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特表2024-510943上皮間葉転換をモジュレートするための組成物および方法
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  • 特表-上皮間葉転換をモジュレートするための組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】上皮間葉転換をモジュレートするための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240305BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P29/00
A61P9/00
A61P27/02
A61P43/00 111
A61K31/352
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553496
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018557
(87)【国際公開番号】W WO2022187387
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】773493
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508037005
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523333755
【氏名又は名称】インフラメックス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, コリン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ムギショー, オドゥナヨ オモローラ ボルワリン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC411
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、線維性疾患、障害および状態ならびに線維症に関連する他の状態を含む疾患、障害および状態において、上皮間葉転換および/または内皮間葉転換をモジュレート、抑制および安定化するための、抗コネキシン43ヘミチャネル開口化合物、阻害剤および遮断薬を含む抗ヘミチャネル化合物の使用に関する。本発明は、概して、コネキシンヘミチャネル、ならびに疾患における上皮間葉転換または他の病理学的もしくは異常なレベルの上皮間葉転換を阻害するための組成物および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に病理学的または望ましくない上皮間葉転換活性を特徴とする疾患、障害または状態を有する対象における上皮間葉転換活性を阻害するための方法であって、ヘミチャネル阻害剤を前記対象に上皮間葉転換活性を阻害するのに有効な量で投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ヘミチャネル阻害剤がコネキシン43ヘミチャネル阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘミチャネル阻害剤が低分子ヘミチャネル阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘミチャネル阻害剤がN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(トナベルサット)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ヘミチャネル阻害剤が式(I)の化合物:
【化5】
(式中、YはC-Rであり;
はアセチルであり;
は、水素、C3~8シクロアルキル、必要に応じて酸素によって中断またはヒドロキシ、C1~6アルコキシもしくは置換アミノカルボニルによって置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C1~6アルキルカルボニルオキシ、C1~6アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはCFS;またはCF-A-基(式中、Aは-CF-、-CO-、-CH-、CH(OH)、SO、SO、CH-OまたはCONHである);またはCFH-A’-基(式中、A’は酸素、硫黄、SO、SO、CFまたはCFHである);トリフルオロメトキシ、C1~6アルキルスルフィニル、ペルフルオロC2~6アルキルスルホニル、C1~6アルキルスルホニル、C1~6アルコキシスルフィニル、C1~6アルコキシスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ホスホノ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アリールスルホニルもしくはヘテロアリールスルホニル(任意の芳香族部分は必要に応じて置換されている)、C1~6アルキルカルボニルアミノ、C1~6アルコキシカルボニルアミノ、C1~6アルキル-チオカルボニル、C1~6アルコキシ-チオカルボニル、C1~6アルキル-チオカルボニルオキシ、1-メルカプトC2~7アルキル、ホルミル、またはアミノスルフィニル、アミノスルホニルもしくはアミノカルボニル(任意のアミノ部分は1つもしくは2つのC1~6アルキル基によって必要に応じて置換されている)、またはC1~6アルキルスルフィニルアミノ、C1~6アルキルスルホニルアミノ、C1~6アルコキシスルフィニルアミノもしくはC1~6アルコキシスルホニルアミノ、またはC1~6アルキルカルボニル、ニトロもしくはシアノによって末端置換されたエチレニル、または-C(C1~6アルキル)NOHもしくは-C(C1~6アルキル)NNH;または1つもしくは2つのC1~6アルキルによってまたはC2~7アルカノイルによって必要に応じて置換されたアミノであり;RおよびRの一方は水素またはC1~4アルキルであり、他方はC1~4アルキル、CFまたはCHであり、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1~4アルコキシ、ヒドロキシ、C1~4アルキルカルボニルオキシ、-S-C1~4アルキル、ニトロ、1つもしくは2つのC1~4アルキル基によって必要に応じて置換されたアミノ、シアノまたはC1~4アルコキシカルボニルである;あるいはRおよびRが一緒になって、C1~4アルキルによって必要に応じて置換されたC2~5ポリメチレンであり;
は、C1~6アルキルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ONO、ベンジルオキシ、フェニルオキシまたはC1~6アルコキシであり、RおよびRは水素である、あるいはRはヒドロキシであり、Rは水素またはC1~2アルキルであり、Rは水素であり;
はヘテロアリールまたはフェニルであり、これらは共に、独立して、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、C1~4アルキルによって1回もしくは2回必要に応じて置換されたアミノ、シアノ、アジド、C1~4アルコキシ、トリフルオロメトキシおよびトリフルオロメチルから選択される基または原子で1またはそれを超える回数必要に応じて置換されており;
は、水素、C1~6アルキル、OR11またはNHCOR10であり、R11は、水素、C1~6アルキル、ホルミル、C1~6アルカノイル、アロイルまたはアリール-C1~6アルキルであり、R10は、水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、モノもしくはジC1~6アルキルアミノ、アミノ-C1~6アルキル、ヒドロキシ-C1~6アルキル、ハロ-C1~6アルキル、C1~6アシルオキシ-C1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニル-C1~6アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;R-N-CO-R基はR基に対してシスであり;Xは酸素またはNR12であり、R12は水素またはC1~6アルキルである)
である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記低分子ヘミチャネル遮断薬が式(II)の化合物:
【化6】
(式中、
QはOまたは式=NHOR43のオキシムであり、R43は、
(i)H、C1~4フルオロアルキルもしくは必要に応じて置換されたC1~4アルキルから選択される、または
(ii)-A300-R300
であり、
300は、直接結合、-C(O)O-、-C(R)(R)O-、-C(O)O-C(R)(R)O-、または-C(R)(R)OC(O)O-であり、印が付けられた原子はR300に直接結合しており、
およびRは、H、フルオロ、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキルから独立して選択される、または
およびRは、これらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル基を形成し、
300は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]または[6]基から選択され;
はHまたはB-R21であり、
Aは、直接結合、-C(O)O-、-C(R)(R)O-、-C(O)O-C(R)(R)O-または-C(R)(R)OC(O)O-であり、印が付けられた原子はRに直接結合しており、RおよびRは、H、フルオロ、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキルから独立して選択される、またはRおよびRは、これらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル基を形成し、
は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]および[6]基から選択され、**印を付けられた原子はAに直接結合しており:
【化7】
およびRは、H、C1~4アルキル、C1~4フルオロアルキルおよびベンジルからそれぞれ独立して選択され;
は、H、C1~4アルキルおよびC1~4フルオロアルキルから独立して選択され;
は、
(i)H、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキル、または
(ii)天然もしくは非天然α-アミノ酸、または本明細書に記載されるペプチドの側鎖、または
(iii)ビオチンもしくはビオチンに化学的に連結している
から選択され;
は、H、-N(R11)(R12)、または-N(R11)(R12)(R13)X、または-N(R11)C(O)R14から選択され、
11、R12およびR13は、H、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルから独立して選択され、
14は、H、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルであり、
15は、C1~4アルキルおよびC1~4フルオロアルキルから独立して選択され、
は薬学的に許容され得るアニオンである)
である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヘミチャネル遮断薬が、1投与当たり約10~200mgの範囲の量で経口投与される、請求項1から5または6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ヘミチャネル遮断薬が、1日当たり約80~320mgの範囲の量で経口投与される、請求項1から5または6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ヘミチャネル遮断薬が、1投与当たりまたは1日当たり約0.2mg/kg~約5mg/kgの範囲の量で経口投与される、請求項1から5または6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記対象におけるトナベルサットの循環濃度が約10マイクロモル濃度~約90マイクロモル濃度の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘミチャネル阻害剤が注射によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ヘミチャネル阻害剤が経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘミチャネル阻害剤が1日1回または1週間に1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘミチャネル阻害剤が1日2回以上投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘミチャネル阻害剤がヘミチャネルの閉鎖を誘導または促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ヘミチャネル阻害剤がヘミチャネル開口を遮断する、阻害するまたは減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘミチャネル阻害剤がヘミチャネルの細胞内在化を誘発、誘導または促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患、障害または状態が増殖性硝子体網膜症である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
対象における上皮間葉転換活性を阻害するための方法であって、ヘミチャネル阻害剤を前記対象に上皮間葉転換活性を阻害するのに有効な量で投与することを含む方法。
【請求項21】
前記ヘミチャネル阻害剤がコネキシン43ヘミチャネル阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘミチャネル阻害剤が低分子ヘミチャネル阻害剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ヘミチャネル阻害剤がN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(トナベルサット)である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘミチャネル阻害剤が化合物であり式(I)の化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記ヘミチャネル阻害剤が化合物であり式(II)の化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が線維性障害を有する、請求項20または23のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、部分的に病理学的または望ましくない上皮間葉転換活性を特徴とする障害を有する、請求項20または23のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記障害が腎臓障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記障害が肺障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記障害が肝障害である、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、概して、コネキシンヘミチャネル、ならびに疾患における上皮間葉転換または他の病理学的もしくは異常なレベルの上皮間葉転換を阻害するための組成物および方法に関する。本発明は、病理学的または他の望ましくない上皮間葉転換をモジュレート、阻害、抑制および安定化するための、抗コネキシン43ヘミチャネル開口化合物、阻害剤および遮断薬を含む抗ヘミチャネル化合物の使用に関する。
参照による組み込み
【0002】
本明細書に記載される全ての米国特許、米国特許出願公開、外国特許、外国およびPCT公開出願、論文および他の文書、参考文献および刊行物、ならびにそこから発行されるいずれかの単一の特許もしくは複数の特許において引用された参考文献として列挙される全てのものは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれる情報は、全てのテキストおよび他の内容が本出願で繰り返されるのと同様に本出願の一部であり、出願時の本出願のテキストおよび内容の一部として扱われる。
【背景技術】
【0003】
簡単な背景
以下は、本発明を理解するのに有用となり得る情報を含む。本明細書で具体的または暗示的に言及される情報、刊行物または文書のいずれも、ここに記載または特許請求されている発明に対する先行技術であることを認めるものでも、必須であることを認めるものでもない。
【0004】
上皮細胞および内皮細胞が間葉系細胞に形質転換する能力は、周知の細胞機序である。上皮間葉転換(EMT)または内皮間葉転換(EndMT)と呼ばれるこのプロセスは、胚発生の様々な段階を調節するが、広範囲の疾患の進行にも寄与する。J.P.Thieryら「Epithelial-mesenchymal transitions in development and disease」、Cell 第139巻、第5号、871~890頁、2009年;R.KalluriおよびR.A.Weinberg、「The basics of epithelial-mesenchymal transition」、J.Clin.Invest.、第119巻、第6号、1420~1428頁、2009年を参照されたい。EMTにおいて、極性化上皮細胞は、運動性中皮表現型の特徴を獲得する。これは、極性化上皮細胞が間葉系になるまで表現型を変化させる多段階プロセスである(Kalluri&Weinberg、2009年)。これらの変化は、転写因子の活性化および不活性化ならびに特異的mRNAの発現から、細胞骨格タンパク質および細胞表面タンパク質の発現および構造の変化にまで及ぶ(Kalluri&Weinberg、2009年)。移行中の細胞は、上皮表現型と間葉表現型の両方を示し、それらのそれぞれの割合は、プロセスが進行するにつれて変化する。共通の進行にもかかわらず、EMTが起こる条件は3つのタイプに分けられている。「1型」EMTは、着床、胚形成および器官発生中に起こるが、「3型」EMTは新生物細胞で起こり、がんの進行および転移に関連する。「2型」は、臓器線維症、組織再生および創傷治癒に関連し、外傷および/または炎症後の組織で頻繁に起こる。
【0005】
胚形成中、EMTは原腸形成、原始線条形成、体節解離、神経堤発達、ならびに口蓋および口唇融合に不可欠である。EndMTは、心臓の発達、特に心臓の弁および中隔の形成、ならびに中胚葉細胞および複能性前駆体の生成に重要である。
【0006】
成体生物では、EMTおよびEndMTは通常、病理学的刺激がこの胚性機序を覚醒させるまで休眠状態である。例えば、EMTは、がん転移の主要な機序である(G.P.GuptaおよびJ.Massague、「Cancer metastasis:building a framework」、Cell、第127巻、第4号、679~695頁、2006年;J.-Y.ShihおよびP.-C.Yang、「The EMT regulator slug and lung carcinogenesis」、Carcinogenesis、第32巻、第9号、1299~1304頁、2011年)のに対して、EndMTは、腫瘍微小環境においてがん関連線維芽細胞を形成する。S.Potentaら、「The role of endothelial-to-mesenchymal transition in cancer progression」、British Journal of Cancer、第99巻、第9号、1375~1379頁、2008年。また、EMTとEndMTの両方が、組織損傷後または炎症性疾患および線維性疾患に関連して瘢痕組織の形成を引き起こす線維芽細胞を生成することが示されている。R.KalluriおよびE.G.Neilson、「Epithelial-mesenchymal transition and its implications for fibrosis」、J.Clin.Invest.、第112巻、第12号、1776~1784頁、2003年;S.Piera-Velazquezら、「Role of endothelial-mesenchymal transition(EndoMT)in the pathogenesis of fibrotic disorders」、American Journal of Pathology、第179巻、第3号、1074~1080頁、2011年;P.Pessinaら、「Fibrogenic cell plasticity blunts tissue regeneration and aggravates muscular dystrophy」、Stem Cell Reports、第4巻、第6号、1046~1060頁、2015年。間葉転換は、伝統的に、発生においてプラスの効果を有し、疾患においてマイナスの効果を有すると考えられてきた。多くの研究は、EMTの誘導が、上皮がん細胞が転移を促進する悪性表現型を獲得する主要な機序であることを提案している。
【0007】
EMTは、傷害後の網膜色素上皮細胞においても観察されている(Leeら、2020年;Yangら、2020年;Cheら、2016年;Chenら、2014年)。網膜色素上皮細胞における上皮間葉転換もまた、黄斑変性に関連するなど、網膜下線維症の発病に関連する。RPE細胞は、眼の後部で外側血液網膜関門(BRB)を形成し、機能的重要性が高く、網膜グルコース恒常性、光受容体機能性および血管新生のバランスを調節し、RPE機能の破壊は、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性(AMD)および増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む複数の眼疾患に関与している(Hyttinenら、2019年;Chenら、2014年;Cheら、2016年)。これらのうち、PVRは既にEMTと関連づけられているが(Tamiya&Kaplan、2016年)、糖尿病状態に特徴的な高グルコースもまた、RPE細胞においてEMTを誘導することが見出されている(Cheら、2016年)。RPE細胞においてEMTが誘導される機序は依然として議論されているが、複数の疾患経路がその活性化に関連づけられている。高グルコース(Cheら、2016年)とTGF-β(Monyら、2013年;Chenら、2014年)の両方が、独立して、RPE細胞においてEMTを誘導することが示されている。特に、高グルコースは、重要なEMT転写因子の1つであるSnailの発現を増加させることが見出された(Cheら、2016年)。
【0008】
増殖性硝子体網膜症は、裂孔原性網膜剥離の重度の失明する合併症である。RPE細胞の上皮間葉転換は、PVRの発病において極めて重要な役割を果たすと考えられている。RPE細胞がそれらの上皮特性を失い、間葉系細胞に形質転換することを可能にする上皮間葉転換(EMT)は、PVR膜の形成の根底にある基本的な機序と考えられている。発癌におけるEMTと同様に、RPE細胞のEMTは、関連する細胞経路の活性化、細胞骨格の再構成、およびRPE細胞間の接合部の分解を伴う。古典的なEMTトリガーであるトランスフォーミング成長因子(TGF)-βもPVR患者の眼に見出される。したがって、RPE細胞のEMTを遮断することが、PVRを予防するための効率的な方法となる。しかしながら、数十年にわたるPVRにおけるRPE細胞のEMTの研究にもかかわらず、これを予防するための現在利用可能な薬物はない。
【0009】
EMTはまた、内皮細胞密度の喪失および線維芽細胞型への形態変化を含む後天性または遺伝性角膜疾患の一次的変化と共に、眼の角膜内皮でも観察されている。遺伝性疾患には、最も一般的な角膜内皮ジストロフィーであり、視力喪失につながるフックス角膜内皮ジストロフィーが含まれる。後天性疾患には、偽水晶体性または無水晶体性水疱性角膜症(Aphakic bulbous keratoplasty)、および以前の角膜移植の失敗が含まれる。
【0010】
デスメ膜剥離角膜内皮移植術(DSEK)または自動化DSEK(DAESK)は、角膜の透明度および生存率を保持するために不可欠であるが、限られたドナー組織の利用可能性によって制約される、角膜内皮修復のために多くのセンターで選択される手技である。人工角膜組織を構築するために組織工学が使用されているが、内皮細胞のEndoMTが依然として課題である。
本発明者らは、コネキシン43およびコネキシン43ヘミチャネルを含む、コネキシンおよびコネキシンヘミチャネルのEMTにおける潜在的役割を研究した。本発明者らは、コネキシンヘミチャネル調節剤(modulation agent)が、EMTをモジュレートするために使用することができ、EMT、ならびに網膜下線維症などを特徴とするものを含む網膜疾患を含む疾患におけるEndMTの治療薬として役立つ抗EMT剤であることを発見した。本特許は、EMT関連疾患、障害および状態における上皮間葉転換を改変および阻害することができる抗ヘミチャネル化合物を含む方法および組成物の重要な発見に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.P.Thieryら「Epithelial-mesenchymal transitions in development and disease」、Cell 第139巻、第5号、871~890頁、2009年
【非特許文献2】R.KalluriおよびR.A.Weinberg、「The basics of epithelial-mesenchymal transition」、J.Clin.Invest.、第119巻、第6号、1420~1428頁、2009年
【非特許文献3】G.P.GuptaおよびJ.Massague、「Cancer metastasis:building a framework」、Cell、第127巻、第4号、679~695頁、2006年
【非特許文献4】J.-Y.ShihおよびP.-C.Yang、「The EMT regulator slug and lung carcinogenesis」、Carcinogenesis、第32巻、第9号、1299~1304頁、2011年
【非特許文献5】S.Potentaら、「The role of endothelial-to-mesenchymal transition in cancer progression」、British Journal of Cancer、第99巻、第9号、1375~1379頁、2008年
【非特許文献6】R.KalluriおよびE.G.Neilson、「Epithelial-mesenchymal transition and its implications for fibrosis」、J.Clin.Invest.、第112巻、第12号、1776~1784頁、2003年
【非特許文献7】S.Piera-Velazquezら、「Role of endothelial-mesenchymal transition(EndoMT)in the pathogenesis of fibrotic disorders」、American Journal of Pathology、第179巻、第3号、1074~1080頁、2011年
【非特許文献8】P.Pessinaら、「Fibrogenic cell plasticity blunts tissue regeneration and aggravates muscular dystrophy」、Stem Cell Reports、第4巻、第6号、1046~1060頁、2015年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
簡単な概要
本明細書に記載および特許請求される発明は、それだけに限らないが、この発明の概要に示されるまたは記載されるまたは言及されるものを含む、多くの属性および実施形態を有する。これは包括的であることを意図するものではなく、本明細書に記載および特許請求される発明は、制限ではなく例示のみの目的のために含まれる、この序論で特定される特徴または実施形態に限定されず、これらによって限定もされない。
【0013】
本特許は、上皮間葉転換(EMT)を阻害するための抗ヘミチャネル化合物の方法および組成物および使用に関する。本特許はまた、適切な(非病理学的)レベルのEMTを維持するための抗ヘミチャネル化合物の方法および組成物および使用に関する。本特許はさらに、内皮間葉転換(EndMT)を阻害するための抗ヘミチャネル化合物の方法および組成物および使用に関する。本特許はまた、適切な(非病理学的)レベルのEndMTを維持するための抗ヘミチャネル化合物の方法および組成物および使用に関する。
【0014】
本明細書のデータは、例えば、抗ヘミチャネル化合物を使用して、慢性網膜疾患、状態および障害におけるEMTを含む、EMTを阻害することができることを示す。抗ヘミチャネル化合物を使用して、EMTを非病理学的レベルで維持することができることも発見された。抗ヘミチャネル化合物を使用して、内皮間葉転換(EndMT)を非病理学的レベルで維持することもできる。
【0015】
よって、一態様では、本発明は、上皮間葉転換(EMT)を阻害するための抗ヘミチャネル化合物の使用を提供する。別の態様では、本発明は、内皮間葉転換(EndMT)を阻害するための抗ヘミチャネル化合物の使用を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、網膜におけるEMTを調節するための方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、網膜色素上皮におけるEMTを調節するための方法を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、網膜色素上皮細胞におけるEMTを調節するための方法を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、角膜におけるEndMTを調節するための方法を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、角膜内皮細胞におけるEndMTを調節するための方法を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、がんにおけるEMTを調節するための方法を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、線維性疾患、障害および状態におけるEMTを調節するための方法を提供する。
【0023】
本特許はまた、罹患患者におけるEMTを阻害するための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用、EMT関連疾患を逆転または実質的に逆転させるための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載している。
【0024】
本特許はまた、慢性眼疾患に罹患している、必要とする患者における正常なEMT機能を救済するための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載している。
【0025】
本特許はまた、少なくとも部分的に調節不全EMTを特徴とする慢性眼疾患に罹患している、必要とする患者におけるEMTを阻害するための経口送達抗ヘミチャネル化合物の使用も記載している。
【0026】
本特許はまた、これらの目的のために、例えば、トナベルサット、ベンゾピラン化合物(シス-6-アセチル-4S-(3-クロロ-4-フルオロベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-2H-ベンゾ[b]ピラン-3 S-オール(SB-220453、Xiflamまたはトナベルサットとも呼ばれる)、ならびにトナベルサットプロドラッグ(例えば、式IIの化合物参照)を含む、抗ヘミチャネル化合物を使用するための方法に関する。
【0027】
本発明は、一態様では、例えば、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性および増殖性硝子体網膜症を含む、全体的または部分的に病理学的または他の望ましくないEMT活性を特徴とする状態を有する対象におけるEMT調節不全を処置するための抗ヘミチャネル化合物の使用に関する。
【0028】
いくつかの方法では、EMTモジュレーションまたは阻害が慢性網膜障害を処置する。他の態様では、慢性網膜障害が糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性または増殖性硝子体網膜症である。他の態様では、生存を増加させる方法が、病理学的または他の望ましくないレベルのEMT活性を特徴とする網膜障害または他の障害を処置する。
【0029】
いくつかの方法では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が線維症/線維性障害を処置する。一実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害が眼線維症障害を処置する。上皮間葉転換は、損傷した腎尿細管細胞が、腎臓および慢性腎不全における線維症の発症に寄与する間葉系細胞に形質転換する機序として広く受け入れられており、いくつかの実施形態では、例えばコネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートする化合物および方法を使用したEMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が腎線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎不全または慢性腎不全を処置する。いくつかの実施形態では、EMT調節または阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎臓損傷後の腎上皮細胞におけるEMTおよび/またはEndMTを処置する。本方法の別の実施形態では、対象におけるEMTまたはEndMT関連の疾患、障害または状態が、がんである。いくつかの実施形態では、例えばコネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートする化合物および方法を使用したEMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎不全または慢性腎不全を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎臓損傷後の腎上皮細胞におけるEMTを処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、眼および腎臓以外の器官における線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、炎症後の線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎臓損傷後の腎上皮または内皮細胞におけるEMTまたはEndMTを処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が任意の線維性障害を処置する。本明細書で使用される場合、線維性障害には、上皮細胞が筋線維芽細胞表現型および最終的に線維性表現型を獲得するように誘導される任意の疾患、障害または状態が含まれる。本発明の化合物および方法で処置可能なEMTおよびEndMT関連線維性障害には、例えば、肺(pulmonary)(肺(lung))線維症、腎線維症、特発性肺線維症、肝線維症(B型肝炎およびC型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、およびアルコール乱用に起因する肝線維症を含む)、腸線維症、眼線維症、脂肪組織線維症、心臓および他の器官の線維症、ならびに強皮症が含まれる。
【0030】
本特許は、一態様では、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートして、EMT活性を阻害するための、化合物および方法の使用を記載している。本特許はまた、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートして、正常なEMT活性を維持するための、化合物および方法の使用を記載している。
【0031】
本特許は、一態様では、コネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートして、急性または慢性全身性高血糖によって引き起こされるEMTを阻害するための、化合物および方法の使用を記載している。
【0032】
本発明で有用な抗ヘミチャネル化合物には、式Iの化合物、例えばXiflam(トナベルサット)、および/または前記化合物のいずれかのプロドラッグ、ならびに本明細書に記載または参照により組み込まれる他の抗ヘミチャネル化合物が含まれる。いくつかの実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、Xiflam(トナベルサット)以外の低分子、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Colin Greenらの名前で出願された米国特許出願公開第20160177298号において式Iまたは式IIに記載されるヘミチャネル遮断薬である。
【0033】
一実施形態では、コネキシンヘミチャネルをモジュレートするために使用される化合物が式Iによる化合物である。
【0034】
別の実施形態では、コネキシンヘミチャネルをモジュレートするために使用される化合物が式IIによる化合物である。
【0035】
一実施形態では、コネキシンヘミチャネルをモジュレートするために使用される化合物がペプチドヘミチャネル阻害剤である。一実施形態では、コネキシンヘミチャネルをモジュレートするために使用される化合物がコネキシン43ペプチド模倣物である。有用なコネキシン43ペプチド模倣物には、例えば、ペプチド5、GAP9、GAP19、GAP26、GAP27またはα-コネキシンカルボキシ末端(ACT)ペプチド、例えばACT-1、または他の活性抗ヘミチャネルペプチド模倣物が含まれる。
【0036】
一実施形態では、コネキシンヘミチャネルをモジュレートするために使用される化合物が、(a)B型肝炎ウイルスのXタンパク質に由来する標的化キャリアペプチド、および(b)コネキシン43(Cx43)の細胞内ドメインと相互作用することができるペプチド、例えばその開示全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT出願番号PCT/NZ2018/050059(「Methods of Treatment and Novel Constructs」)に記載されるXG19を含むペプチド構築物である。
【0037】
本発明の別の目的は、EMTの阻害および/または正常なEMT活性の回復から利益を得る疾患、障害および状態を処置するための化合物、組成物、製剤、キット、用量および方法を提供することである。
【0038】
いくつかの態様では、処置方法が哺乳動物、例えばヒトに適用される。
【0039】
ヘミチャネル阻害剤は、任意の当技術分野で公知の方法を使用して送達され得るが、いくつかの好ましい実施形態は、網膜および/または脈絡膜の構造または機能の喪失のリスクがある、またはそのリスクがある可能性がある対象におけるEMT活性を阻害するための、経口で利用可能な低分子抗ヘミチャネル化合物の使用を含む。
【0040】
本発明の他の態様は、慢性網膜障害を有する対象におけるEMTを阻害またはモジュレートする方法であって、有効量のヘミチャネル遮断薬を前記対象に投与することを含む方法を含む。
【0041】
EMTを阻害することまたはモジュレートすることを必要とする対象においてEMTを阻害するまたはモジュレートするための方法であって、例えば、EMT阻害量のN-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を前記対象に投与することを含む方法が含まれる。いくつかの実施形態では、阻害量が1投与当たりまたは1日当たり約50~約250mgである。他の実施形態では、生存促進量が1日当たり約80~約320mg、400mg、500mgまたは最大約1000mgである。これらの量は、単回投与または分割投与、例えばBIDで投与され得る。他の1日量、ならびに特に有用な毎週、毎月およびインプラントの投与および投与レジメンが本明細書で提供される。様々な実施形態では、ヘミチャネル開口を遮断または改善または阻害する低分子が、Xiflam(トナベルサット)のプロドラッグまたはその類似体である。
【0042】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載または言及される、対象、または疾患、障害および状態の処置に使用するための医薬の製造におけるヘミチャネル遮断薬の使用を提供する。医薬は、抗ヘミチャネル化合物を含む、から本質的になる、またはからなる。一実施形態では、抗ヘミチャネル化合物が低分子抗ヘミチャネル化合物である。別の実施形態では、低分子抗ヘミチャネル化合物が経口で利用可能な低分子抗ヘミチャネル化合物である。
【0043】
本発明の方法の他の態様では、EMTが改善または正常化される。
【0044】
別の態様では、本発明は、ヘミチャネルをモジュレートするため、ならびに本明細書に記載または言及される疾患、障害および/または状態のいずれかを含むEMT関連疾患、障害および/または状態を処置するための医薬(あるいは使用のための指示の有無にかかわらず、1またはそれを超える医薬および/または容器を含有するパッケージまたはキット)の製造におけるヘミチャネル遮断薬の使用を提供する。一態様では、例えば、本発明は、例えば、Xiflamおよび/またはその類似体もしくはプロドラッグを含む低分子コネキシンヘミチャネル遮断薬の使用を提供する。一実施形態では、医薬が、コネキシン43ヘミチャネル遮断薬、例えば低分子コネキシン43ヘミチャネル遮断薬を含む、から本質的になる、またはからなる。一実施形態では、本発明で有用なヘミチャネル遮断薬組成物が、薬学的に許容され得る担体を含み得、例えば、丸剤、液剤、ミクロスフェア、リポソーム、ナノ粒子、インプラント(例えば、腹膜、皮下および眼インプラント、ならびに遅延放出または制御放出インプラントを含む)、マトリックス、もしくはヒドロゲル製剤として製剤化され得る、または凍結乾燥形態で提供され得る。
【0045】
本明細書に記載される目的のためにモジュレートされるヘミチャネルは、その目的のために対象となる任意のコネキシンであり得る。例えば、本明細書に記載される目的のためにモジュレートされるヘミチャネルは、網膜、血管および/または血管壁で発現されるコネキシンヘミチャネルであり得る。一実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、微小血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、毛細血管内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。
【0046】
他の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、上皮内または内皮内のコネキシンヘミチャネルを遮断する。
【0047】
様々な実施形態では、例として、モジュレートされるヘミチャネルが、コネキシン36(Cx36)、コネキシン37(Cx37)、コネキシン40(Cx40)、コネキシン43(Cx43)、コネキシン45(Cx45)、コネキシン57(Cx57)、コネキシン59(Cx59)および/またはコネキシン62(Cx62)のうちの1またはそれを超える数を含む。
【0048】
一実施形態では、特に網膜に関する場合、モジュレートされるヘミチャネルが、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45またはCx57タンパク質のうちの1またはそれを超える数を含む。標的化ヘミチャネルコネキシンには、例えば、血管内の選択されたヘミチャネルコネキシン(例えば、Cx37、Cx40またはCx43)、ならびに星状膠細胞(例えば、Cx43)、アマクリン細胞(例えば、Cx36、Cx45)、双極細胞(例えば、Cx36、Cx45)、外網状層および内網状層、神経節細胞層(例えば、Cx36、Cx45)、錐体光受容体および網膜内皮細胞、ならびに他の網膜ニューロン内のヘミチャネルコネキシンのうちの1またはそれを超える数が含まれる。いくつかの実施形態では、Cx36およびCx43ヘミチャネルが標的化される。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルがCx43を含む。一実施形態では、外網状層の細胞内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化される(例えば、Cx43)。
【0049】
他の実施形態、特に脈絡膜または網膜の血管に関する実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、Cx37、Cx40またはCx43タンパク質のうちの1またはそれを超える数を優先的に含み得る。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルがCx43を含む。一実施形態では、大口径の有窓でない血管で構成される、ハラー層としても知られる、外脈絡膜の細胞内の血管コネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、有意に小さい血管で構成される、サットレル層としても知られる、内脈絡膜の細胞内の血管および内皮細胞コネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、外脈絡膜および内脈絡膜の細胞内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、脈絡毛細管板の毛細血管内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。一実施形態では、本発明の方法において標的化されるヘミチャネル血管コネキシンが、周皮細胞内のヘミチャネルコネキシンならびに血管平滑筋および内皮細胞内のコネキシンを含む。別の実施形態では、本発明の方法において標的化されるヘミチャネル血管コネキシンが、周皮細胞内のヘミチャネルおよび内皮細胞、例えば微小毛細血管内のコネキシンを含む。Cx43ヘミチャネルが本発明の好ましい標的である。
【0050】
本発明の1つの方法は、(1)EMT関連疾患、障害または状態を有する対象を特定するステップ、(2)治療有効量のコネキシンヘミチャネル阻害剤を対象に投与するステップ、および必要に応じて、(3)対象におけるEMT活性を測定または可視化するステップを含む。一実施形態では、EMT活性が測定または可視化され、用量が維持または調整される。本方法の一実施形態では、対象がEMT関連疾患を有することが既に知られているので、ステップ(1)は必要とされない。一実施形態では、疾患、障害または状態がEndMT関連疾患、障害または状態である。一実施形態では、EMTおよび/またはEndMTが、低下、阻害または減弱される。本方法の一実施形態では、コネキシンヘミチャネル阻害剤がコネキシン43ヘミチャネル阻害剤である。本方法の一実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤が低分子コネキシン43ヘミチャネル阻害剤である。本方法の別の実施形態では、コネキシンヘミチャネル阻害剤が、コネキシン43ヘミチャネル開口または活性を阻害または遮断する抗コネキシン43ヘミチャネルペプチドまたはペプチド模倣物である。本方法の一実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤がトナベルサットである。本方法の別の実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤がカラベルサットである。本方法の一実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態がEMT調節不全を特徴とする。本方法の一実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態が、全体的または部分的に病理学的または他の望ましくないEMT活性を特徴とする。本方法の一実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態が、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性または増殖性硝子体網膜症である。本方法の別の実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態が、病理学的または他の望ましくないレベルのEMT活性を特徴とする網膜障害または他の障害である。本方法の別の実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態がフックス角膜内皮ジストロフィーまたは偽水晶体性もしくは無水晶体性角膜症である。本方法の別の実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態が線維症障害である。一実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害が眼線維症障害を処置する。本方法の別の実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態ががんまたは腎疾患もしくは損傷である。
【0051】
本発明のこの態様の別の実施形態は、低分子または他のヘミチャネル遮断薬を含む医薬品パックを提供する。一実施形態では、ヘミチャネル遮断薬がXiflam(トナベルサット)である。別の実施形態では、医薬品パック中のヘミチャネル遮断薬が、例えば、ペプチド5、GAP9、GAP19、GAP26、GAP27またはα-コネキシンカルボキシ末端(ACT)ペプチド、例えばACT-1、または他の活性抗ヘミチャネルペプチド模倣物を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0052】
ヘミチャネル遮断薬の活性は、ある特定の生物学的アッセイを使用して評価され得る。分子運動性に対する既知のまたは候補ヘミチャネル遮断薬の効果は、ヒト成人網膜色素上皮細胞を使用する以下の実施例に記載される方法、またはコネキシンヘミチャネルを通る化合物の通過を決定するための他の当技術分野で公知の方法もしくは等価な方法を使用して、特定、評価、またはスクリーニングすることができる。色素移動実験、例えば、検出可能なマーカーで標識された分子の移動、ならびにヘミチャネルの機能状態を研究するために広く使用されている小型蛍光透過性トレーサーの膜貫通通過を含む様々な方法が当技術分野で知られている。化合物がヘミチャネルを遮断する能力を特定または評価するのに使用する方法であって、(a)試験試料と試験系を一緒にし、前記試験試料は1またはそれを超える試験化合物を含み、前記試験系はヘミチャネル遮断を評価するための系を含み、前記系は、例えば、前記系への低酸素もしくは虚血の導入に応答した、色素もしくは標識代謝産物の移動の増加、炎症のメディエーター、またはヘミチャネル開口を誘導する他の化合物もしくは事象、例えば細胞外Ca2+の低下を示すことを特徴とすることと;(b)前記系における、例えば、色素または他の標識代謝産物(複数可)の存在または増加量を決定すること、とを含む方法を含む、本発明のこの態様の様々な実施形態が本明細書に記載される。陽性および/または陰性対照も同様に使用され得る。必要に応じて、所定量のヘミチャネル遮断薬(例えば、Xiflam)が試験系に加えられ得る。ヘミチャネル遮断薬活性を評価するのに有用な他の方法には、電気生理学およびチャネルコンダクタンスブロック技術、細胞質膨潤または細胞浮腫の減少、および細胞からのカリウム流出の減少が含まれ、これらは全て当技術分野で公知である。
【0053】
一態様では、ARPE-19細胞を使用する試験を含むアッセイを使用して、網膜機能を回復または救済するのに有用な化合物の活性を確認、測定または評価するための方法が提供される。Dunn KCら、ARPE-19,a human retinal pigment epithelial cell line with differentiated properties Exp Eye Res.1996年2月;62(2):155-69を参照されたい。超音波検査、磁気共鳴画像法(MRI)、ならびに増強深度イメージング光干渉断層撮影(EDI-OCT)および波長掃引型OCT(SS-OCT)を含む当技術分野の方法が、EMTおよびEndMT活性を阻害するのに有用な化合物の活性を確認、測定または評価するために使用され得る。
【0054】
一態様では、B4G12細胞を使用する試験を含むアッセイを使用して、角膜内皮機能を回復または救済するのに有用な化合物の活性を確認、測定または評価するための方法が提供される。インビボ共焦点顕微鏡法、角膜厚測定、接触および非接触鏡面光顕微鏡法(specular photo microscopy)(Gasser,L.、Reinhard,T.&Boehringer,D.Comparison of corneal endothelial cell measurements by two non-contact specular microscopes.BMC Ophthalmol 2015;15:87参照)を含む当技術分野の方法が、角膜内皮機能を回復または救済するのに有用な化合物の活性を確認、測定または評価するために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1 HG+Cyt処理は、72時間にわたってARPE-19細胞の表現型の変化を誘導し、効果は経時的に増加した。未処理細胞は、切断された線維芽細胞または立方体形態を有する。HG+Cyt処理細胞は伸長および伸展する。スケールバー=50μm。
【0056】
図2図2(a、b)RPE65発現は、HG+Cyt傷害後に低下したが、式Iのヘミチャネル阻害剤であるトナベルサットの共適用(HG+Cyt+Ton)によって防止された。(c、d)α-SMA発現は、未処理条件と比較して、HG+Cyt傷害後に増加し、より線状に見えたが、トナベルサットの添加によって(HG+Cyt+Ton)変化が妨げられた。n=4;四角で囲まれた領域は拡大されている;スケールバー=50または25μm。
【0057】
図3図3(a)平均蛍光強度によるRPE65発現の定量は、RPE65発現が24時間でHG+Cyt群と比較してHG+Cyt+Ton群で有意に高いことを示した(p=0.0286)。(b)72時間までに、HG+Cytは、未処理条件と比較してRPE65発現が有意に低下した(p=0.0040)が、HG+Cyt+Ton群とHG+Cyt群との間に統計学的有意差はなかった。(c)24時間で、α-SMA発現は、未処理条件よりもHG+Cyt後に有意に高かった(p=0.0459)。(d)72時間までに、HG+Cyt+Ton処理群は、HG+Cyt傷害単独と比較して、α-SMA発現レベルが有意に低下した(p=0.0119)。(e)α-SMAのRPE65に対する発現の割合は、24時間と72時間の両方のインキュベーション後、未処理およびHG+Cyt+Ton条件と比較して、HG+Cyt傷害後に著しく高かった。24時間で、未処理群は1.0のα-SMA対RPE65比を有し、HG+Cyt群は1.7の比を有し、HG+Cyt+Ton群は1.1の比を有した。同様の傾向が72時間で見られ、未処理群およびHG+Cyt+Ton群は1.0および0.8の同様の比を有し、HG+Cyt傷害群は1.5に上がっていた。破線は、1.0の比を示す。統計分析は、ダネットの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用して行った。p≦0.05;**p≦0.01;n=4。図3図6および図7では、基礎状態が左側の全て黒いバーに示されており、HG+Cytが中央のバーであり、HG+Cyt+Tonが右側のバーである。
【0058】
図4図4(a)HG+Cyt+Ton処理は、HG+Cytによって誘導されるタイトジャンクション喪失を防止する。ZO-1局在化は、HG+Cyt傷害後に見られる細胞膜への局在化の喪失を伴い、処理条件によって影響されることが分かった。トナベルサットの追加(HG+Cyt+Ton)は、ZO-1細胞膜局在化の喪失を防止したが、未処理群と比較して少量の内在化が依然として起こった。(b)HG+Cyt+Ton処理は、Cx43局在化のHG+Cytによって誘導される喪失を防止し、これは外因性ATPの添加によって逆転された。Cx43細胞膜局在化はHG+Cyt条件によって減少したが、トナベルサットの添加がCx43局在化を維持した。スケールバー=50または25μm。
【0059】
図5-1】図5 HG+Cyt傷害後に細胞遊走が増加したが、HG+Cyt+Ton処理はこれらの変化を部分的に防止した。24時間で、未処理群の細胞は、擦過傷幅(scrape wound width)の有意な変化を示さなかった(p=0.9789)が、HG+Cytで処理した細胞は、0時間と比較して有意な擦過傷閉鎖を示した(p<0.0001)。HG+Cyt+Ton処理は、擦過傷閉鎖の減少をもたらしたが、未処理細胞と比較して有意な変化が依然として観察された(p=0.0015)。ダネットの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用して統計分析を行って、ある時点内の処理を比較し、次いで、経時的に処理群内の擦過傷閉鎖を比較した。所与の時点での処理条件間の比較。**p≦0.01;****p≦0.0001。+所与の処理群内の0時間時点との比較。++p≦0.01;++++p≦0.0001;n=10;点線は、擦過傷の縁を示す。スケールバー=50μm。
図5-2】図5 HG+Cyt傷害後に細胞遊走が増加したが、HG+Cyt+Ton処理はこれらの変化を部分的に防止した。24時間で、未処理群の細胞は、擦過傷幅(scrape wound width)の有意な変化を示さなかった(p=0.9789)が、HG+Cytで処理した細胞は、0時間と比較して有意な擦過傷閉鎖を示した(p<0.0001)。HG+Cyt+Ton処理は、擦過傷閉鎖の減少をもたらしたが、未処理細胞と比較して有意な変化が依然として観察された(p=0.0015)。ダネットの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用して統計分析を行って、ある時点内の処理を比較し、次いで、経時的に処理群内の擦過傷閉鎖を比較した。所与の時点での処理条件間の比較。**p≦0.01;****p≦0.0001。+所与の処理群内の0時間時点との比較。++p≦0.01;++++p≦0.0001;n=10;点線は、擦過傷の縁を示す。スケールバー=50μm。
【0060】
図6図6(a)FITC-デキストランは、未処理細胞(p<0.0001)とHG+Cyt+Ton処理細胞(p<0.0001)の両方と比較して、HG+Cyt傷害後にARPE-19細胞単層を通した有意に高い透過性を示した。統計分析は、ダネットの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用して行った。****p≦0.0001;n=3。(b)経上皮電気抵抗(TEER)は、未処理細胞およびHG+Cyt+Ton処理細胞と比較して、HG+Cyt傷害後に有意に減少した。24時間から72時間まで、有意な処理効果が観察され、HG+Cyt群は、未処理(p=0.0292)群とHG+Cyt+Ton(p=0.0015)処理群の両方よりも有意に低いTEERを示した。48時間で、HG+Cyt傷害細胞は依然として、HG+Cyt+Ton処理よりも有意に低いTEERを示した(p=0.0029)。72時間までに、TEERは、未処理(p=0.0048)群とHG+Cyt+Ton(p=0.0004)群の両方と比較して、HG+Cyt群で再び有意に低かった。統計分析は、ダネットの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを使用して行った。p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001;n=3。
【0061】
図7図7(a)HG+Cytは、24時間でTGF-β2を誘導した(p=0.0089)が、TGF-β1放出は誘導しなかった。トナベルサット処置(p=0.0057)は、HG+Cytによって誘導されたTGF-β2放出を防止し、未処理レベルに戻した。(b)72時間までに、TGF-β1レベルとTGF-β2レベルの両方に関して全ての群の間に有意差はなかった。統計分析は、ダネットの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを使用して行った。p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001;n=3。
【発明を実施するための形態】
【0062】
詳細な説明
上皮細胞が間葉系細胞に変形するEMTのプロセスは、間葉表現型を共有する多様な細胞型を作り出すために胚形態形成において必要な正常な出来事である(Kalluri&Weinberg、2009年)。しかしながら、EMTが、他の状況において、例えば、眼、腎臓および他の器官におけるがんの進行および組織線維症で起こり、炎症後に組織線維症が発症する場合、問題が生じる。眼においては、網膜の線維症は、網膜の柔軟性の喪失と収縮特性の獲得の両方をもたらし、視力の喪失をもたらし得るだけでなく、網膜剥離を引き起こし得る(Tamiya&Kaplan、2016年;Krollら、2007年)。最近の研究は、NLRP3インフラマソームをヒト腎尿細管およびヒト気管支上皮細胞のEMTに関係づけており、NLRP3インフラマソームのノックダウンはEMT誘導を阻害する(Liら、2018年;Songら、2018年)。しかしながら、網膜、特にRPE細胞におけるEMTの調節におけるNRLP3の役割は不明のままである。
【0063】
本特許は、コネキシンヘミチャネルがRPE細胞のEMTにおいて役割を果たすことを示し、様々な病態におけるコネキシン43ヘミチャネルの広範な影響をさらに裏付けている。ARPE-19細胞は、HG+Cyt傷害後に形態を変化させ、古典的な立方体玉石単層(cuboidal cobblestone monolayer)から、線維性組織に存在する線維芽細胞を連想させる細長い紡錘状の形状に形質転換することが最初に分かった。これら2つの形態間の進行は、EMTの指標として既に十分に確立されている(Tamiya&Kaplan、2016年;Wangら、2017年;Hyttinenら、2019年;Tamiyaら、2010年)。インキュベーション時間が増加するにつれて、細胞の割合および形態変化の程度も増加した。これらの形態学的変化は、HG+Cyt傷害後の表現型調整によって裏付けられ、RPE特異的マーカーであるRPE65の発現低下が、間葉系マーカーであるα-SMAの発現増加によって打ち消された。さらに、α-SMA標識は、その細胞分布がより伸長し、線条化することを示した。また、これらの表現型変化は、EMTについて予想される通りであり、Tamiyaら(2010)は、以前に、RPE65発現がEMTの進行とともに低下することを実証し、誘導されたEMTのマーカーとして頻繁に使用されるα-SMA発現が獲得された(Wangら、2017年;Songら、2018年;Jingら、2019年;Yangら、2020年;Kobayashiら、2019年)。
【0064】
これらの観察された細胞変化は、機能的帰結の変化に置き換えられた。DR様傷害(HG+Cyt)は、細胞膜ZO-1局在化の喪失をもたらし、細胞間タイトジャンクションの喪失を示した。タイトジャンクションのこの喪失は、より大きな細胞運動性を可能にし、これは、細胞表現型の変化と合わせて、創傷治癒アッセイにおいて示されるように、また以前に報告されたように(Shukalら、2020年)、細胞遊走の増加に寄与した。FITC-デキストラン色素漏出およびTEER研究からの結果はまた、HG+Cytに曝露されたARPE-19細胞のバリア機能が失われ、インビボではもはや外側BRBとしてのその機能を維持することができないことを確認した。いくつかの研究が、DR、AMDおよびブドウ膜炎を含む疾患におけるRPE BRB完全性の喪失を報告している(Cunha-Vaz、2004年、2009年;Klaassenら、2013年)。さらに、EMTは、RPE機能の喪失をもたらす重要な病態として記載されている(Cheら、2016年;Liら、2020年)。Hyttinenら(2019)は、EMTとRPE線維症が主な特徴である状態であるAMDの関連性を論じたが、EMTが細胞剥離と合わせた細胞遊走の増加を通してAMDの「終末」期に見られるRPE破壊を引き起こし得ることも示唆している。最後に、PVRでは、網膜上膜を形成する移行した細胞の獲得された収縮特性が、網膜ひだおよび牽引媒介網膜剥離(traction mediated retinal detachment)をもたらす(Tamiya&Kaplan、2016年)。DRおよび滲出型AMDの場合、抗血管内皮成長因子(抗VEGF)が現在のところゴールドスタンダード処置であるが、これは疾患の根本原因にほとんど効果を及ぼさず、疾患の初期段階においても価値がない(Campochiaroら、2016年;Kovachら、2012年;Dhoot&Avery、2016年)。
【0065】
実施例では、コネキシンヘミチャネル阻害剤トナベルサットの添加が、HG+Cyt傷害後に観察される表現型変化を防止し、Cx43ヘミチャネルがRPE細胞におけるEMTに重要であることを示した。本発明者らの所見は、新たな治療標的、ならびに例えば、EMT関連眼疾患を処置する可能性を提示する。重要なことに、本発明者らはまた、根本原因に対抗することによる、EMT関連眼疾患の初期段階におけるコネキシンヘミチャネル阻害剤処置の有用性を実証している。
【0066】
実施例は、RPE細胞を使用したHG+Cytによる上皮細胞の傷害がEMTを誘導することを実証している。さらに、コネキシンヘミチャネルの遮断はEMTを減弱させ、ヘミチャネルがプロセスを促進し、EMTが根底にある疾患の別の治療標的を提供するのに重要な役割を果たすことを実証している。これらの所見は、ここでEMTに頻繁に関連付けられる眼疾患が一般的であると共に、非常に衰弱性である、糖尿病などの健康状態を有する人に機会を提供する。
【0067】
本発明者らは、コネキシン43ヘミチャネル開口の増加がEMT活性化に関連し、眼障害を含む一定範囲の病態に関連することを発見した。本発明者らは、EMTの阻害における、臨床的に安全な用量のコネキシンヘミチャネル遮断薬、例えば、Xiflamを含む経口送達低分子コネキシンヘミチャネル遮断薬の有用性を発見した。本発明者らは、ヘミチャネル遮断薬を使用してEMT関連慢性網膜疾患を改善することができることを発見した。
定義
【0068】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、医薬からの追加の列挙されていない要素も成分も(方法の場合はステップも)排除しない。「からなる」という句は、医薬において指定されていない要素、ステップまたは成分(方法の場合はステップ)を除外する。「から本質的になる」という句は、指定される材料、および医薬の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料(方法の場合はステップ)を指す。本発明の基本的かつ新規な特徴は、本明細書全体を通して記載されており、本発明の医薬および方法が、コネキシンギャップ結合ヘミチャネルを遮断またはモジュレートし、場合によってはEMTおよび/またはEndMTをモジュレートまたは阻害する能力を含む。本明細書に記載される医薬および方法を含む、本発明の基本的かつ新規な特徴における材料の変化には、ヘミチャネルモジュレーションならびに/あるいはEMTおよび/またはEndMTのモジュレーションまたは阻害の望ましくないまたは臨床的に望ましくない、不利益な、不利なまたは有害な減少が含まれる。一実施形態では、医薬が、コネキシン43ヘミチャネル遮断薬、例えば低分子コネキシン43ヘミチャネル遮断薬を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0069】
ここで使用される場合、「約」値またはパラメータという用語は、当技術分野で理解されているその意味を指し、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む。例えば、「約X(about X)」という記載は、「X」の記載を含む。例えば、投与量における重量値の「約5mg」という用語は、重量値の+/-0.5度を指す。
【0070】
「低分子」は、本明細書では、約600~900ダルトン未満の分子量を有すると定義され、一般に有機化合物である。低分子は、ヘミチャネル遮断薬プロドラッグの活性剤であり得る。一実施形態では、低分子が600ダルトン未満である。別の実施形態では、低分子が900ダルトン未満である。
【0071】
本明細書で使用される場合、「処置」(および「処置する」または「処置すること」などのその文法的変形)は、処置される個体、組織または細胞の自然経過を変化させるための臨床的介入を指し、予防のためにまたは臨床病理中に実施することができる。処置の望ましい効果には、それだけに限らないが、疾患、障害または状態の発生または再発の予防、徴候または症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物、方法および組成物を使用して、疾患、障害もしくは状態の発症を遅延させる、またはEMT関連疾患、障害もしくは状態の進行を遅延させることができる。この用語は、対象が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味しない。したがって、「処置」は、特定の疾患、障害もしくは状態の症状もしくは重症度を軽減、緩和もしくは改善すること、または特定の疾患、障害もしくは状態の発症を予防すること、または特定の疾患、障害もしくは状態を発症するリスクを軽減することを含む。これはまた、状態の完全または部分的な寛解状態を維持または促進することも含み得る。
【0072】
本明細書で使用される「処置」はまた、ヘミチャネル遮断薬の投与後の対象におけるEMT活性の阻害を含む。好ましいヘミチャネル遮断薬はXiflamである。好ましい投与経路は経口である。
【0073】
疾患、状態または障害などを「処置すること」という用語は、EMT関連障害、疾患または状態を予防すること、遅延させること、低下させること、減少させること、および特に停止することおよび逆転させることを指し得る。
【0074】
他の実施形態では、網膜が、実施例に示されるように、本明細書に記載される化合物および方法を使用して保護され、これは、本発明の保護効果も有用性を見出す加齢黄斑変性を含む慢性網膜疾患において重要である。
【0075】
「予防すること」という用語は、全体的または部分的に予防すること、または改善すること、または制御することを意味する。
【0076】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。例えば、限定としてではないが、「有効量」は、病理学的もしくは他の望ましくないEMT活性を伴う疾患、障害もしくは状態の徴候および/もしくは症状を処置することができる、本明細書に開示される化合物もしくは組成物の量、または正常もしくはほぼ正常なEMT機能を有益に維持することができるヘミチャネル化合物もしくは組成物の量を指すことができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、本発明の物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力などの因子によって変化し得る。治療有効量はまた、好ましくは、物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの任意の毒性または有害作用を治療上有益な効果が上回ることができる量である。ヘミチャネル遮断薬の治療有効量は、対象におけるEMT活性を有益に阻害する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」は、所望の予防的結果、典型的には望ましくないEMT活性の阻害を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。典型的には、必ずしもそうとは限らないが、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0079】
「医薬製剤」という用語は、その中に含有される有効成分、例えばヘミチャネル遮断薬の生物学的活性が有効となることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0080】
本明細書で使用される「薬学的に許容され得る担体」は、対象に安全に投与することができる、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容され得る担体には、それだけに限らないが、バッファー、賦形剤、安定剤および保存剤が含まれる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「個体」および「患者」を含む「対象」などの用語は、その全てが本明細書で互換的に使用され得るが、ヒト、飼育動物および農場動物、ならびに動物園、野生動物公園、スポーツ、またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどを含む任意の哺乳動物を指す。好ましい哺乳動物は、成人、小児および高齢者を含むヒトである。好ましいスポーツ動物はウマおよびイヌである。好ましいペット動物はイヌおよびネコである。ある特定の実施形態では、対象、個体または患者がヒトである。
【0082】
EMTは、当技術分野で公知の方法を使用してインビボで測定および監視および可視化され得る。EMTは、サイトケラチンおよびE-カドヘリンなどの上皮細胞マーカーの喪失、引き続いてN-カドヘリン、ビメンチンおよびフィブロネクチンなどの間葉系細胞マーカーの発現の上方調節を特徴とする。上皮および間葉系細胞マーカーの発現の変化は、移行中の細胞と隣接上皮細胞との間の接着の減少、および細胞外マトリックスを分解する酵素の分泌の増加をもたらす。まとめると、これは、上皮細胞が頂端-基底細胞極性を失い、それらの細胞骨格を再編成し、遺伝子発現を再プログラミングすることをもたらす。がんにおいては、これはがん転移における浸潤表現型の発生を可能にする。EMTは、いくつかの方法を使用して測定され得る。例えば、Busch,ELら Evaluating markers of epithelial-mesenchymal transition to identify cancer patients at risk for metastatic disease Clin Exp Metastasis 2016年1月;33(1):53~62(原発腫瘍標本におけるEMTマーカーの測定);Song J.ら、Epithelial-mesenchymal transition markers screened in a cell-based model and validated in lung adenocarcinoma BMC Cancer 第19巻、論文番号:680(2019年);Michael ZeisbergおよびEric G.Neilson、Biomarkers for epithelial-mesenchymal transitions J Clin Invest.2009年;119(6):1429~1437;Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT)Markers https://www.novusbio.com/antibody-news/antibodies/antibodies-for-epithelial-mesenchymal-transition-emt-marker 08/18/2016-14:15を参照されたい。EMTは、Ieda,T.ら、Visualization of epithelial-mesenchymal transition in an inflammatory microenvironment-colorectal cancer network Sci Rep 9、16378(2019)(間葉系ビメンチンプロモーターが赤色蛍光タンパク質(RFP)発現を駆動する蛍光ガイドEMTイメージングシステムを使用した、EMTを受けているCRC細胞のインビボ時空間可視化);Maie,J.ら、Visualizing Epithelial-Mesenchymal Transition Using the Chromobody Technology Cancer Res、76(19);5592-6(chromobody技術および生物系におけるEMT関連プロセスの可視化を考察している)に記載されるEMTイメージングシステムなどの公知の技術を使用して可視化および監視され得る。「The basics of epithelial-mesenchymal transition」において、KalluriおよびWeinbergは、転写因子の活性化および不活性化ならびに特異的mRNAの発現から、細胞骨格タンパク質および細胞表面タンパク質の発現および構造の変化にまで及ぶ、上皮細胞が間葉系になるまでに受ける変化を記載している(Kalluri&Weinberg、2009年)。
【0083】
眼では、単純で非侵襲的なイメージング試験である光干渉断層撮影(OCT)を使用してEMTを可視化、測定および監視することができる。眼EMTは、細胞形態の変化を可視化することによって直接測定することができる。角膜では、例えば、虹彩角膜内皮症候群が、フックス角膜内皮ジストロフィーで見られる滴状角膜と同様に、ICE症候群患者において「槌目銀」または「打ち延ばされた青銅」の外観を有する角膜内皮をもたらす。病理学的レベルでは、正常な内皮細胞が、遊走特性を有するより上皮様の細胞で置き換えられている。これは、インビボ共焦点顕微鏡法を使用して観察することができる(例えば、Grupcheva CNら、In vivo confocal microscopic characteristics of iridocorneal endothelial syndrome.Clin Exp Ophthalmol.2004年;32:275~283参照)。網膜では、RPE機能の破壊が、糖尿病性網膜症(DR)、加齢黄斑変性(AMD)および増殖性硝子体網膜症(PVR)を含む複数の眼疾患に関与している。網膜色素上皮の変化は、細胞がEMTを受けるにつれて色素上皮の喪失を示す、眼底イメージングを使用して、ならびに網膜色素上皮厚さおよび完全性(EMTが起こっていることを示すRPE過形成から生じる反射率の増加を含む)を測定するためにOCTを使用して直接可視化される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「ヘミチャネル」という用語は、ギャップ結合(2つのヘミチャネルまたはコネキソンが隣接細胞間の細胞間空間を横切って接続してギャップ結合を形成する)の一部であり、2つの隣接細胞の細胞質間のギャップ結合のための細孔を形成する、典型的には同種または異種の、すなわちコネキシンタンパク質のホモマーまたはヘテロマーヘキサマーである、いくつかのコネキシンタンパク質で構成される。ヘミチャネルは、結合の片側の細胞によって供給され、対向する細胞からの2つのヘミチャネルが通常一緒になって完全な細胞間ヘミチャネルを形成する。しかしながら、一部の細胞において、および一部の状況下における細胞においては、ヘミチャネル自体が、細胞質と細胞外空間との間の導管として活性となり、イオンおよび低分子の移動を可能にする。
【0085】
式Iの化合物、例えばXiflam、および/または前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグは、ヘミチャネル、好ましくは任意のタイプのコネキシンタンパク質を含むヘミチャネルの機能および/または活性をモジュレートすることができる。したがって、「ヘミチャネル」への言及は、文脈上別段の要求がない限り、いくつかの異なるコネキシンタンパク質のいずれか1またはそれを超える数を含む、から本質的になる、またはからなるヘミチャネルを含むと広く解釈されるべきである。しかしながら、例として、ヘミチャネルは、上記で具体的に言及されるものを含むいずれかのコネキシンのうちの1またはそれを超える数を含み得る。一実施形態では、ヘミチャネルが前記コネキシンのうちの1つからなる。一実施形態では、ヘミチャネルが、コネキシン36、37、40、43、45および57のうちの1またはそれを超える数を含む。一実施形態では、ヘミチャネルが、コネキシン37、40または43のうちの1つからなる。一実施形態では、ヘミチャネルがコネキシン43ヘミチャネルである。一実施形態では、ヘミチャネルが網膜ヘミチャネルである。一実施形態では、ヘミチャネルが脈絡膜ヘミチャネルである。一実施形態では、ヘミチャネルが血管ヘミチャネルである。一実施形態では、ヘミチャネルが、血管内皮細胞に見出されるコネキシンヘミチャネルである。1つの特定の実施形態では、ヘミチャネルが、コネキシン30、37およびコネキシン43のうちの1またはそれを超える数を含む。1つの特定の実施形態では、ヘミチャネルがコネキシン30からなる。1つの特定の実施形態では、ヘミチャネルがコネキシン37からなる。1つの特定の実施形態では、ヘミチャネルがコネキシン43からなる。一実施形態では、ヘミチャネルが、コネキシン26を除く1またはそれを超えるコネキシンを含む。一実施形態では、組成物が、前記のものを含む任意のコネキシンのヘミチャネル遮断薬を含むまたは除外することができる。
【0086】
ヘミチャネルおよびヘミチャネルは、任意の種類の細胞に存在し得る。したがって、「ヘミチャネル」または「ヘミチャネル」への言及は、任意の上皮または内皮細胞型に存在し、EMTまたはEndMTの阻害の標的となるヘミチャネルまたはヘミチャネルへの言及を含むと解釈されるべきである。本発明の一実施形態では、前記ヘミチャネルまたはヘミチャネルが、器官内、またはがんもしくは腫瘍内の細胞に存在する。一実施形態では、前記ヘミチャネルが血管ヘミチャネルである。一実施形態では、前記ヘミチャネルが、血管内皮細胞および/または眼上皮もしくは内皮細胞に見出されるコネキシンヘミチャネルである。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ヘミチャネルのモジュレーション」は、ヘミチャネルの1またはそれを超える機能および/または活性、典型的には、ヘミチャネルを通る細胞間の分子の流れのモジュレーションである。このような機能および活性には、例えば、細胞外空間もしくは環境からヘミチャネルを通る細胞内への分子の流れ、および/またはヘミチャネルを通る細胞内空間もしくは環境から細胞外空間もしくは環境への分子の流れが含まれる。ヘミチャネルのモジュレーションに有用な化合物は、「ヘミチャネル調節剤」または「ヘミチャネル阻害剤」と呼ばれ得る。本発明および本明細書に記載される方法の全ての態様は、例えば、ヘミチャネル開口および/またはATPの放出を阻害または遮断することを含む、その活性を破壊するためのヘミチャネルのモジュレーションによって達成され得る。コネキシンヘミチャネルの調節剤または阻害剤は、本明細書では、例えば抗コネキシン43ヘミチャネル化合物を含む「抗ヘミチャネル化合物」とも呼ばれる。
【0088】
ヘミチャネルの機能のモジュレーションは、任意の手段によって行われ得る。しかしながら、単なる例として、モジュレーションは、ヘミチャネルの閉鎖の誘導または促進;ヘミチャネル開口の防止、遮断、阻害または減少;ヘミチャネルおよび/またはギャップ結合の細胞内在化の誘発、誘導または促進のうちの1またはそれを超える数によって行われ得る。「遮断すること」、「阻害すること」、「防止すること」、「減少させること」、および「拮抗すること」などの単語の使用は、完全な遮断、阻害、防止、または拮抗を意味すると解釈されない場合があるが、これが好ましい場合があり、ヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルの機能または活性を少なくとも低減するための部分的な遮断、阻害、防止、または拮抗を含むと解釈されるべきである。同様に、「誘導すること」または「促進すること」は、ヘミチャネル(またはヘミチャネルの群)の完全な内在化を意味すると解釈されるべきではなく、ヘミチャネルの機能または活性を少なくとも低下させるための部分的な内在化を含むと解釈されるべきである。
【0089】
本明細書で使用される場合、「抗ヘミチャネル化合物」および「ヘミチャネル遮断薬」という用語は、コネキシンヘミチャネルを通る分子の通過を妨げる化合物である。抗ヘミチャネル化合物またはヘミチャネル遮断薬は、ヘミチャネル開口を遮断もしくは減少させる、ヘミチャネルを通した細胞外空間への分子の放出を遮断もしくは減少させる、および/または細胞内空間へのヘミチャネルを通した分子の進入を遮断もしくは減少させることができる。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断薬には、ヘミチャネル漏出または細胞外空間へのもしくは細胞外空間からの分子の通過を完全にまたは部分的に遮断する化合物が含まれる。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断薬には、ヘミチャネルの開口確率を低下させる化合物も含まれる。開口確率は、チャネルが閉じている時間に対する開いたままである時間の割合の尺度である(Goldberg GSら、Selective permeability of gap junction channels Biochimica et Biophysica Acta 1662(2004年)96~101に概説)。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断薬には、ヘミチャネル調節剤が含まれる。抗ヘミチャネル化合物およびヘミチャネル遮断薬は、コネキシンヘミチャネルを通る分子の通過を直接または直接妨害し得る。本発明および本明細書に記載される方法の全ての態様は、例えば、本明細書に記載されるように、ヘミチャネルを遮断すること、またはヘミチャネルの開口確率を低下させることによって達成され得る。一実施形態では、コネキシンヘミチャネルが、コネキシン43ヘミチャネル、および/または他の血管コネキシンヘミチャネルである。
【0090】
本明細書で使用される場合、「EMTを阻害する」および「EndMTを阻害する」などの用語は、場合によっては、上皮間葉転換または内皮間葉転換を低下させる、減少させるまたは下方調節することを指す。本発明のいくつかの実施形態では、網膜色素上皮、網膜血管内皮、EMTおよび/またはEndMtが正常状態または疾患前状態に戻される。
【0091】
「ペプチド」、「ペプチド模倣物」および「模倣物」という用語は、それらが模倣するタンパク質領域の実質的に同じ構造的および機能的特徴を有し得る合成または遺伝子操作された化学化合物を含む。コネキシンヘミチャネルの場合、これらは、例えばヘミチャネルコネキシンの細胞外ループを模倣し得る。
【0092】
本特許は、本発明の方法によって改善され得るEMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害または状態に対する新たな方法を記載する。
【0093】
本発明は、とりわけ、全体的または部分的に病理学的または他の望ましくないEMTおよび/またはEndMT活性を特徴とする疾患、障害または状態を処置するために、ヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam、または式IIの化合物、および/または前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグの投与によりEMTおよび/またはEndMT活性を阻害する方法を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明は、Cx43ヘミチャネルを直接および直ちに遮断し、EMTおよび/またはEndMTの阻害を引き起こすための、式Iの化合物、例えばXiflam、または式IIの化合物、および/または前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグの使用を特徴とする。いくつかの例示的な用量は、例えば、1.0~3.0mg/kg、または3.0~4.0mg/kgおよび4.0~5.0mg/kg、または1.1~1.5mg/kgを含む、約1.0~約7.0mg/kgの範囲である。いくつかの例示的な毎日の投与量または他の定期投与量は、例えば、約80~160mg/投与、約160~240mg/投与、約240~300mg/投与および約300~500mg/投与(80、150、250および500mg/投与の用量を含む)を含む、約10~250mg/投与の範囲である。
コネキシン
【0095】
様々な実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、任意のコネキシンヘミチャネルであり、コネキシン26(Cx26)ヘミチャネルを含み得るまたは除外し得る。ある特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、コネキシン36(Cx36)ヘミチャネル、コネキシン37(Cx37)ヘミチャネル、コネキシン40(Cx40)ヘミチャネル、コネキシン43(Cx43)ヘミチャネル、コネキシン45(Cx45)ヘミチャネルおよび/またはコネキシン57(Cx57)ヘミチャネルである。一実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45および/またはCx57タンパク質のうちの1またはそれを超える数を含む。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルが、Cx37および/またはCx40および/またはCx43ヘミチャネルである。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルが、Cx30および/またはCx43および/またはCx45ヘミチャネルである。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルが、Cx36、Cx37、Cx43および/またはCx45ヘミチャネルである。
【0096】
いくつかの実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、前記コネキシンタンパク質のいずれかを含むまたは除外することができる。いくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬が、Cx43ヘミチャネル、Cx40ヘミチャネルおよび/またはCx45ヘミチャネルの遮断薬である。ある特定の好ましい実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、上皮および/または内皮細胞コネキシン43ヘミチャネル遮断薬である。本明細書で特徴とされる使用のいずれかのための本発明の医薬組成物はまた、記載されるコネキシンヘミチャネル(同種および異種ヘミチャネルを含む)のいずれかを阻害または遮断し得るヘミチャネル遮断薬を含み得る。いくつかの実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、前記コネキシンヘミチャネルのいずれかを含むもしくは除外することができる、またはヘテロマーヘミチャネルであり得る。
【0097】
本発明の投与、共投与、組成物、キットまたは処置方法のいずれかで使用されるヘミチャネル遮断薬は、一実施形態では、Cx43ヘミチャネル遮断薬である。他の実施形態は、Cx45ヘミチャネル遮断薬、Cx30ヘミチャネル遮断薬、Cx37ヘミチャネル遮断薬、Cx40ヘミチャネル遮断薬、ならびに上記もしくは本明細書に記載されるものを含む、または上記もしくは本明細書に記載される任意の他のコネキシンから本質的になる、もしくはからなるコネキシンヘミチャネルまたはヘミチャネルのいずれかの遮断薬を含む。いくつかの実施形態は、前記コネキシンもしくはヘミチャネル、または本特許に記載されているその他のいずれかを含み得るまたは除外し得る。様々な実施形態では、例として、モジュレートされるヘミチャネルが、コネキシン36、コネキシン37、コネキシン40、コネキシン43、コネキシン45、コネキシン57、コネキシン59および/またはコネキシン62のうちの1またはそれを超える数を含む。
【0098】
一実施形態では、特に網膜に関する場合、モジュレートされるヘミチャネルが、Cx36、Cx37、Cx40、Cx43、Cx45またはCx57タンパク質のうちの1またはそれを超える数を含む。標的化ヘミチャネルコネキシンには、例えば、血管内の選択されたヘミチャネルコネキシン(例えば、Cx37、Cx40またはCx43)、ならびに神経上皮細胞、例えば星状膠細胞(例えば、Cx43)、アマクリン細胞(例えば、Cx36、Cx45)、双極細胞(例えば、Cx36、Cx45)、外網状層および内網状層、神経節細胞層(例えば、Cx36、Cx45)、錐体光受容体および網膜内皮細胞、ならびに他の網膜ニューロン内のヘミチャネルコネキシンのうちの1またはそれを超える数が含まれる。いくつかの実施形態では、Cx36およびCx43ヘミチャネルが標的化される。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルがCx43を含む。一実施形態では、外網状層の細胞内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化され(例えば、Cx43)、本発明の方法が、OPL薄化を停止および逆転させ、OPLを救済することができる。
【0099】
他の実施形態、特に脈絡膜または網膜の血管に関する実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルが、Cx37、Cx40またはCx43タンパク質のうちの1またはそれを超える数を優先的に含み得る。1つの特定の実施形態では、モジュレートされるヘミチャネルおよび/またはヘミチャネルがCx43を含む。一実施形態では、大口径の有窓でない血管で構成される、ハラー層としても知られる、外脈絡膜の細胞内の血管コネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、有意に小さい血管で構成される、サットレル層としても知られる、内脈絡膜の細胞内の血管および内皮細胞コネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、外脈絡膜および内脈絡膜の細胞内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。別の実施形態では、脈絡毛細管板の毛細血管内のコネキシンを含むヘミチャネルが標的化される。一実施形態では、本発明の方法において標的化されるヘミチャネル血管コネキシンが、周皮細胞内のヘミチャネルコネキシンならびに血管平滑筋および内皮細胞内のコネキシンを含む。別の実施形態では、本発明の方法において標的化されるヘミチャネル血管コネキシンが、周皮細胞内のヘミチャネルおよび内皮細胞、例えば微小毛細血管内のコネキシンを含む。Cx43ヘミチャネルが本発明の好ましい標的である。
低分子ヘミチャネル遮断薬
【0100】
ヘミチャネル遮断薬の例としては、低分子ヘミチャネル遮断薬、例えばXiflam(トナベルサット)が挙げられる。トナベルサット(PubChem、DrugBankおよびMedChemExpressにも示される)の構造は以下の通りである:
【化1】
【0101】
トナベルサットについての他の化学名は、PubChem(N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド)、DrugBank(
N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド)およびChemical Book(N-((3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルクロマン-4-イル)-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド;または2H-ベンゾ(B)ピラン-3-オール、6-アセチル-4-(3-クロロ-4-フルオロベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-;またはN-[(3S,4S)-6-アセチル-3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロ-ベンズアミド)に見出される。
【0102】
いくつかの実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、Xiflam以外の低分子、例えば、上記のように、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Colin Greenらの名前で出願された米国特許出願公開第20160177298号において式Iまたは式IIに記載されるヘミチャネル遮断薬である。様々な好ましい実施形態は、本明細書に記載または言及される疾患、障害および状態を含む、EMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害および状態を処置するための、ヘミチャネル開口を遮断または改善または拮抗または阻害する低分子の使用を含む。様々な実施形態では、ヘミチャネル開口を遮断または改善または阻害する低分子が、Xiflamのプロドラッグまたはその類似体である。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、EMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害または状態を処置するために、例えば、Cx43ヘミチャネルを遮断するための、式Iの化合物、例えばXiflam、および/または前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグを含む低分子ヘミチャネル遮断薬の使用を特徴とする。
【0104】
例として、ヘミチャネル遮断薬Xiflam(トナベルサット)は、IUPAC名N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミドまたは(3S-シス)-N-(6-アセチル-3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-2,2-(ジメチル-d6)-2H-1-ベンゾピラン-4-イル)-3-クロロ-4-フルオロベンズアミドによって知られている場合がある。
【0105】
別の有用な化合物は、ボルドの木およびテンダイウヤク(Lindera aggregata)に見出されるアポルフィンクラスのアルカロイドであるボルジンである。
【0106】
一実施形態では、Xiflamおよび/またはその類似体もしくはプロドラッグが、式Iを有する化合物:
【化2】
(式中、
YはC-Rであり;
はアセチルであり;
は、水素、C3~8シクロアルキル、必要に応じて酸素によって中断またはヒドロキシ、C1~6アルコキシもしくは置換アミノカルボニルによって置換されたC1~6アルキル、C1~6アルキルカルボニル、C1~6アルコキシカルボニル、C1~6アルキルカルボニルオキシ、C1~6アルコキシ、ニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはCFS;またはCF-A-基(式中、Aは-CF-、-CO-、-CH-、CH(OH)、SO、SO、CH-OまたはCONHである);またはCFH-A’-基(式中、A’は酸素、硫黄、SO、SO、CFまたはCFHである);トリフルオロメトキシ、C1~6アルキルスルフィニル、ペルフルオロC2~6アルキルスルホニル、C1~6アルキルスルホニル、C1~6アルコキシスルフィニル、C1~6アルコキシスルホニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ホスホノ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アリールスルホニルもしくはヘテロアリールスルホニル(任意の芳香族部分は必要に応じて置換されている)、C1~6アルキルカルボニルアミノ、C1~6アルコキシカルボニルアミノ、C1~6アルキル-チオカルボニル、C1~6アルコキシ-チオカルボニル、C1~6アルキル-チオカルボニルオキシ、1-メルカプトC2~7アルキル、ホルミル、またはアミノスルフィニル、アミノスルホニルもしくはアミノカルボニル(任意のアミノ部分は1つもしくは2つのC1~6アルキル基によって必要に応じて置換されている)、またはC1~6アルキルスルフィニルアミノ、C1~6アルキルスルホニルアミノ、C1~6アルコキシスルフィニルアミノもしくはC1~6アルコキシスルホニルアミノ、またはC1~6アルキルカルボニル、ニトロもしくはシアノによって末端置換されたエチレニル、または-C(C1~6アルキル)NOHもしくは-C(C1~6アルキル)NNH;または1つもしくは2つのC1~6アルキルによってまたはC2~7アルカノイルによって必要に応じて置換されたアミノであり;RおよびRの一方は水素またはC1~4アルキルであり、他方はC1~4アルキル、CFまたはCHであり、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1~4アルコキシ、ヒドロキシ、C1~4アルキルカルボニルオキシ、-S-C1~4アルキル、ニトロ、1つもしくは2つのC1~4アルキル基によって必要に応じて置換されたアミノ、シアノまたはC1~4アルコキシカルボニルである;あるいはRおよびRが一緒になって、C1~4アルキルによって必要に応じて置換されたC2~5ポリメチレンであり;
は、C1~6アルキルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、ONO、ベンジルオキシ、フェニルオキシまたはC1~6アルコキシであり、RおよびRは水素である、あるいはRはヒドロキシであり、Rは水素またはC1~2アルキルであり、Rは水素であり;
はヘテロアリールまたはフェニルであり、これらは共に、独立して、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ニトロ、C1~4アルキルによって1回もしくは2回必要に応じて置換されたアミノ、シアノ、アジド、C1~4アルコキシ、トリフルオロメトキシおよびトリフルオロメチルから選択される基または原子で1またはそれを超える回数必要に応じて置換されており;
は、水素、C1~6アルキル、OR11またはNHCOR10であり、R11は、水素、C1~6アルキル、ホルミル、C1~6アルカノイル、アロイルまたはアリール-C1~6アルキルであり、R10は、水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、モノもしくはジC1~6アルキルアミノ、アミノ-C1~6アルキル、ヒドロキシ-C1~6アルキル、ハロ-C1~6アルキル、C1~6アシルオキシ-C1~6アルキル、C1~6アルコキシカルボニル-C1~6アルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;R-N-CO-R基はR基に対してシスであり;Xは酸素またはNR12であり、R12は水素またはC1~6アルキルである)
の群から選択される。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、EMTおよび/またはEndMT活性を阻害するために、例えば、Cx43ヘミチャネルを遮断するための、式IIの化合物、および/または前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグを含む低分子ヘミチャネル遮断薬の使用を特徴とする。
式II
【化3】
(式中、
QはOまたは式=NHOR43のオキシムであり、R43は、
(i)H、C1~4フルオロアルキルもしくは必要に応じて置換されたC1~4アルキルから選択される、または
(ii)-A300-R300
であり、
300は、直接結合、-C(O)O-、-C(R)(R)O-、-C(O)O-C(R)(R)O-、または-C(R)(R)OC(O)O-であり、印が付けられた原子はR300に直接結合しており、
およびRは、H、フルオロ、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキルから独立して選択される、または
およびRは、これらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル基を形成し、
300は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]または[6]基から選択され;
はHまたはB-R21であり、
Aは、直接結合、-C(O)O-、-C(R)(R)O-、-C(O)O-C(R)(R)O-または-C(R)(R)OC(O)O-であり、印が付けられた原子はRに直接結合しており、RおよびRは、H、フルオロ、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキルから独立して選択される、またはRおよびRは、これらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピル基を形成し、
は、[1]、[2]、[2A]、[3]、[4]、[5]および[6]基から選択され、**印を付けられた原子はAに直接結合しており:
【化4】
およびRは、H、C1~4アルキル、C1~4フルオロアルキルおよびベンジルからそれぞれ独立して選択され;
は、H、C1~4アルキルおよびC1~4フルオロアルキルから独立して選択され;
は、
(i)H、C1~4アルキルもしくはC1~4フルオロアルキル、または
(ii)天然もしくは非天然α-アミノ酸、または本明細書に記載されるペプチド模倣物もしくは他のペプチドの側鎖、または
(iii)ビオチンもしくはビオチンに化学的に連結している
から選択され;
は、H、-N(R11)(R12)、または-N(R11)(R12)(R13)X、または-N(R11)C(O)R14から選択され、
11、R12およびR13は、H、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルから独立して選択され、
14は、H、C1~4アルキルまたはC1~4フルオロアルキルであり、
15は、C1~4アルキルおよびC1~4フルオロアルキルから独立して選択され、
は薬学的に許容され得るアニオンである)。
いくつかの実施形態では、QがOである。
【0108】
上に示されるマーカッシュ群のいずれについても、その群は、その群について列挙される種のいずれかを含むまたは除外することができる。本発明の方法で使用するためのヘミチャネル遮断薬は、これらの化合物のいずれかを含み得るまたは除外し得る。
【0109】
別の実施形態では、式Iの類似体が、化合物カラベルサット(N-[(3R,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-4-フルオロベンズアミド)またはトランス-(+)-6-アセチル-4-(S)-(4-フルオロベンゾイルアミノ)-3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-2H-1-ベンゾ[b]ピラン-3R-オール、半水和物である。
【0110】
ある特定の実施形態では、Xiflamおよび/またはその類似体が、遊離塩基または薬学的に許容され得る塩の形態である。他の実施形態では、Xiflamおよび/またはその類似体の1またはそれを超える多形、1またはそれを超える異性体、ならびに/あるいは1またはそれを超える溶媒和物が使用され得る。
【0111】
他の様々な低分子がヘミチャネル活性の阻害に有用であると報告されている。上記のように、全て全体が参照により組み込まれる、Greenらの米国特許出願公開第20160177298号、式II;Savoryらの米国特許出願公開第20160318891号;およびSavoryらの米国特許出願公開第20160318892号を参照されたい。本発明の方法で使用するためのヘミチャネル遮断薬は、これらの化合物のいずれかを含み得るまたは除外し得る。
【0112】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される疾患、障害または状態、ならびに病理学的または他の望ましくないEMTおよび/またはEndMT活性を特徴とする疾患、障害または状態を処置する方法における、単独でのまたはキット、パッケージもしくは他の製造品内の医薬組成物の使用に関する。いくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬がコネキシン43ヘミチャネル遮断薬である。記載されるように、他のコネキシンヘミチャネルの遮断薬は本発明の範囲内である。
【0113】
いくつかの実施形態では、「プロモイエティ(promoiety)」が、活性剤内の官能基をマスクし、それによって、活性剤をプロドラッグに変換する保護基として作用する種を指す。典型的には、プロモイエティは、インビボで酵素的または非酵素的手段によって切断される結合(複数可)を介して薬物に付着され、それによって、プロドラッグをその活性形態に変換する。いくつかの実施形態では、プロモイエティが活性剤であってもよい。いくつかの実施形態では、プロモイエティが、ヘミチャネル遮断薬分子、ペプチド、抗体または抗体断片に結合され得る。いくつかの実施形態では、プロモイエティが、例えば、ペプチドまたはペプチド模倣物または低分子または他の有機ヘミチャネル遮断薬のいずれかに結合され得る。いくつかの実施形態では、プロモイエティが式Iの化合物に結合され得る。いくつかの実施形態では、プロドラッグが、別のヘミチャネル化合物、例えば、Greenらの米国特許出願公開第20160177298号;Savoryらの米国特許出願公開第20160318891号;またはSavoryらの米国特許出願公開第20160318892号に記載される化合物であり得る。
処置方法
【0114】
本発明の1つの方法は、(1)EMT関連疾患、障害または状態を有する対象を特定するステップ、(2)治療有効量のコネキシンヘミチャネル阻害剤を対象に投与するステップ、および必要に応じて、(3)対象におけるEMT活性を測定または可視化するステップを含む。一実施形態では、EMT活性が測定または可視化され、用量が維持または調整される。本方法の一実施形態では、対象がEMT関連疾患を有することが既に知られているので、ステップ(1)は必要とされない。
【0115】
一実施形態では、疾患、障害または状態がEndMT関連疾患、障害または状態であり、EndMT活性が必要に応じて測定される。一実施形態では、EndMT活性が測定または可視化され、用量が維持または調整される。
【0116】
一実施形態では、EMTが、低下、阻害または減弱される。
【0117】
一実施形態では、EndMTが、低下、阻害または減弱される。
【0118】
本方法の一実施形態では、コネキシンヘミチャネル阻害剤がコネキシン43ヘミチャネル阻害剤である。
【0119】
本方法の一実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤が低分子コネキシン43ヘミチャネル阻害剤である。
【0120】
本方法の別の実施形態では、コネキシンヘミチャネル阻害剤が、コネキシン43ヘミチャネル開口または活性を阻害または遮断する抗コネキシン43ヘミチャネルペプチドまたはペプチド模倣物である。
【0121】
本方法の一実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤がトナベルサットである。本方法の別の実施形態では、コネキシン43ヘミチャネル阻害剤がカラベルサットである。
【0122】
本方法の一実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態がEMT調節不全を特徴とする。本方法の別の実施形態では、対象におけるEndMT関連疾患、障害または状態がEndMT調節不全を特徴とする。
【0123】
本方法の一実施形態では、対象におけるEMT関連疾患、障害または状態が、全体的または部分的に病理学的または他の望ましくないEMT活性を特徴とする。本方法の一実施形態では、対象におけるEndMT関連疾患、障害または状態が、全体的または部分的に病理学的または他の望ましくないEndMT活性を特徴とする。本方法の一実施形態では、対象におけるEMTまたはEndMT関連の疾患、障害または状態が、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性または増殖性硝子体網膜症である。
【0124】
本方法の別の実施形態では、対象におけるEMTまたはEndMT関連の疾患、障害または状態が、病理学的または他の望ましくないレベルのEMT活性を特徴とする網膜障害または他の障害である。
【0125】
本方法の別の実施形態では、対象におけるEMTまたはEndMT関連の疾患、障害または状態が線維症障害である。一実施形態では、EMTおよび/またはEndMTの調節または阻害が眼線維症障害を処置する。
【0126】
本方法の別の実施形態では、対象におけるEMTまたはEndMT関連の疾患、障害または状態が、がんである。いくつかの実施形態では、例えばコネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートする化合物および方法を使用したEMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎不全または慢性腎不全を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎臓損傷後の腎上皮細胞におけるEMTを処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、眼および腎臓以外の器官における線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、炎症後の線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTおよび/またはEndMTのモジュレーションまたは阻害が、腎臓損傷後の腎上皮細胞におけるEMTまたはEndMTを処置する。いくつかの方法では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が任意の線維症/線維性障害を処置する。一実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害が眼線維症障害を処置する。上皮間葉転換は、損傷した腎尿細管細胞が、腎臓および慢性腎不全における線維症の発症に寄与する間葉系細胞に転換する機序として広く受け入れられており、いくつかの実施形態では、例えばコネキシン43ヘミチャネルを含むコネキシンヘミチャネルをモジュレートする化合物および方法を使用したEMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が腎線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎不全または慢性腎不全を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、腎臓損傷後の腎上皮細胞におけるEMTおよび/またはEndMTを処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が、炎症後の線維症を処置する。いくつかの実施形態では、EMTモジュレーションまたは阻害(またはEndMTモジュレーションもしくは阻害)が任意の線維性障害を処置する。本明細書で使用される場合、線維性障害には、上皮細胞が筋線維芽細胞表現型および最終的に線維性表現型を獲得するように誘導される任意の疾患、障害または状態が含まれる。本発明の化合物および方法で処置可能なEMTおよびEndMT関連線維性障害には、例えば、肺(肺)線維症、腎線維症、特発性肺線維症、肝線維症、腸線維症、眼線維症、脂肪組織線維症、心臓および他の器官の線維症、ならびに強皮症が含まれる。いくつかの実施形態では、肝線維症の最も一般的な原因につながる線維性状態、すなわちB型肝炎およびC型肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、ならびにアルコール乱用が、本発明の化合物および方法で処置可能である。A1~A3の範囲の肝臓活動性グレードおよび/またはF1~F3の範囲の線維化ステージを有する対象が、例えば、本発明の化合物および方法で処置され得る。
化学送達修飾
【0127】
本発明で有用なヘミチャネル遮断薬は、マイクロ粒子(ミクロスフェア、Mps)またはナノ粒子(ナノスフェア、Nps)製剤、またはその両方、ならびにリポソームまたはインプラントに製剤化することもできる。粒子薬物送達系には、ナノ粒子(1~999nm)およびマイクロ粒子(1~1,000μm)が含まれ、これらはナノスフェアおよびミクロスフェアならびにナノカプセルおよびマイクロキャップとしてさらに分類される。ナノカプセルおよびマイクロカプセルでは、薬物粒子または液滴がポリマー膜に捕捉される。粒子系は、注射による送達の利点を有し、それらのサイズおよびポリマー組成は、インビボでのそれらの生物学的挙動に顕著に影響を及ぼす。ミクロスフェアはナノスフェアよりもはるかに長期間硝子体内に留まることができ、したがって、マイクロ粒子は注射後にリザーバーのように作用する。ナノ粒子は急速に拡散し、組織および細胞内に内在化される。
ヘミチャネル遮断薬活性の評価
【0128】
ヘミチャネル遮断薬の活性または有効性を評価するために、様々な方法が使用され得る。本発明の一態様では、対象におけるヘミチャネル遮断薬処置の効果が、例として本明細書に記載されるように、EMTおよび/またはEndMT活性を評価するための技術を使用して評価または監視される。
【0129】
ヘミチャネル遮断薬の活性はまた、ある特定の生物学的アッセイを使用して評価され得る。分子運動性に対する既知のまたは候補ヘミチャネル遮断薬の効果は、以下の実施例に記載される方法、またはコネキシンヘミチャネルを通る化合物の通過を決定するための他の当技術分野で公知の方法もしくは等価な方法を使用して、特定、評価、またはスクリーニングすることができる。色素移動実験、例えば、検出可能なマーカーで標識された分子の移動、ならびにヘミチャネルの機能状態を研究するために広く使用されている小型蛍光透過性トレーサーの膜貫通通過を含む様々な方法が当技術分野で知られている。例えば、Schlaper,KAら Currently Used Methods for Identification and Characterization of Hemichannels.Cell Communication and Adhesion 15:207~218(2008年)を参照されたい。インビボ法も使用され得る。例えば、Danesh-Meyer,HVら Connexin43 mimetic peptide reduces vascular leak and retinal ganglion cell death following retinal ischemia.Brain,135:506~520(2012年);Davidson,JOら(2012年).Connexin hemichannel blockade improves outcomes in a model of fetal ischemia.Annals of Neurology 71:121~132(2012年)の方法を参照されたい。
【0130】
化合物がヘミチャネルを遮断する能力を特定または評価するのに使用するための1つの方法は、(a)試験試料と試験系を一緒にすることであって、前記試験試料は1またはそれを超える試験化合物を含み、前記試験系はヘミチャネル遮断を評価するための系を含み、前記系は、例えば、前記系への高グルコース、低酸素もしくは虚血の導入に応答した、色素もしくは標識代謝産物の移動の増加、炎症のメディエーター、またはヘミチャネル開口を誘導する他の化合物もしくは事象、例えば細胞外Ca2+の低下を示すという点で特徴付けられる、一緒にすることと;(b)前記系における、例えば、色素または他の標識代謝産物(複数可)の存在または増加量を決定すること、とを含む。陽性および/または陰性対照も同様に使用され得る。必要に応じて、所定量のヘミチャネル遮断薬(例えば、ペプチド5またはXiflam)が試験系に加えられ得る。
剤形および製剤および投与
【0131】
投与に関する全ての記載が、特に明記しない限り、本発明のヘミチャネル遮断薬に適用される。ヘミチャネル遮断薬は、本明細書に記載されるように投与(dosed)、投与(administered)または製剤化することができる。一実施形態では、1またはそれを超えるヘミチャネル遮断薬を含む、から本質的になる、またはからなる組成物が投与される。ヘミチャネル遮断薬(複数可)は、QD、BID、TID、QID、または毎週の用量で、例えばQWK(1週間に1回)またはBIW(1週間に2回)投与され得る。これらはまた、本明細書に記載される用量を使用して毎月投与され得る。これらはまた、PRN(すなわち、必要に応じて)およびHS(hora somni、すなわち就寝前に)で投与され得る。ヘミチャネル遮断薬は、処置を必要とする対象に投与することができる。したがって、本発明によると、コネキシンヘミチャネル、例えばコネキシン43ヘミチャネルまたはコネキシン45ヘミチャネルまたはコネキシン36ヘミチャネルをモジュレートして、一過的かつ部位特異的にその開口確率を低下させることができる製剤が提供される。ヘミチャネル遮断薬は、製剤中に実質的に単離された形態で存在し得る。生成物は、生成物の意図された目的を妨害せず、依然として実質的に単離されていると見なされる担体または希釈剤と混合され得ることが理解されよう。本発明の生成物はまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、これは一般に、低分子ヘミチャネル遮断薬の、例えば、または調製物の乾燥質量の約80%、85%または90%、例えば、少なくとも約88%、少なくとも約90、95または98%、または少なくとも約99%を構成する。
【0132】
対象へのヘミチャネル遮断薬の投与は、薬剤を対象の体内の標的部位に送達することができる任意の手段によって行われ得る。例として、ヘミチャネル遮断薬は、以下の経路のうちの1つによって投与され得る:経口、局所、全身(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、経皮、鼻腔内、または坐剤による)、非経口(例えば、筋肉内、皮下、または静脈内または動脈内注射)、植え込み(腹膜、皮下および眼への植え込みを含む)、および浸透圧ポンプ、経皮パッチなどのようなデバイスを通した注入による。例示的な投与経路は、Binghe,W.およびB.Wang(2005年).Drug delivery:principles and applications、Binghe Wang、Teruna Siahaan、Richard Soltero、Hoboken、N.J.Wiley-Interscience、c2005にも概説されている。一実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が全身投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が経口投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、例えば、眼の上に局所投与される、または眼内に直接投与される。
【0133】
いくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬が、インプラントとして、またはインプラントと併せて提供され得る。いくつかの態様では、インプラントが、バースト投与の有無にかかわらず、遅延放出、制御放出または徐放性送達を提供し得る。いくつかの実施形態では、マイクロニードル、ニードル、イオン導入デバイスまたはインプラントがヘミチャネル遮断薬の投与に使用され得る。インプラントは、例えば、S.Pflugfelderら、ACS Nano、9(2)、1749~1758頁(2015年)に記載されているような溶解性ディスク材料であり得る。いくつかの態様では、本発明のヘミチャネル遮断薬、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断薬が、脳室内、および/または髄腔内、および/または硬膜外(extradural,)、および/または硬膜下、および/または硬膜外(epidural)経路を介して投与され得る。
【0134】
ヘミチャネル遮断薬は、1回または2回以上または定期的に投与され得る。これはまた、PRN(必要に応じて)もしくは所定のスケジュールで、またはその両方で投与され得る。いくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬が、毎日、毎週、毎月、隔月もしくは3か月ごとに、またはこれらの期間の任意の組み合わせで投与される。例えば、処置は、ある期間にわたって毎日投与され、その後、毎週および/または毎月などで投与され得る。遮断薬を投与する他の方法は、本明細書において紹介される。一態様では、ヘミチャネル遮断薬が、患者を処置するのに十分な量で、1~5、10、30、45、60、75、90、または100~180日目の時点でまたはその間に患者に投与される。
【0135】
ヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグ、または式IIの化合物は、単独で、あるいは1またはそれを超える追加の成分と組み合わせて投与され得、1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤および/または担体を含む医薬組成物に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、ヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam(トナベルサット)、および前記化合物のいずれかの類似体もしくはプロドラッグ、または式IIの化合物が、食材を含む組成物で経口投与され得る。いくつかの実施形態では、食材がピーナッツバターまたはヘーゼルナッツ系クリームである。理論によって拘束されるものではないが、トナベルサットを含む式Iまたは式IIの比較的疎水性の化合物は、食材(foodstsuff)(例えば、ピーナッツバター)の乳化脂肪に封入された後にゆっくり放出され、治療寿命を延ばすと考えられる。
【0136】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る希釈剤、担体および/または賦形剤」という用語は、医薬組成物を調製するのに有用であり、式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体、または式IIの化合物と共投与され得ると同時に、化合物がその意図した機能を果たすことを可能にし、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない物質を含むことを意図している。薬学的に許容され得る希釈剤、担体および/または賦形剤には、獣医学的使用ならびにヒト医薬使用のために適したものが含まれる。適切な担体および/または賦形剤は、式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体の性質を考慮して、当業者によって容易に理解される。しかしながら、例として、希釈剤、担体および/または賦形剤には、溶液、溶媒、分散媒、遅延剤、ポリマーおよび脂質剤、エマルジョンなどが含まれる。さらなる例として、特に注射液剤に適した液体担体には、水、食塩水溶液、デキストロース水溶液などが含まれ、等張溶液が静脈内、脊髄内および大槽内投与に好ましく、ビヒクル、例えばリポソームも薬剤の投与に特に適している。
【0137】
組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、半固体、散剤、徐放性製剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアロゾル剤、溶液注射剤、ゲル剤、クリーム剤、経皮送達デバイス(例えば、経皮パッチ)、臓器インサート、例えば皮膚もしくは眼などのインサート、または任意の他の適切な組成物を含む任意の標準的な既知の剤形の形態をとることができる。本発明が関連する分野の当業者であれば、過度の実験を行うことなく、処置される状態および使用される活性剤の性質を考慮して最も適切な剤形を容易に理解するであろう。1またはそれを超えるヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体、および/または式IIの化合物が単一組成物に製剤化され得ることを理解すべきである。ある特定の実施形態では、好ましい剤形が、注射液剤、インプラント(好ましくは、バースト投与の有無にかかわらず、遅延放出、制御放出性または徐放性インプラント)および経口製剤を含む。
【0138】
本発明で有用な組成物は、剤形および投与様式を考慮して、任意の適切なレベルのヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体、および/または式IIの化合物を含有し得る。しかしながら、例として、本発明で使用される組成物は、投与方法に応じて、およそ0.1重量%~およそ99重量%、好ましくはおよそ1%~およそ60%のヘミチャネル遮断薬を含有し得る。
【0139】
標準的な希釈剤、担体および/または賦形剤に加えて、本発明による組成物は、ヘミチャネル遮断薬、例えば式Iの化合物、例えばXiflam、および前記化合物のいずれかの類似体、および/または式IIの化合物の活性もしくはバイオアベイラビリティを増強する、完全性を保護するまたはその半減期もしくは貯蔵寿命を増加させるのを助ける、対象への投与の際の遅延放出を可能にする、または他の望ましい利益を提供するように、1またはそれを超える追加の構成成分と共に、またはそのような方法で製剤化され得る。例えば、遅延放出ビヒクルには、マクロマー、ポリ(エチレングリコール)、ヒアルロン酸、ポリ(ビニルピロリドン)またはヒドロゲルが含まれる。さらなる例として、組成物はまた、保存剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、バッファーなどを含み得る。本発明が関連する分野の当業者であれば、特定の目的のために望ましい場合があるさらなる添加剤を特定することができる。
【0140】
上記のように、ヘミチャネル遮断薬は徐放システムによって投与され得る。徐放性組成物の適切な例としては、成形物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態の半透性ポリマーマトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号;欧州特許第58,481号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、エチレン酢酸ビニル、またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)が含まれる。徐放性組成物には、リポソーム封入化合物も含まれる。ヘミチャネル遮断薬を含有するリポソームは、例えば、ドイツ特許第3,218,121号;欧州特許第52,322号;欧州特許第36,676号;欧州特許第88,046号;欧州特許第143,949号;欧州特許第142,641号;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびに欧州特許第102,324号に記載される方法を含む公知の方法によって調製され得る。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モルパーセント超のコレステロールであり、選択される割合が最も有効な治療のために調整されている小型(または約200~800オングストローム)単層型である。例えば、PGLAナノ粒子もしくはマイクロ粒子、またはインサイチュイオン活性化ゲル化システムを使用した遅延放出送達も使用され得る。
【0141】
さらに、本発明によって使用するためのヘミチャネル遮断薬医薬組成物が、特定の場合に対象にとって治療的利益または他の利益となり得る追加の有効成分または薬剤と共に製剤化され得ることが企図される。本発明が関連する分野の当業者であれば、本明細書中の本発明の記載ならびに処置されるEMTおよび/またはEndMT関連障害の性質を考慮して、適切な追加の有効成分を理解するであろう。
【0142】
さらに、本発明によって使用するためのヘミチャネル遮断薬医薬組成物がキャンディまたは食品に、例えば「グミ」医薬品として製剤化され得ることが企図される。
【0143】
組成物は、例えば、Gennaro AR:Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott,Williams&Wilkins、2000年のような標準的な参考文献に見出されるような標準的な技術に従って製剤化され得る。しかしながら、さらなる例として、米国特許出願公開第2013/0281524号または米国特許第5948811号で提供される情報が使用され得る。
【0144】
医薬組成物を保存および/または投与するのに適した任意の容器が、本発明の方法で使用するためのヘミチャネル遮断薬製品に使用され得る。
【0145】
ヘミチャネル遮断薬(複数可)、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断薬(複数可)は、いくつかの態様では、投与部位に制御されたおよび/または区画化された放出を提供するように製剤化され得る。本発明のいくつかの態様では、製剤が即時放出または持続放出または徐放性剤形であり得る。いくつかの態様では、剤形が、持続放出および/または徐放性剤形と組み合わせた即時放出剤形の両方を含み得る。いくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬(複数可)の即時放出と徐放および/または持続放出の両方を、即時放出形態のヘミチャネル遮断薬(複数可)を組み合わせることによって得ることができる。本発明のいくつかの態様では、ヘミチャネル遮断薬が、例えば、コネキシン43遮断薬または本開示の他のヘミチャネル遮断薬である。本発明のいくつかの態様では、剤形がインプラント、例えば生分解性または非生分解性インプラントであり得る。
【0146】
本発明は、様々な障害の処置および回復もしくは実質的な回復または改善のためにヘミチャネルの機能をモジュレートする方法を含む。本発明の方法は、ヘミチャネル遮断薬を単独で、あるいは所望であれば1またはそれを超える他の薬剤または治療と組み合わせて投与することを含む。
【0147】
ヘミチャネル遮断薬、および必要に応じて1またはそれを超える活性剤の投与は、障害の進行中、あるいは障害または障害の1またはそれを超える症状の発症前または発症後の任意の時点で行われ得る。一実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、症状の進行中の管理または回復を補助するために長期間にわたって定期的に投与される。別の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、EMTおよび/またはEndMT関連障害の発症を予防するもしくは遅延させるために、またはこれを排除するために長期間または生涯にわたって定期的に投与される。
【0148】
いくつかの実施形態では、ヘミチャネル遮断薬、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断薬(例えば、トナベルサットを含む式(I)の化合物、または式(II)の化合物)を、1つまたは複数の粒子を含む医薬組成物として投与することができる。いくつかの態様では、医薬組成物が、例えば、即時放出製剤または制御放出製剤、例えば遅延放出粒子であり得る。他の態様では、ヘミチャネル遮断薬を、処置される領域への選択的送達のための1つまたは複数の粒子を含む粒子製剤に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、粒子が、例えば、ナノ粒子、ナノスフェア、ナノカプセル、リポソーム、ポリマーミセルまたはデンドリマーであり得る。いくつかの実施形態では、粒子がマイクロ粒子であり得る。ナノ粒子またはマイクロ粒子は、生分解性ポリマーを含むことができる。他の実施形態では、ヘミチャネル遮断薬が、インプラントもしくはマトリックスとして調製もしくは投与される、または投与部位への区画化放出を提供するように製剤化される。いくつかの実施形態では、ヘミチャネル遮断薬、例えばコネキシン43ヘミチャネル遮断薬(例えば、トナベルサットを含む式(I)の化合物、または式(II)の化合物)の医薬組成物がマイクロ粒子を含まない。
【0149】
いくつかの実施形態では、述べられるように、製剤化されたヘミチャネル遮断薬が、例として、コネキシン37またはコネキシン40またはコネキシン43またはコネキシン45ヘミチャネル遮断薬である。コネキシン36またはコネキシン37またはコネキシン40またはコネキシン43またはコネキシン45遮断薬が好ましい。コネキシン36およびコネキシン43ヘミチャネル遮断薬が最も好ましい。コネキシン43ヘミチャネル遮断薬が特に好ましい。本明細書で使用される場合、「マトリックス」は、例えば、ポリマーマトリックス、生分解性または非生分解性マトリックス、およびヘミチャネル遮断薬を送達するためのインプラントまたは適用構造を作製するのに有用な他の担体などのマトリックスを含む。インプラントには、リザーバーインプラントおよび生分解性マトリックスインプラントが含まれる。
コネキシンヘミチャネル遮断薬の組み合わせの製造品/キット
【0150】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載または言及されるEMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害または状態を処置するのに有用な材料を含有する製造品または「キット」が提供される。キットは、コネキシンヘミチャネル遮断薬/阻害剤を含む、から本質的になる、またはからなる容器を含む。キットは、容器上のまたは容器に関連したラベルまたは添付文書をさらに含み得る。「添付文書」という用語は、治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、禁忌および/または警告に関する情報を含む、治療用製品の市販パッケージに習慣的に含まれる指示を指すために使用される。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、状態を処置するのに有効なヘミチャネル遮断薬またはその製剤を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、輸液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選択された状態、例えば、本明細書に記載または言及されるものを含む、EMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害および/または状態を処置するために使用されることを示す。あるいはまたはさらに、製造品は、薬学的に許容され得るバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含み得る。これは、他のバッファー、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0151】
キットはさらに、ヘミチャネル遮断薬の投与を必要とする患者へのヘミチャネル遮断薬の投与についての指示を含み得る、またはオンラインもしくはクラウドで指示(direction)にアクセスするための指示(instruction)を提供し得る。
【0152】
ヘミチャネル遮断薬化合物、組成物または製剤を含有する容器と、対象の処置に使用するための指示とを含む、から本質的になる、またはからなる製造品も提供される。例えば、別の態様では、本発明は、治療有効量の1またはそれを超える、低分子を含むコネキシンヘミチャネル遮断薬を含有する容器と、対象の処置のための使用を含む、使用のための指示とを含む、から本質的になる、またはからなる製造品を含む。
【0153】
いくつかの態様では、製造品が、1またはそれを超えるコネキシンヘミチャネル遮断薬、例えば低分子ヘミチャネル遮断薬を単独でまたは組み合わせて含むマトリックスを含み得る。
用量、量および濃度
【0154】
理解されるように、投与されるヘミチャネル遮断薬の用量、投与期間、および一般的な投与体制は、送達される標的部位、処置される対象のいずれかの症状の重症度、処置される障害の種類、単位投与量のサイズ、選択される投与様式、ならびに対象の年齢、性別および/または健康全般、ならびに当業者に公知の他の因子のような可変要素に応じて、対象間で異なり得る。
【0155】
対象のEMTおよび/またはEndMT関連の疾患、障害または状態を処置する方法であって、例えば、有効量の、例えば、N-[(3S,4S)-6-アセチル-3-ヒドロキシ-2,2-ジメチル-3,4-ジヒドロクロメン-4-イル]-3-クロロ-4-フルオロベンズアミド(Xiflam)を含むヘミチャネル遮断薬を前記対象に投与することを含む方法が本明細書に含まれる。いくつかの実施形態では、用量が本明細書に記載される通りである。生存促進量は、約10~約200mg/日、またはいくつかの実施形態では、約3.5~350mg/日である。他の実施形態では、生存促進量が1日当たり約20~約100mgである。これらの量は、単回投与または分割投与、例えばBIDで投与され得る。1日当たり約1.0~約10mg/kgの範囲の用量が好ましい。用量は、例えば、1日当たり約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5 1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9等、または約10.0mg/kg、または列挙される用量のいずれか2つの間の任意の範囲であり得る。
【0156】
特に好ましい1日量は、1投与当たりまたは1日当たり約1~3mg/kgであり、後者は単回投与または分割投与(例えば、BID)である。したがって、例えば、体重が約70kg、90kgまたは100kgの対象では、投与される量は、それぞれ、1日当たりもしくは1投与当たり約70、140もしくは210mg、1日当たりもしくは1投与当たり約90、180もしくは270mg、または1日当たりもしくは1投与当たり約100、200もしくは300mgとなるだろう。例えば、トナベルサットでは、これらの用量が、約10日後にヘミチャネル遮断薬の有効なピーク定常状態濃度を提供する。
【0157】
いくつかの実施形態では、ヘミチャネル阻害剤が1週間に1回(QWK)投与される。1つのQWK投与実施形態では、ヘミチャネル遮断薬化合物が、10~20%バースト投与または他の所望のバースト投与の有無にかかわらず、遅延放出、徐放性または制御放出の経口またはインプラント製剤で投与される。インプラント製剤、例えば眼インプラント製剤は、好ましくは、遅延放出、徐放性または制御放出の経口またはインプラント製剤で配置される範囲である。
製造および純度
【0158】
式IおよびIIのものを含む低分子ヘミチャネル遮断薬は、前記のように調製され得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤が実質的に純粋である。実質的に純粋とは、製剤が約10%、5%または1%未満、好ましくは約0.1%未満の不純物を含むことを意味する。いくつかの実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝産物を含む全不純物が1~15%以下である。いくつかの実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝産物を含む全不純物が2~12%以下である。いくつかの実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝産物を含む全不純物が3~11%以下である。他の実施形態では、コネキシン43調節剤の代謝産物を含む全不純物が4~10%以下である。
【実施例
【0160】
これらの実施例に記載される研究は、ヘミチャネル遮断薬投与および投与レジメンによるコネキシンヘミチャネルのモジュレーションが上皮間葉転換を減弱させる能力を評価および実証した。上皮細胞を、継代15以降で、高グルコース+サイトカイン(HG+Cyt)で傷つけたのみとした、またはHG+Cyt傷害と並行して式Iによるコネキシン43ヘミチャネル調節剤(トナベルサット)で処理した。上皮表現型と間葉表現型の両方のマーカーを、細胞遊走速度およびバリア機能と共に監視した。実験は、ヘミチャネルモジュレーションが上皮間葉転換の調節において役割を果たすこと、およびヘミチャネル遮断薬がそれを有利にモジュレートし得ることを示す。
実施例1
方法
細胞培養
【0161】
ヒト成人網膜色素上皮細胞(ARPE-19;アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関、米国)を、10%ウシ胎児血清(FBS:Invitrogen、米国)および1×抗生物質と抗真菌剤の混合物(AA、100 xストック)を補充したダルベッコ改変イーグル培地F-12(DMEM-F12;Thermofisher Scientific Inc.、米国)中、加湿5% COインキュベーター中37℃で培養した。細胞をT75フラスコで成長させ、コンフルエントになるまで培地を1週間に2回交換した。
高グルコース(HG)およびサイトカイン負荷
【0162】
継代15~18において、細胞を、免疫組織化学的試験のための8ウェルチャンバースライド、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-デキストラン色素漏出および経上皮電気抵抗(TEER)測定のためのインサートを有する6ウェルプレート、ならびに細胞遊走試験のための24ウェルプレートに2.5×10細胞/mLで蒔いた。コンフルエントになったら、細胞を3つの別々の群:未処理、HG+Cytの傷害、またはHG+Cyt傷害+トナベルサット処理(HG+Cyt+Ton)として処理した。HG+Cytの傷害は、以前に記載されたように(Kuoら、2020年;Mugishoら、2018a、2018b)DR様状態を誘発するために使用し、32.5mM HGと炎症誘発性サイトカイン;腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α;10ng/mL;Peprotech、米国)およびインターロイキン-1ベータ(IL-1β;10ng/mL;Peprotech、米国)の組み合わせからなった。
処理の適用
【0163】
トナベルサット(MedChemExpress、NJ、米国)を100μMの濃度で、HG+Cyt傷害と同時に細胞に投与した(HG+Cyt+Ton)。これを達成するために、トナベルサットを100mMの濃度で100% DMSOに溶解し、次いで、1μlのストック溶液を、HG+Cytを含有する999μlの培養培地に添加した。特に明記しない限り、細胞を処理条件下で72時間インキュベートした。明視野画像を、処理後24、48および72時間で光学顕微鏡を使用して撮影した。全ての実験を3回繰り返した。
免疫細胞化学
【0164】
細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中0.1% Triton(登録商標) X-100で10分間透過処理した。細胞を正常ヤギまたはウマ血清で1時間ブロッキングし、次いで、マウス抗RPE65(1:1000;Abcam、英国)およびヤギ抗α-SMA(1:200;Abcam、英国)、またはウサギ抗ZO-1(1:1000;Invitrogen、米国)のいずれかと4℃で一晩インキュベートした。PBSで2回、10分間の洗浄し、その後、細胞をそれぞれの二次抗体;ロバ抗ウサギAlexa-488(1:500;Abcam、英国)、ロバ抗マウスAlexa-488(1:500;Abcam、英国)またはロバ抗ヤギCy3(1:500;Invitrogen、米国)と室温で2時間インキュベートした。細胞をPBSで2回、10分間洗浄した。細胞核をDAPI(1:1000;Sigma-Aldrich、米国)で染色し、スライドをCitifluor(商標)退色防止試薬を使用してマウントし、ネイルワニスで密封した。
画像分析およびタンパク質定量
【0165】
蛍光画像をOlympus FV1000共焦点レーザー走査型顕微鏡(Olympus、日本)で撮影し、Olympus FV10-ASWビューアーおよびImageJソフトウェア(バージョン1.52a、米国国立衛生研究所、米国)を使用して処理した。5つの画像を条件ごとに単一チャンバーから撮影し、3つの別々の実験で繰り返した。RPE65およびα-SMAの発現を、平均蛍光強度(MFI)を測定することによって定量した。データをそれぞれの未処理群と比較して示す。α-SMAとRPE65の発現の比を(α-SMA MFI/RPE65 MFI)によってさらに計算した。ZO-1を、局在化の変化について定性的に評価した。
細胞遊走アッセイ
【0166】
72時間の処理後の細胞遊走速度を決定するために、1000μLのピペットチップを手で細胞上に垂直に引くことによって細胞単層中に擦過傷を作製し、創傷幅を経時的に測定した。細胞遊走試験全体を通して様々な処理培地(未処理、HG+Cyt、HG+Cyt+Ton)中でインキュベートした細胞を用いて、処理効果を2連ウェルで観察した。光学顕微鏡を使用して、擦過前、擦過直後、ならびに擦過後4時間および24時間の細胞の画像を撮影した。1ウェル当たり5枚の画像を撮影し、擦過傷の同じ切片を毎回画像化した。擦過傷の幅は、各画像内で8つの規則的な間隔(グリッドオーバーレイを使用してガイドされる)でImageJのラインツールおよび「測定」機能を用いて測定した。次いで、5つの画像のそれぞれについての平均値を統計分析に使用した。2連ウェルを使用し、条件ごとに10の試料サイズを作成した。擦過傷幅を、0時間の擦過後幅に対して定量し、各条件について擦過閉鎖率に変換した。擦過傷閉鎖率を、所与の時点内の処理群間でおよび処理群内で経時的に比較した。
FITC-デキストラン傍細胞透過性の測定
【0167】
細胞の単層を横切る70,000DaのFITC-デキストラン(D 1820、Thermofisher Scientific Inc.、米国)の運動を以前に記載されたように(Kuoら、2020年)評価した。手短に言えば、処理後、各プレートインサート中の1000μLの使用済み培地を1000μLの培地中FITC-デキストラン(10μg/mL)によって置き換え、15分間インキュベートした。インサートを除去し、ウェルベースからの培地試料を分光光度法(励起490nmおよび発光520nm)による定量のために96ウェルプレートに移した。FITC-デキストラン透過性を、処理なしの細胞を含有する未処理ウェルと比較して表した。条件ごとに3つのウェルがあり、それぞれ10回サンプリングした。
経上皮電気抵抗(TEER)の測定
【0168】
細胞単層のTEERに対する条件の効果を決定するために、細胞を6ウェルTranswell(登録商標)プレート(Corning Incorporated、米国)のインサートに、ベースに培地を追加して、再び播種した。コンフルエントになったら、インサート中の培地を3つの条件(未処理培地、HG+CytまたはHG+Cyt+Ton)で72時間置き換えた。次いで、STX3電極を備えたEVOM2(World Precision Instruments、米国)を使用して、処理追加後0、24、48および72時間でTEER測定値を得た。TEER値を、それぞれの群について0時間値に対して定量した。条件ごとに3つのウェルがあり、それぞれ6回サンプリングした。
統計分析
【0169】
データは、棒グラフ上の算術平均+S.E.M.および折れ線グラフ上の平均±S.E.M.として示される。RPE65およびα-SMAの発現、ならびにFITC-デキストラン透過性の場合、データをそれぞれの未処理群に対して定量した。統計学的比較を、事後検定を伴う一元または二元配置ANOVAを使用して実施した。各データセットに使用される具体的な統計方法は、それぞれの図の凡例に示される。Windows(登録商標)用のGraphPad Prismバージョン8.2.1(GraphPad Software、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を全ての統計分析に使用した。調整されたp<0.05を、統計学的に有意な差を示すとみなした。
実施例2
【0170】
この実施例は、HG+Cytの共適用が細胞形態の変化をもたらしたことを示す。培養中の正常なARPE-19細胞は、切断された線維芽細胞形態を有し、所々でほぼ立方体に見える。HG+Cyt適用は、24時間以内に開始し、48時間以内に非常に明らかになる、伸長および伸展した表現型への分化を誘導した(図1)。HG+Cyt処理の効果は、より長い処理期間でさらに強化され、72時間にわたって細胞を傷つけたところ、24時間のインキュベーション後のHG+Cyt処理細胞と比較して、より大きな伸長とより高い割合の伸展細胞の両方が示された。
実施例3
【0171】
この実施例は、上皮特異的表現型マーカーRPE65が、HG+Cyt傷害後に下方調節されたが、ヘミチャネル阻害剤(トナベルサット)の存在下で維持されたことを示す。上皮細胞表現型の変化を決定するために、定量的免疫細胞化学を使用して、RPE細胞に特異的な細胞マーカーであるRPE65の発現レベルを分析した。
【0172】
RPE65発現は、24時間後(F(2,11)=4.041、p=0.0483)と72時間後(F(2,10)=8.504、p=0.0070)の両方で処理条件によって有意に影響された(図2)。結果は、HG+Cyt+Ton群(112.6±6.4%)が、傷害HG+Cyt群よりも24時間で有意に高いRPE65発現を示すことを示した(84.5±6.0%、p=0.0286)(図2b)。
【0173】
72時間までに、RPE65発現は、未処理群(100.0±4.5%、p=0.0040)よりもHG+Cyt群で有意に低かった(72時間で未処理レベルと比較して81.2±2.8%)(図2d)。HG+Cyt+Ton群はここでは中間にあり、いずれの群とも有意には異ならなかった。
実施例4
【0174】
この実施例は、HG+Cyt条件が、間葉表現型分化のマーカーであるα-SMAの発現増加をもたらすが、ヘミチャネル阻害剤(トナベルサット)による処理によって防止されることを示した。間葉マーカーα-SMAに対する処理条件の有意な効果が、24時間(F(2,11)=3.358、p=0.072)と72時間(F(2,10)=5.889、p=0.0204)の両方で一元配置ANOVAによって決定された(図3)。ダネットの多重比較検定は、24時間後、α-SMA発現が、未処理(100.0±13.7%、p=0.0459)条件と比較して、HG+Cyt後に有意に増加する(140.6±6.4%)ことを示した(図3c)。72時間で、HG+Cyt+Ton(72時間で未処理レベルと比較して75.5±8.4%)は、HG+Cyt群(118.8±4.0%、p=0.0119)よりも有意に低いα-SMA発現を有していた(図3d)。さらに、細胞内のα-SMAの位置は、未処理群またはHG+Cyt+Ton処理群よりも、傷害後およびインキュベーション時間の増加に伴って発現がより線維性の性質を示し、処理条件に応じて変化する(図3a、c)ことが認められた。
実施例5
【0175】
この実施例は、コネキシン43ヘミチャネル遮断が、RPE65に対するα-SMAの発現比のHG+Cytによって誘導される増加を防止することを示した。α-SMAとRPE65の両方の発現で見られる変化を組み合わせると、HG+Cyt傷害が、24時間と72時間の両方で、未処理条件と比較して、RPE65に対するα-SMAの発現比の増加をもたらすことが実証された(24時間:未処理=1.0、HG+Cyt=1.7;72時間:未処理=1.0、HG+Cyt=1.5)(図4)。
【0176】
さらに、ヘミチャネル阻害剤であるトナベルサットの添加(HG+Cyt+Ton)は、この増加を防止し、未処理群(24時間=1.1;72時間=0.8)と同様に、比を約1で維持した。
実施例6
【0177】
この実施例は、式Iによる化合物(トナベルサット)を含むコネキシン43ヘミチャネル遮断が、HG+Cytによって誘導される細胞遊走を減少させることを示した。全ての条件の擦過を同様の幅(p>0.9999)で開始した(図5)。擦過後4時間で、創傷閉鎖に対する有意な処理効果は観察されず(F(2,27)=1.148、p=0.3322)、処理条件のいずれについてもそれぞれの0時間の擦過傷幅と比較して閉鎖率に有意差はなかった(未処理、p=0.9846;HG+Cyt、p=0.1675;HG+Cyt+Ton、p=0.8752)。しかしながら、24時間までに、処理条件が擦過傷閉鎖に影響を及ぼす(F(2,27)=23.76、p<0.0001)ことが分かった(図5b)。HG+Cytは、0時間と比較して擦過傷幅の有意な減少(61.3±3.1%、p<0.0001)をもたらし、HG+Cyt+Ton処理(33.8±9.6%)もまた、程度は低いが、0~24時間の間に有意な擦過傷閉鎖をもたらした(p=0.0015)。未処理群では、経時的な擦過傷幅の有意な変化は見られなかった(p=0.9846)。処理条件間の24時間での擦過傷幅の比較は、HG+Cyt(61.3±3.1%)が未処理群(0.9±3.7%、p<0.0001)と比較して擦過傷閉鎖を加速することを実証した。HG+Cyt+Ton処理は、HG+Cyt傷害単独(33.8±9.6%、p=0.0028)と比較して、擦過傷閉鎖の減少をもたらした。
実施例7
【0178】
この実施例は、タイトジャンクションの完全性がHG+Cyt傷害によって損なわれるが、ヘミチャネル遮断薬であるトナベルサットの共適用によって維持されることを示した。ZO-1はタイトジャンクションタンパク質であり、通常、細胞の細胞質膜に位置する。ZO-1の免疫細胞化学的標識後、未処理条件の細胞は、細胞質標識をほとんど伴わず、細胞膜におけるZO-1の明確な局在化を示した(図6a)。しかしながら、HG+Cytに曝露された細胞では、ZO-1膜細胞-細胞界面局在化の喪失が見られた。HG+Cyt+Ton処理は、細胞膜でのZO-1局在化を維持した。ZO-1細胞膜標識は、未処理群と比較してわずかに明確ではなかったが、それにもかかわらず本質的に正常であったのに対し、HG+Cyt傷害細胞では、ZO-1膜局在化が制限されたままであった。
実施例8
【0179】
傍細胞透過性に対する処理条件の効果を決定するために、細胞単層を横切る大きなFITC-デキストラン分子の通過を試験した。傍細胞透過性に対する処理の有意な効果が観察され(F(2,27)=58.72、p<0.0001)、HG+Cyt傷害後のFITC-デキストラン透過性(1.79±0.09)は、未処理(1.00±0.08、p<0.0001)群とHG+Cyt+Ton(0.77±0.02、p<0.0001)群の両方より有意に高かった(図6b)。この実施例は、HG+Cytが傍細胞透過性の増加(色素通過)を誘導し、これがヘミチャネル阻害剤(トナベルサット)による処理によって防止されることを示した。
実施例9
【0180】
この実施例は、経上皮電気抵抗がHG+Cyt傷害によって損なわれるが、ヘミチャネル阻害剤であるトナベルサットの共適用によって維持されることを示した。全ての条件の細胞を同じTEERで開始した(p=0.7625)。しかしながら、24時間以内に、TEERに対する有意な処理効果が観察された(p=0.0024)(図7)。24時間で、HG+Cyt群(89.2±1.0%)は、未処理(94.9±0.4%、p=0.0292)群とHG+Cyt+Ton(99.5±1.2%、p=0.0015)群の両方よりも有意に低いTEERを有していた。48時間でのHG+Cyt+Tonもまた、HG+Cyt単独(89.0±0.8%)よりも高いTEER(114.9±3.2%、p=0.0029)を維持したが、72時間でのTEERもまた、HG+Cyt単独(81.3±1.6%)と比較して、未処理(91.5±1.7%、p=0.0048)およびHG+Cyt+Ton(97.7±1.1%、p=0.0004)条件で有意に高かった。
【0181】
本明細書に記載および特許請求される発明は、それだけに限らないが、この発明を実施するための形態に示されるまたは記載されるまたは言及されるものを含む、多くの属性および実施形態を有する。これは包括的であることを意図するものではなく、本明細書に記載および特許請求される発明は、制限ではなく例示のみの目的のために含まれる、この発明を実施するための形態で特定される特徴または実施形態に限定されず、これらによって限定もされない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、構成要素およびパラメータの多くをある程度変更もしくは修正することができる、または既知の等価物に置き換えることができることを容易に認識するであろう。このような修正および等価物は、あたかも個別に示されているかのように本明細書に組み込まれることを理解すべきである。本発明はまた、本明細書で言及または指示されるステップ、特徴、組成物および化合物の全てを個別にまたは集合的に含み、前記ステップまたは特徴のいずれか2つまたはそれを超える数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0182】
本明細書で言及されるまたは述べられる全ての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、ならびに他の文書および資料は、本発明が関係する分野の当業者の技能レベルを示しており、このような言及される各文書および資料は、全体が参照により個別に組み込まれているか、または全体が本明細書に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、このような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および他の言及される資料または文書からのありとあらゆる資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を留保する。本明細書における任意の出願、特許および刊行物への言及は、それらが有効な先行技術を構成するまたは世界の任意の国における共通の一般知識の一部を形成することの自認でもいかなる形態の示唆でもなく、またそのように解釈されるべきでもない。
【0183】
本明細書に記載される特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示的なものであり、本発明の範囲に対する限定として意図されるものではない。他の目的、態様および実施形態が、本明細書を考慮すると当業者に思い浮かぶであろうし、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神の範囲内に包含される。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示される発明に対して様々な置換および修正を行うことができることが、当業者には容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載される本発明は、必須であるとして本明細書に具体的に開示されていない任意の1つもしくは複数の要素、または1つもしくは複数の限定の非存在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、および本発明の実施形態または実施例において、「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、および「からなる(consisting of)」という用語のいずれも、本明細書において他の2つの用語のいずれかで置き換えられ得る。したがって、例えば、ある特定の列挙される成分を「含む(comprising)」組成物はまた、列挙される成分「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」組成物の明示的な記述要件の裏付けを提供し、このような組成物としても特許請求され得る。同様に、ある特定のステップを「含む(comprising)」方法はまた、列挙されるステップ「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」組成物の明示的な記述要件の裏付けを提供し、このような組成物としても特許請求され得る。
【0184】
本明細書に例示的に記載される方法およびプロセスは、異なる順序のステップで適切に実施することができ、それらは、本明細書または特許請求の範囲に示されるステップの順序に必ずしも制限されない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないと指示しない限り、複数の言及を含む。いかなる状況下でも、本特許が、本明細書に具体的に開示される特定の例または実施形態または方法に限定されると解釈されるべきでない。いかなる状況下でも、審査官または特許商標庁の他の役人もしくは従業員によってなされた陳述が、出願人による応答の書面において具体的にかつ資格も留保もなしに明示的に採用されない限り、本特許がこのような陳述によって限定されると解釈されるべきでない。さらに、表題または見出しなどは、読者のこの文書の理解を高めるために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。本明細書で言及される本発明の態様、実施形態または構成要素のいずれの例も非限定的であるとみなされるべきである。
【0185】
使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示され、記載される特徴またはその一部の等価物を排除する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の修正および変形が当業者によって使用されてもよく、このような修正および変形が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることが理解されよう。
【0186】
本発明は、本明細書において広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示に入るより狭い種および亜属の群の各々も、本発明の一部を形成する。これは、切除される材料が本明細書に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属からいずれかの主題を除去するという条件または否定的限定を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0187】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者であれば、本発明がそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。
引用
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図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
【国際調査報告】