などの標的発現部位に移動し、次いで全身での検出が可能となる。本明細書に提供されるリンパ管周囲法、皮下法、または筋肉内法を使用して局所注射部位に注射されたRIP製剤に由来するRIPは、対象中に存在するT細胞およびNK細胞を形質導入することができ、または対象から単離された例えばT細胞および/またはNK細胞などのPBMCとともに同時投与された場合には、その同時投与されたT細胞および/またはNK細胞を形質導入することができる。一部の実施形態では、改変、遺伝子改変、および/または形質導入された細胞(細胞製剤に由来する、またはRIP製剤に由来して後に改変される)の局所注射による放出制御を行うことによって、数日間(例えば、最大で5、7、14、17、21、または28日間)、または数カ月(例えば、最大で1、2、3、6、12、または24カ月間)、皮下投与部位で遺伝子改変細胞が拡張し、遺伝子改変されたCAR-T細胞またはCAR-NK細胞は、皮下投与部位から例えば腫瘍などの身体の他の部位へと移動する。したがって、遺伝子改変されたCAR-T細胞は、改変されたT細胞および/またはNK細胞が対象に皮下注射されてから数日後(例えば、1、2、3、4、5、6または7日後)、数週間後(例えば、1、2、4、または4週間)、さらには数か月後(例えば、1、2、3、6、12、または24カ月)に、皮下投与部位から移動してリンパ管または循環中に現れ得る。
【0145】
例えばCAR-T細胞などの遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞が皮下で持続することによって、有益な局所環境が提供され、対象にとって自然または不自然な他の成分、例えば改変CAR-T細胞に影響を及ぼし得る分子(イオン)、高分子(例えば、DNA、RNA、ペプチドおよびポリペプチド)、および/または他の細胞が、改変CAR-T細胞の送達部位に、またはその近傍に動員されることができ、または皮下送達されることができる。実際、改変されたT細胞および/またはNK細胞の送達後、リンパ管構造を含むリンパ三次構造が観察された。理論に限定されないが、そのようなリンパ管構造によって、皮下投与された改変T細胞および/またはNK細胞が局所リンパ循環にアクセスするための場が提供され、その後、それら細胞は全身循環へのアクセス、例えば血液へのアクセスを手に入れると考えられる。そのような三次リンパ構造は、活性化されたリンパ細胞を含むことが観察されている。したがって、本明細書において、能動的に分裂する遺伝子改変T細胞および/またはNK細胞の凝集体、ならびに当該凝集体に近接したリンパ管構造を含むリンパ構造が提供される。一部の実施形態では、三次リンパ構造および/または遺伝子改変CAR-T細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは7日間、1、2、3、4、5、6、7もしくは8週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または24カ月間、皮下投与部位の近傍で持続することができる。例示的な実施形態では、三次リンパ構造および/または遺伝子改変CAR-T細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、もしくは7日間、1、2、3、もしくは4週間、または1、2、もしくは3カ月間、皮下投与部位の近傍で持続する。一部の実施形態では、三次リンパ構造および/または遺伝子改変CAR-T細胞は、1日~24か月、7日~12か月、2週間~6か月、3週間~8週間、または4週間~6週間、皮下投与部位の近傍で持続することができる。例示的な実施形態、一部の実施形態では、三次リンパ構造および/または遺伝子改変CAR-T細胞は、1週間~3、4、5、6、7、8、9もしくは10週間、例えば1週間~8週間、1週間~7週間、または1週間~6週間、皮下投与部位の近傍で持続することができる。一部の実施形態では、三次リンパ構造および/または遺伝子改変細胞の細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%は、投与部位から1、2、3、4、または5cm以内で局在を維持することができる。
【0146】
均一な単一細胞懸濁液は、静脈内送達に理想的であるが、皮下または筋肉内投与には必要とされない。いくつかの実施形態では、皮下または筋肉内送達のための細胞製剤は、細胞凝集を促進する細胞のデポ製剤またはエマルションであり、本明細書において、そのようなデポ細胞製剤を調製するために使用される送達溶液は、デポ特性を提供する副成分を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、製剤が対象に投与される前に、または例えば、細胞、例えば本明細書に提供される改変されたリンパ球が、例えば、製剤を産生するために凝集剤を含む送達溶液中に製剤化される1時間、45分、30分、15分、10分、5分、もしくは1分以内に、製剤中に凝集され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される細胞製剤中の細胞の少なくとも10%、20%、25%、50%、75%、90%、95%、または99%が凝集される。そのような凝集体は、例えば、個々の細胞対少なくとも一つの他の細胞と関連付けられた細胞の顕微鏡によるカウントを使用して、または製剤内の細胞が関連付けられている平均の細胞数をカウントすることによって決定され得る。いくつかの実施形態では、細胞製剤は、細胞増大に適応するために組織拡張を伴う、制御または遅延放出のために設計されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、皮下または筋肉内送達のための本明細書に提供される送達溶液は、デポ製剤である。デポ(すなわち、持続放出)製剤は、典型的には、水性または油脂性の懸濁液または溶液である。
【0148】
したがって、いくつかの実施形態では、送達溶液または細胞製剤は、ヒドロゲルなどの人工細胞外基質を形成する成分を含む。いくつかの実施形態では、デポ送達溶液は、デポ製剤を形成するために有効量のアルギン酸塩、コラーゲン、および/またはデキストランを含む。ゲル形成生体材料を作製するために使用されることができ、本明細書に提供される送達溶液および細胞製剤に含まれ得る、ある種のポリマーは、は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびそのコポリマーと、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、およびポリホスファゼンなどの脂肪族ポリエステルと、から構成される。使用され得る他のポリマーとしては、生理学的環境において自然発生的に自己集合することができるポリ(N-(2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド乳酸塩)およびポリ(エチレングリコール)(p(HPMAm-lac)-PEG)に基づく感熱性トリブロックコポリマーが挙げられる(Vermonden et.al 2006,Langmuir 22:10180-10184)。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書の送達溶液または細胞製剤で使用されるヒドロゲルは、ヒアルロン酸(HA)を含有する。そのようなHAは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-1-カルボジイミド塩酸塩で修飾されて、優先的にN-ヒドロキシスクシンイミドの存在下で、本明細書に提供される改変されたリンパ球上に見られるものなどのタンパク質、ペプチド、ポリマー、およびリンカー上のアミン基と反応し得るカルボン酸基を有し得る。抗体、サイトカイン、およびペプチドは、そのような方法を使用してHAに化学的にコンジュゲートされて、本明細書に提供されるいくつかの細胞製剤の実施形態において、細胞エマルションとして同時注射用のヒドロゲルを産生することができる。さらに、いくつかの実施形態では、送達溶液および細胞製剤中のHAは、ポリマー(例えば、Healon)であり、かつ/またはグルタルアルデヒドなどの薬剤と、その-OH基を介して架橋されて(例えば、レスチレン(Abbive/Allergan))、例えば、軽く架橋されて、皮下注射後の材料の局所的な異化作用を低減する。本明細書の送達溶液および細胞製剤で使用されるHAは、可変の長さおよび粘度を有し得る。本明細書の送達溶液および細胞製剤で使用されるHAは、コンドロイチン硫酸塩(例えば、Viscoat)またはポリマーもしくは界面活性剤などの他のグリコサミノグリカンとさらに架橋され得る。当業者であれば、基質の多孔性および架橋の程度が、本明細書の改変されたリンパ球などの細胞がヒドロゲルを通って遊走することができることを確実にするように調節され得ることを認識するであろう。したがって、本明細書の細胞製剤で使用される場合のヒドロゲル基質などの基質は、基質を通した細胞の遊走を可能にするように構成されてもよく、またはそのために適合されてもよい。ヒドロゲルの置換の程度および架橋時の濃度は、多孔性膨潤率およびヤング率(または剛性)に影響を与える。例えば1mg/mLのチラミン(tyramine)とHAの最初の1%置換は、その後過酸化物の存在下で架橋された場合、3%置換および5mg/mLの溶液よりも高い多孔性と低い剛性を有するヒドロゲルを生じさせる。剪断弾性係数を低減することは、注射中の剪断力を低減し、かつ細胞が1~2週間にわたって皮下に基質内へと増大するための十分な多孔性および半減期を確実にするために、状況によっては望ましい。いくつかの実施形態では、剪断弾性係数は、約2.5kPa、約3kPa、約3.5kPa、または約4kPaである。
【0150】
一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、または細胞製剤は、例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、またはそのバリアントなど、一つ以上のサイトカイン、または前述のいずれかの活性断片、および/または例えばIL-15アゴニストなどのサイトカイン受容体アゴニストを含む。一部の実施形態において、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、CX3CL1、およびそれらのバリアント、ならびにそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、IL-2、IL-7、IL-15、またはIL-21を含まない。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ、GM-CSF、およびそれらのバリアント、ならびにそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、およびそれらのバリアント、ならびにそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CCL19、CCL21、およびそれらのバリアント、ならびにCCR7および/またはCXCR3に結合することができる前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、または細胞製剤は、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、およびそれらのバリアント、ならびにそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CX3CL1、およびそれらのバリアント、ならびにそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6および/またはCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CCR7、CXCR3、CXCR4、および/またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液、キット中の組成物、および/または細胞製剤は、CCR1、CC42、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、および/またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0151】
一部の実施形態では、サイトカインは、送達溶液、キット、または細胞製剤に含まれるサイトカイン受容体に結合せず、および/または送達溶液、細胞製剤、もしくはキット中のポリヌクレオチドによってコードされるサイトカイン受容体に結合しない。一部の実施形態では、サイトカインは、理論に限定されないが、増殖を誘導する複合体を選択的に活性化する改変サイトカインであってもよい。例示的な実施形態では、改変サイトカインは、改変IL-2であり、例えば、IL-2Rαの細胞外ドメイン(例えば、Lopes et al,J Immunother Cancer 2020 Apr;8(1):e000673を参照)を含む環状置換IL-2を含む融合タンパク質である。一部の実施形態では、サイトカイン、改変サイトカイン、またはサイトカイン受容体アゴニストは、送達溶液または細胞製剤を含む投与の前、投与と同時、または投与の後に、一回で、または別々の投与で細胞製剤から投与されてもよい。一部の実施形態では、2個以上の個別の投与は、用量を漸増してもよい。一部の実施形態では、2個以上の投与は、同じ用量であってもよい。一部の実施形態では、2個以上の投与は、同一もしくは異なるサイトカイン、改変サイトカイン、および/またはサイトカイン受容体アゴニストを含んでもよい。一部の実施形態では、別個の投与は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21個の一連の投与であってもよい。一部の実施形態では、別個の投与は、連続する日に行われる。
【0152】
いくつかの実施形態では、細胞製剤は、CD2、CD3、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81、および/またはCD82に結合することができる抗体またはポリペプチドを含む。EDC-NHS反応は、そのようなタンパク質をHAに、または上述の他の中間体を介して連結するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、これらのサイトカイン、抗体、またはポリペプチドは、ヒドロゲルの成分に架橋されている。ヒドロゲルは、注射前に注射器コネクターおよび二つの注射器を使用して細胞懸濁液と混合されてもよい。他の実施形態では、これらのサイトカイン、抗体、またはポリペプチドは、溶液中にある。一部の実施形態では、送達溶液または細胞製剤は、これらのサイトカイン、抗体、またはポリペプチドをコードするRNAを含む。
【0153】
CARを発現する遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の増殖および生存は、適切な状況でその同族抗原に結合したとき、CARを介したシグナル伝達によって促進される。いくつかの実施形態では、抗原は、改変および/または遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞に添加され得るか、またはそれらと同時投与され得る。一部の実施形態では、抗原は、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物、それらの断片、例えば、ペプチド、糖ペプチド、または官能基である。一部の実施形態では、抗原は、可溶性であってもよい。一部の実施形態では、抗原は、非ヒトの源に由来する。一部の実施形態では、抗原は、例えばハイドロゲルなどの人工基質の表面上に固定化されてもよい。一部の実施形態では、抗原は、DNAまたはRNAなどの核酸である。一部の実施形態では、核酸は、CARによって認識される抗原であるタンパク質抗原またはペプチド抗原をコードする。例示的な実施形態では、抗原は、タンパク質抗原またはペプチド抗原をコードする核酸を含む細胞の表面上に発現されてもよく、それによって当該細胞は標的細胞となり、本明細書においてフィーダー細胞と呼称される。いくつかの実施形態では、そのような標的細胞は、全血中に多数存在し、添加される必要なく、細胞製剤中に自然に存在する。例えば、B細胞は、全血中、単離されたTNC中、および単離されたPBMC中に存在し、細胞製剤中に自然に存在し、CD19またはCD22(両方とも、限定されない例としてB細胞上に発現される)に向けられたCARを発現するT細胞および/またはNK細胞のための標的細胞として作用し得る。他の実施形態では、そのような標的細胞は、全血中に存在しないか、または全血中に多くは存在しないため、例えばフィーダー細胞などの外部的に追加される。いくつかの実施形態では、標的細胞は、当該技術分野で既知の方法を使用して、腫瘍試料からなど、対象から単離または濃縮され得る。他の実施形態では、対象由来の細胞、または細胞株をはじめとする対象以外の供給源に由来する細胞は、適切な抗原を発現するように改変される。一部の実施形態では、標的細胞は、例えば放射線または化学療法剤によって増殖能力が落ちるように処理されて、その後、対象に投与される。例示的な実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、抗原を含有するタンパク質のすべてまたは一部分を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、抗原を含むタンパク質の細胞外ドメインのすべてまたは一部分を含み得る。一部の実施形態では、抗原は、CARのASTRを認識する抗体、例えば、CARのscFvドメインを指向する抗イディオタイプ抗体などである。いくつかの実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、それを細胞表面に固定する膜貫通ドメインとの融合であってもよい。本明細書の別の箇所に開示される膜貫通ドメインのいずれも使用され得る。いくつかの実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、ストークドメインとの融合であってもよい。本明細書の別の箇所に開示されるストークドメインのいずれも使用され得る。例示的な実施形態では、抗原は、CD8ストークおよび膜貫通ドメイン(配列番号24)との融合であってもよい。
【0154】
例示的な実施形態では、第一の細胞混合物中の細胞、例えば、対象から得られた細胞は、標的抗原をコードする組換え核酸ベクターで改変され、これは本明細書では、「人工抗原提示細胞」または「aAPC」と称され得、同じ対象からの別個の第二の細胞混合物中の細胞は、抗原に結合するCARを発現するように改変される。いくつかの実施形態では、標的抗原をコードするベクターで改変された、改変された細胞が、T細胞である場合、細胞は、本明細書において「T-APC」と呼ばれ得る。そのような改変T-APCとしては、非限定的な例として、B細胞、樹状細胞およびマクロファージが挙げられ、例示的な実施形態では、例えば対応するCAR-T標的がB細胞がん標的である場合などで樹状細胞およびマクロファージが挙げられる。また改変T-APCは、本明細書に提供される方法を使用して作製することができ、その場合、改変(例えば、形質導入)のための反応混合物には、例えばCD3を指向するポリペプチドなどのT細胞結合ポリペプチドが含まれる。さらなる例示的な実施形態では、細胞混合物は、全血、単離されたTNC、単離されたPBMCである。例えば、第一の細胞混合物は、Her2の細胞外ドメインおよびPDGFの膜貫通ドメインの融合タンパク質をコードする組換え核酸ベクターで改変され得、第二の細胞混合物は、HER2に向けられたCARをコードする組換え核酸ベクターで改変され得る。次いで、細胞は、送達溶液中に製剤化され得るか、または異なるCARエフェクター細胞対標的細胞比において、他の方法で対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、製剤化または投与時のエフェクター対標的比は、(約)10:1、(約)9:1、(約)8:1、(約)7:1、(約)6:1、(約)5:1、(約)4:1、(約)3:1、(約)2:1、(約)1:1、(約)1:2、(約)1:3、(約)1:5、(約)1:6、(約)1:7、(約)1:8、(約)1:9、または(約)1:10である。例示的な実施形態では、標的細胞は、改変されたTおよび/またはNK細胞と皮下または筋肉内に同時投与される。
【0155】
CARを発現する遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の増殖および生存はまた、CARの同族抗原に結合するCARのASTRを介する以外の相互作用によってCARを架橋することによって開始されるCARシグナル伝達によって促進され得る。いくつかの実施形態では、小分子またはタンパク質は、細胞の表面上のCARを架橋および活性化することができる。例示的な実施形態では、抗体は、細胞表面上のCARを架橋および活性化することができる。さらなる例示的な実施形態では、抗体は、ストークまたはスペーサードメインなどのCARの細胞外ドメイン中のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、エピトープは、His5(HHHHH、配列番号76)、HisX6(HHHHHH、配列番号77)、c-myc(EQKLISEEDL、配列番号75)、Flag(DYKDDDDK、配列番号74)、Strepタグ(WSHPQFEK、配列番号78)、HAタグ(YPYDVPDYA、配列番号73)、RYIRS(配列番号79)、Phe-His-His-Thr(配列番号80)、またはWEAAAREACCRECCARA(配列番号81)などのエピトープタグであってもよい。例示的な実施形態では、エピトープは、細胞外受容体に対して反応性ではない細胞内抗原に共通している。いくつかの実施形態では、エピトープタグは、HisX6タグ(配列番号77)である。いくつかの実施形態では、CARは、エピトープタグに結合する可溶性抗体を添加することによって架橋および活性化され得る。例示的な実施形態では、本明細書においてユニバーサルフィーダー細胞とも呼称される、エピトープタグに結合する抗体または抗体模倣体を発現する細胞を添加することによって、CARは架橋され、活性化され得る。いくつかの実施形態では、抗体または抗体模倣体は、GPIアンカーを介して細胞膜と関連する。例示的な実施形態では、抗体または抗体模倣体は、膜貫通ドメインを介して細胞膜と関連する。さらなる例示的な実施形態では、ストークまたはスペーサーは、膜貫通ドメインから抗体または抗体模倣体を分離する。いくつかの実施形態では、同じユニバーサルフィーダー細胞、例えば、CD8aストークおよび膜貫通ドメインに付着した抗HisX6 scFvを発現するユニバーサルフィーダー細胞を、ASTRを含むCARを発現する細胞と共に使用することができ、当該CARは異なる抗原に結合するが、それらのストーク中にHisX6エピトープタグを含む。これらのユニバーサルフィーダー細胞は、共通のエピトープタグを含有する、異なるCARを発現する細胞とともに使用することができる。ユニバーサルフィーダー細胞に関して、CARがエピトープタグを含有するという条件下では、異なるASTRを含有するCARに対する同族抗原を発現する異なるフィーダー細胞を生成する必要はない。CARを発現する細胞上のエピトープタグは、ユニバーサルフィーダー細胞によって架橋されて、CARのクラスター化および増殖に関与する。例えば、抗HisX6ユニバーサルフィーダー細胞は、Her2に結合し、HisX6エピトープタグを含むCARを発現する細胞とともに使用され得、またAxlに結合し、HisX6エピトープタグを含むCARを発現する細胞とともに使用され得る。ユニバーサルフィーダー細胞とCARの組み合わせは、CAR-Tの増殖を可能にし、その後、細胞はその同族抗原に会合する。さらに、CARのASTRが、限定的な微小環境にある場合、抗原に結合するユニバーサルフィーダー細胞を使用することによって、その限定的な環境の外での拡張が可能となる。
【0156】
組換えレトロウイルス粒子
本明細書に提供される方法および組成物において、例えば、非限定的な例としてヒト細胞、初代細胞、T細胞および/またはNK細胞を改変して、遺伝子改変された、および/または形質導入された細胞、ヒト細胞、初代細胞、T細胞、および/またはNK細胞を作製するための組み換えレトロウイルス粒子が開示される。そのような改変は、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで行われ得る。組換えレトロウイルス粒子は、それ自体が本発明の態様である。典型的には、本明細書に提供される態様に含まれる組換えレトロウイルス粒子は複製能力がなく、これは、組換えレトロウイルス粒子がパッケージング細胞を離れると複製できないことを意味する。実際には、本明細書に別段の指示がない限り、レトロウイルス粒子は、複製能力がなく、そのようなレトロウイルス粒子が、レトロウイルスに天然ではない核酸をそのゲノム中に含む場合、それらは、「組換えレトロウイルス粒子」である。例示的な実施形態では、組換えレトロウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。
【0157】
いくつかの態様では、細胞、典型的にはリンパ球、および例示的実施形態では、T細胞および/またはNK細胞の形質導入において使用するための複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が、本明細書に提供される。複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子は、エンベロープタンパク質を含んでもよい。一部の実施形態では、エンベロープタンパク質は、シュードタイピングエレメントであってもよい。一部の実施形態では、エンベロープタンパク質は、活性化エレメントであってもよい。一部の実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、シュードタイピングエレメントと活性化エレメントの両方を含む。複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、本明細書の別の箇所で考察されているシュードタイピングエレメントのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、本明細書の別の箇所で考察されている活性化エレメントのいずれかを含み得る。一つの態様では、本明細書において、CAR、TCR、LE、抗イディオタイプポリペプチド、およびサイトカイン、ならびに本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて提供される阻害性RNAのうちの少なくとも一つをコードする核酸を有するポリヌクレオチドを含む複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)が提供される。かかるポリペプチドは、典型的には、CAR、TCR、LE、サイトカイン、および阻害性RNAのうちの少なくとも一つをさらにコードする核酸を含む。一部の実施形態では、RIPは、以下を含むポリヌクレオチドを含む:A)T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の転写単位であって、当該一つ以上の転写単位は、抗イディオタイプポリペプチド、操作されたT細胞受容体、またはキメラ抗原受容体(CAR)のうちの少なくとも一つをコードするもの、およびB)その表面上のシュードタイピングエレメントおよびT細胞活性化エレメントであって、当該T細胞活性化エレメントは、当該複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子中のポリヌクレオチドにはコードされていないもの。いくつかの実施形態では、T細胞活性化エレメントは、本明細書の別の箇所で考察されている活性化要素のいずれかであってもよい。例示的な実施形態では、T細胞活性化エレメントは、抗CD3 scFvFcであってもよい。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、シュードタイピングエレメントは存在しない場合がある。別の態様では、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された転写単位を一つ以上含むポリペプチドを含む、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が本明細書に提供され、当該一つ以上の転写単位は、操作されたT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチド、およびリンパ増殖エレメントを含む第二のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、キメラリンパ増殖エレメントであってもよい。例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、IL-7受容体アルファ鎖またはその断片につながれたIL-7を含まない。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、IL-2/IL-15受容体ベータ鎖につながれたIL-15を含まない。本明細書に提供されるレトロウイルス粒子の態様または実施形態のいずれかの一部の実施形態において、またはレトロウイルス粒子を含む任意の他の態様において、操作されたT細胞受容体、CAR、または他の導入遺伝子は、複製能力のないレトロウイルス粒子の表面において、EF1-aまたはPGKプロモーターから導入遺伝子が発現された場合と比較して、および例示的実施形態では、かかる表面発現を減少させるための追加エレメント(例えば、degronsまたは阻害性RNA)の非存在下でEF1-aまたはPGKプロモーターから導入遺伝子が発現された場合と比較して、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満の表面発現という低いレベルで発現され、提示され、および/または別手段により組み込まれる。本明細書に提供されるポリヌクレオチドベクター(例えば、RIP)の態様のいずれか、または遺伝子ベクターを含む任意の他の態様の例示的な実施形態において、遺伝子ベクターは、当該遺伝子ベクターの核酸によってコードされるタンパク質転写物を実質的に含まず、および/またはRIPは、自身の表面上に検出可能な量の操作されたT細胞受容体またはCARを発現せず、もしくは含まず、または自身の表面上に操作されたT細胞またはCARを少ない量で発現し、もしくは含む。
【0158】
一部の態様では、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された転写単位を一つ以上含むポリペプチドを含む、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が本明細書に提供され、当該一つ以上の転写単位は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチド、およびリンパ増殖エレメント(LE)、例示的な実施形態では、キメラリンパ増殖エレメント(CLE)、例えば構造的に活性なCLEを含む第二のポリペプチドをコードする。例示的な実施形態では、キメラリンパ増殖エレメントは、その同族受容体につながれた、またはその同族受容体の断片につながれたサイトカインを含まない。本明細書にさらに開示されるように、一部の実施形態では、例えばCLEなどのLEは、第一のリンパ増殖エレメントポリペプチド(LEポリペプチド)および第二のLEポリペプチドを含み、この場合において当該第一のLEポリペプチドは、当該第二のLEポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有し、当該第一のLEポリペプチドおよび当該第二のLEポリペプチドは、互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。こうした実施形態は、本明細書においてヘテロ二量体LEと呼ばれる。例示的な実施形態では、かかるLEは、ヘテロ二量体LEであり、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドはそれぞれ、第一の細胞外二量体化モチーフおよび第二の細胞外二量体化モチーフを含み、それらモチーフは互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。例示的な実施形態では、かかるLEは、ヘテロ二量体LEであり、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドはそれぞれ、第一の細胞内二量体化モチーフおよび第二の細胞内二量体化モチーフを含み、それらモチーフは互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。
【0159】
いくつかの態様では、(i)T細胞および/またはNK細胞に結合し、それへの組換えレトロウイルス粒子の膜融合を促進することができるシュードタイピングエレメントと、(ii)T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の転写単位を有するポリヌクレオチド(一つ以上の転写単位は、抗原特異的標的化領域、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体を有する第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチド、ならびに少なくとも一つのリンパ増殖エレメントを含む第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードし、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドおよび/または第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの発現は、インビボ制御要素によって調節される)と、(iii)その表面上の活性化エレメントであって、T細胞および/またはNK細胞に結合することができ、組換えレトロウイルス粒子中のポリヌクレオチドによってコードされていない活性化エレメントと、を含む、組換えレトロウイルス粒子が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターは、パッケージング細胞株中で活性ではないか、または誘導可能な様式でのみパッケージング細胞株中で活性である。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第一および第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドのいずれかは、キメラ抗原受容体を有することができ、他の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、少なくとも一つのリンパ増殖エレメントを有することができる。
【0160】
いくつかの態様では、自己駆動CARをコードするポリヌクレオチドを含む、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が本明細書に提供される。そのような複製能力のない組換えレトロウイルス粒子、ならびに自己駆動CARを含む組成物および方法の態様に関する詳細は、本明細書に、例えば、自己駆動CAR方法および組成物のセクション、ならびに例示的な実施形態のセクションにより詳細に開示されている。
【0161】
複製能力のない組換えレトロウイルス粒子に含まれる様々なエレメントおよびエレメントの組み合わせが本開示全体を通じて提供され、例えば、シュードタイピングエレメント、活性化エレメント、および膜結合型サイトカイン、ならびに複製能力のない組換えレトロウイルス粒子のゲノムに含まれる核酸配列、例えば限定されないが、抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸配列、CARをコードする核酸配列、リンパ増殖エレメントをコードする核酸配列、サイトカインをコードする核酸、例えばリボスイッチ(riboswitch)などの制御エレメントをコードする核酸配列、プロモーター、特にT細胞中で構造的に活性である、または誘導性であるプロモーター、および阻害性RNA分子をコードする核酸などが、本開示全体を通じて提供される。さらに、組換えレトロウイルス粒子を作製する方法、養子細胞療法を実施するための方法、およびT細胞を形質導入するための方法などの本明細書に提供される様々な態様は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を産生し、かつ/またはそれを含む。そのような方法で産生され、かつ/または含まれる複製能力のない組換えレトロウイルス自体は、単離された形態であってもよい複製能力のない組換えレトロウイルス粒子組成物として、本開示の別個の態様を形成する。そのような組成物は、乾燥(例えば凍結乾燥)形態であってもよく、またはレトロウイルス粒子の保存および使用のための当該技術分野で既知の好適な溶液もしくは培地であってもよい。
【0162】
したがって、限定されない例として、別の態様では、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の核酸配列を有するポリヌクレオチドをゲノム内に有する、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が本明細書において提供され、これは、いくつかの場合において、本明細書に記載されるように、一つ以上のRNA標的を対象とする一つ以上(例えば二つ以上)の阻害性RNA分子をコードする第一の核酸配列、およびキメラ抗原受容体、またはCARをコードする第二の核酸配列を含む。他の実施形態では、阻害性RNA分子ではない、本明細書で前述した少なくとも一つ(例えば、1、2、3または4つ)のリンパ増殖エレメントをコードする第三の核酸配列が存在する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、存在する場合、第一の核酸配列、第二の核酸配列、および/または第三の核酸配列に作動可能に連結された、本明細書に提示されるような一つ以上のリボスイッチを含む。そのような構築物では、一つ以上の阻害性RNA、CAR、および/または阻害性RNAではない一つ以上のリンパ増殖エレメントの発現は、リボスイッチによって制御される。いくつかの実施形態では、2~10個の阻害性RNA分子が、第一の核酸配列によってコードされる。さらなる実施形態では、2~6個の阻害性RNA分子が、第一の核酸配列によってコードされる。例示的な実施形態では、4個の阻害性RNA分子が、第一の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、第一の核酸配列は、一つ以上の阻害性RNA分子をコードし、イントロン内に位置する。特定の実施形態では、イントロンは、プロモーターのすべてまたは一部分を含む。プロモーターは、Pol I、Pol II、またはPol IIIプロモーターであってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、プロモーターは、Pol IIプロモーターである。いくつかの実施形態では、イントロンは、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに隣接し、その下流にある。いくつかの実施形態では、イントロンは、EF1-αイントロンAである。
【0163】
本明細書の組換えレトロウイルス粒子の実施形態は、レトロウイルス粒子が、一つ以上の阻害性RNA分子をコードする一つ以上の核酸を含むゲノムを含むものを含む。レトロウイルス粒子のゲノムに含まれ得る阻害性RNA分子をコードするそのような核酸(そのような核酸と、CARまたは阻害性RNA分子以外のリンパ増殖エレメントをコードする他の核酸との組み合わせを含む)の様々な代替の実施形態は、例えば、本明細書に提供される阻害性RNAの項、ならびにこれらの実施形態を組み合わせた他の様々な段落に含まれる。さらに、そのような複製能力のない組換えレトロウイルスの様々な代替物は、本明細書に開示されるパッケージング細胞株の態様内に開示される例示的な核酸によって特定され得る。当業者は、一つ以上(例えば二つ以上)の阻害性RNA分子をコードするゲノムを含む組換えレトロウイルス粒子の当該項における開示が、本明細書の他の項に提供される阻害性RNA分子をコードするそのような核酸の様々な代替物と組み合わされ得ることを認識するであろう。さらに、当業者は、一つ以上の阻害性RNA分子をコードするそのような核酸が、例えば、阻害性RNA分子およびこれらの分子をコードする核酸に焦点を当てている本明細書の項に開示されるように、本明細書に提供される様々な他の機能的核酸要素と組み合わされ得ることを認識するであろう。さらに、本明細書の他の項に提供される特定の阻害性RNA分子の様々な実施形態は、本開示の組換えレトロウイルス粒子の態様で使用され得る。
【0164】
レンチウイルスベクターなどの組換えレトロウイルスベクターの必要な要素は、当該技術分野で知られている。これらの要素は、パッケージング細胞株の項、および実施例の項に提供され、WO2019/055946に示されているような複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を作製するための詳細に含まれている。例えば、レンチウイルス粒子は、典型的には、一つ以上のパッケージングプラスミドを介してパッケージング細胞株に送達され得るパッケージング要素REV、GAGおよびPOL、シュードタイピングプラスミドを介してパッケージング細胞株に送達され得るシュードタイピングエレメント(その様々な例は、本明細書に提供されている)、ならびに導入プラスミドを介して宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドによって産生されるゲノムを含む。このポリヌクレオチドは、典型的には、ウイルスLTRおよびpsiパッケージングシグナルを含む。5’LTRは、Tatトランス活性化に依存しない5’LTRを含む、異種プロモーターに融合したキメラ5’LTRであってもよい。導入プラスミドは、例えば3’LTRのU3領域を除去することによって自己不活化し得る。いくつかの限定されない実施形態では、Src-FLAG-Vpuを含むがこれに限定されない、Vpuを含むポリペプチド(本明細書では「Vpuポリペプチド」と呼ばれることがある)などのVpuは、レトロウイルス粒子を含む本明細書に提供される任意の組成物または方法の態様および実施形態に関して、レトロウイルス粒子内にパッケージングされる。いくつかの限定されない実施形態では、Src-FLAG-VpxなどのVpxは、レトロウイルス粒子内にパッケージングされる。理論によって限定されるものではないが、T細胞の形質導入時に、Vpxは、細胞のサイトゾルに入り、SAMHD1の分解を促進し、逆転写に利用可能な細胞質dNTPのプールを増加させる。いくつかの限定されない実施形態では、VpuおよびVpxは、本明細書に提供されるレトロウイルス粒子を含む任意の組成物または方法の態様および実施形態に関して、レトロウイルス粒子内にパッケージングされる。
【0165】
本開示の様々な態様に含まれるレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)は、例示的実施形態では、特にそのようなレトロウイルス粒子で形質導入された細胞を対象に導入することを含む実施形態の安全上の理由から、複製能力がない。複製能力のないレトロウイルス粒子を使用して細胞を形質導入する場合、形質導入された細胞からレトロウイルス粒子は産生されない。ゲノムを含むレトロウイルス粒子が複製能力がないことを確実にするためのレトロウイルスゲノムへの改変は、当該技術分野で知られている。しかしながら、本明細書に提供される態様のいずれかに関する一部の実施形態では、複製能力のある組み換えレトロウイルス粒子が使用され得ることが理解されるだろう。一部の非限定的な実施形態では、レトロウイルス粒子は、機能性のインテグラーゼを欠く。これらおよび他の実施形態では、レトロウイルスのRNAは逆転写されるが、宿主細胞ゲノムには組み込まれない。
【0166】
当業者は、本明細書で考察される機能的要素が、発現ベクターなどの異なるタイプのベクターを使用して、パッケージング細胞および/またはT細胞に送達され得ることを認識するであろう。本開示の例示的な態様は、レトロウイルスベクター、およびいくつかの特に例示的実施形態ではレンチウイルスベクターを利用する。他の好適な発現ベクターを使用して、本明細書の特定の実施形態を達成することができる。そのような発現ベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルスに基づくウイルスベクター、ポリオウイルス、アデノウイルス(例えば、Li et al.,Invest Opthalmol Vis Sci 35:2543 2549,1994、Borras et al.,Gene Ther 6:515 524,1999、Li and Davidson,PNAS 92:7700 7704,1995、Sakamoto et al.,H Gene Ther 5:1088 1097,1999、WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984、およびWO95/00655を参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al.,Hum Gene Ther 9:81 86,1998、Flannery et al.,PNAS 94:6916 6921,1997、Bennett et al.,Invest Opthalmol Vis Sci 38:2857 2863,1997、Jomary et al.,Gene Ther 4:683 690,1997、Rolling et al.,Hum Gene Ther 10:641 648,1999、Ali et al.,Hum Mol Genet 5:591 594,1996、SrivastavaによるWO 93/09239、Samulski et al.,J.Vir.(1989)63:3822-3828、Mendelson et al.,Virol.(1988)166:154-165、およびFlotte et al.,PNAS(1993)90:10613-10617を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;またはレトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、髄増殖性肉腫ウイルス、および乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)、例えば、ガンマレトロウイルス;またはヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al.,PNAS 94:10319 23,1997、Takahashi et al.,J Virol 73:7812 7816,1999を参照されたい)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
本明細書に開示されるように、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、遺伝子送達のための一般的なツールである(Miller,Nature(1992)357:455-460)。複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が再構成されていない核酸配列を広範囲のげっ歯類、霊長類およびヒトの体細胞に送達する能力により、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、遺伝子を細胞に導入するのに非常に適している。いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、アルファレトロウイルス属、ベータレトロウイルス属、ガンマレトロウイルス属、デルタレトロウイルス属、イプシロンレトロウイルス属、レンチウイルス属、またはスプマウイルス属に由来し得る。本明細書に開示される方法での使用に適した多くのレトロウイルスが存在する。例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤波肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)が使用され得る。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin et al(“Retroviruses”1997 Cold Spring Harbor Laboratory Press Eds:J M Coffin,S M Hughes,H E Varmus pp 758-763)に見られ得る。いくつかのレトロウイルスのゲノム構造の詳細は、当該技術分野で見られ得る。一例として、HIVの詳細は、NCBI Genbank(すなわち、ゲノムアクセッション番号AF033819)から見られ得る。
【0168】
例示的実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、レンチウイルス属に由来し得る。いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、HIV、SIV、またはFIVに由来し得る。さらなる例示的実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、レンチウイルス属のヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来し得る。レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、envに加えて、調節機能または構造機能を持つ他の遺伝子を含有する。より高い複雑性により、潜伏感染の過程にあるように、レンチウイルスは、そのライフサイクルを調整することができる。典型的なレンチウイルスは、AIDSの病原因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。インビボでは、HIVは、リンパ球およびマクロファージなどの滅多に分裂しない最終的に分化された細胞に感染し得る。
【0169】
例示的な実施形態では、本明細書に提供される複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、Vpxポリペプチドを含有する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、Vpuポリペプチドを含む、および/または含有する。
【0171】
例示的な実施形態では、レトロウイルス粒子は、レンチウイルス粒子である。そのようなレトロウイルス粒子は、典型的には、ウイルスエンベロープ内に位置するキャプシド内にレトロウイルスゲノムを含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、組換えレトロウイルス粒子の代わりに、DNA含有ウイルス粒子が利用される。そのようなウイルス粒子は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ポックスウイルス、アビポックスウイルス、インフルエンザウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはシンドビスウイルスであってもよい。当業者は、異なるウイルスおよびレトロウイルス、またはレトロウイルス粒子とともに使用するために本明細書に開示される方法を改変する方法を理解するであろう。DNAゲノムを含むウイルス粒子が使用される場合、当業者は、ウイルス粒子のDNAゲノムのすべてまたは一部分の、そのようなウイルスで形質導入されたT細胞のゲノムへの組み込みを誘導するために、そのようなゲノムに機能単位を含まれ得ることを理解するであろう。
【0173】
いくつかの実施形態では、HIV RREおよびHIV Revをコードするポリヌクレオチド領域は、N末端RGGボックスRNA結合モチーフおよびICP27をコードするポリヌクレオチド領域で置き換えられ得る。いくつかの実施形態では、HIV Revをコードするポリヌクレオチド領域は、アデノウイルスE1B 55-kDaおよびE4 Orf6をコードする一つ以上のポリヌクレオチド領域で置き換えられ得る。
【0174】
特定の態様では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、本明細書の別の箇所に開示されるように、自己駆動CARをコードする核酸を含み得る。限定されない例として、そのような実施形態は、レトロウイルス粒子であり、そのゲノムは、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位、および構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位を含み、一つ以上の第一の転写単位の5’末端と一つ以上の第二の転写単位の5’末端との間のヌクレオチド数は、一つ以上の第一の転写単位の3’末端と一つ以上の第二の転写単位の3’末端との間のヌクレオチド数よりも少なく、
a)一つ以上の第一の転写単位のうちの少なくとも一つは、リンパ増殖エレメントをコードし、
b)一つ以上の第二の転写単位のうちの少なくとも一つは、第一のキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、CARは、抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む。
【0175】
一部の実施形態では、第一の転写単位内の核酸、または第二の転写単位内の核酸はさらに、本明細書に提供される実施形態のいずれかに従う抗イディオタイプポリペプチドをコードしてもよい。いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、T細胞活性化エレメントをさらに提示し得る。
【0176】
理論によって限定されるものではないが、自己駆動CARをコードする核酸を含むこれらの複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と接触し、かつ形質導入されたT細胞は、T細胞活性化エレメントが、CAR刺激誘導性プロモーターの誘導シグナルを刺激することができるため、CAR刺激誘導性プロモーターからの転写の最初の促進を受けることができる。T細胞活性化エレメントの結合は、NFATの脱リン酸化、およびその後続の核転座およびNFAT応答性プロモーターへの結合をもたらすカルシウムイオン流入を誘導し得る。これらのCAR刺激誘導性プロモーターから転写および翻訳されたリンパ増殖エレメントは、これらの細胞に増殖の最初の増加をもたらし得る。例示的な実施形態では、T細胞活性化エレメントは、膜結合抗CD3抗体であってもよく、かつGPI連結され得るか、またはそうでなければウイルス上に提示され得る。一部の実施形態では、膜結合型抗CD3抗体は、例えば、MuLV、VSV-G、Henipavirus-G、例えば、Niv-Gなどのウイルスエンベロープタンパク質、またはそれらの断片に融合されてもよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、単離された複製能力のないレトロウイルス粒子は、大型容器中に含有される大規模バッチである。そのような大規模なバッチは、例えば、106~108TU/mLの力価、および1×1010TU~1×1013TU、1×1011TU~1×1013TU、1×1012TU~1×1013TU、1×1010TU~5×1012TU、または1×1011TU~5×1012TUの合計バッチサイズを有することができる。例示的な実施形態では、本明細書に提供される任意の態様または実施形態に関するレトロウイルス粒子は、本明細書でより詳細に考察されるように、実質的に純粋である。
【0178】
レトロウイルスゲノムサイズ
RIP、RIPのゲノム(すなわち組み換えレトロウイルスゲノム)を含む、本明細書に提供される方法および組成物において、非限定的な例示的実施形態では、レンチウイルスゲノムは、ウイルス粒子にパッケージングされ得るポリヌクレオチドの数が限られている。本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドコード領域によってコードされるポリペプチドは、ポリヌクレオチドコード領域が野生型ポリペプチドのポリヌクレオチドコード領域よりも少ないヌクレオチドによってコードされるような機能的活性を保持する切断または他の欠失であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドコード領域によってコードされるポリペプチドは、一つのプロモーターから発現され得る融合ポリペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、一つの融合ポリペプチドおよび一つのプロモーターから二つ以上の機能的ポリペプチドを生成するための開裂シグナルを有し得る。さらに、最初のエクスビボ形質導入後に必要とされないいくつかの機能は、レトロウイルスゲノムに含まれず、むしろ、パッケージング細胞膜を介して複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に存在する。これらの様々な戦略は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子内にパッケージされている機能的要素を最大化するために本明細書で使用される。
いくつかの実施形態では、パッケージングされる組換えレトロウイルスゲノムは、範囲の下限の1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、および8,000ヌクレオチド~範囲の上限の2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、および11,000ヌクレオチドであってもよい。パッケージングされるレトロウイルスゲノムは、本明細書に詳細に開示されるように、第一および第二の操作シグナル伝達ポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチド領域を含む。いくつかの実施形態では、パッケージングされる組換えレトロウイルスゲノムは、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、または11,000ヌクレオチド未満であってもよい。パッケージングされ得る本明細書の別の箇所で考察される機能は、レトロウイルスの集合およびパッケージングに必要なレトロウイルス配列、例えば、レトロウイルスのrev、gag、およびpolコード領域、ならびに5’LTRおよび3’LTR、またはそれらの活性な切断された断片、レトロウイルスシス作用性RNAパッケージング要素をコードする核酸配列、ならびにcPPT/CTS要素を含む。さらに、例示的な実施形態では、本明細書の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、以下のいずれか一つ以上またはすべてを含むことができ、いくつかの実施形態では、レトロウイルス5’LTRおよび3’LTRによって確立される5’から3’の方向に対して逆の方向である(限定されない例としてWO2019/055946に示されている):第一および第二の操作シグナル伝達ポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチド領域(その少なくとも一つは、少なくとも一つのリンパ増殖エレメントを含む(例えば、それぞれが1個または2個のリンパ増殖エレメントポリペプチドを含む);キメラ抗原受容体を含み得る第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチド;miRNA、リボスイッチなどの制御要素(これは典型的には、第一および/もしくは第二の操作シグナル伝達ポリペプチドの発現を調節する);安全スイッチポリペプチド、イントロン、T細胞などの標的細胞中で活性なプロモーター、2A開裂シグナルおよび/またはIRES。
【0179】
キットおよび商業用製品
別の態様では、本明細書において、例えば、がんまたは腫瘍増殖などの疾患を治療または予防するための送達用の組成物または懸濁液が提供され、それらは有効成分として、例えばポリヌクレオチドベクターなどのポリヌクレオチド、例示では複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)、または例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞などの改変細胞を含む。別の態様では、本明細書において、がんもしくは腫瘍増殖を治療または予防するための点滴用の組成物または他のRIPまたは細胞製剤が提供され、それらは、例えばポリヌクレオチドベクターなどのポリヌクレオチド、例示的な実施形態ではRIP、または例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞などの改変細胞を含む。送達用組成物または点滴用組成物の、例えばポリヌクレオチドベクターなどのポリヌクレオチド、例示的実施形態ではRIP、または例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞などの改変細胞は、上記または本明細書の別段で検討される態様、実施形態または下位実施形態のいずれかを含んでもよく、例えば、抗イディオタイプポリペプチド、CAR、LE、サイトカイン、および/またはTCRをコードする核酸を含む、いずれか実施形態を含んでもよい。
【0180】
一つの態様において、本明細書において例えば市販の容器またはパッケージなどの容器が提供され、またはそれらを含むキットが提供され、それらは本明細書に提供される態様および実施形態のいずれかに従い、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIPを含み、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞を含む。非限定的な例として、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIP、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞は、そのゲノム中に、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された核酸配列を一つ以上含むポリヌクレオチドを含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上の核酸配列の核酸配列は、抗イディオタイプポリペプチド、阻害性RNA、サイトカイン、リンパ増殖エレメント、TCR、および/または抗原特異的標的化領域(ASTR)を含むキメラ抗原受容体(CAR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインをコードしてもよい。一部の実施形態では、一つ以上の核酸配列の核酸配列は、一つ以上のRNA標的を対象とする一つ、二つ、またはそれ以上の阻害性RNA分子をコードしてもよい。
【0181】
市販の容器ならびにキットを含む任意の態様または実施形態における、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIP、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞を含有する容器は、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIP、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞の保管用の点滴バッグ、チューブ、バイアル、プレートのウェル、または他の管であってもよい。実際に、本明細書に提供される一部の態様は、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIP、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞を含む容器を含み、この場合において当該生物製剤は、本明細書に開示される任意の核酸または他の成分を含む。例示的実施形態におけるかかる容器は、実質的に純粋なポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIP、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、もしくは改変T細胞、および/または改変NK細胞を含み、それらは本明細書において短く実質的な生物製剤と呼称される場合もある。典型的には、実質的に純粋なレトロウイルス粒子の調製物および/または容器は、滅菌され、標準的なプロトコルに従ってマイコプラズマ、同じタイプの複製能力のあるレトロウイルス、および外来性ウイルスに対して陰性である(例えば、“Viral Vector Characterization:A Look at Analytical Tools”;October 10,2018(https://cellculturedish.com/viral-vector-characterization-analytical-tools/で入手可能)を参照されたい)。細胞療法を目的とした実質的に純粋な生物製剤および細胞を作製するための方法の例は、公知である。例えば、RIPに関するかかる方法については、ウイルス上清を、深層濾過、TFF、ベンゾナーゼ処理、透析濾過、および製剤化の組み合わせにより精製することができる。特定の例示的実施形態では、実質的に純粋な生物製剤は、品質管理試験結果に基づいて、以下の特徴のすべてを満たす:
a)マイコプラズマに対して陰性である。
b)25EU/mL未満、および特定のさらなる例示的実施形態では、10EU/mL未満のエンドトキシン。
c)検出された容器内で意図的に検出されたもの(例えば、レンチウイルス)と同じタイプの検出された複製能力のあるレトロウイルスが存在しないこと。および
d)検出された外来性ウイルスが存在しないこと。
【0182】
さらに、生物製剤が、ウイルス粒子、例えばレトロウイルス粒子である場合、例示的な実施形態では、以下の品質管理試験結果を満たす:
a)1pg未満の宿主細胞DNA/形質導入単位(TU)、および特定のさらなる例示的実施形態では、0.3pg/TU未満。
b)100未満の残留プラスミドコピー数/TU、および特定のさらなる例示的実施形態では、10未満のコピー数/TU(TUは、組み換えレトロウイルス粒子を作製するために使用される任意のプラスミドのTU)。
c)1ng未満の宿主細胞タンパク質/TU、および特定のさらなる例示的実施形態では、50pg未満の宿主細胞タンパク質/TU。および/または
d)100TU/ng超のP24タンパク質、および特定のさらなる例示的実施形態では、10,000TU/ng超のP24タンパク質。
【0183】
レトロウイルス粒子は、典型的には、顧客に出荷される前に、上記に提供されるものの一部またはすべてを含む出荷規格に対して試験される。マイコプラズマ検査は、米国薬局方(USP)第63章に従って、またはマイコプラズマの非存在を目的としたサンプルのRT-PCRなどの迅速法により、実施することができる。エンドトキシン試験は、USP第85章、またはCharles River社のEndosafe(登録商標)nexgen-PTS(商標)のような迅速法に従い実施することができる。複製能力のあるレトロウイルスは、qPCRベースのProduct Enhanced Reverse Transcriptase(PERT)アッセイまたは迅速RCLアッセイによって、逆転写酵素活性を分析することによって試験することができる。外来性ウイルスの検出は、指標細胞株(MRC-5、Vero、HEK 293T)に被験物質を接種し、14日間、細胞障害効果について培養物を観察し、赤血球の血球凝集および血球吸着を試験することによってインビトロで実施することができる。宿主細胞のDNAは、宿主細胞ゲノムの核酸のqPCRにより定量することができる。残されたウイルスRNAゲノムのコピー数は、例えばVSVGなどのウイルスエンベロープタンパク質の核酸残基について、q-RT-PCRを行うことにより測定することができる。宿主細胞のタンパク質は、宿主細胞可溶化物に対するポリクローナル抗体を使用したELISAにより測定することができる。HIV-1をベースにしたレンチウイルス上清に基づく物理的力価を判定するためのP24分析は、標準的なELISAによって決定することができる。
【0184】
各粒子の力価は、p24ウイルスカプシドタンパク質またはウイルスRNAゲノムコピー数に基づき定義されてもよく、バイオアッセイにおいて機能的遺伝子導入の形質導入単位(TU)を測定することによって感染力価に変換することができる。
【0185】
バイオアッセイおよびqPCRによる精製されたバルクレトロウイルス材料および最終製品の感染力価の決定は、レトロウイルスの感染力価の決定のための例示的な分析試験方法である。指標細胞バンク(例えば、JurkatまたはF1XT(HEK293T細胞バリアント))は、ウェル当たり150,000個の細胞で播種され、続いて、レトロウイルス産物の段階希釈に曝露されてもよい。精製されたレトロウイルス粒子の希釈は、例えば、1:200~1:1,600など、指標細胞上で行われる。システム適合性のために参照標準ウイルスが添加されてもよい。4日間(または2~4日間)のレトロウイルスとのインキュベーション後、細胞を回収し、DNAを抽出および精製する。例えば、ヒトゲノムおよび固有のレトロウイルスゲノム配列プラスミドpDNAアンプリコンの100~10,000,000コピー/ウェルの標準曲線を使用し、続いて、レトロウイルス粒子に曝露された細胞試料のゲノムDNAを添加する。各PCR反応について、レトロウイルスアンプリコン、および例えばヒトRNAsePなどの内因性対照の両方のCq値を、反応当たりのコピー数に外挿して戻す。これらの値から、組み込まれたゲノムコピー数を計算する。いくつかの場合では、HEK 293Tなどの指標細胞は、三倍体であると特徴付けられているため、細胞当たり3コピーの単一コピー遺伝子が、計算に利用されるべきである。ウェル当たりの初期生細胞カウント、細胞に添加されたレトロウイルスの体積、およびゲノムコピー数比を使用して、レトロウイルス粒子mL当たりの形質導入単位(TU)が決定されてもよい。1TUは、ウイルス溶液が100個の受け入れ細胞に添加されたときに1個の導入遺伝子の統合が生じる、溶液中の機能性ウイルス粒子の量である。
【0186】
力価試験は、純度および比活性を用いた出荷規格に対する力価試験を含むことができる。例えば、最終製品の力価の出荷試験には、ウイルス粒子量と比較した、形質導入単位(TU)の数の測定(例えば、少なくとも100、1,000、2,000、または2,500TU/ngのp24のカットオフを用いて、p24キャプシドタンパク質ELISAを実施することによって、例えば、レンチウイルスのウイルスタンパク質に対してELISAを実施することによる)、および例えば、遺伝子改変された細胞に曝露されたレポーター細胞株によるインターフェロンガンマ放出を測定することによる、CAR機能性が含まれ得る。したがって、本明細書のRIP製剤は、本明細書の効力試験のカットオフおよび範囲のいずれかと等しい効力または効力範囲を有し得る。
【0187】
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)の純度は、RIPを生成するために使用された宿主細胞からのタンパク質の量と、形質導入単位の比率(宿主細胞タンパク質の量/TU)を使用して決定されてもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、1ng以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、50pg以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK細胞株またはそのバリアントである。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下のHEKタンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下のHEKタンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTusの比率は、1ng以下のタンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTusの比率は、50pg以下のHEKタンパク質/TUであってもよい。
【0188】
送達溶液中またはRIP製剤中に存在するRIPの効力は、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率を使用して決定することができる。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、100、200、300、400、500、1,000、4,000、10,000、12,500、または15,000以上のTU/p24タンパク質のngであってもよい。
【0189】
一部の実施形態では、実質的に純粋な生物製剤中のRIPの純度および効力は、本明細書の例示的実施形態の項に提供される組み合わせのいずれかであってもよい。
【0190】
一部の実施形態では、品質管理試験には、宿主細胞タンパク質/TUおよびTU/ng p24タンパク質の比率が含まれてもよく、それぞれ、以下であってもよい:1ngの宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;または50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上。
【0191】
一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK 293T細胞株を含む、HEK 293細胞株またはそのバリアントであってもよい。かかる実施形態では、品質管理試験には、HEKタンパク質/TUおよびTU/ng p24タンパク質の比率が含まれてもよく、それぞれ、以下であってもよい:1ngのHEKタンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;または50pg HEKタンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上。
【0192】
【0193】
本明細書のキットまたは単離された複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の態様(そのようなレトロウイルス粒子の容器を含む)のいずれかにおいて、0.1~50、0.5~50、0.5~20、0.5~10、1~25、1~15、1~10、1~5、2~15、2~10、2~7、2~3、3~10、3~15、もしくは5~15、または少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、もしくは15の、レトロウイルス粒子を使用して作製された反応混合物中のMOI(形質導入単位の数、または細胞当たりに適用されるTU)を達成するために、あるいは少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、または15のMOIを達成するために、十分な組換えレトロウイルス粒子が容器中に存在する。キットで提供されるウイルス粒子の形質導入単位は、個々の細胞にあまりにも多くの組み込み体が産生されることを防止し、細胞ゲノム当たり平均で5、4または3未満のレンチゲノムコピー数、およびより好ましくは細胞当たり1コピーのMOIが使用可能となるものでなければならない。キットおよび単離されたレトロウイルス粒子の実施形態については、このようなMOIは、1×106個の標的細胞/mLと仮定して、例えば全血の場合には1×106個のPBMC/血液mLと仮定して、1、2.5、5、10、20、25、50、100、250、500、または1,000mLの反応混合物に基づいたものであってもよい。したがって、レトロウイルス粒子の容器は、1×105~1×109、1×105~1×108、1×105~5×107、1×105~1×107、1×105~1×106、5×105~1×109、5×105~1×108、5×105~5×107、5×105~1×107、5×105~1×106、または1×107~1×109、1×107~5×107、1×106~1×107、および1×106~5×106TUを含む。特定の例示的実施形態では、容器は、1×107~1×109、5×106~1×108、1×106~5×107、1×106~5×106、または5×107~1×108のレトロウイルス形質導入単位を含有し得る。理論によって限定されるものではないが、そのような粒子の数は、1~10のMOIで1~100mLの血液を裏付ける。本明細書に示されるようないくつかの例示的な実施形態では、T細胞および/またはNK細胞改変、ならびに任意選択で本明細書に提供される皮下および/または筋肉内投与方法のために、わずか10mL、5mL、3mL、またはさらには2.5mLの血液が処理され得る。したがって、本方法の利点は、いくつかの例示的な実施形態では、CAR-T方法などのCARをコードする核酸を伴う従来の方法よりもはるかに少ないレトロウイルス粒子形質導入単位を必要とすることである。
【0194】
レトロウイルス粒子を含む各容器は、例えば、0.05mL~5mL、0.05mL~1mL、0.05mL~0.5mL、0.1mL~5mL、0.1mL~1mL、0.1mL~0.5mL、0.1~10mL、0.5~10mL、0.5mL~5mL、0.5mL~1mL、1.0mL~10.0mL、1.0mL~5.0mL、10mL~100mL、1mL~20mL、1mL~10mL、1mL~5mL、1mL~2mL、2mL~20mL、2mL~10mL、2mL~5mL、0.25mL~10mL、0.25~5mL、または0.25~2mLの体積を含有し得る。
【0195】
特定の実施形態では、容器中のレトロウイルス粒子は、GMPグレード、もしくはcGMPグレードのレトロウイルス粒子(すなわち、規制機関に従ってGMPもしくは現行のGMP要件の下で生産される)、またはGMPシステムを使用して実施されるレトロウイルス製造ステップの生成物である。そのようなレトロウイルス粒子は、典型的には、米国FDA(すなわち、米国GMPもしくは米国cGMP)、EMA(すなわち、EMA GMPもしくはEMA cGMP)、またはNational Medical Products Administration(NMPA)of China(すなわち、中国FDA)(すなわち、NMPA GMPもしくはNMPA cGMP)の適正製造規範(GMP)を使用して、例えば、GMP品質システムおよびGMP手順管理を使用して作製される。これらの生成物は、典型的には、GMPまたはcGMP要件を満たす施設で生産される。そのような生成物は、典型的には、GMPまたはcGMP規制に基づく厳格な品質管理システムの下で製造される。GMPグレードのレトロウイルス粒子は、典型的には滅菌されている。これは、例えば、0.45μmまたは0.22μmのフィルターで、例えば実質的に純粋なレトロウイルス粒子などのレトロウイルス粒子を濾過することによって達成され得る。GMPグレードのレトロウイルス粒子は、典型的には、実質的に純粋であり、力価、品質、および安全性についての製造管理試験仕様を用いて調製される。
【0196】
いくつかの実施形態では、容器中でレトロウイルス粒子を含む溶液は、検出可能なウシタンパク質を含まず、これは「ウシ成分を含まない」と称され得る。例えば、ウシ血清タンパク質などのウシタンパク質は、レトロウイルス産生中のパッケージング細胞の培養に使用されず、かかるレトロウイルス粒子の溶液は、ウシ成分を含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、レトロウイルス粒子の溶液は、GMPグレードであり、ウシ成分を含まない。実質的に純粋な核酸溶液は、典型的には、ウシ成分を含まず、不死成分を含まないブロスで製造される。
【0197】
本明細書に提供される特定の例示的な反応混合物中のレトロウイルス粒子、および例示的な実施形態では、レンチウイルス粒子に関して0.1~50、0.5~50、0.5~20、0.5~10、1~25、1~15、1~10、1~5、2~15、2~10、2~7、2~3、3~10、3~15、もしくは5~15の感染多重度(MOI)または少なくとも1~6、11、もしくは51未満のMOI、またはいくつかの実施形態では、5~10のMOI単位の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子が存在する。いくつかの実施形態では、MOIは、少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、または15であってもよい。血液中のリンパ球を形質導入するための組成物および方法に関して、特定の実施形態では、PBMCが単離され、かつ反応混合物で使用される方法よりも高いMOIが使用され得る。例えば、全血中のリンパ球を形質導入するための組成物および方法の例示的な実施形態は、1×106個のPBMC/mLの血液を仮定すると、1~50、2~25、2.5~20、2.5~10、4~6、または約5、およびいくつかの実施形態では、5~20、5~15、10~20、または10~15のMOIを有するレトロウイルス粒子を使用することができる。
【0198】
CD4陽性(CD4+)細胞およびCD8陽性(CD8+)細胞上のTCRa,TCRb,およびCD3を含むTCR複合体の表面発現は、かかる細胞が、TCR複合体、本明細書の特定の例示的実施形態の場合にはT細胞活性化エレメントに結合する結合ポリペプチドを提示するポリヌクレオチドベクター(例えば、複製能力のない組み換え(RIR)レトロウイルス粒子)と接触したときに、減少し、または「減光する(dimmed)」。この減光は主に、活性化した際のTCR複合体の内部移行の結果である。さらに、この減光の程度は、反応混合物中の所与の遺伝子ベクターの濃度が上昇するにつれて増加し、遺伝子ベクターが活性化し、細胞へ進入する能力とも相関している。同様に、遺伝子ベクターの表面上のポリペプチドに結合した後の他の表面ポリペプチドの内部移行によっても、遺伝子ベクターと接触した細胞上の表面ポリペプチドに減光が生じ、この内部移行は他の結合ポリペプチドを使用した形質導入でも普遍的に起こり得る。したがって、一部の実施形態では、結合ポリペプチドを含む遺伝子ベクターと接触していない細胞上の表面ポリペプチドの発現と比較した、結合ポリペプチドを含む遺伝子ベクターと接触した細胞上の表面ポリペプチドの発現における減少の割合パーセントを使用して、遺伝子ベクターの効力が定量され、細胞集団の改変に使用される遺伝子ベクターの適切な用量が決定される。例示的な実施形態では、遺伝子ベクターと接触していない細胞上の表面TCR複合体の発現と比較した、遺伝子ベクターと接触した細胞上の表面TCR複合体の発現における減少の割合パーセントを使用して、遺伝子ベクターの効力が定量され、細胞集団の改変に使用される遺伝子ベクターの適切な用量が決定される。本明細書で使用される場合、「減光単位」(DU:Dimming Unit)は、37℃、5% CO2で4時間、遺伝子ベクターと接触させた後の細胞混合物1ml中の表面ポリペプチドの表面発現を、遺伝子ベクターと接触していないが同様の条件下にある細胞混合物中の表面ポリペプチドの表面発現と比較して、50%減少させる遺伝子ベクター(例えば、RIRレトロウイルス粒子)の量である。表面ポリペプチドは、典型的には、遺伝子ベクターの表面上に存在する結合ポリペプチドの結合パートナーである。一部の実施形態では、表面ポリペプチドは、TCR複合体ポリペプチドである。一部の実施形態では、TCR複合体ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRα、またはTCRβである。例示的な実施形態では、結合パートナーは、CD3であり、結合ポリペプチドは、抗CD3である。
【0199】
ポリヌクレオチドベクター(本明細書において「遺伝子ベクター」と呼称される場合もある)の表面上の結合ポリペプチドの発現レベルは、様々な結合ポリペプチドによって変化し、さらにポリヌクレオチドベクター調製物によっても変化することから、表面ポリペプチドの表面発現を減少させるポリヌクレオチドベクターの能力は、ポリヌクレオチドベクターの各調製物ごとに決定しなければならない。一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現を減少させるポリヌクレオチドベクターの能力は、標的細胞数に基づいて決定される。一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現を減少させるポリヌクレオチドベクターの能力は、細胞量に基づいて決定される。本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、表面ポリペプチドの表面発現の減少は、表面ポリペプチドの減光と呼称される場合もある。例えば、細胞上のCD3の表面発現が減少した場合、当該細胞上のCD3は減光し、当該細胞は、たとえまだ表面上には発現されていないCD3を含有している可能性があったとしても、CD3-と呼称され得る。理論により限定されないが、T細胞は一過性にCD3を内部移行して減光させ、そして最終的にはその細胞表面上にCD3を再発現させる。それによって、当該T細胞は再びCD3+となる。
【0200】
したがって本明細書において一つの態様では、表面ポリペプチドの表面発現を減光させるポリヌクレオチドベクター調製物の量を、減光体積中の細胞上の減光割合パーセントによって決定する方法が提供され、当該方法は、以下を含む:
a)複数の体積のポリヌクレオチドベクター調製物、および複数の体積の細胞混合物を含む、複数の反応混合物を作製することであって、当該複数の反応混合物中の反応混合物の内の少なくとも二つは、異なる量のポリヌクレオチドベクター調製物および/または細胞混合物を含み、この場合において当該細胞混合物は、表面上に表面ポリペプチドを含む複数の細胞を含み、およびこの場合において当該ポリヌクレオチドベクター調製物は、その表面上に当該表面ポリペプチドに結合することができる結合ポリペプチドを含む複数のポリヌクレオチドベクターを含むこと;
b)当該反応混合物をインキュベートすること;
c)当該反応混合物中、および当該細胞混合物の非接触体積中の表面ポリペプチドの表面発現を測定することであって、当該細胞混合物の非接触体積は、ポリヌクレオチドベクター調製物と接触していないこと;および
d)減光させるポリヌクレオチドベクター調製物の量、減光体積中の細胞の減光割合パーセント、反応混合物中で測定された表面ポリペプチドの表面発現、細胞混合物の非接触体積中で測定された表面ポリペプチドの表面発現、および反応混合物中のポリヌクレオチドベクター調製物と細胞混合物の量、を決定すること。
【0201】
一部の実施形態では、反応混合物中の細胞混合物の量は、体積に基づく。一部の実施形態では、反応混合物中の細胞混合物の量は、標的細胞の数に基づく。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドベクター調製物は、ウイルス調製物である。例示的な実施形態では、ウイルス調製物は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子調製物である。一部の実施形態では、減光割合パーセント(減光した細胞の割合パーセント)は、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、または97%である。例示的な実施形態では、減光割合パーセントは、少なくとも、または約80%、85%、90%、または95%である。一部の実施形態では、減光体積は、0.25ml、0.5ml、0.75ml、1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、10ml、15ml、20ml、または25mlである。一部の実施形態では、表面ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRα、TCRβ、CD16A、NKp46、2B4、CD2、DNAM、またはNKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、および/またはNKG2Hであってもよい。一部の実施形態では、表面ポリペプチドは、TCR複合体ポリペプチドである。一部の実施形態では、TCR複合体ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRα、またはTCRβである。例示的な実施形態では、表面ポリペプチドは、CD3Eである。一部の実施形態では、結合ポリペプチドは、本明細書の活性化エレメントの項に開示される活性化エレメントのいずれかであってもよい。こうした実施形態では、表面ポリペプチドは、活性化エレメントの結合パートナーであってもよい。
【0202】
例示的な実施形態では、細胞混合物は、全血である。さらなる例示的な実施形態では、細胞混合物には、赤血球枯渇手順が行われる。一部の実施形態では、全血は、健康な対象、例えば、抗原の発現上昇に関連する疾患、障害、もしくは状態を有さない、または有することが判明していない、または有することが疑われていない対象から採取される。一部の実施形態では、全血は、抗原の発現上昇に関連する疾患、障害、または状態を有する対象から採取され、この場合において当該ポリヌクレオチドベクターは、対象に投与され、または疾患、障害もしくは状態を有する他の対象に投与される。一部の実施形態では、全血は、各対象から採取され、減光単位は、各対象ごとに個別に計算される。
【0203】
一部の実施形態では、反応混合物は、約24時間、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、もしくは2時間、または60分、45分、30分、15分、10分、もしくは5分、またはそれ未満の間、またはただ最初の接触の間にインキュベートされてもよい。一部の実施形態では、反応混合物は、10分~24時間、または10分~8時間、または1時間~8時間、または1時間~6時間、または例示的実施形態では、3.5~4.5時間、または4時間、インキュベートされてもよい。一部の実施形態では、反応混合物は、約10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、37℃、または42℃でインキュベートされてもよい。一部の実施形態では、反応混合物は、CO2なしでインキュベートされる。例示的な実施形態では、反応混合物は、5% CO2でインキュベートされる。
【0204】
一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)法によって測定される。一部の実施形態では、FACS法で使用される抗体は、GMPである。一部の実施形態では、CD3抗体を使用して、表面ポリペプチドの表面発現が決定される。一部の実施形態では、CD3抗体は、UCHT1、OKT-3、HIT3A、TRX4、X35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111409、CLB-T3.4.2、TR-66、TR66.opt、HuM291、WT31、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW24B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、および/またはSK7である。例示的な実施形態では、CD3抗体は、PerCPマウス抗ヒトCD3-クローンSK7(BD社、347344)である。一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現を測定する前に、インキュベートされた反応混合物中の非結合ポリヌクレオチドベクターから細胞混合物中に存在する細胞が分離される。
【0205】
上記の方法の例示的実施形態では、ポリヌクレオチドベクター調製物は、RIP調製物であり、減光割合パーセントは、50%であり、減光体積は、1mlであり、表面ポリペプチドは、CD3であり、細胞混合物は、健康な対象から採取された全血であり、反応混合物は、37℃および5% CO2で4時間インキュベートされ、当該方法を使用して減光単位が計算される。
【0206】
かかる方法を使用して、細胞上の表面ポリペプチド発現を特定の割合まで減少させるポリヌクレオチドベクター調製物中のレトロウイルス粒子の量を決定することができる。次いでこの量を使用して、レトロウイルス粒子量を決定し、その後の全血、単離PBMC、または単離TNCの形質導入に使用することができる。遺伝子改変リンパ球および/または形質導入リンパ球を含む本明細書に提供される態様および実施形態のいずれかにおいて、リンパ球に添加する、ポリヌクレオチドベクター調製物、例えば、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子調製物の量は、上述の方法を使用して決定することができる。
【0207】
添加するポリヌクレオチドベクターの量を決定するための接触工程を含む本明細書の態様または実施形態のいずれかにおいて、減光単位(DU)を使用することができる。ポリヌクレオチドベクターの1DUは、1mlの体積の細胞で表面ポリペプチドの表面発現を50%まで減少させる。ポリヌクレオチドベクターの10DUは、10mlの細胞混合物で表面ポリペプチドの表面発現を50%まで減少させる。一部の実施形態では、充分なDUが細胞体積に添加されて、例えばCD3などの表面ポリペプチドの表面発現は、当該ポリヌクレオチドベクターと接触した後に、当該ポリヌクレオチドベクターと接触していないが類似条件下にある細胞混合物中の表面ポリペプチドの表面発現と比較して、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、または97%超まで減少する。例示的な実施形態では、充分なDUが細胞体積に添加されて、表面ポリペプチドの表面発現は、当該ポリヌクレオチドベクターと接触した後に、当該ポリヌクレオチドベクターと接触していないが類似条件下にある細胞混合物中の表面ポリペプチドの表面発現と比較して、80%、85%、90%、または95%超まで減少する。一部の実施形態では、1mlの細胞混合物当たり、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20DUが添加される。例示的な実施形態では、1mlの細胞混合物当たり、5~20DU、5~15DU、10~20DU、または13~18DUが添加される。一部の実施形態では、1,000,000個の標的細胞当たり、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20DUが添加される。一部の実施形態では、標的細胞は、例えばT細胞またはNK細胞などのリンパ球である。例示的な実施形態では、細胞は、全血、単離PBMC、または単離TNC中にある。さらなる例示的な実施形態では、細胞は、赤血球を溶解させた後の全血の残りの部分である。一部の実施形態では、充分なDUが添加されて、特定の割合の細胞集団が減光される。例えば、T細胞集団上のCD3が、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、または97%超まで減光される。一部の実施形態では、充分な減光単位のポリヌクレオチドベクター、例示的な実施形態ではRIPが存在して、表面減光された表面ポリペプチドの割合が増加する。例示的な実施形態では、細胞集団中、例示的な実施形態ではT細胞集団中の減光した表面CD3-は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、または97%まで増加する。ポリヌクレオチドベクターと接触した細胞を含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、細胞を含む組成物は、例えば、1mlの細胞当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20DUを含んでもよく、例えば、1mlの血液、細胞製剤、または細胞集団当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20DUを含んでもよい。
【0208】
いくつかの態様では、NK細胞および/または例示的実施形態ではT細胞を改変するためのキットが、本明細書に提供される。特定の実施形態におけるそのようなキットは、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位(一つ以上の第一の転写単位は、第一のキメラ抗原受容体(CAR)(第一のCARと称される場合がある)をコードする)を含む、ポリヌクレオチド、典型的には、実質的に純粋なポリヌクレオチドを含有する、一つ以上の容器、ならびに付属の構成要素の一つ以上の容器(本明細書において付属のキット構成要素とも呼ばれる)を含む。ポリヌクレオチド(例えば、レトロウイルス粒子)は、例えば、-70℃以下(例えば、-80℃)で凍結保存され得る。
【0209】
キットが、例えば凍結保存点滴バッグなどの市販容器内に例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞ではない改変リンパ球、例えば改変T細胞および/または改変NK細胞などの改変細胞を細胞懸濁液中に含む一部の実施形態の場合、当該凍結保存点滴バッグなどの容器は、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、または500ml以下の血液を保持してもよい。一部の実施形態では、例えば凍結保存点滴バッグなどの容器は、少なくとも5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mlの血液を保持してもよい。一部の実施形態では、例えば凍結保存点滴バッグなどの容器は、範囲の下限で1、2、3、4、5、10、15、20、25、および50mLの血液、および範囲の上限で10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、および500mLの血液を保持してもよい。一部の実施形態では、例えば凍結保存点滴バッグなどの容器は、範囲の下限で1、2、3、4、5、10、15、20、25、および50mLの血液、および範囲の上限で10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、および500mLの血液を保持してもよい。例えば、凍結保存点滴バッグなどの容器は、1~10mL、5~25mL、10~50mL、25~100mL、50~200mL、または100~500mLの血液を保持してもよい。一部の実施形態では、例えば、凍結保存点滴バッグなどの容器は、ヘパリンを含んでもよい。他の実施形態では、例えば、凍結保存点滴バッグなどの容器は、ヘパリンを含まない。
【0210】
キットが、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、または改変T細胞および/もしくは改変NK細胞などの改変細胞を、例えば細胞凍結保存点滴バッグなどの容器内の細胞懸濁液中に含む一部の実施形態では、送達される細胞の数は、細胞が送達される対象の体重1kg当たり、1×105細胞~1×109細胞、1×106細胞~1×109細胞、または1×106細胞~5×108細胞のCAR陽性生存T細胞および/またはNK細胞を提供するのに充分な数であってもよい。したがって、一部の実施形態では、市販容器は、前述の範囲×50~150kg、または50~100kgを含んでもよい。一部の実施形態では、市販容器は、1×107~1×1011細胞個、1×108~1×1011細胞個、または1×108~5×1010細胞個の例えばCAR陽性の生存T細胞および/または生存NK細胞、または例示的実施形態では、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインが陽性である細胞を含む。
【0211】
例示的な実施形態では、例えばCARなど本明細書に開示される様々なポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に提供される複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の態様および実施形態のいずれかによる、レトロウイルス粒子、典型的には実質的に純粋なレトロウイルス粒子のゲノム中に位置する。例示的な実施形態では、キット中の複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結された転写単位を一つ以上含むポリヌクレオチドを含み、この場合において当該一つ以上の第一の転写単位は、本明細書に提供される実施形態のいずれかに従い、抗イディオタイプポリペプチド、CAR、TCRおよび/またはLEを含む第一のポリペプチドをコードし、さらに任意選択的に抗イディオタイプポリペプチド、CAR、TCR、および/またはLEを含む第二のポリペプチドをコードする。
【0212】
本明細書に提供されるキットは、ポリヌクレオチド、例えばポリヌクレオチドベクター、例えばRIPを含み、または改変細胞、例えば改変リンパ球、改変TIL、B細胞以外の改変リンパ球、例えば改変T細胞および/もしくは改変NK細胞、ならびにアクセサリキットを含む容器を含んでもよい。付属のキット構成要素は、以下のうちの一つ以上を含み得る:
a.本明細書に提供される皮下および/または筋肉内投与に適合する、例示的な実施形態では、それに有効な、およびさらなる例示的な実施形態では、そのために適合された送達溶液を含有する一つ以上の容器、
b.本明細書に提供されるヒアルロニダーゼの一つ以上の容器、
c.例示的な実施形態では、バッグまたは別個の容器中に抗凝固剤を含む採血バッグ、血液処理緩衝液バッグ、血液処理廃棄物収集バッグ、および血液処理細胞試料収集バッグなどの一つ以上の血液バッグ、
d.T細胞および/またはNK細胞の皮下または筋肉内送達に適合する、例示的な実施形態では、それに有効な、およびさらなる例示的な実施形態では、そのために適合された一つ以上の滅菌注射器、
e.本明細書に詳細に開示されるT細胞活性化エレメント、例えば、レトロウイルス粒子を含有する容器内の溶液中、または別個の容器中、または例示的な実施形態において提供される抗CD3は、複製能力のないレトロウイルス粒子の表面と関連付けられる、
f.一つまたは複数の白血球除去濾過アセンブリ、
g.T細胞および/またはNK細胞の形質導入に適合する、例示的な実施形態では、それに有効な、およびさらなる例示的な実施形態では、そのために適合された溶液または培地を含有する一つ以上の容器、
h.T細胞および/またはNK細胞のすすぎに適合する、例示的な実施形態では、それに有効な、および/またはさらなる例示的な実施形態では、そのために適合された溶液または培地を含有する一つ以上の容器、
i.pH調節薬剤を含有する一つ以上の容器、
j.T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位を含むポリヌクレオチド、典型的には、実質的に純粋なポリヌクレオチド(例えば、本明細書の任意の実施形態による組換えレトロウイルス粒子内に見られる)を含有する一つ以上の容器であって、一つ以上の第二の転写単位が、例示的な実施形態では、同じ標的がん細胞(例えば、B細胞)上に見られる、異なる標的エピトープ、および特定の実施形態では、異なる抗原を対象とする第二のCARを含むポリペプチドをコードする、一つ以上の容器、
k.核酸(例えば、レトロウイルス粒子)によってコードされる第一のCARおよび/または第二のCARの同族抗原を含有する一つ以上の容器、ならびに
l.他のキット構成要素に物理的またはデジタル的のいずれかで関連付けられた、その使用のための、例えば、T細胞および/もしくはNK細胞を改変するための、改変されたT細胞および/もしくはNK細胞を対象に皮下または筋肉内送達するための、ならびに/または対象における腫瘍成長もしくはがんを治療するための指示。
【0213】
いくつかの実施形態では、血液バッグは、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mL以下の血液を保持し得る。いくつかの実施形態では、血液バッグは、少なくとも5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、または500mLの血液を保持し得る。いくつかの実施形態では、複数の血液バッグは、範囲の下限の1、2、3、4、5、10、15、20、25、および50mLの血液~範囲の上限の10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、および500mLの血液を保持し得る。いくつかの実施形態では、血液バッグは、範囲の下限の1、2、3、4、5、10、15、20、25、および50mLの血液~範囲の上限の10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、および500mLの血液を保持し得る。例えば、血液バッグは、1~10mL、5~25mL、10~50mL、25~100mL、50~200mL、または100~500mLの血液を保持し得る。いくつかの実施形態では、血液バッグは、ヘパリンを含み得る。他の実施形態では、血液バッグは、ヘパリンを含まない。
【0214】
抗原または同族抗原を含む本明細書のキットの態様および実施形態のいずれかにおいて、キット中のポリペプチドの50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%未満は、非ヒトであり、すなわち、非ヒト源から生成される。
【0215】
いくつかの実施形態では、キットは、単回パック/使用キットであってもよいが、他の実施形態では、キットは、任意選択で皮下投与を介してCARをコードする核酸と接触することからの二つ以上の血液試料を処理するための複数回パックまたは複数回使用キットである。典型的には、キット内のCARをコードする核酸の容器(および任意選択で、特定の実施形態では、第二のCARをコードする核酸の対になった容器)は、T細胞および/またはNK細胞を改変することならびに任意選択で皮下投与のための方法の一回の実施のために使用される。CARおよび任意選択で第二のCARをコードする核酸を含有する容器は、典型的には、凍結状態で保管および出荷される。したがって、キットは、本明細書に提供されるT細胞および/またはNK細胞を改変するための方法の1、2、3、4、5、6、10、12、20、24、50、および100回の実施のための、CARをコードする核酸の十分な容器(例えば、バイアル)(および任意選択で、特定の実施形態では、第二のCARをコードする対になった容器)を含むことができ、したがって、CARをコードする核酸(例えば、レトロウイルス粒子)の1、2、3、4、5、6、10、12、20、24、50、および100個の容器(例えば、バイアル)を含むことができ、同様に、1、2、3、4、5、6、10、12、20、24、50、および100のパック、実施、投与、またはXキットとそれぞれみなされる。同様に、キット内の付属の構成要素は、キットを使用する、T細胞および/またはNK細胞を改変することならびに任意選択で皮下投与のための方法の同様の実施数のために提供される。
【0216】
一つ以上の白血球除去濾過アセンブリは、そのようなキット内に存在する場合、典型的には、単回使用の閉鎖型血液処理システムで使用するために適合された、一つまたは複数の白血球除去フィルターまたは白血球除去フィルターセット(各々は典型的には、フィルターエンクロージャー内にある)、ならびにそれに接続された、または接続されるように適合された複数の接続滅菌チューブ、およびそれに接続された、または接続されるように適合された複数のバルブを含む。典型的には、キット内のCARをコードする核酸の各容器に対して一つの白血球除去濾過アセンブリが存在する。したがって、例示的な実施形態における20パックキットは、CARをコードする核酸の20個のバイアル、および20個の白血球除去濾過アセンブリを含む。いくつかの実施形態では、本明細書のキットは、核酸を含有する一つまたは複数の容器、および一つ以上の白血球除去濾過アセンブリを備える。そのようなキットは、任意選択で、例えば、注入、または例示的な実施形態では筋肉内送達、および/またはさらなる例示的な実施形態では皮下送達を含む任意の経路を介した、対象への投与のために使用されることが意図され得る。したがって、かかるキットは任意選択的に、かかる投与経路で使用されることが意図される他のアクセサリ構成要素を含む。皮下または筋肉内送達溶液の一つ以上の容器は、本明細書でより詳細に考察され、典型的には滅菌され、かつ100mL~5L、1mL~1L、1mL~500mL、1mL~250mL、1mL~200mL、1mL~100mL、1mL~10mL、もしくは1mL~5mL、5mL~1L、5mL~500mL、5mL~250mL、5mL~100mL、5mL~10mL、または約5mLの、合わせた総体積または容器当たりの個々の体積を含み得る。いくつかの例示的な実施形態では、キットは、皮下送達溶液の複数の容器を備え、各容器は、10mL~200mL、10mL~100mL、1mL~20mL、1mL~10mL、1mL~5mL、1mL~2mL、2mL~20mL、2mL~10mL、2mL~5mL、0.25mL~10mL、0.25~5mL、または0.25~2mLの体積を有する。例示的な実施形態では、キット内のCARをコードする核酸の各容器に対して送達溶液の一つの容器が存在する。したがって、例示的な実施形態における20パックキットは、CARをコードする核酸の20個のバイアル、および滅菌送達溶液の20個の容器を含む。
【0217】
特定のキットの態様では、第一のCARをコードする核酸、および任意選択で、第二のCARをコードする核酸を含有する容器のいずれかまたは両方が、本明細書に提供される自己駆動CARの実施形態のいずれかによる核酸である実施形態が、本明細書に提供される。そのような実施形態では、キットの付属の構成要素は、以下のうちの一つ以上をさらに含み得る:
a.本明細書に提供される静脈内投与もしくは腹腔内投与に適合された、それらと適合性がある、および/またはそれらに有効な、送達溶液を含有する一つ以上の容器、および
b.他のキット構成要素に物理的またはデジタル的のいずれかで関連付けられた、その使用のための、例えば、改変されたT細胞および/もしくはNK細胞を対象に静脈内送達または腹腔内送達するための指示。
【0218】
特定の態様では、T細胞またはNK細胞を改変するためのキットの製造におけるRIPの使用が、本明細書に提供され、キットの使用は、T細胞またはNK細胞を複製能力のない組換えレトロウイルス粒子とエクスビボで接触させることを含み、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、表面上のシュードタイピングエレメントおよび表面上のT細胞活性化エレメントを含み、当該接触させることは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子によるT細胞またはNK細胞の形質導入を促進し、それによって遺伝子改変、および例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞またはNK細胞を産生する。
【0219】
いくつかの態様では、T細胞またはNK細胞を改変するためのキットの製造における複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の使用を含む態様が、本明細書に提供される。ポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドを含有する複製能力のない組換えレトロウイルス粒子に関する詳細は、本明細書および例示的な実施形態の項により詳細に開示されている。いくつかの実施形態では、T細胞またはNK細胞は、対象に由来してもよい。いくつかの実施形態では、T細胞活性化エレメントは、膜結合していてもよい。いくつかの実施形態では、接触させることは、範囲の下限の1、2、3、4、5、6、7、または8時間~範囲の上限の4、5、6、7、8、10、12、15、18、21、および24時間、例えば1~12時間、実施され得る。キットの製造に使用するための複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、本明細書の別の箇所で考察される態様、実施形態、または下位実施形態のいずれかを含み得る。
【0220】
さらに、別の態様では、本明細書に提供されるパッケージング細胞および/またはパッケージング細胞株の態様のいずれかによる、単離されたパッケージング細胞、例示的実施形態ではパッケージング細胞株からの単離されたパッケージング細胞を含む容器、例えば、商業用容器もしくはパッケージ、またはそれを備えるキットが、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に提供される方法で使用される緩衝液または試薬などの追加の試薬を含む追加の容器を含む。さらに、特定の態様では、本明細書に提供される任意の態様によるT細胞またはNK細胞を改変する、および例示的な実施形態では、遺伝子改変するためのキットの製造における、任意の態様で本明細書に提供される任意の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の使用が、本明細書に提供される。さらに、特定の態様では、本明細書に提供される任意の態様による複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を産生するためのキットの製造における、任意の態様で本明細書に提供される任意のパッケージング細胞またはパッケージング細胞株の使用が、本明細書に提供される。
【0221】
別の態様では、活性成分として複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を含む、がんまたは腫瘍成長を治療または予防するための医薬組成物が、本明細書に提供される。別の態様では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を含む、がんまたは腫瘍成長を治療または予防するための注入組成物または他の細胞製剤が、本明細書に提供される。医薬組成物または注入組成物の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、上記または本明細書の別の箇所で考察される態様、実施形態、または下位実施形態のいずれかを含み得る。
【0222】
対象からのリンパ球の採取
リンパ球、PBMC、および例示的な実施形態では、NK細胞、および/またはさらなる例示的な実施形態では、T細胞をエクスビボまたはインビボでRIPの直接的投与によって改変する、および例示的な実施形態では、遺伝子改変するための工程を含み得る、本明細書に提供される任意の態様で使用される任意の方法の一部の実施形態は、対象から血液を採取する工程を含み得る。血液は、本明細書に提供される方法および組成物で使用され得るリンパ球(例えばT細胞およびNK細胞)などの血液細胞を含む血液成分を含む。特定の例示的な実施形態では、対象は、がんに罹患しているヒト対象(すなわちヒトがん対象)である。注目すべきは、特定の実施形態がそのようなステップを含まないことである。しかしながら、対象から血液を採取することを含む実施形態では、血液は、本明細書でより詳細に考察されるように、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって、対象から採取または獲得され得、したがって、採取された血液または血液由来成分は、「血液由来生成物」と称され、かつ典型的には、それが末梢血から単離されるため、典型的には「末梢血由来生成物」である。例えば、血液由来生成物は、静脈穿刺または当分野で公知の任意の他の採血方法によって採取されてもよく、それにより、未分画全血の試料が、管に、例えば血液バッグ内に採取される、またはそれにより、白血球およびリンパ球が、アフェレーシス(例えば、白血球アフェレーシスまたはリンパ球血漿アフェレーシス)などによって血液から単離される。いくつかの実施形態では、採取される血液(例えば、未分画全血)の量は、1~5mL、5~10mL、10~15mL、15~20mL、20~25mL、5~25mL、25~250mL、25mL~125mL、50mL~100mL、または50mL~250mL、75mL~125mL、90mL~120mL、または95~110mLである。いくつかの実施形態では、採取される血液の量は、範囲の下限の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、600、700、800、または900mL~範囲の上限の25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、175、200、225、250、275、300、350、400、450、500、600、700、800、もしくは900mL、または1Lであってもよい。いくつかの実施形態では、採取される血液の量は、250mL、100mL、75mL、20mL、15mL、10mL、または5mL未満である。いくつかの実施形態では、リンパ球(例えばT細胞および/またはNK細胞)は、アフェレーシスによって得られ得る。いくつかの実施形態では、アフェレーシス(例えば、白血球アフェレーシスまたはリンパ球血漿アフェレーシス)中に採取および処理される血液の量は、範囲の下限の0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1、1.25、または1.5の対象の総血液量~範囲の上限の0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、または2.5の対象の総血液量、例えば、0.5~2.5、0.5~2、0.5~1.5、または1~2の総血液量である。ヒトの総血液量は、典型的には4.5~6Lの範囲であり、したがって、未分画全血が採取される場合よりもはるかに多くの血液が、典型的には、アフェレーシス中に採取および処理される。標的血液細胞(例えば、T細胞)がアフェレーシスによって得られるか、または未分画全血が例えば血液バッグ内に採取されるかに関わらず、その中の標的血液細胞(例えば、T細胞)が、本明細書に提供される方法に従って処理され、方法が、特定の例示的な実施形態では、改変、遺伝子改変、および/または形質導入されようになる標的血液細胞をもたらすことが企図される。T細胞および/またはNK細胞を含む細胞画分を収集するためにアフェレーシス(例えば、白血球アフェレーシスまたはリンパ球血漿アフェレーシス)が使用される場合(例えば、ロイコパック(leukopak)またはlymphoplasmapakを提供するために)、そのような細胞は、直接にまたは一回以上の洗浄後に溶液中に再懸濁され、それにCARをコードする組換えベクターが添加されて、本明細書に提供される反応混合物を形成する。そのような反応混合物は、本明細書の任意の方法で使用され得る。対象または対象由来の血液試料が低いCD3+血液細胞カウントを有するいくつかの例示的な方法では、アフェレーシス(例えば、白血球アフェレーシスまたはリンパ球血漿アファレーシス)を使用して、本明細書に提供される方法に含むための血液細胞(例えば、白血球またはリンパ球)を収集する。
【0223】
RIPが対象に直接投与される態様および実施形態で形成されるインビボ反応混合物において、対象中のT細胞および/またはNK細胞は、RIPに接触され、改変され、ならびに例示的実施形態は、遺伝子改変され、および形質導入される。かかるインビボ反応混合物に関する詳細は、本明細書の他の項、例えば本明細書の例示的実施形態の項に見出される。
【0224】
本明細書に提供される全血中のリンパ球を改変することを目的とした組成物および方法の態様に関連する反応混合物において、ならびに例えば非改変のT細胞および/またはNK細胞などのリンパ球を同時投与することを含む本明細書の態様および実施形態において、NK細胞および/またはT細胞を含むリンパ球は、同時投与されるリンパ球中で、または反応混合物中で、反応混合物を同時投与する前または反応混合物を形成する前にPBMC濃縮手順を伴う方法よりも低い割合で血液細胞に存在してもよく、および低割合で白血球に存在してもよい。例えば、これらの態様の一部の実施形態では、NK細胞よりも、さらにはT細胞よりも、同時投与される細胞集団または反応混合物中の細胞集団に、より多くの顆粒球または好中球が存在する。全血中のリンパ球を改変することを目的とした態様の同時投与される細胞集団または反応混合物中に存在する抗凝固剤、および一つ以上の追加の血液成分の組成に関する詳細は、本明細書の他の項で詳細に提供される。本明細書に提供される一部の反応混合物において、T細胞は、例えば、範囲の下限で、同時投与される細胞集団または反応混合物のリンパ球の10、20、30、または40%、および範囲の上限で、同時投与される細胞集団または反応混合物のリンパ球の40、50、60、70、80、または90%であってもよい。例示的な実施形態では、T細胞は、リンパ球の10~90%、20~90%、30~90%、40~90%、40~80%、または45%~75%を構成する。そのような実施形態では、例えば、NK細胞は、反応混合物のリンパ球の範囲の下限の1、2、3、4、または5%~反応混合物のリンパ球の範囲の上限の5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14%で存在し得る。例示的な実施形態では、T細胞は、反応混合物のリンパ球の1~14%、2~14%、3~14%、4~14%、5~14%、5~13%、5~12%、5~11%、または5~10%を構成する。一部の実施形態では、T細胞は少なくとも反応混合物の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。本明細書に開示されるように、全血中のリンパ球を形質導入するための組成物および方法の態様は、典型的には、血液試料由来のリンパ球がそれらの態様について本明細書に開示される反応混合物中で、組換え核酸ベクター、例えばレトロウイルス粒子と接触する前に、血液試料のPBMC濃縮ステップなどの血液分画を伴わない。したがって、いくつかの実施形態では、未分画全血中のリンパ球は、組換えレトロウイルス粒子と接触する。しかしながら一部の実施形態では、特に本明細書の自己駆動CAR方法および組成物の項の一部の態様では、ならびにT細胞および/またはNK細胞を含む細胞集団とRIPの直接投与との同時投与を含む態様の一部の実施形態では、好中球/顆粒球は、他の血液細胞から分離され、その後に細胞は対象に同時投与され、またはエクスビボ反応混合物中のRIPと接触する。一部の実施形態では、例えばT細胞および/またはNK細胞などの末梢血リンパ球(PBL)を含む末梢血単核球(PBMC)は、血液試料の他の成分から、例えばPBMC濃縮手順などを使用して単離され、その後に、典型的には細胞製剤への製剤化され、対象に同時投与され、またはその後にレトロウイルス粒子を含むエクスビボ反応混合物と混合される。当業者であれば、当該技術分野で既知の様々な方法を使用して、T細胞および/またはNK細胞を含有する異なる血液画分を濃縮することができることを理解するであろう。
【0225】
PBMC濃縮手順は、PBMCが他の血液細胞タイプから少なくとも25倍、典型的には少なくとも50倍濃縮される手順である。例えば、PBMCは、全血中の血液細胞の1%未満を構成すると考えられている。PBMC濃縮手順の後、PBMC画分で単離された細胞の少なくとも30%、およびいくつかの例では70%ほど多くがPBMCである。いくつかのPBMC濃縮手順を使用して、PBMCのさらに高い濃縮が達成される可能性がある。様々な異なるPBMC濃縮手順が、当該技術分野で知られている。例えば、PBMC濃縮手順は、リンパ球、単球、顆粒球、および赤血球などの主要な細胞集団を密度勾配培地全体で分離するフィコール密度勾配遠心分離プロセスである。そのような方法では、水性媒体は、高密度溶液を形成する親水性多糖類であるフィコールを含む。二つの層を混合せずに密度培地の上または下に全血を重ねた後、遠心分離すると、細胞が密度に応じて分散され、PBMC画分が、血漿と密度勾配培地との界面に薄い白い層を形成する(例えば、Panda and Ravindran(2013)Isolation of Human PBMCs.BioProtoc.Vol.3(3)を参照されたい)。さらに、Sepax細胞処理システムの回転力を使用して、フィコールでPBMCを他の血液成分から分離するために、求心力が使用され得る。
【0226】
いくつかの実施形態では、アフェレーシス、例えば、白血球アフェレーシスを使用して、PBMCなどの細胞を単離することができる。例えば、AMICUS RBCX(Fresenius-Kabi)およびTrima Accel(Terumo BCT)アフェレーシスデバイスおよびキットが使用され得る。アフェレーシスによって単離された細胞は、典型的には、T細胞、B細胞、NK細胞、単球、顆粒球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有する。アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、かつ後続の処理ステップのために、カルシウムを欠き、かつマグネシウムを欠く場合があるか、またはすべてではないが多くの二価カチオンを欠く場合があるリン酸緩衝生理食塩水(PBS)または洗浄溶液などの適切な緩衝液または培地中に細胞を配置し得る。いくつかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、本明細書に提供される方法のいずれかによって遺伝子改変され得る。いくつかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、本明細書に提供される細胞製剤のいずれかを調製するために使用され得る。いくつかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞は、例えば、Caを含まず、Mgを含まないPBSなどの様々な生体適合性緩衝液中に再懸濁され得る。あるいは、アフェレーシスによって収集された細胞を含有する試料の不要な成分が除去され得、細胞が培養培地中に再懸濁され得る。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシスを使用して、リンパ球などの細胞を単離することができる。PBMCを含む本明細書に提供される実施形態のいずれかにおいて、ロイコパックが使用され得る。TNCを含む任意の実施形態では、バフィーコートを使用することができる。別のPBMC濃縮方法では、自動白血球アフェレーシス収集システム(Terumo BCT,Inc.、Lakewood,CO 80215,USA製のSPECTRA OPTIA(登録商標)APHERESIS SYSTEMなど)を使用して、典型的には、血漿、赤血球、および顆粒球などの流出物質をドナーに戻す一方で、高速遠心分離を使用して、全血の流入を標的PBMC画分から分離するが、この戻りは、本明細書に提供される方法では任意選択である。残留赤血球および顆粒球を除去するには、さらに処理が必要であり得る。どちらの方法も、PBMCの時間のかかる精製を含み、白血球アフェレーシス法では、PBMC濃縮ステップ中に患者の存在および参加が必要である。
【0227】
PBMC濃縮手順のさらなる非限定的な例としては、T細胞および/またはNK細胞を含む細胞集団の同時投与を含む一部の実施形態、または本明細書の形質導入、遺伝子改変および/または改変のエクスビボ法に関する一部の実施形態では、PBMCは、SepaxまたはSepax2細胞処理システム(BioSafe社)を使用して単離される。いくつかの実施形態では、PBMCは、CliniMACS Prodigyセルプロセッサ(Miltenyi Biotec)を使用して単離される。いくつかの実施形態では、対象から血液を採取し、特定の細胞タイプ(例えばPBMCなど)を選別する装置に血液を通過させ、残りを対象に戻す自動アフェレーシス分離器が使用される。密度勾配遠心分離は、アフェレーシス後に実施され得る。いくつかの実施形態では、PBMCは、白血球除去フィルターアセンブリを使用して単離される。いくつかの実施形態では、次いで、磁気ビーズ活性化細胞選別を使用して、細胞表現型に従って、PBMC、例えば、PBLまたはそのサブセットから特定の細胞集団を精製した(すなわちポジティブ選択)後に、それらを本明細書の反応混合物中で使用する。
【0228】
他の精製方法、例えば、反応混合物に添加する前にT細胞を精製するために、T細胞が動員中に遭遇する環境を模倣する基質を利用する基質接着もまた使用され得、または接触ステップの反応混合物が形成される前に、不要な細胞を除去の標的とする抗体複合体を用いて、不要な細胞が除去の標的とされるネガティブ選択が使用され得る。いくつかの実施形態では、赤血球ロゼット形成を使用して、反応混合物を形成する前に赤血球を除去することができる。他の実施形態では、造血幹細胞が接触ステップの前に除去され得、したがってこれらの実施形態では、造血幹細胞は、接触ステップ中に存在しない。本明細書のいくつかの実施形態では、特に全血中のリンパ球を形質導入するための組成物および方法について、ABCトランスポーター阻害剤および/または基質は、任意選択のインキュベーションを伴うかもしくは伴わない接触の前、最中、もしくは前および最中の両方に存在せず(すなわち、接触が行われる反応混合物中に存在しない)、または方法の任意のステップにおいて存在しない。
【0229】
複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を含む本明細書の態様の例示的な実施形態では、T細胞および/またはNK細胞と複製能力のない組換えレトロウイルス粒子との間の接触は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子によるT細胞および/またはNK細胞の形質導入を促進し得る。理論によって限定されるものではないが、接触期間中、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子(RIP)は、T細胞および/またはNK細胞を特定し、かつそれらに結合し、T細胞およびNK細胞は、「改変」され、この用語は本明細書で使用されるとおりである。この時点で、レトロウイルスおよび宿主細胞膜は、融合を開始し、抗CD3抗体を含む任意のレトロウイルスシュードタイピングエレメントおよび/またはT細胞活性化エレメントは、改変されたT細胞および/またはNK細胞の表面に組み込まれるようになる。次いで、形質導入のプロセスの次のステップとして、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子からの遺伝物質が、T細胞および/またはNK細胞に入り、その時点でT細胞および/またはNK細胞は、「遺伝子改変」され、この語句は本明細書で使用されるとおりである。注目すべきは、そのようなプロセスが、接触が開始されてから数時間後またはさらには数日後、および関連付けられていないレトロウイルス粒子が洗い流された後でさえ行われ得ることである。次いで、遺伝物質は、典型的には、T細胞および/またはNK細胞のゲノムDNAに組み込まれ、その時点で、T細胞および/またはNK細胞は、ここで「形質導入」され、この用語は本明細書で使用されるとおりである。同様に、細胞は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子以外の組換えベクターによって改変、遺伝子改変、および/または形質導入され得る。細胞はまた、トランスフェクション後に遺伝物質をT細胞および/またはNK細胞のゲノムDNAに内在化し、かつ組み込み、その時点で、T細胞および/またはNK細胞は、ここで「安定してトランスフェクト」され、この用語は本明細書で使用されるとおりである。したがって、例示的な実施形態では、本明細書のリンパ球(例えばT細胞および/またはNK細胞)を改変および/または遺伝子改変するための任意の方法は、リンパ球(例えばT細胞および/またはNK細胞)を形質導入するための方法である。接触が開始された後、インビボまたはエクスビボで6日目までに、改変および遺伝子改変された細胞の大部分が、形質導入されていると考えられている。レンチウイルスを形質導入する方法は既知である。例示的な方法は、例えば、Wang et al.(2012)J.Immunother.35(9):689-701、Cooper et al.(2003)Blood.101:1637-1644、Verhoeyen et al.(2009)Methods Mol Biol.506:97-114、およびCavalieri et al.(2003)Blood.102(2):497-505に記載されている。本開示全体を通して、形質導入、またはいくつかの実施形態では、安定して形質導入されたT細胞および/またはNK細胞は、エクスビボ形質導入中に細胞のゲノムに組み込まれる核酸またはポリヌクレオチドの少なくとも一部を保持する、エクスビボ形質導入された細胞の子孫を含む。形質導入された細胞を「再導入すること」を列挙している本明細書の方法では、そのような細胞は、対象の血液から採取されたとき、典型的には形質導入された状態ではないことが理解されるであろう。
【0230】
本明細書において導入または再導入は、本明細書に提供される方法における対象への投与および再投与とも呼称され、また改変リンパ球の送達とも呼称され、例示的実施形態では遺伝子改変リンパ球の送達とも呼称され、または一部の実施形態では、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)の送達とも呼称され、当分野に公知の任意の経路を介してもよい。そのような遺伝子改変リンパ球の導入または再導入は、典型的には、i)改変された、および/もしくはii)遺伝子改変された、ならびに/またはiiia)形質導入された、もしくはiiib)トランスフェクトされた、細胞、またはiv)RIPを、送達溶液中に懸濁して、細胞製剤またはRIP製剤を作製することを伴い、それら製剤は、本明細書で詳細に検討されるように対象内に導入または再導入することができる。RIPの導入に関連する一部の実施形態は、送達溶液中にRIPを懸濁し、形質導入製剤を作製することを伴い、当該製剤は、対象内に導入することができる。例えば、RIP、リンパ球もしくは改変リンパ球の導入、またはリンパ球もしくは改変リンパ球の再導入は、点滴を介した、対象の血管内への送達であってもよい。一部の実施形態では、RIPSまたは改変リンパ球(例えば、T細胞および/またはNK細胞)は、腹腔内投与、腫瘍内投与、筋肉内投与、リンパ節内投与によって、または例示的な実施形態では皮下投与によって、対象に投与または別手段で導入され、またはリンパ球もしくは改変リンパ球については戻し再導入される。
【0231】
いくつかの投与される細胞は、リンパ増殖エレメントをコードする核酸で改変される。理論によって限定されるものではないが、限定されない例示的な方法では、リンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチドの、エクスビボでの休止T細胞および/またはNK細胞への送達(これは、T細胞またはNK細胞のゲノムに組み込まれ得る)は、宿主をリンパ球枯渇させる必要なく、その細胞にインビボ増大の原動力を提供する。したがって、例示的な実施形態では、対象は、RIPの直接投与または接触の実施から1、2、3、4、5、6、7、10、14、21、もしくは28日以内、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月もしくは6ヶ月以内、接触中、ならびに/またはRIPが直接投与された後、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞が対象に戻し再導入された後、1、2、3、4、5、6、7、10、14、21、もしくは28日以内、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、もしくは6ヶ月以内にリンパ球枯渇剤に曝露されない。さらに非限定的な実施形態では、本明細書に提供される方法は、RIPが対象のT細胞および/もしくはNK細胞(例えば、休止T細胞および/または休止NK細胞)とインビボまたはエクスビボで接触している工程中、および/またはエクスビボ法の全体の工程中、またはインビボ投与の全体の工程中、対象をリンパ球枯渇剤に曝露することなく実施されてもよい。したがって、インビボで対象において改変、および例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を増大させる方法は、本開示のいくつかの実施形態の特徴である。例示的な実施形態では、そのような方法は、エクスビボ繁殖がないか、または実質的に繁殖がない。
【0232】
本開示は、CARを使用する様々な処置方法を提供する。本開示のCARは、Tリンパ球またはNK細胞中に存在する場合、標的細胞に対する細胞傷害性を媒介することができる。本開示のCARは、標的細胞上に存在する抗原に結合し、それによって、CARを産生するように遺伝子改変されたTリンパ球またはNK細胞による標的細胞の殺傷を媒介する。CARのASTRは、標的細胞の表面上に存在する抗原に結合する。本開示は、標的細胞を殺傷するか、またはその成長を阻害する方法を提供し、方法は、Tリンパ球またはNK細胞が標的細胞の表面上に存在する抗原を認識し、かつ標的細胞の殺傷を媒介するように、対象CARを産生するように遺伝子改変された細胞傷害性免疫エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはNK細胞)を接触させることを含む。標的細胞は、例えば、がん細胞であってもよく、本明細書の自家細胞療法は、いくつかの例示的な実施形態では、がんを治療するための方法であってもよい。これらの実施形態では、対象は、がんを有することが疑われる動物もしくはヒト、またはより典型的には、がんを有することが知られている対象であってもよい。PDL-1陽性がんを治療する一部の実施形態では、およびPDL-1陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する例示的実施形態では、遺伝子改変された細胞は、抗PDL-1抗体または抗体模倣体と組み合わされて投与されてもよい。
【0233】
一部の例示的な実施形態では、細胞は、特に、好中球が、レトロウイルス粒子と接触しており、かつ再導入される準備ができているリンパ球の調製物中に存在しない場合、静脈もしくは動脈に注入することによって、あるいは投与される細胞製剤中の細胞の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、7.5%、10%、15%、20%、もしくは25%の細胞、または1%~90%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、1%~20%、1%~10%、5%~90%、5%~75%、5%~50%、5%~25%、5%~20%、5%~10%、10%~90%、10%~75%、10%~50%、10%~25%、または10%~20%が好中球である実施形態については、皮下投与、腫瘍内投与または筋肉内投与によって、対象に導入または再導入される。そのような実施形態は、本明細書でさらに詳細に考察されるように、ヒアルロニダーゼとの同時投与または連続投与を含み得る。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、本明細書に提供される細胞製剤中に存在し、任意選択的に対象に再注入される、または例示的実施形態では対象に皮下送達される、リンパ球の数、例示的実施形態では改変T細胞および/またはNK細胞の数は、範囲の下限で1×103、2.5×103、5×103、1×104、2.5×104、5×104、1×105、2.5×105、5×105、1×106、2.5×106、5×106、および1×107細胞/kg、範囲の上限で5×104、1×105、2.5×105、5×105、1×106、2.5×106、5×106、1×107、2.5×107、5×107、1×108、1×109、および1×1010細胞/kgの範囲であってもよい。特定の実施形態では、本明細書の細胞製剤中に存在し、任意選択的に対象に再注入され、または別手段で送達される、リンパ球の数、例示的実施形態では改変されたT細胞および/またはNK細胞の数は、範囲の下限で1×104、2.5×104、5×104、および1×105細胞/kg、範囲の上限で2.5×104、5×104、1×105、2.5×105、5×105、1×106、1×107、2.5×107、5×107、および1×108細胞/kgの範囲であってもよく、または範囲の下限で1×104細胞/kg、範囲の上限で2.5×104、5×104、1×105、2.5×105、5×105、1×106、1×107、2.5×107、5×107、および1×108細胞/kgの範囲であってもよい。一部の実施形態では、本明細書の細胞製剤中に存在し、任意選択的に対象に再注入され、または腫瘍内送達され、筋肉内送達され、皮下送達され、もしくは別手段で送達される、リンパ球の数、例示的実施形態ではT細胞および/またはNK細胞の数は、範囲の下限で5×105、1×106、2.5×106、5×106、1×107、2.5×107、5×107、および1×108個の細胞、範囲の上限で2.5×106、5×106、1×107、2.5×107、5×107、1×108、2.5×108、5×108、および1×109個の細胞の範囲であってもよい。一部の実施形態では、本明細書の細胞製剤中に存在し、かつ70kgの対象または患者への注入、再注入、または他の送達手段(例えば、皮下送達)に利用可能なリンパ球、および例示的な実施形態ではT細胞および/またはNK細胞の数は、7×105~2.5×108個の細胞である。他の実施形態では、本明細書の細胞製剤中に存在し、かつ形質導入に利用可能なリンパ球、および例示的な実施形態ではT細胞および/またはNK細胞の数は、約7×106プラスまたはマイナス10%である。
【0234】
T細胞、NK細胞、B細胞、または幹細胞を含む本明細書に提供される実施形態および態様のいずれかにおいて、細胞は、自家細胞または同種細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、同種細胞は、遺伝子操作された同種細胞であってもよい。同種T細胞などの同種細胞、および同種細胞を遺伝子操作するための方法は、当該技術分野で既知である。同種細胞がT細胞であるいくつかの実施形態では、T細胞は、TCR複合体の少なくとも一つの成分が機能的に損なわれ、かつ/または少なくとも部分的に欠失されるように遺伝子操作されている。いくつかの実施形態では、T細胞は、TCR複合体の少なくとも一つの成分の発現が低減または排除されるように遺伝子操作されている。いくつかの実施形態では、同種細胞は、B2ミクログロブリン遺伝子のすべてまたは一部を欠いているように改変され得る。いくつかの実施形態では、同種細胞は、本明細書に開示されるリンパ増殖エレメントおよび/またはCLEのいずれかを含み得る。リンパ増殖エレメントおよびCLEの使用は、必要な細胞数を低減し得、T細胞、NK細胞、B細胞、または幹細胞の細胞生産を促進し得る。いくつかの実施形態では、同種細胞は、不死化細胞であってもよい。同種細胞を含む本明細書の態様または実施形態のいずれかにおいて、血液を採取すること、または細胞を複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と接触させることを含むステップは、排除され得る。例えば、同種CAR-T細胞で対象を治療するために、T細胞は、事前に遺伝子改変されていてもよく、遺伝子改変された同種CAR-T細胞は、対象から血液を採取することなく対象に投与される。いくつかの実施形態では、同種細胞は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、同種細胞は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、同種細胞は、腹腔内投与される。
【0235】
リンパ球(例えば、T細胞および/またはNK細胞)を改変することを目的とした本明細書に提供される方法のいずれかの実施形態の一部において、ならびに対象のT細胞および/またはNK細胞を改変するためのキットの製造における複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)の使用を目的とした態様の一部において、改変された、遺伝子改変された、および/もしくは形質導入されたリンパ球(例えば、T細胞および/またはNK細胞)、またはそれらの集団、または細胞を含まない本明細書に提供される組成物中のRIP、例えば、GMP RIP組成物は、対象内に導入され、または再導入される。改変されたリンパ球、例示的な実施形態では遺伝子改変されたリンパ球を対象に送達すること、導入すること、または再導入すること、およびRIPを直接送達することまたは再導入することは、当分野に公知の任意の経路を介してもよい。例えば、導入または再導入は、対象の血管への注入を介した送達であってもよい。腫瘍内、腹腔内、筋肉内、リンパ節内、および特定の例示的な実施形態では、皮下。いくつかの実施形態では、改変、遺伝子改変、および/または形質導入されたリンパ球(例えばT細胞および/もしくはNK細胞)またはその集団は、対象に導入または再導入される前に、エクスビボで4つ以下の細胞分裂を受ける。いくつかの実施形態では、そのような方法で使用されるリンパ球は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と1時間~12時間の間接触している休止T細胞および/または休止NK細胞である。いくつかの実施形態では、対象から血液が採取される時間と、非改変の、改変された、および/または遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞が、対象への送達および/または再導入のために製剤化される時間との間に、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、2時間、または1時間以内が経過する。いくつかの実施形態では、血液が採取された後および血液が再導入される前のすべてのステップは、人が処理全体を通して閉鎖型システムを監視する閉鎖型システムで実施される。
【0236】
ポジティブ選択によるT細胞および/またはNK細胞の濃縮
いくつかの実施形態では、養子細胞療法で有用な細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の任意の細胞、例えばT細胞および/またはNK細胞の一つ以上の細胞集団など、望ましい細胞と本明細書で呼称される任意の細胞は、送達のための製剤化の前に濃縮されてもよい。いくつかの実施形態では、望ましい細胞は、複製能力のないレトロウイルス粒子などの組換え核酸ベクターと接触する前に、ポジティブ選択によって濃縮され得る。他の実施形態では、望ましい細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物が例えば複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子などの組み換え核酸ベクターと接触した後のポジティブ選択により濃縮されてもよい。いくつかの実施形態では、一つ以上の細胞集団を濃縮することは、本明細書に開示される遺伝子改変方法のいずれか、および例示的な実施形態では、複製能力のないレトロウイルス粒子を用いた遺伝子改変と同時に実施され得る。
【0237】
単核細胞(PBMCなど)またはTNCは、本明細書により詳細に記載されるように、それぞれ、密度勾配遠心分離または白血球除去フィルターアセンブリの逆灌流によって、全血などのより複雑な細胞混合物から単離され得る。いくつかの実施形態では、望ましい細胞は、特定の細胞系統、例えばNK細胞、T細胞、ならびに/またはナイーブ、エフェクター、メモリー、サプレッサーT細胞、および/もしくは制御性T細胞を含むT細胞サブセットを有してもよく、一つ以上の表面分子を発現する細胞の選択を通して濃縮されてもよい。例示的な実施形態では、一つ以上の表面分子は、CD4、CD8、CD16、CD25、CD27、CD28、CD44、CD45RA、CD45RO、CD56、CD62L、CCR7、KIR、FoxP3、および/またはCD3などのTCR成分を含み得る。一つ以上の表面分子に向けられた抗体にコンジュゲートされたビーズを使用する方法は、磁気、密度、およびサイズベースの分離を使用して、所望の細胞を濃縮するために使用され得る。
【0238】
そのような抗体ベースのポジティブ選択方法のプロセスにおいて、一つ以上の細胞表面分子の結合は、シグナル伝達および結合細胞の生物学の変化をもたらし得る。例えば、CD3に抗体を付着させたビーズを使用したT細胞の選択は、CD3シグナル伝達およびT細胞活性化をもたらし得る。他の例では、結合およびシグナル伝達は、ナイーブまたはメモリーT細胞などの細胞のさらなる細胞分化をもたらし得る。いくつかの実施形態では、ポジティブ選択は、所望の細胞が接触せず、むしろ触れないまま残されることが好ましい場合などには、所望の細胞を濃縮するために使用されない。
【0239】
一部の実施形態では、望ましい細胞は濃縮されてもよく、それによって、望ましい細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を構成する。一部の実施形態では、望ましい細胞は濃縮されてもよく、それによって、望ましい細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の範囲の下限で1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、または40%、および細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の範囲の上限で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の範囲を構成する。一部の実施形態では、望ましい細胞は濃縮されてもよく、それによって、望ましい細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の10%~90%、20%~90%、30%~90%、40%~90%、40%~80%、45%~75%、1%~14%、2%~14%、3%~14%、4%~14%、5%~14%、5~13%、5%~12%、5%~11%、または5%~10%を構成する。
【0240】
不要な細胞の枯渇による望ましい細胞の濃縮
一部の実施形態では、全血、単離TNC、または単離PBMCに由来する細胞集団、細胞混合物、細胞製剤、または反応混合物中の任意の細胞は、本明細書において不要な細胞と呼称される、不要な細胞集団を一つ以上含有している可能性があるが、不要な細胞を枯渇させることができ、それによって、細胞混合物、細胞製剤、または反応混合物中の望ましい細胞が濃縮される。一部の実施形態では、不要な細胞は、ネガティブ選択によって枯渇させることができ、その後、例えば、本明細書に提供されるT細胞またはNK細胞を遺伝子改変するための方法で提供されるような、複製能力のないレトロウイルス粒子などの組換え核酸ベクターとの接触が行われる。他の実施形態では、不要な細胞は、例えば、本明細書に提供されるT細胞またはNK細胞を遺伝子改変するための方法で提供されるような、複製能力のないレトロウイルス粒子などの組換え核酸ベクターと細胞混合物が接触した後に、ネガティブ選択によって枯渇させることができる。一部の実施形態では、不要な細胞の枯渇は、本明細書に開示される遺伝子改変方法のいずれかと同じときに実施することができ、および例示的な実施形態では、複製能力のないレトロウイルス粒子を用いた遺伝子改変と同じときに実施することができる。
【0241】
一部の実施形態では、不要な細胞は、任意の非T細胞または非NK細胞を含み得る。一部の実施形態では、不要な細胞は、制御性T細胞またはサプレッサーT細胞などのT細胞またはNK細胞サブセットを含み得る。一部の実施形態では、不要な細胞は、がん細胞を含む。一部の実施形態では、不要な細胞は、単球を含む。一部の実施形態では、不要な細胞は、顆粒球を含む。例示的な実施形態では、不要な細胞は、送達のために製剤化される細胞の集団上に発現される、または発現されるであろうCARに対して同族抗原を発現する細胞を含む。
【0242】
さらなる例示的な実施形態では、不要な細胞は、がん細胞を含む。多くのタイプのがん由来のがん細胞は、血液に入ることができ、本明細書に提供される方法を使用してリンパ球とともに低頻度で意図せずに遺伝子改変され得る。一部の実施形態では、がん細胞は、限定されないが、腎細胞がん腫、胃がん、肉腫、乳がん、リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(B-NHL)、神経芽腫、神経膠腫、膠芽腫、髄芽腫、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、中皮腫、肺がん(例えば、小細胞肺がん)、黒色腫、白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、または慢性骨髄性白血病(CML)を含む任意のがんに由来し得る。例示的な実施形態では、CARがん細胞は、B細胞リンパ腫に由来し得る。理論によって限定されるものではないが、それ自体の細胞表面上に発現される抗原に結合するASTRを有するCARを発現するがん細胞、すなわち、CAR発現がん細胞は、それ自体が標的細胞(CARがん細胞)であり、エピトープマスキングとしても既知の、抗原へのCAR-T細胞の結合を遮断し、それによってCARがん細胞の殺傷を防止することができる。CAR-がん細胞は、CAR-Tを用いた最初の治療が成功した後でさえ、CAR-Tに対する免疫を有するがんの再発をもたらし得る(例えば、Ruella et al.Nat Med.2018 Oct;24(10):1499-1503を参照されたい)。不要ながん細胞を枯渇させるための本明細書に提供される方法および組成物は、がん患者から単離された血液細胞またはPBMCなどの遺伝子改変された細胞によってもたらされるこのリスクを克服する。
【0243】
単球は、標準的なプラスチック組織培養プレート、ナイロンもしくはガラスウール、またはセファデックス樹脂などの固定化された単球結合基質との細胞混合物のインキュベーションによって枯渇し得る。理論によって限定されるものではないが、単球は、より低い頻度または強度で接着するか、または全く接着しない細胞混合物中の他の細胞と比較して、固定化された単球結合基質に優先的に接着する。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、37℃で少なくとも1時間、または細胞混合物を樹脂に通過させることによって実施され得る。インキュベーション後、懸濁液中の所望の非接着細胞が、さらなる処理のために収集される。本明細書に提供されるリンパ球の迅速なエクスビボ処理の例示的な実施形態では、全血、TNC、またはPBMCは、固定化された単球結合基質と少なくとも8、7、6、5、4、3、2、または1時間インキュベートされず、単球は、そのようなインキュベーションによって枯渇しない。
【0244】
例示的な実施形態では、本明細書の方法は、そのような細胞を除去するための当該技術分野で既知の方法を使用して、一つ以上の表面分子を発現する細胞の負の選択によって不要な細胞を枯渇させることを含む。例示的な実施形態では、表面分子は、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原であるか、または例えば循環腫瘍細胞など、別手段によりがん細胞上に発現される。一部の実施形態では、表面分子としては、Axl、ROR1、ROR2、Her2(ERBB2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)、がん抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、クロモグラニン、タンパク質メラン-A(Tリンパ球により認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、MAGE-AI、高分子量-メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、胎盤性アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形態(腫瘍M2-PK)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD70、CD99、CD117、CD123、CD138、CD171、GD2(ガングリオシドG2)、EphA2、CSPG4、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、カッパ、ラムダ、5T4、αvβ6インテグリン、インテグリンανβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子)、Ral-B、B7-H3、B7-H6、CAIX、EGFR、EGP2、EGP40、EpCAM、胎児AchR、FRα、GD3、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-DR、IL-11Rα、L-13Rα2、Lewis-Y、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、PRAME、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の六回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、または異常なp53タンパク質、ニューヨーク食道扁平上皮細胞がん腫抗原(NYESO1)、またはPDL-1が挙げられる。さらなる例示的な実施形態では、表面分子は、CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD34、CD38、CD123、BCMA、TACI、またはTIM3などの血液がん抗原である。
【0245】
いくつかの実施形態では、不要な細胞は、全血、PBMC、またはTNCなどの細胞混合物から、ビーズまたはカラムベースの分離によって枯渇し得る。これらの実施形態では、細胞表面分子に対するリガンドまたは抗体は、ビーズまたはカラムに付着している。いくつかの実施形態では、ビーズに付着した抗体は、不要な細胞が除去される方法で使用される、例えば、T細胞および/またはNK細胞によって発現されるCARと同じ抗原に結合し得る。いくつかの実施形態では、ビーズに付着した抗体は、患者において後に発現されるであろうCARと同じ抗原の異なるエピトープに結合し得る。例示的な実施形態では、ビーズに付着した抗体は、CARと同じ抗原の同じエピトープに結合し得る。いくつかの実施形態では、ビーズは、不要な細胞の表面上の抗原に結合する二つ以上の付着抗体を有し得る。いくつかの実施形態では、異なる抗体が付着したビーズは、組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、ビーズは、磁気ビーズであってもよい。いくつかの実施形態では、不要な細胞は、抗体が付着した磁気ビーズと細胞混合物とのインキュベーション後の磁気分離によって枯渇し得る。いくつかの実施形態では、ビーズは、磁気ビーズではない。
【0246】
いくつかの実施形態では、一つ以上の表面分子を発現する不要な細胞は、全血、PBMC、またはTNCなどの細胞混合物から、抗体でコーティングされたビーズによって枯渇し、サイズによって分離される。いくつかの実施形態では、ビーズは、ポリスチレンである。例示的な実施形態では、ビーズは、少なくとも直径約30μm、約35μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、または約80μmである。いくつかの実施形態では、抗体でコーティングされたビーズは、例示的な実施形態では複製能力のない組換えレトロウイルス粒子である組換え核酸ベクターが、細胞混合物とインキュベートされる時間の間、細胞混合物に添加される。これらの実施形態では、以下を含む反応混合物が形成される:(A)全血、濃縮されたTNC、または濃縮されたPBMCなどからの細胞混合物、(B)CARなどの目的の導入遺伝子をコードする、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子などの組換え核酸ベクター、および(C)不要な細胞の表面上に発現される一つ以上の表面分子または抗原に結合する抗体でコーティングされたビーズ。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、もしくは45分未満、または1、2、3、4、5、6、7、または8時間未満の間インキュベートされ得る。いくつかの実施形態では、インキュベーション後、密度勾配遠心分離ベースの細胞濃縮手順を実施して、ペレット化する抗体でコーティングされたビーズに複合体化された不要な細胞が枯渇した、全単核細胞を濃縮することができる。他の実施形態では、反応混合物は、より大きい直径のメッシュのプレフィルターを通過して、抗体でコーティングされたビーズに複合体化された不要な細胞を枯渇させることができる。いくつかの実施形態では、フィルターは、ビーズの直径よりも(約)5μm、(約)10μm、または(約)15μm小さい細孔径を有し得る。他の実施形態では、ビーズは、磁気ビーズであってもよく、プレフィルターは、磁石であってもよい。そのようなフィルターは、ビーズに結合された不要な細胞を捕捉し、所望の細胞が下流を通って、より小さい細孔径を有する白血球除去フィルターアセンブリに流れることを可能にすることができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、不要な細胞は、赤血球抗体ロゼット形成(EA-ロゼット形成)によって、リンパ球および赤血球、例えば全血を含有する細胞混合物から枯渇するか、または除去される。EA-ロゼット形成では、不要な細胞の細胞表面上の抗原に結合する抗体は、細胞混合物とインキュベートされて、不要な細胞を赤血球に架橋し、これは次いで、RosetteSep(商標)キット(Stemcell Technologies)で提供されているような密度勾配遠心分離によって、所望の細胞から分離される。いくつかの実施形態では、EA-ロゼット形成を媒介する抗体は、例示的な実施形態では複製能力のない組換えレトロウイルス粒子である組換え核酸ベクターが、細胞混合物とインキュベートされる時間の間、細胞混合物に添加される。例示的な実施形態では、以下を含む反応混合物が形成される:(A)全血由来のものなど、リンパ球および赤血球の細胞混合物、(B)目的の導入遺伝子、およびさらなる例示的な実施形態ではCARをコードする、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子、(C)不要な細胞の表面上の抗原、例えば、血液がん抗原CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD34、CD38、CD123、BCMA、TACI、またはTIM3などの主要抗原に対する第一の抗体、(D)グリコフォリンAなどの赤血球の表面上の抗原に対する第二の抗体、ならびに(E)第一および第二の抗体を架橋する第三の抗体。さらなる例示的な実施形態では、反応混合物は、不要な細胞の表面上の二つ以上の抗原に対する抗体を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、CARと同じ抗原に結合し得る。いくつかの実施形態では、この反応混合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、もしくは45分未満、または1、2、3、4、5、6、7、または8時間未満の間インキュベートされる。例示的な実施形態では、インキュベーション後、密度勾配遠心分離ベースのPBMC濃縮手順を実施して、赤血球を用いてペレット化するEA-ロゼット形成によって枯渇したか、または除去された集団を引いた総PBMCを単離する。
【0248】
上記のように、操作されたT細胞受容体またはCARをコードする組換え核酸ベクターを用いたがん細胞の遺伝子改変は、製剤化および/または対象への送達前に、正の選択のステップを含むことによるT細胞および/またはNK細胞の濃縮、または本明細書に提供される方法における細胞混合物からの負の選択によるがん細胞の枯渇によって、細胞処理中に最小化され得る。操作されたT細胞受容体構築物またはCAR構築物で遺伝子改変されたがん細胞の潜在的な作用を低減するためのいくつかの追加の方法が、本明細書に開示される。例えば、T細胞特異的プロモーター(本明細書の別の箇所に開示されている)が、CARを発現するために使用され得、CARをコードする外因性核酸を含有する非T細胞が、CARを実際に発現することを防止するのに役立ち得る。したがって、抗原は、シスで発現されるCARによってマスクされず、CAR-T細胞は、CARをコードする外因性核酸を含有する標的細胞に結合し、それを殺傷し得る。さらに操作されたT細胞受容体またはCARを発現するためにT細胞特異的なプロモーターを使用することで、例えばRIRレトロウイルス粒子またはウイルス様粒子などの封入核酸ベクター中の操作されたT細胞受容体またはCARの発現を低下させる、最小化させる、または例示的な実施形態では実質的に消滅させる、さらには消失させるのに役立ち、封入核酸ベクターを作製するために使用された細胞株中の操作されたT細胞受容体またはCARの発現は低下し、少なく、ごくわずかであり、実質的に無く、または無い。例示的な実施形態では、かかる発現は、封入核酸ベクター(例えば、RIR粒子またはウイルス様粒子)の表面で低下し、実質的に消失し、または消失する。
【0249】
CARがん細胞の潜在的な効果を低減するための別の方法は、二つ以上の別個のCAR、および例示的な実施形態では、二つの細胞集団において発現された二つのCARを使用して、エピトープのうちの一つをマスクし得る標的細胞を殺傷することである。血液細胞またはPBMCなどの細胞の集団は、別個に遺伝子改変され、これにより、各集団は、第一のCARまたは第二のCARのいずれかを発現する。例示的な実施形態では、第一または第二のCARを発現する標的細胞は、それぞれ、第二および第一のCARが結合するエピトープをマスクしない。したがって、第一または第二のCARを発現する標的細胞は、それぞれ、第二または第一のCARを発現するエフェクターT細胞またはNK細胞によって殺傷され得る。いくつかの実施形態では、第一および第二のCARは、標的細胞上に発現された同じ抗原の異なるエピトープに結合し得る。他の実施形態では、第一および第二のCARは、本明細書の別の箇所に開示される抗原のいずれかを含む、同じ標的細胞上に発現される異なる抗原に結合し得る。いくつかの実施形態では、第一および第二のCARは、CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD34、CD38、CD123、BCMA、TACI、またはTIM3から選択される異なる抗原の異なるエピトープ、または異なる抗原に結合し得る。さらなる例示的な実施形態では、第一のCARは、CD19に結合し得、第二のCARは、CD22に結合し得、その両方は、B細胞上に発現される。他の実施形態では、CARは、がん抗原の細胞外リガンドであってもよい。例示的な実施形態では、改変された細胞集団は、別個に製剤化される。いくつかの実施形態では、別個の細胞製剤は、体内の異なる部位で対象に導入されるか、または再導入して戻される。いくつかの実施形態では、別個の細胞製剤は、同一部位で対象に別個に導入されるか、または再導入して戻される。他の実施形態では、改変された細胞集団は、任意選択で、同一部位で一緒に対象に導入されるか、または再導入して戻される一つの製剤に組み合わされる。細胞集団が組み合わされる例示的な実施形態では、細胞集団は、細胞が組換え核酸ベクターから洗い流される洗浄ステップの後まで組み合わされない。二つ以上の異なるCARを使用するこの方法によって、その同族エピトープをシスで結合およびマスクする第一または第二のCARを発現するCARがん細胞は、それぞれ、第二または第一のCARを発現するCAR-T細胞によって殺傷される。
【0250】
一部の実施形態では、不要な細胞は枯渇されてもよく、それによって、不要な細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の最大でも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%を構成する。一部の実施形態では、不要な細胞は枯渇されてもよく、それによって、不要な細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の範囲の下限で1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、または40%、および細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の範囲の上限で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の範囲を構成する。一部の実施形態では、不要な細胞は枯渇されてもよく、それによって、不要な細胞は、細胞混合物、細胞製剤または反応混合物中の細胞の10%~90%、20%~90%、30%~90%、40%~90%、40%~80%、45%~75%、1%~14%、2%~14%、3%~14%、4%~14%、5%~14%、5~13%、5%~12%、5%~11%、または5%~10%を構成する。
【0251】
膜結合サイトカイン
本明細書に提供される方法および組成物の態様の一部の実施形態は、膜結合サイトカインを含み、当該サイトカインは典型的には、RIPの外膜もしくは表面と関連付けられ、および/またはその上にあり、または改変された、遺伝子改変された、および/もしくは形質導入されたT細胞ならびに/またはNK細胞、またはそれらの集団の細胞膜上にあり、または膜結合サイトカインをコードするポリヌクレオチドを含み、例示的実施形態ではRIP内にある当該ポリヌクレオチドを含み、例えばRIPもしくはRIP集団のゲノム中、またはT細胞および/もしくはNK細胞またはそれらの集団内に当該ポリヌクレオチドを含む。サイトカインは、常にではないが、典型的には分泌タンパク質である。自然に分泌されるサイトカインは、膜結合する融合タンパク質として操作され得る。膜結合サイトカイン融合ポリペプチドは、本明細書に開示される方法および組成物に含まれ、本発明の一態様でもある。一部の実施形態では、RIPは、その表面上に膜結合サイトカイン融合ポリペプチドを有し、当該ポリペプチドは、T細胞および/またはNK細胞に結合し、その増殖および/または生存を促進することができ、または免疫細胞を惹き寄せる、もしくは保持することができる。かかるRIPは、例えば、対象への投与を目的として本明細書に提供されるRIP製剤において使用することができる。典型的には、膜結合ポリペプチドは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の膜に組み込まれ、細胞が当該複製能力のない組換えレトロウイルス粒子によって形質導入されると、レトロウイルス膜と宿主細胞膜の融合が生じ、例えばサイトカイン融合ポリペプチドなど、形質導入細胞の膜に結合されたポリペプチドが産生される。一部の実施形態では、RIP製剤および/または送達溶液は、RIP表面に関連付けられた膜結合サイトカインを含有する。一部の実施形態では、本明細書に開示される表面に関連付けられた膜結合サイトカインを有するRIPを含むRIP製剤または送達溶液は、その必要のある対象にインビボで投与される。一部の実施形態では、本明細書に開示される表面に関連付けられた膜結合サイトカインを有するRIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞に接触する(直接RIP投与)。一部の実施形態では、本明細書に開示される表面に関連付けられた膜結合サイトカインを有するRIPは、エクスビボでT細胞および/またはNK細胞に接触する。
【0252】
一部の実施形態において、サイトカイン融合ポリペプチドは、IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、IL-2、IL-7、またはIL-15を含まない。
【0253】
一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、T細胞および/もしくはNK細胞の増殖ならびに/または生存を促進することができるサイトカインを含む。一部の実施形態では、T細胞および/もしくはNK細胞の増殖ならびに/または生存を促進することができるサイトカイン融合ポリペプチドは、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。
【0254】
一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、炎症を刺激することができるサイトカインを含む。一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ、GM-CSF、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。
【0255】
一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、走化性サイトカイン(例えば、ケモカイン)を含む。理論に限定されないが、走化性サイトカインは、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NK T細胞、TIL(腫瘍浸潤性T細胞)、MIL(骨髄浸潤性リンパ球)、TINK(腫瘍浸潤性NK細胞)、または樹状細胞)を惹き寄せ、および任意選択的に保持することができる。一部の実施形態では、走化性サイトカインは、C-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、C-Cモチーフを含む走性サイトカインは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。例示的実施形態では、C-Cモチーフを含む走化性サイトカインは、CCL19、CCL21、またはそれらのバリアント、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる、前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、走化性サイトカインは、C-X-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、C-X-Cモチーフを含む走化性サイトカインは、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、またはそれらのバリアント、または前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、走化性サイトカインは、C-X3-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、C-X3-Cモチーフを含む走化性サイトカインは、CX3CL1、またはそのバリアント、または前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。
【0256】
一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。例示的な実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、CCR7、CXCR3、CXCR4、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0257】
一部の実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、CCR1、CC42、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0258】
膜結合サイトカイン融合ポリペプチドは、典型的には、異種シグナル配列および/または異種膜付着配列に融合したサイトカインである。いくつかの実施形態では、異種膜付着配列は、GPIアンカー付着配列である。異種GPIアンカー付着配列は、任意の既知のGPI固定されたタンパク質に由来し得る(Ferguson MAJ,Kinoshita T,Hart GW.Glycosylphosphatidylinositol Anchors.In:Varki A,Cummings RD,Esko JD,et al.,editors.Essentials of Glycobiology.2nd edition.Cold Spring Harbor(NY):Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009.Chapter 11で考察されている)。いくつかの実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、CD14、CD16、CD48、CD55(DAF)、CD59、CD80、およびCD87からのGPIアンカー付着配列である。いくつかの実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、CD16に由来する。例示的な実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、Fc受容体FcγRIIIb(CD16b)に由来する。いくつかの実施形態では、GPIアンカーは、DAFのGPIアンカーである。
【0259】
例示的な実施形態では、膜結合サイトカインは、DAFに融合したサイトカインの融合ポリペプチドである。DAFは、パッケージング細胞から出芽する複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の膜に組み込まれる脂質ラフトに蓄積することが知られている。したがって、理論によって限定されるものではないが、DAF融合タンパク質は、組換えレトロウイルス膜の一部になるパッケージング細胞の膜の部分に優先的に標的化されると考えられている。
【0260】
限定されない例示的な実施形態では、サイトカイン融合ポリペプチドは、DAFに融合したIL-7またはその活性断片である。特定の限定されない例示的な実施形態では、融合サイトカインポリペプチドは、DAFシグナル配列(DAFの残基1~31)、そのシグナル配列を含まないIL-7、およびDAFの残基36~525を順番に含む。
【0261】
一部の実施形態では、膜結合サイトカイン融合ポリペプチドは、切断部位を含む。一部の実施形態では、切断部位は、サイトカインの配列内であってもよい。一部の実施形態では、切断部位は、異種シグナル配列の配列内であってもよい。一部の実施形態では、切断部位は、異種膜結合配列の配列内であってもよい。一部の実施形態では、切断部位は、サイトカインと異種シグナル配列または異種膜結合配列との間にあってもよい。
【0262】
一部の実施形態では、膜結合サイトカイン融合ポリペプチドは、本明細書に別段に開示されるリンカーを含んでもよい。
【0263】
操作されたシグナル伝達ポリペプチド
一部の実施形態では、インビボ(例えば、直接RIP投与の態様および実施形態)またはエクスビボのいずれかで、T細胞および/またはNK細胞に接触するために使用される複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子は、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードする転写単位を一つ以上有するポリヌクレオチドまたは核酸を有する。いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、一つ以上の細胞内活性化ドメイン、任意選択で一つ以上の調節ドメイン(例えば共刺激ドメイン)、および任意選択で一つ以上のT細胞生存モチーフと組み合わせて、細胞外ドメイン(例えば、抗体、抗原特異的標的化領域またはASTR)、ストークおよび膜貫通ドメインの任意の組み合わせを含む。例示的な実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドの少なくとも一つ、二つ、またはすべては、キメラ抗原受容体(CAR)またはキメラリンパ増殖エレメント(CLE)などのリンパ増殖エレメント(LE)である。いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのうちの少なくとも一つ、二つ、またはすべては、操作されたT細胞受容体(TCR)である。いくつかの実施形態では、二つのシグナル伝達ポリペプチドが利用される場合、一方は、リンパ増殖エレメントをコードし、他方は、抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。本明細書に開示される操作されたシグナル伝達ポリペプチドの任意のドメインについて、例示的な配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2019/055946に見られ得る。当業者は、そのような操作されたポリペプチドが組換えポリペプチドとも称され得ることを認識するであろう。本明細書に提供されるCAR、操作されたTCR、LE、およびCLEなどの操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、典型的には、そのようなシグナル伝達ポリペプチドを発現するための、リンパ球、特にT細胞およびNK細胞、とりわけ本明細書に提供される方法および組成物を使用して操作されたT細胞および/またはNK細胞に対する導入遺伝子である。
細胞外ドメイン
【0264】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、特異的結合対のメンバーである細胞外ドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、サイトカイン受容体もしくその変異体、またはホルモン受容体もしくはその変異体の細胞外ドメインであってもよい。いくつかの実施形態におけるそのような変異細胞外ドメインは、少なくともいくつかの細胞タイプにおいて発現される場合、構造的に活性であることが報告されている。例示的な実施形態では、そのような細胞外および膜貫通ドメインは、リガンド結合領域を含まない。そのようなドメインは、操作されたシグナル伝達ポリペプチド中に存在し、かつB細胞、T細胞、および/またはNK細胞中で発現される場合、リガンドに結合しないと考えられている。そのような受容体変異体の変異は、細胞外膜近傍領域で起こり得る。理論によって限定されるものではないが、本明細書に提供される操作されたシグナル伝達ポリペプチドの少なくともいくつかの細胞外ドメイン(およびいくつかの細胞外膜貫通ドメイン)の変異は、通常は一緒ではない活性化鎖を一緒にすることによって、リガンドの非存在下で操作されたシグナル伝達ポリペプチドのシグナル伝達に関与する。細胞外ドメインの変異を含む細胞外ドメインに関するさらなる実施形態は、例えば、本明細書のリンパ増殖エレメントの項に見られ得る。
【0265】
特定の例示的な実施形態では、細胞外ドメインは、二量体化モチーフを含む。例示的な実施形態では、二量体化モチーフは、ロイシンジッパーを含む。いくつかの実施形態では、ロイシンジッパーは、junポリペプチド、例えば、c-junに由来する。二量体化モチーフを含む細胞外ドメインに関するさらなる実施形態は、例えば、本明細書のリンパ増殖エレメントの項に見られ得る。
【0266】
特定の実施形態では、細胞外ドメインは、本明細書では抗原結合ドメインと呼ばれることもある抗原特異的標的化領域(ASTR)である。特異的結合対は、これらに限定されないが、抗原-抗体結合対、リガンド-受容体結合対などを含む。したがって、本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドでの使用に適した特異的結合ペアのメンバーは、、抗体であるASTR、抗原、リガンド、リガンドの受容体結合ドメイン、受容体、受容体のリガンド結合ドメイン、および代替的な非抗体スキャホールド(本明細書において抗体模倣体とも呼称される)を含む。ASTRを含む本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、ASTRは、適切な抗体模倣体であってもよい。一部の実施形態では、抗体模倣体は、アフィボディ(affibody)、アフィリン(afflilin)、アフィマー(affimer)、アフィチン(affitin)、アルファボディ、アルファマブ(alphamab)、アンチカリン(anticalin)、アルマジロリピートタンパク質(armadillo repeat protein)、アトリマー、アビマー(アビディティマルチマーとしても知られている)、C型レクチンドメイン、システイン-ノットミニタンパク質、環状ペプチド、細胞障害性Tリンパ球抗原-4(cytotoxic T-lymphocyte associated protein-4)、DARPin(Designed Ankyrin Repeat Protein)、フィブリノーゲンドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン(FN3ドメイン)(例えば、アドネクチン(adnectin)またはモノボディ)、フィノマー(fynomer)、ノッチン(knottin)、Kunitzドメインペプチド、ロイシンリッチリピートドメイン、リポカリンドメイン、mAb 2もしくはFcab(商標)、ナノボディ、nanoCLAMP、Obody、プロネクチン(Pronectin)、一本鎖TCR、テトラトリコペプチドリピートドメイン、またはV様ドメインであってもよい。ASTRを含む本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、ASTRは、例えばscFvなどの抗体であり、scFvは、抗体の代わりに使用され得る適切な抗体模倣体である。
【0267】
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドでの使用に適したASTRは、任意の抗原結合ポリペプチドであってもよい。特定の実施形態では、ASTRは、完全長抗体、一本鎖抗体、Fab断片、Fab’断片、(Fab’)2断片、Fv断片、および二価一本鎖抗体、またはダイアボディなどの抗体である。
【0268】
いくつかの実施形態では、ASTRは、一本鎖Fv(scFv)である。いくつかの実施形態では、重鎖は、操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける軽鎖のN末端に位置付けられる。他の実施形態では、軽鎖は、操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける重鎖のN末端に位置付けられる。開示された実施形態のいずれにおいても、重鎖および軽鎖は、本明細書でより詳細に考察されるように、リンカーによって分離され得る。開示された実施形態のいずれにおいても、重鎖または軽鎖は、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのN末端にあってもよく、典型的には、シグナル配列またはペプチドなどの別のドメインのC末端である。
【0269】
他の抗体ベースの認識ドメイン(cAb VHH(ラクダ抗体可変ドメイン)およびヒト化バージョン、IgNAR VH(サメ抗体可変ドメイン)およびヒト化バージョン、sdAb VH(単一ドメイン抗体可変ドメイン)および「ラクダ化」抗体可変ドメインは、操作されたシグナル伝達ポリペプチドとともに使用すること、および本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドを使用する方法に適している。いくつかの場合において、T細胞受容体(TCR)ベースの認識ドメインである。
【0270】
自然発生のT細胞受容体には、T細胞のゲノム中の固有の組換え事象によって別個に産生される、α-サブユニットおよびβ-サブユニットが含まれる。TCRのライブラリーは、標的抗原、例えば、本明細書に開示される抗原のいずれかに対するそれらの選択性についてスクリーニングされてもよい。天然のおよび/または操作されたTCRのスクリーニングは、標的抗原に対する高いアビディティおよび/または反応性を有するTCRを特定し得る。そのようなTCRは、選択およびクローン化され得、そのようなTCRをコードするポリヌクレオチドは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子中に含まれて、リンパ球、または例示的な実施形態ではT細胞もしくはNK細胞を遺伝子改変することができ、その結果、リンパ球は、操作されたTCRを発現する。いくつかの実施形態では、TCRは、一本鎖TCR(scTv、VαVβを含有する一本鎖2ドメインTCR)であってもよい。
【0271】
CARを含む本明細書の任意の態様または実施形態の特定の実施形態は、内因性TCRシグナル伝達複合体およびCD3Zシグナル伝達経路を組み入れるように操作された細胞外ドメインを有するCARを含む。一実施形態では、キメラ抗原受容体ASTRは、内因性TCR複合体鎖(例えば、TCRアルファ、CD3Eなど)のうちの一つに融合して、TCR複合体への取り込みおよび内因性CD3Z鎖を介したシグナル伝達を促進する。他の実施形態では、CARは、TCR複合体に結合する第一のscFvまたはタンパク質、および標的抗原(例えば腫瘍抗原)に結合する第二のscFvまたはタンパク質を含有する。別の実施形態では、TCRは、一本鎖TCR(scTv、VαVβを含有する一本鎖2ドメインTCR)であってもよい。最後に、scFvはまた、特定のMHC/ペプチド複合体を認識し、それによって代理TCRとして機能するように生成され得る。そのようなペプチド/MHC scFvバインダーは、CARと同様の多くの構成で使用され得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、ASTRは、多重特異性、例えば二重特異性抗体であってもよい。多重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる部位に対して結合特異性を有する。特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、一方の標的抗原に対するものであり、他方は、別の標的抗原に対するものである。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、標的抗原の二つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、標的抗原を発現する細胞に細胞傷害性剤を局在化させることもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0273】
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチド、または操作されたTCRでの使用に適したASTRは、様々な抗原結合特異性を有し得る。いくつかの場合において、抗原結合ドメインは、標的細胞によって発現される(合成される)抗原中に存在するエピトープに特異的である。一例では、標的細胞は、がん細胞関連抗原である。がん細胞関連抗原は、例えば、乳がん細胞、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞などのB細胞リンパ腫細胞、ホジキンリンパ腫細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、中皮腫、肺がん細胞(例えば、小細胞肺がん細胞)、リンパ腫細胞、非ホジキンリンパ腫(B-NHL)細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、中皮腫細胞、肺がん細胞(例えば、小細胞肺がん細胞)、黒色腫細胞、白血病細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、急性リンパ性白血病(ALL)細胞、神経芽腫細胞、神経膠腫、膠芽腫、髄芽腫、結腸直腸がん細胞などに関連する抗原であってもよい。がん細胞関連抗原はまた、非がん性細胞によって発現され得る。一部の実施形態では、がん細胞は、PDL-1陽性がん細胞である。例示的な実施形態では、がん細胞は、PDL-1陽性DLBCL細胞である。一部の実施形態では、がん細胞は、PDL-1陰性細胞である。例示的な実施形態では、がん細胞は、PDL-1陰性DLBCL細胞である。
【0274】
操作されたシグナル伝達ポリペプチドのASTRが結合することができる、または操作されたT細胞受容体が結合することができる抗原の非限定的な例としては、例えば、ASTRを含む本明細書の態様または実施形態のいずれかにおいて、抗原は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原であってもよい。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、Axl、ROR1、ROR2、Her2(ERBB2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)、がん抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、クロモグラニン、タンパク質メラン-A(Tリンパ球により認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、MAGE-AI、高分子量-メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、胎盤性アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形態(腫瘍M2-PK)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD70、CD99、CD117、CD123、CD138、CD171、GD2(ガングリオシドG2)、EphA2、CSPG4、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、カッパ、ラムダ、5T4、αvβ6インテグリン、インテグリンανβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子)、Ral-B、B7-H3、B7-H6、CAIX、EGFR、EGP2、EGP40、EpCAM、胎児AchR、FRα、GD3、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-DR、IL-11Rα、L-13Rα2、Lewis-Y、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、PRAME、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の六回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、ニューヨーク食道扁平上皮細胞がん腫抗原(NYESO1)、PDL-1などである。
【0275】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した特異的結合対のメンバーは、受容体のリガンドであるASTRである。リガンドは、これらに限定されないが、ホルモン(例えば、エリスロポエチン、成長ホルモン、レプチンなど)、サイトカイン(例えば、インターフェロン、インターロイキン、特定のホルモンなど)、成長因子(例えば、ヘレグリン、血管内皮成長因子(VEGF)など)、インテグリン結合ペプチド(例えば、配列Arg-Gly-Asp(配列番号1)を含むペプチド)などを含む。
【0276】
操作されたシグナル伝達ポリペプチドの特異的結合対のメンバーがリガンドである場合、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、特異的結合対の第二のメンバーの存在下で活性化され得、特異的結合対の第二のメンバーは、リガンドの受容体である。例えば、リガンドがVEGFである場合、特異的結合対の第二のメンバーは、可溶性VEGF受容体を含むVEGF受容体であってもよい。
【0277】
上記のように、いくつかの場合では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドに含まれる特異的結合対のメンバーは、受容体、例えば、リガンドの受容体、補助受容体などであるASTRである。受容体は、受容体のリガンド結合断片であってもよい。好適な受容体には、これらに限定されないが、成長因子受容体(例えばVEGF受容体)、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK、メンバー1(NKG2D)ポリペプチド(MICA、MICB、およびULB6の受容体);サイトカイン受容体(例えば、IL-13受容体、IL-2受容体など)、CD27、天然の細胞傷害性受容体(NCR)(例えば、NKP30(NCR3/CD337)ポリペプチド(HLA-B関連転写物3(BAT3)およびB7-H6の受容体)など)などが含まれる。
【0278】
ASTRを含む本明細書に提供される態様のいずれかの特定の実施形態では、ASTRは、ASTRを標的細胞上に発現される標的分子と連結する中間タンパク質に向けられ得る。中間タンパク質は、内因的に発現または外因的に導入されてもよく、また天然であってもよく、操作されてもよく、または化学的に修飾されてもよい。特定の実施形態では、ASTRは、少なくとも一つのタグ付き中間体、典型的には抗体-タグコンジュゲートが、ASTRによって認識されるタグと、標的細胞上で発現される標的分子、典型的にはタンパク質標的との間に含まれるような抗タグASTRであってもよい。したがって、そのような実施形態では、ASTRはタグに結合し、タグは、がん細胞などの標的細胞上の抗原に向けられた抗体にコンジュゲートされる。タグの限定されない例には、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ストレプトアビジン、ビオチン、ヒスチジン、ジニトロフェノール、ペリジニンクロロフィルタンパク質複合体、緑色蛍光タンパク質、フィコエリトリン(PE)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、パルミトイル化、ニトロシル化、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、およびマルトース結合タンパク質が含まれる。そのため、ASTRは、タグに結合する分子を含む。
ストーク
【0279】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、細胞の外側にあり、ASTRと膜貫通ドメインとの間に介在する操作されたシグナル伝達ポリペプチドの部分に位置するストークを含む。いくつかの実施形態では、ストークは、野生型CD8ストーク領域(TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGG AVHTRGLDFA(配列番号2))に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するか、野生型CD28ストーク領域(FCKIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号3)に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有するか、または野生型免疫グロブリン重鎖ストーク領域に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、99、もしくは100%の同一性を有する。操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおいて、用いられるストークは、抗原特異的標的化領域、および典型的には操作されたシグナル伝達ポリペプチド全体が、標的抗原への増加した結合を保持することを可能にする。
【0280】
ストーク領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有し得る。
【0281】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのストークは、少なくとも一つのシステインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、ストークは、配列Cys-Pro-Pro-Cys(配列番号4)を含み得る。存在する場合、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドのストークのシステインは、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドのストークとジスルフィド結合を形成するために利用可能であり得る。
【0282】
ストークは、当該技術分野で知られている免疫グロブリンヒンジ領域アミノ酸配列を含み得る。例えば、Tan et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:162、およびHuck et al.(1986)Nucl.Acids Res.14:1779を参照されたい。限定されない例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸の一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてに対して少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る:DKTHT(配列番号5)、CPPC(配列番号4)、CPEPKSCDTPPPCPR(配列番号6)(例えば、Glaser et al.(2005)J.Biol.Chem.280:41494を参照されたい)、ELKTPLGDTTHT(配列番号7)、KSCDKTHTCP(配列番号8)、KCCVDCP(配列番号9)、KYGPPCP(配列番号10)、EPKSCDKTHTCPPCP(配列番号11)(ヒトIgGlヒンジ)、ERKCCVECPPCP(配列番号12)(ヒトIgG2ヒンジ)、ELKTPLGDTTHTCPRCP(配列番号13)(ヒトIgG3ヒンジ)、SPNMVPHAHHAQ(配列番号14)(ヒトIgG4ヒンジ)など。ストークは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列を有するヒンジ領域を含み得る。ストークは、野生型(自然発生)ヒンジ領域と比較して、一つ以上のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含み得る。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、ストークが配列EPKSCDKTYTCPPCP(配列番号15)を含むように、Tyrで置換され得る(例えば、Yan et al.(2012)J.Biol.Chem.287:5891を参照されたい)。ストークは、ヒトCD8に由来するアミノ酸配列を含み得る。例えば、ストークは、アミノ酸配列:TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号16)、またはそのバリアントを含み得る。
【0283】
膜貫通ドメイン
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、真核細胞膜に挿入するための膜貫通ドメインを含み得る。膜貫通ドメインは、ASTRと共刺激ドメインの間に介在し得る。膜貫通ドメインは、キメラ抗原受容体がアミノ末端(N末端)からカルボキシル末端(C末端)の順に、ASTR、ストーク、膜貫通ドメイン、および活性化ドメインを含むように、ストークと共刺激ドメインとの間に介在し得る。
【0284】
真核生物(例えば哺乳動物)細胞の細胞膜へのポリペプチドの挿入を提供する任意の膜貫通(TM)ドメインは、本明細書に開示される態様および実施形態での使用に適している。一部の実施形態では、CARを含む本明細書に提供される任意の態様のTMドメインとしては、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14、TNFRSF18、VLA1、またはVLA-6、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する膜貫通ドメインが挙げられる。BAFFR,C3Z,CEACAM1,CD2,CD3A,CD3B,CD3D,CD3E,CD3G,CD3Z,CD4,CD5,CD7,CD8A,CD8B,CD9,CD11A,CD11B,CD11C,CD11D,CD27,CD16,CD18,CD19,CD22,CD28,CD29,CD33,CD37,CD40,CD45,CD49A,CD49D,CD49F,CD64,CD79A,CD79B,CD80,CD84,CD86,CD96(Tactile),CD100(SEMA4D),CD103,C134,CD137,CD154,CD160(BY55),CD162(SELPLG),CD226(DNAM1),CD229(Ly9),CD247,CRLF2,CRTAM,CSF2RA,CSF2RB,CSF3R,EPOR,FCER1G,FCGR2C,FCGRA2,GHR,HVEM(LIGHTR),IA4,ICOS,IFNAR1,IFNAR2,IFNGR1,IFNGR2,IFNLR1,IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL4R,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7RA,IL7RA Ins PPCL,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL12RB2,IL13RA1,IL13RA2,IL15RA,IL17RA,IL17RB,IL17RC,IL17RD,IL17RE,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27RA,IL31RA,ITGA1,ITGA4,ITGA6,ITGAD,ITGAE,ITGAL,ITGAM,ITGAX,ITGB1,ITGB2,ITGB7,KIRDS2,LEPR,LFA-1(CD11a,CD18),LIFR,LTBR,MPL,NKp80(KLRF1),OSMR,PAG/Cbp,PRLR,PSGL1,SLAM(SLAMF1,CD150,IPO-3),SLAMF4(CD244,2B4),SLAMF6(NTB-A,Ly108),SLAMF7,SLAMF8(BLAME),TNFR2,
【0285】
本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかに適したTMドメインの限定されない例は、以下のTMドメインまたは組み合わされたストークおよびTMドメインのいずれかのアミノ酸の一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてに対して少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するドメインを含む:a)CD8アルファTM(配列番号17)、b)CD8ベータTM(配列番号18)、c)CD4ストーク(配列番号19)、d)CD3Z TM(配列番号20)、e)CD28 TM(配列番号21)、f)CD134(OX40)TM:(配列番号22)、g)CD7 TM(配列番号23)、h)CD8ストークおよびTM(配列番号24)、ならびにi)CD28ストークおよびTM(配列番号25)。
【0286】
限定されない例として、本開示の一態様の膜貫通ドメインは、配列番号17の膜貫通ドメインに対して少なくとも80%、90%、もしくは95%の配列同一性を有し得るか、または100%の配列同一性を有し得るか、あるいは以下の遺伝子のそれぞれからの膜貫通ドメインのいずれかに対して100%の配列同一性を有し得る:CD8ベータ膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、CD3ゼータ膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD134膜貫通ドメイン、またはCD7膜貫通ドメイン。
【0287】
細胞内活性化ドメイン
活性化されると、本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した細胞内活性化ドメインは、典型的には、一つ以上のサイトカインの産生を誘導する、細胞死を増加させる、ならびに/またはCD8+ T細胞、CD4+ T細胞、NKT細胞、γδ T細胞、および/もしくは好中球の増殖を増加させる。活性化ドメインは、本明細書では活性化ドメインとも称され得る。活性化ドメインは、CARまたは本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントにおいて使用され得る。
【0288】
いくつかの実施形態では、細胞内活性化ドメインは、以下に記載される少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つなど)のITAMモチーフを含む。一部の実施形態では、本開示の態様の細胞内活性化ドメインは、以下に記載される、CD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCERlG、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、ZAP70、NKp30(B7-H6)、NKG2D、NKp44、NKp46、FcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(FCER1B)、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、およびFcRL5のドメインに対して、少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を有してもよく、または100%の配列同一性を有してもよい。
【0289】
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した細胞内活性化ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。ITAMモチーフは、YX1X2L/Iであり、式中、X1およびX2は、独立して任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドの細胞内活性化ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのITAMモチーフを含む。いくつかの実施形態では、ITAMモチーフは、細胞内活性化ドメインにおいて二回繰り返され、ITAMモチーフの第一および第二のインスタンスは、6~8アミノ酸によって互いに分離され、例えば(YX1X2L/I)(X3)n(YX1X2L/I)であり、式中、nは6~8の整数であり、6~8つのX3の各々は、任意のアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドの細胞内活性化ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
【0290】
好適な細胞内活性化ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来するITAMモチーフ含有部分であってもよい。例えば、好適な細胞内活性化ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質からのITAMモチーフ含有ドメインであってもよい。したがって、好適な細胞内活性化ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。好適なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例としては、CD3Z(CD3ゼータ)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)、CD79B(抗原受容体複合体関連タンパク質ベータ鎖)DAP12、およびFCERlG(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、好適な細胞内活性化ドメインは、以下のITAMモチーフ含有ポリペプチド中のアミノ酸配列における一続きの少なくとも10、15、20アミノ酸、またはすべてのアミノ酸に対して、または以下のITAMモチーフ含有ポリペプチドのいずれかの一続きの約100アミノ酸~約110アミノ酸(aa)、約110aa~約115aa、約115aa~約120aa、約120aa~約130aa、約130aa~約140aa、約140aa~約150aa、もしくは約150aa~約160aaに対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含んでもよい:CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZとしても知られている)、例示的配列MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQL[YNELNLGRREEYDVL]DKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGL[YNELQKDKMAEAYSEI]GMKGERRRGKGHDGL[YQGLSTATKDTYDAL]HMQALPPR(配列番号26),MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQL[YNELNLGRREEYDVL]DKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGL[YNELQKDKMAEAYSEI]GMKGERRRGKGHDGL[YQGLSTATKDTYDAL]HMQALPPR(配列番号27),;RVKFSRSADAPAYQQGQNQL[YNELNLGRREEYDVL]DKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGL[YNELQKDKMAEAYSEI]GMKGERRRGKGHDGL[YQGLSTATKDTYDAL]HMQALPPR(配列番号28),RVKFSRSADAPAYQQGQNQL[YNELNLGRREEYDVL]DKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGL[YNELQKDKMAEAYSEI]GMKGERRRGKGHDGL[YQGLSTATKDTYDAL]HMQALPPR(配列番号29),NQL[YNELNLGRREEYDVL]DKR 配列番号30);EGL[YNELQKDKMAEAYSEI]GMK(配列番号31)およびDGL[YQGLSTATKDTYDAL]HMQ(配列番号32)を含む;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても知られている)with exemplary sequences:MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRMCQSCVELDPATVAGIIVTDVIATLLLALGVFCFAGHETGRLSGAADTQALLRNDQV[YQPLRDRDDAQYSHL]GGNWARNK(配列番号33),MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRTADTQALLRNDQV[YQPLRDRDDAQYSHL]GGNWARNK(配列番号34)およびDQV[YQPLRDRDDAQYSHL]GGN(配列番号35);T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても知られている)、以下の例示的配列を含む:MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPD[YEPIRKGQRDLYSGL]NQRRI(配列番号36)およびNPD[YEPIRKGQRDLYSGL]NQR(配列番号37);T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても知られている)、例示的配列:MEQGKGLAVLILAIILLQGTLAQSIKGNHLVKVYDYQEDGSVLLTCDAEAKNITWFKDGKMIGFLTEDKKKWNLGSNAKDPRGMYQCKGSQNKSKPLQVYYRMCQNCIELNAATISGFLFAEIVSIFVLAVGVYFIAGQDGVRQSRASDKQTLLPNDQL[YQPLKDREDDQYSHL]QGNQLRRN(配列番号38)およびDQL[YQPLKDREDDQYSHL]QGN(配列番号39)を含む;CD79A(B細胞抗原受容体複合体-関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン-関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;Ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン-関連タンパク質;表面IgM-関連タンパク質などとしても知られている)、以下の例示的配列を含む:MPGGPGVLQALPATIFLLFLLSAVYLGPGCQALWMHKVPASLMVSLGEDAHFQCPHNSSNNANVTWWRVLHGNYTWPPEFLGPGEDPNGTLIIQNVNKSHGGIYVCRVQEGNESYQQSCGTYLRVRQPPPRPFLDMGEGTKNRIITAEGIILLFCAVVPGTLLLFRKRWQNEKLGLDAGDEYEDENL[YEGLNLDDCSMYEDI]SRGLQGTYQDVGSLNIGDVQLEKP(配列番号40)、MPGGPGVLQALPATIFLLFLLSAVYLGPGCQALWMHKVPASLMVSLGEDAHFQCPHNSSNNANVTWWRVLHGNYTWPPEFLGPGEDPNEPPPRPFLDMGEGTKNRIITAEGIILLFCAVVPGTLLLFRKRWQNEKLGLDAGDEYEDENL[YEGLNLDDCSMYEDI]SRGLQGTYQDVGSLNIGDVQLEKP(配列番号41)、およびENL[YEGLNLDDCSMYEDI]SRG(配列番号42);CD79B、以下の例示的配列を含む:LDKDDSKAGMEEDHT[YEGLDIDQTATYEDI]VTLRTGEVKWSVGEHPGQE(配列番号211);DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX-活性化タンパク質12;KAR-関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ-結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質;キラー活性化受容体-関連タンパク質などとしても知られている)、以下の例示的配列を含む:MGGLEPCSRLLLLPLLLAVSGLRPVQAQAQSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAVYFLGRLVPRGRGAAEAATRKQRITETESP[YQELQGQRSDVYSDL]NTQRPYYK(配列番号43),MGGLEPCSRLLLLPLLLAVSGLRPVQAQAQSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAVYFLGRLVPRGRGAAEATRKQRITETESP[YQELQGQRSDVYSDL]NTQ(配列番号44),MGGLEPCSRLLLLPLLLAVSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAVYFLGRLVPRGRGAAEAATRKQRITETESP[YQELQGQRSDVYSDL]NTQRPYYK(配列番号45),MGGLEPCSRLLLLPLLLAVSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAVYFLGRLVPRGRGAAEATRKQRITETESP[YQELQGQRSDVYSDL]NTQRPYYK(配列番号46)、およびESP[YQELQGQRSDVYSDL]NTQ(配列番号47);ならびにFCERlG(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fc-イプシロン RIガンマ;fcRガンマ;fceRIガンマ;高アフィニティ免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体、高アフィニティ、ガンマ鎖などとしても知られている)、以下の例示的配列を含む:MIPAVVLLLLLLVEQAAALGEPQLCYILDAILFLYGIVLTLLYCRLKIQVRKAAITSYEKSDGV[YTGLSTRNQETYETL]KHEKPPQ(配列番号48)およびDGV[YTGLSTRNQETYETL]KHE(配列番号49)、式中、ITAMモチーフは角括弧中に記載されている。
【0291】
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した細胞内活性化ドメインは、DAP10/CD28タイプのシグナル伝達鎖を含む。DAP10シグナル伝達鎖の例は、アミノ酸配列番号50である。いくつかの実施形態では、好適な細胞内活性化ドメインは、配列番号50における一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてのアミノ酸に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含む。
【0292】
CD28シグナル伝達鎖の例は、配列番号51のアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、好適な細胞内ドメインは、配列番号51の一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてのアミノ酸に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含む。
【0293】
本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した細胞内活性化ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。例えば、好適な細胞内活性化ドメインは、以下の配列における一続きの少なくとも10、15、20、もしくはすべてのアミノ酸に対して、または配列番号52の連続した一続きの約300アミノ酸~約400アミノ酸、約400アミノ酸~約500アミノ酸、もしくは約500アミノ酸~619アミノ酸に対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る。
調節ドメイン
【0294】
調節ドメインは、活性化ドメインの下流効果を強化もしくは減弱すること、または応答の性質を変化させることを含めて、操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける細胞内活性化ドメインの効果を変化させ得る。本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した調節ドメインは、共刺激ドメインを含む。操作されたシグナル伝達ポリペプチドに含むのに適した調節ドメインは、約30アミノ酸~約70アミノ酸(aa)の長さを有し得、例えば、調節ドメインは、約30aa~約35aa、約35aa~約40aa、約40aa~約45aa、約45aa~約50aa、約50aa~約55aa、約55aa~約60aa、約60aa~約65aa、または約65aa~約70aaの長さを有し得る。他の場合において、調節ドメインは、約70aa~約100aa、約100aa~約200aa、または200aaを超える長さを有し得る。
【0295】
共刺激ドメインは、典型的には、活性化ドメインへの応答の性質を強化する、および/または変化させる。本開示の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した共刺激ドメインは、一般に、受容体に由来するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、ホモ二量体化する。対象の共刺激ドメインは、膜貫通タンパク質の細胞内部分であってもよい(すなわち、共刺激ドメインは、膜貫通タンパク質に由来し得る)。一部の実施形態では、本明細書に提供されるCARのいずれも、共刺激ドメインを含み得る。一部の実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB(CD137)、B7-H3、B7-HCDR3、BAFFR、BTLA、C100(SEMA4D)、CD2、CD4、CD7、CD8A、CD8B、CD11A、CD11B、CD11C、CD11D、CD18、CD19、CD27、CD28、Lck結合を欠損したCD28(ICΔ)、CD29、CD30、CD40、CD49A、CD49D、CD49F、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CD103、CD160(BY55)、CD162(SELPLG)、CD226(DNAM1)、CD229(Ly9)、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、CEACAM1、CRLF2、CRTAM、CSF2RA、CSF2RB、CSF3R、EPOR、Fc受容体ガンマ鎖、Fc受容体ε鎖、FCGRA2,GADS,GHR,GITR,HVEM,IA4,ICAM-1,ICOS,IFNAR1,IFNAR2,IFNGR1,IFNGR2,IFNLR1,IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL4R,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7RA,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL12RB2,IL13RA1,IL13RA2,IL15RA,IL17RA,IL17RB,IL17RC,IL17RD,IL17RE,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27RA,IL31RA,ITGA4,ITGA6,ITGAD,ITGAE,ITGAL,ITGAM,ITGAX,ITGB1,ITGB2,ITGB7,LAT,LEPR,LFA-1(CD11a/CD18),LIGHT,LIFR,LMP1,LTBR,MPL,MYD88,NKG2C,NKP80(KLRF1),OSMR,OX40,PD-1,PRLR,PSGL1,PAG/Cbp,SLAM(SLAMF1,CD150,IPO-3),SLAMF4(C244,2B4),SLAMF6(NTB-A,Ly108),SLAMF7,SLAMF8(BLAME),SLP-76,TILR2,TILR4,TILR7,TILR9,TNFR2,TNFRSF4,TNFRSF8,TNFRSF9,TNFRSF14,TNFRSF18,TRANCE/RANKL,VLA1,もしくはVLA-6、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片の一続きの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸、または細胞内ドメインに対し、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る。
【0296】
操作されたシグナル伝達ポリペプチドに含むのに適した共刺激ドメインは、約30アミノ酸~約70アミノ酸(aa)の長さを有し得、例えば、共刺激ドメインは、約30aa~約35aa、約35aa~約40aa、約40aa~約45aa、約45aa~約50aa、約50aa~約55aa、約55aa~約60aa、約60aa~約65aa、または約65aa~約70aaの長さを有し得る。他の場合において、共刺激ドメインは、約70aa~約100aa、約100aa~約200aa、または200aaを超える長さを有し得る。
【0297】
一部の実施形態では、共刺激ドメインは、以下の細胞内部分の一続きの少なくとも10、15、20アミノ酸またはすべてのアミノ酸に対し、または約30aa~約35aa、約35aa~約40aa、約40aa~約45aa、約45aa~約50aa、約50aa~約55aa、約55aa~約60aa、約60aa~約65aa、または約65aa~約70aa、約70aa~約75aa、約75aa~約80aa、約80aa~約85aa、約85aa~約90aa、約90aa~約95aa、約95aa~約100aa、約100アミノ酸~約110アミノ酸(aa)、約110aa~約115aa、約115aa~約120aa、約120aa~約130aa、約130aa~約140aa、約140aa~約150aa、約150aa~約160aa、または約160aa~約185aa当該タンパク質の細胞内部分の長さに依存する)に対し、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る:CD137(TNFRSF9;CD137;4-1BB;CDwl37;ILAなどとしても知られている)、例えば、配列番号53、CD28(Tp44としても知られている)、例えば、配列番号54、Lck結合を欠損したCD28(ICΔ)、例えば、配列番号55、ICOS(AILIM、CD278、およびCVIDlとしても知られている)、例えば、配列番号56、OX40(TNFRSF4、RP5-902P8.3、ACT35、CD134、OX-40、TXGPlLとしても知られている)、例えば、配列番号57、CD27(S152、T14、TNFRSF7、およびTp55としても知られている)、例えば、配列番号58、BTLA(BTLAlおよびCD272としても知られている)、例えば、配列番号59、CD30(TNFRSF8、DlS166E、およびKi-1としても知られている)、例えば、配列番号60、GITR(TNFRSF18、RP5-902P8.2、AITR、CD357、およびGITR-Dとしても知られている)、例えば、配列番号61、またはHVEM(TNFRSF14、RP3-395M20.6、ATAR、CD270、HVEA、HVEM、LIGHTR、およびTR2としても知られている)、例えば、配列番号62。OX40は、残基34~57にp85 PI3K結合モチーフおよび残基76~102にTRAF結合モチーフを含有し、各々、(表1の)配列番号296のものである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、OX40のp85 PI3K結合モチーフを含み得る。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、OX40のTRAF結合モチーフを含み得る。配列番号296のアミノ酸17および41に対応するリジンは、ユビキチン標的化モチーフの一部として機能する潜在的に負の調節部位である。いくつかの実施形態では、OX40の共刺激ドメインにおけるこれらのリジンの一方または両方が、変異したアルギニンまたは別のアミノ酸である。
リンカー
【0298】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、任意の二つの隣接するドメイン間にリンカーを含む。例えば、リンカーは、膜貫通ドメインと第一の共刺激ドメインとの間にあってもよい。別の例として、ASTRは、抗体であってもよく、リンカーは、重鎖と軽鎖との間にあってもよい。別の例として、リンカーは、ASTRと膜貫通ドメインと共刺激ドメインとの間にあってもよい。別の例として、リンカーは、第二のポリペプチドの共刺激ドメインと細胞内活性化ドメインとの間にあってもよい。別の例として、リンカーは、ASTRと細胞内シグナル伝達ドメインとの間にあってもよい。
【0299】
リンカーペプチドは、様々なアミノ酸配列のいずれかを有し得る。タンパク質は、一般に柔軟な性質のスペーサーペプチドによって結合され得るが、他の化学的結合は除外されない。リンカーは、長さが約1~約100アミノ酸、または長さが約1~約25アミノ酸のペプチドであってもよい。これらのリンカーは、合成のリンカーをコードするオリゴヌクレオチドを使用してタンパク質を結合することによって産生され得る。ある程度の柔軟性を備えたペプチドリンカーが使用され得る。連結ペプチドは、好適なリンカーが一般に柔軟なペプチドをもたらす配列を有することを考慮して、事実上任意のアミノ酸配列を有し得る。グリシンおよびアラニンなどの小さいアミノ酸の使用は、柔軟なペプチドの形成に役立つ。そのような配列の形成は、当業者にとって日常的である。
【0300】
好適なリンカーは容易に選択され得、1アミノ酸(例えばGly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸などの好適な異なる長さのいずれかであってもよく、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸であってもよい。
【0301】
例示的な柔軟なリンカーは、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n、(GGS)n、(GGGS)n、および(GGGGS)nを含み、nは、少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当該技術分野で既知の他の柔軟なリンカーを含む。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、これらのアミノ酸が両方とも比較的構造化されておらず、したがって成分間の中性テザーとして機能し得るため、興味深い。グリシンは、アラニンよりもはるかに多くのファイ-プサイ空間にアクセスし、かつより長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ないため、グリシンポリマーは、特に興味深い(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照されたい)。例示的な柔軟性のあるリンカーとしては限定されないが、GGGGSGGGGS(配列番号674)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号63)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号372)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号675)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号64)、GGSSRSS(配列番号673)、GGGGSGGGSGGGGS(配列番号65)、GGSG(配列番号66)、GGSGG(配列番号67)、GSGSG(配列番号68)、GSGGG(配列番号69)、GGGSG(配列番号70)、GSSSG(配列番号71)などが挙げられる。当業者は、上記の任意の要素にコンジュゲートされたペプチドの設計が、すべてまたは部分的に柔軟であるリンカーを含み得、その結果、リンカーが、柔軟なリンカー、ならびにあまり柔軟ではない構造を与える一つ以上の部分を含み得ることを認識するであろう。
組み合わせ
【0302】
いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子によって提供されるポリヌクレオチドは、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの特定の組み合わせをコードする一つ以上の転写単位を有する。本明細書に提供されるいくつかの方法および組成物において、改変、および例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子によるT細胞の形質導入後、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの組み合わせを含む。第一のポリペプチド、第二のポリペプチド、第三のポリペプチドなどの参照は、便宜上のものであり、「第一のポリペプチド」上の要素および「第二のポリペプチド」上の要素は、要素が、典型的にはその特定のポリペプチドに対するさらなる要素またはステップにおいて、参照および慣例としてのみ第一または第二と称される異なるポリペプチド上にあることを意味することが理解されるであろう。
【0303】
いくつかの実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、抗原に結合することができる細胞外抗原結合ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。他の実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドはまた、T細胞生存モチーフおよび/または膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、共刺激ドメインを含まないが、他の実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、共刺激ドメインを含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、リンパ増殖性遺伝子産物および任意選択で細胞外抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドはまた、T細胞生存モチーフ、細胞内シグナル伝達ドメイン、および一つ以上の共刺激ドメインのうちの一つ以上を含む。他の実施形態では、二つの操作されたシグナル伝達ポリペプチドが使用される場合、少なくとも一つはCARである。
【0305】
一実施形態では、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、T細胞特異的プロモーターまたは同じ転写物の下の一般的なプロモーターの下で発現され、転写物において、操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードする核酸は、一つ以上の内部リボソーム侵入部位(IRE)または一つ以上のプロテアーゼ開裂ペプチドをコードする核酸によって分離される。
【0306】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、二つの操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードし、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、第一の抗原に結合することができる第一の細胞外抗原結合ドメイン、および共刺激ドメインではなく第一の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第二のポリペプチドは、VEGFに結合することができる第二の細胞外抗原結合ドメイン、および例えば共刺激分子のシグナル伝達ドメインなどの第二の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、第一の抗原は、PSCA、PSMA、またはBCMAである。特定の実施形態では、第一の細胞外抗原結合ドメインは、抗体またはその断片(例えばscFv)、例えば、PSCA、PSMA、またはBCMAに特異的な抗体またはその断片を含む。特定の実施形態では、VEGFに結合する第二の細胞外抗原結合ドメインは、VEGFの受容体、すなわちVEGFRである。特定の実施形態では、VEGFRは、VEGFR1、VEGFR2、またはVEGFR3である。特定の実施形態では、VEGFRは、VEGFR2である。
【0307】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、二つの操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードし、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、細胞外腫瘍抗原結合ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、抗原結合ドメイン(抗原は、血管新生または血管原性因子である)および一つ以上の共刺激分子シグナル伝達ドメインを含む。血管新生因子は、例えば、VEGFであってもよい。一つ以上の共刺激分子シグナル伝達モチーフは、例えば、CD27、CD28、OX40、ICOS、および4-1BBの各々からの共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0308】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、二つの操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードし、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、細胞外腫瘍抗原結合ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、第二のポリペプチドは、VEGFに結合することができる抗原結合ドメイン、ならびにCD27、CD28、OX40、ICOS、および4-1BBの各々からの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。さらなる実施形態では、第一のシグナル伝達ポリペプチドまたは第二のシグナル伝達ポリペプチドはまた、T細胞生存モチーフを有する。いくつかの実施形態では、T細胞生存モチーフは、IL-7受容体(IL-7R)の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-12受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-15受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、IL-21受容体の細胞内シグナル伝達ドメイン、または形質転換成長因子β(TGFβ)受容体もしくはTGFβデコイ受容体(TGF-β-ドミナントネガティブ受容体II(DNRII))の細胞内シグナル伝達ドメインであるか、またはそれに由来する。
【0309】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、二つの操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードし、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、細胞外腫瘍抗原結合ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを含み、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、VEGFに結合することができる抗原結合ドメイン、IL-7受容体細胞内T細胞生存モチーフ、ならびにCD27、CD28、OX40、ICOS、および4-1BBの各々からの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0310】
いくつかの実施形態では、三つ以上のシグナル伝達ポリペプチドが、ポリヌクレオチドによってコードされる。特定の実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのうちの一つのみが、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に結合する抗原結合ドメインを含み、操作されたシグナル伝達ポリペプチドの残りの各々は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原ではない抗原に結合する抗原結合ドメインを含む。他の実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのうちの二つ以上は、一つ以上の腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に結合する抗原結合ドメインを含み、操作されたシグナル伝達ポリペプチドのうちの少なくとも一つは、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原に結合しない抗原結合ドメインを含む。
【0311】
ASTRを含む本明細書の態様または実施形態のいずれかにおいて、抗原は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原であってもよい。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、Axl、ROR1、ROR2、Her2(ERBB2)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、B細胞成熟抗原(BCMA)、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)、がん抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、クロモグラニン、タンパク質メラン-A(Tリンパ球により認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、MAGE-AI、高分子量-メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、胎盤性アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼイソ酵素タイプM2の二量体形態(腫瘍M2-PK)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD40、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD45、CD70、CD99、CD117、CD123、CD138、CD171、GD2(ガングリオシドG2)、EphA2、CSPG4、FAP(線維芽細胞活性化タンパク質)、カッパ、ラムダ、5T4、αvβ6インテグリン、インテグリンανβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルスがん遺伝子)、Ral-B、B7-H3、B7-H6、CAIX、EGFR、EGP2、EGP40、EpCAM、胎児AchR、FRα、GD3、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、HLA-DR、IL-11Rα、L-13Rα2、Lewis-Y、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、PRAME、サバイビン、TAG72、TEMs、VEGFR2、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の六回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、ニューヨーク食道扁平上皮細胞がん腫抗原(NYESO1)、またはPDL-1である。
【0312】
いくつかの実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、第一の抗原に結合する第一の細胞外抗原結合ドメイン、および第一の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、第二の抗原に結合する第二の細胞外抗原結合ドメイン、または第二の抗原に結合する受容体、および第二の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、共刺激ドメインを含まない。特定の実施形態では、第一の抗原結合ドメインおよび第二の抗原結合ドメインは、独立して、受容体の抗原結合部分または抗体の抗原結合部分である。特定の実施形態では、第一の抗原結合ドメインまたは第二の抗原結合ドメインのいずれかまたは両方が、scFv抗体断片である。特定の実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドおよび/または第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、膜貫通ドメインをさらに含む。特定の実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドまたは第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、T細胞生存モチーフ、例えば本明細書に記載されるT細胞生存モチーフのいずれかを含む。
【0313】
別の実施形態では、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、HER2に結合する第一の細胞外抗原結合ドメインを含み、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、MUC-1に結合する第二の細胞外抗原結合ドメインを含む。
【0314】
別の実施形態では、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの第二の細胞外抗原結合ドメインは、インターロイキンに結合する。
【0315】
別の実施形態では、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの第二の細胞外抗原結合ドメインは、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP;アラーミンとしても知られる)に結合する。他の実施形態では、DAMPは、熱ショックタンパク質、クロマチン関連タンパク質高移動度グループボックス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、またはカルグラニュリンAとしても知られる)、S100A9(MRP14、またはカルグラニュリンBとしても知られる)、血清アミロイドA(SAA)、デオキシリボ核酸、アデノシン三リン酸、尿酸、またはヘパラン硫酸である。
【0316】
特定の実施形態では、当該第二の抗原は、腫瘍細胞によって提示される抗原に結合する抗体上の抗原である。
【0317】
いくつかの実施形態では、第二の操作されたシグナル伝達ポリペプチドを介したシグナル伝達活性化は、非抗原性であるが、低酸素症に関連している。特定の実施形態では、低酸素症は、低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)、HIF-1β、HIF-2α、HIF-2β、HIF-3α、またはHIF-3βの活性化によって誘導される。
【0318】
いくつかの実施形態では、例えば、皮下注射によって導入または再導入されるリンパ球を改変、遺伝子改変、および/または形質導入するために、一つ以上の操作されたシグナル伝達ポリペプチドの発現は、制御要素によって調節され、これは、本明細書により詳細に開示されている。
【0319】
追加の配列
CARなどの操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、一つ以上の追加のポリペプチドドメインをさらに含み得、そのようなドメインは、これらに限定されないが、シグナル配列;エピトープタグ;親和性ドメイン;および、例えば抗体アッセイによって、またはそれが検出可能なシグナルを発生させるポリペプチドであるために、その存在または活性が検出され得るポリペプチド(検出可能なマーカー)を含む。本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかの追加のドメインの限定されない例には、下に記載される以下の配列のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインが含まれる:シグナル配列、エピトープタグ、親和性ドメイン、または検出可能なシグナルを発生させるポリペプチド。
【0320】
対象のCARにおける、例えば、対象のCARの第一のポリペプチドにおける使用に適したシグナル配列は、自然発生シグナル配列、合成(例えば人工)シグナル配列などを含む、任意の真核生物シグナル配列を含む。いくつかの実施形態では、例えば、シグナル配列は、CD8シグナル配列MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号72)であってもよい。
【0321】
好適なエピトープタグは、これらに限定されないが、血球凝集素(HA;例えばYPYDVPDYA;配列番号73)、FLAG(例えばDYKDDDDK;配列番号74)、c-myc(例えばEQKLISEEDL;配列番号75)などを含む。
【0322】
親和性ドメインは、例えば、固体支持体上に固定化されたものなど、結合パートナーと相互作用することができ、特定または精製に有用なペプチド配列を含む。ヒスチジンなどの複数の連続する単一アミノ酸をコードするDNA配列は、発現されたタンパク質に融合すると、ニッケルセファロースなどの樹脂カラムに高親和性で結合することによって、組換えタンパク質のワンステップ精製に使用され得る。例示的な親和性ドメインは、His5(HHHHH;配列番号76)、HisX6(HHHHHH;配列番号77)、c-myc(EQKLISEEDL;配列番号75)、Flag(DYKDDDDK;配列番号74)、Strep Tag(WSHPQFEK;配列番号78)、血球凝集素、例えばHA Tag(YPYDVPDYA;配列番号73)、GST、チオレドキシン、セルロース結合ドメイン、RYIRS(配列番号79)、Phe-His-His-Thr(配列番号80)、キチン結合ドメイン、S-ペプチド、T7ペプチド、SH2ドメイン、C末端RNAタグ、WEAAAREACCRECCARA(配列番号81)、金属結合ドメイン、例えば亜鉛結合ドメイン、またはカルシウム結合タンパク質からのものなどのカルシウム結合ドメイン、例えばカルモジュリン、トロポニンC、カルシニューリンB、ミオシン軽鎖、リカバリン、S-モジュリン、ビシニン、VILIP、ニューロカルシン、ヒポカルシン、フレケニン、カルトラクチン、カルパイン大サブユニット、S100タンパク質、パルブアルブミン、カルビンジンD9K、カルビンジンD28K、およびカルレチニン、インテイン、ビオチン、ストレプトアビジン、MyoD、Id、ロイシンジッパー配列、ならびにマルトース結合タンパク質を含む。
【0323】
好適な検出可能なシグナル発生タンパク質は、例えば、蛍光タンパク質;生成物として検出可能なシグナルを発生させる反応を触媒する酵素などを含む。
【0324】
好適な蛍光タンパク質は、これらに限定されないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはそのバリアント、GFPの青色蛍光バリアント(BFP)、GFPのシアン蛍光バリアント(CFP)、GFPの黄色蛍光バリアント(YFP)、強化GFP(EGFP)、強化CFP(ECFP)、強化YFP(EYFP)、GFPS65T、Emerald、Topaz(TYFP)、Venus、Citrine、mCitrine、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、mCfPm、Cerulean、T-Sapphire、CyPet、YPet、mKO、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、DsRed-モノマー、J-Red、ダイマー2、t-ダイマー2(12)、mRFPl、ポシロポリン、Renilla GFP、Monster GFP、paGFP、Kaedeタンパク質およびキンドリングタンパク質、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、およびアロフィコシアニンを含むフィコビリタンパク質およびフィコビリタンパク質コンジュゲートを含む。蛍光タンパク質の他の例には、mHoneydew、mBanana、mOrange、dTomato、tdTomato、mTangerine、mStrawberry、mCherry、mGrapel、mRaspberry、mGrape2、mPlum(Shaner et al.(2005)Nat.Methods 2:905-909)などが含まれる。例えば、Matz et al.(1999)Nature Biotechnol.17:969-973に記載されるように、Anthozoan種からの様々な蛍光および着色タンパク質のいずれかが、使用に適している。
【0325】
好適な酵素は、これらに限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ-ガラクトシダーゼ(GAL)、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ベータ-N-アセチルグルコサミニダーゼ、β-グルクロニダーゼ、インベルターゼ、キサンチンオキシダーゼ、ホタルルシフェラーゼ、グルコースオキシダーゼ(GO)などを含む。
【0326】
安全スイッチ(認識および/または排除ドメイン)
有害事象の場合に注入された細胞の低減または排除に影響を与えるために、細胞療法で使用するための安全スイッチが開発されてきた。例えば膜結合サイトカインを含むものを含む、本明細書に提供される組み換えウイルスベクター(例えば、RIP)のいずれかは、本明細書に提供される操作されたシグナル伝達ポリペプチドのいずれかをコードする核酸の一部として、または当該核酸とは別に、安全スイッチをコードする核酸を含む。したがって、対象に直接送達されるRIPのいずれかは、例えば、抗イディオタイプ安全スイッチを含む安全スイッチをコードする核酸を含み得る。本明細書に提供される操作されたシグナル伝達ポリペプチド、例えば、対象に導入される、もしくは再導入される改変された、遺伝子改変された、および/または形質導入されたリンパ球中の操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、安全スイッチを含み得る。したがって本明細書に開示される操作されたT細胞のいずれかは、安全スイッチを含み得る。
【0327】
安全スイッチ技術は、その作用メカニズム、抗体介在性または抗体模倣体介在性の細胞障害性、アポトーシス促進性シグナル伝達、および代謝(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法、GDEPT)に依存して三つのグループに広くカテゴライズされ得る。過去に開示された安全スイッチには、短縮型チロシンキナーゼ受容体である細胞表面分子が含まれる。これらの例の一部では、短縮型チロシンキナーゼ受容体は、例えば、米国特許第8,802,374号またはWO2018/226897に開示されるように、上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリー(例えば、ErbB1(HER1)、ErbB2、ErbB3、およびErbB4)のメンバーである。したがってこれら過去の安全スイッチの一部は、抗体によって認識されるポリペプチドであり、当該抗体は、EGFRメンバーの細胞外ドメインを認識する。例えば、配列番号82は、EGFRメンバーの細胞外ドメインを認識する抗体によって認識され、かつ適切な条件下でそれによって結合される例示的なポリペプチドである。そのような切断されたEGFRポリペプチドは、本明細書ではeTagと称されることがある。例示的な実施形態では、eTagは、マツズマブ、ネシツムマブ、パニツムマブ、および例示的な実施形態ではセツキシマブなどの市販されているモノクローナル抗体によって認識される。例えば、eTAGは、Erbitux(登録商標)介在性の抗体依存性細胞傷害(ADCC)経路を介した細胞殺傷性を有することが実証されている。本開示の発明者らは、レンチウイルスベクターを使用してPBMC中でeTagを発現させることに成功し、セツキシマブに暴露されたPBMCによりeTagをインビトロ発現させることによって、効果的なPBMCの排除機構が得られたことが見出された。eTagは、本開示の一部の実施形態において使用され得るが、そのような実施形態において典型的には抗イディオタイプ細胞外ドメインも同様に存在する。
【0328】
一部の実施形態では、細胞外認識ドメイン(すなわち、細胞タグ)は、それ自体が抗体であり、本明細書に開示されるように、所定の結合パートナー抗体(例えば、標的抗体)に結合する機能性抗体断片を含む。例示的な実施形態では、細胞タグ抗体は、標的抗体に特異的であり、例えば、抗体定常領域と排他的には結合せず、または一部の実施形態では全く結合せず、または例示的実施形態では、標的抗体(Ab1)と細胞タグ(細胞外認識ドメイン)(Ab2)の結合に相互作用しない限り、結合しない。例示的な実施形態では、細胞タグ抗体(すなわち、抗体の可変領域を含む細胞外認識ドメイン)は、抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体である。一部の実施形態では、抗イディオタイプ抗体(Ab2)は、所定の結合パートナー抗体(すなわち標的抗体)(Ab1)上のエピトープを認識し、当該エピトープは、Ab1上の抗原結合部位とは異なる。例示的な実施形態では、Ab2は、Ab1の可変領域に結合する。他の例示的な実施形態では、Ab2は、Ab1の抗原結合部位に結合し、例示的な実施形態では、Ab1の抗原結合部位への結合に関し、Ab1と競合する。特定の実施形態では、Ab2は、ヒトおよびマウスを含む任意の動物に由来してもよく、またはヒト化抗体もしくはキメラ抗体、または本明細書の「抗体」の定義内に含まれる、例えば、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ダイアボディ、二特異性抗体、および抗体融合タンパク質を含む抗体誘導体に由来してもよい。Ab2は、典型的には、膜関連ドメインを介して、膜に関連付けられる。特定の実施形態では、Ab2は、その内因性膜貫通ドメインを介して細胞表面と関連付けられている。他の実施形態では、Ab2は、GPIなどの異種膜貫通ドメインまたは膜付着配列を介して細胞表面と関連付けられている。いくつかの実施形態では、Ab1は、市販のモノクローナル抗体である。例示的な実施形態では、Ab1は、市販のモノクローナル抗体治療薬である。さらなる例示的な実施形態では、Ab1は、以下に記載されるADCCおよび/またはCDCを媒介することができる。細胞株上に提示された抗イディオタイプ抗体、ならびにADCCおよびCDCを媒介する同族モノクローナル抗体Ab2抗体を含む結合パートナーの一例(およびその作製方法)は、WO2013/188864に提供されている。
【0329】
いくつかの実施形態では、安全スイッチはまた、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞が操作されたと標識またはマークするフラグとして機能し得る。そのような安全スイッチは、PCR、サザンブロット、RT-PCR、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、組織学、およびフローサイトメトリーを含む標準的な実験室技術を使用して検出され得る。例えば、フローサイトメトリーによるeTAGの検出は、マウスにおけるT細胞生着に関するインビボ追跡マーカーとして、本発明者らの少なくとも一人により使用された。他の実施形態では、細胞タグは、カラムまたはビーズなどの固体基質に任意選択で結合された抗体またはリガンドを使用して、操作された細胞を濃縮するために使用される。例えば、他の研究者らは、ビオチン化セツキシマブを抗ビオチンマイクロビーズと組み合わせて免疫磁気選択に適用することにより、eTAG含有構築物でレンチウイルスにより形質導入されたT細胞を、集団の2%ほどの低さから90%を超える純度まで、細胞調製物に対する観察可能な毒性なしに濃縮することに成功したことを示している。
【0330】
本明細書に提供される一部の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドは、抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体模倣体の認識ドメイン、および膜関連ドメインを含む安全スイッチ(本明細書において安全スイッチポリペプチドまたは抗イディオタイプポリペプチド安全スイッチとも呼称される)である。そのような安全スイッチポリペプチドは、従来技術の安全スイッチよりもはるかに効率的に、そしてより多くの任意選択的な配列と設計を用いて設計することができる。一つの態様においてそのような安全スイッチポリペプチドは、細胞外認識ドメインが、細胞傷害を誘導することができる抗体または抗体模倣体のイディオタイプを認識するように設計される。
【0331】
したがって一つの態様において、安全スイッチは、細胞表面上に発現された抗イディオタイプポリペプチド、より具体的には抗イディオタイプポリペプチドの細胞外認識ドメイン(本明細書において細胞タグ、より具体的には孔イディオタイプ細胞タグと呼称される)に抗体または抗体模倣体が結合した際の抗体介在性細胞傷害に基づいている。一部の実施形態では、抗体または抗体模倣体は、細胞タグに結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)を誘導する。一部の実施形態では、抗体または抗体模倣体が抗イディオタイプポリペプチドに結合すると、ADCC、CDC、抗体介在性補体活性化、抗体依存性細胞貪食、および抗体依存性の疾患増強のうちの一つ以上が誘導され、促進され、ならびに/または活性化する。そのような応答を惹起させる対応Fcドメインを含む、他の抗体および抗体模倣体の機能に関連する詳細は、本明細書の「抗体および抗体模倣体のエフェクター機能」で検討される。抗イディオタイプポリペプチドは、免疫原性であり、免疫系をさらに刺激してもよい。したがって一部の実施形態では、細胞タグは、免疫原性である。他の実施形態では、細胞タグポリペプチドは、非免疫原性である。別の態様では、安全スイッチポリペプチドは、抗イディオタイプポリペプチドが、一つ以上の細胞死誘導シグナルを有する細胞内ドメインを含み、抗イディオタイプポリペプチドが、当該抗イディオタイプポリペプチドによって認識されるイディオタイプを備える標的抗体または抗体模倣体に結合した際に、当該ポリペプチドが細胞死シグナルを誘導することができるように設計される。細胞死誘導シグナルは、二量体形成誘導性アポトーシスシグナル伝達に基づいて誘導されてもよい。一部の態様では、安全スイッチは、二量体化誘導性アポトーシスシグナルに基づいている。一部の実施形態では、そのような安全スイッチは、膜関連ドメインとインフレームで連結された抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体の認識ドメインを含む細胞外二量体化ドメイン、およびアポトーシス経路の構成要素を含む細胞内ドメインを含む。したがって、抗体または抗体模倣体が抗イディオタイプポリペプチドに結合することにより介在される二量体化は、細胞のアポトーシスを生じさせる。一部の実施形態では、安全スイッチは、Fas受容体の細胞質尾部に融合された一つ以上の誘導性二量体化ドメイン、すなわち抗イディオタイプポリペプチドから構成され、膜関連ドメインにより膜に局在する誘導性FAS(iFAS)を含む。本明細書の「細胞内ドメイン」の項で検討されるように、一部の実施形態では、安全スイッチは、例えばカスパーゼ-1またはカスパーゼ-9などのカスパーゼに由来するドメインを一つ以上含む。
【0332】
本項で検討される安全スイッチを含む抗イディオタイプポリペプチドは、リンパ増殖エレメント、CAR、および/または組換えTCRを含む、本明細書に開示される他のポリペプチドとの融合体として発現されてもよい。他の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドは、単独のポリペプチドとして発現される。これらの実施形態のいずれにおいても、抗イディオタイプポリペプチドは、リンパ増殖エレメント、CAR、および/またはTCR中に含まれる本明細書に開示されるドメインのいずれかを含んでもよく、例えば、細胞外ドメイン、ストーク、膜貫通ドメイン、細胞内活性化ドメイン、調節ドメイン、リンカー、または細胞内ドメインのいずれかを含んでもよい。
【0333】
一つの態様では、安全スイッチは、二量体化誘導性アポトーシスシグナルに基づいている。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、アポトーシス経路の成分とインフレームで連結された誘導性二量体化ドメインで構成され、その結果、二量体化の細胞透過性化学誘導剤(CID)の結合によって媒介される条件付き二量体化が細胞のアポトーシスをもたらす、キメラタンパク質である。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、Fas受容体の細胞質尾部に融合し、ミリストイル基によって膜に局在化された一つ以上の誘導性二量体化ドメインで構成される誘導性FAS(iFAS)である。いくつかの実施形態では、安全スイッチは、カスパーゼ-1またはカスパーゼ-9などのカスパーゼに融合した一つ以上の誘導性二量体化ドメインで構成される誘導性カスパーゼである。いくつかの実施形態では、誘導性二量体化ドメインは、シクロフィリンであり、CIDは、シクロスポリンまたはシクロスポリン誘導体である。いくつかの実施形態では、誘導性二量体化ドメインは、FKBPであり、CIDは、AP1903などのFK-506二量体またはその誘導体である。
【0334】
いくつかの実施形態では、細胞タグは、mycタグまたはFLAGタグである。好ましい実施形態では、細胞タグポリペプチドは、非免疫原性である。いくつかの実施形態では、改変された内因性細胞表面分子は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーの切断型である。例えば、低親和性神経成長因子受容体(LNGFRまたはTNFRSF16)の切断型。ヒトLNGFRは、28aa残基シグナルペプチド、4つのシステインリッチドメインを含む222aaa細胞外ドメイン、22aa膜貫通ドメイン、および155aa細胞内ドメインを含む(配列番号369)のアミノ酸配列を有するシングルパスI型膜貫通糖タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞表面分子は、エピトープを含み、LNGFRの細胞外ドメイン全体のアミノ酸配列に対して、または配列番号369の残基29~250、65~250、もしくは108~250などの細胞外ドメインの切断断片に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。
【0335】
いくつかの実施形態では、改変された内因性細胞表面分子は、CD20の型である。ヒトCD20ポリペプチドは、配列番号370のアミノ酸配列を有する膜貫通4ドメインサブファミリーAメンバー(MS4A1)遺伝子によってコードされるマルチパス膜貫通タンパク質である。いくつかの実施形態では、CD20は、アミノ酸57~78、85~105、121~141、および189~209を包含する4つの膜貫通ドメインパスを含む。いくつかの実施形態では、CD20は、アミノ酸79~84および142~188を包含する2つの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20は、アミノ酸1~56、106~120、および210~297を包含する3つの細胞質ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD20ポリペプチドは、野生型ポリペプチドと比較して、複数のドメインまたはドメインの複数の部分を欠いている可能性がある。一実施形態では、CD20ポリペプチドは、内因性CD20のM1-E263、M117-N214、M1-N214、V82-N214、またはV82-I186を含む。一実施形態では、CD20ポリペプチドは、配列番号370のK142-S185、P160-S185、またはC167-C183から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。例示的な実施形態では、切断されたCD20の型は、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、イブリツモマブチウキセタン、トシツモマブ、ウブリツキシマブ、およびさらなる例示的な実施形態ではリツキシマブなどのモノクローナル抗体によって認識されるエピトープの少なくとも1コピーを含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、改変された内因性細胞表面分子は、CD52の型である。CD52は、そのC末端でGPIアンカーに連結された12アミノ酸のペプチドとして、ヒトにおいて内因的に生じる。いくつかの実施形態では、GPIを使用して、ポリペプチドを細胞表面に固定することができる。他の実施形態では、CD52は、異種膜貫通ドメインを使用して細胞表面に付着し得る。いくつかの実施形態では、切断されたCD52ポリペプチドは、HI186(BioRad社)、YTH34.5(BioRad社)、YTH66.9(BioRad社)、または例示的な実施形態ではアレムツズマブなどの抗体によって認識される一つ以上のエピトープを組み込み得る。いくつかの実施形態では、CD52エピトープは、配列番号371のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%の同一性を有する。
【0337】
いくつかの実施形態では、安全スイッチはまた、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞が操作されたと標識またはマークするフラグとして機能する。そのような安全スイッチは、PCR、サザンブロット、RT-PCR、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、組織学、およびフローサイトメトリーを含む標準的な実験室技術を使用して検出され得る。例えば、フローサイトメトリーによるeTAGの検出を、マウスにおけるT細胞生着のためのインビボ追跡マーカーとして本明細書で使用した。他の実施形態では、細胞タグは、カラムまたはビーズなどの固体基質に任意選択で結合された抗体またはリガンドを使用して、操作された細胞を濃縮するために使用される。例えば、他の研究者らは、ビオチン化セツキシマブを抗ビオチンマイクロビーズと組み合わせて免疫磁気選択に適用することにより、eTAG含有構築物でレンチウイルスにより形質導入されたT細胞を、集団の2%ほどの低さから90%を超える純度まで、細胞調製物に対する観察可能な毒性なしに濃縮することに成功したことを示している。
【0338】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、CARも含む単一のポリヌクレオチドの一部として、またはリンパ増殖エレメントを含む単一のポリヌクレオチドの一部として、またはCARおよびリンパ増殖エレメントの両方をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現される。いくつかの実施形態では、安全スイッチをコードするポリヌクレオチドは、内部リボソーム侵入部位(IRES)またはリボソームスキップ配列および/もしくは開裂シグナルによって、CARをコードするポリヌクレオチドおよび/またはリンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチドから分離される。リボソームスキップおよび/または開裂シグナルは、当該技術分野で知られている任意のリボソームスキップ配列および/または開裂シグナルであってもよい。リボソームスキップ配列は、例えば、アミノ酸配列GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号83)を有するT2Aであってもよい。開裂シグナルおよびリボソームスキップ配列の他の例には、FMDV 2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス2A(E2Aと略される)、ブタテッショウウイルス-1 2A(P2A)、およびThoseaasignaウイルス2A(T2A)が含まれる。
【0339】
いくつかの実施形態では、安全スイッチ、および例示的な実施形態では細胞タグは、CARに融合した融合ポリペプチドの一部として発現される。他の実施形態では、安全スイッチ、および本明細書に経験的に例示されるように、細胞タグは、リンパ増殖エレメントに融合して発現される。そのような構築物は、特に本明細書に提供される他の「空間節約」要素と組み合わせて、別個のポリペプチドと比較してRNAゲノム上でより少ないゲノム空間を占めるという利点を提供する。一つの例示的な実施形態では、eTagは、c-Junドメイン(配列番号104)の5’末端、CSF2RA(配列番号129)からの膜貫通ドメイン、MPL(配列番号283)からの第一の細胞内ドメイン、およびCD40(配列番号208)からの第二の細胞内ドメインに融合した融合ポリペプチドとして発現される。CARまたはリンパ増殖エレメントに融合していないポリペプチドとして発現された場合、細胞タグは、その天然膜付着配列を介して、またはGPIアンカーもしくは膜貫通配列などの異種膜付着配列を介して、細胞膜と関連付けられてもよい。例示的な実施形態では、細胞タグは、T細胞および/またはNK細胞上で発現されるが、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子上では発現されない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および細胞は、2つ以上の安全スイッチを含む。
【0340】
キメラ抗原受容体
本発明のいくつかの態様では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)またはCARをコードするポリヌクレオチドであり、これは、簡単にするために、本明細書では「CAR」と称される。本開示のCARは、a)少なくとも一つの抗原特異的標的化領域(ASTR)、b)膜貫通ドメイン、およびc)細胞内活性化ドメインを含む。例示的な実施形態では、CARの抗原特異的標的化領域は、標的抗原に対する抗体のscFv部分である。例示的な実施形態では、細胞内活性化ドメインは、CD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCERlG、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、またはZAP70、およびいくつかのさらなる例示的な実施形態では、CD3zに由来する。例示的な実施形態では、CARは、共刺激ドメイン、例えば、上記の調節ドメインの項で提供される共刺激ドメインのいずれかをさらに含み、さらなる例示的な実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB(CD137)、CD28、ICOS、OX-40、BTLA、CD27、CD30、GITR、およびHVEMの細胞内共刺激ドメインである。いくつかの実施形態では、CARは、上記の膜貫通ドメインの項に列挙された膜貫通ドメインのいずれかを含む。一部の実施形態では、対象に直接送達されるRIP(RIP製剤および/または送達溶液)のいずれかは、本項および本明細書の任意の実施形態で開示されるCARをコードする核酸を含んでもよい。
【0341】
本開示のCARは、真核細胞、例えば哺乳動物細胞の原形質膜中に存在することができ、好適な哺乳動物細胞は、これらに限定されないが、細胞傷害性細胞、Tリンパ球、幹細胞、幹細胞の子孫、前駆細胞、前駆細胞の子孫、およびNK細胞、NK-T細胞、およびマクロファージを含む。真核細胞の原形質膜中に存在する場合、本開示のCARは、特定の条件においてASTRに結合する一つ以上の標的抗原の存在下で活性である。標的抗原は、特異的結合対の第二のメンバーである。特異的結合対の標的抗原は、可溶性(例えば細胞に結合していない)因子、標的細胞などの細胞の表面上に存在する因子、固体表面上に提示された因子、脂質二重層中に存在する因子などであってもよい。ASTRが抗体であり、特異的結合対の第二のメンバーが抗原である場合、抗原は、可溶性(例えば細胞に結合していない)抗原、標的細胞などの細胞の表面上に存在する抗原、固体表面上に提示された抗原、脂質二重層中に存在する抗原などであってもよい。
【0342】
いくつかの実施形態では、CARのASTRは、細胞内シグナル伝達ドメインとは別個のポリペプチドとして発現される。そのような実施形態では、ポリペプチドの一方または両方が、本明細書に開示される膜貫通ドメインのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの一方または両方が、異種シグナル配列および/または異種膜付着配列を含み得る。いくつかの実施形態では、異種膜付着配列は、GPIアンカー付着配列である。
【0343】
いくつかの場合において、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞内の少なくとも一つの核酸の発現を増加させる。例えば、いくつかの場合において、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞内の少なくとも一つの核酸の発現を、一つ以上の標的抗原の非存在下での核酸の転写レベルと比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または10倍超増加させる。
【0344】
一例として、本開示のCARは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含み得る。
【0345】
本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、いくつかの場合において、細胞による一つ以上のサイトカインの産生の増加をもたらし得る。例えば、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞によるサイトカインの産生を、一つ以上の標的抗原の非存在下で細胞によって産生されるサイトカインの量と比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または10倍超増加させ得る。産生が増加され得るサイトカインは、これらに限定されないが、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-a)、IL-2、IL-15、IL-12、IL-4、IL-5、IL-10;ケモカイン;成長因子などを含む。
【0346】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞内の核酸の転写の増加および細胞によるサイトカインの産生の増加の両方をもたらし得る。
【0347】
いくつかの場合において、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、CARの第一のポリペプチドの抗原結合ドメインが結合する抗原をその細胞表面上に発現する標的細胞に対する、細胞による細胞傷害性活性をもたらす。例えば、真核細胞が細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞または細胞傷害性Tリンパ球)である場合、本開示のCARは、細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、一つ以上の標的抗原をその細胞表面上に発現する標的細胞に対する細胞の細胞傷害性活性を増加させる。例えば、真核細胞がNK細胞またはTリンパ球である場合、本開示のCARは、細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞の細胞傷害性活性を、一つ以上の標的抗原の非存在下での細胞の細胞傷害性活性と比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、または10倍超増加させる。
【0348】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、増殖および増大などの他のCAR活性化関連事象をもたらし得る(増加した細胞分裂または抗アポトーシス応答に起因する)。
【0349】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、真核細胞の原形質膜中に存在する場合、および一つ以上の標的抗原によって活性化される場合、細胞内シグナル伝達調節、細胞分化、または細胞死などの他のCAR活性化関連事象をもたらし得る。
【0350】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、微小環境が制限されている。この特性は典型的には、CARのASTRドメインの微小環境が制限された性質の結果である。したがって、本開示のCARは、より低い結合親和性を有し得るか、または例示的な実施形態では、通常の生理学的環境の条件下よりも微小環境の条件下で、一つ以上の標的抗原に対してより高い結合親和性を有し得る。
【0351】
特定の例示的な実施形態では、本明細書に提供されるCARは、細胞内活性化ドメインに加えて共刺激ドメインを含み、共刺激ドメインは、例えば、リンパ増殖エレメント(LE)のための本明細書に提供される細胞内シグナル伝達ドメインのいずれか、例えばCLEの細胞内ドメインなどである。特定の例示的な実施形態では、本明細書のCARの共刺激ドメインは、CLEについて本明細書で特定される第一の細胞内ドメイン(P3ドメイン)、またはP3ドメインの非存在下で本明細書のCLEの有効な細胞内シグナル伝達ドメインとして示されるP4ドメインである。さらに、特定の例示的な実施形態では、CARの共刺激ドメインは、本明細書でCLEについて特定されるP3およびP4細胞内シグナル伝達ドメインの両方を含み得る。特定の例示的な下位実施形態は、CLEについて本明細書で特定されるように、特に有効なP3およびP4パートナー細胞内シグナル伝達ドメインを含む。例示的な実施形態では、共刺激ドメインは、共刺激ドメインの一部として、またはさらなる例示的な実施形態では唯一の共刺激ドメインとして、CARのITAM含有細胞内ドメイン以外である。
【0352】
LEの有効な細胞内ドメインとして本明細書で特定される共刺激ドメインを有するCARを含むこれらの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、本明細書に提供される表1の任意の細胞内シグナル伝達ドメインであってもよい。表1の細胞内ドメインのいずれかの活性断片は、CARの共刺激ドメインであってもよい。例示的な実施形態では、CARのASTRは、scFVを含む。例示的な実施形態では、CLEのc刺激細胞内ドメインに加えて、これらのCARは、例示的な実施形態ではCD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCER1G、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、もしくはZAP70細胞内活性化ドメインであるか、またはさらなる例示的な実施形態では、CD3z細胞内活性化ドメインである、細胞内活性化ドメインを含む。
【0353】
これら例示的実施形態において、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CRLF2、CSF2RA、CSF3R、EPOR、GHR、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IFNLR1、IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7RA,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL12RB2,IL13RA1,IL13RA2,IL15RA,IL17RB,IL17RC,IL17RD,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27RA,IL31RA,LEPR,LIFR,LMP1,MPL,MyD88,OSMR,またはPRLRに由来するシグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインまたはその機能性シグナル伝達断片を含んでもよい。いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CRLF2、CSF2RA、CSF3R、EPOR、GHR、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IFNLR1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL13RA1、IL13RA2、IL17RB、IL17RC、IL17RD、IL18R1、IL18RAP、IL20RA、IL20RB、IL22RA1、IL31RA、LEPR、LIFR、LMP1、MPL、MyD88、OSMR、またはPRLRからのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその機能的シグナル伝達断片を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CSF2RA、CSF3R、EPOR、IFNGR1、IFNGR2、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL2RA、IL2RG、IL5RA、IL6R、IL9R、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA2、IL15RA、IL17RD、IL21R、IL23R、IL27RA、IL31RA、LEPR、MPL、MyD88、またはOSMRからのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその機能的断片を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CSF2RA、CSF3R、EPOR、IFNGR1、IFNGR2、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL2RA、IL2RG、IL5RA、IL6R、IL9R、IL10RB、IL11RA、IL13RA2、IL17RD、IL31RA、LEPR、MPL、MyD88、またはOSMRからのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその断片を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CSF3R、IFNAR1、IFNGR1、IL2RB、IL2RG、IL6ST、IL10RA、IL12RB2、IL17RC、IL17RE、IL18R1、IL27RA、IL31RA、MPL、MyD88、OSMR、またはPRLRからのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその機能的シグナル伝達断片を含み得る。いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF2RB、CSF3R、IFNGR1、IL2RB、IL2RG、IL6ST、IL10RA、IL17RE、IL31RA、MPL、またはMyD88からのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその機能的シグナル伝達断片を含み得る。
【0354】
いくつかの実施形態では、CARの共刺激ドメインは、CSF3R、IL6ST、IL27RA、MPL、およびMyD88からのシグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインまたはその断片を含み得る。特定の例示的な下位実施形態では、CARの細胞内活性化ドメインは、CD3zに由来する。
【0355】
組換えT細胞受容体(TCR)
T細胞受容体(TCR)は、細胞内ならびに細胞外タンパク質に由来する特定のタンパク質断片を認識する。タンパク質がペプチド断片に分解されると、それらは、主要組織適合遺伝子複合体またはMHCと呼ばれる(これは、ヒトではHLA(ヒト白血球抗原)複合体と呼ばれる)別のタンパク質とともに細胞表面上に提示される。脊椎動物における三つの異なるT細胞抗原受容体の組み合わせは、αβ TCR、γδTCR、およびプレTCRである。そのような組み合わせは、α TCRサブユニットおよびβ TCRサブユニット、γ TCRサブユニット、およびδ TCRサブユニット、ならびにプレTCRの場合は、pTαサブユニットおよびβ TCRサブユニットなどの二量体化サブタイプのメンバー間の二量体化によって形成される。TCRサブユニットのセットは、二量体化し、MHCの文脈で提示された標的ペプチド断片を認識する。プレTCRは、未成熟αβ T細胞の表面上にのみ発現され、αβ TCRは、成熟αβ T細胞およびNK T細胞の表面上に発現され、γδTCRは、γδT細胞の表面上に発現される。T細胞の表面上のαβTCRは、MHCIまたはMHCIIによって提示されたペプチドを認識し、NK T細胞の表面上のαβ TCRは、CD1によって提示された脂質抗原を認識する。γδTCRは、MHCおよびMHC様分子を認識し得、ウイルス糖タンパク質などの非MHC分子も認識し得る。リガンドが認識されると、αβTCRおよびγδTCRは、CD3ゼータ鎖を介して活性化シグナルを伝達し、これはT細胞増殖およびサイトカイン分泌を刺激する。
【0356】
TCR分子は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、V領域中に抗原特異的に存在し、CDR3は、CDR1およびCDR2よりも可変性が高く、TCRの抗原結合特異性を直接決定付ける。MHC-抗原ペプチド複合体がTCRによって認識されると、CDR1およびCDR2は、MHC分子抗原結合チャネルの側壁を認識し、かつそれに結合し、CDR3は、抗原ペプチドに直接結合する。したがって、MHC上に提示された腫瘍特異的タンパク質断片を認識する組換えTCRが操作され得る。
【0357】
したがって、一般的なHLAを有する特定のペプチドを認識するヒトTCRαおよびTCRβの対に由来するものなどの組換えTCRは、腫瘍特異的タンパク質に対する特異性を伴って生成され得る(Schmitt,TM et al.,2009)。組換えTCRの標的は、本明細書に提供されるCAR ASTRの抗原標的のいずれかに由来するペプチドであってもよいが、より一般的には、がん胎児性抗原などの細胞内腫瘍特異的タンパク質、または正常な細胞内タンパク質もしくは他のがん特異的ネオエピトープの変異バリアントに由来する。TCRサブユニットのライブラリーは、標的抗原に対するそれらの選択性についてスクリーニングされ得る。天然および/または組換えTCRサブユニットのスクリーニングは、標的抗原に対して高いアビディティおよび/または反応性を有するTCRサブユニットのセットを特定し得る。そのようなTCRサブユニットのセットのメンバーを選択およびクローン化して、TCRサブユニットをコードする一つ以上のポリヌクレオチドを産生し得る。
【0358】
そのようなTCRサブユニットのセットをコードするポリヌクレオチドは、リンパ球が組換えTCRを発現するように、リンパ球、または例示的な実施形態ではT細胞もしくはNK細胞を遺伝子改変するための複製能力のない組換えレトロウイルス粒子に含まれ得る。一部の実施形態では、本項および本明細書の任意の実施形態で開示されるTCRをコードする核酸を含むRIPは、例えばT細胞および/またはNK細胞などのリンパ球をインビボで改変する。一部の実施形態では、TCRをコードする核酸を含むRIPは、たとえばT細胞および/またはNK細胞などのリンパ球をエクスビボで改変する。したがって、CARまたはCARである操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む本明細書に提供される任意の態様または実施形態では、CARは、γδTCR鎖、または例示的な実施形態ではαβTCR鎖のセットによって置き換えられ得る。セットを形成するTCR鎖は、CARおよびリンパ増殖エレメントなどの二つ以上の他の操作されたシグナル伝達ポリペプチドを発現するために、本明細書に開示されるように二つのTCR鎖を共発現するための多数の異なる技術を使用して共発現され得る。例えば、2Aプロテアーゼ、内部リボソーム侵入部位(IRES)、および別個のプロモーターなどのプロテアーゼ開裂エピトープが使用され得る。一部の実施形態では、対象に直接送達されるRIP(RIP製剤および/または送達溶液)のいずれかは、本項および本明細書の任意の実施形態で開示されるTCRをコードする核酸を含んでもよい。
【0359】
混合TCR二量体形成の可能性を低減するために、いくつかの戦略が採用されている。一般に、これには、導入されたTCR鎖の相互の優先的対合を促進する一方で、内因性TCR鎖との対合に成功する可能性を低くするように、TCRαおよびTCRβ鎖の定常(C)ドメインを改変することが含まれる。インビトロでいくらかの見込みを示した一つのアプローチは、ヒトTCRαおよびTCRβ鎖のCドメインをそれらのマウス対応物で置き換えることを含む。別のアプローチは、自己対合を促進するためのヒトTCRα共通ドメインおよびTCRβ鎖共通領域の変異、またはウイルス遺伝子構築物内の内因性TCRアルファおよびTCRベータmiRNAの発現を含む。したがって、操作されたシグナル伝達ポリペプチドとしてTCR鎖の一つ以上のセットを含む本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、TCR鎖、例示的な実施形態ではαβTCR鎖のセットの各メンバーは、相互の優先的な対合を促進する改変された定常ドメインを含む。いくつかの下位実施形態では、TCR鎖、例示的な実施形態ではαβTCR鎖のセットの各メンバーは、同じTCR鎖タイプからのマウス定常ドメイン、または同じTCR鎖サブタイプからのマウス定常ドメインに由来する十分な配列を有する同じTCR鎖サブタイプからの定常ドメインを含み、その結果、TCR鎖のセットの相互への二量体化は、ヒトTCR鎖との二量体化よりも優先されるか、またはそれを排除して行われる。他の下位実施形態では、TCR鎖、例示的な実施形態ではαβTCR鎖のセットの各メンバーは、その定常ドメインに対応する変異を含み、その結果、TCR鎖のセットの相互への二量体化は、ヒト定常ドメインを有するTCR鎖との二量体化よりも優先されるか、またはそれを排除して行われる。例示的な実施形態におけるそのような好ましいまたは排他的な二量体化は、生理学的条件下である。
【0360】
操作されたシグナル伝達ポリペプチドとしてTCR鎖の一つ以上のセットを含む本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、TCR鎖の一つ以上のセットの各々のメンバーの定常領域は、スワッピングされる。したがって、セットのα TCRサブユニットは、β TCR定常領域を有し、セットのβ TCRサブユニットは、α TCR定常領域を有する。理論によって制限されるものではないが、そのようなスワッピングは、内因性対応物との誤対合を防止し得ると考えられる。
【0361】
リンパ増殖エレメント
本明細書に提供される実施形態の多くは、リンパ増殖エレメント、またはそれをコードする核酸を、典型的には操作されたシグナル伝達ポリペプチドの一部として含む。したがって、本発明の一部の態様では、例えば、皮下注射によって導入または再導入される改変リンパ球および/または遺伝子改変リンパ球について、またはインビボでのリンパ球の改変について、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、リンパ増殖エレメント(LE)、例えばキメラリンパ増殖エレメント(CLE)である。一部の実施形態では、対象に直接送達されるRIP(RIP製剤および/または送達溶液)のいずれかは、例えばCLEなどのLEをコードする核酸を含む。一部の実施形態では、そのようなRIPのインビボ送達によって、リンパ球のインビボ改変が行われる。典型的には、LEは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および増殖を駆動する少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメイン、および例示的な実施形態では第二の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0362】
LEの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインは、それぞれのアミノ酸の長さが異なり得る。例えば、複製能力のないレトロウイルス粒子(RIP)を含む実施形態について、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得るポリヌクレオチドの長さに制限があるため、特定の例示的な実施形態では、より短いアミノ酸配列を有するLEが有利となり得る。いくつかの実施形態では、LEの全長は、3~4000アミノ酸、例えば10~3000、10~2000、50~2000、250~2000アミノ酸、および例示的な実施形態では50~1000、100~1000、または250~1000アミノ酸であってもよい。細胞外ドメインは、細胞外および膜貫通ドメインを形成するために存在する場合、1~1000アミノ酸であってもよく、典型的には4~400、4~200、4~100、4~50、4~25、または4~20アミノ酸である。一実施形態では、細胞外領域は、本発明のこの態様の細胞外および膜貫通ドメインのGGGSである。膜貫通ドメイン、または細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの膜貫通領域は、10~250アミノ酸であってもよく、より典型的には、長さが少なくとも15アミノ酸であり、例えば、長さが15~100、15~75、15~50、15~40、または15~30アミノ酸であってもよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、10~1000、10~750、10~500、10~250、または10~100アミノ酸であってもよい。例示的な実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、少なくとも30、または30~500、30~250、30~150、30~100、50~500、50~250、50~150、または50~100アミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態では、特定の遺伝子の細胞内シグナル伝達ドメインは、その細胞内シグナル伝達ドメインの配列、例えばその細胞内ドメインに関して本明細書に提供される配列からの少なくとも10、25、30、40、50アミノ酸または全アミノ酸から、細胞内ドメイン配列全体のサイズまでに対して、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%同一であり、例えば、追加で1、2、3、4、5、10、20、または25アミノ酸までを含んでもよいが、ただし、そのような配列が依然として、本明細書に開示されるLEの特性のいずれかを提供することができることを条件とする。
【0363】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、第一および/または第二の細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。一部の実施形態では、第一および/または第二の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD2、CD3D、CD3E、CD3G、CD4、CD8A、CD8B、CD27、変異デルタLck CD28,CD28,CD40,CD79A,CD79B,CRLF2,CSF2RB,CSF2RA,CSF3R,EPOR,FCER1G,FCGR2C,FCGRA2,GHR,ICOS,IFNAR1,IFNAR2,IFNGR1,IFNGR2,IFNLR1,IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL4R,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7RA,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL12RB2,IL13RA1,IL13RA2,IL15RA,IL17RA,IL17RB,IL17RC,IL17RD,IL17RE,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27RA、IL31RA、LEPR、LIFR、LMP1、MPL、MYD88、OSMR、PRLR、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14、もしくはTNFRSF18、またはそれらの機能的変異体、および/またはそれらの断片を含んでもよい。例示的な実施形態では、第一の細胞内シグナル伝達ドメインは、MyD88、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、第一の細胞内シグナル伝達ドメインは、MyD88、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得、第二の細胞内シグナル伝達ドメインは、ICOS、TNFRSF4、もしくはTNSFR18、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、第一の細胞内ドメインは、MyD88であり、第二の細胞内ドメインは、ITAM含有細胞内ドメイン、例えば、CD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCERlG、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、またはZAP70からの細胞内ドメインである。いくつかの実施形態では、第二の細胞内シグナル伝達ドメインは、TNFRSF18、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの融合を含み得る。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの融合は、eTAG IL7RA Ins PPCL(インターロイキン7受容体)、Myc LMP1、LMP1、eTAG CRLF2、eTAG CSF2RB、eTAG CSF3R、eTAG EPOR、eTAG GHR、Fn F523C IL27RAの後が切断されたeTAG、もしくはFn S505N MPLの後が切断されたeTAG、またはそれらの機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、カルボキシ末端に0、1つ、2つ、3つ、または4つの追加のアラニンを有する細胞タグを含み得る。いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、カルボキシ末端に0、1つ、2つ、3つ、もしくは4つの追加のアラニンを有するMycもしくはeTAG、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。細胞タグを含む本明細書に開示されるリンパ増殖エレメントの任意の実施形態について、同一であるが、細胞タグを欠き、任意選択で、細胞タグをリンパ増殖エレメントに接続した任意のリンカー配列を欠く、対応する実施形態がある。
【0365】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、膜貫通ドメインを含み得る。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、BAFFR,C3Z,CEACAM1,CD2,CD3A,CD3B,CD3D,CD3E,CD3G,CD3Z,CD4,CD5,CD7,CD8A,CD8B,CD9,CD11A,CD11B,CD11C,CD11D,CD27,CD16,CD18,CD19,CD22,CD28,CD29,CD33,CD37,CD40,CD45,CD49A,CD49D,CD49F,CD64,CD79A,CD79B,CD80,CD84,CD86,CD96(Tactile),CD100(SEMA4D),CD103,C134,CD137,CD154,CD160(BY55),CD162(SELPLG),CD226(DNAM1),CD229(Ly9),CD247,CRLF2,CRTAM,CSF2RA,CSF2RB,CSF3R,EPOR,FCER1G,FCGR2C,FCGRA2,GHR,HVEM(LIGHTR),IA4,ICOS,IFNAR1,IFNAR2,IFNGR1,IFNGR2,IFNLR1,IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL4R,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7RA,IL7RA Ins PPCL,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL12RB2,IL13RA1,IL13RA2,IL15RA,IL17RA,IL17RB,IL17RC,IL17RD,IL17RE,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27RA,IL31RA,ITGA1,ITGA4,ITGA6,ITGAD,ITGAE,ITGAL,ITGAM,ITGAX,ITGB1,ITGB2,ITGB7,KIRDS2,LEPR,LFA-1(CD11a,CD18),LIFR,LTBR,MPL,NKp80(KLRF1),OSMR,PAG/Cbp,PRLR,PSGL1,SLAM(SLAMF1,CD150,IPO-3),SLAMF4(CD244,2B4),SLAMF6(NTB-A,Ly108),SLAMF7,SLAMF8(BLAME),TNFR2,TNFRSF4,TNFRSF8,TNFRSF9,TNFRSF14,TNFRSF18,VLA1,もしくはVLA-6、またはそれらの機能性変異体、および/または断片に由来する膜貫通ドメインを含んでもよい。
【0366】
本明細書の任意の態様または実施形態において使用するためのCLEは、WO2019/055946(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される任意のCLEを含んでもよく、その大部分は構造的に活性であるように設計され、および構造的に活性であると考えられ、典型的には、それらは典型的にはその細胞内ドメイン上の機能性ドメインを介して、シグナル伝達経路を構造的に活性化する。一部の実施形態では、構造的に活性なシグナル伝達経路は、Jak1、Jak2、Jak3、およびTyk2、ならびにSTAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5、STAT6、および例示的な実施形態では、STAT3および/またはSTAT5などのSTATを含む、Jak経路、Stat経路またはJak/Stat経路の活性化を含む。本明細書におけるLEの例示的実施形態は、JAK結合ドメインおよび/またはSTATリクルートドメインを含む。したがって本明細書において特定の実施形態では、これら経路のうちのいずれか一つ以上を活性化するための手段を含むリンパ増殖エレメントが提供され、典型的には、これら経路の内のいずれか一つ以上を活性化するための手段である細胞内ドメインを含む。特定の実施形態では、リンパ増殖エレメントは、例えば細胞内ドメインなど、T細胞および/もしくはNK細胞の増殖ならびに/または生存を促進するシグナルを伝達するための手段を含み、例示的実施形態では、二量体化したリンパ増殖エレメントの部分のときに、含む。一部の実施形態では、CLEは、一つ以上のJak結合ドメインを含む。一部の実施形態では、CLEは、一つ以上のStatリクルートドメインを含む。理論または機序に拘束されないが、一部の実施形態では、本明細書のLEはJak結合ドメインとSTATリクルートドメインを含み、二量体化し、および/またはクラスター化して、二つの結合したJAKタンパク質を活性化させ、次いでLEのリクルートドメイン上のチロシン残基がリン酸化される。その後、リン酸化したリクルートドメインは、リクルートされたタンパク質に結合する能力を有し(例えば、リン酸化されたSTAT-リクルートドメインは、STATタンパク質に結合する)、STATタンパク質は(例えば、リン酸化により)活性化し、STATリクルートドメインから解離して、核へと移行し、そこでSTATタンパク質は転写事象に影響を及ぼす。
【0367】
いくつかの実施形態では、CLEは、一つ以上のSTAT活性化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CLEは、二つ以上、三つ以上、四つ以上、五つ以上、または六つ以上のSTAT活性化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、一つ以上のSTAT活性化ドメインのうちの少なくとも一つは、当該技術分野で既知のようなBLNK、IL2RG、EGFR、EpoR、GHR、IFNAR1、IFNAR2、IFNAR1/2、IFNLR1、IL10R1、IL12Rb1、IL12Rb2、IL21R、IL2Rb、IL2small、IL7R、IL7Ra、IL9R、IL15R、およびIL21Rであるか、またはそれらに由来する。いくつかの実施形態では、二つ以上のSTAT活性化ドメインは、二つ以上の異なる受容体であるか、またはそれらに由来する。LEを含む本明細書の態様および実施形態に含有され得る他のSTAT活性化ドメインとしては、IL7R(316-459)、IL2Rb(333-551)、IFNAR1(508-557)、IFNAR2(310-515)、IFNAR1/2(IFNAR1残基508-557-IFNAR2残基310-515)、IFNLR1(300-520)、共通ガンマ鎖(335-369)、IL9R(356-521)、IL21R(322-538)、GHR(353-638)、EpoR(339-508)、マウスIL2Rb(337-539)、マウスIL7Ra(316-459)、EGFR(955-1186)、EGFR(955-1186;Y974F、d1045-1057)、EGFR(955-1009;Y974F)、EGFR(1019-1085)、EGFR(1037-1103;Y1068/1101F、d1045-1057)、EGFR(1066-1118;Y1068/1086F)、EGFR(1122-1165)、EGFR(1133-1186;Y1148F)、IL12 Rb2(775-825)、IL7R(376-416)、IL7R(424-459)、IL7R(376-416、424-459)、IL7R(424-459;Y456F)、IL7R(376-416、424-459、Y456F)、IL2Rbsmall(393-433)、IL2Rbsmall(518-551)、IL2Rbsmall(339-379、393-433)、IL2Rbsmall(339-379、518-551)、IL2Rbsmall(393-433、518-551)、IL2Rbsmall(339-379、393-433、518-551)、IFNAR2small(310-352)、IFNAR2small(486-515)、IFNAR2small(310-352、486-515)、BLNK(53-208)、BLNK(53-208;Y72F)、BLNK(53-208;Y72F、Y96F)、EpoR(339-508)、IL12Rb2(714-862)、IL12Rb1(622-662)、IL10R1(304-578)、IL2Rb(333-551、Y381S、Y384S、Y387S)、およびIL2Rb(333-551、Y364S、Y381S、Y384S、Y387S)のうちの一つ以上が挙げられる。これらのSTAT-活性化ドメインは、配列番号376~420にそれぞれ提示される。
【0368】
一部の実施形態では、STAT活性化ドメインは、本明細書においてSTATリクルートドメインとも呼称される場合があり、タンデムで連結されて、複数の経路(例えば、持続促進性STAT5および炎症促進性STAT4については、IL7R(316-459)- IL12Rb2(775-825)断片融合物;持続促進性についてはIL7R(316-459)-IL2Rbsmall(393-433,518-551);持続促進性および抗消耗性についてはIL7R(316-459)-EGFR(1122-1165);持続促進性および抗消耗性についてはIL2Rbsmall(393-433,518-551)-EGFR(1122-1165))を刺激することができる。
【0369】
いくつかの実施形態では、構造的に活性なシグナル伝達経路は、TRAF3、TRAF4、TRAF7、ならびに例示的な実施形態ではTRAF1、TRAF2、TRAF5、および/またはTRAF6などのTNF受容体関連因子の活性化を介した、TRAF経路の活性化を含む。したがって特定の実施形態では、本明細書のキット、方法、使用または組成物のいずれかにおける使用のためのリンパ増殖エレメントは、構造的に活性であり、Jak/Stat経路および/またはTRAF経路を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、構造的に活性なシグナル伝達経路は、PI3K経路の活性化を含む。一部の実施形態では、構造的に活性なシグナル伝達経路は、PLC経路の活性化を含む。したがって特定の実施形態では、本明細書のキット、方法、使用または組成物のいずれかにおける使用のためのリンパ増殖エレメントは、構造的に活性であり、Jak/Stat経路、TRAF経路、PI3K経路、および/またはPLC経路を活性化する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。例示されるように、CLEの第一および第二の細胞内シグナル伝達ドメインがある場合、第一の細胞内シグナル伝達ドメインは、膜関連モチーフ、例えば膜貫通ドメインと、第二の細胞内ドメインの間に配置される。
【0370】
一部の実施形態では、本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントは、本明細書に開示されるものを含む、結合ドメインのうちの一つ、または複数、またはすべてを含み、自然界で相当するリンパ増殖エレメントにあるシグナル伝達に関与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントは、一つ以上のJAK結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、JAK結合ドメインは、EPOR、GP130、PRLR、GHR、GCSFR、またはTPOR/MPLであるか、またはそれに由来する。これらのタンパク質からのJAK結合ドメインは、当該技術分野で知られており、当業者であれば、それらを使用する方法を理解するであろう。例えば、EpoRの残基273~338およびTpoRの残基478~582は、JAK結合ドメインであることが知られている。このシグナル伝達に関与するサイトカイン受容体の細胞内ドメインに見られる保存されたモチーフは、知られており、本明細書に提供される特定の例示的なリンパ増殖エレメント中に存在する(例えば、Morris et al.,“The molecular details of cytokine signaling via the JAK/STAT pathway,”Protein Science(2018)27:1984-2009を参照されたい)。Box1およびBox2モチーフは、JAKへの結合およびシグナル伝達に関与するが、Box2モチーフの存在は、増殖シグナルに必ずしも必要とされない(Murakami et al.Proc Natl Acad Sci USA.1991 Dec 15;88(24):11349-53、Fukunaga et al.EMBO J.1991 Oct;10(10):2855-65、およびO’Neal and Lee.Lymphokine Cytokine Res.1993 Oct;12(5):309-12)。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、Box1ヤヌスキナーゼ(JAK)結合モチーフ、任意選択でBox2 JAK結合モチーフ、およびチロシン残基を含むシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)結合モチーフを含むサイトカイン受容体の細胞内ドメインを含む、トランスジェニックBox1含有サイトカイン受容体である。一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントは、二個以上のJAK結合モチーフ、例えば、三個以上または四個以上のJAK結合モチーフを含み、例示的実施形態では、それらは自然界で相当するリンパ増殖エレメント中に存在する結合モチーフである。
【0371】
IFNAR1、IFNGR1、IFNLR1、IL2RB、IL4R、IL5RB、IL6R、IL6ST、IL7RA、IL9R、IL10RA、IL21R、IL27R、IL31RA、LIFR、およびOSMRに由来する細胞内ドメインは、JAK1シグナル伝達を活性化することが当該技術分野で知られており、ゆえにJAK1結合モチーフを含む。CRLF2、CSF2RA、CSF2RB、CSF3R、EPOR、GHR、IFNGR2、IL3RA、IL5RA、IL6ST、IL20RA、IL20RB、IL23R、IL27R、LEPR、MPL、およびPRLRに由来する細胞内ドメインは、JAK2を活性化することが当該技術分野で知られており、ゆえにJAK2結合モチーフを含む。IL2RGに由来する細胞内ドメインは、JAK3を活性化することが当該技術分野で知られており、ゆえにJAK3結合モチーフを含む。GHR、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IL2RB、IL2RG、IL4R、IL5RA、IL5RB、IL7RA、IL9R、IL21R、IL22RA1、IL31RA、LIFR、MPL、およびOSMRからの細胞内ドメインは、STAT1を活性化することが当該技術分野で知られている。IFNAR1およびIFNAR2からの細胞内ドメインは、STAT2を活性化することが当該技術分野で知られている。GHR、IL2RB、IL2RG、IL6R、IL7RA、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL21R、IL22RA1、IL23R、IL27R、IL31RA、LEPR、LIFR、MPL、およびOSMRからの細胞内ドメインは、STAT3を活性化することが当該技術分野で知られている。IL12RB1に由来する細胞内ドメインは、STAT4を活性化することが当該技術分野で知られている。CSF2RA、CSF2RB、CSF3R、EPOR、GHR、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL5RB、IL7RA、IL9R、IL15RA、IL20RA、IL20RB、IL21R、IL22RA1、IL31RA、LIFR、MPL、OSMR、およびPRLRの細胞内ドメインは、STAT5を活性化することが当該技術分野で知られている。IL4RおよびOSMRからの細胞内ドメインは、STAT6を活性化することが当該技術分野で知られている。第一の細胞内ドメインに見られる遺伝子およびその細胞内ドメインは、第一および第二の細胞内ドメインが同一である場合、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインの少なくとも一つ、および典型的には両方が同じ遺伝子からのものではないことを除いて、任意選択の第二の細胞内ドメインと同じである。
【0372】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のBox1モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のBox1モチーフを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、IL7RA(配列番号248および249の残基9~17のBox1モチーフ)、IL12RB((配列番号254および255の残基10~12;ならびに配列番号256の残基107~110および139~142のBox1モチーフ)、IL31RA(配列番号275および276の残基12~15のBox1モチーフ)、CSF2RB(配列番号213の残基14~22のBox1モチーフ)、IL2RB(配列番号240の残基13~21のBox1モチーフ)、IL6ST(配列番号247の残基10~18のBox1モチーフ)、IL2RG(配列番号241の残基3~11のBox1モチーフ)、IL27RA(配列番号273の残基17~25のBox1モチーフ)、MPL(配列番号283の残基17~20のBox1モチーフ)、OSMR(配列番号294の残基16~30のBox1モチーフ)、IFNAR2(配列番号227の残基23~31のBox1モチーフ)、CSF3RまたはEPOR(全長EPORの残基257~264のBox1モチーフ)であってもよい。
【0373】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のBox2モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のBox2モチーフを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、MPL(配列番号283の残基46~64のBox2モチーフ)、IFNAR2(配列番号227の残基37~46のBox1モチーフ)、CSF3RまたはEPOR(全長EPORの残基303~313のBox2モチーフ)であってもよい。EPORは、チロシンキナーゼ受容体KITの結合に重要な伸長Box2モチーフ(全長EPORの残基329~372)も含有してもよく、一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントが含有してもよい。CSF3Rは、Box3モチーフを含有してもよく、一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントが含有してもよい。
【0374】
一部の細胞内シグナル伝達ドメインは、Box1モチーフに対して-1位、-2位、および-6位に疎水性残基を有し、これらは、サイトカイン誘導性JAK2活性化に必要であるがJAK2結合には必要ではない「スイッチモチーフ」を形成する(Constantinescu et al.Mol Cell.2001 Feb;7(2):377-85、およびHuang et al.Mol Cell.2001 Dec;8(6):1327-38)。したがって特定の実施形態では、Box1モチーフ含有リンパ増殖エレメントは、スイッチモチーフを有し、これは、例示的な実施形態では、Box1モチーフに対して-1位、-2位、および-6位に一つ以上、および好ましくはすべての疎水性残基を有する。特定の実施形態では、リンパ増殖エレメントのICDであるBox1モチーフは、Box2モチーフに比べて膜貫通(TM)ドメインの近位に位置し(例えば、TMドメインから5~15または約10残基下流)、Box2モチーフは、STAT結合モチーフに比べて膜貫通ドメインの近位に位置する(例えば、TMドメインから10~50残基下流)。STAT結合モチーフは、典型的にはチロシン残基を含み、そのリン酸化は、リンパ増殖エレメントのSTAT結合モチーフへのSTATの結合に影響を与える。一部の実施形態では、複数のSTAT結合モチーフが天然のICD(例えば、EPO受容体およびIL-6受容体シグナル伝達鎖(gp130))中に存在する場合、ICDは複数のSTAT結合モチーフを含む。一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインを含有するスイッチモチーフは、MPL(配列番号283の残基11、15および16のスイッチモチーフ)であってもよい。
【0375】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のリン酸化可能な残基、例えばリン酸化可能なセリン、スレオニンまたはチロシンを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のリン酸化可能な残基を含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、IL31RA(配列番号275の残基Y96、Y237およびY165のリン酸化可能なチロシン;配列番号276には存在しない)、CD27(配列番号205の残基S6のリン酸化可能なセリン)、CSF2RB(配列番号213の残基Y306のリン酸化可能なチロシン)、IL6ST(配列番号247の残基S20、S26、S141、S148、S188およびS198のリン酸化可能なセリン)、MPL(配列番号283の残基Y8、Y29、Y78、Y113およびY118のリン酸化可能なチロシン)、CD79B(配列番号211の残基Y16およびY27のリン酸化可能なチロシン)、OSMR(配列294の残基S65およびS128のリン酸化可能なセリン)、またはCD3G(全長CD3Gの残基S123およびS126のリン酸化可能なセリン)であってもよい。一部の実施形態では、CSF3R細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、全長CSF3RのY704、Y729、Y744およびY764に相当するチロシン残基のうちの1個、2個、3個またはすべてを含んでもよく、それらの様々な組み合わせは、Stat3、SOCS3、Grb2、およびp21Rasの結合に重要であることが示されている。一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、そのリン酸化可能な残基のうちの一つ以上が、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸などのリン酸化模倣残基に変異した細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、そのリン酸化可能なチロシンのうちの一つ以上が、例えばアラニン、バリンまたはフェニルアラニンなどの非リン酸化可能な残基に変異した細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、CSF3R細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、全長CSF3RのT615AおよびT618Iに相当する一つ以上の変異を含んでもよく、これは受容体二量体化および活性を増加させることが示されている。
【0376】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のユビキチン化標的モチーフ残基を含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のユビキチン化標的モチーフ残基を含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、MPL(配列番号283のK40およびK60の残基)またはOX40(配列番号296のK17およびK41の残基)であってもよい。本明細書の一部の実施形態では、ユビキチン化標的モチーフ残基を含む細胞内ドメインは、リシンのうちの一つ以上がアルギニンまたは別のアミノ酸に変異してもよい。
【0377】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のTRAF結合部位を含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。理論に限定されないが、TRAF1、TRAF2およびTRAF3結合部位は、アミノ酸配列PXQXT(配列番号303)を含み、式中、各Xは、任意のアミノ酸であってもよく、TRAF2結合部位は個別にコンセンサス配列のSXXE(配列番号304)を含み、式中、各Xは任意のアミノ酸であってもよく、TRAF6結合部位は、コンセンサス配列QXPXEX(配列番号305)を含む。一部の実施形態では、一つ以上のTRAF結合部位を含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD40(配列番号208の残基35~39のTRAF1、TRAF2およびTRAF3に対する結合部位;配列番号208の残基57~60のTRAF2結合部位;配列番号208の残基16~21のTRAF6結合部位)またはOX40(配列番号296の残基20~27のTRAF1、TRAF2、TRAF3およびTRAF5結合モチーフ)であってもよい。
【0378】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、TIRドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、TIRドメインを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、IL17RE(配列番号265の残基13~136のTIRドメイン)、IL18R1(配列番号266の残基28~170のTIRドメイン)、またはMyD88(配列番号284の残基160~304のTIRドメイン)であってもよい。
【0379】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、PI3K結合モチーフドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、PI3K結合モチーフを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28(配列番号206および207の残基12~15のPI3K結合モチーフ、それらはGrb2にも結合する)、ICOS(配列番号225の残基19~22のPI3K結合モチーフ、それらはIL-2産生を増加させる、および/またはGrb2に結合するためにF21Qに変異されてもよい)、OX40(全長OX40の残基34~57のp85 PI3K結合モチーフ)であってもよい。
【0380】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、ジロイシンモチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、ジロイシンモチーフを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、IFNGR2(配列番号230の残基8~9のジロイシンモチーフ)またはCD3G(全長CD3Gの残基131~132のジロイシンモチーフ)であってもよい。一部の実施形態では、ジロイシンモチーフ中の残基のうちの一つまたは両方が変異していてもよい。
【0381】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、一つ以上のN末端デスドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のN末端デスドメインを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、MyD88(配列番号284の残基29~106のN末端デスドメイン)またはTNFRであってもよい。例示的な実施形態ではTNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14、またはTNFRSF18であってもよいTNF受容体(TNFR)の細胞質ドメインは、TRAF(TNF受容体関連因子)および/または「デスドメイン」(DD)分子を含むシグナル伝達分子を動員し得る。T細胞および/またはNK細胞の増殖および/または生存を誘導するTNFRポリペプチドは、当該技術分野で知られており、当業者は、TNFRポリペプチドの対応するドメイン、モチーフ、および点変異を特定することができる。当業者は、例えば、既知の結合モチーフへの配列アラインメントを使用して、異なるTNFRファミリーにおけるTRAFおよび/またはDD結合モチーフを特定することができるであろう。いくつかの実施形態では、TNFR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、一つ以上のTRAF結合モチーフを含み得る。いくつかの実施形態では、TNFR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、DD結合モチーフを含まないか、または細胞内ドメイン内で一つ以上のDD結合モチーフが欠失もしくは変異している。いくつかの実施形態では、TNFR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、TRADDおよび/またはTRAF2を動員し得る。TNFRはまた、リガンド結合に重要であるシステインリッチドメイン(CRD)を含む(Locksley RM et al.Cell.2001 Feb 23;104(4):487-501)。いくつかの実施形態では、TNFR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、TNFR CRDを含まない。
【0382】
一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、IL-1R関連キナーゼと相互作用する一つ以上の中間ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上の中間ドメインを含む一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインは、MyD88(配列番号284の残基107~156の中間ドメイン)であってもよい。
【0383】
一部の実施形態では、IL7RAに由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、S領域またはT領域(全長IL7RAの残基359~394のS領域、ならびに残基Y401、Y449およびY456のT領域)のうちの一つ以上を含んでもよい。IL7RAに由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントは、IL7RA以外の受容体に由来する第二の細胞内ドメインを含む。一部の実施形態では、第二の細胞内ドメインは、TNFRSF8に由来する。一部の実施形態では、第二の細胞内ドメインは、IL2Rβに由来する。一部の実施形態では、第二の細胞内ドメインは、IL12Rβ2に由来する。IL7RAに由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、EpoR、GP130、PrlR、GHR、GCSFRまたはTPOR/MPLに由来する。IL2Rβに由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、EpoR、GP130、PrlR、GHR、GCSFRまたはTPOR/MPLに由来する。IL12Rβ2に由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、EpoR、GP130、PrlR、GHR、GCSFRまたはTPOR/MPLに由来する。IL2Rβ、IL7RA、またはIL2Rβに由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、天然TPOR/MPLのアミノ酸478~582を含む。
【0384】
CD40に由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、MyD88、CD28ファミリーメンバー(例えば、CD28、ICOS)、パターン認識受容体、C反応性タンパク質受容体(すなわち、Nodi、Nod2、PtX3-R)、TNF受容体、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、4-1BB)、HSP受容体(Lox-1およびCD91)、またはCD28に由来する細胞内ドメイン以外であってもよい。パターン認識受容体は、これらに限定されないが、エンドサイトーシスのパターン認識受容体(すなわち、マンノース受容体、スカベンジャー受容体(すなわち、Mac-1、LRP、ペプチドグリカン、タイコ酸、毒素、CD1 1 c/CR4))、外部シグナルパターン認識受容体(Toll様受容体(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10)、ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRPは細菌ペプチドグリカンおよびCD14に結合する)、内部シグナルパターン認識受容体(すなわち、NOD受容体1および2)、ならびにRIG1を含む。
【0385】
一部の実施形態では、MyD88に由来する細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、全長MyD88において、変異L93P、R193CおよびL265Pのうちの一つ以上を含んでもよい(配列番号284の変異L93P、R196CおよびL260P)。MyD88に由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、TNFRSF4またはTNFRSF8に由来し得る。MyD88に由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの他の例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、CD28ファミリー類(例えば、CD28、ICOS)、パターン認識受容体、C反応性タンパク質受容体、TNF受容体、またはHSP受容体に由来する細胞内ドメイン以外であってもよい。
【0386】
一部の実施形態では、MPLの細胞内ドメインと膜貫通ドメインを含むリンパ増殖エレメントを発現する細胞は、エルトロンボパグと接触またはエルトロンボパグに暴露されてもよく、またはかかる細胞が注入される患者または対象は、エルトロンボパグで治療されてもよい。理論によって限定されるものではないが、エルトロンボパグは、MPLの膜貫通ドメインに結合し、MPLの細胞内ドメインの活性化を誘導する。
【0387】
T細胞および/またはNK細胞の増殖および/または生存を誘導するMPLのドメイン、モチーフ、および点変異は、当該技術分野で知られており、当業者は、MPLポリペプチドの対応するドメイン、モチーフ、および点変異を特定することができ、そのうちのいくつかがこの段落で考察される。配列番号283のアミノ酸70~95を包含する領域の欠失は、v-mplと関連してウイルス形質転換を支持することが示されており(Benit et al.J Virol.1994 Aug;68(8):5270-4)、したがって、この領域がこれに関連したmplの機能に必要ないことを示している。Morello et al.Blood 1995 July;86(8):557-71は、同じ欠失を使用して、この領域がヘマトポエチン受容体応答性CATレポーター遺伝子構築物の転写を刺激するために必要ではないことを示し、さらに、DrachmanおよびKaushanskyによって示唆されたように、この欠失がこの領域における非必須かつ否定的な要素の除去に期待されるわずかに強化された転写をもたらしたことを見出した。したがって、いくつかの実施形態では、MPL細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号283のアミノ酸70~95を含む領域を含まない。Lee et al.は、コンピュータシミュレーションを使用して、MPLの膜貫通ドメインに臨床的に関連する変異が、以下の順序の活性化効果でMPLを活性化するはずであることを発見した:W515K(配列番号283のアミノ酸置換W2Kに対応)>S505A(配列番号187のアミノ酸置換S14Aに対応)>W515I(配列番号283のアミノ酸置換W2Iに対応)>S505N(配列番号187のアミノ酸置換S14Nに対応、これは部分T075(配列番号188)として試験された)(Lee et.al.PLoS One.2011;6(8):e23396)。シミュレーションは、これらの変異がMPLのキナーゼパートナーであるJAK2の構造的活性化を引き起こし得ることを予測した。いくつかの実施形態では、MPLの細胞内部分は、配列番号283に存在する、本明細書に記載される一つ以上、またはすべてのドメインおよびモチーフを含み得る。一部の実施形態では、MPLの膜貫通部分は、配列番号187に存在する、本明細書に記載される一つ以上、またはすべてのドメインおよびモチーフを含み得る。MPLに由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、CD79Bに由来し得る。
【0388】
CD79Bに由来する第二の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第一の細胞内ドメインは、CSF3Rに由来し得る。
【0389】
一部の実施形態では、PRLR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、PRLRの成長ホルモン受容体結合ドメインおよび任意の公知の変異を含む(配列番号295の残基28~104の成長ホルモン受容体結合ドメイン)。
【0390】
一部の実施形態では、ICOS細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、カルシウムシグナル伝達モチーフを含んでもよい(配列番号225の残基5~8のカルシウム-シグナル伝達モチーフ)。一部の実施形態では、ICOS細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、第一および第二の保存モチーフのうち少なくとも一つを含んでもよい(配列番号225のそれぞれ残基9~18および24~30の第一および第二の保存モチーフ)。一部の実施形態では、ICOS細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、第一および第二の保存モチーフのうち少なくとも一つを含まない。
【0391】
EPORはまた、EPORの内在化に重要な短いセグメントを含有する(完全長EPORの残基267~276)。いくつかの実施形態では、EPOR細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントは、内在化セグメントを含まない。
【0392】
T細胞および/もしくはNK細胞の増殖ならびに/または生存を誘導する細胞内シグナル伝達ドメインのドメイン、モチーフおよび点変異は当分野に公知であり、当業者であれば、ポリペプチド中の対応するドメイン、モチーフおよび点変異を識別することができ、それらの一部は上記にあり、当業者であれば、他のポリペプチド中の対応するドメイン、モチーフおよび点変異を識別することができる。当業者であれば、例えば公知の結合モチーフに対する配列アライメントを使用して、類似したポリペプチド中のこれらドメイン、モチーフおよび点変異を識別することができる。一部の実施形態では、本明細書のリンパ増殖エレメントは、例えば、本明細書に開示される細胞内シグナル伝達ドメイン、またはT細胞および/もしくはNK細胞の増殖ならびに/または生存を誘導することが別段により知られている細胞内シグナル伝達ドメインのドメイン、モチーフおよび点変異のうちのいずれか、例えば、一つ以上からすべてまでを含むことができる。
【0393】
別の実施形態では、LEは、インビボでT細胞拡張を駆動する特性を提供することができる、および/またはその特性を保有する(またはLEで改変、遺伝子改変、および/または形質導入された細胞は、インビボでのT細胞増大の駆動を提供することができる、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されている)。
【0394】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、表1に列挙される配列(配列番号84~302)のいずれかを含み得る。表1は、CLEで試験したドメインの部分、名称(遺伝子名を含む)、およびアミノ酸配列を示す。CLEは、特定の例示的な実施形態では、細胞外ドメイン(ECD)(P1と示される)、膜貫通ドメイン(TM)(P2と示される)、第一の細胞内ドメイン(ICD)(P3と示される)、および第二の細胞内ドメイン(P4と示される)を含んでもよい。一部の実施形態では、本明細書に提供されるCLEは、それぞれがTMドメインとICDを含む二つの異なるLEポリペプチドまたはCLEポリペプチドから構成されるヘテロ二量体CLEであってもよく、例示的な実施形態では、当該ヘテロ二量体の各LEポリペプチドのTMまたはECDは、他方(すなわち、相補的な二量体化モチーフ)に結合することができる二量体化モチーフを含む。これらヘテロ二量体CLEの一部の実施形態では、一つのポリペプチドのICDは、本明細書で呼称される第一のICDのいずれかであり、当該ホモ二量体の他方のポリペプチドのICDは、本明細書で呼称される第二のICDのいずれかである。これらのヘテロ二量体CLEの一部の実施形態では、一つのポリペプチドのICDは、表1のP3 ICDのうちの一つであり、当該ヘテロ二量体の他方のポリペプチドのICDは、表1の対応するP4 ICDを含む。特定の例示的な実施形態では、かかるヘテロ二量体CLEをコードするレトロウイルスは、対象に直接投与されてもよい。特定の例示的な実施形態では、かかるヘテロ二量体CLEをコードするレトロウイルスは、膜結合サイトカインを含んでもよい。
【0395】
典型的には、リンパ増殖エレメントは、第一の細胞内ドメインを含む。例示的な実施形態では、第一の細胞内ドメインは、S036~S0216として、もしくは表1に列挙される部分のいずれか、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、第二の細胞内ドメインを含み得る。例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、S036~S0216として、もしくは表1に列挙される部分のいずれか、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外ドメインを含み得る。例示的な実施形態では、細胞外ドメインは、表1にM001~M049もしくはE006~E015として列挙される部分の配列のいずれか、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、膜貫通ドメインを含み得る。例示的な実施形態では、膜貫通ドメインは、表1にM001~M049もしくはT001~T082として列挙される部分のいずれか、またはその機能的変異体および/もしくは断片を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外/膜貫通ドメイン(表1のM001~M049)、第一の細胞内ドメイン(表1のS036~S0216)、および第二の細胞内ドメイン(表1のS036~S216)の融合であってもよい。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外ドメイン(表1のE006~E016)、膜貫通ドメイン(表1のT001~T082)、第一の細胞内ドメイン(表1のS036~S0216)、および第二の細胞内ドメイン(表1のS036~S0216)の融合であってもよい。例えば、リンパ増殖エレメントは、E006、T001、S036、およびS216の融合であってもよく、これは、E006-T001-S036-S216)としても記述される。例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、融合E010-T072-S192-S212、E007-T054-S197-S212、E006-T006-S194-S211、E009-T073-S062-S053、E008-T001-S121-S212、E006-T044-S186-S053、またはE006-T016-S186-S050であってもよい。
【0396】
例示的な実施形態では、LEの細胞内ドメイン、または二つ以上の細胞内ドメインを有するLEの第一の細胞内ドメインは、ITAM含有細胞内ドメインからの機能的細胞内活性化ドメイン、例えば、CD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCERlG、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、またはZAP70、およびさらなる例示的な下位実施形態ではCD3zからの細胞内ドメイン以外である。例示的な実施形態では、LEの細胞外ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含まない。さらなる例示的な実施形態では、結合パートナーに結合するとLEを活性化するLEの細胞外ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含まない。CLEは、ASTR、ならびにCD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCERlG、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、またはZAP70からの活性化ドメインの両方を含まない。LEがASTRを含む(および上記リスト中の活性化ドメインは含まない)場合、例示的実施形態におけるLEのASTRは、scFvを含まない。一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントは、細胞外ドメインを含まない。
【0397】
一部の実施形態では、リンパ増殖エレメント、および例示的な実施形態ではCLEは、サイトカインに共有結合していない。一部の態様では、リンパ増殖エレメント、および例示的な実施形態ではCLEは、その同族受容体に共有結合したサイトカインポリペプチドを含む。これらの実施形態のいずれかにおいて、CLEは、構造的に活性であってもよく、かつ典型的には、対応する活性化された野生型サイトカイン受容体と同じJak/STATおよび/またはTRAF経路を構造的に活性化する。一部の実施形態では、キメラサイトカイン受容体は、インターロイキンである。一部の実施形態では、CLEは、IL7RAに共有結合したIL-7であるか、またはIL15RAに共有結合したIL-15である。他の実施形態では、CLEは、IL15RAに共有結合したIL-15以外である。他の態様では、CLEは、サイトカインポリペプチドを結合することができる細胞外ドメインの機能的部分を含むその同族受容体の一部分にのみ共有結合したサイトカインポリペプチドを含み、膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインは、異種ポリペプチドに由来し、CLEは、構造的に活性である。一つの実施形態では、CLEは、IL7RAの細胞外および膜貫通ドメイン、ならびにIL2RBからの細胞内ドメインに共有結合したIL-7である。別の実施形態では、CLEは、サイトカインポリペプチドであり、当該ポリペプチドは、その同族受容体の一部に共有結合され、当該同族受容体は、当該サイトカインポリペプチドに結合することができる細胞外ドメインの機能性部分、異種膜貫通ドメイン、および本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントの細胞内ドメイン、を含む。一部の実施形態では、リンパ増殖エレメントは、サイトカインにつながれていないサイトカイン受容体である。
【0398】
一部の態様では、リンパ増殖エレメントは、可溶性シトインまたは成長因子に結合することができ、かかる結合は、活性に必要である。特定の例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは構造的に活性であり、したがって活性のために可溶性成長因子またはサイトカインへの結合を必要としない。典型的には、構造的に活性なリンパ増殖エレメントは、可溶性サイトカインまたは成長因子に結合しない。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、一つの受容体からの細胞外結合ドメインおよび異なる受容体からの細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラである。いくつかの実施形態では、CLEは、その天然受容体に結合したときに増殖および/または生存を阻害するが、代わりにCLEを活性化したときに増殖および/または生存をもたらすリガンドの結合時に活性化される逆受容体である。いくつかの実施形態では、逆受容体は、IL4Raからの細胞外リガンド結合ドメイン、およびIL7RaまたはIL21からの細胞内ドメインを含むキメラを含む。逆サイトカイン受容体のその他の実施形態は、IL-4、IL-10、IL-13、またはTGFbの受容体など、その天然リガンドに結合したときに増殖および/または生存を阻害する受容体に由来する細胞外リガンド結合ドメイン、および本明細書に開示される任意のリンパ増殖エレメントの細胞内ドメインを含むキメラを含む。例示的な態様では、リンパ増殖エレメントは、サイトカインに結合しない。さらなる例示的な態様では、リンパ増殖エレメントは、いずれのリガンドにも結合しない。例示的な実施形態では、いずれのリガンドにも結合しないリンパ増殖エレメントは、構造的に二量体化され、または別段により多量体化され、構造的に活性である。リンパ増殖エレメントを含む本明細書に提供される方法および組成物のいずれかの例示的な実施形態では、細胞内ドメインは、TNF受容体ファミリー、CD40の膜貫通タンパク質の細胞内部分に由来し得る。T細胞および/またはNK細胞の増殖および/または生存を誘導するCD40のドメイン、モチーフ、および点変異は、当該技術分野で知られており、当業者は、CD40ポリペプチドの対応するドメイン、モチーフ、および点変異を特定することができ、そのうちのいくつかがこの段落で考察される。CD40タンパク質は、TRAFタンパク質のいくつかの結合部位を含有する。理論によって限定されるものではないが、TRAF1、TRAF2、およびTRAF3の結合部位は、CD40の細胞内部分の膜遠位ドメインに位置し、アミノ酸配列PXQXT(配列番号303)を含み、各Xは、任意のアミノ酸(配列番号208のアミノ酸35~39に対応)であってもよい(Elgueta et al.Immunol Rev.2009 May;229(1):152-72)。TRAF2は、コンセンサス配列SXXE(配列番号304)に結合することも示されており、各Xは、任意のアミノ酸(配列番号208のアミノ酸57~60に対応)であってもよい(Elgueta et al.Immunol Rev.2009 May;229(1):152-72)。TRAF6の別個の結合部位は、CD40の細胞内部分の膜近位ドメインに位置し、コンセンサス配列QXPXEX(配列番号305)を含み、各Xは、任意のアミノ酸(配列番号208のアミノ酸16~21に対応)であってもよい(Lu et al.J Biol Chem.2003 Nov 14;278(46):45414-8)。例示的な実施形態では、膜貫通タンパク質CD40の細胞内部分は、TRAFタンパク質のすべての結合部位を含み得る。TRAF結合部位は、当該技術分野で知られており、当業者は、同様のCD40ポリペプチド中の対応するTRAF結合部位を特定することができるであろう。いくつかの実施形態では、好適な細胞内ドメインは、配列番号208または209の一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてのアミノ酸に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、CD40に由来する細胞内ドメインは、約30アミノ酸(aa)~約35aa、約35aa~約40aa、約40aa~約45aa、約45aa~約50aa、約50aa~約55aa、約55aa~約60aa、または約60aa~約65aaの長さを有する。例示的な実施形態では、CD40に由来する細胞内ドメインは、約30aa~約66aa、例えば、30aa~65aa、または50aa~66aaの長さを有する。CD40に由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、MyD88、CD28ファミリーメンバー(例えば、CD28、ICOS)、パターン認識受容体、C反応性タンパク質受容体(すなわち、Nodi、Nod2、PtX3-R)、TNF受容体、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、4-1BB)、HSP受容体(Lox-1およびCD91)、またはCD28に由来する細胞内ドメイン以外であってもよい。特定の実施形態では、本明細書のCLEの一つの細胞内ドメインは、CD40に由来する細胞内ドメイン、またはその機能性断片であり、CLEの別の細胞内ドメインは、MPLの細胞内ドメイン、またはその機能性断片である。パターン認識受容体は、これらに限定されないが、エンドサイトーシスのパターン認識受容体(すなわち、マンノース受容体、スカベンジャー受容体(すなわち、Mac-1、LRP、ペプチドグリカン、タイコ酸、毒素、CD1 1 c/CR4))、外部シグナルパターン認識受容体(Toll様受容体(TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10)、ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRPは細菌ペプチドグリカンおよびCD14に結合する)、内部シグナルパターン認識受容体(すなわち、NOD受容体1および2)、ならびにRIG1を含む。
【0399】
リンパ増殖エレメントを含む本明細書に提供される方法および組成物のいずれかの例示的な実施形態では、細胞内ドメインは、膜貫通タンパク質MPLの一部に由来し得る。したがって、いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、MPLを含むか、またはMPLであるか、またはそのバリアントおよび/もしくは断片であり、MPLの膜貫通および/または細胞外ドメインを伴うか、または伴わず、MPLの細胞内ドメインの少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%を含むバリアントおよび/または断片を含み、バリアントおよび/または断片は、PBMC、およびいくつかの実施形態ではT細胞の細胞増殖を促進する能力を保持する。いくつかの実施形態では、MPLの細胞内および膜貫通ドメインを含むリンパ増殖エレメントを発現する細胞は、エルトロンボパグと接触し得るか、それに曝露され得るか、またはそれで処理され得る。理論によって限定されるものではないが、エルトロンボパグは、MPLの膜貫通ドメインに結合し、MPLの細胞内ドメインの活性化を誘導する。T細胞および/またはNK細胞の増殖および/または生存を誘導するMPLのドメイン、モチーフ、および点変異は、当該技術分野で知られており、当業者は、MPLポリペプチドの対応するドメイン、モチーフ、および点変異を特定することができ、そのうちのいくつかがこの段落で考察される。膜貫通型MPLタンパク質は、Box1モチーフPXXP(配列番号306)(各Xは、任意のアミノ酸(配列番号283のアミノ酸17~20に対応)であってもよい)、ならびにBox2モチーフ(セリンおよびグルタミン酸含有量が増加した領域)(配列番号283のアミノ酸46~64に対応)を含有する(Drachman and Kaushansky.Proc Natl Acad Sci USA.1997 Mar 18;94(6):2350-5)。Box1およびBox2モチーフは、JAKへの結合およびシグナル伝達に関与するが、Box2モチーフの存在は、増殖シグナルに必ずしも必要とされない(Murakami et al.Proc Natl Acad Sci USA.1991 Dec 15;88(24):11349-53、Fukunaga et al.EMBO J.1991 Oct;10(10):2855-65、およびO’Neal and Lee.Lymphokine Cytokine Res.1993 Oct;12(5):309-12)。多くのサイトカイン受容体は、Box1モチーフに対して-1位、-2位、および-6位に疎水性残基を有し(それぞれ配列番号283のアミノ酸16、15、および11に対応)、これらは、サイトカイン誘導性JAK2活性化に必要であるがJAK2結合には必要ではない「スイッチモチーフ」を形成する(Constantinescu et al.Mol Cell.2001 Feb;7(2):377-85;and Huang et al.Mol Cell.2001 Dec;8(6):1327-38)。配列番号283のアミノ酸70~95を包含する領域の欠失は、v-mplと関連してウイルス形質転換を支持することが示されており(Benit et al.J Virol.1994 Aug;68(8):5270-4)、したがって、この領域がこれに関連したmplの機能に必要ないことを示している。Morello et al.Blood 1995 July;86(8):557-71は、同じ欠失を使用して、この領域がヘマトポエチン受容体応答性CATレポーター遺伝子構築物の転写を刺激するために必要ではないことを示し、さらに、DrachmanおよびKaushanskyによって示唆されたように、この欠失がこの領域における非必須かつ否定的な要素の除去に期待されるわずかに強化された転写をもたらしたことを見出した。したがって、いくつかの実施形態では、MPL細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号283のアミノ酸70~95を含む領域を含まない。完全長MPLにおいて、リジンK553(配列番号283のK40に対応)およびK573(配列番号283のK60に対応)は、ユビキチン化標的化モチーフの一部として機能する負の調節部位であることが示されている(Saur et al.Blood 2010 Feb 11;115(6):1254-63)。したがって、本明細書のいくつかの実施形態では、MPL細胞内シグナル伝達ドメインは、これらのユビキチン化標的化モチーフ残基を含まない。完全長MPLにおいて、チロシンY521(配列番号283のY8に対応)、Y542(配列番号283のY29に対応)、Y591(配列番号283のY78に対応)、Y626(配列番号283のY113に対応)、およびY631(配列番号283のY118に対応)が、リン酸化されることが示されている(Varghese et al.Front Endocrinol(Lausanne).2017 Mar 31;8:59)。完全長MPLのY521およびY591は、リソソーム標的化モチーフ(Y521)の一部として、またはアダプタータンパク質AP2(Y591)との相互作用を介してのいずれかで機能する負の調節部位である(Drachman and Kaushansky.Proc Natl Acad Sci USA.1997 Mar 18;94(6):2350-5、およびHitchcock et al.Blood.2008 Sep 15;112(6):2222-31)。完全長MPLのY626およびY631は、正の調節部位であり(Drachman and Kaushansky.Proc Natl Acad Sci U S A.1997 Mar 18;94(6):2350-5)、Y626のマウス相同体は、細胞分化およびShcのリン酸化に必要であり(Alexander et al.EMBO J.1996 Dec 2;15(23):6531-40)、Y626はまた、以下に記載されるW515A変異を有するMPLの構造的シグナル伝達に必要である(Pecquet et al.Blood.2010 Feb 4;115(5):1037-48)。MPLは、Shcホスホチロシン結合の結合モチーフNXXY(配列番号307)を含有し、各Xは、任意のアミノ酸(配列番号283のアミノ酸110-113に対応)であってもよく、このチロシンは、リン酸化されており、Shc、SHIP、およびSTAT3のTPO依存性リン酸化に重要である(Laminet et al.J Biol Chem.1996 Jan 5;271(1):264-9、およびvan der Geer et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1996 Feb 6;93(3):963-8)。MPLはまた、STAT3コンセンサス結合配列YXXQ(配列番号308)を含有し、各Xは、任意のアミノ酸(配列番号283のアミノ酸118~121に対応)であってもよい(Stahl et al.Science.1995 Mar 3;267(5202):1349-53)。この配列のチロシンは、リン酸化され得、MPLは、部分的なSTAT3動員が可能である(Drachman and Kaushansky.Proc Natl Acad Sci USA.1997 Mar 18;94(6):2350-5)。MPLはまた、配列YLPL(配列番号309)(配列番号283のアミノ酸113~116に対応)を含有し、これは、STAT5動員pYLXL(配列番号310)のコンセンサス結合部位に類似しており、pYは、ホスホチロシンであり、Xは、任意のアミノ酸であってもよい(May et al.FEBS Lett.1996 Sep 30;394(2):221-6)。Lee et al.は、コンピュータシミュレーションを使用して、MPLの膜貫通ドメインに臨床的に関連する変異が、以下の順序の活性化効果でMPLを活性化するはずであることを発見した:W515K(配列番号283のアミノ酸置換W2Kに対応)>S505A(配列番号187のアミノ酸置換S14Aに対応)>W515I(配列番号283のアミノ酸置換W2Iに対応)>S505N(配列番号187のアミノ酸置換S14Nに対応、これは部分T075(配列番号188)として試験された)(Lee et.a.PLoS One.2011;6(8):e23396)。シミュレーションは、これらの変異がMPLのキナーゼパートナーであるJAK2の構造的活性化を引き起こし得ることを予測した。上記および他の結果に基づき、MPL ICDは、自身、Shc、SHIP、JAK2、TYK2、STAT3、STAT5、および他のタンパク質(SH2結合ドメインおよび/またはホスホチロシン-結合ドメインを含む他のタンパク質)に直接または間接的に結合し、チロシンリン酸化を誘導するドメインを含む。これらのタンパク質がMPLに結合すると、リン酸化が発生し、Shc-Grb2-SOSアダプタータンパク質複合体が形成され、ホスファターゼSHIPおよびSHPTP-2が活性化し、ならびにホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)/AKTおよびRaf-1/MAPキナーゼ経路の両方が刺激sあれる。一部の実施形態では、MPLの細胞内部分は、配列番号283に存在する、本明細書に記載される一つ以上、またはすべてのドメインおよびモチーフを含んでもよい。これらとしては限定されないが、本項、LEの項、および本明細書、例示的実施形態において示唆される、増殖および/または生存を促進するタンパク質の結合および/または経路の活性化に関与するMPLドメインが挙げられる。一部の実施形態では、MPLの膜貫通部分は、配列番号187に存在する、本明細書に記載される一つ以上、またはすべてのドメインおよびモチーフを含み得る。本明細書に提供されるMPLのドメイン、モチーフ、および点変異は、当該技術分野で知られており、当業者は、例示的な実施形態における本明細書のMPL細胞内シグナル伝達ドメインが、増殖活性を促進することが示され、かつMPL増殖活性を阻害することが示されているものは含まない一つ以上の対応するドメイン、モチーフ、および点変異を含むことを認識するであろう。MPLのこれらのドメイン、モチーフ、および点変異のいずれか、またはすべては、細胞内シグナル伝達ドメイン内に存在してもよく、本明細書に開示される態様および実施形態のいずれに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、好適な細胞内ドメインは、配列番号283の一続きの少なくとも10、15、20、またはすべてのアミノ酸に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、MPLに由来する細胞内ドメインは、約30aa~約35aa、約35aa~約40aa、約40aa~約45aa、約45aa~約50aa、約50aa~約55aa、約55aa~約60aa、約60aa~約65aa、約65aa~約70aa、約70aa~約100aa、約100aa~約125aa、約125aa~150aa、約150~約175aa、約175aa~約200aa、約200aa~約250aa、約250aa~300aa、約300aa~350aa、約350aa~約400aa、約400aa~約450aa、約450aa~約500aa、約500aa~約550aa、約550aa~約600aa、または約600aa~約635aaの長さを有する。例示的な実施形態では、MPLに由来する細胞内ドメインは、約30aa~約200aa、例えば30aa~150aa、30aa~119aa、30aa~121aa、30aa~122aa、または50aa~125aaの長さを有する。MPLに由来する第一の細胞内ドメインを含むリンパ増殖エレメントの例示的な実施形態では、第二の細胞内ドメインは、CD79Bに由来し得る。
【0400】
本明細書に開示される態様のいずれかに含まれ得るリンパ増殖エレメントおよびCLEは、WO2019/055946に開示されるLEまたはCLEのいずれかであってもよい。その中では、形質導入後7日目と21、28、35、および/または42日目との間にCLEをコードするレンチウイルス粒子で形質導入されたPBMCの細胞培養における増殖を促進するCLEが開示された。さらに、その中では、CARによって認識される抗原の存在下または非存在下で、マウスのインビボでの増殖を促進するCLEが特定され、CLEおよびCARのうちの一つを発現するT細胞がマウスに導入された。本明細書に例示されるように、試験および/または基準を使用して、LE、またはLEの試験ドメイン、例えば第一の細胞内ドメイン、もしくは第二の細胞内ドメイン、もしくは第一および第二の細胞内ドメインの両方を含む任意の試験ポリペプチドが、実際にLEまたはLEの有効な細胞内ドメイン、または特に有効なLEまたはLEの細胞内ドメインであるかどうかを特定することができる。したがって、特定の実施形態では、LE、またはLEをコードするポリヌクレオチドもしくは核酸を含む本明細書に提供される任意の態様または他の実施形態は、LEが本明細書に提供されるLEを特定するための特定された試験または基準のうちの一つ以上を満たす、その特性を提供する、もしくは提供することができる、および/またはその特性を保有すること、ならびに組換え核酸ベクターで遺伝子改変、形質導入、および/または安定してトランスフェクトされた細胞、例えば、LEをコードするレンチウイルス粒子で形質導入された細胞が、列挙された試験のうちの一つ以上の結果を提供することができる、そのために適合されている、その性質を保有する、および/またはそのために改変されていることを列挙することができる。一実施形態では、LEは、同一条件下での対照レトロウイルス粒子、例えばレンチウイルス粒子と比較して、外因的に添加されたサイトカインの非存在下での形質導入後のインビトロ培養の7日目と21、28、35、および/または42日目との間に、LE、およびCD3ゼータ細胞内活性化ドメインを含むが共刺激ドメインを含まない抗CD19 CARをコードする核酸を含むレンチウイルスで形質導入された事前活性化PBMCに対する改善された増大を提供する、提供することができる、および/もしくはその特性を保有する(またはLEをコードするレトロウイルス粒子で遺伝子改変および/もしくは形質導入された細胞は、それを提供することができる、それのために適合されている、その特性を保有する、および/もしくはそのために改変されている)。いくつかの実施形態では、推定LE(試験細胞)をコードする試験構築物をコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)で形質導入された細胞の生存、増大、および/または増殖の改善または強化についてのリンパ増殖エレメント試験が、例えば、非形質導入細胞、またはリンパ増殖エレメントをコードする核酸を含むがリンパ増殖エレメントを欠く、もしくは試験ポリペプチド構築物の細胞内ドメイン(複数可)を欠くが、存在する場合は同じ細胞外ドメイン、およびそれぞれの試験ポリペプチド構築物の同じ膜貫通領域もしくは膜標的化領域を含むレンチウイルス粒子と同一の対照レトロウイルス(例えばレンチウイルス)粒子で形質導入された細胞のいずれかであってもよい対照細胞との比較に基づいて実行され得る。いくつかの実施形態では、対照細胞は、リンパ増殖エレメントを例示するものとして本明細書で特定される、リンパ増殖エレメントまたはその細胞内ドメインをコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)で形質導入される。そのような実施形態では、試験基準は、試験構築物をコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)対対照リンパ増殖エレメントをコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)を使用して、典型的にはそれで転写された細胞を分析することによって、試験が実施される場合、少なくとも同程度の濃縮、生存、および/もしくは増大が存在すること、または濃縮、生存、および/もしくは増大の統計的差異がないことを含み得る。本明細書のリンパ増殖エレメントの例示的または説明的な実施形態は、一部の実施形態では、そのような試験のための対照のリンパ増殖エレメントの解説的実施形態である。
【0401】
いくつかの実施形態では、推定または試験リンパ増殖エレメントの改善された特性についてのこの試験は、複製を実施すること、および/または統計的試験を実施することによって実施される。当業者は、多くの統計的試験がそのようなリンパ増殖エレメント試験に使用され得ることを認識するであろう。これらの実施形態におけるそのような試験について企図されるのは、当該技術分野で知られている任意のそのような試験である。いくつかの実施形態では、統計的試験は、T検定またはマンホイットニーウィルコクソン検定であってもよい。いくつかの実施形態では、試験構築物の正規化された濃縮レベルは、0.1未満、または0.05未満、または0.01未満のp値で有意である。
【0402】
別の実施形態では、LEは、外因的に添加されたサイトカインの非存在下でのインビトロ培養の7日目と21、28、35、および/または42日目との間に、CD3ゼータ細胞内活性化ドメインを含むが共刺激ドメインを含まない抗CD19CARとともに形質導入された場合、LEをコードする核酸で形質導入された事前活性化PBMCの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍の増大、または1.5倍~25倍の増大、または2倍~20倍の増大、または2倍~15倍の増大、または5倍~25倍の増大、または5倍~20倍の増大、または5倍~15倍の増大を提供する、提供することができる、および/もしくはその特性を保有する(またはLEで遺伝子改変および/もしくは形質導入された細胞は、それを提供することができる、そのために適合されている、その特性を保有する、および/もしくはそのために改変されている)。いくつかの実施形態では、試験は、PBMCの存在下で、例えば形質導入された細胞対PBMCの1:1の比で実施され、これは、例えば、適合ドナーからのものであってもよく、いくつかの実施形態では、試験は、PBMCの非存在下で行われる。いくつかの実施形態では、これらの試験のいずれかの増大の分析は、WO2019/055946に示されるように実施される。いくつかの実施形態では、試験は、さらなる統計的試験および0.1、0.05、または0.01未満のP値などのカットオフを含み得、試験ポリペプチドまたはそれをコードする核酸は、一方または両方の閾値を満たす必要がある(すなわち、倍数増大および統計的カットオフ)。
【0403】
本明細書に提供されるリンパ増殖エレメント試験のいずれについても、試験細胞の数および対照細胞の数は、形質導入後7日目と14、21、28、35、42、または60日目との間で比較され得る。いくつかの実施形態では、試験細胞および対照細胞の数は、DNAを配列決定し、各構築物に存在する一意の識別子の出現をカウントすることによって決定され得る。いくつかの実施形態では、試験細胞および対照細胞の数は、例えば血球計または細胞カウンターを用いて直接カウントされ得る。いくつかの実施形態では、すべての試験細胞および対照細胞が、同じ容器、ウェル、またはフラスコ内で成長し得る。いくつかの実施形態では、試験細胞は、一つ以上のウェル、フラスコまたは容器に播種され得、対照細胞は、一つ以上のフラスコまたは容器に播種され得る。いくつかの実施形態では、試験細胞および対照細胞は、ウェルまたはフラスコに個別に、例えばウェル当たり一つの細胞で播種され得る。いくつかの実施形態では、試験細胞および対照細胞の数は、濃縮レベルを使用して比較され得る。いくつかの実施形態では、試験または対照構築物の濃縮レベルは、各構築物に対して、後の時点(14、21、28、35、または45日目)の細胞の数を7日目の細胞の数で割ることによって計算され得る。いくつかの実施形態では、試験または対照構築物の濃縮レベルは、ある時点(14、21、28、35、または45日目)での細胞の数を、非形質導入細胞に対するその時点での細胞の数で割ることによって計算され得る。いくつかの実施形態では、各試験構築物の濃縮レベルをそれぞれの対照構築物の濃縮レベルに正規化して、正規化された濃縮レベルを生成することができる。いくつかの実施形態では、試験構築物にコードされるLEは、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍正規化された濃縮レベル、または1.5倍~25倍正規化された濃縮レベル、または3倍~20倍正規化された濃縮レベル、または5倍~25倍の正規化濃縮レベル、または5倍~20倍正規化濃縮レベル、または5倍~15倍正規化された濃縮レベルを提供する(あるいはLEをコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)で遺伝子改変および/または形質導入された細胞は、そのような正規化された濃縮レベルを提供することができる、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されている)。濃縮は、例えば、直接細胞カウントによって測定され得る。カットオフ値は、一回の試験、二回、三回、四回、もしくは五回の反復、または多数の反復に基づき得る。リンパ増殖エレメントが一つ以上の反復試験を満たすか、すべての反復でカットオフを満たすもしくは超えると、カットオフを満たすことができる。いくつかの実施形態では、濃縮は、log2((試験日での正規化されたカウントデータ+1)/(7日目の正規化されたカウントデータ+1))として測定される。
【0404】
LEを特定するために実施された試験に関する追加の詳細は、実験条件を含め、WO2019/055946に示される。
【0405】
WO2019/055946に示されるように、CLEが7日目と21、28、35、および/または42日目との間にIL-2などのサイトカインを添加せずにこれらの供給された、または供給されていない培養物で増殖/増大を誘導したため、試験構築物は、CLEとして特定された。例えば、WO2019/055946に示されるように、有効なCLEは、いかなる細胞内ドメインも含まなかった対照構築物と比較して、形質導入後7日目と21、28、35、および/または42日目との間に、非形質導入PBMCが供給された、または供給されていないに関わらず、これらのインビトロ培養物の増大の増加をもたらした試験CLEを特性することによって特定された。WO2019/055946は、試験遺伝子からの細胞内ドメインを含んだ少なくとも一つ、典型的には二つ以上の試験CLEが、細胞内ドメインを含まなかった形質導入後7日目に存在したすべての対照構築物よりも多くの増大をもたらしたことを開示している。WO2019/055946は、第一の細胞内ドメイン、およびこれらの遺伝子からの一つ以上の例示的な細胞内ドメインについて、非常に有効な遺伝子を特定するために使用された統計的方法をさらに提供している。この方法は、マンホイットニーウィルコクソン検定、および0.1未満または0.05未満の偽発見カットオフ率を使用した。WO2019/055946は、例えば、その遺伝子を有するすべての構築物の組み合わせスコアとして計算された遺伝子のスコアを分析することによって、第一の細胞内ドメインまたは第二の細胞内ドメインに特に有効な遺伝子を特定した。そのような分析では、WO2019/055946に開示される試験のうちのいくつかに示されるように、1より大きい、またはいかなる細胞内ドメインもない陰性対照構築物より大きい、または2より大きいカットオフを使用することができる。
【0406】
別の実施形態では、LEは、インビボでT細胞増大を駆動する特性を提供することができる、および/またはその特性を保有する(またはLEで遺伝子改変および/または形質導入された細胞は、インビボでのT細胞増大の駆動を提供することができる、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されている)。例えば、インビボ試験は、WO2019/055946に開示されるように、マウスモデルを利用し、T細胞がLEをコードするレンチウイルスベクターと接触し、マウスに導入された後、インビボで15~25日、またはインビボで19~21日、またはインビボで約21日でT細胞増大を測定することができる。
【0407】
細胞を改変、遺伝子改変、および/または形質導入するための本明細書に提供される方法、ならびにそれらの使用など、典型的にはCARを含むLEを含む例示的な態様および実施形態では、遺伝子改変された細胞は、遺伝子改変および/または形質導入の前に細胞が以前に保有していなかった新たな特性を保有するように改変されている。そのような特性は、CARまたはLE、ならびに例示的な実施形態ではCARおよびLEの両方をコードする核酸による遺伝子改変によって提供され得る。例えば、特定の実施形態では、遺伝子改変および/または形質導入された細胞は、添加されたIL-2の非存在下で、または添加されたサイトカイン、例えばIL-2、IL-15もしくはIL-7の非存在下で、および特定の例示的な実施形態ではCARによって認識される抗原の存在下で、少なくとも7、14、21、28、35、42、もしくは60日間、または形質導入後7日目と14、21、28、35、42、または60日目との間で、エクスビボ培養における生存および/または増殖が可能である、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されており、方法は、シュードタイピングエレメントおよび任意選択でその表面上の別個のまたは融合した活性化ドメインを有するレトロウイルス粒子を使用して遺伝子改変することを含み、典型的には事前活性化を必要としない。
【0408】
特定の実施形態では、生存および/または増殖を強化することができるとは、遺伝子改変および/または形質導入された細胞が、遺伝子改質および/もしくは形質導入される前の遺伝子改変および/もしくは形質導入された細胞と同一の対照細胞、またはLEもしくは推定LEを含む試験レトロウイルス粒子と同一であるがLEもしくはLEの細胞内ドメインを有しないレトロウイルス粒子で形質導入された対照細胞と比較して、一つ以上の添加されたサイトカイン、例えばIL-2、IL-15、もしくはIL-7、または添加されたリンパ球マイトジェン剤の非存在下での培養培地でのエクスビボまたはインビトロ培養における改善された生存または増大を示す、それが可能である、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されていることを意味し、当該対照細胞の当該生存または増殖は、当該一つ以上のサイトカイン、例えばIL-2、IL-15、もしくはIL-7、または当該リンパ球マイトジェン剤を培養培地に添加することによって促進される。添加されたサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤とは、サイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤が外因性供給源から培養培地に添加されて、最初の培養培地と比較して細胞の培養中に培養培地における当該サイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤の濃度を増加させるようにし、いくつかの実施形態では、当該添加前に最初の培養培地に存在しなくてもよいことを意味する。「添加された」または「外因的に添加された」とは、そのようなサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤が、改変後に改変、遺伝子改変、および/または形質導入細胞を培養するために使用されるリンパ球培地に添加されることを意味し、培養培地は、すでにサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤を保有してもよいか、または保有しなくてもよい。複数の培地成分の混合物を含む培地のすべてまたは一部分は、典型的には保存され、例示的な実施形態では、外因的に添加されたサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤なしで、培養が行われる場所に輸送されている。いくつかの実施形態におけるリンパ球培地は、供給業者から購入され、供給業者によって雇用されておらず、かつ供給業者施設内にいない技術者などの使用者が、外因的に添加されたサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤をリンパ球培地に添加し、次いで遺伝子改変および/または形質導入された細胞は、そのような外因的に添加されたサイトカインまたはリンパ球マイトジェン剤の存在下または非存在下で培養される。
【0409】
いくつかの実施形態では、改善または強化された生存、増大、および/または増殖は、CLEをコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)で形質導入された細胞からのDNAを配列決定し、各CLEからの一意の識別子に存在する配列の出現をカウントすることによって決定される細胞の数の増加として示され得る。いくつかの実施形態では、改善された生存および/または改善された増大は、各時点で、例えば血球計または細胞カウンターを用いて細胞を直接カウントすることによって決定され得る。いくつかの実施形態では、改善された生存および/または改善された拡張および/または濃縮は、各構築物に対して、後の時点(21、28、35、および/または45日目)の細胞の数を、7日日の細胞の数で割ることによって計算され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、血球計または細胞カウンターによってカウントされ得る。いくつかの実施形態では、各特定の試験構築物の核酸カウントまたは細胞カウントを使用して決定された濃縮レベルは、それぞれの対照構築物、すなわち同じ細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを有するが、試験構築物に存在する細胞内ドメインを欠く構築物の濃縮レベルに正規化され得る。これらの実施形態では、構築物にコードされるLEは、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍正規化された濃縮レベル、または1.5倍~25倍正規化された濃縮レベル、または3倍~20倍正規化された濃縮レベル、または5倍~25倍の正規化濃縮レベル、または5倍~20倍正規化濃縮レベル、または5倍~15倍正規化された濃縮レベルを提供する(あるいはLEをコードするゲノムを有するレトロウイルス粒子(例えばレンチウイルス粒子)で遺伝子改変および/または形質導入された細胞は、そのような正規化された濃縮レベルを提供することができる、そのために適合されている、その特性を保有する、および/またはそのために改変されている)。
【0410】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、サイトカイン受容体またはそのシグナル伝達ドメインを含む断片を含み得る。一部の実施形態では、サイトカイン受容体は、CD27,CD40,CRLF2,CSF2RA,CSF2RB,CSF3R,EPOR,GHR,IFNAR1,IFNAR2,IFNGR1,IFNGR2,IFNLR1,IL1R1,IL1RAP,IL1RL1,IL1RL2,IL2R,IL2RA,IL2RB,IL2RG,IL3RA,IL4R,IL5RA,IL6R,IL6ST,IL7R,IL7RA,IL9R,IL10RA,IL10RB,IL11RA,IL12RB1,IL13R,IL13RA1,IL13RA2,IL15R,IL15RA,IL17RA,IL17RB,IL17RC,IL17RE,IL18R1,IL18RAP,IL20RA,IL20RB,IL21R,IL22RA1,IL23R,IL27R,IL27RA,IL31RA,LEPR,LIFR,MPL,OSMR,PRLR,TGFβR、TGFβデコイ受容体、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14、またはTNFRSF18であってもよい。
【0411】
いくつかの実施形態では、CLEを含むリンパ増殖エレメントは、本明細書で上記に開示されるような細胞内活性化ドメインを含む。いくつかの例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、ITAM含有ドメインを含む細胞内活性化ドメインを含むCLEであり、したがって、CLEは、本明細書に提供されるCD3Z、CD3D、CD3E、CD3G、CD79A、CD79B、DAP12、FCER1G、FCGR2A、FCGR2C、DAP10/CD28、またはZAP70ドメインに対して少なくとも80%、90%、95%、98%、または100%の配列同一性を有する細胞内活性化ドメインを含み得、CLEは、ASTRを含まない。
【0412】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントの一つ以上のドメインは、共刺激ドメインなどの調節ドメイン、および/またはCARの細胞内活性化ドメインに融合している。全血中のリンパ球を形質導入するための組成物および方法の態様のいくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントの一つ以上の細胞内ドメインは、CARと同じポリペプチドの一部であり得るか、または融合し、任意選択でCARのいくつかの成分に機能的に接続され得る。さらに他の実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、ASTR、細胞内活性化ドメイン(CD3ゼータシグナル伝達ドメインなど)、共刺激ドメイン、およびリンパ増殖性ドメインを含み得る。共刺激ドメイン、細胞内活性化ドメイン、ASTR、および他のCARドメインに関するさらなる詳細は、本明細書の別の箇所に開示されている。
【0413】
本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントは、典型的には膜貫通ドメインを含む。例えば、膜貫通ドメインは、WO2019/055946に開示される以下の遺伝子および代表的な配列からの膜貫通ドメインのいずれか一つに対して80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有し得る:CD8ベータ、CD4、CD3ゼータ、CD28、CD134、CD7、CD2、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD8A CD8B、CD27、CD28、CD40、CD79A、CD79B、CRLF2、CRLF2、CSF2RA、CSF2RB、CSF2RB、CSF3R、EPOR、FCER1G、FCGR2C、FCGRA2、GHR、ICOS、IFNAR、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IFNLR1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL7RA、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17RA、IL17RB、IL17RC、IL17RD、IL17RE、IL18R1、IL18RAP、IL20RA、IL20RB、IL21R、IL22RA1、IL23R、IL27RA、IL27RA、IL31RA、LEPR、LIFR、MPL、OSMR、PRLR、TNFRSF4、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF14およびTNFRSF18、またはそれらの変異体で、かかる変異体の場合には特定の細胞型においてシグナル伝達活性を促進することが知られている。任意の操作されたシグナル伝達ポリペプチドにおける使用に適した膜貫通(TM)ドメインは、これらに限定されないが、本明細書でより詳細に考察されるように、構造的に活性なサイトカイン受容体、LMP1からのTMドメイン、および二量体化モチーフを含む1型TMタンパク質からのTMドメインを含む。I型膜貫通タンパク質からの膜貫通ドメインを含む本明細書に開示される態様のいずれにおいても、膜貫通ドメインは、I型成長因子受容体、ホルモン受容体、T細胞受容体、またはTNFファミリー受容体であってもよい。
【0414】
いくつかの実施形態では、CLEは、同じタンパク質、例示的な実施形態では同じ受容体からの細胞外部分および膜貫通部分の両方を含み、そのいずれかは、例示的な実施形態では変異体であり、したがって細胞外および膜貫通ドメインを形成する。これらのドメインは、少なくともいくつかの細胞タイプで発現されたときに構造的に活性であると報告されているいくつかの実施形態では、サイトカイン受容体もしくはその変異体、またはホルモン受容体もしくはその変異体からのものであってもよい。例示的な実施形態では、そのような細胞外および膜貫通ドメインは、リガンド結合領域を含まない。そのようなドメインは、CLE中に存在し、B細胞、T細胞、および/またはNK細胞で発現される場合、リガンドに結合しないと考えられている。そのような受容体変異体の変異は、膜貫通領域または細胞外膜近傍領域で起こり得る。理論によって限定されるものではないが、本明細書に提供されるCLEの少なくともいくつかの細胞外-膜貫通ドメインにおける変異は、通常は一緒ではない活性化鎖を一緒にすることによって、または連結された膜貫通ドメインおよびもしくは細胞内ドメインの確認を変更することによって、リガンドの非存在下でのCLEのシグナル伝達に関与する。
【0415】
例示的な実施形態では、そのようなドメインを含む実施形態のCLEの例示的な細胞外および膜貫通ドメインは、典型的には、構造的であると報告されている変異受容体からの膜貫通ドメインとともに、膜近位細胞外ドメインの30未満のアミノ酸である細胞外領域であり、これは、関連する細胞内ドメインの活性化にリガンド結合を必要としない。例示的な実施形態では、そのような細胞外および膜貫通ドメインは、IL7RA Ins PPCL、CRLF2 F232C、CSF2RB V449E、CSF3R T640N、EPOR L251C I252C、GHR E260C I270C、IL27RA F523C、およびMPL S505Nを含む。いくつかの実施形態では、細胞外および膜貫通ドメインは、IL7RAの細胞外および/もしくは膜貫通ドメインの一部分、またはその変異体と配列が同一である10、20、25、30、または50を超える連続したアミノ酸を含まない。いくつかの実施形態では、細胞外および膜貫通ドメインは、IL7RA Ins PPCL以外である。いくつかの実施形態では、細胞外および膜貫通は、IL15Rの細胞外および/または膜貫通ドメインの一部分と配列が同一である10、20、25、30、または50を超える連続したアミノ酸を含まない。
【0416】
これらの態様のいずれかの実施形態、および膜貫通ドメインがI型膜貫通タンパク質である実施形態では、膜貫通ドメインは、I型成長因子受容体、ホルモン受容体、T細胞受容体、またはTNFファミリー受容体であってもよい。態様のいずれかの実施形態、およびキメラポリペプチドが細胞外ドメインを含み、細胞外ドメインが二量体化モチーフを含む実施形態では、膜貫通ドメインは、I型サイトカイン受容体、ホルモン受容体、T細胞受容体、またはTNFファミリー受容体であってもよい。
【0417】
いくつかの実施形態では、細胞外および膜貫通ドメインは、ウイルスタンパク質LMP1、またはその変異体および/もしくは断片である。LMP1は、脂質ラフトに標的化された場合、またはCD40に融合した場合に、リガンドとは無関係に細胞シグナル伝達を活性化することが知られているマルチスパン膜貫通タンパク質である(Kaykas et al.EMBO J.20:2641(2001))。LMP1の断片は、典型的には、原形質膜に及び、かつ連結された細胞内ドメインを活性化するのに十分な長さである。例えば、LMP1は、15~386、15~200、15~150、15~100、18~50、18~30、20~200、20~150、20~50、20~30、20~100、20~40、または20~25アミノ酸であってもよい。本明細書に提供されるCLEに含まれる場合のLMP1の変異体および/または断片は、細胞内ドメインを活性化するその能力を保持する。さらに、存在する場合、細胞外ドメインは、少なくとも1つであるが典型的には少なくとも4つのアミノ酸を含み、典型的には、クリアランスドメイン、例えばeTagなどの別の機能的ポリペプチドに連結されている。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、LMP1膜貫通ドメインを含む。例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、LMP1膜貫通ドメインを含み、一つ以上の細胞内ドメインは、TNFRSFタンパク質(すなわち、CD40、4-IBB、RANK、TACI、OX40、CD27、GITR、LTR、およびBAFFR)、TLR1~TLR13、インテグリン、FcyRIII、デクチン1、デクチン2、NOD1、NOD2、CD16、IL-2R、III型インターフェロン受容体、CCR5およびCCR7などのケモカイン受容体、Gタンパク質共役受容体、TREM1、CD79A、CD79B、Ig-アルファ、IPS-1、MyD88、RIG-1、MDA5、CD3Z、MyD88ΔTIR、TRIF、TRAM、TIRAP、MAL、BTK、RTK、RAC1、SYK、NALP3(NLRP3)、NALP3ΔLRR、NALP1、CARD9、DAI、IPAG、STING、Zap70、またはLATからの細胞内ドメインを含まない。
【0418】
本明細書に提供されるCLEの他の実施形態では、細胞外ドメインは、二量体化部分を含む。本明細書に開示される多くの異なる二量体化部分が、これらの実施形態に使用され得る。特定の例示的な実施形態では、二量体化部分は、ホモ二量体化することができる。理論によって限定されるものではないが、二量体化部分は、膜貫通ドメインを介してそれに接続された細胞内ドメイン上で活性化機能を提供し得る。
【0419】
特定の例示的な実施形態では、どのドメインが二量体化モチーフを含むかに関わらず、例えばCLEポリペプチドなどのLEポリペプチドは、第一のリンパ増殖エレメントポリペプチド(LEポリペプチド)および第二のLEポリペプチドを含み、この場合において当該第一のLEポリペプチドは、当該第二のLEポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有し、当該第一のLEポリペプチドおよび当該第二のLEポリペプチドは、互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。かかる実施形態は、本明細書においてヘテロ二量体LEと呼称され得る。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドはそれぞれ、第一の細胞外二量体化部分および第二の細胞外二量体化部分を含み、それらは互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドはそれぞれ、第一の細胞内二量体化部分および第二の細胞内二量体化部分を含み、それらは互いに二量体化することができ、二量体化するように適合され、および/または二量体化するように構成される。典型的には、第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドの二量体化によって、第一のLEポリペプチドおよび/または第二のLEポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインが活性化され、または例えば、第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドの結合などの相互作用によって形成された細胞内シグナル伝達ドメインが活性化される。
【0420】
したがって、一つ以上のLEを含む本明細書の実施形態は、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドを含む実施形態を含み、この場合において第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドは、ヘテロ二量体を形成し、二量体化の際にシグナル伝達経路を活性化し、典型的には増殖および/または細胞生存を促進することができる、それらを行うよう適合される、および/またはそれらを行うよう構成される。ヘテロ二量体LEのICDは、本明細書のICDのいずれを含んでもよい。ヘテロ二量体LEは構造的に活性であるが、例示的な実施形態では、それらは誘導性である。第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドは、単一のポリヌクレオチドから転写されてもよく、または別個のポリヌクレオチドから転写されてもよい。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドは、同じポリヌクレオチド上にコードされ、IRESによって分離される。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドは、同じポリヌクレオチド上にコードされ、切断シグナルまたはリボソームスキップ配列、例えばP2AまたはT2Aによって分離される。第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドは、単一の転写物から発現されてもよく、または別個の転写物から発現されてもよい。
【0421】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体LEのICDのペアは、遺伝子改変されていない本来の細胞において二量体形成した際に活性化されるICDのペアである。そのような実施形態では、第一のLEポリペプチドおよび/または第二のLEポリペプチドのうちの少なくとも一つのドメインの少なくとも一つは、キメラである。ヘテロ二量体LEを含む本明細書に提供される方法および組成物の一部の実施形態では、ヘテロ二量体LEは、第一のLEポリペプチドと第二のLEポリペプチドを含み、それらは以下の遺伝子ペアに由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む:IL2RβおよびIL2Rγ;IL7RAおよびIL2Rγ;IL7RAおよびIL2Rβ;LIFRおよびGP130,CSF2RAおよびTNFRSF4;CSF2RAおよびCD28;CSF2RAおよびTNFRSF8;CSF2RAおよびCD27;CSFR3およびCD79B;IFNAR2およびTNFRSF14;IL1RAPおよびCD79A;IL3RAおよびCD40;IL10RAおよびCD79B;IL11RAおよびFCGRA2;IL13RA2およびTNFRSF14;IL18RAPおよびCD3G;IL27RAおよびFCGRA2;LEPRおよびCD3G;LIFRおよびTNFRSF18;MPLおよびCD40;MPLおよびCD79B;MPLおよびTNFRSF4;MPLおよびCD79A;MPLおよびCD3G;MyD88およびCD79B;またはMyD88およびCD3D。例示的な実施形態では、ヘテロ二量体LEは、IL2RB ICDを含む第一のLEポリペプチド、およびIL2RG ICDを含む第二のLEポリペプチドを含む。
【0422】
一部の実施形態では、ヘテロ二量体LEの第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドは、FK506-結合タンパク質(FKBP)、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ドメイン、および当分野で公知のそれらのバリアントを含んでもよい。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドのECDは、そのようなFKBP、FRB、またはそれらのバリアントを含む。一部の実施形態では、第一のLEポリペプチドおよび第二のLEポリペプチドのICDは、そのようなFKbP、FRB、またはそれらのバリアントを含む。かかるヘテロ二量体LEは、ラパマイシンまたはラパログにより活性化されることができ、それらは本明細書に提供される例示的な方法において、かかるLEをコードするCAR-T細胞またはウイルスベクターを投与された対象に投与され得る。
【0423】
一部の実施形態では、CLEの二量体形成部分は、例えば、臨床用抗体などの抗体によって認識されるエピトープを含んでもよく、例示的な実施形態では、臨床用抗体は、承認された生物製剤であってもよい。非限定的な例として、本明細書のLEのECDは、PD-1エピトープおよび/またはCTLA-4エピトープの一つ、または複数のタンデムコピーを含む、ECDを含んでもよい。そのため、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体、例えば、臨床用抗PD-1抗体または臨床用抗CTLA-4抗体はそれぞれ、そのようなLEを二量体化させ、活性化するために使用することができる。理論によって限定されないが、かかる実施形態は、例えばCAR-T細胞上に発現されたPD-1と、腫瘍細胞上に発現されたPDL-1との相互作用の妨害、およびホモ二量体LEまたはヘテロ二量体LEの二量体形成を介したCAR-T細胞の増殖および/または生存シグナルの誘導の両方において、抗PD-1投与に対する利点を提供し得る。PD-1エピトープ含有ECDを含むLEが使用される一部の実施形態では、例えばニボルマブまたはペムブロリズマブなどの抗PD1抗体は、併用療法の一部として対象に提供され、および/または投与され得る。ECDは、本明細書において、外部ドメインと呼称される場合がある。一部の実施形態では、外部ドメインは、例えばWO2020180664A1(その全体で本明細書に参照により援用される)の表1のポリペプチドのいずれかなどのPD-1ポリペプチドを含んでもよい。それらの外胚葉は、自身の名称に「PD1」を含む。
【0424】
一部の実施形態では、CLEの二量体形成部分は、本明細書の抗イディオタイプポリペプチドのいずれかの抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを含んでもよい。したがって、抗イディオタイプ細胞外ドメインを含有する抗イディオタイプポリペプチドは、CLEであってもよい。例えば、そのようなCLEに結合された細胞外認識ドメインは、本明細書に別段に開示されるように、標的抗体または抗体模倣体と結合した際に、二量体を形成することができる。言い換えれば、一部の実施形態では、CLEは、抗イディオタイプポリペプチドを含む融合ポリペプチドの一部であり、当該融合ポリペプチドは、標的抗体または抗体模倣体が抗イディオタイプ細胞外認識ドメインに結合することによって二量体形成する。例示的な実施形態では、CLEは、構造的に活性ではなく、むしろ、標的抗体のイディオタイプに結合する2個の抗イディオタイプポリペプチドに標的抗体が結合することによって誘導される二量体の形成時に、活性化される。これらの実施形態では、標的抗体は、典型的には細胞傷害を誘導しない。
【0425】
一部の実施形態では、本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントは、細胞外ドメインを含み、例示的な実施形態では、当該細胞外ドメインは、二量体化モチーフを含む。この態様の例示的な実施形態では、細胞外ドメインは、ロイシンジッパーを含む。いくつかの実施形態では、ロイシンジッパーは、junポリペプチド、例えば、c-junに由来する。特定の実施形態では、c-junポリペプチドは、ECD-11のc-junポリペプチド領域である。
【0426】
二量体化部分を含む細胞外ドメインは、例えば抗イディオタイプポリペプチドの抗イディオタイプ細胞外認識ドメインなどの細胞タグポリペプチドに、CLEを発現する細胞を連結させる機能も果たし得る。したがってかかる実施形態では、二量体化モチーフは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを膜関連ドメインに連結するストークの機能を果たすことができ、当該膜関連ドメインは、LEおよびCLEでは、典型的には膜貫通ドメインである。かかる実施形態は、抗イディオタイプドメインを細胞に固定する膜貫通ドメインおよび二量体形成モチーフを有する一方で、その機能はLEに保持されるという利点を提供する。一部の実施形態では、かかる実施形態は、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインによって認識されるイディオタイプを有する標的抗体に結合した際に四量体を形成する、LE二量体化モチーフと誘導性二量体形成を介した構造的な二量体形成によって、細胞内ドメインの四量体形成をもたらすという利点を提供する。これらの実施形態では、標的抗体は、典型的には細胞傷害を誘導しないが、二量体形成したICDを四量体形成させるという機能を果たす。これらは、本明細書の他の項に記載されるように、一部のアポトーシス誘導性の実施形態において有用である。
【0427】
いくつかの実施形態では、二量体化剤は、細胞外ではなく細胞内に配置され得る。いくつかの実施形態では、二つ以上または複数の二量体化ドメインが使用され得る。CLEの細胞外ドメインが二量体化モチーフを含む任意の態様または実施形態では、二量体化モチーフは、ロイシンジッパーモチーフ含有ポリペプチド、CD69、CD71、CD72、CD96、Cd105、Cd161、Cd162、Cd249、CD271、およびCd324、ならびに二量体化する能力を保持する変異体および/またはそれらの活性断片からなる群から選択され得る。CLEの細胞外ドメインが二量体化モチーフを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、二量体化モチーフは、二量体化剤を必要とし得、二量体化モチーフおよび関連する二量体化剤は、以下からなる群から選択され得る:FKBPおよびラパマイシンもしくはそれらのアナログ(例えば、Ap1903)、GyrBおよびクーママイシンもしくはそれらのアナログ、DHFRおよびそのメトトレキサートもしくはそれらのアナログ、またはDmrBおよびAP20187もしくはそれらのアナログ、ならびに二量体化する能力を保持する、列挙された二量体化タンパク質の変異体および/または活性断片。いくつかの態様および例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは構造的に活性であり、活性化のために二量体化剤を必要とするリンパ増殖エレメント以外のものである。
【0428】
一実施形態における内部二量体化および/または多量体化リンパ増殖エレメントは、脂質透過性免疫抑制薬、FK506の二量体類似体を使用する系の不可欠な部分であり、FK506結合タンパク質、FKBP12に遺伝的に融合した分子を架橋する能力を獲得する一方で、その通常の生物活性を失う。FKB-結合ポリペプチドドメインとみなされ得る一つ以上のFKBP、および例えばミリストイル化配列または膜貫通ドメインなどの膜標的化配列を、標的受容体の細胞質シグナル伝達ドメインに融合させることによって、薬剤依存性であるが、リガンドおよび外部ドメイン非依存性の二量体形成体において、シグナル伝達を刺激することができる。これにより、一時的な制御、単量体性薬物類似体を使用した可逆性、および強化された特異性が系に提供される。結合ドメインFKBP12に対する第三世代AP20187/AP1903二量体化薬の高い親和性は、内因性FKBP12を介して非特異的な副作用を誘導することなく、インビボで組換え受容体の特異的活性化を可能にする。二量体化薬に結合する、FKBP12V36などのアミノ酸置換および欠失を有するFKBP12バリアントもまた使用され得る。さらに、合成リガンドは、プロテアーゼ分解に耐性があり、ほとんどの送達されたタンパク質剤よりも、インビボで受容体を活性化するのにより効率的になる。
【0429】
細胞外ドメインが二量体化モチーフを有する実施形態の細胞外ドメインは、ロイシンジッパー二量体などの二量体を形成するのに十分な長さである。したがって、二量体化部分を含む細胞外ドメインは、15~100、20~50、30~45、または35~40アミノ酸であってもよく、例示的な実施形態では、c-Jun細胞外ドメインのc-Jun部分である。二量体化部分を含むポリペプチドの細胞外ドメインは、他の機能を保持していない可能性がある。例えば、ロイシンジッパーの実施形態の場合、そのようなロイシンジッパーは、アルファヘリックスに沿って7残基離れてロイシンのモチーフを保持するため、二量体を形成することができる。しかしながら、本明細書に提供されるCLEの特定の実施形態のロイシンジッパー部分は、それらのDNA結合機能を保持しても、または保持しなくてもよい。
【0430】
1~4個のアラニン残基のスペーサーが、二量体化部分を有する細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のCLEに含まれ得る。理論によって限定されるものではないが、アラニンスペーサーは、細胞内ドメインの方向を変化させることによって、膜貫通ドメインを介してロイシンジッパー細胞外領域に接続された細胞内ドメインのシグナル伝達に影響を与えると考えられている。
【0431】
例示的な実施形態では、CLEは、細胞タグドメインを含む。細胞タグに関する詳細は、本明細書の他の項に提供されている。本明細書に提供される任意の細胞タグは、CLEの一部であり得る。典型的には、細胞タグは、細胞外ドメインのN末端に連結されている。理論によって限定されるものではないが、いくつかの実施形態では、細胞外ドメインは、リンカー、例示的な実施形態ではCLEを発現する細胞に細胞タグドメインを連結する柔軟なリンカーを提供する機能を含む。
【0432】
さらに、本明細書に提供されるCLEをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドはまた、典型的には、発現を原形質膜に向けるためのシグナル配列を含む。例示的なシグナル配列は、本明細書の他の項に記載されている。特定の実施形態では、CARおよびCLEの両方が同じ転写物から発現されるように、転写物上に要素が提供され得る。
【0433】
抗イディオタイプポリペプチド
本明細書の一部の態様において、生命科学および医学において多くの有用性がある抗イディオタイプポリペプチド、およびこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される(参照によりその全体で本明細書に援用されるPCT/US21/48532、および本明細書の他の項において詳細に開示される)。かかるポリペプチドは、例示的な実施形態において、例えば、細胞療法や遺伝子療法での用途など、改変細胞で特に有用である。細胞表面上に発現される抗イディオタイプポリペプチドは、これらの細胞と接触する標的抗体または標的抗体模倣体を認識することができる。これらの抗体および抗体模倣体を使用して、抗イディオタイプポリペプチドを発現する細胞をマーキングして免疫細胞により殺傷させることができ、細胞の性能(例えば、増殖状態またはアポトーシス状態)を調節することができ、もしくは細胞の活性を調節することができ、細胞を標識することができ、標的を濃縮および/または精製することができ、細胞を濃縮することができ、または細胞を凝集させることができる。当業者であれば本開示に照らして、これらの方法および他の方法を目的として、どのように抗イディオタイプポリペプチドを使用するかを理解するであろう。したがって本明細書において、本明細書および/またはPCT/US21/48532に開示される抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸を含む、本明細書および/または当該国際特許出願に開示されるポリヌクレオチドのいずれかを発現することによって、上述の用途のいずれかを提供する方法が提供される。
【0434】
本明細書の抗イディオタイプポリペプチドは、例示的な態様では、細胞外認識ドメイン(抗イディオタイプ細胞外認識ドメイン、抗id ERD、または抗Id ECDと呼称される場合もある)を含み、典型的には、膜関連ドメイン(MAD)を含み、当該膜関連ドメインは、例示的な実施形態ではストークによって抗id ECDから分離される。例示的実施形態において、抗Id ERDは、抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体模倣体の認識ドメインを含む。抗イディオタイプポリペプチドの認識ドメインは、標的抗体のイディオタイプ、または標的抗体模倣体のイディオタイプを認識する。例示的な実施形態では、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインは、抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプ抗体模倣体のイディオタイプ結合可変領域を含む。例示的な実施形態では、ストークは、MADと抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを分離させる。
【0435】
一部の実施形態では、細胞外認識ドメインは、当分野で公知の任意の抗体または抗体模倣体のイディオタイプを認識する。特定の例示的な実施形態では、細胞外認識ドメインは、臨床用抗体または臨床用抗体模倣体のイディオタイプを認識する。そのような臨床用抗体は、一部の例示的な実施形態では、規制当局(例えば、米国FDA)が承認した生物製剤である。一部の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドと標的抗体の結合は、標的抗体とその同族抗原の結合を遮断せず、または阻害しない。例示的な実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドと標的抗体の結合は、標的抗体とその同族抗原の結合を遮断し、または阻害する。
【0436】
典型的には、抗イディオタイプポリペプチドは、膜関連ドメイン(本明細書においてMADと呼称される場合もある)を含む。抗イディオタイプポリペプチドの膜関連ドメインは、抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体に由来する認識ドメインを、細胞膜に結合させ、繋ぎ、または固定する。一部の実施形態では、膜関連ドメインは、本明細書において別段に開示されるように、膜貫通ドメインの一つ以上、およびGPIアンカーを含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、異種膜貫通ドメインまたは内因性膜貫通ドメインであってもよく、それらのいずれかが、抗体の膜貫通ドメインであってもよい。
【0437】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗イディオタイプポリペプチドは、一つ以上の細胞内ドメイン(本明細書においてICDと呼称される場合もある)をさらに含む。さらに、特定の例示的な実施形態において、ICDを含むかかる抗イディオタイプポリペプチドのMADは、膜貫通ドメインである。一つ以上の細胞内ドメインが、アポトーシス促進経路もしくは抗アポトーシス経路、および/または生存促進経路もしくは抗生存経路を活性化し、または阻害することができ、特定の実施形態では、他の細胞プロセス/経路を調節することができる。本明細書全体を通して、本明細書の抗イディオタイプポリペプチドがICDを含む、これらの様々な実施形態および他の実施形態に関する詳細が提供される。一部の実施形態では、ICDは、抗id ERDが安定して発現され、細胞膜に結合した状態を維持するための構造的な役割を果たす。他の実施形態では、ICDは、その標的抗体または抗体模倣体と抗id ERDの結合によって誘導される、結合二量体形成または多量体形成によって制御される機能的性能を有してもよい。
【0438】
一部の実施形態では、抗id ERDは、本明細書のLEの誘導性細胞外二量体形成ドメインとして作用する。かかる実施形態では、標的抗体と抗id ERDの結合によってLEが二量体化すると、ICDのシグナル伝達ドメインが活性化され、増殖および/または細胞生存を駆動することができる。図示されるように、LEのICDは、LE ICDに関して本明細書に開示されるように、P3ドメイン、および任意選択的にP4ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、細胞内ドメインは、Jak/Stat経路、TRAF経路、PI3K経路、またはPLC経路のうちの一つ以上を活性化することができる。これらの経路を活性化するための機構に関する開示は、本明細書の「リンパ増殖の項」に提供される。これらの実施形態の例は、誘導性キメラリンパ増殖エレメントであり、当該エレメントは、標的抗体と、標的抗体のイディオタイプを認識する細胞外ドメインが結合することによって、誘導される。
【0439】
一部の実施形態では、抗id ERDは、CARまたはTCRのASTRとして作用する。したがって、CARまたはTCRは、抗id ERD、ERDを膜貫通ドメインに結合させるストーク、およびCARまたはTCRのICDを含む。したがって、標的抗体と抗id ERDが結合することによって、CARまたはTCRのICDのシグナル伝達ドメインが活性化することができる。
【0440】
一部の実施形態では、細胞内ドメインはアポトーシス促進性であり、カスパーゼタンパク質に由来する一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーに由来する一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。したがって、かかる実施形態は、本明細書に提供される安全スイッチの具体的な例である。かかる実施形態は、抗イディオタイプポリペプチドを含んでもよく、この場合においてICDは、デスドメインを含む。かかるICDは、例えばFASなどのデスドメインを含む、TNF受容体スーパーファミリーメンバーに由来するICDのすべてを含んでもよく、特定の例示的実施形態では、かかるICDの一部を含んでもよい。かかる抗イディオタイプポリペプチドの例示的実施形態は、細胞外ドメインの構造的二量体形成ドメインを含み、ストークまたは膜貫通ドメインのすべて、または一部を含んでもよく、したがって、例えば四量体などの高次多量体を形成する能力がある抗イディオタイプポリペプチドが提供される。さらに、これらの実施形態のICDは、デスドメインを含んでもよく、または例えばカスパーゼ2、8、9、および10などのイニシエーターカスパーゼに由来する他の機能性ドメインを含んでもよい。
【0441】
一部の実施形態では、抗id ERDは、二特異性のCARまたはTCRのASTRとして作用し、この場合において、典型的にはがん細胞により発現される抗原に結合する第二のASTRが存在する。かかる実施形態は、本明細書において抗イディオタイプ二特異性CARと呼称され得る。かかる実施形態では、CARまたはTCRは、抗id ERD、第二のASTR、抗id ERDおよび第2のASTRを膜貫通ドメインに結合させるストーク、ならびにCARまたはTCRのICDを含む。したがって、標的抗体と抗id ERDが結合することによって、または第2のASTRがその抗原に結合することによって、CARまたはTCRのICDのシグナル伝達ドメインが活性化することができる。
【0442】
ICDを含む本明細書の抗イディオタイプポリペプチドの他の実施形態では、典型的には二量体形成によって活性化される切断部位が、膜貫通ドメインとICDの間で抗イディオタイプポリペプチドに追加され、または膜貫通ドメインとICDの一部として抗イディオタイプポリペプチドに追加される。したがって一部の実施形態では、これらの抗イディオタイプポリペプチドは、二量体形成時に、特定のプロテアーゼによる基質切断部位としての役割を果たすアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインを含む。そのような切断部位は、特定の実施形態では、本明細書で詳細に検討されるように、ガンマ-セクレターゼ複合体の基質切断部位であってもよい。かかる実施形態の細胞内ドメインは、たとえばカスパーゼ2、8、9、および10などのイニシエーターカスパーゼをはじめとする特定のカスパーゼを含む様々な細胞内ポリペプチドをコードしてもよい。他の実施形態では、ICDは、転写因子である。かかる実施形態では、転写因子は、抗id ERDがその標的抗体に結合して二量体化と切断を誘導し、転写因子が放出されるまで、核外に隔離される。それによって、転写因子は核に入り、遺伝子発現の制御を活性化することができる。
【0443】
抗イディオタイプポリヌクレオチド
本明細書の一つの態様において、抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドが提供され、当該ポリヌクレオチドは本明細書において、抗イディオタイプポリヌクレオチドと呼称され得る。例示的な実施形態では、コードされた抗イディオタイプポリペプチドは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメイン(抗イディオタイプ)、ストーク、および膜関連ドメイン(MAD)を含む。抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸は、一部の実施形態では、膜関連ドメイン(MAD)および抗イディオタイプ細胞外認識ドメインをコードする。例示的な実施形態では、ストークをコードする核酸は、MADをコードする核酸と、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインをコードする核酸を分離させ、それらとインフレームにある。一部の実施形態では、本明細書において、同じプロモーターから発現される(すなわち、同じ転写単位上)、または異なるプロモーターから発現される(すなわち、異なる転写単位上)、追加の機能性をコードするポリヌクレオチドが提供される。例えば、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインに加えて、操作されたシグナル伝達ポリペプチド、サイトカイン、および/または阻害性RNAをコードする核酸を含んでもよい。したがって、本明細書の一つの態様において、以下を含むポリヌクレオチドが提供される:一つ以上の転写単位であって、この場合において当該一つ以上の転写単位のそれぞれが、プロモーターに作動可能に連結され、当該一つ以上の転写単位は、以下を含む:
a)一つ以上の阻害性RNA分子、第一の操作されたシグナル伝達ポリペプチド、および/またはサイトカインをコードするポリヌクレオチド配列、および
b)標的抗体または標的抗体模倣体のイディオタイプを認識する抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを含む、抗イディオタイプポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列。例示的な実施形態では、かかるポリヌクレオチドは、例えば、RIPなどのウイルスベクター中にある。これらの実施形態の一部では、RIPはさらに、膜結合ケモカインを含む。一部の実施形態では、かかるウイルスベクター(例えば、RIP)は、インビボでT細胞および/またはNK細胞を改変する方法で使用され、当該方法は、かかるウイルスベクターを対象に直接送達することを含む。
【0444】
抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAであってもよい。一部の例示的な実施形態では、それらは、mRNAである。かかる実施形態は、抗イディオタイプ抗体が、CARのASTRを形成する抗体を指向する実施形態を含み得る。したがって、抗イディオタイプ抗体をコードするmRNAは対象に直接送達されてもよく、対象中の細胞によって取り込まれて発現される場合には、かかる細胞は、人工抗原提示細胞を形成することができ、当該抗原提示細胞は、抗イディオタイプポリペプチドによって認識される標的抗体である、ASTRを含むCARを発現する対象に投与されたCAR-T細胞の増殖を誘導する。合成mRNAを作製する方法は、当分野で公知である。さらに、かかるポリヌクレオチドは、例えば、発現ベクターなどのポリヌクレオチドベクターであってもよい。ポリヌクレオチド、およびレンチウイルス粒子をはじめとするRIPなどのポリヌクレオチドベクターに関するさらなる詳細は、特許請求の範囲を含む本開示全体を通して提供される。
【0445】
抗イディオタイプポリペプチドをコードする核酸は、他の機能性をコードする核酸の上流または下流(すなわち、5’または3’)であってもよい。したがって、かかる実施形態では、抗イディオタイプポリヌクレオチドは、他の機能性ポリペプチドとは別のポリペプチドとして発現される。
【0446】
特定の例示的な実施形態では、本明細書のポリヌクレオチドは、抗イディオタイプポリペプチドをコードし、T細胞および/またはNK細胞での発現に適合され、構造化され、および/または有効である。したがって、T細胞療法、および/もしくはNK細胞療法、または対象へのウイルスベクター(RIP)の直接送達を含む治療法に適合され、構造化され、ならびに/または有効である。かかるポリヌクレオチドは、典型的にはプロモーターを含み、当該プロモーターは、T細胞および/またはNK細胞で活性であり、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインおよび膜関連ドメインを発現し、したがって、それらは同じ転写単位上にあり、その発現は当該プロモーターによって誘導される。したがって一部の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドは、単一のポリヌクレオチドの一部として発現され、当該ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(CAR)、操作されたT細胞受容体(TCR)、リンパ増殖エレメント、またはサイトカインもコードする。さらに一部の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドは、単一のポリヌクレオチドの一部として発現され、当該ポリヌクレオチドは、CARまたはTCR、抗イディオタイプポリペプチド、およびリンパ増殖エレメントまたはサイトカインまたはリンパ増殖エレメントとサイトカインの両方をコードする。かかるポリヌクレオチドの実施形態、ポリヌクレオチドがコードする抗イディオタイプポリペプチド、特に抗イディオタイプポリペプチドとCARまたはTCRの両方がコードされ、T細胞および/またはNK細胞に存在し、発現される実施形態は、CAR-T療法、TIL療法、およびCAR-NK療法の一部の場合を含む、本明細書に提供される安全スイッチ、および本明細書に提供される他の安全スイッチ法に特に適しており、適合され、および/または有効である。
【0447】
一部の実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、内部リボソーム侵入部位(IRES)またはリボソームスキップ配列および/もしくは開裂シグナルによって、CAR、TCR、サイトカインをコードするポリヌクレオチド、および/またはリンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチドから分離される。IRESまたはリボソームスキップおよび/もしくは開裂シグナルは、当分野で公知の任意のIRES、またはリボソームスキップ配列および/もしくは開裂シグナルであってもよい。
【0448】
自己駆動CAR方法および組成物
特定の態様では、T細胞またはNK細胞におけるその発現が、T細胞またはNK細胞によって発現され、かつ細胞内活性化ドメイン、例えば、CD3ゼータ細胞内活性化ドメインまたは本明細書の別の箇所に開示される細胞内活性化ドメインのいずれかに機能的に連結されている細胞外結合ペアメンバーポリペプチドへの抗原の結合によって誘導される誘導性プロモーターの制御下にある、膜結合リンパ増殖エレメントをコードする、本明細書では「自己駆動CAR」と称されるポリヌクレオチドが、本明細書に提供される。本明細書の例示的な実施形態では、抗イディオタイプポリペプチドは、T細胞またはNK細胞によって共発現されて、自己駆動CARに対し追加の機能的選択性を提供する。例示的な実施形態では、共発現される抗イディオタイプポリペプチドは、安全スイッチである。例示的な実施形態では、そのような結合ペアメンバーポリペプチドは、CARである。他の実施形態では、そのような結合ペアメンバーポリペプチドは、TCRである。したがって、特定の実施形態では、その標的へのCAR結合によって誘導される、膜結合リンパ増殖エレメントをコードする核酸に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含むポリヌクレオチドが、本明細書に提供される。リンパ増殖エレメントの発現は、T細胞またはNK細胞の増殖を誘導し得る。特定の態様では、自己駆動CARを含む「自己駆動CAR-T細胞」と称される、遺伝子改変または形質導入されたT細胞が、本明細書に提供される。自己駆動CAR-T細胞を含む実施形態のいずれも、自己駆動CARを含む遺伝子改変または形質導入されたNK細胞である「自己駆動CAR NK細胞」を含み得る。いくつかの実施形態では、自己駆動CAR-T細胞に加えて、自己駆動CAR NK細胞が存在する。他の実施形態では、自己駆動CAR-T細胞の代わりに、自己駆動CAR NK細胞が存在する。自己駆動CARを含む様々な実施形態が、本明細書の例示的実施形態の項に開示され、当該項の実施形態または詳細のいずれかと組み合わせることができる。
【0449】
したがって、特定の実施形態では、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位(一つ以上の第一の転写単位のうちの少なくとも一つが、リンパ増殖エレメントを含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含む)、および例示的な実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第二の転写単位(CARが、抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む)を含む第一の配列を含む、単離されたポリヌクレオチドが、本明細書に提供される。特定の例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて構造的に活性であり、リンパ増殖エレメントは、膜貫通ドメインを含む。例示的な実施形態では、自己駆動CARの一つ以上の第一の転写単位は、シグナルペプチダーゼ開裂部位を含むシグナルペプチド配列、またはいったん発現されると、T細胞もしくはNK細胞から分泌されるか、もしくは別の方法で放出されるコードされたポリペプチドをもたらす他の配列を含むポリペプチドをコードしない。
【0450】
別の自己駆動CARの実施形態では、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位を含む逆方向の第一の配列を含む、単離されたポリヌクレオチドが、本明細書に提供され、構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位を含む順方向の第二の配列をさらに含み、一つ以上の第一の転写単位の5’末端と一つ以上の第二の転写単位の5’末端との間のヌクレオチド数は、一つ以上の第一の転写単位の3’末端と一つ以上の第二の転写単位の3’末端との間のヌクレオチド数よりも少なく、一つ以上の第一の転写単位のうちの少なくとも一つは、リンパ増殖エレメントをコードし、かつ一つ以上の第二の転写単位のうちの少なくとも一つは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、CARは、抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む。一つ以上の第一の転写単位の5’末端と一つ以上の第二の転写単位の5’または3’末端との間の距離は、例えば、一つ以上の第一の転写単位の5’ヌクレオチドと一つ以上の第二の転写単位の5’または3’ヌクレオチドとの間のヌクレオチドの数として測定され得る。いくつかの実施形態では、一つ以上の第一の転写単位および一つ以上の第二の転写単位は、分岐して転写され、そのような転写単位は、分岐して、すなわち、反対方向に配置されていると言われ、一つ以上の第一の転写単位および一つ以上の第二の転写単位の3’末端が、一つ以上の第一の転写単位および一つ以上の第二の転写単位の5’末端よりも互いにより離れている。二つの転写単位、すなわち、第一および第二の一つ以上の転写単位を含有するポリヌクレオチドまたはベクターは、本明細書ではバイシストロニックなポリヌクレオチドまたはベクターと称され得る。分岐したバイシストロニックなポリヌクレオチドは、2、3、4個、またはそれ以上のポリペプチドおよび/または阻害性RNAをコードしてもよい。
【0451】
別の実施形態では、上記に開示されたポリヌクレオチドで形質導入および/または遺伝子改変された、遺伝子改変されたリンパ球、例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞が、本明細書に提供される。さらに別の実施形態では、対象のリンパ球、例示的な実施形態ではT細胞および/またはNK細胞を遺伝子改変および/または形質導入するためのキットの製造における複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の使用が、本明細書に提供され、キットの使用は、上記に開示されたポリヌクレオチドでT細胞またはNK細胞をインビボもしくはインビトロで形質導入および/または遺伝子改変することを含む。別の実施形態では、遺伝子改変されたリンパ球を対象に投与するための方法が本明細書に提供され、遺伝子改変されたリンパ球は、この自己駆動CARの項において開示されたポリヌクレオチドでリンパ球を形質導入および/または遺伝子改変することによって産生される。本明細書の任意の態様一部の実施形態では、遺伝子改変されたリンパ球または複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子の投与は、静脈内注射、腹腔内投与、皮下投与、または筋肉内投与によって実施することができる。一部の実施形態では、対象に導入される改変されたリンパ球は、同種リンパ球であってもよい。そのような実施形態では、リンパ球は、別のヒトに由来するものであり、対象に由来するリンパ球は、改変されていない。いくつかの実施形態では、リンパ球を回収するために、対象から血液は採取されない。一部の実施形態では、対象への直接投与を目的としたRIP製剤(例えば、送達溶液など)のいずれかは、本明細書に開示される自己駆動CARをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。一部の実施形態では、このようなRIPを直接投与(インビボ)することによって、インビボでのリンパ球の改変が生じる。
【0452】
自己駆動CARでリンパ球を形質導入するための組成物および方法の実施形態のいずれかの例示的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、構造的なT細胞またはNK細胞プロモーターを含み得る。T細胞またはNK細胞中でポリヌクレオチドを構造的に発現する構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターは、当分野で公知であり、本明細書の別段に開示されている。一部の実施形態では、転写単位は、自己駆動CARの実施形態の例示的な実施形態においてCARをコードする、構造的な発現単位または構築物である。一部の実施形態では、構造的な発現構築物は、本明細書に記載される組換え発現ベクターであるか、またはその一部である。
【0453】
一部の実施形態では、転写単位は、誘導性の発現単位または構築物であり、これは、自己駆動CARの実施形態の例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントをコードすることができる。誘導性発現構築物は、転写および翻訳の開始コドンおよび終結コドンなどの制御配列を含み得る。いくつかの実施形態では、そのような制御配列は、誘導性プロモーターが導入される細胞のタイプ、すなわち、T細胞および/またはNK細胞に特異的である。誘導性の発現構築物は、目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結された天然または非天然プロモーターを含み得る。いくつかの実施形態では、誘導性または活性化可能プロモーターは、NFAT応答性、ATF2応答性、AP-1応答性、またはNF-κB応答性プロモーターであってもよい。T細胞の活性化の際に誘導され、本明細書の実施形態、特に自己駆動CARの実施形態において誘導性プロモーターとして使用することができる他のプロモーターとしては、IL-2、IFNg、CD25、CD40L、CD69、CD107a、TNF、VLA1、もしくはLFA1プロモーター、またはこれらプロモーターのいずれかの機能的で誘導性の断片が挙げられる。本明細書で考察されるように、そのような誘導性は、一つ以上のNFAT結合エレメントの存在から生じ得る。
【0454】
自己駆動CARでリンパ球を形質導入するための組成物および方法の実施形態のいずれかの例示的な実施形態では、第一の配列は、逆方向であってもよく、第二の配列は、順方向であってもよい。第一および第二の配列の方向は、T細胞またはNK細胞を遺伝子改変することができる組換えレトロウイルス粒子中に存在するとき、ポリヌクレオチドの5’LTRおよび3’LTRによって確立された5’から3’への方向に相対的である。したがって、その5’末端が、その3’末端が5’LTRに対するよりも5’LTRに近い配列、例えば転写単位、プロモーター、コード配列、miRNAは、順方向にあり、その3’末端が、その5’末端が5’LTRに対するよりも5’LTRに近い配列は、逆方向にある。配列の末端と5’LTRとの間の距離は、典型的には、例えば、配列の5’または3’ヌクレオチドと5’LTRの3’ヌクレオチドとの間のヌクレオチドの数として測定される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書の別の箇所に開示される逆方向のリボスイッチをさらに含み得る。一部の実施形態では、一つ以上の第一の転写単位の5’末端と、一つ以上の第二の転写単位の5’末端の間のヌクレオチドの数は、一つ以上の第一の転写単位の3’末端と、一つ以上の第二の転写単位の3’末端の間のヌクレオチドの数よりも少ない。
【0455】
自己駆動CARのように、CARシグナル伝達が活性なCAR-T細胞による、非分泌型で構造的に活性なリンパ増殖エレメントの発現のみが、抗原結合の非存在下でのCAR-T細胞の拡張を制限することができる。さらに、腫瘍の治療に成功した後は、自己駆動CAR-T細胞は、抗原の非存在下ではあまり増殖しない。
【0456】
自己駆動CARの実施形態の例示的な実施形態では、誘導性プロモーターは、NFAT応答性プロモーターである。いくつかの実施形態では、誘導性または活性化可能プロモーターは、NFAT応答性プロモーターであってもよく、一つ以上のNFAT結合部位を含む。いくつかの実施形態では、一つ以上のNFAT結合部位は、NFAT応答性プロモーターであることが当該技術分野で既知のプロモーターに由来し得る。一部な実施形態では、一つ以上のNFAT結合部位は、IL-2、IL-4、および/またはIL-8のプロモーターに由来してもよい。例示的な実施形態では、一つ以上のNFAT結合部位は、IL-2のプロモーターに由来してもよい。一部の実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のNFAT結合部位を含んでもよい。例示的な実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、4、6、または9個のNFAT結合部位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、NFAT応答性プロモーターのNFAT結合部位は、正確な反復を回避するために、NFATに結合する能力を保持する機能的配列バリアントを含み得る。いくつかの実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、NFATc1、NFATc2、NFATc3、NFATc4、および/またはNFATc5に対して応答性である。いくつかの実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、配列番号352の一つ以上のNFAT結合部位を含む。一部の実施形態では、NFAT結合部位のコピー間の間隔は、3~60ヌクレオチド、または6~20ヌクレオチドであってもよい。例示的な実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、6個のNFAT結合部位を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号353またはその機能的部分もしくは機能的バリアントを含むか、またはそれからなる。
【0457】
いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントをコードする転写単位は、誘導シグナルの非存在下であっても低レベルの転写を有する誘導性または活性化可能プロモーターを生成するための上流のNFAT結合部位を有する、最小の構造的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、誘導シグナルの非存在下で、そのような誘導性プロモーターからのリンパ増殖エレメントの低レベルの転写は、構造的プロモーターからのCARの転写レベルの1/2、1/4、1/5、1/10、1/25、1/50、1/100、1/200、2/250、1/500、または1/1,000未満であってもよい。一部の実施形態では、最小の構造的プロモーターは、最小IL-2プロモーター、最小CMVプロモーター、または最小MHCプロモーターを含んでもよい。例示的な実施形態では、最小プロモーターは、最小IL-2プロモーター(配列番号354)またはその機能的部分もしくは機能的バリアントであってもよい。例示的な実施形態では、NFAT応答性プロモーターは、最小IL-2プロモーターの上流に6個のNFAT結合部位を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号355またはその機能的部分もしくは機能的バリアントを含むか、またはそれからなる。
【0458】
逆方向の第一の配列および順方向の第二の配列を有する上記に開示されたポリヌクレオチド中の誘導性および構成的プロモーターは、特にEF1-a、CMV、およびCAGプロモーターなどの強力な構成的プロモーターの存在下で、予測不可能な方法で互いに干渉し得る。プロモーター干渉は、一方または両方のプロモーターからの転写の増加または減少をもたらし得る。プロモーター干渉はまた、誘導性プロモーターのダイナミックレンジの減少をもたらし得る。いくつかの実施形態では、インスレーターは、分岐転写単位間に位置する。いくつかの実施形態では、インスレーターは、誘導性プロモーターと構成的プロモーターとの間に位置する。いくつかの実施形態では、インスレーターは、ニワトリHS4インスレーター、Kaisoインスレーター、SAR/MAR要素、キメラニワトリインスレーター-SAR要素、CTCFインスレーター、ジプシーインスレーター、もしくはβ-グロビンインスレーター、または当該技術分野で既知のそれらの断片であってもよい。いくつかの実施形態では、インスレーターは、b-グロビンポリAスペーサーB(配列番号356)、b-グロビンポリAスペーサーA(配列番号357)、250 cHS4インスレーターv1(配列番号358)、250 cHS4インスレーターv2(配列番号359)、650 cHS4インスレーター(配列番号360)、400 cHS4インスレーター(配列番号361)、650 cHS4インスレーターおよびb-グロビンポリAスペーサーB(配列番号362)、またはb-グロビンポリAスペーサーBおよび650 cHS4インスレーター(配列番号3)であってもよい。いくつかの実施形態では、インスレーターは、順方向であってもよい。他の実施形態では、インスレーターは、逆方向であってもよい。当業者は、プロモーター間にインスレーターを組み込んで、プロモーター干渉を防止または低減する方法を理解するであろう。
【0459】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリアデニル化配列として既知の多数のアデノシンヌクレオチドを、逆方向のリンパ増殖エレメントをコードする配列の3’末端の後に含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、インスレーターとともに使用され得る。他の実施形態では、ポリアデニル化配列は、インスレーターの非存在下で使用され得る。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、β-グロビンポリアデニル化配列またはhGHポリアデニル化配列に由来し得る。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、合成であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、hGHポリA(配列番号316)、SPA1(配列番号317)、またはSPA2(配列番号318)から選択される配列のうちの一つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、外因性スプライス部位を含まない。例示的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、順方向または逆方向の外因性スプライス部位を含まない。
【0460】
自己駆動CARでリンパ球を形質導入するための組成物および方法の実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、本明細書の別の箇所に開示されるように、例えばmiRNAまたはshRNAなどの一つ以上の阻害性RNA分子を含み得る。いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、例えば、EF1-aイントロンを含むイントロン内でコードされ得る。例示的な実施形態では、阻害性RNA分子は、本明細書の阻害性RNA分子のセクションが含まれるがこれに限定されない、本明細書で特定される標的のいずれかを標的とすることができる。
自己駆動CARでリンパ球を形質導入するための組成物および方法の実施形態のいずれかにおいて、誘導性プロモーターは、本明細書の別の箇所に開示されるように、リンパ増殖エレメントの発現を駆動することができる。例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは、非分泌型で構造的に活性なリンパ増殖エレメントである。
【0461】
合成RNA
本明細書に提供される別の態様において、送達溶液または細胞製剤は、合成RNAを含む。一部の実施形態では、合成RNAは、例えば一つ以上の標的に指向するsiRNAなどの阻害性RNAが含まれる。これらの阻害性RNAの標的は、本明細書において別段に開示されるsiRNAまたはmiRNAの標的のいずれであってもよい。一部の実施形態では、合成RNAは、一つ以上のタンパク質またはペプチドをコードするmRNAを含む。一部の実施形態では、mRNAは、一つ以上のCARをコードする。CARは、本明細書に開示される任意のCAR組成物であってもよく、当該組成物は、本明細書に開示される抗イディオタイプ細胞外認識ドメイン(本明細書において抗id ERDとも呼称される)を含む二特異性CARを含む。一部の実施形態では、mRNAは、本明細書に開示される任意の抗イディオタイプポリペプチドをコードしてもよい。一部の実施形態では、mRNAは、本明細書に開示される抗イディオタイプポリペプチドに対する標的抗体をコードする。かかる実施形態は、可溶型で送達された場合には細胞障害性である可能性があるが、標的抗体をコードするmRNAをインビボで送達した後に細胞に取り込まれた場合には細胞障害性は低く、または細胞傷害性がないという利点があり得る。したがって、抗イディオタイプポリペプチドが、LEのICD、またはCAR(例えば、二特異性CAR)のICDであるICDを有する実施形態について、取り込み、標的抗体を発現する細胞は、人工抗原提示細胞となり得る。
【0462】
一部の実施形態では、mRNAは、一つ以上のサイトカインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、IL-2またはその機能性バリアントをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、IL-7またはその機能性バリアントをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、IL-15またはその機能性バリアントをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、IL-21またはその機能性バリアントをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、CARに結合し、活性化させるタンパク質またはポリペプチドを一つ以上コードする。一部の実施形態では、mRNAは、CARのASTRによって認識される抗原をコードする。一部の実施形態では、mRNAは、HER2またはHER2の細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、EGFRまたはEGFRの細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、AxlまたはAxlの細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、CD19またはCD19の細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、CD22またはCD22の細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、CARのASTRによって認識される抗体をコードする。一部の実施形態では、CARのASTRによって認識される抗体をコードするmRNAは、ASTRの抗体またはscFvを指向する抗イディオタイプ抗体である。一部の実施形態では、mRNAは、抗体をコードし、当該抗体は、本明細書の別段に記載されるようにCARのエピトープタグに結合し、二つのCARを架橋させることができる。一部の実施形態では、mRNAは、T細胞および/またはNK細胞の共刺激性タンパク質を一つ以上コードする。そのような共刺激性タンパク質は、T細胞および/またはNK細胞上の共刺激性受容体に対するリガンドまたは抗体を一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、共刺激性受容体は、CD28である。一部の実施形態では、共刺激性受容体は、4-1BBである。一部の実施形態では、mRNAは、可溶性のタンパク質またはポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、mRNAは、膜結合型のタンパク質またはポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、膜結合型のタンパク質またはポリペプチドは、膜貫通ドメインに作動可能に連結される。一部の実施形態では、合成RNAは、例えば一つ以上の標的に指向するsiRNAなどの阻害性RNAと、一つ以上のタンパク質またはペプチドをコードするmRNAの両方を含む。
【0463】
送達溶液または細胞製剤での使用を目的としたmRNAを生成する方法は、特異的に設計されたプライマーを用いた鋳型のインビトロ転写とそれに続くポリA付加を行い、3’および5’の非翻訳配列、5’キャップおよび/またはIRES、発現される核酸、ならびにポリAテールを含有する構築物を生成することを伴ってもよく、当該構築物は典型的には50~200塩基の長さである。一部の実施形態では、合成RNAは、対象核酸に対し、天然の内因性RNAである。一部の実施形態では、RNAは、対象核酸に対し、天然の内因性RNAではない。一部の実施形態では、RNAは、RNAの安定性および/または翻訳効率を変えるように改変される。一部の実施形態では、5’UTR、3’UTR、Kozak配列、ポリAテールが改変される。一部の実施形態では、RNAは、5’キャップを含む。一部の実施形態では、RNAは、脂質系の担体ビヒクルに封入される。脂質ナノキャリアを組み立てるための一つの方法としては、脂質のエタノール溶液と、核酸の水溶液を直接混合して、脂質ナノ粒子(LNP)を得る方法が挙げられる。一部の実施形態では、LNPは、PEGコンジュゲート脂質を含む。PEGコンジュゲート脂質は、粒子形成中の凝集を防止し、およそ50nm~150nmの範囲の規定の直径を有する制御された粒子製造を可能にする。ナノ粒子のPEG化は、安全性および活性に関して重大な不利益を及ぼすことがある。PEG化ナノ粒子の使用に関連する欠点があるために、PEG代替物の開発が盛んとなった。一部の実施形態では、LNPは、PEGを含まない。一部の実施形態では、LNPは、ポリ(グリセロール)(PG)、ポリ(オキサゾリン)、糖系、およびポリ(ペプチド)を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ポリサルコシン(pSAR)を含む。一部の実施形態では、LNPは、樹状細胞標的化部分を含む。一部の実施形態では、樹状細胞標的化部分は、マンノースを含む。
【0464】
一部の実施形態では、RNAは、本明細書に提供される細胞製剤および方法において、改変された、および/もしくは遺伝子改変されたT細胞ならびに/またはNK細胞を含む細胞製剤に添加されてもよく、またはそれら細胞と同時投与されてもよい。一部の実施形態では、RNAは、対象の単離血液に添加され、T細胞および/またはNK細胞と並行して処理される。一部の実施形態では、RNAは、改変された、および/もしくは遺伝子改変されたT細胞ならびに/またはNK細胞とは別に製剤化されてもよい。合成RNAは、RNAの治療用送達を目的として当分野で公知の任意の手段により送達されてもよい。一部の実施形態では、RNAは、静脈内送達される。一部の実施形態では、RNAは、腹腔内送達される。一部の実施形態では、RNAは、筋肉内送達される。一部の実施形態では、RNAは、腫瘍内送達される。一部の実施形態では、RNAは、皮内送達される。例示的な実施形態では、RNAは、皮下送達される。一部の実施形態では、RNAは、改変された、および/もしくは遺伝子改変されたT細胞ならびに/またはNK細胞の投与部位と同じ部位に送達される。一部の実施形態では、RNAは、改変された、および/もしくは遺伝子改変されたT細胞ならびに/またはNK細胞の投与部位に隣接した部位に送達される。一部の実施形態では、RNAは、一回投与される。一部の実施形態では、RNAは、2、3、4、5、6回、またはそれ以上投与される。
【0465】
本明細書の別の態様において、T細胞および/またはNK細胞の凝集体を含む細胞製剤が提供され、この場合において当該T細胞および/またはNK細胞は、例示的な実施形態では、一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドで改変され、この場合において当該転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、およびこの場合において当該一つ以上の転写単位は、溶液中、例示的な実施形態では送達溶液中のキメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチドをコードし、さらにこの場合において当該凝集体は、少なくとも4、5、6、もしくは8個のT細胞および/またはNK細胞を含み、当該細胞凝集体は、その最小寸法で少なくとも15μMであり、および/または当該細胞凝集体は、少なくとも15μmの直径を有する粗いフィルター、もしくは15μm~60μmの直径を有する粗いフィルターに保持され、または保持されることができる。およそ40μmを超える大きな細胞凝集体は、静脈注射には危険であり、微小血管の閉塞をもたらす可能性がある(Truter et al.1981.Intensive Care Med 7,115-119)。一部の実施形態では、細胞凝集体は、40μm未満の直径を有する。一部の実施形態では、細胞製剤中の細胞凝集体の少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%は、40μm未満の直径を有する。例示的な実施形態では、細胞製剤中の細胞凝集体の少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%は、40μm未満の直径を有し、細胞製剤は、静脈内投与される。
【0466】
結合エレメントおよび融合性エレメント
本明細書に提供される方法、組成物およびキットの多くは、その表面上にエンベロープタンパク質、複数コピーのT細胞および/またはNk細胞の結合ポリペプチド、ならびに複数コピーの融合性ポリペプチド(フソゲンとも呼称される)を有するレトロウイルス粒子を含む。「結合ポリペプチド」は、標的宿主細胞を識別し、結合する一つ以上のポリペプチド、典型的には糖タンパク質を含む。「融合性ポリペプチド」は、レトロウイルスと標的宿主の細胞膜の融合を介在し、それによって、レトロウイルスゲノムは標的宿主細胞に進入する。特定の実施形態では、結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドは、同じエンベロープタンパク質上にあり、例えば、異種糖タンパク質上にある。他の実施形態では、結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドは、二つ以上の異なる異種糖タンパク質上にある。
【0467】
これらの結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチド機能の一方または両方が、シュードタイピングエレメントによって提供され得る。一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントは、一つ以上のウイルスエンベロープタンパク質であってもよい。一部の実施形態では、ウイルスエンベロープタンパク質の結合ポリペプチドの機能は変化し、低下し、または消失することができる(例えば、結合ポリペプチド機能に対応するアミノ酸を変異させ、または欠失させることができる)。一部の実施形態では、結合ポリペプチド機能が低下した、または消失したウイルスエンベロープタンパク質は、新しい結合ポリペプチド機能を用いて、または元の結合ポリペプチド機能を変異させることによって、再標的化させることができる。
【0468】
一部の実施形態では、結合ポリペプチド機能は、標的細胞上の細胞表面マーカーに結合する任意のポリペプチドによって提供されてもよい。例えば、結合ポリペプチド機能は、本明細書の別段に開示される活性化エレメントによって提供されてもよい。異種エンベロープ糖タンパク質を用いた複製能力のない組換えレトロウイルス粒子のシュードタイピングは、典型的には、ウイルスの指向性を変化させ、宿主細胞の形質導入を促進する。本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントは、ポリペプチド/タンパク質として、またはポリペプチド/タンパク質をコードする核酸配列として提供される。
【0469】
一部の実施形態では、本明細書のシュードタイピングエレメントおよび/または融合性エンベロープタンパク質は、シンシチウム誘導ポリペプチドの全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログ、または機能性バリアントである。一部の実施形態では、本明細書の融合性エンベロープタンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gpl60、マウス白血病ウイルス(MLV)gp70、テナガザル白血病ウイルス(GALV)gp70、ネコ白血病ウイルス(RD114)gp70、アンフォトロピック(amphotropic)レトロウイルス(Ampho)gp70、10A1 MLV(10A1)gp70、エコトロピック(Ecotropic)レトロウイルス(Eco)gp70、ヒヒ(Baboon ape)白血病ウイルス(BaEV)gp70、麻疹ウイルス(MV)HおよびF、ニパウイルス(NiV)HおよびF、狂犬病ウイルス(RabV)G、モコラウイルス(MOKV)G、エボラザイールウイルス(EboZ)G、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)GP1およびGP2、バキュロウイルスGP64、チクングニアウイルス(CHIKV)ElおよびE2、ロスリバーウイルス(RRV)ElおよびE2、セムリキ森林ウイルス(SFV)ElおよびE2、シンドビスウイルス(SV)ElおよびE2、ベネズアラウマ脳炎ウイルス(VEEV)ElおよびE2、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)ElおよびE2、インフルエンザA、B、CもしくはD HA、家禽ペストウイルス(FPV)HA、水疱性口内炎ウイルスVSV-G、またはチャンディプラ(Chandipura)ウイルス、ならびにピリ(Piry)ウイルスのCNV-GおよびPRV-Gの全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログまたは機能性バリアントである。一部の実施形態では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントは、水疱性口内炎アラゴ(Alagoas)ウイルス(VSAV)、カラヤス(Carajas)ベシクロウイルス(CJSV)、チャンディプラ(Chandipura)ベシクロウイルス(CHPV)、コカウ(Cocal)ベシクロウイルス(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、エスファハーンベシクロウイルス(ISFV)、マラバ(Maraba)ベシクロウイルス(MARAV)、水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)、バス-コンゴ(Bas-Congo)ウイルス(BASV)の全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログまたは機能性バリアントである。一部の実施形態では、融合糖タンパク質またはその機能性バリアントは、コカル(Cocal)ウイルスGタンパク質である。
【0470】
一部の実施形態では、本明細書のシュードタイピングエレメントおよび/または融合性エンベロープタンパク質は、狂犬病ウイルスのG型膜糖タンパク質、モコラウイルスのG型膜糖タンパク質、小胞性口内炎ウイルスのG型膜糖タンパク質、トガウイルスのG型膜糖タンパク質、マウス肝炎ウイルスJHM表面突起タンパク質、ブタ呼吸器コロナウイルススパイク糖タンパク質、ブタ呼吸器コロナウイルス膜糖タンパク質、鳥類感染性気管支炎スパイク糖タンパク質およびその前駆体、ウシ腸内コロナウイルススパイクタンパク質、パラミクソウイルスSV5 Fタンパク質、麻疹ウイルスFタンパク質、イヌジテンパーウイルスFタンパク質、ニューカッスル病ウイルスFタンパク質、ヒトパラインフルエンザウイルス3 Fタンパク質、シミアンウイルス41 Fタンパク質、センダイウイルスFタンパク質、ヒト呼吸器合胞体ウイルスFタンパク質、麻疹ウイルスヘマグルチニン、シミアンウイルス41ヘマグルチニンノイラミニダーゼタンパク質、ヒトパラインフルエンザウイルス3型ヘマグルチニンノイラミニダーゼ、ニューカッスル病ウイルスヘマグルチニンノイラミニダーゼ、ヒトヘルペスウイルス1 gH、サル水痘ウイルスgH、ヒトヘルペスウイルスgBタンパク質、ウシヘルペスウイルスgBタンパク質、セルコピテシン(cercopithecine)ヘルペスウイルスgBタンパク質、フレンドマウス白血病ウイルスエンベロープ糖タンパク質、マソンファイザーサルウイルスエンベロープ糖タンパク質、HIVエンベロープ糖タンパク質、インフルエンザウイルスヘマグルチニン、ポックスウイルス膜糖タンパク質、流行性耳下腺炎ウイルスヘマグルチニンノイラミニダーゼ、流行性耳下腺炎ウイルス糖タンパク質FIおよびF2、ウェストナイルウイルス膜糖タンパク質、単純ヘルペスウイルス膜糖タンパク質、ロシア極東脳炎ウイルス膜糖タンパク質、ベネズエラウマ脳炎ウイルス膜糖タンパク質、ならびに水痘ウイルス膜糖タンパク質の全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログ、または機能性バリアントである。
【0471】
一部の実施形態では、採用され得るシュードタイピングエレメントおよび/または融合性エンベロープタンパク質としては限定されないが、以下の全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログ、または機能性バリアントが挙げられる:MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV-B、RD114、SSAV、エボラ、センダイ、FPV(家禽ペストウイルス)、およびインフルエンザウイルスエンベロープ。同様に、RNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス科、カリシウイルス科、アストロウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、レトロウイルス科)ならびにDNAウイルス(ヘパドナウイルス科、サーコウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科およびイリドウイルス科)に由来するエンベロープをコードする遺伝子を利用してもよい。代表的な例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病ウイルス、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、およびEIAVが挙げられる。
【0472】
一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントおよび/または融合性エンベロープタンパク質としては限定されないが、以下の供給源のいずれかに由来する融合性エンベロープタンパク質の全長ポリペプチド、機能性断片、ホモログ、または機能性バリアントが挙げられる:例えば、H1N1、H1N2、H3N2およびH5N1(鳥インフル)などのインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群のいずれかのウイルス、腸管アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目、例えば狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、ドゥベンヘイグウイルス、欧州コウモリウイルス1および2、ならびにオーストラリアコウモリウイルスなどのリッサウイルス、エフェメロウイルス、ベシクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、例えば単純ヘルペスウイルス1型および2型などのヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバールウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、ヒトヘルペスウイルス6型および8型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、例えばアルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)などのアレナウイルス、例えばクリミア-コンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、ウイルスを原因とする腎症候性出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルスなどのブニヤウイルス科、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱を含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌル森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ウイルスを原因とするダニ媒介性脳炎を含むフラビウイルス科、ならびに例えばヘンドラウイルスおよびニパウイルスなどのパラミクソウイルス、致死率の高いおよび低い(天然痘)、例えばベネズエラ馬脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)、ウェストナイルウイルス、ウイルスを原因とする任意の脳炎などのアルファウイルス。
【0473】
一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントおよび/または融合性エンベロープタンパク質は、異なるウイルスに由来するエンベロープタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントは、ネコ内因性ウイルス(RD114)エンベロープタンパク質、オンコアトロウイルス両種指向性エンベロープタンパク質、オンコアトロウイルス同種指向性エンベロープタンパク質、水疱性口内炎ウイルスエンベロープタンパク質(VSV-G)(配列番号336)、ヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質(BaEV)(配列番号337)、マウス白血病エンベロープタンパク質(MuLV)(配列番号338)、インフルエンザ糖タンパク質HA表面糖タンパク質(HA)、インフルエンザ糖タンパク質ニューロミニダーゼ(NA)、パラミクソウイルス麻疹エンベロープタンパク質H、パラミクソウイルス麻疹エンベロープタンパク質F、ツパイアパラミクソウイルス(TPMV)エンベロープタンパク質H、TPMVエンベロープタンパク質F、へニパウイルス属の糖タンパク質GおよびF、ニパウイルス(NiV)エンベロープタンパク質F、NiVエンベロープタンパク質G、シンドビスウイルス(SINV)タンパク質E1、SINVタンパク質E2、および/またはこれらのエンベロープタンパク質の機能的バリアントもしくは断片(例えば、Frank and Bucholz Mol Ther Methods Clin Dev.2018 Oct 17;12:19-31を参照されたい)。
【0474】
いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントは、野生型BaEVであってもよい。理論によって限定されるものではないが、BaEVは、形質導入を阻害することが示されているRペプチドを含有する。いくつかの実施形態では、BaEVは、Rペプチドの欠失を含有し得る。いくつかの実施形態では、BaEVは、本明細書でBaEVΔR(HA)(配列番号339)と称される、アミノ酸配列HAをコードするヌクレオチドの後の阻害性Rペプチドの欠失を含有し得る。いくつかの実施形態では、BaEVは、本明細書でBaEVΔR(HAM)(配列番号340)と称される、アミノ酸配列HAMをコードするヌクレオチドの後の阻害性Rペプチドの欠失を含有し得る。
【0475】
いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントおよび/または融合性ポリペプチドは、野生型MuLVであってもよい。いくつかの実施形態では、MuLVは、エンベロープ糖タンパク質の膜貫通(TM)サブユニットと表面(SU)サブユニットとの間に位置するフューリン媒介開裂部位を除去するための一つ以上の変異を含有し得る。いくつかの実施形態では、MuLVは、パッケージング細胞におけるMuLVエンベロープタンパク質のフューリン媒介開裂を阻害するSUx変異(MuLVSUx)(配列番号372)を含有する。特定の実施形態では、MuLVまたはMuLVSUxタンパク質の細胞質尾部のC末端は、4~31個のアミノ酸によって切断されている。特定の実施形態では、MuLVまたはMuLVSUxタンパク質の細胞質尾部のC末端は、4、8、12、16、20、24、28、または31個のアミノ酸によって切断されている。
【0476】
いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントは、異なるタンパク質に由来する結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドを含む。一態様では、シュードタイピングエレメントは、インフルエンザタンパク質血球凝集素HAおよび/またはノイラミニダーゼ(NA)を含み得る。特定の実施形態では、HAは、インフルエンザAウイルスサブタイプH1N1からのものである。例示的な実施形態では、HAは、一塩基性トリプシン依存性開裂部位がより乱雑な多塩基性配列(配列番号311)に変異しているH1N1 PR8 1934からのものである。特定の実施形態では、NAは、インフルエンザAウイルスサブタイプH10N7からのものである。例示的な実施形態では、NAは、H10N7-HKWF446C-07(配列番号312)からのものである。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、標的細胞に結合する能力を保持するVSV-G、BaEV、BaEVΔR(HA)、BaEVΔR(HAM)、MuLV、MULVSUx、インフルエンザHA、インフルエンザNA、または麻疹エンベロープタンパク質Hの機能的バリアントまたは断片であってもよく、融合性ポリペプチドは、レトロウイルスおよび標的宿主細胞膜の融合を媒介する能力を保持するVSV-G、BaEV、BaEVΔR(HA)、BaEVΔR(HAM)、MuLV、MULVSUx、インフルエンザHA、インフルエンザNA、または麻疹エンベロープタンパク質Fの機能的バリアントまたは断片であってもよい。
【0477】
別の態様では、本明細書に開示される方法および組成物の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、麻疹ウイルス(MV)、限定されない例としてMVの臨床野生型株、およびEdmonston株(MV-Edm)(GenBank;AF266288.2)、またはその断片を含むワクチン株の融合(F)および/または血球凝集素(H)ポリペプチドでシュードタイピングされ得る。理論によって限定されるものではないが、血球凝集素(H)および融合(F)ポリペプチドの両方が、宿主細胞への侵入において役割を果たすと考えられており、Hタンパク質は、MVを標的細胞上の受容体CD46、SLAM、およびネクチン-4に結合し、Fは、レトロウイルスおよび宿主細胞膜の融合を媒介する。例示的な実施形態では、特に標的細胞がT細胞および/またはNK細胞である場合、結合ポリペプチドは、麻疹ウイルスHポリペプチドであり、融合性ポリペプチドは、麻疹ウイルスFポリペプチドである。
【0478】
いくつかの研究では、切断されたFおよびHポリペプチドでシュードタイピングされたレンチウイルス粒子は、力価および形質導入効率が大幅に増加した(Funke et al.2008.Molecular Therapy.16(8):1427-1436)、(Frecha et al.2008.Blood.112(13):4843-4852)。最高の力価は、F細胞質尾部が30残基によって切断された場合(MV(Ed)-FΔ30(配列番号313)と称される)に得られた。Hバリアントでは、18または19残基が欠失した場合に最適な切断が発生した(MV(Ed)-HΔ18(配列番号314)またはMV(Ed)-HΔ19)が、欠失した残基のアラニンによる置き換えの有無にかかわらず24残基の切断を有するバリアント(MV(Ed)-HΔ24(配列番号315)およびMV(Ed)-HΔ24+A)も、最適な力価をもたらした。したがって、T細胞および/またはNK細胞の形質導入に向けられたものを含むいくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物の複製能力のない組換えレトロウイルス粒子は、麻疹ウイルス融合(F)および血球凝集素(H)ポリペプチドの変異型またはバリアント型、例示的な例では、麻疹ウイルスFおよびHポリペプチドの細胞質ドメイン欠失バリアントでシュードタイピングされる。いくつかの実施形態では、変異したFおよびHポリペプチドは、細胞質部分が切断された、すなわちアミノ酸残基(またはタンパク質をコードする対応する核酸分子のコード核酸)が欠失した「切断されたH」または「切断されたF」ポリペプチドである。「HΔY」および「FΔX」はそれぞれ、そのような切断されたHおよびFポリペプチドを示し、「Y」は、細胞質ドメインのアミノ末端から欠失した1~34残基を指し、「X」は、カルボキシ末端から欠失した1~35残基を指す。さらなる実施形態では、「切断されたFポリペプチド」は、FΔ24またはFΔ30であり、および/または「切断されたHタンパク質」は、HΔ14、HΔ15、HΔ16、HΔ17、HΔ18、HΔ19、HΔ20、HΔ21+A、HΔ24およびHΔ24+4A、より好ましくはHΔ18またはHΔ24からなる群から選択される。例示的な実施形態では、切断されたFポリペプチドは、MV(Ed)-FΔ30であり、切断されたHポリペプチドは、MV(Ed)-HΔ18である。
【0479】
一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントは、へニパウイルス属(例えば、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、シダーウイルス、墨江ウイルスまたはクマシウイルス)に由来するエンベロープタンパク質であってもよく、エンベロープ糖タンパク質G(へニパウイルス-Gタンパク質)およびその融合パートナーのエンベロープ糖タンパク質F(へニパウイルス-Fタンパク質)を含んでもよい。一部の実施形態では、ヘニパウイルス-Fタンパク質は、配列番号374の配列を含み、ヘニパウイルス-Gタンパク質は、配列番号375の配列を含む。一部の実施形態では、ヘニパウイルス-Fタンパク質は、配列番号374の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45または50個の一続きのアミノ酸に対し、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、ヘニパウイルス-Gタンパク質は、配列番号375の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45または50個の一続きのアミノ酸に対し、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0480】
一部の実施形態では、ヘニパウイルス-Gタンパク質は、一つ以上の変異を含有して細胞質尾部を改変(例えば、短縮化)してもよく、それによって、シュードタイピングおよび粒子組み込みの効率が改善される(Palomares et al.,2013.J Virol.87(8):4794-4794;Witting et al.,2013.Gene Ther.20(10):997-1005;Bender et al.,2016.Plos Pathog.12(6):e1005641)。特定の実施形態では、ヘニパウイルス-Gタンパク質の細胞質尾部のN末端は、そのアミノ酸の内の1個~すべてが切断されてもよい。一部の実施形態では、受容体結合に関与するヘニパウイルス-Gタンパク質の残基が変異されて、その本来の受容体との本来の相互作用が変化し、例示的な実施形態では相互作用が改善される。特定の実施形態では、へニパウイルス-Gタンパク質は、例えば限定されないが、配列番号375のY389、E501、W504、E505、V507、Q530、E533またはI588のうちの一つ以上で変異される(アミノ酸は、Nipah-Gに対するものであり、NiV-Gとも呼称される。当業者であれば、他のへニパウイルス-Gタンパク質の対応するグルタミンを識別するであろう)(Guillaume et al.,2006.J Virol.80(15):7546-7554;Negrete et al.,2007.J Virol.81(19):10804-10814;Xu et al.,2008.P Natl Acad Sci USA.105(29):9953-9958;Xu et al.,2012.Plos One.7(11):e48742;Bender et al.,2016.Plos Pathog.12(6):e1005641)。一部の実施形態では、ヘニパウイルス-Gタンパク質は、E533Aおよび/またはQ530Aの変異を有する配列番号375である。一部の実施形態では、一つ以上のN-グリコシル化部位またはO-グリコシル化部位が変異されて、シュードタイピングおよび融合が改善される(Biering et al.,2012.J Virol.86(22):11991-12002;Stone et al.,2016.Plos Pathog.12(2):e1005445)。一部の実施形態では、一つ以上のN-グリコシル化部位が、例えば限定されないが、配列番号375のN72,N159、N306、N378、N417、N481またはN529のうちの一つ以上で、または他のへニパウイルス-Gタンパク質の対応するグルタミンで、例えばグルタミンなどの別のアミノ酸に変異する。一部の実施形態では、一つ以上のO-グリコシル化部位が、セリンまたはスレオニンから例えばアラニンなどの別のアミノ酸に変異する。一部の実施形態では、配列番号375のアミノ酸103~137の大きなO-グリコシル化ストークドメイン中のセリン残基またはスレオニン残基のうちの一つ以上が、例えばアラニンなどに変異する。他の実施形態では、へニパウイルス-Gタンパク質のC末端は、改変され、結合ポリペプチドに融合されてもよく、例示的な実施形態では例えば抗体または抗体模倣体などの活性化エレメントに融合されてもよく、例示的実施形態では、当該抗体または抗体模倣体は、抗CD3抗体または抗体模倣体であってもよい(Bender et al.2016.Plos Pathog.12(6):e1005641;Jamali et al.2019.Mol Ther-Meth Clin D.13:371-379;Frank et al.2020.Blood Adv.4(22):5702-5715)。
【0481】
一部の実施形態では、Fタンパク質は、一つ以上の変異を含有して、細胞質尾部を改変(例えば、短縮化)してもよく、それによって、シュードタイピング、粒子組み込みの効率、および/または不活性なF0から切断型の活性F1型へとFタンパク質の切断が改善される(Khetawat et al.2010.Virol J.7:312;Palomares et al.2013.J Virol.87(8):4794-4794;Witting et al.2013.Gene Ther.20(10):997-1005;Bender et al.2016.Plos Pathog.12(6):e1005641;Johnston et al.2017.J Virol.91(10):e02150-16)。一部の実施形態では、一つ以上のN-グリコシル化部位が、例えば限定されないが、N64、N67、N99、N414、またはN464のうちの一つ以上で、例えばグルタミンなどの別のアミノ酸へと変異する。特定の実施形態では、へニパウイルス属のエンベロープ糖タンパク質F(へニパウイルス-Fタンパク質)の細胞質尾部のC末端は、そのアミノ酸の1個~すべてまで切断される。一部の実施形態では、Fタンパク質は、一つ以上の変異を含有して、融合性を高めることができる(Aguilar et al.2007.J Virol.81(9):4520-4532;Weis et al.2015.Eur J Cell Biol.94(7-9):316-322)。
【0482】
一部の実施形態では、へニパウイルス属の同じウイルスに由来するシュードタイピングエレメントは、へニパウイルス-Fタンパク質とへニパウイルス-Gタンパク質を含んでもよい(すなわち、同種のタンパク質)。一部の実施形態では、へニパウイルス属の異なるウイルスに由来するシュードタイピングエレメントは、へニパウイルス-Fタンパク質とへニパウイルス-Gタンパク質を含んでもよい(すなわち、異種のタンパク質)。一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントは、ヘニパウイルス-Fタンパク質とへニパウイルス-Gタンパク質を含んでもよく、異種タンパク質のドメインから構成されるキメラであってもよい(Bradel-Tretheway et al.2019.J Virol.93(13):e00577-19)。
【0483】
一部の実施形態では、任意のシュードタイピングエレメントが細胞質尾部を改変(例えば短縮化)するための変異を一つ以上含有してもよく、それによってシュードタイピングおよび粒子組み込みの効率が改善される。特定の実施形態では、細胞質尾部のN末端は、そのアミノ酸の内の1個~すべてが切断される。一部の実施形態では、受容体結合に関与する残基が変異されて、その本来の受容体との本来の相互作用が変化し、例示的な実施形態では相互作用が改善される。Nipah-Gタンパク質の変異と同様に、一部の実施形態では、VSV-Gタンパク質は、例えば限定されないが、残基K47またはR354において変異され、例えばK47AまたはK47Qおよび/またはR354AもしくはR354Qに変異される。一部の実施形態では、これらのシュードタイピングエレメントは、同じまたは異なる細胞標的上の新たな標的タンパク質にシュードタイピングエレメントを指向させる、または再指向させるように機能する異種結合ポリペプチドに融合される。
【0484】
一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントおよび/または融合膜ポリペプチドは、パラミクソウイルス科のウイルスのエンベロープ糖タンパク質に由来する。パラミクソウイルス科のウイルスは、好ましくはモルビリウイルス属またはへニパウイルス属のウイルスである。モルビリウイルス属およびヘニパウイルス属のウイルスは、以下の二種類の糖タンパク質を使用して標的細胞に侵入する:結合タンパク質(ヘニパウイルス属のウイルスでは糖タンパク質Gと呼ばれ、モルビリウイルス属のウイルスでは糖タンパク質Hと呼ばれる)および糖タンパク質F(融合タンパク質またはタンパク質Fとも呼ばれる)。タンパク質Fは、ウイルス膜と宿主細胞の細胞膜の融合を介在する。糖タンパク質G/Hは、標的膜上の受容体を認識し、Fタンパク質の膜融合機能をサポートする。糖タンパク質G/Hと糖タンパク質Fの両方が改変型で使用されて、本発明によるレトロウイルス様粒子またはレトロウイルスベクターがシュードタイピングされる。モルビリウイルス属のウイルスは、例えば、麻疹ウイルス、イヌジテンパーウイルス、鯨類モルビリウイルス、小反芻獣疫ウイルス、アザラシジステンパーウイルス、および牛疫ウイルスからなる群から選択される。モルビリウイルス属の好ましいウイルスは、麻疹ウイルス(MeV)である。ヘニパウイルス属のウイルスは、例えば、ニパウイルス、シダーウイルス、およびヘンドラウイルスからなる群から選択される。ヘニパウイルス属の好ましいウイルスは、ニパウイルス(NiV)である。好ましい実施形態では、改変されたエンベロープ糖タンパク質は、麻疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質Hおよび糖タンパク質F、またはニパウイルスのエンベロープ糖タンパク質Gおよび糖タンパク質Fに由来する。ニパウイルスのエンベロープ糖タンパク質Gの配列の例は、WO2017/182585の配列番号9の配列である。ニパウイルスのエンベロープ糖タンパク質Fの配列の例は、WO2017/182585の配列番号11の配列である。麻疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質H(いわゆる糖タンパク質H)の配列の例は、WO2017/182585の配列番号10の配列である。麻疹ウイルスのエンベロープ糖タンパク質Fの配列の例は、WO2017/182585の配列番号12の配列である。WO 2017/182585は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0485】
いくつかの実施形態では、別個の結合および/または融合性ポリペプチドは、一つ以上の非ウイルス由来タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、標的細胞上のポリペプチドに結合する抗体、リガンド、または受容体を含む。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、本明細書において抗体模倣体とも呼称される代替的な非抗体のスキャホールドを含む。結合ポリペプチドを含む本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、抗体模倣体であってもよい。抗体である結合ポリペプチドを含む、本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、抗体の代わりに適切な抗体模倣体が使用されてもよい。一部の実施形態では、抗体模倣体は、アフィボディ(affibody)、アフィリン(afflilin)、アフィマー(affimer)、アフィチン(affitin)、アルファボディ、アルファマブ(alphamab)、アンチカリン(anticalin)、ペプチドアプタマー、アルマジロリピートタンパク質(armadillo repeat protein)、アトリマー、アビマー(アビディティマルチマーとしても知られている)、C型レクチンドメイン、システイン-ノットミニタンパク質、環状ペプチド、細胞障害性Tリンパ球抗原-4(cytotoxic T-lymphocyte associated protein-4)、DARPin(Designed Ankyrin Repeat Protein)、フィブリノーゲンドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン(FN3ドメイン)(例えば、アドネクチン(adnectin)またはモノボディ)、フィノマー(fynomer)、ノッチン(knottin)、Kunitzドメインペプチド、ナノフィチン、ロイシンリッチリピートドメイン、リポカリンドメイン、mAb 2もしくはFcab(商標)、ナノボディ、nanoCLAMP、Obody、プロネクチン(Pronectin)、一本鎖TCR、テトラトリコペプチドリピートドメイン、VHH、またはV様ドメインであってもよい。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、CD16、CD56、およびCD57などのNK細胞の表面上のタンパク質を認識する。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD62L、CCR7、TCRa、およびTCRbなどのT細胞の表面上のタンパク質を認識する。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドはまた、活性化エレメントである。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドは、CD3に結合する膜ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、フソゲンは、その結合活性を除去するために改変されるシンドビスウイルス糖タンパク質、SV1に由来し、結合ポリペプチドは、膜結合型の抗CD3抗体
(Yang et al.2009.Pharm Res 26(6):1432-1445)である。
【0486】
いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、二つ以上の異種ウイルスからのエンベロープ糖タンパク質と同時シュードタイピングされる。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、VSV-G、またはその機能的バリアントもしくは断片、ならびにRD114、BaEV、MuLV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルスからのエンベロープタンパク質、および/またはその機能的バリアントもしくは断片で同時シュードタイピングされる。いくつかの実施形態では、ウイルス粒子は、VSV-G、およびMV(Ed)-H糖タンパク質、または切断された細胞質ドメインを有するMV(Ed)-H糖タンパク質と同時シュードタイピングされる。例示的な実施形態では、ウイルス粒子は、VSV-GおよびMV(Ed)-HΔ24で同時シュードタイピングされる。特定の実施形態では、VSV-Gは、MuLV、または切断された細胞質ドメインを有するMuLVと同時シュードタイピングされる。他の実施形態では、VSV-Gは、MuLVSUx、または切断された細胞質ドメインを有するMuLVSUxと同時シュードタイピングされる。さらなる例示的な実施形態では、VSV-Gは、抗CD3scFvのMuLVへの融合を用いて同時シュードタイピングされる。
【0487】
いくつかの実施形態では、融合性ポリペプチドは、クラスIフソゲンに由来する。いくつかの実施形態では、融合性ポリペプチドは、クラスIIフソゲンに由来する。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドおよび別個の融合性ポリペプチドの両方は、ウイルス由来である。いくつかの実施形態では、融合性ポリペプチドは、一つのポリペプチドとして発現される複数の要素を含む。いくつかの実施形態では、結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドは、同じ転写物からであるが別個のリボソーム結合部位から翻訳され、他の実施形態では、結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドは、理論によって束縛されるものではないが、文献において一般的であるように翻訳後に切断される開裂ペプチド部位、またはリボソームスキップ配列によって分離される。いくつかの実施形態では、別個のリボソーム結合部位からの結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドの翻訳は、結合ポリペプチドと比較して、より大量の融合性ポリペプチドをもたらす。いくつかの実施形態では、融合性ポリペプチド対結合ポリペプチドの比は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、または少なくとも8:1である。いくつかの実施形態では、融合性ポリペプチド対結合ポリペプチドの比は、範囲の下限の1.5:1、2:1、または3:1~範囲の上限の3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1である。
【0488】
短い接触時間を含む本明細書に開示される実施形態では、細胞製剤中の改変されたリンパ球の多くは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子との会合を介して、またはレトロウイルスエンベロープと改変されたリンパ球の形質膜との融合によってのいずれかで、改変されたリンパ球の対象への再導入中に、その表面上にシュードタイピングエレメントを有する。いくつかの実施形態では、細胞製剤中の改変されたリンパ球の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%が、その表面上にシュードタイピングエレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、シュードタイピングエレメントは、改変されたリンパ球の表面に結合していてもよく、および/またはシュードタイピングエレメントは、改変されたリンパ球の形質膜内中に存在していてもよい。
【0489】
一部の実施形態では、本明細書のRIPは、その表面上に、T細胞および/またはNK細胞に結合するための手段を含む。一部の実施形態では、本明細書のRIPは、その表面上に、RIPとT細胞および/またはNK細胞の細胞膜の融合を介在するための手段を含む。一部の実施形態では、本明細書のRIPは、その表面上に、T細胞および/またはNK細胞を結合するための手段と、T細胞および/またはNK細胞の細胞膜とRIPの融合を介在するための手段の両方を含む。一部の実施形態では、これは同じ手段である。
【0490】
一部の実施形態では、本明細書に開示される対象に直接投与することを目的としたRIP(RIP製剤および/または送達溶液)のいずれかは、その表面上にエンベロープタンパク質、例えば、T細胞および/またはNK細胞の結合ポリペプチドの複数コピー、および本明細書に開示されるフソゲンとも呼称される、融合性ポリペプチドの複数コピーを含んでもよい。一部の実施形態では、本明細書に開示される対象に直接投与することを目的としたRIP(RIP製剤および/または送達溶液)のいずれかは、その表面上に本明細書に開示されるT細胞および/またはNK細胞への結合手段を含んでもよい。
【0491】
活性化エレメント
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子を含む本開示の方法および組成物の態様の多くはさらに、本明細書においてT細胞活性化エレメントとも故障される活性化エレメント、または活性化エレメントをコードする核酸を含む。活性化エレメントは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子のエンベロープタンパク質である。Tリンパ球などの免疫系の細胞は、受容体または受容体複合体を介して特定の抗原を認識し、かつそれと相互作用し、受容体または受容体複合体は、そのような抗原の認識またはそれとの相互作用後に、細胞の活性化および体内での増大をもたらす。そのような受容体の一例は、Tリンパ球の表面上に発現される抗原特異的Tリンパ球受容体複合体(TCR/CD3)である。TCRは、抗原提示細胞または他のリンパ球標的の表面上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のタンパク質によって提示される抗原性ペプチドを認識する。TCR/CD3複合体の刺激は、Tリンパ球の活性化、およびその結果としての抗原特異的免疫応答をもたらす。したがって、本明細書に提供される活性化エレメントは、T細胞受容体関連複合体の一つ以上の成分に結合することによって、例えばCD3に結合することによってT細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、活性化エレメントは、単独で活性化することができる。他の場合では、活性化は、細胞をさらに活性化するために、TCR受容体複合体を介した活性化を必要とする。Tリンパ球はまた、インビボで完全に活性になるために第二の共刺激シグナルを必要とする。そのようなシグナルがないと、Tリンパ球は、TCRに結合する抗原に応答しないか、またはアネルギーになる。しかしながら、第二の共刺激シグナルは、T細胞の形質導入および拡張に必須ではなく、例えば、本明細書において別段に提示されるように、形質導入の後に、CARまたはLEからの共刺激シグナルによって後で提供されてもよい。一部の実施形態では、共刺激シグナルは、形質導入の間に、例えば抗原産生細胞上のCD80およびCD86と相互作用するTリンパ球タンパク質であるCD28によって提供されてもよい。
【0492】
T細胞受容体(TCR)CD3複合体の活性化およびCD28との共刺激は、抗CD3および抗CD28でコーティングされた固体表面(例えばビーズ)へのエクスビボ曝露によって生じ得る。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態では、休止T細胞は、エクスビボでの、抗CD3および抗CD28でコーティングされた固体表面への曝露によって活性化される。他の実施形態では、休止T細胞またはNK細胞、および例示的な実施形態では休止T細胞は、可溶性抗CD3抗体(例えば、50~150、または75~125、または100ng/mL)への曝露によって活性化される。例示的な実施形態では事前活性化を伴わない、改変、遺伝子改変、または形質導入するための方法の一部であり得るそのような実施形態では、そのような活性化および/または接触は、形質導入反応混合物中に抗CD3を含むこと、および本明細書に提供される時間のいずれかの間、任意選択のインキュベーションを伴って接触させることによって実行され得る。さらに、可溶性抗CD3によるそのような活性化は、PBMCなどのリンパ球、および例示的な実施形態ではNK細胞、およびより例示的な実施形態ではT細胞を、抗CD3を含有する培地中でレトロウイルス粒子と接触させた後にインキュベートすることによって生じ得る。そのようなインキュベーションは、例えば、範囲の下限の5、10、15、30、45、60、または120分間~範囲の上限の15、30、45、60、120、180、または240分間の間、例えば15~1時間または2時間の間であってもよい。
【0493】
例えば、リンパ球、特に活性化T細胞表面タンパク質に結合することができるT細胞および/またはNK細胞ポリペプチドを改変(インビボまたはエクスビボ)、遺伝子改変、および/または形質導入するための本明細書に提供される方法、キット、および組成物の特定の例示的な実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に「活性化エレメント」として提示される。したがって一部の実施形態では、活性化エレメントは、結合ポリペプチドの機能を実行することができる。一部の実施形態では、活性化エレメントは、エンベロープタンパク質である。レトロウイルス粒子の表面上のかかるT細胞および/またはNK細胞の活性化エレメントは、本明細書の実施形態において、例えばレトロウイルス粒子が、CAR、自己駆動CARまたはLEをコードするゲノムを有する場合、リンパ球を改変する、遺伝子改変する、および/または形質導入することを目的に提示される。一部の実施形態では、対象への直接投与を目的とした、本明細書に開示されるRIPを含有するRIP製剤または送達製剤のいずれかは、本明細書に開示されるRIPの表面上に活性化エレメントを含んでもよい。一部の実施形態では、表面に活性化エレメントがあるレトロウイルス粒子は、皮下投与による投与を含む方法および使用において使用され、および皮下投与を目的としたきっとにおいて使用される。本明細書のこの項で検討される活性化エレメントの機能、ならびに本明細書の別段に開示される結合ポリペプチドおよび融合性ポリペプチドは、特定の例示的な実施形態ではすべて、レトロウイルス粒子の表面と関連付けられて存在し、一つ、二つ、または三つのタンパク質の一部として存在し、例示的な実施形態では糖タンパク質の一部として存在し、さらに例示的な実施形態では異種糖タンパク質の一部として存在する。例えば、CD3に結合する能力を有するものなど、一部の活性化エレメントポリペプチドは、T細胞結合ポリペプチドの機能も提供することができる。
【0494】
一部の実施形態では、活性化エレメントは、リンパ球、例示的な実施形態ではT細胞および/またはNK細胞の表面上のポリペプチドに結合することができるポリペプチドである。例示的な実施形態では、活性化エレメントは、TCR複合体ポリペプチドに結合することができるポリペプチドである。一部の実施形態では、TCR複合体ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRα、またはTCRβである。一部の実施形態では、TCR複合体ポリペプチドに結合することができる活性化エレメントは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRαまたはTCRβのうちの一つ以上に結合することができるポリペプチドである。例示的な実施形態では、活性化エレメントは、ZAP-70を活性化する。一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD16A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2FまたはNKG2Hに結合することができるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、NKG2Dに結合することができるポリペプチドは、MIC-A、MIC-B、またはULBP、例えば、ULBP1またはULBP2である。さらなる実施形態では、CD16Aに結合することができるポリペプチドは、NKp46、2B4、CD2、DNAM、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2FまたはNKG2Hのうちの一つ以上に結合することができるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、活性化エレメントは、以下の組み合わせのうちの一つ以上に結合することができるポリペプチドである:NKp46および2B4、NKp46およびCD2、NKp46およびDNAM、NKp46およびNKG2D、2B4およびDNAM、または2B4およびNKG2D。一部の実施形態では、活性化エレメントは、リンパ球の表面上のポリペプチドに結合することができる二つ以上のポリペプチドであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、以下の組み合わせのうちの少なくとも一つに結合することができる一つ以上のポリペプチドであってもよい:NKp46および2B4、NKp46およびCD2、NKp46およびDNAM、NKp46およびNKG2D、2B4およびDNAM、または2B4およびNKG2D。例示的な実施形態では、活性化エレメントは、CD3Eに結合することができるポリペプチドである。いくつかの実施形態では、CD3に結合することができるポリペプチドは、抗CD3抗体、またはCD3に結合する能力を保持するその断片である。例示的な実施形態では、抗CD3抗体またはその断片は、抗CD3 scFvなどであるがこれに限定されない、一本鎖抗CD3抗体である。別の例示的な実施形態では、CD3に結合することができるポリペプチドは、抗CD3scFvFcである。
【0495】
一部の実施形態では、活性化エレメントは、抗体である。一部の実施形態では、活性化エレメントは、本明細書において抗体模倣体とも呼称される代替的な非抗体のスキャホールドを含む。リンパ球の表面上、例示的な実施形態ではT細胞の表面上のポリペプチドに結合することができる活性化エレメントを含む、本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、結合ポリペプチドは、抗体模倣体であってもよい。一部の実施形態では、抗体模倣体は、アフィボディ(affibody)、アフィリン(afflilin)、アフィマー(affimer)、アフィチン(affitin)、アルファボディ、アルファマブ(alphamab)、アンチカリン(anticalin)、VHH、アルマジロリピートタンパク質(armadillo repeat protein)、アトリマー、アビマー(アビディティマルチマーとしても知られている)、C型レクチンドメイン、システイン-ノットミニタンパク質、環状ペプチド、細胞障害性Tリンパ球抗原-4(cytotoxic T-lymphocyte associated protein-4)、DARPin(Designed Ankyrin Repeat Protein)、フィブリノーゲンドメイン、フィブロネクチン結合ドメイン(FN3ドメイン)(例えば、アドネクチン(adnectin)またはモノボディ)、フィノマー(fynomer)、ノッチン(knottin)、Kunitzドメインペプチド、ロイシンリッチリピートドメイン、リポカリンドメイン、mAb 2もしくはFcab(商標)、ナノボディ、nanoCLAMP、Obody、プロネクチン(Pronectin)、一本鎖TCR、テトラトリコペプチドリピートドメイン、またはV様ドメインであってもよい。抗体である活性化エレメントを含む、本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかにおいて、抗体の代わりに適切な抗体模倣体が使用されてもよい。一部の実施形態では、リンパ球の表面上のポリペプチド(例えば、TCRb)に結合することができる活性化エレメントは、スーパー抗原ポリペプチドである。
【0496】
一部の実施形態では、本明細書に提供されるRIPは、その表面上に、CD3に結合する手段を含んでもよい。限定されないが、UCHT1、OKT-3、HIT3A、TRX4、X35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111409、CLB-T3.4.2、TR-66、TR66.opt、HuM291、WT31、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW24B6、OKT3D、M-T301、SMC2、およびF101.01を含む多数の抗ヒトCD3モノクローナル抗体およびそれらの抗体断片が利用可能であり、本発明において使用され得る。例示的な実施形態では、抗CD3は、UCHT1またはOKT-3である。一部の実施形態では、抗CD3は、VHH抗体のCML3.1(配列番号421)を含む。一部の実施形態では、抗CD3は、配列番号347のUCHT1の配列を含む。
【0497】
他の実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上の活性化エレメントは、CD28、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81、および/またはCD82、ならびに任意選択でCD3に結合できるポリペプチドを一つ以上含んでもよい。例示的な実施形態では、活性化エレメントは、マイトジェンのテトラスパニンに結合することができるポリペプチド、例えば、CD81、CD9、CD53、CD63、またはCD82に結合することができるポリペプチドである。一部の実施形態では、活性化エレメントは、テトラスパニンである。テトラスパニンは、当分野で公知である。一部の実施形態では、テトラスパニンは、TSPAN1(TSP-1),TSPAN2(TSP-2),TSPAN3(TSP-3),TSPAN4(TSP-4,NAG-2),TSPAN5(TSP-5),TSPAN6(TSP-6),TSPAN7(CD231/TALLA-1/A15),TSPAN8(CO-029),TSPAN9(NET-5),TSPAN10(OCULOSPANIN),TSPAN11(CD151-like),TSPAN12(NET-2),TSPAN13(NET-6),TSPAN14,TSPAN15(NET-7),TSPAN16(TM4-B),TSPAN17,TSPAN18,TSPAN19,TSPAN20(UP1b,UPK1B),TSPAN21(UP1a,UPK1A),TSPAN22(RDS,PRPH2),TSPAN23(ROM1),TSPAN24(CD151),TSPAN25(CD53),TSPAN26(CD37),TSPAN27(CD82),TSPAN28(CD81),TSPAN29(CD9),TSPAN30(CD63),TSPAN31(SAS),TSPAN32(TSSC6),またはTSPAN33であってもよい。一部の実施形態では、テトラスパニンは、TSPAN1(TSP-1),TSPAN2(TSP-2),TSPAN3(TSP-3),TSPAN4(TSP-4,NAG-2),TSPAN5(TSP-5),TSPAN6(TSP-6),TSPAN7(CD231/TALLA-1/A15),TSPAN8(CO-029),TSPAN9(NET-5),TSPAN10(OCULOSPANIN),TSPAN11(CD151-like),TSPAN12(NET-2),TSPAN13(NET-6),TSPAN14,TSPAN15(NET-7),TSPAN16(TM4-B),TSPAN17,TSPAN18,TSPAN19,TSPAN20(UP1b,UPK1B),TSPAN21(UP1a,UPK1A),TSPAN22(RDS,PRPH2),TSPAN23(ROM1),TSPAN24(CD151),TSPAN26(CD37),TSPAN31(SAS),TSPAN32(TSSC6),またはTSPAN33であってもよい。例示的な実施形態では、テトラスパニンは、TSPAN7(CD231/TALLA-1/A15)、TSPAN9(NET-5)、TSPAN24(CD151)、TSPAN27(CD82)、TSPAN28(CD81)、TSPAN29(CD9)、またはTSPAN30(CD63)である。一部の実施形態では、活性化エレメントは、テトラスパニンであり、テトラスパニンは、TSPAN25(CD53)、TSPAN27(CD82)、TSPAN28(CD81)、TSPAN29(CD9)、またはTSPAN30(CD63)である。一部の実施形態では、テトラスパニンは、唯一のエンベロープタンパク質である。一部の実施形態では、テトラスパニンは、結合ポリペプチドおよび融合エレメントを含むシュードタイピングエレメントである。一部の実施形態では、テトラスパニンは、活性化エレメントおよびシュードタイピングエレメントである。例示的な実施形態では、活性化エレメントおよびシュードタイピングエレメントであるテトラスパニンは、TSPAN29(CD9)である。
【0498】
一部の実施形態では、これらの活性化エレメントのうちの一つ以上の一つまたは典型的にはそれより多くのコピーが、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に発現され得るが、これは、ポリペプチドがシュードタイピングエレメントとは別個であり、異なるためである。一部の実施形態では、活性化エレメントは、融合ポリペプチドとして複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に発現されてもよい。例示的な実施形態では、融合ポリペプチドは、一つ以上の活性化エレメントおよび一つ以上のシュードタイピングエレメントまたは一つ以上の結合エレメントおよび/もしくは融合性エレメントを含む。さらなる例示的な実施形態では、融合ポリペプチドは、抗CD3、例えば抗CD3scFv、または抗CD3scFvFc、およびウイルスエンベロープタンパク質を含む。一例では、融合ポリペプチドは、Maurice et al.(2002)に示されるように、MuLVエンベロープタンパク質などのウイルスエンベロープタンパク質のアミノ末端に融合したOKT-3scFvである。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、ウイルスエンベロープタンパク質、例えばMuLVエンベロープタンパク質(配列番号341)、MuLVSUxエンベロープタンパク質(配列番号366)、VSV-G(配列番号367)、またはその機能的変異体もしくは断片(本明細書に提供される膜タンパク質切断のいずれかを含む)に融合したUCHT1scFvである。例示的実施形態、特に全血中のリンパ球を形質導入することを目的とした本明細書の組成物および方法の実施形態において、融合ポリペプチドは、レトロウイルス粒子の外側にある融合タンパク質の部分に、いかなる血液タンパク質(例えば、血液因子(例えば、第X因子))の開裂部位も含まない。いくつかの実施形態では、融合構築物は、いかなるフューリン開裂部位も含まない。フューリンは、検査したすべての哺乳動物細胞で発現される膜結合プロテアーゼであり、その一部は、血漿中で分泌され、かつ活性である(例えば、C.Fernandez et al.J.Internal.Medicine(2018)284;377-387を参照されたい)。そのようなプロテアーゼ開裂部位を除去するための既知の方法を使用して、融合構築物に変異を生じさせることができる。
【0499】
CD3、CD28、OX40、4-1BB、またはICOSに結合するポリペプチドは、休止T細胞を活性化する能力があるため、活性化エレメントと呼称される。特定の実施形態では、そのような活性化エレメントをコードする核酸は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子のゲノム中に存在し、当該レトロウイルス粒子は、その表面上に活性化エレメントを含む。例示的な実施形態では、活性化エレメントをコードする核酸は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子のゲノム中に存在しない。一部の実施形態では、活性化エレメントをコードする核酸は、ウイルスパッケージング細胞のゲノム中に存在する。
【0500】
一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD28に結合することができるポリペプチドであり、例えば抗CD28抗体もしくは抗CD28scFv抗体、またはCD28に結合する能力を保持するその断片である。他の実施形態では、CD28に結合することができるポリペプチドは、CD80、CD86、またはCD28に結合し、かつCD80の外部断片などのAktのCD28媒介活性化を誘導することができるそれらの機能的断片である。本明細書のいくつかの態様では、CD80の外部断片は、CD80の通常の細胞位置において細胞の外側に典型的に存在し、CD28に結合する能力を保持する断片を意味する。
【0501】
抗CD28抗体は当分野に公知であり、非限定的な例として、モノクローナル抗体の9.3(IgG2a抗体)、KOLT-2(IgG1抗体)、15E8(IgG1抗体)、248.23.2(IgM抗体)、およびEX5.3D10(IgG2a抗体)が挙げられる。
【0502】
例示的な実施形態では、活性化エレメントは、二つのポリペプチドを含み、CD3に結合することができるポリペプチドとCD28に結合することができるポリペプチドを含む。
【0503】
特定の実施形態では、CD3またはCD28に結合することができるポリペプチドは、抗体、一本鎖モノクローナル抗体または抗体断片、例えば一本鎖抗体断片である。したがって、抗体断片は、例えば、一本鎖断片可変領域(scFv)、抗体の抗体結合(Fab)断片、一本鎖抗原結合断片(scFab)、システインを含まない一本鎖抗原結合断片(scFabΔC)、断片可変領域(Fv)、抗原の隣接エピトープに特異的な構築物(CRAb)、または単一ドメイン抗体(VHもしくはVL)であってもよい。
【0504】
一部の実施形態では、活性化エレメントは、別個の二つの細胞表面タンパク質に結合する、当分野で公知の二重特異性T細胞誘導体(BiTE:bispecific T-cell engager)を含んでもよい。一部の実施形態では、BiTEは、活性化T細胞の表面タンパク質と別の表面タンパク質に結合することができる一つ以上のポリペプチドを含んでもよい。一部の実施形態では、BiTEは、活性化T細胞の表面タンパク質と、別の細胞、例えば血液細胞、例示的実施形態ではB細胞の表面タンパク質に結合することができる一つ以上のポリペプチドを含んでもよい。一部の実施形態では、BiTEは、CD3に結合することができる一つ以上のポリペプチドを含んでもよい。一部の実施形態では、CD3に結合することができるポリペプチドは、CD3に結合する本明細書のポリペプチドのいずれか、例えば抗CD3抗体であってもよい。一部の実施形態では、BiTEは、CD19に結合することができる一つ以上のポリペプチドを含んでもよい。一部の実施形態では、CD19に結合することができるポリペプチドは、当分野で公知の任意の抗CD19抗体を含む、抗CD19抗体であってもよい。例示的な実施形態では、BiTEは、CD3とCD19に結合することができる一つ以上のポリペプチドを含んでもよい。
【0505】
一部の実施形態では、細胞製剤中の改変されたリンパ球の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%が、その表面上にT細胞活性化エレメントを含んでもよい。一部の実施形態では、T細胞活性化エレメントは、例えば、T細胞受容体を介して改変リンパ球の表面に結合することができ、および/またはシュードタイピングエレメントは、改変リンパ球の細胞膜中に存在してもよい。
【0506】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、活性化エレメント、またはそれをコードする核酸は、二量体化またはより高次の多量体化モチーフを含み得る。二量体化および多量体化のモチーフは、当該技術分野で周知であり、当業者は、有効な二量体化または多量体化のためにそれらをポリペプチドに組み込む方法を理解するであろう。例示的な実施形態では、CD3に結合することができるポリペプチドは、抗CD3scFvFcであり、これは、抗CD3scFvFc構築物が別個の二量体化モチーフを必要とすることなく二量体化することができることが知られているため、いくつかの実施形態では、いかなる追加の二量体化モチーフも伴わない二量体化モチーフを有する抗CD3とみなされる。
【0507】
いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面に存在する場合、二量体化モチーフを含む活性化エレメントは、二量体化剤の非存在下で活性であり得る。いくつかの実施形態では、二量体化もしくは多量体化モチーフ、またはそれをコードする核酸配列は、ホモ二量体または多量体として自然に存在する膜貫通ポリペプチドからのアミノ酸配列であってもよい。いくつかの実施形態では、二量体化もしくは多量体化モチーフ、またはそれをコードする核酸配列は、天然タンパク質または操作されたタンパク質の断片からのアミノ酸配列であってもよい。一実施形態では、ホモ二量体ポリペプチドは、ロイシンジッパーモチーフ含有ポリペプチド(ロイシンジッパーポリペプチド)である。例えば、c-JUNに由来するロイシンジッパーポリペプチドであり、その限定されない例は、本明細書のキメラリンパ増殖エレメント(CLE)に関連して開示される。一部の実施形態では、これらの膜貫通型ホモ二量体ポリペプチドは、CD69、CD71、CD72、CD96、Cd105、Cd161、Cd162、Cd249、CD271、Cd324、またはそれらの活性断片を含んでもよい。
【0508】
いくつかの実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面に存在する場合、二量体化モチーフを含む活性化エレメントは、二量体化剤の存在下で活性であり得る。いくつかの実施形態では、二量体化モチーフ、およびそれをコードする核酸は、リガンド(本明細書では二量体化物質または二量体化剤とも称される)結合後に二量体化する膜貫通タンパク質からのアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、二量体化モチーフおよび二量体化物質は、以下を含んでもよい(二量体化物質は、以下の二量体化物質-結合ペアの後の括弧内に記載):FKBPおよびFKBP(ラパマイシンまたはそのアナログのAP1903);FKBP12-F36VおよびFKBP12-F36V(AP1903);FKBPおよびFRB(ラパマイシンまたはそのアナログ);GyrBおよびGyrB(クーママイシンまたはそのアナログ);DHFRおよびDHFR(メトトレキサート);またはDmrBおよびDmrB(AP20187)上記のように、ラパマイシンは、二量体化物質として役立ち得る。代替として、ラパマイシン誘導体またはアナログが使用され得る(例えば、WO96/41865、WO 99/36553、WO01/14387、およびYe et al(1999)Science 283:88-91を参照されたい)。代替として、クーママイシンアナログが使用され得る(例えば、Farrar et al.(1996)Nature 383:178-181、および米国特許第6,916,846号を参照されたい)。リンパ増殖エレメントのいくつかの実施形態は、二量体化剤を含むが、いくつかの態様および例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントは構造的に活性であり、活性化のために二量体化剤を必要とするリンパ増殖エレメント以外である。
【0509】
いくつかの実施形態では、活性化エレメントは、異種シグナル配列および/もしくは異種膜付着配列または膜結合タンパク質に融合しており、これらはすべて、活性化エレメントを膜に向けるのを助ける。いくつかの実施形態では、翻訳後脂質改変は、ミリストイル化、パルミトイル化、またはGPI固定を介して生じ得る。いくつかの実施形態では、異種膜付着配列は、GPIアンカー付着配列である。異種GPIアンカー付着配列は、任意の公知のGPIアンカー型タンパク質から誘導され得る。いくつかの実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、CD14、CD16、CD48、CD55(DAF)、CD59、CD80、およびCD87からのGPIアンカー付着配列である。いくつかの実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、CD16に由来する。例示的な実施形態では、異種GPIアンカー付着配列は、Fc受容体FcγRIIIb(CD16b)または崩壊促進因子(DAF)、別名補体崩壊促進因子もしくはCD55に由来する。
【0510】
いくつかの実施形態では、活性化エレメントの一つ以上が、活性化エレメントの細胞膜への直接発現を助けるための異種シグナル配列を含む。パッケージング細胞株中で活性な任意のシグナル配列が使用され得る。いくつかの実施形態では、シグナル配列は、DAFシグナル配列である。例示的な実施形態では、活性化エレメントは、そのN末端でDAFシグナル配列に融合しており、そのC末端でGPIアンカー付着配列に融合している。
【0511】
例示的な実施形態では、活性化エレメントは、CD14に由来するGPIアンカー付着配列に融合した抗CD3 scFvFc、およびCD16bに由来するGPIアンカー付着配列に融合したCD80を含み、両方とも、本明細書に提供される複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、抗CD3 scFvFcは、そのN末端でDAFシグナル配列およびそのC末端でCD14に由来するGPIアンカー付着配列に融合しており、CD80は、そのN末端でDAFシグナル配列およびそのC末端でCD16bに由来するGPIアンカー付着配列に融合しており、両方とも、本明細書に提供される複製能力のない組換えレトロウイルス粒子の表面上に発現される。いくつかの実施形態では、DAFシグナル配列は、DAFタンパク質のアミノ酸残基1~30を含む。
【0512】
一部の実施形態では、活性化エレメントは、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子から分離されてもよい。したがって一部の実施形態では、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子は、その表面上に活性化エレメントを含まない。
【0513】
一部の実施形態では、複数の活性化エレメントが使用される。一部の実施形態では、活性化エレメントは、スーパー抗原、例えば、リポ多糖類、SEC3、およびブドウ球菌エンテロトキシンBであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、サイトカインであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、ホルボールミリスタートアセタート(PMA)、イオノマイシン、またはフィトヘマグルチニン(PHA)であってもよい。一部の実施形態では、細胞製剤中のPMAの濃度、または複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子とは別に投与されるPMAの濃度は、10、25、50、75、もしくは100ng/mlであってもよく、または10~100ng/mlもしくは25~75ng/mlであってもよい。一部の実施形態では、細胞製剤中のイオノマイシンの濃度、または複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子とは別に投与されるイオノマイシンの濃度は、少なくとも、または約100、250、500、もしくは750ng/mlであってもよく、または1、2、3、4、もしくは5μg/mlであってもよく、または100ng/ml~5μg/mlもしくは500ng/ml~2μg/mlであってもよい。一部の実施形態では、細胞製剤中のPHAの濃度、または複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子とは別に投与されるPHAの濃度は、少なくとも、または約0.1μg/ml、0.25μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、7.5μg/ml、もしくは10μg/mlであってもよく、または0.1~10μg/ml、1~10μg/mlもしくは2.5~7.5μg/mlであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、細胞製剤の投与から5、10、15、20、30、45もしくは60分以内、または1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、18もしくは24時間以内、または1、2、3、4、5、6、7、14、21もしくは28日以内に投与される。一部の実施形態では、活性化エレメントは、例えば、細胞製剤の投与後、別の日に複数回投与される。
【0514】
チェックポイント阻害リガンド
一部の実施形態では、本開示のRIPはさらに、チェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸配列を含む。任意選択的にチェックポイント阻害性リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイントを遮断することができる。任意選択的にチェックポイント阻害性リガンドは、Tim-3チェックポイントを遮断することができる。一部の実施形態では、かかるRIPは、CARおよび/またはLEをコードする。例示的な副次的実施形態では、LEは、抗PD-1リガンドを含むLE以外のLEである。さらに特定の例示的な実施形態では、本明細書のRIPは、チェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸配列を含み、および膜結合型または膜関連型のサイトカイン融合ポリペプチドを含む。さらにかかるRIPは、CD3に結合するポリペプチドなどの膜関連型の活性化エレメントをさらに含んでもよい。
【0515】
チェックポイント阻害剤療法は、あるタイプのがん治療であり、免疫チェックポイントを刺激する、または阻害する剤を使用して、免疫応答を調節する。腫瘍は、自身を対象の免疫系から防御するために、またはがん免疫療法で使用される治療剤から防御するために、チェックポイントを利用する可能性がある。本開示は、チェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸配列を含むRIP(例えば、レンチウイルス粒子)を提供するものであり、この場合において、レンチウイルスベクター系から産生されるレンチウイルス粒子は、その表面にチェックポイント阻害性リガンドを提示し、それに伴い当該レンチウイルス粒子の投与によって、治療的使用の場所で、対象にチェックポイント阻害性リガンドが送達される。本開示はさらに、チェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸配列を含むレンチウイルスベクター系を提供するものであり、それによって、レンチウイルス粒子が投与されると標的細胞にポリヌクレオチド配列が送達され、次いで治療的使用の場所でチェックポイント阻害性リガンドが発現される。
【0516】
本開示によって提供されるチェックポイント阻害性リガンドの例としては、限定されないが、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、および抗PD-Ll抗体、またはCTLA4、PD-1もしくはD-L1とそれぞれ相互作用する任意の非抗体性リガンド(例えば、ナノボディ、DARPins)が挙げられる。一部の実施形態では、チェックポイント阻害性リガンドは、PD-1/PD-L1チェックポイントおよび/またはTim-3チェックポイントおよび/またはCTLA-4チェックポイントを遮断することができる。
【0517】
一部の実施形態では、対象への直接投与を目的とした、本明細書に開示されるRIPを含有するRIP製剤または送達製剤のいずれかは、本明細書に開示されるチェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸配列を含んでもよい。
【0518】
パッケージング細胞株/組換えレトロウイルス粒子の作製方法
本開示は、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子(RIP)を産生する哺乳動物パッケージング細胞およびパッケージング細胞株を提供する。RIPを産生する細胞株は、本明細書において、パッケージング細胞株とも呼称される。そのような方法の限定されない例は、WO2019/055946に示される。本明細書の方法を使用して生産されるRIPは、例えば、本明細書に提供されるRIP製剤において、例えば、対象への投与を目的として使用することができる。そのような方法は、例えば、GPI連結した抗CD3などのウイルスエンベロープとの融合ではないT細胞活性化エレメントなどの追加の膜結合タンパク質をコードする核酸が含まれる場合、4プラスミド系または5プラスミド系を含む(WO2019/05546を参照されたい)。例示的な実施形態では、GPI連結した抗CD3などのT細胞活性化エレメントが、ウイルスエンベロープをコードするプラスミドまたはREVをコードするプラスミドなどのパッケージングプラスミドのうちの一つの上でコードされ、かつ任意選択で、膜結合サイトカインなどの第二のウイルス膜会合導入遺伝子は、他のパッケージングプラスミド上でコードされ得る、4プラスミド系が本明細書に提供される。いずれの場合も、ウイルスタンパク質をコードする核酸は、IRES、またはP2AもしくはT2Aなどのリボソームスキップ配列によって導入遺伝子から分離されている。実施例に記載されるような4プラスミド系および関連するポリヌクレオチドは、一過性トランスフェクションにおいて5ベクター系と比較して増加した力価を提供し、したがって、本明細書の例示的な実施形態を提供する。本開示は、標的哺乳動物細胞を遺伝子改変する複製能力のない組換えレトロウイルス粒子および標的哺乳動物細胞自体を産生するパッケージング細胞株である、パッケージング細胞および哺乳動物細胞株を提供する。例示的な実施形態では、パッケージング細胞は、複製能力のないレトロウイルス粒子のパッケージング可能なRNAゲノム、REVタンパク質、gagポリペプチド、polポリペプチド、およびシュードタイピングエレメントをコードする核酸配列を含む。
【0519】
パッケージング細胞株の細胞は、接着細胞または浮遊細胞であってもよい。例示的な細胞タイプが、本明細書の以下に記載される。例示的実施形態では、パッケージング細胞株は、浮遊細胞株、すなわち、成長中に表面に接着しない細胞株であってもよい。細胞は、既知組成培地および/または無血清培地で成長し得る。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株は、接着細胞株に由来する浮遊細胞株であり得、例えば、HEK293細胞株は、当該技術分野で知られている方法に従って、懸濁液適応HEK293細胞株を生成する条件で成長し得る。パッケージング細胞株は典型的には、既知組成培地で成長する。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株培地は、血清を含み得る。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株培地は、当該技術分野で知られているように、血清代替物を含み得る。例示的実施形態では、パッケージング細胞株培地は、無血清培地であってもよい。そのような培地は、米国食品医薬品局(FDA)の現在の適正製造基準(CGMP)規制に準拠して製造された、既知組成無血清製剤であってもよい。パッケージング細胞株培地は、ゼノフリーかつ完全であり得る。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞株培地は、FDA 510(k)が承認されたデバイスなど、エクスビボ細胞処理で使用するために、規制機関によって承認されている。
【0520】
したがって、一態様では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を作製する方法が本明細書に提供され、方法は、A.パッケージング細胞を無血清培地中で懸濁状態で培養することであって、パッケージング細胞が、複製能力のないレトロウイルス粒子のパッケージング可能なRNAゲノム、REVタンパク質、gagポリペプチド、polポリペプチド、およびシュードタイピングエレメントをコードする核酸配列を含む、培養することと、B.無血清培地から複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を回収することと、を含む。別の態様では、リンパ球を複製能力のない組換えレトロウイルス粒子で形質導入する方法が本明細書に提供され、方法は、A.無血清培地中で懸濁状態でパッケージング細胞を培養することであって、パッケージング細胞が、複製能力のないレトロウイルス粒子のパッケージング可能なRNAゲノム、REVタンパク質、gagポリペプチド、polポリペプチド、およびシュードタイピングエレメントをコードする核酸配列を含む、培養することと、B.無血清培地から複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を回収することと、C.リンパ球を複製能力のない組換えレトロウイルス粒子と接触させることであって、24時間、20時間、18時間、12時間、8時間、4時間、2時間、1時間、30分、または15分未満の間(または接触とインキュベーションなし、または範囲の下限の15分、30分、1、2、3、もしくは4時間~範囲の上限の1、2、3、4、6、8、12、18、20、または24時間との間)実施される、接触させることと、を含み、それによってリンパ球を形質導入する。
【0521】
パッケージング可能なRNAゲノムは、特定の例示的な実施形態では、gagおよびpolなどのレトロウイルス成分から、限定されない例として、本明細書に開示される操作されたシグナル伝達ポリペプチドのいずれか、および/または一つ以上(例えば二つ以上)の反対方向の(例えば反対の鎖および反対の方向でのコード化)阻害性RNA分子を含む、一つ以上の標的ポリペプチドを発現するように設計されている。例えば、パッケージング可能なRNAゲノムは、5’から3’に向けて、5’の長い末端反復またはその活性切断断片;レトロウイルスのシス作用性RNAパッケージングエレメントをコードする核酸配列;反対方向の操作されたシグナル伝達ポリペプチドなどであるがこれに限定されない、第一および任意選択で第二の標的ポリペプチドをコードする核酸配列(これは、5’の長い末端反復およびシス作用性RNAパッケージング要素に対してこの反対方向のプロモーターから排除され得、これはいくつかの実施形態では単に便宜上「第四の」プロモーターと呼ばれ(また本明細書においてT細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターと呼ばれることがある)、これはT細胞および/またはNK細胞などの標的細胞中で活性であるが、例示的な例ではパッケージング細胞中で活性ではないか、またはパッケージング細胞中で誘導的にのみもしくは最小限に活性である);ならびに3’の長い末端反復またはその活性切断断片を含み得る。いくつかの実施形態では、パッケージング可能なRNAゲノムは、中央ポリプリントラクト(cPPT)/中央終結配列(CTS)要素を含み得る。いくつかの実施形態では、レトロウイルスシス作用性RNAパッケージング要素は、HIV Psiであってもよい。いくつかの実施形態では、レトロウイルスシス作用性RNAパッケージング要素は、Rev応答要素であってもよい。例示的な実施形態では、5’の長い末端反復とは反対の方向でプロモーターによって駆動される操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、本明細書に開示される操作されたシグナル伝達ポリペプチドのうちの一つ以上であり、本明細書ならびにWO2017/165245A2、WO2018/009923A1、およびWO2018/161064A1により詳細に開示されるように、任意選択で一つ以上の阻害性RNA分子を発現し得る。いくつかの態様では、自己駆動CARを発現するように設計されたパッケージング可能なRNAゲノムが本明細書に提供される。そのような複製能力のない組換えレトロウイルス粒子、ならびに自己駆動CARを含む組成物および方法の態様に関する詳細は、本明細書に、例えば、自己駆動CAR方法および組成物のセクション、ならびに例示的な実施形態のセクションにより詳細に開示されている。例示的な実施形態では、リンパ増殖エレメントをコードする第一の一つ以上の転写単位は、逆方向にコードされ、CARをコードする第二の一つ以上の転写単位は、順方向である。
【0522】
第一、第二、第三、第四などのプロモーターなどのプロモーター番号は、単に便宜上のものであることが理解されるであろう。「第四の」プロモーターと呼ばれるプロモーターは、そのような他のプロモーターが明示的に列挙されていない限り、第一、第二、または第三のプロモーターなどの任意の追加のプロモーターがあることを意味すると解釈されるべきではない。プロモーターの各々が、適切な細胞タイプで転写物の発現を駆動することができ、かつそのような転写物が、転写単位を形成することに留意されたい。
【0523】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、第一のリンパ増殖エレメントを含み得る。好適なリンパ増殖エレメントは、本明細書の他のセクションに開示されている。限定されない例として、リンパ増殖エレメントは、本明細書に開示されるeTagなどの細胞タグとの融合として発現され得る。いくつかの実施形態では、パッケージング可能なRNAゲノムは、本明細書に提供される任意のCAR実施形態をコードする、キメラ抗原受容体を含む第二の操作されたポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含み得る。例えば、第二の操作されたポリペプチドは、第一の抗原特異的標的化領域、第一の膜貫通ドメイン、および第一の細胞内活性化ドメインを含み得る。抗原特異的標的化領域、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインの例は、本明細書の別の箇所に開示されている。標的細胞がT細胞であるいくつかの実施形態では、標的細胞中で活性であるプロモーターは、本明細書の別の箇所に開示されるように、T細胞中で活性である。
【0524】
いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドは、CARを含み得、核酸配列は、本明細書に提供される任意のCARの実施形態をコードし得る。例えば、操作されたポリペプチドは、第一の抗原特異的標的化領域、第一の膜貫通ドメイン、および第一の細胞内活性化ドメインを含み得る。抗原特異的標的化領域、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインの例は、本明細書の別の箇所に開示されている。いくつかの実施形態では、パッケージング可能なRNAゲノムは、第二の操作されたポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、第二の操作されたポリペプチドは、リンパ増殖エレメントであってもよい。標的細胞がT細胞またはNK細胞であるいくつかの実施形態では、標的細胞中で活性であるプロモーターは、本明細書の別の箇所に開示されるように、T細胞またはNK細胞中で活性である。
【0525】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される態様のいずれかに含まれるパッケージング可能なRNAゲノムは、WO2017/165245A2、WO2018/009923A1、およびWO2018/161064A1で考察されるように、リボスイッチをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、操作されたシグナル伝達ポリペプチドをコードする核酸配列は、5’LTRおよび3’LTRによって確立された5’から3’の方向に対して逆方向であり得る。さらなる実施形態では、パッケージング可能なRNAゲノムは、リボスイッチをさらに含み得、任意選択で、リボスイッチは、逆方向であってもよい。本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、要素のいずれかを含むポリヌクレオチドは、プライマー結合部位を含み得る。例示的な実施形態では、インスレーターおよび/またはポリアデニル化配列を遺伝子の前、後、間、または近くに配置して、無秩序な転写を防止または低減することができる。いくつかの実施形態では、インスレーターは、ニワトリHS4インスレーター、Kaisoインスレーター、SAR/MAR要素、キメラニワトリインスレーター-SAR要素、CTCFインスレーター、ジプシーインスレーター、もしくはβ-グロビンインスレーター、または当該技術分野で既知のそれらの断片であってもよい。いくつかの実施形態では、インスレーターおよび/またはポリアデニル化配列は、hGHポリA(配列番号316)、SPA1(配列番号317)、SPA2(配列番号318)、b-グロビンポリAスペーサーB(配列番号319)、b-グロビンポリAスペーサーA(配列番号320)、250 cHS4インスレーターv1(配列番号321)、250 cHS4インスレーターv2(配列番号322)、650 cHS4インスレーター(配列番号323)、400 cHS4インスレーター(配列番号324)、650 cHS4インスレーターおよびb-グロビンポリAスペーサーB(配列番号325)、またはb-グロビンポリAスペーサーBおよび650cHS4インスレーター(配列番号326)であってもよい。
【0526】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、Vpxをコードする核酸配列は、第二もしくは任意選択の第三の転写単位上、または第一の誘導性プロモーターに作動可能に連結された追加の転写単位上にあり得る。
【0527】
本開示のいくつかの態様は、T細胞および/またはNK細胞の形質導入のためのレンチウイルスなどの複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を作製するためのパッケージング細胞として使用される細胞、例示的な例では哺乳動物細胞を含むか、またはそれらの細胞である。いくつかの態様では、自己駆動CARをコードするポリヌクレオチドを含む、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を作製するためのパッケージング細胞が、本明細書に提供される。そのような複製能力のない組換えレトロウイルス粒子、ならびに自己駆動CARを含む組成物および方法の態様に関する詳細は、本明細書に、例えば、自己駆動CAR方法および組成物のセクション、ならびに例示的な実施形態のセクションにより詳細に開示されている。
【0528】
本発明によれば、ウイルスまたはウイルス粒子、例えばリダイレクトされた組換えレトロウイルス粒子のインビトロ産生のために、多種多様な細胞のいずれかが選択され得る。真核細胞、特にヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、およびげっ歯類の細胞を含む哺乳動物細胞が、典型的には使用される。例示的な例では、細胞は、ヒト細胞である。さらなる例示的な実施形態では、細胞は、無制限に複製し、したがって不死である。本発明において有利に使用され得る細胞の例には、NIH 3T3細胞、COS細胞、マディンダービーイヌ腎臓細胞、ヒト胎児293T細胞、および293T細胞に由来するgpnlslacZφNX細胞などのそのような細胞に由来する任意の細胞が含まれる。ヒト胎児腎臓293T細胞などの高度にトランスフェクト可能な細胞が使用され得る。「高度にトランスフェクト可能」とは、細胞の少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、および最も好ましくは少なくとも約80%が、導入されたDNAの遺伝子を発現することができることを意味する。
【0529】
好適な哺乳動物細胞は、一次細胞および不死化細胞株を含む。好適な哺乳動物細胞株は、ヒト細胞株、非ヒト霊長類細胞株、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞株などを含む。好適な哺乳類細胞株としては、HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collection(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCLlO)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、C127、A549、RATl細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、マウスメラノーマ、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HEK-293、HEK-293T、HEK-293E、HEK-293 FT、HEK-293S、HEK-293SG、HEK-293 FTM、HEK-293SGGD、HEK-293A、293RTV、GP2-293、MDCK、HLHepG2細胞、Hut-78、Jurkat、HL-60、PerC6、91-1などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0530】
核酸
本開示は、本開示のポリペプチドをコードする核酸を提供し、本明細書の様々な方法で使用するための核酸が開示されている。いくつかの実施形態では、核酸は、例えば、組換え発現構築物を含むか、または例えば、T細胞もしくはNK細胞のゲノムのすべてもしくは一部としてのDNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、例えば、レトロウイルスゲノム(例えば、本明細書に提供されるRIP中に含有される)などのRNA、または例えばT細胞やNK細胞などのパッケージング細胞株内で発現された転写物などのRNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、RNA、例えば、インビトロで合成されたRNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、単離され得る。本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、材料がその元の環境(例えば、それが自然発生している場合は自然環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物に存在する自然発生ポリヌクレオチド、または他の実施形態ではポリペプチドは、単離されないが、天然系に共存する材料のいくつかまたはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離される。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってもよく、および/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、組成物の一部であってもよく、そのようなベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではないという点で依然として単離され得る。例えば、単離された核酸は、発現ベクターなどの組換え核酸ベクターの一部であってもよく、例示的な実施形態では、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸は、キット構成要素について本明細書で考察されるように、cGMPに準拠して製造される。
【0531】
いくつかの実施形態では、核酸は、例えば哺乳動物細胞において、本開示のポリペプチドの産生を提供する。他の場合では、主題の核酸は、本開示のポリペプチドをコードする核酸の増幅を提供する。
【0532】
ウイルス粒子のパッケージングについては、使用に適したプロモーターは、構造的であっても、誘導性であってもよい。ウイルス粒子RNAの発現については、LTRプロモーターまたはハイブリッドLTRプロモーターを使用してもよい。例えば、RSV/LTR、TRE/LTR、またはLTR単独を使用して核酸を転写し、パッケージングしてもよい。LTRの例としては限定されないが、MSCV、GALV、HIV-1、HIV-2およびMuLVが挙げられる。ラージT抗原を含有するパッケージング株では、例えば、転写および/または翻訳中の環状プラスミドDNAの増幅のために、SV40の複製起源の組み込みが一つ以上のパッケージングベクター中に含有されてもよい。複数のプロモーターの使用を利用して、転写因子の競合を防止してもよい。例えば、CMV、SV40、RSV、HSVTK、TRE、および他のプロモーターを利用して、LV粒子の様々な構成要素を発現させてもよい。一部の例では、ウイルス粒子の構成要素は、組み込まれた発現ベクターから発現されてもよい。他の例では、核酸のうちの一つ以上が、一過性発現によって導入されてもよい。一部の実施形態では、誘導性プロモーターを使用して細胞毒性を最小化し、その後にウイルス粒子のパッケージングが行われる。
【0533】
例えばリンパ球、マクロファージ、または樹状細胞などの遺伝子改変細胞における導入遺伝子(例えば、CAR)の発現については、適切なプロモーターとしては、当分野に公知の任意の構造的プロモーターが挙げられる。一部の実施形態では、構造的プロモーターは、EF1-aプロモーター、PGKプロモーター、CMVプロモーター、MSCV-U3プロモーター(例えば、Jones et al.,Human Gene Therapy(2009)20:630-40を参照のこと)、SV40hCD43プロモーター、VAVプロモーター、TCRbプロモーター、UBCプロモーター、サイトメガロウイルスの早期プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター、早期および後期のSV40プロモーター、レトロウイルスに由来する長い末端反復配列中に存在するプロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、および様々な当分野に公知の組織特異的なプロモーターであってもよい。一部の実施形態では、構造的プロモーターは、EF1-aプロモーターヌクレオチド配列(配列番号350)、PGKプロモーターヌクレオチド配列(配列番号351)、またはその機能的部分もしくはバリアントを含んでもよい。一部の実施形態では、構造的プロモーターは、EF1-aプロモーター以外を含んでもよい。一部の実施形態では、プロモーターは、軽鎖および/または重鎖の免疫グロブリン遺伝子プロモーター、およびエンハンサーエレメントを含む。
【0534】
一部の実施形態では、プロモーターは、パッケージング株では活性ではなく、またはパッケージング株では最低限の活性しかない。かかる実施形態は、操作されたT細胞受容体またはCARの発現で利点を有しており、例えばRIRレトロウイルス粒子またはウイルス様粒子などの封入核酸ベクター中の操作されたT細胞受容体またはCARの発現を低下させる、最小化させる、または例示的な実施形態では実質的に消滅させる、さらには消失させ、封入核酸ベクターを作製するために使用されるパッケージング細胞株中の操作されたT細胞受容体またはCARの発現は低下し、少なく、ごくわずかであり、実質的に無く、または無い。例示的な実施形態では、かかる発現は、封入核酸ベクター(例えば、RIR粒子またはウイルス様粒子)の表面で低下し、実質的に消失し、または消失する。一部の実施形態では、プロモーターは、T細胞特異的プロモーター、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、NKT細胞特異的プロモーター、またはNK細胞特異的プロモーターであってもよい。いくつかの実施形態では、T細胞特異的プロモーターは、CD3ゼータプロモーターまたはCD3デルタプロモーターであってもよい(例えば、Ji et al.,J Biol Chem.2002 Dec 6;277(49):47898-906を参照をされたい)。例示的な実施形態では、T細胞特異的プロモーターは、CD3ゼータプロモーターであってもよい。一部の実施形態では、T細胞特異的プロモーターは、CD8遺伝子プロモーターであってもよい。一部の実施形態では、T細胞特異的プロモーターは、CD4遺伝子プロモーターであってもよい(例えば、Salmon et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7739、およびMarodon et al.(2003)Blood 101:3416を参照されたい)。いくつかの実施形態では、NK細胞特異的プロモーターは、Neri(p46)プロモーターであってもよい(例えば、Eckelhart et al.(2011)Blood 117:1565を参照されたい)。一部の実施形態では、組換え遺伝子ベクターによってコードされる特異的タンパク質は、遺伝子ベクター(例えば、RIP)の表面では発現されず、提示されず、および/または組み込まれない。一部の実施形態では、これは、遺伝子ベクター中の導入遺伝子発現を駆動するT細胞特異的プロモーターによって実現される。一部の実施形態では、当該プロモーターは、CD3ファミリーに由来するプロモーターである。他の実施形態では、当該プロモーターは、ハイブリッドCD3プロモーターである。他の実施形態では、パッケージング細胞株は、リプレッサータンパク質をコードし、リプレッサータンパク質は、パッケージング細胞株においてレンチウイルス導入遺伝子の発現を実質的に抑制することができる。一部の実施形態では、当該抑制物質は、TETリプレッサータンパク質であってもよい。さらに他の実施形態では、パッケージング株中のタンパク質を活性化する転写因子は、抑制され、または不活化されている。一部の実施形態では、不活化は、DNA編集ヌクレアーゼによって実現され得る。他の実施形態では、不活化は、shRNAまたはmiRNAによって実現される。他の実施形態では、転写因子の抑制は、転写因子に対するドミナントネガティブタンパク質またはデグロンによって実現される。他の実施形態では、ウイルスの核酸は、パッケージング細胞株で活性化されない、リガンド誘導性または抑制性のプロモーターによって制御される。他の実施形態では、プロモーターは、可逆的プロモーターであってもよい。可逆的誘導性プロモーターを含む好適な可逆的プロモーターは、当該技術分野で知られている。そのような可逆的プロモーターは、真核生物および原核生物などの多くの生物から単離され得、かつそれらに由来し得る。第一の原核生物および第二の真核生物、第一の真核生物および第二の原核生物など、第二の生物で使用するための第一の生物に由来する可逆的プロモーターの改変は、当該技術分野で周知である。そのような可逆的プロモーター、およびそのような可逆的プロモーターに基づくが追加の制御タンパク質も含む系は、これらに限定されないが、アルコール調節プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランスアクチベータータンパク質(AlcR)に応答するプロモーターなど)、テトラサイクリン調節プロモーター(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFなどを含むプロモーター系)、ステロイド調節プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーター系、ヒトエストロゲン受容体プロモーター系、レチノイドプロモーター系、甲状腺プロモーター系、エクジソンプロモーター系、ミフェプリストンプロモーター系など)、金属調節プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター系など)、病因関連調節プロモーター(例えば、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーター、ベンゾチアジアゾール調節プロモーターなど)、温度調節プロモーター(例えば、熱ショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、大豆熱ショックプロモーターなど)、光調節プロモーター、合成誘導性プロモーターなどを含む。様々な方法において、および別個の態様として使用するのに適したプロモーターのさらなる考察が、本明細書に提供される。
【0535】
一部の実施形態では、プロモーターは、遺伝子改変される細胞(例えば、CAR-T細胞)において誘導性である。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、T細胞特異的応答要素またはNFAT応答要素を含み得る。他の実施形態では、プロモーターは、例えば、低酸素、温度、グルコース、pH、または光などの環境条件によって制御されてもよい。他の実施形態では、プロモーターは、細胞外分子の濃度に対して応答性であってもよい。いくつかの場合において、好適なプロモーターを含有する座位または構築物または導入遺伝子は、誘導性の系の誘導によって不可逆的にスイッチングされる。不可逆スイッチの誘導に適した系は、当該技術分野で周知であり、例えば、不可逆スイッチの誘導は、Cre-lox媒介組換えを利用し得る(例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるFuhrmann-Benzakein,et al.,PNAS(2000)28:e99を参照されたい)。当該技術分野で知られているリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の好適な組み合わせが、不可逆的にスイッチング可能なプロモーターの生成に使用され得る。本明細書の別の箇所に記載される部位特異的組換えを実施するための方法、機構、および要件は、不可逆的にスイッチングされたプロモーターの生成に使用され、当該技術分野において周知であり、例えば、参照によりその開示が本明細書に組み込まれるGrindley et al.(2006)Annual Review of Biochemistry,567-605、およびTropp(2012)Molecular Biology(Jones & Bartlett Publishers,Sudbury,MA)を参照されたい。
【0536】
いくつかの態様では、自己駆動CARに特に有用であるプロモーターを含むポリヌクレオチドが本明細書に提供される。そのようなプロモーター、ならびにそのようなプロモーターを含有する自己駆動CARを含む任意の組成物および方法の態様に関する詳細は、本明細書に、例えば、自己駆動CAR方法および組成物のセクション、ならびに例示的な実施形態のセクションにより詳細に開示されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、マクロファージ特異的プロモーター、またはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターが使用されてもよい。
【0537】
一部の実施形態では、例えば、酵母細胞での発現については、適切なプロモーターは、構造的プロモーターであり、例えば、ADHl、PGKl、ENO、もしくはPYKlプロモーターなどであり、または制御性プロモーターであり、例えば、GALI、GALlO、ADH2、PH05、CUPl、GAL7、MET25、MET3、CYCl、HIS3、ADHl、PGK、GAPDH、ADCl、TRPl、URA3、LEU2、ENO、TPlもしくはAOXlプロモーター(例えば、ピチア属での使用)である。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当業者のレベルの範囲内である。
【0538】
原核宿主細胞で使用するのに適したプロモーターとしては、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーターと、T7/lacプロモーター、trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;インビボ調節プロモーター、例えばssaGプロモーターまたは関連するプロモーター(例えば、米国特許公開第2004/0131637号を参照されたい)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller,J.Bacterial.,1991:173(1):86-93、Alpuche-Aranda et al.,PNAS,1992;89(21):10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al.(1992)Mal.Micro.6:2805-2813)など(例えば、Dunstan et al.(1999)Infect.Immun.67:5133-5141、McKelvie et al.(2004)Vaccine 22:3243-3255、およびChatfield et al.(1992)Biotechnol.10:888-892);sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961、およびAX798183を参照されたい);定常期プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性遺伝子島SPI-2に由来するプロモーター(例えば、W096/17951を参照されたい);actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al.(2002)Infect.Immun.70:1087-1096を参照されたい);rpsMプロモーター(例えば、Valdivia and Falkow(1996).Mal.Microbial.22:367を参照されたい);tetプロモーター(例えば、Hillen,W.and Wissmann,A.(1989)In Saenger,W.and Heinemann,U.(eds),Topics in Molecular and Structural Biology,Protein-Nucleic Acid Interaction.Macmillan,London,UK,Vol.10,pp.143-162を参照されたい);SP6プロモーター(例えば、Melton et al.(1984)Nucl.Acids Res.12:7035を参照されたい)などが挙げられるが、これらに限定されない。Escherichia coliなどの原核生物で使用するのに適した強力なプロモーターは、これらに限定されないが、Trc、Tac、T5、T7、およびPLambdaを含む。細菌宿主細胞で使用するためのオペレーターの限定されない例には、ラクトースプロモーターオペレーター(Laciリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触すると配座を変化させ、それによってLaciリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを防ぐ)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合体を形成すると、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合する配座を有し、トリプトファンがない場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合しない配座を有する)、およびtacプロモーターオペレーターが含まれる(例えば、deBoer et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21-25を参照されたい)。
【0539】
本開示のポリペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列は、真核細胞発現ベクターおよび/またはクローニングベクター中に存在し得る。二つの別個のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、同じまたは別個のベクターにクローン化され得る。発現ベクターは、選択可能なマーカー、複製起点、ならびにベクターの複製および/または維持および導入遺伝子の発現を提供する他の特徴を含み得る。例えば、発現ベクターは、典型的には、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。好適な発現ベクターは、当該技術分野で知られており、例えばプラスミドおよびウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、本明細書に詳細に開示される組換えレトロウイルス粒子である。
【0540】
多数の好適なベクターおよびプロモーターが、当業者に知られており、多くは、対照の組換え構築物を生成するために市販されている。例として、以下の細菌ベクターが提供される:pBs、phagescript、PsiXl74、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene、La Jolla,CA,USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia、Uppsala,Sweden)。例として、以下の真核細胞ベクターが提供される:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmacia)。
【0541】
発現ベクターは一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有する。発現宿主で機能する選択可能なマーカーが存在してもよい。
【0542】
上記のように、いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドをコードする核酸は、いくつかの実施形態ではRNA、例えばインビトロで合成されたRNAである。RNAのインビトロ合成のための方法は、当該技術分野で知られており、任意の既知の方法を使用して、本開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを合成することができる。RNAを宿主細胞に導入するための方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Zhao et al.(2010)Cancer Res.15:9053を参照されたい。本開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞に導入することは、インビトロまたはエクスビボまたはインビボで実行され得る。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)は、本開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを用いて、インビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションされ得る。
【0543】
ポリヌクレオチド、核酸配列、および/もしくは転写単位、ならびに/またはそれらを含むベクターを含む様々な態様および実施形態は、コザック型配列(本明細書ではコザック関連配列とも呼ばれる)、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)、および二重終止コドンまたは三重終止コドンのうちの一つ以上をさらに含み、二重終止コドンまたは三重終止コドンの一つ以上の終止コドンは、一つ以上の転写単位のうちの少なくとも一つからのリーディングの終結を定義する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチド、核酸配列、および/もしくは転写単位、ならびに/またはそれらを含むベクターは、一つ以上の転写単位のうちの少なくとも一つの開始コドンの10ヌクレオチド以内の上流に5’ヌクレオチドを有するコザック型配列をさらに含む。コザックは、699の脊椎動物のmRNAについて、コザックコンセンサス配列(GCC)GCCRCCATG(配列番号327)を決定し、ここで、Rは、プリン(AまたはG)である(Kozak.Nucleic Acids Res.1987 Oct 26;15(20):8125-48)。一実施形態では、コザック型配列は、CCACCAT/UG(G)(配列番号328)、CCGCCAT/UG(G)(配列番号329)、GCCGCCGCCAT/UG(G)(配列番号330)、またはGCCGCCACCAT/UG(G)(配列番号331)であるか、またはそれを含む(括弧内のヌクレオチドは、任意選択のヌクレオチドを表し、スラッシュによって分離されたヌクレオチドは、例えば核酸がDNAであるかRNAであるかに応じて、その位置の異なる可能なヌクレオチドを示す。AU/TG開始コドンを含むこれらの実施形態では、Aは、0位とみなされ得る。特定の例示的な実施形態では、-3および+4のヌクレオチドは、同一であり、例えば、-3および+4のヌクレオチドは、Gであってもよい。別の実施形態では、コザック型配列は、ATGの上流の3番目の位置にAまたはGを含み、ATGは、開始コドンである。別の実施形態では、コザック型配列は、AUGの上流の3番目の位置にAまたはGを含み、AUGは、開始コドンである。例示的な実施形態では、コザック配列は、(GCC)GCCRCCATG(配列番号327)であり、Rは、プリン(AまたはG)である。例示的な実施形態では、コザック型配列は、GCCGCCACCAUG(配列番号332)である。コザック型配列を含む先行する実施形態および/または三重終止コドンを含む以下の実施形態と組み合わされ得る別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、WPRE要素を含む。WPREは、当該技術分野で特性評価されており(例えば、(Higashimoto et al.,Gene Ther.2007;14:1298)を参照されたい)、WO2019/055946に例示されるとおりである。いくつかの実施形態では、WPRE要素は、一つ以上の転写単位の終止コドンの3’、およびポリヌクレオチドの3’LTRの5’に位置する。先行する実施形態(すなわち、ポリヌクレオチドがコザック型配列を含む実施形態および/またはポリヌクレオチドがWPREを含む実施形態)の一方または両方と組み合わされ得る別の実施形態では、一つ以上の転写単位は、二重終止コドンまたは三重終止コドンの一つ以上の終止コドンで終結し、二重終止コドンは、第一のリーディングフレームに第一の終止コドンおよび第二のリーディングフレームに第二の終止コドン、または第二の終止コドンとインフレームの第一の終止コドンを含み、三重終止コドンは、第一のリーディングフレームに第一の終止コドン、第二のリーディングフレームに第二の終止コドン、および第三のリーディングフレームに第三の終止コドン、または第二の終止コドンおよび第三の終止コドンとインフレームの第一の終止コドンを含む。
【0544】
本明細書の三重終止コドンは、三つの終止コドンを含み、各リーディングフレームに一つあり、互いに10ヌクレオチド以内であり、好ましくは重複配列を有するか、または同じリーディングフレーム内に、好ましくは連続するコドンに三つの終止コドンを含む。二重終止コドンとは、各々が異なるリーディングフレームにあり、互いに10ヌクレオチド以内にあり、好ましくは重複配列を有する二つの終止コドン、または同じリーディングフレーム内に、好ましくは連続するコドンにある二つの終止コドンを意味する。
【0545】
本明細書に開示される方法および組成物のいくつかにおいて、PBMC、B細胞、T細胞および/またはNK細胞へのDNAの導入、ならびに任意選択で、宿主細胞ゲノムへのDNAの組み込みは、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子以外の組換え核酸ベクターを使用する方法を使用して実施される。例えば、限定されない例として、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、または単純ヘルペスウイルス-1に由来するものなどの他のウイルスベクターが利用され得る。
【0546】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法、および関連する使用、反応混合物、キット、および細胞製剤は、ウイルスベクターにコードされていないポリヌクレオチドで細胞をトランスフェクトすることを含み得る。そのようなポリヌクレオチドは、非ウイルスベクターと称され得る。非ウイルスベクターを利用して細胞を遺伝子改変またはトランスフェクトする本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、例えばプラスミドまたは裸のDNAを含む非ウイルス性ベクターは、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リポソーム製剤、脂質、デンドリマー、ポリ(エチルエニミン)(PEI)およびポリ(l-リジン)(PLL)などのカチオン性ポリマー、ナノ粒子、細胞膜透過性ペプチド、マイクロインジェクション、および/または非組み込み型レンチウイルスベクターを使用する方法を使用して、細胞、例えばPBMC、B細胞、T細胞および/またはNK細胞に導入され得る。いくつかの実施形態では、リポソーム製剤、脂質、デンドリマー、PEI、PLL、ナノ粒子、および細胞膜透過性ペプチドは、リンパ球標的化リガンド、例えば抗CD3抗体を含むように改変され得る。抗CD3抗体に結合したPEIは、外因性核酸でPBMCを効率的にトランスフェクトすることが示された(O’Neill et al.Gene Ther.2001 Mar;8(5):362-8)。同様に、抗CD3ef(ab’)2断片に結合したポリグルタミン酸分子から作製されたナノ粒子は、Tリンパ球をトランスフェクトした(Smith et al.Nat Nanotechnol.2017 Aug;12(8):813-820)。いくつかの実施形態では、DNAは、リポソームおよびプロタミンとの複合体において、PBMC、B細胞、T細胞および/またはNK細胞などの標的細胞に導入され得る。本明細書に提供される方法の実施形態で使用され得るエクスビボでT細胞および/またはNK細胞をトランスフェクトするための他の方法は、当該技術分野で知られている(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMorgan and Boyerinas,Biomedicines.2016 Apr 20;4(2).pii:E9を参照されたい)。
【0547】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態では、DNAは、目的の遺伝子の5’および3’末端にトランスポゾンITR断片およびDNAまたはmRNAまたはタンパク質または部位特異的セリンリコンビナーゼ、例えばヒトゲノムの偽attP部位に目的の遺伝子を組み込むphiC31などを含有するプラスミドとして、標的DNAの同時トランスフェクション、同時ヌクレオフェクション、または同時エレクトロポレーションによってトランスポゾンベースの担体系を使用してゲノムに組み込まれ得、この場合では、DNAベクターは、リコンビナーゼ酵素の認識配列であり(Bhaskar Thyagarajan et al.Site-Specific Genomic Integration in Mammalian Cells Mediated by Phage φC31 Integrase,Mol Cell Biol.2001 Jun;21(12):3926-3934)、リコンビナーゼで同時トランスフェクトされる34~40bpのattB部位を含有する。T細胞および/またはNK細胞の場合、本明細書に提供される特定の方法で使用され得るトランスポゾンベースの系は、Sleeping Beauty DNA担体系(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,489,458号および米国特許出願第15/434,595号を参照されたい)、PiggyBac DNA担体系(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるManuri et al.,Hum Gene Ther.2010 Apr;21(4):427-37を参照されたい)、またはDNA、mRNA、もしくはタンパク質の形態のToLCDR2トランスポゾン系(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるTsukahara et al.,Gene Ther.2015 Feb;22(2):209-215を参照されたい)を利用する。いくつかの実施形態では、トランスポゾンベースのベクター系のトランスポゾンおよび/またはトランスポザーゼは、T細胞および/またはNK細胞に導入される前に、ミニサークルDNAベクターとして産生され得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるHudecek et al.,Recent Results Cancer Res.2016;209:37-50およびMonjezi et al.,Leukemia.2017 Jan;31(1):186-194を参照されたい)。しかしながら、いくつかの状況では、トランスポザーゼベースの担体系は、外因性核酸を導入する好ましい方法ではない。したがって、一部の実施形態では、本明細書に開示される態様または実施形態のいずれかのポリヌクレオチドは、トランスポゾンITR断片を含まない。一部の実施形態では、本明細書に開示される態様または実施形態のいずれかの改変、遺伝子改変、および/または形質導入された細胞は、DNAまたはmRNAまたはタンパク質としてのトランスポザーゼ担体系を含まない。
【0548】
CARまたはリンパ増殖エレメントはまた、CRISPRまたはTALEN媒介組み込みを使用して、標的部位の5’および3’の組み込みに相同な50~1000bpの相同性アームを追加することによって、ゲノム内の定義された、かつ特定の部位に組み込まれ得る(Jae Seong Lee et al.Scientific Reports 5,Article number:8572(2015),Site-specific integration in CHO cells mediated by CRISPR/Cas9 and homology-directed DNA repair pathway)。CRISPRまたはTALENは、特異性およびゲノム標的開裂を提供し、構築物は、相同性媒介末端結合を介して組み込まれる(Yao×et al.Cell Res.2017 Jun;27(6):801-814.doi:10.1038/cr.2017.76.Epub 2017 May 19)。CRISPRまたはTALENは、DNA、mRNA、またはタンパク質として標的プラスミドで同時トランスフェクトされ得る。
【0549】
(例えば、全血中もしくはTNCもしくはPBMCなどの全血画分中の)T細胞および/もしくはNK細胞を改変、遺伝子改変、および/もしくは形質導入するための方法、またはそのような方法を含む方法、またはそのような方法を使用して産生される改変された細胞、ならびに本明細書に提供される任意の他の方法またはプロダクトバイプロセスのいずれかについて、当業者であれば、外因性核酸が、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子を含まない方法を使用して、例えば、別のタイプの組換えベクター(例えば、脂質トランスフェクション剤と関連するプラスミド)を使用して、細胞内に導入され得る場所を理解するであろう。
【0550】
阻害性RNA分子
本明細書に提供される態様のいずれかの実施形態は、リンパ球(例えばT細胞および/またはNK細胞)などの宿主細胞への組み込み後に、ゲノムが一つ以上の、および例示的な実施形態では二つ以上の阻害性RNA分子、例えばmiRNAまたはshRNAなどの発現を誘導するように構築される組換えレトロウイルス粒子を含み得る。そのような阻害性RNA分子は、例えば、EF1-aイントロンを含むイントロン内にコードされ得る。これは、パッケージング可能なレトロウイルスゲノムに含まれ得る機能要素を最大化する方法の現在の教示を利用して、以前の教示の欠点を克服し、養子T細胞療法におけるそのような組換えレトロウイルス粒子の有効性を最大化する。そのような阻害性RNA分子は、本明細書のRIP製剤に含まれるRIPのゲノム上にコードされてもよい。
【0551】
いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、2本の鎖が細胞環境内で18~25ヌクレオチドRNA二重鎖を形成することができるように、互いに部分的または完全に相補的である5’鎖および3’鎖(いくつかの例では、センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。5’鎖は、長さが18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドであってもよく、3’鎖は、長さが18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドであってもよい。5’鎖および3’鎖は、同じ長さであっても異なる長さであってもよく、RNA二重鎖は、一つ以上のミスマッチを含み得る。あるいは、RNA二重鎖は、ミスマッチを有しない。一部の例では、本明細書のベクターまたはゲノムは、本明細書に提供される阻害性RNAを2個以上含む。
【0552】
本明細書に提供される組成物および方法に含まれる阻害性RNA分子は、特定の例示的な例では、それらがゲノムに挿入されるT細胞において存在しない、および/または自然に発現されない。いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、miRNAまたはshRNAである。いくつかの実施形態では、本開示の実施形態の阻害性分子は、例えば、プリmiRNAもしくはプレmiRNAなどのmiRNAの前駆体、またはshRNAの前駆体である。いくつかの実施形態では、miRNAまたはshRNAは、人工的に得られる(すなわち、人工miRNAまたはsiRNA)。他の実施形態では、阻害性RNA分子は、siRNAに処理されるdsRNA(転写もしくは人工的に導入された)またはsiRNA自体である。いくつかの実施形態では、miRNAまたはshRNAは、自然界に見られない配列を有するか、または自然界に見られない少なくとも一つの機能的セグメントを有するか、または自然界に見られない機能的セグメントの組み合わせを有する。
【0553】
いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、複数のmiRNA配列が単一のポリシストロン性miRNA転写物から同時に発現されるように、直列または多重配置で第一の核酸分子内に位置付けられる。いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、非機能的リンカー配列によって直接的または間接的のいずれかで互いに隣接し得る。いくつかの実施形態におけるリンカー配列は、長さが5~120ヌクレオチドであり、いくつかの実施形態では、限定されない例として、長さが10~40ヌクレオチドであってもよい。一部の実施形態では、機能性配列は、阻害性RNA分子、例えば本明細書に提供されるリンパ増殖エレメントのいずれかと同じ転写物から発現されてもよい。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、例えば限定されないが、miR-155、miR-30、miR-17-92、miR-122、およびmiR-21などの天然miRNAである。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、5’から3’の方向に、5’microRNA隣接配列、5’ステム、ループ、当該5’ステムに部分的または完全に相補的である3’ステム、および3’microRNA隣接配列を含む。いくつかの実施形態では、5’ステム(本明細書では5’アームとも呼ばれる)は、長さが18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、3’ステム(本明細書では3’アームとも呼ばれる)は、長さが18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ループは、長さが3~40、10~40、20~40、または20~30ヌクレオチドであり、例示的な実施形態では、ループは、長さが18、19、20、21、または22ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、一方のステムは、他方のステムより2ヌクレオチド長い。より長いステムは、5’または3’ステムであり得る。阻害性RNA分子は、本明細書の阻害性RNA分子の項の阻害性RNA分子のいずれかであってもよい。
【0554】
いくつかの実施形態では、5’microRNA隣接配列、3’microRNA隣接配列、またはその両方は、これらに限定されないが、miR-155、miR-30、miR-17-92、miR-122、およびmiR-21などの自然発生miRNAに由来する。特定の実施形態では、5’microRNA隣接配列、3’microRNA隣接配列、またはその両方は、例えば、ハツカネズミまたはホモサピエンスからのmiR-155などのmiR-155に由来する。例えば、SIBR配列およびeSIBR配列など、合成miRNAステム-ループをmiR-155フレームワークに挿入すること(すなわち、5’microRNA隣接配列、3’microRNA隣接配列、およびmiRNA 5’ステムとmiRNA 3’ステムとの間のループ)は、当業者に知られている(Chung,K.et al.2006.Nucleic Acids Research.34(7):e53、US 7,387,896)。本開示のいくつかの実施形態では、miRNAは、SIBRまたはeSIBR miR-155フレームワークに配置され得る。本明細書の例示的な実施形態では、miRNAは、配列番号333によって表されるmiR-155の5’microRNA隣接配列またはその機能性バリアント、配列番号334によって表される3’microRNA隣接配列(ハツカネズミBIC非コードmRNAのヌクレオチド221~265)またはその機能性バリアント、および改変されたmiR-155ループ(配列番号335)またはその機能性バリアントを含む、miR-155フレームワークに配置される。しかしながら、それらが結合する標的mRNAの発現を阻害することができる成熟miRNAを形成するためにその中に挿入されたmiRNAの細胞内で適切な処理を提供するように機能する任意の既知のmicroRNAフレームワークが、本開示内で企図される。
【0555】
二つ以上の阻害性RNA分子(いくつかの例では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の阻害性RNA分子)が含まれるいくつかの実施形態では、これらの阻害性RNA分子は、同じまたは異なるRNA標的(例えば目的の遺伝子から転写されたmRNAなど)を対象とする。
【0556】
一部の実施形態では、一つ以上の阻害剤RNA分子は、一つ以上のリンパ増殖エレメントであり、したがってリンパ増殖エレメントを含む本明細書に提供される任意の態様または実施形態において、それと不適合でない限り、またはそこですでに記載されていない限り、一つ以上のリンパ増殖エレメントである。例示的な実施形態では、本明細書に提供される方法でT細胞のゲノムに挿入されたmiRNAは、T細胞の増殖が誘導および/もしくは強化される、ならびに/またはアポトーシスが抑制されるように標的を対象とする。一部の実施形態では、RNA標的は、miR-155標的である遺伝子から転写されたmRNAである。
【0557】
いくつかの実施形態では、阻害性RNA、例えばmiRNAは、ABCG1、Cblがん原遺伝子(RNF55)(cCBLおよびRNF55としても既知)(HGNC:1541,Entrez Gene:867,OMIM:165360)、T細胞受容体T3ゼータ鎖(CD3z)(HGNC:1677,Entrez Gene:919,OMIM:186780)、T細胞受容体アルファ座位(TCRA)(TCRαとしても知られる)(HGNC:12027、Entrez Gene:6955、OMIM:186880)、T細胞受容体ベータ座位(TCRB)(TCRβとしても知られる)(HGNC:12155、Entrez Gene:6957、OMIM:186930)、PD1、CTLA4、IFNガンマ、T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM3)(A型肝炎ウイルス細胞受容体2としても既知)(HGNC:18437 Entrez Gene:84868,OMIM:606652)、リンパ球活性化3(LAG3)(HGNC:6476,Entrez Gene:3902,OMIM:153337)、SMAD2、TNF受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B)(HGNC:11905,Entrez Gene:8795,OMIM:603612)、プロテインホスファターゼ2触媒サブユニットアルファ(PPP2CA)(HGNC:9299,Entrez Gene:5515,OMIM:176915)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6(TNFRSF6)(Fas細胞表面死受容体(FAS)としても既知)(HGNC:11920,Entrez Gene:355,OMIM:134637)、BおよびTリンパ球関連(BTLA)(HGNC:21087,Entrez Gene:151888,OMIM:607925)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)(HGNC:26838,Entrez Gene:201633,OMIM:612859)、アデノシンA2a受容体(ADORA2AもしくはA2AR)(HGNC:263,Entrez Gene:135,OMIM:102776)、アリール炭化水素受容体(AHR)(HGNC:348,Entrez Gene:196,OMIM:600253)、エオメソデルミン(EOMES)(HGNC:3372,Entrez Gene:8320,OMIM:604615)、SMADファミリーメンバー3(SMAD3)(HGNC:6769,Entrez Gene:4088,OMIM:603109)、SMADファミリーメンバー4(SMAD4)(GNC:6770,Entrez Gene:4089,OMIM:600993)、TGFBR2、TRAIL2、PP2A、プロテインホスファターゼ2調節サブユニットBデルタ(PPP2R2D)(HGNC:23732,Entrez Gene:55844,OMIM:613992)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー6(TNFSF6)(FASLとしても既知)(HGNC:11936,Entrez Gene:356,OMIM:134638)、カスパーゼ3(CASP3)HGNC:1504,Entrez Gene:836,OMIM:600636)、SOCS1、サイトカインシグナル伝達のサプレッサー2(SOCS2)(HGNC:19382,Entrez Gene:8835,OMIM:605117)、クルッペル様因子10(KLF10)(TGFB誘導性初期成長応答タンパク質1(TIEG1)としても既知)(HGNC:11810,Entrez Gene:7071,OMIM:601878)、JunBがん原遺伝子、AP-1転写因子サブユニット(JunB)(HGNC:6205,Entrez Gene:3726,OMIM:165161)、Chromobox 1(Cbx)(HGNC:1551、Entrez Gene:10951、OMIM:604511)、Cbx3、Tetメチルシトシンジオキシゲナーゼ2(Tet2)(HGNC:25941,Entrez Gene:54790,OMIM:612839)、ヘキソキナーゼ2(HK2)(HGNC:4923,Entrez Gene:3099,OMIM:601125)、Src相同性領域2ドメイン含有ホスファターゼ-1(SHP1)(HGNC:9658,Entrez Gene:5777,OMIM:176883)、Src相同性領域2ドメイン含有ホスファターゼ-2(SHP2)(HGNC:9644,Entrez Gene:5781,OMIM:176876)、コロニー刺激因子2(CSF2;GMCSF)(Entrez Gene:1437)をコードするmRNAを標的とする。一部の実施形態では、例えばmiRNAなどの阻害性RNAは、本明細書に提供されるRIP、または改変T細胞、または改変NK細胞を送達することによる有益な効果を妨害する可能性のある遺伝子、例えば移植片対宿主病を誘導する可能性のあるTCR構成要素、宿主対移植片病を誘導する可能性のあるHLA構成要素、ストレスリガンド、免疫チェックポイントなどの遺伝子からのRNAを標的とする。したがって、一部の実施形態では、例えばmiRNAなどの阻害性RNAは、以下のうちの一つ以上に由来する遺伝子、当該遺伝子から転写された配列、または当該遺伝子のコード配列のうちの一つ以上をコードするmRNAを標的とする:MHCクラスI遺伝子、MHCクラスII遺伝子、MHCコレセプター遺伝子(例えば、HLA-F、HLA-G)、TCR鎖、NKBBiL、LTA、TNF、LTB、LST1、NCR3、AIF1、LY6、ヒートショックタンパク質(例えば、HSPA1L、HSPA1A、HSPA1B)、補体カスケード、制御性受容体(例えば、NOTCH4)、TAP、HLA-DM、HLA-DO、RING1、CD52、CD247、HCP5、DGKA、DGKZ、B2M、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、2B4、A2AR、BAX、BLIMP1、C160(POLR3A)、CBL-B、CCR6、CD7、CD95、CD123、DGK [DGKA、DGKB、DGKD、DGKE、DKGG、DGKH、DGKI、DGKK、DGKQ、DGKZ]、DNMT3A、DR4、DR5、EGR2、FABP4、FABP5、FASN、GMCSF、HPK1、IL- 10R [IL10RA、IL10RB]、IL2、LFA1、NEAT 1、NFkB(RELA、RELB、NFkB2、NFkBl、RELを含む)、NKG2A、NR4A(NR4A1、NR4A2、NR4A3を含む)、PD1、PI3KCD、PPP2RD2、SHIP1、SOAT1、SOCS1、T-BET、TET2、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、TIGIT、TIM3、TOX、およびZFP36L2。いくつかの実施形態では、阻害性RNA、例えばmiRNAは、CARのASTRが結合する抗原を標的とする。
【0558】
いくつかの態様では、自己駆動CARを発現するように設計されたポリヌクレオチドが本明細書に提供される。そのような複製能力のない組換えレトロウイルス粒子、ならびに自己駆動CARを含む組成物および方法の態様に関する詳細は、本明細書に、例えば、自己駆動CAR方法および組成物のセクション、ならびに例示的な実施形態のセクションにより詳細に開示されている。いくつかの実施形態では、自己駆動CARを発現するように設計されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示される阻害性RNA分子のいずれかを含み得る。そのようなポリヌクレオチドはまた、本明細書に開示される他の阻害性RNA分子を伴ってまたは伴わず、NFAT経路の阻害剤を標的とする阻害性RNA分子を有し得る。いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、CABIN、Homer2、AKAP5、LRRK2、および/もしくはDSCR1/MCIP(これらのタンパク質をコードするRNA分子のノックダウンは、カルシニューリンもしくはカルモジュリンの阻害を低減することができる);ならびに/またはDyrk1A、CK1、および/もしくはGSK3(これらのタンパク質をコードするRNA分子のノックダウンは、NFATのリン酸化および核外輸出を防止することができる)を標的とし得る。いくつかのさらなる例示的な実施形態では、本明細書のベクターまたはゲノムは、2つ以上、2~10、2~8、2~6、3~5、2、3、4、5、6、7、または8つの、本明細書で、例えばすぐ上の段落で特定された阻害性RNA(例えばmiRNA)を含む。
【0559】
本明細書に提供されるいくつかの実施形態では、二つ以上の阻害性RNA分子は、これに限定されないが、EF1-aイントロンAなどの単一のイントロンで送達され得る。本開示のためにmiRNAを内部に持つために使用され得るイントロン配列は、T細胞内で処理される任意のイントロンを含む。イントロンの配列要件は、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、そのようなイントロン処理は、本明細書に開示される任意のリボスイッチなどのリボスイッチに作動可能に連結されている。したがって、例示的な実施形態では、内因性T細胞受容体サブユニットを対象とするmiRNAの組み合わせが本明細書に提供され、miRNAの発現は、本明細書で考察されるリボスイッチのいずれかであり得るリボスイッチによって調節される。
【0560】
いくつかの実施形態では、阻害性RNA分子は、同じまたは異なる転写単位に含まれ得る複数の核酸配列上に提供され得る。例えば、第一の核酸配列は、一つ以上の阻害性RNA分子をコードし、かつ第一のプロモーターから発現され得、第二の核酸配列は、一つ以上の阻害性RNA分子をコードし、かつ第二のプロモーターから発現され得る。例示的な実施形態では、二つ以上の阻害性RNA分子は、単一のプロモーターから発現される第一の核酸配列上に位置する。そのようなmiRNAを発現するために使用されるプロモーターは、典型的には、そのゲノム内のmiRNAを標的T細胞に送達するレトロウイルス粒子を発現するために使用されるパッケージング細胞中で不活性であるプロモーターであるが、そのようなプロモーターは、T細胞内で構成的または誘導的様式のいずれかで活性である。プロモーターは、Pol I、Pol II、またはPol IIIプロモーターであってもよい。いくつかの例示的な実施形態では、プロモーターは、Pol IIプロモーターである。
【0561】
ポリペプチドバリアント
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、ポリペプチド配列中のアミノ酸は、置換または変動を含有してもよい。アミノ酸配列に置換または変動を与えることにより得られるポリペプチドは、ポリペプチドバリアントと呼称され得、例えば、キメラ抗原受容体バリアントまたはリンパ増殖エレメントバリアントと呼称され得る。一部の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドは、ポリペプチドバリアントであってもよい。バリアントは、ポリペプチドをコードする核酸のヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって作製されてもよい。あるいは、バリアントは、ペプチド合成によって作製されてもよい。そのような改変としては例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入および/または置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを行うことによって、バリアントを作製することができるが、ただし当該バリアントは、例えばリンパ増殖活性や抗原結合などの所望の特性を保有しているものとする。理論に限定されないが、変動を抗体または抗体模倣体に導入して、当該抗体または抗体模倣体の結合アフィニティを改善する、および/または他の生物学的性能を改善することができる。一部の実施形態では、バリアントは、一つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0562】
一部の実施形態では、アラニン(Ala)残基は、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、またはイソロイシン(Ile)と置換されてもよい。一部の実施形態では、アルギニン(Arg)残基は、リシン(Lys)、グルタミン(Gln)、またはアスパラギン(Asn)と置換されてもよい。一部の実施形態では、アスパラギン(Asn)残基は、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、リシン(Lys)、またはアルギニン(Arg)と置換されてもよい。一部の実施形態では、アスパラギン酸(Asp)残基は、グルタミン酸(Glu)またはアスパラギン(Asn)と置換されてもよい。一部の実施形態では、システイン(Cys)残基は、セリン(Ser)またはアラニン(Ala)と置換されてもよい。一部の実施形態では、グルタミン(Gln)残基は、アスパラギン(Asn)またはグルタミン酸(Glu)と置換されてもよい。一部の実施形態では、グルタミン酸(Glu)残基は、アスパラギン酸(Asp)またはグルタミン(Gln)と置換されてもよい。一部の実施形態では、グリシン(Gly)残基は、アラニン(Ala)と置換されてもよい。一部の実施形態では、ヒスチジン(His)残基は、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、リシン(Lys)、またはアルギニン(Arg)と置換されてもよい。一部の実施形態では、イソロイシン(Ile)残基は、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、フェニルアラニン(Phe)、またはノルロイシンと置換されてもよい。一部の実施形態では、ロイシン(Leu)残基は、ノルロイシン、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、またはフェニルアラニン(Phe)と置換されてもよい。一部の実施形態では、リシン(Lys)残基は、アルギニン(Arg)、グルタミン(Gln)、またはアスパラギン(Asn)と置換されてもよい。一部の実施形態では、メチオニン(Met)残基は、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、またはイソロイシン(Ile)と置換されてもよい。一部の実施形態では、フェニルアラニン(Phe)残基は、トリプトファン(Trp)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、イソロイシン(Ile)、アラニン(Ala)、またはチロシン(Tyr)と置換されてもよい。一部の実施形態では、プロリン残基は、アラニン(Ala)と置換されてもよい。一部の実施形態では、セリン(Ser)残基は、スレオニン(Thr)と置換されてもよい。一部の実施形態では、スレオニン(Thr)残基は、バリン(Val)またはセリン(Ser)と置換されてもよい。一部の実施形態では、トリプトファン(Trp)は、チロシン(Tyr)またはフェニルアラニン(Phe)と置換されてもよい。一部の実施形態では、チロシン(Tyr)残基は、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)、スレオニン(Thr)、またはセリン(Ser)と置換されてもよい。一部の実施形態では、バリン(Val)残基は、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、アラニン(Ala)、またはノルロイシンと置換されてもよい。
【0563】
当業者であれば、ポリペプチドを含む本明細書に開示される実施形態のいずれかは、本項において開示されるポリペプチドバリアントを代わりに含み得ることを理解するであろう。
【0564】
特性評価および商業生産方法
本開示は、科学実験における研究試薬として、および商業生産のために使用され得る様々な方法および組成物を提供する。そのような科学実験は、例えば例えばNK細胞、例示的実施形態ではT細胞などのリンパ球を、対象へRIPを投与する方法を使用して、または本明細書に提供されるリンパ球を改変する方法、例えば遺伝子改変する方法および/または形質導入する方法を使用して、特徴解析する方法を含み得る。そのような方法は、例えば、リンパ球の活性化、および活性化がそのような細胞を形質導入可能にする詳細な分子機構を研究するために使用され得る。さらに、T細胞増殖および生存に影響を与える因子をより良く理解するための研究ツールとして、例えば有用性を有するであろう改変、および例示的な実施形態では遺伝子改変されたリンパ球が、本明細書に提供される。そのような改変されたリンパ球、例えばNK細胞および例示的な実施形態ではT細胞はさらに、商業生産、例えば、成長因子および免疫調節剤などの特定の因子の生産に使用され得、これらは、回収および試験され得る、または商業製品の生産に使用され得る。
【0565】
リンパ球の科学実験および/または特性評価は、リンパ球を分析または比較するのに有用な、本明細書に提供される態様、実施形態、または下位実施形態のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、T細胞および/またはNK細胞は、ポリヌクレオチドを含む、本明細書に提供されるRIPで形質導入され得る。いくつかの実施形態では、T細胞および/またはNK細胞の形質導入は、本開示のポリペプチド、例えば、CAR、リンパ増殖エレメント、および/または活性化エレメントをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書の別の箇所で考察されるように、阻害性RNA分子を含み得る。いくつかの実施形態では、リンパ増殖エレメントは、キメラリンパ増殖エレメントであってもよい。
【0566】
例示的な実施形態
この例示的な実施形態のセクションでは、本明細書に提供され、かつ本明細書全体でさらに考察される、限定されない例示的な態様および実施形態が提供される。簡潔さのために、および便宜上、本明細書に開示される態様および実施形態のすべて、ならびに開示された態様および実施形態の可能な組み合わせのすべてがこのセクションで列挙されるわけではない。追加の実施形態および態様が、本明細書の他のセクションに提供される。さらに、本開示全体で考察されるように、多くの態様の特定の実施形態である実施形態が提供されることが理解されるであろう。本明細書の全開示を考慮して、以下またはこの全開示に列挙される任意の個々の実施形態は、それが一態様に追加され得る追加の要素である場合、またはそれが一態様にすでに存在する要素に対してより狭い要素であるという理由で、以下またはこの全開示に列挙される任意の態様と組み合わされ得ることが意図される。そのような組み合わせは、この詳細な説明の他のセクションでより具体的に考察される。したがって例えば本明細書に提供される実施形態のいずれかは、適合性がない場合を除き、または別段に述べられている場合を除き、本明細書に提供される反応混合物、細胞製剤、キット、使用、細胞処理組み立て、フィルター組み立て、細胞集団、改変された、遺伝子改変された、および形質導入されたT細胞もしくはNK細胞、混合物、細胞混合物、または方法の態様において使用され得る。
【0567】
一つの態様では本明細書において、複製能力がない組換えレトロウイルス粒子(RIP)を対象に送達する方法、投与する方法、および/または注入する方法が提供され、当該方法は:
RIPを含む製剤を対象に投与することを含み、当該RIPは:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするもの、を含む。一部の実施形態では、一つ以上の転写単位は、LEとCARの両方をコードする。
【0568】
本明細書の別の態様において、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を対象に投与する方法または送達する方法または注入する方法が提供され、当該方法は、当該RIPを含むRIP製剤を対象に直接投与することを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、当該LEは構造的に活性であるもの、を含む。例示的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、LEとキメラ抗原受容体(CAR)の両方をコードする。
【0569】
リンパ球(例えば、T細胞および/またはNK細胞)、RIP、および/または改変リンパ球(例えば、改変されたT細胞および/またはNK細胞)の筋肉内投与、例示的実施形態では皮下投与を含む本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、皮下投与は、対象での生着成功のために、および/または対象中の腫瘍の体積減少のために、対象のリンパ球枯渇を必要としない方法において、哺乳動物対象に対して実施され、または当該皮下投与前の1、2、3、4、5、6もしくは7日間、または1、2、3もしくは4週間、または1、2、3、6、9、12もしくは24カ月間、またはそれ以上、リンパ枯渇が行われていない哺乳動物(例えば、ヒト)対象に対して実施される。特定の実施形態では、皮下投与は、低白血球数、リンパ球減少症(lymphopenia)、またはリンパ球減少症(lymphocytopenia)を患っていない哺乳動物(例えば、ヒト)対象に対して行われる。特定の実施形態では、皮下投与は、正常範囲のリンパ球数(すなわち、血液1マイクロリットル(μL)中、1,000~4,800個のリンパ球)を有する対象に対して実施される。特定の実施形態では、皮下投与は、血液1μL当たり、1,000~5,000個、300個超、500個超、1,000個超、1,500個超、または2,000個超のリンパ球を有する対象に対して実施される。特定の実施形態では、皮下投与は、リンパ系が備わった(lymphoreplete)哺乳動物(例えば、ヒト)対象に対して行われる。
【0570】
リンパ球(例えば同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIP、および/または改変リンパ球(例えば、改変されたT細胞および/またはNK細胞)の筋肉内投与、リンパ節内投与、例示的実施形態では皮下投与を含む、本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、かかる方法は、特定の実施形態では、対象中のT細胞および/もしくはNK細胞、対象に同時投与された対象のT細胞および/もしくはNK細胞、または対象に投与された改変T細胞および/もしくはNK細胞が、例えば、数日間(例えば、最大で5、7、14、17、21または28日間)または数か月間(例えば、最大で1、2、3、6、12または24カ月間)、皮下投与の部位で、またはその近傍で(例えば、10、5、4、3、2または1cm以内)、皮下拡張する(例えば、皮下で改変細胞が拡張する)工程を含み得る。T細胞および/またはNK細胞のリンパ管周囲同時投与、腹腔内同時投与、筋肉内同時投与、例示的実施形態では皮下同時投与、改変されたT細胞および/もしくはNK細胞の投与、またはT細胞および/もしくはNK細胞をインビボで改変するためのRIPの投与を含む、本明細書の態様の一部の実施形態では、改変されたT細胞および/またはNK細胞(例えば、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞)は、皮下投与の部位から、例えば腫瘍などの身体の他の部位へと移動する。したがって改変された一部の実施形態、および例示的実施形態では、当該方法は、改変されたT細胞が対象に腹腔内注射、筋肉内注射、または例示的実施形態では皮下注射されてから数日後(例えば、1、2、3、4、5、6または7日後)、数週間後(例えば、1、2、4、または4週間)、または数か月後(例えば、1、2、3、6、12、または24カ月)に、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞は、皮下投与部位から移動して循環中に現れる。特定の実施形態において、これらの時点で、当該方法は、改変された、および例示的実施形態では遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の領域、または例示的実施形態では濃度勾配は、筋肉内投与の部位から、または例示的実施形態では皮下投与の部位からの発散を形成する。
【0571】
リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIP、または改変されたリンパ球(例えば、改変されたT細胞および/またはNK細胞)の腹腔内投与、筋肉内投与、リンパ節内投与、例示的実施形態では皮下投与を含む、本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、特定の実施形態では、例えば分子(イオン)、高分子(例えば、DNA、RNA、ペプチドおよびポリペプチド)および/または例えば改変されたT細胞および/またはNK細胞に影響を与え得る他の改変細胞(例えば、遺伝子改変細胞)などの他の細胞など、別の構成要素を、リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIPまたは改変されたT細胞および/もしくはNK細胞の送達部位に、またはその近傍に、同じ製剤中で、または別の製剤中で皮下送達する工程を含んでもよい。特定の例示的な実施形態では、他の構成要素は、抗原、組換え抗原をコードする組換え細胞、または抗原をコードするRNA、またはT細胞および/もしくはNK細胞の増殖を誘導するサイトカインを含む。本明細書により詳細に開示されるこれらの他の構成要素は、リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIP、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞と同じ製剤中または別の製剤中で送達されてもよい。さらにこれらの他の構成要素は、リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/またはNK細胞)、RIP、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞とともに送達されてもよく、またはリンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/またはNK細胞)、RIP、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞が送達される数日前もしくは後(例えば、1、2、3、4、5、6または7日間)、または数週間前もしくは後(例えば、1、2、4または4週間)、またはさらには数か月前もしくは後(例えば、1、2、3、6、12または24カ月)に送達されてもよい。一部の実施形態では、これらの他の構成要素のうちの一つ以上が、複数の時点で送達され、例えば、本項で上記に列挙されるときのうちの一つ以上で、リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIP、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞と同日に、または同時に送達される。したがって、一部の実施形態では、第二の製剤は、RIP製剤または細胞製剤の投与から1日~1か月後、2か月後、3か月後、6か月後、または12か月後の第二の時点で対象に投与される。改変リンパ球、または実質的に精製されたRIP、もしくはは精製されたRIPに加えて対象に投与される他の構成要素としては、例えば、i)サイトカイン、例えば、IL-2、ii)CD2、CD3、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81および/またはCD82に結合することができる抗体もしくはポリペプチド、および/またはiii)CARに認識される同族抗原の供給源、が挙げられる。特定の実施形態では、リンパ球(例えば、同時投与される非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)、RIP、または改変されたT細胞および/もしくはNK細胞の皮下投与は、例えば腫瘍などの新生物(例えば、がん性)細胞の部位または腫瘍を含む器官、例えば血液のがんの症例では脾臓の近傍(例えば、1、2、3、4、5、10、20または30cm以内)で実施され、または同じ製剤もしくは異なる製剤の複数回の投与が行われる場合には、投与前の部位で、もしくはその近傍で、または当該部位から離れて実施されてもよい。一部の実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、CARの同族抗原の供給源を含み、この場合において当該同族抗原の供給源は、同族抗原、同族抗原をコードするmRNA、または同族抗原を発現する細胞である。一部の実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、サイトカインを含有し、この場合において当該サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-15もしくはIL-21、またはこれらサイトカインの天然受容体に結合および活性化することができる、これらのサイトカインのいずれかの改変型である。例示的実施形態の項を含む、本明細書の当該実施形態および任意の実施形態の同族抗原は、本明細書に提供される腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原のいずれかであってもよい。
【0572】
特定の態様では、本明細書において、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団が提供され、この場合において当該集団は、例えばヒトなどの哺乳動物の皮下環境中にあり、この場合において当該改変されたT細胞および/またはNK細胞の少なくとも50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%が遺伝子改変されており、例示的な実施形態では、それらのゲノムDNAに統合されるCARをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、当該集団はさらに、筋肉内送達、例示的実施形態では皮下送達から発散する改変されたT細胞および/またはNK細胞の勾配を含んでもよく、一部の実施形態では、当該勾配は、任意選択的にリンパ球(例えば、非改変のT細胞および/または非改変のNK細胞)と同時投与されるRIP、または改変されたT細胞が、対象に皮下注射され、または例示的実施形態では皮下注射されてから数日後(例えば、1、2、3、4、5、6または7日)、数週後(例えば、1、2、4または4週)、または数か月後(例えば、1、2、3、6、12または24カ月)に形成される。一部の実施形態では、例えば分子(イオン)、高分子(例えばDNA、RNA、ペプチドおよびポリペプチド)および/または例えば対象にいずれか投与される改変されたT細胞および/またはNK細胞に影響を及ぼし得る、または対象に直接投与されたRIPによりインビボでT細胞および/またはNK細胞が改変された後に形成される他の改変された(例えば遺伝子改変された)細胞などの他の細胞など、別の構成要素は、皮下環境中に存在する。
【0573】
改変されたT細胞および/もしくはNK細胞、ならびに/またはRIPを含む皮下環境は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10cm3の体積であってもよい。一部の実施形態では、かかる皮下環境は、インビボ反応混合物とみなされる場合がある。一部の実施形態では、かかる皮下環境は、例えば、1x103~1x108TU/対象kgのRIPを含む。一部の実施形態では、かかる皮下環境は、少なくとも1×1010、1×1011、1×1012、または1×1013個の遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含んでもよく、または1×109~1×1015個の遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含んでもよく、例えば、1×1010~1×1013、1×1010~1×1012、または1×1011~1×1013個の遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含んでもよい。一部の実施形態では、かかる皮下環境は、1×109~1×1013、例えば、1×1010~1×1013、1×1010~1×1012、または1×1011~1×1013個の遺伝子改変されたT細胞および/または改変されたNK細胞を含んでもよく、この場合においてかかる細胞は、そのゲノムDNAに統合されるCARをコードするポリヌクレオチドを含む。関連する態様では、哺乳動物対象、例えばヒト対象が提供され、この場合において、CARを発現する当該対象中の遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の少なくとも50、60、70、75、80、90、または95%は、皮下であり、例示的な実施形態では、本段落に開示される皮下環境中の遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団である。一部の実施形態では、かかる哺乳動物対象は、入院しない。一部の実施形態では、かかる哺乳動物対象は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日前、または1、2、3、もしくは4週間前、または1、2、3、6、9、12、もしくは24カ月前、またはそれ以前に、リンパ球枯渇が行われなかった。
【0574】
一部の態様では、本明細書において、対象にRIP製剤を投与する、送達する、または注入することにおける使用のための、または対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変することにおける使用のための複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を目的とした態様「における使用のためのRIP」のセットが提供され、この場合においてRIPの使用は、例えばRIP製剤中のRIP、RIPを含む改変組成物中のRIP、またはRIPを含む送達溶液中のRIPを対象に投与すること、送達すること、および/または注入することを含む、本明細書に提供される方法の態様のいずれかを含む。したがって、一部の態様では、態様「における使用のためのRIP」のセットの各態様は、本明細書に提供される方法の態様に対応する。
【0575】
一部の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/もしくはNK細胞を改変する、ならびに/または遺伝子改変するためのキットの製造における複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)の使用を目的とした「キットの製造におけるRIPの使用」のセットの態様が提供され、この場合においてキットの使用は、例えばRIP製剤中のRIP、RIPを含む改変組成物中のRIP、またはRIPを含む送達溶液中のRIPを対象に投与すること、送達すること、および/または注入することを含む、本明細書に提供される方法の態様のいずれかを含む。したがって、一部の態様では、「キットの製造におけるRIPの使用」のセットの態様の各態様は、本明細書に提供される方法の態様に対応する。
【0576】
任意の投与工程は、一部の態様および実施形態では、注入工程または送達工程または導入工程であり得ることが理解される。態様および実施形態が、表面に関連することを指す場合、それらは互換的に、表面上、一つ以上の表面と関連付けられる、表面に結合される、または一つ以上の表面に結合されることを指す。
【0577】
一つの態様では、本明細書において、対象にRIP製剤を送達するための方法が提供され、当該方法は、対象にRIP製剤を投与することを含み、当該RIP製剤は、RIPを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、および当該LEは構造的に活性であるもの、を含む。
【0578】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変するための方法が提供され、当該方法は:
対象に、RIPおよび活性化エレメントを含むRIP製剤を投与することであって、RIPは、リンパ増殖エレメント(LE)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、LEは、構造的に活性である、投与することを含み、
当該投与によって、RIPと、T細胞および/またはNK細胞の会合が促進され、当該T細胞および/またはNK細胞は対象中に存在し、および当該RIPは、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変して、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する。
【0579】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは一つ以上の転写単位を含み、この場合において当該一つ以上の転写単位のそれぞれは、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結され、当該転写単位のうちの一つは、第一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、転写単位はさらに、キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、この場合において改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を含む。
【0580】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変するための方法が提供され、当該方法は:
当該対象に、RIP製剤を投与することであって、この場合において当該RIP製剤は、RIPおよび活性化エレメントを含み、当該RIPは、リンパ増殖エレメント(LE)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むこと;および
当該対象に細胞懸濁液を含む細胞製剤を投与することであって、当該細胞懸濁液は、T細胞および/またはNK細胞を含み、それによって当該細胞製剤を投与した後に、当該T細胞および/またはNK細胞は、投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞であり、
当該RIP製剤を投与し、および細胞製剤を投与することによって、投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞と、RIPのインビボでの会合が促進され、およびRIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞を改変して、対象において改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する。明瞭性から、当該細胞は、溶液中に懸濁されており、かならずしもその細胞プロセスのいずれかが懸濁されるわけではないことから、「懸濁された」細胞と呼称される場合がある。
【0581】
一部の実施形態では、T細胞および/またはNK細胞は、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞であり、これは当該細胞が溶液中に懸濁されていることを意味する。
【0582】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変する方法が提供され、当該方法は、対象にRIP製剤を投与することを含み、当該RIP製剤は、RIPを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメント、キメラ抗原受容体(CAR)、操作されたTCR、細胞除去タグ、および阻害性RNAのうちの一つ、二つ、三つ、四つ、またはそれ以上をコードし、当該RIP製剤は、1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上を含む。一部の実施形態では、転写単位は、LEおよびCARをコードする。
【0583】
特定の実施形態では、RIP製剤は、本明細書にさらに詳細に開示されるウシタンパク質を実質的に含まない。他の実施形態では、RIP製剤は、本明細書にさらに詳細に開示される非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まない。
【0584】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変する方法が提供され、当該方法は、対象にRIP製剤を投与することを含み、当該RIP製剤は、RIPを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、当該一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結され、および当該一つ以上の転写単位は、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、RIP製剤は、0.5%~10%コロイド、0.4~1.8%デキストロース、2~10%ヒト血清アルブミン、および50~100nMの合計電解質を含み、合計電解質は、25~100mMナトリウム、0.25~5mMカリウム、10~75mM塩化物、および0.1~1.5mMマグネシウムを含む。
【0585】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変する方法が提供され、当該方法は、対象にRIP製剤を投与することを含み、当該RIP製剤は、RIPを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、ポリヌクレオチド;および
c)当該RIPの表面上の一つ以上の膜結合型ケモカイン、を含み、当該一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である。
【0586】
別の態様では、本明細書において、対象においてT細胞および/またはNK細胞を改変する方法が提供され、当該方法は、対象にRIP製剤を投与することを含み、当該RIP製剤は、RIPを含み、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチド、を含み、一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結され、一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードし、およびRIP製剤は、一つ以上のケモカインを含み、一つ以上のケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である。
【0587】
一部の態様では、RIPを含む、複製能力のない組換えレトロウイルス粒子(RIP)製剤が本明細書に提供され、当該RIPは:
a)当該RIPの膜と関連付けられた活性化エレメント;および
b)一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドであって、当該一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結されており、当該一つ以上の転写単位が、リンパ増殖エレメントおよびキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、ポリヌクレオチド;および
c)当該RIPの表面上の一つ以上の膜結合型ケモカイン、を含み、当該一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL19および/もしくはCCL21、またはCCR7および/もしくはCXCR3に結合することができるCCL19および/またはCCL21の活性断片である。
【0588】
例えば、対象へのRIP製剤の投与を含む態様、またはRIP製剤の態様など、本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、RIP製剤は、注射器内に0.5ml~20mlの体積を含有する。一部の実施形態では、RIP製剤は、注射器内に2.5ml~10mlの体積を含有する。一部の実施形態では、方法は、疾患を治療する方法であり、当該疾患は、がんである。一部の実施形態では、投与は、リンパ管周囲投与による投与である。一部の実施形態では、投与は、筋肉内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、リンパ節内投与、または皮下投与による投与である。一部の実施形態では、投与は、リンパ節内投与または皮下投与による投与である。一部の実施形態では、RIP製剤中に、1×105~4×109の合計TUのRIPがある。一部の実施形態では、RIP製剤中に、1×103~4×107TU/対象kgがある。一部の実施形態では、1×105~4×109の合計TUのRIPが対象に投与される。一部の実施形態では、1×103~4×109 TU/対象kgのRIPが対象に投与される。
【0589】
対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、方法は、対象に、細胞懸濁液を含む細胞製剤を投与することをさらに含み、この場合において当該細胞懸濁液は、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞を含み、当該懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、対象に由来する。明白性を理由として、そのような懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、細胞製剤内の細胞懸濁液中にある。例示的な実施形態では、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、例示的実施形態では対象から単離された、単離T細胞および/または単離NK細胞である。そのような方法の一部の実施形態では、投与後、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、対象中に存在する投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞であり、この場合においてRIP製剤のRIPは、投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞の少なくとも一部と接触し、それによって当該投与されたT細胞および/または投与されたNK細胞を改変する。一部の実施形態では、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、対象に由来する。一部の実施形態では、細胞懸濁液は、PBMCの懸濁液である。これらの実施形態のうちの一部のさらなる実施形態において、PBMCは、対象から採取された全血から濃縮される。これは、方法の追加工程であってもよく、またはPBMCの特徴を指す場合もある。一部の実施形態では、細胞製剤は、RIP製剤の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10cm以内に投与される。これら及び他の実施形態の一部では、細胞製剤およびRIP製剤は、対象の皮膚表面上で互いに1cm以内で投与される。一部の副次的実施形態では、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、対象に投与される前に、エクスビボで活性化され、または活性化剤と接触される。これらの副次的実施形態の一部では、RIPは、例えば膜上または表面上で、活性化エレメントと関連付けられ、特定の実施形態では活性化エレメントと関連付けられない。これらの副次的実施形態の一部では、RIPは、LEをコードするポリヌクレオチドを含み、特定の例示的な実施形態では、RIPは、LEをコードするポリヌクレオチドを含まない。懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞が、対象に投与される前にエクスビボで活性化される、これらの副次的実施形態のいくつかのさらなる実施例では、RIPは、活性化エレメントと関連付けられず、LEをコードするポリヌクレオチドを含まない。
【0590】
したがって一部の態様では、本明細書において、対象に複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を送達する方法、投与する方法、および/または注入する方法が提供され、当該方法は、RIPを含有するRIP製剤を対象に投与することを含み、この場合においてRIPは、一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドを含み、当該一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結され、および当該一つ以上の転写単位は、リンパ増殖エレメントおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、転写単位のうちの一つ以上が、CARをコードする。一部の実施形態では、一つ以上の転写単位が、LEをコードしない。一部の実施形態では、RIPは、その表面上に活性化エレメントを含む。一部の例示的な実施形態では、RIPは、その表面上に活性化エレメントを含まない。特定の実施形態では、方法は、細胞懸濁液を含む細胞製剤を対象に投与することをさらに含み、当該細胞懸濁液は、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞を含み、当該懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、対象に由来する。一部の実施形態では、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、細胞製剤内で活性化状態にある。一部の実施形態では、懸濁されたT細胞および/または懸濁されたNK細胞は、投与される前に、エクスビボで活性化エレメントに暴露された。懸濁されたT細胞および/またはNK細胞が暴露され、一部の実施形態ではエクスビボで活性化される実施形態の一部の例示的実施形態では、RIPは、活性化エレメントを含まず、および/またはRIPは、LEをコードするいかなるポリヌクレオチドも含まない。一部の実施形態では、懸濁されたT細胞および/またはNK細胞は、対象に投与される前に、エクスビボで活性化される。
【0591】
対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、および本明細書のRIP製剤の態様の一部の実施形態では、RIPは、RIPの表面上の一つ以上の膜に関連付けられた、例示的実施形態では結合された、一つ以上の膜結合型サイトカインを含む。一部の実施形態では、膜結合型サイトカインは、一つ以上の膜結合型ケモカインである。一部の実施形態では、一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CCR7またはCx3cr1のうちの一つ以上に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、C-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、ケモカインの内の少なくとも一つは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片を含む。一部の実施形態では、ケモカインは、CCL19、CCL21、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる、それらのバリアント、またはそれらの活性断片を含む。一部の実施形態では、ケモカインは、C-X-Cモチーフを含む。かかる実施形態の一部の例では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片を含む。一部の実施形態では、ケモカインは、C-X3-Cモチーフを含む。かかる実施形態の一部の例では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、CX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片を含む。かかる実施形態の一部の例では、膜結合型ケモカインは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。かかる実施形態の一部の例では、一つ以上のポリペプチドは、CCR7、CXCR3、CXCR4、またはCXCR6に結合することができる。一部の実施形態では、膜結合型ケモカインは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、膜結合型ケモカインは、CCR2、CCR5、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、およびCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0592】
対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態において、および本明細書のRIP政治の態様の一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、LEをコードする、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、一つ以上の転写単位を含み、この場合において当該一つ以上の転写単位の各々は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結される。対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態において、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団がインビボで形成され、一部の実施形態では当該集団は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団である。対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、および本明細書のRIP製剤の態様の一部の実施形態では、LEは、構造的に活性である。一部の実施形態では、投与後、RIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞と接触する。一部の実施形態では、RIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞と関連する。一部の実施形態では、RIPは、インビボでT細胞および/またはNK細胞を改変し、対象において改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する。
【0593】
対象へのRIP製剤の投与を含む本明細書に提供される方法の態様のいずれか、または本明細書のRIP製剤の態様のいずれかにおいて、RIP製剤は、pH7.2~7.6でコロイド、デキストロース、アルブミン、および電解質を含む。一部の実施形態では、RIP製剤は、0.5%~10%のコロイド、0.4~1.8%のデキストロース、2~10%のアルブミン、および50~100mMの総電解質を含有する。一部の実施形態では、電解質は、ナトリウム、カリウム、塩化物、およびマグネシウムのうちの1、2、3種、または全てを含み、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。一部の実施形態では、ナトリウムは、25~100mMナトリウムでRIP製剤中に存在し、カリウムは、0.25~5mMでRIP製剤中に存在し、塩化物は、10~75mMでRIP製剤中に存在し、および/またはマグネシウムは、0.1~1.5mMで、RIP製剤中に存在する。
【0594】
RIP製剤中のRIPを対象に投与することを含む本明細書の態様のいずれかにおいて、方法は、改変されたT細胞および/または改変されたNK細胞を含む製剤を対象に投与すること、送達すること、または注入することをさらに含む。一部の実施形態では、改変されたT細胞および/または改変されたNK細胞は、LEおよび/またはCARを発現する。
【0595】
対象にRIP製剤を送達することを含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態において、および本明細書のRIP製剤の態様の一部の実施形態において、方法は、以下のサイトカインのうちの一つ以上を、対象に投与すること、送達すること、または注入することをさらに含む:IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片。一部の実施形態では、サイトカインは、送達溶液中で対象に投与される。一部の実施形態では、送達溶液は、RIP製剤と同じ溶液である。一部の実施形態では、サイトカインは、同じRIP製剤、改変組成物、または送達溶液中で対象に投与される。一部の実施形態では、送達溶液は、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ、GM-CSF、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCL19、CCL21、またはそれらのバリアント、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、またはそれらのバリアント、または前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CX3CL1、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCR7、CXCR3、CXCR4、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液は、CCR2、CCR5、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、およびCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0596】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、RIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPは、RIPの表面上に、本明細書の別段に開示される活性化エレメントのいずれかを含む、活性化エレメントを含んでもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD3、TCRα/β、CD28、またはマイトジェンのテトラスパニンに結合することができる抗体または抗体模倣体のうちの一つ以上を含んでもよく、または活性化エレメントは、マイトジェンのテトラスパニンであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD3に結合することができる抗体または抗体模倣体を含んでもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、抗CD3抗体である。一部の実施形態では、活性化エレメントは、RIPの膜に結合される。
【0597】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、RIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPは、RIPの表面上に、本明細書の別段に開示される活性化エレメントのいずれかを含む、活性化エレメントを含んでもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD3、TCRα/β、CD28、またはマイトジェンのテトラスパニンに結合することができる抗体または抗体模倣体のうちの一つ以上を含んでもよく、または活性化エレメントは、マイトジェンのテトラスパニンであってもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、CD3に結合することができる抗体または抗体模倣体を含んでもよい。一部の実施形態では、活性化エレメントは、抗CD3抗体である。一部の実施形態では、活性化エレメントは、RIPの膜に結合される。
【0598】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、RIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPは、RIPの表面上に、本明細書の別段に開示されるシュードタイピングエレメントのいずれかを含む、融合性エレメントを含んでもよい。一部の実施形態では、融合性エレメントは、シュードタイピングエレメント上に存在する。一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントはさらに結合エレメントを含む。一部の実施形態では、シュードタイピングエレメントの結合エレメントは、結合が低下するように変更される。
【0599】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、ポリヌクレオチドを含むRIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、本明細書の別段に開示されるリンパ増殖エレメント(LE)のいずれかを含む、LEをコードしてもよい。一部の実施形態では、LEは、その同族受容体またはその断片に繋がれたサイトカインを含まない。一部の実施形態では、LEは、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL7RA、IL12RB2、MyD88、OX40、GITRもしくはCD79B、またはその機能性変異体および/もしくは断片に由来するいかなる細胞内シグナル伝達ドメインも含まない。一部の実施形態では、LEは、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL7RA、IL12RB2、MyD88、CD40、MPL、OX40、GITRもしくはCD79B、またはその機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを複数含まない。一部の実施形態では、LEは、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL7RAに由来する細胞内シグナル伝達ドメインを3個以上含まない。
【0600】
一部の実施形態では、LEは、IL-2受容体ファミリー、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、IL7RA、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。
【0601】
一部の実施形態では、LEは、IL12RB2、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、MyD88、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、CD40、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、MPL、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、OX40、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、GITR、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。一部の実施形態では、LEは、CD79B、またはそれらの機能性変異体および/もしくは断片に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。
【0602】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、RIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPは、本明細書の別段に開示される抗イディオタイプポリペプチドのいずれかを含む、抗イディオタイプポリペプチドを含んでもよい。抗イディオタイプポリペプチドは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメイン、膜会合ドメイン、および抗イディオタイプ細胞外認識ドメインを膜会合ドメインに接続するストークを含んでもよく、この場合において当該抗イディオタイプ細胞外認識ドメインは、標的抗体または標的抗体模倣体のイディオタイプを認識する抗イディオタイプ抗体または抗体模倣体のイディオタイプ結合可変領域を含む。CARまたはLEを含む本明細書のいくつかの態様および実施形態では、CARまたはLEは、本明細書に開示される抗イディオタイプポリペプチドの細胞外認識ドメインのいずれかを含んでもよい。一部の実施形態では、細胞外認識ドメインの標的抗体または標的抗体模倣体は、米国食品医薬品局(USFDA)、欧州医薬品庁(EMA)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)(中国FDA)、または日本の医薬食品局(PFSB)によって承認された生物製剤の抗体または抗体模倣体であってもよい。
【0603】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、RIPを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、RIPは、その表面上に、本明細書の別段に開示される安全スイッチのいずれかを含む安全スイッチをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、安全スイッチは、認識ドメインである。一部の実施形態では、認識ドメインは、モノクローナル抗体承認生物製剤によって認識される。一部の実施形態では、認識ドメインは、EGFRまたはそのエピトープを認識する抗体により認識されるポリペプチドを含む。
【0604】
非限定的な例として、対象へのRIP製剤の送達を含む態様を含む、ポリヌクレオチドを有するRIP、および/または一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドおよび/または転写単位は、本明細書の別段に開示される阻害性RNA分子のいずれかを含む、阻害性RNAをコードしてもよい。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、TCRa、TCRb、SOCS1、miR155標的、IFNガンマ、cCBL、TRAIL2、PP2A、ABCG1、CD3z、PD1、CTLA4、TIM3、LAG3、SMAD2、TNFRSF10B、PPP2CA、TNFRSF6(FAS)、BTLA、TIGIT、A2AR、AHR、EOMES、SMAD3、SMAD4、TGFBR2、PPP2R2D、TNFSF6(FASL)、CASP3、SOCS2、TIEG1、JunB、Cbx3、Tet2またはHK2のうちの一つ以上を標的としてもよい。例示的な実施形態では、阻害性RNA分子は、AHR、Cbx3、HK2、SMAD4、またはEOMESのうちの一つ以上を標的としてもよい。
【0605】
一部の態様では、本明細書において、対象の皮下でT細胞および/もしくはNK細胞を改変する、ならびに/または遺伝子改変するためのキットの製造における複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子の使用が提供され、この場合において当該キットの使用は、本明細書において別の方法の態様であり、および以下を含む:
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)と活性化エレメントを含む改変組成物を、対象に皮下投与することであって、当該RIPは、導入遺伝子、抗原、操作されたT細胞受容体、またはキメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、
当該改変組成物は、0.5ml~10mlの体積を注射器内に含有され、当該投与によって、RIPと、T細胞および/またはNK細胞の会合が促進され、当該T細胞および/またはNK細胞は対象の皮下領域中に存在し、および当該RIPは、T細胞および/またはNK細胞を改変して、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団の改変組成物を形成する。
【0606】
一部の実施形態では、方法は、細胞懸濁液を対象に投与することをさらに含む。そのような投与は、例えば、皮下であってもよい。一部の実施形態では、細胞懸濁液の投与は、注射器内に2ml~25mlの体積が含有され、この場合において当該細胞懸濁液は、T細胞および/またはNK細胞を含む。一部の実施形態では、改変組成物中のRIPは、T細胞および/またはNK細胞と接触し、それによって、細胞懸濁液中のT細胞および/もしくはNK細胞は改変され、ならびに/または遺伝子改変される。かかる改変は、例えばRIPならびにT細胞および/またはNK細胞の両方を含む注射器においてエクスビボで行われてもよく、例示的実施形態ではインビボで行われてもよく、一部の実施形態では投与部位で、または投与部位近傍で原位置(in situ)で行われてもよい。
【0607】
一部の態様では、本明細書において、膜に封入された遺伝子ベクター(すなわち、遺伝子ベクター粒子)の調製物の量を決定し、標的細胞懸濁液に添加する方法が提供され、当該方法は:
反応混合物を含む、減光条件下での遺伝子ベクターの減光単位を決定すること、を含み、この場合において調製物の遺伝子ベクター粒子は、その表面上に結合ポリペプチドを発現し、減光単位は、表面ポリペプチドを発現する対照細胞懸濁液の標的体積において、または遺伝子ベクターが接触する同じ試験中の血液調製物の標的体積において、標的割合パーセントにまで、標的表面ポリペプチドを減少させる遺伝子ベクターの量または体積であり、または表面ポリペプチドを発現する標的細胞集団における、接触条件下での別の表面マーカーと比較した、標的割合パーセントにまで標的表面ポリペプチドを減少させる遺伝子ベクターの量または体積である。
【0608】
かかる方法の一部の実施形態では、追加する遺伝子ベクター(例えば、ウイルス粒子)調製物の量は、遺伝子ベクター(例えば、ウイルス粒子)調製物の減光単位、標的細胞(例えば、T細胞)懸濁液での表面ポリペプチドの標的減光割合パーセント、およびT細胞懸濁液での表面ポリペプチドの近似濃度、推定濃度、計算濃度、および/または経験的に決定された濃度によって決定される。
【0609】
一部の実施形態では、本明細書において、典型的には活性化エレメントとともに、例示的実施形態ではRIPの膜に関連付けられて、本明細書に提供される複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)のいずれかを対象に直接投与することを含む方法が提供される。かかる投与は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、リンパ節内投与、および例示的な実施形態では皮下投与によって行われてもよい。RIPは、典型的には、活性化エレメントともに、改変組成物中で投与されてもよく、この場合においてRIPと例えばT細胞および/またはNK細胞などのリンパ球の接触は、インビボで発生する。一部の実施形態では、RIPは、導入遺伝子を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例示的な実施形態では、抗原、操作されたT細胞受容体、またはキメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、この場合においてCARは抗体またはその断片を含み、例示的実施形態では、抗原特異的標的化領域(ASTR)、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメイン、ならびに/またはリンパ増殖エレメント(LE)である。一部の実施形態では、RIPは、膜結合型サイトカインを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗イディオタイプ細胞外認識ドメインをコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、LEをコードし、この場合において当該LEは、ヘテロ二量体LEである。
【0610】
追加のRIP製剤および細胞製剤の態様ならびに実施形態は、この例示的な実施形態の抗以外に、以下および発明の詳細な説明において提供される。様々な体積のRIP製剤または細胞製剤が、任意のRIP製剤または細胞製剤の態様に対して本明細書に提供される。一部の実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、3ml以上の体積、例えば、3ml~600mlの体積、または50ml~500ml、または100ml~500mlである。一部の実施形態では、細胞製剤またはRIP製剤は、ヒアルロニダーゼを含有する。一部の実施形態では、細胞製剤またはRIP製剤は、1ml~10ml、1ml~5ml、1ml~3ml、または10、5、4、3もしくは2ml~25ml、または2ml~10ml、または2ml~5ml、または2ml以下、または3ml未満、または本明細書に提供される小体積要素のいずれかである。例示的な実施形態では、細胞製剤またはRIP製剤は、ヒアルロニダーゼを含有しない。他の体積および製剤は、本明細書に提供される。本明細書のRIP製剤または細胞製剤の態様のいずれかに対するいくつかの実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、注射器内に含有される。一部の実施形態では、本明細書に提供される任意の細胞製剤に関し、細胞製剤は、インキュベーションバッグまたは血液処理バッグの中にある。例示的な実施形態では、注射器は、医薬品の製造管理および品質管理の基準(GMP)を使用して製造され、GMPのグレードおよび品質である。
【0611】
本明細書に提供されるRIP製剤または細胞製剤の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、皮下、リンパ節内または筋肉内に局在化され、またはRIP製剤もしくは細胞製剤の大部分が、対象において、皮下、リンパ節内または筋肉内に局在化される。いくつかの実施形態では、RIP製剤または細胞製剤は、CARによって認識される抗原の源をさらに含む。いくつかの実施形態では、改変されたリンパ球は、本明細書に提供されるリンパ球を改変するための方法の生成物である。
【0612】
本明細書の別の態様では、本明細書において、典型的には活性化エレメントとともに、例示的実施形態ではRIPの膜に関連付けられて、本明細書に提供される複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)のいずれかを対象に、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、リンパ節内投与により、例示的な実施形態では皮下投与により、直接投与することを含む方法が提供される。そのようなRIPは、典型的には、活性化エレメントと共に、RIP製剤中で投与されてもよく、RIP製剤は、RIPを含有する改変組成物である。かかる方法では、本明細書に提供される接触工程のいずれかがインビボで行われてもよい。したがって、これらの実施形態では、典型的には、一部の実施形態では、例えば投与部位にリクルートされる、対象内に存在する天然の変化していない標的細胞(例えば、T細胞および/またはNK細胞)との接触が発生する。そのような実施形態では、RIPは、送達溶液のいずれかにおいて、本明細書に提供される任意の体積のいずれかで製剤化されて、RIP製剤を形成し、当該RIP製剤は、RIPを含有する改変組成物である。そのような送達はさらに、対象に細胞製剤を投与することを含んでもよく、当該細胞製剤は、細胞懸濁液を含み、この場合において当該細胞懸濁液は、対象上のRIP投与部位で、もしくはその近傍で、または異なる部位で、T細胞および/またはNK細胞を含む。
【0613】
したがって一部の実施形態では、本明細書において、関連する態様では、対象の皮下でT細胞および/もしくはNK細胞を改変する、ならびに/または遺伝子改変するためのキットの製造における、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子の方法または使用が提供され、この場合において当該方法またはキットの使用は:
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)(すなわちRIPを含む改変組成物)と活性化エレメントを含む製剤を、対象に、例示的実施形態では皮下投与することを含み、当該RIPは、導入遺伝子、例示的実施形態ではリンパ増殖エレメント(LE)、抗原、操作されたT細胞受容体、またはキメラ抗原受容体(CAR)を含む第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、
当該改変組成物は、0.5ml~10mlの体積を注射器内に含有され、当該投与によって、RIPと、T細胞および/またはNK細胞の会合が促進され、当該T細胞および/またはNK細胞は対象の皮下領域中に存在し、および当該RIPは、T細胞および/またはNK細胞を改変して、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団を形成する。例示的な実施形態では、第一のポリペプチドは、構造的に活性なLEである。
【0614】
一部の実施形態では、本明細書において、対象の皮下でT細胞および/もしくはNK細胞を改変する、ならびに/または遺伝子改変するためキットの製造における、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子の方法、または関連する態様では使用が提供され、この場合において当該使用はさらに、細胞製剤中の細胞懸濁液、およびRIP製剤(すなわち、RIPを含む改変組成物)を対象に皮下投与することを含み、当該細胞製剤および/またはRIP製剤は、2ml~25mlの体積を注射器内に含有され、当該細胞懸濁液は、T細胞および/またはNK細胞を含み、当該RIP製剤(すなわち、RIPを含む改変組成物)中のRIPは、T細胞および/またはNK細胞と接触し、それによって、細胞懸濁液中のT細胞および/もしくはNK細胞が改変され、ならびに/または遺伝子改変される。細胞懸濁液は、対象から早期に収集されたT細胞および/もしくはNK細胞、または同種のT細胞および/またはNK細胞を含んでもよい。
【0615】
一部の実施形態では、RIP製剤(すなわち、RIPを含む改変組成物)および細胞製剤中の細胞懸濁液は、対象の皮膚の表面上で互いに0.5、1、2、3、4、または5cm以内で投与される。一部の実施形態では、細胞製剤中の細胞懸濁液の投与は、RIP製剤(RIPを含む改変組成物)の投与と同時、または投与から1、2、3、4、5、10、15、30、45、もしくは60分以内、または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8時間以内に行われる。一部の実施形態では、細胞懸濁液は、対象から採取された全血を含む。一部の実施形態では、細胞懸濁気は、対象由来の好中球を含有する。一部の実施形態では、全血にPBMC濃縮手順およびTNC濃縮手順が行われた。
【0616】
一部の実施形態では、RIP製剤(すなわち、RIPを含有する改変組成物)および細胞製剤中の細胞懸濁液は、同じ注射器内に含有される。したがって、注射器内の溶液は、RIP製剤と細胞製剤の両方である。一部の実施形態では、活性化エレメントは、T細胞活性化エレメントである。一部の実施形態では、T細胞活性化エレメントは、CD3に結合することができるポリペプチド、または本明細書に提供されるT細胞活性化エレメントのいずれかである。一部の実施形態では、活性化エレメントは、RIPの表面上にある。一部の実施形態では、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の持続的な集団を含み、当該遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の持続的な集団は、対象において、改変組成物の投与から少なくとも7、14、21もしくは28日間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12か月間、または1、2、3、4もしくは5年間、持続する。
【0617】
一部の実施形態では、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団における改変されたT細胞および/またはNK細胞のうちの少なくとも10%は、これらの態様の例示的な実施形態では、インビボで形成され、本明細書に提供される細胞凝集体の実施形態のいずれかに従う細胞凝集体である。一部の実施形態では、改変されたT細胞および/またはNK細胞の集団におけるCD4+細胞および/またはCD8+細胞のうちの少なくとも50%は、本明細書に提供される減光T細胞特性または減光NK細胞特性のいずれかに従い、CD3-である。
【0618】
一つの態様では、本明細書において、表面ポリペプチドの表面発現を減光するための、例えば複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子調製物などのウイルス様粒子やウイルス粒子といった遺伝子ベクターの量を、減光体積での標的細胞上の標的減光割合パーセントによって決定する方法が提供され、当該方法は:
a)複数の濃度の遺伝子ベクター調製物、および固定量の標的細胞混合物を含む、複数の反応混合物を作製することであって、当該複数の反応混合物中の反応混合物の内の少なくとも二つは、異なる濃度の遺伝子ベクター調製物および/または標的細胞懸濁液を含み、この場合において当該標的細胞懸濁液は、表面上に表面ポリペプチドを含む複数の細胞を含み、およびこの場合において当該遺伝子ベクター調製物は、その表面上に当該表面ポリペプチドに結合することができる結合ポリペプチドを含む複数の遺伝子ベクターを含むこと;
b)反応混合物を標的減光時間、インキュベートすることであって、この場合においてインキュベートの間、当該遺伝子ベクターは、標的細胞と接触すること;および
c)当該反応混合物中、および当該表面ポリペプチドを発現するが、当該遺伝子ベクター調製物と接触しない対照サンプル中の当該表面ポリペプチドの表面発現を測定すること、ならびに/または当該表面ポリペプチドの表面発現、および当該標的細胞懸濁液の全標的細胞上に発現することが知られている別の表面ポリペプチドの表面発現を測定すること;および
d)減光させる遺伝子ベクター調製物の量、当該反応混合物中の表面ポリペプチドの表面発現測定値を使用した減光体積中の細胞の標的減光割合パーセント、対照体積中の表面ポリペプチドの表面発現の測定値または他の表面ポリペプチドの表面発現測定値、および当該反応混合物中の遺伝子ベクター調製物および標的細胞懸濁液の例えば体積または希釈などの量、を決定すること、を含む。
【0619】
一部の実施形態では、対照試料は、標的細胞懸濁液の例えば体積および/または希釈などの量である。一部の実施形態では、対照試料は、正常な血液細胞懸濁液であり、一部の実施形態では、健康なドナーに由来する。
【0620】
別の態様では、本明細書において、T細胞懸濁液に添加するための、例えば複製能力のない組み換えウイルス粒子などのウイルス粒子調製物の量を決定する方法が提供され、当該方法は:
ウイルス粒子調製物の減光単位を決定すること、を含み、当該ウイルス粒子調製物のウイルス粒子は、その表面上に結合ポリペプチドを発現し、当該減光単位は、結合ポリペプチドにより認識される標的表面ポリペプチドの発現を、ウイルス粒子調製物と接触しなかった試験中の細胞懸濁液、または対照細胞懸濁液の例えば体積または希釈などの標的量の標的割合パーセントにまで減少させる、または接触条件下で試験中または試料のT細胞懸濁液上の例えばCD4またはCD8などの別のT細胞表面マーカーと比較して減少させる、ウイルス粒子調製物の例えば体積および/または希釈などの量であり、この場合において添加するウイルス粒子調製物の量は、ウイルス粒子調製物の減光単位、およびT細胞懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセントによって決定される。
【0621】
一部の実施形態では、追加するウイルス粒子調製物の量は、ウイルス粒子調製物の減光単位、T細胞懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセント、およびT細胞懸濁液中の表面ポリペプチドの近似濃度、推定濃度、計算濃度、および/または経験的に決定された濃度によって決定される。一部の実施形態では、接触条件下でのT細胞懸濁液上の表面ポリペプチドの濃度は、規定量または公知の量の表面ポリペプチドを発現する対照細胞懸濁液を使用して経験的に決定され、この場合において追加するウイルス粒子調製物の量は、ウイルス粒子調製物の減光単位、T細胞懸濁液中の表面ポリペプチドの濃度、およびT細胞懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセントによって決定される。
【0622】
別の態様では、本明細書において、例えばT細胞懸濁液やNK細胞懸濁液といった標的血液細胞懸濁液などの標的細胞懸濁液に添加する、例えば複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子などのウイルス様粒子またはウイルス粒子といった、膜内に封入された遺伝子ベクター(例えば遺伝子ベクター粒子調製物)の量、結合能力または形質導入能力を決定する方法が提供され、当該方法は:
反応混合物を含む減光条件下で、遺伝子ベクター、ウイルス様粒子またはウイルス粒子調製物の減光単位を決定すること、を含み、当該遺伝子ベクターまたはウイルス粒子調製物の遺伝子ベクターまたはウイルス粒子は、その表面上に結合ポリペプチドを発現し、減光単位は、例示的実施形態では正常血液細胞懸濁液、健康なドナーのヘパリン処理末梢血調製物、または遺伝子ベクターが接触する同じ試験中の血液調製物など、表面ポリペプチドを発現する対照細胞懸濁液の標的体積(例えば、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1ml)中の標的割合パーセントまで標的表面ポリペプチドを減少させる、または標的と接触した後/インキュベーション時間の後、例えば、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分間、15分間、10分間、5分間、1分間の接触/インキュベーションの後、またはインキュベーションを行わずに接触の直後、例えば20℃、22℃、25℃、または37℃などの標的温度、例えば4%、5%、または6%などのCO2割合といった接触条件下で、表面ポリペプチドを発現する例えば試験中細胞懸濁液または試料細胞懸濁液などの標的細胞集団中の別の表面マーカーと比較して減少させる、遺伝子ベクター、ウイルス様粒子もしくはウイルス粒子の量または体積であり、追加する遺伝子ベクター(ウイルス粒子)調製物の量は、当該遺伝子ベクター(ウイルス粒子)の減光単位、標的細胞(例えばT細胞)懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセントによって決定される。
【0623】
一部の実施形態では、追加する遺伝子ベクター(例えば、ウイルス粒子)調製物の量は、遺伝子ベクター(例えば、ウイルス粒子)調製物の減光単位、標的細胞(例えば、T細胞)懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセント、およびT細胞懸濁液での表面ポリペプチドの近似濃度、推定濃度、計算濃度、および/または経験的に決定された濃度によって決定される。
【0624】
一部の実施形態では、接触条件下での遺伝子ベクター(例えばT細胞)懸濁液上の表面ポリペプチドの濃度は、規定量または公知の量の表面ポリペプチドを発現する対照細胞懸濁液を使用して経験的に決定され、この場合において追加する遺伝子ベクター(ウイルス粒子)調製物の量は、ウイルス粒子調製物の減光単位、標的細胞(例えばT細胞)懸濁液中の表面ポリペプチドの濃度、および標的細胞(例えばT細胞)懸濁液上の表面ポリペプチドの標的減光割合パーセントによって決定される。
【0625】
一部の実施形態では、遺伝子ベクター調製物は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子調製物である。一部の実施形態では、標的減光割合パーセントは、50%である。一部の実施形態では、減光体積は、1mlである。一部の実施形態では、表面ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3Z、TCRα、TCRβ、CD16A、NKp46、2B4、CD2、DNAM、またはNKG2Dである。一部の実施形態では、表面ポリペプチドは、CD3D、CD3E、CD3G、TCRα、またはTCRβである。
【0626】
一部の実施形態では、結合ポリペプチドは、活性化エレメントである。一部の実施形態では、活性化エレメントは、抗CD3抗体である。
【0627】
一部の実施形態では、反応混合物は、表面ポリペプチドの表面発現を測定する前に、2~6時間、インキュベートされる。一部の実施形態では、反応混合物は、37℃および5% CO2でインキュベートされる。一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現の測定には、蛍光活性化細胞ソーティング法の使用が含まれる。一部の実施形態では、表面ポリペプチドの表面発現の測定には、CD3抗体の使用が含まれ、例示的実施形態では、CD4抗体および/またはCD8抗体を使用して、他の表面ポリペプチドを測定することが含まれる。一部の実施形態では、CD3抗体は、抗ヒトCD3-クローンSK7であり、例えば、抗CD3-PerCP(SK7)(BD社、347344)であり、例示的な実施形態では、抗CD8抗体は、SK1であり、例えば、抗CD8-FITC(SK1)(BD社、347313)である。
【0628】
限定されないが、本明細書において例示的な実施形態の項に提供される方法および使用の態様を含む、本明細書に提供される態様のいずれかの一部の実施形態において、例えば改変されたT細胞および/またはNK細胞などの改変された細胞、またはそれらの集団の一部(例えば、少なくとも5%、7.5%または10%)またはそれらの集団は、本明細書に開示されるように凝集体である。
【0629】
限定されないが、本明細書において例示的な実施形態の項に提供される方法および使用の態様を含む、本明細書に提供される態様のいずれかの一部の実施形態において、細胞は集団を形成し、本明細書に開示されるように当該集団は、持続的な集団であってもよい。
【0630】
本明細書の持続的な集団、もしくは子孫細胞の集団の態様また実施形態のいずれかにおいて、または持続的な集団もしくは子孫細胞の集団を含む本明細書の任意の態様または実施形態において、同時に投与されるT細胞および/またはNK細胞、改変細胞、例えば改変されたT細胞および/またはNK細胞、例示的な実施形態では遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の数は、少なくとも100個、1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、または1×1012個の細胞、または1×103~1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、または1×109個の細胞を含む。一部の実施形態では、対象に投与される細胞製剤中に改変型または非改変型で存在する、改変細胞、および例示的な実施形態では、改変されたT細胞および/またはNK細胞は、対象中で少なくとも5、10、15、20、25、50、75、100、250、500、750、1,000、2,500、5,000、または10,000倍に増殖し、例えば持続的な集団を形成し、または子孫細胞の集団を形成する。
【0631】
一部の実施形態では、持続的な集団、または子孫細胞の集団は、操作されたT細胞受容体またはCARを発現し、持続的な集団または子孫細胞の集団は、持続的な臨床応答によって間接的に検出される。例えば、そのような持続性は、臨床応答が最初に観察されてから少なくとも3、6、9、12、18または24カ月間の応答の持続期間で、安定疾患、部分奏功、または完全奏功が検出されることにより検出することができ、一部の実施形態では、安定疾患は、細胞の投与前、例示的な実施形態には操作されたT細胞またはCAR-T療法の投与前には進行性疾患であった患者の安定疾患である。
【0632】
血液を採取する工程を含む本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、採取される血液量は、例えば、5mL~600mLであってもよい。本明細書の別段において、より多い体積および範囲が提供され、一部の実施形態では、本明細書に提供される小体積要素が含まれる。いくつかの実施形態では、採取された血液がフィルター、例示的な実施形態では白血球除去フィルターを使用して処理される場合、フィルターに適用される血液試料の量は、600、500、400、300、200、150、120、100、75、50、40、30、25、20、15、10、または5mL以下である。例示的な実施形態では、フィルターに適用される血液試料の量は、50、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mL以下である。
【0633】
本明細書に提供される態様のいずれかの一部の実施形態において、RIP製剤または細胞製剤は、例示的実施形態において、注射器内にあり、0.5ml~20ml、15ml、10ml、5mlもしくは1mlの体積を有し、または1ml~20ml、15ml、10ml、5ml、4ml、3ml、2mlもしくはそれ以下の体積を有し、または2ml~20ml、15ml、10ml、7mlもしくは5mlの体積を有し、または5ml~20ml、15mlもしくは10mlの体積を有し、または3ml~12ml、または3ml未満の体積を有する。本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかの一部の実施形態では、対象から血液が採取され、採取された血液は、2.5ml~75ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25ml、20ml、15ml、10mlもしくは5ml、または5ml~75ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25ml、20ml、15mlもしくは10ml、または10ml~75ml、60ml、50ml、50ml、40ml、30ml、25mlもしくは20ml、または15ml~75ml、60ml、50ml、50ml、40ml、30ml、25mlもしくは20ml、または20ml~75ml、60ml、50ml、40ml、30mlもしくは25ml、または25ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40mlおよび30ml、または下限で5ml、10mlもしくは15ml、上限で20mlの間の体積を有する。一部の実施形態では、採取された血液が、フィルター、例示的な実施形態では白血球除去フィルターを使用して処理される場合、フィルターに適用される血液試料、またはその画分の体積は、2.5ml~75、50、40、30、25、20、15または10mlであってもよい。例示的な実施形態では、フィルターに適用される全血試料、またはその画分の体積は、10ml~50、25、20、15mlである。一部の実施形態では、フィルターに適用される血液試料またはその画分の体積は、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1mL以下である。本明細書に提供される態様または実施形態のいずれかの一部の実施形態では、反応混合物(例えば、エクスビボまたはインビボ)の体積は、2.5ml~75ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25ml、20ml、15ml、10mlもしくは5ml、または5ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25ml、20mlもしくは10ml、または10ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25ml、20mlもしくは15ml、または15ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40ml、30ml、25mlもしくは20ml、または20ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40ml、30mlもしくは25ml、または25ml~75ml、70ml、60ml、50ml、40mlおよび30mlである。この段落におけるRIP製剤、細胞製剤、採取された血液、および反応混合物の体積は、本明細書において、「小体積要素」と呼称される。小体積要素を含む実施形態の例示的な副次的実施形態において、細胞製剤は、皮下送達に適合され、この場合において非改変細胞または改変細胞の数、例えば改変細胞製剤中の改変されたT細胞および/またはNK細胞の数は、1.5×104~1.5×109、1×109、1×108もしくは1×107 、または1×105~1.5×108、1×105~1×107、または1×106~1×108、または2×106~1×108、または例示的実施形態では、3×104~3×107、1×105~3×107、または1×106~3×107個の改変T細胞、NK細胞、CD4+細胞、CD8+細胞、および/またはCD56+細胞である。
【0634】
遺伝子改変および/または形質導入を含む本明細書の態様のいずれかにおいて、ABCトランスポーター阻害剤および/または基質、さらなる実施形態では外因性ABCトランスポーター阻害剤および/または基質は、遺伝子改変および/または形質導入の前、最中、または前および最中の両方に存在しない。
【0635】
本明細書の上記に提供されるキットのいずれかにおいて、第一および/または第二のポリヌクレオチドは、本明細書に提供される任意の自己駆動CARを含み得る。追加のキットの態様および実施形態は、この例示的な実施形態のセクション以外に、以下および本明細書の詳細な説明に提供されている。
【0636】
注射器を含む本明細書に提供される態様のいずれかについて、例示的な実施形態では、注射器は、筋肉内、および例示的な実施形態では皮下送達に適合する、有効である、および/もしくはそのために適合されている、ならびに/または筋肉内注射に有効である、皮下注射に有効である、筋肉内注射するように適合されている、ならびに/または皮下注射するように適合されている。例えば、注射器は、筋肉内送達用の20~22のゲージおよび1インチ~1.5インチの長さを有する針、ならびに皮下送達用の26~30のゲージおよび0.5インチ~0.625インチの長さを有する針を有し得る。
【0637】
CARおよび/またはLEをコードするポリヌクレオチドを含み、およびT細胞を含む、本明細書の態様および他の実施形態のいずれかの特定の実施形態(例えば、リンパ球を遺伝子改変する、および/または形質導入するためのキットの製造における、T細胞もしくはNK細胞を遺伝子改変する、および/または形質導入するための方法における、対象に遺伝子改変されたリンパ球を投与する方法における、細胞製剤、細胞集団、遺伝子改変リンパ球、反応混合物、キット、RIPの使用)において、細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であってもよい。非限定的な例として、本明細書に開示される、任意のCAR、組み換えTCR、LE、阻害性RNA、細胞認識タグ(例えば、抗イディオタイプポリペプチド)、サイトカイン、またはチェックポイント阻害性リガンドをコードする核酸を個々に、または組み合わせで含むTILが本明細書において提供される。さらなる非限定的な例として、改変されたTIL、一部の実施形態では遺伝子改変されたTILを作製するための、本明細書に提供される任意のRIPと接触したTILが本明細書に提供される。
【0638】
CARおよびLEをコードするポリヌクレオチドを含む、本明細書の態様および他の実施形態のいずれかの特定の実施形態(例えば、リンパ球を遺伝子改変する、および/または形質導入するためのキットの製造における、T細胞もしくはNK細胞を遺伝子改変する、および/または形質導入するための方法における、対象に遺伝子改変されたリンパ球を投与する方法における、ポリヌクレオチド、RIP、細胞製剤、細胞集団、遺伝子改変リンパ球、反応混合物、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子のパッケージング用RNAゲノムを含む哺乳動物パッケージング細胞株、キット、RIPの使用)において、ポリヌクレオチドは、本明細書の自己駆動CARの方法および組成物の項に開示される自己駆動CARの実施形態のいずれかを含んでもよく、またはコードしてもよい。
【0639】
一部の実施形態では、自己駆動CARの実施形態は、T細胞またはNK細胞の内の少なくとも一つで誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された第一の転写単位、および構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された第二の転写単位、を含むポリヌクレオチドであってもよく、この場合において当該第一の転写単位および第二の転写単位は、分岐して配置され、第一の転写単位は、LEをコードし、第二の転写単位は、CARをコードし、CARは、ASTR、膜貫通ドメインおよび細胞内活性化ドメインを含む。
【0640】
一部の実施形態では、自己駆動CARの実施形態は、T細胞またはNK細胞の内の少なくとも一つで誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位を含む第一の配列を含むポリヌクレオチドであってもよく、この場合において当該一つ以上の第一の転写単位の内の少なくとも一つは、LEを含む第一のポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチド配列を含み、リンパ増殖エレメントは、T細胞またはNK細胞の内の少なくとも一つにおいて構造的に活性であり、リンパ増殖エレメントは、膜貫通ドメインを含み、当該一つ以上の第一の転写単位は、シグナルペプチダーゼ開裂部位を含むシグナル配列を含まない。
【0641】
一部の実施形態では、自己駆動CARの実施形態は、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位を含む逆方向の第一の配列、および構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位を含む順方向の第二の配列、を含むポリヌクレオチドであってもよく、当該一つ以上の第一の転写単位の5’末端と当該一つ以上の第二の転写単位の5’末端の間のヌクレオチドの数は、当該一つ以上の第一の転写単位の3’末端と当該一つ以上の第二の転写単位の3’末端の間のヌクレオチドの数よりも少なく、当該ポリヌクレオチドはさらに、5’LTRおよび3’LTRを含み、当該逆方向および順方向は、5’LTRおよび3’LTRにより確立される5’~3’の方向に対するものであり、当該一つ以上の第一の転写単位のうちの少なくとも一つは、LEをコードし、当該一つ以上の第二の転写単位のうちの少なくとも一つは、CARをコードし、当該CARは、ASTR、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む。
【0642】
一部の実施形態では、自己駆動CARの実施形態は、T細胞またはNK細胞のうちの少なくとも一つにおいて誘導性の誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位、構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位、を含むポリヌクレオチドであってもよく、当該一つ以上の第一の転写単位の5’末端と当該一つ以上の第二の転写単位の5’末端との間のヌクレオチド数は、当該一つ以上の第一の転写単位の3’末端と当該一つ以上の第二の転写単位の3’末端の間のヌクレオチドの数よりも少なく、当該一つ以上の第一の転写単位のうちの少なくとも一つは、LEをコードし、当該一つ以上の第二の転写単位のうちの少なくとも一つは、CARをコードし、当該CARは、ASTR、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む。
【0643】
一部の実施形態では、誘導性プロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第一の転写単位を含むポリヌクレオチドを含み、当該一つ以上の第一の転写単位の内の少なくとも一つはLEをコードする、任意の態様に関し、当該ポリヌクレオチドはさらに、構造的なT細胞またはNK細胞のプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の第二の転写単位を含む第二の配列を含んでもよく、この場合において当該一つ以上の第二の転写単位の内の少なくとも一つは、CARを含む第二のポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチド配列を含み、当該CARは、ASTR、膜貫通ドメイン、および細胞内活性化ドメインを含む。例示的な実施形態では、誘導性プロモーターは、NFAT応答性プロモーターである。一部の実施形態では、第一および第二の転写単位は、前方向に、250 cHS4インシュレーター(配列番号358)によって分離される。一部の実施形態では、RIPは、レンチウイルス粒子である。
【0644】
前述の段落における自己駆動CARの実施形態のいずれかと任意の組み合わせで使用される、さらなる詳細および実施形態は、本明細書の自己駆動CARの方法および組成物の項において開示される。
【0645】
容器および/または反応混合物中に組換えレトロウイルス粒子を含む本明細書の態様のいずれかにおいて、組換えレトロウイルス粒子は、0.1~50、0.5~50、0.5~20、0.5~10、1~25、1~15、1~10、1~5、2~15、2~10、2~7、2~3、3~10、3~15、もしくは5~15、または少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、もしくは15のMOIで容器および/または反応混合物中に存在するか、または少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、もしくは15のMOIで反応混合物中に存在する。キットおよび単離されたレトロウイルス粒子の実施形態については、このようなMOIは、1×106個の標的細胞/mLと仮定して、例えば全血の場合には1×106個のPBMC/血液mLと仮定して、1、2.5、5、10、20、25、50、100、250、500、または1,000mLに基づいたものであってもよい。
【0646】
細胞をレトロウイルス粒子と接触させることを含む本明細書の態様のいずれかにおいて、十分な組換えレトロウイルス粒子が、0.1~50、0.5~50、0.5~20、0.5~10、1~25、1~15、1~10、1~5、2~15、2~10、2~7、2~3、3~10、3~15、もしくは5~15、または少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、もしくは15のMOIを達成するために、または少なくとも0.1、0.5、1、2、2.5、3、5、10、もしくは15のMOIを達成するために、反応物中に存在する。
【0647】
遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含む本明細書の態様のいずれかにおいて、T細胞および/またはNK細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、もしくは少なくとも20%、または5%~85%、または5%~20%、25%、50%、60%、70%、80%もしくは85%、範囲の下限で5%、10%、15%、20%、もしくは25%~範囲の上限で20%、25%、50%、60%、70%、80%、もしくは85%が、遺伝子改変されている。
【0648】
RIPを含む本明細書の態様のいずれかにおいて、RIPは、レンチウイルス粒子である。さらなる例示的な実施形態では、改変された細胞は、改変されたT細胞または改変されたNKT細胞である。
【0649】
一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドを含む本明細書の態様のいずれかにおいて、一つ以上の転写単位は、CARを含むポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態では、CARは、微小環境が制限された生物学的(MRB)-CARである。他の実施形態では、CARのASTRは、腫瘍関連抗原に結合する。他の実施形態では、CARのASTRは、微小環境が制限された生物学的(MRB)-ASTRである。
【0650】
特定の実施形態では、T細胞および/またはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、本明細書に提供される態様および実施形態のいずれかにおいて、ポリヌクレオチドは、少なくとも一つのポリペプチドリンパ増殖エレメントをコードする。例示的な実施形態では、ポリペプチドリンパ増殖エレメントは、本明細書に開示されるポリペプチドリンパ増殖エレメントのいずれかである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される核酸配列のいずれかまたはすべては、リボスイッチに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態では、リボスイッチは、ヌクレオシド類似体に結合することができる。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド類似体は、抗ウイルス薬である。
【0651】
RIPを含む本明細書に提供される態様のいずれかにおいて、一部の実施形態では、RIPは、モノクローナル抗体の承認された生物製剤によって認識されるドメインをコードする核酸をその表面上に含む。
【0652】
反応混合物中に血液細胞を含む本明細書の態様のいずれかの特定の例示的な実施形態では、反応混合物中の血液細胞は、PBMC濃縮手順によって産生され、PBMCを含む血液細胞であるか、または例示的な実施形態の血液細胞は、PBMCである。例示的な実施形態では、PMBC濃縮を含むそのような実施形態は、反応混合物が少なくとも10%の全血を含む実施形態と組み合わされない。したがって、本明細書の特定の例示的な実施形態では、反応混合物中の血液細胞は、レトロウイルス粒子が添加されて反応混合物を形成するPBMC濃縮手順からのPBMC細胞画分であり、他の例示的な実施形態では、反応混合物中の血液細胞は、レトロウイルス粒子が添加されて反応混合物を形成する全血からのものである。
【0653】
阻害性RNA分子をコードする核酸配列を含む、または任意選択的に含む、本明細書に提供される態様および実施形態のいずれかにおいて、阻害性RNAは、例えば本明細書の阻害性RNA分子の項で特定される遺伝子(例えばmRNAをコードする)標的のいずれかを標的とする。
【0654】
一つの態様では、送達溶液、RIP製剤、または改変組成物が本明細書に提供され、この場合において当該送達溶液、RIP製剤、または改変組成物は:
a)RIPの膜に関連付けられた、またはRIPの表面と関連付けられた、活性化エレメントを含む複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP);および
b)IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上、を含む。
【0655】
別の態様では、送達溶液、RIP製剤、または改変組成物が本明細書に提供され、この場合において当該送達溶液、RIP製剤、または改変組成物は:
a)複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
i)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた活性化エレメント、および
ii)リンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチド、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIP;ならびに
b)IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上、を含む。
【0656】
別の態様では、送達溶液および/または製剤が本明細書において提供され、この場合において当該送達溶液または細胞製剤は、b)IL-1、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、TNFα、IFNγ、GM-CSF、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)もしくはCX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。
【0657】
本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、送達溶液は、製剤、および/または改変組成物は、IL-1、IL-12、IL-18、TNFα、IFNγ、GM-CSF、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCL19、CCL21、またはそれらのバリアント、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、またはそれらのバリアント、または前述のいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CX3CL1、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。
【0658】
本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCR7、CXCR3、CXCR4、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、またはCXCR6に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。一部の実施形態では、送達溶液、製剤および/または改変組成物は、CCR2、CCR5、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、およびCx3cr1に結合することができるポリペプチドを一つ以上含む。
【0659】
別の態様では、送達溶液、RIP製剤、または改変組成物が本明細書に提供され、この場合において当該送達溶液、RIP製剤、または改変組成物は、複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)を含み、当該RIPは:
a)RIPの膜に関連付けられた、またはRIPの表面と関連付けられた、活性化エレメント;
b)リンパ増殖エレメントをコードするポリヌクレオチド、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド;および
c)当該RIPの表面上の膜結合型ケモカイン、当該RIPの表面に関連付けられた、および/もしくは結合された膜結合型ケモカインを一つ以上、含む。
【0660】
本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、送達溶液、RIP製剤、および/または改変組成物は、一つ以上の膜結合型ケモカインを含むRIPを含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCR1、CCR2(MCP-1)、CCL3、CCR4、CCR5、CCR6、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCR9、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、CXCL1、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、もしくはCX3CL1、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片のうちの一つ以上を含む。一部の実施形態では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、C-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、C-X-Cモチーフを含む。ケモカインのうちの少なくとも一つは、C-X3-Cモチーフを含む。一部の実施形態では、ケモカインの内の少なくとも一つは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3、CCL5、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL28、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片であってもよい。一部の実施形態では、ケモカインの内の少なくとも一つは、CCL19、CCL21、またはそれらのバリアント、またはCCR7もしくはCXCR3に結合することができる前述のいずれかの活性断片であってもよい。一部の実施形態では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、CXCL1、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL14(BRAK)、またはそれらのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片であってもよい。一部の実施形態では、ケモカインのうちの少なくとも一つは、CX3CL1、またはそれらのいずれかのバリアント、またはそれらのいずれかの活性断片であってもよい。
【0661】
本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、送達溶液、RIP製剤、一つ以上の膜結合型ケモカインは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1のうちの一つ以上に結合することができるポリペプチドを一つ以上含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上のポリペプチドは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCx3cr1に結合することができてもよい。一部の実施形態では、一つ以上のポリペプチドは、CCR7、CXCR3、CXCR4、またはCXCR6に結合することができてもよい。一部の実施形態では、一つ以上のポリペプチドは、CCR1、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR5、またはCXCR6に結合することができてもよい。一部の実施形態では、一つ以上のポリペプチドは、CCR2、CCR5、CCR7、CCR9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、およびCx3cr1に結合することができてもよい。
【0662】
本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、RIPは、ポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは、一つ以上の転写単位を含んでもよい。一部の実施形態では、一つ以上の転写単位の各々が、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結される。例示的な一つ以上の転写単位は、本明細書の別段に開示される、リンパ増殖エレメント、キメラ抗原受容体(CAR)、および/または操作されたTCRをコードする。
【0663】
一つの態様では、本明細書において、RIPまたは細胞を対象に投与する、送達する、導入する、または注射するための送達溶液および/または製剤、例えば、RIP製剤や細胞製剤を含む方法および組成物が提供される。別の態様では、本明細書において、疾患または障害を治療する方法が提供され、例示的な実施形態では、本明細書に提供される送達溶液および/または製剤を使用してがんを治療する方法が提供される。本開示の送達溶液は、RIP、非改変の、改変された、遺伝子改変された、および/もしくは形質導入された細胞、RIP製剤、ならびに/または細胞製剤を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤のRIPは、本明細書に開示されるRIPのいずれかを含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤の細胞は、本明細書に開示される非改変細胞、改変細胞、遺伝子改変細胞、および/または形質導入細胞のいずれかを含んでもよい。例示的な実施形態では、RIPは、一つ以上のコードポリヌクレオチドを含んでもよく、細胞は、例えば本明細書の別段に開示されるCAR、操作されたTCR、および/またはリンパ増殖エレメントのいずれかなど、本明細書に開示される操作されたシグナル伝達ポリペプチドのいずれかのうちの一つ以上を発現してもよい。一部の実施形態では、RIPおよび/または細胞は、その表面上に、本明細書に開示される活性化エレメント、シュードタイピングエレメント、結合エレメント、および/または融合性エレメントのうちの一つ以上を含む。
【0664】
本明細書に提供されるいくつかの態様および実施形態では、組成物、送達溶液、および/または製剤は、細胞および/またはRIPを含んでもよく、ならびに本明細書に列挙される構成要素のいずれかのうちの一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、またはそれ以上の製剤構成要素を含んでもよく、この場合において当該RIPは:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)リンパ増殖エレメント(LE)、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含む。一部の態様および実施形態では、送達溶液および/または製剤の構成要素は、コロイド(例えば、デキストラン40、ヘタスターチ、アルブミン、またはPEG)、糖(例えば、デキストロース、スクロース、トレハロース、またはラクトース)、HSA、生理食塩水、緩衝剤、および/または電解質溶液を含んでもよく、例示的な実施形態では、組成物、製剤、または送達溶液は、これらの製剤の構成要素のうちの四つ以上またはすべてを含む。一部の態様、および一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤の構成要素は、0.5%~2% デキストラン40、0.45%~1.8% デキストロース、22~100mg/mL HSA、1.15%~4.6%生理食塩水、および11%~56%の多電解質溶液(例えば、Plasma-Lyte AA溶液)を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.75%~1.5% デキストラン40、0.7%~1.1% デキストロース、30~60mg/mL HSA、2%~2.6%の生理食塩水、および20%~56%の多電解質溶液(Plasma-Lyte A溶液)を、pH7.0~7.8、7.2~7.6、または7.3~7.5で含有する。本明細書の送達溶液および/または製剤の構成要素の割合パーセントは、重量/体積、すなわち、100mlの送達溶液または製剤中の構成要素のグラム数、または体積/体積、すなわち、100mlの送達溶液または製剤中の構成要素のmL数のいずれかを指し得る。当業者であれば、本明細書の送達溶液および/または製剤を作製するために、いずれかを使用する方法を理解し得る。
【0665】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤の構成要素は、標的のpHを維持するために、例えば、PBS、HBSS、リンゲル乳酸溶液、またはPlasma-Lyteなどの緩衝剤を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液または細胞製剤の構成要素はさらに、非改変の細胞、改変された細胞、遺伝子改変された細胞、および/または形質導入された細胞(例えば、T細胞および/またはNK細胞)を含む。例示的な実施形態では、送達溶液および/または細胞製剤の構成要素は、本明細書に開示される非改変の細胞を含む。一部の実施形態では、組成物、RIP製剤、または送達溶液は、例えば本明細書に開示される非改変細胞を含む細胞製剤などの細胞製剤と同時投与される。一部の実施形態では、組成物、製剤、または送達溶液は、DMSOを含まない。例示的な実施形態では、組成物、製剤、または送達溶液は、構造的に活性なLEをコードするポリヌクレオチドを一つ以上含有するRIPを含有する。さらなる例示的な実施形態では、組成物、製剤、または送達製剤は、注射器内にある。
【0666】
一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、1~3.5%、1.25~3.25%、または1.75~2.5%の生理食塩水を含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、1.25~2.5%の生理食塩水を含有する。例示的な実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、約2.3%の生理食塩水を含有する。
【0667】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への注射に適した多電解質溶液であり、またはそれを含む。一部の実施形態では、送達溶液は、例えば単回用量容器などの容器中に、滅菌された、発熱物質を含まない等張溶液であってもよく、またはそれを含んでもよい。特定の実施形態におけるそのような溶液は、静脈内投与または腹腔内投与ならびに皮下投与および/または筋肉内投与に適しており、またはそれらに適合される。一部の実施形態では、送達溶液は、対象への注射を目的とした多電解質溶液を含んでもよい。一部の実施形態では、多電解質溶液は、それぞれ100mL中に以下を含む:526mgの塩化ナトリウム、USP(NaCl)、502mgのグルコン酸ナトリウム(C6H11NaO7)、368mgの酢酸ナトリウム三水和物、USP(C2H3NaO2・3H2O)、37mgの塩化カリウム、USP(KCl)、および30mgの塩化マグネシウム、USP(MgCl2・6H2O)(pHは7.4(6.5~8.0)に調整)。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、10~50%、15~45%、20~35%、22~28%の本明細書に記載される多分析物/多電解質の溶液を含む。一部の実施形態では、RIP製剤は、多電解質溶液を、送達溶液および細胞製剤のいずれかよりも少なくとも10%多く含有する。例示的な実施形態では、RIP製剤は、23~35%、または23~29%の多分析物溶液を含む。他の例示的な実施形態では、送達溶液および細胞製剤は、18~22%の多分析物溶液を含む。例示的な実施形態では、送達溶液は、抗微生物剤を含有しない。一部の実施形態では、pHは、水酸化ナトリウムで調整される。一部の実施形態では、多電解質注射液は、様々な供給業者から入手可能なPlasma-Lyte A Injection pH 7.4であってもよい。一部の実施形態では、多電解質注射液は、Plasma-Lyte148であってもよい。例示的な実施形態では、Plasma-Lyteは、約150mM ナトリウム、約5mM カリウム、約1.5mM マグネシウム、約98mM 塩化物、約27mM 酢酸塩、および約23mM グルコン酸塩を含んでもよい。
【0668】
細胞混合物、送達溶液、または製剤を含む、または任意選択的に含む、本明細書に提供される態様および実施形態では、細胞混合物、送達溶液、または製剤は、pHおよびイオン性組成物を有してもよい。一部の実施形態では、pHは、pH6.5~pH8.0、pH7.0~pH8.0、またはpH7.2~pH7.6であってもよい。一部の実施形態では、例えば、RIPがMRB-CARをコードするポリヌクレオチドを有する場合、pHは、pH6.0~pH7.0、例えばpH6.2~pH7.0、またはpH6.4~pH7.0、またはpH6.4~pH6.8であってもよい。一部の実施形態では、細胞混合物、送達溶液、または製剤は、pHを標的範囲に維持するのに有効な濃度で存在する緩衝剤、たとえば、リン酸緩衝剤または重炭酸塩により維持されてもよい。一部の実施形態では、細胞混合物、送達溶液、または製剤は、例えば塩化ナトリウムなどの塩を0.8~1.0%、または約0.9%で含む生理食塩水組成物を含んでもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBSであるか、またはPBSを含む。本明細書の送達溶液または製剤の一部の実施形態では、Na+の濃度は、110mM~204mMであり、Cl-の濃度は、98mM~122mMであり、および/またはK+の濃度は、3mM~6mMである。例示的な実施形態では、送達溶液またはそれを含む細胞製剤は、カルシウムおよび/またはマグネシウムを含有する。カルシウムの濃度は、例えば、0.5mM~2mMであってもよい。マグネシウムの濃度は、例えば、0.5mM~2mMであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、カルシウムおよびマグネシウムを含まない。
【0669】
一部の実施形態では、例えば、ナトリウム、カリウム、塩化物および/またはマグネシウムをはじめとする電解質の送達溶液中または製剤中の総濃度は、10~500mM、25~250mM、50~100mM、または60~80mMであってもよい。例示的な実施形態では、例えば、ナトリウム、カリウム、塩化物、および/またはマグネシウムをはじめとする電解質の総濃度は、60~80mMであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液中または製剤中のナトリウムの総濃度は、10~250mM、25~100mM、または35~45mMであってもよい。例示的な実施形態では、ナトリウムの総濃度は、35~45mMであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液中または製剤中のカリウムの総濃度は、0.1~10mM、0.25~5、または0.5~2mMであってもよい。例示的な実施形態では、カリウムの総濃度は、0.5~2mMであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液中または製剤中の塩化物の総濃度は、5~200mM、10~75mM、または25~35mMであってもよい。例示的な実施形態では、塩化物の総濃度は、25~35mMであってもよい。一部の実施形態では、送達溶液中または製剤中のマグネシウムの総濃度は、0.05~5mM、0.1~1.5mM、または0.25~0.75mMであってもよい。例示的な実施形態では、マグネシウムの総濃度は、0.25~0.75mMであってもよい。
【0670】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、乳酸ナトリウム溶液およびHartman溶液としても知られるリンゲル乳酸溶液を含んでもよい。例示的な実施形態では、リンゲル乳酸溶液は、約130~131mMのナトリウム、109~111mMの塩化物、28~29mMの乳酸塩、4~5mMのカリウム、および1~1.5mMのカルシウムを含有してもよく、典型的には、塩化ナトリウム(NaCl)、乳酸ナトリウム(CH3CH(OH)CO2Na)、塩化カルシウム(CaCl2)、および塩化カリウム(KCl)を混合することによって作製される。
【0671】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、1%~10%、1%~9%、1%~8%、2%~8%、3%~8%、4%~8%、5%~8%、または5%~7.5%のDMSOを含有する。例示的な実施形態では、RIPを含む送達溶液またはRIP製剤は、DMSOを含まない。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%以下のDMSOを含有する。特定の例示的な実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、DMSOを含む。一部の実施形態では、送達溶液または細胞製剤は、6%~8%のDMSOを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または細胞製剤は、5%~7%のDMSOを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または細胞製剤は、4%~6%のDMSOを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、10%のDMSOを含む、例えばCryoStor10などの市販の溶液を含んでもよい。
【0672】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または製剤は、ヒト血清アルブミンを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、および細胞製剤は、最大で5%のHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.20%~5%、0.25%~5%、1%~5%、2%~5%、または2.5%~5%のHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2%~5%のHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.2%~2.5%のHSAを含有する。いくつかの実施形態では、送達溶液は、2%のHSAを含むPBSである。いくつかの実施形態では、送達溶液は、2%のHSAを含むDPBSである。一部の実施形態では、送達溶液は、HSAおよび重炭酸ナトリウムをさらに含む、約pH7.4の生理食塩水を含む。
【0673】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または製剤は、30~100U/ml、40~100U/ml、30~60U/ml、または60~80U/mlのヘパリンを含有する。一部の実施形態では、溶液は、ヘパリンをさらに含む生理食塩水である。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.5~5%、1~5%、または1~2.5%のHSAをさらに含む。反応混合物の態様におけるヘパリンの濃度に関する、本明細書の別段での考察は、送達溶液、RIP製剤、および細胞製剤の態様に等しく適用される。
【0674】
一部の実施形態では、送達溶液は、少なくとも、または約10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、または100mg/mlのHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤または細胞製剤は、10~30mg/ml、22~100mg/ml、30~90mg/ml、35~75mg/ml、40~60mg/ml、または44~50mg/mlのHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、40~60mg/mlのHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、44~50mg/mlのHSAを含有する。
【0675】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.45~1.8%、0.5~1.5%、0.75~1.25%、または0.75~1%のデキストロース(g/100ml)を含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%のデキストロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%のデキストロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.5%~10%、1%~9%、2%~8%、3%~7%、または4%~6%のデキストロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、3~7%のデキストロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、3~6%のデキストロースを含有する。例示的な実施形態では、送達溶液は、5%デキストロースの0.9% NaCl溶液であってもよい。他の例示的な実施形態では、送達溶液は、5%デキストロースの0.45% NaCl溶液であってもよい。
【0676】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.25%~10%、0.5%~10%、0.5%~8%、1%~8%、1%~10%、2%~8%、2%~6%、3%~6%、3%~5%、3.5%~4.5%、3.6%~4.4%、3.7%~4.3%、3.8%~4.2%、3.9%~4.1%、または4%のラクトース(g/100ml)を含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~8%のラクトースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~6%のラクトースを含有する。
【0677】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.25%~10%、例えば、0.5%~10%、0.5%~8%、1%~8%、1%~10%、2%~8%、2%~6%、3%~6%、3%~5%、3.5%~4.5%、3.6%~4.4%、3.7%~4.3%、3.8%~4.2%、3.9%~4.1%、または4%のスクロース(g/100ml)を含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~8%のスクロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~6%のスクロースを含有する。
【0678】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.25%~10%、例えば、0.5%~10%、0.5%~8%、1%~8%、1%~10%、2%~8%、2%~6%、3%~6%、3%~5%、3.5%~4.5%、3.6%~4.4%、3.7%~4.3%、3.8%~4.2%、3.9%~4.1%、または4%のトレハロース(g/100ml)を含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~8%のトレハロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、2~6%のトレハロースを含有する。
【0679】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびラクトースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および2%~10%のラクトースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および3%~6%のラクトースを含有する。
【0680】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、およびラクトースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および2%~10%のラクトースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および3%~6%のラクトースを含有する。
【0681】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、多電解質溶液、およびラクトースを含有する。一部の実施形態では、多電解質溶液は、例えばPlasma-Lyte Aなどの市販の溶液であってもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および2%~10%のラクトースを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および3%~6%のラクトースを含有する。
【0682】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびスクロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および2%~10%のスクロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および3%~6%のスクロースを含有する。
【0683】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、およびスクロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および2%~10%のスクロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および3%~6%のスクロースを含有する。
【0684】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、多電解質溶液、およびスクロースを含有する。一部の実施形態では、多電解質溶液は、例えばPlasma-Lyte Aなどの市販の溶液であってもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および2%~10%のスクロースを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および3%~6%のスクロースを含有する。
【0685】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびトレハロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および2%~10%のトレハロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および3%~6%のトレハロースを含有する。
【0686】
一部の実施形態では、送達溶液、または製剤は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、およびトレハロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および2%~10%のトレハロースを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および3%~6%のトレハロースを含有する。
【0687】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、およびトレハロースを含有する。一部の実施形態では、多電解質溶液は、例えばPlasma-Lyte Aなどの市販の溶液であってもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および2%~10%のトレハロースを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および3%~6%のトレハロースを含有する。
【0688】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および22~100mg/mlのHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、PBS、および35~75mg/mlのHSAを含有する。
【0689】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、およびHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および22~100mg/mlのHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、HBSS、および35~75mg/mlのHSAを含有する。
【0690】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、およびHSAを含有する。一部の実施形態では、多電解質溶液は、例えばPlasma-Lyte Aなどの市販の溶液であってもよい。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および22~100mg/mlのHSAを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、多電解質溶液、および35~75mg/mlのHSAを含有する。
【0691】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、DMSO、コロイド(例えば、デキストラン)、デキストロース、HSA、生理食塩水、多電解質溶液を含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、1~10% DMSO、0.5~10%コロイド、0.45~1.8%デキストロース、20~100mg/ml HSA、1~3.5%生理食塩水、および10~50%多重電解質溶液を含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、3~8% DMSO、0.5~3%コロイド、0.6~1.4%デキストロース、35~65mg/ml HSA、1.5~3%生理食塩水、および15~35%多重電解質溶液を含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、本明細書に記載される緩衝剤をさらに含有してもよい。
【0692】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、コロイド(例えば、デキストラン)、デキストロース、HSA、生理食塩水、多電解質溶液を含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、0.5~10%コロイド、0.45~1.8%デキストロース、20~100mg/ml HSA、1~3.5%生理食塩水、および10~50%多重電解質溶液を含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、0.5~3%コロイド、0.6~1.4%デキストロース、35~65mg/ml HSA、1.5~3%生理食塩水、および15~35%多重電解質溶液を含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、0.5~2%コロイド、0.7~1.2%デキストロース、44~50mg/ml HSA、1.75~2.75%生理食塩水、および23~35%多重電解質溶液を含有する。
【0693】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、本明細書に記載される多分析物/多電解質溶液、デキストロース、コロイド(例えば、デキストラン40)、HAS、およびDMSOを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、25~40%(v/v)多分析物溶液、0.45~1.8% デキストロース、0.5~20% デキストラン40、1~10% HSA、および1~10% DMSOを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、28~35%(v/v)多分析物溶液、0.75~1.5% デキストロース、5~12% デキストラン40、3~7% HSA、および4~9% DMSOを含有する。一部の実施形態では、デキストロースは、0.45%または0.9%の塩化ナトリウム溶液に溶解される。一部の実施形態では、デキストランは、5%デキストロース溶液に溶解される。
【0694】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、DMSO、塩化ナトリウム、およびHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、1~10% DMSO、1~3.5%塩化ナトリウム、および1~10% HSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、3~7% DMSO、1~3%塩化ナトリウム、および2~8% HSAを含有する。
【0695】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、DMSO、および多電解質溶液とを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、1~10% DMSO、および10~70% 多電解質溶液を含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、3~7% DMSO、および30~70%多電解質溶液を含む。
【0696】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、DMSO、多電解質溶液、およびHSAを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、1~10% DMSO、10~70% 多重電解質溶液、および0.1~10% HSAを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、5~9% DMSO、15~35%多重電解質溶液、および0.1~1% HSAを含む。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、市販溶液のCryoStor 10の形態のDMSOを含み、多電解質溶液は、注射用に市販されている任意の溶液である。
【0697】
一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、DMSOおよびHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、1~10%のDMSO、および1~10%のHSAを含有する。一部の実施形態では、送達溶液または製剤は、3~7%のDMSO、および1.5~4%のHSAを含有する。
【0698】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、例えばヒドロゲルなどの人工細胞外基質を形成する構成要素を含む。一部の実施形態では、デポ送達溶液は、デポ製剤を形成するのに有効な量のアルギン酸塩、コラーゲン、および/または後エバデキストランなどのコロイドを含む。デキストランは、例えば、40kDa~2x106kDaの範囲内の特定の分子量のものであってもよい。使用可能な他のタイプのコロイドは、ヘタスターチ、アルブミン、およびPEGである。一部の実施形態では、PEGは、5kDa~100kDaの範囲内であってもよい。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0.5~10%、0.75~7.5%、または1~5%のコロイドを含有する。一部の実施形態では、ゲル形成生体材料を作製するために使用され、本明細書に提供される送達溶液および細胞製剤に含まれ得るポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ならびに例えば、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、およびポリホスファゼンなどの脂肪族ポリエステルとのそのコポリマーから構成される。一部の実施形態では、ゲル形成生体材料を作製するために使用され、本明細書に提供される送達溶液および細胞製剤に含まれ得るポリマーとしては、生理学的環境において自然発生的に自己集合することができる、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド乳酸塩)およびポリ(エチレングリコール)(p(HPMAm-lac)-PEG)をベースとした感熱性トリブロックコポリマーが挙げられる(Vermonden et.al 2006,Langmuir 22:10180-10184)。
【0699】
一部の実施形態では、本明細書の送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤で使用されるヒドロゲルは、ヒアルロン酸(HA)を含有する。そのようなHAは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-1-カルボジイミド塩酸塩で修飾されて、優先的にN-ヒドロキシスクシンイミドの存在下で、本明細書に提供される改変されたリンパ球上に見られるものなどのタンパク質、ペプチド、ポリマー、およびリンカー上のアミン基と反応し得るカルボン酸基を有し得る。一部の実施形態では、抗体、サイトカイン、およびペプチドは、そのような方法を使用してHAに化学的にコンジュゲートされて、本明細書に提供されるいくつかのRIP製剤および細胞製剤の実施形態において細胞エマルションとして同時注射を行うことを目的としたハイドロゲルを生成する。さらに、いくつかの実施形態では、送達溶液、RIP製剤、および細胞製剤中のHAは、ポリマー(例えば、Healon)であり、かつ/またはグルタルアルデヒドなどの薬剤と、その-OH基を介して架橋されて(例えば、レスチレン(Abbive/Allergan))、例えば、軽く架橋されて、皮下注射後の材料の局所的な異化作用を低減する。一部の実施形態では、本明細書の送達溶液、RIP製剤、および細胞製剤で使用されるHAは、可変の長さおよび粘度を有し得る。一部の実施形態では、本明細書の送達溶液、RIP製剤、および細胞製剤で使用されるHAは、コンドロイチン硫酸塩(例えば、Viscoat)またはポリマーもしくは界面活性剤などの他のグリコサミノグリカンとさらに架橋され得る。当業者であれば、基質の多孔性および架橋の程度が、本明細書の改変されたリンパ球などの細胞がヒドロゲルを通って遊走することができることを確実にするように調節され得ることを認識するであろう。したがって、本明細書のRIP製剤または細胞製剤で使用される場合のヒドロゲル基質などの基質は、基質を通した細胞の遊走を可能にするように構成されてもよく、またはそのために適合されてもよい。いくつかの実施形態では、剪断弾性係数は、(約)2.5kPa、(約)3kPa、(約)3.5kPa、または(約)4kPaである。
【0700】
本明細書に提供されるキット、送達溶液、RIP製剤、および/または細胞製剤、特に筋肉内送達に有効または適合されたもの、および例示的な実施形態では皮下送達に有効または適合されたもののいずれかの例示的な実施形態では、送達溶液、RIP製剤、および/または細胞製剤は、デポ製剤であるか、またはRIP製剤および/もしくは細胞製剤は、細胞凝集を促進する細胞のエマルションである。いくつかの実施形態では、デポ送達溶液は、デポ製剤を形成するために有効量のアルギン酸塩、ヒドロゲル、PLGA、架橋および/またはポリマーのヒアルロナン、PEG、コラーゲン、および/またはデキストランを含む。いくつかの実施形態では、送達溶液、RIP製剤、および/または細胞製剤は、制御または遅延放出のために設計されている。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、および/または細胞製剤は、例えばヒドロゲルなどの人工細胞外基質を形成する構成要素を含む。
【0701】
本明細書に提供される送達溶液および/または製剤のいずれかの一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、ウシタンパク質を実質的に含まなくてもよい。RIP製剤および/またはRIPを含む送達溶液については、ウシタンパク質を実質的に含まないとは、50pg未満のウシタンパク質/TUであることを含み得る。細胞製剤および/またはヒト細胞を含む送達溶液については、ウシタンパク質を実質的に含まないとは、50pg未満のウシタンパク質/1μgヒト細胞タンパク質であることを含み得る。例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、ウシタンパク質を含まない。すなわちウシタンパク質は検出不能である。RIPを含む一部の実施形態では、ウシタンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下のウシタンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下のウシタンパク質/TUであってもよい。ヒト細胞を含む一部の実施形態では、ウシタンパク質とヒトタンパク質の比率は、10、5、3、2、または1ng以下のウシタンパク質/ヒトタンパク質μgであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下のウシタンパク質/ヒトタンパク質μgであってもよい。
【0702】
本明細書に提供される送達溶液および/または製剤のいずれかの一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まなくてもよい。RIP製剤およびRIPを含む送達溶液については、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まないとは、50pg未満の非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質/TUであることを含み得る。細胞製剤および/またはヒト細胞を含む送達溶液については、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を実質的に含まないとは、50pg未満の非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質/1μgヒト細胞タンパク質であることを含み得る。例示的な実施形態では、送達溶液および/または製剤は、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質を含まない。すなわち、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質は検出不能である。RIPを含む一部の実施形態では、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下の非ヒトおよび非ウイルス性のウシタンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下の非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質/TUであってもよい。ヒト細胞を含む一部の実施形態では、非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質とヒトタンパク質の比率は、10、5、3、2、または1ng以下の非ヒトおよび非ウイルス性のウシタンパク質/ヒトタンパク質μgであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下の非ヒトおよび非ウイルス性のタンパク質/ヒトタンパク質μgであってもよい。
【0703】
一つの態様では、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ならびに/または他の改変された、もしくは非改変のリンパ球、例示的な実施形態ではT細胞および/もしくはNK細胞を用いて製剤化された送達溶液を含む、細胞製剤(すなわち送達組成物)が、本明細書に提供され、細胞製剤は、皮下または筋肉内送達に適合する、それに有効である、および/またはそのために適合されている。本明細書に提供される細胞製剤のいずれかのいくつかの実施形態では、細胞製剤は、対象において、皮下に局在化されるか、または細胞製剤の大部分が、皮下に局在化される。いくつかの実施形態では、細胞製剤は、対象において、皮下もしくは筋肉内に局在化されるか、または細胞製剤の大部分が、皮下もしくは筋肉内に局在化される。一部の実施形態では、細胞製剤がTILを含む場合、細胞製剤は、T細胞および/もしくはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドを含む、組換え核酸ベクター、例示的な実施形態ではRIPと関連付けられたこと、または当該ポリヌクレオチドで遺伝子改変されたこと、いずれかにより改変された、または両方により改変された改変リンパ球をさらに含んでもよく、当該一つ以上の転写単位は、第一のCARを含む第一のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、細胞製剤がTILを含む場合、細胞製剤は、TILによって認識される腫瘍抗原源をさらに含む。一部の実施形態では、TILは、核酸ベクターと接触される。
【0704】
本明細書に提供されるキット、送達溶液、RIP製剤、および/または細胞製剤、特に筋肉内送達に有効または適合されたもの、例示的実施形態では、皮下送達に有効または適合されたもののいずれかの例示的な実施形態では、送達溶液は、T細胞および/またはNK細胞、一部の実施形態では遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞、例えば、本明細書に提供される遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞に影響を及ぼし得る、例えば、分子(イオン)、高分子(例えば、DNA、RNA、ペプチドおよびポリペプチド)および/または他の細胞などの本明細書に開示される構成要素を一つ以上含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される送達溶液および/または細胞製剤は、本明細書において詳細に検討されるように、有効量の抗原を含む。一部の実施形態では、かかる製剤は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含まない。例示的な実施形態では、かかる製剤は、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含み、特に本明細書の態様および他の実施形態で提供されるものを含む製剤を含むか、または当該製剤と同時投与される。一部の実施形態では、本明細書に提供される送達溶液および/または細胞製剤は、例えば、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、または皮下送達用に適合され、および/またはサイトカイン活性を保持しているそれらの改変型などの一つ以上のサイトカインの有効量を含む。例示的な実施形態では、かかる改変型サイトカインは、サイトカインの天然受容体(例えば、野生型受容体)に結合し、活性化することができる。例示的な実施形態では、改変型サイトカインは、優先的な偏向性のあるサイトカイン活性を有する。一部の実施形態では、細胞製剤および/または送達溶液は、CD2、CD3、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81、および/またはCD82に結合することができる抗体またはポリペプチドの有効量を含む。一部の実施形態では、これらのサイトカイン、抗体、またはポリペプチドは、ハイドロゲルの構成要素に架橋される。一部の実施形態では、かかる他の構成要素と共に送達される改変T細胞は、CARおよびLEをコードするポリヌクレオチドを含み、例示的な実施形態では、当該ポリヌクレオチドはCARをコードするが、リンパ増殖エレメントはコードしない。例示的な実施形態では、送達溶液および/または細胞製剤は、DMSOを欠き、決して凍結していなかった。一部の実施形態では、細胞製剤は、ヒト対象への筋肉内送達または皮下送達との適合性がある、適合された、または作動する送達デバイスの内にある。一部の実施形態では、かかるデバイスは、本明細書に提供されるように筋肉内または皮下に細胞を送達するのに有効なサイズを有する針を有する。皮下に送達されると、本明細書に提供される態様および実施形態のいずれかの皮下製剤は、改変されたリンパ球および/またはTILを含む皮下反応混合物を形成する。一つの態様では、本明細書に提供される改変リンパ球のいずれか、および本明細書に提供される他の細胞製剤構成要素のうちの一つ以上を含む、皮下反応混合物が本明細書に提供される。したがって一部の態様では、本明細書に提供される改変されたT細胞および/もしくはNK細胞、または遺伝子改変されたT細胞および/もしくはNK細胞、ならびに/またはTIL、ならびにi)サイトカイン、ii)CD2、CD3、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD9、CD53、CD63、CD81、および/またはCD82に結合することができる抗体またはポリペプチド、ならびに/またはiii)CARに認識される同族抗原の供給源、を含む皮下反応混合物が本明細書に提供される。かかる組成物は、本明細書に提供される他の、または特定の皮下製剤の構成要素のいずれかを含んでもよい。 一部の実施形態では、皮下反応混合物は、好中球を含む。一部の実施形態では、皮下反応混合物は、人工基質を含む。一部の実施形態では、人工基質は、ヒアルロン酸および/またはコラーゲンを含む。一部の実施形態では、皮下反応混合物中のCD4+細胞および/またはCD8+細胞の少なくとも25%、50%、75%、または90%は、表面CD3-である。
【0705】
一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤および/または製剤は、凍結され、その後に解凍されて対象に投与される。一部の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、0℃未満の温度で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。一部の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-15℃未満の温度で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。一部の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-70℃未満の温度で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。例示的な実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-70℃未満の温度で12日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。他の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-70℃未満の温度で7日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。さらなる例示的な実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-70℃未満の温度で4日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。一部の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-15℃未満の温度で12日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。他の実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-15℃未満の温度で7日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。さらなる例示的な実施形態では、凍結された送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、-15℃未満の温度で4日以下の間、保管され、その後に対象に投与される。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、1、2、3、4、5、もしくは6日間、または1、2、3、もしくは4週間、または1、2、3、4、5、6、9もしくは12か月間、または無期限に凍結されてもよく、その後に、投与され、または細胞を含む細胞製剤および送達溶液の例示的実施形態では、対象に戻し再投与される。RIPまたは細胞が凍結している期間中、または対象への投与前の任意のとき、または対象への戻し再投与前の任意のとき、RIPおよび/または細胞は、本明細書の別段で開示される様々な品質管理性、例えば、ウイルス濃度、純度、および/または効力についてRIPは試験されてもよく、ならびに/または一つ以上の細胞および/もしくは遺伝子治療の品質管理試験についてRIPは試験されてもよい。
【0706】
他の実施形態では、送達溶液、RIP製剤および/または製剤は、対象への投与前に凍結されない。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で保存される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で1以下の間、保存される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で12日以下の間、保存される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で7日以下の間、保存される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前、2~8℃で、範囲の下限で1、2、3、4、5、6、または7日間、および範囲の上限で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間、保存される。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で2~7日間、保存されてもよい。一部の実施形態では、送達溶液、RIP製剤、または細胞製剤は、対象への投与前に2~8℃で2~7日間、保存される。一部の実施形態では、送達溶液および/または製剤は、1、2、3、4、5、もしくは6日間、または1、2、3、もしくは4週間、または1、2、3、4、5、6、9もしくは12か月間、または無期限に2~8℃で保存されてもよく、その後に、投与され、または細胞を含む細胞製剤および送達溶液の例示的実施形態では、対象に戻し再投与される。RIPまたは細胞が2~8℃で保存される期間中、または対象への投与前の任意のとき、または対象への戻し再投与前の任意のとき、RIPおよび/または細胞は、本明細書の別段で開示される様々な品質管理性、例えば、ウイルス濃度、純度、および/または効力についてRIPは試験されてもよく、ならびに/または一つ以上の細胞および/もしくは遺伝子治療の品質管理試験についてRIPは試験されてもよい。
【0707】
本明細書に提供される方法の態様および実施形態のいずれかに加えて、本明細書において、当該方法を実施するためのキットの使用、または当該方法を実施するためのキットの製造における、核酸ベクターの使用、例示的な実施形態ではRIPの使用を含む、使用の態様および実施形態も提供され、この場合において当該キットの使用は、方法の態様または実施形態の工程を実施することである。例えば、一つの態様では、本明細書において、接触工程における、核酸ベクターを含む、および例示的実施形態ではRIPを含む、C/F工程を含む細胞製剤の作製方法が提供される。かかる方法は任意選択的に、上記の投与工程を含んでもよく、または本明細書の任意の投与工程を含んでもよい。したがって、本明細書において、細胞製剤の作製のためのキットの製造における、核酸ベクターの使用、および例示的な実施形態では複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子の使用がさらに提供され、この場合いおいて当該キットの使用は、C/F工程および任意選択的な「A」工程を実施することを含む。同様に、本明細書に提供される任意の使用の態様および実施形態については、本明細書において、使用の態様または実施形態に列挙される方法を含む、方法の態様および実施形態がさらに提供される。
【0708】
RIPおよび/または細胞を対象に投与する方法の一部の態様または実施形態において、当該方法は、対象に、少なくとも0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.5ml、1ml、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、14ml、または15mlの本明細書に開示される製剤または送達溶液のいずれかを投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、0.1~20ml、0.5~15ml、1~12ml、1~10ml、1~8ml、または1~5mlの製剤または送達溶液を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、0.5~15mlの製剤または送達溶液を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、0.25~10mlの製剤または送達溶液を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、0.5~5mlの製剤または送達溶液を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPおよび/または細胞を投与する方法は、2~3mlの製剤または送達溶液を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPおよび/または細胞を対象に投与する方法は、0.1ml~20mlの製剤または送達溶液を、対象のリンパ節に投与することを含む。例示的な実施形態では、RIPおよび/または細胞を対象に投与する方法は、0.5~5mlの製剤または送達溶液を、対象のリンパ節に投与することを含む。例示的な実施形態では、RIPおよび/または細胞を対象に投与する方法は、0.5~5mlの製剤または送達溶液を、対象のリンパ節に皮下投与することを含む。
【0709】
一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014の総TUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、1000~1014、104~1012、105~1010、105~109、または105~108の総TUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、1x106~4x109の総TUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、1x106~1x109の総TUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、1x106~1x108の総TUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、5x106~5x107の総TUを対象に投与することを含む。
【0710】
一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、少なくとも1、10、100、1000、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014形質導入単位(TU)/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、RIPを対象に投与する方法は、1~1014TU/kg、10~1014TU/kg、100~1014TU/kg、1000~1014TU/kg、104~1014TU/kg、104~1013TU/kg、104~1012TU/kg、105~1012TU/kg、106~1010TU/kg、103~108または107~1010または1×103~4×109TU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1000~1014TU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、104~1013TU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、106~1012TU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、107~1011TU/kgを対象に投与することを含む。
【0711】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1000、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、または1014形質導入単位(TU)/標的細胞/血液mlを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1~1014、10~1014、100~1014、1000~1014、104~1014、104~1013、104~1012、105~1012、106~1010、または107~1010TU/標的細胞/血液mlを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、104~1013TU/標的細胞/血液mlを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、106~1012TU/標的細胞/血液mlを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、107~1010TU/標的細胞/血液mlを対象に投与することを含む。
【0712】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1、10、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、700、または800ng/kg/日を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1ng/kg/日~800mg/kg/日を投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、100ng/kg/日~600mg/kg/日を投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、200ng/kg/日~500mg/kg/日を投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、300ng/kg/日~500mg/kg/日を投与することを含む。
【0713】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×102、1.0×103、1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、または1.0×1011GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1013GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1012GCを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1010GCを対象に投与することを含む。
【0714】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×102、1.0×103、1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、または1.0×1011GC/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015、1.0×103~1.0×1014、1.0×104~1.0×1013、1.0×105~1.0×1012、または1.0×106~1.0×1010GC/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015GC/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1013GC/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1012GC/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1010GC/kgを対象に投与することを含む。
【0715】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015、1.0×103~1.0×1014、1.0×104~1.0×1013、1.0×105~1.0×1012、または1.0×106~1.0×1010感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1015感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1013感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1012感染単位を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015感染単位を対象に投与することを含む。
【0716】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011感染単位/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015、1.0×103~1.0×1014、1.0×104~1.0×1013、1.0×105~1.0×1012、または1.0×106~1.0×1010感染単位/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1015感染単位/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1013感染単位/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1012感染単位/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015感染単位/kgを対象に投与することを含む。
【0717】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015、1.0×103~1.0×1014、1.0×104~1.0×1013、1.0×105~1.0×1012、または1.0×106~1.0×1010PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1015PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1013PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1012PFUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015PFUを対象に投与することを含む。
【0718】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011PFU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×102~1.0×1015、1.0×103~1.0×1014、1.0×104~1.0×1013、1.0×105~1.0×1012、または1.0×106~1.0×1010PFU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1015PFU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1013PFU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015PFU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×107~1.0×1012PFU/kgを対象に投与することを含む。
【0719】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1015、1.0×105~1.0×1014、1.0×106~1.0×1013、1.0×107~1.0×1012、または1.0×108~1.0×1012DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1014DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1012DUを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015DUを対象に投与することを含む。
【0720】
一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、少なくとも1.0×104、1.0×105、1.0×106、1.0×107、1.0×108、1.0×109、1.0×1010、1.0×1011DU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×104~1.0×1015、1.0×105~1.0×1014、1.0×106~1.0×1013、1.0×107~1.0×1012、または1.0×108~1.0×1012DU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×105~1.0×1014DU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×106~1.0×1012DU/kgを対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象にRIPを投与する方法は、1.0×109~1.0×1015DU/体重kgを対象に投与することを含む。
【0721】
品質管理特性には、RIPの純度および効力を含めてもよい。RIPの純度は、RIPを生成するために使用された宿主細胞からのタンパク質の量と、形質導入単位の比率(宿主細胞タンパク質の量/TU)を使用して決定されてもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、1ng以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、50pg以下の宿主細胞タンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10~1ng宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10~0.5、10~1、8~2、6~3、または5~3ng宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、10~1ng宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、8~2ng宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、6~2ng宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、750~10、500~20、400~30、300~40、または200~50pg宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、500~20pg宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質とTUの比率は、200~50pg宿主細胞タンパク質/TUの範囲であってもよい。一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK 293T細胞株を含む、HEK 293細胞株またはそのバリアントであってもよい。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTUの比率は、10、5、3、2、または1ng以下のHEKタンパク質/TUであってもよく、または750、500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10pg以下のHEKタンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTUの比率は、1ng以下のタンパク質/TUであってもよい。一部の実施形態では、HEKタンパク質とTUの比率は、50pg以下のHEKタンパク質/TUであってもよい。
【0722】
送達溶液中またはRIP製剤中に存在するRIPの効力は、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率を使用して決定することができる。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、100、200、300、400、500、1,000、4,000、10,000、12,500、または15,000以上のTU/p24タンパク質のngであってもよい。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、100~15,000、500~12,500、または1,000~10,000TU/p24(ng)であってもよい。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、100~15,000TU/p24(ng)であってもよい。一部の実施形態では、TUとp24タンパク質(ng単位)の比率は、1,000~10,000TU/p24(ng)であってもよい。
【0723】
一部の実施形態では、送達溶液またはRIP製剤は、それぞれ以下である、宿主細胞タンパク質/TUおよびTU/ng p24タンパク質の比率が含まれてもよい:1ngの宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;1ng宿主細胞タンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;または50pg宿主細胞タンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上。
【0724】
一部の実施形態では、宿主細胞は、HEK 293T細胞株を含む、HEK 293細胞株またはそのバリアントであってもよい。かかる実施形態では、送達溶液またはRIP製剤は、それぞれ以下である、HEKタンパク質/TUおよびTU/ng p24タンパク質の比率が含まれてもよい:1ngのHEKタンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;1ng HEKタンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および100TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および500TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および1,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および5,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および10,000TU/ng p24タンパク質以上;50pg HEKタンパク質/TU以下および12,500TU/ng p24タンパク質以上;または50pg HEKタンパク質/TU以下および15,000TU/ng p24タンパク質以上。
【0725】
一部の実施形態では、送達溶液および/またはRIP製剤中に存在するRIPの濃度は、少なくとも1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、2×108、5×108、または1×109TU/mlであってもよい。一部の実施形態では、RIPの濃度は、1×106~1×107、1×106~1×108、1×106~1×109TU/ml、1×107~1×109TU/ml、または1×108~1×109TU/mlであってもよい。
【0726】
一つの態様では、本明細書において、対象中のインビボ反応混合物が提供され、当該混合物は、以下を含む:
I)T細胞および/またはNK細胞;ならびに
II)複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;
b)リンパ増殖エレメント(LE)、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIPであって、
当該反応混合物は、当該対象内に位置する。
【0727】
別の態様では、本明細書において、対象中のインビボ反応混合物が提供され、当該混合物は、以下を含む:
I)T細胞および/またはNK細胞;ならびに
II)複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)リンパ増殖エレメント(LE)をコードする、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIPであって、
当該反応混合物は、当該対象内に位置する。
【0728】
別の態様では、本明細書において、対象中のインビボ反応混合物が提供され、当該混合物は、以下を含む:
I)T細胞および/またはNK細胞;ならびに
II)複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)リンパ増殖エレメント(LE)をコードするポリヌクレオチド、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIPであって、当該LEは、構造的に活性であり;ならびに
【0729】
当該反応混合物は、対象内に位置する。別の態様では、本明細書において、対象中のインビボ組成物が提供され、当該組成物は、以下を含む:
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)リンパ増殖エレメント、および/またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIPであって、
当該組成物は、対象内に位置する。
【0730】
別の態様では、本明細書において、対象中のインビボ組成物が提供され、当該混合物は、以下を含む:
複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子(RIP)であって:
a)RIPの膜に関連付けられた活性化エレメント、またはRIPの表面と関連付けられた、もしくは表面上にある活性化エレメント;および
b)リンパ増殖エレメントをコードする、およびキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド、を含むRIPであって、
当該組成物は、対象内に位置する。
【0731】
本明細書のインビボ反応混合物の態様、または本明細書のインビボ組成物の態様のいずれかの一部の実施形態において、LEは、構造的に活性である。本明細書のインビボ反応混合物の態様のいずれかの一部の実施形態では、RIPの少なくとも10、20、25、30、40、50、75、80、90、95、99、99.5、または100%は、例えば反応混合物のT細胞および/もしくはNK細胞、ならびに/または対象の別の場所のT細胞および/もしくはNK細胞などの、T細胞および/またはT細胞に結合されず、または別段により関連付けられていない。本明細書のインビボ反応混合物の態様のいずれかの一部の実施形態では、反応混合物中のT細胞および/もしくはNK細胞、ならびに/または対象中の別の場所のT細胞および/もしくはNK細胞の少なくとも10、20、25、30、40、50、75、80、90、95、99、99.5、または100%は、対象においてインビボで、反応混合物が最初に生じたときに、または反応混合物が形成されたときに、例えば、RIPが対象に送達されたときに、またはT細胞およびNK細胞がRIPの近傍にリクルートされた後、まだRIPに接触されていないときに、RIPのうちの一つ以上によって結合されることにより改変されない。一部の実施形態では、インビボ反応混合物は、10um~100mm、または10um~10mm、または100um~10mm、または1mm~10mm、または100um~1mmの領域を有する。一部の実施形態では、インビボ反応混合物は、RIP製剤に関して本明細書に提供される体積のいずれかと等しい体積、または10倍、5倍、2倍、1.5倍である体積を有する。一部の実施形態では、RIPを含有するインビボの組成物または製剤は、DMSOを含まない。一部の実施形態では、T細胞および/またはNK細胞は、対象に由来する。一部の実施形態では、反応混合物は、T細胞および/またはNK細胞を含むPBMCを含み、例示的な実施形態では、かかるPBMCは、エクスビボ単離を示す濃度であり、および/またはかかるPBMCは、エクスビボ単離された後に、対象に再投与される。
【0732】
RIP製剤、および/またはRIPを含む送達溶液を対象に投与することを含む本明細書の態様および実施形態のいずれかにおいて、本明細書の別段に開示されるように、持続的な集団が生成されてもよい。
【0733】
いくつかの実施形態では、細胞製剤は、枯渇した、もしくは実質的に枯渇した血液細胞を含むか、または標的抗原を発現する細胞の少なくとも50、60、75、80、90、95、または99%が枯渇している。いくつかの実施形態では、標的抗原は、CARによって認識される抗原である。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に提供される枯渇方法のいずれかを使用して枯渇される。
【0734】
一部の実施形態では、細胞製剤は、T細胞および/もしくはNK細胞中で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の転写単位を含むポリヌクレオチドを含む組換え核酸ベクター、例示的な実施形態では組み換えレトロウイルス粒子と関連付けられた、または当該ポリヌクレオチドで遺伝子改変された、第二の改変リンパ球、またはその集団を用いて製剤化され、当該一つ以上の転写単位は、第二のCARを含む第二のポリペプチドをコードし、当該CARは、第一のCARにより認識される腫瘍抗原とは別のエピトープを認識し、または第一のCARとは異なる腫瘍抗原を認識する。例示的な実施形態では、改変されたリンパ球は、改変されたT細胞および/またはNK細胞を含む。
【0735】
一部の実施形態では、本明細書において、細胞製剤のペア、組み換え核酸ベクターのペアの使用、例示的な実施形態では、かかる細胞製剤のペアを作製するための複製能力のない組み換えレトロウイルス粒子が提供され、この場合において細胞製剤のペアの各細胞製剤は、改変されたリンパ球の集団を用いて製剤化され、各集団は、異なる組換え核酸ベクターと関連付けられ、例示的な実施形態では異なる組換えレトロウイルス粒子と関連付けられ、各集団は、T細胞および/またはNK細胞で活性なプロモーターに作動可能に連結された一つ以上の転写単位を含む異なるポリヌクレオチドを含み、または当該ポリヌクレオチドで遺伝子改変され、この場合において各集団の一つ以上の転写単位は、異なるCARを含む異なるポリペプチドをコードし、当該CARは、同じ腫瘍抗原の異なるエピトープを認識し、それぞれ異なる腫瘍抗原を認識する。
【0736】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される送達溶液および/または細胞製剤は、本明細書に提供される凝集剤を含む。いくつかの実施形態では、送達溶液および/または細胞製剤は、例えば、ヒアルロン酸基質および/またはコラーゲン基質などの細胞基質を含む。そのような細胞製剤は、対象内で筋肉内または皮下に局在化されるエクスビボ細胞製剤またはインビボ細胞製剤であってもよい。例示的な実施形態では、ヒアルロン酸および/またはコラーゲン基質は、皮下に局在化され、いくつかの実施形態では、そのような基質は、対象に見られる天然の皮下基質である。本明細書に提供される腫瘍浸潤リンパ球および/または改変されたリンパ球などの外因性リンパ球を含むときに、本明細書に提供される他の細胞製剤成分を任意選択で含む、対象で皮下に見られるか、または局在化されるそのような基質は、人工リンパ節とみなされ得る。したがって、細胞製剤が凝集剤および/または細胞基質を含む場合、および/または基質が対象の本来の基質構成要素のみを含み、皮下送達された改変リンパ球の周囲に形成される場合の、細胞製剤を対象に皮下投与する方法が本明細書に提供され、当該方法は、人工リンパ節を形成する方法とも呼称され得、そのようにして得られた構造は、人工リンパ節とみなされ得る。一部の実施形態では、組成物は、例えば皮下に配置される、ヒアルロン酸基質および/またはコラーゲン基質などの人工基質中に、改変されたT細胞および/もしくはNK細胞、ならびに/またはTILを含む、
【0737】
いくつかの実施形態では、不要な細胞は、CAR、およびCARが結合する抗原の両方を発現するエピトープマスキング標的細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、エピトープマスキング標的細胞は、本明細書に提供される方法を使用して細胞を遺伝子改変した後に、それらを、本明細書に提供される方法で標的細胞がマスキングしない異なるエピトープまたは抗原に対するCARを発現するCAR-T細胞と接触させることによって、枯渇、除去、または殺傷され得る。これらの実施形態におけるそのような第一のCARおよび第二のCARは、CAR対と称され得る。いくつかの実施形態では、二つ以上の別個のCARを発現する細胞、および例示的な実施形態では、二つの細胞集団において発現される二つのCARを使用して、エピトープのうちの一つのみをマスキングするエピトープマスキング標的細胞を殺傷することができる。いくつかの実施形態では、二つの細胞集団は、別個に形質導入またはトランスフェクトされ、そのため、各集団は、第一のCARまたは第二のCARのいずれかを発現する。例示的な実施形態では、第一または第二のCARを発現するエピトープマスキング標的細胞は、それぞれ、第二および第一のCARが結合するエピトープをマスキングしない。いくつかの実施形態では、第一および第二のCARは、エピトープマスキング標的細胞上に発現された同じ抗原の異なるエピトープに結合し得る。他の実施形態では、第一および第二のCARは、本明細書の別の箇所に開示される抗原のいずれかを含む、同じエピトープマスキング標的細胞上に発現される異なる抗原に結合し得る。いくつかの実施形態では、第一および第二のCARは、CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD34、CD38、CD123、BCMA、TACI、またはTIM3から選択される異なる抗原の異なるエピトープ、または異なる抗原に結合し得る。いくつかの実施形態では、各々が同じ標的細胞上に発現された二つの異なるエピトープまたは抗原に向けられたCAR対のCARのうちの一つをコードする、別個のポリヌクレオチドを含有する二つの容器が、本明細書のキット内に提供される。他の実施形態では、一方のCARは、がん抗原に結合する細胞外リガンドまたは受容体であってもよく、他方は、抗体断片に由来するCARであってもよい。他の実施形態では、両方のCARが、異なるがん抗原に対する細胞外リガンドまたは受容体であってもよい。一例では、CARは、BCMAであり、Aprilは、TACIおよびBCMA受容体へのリガンド結合タンパク質である。さらなる例示的な実施形態では、第一のCARは、CD19に結合し得、第二のCARは、CD22に結合し得、その両方は、B細胞およびリンパ腫上に発現される。例示的な実施形態では、第一のCARを発現する改変された細胞集団および第二のCARを発現する改変された細胞集団は、別個に製剤化される。いくつかの実施形態では、別個の細胞製剤は、異なる部位で対象に導入されるか、または再導入して戻される。いくつかの実施形態では、別個の細胞製剤は、同一部位で対象に別個に導入されるか、または再導入して戻される。他の実施形態では、改変された細胞集団は、任意選択で、対象に導入されるか、または再導入して戻される一つの製剤に組み合わされる。細胞集団が組み合わされる例示的な実施形態では、細胞集団は、細胞が組換え核酸ベクターから洗い流される洗浄ステップの後まで組み合わされない。
【0738】
改変もしくは遺伝子改変されたT細胞またはNK細胞、またはそれら細胞を作製するためのキットもしくは組成物を含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、CARを発現する遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の増殖ならびに生存は、CARのASTRが結合する抗原を、例えば細胞製剤などの組成物に添加することによって、または例えば、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含む皮下環境や筋肉内環境などの環境に添加することによって、促進され得る。特定の例示的な実施形態では、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞は、CARをコードする核酸で遺伝子改変されているが、LEをコードする核酸では遺伝子改変されていない。いくつかの実施形態では、抗原は、本明細書に提供される細胞製剤および方法において、改変および/または遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞を含むか、またはそれらと同時投与される細胞製剤に添加され得る。一部の実施形態では、抗原は、タンパク質抗原である。一部の実施形態では、抗原は、タンパク質抗原をコードするmRNAである。一部の実施形態では、抗原は、可溶性であってもよい。いくつかの実施形態では、抗原は、ヒドロゲルなどの人工基質の表面上に固定化され得る。例示的な実施形態では、抗原は、標的細胞の表面上に発現され得る。いくつかの実施形態では、そのような標的細胞は、全血中に多数存在し、添加される必要なく、細胞製剤中に自然に存在する。いくつかの実施形態では、細胞製剤中に自然に存在する全血、単離されたTNC、および単離されたPBMC中に存在するB細胞は、CD19またはCD22(両方とも、B細胞上に発現される)に向けられたCARを発現するT細胞および/またはNK細胞のための標的細胞であってもよい。他の実施形態では、そのような標的細胞は、全血中に存在しないか、または全血中に多数存在せず、外から本明細書に提供される細胞製剤に添加される必要がある。いくつかの実施形態では、標的細胞は、当該技術分野で既知の方法を使用して、腫瘍試料からなど、対象から単離または濃縮され得る。他の実施形態では、対象由来の細胞は、標的抗原を発現するように改変されている。例示的な実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、抗原を含有するタンパク質のすべてまたは一部分を含み得る。さらなる例示的な実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、抗原を含むタンパク質の細胞外ドメインのすべてまたは一部分を含み得る。いくつかの実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、それを細胞表面に固定する膜貫通ドメインとの融合であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書の別の箇所に開示される膜貫通ドメインのいずれかが使用され得る。いくつかの実施形態では、標的細胞上に発現される抗原は、ストークドメインとの融合であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書の別の箇所に開示されるストークドメインのいずれかが使用され得る。例示的な実施形態では、抗原は、CD8ストークおよび膜貫通ドメイン(配列番号24)との融合であってもよい。
【0739】
いくつかの実施形態では、第一の細胞混合物中の細胞、例示的な実施形態では、対象に由来する第一の細胞混合物中の細胞は、抗原をコードする組換え核酸ベクターで改変され、対象に由来する別の第二の細胞混合物中の細胞、および例示的な実施形態では、同じ対象に由来する第二の混合物中の細胞は、抗原に結合するCARを発現するように改変されている。さらなる例示的な実施形態では、細胞混合物の一方または両方は、全血、単離されたTNC、または単離されたPBMCである。例示的な実施形態では、第一の細胞混合物は、Her2の細胞外ドメインおよびPDGFの膜貫通ドメインの融合タンパク質をコードする組換え核酸ベクターで改変され得、第二の細胞混合物は、HER2に向けられたCARをコードする組換え核酸ベクターで改変され得る。次いで、細胞は、送達溶液中に製剤化されて、細胞製剤を形成することができる。したがって、一つの態様では、そのような細胞混合物のペア、または細胞製剤のペアが本明細書に提供され、各々が、細胞混合物または細胞製剤のうちの一つを含み、それらは典型的には、細胞製剤を保持するために本明細書に提供される細胞バッグなどの容器のいずれかにおいて物理的に分離されている。任意選択で、細胞製剤は、異なるCARエフェクター細胞対標的細胞の比で対象に投与される。いくつかの実施形態では、製剤化または投与時のエフェクター対標的比は、(約)10:1、(約)9:1、(約)8:1、(約)7:1、(約)6:1、(約)5:1、(約)4:1、(約)3:1、(約)2:1、(約)1:1、(約)1:2、(約)1:3、(約)1:5、(約)1:6、(約)1:7、(約)1:8、(約)1:9、または(約)1:10である。例示的な実施形態では、抗原は、改変されたTおよび/またはNK細胞と皮下または筋肉内に同時投与される。
【0740】
改変もしくは遺伝子改変されたT細胞またはNK細胞、またはT細胞および/もしくはNK細胞を遺伝子改変するための方法、組成物、ならびにキット含む本明細書の態様のいずれかの一部の実施形態では、CARを発現する、遺伝子改変されたT細胞および/またはNK細胞の増殖と生存は、その同族抗原に結合するCAR分子の非存在下で、遺伝子改変されたT細胞またはNK細胞内でCAR分子を架橋することによって促進され得る。したがって、いくつかの実施形態では、T細胞またはNK細胞は、抗体によって結合され、かつ同じT細胞またはNK細胞上の第二のCARのエピトープタグに架橋されたエピトープタグを含み得る。いくつかの実施形態では、CARの細胞外ドメインは、エピトープタグを含み得る。例示的な実施形態では、エピトープタグは、ストークドメイン内にあってもよい。いくつかの実施形態では、エピトープタグは、His5(HHHHH、配列番号76)、HisX6(HHHHHH、配列番号77)、c-myc(EQKLISEEDL、配列番号75)、Flag(DYKDDDDK、配列番号74)、Strepタグ(WSHPQFEK、配列番号78)、HAタグ(YPYDVPDYA、配列番号73)、RYIRS(配列番号79)、Phe-His-His-Thr(配列番号80)、またはWEAAAREACCRECCARA(配列番号81)であってもよい。例示的な実施形態では、エピトープタグは、HisX6タグ(配列番号77)であってもよい。一部の実施形態では、CARは、エピトープタグに結合する可溶性の抗体または抗体模倣体を添加することにより、または例示的な実施形態では、本明細書においてユニバーサルフィーダー細胞とも呼称される、その表面上にエピトープタグに結合する抗体または抗体模倣体を発現する細胞を添加することによって、架橋され、および活性化され得る。一部の実施形態では、同じユニバーサルフィーダー細胞、例えば、抗HisX6抗体を発現するユニバーサルフィーダー細胞を、異なる抗原に結合するが、例えばHisX6と同じエピトープタグを含むCARを発現する細胞とともに使用してもよい。一部の実施形態では、CARは、エピトープタグに結合する抗体または抗体模倣体を一つ以上コードするmRNAを添加することによって、架橋され、活性化され得る。一部の実施形態では、mRNAは、可溶性、膜結合型、もしくは可溶性であり、膜結合型の両方である抗体または抗体模倣体をコードしてもよい。
【0741】
以下の限定されない例は、例示的な実施形態を純粋に例示する目的で提供され、本開示の範囲および趣旨を決して制限するものではない。さらに、本明細書に開示または請求される任意の発明は、本明細書に記載される任意の一つ以上の特徴のすべての変形、組み合わせ、および順列を包含することが理解されるべきである。特定の除外が本明細書に明示的に記載されていない場合でも、任意の一つ以上の特徴が特許請求の範囲から明示的に除外され得る。また、ある方法で使用するための試薬の開示は、本明細書に開示される特定の方法、または当業者が別様に理解しない限り、当該技術分野において知られている他の方法に従うその試薬の使用を含むその方法と同意である(またそれを支援する)ことが理解されるべきである。さらに、本明細書および/または特許請求の範囲がある方法を開示する場合、当業者が別様に理解しない限り、本明細書に開示される試薬のいずれか一つ以上がその方法で使用され得る。
【実施例1】
【0742】
実施例1.形質導入実験のための材料および方法。
本実施例は、本明細書の後続の実施例に開示される実験で使用される材料および方法を提供する。
【0743】
一過性トランスフェクションによる組換えレンチウイルス粒子の産生。
【0744】
HEK 293T細胞(Lenti-X(商標)293T、Clontech)を、Freestyle(商標)293 Expression Medium(動物由来成分を含まない、既知組成、およびタンパク質を含まない)(ThermoFisher Scientific)中の連続増大によって既知組成懸濁培養に適合し、続いて、96ウェルプレート中での連続希釈による単一細胞クローニングを繰り返し、F1XT細胞と名付けられた細胞のマスターおよびワーキング細胞バンクを生成し、別段の記載がない限り、本明細書の実験のためのパッケージング細胞として使用した。
【0745】
5ベクターパッケージングシステムを使用して、レンチウイルス粒子を生成した。システムは、(i)gag/pol、(ii)rev、および(iii)VSV-Gなどのシュードタイピングエレメントをコードする3つのパッケージングプラスミドを含んでいた。このパッケージング系の第4のベクターは、目的の1つ以上の遺伝子をコードする第三世代レンチウイルス発現ベクター(自己不活化をもたらす3’LTRの欠失を含有する)であるゲノムプラスミドであった。第5のベクターは、T細胞活性化エレメントの抗CD3-scFvFc-GPIをコードした。トランスフェクションについては、使用した全DNA(1μg/mLの培養体積)は、別段の記載がない限り、次のモル比の5つのプラスミドの混合物であった:1×gag/pol含有プラスミド、1×Rev含有プラスミド、1×VSV-G含有プラスミド、2×ゲノムプラスミド、および1×第5のベクター。
【0746】
小規模(3mL)のレンチウイルス産生について、プラスミドDNAを、Freestyle(商標)293 Expression Medium中のパッケージング細胞を含有する培養液30mL毎に、いずれかの1.5mLのGibco(商標)Opti-MEM(商標)成長培地中に溶解した。ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences)(弱酸に溶解)を、1.5mLのGibco(商標)Opti-MEM(商標)で2μg/mlに希釈した。PEIおよびDNAの3mL混合物を、2ugのPEI対1ugのDNAの比で二つの調製された試薬を組み合わせることによって作製した。室温で5分間インキュベートした後、二つの溶液を完全に混合し、室温でさらに20分間インキュベートした。125mlの三角フラスコ内で、最終体積(3mL)を1×106個の細胞/mlで懸濁状態の30mLのパッケージング細胞に添加した。次いで、細胞を、トランスフェクションのために125rpmおよび8%CO2で回転させながら、37℃で72時間インキュベートした。大規模のレンチウイルス産生(6.6~10L)について、試薬の体積および比は、比例的に増加して、細胞が1×106個の細胞/mlに達したときの最終反応器への接種およびトランスフェクション材料の添加まで、サイズを増大させた三角フラスコを介して増大したF1XT細胞のより大型の反応器におけるトランスフェクションおよび発酵を支持した。これらの方法のすべてによって作製されたレトロウイルス粒子は、非ヒト由来動物タンパク質を含まない。
【0747】
72時間後、小規模のレンチウイルス産生の場合、上清を回収し、1,200gで10分間遠心分離することによって清澄化した。清澄化された上清を、新しい容器に滅菌濾過した。ポリエチレングリコール(PEG)を添加し、続いて遠心分離することによって、実質的に精製されたウイルスをこれらの清澄化された上清から得た。PEG沈殿について、1/4体積のPEG(Takara Lenti-X(商標)Concentrator)を、清澄化された上清に添加し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、混合物を1600gで1時間(50mLのコニカルチューブについて)または1800gで1.5時間(500mLのコニカルチューブについて)遠心分離した。上清を廃棄し、レンチウイルス粒子ペレットを1:100の初期体積のパッケージング細胞培養液中に再懸濁した。
【0748】
深層濾過によるより大規模の精製について、トランスフェクション溶液の添加の72時間後に培養培地を回収し、蠕動ポンプを使用したSartorius(#5445306G9もしくは#5445306G8)またはMillipore(#MCE50027H1)深層フィルターカートリッジを使用した深層濾過によって清澄化した。次いで、清澄化された培地を、2.0+/-0.5PSIのTMPを有するKrossFlow TFF System(Spectrum)上の500Kd mPES Hollow Fiber TFF Module(Spectrum)を使用して高濃度化した。MgCl2を2mMの最終体積まで添加した後、ベンゾナーゼ(EMD Millipore)を50U/mLまで添加して、残留DNAを断片化した。次いで、濃縮物を再循環させ、続いて、10体積のPBS 4%ラクトースを使用して透析濾過した。次いで、実質的に精製され、高濃度化され、かつ製剤化されたウイルスを滅菌濾過し、使用のために凍結させた。他の場合において、ベンゾナーゼを最初に、トランスフェクションの24時間後に培養培地に添加し、深層濾過後の材料を、高濃度化されたトリスNaClで50mMのトリス、300mMのNaCl、pH8.0の最終まで希釈した。Mustang-Q樹脂(Pall)上に装填し、2M NaClで溶出した後、ウイルスをPBSラクトースで希釈し、上記に従ってTFFによって処理した。
【0749】
レンチウイルス粒子を、Jurkat細胞への形質導入、ならびにLenti-X(商標)qRT-PCR Titration Kit(#631235)またはTakara製のp24アッセイELISAキット(Lenti-X(商標)p24 Rapid Titer Kit#632200)を使用したレンチウイルスゲノムのFACSまたはqPCRによる導入遺伝子発現の分析によって、導入遺伝子発現の段階希釈および分析によって力価測定した。コピー数を、レンチウイルスおよびヒトRNAsePの標的配列を含有するプラスミド標準に対して較正した。
実施例で使用されるゲノムプラスミド。
【0750】
以下のレンチウイルスゲノムベクターは、示されるように目的の遺伝子および特徴をコードする:
【0751】
GCAR-19は、CD19 CARと、FLAGタグ付け抗CD19scFv、CD8ストーク、およびCD3zの膜貫通領域、続いてT2A、およびeTag付けリンパ増殖エレメントから構成されるポリペプチドのリンパ増殖エレメント(抗CD19:CD8:CD3z-T2A-LE)をコードする。
【0752】
実施例で使用したマウスはすべて、動物実験委員会が承認したプロトコルに従って取り扱った。
【0753】
実施例2.ヒト化リンパ系が備わった宿主に直接、実質的に純粋な組み換えレトロウイルス粒子を投与することによって、効率的なT細胞の形質導入とインビボでのエフェクター機能が得られる。
本実施例では、実質的に純粋な組換えレトロウイルス粒子(例えば、RIP製剤)を、いくつかのリンパ系が備わったマウスモデルに直接注入した。組換えレトロウイルス粒子はVSV-Gでシュードタイピングされ、その表面上に活性化エレメントを呈し、CD19 CARとリンパ増殖エレメントをコードした。組換えレトロウイルス粒子(RIP)をリンパ管周囲投与した後、CAR形質導入T細胞の存在およびCAR標的細胞の存在についてマウスを評価した。
【0754】
VSV-Gでシュードタイピングされ、T細胞活性化エレメントを提示する、GCAR-19をコードする組み換えレトロウイルス粒子であるUCHT1-scFvFc-GPI(GCAR-19GU)(RIP)は、10リットルのスケールを使用し、5プラスミドプロトコルを使用してF1XT細胞をトランスフェクトすることによって産生され、深層濾過、TFF、ベンゾナーゼ処理、透析濾過の組み合わせにより精製され、製剤化されて、実施例1に記載されるように非ヒト動物タンパク質を含まない実質的に純粋なウイルス粒子が作製された。GCAR-19組換えレトロウイルス粒子(RIP)を製剤化し(RIP製剤)、4%ラクトースPBS中で凍結され、qPCRエンドポイント力価アッセイまたはフローサイトメトリーに基づき、2~5×107TU/mlの効力を示すロットを得た。
【0755】
この実施例では、ヒト化リンパ系が備わった二つの異なるモデル宿主を使用した。一つのモデルは、NSG-MHC1/2-DKO(NSG-(KbDb)null(IA)null PBMCヒト化マウスであった。これらのマウスは、MHCクラス1の欠損とMHCクラス2の欠損を有する高度に免疫不全状態のNSGマウスの特性を併せ持ち、尾静脈中に5.0x107細胞/mLのヒトPBMCのPBS-HSA溶液を200μl(1000万個のPBMC)、IV注射することによりヒト免疫系が再構築されている。他方のモデルは、NSG-SGM3 CD34ヒト化マウスであった。これらのマウスは、ヒトCD34造血幹細胞の増殖と免疫細胞への分化を促進するSCF、GM-CSF、およびIL-3のトランスジェニック過剰発現を伴う、高度に免疫不全状態のNSGマウスの特性を併せ持ち、これらマウスの全身照射の後に、当該造血幹細胞が移植された。NSG-MHC1/2-DKO(NSG-(KbDb)null(IA)null PBMCヒト化マウスは、ドナー由来のTCRプロファイルを有する細胞を移植されているが、移植片対宿主病に抵抗性である。一方でCD34モデルは、NSGマウスにおいてCD34幹細胞から分化したヒトT細胞を、インビボで、ヒトおよびマウスのMHCの混合に対して改変することが可能である。
【0756】
7週齢のNSG-MHC1/2-DKO PBMCヒト化マウス(n=5)および7週齢のNSG-SGM3 CD34ヒト化マウス(n=5)に、2x107 TU(350μl)のGCAR-19GUを腹腔内注射した。投与から5、12、18(または19)、および27(または28)日後に各マウスから血液を採取した。PBMCを、FLAG、hCD3、およびhCD20について染色し、FACSによって分析した。
【0757】
NSG-SGM CD34ヒト化マウスの末梢血でCAR陽性細胞の拡張が観察された。末梢血中のCAR-T細胞の最大数は、投与から19日後に見られた。PBMCの11.4%が、hCD3+CAR+CAR-T細胞であった代表的なFACSプロットを
図1に示す。NSG-SGM3 CD34ヒト化モデルは、高レベルのヒトB細胞を含有した。血液1μl当たりのB細胞数(CD20発現により判定)を
図2に示す。PBSで処置された対照マウスモックは、28日間の試験期間を通じて末梢血中に高レベルのB細胞を含有したが、IP注射によってGCAR-19GUを処置されたマウスは、早期で持続的なCD20陽性B細胞の欠乏を呈した。これらのデータから、GCAR-19GUの注射によって、リンパ系が備わった宿主においてインビボでのヒトCD3陽性T細胞の改変が行われ、CD3陽性CAR陽性の細胞が生成されたことが示される。これらのCAR-T細胞は機能的に活性であり、そのCD19発現B細胞標的を殺傷することができた。
【0758】
CAR陽性細胞の拡張は、NSG-MHC1/2-DKO(NSG-(K
bD
b)
null(IA)
null PBMCヒト化マウスの末梢血でも観察された。当該マウスは最初にヒトPBMCを投与され、続いてGCAR19GU RIPを含む製剤を注射されていた。このモデルでは末梢血中のB細胞の絶対数は少なかったが、CD3陽性CAR陽性の細胞の効果的な拡張がフローサイトメトリーによって観察された。PBMCの5.1%が、hCD3+CAR+CAR-T細胞であった代表的なFACSプロットを
図3に示す。
【0759】
本実施例は、活性化エレメントをその表面上に提示し、CARとリンパ増殖エレメントをコードするレンチウイルス粒子(例えば、RIP製剤中のRIP)が、リンパ管周囲送達によってリンパ系が備わった宿主に直接投与されたとき、インビボでT細胞を形質導入/改変し得ること、およびインビボで機能的に活性なCAR-T細胞を生成し得ることを実証する。これらの結果から、本明細書に開示されるベクター(RIP)、ならびにRIPを含む製剤および/または送達溶液、例えばRIP製剤は、エクスビボでの細胞製造とリンパ枯渇的化学療法を行う必要なく、患者への直接投与によってCAR-T療法に使用され得ることが示される。開示された実施形態、実施例、および実験は、開示の範囲を限定すること、または以下の実験が実施されるすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするための努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。記載されている方法の変形は、実験が例示することを意図している基本的な態様を変更することなく行われ得ることが理解されるべきである。
【0760】
開示された実施形態、実施例、および実験は、開示の範囲を限定すること、または以下の実験が実施されるすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするための努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。記載されている方法の変形は、実験が例示することを意図している基本的な態様を変更することなく行われ得ることが理解されるべきである。
【0761】
当業者は、本開示の範囲および趣旨内において多くの修正および他の実施形態を考案することができる。実際に、記載された材料、方法、図面、実験、実施例、および実施形態の変形は、本開示の基本的な態様を変更することなく、当業者によって行われ得る。開示された実施形態のいずれも、他の開示された実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る。
【0762】
いくつかの例において、いくつかの概念が特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更が行われ得ることを理解している。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で解釈されるべきであり、そのようなすべての修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【配列表】
【国際調査報告】