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特表2024-510945リグノセルロース系バイオマスからの抽出中のリグニン安定化のためのケト酸の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】リグノセルロース系バイオマスからの抽出中のリグニン安定化のためのケト酸の使用
(51)【国際特許分類】
   C07G 1/00 20110101AFI20240305BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C07G1/00
C12P1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553953
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022019042
(87)【国際公開番号】W WO2022187716
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,594
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336114
【氏名又は名称】リグ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ディック,グラハム
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AH19
4B064CC30
4B064CE07
4B064DA01
4B064DA20
(57)【要約】
生分解性のケト酸又はケトエステルを使用して、残留糖類もバイオマス断片も含まず、カルボン酸、カルボン酸エステル、又はケトンが豊富に含まれているケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンを製造する方法が提供される。開示された安定化されたリグニンを抽出後に更に改質することができ、又は水素化分解によって再生可能な芳香族原料源として利用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの抽出中にリグニンを単離及び安定化する方法であって、
(i)リグノセルロース系バイオマスを取得することと、
(ii)ケト酸又はケトエステル、溶媒、及び触媒量の鉱酸又はスルホン酸を前記リグノセルロース系バイオマスに添加して、混合物を得ることと、
(iii)前記混合物を処理及び濾過して、セルロース不含の濾液を生成することと、
(iv)前記濾液からリグニンを単離することにより、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物を処理及び濾過してセルロース不含の濾液を生成することは、前記混合物を約45℃~約165℃の温度に5分間から48時間の間の期間にわたって撹拌して加熱することと、前記混合物を室温まで冷却することと、前記混合物を濾過して、セルロース不含の濾液を生成することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記濾液からリグニンを単離することは、前記濾液を約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって、連続的に撹拌しながら約45℃以上の温度に曝して、前記溶媒を除去し、前記濾液を濃縮することと、溶媒を加えて前記リグニンを単離することと、濾過により前記リグニンを収集し、これを空気乾燥させることと、前記リグニンを約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって約45℃以上の温度に曝して、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、残留糖類及びバイオマス断片を含まない純粋なリグニンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ケト酸又はケトエステルは、それぞれ以下に示される一般式(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである):
【化1】
によりそれぞれ表されるα-ケト酸、α-ケトエステル、β-ケト酸、β-ケトエステル、γ-ケト酸、及びγ-ケトエステルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、式1、式2、式3、式4、式5、式6、式7、式8、式9、式10、式11、及び式12(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである):
【化2】
によりそれぞれ表される安定化されたシリンギル部分単位、グアイアシル部分単位、及び/又はp-ヒドロキシフェニル部分単位を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ケト酸又はケトエステルは、ピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、2-オキソ酪酸、オキサロ酢酸、2-オキソ吉草酸、3-オキソペンタン酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-オキソカプロン酸、4-アセチル酪酸、6-オキソヘプタン酸、2-オキソオクタン酸、7-オキソオクタン酸、5-オキソアゼライン酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、ピルビン酸プロピル、レブリン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、及びレブリン酸ブチルのうちの1種以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒は、エーテル、ケト酸と水との混合物、又はケトエステルと水との混合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エーテルは、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、及びビス(2-メトキシエチル)エーテルのうちの1種以上であり、前記ケト酸と水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケト酸と水との混合物は、約20%(容量/容量)の水から30%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケトエステルと水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケトエステルと水との混合物は、約0%(容量/容量)の水から10%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記鉱酸又はスルホン酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、及びフッ化水素酸のうちの1種以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
残留糖類もバイオマス断片も含まない、ケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項12】
前記ケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンは、
(i)リグノセルロース系バイオマスを取得することと、
(ii)ケト酸又はケトエステル、溶媒、及び触媒量の鉱酸又はスルホン酸を前記リグノセルロース系バイオマスに添加して、混合物を得ることと、
(iii)前記混合物を処理及び濾過して、セルロース不含の濾液を生成することと、
(iv)前記濾液からリグニンを単離することにより、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることと、
を含む方法によって製造される、請求項11に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項13】
前記混合物を処理及び濾過してセルロース不含の濾液を生成することは、前記混合物を約45℃~約165℃の温度に5分間から48時間の間の期間にわたって撹拌して加熱することと、前記混合物を室温まで冷却することと、前記混合物を濾過して、セルロース不含の濾液を生成することとを含む、請求項12に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項14】
前記濾液からリグニンを単離することは、前記濾液を約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって、連続的に撹拌しながら約45℃以上の温度に曝して、前記有機溶媒を除去し、前記濾液を濃縮することと、溶媒を加えて前記リグニンを単離することと、濾過により前記リグニンを収集し、これを空気乾燥させることと、前記リグニンを約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって約45℃以上の温度に曝して、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む、請求項13に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項15】
前記ケト酸は、一般式(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである):
【化3】
によりそれぞれ表されるα-ケト酸、α-ケトエステル、β-ケト酸、β-ケトエステル、γ-ケト酸、及びγ-ケトエステルである、請求項14に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項16】
前記ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、式1~式12(式中、R1及びR2は有機残基であり、かつLはリンカである):
【化4】
のうちの1つ以上によってそれぞれ表される、安定化されたシリンギル部分単位、グアイアシル部分単位、及び/又はp-ヒドロキシフェニル部分単位を含む、請求項15に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項17】
前記ケト酸又はケトエステルは、ピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、2-オキソ酪酸、オキサロ酢酸、2-オキソ吉草酸、3-オキソペンタン酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-オキソカプロン酸、4-アセチル酪酸、6-オキソヘプタン酸、2-オキソオクタン酸、7-オキソオクタン酸、5-オキソアゼライン酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、ピルビン酸プロピル、レブリン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、及びレブリン酸ブチルのうちの1種以上である、請求項16に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項18】
請求項17に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンを含む組成物。
【請求項19】
前記溶媒は、エーテル、ケト酸と水との混合物、又はケトエステルと水との混合物である、請求項18に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項20】
前記エーテルは、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、及びビス(2-メトキシエチル)エーテルのうちの1種以上であり、前記ケト酸と水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケト酸と水との混合物は、約20%(容量/容量)の水から30%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケトエステルと水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成であり、前記ケトエステルと水との混合物は、約0%(容量/容量)の水から10%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である、請求項19に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【請求項21】
前記鉱酸又はスルホン酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、及びフッ化水素酸のうちの1種以上である、請求項20に記載のケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国本出願であり、2021年3月5日に出願された米国仮特許出願第63/157,594号の利益を主張する。この米国仮出願は、その全体が引用することによって本明細書の一部をなす。
【0002】
分野
リグニンをリグノセルロース系バイオマスから抽出する間にリグニンを安定化する方法が提供される。開示される方法では、無毒であり人体により忍容性が良好な生分解性のケト酸及びケトエステルが使用される。また、抽出後に更に改質することができ、又は再生可能な還元炭素源として利用することができる安定化されたリグニンも開示される。
【背景技術】
【0003】
背景
リグニンは、主に植物及び紅藻類の細胞壁にセルロース及びヘミセルロースとともに見出される複雑で不均一な有機ポリマーの一種であり、コニフェリルアルコール、p-クマリルアルコール、及びシナピルアルコール等のフェニルプロパノイドのin vivo重合により生成される。これらのフェニルプロパノイドの構造のため、リグニンにおいて最も多く見られるモノマー間連結はβ-O-4エーテル結合であり、リグニンは芳香族化合物であるシリンギルモノマー、グアイアシルモノマー、及び4-ヒドロキシフェニルモノマーを豊富に含んでいる。芳香族化合物は一般に、プラスチック、薬物、化粧品原料、及び塗料を含む様々な化学物質及び材料の製造に使用される。
【0004】
大気中の二酸化炭素レベルの上昇により、気候変動を緩和し減速させる代替戦略が求められている。リグノセルロース系バイオマスは、地球上における莫大な再生可能な還元炭素源である。リグノセルロース系バイオマスの80%超は、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンという3種の主要な生体高分子から構成されている。これらの生体高分子を、セルロース由来のグルコース、主にヘミセルロース由来のキシロース、及びリグニン由来の芳香族分子を含むそれらの構成モノマーに分離及び解重合することができる。しかしながら、リグノセルロース系バイオマス原料のセルロース画分及びヘミセルロース画分は直接的に材料として容易に利用されるか、又はその構成モノマーが容易に利用されるのに対し、高度に加工可能かつ性能向上可能な材料としてのリグニンの単離及び精製は開発が不十分である。
【0005】
したがって、工業的に生成されたリグニンは主に燃料源として使用され、すべての抽出されたリグニンのうち再生可能な化学物質又は材料の供給源として利用されるのは2%未満である。これは、リグニン内に官能基が存在することにより、リグニンがバイオマスからの抽出中に分解する反応性ポリマーとなるためである。したがって、抽出されたリグニンは、バイオマスからこれを抽出するのに使用された方法論のおかげで、その当初の構造を失っている。
【0006】
既存の工業的規模のバイオマス利活用技術のほとんどは、精製されたセルロース画分及びヘミセルロース画分を得ることができるようにリグノセルロース系バイオマスからリグニンを分離することに焦点を当てている。これらの方法では、リグニンは、得られる生成物及びその後のプロセスに悪影響を与えるため夾雑物と見なされる。
【0007】
最大規模の既存の工業的規模のバイオマス利活用法は、製紙用の精製セルロース繊維を生産する紙パルププロセスである。製紙プロセスでは、リグニンは劣化に伴う紙の黄ばみの原因となるため、最終製品の品質に悪影響を与えると考えられている。
【0008】
同様に、リグニンはセルロースの酵素加水分解から得ることができるグルコースの収率を下げる場合があるため、新興の工業的規模のバイオリファイナリーではリグニンは除去される。したがって、これらの方法ではリグニンを抽出するのに過酷な条件が使用され、その結果、リグニンの分解がもたらされる。
【0009】
これらの過酷な反応条件下では、リグニンのβ-O-4連結において不安定なベンジルアルコール単位が切断されて、反応性のベンジルカルボカチオン又はアルケンとなる。これらの化学種は、近くの電子豊富なグアイアシルリグニン部分単位又はシリンギルリグニン部分単位と求電子芳香族置換反応において素早く反応する。結果として生じる単位間C-C結合は、水素化分解によるリグニンの効率的な解重合を妨げ、その加工性を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、リグニンから再生可能な化学物質を作製し、リグニンのその全体の最適化された使用を可能にする経済的に採算の合う代替的な解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本出願は、バイオマスの抽出中にリグニンを単離及び安定化する、迅速で費用効果が高くかつ容易に拡張可能な方法を提供することによって、上述の課題に対する解決策を提示する。開示される方法は、バイオマスの分画中にケト酸又はケトエステルを使用して、リグニンの縮合を妨げ、リグニンを安定化させるため、抽出後にリグニンを改質することができる。得られる安定化されたリグニンを、ケト酸若しくはケトエステルに含まれるカルボン酸官能基、カルボン酸エステル官能基、若しくはケトン官能基を利用することによって更に改質することができ、又は化学物質及び材料の製造若しくはあらゆる他の適切な用途に向けた再生可能な原料源として使用することができるモノマーへと解重合することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な説明
図1図1は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0013】
図2図2は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0014】
図3図3は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0015】
図4図4は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0016】
図5図5は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0017】
図6図6は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【0018】
図7図7は、ある実施形態において使用される化合物の例を示す図である。
【0019】
図8図8は、ある実施形態において使用される二官能性ケトンの例を示す図である。
【0020】
図9図9は、ある実施形態において使用される式の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面の詳細な説明
本明細書において、本発明の特定の実施形態が詳細に言及されている。実施形態又はそれらの態様のうちのいくつかが図面に示されている。
【0022】
説明を明瞭にするために、本発明は、特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明は、説明されている実施形態に限定されるものではないことが理解されるべきである。それどころか、本発明は、いずれかの請求項によって画定される範囲内に含まれ得る代替形態、変更形態、及び均等形態を対象として含む。本発明の以下の実施形態は、請求項に記載の発明の一般性を失うことなく、かつ、請求項に記載の発明に制限を課すことなく述べられる。以下の説明にて、本発明の徹底した理解を提供するために具体的な詳細が述べられる。本発明は、これらの具体的な詳細の一部又は全部がなくても実施することができる。加えて、よく知られた特徴は、本発明を不必要に分かりにくくすることを回避するために詳細に説明されていない場合がある。
【0023】
ある実施形態において、バイオマスの抽出中にリグニンを単離及び安定化する方法が本明細書において提供される。開示される方法は、(i)リグノセルロース系バイオマスを取得することと、(ii)ケト酸又はケトエステル、溶媒、及び触媒量の鉱酸又はスルホン酸をリグノセルロース系バイオマスに添加して、混合物を得ることと、(iii)混合物を処理及び濾過して、セルロース不含の濾液を生成することと、(iv)濾液からリグニンを単離することにより、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む。
【0024】
ある実施形態において、混合物を処理及び濾過してセルロース不含の濾液を生成する工程は、混合物を約45℃~約165℃の温度に5分間から48時間の間の期間にわたって撹拌して加熱することと、混合物を室温まで冷却することと、混合物を濾過して、セルロース不含の濾液を生成することとを含む。
【0025】
ある実施形態において、濾液からリグニンを単離する工程は、濾液を約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって、連続的に撹拌しながら約45℃以上の温度に曝して、有機溶媒を除去し、濾液を濃縮することと、溶媒を加えてリグニンを単離することと、濾過によりリグニンを収集し、これを空気乾燥させることと、リグニンを約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって約45℃以上の温度に曝して、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む。
【0026】
開示される方法によって製造されるケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、残留糖類及びバイオマス断片を含まない純粋なリグニンである。
【0027】
ある実施形態において、ケト酸又はケトエステルは、図1に記載される一般式(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである)によってそれぞれ表されるα-ケト酸、α-ケトエステル、β-ケト酸、β-ケトエステル、γ-ケト酸、又はγ-ケトエステルである。
【0028】
ある実施形態において、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、図2に記載される式1~式12(式中、R1及びR2は有機残基であり、かつLはリンカである)のうちの1つ以上によってそれぞれ表される、安定化されたシリンギル部分単位、グアイアシル部分単位、及び/又はp-ヒドロキシフェニル部分単位を含む。
【0029】
適切なケト酸及びケトエステルは、限定されるものではないが、ピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、2-オキソ酪酸、オキサロ酢酸、2-オキソ吉草酸、3-オキソペンタン酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-オキソカプロン酸、4-アセチル酪酸、6-オキソヘプタン酸、2-オキソオクタン酸、7-オキソオクタン酸、5-オキソアゼライン酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、ピルビン酸プロピル、レブリン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、及びレブリン酸ブチルのうちの1種以上を含む。
【0030】
ある実施形態において、溶媒は、エーテル、ケト酸と水との混合物、又はケトエステルと水との混合物である。ある実施形態において、エーテルは、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、及びビス(2-メトキシエチル)エーテルのうちの1種以上である。ある実施形態において、ケト酸と水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケト酸と水との混合物は、約20%(容量/容量)の水から30%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケトエステルと水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケトエステルと水との混合物は、約0%(容量/容量)の水から10%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。
【0031】
適切な鉱酸又はスルホン酸は、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、及びフッ化水素酸のうちの1種以上を含む。
【0032】
また、残留糖類もバイオマス断片も含まない、ケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンが本明細書において提供される。
【0033】
ある実施形態において、開示されるケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンは、(i)リグノセルロース系バイオマスを取得することと、(ii)ケト酸又はケトエステル、溶媒、及び触媒量の鉱酸又はスルホン酸をリグノセルロース系バイオマスに添加して、混合物を得ることと、(iii)混合物を処理及び濾過して、セルロース不含の濾液を生成することと、(iv)濾液からリグニンを単離することにより、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む方法によって製造される。
【0034】
ある実施形態において、混合物を処理及び濾過してセルロース不含の濾液を生成する工程は、混合物を約45℃~約165℃の温度に5分間から48時間の間の期間にわたって撹拌して加熱することと、混合物を室温まで冷却することと、混合物を濾過して、セルロース不含の濾液を生成することとを含む。
【0035】
ある実施形態において、濾液からリグニンを単離する工程は、濾液を約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって、連続的に撹拌しながら約45℃以上の温度に曝して、有機溶媒を除去し、濾液を濃縮することと、溶媒を加えてリグニンを単離することと、濾過によりリグニンを収集し、これを空気乾燥させることと、リグニンを約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって約45℃以上の温度に曝して、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む。
【0036】
開示される方法によって製造されるケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、残留糖類及びバイオマス断片を含まない純粋なリグニンである。
【0037】
ある実施形態において、ケト酸又はケトエステルは、図3によって記載される以下に示される一般式(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである)によりそれぞれ表されるα-ケト酸、α-ケトエステル、β-ケト酸、β-ケトエステル、γ-ケト酸、又はγ-ケトエステルである。
【0038】
ある実施形態において、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、図4によって記載される式1~式12(式中、R1及びR2は有機残基であり、かつLはリンカである)によりそれぞれ表される安定化されたシリンギル部分単位、グアイアシル部分単位、及び/又はp-ヒドロキシフェニル部分単位を含む。
【0039】
適切なケト酸又はケトエステルは、限定されるものではないが、ピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、2-オキソ酪酸、オキサロ酢酸、2-オキソ吉草酸、3-オキソペンタン酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-オキソカプロン酸、4-アセチル酪酸、6-オキソヘプタン酸、2-オキソオクタン酸、7-オキソオクタン酸、5-オキソアゼライン酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、ピルビン酸プロピル、レブリン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、及びレブリン酸ブチルのうちの1種以上を含む。
【0040】
ある実施形態において、溶媒は、エーテル、ケト酸と水との混合物、又はケトエステルと水との混合物である。ある実施形態において、エーテルは、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、及びビス(2-メトキシエチル)エーテルのうちの1種以上である。ある実施形態において、ケト酸と水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケト酸と水との混合物は、約20%(容量/容量)の水から30%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケトエステルと水との混合物は、0%(容量/容量)の水から100%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。ある実施形態において、ケトエステルと水との混合物は、約0%(容量/容量)の水から10%(容量/容量)の水の間の範囲の組成である。
【0041】
適切な鉱酸又はスルホン酸は、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、及びフッ化水素酸のうちの1種以上を含む。
【0042】
本開示の上述の特徴及びその他の特徴は、添付の図を参照して行われるある実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0043】
図5は、電子豊富なグアイアシル部分単位、シリンギル部分単位、及びβ-O-4部分単位(遊離ジオール)を含む例示的なリグニン生体分子の慣例的な抽出(a)と、開示される方法に従うケト酸又はケトエステルの存在下での同じリグニン生体分子の抽出(b)とを比較している。ケト酸又はケトエステルが存在しない場合(a)、β-O-4部分単位のベンジルアルコールが分解して反応性カルボカチオンを生成し、これが近くの電子豊富なグアイアシル部分単位と求電子芳香族置換反応において反応するため、水素化分解は炭素-炭素(C-C)結合を切断してリグニンモノマー(例えば、4-プロピルシリンゴール、4-プロピルグアイアコール、4-プロピルフェノール)を生成し得ない。ケト酸又はケトエステルが存在する場合(b)、リグニンが可溶化されると、ケト酸又はケトエステルはリグニンのβ-O-4部分単位と反応して、安定化されたケタール(1,3-ジオキサン構造)又はエステルを形成する。ケタール又はエステルは、ベンジルカルボカチオンの形成及びそれに続くリグニン部分単位の間の単位間C-C結合の形成を妨げるため、リグニンを水素化分解によってリグニンモノマーへと解重合することが可能となる。こうして形成された安定化されたリグニン部分単位は、リグニンの抽出後に更に改質することができることから、新規の材料、医薬品、及び添加剤を作ることが可能となる。
【0044】
詳細な説明
以下の用語及び方法の説明は、本開示をより良く説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」は「含む(including)」を意味し、単数形は、文脈上特段の明示がない限り、複数の参照を含む。「又は」という用語は、文脈上特段の明示がない限り、指定された択一的な要素のうちの単一の要素、又は2つ以上の要素の組合せを指す。例えば、「A又はB」という語句は、A、B、又はA及びBの両方の組合せを指す。さらに、本明細書において論じられる様々な要素、特徴、及び工程、並びにそのような要素、特徴、又は工程のそれぞれについての他の既知の等価物をこの技術分野における当業者によって組み合わせ、適合させて、本明細書において記載される原理に従って方法を実行することができる。
【0045】
特段の説明がない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、限定することは意図されない。
【0046】
いくつかの例において、ある特定の実施形態を説明し、特許請求の範囲に記載するのに使用される成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表す数字は、場合によっては「約」又は「およそ」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。例えば、「約」又は「およそ」は、これにより記載される値の±20%の変動を示し得る。したがって、ある実施形態において、本明細書に示される数値パラメーターは、特定の実施形態に所望される特性に応じて変動し得る近似値である。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に含まれるそれぞれ別個の値を個別に参照する簡略的な手法としての役割を果たすことを目的としているにすぎない。本開示の様々な実施形態の検討を容易にするのに、特定の用語の以下の説明を提供する:
【0047】
類似体:別の化合物と類似した構造を有するが、それとは、例えば1つ以上の原子、官能基、又は部分構造の点で異なる化合物。
【0048】
カルボカチオン:正に荷電した炭素原子を有するイオン。
【0049】
接触:ある物質と固体、液体、又は気体の形態の材料とを直接的に物理的会合させること。
【0050】
コントロール:既知の値又は値の範囲の参照標準。
【0051】
1,3-ジオキサン:1位及び3位の炭素原子の代わりに2つの酸素原子を有する飽和6員複素環を有し、分子式Cによって特徴付けられる化学的化合物。
【0052】
エステル:以下の接続性R1C(O)(OR2)(式中、R基は最初の原子が炭素である有機残基である)を有する構造を形成するカルボン酸とアルコールとの反応から形成される化学的官能基。R基は、同じ有機残基の等価物又はその一部であり得る(例えば、酢酸エチル、γ-バレロラクトン)。
【0053】
ハイブリッド材料:ナノメートルレベル又は分子レベルでマトリックスへと混ぜ合わせた2種以上の成分からなる複合材。1種の成分が無機であり、1種の成分が有機である場合もある。
【0054】
水素化分解:炭素-炭素又は炭素-ヘテロ原子の単結合が水素によって切断される化学反応。ヘテロ原子は通常、酸素、窒素、又は硫黄である。
【0055】
ケタール:以下の接続性R12C(OR3)(OR4)(式中、R基は最初の原子が炭素である有機残基である)を有する構造を形成するケトンとアルコールとの反応から形成される化学的官能基。R基は、同じ有機残基の等価物又はその一部であり得る(例えば、シクロヘキサノン、エチレングリコール)。
【0056】
有機残基:分子の一部を形成する原子又は原子団。残基は単純(例えば、メチル基)又は複雑(例えば、四環式又はペニシリン)であり得る。残基のサイズ、その構成原子、又は複雑さに制限はない。有機残基は、上付き文字を有する若しくは有しない「R」によって表され得るか、又は波打った線によって垂直に描かれた結合を使用することによって表され得る。
【0057】
リグノセルロース系バイオマスから安定化されたリグニンを製造する方法
リグノセルロース系バイオマスは陸域バイオマスの大部分を構成し、化石炭素に代わる妥当な持続可能な代替物となる。リグノセルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、及びリグニンという3種の主な生体高分子を含む。セルロース及びヘミセルロースは、五炭糖モノマー又は六炭糖モノマーを含む炭水化物ポリマーであり、これらは、p-ヒドロキシフェニル部分単位、グアイアシル部分単位、及びシリンギル部分単位を含む芳香族ポリマーであるリグニンに結合されている。
【0058】
これらの生体高分子をその構成モノマーへと分離及び解重合することができる。したがって、セルロースの解重合により主にグルコースが生成され、ヘミセルロースの解重合により主にキシロースが生成され、リグニンの重合により芳香族モノフェノールが生成される。しかしながら、リグニン由来の材料及びモノフェノールが化学物質及び材料の製造用の原料として使用され、石油化学製品の代替となる潜在性が大きいにもかかわらず、ほとんどのリグニンは燃料として使用され、抽出されたリグニンのうち再生可能資源として使用されるのは2%未満である。このようにリグニンの加工が非効率的であるのは、主として、リグニンをリグノセルロース系バイオマスから抽出する条件が過酷であるためである。
【0059】
リグニンは、シリンギル単位、グアイアシル単位、及びp-ヒドロキシフェニル単位を含むランダムポリマーである。リグニンにおける最も豊富な連結はβ-O-4連結として知られるβ-アリールエーテル単位である。過酷な抽出条件下では、β-O-4連結において不安定なベンジルアルコールが反応性のベンジルカルボカチオン(図5のa区分として参照される)を生成し、これが近くの電子豊富なグアイアシル単位及びシリンギル単位と求電子芳香族置換反応において反応する。これらの反応により扱いにくいC-C結合が生成され、これによりリグニンの加工可能性及び性能向上可能性が低下し、リグノセルロース系バイオマスから抽出された後の材料の更なる官能化が阻害される。
【0060】
本明細書において、従来のバイオマスの抽出方法の上述の課題及び不利点を克服する方法が提供される。開示される方法では、リグニンの分画反応にケト酸又はケトエステルを添加して、抽出プロセス中にリグニンを安定化することが要求される。リグニンの安定化は、ケト酸分子又はケトエステル分子中のケトン、カルボン酸、又はカルボン酸エステルをβ-O-4遊離ジオール単位と反応させ(図5のb区分として参照される)、ケタール又はエステルを生成させ、これが更にベンジルアルコールの脱離及び反応性ベンジルカルボカチオンの生成を妨げることによって達成され、それによりリグニンが安定化される。
【0061】
開示される方法によって製造されるケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンには、反応性のカルボン酸官能基又はカルボン酸エステル官能基及びケトン官能基が組み込まれている。したがって、ケト酸のカルボン酸官能基若しくはケトン官能基、又はケトエステルのカルボン酸エステル官能基若しくはケトン官能基を更に活用して、抽出後にリグニンを改質するか、又は化学反応によって多数の官能基に相互変換することができる。ケト酸及びケトエステルは低い毒性を示し、これらは多くの場合ヒトの代謝産物であるため、開示される方法により、安全であり危険を引き起こさないリグニン材料が製造される。さらに、これらの低い反応性のため、ケト酸及びケトエステルは、アルデヒドと同程度で酸触媒アルドール反応を受けないため、リグニンの抽出において低い濃度のケト酸又はケトエステルを使用してもよい。同様に、ケト酸及びケトエステルをリグニンの抽出用の溶媒として使用することができる。
【0062】
さらに、残留ケト酸及び糖類は水中に可溶性であるのに対し、リグニンは水不溶性であるため、抽出中にバイオマスにケト酸を添加すると、リグニンの精製が容易になる。したがって、開示される方法に従って、高純度のリグニンを容易に単離し、大規模に製造することができる。開示される方法に従って製造されたケト酸で安定化された純粋なリグニンは、残留糖類もバイオマス断片も含まず、カルボン酸官能基及びケトン官能基を介して抽出後改質するのに大きな可能性を秘めている。
【0063】
開示される方法によって得られる安定化されたリグニンは、典型的な工業的バイオマス分画法の間に形成し、最終的にリグニンモノマーがほとんど生成されない単位間C-C結合を欠いている。むしろ、単位間C-C結合の形成反応が見られないため、本明細書において提供される安定化されたリグニンはその天然構造を維持し、カルボン酸官能基、カルボン酸エステル官能基、又はケトン官能基を有し、所望であれば、これは水素化分解によってリグニンモノマーへと容易に転化される。
【0064】
開示される方法は、(i)リグノセルロース系バイオマスを取得することと、(ii)ケト酸又はケトエステル、溶媒、及び触媒量の鉱酸又はスルホン酸をリグノセルロース系バイオマスに添加して、混合物を得ることと、(iii)混合物を処理及び濾過して、セルロース不含の濾液を生成することと、(iv)濾液からリグニンを単離することにより、ケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを得ることとを含む。
【0065】
混合物を処理及び濾過してセルロース不含の濾液を生成する工程は、混合物を約45℃~約165℃の温度に5分間から48時間の間の期間にわたって撹拌して加熱することと、混合物を室温まで冷却することと、混合物を濾過して、セルロース不含の濾液を生成することとを含む。
【0066】
濾液からリグニンを単離する工程は、濾液を約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって、連続的に撹拌しながら約45℃以上の温度に曝して、有機溶媒を除去し、濾液を濃縮することと、溶媒を加えてリグニンを単離することと、濾過によりリグニンを収集し、これを空気乾燥させることと、リグニンを約2mbarから約100mbarの間の減圧で5分間から24時間の間の期間にわたって約45℃以上の温度に曝して、ケト酸で安定化されたリグニンを得ることとを含む。
【0067】
開示される方法において使用することができる適切なケト酸又はケトエステルとしては、限定されるものではないが、図6によって記載される以下に示される一般式(式中、Rは有機残基であり、かつLはリンカである)によりそれぞれ表されるα-ケト酸、α-ケトエステル、β-ケト酸、β-ケトエステル、γ-ケト酸、及びγ-ケトエステルが挙げられる。
【0068】
開示される方法において使用することができる例示的な適切なケト酸及びケトエステルとしては、ピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、2-オキソ酪酸、オキサロ酢酸、2-オキソ吉草酸、3-オキソペンタン酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-オキソカプロン酸、4-アセチル酪酸、6-オキソヘプタン酸、2-オキソオクタン酸、7-オキソオクタン酸、5-オキソアゼライン酸、2-アセチル安息香酸、3-アセチル安息香酸、4-アセチル安息香酸、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、レブリン酸メチル、レブリン酸エチル、ピルビン酸プロピル、レブリン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、及びレブリン酸ブチルが挙げられる。これらの化合物の構造は図7によって表される。
【0069】
ケト酸又はケトエステルのカルボン酸官能基、カルボン酸エステル官能基、又はケトン官能基を転化又は改質することができる適切な官能基としては、限定されるものではないが、アルケン、アルキン、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、アミノ酸、ケテン、ケトン、ジアゾケトン、イミン、オキシム、アミン、アセタール、ケタール、ヘミアセタール、ヘミケタール、フルミネート、シアネート、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトリル、エーテル、チオエーテル、ヒドロキシル、チオール、ニトロ、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、アジド、トリフレート、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボレート、ホウ酸塩、ボラン、シラン、シリルエーテル、シロキサン、シラノール、スルホンアミド、スルホン酸、スルホネート、スルホキシド、スルホン、ジチアン、ホスフェート、リン酸エステル、ホスホネート、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、ホスホニウム塩、ホスフィン、ホスファイト、亜リン酸エステル、及び亜リン酸塩、又はアジリジン、2H-アジリン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、2,3-ジヒドロアゼト、アゼト、1,3-ジアゼチジン、オキセタン、2H-オキセト、チエタン、2H-チエット、アゼチジン-2-オン、ピロリジン、3-ピロリン、2-ピロリン、2H-ピロール、1H-ピロール、ピラゾリジン、イミダゾリジン、2-ピラゾリン、2-イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、テトラゾール、テトラヒドロフラン、フラン、1,3-ジオゾラン(1,3-diozolane)、テトラヒドロチオフェン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、1,2-オキサチオラン、1,3-オキサチオラン、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、スルホラン、2,4-チアゾリジンジオン、スクシンイミド、2-オキサゾリドン、ヒダントイン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、テトラヒドロピラン、2H-ピラン、4H-ピラン、ピリリウム、1,4-ジオキサン、1,4-ジオキシン、チアン、2H-チオピラン、4H-チオピラン、1,3-ジチアン、1,4-ジチアン、1,3,5-トリチアン、モルホリン、2H-1,2-オキサジン、4H-1,2-オキサジン、6H-1,2-オキサジン、2H-1,3-オキサジン、4H-1,3-オキサジン、6H-1,3-オキサジン、4H-1,4-オキサジン、2H-1,4-オキサジン、チオモルホリン、4H-1,4-チアジン、2H-1,2-チアジン、6H-1,2-チアジン、2H-1,4-チアジン、シトシン、チミン、ウラシル、二酸化チオモルホリン、ヘキサヒドロ-1H-ピロリジン、1,4,5,6-テトラヒドロシクロペンタール[b]ピロール(1,4,5,6-tetrahydrocyclopental[b]pyrrole)、1,3a,4,6a-テトラヒドロピロロ[3,2-b]ピロール、1,4-ジヒドロピロロ[3,2-b]ピロール、1,6-ジヒドロピロロ[2,3-b]ピロール、6H-フロ[2,3-b]ピロール、4H-フロ[3,2-b]ピロール、4H-チエノ[3,2-b]ピロール、6H-チエノ[2,3-b]ピロール、2,3-ジヒドロ-1H-インデン、インデン、インドリン、3H-インドール、1H-インドール、2H-イソインドール、インドリジン、1H-インダゾール、ベンズイミダゾール、4-アザインドール、5-アザインドール、6-アザインドール、7-アザインドール、7-アザインダゾール、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン、プリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、1,2-ベンズイソオキサゾール、2,1-ベンズイソオキサゾール、1,2-ベンズイソチアゾール、2,1-ベンズイソチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール、1,2-ベンズイソチアゾール-3(2H)-オン、アデニン、グアニン、デカヒドロイソキノリン、デカヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、1,2-ヒドロキノリン、1,2-ジヒドロイソキノリン、キノリン、イソキノリン、4H-キノリジン、キノキサリン、フタラジン、キナゾリン、シンノリン、1,8-ナフチリジン、ピリド[3,2-d]ピリミジン、ピリド[4,3-d]ピリミジン、ピリド[3,4-d]ピラジン、ピリド[2,3-b]ピラジン、プテリジン、2H-クロメン、1H-イソクロメン、3H-イソクロメン、2H-クロメン-2-オン、2H-ベンゾ[e][1,2]オキサジン、2H-ベンゾ[e][1,3]オキサジン、2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン、キノリン-2(1H)-オン、イソキノリン-1(2H)-オン、イソキノリン-1(2H)-オン、フルオレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、アクリジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェノキサチイン、キヌクリジン、1-アザアダマンタン、2-アザアダマンタン、2,3-ジヒドロアゼピン、2,5-ジヒドロアゼピン、4,5-ジヒドロアゼピン、アゼピン、2H-アゼピン、3H-アゼピン、4H-アゼピン、1,2-ジアゼピン、1,3-ジアゼピン、1,4-ジアゼピン、オキセパン、チエピン、1,4-チアゼピン、アゾカン、アゾシン、チオカン、アゾナン、及びアゼシンから選択される複素環が挙げられる。
【0070】
ある実施形態において、開示される方法におけるケト酸又はケトエステルを、二官能性ケトン等のケトンによって置き換えることができる。適切な二官能性ケトンとしては、限定されるものではないが、2,3-ブタンジオン、アセチルアセトン、1,3-シクロヘキサンジオン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、2-メチル-1,3-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロペンタンジオン、2-メチル-1,3-シクロペンタンジオン等のジケトン、アセトイン、4-ヒドロキシアセトフェノン、2-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトン、アポシニン、及びアセトシリンゴン等のヒドロキシケトン、クロロアセトン、ブロモアセトン、2-クロロアセトフェノン、2-ブロモアセトフェノン、4’-クロロアセトフェノン、2’-クロロアセトフェノン、4’-ブロモアセトフェノン、3’-ブロモアセトフェノン、及び2-ブロモ-4’-クロロアセトフェノン等のハロケトン、4’-メトキシアセトフェノン、3’-メトキシアセトフェノン、及び2’-メトキシアセトフェノン等のエーテルケトン、並びに4’-ニトロアセトフェノン、3’-ニトロアセトフェノン、及び2’-ニトロアセトフェノン等のニトロケトンが挙げられる。いくつかの二官能性ケトンの構造を図8に示す。
【0071】
追加の適切なケトンとしては、限定されるものではないが、1,2-シクロヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、ベンジル、1,2-シクロペンタインジオン(1,2-cyclopentainedione)、及び1,3-シクロペンタンジオン等のジケトン、ヨードアセトン、2-ヨードアセトフェノン、3’-クロロアセトフェノン、2’-ブロモアセトフェノン、4’-ヨードアセトフェノン、3’-ヨードアセトフェノン、及び2’-ヨードアセトフェノン等のハロケトン、メトキシアセトン等のエーテルケトン、並びに4-アミノアセトフェノン、3-アミノアセトフェノン、及び2-アミノアセトフェノン等のケトアミンが挙げられる。
【0072】
分画混合物に添加されるケト酸又はケトエステルの量は、溶媒として使用されない限り、1グラムのバイオマス当たり約1.0mmol~約13.2mmolの範囲内である。
【0073】
開示される方法によって得られるケト酸又はケトエステルで安定化された純粋なリグニンは、図9によって記載される式1~式12(式中、R1及びR2は有機残基であり、かつLはリンカである)のうちの1つ以上によってそれぞれ表される、安定化されたシリンギル部分単位、グアイアシル部分単位、及び/又はp-ヒドロキシフェニル部分単位を含む。
【0074】
分画混合物において使用される溶媒は、例えば1,4-ジオキサン等のエーテル、又はケトン、ケト酸、若しくはケトエステルと水との混合物、例えば70%(容量/容量)のレブリン酸及び30%(容量/容量)の水であり得る。分画混合物における溶媒の濃度は、1グラムのバイオマス当たり約4mL~約10mLの範囲内である。
【0075】
リグニンの安定化は、鉱酸又はスルホン酸を分画混合物にケト酸又はケトエステルとともに1グラムのバイオマス当たり約1mmol~約10mmolの最終濃度範囲で添加することによって最適化される。適切な鉱酸又はスルホン酸としては、限定されるものではないが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸、及びフッ化水素酸のうちの1種以上が挙げられる。
【0076】
開示される方法によって製造されるケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンは、残留糖類及びバイオマス断片を含まない純粋なリグニンである。開示される方法によって得られた安定化されたリグニンを更に改質し、及び/又は樹脂、接着剤、ポリマー、炭素繊維、断熱材、塗料、界面活性剤、フィルム、顔料、薬物送達基材、粉末、クリーム、日焼け止め組成物、医薬品、爆発物、難燃剤等の製造用の組成物へと配合することができる。
【0077】
開示される方法は、抽出後のリグニンの更なる改質を可能にし、非効率的なリグニン断片の安定化につながるアルドール反応を妨げ、そしてすべての生成物が完全に生分解性であるため環境に優しいことから、従来の分離方法に対していくつかの利点がある。
【0078】
以下の実施例は、リグノセルロース系バイオマスから安定化されたリグニンを製造する開示される方法、並びに残留糖類及びバイオマス断片を含まない高純度のケト酸又はケトエステルで安定化されたリグニンを本明細書に表される方法に従って得る方法を例示する。
【0079】
実施例
実施例1:一般的なバイオマスの抽出手順
【0080】
皮を剥ぎ、乾燥させた木材チップ(約2cm×4cm×0.5cm)としてヒッコリー木材を得た。ブレンダーを使用して粒子径が6mm未満となるように木材チップのサイズを小さくした。サイズを小さくした粒子サイズの混じり合ったヒッコリー木材をそのままで使用した。
【0081】
木質バイオマス(2.0g)を、セプタムキャップを備えた40mlバイアル内に集めた。次いで、バイアルに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされた撹拌子、ケトン(1グラムのバイオマス当たり3.3mmol~13.2mmol)、1,4-ジオキサン(1グラムのバイオマス当たり4ml~10mlのジオキサン)、及び塩酸(1グラムのバイオマス当たり2mmol~10mmol)を順次加えた。バイアルを密閉し、85℃に加熱し、700RPMで3時間撹拌した。次いで、反応物を室温(約23℃)に冷却し、粉末ガラスフリット(中程度の多孔度)を備えた漏斗を通して濾過して、セルロース画分を分離した。1,4-ジオキサン(10ml)を使用して定量的移動を実施し、セルロースを1,4-ジオキサン(10ml)で再度洗浄した。濾液を風袋引きした24/40の250ml丸底フラスコに移した。次いで、濾液をロータリーエバポレーター(45℃の浴温、10mbarの到達圧力)を使用して真空中で濃縮した。脱イオン水(50ml)を加えてリグニンを沈殿させた。PTFEでコーティングされた撹拌子を加え、溶液を室温で30分間撹拌して、一切の凝集物を破壊し、濃縮濾液からのリグニンの完全な沈殿を確実にした。次いで、撹拌子を取り除き、沈殿したリグニンを、ナイロン膜フィルター(0.8μm)を介して濾過することにより収集した。リグニンを空気乾燥させ、風袋引きした24/40の250ml丸底フラスコに戻した。次いで、フラスコをロータリーエバポレーター(45℃の浴温、2mbarの到達圧力)において真空中で乾燥させて、ケタールで安定化されたリグニンを粉末として得た。
【0082】
実施例2:ピルビン酸を用いたバイオマスの抽出
【0083】
ヒッコリー木材(2.0391g)、ピルビン酸(0.45ml、6.4mmol、1.5当量)、1,4-ジオキサン(10ml)、及び塩酸(0.35ml、4.2mmol、1.0当量)を使用して、実施例1に記載される手順に従った。得られたリグニンを薄褐色の粉末として単離した(0.4168g、20.4重量%)。
【0084】
実施例3:レブリン酸を用いたバイオマスの抽出
【0085】
ヒッコリー木材(2.03753g)、レブリン酸(0.70ml、6.9mmol、1.6当量)、1,4-ジオキサン(10ml)、及び塩酸(0.35ml、4.2mmol、1.0当量)を使用して、実施例1に記載される手順に従った。得られたリグニンを薄褐色の粉末として単離した(0.4378g、21.1重量%)。
【0086】
実施例4:オキサロ酢酸を用いたバイオマスの抽出
【0087】
ヒッコリー木材(2.0377g)、オキサロ酢酸(870.6mg、6.592mmol、1.6当量)、1,4-ジオキサン(10ml)、及び塩酸(0.35ml、4.2mmol、1.0当量)を使用して、実施例1に記載される手順に従った。得られたリグニンを薄褐色の粉末として単離した(0.4393g、22.0重量%)。
【0088】
実施例5:2-オキソグルタル酸を用いたバイオマスの抽出
【0089】
ヒッコリー木材(1.9965g)、2-オキソグルタル酸(950.2mg、6.504mmol、1.6当量)、1,4-ジオキサン(10ml)、及び塩酸(0.35ml、4.2mmol、1.0当量)を使用して、実施例1に記載される手順に従った。得られたリグニンを薄褐色の粉末として単離した(0.4971g、24.9重量%)。
【0090】
これらの結果は、バイオマスの分画中にケト酸を添加すると、安定化されたリグニンの製造が大幅に向上し、リグニンを更に改質して再生可能資源に活用することが可能となることを示している。
【0091】
例示された実施形態は、開示された生成物及び方法の単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲及び趣旨に含まれるすべてを本発明者らの発明として特許請求の範囲に記載する。
図1
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図9
【国際調査報告】