(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】構成部品の光誘起移動用の多層解放スタック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240305BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20240305BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20240305BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L21/52 C
B29C65/48
H01L33/48
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553367
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 NL2022050114
(87)【国際公開番号】W WO2022186689
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロプ・ヤーコプ・ヘンドリクス
【テーマコード(参考)】
4F211
5F047
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4F211AA40
5F047AA17
5F047FA07
5F047FA21
5F047FA57
5F142BA32
5F142FA32
5F142GA01
5G435BB04
5G435KK05
(57)【要約】
ドナー基板(10)からアクセプタ基板(20)への構成部品(15)の光誘起移動のための方法およびシステム。ドナー基板(10)は、アクセプタ基板(20)に面する構成部品(15)を担持するように構成された透明担体(11)、および解放スタック(S)を備えている。解放スタック(S)は、光吸収層(12)、溶融層(13)、および接着層(14)を備えている。光吸収層(12)は、溶融層(13)に伝導される熱を生じさせる光ビーム(L)を吸収するための比較的高い吸収係数を有する。光吸収層(12)は、溶融層(13)が溶融されている間に光吸収層(12)が固体に留まることができるように、比較的高い融点(Tm12)を有する。接着層(14)は、溶融層(13)が固体であり、溶融層(13)が溶融される(M)場合に接着を解放する間に、溶融層(13)に構成部品(15)を接着させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー基板(10)からアクセプタ基板(20)への構成部品(15)の光誘起移動のための方法であって、
前記ドナー基板(10)は、
前記アクセプタ基板(20)に面する前記構成部品(15)を担持するように構成された透明担体(11)と、
前記透明担体(11)を通した光ビーム(L)による解放スタック(S)の照明の後に、前記アクセプタ基板(20)の上に前記ドナー基板(10)から前記構成部品(15)の1つまたは複数を解放するために、前記透明担体(11)と前記構成部品(15)との間に配置された解放スタック(S)とを備え、
前記解放スタック(S)は、
融点(Tm13)を有する溶融層(13)と、
前記透明担体(11)と前記溶融層(13)との間に配置された光吸収層(12)であって、前記光ビーム(L)を吸収することにより前記光吸収層(12)を加熱させるための吸収係数を有し、その熱を前記溶融層(13)に伝導することにより前記溶融層(13)の温度をその融点(Tm13)の上まで上昇させるために前記溶融層(13)と熱接触し、前記溶融層(13)が前記光吸収層(12)から伝えられた前記熱によって溶融されている間に前記光吸収層(12)が固体のままであることができるように前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)より高い融点(Tm12)を有する、光吸収層(12)と、
前記溶融層(13)が固体である間に前記溶融層(13)に前記構成部品(15)を接着し、前記溶融層(13)が溶融される(M)場合に接着を解放する接着層(14)とを備え、前記方法は、
それぞれの構成部品(15)を保持する前記解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)の領域を、前記光吸収層(12)のそれぞれの部分を加熱するように前記透明担体(11)を通して光ビーム(L)で照らすステップであって、前記熱が前記解放スタック(S)の隣り合う溶融層(13)に伝導され、それにより、前記光吸収層(12)の前記それぞれの部分が固体である間に前記隣り合う溶融層(13)を溶融させ、前記隣り合う溶融層(13)の前記溶融は、前記隣り合う溶融層(13)と、前記隣り合う溶融層(13)に前記それぞれの構成部品(15)を接着させる前記解放スタック(S)の前記接着層(14)のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせ、前記接着の損失は、前記それぞれの構成部品(15)の解放および移動を生じさせる、ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記溶融層(13)は第1の金属層を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光吸収層(12)は第2の金属層を備えている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接着層(14)はポリマー系接着剤を備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光吸収層(12)は、単位面積当たりの表面エネルギーが前記接着層(14)より高く、選択した構成部品(15)の前記解放スタック(S)内での溶融層(13)の溶融の際、前記溶融層(13)は前記解放スタック(S)の前記光吸収層(12)に主にくっつき、一方、前記選択した構成部品(15)の前記接着層(14)は主に前記選択した構成部品(15)にくっつき、前記接着層(14)は前記選択した構成部品(15)と共に前記アクセプタ基板(20)に移動され、一方、前記溶融層(13)は主に前記ドナー基板(10)上に前記解放スタック(S)の一部と共に留まっており、前記移動された接着層(14)は、移動後に前記選択した構成部品(15)から取り除かれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記解放スタック(S)を照らす前記光ビーム(L)は、前記溶融層(13)の温度(T13)をその融点(Tm13)より上まで上昇させるが、その蒸発温度(Te13)未満に留めさせるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接着層(14)は、前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)の上である、または前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)未満で300ケルビン度より高い崩壊温度(Td14)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着層(14)、前記溶融層(13)、および前記光吸収層(12)の少なくとも1つが、前記構成部品(15)どうしの間で分割される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
それぞれの構成部品(15)を保持する前記溶融層(13)の領域は、少なくとも2の倍率だけ前記それぞれの構成部品の領域より小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
マスク(30)は、前記ドナー基板(10)と位置合わせされ、前記マスク(30)は、前記ドナー基板(10)上の前記構成部品(15)のサブセットと位置合わせされた一式のマスクウィンドウを備え、一式の光スポットは、それぞれの構成部品(15)の解放のために前記一式のマスクウィンドウを順にまたは同時に照らすために使用され、それぞれの光スポットは照らされているそれぞれのマスクウィンドウより大きく、光スポットFWHM直径は少なくとも2の倍率だけ前記マスクウィンドウの幅より大きい、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記構成部品が特定の順に従って前記ドナー基板(10)から解放され、
解放のために選択された前記順の各構成部品(15)は、
全ての側に4つの直接隣り合う隣接構成部品を有する、
いずれの側にも直接隣り合う隣接構成部品を有さない、または
第1のセットの2つの対向する側に2つの直接隣り合う隣接構成部品を有し、第2のセットの対向する側に直接隣り合う構成部品を有さない、
のいずれかである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光吸収層(12)は、前記解放スタック(S)を照らす前記光ビーム(L)の少なくとも50パーセントを吸収するように構成され、前記光ビーム(L)は、前記光吸収層(12)に直接隣り合う領域を照らすことなく、選択した構成部品(15)を保持する選択した解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)のサブ領域を排他的に照らし、それにより、隣り合う構成部品を前記ドナー基板(10)に取り付けられたままにしながら、前記選択した構成部品(15)を排他的に解放するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)は600ケルビン度未満であり、前記光吸収層(12)の前記融点(Tm12)は、少なくとも100ケルビン度だけ前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)より高い、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
透明担体(11)を通した光ビーム(L)による解放スタック(S)の照明の後に、ドナー基板(10)から構成部品(15)の1つまたは複数を解放するために、前記透明担体(11)と前記構成部品(15)との間に配置された前記解放スタック(S)での光誘起移動のために、前記構成部品(15)を担持する前記透明担体(11)を備えたドナー基板(10)であって、
前記解放スタック(S)は、
比較的低い融点(Tm13)を有する溶融層(13)と、
前記透明担体(11)と前記溶融層(13)との間に配置された光吸収層(12)であって、100~2000nmの間の波長範囲および10ナノ秒未満のパルス長さで光ビーム(L)の少なくとも50パーセントを吸収することにより前記光吸収層(12)を加熱させるための比較的高い吸収係数を有し、その熱を前記溶融層(13)に伝導することにより前記溶融層(13)の温度をその融点(Tm13)の上まで上昇させるために前記溶融層(13)と熱接触し、前記溶融層(13)が前記光吸収層(12)から伝えられた前記熱によって溶融されている間に前記光吸収層(12)が固体のままであることができるように前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)より高い比較的高い融点(Tm12)を有する、光吸収層(12)と、
前記溶融層(13)が固体である間に前記溶融層(13)に前記構成部品(15)を接着し、前記溶融層(13)が溶融される(M)場合に接着を解放する接着層(14)とを備えている、ドナー基板(10)。
【請求項15】
構成部品(15)の光誘起移動のためのシステムであって、
請求項14に記載のドナー基板(10)であって、透明担体(11)および解放スタック(S)を備え、前記解放スタック(S)は、光吸収層(12)、溶融層(13)、および前記構成部品(15)を保持する接着層(14)を有し、前記接着層(14)は、前記構成部品(15)どうしの間で分割される、請求項14に記載のドナー基板(10)と、
アクセプタ基板(20)と、
それぞれの構成部品(15)を保持する前記解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)の領域を、前記光吸収層(12)のそれぞれの部分を加熱するように前記透明担体(11)を通して照らす光ビーム(L)を発生させるように構成されたコントローラおよび光源であって、熱が前記解放スタック(S)の隣り合う溶融層(13)に伝導され、それにより、前記光吸収層(12)の前記それぞれの部分が固体である間に前記隣り合う溶融層(13)を溶融させ、前記隣り合う溶融層(13)の溶融は、隣り合う溶融層(13)と、前記隣り合う溶融層(13)に前記それぞれの構成部品(15)を接着させる前記解放スタック(S)の前記接着層(14)のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせ、前記接着の損失は、前記それぞれの構成部品(15)の解放および移動を生じさせる、コントローラおよび光源とを備えた、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドナー基板からアクセプタ基板へのチップなどの構成部品の光誘起移動のための方法およびシステムに関する。本開示はまた、このような方法またはシステムでの使用のためのドナー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
小さな構成部品の制御した移動は、例えばμLEDの配置の際に様々な応用例を有する。光誘起移動は、ドナー基板からアクセプタ基板に構成部品を選択的に移動するために使用することができる。移動を容易にするために、ドナー基板と構成部品との間に解放スタックを提供することができる。1つの技術では、構成部品は担体基板の上に糊付けされ、急速なブリスタ形成により担体から解放される。別の技術では、光吸収層を備えた平らなガラス板は糊でコーティングされている。構成部品は、光吸収層が光パルスによって急速に熱くなった場合に、糊の分解または溶融により解放することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
構成部品の制御した移動および配置におけるさらなる改良の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示のいくつかの態様は、ドナー基板からアクセプタ基板への構成部品の光誘起移動のための方法およびシステムに関する。他のまたは別の態様は、このような方法またはシステムでの使用のためのドナー基板に関する。典型的には、透明担体が、アクセプタ基板に面する構成部品を担持するように構成され、解放スタックが、透明担体を通した光ビームによる解放スタックの照明の後に、ドナー基板からアクセプタ基板の上へ構成部品の1つまたは複数を解放するために、透明担体と構成部品との間に配置されている。
【0005】
本明細書に記載されるように、ドナー基板の解放スタックは、光吸収層、溶融層、および接着層を備えている。光吸収層は、透明担体と溶融層との間に配置されている。光吸収層に比較的高い吸収係数を提供することによって、光ビームが効率的に吸収され、それによって、光吸収層を加熱させることができる。加熱された光吸収層を溶融層と熱接触して提供することによって、吸収された熱は、溶融層の温度がその融点より上に上昇することができるように、溶融層に伝えることができる。溶融層の材料に比較的低い融点を提供することによって、この材料は容易に溶融することができる。光吸収層に比較的高い融点(少なくとも溶融層の融点より高い)を提供することによって、光吸収層は、溶融層が光吸収層から伝えられる熱によって溶融されている間に固体に留まることができる。構成部品と溶融層との間に接着層を提供することによって、溶融層が固体である間に、構成部品を溶融層に容易に接着することができる。さらに、溶融層が溶融された場合に、この接着は解放することができる。構成部品間で少なくとも接着層を分割することによって、構成部品をより容易に移動することができる。例えば、接着層の周辺部に接続させる、例えば、隣り合う(非移動)構成部品または接着層の他の部分を保持することなく、接着層の一部を構成部品と共に解放させることができる場合に、移動中の剪断力を緩和することができる。また、溶融層および/または光吸収層は、別の利点、例えば、熱のさらなる分離および/または隔離をそれぞれのスタックに提供するように分割することができる。分割は特定の利点を有するが、構成部品は原則として、分割を必要とすることなく解放され得る。例えば、構成部品を保持する(連続)接着層の一部は、比較的脆く、構成部品と光吸収層との間の溶融層が局所的に溶融され、接着がなくなった場合に、周辺の接着層から簡単に分離し得る。例えば、構成部品は、重力などの様々な力によって、および/または任意の気体発生での溶融材料の乾燥または堆積によって、担体から引っ張る、押す、あるいは解放することができる。
【0006】
典型的には、(例えば、それぞれの構成部品を保持する解放スタックの一部を形成する)光吸収層の領域は、透明担体を通して光ビームで照らされる。これは、光吸収層のそれぞれの部分の加熱につながる可能性がある。熱はその後、解放スタックの隣り合う溶融層に伝えることができ、それにより、好ましくは、光吸収層のそれぞれの部分が実質的に固体である間に、隣り合う隣接溶融層を少なくとも部分的に溶融する。したがって、隣り合う溶融層の少なくとも部分的な溶融は、隣り合う溶融層と、(それぞれの構成部品を隣り合う溶融層に接着する)解放スタックの接着層のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせる可能性がある。したがって、接着の損失は、それぞれの構成部品の解放および移動を生じさせる可能性がある。例えば、1つまたは複数の光源および/またはマスクは、本明細書に記載されるように、それぞれの構成部品を移動するために1つまたは複数の光ビームを発生させるように構成および制御されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、低気体発生レーザ解放スタックは、アクセプタ基板に向けて担体から構成部品を迅速に移動するために使用される。低圧積層により、構成部品は(最小限の衝撃波で、または衝撃波なしで)低速で移動することができ、周りに乱流空気(気体)がより少ないので、構成部品は移動されている間に回転するのが実質的に防止され得る。一実施形態では、スタックは、熱安定性光吸収層、溶融層および接着層を備えている、または基本的にこれらからなる。溶融層は、比較的低い融点を有する金属層であることが好ましい。光吸収はまた、金属層であるが比較的高い融点を有することがより好ましい。接着層は基本的に、金属溶融層の融点より高い、および/またはこれに密接に一致された分解温度を有するポリマー接着剤からなることが最も好ましい。
【0008】
いくつかの実施形態では、レーザビームまたは他の光源は、下地金属層が溶融し始めるように、急速に光吸収層を十分加熱する。溶融状態では、金属溶融層に構成部品を結合させるポリマー接着剤は、例えば、乾燥硬化により解放し得る。液体金属の表面張力は典型的には固体ポリマーの表面エネルギーよりはるかに高いので、2つの層の間の接着は解放することができる。これに対して、固体金属層の表面エネルギーは典型的に極めて高いので、金属溶融層は金属光吸収層にくっつく可能性がある。例えば、ポリマー部のみが構成部品と共に移動される。移動後、ポリマー層は、例えば、湿式または乾式エッチングまたは熱分解により、構成部品から取り除くことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、構成部品の移動速度を増加させるため、ポリマー接着剤を、溶融層の融点で僅かに分解するように調整することができる。溶融中、接着剤と溶融層との間の接触領域は、例えば、溶融金属の高い表面張力により減少させることができる。したがって、材料は丸まる傾向があり得る。SU-8などのポリマー材料の蒸発(分解)温度が低い加熱率で約350℃であるとしても、極めて高い加熱率では、ポリマーの分解ははるかに高い温度で起こる傾向がある。ポリマーが金属(例えば、Sn+SU8、Zn+ポリイミド)の溶融温度などのより高い分解温度を有するポリマー/金属組合せを選択することにより、あらゆる気体発生なしで構成部品を解放することが可能になる。例えば、重力または静電気力を使用して、担体から構成部品を解放し、アクセプタ基板に向けて移動することができる。典型的には、金属溶融材料の沸点(蒸発温度)未満であることが好ましい。あるいは、蒸発した金属は、より冷たい周辺表面上に追加の圧力および堆積物を生じさせ得る。
【0010】
気体発生の量を制御するのに加えて、金属溶融層が同時に溶融するのを保証するために、光吸収層をできるだけ均質に加熱することも好ましい。いくつかの実施形態では、1つの構成部品の上でスタックを特に加熱し、あらゆる隣り合う構成部品に干渉しない平らな上部ビームプロファイルが使用される。基板廃棄物の量を減少させるために構成部品間の極めて狭いダイシングストリート(例えば、≦5μm)を有することも好ましいが、単一の構成部品を選択的に加熱することは次第に難しくなることがある。特に移動速度が増加する場合、レーザ上のタイミングジッタは、制御するのがより難しいことがある。したがって、構成部品に正確に位置合わせされたマスクを使用し、正しい寸法にレーザパルスをトリミングすることが好ましい。
【0011】
典型的には構成部品の僅かな部分のみが(例えば、μLEDディスプレイに対して)移動される必要があるので、レーザパルスは構成部品より(はるかに)大きい可能性がある。例えば、マスクと組み合わせた比較的大きい平らな上部ビームは、正確かつ高価なレーザ位置決め制御システムを必要としないロバストなプロセスにつながる可能性がある。例えば、最大レーザスポットサイズは、構成部品ピッチの2倍-構成部品サイズ-レーザ精度として計算することができる。例えば、2x200μm(構成部品ピッチ)-40μm(構成部品サイズ)-10μm(レーザ精度)=350μである。これらの大きなスポットサイズでは、特にπシェーパなどのビーム形成光学部品で、中間に均質な熱流束を得ることが比較的容易である可能性がある。
【0012】
熱影響区間を減少させ、さらに気体発生の量を制限するために、いくつかの実施形態では、構成部品の下の金属溶融層のサイズが減少される。例えば、構成部品の下で金属溶融層を自動的に中心に置くために、層はエッチング槽内でアンダーエッチングすることができる。より集中化して構成部品を解放すると、移動プロセスがよりよくなる。
【0013】
他のまたは別の改良は、アクセプタ基板に向けて真っすぐ推進されることを保証するために、構成部品の戦略的な移動から来ることができる。例えば、構成部品の下にあらゆる気体発生がある場合、典型的にはこの気体は最も低い流れ抵抗がある場合に最も容易に逃げる。ほぼ完全に均質な熱流束でさえも、構成部品周りの不均質圧力は、望ましくない構成部品軌跡、例えば、移動中の構成部品の回転につながることがある。この問題を緩和するために、例えば、構成部品が代替の方法で移動される、格子縞模様アプローチを使用することができる。移動される構成部品が隣り合う構成部品によって反対側で囲まれている、または囲まれていない、のいずれかに確実にすることによって、移動された構成部品周りの圧力蓄積はより均質である可能性がある。構成部品の軌跡を直線下方向によりよく制御することができる場合、より大きな移動間隙を実現することができ、これは、高さ位置決めが極めて正確である必要がないので、産業化に有益になり得る。
【0014】
性能を改善するために、例えば、熱流束およびフルエンスを制御することができる。光吸収層は、その溶融または蒸発温度まで行くことなく熱くなることが好ましい。さらに、高い強度の光は、損傷を防ぐために構成部品に到達しないことが好ましい。金属溶融層の層厚さに関して、層がより厚くなると、層全体を溶融するためにより高いフルエンスが必要である。さらに、両方の金属が拡散し、合金を形成する可能性がある。比較的多すぎる溶融金属がある場合、光吸収層は溶融池内に完全に拡散し得る。光吸収層が溶融すると、不均質効果が生じ得る。溶融時間を制御するため、パルス時間およびフルエンスを制御することができる。パルス時間は約ナノまたはピコ秒であることが好ましい。約フェムト秒のより短いパルスは、光吸収層の「冷間」アブレーションにつながり得、約マイクロ秒のより長いパルスは熱影響領域を増加させ得る。典型的には、ほとんどの熱が担体および構成部品のヒートシンクにより損失されるので、より長いパルスはまたあまり効果的ではない可能性がある。接着層の厚さは、構成部品に向かう熱流を減少させるように増加させることができる。比較的高い温度が光吸収層および溶融層で達成される間、構成部品が接着材によって熱絶縁される場合には、構成部品は比較的冷たいままであることができる。
【0015】
本開示の装置、システムおよび方法のこれらおよび他の特性、態様および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および添付の図面からよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】解放スタックを照らすことによって、ドナー基板からアクセプタ基板への構成部品の移動を示す図である。
【
図1B】解放スタック内の選択層の光誘起加熱によって構成部品を解放する相対温度および順序を示す図である。
【
図2A】解放スタックの切断および/またはエッチング部を含む別の態様を示す図である。
【
図2B】解放スタックの切断および/またはエッチング部を含む別の態様を示す図である。
【
図3A】比較的狭い光ビームを形成するための光パルスのマスキング、および様々な層の相対厚さを示す図である。
【
図4A】アクセプタ基板に移動される構成部品の写真を示す図である。
【
図4B】アクセプタ基板に移動される構成部品の写真を示す図である。
【
図4C】ドナー基板上の残りのスタックの一部を示す図である。
【
図6】多数の光パルスによって構成部品を解放する順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特定の実施形態を記載するために使用される用語は、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、内容がそうでないと明らかに示していない限り、複数形も含むことを意図している。「および/または」という用語は、関連する挙げられたアイテムの1つまたは複数のいずれかおよび全ての組合せを含む。「備えている」および/または「備えた」という用語は、記した特性の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特性の存在または追加を排除するものではないことを理解されたい。さらに、「基本的にからなっている」および「基本的にからなる」という用語は、本明細書で材料(例えば、金属、半導体、ポリマー)に言及して使用されているように、化合物または組成物の基本的特徴に実質的な影響を与えない限り、別の構成部品が存在してもよいことを意味していることを理解されたい。別の方法では、または加えて、これらの用語は、例えば、>90%、>95%、>99%、>99.9%、または100%の質量百分率を備えた(または、単に「からなる」)大部分の構成物質を表すために使用することができる。方法の特定のステップが別のステップの後であるとされる場合、そうでないと特定されていない限り、前記他のステップに直接続くことができる、または1つまたは複数の中間ステップを特定のステップを行う前に行ってもよいことをさらに理解されたい。同様に、構造または構成部品間の接続が記載されている場合、この接続はそうでないと特定されていない限り、直接または中間構造または構成部品を通して確立されてもよいことを理解されたい。
【0018】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照してこれ以下により完全に記載する。図面では、システム、構成部品、層および領域の絶対および相対サイズを明確化のために誇張してもよい。本発明の可能性のある理想的な実施形態および中間構造の略および/または断面図を参照して実施形態を記載してもよい。記載および図面では、同様の番号は全体を通して同様の要素のことを言う。相対的用語と、その派生語は、議論中の図面に記載されているまたは図示されているような配向に言及していると解釈されたい。これらの相対的用語は、記載を便利にするためであり、そうでないと記されていない限り、システムが特定の配向で構成または操作される必要があるということではない。
【0019】
図1Aは、解放スタック「S」を照らすことによる、ドナー基板10からアクセプタ基板20への構成部品15の移動を示している。いくつかの実施形態では、ドナー基板10は、アクセプタ基板20に面する構成部品15を担持するように構成された透明担体11を備えている。解放スタック「S」は、ドナー基板10からアクセプタ基板20の上へ構成部品15の1つまたは複数を解放するために、透明担体11と構成部品15との間に配置されていることが好ましい。典型的には、解放は、透明担体11を通した光ビーム「L」による解放スタック「S」の照明の直後に続く。
【0020】
いくつかの実施形態では、解放スタック「S」は、例えば、比較的低い融点「Tm13」を有する溶融層13を備えている。他のまたは別の実施形態では、解放スタック「S」は、透明担体11と溶融層13との間に配置された光吸収層12を備えている。一実施形態では、光吸収層12は比較的高い吸収係数を有する。これは、光ビーム「L」を効率的に吸収することを可能にし、それにより、光吸収層12を加熱させ得る。別のまたはさらなる実施形態では、加熱された光吸収層12は溶融層13と熱接触している。これは、溶融層13への熱の伝導を可能にし得る。このように、溶融層13の温度はその融点「Tm13」の上に上昇する可能性がある。光吸収層12は、溶融層13の融点「Tm13」より高い比較的高い融点「Tm12」を有することが好ましい。このように、光吸収層12は基本的に固体のままである可能性があり、溶融層13は基本的に光吸収層12から伝導された熱によって溶融される。他のまたは別の実施形態では、解放スタック「S」は、構成部品15と溶融層13との間に配置された接着層14を備えている。これは、溶融層13が固体である間に溶融層13に構成部品15を容易に接着し、溶融層13が溶融した場合に接着を解放する(図で「M」で示されている)ことを可能にする。
【0021】
いくつかの実施形態は、それぞれの構成部品15を保持する解放スタック「S」の一部を形成する光吸収層12の領域を、透明担体11を通して光ビーム「L」で選択的に照らすステップを含む。このように、光吸収層12のそれぞれの部分を選択的に(局所的に)加熱することができる。熱は解放スタック「S」の隣り合う溶融層13に伝えられることが好ましい。このように、隣り合う溶融層13は少なくとも部分的に溶融することができる。光吸収層12のそれぞれの部分は、溶融層13が溶融されている間に、実質的に固体に留まることが好ましい。有利には、隣り合う溶融層13の溶融は、隣り合う溶融層13と、それぞれの構成部品15を隣り合う溶融層13に接着する解放スタック「S」の接着層14のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせる可能性がある。したがって、接着の損失は、それぞれの構成部品15の解放および移動を生じさせる可能性がある。例えば、解放は、構成部品をアクセプタ基板20に対してドナー基板10から落ちるおよび/または押すことを可能にする。ドナー基板10は、重力の力が移動の助けとなるように、アクセプタ基板20の上に配置されていることが好ましい。別の方法では、または加えて、移動は照明の後に力によって誘導することができる。例えば、解放は溶融によって誘導する、および/または少なくともいくつかの気体形成を伴うことができる。本開示の態様はまた、本明細書に記載するように、ドナー基板10を備えたシステムとして具体化することができる。例えば、システムは、本明細書で記載されるように、光ビーム「L」を発生するように構成された光源および/またはコントローラを備えている。
【0022】
いくつかの実施形態では、溶融層13は金属を備えている、または基本的に金属からなる。発明者らは、金属溶融層は本方法およびシステムに特定の特典を提供することができる、例えば、様々なタイプの接着材料への一定の接続、および予測可能な融点での接着剤のよく制御した解放を提供することができることを発見した。別の方法では、または加えて、例えば、半導体材料、合金などの他の溶融材料も使用することができる。有利には、例えば、本明細書に記載されたような溶融層の目的で、共晶合金は、純金属の流れ性状と構成金属の結合特徴を組み合わせてもよい。さらに、このような合金は、2相均衡を通過することなく、特定の組成および温度で、固体から液体状態に直接転換することができ、液体から固体状態の逆も同様である。さらに、共晶温度は、2つ以上の純元素の融点よりはるかに低い可能性がある。他のまたは別の実施形態では、光吸収層12は金属を備えている、または基本的に金属からなる。発明者らは、金属光吸収層12は本方法およびシステムに特定の特典を提供することができる、例えば、比較的優れた熱伝導を行うことを発見した。さらに、発明者らは、光吸収層12および溶融層13が両方とも金属層である場合、溶融された溶融層13は、特に、接着層14が金属層でない場合に、接着層14より光吸収層12にくっつく傾向があり得ることを発見した。同様の利点が、例えば、ケイ素および炭化ケイ素を含む、半導体材料で作られた光吸収層を使用して達成されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、接着層14は、ポリマー系接着剤、好ましくは、エポキシなどの架橋ポリマーを備えている、または基本的にこれからなる。有利には、ポリマー接着剤は典型的には、金属と比較して比較的低い熱伝導を有し、したがって、構成部品15に対する熱伝導は比較的低いままである可能性がある。さらに、液体金属の表面張力は典型的には固体ポリマーの表面エネルギーよりはるかに高い。したがって、接着層14と溶融層13との間の接着は解放することができる。これに対して、固体金属層の表面エネルギーは典型的に比較的高いので、金属溶融層13は金属光吸収層に主にくっついてもよい。これは、いくつかの実施形態では、ポリマー部のみが構成部品と共に移動されることを意味する。また、好ましくは、有機および/または非金属層を備えた、または基本的にはこれによって形成される接着層に対して他の材料を考えることができる。
【0024】
特定の材料と関係なく、光吸収層12は、例えば、少なくとも2、3、5、10、20、50、またはそれ以上の倍率で、単位面積当たりの表面エネルギー(例えば、mJ/m2)が接着層14より高いことが好ましい。表面エネルギーの差が高いほど、より多くの溶融された材料が、接着層14の代わりに、光吸収層12にくっつく傾向があり得る。典型的には、溶融層13の表面エネルギーは光吸収層12より低く、より低い温度で溶融し、最も好ましくは、接着層14より高い。一実施形態では、選択した構成部品15の解放スタック「S」内での溶融層13の溶融の際、溶融層13は解放スタック「S」の光吸収層12に主にくっつき、一方、選択した構成部品15の接着層14は主に選択した構成部品15にくっつく。例えば、接着層14は選択した構成部品15と共にアクセプタ基板20に移動され、一方、溶融層13は主にドナー基板10上に解放スタック「S」の一部と共に留まっている。移動された接着層14は、移動後に選択した構成部品15から取り除かれることが好ましい。例えば、ポリマー接着層14は、湿式または乾式エッチングにより構成部品から取り除くことができる。例えば、溶融材料の50パーセントより多くが、好ましくは、70パーセントより多くが、またはさらに90パーセントより多くが光吸収層12にくっつく。溶融材料の実質的に全てがドナー基板10上にスタックで留まることが最も好ましい。
【0025】
図1Bは、様々な温度「T」および解放スタック「S」内の選択層の光誘起加熱「H」による構成部品15の解放の順を示している。理論に縛られることなく、グラフは光パルス「Lp」の持続時間を示し、溶融層13への熱伝達「H13」、接着層14への熱伝達「H14」、および得られた溶融層温度「T13」(任意縮尺)につながる。グラフの下では、構成部品解放の様々な段階が示されている。グラフに示すように、溶融層温度「T13」は典型的には最初に、光吸収層を照らす光パルス「Lp」によって生じる熱伝達「H13」により増加する。溶融層温度「T13」が融点「Tm13」に到達すると、温度上昇は安定状態になり得、熱伝達「H13」のエネルギーは「M」によって示される材料を溶融するために使用される。溶融層13の溶融の結果として、溶融層13と接着層14との間の接触は、溶融層13への熱伝達「H13」が続いている間でさえも、接着層14への熱伝達「H14」が停止されるように低くなり次第に損失される可能性がある。有利には、接着層14への停止した熱伝達「H14」は、接着層14の崩壊を緩和する、および/または過熱による構成部品15への損傷を緩和してもよい。したがって、実際、溶融層13はまた、損傷から構成部品15を保護する緩衝材として働くことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、溶融層13の比較的低い融点「Tm13」は、1000ケルビン度未満(<約700℃)である、好ましくは600ケルビン度未満(<約300℃)である。溶融層13の融点が低ければ低いほど、より少ないエネルギーが、溶融、例えば、弱い強度の光ビーム「L」および/または構成部品を損傷する低い可能性を可能にするために必要であり得る。例えば、溶融層に適切な材料としては、アルミニウム(Tm≒660℃)、亜鉛(Tm≒420℃)、錫(Tm≒232℃)、および/またはインジウム(Tm≒156℃)が挙げられ得る。
【0027】
他のまたは別の実施形態では、光吸収層12の非溶融材料の場合の融点「Tm12」または崩壊/蒸発温度は、例えば、少なくとも10ケルビン度、好ましくは少なくとも50ケルビン度、より好ましくは少なくとも100ケルビン度、最も好ましくは少なくとも200ケルビン度、またはさらには500より大きいケルビン度だけ、溶融層13の融点「Tm13」より高い。融点Tm12、Tm13の差が大きければ大きいほど、溶融層13が光吸収層12から伝導された熱によって少なくとも部分的に溶融されている間に、光吸収層12が実質的に固体に留まることをより容易に保証することができる。非溶融材料の場合の融点「Tm12」または崩壊/蒸発温度は、例えば、少なくとも1000ケルビン度≧約700℃、より好ましくは少なくとも2000ケルビン度であることが好ましい。光吸収層12での使用に特に適切な金属としては、2896K(2623℃)の比較的高い融点を有するモリブデンが挙げられる。また、金属の代替としてクロム(2180K、1907℃)などの比較的高い融点を有する他の金属を使用することができ、他の材料、例えば、光ビーム「L」に対して比較的高い吸収性を有することが好ましい、固体に留まっている間に溶融層13に熱を伝導することが可能である半導体材料または他の材料を光吸収層12に使用することもできる。いくつかの実施形態では、湿式制御層12wを、(主な)光吸収層12と溶融層13との間に提供することができる。例えば、湿式制御層12wに適切な材料としては、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素などの酸化物が挙げられ得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、解放スタック「S」を照らす光ビーム「L」は、溶融層13の温度「T13」をその融点「Tm13」の上まで上昇させるが、その蒸発温度Te13より下に留まるように構成されている。例えば、光ビーム「L」の強度および/または持続時間は、光ビーム「L」の特定の量のエネルギーを光吸収層12内に堆積させて、光吸収層12の温度の特定の上昇につながるような光吸収層12の吸収性、および溶融層13を溶融させるのに十分であるが、溶融層13の実質的な沸騰および/または蒸発を生じさせるのに十分でない溶融層13への特定量の熱伝達に関連して適合されている。溶融層13の蒸発がより多く防ぐことができるほど、構成部品15の解放をより制御することができる。例えば、構成部品の爆発的解放を緩和することができる。別の方法では、溶融層の蒸発または沸騰温度は、特に金属溶融層に対して、その融点よりはるかに高い可能性がある。例えば、溶融層13の蒸発温度Te13は、少なくとも500ケルビン度、好ましくは少なくとも1000ケルビン度、またはさらには1500より大きいケルビン度だけ、その融点「Tm13」より高い。溶融および蒸発温度の差が高ければ高いほど、溶融層の蒸発をより容易に防ぐことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、接着層14は、溶融層13の融点「Tm13」より上である[Td14>Tm13]、または溶融層13の融点「Tm13」未満である少なくとも500ケルビン度内(より高い)[Td14>(Tm13-500K)]、好ましくは400ケルビン度内である、または300ケルビン度内である崩壊温度Td14を有する。接着層14の蒸発または崩壊温度Td14が高ければ高いほど、不注意な崩壊をよりよく防ぐことができ、構成部品15のより制御された解放を得ることができる。接着層14の崩壊温度Td14は典型的には、その温度への長期の露出に適用可能であることに留意されたい。したがって、溶融材料は光吸収層12にくっつく傾向がある、および/または接着層14から乾燥するので、接着層14は崩壊温度Td14より上の隣り合う溶融層13の温度に短く曝されることに耐えることができる。例えば、接着層に適切な材料としては、SU-8などのフォトレジスト材料が挙げられ得る。また、他の材料、例えば、ポリイミドを使用することができる。
【0030】
非限定的な例として、概算パラメータを有する以下の表が考えられる。
【0031】
【0032】
いくつかの実施形態では、解放スタック「S」を照らす光ビーム「L」は、例えば、1ミリ秒未満、好ましくは100ナノ秒未満、より好ましくは10ナノ秒未満、またはさらには1ナノ秒未満のFWHM持続時間を有する、比較的短い光パルスとして提供される。例えば、光はナノ秒またはピコ秒パルスとして提供することができる。光パルスが短ければ短いほど、パルスの持続時間に対する時間の単位毎強度が高くなる。これは、スタックの比較的短く強い加熱、および好ましくは熱が接着層14を崩壊する前に、および/または熱が構成部品15を損傷する前に、構成部品の溶融を生じさせてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、光吸収層12は、解放スタック「S」を照らす光ビーム「L」の少なくとも10パーセント、好ましくは少なくとも20パーセント、より好ましくは少なくとも50または60パーセント、最も好ましくは少なくとも90パーセントを吸収するように構成されている。例えば、光ビーム「L」は100~2000nmの間の波長(例えば、モノクロまたは高帯域幅光)、好ましくはNIRレーザ(例えば、1064nm)を有する。また、光吸収層12の材料がその波長を十分吸収することができる限り、他の波長、例えば、UV、可視または紫外線を使用することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、光ビーム「L」は、光吸収層12に直ぐ隣り合う領域を照らすことなく、選択した構成部品15を保持する選択した解放スタック「S」の一部を形成する光吸収層12のサブ領域を排他的に照らすように構成されており、それにより、隣り合う構成部品をドナー基板10に取り付けられたままにしながら、選択した構成部品15を排他的に解放する。例えば、光ビーム「L」は選択した構成部品の幅「W15」とほぼ等しいまたはこれより小さいビーム幅「WL」を有する、および/または光ビーム「L」は選択した構成部品上で中心に置かれる。一実施形態では、1つまたは複数の構成部品に対応する解放スタック「S」の1つまたは複数のサブ領域を照らす比較的狭いビーム幅を有する光ビーム「L」が発生される。別のまたはさらなる実施形態では、光ビーム「L」は、例えば、解放スタック「S」の1つまたは複数のサブ領域の上で比較的小さなスポットを照射する1つまたは複数のレンズ/ミラーを使用して、比較的狭いビーム幅に焦点が当てられる。別のまたはさらなる実施形態では、比較的広い光ビーム「L」は、例えば、解放スタック「S」の1つまたは複数のサブ領域に衝突する1つまたは複数の比較的狭い光ビームを発生させるためにマスクパターンを使用して、形状化またはパターン化される。一実施形態では、例えば、マスクパターンの特定の構成部品または部分を照らす光ビーム「L」は、レーザによって発生される。また、他の光源、例えば、マスクパターンの一部、またはマスク全体を照らすフラッシュランプを使用することができる。
【0035】
図2Aおよび
図2Bは、解放スタック「S」の切断および/またはエッチング部分を含む別の態様を示している。いくつかの実施形態では、解放スタック「S」は、例えば、レーンまたは切断線「C」に沿って、構成部品15の間および/またはその周りで少なくとも部分的に分割またはダイシングされる(投影図)。例えば、スタックの1つまたは複数の層は、構成部品を接続する前または後に、好ましくは少なくとも移動の前に、分割することができる。異なる構成部品15を保持する接着層14の部分が互いに離れているように、少なくとも接着層14が分割されることが好ましい。このように、個別の構成部品15の移動は、接着層14の中間片のより少ない干渉でよりよく制御することができる。また、異なる構成部品15に対応する溶融層13の部分が互いに離れているように、溶融層13が分割されていることがより好ましい。このように、解放された構成部品の溶融材料は、隣り合う構成部品の溶融層13から離れたままである、例えば、後に解放された構成部品との干渉を防ぐことができる。また、異なる構成部品15に対応する光吸収層12の部品は互いに離れているように、光吸収層12が分割されていることが最も好ましい。このように、光吸収層12の加熱は、よりよく局所化される、および/または防止される隣接構成部品に対応する光吸収層12の隣り合う領域へ熱伝達することができる。これは裏側から構成部品にレーザを位置合わせするのに有益である可能性もある。
【0036】
いくつかの実施形態では、例えば、
図2Bに示すように、溶融層13の少なくとも一部は、構成部品15とドナー基板10との間にそれぞれの刻み目を提供するように取り除かれる。一実施形態では、それぞれの構成部品15を保持する溶融層13の領域は、例えば、少なくとも2、3、4、5、またはそれ以上の倍率で、それぞれの構成部品の領域より小さい。比較的小さい領域の溶融層13を提供することによって、この材料は、溶融層13の隣り合う部分を溶融することなく、構成部品を解放するためにより容易に溶融することができる。例えば、移動中に構成部品の回転を緩和するために、より小さい領域はそれぞれの構成部品の上でさらに中心に置かれることが好ましい。別のまたはさらなる実施形態(図示せず)では、接着層14はまた、より小さい領域を有することができ、例えば、したがってより少ない材料を後で取り除く必要がある。図示しない別のまたはさらなる実施形態では、光吸収層12は、隣接構成部品での熱分離をさらに改善するために、より小さい領域を有することもできる。例えば、溶融層13および/または他の層の部分は、「E」によって示されるエッチングによって構成部品の下で取り除くことができる。他のまたは別の実施形態では、光ビーム「L」の幅「WL」は、解放されているそれぞれの構成部品15の幅「W15」より小さい。例えば、光ビーム「L」の領域または幅「WL」は、溶融層13の領域に対して調節することができる。
【0037】
図3Aは、比較的狭い光ビームLを形成するための光パルス「Lp」のマスキング、および様々な層の相対的厚さを示している。いくつかの実施形態では、マスク30はドナー基板10に位置合わせされている。一実施形態では、マスク30は、ドナー基板10上の構成部品15のサブセットと位置合わせされた一式のマスクウィンドウ(開口領域)を備えている。別のまたはさらなる実施形態では、一式の光スポット(例えば、光パルスLp)は、一式のマスクウィンドウを連続的にまたは同時に照らすために使用される。別のまたはさらなる実施形態では、それぞれの光スポット(例えば、レーザスポット)は、(照らされている、光スポットはウィンドウ上で中心に置かれていることが好ましい)それぞれのマスクウィンドウより大きく、例えば、半値全幅(FWHM)スポットサイズ(直径)は、少なくとも2、3、またはそれ以上の倍率でマスクウィンドウの幅より大きいが、十分小さい、例えば、4または5の倍率より小さく、それによって、スポットの尾部が別のマスクウィンドウを実質的に照らさない。典型的には、レーザスポットはガウス強度プロファイルを有する。スポットの中心部のみがマスクウィンドウを通して通過されるようにスポットをマスキングすることによって、強度プロファイルは比較的平らであり、制御された解放に利益を与えてもよい。
【0038】
ドナー基板10の透明担体11は、例えば、2未満、またはさらには1ミリメートル未満の厚さ「Ds」を有する比較的薄い箔によって形成されていることが好ましい。透明担体がより薄ければ薄いほど、(例えば、マスクで)そこを通してスタックを照らすことはより容易である可能性がある。例えば、ドナー基板10は、可撓性または剛性基板である可能性がある。典型的には、例えば、100マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満、またはさらには30マイクロメートル未満の厚さ「Dc」、高さ、または他の断面寸法を有する構成部品は極めて小さい。典型的には、解放スタック「S」は、さらにはるかに小さい、例えば、10マイクロメートル、またはさらには1マイクロメートル未満である厚さ「Dr」を有する。構成部品15は、例えば、1から100マイクロメートルの間、好ましくは20から60マイクロメートルの間の移動距離「Dt」上で、アクセプタ基板20にドナー基板10から非接触で移動されることが好ましい。これらの範囲は、一方では、不注意な接触を防ぐために十分な距離を提供することができ、もう一方では、制御された移動を可能にするために十分に近接している可能性がある。別の方法では、他の距離を使用することもできる。いくつかの実施形態では、移動距離は構成部品の厚さより大きく、したがって、修理の目的で技術を使用することもできることが好ましい。
【0039】
一実施形態では、光吸収層12は、500nm未満、好ましくは250nm未満、例えば、50~150nmの間の層厚さを有する。比較的薄い光吸収層12を提供することにより、この層の比較的急速な加熱を可能にすることができる。もう一方では、層は光を吸収するためにある厚さが必要であり得る。別のまたはさらなる実施形態では、溶融層13は、500nm未満、好ましくは250nm未満、例えば、50~150nmの間の層厚さを有する。比較的薄い溶融層13を提供することにより、この層の比較的急速な加熱および溶融を可能にすることができる。もう一方では、層はその機能を提供するためにある厚さが必要であり得る。別のまたはさらなる実施形態では、溶融層13は、1マイクロメートル未満、例えば、50~500nmの間の層厚さを有する。原則的に、接着層14が薄ければ薄いほど、より少ない材料を後で洗浄する必要がある(これが全く必要ない場合でさえある)。もう一方では、層はその機能によって、例えば、250nmより大きい、ある厚さが必要であり得る。また、他の層厚さを使用することができる。
【0040】
非限定的例として、ドナー基板は以下の通り準備される。きれいな水晶/ガラスの透明担体で始まり、130nmモリブデンの光吸収層が担体上でスパッタリングされる。120nmアルミニウムの溶融層は、前の層の上でスパッタリングされる。500nm SU-8の接着層が、前の層の上でスピンコーティングされる。担体およびスタックは、2分間95℃でソフトベーキングされる。構成部品には、120℃で15分間、担体/スタックの上で真空積層される。一時ポリマーテープは、構成部品から取り除かれる。酸素プラズマは、構成部品の間でSU-8を取り除くために、500Wで1時間加えられる。アルミニウムおよびモリブデンは、PESエッチング液77-23-04内で2分間エッチングされる。SU-8レジストは、250℃で3時間ハードベーキングされる。もちろん、他の材料、層厚さ、温度なども使用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、マスク30は、それぞれの構成部品15を保持する解放スタック「S」の部分と位置合わせすることができるそれぞれのマスクウィンドウを形成する透明担体上に配置された光吸収材料のパターンによって形成されている。非限定的例として、マスク基板は以下の通り準備される。きれいな水晶/ガラスの透明担体で始まり、130nmモリブデンの光吸収層が担体上でスパッタリングされる。2μmのHPR504レジストが光吸収層の上でスピンコーティングされる。スタックは、95℃で2分間ソフトベーキングされる。レジストは、マスクパターンに従って選択的に照らされる。HPR504レジストは成長している。HPR504レジストは、120℃で2分間、ハードベーキングされる。モリブデンは、PSエッチング液中で30秒間エッチングしている。HPR504レジストは、マイクロストリッピングによって取り除かれる。マスク基板は洗浄される。有利には、解放スタック「S」内の光吸収層12と同じまたは同様の光吸収材料をマスク30のために使用することができる。また、クロムは1907℃で溶融し、アルミニウム層を溶融するためにフルエンスおよびレーザ電力で損傷が生じないので、他の材料、例えば、水晶マスク上の標準的クロムを使用することができる。
【0042】
図3Bは、構成部品15の連続解放を示している。いくつかの実施形態では、構成部品は、特定の順序によって、ドナー基板10から解放され、構成部品の少なくともいくつか、好ましくは大部分、最も好ましくは、解放のために選択された順の各構成部品15は、(
図3B左側に示すように)全ての側に4つの直接隣り合う隣接構成部品を有する、または(
図3B右側に示すように)いずれの側にも直接隣り合う隣接構成部品を有していない、のいずれかである。一実施形態では、例えば、第1のセットの2つの対向する側に2つの直接隣り合う隣接構成部品があり、第2のセットの対向する側(図示せず)に直接隣り合う構成部品がない、といった組合せを使用することができる。例えば、存在しない隣接構成部品は、最初からなくてもよく、またはまだ存在する構成部品によって囲まれていたときに前もって解放されていてもよい。対向する側で直接隣り合う隣接構成部品の有無を均衡化することによって、構成部品の解放はより均衡化することができる、例えば、接着層の気体発生が制御した方向性と離れて構成部品を推進させることを可能にする。例えば、構成部品は、示したような格子縞パターンに従って解放することができる。他のパターンも考えられる。さらに、解放順は本明細書に記載した特定の解放スタックと組み合わせて特定の利点を提供し、順序は原則的に、特に構成部品が解放されて、スタック内の気体発生を必要とする場合に、あらゆるタイプの解放スタックを使用して構成部品の光誘起移動に利益を与えることができることが分かるだろう。
【0043】
図4Aおよび
図4Bは、本明細書に記載した方法を使用して、アクセプタ基板20に移動される構成部品15の写真を示している。この場合、移動された構成部品は、200μmピクセルピッチを有する40x40μm
2のチップである。
図4Cは、ドナー基板10上の残りのスタックS’の一部を示している。この場合、モリブデン上の溶融アルミニウムは、構成部品が移動された後に見える。図示するように、残りのスタックの幅「Ws」は約15μmである、例えば、移動された構成部品より小さい。
【0044】
図5Aは、ドナー基板10、例えば、スタック「S」が透明担体11と光吸収層12との間に熱絶縁層11iを備えている実施形態を示している。したがって、熱絶縁層11iおよび光吸収層12は両方とも、透明担体11と溶融層13との間に配置することができる。いくつかの実施形態では、熱絶縁層11iは、比較的低い、例えば、透明担体11を形成する材料より低い熱伝導性を有する。他のまたは別の実施形態では、熱絶縁層11iは、(光ビーム「L」に対して)比較的高い、例えば、光吸収層12を形成する材料より高い透明度を有する。有利には、比較的透明な熱絶縁は、光ビーム「L」が透明担体11から通過して、透明担体11に戻る光吸収層12からの熱伝達を防ぐまたは少なくとも減らしながら、光吸収層12を照らし加熱することを可能にすることができる。このように、熱は溶融層13により効率的に伝達されてもよい。一実施形態では、例えば、図示するように、熱絶縁層11iは構成部品15どうしの間で分割される。これはさらに、透明担体11に戻る熱伝達を減らす、および/または隣接構成部品間の熱伝達を減らしてもよい。熱絶縁層11iが特定の実施形態でここに示されているが、層は本明細書に記載されているように他の実施形態のいずれかと組み合わせて加えることができる(分割されているまたはそうではない)ことを理解されたい。
【0045】
図5Bは、ドナー基板10、例えば、スタック「S」が光吸収層12と溶融層13との間に乾燥層12dを備えている実施形態を示している。概して、乾燥は、カバーされる表面からの流体の撤退、この場合、乾燥層12dからの溶融層13の溶融材料「M」の撤退のプロセスを記載している。(例えば、周囲の気体で)表面固体上の液体の一滴に対する自発的拡散および乾燥を記載する1つの要因は、いわゆる拡散係数「S」である。S>0自発的拡散が起こる場合、S<0であると、部分的湿潤または乾燥が観察されてもよい。別の方法では、または加えて、湿潤および乾燥は、表面上の液体の一滴の均衡接触角度θcによって記載することができる。表面がより濡れている場合、接触角度はより小さくなり、表面がより乾燥している場合、接触角度はより小さくなってもよい。いくつかの実施形態では、乾燥層12dは、光吸収層12と比較して、溶融層13の溶融材料「M」の乾燥を促進するために加えられる。例えば、乾燥層12d上の溶融材料「M」に対する拡散係数は、光吸収層12上の溶融材料「M」より低い、および/または均衡接触角度はより大きい。制御された乾燥は、選択構成部品15の解放接着を改善することができる溶融材料「M」の撤退などの様々な利点を有し得る。撤退はまた、材料の局所的堆積によって選択構成部品を押すのを助けることができる。乾燥層12dは、溶融層13より高い融点を有することが好ましい。乾燥層12dは、光吸収層12から溶融層13への熱伝達が最小限の影響を受ける、または全く影響を受けないように、比較的優れた熱伝導性を有する、および/または比較的薄いことが好ましい。例えば、乾燥層12dは、光吸収層12と比較して、同じまたは同様の、またはより高い熱伝導性を有し得る。いくつかの実施形態では、乾燥層12dは、光吸収層12の上に(薄い)コーティング、例えば、モノ層によって形成されている。したがって、加熱された光吸収層12は、(光吸収層12の一部とも考えられ得る)乾燥層12dを介して溶融層13と熱接触することができる。
【0046】
図6は、多数の光パルスで、上の実施形態で記載したように、解放スタックSを照らすことによって、ドナー基板10から構成部品15を解放することを示している。いくつかの実施形態は、光吸収層のそれぞれの部分を加熱し、溶融層の隣り合う部分の溶融を開始するおよび/または完了するために第1の光パルスL1で、それぞれの構成部品を保持するそれぞれの解放スタックの一部を形成する光吸収層のそれぞれの領域を照らすステップを含んでいる。他のまたは別の実施形態は、溶融層13の部分的または完全に溶融された材料「M」からの構成部品15の解放をさらに促進するために第2の光パルスL2で、光吸収層のそれぞれの領域を照らすステップを含んでいる。一実施形態では、第1の光パルスL1は比較的長い、例えば、図示するように、溶融層13を完全に溶融するのに十分長い。別のまたはさらなる実施形態では、溶融層13は第1の光パルスL1によって少なくとも部分的に溶融されてもよい。別のまたはさらなる実施形態では、第2の光パルスL2は比較的短い、および/または第1の光パルスL1と比較して比較的高い電力を有する。いくつかの実施形態では、第1の光パルスL1は、例えば、>1ns、>10ns、>100ns、またはさらには>1μsのパルス長さで溶融層13の相対的に段階的な溶融を生じさせる。他のまたは別の実施形態では、第2の光パルスL2は、例えば、<1μs、<100ns、<10ns、<1ns、<100ps、またはさらに低いパルス長さで、比較的高い熱流を生じさせる。例えば、突然の高い熱流はさらに、部分的または完全に溶融された材料「M」からの構成部品15の解放を促進してもよい。例えば、第2の光パルスL2は、溶融材料内に衝撃波、および/または接着層の少なくとも部分的崩壊を生じさせてもよい。いくつかの実施形態では、第1の光パルスL1は、例えば、光吸収層または任意の乾燥層上での乾燥によって、溶融材料の接触領域減少を生じさせる。いくつかの実施形態では、第2の光パルスL2は、例えば、分解による気体発生あるいはその他によって、構成部品を解放するための最後の押込みを生じさせる。本図は2つの別の光パルスを示しているが、他のまたは別の実施形態は、単一の変調された光パルスを使用した同様の効果、例えば、パルスの終わりでの電力の上昇を達成してもよい。3つ以上のパルスを使用することも考えることができる。いくつかの実施形態では、例えば、示すように、接着層14の崩壊温度Td14は、溶融層13の融点Tm13より高い。他の実施形態では、例えば、
図1Bを参照して図示および記載するように、これは[例えば、Td14>(Tm13-300K)などの特定の限界内で]反対であることもできる。
【0047】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、「備えている」という語は、所与の請求項に挙げられたもの以外の要素または行動の存在を排除しないものであり、要素に先行する「a」または「an」という語は複数のこのような要素の存在を排除しないものであり、特許請求の範囲内のあらゆる参照符号はその範囲を限定するものではなく、開示されたデバイスまたはその部分のいずれかを、そうでないと特に記されていない限り、共に組み合わせるまたは別の部分に分離させてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0048】
10 ドナー基板
11 担体
12 光吸収層
13 溶融層
14 接着層
15 構成部品
20 アクセプタ基板
30 マスク
L 光ビーム
S 解放スタック
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー基板(10)からアクセプタ基板(20)への構成部品(15)の光誘起移動のための方法であって、
前記ドナー基板(10)は、
前記アクセプタ基板(20)に面する前記構成部品(15)を担持するように構成された透明担体(11)と、
前記透明担体(11)を通した光ビーム(L)による解放スタック(S)の照明の後に、前記アクセプタ基板(20)の上に前記ドナー基板(10)から前記構成部品(15)の1つまたは複数を解放するために、前記透明担体(11)と前記構成部品(15)との間に配置された解放スタック(S)とを備え、
前記解放スタック(S)は、
第1の融点(Tm13)を有する
金属または合金層によって形成された溶融層(13)と、
前記透明担体(11)と前記溶融層(13)との間に配置された光吸収層(12)であって、前記光ビーム(L)を吸収することにより前記光吸収層(12)を加熱させるための吸収係数を有し、その熱を前記溶融層(13)に伝導することにより前記溶融層(13)の温度をその融点(Tm13)の上まで上昇させるために前記溶融層(13)と熱接触し、前記溶融層(13)が前記光吸収層(12)から伝えられた前記熱によって溶融されている間に前記光吸収層(12)が固体のままであることができるように前記溶融層(13)の前記
第1の融点(Tm13)より高い
第2の融点(Tm12)を有する、光吸収層(12)と、
前記溶融層(13)が固体である間に前記溶融層(13)に前記構成部品(15)を接着し、前記溶融層(13)が溶融される(M)場合に接着を解放する
、有機および/または非金属層で形成された接着層(14)とを備え、前記方法は、
それぞれの構成部品(15)を保持する前記解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)の領域を、前記光吸収層(12)のそれぞれの部分を加熱するように前記透明担体(11)を通して光ビーム(L)で照らすステップであって、前記熱が前記解放スタック(S)の隣り合う溶融層(13)に伝導され、それにより、前記光吸収層(12)の前記それぞれの部分が固体である間に前記隣り合う溶融層(13)を溶融させ、前記隣り合う溶融層(13)の前記溶融は、前記隣り合う溶融層(13)と、前記隣り合う溶融層(13)に前記それぞれの構成部品(15)を接着させる前記解放スタック(S)の前記接着層(14)のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせ、前記接着の損失は、前記それぞれの構成部品(15)の解放および移動を生じさせる、ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記光吸収層(12)は第2の金属層を備えている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着層(14)はポリマー系接着剤を備えている、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光吸収層(12)は、単位面積当たりの表面エネルギーが前記接着層(14)より高く、選択した構成部品(15)の前記解放スタック(S)内での溶融層(13)の溶融の際、前記溶融層(13)は前記解放スタック(S)の前記光吸収層(12)に主にくっつき、一方、前記選択した構成部品(15)の前記接着層(14)は主に前記選択した構成部品(15)にくっつき、前記接着層(14)は前記選択した構成部品(15)と共に前記アクセプタ基板(20)に移動され、一方、前記溶融層(13)は主に前記ドナー基板(10)上に前記解放スタック(S)の一部と共に留まっており、前記移動された接着層(14)は、移動後に前記選択した構成部品(15)から取り除かれる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記解放スタック(S)を照らす前記光ビーム(L)は、前記溶融層(13)の温度(T13)をその融点(Tm13)より上まで上昇させるが、その蒸発温度(Te13)未満に留めさせるように構成されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接着層(14)は、前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)の上である、または前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)未満で300ケルビン度より高い崩壊温度(Td14)を有する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接着層(14)、前記溶融層(13)、および前記光吸収層(12)の少なくとも1つが、前記構成部品(15)どうしの間で分割される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの構成部品(15)を保持する前記溶融層(13)の領域は、少なくとも2の倍率だけ前記それぞれの構成部品の領域より小さい、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マスク(30)は、前記ドナー基板(10)と位置合わせされ、前記マスク(30)は、前記ドナー基板(10)上の前記構成部品(15)のサブセットと位置合わせされた一式のマスクウィンドウを備え、一式の光スポットは、それぞれの構成部品(15)の解放のために前記一式のマスクウィンドウを順にまたは同時に照らすために使用され、それぞれの光スポットは照らされているそれぞれのマスクウィンドウより大きく、光スポットFWHM直径は少なくとも2の倍率だけ前記マスクウィンドウの幅より大きい、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記構成部品が特定の順に従って前記ドナー基板(10)から解放され、
解放のために選択された前記順の各構成部品(15)は、
全ての側に4つの直接隣り合う隣接構成部品を有する、
いずれの側にも直接隣り合う隣接構成部品を有さない、または
第1のセットの2つの対向する側に2つの直接隣り合う隣接構成部品を有し、第2のセットの対向する側に直接隣り合う構成部品を有さない、
のいずれかである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光吸収層(12)は、前記解放スタック(S)を照らす前記光ビーム(L)の少なくとも50パーセントを吸収するように構成され、前記光ビーム(L)は、前記光吸収層(12)に直接隣り合う領域を照らすことなく、選択した構成部品(15)を保持する選択した解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)のサブ領域を排他的に照らし、それにより、隣り合う構成部品を前記ドナー基板(10)に取り付けられたままにしながら、前記選択した構成部品(15)を排他的に解放するように構成されている、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)は600ケルビン度未満であり、前記光吸収層(12)の前記融点(Tm12)は、少なくとも100ケルビン度だけ前記溶融層(13)の前記融点(Tm13)より高い、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
透明担体(11)を通した光ビーム(L)による解放スタック(S)の照明の後に、ドナー基板(10)から構成部品(15)の1つまたは複数を解放するために、前記透明担体(11)と前記構成部品(15)との間に配置された前記解放スタック(S)での光誘起移動のために、前記構成部品(15)を担持する前記透明担体(11)を備えたドナー基板(10)であって、
前記解放スタック(S)は、
第1の融点(Tm13)を有する
金属または合金層によって形成された溶融層(13)と、
前記透明担体(11)と前記溶融層(13)との間に配置された光吸収層(12)であって、100~2000nmの間の波長範囲および10ナノ秒未満のパルス長さで光ビーム(L)の少なくとも
10パーセントを吸収することにより前記光吸収層(12)を加熱させるための
吸収係数を有し、その熱を前記溶融層(13)に伝導することにより前記溶融層(13)の温度をその融点(Tm13)の上まで上昇させるために前記溶融層(13)と熱接触し、前記溶融層(13)が前記光吸収層(12)から伝えられた前記熱によって溶融されている間に前記光吸収層(12)が固体のままであることができるように前記溶融層(13)の前記第1の融点(Tm13)より高い
第2の融点(Tm12)を有する、光吸収層(12)と、
前記溶融層(13)が固体である間に前記溶融層(13)に前記構成部品(15)を接着し、前記溶融層(13)が溶融される(M)場合に接着を解放する
、有機および/または非金属層によって形成された接着層(14)とを備えている、ドナー基板(10)。
【請求項14】
前記接着層(14)、前記溶融層(13)、および前記光吸収層(12)の少なくとも1つが、前記構成部品(15)どうしの間で分割される、請求項13に記載のドナー基板(10)。
【請求項15】
構成部品(15)の光誘起移動のためのシステムであって、
請求項
13または14に記載のドナー基板(10)であって、透明担体(11)および解放スタック(S)を備え、前記解放スタック(S)は、光吸収層(12)、溶融層(13)、および前記構成部品(15)を保持する接着層(14)を有する
、ドナー基板(10)と、
アクセプタ基板(20)と、
それぞれの構成部品(15)を保持する前記解放スタック(S)の一部を形成する前記光吸収層(12)の領域を、前記光吸収層(12)のそれぞれの部分を加熱するように前記透明担体(11)を通して照らす光ビーム(L)を発生させるように構成されたコントローラおよび光源であって、熱が前記解放スタック(S)の隣り合う溶融層(13)に伝導され、それにより、前記光吸収層(12)の前記それぞれの部分が固体である間に前記隣り合う溶融層(13)を溶融させ、前記隣り合う溶融層(13)の溶融は、隣り合う溶融層(13)と、前記隣り合う溶融層(13)に前記それぞれの構成部品(15)を接着させる前記解放スタック(S)の前記接着層(14)のそれぞれの部分との間の接着の損失を生じさせ、前記接着の損失は、前記それぞれの構成部品(15)の解放および移動を生じさせる、コントローラおよび光源とを備えた、システム。
【国際調査報告】